彩結ぶ星祭(作者 公塚杏
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#サクラミラージュ 


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#サクラミラージュ


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●星結び
 星に願おう。
 愛しい人と人を繋ぎしこの紐に、願いを託して。
 アナタにこの赤い紐を結べば、想いは繋がるだろうか?

●彩の縁
「恨みを持った影朧。彼の存在が、事件を起こすようですの」
 猟兵に向け、杠葉・花凛(華蝶・f14592)は端的に事件のことを言葉にする。
 サクラミラージュで起こる影朧の事件は様々。今回はその中でも、恨みを持つ影朧が都市に現れ、一般人を襲うと云うごく普通の事件だと彼女は語る。
「敵が現れるのは早朝。けれど、このまま皆様が向かえば時刻は夜となりますわ」
 敵が現れるまで暫しの時間がある。
 その間、敵についての情報収集を行うのが良いだろう。この地に伝わる伝承が、恐らく関係しているだろうから。
「丁度この地では、七夕にちなんだ催しが行われているようですわ」
 お祭りを楽しんでいれば、自ずと情報を仕入れることは出来るだろう。
 だからまずは、一夜のひと時を楽しんではどうかと。花凛は優雅な笑みと共に添えた。

 訪れるのは、帝都からは少し離れた位置にある大きな都市。
 人口も多く、数多のお店が並ぶ活気のある場だ。
 ――その都市で今行われているのは、星祭。
 七夕の時期に行われる催しで、瞬く星々の下の出来事。
「中央の広場にある、笹に願い事をする。催し自体はとても些細なものですわ」
 けれど、だからこそ。
 人々は織姫と彦星の逢瀬を願いながら、自身の願いも託すのだ。小さな紙片に。
 催しに合わせて、辺りには星々に纏わる夜店が数多出展されている。星を模ったアクセサリーや文具や小物の他、星型のクッキーなどの飲食物も取り扱っている。中でも星型のゼリーが泳ぐサイダーが若い女性には人気のようだ。
「とても広い敷地ですから、お店の数はかなりのようです。きっと皆様の目に留まるお店がございますわ」
 優雅な笑みと共に、花凛はそう語る。
 そして――ここからが本題だと言いたげに、彼女は更に言葉を添えた。
「この催しですが、一風変わった風習があるようですの。なんでも、好みの紐……、リボンと云うのでしょうか? それを想いを込めてどなたかに贈るとか」
 それは友人、恋人、家族、はたまたもう亡き人。
 親愛、愛情、感謝――深い想いを込めて、誰かにリボンをプレゼントする。
 そのリボンは相手に結んでも良い。亡き人を想うのならば、弔いに燃やし天に贈ることもある。中には、短冊の紐変わりにして笹に結ぶ者もいるようだ。
 ――全ては、結び届くようにと願いを込めて。
「夜店の中にはリボンを扱っているお店もあるようです。他の商品に、リボンを添えているお店などもあるようですわね」
 何か運命の出会いがあれば、その場で購入することも良いだろう。勿論、自身でリボンを持参しても構わない。
 誰を想い。誰との想いを結ぶのか。
 それが、ささやかなこのお祭りの大切な意味。
 ――機織り乙女の想いを届ける為に、行われたのが初めなのだろう。
「街の灯りは少し落とし目ですので、普段よりは星々も美しく見えるかと思います」
 楽しんでいれば、自然と情報も得られるだろう。
 だからまずは、星祭を楽しんで来て欲しいと花凛は優雅な笑みと共に言葉を零す。
 悲しき恨みを持つ影朧が起こす事件の前の、ちょっとした息抜きにもなる筈だから。

 そっと結んだ縁の先は。
 ずっとずっと、アナタが居る筈。


公塚杏
 こんにちは、公塚杏(きみづか・あんず)です。
 『サクラミラージュ』でのお話をお届け致します。

●シナリオの流れ
 ・1章 日常(きみに飾るわたしの彩)
 ・2章 集団戦(くろがらすさま)
 ・3章 ボス戦(その場から動かない影)

●1章について
 時刻は夜。瞬く星々の下の広場です。
 丁度七夕のお祭り中で。広場には笹の葉と星型の短冊が用意されています。
 合わせて、好みのリボンを親しい誰かにプレゼントする、という習わしもあります。
 そのリボンは短冊の紐にして、誰かとの願いを記す人も多いです。(必須では無いので、リボンはその他の使い方をしても問題ありません)

 広場内には沢山の夜店が。星に纏わる何かばかりです。リボンも合わせて色んなサイズや色、デザインの物を販売しています。
 リボンはご自分で用意をしても、購入しても大丈夫です。

 どこを楽しむか含めて、お好きなように過ごして頂ければ。

●2章、3章について
 時刻は夜明け後、カラスが鳴き始める早朝です。
 早朝ゆえ人通りの無い場での戦闘となります。
 詳細は開始前に冒頭を追記致します。

 3章で現れる影朧は、説得によっては転生することが出来ます。
 人型では無いので、言葉を交わし合うことは出来ません。言葉と心が通じるかは皆様次第です。

●その他
 ・全体的に心情重視のシナリオになる予定です。
 ・同伴者がいる場合、プレイング内に【お相手の名前とID】を。グループの場合は【グループ名】をそれぞれお書きください。記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。
 ・1章のみ、途中からの参加も大丈夫です。
 ・2章と3章は、場合によっては少人数での運営となる可能性がございます。
 ・許容量を超えた場合は早めに締め切る、又は不採用の場合があります事をご了承下さい。
 ・受付や締め切り等の連絡は、マスターページにて随時行います。

 以上。
 皆様のご参加、心よりお待ちしております。
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第1章 日常 『きみに飾るわたしの彩』

POW友愛の彩を結ぶ
SPD愛情の彩を結ぶ
WIZ感謝の彩を結ぶ
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●星下に宿る想い
 はらり、はらりと。零れ落ちるは春の彩である桜の花弁。
 淡い春色が舞う中――肌を撫でる風は、温もりと仄かな湿気を帯びた夏風。
 天に瞬く星々の下。
 細い紐を絡めた先には、想いを伝えたいヒトがいるだろうか?
 さあ、想いを込めた色を手に取って。
 胸に宿るキモチをアナタへと捧げよう。

 夏風に揺れるは願いを込めた星の欠片の花。
 彩添えた星々は、きっと天へと願いを届けてくれるのだろうから――。
トゥール・ビヨン
アドリブ&絡み歓迎

/
すごい人!それにとても賑やかだ
夜空の二つの星に願いを込めるお祭りか
アックス&ウィザーズでは聞かなかったけど、とてもロマンチックだね

大きな事件の気配も感じるけど、先ずは情報収集もかねて縁日をまわってみよう

/
杠葉さんから聞いたこれが星のゼリーが泳ぐサイダー
話しを聞いた時から気になっていたけど、シュワシュワのソーダに浮かぶゼリーがすごく綺麗だ

ちょっとボクには大きいけどストローを貰ってゆっくり味わわせて貰おう

/
夜店の人から貰ったリボン
笹に結ぶ紐に使ってみよう

王都ロワに最近たくさんの友達が集まってくれた
みんなとの縁がこれからも続くように短冊に願いを込めて
夜空の星の神様に届きますように



「すごい人! それにとても賑やかだ」
 背の翅を羽ばたかせながら、トゥール・ビヨン(時計職人見習い・f05703)は眼前に広がる光景に思わず声を上げた。
 天に煌めく星々の元、女学生や仲の良さそうな老夫婦と数多の人々が集っている。ぐるりと首を動かし、彼等の様子を見た後。揺れる笹の葉と願いを乗せた星型の欠片、そして夜空を見て彼は笑みを零した。
 夜空の二つ星に願いを込めるお祭り。
「アックス&ウィザーズでは聞かなかったけど、とてもロマンチックだね」
 彼の青い瞳の先に見える、一等強く煌めく二つ星。その輝きを瞳に映しながら微笑めば、彼はふいっと羽ばたきながら人の波の中へと入っていく。小さな身体は、多くの人の中を縫うように飛ぶのは少し大変だけれど。此処は広い空間だから大丈夫。
 星のチャームが揺れるネックレス。星模様の手鏡や手帳。
 女学生向けの物が些か多いようだが、どれも美しく楽しそうに笑う人々の姿を見れば此処が今は平穏だとトゥールは感じる。
 しかし、その裏に潜む大きな事件の気配を。仄かにだがその小さな身体で感じながら、彼が向かうのは一際人が集まる場所。――星のゼリーが泳ぐサイダーのお店。
 ひとつ受け取ると、それはフェアリーである彼には抱える程の大きさ。けれど持てない大きさではないので、トゥールはまじまじとそのサイダーを見る。
 話を聞いた時から気になっていたのだ。しゅわしゅわと浮かび上がるサイダーの粒が心地良く、仄かに弾ける水雫が覗き込むトゥールの鼻を撫でる。夜色の中に転がる星々を見れば、綺麗だとトゥールは頬を緩めた。
 空いていたベンチへと降り立ち、少し大きめのストローに唇が触れれば――口の中いっぱいに、爽やかなサイダーの味が広がった。
 爽やかな夏の味を頼んだ後、手にしたリボンはトゥールにはやはり少し大きい。
 けれど、それは貰った短冊には丁度良い大きさで。願いを記した星の欠片へとリボンを結ぶと、彼は笹の元へと羽ばたきそっと願いの星を添える。
 トゥールの家がある王都に、最近沢山の友達が集まってくれた。
 だから彼は、願いを込めたい。みんなとの縁が、これからも続くようにと。
「夜空の星の神様に届きますように」
 祈るように紡げば、笹が擦れる音を聞こえ彼はどこかくすぐったそうに微笑んだ。
大成功 🔵🔵🔵

太宰・寿
英(f18794)と

星が泳ぐソーダに目を輝かせて、口に含めばしゅわと弾ける
美味しい…!
もうっ、聞こえてるからね!
だけど、お菓子も買ったからあまり反論できない

あ、アクセサリーも売ってるんだね
気分を切り替えて、六連星のような色違いのバレッタを手に
見てみて、どっちが似合うかな?
へへ、じゃあこっち買おっと

うん?
首を傾げ手を出す
あ、ありがとう
最近の英は随分と丸くなった気がして、なんだかくすぐったい
短冊に願い事書く時に使わなくてよかったの?
だよね、じゃあ私のリボンあげる
交換だよ、と言いながら英の手首に
小言にはいたずらっぽく笑い
いいでしょ、おそろいだよ
後はのんびり星でも見ようか


花房・英
寿(f18704)と

ソーダ片手に歩く
ホント、色気より食い気
膨らんだ頬を横目にさくさく歩く

どっち……俺に聞くのかよ
楽しそうな顔にどっちも同じように見えるとは言えず
じゃあ、こっち
パールピンクの方を指差す
色が寿っぽい、とは口にせず

ちょっと、手出して
出された手首に、リボンを結う
あんたが菓子買い込んでる時に売りつけられた
俺が持っててもしょーがないからあげる
ホントは自分で買ったけど気恥ずかしいから言わない
別に興味ない。願えば叶うなら願うけど
……これこそ柄じゃないだろ……別にいいけど
誘いには小さく頷いて、人混みを抜けて行く



「美味しい……!」
 星が泳ぐ夜色サイダーを口にして、太宰・寿(パステルペインター・f18704)は思わず瞳を輝かせながら感嘆の声を零していた。
 夜空を映したような色も、色を操る彼女にとってはどこか特別に映るのだろう。
「ホント、色気より食い気」
 そんな、嬉しそうな寿を横目でちらりと見遣りながら。花房・英(サイボーグのグールドライバー・f18794)が一瞬ぽつりと零した後、すぐにストローへと口を伸ばせば。
「もうっ、聞こえてるからね!」
 どこか子供っぽく、頬を膨らませながら寿は英を見上げた。
 視線と声を向けても、英は気にせずに歩むだけ。そんな彼を横目に、尚も頬を膨らませているけれど――実際にお菓子も買ってしまったから、反論は出来ないと寿は思う。
 だから、という訳では無いが。気分を切り替えるように辺りを見れば、人気だというサイダーの夜店以外にも美しい物は沢山並んでいて。その中で寿の目に留まったのは、数多の装飾品を扱う店。
 足を止め覗き込めば、彼女は六連星のようなバレッタへと手を伸ばし。
「見てみて、どっちが似合うかな?」
 足を止めた彼女に付き添うように、どこか興味なさげに傍らに立っていた英へと問い掛ける。柔らかなウェーブの掛かった薄茶色の髪に瞬く、淡いピンクと淡い紫。
「どっち……俺に聞くのかよ」
 その問いにどこか困ったように英は零す。
 正直、彼にはどちらも同じように見える。けれど楽しそうな寿の顔を見ては、正直に言うことは出来ず――髪に瞬く色を交互に見遣りながら、こっちと彼はパールピンクを指差した。色が寿っぽい、そう想ったのは内に秘めて。
 その言葉が無くても、寿は指差された淡色を改めて見ると。
「へへ、じゃあこっち買おっと」
 嬉しそうに頬を緩めながら、髪飾りを一撫ですると店主へと声を掛けた。
 星の瞬きを手に、待たせていた英へと声を掛けて再び歩き出そうとする寿。その足を止めるように、英は――。
「ちょっと、手出して」
「うん?」
 声を掛ければ、寿は不思議そうに小首を傾げながら素直に従う。差し出される細く白い腕。その腕へと――添えられるのは、リボンの花。
「あんたが菓子買い込んでる時に売りつけられた。俺が持っててもしょーがないからあげる」
 驚いたように瞳を瞬く寿から、顔を背けながら英は紡ぐ。
 ――本当は、自分で購入したのだ。寿へとあげる為に。けれど、気恥ずかしいから素直に言葉には出来ずに。ついつい、いつも通りの口ぶりで語ってしまう。
 それは寿には分かっているかは、分からない。けれど彼女は腕に添えられたリボンにそっと指先で触れると。
「あ、ありがとう」
 少し戸惑ったように。けれど嬉しそうに笑みを零しながら、そう紡いだ。
 最近の彼は随分と丸くなった気がする。だからだろうか、なんだかくすぐったいと思う、この感覚は。
 ひらひらと夏風に揺れるリボンの裾。それはまるで、揺れる笹の葉のようにも思えて。
「短冊に願い事書く時に使わなくてよかったの?」
「別に興味ない。願えば叶うなら願うけど」
 ふと浮かんだ疑問を寿が口にすれば、淡々と英はいつもの口癖を零した。
 そんな相変わらずの彼に、寿はひとつ笑みを落とすと――そっと自身の持っていたリボンを、英の腕へと結ぶ。
 交換だよ。
 そう紡がれれば、どこか気まずそうに英は眉を寄せ。
「……これこそ柄じゃないだろ……別にいいけど」
 自身の腕を彩るそのリボンを見て、ぽつりと零した。そんな相変わらずの小言に、寿は悪戯っぽく笑みを零しながらお揃いだと。
「後はのんびり星でも見ようか」
 すうっとひとつ、呼吸を整えるように夏の空気を吸い。寿が提案すれば小さく英は頷いた。そのままふたりはどちらからともなく歩き出すと、ゆっくりと星の見える場所を探すように人混みから逸れていく。
 歩む度、腕を彩る絆が揺れる。
 想い結んだその色は、きっと星々と共にふたりを見守ってくれるだろう。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

氷雫森・レイン
【竜雨】
七夕に因んだお祭り…風流だし行きましょうか
「とはいえ目的は白紙なのだけど」
一応風習の話を聞いて先日誕生祝いに貰った物を首に結んできたものの
「こういう事じゃないわよね…」
有難くも様々な縁を得たから贈り物を探したらキリは無く、かと言って…
「ぁ…!」
考え事をしながら飛ぶのは駄目と知っていたのに
夜店の何処かに引っ掛けたらしくリボンが解けて風に攫われるのを追う
だめ、だめよ
失くしていい物じゃないの
お願い誰か捕まえて…
「…!」
願いは、叶ったのだけど
まさか贈り主当人だなんて
「サモン…」
ええと…何て言うべきかしら
寄せてくれた想いをうかうか飛ばした事を謝るべきよね…?
「…こんな意地悪な彦星は知らないわよ」


サモン・ザクラ
【竜雨】
夜店並ぶ人の道を浴衣姿で一人行く

星賑やかな空が見えると聞いたが、
年に一度の逢瀬の夜空、何と光鮮やかなことよ
一方地上は人の賑わい
祭りの喧騒が耳に心地よく

再び見上げた視界に、ふと
夜空漂う、覚えある青透くリボン
手を伸ばし破らぬ様に掴み取る

竜人の手には不相応なそれを、確かめれば予想の通り
慌てて飛んでくる愛らしい友の生誕の日の祝いにと、先日俺が贈ったものだ

「…薄衣で彦星の視線を誘うとは、大胆な織姫も居たものよな、レイン?」

ばつが悪そうな様子の友を、くつくつと笑んで茶化して
いいからと手招きののち、リボンを結い直してやろう

「かの日には、直参して結ってやりたいと思ったものだが…思わぬところで叶ったな」



 空に煌めく星々の下。星の欠片へと願い事を記す――。
 とても風流だと思う。だから氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)はふらりと足を運んでみたのだけれど。目的などは白紙で、どこか落ち着かなげに辺りを見遣る。
 行き交う人々は皆楽しげで、思い思いのリボンを手にしながら星に願いを掛けている。
 願うは、空に瞬くふたつ星へ。
 風習の元となった話を聞いて纏って来た、青く柔く透くリボンへとレインは触れると。
「こういう事じゃないわよね……」
 どこか感じる違和感に、彼女はきゅっと唇を結ぶ。
 並ぶ店の品物はどれも美しく、瞳に映るだけでどこか心が躍るよう。けれど、贈り物を探すには。様々な縁を得た為、キリが無い。
 どうしようかと悩んでいたその時――風に乗り、ふわりと首元のリボンが揺れた。
「ぁ……!」
 ひらりと宙を舞う青が視界に映り、レインは声を漏らすと共に手を伸ばす。羽ばたいていたからだろうか。夜店の装飾へと首元のリボンを引っかけてしまい、そのまま解けてしまったよう。普通の人ならば大丈夫でも、大きさの違うレインには障害となったのだ。
 伸ばしたレインの小さな手は宙を泳ぎ。ひらりひらりとリボンは風に乗り街を舞う。
「だめ、だめよ。失くしていい物じゃないの」
 誰か捕まえて。
 強く強く祈るように、レインは心に想いその青を追っていく。

 足爪が石畳を叩く微かな音を響かせながら、サモン・ザクラ(常磐・f06057)はくるりと辺りを見渡した。
 星賑やかな空が見えると聞いてこの場に来たが、年に一度の逢瀬の夜空はなんと光鮮やかなことだろうと――細い瞳を細め、彼は心地良さそうに息を吐く。
 片手に持たれた、決して口は付けない煙管をくるりと操り。鮮やかに、そして静かにささやくように瞬く星々とは対照的に。人々の賑わいを、祭りの喧騒を耳にしてそっと嬉しそうに笑みを浮かべ空を見上げた時――星々の下に、淡い青が流れてくるのが見えた。
 何かと思い、咄嗟にサモンはその布へと手を伸ばす。
 その淡い色合いはとても儚く見えて。自身の長い爪で破らないようにと、細心の注意を払いながら触れてみれば――それが、よく知る布だと気付き彼は驚いたように息を呑む。
「サモン……」
 すると、不意に声が掛かり彼は顔を上げた。声の出所は、この布の持ち主であるレインだった。それは、この布を贈った当人であるサモンには、姿を見る前から分かっていたこと。だからこそ、レインはどこか気まずそうに瞳を揺らす。
 誰か捕まえて欲しい。
 強く願ったことは叶ったけれど、それがまさか贈り主当人だなんて思わなかった。何て言うべきかと、困惑したように揺れる瞳。羽ばたく翅。寄せてくれた想いを、うかうか飛ばしたことを謝るべきだと、すっとひとつ息を吸い込んだ時。
「……薄衣で彦星の視線を誘うとは、大胆な織姫も居たものよな、レイン?」
 どこか落ち着いた大人の物言いで、サモンはひとつ言葉を零した。
 その言葉にレインは、先程までの揺れる瞳では無く。真っ直ぐに彼を見ると。
「……こんな意地悪な彦星は知らないわよ」
 いつも通りの物言いで、言葉を紡ぐ。
 ――サモンの言葉は、ばつが悪そうな様子の友を見てのものだったのだろう。
 くつくつと笑いながら茶化していたが、サモンは手招きをするとすぐ傍へと舞い降りたレインへと手を伸ばし、掴み取った柔布を結び直す。
「かの日には、直参して結ってやりたいと思ったものだが……思わぬところで叶ったな」
 そこには、まるで花咲くかのように揺れるリボンの花が。レインの胸元に咲いていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

紫丿宮・馨子
桜雨様と(f05712)

賑わっていますね
人波に流されてしまいそうでございます

祭りの喧騒
もうずっと遠くに感じる昨年の狐面の祭りを思い出しながら

人との縁…もう多分に頂いておりますのに
これ以上は…益々己を壊せなくなってしまいます
あなた様の手で
縁を結んで頂けますか
微笑して

多様なリボンを前に悩む
誰の為に
何の為に

紫色を見ると苦しくなる
以前なら迷わず手に取った色
でも想い敗れた今は
あの人に送るためのあの人の好む色ではなく

紫から朱色へのグラデーションリボン
これは桜雨様へ選んだ物
なぜか自分の色を身につけていて欲しいと思ったのは内緒

叶うならば…これからはカイ様、とお呼びしても?
不安げに窺う
これがわたくしの七夕の願い


桜雨・カイ
馨子さん(f00347)と

様々な色の糸で編まれたリボン…これに馨子さんにどうでしょう?

