アリス・イン・ナンバーズーMetals(作者 北瀬沙希
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#アリスラビリンス 


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#アリスラビリンス


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●金属の国のアリス
 世界のあらゆる物質が金属で構成された「不思議の国」。
 草木の一本、生物の毛の一筋まで金属で造られ、鈍い灰色に覆われた世界を、右手に銀のナイフを持ち、血まみれの白ワンピースを纏っている銀髪の少女が歩いていた。

 少女の眼に映るのは、はるか遠くに光り輝く扉。
 おそらく、あの扉が「自分の扉」……己の元居た世界に帰るための扉。

 ――不意に、記憶の彼方のヴィジョンが再生される。

『――。いよいよ吸血鬼どもと戦う日が来た』
『お前はこの組織で最も力ある戦士だ。――の名に恥じぬ戦いを期待しているよ』

 ヴィジョンに映る大人たちが少女にかけるのは――期待。
 しかし、大人たちが口にした少女の名は、少女をひとりのヒトとしては見ていない証でもあり。
「――」
 その名を無意識に口にするだけで、少女は嫌悪感を催し、わずかに顔をしかめた。
「……大人たちはみんな、私のことを――としか呼んでくれなかったわね」
 嫌悪感をこらえつつ記憶の欠片を言の葉で零す少女の脳裏にふと過るのは、鏡の迷宮で出会った猟兵達の姿。

 ――貴女の髪、綺麗な銀色だね!
 ――笑った顔も可愛いよ!

 己の容姿を、表情を褒められたのは、あの時が初めて。
 それは恥ずかしくも嬉しい記憶として、少女の脳裏に焼き付いていた。
 ――あの組織では結果がすべてで、容姿や表情を気にしたこともなかったから。

「私の名前は数字じゃない。それを証明するためにも、あの世界に帰るわ」
 軽く首を振りヴィジョンを振り払いながら、言の葉に力強い決意を籠めて。
 少女は鈍色の世界の彼方に見える光輝く扉へと歩みを進める。

 ――背後から迫る死の気配を、肌で敏感に感じ取りながら。

●グリモアベース
「やっと「扉」が見つかったのか……長かったな」
 グリモアベースの片隅でほっと一息ついたグリモア猟兵藤崎・美雪の呟きは、心底安堵したようで。
 それを耳にし集まってきた猟兵たちを見回しながら、美雪はグリモアが見せた光景を告げる。
「ああ、皆。聞いてくれないだろうか。以前、鏡の国のデスゲームから生還した『アリス』が、ようやく「自分の扉」のある世界に辿り着いた」
 集まった猟兵たちの一部から、おお、と感嘆の声があがる。
「そこで、皆には『アリス』が扉に辿り着くための手助けをしてほしい。頼めるだろうか?」
 猟兵達に深々と頭を下げる美雪に、猟兵達は其々の想いを胸に頷いた。

「『アリス』の「自分の扉」がある世界は、鈍色の金属に覆われた世界だ」
 それは長い間「不思議の国」を渡り歩いてきた『アリス』が求め続け、探し続けた場。
 しかし、美雪のグリモアの予知にかかったということは、扉に辿り着く前にオウガの妨害が確実に入ることを意味する。
「妨害の手始めに襲ってくるのは、影を操る暗殺者の集団。ナイフと影で敵を翻弄し、確実に仕留めようとして来るぞ」
『アリス』も暗殺者の1体程度なら互角に渡り合えるが、数体同時にかかられると為す術がない。猟兵の助力は必須だ。
「暗殺者集団を排除し先に進むと、待ち構えるのはアリスを斬り裂こうとする斬り裂き魔。アリスを斬り裂くことのみに執念を燃やしている故、厄介だぞ」
 斬り裂き魔は『アリス』では到底太刀打ちできないため、猟兵のみで相手することになる。どうやら何らかの弱点を持っているようだが、実際に対峙してみないとわからない。
 しかし、斬り裂き魔を退けても気は抜けない。『アリス』を永遠にこの世界に閉じ込めるために、幸福な幻影を見せる罠が発動するからだ。
「もしアリスが幻影を現実と信じ込んでしまったら、元の世界に戻ることを諦めてしまう。帰還を諦めた『アリス』に待っているのは、幸福な幻影に囚われたままオウガに無惨に殺される未来だけだ」
 バッドエンドを回避するためにも、皆で幻影を振り払うための声かけを行ってほしい。美雪は強い口調でそう告げた。

「元の世界に戻ることが『アリス』にとって幸せなことなのかどうかは、私には正直判断が付きかねる」
 虚空に浮かぶグリモア・ムジカから音符を奏でて転送ゲートを形成しながら、心底不安そうに呟く美雪。
 ――それでも、「自分の扉」に辿り着かないことには、戻るか否かも決められないから。
「皆には『アリス』が扉まで辿り着き、戻るか否かを選択できるよう、全力を尽くしてもらいたい。頼んだぞ」
 改めて一礼する美雪に送り出されながら、猟兵たちは音符奏でる転送ゲートを潜り、鈍色の金属の世界へと赴いた。


北瀬沙希
 北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
 よろしくお願い致します。

 以前、アリスラビリンスのデスゲームから脱出した『アリス』が、とうとう「自分の扉」の在処を突き止めたようです。
 猟兵の皆様には、『アリス』を襲うオウガを退け、『アリス』が「自分の扉」から元の世界に帰還するための手助けをお願い致します。

 なお、本シナリオに登場する『アリス』は、以下のシナリオに登場した『アリス』と同一人物となりますが、未読でも支障ございません。
「アリス・イン・デスゲームーMirrors」(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=11024)

●本シナリオの構造
 集団戦→ボス戦→冒険となります。

 第1章集団戦、第2章ボス戦は純戦です。
 第2章は特定の条件でプレイングボーナスが付与されます。詳細は第2章導入にて。

 第3章では幸福な幻影に囚われますので、『アリス』と共に幻影を振り払っていただきます。
 詳細は第3章導入にて。

●『アリス』
 オープニング時点では本名不明のため、便宜上『アリス』と記載。
 肩まで伸ばした銀髪と黒の瞳を持つ、10代後半程度の少女です。
 銀のナイフを持ち、大量の返り血を浴びた白のワンピースを身に纏っております。
 集団戦では【九死殺戮刃】を駆使して戦ってくれますが、ボス戦では明確に足手まとい。
 以前出会った猟兵の事はきちんと覚えています。

 ただし【九死殺戮刃】は「味方を1度も攻撃しないと寿命が減る」という特徴がございますので、1章のみ50%の確率で猟兵の皆様が『アリス』に斬られる可能性がございます。
『アリス』に斬られたことによる負傷はフレーバーとして扱いますので、成否判定には一切影響致しません。
 斬られても大丈夫という方は、プレイングの1行目に「◎」と記載願います。(記載なき場合は斬りません)

●プレイング受付について
 全章、冒頭の導入文の追記後からプレイング受付を開始。
 受付締め切りはマスターページ及びTwitterで告知致します。

 全章通しての参加も、気になる章だけの参加も大歓迎です。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『影縫い・シャッテンドルヒ』

POW ●これは君を飲み込む影の群れ
【紐付きのナイフ】が命中した対象に対し、高威力高命中の【レベル×1の自身の影】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD ●僕らは影、君の命を刈り取る影
【漆黒の影】に変形し、自身の【意思や心情】を代償に、自身の【攻撃力と影に溶け込み影伝に移動する能力】を強化する。
WIZ ●僕らの狩場、君の墓場
戦場全体に、【影に覆われた暗い街】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『アリス』を翻弄する暗殺者を排除せよ
 金属の国に転送された猟兵たちが目にしたのは、歩いていた銀髪の少女――『アリス』がちょうどだだっ広い金属の草原の真ん中で足を止めた瞬間。
 彼女の視線は、突然現れた猟兵達ではなく、地面に落ちている己の影に向けられていた。
「私の命を狙う暗殺者さん、影に隠れているのはわかっているわ。おとなしく出てきたらどう?」
『アリス』の声に応えるかのように、木々や岩、そして『アリス』自身の影からゆっくりと現れたのは、漆黒の影。
 それはヒトのかたちをとりながら徐々に色彩を取り戻し、やがてフードを深くかぶりナイフを手にした少年へと変じる。
「あーあ、勘のいい『アリス』はいやだなあ」
 肩を竦めながら大きく息を吐く少年たちが『アリス』に向ける視線には、明確な殺意と、目の前の餌への興味が含まれている。

 ――少年たちがオウガであることは、明白だった。

「ねえ、君はまだ、本当かどうかわからない記憶にしがみつく?」
「いい加減諦めて、僕らの餌になったほうが楽だよ?」
 殺意を隠さずにくつくつと嗤い、赤い紐がついたナイフを掌で弄びながら、少年の姿をしたオウガの集団は『アリス』を取り囲むが、『アリス』の強き意志がこもった瞳は決して揺らがない。
「私は帰ると決めたから。邪魔をするなら無理やりにでも通してもらうわ」
 銀のナイフをオウガたちに向けながら、『アリス』はオウガの包囲の外にいる猟兵達に気づいたかのようにウインクひとつ。
「そこの猟兵さんたち、手を貸してくれないかしら?」
 猟兵たちに信頼を寄せているかのような『アリス』の声に、猟兵たちはそれぞれ頷き返すと、得物を手に少年の姿をしたオウガ――『影縫い・シャッテンドルヒ』の集団に接近する。

『アリス』をオウガの手から救い出すための戦いが、始まった。
サフィリア・ラズワルド

POWを選択

【白銀竜の解放】で四つ足の飛竜になり彼女の元へ。

『アリスさん久しぶり!』

敵のナイフは避けません、アリスさんの盾になって青い炎で周囲を攻撃します。

君達のUCは厄介だけど私の炎が避けられないなら本体も偽物も関係ないよね!逃げようとしても無理だよ?だって隠れられる影がないから、全てが金属で出来ている国だから周りの物は溶けて一塊になっちゃう、もしかして私達の影に逃げようなんて思ってる?私の影に近づいたらアリスさんが、アリスさんの影に近づいたら私が貴方達を攻撃しますよ!

一通り倒したらアリスさんに話しかけます。よかった、また会えて、心配してたの!

『友達だもん心配するよ!』

アドリブ協力歓迎です


●白銀竜は銀髪の友達と再会す
「猟兵が何人来ようが、僕らが先に『アリス』を狩ってしまえばいいのさ!」
 猟兵達が割り込むより早く、赤い紐付きのナイフが『アリス』の首筋目がけて放たれたその時、上空から巨大な飛竜の影が地に落ちる。
 少年たちが驚いている間に、飛竜は『アリス』と少年の間に割り込むように着地し、固い鱗で全てのナイフを受け止めた。
『『アリス』さん久しぶり!』
 飛竜の口から発せられるサフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)の声に、『アリス』は一瞬目を丸くした後、顔をほころばせる。
「ええ、久しぶりね!」
 以前、鏡の迷宮で助けてくれた恩人との再会に、答える『アリス』の声には自然と活気が戻っていた。

「そのナイフが刺さったままで、僕らの影から逃れられるかな?」
 ナイフが胸に突き立ったままのサフィリアに、実に150体以上の影と化した少年が四方八方から殺到するが。
 ――ゴウッ!!
 サフィリアが周囲を掃射するように吐いた青き灼熱の炎が、殺到した少年たちを本物も影も関係なく一気に消し飛ばした。
 少年たちを焼き尽くした高温の炎はそのまま周囲の金属の草花をも溶かし、地面と一体化させて草花の影すら消し去る。
 これで少年たちは、草花の影に隠れて奇襲できなくなったはずだが、残った少年たちの顔からは余裕の笑みは消えていない。
『私の炎が避けられないなら、本体も偽物も関係ないよね!』
「まだわかってないなあ。僕らは影があればどこからでも手を出せるのさ」
 少年たちは笑みを崩さぬまま一斉に己の影に溶け込み、サフィリアと『アリス』の前から姿を消す。
 それを確認したサフィリアと『アリス』はお互い目配せし、向かい合った。
 数秒後、影に溶け込んだ少年たちが、歪んだ笑みを浮かべつつサフィリアと『アリス』の影から得物を閃かせながら姿を現す。
「竜も『アリス』も、これでサヨウナラ」
 サフィリアの影から現れた少年は、『アリス』の首筋にナイフを向け。
『アリス』の影から現れた少年は、サフィリアを影で縛ろうと己が影を伸ばした。

 少年たちの狙いは、己が移動した影の持ち主ではなく、持ち主の目の前に佇む相手。
 ――それは、相手の不意を突き、確実に仕留める一手。

 だが、少年たちのナイフと影が相手を仕留めることは、なかった。
 なぜなら……。
「待っていたわよ」
 サフィリアの影から現れた少年を、サフィリアの鱗に一筋の切り傷をつけた『アリス』の銀のナイフが狙っており。
『『アリス』さんの影に近づけば、私が貴方達を攻撃しますよ!』
『アリス』の影から現れた少年を、サフィリアの口内に溜められている灼熱の青き炎が待ち構えていたから。
 ――サフィリアと『アリス』は、少年たちの動きを完全に読んでいたのだ。
 目論見を看破されていたと気づいた少年たちが再度影に逃れようとするも、遅く。
「逃がさないわよ」
『アリス』の銀のナイフが複雑な銀のラインを描きながら少年たちをまとめて切り裂き。
『友達に手は出させないから!』
 サフィリアの灼熱の青き炎が、周囲の金属ごと少年たちを焼き尽くしていた。

 一先ずの危険は脱したと判断したサフィリアは、竜形態を解除し銀髪の少女の姿に戻り『アリス』に駆け寄る。
「よかった、また会えて、心配してたの!」
「心配して……くれていたの?」
 サフィリアの声が心底心配していることを察した『アリス』が思わず問い返すも、サフィリアは即答。
「友達だもん、心配するよ!」
「そう……ありがとう、助けてくれて」
 サフィリアの屈託ない笑みに、『アリス』も礼を述べながら釣られるように笑みをこぼしていた。
大成功 🔵🔵🔵

幽遠・那桜

WIZ
ナイフ……暗殺……。うん、墨染の方がやりやすいね。
ねぇ、アリス。私の左手の手のひらを傷付けて。
一応理由は、ナイフが嫌いだから、赤いのを見ていると忘れられるかな、として、ね。
本当の理由はね。まだ始まったばかりだし、こんな所でちょっと昔の因縁を思い出してね、我を忘れて足引っ張る訳にはいかないでしょ?
お仕事はちゃんとしなきゃ。
UC発動。ナイフなんか持ってたら危ないよ?
だから消えてよ。いなくなって!
限界突破、恐怖を与える、呪詛
呪いって言うほどじゃないけど、動けなくしたらいいかなって。影なのにいい的になりそうだしね。

あ、そうだ。アリスだと色んなアリスが居るんだし、ちゃんとした名前、教えて?


