どうしてイラストが納品されないんですか?
「どうして……」
猫キマイラの涙声には悲哀が溢れていた。とてもとても哀しそうだった。
ここはキマイラフューチャー有数のグラフィティスポット、通称『エリトア』。日夜多くのアーティストたちがウデマエを披露しあう場所だ。
どうやら猫キマイラは、自作ではなく腕のいいアーティストに依頼をしていたらしい。
肝心のそのイラスト……もといアートが届かないものだから、携帯端末を手に嘆いているというわけだ。
「教えてやろうか?」
ザッ! とそこに現れたのは、ハート型のチョコレート怪人だ。猫キマイラは唖然としながらも、縋るような思いで問いかける。
「どうしてイラストがノウヒンされないんですか?」
「それはな……全てバレンタインが悪いッ!!」
鬼気迫る怪人の声。そして両手を広げ、宣言した!
「ゆえにこのアートスポットを破壊する! アートを表現する場所など、最初から必要ないのだァーッ!!」
なんたる短絡的発想か! でもオブリビオンだから仕方ない!
怪人の号令によって雀牌戦闘員が現れ、そこらじゅうで破壊活動を開始する。よくわからないが、なぜか白牌の比率が高い。中や発1割に対して9割ぐらい白がいる。何故だ。
「怪人様! あそこにセクシーな水着姿のキマイラが居ます!」
「よし、連行しろ。水着は悪い文明だ」
「手作り衣装を自慢しているキマイラを見つけました。どうしますか怪人様」
「私が自ら手を下す、おしゃれも悪い文明!!」
「「「ウワーッ!」」」
おお、おお……平和な『エリトア』は一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図に変わった。
顔のない怪人たちの悪意が、なんの罪もないキマイラたちを襲う……!
●グリモアベース
「みんなはバレンタインの予定って決まってるのかしら!?」
グリモア猟兵、白鐘・耀は満面の笑顔で猟兵たちに問いかけた。
ちなみに、彼女は黒髪の姫カットで眼鏡をかけており、スタイルがいい。
見ればわかる? 違いない。でも書いておくのは大事だからね!
「友達や恋人、はたまた家族や近しい立場の大事な人たちにプレゼントを送る日。そういうの、忘れちゃいけないわよね」
なぜか遠い目をしながら語る耀。
「きっとそんな人たちととっておきの場所、英語でいうとベストなプレイスで過ごすのよね。素敵ねえ! おしゃれとかしちゃってね! 素敵ねえ!」
二回言った。とても大事なので、今から準備しておいたほうがいいっすよ、おやぶん!
「まあ私そんな予定ないんだけどね。ケッ」
真顔で吐き捨てた。常日頃から自称する可憐な少女ぶりはどこにもなかった。
え、予知?
なんかキマイラフューチャーで怪人が暴れだしたんだとか。
雀牌戦闘員とチョコレート怪人がいるので、転移したら即ぶっ倒せばいいとか。
現場では旧文明になぞらえた『書き初めアート大会』というやや時期を外したイベントが予定されていて、怪人どもをぶっ倒したら場を盛り上げる意味でも猟兵が参加するといいとか。
なんか、そういう話があった。
「説明ヨシ!」
独特な指差しポーズを取る耀。
繰り返すが、彼女は黒髪の姫カットで眼鏡をかけており、スタイルがいい。
見ればわかる? 違いない。
「ちなみに、アートは絵じゃなくて曲とか芸とかそういうのでもいいらしいわよ」
さらに現地には『アートを披露するとノウヒンとジュリが早まる』という古い噂があるらしい。
一体ノウヒンやジュリとはなんなのか。旧人類の文化には謎が尽きない。
「いやあバレンタイン楽しみね! 私には関係ないけど!! 転移するわね!!」
カッカッと火打ち石が鳴った。それが転移の合図になった。
唐揚げ
挨拶ヨシ! 唐揚げです。
オープニング、いかがでしたか。エッ、読んでない?
そんな方のために、シナリオのまとめです。
●目的
オブリビオンの撃破。
『書き初めアート大会』でアート(絵に限らなくともよい)を披露する。
●敵戦力
雀牌戦闘員(たくさん。よわよわ。白牌がやけに多い)
ハートブレイク・チョコレート怪人(ひとり。つよつよ。顔はない)
●備考
アートを披露すると『ノウヒン』や『ジュリ』が早まる、という謎の言い伝えがある。
バレンタインが近いっすよおやぶん!
こんな感じです。
なおオブリビオンどもはやけに顔の個性が薄い連中ばかりなので、顔の良さとかおしゃれとかなんかそういうのをアピールすると効果があるかもしれません。
言い伝えの効果のほどは不明です。当社比とか個人差があるというやつですね。
ちなみに、バレンタイン要素はあんまりありません。
そしてもう一つ。
第3章は日常パート、無事に敵を撃破していればグリモア猟兵が登場できます。
白鐘・耀(可憐な猟兵・f10774)と絡みたいという奇特な方がいらっしゃれば、プレイングにその旨をご記入ください。
では前置きはいい加減にして。
皆さん、イラストマスター様に感謝と労りの念を送りつつよろしくお願いします。
第1章 集団戦
『雀牌戦闘員』
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POW : 国士無双
予め【異なる顔の戦闘員が14人揃う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : 三元牌
【3人同時攻撃】による素早い一撃を放つ。また、【鳴く】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 立直
【相手の行動を読み、作戦通りの攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【狙いすました一発】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
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猟兵たちが転移されたのは、『エリトア』のど真ん中だった。
そしてまさに今、彼らの前で悪逆を働くオブリビオンあり!
「アート禁止!」
「絶対に許さないぞ!」
「浮かれたキマイラどもを叩いて潰すとサクサクになるぞ!」
意味不明な罵詈雑言を叫びながら、破壊活動を働く戦闘員たち。その顔ぶれはなぜか白牌が多い。なぜだ。
兎にも角にも、これではアートだのグラフィティどころではない。キマイラフューチャーの愉快な日常を取り戻すため、顔のない戦闘員たちを蹴散らせ!
狗衣宮・藍狐
か、かわいくなーい!!
何よその頭!個性の欠片も無いじゃない!ちゃんとオシャレして自分を表現しようとか思わないワケ!?
もう良いわ。あたしがバッチリメイクしてあげる!
グラフィティスプラッシュで雀牌の頭部を攻撃よ。アートで柄を変えて役なんて成立させないわ!役の方はよくは覚えてないけれど!
変えた柄を自慢のコミュ力で宣伝して、自分もああなりたいって誘惑しちゃうんだから!
さあ並びなさい、ここであなたたちと今までの無個性な人生をサヨナラさせてあげる。だからジッとしてあたしの攻撃受けて頂戴!
…とはいえ、あたし自身そんなに戦闘が得意じゃないから、誰かボディーガードが欲しいかな。
アドリブ・絡み歓迎
ティティモルモ・モルル
状況はさっぱり分からねーですが、とりあえず暴れてるのを倒せば良いんでごぜーますね?
本当は寝正月をまだまだ続けたい気分なんですが、仕方ねーです……。
つい最近納品をもらったこのモルがお手伝いしましょー。
つい最近、納品もらった、このモルが。(字余り)
で、なんかいっぱいわちゃわちゃしてるですね……。
騒がしくするのはいけないことでごぜーますよ、ゆっくり寝られねーじゃねーですか。
罰として、んんー……白いのいっぱいいるんで、ポンの刑にでも処しましょー。
(騒音は罪。ゆえに発動する【独裁独善独擅場】。白の戦闘員を数体まとめて謎の力で挟み潰してサンドイッチに。技能:衝撃波・高速詠唱・全力魔法)
●持つもの、その一
「何よその頭、個性の欠片も無いじゃない! か、かわいくなーい!!」
転移するなり叫んだのは狗衣宮・藍狐(キューティースタイリスト・f00011)である。ある意味でこの場にもっともふさわしいゴッドペインターの少女だ。
女性たちを美しく彩る役目に就く彼女にとって、この白牌ばかり(たまに中とか発がいる)の光景はまさに地獄めいていた。
「むむっ猟兵だ! 白ア、白ッシュ、ジェット三元牌で行くぞ!」
「「おう!」」
なにやら息の合った動きで襲いかかろうとする戦闘員三体。が、機先を制するように、その顔に色とりどりの顔料が付着した!
「「「ウワーッ
!!」」」
「ふふん、あたしのメイク術に勝とうったってそうはいかないんだから!」
化粧道具を手に少女がドヤ顔すれば、その鮮やかな手並みを褒め称えるようにリリン、とふたつの鈴が鳴った。
さてそんなグラフィティスプラッシュという名のメイクを受けた戦闘員たちだが。
「くそぅ、猟兵め……お、おいお前!」
「うん……? あっ、お前も!」
「あらやだ、アタシもだわ!」
描き上げられたのは猪・鹿・蝶。麻雀ですらない、花札の絵柄である。それにしても見事な色彩だ!
「ちゃんとオシャレして自分を表現しようとすれば、誰だって輝けるのよ!」
戦闘員らに、そして周囲の逃げ惑う市民らに朗々と響く少女の声。おおー、と称える拍手まであがる。
「さあ、他の連中も並びなさい。ここで今までの無個性な人生とサヨナラさせてあげる」
だからおとなしく喰らいなさいよね? と小悪魔めいて言いながら、化粧道具を構える藍狐。
描き出す色合いと同じく、いやさそれ以上にあどけなくも美しい少女の言葉に、ちょろい戦闘員たちは割とほだされていた。
「お、俺ちょっと食らっちゃおうかな……」
「俺が先だぜ!」
盛り上がる戦闘員たち。自信に満ちた笑みを浮かべながらも、藍狐は内心で少し焦っていた。
(うまく惹きつけられたけど、万一こいつらが暴れだしたらどうしよう……あたし、戦うのは得意じゃないからなあ)
とはいえ、ここは少しでも戦闘員の注意を惹きつけねばならない。それに、一人のアーティストとして、この無個性な戦闘員たちは見過ごせないのだ!
なにせ彼女の顔立ちは可愛らしい。青みがかった銀髪と白い肌、もふもふした尻尾は実に暖かそうだ。
そう、戦闘員たちすら魅了するほどに、その可愛さは溢れ出ていたのである。が……。
●持つもの、その二
同時刻。同じく転移されたティティモルモ・モルル(フトゥンフワット・f03305)は、寝ぼけ眼をこすり大きくあくびした。
「んー……状況はさっぱりわからねーですが……」
グリモア猟兵の説明を聞いていたのか寝ていたのか、そんなことを言いつつ。
「とりあえずー、暴れてるのをぶっ倒せばいいんでごぜーますね……ふぁあ」
ティティモルモは少々機嫌が悪かった。なにせ周囲は阿鼻叫喚の乱痴気騒ぎである。
三が日が過ぎようが寝正月は続けたい。なんだったら来年までぐうたらごろごろすうすうしたい。それがねぼすけブラックタールの人生哲学である。
が、そこはかとなく、その黒くも幼い顔には、何かに対するドヤ感があった。何にドヤってるのかはわからないが。とても自信に溢れていた!
「やってやるですよー……ここ最近……お肌つやつや、このモルが……」
字余り。
さておき、右を向けど左を向けど、居るのはわちゃりまくっている戦闘員どもだ。
「おい見ろ、あそこのガキを!」
「あの子供……許しちゃおけねえ!」
「ようし白ダー、白ット、ヤツに三元牌をかけるぞ!」
「「おう!」」
やけにチームワークのよさげな戦闘員三体が目星をつけ、ティティモルモに襲いかかる!
「んー……?」
ふらふらマクラァン(魔導書である)片手にそちらを見るティティモルモ。やかましい連中だ。寝られないではないか。
「ゆっくり寝られねーのはー、罪でごぜーますから……罰が必要でごぜーますねー」
ゆらり。可塑性のある体が不気味に動いた。そこに飛びかかる戦闘員たち!
「「「ケケーッ!」」」
「えい」
慌てもせず、まるでいただきますをするように、両手をぽむんと打ち合わせるティティモルモ。
それが大騒ぎの幕開けとなった。
●持つもの達
ここで時系列は合流する。
藍狐によってメイクされた雀牌戦闘員、あらため猪・鹿・蝶たち。
さながらファッションショーのモデルめいて、自慢げにその彩りを披露していた彼らと、ちょうどティティモルモに襲いかかろうとしていた戦闘員らとが、同軸上に立ってしまった。
「これからは個性を大切に生きグワーッ!?」
「俺も新しいことに挑戦グワーッ!?」
「故郷に帰ったら幼馴染に告グワーッ!?」
「キャーーーッ!?」
藍狐は思わず悲鳴をあげた。
無理もあるまい。猪鹿蝶がいきなりプレス機めいて押し潰されてしまったのだから!
「え、何、なんなの今の!?」
「えい」
「「「ギャーーーー
!!!」」」
遠くに居たティティモルモがまたぽんと手を合わせると、今度は別の戦闘員たちがミンチよりひどいことになった。
「ちょ、ちょっとあなた! 何やってるの!?」
「んー……? 戦闘員退治でごぜーますー……」
ぽむ。ぐしゃり。ぽむ。ぐしゃり。
ちょうど藍狐の呼びかけて集まっていた戦闘員たちは烏合の衆というべき勢いでぺらっぺらになっていく。
「あ、あわわわわわ、あたしがメイクしたあげるはずだった子たちが……」
「恥ずべきことをしていなければ何も起きねーはずです……因果応報、でごぜーます」
「だからってやり方がグロくない!? ていうかなんなのそれ!?」
「えい」
「「「ギエーーーー
!!!」」」
ティティモルモが悪だと思ったら悪なのだ。まあオブリビオンなので慈悲はないのが正しいのだが。
「白いのたくさんですしー……まさにポンの刑でごぜーますねー」
「上手いこと言ったつもり!?」
結果的に二人の行動が一網打尽に功を奏してしまったのがなおさらひどい。
「ああもう、こうなったらあたしも!」
「そうでごぜーますー……もふもふでかわいーおねーさんも働いてくだせー」
「えっ、そ、そう? あなたもなかなかね、なんで枕持ってるのかわからないけど……」
なんだかんだで面倒見がいい藍狐であった。
それにしても並び立つ二人の鮮やかさのコントラストは見事なものだ。いわば二人の戦いぶりが一種のグラフィティとすら言える。
実に! 色鮮やかで!! 個性的な二人であった!!!
なお、無個性な戦闘員たちはバンバン潰れて塗料まみれになって倒れていく。格差だ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
グイーダ・スティラ
わぁーお……なかなかぶっ飛んだ光景ねこれ。なんで白い顔怪人が多いのかしら……ミステリーね!まぁ、それはともかく猟兵としての初仕事頑張っちゃうわよ!千里眼射ちでとにかくビシバシ撃ち抜いていくわ!フェアリーだからって、甘く見てると痛い目見るわよ!アドリブ等はエクセレントでアメイジング!大歓迎だわ!
シトー・フニョミョール
実はアイコンが納品されなくて…失望しました、エリトアを壊し――ちゃう訳ないんですよぉー!壊したら届くものも届かなくなるじゃないですか!聞いているのかねジャンバラヤ戦闘員君!!11
もう怒りました、お前がアートになるんだよぉ!