馨子さんの着物にまけないぐらい華やかだなと思ったのがひとつ、
そして色々な色の糸が集まり綺麗な柄ができるように
こんな風に人との縁もいっぱい結べたらいいですね、という願いも込めて、です。

頼まれて、迷って彼女の長い髪の一房を
触れただけでどきりとする
落ち着け。リボンを結ぶだけなのだから
彼女の心の内には特別な人がいるのだから

私にもリボン選んでもらえた上に
名前ですか?はいっどうぞ
あぁ、なんだか宝物をもらったみたいに嬉しい

人並みに流されてしまぬように少しだけ彼女に近づいて
もう少しこのままでいたい
短冊には書けない願い



 星の下、集う人々は皆幸せそうに笑みを浮かべていて――。
「賑わっていますね」
 人々の姿を見て、紫丿宮・馨子(仄かにくゆる姫君・f00347)はどこか遠くを見るように、その瞳を細めた。
 耳に届くのは、祭りの喧騒。
 楽しげな彼等を眺めていれば、馨子は昨年の記憶を思い起こされた。
 たった一年前のこと。けれど、何故だろう。ずっとずっと遠くに感じる、あの景色。
 ふうっと小さな唇から零れる吐息。それは夏の風に流れ消えてしまうけれど――。
「馨子さんにどうでしょう?」
 そんな彼女へと、声を掛けてくれる人がいた。
 声の主へと視線を移すと、漆黒の髪を結い上げた彼。桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)はひとつのリボンを馨子へと差し出してくれていた。
 それは、様々な色の糸で編まれたリボン。彩がより合い、作られた細い布はとても美しく正に芸術品。その美しさが、馨子の彩重ねられた着物に負けないくらい、華やかだとカイは思ったのだ。
 そして、色々な色の糸が集まり綺麗な柄が出来るように。
「こんな風に人との縁もいっぱい結べたらいいですね、という願いも込めて、です」
 馨子を真っ直ぐに見つめ、そっと微笑みながらカイは紡ぐ。
 その言葉に彼女はひとつ瞳を瞬くと、ゆるりと口元に笑みを浮かべた。
 人との縁。それはもう多分に頂いている、と思う。
(「これ以上は……益々己を壊せなくなってしまいます」)
 少し視線を下げながら、心に宿るそんな想い。じわりと宿る温もりを感じながら――馨子は視線を上げ、改めてカイを見つめると微笑みながらひとつ願いを口にする。
「あなた様の手で、縁を結んで頂けますか」
 その言葉を聞いて、カイは驚いたように瞳を見開いたが。すぐにこくりと同意の証である頷きを返す。そのまま手にしたリボンをどこに結ぼうかと、一瞬の戸惑いの後彼女の長い髪へと手を伸ばす。触れる漆黒の髪はさらりと艶やかで、指の間から零れ落ちてしまいそうなほど。その感覚に、彼女の一部に触れられたと云うことに。カイは動揺が隠し切れず、微かに手が震えるけれど。
(「落ち着け。リボンを結ぶだけなのだから」)
 彼女の心の内には、特別な人がいるのだから。
 自分に言い聞かせるように心で想いつつ、そっと美しい馨子の髪を結い終えた。
 纏まった髪を確かめるように一瞬触れ、馨子は視線を辺りの夜店へと向ける。
 並ぶのは、色とりどりのリボンたち。色もデザインも様々で、どれを手に取ろうかと彼女は迷うように視線を泳がせた。
 誰の為に。何の為に。
 そう想いながら選べば、見つけられるだろうか?
 瞳に映る紫色を見れば胸がきゅっと締め付けられるよう。それは、以前ならば迷わずに手に取った色。けれど今は――指を伸ばすことすら出来ない。
 そう、これはあの人に贈る為ではない。あの人の好む色では無く、今は――。
 しっかりと前を見て。今の馨子が手にしたのは、紫から朱色へと移り変わる美しいグラデーションのリボン。そのリボンをカイへと差し出せば、彼は驚いたように瞳を瞬いた。
「叶うならば……これからはカイ様、とお呼びしても?」
 ――何故か、自分の色を身に着けていて欲しいと思ったことは心に秘めながら。馨子はひとつ願いを口にする。これが、彼女にとっては大切な七夕の願い事。
「名前ですか? はいっどうぞ」
 不安げに窺うその眼差しをしっかりと見返しながら。カイは大きく頷くと、差し出されるリボンへとそっと自身の手を伸ばした。
 なんだか宝物をもらったみたいで嬉しい。そう想う心を隠し切れず、彼は笑みと共にそのリボンをきゅっと、大切そうに掌を握る。
 さわりと夜の夏風が吹けば、ふたりの頬を温もりが撫でる。女学生たちが通り掛かるのに気付き、カイは少しだけ馨子との距離を詰めた。
 それは人並みに流されてしまわないように、と云う想いだったけれど――。
(「もう少しこのままでいたい」)
 すぐ傍で揺れる、馨子の長い髪。
 先程触れたその艶やかな煌めきを瞳に宿しながら、静かにカイは心に願う。
 それは、短冊には書けない願い事。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

マギア・オトドリ
音海・心結(ID:f04636)さんと

星に七夕、ですか……どちらも、馴染みの深い存在だけに、とても楽しみです。

友達の音海さんと、祭りを回りましょうか。
旅団でも、よくお話しする方で、自分にはない明るさが、とても素敵な方。
今回もお誘い頂き、ありがとうございますね。

短冊に、お願いごと、ですか?えぇ、もちろん、していきましょう。
願い事は……色々、ありますが、『良き存在が、幸せになれるように』
本当はお友達の方へ、と書きたいですが、ヒーローとしての性分もあるので……それでも、皆が幸せだと、嬉しいですので。

リボンも、ですね。勿論、良いですよ。
私の方のリボンは……はい、此方ですと、薄紫色のリボンを渡します。


音海・心結
マギア(f22002)と

煌く星々と舞い散る桜
情緒豊かなこの光景を
愛おしむように

……綺麗ですねぇ
言葉が零れた

マギア
今回は付き合ってくれてありがとなのですよ♪
にこり、隣を見れば大切な友の姿
同じ旅団で仲良くしてもらってる人

どうせなら、お願いもしてゆきませんか?
短冊に願いを書きましょうっ
はぐれないようにと、彼女の手を引いて

星型の短冊に想いを
『友達や大切な人とずっと一緒にいれますように』

お願いしたいこと、いっぱいあって困っちゃうのですよー
マギアは何にするのですか?
……みゆはひみつ♪

リボンっ!
どうせなら、リボンを交換しましょうっ!
交換するのもまだ風情があるというもの
おねだりしてから
淡い虹色のリボンを手渡し



 煌めく星々の元、はらりと零れ落ちた桜の花が目の前を舞い踊る。
「……綺麗ですねぇ」
 愛おしむように音海・心結(ゆるりふわふわ・f04636)は大きな金色の瞳を細めると、そっと笑みと共に言葉を零した。
 サクラミラージュ特有の、桜と共の夏の気配。ふたつの季節を感じることの出来る美しい景色がとても情緒豊かで、彼女は嬉しそうに頬を染めながらそっと傍らを見る。
「マギア。今回は付き合ってくれてありがとなのですよ♪」
 星に七夕と、馴染み深い存在故に胸を弾ませていたマギア・オトドリ(MAG:1A・f22002)は。隣の少女の言葉と微笑みに左目を瞬いた後、そっと笑みを浮かべた。
 年の近い少女の、自分にはないその明るさに心に温かなものを宿しながら――お誘い頂き、ありがとうございますと丁寧に言葉を返す。
 星の瞬きの元、集う人々は願い事をしたり買い物を楽しんだりと思い思いに過ごしている。辺りを興味深げに見遣るマギアの姿を見て、心結はそっと彼女の小さな手を取ると。
「どうせなら、お願いもしてゆきませんか?」
 ひとつ、願いを込めるように言葉を零した。
「短冊に、お願いごと、ですか? えぇ、もちろん、していきましょう」
 手から伝わる温もりに、マギアは淡い紫色の瞳を辺りから愛らしい少女へと移して。こくりと頷くと、ふたりははぐれないようにと手を取り合い、人々の間を歩んでいく。
 笹の元へと辿り着けば、星型の短冊が渡された。嬉しそうに手にした心結に続き、ゆっくりとマギアは手を伸ばすと淡い藤色をしたその短冊を見遣る。
 何も書かれていない、星の欠片を手にして。マギアが悩むように少し眉を寄せ、手にしたペンを頬に当てていれば。
「お願いしたいこと、いっぱいあって困っちゃうのですよー」
 きゅっと瞳を瞑り、素直に悩みを言葉にする心結の声が聞こえ意識を向ける。
 傍らを見れば、彼女の大きな瞳がマギアへと向けられていた。その金色に映る自分の姿を見返していれば、こてりと心結は小首を傾げ問い掛ける。
「マギアは何にするのですか?」
 そんな、些細な疑問を。
 その問いに、マギアは色々ありますと呟いた。
 そう、色々とある。けれど、星に掛けたい願い事は――良き存在が、幸せになれるようにという、愛しむ言葉。
 短冊に記したその文字を見て、そっと彼女は微笑む。本当はお友達の方へ、と書きたい気持ちはある。けれど、ヒーローとしての性分もある。憧れていたその存在に近付いたからには、その想いに偽りはない。
 だからマギアは、願うように微笑むのだ。皆が幸せだと、嬉しいと思うから。
 笹へと願いを吊るしていれば、傍らの心結も笹へと星を飾っていた。
 その姿を見ていれば、視線が合い――。
「……みゆはひみつ♪」
 願いを秘めるように、そっと蕾のような唇に人差し指を当て、悪戯っぽく微笑む心結。無邪気な少女の仕草と笑みに、マギアはそっと笑みを零すと――手にしていたリボンが風に揺れ、手に絡まるのに気付き薄紫色のそれを解いていく。
 その様子を見て、心結はリボンっ! と思い出したように声を上げた。何があったのかと、不思議に思うようにマギアが視線を少女へと向ければ。
「どうせなら、リボンを交換しましょうっ!」
 きらきらと、大きな瞳を期待に煌めかせて心結は紡ぐ。交換するのも風情があるからと、理由を告げながらおねだりしてみれば。
「リボンも、ですね。勿論、良いですよ」
 そっと柔らかく笑みながら、マギアは頷きを返してくれた。
 瞳を交わし笑い合うと、心結は自分の手にしていた淡い虹色のリボンをマギアへと手渡す。柔らかなその色が、ふたりの絆を繋いでくれるかのようで。
 ――友達や大切な人とずっと一緒にいれますように。
 笑い合う少女たちを祝福するように、心結の願いを込めた星が風に揺れた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

リル・ルリ
🐟櫻沫

星が歌う
満天の星が微笑む
星に願いを託すなんて
ろまんちく、だ

七夕、分かたれた恋人達が出逢える日

愛する君の手を握り星祭りを游ぐ
星の紙に託す願い
僕は、祈る『愛する君と、ずっと一緒に
君が幸せでありますように』そうと、願いを託すよ
どんなに離れても一緒だ
優しく頬を撫でる掌が暖かくて心地よくて、頬を擦り寄せる

一緒にリボンを選ぼうよ
れぇす、にサテンに…どれにするか悩むね

僕が選んだのは、あかいリボン
桜色の宝石が、一等星のようにきらりと煌めいて綺麗―まるで、君のよう
リボンに優しく口付けて
櫻宵の桜枝の角に結ぶ

僕の片角に結ばれた白のリボンにはにかむ
お揃いだ
嬉しくてたまらない

ふたりの彩
まぜれば綺麗な、さくらいろ


誘名・櫻宵
🌸櫻沫

月のヴェールの如き尾鰭揺らすあなたをみやる

星に願いを
私に願いがうまれたの

『この先の未来も愛するあなたと共に歩めますように』

未来なんて夢見ることもできなくて
けど今は
リル一緒に未来をつくりたい
生きていきたい
このいのちを
病める時も健やかなる時も悲しい時も嬉しい時も傍にいたい
優しくリルの頬を撫でて愛を示す

リボンどれにしよっか
…悩む人魚もかあいらし
私はリルのように白く綺麗で繊細なレェスのリボン
揺らぐ雫飾りが月の涙のよう

あら、私の角に?
美しい、あかい愛が咲いたわ
お返し、とリルの珊瑚の角に白を結ぶ

お揃いね!
白と赤、ゆるりまじわり桜色
私達の春の色
どんな美しい星よりも、微笑むリルの笑顔が眩しくて綺麗だわ



 星が歌うように瞬いている。
 美しき満点の星空を見上げて、リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)は静かに微笑んだ。ふたつの強く煌めく星。それは、分かたれた恋人たちで――七夕と云う日は、そんな彼等が出逢うことの出来る特別な日。
「ろまんちく、だ」
 唇から零れる言葉。
 そしてリルは傍らの――愛しい桜、誘名・櫻宵(貪婪屠櫻・f02768)の手を取ると優雅に星祭りの中を泳ぎだす。ひらり、ひらりと月のヴェールのごとき尾びれが揺れれば、キラキラと星を纏うかのように美しく。櫻宵は瞳を細め微笑んだ。
 手には星の欠片がひとつ。
 瞬く星々へと視線を上げ、星に願う。
 ――この先の未来も愛するあなたと共に歩めますように。
 そんな願いが、櫻宵には生まれていた。
 未来なんて夢見ることも出来なかった。けれど今は、リルと一緒に未来をつくりたいと。生きていきたいと。このいのちを、病める時も健やかなる時も。悲しい時も嬉しい時も、ずっとずっと傍に居たいと、心から強く想うのだ。
 美しき人魚へと視線を移せば、彼は祈るように瞳を閉じていた。
 長い睫毛が影を作る中。祈りを捧げるリルの願いは――愛する君と、ずっと一緒に。君が幸せでありますように。
 そうっと瞼を開ければ、瞬く星々がリルの瞳に映り込む。
 そして手には、愛しい温もり。どんなに離れても一緒だと――その温もりから改めて感じていると。リルの願いが終わったことを察した櫻宵が、柔らかな頬へと手を伸ばした。
 温もりがリルの頬を包み込む。
 そうっと撫でられれば心地良く、思わずリルは瞳を閉じて頬を摺り寄せていた。
 願いを笹へと託して。
 繋いだ手を揺らしながら、ゆらりと尾びれを泳がせながら彼等は夜店を巡る。数多の彩が、数多の星が、彼等を待っているけれど――。
「一緒にリボンを選ぼうよ」
 ひとつ、この催し会場に相応しい数多のリボンを扱う店で足を止めると。リルは櫻宵を見つめながらそう紡いだ。彼の言葉に静かに頷き、ふたりは近付くと商品を見遣る。
 レースにサテン、ベルベッドは少し季節外れだろうか?
 じっと見つめながら悩むリル。その横顔を見て、櫻宵は可愛らしいと心から想い自身の頬を和らげる。さらりと秘色の髪が流れたかと思えば、リルはひとつリボンを手にした。
 それは、あかいリボン。
 桜色の宝石が、一等星のようにきらりと煌めく様子に。まるで櫻宵のようだと思いながら、リルは優しく口付ける。
 深い深い、愛のこもった行動。
 そのまま彼は――そのリボンを櫻宵の桜咲く、竜神の角へと彩を添えた。
 近付く距離と、彼が彩ってくれたあかい色。
「美しい、あかい愛が咲いたわ」
 そっと触れると笑みを零して。櫻宵はお返しにと、手にしていた白く繊細なレースのリボンを、リルの鮮やかな珊瑚へと添えた。
 何かと小首を傾げれば、添えられた彩が揺れてリルの髪を撫でるよう。ちりりと、微かに音が鳴ったような気がしたのは、鈴では無く雫飾り。それはまるで、夜空から零れ落ちた月の涙のように煌めいていて。
「お揃いだ」
 片角に結ばれたその彩は、愛しい彼とのお揃いの証。
 だから嬉しさを隠せずに、リルは頬を仄かに染めながら幸せそうに笑みを零す。
 淡い桜に咲くのはあかと白。ゆるり混じれば桜色へと変化する。
「私達の春の色」
 そっと顔を寄せ微笑めば、更なる笑みの花が咲き誇る。
 そんなリルの笑みを見て。櫻宵は改めて、強く想う。
 ――どんな美しい星よりも、微笑むリルの笑顔が眩しくて綺麗だわ。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

