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宝石鉱山を解放せよ

#ダークセイヴァー #【Q】 #闇の救済者



「働きなさい。労働こそが生きるための道」

 カーンッ、カーンッ、と、ツルハシの音が木霊する山中に、唱うような女の声。
 清らかに澄み渡った聖女の御言葉が、今宵も宝石鉱山の一日の始まりを告げる。

「従いなさい。従属こそが生きるための理」

 純白の衣を纏いし女達が宣われるままに、人々はただ黙々とツルハシを振るう。
 山を崩して産出される血のように紅い原石。それこそがこの地の主が求める宝物。
 彼らの命はただ、それを掘り起こすためだけに酷使され、無慈悲に消費されていく。
 たった一粒の宝石のために、一体どれだけの命が使い潰されたことだろうか。

「捧げなさい。供物こそが生きるための証」

 およそ人を人として扱っていない、劣悪極まる過酷な労働環境。
 だが、それに異議を唱える者はいない。誰もがみな未来をとうに諦めていた。
 逆らいさえしなければ生きていられる。明日よりも今日、今日よりも昨日。
 吸血鬼に隷属することが正しいのだと、そう信じ込まされて、全てを捧ぐ。

 ――今日も奴隷達の血潮を吸ったように、宝石は美しい真紅の輝きを放つ。


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「ヴァンパイアが領有する鉱山の労働者を開放する計画を『闇の救済者達(ダークセイヴァー)』が立てています」
 絶望の闇に覆われたこの世界で、猟兵の活躍により『希望』を取り戻した人々がいる。
 彼ら『闇の救済者達』は今だ絶望に囚われた民衆を救うための秘密組織を築き、世界各地で活動を続けている。そのうちの一つの支援要請が今回の依頼である。

「情報によると件の鉱山では、品質の高いルビーの鉱石が産出されるそうです」
 血のように紅い宝石の輝きに魅せられたか、この地に君臨するヴァンパイアは多くの領民を鉱夫として働かせ、昼夜問わぬ劣悪な労働環境下で宝石の採掘に当たらせている。
 当然、過労や健康被害で倒れる者は後を絶たないのだが、鉱夫達は不自然なほど大人しく過酷な労働に従事し続けている。それは彼らがオブリビオンの洗脳下にあるためだ。
「労働者の監督を行っているのは『光の断罪者』と称される堕落した聖女達です。彼女らは"吸血鬼による支配こそ正義"という洗脳を施して民衆から反抗の意思を奪っています」
 人々の解放を成功させるためには、まずは彼ら自身が解放を望まなければならない。
 そうでなければ密告や妨害によって作戦自体が失敗する可能性が高まり、仮に鉱山を管理するオブリビオンを倒せたとしても、彼らを真に支配から解放したことにはならない。

「そこでまず皆様には『闇の救済者達』と共に宝石鉱山に潜入して、労働者達に反抗の意思を取り戻させて欲しいのです」
 鉱山への潜入はそれほど難しくはない。オブリビオンは新しい(使い捨ての)鉱夫を常に求めているうえ、命令に従っている限りは最低限の生命の保証はされるために、自ら志願してここにやって来る民も少なくないからだ。
 警備体制もどちらかと言えば"内向き"で、外部からの侵入よりも内部からの脱走を防ぐことに比重が置かれている。なので中に入るところまでは特に苦もなく果たせるだろう。
「そこからどうやって人々に反抗心を取り戻させかは皆様次第です。共に汗水流して労働に従事したり、具体的な反抗計画を説明したり……いかにして彼らの信頼と協力を得られるかが、作戦の成功度に大きな影響をもたらします」
 この反抗作戦の準備には、共に潜入する『闇の救済者達』も協力してくれる。戦力としては訓練を積んだ一般人程度の彼らだが、ことオブリビオンの支配に対する反抗心は人一倍なので、猟兵のアイデア次第で労働者達の説得に一役買ってくれるかもしれない。

「作戦がどのような経緯を辿るにせよ、最終的に人々を解放するためには、鉱山を管理するオブリビオンとの交戦は避けられません」
 敵は『光の断罪者』の集団。人数比においては労働者に対してごく少数に過ぎないが、反転した聖者の力による洗脳と破壊的なユーベルコードで強固な支配体制を築いてきた。
「彼女らを全滅させることはこの作戦における必須条件です。もし1人でも逃走を許せば領主の元に報告が行ってしまい、直ちに報復がやって来るのは間違いありません」
 この戦闘には『闇の救済者達』と、説得に成功していれば労働者達も協力してくれる。
 個々の実力は低いため矢面に立たせるような戦術は推奨できないが、人数は敵方よりもずっと多いため、うまく指揮すれば戦いの役に立ってくれるだろう。

「無事に作戦が成功した暁には、解放された民衆に対する支援もお願いします」
 劣悪な環境下で過酷な労働に従事させられてきた人々の窮状は深刻だ。『闇の救済者達』が安全な所まで彼らを保護するにせよ、猟兵からも支援があったほうが良いだろう。
「この作戦が成功すれば、ダークセイヴァーにまたひとつ新たな希望が生まれ、その積み重ねはいずれ大きな戦いに向けた力になるでしょう」
 どうか宜しくお願いします――そう言って説明を締め括ったリミティアは猟兵達を信頼の眼差しで見つめると、手のひらにグリモアを浮かべてダークセイヴァーへの道を開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼はダークセイヴァーにて『闇の救済者達』と共に、吸血鬼が領有する宝石鉱山の労働者達を解放するのが目的となります。

 第一章では『闇の救済者達』と共に鉱山に潜入し、労働者の説得を行います。
 外向きの警備はザルなため、基本的にはなんやかんやで潜入に成功した段階からリプレイが始まります。働いている人々は成人男性から幼い少女まで様々ですが、みな過酷な扱いを受けながらも無気力で、オブリビオンに反抗する意思を失っています。
 彼らをオブリビオンの洗脳から解き放つための活動がどれだけ成功するかによって、以降の章におけるプレイングにボーナスがかかります。

 第二章では鉱山の管理と鉱夫の監督を行う『光の断罪者』との集団戦です。
 1人でも逃走を許せば、そこから領主に報告が届いて報復が行われてしまうため、全滅させることが必須条件となります。
 プレイングで指示があれば『闇の救済者達』や洗脳の解けた労働者も戦闘に参加します(無ければなるべく安全なところに退避しようとします)。

 無事に戦いを終えれば、第三章では解放された人々のアフターケアや『闇の救済者達』との交流を行う日常章となります。
 残された課題と向き合いながら、取り戻された自由と希望を共に味わうことが出来れば何よりでしょう。

 宝石の欲望で人々を囚える鉱山の闇に希望の光を。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『血潮と宝石』

POW   :    労働者たちと共に発掘作業に従事する

SPD   :    効率的な発掘技術などを与え、負担を軽減する

WIZ   :    密かに内情を調査し、反抗の足掛かりを探す

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フレミア・レイブラッド
宝石は確かに価値のある物だけど…虐げられる人々の命に代えられるモノではないわ…。
特に未来ある子供達の命まで使い潰されてるなんて…。


例によって事前にUDCアースで食糧等の解放後の支援物資を補充し、【魔城スカーレット】に格納して出発。

志願者の管理をしてる一般兵クラスや番兵を【魅了の魔眼・快】で魅了して闇の救済者達を手引きしつつ堂々と潜入。
労働者がなるべく一か所に集まる夜等に労働者と接触するわ。
労働者達は【魅了の魔眼・快】【催眠術】で洗脳を上書き、魅了。
自分達がこれまで幾多の吸血鬼達を退けて来た事を告げ、このままでは未来を担う子供まで死の未来しか無い。死の未来を覆しましょうと説得をするわ



「わたしの僕になりなさい……あなたはもう、わたしのトリコ♪」
 真夜中の山中にゆらりと浮かぶ、紅く煌めく一対の視線と甘く蕩けるような囁き。
 フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)の【魅了の魔眼・快】は、宝石鉱山の管理を行う番兵の心をたちまちのうちに奪ってみせた。
「ぁ……どうぞ、お通り下さい……」
 鉱夫を志願してやって来る者の審査を担っていた彼らは、今や吸血姫の虜だった。
 もはや言われるままの彼らを操り、フレミアは『闇の救済者達』を手引きして堂々と宝石鉱山への潜入を果たす。

「宝石は確かに価値のある物だけど……虐げられる人々の命に代えられるモノではないわ……」
 鉱山内の様子は聞きしに勝るものだった。夜中であるにも関わらず山中にツルハシの音が絶えることはなく、生気のない顔をしたやせ細った人々が、代わる代わるに作業を押し付けられ、ヴァンパイアに捧げるルビーの採掘に当たらされている。
「特に未来ある子供達の命まで使い潰されてるなんて……」
 その中にまだ幼い子供までいるのを見て、フレミアは痛ましそうに目を細める。
 だが、オブリビオンの洗脳を受けた人々は自らの境遇を異常と思うことはなく、フレミアや『闇の救済者達』のことも新しい労働者仲間としか見ていないようだった。

「貴方達は騙されているのよ。ここで黙って従っていても未来は無いわ」
 そんな彼らの多くが一ヶ所に集まる、山中の居住エリアまでやって来たフレミアは、つかの間の就寝や休息を取っていた人々に向けて再び【魅了の魔眼・快】を使う。
 視界内の対象全てに効果が及ぶこの魔眼は、魅入られた者の心を強烈な快楽と好意で染め上げる。この力をもって彼女はオブリビオンの洗脳を上書きしようというのだ。

「わたし達はこれまでにも、幾多の吸血鬼達を退けて来たわ」
 催眠術にかかったようにぼうっと手を止めてこちらを見つめ返してくる民衆に、フレミアは凛とした態度で語る。猟兵と『闇の救済者達』の目的とこれまでの戦果を。
 ヴァンパイアの支配を打倒するという考えは、隷従を強いられてきた人々には無かった。ただの人間にまさかそんな事が可能だとは夢にも思わなかったに違いない。
「このままでは未来を担う子供まで待っているのは死の未来しか無いわ。わたし達と一緒に、死の未来を覆しましょう」
 フレミアは彼らに待ち受ける現実と夢想すらしなかった可能性を語り、明日のための蜂起を促す。魅了にかかった人々にその言葉は甘い呼びかけとなり、久しく抱くことのなかった燃えるような感情が、さざ波のように伝播していく。

「共に来てくれるのなら、貴方達の未来と生命はわたし達が保証するわ」
 人々が説得に応じると、フレミアは自らの居城【魔城スカーレット】に通じるゲートを開き、事前にUDCアースから補充しておいた食糧等の支援物資の一部を見せる。
 無事に反乱が成功した暁には、解放された労働者達を救援する準備は整えてある。それを見せておけば彼らも安心してこちらの計画に乗ってきてくれるだろう。
「わたし、まだ、死にたくない……だから、いっしょに行く……!」
 ツルハシを握らされていた幼子が、きゅっと小さな拳を握るのをフレミアは見た。
 ――この計画は必ず成功させねばならない。この未来ある尊い生命を救うために。

成功 🔵​🔵​🔴​

フルエレ・エルムウッド
アドリブ・連携歓迎

私は蛍石の神
鉱石司りし一端として見過ごせぬ事態です
鉱夫皆様の身辺の世話をする為に連れられた娘として貧しい身なりで潜入
《優しさ》籠め傷の手当や食事を配り皆様に親しんで頂ければと
見張りの目の届かぬ折《祈り》皆様の心を《慰め》
静かに聞いて下さいと
「私は皆様を助けに参りました
神の末席に名を連ねる者
皆様の歩みあればこそ私の光も力を増します」
UCの変身と浮遊を用いて存在の証とし
紅玉(ルビー)の神よ、私達に一筋の力添えを
そうして皆様自身で暗闇に押し込めた心の《封印を解く》
希望や自由がそこにあるはず
「折れぬ限り、負けません」
微笑み反抗計画を練ります
専門知識はありませんが知恵を皆様と振り絞って



(私は蛍石の神。鉱石司りし一端として見過ごせぬ事態です)
 貧しい身なりで素性を隠し、宝石鉱山への潜入を果たしたフルエレ・エルムウッド(フローライトのひかり・f24754)は、目にした惨状に哀しげな表情を浮かべた。
 血のように紅いルビーの採掘のために、自らの血を流すことを強いられる鉱夫達。時と大地が育んだ輝きが悪しき者の手に渡り、今を生きる彼らを苦しめる要因となっているのを放置すれば、同じ宝石の神としての威光にも傷がつこう。

「苦労されているのですね。どうか御身を大切になさって下さい」
 フルエレは鉱夫達の身辺の世話役として連れられた娘という役柄に扮し、酷使される人々に優しく手を差し伸べる。怪我をした者がいれば手当てして、空腹の者には食事を配る。計画を成功させるためには、まずは人々との親交を深めることが第一だ。
「今日も皆様が無事でありますように……」
 見張りの目の届かぬところで捧げられる祈りは、祈ることさえ忘れていた人々を慰める。砂漠に降り注いだ一滴の雨粒のように、蛍石の神の慈愛は乾ききった心に染み渡り、とうに失っていたなにかの感情を思い出させていく。

「静かに聞いて下さい」
 人々に奉仕を続けながら、フルエレは敵に気取られぬよう注意を払いながら語る。
 己の正体とここに来た目的、その成就のために皆の協力を必要としていることを。
「私は皆様を助けに参りました、神の末席に名を連ねる者。皆様の歩みあればこそ私の光も力を増します」
「あんたが……神様? 俺たちを助けに来たって、どういう……?」
 すんなりと理解が及ぶ話ではあるまい。洗脳下にある鉱夫達にとってヴァンパイアの支配は絶対、そもそも「助けてほしい」と思ってすらいない上に、目の前にいる彼女は自分たちと同じようなみすぼらしい格好の娘にしか見えないのだから。

「これが、私が神である存在の証です」
 フルエレは疑う人々の眼差しを受けて【ドレスアップ・プリンセス】を発動する。
 その瞬間、襤褸切れのような衣服は豪華絢爛なドレスに変わり、その身は舞い散る花びらと共にふわりと宙に浮かぶ。その神々しき御姿に人々は思わず目を見張った。
「紅玉(ルビー)の神よ、私達に一筋の力添えを」
 蛍石の神がそっと呼びかけると、採掘された鉱石から紅い光が放たれ、闇を照らす。
 その煌めきは人々の精神にある暗闇さえも照らし、押し込められていた心の封印を解く。洗脳によって封じられていた、希望や自由がそこにあるはずだと信じて。

「――――!!」
 人々はもう、言葉もなかった。目の前に降臨した神の威光に打たれ、あふれ出す感情に激流に呑まれ――せめてもの感謝を伝えようと、ただただ足元にひれ伏すのみ。
 そんな彼らにフルエレは優しく微笑むと、これまでと変わらぬよう手を差し伸べて。
「折れぬ限り、負けません」
 共に自由を掴み取ろうと、オブリビオンの支配を打倒する反抗計画を提案する。
 彼女にそれを達成するための専門的な知識はないが、ここには他の猟兵も『闇の救済者達』もいる。そこに鉱夫達も加わればきっと良いプランが出来上がるはずだ。

「皆様と知恵を振り絞れば、必ずこの計画は成功します」
「ええ……ええ! 俺達にできる事なら、何でもやります!」
 やるぞ! と、希望を取り戻した人々は威勢を上げて反抗作戦への協力を誓う。
 芽生え始めた叛乱の意志は、少しずつ宝石鉱山のあちこちに広まりつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
ラン達3人とミラ達3匹と共に参加…。
ミラ達を【影竜進化】で影に潜伏させ、自身の武装やラン達をミラ達の力で影に潜らせた状態で闇の救済者の人達と潜入…。

内部ではミラ達3匹の内、2匹に影から周辺の調査をして貰いながら、勤務時間後に労働者達に接触…。
洗脳された人や反抗する気力を失くした人の心に染み入る様に【呪詛、催眠術】による言霊で呪力を言葉に乗せて説得し、最低限の命の保証はされると言われていても、結局この環境化では命を使い潰されて死んでしまう事を指摘…。
今、各地には闇の救済者達の支援や人類砦が存在している事を告げて希望を持たせ、ラン達が淹れた心落ち着くお茶と持ってきた甘味で彼等を癒してい説得するよ…



「我が家族たる竜達……闇の衣を纏いて仮初の進化を得よ……。お願いみんな、わたしに力を貸して……」
 闇に包まれた山中に静かな詠唱が木霊し、それに応えるような3つの鳴き声が響く。
 雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)の【呪法・影竜進化】によって成長を遂げたミラ・クリュウ・アイの3匹の仔竜は、自らの身体と同化した影の中に主人の武装とメイド人形のラン・リン・レンを取り込むと、音もなく影の奥底へと潜航していく。
 この手の作戦において影を操れる竜達の力はまさにうってつけだ。身軽となった璃奈は『闇の救済者達』と共に影竜に導かれ、誰にも気付かれぬまま潜入を果たす。

