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夜ヲ切リ裂ク者達

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●GoodChoice
 それは深夜、とある村で起きた光景……。

「お父さん、私……行くね。こうすれば村のみんなが助かるんでしょう? なら、私は喜んで領主様の所へ行くよ」
「アナ……頼む、行かないでくれ……。母さんが向こうへ行って、今度はお前までいなくなったら父さんはどうやって生きていけば……」
「でも、この村で私以外に行ける人がもういないんでしょう? ……私はこの村のみんなのために、いい選択をするつもりだから」
 まだ十代半ばと言った感じの少女と、その父親だろうか。
 その親子が今まさに永遠に引き離されようとしていた。
 この地を治める領主への『食料』として『収穫』される為だ。
「おい、別れの挨拶はもう済んだか」
 領主の部下である異端の騎士が、これ以上待てないとばかりに割り込む。
 せめてもう少し父親と会話をしたかったが……あまり待たせてしまう訳にもいかない。
 已む無く、少女は会話を打ち切る。
「……はい」
「フン、では行くぞ。乗れ」
「お父さん、短い間だったけど……今までありがとう……」
 檻の付いた馬車に乗せられ、アナと言う名の少女が村から離れていく。
 以前に妻を領主に奪われ、今度は娘までもが……。
 彼女の父親はその様子を涙しながら、ただ黙って見ている事しか出来なかった。

●暗黒の闇を切り裂け
「……みんな、今日は集まってくれてありがとう。今からわたしの見た予知について説明するね。場所はダークセイヴァー、そのとある地方よ」
 悲劇的な予知を見たためか、先ほどまで暗い面持ちだったアヤカ・ホワイトケープ(ロストイノセント・f00740)が、一転して真剣な表情で説明を始める。
 今回の場所となる地方の中心部にこの地を治める領主の住む館があり、領主は定期的に領内の町や村から『若い女』を部下に命じて『食料とするために』収穫しているのだと言う。
 収穫に応じれば一定期間の平穏が約束され、もしそれが出来なければ……後は言うまでもないだろう。
 アヤカの見た予知は、とある村の親子の間に起きてしまった悲劇の光景であった。
「みんなにお願いしたいのは、この領主を討って長く続いている悪夢を終わらせてほしいの」
 それはつまり領主の館に攻め込むと言う事。
 ただし、普段は警備が厳しく普通に攻め落とすのは非常に困難だが、その警備に穴が開く時があるのだと言う。
「部下に命令して『収穫』に出している、まさにその時ね。予知では今度遠い町に行くようだから、行って戻ってくるのには時間がかかるはず……」
 よって猟兵達はその時を狙い、館に攻め込んで領主を倒すしかない。
 ただ全くのもぬけの殻と言う訳でもないらしく、館の中にはおおよそ十体以上ほどいる『朱殷の隷属戦士』が警備として置いてあるとの事。
 館に攻め込んだ直後はまずそいつらを倒さなければならないようだ。

「それで、朱殷の隷属戦士を倒したら領主の部屋に踏み込むんだけど……どうにかして領主を倒したら、連れて行かれた子の亡骸を村に帰してあげてほしいの」
 アヤカが言うには、連れて行かれた少女は『どうあがいても助からず、領主の餌となってしまう事は避けられない』らしい。
 せめて亡骸を持ち帰る事が出来れば、娘が二度と戻らない事で深い悲しみを背負った彼女の父親の心も、少しは救われるはずだろう。
 その後は疲弊しきった村のアフターフォローも行って欲しい、と付け加えた。
「わたしもあの領主は絶対に許せないし、討伐に加わりたい。……でも、わたしは予知を見た以上、ただ送り出す事しか出来ないから、それはみんなにお願いするね」
 あんな狂った風習を止めるべく……そして平和を取り戻すためにもどうか闇を切り裂いて、この世界の希望の光となって。
 アヤカの切実な願いに猟兵達は頷いた。


NS
 はいどうも、NS(えぬえす)でございます。
 今回のネタは某ゲームの曲聞いてる時に思い付きました。
 NSはあのゲームでクリストファーさんばっかり使ってました。昔から尖ってたゲーム出してたD社は好きだったなぁ……。
 それはともかくとして、NSの三発目となるシナリオはシリアス系の話となります。

●場所
 ダークセイヴァーの世界、そのとある地方の領主館。
 転送先はその近隣、時間は深夜頃となります。

●目的
 領主の部下が収穫に出払っている間、館に強襲。
 残った警備を蹴散らして、領主を討ち滅ぼして下さい。
 戦いが終わった後は村人のケアもあるので、そちらもお忘れなく。

 なおOPに出ていたアナは『どうあっても助かりません』。
 その怒りを敵に叩き付けてやりましょう。
 また、同じくOPに出ていた異端の騎士も出番はそこだけなので気にしないで下さい。
 領主が討たれたとなれば、どこかへ消えていく物と思われます。

●章構成
 第一章:朱殷の隷属戦士を蹴散らせ(集団戦)
 第二章:悪魔の領主を討て(ボス戦)
 第三章:夜明け、明日へのために(日常)
 …と、言ったところです。

 リプレイはプレイングがいくつか集まり次第、取り掛かりたいと思います。
 また、その他の事に関してはマスターページにも書いてありますので、そちらもご確認いただければ幸いです。
 それでは、皆さんで『夜を切り裂いて』下さい。
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第1章 集団戦 『朱殷の隷属戦士』

POW   :    慟哭のフレイル
【闇の力と血が染付いたフレイル】が命中した対象に対し、高威力高命中の【血から滲み出る、心に直接響く犠牲者の慟哭】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    血濡れの盾刃
【表面に棘を備えた盾を前面に構えての突進】による素早い一撃を放つ。また、【盾以外の武器を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    裏切りの弾丸
【マスケット銃より放った魔を封じる銀の弾丸】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Under the Moonlight
 不気味な月が夜空に輝く深夜、猟兵達は目的の館の近くに転送されてきた。
 まず一行は近くの茂みに身を隠して館の入口を注視する。
 少しすると門が開き、中から馬車に乗った異端の騎士が出てくる。
 アヤカの情報通り、これから遠くの町まで収穫へ向かうのだろう。
 馬車が遠くまで行くのを見送った後、一行は館へと向かう。
 門は開いたままになっていたため、侵入する事自体は容易であった……もっとも、それは入口までの話だ。
 館の扉を開き慎重に内部へと進んだその時、複数の人影が暗闇の奥から現れる。

「侵入者……」
「排除……」
 朱殷の隷属戦士達だ。
 彼らは収穫されていった女達を奪還するべく無謀にも領主へ歯向かったが、返り討ちに遭い亡者となってしまった哀れな者達である。
 既にまともな理性は残っておらず、今はただ領主の命令のみに従うだけの尖兵だ。
 彼らを救うには……倒すしか手段はない。
 全ては悪しき領主を討つべく、今は降りかかる火の粉を払うのみ……猟兵達は、それぞれ武器を構えた!
栖夜・鞠亜
"どうあっても助からない"
ま、この世界では在り来たりな結末だけど。 気持ちの良い話でもない。


貧しく乏しい人々を死へ追いやったのだから、その死は彼に報いとして還さなきゃ・・・ 鞠亜は銃で迎え撃つ。 屋内だけど構わずユーベルコードで吹き飛ばす。 普段なら戦術的に考慮したかもしれないけど今日の鞠亜は少し・・・機嫌が悪いの。

裏切りの弾丸の対処は、銃を構えた敵が視界に入ったらすかさず銃口を向けて、発射された弾丸を弾丸で弾いてみる。 鞠亜の腕を甘くみないほうが、いい。



●裁きの銃弾
 朱殷の隷属戦士達がこちらへ向かってくる中、栖夜・鞠亜(ダンピールのマスケティア・f04402)は不機嫌な様子であった。
 出撃前に聞かされた「連れ去られた子はどうあっても助からない」と言う話。
 この世界では在り来たりな結末ではあるが、 気持ちの良い話でもないのは確かだ。
(貧しく乏しい人々を死へ追いやったのだから、その死は彼に報いとして還さなきゃ……)
 鞠亜は手持ち四丁の狙撃銃から一つを取り出し、構える。
「吹き飛べ」
 ユーベルコード、炸裂弾(エクスプローディングバレット)が放たれる。
 その強烈かつ的確な一発は、一瞬で隷属戦士の頭を吹き飛ばした。
 頭を失った肉体はその場に崩れ落ちる。
 ここは屋内ではあるが、そんな事とはお構いなしに炸裂弾を更に放つ。
「普段なら戦術的に考慮したかもしれないけど、今日の鞠亜は少し……機嫌が悪いの」
 それはここの領主に対する怒りでもあった。
 必ず仕留める……その心が、今の彼女を突き動かしているのかもしれない。