「これは届かないアイコンの分!」(UDC石化液)
「これは予算の都合でつかない全身イラストの分!」(UDC液体金属)
「そしてこれが、もうすぐ届く異世界の設定資料の分ですだぁー!」(UDCラバー液)
ふぅ、気が済んだら見てください。アートなシュルシャガナ戦闘員君が出来上がりました。カメラで撮ってもいいのよ
●実は持ってるものたち
転移の光が晴れた時、そこには虹のように鮮やかな蝶がいた。
「ワァーオ……なかなかブッ飛んだ光景ね、これ」
いや蝶ではない。フェアリーの少女、グイーダ・スティラ(ビーストナビゲーター・f12597)である。
30cmに満たない小さな体が興味深げにあちらこちらを見るたび、きらきらと光の粉を蒔いて翅が羽ばたく。プリズムめいた美しい光景だ。
さて、彼女がやや挙動不審な様子をしているのには理由がある。というのも、どうやら今回が猟兵としての初仕事らしい。
初仕事がこれというのも大変に数奇な運命だが。本人のやる気が満々のようなので問題ないだろう。
「なんで白い顔の戦闘員が多いのかしら、ミステリーね!」
「ええ、まったくアングリーですね……」
「ヒエッ!?」
横合いから響いた滴るような怒気に大げさにビビるグイーダ。見てみればそれは髪も肌も黒い少女だった。
すなわち、シトー・フニョミョール(不思議でおかしなクリスタリアンの従者・f04664)だ。一瞬ブラックタールかと思われたが、鈍く輝くその体は鉱石の質感を持つ。
「あら……アンタ、クリスタリアン?」
「へっ? あ、はい! シトーはそうですよ、フェアリーのお嬢さん!」
ものすごい憤怒に歪んでいたような気がしたが、グイーダに向けられる微笑みは可憐だった。
「ひょっとして新人さんですか? 頑張りましょうね!」
「ええ、そうよ。アタシはグイーダ、よろしくねシトー!」
「はい、一緒にあの愚かなジャカルタ戦闘員さんたちをアートにしちゃいましょうね!」
「そうね、早くやっつけ……へっ?」
シトーはにこにこ笑顔のまま続けた。
「失望したからエリトアを壊す? それじゃ意味がないんですよ、そうでしょうグイーダさん?」
「え、えっと……」
笑顔だからこそ、溢れ出る迫力がすさまじかった。なにこのクリスタリアンこわい。
「見つけたぞ、猟兵だ!」
と、そこへ現れる戦闘員たち。二人にやけに敵対意識を向けている!
たしかに鮮やかな翅と黒く美しいボディとで、二人は対照的だが目に鮮やかな個性を放っていた。やや離れたところで戦う二人の少女とは違った存在感だ。
「おのれ猟兵め、見せつけやがって! 俺たちはみんな白一色だってのに!」
「そうだそうだ、おかげでろくに国士無双出来ないんだ!」
それは戦闘員側の手落ちな気がするが。
「来たわねオブリビオンども! 見てなさい、アタシの力でやっつけて――」
「おりゃあ喰らえUDC石化液ーーー!!」
かっこよくキメようとしたグイーダの真横からドバーッとぶちまけられる特殊液! 戦闘員どもの啖呵すら許さない怒りの爆発だ!
「これは嘆き悲しむキマイラさんたちのぶん!」
「あ、あのちょっと、シトー?」
「そしてこれが私の寂しい懐具合のぶん!」
「それはこの場に関係ないんじゃないの!?」
「「「ケオオオオオオッ
!?」」」
回避すら許さぬ決断的攻撃の雨嵐に、戦闘員たちは奇妙な悲鳴をあげてなすがままになるしかない。
シトーの目には怒りの炎が燃えていた。なぜだ、なぜそこまで憤るのだ、黒き乙女よ!
グイーダにはわからない。もちろん戦闘員にもわからない! 誰か説明してくれよぉ!!
「そしてこれが……いまも異世界で苦しむ人々のぶんですだァー!!」
「「「アバーッ
!!」」」
とどめのUDCラバー液がぶちまけられれば、哀れ戦闘員たちは不思議なオブジェと化していた。UDCアースなら現代アートとして売れるかもしれない。
「ふう、少し気が済みました。あ、写真に撮ってもいいですよ?」
「え、遠慮しておくわね、猟兵ってみんなこうなのかしら……」
グイーダはちょっとヒいていた。まあエキゾチックでパワフルなのはたしかだが。想像とちょっと違う。なにこのクリスタリアンこわい。
「「「うおおお、猟兵めー
!!」」」
そこに新たに駆けつける戦闘員たち。事前に作戦を立てていたのか、チームワークで襲いかかろうとする……が!
「はっ。そうよ、アタシも働かなきゃ! 甘く見ないでね!」
我に返ったグイーダは素早くロングボウ(妖精サイズ)を引き抜き、早撃ちで白牌どもを一筒に変えていく! ナイスショット!
「「「グワーッ
!!」」」
「おっと、そこのも逃さないわよ……!」
後方から様子をうかがっていた戦闘員に視点を合わせ、集中する。尋常に考えれば、フェアリーの弓ではとても届かぬ距離だ。
「アバーッ!?」
が……放たれた鋭い一矢は、白牌を赤ドラの五筒に変えてやった! グッキル!
「やったわ! さあシトー、気を取り直して戦うわよ!」
「うーん、ちょっとこのアートには味が足りない気がしますね……」
「話聞いてる!?」
すっかり目的の変わっていたシトーにツッコミを入れつつ、弓を構え直すグイーダ。羽ばたく鮮やかな翅。
せっかくの初仕事だ、戦いぐらいはシリアスに決めなければ! それにしても可愛らしいかんばせだ。
そういえばそうでした~、とか言いながら新たな溶液を補充するシトーも、耳目を惹く美しい姿をしている。
「エクセレントにかましてやるわ!」
「エンジョイしてエキサイティングしていきましょう~」
矢が、謎の液体が、カンバスめいて真っ白な戦闘員たちを次々に蹴散らす。
ここはエリトア。グラフィティな者だけが生き残る地獄の一丁目……。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヒルダ・ナインハルテン
他人の創作活動を妨害するとはなんと卑劣な… 絶対に許さないのはこちらのセリフですわ!
戦闘員は数が多いようですが所詮は十把一絡げな雑兵。一気に仕留めさせてもらいましてよ。
戦闘員の群がる中央まで盾を構えて突撃!【ダッシュ】で一気に跳ね飛ばしながら中央にたどり着いたら【範囲攻撃】のユーベルコード●女神の威光を使って周囲の戦闘員達に掲げた剣先から撃ち出される裁きの光線で一網打尽にしてやりましてよ!
「戦闘員達を光線で炙るとサクサクになるぞ!って感じかしら?先程の貴方方の妄言そっくりそのままお返ししますわ!」
●持つもの、また一人
猟兵たちの一大攻勢によってその蹂躙を大きく減じれど、戦闘員の数はいまだ大量。
いやほんと、どこに隠れてたんだお前らというぐらいの戦闘員たちがいる。市民の避難も間に合わないほどだ!
「おい、早く逃げないと!」
「まだだ、あと少しで! あと少しでこの絵が完成するんだ!」
大会に備えてグラフィティをしていたアーティスト二人が言い争う。そこに忍び寄る戦闘員の影……!
「アートしてんじゃねェー! ぶっとばしてやウワーッ!!」
「させませんわっ!」
危機一髪に割り込んだのはヒルダ・ナインハルテン(女神の盾・f00910)! 桃色の髪うるわしき聖騎士の乙女だ。
バスタードソードによって不埒な戦闘員を両断し、アーティストらに向き直る。
「ご無事でして? ここは私が死守しますわ。さあ、どうぞ安心して創作活動をお続けになって」
「あ、ありがとう猟兵さん!」
にこりと微笑み返しながらも、ヒルダははらわたが煮えくり返るような思いをしていた。
創造性はまさに未来への階。それを否定し、醜い感情で破壊しようとするオブリビオンのなんと卑劣なことか。
(とはいえ、守ってばかりではジリ貧ね。ここは一気に殲滅よ!)
令嬢めいた口調とは裏腹に心の中で決意すると、盾を構え腰を落とす。目指す先は、まさにいまここへ詰めかけんとする敵の中枢だ。
「やあああああっ!!」
己を鼓舞する気合を吐き出し、迷いを振り切った全力疾走で突撃する!
「「「おのれ猟兵めー
!!」」」
「くっ、この程度……っ、やあっ!!」
応報の攻撃を盾で防ぎながらも、少女は駆ける。そして敵中央!
「ふっふっふ、自分から囲まれに来るとは愚かな奴め。逃げ場はないぞ」
「そのピンク色の髪とかかっこいい鎧とかを、こう、アレしてやる!」
「一般のチャンネルでは映らないようにしてやる!」
あ、悪辣! 周りを取り囲む戦闘員たちは下卑た笑みを……いや、浮かべられなかった。だって全員白牌だし。
とにかくそんな雰囲気を醸し出すオブリビオンども。このままヒルダはくっ殺な目に遭ってしまうのか? いや、見よ!
「逃げ場はない? それはこちらの台詞ですわ」
剣を掲げよ。盾を鳴らせ! 其は聖騎士の凱歌なり!
「女神の威光の前には、逃げ場は無くてよ!」
溌剌たる声! そして次の瞬間、掲げられた武器からまばゆい閃光が周囲を照らし出す。ただの明かりではない、質量を伴う光線……すなわち、女神の威光だ!
「「「グワーーーーーッ
!!」」」
無個性な戦闘員たちに、その光輝は耐えきれなかった。このためのチャージ、そして挑発だったのだ。
「戦闘員達を光線で炙るとサクサクになるぞ! って感じかしら? まだ妄言は吐けまして?」
おお、戦闘員たちに為す術はない。なにせ彼らは白牌ばかりであり、そのうるわしの美貌には太刀打ちできないのだ!
凛々しき乙女の横顔が、アーティストたちに新たなインスピレーションを与える。
……後に、キマイラフューチャーで『女騎士っていいよね』みたいなムーブメントが起きたという。時の学者はこれをこう名付けた。
光の中にたゆたい敵を退ける勇猛果敢なるさま。すなわち、女騎士カンフライヤーと!
「……今なにか妙ちくりんな文化の萌芽に手を貸してしまった気がするような……」
周囲の敵を一掃し、よからぬ予感に首を傾げるヒルダ。藍色の瞳には意志が強く宿っている。
戦局は五分、いや猟兵が押し始めている。すぐにでも参戦せねば!
「恥を知ることですわね、他人の創作活動を邪魔するとは……!」
義憤を胸に、乙女は往く!
成功
🔵🔵🔴
●そして彼らが来る
阿鼻叫喚の地獄は、いまや英雄たちが戦う鉄火場に変化していた。
襲われるものあれば誰かがそれを守り、悪辣な白き怪人たちを蹴散らす。
「すっげー、これなら勝っちまうぜ!」
「ああ、さすが猟兵だな!」
すっかりギャラリーモードのキマイラたちが語り合った。
が、そこに現れた、妙に古めかしい格好の女性。ブルブルと震えながら迷信めいて呟く。
「い、言い伝えは本当だったんじゃ……!」
「あっ、あれは物知りおばばだ! 色んなことを知ってるすごい人なんだぜ!」
「旧文明にも詳しいって聞いたことあるよ、俺たち人類のことよく知らないけど!」
「すごいぜ! でもおばば、言い伝えって一体?」
若きキマイラの問いかけに、女性は呻くように答えた。
「白きかんばせの怪人はびこる時、何処からともなく英雄来たり。そしてジュリとノウヒンの嵐吹き荒れん……!」
「すごいぜ、俺たちにはよくわかんないや!」
「ジュリ、ノウヒン……一体どういう意味の言葉なんだ……」
真剣な表情で語り合うキマイラたち。おばばの目は険しくなっていた。
はたしてそれは嘘か真か。そして来るは嵐か吉兆か。
一つ確かなことがある。怪人どもの歪んだ憎悪と妬みよりも、なお熱く燃え上がる怒りと闘志、それを宿しながら持たざるものたちがここに来るのだ……。
何を持っていないのかはわからないが、とにかく猟兵たちが新たに駆けつけるのだ!
ヤクモ・カンナビ
概ね牌を美しゅう並べる程点数の増える麻雀の怪人が芸術を否定するなど、可笑しな事よ
その矛盾、わらわが指摘してしんぜよう
自らの過ちを受け容れ大人しゅうなるのであればそれで良し、然し逆ギレされるようであれば…これは懲らしめてやらねばなるまいの
麻雀怪人を相手するのであれば、わらわも麻雀で勝負じゃ
麻雀牌が見つからずとも構わぬ、どうせ三界改変にて現実をハッキングし、手元に牌を作り出す故の
そして、手元の白3つと敵怪人の白で「カン」じゃ…此れを4回(三界改変にて手持ちの牌を全て白にしておる故の)
…っと、どこぞの文献とは違い、通常は字一色・四槓子のみにしかならぬかの?
何れにせよ十分な時間稼ぎにはなったじゃろうて
未魚月・恋詠
ノウヒン……ジュリ……? う、頭が……は、いけませんいけません!
今はお仕事のお時間でございます!
恋詠めがキマイラの皆々様の平穏を守り抜いて見せましょう!
(名乗りあげる青い和服に青い瞳、抜けるような白い肌で漆黒のセミロングの髪がさらさらと風に靡く和風美少女ヤドリガミ※とても大事な部分)
まーじゃんというのは未経験でございますが、将棋と花札は村内大会(参加者12名)で第五位にまで上り詰めましてございます!
さぁ参りますよヒナゲシ、ナデシコ!
(その名通りの花飾りのフェアリー大の人形2体。前者が前衛、後者が小さな弓で千里眼射ちの布陣)
まーじゃんだろうと何であろうと、数が武器なら削れば良いのでございます!
美墨・ヨウ
何がサクサクだクソがぁぁ!!
テメェらの顔サクサクどころかサラサラにしてやるってんだよ!!
(ナレーション:ロン毛龍は怒っていた。自慢の可愛い妹には既に可愛いイラストある。
自分にはない。予定通りなら来るのは三月の中頃。バレンタインどころかホワイトデーも過ぎた後だ。プレゼントピンどころか2ピンも参加は叶わない(メメタァ))
【POW】
おう白揃いの中にいるそこの「中」って書いてあるテメェ!!
目と鼻がちゃんとあるテメェはいいご身分だなぁ!!(中の字がそんな風に見える)
あ゛?顔じゃねぇ?ごちゃごちゃうるせぇ死ね!!!
(【矛盾交叉】で轟盲牌の如く容赦なく中の字を削り取る)
(アドリブ等歓迎、好きなようにどうぞ)
在連寺・十未
おっま……そういうことするのか、そっかそっか
……ユーベルコード起動(おもむろに有効な近接武器であるペン(油性)を取り出す)
『罠使い』でワイヤー張って『ロープワーク』で絡めて『敵を盾にする』を使って上手く凌ぎながら連中の顔面に東西南北發中ついでにピンズを描いていくよ。
後は鏡を取り出して突き付けながら「誰に顔が無いって???」と詰め寄ってからお腹を蹴りあげるよ
……怒ってないよほんとだよ。連中の考えに則って連中をサクサクにしてあげるよ
※アドリブや絡みなどご自由に、大歓迎です
リリィ・オディビエント
ジュリを受けはや一か月にさしかかろうとしていた。なぜ…?周りには幸せそうな顔が並んでいる。こちらとら喜ぶ顔すら見せれない。
妬ましい…!
騎士として浅ましいぞ!と心(建前)は叫ぶ
でも羨ましい…!
心(本心)はもう我慢できなかった。
騎士として生きる少女だが、心にある小さな器が弾けるように叫ぶ。
少女は金髪の髪や黒く美しい尻尾を揺らしながら、鍛え抜かれた細くも力強い四肢にて剣やUCを振るって敵を攻撃するだろう。その表情は怒りに染まり、プリティーな狼耳がピーンと立っている。かわいい!
主に白杯以外のやつらの表面を削ぎ落すように戦うのだ。インシツ!
バレンタイン?愛すべき姉と過ごすがなにか?
北条・優希斗
・・・・・・顔が無い?
いやいや、俺達の顔を描いて下さる人々を逆恨みしちゃいけないよ(笑顔)。
まあ、それぞれの都合を考えず逆恨みするオブリビオンには相応の報いを与えないとね(笑顔)。
仲間との連携・声掛けOK。
ダッシュで3人の中に突っ込み、問答無用で【夢月蒼覇斬】。
あっ、外れそうなら先にワイヤーで【フェイント】掛けて転ばせて引っかけておくよ。
他の人々の様々な思いと共にひたすら敵を【二回攻撃】で斬り捨てるよ。
防御に関しては、【見切り】で回避を重視して、【残像】で標的をずらす。
当たりそうなら【オーラ防御】、【武器受け】で受け流しながら【カウンター】。
こういう奴らに容赦するつもりは一切無いよ。
フルム・サーブル
【アドリブ・絡みOK】
僕は「生きている生け花」を披露しよう
アートとは何も絵画だけとは限らない!