「ありがとう、みんな……クリュウとアイは向こうを調べてきてくれるかな……」
 鉱山に忍び込んだ璃奈は影竜のうち2匹に周辺の調査をして貰いながら、自らは労働者達との接触を図る。影に潜んだ竜達が見聞きしたものは璃奈も共有できるため、もし途中で見張りがやって来てもすぐに気が付くだろう。
「少し失礼するよ……」
「え? あなた達、一体どこから?」
「新しく来た人? 見ない顔だね」
 勤務時間後の休憩のタイミングを見計らって声をかけると、やつれきった様子の人々はきょとんとした顔をする。明日をも知れぬ過酷な労働を強いられていながら、皮肉にも洗脳の影響によって、彼らの表情に恐怖や不安はまるで無いようだった。

「貴方達は、今のままでいいと思ってる……?」
 反抗する気力の失くした人々に、静かだが訴えるような口調で語りかける璃奈。
 呪力を乗せた彼女の言葉は言霊となり、聞いた者に催眠術的な作用をもたらす。
「最低限の命の保証はされると言われていても、結局この環境下では命を使い潰されて死んでしまう……今日死ぬか、明日死ぬかの違いでしかない……」
 それは、おそらくは誰もが気付いていながら、ずっと目を逸らし続けていた事実。
 核心を指摘する言霊が人々の心に染み入り、オブリビオンによる洗脳を解除する。
 はっと目が覚めたような顔をして、労働者達の瞳に徐々に生気が戻り始めた。

「今、この世界の各地には、闇の救済者達の支援や人類砦が存在している……」
 さらに璃奈はヴァンパイアへの反抗組織や敵の支配が及ばない拠点について告げる。
 生きるためには隷属するしかないと信じていた人々にとって、それはまさに晴天の霹靂だった。璃奈ひとりであれば夢物語だと思ったかもしれないが、ここには実際に『闇の救済者達』も一緒に来ていて、力強い眼差しで彼女の言葉を裏付ける。
「ヴァンパイアの支配に抗う勢力ができつつあるのは事実です」
「どうか貴方達も、わたし達に協力してほしい……」
 璃奈達の説得に耳を傾けるうちに、人々の心には忘れていた希望が湧いてくる。
 そこに、影の中からひょっこりと3人のメイドが顔を覗かせ、淹れたてのティーポットとカップを用意して出てきた。

「お茶どうぞ!」
「休憩も大事!」
「リラックス!」

 ふわりと湯気をたてる温かなお茶の香りは、労働に疲れた人々の心を落ち着かせる。
 お茶請けとして璃奈達が持ってきた甘味もまた、彼らには最高の癒やしとなった。
「うん……すこし元気、出てきたかも」
「なんだか、やれるような気がしてきた!」
 ほっと疲れを癒やされれば、洗脳の解けた心には自然と勇気と希望が湧いてくる。
 抑圧されてきた宝石鉱山の労働者達の間で、反抗の機運は順調に高まりつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アウレリア・ウィスタリア
ボクにできるのは歌うことだけ

労働者には最低限の生命の保証はあるということですし
まずは共に働きましょう

そして僅かな休息の時間
食事でも睡眠でも良い
その時に歌を奏でましょう
【勇壮ノ歌姫】を

ルビーを見ると僅かな記憶の欠片なのですが
母を、本当の母の姿を思い出します
ここにいる方にも親や兄弟がいるのでしょう
ここで吸血鬼にただ従って死ぬ
それは親や兄弟たちに誇れる死に様でしょうか

ボクはそう思わない
私はそうはならない
だって私は本当の両親を見つけるために戦っているから
再会を果たした時に誇れる私でいたいから

死ぬのは怖い
けれど無意味に生を浪費するのはもっと怖い
小さくても良い
生きる意味を思い出しましょう

アドリブ歓迎



(労働者には最低限の生命の保証はあるということですし、まずは共に働きましょう)
 宝石鉱山への潜入を果たしたアウレリア・ウィスタリア(憂愛ラピス・ラズリ・f00068)は、鉱夫として酷使されている人々に加わりながら機会を窺うことにした。
 保証があると言ってもそれは理不尽に殺されることは無いという程度で、その労働環境は劣悪極まる。重たいツルハシを振るい、掘り出した石屑を運び、ふるいにかけた中からルビーの原石を見つけ出す――心身共に過酷な作業が延々と繰り返される。

(ここの人達はずっと、こんな事を強いられてきたんですね)
 慣れない仕事の連続で、仮面に覆われたアウレリアの顔には玉のような汗が浮かぶ。
 並みの人間がこんな労働を続ければ、遠からず体力が保たずに倒れてしまう。吸血鬼にとって彼らは、宝石を採掘させるための替えのきく消耗品に過ぎないのだろう。
 それでも"吸血鬼による支配こそ正義"と洗脳された人々は、疑いもせずに働き続ける。一刻も速く彼らを解放しなければ、過労死する人間の数は増える一方だ。

(ボクにできるのは歌うことだけ)
 アウレリアが動いたのは、食事と睡眠のために用意された僅かな休憩時間のこと。
 山中に作られた居住区に集まってきた人々の前で、彼女はおもむろに歌を披露する。
(奏でよう、ボクの歌を。伝えよう、私の想いを)
 歌い上げるは【勇壮ノ歌姫】。勇気を胸に、心から紡ぎ出されるメロディを美しい歌声に乗せて伝える。それはアウレリアから鉱夫達に送る、精一杯のメッセージ。

(ルビーを見ると僅かな記憶の欠片なのですが、母を、本当の母の姿を思い出します)
 朧げに残る家族との記憶は、今のアウレリアを支える大切な希望。今は遠く離れていても、自分を愛してくれた人がいるから、彼女はどんな暗闇でも歩いていける。
「ここにいる方にも親や兄弟がいるのでしょう。ここで吸血鬼にただ従って死ぬ。それは親や兄弟たちに誇れる死に様でしょうか」
 それは――と、少女の歌声に惹かれた人々の間から戸惑いのような声が漏れる。
 誇りも尊厳も何もかもを捨てて、ただ今日を生きるためだけに生きる。そんな日々に疑問を抱くことすらなくなっていた人々の心が、微かに揺れた。

「ボクはそう思わない。私はそうはならない」
 アウレリアはそっと仮面を外すと、希望を宿した琥珀色の瞳で人々を見つめる。
 誇りもなくただ生きる――否、生かされるだけの今日なんて、自分は御免だと。
「だって私は本当の両親を見つけるために戦っているから。再会を果たした時に誇れる私でいたいから」
 揺るぎない決意を込めて紡がれる歌は、心の奥底にある母の歌。すべてのヒトが未来に向かっていくことを願った歌。狂気を払い、どんな強大な敵にも立ち向かう、そんな"勇気"の感情を湧き上がらせてくれる、希望に満ちた歌だ。

「死ぬのは怖い。けれど無意味に生を浪費するのはもっと怖い」
 魂心の歌唱を終えて、勇壮の歌姫は仮面を被り直すと、再び静かに語りかける。
 偽らざる想いの全てを歌と言葉にして、アナタ達はどうするのかと訴えかける。
「小さくても良い。生きる意味を思い出しましょう」
 まだ心には歌の余韻が残るなかで、人々は胸に手を当てて暫し無言のまま考える。
 そして――顔を上げた彼らの表情はもう、ヴァンパイアの奴隷ではなかった。

「ありがとう……俺達はずっと大切なものを忘れていた」
 生命を輝かせるために必要なもの。未来への希望と、困難に立ち向かう勇気。
 アウレリアの歌からそれを取り戻した人々は、ぎゅっと力強く拳を握り締める。
「俺達も戦う。家族に、大切な者に、胸を張れるように」
「はい。それならボク達も力になりましょう」
 反旗を翻す決意を固めた労働者達に、アウレリアはふっと淡い微笑みを見せる。
 灯り始めた勇気の灯火を示すかのように、ルビーの原石がきらりと紅く輝いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

カビパン・カピパン
カビパンの御言葉



他人のため働くな 従うな 捧げるな。

鉱夫達よ、苦難の道と楽な道があればどちらを選ぶ。
多くの者は楽な道を選ぶ、が後悔する、苦難の道を選べばよかったと。険しい苦難の道が、実は自身のやりたいことなのだ。

日々生きるのは大変である。
不慮の事故や病や死に遭遇することもある。
しかし、いいですか皆よ。

私たちは──
いつも日々戦っているのです。頑張っています。 

鉱夫達よ、今の今まで人生と戦い日々張り合ってきたのは何の為であろうか。
光の断罪者のためか、否。吸血鬼のためか、否。
自分自身のためである。
生きている限り、人生は常に戦いなのだ。
誰の為でも無い、自分で決めて反抗し戦いましょう。貴方自身のために。



「他人のため働くな 従うな 捧げるな」
 唯々諾々とヴァンパイアの奴隷として宝石を採掘する民衆の前で、カビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)は威厳のこもった口調でそう語りだした。
 平時はドジを踏むことも少なからず、性根は貧乏性で面倒くさがり屋の彼女だが、いざ真面目な態度をすればその振る舞いは自ずと威厳を放ち、人々の心を引きつける。

「鉱夫達よ、苦難の道と楽な道があればどちらを選ぶ」
 女教皇カビパンの問いかけに、人々は何も答えられずに言葉に詰まってしまう。
 選べなかったのではない。逆に明白な答えがあったからこそ口にするのを憚ったのだ。
「多くの者は楽な道を選ぶ、が後悔する、苦難の道を選べばよかったと。険しい苦難の道が、実は自身のやりたいことなのだ」
 ここに居る者達も皆、例外なくそれに当てはまる者だろう。こうして従っていれば最低限の生命の保証はされるからと、吸血鬼による支配こそ正義なのだと自分を騙し、全てを諦めて今日を生きる――その果てにあるのは希望なき明日だ。

「日々生きるのは大変である。不慮の事故や病や死に遭遇することもある。しかし、いいですか皆よ」
 項垂れる人々に向けて、カビパンは問い詰めるのではなく優しい調子で語りかける。
 誰の目からも心優しき聖女と映るような、赦しと慈愛に満ちた微笑みを浮かべて。

「私たちは──いつも日々戦っているのです。頑張っています」

「俺達は……戦っている?」
「その通りです」
 疑問符を浮かべる人々を肯定するように、女教皇はこくりと頷きながら尚も語る。
 今や民衆の目はカビパンに釘付けであり、演説の場には大きな人だかりができていた。
「鉱夫達よ、今の今まで人生と戦い日々張り合ってきたのは何の為であろうか。光の断罪者のためか、否。吸血鬼のためか、否。自分自身のためである」
 持ち前のカリスマ性をフル活用し、女神の聖杖を掲げ、彼女の弁舌は熱を増す。
 それに聞き入るうちに鉱夫達の身体は女神の加護に包まれ、聖なる光を発する。
 洗脳に対抗するには【洗脳】。光の断罪者によってかけられた隷従の呪いはもはや、カビパンの威光にすっかりと塗り替えられていた。

「生きている限り、人生は常に戦いなのだ」
 心に火がついた鉱夫達を、ここぞとばかりに思いっきり煽り立てるカビパン。
 一度燃え上がった感情は燎原の火のごとく広がり、これまで自分達を支配していたオブリビオンに対する怒りと闘争心が高まっていく。
「誰の為でも無い、自分で決めて反抗し戦いましょう。貴方自身のために」
「「オオォォォォーーーーッ!!!!」」
 鉱山に木霊する鉱夫達の雄叫び。女神の加護を与えられた彼らの心から恐怖は消え去り、カビパンのカリスマ性に対する強い畏敬と崇拝心がそこに代わって収まる。
 もはや彼らは止まるまい。自分達のため、そして女教皇カビパンのために、自由と明日を求めて戦う叛乱軍がここに誕生したのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シェーラ・ミレディ
案外あっさりと中へ入れたが、問題は帰りか。
グリモア猟兵の力が使えれば話が早いのだがなぁ。ま、できないものは仕方あるまい。

これだけ劣悪な環境だ、探せば死体のひとつもあるだろう。
「生きるために自ら志願したものも、
領主に無理やり連れてこられたものもいるだろう。
しかし、正義を信じた末路がこれだ。
──この死体の、どこに正義がある!
吸血鬼のいいように使われているだけじゃないのか?!」
などと、死体を示して『口は舌禍の門』で指摘すれば、僕の言葉を理解できるものならば奮い立つ力も沸いてくるはず。

……ようするに扇動なのだが。
精神的に衰弱した相手ならば、僕の話術にも引っかかってくれるだろう。

※アドリブ&絡み歓迎



「案外あっさりと中へ入れたが、問題は帰りか」
 カンカンとツルハシの音が響く山中にて、潜入を果たしたシェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は呟く。来るもの拒まず、去るもの逃さずとでも言うような警備体制、一度潜入すればただで出ていくのは困難だろう。
「グリモア猟兵の力が使えれば話が早いのだがなぁ。ま、できないものは仕方あるまい」
 それにもし使えたとしても、酷使される人々を置いて自分だけ帰る訳にもいくまい。
 まずは鉱夫達を洗脳から解き放つために、人形の少年はさっそく行動を開始する。

「生きるために自ら志願したものも、領主に無理やり連れてこられたものもいるだろう。しかし、正義を信じた末路がこれだ」
 舞台上の俳優のように朗々とよく通る声で、舌鋒鋭く人々に語りかけるシェーラ。
 彼が突きつけたものは、採掘中に力尽き、打ち捨てられていた鉱夫の骸だった。
 これだけ劣悪な環境だ、探せば打ち捨てられた死体のひとつ見つけるくらい訳もない。
「──この死体の、どこに正義がある! 吸血鬼のいいように使われているだけじゃないのか?!」
 びしり、と無惨な有様と成り果てた亡骸を示し、語調を荒げてシェーラは問う。
 揺るぎない現実を、紛うことない物証と言葉で指摘されれば、洗脳によって目を曇らされていた人々も理解する――否、せざるを得なかった。

「お、俺達は……ここで働いていれば、殺されることはないと思って……」
「聖女様が言ったんだ……ヴァンパイア様に従うことが正しい、って……」
「吸血鬼の言葉は全てデタラメだ。諸君らの生命など塵芥も同然に使い潰される」
 戸惑いがちな鉱夫達の言葉を、シェーラはばっさりと言葉の刃で切って捨てる。
 彼の弁舌はヴァンパイアの悪辣さを罵り、連中に従う欠点を浮き彫りとするもの。
 【戯作再演・口は舌禍の門】により、それを聞く者たちの心には次第に戸惑いよりも怒りが、屈従よりも奮い立つ力が沸き上がってくる。
「諸君らはこのまま、奴らに飼い殺されるのを望むのか?」
「そんなの……嫌に決まってるだろう! 俺達は奴隷じゃない!」
 オブリビオンの洗脳は打ち破られ、虚ろだった人々の目には生気が戻ってくる。
 シェーラの言葉に共鳴した雄叫びは、やがて鉱山のあちこちに伝播していった。

(……ようするに扇動なのだが。精神的に衰弱した相手ならば、僕の話術にも引っかかってくれるだろう)
 ヒートアップする群衆を前にして、シェーラはこっそりと心の中で舌を出す。
 べつに虚偽を騙ったつもりはないが、いささか偏った言論ではあった。だがそれで人々にヴァンパイアへの反抗心が芽生えるのるなら、これも方便というものだろう。
 その甲斐もあって計画に参加する労働者達の運動は順調に広がっており、決起の時は迫りつつある。邪悪なるヴァンパイアの支配体制が崩れるまで、あと少しだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(●防具改造で暗色外套を纏い潜入)

闇の救済者達に妖精ロボを隠し持たせ鉱山内●情報収集
送信データを元に反抗計画や説得材料の為の地図作成

宇宙船内反乱事件の手口が使えそうです(●世界知識)
人が集まれば集団となり、そこから小集団に枝分かれ
その小集団の「頭」を抑えれば全体に伝播する…
その「頭」全てに近いのは、司令塔、食糧関係、そして船医

知識ある故に治療担当となり他の奴隷に慕われる者と接触
反抗計画参加への説得
劣悪な環境と日々失われる命…その憤り、晴らすべき時が来たのです!

