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珊瑚の海と海賊の掟

#グリードオーシャン #挿絵

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#グリードオーシャン
#挿絵


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「集まってくれてありがとう。今回皆にはグリードオーシャンに向かってもらうわ」
 グリモアベースに猟兵達が集合したのを確認し、クリナム・ウィスラー(さかなの魔女・f16893)はゆっくりと口を開き始める。
「グリードオーシャンは最近発見されたばかりの新世界。広い海と、他の世界から落ちてきた沢山の『島』で構成された世界よ。皆にはそのうちの一つ……『カラール島』に向かって欲しい。そして囚われた海賊達を助け出してもらうわ」
 『カラール島』はUDCアースから落ちてきた小さな島だ。
 海賊達はメガリスと呼ばれる秘宝を求めてこの島を訪れた。
 そして無事に目的のメガリスは発見できたが、そこでトラブルが起こってしまったようだ。
 海賊達はメガリスを発見すると、まだユーベルコードに覚醒していない仲間に「メガリスの試練」というものを受けさせる事がある。この海賊達もそれを行い……試練を受けさせた仲間はコンキスタドールと呼ばれるオブリビオンになってしまったのだ。
 そうなってしまった以上は仲間だった者達が「海賊の掟」としてケリをつけるのだが、今回のコンキスタドールは予想より遥かに強力だった。海賊達は返り討ちに遭い、牢に囚われてしまった。

「コンキスタドールは放って置けないし、海賊達だって見捨てる訳にはいかないわ。是非皆の力を貸して欲しいの」
 今回は島のすぐ側まで転移する事が出来るため、島に乗り込みすぐに敵と戦う事になるだろう。
 海賊達は島にある洞窟に囚われている。その見張りにはコンキスタドールがつけられているようだ。
「まずは牢を守る雑魚達を倒してちょうだい。そうすればボスも出てくるはずだから……あとはそいつを倒せば解決という訳ね」
 試練によってコンキスタドールとなった海賊は、元々粗暴な男だったようだ。
 彼には改心の余地もなく、放っておけば海賊も島民も虐殺していくだろう。
 とにかく今は、彼を倒す事が最優先だ。

「戦いが終わればしばらくはゆっくり出来るわ。海賊達も島の住民達も皆の事を歓迎してくれるだろうし……島で遊んでいくのも良いんじゃないかしら」
 『カラール島』が面した海には美しい珊瑚礁が広がっている。それに合わせて様々な種類の魚や生物が暮らし、見事な生態系を作り上げているようだ。
 浜辺でのんびり海を眺めるもよし、海に入って珊瑚礁や魚達が作る光景を楽しむもよし。
 海賊や住民達が小舟を貸してくれるので、船の上から海を楽しむ事も可能だ。
「……その美しい光景を守るためにも、まずはコンキスタドールを倒さないとね。それじゃあ、よろしくお願いするわ」
 そう言ってクリナムは頭を下げると、転移の準備を進めていくのであった。


ささかまかまだ

 こんにちは、ささかまかまだです。
 今回の舞台はグリードオーシャンです。
 シンプルな戦闘の後に海でのんびりするお話です。

 1章は『呪われた船首像』との集団戦です。
 思い切り倒しましょう。

 2章は『略奪船長』とのボス戦です。
 ここでは囚われていた海賊達も加勢します。
 彼らは武器での攻撃や敵の引きつけをやってくれます。必要であればプレイングで指示して下さい。

 3章では珊瑚礁の広がる海でのんびり遊べます。
 美しい光景を楽しむもよし、思い切り泳ぐのもよしです。
 水着や船は必要があれば貸し出してもらえます。
 お声がけがあればクリナムも出てきます。

 どの章からでも参加していただいて大丈夫ですし、特定の章だけ参加していただくのも歓迎です。
 進行状況や募集状況はマスターページに適宜記載していく予定です。

 それでは今回もよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『呪われた船首像』

POW   :    まとわりつく触腕
【下半身の触腕】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    掻き毟る爪
【水かきのついた指先の爪】による素早い一撃を放つ。また、【自らの肉を削ぎ落す】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    呪われた舟唄
【恨みのこもった悲し気な歌声】を聞いて共感した対象全てを治療する。