 不意に、隷属戦士の一人が鞠亜へと手持ちのマスケットを向ける。
 当たった相手のユーベルコードを封じる『裏切りの弾丸』を撃つつもりのようであった。
 ……だが、彼女の方がそれに気付くのが早かった。
「遅い」
 鞠亜の放った銃弾が数瞬の差で、隷属戦士の魔を封じる銀の弾丸を弾いた。
 高い視力と暗視能力、そして一流と言っても過言ではないスナイパーとしての腕が相手を圧倒的に上回っていたのだ。
「鞠亜の腕を甘くみないほうが、いい」
 淡々と語りつつ、鞠亜は次弾をリロードすると次の標的へと狙撃銃を向けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

デナイル・ヒステリカル
僕たちが館の主であるオブリビオンを放置すれば、
直接的な犠牲者だけではなく、隷属戦士たちも増え続ける事になります。
勇敢な意思を持っていたであろう、戦士たちを損壊させるのは気が引けますが、仕方ありません。

攻撃……の前に戦士たちの受けた傷を【情報収集】し、館の主の攻撃方法を仮定して記憶しておきます。
多祥なりとも今後の戦闘の助けになるはずですし、戦士たちをただの敗北者にはしたくない。
何か少しでも彼らから得るものが有れば、それは彼らの功績となるはずです。

UCを使用して実体化した槍を【先制攻撃】【範囲攻撃】【一斉発射】で放ちます。
或いは倒しきれなかったとして、後に続く仲間の猟兵が攻撃する隙を作るために。


鏡島・嵐
皆を守りてぇって気持ちは本物だったんだろうな。
――せめて、その気持ちが無駄にならねぇようにしねえとな。

【WIZ】
《二十五番目の錫の兵隊》を使って、味方への〈援護射撃〉を中心に行うぞ。
向こうが放つ銀の弾丸は〈見切り〉でタイミングを測って、こちらからの射撃で撃ち落とすようにする。
攻撃するときは〈フェイント〉を絡めて、ちょっとでも攻撃の精度を上げてぇところだ。



●その屍を踏み越えて
 鞠亜の狙撃が的確に、敵を仕留めていく。
 だが敵の数は多く、カバーが必要なのも事実……そこへ仲間達が援護へと回る。
「旧式兵装構築。実体化完了。対象を穿て…!」
 デナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)がユーベルコード、本日の天気は突然の槍模様となるでしょうシステム(シミュレート・シークレットウェポン)を発動させ、実に100本もの槍を実体化する。
 それを先制攻撃として、一斉に広範囲へと放つ!
 槍の雨が次々と敵を貫き、何体かの敵がその場で串刺しとなり、物言わぬ骸と化した。
 もちろん仕留めきれなかったのもいるが、防具の一部を打ち砕く事には成功しているようだ。

「胸に燃ゆるは熱き想い、腕に宿るは猛き力。その想いを盾に、その力を刃に。……頼んだ!」
 更にそこへ鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)がユーベルコード、二十五番目の錫の兵隊(フェモテューヴェ)を使用。
 片脚が義足の武装した兵士の霊を召喚し、援護射撃を行う。
 二人のカバーリングが数で勝る朱殷の隷属戦士達を押し返す。
 戦況が変わった事で、敵はスパイクシールドを構え、じりじりと後退していく。
 闇雲に突っ込んでは危険だと判断したのだろう。
 ……そんな交戦中の最中、嵐は思う。
(皆を守りてぇって気持ちは本物だったんだろうな。――せめて、その気持ちが無駄にならねぇようにしねえとな)
 収穫された女達を取り戻すべく、はたまた一部は女達を守ろうとして返り討ちに遭ったのだろう。
 それを思うとこうして戦うのは辛い物がある、しかし今は彼らを倒してその屍を乗り越えねばならない。
「全て終わったら、おれがアンタ達も弔ってやる! だから、悪く思うなよ!」
 時折フェイントを交えつつ、敵の放つ銀の弾丸は見切りでタイミングを見て撃ち落す。
 本当は戦う事に恐怖を感じながらも、嵐は必死に、そして全力で迎え撃つ。
 決して逃げずに戦う、その勇気は本物だ。
 何より、今の自分には頼れる仲間も付いている……なら、尚更逃げ出す訳にもいかなかった。

 そしてデナイルもまた、嵐と似たような気持ちでいた。
(勇敢な意思を持っていたであろう、戦士たちを損壊させるのは気が引けますが、仕方ありません)
 自分達が領主を討たねば直接的な犠牲者だけではなく、隷属戦士達も増え続ける事になる。
 だからこそ、今は心を鬼にしなければならないのだ。
(……戦士達の体には刀剣による切り傷、一部は滅多切りにされたような跡。そして一部は何かの生物から無数に咬まれたような傷、か)
 密かにデナイルは戦闘中、朱殷の隷属戦士の体を観察していた。
 ここを突破した後、館の主と戦う際に攻撃方法を仮定して記憶しておけば、戦いを少しでも有利に進められると考えたのだろう。
(今後の戦闘の助けになるはずですし、戦士たちをただの敗北者にはしたくない。何か少しでも彼らから得るものが有れば、それは彼らの功績となるはずです)
 かつては人間であった彼らにも、何らかの形で功績を残してあげたい。
 その気持ちがデナイルにはあった。
「……嵐さん!」
「ああ! 行くぜ!」
 二人のコンビネーションが隷属戦士を一体、また一体と倒していく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。間に合わない、か
予知は多くの人達を救ってきたけど、こういう時は残酷
だけど犠牲者を悼むのは全てが終わってから…

…事前に防具を改造して消音性と暗視能力を高めておく
猟兵が暴れている隙に隠れて【見えざる鏡像】を発動して透明化
敵の第六感に察知されないよう存在感を消して接近

…全身鎧に盾に銃。そして銀の弾丸…
まともに戦っても負けはしないけど、少し厄介

死角から鎧の急所を見切り、呪詛の力を溜めた短剣を突き刺す
怪力任せに傷口を抉り、生命力を吸収する2回攻撃を
攻撃した後は敵の追跡を避ける為、即座にその場を離脱
他の猟兵が危険なら短剣を投擲して助けに入る

眠りなさい。安らかに…
あなた達を玩弄した吸血鬼は、私達が狩る


ヴィネ・ルサルカ
吸血鬼を喰えると聴いてやって来てみれば…前菜にもならん死骸共の相手とはのぅ…。

まぁ、よい。早ぅ終らせるぞ。
【ネクロポリスの黒嵐】に【衝撃波】と【呪詛】【鎧砕き】を載せて先制と致すか。一応、他の猟兵には一声掛けておくかのぅ。

嵐が過ぎ去れば【■■■■■・■■■】にて眷族を喚び、猟犬には撹乱、奴隷には酸を飛ばして他の猟兵の援護を指示。ワシ自身は腕っぷしがからっきしじゃからのぅ、ゆるりと高見をきめるとするかのぅ。

おっと、奴等がユーベルコードを使おうものなら【七星七縛符】で縛り付けておくかのぅ。



●鏡像と黒嵐
 少しずつではあるが朱殷の隷属戦士の数は減りつつあった。
 それだけ猟兵達の力と連携が優れていたのだろう。
 しかし、それでも隷属戦士は戦う事を止められない。
 そんな中で隷属戦士の一体が一瞬の隙を狙い、フレイルを振りかざして嵐に襲い掛かる。
 しかし……
「眠りなさい。安らかに…」
 どこからか聞こえた声と共に、何者かが死角から鎧の急所を見切り、呪詛の力を溜めた短剣を突き刺す。
 その一撃は怪力任せに傷口を抉り、生命力を吸収する二回攻撃と言うえげつない物であった。
 当然、隷属戦士はこの攻撃に耐え切れるはずもなく、糸の切れた人形のように崩れ落ちる。
「これで四人目……」
 その直後、スゥッと何も無い空間から姿を見せたのはリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)。
 自身のユーベルコード、見えざる鏡像(インビジブル・ミラー)を使って透明化していたのだ。
 これは毎秒疲労するため長時間の使用は出来ないが、事前に防具を改造して消音性と暗視能力を高めて隠密性を上げてからのヒットアンドアウェイ戦法で、一体ずつではあるが確実に敵を始末している。
(予知は多くの人達を救ってきたけど、こういう時は残酷。だけど犠牲者を悼むのは全てが終わってから…)
 予知で多くを救う事は出来ても、救いきれない物もある。
 それは猟兵達にも分かっていた事だ。
 ならば、今自分達に出来る事は……
「あなた達を玩弄した吸血鬼は、私達が狩る」
 そしてリーヴァルディは再び姿を透明化すると、また一体と隷属戦士を狩っていく……。
 全てはヴァンパイアを狩るために――。