小集団の「頭」達の情報(密告の危険、協力的か否か)を得、猟兵や救済者達に伝達

騎士と振舞うのは暫し辛抱
銀河帝国工作員の真似が続きそうですね



「鉱山労働者に反乱を呼びかける……宇宙船内反乱事件の手口が使えそうです」
 データベースに記録した過去の事件簿の中から、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は今回の依頼に役立ちそうな知識をピックアップしていた。
 かつて彼の故郷、スペースシップワールドで繰り広げられた銀河帝国との戦いの中、帝国は宇宙船内に工作員を潜入させ、反乱や裏切りを引き起こすこともあった。
 敵からの教訓ではあるが、鉱夫達の為に使えるノウハウは全て利用させてもらおう。

「皆様はこれを持って鉱山内の偵察をお願いします」
「ええ、分かりました」
 闇に紛れる暗色外套を纏い潜入を果たしたトリテレイアは、【自律式妖精型ロボ 格納・コントロールユニット】の中から小さな鈍色の妖精型偵察ロボを取り出し、同時に潜入した『闇の救済者達』に隠し持たせて送り出す。彼らがこの妖精を介して送信するデータは、具体的な反抗計画の立案や労働者達を説得する材料となるのだ。
(人が集まれば集団となり、そこから小集団に枝分かれ、その小集団の「頭」を抑えれば全体に伝播する……その「頭」全てに近いのは、司令塔、食糧関係、そして船医)
 収集したデータを元に地図を作成しながら、トリテレイアは接触目標を選定する。
 労働者の中でも知識があった故に治療を担当することになり、それゆえ他の人々から慕われる立場にある者――彼を説得できれば、反抗計画は大きく進展するだろう。

「失礼します。すこし宜しいですか?」
「うん、どうかしたのかい。ケガをしたのではないようだが」
 穏やかな雰囲気のあるその壮年の男性は、突然の来訪にも驚くことなく出迎えた。
 トリテレイアは礼儀正しい振る舞いで彼に接しながら、己の立場とその目的、奴隷労働を強いられる鉱夫達の反抗計画とその参加について語り始めた。
「この地の人々の生命を救うために尽力されている貴方の働きには敬意を表します。ですが現状を変えなければいずれ待っているのは破滅です」
 このまま吸血鬼に従っていたところで救いはない。けして勝算もなしに騙っているわけでは無いと『闇の救済者達』が集めたデータも提示して具体的なプランを語る。

「劣悪な環境と日々失われる命……その憤り、晴らすべき時が来たのです!」
「……なるほど。貴方の考えはよく分かりました」
 トリテレイアが熱意を込めて説得を続ければ、ついに相手も心動かされたようだ。
 静かに頷きながらも、その目つきには奴隷のものではない反抗の炎が灯っていた。
「私に何ができるかは分かりませんが、微力ながら協力しましょう」
「感謝します!」
 差し出された手をぎゅっと握って、苦労が報われたと快哉を叫ぶトリテレイア。
 彼が持つ小集団の「頭」達の情報――密告の危険や、協力的か否かといった情報は、より多くの労働者を反抗計画に巻き込むために必須の手掛かりだったからだ。

(騎士と振舞うのは暫し辛抱。銀河帝国工作員の真似が続きそうですね)
 トリテレイアは直ちに入手した情報を猟兵や『闇の救済者達』に伝達する。どれだけの「頭」達を仲間に引き入れられるかによって、この作戦の成功度も変わるだろう。
 そのために最も重要な"情報"を探りながら、彼は宝石鉱山で暗躍を続ける。騎士の誇りを隠す暗色外套、それが取り払われるのは、反抗の狼煙が上がったその時だ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィサラ・ヴァイン
こんなにも美しい石が、醜い物欲を起こさせる…ひいてはこんな酷い状況を作り出すなんて
でも欲望は私達に前進するきっかけを与えてもくれる
姿を隠し[目立たない]ように行動し【宝石の谷】を使用
発掘現場の一部をルビーの鉱石に変えて労働者達に回収させるよ
もちろんこれはただの石じゃない
願いの成就を約束する、特別な石
その輝きは「少し休みたい」とか「ご飯をもっと食べたい」という人として当たり前の欲望を駆り立てる
その欲望は反抗の芽となるでしょう
後は『闇の救済者達』に任せるよ。反抗心を煽るのは彼らの役目
その間に私は…ルビーの鉱石を少し貰おうかな
「だってこの石キラキラしてたから…」
そんな理由で協力しても、別にいいよね?



「こんなにも美しい石が、醜い物欲を起こさせる……ひいてはこんな酷い状況を作り出すなんて」
 炎のように煌めく紅い宝石を手のひらに乗せて、ヴィサラ・ヴァイン(魔女噛みのゴルゴン・f00702)は物憂げに眉をひそめる。この自然が作り出した美を我がものにしようという吸血鬼の浅ましい欲が、大地を罪なき人々の血で染め上げてしまった。
「でも欲望は私達に前進するきっかけを与えてもくれる」
 帽子をぎゅっと目深に被って姿を隠し、見張りや鉱夫達から目立たないように潜入を果たした少女は、鉱山の発掘現場まで辿り着くと己のユーベルコードを発動する。
 邪悪なる欲望が人々を絶望へと導くのなら、自分は欲望をもって希望を与えようと。

「この不滅の輝きに、願いを込めて」
 ヴィサラが唱えたのは【宝石の谷】。剥き出しとなった岩肌の一部がただの無機物から宝石へと変わり、採掘場に紅い輝きが――ルビーの原石がちらちらと露出する。
 ユーベルコードの力で変換されたその宝石を、鉱夫達は天然のルビーと見分けがつかずに回収するだろう。採掘量が急に増えたことを驚きこそすれ不満には思うまい。
 変換を完了させたヴィサラは誰かが来る前にその場を後にして、事の推移を見守ることにする。自分の撒いた願いの種が、うまく花を咲かせることを祈りながら。

「さあ、今日もヴァンパイア様のために、働き、従い、捧げなさい」
 慈母のような笑みを浮かべる『光の断罪者』の監督の下、人々は採掘作業を行う。
 不満を口にする者はなく、誰もが傀儡のように淡々と、感情を表に出そうともせず。
 "吸血鬼による支配こそ正義"という洗脳を受けてきた彼らは、現状をおかしいと疑問に思うことすらなく、ただただ無為に生命を使い潰されてきたのだ――そう、この日、ひときわ美しい輝きを発するルビーを掘り当てるまでは。

「なんだろう、これは……」
 鉱夫達にとって宝石とは主人への献上品であり、それ以上の価値は無いはずだ。
 だが、ヴィサラの力で作り出されたルビーは、もちろんただの石ころではない。
 それは願いの成就を約束する、特別な石。その輝きは「少し休みたい」とか「ご飯をもっと食べたい」という人として当たり前の欲望を駆り立てる作用があった。
「今日はもう疲れたな……」
「お腹すいた……眠い……」
 それは誰もが日常的に持ちえるささやかな欲。だが、不滅の輝きによって願望を増幅されることで、初めて人々は自覚する――この場所は、そんな些細な願いすらも満足に叶えられない場所なのだと。

「何を怠けているのですか? まだ休憩の時間ではありませんよ」
 監督者達は気付かない。あるいは気付いたとしても重大な変化だとは思わない。
 だが、無欲で盲信的だった労働者達の中に生まれた"欲求"と"不満"は、細やかなようでいてその実、宝石鉱山の支配体制を根幹から揺るがしかねないものであった。
(その欲望は反抗の芽となるでしょう。後は『闇の救済者達』に任せるよ)
 人々の間に反感が高まっていく様子を物陰から見守り、ヴィサラは満足げに頷く。
 彼女が芽生えさせた反抗心を煽るのは『闇の救済者達』の役目。ヴァンパイアの支配に不満を抱いて決起した彼らの言葉は、このタイミングでこそ人々に響くはずだ。
 一度点いた火が鉱山を燃え上がらせる大火となるまで、そう時間はかかるまい。

「その間に私は……これを少し貰おうかな」
 自分の役目を果たしたヴィサラは、落ちていたルビーの鉱石をひとつ拾い上げる。
 彼女が今回の計画に協力したのも、この天然の煌めきに魅せられたゆえだった。
「だってこの石キラキラしてたから……」
 別にいいよね? と悪戯っぽい笑みを浮かべながら、少女は宝石をポッケにしまう。
 かくして欲望は世界を回す。人を動かし、人を助け、未来を拓く原動力となるのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
今日は宝石の原石を見に来たの。
分かったらさっさと道を開けなさい。
それとも、お前は吸血鬼の言葉に逆らうのかしら?

事前にUCを発動して吸血鬼に変身
遠くから宝石の視察に来た令嬢の演技をして潜入する

…ん。彼女達の洗脳は彼女達自身にも通じる。
闇の救済者の皆、後は手筈通りに…。

気紛れに断罪者達を追い払い、女子供を虐げようとして救済者達が阻止
闇に紛れて戦闘して倒された振りをして霧になって離脱
使えない道具は処分しないと…あら?
お前達?家畜の分際で高貴な私達に刃向かう気?

ぐっ、バカな…!この私が…下賎な人間風情に…!
そんな、はずは……っ

吸血鬼を討ち人々に衝撃を与えた後、
作戦を演説して反抗心を取り戻せないか試みる



「止まりなさい。貴女はなんのために此処に――あっ、貴女様は?!」
 麓より鉱山にやってきた人影の前に、すっと立ちはだかるオブリビオンの見張り達。
 彼女らの慇懃な態度と振る舞いは、すぐに驚愕によって上書きされることになった。
「今日は宝石の原石を見に来たの。分かったらさっさと道を開けなさい」
 尊大極まる態度にてそう言い放ったのは、美しい銀髪と赤い瞳を持つひとりの令嬢。
 それは【限定解放・血の変生】によって吸血鬼に変身したリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の姿であった。

「それとも、お前は吸血鬼の言葉に逆らうのかしら?」
「と、とんでも御座いません! すぐご案内致します!」
 妖艶かつ酷薄な笑みを浮かべてリーヴァルディが問うと、光の断罪者達は真っ青な顔ですぐさま道を開ける。宝石鉱山の管理者として労働者達に苦役を課す彼女らも、しょせんはより高位のオブリビオン――ヴァンパイアに絶対服従する配下に過ぎない。
(……ん。彼女達の洗脳は彼女達自身にも通じる)
 "吸血鬼による支配こそ正義"。彼女らの教義を逆手に取って吸血鬼に扮したリーヴァルディは、遠くから宝石の視察に来た令嬢として悠々と正面からの潜入を果たした。

(闇の救済者の皆、後は手筈通りに……)
 鉱山内を堂々と歩きながら目配せを送る相手は、鉱夫に紛れた『闇の救済者達』。
 わざわざ仇敵の姿を取ってここに来た理由は、なにも敵の目を欺くためだけでは無い。
「案内はここまでで良いわ」
「えっ。で、ですが……」
「1人で好きに見て周りたいの。文句があるのかしら?」
「い、いえっ! では私共は待機しておりますので!」
 気まぐれな言い草で断罪者達を追い払うと、吸血鬼の令嬢は近くの人々を見回す。
 そして、ふらふらと疲れた様子で荷運びをしている、まだ幼い少女に目をつけた。

「あら、駄目じゃない。ちゃんと働かないと」
「え……っ」
 嗜虐的な笑みを浮かべてゆらりと近付いてくる吸血鬼に、少女の表情が凍りつく。
 この鉱山でオブリビオンの不興を買った、それは即ち死刑宣告にも等しい。最低限の生命の保証があると言っても、結局その処遇は彼女らの胸先三寸でしかないのだ。
 労働者の誰もがそれを理解している。だから皆、目を付けられた少女のことを憐れに思いこそすれ助けようとする者はいない。ここでは吸血鬼の支配は絶対なのだから。
「使えない道具は処分しないと……あら?」
 ――そう、絶対のはずだ。だけど今日は吸血鬼と少女の間に立ちはだかる者がいた。
 それは邪悪なる支配に異を唱える者。宝石鉱山に潜伏した『闇の救済者達』だった。

「お前達? 家畜の分際で高貴な私達に刃向かう気?」
「ああ。そうだ。俺達はもうお前らの支配に屈しない!」
 "邪悪で高慢なヴァンパイア"に扮するリーヴァルディに、鉱夫の格好をした『闇の救済者達』が立ち向かう。周囲からは「やめろ」「勝てるわけない」といった悲鳴混じりの声が飛び交うが、闇に紛れての戦闘は労働者達の予想もしない展開となった。
「こいつをくらえっ!」
「ぐっ、バカな……! この私が……下賎な人間風情に……!」
 粗末な武器の攻撃を受けて、吸血鬼の表情が苦痛に歪む。まさか自分が負けるはずも無いという絶対的な自信が剥がれ落ち、屈辱に歯ぎしりしながら後ずさっていく。
 それは"虐げられた者の叛逆"と"支配者の凋落"をアピールする壮大な一芝居。事前の筋書き通りに追い詰められていくリーヴァルディの有様に、人々の目は釘付けとなる。

「そんな、はずは……っ」

 そして遂に、致命的な一撃を受けた"悪しき女吸血鬼"は、霧となって消失する。
 実際にはその場を離脱しただけだが、人々の目には『闇の救済者達』が吸血鬼を討ったように見えただろう。
「か、勝った……?」
「人間が、吸血鬼に……?」
 絶対だと思っていた存在の敗北は、洗脳を受けていた人々に大きな衝撃を与える。
 人間はけして吸血鬼に対して無力ではない。凝り固まった観念を打ち破ることこそが、リーヴァルディと『闇の救済者達』がこの芝居を打った理由だった。

「私達は『闇の救済者(ダークセイヴァー)』。貴方達を解放する為にやって来た」
 "吸血鬼"を退けた救済者達は、驚愕する人々の前で今回の作戦について演説する。
 宝石鉱山を管理するオブリビオンを打倒し、虐げられてきた人々を救済する。
 そのためには他ならぬ貴方達の協力が必要であると、熱意を込めて切々と訴える。
「……貴方達は奴隷じゃない。このまま吸血鬼に虐げられていいの?」
 演説に合わせて問いかけたのは、血の変生を解除して戻ってきたリーヴァルディ。
 吸血鬼狩人の正装たる漆黒の戦闘装束を纏い、吸血鬼の生命と魂を刈り取るための大鎌を携えた彼女が、先刻の吸血鬼と同一人物だと気付く者はひとりも居なかった。

「……立ち上がりましょう。私達と、一緒に」
 決意の籠もった紫の瞳に見つめられて、人々の内なる反抗心についに火が点いた。
 猟兵と闇の救済者達によって撒かれてきた火種は、ここに発火の時を迎えたのだ。
「そうだ……やるぞ! やってやる!」
「もうこれ以上、支配されるのは御免だ!」
 洗脳から完全に脱した人々は、これまで溜まった怒りと不満を一気に爆発させる。
 その雄叫びは大地を揺るがすほどの大きなうねりとなって、鉱山中に広がっていく。

 ――もう、ここにはただ死を待つだけの労働に従事する奴隷はひとりも居ない。
 潜伏下で進められてきた宝石鉱山の解放作戦は、ついに決起の時を迎えたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『光の断罪者』

POW   :    光の断罪者
自身に【反転した聖者の光】をまとい、高速移動と【破壊の光】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    主よ、憐れみたまえ
【洗脳の呪詛】を籠めた【反転の光】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【反抗心】のみを攻撃する。
WIZ   :    反転の呪詛獣
自身が戦闘で瀕死になると【自身を洗脳していた魔法生物】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「一体、何が起こったというのですか……っ!!」

 宝石鉱山にて勃発した異常事態を、『光の断罪者』達は把握できていなかった。
 兆候はあったはずだ。だが彼女らはそれに気付けなかった。民衆の洗脳は完璧であるとたかを括り、反乱の危険性はないと侮ったがために、外部から侵入した猟兵と『闇の救済者達』の手によって撒かれた火種はいつの間にか巨大な劫火になっていたのだ。

「今までよくもやってくれたな!」
「俺達はもう、お前らの奴隷じゃない!」

 洗脳から解放された労働者による反乱は、またたく間に鉱山全体に広がっていく。
 全ては猟兵達の計画通り。同時多発的にこれほど大規模な反乱が発生すれば、人数の少ないオブリビオンだけでは収集をつけられず、事態は拡大の一途を辿っていた。

「このままでは、鉱山の運営に支障が……」
「なぜ、吸血鬼の支配を受け容れないのです!」

 主君からの叱責を想像して青ざめる者、叛徒への怒りで顔を真っ赤にする者。
 光の断罪者達の反応は様々であったが、共通するものは突き詰めればひとつ。
 "吸血鬼による支配こそ正義"。それが闇に堕ちた聖女達にとって絶対の規範。
 民衆を洗脳してきた彼女らもまた、結局は吸血鬼に洗脳された奴隷に過ぎない。

「主よ、この愚かなる者達を憐れみたまえ」
「吸血鬼の正義に逆らう者に、光の断罪を!」

 反転した聖者の力――破壊の烈光を身に纏い、堕ちた聖女達は叛徒を迎え撃つ。
 反乱した勢力の中で彼女らの力に正面から対抗できる者は、猟兵達だけだろう。
 逃がすわけにはいかない。ここで彼女らを全滅させて、初めて作戦は成功となる。