イラスト:Kirsche

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達は転移を終え、すぐに目的の洞窟へと向かう事になる。
 中は薄暗くひんやりしているが、戦闘において支障になるようなことはない。

 洞窟の奥には牢屋が作られており、その周囲には敵の姿も見えている。
 敵達も猟兵の接近に気が付くと、不気味な唸り声をあげながらこちらへ向かってきた。
「あれは……?」
「他の海賊が助けに来たのか?」
 牢に囚われた海賊達は助けの到来に喜びの声をあげている。
 まずは彼らを助け出さなくては。
高柳・零
POW
コンキスタドールは何故、殺さずに捕らえたんでしょうねえ?
まあ、考えても仕方ないですね。海賊さん達を助けましょう。

「海賊ではありませんが、似たような者です。助けに来ましたよ」
武器は持たず、盾だけを構えて前に出ます。
触腕は攻撃力重視なら、見切りで軌道を読んで威力を減衰するように盾とオーラで受けます。
回数か命中率重視なら、全身にオーラを纏い激痛耐性で耐えつつ反撃に転じます。

「武器を持たなかったのは…こういう理由です!」
攻撃して来る触腕を引っ掴み、UCを発動して敵を振り回します!
壁や床に叩きつけ、消滅したら次の敵を捕まえて同じ事を繰り返します。

「武器が無くても聖騎士は強いんです」

アドリブ歓迎です




 威嚇する敵と喜ぶ海賊達の元へ、少年の声が聞こえてきた。
「海賊ではありませんが、似たような者です。助けに来ましたよ」
 声の主は高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)だ。
 彼の手には天霧の盾がしっかりと握られており、身体はオーラにより微かに輝いている。
「本当に助けが来た! ありがとうな!」
「でも……本当に大丈夫かい?」
 海賊は零に感謝の言葉を述べていくが、彼らの顔には不安の色も浮かんでいる。
 何故なら零が持っているのは盾だけだから。愛用のバスタードソードは鞘に入れたまま鞄に仕舞われており、柄の部分がひょっこりと顔を出している。
 けれど零の様子は堂々としたものだった。海賊達へと液晶の顔を向け、緩く笑みも浮かべている。
「大丈夫です、ご心配なく。今助けますからね」
「分かった、気をつけなよ」
 海賊達の声を受けつつ、零は敵の方を見た。
 見張りのコンキスタドール――『呪われた船首像』達は恨めしい唸り声をあげながら零へとにじり寄ってきている。
 彼女らの触腕は不気味に蠢き、次の瞬間には零を打ち据えようとしなりだした。
「これは……避けた方が良さそうですね」
 多少の攻撃ならば身体と盾で受け止められるが、船首像達の攻撃は思ったよりも威力がありそうだ。
 零は迫る触腕をしっかりと見つめ、その軌道を観察していく。
「……ここですね!」
 触腕が身体へとぶつかる直前に、盾を構えて身体に力を入れる零。予想通りに入った一撃は重いものの、受け止められない程ではない。
 一発、二発と触腕による殴打が襲いかかるが、零は決して膝をつかない。
 オーラによる防御もしっかりと働いている。動けるならば反撃だって簡単だ。
「武器を持たなかったのは……こういう理由です!」
 零は弾いた触腕を引っ掴むと、体中に力を巡らせていく。
「時には力技も必要です!」
 思い切り触腕を持ち上げると、それに合わせて船首像は大きくバランスを崩した。
 零はその勢いで更に触腕を引っ張り込み……船首像の身体ごと振り回していく!
 振り回された船首像は床や壁、そして仲間へとその身体を大きく叩きつけられた。禍々しい悲鳴が鳴り響くが、そんなものはお構いなしだ。
 勢い余って牢に叩きつけた時は海賊達も驚いたようだが、すぐに彼らも大声ではしゃぎ始めた。
 一体の船首像が耐えきれずに骸の海へ消滅すれば、更に別の船首像の身体を掴んで。零はひたすらに敵をぶん回していく。
「武器が無くても聖騎士は強いんです」
 そう、まさに『力こそ正義』。時にはこのような戦いだって必要だ。
 その圧倒的な光景に海賊達も歓声を上げている。
 零はそんな彼らににっこりと笑みを向けながら、更に敵を振り回していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フロース・ウェスペルティリオ
えーっと、海賊さんは薄暗い洞窟の奥に居るって、事だっけ?
んー、それなら液状態で壁面や天井からこっそりと(闇に紛れる・目立たない・忍び足フル活用で)お邪魔してみようか。色的にも形状的にも見つかり難いだろうし。
敵さんの動きを視力・暗視・情報収集等で観察して事前情報を補足しつつ、隙があればロングボウで攻撃を。他の猟兵さんが近くにいる場合は、なるべく邪魔にならない所からの援護射撃を心掛けるよ。
触腕の動きも結構参考になるし、接近して来た相手には髪部分のタールを触腕もどきとして自分なりに補足(毒使い・カウンター等)しつつふるってみるのも、良い鍛錬になるかもしれないねぇ。