●墨に染まりし桜が齎すは、姿かたちが見えぬ刃
『アリス』の包囲が緩んだ隙に『アリス』と合流した幽遠・那桜(微睡みの桜・f27078)が感じ取ったのは、少年の姿のオウガたちが『アリス』に向ける鋭い殺意。
(「ナイフ……暗殺……うん、墨染のほうがやりやすいね」)
 大人びた雰囲気を纏い、恐怖を恐怖として認識しない「墨染」となった那桜は『アリス』に近づき、左手を差し出す。
「ねえ、『アリス』。私の手のひらを傷付けて」
「いいの?」
「私、ナイフが嫌いだから、赤いのを見ていると忘れられるかな、として、ね」
 ――本当は、ちょっと昔の因縁を思い出したからだけど。
 それで我を忘れて『アリス』や他の猟兵の足を引っ張るわけには、いかないから。
(「お仕事はちゃんとしなきゃ」)
 その戒めの意味も込めてなのか、笑みを浮かべて左手を差し出す那桜に。
「……ええ、わかったわ」
『アリス』は半ば気圧されたかのように頷いていた。

 那桜の左の手のひらを銀のナイフで一閃した『アリス』は、そのまま少年らの真っ只中に切り込んでゆく。
「あっはっは! このまま切り刻んで、ジ・エンドだね!」
 無謀だと『アリス』を嘲笑う少年たちは、そのまま手中の得物で『アリス』を切り刻もうとするが。
「ナイフなんか持ってたら危ないよ?」
 ――さあっ……。
 左の手のひらの赤い筋を眺めたままの那桜を中心に吹き荒れた風なき風は、『アリス』を狩り取ろうとした少年らのナイフを一瞬で消し去った。
「やだなあ、邪魔をしないでよ」
 ナイフを奪われた少年は、動じることなく影に覆われた暗い街の迷宮を召喚し、光の乏しい空間に那桜を閉じ込めようとするが。
「だから消えてよ。いなくなって!」
 ――ザア……ッ!!
 暗い街の迷宮も、勢いを増す風なき風に呑まれ、一瞬で消滅。
 『アリス』に死を齎すはずだったナイフと那桜を閉じ込めるはずだった暗き闇を呑み込んだ風なき風は、逆に少年らに恐怖と消滅を齎す風なき真空の刃の嵐と化し、周囲を激しく荒れ狂い始めていた。
 ――それは、那桜と『アリス』に迫りくる死への「恐怖」を消し去るためか。
 ――あるいは、2人に死を齎す相手に死の「恐怖」を与えんとするためか。
(「呪いって言うほどじゃないけど、動けなくしたらいいかなって。影なのにいい的になりそうだしね」)
 那桜は動きを止める程度のつもりだったが、無意識に認識すまいとしている死への「恐怖」が、無機物を真空刃に変換し操る力を暴走に近い勢いにまで高めている。
 その結果……。
「うわああああっ!?」
「何だこれ、身体が……っ!!」
 暴れ狂う真空刃の空間に呑まれた少年たちは、ただ動きを止めるだけでなく、本体も影も関係なく悉く切り刻まれ、次々と消滅した。

「あ、そうだ」
 少年たちの包囲の一角が崩れたところで、真空刃に斬られることなく佇んでいる『アリス』に何気なく問いかける、那桜。
「『アリス』だと色んなアリスが居るんだし、ちゃんとした名前、教えて?」
「名前……」
 突然問われ、瞳に一瞬苦悩を宿す『アリス』。
 以前は『アリス』と呼ばれる理由を知らず、名前と呼べるものは何一つ思い出していなかったから『アリス』と呼ばれても抵抗はなかったのだけど。
 ――この世界のルールを知り、断片でも思い出した今は、嫌悪感を抱く名でも名乗るしかない。
 那桜に問われた『アリス』は、観念したかのようにぽつりと己が名のひとつを呟く。
「……アイン」
「アイン?」
 那桜は少し首を傾け、琥珀色の瞳に興味を宿し。
「それ、数字だよ?」
 そして、感じるままに疑問を言の葉に乗せ、伝える。
 ――『アリス』……アインが口にしたのは、ドイツ語で「1」を示す単語だから。
「ええ、数字よ」
 そうつぶやくアインの瞳には、わずかながら嫌悪感が宿っていた。
大成功 🔵🔵🔵

アハト・アリスズナンバー
◎ SPD判定
アリスが助けを求められるのなら、いつでも手をお貸ししましょう。それがアリスズナンバーなれば。

数には数です。
相手の初撃に対してソードドローンを飛ばしつつUCを起動。アリスを守るようにしつつ、【焼却】弾で光を多くして影の場所を少なくし、【集団戦術】で総員に【第六感】と【暗視】を組み合わせて、影から出てくるところを狙います。

残りの敵にはナイフに対して【誘導弾】をうち、【部位破壊】で壊してあげましょう。そして入る影が限られて困惑してる所に集団で蹂躙しましょう。

……あなたはどちらがいいですか?名無しの1(アイン)か、名無しのアリス。私は、ただの名無しの8(アハト)です。


●アリスの名を持つ者の真の名は
(「『アリス』が助けを求められるのなら、いつでも手をお貸ししましょう。それがアリスズナンバーなれば」)
 とあるアリス適合者の複製たるフラスコチャイルドのひとり、アハト・アリスズナンバー(アリスズナンバー8号・f28285)もまた、『アリス』の危機に駆けつけたひとりだった。

 他の猟兵がある程度数を減らしたとはいえ、まだ『アリス』が危機を脱したわけではない。
 漆黒の影を伝って移動し、数を持って『アリス』を仕留めようとする少年たちに対し、アハトが選んだ戦術は「集団による蹂躙戦」。
「上位権限グリムコード送信。総員殲滅戦に移行」
 アハトはネットワーク中継器の機能を持つソード・ソーシャル・ドローンを空に飛ばしつつ、瞳に「1」と刻印された戦闘用に調整されたアハトの別個体を78体召喚。
 78体のうち20体はその場で合体させ、「10」と刻印された2体の戦闘用個体がレーザーライフルを構えて『アリス』の護衛につく。
(「焼き払いなさい」)
 護衛についていない、瞳に「1」を宿す58体の戦闘用個体たちは、ソード・ソーシャル・ドローンを介したアハトの声なき命に従い、少年たちが影に潜ろうとする動きを察知し一斉に焼却弾を発射。
 ――バシュッ!!
 金属の地面に着弾した焼却弾は瞬く間に地面伝いに炎を燃え広がらせ、影という影を焼き尽くすかのように『アリス』たちの周囲を炎の海に変えた。
「くっ……!」
 突然金属の地面に広がった炎に、少年たちは顔面に手をかざしながらじりじりと後退。
 移動するはずだった影は全て炎で覆われてかき消され、炎そのもので生じる影は常に揺らめき安定しないため、移動することはできない。
 それでもアハトや戦闘用個体たちが地面に落とす影を目ざとく見つけた少年が、影伝いに『アリス』を急襲しようと試みたが。
(「影という影は私の戦闘用個体が見張っています」)
 戦闘用個体の影から姿を現した瞬間、少年たちは『アリス』を守る「10」を宿す戦闘用個体にレーザーライフルで狙い撃ちされ、瞬く間に消滅した。
「まだまだ……!」
 影伝いも封じられた少年たちは、ナイフを抜き放ち、近接戦で戦闘用個体を破壊し『アリス』に迫ろうとするが。
(「ナイフを破壊し、徹底的に蹂躙しなさい」)
 それを察したアハトが、戦闘用個体たちに時間差をつけて誘導弾を撃ち出させ、確実にナイフを叩き落とし破壊。
 得物を失った少年たちは体制を立て直すために影伝いに逃げようとするが、その一瞬の隙を突いて戦闘用個体の集団が次々と急襲し、着実に殲滅していった。

 炎が壁として残っている間に、アハトは『アリス』の名前を聞こうとして、別の猟兵に「アイン」と名乗っていたことを思い出し、思いとどまる。
(「アイン」……1号、でしょうか)
 アハトが持つ「アハト」という名は、アリスズナンバーの「量産型個体8号」であることの証。
 だが、目の前の「アイン」と名乗った『アリス』は、フラスコチャイルドではなくアリス適合者。
 だとしたら、何故彼女は「アイン」と名乗っているのか。
 そして、なぜ自らの名乗った名に対し、嫌悪感を抱くのか。
 疑問を呑み込みながら、アハトはあえて戦闘用個体に守られ動く機会のなかった『アリス』――アインに問う。
「……あなたはどちらがいいですか?」
「どちら、って?」
「『名無しの1(アイン)』か、『名無しのアリス』」
「……あなたは?」
 アハトが告げた選択の意を測り兼ねながらも、逆にアインが名を聞くが、アハトの答えは明快。
「私は、ただの名無しの8(アハト)です」
「アハト……」
 淡々と答えるアハトの目を見つめながら、復唱するアイン。
 アインの瞳には、新たに困惑の光がちらついていた。
「どうしました?」
 アハトの問いかけに、アインは力ない声で答える。
「……私は、『名無しのアイン』でも『名無しのアリス』でもない」
 ――数字ではない名を、確かに持っているから。
「だけど、本来の名前は、まだ……」
「思い出せませんか」
 アハトの呟きに首肯するアイン。
 その瞳に宿る光は、困惑し苦悩する彼女の心中を露わにするかのように揺らいでいた。
大成功 🔵🔵🔵

桜井・夕月

零くん(f03921)と参加

敵さんも【影】を使うんだね、奇遇だなぁ

呼び方はアリスさん、でいいのかね
はじめましてでよろしくだ
ん、斬られるのは気にしない。そういうものだよ、大丈夫

基本は月牙による魔弾での攻撃
魔弾には閃光弾の如く光の属性をもたせましょうか

本体を撃ち抜ければそれでよし、
駄目でも光で影の範囲を絞るイメージ
影伝いの移動、出現場所が予想できるんなら対処は容易だよね?

影獣、ウカと呼んでいる狐の影には不意打ちを指示
その後は暴れていいよ

ある程度戦況が整ったら魔弾での攻撃だけでなく、皆の援護射撃を
一応アリスさんに攻撃がいかない様気を付けるけど、零くんいるし大丈夫かなぁと思ってます

アドリブ協力歓迎


高柳・零
桜井さん(f00358)と
POW
おっと、信頼してくれている人からの期待には応えないといけませんね。
全力でお手伝い致しますよ!

「自分が盾になりますので、遠慮なく攻撃に専念してください!」
オーラを全身に張り、盾を構えて前に出ます。
アリスさんと桜井さんを庇いつつ、敵のナイフに気をつけて見切りながら盾で弾くようにします。
万一ナイフが当たった時は、オーラを球状に張って影を遮断します!

「餌になりたがる人間なんて居ませんよ。どうしても食べたいなら、自分達を倒すことです…出来るものならですが」
剣からのソニックブーム(範囲攻撃)で敵を纏めて攻撃し、弱ったのから天斬りで止めを刺します。

アドリブ歓迎です


●如何なる呼称を持とうが、私は私
 ――私の名前は、数字じゃない。
 ――でも、本当の名前は……まだ……。

 8の名を呼称として持つ猟兵と邂逅した『アリス』……アインの苦悩は、猟兵と別れても深まるばかり。
 アインたちとオウガたる少年たちを隔てる炎が徐々に弱まり、少年たちが移動に使えそうな影が徐々に増えているにもかかわらず、一度認識した苦悩に囚われたアインは動けない。
「困っている『アリス』、その困りごとをここで全部断ち切ってあげるよ!」
 炎の向こうから、機を得たりと見た少年たちが一斉にナイフを投げる。
 アインも反射的にナイフで叩き落とすが、立て続けに投げられるナイフ全てをたたき落とすことはできない。
 ――絶体絶命と思われた、その時。
「全力でお手伝いしますよ!」
 緑の衣服と黄色の画面のバランスが印象に残るテレビウムの高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)がアインの前に立ちはだかり、全身に纏うオーラでナイフを絡め取り、天霧の盾で残ったナイフを全て叩き落とした。
「はじめましてでよろしくだ」
 そして、いつの間にか青のラインが印象的な黄のフードつきの上着を羽織った桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・f00358)が、アインの真横に立ち、スナイパーライフル型のガジェット・月牙の銃口を少年たちに向けながら問いかける。
「そこの呼び方はアリスさん、でいいのかね」
「……好きに呼んで構わないわ」
 ――数字も不特定多数扱いも、どちらも嫌悪感しかわかないけど。
 唯一無二の「名前」が記憶の海から浮かんでこないなら、今は好きに呼んでもらおう。
 半ばあきらめが入ったかのように言い捨てるアインの言に、意を得たりと頷く夕月。
「じゃあ、私はアリスさんと呼ばせてもらうよ」
「僕もそうさせてもらいますね」
 零も頷きながらオーラを球状に展開し、アインと夕月を守るように天霧の盾を構えて立ちはだかる。
「自分が盾になりますので、遠慮なく攻撃に専念してください!」
「うん、わかった」
 夕月が頷き、改めて月牙を構える。
 一方でアインは、銀のナイフを手にしながらも、攻撃の構えをとらなかった。

「やれやれ、考えるのをやめたら一気に楽になるのになあ」
 苦悩に囚われ攻撃の意を見せないアインを少年たちが鼻で笑いつつ、己の影に溶け込もうとする。
 今のアインなら、影伝いに不意を打つのはたやすいと踏んだのだが。
「ふうん、敵さんも【影】を使うんだね、奇遇だなぁ」
 その動きを見て何気ない呟きを零す夕月の手にする月牙から、閃光弾にも匹敵する程の光の魔力が凝縮された弾が、これまた何気なく撃ち出される。
 それは影に溶け込もうとした少年を掠め、外れたかと思わせた瞬間、その背で炸裂し、閃光を解放。
 直視すると一瞬で目が潰れるほどの光が地表を照らし、次々と影を押しつぶして行った。
 影伝いの移動をいったん諦めた少年たちは、言の葉の刃を紡ぎながら紐付きのナイフを投擲。
「それ以上記憶に、名前に苦しむくらいなら、その苦しみを僕らがスパッと断ち切ってやるのに」
 しかし少年らの言葉とは裏腹に、アインに向かい苦しみを命脈ごと断ち切るはずのナイフは、全て零が見切ってオーラや盾で受け止め、明後日の方向に弾き飛ばしている。
 影を伝い近づこうにも、夕月が月牙から何度も打ち出す光の魔弾から発せられる閃光が影を押しつぶし、それを許さない。
 2人の猟兵に悉く一撃を防がれ阻止され続けている少年たちは、苛立ちを深めながらも、困惑の色を深めるアインを言の葉の刃で惑わせる。
「どうして君は扉を探そうとするのかな?」
「どうして君は、あえて苦しむことを選んでいるのかな?」
「……っ」
 一度は帰ると決めたのに、己のアイデンティティを定義づける「本当の名前」が思い出せないことを自覚したアインは、その心の綻びを少しずつ広げられ、言葉を失う。
 少年たちはアインの意思の揺らぎにつけこみ、帰還の意を折り取ろうと、さらに言の葉を紡いでいた。
「僕らに出会ったが最後、おとなしく僕らに狩られる。それが『アリス』の在り方」
「だから、これ以上の抵抗は無意味だよ」
 歪んだ笑みを崩さない少年たちの言を、アインはただ聞くしかできない。
 アイデンティティが揺らいでいる今のアインは、「扉」を見つけ帰るという意思さえ揺らぎつつあった。