 ここが宝石鉱山の人々を解放するための正念場だ。
 光の断罪者オブリビオン、対、闇の救済者イェーガー。
 対局に位置する者達の戦いの火蓋が切って落とされる。
カビパン・カピパン
「よく立ち上がりました鉱夫達よ。皆の敵は舌です」
加護を与えたとは言え、流石に危ない目に合わせる訳にいけない。そう思い作戦を指示する、それは…

「光の断罪者(笑)ってなんだよダッセー」
「吸血鬼が主人ならキュウリでも喰ってろ!」
溜まりに溜まった鬱憤と反抗心を、悪口として活用。光の断罪者の注目を集め、囮と挑発としての役割を果たしていた。

自分自身と洗脳主である吸血鬼をコケにされてはイライラも頂点だろう。

彼女らの隙を突いて、カビパンはUCをこめて【女神のハリセン】を頭に振り下ろす。
スッパーン!と景気の良い音が鉱山に響いた。

光の断罪者の洗脳を解き、「貴女は悪い夢をみていたのです」と優しく抱き留める。



「よく立ち上がりました鉱夫達よ。皆の敵は舌です」
 ついに反旗を翻した民衆の前で、カビパンは聖杖を高々と掲げながら呼びかける。
 あふれ出す聖なる光は力なき者達に加護を与え戦闘力を高める。素人の集団を強化するには最適の手段だろう。とはいえ、オブリビオンとの力の差はそれでも歴然だ。
 流石に危ない目に合わせる訳にいけない。そう思ってカビパンが一計を案じて指示した作戦、それは――。

「光の断罪者(笑)ってなんだよダッセー」
「な……にをッ!?」
 相手を小馬鹿にしくさった態度と毒舌に、聖女然と振る舞っていた敵の顔色が変わる。
 その反応を見たカビパンはにやりと笑い、鉱夫達の間で溜まりに溜まった鬱憤と反抗心を代弁するかのように、これでもかと言わんばかりの毒舌を浴びせかける。
「吸血鬼が主人ならキュウリでも喰ってろ!」
「なんということを……ッ!」
 自分自身のことだけならばまだ耐えられたかもしれないが、洗脳の主である吸血鬼までコケにされては断罪者達のイライラも頂点に達する。刺し貫くような怒りの視線と共に、破壊の光がカビパンに襲い掛かった。

「こんなの効くかバーカ!」
 聖者の力が反転した光を、カビパンは同じ聖者の力である女神の加護で相殺する。
 彼女の役割は囮と挑発。光の断罪者の注目を集めることで鉱夫達が標的にされないよう誘導し、反抗のチャンスを作り出そうという狙いは、見事に達成されていた。
「今だ! これでも食らえっ!」
「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
 山を震わすような鬨の声を上げて、側面を取った鉱夫達が瓦礫や岩石を一斉に投げつける。ただの投石ならまだしも数十人分、それも女神の加護のオマケつきだ――不意を突かれた断罪者達は、慌てふためきながら防戦一方となる。

「隙あり!」
 敵の陣容が乱れたのを好機と見たカビパンは、教皇服の中からハリセンを取り出す。勿論ただのハリセンではなく、あらゆる奇跡を霧散霧消し、癒す力を秘めた女神のハリセンだ。
「目を覚ましなさい!」
 ユーベルコードの力を籠めて【HARI☆SEN】を断罪者達の頭に振り下ろす。
 スッパーン! と景気の良い音が鉱山に響き渡ると、ぶっ叩かれた脳ミソから洗脳の悪影響は綺麗さっぱりと吹き飛び、女達を覆っていた聖者の力も同時に消え去った。

「あ……あれ……私は、一体……」
 正気に戻った断罪者達がぽかんと困惑する中、カビパンはそのうちの一人の傍に寄ると、微笑みを浮かべながら優しく抱き留める。それは正しく慈愛に満ちた聖女のように。
「貴女は悪い夢をみていたのです」
 どうやら彼女は堕ちる以前は、カビパンが教皇位につく教団の関係者だったらしい。いつになくカビパンが真面目な様子でこの依頼に取り組んでいたのも、見知った相手を見捨てられなかったが故のことか。
「あ、貴女様は……そぅ、助けてくれたのですね……」
 その女性はカビパンの顔を見てほっと安堵の表情を浮かべると、そのまま糸が切れたように意識を手放した。鉱夫達と同様に彼女もまた、吸血鬼の支配から解き放たれたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
憐れね…。信仰する神を見失い、吸血鬼に仕えるなんて…。
なら、その信仰、わたしが解放してあげるわ♪

【念動力】で動きを封じつつ、【魅了の魔眼・快】【催眠術、誘惑】魅惑のフェロモンで聖女達を魅了。
後はじっくりと魅了の魔眼による魔力と快楽を送りながら【吸血姫の覚醒】を一時的に発動。

真の姿を解放しながら真祖として覚醒した姿を彼女達に見せつけながらゆっくりと近づき、更に【吸血姫の魔愛】による包容と口づけで彼女達を堕とし、彼女達に崇めるべき者が誰か教えてあげるわ♪

これがわたしの真の姿…吸血姫の祖たる真祖の姿よ。
貴女達が真に崇めるべきはあんな悪趣味な吸血鬼ではないわ。さぁ、聖女達、わたしの元へいらっしゃいな



「憐れね……。信仰する神を見失い、吸血鬼に仕えるなんて……」
 盲信に堕ちた光の断罪者達を、フレミアは哀れみを込めた眼差しで見つめていた。
 洗脳によって与えられた偽りの忠誠。吸血鬼の支配こそが絶対の正義であると疑わない彼女らは、虐げられてきた鉱夫達よりもずっと、自由意志を持たない奴隷であった。
「なら、その信仰、わたしが解放してあげるわ♪」
 憐憫を慈悲に変えて吸血姫は微笑み、その瞳はまるでルビーのように爛々と輝く。鉱夫達の洗脳を上書きした【魅了の魔眼・快】、その効力が及ぶのは決して一般人のみに限らない。

「ぅ……怪しい術で、私達の信仰を惑わそうとしても無駄です……!」
 得も言われぬ快感と胸の高鳴りを覚えながら、光の断罪者達はフレミアのもたらす魅了の魔力と魅惑のフェロモンに抗っていた。凡人であればたちまち心を奪われてしまうような誘惑に正気を飛ばされずにいるのは、それだけ洗脳の影響力が強い証か。
「主よ、憐れみたまえ――ッ!?」
 だが、反転した光にて主に反抗する者を洗脳せんという彼女らの反撃は、不可視の拘束によって阻まれる。魅了の力と共に吸血姫が発する念動力は、一度捕らえた相手を決して逃さず、その動きを封じ込めていた。

「意外と抵抗するのね……それなら、わたしも少しだけ本気を見せてあげるわ」
 動けない女達にじっくりと魅了の魔力と快楽を送り続けながら、フレミアは一時的に【吸血姫の覚醒】を発動する。その血に眠りし真祖の力が目覚め、爆発的に膨れ上がる魔力の中で、まだ幼さを残していた吸血姫の容姿がだんだんと変化していく。
「これがわたしの真の姿……吸血姫の祖たる真祖の姿よ」
 背中には4対の真紅の翼を広げ、17~8歳程に成長した蠱惑的な肢体と美貌を見せつけ。
 呆然としている断罪者達の前にゆっくりと近付くと、フレミアは艶美な微笑を浮かべた。

「あ……あぁぁ……貴女は……いえ、貴女様は……」
 光の断罪者達が受けた衝撃たるや言葉では表せまい。吸血鬼を主上と崇めるように洗脳された彼女らの前に今立っているのは、これまで出会ったどの吸血鬼よりも美しく、高貴で、何よりも強大な力を感じさせる真祖の姫君であった。
「貴女達が真に崇めるべきはあんな悪趣味な吸血鬼ではないわ。さぁ、聖女達、わたしの元へいらっしゃいな」
 その瞳に見つめられるだけで、身体の芯まで痺れるような快感の電流が走る。指先ひとつ動かせずに固まっている聖女達に、フレミアは慈しむような抱擁と口づけを与え、【吸血姫の魔愛】を以って真に崇めるべき者が誰かを心と身体に教えこませていく。

「あぁぁ……フレミアさまぁ……」
「私達の信仰は……貴女様のみに捧げます……」
 覚醒した吸血姫の本気の魅了を味わわされて、堕ちぬ者などいるはずがなかった。
 発狂しかねない程の強烈な快楽と幸福を心身に刻み付けられた聖女達は、すっかりと蕩けきった様子でフレミアに絶対の忠誠を誓う。その心にはもはや元の洗脳主への感情など微塵もなく、フレミアに奉仕する事こそを至上の幸福とする、新たな眷属がそこにいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フルエレ・エルムウッド
アドリブ・絡み歓迎

世界を一つの視座でしか見られないのは哀しいこと
正義は振りかざせば毒になる
ですが
光とは毒や罪を断つのでなく
救い昇華する為にあるのだと思います

UCで敵攻撃回避
「その祈りは私に必要ありません」
光が回避に足る形でなくとも落ち着き《祈り》その聖なる気で敵呪詛を相殺
「我が高位の御方はそれを望みません」
反乱者皆様の勇気を受け鼓動するハートと杖の波動で攻撃や《念動力》で石礫を巻き上げ《範囲攻撃》
皆様を巻き込まぬ様注意し戦場を広く意識し
体勢を崩した敵や遠距離攻撃など倒しやすい敵を任せます
危なげな足許は《念動力》《空中浮遊》で支援
《威厳》で高らかに詠唱し《破魔》の加護を贈れば士気高揚も導けるかと



「吸血鬼の正義を理解しない愚者達よ。貴方達に今一度悔悛の機会を与えましょう」
 広がりゆく反乱の渦中にて、光の断罪者達は十字架の杖を構えながら叛徒に告げる。
 その身から放たれる聖者の光はしかし、ヴァンパイアの洗脳によって反転したもの。
「主よ、憐れみたまえ」
 忌まわしき吸血鬼に捧げられた祈りは呪詛となって、再び人々を洗脳しようとする。
 だが、禍々しきその輝きから民を守るように、敢然と立ちはだかるひとりの猟兵がいた。

「その祈りは私に必要ありません」
 蛍石の神フルエレが発する聖なる気は、光のカーテンのように洗脳の呪詛を遮断する。
 光速の攻撃が回避できるものでなくとも、その振る舞いは微塵の焦りもなく落ち着いており、細められた濃紫の瞳からオブリビオンに対する反抗の意志は失われていない。
「私達の聖光が効いていない? なぜ?」
「我が高位の御方はそれを望みません」
 現世に顕現しているフルエレを夢とするならばそれは現。枝葉のひとつとするならば樹木そのもの。人の言葉では満足に表せない高次の存在への祈り、全知たる【Akashic Chronicles】の前では、洗脳に基づいた虚ろな祈りなど虚仮威しにもならない。

「皆様の勇気を、どうか私にお貸しください」
 洗脳呪詛を凌いだフルエレは反乱者達に呼びかけると、鼓動するプリンセスハートと叡智の杖を手に反撃に転じる。放たれた波動は光の断罪者達を吹き飛ばし、同時に巻き上げられた石礫は念動力によって敵陣目掛けて降り注ぐ。
「きゃあぁぁぁぁぁっ!!?!」
 山肌を抉るような広範囲の攻撃に体勢を崩され、悲鳴を上げる断罪者達。そこに間髪入れず待機していた『闇の救済者達』と反乱者の集団が、一気呵成に追撃を仕掛ける。
「俺達の怒り、思い知れっ!」
 投げつけられる石礫や弓矢による遠距離攻撃が、隙を見せた敵を確実に仕留めていく。
 個々の力は弱かれど、彼らは決して無力ではない。オブリビオンに立ち向かう意志と、恐怖に負けない勇気がある限り。

「皆様の歩みが止まらぬよう、私も神として加護を授けましょう」
 威厳ある振る舞いを見せながら、高らかな詠唱と共に破魔の加護を贈る蛍石の女神。その神々しき佇まいに鼓舞された人々は、ますます士気を高揚させ敵に立ち向かう。
 フルエレは味方を巻き込まないように戦場を広く意識し、足許が危なげな者には念動力の手を差し伸べるなど、細やかな気配りで反乱者達の戦いをサポートしていく。
「この地に光をもたらすのは、皆様の意志です」
 希望を抱く人々の想いが強まってこそ、宝石の神もまた輝きを増す。
 なぜなら『まもりたすける』ことが、彼女の最も強固な意志ゆえに。
 蛍石の光が照らす戦場に、堕ちし聖者が輝く余地はもはや無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(暗色外套を脱ぎ捨て)
数に勝るとはいえ人々の被害は抑えなくてはなりません

各地で反乱指揮する『闇の救済者達』に持たせた妖精ロボで鉱山の状況を●情報収集
敵の発見や劣勢を確認次第、遠隔●操縦するロボの●スナイパー射撃で牽制
脚部スラスタでの●スライディング移動
地図で割り出した最短ルートで急行(地形の利用)

お待たせしました、後はお任せを
●盾受けや●武器受けで●かばい、格納銃器とレーザーの●なぎ払い掃射
●怪力での近接攻撃で制圧

…堕ちた聖女、反転する前の光でどれ程救えたか…

(戦闘後ロボ回収、充電済み個体を渡し)

敵が逃走中? 場所は…
通路が小さく急行不能…味方にお任せする他ありませんね
やはり閉所は不得手です…



「数に勝るとはいえ人々の被害は抑えなくてはなりません」
 暗色外套を脱ぎ捨てて、人々の前で勇ましき姿を露わにしたトリテレイアは、各地で反乱を指揮する『闇の救済者達』から鉱山の状況を調べる。彼らに持たせた自律式妖精型ロボは、リアルタイムで反乱の模様を映像や録音として伝えてきてくれる。
 どうやら反乱はこちら側の優勢だ。だがそれがこれ以上の鉱夫達の流血の上に成り立つ勝利であってはならない。自分達猟兵がここに居るのはそのためでもあるのだから。

「光の断罪者が複数出現……すぐにお助けに参ります」
 局地的に劣勢に陥っている戦場を見つけたトリテレイアは【自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード】を起動して、現地にいる妖精に味方の援護を行わせる。機械仕掛けの妖精から発射されるレーザーは閃光の矢となって、人々を襲う光の断罪者達を牽制する。
「くっ……こんな小さな紛い物の妖精が、邪魔をして……!」
 反転した聖者の力を纏った断罪者達は、破壊の光にて邪魔者を撃ち落とそうとするが、妖精ロボは小ささと精密動作性を活かして戦場を飛び回り、敵に的を絞らせない。
 その間にトリテレイアは脚部スラスターで滑るように鉱山を駆け、潜伏中に作成した地図から割り出した最短ルートで現場へと急行する。

「お待たせしました、後はお任せを」
「騎士殿! 助かりました!」
 さほどの時を置かずしてトリテレイアが駆けつけると、面識のあった鉱夫や『闇の救済者達』の中からはわっと歓声が上がる。白き騎士甲冑のような装甲を纏い、長剣と大盾を携えたその勇姿は、味方に安心感を与えるのに充分なものだ。
「また吸血鬼に歯向かう愚か者がひとり……我らが主の威光に浄化されなさい!」
 その反応への苛立ちを込めた破壊の光を浴びせかける断罪者達。ここまで時を稼いだ妖精ロボに代わって閃撃を受け止めるトリテレイア。光さえも跳ね除けるその巨体と大盾は、オブリビオンの猛威を決して人々に寄せ付けなかった。

「……堕ちた聖女、反転する前の光でどれ程救えたか……」
 今や治癒から殺戮の力へと堕したその輝きを剣にて切り払い、機械仕掛けの騎士は嘆くような呟きと共に格納銃器を展開し、妖精ロボとの連携攻撃にて反撃を開始する。
 二機同時に一斉発射されるレーザーと銃弾は逃げ場のない濃密な弾幕を展開し、射界にいた光の断罪者達を一人残らず薙ぎ払っていく。
「きゃぁぁぁぁぁっ!?」
 銃声と悲鳴と共に血飛沫が舞い、堕ちたる聖女達は掃射から逃れようと慌てふためく。
 トリテレイアはその機を突いてスラスター噴射で接近すると、浮足立った敵を得意の近接戦闘で制圧していく。こと白兵戦となれば体格でも怪力でも勝るウォーマシンを相手に、術士である聖女達が敵う道理は無かった。

「……これでこちらの敵は全滅ですね」
 銃弾と剣戟の音色が止んだ時、騎士の視界にいた断罪者達は全て一掃されていた。
 味方の犠牲者はなし。トリテレイアはここまでよく奮戦した妖精ロボを肩部の格納スペースに回収すると、フル充電された新たな個体を『闇の断罪者達』に渡す。
「引き続き戦況はモニタリングしておきますので、こちらをお持ちください」
「感謝します。我々も貴方がたのお力になれるよう、精一杯戦います」
 猟兵達に守られるだけではいられないと人々は奮起し、士気はより高まっていく。
 それが戦局に良い影響をもたらすことを願いながら、トリテレイアは他の場所にいる妖精ロボから情報収集を再開する。

「敵が逃走中? 場所は……通路が小さく急行不能……味方にお任せする他ありませんね」
 妖精の一機が捉えていたのは狭い坑道の中を駆けていく敵の姿。領主に報告を持ち帰らせないためにも一人も逃すわけにはいかないが、運悪く手出しのしづらいい所だ。
「やはり閉所は不得手です……」
 3m近い巨体はメリットにもなればデメリットにもなる。トリテレイアは他の猟兵に連絡を取って自身が掴んだ情報を伝え、至急そちらに向かってもらうよう要請する。
 自分は自分に出来ることを。人々に犠牲を出さぬようにその後も彼は各所を転戦するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
これ以上、洗脳なんてさせない…みんなを、そして貴女達も吸血鬼の支配から救ってみせる…!