共闘・アレンジ・アドリブ等歓迎


ニトロ・トリニィ
アドリブ・協力歓迎です!

彼らが海賊?
凄い… 本物だ!
色々と話を聞きたい所だけど… まずは彼女達を何とかしないとね。

行動
僕は〈《第七感》を駆使して少し先の未来を予知!
これで敵のUCを回避しつつ、隙を見てククリナイフで〈二回攻撃/なぎ払い〉かな!
敵側に〈念動力〉を使い砂埃を起こして〈目潰し〉を狙ってみるのも良さそうだね!




 薄暗い洞窟の影で、ぴちゃりと何かが跳ねる。
 跳ねたのは液状の姿をしたフロース・ウェスペルティリオ(蝙蝠花・f00244)だ。
「(えーっと、海賊さんは薄暗い洞窟の奥に居るって、事だっけ?)」
 洞窟の奥に視線を向ければ、確かに牢が作られていた。その中には助けの到来に喜ぶ海賊達の姿もある。
 牢の前では『呪われた船首像』達が暴れまわり、ここへとやってきた猟兵達へと殺意を向けていた。
「(まずは敵の様子を観察させてもらおうかな……ん?)」
 気配を殺して敵の補足を開始したフロースだが、彼の身体は別の存在の介入も感知していた。
 新たな猟兵が洞窟の入口からやってきたのだ。
「彼らが海賊? 凄い……本物だ!」
 その猟兵、ニトロ・トリニィ(楽観的な自称旅人・f07375)は青い瞳をきらきらと輝かせつつ海賊達を見つめている。
 他の世界でも「海賊」という存在について聞いた事はある。けれど今自分の前にいるのは本物の海賊だ。
 彼らの冒険譚には自分の記憶の手がかりだってあるかもしれない。是非彼らの話を聞いてみたいが……そのためにもまずは目の前の敵を倒さなくては。
 一方フロースはユーベルコードで目の前の状況を補足しつつ、自分が取るべき行動を考えていた。
「(同じブラックタールさんだねぇ。ウチは……最初は援護させてもらおうかねぇ)」
 闇に紛れつつ、上半身だけを人型へと変えたのならば準備は万端。両手にロングボウを携えて、フロースは船首像をじっと見つめる。