「吸血鬼を喰えると聴いてやって来てみれば…前菜にもならん死骸共の相手とはのぅ…」
 やれやれ、と言った様子でヴィネ・ルサルカ(暗黒世界の悪魔・f08694)が肩をすくめる。
 遥か彼方の暗黒星雲から来訪した悪魔と自称しており、その外見は悪魔を自称するに相応しい異形の姿ではあるが、実際のところはキマイラの女性である。
「まぁ、よい。早ぅ終らせるぞ。……ああ、巻き込まれるかもしれんから、少し離れておった方がいいぞ」
 先に仲間達へ一声かけるヴィネ。
 それを聞いた仲間達が素早く後退する。
 そして、安全な範囲に下がったのを見るが早いか自身のユーベルコードを発動させた。
「狂える王よ、万物を侵せ」
 ネクロポリスの黒嵐(アースィファト・ウルジュウネ)が放たれる。
 腐食の呪詛を含んだ漆黒の旋風が半径17m内の敵に向けて一斉に襲い掛かった。
 そこへ更に衝撃波と呪詛、鎧砕きも乗せており破壊力は向上している。
 漆黒の旋風が隷属戦士を飲み込むと、肉体があっと言う間に腐敗する。
 その身を守る鎧は効果すら発揮出来ず、呪詛の力で砕かれていく。
「うむ、こんな物かのう。では、続いてこれで行くか……『我が眷属よ、顕現せよ』」
 黒嵐が過ぎ去った後でヴィネは■■■■■・■■■(ニンゲンニヨル・エイショウ・フカ)を使用する。
 ■■■■の猟犬(四足で三角頭の生物)と奴隷・■■■■ (不定形の何か)がその場に呼び出された。
 それは言葉に出来ないおぞましさを持った何か、としか言えない生物である。
「ワシ自身は腕っぷしがからっきしじゃからのぅ、ゆるりと高見をきめるとするかのぅ」
 そう言うと、ヴィネは猟犬と奴隷を使役し、隷属戦士に襲い掛からせる。

 こうしてまた一体、隷属戦士が倒れていき……その数はあと僅かと言うところにまで減っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
POW
人間を餌としか見ない邪悪な圧制者め……!
その跳梁も今宵までと識れ!

【トリニティ・エンハンス】【属性攻撃】【破魔】で槍に聖なる炎の魔力を纏い攻撃力を増大

【怪力】で聖槍を縦横無尽に打ち振るい、有象無象を【なぎ払う】
我が槍は邪悪を打ち砕く破邪の聖槍!
悪徳の鎧や盾で防げると思うな!(【鎧砕き】【串刺し】)

物理攻撃は槍で受け流し(【武器受け】)
闇の力や慟哭の響きは【オーラ防御】【呪詛耐性】【激痛耐性】【気合い】で耐える
突進で密着されればガントレットで殴り飛ばし(【グラップル】【カウンター】)、【踏み潰す】
心に響く慟哭の声……それで私が止まるとでも?
湧き上がる怒りが、私に邪悪を討つ力を与える!



●浄化と憤怒の炎
 戦闘が始まってから少し経ち、次々と朱殷の隷属戦士が倒れていく。
 そんな中、まるで烈火のごとき勢いで隷属戦士を倒していく者がいた。
 破邪の聖槍を振り回し、群がる敵をなぎ払うその姿……オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)である。
 柔和な笑みを湛えている銀髪のシスターではあるが、今の彼女の様子を見るとその印象はどこにも感じられない。

「我が槍は邪悪を打ち砕く破邪の聖槍! 悪徳の鎧や盾で防げると思うな!」
 ……そう、彼女は憤怒していた。
 自らの欲望のために、人々を苦しめている領主の悪行。
 そのために永遠の別れを強いられた親子。
 そして、連れ去られた少女は助からないと言う残酷な現実。
 この怒りは領主を完全に討ち滅ぼすまで収まりそうにない事を仲間達は感じていた。
「湧き上がる怒りが、私に邪悪を討つ力を与える! はぁぁぁぁぁぁッ!!」
 トリニティ・エンハンスで槍に聖なる炎の魔力を纏いその力は更に増大していく。
 ひとたび炎の槍で貫かれれば、身に付けている鎧は一瞬で砕かれ炎が体に回り焼き尽くす。
 亡者となり腐敗した肉体は、浄化の炎で灰へと変わる。
 それでも恐れる事なく命令に従うがまま、残り僅かな隷属戦士がオリヴィアにフレイルを振り下ろす。
 運悪くその一撃は命中し、彼女の心に直接響く犠牲者の慟哭が聞こえてくる。
(何故だ……何故俺の妻が……)
(もうすぐ結婚するはずだったのに……どうして……)
(僕らの子供が生まれるまで、あと少しだったのに……行かないでくれ……)
 それはおそらく、彼らの心の叫びだったのだろう。
 だが、オリヴィアはそれに負ける事なく押し返す。
 彼らの慟哭を聞いた事で、彼女の憤怒の心に更なる火が付いたのだ!
「それで私が止まるとでも? 湧き上がる怒りが、私に邪悪を討つ力を与える!」
 破邪の聖槍を振り回し、炎と共になぎ払う!
 ……残り僅かだった敵は全て浄化され、朱殷の隷属戦士は全て物言わぬ骸となった。

「人間を餌としか見ない邪悪な圧制者め……! その跳梁も今宵までと識れ!」
 オリヴィアの怒りの叫び……それはこの館の領主へと向けられた物であった。

●From the Hell
 襲い来る朱殷の隷属戦士を全て倒した一行は、階段を上がり奥へと進む。
 すると、突き当たりに一際大きな扉のある部屋があった……おそらく領主はここだろう。
 一行は覚悟を決め、扉を開ける。
 ギイィィィ……と重苦しい音と共に扉が開く。そこは異様なまでに広い部屋であった。

 ……少し部屋の中を進むと誰かが倒れている。
 それは首筋に穴が空き、絶望した表情で絶命している少女であった。
 アヤカが予知で見たと言う少女はおそらく……

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ヴァンパイア』

POW   :    クルーエルオーダー
【血で書いた誓約書】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    マサクゥルブレイド
自身が装備する【豪奢な刀剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    サモンシャドウバット
【影の蝙蝠】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Beat the Darkness
「下が騒がしいと思ったが、まさか我が手駒を倒すほどとはな……まあ雑魚に欠片も期待などしなかったが、な」
 窓際に立っていた男がこちら側に振り返る……ヴァンパイアだ。
 こいつが話に聞いていた、この地方の領主なのだろう。
 ふと、部屋の壁に目を向けた猟兵達は一斉に息を呑む。
 ……壁には恐怖、絶望、悲鳴を上げようとした表情のまま死んでいる女達が『剥製となって括り付けられて』いた。
 収穫された女は餌になった挙句、領主の趣向でこのような仕打ちを受けたのだろうか。
 どうやって剥製にされたのかは……正直考えたくもない。

「人間と言うのは実に短命で脆すぎる。成長も、劣化もあまりに早すぎる……だから我が美しい姿のままで残そうとしているのだよ。まあ、一種の芸術品とも言うがね」
 壁の犠牲者に気付いてか、領主が語り出す。
 罪悪感すら何一つ感じない表情で続けると、壁の剥製の一つを指差した。
 剥製の下のプレートには犠牲者本人と村の名前が刻まれている。
「あのシーナと言う女だった物があるだろう? そこに転がっているアナとか言う娘の母親だったそうでね。アナは芸術品となった母親を目にした時に見せた絶望の表情……ああ、実に素晴らしかった。血の味も絶望に彩られて久々に美味かったよ。つい飲み過ぎてしまったほどにね」
 アナは母親が餌にされて死んだ後、剥製にされていたのを見て何を思ったのだろうか?
 その絶望の表情からある程度の推測は出来なくもないが、彼女が死体となった今ではそれを知る術は何も無い。
 だが、ハッキリと言える事があった。
 ……狂っている、と。
「まあ我の高尚な趣味に他人の理解など求めんがな。それに人間共は所詮家畜でしかない……我々に管理されて生きるのが運命なのだよ」
 それ以上喋るな、と言わんばかりに猟兵達は武器を再度構える。
「人間風情が我を滅ぼすか? ……無知! 無駄! 無力! ならば思い知らせてくれる!」
 領主も武器を抜いた。
 いずれにせよ、ここでこいつを討たなければ犠牲者は増えるばかりだ。
 この悪魔の餌となる者達をこれ以上増やさないためにも、猟兵達は闇を打ち破る戦いに勝たねばならない!
ヴィネ・ルサルカ
ほぅ、お主…中々善い趣味をしておるなぁ。(部屋の主を意に介さずシーナの剥製を撫でながら)美しい女を嬲り、剥製に仕立てた上に娘に見せて血を啜るとは…この上無き贅沢じゃ。

贅沢三昧の日々は…お主をさぞかし美味しく仕上げておるじゃろうなぁ。

先の戦闘で召喚した眷族を引き継ぎ使役するかのぅ。猟犬に【傷口をえぐる】【鎧砕き】を付与し機動力を活かした遊撃を、奴隷は【呪詛】【誘導弾】を付与し強酸での射撃を指示。

奴が後一撃で仕留められる状況になれば、眷族の召喚を解除し右腕を【暴食螺鈿怪口】に変化。

【傷口をえぐる】を使い爪先から断末魔を味わうように喰ろうてやろうかのぅ。

家畜と侮ったワシ等に喰われる気分は如何かのぅ?