ラン達には労働者の解放と共に人々の支援をお願い…。

わたしは止めに来た断罪者達の相手をするよ…。
【神滅】で吸血鬼の洗脳や彼女達の堕ちた聖女の力を断ち、無力化…。
彼女達に闇に堕ちる前、神を信じて人々に希望を与えてた頃の気持ちを取り戻す様、訴えるよ…。
洗脳が解けて希望を取り戻してくれれば【共に歩む奇跡】も使えるはず…。
そうすれば、もう一度、正しい聖女として歩んでいけるはずだから…。

貴女達だって闇に堕ちる前は神を信じ、希望を信じた聖女だったはず…。
思い出して欲しい…希望を、人々の強さを…。
もう一度、共に歩んで行こう…



「くっ……ここにも猟兵が……一体、何人紛れ込んだと言うのです……!」
 反旗を翻した人々に追われるように鉱山中を駆けながら、悪態を吐く光の断罪者達。
 その前に立ちはだかったのは妖刀を構えし魔剣の巫女、璃奈と3人のメイド人形達。
「これ以上、洗脳なんてさせない……みんなを、そして貴女達も吸血鬼の支配から救ってみせる……!」
 自らもオブリビオンの奴隷となった過去を持つゆえに、この地に囚われた人々の辛さが彼女にはよく分かる。それは虐げる側であった光の断罪者達も例外ではなく――銀の瞳に宿る輝きは、救えるもの全てを救わんとする強い決意の証だった。

「ラン達は労働者の解放と共に人々の支援をお願い……」
「「「りょうかい!」」」
 ご主人からの司令にメイド達は声を揃えて応えると、今も鉱山の各地で戦っている人々の援護に向かう。そこには今だ洗脳に囚われたままの労働者の救出も含まれている。
「行かせません……っ!?」
 断罪者達は反転した聖者の光を纏ってメイド達を阻まんとするが、それよりも速く璃奈が彼女らの行く手に回りこむ。その身のこなしはユーベルコードで強化されているはずの聖者達のスピードを、さらに上回っていた。

「思い出して……貴女達が闇に堕ちる前、神を信じて人々に希望を与えてた頃の気持ちを……」
 静かな口調に切なる想いを込めて訴えながら、璃奈は呪力を籠めた妖刀を振るう。
 【妖刀魔剣術・神滅】。呪力と身体能力を飛躍的に強化して放つその一閃は、彼女らの肉体を傷つけることなく、吸血鬼にかけられた洗脳や堕ちた聖女の力を断ち斬る。
「なに、を――く、この、力は、あぁぁぁぁぁっ!!?!」
 呪殺の刃に斬り伏せられた光の断罪者達は、苦しげな悲鳴を上げた後、がくりと糸が切れたようにその場に崩れ落ちる。その身を包んでいた破壊の光は消え去り、彼女らの力の根源はここに破壊された。

(洗脳が解けて希望を取り戻してくれれば【共に歩む奇跡】も使えるはず……。そうすれば、もう一度、正しい聖女として歩んでいけるはずだから……)
 その場にいた断罪者達を無力化した璃奈は、パチンと鍔音を立てて妖刀を鞘に納めると、巫女装束の中から特別な力を込めた呪符を取り出して、彼女らの傍に近寄る。
「貴女達だって闇に堕ちる前は神を信じ、希望を信じた聖女だったはず……」
 今ならばこの言葉も届くはず。洗脳を解かれた光の断罪者達は魂が抜けたように虚ろな目をしてへたり込んでいるが、その表情が微かに動いたのを璃奈は見逃さなかった。
「思い出して欲しい……希望を、人々の強さを……」
 聖者とは、暗黒の世界に残された唯一の聖なる存在。人々を癒やし救う希望の象徴。
 ずっと忘れていたその在り方を、巫女の呼びかけが思い出させた時、彼女らの瞳に再び光が灯った。

「そうだった……私達は、みんなに与えたかった……」
「こんな歪んだ形じゃない……本当の生きる希望を……」
 はらはらと零れ落ちる涙が、聖女達を闇に縛り付けていた澱みを洗い流していく。
 その心に希望が蘇ったのを見て、璃奈は呪符をそっと彼女らの身体に押し当てる。
「もう一度、共に歩んで行こう……」
 【共に歩む奇跡】。それは敵対意志の無いオブリビオンを共存可能なものへと最適化するユーベルコード。一度は闇に堕ちた聖女達の魂は、呪符の中にすうっと吸い込まれていき、その中で光の聖女としての再誕の時を待つことになる。

「ありがとう……私達に希望を思い出させてくれて……」

 姿を消す瞬間、花が咲いたような微笑みで告げられた言葉を、璃奈は心に刻みこむ。
 世界を包む闇がどれほど深くとも、希望も、奇跡も、ここにある。呪符の中に宿った聖なる光が、そのことを彼女に確信させてくれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シェーラ・ミレディ
堕ちたとはいえ、もとは聖者。
自らの行いに気付かぬうちに、殲滅するのもまた慈悲か。

民衆を安全に逃がすため、僕の方へ注意を引き付けよう。
正義を強制する者が、正義であるはずがなかろう!
正義とは強いず、導くものだ!

敵の数が多いからな、『落花流水』で守りを固めよう。
呼び出した精霊に防御と奇襲への警戒を任せ、僕自身は動き回りながら銃撃だ。弾頭は誘導弾。フェイントも織り交ぜながら、的確に敵を射抜いていこう。
聖者を倒しても油断せず、魔法生物が召喚されたら優先して処理するぞ。
僕の弾丸から、逃れられると思うなよ?

※アドリブ&絡み歓迎



「正義を強制する者が、正義であるはずがなかろう! 正義とは強いず、導くものだ!」
 戦いの喧騒を切り裂くような、凛として力強いシェーラの叫びが宝石鉱山に木霊する。
 戦闘中でも人目を惹くその立ち振る舞いと糾弾の言葉は、光の断罪者達の注意を引きつける。彼の狙いはまさしくそれ、戦う力のない民衆を安全に逃がすための囮役だ。
「強制とは異なことを。絶対的な世の真理に跪くのは当然の摂理でしょう」
 ヴァンパイアの洗脳に染まりきった者に、歪み果てた正義を糾す言葉は届かない。
 闇の支配こそを絶対の真理と宣う狂信者達は、十字架の杖を掲げて閃光を放つ。

(敵の数が多いからな、まずは守りを固めよう)
 冷静に敵方の戦力を見極めながら、シェーラは四丁の精霊銃を手元でくるりと操る。
 奏でるは【彩色銃技・落花流水】。その衣装は舞踏会に出席するような着飾ったものに変わり、ダンスパートナーとして見目麗しい精霊が傍らに呼び出される。
「一曲お相手願おうか!」
 精霊とシェーラは互いの死角をかばい合うように、ぴったりと息のあった動きで戦場を舞う。精霊が閃光を防ぎながら敵の奇襲に睨みをきかせ、シェーラは敵の攻撃の間隙を突いて銃撃を放つ。攻防一体となった華麗なる連携戦法だ。

(堕ちたとはいえ、もとは聖者。自らの行いに気付かぬうちに、殲滅するのもまた慈悲か)
 鋭くも憐れむような眼差しと共にシェーラがトリガーを引けば、多彩な精霊の力を宿した弾丸が光の断罪者を射抜き、舞い散る血飛沫が山肌をルビーのように紅く染める。
 弾頭は誘導弾。フェイントを織り交ぜながら4丁の銃を曲芸のように巧みな手さばきで操る『彩色銃技』の動作は、並大抵の手合いが見切れるものではない。

「きゃぁぁぁぁっ?!」
「そん、な、馬鹿な……」
 玄妙なる軌跡を描く銃弾に射抜かれて、ばたばたと大地に倒れ伏す光の断罪者達。
 だが、完全に敵を仕留めるまでシェーラは決して油断しない。精霊銃を構えたまま周囲を窺っていると、侍らせていた精霊が警戒を促すように倒れた女達を指差した。
『グルルルルル……』
 瀕死の断罪者の影から現れたのは【反転の呪詛獣】。彼女らの信仰心を歪めヴァンパイアに絶対服従するように洗脳していたのは、この魔法生物の能力によるものだ。
 もしもこの獣達の奇襲を受けていれば次に洗脳されていたのはシェーラだったかもしれない。だが、新手の出現を予期してさえいればその対処は容易だ。

「彼女達を使って、この鉱山の民衆を洗脳していたのはお前達か」
 呪詛獣が動き出すよりも速く、シェーラは落花流水の構えから銃撃を仕掛ける。洗脳能力の元凶とも言えるこれは優先して処理すべき標的であり、撃ち抜かれた獣共は断末魔の悲鳴を残して再び闇に還っていく。
「僕の弾丸から、逃れられると思うなよ?」
 精霊と共に踊るように戦場を駆け、雨あられと銃弾を放つ、その勇姿は華麗にして苛烈であり。奏でられる銃撃の舞踏会を生き延びたオブリビオンは、誰一人としていなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アウレリア・ウィスタリア
労働者には逃げてもらいたい
ボクでは守りながら戦うことはできないから
だから足止めをして、そのまま……焼き尽くす

逃れる元労働者たちと敵の間に立ち
【蒼く凍てつく復讐の火焔】を纏った鞭剣を振りかざしましょう

アナタたちも吸血鬼に踊らされるだけの存在
そして彼らとは違い解けぬ呪縛に囚われた存在
なら、ボクの火焔でその想いごと凍え、焼き付かせてみせましょう

瀕死になんてさせない
ただ焼き尽くす

鞭剣を振るい敵を凍えさせ動きを止めましょう
そうして動きが止まったのなら
そのまま蒼の火焔で焼き滅ぼします

逃げるものを囮にするようで気が引けますが
敵がそちらに気を取られたのなら
一気に殲滅するチャンスでしょう

アドリブ歓迎



「アナタたちは先に逃げてください。ボクでは守りながら戦うことはできないから」
 戦いから逃れる人々をかばうように敵との間に立ちながら、アウレリアは静かに言う。
 鉱山で働かされていた元労働者達の中でも戦う力のない者――非力な女子供や具合の悪い者達は感謝を口にしながら、戦いに巻き込まれないように遠ざかっていく。
「ありがとう……貴女もどうか気をつけて!」
「また、あの素敵な歌を聞かせてね!」
 離れていく人々の声を背に受けて、猫面のオラトリオは鞭剣「ソード・グレイプニル-thorn-」を振りかざす。その刀身は【蒼く凍てつく復讐の火焔】を纏い、大気が震えるほどの冷気が周囲を氷結させていく。

「そこを退きなさい」
 十字架を構えた光の断罪者達の刺すような敵意にも、アウレリアは一歩も退かない。
 その仮面の下に宿るのは敵愾心よりも深く暗い感情と、対峙する相手への一抹の憐憫。
「アナタたちも吸血鬼に踊らされるだけの存在。そして彼らとは違い解けぬ呪縛に囚われた存在。なら、ボクの火焔でその想いごと凍え、焼き付かせてみせましょう」
 さっと振るった鞭剣の刃は、蛇のごとく大きくしなりながら標的に牙を剥く。蒼炎の軌跡が戦場を薙ぎ、切り裂かれた光の断罪者達の傷口は一瞬のうちに凍りついた。

「これは―――ッ!?」
 血が流れる前に凍るほどの絶対零度の炎。其は少女の魂に残された復讐と狂気の業火。
 骨の髄まで沁みるほどの冷気は光の断罪者達の動きを鈍らせる。アウレリアはそこに休むことなく追撃の一閃を重ね、敵の血肉を削りながら蒼炎で凍りつかせていく。
(瀕死になんてさせない。ただ焼き尽くす)
 彼女が警戒するのは【反転の呪詛獣】。宿主の危機に反応してユーベルコードが起動するのなら、それを許さないほどのダメージで瞬時かつ完全に息の根を止めるまで。
 光の断罪者の動きが止まれば、刃と共に躍る蒼の火焔はひとつに集束して火力を増し、召喚の猶予を与えることなく標的を焼き滅ぼした。

「くっ……この娘、強い! ここは一度撤退を……!」
「ですが、このままではあの者達が逃げてしまいます!」
 物言わぬ氷像と化した同胞を目の当たりにして、残された断罪者達は浮き足立つ。
 彼女らの使命はここで労働者達を働かせ、鉱山から逃がさないことだ。ここでアウレリアひとりに足止めを食らっている時間が長引くほど、その目的は遠のいていく。
 だが、こと戦いの最中にそんなことに気を取られるほうが、余程致命的であることを彼女らは分かっていない。その隙を目の前の猟兵が見逃すわけが無いことも。
(逃げるものを囮にするようで気が引けますが)
 力なき人々の背中に敵の気が逸れたうちに、蒼の火焔は周囲を完全に包囲していた。
 いつの間に、と断罪者達が青ざめた直後、四方八方より押し寄せた業火が彼女らを一気に殲滅する。

「さようなら。アナタたちに奏でる歌はないけれど」
 極寒の蒼炎が全てを焼き尽くし、断末魔すら凍りついた戦場にアウレリアはひとり佇む。
 氷像と成り果てた光の断罪者達は、死をもって吸血鬼の支配から解き放たれたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィサラ・ヴァイン
よしよし、『闇の救済者達』の煽動は上手くいったみたいだね…まあ、ここまでの波となるのは予想外だったけど
さて、私も作戦に協力しないと
《心喰い『ハーライト』》を用いて炭坑夫達の反抗心から力を得て、《石の書庫『リトス』》で鉱石の塊…鉱山そのものから魔力を吸い上げるよ
全ての出口をカバー出来るように、じっくりと魔力を練り上げ、鉱山の出口から繋がる形で【ゴルゴンの試練】を設置
オブリビオンは一人たりとも逃すわけにはいかないからね
迷路の壁に隠れながら《魔眼『コラリオ』》で石化させつつ足止め
『闇の救済者達』や反抗者達、仲間の増援を待つよ
ねえ、鉱山から脱出した先に敵が待ち構えてるってどんな気持ち?