 船首像はまだニトロにしか気付いていない。彼女達は更に不気味な声をあげつつ、ニトロの方へと殺到し始めた。
 彼女達は鋭い爪で自らの身体を抉りつつ、一気にニトロとの距離を詰めていく。
「このままだと危ないけれど……攻撃は、当たらなければ良いのさ!」
 脳のリミッターを解除しつつ、ニトロは迫りくる敵を見た。
 彼女達の動く速度や身体の大きさ、爪が振るわれる速度。それらを凄まじい早さで計算し、『第七感』に従い身体を動かすニトロ。
 船首像達は容赦なく爪を突き立てにきたが、その手が何かを掴む事はなかった。
「今度は僕の番だよ!」
 攻撃を空振りした船首像へ向けて、ニトロは両手に握ったククリナイフを振るう。その連撃は見事に船首像の身体を切り裂いて、鮮血を洞窟内に撒き散らした。
 しかし敵はまだまだ存在している。暗闇から飛び出した船首像がニトロ目掛けて蠢き出すが、今度はフロースがその足を止める事となる。
「身体を削るなんて方法で加速するなんてねぇ……でも、逃げられるとでも思ったのかい?」
 彼もしっかりと敵の様子を見定め、動きの癖や早さは理解している。
 相手の動きに合わせてロングボウを引けば、放たれた矢は的確に船首像の頭を撃ち抜いた。
「おっと、仲間がいたんだね。ありがとう、助かったよ!」
「こちらこそ。あなたが敵を引き付けてくれてるから、ウチも戦いやすいよ」
 ニトロとフロースは互いの存在を認識し、緩く笑みを向け合う。
 敵も二人に気付いたけれど、一緒に戦う仲間がいれば問題はない。

 戦いの舞台は洞窟だが、海や砂浜が近いためか床には砂も散らばっているようだ。
 ニトロはそれにもしっかりと目を配り、次の作戦を考えていく。
「こういうのも……どうかな!」
 念動力で砂を撒き散らし、船首像の方へと向ければ彼女達はたまらず悲鳴をあげた。
 その隙を狙ってフロースが弓を引き、更に敵を撃ち抜いていく。
「動きは思ったよりも単純だねぇ。でもその触腕の動きは参考になるかな?」
 うねうねと動く船首像達の触腕は独特の動きをしている。もっと近くで観察してみたい、という気持ちがフロースの中には湧き上がってきていた。
 初めて見る場所、初めて見る敵、初めて試す行動。全てが彼にとっては新鮮で、とても楽しい。
 ちょうど自分へと迫る船首像もいるようだ。それなら一つ、新しい事を試してみよう。
 フロースは髪の部分のタールを蠢かせ、自己流の触腕を作り上げていく。先端には毒も浸透させてみている。
「さあ、これでどうかい?」
 接近してきた敵へ向かって、フロースは思い切り髪の触腕を振るってみる。
 まずは先端から滲み出した毒が船首像へと跳ねていき、次の瞬間には触腕がしっかりとその身体を掴まえた。
 毒により徐々に力が奪われ、触腕に身体を拘束されればもう逃げる事は叶わない。
「っとと、こんな鍛錬もありだねぇ」
 頭と一緒に髪を動かし、船首像をゆっくりと持ち上げていくフロース。そしてそのまま大きく頭を振るえば、船首像は洞窟の奥へと吹き飛ばされていく!
 牢へと巨大な身体が叩きつけられ、大きな金属音が洞窟に鳴り響いた。船首像はそのまま力を失い、身体を骸の海へと沈めていく。
「凄いね! それなら僕も!」
 フロースの戦いぶりを見つつ、ニトロも更に勢いよく敵へと迫る。
 タールの身体をその都度変形させ、素早く洞窟内を駆けるニトロの姿は黒い風のようだ。
 敵の爪や触腕を華麗に躱し、一気に距離を詰めたのならば……ナイフによる斬撃で次々に敵を切り裂く事も忘れずに。
「そっちも調子は良さそうだねぇ。どんどんいこうか」
「ああ、海賊達を助け出すためにも頑張ろう!
 フロースとニトロは再び顔を見合わせ笑顔を向け合う。
 こうして二人のブラックタールは、連携を取りつつ次々と船首像を倒していった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ロラン・ヒュッテンブレナー
チェリカちゃん(f05395)と海賊さん、助けに来たよ
感情が獣耳や尻尾にダイレクトに現れる
【POW】