鏡島・嵐
ヴァンパイア。
力も知恵も、ついでに心も、おれなんかよりずっと強ぇ相手。
そんなのはわかってる。
それでも、おれにも退けねぇ理由がある。

真の姿:普段と変わりなし。強いて言えば目力が上がったかも、程度。
判定:【WIZ】
前線から少し離れた場所で《大海の姫の恋歌》で自分を含めた全員を治癒しつつ、皆が動きやすくなるよう〈援護射撃〉も行う。
向こうの攻撃は〈第六感〉で察知して、可能なら皆にも警告を発したり、状況的に喰らってほしくねぇ奴を庇ったりするぞ。


栖夜・鞠亜
想像以上に・・・いや、想像通りのクズで安心した。
嫌悪感の表情までは隠せそうにないかも。


鞠亜は距離を置きつつ銃で攻撃する。 属性攻撃を利用して弾丸に氷属性を付与して手足を狙えば多少は行動の阻害になる。 狙いは他にあるけど、とりあえず当てる狙いだという事を演じる。 血で書いた誓約書がどんな軌道で飛んでくるかわからないけど、弾丸より早く飛んでくるとは考えずらいから撃ち落とすつもり。

氷の弾丸をこれだけ撃てば辺りは氷だらけでしょ? 簡単に滑ってくれるとは思わないけど、1度くらい。 うっかりよろけてしまう事くらいあるんじゃない? ただの賭けだけど、その一瞬を狙ってUCをお見舞いしてあげる。


オリヴィア・ローゼンタール
POW
アナさん……間に合わず、申し訳ありません
必ずや邪悪を滅ぼし、弔いとします――この槍に誓って

【血統覚醒】により吸血鬼を狩る吸血鬼と化し、戦闘力を爆発的に増大
【属性攻撃】【破魔】で聖槍に破邪の炎を纏う
邪悪な吸血鬼よ、その傲慢が潰え、因果が応報する時が来た
覚悟しろ、とは言わない……狩られる恐怖に打ち震えて死ぬがいい!

【怪力】を以って苛烈に攻め立てる
斬り打ち穿ち、具足ごと粉砕する(【鎧砕き】【串刺し】)
彼女らの無念、我が赫怒の炎に乗せて――叛逆の牙と成し貴様の喉元に突き立てる!

蝙蝠や浮遊する刀剣は槍を振るう【衝撃波】で吹き飛ばす
誓約書は強化された【視力】で【見切り】、接触する前に焼き斬る


デナイル・ヒステリカル
彼の芸術も性癖も生態も慢心も一切の興味はありません。
僕の目的はオブリビオンの排除によって得られる近隣の安全性向上のみ。
「だからもうその口を閉じろ。くたばれ、ナルシスト」

先にUC:バーチャルレギオンを使用して機械兵士を召喚し、味方への援護射撃と、ヴァンパイアからの攻撃から味方を庇う盾としての立ち回りを命じます。

その間に自分は光学迷彩を使用して潜伏し、先に戦った隷属戦士達から得られた情報を集積して、UC:カウンターシステムを構築します。

ヴァンパイアが大技を使用するタイミングを見切り、カウンターシステムで隙を作って味方猟兵が攻撃するチャンスを産み出そうと思います。


リーヴァルディ・カーライル
事前に改造した防具で存在感を消し
目立たないよう機を伺う

…もはや語るに及ばない
その悪逆の報いを与える為に、私はここにいる

【限定解放・血の教義】を発動
吸血鬼化して増幅した生命力を吸収して力を溜め、
傷口を抉り痛覚を剥き出しにする“呪詛の奔流”を
両手で発動(2回攻撃)し維持

…そう。それを待っていた
五感が繋がっている“それ”を呼び出すのを、ずっと…

蝙蝠の群れが召喚される瞬間を見切り、片手にある呪いの奔流でなぎ払う
蝙蝠が潰れる激痛を、呪いで味わってもらう
その隙に敵に接近し、もう片手にある呪いを怪力と共に叩きつける
(反動で自身もダメージ)

…お前には、死すら生温い
苦しみ、嘆き、絶望のうちに滅びるが良い…!



●決意
 事前に、「どうあがいても助からない」とは聞かされていた。
 分かっていたはずだった……だが、実際にそれを目の辺りにした時のショックは大きかった。
(アナさん……間に合わず、申し訳ありません。必ずや邪悪を滅ぼし、弔いとします――この槍に誓って)
 目の前で横たわるアナを見て、オリヴィアが破邪の聖槍を握る手に力を込める。
 生まれ育った村を守るため、その身を犠牲にした事……そしてこの館で変わり果てた姿となった母親と再会し、絶望の中で死んでいった事を思うと胸が締め付けられる思いだった。
 もちろん彼女だけではない……自らの欲望のために大切な人から引き離され、犠牲となった女達も数多く存在している。
 その成れの果てが、壁に括り付けられた剥製なのだ。
(必ず……討つ!)
 オリヴィアの怒りの炎は静かに燃え上がっていた。

(ヴァンパイア。力も知恵も、ついでに心も、おれなんかよりずっと強ぇ相手。そんなのはわかってる)
 嵐が領主と相対して分かる事はいくつもあった。
 先ほど倒した朱殷の隷属戦士に比べ、何十倍もの強さを感じる強者のオーラ、そして突き刺すような鋭い殺気。
 恐怖で足が震えている、だがそれでも……
(それでも、おれにも退けねぇ理由がある)
 これ以上の犠牲を出さないために、そしてこの辺境に平和を取り戻すために。
(アナ、敵はおれ達が取ってやる! そんで、あいつを倒したら村へ連れて帰ってやるからな……!)
 嵐は固い決意と強い覚悟を決める。

「想像以上に……いや、想像通りのクズで安心した」
 鞠亜がより一層の嫌悪感を示した表情を領主へと向け、ぼそりと呟く。
 おそらくそれは誰しもが思った事だろう。
 ……だが、これで何のためらいもなく敵を撃てると言うものだ。
 犠牲者達の苦しみを何十倍、いや何千倍にして返してやろう。
 考える事はそれだけでいい。
「……撃ち殺すわ、必ず」
 そして敵に向ける言葉はそれだけで十分、あとはやるだけだ。
 鞠亜が狙撃銃に弾を込める。

「……もはや語るに及ばない。その悪逆の報いを与える為に、私はここにいる」
 リーヴァルディが先ほどの戦いでも使っていた、守護のルーンが刻まれた短剣を逆手に持つ。
 彼女がヴァンパイアを狩るのは今回が初めてではない。
 この世界で観測された予知……ヴァンパイアの事件に何件も介入し、その度に滅ぼしてきていたのだ。
 今回この事件に関与したのは、他ならぬヴァンパイアが黒幕である事が大きかったのだろう。
 無論、その悪逆非道な行いを見逃すはずもない。
「何度でも、滅ぼすわ。それが私の使命……」
 ヴァンパイアハンターであるダンピール、リーヴァルディの戦いは終わらない。
 この戦いも一つの通過点なのだろう……だが、それでも戦うのであれば全力で狩るのみだ。