 ――しかし。
「餌になりたがる人間なんていませんよ」
 少年たちの長々と続く身勝手な口上を、零が短く鋭い言葉の刃で一刀両断。
 同時に時雨の剣を横に薙ぐように振り抜き、雨雫滴るソニックブームを放ってナイフと言の葉でアインを惑わす少年らを牽制した。
「……っ、邪魔をするなよ」
 雨雫を伴う衝撃波を真正面から受け、たたらを踏みながら口上を中断させられた少年たちの敵意は、一時的に零に向く。
 アインの腰より少し低い程度の背丈のテレビウムの少年に、少年たちのナイフは全て逸らされているのは、事実だから。
 しかし、敵意を向けられても零の意は決して揺らがず、むしろ短く鋭い言の葉で少年らの敵意を斬り続け、惹き続ける。
「どうしても食べたいなら、自分達を倒すことです……出来るものならですが」
「油断大敵だな……ウカ」
 その隙に夕月が零の挑発に紛れ込ませるように密かにナニカに命じつつ、光の魔弾で体勢を崩した少年たちを撃ち抜き、無力化。
 それでも運良くソニックブームも光の魔弾も逃れた少年が、赤い紐を突いたナイフを逆手に持ち、歪んだ笑みを浮かべる。
「じゃ、君たちもまとめて――」
 ナイフで解体して食べてあげるよ、と続けようとした少年の言葉が、突然途切れた。
 ――ゴスッ、ドサッ。
 直後に響くのは、重い何かがぶつかり、倒れる音。
「……?」
 別の少年が言葉を途切れさせた少年のほうを振りむくと、そこにいたのは少年……ではなく、多数の尾を持つ影の狐。言葉を途切れさせた少年は、影の狐の足元に倒れ伏し、動かない。
 夕月が召喚した影の狐――ウカが、主の命に従い背後から不意打ちで少年を地面に押し倒していたのだ。
「いつの間に!?」
「よくやったねウカ、暴れていいよ」
 夕月の労いを受けたウカが、遠吠えと共に、驚き隙を見せる少年たちに踊りかかる。
 その動きを捉えて斬り裂こうと少年たちはウカを追うも、少年たちの影に紛れて巧みに姿をくらます影の狐をなかなか捉えられない。
 影に溶け込まず同化することで少年たちを翻弄するウカは、少年たちの不意を突いて尻尾で払い、叩き、隙を見て一気に押し倒していった。
「今なら、なんとか……!」
 少年たちが混乱する間に、夕月の左腕をナイフで軽く払い傷をつけながら、アインが前に出る。
 迷いは晴れず、苦悩は深いけど。
 それでも今、思う事はただひとつ。
「まだ、食べられるわけには……いかない!」
 影伝いにアインの影へ移動しようとした少年に、生存本能を励起させたアインが先んじて一振りが九振りに増えるナイフを閃かせ、徹底的に切り刻み無力化。
「影伝いの移動、出現場所が予想できるんなら対処は容易だよね?」
 夕月も誤ってアインを撃ち抜かないよう注意を払いつつ、光の魔弾で影を潰し、影伝いの移動先を減らしつつアインの援護に徹し。
「天に変わって悪を斬る!」
 機が訪れたと見て防御から攻撃に転じた零が、時雨の剣で影を探す少年を一刀両断していた。

 新たな少年たちが駆け付けるまでのわずかな時間に、アインは零たちに心の綻びから生まれた疑問を投げる。
「どうしてあなたたちは、私を?」
「信頼してくれている人からの期待には、応えないといけませんからね」
「――――!!」
 何気ない零の答えに、アインは大きく息を呑んだ。
 ――例えば、猟兵全体に信頼を寄せているから、という理由で。
 ――例えば、友達だからという理由で。
 ――例えば、アインが異世界から召喚された『アリス』だからという理由で。
 彼らは彼らなりの確固たる理由を持って駆け付けてくれている。
 しかもその理由に決して裏は存在せず、純粋に「アインを助けたい」一心で駆けつけている。
 だからこそ、彼らは決してあきらめない。
 ――そう、気づかされたから。
(「だったら、私が扉行きを諦めるわけにはいかないわね……」)
「アリスさん、少し悩んでいたようですが、悩みがあればお聞きしますよ?」
 背中から感じる気配でアインが悩む様子を察していた零が、気遣いの言葉をかけるが、アインは首を振る。
「もう大丈夫よ、ありがとう。あと……ごめんなさい、斬ってしまって」
 神妙な顔をして謝るアインの視線は、夕月の左腕に薄く走る切り傷に向いていた。
 この剣技の特性だとはわかっていても、意識しないと今でも味方を斬ってしまうから。
 だが、当の夕月は気にした様子もない。
「ん、斬られるのは気にしない。そういうものだよ、大丈夫」
 一仕事こなしたウカをもふもふして労いながらこくりとうなずく夕月に、アインの口端からわずかに笑みがこぼれる。
「そう……ありがとう」
 夕月に頭を下げるアインの瞳からは、苦悩の色は明らかに薄れていた。

 ――少年たちの包囲を破り、「扉」に辿り着くまで、あと一息。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

真宮・響
【真宮家】で参加



初めましてだね。アンタが美雪の言ってたアリスかい?ひとりで一年もこの世界を生き延びたのは大したものだ。アンタが元の世界に戻るのが願いなら、全力で協力するだけだ。名前はあるみたいだが、呼ばれるのが嫌ならいってくれ。

ふむ、敵はアリスの影狙いか。しっかりアリスを護衛しながら待ち伏せすれば、狙い撃ち出来る訳だ。敵の攻撃に備えて【オーラ防御】しておいて敵の攻撃を【見切り】【残像】で凌いだ後、【二回攻撃】【怪力】で思いっきり炎の拳で殴り飛ばし、【グラップル】で追撃で蹴り飛ばす。

ああ、アタシは斬っても構わないよ。アンタの目的の為なら、傷を負う事ぐらい、どうってことないさ。


真宮・奏
【真宮家】で参加



初めてお目にかかります、アリスさん、でいいですか?お名前があるみたいですが、呼ばれるのが嫌なら、アリスさんとお呼びします。貴方の望みを叶える為、全力を尽くします。

敵の狙いはアリスさんですので、トリニティエンハンスで防御力を高め、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】でアリスさんを【かばう】。敵の襲撃を防いだら、【シールドバッシュ】【グラップル】【怪力】で全力で殴り飛ばします。余裕があれば、【衝撃波】で追撃。

あ、必要なら、私を斬っても構いませんよ。身体は頑丈ですし。少しの傷なら平気です!!


神城・瞬
【真宮家】で参加



美雪さんが予知したと聞きまして・・・一年の間探しまわっていた扉ですし、帰還を全力でお手伝いします。お名前あるみたいですが、呼ばれるのが嫌なら、今まで通りアリスさんとお呼びします。

敵がアリスさんの影を狙って襲撃してくるところを待ち伏せて、【結界術】を発動。【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】を乗せた疾風閃で攻撃します。更に【誘導弾】で追撃します。敵の攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぎます。

あ、僕を斬っても構いませんよ。必要な事ですしね。僕達家族は貴方の本懐が果たされるのが望みです。


●家族の絆と連携は、少女を扉へを誘う
 ――私を、扉まで辿り着かせるために、たくさんの猟兵さんが協力してくれた。
 ――ならば、私は……帰らないといけないわね。

 テレビウムの少年ともふもふした影を従える少女が一時撤退した後、新たにやってきたのは【真宮家】の3人。
「ああ、アンタがグリモア猟兵の言っていた『アリス』かい?」
 遠慮せずに『アリス』――アインに声をかけるのは、一家の長で2人の子供の母、真宮・響(赫灼の炎・f00434)。
 その遠慮のなさにアインも一瞬呆気に取られるが、直ぐに気を取り直す。
「そうだけど、あなたたちも猟兵?」
「ええ、世話になっているカフェのオーナーが予知したと聞きましたので……」
 アインの言葉を肯定するように、神城・瞬(清光の月・f06558)が大きく頷く。
「まったく、ひとりで一年もこの世界を生き延びたのは大したものだ」
「一年の間探しまわっていた扉ですし、帰還を全力でお手伝いします」
「一年……!?」
 この世界で一年以上も生き抜いたことに感心する響と瞬が何気なく呟いた言葉を耳にしたアインの顔が、一気に驚愕に染まった。
 ――自分は、そんなに長く、扉を探していたのか、と。
「ああ、一年以上さ」
 それはともかく、と微かな殺気を感じて話題を切り替える響。
「アンタが元の世界に戻るのが願いなら、アタシたち家族は全力で協力するだけだ」
「私も、貴方の望みを叶える為、全力を尽くします」
 可憐で優雅にお辞儀する真宮・奏(絢爛の星・f03210)を見ると、アインの顔からわずかに笑みがこぼれた。
「ところで、どのようにお呼びすればよろしいでしょうか?」
「呼び方……?」
「お名前があるみたいですが、呼ばれるのが嫌なら、アリスさんとお呼びしますので」
 緊張させないよう笑顔を浮かべる奏の問いに、アインは軽く苦笑いを浮かべながら答える。
「アリスさん、で構わないわ」
 ――嫌悪感を催す数字で呼ばれるより、よほど気楽だもの。
 見え隠れする本音はそっと懐にしまい、アインはそう、真宮家の3人に告げる。
 それと同時に、さあっと殺気が濃く吹き付け始める。
「アリスさん、母さん、奏、来ます!」
 六花の杖を構えた瞬の警告に、響と奏、そしてアインは、残った少年たちを迎撃すべく身構えた。

 常に家族で行動を共にする真宮家の3人の役割は、極めて明確。
 響がブレイズランスや拳、時には召喚したゴーレムと共にオブリビオンを思いっきりぶん殴り。
 後方からは瞬が魔法や誘導弾で撹乱・翻弄しながら追撃を行う。
 2人や護衛対象への攻撃は、エレメンタル・シールドを構えた奏が身体の頑丈さを生かしてしっかりと庇い、防ぐ。
 個々でも戦えるのだが、家族の連携を重視しながらそれぞれの役割をしっかりとこなせば、たとえ集団を相手取っても互角以上に戦える。
 ――そしてそれは、暗殺者相手でも変わりない。
「諦めの悪いアリスには、おしおきが必要だね!」
「4人まとめて影に呑まれてしまえ!」
 片手で数えられる程度の数しか残っていない少年たちが、一斉に赤い紐のついたナイフを投げ、アインを貫こうとするが。
「させません!」
 炎・水・風の魔力で己が護りを固めた奏が、エレメンタル・シールドを両手で構えて射線上に割込み、その全てを受け止めた。
 立て続けにナイフが突き立ったエレメンタル・シールドを追うように、少年たちの影が大量に奏に襲い掛かり、その一部はアインに影の刃を伸ばすが。
「アリスさんを狙うことは読んでおりましたので」
 待ち伏せしていた瞬がアインを守るように銀の結界を構築、エレメンタル・シールドで受け切れなかった分の影を全て弾き飛ばし、アインには決して影を届かせない。
「な……っ!!」
「この2人、何なんだよ!!」
 少年全員合わせて500以上もの影を同時に飛ばしたにも関わらず、エレメンタル・シールドと銀の結界で全ての影をしっかりと止められれば、流石に少年らも驚愕を隠せない。
 ――そして、それは攻撃手に対し、あまりにも大きな隙を晒すことになる。
「しっかりアリスを護衛しながら待ち伏せしていれば、狙い撃ちは簡単さ」
 響が溢れた影を見切って躱しつつ、流れるように気力を籠めた灼熱の拳を影に叩き込めば、怯んだ影から伝わる灼熱に少年たちが絶叫をあげながら身悶えする。
「ぎゃあああああああ!」
「アリスを狙う悪い子にはおしおきが必要だからね!」
 さらに響が灼熱に怯んだ少年たちに追撃のために接近して思いっきり蹴り飛ばし、少年の華奢な身体を虚空へと吹き飛ばせば。
「疾風よ、奔れ!!」
 瞬が衝撃波でさらに高く吹き飛ばし、少年の息の根を止めた。
 さらに……。
「アリスさん、僕を斬っても構いませんよ」
「ええ……私は諦めないから、決して諦めないから!」
 瞬の右腕を浅く切り裂きながら、アインも一振りを九振りに増した銀のナイフで少年を影ごと一気に切り裂き。
「アリスさんの邪魔はさせませんよ~!」
 奏が未だ影が殺到するエレメンタル・シールドに力を籠め、残った影を一気に弾き飛ばした上で薄緑の衝撃波で追撃し、少年ごと影を完全に吹き散らした。

 ――かくして、アインを狙う少年たちは、全て排除された。

「これで暗殺者はもう来ないだろうね」
 少年たちの気配が完全に消えたことを確認した響だが、それでも油断なく周囲を見回し警戒を怠らない。
「ええ、アリスさんが扉を潜るまでは油断できないですよ~」
 一度エレメンタル・シールドを格納しつつ、周囲をせわしなく見回す奏。
「大丈夫、どうやら、扉はすぐ近くのようです」
 義妹の仕草に微笑を浮かべた瞬が金属に覆われた世界に浮かぶ光を指差すと、アインが身を固くする。

 ――それは、まぎれもないアインの「自分の扉」。

 そして。
「扉」から一筋の光が、アインに流れ込んだ。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第2章 ボス戦 『切り裂き魔』

POW ●マッドリッパー
無敵の【殺人道具】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD ●インビジブルアサシン
自身が装備する【血塗られた刃】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ ●殺人衝動
自身が【殺人衝動】を感じると、レベル×1体の【無数の血塗られた刃】が召喚される。無数の血塗られた刃は殺人衝動を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●蘇る『アリス』の記憶
 光り輝く「扉」から『アリス』――アインに流れ込む一筋の光。
 すると、アインは雷に打たれたかのように身体を硬直させ、大きく目を見開いた。

 ――光と共に流れ込むのは、記憶。

「あ、あ……」
 呻くアインの脳裏に、失われていた記憶が次々と呼び覚まされていた。

 ――吸血鬼たちが支配する闇の世界にいる、自分。
 ――吸血鬼たちに対抗すべく、身体能力の高い子供たちが集められた、砦。
 ――大人たちは、集めた子供を能力でランク付けし、常に競争を強いていた。
 ――私は九振りに分裂させられる異能をもつ故、常にランクではトップで。
 ――それゆえに、「1」を示す「アイン」と呼ばれていた。

『アイン。いよいよ吸血鬼どもと戦う日が来た』
『お前はこの組織で最も力ある戦士だ。アインの名に恥じぬ戦いを期待しているよ』

 ――あの日、大人たちは私に大きな期待を寄せていた。
 ――同時に、アインの名を穢さぬような戦いを強いられた気もした。
 ――でも、大人たちは決して本当の名前では……呼んでくれなかった。
 ――なぜなら、大人たちにとって私たちは「吸血鬼と戦う戦士」に過ぎないから。

「あ……あ…………」
 額に脂汗を浮かべ、声にならない呻き声を上げ続けるアインの脳裏にさらに過るのは……「あの日」の記憶。

 ――あの日、砦を吸血鬼とその眷属の群れが襲撃してきて。
 ――私は、大人たちに期待をかけられて、吸血鬼たちと対峙した。
 ――でも、大人たちも他の子供たちも、なす術なく駆られていって。
 ――砦は悉く破壊され、火をかけられてしまって。
 ――吸血鬼たちの圧倒的な力に、私も絶望して屈しかけて。
 ――気づいたら……この世界に記憶を失くして流れ着いていた。

「思い……出した」
 息を切らしながらアインが呟くのは――己が本当の名前。
「私は『アイン』なんかじゃない。本当の名前は……『ライナ』」
 ――それは、「小さな天使」を意味する名。
「子供たちは皆、数字で呼ばれることを嫌っていたから、こっそり本当の名前で呼び合っていた。皆、大切な家族のような存在だったから、名前は大切にしたかった」
 ――しかし、それもあの日、全てが崩された。
「砦はほとんど壊滅状態になったはずだけど、皆、無事かしら……心配だわ」
 ライナが猟兵達に本音を零した、その時。

 ――不意に、鋭き刃の如く殺気が吹き付けた。

●「扉」の門番たる切り裂き魔
「キッシッシッシッシッシ!!」
 殺気と共に現れたのは、血にまみれた黒のロングコートと帽子に身を包み、異様に伸びた金属の爪をカチカチと鳴らしながら迫る、以前鏡の迷宮で遭遇した切り裂き魔。
 その姿を見たライナが、何気なく呟いた。
「ねえ、あなたは……『何体目』?」
「キシシ?」
『何体目』に反応し、軽く首を傾げる切り裂き魔に、ライナがさらに言の葉で追い打ちをかける。
「私が覚えている限りでは……あなたは『11体目』かしら?」
「キシャアアアアアアア!!」
 明確に戸惑う切り裂き魔に臆することなく、さらにライナは言の葉の刃で抉る。
「間違えたわ、その帽子の特徴は『5体目』かしら?」
「ギシャアアアアアア!!」
 鋭き爪で頭を抱え錯乱するようなポーズをとる、切り裂き魔。
 しかし、ライナの言から、おそらくライナは切り裂き魔たちに遭遇する都度、刃を交えることをせずに逃げ延びたのだろうと察しがつく。
 ――ならば、完全に切り裂き魔を排除するのは、猟兵の仕事だろう。
「私ではいまだかなわないから、お願いしても良いかしら?」
 迷わず頷く猟兵たちに後を託すように、ライナは扉から少し離れた、安全な場所へと退避した。

 ――さて。

 恐らく、この切り裂き魔は、『アリス』――ライナのトラウマに関係するような弱点を持っている。
 弱点を突けば、一時的に切り裂き魔の動きを止め、有利に戦うことができるだろう。
 問題は、如何なる声かけで弱点を突くか、だが。
 ――ライナは、どのような時に気を悪くしていただろうか?