榎本・英
【春嵐】

年に一度しか会えない
それはとても哀しい事のように思えてしまうのだよ
私は、気が狂ってしまうかもしれない

嗚呼。これはこの地域特有の物だったかな?
右の小指に結わうリボン
君の望みは然と聞き届けた

何も取りこぼさない事は簡単なようでとても難しいのだよ
けれど、そんな君が躓いて、転んで、涙がこぼれ落ちても
いつかその傷すらも愛おしいと思えるように

君が何者でもない蘭七結で在れるように
左の小指に同じリボンを結いだ

私の望みは、平凡な日常の一幕に君がいる事
同じように平凡な日常を過ごせたら嬉しいね
そうして君の成長を見守っていたいのだよ

織姫と彦星のように
年に一度しか会えないなんて
嗚呼。それはとても哀しい


蘭・七結
【春嵐】

七夕のお祭りごと
一年に一度きりの逢瀬、だったかしら
とてもステキな響きだけれど
ちょっぴり寂しいと、感じてしまうわ

ねえ、英さん
手を貸してちょうだいな
あなたの右手を取って小指のあかに色を重ねる
まっかなリボンを絡めて結んで
緋色のさくらを添えて、できあがり

大切なひとたちと、あたたかな日々を送る

わたしの望みよ
この望みはすでに叶っているの
だから、結び目を緩めずに結わい続ける
もう見失わないように
なにも取りこぼさないように

今のなゆの願いはね
あなたが、榎本英という唯一で在れること
英さんの望んだことが叶うこと
あなたの隣で、それを見ていたいの

やさしい時間が続きますようにと
溢るるような想いを、このひと夜に込めて



 瞬く星々の下の――七夕のお祭り。
 一年に一度きりの逢瀬、という美しくも切ない響きを思い出し、蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)はそっと悲しげに瞳を伏せる。
 そんな悲しげな彼女の傍らで。榎本・英(人である・f22898)は一年に一度しか会えないとしたら。それはとても哀しいことのように思えると。
(「私は、気が狂ってしまうかもしれない」)
 そう想う彼の、眼鏡の奥の赤い瞳が揺れる。
 きゅっと結んだ唇。そんな彼をじっと見上げて――七結が唇を開いた。
「ねえ、英さん。手を貸してちょうだいな」
 その言葉に意識を現実へと戻した英は、不思議そうにひとつ首を傾げた後。そっと自身の無骨な右手を彼女へと差し出す。その大きく温かな手を取って、七結は彼の小指のあかへと色を重ねた。
「嗚呼。これはこの地域特有の物だったかな?」
 その色を見て、零される英の言葉。
 あかに重なる、あか。
 まっかな色に緋色のさくらが添えられれば、ひらりと彼の右指が目に焼き付く。
 ――大切なひとたちと、あたたかな日々を送る。
「わたしの望みよ」
 できあがり、の声に掌を手元へと寄せ。重なるあかを見つめる英へと、七結は自身の願いを口にする。七結の願い。けれど――それはもう叶っているから。
 だから、結び目を緩めずに結わい続けるのだ。
 もう見失わないように。何も、取り零さないように。
「今のなゆの願いはね。あなたが、榎本英という唯一で在れること」
 そのまま彼女は、『今』の願いを口にする。英が望んだことが叶うことを。そしてあなたの隣で、それを見ていたいと云うことを。
 鮮やかな瞳で真っ直ぐ見つめられ、花のような唇から零れる彼女の真意。
 その様子に英は――笑みを零すと、ゆるりと瞳を閉じ言葉を零す。
 君の望みは然と聞き届けた、と。
「何も取りこぼさない事は簡単なようでとても難しいのだよ」
 そのまま彼は言葉を続ける。
 とても難しい。けれど、そんな君が躓いて、転んで、涙が零れ落ちても。いつかその傷すらも愛おしいと思えるように。
 そっと彼は、彼女の細く白い手を取ると。その小指へと彩を添える。
 同じあかい、リボンを。
 それは何者でもない、蘭七結で在れるようにと願いを込めて――。
「私の望みは、平凡な日常の一幕に君がいる事。同じように平凡な日常を過ごせたら嬉しいね。そうして君の成長を見守っていたいのだよ」
 彼女の手を取ったまま、優しい笑みを零しながら英は紡ぐ。――ひとつの願いを。未来を、君と共に居たいということを。
 その優しい眼差しと言葉の色は、いつもの彼。けれどこれは、七結にのみ注がれる優しさでもある。だから彼女は瞳を細め、そっと笑みを零すのだ。
 やさしい時間が続きますようにと、祈りを込めながら。
 ふわりと風が吹けば、七結の長く柔らかな髪が夜風に舞い踊る。温もりと湿気を含んだ風が運ぶのは、この地に訪れた人々の祈り。
 だから七結は、そっと風に託すように心に想う。溢るるような想いを――。
 舞う風は空へと昇るかのように感じて、彼等は空を見上げた。瞬く星々は変わらずそこにあり、一際輝く星々こそが織姫と彦星。
 年に一度しか会えない、悲しき星。
 彼等のように年に一度しか会えないなんて――――。
「嗚呼。それはとても哀しい」
 瞳を細め、零す息と共に英は声を漏らしていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎

祭りといやぁこれだよな
屋台をじっと見て悩み
真ん中に赤いジャムの乗った星型のクッキー…これ…
食べる!
アレスの問いに目を輝かせて応える

見ろよアレス
これ、アレスの星
一番デカいクッキーを嬉しそうに
だって一番デカくて眩しいじゃん
言って照れるアレスに揶揄いの心がむくむくと
そんじゃおいしく食べてくれよ?
悪戯っ子の笑みで返したら今度はこっちが照れる番
…あとで返せは聞かねえぞ

アレスの口元にクッキーを運んだり
ジュースを飲ませて貰ったりしつつ短冊へ
…今なら、素直にこの願いを見せれる
『アレスが幸せでいるように』
笑うアレスがうれしくて
その為なら俺の全てをやってもいい
誓いの様にリボンをアレスの指先に結ぶ


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

買ってあげたいけど…それでは遠慮すると思うから
それ、一緒に食べる?
買ったクッキーは彼に渡すよ
青い星のサイダーも2人分買おうか

嬉しそうな彼に笑みを溢す
僕ってそんなに大きいのかい?
それなら…これはセリオスの星
キラキラして綺麗だ
サイダーを見せつつ照れ笑い
…揶揄うつもりだな
そっちこそ、残さず全部食べてくれ
照れる彼が何だか微笑ましくて
いいよ。君に食べて欲しいから

クッキーを貰ったり
サイダーを飲ませたりなんてしつつ短冊へ
見せてくれた願い事が…心から嬉しかった
願い事は僕も見せよう
『セリオスが自由に幸せでいるように』
(君の幸せの為なら…僕は全てを差出せる)
想いと誓いを込めて
彼の髪にリボンを結ぶ



 満点の星空の元、並ぶ夜店を前にセリオス・アリス(青宵の剣・f09573)はどこか浮立っているようにも見えて。ぐるりと大きな青い瞳は様々な品物を映すが、ひとつの店へと近付くと、ぴたりと離れなくなる。
「これ……」
 零れる言葉は極々自然に。
 彼の眼差しに映るのは、真ん中に赤いジャムの乗った鮮やかな星型クッキー。あまりにじいっと見るものだから、傍らに立つアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)は彼の様子を見ながら買ってあげたいと思うけれど。それはきっと、遠慮するだろうから。
「それ、一緒に食べる?」
 これならば大丈夫かと思いつつ、ひとつ問い掛けてみる。
 するとセリオスは顔をぱっと上げ、キラキラとその瞳を輝かせながら。
「食べる!」
 真っ直ぐな言葉と共に、大きく頷きを返した。
 その様子にアレクシスは笑みを零しながら。星のクッキーを購入するとその袋は彼へと手渡す。そのまま彼は、星の泳ぐサイダーを手にし人通りの邪魔にならない片隅へと。
 星が詰められた袋をじいっと見て、不意にセリオスの口元が綻ぶ。
「見ろよアレス。これ、アレスの星」
 そう言葉にアレクシスが視線を向ければ――セリオスは、一番大きなクッキーを手にし、どこか嬉しそうに笑いながらその星をアレクシスへと見せていた。
 アレクシスらしい。その意味は、一番大きくて眩しいから。
 そう紡ぐ彼は真っ直ぐで。零れる笑みに釣られるように、ついついアレクシスの口許にも笑顔の花が咲く。
「僕ってそんなに大きいのかい?」
 零れる言葉には嬉しさを宿して。そのままじいっと大きなクッキーを見た後、視線を手元に戻すと、アレクシスはひとつ「あ、」と言葉を漏らす。
 その大きなクッキーが自分ならば――。
「それなら……これはセリオスの星。キラキラして綺麗だ」
 そう言って彼は、手元の夜空のような青の中。星が泳ぐサイダーを掲げながらそう紡ぐ。そう零した時は平気だった。けれど、段々と恥ずかしくなってきて……照れるように笑うアレクシスの姿を見れば、セリオスの心に揶揄い感情が湧いてくる。
「そんじゃおいしく食べてくれよ?」
 にやりと笑いながら、零されるセリオスの言葉。その言葉に宿る心を察したアレクシスは、発した後照れる彼の微笑ましさについ笑みを返しながら。
「いいよ。君に食べて欲しいから」
 そう言葉を零す。
 星のクッキーとサイダーを分け合いながら。そのまま彼等は、笹の前へと辿り着いた。数多の星が願いを乗せ、夏風にさわりと揺れている。その星々を見た後、願いを記した自分の手元の星を見て――セリオスは、今なら素直にこの願いを見せられると思った。
 ――アレスが幸せでいるように。
 自分のことでは無い。彼のことを想った、その願い事を。
 差し出されたその願いを見れば、アレクシスは一瞬驚いたように澄んだ青の瞳を微かに見開く。けれど、すぐその目元は和らぎ、口元には笑顔が綻ぶ。
 その願いが、心から嬉しかったから。
 だから彼も、自身の願いをセリオスへと見せる。――セリオスが自由に幸せでいるようにと、同じように彼のことを想ったこの願い事を。
 その笑みと、願いが嬉しくて。セリオスの口許にも笑顔が咲く。
(「君の幸せの為なら……僕は全てを差出せる」)
 その笑みを見遣れば、アレクシスの胸に満ちる温かな想い。
 記すふたつの願いの下で。
 想いと誓いの込められたリボンを交わし合う。
 さわりと夏風が通り過ぎる。
 その風に乗るように。セリオスの髪とアレクシスの指先のリボンが、舞い踊った。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

雛瑠璃・優歌
「…そんな季節、なんだね」
幼少からの悲願が自分じゃどうにもならないと解った今は短冊に何を書いていいか分からない
だけど
「これ下さい」
夜店で見つけた深支子色のリボンを買ってお焚き上げに持って行く
祈る相手は弟のお母さん
あたしには腹違いの兄弟が沢山いるみたいだけど度々遊びに行けたのはあたしのお母さんの親友でもあった彼女の所だけ
これが彼女に似合う色だとは思わない
でも旧姓は梔子守(ししもり)…梔子の名が入った人だったから
「……」
手を合わせて祈る
お母さんは今日も此処へは来れなかったから、あたしはその代わり
もし貴女が生きてたらって思う事もあるけど
「弟は…あの子はあたしが守ります」
今のあたしに言えるのはこれだけ



「……そんな季節、なんだね」
 瞬く星々の下。願いを乗せた星欠片と共に揺れる笹の葉を見上げて、雛瑠璃・優歌(スタァの原石・f24149)は瞳を細めぽつりと言葉を零した。
 幼少から抱いていた悲願。かつてはその願いを星に託したものだけれど――それが自分ではどうにもならないと解った今は、短冊に何を記せば良いかは分からない。
 だから優歌は願いを乗せる星は手にせずに。並ぶ店で見つけた深支子色のリボンを手に、彼女は炎を扱っている場へと赴く。その炎は想いを乗せ、届けてくれると言うから。
 そっと炎へとリボンを垂らせば、一瞬で燃え上がり煙を上げる。
 星々へと昇るその煙を見ながら――優歌は、静かに祈るように手を合わせた。
 彼女がリボンに込め、祈る相手は弟の母親。
 優歌には腹違いの兄弟が沢山居るようだけれど。度々遊びに行けたのは、優歌の母親の親友でもあった、彼女の所だけだった。
 今でも鮮明に思い出せる、彼女の姿。
 その姿と、纏う空気と照らし合わせて。今炎で燃えるリボンが、似合う色だとは思わない。けれど、その女性の旧姓は梔子守――同じ響きである、梔子の名が入っていたから。
 だから、この色を選んだのだ。
 この色が、優歌の想いを一番表してくれると思ったから。
「……」
 瞳を瞼で隠し、手を合わせて祈る優歌。
 これは、母親の代わり。母は今日も此処へ来れなかったから、優歌が代わりに祈るのだ。もしも貴女が生きていたらと、母では無く優歌自身が思うことはあるけれど。
「弟は……あの子はあたしが守ります」
 今の優歌が言えるのは、これだけの言葉。
 けれど紡ぐ言葉は確かな意志を宿し。瞳を開いた彼女の眼差しは、どこまで真っ直ぐだった。――大切な、人を想う心を宿して。
 パチリ。
 静寂の中、耳に届くのは炎の音だった。
大成功 🔵🔵🔵

琶咲・真琴
姉(f12224)と

姉と2人っきりなので
男物の浴衣を着て
素の口調


さーさーのはー
さーらさらー♪ってね

家でも
母さん達が笹を用意して
短冊飾ったりしたなぁ

願い事は変わらず
『母さんみたいになりたい』

優しくて強い母
憧れには
まだまだ遠くて

姉ちゃんは何を書いたー?
あー
親父、滅法強いもんね
いつか2人で負かそうぜ!

(夜店を見て

そういや
母さんが綺麗な星の扇を持ってたよな


(ある物を見つけて
お、面白そうなの発見!

祖父ちゃんと祖母ちゃん(familia pupa)は迷子防止にオレの真上を飛んでてー

夜店で買ったのは満点の星空を思わせる布のブックカバー
はい、姉ちゃん
これあげる(藤色のリボンと共に
今日の記念品だぜ



アドリブ歓迎


鈍・小太刀
弟の真琴(f08611)と

勿忘草色の浴衣着用

真琴の浴衣似合ってるよ
いつもより男らしい様子に成長を感じて頬が緩む姉バカ
身長も少し伸びたかな?

短冊かぁ
高い所に吊るしたくて
お父さんに肩車して貰ったりね
何だか懐かしい

思い出すのは母の優しい声と
父の大きな背中

両親に教わった事は沢山で
剣術もその一つ
でも父には未だ勝てなくて…むむ、なんか悔しい

私もお父さん達みたいに強く…いや
みたいじゃなく追い越してやるんだから
故に願いは『父に勝つ!』

夜店では人気のサイダーとやらも飲んでみたいわね
ほら、走ったら転ぶよー!

真琴のプレゼントが嬉しくて
思わずぎゅーっとハグしちゃったり♪

お返しには星空のペンケースを
藍色のリボンを添えて



 カラリと下駄の音を響かせて、琶咲・真琴(今は幼き力の継承者・f08611)の歩む足取りはどこまでも軽い。思わず唄を口ずさみながら歩む、彼の装いは珍しくも男物の浴衣。
「真琴の浴衣似合ってるよ」
 小首を傾げ微笑めば、鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)の結わいたふたつの髪が揺れ動いた。彼が珍しくその装いを纏ったのは。共に居るのが、姉である小太刀だから。いつもより男らしく見える様子と、少し伸びたように感じる身長に小太刀は思わず頬を緩めるように笑みを零した。
 そんな姉の眼差しに気付かないのか、星型の短冊を手にした真琴は願い事を想う。
 ――家でも、母たちが笹を用意して短冊を飾った過去を思い出しながら。彼の願いはあの時と変わらず、同じなのだ。
 『母さんみたいになりたい』と云う、変わらず真っ直ぐな想い。優しくて強い母は、憧れにはまだまだ遠い存在だから。祈るように、彼は短冊に記していく。
 そんな彼の傍らで。かつては高い所に短冊を飾りたくて、父に肩車して貰ったことを小太刀は思い出す。――母の優しい声と、父の大きな背中。そんな両親に教わったことは数多あるが、剣術もそのひとつだ。けれど、父に勝つことは未だに無い。
 だから――短冊に決意をするように、小太刀は『父に勝つ!』と伸びやかな字を記す。父みたいに強く。否、追い越してやるという強い意志を宿して。
「姉ちゃんは何を書いたー?」
 ひょっこりと、そんな小太刀の手元を覗き込む真琴。姉の願い事を目にすれば、彼も父のことを思い出して、どこか遠くを見るように眼差しを細め。
「あー、親父、滅法強いもんね。いつか2人で負かそうぜ!」
 呟きと共に、真っ直ぐに小太刀の眼差しを見て強く強く彼は語る。
 その眼差しをしっかりと見返して。こくりと頷いた後ふたりは願いを笹に託した。
 ――そのまま、ふたりは並ぶ夜店を見て歩く。
 数多の人がいるから、はぐれないようにと注意をして。並んで歩いていると、不意に誠は思い出す。母が、綺麗な星の扇を持っていたことを。
「お、面白そうなの発見!」
 そう想った時。不意に真琴は商品を見て走り出した。あまりに急だったものだから、小太刀は「あ、」と声を漏らし――。
「ほら、走ったら転ぶよー!」
 姉らしく、注意をひとつ。
 迷子防止にと、浮かぶ二体の少年少女の人形のおかげで。小さな彼が人混みの中入って行っても居場所は分かるけれど。だからこそ、人にぶつかってしまう可能性はある。
 少しはらはらしたように瞳を震わせ、小太刀は人の中。弟が走った方向を追い掛ける。人形を頼りに進めば――。
「はい、姉ちゃん。これあげる」
 人混みの中から姿を現した真琴は、満点の星空を思わせる布のブックカバーと共に、藤色のリボンを差し出した。今日の記念品だと、笑顔と共に。
 受け取った小太刀は、突然の贈り物に驚いたように瞳を瞬く。
 手元に瞬く星と、淡い藤の花のようなリボンを見れば――とくんと、胸が高鳴った。
 そのまま彼女はあまりの感動に言葉には出来ず。微かに滲む涙と共に真琴を抱きしめる。嬉しさと、感謝の気持ちを表すかのように。
 ふたりの平和なひと時を見守るのは、夜空に瞬く数多の星。
 素直になれるこの瞬間は、きっと特別な一夜なのだろう。
 ――お返しには星空のペンケースを贈ろう。藍色の、夜空のようなリボンを添えて。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ノイシュ・ユコスティア
七夕…切ない恋物語か。

情報収集をしながら店が建ち並ぶ通りを歩く。
…自分の願い事を託すのもいいかもしれない。

リボン…というより、僕は紐でいいかな。
色は、天の川に輝く星たちをイメージ。
細い紐を何色か買って、それを編み込んだものを催しに使用。

短冊に書く願いは「無病息災」
オブリビオンが消滅することと、遠く離れていった幼馴染がずっと元気でいるようにと。

…僕自身も、これからの人生の旅で、大切な人、守りたい人と出会えればいい。
ちょっとはずかしいな、これは書かないでおこう。

紐を短冊に通し、笹に結ぶ。
そっと祈る。

…ここは賑やかだな。灯りが少ない場所に行って、本物の天の川を探してみようかな。



 一年に一度だけ許された逢瀬。切なくも愛おしい伝承の物語。
「七夕……切ない恋物語か」
 その物語を想い、ノイシュ・ユコスティア(風の旅人・f12684)は瞳を細め空を見上げた。瞬く星々の中、一等強く煌めくふたつ星を見遣れば、それが恋物語の主役たちだと改めて感じる。
 先程夜店で見つけた細い紐が、ノイシュの手の中で風に揺れる。
 動く度にキラキラと煌めいたように見えたのは、その細い紐は数多の色を宿していたから。ノイシュなりに、天の川で輝く星をイメージして。細い紐を何色か合わせ、彼の手自ら編み込んだものが、今彼の手に握られている。
 星のような鮮やかな短冊は、まるで願いを記されることを待っている気がして――ノイシュはペンを手に取ると、小さな欠片へとペン先を走らせる。
 彼の記す願いは、『無病息災』という簡潔な言葉。
 けれどその言葉には、確かな願いを宿して。数多の世界に蔓延るオブリビオンが消滅することと、遠く離れていった幼馴染がずっと元気でいるようにと云う。
(「……僕自身も、これからの人生の旅で、大切な人、守りたい人と出会えればいい」)
 願いを込めた星をじっと見つめながら、一瞬そんなことを考えるけれど――いや、と彼は首を振る。この願いを記すのは、ちょっと恥ずかしい。だから、文字にはせずに胸に秘めておこう。
 星々のような紐を短冊に遠し、笹に結べば星が咲く。
 風に揺れるその短冊へと祈りを捧げれば――瞳を閉じたからか、辺りの祭りの喧騒がより強く感じられた。
 数多の人が願いを星に託し、絆を紡いでいるのだろう。
「……ここは賑やかだな」
 ノイシュの口から零れた言葉は、夜風に流れてしまう程小さなもの。
 彼はそのまま顔を上げると、暗い場を求めて歩き出す。
 ――街灯の少ない場所ならば、きっと本物の天の川が美しく見えるだろうから。
大成功 🔵🔵🔵

荻原・志桜
🎲🌸
歩幅合わせてくれる些細なことで幸せを感じる
かち合う視線にふにゃり緩む笑み向けた

彼が指差す先に視線をやれば色とりどりのリボン
そうだ!ねえ、ディイくん
ひとつ欲しいから選んでくれる?
ふふっ、どんな色を選んでくれるのかなぁ

彼の青とわたしの緑。その間の碧色が特別に見えて
それじゃわたしたちの色だね、とリボン撫でる

賑やかな音が遠くなる
自分の手首に彼が結わえた碧色
似ているけどあの時と変わった関係がくすぐったい

わたしはずっとディイくんのものだよ
アナタだってわたしのものなんだから
覚えておいてね、彼の手に指を絡め照れたようにはにかむ

愛しい特別な人
わたしと彼を繋ぐ縁
固く結んで、どんな時がきても解けませんように


ディイ・ディー
🎲🌸
笹の葉が揺れる音に耳を澄ませて歩く
歩幅を合わせるのにも慣れてきた
視線が重なって、何とはなしに笑みを交わす
たったそれだけで幸せだと思う

ほら志桜、あそこ
店を示して並ぶリボンを指差す
おう、良いぜ
その中から少し悩んで選ぶのは碧色のリボン
俺と志桜の間の色。悪くないだろ?