●衝突
「ほぅ、お主……中々善い趣味をしておるなぁ」
 それは唐突の事であった。
 ヴィネがすたすたと前へ出ると、そのままシーナの飾られている壁へと向かう。
 そして部屋の主を意に介さずシーナの剥製を撫でながら……
「美しい女を嬲り、剥製に仕立てた上に娘に見せて血を啜るとは……この上無き贅沢じゃ」
 まるで領主の趣味を理解するような口ぶり……その言葉に仲間達は困惑の表情を浮かべる。
「ほう……? 我の高尚な趣味を理解出来るとな? フ、ハハハッ……面白い事を言う者もいたものだ!」
 少し興味が沸いたのか、領主の視線がヴィネへ向く。
「む、見れば女が四人もいるではないか。……よかろう、一度殺し尽くした後にでも血を味わった後で、我が芸術品となる権利を与えてやろうではないか。ふぅむ、そうであれば体は出来るだけ傷付けずに……」
 領主が一行の女子達を値踏みするような目で見る。
 だが、その言葉に黙っていられない者もいた。
「もうその口を閉じろ」
 デナイルだ。
 領主の芸術も性癖も生態も慢心も一切の興味はなく、オブリビオンの排除によって得られる近隣の安全性向上のみを目的としている彼だったが、どこまでも愚弄するような物言いに我慢ならなかったのだろうか。

「フン、吠えるではないか。……ああ、戦う前に言わせてもらうが、そこのアナの死体は退けてくれたまえよ? 損壊してしまっては芸術品にならんからなぁ?」
 非常に癪に障る言い方だが、アナの死体を損壊させる訳にはいかない事に限って言えば同意見だ。
 領主を睨み付けながらも、デナイルはアナの死体をこの部屋の中では比較的安全であろう角へと大事に運ぶ。
 余裕からなのか、死体を運んでいる間は領主が不意打ちを仕掛けてくるような事はなかった。
(アナさん……僕達がシーナさん共々、無念を晴らしてみせます……!)
 心の中で彼女に約束すると、デナイルは戦列へと戻る。
「贅沢三昧の日々は……お主をさぞかし美味しく仕上げておるじゃろうなぁ」
 用事が済んだのを見届けた後でヴィネが領主へ向けて言う。
「うん? 美味しくだと……一体何を」
「喰われる側と言うのは……お主と言う事じゃ!」
 先ほどの隷属戦士との戦いで使役していた猟犬と奴隷が奇襲をかける。
 多少ダメージは受けていたものの、まだ稼動には問題のないレベルであったため継続して戦わせるつもりだったようだ。
「何ッ!? ……えぇい!!」
 寸前のところで二匹の攻撃を回避する。
 しかし、追撃は続く。
「くたばれ、ナルシスト」
 この時を待っていたとばかりにデナイルはユーベルコード、疲れ知らずの配下たち(バーチャルレギオン)を発動させる。
 実に105体もの電子精霊で構成された機械兵器が現れた。
 一撃で消滅し、数こそ少ないものの数だけで言えば驚異的と言わざるを得ないだろう。
「ぬぅッ、この力は……!?」
 相手はただの人間と侮っていた領主が、その戦闘力を見て驚きを隠せずにいる。
 そして何かを思い出したかのように口を開いた。
「そう言えば風の噂で聞いた事があるぞ……この世界を荒らし回り、我が同胞を次々と殺している集団がいると。それはまさか……貴様等の事か!?」
「荒らし回る? ほっほっほっ、何を言うかと思えば……」
 ヴィネが領主の言葉を笑い飛ばす。
「一つ訂正させてもらおう。荒らし回ってるんじゃない、僕達はこの世界を……救いに来ているのさ!!」
 デナイルの言葉が引き金となり、本格的な戦いが始まった。

●死闘
 バーチャルレギオンの一斉射撃を、領主がマサクゥルブレイドで防ぎ反撃で消していく。
 そこへ隙を狙った鞠亜の射撃、嵐の援護射撃も無数の刀剣が盾となり、余裕で弾かれてしまう。
 召喚した刀剣の数はかなりの多さで、数を減らさない限りは遠距離攻撃は届きそうにない。
 スナイパーとして状況を瞬時に判断した鞠亜が、仲間へアイコンタクトを送る。
 あの刀剣を何とかして欲しい、と。
 その意図を読み取り、オリヴィアとリーヴァルディがお互い頷く。
「……あぁぁぁぁぁぁぁぁーーーッ!!」
 叫びと共に、オリヴィアの金の瞳が真紅に覚醒し、ヴァンパイアへ変貌する。
 ユーベルコード、血統覚醒だ。
 戦闘終了まで毎秒寿命を削るが、目の前の巨悪を討つためならば些細な事なのだろう。
 聖槍に破邪の炎を纏い、赤い閃光となって領主へと襲い掛かる!
「な、貴様……人間と違う匂いがしたと思えば、我と同属だと!? 一体何故……」
「それがどうした。邪悪な吸血鬼よ、その傲慢が潰え、因果が応報する時が来た……」
 烈火のごとき怒涛の攻めで領主をひたすら攻める。
 しかし、それに負けじと無数の刀剣が反撃を行いオリヴィアの体をいくつも切り裂く。
 だが、それでも止まらない、止められない。
「覚悟しろ、とは言わない……狩られる恐怖に打ち震えて死ぬがいい!」
 怪力に身を任せた渾身の突きが、領主の左肩を裂く!
 直撃には至らずとも、破邪の炎が少しであるがその身を焼いたようだ。
「ぐッ、ぬおぉぉぉッ!」
 たまらず後ろに飛び退き、猛攻を避ける。
 しかし、それだけでは終わらない。

「……限定解放。テンカウント。吸血鬼のオドと精霊のマナ。それを今、一つに……!」
 リーヴァルディは限定解放・血の教義(リミテッド・ブラッドドグマ)を発動させる。
 吸血鬼化して増幅した生命力を吸収して力を溜め、傷口を抉り痛覚を剥き出しにする“呪詛の奔流”を両手で発動し維持していたのだ。
 それには僅かな時間を要するが、先ほどのオリヴィアの猛攻がその時間を稼いでくれていた。
「チィッ、少しはやるようだが……易々とはやられぬぞ!」
 領主が反撃として影の蝙蝠……サモンシャドウバットを使う。
 無数の影の蝙蝠を放ち、喰らわせるつもりなのだろう。
 ……だが、それはリーヴァルディの狙い通りだった。
「…そう。それを待っていた。五感が繋がっている“それ”を呼び出すのを、ずっと…」
 蝙蝠の群れが召喚される瞬間を見切り、片手にある呪いの奔流でなぎ払う。
 奔流を受け、次々と群れが潰されていくと同時に領主の顔が苦痛に歪む。
 このユーベルコードは自身と五感を共有している以上、受けたダメージはそのまま帰ってくる。
 しかし、この程度のダメージは許容範囲なのか決定打には至らない。
「ぐ、ぐぐッ……この程度で我が怯むとでも……」
「呪いはもう一つある……」
 吸血鬼化した事で音もなく高速で接近し、怪力でもう片方の手に残っていた呪詛の奔流を叩き付ける!
「ぐ、お、あぁぁぁぁぁッ!?」
「くぅ……ッ!!」
 強烈な一撃を叩き込まれ、領主が絶叫する。
 しかし、その反動でリーヴァルディにもダメージが行く。
 まさに捨て身の一撃であった。
「き、貴様も我と同属か!? それも己を犠牲にしてまで……!」
 領主が信じられない物を見たような顔をする。
 同属が何故我を討つのかと言わんばかりだ。
「……お前には、死すら生温い。苦しみ、嘆き、絶望のうちに滅びるが良い……!」
 口から流した血を拭いつつ、リーヴァルディが宣告する。
 その目に慈悲は、ない。

●決着
 猟兵達の猛攻は止まらない。
 領主が再びマサクゥルブレイドを使い、無数の刀剣を呼び出すが……
「新規兵装構築。活性化完了。猟兵を嘗めるな…!」
「なん……ッ!?」
 デナイルがユーベルコード、猟兵に同じ技は二度も通じぬ。これは常識!システム(シミュレート・カウンターシステム)を放ち、これを相殺する。
 隷属戦士が受けた傷、そして先ほど領主が発動した物を見ていた事で「寸分も狂い無く逆位相のユーベルコード」をより正確にコピー出来たのだ。
(戦士達の皆さん、あなた方の犠牲は無駄にはしません……!)
 攻撃をコピー出来た功績は彼らにもある。
 犠牲となった隷属戦士の魂に敬意を払うデナイル。
 そして、その隙を見逃さない者が、一人。