 さあ、猟兵達よ。
『アリス』が「自分の扉」を潜り、闇の世界に帰るために、門番たるオウガを排除せよ。
 ただし、最後の最後まで気を抜くことなかれ。

 ――健闘を、祈る。

※マスターより補足
 本シナリオのボス「切り裂き魔」には「あるカテゴリに属するキーワードを告げられると一時的に動きが封じられる」弱点が設定されており、弱点を突くような声かけをするとプレイングボーナスが付与されます。
 声かけの内容が外れてもペナルティにはなりませんので、積極的に狙ってみると良いかもしれませんが、狙わないというのも立派な作戦です。
 弱点のヒントは、オープニング及びこの断章に記されております。

 なお、『アリス』ことライナは、マスターコメントにも記した通り、この章の戦闘には参加致しません。
 よって、ユーベルコードの効果で斬られることもございませんので、安心して戦って下さい。

 それでは、扉にたどり着くための良き戦いを。
幽遠・那桜
アド・連携◎
WIZ
じっと、切り裂き魔を見つめながら言うよ。
……そう。あなたはライナね。もう、忘れないようにね。

刃の音、血塗れた刃、全部嫌い。大嫌い。
暗闇じゃないだけマシだけど。

ライナに、何体目じゃなくて(数字の)名前で呼んであげてって、お願いしてみよう。それなら大丈夫でしょ?
いいよ、当てずっぽうでも。嫌がってたしね。

恐怖を与える、限界突破、呪詛、全力魔法
武器はネックレスを短杖に変化させたもの。
攻撃は何処にも届かせない。UC発動。
鎖は12本だけでもね、操作して、刃を絡めて、全部、全部!
あなたに、返してあげる!!
それで、言ってあげるんだ。

……ねぇ、怖いでしょ?って。

……私、今どんな顔してるのかな。


●刃に対する無意識の感情は、刃の動きを変転させ
「……そう。あなたはライナね」
 目の前の切り裂き魔をじっと見つめながら告げる幽遠・那桜の声は、どこか己を納得させるかのような静かなそれ。
「もう、忘れないようにね」
「ええ、もう忘れないわ」
 ようやく取り戻した名前だもの、と微かに笑うライナをかばうように立った那桜は、カチカチと爪を打ち合わせる斬り裂き魔の全身を見て、明確に顔をしかめていた。

 ――刃の音。
 ――血塗れた刃。
 ――そして、暗闇。

(「全部嫌い、大嫌い」)
 那桜が苦手とするものが目の前にある以上、嫌悪感を隠すことはできない。
 今は空が暗闇に包まれていないだけ、まだマシなのだけど。
 それでも、血塗れの刃をカチカチと打ち合わせる音は、那桜――否、墨染の心を激しく搔き乱す。
 その音を打ち消したいのか、それとも単に弱体化を狙いたいのか。
 那桜は、ある提案をライナにしていた。
「ライナ、何体目、じゃなくて、数字の名前で呼んであげて」
「数字で?」
 那桜の真意を測り兼ね、首を傾げるライナ。
 単純な「数」を意味する言葉ではなく、「名前」としての数字なら、呼んでも大丈夫ではないか、と那桜は考えたのだけど。
「そもそも私、逃げることが多かったから、奴らの名前を聞いている余裕はなかったわよ?」
 ライナは遭遇する都度、斬り裂き魔に名前を聞いているわけではない。聞く前に八つ裂きにされて一巻の終わりになる可能性が高かったため、遭遇後1、2度刃を交えた時点で逃げることが多かったのだ。
「それに、目の前の斬り裂き魔が、本当に5体目なのかは自信がないのよね……」
「ギシャアアアア!!」
 首を傾げたライナが「5体目」と口にしたことで再び錯乱状態に陥った斬り裂き魔が、その爪を打ち鳴らす音を激しく響かせていた。

(「当てずっぽうでもよかったのだけど、これでもいいわ」)
 多少思惑はズレたものの、結果的に斬り裂き魔の動きを止めている間に、那桜は叡智宿るネックレスを手に握り込む。
 叡智宿るネックレスは、掌の中で灰色のゾイサイト―灰簾石が埋め込まれた短杖に変化した。
(「攻撃は、何処にも届かせない」)
「十二の時が刻むとき。それはあなたの時間が止まる時」
 灰簾石を切り裂き魔に突き付けながら紡がれた那桜の力ある言葉に反応し、灰簾石の先に現れたのは、いぶし銀の輝きを持つアナログの時計盤。
 時計盤に刻まれた十二のローマ数字からは銀の鎖が喚び出され、それぞれが綺麗な放射線を描きつつ、斬り裂き魔を包み込むように十二の鎖が殺到する。
「ギシャアア!!」
 那桜に殺人衝動を抱いた斬り裂き魔も、150を超える血塗られた刃を虚空に召喚し、彼女を斬り刻む前に邪魔な鎖を砕かんとするが。
 那桜は銀の鎖を刃を絡め取るために巧みに操作し、決して砕かせない。
 たった12本しかない鎖で、150を超える刃と爪を全て絡め取るのは難しいかもしれないけど。
 ――それでも、この刃が存在することは、許せない。
「全部、全部! あなたに返してあげる!!」
 触れたものの時を止める十二の鎖は、那桜の激情に応じるかのように次々と刃に触れ、一瞬だけその時を、動きを止め。
 続けざまに鎖で刃を薙ぎ払うと、150を超える刃全てがまるで時間を遡るかのように斬り裂き魔の手元に戻り、召喚主を徹底的に斬り刻む。
「ギシャシャシャアアアアアアアア!!」
 全身を己が刃で斬り刻まれた切り裂き魔の絶叫が、轟いた。

「……ねえ、怖いでしょ?」
 刃で斬り裂かれる恐怖を存分に味わっている斬り裂き魔を見つめる那桜の顔は。
 ――己が抱いた無意識の恐怖で、歪んでいた。
大成功 🔵🔵🔵

アハト・アリスズナンバー
ライナ、ですか。良い名前ですね。
なら、名無しのアインなんて居なかったんですよ。
あの5番目は私に任せて、あなたはこの後の決断を、覚悟を決めてください。

POW
おい5体目。いい加減どいてください。
貴方が何体いようが、私の敵ではありませんが。
相手のUCによって作られた殺人道具を対象に、【グラップル】弾を撃ち込み、勢いを利用して【ランスチャージ】で攻撃します。
命中時にUCを起動。その道具を破壊させてもらいます。
そしてそのまま【鎧無視攻撃】で貫きます。

きっと貴方は替えの効く戦力にも、吸血鬼を打倒する救世主にも見えたのでしょう。ですが、ライナという名だけは守りなさい。
貴方がただの1ではないと刻みたいのなら。


●名のある少女の代わりに、名のない己が
「ライナ、ですか。良い名前ですね」
 名無しのアインなんて居なかったんですよ、と非礼を詫びるように告げるアハト・アリスズナンバーに、ライナは「そんなことないわよ」と微笑みかける。
「あの5番目は私に任せて、あなたはこの後の決断を、覚悟を決めて下さい」
 ライナと斬り裂き魔の間に割り込むように立ったアハトの背に向けて、ライナは軽く頷いた。
(「今、この場を切り抜けても、最後の仕掛けが待っていますから」)
 アハトはライナに続けて告げようとして、あえて言の葉を呑み込む。
 それはグリモア猟兵の予知でしか裏付けがないし、何より説明する程の余裕は与えてもらえないだろうから。
「キシシ、キシシ……」
 アハトが目前に視線をやると、無敵の殺人道具たる裁ちバサミを召喚し、両手で構える斬り裂き魔が徐々に迫っている。
 ――ジャキン、ジャキン!
 裁ちバサミの持ち手を両手で握り締めた斬り裂き魔は、これ見よがしに派手に音を立てて裁ちバサミを開閉しながらアハトに迫るが。
「おい5体目、いい加減どいてください」
 アハトはそれに動じず、あえて過剰に反応した「数字」を言の葉に織り込み、挑発。
 ――貴方が何体いようが、私の敵ではありませんが。
 続く言葉はそっと声にならぬ様、口内のみで噛み殺すけど。
 口にした数字は、斬り裂き魔を惑わせるには十分すぎて。
「ギシャアアアアアアアアアアア!!」
『5体目』呼ばわりされたことに過敏に反応し、錯乱状態に陥る斬り裂き魔が、破れかぶれで巨大な裁ちバサミを激しく開閉させ、アハトの首を一思いに刎ね飛ばそうとする。
 だが、アハトは裁ちバサミを開こうとしたその一瞬を突き、拳を裁ちバサミの接合部に叩き込む要領で大きめの弾丸を撃ち込んだ。
 たとえ無敵で強力な威力を誇る殺人道具であっても、外部から衝撃を与えられれば全く揺らがないわけではない。
「ギシャシャ!?」
 突然裁ちバサミに与えられた強打に、姿勢を崩された斬り裂き魔。
 それは無敵であるはずの殺人道具に対する疑念を抱かせるには、十分すぎた。

 ランスチャージの衝撃で大きく体勢を崩す切り裂き魔を前に、アハトはちらり、とライナを横目に見る。
 今のライナは、アハトの戦いをただ見守っているだけだが、その胸中は如何なるものか、表情と立ち居振る舞いだけでは計れない。
 だからアハトは、あえて声に乗せることなく、心の裡だけで呼びかける。
(「きっと貴方は、大人たちにとっては、替えの効く戦力にも、吸血鬼を打倒する救世主にも見えたのでしょう」)
 ライナを『アイン』と呼び期待を寄せていた大人たちの真意も、断片的な情報しか持たぬアハトには測り兼ねる。
 ……一方、ただの替えの効く駒であれば、期待はかけないだろうとも思うけど。
 今のアハトが言えるのは、ただひとつだけ。
(「ですが、ライナという名だけは守りなさい」)
 
 ――貴方がただの1(アイン)でないと刻みたいのなら。

 唯一無二の名を守れとの願いを込めて、銃をアリスズナンバーランスに持ち替え、一気に斬り裂き魔に肉薄したアハトは、やや平坦な槍先を無造作に斬り裂き魔の胴に撃ち込み、さらによろめかせる。
「斬り裂き魔、チェックメイト」
 いったんアリスズナンバーランスを引いた後、先端を鋭い槍先に変じ、今度は裁ちバサミを貫きながら、酷薄な声音で告げる。
「あなたはもう、詰んでます」

 ――ゲーム・エンドです。

 裁ちバサミをアリスズナンバーランスで貫くと同時に、アハトはユーベルコードを発動。
 それは無敵でなくなっていた裁ちバサミを粉々に破壊し、驚く斬り裂き魔の左わき腹をそのまま槍先で深く穿っていた。
「ギシャシャシャシャアアアアアア!」
 殺人道具を破壊され、さらに左わき腹を穿たれ大穴を開けられた斬り裂き魔は、もはや言語にならない声で苦痛に喚いていた。
大成功 🔵🔵🔵

月凪・ハルマ
【狐屋】
お待たせ、零君
ちょいと出遅れたが、俺も手を貸そう

◆SPD

しかし、随分とライナさんに拘りがあるんだなコイツ
よく分からんがもし番号で呼ぶ事を嫌がるなら、
その都度適当に『○○番』と呼んでやろう

ま、実際は何番だろうと関係ない
どのみち叩き潰す事に変わりないしな

という訳で、戦闘開始と同時に【瞬身】発動
敵の攻撃は【見切り】【武器受け】【第六感】で躱しつつ
【迷彩】で姿を消し、【目立たない】様に死角から
【残像】を残す程の速度で移動しつつ手裏剣を【投擲】して牽制

隙を見て魔導蒸気式旋棍の打撃の打撃を打ち込み【早業】で離脱
その後は距離を取り再び手裏剣の牽制、という流れを繰り返す

※アドリブ・連携歓迎


高柳・零
【狐屋】
任されました、ライナさん…良いお名前だと思いますよ。

おお!月凪さん、玄信さん。
桜井さんが別行動になったので助かります!

「11回も襲ってるんですか?しつこい化け物ですねえ。では、仮に『ジュウイチさん』とでもお呼びしますか」
いきなり名前を番号で呼んでみます。これで動きが止まったら、容赦なく両手の指を敵に向け光を10本落とします。
そして、味方を守る為に前に出ます

「そんなに数字で呼ばれるのが嫌ですか?自分も『零』という名前なんですがねえ。『イレブンさん』」
血の刃は盾で受け、受け損ねたらオーラを張って弾きます。
味方への攻撃も体を張って受け止めますよ。
敵が止まったら、また光を落とします

アドリブ歓迎


山梨・玄信
【狐屋】
零殿、待たせたな。救援に来たぞ。
ライナ殿は初めましてじゃ…が、自己紹介は後にしておくぞい。

ライナ殿が嫌う事をこいつも嫌うのか。何か理由はあるんじゃろうが…ライナ殿には申し訳ないが、使える物は使わせてもらうぞ。
先ずはオーラ防御を全身に展開し、見切りと第六感で攻撃を躱しながら前進じゃ。
敵がUCを使おうとしたら番号で敵を呼び、動きを止めるぞい。
そのまま、拳に気を乗せて殴り(鎧無視攻撃)UCを発動。
2発目の攻撃をぶちかましてやるのじゃ!