それから少し人気の無い所へ歩いて
星祭の賑わいを遠く感じながら、手を差し伸べる
志桜、手を貸してくれ
いつかのあの日にそうしたように、
彼女の手首にリボンを結ぼう

これでよし。志桜は俺のって証!
勿論、逆もまた然りってな

縁を結わうように
手を握り返して繋いで結ぶ
二人の思い出をたくさん結んでいけるよう

君が好きで愛おしい
想いを込めた彩は、いま此処に



 さわりと、耳に心地よく届くのは笹の揺れる微かな音。
 カツリと石畳を打つのは、荻原・志桜(桜の魔女見習い・f01141)歩むヒールの音。その音色も心地良く、どこかくすぐったく想いながら――ディイ・ディー(Six Sides・f21861)は合わせるように、彼女と並び歩んでいく。
 ヒールを履いても尚ある身長差。
 けれど、しっかりと歩幅を合わせて歩いてくれる。とても些細だけれど、彼の優しさを感じてついつい志桜は頬を桜色に染めながら、瞳を緩める。そのまま視線を上げ彼を見つめれば――不意にふたりの青と緑の瞳が交わり、志桜はふにゃりと笑みを向けた。
 彼女から零れる温かな笑み。真っ直ぐに交わされる視線。
 たったそれだけのことが嬉しくて、幸せで。ディイの口許も、自然と綻ぶように笑みが浮かんでいる。そのまま彼は彼女に向けていた視線を街へと移すと。
「ほら志桜、あそこ」
 ひとつの店を指差した。
 そこに並ぶのは、数多の色と形のリボン。
 純白のレースのリボンはどこか女性らしく、星のチャームが揺れるリボンは見目も華やかで愛らしい。他にも目移りするほど数多の色へと、興味深げに志桜は視線を揺らし。
「そうだ! ねえ、ディイくん。ひとつ欲しいから選んでくれる?」
 ぱっと顔を上げると、大きな瞳を輝かせながら彼女はディイを見て小さなお願い事をした。彼女のその望みには勿論良いぜと、ディイは即答する。何を選んでくれるのかと、ワクワクする気持ちを隠せない志桜の眼差しに見守られる中。ひとつひとつ、彼女に似合いそうなリボンを探すように視線を揺らせば――彼が手に取ったのは、碧色のリボン。
「俺と志桜の間の色。悪くないだろ?」
 彼女の瞳辺りにリボンを添え、にっと微笑みながら彼は紡ぐ。
 その色を見て、ディイの眼差しを見て――彼の青と、自分の緑。その間の碧色が、なんだか特別に志桜は見えてくる。そう想えば、このリボンも何だか愛おしくて。
「それじゃわたしたちの色だね」
 柔らかく、甘く、そっとリボンを撫でながら志桜は紡いだ。
 繋ぐリボンを手にすれば、そのままふたりは人気の無い所へと。街のメインである夜店や笹の付近はどこも人が多かったが、少し外れた照明の少ない辺りならば人もまばら。むしろ夜空を楽しむかのように、雰囲気を静かに楽しむ者だけの穴場のようで。
 瞬く星々に見守られる中、足を止めたディイは彼女へと向き直ると。
「志桜、手を貸してくれ」
 短い言葉で、願いを口にした。
 彼の紡いだ言の葉に、志桜は迷うこと無く従い自身の小さな手を差し出す。白く、細いその手首に添えられるのは――あの日にそうしたように、先程の碧のリボンが花開く。
「これでよし。志桜は俺のって証!」
 嬉しそうに笑い、紡ぐディイ。
 その言葉と手首の色に、志桜はひとつ息を呑むと微かに瞳を潤ませた。
 似ている。けれど、あの時とは確かに変わった関係がくすぐったくて。嬉しくて。
 揺れる瞳と染まる頬。高鳴る鼓動を感じながら――俯き、そっと彼の袖へと手を伸ばし。摘まみながら志桜は、唇を開く。
「わたしはずっとディイくんのものだよ。アナタだってわたしのものなんだから」
 覚えておいてね。
 言葉と共に袖に添えられていた手をするりと移動させると、そのまま彼女はディイの手を取り、細い指を絡めると照れたようにはにかんだ。
 その笑みを見れば、ディイの心も逸るように鳴り。同時に満ちるのは、愛おしさ。
 すっと絡められた手を握り返すのは、まるで縁を結わうようで――まるで、ふたりの思い出を沢山結んでいけるようにと、願いを込めているかのようにも見える。
 愛しい人。
 特別な人。
 その想いは確かにふたり重なっている。
 繋いだ手から伝わる温もりも、街灯に照らされた眼差しも、全てが大切で愛おしい。
 志桜とディイを繋ぐ縁。固く結んで、どんな時がきても解けませんように――そう願えば思わず、志桜はきゅっと微かに握る手に力を込めた。
 夏風に揺れるは、想いを添えた手首の碧。
 ――想いを込めた彩は、いま此処にある。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ナターシャ・フォーサイス
七夕…と言うと、短冊を吊るし祈る風習でしたか。
同じ祈る者として、使徒として。祈りを捧げましょう。

…使徒として、私として。
まず祈りを捧ぐは、楽園へと導いた方々のこと。
そして、私の身体の元となった彼女(エリー)に。
(「煉獄に咲く」参照)
白いリボンを、餞としましょう。

それから…これは、個人的なことですが。
想い人に贈ることもできるなら、ぜひとも…
あぁ、けれど。突然こんなことをしては、迷惑ではないでしょうか…
…黒銀のリボンを、手首へと結びましょう。

あとは…お祭りなのです、楽しまねば損と言うもの。
星型ゼリーのサイダーを手に、星空を眺めましょう。
宝石を蒔いたようなこの空は、いつ見ても…心が、洗われますから。



 七夕――それは、短冊を吊るして祈る風習だったか。
 見知らぬ行事の概要を考えながら、ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)は瞬く星々を見上げた。
 彼女は、祈る者。
 同じ祈る者として、使徒として。祈りを捧げようと思うのだ。
 捧げる祈りは、使徒として。そして、ナターシャとして。楽園へと導いた人々のこと。そして、ナターシャの身体の元となった彼女(エリー)に――真白のリボンをはなむけへと、彼女は店先に並ぶ白を手に取った。
 そのままぴたりと、彼女の指は止まる。
 並ぶリボンの上を迷うように指を添えて――彼女は、とても個人的なことを想う。
 想い人に贈ることも出来るのならば、ぜひと。そう想うのだけれど。
「あぁ、けれど。突然こんなことをしては、迷惑ではないでしょうか……」
 ふるりと首を振り、迷いを小さな小さな声で口にする。その言葉は風に流れ消えてしまったけれど――ナターシャは覚悟を決めたように黒銀のリボンを手に取り、自身の白い手首へと結んだ。
 風に揺れる、黒銀。
 その色を見ればどこか心もほっとするようで、自然と彼女の口許に笑みが浮かぶ。
 ――同じように、道行く人々にも笑顔の花が咲いていた。
 願いを捧げ。人と縁を紡ぎ。ささやかな特別な日々を過ごす彼等。
 楽しむ彼等に倣うように、ナターシャもお祭りを楽しもうと。一際人々の集う星の浮かぶ夜色のサイダーの店へと、足を向けた。
 ぷかりと星の浮かぶ器を手に、その後は――美しき天の川を、静かに眺めよう。
「宝石を蒔いたようなこの空は、いつ見ても……心が、洗われますから」
 そっと口元に笑みを浮かべ。
 静かに彼女が紡いだ時。ふわりと夏風が、ナターシャの頬を撫でた。
大成功 🔵🔵🔵

ヴァルダ・イシルドゥア
【彩色】
リィンさま、キョウジさまと
雨のように降り注ぐ星々のひかり
彼等が、ふたりの逢瀬を守ってくださっているのかもしれませんね

自分の想いを口に出すことが不得手だった
けれど、踏み出す勇気を、と
望んだのは、他でもない私自身だから

瑠璃色のリボン
きんいろの刺繍はリィンさま
ぎんいろの刺繍はキョウジさまへ

これは、おふたりへ
お、おともだちのしるし、です

母さまに教わった護りの彩
いろに託した、祈りのかたち
ふたりを守ってくれますようにと、願いを込めて
照れ臭さに思わず俯きかけてしまったけれど

……はい。はい、こちらこそ!

ふたりの想色を胸に抱いてはにかんだ
ああ、舞い散る桜の花びらは
熱を帯びた私の頬を、隠してくださるかしら


リィン・メリア
【彩色】
ヴァルダさん、キョウジさんと
きらきらひかるお星さまと
ひらひら舞う桜たち
初めての光景に見惚れてしまうわ
ふたりの逢瀬を見守ってるのは、星だけではなかったりして

瞼を閉じ、今までの記憶に想いを馳せる
今まで色々あったけれど
生きていてよかった

空にも海にも似た青のグラーデションのリボンをヴァルダさんに
柔くも淡い橙のリボンをキョウジさんへ
今はこの色よ、と

リボンと二人の想いが擽ったくて
睫毛を伏せ、照れてしまうけれど
すごく、すごく嬉しいの
お礼の言葉と不得意な笑みを返して
……うまく笑えているかしら

出逢いも、踏み出してくれた勇気も
こうして、私と向き合ってくれることも
……全部、ありがとう
心からの感謝の想い


高塔・梟示
【彩色】
ヴァルダ君、リィン君と
流石帝都、桜花の下の七夕とはね
慣れない景色だが…今宵は星がよく見える
二人の逢瀬も叶ったろう

折角のお祭りだ、楽しんで行こう
若い二人を見守りつつ
いい思い出になるようにと計らいを

覗いた夜店で、気に入った色のリボンを見つければ
朝焼色のリボンはヴァルダ君
薔薇色のリボンはリィン君へ

受取ったリボンに代えて二人に贈ろう
新しい友との出逢いに、結ばれた縁に感謝を込め
二人の行く道の幸運を願って

心の星は見えなくとも
空の川ほど遠く離れている訳じゃない
言葉と顔を目の前にすれば
大丈夫、想いはちゃんと届いているとも

有難う。友人として、これからどうぞよろしく
恥ずかしがりな年若い友達に、そう笑って



 空には、きらきらと瞬く数多の星々。
 美しき星空を見上げていれば、リィン・メリア(帰還者・f28265)の視界にひらりと舞い踊る淡い桜色――この地特有の、幻朧桜の花びらが。
 それは、とても美しく幻想的で。初めての光景に、リィンは頬を染めながらほうっと溜息を零した。それは見惚れてしまうほどの、美しさ。
「慣れない景色だが……今宵は星がよく見える」
 リィンと同じように、瞬く夏の空と舞い散る桜を見て高塔・梟示(カラカの街へ・f24788)は興味深げに言葉を落とした。桜花の下の七夕は、初めて見る景色。梅雨にあたる地域もあり、七夕の日に星が綺麗に見えないことも多いという。
 けれど、今広がる景色はとても美しき星空で――ふたりの逢瀬も叶っただろうと、梟示は隈の浮いた瞳を細めた。
 ふたつの季節に心奪われたふたりの傍らで、ヴァルダ・イシルドゥア(燈花・f00048)は口元に淡い笑みを浮かべ。
「彼等が、ふたりの逢瀬を守ってくださっているのかもしれませんね」
 いつもは少し伏しがちなその眼差しを、空へと上げて唇を開いた。紡がれる言葉にリィンはヴァルダを見遣る。彼女が紡ぐ通り、ふたつの織姫と彦星の他にも美しき輝きが海のように広がっているけれど――。
「ふたりの逢瀬を見守ってるのは、星だけではなかったりして」
 ぽつり、リィンの口から零れた言葉は夏の夜風に流れていく。
 かつりと足音を響かせて、彼等は並んで歩く。微かに高鳴る胸を抑えるように、胸元で小さな手を握るヴァルダ。舞い散る桜の花弁へと、そっと手を伸ばすリィン。そんなふたりの様子を、梟示は少し後ろから見守るように眺めている。
 並ぶ夜店は数多の種類があり、行き交う人々も老若男女溢れている。広い通りといえどその人波に流されてしまいそうになり、気付いた梟示がこっちだと手招けば。そこは絆を紡ぐ、数多のリボンを取り扱う店だった。
 溢れる、色。
 その色を見て、どこか眩しそうにぱちりとヴァルダとリィンは瞳を瞬く。
 ヴァルダはそのまま、じっとオレンジの瞳にリボンの色を映した。
 彼女は、自分の想いを口に出すことが不得手だった。けれど、踏み出す勇気を。望んだのは、他でもないヴァルダ自身だから――きゅっと唇を結び、胸元で握った手を更に強く握り。決意を固めると彼女は、爪の彩煌めく指を伸ばすと。そっとふたいろをリィンと梟示へと差し出した。
 それは、まるで夜空を零したかのような深い瑠璃色のリボン。
 きんいろの刺繍は、リィンへと。ぎんいろの刺繍は、梟示へと。
「これは、おふたりへ。お、おともだちのしるし、です」
 絞り出すように、ヴァルダの唇から零れた声は震えている。
 けれど、前までならこんなことは言えなかった。出来なかった。確かな勇気を胸に、震える声と合わせるように瞳を揺らすヴァルダ。
 それは、かつて母から教わった護りの彩。
 いろに託した、祈りのかたち。
(「ふたりを守ってくれますように」)
 心に浮かんだ気持ちは、祈りの欠片。――その祈りは言葉には出来ず、ただ胸の中で煌めきじわりと熱が広がるよう。そのままヴァルダはあまりに照れくさく、そっと俯いてしまう。けれど、差し出した彩はそのままに。
 その瑠璃色のリボンを見つめて、リィンはすうっと深く息を吸い。想いを馳せるように瞳を閉じた。――今までの記憶を想って。
 今まで色々なことがあった。楽しかったあの日々も、幸せだったあの瞬間も、もう戻っては来ない。けれど、生きていてよかったと深く深く想うのだ。
 だから彼女は――先程ヴァルダがしたように、自分もふたつの色を差し出した。空にも海にも見た、深い青から淡い青へのグラデーションが美しいリボンはヴァルダへと。柔くも淡い橙色のリボンを、梟示へと。
「今はこの色よ」
 口元に浮かぶ柔らかな笑み。
 それは、彼女が今幸せだと云うことを表しているかのようで――その笑みと、ふたつの差し出されたリボンを見て、梟示はそっと瞳を閉じる。
 小さな少女から差し出される色が嬉しい。
 勇気を出してくれた言葉が、嬉しい。
 だから梟示はお返しをするように、夜店に並ぶリボンへと手を伸ばしふたりへとお返しにと差し出した。朝焼け色のリボンを、ヴァルダへ。薔薇色のリボンを、リィンへ。
「二人の行く道の幸運を願って」
 ――それは梟示が心から、新しい友との出逢いと結ばれた縁への感謝を込めた贈り物。
 ふたつの彩へと手を伸ばし、そっと瞳へと寄せるとリィンの瞳が震える。
 そのままそうっと睫毛を伏せれば、彼女の瞳に影が宿った。
「すごく、すごく嬉しいの」
 震える心を表すように、零れる言葉は微かに震えを帯びている。
 それは、心からの嬉しさを表した震え。お礼の言葉と共にリィンが零したのは、不得手な笑み。うまく笑えているかと、不安そうにちらりと瞳を上げれば――そこには、穏やかな笑みを浮かべた梟示の姿があった。
「大丈夫、想いはちゃんと届いているとも」
 不安げな彼女たちを勇気づけるように、安心させるかのように。年長者の彼は穏やかな声を紡ぐ。心の星は見えなくとも。空の川ほど遠く離れている訳では無い。言葉と顔を目の前にすれば、その心はきちんと届くのだ。
 だから、彼は彼女達の――恥ずかしがり屋な年若い少女たちに向け、こう語る。
「有難う。友人として、これからどうぞよろしく」
 両手に揺れる彩と共に。
 彼から紡がれたその言葉に、ヴァルダは顔を上げ息を吸いながら瞳を輝かせると――。
「……はい。はい、こちらこそ!」
 何度も何度も強く頷き、彼の言葉に同意を示した。
 そんな、喜ぶヴァルダの姿を見れば。不思議とリィンの心も温かくなるようで。――彼女が、勇気を出してくれたことが嬉しい。こうして、出逢えた奇跡も嬉しい。
 そして、こうしてリィンと向き合ってくれることも。
「……全部、ありがとう」
 紡ぐ言葉は少ないけれど、深い想いと共にリィンは零す。その心からの言葉を耳にして、ヴァルダと梟示は小さな少女を見て優しく笑みを返した。
 はらり、零れ続ける淡桜。
(「ああ、舞い散る桜の花びらは。熱を帯びた私の頬を、隠してくださるかしら」)
 そっと両手で頬を押さえたヴァルダは、ひっそりと心にそう想っていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第2章 集団戦 『くろがらすさま』

POW ●雑霊召喚・陰
レベル×5体の、小型の戦闘用【雑霊】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
SPD ●おねむりなさい
【ふわふわの羽毛】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
WIZ ●みちしるべ
【勾玉】から【光】を放ち、【視界を奪うこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●漆黒と雪
 此の場は今も昔も変わらず、人々の集まる憩いの場だった。
 休日や祭りの日には数多の露店が並び、多くの人が行き交い交流をする。美しい幻朧桜の花びらが舞う中、日々散歩に訪れる者も多くいる。
 そんな、ごく普通の場。
 けれどそこには、昔から伝わる物語があった。

 それはサクラミラージュが大正を歩みはじめる時期かもしれないし。ごく最近のことなのに尾ひれがついて、古のことのように語られているのかもしれない。
 愛する妻を亡くした老人がひとりの老人がいた。
 彼は夫婦で毎日のように街を歩んでは、美しい幻朧桜の中佇む妻を眺めることが好きだったという。けれど、愛する片割れを亡くしてしまってからは。彼の老人はすっかり元気を無くしてしまったという。
 そんな彼を街へと連れ出したモノが居た。
 漆黒の毛並みを持つ、大きな犬。
 子供を授かることの無かった彼等にとっては、子も同然な程愛おしい彼。愛する妻と共に愛を注いだ彼が共に居たから、老人は再び街を歩み、美しき桜の中駆け回る子を眺めるという新たな生きる糧を見つけたという。

 ずっと一緒の愛する子。
 勿論、子も老夫婦のことは大好きだった。沢山の愛を注がれて、いつだって一緒だったから――ここで待っていろと、言葉は交わせなくとも言われたことは忠実に守ったのだ。
 あれは桜と共に雪の舞う、寒い寒い冬のこと。
 震える身体。
 漆黒の身体が段々と白に染まっていく。
 自分を見つめる人々の眼差しが痛い。
 
 ねえ、ご主人。
 まだですか――?