海賊さん、どこかな?
【暗視】【聞き耳】【情報収集】【野生の勘】で海賊さんたちを探すね
見つけたら相手の隙を突いて牢屋に取り付くね

ぼくたち、ここのボス、退治しに来てるの
放っておくと海賊さんたちまた危ないから…
だから、協力してくれる?【優しさ】【手を繋ぐ】
UC詠唱して発動後に開錠魔術【封印を解く】で牢を開けるね

チェリカちゃん、お待たせ!
早く倒して脱出なの
海賊さんたちに色々お願い(指示)してチェリカちゃんをサポートするよ

チェリカちゃんの格好に赤くなって
海賊さんたちにはあんまり見ちゃダメって指示するね


チェリカ・ロンド
友達のロラン(f04258)と戦うわ!

辛気臭い洞窟だわ。ロラン、早いとこ終わらせて海で遊びましょ!【ねこ水着】に【光聖剣バルムンク】(でかい)を担いでいくわよ!

ロランが海賊さんたちを解放している間、守るようにして敵を迎え撃つわ
といっても、私に防御なんて似合わないからね。伸ばしてくる触腕を光聖剣でばっさばっさ斬り落としてやるんだから!

待ってたわよ、ロラン!魔術回路の鎧を付与してくれたら、海賊たちと一緒に斬り込むわ!一応彼らがやられないよう注意するわね
……海賊たち、私から目を逸らしてる?水着、変だったかなぁ

まぁいっか、戦いに集中よ!
ロランの魔力も合わさった【零距離チェリカ砲】で、消し飛べ―!




 洞窟の中に小さな足音が二つ聞こえてきた。
 ぱたぱたと駆ける音は真っ直ぐに洞窟の奥を目指している。
「海賊さん、どこかな? 早く見つけてあげないと……」
「そうね。それにここは辛気臭い洞窟だわ。ロラン、早いとこ終わらせて海で遊びましょ!」
 声の主はロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)とチェリカ・ロンド(聖なる光のバーゲンセール・f05395)。
 ロランは小さな狼の姿に変身しており、チェリカは黒猫をモチーフにした可愛らしい水着を着込んでいた。
 けれど装備はそれだけではない。ロランの頭部からは微かに魔術回路が光を放ち、チェリカは大きな剣を担いでいる。
 二人はまだ幼い少年少女だが、カラール島の危機を救うべくやってきた猟兵でもあるのだ。
「あ、牢屋ってあれじゃない?」
「本当だ。じゃあぼくは海賊さんを助けてくるよ!」
「分かったわ。こっちは任せて!」
 二人の目線の先には牢と呪われた船首像の姿があり、その奥では海賊達も助けを待っている。
 船首像達は唸り声をあげつつ二人へと迫りくるが、それを迎え撃ったのはチェリカだった。
「さあ、こっちに来なさい!」
 巨大な光聖剣『バルムンク』を堂々と構え、身体を聖なる光で輝かせるチェリカ。その存在感は圧倒的で、船首像達は一気に彼女の方へと殺到し始めた。
 その隙にロランは敵の側を潜り抜け、一気に牢へと接近していく。
 友達が無事に奥へと進めた事を確認し、チェリカは更に大きな声で敵を引きつける事にした。
「私に防御なんて似合わないからね。どんどんいくわよ!」
 彼女の眩しさが疎ましいのか、船首像達は苛立ったように触腕を振るいチェリカの身体を打ち据えようとしてきた。
 その攻撃をまずはバルムンクへ受け止め、弾いたのならすかさず一閃。
 輝く剣は怪物達の触腕をあっさりと斬り落としていく。
「まだまだいけるわよ!」
 複数体の敵に囲まれないように注意しつつ、少しずつ牢から敵を離していくチェリカ。
 その姿はとても勇ましく、頼もしかった。