「お主、もしかしてライナ殿の負の感情か?まあ、正体などどうでもいい。おい、11番!ライナ殿には指一本触れさせんぞ」

アドリブ、絡み歓迎じゃ。


●戦友の助けを得て、名を取り戻せし少女を守れ
「任されました、ライナさん」
 ライナに託された高柳・零が「ライナさん……良いお名前だと思いますよ」とそつなく付け加えると、ライナは無言のまま、嬉しそうに微笑んでいた。
 ――それは、己の唯一無二の名前を取り戻した喜びか。
 ――あるいは、個を特定しない名から解き放たれた喜びか。
 しかし、暗殺者との戦いで零と共闘したもふもふな影を操る少女は、いつの間にか姿を消しており、今ここにはいない。
 さて、ひとりでどこまで耐えられるか……と零が思った矢先、突然虚空に無数の音符が舞い始めた。
 ――それは、グリモア猟兵が新たに猟兵を転送する、合図。
「ギシ?」
 斬り裂き魔が突然飛び交う音符を見て首を傾げる前で、白の道着姿のドワーフの少年と、黒の帽子と蒼色の羽織を纏った少年が、無数の音符をかき分けるようにして現れる。
 その二人の姿に、零は見覚えがあった。
「零殿、待たせたな。救援に来たぞ」
 道着姿の山梨・玄信(3-Eの迷宮主・f06912)が、その見た目にそぐわぬ年を重ねた壮年風の声で零に告げ。
「お待たせ、零君。ちょいと出遅れたが、俺も手を貸そう」
 蒼色の羽織を纏った月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)が、ふわりと風のように地に足をつけ、零の横に並び立つ。
「おお! 玄信さん、月凪さん。助かります!」
 気心知れた【狐屋】の盟友・戦友の加勢に、零の黄色の画面がぱっと明るくなった。
 玄信は喜ぶ零を横目に見ながら、ライナに軽く一礼。
「ライナ殿は初めましてじゃ……が、自己紹介は後にしておくぞい」
 本当は自己紹介をきちんとしたいところだが、目の前の斬り裂き魔は苛立つように爪を鳴らし始めている。悠長に自己紹介をしている余裕はないだろう。
 ライナもその状況は察しているのか、軽く頷くにとどめていた。
「ええ、後でゆっくりと聞かせてもらうわ」
 それなりの傷を受けながらも、なおライナや猟兵達に迫ろうとする斬り裂き魔を目にし、玄信はどこから血に塗れた刃が飛んできても良いように全身にオーラを纏い、待ち受ける。
 一方、ハルマはライナに軽く会釈をした後、深呼吸しつつ深く集中。
(「――集中しろ。もっと、深く……!」)
 集中したことで風のような身軽さと俊敏さを得たハルマは、斬り裂き魔を撹乱するつもりで一対の魔導蒸気式旋棍を手にする。
 ――ふと、ハルマの脳裏にある疑問が過った。
「……しかし、随分とライナさんに拘りがあるんだなコイツ」
 己のみ聞こえる程度の声で呟いたハルマの疑問は、零や玄信の耳には届かない。

●如何なる数字を口にすれば動きを封じられるか
 手の爪を頻りに鳴らしている斬り裂き魔に対し、先に口火を切ったのは、零。
「11回も襲ってるんですか? しつこい化け物ですねえ」
「ギシャシャ?」
 先制口撃に戸惑いを見せる斬り裂き魔の姿を見て、さらに言葉を重ねる零。
「では、仮に『ジュウイチさん』とでもお呼びしますか」
「キシャアアアア」
 零に数字を重ねられた斬り裂き魔は、戸惑いこそ深くするも、動きを止めるまでには至らず、さらに爪をぶつけ合い、かき鳴らす。
(「思ったより効果がありませんね……数が大きいのではなく、小さいほど効果的なのでしょうか」)
 零の思惑に反し動きは止まらなかったが、ならば己の役割を果たすのが先。
 いざという時、護り手としてライナやハルマ、そして玄信をかばうために、零はあえてオーラを纏って前に出た。

 一方、ハルマは風のように舞い、残像が残る程の速度で駆けながら、斬り裂き魔に接近。
 残像を囮に振り下ろされた爪を躱しつつ、得物の魔導蒸気式旋棍を顎をすくい上げるように真下から一気に振り上げるも、寸前で軽くバックステップを踏んだ斬り裂き魔に躱された。
「ギシャアア!!」
 斬り裂き魔の雄たけびと共に虚空に召喚された150を超える血塗られた刃が、至近距離からバラバラな軌道を描きながらハルマに迫る。
 その刃の動きをハルマはひとつひとつ見切りつつ、己に直撃しそうな刃を魔導蒸気式旋棍で受け流しつつ、零にならって数字を口にしつつ挑発。
「おい、貴様は何番だ。8番か?」
 実は数字は極めて適当に選んだものだったが、これが意外な効果を上げることになる。
「ギシャアア!?」
 零の「11」より明確に戸惑いを深くした斬り裂き魔は、血塗られた刃を束になる程に密集させ、ハルマの胴に大穴を開けようと束ごと放った。
 しかし、血塗られた刃の束がハルマを貫くかと思われた瞬間、突然ハルマが姿をくらます。
「ギシャ!?」
 ハルマの姿が見えなくなったことで刃の制御が狂ったか、結果としてハルマの胴に大穴を開けるはずだった血の刃の束は、誰も傷付けることなくバラバラになって金属の地面のみを叩き、甲高い不協和音を奏でていた。
 ハルマが姿をくらまし、斬り裂き魔が見失った隙を、玄信は見逃さない。
(「ライナ殿が嫌う事をこいつも嫌うのか。何か理由はあるんじゃろうが」)
 斬り裂き魔がなぜ「数字」に反応するのか、その理由は気になるが。
「ギシャアアアアア!!」
 そもそも意味の通る言語を発しない斬り裂き魔にその理由を問いただしたところで、明快な理由は得られないだろう。
 ――故に、手札としてある情報のみで、動きを止めるのみ。
「……ライナ殿には申し訳ないが、使える物は使わせてもらうぞ」
 ライナの耳にどうしてもトラウマになる「数字」が入ることを詫びつつ、玄信はあえて斬り裂き魔に接近。
「ギシャアア」
 斬り裂き魔が再び血塗られた刃を生成しようとしたところで、玄信の口が動く。
「おい、11番! ライナ殿には指一本触れさせんぞ!?」
「ギシャ」
 玄信が数字を絡めて呼んだにも関わらず、「11」と何度も呼ばれたためか慣れてしまったらしく、さほど戸惑いを見せぬ斬り裂き魔は、躊躇いなく玄信に再召喚した血塗られた刃の雨を向ける。
 1本1本制御されてバラバラに降り注ぐそれらを見切り、避けられない刃はオーラで絡め取りながら落としてゆくが、明確に玄信に対する殺意が籠められた刃はなお玄信に降り注ぐ。
(「動きは止められておらぬのう……」)
 真正面から玄信の額を狙う刃を拳に集中させたオーラで叩き落とし、接近しようと試みるも、別の刃に連続して狙われてはそれすらままならない。
 流れ弾のように、あるいは意識的に玄信を外されライナに向かう刃は、零が盾で受け止め、間に合わなければオーラを纏った身体を張って受け止めているが、それとて限界はある。

 手数の多い切り裂き魔に対し、零の守りもじり貧になるかと思われたその時。
 風のように姿をくらまし、風のように斬り裂き魔の背後に現れたハルマが、斬り裂き魔の耳元でそっと呟いた。

「ひょっとして、2番とか言うんじゃないだろうな?」

「2番」という数字を聞いた斬り裂き魔の躰が一瞬硬直した後。
「ギャアアアアアアアアアアアア!!」
 斬り裂き魔の喉から迸る盛大な絶叫が、周囲一帯に木霊する。
 ハルマの気配に反応して呼び出された血塗られた刃は、1本たりとも誰も傷つけることなく一斉に地に落ち、金属製の地面と接して甲高い音を次々と立てていた。

 ――できるだけ小さな数字を告げる事。
 これが、斬り裂き魔がライナのトラウマを写し取ったかのように持ち合わせる、致命的な弱点だった。

●小さき数字は勝利への道標足りえる
(「おっと、適当に言ったら大当たりだったか」)
 耳元で斬り裂き魔に小さな数字を告げ、動きを明確に止めたハルマは、そのまま手裏剣を投げて牽制しつつ距離を取ろうとする。
 しかし、牽制のためにわざと甘く投げられた手裏剣ですら、斬り裂き魔は躱す様子はなく、二の腕を浅く斬り裂いた。
 狙いが甘かったため、傷は浅くすんだのだが、その痛みで錯乱状態から回復するかというと……しない。
「ウギャアアアアア!!」
「そんなに数字で呼ばれるのが嫌ですか? 自分も『零』という名前なんですがねえ」
「ギャアアアアアア!!」
 追い打ちをかける意図はなくとも、零が呟いた「零(ゼロ)」という最も小さな「数字」に反応したか、さらに錯乱の度合いを深める斬り裂き魔。
 守りに徹していた零が、攻撃の機を得たりと両手の指先を斬り裂き魔に向けた。
「天よ邪なる力を封じたまえ」
 ――カッ!!
 再生を封じる天からの光が斬り裂き魔に降り注ぐが、錯乱するあまり光すら避けるという発想が浮かばない斬り裂き魔は、全身を光に焼かれのたうち回る。
「お主、もしかしてライナ殿の負の感情か?」
「ギャアアア!!」
 玄信の問いですら、斬り裂き魔はまともに耳に入っている様子はなく、もちろん解を得られることはない。
 しかし、まともに言葉すら聞けぬ程錯乱している今、絶好の攻撃チャンスであることだけは確かだった。
「お主の動き、見切ったぞ!」
 玄信は道着を地面に脱ぎ捨て褌一丁になりつつ、右の拳に気を籠めて斬り裂き魔の頬を力いっぱいぶん殴った。
 ……ユーベルコード発動の為にはやむを得なかったとはいえ、突然男性の裸を見せつけられたライナが顔を真っ赤にしながら玄信から目を逸らしていたが、それを玄信が知るのは後の話。
 いずれにせよ、錯乱し完全に動きを止めた斬り裂き魔が、気を籠められた拳を避けることは叶わず。
 ――ドゴォッ!
「グホォォォ!?」
 斬り裂き魔の頬に玄信の拳が綺麗にクリーンヒットし、斬り裂き魔が大きくよろめいた。
 さらに玄信は斬り裂き魔の気と動きの癖を読んで1歩踏み込み、追撃の左拳を再び頬に。
 ――ガゴォッ!!
「ギシャアアアアアアアアア!!」
 右拳より威力を増した左拳は、頬骨を粉砕しながら、今度は斬り裂き魔を吹き飛ばし、金属の地面に叩きつけていた。
 しかし、追撃はこれだけでは終わらず、零が再度両手の指を向けると、再び光が降り注ぎ、斬り裂き魔の爪や帽子を焼き尽くしてゆく。
「さっきは適当に2番とか呼んだが、ま、実際は何番だろうと関係ない」
 どのみち叩き潰す事に変わりないしな、と嘯きながら、ハルマは一対の魔導蒸気式旋棍を構え、立て続けに乱打。
 頬と二の腕にくっきりと旋棍の痕を刻み込んだ後、ハルマは至近距離でがむしゃらに振り回される爪を避けながら手裏剣を投げつつ距離を取り、再度残像と共に撹乱していた。

 零と玄信、そしてハルマの3人の連携は、斬り裂き魔に大きなダメージを蓄積することに成功していた。
 ――そして、次の猟兵に更なる追撃を任せ、バトンタッチすることになる。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

真宮・響
【真宮家】で参加

ライナか。これからアンタをライナと呼ぶよ。どうやら扉の先の辛い出来事を思い出したみたいだが、アンタが扉の先に戻る覚悟を決めたならば、アタシ達はライナの決意を全力で手助けするよ。

敵はやたらと手数が多いね・・・細かい戦略を立てるのはアタシ達向きじゃないから、素直に手数で押しこもうか。【オーラ防御】【残像】【見切り】で刃の攻撃を凌ぎつつ、【二回攻撃】【串刺し】で光焔の槍で攻撃。奏と瞬と協力して一斉攻撃を掛ける。ライナの道行きにアンタはいらないんだよ!!さっさと消えな!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

ライナさんですね!!本当のお名前がやっと呼べますね。ライナさんは戦友ですし、知り合いの親しいグリモア猟兵さんの頼みもあります。全力で貴方の本懐が遂げられるよう尽力しますね。

敵は一流の殺戮者。その手数の多さが脅威ですね・・キーワード考えるとか苦手ですし、素直に力押ししましょう!!【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で刃をきっちり凌ぎながら、【二回攻撃】で疾風の矢で攻撃します!!単体の相手に3人で圧倒的物量攻撃は卑怯かもですが、斬り裂き魔のような相手は即刻倒した方がいいですから。手を抜いていい相手ではありません。さあ、道を開けて貰いますよ!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

ライナさんですね。これからライナさんとお呼びします。確かに扉の先には辛い過去を経験した場所があるようですが、貴女が扉をくぐるのを決めたならば、僕らはその決意を支えるだけです。

切り裂き魔は一度交戦経験がありますが、その攻撃は容赦なく、熾烈です。戦況を支配される前に手を撃ちましょうか。【オーラ防御】【第六感】で刃の攻撃を凌ぎながら、【高速詠唱】【多重詠唱】で氷晶の矢を撃ちます。敵が圧倒的手数で攻撃するならこちらはそれを上回る手数で。ライナさんの邪魔はさせません!!


●刃と槍、風と氷の豪雨が降り注ぐ戦場で
「ライナさんですね!! 本当のお名前がやっと呼べますね」
『アリス』――ライナの本当の名を知った真宮・奏が、全く裏表のない純粋な笑顔でライナに呼びかければ、ライナもほんの少しだけ気恥ずかしそうに頷いて。
 真宮・響や神城・瞬も、軽く微笑みながらライナの名を呼んでいた。
「ライナか。これからアンタをライナと呼ぶよ」
「ええ、僕もこれからライナさんとお呼びします」
「ありがとう」
 3人から本当の名を呼ばれたライナは、軽く会釈をするにとどめる。
 ――今は、じっくり話をしている余裕は、ないから。
「どうやら扉の先の辛い出来事を思い出したみたいだが、アンタが扉の先に戻る覚悟を決めたならば、アタシ達はライナの決意を全力で手助けするよ」
「確かに扉の先には辛い過去を経験した場所があるようですが、貴女が扉をくぐるのを決めたならば、僕らはその決意を支えるだけです」
 ライナを守るように立ちながら目的を告げる響と瞬に、ライナは何も答えない。
 しかし、その瞳に宿る決意が揺らいでいないのは、響も瞬も、そして奏も感じ取っている。
「ライナさん、全力で貴方の本懐が遂げられるよう、尽力しますね」
 にこりと笑い、ライナをかばうように立ちはだかった奏の目の前から、金属の爪が打ち鳴らされる甲高い音が鳴り響いた。

 ――その音の主は、ずっとライナを追い続けて来たであろう、切り裂き魔。

「キシシシッシシシ……!!」
 切り裂き魔は、既に他の猟兵等に斬られ、穿たれ、殴られ、満身創痍。
 だが、『アリス』――ライナを殺すべしとの意はへし折られていない。
「キシャアアアアアア!!」
 雄叫びとともにライナに対する殺人衝動をさらに強く、強く抱き。
 その衝動を150を超える血塗られた刃へと変換し、一斉に背後のライナに向ける。
 その刃の銀と紅の圧力に、交戦経験のある瞬の背中に冷や汗が一滴伝い落ちた。
「切り裂き魔は一度交戦経験がありますが、その攻撃は容赦なく、熾烈です」
 それでも冷静に、静かに告げられた経験談に、奏と響が頷く。
「はい、敵は一流の殺戮者。その手数の多さが脅威ですね」
「ああ、やたら手数が多そうだ……」
 念力で自在に操れる多数の刃と、無敵の殺人道具を操り、確実に『アリス』を仕留めようとするその様は、まさに『切り裂き魔』の名に相応しい振る舞い。
 手数を頼みに攻め、斬り裂き行為に愉悦を覚える悪趣味な敵に対し、真宮家が選んだ戦術は――
「……細かい戦略を立てるのはアタシ達向きじゃないから、素直に手数で押しこもうか」
「キーワード考えるとか苦手ですし、素直に力押ししましょう!!」
 ――弱体化なしの、手数を頼みにした力押し戦術。
「戦況を支配される前に手を撃ちましょうか」
 ――すなわち、相手に主導権を握られる前に逆に主導権を握り、押し込む作戦。
 ならば、まずは血塗られた刃がライナを穿つ前に、先制するのみ。
「そうだな……さあ行くよ!! 避けれるものなら避けてみな!!」
 瞬の言に頷いた響が、遥か上空の一点を指差し、一気に腕を振り下ろした。

 ――ドドドドドドドド!!