「捉えた……」
 鞠亜が弾丸に氷属性を付与し、的確に狙い撃つ。
 動きを鈍らせる事が目的であるため、一発目は太腿に、二発目は手に当てる。
 邪魔するものがなければ、一流スナイパーである鞠亜に狙えない物などない。
「ぐ、おのれ……ッ!」
 苦し紛れに血で書いた誓約書――クルーエルオーダーを投げ付ける。
 我を攻撃するな、と言う簡単な命令であり、破れば大きなダメージが行く。
 だが、その目論見はあっさりと崩れる。
「させない」
「何ッ!?」
 素早い三点ショットが誓約書を撃ち落とす。
 飛んでくる弾丸の方が早い以上、誓約書を飛ばす事など無駄な行為でしかなかった。
 更に鞠亜の追撃は続く。
 氷の弾丸を領主の”足元へ”連射したのだ。
「ど、どこを撃って……ぬおッ!?」
 足元が氷で覆われている事に気付かず、前に出た領主が足を滑らせる。
 これは見当違いの方向へ攻撃したのを見て、完全に油断をした事で足元を掬われた領主の慢心であった。
 そしてこれが最大の決定打となる。
「遅い」
 鞠亜の目を狙う(クイックスナイプ)がその一瞬を見逃す事なく、領主の両目に向けて二連射を放った。
 弾丸が両目を潰し、壮絶な痛みに領主が絶叫する。
「ぐぎゃあぁぁぁぁぁッ!? 目が、目がァァァーーーッ!!」
 最大の好機が訪れた。
 トドメを刺すなら、今しかない。

「その調べは哀しく、その詞は切なく、その末期は儚く、痛みを遙かに運び去る」
 密かに真の姿(普段と変わらず、強いて言えば目力が上がった程度ではあるが)となった嵐が、大海の姫の恋歌(シレネッタ・アリア)で仲間達の傷を癒す。
 激しい戦いの中で受けた一行の傷が治り、力を与える。
「みんな、バックアップならおれに任せてくれ! トドメを……頼むッ!」
 嵐の言葉を受け、仲間達がトドメにかかる。
「さあて、それじゃあ喰わせてもらうとしようかの?」
 ヴィネが瀕死にあった眷属の召喚を解除し、右腕を暴食螺鈿怪口(グラトニー・バッカルコーン)を使い、クリオネの頭に変化させる。
 宣言通り、領主を喰らうつもりなのだろう。
「彼女らの無念、我が赫怒の炎に乗せて――叛逆の牙と成し貴様の喉元に突き立てる!」
 オリヴィアの聖槍が、より一層強い破邪の炎に包まれた。
 必ずこの一撃で仕留めると言う気迫が伝わってくる。
「この呪いで……狩る!」
 リーヴァルディが再び限定解放・血の教義(リミテッド・ブラッドドグマ)を発動させる。
 自身にもダメージは帰ってくるが、犠牲となった者達の痛みと比べればこの程度など大した事はない。
「ど、どこだ……敵共は……!」
 両目を潰され、闇雲に刀剣を振り回す領主へ向けて三人が飛びかかる。
 まずリーヴァルディの一撃が呪詛の奔流を二度叩き込み、大きな打撃を与える。
 上へと吹き飛ばされ、落ちてきた領主の体をヴィネの右腕が喰らう。
 大きさ的にも全てを喰らう事は出来なかったが、領主の片足を根こそぎ持っていく事は出来たようだ。
 そして、地面に叩き付けられた直後……
「貴様に……次の夜は無い!!」
 オリヴィアの一撃が領主の胸を貫き、破邪の炎が心臓を焼き尽くす!
 それが最後の一撃となった。
「家畜と侮ったワシ等に喰われる気分は如何かのぅ? ……ふむ、この吸血鬼はあんまり美味くはなかったがの」
 倒れた領主に向け、ヴィネが笑った。

●NightSlashers
「……バカな、こんなバカな事が……」
 心臓を焼かれた領主の命の火が消えかかろうとしている……激しい戦いではあったが決着は付いた。
 体からは煙がいくつも立ち昇っており、消滅はもうすぐそこまで迫っている。
「わ、我は滅ぶが……この世界は我々、闇の住人の物だ……いくら足掻こうと、無駄な事で、あると……知、れ……フ、ハハハハッ……ガァッ!」
「聞こえなかったわ」
 鞠亜がこれ以上喋るなとばかりに、死にかけた領主の頭を撃ち抜き完全なるトドメを刺す。
 その直後、領主の体は灰となり消滅した。
 過去から甦り、多くの命を啜ってきた悪魔は猟兵達の手によりついに裁かれたのである。
 戦いを終えた猟兵達は、領主を討った証であるボロボロとなって残った領主の衣装、亡骸となったアナ、そして剥製にされた彼女の母親であるシーナを回収して館を出る。
 ……最早この館が命を喰らう事は二度とないだろう。
 一行は出撃前に場所を教えてもらった、アナの生まれ育った村へと急ぐ。

 闇に閉ざされたこの世界であっても、明けない夜は無い。
 猟兵達は『夜を切り裂いた』のだ。
 長かった夜に、東の空から明るみが浮かび上がりつつあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『救われた者の明日の為に』

POW   :    体の鍛え方や力仕事のコツを教える

SPD   :    生活に必要な技術を教える

WIZ   :    心を豊かにしてくれる芸術や知識を教える

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Sunrise
 村へと到着した一行は、真っ先に村長の所へと向かう。
 見知らぬ余所者が突然現れた事に警戒する村長であったが、領主は自分達が討伐したと報告する。
 その証として、穴が空き所々が破れた領主の衣装を見せると村長は驚愕する。
 それほどの力を持った人間など、この世界にはいないはずだった。
 ……だが、それだけの事をやってのけた者達が確かに目の前にいる。
 それが『まだこの世界において存在を知られていない』猟兵であり、世界に希望をもたらす者達なのだ。

 領主が討たれたと言う事実は即座に村内に広まった。
 この様子であれば、この地方における他の村や町にもその事が広まるのは時間の問題だろう。
 村内ではやっと本当に平和が訪れたと涙する者、死んだ領主への悪口を叫び狂喜する者、まだ信じられない様子の者。
 そして……
「ああ……アナ、シーナ……。やっと、やっと戻ってきてくれたんだな……」
 亡骸となった妻子を前に、彼女らの夫であり父でもあった男性が安堵したような表情で泣いていた。
 正直こんな形で再会させたくはなかったが、こうする事で少なくとも彼は救われたのであろうか?
 猟兵達はそんな事を思う。
「……あなた方のおかげで、妻子は帰ってきてくれました。本当に感謝してもしきれません」
 男性は深々と頭を下げる。
 けど娘さんを助けられなかった事は……と誰かが口にする。
「いえ、いいんです。こうして二人が戻ってきてくれて、墓を立ててやる事が出来るだけでも……私は……」
 何も言えなくなり、嗚咽する。
 彼の心には癒えないであろう深い傷を負ってしまった。
 しかし、彼だけではない……この村そのものが長い圧政と搾取で荒れ果て、疲弊しきっているのは誰の目から見ても明らかだった。
 この村に残されたのは老人と大人の男性、それに(まだ収穫の対象ではなかったと思われる)女の子も含めた子供達。
 自分達は彼らのために、何か出来ない事はないのだろうか?
 早速、それを考えねばならない時が来たようだ。

 さあ、最後の仕事だ。
 全てはこの村に、少しでも明日への希望の光を差し込めるよう――
西院鬼・織久
【POW】
【心情】
敵がいないのであればここに用はありません
……分かりました、協力しましょう
ですが慰問は無理です。ベリザリオがやって下さい
俺は体を使う事しか知りません

【行動】
ベリザリオ(f11970)と役割分担
力仕事のコツを教える
西院鬼の鍛錬法は正気を疑われるので教えない

鍛錬は余裕がある時にするもの
消費した分を補える栄養を摂れなければ筋肉はつかない
まずは仕事を安定して回す事と食糧供給を優先させるべき
多少効率が悪くとも力仕事は必ず複数でやる
腕力がなくとも遠心力の利用や重心を分散させる事で驚くほどの荷物を運べる
疲れたからと言ってすぐ横になるのも良くない
必ずストレッチをして明日へ持ち越す疲労の軽減を


ベリザリオ・ルナセルウス
●目的
織久(f10350)、敵がいなくて拗ねているのは分かる
(本当は拗ねるとかかわいいものではないと知っているが)
でも折角縁があったんだから私達も協力しよう
私は慰問を兼ねて村人たちを手伝ってみる

●村人たちと
突然お邪魔してもうしわけありません
私達も何か皆様のお力になれればと加わったのです
埋葬をお手伝いします。弔いの【祈り】も捧げましょう。魂が安らかに眠れるよう鎮魂歌を

音楽は慰めであり、また楽しみでもある
大層な楽器はなくてもいいのです
手拍子、足踏み、鼻歌、心の中で奏でるだけでもいい
正確さよりも楽しく奏でればそれでいいのです
むしろ、間違いから新たな音楽が生まれるかもしれませんよ