立体を魅せるこの空間芸術でもって散りたまえ
もうすぐ二月だから少々季節を先取りして
赤やピンクのカーネーションにチョコレートコスモスなんかも混ぜて
バレンタインは悪くないアピール
召喚できる花は全部一籠にまとめて強化するよ
余談だけど……本当に余談なんだけど
僕も昔、絵画の依頼をアーティストにしていてね
2014年に完成するはずだったんだけどまだ待っているんだ
だって、中止要求さえしなければ
「永遠に納品される可能性は無い」というエンドをブレイクできるからね!
アンノット・リアルハート
アーティストさんの予定を見て、ノウヒンのスピードを確認して、予定日を過ぎてるようなら嘆きなさい!
沢山の人とやりとりしてるんだからすぐ来ないのは当たり前でしょう!?
それはさておき【流れる夢よ、正しき願いを守りたまえ】で他の猟兵さん達の援護をしながら、ノウヒンを待つキマイラの人達の夢を応援しましょう
これは邪な願いを持つ人物の力を弱めると同時に、真摯な願いを持つ人物を強化する広域結界。
またその願いが他者に迷惑をかけないものならそれが叶うよう少しだけ幸運が訪れます
戦闘は【メタルハート・ベーゼン】に【騎乗】して移動しながら、100を超える流星の光で怪人達を爆撃していきます
コハル・ファインギフト
「『ノウヒン』『ジュリ』…何それ食べ物にゃ?」
コハルは…リクエストしたかったのに受付時間誤認して
寝落ちて起きたら閉まってて…今は開き待ちにゃ
でも今はお星さま足りな…コハルは何言ってるにゃ?
キマイラ達を【かばう】して守り
一時避難してもらうにゃ
じゃんはい?達を倒すにゃ
「白い顔に、にゃんこ描くにゃ!可愛いの描くにゃ!描ーくーにゃー!」
【範囲攻撃】用い
『グラフィティスプラッシュ』で攻撃にゃ!
塗りつぶした地形の上に移動し
もう一度攻撃…
…が敵の狙いかもなので
場合により【ダッシュ】で通り過ぎたり方向変換にゃ!
敵の攻撃は避けるか受ける
痛くても我慢にゃ
…ところで、じゃんはい?って何かにゃ
固めて切ったお豆腐にゃ?
●持たざるもの、怒りの日
「何がサクサクだクソがァ!!」
転移が完了するなり、美墨・ヨウ(射干玉・f03063)が吼えた。まさに怒龍の咆哮だ。
そう、ヨウは怒っていた。必ずやかの邪智暴虐なるオブリビオンをアレしなければならないと思っていた。
「テメエらの面をサラサラにしてやるってんだよォ!!」
怒りの理由? それは余人には分からない。芸術を汚されることへの義憤かもしれないし、単純にオブリビオンが好き勝手していることへの怒りかもしれない。
はたまた逃げ惑う市民たちが、自らの最愛の妹と重なったのかもしれない。多分そういうシリアスなやつだ。
なのでここに関しては深く掘り下げないようにしよう。むしろ注目すべきは彼の容姿だ!
黒い髪は不穏な夜霧のように怒りにざわめき、赤い瞳は炯々と輝く。戦闘員たちもその迫力にはビビリ散らした。
「えっ初対面なのにどうして俺たちにそんな」
「テメェ!!」
「ひい!」
ずんずんずん。取り囲む白牌戦闘員たちを威圧しながら突き進む。睨みつけるは『中』の絵柄が刻まれた戦闘員だ。
「お前……なんだその中ってのは」
「えっ、いや、これは字牌で」
「ごちゃごちゃうるせえ死ねェ!!」
理不尽! ぐわっと両手をかぎ爪めいて強張らせ、中牌戦闘員に襲いかかる!
「なぜぇ!?」
戦闘員は反射的に攻撃を繰り出した。だがこれがまずかった。
ぎしりと龍が笑う。繰り出された拳撃は乱暴に弾かれ、返す龍槍が戦闘員の頭部をガリガリと削り取る!
カウンターと呼ぶにはあまりに豪快な一撃。中牌戦闘員、その役目を終える。
「おいこいつヤバいぞ」
「袋叩きにしてやれ!」
「「「ウオオオーッ!」」」
仁王立ちするヨウに、我に返った白牌戦闘員たちが飛びかかる。が!
「そこは私の手が届く場所だッ!」
叫びとともに一気呵成に飛び込んだのは、リリィ・オディビエント(パラディンナイト・f03512)。細身ながらも鍛え上げられたしなやかな四肢が躍動し、金色の髪を後に引いて獣じみて飛びかかる。か、可憐だ……!!
しかし攻撃方法はえげつなかった。獅子の頭部に変じたそれで、ヨウに襲いかからんとした戦闘員をがぶり。がりごり、ぶつん。である。
「オブリビオンどもめ……許さんぞ」
狼めいた耳をぴんと屹立(これもまた可憐だ)させながら、すさまじい憤怒の形相で唸るリリィ。怒りの理由は、多分……義憤とか、そういうのだ!
「やべえよやべえよ……」
「猟兵ってこんな奴らだったのか!?」
「やかましい! そこの発と東! 問答無用ーッ!」
「「ギャーッ!!」」
まさに猛獣じみた噛みつきに、また二体ほど戦闘員が役目を失った。多分白牌にドラが乗ったらすごいことになる。
「はっ。いかん、私としたことが騎士として浅ましいふるまいを……」
我に返るリリィ。そこまで彼女を突き動かす怒りとはなんなのか。さっぱりわからない……多分、義憤とかだ。
「でもやっぱりお前らが気に食わないので潰ーす!」
「「「ウワーッ
!?」」」
怒りだ。怒りの嵐が吹き荒れている。もはや戦闘員が逃げ惑う有り様だ。
不意を救われたヨウも、リリィの猛々しき戦いぶりに鋭い眼光を漲らせ、長く艷やかな黒髪を翻しながら戦列に加わった!
「おい、なかなかやるなお前!」
「そっちこそ……いや、こほん。そちらこそな。なぜかわからないが、私はあなたに強いシンパシーを感じるよ」
姉と妹。互いの家族構成は違えど、二人には共通点があった。
そう、シスコンである。
「よくわかんねえが、たしかにな! ようし、いっちょ奴らをぶちのめそうぜ!」
「ああ、全員真っ白にしてやる!」
騎士としての礼節とかそういうのは忘れることにした。両雄並び立って凶暴な笑みを浮かべれば、戦闘員たちはたまらず震え上がる。
「「「俺たちが一体何をした
!?」」」
「「うるさい死ねェ!!」」
「「「ギャーーーーー
!!」」」
新たな地獄絵図が生まれていた。
●持たざるもの、静かなれど
一方で別区画。ここでも避難の遅れた市民が、六体の戦闘員に囲まれていた。
「ひいいい、なんで自作の水着を披露したらダメなんですか!?」
どうやら服作りが趣味らしい女性キマイラだ。もふもふの体を着飾る可愛らしい水着も、悪漢どもに囲まれ震えるさまは実に寒々しい。
「どんな形であれアートは禁止だぁ~」
「見せびらかしやがって……そのもふもふを、見せびらかしやがって!」
「俺たちを見ろ! この真っ白な顔を!!」
なんと八つ当たりにも程がある怒りだろうか。というか絵柄の違いはそんなに重要なのか? オブリビオンの感覚はよくわからない。
「だ、誰か助けてぇ……!」
乙女の切なる悲鳴が響いた、その時!
「Came to me――!」
高らかに響く詠唱。そして風のような軽やかさで走るワイヤー。それを伝い、何者かが戦闘員どもの間を縦横無尽に駆け抜ける。一体何が!?
「アアッ!? お、俺の顔がーッ!?」
見よ! 白牌戦闘員たちの顔には、それぞれ東西南北を始めとした字牌の絵柄が描かれているではないか。
……油性マジックで!!
「だ、誰がこんなことをーッ!」
「僕だよ」
さらさらと流れる白髪は先に行くにつれ、艶やかな黒に染まっていた。肌はと言えば透き通るほどに白い少女……すなわち、在連寺・十未(アパレシオン・f01512)だ。
持ってるものが油性ペンでなければもっとかっこよかったかもしれない。
「な、なんてことをするんだ! おのれ猟兵め!」
「それはこっちの台詞だよ。まさかこんなことをするとはね」
罪なき女性を囲っての威圧、そして不埒な振る舞い。中性的な声音にははっきりと嫌悪が籠もっている。
「ところで」
そんなことより、とばかりにずずいと突き出したのは……鏡?
「さっきなんて言ってたっけ? 真っ白な顔が? なんだって??」
「うっ! こ、これはお前が書いたのであって……オゴーッ!?」
あなや。涼やかな笑顔のまま、ものすごい鋭いニーを戦闘員の腹部に叩き込む十未。
「な、なんで? なんでそんなに怒ってるんですかオゴーッ!?」
「怒ってないよ? ほんとだよ???」
ものすごい鋭いトーキックも刺さった。
しかし敵は六、こちらは一。痛めつけるのはいいが、今度は彼女が囲まれてしまった。
「猟兵め、袋のネズミだ!」
「この厄介なワイヤーだってもう使えまい!」
勝ち誇った様子で、ワイヤーを掴む戦闘員たち。十未はそれを見てきょとんとしたあと、とっくに巧みなロープワークで手繰り寄せた"自らの"ワイヤー束を見せる。
「それ、僕のじゃないよ?」
「何ッ!?」
気付いたときにはもう遅い。先の十未よりもなお疾き風が奴らの間を駆け抜ければ、戦闘員どもの頭部にしゃこんしゃこん、と光の亀裂が走る。
否、それはれっきとした剣風である。目視すら出来ぬ速度の斬撃が、奴らに最期を自覚させぬまま切り払ったのだ。
「そう、俺のだよ」
戦闘員どもの間に張り巡らされていたワイヤーは、北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)のものだった!
彼は戦闘員と一触即発にある十未を見つけ、密かにワイヤーを張り巡らせて機を伺っていたのだ。
「大丈夫かな? よかった、じゃああっちへ避難して」
女性キマイラは二人に感謝を述べ、優希斗が指示した方角へ去っていく。
「しかし面白いね、俺とキミは似てるようで全然戦い方が違うみたいだ」
特徴的な髪色の十未に対し、優希斗のそれは星なき空の闇めいて黒に染まりきっている。
「えっと……そうです、かね? 今回はこれ、このペンだっただけですよ」
どうやら年上らしいことを察し、ややぎこちない敬語を返す十未。
「面白いな。詳しく話を聞いてみたいところだけど……」
「ええ。そうもいきませんね」
ふたりは視線を周囲にやる。本当にどれだけいるんだという数の戦闘員が、ふたりを取り囲んでいた!
しかし奴らは攻め込めない理由があった。
笑顔である。
優希斗の、そして十未の笑顔。優しいはずのそれが、ものすごい迫力を放っているのだ。ていうか怖い。
なんかの本には、笑いとは獣が牙を剥く行為に端を発するともあった。多分それだ。
「それぞれの都合を考えず逆恨みするオブリビオンには、相応の報いを与えないとね」
「そこはまったく同意見。文字通りサクサクにしてやりましょうよ」
いっそ軽やかな声で語り合う二人。緊張の糸が張り詰めた怪人が迂闊にも飛びかかり……スッ、と優希斗の残像を突き抜けた。
そして次の瞬間、前身に剣閃が走り、バラバラになって倒れ伏す。三日月めいた二刀がひゅう、と空を切る。
「言っておくけど、容赦はしないよ。さあ、蒼き月の舞を踴ろうか」
「そういうわけだから。覚悟してくれるかな、いや僕全然怒ってないけどね???」
「「「ウ、ウオオオオオーッ
!!」」」
戦闘員たちの雄叫びが響き……ほどなくして、それは悲鳴と断末魔の雨あられに変わったという。
●持たざるもの、なんかやばいことに触れてしまった人たち
ノウヒン。
ジュリ。
それは謎めいた言葉。とてもとても胸躍る、けれど切ない言葉。
しかしよく考えるとなんだか頭がぼんやりしてくる微妙にやばげな言葉……。
「……はっ!? いけませんいけません!」
未魚月・恋詠(詠み人知らず・f10959)が我に返ってぶんぶん頭を振ると、濡羽色の黒髪がふるふると風になびく。まるで絹糸のように煌めく見事な艶だ。
「んー、よくわからんけど食べ物かなんかかにゃ?」
その隣で首を傾げるのはコハル・ファインギフト(目指せ稀代のにゃーてぃすと・f00216)。ふわっふわな白い毛並みが柔らかそうな、金の眼がどこか妖しいケットシーである。
「いえ、深く考えるのはやめましょう。今はお仕事の時間でございますし」
「うーん……」
恋詠の言葉に対し、コハルはぼんやりと虚空を見つめる。猫ってたまにそういうことありますよね。背景に宇宙とか背負いそうな感じで。
「……コハルは寝落ちしちゃった上に懐もさむさむで……」
「考えないように! しましょう!!」
コハルは少し頭がぼんやりしていたらしい。猫ってたまにそういうことありますよね。
ともかく! と咳払いをし、青い瞳の大和撫子が仕切り直す。彼女が身振りするたび、藍より蒼き和服がひらひらと舞う。シミひとつない白肌とのコンストラストは、さながら晴天の空に似る。
「恋詠めが、キマイラの皆々様の平穏を守り抜いてみせましょう!」
「ん~、ところでじゃんぱいってなにかにゃ? 固めて切ったお豆腐みたいだにゃ~」
コハルはどこまでもマイペースだった。
しかし恋詠は真面目な性質なのか、むむむと考え込む。
「実を言うと、まーじゃんというのは未経験でございまして……」
「コハルと一緒だにゃー。真っ白だしキャンバスの代わりになりそうだにゃ」
「「「なんだとぅ
!?」」」
そこで反応する白牌戦闘員たち! 奴らはオブリビオンだがあくまで戦闘員なので、不意打ちをしたりすることもあればしないこともあるし、こうして待ってくれていることもある! 律儀だ!
「誰が顔なしだ!!」
「おのれ猟兵め!」
「しかも麻雀を知らないだと! なんてやつらだ!」
口々に戦闘員が罵る。恋詠はきっと睨み返し、威風堂々と宣言した!
「で、ですが恋詠めは、将棋と花札は村内大会第五位まで上り詰めましてございますよ!」
まあ、総参加者数たったの12人なのだが。いやでも割と自慢していい順位……なのか?
「しょーぎってなんにゃ? ケーキの仲間かにゃ?」
「……コハル様。敵でございますよ、敵。あれ、敵でございます」
「あ、そだったにゃ。蹴散らしてやるかにゃ!」
「ええ、そうこなくては。さあ、参りますよヒナゲシ、ナデシコ!」
コハルは愛用の絵筆――箒めいた大きなもの――を軽やかに構える。
対する恋詠の周囲に舞う花びら……いや、それを飾りにした妖精大のからくり人形二体。一方は弓を備え、油断なく敵の動きを伺うように頭を巡らせている。
これこそが二人のバトルスタイル。実に絵的に映える、かっこいい武器であった!
ところで、彼女たちはなぜあんなよもやま話をしながら敵と対峙していたのか。
答えは簡単だ。彼女らの背には、避難するキマイラたちの列がある。敵は卑劣にもそれを狙ってきたのだ!
「一時避難は十分かにゃ。そろそろ仕掛けるにゃ!」
「はいっ。数が武器なら削ればいいのでございます! いざっ!」
数倍を超える敵に勇ましく駆け出す両名。敵は三位一体を基本に、波状攻撃で迎え撃つ!
「白い顔に、にゃんこ描くにゃ! 可愛いの描くにゃ! 描ーくーにゃー!」
「うおおおお! 俺たちの顔は落書き帳じゃねえーッ!」
ぶんぶん絵筆を振り回せば、カラフルな塗料があたりに飛び散る。戦闘員どもはそれを予期していたかのように飛び退り、空いた場所に色溜まりが生まれた。
グラフィティスプラッシュは、たとえ外れてもその上で戦うならば力を高めてくれる。普通に考えればこれを逃す手はない、が――。
「それはお見通しー、なのをお見通しにゃっ!」
マイペースに見えてなんたる猫めいた状況判断能力か!