●漆黒の鳥
 瞬く星々の祭りから一夜明ければ、湿った空気の中眩い太陽が世界を染める。
 段々と地は熱を持ち、世界を温めるのだろうけれど――早朝ゆえまだ、少しの夜気をはらんでいる。それは本格的な夏が訪れる前の、独特の空気。
 そんな中、奏でられる鳴き声は――早朝を告げる、漆黒のカラスの声。
 カア、カア。
 響き渡る音は、数多の音を重ねまるで歌を奏でているかのよう。
 否。常識外れのその重奏音は、この地に異変が起きていることを告げているのだ。
 まるで昨夜の賑わいが嘘だったかのように、広場に人影は無い。唯一、数多の人が星を飾り付けた笹だけが、昨夜の出来事を現実だと語っているかのようだった。
 その笹の周りに――てんっと跳ねたのは、漆黒のカラス。
 けれどそのカラスは一般的なカラスとは随分と違う見た目をしていた。抱きかかえられるほどの大きさのまん丸な身体に小さな翼、円らな瞳に緩やかなカーブを描くクチバシ。そして彼等は皆同じように、勾玉の装飾を抱いている。
『かあ!』
 猟兵の姿を見つければ、彼等はまた声を上げる。どこか高いその音色は愛らしさを宿し、円らな瞳でじっと見つめ様子を窺うように小首を傾げる。
『かあ、かあー!』
 何か御用ですか。
 おいしいものを持ってますか。
 あさごはんの時間です。
 そんなどこか純粋な眼差しで、彼等は猟兵達を見る。
 敵意は見えないが、確かに彼等は影朧なのだろう。理性に乏しい彼等を説得し転生させることはほぼ不可能。
 だからこそ苦しまないように――全てを終わらせるのが、猟兵として出来ること。
高塔・梟示
【彩色】
ヴァルダ君、リィン君と

ふむ、随分まるっこい…ゴム鞠のような…
…まあ、吉兆という感じはしないな
彼等も神話によっては御使いだ
乱暴にするのは気が引けるが、これも仕事でね

リィン君、怖がることはない
わたしたちを信じて戦ってくれないか
ふふ、駆ける姿が勇ましいな、ヴァルダ君
なら君の背はわたしが護ろう

二人と連携を心掛けて戦う
ヴァルダ君の払った敵に止めをくれて
痛めつけるのは趣味じゃない
手早く済ませよう

…実は気兼ねなく殴る方が得意なんだ
鎧砕く怪力を載せて、一撃必殺を
攻撃で体勢を崩すか、マヒしたならば
仕留め損ねても、リィン君にパス出来る
いい夢をよろしく

此処に君等の居場所はない
彼方の海へ羽搏いて往きたまえ


ヴァルダ・イシルドゥア
【彩色】
リィンさま、キョウジさまと

リィンさま、こわくはありませんか
大丈夫
かならず。私がおふたりをお守りいたします
はい、キョウジさま
背を。あなたに預けます!

まあ、たいへん!こんなに
なんだか……ぬいぐるみの、ような……

竜槍を握る手が緩みそうになって慌てて首を振る
いけません、しっかりしなくては

前衛にてお二人に攻撃が届かぬよう庇い乍ら
現れる雑霊を穿ち

……アナリオン!

名を呼ばえば写見が牙を剥く
出来る限り苦しませぬよう一息で
露を払えば、キョウジさまのさいはてのしるしが
リィンさまが紡ぎだす魔力が
彼等をあるべきところへ還してくれるから

結んだしるしが、暁のそらが
きっと導いてくれる筈
……私たちを、迷える影の元へ!


リィン・メリア
【彩色】
ヴァルダさん、キョウジさんと

……こわくないと言ったら嘘になるわ
でも、
今はひとりじゃない
大丈夫、ふたりがいるもの

ええと、
相手はこの子たちかしら?
愛くるしいまあるいからすたちに小首を傾けて

それでも敵と在らば倒すしかない
危険を冒してでも前に駆ける少女に
釣られるように箒に跨り空へ
二人との連携を心掛けるの忘れずに

からすの群れに向けて催眠術を
苦しむ必要なんてないわ
幸せな夢を見せて、眠らせて
一匹ずつ確実に魔術で仕留めていくわ

油断してからすが至近距離に来たらUCを

あら
キョウジさんも物理だったのね?
後は任せておいて

前で、勇ましく戦うヴァルダさんとキョウジさん
ふたりがいるから、私は強くなれるの



「まあ、たいへん! こんなに。なんだか……ぬいぐるみの、ような……」
 目の前に溢れる程に居るくろがらすさまの姿を見て、ヴァルダ・イシルドゥアは思わず声を上げた。僅かに染まる頬を細い両手で押さえ、じいっと彼等を見れば『かあ!』となんとも気の抜けるような鳴き声を彼等はあげ、ヴァルダたちへと近付いてくる。
「ええと、相手はこの子たちかしら?」
 ぱちぱちと大きな瞳を瞬いて、リィン・メリアはどこか不思議そうに小首を傾げる。愛くるしいまあるいその姿を見れば、脅威な存在とは思えずに――そしてそれは、高塔・梟示も同じようで。その丸っこい姿はまるでゴム鞠のようだと思うが。
「……まあ、吉兆という感じはしないな」
 円らな瞳でじっとこちらを見て、ゴム鞠と言われたようにその場でぽよんと跳ねるように飛び跳ねるくろがらすさまたち。彼等も神話によっては御使いと言われているけれど。
「乱暴にするのは気が引けるが、これも仕事でね」
 戦いの意志を表すかのように、梟示は行き止りの標識をゆるりと構える。朝の風がひらりと、標識に纏われたリボンが揺らした。
 愛らしい彼等を見て、ついつい竜槍を握る手が緩みそうになる手を。けれど彼の言葉に慌ててヴァルダは首を振り、しっかりしなければと活を入れるが――傍らの、戦いに不慣れな少女の様子に気付けば、そっと心配そうに彼女を見て。
「リィンさま、こわくはありませんか」
 優しく、問い掛けた。
「リィン君、怖がることはない。わたしたちを信じて戦ってくれないか」
 ヴァルダの問い掛けを耳にすれば、梟示も合わせるようにリィンへと声を掛ける。
 優しいふたりの言葉に少女は、緊張に強張らせていた身体を解き放つように息を吐き。
「……こわくないと言ったら嘘になるわ。でも、今はひとりじゃない」
 瞳を閉じて、ふるりとひとつ首を振るリィン。戦いは、経験が少ない為未だ不慣れ。いくら相手が小さく愛らしい存在といえど、戦いとなれば話は別だ。怪我をすることも、相手を傷付けることも――まだ、恐怖が溢れ微かに手は震える。
 けれど――。
「大丈夫、ふたりがいるもの」
 そっと瞼を開き、彼女の淡い瞳が世界を見る。
 注ぐ陽射しは眩しいほどで、世界を染め上げる熱が自身の身体をも温める。かあかあと、鳴きながら辺りを遊ぶように跳ねるくろがらすさまを見て、仲間を見て。少女は、戦いの意志を表すように扇を開いた。
 少女のその意志に笑みを零すと、迷うこと無くヴァルダは前へと進み出る。
 ふたりに、攻撃が届かぬように――その強い意志の元、いつもは伏しがちなその眼差しをしっかり前方へと向けて。敵を見据えると、彼女は雑霊を放つ敵へ向け。
「……アナリオン!」
 槍を放つと共に竜の名を呼び、具現化した彼はそのまま敵を喰らわんとするかのように向かっていく。その傷を負った対象に向け、梟示は手早く拳を振るい落とす。
 ――勇敢な仲間の姿は、リィンを勇気づける。
 危険を冒してでも前へと駆ける少女の姿を見れば、自然と自身も続こうと箒へとまたがっていた。地を蹴り、空へと飛び立てば箒の薔薇装飾が揺れ――そのまま少女は、くろがらすさまたちを眠らせようと宙から扇を振るう。
 かあ、かあ。
 リィンの術を受け、上がる声は微かに緩やかなものへと変わり。跳ねる姿もどこか元気がなくなって、そのまま立ち止まってしまうくろがらすさま。そんな彼等へ向けて、迷うこと無く梟示は長い腕で力強く拳を振るった。
 それは細身によれたスーツの彼とは、どこか不釣り合いなほどの力強さ。衝撃で遠くへ飛んでいき、そのまま姿が消えゆくのを見送った後。
「……実は気兼ねなく殴る方が得意なんだ」
 梟示はそっと、自身のことを告白する。
 目の前に飛んできたくろがらすさまへと再び拳を振るえば、致命傷にはならなかったようだがその衝撃でリィンの元へと飛んでいき――空飛ぶ少女が放つ薔薇の花弁がくるりと舞ったかと思えば、芳しい香りと共にの身を包み込み一瞬でその姿は消え去った。
「あら、キョウジさんも物理だったのね?」
 くすくすと笑みを零しながら、リィンは紡ぐ。
 ――全ての攻撃は、かなりの威力のもの。
 か弱い存在であるくろがらすさまたちは、彼等の攻撃を受ければ一瞬で消えていってしまう。けれどそれは、苦しまずに終われるようにとの。全ては彼等の優しさの証だ。
 ヴァルダが前にて露を払い、梟示とリィンが最期を告げる。心の通じた彼等だからこそ出来る、その行動は見事なもので敵の姿は消えていく。地を覆う程の黒色も薄れ、石畳の色が見えゆく中――ヴァルダの攻撃の合間を縫い、梟示の強い拳が振るわれた。
「此処に君等の居場所はない。彼方の海へ羽搏いて往きたまえ」
 微かに黒に染まる瞳を細め、祈るように彼はくろがらすさまへと声を掛ける。
 小さな小さな翼をはためかせ、『かあ……』とか細い鳴き声をあげて。一瞬で消えゆくくろがらすさまを見送るように、その眼差しを反らすことなく。
 そんな、前線で戦うふたりの姿がとても頼もしいと。空に浮かぶリィンは心に想う。
(「ふたりがいるから、私は強くなれるの」)
 きゅっと唇を結び、胸元で手を握り心に宿る温かな気持ちを再確認するリィン。そのまま彼女はその意志を表すかのように、再び薔薇の花を世界に散らしくろがらすさまを包み込んでいく。
 梟示とリィンの力ならば、彼等をあるべきところへと還してくれると。そう信じているから、ヴァルダは柔く笑みを落としながら再び竜槍を握り敵へと向き直る。
「……私たちを、迷える影の元へ!」
 その優しい導きは、きっと何かを待つ影へだって――。
 ひらりと舞うのは星空の下、紡いだ結びのしるしだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

トゥール・ビヨン
アドリブ歓迎

パンデュールに搭乗し操縦して戦うよ

/
夜が明けたね

昨晩のお祭り、楽しかった

さてと、あれが影朧、くろがらすさまか

今はこの広場も人通りはないけど、時間がたてば誰かがやってくる

罪の無い人達が襲われる前に、ここで倒させて貰うよ

いこう、パンデュール!

/
召喚された雑霊は数が多い

先ずは全て雑霊を片付けてしまおう

雑霊から距離をとるように広場の周囲を円を描くように移動してこちらを追いかけさせる

ある程度群でかたまってきたら方向転換しターン・ドゥ・エギールを発動

そのまま、高速移動でドゥ・エギールでの攻撃でなぎ払って一網打尽にするよ

雑霊を一掃した勢いのまま、くろがらすさまにも攻撃を加えて倒してしまおう



 小さな小さなフェアリーであるトゥール・ビヨンにとっては、いくら人にとっては小さな影朧とはいえ自身よりも大きな存在。
 勿論猟兵として、大きさで不利になるようなことは無いし、負けない力も持っている。
 けれど彼は――対抗する為に、巨大な超常機械鎧へとその身を委ねる。
「夜が明けたね。昨晩のお祭り、楽しかった」
 空から注がれる夏の気配を感じる陽射し。その光を機械内から感じると、彼は微笑みながら小さく言葉を零す。
 ――相棒は、物言わない。
 けれど語り掛けるようにトゥールは紡ぐのだ。
 人のいない早朝ゆえ、そびえ立つその存在に驚く者はいない。街は未だ眠っている為、巨大な影が生まれても気付く者はいないだろう。
 風に揺れる人々の願いを乗せた笹の葉。その下に、ひしめくように存在する黒の群れを見て――あれが影朧であるくろがらすさまだと、トゥールは気付きそっと瞳を細める。
 今は人がいないけれど、時間が経てば誰かは確実にやってくる。この場は、人々が行き交う憩いの場だから。あと数時間もすれば、罪の無い人が襲われてしまうだろう。
「いこう、パンデュール!」
 戦いの意志を宿し声を高らかに上げれば、力強い一歩を踏み出しくろがらすさまへと近付いて行く。その一歩は地響きのように地を揺らし、彼等は驚いたように飛び跳ねる。そのままトゥールを敵だと認識したようで、一斉に雑霊を呼び出した。
 その数は、数えきれないほど。
 一体からの雑霊でも相当な数が召喚されるはずなのに、数多の敵が同じように行動すればそれは必然。――だがその動きを詠んでいたトゥールには、その攻撃は脅威にはならない。彼は口元に笑みを浮かべると、慣れた手付きでパンデュールを操り敵と距離を取る。
 そのまま円を描くように移動をすれば、当然雑霊たちは追い掛ける。
 距離が詰まりそうで詰まらない。その動きは逃げでは無く――。
「なぎ払えドゥ・エギール!」
 タイミングを見計らい、丁度良いと判断した時トゥールは広範囲へと力を放った。
 そう、全ては雑霊を一か所に纏める為の行動だった。
 放たれる高威力により、一瞬で数多の雑念は消えていく。開ける視界。溢れる程に居る黒色が、少し慌てたように羽ばたくけれど――逃げる隙も与えずに、トゥールの攻撃が再び放たれた。
大成功 🔵🔵🔵

ナターシャ・フォーサイス
WIZ
昨日の活気はどこへやら…ですが。
彼等もまた、迷える哀れな魂と言うのなら。
使徒として、彼らを導いて差し上げねばなりません。
…いえ、ですが。それ以上に。
なんと…なんと可愛いのでしょう!
役目を果たす、それがなければすぐにでも抱きしめ可愛がりたいのですが…!

…取り乱しましたね。鳥だけに。
純粋な方々をと言うのは、少々抵抗がありますが…
天使達を呼び、【祈り】をもって楽園へと導きましょう。
ただ、いきなりと言うのはアレですから…
…朝ごはん、一緒に食べませんか?
目潰しは封じ、ひと時の穏やかな時間を過ごしましょう。

なんだか、普段よりもとても穏やかな仕事な気がしますが…
たまには、こう言うのもいいのでしょうね。



 肌を撫でる、夏朝の風。
 昨夜の星瞬く下での、人々の集う賑やかな空間と同じ場とはとても思えぬ朝の景色。早朝ゆえ人々はまだ眠りから覚めず、人の息吹を感じさせぬ眠る街。
 ――そんな場で、唯一起きているのは小さくまあるいくろがらすさまのみ。
 ナターシャ・フォーサイスは小さな黒の群れを見て、そっと藍色の瞳を細めた。
 彼等は悲しき過去を持つ影朧。それは迷える、哀れな魂と言えるだろう。ならば、使徒として彼等を導かなければいけないと想うけれど――。
「……いえ、ですが。それ以上に。なんと……なんと可愛いのでしょう!」
 ふるふると微かに震える身体。
 彼女の言葉が理解出来たのか、じっとナターシャを見るとくろがらすさまたちはぱちぱちと円らな瞳を瞬き、こてりと身体ごと傾げたかと思うと『かあ!』と嬉しそうに鳴く。 まんまるな身体と同化しそうな小さな小さな翼を頑張ってはためかせて、ナターシャに興味津々なようで近付いてくる彼等。その姿を見れば、抱き締めて可愛がりたいと強く想うけれど――自身には役目を果たす義務があると、理性でぐっと押さえ伸ばす手を止めた。けれど、じっとナターシャを見上げてくるくろがらすさまたちの眼差しは純粋なもので、とても人々に害を与える存在だとは思えない。
 天使と共に祈りを捧げ、彼等を楽園へと導こうと。それが、猟兵であり使徒であるナターシャの使命なのだと。強く強く自身に言い聞かせる。
 そっと祈りを捧げる為に手を組んで。
 大きな瞳を閉じようとゆるり瞼を下ろそうとする。
 けれど――。
「……朝ごはん、一緒に食べませんか?」
 一瞬瞳に映ったくろがらすさまたちの円らな瞳から反らせずに、ナターシャは瞳を開けると組んでいた手を開きしゃがみ込んだ。彼女の言葉にくろがらすさまたちは嬉しそうに鳴くと、弾むようにその場でぴょんぴょん跳ねる。
 その姿が愛らしくて、心が温かくなるようで。そっとナターシャは手を伸ばし、まあるい身体を指先で撫でる。
 指先に伝わるのは確かな生き物の温もり。心地良さそうに瞳を細める姿もまた愛らしく、じゃれるように小さなくちばしで小突くカラスたち。
「なんだか、普段よりもとても穏やかな仕事な気がしますが……」
 たまには、こう言うのもいいのでしょうね。
 ――祈りを捧げるのは、あともう少しだけ後で。
大成功 🔵🔵🔵

ノイシュ・ユコスティア
丸い…!
この物体は…鳥?

とりあえず、最初は少し離れたところから敵を観察する。
これが本当にカラスなのかどうか…

触ってみたい気もする。
(1章の)露店で買ったお菓子を砕いて、敵の近くにばらまく。
カラスが集まってきたら、背後から近づき、もふもふもふ。
囲まれて羽毛まみれになるのもいいなぁ…
羽毛を触って夢心地…うとうと。

…あ!こうしている場合じゃないんだ。
敵は影龍、しっかり倒さないと!