鏡島・嵐
判定:【WIZ】
技能:〈コミュ力〉

自分たちを苦しめていた領主がある日突然倒された。
――正直、こういうのって実感湧くんだろうか。おれにはわかんねぇ。
恐怖から解放される人も居れば、いつかまた同じようなことが起きるのを心配する人だって居ると思う。

おれは誰かにものを教えるってのは出来ねぇけど、何か村の人を手伝って力にはなりてぇな。
その上で、希望を捨てないでくれっていう願いが伝えられればいい。
もしまた同じことになったとしても、おれやおれじゃない誰かが、何度でも助けてくれる。それを信じてほしいから。


オリヴィア・ローゼンタール
SPD
アナさんに、少しは報いることができたでしょうか……

次代を担う子供たちに生活の技術を教えましょう(【コミュ力】)
主に【料理】を担当します
スープやシチューなど、多くの人に行き渡るものの作り方を
具材の切り方や火の加減など

一頻り教えたあとは、【守護霊獣の召喚】で黄金の獅子を召喚して、
乗せてあげたりして遊ばせてあげましょう
子供、特に男の子なら喜んでくれるのではないでしょうか
娯楽のない生活を送ってきたのですから、これくらいの遊びは許されるでしょう
私自身も子供たちのリクエストに応えて遊んであげます


デナイル・ヒステリカル
少々困りました。
僕は遊戯施設の案内役プログラムが元となった存在ですが、僕個人にそういった娯楽の心得があるわけではないのです……。

とは言えこの状態の村々を見ているだけなど論外です。
多少技術の先取りとなるのかもしれませんが、
【世界知識】を用いてダークセイヴァー世界でも再現可能、かつ最適な暮らしの技術を広めていけないか、頭を悩ませようと思います。

失ったものは戻らないでしょうが、ほんの少しでも暮らしを豊かにできるのならば、これから先の幸せに繋がると信じています。


リーヴァルディ・カーライル
…ん。吸血鬼は狩り終えた
後は死者を弔い、遺された家族が、
少しでも慰められるように動く
…教え、導くことのできない私にできるのは、これぐらいだから…

領主の館の戦士と女性の遺体を【常夜の鍵】を刻んだ白手袋で触れて収納
魔力を溜めた脚の怪力を【吸血鬼狩りの業】で機動力に変換して
領内の村を周り、希望者に遺体を判別してもらい遺族に返して回る

領主の衣装を借り受け、猟兵と名乗る英雄達が領主を退治した事を告げる
そして彼らからの好意だと大量の保存食と救済活動に使用する物質を渡して信頼を得て、
遺体を返す時は礼儀作法に則り丁重に扱う

…ん。私は猟兵じゃない。これは彼らから依頼されたこと

…今ならまだ……の村にいると思う


栖夜・鞠亜
この村の危機は一先ず去ったけど。 オブリビオンがいなくても飢餓や疫病で簡単に死んじゃうから・・・。 でも鞠亜はあんまり人と話すの得意じゃないし、何をすればいいのかよくわからない。

まずは墓に手向ける花を探してからアナとシーナの埋葬を黙って見守り、この世界からオブリビオンを消してやると密かに思った。



●闇を切り裂いた後で
 領主を討ってから一夜が明ける。
 今日はダークセイヴァーの世界でも珍しい、雲一つない晴れた日となった。
 それを見て、村長は言う。
「まるでこの地方の平和が戻ってきた事を告げる太陽のようだ」と。

 村で少し休み、猟兵達は各々すべき事を始める……。

●復興へ向けて
 西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)とベリザリオ・ルナセルウス(この行いは贖罪のために・f11970)の二人が、この地方へやってきた時には一足遅かったようだ。
 グリモアベースから転送され、領主の館の近くへ出ると館から異端の騎士が馬に乗り、いずこかへと逃げ去っていく様子を目撃したためだ。
 すぐに館の中を覗いてみれば激しい戦闘の痕跡……そして奥の部屋には崩れ去った灰の塊だけがその場に残っていた。
 その後「敵がいないのであればここに用はありません」と言う織久をたしなめて、ベリザリオと共に村へとやってきたのだ。
 後からやってきた二人は村の復興の手伝いと言う形で、先に討伐を済ませた猟兵達と合流するのである。

 荒れ果てた村を改めて見ると、実にひどい有様であった。
 ギリギリで家の形を保ってはいるが壁は隙間だらけ、屋根には穴。
 窓ガラスも所々が割れているなどと、生活するにはあまりにも過酷すぎる。
 畑もあるにはあるが、作物もまともに育つのかどうかすら怪しいほどだ。
 村人達はこんな環境の中で生きてきたのかと思わずにはいられなかった。
 ……そんな訳で、まずは建物の修繕などを行う事にする。
「よっこい……せっと! おっちゃん、この木材はここでいいんだよね?」
「ああ、いいぞ! で、次は石材なんだが……」
「任せて! すぐにでも持ってくるぜ!」
 嵐が率先して、修繕に必要な資材をあちこちに運ぶ。
 ただし、一人でやるにはさすがに厳しいので村の大人達と連携してであるが。
 自分は物を教える事は出来ないけれど、村人の手伝いをして力になりたい。
 そんな感じで、こうして復興作業に加わっている。
 なお、この修繕指示は織久によるものである。
 当初は鍛錬法の伝授を考えていたようだが、正気を疑われる内容らしく自らの判断で取りやめたようだ。
「多少効率が悪くとも力仕事は必ず複数でやる事。腕力がなくとも遠心力の利用や重心を分散させる事で、驚くほどの荷物を運べます」
 自らもある程度仕事をこなしつつ、テキパキと指示を出す織久。
 その指示は実に的確であり、復興作業は順調に進んでいく。
「ああ、疲れたからと言ってすぐ横になるのも良くない。必ずストレッチをして明日へ持ち越す疲労の軽減をするのが大事です」
「……若いのに体を使う仕事には凄い詳しいんだねえ、驚きだよ」
 作業員の一人が織久の有能ぶりに脱帽する。
「ええ、慣れてますから。……おっと、手が止まっていますよ?」
「おお、すまんすまん!」
 そして細かい所の指摘も忘れない。
 そうこうしている間、一軒の家が綺麗に修復されていくのであった。

(自分たちを苦しめていた領主がある日突然倒された。――正直、こういうのって実感湧くんだろうか。おれにはわかんねぇ)
 石壁を修繕しつつ、嵐がふと思う。
(恐怖から解放される人も居れば、いつかまた同じようなことが起きるのを心配する人だって居るんだろうな……)
 少なくとも、この地方の闇を切り裂いて平和は取り戻した。
 また同じような事は起きないと信じたいものだ。
「……なあ、おっちゃん」
「うん? なんだい?」
「なんて言えばいいのか分からねぇけど、もしまたこの地方にあの領主が現れて同じことになったとしても、おれやおれじゃない誰かが、何度でも助けてくれる。それを信じてほしいからさ……」
 だから希望を捨てないでくれ、と嵐は言う。
 その言葉を聞き、村人はただ微笑み、静かに頷くのであった。

●去っていった者達へ祈りを
 ここは村外れの墓地。
 この墓地も荒れ果てていたが、復興作業の最中で大分綺麗になっていった。
 そしてそこには真新しい墓石が一つ、その前の墓穴は二つの棺……
「この村を守るために、その尊い命を捧げ、この世を去ったアナの魂に安らぎを……」
 ベリザリオが鎮魂の言葉を口にする。
 かつてヴァンパイアへの生贄とされたが、自分だけが生き残ってしまった事から贖罪の旅を続けており、これもその一環なのであろう。
「……そして、その前に悪しき領主の前に命を散らせたアナの母、シーナの魂にも救いを……」
 弔いの祈りを捧げ、鎮魂歌を歌う。
 竪琴から流れる曲はこの場にいる者達の心へ、静かに響く。
 ……やがて、それが終わるとアナの父親が頭を下げた。
「本当にありがとうございます、まさか埋葬まで手伝ってもらえるなんて……」
「いえ、お気になさらず。私も何か皆様のお力になれればと加わったのです」
 慰問活動に関しては「ベリザリオがやって下さい」と織久に丸投げされる形となったが、こうして来たのも何かの縁と言う事と己の贖罪も兼ね、墓地周りの手入れなども行ったのだ。