 響の指先に導かれるように、425本の光の槍が空高くから一斉に光の豪雨の如く金属の地面に降り注ぐ。
 光の槍は、次々と切り裂き魔の胴や四肢を貫き、足を焼き、手の爪を高温で溶かしていった。
「ギシャアア!!」
「まだまだです! さあ、道を開けて貰いますよ!!」
 響に続く形で奏がシルフィード・セイバーを横薙ぎに振るい、400を超える風の矢を生み出し、一斉に斬り裂き魔に発射。
 風の矢は風切り音を立てながら次々と切り裂き魔の全身に突き刺さり、一瞬だけ鎌鼬を発生させ、体表に無数の切り傷を刻んでゆく。
 単体の相手に3人で圧倒的物量攻撃は卑怯かもしれないが、全身を狂気と殺意で固めたような相手は即刻倒したほうが良いから、手は抜けない。
「ライナさんの邪魔はさせません!」
 疾風のように空を切り裂く風の矢を後押しするかのように、さらに瞬が振りかざした六花の杖の先端から放たれた400を超える氷の矢が斬り裂き魔の全身を容赦なく貫き、凍らせる。

 ――数には数で。
 ――力には力で。
 ――そして、殺意にはそれを上回る覚悟と戦意で。

 光と風、氷の豪雨で、切り裂き魔に先んじて圧倒的な火力で一気に押しつぶす真宮家の作戦は功を奏し、切り裂き魔は全く動けない。
 もし矢の雨が途切れても、響と奏が再度光の槍と風の矢を召喚して再び押し込めば、切り裂き魔は手の爪で顔をかばいながらじりじりと後退するしかできない。
 切り裂き魔が召喚した血塗られた刃は、3属性の槍と矢でそのほとんどが撃ち落とされるが、それでも運よく残った数本の血塗られた刃が、ライナを追跡しその命を奪うために空を切り裂くように飛ぶが。
「ライナさんには傷ひとつつけさせませんよ!」
 得物をエレメンタル・シールドに持ち替えた奏がしっかりと不規則な射線を遮り、血塗られた刃を盾で絡め取るように受け止めた。
 響も瞬にも同じように血塗られた刃が飛ぶが、2人とも軌道を見切って赤と銀のオーラで絡め取り、決して己が身体に届かせることはなかった。

 ――戦況を操る糸は、真宮家の手にのみ、握られていた。

「すごい……」
 光が煌めき、風が切り裂き、氷が穿つ三重奏。
 三属性の集中豪雨の美しさに、思わず魅入ってしまうライナ。
 だが、それだけの集中豪雨を、集中砲火を受けても、まだ切り裂き魔は倒れない。
「ギシシシシ……」
 爪を溶かされ、全身穿たれ貫かれても、まだ切り裂き魔の足は地から離れていなかったのだ。
「まったく、ここまで来ると執念だね」
「キシシ……」
 呆れるような響の呟きに、言語にならぬ声と共に溶けた爪を打ち鳴らし、答えようとする切り裂き魔。

 ――だが、その執念が折られる時も、遠くはない。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

サフィリア・ラズワルド
POWを選択

私と……ライナさんは似てる所が多い、私もある目的のために施設で育てられた、呼ばれることはあまりなかったけど数字も当てられてた、施設を失って一人になった、違いは目的を知らされていなかったことかな?

彼女に聞こえる可能性があるので、あえて弱点は気にせず行きます。前と同一の個体じゃなさそうだけどちょっと後悔してたから会えて嬉しいです。【竜の侵蝕】で敵を狩りに突撃します。痛みなんて気になりません、だって目の前の餌を狩ることしか頭にないから、喰らいついて離れません。

私には数字以上に呼ばれた呼び名があるんです。敵からも味方からも“竜擬きの化け物”ってよく呼ばれてました。

アドリブ協力歓迎です。


●似た者同士であっても、友達だから
 他の猟兵が無数の矢で切り裂き魔を追いつめている頃。
(「私と……ライナさんは似てるところが多い」)
 ライナの告白を聞いたサフィリア・ラズワルドの胸中に到来する想いは――既視感。

 ――ある目的のために施設で育てられ。
 ――呼ばれることはあまりなかったが、数字も当てられていて。
 ――そして……施設を失い独りになって。

 あの頃のサフィリアは、己が施設で育てられていた目的を知らされていなかったのだけど。
 それでも、名前ではなく数字で呼ばれたことのある記憶は、確りと残っている。
 ――だから、その記憶を、ライナに伝えようとするのだけど。
「ライナさん、私も数字で呼ばれたことがちょっとだけあるの」
「あなたも……?」
 友達だと言ってくれたサフィリアからの告白に、やや戸惑うライナ。
 しかし、サフィリアの顔は俯き加減になっており、その目はライナを見ていない。
 ――見て、いられない。
「だけど、私には数字以上によく呼ばれた呼び名があるんです」
 サフィリアがぽつりと零したその名は――

 ――“竜擬きの化け物”

 一瞬、ライナが声を失い、息を呑む音が、サフィリアの耳にやけに大きく響く。
 敵からも味方からも、ヒトとして見られていないような呼称。
 それは、暗にサフィリアは実験体であると常に突き付けているようで。
 ……だからこそ、サフィリアはライナを直視できなかった。
 しかし……。
「……今はその名で呼ぶ人はいないでしょう?」
「え?」
 凛としたライナの声に、サフィリアは顔を跳ね上げ、ライナの顔を覗き込む。
「あなたが過去にどう呼ばれていようが、私は気にしないわ」

 ――暗殺者たちとの戦いの時、「何と呼ぼうか」と聞かなかったでしょう?

「――――!!」
 驚いて大きく目を見開くサフィリアを見つめるライナの顔は、どこまでも穏やか。
 ――サフィリアは、唯一『アイン』とは呼んでいないのだ。
「だから、私も気にしない。これでおあいこよ」
「ありがとう……」
 サフィリアは、滲む涙をそっと拭っていた。

「キシャシャ!!」
 猟兵たちに痛めつけられ、満身創痍になりながらも、まだ『アリス』殺害を諦めきれぬ切り裂き魔。
「前と同一の個体じゃなさそうだけど……」
 ライナと初めて出会ったデスゲームの場で別の切り裂き魔と遭遇した時のことは、ちょっと後悔している。
 今、目の前にいる切り裂き魔は、デスゲームの時の個体とはおそらく別の個体だが、それでも会えたのはちょっと嬉しかったり。
(「友達に聞こえるかもしれないから、あえて弱点にはこだわらないけど」)
 その代わり、前の猟兵に倣って、大幅に強化した攻撃力と耐久力を持って友達を苦しめる切り裂き魔を屠ろう。
 ――ゆえにサフィリアは、竜の力を解放する。
「こっチハ仲間……あっチは……獲物ダ……」
 完全なドラゴンの力を身に宿し、手足に爪を、口内に牙を生やし。
 理性の代わりに獰猛な本能を瞳に宿し、目の前の切り裂き魔を……『餌を狩る』ことだけを考え、突撃。
「キシャシャシャシャ!」
 我武者羅に突撃するサフィリアを見て、切り裂き魔は大振りのナイフを無敵の殺人道具として召喚、そのままサフィリアの右腕を抉るように突き立てる。
 竜の力を宿すとはいえ、ナイフから激しい痛みが伝わっているはずだが、餌を狩ることしか頭にないサフィリアに痛みは関係ない。
 そのまま、無造作に左腕の爪を振り下ろした。

 ――ザシュ!!

「ギシャアアアアアア!!」
 無造作に振り下ろされた爪が、深々と斬り裂き魔の胴を切り裂き。
 続けて何気なく蹴り上げた足の爪が、斬り裂き魔の急所を深々と穿つ。
「ギシャ!?」
 急所を穿たれた激痛に痛みに怯む斬り裂き魔を、さらに容赦なく攻め立てるサフィリア。
 切り裂き魔が離れようとしても、決して離さず、爪と牙で食らいつき。
「ギシャアアアアア!!」
 切り裂き魔が断末魔の叫びを上げようが、決してその爪と牙を止めるようなことはしない。

 やがて、サフィリアの牙による噛みつきが切り裂き魔の喉笛を大きく切り裂き、大振りの爪の連撃で切り裂き魔の身体を地面に叩きつける。
 それが、止めとなった。

●『アリス』逃がさぬ斬り裂き魔の執念
 喉笛を斬り裂かれ、金属の地面に溶けた爪とともに力なく横たわる斬り裂き魔を、サフィリアとライナはそろって見下ろす。
「ギシシ……ヒュー……」
 声にもか細い呼吸音が混ざり始めていては、おそらく長くはない。
「トモダチ……マモル……」
 完全に命脈を断ち、骸の海へと還すために、サフィリアが再度左の爪を振り上げたその瞬間、サフィリアの耳に入ったのは――

「アリス……ニガサヌ!!」

 ――この切り裂き魔が初めて発した、明瞭な言葉。

「!?」
「しゃべった!?」
 サフィリアが爪を振り上げたまま止め、ライナが驚愕したその瞬間、

 ――パアアアアアアアン!!

 力なく横たわっていた斬り裂き魔の全身が一瞬で膨張し、破裂。周囲に乳白色の煙を巻き散らす。
 斬り裂き魔自体が、この金属の世界から『アリス』を逃がさぬための生きた『罠』だったのだ。

 サフィリア達が慌てて煙から逃れようにも、不意打ち同然で発動した罠から逃れるにはあまりにも遅く。
 ――ライナとサフィリア達猟兵を、乳白色の濃い煙が包み込んだ。
大成功 🔵🔵🔵


第3章 冒険 『幸せな誘惑』

POWこれは夢だ! 自分をつねったりはたいたりして、力ずくで正気に戻る
SPD種も仕掛けもあるんだろう! 幻影を見せている罠を探し出し、解除する
WIZこれは現実じゃない! 現実にはありえない部分を指摘し、幻影を破る
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幸福な幻影の誘惑を打ち破れ
 気づけば、あなたは乳白色の濃い煙に包まれた空間で、独りになっていた。

 周囲を見回しても、ライナや猟兵達の姿はない。気配すら感じ取れない。
 思いっきり手を伸ばしても、すぐ傍にいたはずの戦友や家族に触れることすら、かなわない。
 どうやら、何らかの理由で空間ごと隔離されてしまったようだ。

 ――突然、目の前の風景が変わる。

 目の前に広がる風景は、あなたの心に秘められた「幸福」な光景。
 しかしそれは、圧倒的な現実味を伴う「幻影」。

 幸い、あなたは事前にグリモア猟兵から罠の存在を示唆されていたため、心の準備はできている。
 故に、目の前に広がる光景が「幻影」であると気づき、打ち破って抜け出すことは難しくないだろう。
 目の前の幻影を打ち破れば、乳白色の煙は一瞬で晴れ、幻影に囚われている他の猟兵の姿が見えるようになる。そうなれば、他の猟兵に助けの手を差し伸べられるだろう。

 ……問題は、幻影の罠の存在を知らなかったライナだ。

「……え?」
 幻影から声をかけられたのか、驚いて後ろを振り向くライナ。
「ああ、ああ……よかった、よかった……!!」
 ライナは大きく目を見開き口を覆い驚きつつ、感嘆の涙を流し始めている。
「みんな、みんなこの世界に辿り着いていたの……無事だったのね……よかった……」
 涙を流しながら喜ぶライナは、いつの間にか辿り着いたはずの「自分の扉」に背を向けている。
「でも、どうやって……え、この扉をくぐって?」
 背後の「自分の扉」を指差すライナの表情は、どこか納得したそれ。
「え? 私はもう、戦わなくていいの?」
 幻影に何か示唆されたか、こくりと頷くライナ。
「ええ、みんなここにいるなら……私もこの世界に残るわ……」
 両手をだらりと下げ、「自分の扉」から離れるようにふらふらと歩きだすライナの手からは銀のナイフが滑り落ち、地面と接して乾いた音を立てるが、ライナはそれに気づかない。

 徐々に「扉」から離れるライナの瞳からは、「自分の世界に帰る」強き意志を秘めていた光が少しずつ失われていく。
 この光が完全に消えた時、ライナは「仲間とこの世界で暮らす」幻影に囚われたまま抜け出せなくなってしまい、幸福感に満たされたまま、無惨にオウガに殺されてしまうだろう。

 ――そうなれば、この1年の苦労は、全て水泡に帰してしまう。

 オウガの仕掛けた悪辣な罠を破るために。
 ライナを幻影の呪縛から解き放つために。

 猟兵達は、各々の幸福な幻影に立ち向かい始めた。


※マスターより補足
 第3章は「各々の幻影を打ち破る」パートと、「幻影に囚われたライナを救う」パートの二部構成となります。
 この章から参加される方は、グリモア猟兵に転送された直後に乳白色の煙に包まれ、いきなり分断された、とします。

●前半「各々の幻影を打ち破る」
 全員、強制的に乳白色の煙に包まれ、「幸福な幻影」を見せられます。
 プレイングで各々見せられる「幸福な幻影」の内容を指定し、それを打ち破る術を記してください。
 前述の通り、猟兵達はグリモア猟兵から事前に罠の存在を示唆されておりますので、幻影を打ち破ること自体は難しくありません。
 見えぬ力で全員分断されておりますので、原則個人で抜け出してもらうことになりますが、早く幻影から抜け出した猟兵が他の猟兵の手助けをすることは可能です。(合わせプレイングでの参加をお願いします)

●後半「幻影に囚われたライナを救う」
 各々の幻影を打ち破ったら、幻影に囚われているライナに干渉できるようになります。
 ライナが見ている幻影の内容は、ライナの台詞から察していただいて構いません。
 その上で声をかけるなり、腕をつねるなりして、ライナが幻影を打ち破る手助けをしてあげてください。
 もし、ライナ救出後にやりたいことがございましたら、是非その旨を記してくださいませ。

 ちなみに、ライナにあえて声をかけず、自分の幻影を破ることに専念するプレイングも可能としますが、誰もライナに声をかけない場合、ライナは幻影に囚われたままオウガの群れの中に足を踏み入れてしまい、殺されてシナリオ失敗となりますのでご注意ください。

 後半のライナ救出パートにおける描写の都合上、全員一括して採用し、執筆するため、誠に勝手ながらプレイング受付期間を指定させていただきます。

 プレイング受付期間:8月7日(金)8:31~8月9日(日)いっぱい
 リプレイ執筆期間 :8月8日(土)夜~8月10日(月・祝)いっぱい

 ――それでは、良き幻影との邂逅と脱出を。
幽遠・那桜
予め聞いていたけど、私に幸福な幻影なんて……
……そう、思っていたけど。

誰かが、いる。誰か分からない。知らない男の子のはず。でも、……とても、懐かしい。
ずっと、ずっと昔で、知ってるの……?

…………ごめんね。私、行かないと。
あなたのことは、また思い出すから。
私が桜の精になる前、知った人なのかな……

そんなことを思いながら、ライナに駆け寄るよ。
ライナ、しっかりして。それは幻。
……なかなかしぶといなぁ。
ねぇ、ライナ。帰る道間違ってるって。
こっち見てない……怒っていい?