「よしよし、『闇の救済者達』の煽動は上手くいったみたいだね……まあ、ここまでの波となるのは予想外だったけど」
 まさしく怒涛の勢いで反旗を翻す労働者達の様子を見て、ヴィサラはぽつりと呟く。
 一度欲望に火のついた人々の勢いは止まらず、猟兵の力もあってオブリビオン相手に優勢を保っている。この調子でいけば鉱山の解放までもう一息といった所だろう。

「さて、私も作戦に協力しないと」
 ヴィサラはゴルゴンとしての能力のひとつ、心喰い『ハーライト』を使って鉱夫達の反抗心を喰らい、自らの力に変える。胸焼けするような激しい負の感情はけして彼女にとって美味なものでは無いが、これくらいならまだ我慢のできる範疇だ。
「ここは力を引き出せるものがいっぱいあって助かるよ」
 続けて発動するのは石の書庫『リトス』。周囲の石や鉱物から力を得る能力だが、こと良質な宝石の産地であるこの鉱山は、それ全体が彼女にとって巨大なパワーソースとなる。

「これくらいでいいかな……それじゃあ、やろっか」
 十分な魔力を吸い上げたヴィサラは、物陰に潜みながらじっくりとそれを練り上げ、鉱山の出口から繋がる形でユーベルコード【ゴルゴンの試練】を設置する。
 魔力を浸透させた地形が組み変わり、魔石で構成された巨大迷宮が突如として出現する。それは鉱山からの逃亡を図る敵を閉じこめるための、強固かつ複雑な監獄だ。

「なっ、何が起こったのですか?!」
 猟兵と叛徒達の猛攻から辛くも逃げ延びてきた光の断罪者達は、見渡す限りに広がる異様な光景に戸惑いを隠せない。山中から麓へと至る全ての出口は迷路によって塞がれ、脱出のためのルートは完全に封鎖されていた。
「オブリビオンは一人たりとも逃すわけにはいかないからね」
 ヴィサラは迷路の壁に隠れながら、右往左往する敵集団に魔眼『コラリオ』を使う。神話におけるゴルゴンの代名詞と言うべきその力は、視線に捉えた者を石化させる。
「あ……足が!?」
 身体の末端から冷たい石に変わっていく様は、物理的な拘束に加えて精神的な動揺を加速させる。恐怖や不安といった負の感情を敵が抱けば抱くほど、ヴィサラの力は強まるのだ。

「ねえ、鉱山から脱出した先に敵が待ち構えてるってどんな気持ち?」
 くすくすとからかうような笑いの混じったヴィサラの声が、迷路の石壁に反響する。退却さえも許されない理不尽なゴルゴンの試練が、光の断罪者達を追い詰める。
 彼女の目的はここから敵を逃さずに足止めすること。しばらく時間を稼ぎさえすれば、『闇の救済者達』や反抗者達、仲間の猟兵が増援に来ると分かっているから。
「よ、よくも……ッ!」
 敵もそれは理解しているが故に焦りはつのるが、もはやどうしようもない状態だ。
 魔石の迷路で石化の魔眼に囚われた光の断罪者達に、終わりの足音は刻一刻と近付いて来ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。彼女達も元を正せば吸血鬼に操られているだけ…
まだ間に合うか分からないけど、
可能性があるなら私は最後まで抗ってみせる

殺気や気合いを絶ち存在感を消して闇に紛れ、
過去の戦闘知識から右眼に魔力を溜め【血の赫眼】を使用
聖女達を洗脳している呪詛の源を見切りUCを発動

…そこね。私の眼から逃れることはできないと知れ

残像が生じる早業で飛刃を操り敵の体内に透過して切り込み、
呪詛獣のみを切り裂く闇属性攻撃を乱れ撃ち敵をなぎ払い、
洗脳された聖女達を助けられないか試みる

…お前達の命運は此処で潰える。一匹たりとも逃しはしないわ

…貴女達を操っていた呪詛は絶ち切った
生き残っているなら巻き込まれないように隅に待避していて



(……ん。彼女達も元を正せば吸血鬼に操られているだけ……)
 大鎌を肩に担ぎ、光の断罪者達の追討に当たりながら、リーヴァルディは思案する。
 ヴァンパイアに洗脳され、治癒の光も今や破壊の光へと反転したが、本来の彼女らは聖者だった。あの鉱夫達と同様に、まだ救済の余地は残されているかもしれない。
(まだ間に合うか分からないけど、可能性があるなら私は最後まで抗ってみせる)
 勝算がどれほどのものか定かではなくとも、その決心だけは絶対に揺らぎはしない。
 黒衣を纏った少女の姿は闇に紛れ、殺気や気配すらも絶ち、影法師のような存在感で鉱山を駆ける。

「くっ……早く……報告に……」
 やがて発見したのは、麓に逃げ延びる過程で足止めを喰らった断罪者達の姿だった。
 リーヴァルディは気付かれる前に右眼に魔力を溜め、限定的な吸血鬼化を実行する。
「……限定解放。光を灯せ、血の赫眼」
 真紅に染まったその右眼は、感情や魂の波長等の様々な情報を視覚化して、対象の能力を浮き彫りにする。過去の戦闘経験とも照らし合わせて彼女が見極めるのは、聖女達を支配しているヴァンパイアからの烙印、洗脳の原因たる呪詛の源。

「……そこね。私の眼から逃れることはできないと知れ」

 その刹那、残像が生じるほどの早業で操り放たれたのは【限定解放・血の飛刃】。
 紅い軌跡を描いて高速回転する三日月状の魔刃が、反応の暇さえ与えずに光の断罪者達をなぎ払い――直後、獣のような凄まじい絶叫が戦場に響き渡った。
『グギャオォォォォォッ!!!?!』
 悲鳴を上げたのは聖者達ではない。彼女らの内に潜んでいた【反転の呪詛獣】だ。
 リーヴァルディの血の飛刃は、物質を透過して使い手が望んだ物だけを切り裂く。
 その特性を活かして、彼女は聖女達の肉体を傷つけることなく洗脳の元凶を切除したのだ。

『グゥゥゥルルルルゥゥゥ……』
「な……わ、わたしは、一体……」
 強制的に切り離された呪詛獣の群れは、ポタポタと血を垂らしながら唸り声を上げる。
 その宿主であった聖女達は、はっと目が覚めたような様子で、自分の身に何が起こったのか把握しきれていない様子だ。
「……貴女達を操っていた呪詛は絶ち切った。生き残っているなら巻き込まれないように隅に待避していて」
 リーヴァルディは静かな調子でそう告げると、その手元に再び血の飛刃を呼び戻す。
 自分達の所業を朧げながらも記憶しているのか、彼女らは青ざめた顔で震えながら頷くと、よろよろと戦場から退避していく。

『グルゥッ!!』
 宿主を逃すまいと、牙を剥き出しにして洗脳の呪詛を放とうとする呪詛獣の群れ。
 だが、それよりも早くリーヴァルディの飛刃が空を翔け、手負いの獣を切り裂いた。
「……お前達の命運は此処で潰える。一匹たりとも逃しはしないわ」
 真紅の右眼にて敵の一挙一動を見切り、死角や弱点を突いて血の飛刃を乱れ撃つ。
 緻密な予測と練達の技巧に裏打ちされた猛攻を避ける術はなく――反転の呪詛獣の咆哮は断末魔へと変わり、バラバラの肉片となって闇に還っていった。

「……終わりね」
 やがて視界内の獣共をすべて一掃すると、リーヴァルディの右眼は元の紫色に戻る。
 戦いの喧騒も次第に小さくなり、それに代わって人々の歓声と勝鬨が聞こえてくる。
 宝石鉱山を管理していたオブリビオンはもういない。それはすなわち猟兵と『闇の救済者』、そして反旗を上げた人々の勝利を意味していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『パンがないなら…』

POW   :    肉を食え!

SPD   :    野菜を食べよう

WIZ   :    お菓子を食べれば?

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「勝ったぞーーーーっ!!」

 木霊する勝鬨の声。山を割らんばかりの人々の叫びは、歓喜と開放感に満ちている。
 宝石鉱山を管理していた光の断罪者は一人残らず撃退され、この地からオブリビオンの脅威は消え去った。文句のつけようもなく、猟兵と『闇の救済者達』の完全勝利だ。

「この作戦が成功したのも、皆さんのお陰です」
「助けに来てくれて、本当にありがとうございます!」

 感謝の言葉を受け取りながら、猟兵達は洗脳から解放された人々の様子を見回す。
 脅威がなくなったとはいえ、長い酷使の日々が彼らに与えた傷跡は深い。過労や貧困による不調を抱える者、生活環境の改善など、これから解決すべき問題は山程ある。

「まずは何よりも食料の配給ですね。それから傷病者の治療も」
「彼らが安全に暮らせる場所や住まいの手配もしないと……」

 『闇の救済者達』は用意していた物資を広げて、てきぱきと支援活動を開始する。
 しかし助けを必要としている人々の数はあまりにも多い。猟兵達からも何かしらの支援があれば、彼らも大いに助かることだろう。

 宝石鉱山を支配するオブリビオンの闇と絶望は去った。
 ここからは、光と希望を取り戻していく道程が始まる。
フレミア・レイブラッド
採掘した宝石を運搬する大型の荷馬車とかがあるハズよね?
居住地まではそれを利用すれば人々の移動が楽かしら?

1章で【魔城スカーレット】に補充してきた食糧や医薬品、毛布や衣類、野菜の種や農具等、各種支援物資を提供。
更に【虜の軍勢】から「花々しき大空の城にて」の「病をばらまく妖精」、「メイド・ライク・ウェーブ」の「万能派遣ヴィラン隊」を召喚。
ヴィラン隊には分担して【あらゆるニーズにお答えします】による【医術や料理】によるサポート。
妖精には【わたしたちをいやす薬】で特に重い傷病者の治療をさせるわ。

特に妖精には後で労いとご褒美をあげないとね


よくみんな頑張ったわね♪(子供達にブラッド・クリスタル渡しながら)



「開きなさい、わたしの城」
 魔術で空間に穴を開け、【魔城スカーレット】へと続く道を作り上げるフレミア。
 開かれた門の向こうから出てくるのは、食糧や医薬品、毛布や衣類、野菜の種や農具等、戦後のために彼女が予め補充しておいた各種支援物資の数々だ。
「こんなに沢山……!」
 既にその一部を見せられたことのある人々でも、その量と質には思わず目を見開く。
 これだけの物資があれば、解放された労働者達の暮らしは大いに向上するはずだ。

「採掘した宝石を運搬する大型の荷馬車とかがあるハズよね? 居住地まではそれを利用すれば人々の移動が楽かしら?」
 フレミアは提供した物資を配りながら、鉱山に残されていた機材にも目をつける。
 重量のある宝石を運び出すための荷馬車であれば、すこし乗り心地は悪いかもしれないが、人々を移動させる手間も改善できるだろう。
「さすがによく整備されてますね。これなら足の悪い人達をすぐに動かせそうです」
「それなら良かったわ。じゃあお願いね」
 馬車の整備と御者については『闇の救済者達』に任せ、フレミアはさらに困窮している人々の救援に。魔城に続いて【虜の軍勢】を呼び出すゲートを開き、奉仕活動全般に長けた「万能派遣ヴィラン隊」と、治癒能力を持った「病をばらまく妖精」を召喚する。

「ヴィラン隊は分担して医術や料理によるサポートを。妖精は特に重い傷病者の治療をお願い」
「かしこまりました、お嬢様」
「は、はい、わかりました……」
 吸血姫の指揮の下、眷属達は鉱山のあちこちに散っていくと支援や治療活動に当たる。
 【あらゆるニーズにお答えします】と、メイド服を着用したヴィラン隊は"万能"の呼び名に恥じない本職顔負けのスペックを発揮し、飢えた者には提供した食糧を使って料理を、傷ついた者や病の者には医薬品による適切な治療を施す。
「こんな美味いもの食ったのはいつぶりだろう……」
「ああ、身体が軽い……痛かったのもだいぶ楽になったよ」
 これまで満足な食事も与えられず、怪我をしてもろくに手当てさえして貰えなかった人々にすれば、彼女らの奉仕は地獄から天国に移ったような気分だろう。飢えや痛みから解放された彼らの表情は自然と明るく、喜びに満ちあふれたものとなる。

「だいじょうぶよ。これはあなたをいやす薬」
 一方の妖精は鉱山の事故で重傷を負った者、あるいは重病に蝕まれた者達のもとに飛んでいくと、蝶のような背中の翅からキラキラと輝く鱗粉を振りかける。かつてはオブリビオンとして毒と病をばらまく者であった彼女も、フレミアの眷属となった今は誰かを癒やすためにその力を行使する。
「あ、ぁ……身体が……動く……!」
「おじいちゃんの熱が引いた……奇跡だ!」
 諦めかけていた重症者とその家族に、妖精のユーベルコードは希望をもたらした。
 通常の医療では有り得ない治癒効果は不治の病や致命傷であってもまたたく間に癒え、歓喜に湧いた人々が抱擁する姿が、救護所のあちこちで見られるようになった。

「みんな良くやってくれているわね」
 フレミアは可愛い眷属達の働きぶりを見守りながら、満足そうな笑みを浮かべる。
 とにかく助けがいる人の数が多く、物資も人手も幾らあっても十分とは言えない中で、彼女らの精力的な活動は鉱夫達と『闇の救済者達』の大きな助けとなっていた。
「特に妖精には後で労いとご褒美をあげないとね」
 妖精の【わたしたちをいやす薬】の治癒効果は高いが、そのぶん妖精本人への疲労も大きい。その労に報いるには何が良いだろうかと主人として考えていると、ふいに誰かがフレミアのスカートのすそを引っ張った。

「きょうからもう、おしごとしなくていいの?」
「みんなといっしょに遊んでもいいの?」
 それは、親と一緒にここに連れられてきた幼子たち。小さな身体に大人と変わらぬ過酷な労働を負わされてきた彼らは、突然の解放にまだ実感が湧いていないようだった。
 戸惑いと不安が入り混じった子供たちの表情を見て、フレミアは安心させるように優しい微笑を浮かべて。
「よくみんな頑張ったわね♪」
 これはご褒美よ、と手渡すのは吸血姫の加護を宿した「ブラッド・クリスタル」。
 この地で産出されるルビーよりも紅く、そして美しい輝きを放つそれを受け取った子供たちは、ぱっと目を輝かせながらお礼を言う。
「うん! ありがとう、おねえちゃん!」
 未来ある子供たちの笑顔。それはフレミアがこの地で救いたかったもののひとつ。
 この笑顔が、彼ら自身の未来を照らすことを信じて、彼女は満足そうに微笑むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
カビパンの御言葉2



我らと闇の救済者は、理不尽なる支配に泣く人々を護るために立ち上がった希望の集まりである。

皆に平和を、皆に安らぎを。

鉱夫達よ、従いを続けるだけの方がどれだけ楽だったであろうか。
だが、皆は遭えて苦難の道を歩んだ。  
それこそがまさに勇気、希望である。
己の義務から逃げなかった。

人間は勝手なもの
これから失ったものを取り戻したいと思うでしょう。
いいですか──取り戻せます。
だから、今度は間違ってはなりません。

そろそろお別れですね。
この世は不確かで、神であろうとも一寸先は分からぬもの。 
しかしたった一つだけ確かなことがあります。

貴方は自由です。 
必ず、貴方にも神の慈悲が与えられるでしょう。



「我らと闇の救済者は、理不尽なる支配に泣く人々を護るために立ち上がった希望の集まりである」
 ヴァンパイアの支配から解放された人々の前で、カビパンは聖杖を片手に演説する。
 教皇の座に相応しい威厳あふれる態度と表情、朗々とよく響く声音は、もしも素の彼女を知る者が見れば思わず別人かと思うほどの大真面目なものであった。
「皆に平和を、皆に安らぎを」
 勢いとノリと幸運だけで日々を乗り切っている彼女にも、たまにはこういう気分の時もあるのだ。ここで彼ら彼女らと出会ったのもまた、ひとつの天佑であろうから。

「鉱夫達よ、従いを続けるだけの方がどれだけ楽だったであろうか」
 聖なる光のオーラを纏ったカビパンの説法に、人々は黙ったまま耳を傾けている。
 演説場はしんとした静謐な雰囲気に包まれ、教皇の御言葉だけが空気を震わせる。
「だが、皆は遭えて苦難の道を歩んだ。それこそがまさに勇気、希望である。己の義務から逃げなかった」
 義務を全うするのはけして楽ではない。なれど彼らはその一歩を踏み出した。実に善きことであると、ここに集いし全ての者達の勇気を称賛しながら、カビパンは言葉を続ける。

「人間は勝手なもの。これから失ったものを取り戻したいと思うでしょう」
 隷属の中で人々が強いられた犠牲は数多い。誇り、時間、生活、財産、そして生命――数えれば両の手からこぼれ落ちていくものの中には、唯一無二のものもあろう。
 だが、それでも敢えてカビパンは力強く、その声に希望を込めてはっきりと断言する。
「いいですか──取り戻せます。だから、今度は間違ってはなりません」
 そのための長き道程はこの瞬間から始まるのだ。もしも今日に抱いた勇気と希望を忘れ、易き道に流れようとすれば、また同じ悲劇が人々を襲うだろう。そのことを肝に銘じ、正しき道を征く努力を怠らぬよう説くと、彼らは「はい!!」と力強く応えた。

「そろそろお別れですね」
 伝えるべきことを伝え終えたカビパンは壇上から降りると、人々に別れの挨拶をする。
 後のことは他の猟兵やこの世界の人々に任せればいい。自分にできるのは道を説くこと。なけなしのカリスマを総動員して、彼らに征くべき道を示せたのなら十分だ。
「この世は不確かで、神であろうとも一寸先は分からぬもの。しかしたった一つだけ確かなことがあります」
 流浪の女教皇が別れ際に残す言葉はシンプルに、残された人々の心を照らすもの。
 それは彼らが失ったもののひとつであり、この戦いで彼らが最初に取り戻したもの。

「貴方は自由です。必ず、貴方にも神の慈悲が与えられるでしょう」

 女神に加護されし人々の感謝の言葉を背に受けて、カビパンはこの地より去っていく。
 彼女の言葉は、きっと、元鉱夫達の心にいつまでも深く刻み続けられることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
暮らせる場所が用意できたら、ラン達で炊き出しや掃除等を分担して担当…。
ミラ達も周囲の動物を狩ったり、子供達の遊び相手になったりしてお手伝い…。

「なにもない!」
「料理!」
「お掃除!」

わたしは自身や救済者の人達が持ってた種なんかを畑に埋めて、【天照・理想郷】を限定解放…。
集落に天照の力で加護を与え、この一帯のみを太陽の光と恵みの雨が降る土地へ環境を変化させるよ…。