コハルは、敵が『塗料の上で立ち止まったコハルを一斉攻撃する』ことを読んでいた。つまり裏の裏をかくため、そのまま一気に塗料の上を飛び抜けたのだ!
「「「な、なにぃ
!?」」」
立直失敗!
混乱し浮足立つ戦闘員達。それを逃す恋詠ではない。
「そこでございますっ!」
きりり! とからくり糸が張り詰めて高い音を鳴らす。
まるで生きているかのように――否、ヤドリガミたる彼女がたぐるならば、それはまさに神がかりと言えよう――ヒナゲシが踊りかかり、牽制の攻撃を仕掛けて戦闘員の出足を崩す。
そしてナデシコである。張り詰めた弦がぴぃん! と大気を揺らせば、音すら切り裂く鋭い一矢が戦闘員の白牌頭部を貫通した!
「ナイスにゃー! 観念して絵になるにゃー!」
「「うおおーっ!?」」
猫じみた跳躍力で宙返りしたコハルが絵筆を振るう。残る2体の戦闘員は塗料をもろに浴び、その真っ白い顔にキュートなねこのアートを描かれてダウンした!
「ふふん、会心の出来にゃ!」
たしっ、と着地し、出来栄えにドヤ顔をするコハル。
「ってコハル様、後ろ……っ!」
「にゃーっ!?」
恋詠の呼びかけはわずかに遅かった。別の戦闘員がコハルに飛びかかり、痛烈な一撃を叩き込んだのだ。
その勢いでぼてっ、ふにょんっ、と地面をバウンドするコハル。幸い毛並みがふわふわなおかげでノーダメージだ。
「だ、大丈夫でございますか?」
「い、痛くても我慢にゃ。こーなったら百倍返しにゃ!」
敵は未だ多い。しかし彼女らの立ち回りにより、キマイラの避難はほぼ完全に終了した。
二人は並び立ち、それぞれの武装を構える。そして!
「にゃー、ところでノウヒンって一体」
「さ! 参りますよ! コハル様!!」
同じようなやりとりは、その後も数回続いたという。
●持つもの、持たざるもの、役満を和了ったもの
「あなたたちは間違っています!!」
くわわっ! と目を丸く見開いて、アンノット・リアルハート(忘国虚肯のお姫さま・f00851)が敵を一喝した。
「間違ってる、だとぅ……?」
「あなたちがどういう経緯でアートを嫌悪するようになったのかはわかりません。ですが、アーティストさんにも予定というものがあります」
腕組みし、続ける。
「それが逸脱してから嘆きなさい。アートとは人と人の交流の上に成り立つもの、ままならないのは当たり前でしょう!!」
げに正論であった。心なしか、近くで戦っていた猟兵や逃げ惑っていたキマイラたちの中にもしゅんとしている人がいるような。
「ごちゃごちゃうるせー!!」
「なあっ!?」
しかしオブリビオンには通用しない! なにせオブリビオンだから!
虚を突かれたアンノットめがけ、戦闘員が飛びかかろうとし……割って入るように生い茂った、色とりどりの生け花たちに阻まれた!
「な、なんだこれはーッ!?」
「花は野にあるように……これが僕の生きている生け花(バトルフラワーアレンジメント)さ」
優雅な立ちふるまいで現れたのは、すらりと脚長の紳士……ではなく、30cmほどのちっちゃなフェアリーだった。にも関わらずその闘気はめちゃくちゃにパワーファイターな感じがする。フルム・サーブル(森林の妖精さん・f03354)、すごい漢だ……!
「アートとは何も絵画だけとは限らない! それを否定する君達に披露してあげよう!」
ざあっ! と彼の周囲に現れる切り花の数々。赤やピンクのカーネーションを中心に、かすかな甘い匂いを運ぶチョコレートコスモスがアクセントになっている。2月にふさわしい、計算された立体芸術がそこにあった。
「ああ、綺麗ね! 芸術っていうのはこうでなくちゃ!」
アンノットの紫色の瞳が輝く。そして期待を込めて戦闘員らの方を見るが……なおも身構える敵の気配に、ため息をついた。
「うむ、だがアンノット殿よ、そなたの言葉は正しいぞ」
そこで助け舟を出したのはヤクモ・カンナビ(スペースノイドのサイキッカー・f00100)である。切り花の隣に藍色の髪の乙女が立つさまは実に美しい。実に!
「麻雀とは、牌を美しゅう並れば点数が増える遊戯。その怪人が芸術を否定するなど、可笑しなことよ」
「「「ううっ
……!!」」」
意外と効果があった。なにせアイデンティティを否定されたのだから重大である。
そもそも奴ら、このシナリオが始まってから一度も国士無双を成功させていない。白牌が多すぎるからね!
「自らの過ちを受け容れ大人しゅうなるのであればそれで良し。が……」
沈黙。静寂が流れ……怪人たちは、唸り声をあげて隊列を組み直した!
「「「アートは禁止! 猟兵は敵だー
!!」」」
「逆ギレだね」
「逆ギレですね……」
「逆ギレであるのう」
三人はやれやれと頭を振り、しかし次の瞬間には決然たる面持ちで互いを見合い、うなずいた。
もとより話し合いで決着がつくとは思っていない。胸据わって蹴散らすのみ!
彼らが対峙する戦闘員の数はゆうに20を超えていた。しかも敵はさらに増えていく!
「次から次へと、懲らしめてやらねばの」
「ああ、バレンタインは悪くない。それにアーティストに依頼することだって、僕には気持ちがわかるのさ」
「一体どうして?」
何気ないアンノットの問いかけに、フルムはニヒルな笑みを浮かべて答えた。
「そうだね。あえて言うなら……終焉を、ブレイクし続けているってところかな」
間。
「そ、それは大変ね……でもわかりました。なら私のユーベルコードの出番です!」
グリモア腕章も誇らしげに、"空飛ぶ宇宙箒"メタルハート・ベーゼンを起動するアンノット。
すると彼女を中心に、結界が大きく広がっていく。
「これは流れる夢。降り注ぐ幻想、されど願いを導く篝火の星」
口訣は密やかに。
「アーティストの皆さん、それを待つ方々、あなたたちの真摯な願いを私は応援します!」
「おお、これは……!」
フルムは、そして周囲で戦いを見守っていたキマイラたちは、背中を優しく押すような暖かい心地よさに目を瞠る。
「なるほど、これは面白いの。であればわらわも、どれ」
ヤクモの意志に呼応し、立体投影される脳内の精神プログラム。それは世界そのものをハッキングし、書き換える超常の力だ。
「僕も負けてはいられないな!」
強化された切り花がフルムの手から解き放たれる。同時にアンノットを載せた宇宙箒がふわりと浮かび上がり、迫りくる敵の頭上へ滑り出る。
「流れる夢よ、正しき願いを守りたまえ(デイドリーム・メテオシャワー)!」
「「「な、何ィーッ
!?」」」
直後、降り注ぐ百の光芒! まさしく白昼夢めいた星の雨だ!
予想以上の面制圧攻撃により、一気に戦闘員たちに混乱が走る。そこに振り下ろされる斧。……斧!?
「ふんっ!」
仕手はフルムだ。フェアリーとは思えないパワーファイターぶりにキマイラたちも唖然!
「こ、このチビがァーッ!」
「芸術を理解しない輩に負ける道理はないな! 僕はいまいい気分なのだよ!」
愛用斧『鮫斬り』、そして鮮やかなる刃『睦嬢』を縦横無尽に振るい、何もかもがミスマッチなフェアリーの武人は高らかに笑う。
降り注ぐ星の雨を見ると、彼の心に希望が湧き上がる気がした。いつか終焉が本当に打ち砕かれ、願いが叶うかもしれないという希望が。……叶うといいですよね、ほんとに。
ひらひらと翅を羽ばたかせ、やけに物騒な得物とともに敵陣を駆け抜けるさまはややバッドトリップめいた光景ではあるが。
「雑魚どもでは肩慣らしにもならん、さっさと怪人が出てくればいいものを!」
見かけ以上の豪腕でずんばらりと戦闘員を真っ二つに叩き切りながら吼えるさまはまさに狂戦士。まあ30cmちょいのフェアリーなんですが。
さて、一方でヤクモは?
彼女は周囲に映像を立体投影していた。ま、麻雀卓である! 麻雀をしようというのか!?
「ふーむ、九筒とはの……うむ、アストラルネットワーク接続・プログラム注入じゃ」
ピボッ。ツモッたばかりの九筒は白に変わった。
ピボッ。次にツモった一索も白牌に変わった。
ピボッ。最後にツモった五萬も白牌に変わった。
「チートじゃねーかッ!?」
対峙する白牌戦闘員のツッコミは至極まともであった。麻雀の法則が乱れる……。
「おお、いいところに来たではないか。そなたで四枚目だの」
「えっ」
「わらわの名を持って、カンじゃ」
「いやだからチートじゃねグワーッ!?」
立体映像上の白刻子が実体化し、カコーン! と戦闘員に激突する。槓子だ!
「ほれもう一丁」
「グワーッ!?」
「もひとつカンじゃ」
「アバーッ!?」
「とどめにもう一つ」
「ギエーッ!!」
近寄ってくる戦闘員を次々に蹴散らす白刻子。そびえ立つありえない手牌の影……!
「字一色・三暗刻・四槓子・嶺上開花。しめて140符105翻というとこかのう」
もちろんそんな牌はない。だがそれを可能にするのが、彼女のユーベルコード三界改変(サイコクラッキング)であった。
「どうじゃ? そなたらにふさわしき美しき芸術的な手牌になったであろうが」
ふふん、と勝ち誇るヤクモ。周囲にはハッキング(物理)で撃破された戦闘員が死屍累々となっていた。
●
「す、すごい……!」
「ああ、やっぱ猟兵ってすごいよ!」
安全圏に避難したキマイラたちは、その場に集った戦士たちの戦いぶりにただただ感嘆した。
男が、女が、剣士が、魔法使いが、はたまた人形遣いが……その武器も、戦いぶりも、見た目も、何もかもが千差万別。
そこに顔があるだのないだの、怪人どもが声高に叫ぶような違いは一切ない。
猟兵は強く、勇敢であり、それゆえに彼らの心をどんな芸術よりも揺さぶるのだ。
「うおおおーっ、頑張れ猟兵ーっ!」
「負けるなーっ!!」
突発的なオブリビオンの悪意に気圧されかけていた市民らは、快哉をあげ彼らを鼓舞した。
たとえ戦闘員がどれほど湧いて出ようと、関係はない。
猟兵たちには、心強き味方の声があったのだから!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ハートブレイク・チョコレート怪人』
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POW : ジェラシックフレイム
【チョコレートの頭部から噴き出す嫉妬の炎 】が命中した対象を燃やす。放たれた【嫉妬の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : センチメンタル・ギリチョコワールド
戦闘中に食べた【義理チョコ 】の量と質に応じて【過去の悲しみを糧として】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ : ジェラシック・ラブイーター
【嫉妬 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【とろけるチョコの塊】から、高命中力の【愛を食らう触手】を飛ばす。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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●
「ちょっと待て、あれだけいた戦闘員が全滅!?」
泡を食ったのは首魁の怪人だ。数百体以上は用意していた自慢の白牌軍団が、こうもたやすく蹴散らされるとは!
「おのれ猟兵……だがまあいい。私一人いれば全ては事足りる」
いよいよ姿を表した大ボス、ハートブレイク・チョコレート怪人。
非モテとか失恋した人とかの負の思念を暗黒のオーラとして纏う、実に陰気臭いオブリビオンだ。
「貴様らがたとえどれだけあがこうと、私は決してアートは認めん!!」
先導者めいた調子で言う。自分だけでお前たちを倒せる、とまで豪語してみせる。
「バレンタインなどという行事にうつつを抜かすから、他の娯楽がおろそかになる。であればその娯楽自体がなくなってしまえばいいのだ!」
あまりにも短絡的、そして矛盾した理屈だ。それがオブリビオンなのだ。
「認めろ……貴様らの中にも、私の意志を理解する者はいるはずだ……!」
悪魔の甘言めいて囁く。邪悪の誘惑に屈してはならない。
アートも、バレンタインも、もちろんほかの行事や娯楽も全部エンジョイする。それが正しい人生というものである。
「それでも私の前に立ちはだかるというなら、ふさわしい報いを受けてもらおう」
怪人の纏う闘気が高まる。そもそもこいつなんでこんなシリアス面してるのか。
なんにせよ、倒すべき敵であることに変わりはない。多分こいつがノウヒンとかジュリを妨げてる悪いやつだ。そうに違いない。
そういうわけなので、倒そう。囲んでユーベルコードで叩けば死ぬからね!
グイーダ・スティラ
バレンタインとアートに何の関係があるのかさっぱりだけど、なかなか手強そうね!でも、アタシ達猟兵ならアメイジングに倒せるはずよ!とにかくユーベルコードでその頭のハートを撃ち抜いてあげるわ!そう、アートは一期一会!思わぬ出会いもあったりするもの!なんかこう、アタシはそんな直感がビビっと来てるもの!アドリブ等は大歓迎!
アンノット・リアルハート
残念だけど、嫌いっていうのは遠回しな好きと同じなのよ。
邪な思いに惑わされず、真剣に自分の心に向き合いなさい!
【彼方の夢よ、失われた記憶を呼び起こしたまえ】を使って怪人のユーベルコードを封じつつ、【コミュ力】を使って相手の心を揺さぶりかけましょう
貴方は自分を被害者だと思ってるけど、それは違うわ!自分が持たざるものであり続けることの恐怖を、妬みで誤魔化してるだけの臆病者よ!
それを違うというのであれば、この幻想を受けてみなさい!
ティティモルモ・モルル
ふーむ、なるほど。
いやさっぱり分からねーですが。
つまりあれでごぜーますね、とにかく気に入らねーと。
そういう時は、まずリラックスが大切でごぜーます。
(グリモアをぐいっと差し出す)
これに触れてみてくだせー。
大丈夫、あんたさんの肉体は害さないと約束するですよ。
(肉体は害さない。嘘じゃない。無事触れたなら【精神的虐殺】。技能:おびき寄せ・誘惑)
じゃーそういうわけで。
全世界抱腹絶倒間違いなしの究極ギャグの時間でごぜーます。
怪人さん、はりきってどうぞー。
やるまで出られねーので無駄な抵抗は止めてくだせー。
(精神へダイレクトアタック)
んー、これはなんというか……。
微妙でごぜーますねー。
(追撃。技能:2回攻撃)
ヒルダ・ナインハルテン
ここには素晴らしい作品が沢山ありますわ。それを独りよがりな嫉妬心で踏みにじろうなんて言語道断でしてよ!
怪人の持つ●ジェラシックフレイムを要警戒しますわ。
あの言動を見るにアート作品を燃やそうなんて不埒な行動を取るやも知れません。
ですがユーベルコードであるなら私の●シールドリフレクトで相殺出来ましてよ!
アート作品を【かばう】ことで燃やさせはしませんわ!怪人を倒すだけでなく皆さんが作った大切な作品をも守ってこその猟兵ですわ!
もちろん作品だけでなく他の方々のカバーも忘れませんわよ。【ダッシュ】で駆けつけて【盾受け 】で怪人の攻撃なんてシャットアウトですわ!!
(アドリブや絡みなどは大歓迎です!)
狗衣宮・藍狐
な、な、な……なにをしたらそんなセンスの欠片も無い姿になれるワケ!?前世でとんでもない業でも背負ったの!?
しかもなんか外見がこう、あたしの作った失敗作のチョコに似てるような似てないような……とにかくあなたのその外見が気に入らなーい!!
いいもん、いいもん、パティシエじゃないけど、あたしがグラフィティスプラッシュであなたを早業アートでメイクしてあげる!これで多少はあなたもモテカワ誘惑フェイスになるでしょ!
これでちょっとはアートを認める気にならないかしら?嫉妬するんじゃなくて、羨ましがられる立場はどんな気持ち?素敵になるって素敵なことよ!