UCでライナの動きを止めて、頬を軽く叩く。
気付くまで徐々にスピード上げるね。つまり往復ビンタ。
あまり痛くしてないけど?
ほら、扉はこっち。


サフィリア・ラズワルド
POWを選択

見えたのは施設の皆が誰一人竜になっていない世界、でも私の竜になる能力が消えていないならこの幻影は幸福でもなんでもないただの夢だ。

竜になって幻影から抜け出してライナさんの元へ

この能力は人の寿命を代償に発動するものなの、私はいつかこの姿から戻れなくなる、その時に記憶が残るのか理性がなくなるのかわからない、でも私は嘆かない、望んだ運命ではないけど私は私、その事実は変わらないから。

だから貴女も思い出して、何故元の世界に戻ろうとしたのか何をしようとしたのか。

無事に幻影から抜け出せたらライナさんに手を差し出します。

『行きましょう、また幻影が見えそうになったら何度でも引き戻しますから』


アハト・アリスズナンバー
アドリブ協力歓迎
開かれた自分の扉。その先には自分の世界。
これは私の夢。いいえ。正確には私でない私の――オリジナル・アリスの夢ですね。
彼女は扉から帰るのに失敗した。共に同じ世界から来たもう一人のアリスだった博士が、その遺体を持って扉を出たのですから。
この幻惑に対して【封印を解く】を応用して幻影を解除します。

――ライナ。貴方に会わせたい人がいます。
この扉を通れず死んだ私のオリジナルです。
UCを発動。

【破魔】で幻影を打ち消しながら、ライナへ伝える。
どうか自分を待っている人を思い出して。貴方はまだ未来へ進むべきよ。
もしも、元の世界で助けてほしい事があったなら、何時でも願って。
私達は、駆けつけるから。


真宮・響
幸福な夢、か。アタシが夢見る幸福・・・

夕暮れ、野営をする事になった草原。夫の律と奏が剣の稽古をしていて、アタシと瞬が夕飯の準備をしている。それがアタシの理想。

でも違和感にはすぐ気づくよ。夫の律は11年前に死んでるし、直接会った事のない律と瞬が一緒にいるのも在り得ないからねえ。竜牙で幻影を斬り裂いて脱出。

ライナはどうやら失われた大切な人の夢を見てるようだねえ。悪いけど現実は厳しい。失われたものは二度と戻らない。律が二度と戻って来ないように。現実をみるんだ。今までの努力を一時の幻で無駄にするつもりかい?少し手荒だがライナの頬にビンタを一発。アタシたちはライナが扉をくぐれるように手助けに来たんだ!!


真宮・奏
幸福な夢、ですか。

お父さんが生きていて、剣の稽古を付けてくれて、頭を撫でて上達を褒めてくれることでしょうか。歴戦の戦士だけあって、お父さんはとても厳しい人でしたが、良いところはちゃんと褒めてくれました。いつも不愛想なお父さんが笑顔になると私も嬉しくなったものです。

ただ、11年前に死んだお父さんが今の私の目の前にいることはないので、すぐ信念の一撃で幻影を斬り裂いて脱出します。

今ライナさんの見ている夢が偽りだと言う事はすぐ分かります。貴女は一年間、扉を探し続け、辛い事が待って居ようと扉をくぐることを決めました。一時の夢で覆すことは私には受けいられられません!!腕をつねってでも戻って貰います!!


神城・瞬
幸福な夢、ですか。

やっぱり里の皆と両親が生きていて、戦場から帰って来た後の宴を催しているところですか。そこには皆に料理を運んでる僕もいる。

失われた光景、在り得たはずの現在。でも里の皆も両親もいない。氷晶の槍で幻影を突破。

ライナさんの幸福な夢。ある意味それは僕のと似ている。大切な人が生きていたら、一緒にいたいのは良く分る。でも違うんだ。ライナさん、貴女は決めたはずだ。大切な人がいない世界に戻ると。それは大切な人がいない事を受け入れる、という事だ。辛いだろうけど、現実を見て欲しい。僕は貴方の本懐を遂げさせる為に来た。それを最後まで責任持って果たそう。必死にライナさんに呼びかける。


桜井・夕月
助けないとね

自分のは何とかなるって思っている
【WIZ】
皆でのんびり家でだらだら、平和な日常の幻影を見るかと思います
まぁ、居ないはずの人間が居るのはおかしいし、
愛用の武器が無いのは困るんだけどな!!
こうなる為に戦っているだからこれは幻影、少なくとも今ではない!といった感じで論破していきたい

誰も拾わないならナイフを拾っておこうかな
これで戦い続けろとは言わないけど、武器って大事だよ
なんであれ使える力と覚悟があるのは結構大きい
で、どうしてそれを持ったのかは忘れないで欲しいなって
「ねぇ、ライナさん」
数字でないあなたである証明はこの世界で成しえるのかな?
残酷な事かもしれないけど、ごめん、選んで

アドリブ歓迎


●忘れし記憶に根付いているのは、確かな絆か――幽遠・那桜
 乳白色の煙に囚われたとしても、那桜は慌てることなく、落ち着いていた。
(「あらかじめ聞いていたけど、私には幸せな幻影なんて……」)
 見えない、と思っていたその時、目に入った光景に那桜は軽く目を見開いた。

 ――誰かが、那桜に向けて手を振っている。

 那桜がそっと近づいてみると、いたのはひとりの男の子。
 那桜にとっては「誰かわからない」男の子なのだけど、記憶のどこかに引っ掛かるから、どうしても目が離せない。

(「……とても、懐かしく感じる」)
 ――これは、ずっとずっと、昔の記憶だろうか?

 男の子は笑顔で那桜に手招きするが、しかし那桜は足を止め小さく首を振り。
「…………ごめんね。私、行かないと」
 小声で謝り、男の子に背を向けて。
「あなたのことは、また思い出すから」
 男の子を視界から振り払い、那桜は駆け出すのだけど。
どうしても、彼の存在が脳裏から振り払えない。
(「私が桜の精になる前、知った人なのかな……」)
 桜の精に「転生」する前の記憶は、那桜にはない。転生する時、過去の記憶は全て消えてしまうから。
 男の子の存在を忘れようとすると、なぜか記憶の海から首をもたげてくるのは、那桜が「嫌いなもの」。

 ――刃の音。
 ――血塗れた刃。
 ――そして、暗闇。

 それが指し示す意味は、いまだ那桜にはわからない。
(「なぜ、私は「嫌い」なのだろう……?」)
 その意味をぼんやりと考えながら、那桜はライナに近づくため駆け出した。

●誰一人竜になることのない世界――サフィリア・ラズワルド
 サフィリアを呑み込んだ乳白色の煙が徐々に晴れるにつれ、目の前に現れたのは――かつてサフィリアがいた実験施設。
 そこでは、誰もが竜になることなく、人間として暮らしていた。

 ――だが、本当にそうなのか?

 サフィリアにとっては、心のどこかで「あってほしい」光景ではあるのだけど。
(「私の竜よ、私の人間を喰らって完全な者となるがいい」)
 それでも念のため、幻影の子供たちに聞こえないよう、そっと言の葉を呟く。

 ――竜にならなければ、今見ている風景は幻影ではないかもしれないのだから。

 しかし、サフィリアの身体は……淡い期待に背いて銀竜へと変貌する。
(「ああ、やはり」)
 微かな落胆と共に、サフィリアは確信する。

 ――これは……幻影。

「私の竜になる能力が消えていないなら――」
 意を決したサフィリアが、鋭い爪で目の前の実験施設の幻影を切り裂くと、たちまち乳白色の煙は晴れる。
「――この幻影は、幸福でもなんでもないただの夢」
 自身の能力を持って幻影を破り、サフィリアは竜の姿のまま、ライナの元へと駆け出した。

●それはオリジナル・アリスの『最期』――アハト・アリスズナンバー
 ――開かれた自分の扉。
 ――その先に見える、自分の世界。

(「これは、私の夢……いいえ」)
 煙の先に見えた風景に、アハトは小さく首を振る。
 量産型として生を受けた自分に、「自分の扉」を潜った記憶は、ない。

 つまり、これは、アハトでないアハトの夢。
 ――オリジナル・アリス、「アリス・グラムベル」の夢だ。

(「彼女も「自分の扉」を探していた」)
 ――しかし、彼女は見つけた扉を潜れなかった。
(「なぜなら、その扉はアリス・グラムベルの扉ではなかったから」)
 その扉の持ち主は――アリス・グラムベルではない『アリス』。
 すなわち……『アリス・グラムベルと共に同じ世界から来た、もう一人のアリスだった博士』だった。

 この世界に招かれた「アリス」ひとりひとりに「自分の扉」は存在する。
 逆に言えば、生きて「扉」を潜れるのは、持ち主ひとりだけ。

 だから、アリス・グラムベルは扉を潜れず帰るのに失敗し。
 ――『博士』がアリス・グラムベルの遺体を持ち、扉を潜って帰還した。

 これが真実なのか否か、アハトには判別がつかない。
 だが、確実なのは、これが幻影であり、アハトを捕らえるための罠であること。

 アハトは己を閉じ込める乳白色の煙の封に干渉し、強引に解除する。
 みるみるうちに消える煙と共に、アリス・グラムベルの姿も、博士の姿もゆっくりと薄れていった。

●理想の家族の風景は、二度と手に入れられぬもの――真宮・響
(「幸せな夢、か」)
 家族と離ればなれになった響の目の前に広がったのは、響が渇望してやまない家族生活の一端。

 ――ある日の夕暮れ時。
 ダークセイヴァーの一角にある穏やかな草原で、野営をすることになった、真宮家の一家『4人』。
 草原では、響の夫、真宮・律と、娘の真宮・奏が剣のけいこをしていて。
 響はそれをほほえましく眺めつつ、義理の息子の神城・瞬とともに夕飯の準備をしている。

 ――それは、響が「夢見る幸福」であり、「理想の家族」の姿。

 ……だが。
「違和感にはすぐ気づくよ」
 どこか落胆した、鋭き怒りを込めた言の葉の刃で、響は目の前の理想を一刀両断。
 これはどこまでもリアルで、どこまでも理想の光景ではあるのだけど。
 たったひとつだけ、しかし致命的なほころびが存在する。

 ――夫の律は、11年前に響の目の前で死んでいるのだ。

 ゆえに、直接会ったことのない夫と義理の息子が一緒にいるのは、決してあり得ない光景。
 たとえそれが理想であっても、まやかしである以上は切り開かなければならない。
「この一撃は竜の牙の如く!! 喰らいな!!」
 ブレイズランスを大きく振りかぶり、幻影の家族を一刀両断した響は、現実へと戻り、駆け出した。

●厳しくも優しい父の記憶を胸に――真宮・奏
「幸せな夢、ですか」
 乳白色の煙で家族と分断された奏も、母と同じような幻影を目の当たりにしていた。

 ――ある日の夕暮れ時、ダークセイヴァーの片隅の草原で。
「どうした、奏! 腰が入っておらん!!」
 奏に剣のけいこをつけてくれているのは、奏の父、律。
 歴戦の戦士だけあって、とても厳しい父。
 毎日のけいこも、実戦さながらで熾烈を極めていた。
 正直、辛い時もあったけど。
「よくがんばったな」
 けいこが終わると、いつも律は奏の頭を撫でて褒めてくれるから、頑張れる。
 奏にとって、父の笑顔を見ると自分も嬉しくなって。

 しかし、奏は首を横に振り、目の前の幸福な光景を否定する。
「11年前に死んだお父さんが、今の私の目の前にいることはないですから」
 そう、父は、11年前に奏の目の前で死んでいるのだ。

 ――死んだ父が、今けいこをつけてくれるなんて、あり得ない。

 だから、奏は躊躇なく父から教わった剣技を「幻影の」父に振るう。
「信念を貫く一撃を!!」
 アクア・セイバーで容赦なく切断された幻影の父は、かき消えるように奏の前から消え、奏の意識は一瞬にして金属に囲まれた世界に引き戻された。

●失われし里と両親の思い出を胸に――神城・瞬
(「僕にとっての幸せな夢は、やはり……」)
 瞬に見せられた幻影は――響と奏の母子に保護される前の光景。

 戦場から帰って来た民を出迎える、女子供。
 そして、すぐに宴の準備が整い、盛大な大騒ぎが始まる。
 そこには、料理を運んでいる、幼いころの瞬の姿もあった。

 瞬の故郷は、ダークセイヴァーの片隅で、ヴァンパイアと人間が共存していた傭兵集団の里。
 瞬自身も、ヴァンパイアと人間との間に半魔半人――ダンピールとして生を受けた身。

 ――しかし、それはダークセイヴァーにおいては「異端な光景」とみなされる。

 事実、瞬の里は、それを不快に思ったヴァンパイアに襲撃され、滅ぼされた。
 瞬の両親はまだ幼い瞬をかばい……2人とも命を落とし。
 里の民も全て殺され、両親の亡骸の前で呆然としていた瞬を、通りがかった真宮母子が保護してくれなかったら……今頃瞬は死んでいた。

 ――里の民も両親も、既にこの世にはいない存在。
 ――こうして大騒ぎをしているなんて、もうあり得ない。

 それが幸福な光景で在ると理解しても。
 夢である限りは、幻影として惑わそうとする限りは、否定する。
「逃がしませんよ!! 貫いて見せます!!」
 振りかざした六花の杖から降り注ぐ氷晶の槍で、幸福な幻影全てを凍らせ打ち砕く。
 幻影を閉じ込めた氷が破壊された時、瞬の目の前に広がったのは、金属の世界だった。

●求めるのはのんびりだらだら、平和な日常――桜井・夕月
(「助けないとね」)
 1度は戦線から離れた身ではあるけど、やはりライナの事が気になるから戻ってきた夕月。
 再転送後、いきなり煙に巻かれるとは思っていなかったけど、心の準備はできていた。
(「自分のは何とかなるって思っている」)
 心を決めた夕月の目の前に広がったのは、皆でのんびり家でだらだらしている、平和な日常の幻影。
 そこにいるのは、普段自分のお店に出入りしている知己だったり。
 或いは、たまに遊びに来る戦友だったり。
 集まった皆で机を囲みながら料理に手を伸ばし、お茶をすすりつつ。
 ただひたすら、のんびりとだらだらと過ごす日々。
(「おかしい」)
 その幻影が持つ違和感に、直ぐに気づく夕月。
 少なくとも、転送直後、一瞬だけ見えた範囲では、知人は誰もいなかった。
 だから、だらだらしている知人が目の前に居る時点で、既におかしい。
 しかも、ふと手元を見ると、手にしていたはずの愛用の武器が無い!!

 ――明らかに、おかしな点だらけ!!

 違和感だらけの幻影に、しかし夕月はどこか得心いったようにひとつ頷き。
「こうなる為に戦っているのだから、これは幻影」
 力強い否定の意志を持って夕月が断言すると、見る見るうちに幻影が消え、煙が晴れた。
 
 ――少なくとも、今はまだ、手に入れていないから!!