後は吸血鬼に見つけられない様に、村外からは偽装できる様、幻術【呪詛、高速詠唱、残像】を張って置こうかな…。

天照を応用したわたしの新しい力…。
戦う為じゃない、守り育む為の力だよ…。
これで、ここがまた、人々が安全に繰らせる場所になると良いな…



「なにもない!」
「料理!」
「お掃除!」

 持たざる者達のため、取り敢えずの暮らしの場を用意するために建てられた仮設住居。
 まだ何もかもが足りていないそこを少しでも快適にするために、メイド人形のラン達3人も忙しなく働いていた。

「オブリビオンはいなくなっても、これからの暮らしは大変だね……」
 璃奈はその様子を見守りながら、荷馬車から降りてくる人々に支えの手を差し伸べる。
 ここは『闇の救済者達』が用意した避難場所。鉱山から解放された人々が最低限の暮らしができるよう村としての設備は最低限整えられているが、まだ十分ではない。今後の生活基盤を整えられるかどうかは、実際にここで暮らす人々の努力次第だろう。

「今日から、俺たちはここで暮らすんだな」
「鍬なんて持つの久しぶりだよ、昔は農民だったのにな」
 新たな居住地にやってきた人々の反応は戸惑い、不安、期待、様々な想いが入り混じったものだ。そんな彼らの気持ちを少しでも前向きにするために、炊き出し中のメイドが出迎える。
「ごはんできた!」
「部屋もきれい!」
 にこにこと満面の笑顔に勧められ、清潔な屋根の下で温かな料理を食べる。たったそれだけの何気ない日常的なことも、これまでの彼らには決して許されなかったことだ。

「ああ、あったかいなぁ……」
 思わず涙ぐみながら、夢中になって食事を口に運ぶ人々。その向こうでは子供たちが、食糧調達の狩りから戻ってきた仔竜のミラ達といっしょに広場を駆け回っている。
「きゃはは、まてまてー!」
「きゅいーっ!」
 狩ってきた獲物を口に咥えたまま、元気いっぱいの子供らに追っかけ回される仔竜達。
 本当は遊びたい盛りなのに、ずっと大人たちと一緒に働かされてきたのだ。解放された喜びが溢れてはしゃぎまわっているのだと思えば、それも微笑ましい光景だった。

「ん……それじゃあ私からも、贈り物……」
 璃奈はメイドと仔竜たちと交流する人々の様子を快さそうに眺めながら、耕されたばかりの畑に種を埋める。救済者達が用意したもの、自分が故郷から持ちこんだもの、いずれもこれからの住人達の生活の基盤となるであろう作物の種だ。
「天照の力、部分解放……この地に光と希望を……!」
 撒いた種の上にそっと土を被せてから、唱えるのは【天照(限定開放)・理想郷】。
 六本の尾を持つ妖狐へと変じた彼女の身体からは呪力の輝きが立ち上り、それは空を覆う暗雲をかき消して、暖かく柔らかな日の光と恵みの雨をこの地にもたらした。

「なんだろう、あの光は……?」
「あたたかい……なんだか身体に、力が満ちてくるみたい……」
 闇に支配されたこの世界の人々にとって、"太陽"とは半ばおとぎ話の存在に等しい。
 じんわりと染み込むような暖かさと共に湧き上がってくる心地良さに戸惑いながら、これは何なのだろうと空を見上げる人々に、璃奈は優しい調子で語りかける。
「天照を応用したわたしの新しい力……。戦う為じゃない、守り育む為の力だよ……」
 雨と光となって降り注ぐ天照の呪力は、この一帯のみの環境を改変し、あらゆる生き物や作物が豊富に育つ土地に変化させる。それはまさしく理想郷のような環境だ。
 見れば恵みの雨と日の光を浴びた畑にはもう、ちらほらと芽が出ている種さえあった。

「これで、ここがまた、人々が安全に繰らせる場所になると良いな……」
 優しい雨と日光が同時に降り注ぐ――彼女の故郷では"狐の嫁入り"と呼ばれることもある天気の下で、六尾の妖狐はふっと柔らかく目元を緩める。限定的とはいえ豊穣の神にも等しき力を見せた彼女に、人々は深い敬意とともに感謝の想いを告げた。
「ありがとうございます。貴女達から受けた数え切れないほどの御恩は忘れません」
「これからは私達の手で、この場所をきっと素晴らしいところにしてみせます」
 その瞳は希望に満ちていて、その表情に鉱夫だった頃の虚ろさは微塵もない。これならもう、この先何があっても彼らはきっと大丈夫だろう――璃奈はそう確信するに至る。

「ん……どういたしまして……」
 乏しい表情にどこか満足げな感情を滲ませながら、璃奈は最後の置き土産として村の周囲に偽装の幻術を張る。この新たな理想郷がまた吸血鬼に見つけられないように。
 人々の新たな生活を祝福するように、その日の空はいつまでも、彼らの頭上に雨と光の恵みを与え続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フルエレ・エルムウッド
アドリブ・連携歓迎

UCの力を使い力仕事を
居住地区と決めた土地の岩石を移動して整地したり住居を建てることに特にお力添え出来るかと
その方面でひとに適した知識は余り持っておりませんから、闇の救済者や猟兵の皆様、人々の計画や希望を良く聞き知恵を絞り行使します

あとは鉱石の神としてのしごと
酷く使役された皆様にとって鉱山は忌まわしいものでしょう
ですが本来、節度を守り採掘するならば紅玉は心に情熱を灯す親しい友
ですから悲しみと怒りの記憶の場を希望へと変える…採掘現場を新しく整えて《祈り》を捧げ浄化し《破魔》の加護を与えます
そうして《アート》で紅玉を惹き立てる装身具の意匠を沢山ひとに贈りましょう
役立ててくださいな



「物資は他の皆様が用意してくれたようですし、私は力仕事をお手伝いしましょう。居住地区と決めた土地を整地したり住居を建てることに特にお力添え出来るかと」
 宝石細工のように可憐な印象のあるフルエレがそう提案したとき、当初の人々の反応は戸惑いがちだった。猟兵とはいえ彼女の容姿は鉱夫として働かされてきた人々よりもずっと華奢で、その細腕で果たして重労働を担えるのか少々心配であったから。
「その方面でひとに適した知識は余り持っておりませんから、皆様の計画や希望を良くお聞かせくださると幸いです」
 しかし当の本人はまったく問題ないというふうに微笑み、どこにどういった住居を建てるのかという居住区の建築計画に耳を傾ける。人々はみな誤解していたが、神たる彼女が力仕事をすると言っても、それは別にフィジカルだけの力を意味しないのだ。

「あまねく時空に、光あれ」
 『闇の救済者達』が乗ってきた荷馬車に向かってフルエレが聖句を唱えると、不可視の威圧感が放たれ、積みこまれていた材木や煉瓦などがふわりと宙に浮かび上がる。それは肉体の力ならざる神威がひとつ【Aura of Floating Goddess】の力だ。
「これをあちらに運べば良いのですね」
「え、ぁ、ええ……お願いします」
 ただ見つめるだけで触れもせずに物を動かす女神に、人々は目を丸くしている。彼女にとっては造作もないことでも、やはり一般人にとってユーベルコードとは超常の力なのだ。
「次はこちらの邪魔な大岩をどかして……と」
 フルエレは伝えられた計画に基づき、どうすればここが住みよい地になるか自分でも知恵を絞りながら権能を行使する。その御蔭で建築作業は予定よりもずっとスムーズに進み、綺麗に均された土地には真新しい即席の住まいが立ち並んでいく。

(ここは順調のようですね。あとは鉱石の神としてのしごとを)
 居住区の設営が軌道に乗り出したのを見届けると、フルエレは一旦作業の手を止めて、人々をある場所に誘う。そこはまだ掘削や労働の跡がはっきりと残っている、ルビーの原石の採掘現場だった。
「ここは……フルエレ様、申し訳ありませんがこの場所はあまり……」
「分かっています。酷く使役された皆様にとって鉱山は忌まわしいものでしょう」
 はっきりと顔をしかめたり陰鬱な表情になる者も多いなか、ですが、とフルエレは語りかける。この地のルビーを独占しようとしたヴァンパイアの強欲は許されるものではないが、決して宝石そのものに罪はないのだと。

「本来、節度を守り採掘するならば紅玉は心に情熱を灯す親しい友。ですから悲しみと怒りの記憶の場を、希望へと変えてみせましょう」
 忌まわしい隷属と酷使の記憶を塗り替えるように、蛍石の女神は静かな祈りを捧げる。
 すると不可視の力によって雑然としていた採掘現場は綺麗に整えられていき、岩肌の中から露出したルビーの原石がキラキラと輝きはじめる。坑道いっぱいに無数の光がまたたくその光景は、まるで満天の星空を見上げているようだった。
「これは……!」
「……きれい」
 ヴァンパイアに捧げる供物でしかなかった紅玉の、浄化された本当の美しさに人々は思わず目を奪われる。女神によって破魔の加護を与えられた紅玉はもはや支配の象徴ではなく、人々の洗脳を解いたあの時のように、反抗と希望の証となったのだ。

「この紅玉の輝きはこれからも、皆様の道を照らしてくれます」
 感動する人々への贈り物として、フルエレは指環や首飾りといった装身具の意匠を描き留めたものを渡す。彼女自身が考案したそれはルビーの魅力を惹き立てるものだ。
 情熱の石たるルビーをこうして身につけておけば、人々の心から希望が絶えることは無いだろう。あるいはそうして加工した品を、この地の新たな特産にするのもいい。
「役立ててくださいな」
「ありがとうございますっ!」
 穏やかに微笑するフルエレに、人々は深々と頭を垂れながら感謝の想いを告げる。
 この鉱山はきっと生まれ変わるだろう。紅玉が支配する地から、紅玉が加護する地に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
…洗脳から解放された聖者達がいたのですね

単刀直入に申し上げます
人々の治療にご協力頂けますか

鉱山の人々と貴方達を天秤に掛け多くを切り捨てた口で何を、と思われるかもしれません
厚顔無恥の極みでしょう

己の行いを受け止める時間が欲しいのであればご無理は言いません
……ですが、鋼の刃も謀も真の意味で人は救えません
今この時は癒しの力と真心が必要なのです
人々の憎悪や報復は私が受け止め、弁護し、騎士としてかばいだて致します

…私を、人々を助けてください
罪に塗れようとも、貴方達は人を救う事が出来る方です

●怪力で医療用物資を運搬しつつ、UCやセンサーで傷病者を●情報収集し重傷者選別
聖者の治療の際の体力消耗軽減



「……洗脳から解放された聖者達がいたのですね」
 復興を進める鉱山の様子を見て回っていたトリテレイアは、つい先程まで敵として戦っていたはずの者達がいるのに気付いた。一部の猟兵の力によってヴァンパイアの洗脳を解かれた元・光の断罪者達は、みな一様に暗い表情をして身を潜めている。
「私達は、これからどうすれば……」
 洗脳されていたとはいえ、ヴァンパイアの手先となって多くの人々を虐げてきた彼女らの罪が消えるわけではなく、酷使されていた人々も彼女らを赦しはしないだろう。本人達もそれを自覚しているからこそ、自責と不安の念を強く感じていた。

 ――そんな彼女らの元にトリテレイアはおもむろに歩み寄ると、口を開くなり言った。
「単刀直入に申し上げます。人々の治療にご協力頂けますか」
「ぇ……?」
 顔を上げた娘達の表情には、怯えと戸惑いに自信のなさがありありと浮かんでいた。
 確かに洗脳を解かれたことで反転していた聖女の力も正常に戻り、破壊の光は癒やしの光になったはずだ。だが、まさか敵対していた猟兵の側からそれを頼まれるとは。
「鉱山の人々と貴方達を天秤に掛け多くを切り捨てた口で何を、と思われるかもしれません。厚顔無恥の極みでしょう」
「そんなことは、決して……! 私達は、斬られるべき罪を犯したのですから」
「生きている限り、この罪は償わねばならない……分かっているのです。でも……」
 一度は破壊と洗脳の力となって、多くの人々を苦しめた力。今更それを使って人々を癒やすのを誰が許すだろう? 人々の心の傷に塩を塗るような真似が、果たして償いになるのだろうか? ――そんな想いが、闇に抗えなかった娘達の心を縛める。

「己の行いを受け止める時間が欲しいのであればご無理は言いません……ですが、鋼の刃も謀も真の意味で人は救えません。今この時は癒しの力と真心が必要なのです」
 罪悪感に苛まれる元・光の断罪者達に、トリテレイアは真摯な態度で語りかける。
 ヴァンパイアの支配から解放されても、今だ心身に深い傷を負った者は少なくない。彼らの苦しみを癒やすためならば、騎士はどんな手立てでも躊躇わずに実行する。
「人々の憎悪や報復は私が受け止め、弁護し、騎士としてかばいだて致します」
 石を投げられるかもしれない。あるいは容赦ない罵声を浴びせられるかもしれない。
 それでも彼は、彼女らに向けられる負の感情を共に引き受けるという。ひとえに人々の救済を願っての決意をはっきりと見せつけられ、娘達の沈んでいた心が揺らぐ。

「……私を、人々を助けてください。罪に塗れようとも、貴方達は人を救う事が出来る方です」
 嘘偽りのない真心と願いを誠実に示して、機械仕掛けの騎士は深々と頭を下げる。
 その高潔さは、堕落による罪の意識に縛られていた娘達の心を、ついに動かした。
「……私達は愚かです。心弱さゆえに闇に堕ち、慈悲により命を救われながら……」
「……今更、人々からどう思われるか恐れるなんて。厚顔無恥は私達のほうでした」
 聖女は再び杖を取り、その身に聖なる光を纏う。今度こそ己の使命を果たすために。
 人々の救済と癒やしのためにその身を捧ぐ、それこそが聖女の生きる道なれば。
「私達も貴方様のように……いえ、その万分の一でも、強く高潔でありたい」
「どんなに恨まれようとも構いません。この力尽きるまで皆を癒やしてみせます」
 瞳に輝きを取り戻した聖女達の言葉には、もはや二度と揺るがぬ決意が宿っていた。
 そんな彼女らにトリテレイアは「感謝します」と、ただ一言に全ての想いを込めた。

「傷病者の皆様はこちらにどうぞ。動けない方は私が運びます」
 それからのトリテレイアと聖女達は、傷ついた人々の治療のために鉱山を奔走する。
 『闇の救済者達』が持ちこんだ医療用物資を仮設病院のスペースに運びこみ、マルチセンサーと妖精型偵察ロボを駆使して傷病者の容態を確認。重傷の者を選別して聖光による治療を受けさせ、比較的軽症の者は通常の手当てにして聖女の負担を軽減するなど、トリテレイアのやるべき事は休む暇が無いほどだ。
「今は快復が優先です。思う所はあるでしょうが、どうか治療を受けて下さい」
 元鉱夫達からの厳しい視線を受けながら、黙々とただ治療を続ける聖女達をかばうように、トリテレイアは人々をなだめながら治療に専念させる。その甲斐あって大きな衝突が発生することもなく、人々の治療は順調に進んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シェーラ・ミレディ
これで脅威は片付いたか。
あとは事後処理だが……うん、此方の方が問題は多そうだなぁ。

と言って、僕にできることはー……負傷者の治療、ぐらいだろうか?
料理は不得手だし、住居の手配ともなれば土地勘が必要だからなぁ。そちらは人に任せよう。
治療や休息が必要な者を対象にUCを発動する。子守唄を歌うように詠唱し、人々を夢の中へと誘うぞ。
鉱山の中では扇動してしまったからな。責任をとる、というわけでもないが、体を酷使させた分も癒してやろう。
……そう、死んだ者の墓も作らねばなぁ……。

※アドリブ&絡み歓迎



「これで脅威は片付いたか。あとは事後処理だが……うん、此方の方が問題は多そうだなぁ」
 自由を取り戻した元・鉱夫達の様子を見回し、シェーラは小さく肩をすくめて呟く。
 傷病者の治療に衣食住の確保。猟兵も『闇の救済者』達もさまざまに奮闘しているが、全てを一挙には解決できない。宝石鉱山に真の意味での平和が訪れるには、まだ多くの課題が残されていた。