素早く距離を取り、ロングボウで攻撃。
雑霊が召喚されたら、ユーベルコードを利用して攻める。
苦しませないためにも、体の中心を狙い、1撃で倒す方針でいく。

「癒してくれてありがとう。
生まれ変わったら幸せに…!」



 遠くから視認できる黒の群れは、よくよく見れば翼を持っており。
「丸い……! この物体は……鳥?」
 ハンターとしての癖か、遠目から彼等の様子をじっと見ながらノイシュ・ユコスティアは思わず小さな声を漏らしていた。
 観察するように眺めていれば、彼等はまん丸な身体を揺らして。小さな翼を懸命にぱたぱたと揺らして宙を舞う。てんっと跳ねればまるで弾むようにも見えて。
(「触ってみたい気もする」)
 そわりと、好奇心がノイシュの心を満たした。
 敵が警戒して攻撃しないようにと、ゆっくりとノイシュは近付くと――星祭りで購入していたお菓子を取り出し、彼等が食べやすいサイズに砕くとそのまま石畳の上へとばら撒いていく。匂いにだろうか。それともノイシュの行動を気にしていたのか。くろがらすさまたちはすぐに気付くと、我先にと飛んでくる。
 つんっと地面を緩やかなくちばしで突いて、空腹を満たしていく。
 その隙を狙って――慣れた様子で彼等の背後から近づくと、ノイシュはその腕を伸ばしてくろがらすさまを抱き上げた。
『かあ?』
 何が起きたのかと言いたげに、腕の中のくろがらすさまは声を上げる。
 けれど、敵意は無いと分かったのか。そのまま大人しく抱かれているから。ノイシュは遠慮なくその柔らかな羽毛と、温かな体温を堪能する。腕に伝わる熱も、その柔らかさも、まるで全身で包み込まれているような感覚で――瞳を開けた時、気付けばノイシュの周りにはくろがらすさまがまとわりついていた。
 包み込まれている感覚がしたのは、このせいかと。どこか納得したように瞳を瞬いた後、そっと笑むとノイシュは羽毛へと手を伸ばす。
 ああ、眠い――。
 うとうとと瞼を落としそうになり、頭が支えられずにかくりと落ちて。彼ははっとすると首を振り、当初の目的を思い出す。
 いくら愛らしくても。その身体が温かくとも。彼等は、影朧。倒すべき存在だ。
 ノイシュは立ち上がると、彼を囲むくろがらすさまの群れから飛び出し距離を取る。そのまま愛用のロングボウへと指を掛けると――花火のように拡散する光の矢を放った。
 軌道が降り注ぐ先は、小さなカラスの中心へ。
 せめて苦しませないように、一撃で。心優しい想いを乗せたその矢に触れれば、漆黒のカラスは光に包まれ一瞬でこの世から消え果てる。 
「癒してくれてありがとう。生まれ変わったら幸せに……!」
 桜の癒しは得られない。
 けれどまたどこかで、そう願わずにはいられなかった。
大成功 🔵🔵🔵

紫丿宮・馨子
カイ様と(f05712)

ああ、祭りの余韻が消されてゆく…
鴉…こんなにも鳴くなんて
神の使いともされるその存在でございますが
なんだか嫌な予感がいたしますね

けれども結んでいただいたリボンにそっと触れれば
ひとりではない、と安堵が広がる

そのフォルムに可愛さを覚えるが
彼らは影朧
「眠らせて」差し上げることがわたくしたちにできる唯一

たとえ視界を封じられたとしても
鴉様たちの香りは覚えております
第六感と香炉のヤドリガミの矜持でもあるその嗅覚で居場所を判断し攻撃

カイ様の要請に彼の背後からその腕に触れて導く
こちらとこちらに
そして自身の香りが導と
補助となるように
鴉たちへUC発動
破魔/優しさ/祈り/慰めの力を乗せて


桜雨・カイ
馨子さん(f00347)と

……そうでした、これからが本番でしたね。
名残惜しい気持ちを切り替えて、前を向きます。
馨子さんがリボンに触れてくれたのを見て
自分ももらったリボンを一度手の中で強く握る

かわいい姿に少しいやされますが
ごめんなさいと呟きつつ、自分のやるべき事をやるしかない

光で目の調子が悪くなった後は
周囲の味方を攻撃しないよう注意して
苦しめず一撃で倒せるよう【破魔】を付与して攻撃
鴉の攻撃は【オーラ防御】で最小限に抑えます

馨子さん、鴉たちの位置を教えて下さい!
【巫覡載霊の舞】発動
位置がわかれば確実に攻撃をあてられます
指示された方向へ衝撃波で攻撃

日が昇ってしまう前に…おやすみなさい



 注ぐ陽射しはまだ強くは無いけれど、夏を帯びた色をしている。
 カアカアと――人々の眠る朝の世界に鳴り響くのは、カラスの鳴き声だけ。
「ああ、祭りの余韻が消されてゆく……」
 騒ぎ立つように響くその声を耳にして、紫丿宮・馨子は静かに言葉を零した。
 鳴き続けるカラスは、まんまるの漆黒の身体に円らな瞳を持つくろがらすさまと呼ばれる影朧たち。こんなにも鳴くなんて……そう想う馨子の心はざわつくようで。
「神の使いともされるその存在でございますが、なんだか嫌な予感がいたしますね」
 そっと漆黒の瞳を細め。手にした扇で口元を隠しながら、彼女がその心を落とせば。桜雨・カイはじっとまん丸の影朧を見つめていた眼差しを、馨子へと移すと。
「……そうでした、これからが本番でしたね」
 思い出したように、紡ぐ眼差しは真剣な色を宿す。
 ふわふわの身体を揺らして、小さな翼を羽ばたかせるくろがらすさまたち。名残惜しい、そうカイが想うのは、愛らしい影朧を倒すことか。それとも、事件を起こす敵を倒してしまえばこのひと時が終わってしまうからか――。
 真っ直ぐに前を向いていれば、ふと視界に映った。馨子が、その艶やかな黒髪を束ねるリボンに触れる姿が。
 彼女がひとりではない、と安堵が心に満ち笑みを浮かべたのは、後ろにいたカイには分からない。けれど、彼女が自身が贈った物に今触れてくれたことが嬉しくて、ついカイも先程貰った移り変わる色合いのリボンを手の中で強く握る。
 そのまま一歩、踏み込めば――。
『かあ?』
 なあに? とでも言いたげにくろがらすさまはカイを見て、そして馨子を見て身体を傾げる。その姿は可愛らしく、ふたりの心を打つけれど――影朧である彼等は、眠らせてあげることが唯一馨子に出来ることだと、そっと彼女は瞳を閉じる。
「ごめんなさい」
 俯き、カイがぽつりと言葉を零した時――ぴょんっとくろがらすさまが跳ねたかと思うと、その胸元の勾玉が揺れ。瞬間に強い光が辺りを包み込んだ。
 強い、強いその光は全ての世界を白に染め。視界を奪い、馨子とカイの動いを阻害する。その眼差しから反らすように、きゅっと強く瞳を瞑るふたり。興奮したように鳴く彼等からの更なる攻撃は、いつ来るか分からない。
 微かに宿る恐怖と覚悟。
 未だ開かぬ瞳のまま――カイは強く、声を上げた。
「馨子さん、鴉たちの位置を教えて下さい!」
 その言葉に馨子は、瞳を閉じたままだがはっとして見えなくとも頷きを返す。
 彼女は、香炉のヤドリガミ。
 全身を用い、感じるくろがらすさまの存在を、近付いた一瞬で感じ取った彼等の香りを手繰り寄せていけば。見えなくとも、彼等の居場所はなんとなくわかるのだ。
 そして、それはカイの居場所も。
 彼女は一歩、一歩――瞳を閉じたままゆるりと進み、そっと彼へと近付く。そのまま彼の背後から手を伸ばすと、その腕へと触れた。
 腕に触れる細い指の熱に、一瞬カイはぴくりと反応する。
「こちらとこちらに」
 けれど導かれているのだと分かれば。安堵したように息を零し――彼女に導かれるままに、彼は神霊体からの衝撃波を敵へと強く放った。
 居場所さえ分かれば、確実に攻撃が当てられる。
 そう想い攻撃を繰り出す彼の心に触れたようで。馨子は微笑むと香炉を掲げる。戦場に満ちるのは、芳しい香――否、それは見えない香の球。広がり、くろがらすさまたちを包み込んでいけば。その動きを阻害していく。
 それは、攻撃を行うカイを援護するように。
 その瞬間に、先程よりも強い衝撃波が放たれた。
 耳に届くのは小さな鳴き声。消えゆく気配。
 光に惑わされることなく、ゆるゆると瞳を開けていけばそこには――ひしめく黒では無く、先程よりも強く注ぐ夏朝の陽射しが見えた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

誘名・櫻宵
🌸櫻沫

あら、本当
黒くて可愛いのがたくさんいるわ
丸こくて愛らしいわね!
うふふ……なぁに、この角のリボンが欲しいのかしら?
ダメよ
これは私の彦星がくれた、いっとう大事な宝物だもの
角を隠すリルに柔く微笑んで
大丈夫よと宥めてあげる

この子達にもしあわせのお裾分け?
優しい人魚だわ!
どうやら、お腹がすいているよう
けれどあなた達が満ちることはないわ
―桜の癒しはないけれど
あなた達を美しい桜にすることはできるの

あいしてあげる!
おなかいっぱい、あいしてあげる

私、今機嫌がいいの!
人魚の歌に踊るように
呪殺の桜花を神罰の如く吹雪かせ
刀抜き放ちそのままなぎ払う
そうしてこの瞳でとらえたならば――「喰華」
綺麗な桜にお成りなさい


リル・ルリ
🐟櫻沫

かあかあ
鴉が歌っているよ、櫻宵!

角に揺れるリボンが嬉しくて、ついつい頬が緩んでしまう
心暖かなまま黒の鳥をみて……慌てて角のリボンを手で隠す
鴉は、キラキラが好きだと聞いたことある
僕の大事なリボンがとられてしまったら、大変だもの

彼らも美しい想い達に惹かれて飛んできたのかな
ならば、少しくらいおすそ分けしてもいいかもしれないな?
ふふ
最も僕の櫻はひとひらだってあげられないけどさ

泡沫の守りのオーラを櫻宵に纏わせて
夜空に瞬く星の歌を歌ってあげる
歌う「星縛の歌」
君たち自身を、美しい星にしてあげる
櫻龍がかけて、一閃
美しい桜が咲いて散る
ふふ、君たちの願いも届くといいね
転生をさせられなくても
桜にはなれたかな



 目の前にひしめく黒の大群。まん丸な身体に円らな瞳、楽しげに鳴く彼等を見遣り。
「かあかあ。鴉が歌っているよ、櫻宵!」
 リル・ルリはキラキラと瞳を輝かせながら、誘名・櫻宵へと振り返った。
 その楽しげな彼の様子へと自然と優雅な笑みを返しながら、まん丸で可愛らしい彼等を見遣れば。彼等はふたりの姿に気付き、ぱたぱたと小さな翼を動かし近付いてくる。
 珊瑚の角に揺れる、リボンが嬉しくてついつい頬が綻んでいたが。
 彼等が近付いてくることに、はっとリルは自身の角で揺れる白いリボンを隠すように手を伸ばした。――カラスは、キラキラが好きだと聞いたから。
『かあ?』
『かあ、かあ!』
 すぐ近くまで来たかと思うと、何かに興奮したようにぴょんぴょん跳ねる彼等。じいっと円らな瞳は、リルが想ったように彼の角で揺れる月の涙へと送られている。
 僕の大事なリボンがとられてしまったら、大変。そう想った心と、先に気付けた安心感でほっと息を零すリル。その傍らで、同じようにくろがらすさまに囲まれた櫻宵は。
「うふふ……なぁに、この角のリボンが欲しいのかしら?」
 桜色の宝石が揺れる枝角へと手を添えて、優雅に微笑む彼はそのままそっと首を振る。
「ダメよ。これは私の彦星がくれた、いっとう大事な宝物だもの」
 優雅な笑みと共に、口元へと指を当てて。そう紡ぐ彼の様子はどこか頼もしく――大丈夫よと、角を隠すリルを見て紡ぐ姿も彼らしく真っ直ぐ。
 そんな櫻宵の姿と言葉に、奪われないようにとリボンを覆っていた手をそっとリルは落とした。愛らしい彼。ぱたぱた羽ばたき、どこか純粋な眼差しでじっと見つめるその姿は、リルの心をざわつかせる。
 彼らも美しい想い達に惹かれて飛んできたのかな。
「ならば、少しくらいおすそ分けしてもいいかもしれないな?」
 淡い唇から零される言葉。優しさを含んだその言葉を耳にすれば――櫻宵は顔を上げついつい頬を綻ばせる。この子たちにしあわせのお裾分けをしてあげるなんて、優しい人魚だと。心から、改めて想ったから。
 そんな彼の様子と想いに気付いては。リルは笑みを返すとそっと櫻宵を見遣る。
「ふふ。最も僕の櫻はひとひらだってあげられないけどさ」
 それが、彼のしあわせのひとつ。
 けれど彼はリルの一番だから。少しだってお裾分けは出来ない。
 いつもの柔い笑みと共に紡がれる言葉に――櫻宵は嬉しさに深く笑みを浮かべながら。尚もかあかあと声を上げるくろがらすさまたちを見る。どうやらお腹が空いているようだとは、分かっている。
 けれど――。
「あなた達が満ちることはないわ」
 ふるりと首を振れば、彼の枝を彩るリボンが揺れ動く。
 彼等は、桜の癒しにより転生することは叶わない。
 けれど――彼等を、美しい桜にすることは出来るから。
「あいしてあげる! おなかいっぱい、あいしてあげる」
 一瞬伏せていた顔を上げたかと思うと、櫻宵は力強くそう紡いだ。その声に合わせるように、リルはぷくりと泡沫を作ると歌を紡ぎあげる。
 それは夜空に瞬く星の歌。
 どこまでも澄んだ声は、陽射しが煌めく世界を包み込み彩っていく。心地良い歌声にそうっと瞳を閉じて、心地良さそうに揺れるくろがらすさまたちだが――すぐに櫻宵が抜いた血桜の太刀から振るわれる斬撃に触れ、悲鳴を上げる。
「綺麗な桜にお成りなさい」
 櫻宵の呟きと共に、黒に染まるその身体は淡い桜の花弁へと変化し世界に咲き誇る。散るように、風に舞い上がるように――その美しき光景に、感嘆の息を零しながら。
「ふふ、君たちの願いも届くといいね」
 笑みを零しながら、リルは歌うように、囁くようにそう紡いだ。
 転生はさせられなくても。
 桜にはなれたかな。
 願うように想う彼の眼差しは、水面のように揺れキラキラと輝いていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

蘭・七結
【春嵐】

漆黒のまあるい鳥たち
まあ、あなたたちはカラスなのね
桜世界での姿はこうも円かなのかしら
……嗚呼、どうやら違うよう

食べ物は、持ち歩いていないの
じいと見つめる眸と視線を重ねる
お腹を空かせているのかしら
あなたたちは、なにが好きなのでしょうね

やわい頭へと指さきを伸ばす
ふわふわと、とてもやわいのね
あたたかくて心地がよいわ
気がつけば頬が緩んでゆくよう
何処に触れられるのが好きかしら
……此処?
ふふ、なんてあいらしい

夜が明けて、朝がくる
とても名残惜しいのだけれど
そろそろ、あなたたちともお別れを

だいじょうぶ
さむくないように、寂しくないように
わたしのあかが、かえる場所までついてゆく
心安らかに眠ってちょうだいな


榎本・英
【春嵐】

嗚呼。カラス……?
君はカラスに見えないね?
つぶらな瞳に、丸い身。

食べ物が欲しいのかい?
生憎、私は何も持っていないのだが……。
なゆ、君は何か持っているかい?
この小さなカラスたちは何か食べたいようだよ。

嗚呼。君も。
何か持ち歩く癖でもつけようか。

君たちを倒すというのはやりにくいね。
その前に、このカラスに触れても大丈夫かな。
小さな君たちはやはりとても愛らしいのだよ。

なゆもどうぞ?

十分堪能したら、著者の獣を呼び出そう。
私ももっと触れ合いたいのだが、飢えた獣が我慢できないらしくてね。
さて、準備は良いかい。

獣の掌にカラスを乗せて
愛でるように触れ合いそして、さようならだ。

またどこかで。



 注ぐ朝の世界の中、溢れる程の黒を見て――。
「まあ、あなたたちはカラスなのね」
 蘭・七結は不思議そうに小首を傾げながら、そう紡ぐ。
 その透き通る声を耳にして、榎本・英は七結とくろがらすさまを交互に見遣ると。
「嗚呼。カラス……? 君はカラスに見えないね?」
 口元に手を当てながら、彼もまた不思議そうに紡いだ。
 ふたりの言葉が通じたのか。円らな瞳にまん丸な身体を持つ彼等は、カラスだよ! とでも言いたげにカアカアと鳴いている。けれどその声もまた、普通のカラスよりも音が高く、どこか愛らしさを感じるようで――。
「桜世界での姿はこうも円かなのかしら」
 尚も不思議そうに七結は紡ぐ。
 そのままカラスの鳴き声が重なったことに気付き、視線を上げれば――家屋の屋根で羽ばたく見知ったカラスの姿に気付き、違うようだと大きな瞳を瞬いた。
 てんてんと跳ねる姿は、まるで丸い身体が弾むよう。
 その姿は、何かを求めているようだと感じて――。
「食べ物が欲しいのかい? 生憎、私は何も持っていないのだが……。なゆ、君は何か持っているかい?」
 英が問い掛ければ、そうだよと言いたげに彼等は小さな翼をぱたぱたと羽ばたかせた。そんな彼等の様子を見て、彼等が何かを食べたいようだと七結へと伝えるけれど。
「食べ物は、持ち歩いていないの」
 ゆるりと首を振り言葉を零すと、七結はじいっとくろがらすさまを見返す。彼等も何かを訴えるように、じいっと七結を見返してくる。
 その瞳を、視線を重ねながら、七結は問い掛けるように蕾を花開かせる。
「あなたたちは、なにが好きなのでしょうね」
 その問いに、彼等は言葉では返せない。何かをアピールするようにかあかあと鳴く様子を見て、英は何か持ち歩く癖でもつけようかと。心に想いながらそっと近付き、彼等の傍でしゃがみ込んだ。
「君たちを倒すというのはやりにくいね」
 零れる笑みはどこか苦笑を帯びていて。
 そうっと無骨な指を伸ばしてみれば、目の前のくろがらすさまのほうから英へと近寄って来た。眉間辺りに指先が触れ、そっと撫でれば心地良さそうに瞳を閉じる。
「小さな君たちはやはりとても愛らしいのだよ。なゆもどうぞ?」
 愛らしいくろがらす様へ注がれていた眼差しを、今度はあかの少女へと移して。彼が紡げば、七結は英の隣へと座りそっと細い指を伸ばす。するとくろがらすさまは、英へとしたようにぐっと自身から求めるように身体を寄せてきた。
 指先に触れる、温かな体温。ふわふわと包み込むような羽毛。
「ふわふわと、とてもやわいのね。あたたかくて心地がよいわ」
 その感覚に、自然と七結の頬は綻んでいた。
 何処に触れられるのが好きかしら? 問い掛けながら、探るように指を動かせば頬の辺りを撫でた時、一等心地良さそうに瞳をきゅうっと閉じるのに気が付いた。
「……此処? ふふ、なんてあいらしい」
 仄かに頬を染めながら、くろがらすさまと戯れる七結。
 けれど――彼等は、倒すべき影朧であることは分かっている。
 夜が明けて、朝が来るように。終わらないものは無いのだ。名残惜しさで胸がいっぱいになるけれど、お別れをしなければと彼女は立ち上がる。
 そんな彼女の覚悟に気付き、静かに笑みを零しながら英も合わせるように立ち上がった。そのまま彼はひとつ深い息を零すと、手にした本を開くと共に著者の獣を召喚する。
「私ももっと触れ合いたいのだが、飢えた獣が我慢できないらしくてね」
 キラキラとした眼差しを向けてくるくろがらすさまたちは、どこか名残惜しそうに感じて。眉を下げながら、笑みと共に英はそう告げる。
 準備は良いかい。
 その英の一言が、戦いの幕開けの合図。
 けれどそれは、痛々しい戦いなどでは無い。
 現れた獣が小さき存在へと近付いたかと思うと、その掌へとくろがらすさまを乗せる。どこか楽しげに彼が一鳴きしたかと思えば――その姿は一瞬で消えていった。
 それは、まるで愛でるように。触れ合うかのように。優しく彼等を包み込む。
 優しい彼のその行動に、七結は静かに笑みを浮かべるとそっと瞳を閉じる。
 だいじょうぶ。
 さむくないように、寂しくないように。
 わたしのあかが、かえる場所までついてゆく。
「心安らかに眠ってちょうだいな」
 七結から紡がれるその言葉と主に、朝陽注ぐ戦場に満ちるのはあかい牡丹一華の花嵐。風音は聞こえぬ中、視界を覆うほどのあかが空へと昇って行けば――そこには、溢れる程の黒はもう見えなくなっていた。
「またどこかで」
 昇りゆく花弁を見上げながら、静かに英は言葉を紡ぐ。
 彼等が。美しき花々と共に天へと昇っていくのを、見送るかのように。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第3章 ボス戦 『その場から動かない影』

POW ●僕は待ち続ける
全身を【敵対的な行動を完全に防ぐ拒絶状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD ●忘れ果てても待ち続ける
【身体をあらゆる敵対行動を拒絶する影】に変形し、自身の【知性と感情】を代償に、自身の【防御能力】を強化する。
WIZ ●あなただけを待ち続ける
非戦闘行為に没頭している間、自身の【影】が【記憶に残っている何かを模倣し】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はペイン・フィンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●繋ぐ先に
 黒き鳥たちが消え去れば――そこに現れるのは黒き影。
 それは突然現れたのか。それとも、黒き鳥達がその姿を隠していたのか。それは分からない程、愛らしい彼等の声が聞こえなくなると共にその場に存在した。
 声を、上げることもなく。
 じいっとその場から動くこともせずに、ただただ彼はこの場に留まる。
 首に添えられた赤い紐は、どこにも繋がらず彼を拘束していない。行きたい場所へはどこへだって行けるはず。
 けれど彼は、どこにも行かない。
 此処で待っていてくれと言われたから。

 それは寒い寒い冬の日のことだった。
 買い物をしてくるから、此処で待っていてくれと大好きな主人に言われた彼は素直に従った。雪がちらちらと降る中、すぐに戻るからと言われたから。
 ちらつく雪が段々と強くなり、漆黒の毛並みに積もっていく。
 どれほどの時間が経ったのか彼には分からないけれど、ご主人は一向に戻ってこない。
 目の前を流れる人々は、じっと待つ彼を眺めるだけ。
 ――けれど次の日にも。その場でじっと待つ彼を見て住民たちは手を差し伸べた。
 この場に居ては死んでしまうよと。うちにおいでと温かな場へと導くように。
 それでも彼はこの場を離れない。
 だって、此処から離れてしまえば。もう大好きな人に会えなくなってしまうから。