これでちょっとは相手の嫉妬系の攻撃が緩まらないかしら。
●実にカラフル、そんで見やすい
ザッ!
悪意を振りまく怪人の前にまず立ちはだかったのは、五人の乙女である。
麗しの美貌を持つ、色とりどりの五人の乙女である! マーベラス!
「つまりあれでごぜーますね、とにかく気に入らねーと」
ブラックタールの少女、ティティモルモ・モルルがこくこく頷いた。あんまりわかってないような顔で。
「だからって、こんな素晴らしい場所を踏みにじることは許せませんわ!」
桃色髪の聖騎士、ヒルダ・ナインハルテンが醜き嫉妬心を勇ましく一蹴する。
「それに、それよ、その顔! なにをしたらそんなセンスの欠片も無い姿になれるワケ!?」
狗衣宮・藍狐はわなわなと拳を握りながら言った。無慈悲すぎる。
ちなみにここまでで黒・桃・青が揃いました。レンジャーとか組めそうですね。
「残念だけど、"嫌い"は遠回しな"好き"と同じなの。邪念を捨てて、真剣に自分と向き合いなさい!」
ビシィ! と腕章を掲げながら指差すアンノット・リアルハート。まるで弾丸めいた論破だ!
「正直アタシも、バレンタインとアートの関係がよくわかんないんだけど――」
そして中央、グイーダ・スティラがひらひらと舞い踊り、力強く頷く。
「アタシたち猟兵ならアメイジングに倒せるはずよ! 覚悟なさい怪人!」
威風堂々、華美可憐なる五人乙女、ここに勢揃い!
黒・桃・青に銀と琥珀……いや赤。赤ということにしよう。
ビシッとポーズを決めたら背後で爆発とか起きそうである。色付きの。
「ほざけ猟兵どもがァーッ!!」
怪人が腰だめに力を迸らせると、頭部の割れ目から嫉妬の炎がボボボと燃え上がる。ジェラシックフレイムだ!
「やはり来ますわね。この私のシールドリフレクトで!」
一歩前に踏み出し、大盾を構えるヒルダ。そこへ恐るべき炎が――。
「うーん、なんとなくだがこれはやめておこう」
「えっ、どうしてですの!?」
「いやなんか、チョコの触手出したほうがいいかなーと」
なにせWIZなので。大いなるルールには律儀な怪人であった。
「というわけで早速嫉妬の感情を」
「させませんわ喰らえ盾打ちィー!!」
「グワーッ!?」
猛烈なシールドバッシュだ! もともと相殺目当てだったヒルダにとって、相手にその気がないなら待ってるつもりも理由もないのだ!
「どうせ素晴らしいアートを燃やすとか水浸しにするとか踏み絵にするとか、そういうカオスなことを考えていたんでしょう!?」
「えっ、いや何もそこまでは」
「問答無用ですわモルトシュラァーク!!」
「アババーッ!?」
説明しよう。モルトシュラークまたの名を殺撃とは、剣の刃を握りしめて柄でぶん殴るヤバすぎる剣術(物理)である!
ヒルダに容赦はない。大切なアートを守ることが第一義なのだ。つまり、正義ですね!
「私が皆さんのアートを守護(まも)らねば……!」
返り血ならぬ返りチョコレートを頬に浴びながら、聖騎士はシリアスな顔で言った。
「やるじゃない、ワンダフルな先制攻撃ね!」
すかさず、グイーダが弓を構える。さっきまでのやりとりの間、しっかり奴の頭部を見据えて集中していた。
放たれた矢はヒュウッ! と鋭い音を立て大気を切り裂き、狙い通りハート型の割れ目に突き刺さる!
「ギエエエーッ!!」
ピシピシピシ! とさらに深まる裂け目。そこに追い打ちの矢。ぶすり。ぶすぶすり。
「おい撃ちすぎじゃないか!?」
「なんだか楽しくなってきちゃったんだもの! これがアートの楽しさなのかしら!?」
「どう考えても違グワーッ!?」
ピシュンピシュン。ぶすりぶすり。ヒビがさらに広がる。
大きなチョコレートに無数の矢が突き刺さるさまは、そこはかとなくチョコケーキっぽく見えなくもない。
バレンタインだけでなくクリスマスにも活躍できるようになったぞ、よかったね!
「おのれ虫けらめぇ! やっぱり嫉妬の炎で焼き尽」
「行くわよ、ハートブレイクショット!」
「せめて台詞を言わせグワーッ!?」
初任務のメインバトルということもあってか、グイーダはノリノリのようだ。
義理チョコを食べてパワーアップとかするヒマもなかった。
そもそもこいつどこからどうやって食うんだ。クリオネかな?
考えると頭がぼんやりしてくるので、心の目で見てほしい。
そしてそれを見てわなわなと震えている藍狐。怒りか羞恥かよくわからない顔だ。
「ああああ、あのヒビだらけのハート! 焼き上げに失敗したときのやつにそっくりじゃない
……!!」
藍狐は年頃の女の子である。そりゃあチョコぐらい自作する。
しかも可愛い物好きなだけあって、デコレーションとか形とかめっちゃ凝る。
凝りまくるとどうなる? 知らんのか、失敗確率が上がる。
「気に入らないわ……」
「へ?」
どうやって嫉妬の感情与えりゃいいんだこれって怪人が思案してるところに、煮えたぎるような声。
「あなたの! その外見が!! 気に入らなーい!!!」
「さっきより扱いがひどくなってなアバーッ!?」
りりん! と二つの鈴が軽やかに鳴り、シュバシュバッと化粧道具が奔る。すると、おお!
ガトーショコラのケーキめいて、ひび割れを隠す見事な粉チョコ。他にも……こう、写真共有SNS映えしそうなメイクが惜しみなく描かれている!
心の目で見てほしい。見えてくるはずだ、女子力53万のモテカワ誘惑フェイスが……!!
見えない場合は、彼女たちの顔を見てほしい。あとは全身とか。
「まあ! これが私……?」
感激のあまり口調すら変わる怪人。藍狐はふふんと笑う。
「これでちょっとはアートを認める気にならないかしら? 素敵になるって、素敵でしょ?」
「素敵になるって、素敵……! 素敵な言葉だわ!」
きゅん。と胸を抑えるゆるふわモテ系怪人。多分心臓とかあるんじゃない?
今度こそいい感じに話がまとまりそうだ。まとまるかな? ほんとかな?
「これは彼方の夢、捨てられた幻想、されど貴方の持っていた確かな記憶!」
ダメでした。アンノットはなんかエモくてハートフルな締め方とか許す手合ではなかった!
彼女から放たれたいくつもの光の玉が怪人の周囲を飛び交う。
「こ、これは
……!!」
「彼方の夢よ、失われた記憶を呼び起こしたまえ(デイドリーム・リメンバー)。さあ、今こそ向き合うときよ」
光の玉には、怪人の幼き頃の思い出が浮かんでは消えていく。ロングロングアゴー……。
生まれたての怪人がはじめて一人で立ち上がれた日の記念写真。
オブリビオン神社でオブリビオン端午の節句を祝った日のこと。
今は亡きおばあちゃん怪人との暖かな団らん……。
おばあちゃん怪人ってなんだ? よく考えようとすると頭がぼんやりする。
「うっ、うぐ、ふぐうう
……!!」
思わずノスタルジーに号泣する怪人。どこから涙が出るのかって? 心の目で見てほしい。
「貴方は自分を被害者だと思ってるけど、それは違うわ!」
打ちひしがれた怪人に叩きつけられる容赦なき正論!
「自分が持たざるものであり続けることの恐怖を、妬みで誤魔化してるだけの臆病者……それが、あなたよ」
「わ、私が、臆病者……?」
「そうでないというならば直視しなさい、その幻想を」
オブリビオン中学校で、オブリビオン男子生徒らと語り合う姿。
幼馴染怪人と殴り合ったあと、ともに寝転んだオブリビオン原っぱと、夕日の眩しさ……。
『俺たち、ずっとともだちだよな』
『当たり前だろ! そんで一緒に、でっかいことをやるんだ!』
幻影の中の怪人たちは爽やかに語り合う。でも多分このあと受験戦争とかですっ転んだんじゃないかな。
「私……いや、俺は……俺は
……!!」
アンノットは腕組みしたまま頷く。きりりと輝くグリモア腕章(マフラー相当)。
エモと正論と暴力と殺意を浴び、もういいんじゃないかな的な空気がキマイラたちに流れる。
そして怪人は改心を……。
「リラックスするでごぜーますよー」
「えっ? いや俺いま割といい感じの」
「これに触れてくだせー」
「アッハイ」
にゅっと割り込んできたティティモルモのマイペースな勢いに押され、差し出されたグリモアに手を伸ばす怪人。
「大丈夫、あんたさんの肉体は害さないと約束するですよ」
「って待てめちゃくちゃ剣呑ではないか!?」
「気にしねーでくだせー。さあほら、はやくしてくだせー」
「アッハイ。イェーガー、トモダチ……!」
なぜかティティモルモの指先に浮かぶグリモアと、怪人の指先が触れ合う。
そしてあたりを輝かせる閃光!
「……えっ、あれ、なにここ」
「レディースアーンドジェントルメェーン!!」
きょろきょろする怪人。そんな彼を完全無視して番組コールを入れる司会者。沸き立つ観客。なんだここ!?
怪人は慌てて背後を仰いだ。そこには『爆笑グリモアバトル』という看板が!
「じゃーそういうわけで」
いつのまにそこにいたのか、ティティモルモが司会を引き継ぐ。
「全世界抱腹絶倒間違いなしの究極ギャグの時間でごぜーます。怪人さん、はりきってどうぞー」
「あまりにも無茶ぶりが過ぎるだろう!?」
思わずツッコミを入れる怪人。HAHAHA! とアメリカンな笑いをあげる観客達。誰だこの人ら。
「よ、よしどうだ、笑わせたぞ!」
「今のはツッコミでごぜーますからー、もう一度ー。あとやるまでここから出られねーでごぜーますから」
「ええ……」
「大爆笑ですって! どんなマーヴェラスなギャグが見れるのかしらね!?」
「え、ていうかなんで私たち普通に観覧してますの?」
「大丈夫よ怪人、あなたにはあたしが描いた誘惑フェイスがあるじゃない!」
「ええ、彼ならきっとやれるはずよ!」
馴染んでいるグイーダ。
困惑するヒルダ。
なぜかシリアス顔の藍狐。
後方猟兵面で頷くアンノット。
端的に言うと地獄だった。
「う、うおおお……い、一発芸! 行きます!!」
デレレレレ……デン! カメラがズームアップ!
ボボボボボ……ヒビから吹き出す嫉妬の炎。あと溶けたチョコ。
「火山噴火ー!! ……なんつってー。なんつってー!」
「「「「「…………」」」」」
間。
顔を見合わせる五人。そして頷いた。
「驚くほどつまらなかったわ!」
「微妙でごぜーますねー」
「アートでもないですし10点ですわねこれは……」
「はあー……面接は以上ですえ」
「やっぱりオブリビオンに未来は作れないのね……」
無慈悲だった。藍狐はなんか書類をゴミ箱に捨てている。
「う……うぐ、ウグググググーッ!!」
打ちひしがれ、チョコ涙を流す怪人。
この地獄は、飽きたティティモルモがユーベルコードを解除するまで続いたという。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
●
「言い伝えは本当だったんじゃ……!」
「あっ、物知りおじじだ!」
「物知りおじじは長生きだから色んなこと知ってるんだぜ!」
「すごいや! で、何が言い伝え通りなのおじじ」
どこかで見たことのあるやり取りを経て、いつのまにかいた老人キマイラが答えた。
「茶色き嫉妬の権化打ちひしがれしとき、英雄来たりて怒りの嵐を撒き散らさん……!」
「うわなんだそれ、怖いなあ」
「あと、そのあとジュリとかノウヒンの嵐が吹き荒れるそうじゃ」
「まただ! 一体どんな意味なんだろうねその言葉」
「頭がぼんやりしてくるからわからないなあ」
「「「猟兵! 頑張れー
!!」」」
キマイラたちは能天気だった。
そして打ちひしがれたチョコレート怪人に、怒れる猟兵たちの裁きが下される!
その怒りはなにゆえか。誰にもわからない! 多分、義憤とかだ!
未魚月・恋詠
ああ、貴方様があの個性が地獄化してそうな方々の元締めでございますね?
ささ、まずはこちらを。
一月ほど早いのは重々承知でございますが、是非とも受け取っていただきたく……
(白い頬を赤く染める少女が差し出す包は、なんとバレンタインチョコレート!)
勿論、義理ではございまぜん。心をこめた手作りの品にございます
受け取って、いただけますか……?
美味しかったですか?
恋詠めの気持ち、本気の、燃え滾るような熱い想い……
貴方様を倒すという意思を!
(※本気で嫉妬や悲しみに依る強化を無力化しようと心をこめた強力な下剤入り。例え攻撃を受けても人形によるUCの反撃準備も整っている)
味わったなら、これにて幕引きにございます!
リリィ・オディビエント
悪そうなオーラを感じる。見た目もなんか黒いし彩りもよくないし。汚いなさすがオブリビオンきたない。
騎士である以上、民衆の期待に答えなければならない!そう決して私情などカケラも無く全うすべき職務といえるだろう!
ひっそりと幕を閉じさせてやろう!
(突如現れる天の声)
嫉妬心が強い子だから相手のUCを食らったらピンチになるかも!そんなときこそこのUCを使ってピンチをチャンスに変えるのよ!
アドリブ共闘歓迎。
在連寺・十未
うっさい
!!!!!(「クイックドロウ」技能での抜き打ちでゲル弾を当てつつユーベルコード起動)
『手を動かすな』よ……全く、関係ない事柄結んでえらいことにしやがって……
普通にバレンタイン抹殺の時間だおらァ!とか来れば良かったのにさ。そっちのがなんぼか信者得られると思うよ。今ッ更おっそいけどさ。
取り敢えず初動封じて『手を動かす』のにもペナルティを掛けたら後はサブマシンガンで蜂の巣にするよ
※アドリブ、絡みなど大歓迎ですお任せします
美墨・ヨウ
テメェが諸悪の根源だなクソッタレ!!
そのひび割れたハート模様綺麗にカチ割ってやらぁ!!
【POW】
UC使って【炎の髪】に変わる。
【状態異常耐性】上げてやんぜ。
こっちも炎なら向こうの嫉妬の炎だかもそこそこ無効化できんだろ。
【武器受け】【かばう】で味方に行きそうな炎を受け止めつつ、溜めた奴さんの炎をそのまま顔面に【カウンター】で叩き返してやらぁ。
つーわけで誰かとペア組んで味方守って戦えるんならそうしとく。
てめぇの敗因は3つ。
ひとつ、ふざけた理由でこの場を滅茶苦茶にしようとした。
ふたつ、俺らを怒らせた。
みっつ、何よりテメェの顔がなんか気に入らねぇんだよ死ねェ
!!!!!!
*アドリブ等歓迎、お好きにどうぞ
コハル・ファインギフト
あれは…
「コハルが食べちゃいけない?存在…『ちょこれいとぅ』にゃ」
そうお父さんとお母さんに教わったにゃ
…随分前に逸れて
今はどこにいるかもわからないけどにゃ…
『ちょこれいとぅ』の言い分に苛々にゃ…
「アートや娯楽を禁止しようとするなら、アートでぶちのめすのにゃー!」
敵が逃げないよう
周囲の一方向を封じる形で動くにゃ
『グラフィティスプラッシュ』で直接触れずに攻撃にゃ!
あれを食べたい人がいたらごめんにゃー…
でも、逃げようとするなら
触れてでも止めるにゃ!