「と言って、僕にできることはー……負傷者の治療、ぐらいだろうか?」
 そう考えて人形の少年がやって来たのは、傷ついた人々が身体を休める仮設救護室。
 危険かつ過酷な鉱山労働に加えて、先の戦闘でもケガをした人間は皆無ではない。医療技能や治療手段のある者が限られている以上、手当てを待つものはまだ大勢いた。
「母の腕に抱かれるように。暖かな日差しに誘われるように。微睡みの中に光を夢見て。眠れ、愛し子よ」
 シェーラが彼らの前で披露するのは【戯作再演・信じる者は報われる】。子守唄を歌うような詠唱と共に柔らかな慈愛の光が放たれ、傷ついた人々を優しく包みこむ。
「ん……あったかい……」
「なんだか……いい気持ち……」
 痛みに苦しんでいた人々は安らかな眠りへと誘われ、ほどなくして救護所にはすうすうと静かな寝息が満ちる。このユーベルコードには睡眠中の負傷回復効果もあるため、目が覚める頃には彼らの傷はほとんど癒えていることだろう。

(料理は不得手だし、住居の手配ともなれば土地勘が必要だからなぁ。そちらは人に任せよう)
 頼れる仲間とそれぞれの役割を分担して、シェーラは自分にできることに専念する。
 助けを求める者の声を受けてほうぼうを巡り歩きながら、慈愛の子守唄を山に木霊させて皆を癒やしていく彼の姿を見て、人々は涙ながらに感謝の想いを伝える。
「助かりました……ありがとう……」
 今までケガをしても碌な手当てすらしてもらえなかったことを考えれば、その差し伸べられた手のどんなに暖かいことか。閉じられた瞼の下で彼らが見る夢は、きっと光に満ちあふれた幸せな未来の光景だろう。

「鉱山の中では扇動してしまったからな。責任をとる、というわけでもないが、体を酷使させた分も癒してやろう」
 眠りに落ちた人々にも追加の子守唄を奏でてから、シェーラが最後に向かったのは鉱山の居住区でも最も奥まったところ。住人もほとんど寄り付こうとしないそこは、陰鬱な雰囲気と微かな死臭が――例えるなら墓場で嗅ぐのと似た空気が漂っていた。
「……そう、死んだ者の墓も作らねばなぁ……」
 ここは鉱山での酷使の中で息絶えた者達の場所。労働効率を下げないように墓を建てる時間も許されなかった為に、ただ土に埋められた数多の骸がここに眠っている。
 シェーラは『闇の救済者達』の手も借りて、この場所にささやかながらも彼らの死を悼む墓標を作る。解放の日に間に合わなかった者達が、せめて安らかに眠れるよう。
 彼の奏でる子守唄は鎮魂歌ともなって、死者と生者に等しく安らぎをもたらしていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アウレリア・ウィスタリア
本当にボクは歌うことしか出来ませんね……
食事を作ることもできない
住まいを作ることもできない

だから、だからこそ歌おう
せめて彼らの心を癒すために
せめて一時の安らぎを届けるために

愛を届けよう
ボクの歌を素敵と、また聞きたいと言ってくれた人たちに
この世界を変えようと力を尽くす人たちに

母が子に伝える子守唄のように……
ボクは、母の背中を追いかけているのかもしれない
私は母が奏でる歌が聞きたいのかもしれない

でも今はボクがこの鉱山の皆を癒してみせましょう

アドリブ歓迎



(本当にボクは歌うことしか出来ませんね……)
 食事を作ることもできない、住まいを作ることもできない。人々の復興のために為せることの少ない不器用な己を鑑みて、アウレリアは仮面の下でふっと目を細める。
 こんな機会があるなら少しくらい料理を覚えておいても良かっただろうか? なんてことを考えても仕方がない。歌い奏でて想いを伝え、敵には剣戟と銃声の調べを聞かせ、そうして自分は今日まで生きてきたのだから。

(だから、だからこそ歌おう。せめて彼らの心を癒すために。せめて一時の安らぎを届けるために)
 長く苦しい戦いを終えた人々に向けて、憂愛のオラトリオが奏でるのは【空想音盤:愛】。生きとし生けるものへ捧ぐ清らかなる歌が、解放されし宝石鉱山に木霊する。
「ああ、この歌声は……」
 心地のよい音色を聞きつけて、鉱山のあちこちから人が集まってくる。その中には先刻、彼女の歌を聞いて勇気と希望を――生きる意味を取り戻した者達も含まれていた。

(愛を届けよう。ボクの歌を素敵と、また聞きたいと言ってくれた人たちに)
 人々の想いに応えてアウレリアが奏でるアンコール。それは【勇壮ノ歌姫】と同じく彼女の心と記憶の奥底に刻まれていた母の歌。すべてを愛し、すべてを赦す、幼き日に耳にした愛と恋の歌。
(この世界を変えようと力を尽くす人たちに)
 解き放たれた労働者達だけではなく『闇の救済者達』も、いつしかアウレリアの歌声に聞き惚れている。それは彼女の紡ぐ旋律が光り輝くような愛に満ちていたから。昏い夜中に灯る暖炉の炎のように、それは人々の心と身体を癒やしていく。

(母が子に伝える子守唄のように……)
 温かく、優しく、歌声でそっと抱きしめるように、アウレリアは歌を奏で続ける。
 かつて母からその歌を聞かせてもらったときの彼女自身のように、集まった人々は互いに肩を寄せ合い、心地よさそうに瞼を閉じて、旋律に合わせて身体を揺らしている。
 想いが伝わったことに安堵と喜びを覚えながら、しかし歌い手の心にはふと、胸の奥にあるかさぶたを引っ掻くような感情が去来する。
(ボクは、母の背中を追いかけているのかもしれない)
 幼き日の自分が母にしてもらったことを誰かに伝えることで、忘れていた過去がより確かなものになる気がする。今だ再会の叶わない両親との思い出は彼女にとって希望であり、道標であり、憧れでもあるから。
(私は母が奏でる歌が聞きたいのかもしれない)
 それは、仮面の下に隠したアウレリアの本心だったのだろう。ここにいる人々と同じように、彼女もまた安らげる誰かの愛とぬくもりを求めるひとりだった。

(でも今はボクがこの鉱山の皆を癒してみせましょう)
 過酷な現実に傷ついた人々のために、理想を描き、空想を奏でる。母への愛を胸に紡がれたアウレリアの歌は確かに彼らの心に届き、大きな安らぎと感動をもたらしていた。
「ありがとう、貴女の歌を聞けて嬉しかった」
「今度会うときも、また歌ってくれるかな?」
 拍手と一緒に贈られる人々の笑顔と言葉に、アウレリアはふっと小さく笑みを浮かべ。
 ええ、きっと。それはお互いが生きる希望を見失わない限り、いつか果たされる約束だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィサラ・ヴァイン
ふう、騒動も治まったみたいで何より
これでめでたしめでたし…と行かないのが難しいところ
ルビーも貰っちゃったし、私も何かみんなの役に立つ事をしよう
…だけどここで一つ問題が
裏で動いてたせいで、鉱山の人達に知り合いがいない…!
…よし、今回も裏方に徹しよう。決して何話せばいいか分からないからじゃないよ。うん。
[目立たない]ように物陰からみんなを見守り、何かあったらすかさず【ハデスの隠れ兜】で姿を消して手助け。これなら行ける…!
※その後鉱山に妖精が出ると噂になったとか
アドリブ歓迎



「ふう、騒動も治まったみたいで何より。これでめでたしめでたし……と行かないのが難しいところだね」
 戦いを終えてもなお安穏とはいかない人々の様子を、ヴィサラは密かに見つめていた。
 これからの生活に必要な物資の運び込みに居住地の手配。そして傷病者の治療にメンタルケア等、猟兵も『闇の救済者達』も休む暇もないほど忙しなく動きまわっている。

「ルビーも貰っちゃったし、私も何かみんなの役に立つ事をしよう」
 と、ヴィサラもまた人々のために意気込むのだが、ここでひとつ問題が浮上する。
 それは彼女が今だに物陰にひっそり隠れていて、出てこられない理由でもあった。
(裏で動いてたせいで、鉱山の人達に知り合いがいない……!)
 初対面の相手への人見知りな性分もあいまって、今回の依頼中ずっと人々の目に触れない形で行動してきたヴィサラ。縁の下の力持ちとばかりに彼女が労働者の蜂起とオブリビオンの一掃に貢献した部分は小さくないが、それを知る者はほとんどいない。
 どころか、彼女の顔をちゃんと見ている者すら、元・労働者達の間には皆無ではなかろうか。

「……よし、今回も裏方に徹しよう」
 ヴィサラは帽子をぐっと目深に被り、異世界で拾った石片を片手に握りしめながら、目立たないようにこっそりと人々を見守ることにする。今から名乗りを上げて恩を着せるよりも、初志を貫徹して裏からみんなを支えるほうが良かろう。
(決して何話せばいいか分からないからじゃないよ。うん)
 誰も聞いていない言い訳を自分に聞かせつつ、人見知りなゴルゴンはじー、と子猫のような雰囲気で物陰から様子を見ている。その視線の先ではちょうど『闇の救済者達』が運んできた物資を荷馬車から下ろしているところだった。

「これだけ量があると、運ぶのも一苦労だな」
「この鉱山で働いていた皆のぶんの生活物資だ、仕方ない」
 食料品を主として衣類や毛布等、必需品だけに限定してもその数は膨大なものとなる。
 解放者達も鉱山の人々も手分けしているが、猫の手も借りたいといった様子である。
(ここなら私もお手伝いできるかな)
 ヴィサラは【ハデスの隠れ兜】を発動して姿を透明化すると、物陰から出てきて荷運びの手伝いに加わる。積まれていた荷物をひょいと持ち上げ、それを必要としている者の場所へ。誰の目にも映ることのない、陰ながらのサポートである。

「あれ? ここにあった荷物、どこにやった?」
「うたた寝してたらいつの間にか毛布がかけてあったんだけど?」
 やがて、鉱山のほうぼうでは人々の間から疑問符を浮かべた声が上がるようになる。
 ちょっと目を離していたうちに、やらなければならなかった作業が進んでいる。疲れて休んでいたところにそっと食事や毛布が用意されている等々。ひとつひとつは些細ではあるが、そんな不思議な現象を多くの者が体験することになった。
「もしかして、これは妖精の仕業じゃあ?」
「鉱山に住んでいたルビーの精が、俺達を助けてくれて……?」
 あっというまに人々の間で共有された謎はいつしか「鉱山に妖精が出る」という噂に昇華され、様々な尾ひれを付けながら実しやかに囁かれるようになっていく。

(順調順調。これなら行ける……!)
 そんな風に妖精扱いされているとはまだ知らぬまま、裏方作業に精を出すヴィサラ。
 ハデスの隠れ兜は物音を消すことはできない。なので何もない所に足音や足跡が――といった現象がますます妖精の噂を加速させているのだが、気にするほどの事ではないだろう。彼女の手助けで喜ぶ誰かがいる、それが何よりも確かで大事なことだ。
 後に、この地ではルビーの欠片を報酬に人々の手助けをしてくれる妖精のおとぎ話が伝わるようになり、子供たちの間で人気になったというが――それはまた別の話である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。貴女達の他にも何人か洗脳から解放されたみたい
…それで、貴女達はこれからどうする?

…民達を虐げた贖罪がしたいなら、闇の救済者に協力を申し出れば良い
貴女達の事情を説明すれば受け入れてくれるはずよ

…この地に居辛いのなら、私が遠くの安全な場所まで送ってあげる
そこで貴女達が力を使い多くを救ける事もまた、一つの償いとなるでしょう

…折角、拾った生命だもの。貴女達の好きにしたら良いわ
吸血鬼に利する行いをしないのであれば…だけどね

元光の断罪者達の希望を聞き、残る者達にはUCから保存食を出して、
村人達の救援に使ってもらうように告げ、
離れる者達とUCの中に入り別の吸血鬼から解放された村に転移する



「……ん。貴女達の他にも何人か洗脳から解放されたみたい」
「そのようです、ね。闇に堕ちた我々に、なんと慈悲深い……」
 戦いを終えたリーヴァルディが語りかけた相手は、洗脳の呪詛より解き放たれた元・光の断罪者達。正気を取り戻した彼女らはそのことを深く感謝しながらも、犯してしまった己の罪の重さに苛まれている様子だった。
「……それで、貴女達はこれからどうする?」
 投げかけられた問いにも「それは……」と、はっきり答えられる者はいない。自己嫌悪や罪悪感、人々への負い目といった大きすぎる負の感情の渦が、彼女らの心を雁字搦めに縛り上げていた。

「……民達を虐げた贖罪がしたいなら、闇の救済者に協力を申し出れば良い」
 身の振り方を定められないでいる聖女達に、リーヴァルディは淡々と道を提示する。
 断罪者から救済者へ。犯した罪を償い聖者としての本分に立ち返ろうとするのなら、それが最も明解な道だろう。無論、それは決して安穏とした道ではないが。
「貴女達の事情を説明すれば受け入れてくれるはずよ」
 猟兵であるリーヴァルディからの証言もあれば、彼女らもまたヴァンパイアの被害者という側面を持つことは理解されるだろう。そこから本当の意味での信頼や仲間意識を救済者達から得られるかどうかは、当人次第だが。

「……ありがとうございます。でも、ここの方達はそれで赦してくれるでしょうか」
 聖女達の陰鬱な表情の理由は、今も遠巻きに向けられる元鉱夫達の視線にもあった。
 怒り、嫌悪、憎しみ――断罪者であった頃の彼女らから受けた仕打ちを思えば、人々のそうした反応は当然か。それが陰惨な私刑にまで発展していないのは、猟兵と救済者達の抑えが効いていることと、今は他に優先すべきことがあるのが大きい。
「……この地に居辛いのなら、私が遠くの安全な場所まで送ってあげる」
 互いに距離を置いて摩擦を和らげるのも悪くはないと、リーヴァルディはさらに選択肢を示す。彼女の転移術式【常夜の鍵】を使えば、聖女達を隔地の救済者達の拠点や、ヴァンパイアの支配から解放された「人類砦」などに転移させることもできる。
「そこで貴女達が力を使い多くを救ける事もまた、一つの償いとなるでしょう」
 救済の手を必要としている地はここだけではない。反転した破壊の光から治癒の光へと回帰した聖者の力で、そうした者達を癒やし続ける道も彼女らにはある。

「……何故、貴女様は私達にこうまで親身にしてくださるのですか?」
「……救けたからには責任は果たすわ。放っておくのも寝覚めが良くないし」
 見ず知らずの敵であった自分達をなぜ助けてくれるのかという疑問に、リーヴァルディは無表情のまま返しつつも、声には微かな慈悲を滲ませ。暗黒の世界そのものの救済を目的とする彼女にとっては、この聖女達も救うべき人々に違いはなかった。
「……折角、拾った生命だもの。貴女達の好きにしたら良いわ。吸血鬼に利する行いをしないのであれば……だけどね」
 あとの決断は本人に任せつつも、しっかりと釘を差しておくことは忘れない。もしまた聖女達が闇に堕ち、断罪者として人々を虐げることがあれば、数多の闇を切り刻んできた吸血鬼狩りの大鎌は今度こそ彼女らの命を刈り取るだろう。

「……私は、ここに残ります。光の断罪者として苦しめた分まで、闇の救済者として彼らを助けたい……たとえそれで赦されることが無かったとしても」
「私はここを離れます。各地の人を癒やしながら見聞を広めて、自分の罪との向き合い方を……私にまだ、聖者としての力が残されている意味を考えます」
 示された選択肢に対して、元・光の断罪者達の決断は様々だった。残る者も、離れる者も、己の罪や過去と向き合いながら出した答えだろう。奪われた希望や未来を取り戻さんとする元鉱夫達と同様、彼女らにも長い贖罪と再起の道が待っている。

「……貴女達の希望は分かったわ。……開け、常夜の門」
 聖女達全員の意志を聞き届けると、リーヴァルディは自らの血液で空中に魔法陣を描き、常夜の世界の古城に通じる道を繋ぐ。その城内に備蓄しておいた保存食の一部は、ここに残るという決断を下した者達に渡しておく。
「……村人達の救援に使って」
「はい。闇の救済者の皆様とも相談して、役立たさせていただきます」
 食糧の袋を抱えてこくりと頷く彼女らの瞳に、今だ不安はあれども迷いはもはや無い。
 それを見届けたリーヴァルディは、ここから離れることを望んだ者達と共に常夜の門をくぐる。行き先は城を経由して繋がっている転移地のひとつ、別の吸血鬼から解放されたとある村だ。

「……貴女達のこれからの行動が、この世界に光をもたらす事を願っているわ」
 闇より救われた者が、今度は誰かを救う。そうして救済の輪が広がってきたことで、ダークセイヴァーの現状が変わりつつあることをリーヴァルディは知っている。
 かつて光の断罪者であった者達もまた、そうした輪の一部とならんことを、彼女は信じ、そして祈るのだった。


 ――かくして、光の断罪者達に支配された宝石鉱山における物語は幕を閉じる。
 洗脳されし者達は自らの意志と自由を取り戻し、闇の支配はこの地より去った。
 これから彼らの歩む道はけして平坦ではないだろう。それでも、彼らが進む先にはただ生かされていた時とは違う、無限大の可能性が広がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年04月23日


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