 こうして影朧となった彼は、それでは何を恨んでいるのか。ずっと戻ってこなかった主人を恨んでいるのか。
 ――否。もう戻ってこないと、捨てられたのだと憐れみを向けた人々を恨んだのだ。
 もう、誰が憐れみを向けたかなんて分からない。だから彼は、数多の人を恨むのだ。御主人以外の人々からの優しさが、彼にとっては苦しいものだった。
 大好きな人に裏切られたなんて、彼は想ってもいない。
 だから未だに、待ち続けるのだ。
 ――もう彼の待つ人が、この世にいないとしても。
ノイシュ・ユコスティア
武器はロングボウ。
敵を転生させることを目指す。

遠くから様子を見る。
ここからなら先制攻撃が可能か…?
でも目的はそれじゃない。

僕は彼の主人にはなれない。
彼にとっての赤の他人という境界線を越えられない。
優しさは通じないだろう。

人の言葉はわかるか…?
心は伝わるかもしれない。

「どこに行ったかわからない主人に会いたかったら、自分から探しに行けばいいよ。
その場から動かなかったら何も起きない。
行こう、君は自由だろう?」

チャンスと幸せは、自分から行動して掴むもの。
…そう、誰かが言ったな。

戦闘中は、常に敵の様子をうかがう。
ダメージを与える必要があるなら距離を取って弓矢で攻撃する。
攻撃は最小限にとどめたい。



 さらさらと揺れる、人々の願いを乗せた笹の下で。
 ぽつんと、佇む黒き影を遠くから眺め――ノイシュ・ユコスティアは狙いを定めるかのように、紫の瞳を細めた。
 手に握られているのは、愛用のロングボウ。
 相手は動かない。狩猟で慣れた彼にとっては、この距離でも射止めることは容易いだろう。まだ戦闘になってすらいない今、先制攻撃は十分可能だろうけれど――彼はひとつふるりと首を振ると、そのまま立ち上がり影へと近付いて行く。
 倒すことは、容易いのだろう。
 けれど今回の目的は、それではない。
 こんなにも敵との距離が近いことは珍しい。隙をつき射る彼にとって、しっかりと視線を合わせ語ることはあまりないことだ。
 けれど――言葉を交わすには、この距離が必要だと思ったのだ。
 ノイシュは、彼の主人にはなれない。
 彼を子のように愛してくれた大好きな主人は、たったひとりなのだ。
 だから彼にとって、赤の他人という境界線を越えることは到底不可能。優しさは通じないのだろう。紡ぐことは出来なくても、人の言葉は分かるだろうか? 心は伝わるだろうか? 思考を巡らせ、疑問を胸に宿しながらもノイシュは口を開く。
「どこに行ったかわからない主人に会いたかったら、自分から探しに行けばいいよ」
 その言葉に彼はぴくりと耳を動かし反応を示した。
 影である彼は、存在はどこか朧。けれどノイシュのほうへと顔を向けると、先の言葉を待つようにじっと変わらずその場に留まる。
 だからノイシュは、言葉を続ける。心は伝わっていると、信じて。
 その場から動かなかったら何も起きないと。君は自由だから行こうと。首から垂れる、風に揺れる赤い紐を見遣りながら。
「チャンスと幸せは、自分から行動して掴むもの」
 そう、誰かが言ったと。きゅっと自分の手を握りながらノイシュは紡ぐ。
 自分から動く――それはただ、主人を待ち続けることが存在の全てとなっている彼には難しいことなのかもしれない。
 けれど真っ直ぐな眼差しで語るノイシュの言葉に。影朧は朧な口から微かに鳴き声をあげる。それはノイシュへの感謝だろうか。それとも同意だろうか。
 真意は分からないけれど――その声はとても温かな色を宿していた。
大成功 🔵🔵🔵

トゥール・ビヨン
アドリブ歓迎

硬い
パンデュールでの攻撃は通じない
これはこの影朧の想いの強さなんだ

なら今ボクに出来ることは
パンデュールから降りてこの影朧と話をしてみるよ

/
キミはずっと待っているんだね
大好きだった誰かを

その誰かもきっとキミのことを大切に想っていたんだ

だって、この首の紐
昨晩の七夕祭りの紐と一緒だ

誰かがキミにあてた想い
愛情、感謝、約束

この紐はキミとその人を結ぶ絆の証なんだね

その絆と約束がキミをここに縛ってしまった

だから、キミはここにいてその人との約束を守っていて良い

ボクとパンデュールがこの一撃でキミを大好きだったご主人の元まで送り届けるよ

パンデュールに搭乗してドゥ・エギールの一撃で彼の魂を送って上げよう



「硬い」
 不意に零れたトゥール・ビヨンの言葉が、この場での敵の在り方を表していた。影である彼は、不定の存在。全ての攻撃を遮断するかのように、ただそこに佇むだけ。
 けれど、彼はただ佇んでいるだけで。こちらへと害を成す様子は無い。
 ――これはこの影朧の想いの強さなんだ。
 唇を結び、そう想ったトゥールは。此処が戦場であるにも関わらず、巨大な相棒であるパンデュールから降りると背の翅を羽ばたかせ、小さな身体で影へと近付く。
 正確な形を成さない影は、それでも近付いてくるトゥールへと意識を向けるように顔を向けた。ぱたりと尾を揺らし、相変わらず敵意は見せない。
「キミはずっと待っているんだね。大好きだった誰かを」
 そっと大きな青い瞳を細めて、優しく声を掛けるトゥール。彼の言葉に、影朧は言葉は返さないけれど。尾をひとつ大きく揺らした姿が、まるで頷いているように想えた。
 彼は影朧とはいえ犬だから。人の言葉を話すことは出来ない。
 けれど、心は通じる。心を込めた言葉は通じる。そう信じて、トゥールは言葉を紡ぐ。
 彼が、待っていた誰かも。きっとキミのことを大切に想っていた、と。
「だって、この首の紐。昨晩の七夕祭りの紐と一緒だ」
 影朧へと近付き、どこにも繋がらずに風に揺れる首飾りを抱き締めるようにして持ち上げると、そのまま彼を見遣り微笑んだ。
 想いを繋ぐお祭りで交わされた彩と同じだから。これは誰かがキミにあてた想いなのだと。愛情、感謝、約束――込められた想いは何だろう? けれど、確かなことは。
「この紐はキミとその人を結ぶ絆の証なんだね」
 ふわりと笑みながら、彼と眼差しの高さを合わせてトゥールは語る。
 その絆と約束が、彼をここに縛ってしまったのだろう。それが悲しいことなのか、幸せなことなのかは分からない。
 けれど、彼がそれを強く望むから。トゥールはここにいてその人との約束を守っていて良いと想うのだ。
 ――この場に居たまま。トゥールとパンデュールが一撃で、キミを大好きだったご主人の元まで送り届けるのだから。
 最後のひと時まで約束を果たして欲しいと。祈るように、願うように彼は告げた。
大成功 🔵🔵🔵

紫丿宮・馨子
カイ様と(f05712)

そうでございますか…あなた様は、ご主人様を待ち続けて…
UC発動

わたくしの主たちは…
遠い遠い昔
大切な彼女たち
今ならなんとなくわかる気がするのです
失ってからの千を超える長い歳月
生きながらえてきたのは
わたくしも誰かを待っていたからなのだと

お隣、よろしいですか?
わたくしたちも、一緒に待たせていただいてもよろしいですか?
同じ主を持つ身
そしてわたくしたちは永き時を過ごすことができます

わたくしは
主との永訣を体験しておりますから
細かな形は違えど『彼』の不安も決意も
わからないわけではありません

だから
カイさんの提案に頷いて
参りましょう、と『彼』を撫でる
優しく、そして心届くようにと祈りながら


桜雨・カイ
馨子さん(f00347)と一緒に「彼」のそばへ
あなたが待つ間、そばにいていいですか?

憐れんだりしませんよ、私も馨子さんも。
主人を思い続ける気持ちは分かります
私も同じように主を-弥彦を待っているから
※カイ(人形)を蔵に置いて、その後 姿を消した

なぜ自分を置いて行ったのだろうとは思っても
裏切られたなんて思いたくないし
何より、もう一度会いたい気持ちは止められないから

だから、探しに行きませんか?

【援の腕】発動
転生の先にあなたの主人が見つかるように祈りながら
赤い紐も忘れずに持って行って下さいね
今握る手はなくても…思い出や思いはきっと繋がっているから(自分のリボンを見ながら)



 ただ待ち続ける彼の影の姿を見て――。
「そうでございますか……あなた様は、ご主人様を待ち続けて……」
 長い睫毛を伏せながら、紫丿宮・馨子は静かに言葉を零し。そのまま彼女はひとつ呪文を唱えると、瞳に彼の姿をしっかりと映しながら唇を開く。
 馨子は、ヤドリガミ。そして共にこの場に居る桜雨・カイもヤドリガミ。
 百年以上使われた器物に宿りし魂の命。だから、彼等は普通のヒトよりも長きの月日を体感している。自分の主たち。遠い遠い昔の、大切な彼女たち。――その姿は遠く細い記憶の先に、けれど確かに遺っている。
 だからこそ、馨子にはなんとなくわかる気がすることがある。
 失ってからの千を超える長い歳月。生きながらえてきたのは、馨子も誰かを待っていたからなのだと。――だから、彼の心に寄り添える気がした。
 ゆるりと歩み、小さな彼へと近付くと彼女はそっと微笑む。
「お隣、よろしいですか?」
 その問い掛けに、影朧はどこか不思議そうに。けれどひとつ尾を振る様子を見れば、拒否はされていないのだろう。彼女に続きカイも彼の傍へと歩めば。
「あなたが待つ間、そばにいていいですか?」
 微笑みながら、問い掛けた。
 影朧を挟むように立った彼等。すぐ傍に居る彼からは温もりは感じないけれど、ひたむきな気持ちは伝わってくるようで――馨子も一緒に待たせて貰ってもいいかと問い掛ける。彼女達ならば、永き時を過ごすことが出来るから。
 その言葉に少し戸惑ったように、けれど彼はその場からじっと動かない。固い意志を確認して、カイは彼を安心させるように首を振り、言葉を紡ぐ。
「憐れんだりしませんよ、私も馨子さんも。主人を思い続ける気持ちは分かります」
 それは、主を持ち長きを生きる彼等だからこそ分かること。
 だってカイも、同じように蔵に自身を置いて姿を消した主(弥彦)を待っているから。
 けれど彼も、なぜ自分を置いて行ったのだろうと思いはしても。裏切られたなんて思いたくないし、無いよりもう一度会いたい気持ちは止められないのだと。
「だから、探しに行きませんか?」
 傍らを見て、そうっと優しく彼は問う。
 待っているだけでは会えないのなら、こちらから迎えに行けばいい。
 彼の言葉に、馨子は瞳を閉じて口元に笑みを浮かべる。
 馨子は、主との永訣を体験している。細かな形は違えど、『彼』の不安も決意も、分からないわけでは無い。だから――瞳を開くと頷きをひとつ落とし、唇を開く。
「参りましょう」
 そうっと、どこまでも従順な黒き犬の頭を撫でれば。動物らしい温もりも柔らかさも馨子の手には伝わらないはずなのに、不思議と温かさを帯びている気がした。
 これは、彼の影朧の持つ優しさの温度なのだろうか?
 少し不思議そうに瞳を瞬いた後、馨子は優しく、心が届くようにと祈りながら何度も彼の頭を撫で続けた。
 ――もう、無理だよ。
 その言葉は何度も聞いたのだろう。
 けれど、主人の帰還を肯定して。共に時間を過ごしてくれる。そんなことを言われたことは無かった。――だから影朧は、両隣に立つふたりの姿を見て甘えるように鳴く。
 触れた温もりが、こんなにも心地良く感じるのはいつのことだろう。
 嗚呼、ご主人――。
 苦しそうに鳴く彼の声は、言葉としては伝わらない。
 けれど痛いほどにその叫びが、馨子とカイの心には響いた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ヴァルダ・イシルドゥア
【彩色】
……リィンさま、キョウジさま

竜槍を仔竜の姿へ戻す
武器はきっと必要ないから

驚かさぬよう膝を折りてのひらを差し出す
噛まれても良い、匂いを覚えてもらうように

こんにちは
私はヴァルダ
リィンさまと、キョウジさまと一緒に
あなたに会いにきました

あなたと
あなたのだいすきなひとたちのことを知りたくて
……教えて、くださいますか?

星の零れ落ちる夜
想いを繋ぐ、奇跡に満ちた夜が明ける
あなたの『いと』も、きっと
だから……目を閉じて、思い浮かべて
あなたのすきだった遊びを
胸浮き立つ散歩道の景色を
あなたの愛した、ふたりの笑顔を

捧げましょう、歌を
もう、いとしいいとしいと、泣かずともよいのです
その聲を、星々が届けてくれるから


高塔・梟示
【彩色】
ヴァルダ君、リィン君と

いきなり襲いはしないだろうが
もしもの際には二人を護れるよう
彼にとってご主人が大切だったように
わたしも友人達が傷つくのは看過しかねる

…参ったな、説得は得意じゃないんだ
彼の世界はご主人だけだった
けれど他者の声に耳を傾けねば、永劫このままだ

二人を邪魔しないよう静かに彼の様子を眺めて
心に響くものがあれば、反応がある筈

捜しに行ってあげないのかい?
ご主人が君を手放したとは思えない
帰れないでいるなら迎えを寄越さねばなるまいよ
震えて待っているかもしれない
君なら見つけられるんじゃないか

七夕には、天の川にも橋が架かる
長く抱いた願いだって届くだろう
離れた人の下へ、彼が駆けて行けるように


リィン・メリア
【彩色】
ヴァルダさん、キョウジさんと

戦う姿勢は見せないわ
私たちの話に耳を傾けてくれたら嬉しいのだけれど

貴方には大好きで大切な人がいるのね
そこまで想えるなんてすごいわ
私にもそんな人がいたの
もう、逢えないけれど

最初は悩んだわ
私はこのまま前に進んでもいいのか
私だけ幸せになってもいいのかって

でもね、逆の立場だったら、
私は大切な人に幸せになってもらいたい
新しい道を、新しい自分を見つけてほしいって

だから、前に進むって決めたの

貴方のご主人様がどうなったかは分からないけれど
その人の為にも、変わってみない?
私たちが貴方の背中を教えてあげるから

大丈夫
きっと貴方のご主人様も隣にいるわ
目を閉じれば、浮かぶでしょ?



 佇む悲しげな影の犬の姿を見て、ヴァルダ・イシルドゥアが手にした翼飾りの美しい槍を、その細き手でつうっと伝えばその姿は仔竜へと変わる。
「……リィンさま、キョウジさま」
 その先をヴァルダは語らない。けれど、いつもとは違う強い意志を宿し、前を向き影朧を見据えるヴァルダの様子を見てリィン・メリアは静かに頷きを返し、高塔・梟示も手にする標識をそっと下ろした。
 ヴァルダもリィンも、彼の敵への敵意は露わにしない。戦いの姿勢も見せない。けれど梟示は万が一のことを考え、武器を下ろしながらもいざという時はふたりの少女を護れるようにと意識を向ける。
 ただ待つだけだと言うけれど、彼は影朧だ。何が起きるかは分からない為、警戒は必要だろう。――彼にとって、ご主人が大切だったことは十分分かっている。
 けれど、梟示にとっては友人たちが傷付くのは看破出来ないことだから。真っ直ぐに影朧と向き合う少女たちの後姿を見送るように眺めながら。
(「……参ったな、説得は得意じゃないんだ」)
 軽く頭をかき、瞳を細めそんなことを梟示は想う。
 待ち人を今でも待ち続ける影朧。
 彼の世界は、ご主人だけだった。
 けれど他者の声に耳を傾けなければ、永劫このままだと想うから。
 だから梟示は自分から言葉は発さずに、少女たちの紡ぐ言葉を耳にしながら彼の様子を眺めていようと想うのだ。
 静かに背を見送る梟示の前を歩き、ヴァルダは影朧へと近付いて行く。――アナリオンも、そんな彼女を応援するかのようにそっと寄り添う。
 彼の傍へと辿り着けば、彼女はその場で膝を折り細い掌を差し出した。
 その手は微かに震えている。
 けれど戸惑うことも、途中で引っ込めることも彼女はしない。噛まれても良い、匂いを覚えて貰えればと覚悟を持っての行動だから。
「こんにちは、私はヴァルダ。リィンさまと、キョウジさまと一緒に、あなたに会いにきました」
 笑みと共に優しく少女は言葉を紡ぐ。その言葉に、影朧はひとつ鳴き声を上げると、返事をするかのように尾を揺らした。
 相手も、攻撃へは一切移らない。
 此処に何故いるのかと、此処からどけと言っている訳では無いからだろう。そのままヴァルダは小首を傾げると、願いを唇から零していく。
「あなたと、あなたのだいすきなひとたちのことを知りたくて。……教えて、くださいますか?」
 輝くオレンジ色の瞳を細めて、ヴァルダが問えば。彼は人の言葉は話せないけれど、心に描く人のことを想い切なげに鳴いた。
 会いたい、会いたい。
 そんな悲痛な叫びが聴こえてくるようで――。
「貴方には大好きで大切な人がいるのね、そこまで想えるなんてすごいわ」
 そんな彼の姿に、リィンは淡い花のような瞳をそうっと閉じて言葉を紡ぐ。私にもそんな人がいたのだと落とした後――彼女の口からは、もう逢えないと添えられる。
 それは、影朧と同じ立場。
 だからだろうか、リィンは真っ直ぐに彼と向き合うと。瞳を揺らしながら、彼女は過去について吐露する。このまま前に進んでも良いのか、私だけ幸せになっても良いのかと、最初は悩んだことを。
「でもね、逆の立場だったら、私は大切な人に幸せになってもらいたい。新しい道を、新しい自分を見つけてほしいって」
 だから、前に進むって決めたの。
 そう語るリィンの姿は、いつものどこか怯えるような瞳では無く。きゅっと結んだ唇にも、強い意志を宿している。そしてそのまま貴方は? と彼へと向き直る。
「貴方のご主人様がどうなったかは分からないけれど、その人の為にも、変わってみない? 私たちが貴方の背中を教えてあげるから」
 リィンの言葉に影朧は、切なげに声を上げる。
 会いたいと。変われば、大好きな人に会えるのかと。
 そんな、愛を欲するような鳴き声で。――影からの悲痛の叫びと背を押す友人たちの姿を見て、ふうっとひとつ息を吐いた後梟示は唇を開く。
「捜しに行ってあげないのかい?」
 ただ、待っていることを何年も続けたであろう彼に向けて、そんなことを。
 その声に耳をピクリと動かすと、彼は梟示を見た。朧な存在を鋭い眼差しで見返して、彼はどこか淡々と。得意ではない言葉を、彼の為に紡ぐ。
 情報から、ご主人が君を手放したとは思えない。還れないでいるなら迎えを寄越さねばなるまいと、震えて待っているのかもしれないと。
「君なら見つけられるんじゃないか」
 そうっと瞳で姿を捉えたまま、彼はそんなことを紡ぐ。
 頼もしい友たちの言葉に耳を傾けていたヴァルダは、ふわりと花咲くように笑むと一歩前へと近付く。昨夜は星の零れ落ちる夜だった。想いを繋ぐ、奇跡に満ちた夜が明ける時間。あなたの『いと』もきっと――。
「だから……目を閉じて、思い浮かべて。あなたのすきだった遊びを、胸浮き立つ散歩道の景色を」
 ふわりと風に揺れる、どこにも繋がれぬ赤い糸。その糸の流れを視線で追いながらヴァルダが紡げば、彼は遠くを――空を見上げながら声を上げた。
 ――ああ、会いたい。会いに行きたい。
 そんな想いが込められているような気がして、だからこそ祈りを捧げたい。歌を、捧げたい。願うように手を組む少女の小さな後姿を見ながら、そうっと梟示は空を見上げる。
「七夕には、天の川にも橋が架かる。長く抱いた願いだって届くだろう」
 今は浮かばぬ夜空を想いながら、紡がれる言葉。橋が掛かれば想いも人も届くと信じるように。そうすれば、離れた人の下へ、彼が駆けていけるはず。
 そう、きっとそうだ。
 美しき星々が出逢う今ならば、その身体を星々が届けてくれるから。
「もう、いとしいいとしいと、泣かずともよいのです」
 希望を伝えるように梟示の言葉に添えヴァルダが語れば、こくりとリィンも頷く。届いた先にはきっと、きっと――。
「大丈夫、きっと貴方のご主人様も隣にいるわ」
 彼の夢をしっかりと言葉に、リィンは紡ぎこの世に落とす。
 彼等の言葉に。希望を込めるように彼は、遠い空に向けひとつ鳴き声を上げていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ナターシャ・フォーサイス
WIZ
恨みを持った影朧…貴方、なのでしょうね。
主を待つ貴方が、なぜ…いえ、この問いも意味はないのでしょう。