「『しっと』?…飲み物にゃ?」
敵から触手出たら
【かばう】も使ってコハルが受けるにゃ
※怪人へは嫉妬しなくとも
(絵がある人、少しうらやましいにゃー)とは思う
北条・優希斗
君だけで俺達を倒せる? じゃあそれを実証して貰おうか。
そう
・・・・・・俺みたいな『義勇軍』を相手にね(笑顔)。
リア充爆発しろ、か
・・・・・・それは、俺には禁句だなぁ(脳裏に過ぎるは、時折夢で見る過去の光景
・・・・・・笑顔)。
仲間との連携・声掛けOK。
但しRB団が協力するなら彼等にも(判定に影響しない程度で)容赦はしないよ。
【義理チョコ】俺、貰う相手いないから無効なんだけど(笑)。
【過去の悲しみ】は俺自身の戦闘能力を高めるしね。
【ダッシュ】で肉薄して一気に攻めるよ。
隙あらば追撃で【夢月蒼覇斬】を喰らわせてやる。攻撃優先でいくよ。
回避は、敵の攻撃を【見切り】って負傷を最小限に抑え様かな。
●泣きっ面に蜂
怪人は泣いていた。
その目から涙が……目?
うーん、多分目? 的なものが? あるであろうところから? 涙が溢れる。
涙っていうか溶けたチョコが。詳しくは心の目で見てほしい。
「畜生……畜生
……!!」
でも助ける人は誰も居ない。まあそりゃオブリビオンだしね。
かと思えば、一人の和服美人……濡羽色の黒髪に藍の和服を纏う淑やかな女性、すなわち未魚月・恋詠が進み出る。
「もうし。よければこれをどうぞ?」
そして、おお! 上品なハンケチを差し出したではないか……!
これが大和撫子というやつだろう。その白いかんばせも実に美しい。
見えるでしょう。見えますね? では続けます。
「い、いいのか? こんな綺麗なものを汚してしまっては」
「いいのですよ。ああ、それとよければこちらも……」
恋詠が照れくさそうに差し出したのは、赤い包装紙に金のリボン……そして、四角い。
「こ、これは!?」
「一月早いとは存じ上げておりますが、どうしても今お渡ししたく。もちろん、義理ではございませんよ?」
怪人ははらはらと涙をこぼした。男泣きであった。
そして震える指で包装を解けば、嗚呼。現れしはチョコレート……。
「……ここで頂いてもいいだろうか」
「もちろんでございます。さあ、たんとお召し上がってくださいまし」
「ありがてえ、ありがてえ
……!!」
餓死寸前のところに食事を振る舞ってもらえた海賊のような勢いで貪る怪人。
見物するキマイラたちも、その心温まるやり取りに目頭を押さえる。
「美味しかったですか?」
「もちろんだとも、美しい女性(ひと)! 燃え上がるような熱い想いを感じた!」
「よかった」
頬を染めるさまは初心な乙女そのもの。恋詠はうっとりとした心地で言う。
「恋詠めの本気の気持ち、伝わったのでございますね」
「もちろんだとも!」
ひしっ、と恋詠の両手を取る怪人。いい感じに散らばる光のエフェクト。そして大きな腹の音。
……腹の音?
「恋詠のこの、燃え滾るような本気の――貴方様を倒すという意思を!!」
「ゲェーッ!?」
慌てて攻撃しようとする怪人。大きな腹の音! ぐるるるるるるる。
「オオオオウウ……」
お腹を抑え、へろへろと崩折れる怪人。
油断なくからくり人形を控えさせていた恋詠は、おもむろに立ち上がった。
なんたることか。さっきのチョコは恐るべき強力下剤入りだった。
猟兵が想いを込めると下剤も通る。そもそもチョコをどう食べたんだこいつは。
「さあ、今でございます皆様!」
「テメェが諸悪の根源だなクソッタレェ……」
恋詠の号令に応じ、最初に歩み出たのは美墨・ヨウ……なのだが。
なんか燃えてる。髪が。こっわい。そんで形相がヤバい! 怪人がビビるぐらいに!!
「ひいいいいい!?」
「ブチ切れたぞ……てめぇはどうあれぶっ飛ばす」
そんなヨウの隣に現れたのは北条・優希斗。なの、だが……。
こっちもこっわい、満面の笑顔でなんかオーラ纏ってる。章冒頭で怪人が纏ってたのとちょっと似てるやつ。
「おやおやどうしたんだい、君ひとりで俺たち全員を倒せるんじゃなかったかな?」
にこにこ笑顔で威圧する優希斗。隣には髪がボーボー燃えてるドラゴニアン。ヤバい。
「い、いやそれは言葉のあやというか……」
「じゃあ実証してもらおうか、俺みたいな"義勇軍"相手にね」
「話聞いてないですよねぇ!?」
大声出したのでお腹がぐるぐる言って怪人はうめいた。こんなことってあるだろうか。
「そのひび割れたハート模様、綺麗にカチ割ってやらぁ
……!!」
「リア充爆発しろ、か。それは、俺には禁句だなぁ」
「怖いんだが!? あとやっぱ話聞いてないですよねそっちの猟兵は!?」
にじりにじり、と一歩ずつ近づいてくるブチギレ龍と笑顔の妖剣士。
怪人は脂汗をかいた。いやまあ腹痛に苦しんでるので当たり前だが。
一方、誰もが殺気立っているわけではない。
「あれは……ちょこれいとぅ、にゃ?」
コハル・ファインギフトがその当事者だ。あの明るく爛漫な調子はどこへやら、声は沈んでいる。
「ちょこれいとぅ、コハルは食べちゃいけないってお父さんとお母さんに教わったにゃ」
そう言って俯いた。なぜなら彼女は両親とはぐれて久しい。
いま、彼らがどこにいるのか……もはや行方も知れない。
ふとしたきっかけで思い出したため、コハルの胸に悲しみが去来する。
「そう落ち込んではせっかくの毛並みが台無しだ。元気を出して」
おもむろにしゃがみこみ、リリィ・オディビエントがコハルの肩……のあたりのもふもふにもふっと手を置いた。
「私はあなたのアートをいいものだと思っている。ご両親のことは残念だが……えーと、それでいいんじゃないかな?」
「にゃ……」
口下手なリリィの、しかしまっすぐな言葉に、コハルは顔を上げた。
「そうそう、それにほら。今は戦闘中だし?」
隣に現れた在連寺・十未が、白と黒の混ざり合う特徴的な髪をかきあげながら言った。
「そうだったにゃ。あいつの言うことむかつくにゃ! アートでぶちのめすのにゃー!」
すっかり元気を取り戻したコハルにふふふっと微笑む二人。いい感じの空気だ。
「き、貴様ら、私をさしおいて何をいい空気に……」
「「うっさい
!!!!!!」」
ガルルルルルル! とガチキマイラしつつ威嚇するリリィ。こっわい。
なお十未のほうは威嚇どころかノーモーションで銃抜いて発砲していた。非殺傷用のゲル弾だが引き金めっちゃ軽い。こっわい。
ゲルは怪人の両手を拘束してしまう。お腹をさすることすら出来ない。なんてことだ。
いまや怪人は完全に包囲されていた。お腹はまだ痛い。
「う……うう、うううう……」
ぶるぶると震える怪人。そして!
「うおおおおおおお!! ねたましいぞおおそのチームワークがぁーーーーーー!!!」
ボワッ! ヒビから吹き上がる嫉妬の炎!
だってもう配下の雀牌戦闘員だれもいないんですよ! 温泉旅行とか行ったり気のいい連中だったのに!!
「ごちゃごちゃうるせーーーーー!!」
「グワーーーッ!?」
飛び散る炎も厭わず突っ込んだヨウの一撃が炸裂! ナイスショット!
「てめえの敗因は3つだ……ひとつ! ふざけた理由でこの場を滅茶苦茶にしようとした!」
剛槍『銀閣』がうなる! 奔る! ボコボコにする!
「ふたぁつ! 俺らを怒らせた!!」
「ぐほぉ!? み、三つ目は!?」
間。
「テメェの顔がなんか気に入らねぇんだよ死ねェ
!!!!!」
「理不尽すぎアバーッ!?」
思いっきり吹っ飛ぶ怪人。だが周囲にはすでにコハルのばらまいた塗料がある!
「お、おのれ! 貴様にはわからんのか!? わかるだろう、私のこの嫉妬が!」
塗料貯まりの上に仁王立ちし、絵筆を構えるコハルはきょとんと首を傾げた。
「しっと? なにそれ、飲み物にゃ?」
「仲間どもを見ろ! 思うことはないのか!?」
視線をやる。頼れる気のいい猟兵たち(何名かブチギレ状態だが)だ。
気のいい、とても頼りになる……可愛くてカラフルで、あと背景つきで立ってる姿がよく思い描ける……。
……間。
「……むむ」
「ようしチョコ召喚成功喰らえぃ触手攻撃!!」
たとえ手が使えなくても召喚は出来る! コハルの胸にちょーっとだけ芽生えたものを媒介に現れるチョコ! そして触手! アブナイ!
「汚いなさすがオブリビオンきたない!!」
「グワーッ!?」
そこに割って入ったのはリリィ! 触手を退けるは白銀の大盾!
「ば、バカな……!? 見立てでは貴様がもっとも嫉妬心が強いはず……!」
「……確かに! そうかもしれないが!!」
否定しきれないあたりが若さだった。
「だが私は騎士である以上、民衆の期待に答えなければならない! つまりこれは私情とかまったくない騎士の義務なのだわかったか!」
「へ、屁理屈を
……!!」
リリィは構わず盾を、剣を構える。そして言った。
「私は誓おう。騎士とは弱きを守り、決して挫けぬ黄金の精神を持つ者だと!」
「かっこいいにゃー!」
ぽふぽふぽふと肉球で拍手するコハル。リリィは割とてれてれしていた。
この隙に包囲網を抜け出そう。そしてトイレとか行こう。
怪人はそう思いながら這うように手を伸ばした。その手がスパッと切れた。
「ゲーーーッ!?」
「嫉妬の炎、ドラゴニアンの彼を真似するわけじゃないけど俺には効かないなあ」
にこにこ笑顔の優希斗が立っていた。逆光になってこっわい。
「義理チョコ。俺、もらう相手いないから無効なんだけど」
「いや食べるのは私のほうでギャアアアもう片方の手までェー!?」
「躍るよ、蒼き月の舞を。キミはどうする?」
優希斗がみやったのは十未のほうだ。えらくごっついサブマシンガンをジャキっと構えている。
養豚場の豚を見るような目で怪人を見下ろした。こっわい。
「普通にバレンタイン抹殺の時間だ、とか来ればよかったのになあ。ま、いまッさら遅いけどさ。蜂の巣だよ蜂の巣」
「お、おのれ……たとえ私を倒そうと、ジュリやノウヒンはいずれまた途絶えるのだ
……!!」
「言葉の意味はよくわからないのでございますが」
怪人の呻き声に、からくり人形を引き連れ合流してきた恋詠が答える。
「それはまさに歪んだ見方というもの。そもそも、貴方様のように自分勝手な輩は、自分からそのチャンスを失っているのでございますよ」
そう。オブリビオンは所詮、過去の化身。
奴が言った言葉の意味は良く考えようとすると頭がぼんやりするのでわからないが、まあとにかくバレンタインの贈り物だとかアートだとか、そういうものは人と人が絆を深めるために楽しむものなのだ。
ただ持つものを妬み、嫉み、喚き散らすことのなんと浅ましきか。
そもそも持つだ持たぬだ……何の話かはわからないが……区別してあれこれと語ること自体が、まさに語るに落ちているというべきだろう。
なので皆! きちんと礼儀正しくお願いし、そのあとはマナーよくその日を待とう!
何のことかを考えようとすると、頭がぼんやりするのでよくわからないが!
人それぞれ事情はある。ラブとリスペクトが大事です! あといいねも!!
「これにて、幕引きにございます!」
「オッ……オブリビオン永遠なれーーーー!!」
一斉に猟兵たちのとどめが叩き込まれた。チョコレート怪人は爆発四散した!!
とっぴんぱらりのぷう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『書初めグラフティ』
|
POW : ダンスやアクロバットなど体を使った表現
SPD : ゲームのタイムアタックやトランプタワー作成など技量を競う表現
WIZ : 曲や文章の投稿、チェスの対戦など思考能力を使った表現
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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●信じていればいつか必ず夢は叶うしお星様も応えてくれる
「「「やったー
!!」」」
怪人を倒したことにより、『エリトア』には平和と笑顔が戻った。
とはいえキマイラたちは祭り好きだ。彼らのテンションを更に引き上げるには、ヒーローである猟兵たちが自らグラフィティに参加するのが一番だろう。
絵を描いたり曲を歌ってみたり、ポエムとかなんかそういうのをアレしたり。
あ、ラップとかいいんじゃないですかね。フリースタイルなやつ。
あるいはゲーム、ダンス、はたまたトランプタワーやコイントスなんて手品めいたネタでもいいだろう。
キマイラたちは割とちょろいので普通に盛り上がる。🔵🔵か🔵🔵🔵ぐらいは。
もしくはそんな騒ぎを誰かと楽しむ側に回る、なんて手もある。
選択肢は無限大だ。勝ち得た日常を楽しもう! 多分一気に採用します!
アンノット・リアルハート
一先ず、チョコレート怪人に十字を切りましょう。方法は間違っていたとは言え、彼も自らに降り注ぐ理不尽と戦っていたのだから
グラフティは楽しむ側に回りましょう、観客が多い方がキマイラの皆さんもやる気がでるだろうし。人が頑張って作ったものはどんなものであれ綺麗だからね、個人的にちょっと色々見て回りたいわ
ただちょっとした演出とし【流れる夢よ、正しき願いを守りたまえ】を使った流星の花火で会場を彩りましょう。300超えの光のシャワー、きっと綺麗なはずよ
ティティモルモ・モルル
ああー……。
騒がしいの倒して静かになるかと思ったら、ここは元々こういう感じのとこなんでごぜーますね……。
キマイラさん方も騒ぐですかー……。
(そこも良く分かっていなかった。ぽむんと手を打ちそうになるが、我慢)
……ふぅ。
仕方ねーですね、今日のお昼寝は明日の分に上乗せしてー……。
今は、楽しそうなことがないか見て回りましょー。
(半端な鼻歌を歌いながら、のんびりとそこらを見物)
寝正月ー、冬眠ー、気付けばそこにバレンタインー。
バレンタインにはー……んー……。
……そういや、白鐘さん荒れてたでごぜーますねー。
(そういうことだけはしっかりと聞いていた)
バレンタインにはチョコあげてー。機嫌を直してもらいましょー。
グイーダ・スティラ
ふぅん、パーティーに参加するのはアメイジングなアイディアね♪なら、アタシも負けてられないわ!ライオンライドで相棒のライオンを呼び出しつつ、獣奏器で音楽を奏でながら踊りましょう!相棒のライオン君も音楽に合わせて素敵なパフォーマンスをしてくれるわきっと!(実際の判定はフェアリーランド、つまりWIZでよろしくね!)さぁ、みんなもレッツ、ダンシング!
北条・優希斗
判定値:SPD、厳しそうならWIZで。
他の仲間との連携・声掛けOK。
あまりなれていないけれど面白そうな機会なので三題噺とやらをやってみるよ。
如何にスピーディーにお話を作れるか、と言う意味で。
あっ、折角だし耀ちゃんも誘うよ。
三題噺は適当なネタをキマイラや他の人々から貰わないと作れないから、耀ちゃんにもネタを一つ貰う為にね。
他の方からも何かアイディアがあれば拾わせて貰うよ。
三題噺の方向性は
・・・・・・まあ、周囲の皆に受けそうな感じの即興話にしようかな。
ネタ方面が合いそうならネタ方面、シリアス方面が合いそうならシリアス方面で。
多分、これも一種のゲームだよね?
コハル・ファインギフト
今回は猫の手(※別の技で召喚する存在)達はお留守番にゃ
また別の機会に一緒に楽しむにゃ!
気持ちよく歌いながら
大きなキャンバスに絵具等で絵を描いて
『にゃーんふぉにっく・きゅあ』で色々回復にゃー!
「にゃーにゃーにゃー♪」
ぺったぺったぺったぺったぺったぬりぬり。
「にゃーにゃー、にゃぁにゃぁにゃー♪」
ぺったぺった、ぺたぺたぬり。
…踏み台とかはしごとか借りれるかにゃ?
(※高い所に手が届かない)
この世界の風景の中に
にゃんこや色んなキマイラさん等を沢山描いた絵、完成にゃ!