 のんびりと過ごせる日常を手に入れるために戦う少女は、のんびり過ごす幻影を否定し。
 幻影に囚われた少女を救うために、駆け出した。

         *   *   *

 猟兵達は、各々の手段で幻影を切り裂き、否定し、脱出する。
 幻影を脱出した猟兵達の目の前から、乳白色の煙は一瞬にして消え失せ、猟兵達はお互いの姿が認識できるようになっていた。

 ――どうやら、全員幻影から抜け出したようだ。

 しかし、ふらふらとおぼつかない足取りで「自分の扉」から離れるライナの目からは、あの強靭な意志は見られない。やはり、自力では幻影から抜け出せないようだ。
「ああ……みんな、一緒に……」
 完全に幻影に囚われ、徐々に瞳から光すら失われてゆくライナを解放すべく。
 猟兵達は、行動を開始した。

●数字で呼ばれようとも、大切な戦友であり、仲間――ライナ
 ――私が心配している、仲間がいる。
 ――クレイ、ミルズ、リーア、アイラ。
 ――私と年が近い、数字を与えられた仲間たち。
 ――大人たちは、数字でしか私たちのことは呼ばないけど。
 ――私たちは、こっそりお互いの本当の名前で呼び合っていた。

 その仲間たちの姿が、今、目の前にある。
「ああ……ミルズ、リーア」
 両親をヴァンパイアに殺されてこの砦に来た、小さなミルズ。
 異能を見込まれて誘われた、リーア。
「クレイも、アイラも……」
 砦の近くで泣きながら助けを求めてきた、クレイ。
 気が強いが繊細な心で、子供たちの相談に乗っていた、アイラ。

 ――吸血鬼たちに散り散りにされたあの日、私は全員死んだと思って深く絶望した。
 ――でも、みんな、あの扉を潜って、この世界に逃れていたのね。

『ライナ、もう逃げなくていいよ』
『ぼくたちはもう、一緒にいられるんだ。大人達の手の届かないこの場所で』
 目の前でミルズとリーアが手を差し伸べ、クレイとアイラが微笑んで。
「ああ、みんな、一緒に……」
 微笑みながら私を招く彼女たちに、私も精一杯手を伸ばす。
 この手を取れば、私は、もう……。

 ――戦わなくて、すむのかもしれないわね。

●偽りを否定し、真実たる世界に戻したい
「ライナ、しっかりして。それは幻」
 突然響いた那桜の呼び止める声に、ライナは一瞬伸ばした手を引っ込め、足を止める。
「幻……?」
 ――目の前の仲間たちが、幻ですって?
 那桜の指摘に、ライナは一瞬軽く目を見開くも。
 その目はすぐに、幻影に囚われ虚ろと化して。
『こっちにおいでよ、ねえ?』
「ああ……そうよね、今……」
 幻影に深く心を絡め取られているライナは、まぼろしの彼女たちの声の誘いには抗えず、那桜を無視してふらふらと扉に背を向け歩き出す。
「……なかなかしぶといなぁ」
 それでも那桜は諦めず、今度は気持ち大きめの声でライナに呼びかけ。
「ねぇ、ライナ。帰る道間違ってるって」
「…………」
 しかし、ライナは那桜を無視し、無言を貫く。
「こっち見てない……怒っていい?」
 頬を軽く膨らませながら怒りを表す那桜だが、ライナの耳には届かない。

 ライナは、「仲間を心配する」心の隙間を突かれるような幻影を見せられている。
 ――それを偽と、まやかしと証明するのは、並大抵のことではない。

「ライナはどうやら失われた大切な人の夢を見てるようだねえ」 
「ええ、ライナさんの幸福な幻影。ある意味それは僕のと似ている」
 那桜の代わりにライナの行く手を遮るように立ちはだかったのは、響と奏、瞬の真宮家の3人。
 響の声音には、やや怒気が含まれていた。
「悪いけど、現実は厳しい。失われた者は二度と戻らない」
 ――目の前で失われた夫の律が、2度とこの世に戻ってこないのと同じように。
 響の経験を絡めた呼びかけを引き取るように、瞬が続く。
「ライナさん、貴女は決めたはずだ。大切な人がいない世界に戻ると。それは、大切な人がいない事を受け入れる、ということだ」
「ライナさん、貴女は一年間扉を探し続け、辛いことが待っていようとも扉を潜ることを決めました。一時の夢で覆すことは私には受け入れられません!」
 瞬の後を継いで奏も呼びかけるも、それはなぜかライナの心には届かず。
「今までの努力を一時の幻で無駄にするつもりかい?」
 若干の苛立ちと共に、響は手を大きく振り上げる。

 ――パシーン!!

 ライナの頬にビンタを入れる、響。
 それは、ライナに活を入れる為ではあったけど。
「……っ!!」
 ライナはただ痛がるだけで、むしろ響を睨みすらしていた。
「つねってでも戻ってもらいます!」
 構わず奏もライナの腕を強引に取り、指で強くつねる。
 多少手荒だが仕方ないと割り切り、痛みを与えて目を覚ましてもらうつもりだったのだけど、ライナはむしろ奏をも睨んでいた。
 ――その瞳は、光が戻らず、虚ろなままだ。
「痛いわね……やめて」
 奏の手を力強く振り払い、歩きだすライナに、響と瞬が強い口調で叱るように呼び掛ける。
「アタシたちはライナが扉をくぐれるように手助けに来たんだ!!」
「僕は貴方の本懐を遂げさせる為に来た!」
 しかし、ライナの瞳に、あの強き意志が戻る気配は見られない。
 それどころか……。
「あなたたちは失われたというけど、仲間たちは今、私の目の前にいるのよ……?」
 ライナが虚ろな笑みを浮かべながら呟く虚ろな声に、奏たちはそろって言葉を詰まらせる。
 ――致命的な過ちに、気づいてしまったのだ。
「あなた達は嘘つきね。……どいて」
 ライナはこれ以上は無駄とばかりに響と奏を静かに退け、歩きだす。

 ――その歩みは、ますます扉から遠ざかるように。
 ――そして、まぼろしの仲間の元へたどり着くために。

「ライナさん! 辛いだろうけど、現実を見てほしい!!」
 瞬もライナの背中越しに必死に呼びかけるが、真宮家に対し心を閉ざし、さらに瞳から光を失くしたライナには、もはやその声は届かない。
「……マズイね。アタシたち、とんでもない勘違いをしていたのかもしれない」
「ええ、僕たちは既に大切な人たちがこの世にいないという前提で考えていましたが……よく考えればその証拠はありません」
 響の舌打ちを引き取るように、瞬が焦りすら滲ませる口調で「致命的な勘違い」を呟くも、既に遅かった。

 ライナの大切な人が「失われた」と「断定」できる情報は、猟兵の手元にはない。
 そして、その情報は、同じくライナの手元にも、ない。
 もし、仮に大切な人が失われたのが確かな情報であれば、ライナはますます、「幻影の仲間を」渇望するのではないだろうか?

 つまり、ライナの大切な人たちが失われたという前提で説得しようとする限り、その言葉は決してライナには届かない。
 ――むしろ、幻影に深く引き込まれるきっかけにしか、ならない。

 取り返しのつかない事態を招いたと瞬たちが気づいても、手の打ちようはなく。
 ライナの瞳は、すでに奏たちを見なくなり。
 ライナの耳は、すでに響たちの声を拾わない。
「ライナさん……!!」
 改めて奏が呼びかけても、ライナは一切反応せず、ひたすら扉から離れるだけ。
 万事休す――誰もがそう思った、その時。

「十二の時が刻むとき。それはあなたの時間が止まる時」
 那桜の声と共に、灰簾石の短杖の先に現れたいぶし銀の輝きを持つアナログの時計盤から時を止める鎖が放たれ、ライナを縛る。
「ライナ」
 足を止めたライナにつかつかと歩み寄った那桜は、ライナを軽く往復ビンタ。
 ライナが正気を取り戻すまで、徐々に速度を上げてビンタを繰り返し。
「ほら、扉はこっち」
 改めてライナの背を指し示すも、ライナは一切反応を見せない。

 那桜のビンタは、ライナに正気を取り戻させるには至らなかった。
 だが、那桜が時の鎖まで用いて力づくで足を止めて稼いだわずかな時間は、他の猟兵達に逆転の布石を打たせるために十分な時間を与えることになった。

「――ライナ。貴方に会わせたい人がいます」
 鎖に縛られたままのライナの前に静かに進み出たのは――アハト。
「私には関係ないわ」
 ライナはアハトを無視しようとするが、アハトはライナの背で光り輝いているであろう「扉」を指差しつつ、有無を言わさずユーベルコードを発動した。
 ――肉体の操作権限を一時的にオリジナル・アリスに移行。同調開始。
 真の姿の解放したアハトの姿が見る見るうちに別人に……アハトの「オリジナル・アリス」に変わるのを見て、ライナは息を呑み、思わずアハトを見つめる。
「この姿は、この扉を通れず死んだ私のオリジナルです」
「扉を通れず、死んだ……」
 復唱するライナに、アハトは一つ頷き、残酷な現実を告げる。
「ええ、オリジナルは扉を通れなかった」

 ――そもそも、扉の持ち主ですら、なかったのだから。

 アリスラビリンスの各所に存在する扉は「ひとりにひとつ存在」するもの。
 しかし同時に、自分の扉に「他人は入ることができない」。
 だから、博士の扉にオリジナル・アリスは入ることができず――命を落とすしかなかった。
「この扉を潜れるのはあなただけ。どうか自分を待っている人を思い出して」
 アハトのオリジナルの経験とともに、厳然かつ残酷な世界のルールを突き付けられたライナの脳裏に、わずかながらアリスラビリンスで過ごした記憶が呼び覚まされる。

 ――1年にわたり扉を探し続け。
 ――「自分の扉」を潜って元いた世界に帰還した『アリス』たちを見て来た。
 ――だから、私も「自分の扉」を見つけたかった。
 ――見つけて、早く帰りたかった。

「扉の先に、待っている人……」
 ライナがわずかに己が意思を取り戻すとともに、時の鎖が静かに消失するが、ライナは明らかに歩みを止めていた。
 アハトはわずかに微笑みながら頷き、魔を払うように幻影の一部を打ち砕きながら、ライナが歩むべき新たな道を示す。
「ええ、貴方はまだ未来へ進むべきよ」

 ――アハトが示した道は、「未来」という名の不定かつ希望を見出せる道。

「ねえ、この扉は……向こうから潜ってこられるの?」
 道を示されたライナが口にしたのは、確認のための質問。
 しかし、アハトは静かに首を振り、否定する。
「自分の扉」は、アリスラビリンスから元居た世界に戻るしかできない扉なのだから。
「そう……ありがとう」
 アハトに礼を述べるライナの声音には、ほんの少し、力強さが戻っていた。

 ――ライナの瞳に、失われつつあった光が差し込んでいた。

●友達と己が得物に呼び覚まされる「想い」
 アハトと入れ替わるように前に出たのは、銀竜姿のサフィリア。
「サフィリア……?」
 なぜ銀竜姿で現れたのか、友達の真意を測りかねるライナに、サフィリアは前置きすらせずいきなり真実を告げる。
「竜になるこの能力は、人の寿命を代償に発動するものなの」
「寿命……! サフィリア、じゃあ……」
 元に戻って、とライナが口にするより先に、サフィリアはさらに畳みかけた。
「私はいつかこの姿から戻れなくなる、その時に記憶が残るのか理性がなくなるのかわからない」
「そんな……!!」
 友達からあまりにも残酷な現実を突きつけられ、ライナは戸惑いを隠せない。
「でも、私は嘆かない」
「え?」
「望んだ運命ではないけど私は私。その事実は変わらないから」
「私は、私……」
「だから貴女も思い出して、何故元の世界に戻ろうとしたのか、何をしようとしたのか」
「戻りたい、理由……」
 呆然と呟くライナの脳裏に、幻影に呑み込まれ忘れていた想いが蘇る。

 ――なぜ、私は元の世界に戻りたかった?
 ――私は、あの闇の世界で何をしようとしていた?

 サフィリアが身体を張って伝えたことは、ライナの心に少しずつ染み入り、幻影にかき消されそうになっていた想いをよみがえらせる。
 ――大切なのは「かつての」自分がどのような思いを抱き、「今」どうすべきか。

 続いてライナに近づいたのは、夕月。
 彼女は、誰も拾わなかったライナの銀のナイフを、こっそり拾っていた。
 1年にわたり、ライナの身を守り続けてきた、ナイフ。
 しかし幻影に囚われ、いつの間にか落としてしまっていたそれを、夕月はライナの手にしっかりと握らせる。
「私の、ナイフ……?」
「ライナさん、これで戦い続けろとは言わないけど、武器って大事だよ」
「武器……ええ、そうね」
 ――それは、ライナが元居た世界でも、この世界でも戦い続けた証だから。
「なんであれ使える力と覚悟があるのは結構大きい」
 どうしてそれを持ったのかは忘れないで欲しいな、と呟いた夕月に、ライナは軽く笑みを浮かべ頷く。
「ねぇ、ライナさん」
 己が得物のナイフを手にしたライナに、夕月が告げたのは、決定的な一言。

 ――数字でないあなたである証明は、この世界で成しえるのかな?

「…………!!」
 夕月の指摘に、全身を硬直させる、ライナ。
 その一言で、ライナは戻りたい理由を完全に思い出していた。

 ――そう、私は。
 ――数字でないことを証明するために、あの闇の世界に帰ろうと決めたから。

「残酷な事かもしれないけど、ごめん、選んで」
 申し訳なさそうに告げる夕月に、しかしライナは首を振り。
「謝らなくても大丈夫よ……もう、決めているの」

 ――私は「アイン」ではなく「ライナ」であることを証明するために、帰るから。

 夕月にはっきりと告げるライナの瞳には、己が戻る意志が戻っていた。
 そして、ライナは未だ幻影が漂う虚空に向けてはっきりと告げる。

「楽しいひと時を見せてくれて、ありがとう」
 ――それは、一時でも期待を抱かせてくれたことへの、礼。
「でもね、私は探すわ。あの世界であなたたちを。私が私たることを証明できる場所を」
 ――それは、明確に幻影の仲間たちに突き付ける、訣別の意志。
「だからこの世界とはもう、お別れ。私の居場所は、本当の仲間たちがいるあの世界」
 ――それは、はっきりと元居た世界へ帰る意思の表れ。

「じゃあね、残酷かつ素晴らしいこの世界」
 ライナは別れの言葉と共に、銀のナイフを虚空に閃かせ、切り裂く。
 それはまるで、今まで見てきた悪い夢を切り裂き否定し、同時に未来への道筋を己が銀で引くかのような太刀筋だった。

「ライナ、大丈夫?」
 心配そうに声をかけた那桜に、ライナは強い意志を秘めた瞳を向けながら頷く。
「ごめんなさい、私たちの勘違いからライナさんを苦しめてしまって」
 殊勝な表情を見せ謝る奏の後ろでは、響と瞬がバツが悪そうな顔をしていたが、ライナは微笑みながら「気にしないで」と告げていた。
「さあ、行きましょう。また幻影が見えそうになったら何度でも引き戻しますから」
 サフィリアは竜の姿のまま、ライナに手を差し伸べる。
 その後ろで、夕月とアハトも、同意するかのように頷いていた。
「ええ……本当に、ありがとう」
 ライナは差し出されたサフィリアの手を取り、猟兵達と共に「自分の扉」へ歩き出した。

●帰還
「ありがとう、随分と手間をかけさせてしまったわ」
 光り輝く「自分の扉」の前で、銀のナイフを確りと握りしめながら猟兵達に頭を下げるライナ。
 その瞳には、元いた世界に戻っても強く生き抜く、との意思が秘められていた。
「もしも、元の世界で助けてほしい事があったなら、何時でも願って。私達は、駆けつけるから」
 ――届くかどうかはわからないけど、願えばいつか叶うから。
「ええ、そうさせてもらうわ」
 アハトの誓いに、ライナは笑顔を持って答えていた。

「それじゃあ、皆もどうか無事で。……ありがとう」
 ライナは猟兵達に一礼すると、光り輝く扉を潜り、姿を消す。
 然程間を置かず、ライナの「自分の扉」は消失した。

 おそらく、扉の向こうに広がるのは、吸血鬼が支配する闇の世界。
 これからライナを待ち受ける運命は、猟兵達にはわからないけど。

 ――今はただ、彼女の無事を祈るのみ。

 ライナを呑み込んだ「自分の扉」が消滅する時を見計らったかのように、猟兵達の周りを無数の音符が飛び交い始め、大きな転送ゲートを形成する。
「さ、私たちも帰ろう?」
 那桜に促された猟兵達は、転送ゲートを潜り、グリモアベースに帰還した。

 ――いつか、あの闇の世界でライナに再開できる日を夢見て。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年08月11日
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