 そして、少し離れたところから鞠亜が辺りを探し回って見つけた花を抱えてその様子を見ていた。
 領主を討ち、二人の敵を取る事は出来た。
 この地方における危機は去ったと見ていいだろうが、それでもこの世界は過酷だ。
(オブリビオンがいなくても、飢餓や疫病で簡単に死んじゃうから……)
 だからせめて、この村の……いや、この地方の人々はどうか強く生きていってほしいと、そう願う。
 鞠亜が二人の墓の前に行き、集めてきた花を手向ける。
「ああ、二人のために花を集めてきてくれたのですね……何から何まで、本当にありがとうございます。きっとアナとシーナも喜びます」
 アナの父親が感謝の言葉を述べる。
「ん、気にしないで。鞠亜はあんまり人と話すの得意じゃないし、何をすればいいのかよくわからないから……」
 そして墓前に手を合わせる……
(この世界からオブリビオンを消してやる……必ず)
 それが鞠亜の誓いと決意であった。

 ……一方その頃、リーヴァルディはこの地方全体を駆け回っていた。
 夜が明けた頃、素早く領主の館へと向かい隷属戦士の遺体と領主の部屋にあった犠牲者達の剥製を残らず回収して回る。
 本来であれば、馬車が必要になるくらいの荷物となるが……そこは常夜の鍵(ブラッドゲート)を使い、倉庫代わりにしたのだ。
 そして、魔力を溜めた脚の怪力を吸血鬼狩りの業で機動力に変換。
 早馬より何倍も早い速度で、この地方の町や村を回っていく。
 全ては死者を弔い、遺された家族が、少しでも慰められるようにと言う思いからであった。

 行く先々で「もう二度と会えない娘が帰ってきてくれた」「いなくなった兄さんが戻ってきてくれた」「お姉ちゃんが戻った」などと、領主の館へ行ったきり戻ってこなかった者達の帰還をある者は喜び、ある者は悲しんだ。
 更には討伐した領主の衣装を借り受け、猟兵と名乗る英雄達が領主を退治した事を告げて回る。
 この世界において、猟兵の存在は知られてない事から少しでもその認知度を上げるために……と、言う事なのであろう。
 そして彼らからの好意だと大量の保存食、救済活動に使用する物質を渡す事で、更なる信頼を勝ち取っていく。
 当然、遺体を返す時は礼儀作法に則り丁重に扱う事も忘れなかった。
 そんな中で、ある一人の住人がリーヴァルディに尋ねる。
「もしやあなたも……猟兵の一人、なのですか?」と。
 それに対して彼女は……
「……ん。私は猟兵じゃない。これは彼らから依頼されたこと。……今ならまだ……の村にいると思う」とだけ返した。
 英雄扱いされるのは柄ではない、と言う事なのだろうか。
「遺体はこれで全部、ね……村へ戻りましょう」
 自分の成すべき事を終え、リーヴァルディが仲間達のいる村へと戻っていく……。
 その心は、少しだけ晴れていたようにも思えた。

●子供達に笑顔を
 所変わって、ここは猟兵達が復興作業を行っている村の学校……とは名ばかりの集会所のような施設。
 今はここではオリヴィアが子供達に料理を教えている最中である。
 生き残った次代を担う子供たちに、生活の技術を学ばせるべきだと考えたようだ。
「包丁を扱うのは決して怖くはありません。私の言うとおりにやれば大丈夫ですよ」
「「「はぁーい!!」」」
「まず持ち方はこう。いいですね? それから次に……」
 最初にジャガイモ、ニンジンのカットの仕方を。
 続いて火の加減についても、しっかりと教え込む。
「火は強ければいいと言う事ではありません。煮込む時は弱火で、じっくりと……」
 主にスープやシチューなど、多くの人に行き渡るものの作り方だ。
 これなら食料が少ない時期でもやっていけるはずだろう。
 子供達の親(と言っても父親だけしか残っていなかったが)も、貴重な授業の機会をしっかりと目に焼き付けているようだ。
 そして授業の後は……
「うわははははー! はやい、はやいぞー!!」
「ライオンだー! がおー、がおーっ!!」
「ねーねー、じゅんばんまだー?」
 オリヴィアが守護霊獣の召喚(サモン・ガーディアン)で召喚した3メートル以上はある黄金の獅子の背に子供達を数人乗せ、村内を駆け回り楽しませている。
 突然降って沸いた娯楽に、子供達はすっかり夢中のようだ。
 ……ただ、唯一の誤算だったのはこの村の子供達が、自分の想像を遥かに超えるレベルの元気っぷりを余す事なく発揮していた事であった。
 最初からこれだけ元気だったのか、はたまたこの地方が闇から解放された事で明るい心を取り戻せたのか……どちらなのかは分からない。
(こ、これは……思っていた以上に手を焼きますね……)
 あまりのパワフルぶりに、オリヴィアもタジタジの様子だ。
 もしかしたらオブリビオンよりも厄介なのかもしれないが……それでも、平和であるこちらの方がずっとずっといいのは確かだ。
「オリヴィアせんせー、あそぼー!」
「あそぼーっ!」
 そんな中で、更なる子供達の猛攻が迫る。
 こうなったら覚悟を決めるしかないようだ。
 帰還の時が来るまで、とことんまで付き合ってあげるとしよう。
 そんな事をオリヴィアは思うのであった。

 ……そして、集会所の中ではデナイルが紙に図面を引きつつ、ああでもない、こうでもないと頭を悩ませていた。
(少々困りました。僕は遊戯施設の案内役プログラムが元となった存在ですが、僕個人にそういった娯楽の心得があるわけではないのです……)
 何か出来る事はないかと自分なりに色々考えていたが、外ではしゃぐ子供達を見てこの村にはまともな娯楽すら無い、と言う事がわかった。
 そうなれば、何か子供達を楽しませる事が出来るような物を……と、思ったところで、良さそうなアイデアが浮かばないまま現在に至ると言う訳だ。
「うむむむむ……この世界で再現可能、かつ最適な暮らしの技術を広めていけないか……」
 バーチャルキャラクターであるデナイルにはかなりの難問であるようだ。
 多少技術の先取りとなるのかもしれないが、世界知識を用いて再現出来そうなものを考える。
「この村に足りない物は何か……んんー、公園か? なら公園に必要な物は……」
 図面に色々な物を書き込む。
 その中で再現出来そうなのは……。
「これならどうだろうか……? よし、ちょっと聞いてみよう」
 思い立ったがなんとやら、デナイルは村の技術者のところへと図面を持って向かった。

 ……それから二時間くらい経過し、集会所の外にはシーソーとブランコ、簡易的な木製の滑り台、そして砂場が用意された。
 いわゆる一般的な公園にある品々だが、ダークセイヴァーの世界においては未知のアイテムのようであった。
 当然、それに子供達は興味を示したようで。
「わーい、ぎっこんばったーん!」
「いーち、にー、さーん……」
「ひゃほー! たーのしー!」
 あっと言う間に夢中となったのは言うまでもなかった。
「兄ちゃん、よくあんな物を思い付いたなあ。子供達のあんな楽しそうな顔は初めてだよ」
 デナイルの用意した図面の物を作った技術者の男性が、感心したように言う。
 最初にこれを作ってくださいと言われた時は何事だと思ったものだが、実際に図面を見てこれで何をするのかと言う事を聞いた時に『もしや子供達にウケるのではないか』と確信して仕事に取り掛かったのだ。
 結果はご覧の通りだ。
「いえ、喜んでもらえたようで何よりです。この図面自体は差し上げますので、他の町や村にも是非これを広めてあげてください。多分、改良すれば安全性の高い物が出来ますから」
「おお、それはありがたい! 娯楽の少ない世界だから、絶対に喜ばれるぞ!」
 ……どうやら自分にも出来た事はあったようだと、デナイルは安堵するのであった。

●At Last
 各々がやるべき事を済ませ、村の復興も進んだ。
 あとは彼らの仕事であろう……いよいよ、この村から去る時が来たようだ。
 最後に猟兵達はアナとシーナの墓前に手を合わせ、二人の冥福を祈ると村の出入口へと向かう。
 ふと、村を出る前に声をかけられ振り返れば、村人達が総出で見送りに来ていた。
 「ありがとうー!」「元気でなー!!」「またいつかこの村に立ち寄ってくれよー!」
 一行はそれに手を振って応え、村から去っていった。
 そして村人達はその姿が見えなくなるまで、手を振っていた――。

 こうしてダークセイヴァーにおける辺境はオブリビオンの手から解放された。
 しかし、この勝利も世界から見ればごく小さなものでしかない。
 真なる平和を掴むのは、まだ先の事であろう。
 だが、それでも猟兵は戦い続ける。
 異端の神々を滅ぼし、世界に真の希望をもたらすその時まで……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月24日


挿絵イラスト