…密かに小さくハートと四角を入れたのは内緒、にゃ!
(コハルも、いつの日か…皆みたいな素敵なイラスト頼むのにゃ)
お星さまに願いを込めるにゃー!
山梨・心志
アートを披露したらノウヒンとジュリが早まる!
な、なんていい噂なのでしょう!!!!
……ゴホン
そ、そんなことは関係なく、キマイラの皆さんを楽しませるために!
純粋な!正義感で!(強調)
参加しなければならないようですね
ふふーん、こう見えてゲームは得意なのですよ
格闘ゲームだろうが対戦ゲームだろうがタイマンバトルゲームだろうが
かかってきてください(眼鏡クイックイッ)
見よ!炎のコ……炎の連続攻撃!!!
フッ、この1フレ(1フレーム=60分の1秒)の誤差もない指さばき!(眼鏡クイッ)
……これで確実に「ノウヒンとジュリ」が早まりましたね
勝ち確定です!
在連寺・十未
悪は去った!……去ったよな? うん、去った
【SPD】折角だからトランプタワーをつくるよ。それもただのトランプタワーじゃなく下からK,Q,J……とそのカードだけで段が作られたすごいヤツだ!天辺はジョーカー一枚を何とかして縦に立てる。凄くない?
※アドリブ等大歓迎です。最終的にラスト一段というところで運悪く無惨に崩れ落ちてもいいです
美墨・ヨウ
【狗衣宮・藍狐】
はー終わった終わった……
ん、まだなんかあんの?
いや俺ぁいいわ……えっ何この姉ちゃん
いや髪ぁさっき燃えてたからぼさついてるだけで
待、待てって話……話聞けよォォォ(ドップラー効果音を伴い連れ去られてく)
あんたぁ藍狐か……
はぁ、ファッションてぇのはどうもよくわかんねーから任せるわ。
……あ、ハル(妹)に好かれそうな感じで。うん。
――数分後――
こ、これは……!
(軽くカールさせた黒髪にパンクファッション、頬と腕とにタトゥーシール。ガイアが俺にもっと輝けと囁きジュリが舞い込みノウヒンが早まる気がするグレートな姿)
サンキュー藍狐……これならシーンの最前線に立ち続けられるぜ……!
*アドリブ歓迎
狗衣宮・藍狐
【美墨・ヨウ】
さてさて、いよいよあたしの本領発揮ね。
でもあたしの場合、誰か協力者がいないと……あ、ちょうど良さげな男の子!
あなた、あたしのメイクで綺麗にしてあげる!髪なんてほらぼさぼさじゃない。ちゃんと労ってあげないと。はいこっち来る!大丈夫、絶対綺麗にしてあげるから!
ふーん、ヨウくんって言うんだ?妹さんもいるんだね。じゃあ妹さんに自慢できるくらいカッコよくしちゃおう!
カールアイロンで髪ウェーブさせてー、パンクファッションとか似合いそうだよね?
タトゥーシールとかピアリングでちょっとワルっぽく!
さあキマイラたちの反応はいかほどかしら?
アドリブ可
リリィ・オディビエント
どうせならば、共に戦闘を行った者達と戦いの余韻に浸っていたいな。もちろん、横に並んだ者でなくとも構わないけどね。
自慢ではない、自慢ではないが、騎士の存在感は圧倒的だったなと好評を貰えているんじゃないかな、うん!
それにあまり器用ではないから話をするぐらいしか出来ないだろう
残念ながらラップは断念
参戦したいがリップが呆然
新鮮な依頼を黙って観戦
歓声なく唖然としりゃせんか?
人生まで空虚じゃありゃせんか?
後世まで残るラップはつくれん
猟兵は語る言葉を探せ
敗北者は黙して爪隠せ
アドリブ、共闘歓迎だよ。
未魚月・恋詠
宴のお時間でございますね!ではでは、僭越ではございますが恋詠めも一芸ご披露と参りましょう。
まずはお集まりの皆々様にこれを(和紙を大量に取り出し、赤丸を書き人々へ配る)
此処に居ります人形2体、ヒナゲシ、ナデシコの姉妹にございます。大変仲がよく息があった子達でございまして
(紹介しつつヒナゲシに人形サイズの和傘を手渡す。
ヒナゲシが傘を開くとその上に飛び乗るナデシコ。
くるくる回される傘の上でテクテク歩きながら弓を構え配った和紙の赤丸を狙う。
それを抱えるヒナゲシが広場の端から端まで走り出し)
はい、これぞ人形流鏑馬、傘回しのおまけ付きにございます!
※的に命中するかは判定次第でお願いします
●キマイラの、宴が始まる――!
とまあそんなわけで、さっきまで逃げ惑っていた市民もすっかり元通り。
戦闘の余波で壊れた場所もあるものの、むしろそれを遊び場にしている連中すらいる。
「ああー……ここは元々こういう感じのとこなんでごぜーますね……」
ティティモルモ・モルルはがっかりしたような、納得したような様子。
どうやら、敵を倒したらぐっすりお昼寝ができると思っていたらしい。
しばらく黙っていたかと思うと、おもむろに両手をぽむっと……。
「ってさすがにそれはまずいよ!?」
そこで北条・優希斗が止めに入った。楽しい騒ぎが大惨事に!
「大丈夫でごぜーますよー、モルは我慢できる子ですから」
「不安しかないわその自称。モルちゃんてばほんとにもう」
続けてやってきたのは白鐘・耀。ため息をつきつつ、優希斗に笑いかける。
「いつか以来ねこの顔ぶれ、誘ってくれて嬉しいわ」
安全が確保されたことで、グリモア猟兵でも大会を楽しめるというわけだ。
「せっかくだしね。俺もなにかやってみようかなあ」
あちこちで繰り広げられるグラフィティを見て呟く。
グラフィティ、と一言に言っても、市民の発表内容は多岐にわたる。
わかりやすく絵を描くもの、あらかじめ用意したアートを披露するもの。
かとおもえばダンスや曲芸、はたまたゲームのRTAなんてのもあるようだ。
「……ふぅ。仕方ねーですね、今日のお昼寝は……」
「やっぱり寝るのね!?」
またお守りか、と半ば諦めつつツッコむ耀。しかしティティモルモの答えは。
「……明日の分に上乗せしてー、楽しそうなことがないか見て回るでごぜーます」
その言葉にきょとんとする二人、そして顔を見合わせてから吹き出した。
「うん、それがいいよ。せっかくの楽しいお祭りなんだからね」
「北条さんの大爆笑ギャグもー、楽しみでごぜーます」
「いきなりハードル上げてきたね!?」
二人のやりとりに思わず吹き出す耀だった。
「あらおそろいで。あなたたちも観客組かしら?」
アンノット・リアルハートが三人に声をかける。彼女も見学側のようだ。
そういえば、彼女は今までどこに?
そんなことを聞きたそうな一同の視線に肩をすくめる。
「……あのチョコレート怪人に、弔いをね」
生真面目な彼女である。たとえ相手がオブリビオンとて、滅びた者には敬意を払う。
徹底的にそのやり方を糾弾していたが、逆に言えばそれだけ思うところもあるらしい。
「己に降り注ぐ理不尽に抗う、それ自体はいいことよ。けれど……」
「まあまあ、ひとまずそのぐらいにして」
「ごぜーます、ごぜーます」
優希斗とティティモルモはちょっと慌てて合いの手を打った。流れるようなお説教シフト……!
「そう? うん、そうね。どこから見て回るか、決めてあったりするのかしら?」
「そもそも何の集まりなのかもモルはわかってねーでごぜーます」
「やっぱり私の話聞いてなかったじゃない!?」
さすがに耀も唖然とした。そんな彼女の大声につられ、新たな人影あり。
「ああ! みんなここにいたのか。いきなりわっと騒ぎが始まったから驚いたよ」
リリィ・オディビエントだ。アンノットは少し目を丸めた。
「……ちょっと面白いわね。キマイラなのに一人だけ落ち着いてるなんて」
「それは当然だとも、私は騎士だからな!」
ふふん、とドヤ顔。とはいえちらちら辺りを見渡したり、そわそわしている。
「どうせなら、肩を並べた仲間たちと余韻に浸りたいと思っていてね。
けれどみんなあっというまに姿を消して、途方に暮れていたんだ」
この騒ぎでは致し方なし。うんうんとうなずく一同。
「肩を並べたっていうと……あ、ちょうどあそこで出し物をするみたいよ」
「おお。ならそちらを見に行きたいな。よければ一緒にどうだろうか?」
無論、一同に断る理由はない。なんだかんだで五人の大所帯となった。
さて、アンノットが指し示した、リリィと肩を並べた仲間というと――。
●Nyan Cait Sith
「にゃーにゃーにゃー♪」
ゴキゲンな鼻歌を唄うコハル・ファインギフト。
ステージの上を右へ左へせわしなく往復し、絵描き道具を準備中だ。
ついさっきまで華麗な戦いぶりを披露していたヒーローの出番となれば、キマイラたちも大盛り上がりである。
「よーし、これで準備おっけーにゃ!」
でん! と鎮座しますは1メートルはあろうかという巨大キャンバス。
自慢の絵筆にたっぷり絵の具を染み込ませると、勢いよく白面に叩きつける!
「すげー! ライブペインティングだ!」
「一体何描くんだろうな? やっぱ猫かな!」
ぺったぺったぺったぺったぬりぬり。
赤青黄色にとどまらず、緑に紫、水色桃色。カラフルな塗料が飛び散る。
「にゃーにゃー、にゃぁにゃぁにゃー♪」
それにしても楽しそうなコハル。実はこれが彼女のユーベルコードなのだ。
名付けて『にゃーんふぉにっく・きゅあ』! ……実にコハルらしいネーミングである。
生き生きと筆を走らせ、あっちに飛んで、こっちで尻尾をふりふり。
ぴょんぴょん飛び跳ね、ノリノリな鼻歌のリズムも相まって……と、はてな?
ぴょんこ。ぴょんこ。筆を抱えて何やら飛び跳ねている。
「ぐぬぬぬ……と、届かないにゃ!」
どうやら楽しいあまりにキャンバスのサイズを考慮していなかったらしい。
予期せぬ(?)トラブルにざわつく観客だが、ここで助け舟あり。
「踏み台を持ってきたぞ、これを使うといい!」
思わずステージ上に登ってきたリリィである。コハルは目を輝かせる。
「にゃー! ありがとにゃー、やっぱりリリィは優しいにゃー!」
「ふ、ふふふ。それほどでもないさ、困っている人を助けるのは騎士として当然!」
てれてれしているリリィをよそにノリノリでペイントを再開するコハル。
やがて描き上げられたのは、キャンバスいっぱいに詰まったキマイラフューチャーの景色だ!
「もしかしてあれ、オレじゃねー!?」
「猟兵さんたちもいる!」
カラフルでサイバーな背景を縦横無尽に飛び回る多くのキマイラたち。
今回の戦いに参加した猟兵たちの有志も、そこそこ脚色はあれどパワフルに描かれている。
さりげなくいいね!マークもついてるのはご愛嬌だろう。事実素晴らしいアートだし!
「これは素晴らしい。さすがはコハルだ」
「それほどでもあるにゃ! みんな元気になったかにゃ?」
コハルの問いかけに、感心したリリィもキマイラたちも歓声をあげて応えるのだった。
●フューチャーが俺にもっと輝けと囁いている
さて、そんな盛り上がりを逃す手はない、とずんずんステージに現れたのは……。
「はいこっち来る! 大丈夫、絶対綺麗にしてあげるから!」
自信満々な様子の狗衣宮・藍狐と、彼女に引っ張られる美墨・ヨウだ。
「ってなんで俺までンなとこあがらなきゃいけねーんだよ!?」
どうやら拉致られたらしい。
なお、そんな藍狐は完全スルーで観客のほうを見る。
「さあみんな、今からこの男の子がステキに変身するのをしっかり見ててね!」
ジャキッ、と化粧道具を構える藍狐。ぐったりした顔のヨウ。
なぜこんなことになったのかは、少し時間を遡る必要がある――。
「はー、終わった終わった」
戦闘終了直後。
溜まった怒りを吐き出し、ぐるぐる肩を回して一息顔のヨウ。
なにやらあたりが騒がしい。が、あまり興味のなさそうな顔だ。
「さあて、さっさと帰……」
「ちょっとあなた、そこにあーなーた!」
突然の声に、ん? と振り返る。するとそこに藍狐がいた。
「ちょうどよかったわ、協力者が欲しかったのよ」
「あぁ? まだなんかあんの?」
心ここにあらずという様子で頭をかくと、藍狐はピンと耳を逆立てた。
「それよ、それ! その髪! せっかくのロングがぼさぼさじゃないの!」
いちゃもんをつけられているというわけではない。
「髪はちゃんと労ってあげなきゃ。それにメイクすれば化けそうだしね」
「メイクぅ? なんだそりゃ、俺ぁいいわそういうの」
欠伸混じりに答える。藍狐は目を吊り上げた。
「ダメよ! はいこっち来る!」
「つか髪ぁあれだ、さっき燃えちまったからぼさついtえっちょっと」
がしっ。予想以上に強い力で腕を掴まれ驚く。
「大丈夫大丈夫、絶対綺麗にしてあげるから!」
「いや話聞いてくんねぇ!?」
しかしスイッチの入った藍狐は無敵だった。
20cmほどの差があるというのに、すさまじい力でぐいぐい引っ張られる。
「いや、だから待てって」
「せっかくだからステージに行きましょ。どうせならみんなに見てもらわないとね」
「話聞けよォ!? オォオオオオオ……――」
悲鳴のような叫びは聞き入れられず、ドップラー効果を伴い遠ざかっていった。
そして再びステージ上。
「さて。どんなメイクがいいかとか希望はある?」
ここまで連れてこられて希望も何もないのだが、と言いたげなヨウ。
しかしあれこれ準備済みの藍狐には敵わず、困ったように頬をかいた。
「ファッションてぇのはどうもなあ。よくわかんねーから任せるわ」
「だーめーよ。こういうのは気持ちが大事なの! そもそも……」
あ、これ長くなる。ヨウのカンが囁いた。
「わかった、わぁったって! ……あ、ハルに好かれそうな感じとか、か?」
そこで思いついたのは最愛の妹の姿。
一転して愛するシスターのなんたるかを説明するヨウ。しかし藍狐はふんふん真面目に聞いている。
「なるほど、妹さんがいるんだね。じゃあヨウくん、妹さんに自慢できるぐらいカッコよくしてあげる!」
すると今度はヨウが喜色満面に。
「マジで!? 頼むわ!」
「はいはい、じゃあまずはここに座って……」
…………。
はじめは二人の漫才めいたやりとりに胡乱な目を向けていたキマイラたち。
しかしいざ藍狐のメイクアップが始まると、だんだんどよめきが広がる。
そして!
「ようし、これで完成よ! はい、鏡」
「おう!
…………」
「「「おおおおおおお
!?」」」
ヨウの驚きと会場のどよめきがシンクロした。それもそのはず!
ボサボサの黒髪は丁寧なアイロニングでワイルドな印象に早変わり。
いつのまに仕上げたのか、よく見れば彼の服装もパンクなファッションに変わっている!
本人すら気付いていないぐらいなのだ、さすがはゴッドペインター。
さておき頬とたくましい腕には、アクセントとしてエッジなタトゥー。もちろんシールだ。
「こ、こいつぁ……グレートだぜ!」
「ね? ちょっとワルっぽいのがいいと思ったのよ」
ふふん、と鈴を鳴らす藍狐。流行に敏感なキマイラたちも大盛り上がりだ!
「かっこいー! 私好みのタイプかもー!」
「いいなー! 僕もああいうのしてみたい!」
藍狐の表情は満足げな笑顔だ。ヨウも鏡に向けて色々ポーズを取っている。
「サンキュー、藍狐! これならシーンの最前線でも他の野郎に負けやしねえ!」
きっとノウヒンも早まるだろう。ノウヒンがなんなのかはよくわからない。
「こんなアートもあるんだにゃー! すごいにゃ!」
「うむ、まったくだ! 待てよ、私もメイクをお願いすれば……いやいや」
シスコン仲間のリリィは一瞬パンクな自分を想像したが、すぐに振り払った。
ステキだと思うが騎士らしくない。いやしかし逆にストリートスタイルのもアリかもしれない。
リリィの頭の上にほわほわ浮かび上がる白いもやもや……。
(ここから想像の世界)
ドンツクドンツクブブンプスー。盛り上がるフロア!