生けるものに仇成すなら、祓わねばなりませんが…
貴方の想いは、祓うべきではないのでしょう。
忘却は時に救い足りえますが、そうではないでしょうから。

ですので、烏滸がましいとは思いますが…
その恨みだけ祓いましょう。
【精神攻撃】で、祓えればいいのですが。
そして、楽園へ導くことが役目ではありますが。
主人との縁を結び、再び巡り合うことができるよう【祈り】ましょう。
少し遅いですが、かの七夕の祭りのように。
地に縛る枷を外すのなら…ささやかながら、お手伝いしましょう。
どうか貴方にも、ご加護のあらんことを。



「恨みを持った影朧……貴方、なのでしょうね」
 此処へ訪れた自身の使命を確認するかのように、ナターシャ・フォーサイスは紡ぐ。
 人々に恨みを持ち、危害を加える影朧を倒すこと。それが、ナターシャの使命。この使命は変わることは無い、必ず結末は同じでなければならない。
 けれど――。
「主を待つ貴方が、なぜ……いえ、この問いも意味はないのでしょう」
 目の前で微動だにせず、猟兵を前にしてもただ佇むだけの彼の姿を見遣れば。どこか苦しげに顔を歪ませながら、ナターシャは思わず言葉を零した後――我に返り、首を振る。
 そう、すでに彼は影朧へと変わり果ててしまっている。
 例え今は害を成さなくとも、今後どうなるかは分からない。もしかしたら猟兵達が去った後、人々を襲う可能性だって消えてはいない。
 だから――生きるものに仇成すなら、祓わねばならないと想い彼女は向き直る。
 けれど、でも。
「貴方の想いは、祓うべきではないのでしょう」
 ナターシャは戸惑いを素直に言葉にしていた。
 忘却。それは時には救われることもあるものだが、そうでないことだってあるのだと。
 倒さなければならない存在。
 この場に佇むことを否定したくない。
 ふたつの想いがナターシャの心に渦巻いていく。
 どうすればいいのかと悩んだ彼女は――宝杖を構えると、彼へと向けひとつ祈りを捧げる。傷付けたいわけでは無い。だから、恨みを持つ彼のその想いだけ祓えればと想ったのだ。淀んだ心が払えれば、きっと――と希望が持てる気がするから。
 ナターシャの使徒としての役目は、楽園へと導くこと。
 けれど目の前の彼には、主人と縁を結び、再び巡り合うことが出来るようにと祈りを捧げたい。そう、かの七夕の祭りのように――。
 彼へと触れれば、ナターシャの手に温もりは伝わらない。
 けれど――どこか寂しげに鳴く彼の姿は、やはり悪い存在には想えずに。ナターシャの心がちくりと痛んだ。
大成功 🔵🔵🔵

蘭・七結
【春嵐】

微動だにしない黒影
嗚呼、あなたは
果てがないほどに長い時のなか
だれかを待ち続けているのでしょう
ずうと、待ち焦がれるひと
あなたの想うひとはステキな方なのでしょうね

その場を離れることは、あるのかしら
凍える冬はつめたくて
明けない夜は、昏いわ

……、わたしは、待ち続けていた
その手を引いてくれたのは――、

口を噤んで頭を振るう
……いいえ、今は
わたしではなく眼前のあなたを

憐憫の情は掛けない
あなたが待ち続けるひとはひとりきりで
あなたの想いはあなただけのもの
同じ想いなど、抱けるはずがない

手に馴染む凶器を向けることはしない
彼方で待ちびとに会えますように
座す場所ごと春の花で攫おう

待ち続けるだけは
とても、さむいわ


榎本・英
【春嵐】

嗚呼。そうか、ずっと待ち続けているのだね。
君は主人の事がとても好きなのだろう。
こんなにも従順な君に愛された主人は幸せだろうね。

私から君に何かを伝える事も、説得をする事も出来ない。
信じて待つ者に、居ないとも、捨てられたとも告げてはならないと思うのだよ。
信じているのに、あまりにも残酷だ。
気が済むまでそこにいれば良い。

けれども、嗚呼。とても残酷だ。
君は待ち続けているのに。
なゆ、君は――…。
君もこの子のように待ち続けるかい?
待ち続ける事はできるかい?

私はそうだね、探しに行ってしまうかもしれないね。
君の手を握ろう。
とても哀しいけれども、お別れだ。
あちらで、君の好きな人に会えると良いね。



 夏を帯びた強い陽射しの下。
 そこに佇むのは、微動だにしない黒き影。
 その姿を見て、唇から零れる吐息はほぼ同時。――嗚呼、と。息と共に言葉が漏れる。
「そうか、ずっと待ち続けているのだね」
 真っ直ぐな想いを抱く黒き犬の姿を瞳に映しながら、榎本・英は零れるように言葉を紡ぐ。言葉は通じなくとも、彼の想いは伝わってくる気がする。
 そう、彼は――主人のことがとても好きなのだと。
「こんなにも従順な君に愛された主人は幸せだろうね」
 そうっと瞳を閉じて、彼の心とかつての記憶を想うように英は告げる。
 優しい彼の言葉と姿に乗せるように、蘭・七結も瞳を閉じると息を浅く吐いた。
 彼は、果てが無いほどの長い時の中。ずうっと誰かを待ち続けている。ずうっと、待ち焦がれる人。その人の姿は――。
「あなたの想うひとはステキな方なのでしょうね」
 それは、彼の心を肯定する証。
 寄り添う心に反応するように、彼はぴくりと顔を上げふたりを見る。
 けれど、動かない彼の影朧を見て――七結の心に、疑問が宿る。
(「その場を離れることは、あるのかしら」)
 凍える冬はつめたくて。明けない夜は昏い。
 そう、七結は待ち続けていた。だからその感覚が分かる。
 そう想い改めて前を見れば、英が彼へと近付き視線を合わせるようにしゃがんでいた。
 眼鏡の奥の眼差しはいつものように優しさを湛えている。
 そうっと影である彼の瞳辺りを見遣りながら、眉を下げた笑みで英は紡ぐ。
「私から君に何かを伝える事も、説得をする事も出来ない」
 そんな、真っ直ぐな言葉を。
 信じて待つ者に、居ないとも、捨てられたとも告げてはならないと思うから。その言葉は、信じているのにあまりにも残酷だと思うから。だから気が済むまでそこにいれば良いと、彼は想う。
 それは、英が冷たいわけでは無い。
 時には事実を告げることのほうが、その者にとっては残酷なこともあるのだろう。
 けれど――いつまで経っても戻ってこない人を待ち続ける存在。
 元の姿ではなくなっても、ただただ従順に待ち続けるその姿を映せば、とても残酷だと、言葉に出せずとも宿る気持ちはある。
 君は、待ち続けているのに。
「なゆ、君は――……。君もこの子のように待ち続けるかい?」
 ――待ち続ける事はできるかい?
 影朧から顔を上げ、どこか苦しげに唇を結んでいる彼からのひとつの問い掛けに、七結は大きな瞳を見開き、そのまま何かを回想するように息を吸う。
「……、わたしは、待ち続けていた。その手を引いてくれたのは――、」
 答える言葉はそこで止まる。
 自分の紡いだ言葉に気付き、そっと唇へと指先を添えると首を振った。
「……いいえ、今は。わたしではなく眼前のあなたを」
 それは現実へと、帰るかのように。
 七結から影である彼へ、憐憫の情は掛けるつもりは無い。
 彼が今も待ち続ける人はただひとりきりで。彼の想いは彼だけのものだから。他人がどうこう言うことも、同じ想いを抱くことも出来ない。出来るはずが無い。
 だから彼女達が出来ることは、ただ祈るだけ。彼方で、待ち人に会えますようにと。
「待ち続けるだけは。とても、さむいわ」
 ざわりと風が吹き、ふわりと舞う髪を押さえる七結の零した言葉をさらっていく。その流れゆく言葉は英の耳へと届き――彼は柔く笑みを零すと、小さく頷く。
「私はそうだね、探しに行ってしまうかもしれないね」
 そうっと彼女の細い手を取れば、俯いていた彼女の瞳が彼を捉えた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

琶咲・真琴
姉(f12224)と

相変わらず
男の格好と口調


あー、なんか
この影のことに似たような話を聞いたことあるなー

あれも確か
犬がご主人をずっと待っていたって言う話だったっけ


そうだよな
大好きな人を悪く言われんのは嫌だよな

オレだって嫌だ
やったら怒られるけど
悪く言った奴をぶっ飛ばしたくなる


お前は信じているもんな
世界で一番大好きなご主人のこと


………姉ちゃん、やっぱりスゴいや(聞こえない様に、ポツリと呟く

即興で自然の妖精を描いて
UCで呼び出す

姉ちゃんが呼んだ影のご主人のサポートをしてもらう

寒い場所で影隴に成ってまで
ずっと待ったしさ

最期くらい暖かい場所で寝ような

必要あれば輝うさで姉ちゃんと連携して戦う

アドリブ歓迎


鈍・小太刀
弟の真琴(f08611)と

ずっと待っていたんだね

動かぬ影に優しく触れて勿忘草の幻影のUC発動
待ち人であるご主人の霊を召喚する

愛する者と会えない辛さは
奥様を亡くしたご主人もまた知っている筈
彼を置き去りにしてしまったことは
きっと気がかりだったと思うから
頑張った彼がちゃんと癒しを得られる様に
ご主人からも説得してくれるようお願いするよ

大好きな貴方を想って、大好きな貴方に会いたくて
ずっと待っていた彼の事、どうか誉めてあげてね
そして今度こそ一緒に天国へと、その先の未来へと
彼を連れて行ってあげて欲しい
転生したその先で
幸せな縁が再び結ばれるように

必要なら刀で斬り送り出す
可能なら桜花鋭刃で

彼の事、どうか宜しくね



 いつまでも、いつまでも主人を待ち続ける犬の物語。
「あー、なんか。この影のことに似たような話を聞いたことあるなー」
 目の前の影を見遣りながら、琶咲・真琴はぽつりと言葉を零した。
 ただただ人を待つ影朧の姿は、どこか痛々しくも思えて。その姿を宝石のような煌めく瞳に映した鈍・小太刀は、苦しそうに吐息を零す。
「ずっと待っていたんだね」
 吐息と共に零れた言葉は、まるで彼の心を自分も感じているかのようで。微かに震える声と、耳に届いたその声に真琴は姉を見た後――彼女に倣うように、佇む影朧を見る。
 彼は、動かない。
 此処に居てくれと言われたことを、影朧となっても守っている。
「そうだよな。大好きな人を悪く言われんのは嫌だよな」
 伝わる彼の話を思い出しながら、健気に待つ彼の姿を見て。自然と真琴の口からそんな言葉が零れていた。
 自分だって、そんなことを言われたら嫌だと思う。やったら怒られるけど、悪く言った奴をぶっ飛ばしたくなる――そう紡ぐ彼の姿は年相応の男の子の姿で。その素な様子に、彼の心が聞こえるよう。
 だから影朧も、真っ直ぐに彼等を見て。その言葉に耳を傾ける。その姿がお揃いの瞳に映れば、ふたりはどちらからともなく影朧へと近付いていた。
「お前は信じているもんな。世界で一番大好きなご主人のこと」
 今にも泣きそうな彼の姿を見て、真琴は瞳を細めながら静かに零す。
 手を伸ばして、彼に触れても良いのだろうか。少しの戸惑いを感じていると――彼の横を、小太刀が通り過ぎた。結われたふたつの髪が真琴の横を流れる様を瞳で追えば、彼女はそっと影朧へと手を伸ばす。
 相手は影という形無き存在だけれど、不思議と触れることは出来る。そっと撫でるようにその頬に触れ、小さな唇で呪文を唱えれば――朝陽の下、現れたるは和服を纏う古老。
 それは、小太刀の力により呼び出された彼の影朧の主人である霊。
 これは奇跡だろうか。
 この世に彼が存在しないからこそ、この場に呼び出すことが出来た。そして何より、小太刀がこの場に彼を呼び出す、優しい術を持ち合わせていたから――。
「愛する者と会えない辛さは、奥様を亡くしたご主人もまた知っている筈」
 だから、一緒に説得して欲しいと小太刀は古老へと願いを告げる。
 彼を置き去りにしてしまったことは、古老も気がかりだったと思うから。今の今まで、幾程の年月を頑張った彼が、きちんと癒しを得られるように――真剣な眼差しで語る小太刀を見て、古老は笑顔を浮かべると、ゆっくりと影朧へと近付いて行く。
 彼の姿に気付き、影朧は尾を嬉しそうに揺らすと甘えるように声を上げた。深い皺の浮かぶ手で彼を撫でれば、そっとその身をすり寄せる影朧と、嬉しげに笑む古老。
「………姉ちゃん、やっぱりスゴいや」
 彼等の様子を見て、真琴は誰にも聞こえない程小さな声で。心からの声を音にしていた。微かな音と共に零れる吐息もまた、微かなもので小太刀の耳には届かない。彼女は真っ直ぐに古老と影朧の姿を眺め、そっと口元に笑みを浮かべていた。
(「大好きな貴方を想って、大好きな貴方に会いたくて。ずっと待っていた彼の事、どうか誉めてあげてね」)
 そして今度こそ一緒に天国へと、その先の未来へと彼を連れて行ってあげて欲しいと。強く願うように心に宿す。――転生したその先で、幸せな縁が再び結ばれるようにと祈りの気持ちと共に。
『……桜、お待たせ。頑張ったね』
 両手で影朧の顔を覆い、彼の名を呼び顔を寄せ言葉を掛ける古老。
 影である彼も、霊である古老も、互いに温もりはもたない。
 けれど――確かに絆は繋がったようで、つうっと零れ落ちたのは熱を帯びた涙。
 彼等を祝福するかのように、煌めく妖精たちが辺りを舞っていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵


 静かに、かつての主人の霊と寄り添う影朧。
 影が形を成している彼だけれど、甘えるように身を寄せるその姿は本物の黒毛の犬のように見える。――けれど、彼は紛れもない影朧。
 このまま放置は、出来ない。その為に鈍・小太刀も、主人の霊を呼んだのだ。
 彼の主人とは、この出逢いを果たしたとて永久に一緒だとは限らない。猟兵の力により呼び出された彼との別れは、来てしまうのだろう。
 けれど、この幸せなひと時を糧として。輪廻の廻りへと辿り着ければと小太刀は想う。
 ふわりと陽射しの下、舞い踊る妖精へと手を伸ばす琶咲・真琴。
 小太刀の呼び出した主人の霊のサポートをした彼等へとお礼を告げれば、真琴は嬉しそうな影の姿を見て姿を変えた輝うさの薙刀を握る。
「寒い場所で影隴に成ってまでずっと待ったしさ。最期くらい暖かい場所で寝ような」
 愛おしい人に抱かれながら――そう紡ぎ刃を振るえば、小太刀も願いと祈りを込めた一閃を煌めかせ影の邪心を斬り裂いた。
「彼の事、どうか宜しくね」
 自身が呼び出した霊へと、ひとつ紡げば彼は当然だと言いたげに頷きを返す。
「地に縛る枷を外すのなら……ささやかながら、お手伝いしましょう」
 さらりと揺れる銀の髪。小さな姉弟の頑張りを眺めていたナターシャ・フォーサイスは、柔らかな笑みと共にそう告げる。そのまま彼女は祈るように瞳を閉じると、彼を導く為に宝杖を手に力を放つ。
「どうか貴方にも、ご加護のあらんことを」
 祈りの言葉と共に、包み込むは温かな力。――導き、救うことこそ彼女の生き方。
 彼女に合わせ、祈るようにヴァルダ・イシルドゥアも小さな手を組み瞳を閉じる。
 彼の為に捧げるのだ、この歌を。
 高塔・梟示は捜しに行ってあげないのかと。天の川に掛かる虹の橋が、願いを届けてくれると想ったが――こんなにも早く願いが叶ってしまった。
 それはきっと、今まで従順に待ち続けた彼へのご褒美なのだ。梟示はそうっと鋭い眼差しを閉じて息を吐く。
 愛しい主人の傍らで、数多の優しさに触れる影朧。その姿を見てリィン・メリアは瞳を細め笑みを零す。――橋の先に、きっと貴方のご主人様も隣に居る。そう紡いだのは先程のことだけれど。
 そんな必要もなくなったこのひと時が温かくて。じわりと胸に沁みるような温かさを感じ、彼女は瞳を閉じながら胸元に手を当てる。
 ――願わくば、この先の輪廻の果てでも愛しい人と共にありますように。 
「赤い紐も忘れずに持って行って下さいね。今握る手はなくても……思い出や思いはきっと繋がっているから」
 笑みを浮かべながら、そう紡いだ桜雨・カイは自身の手元で揺れる紫から朱色へのグラデーションが美しいリボンを見遣る。彼の首元の紐と同じく、カイだって紡いだものがあったのだ。静かに祈りを捧げる紫丿宮・馨子の髪の、数多の縁を願ったリボンもカイと影朧の紐に共鳴するかのように風に揺れる。 
 苦しい想いをしないように。痛みに満たされないように。
 そんな優しさを込めて、トゥール・ビヨンは搭乗するパンデュールから一撃を放つ。大好きだったご主人の元へ、一時の出逢いでは無く永久のひと時を過ごせるようにと願いを込め、彼の手でその魂を送ろうと。
 そしてそれは、ノイシュ・ユコスティアも同じ。射やすいようにと少しの距離を取り、愛用のロングボウを放つ姿は真剣そのもの。――彼が、少しでも苦しまないようにと。最小限の攻撃で終えられるようにと、意識を集中させているから。
「とても哀しいけれども、お別れだ」
「彼方で待ちびとに会えますように」
 見送るように優しい笑みを浮かべて、蘭・七結と榎本・英も言葉と共に力を紡ぐ。
 待ち人とのこの世での再開は、ほんの一瞬のものだから。願わくば、永久の再開が彼の元へと訪れますように。あちらで、好きな人と会えると良いと願いを込めて。
 ふわりと世界に舞い散るのは、あかい牡丹一華の花びら。血のように赤き色が座す場所ごと包み込めば――影の姿は一瞬で消え果て、代わりにそこには桜の花弁が舞う。
 ひらり、ひらり。
 不規則な動きで地へと舞い散ろうとしたかと思うと、強く風が吹き荒れ空へと昇っていく。ひらりひらりと、今は見えぬ星の橋の元へと舞いあがるかのように。
 彼の花びらの行方は、分からない。
 願わくば、桜の精の癒しが彼へと訪れますように。
『……桜、ありがとう』
 桜の花弁が青き空へと舞い上がる様子を見て。霊である古老は涙を浮かべ優しく紡ぐ。

 桜――それが、愛しい人に貰った、彼の名前だった。

最終結果:成功

完成日2020年07月19日
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