オーディエンスに囲まれなんかそれっぽい怪人と対峙するリリィ。ヒップでホップなスタイルだ。
「YOYO! 何が騎士だよ身の程知れや、おめえは単なる自惚れ屋!
所詮は空っぽ頭の単細胞、それじゃご立派装備も不相応!」
なんたるシツレイ! だがラップバトルはそういうものだ!
イマジナリーリリィは怒りに睨み返しながらライムを刻む。
「残念ながらラップは断念、参戦したいがリップが0点!
お前のコトだぜスベった怪人、おすすめしとくぜ黙って観戦!」
「「「ワオオーッ!」」」
オーディエンスが盛り上がる! リリィは反撃を許さぬ猛攻勢だ!
「お前じゃ無理だぜこの歓声、とっくに詰みだぜその人生!
マジで空虚にゃ思わんか? 実に空虚じゃありゃせんか?」
「取り消せよ……そのライム
……!!」
最後なんか混ざった気がする。
オーディエンスはさらに盛り上がる! ドンツクドンツクギュキュキュキューン!
(ここまで想像の世界)
「……ないな!」
「「「???」」」
何かをすっぱり諦めたリリィに、首を傾げる一同だったという。
●曲芸、人形流鏑馬
さて、ステージはここだけではない。たとえば別の場所では。
「アートを披露したら、ノウヒンとジュリが早まる……?」
怪訝な顔をする眼鏡の青年。バトルゲーマーの山梨・心志だ。
彼はどうやら、道行くキマイラたちの会話から、この『エリトア』の噂を知ったらしい。
彼には言葉の意味がわかるんだろうか。深く考えると頭がぼんやりする。
「な、なんていい噂なのでしょう!! これは俺もやるしかない!」
「どうしたんだ? 一人で騒いで」
「うおおうっ!?」
びくぅ! とややオーバーなリアクションで飛び退る心志。
声をかけたのは在連寺・十未である。その驚きっぷりに怪訝な顔で首を傾げた。
「よくわからないけど、参加するんだろう? グラフィティ」
そんな彼女はトランプのデッキを持っている。心志は勢い込んで頷いた。
「せや……んんっ、ええそうです! なにせほら、キマイラのみなさんを楽しませないと!」
つまり正義のためです、純粋な正義感から! と力説する。
やや半眼になる十未だが、正義というワードが出れば少し考え込み。
「まあそうだね、怪人は倒れて悪は去った! ……よな?」
「えっ。まさか第二第三の怪人が現れるとかそういう……?」
フラグを立てるとほんとに起きかねない。二人は忘れることにした。
しかし、あっちでもこっちでも誰や彼やが出し物をしている。どこで始めるか迷うところだ。
そんなふうにふたりがきょろきょろとしていると、そこへ未魚月・恋詠が現れた。
「まあまあ、お二人様もこちらに? ちょうどようございました、ささ。こちらをどうぞ」
うきうきした様子の恋詠。こういうお祭り騒ぎには誰もが心躍るものなのだろう。
「「なんだこれ?」」
一方、二人が手渡されたのは和紙である。
見れば周囲のキマイラたちにも手当たり次第に配って回っているようだ。
自然と恋詠を中心に耳目が集まる。よく見れば、和紙には赤い丸がちょんと撃たれていた。
「皆様、和紙はお持ちくださいましたか? では恋詠めの一芸、ご披露と参ります」
慣れた様子の口上も相まって、あれよあれよと呑まれていく観客達。
すわ手品でもするのかと思いきや、きりきりと懸糸が張り詰めた。
するとどうだ。どこからともなく二体の小さなからくり人形が現れて、ぺこりとお辞儀をしてみせる。
「此処に居ります人形2体、こちらがヒナゲシ、その隣はナデシコと申します」
もう一度お辞儀をする二体。この時点でぱちぱちと拍手が上がるくらいには、見事な操演だ。
「大変仲のいい姉妹でございまして、息もぴったりこの通りなのでございます」
立板に水の如くに口を回しながら、ヒナゲシに小さな和傘を手渡す。
なお、ナデシコのほうはもともと人形サイズの弓を携えている。何をしようというのか?
「おおっ?」
「ほほーう、これはこれは」
思わず十未が声を上げた。心志も感心した様子だ。
なにせヒナゲシがぱっと和傘を広げると、ナデシコがふわりとその上に飛び乗ったのだから。
さらに器用にも、くるくる傘を回し始めるヒナゲシ。
ナデシコは弓を持ったまま、てくてくと足踏みする。朗らかな光景だ。
「さて皆様! ここで一つお手をお貸しくださいまし」
人形たちの操演に夢中になっていた観客、和紙を見て納得。このための小道具か。
「そうです、そちらの紙をば、どうぞ好きな高さに持ち上げてくださいませ。胸元でも頭の上でも」
さながら人形を手繰るがごとく、よく通る声で恋詠が指示すれば、あっという間に道が開けた。
十未と心志も何が起きるのかと気になりつつ、言うとおりに紙を掲げてみせる。
すると、おもむろにヒナゲシが駆け出した! 傘上のナデシコは体勢を崩す!
が、よっとっと、とばかりにバランスを取り直すと、てこてこ歩きながら弓を構えてみせ――。
キリキリキリ……シュパパッ!
と鋭い矢が二条。十未と心志の掲げていた和紙を、それも中心の赤丸を見事に射抜いてみせたのだ。
どよめく観客たち。二体の人形姉妹は足を止めずに駆け抜けて、めくるめく速度で矢を放つ。
時折狙いがぶれはすれど、おおまか正確。ほとんどの矢は赤丸かそのすぐ近くを射抜いていた。
「さあさご覧じくださいませ、まだまだ参りますよ!」
からくり人形とは思えぬ生き生きとした動きで、くるっとあたりを一周する姉妹。
やがて恋詠のもとへと到着すると、ちょうど彼女の左右に着地した。
「はい、これぞ人形流鏑馬おめでたい宴の時間ゆえ、傘回しのおまけつきにございます!」
そして三人揃ってぺこりとお辞儀。誰もが拍手と歓声をあげた!
「やるなあ、お見事だよ」
「いやあすごい、思わず見入っちゃいました!」
二人も素直な称賛を送る。恋詠はほんのり頬を朱に染めてぺこりとお辞儀した。
「ふふ、おそまつさまでございます。けれども皆様、演目はこれだけにございません」
次は何かと輝く期待の目線が、恋詠の白い指にそって彼方へ向く。
するとそちらのほうから、愉快な音楽が響いてきた。
●ファンタスティック!
突然だが、人類の絶滅したキマイラフューチャーにも動物はいる。
とはいえ野放図に放置されているかというと、まあそういうリゾートはあれどすべてがそうではない。
特にこの『エリトア』は都市部に位置しているため、動物は専用の施設でないと見られないのが一般的だ。
そんなわけで。
「おおー、ライオンだー!」
「ちっちぇー、かわいい! 他にもいろいろいるぜ!」
獣奏器の音とともにやってきたのは、物珍しい多種多様な動物の一団。
先頭を行くのは黄金のライオン、そしてその背に乗るのはグイーダ・スティラだ。
「ふふふ、アタシのアメイジングな演奏にみんなノリノリね!」
後ろに続く動物たちは、他のパフォーマーが連れてきた曲芸用の相棒だったり、手品のパートナーだったり。
グイーダの奏でる音色があまりにも見事であるためか、本来の仕事をほっぽってついてきてしまったのだ。
ちょっとしたパレード状態。元の飼い主たちはというと、こっちもこっちでノッているのであまり困っていない!
それがキマイラフューチャーの住人である。騒げればそれでいいのだ。
「ハローみんな! 紹介するわ、この子がアタシの相棒よ!」
ふわり、とグイーダがその背から飛び上がると、黄金のライオンは器用に後ろ足で二本立ちしてみせる。
大きさ的にはライオンというより猫に近い。が、それが逆に愛嬌を際立てていた。
きらきらと輝きを振り撒きながら、空中を滑るように舞うグイーダ。
ライオンはそれを追うようにあちらへこちらへと飛び跳ねて、かと思えば思いきり宙返り!
そこへグイーダが合流し、着地した瞬間にはまた背の上に、という具合だ。
「うんうん、ナイスよライオン君♪」
わしゃわしゃと首元を撫でられると、嬉しそうに喉を鳴らす相棒。黄色い歓声が上がった。
「またずいぶんと大所帯な! ちょっとしたサーカスじゃないか?」
「まさにこの場にふさわしい出し物、というわけでございますね」
十未と恋詠が話していると、そこへグイーダがやってきた。
「あらふたりとも、それにそっちの男の子も! せっかくだから皆で踊りましょう?」
「えっ、俺もですか!? いやあ、そういうのはキャラじゃないっていうか……」
水を向けられた心志はうまいこと逃れようとするが、テンションの上がったグイーダには通じない。
なにせ彼女はフェアリー、気まぐれで移り気、それでいて愉快な種族の少女なのだ。
「いいじゃない、どうせ二人もなにかやるんでしょう? 楽しみましょうよ!」
「お、そうだね。ならこの騒ぎのど真ん中でやってみようか」
トランプのデッキをお手玉しながら、得意げに十未が言う。トランプタワーを作るつもりだったようだ。
獣楽器の音色とダンスパーティめいた騒ぎで高揚しているのか、こう言いのけてみせる。
「どうせなら勝負でもしようか。こういうの得意だろう?」
「えっ!」
またしても水を向けられる心志。が、勝負と言われると彼も黙ってはいられない。
「なるほど。なら俺のゲーム勝負も受けてもらえませんか? せっかくですし」
「いいね。でもそうすると二回勝負かな? 引き分けだったらどうする?」
「そしたら今度はダンス勝負ね! とにかく踊ればおっけーよ、レッツダンシング!」
と、すっかり意気投合した一同に、にこにこと微笑む恋詠。
踊りならばこちらも、とばかりに、再びヒナゲシとナデシコが息の合った動きで人々を楽しませる。
「よし、準備はいいな? 始めるよ……よーいスタート!」
「えっ合図そっちが出すんですか!? うっわ速っ!?」
コンコンコンでせり出してきたテーブル席を使い並び立った十未と心志。不正はなかった。
しかし自慢げだっただけはあり、十未のタワー構築速度は目を見張るものがある。
一方で心志の指さばきもスピーディだが繊細だ。バトルゲーマーたるもの、このぐらいは出来なければ。
「この山梨・心志に精神的動揺によるミスはない、と思ってもらいましょうッ!」
「甘いね、見てごらん! 僕のは……ほら、絵札から順に組み上げてあるのさ!」
「そういう芸術点もありなんですか!? く、くそぅ、なんだか負けたくなくなってきた……!」
意外にもヒートアップする勝負。なんだかんだで彼らも十代の若者だ。
囃し立てるキマイラもいれば、グイーダの音楽に乗って踊る者もいる。
もはやそこに、オブリビオンの脅威はどこにもなかった。
●祭りは続くよいつまでも
一方その頃。
「……と、そこで男は言うわけだ。『おいおい、そんなリクエストは聞けないぜ!』ってね」
どっ! と一斉に笑う観客たち。
優希斗の即興三題噺は、最初こそ飲み込めないキマイラもいたものの、始めてみれば大盛り上がり。
観客の一人としてネタを出した耀も、そのオチに笑い転げている。
誇張抜きに抱腹絶倒である。くすくす、とかじゃなくてゲラゲラ笑いなのは自称・可憐としてどうなのか。
「あっはははははは! よくあのお題であんなに早くお話思いついたわね!」
「いやあ、さすがに『戦争・クリスマス・球技大会』なんてお題が並んだ時はどうしようかと思ったけどね」
ややくたびれた様子の優希斗。それでも話をまとめてみせたのだから大したものである。
「その前のもよかったわよー。あれはなんだったっけ、『修学旅行・学園祭・卒業式』だったかしら?」
「どうして行事ばかりがお題になるんだろうね……」
繰り返すが、大ウケであった。出目1なぐらいには。優希斗には才能があるのかもしれない。
「ねえねえ猟兵さん、またさっきの即興話やってよ!」
「次は『バレンタイン』がいいなー!」
きゃっきゃとはしゃぐキマイラの少年少女。
「そのお題は勘弁してほしいかな……」
目に見えてテンションの落ちた優希斗をひらひら手を振ってステージへ送り出す耀。
そこへ、鼻歌を歌いながらティティモルモが戻ってきた。
その後ろには、ヨウやコハルといった面々もいる。
「のんびり見て回るのもー、たまにはいいでごぜーますねー」
「その割に寝正月だの冬眠だの、睡眠に関する歌ばかり唄っていたような気がするが……」
苦笑いのリリィ。
「女の子なんだから、バレンタインのこととか考えたりしないの?」
同じくついてきた藍狐に問われると、そこでティティモルモは何かを思い出したように手を叩く。
「そうでごぜーました。白鐘さんはー……いました」
「ん? 何、私に用?」
「バレンタインー。荒れてらっしゃいましたからー、モルがチョコあげるでごぜーますよー」
耀はきょとんとした顔のまま驚いた。……そういうところはきちんと聞いているらしい。
「ちょこれいとぅ、コハルは食べらんないにゃー。食べてみたいにゃ!」
「やめとけよ、死んじまうぞ!? どんだけ食いしん坊なんだっつーの」
見た目がパンクになっても、元気すぎる女の子に振り回されがちなヨウの根は変わらないらしい。
視点を高くして別のほうへ目を向けてみれば、今度はゲーム勝負中の十未と心志がいたり。
「いきますよ、炎のコ……もとい、連続攻撃ィ!!」
「うわーっ!? なんだその連打速度ヤバくない!?」
バトルゲーマーの面目躍如、十未は為す術もない。
「げえむのことはよくわかりませぬが、白熱してございますね!」
「楽しければそれでイッツオッケーよ、レッツゴー!」
観客に混じる恋詠も、グイーダも楽しげだ。
「これは確実にノウヒンが早まりますね、勝ち確定です!」
「油断大敵、もらった!!」
心志が眼鏡をクイクイしながらドヤ顔してたら、コントローラから手を離した隙を突かれてしまった。
そんな飽きさせぬ展開に、観客は誰もが大興奮だ。
そして、そんなお祭り騒ぎのはるか頭上。
機械箒『メタルハート・ベーゼン』に乗り、ゆるやかに空を征くスターライダーの姿あり。
「みんな楽しそうね。それじゃあもう少し演出をしましょうか」
白い指がきらきらとした光を伴い、宙を滑る。
「これは流れる夢。降り注ぐ幻想、されど願いを導く篝火の星」
光は強まる。……戦闘中のそれよりも強まる。そんなにですかアンノットさん!?
「今日この時、この時間を楽しむ全ての人々に、おまじないをかけましょう。
……流れる夢よ、正しき願いを守りたまえ(デイドリーム・メテオシャワー)!」
途端にぱあっと光が飛び散り、さながら流星群のように空を埋め尽くした。
軌跡を描くその数は、ゆうに300はあるだろうか。見事な輝きだ!
実に、そう実に、まことに、大変に盛大な輝きだ。アンノットさんの本気が垣間見える。
さておき。
騒ぎ楽しむ人々はみな空を見上げた。
とても眩しく、心温まる、それでいてなんとなーくヒヤリとする流星の雨を。
なにか祈りを捧げる者もいたかもしれない。僕も私もと同じような花火を上げる人もいたかもしれない。
後者に関しては用法用量を守って楽しく、かついろんな物と相談した上で打ち上げてほしい。花火の話だが。
……さておき!
楽しい時間は過ぎていく。いろんな紆余曲折はあったものの、その輝きのもとでは誰もが平等だ。
きっと、今日という日の出来事は、皆の心に色鮮やかに刻まれることだろう。
思い出という過去と、いつかの未来は、いつだって輝き続けるものなのだから。
大成功
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