「海賊さん、助けに来たよ」
 一方、ロランが牢に張り付き、小声で海賊達へと声をかけていた。
「ぼくたち、ここのボス、退治しに来てるの。放っておくと海賊さんたちまた危ないから……だから、協力してくれる?」
「お安い御用だぜ。まずは何をしたらいい?」
 海賊達はロランの提案に乗り気だ。彼らも「海賊の掟」を全うする必要があるし、何よりこの状況には耐えられないのだろう。
「ありがとう。それじゃあ……ぼくの声を聴いて。心に勇気を、手に理想を、一歩踏み出す決断を。それが、運命を変える力なの。意志を力に変える奇跡を信じて」
 ロランが優しい声で呪文を詠唱すると、海賊達の身体が淡い光に包まれていく。
 光は魔術回路の鎧へと姿を変えて、彼らの弱った身体を癒やして強化してくれた。
「おお、凄い事が出来るんだな」
「あとはぼくが牢を開けるから……鍵の場所を教えてもらっていいかな?」
「この牢の鍵ならここだぜ」
 海賊達が指を向けた先には小さな扉と鍵が存在していた。ロランは一気に飛び上がり、鍵穴に自らの魔力回路を繋いでいく。
「今開けるからね。えっと、これがこうなって……」
 開錠魔術を使えばあっという間に鍵は開き、海賊達を無事に助け出す事が出来た。
「ありがとう、助かった!」
「こちらこそ。今チェリカちゃんが敵を引き付けてくれてるんだ。一緒に戦って!」
 ロランと海賊達は顔を見合わせると、勢いよく戦場へと飛び出していく。

 猟兵達も無事に合流し、共に敵と向かい合う事になった。
「チェリカちゃん、お待たせ! 海賊さん達は助け出したよ!」
「待ってたわよ、ロラン!」
 ロランは狼から水着姿の少年へと変身しつつ、再び回路に光を灯す。
 チェリカにも魔術回路の鎧を施せば準備は万端だ。
「嬢ちゃん、ありがとうな。俺達も一緒に戦うぜ!」
 海賊達もそれぞれ武器を手に取り戻ってきていた。
 彼らの様子も勇ましいが……敵を引き付けていたのが水着の少女だったというのには驚いているようだった。
「助けてもらって何だが……その、良いな……」
「あんまりまじまじと見たら失礼だろ!」
 チェリカの水着に釘付けになる者、目を逸らす者など反応は様々。
 そんな海賊達の反応を見て、ロランも改めてチェリカを見るが……ちょっとセクシーなねこ水着は確かに彼女のスタイルの良さを強調している。
 水着の効果で生えた猫耳尻尾も愛らしさと大人っぽさを強めてくれていた。
 しかしチェリカは、皆の反応に対してどこか不安げだ。
「海賊達、どうしたのかしら? 水着、変だったかなぁ」
「そんなことないよ! 似合ってるし可愛いけど……でも海賊さん達はあんまり見ちゃダメだよ」
 耳と尻尾をぴこぴこ動かし、海賊達へ必死に指示するロラン。よく見れば彼の顔も赤面している。
「はは、ごめんな。二人共よく似合ってるぜ」
「そう? まぁいっか、戦いに集中よ! 行きましょう!」
「うん、行こう!」
 そんな二人の様子を微笑ましく見ていた海賊だが、一度戦闘態勢を整えれば彼らも真剣に敵へと向かってくれていた。
 ロランが戦場の状況をしっかり見極め、彼らへと魔術のサポートを飛ばし、チェリカは前に出てどんどん敵を薙ぎ払う。
 全員が上手く連携を取り、敵の数はどんどん減ってきていた。
「そうだ、ロラン。魔力をこっちに回してくれる? あれ、やりましょうよ」
 戦いの最中、チェリカはロランを呼び寄せこっそりと何かを耳打ちする。ロランも作戦を察したのか、チェリカの方へと魔術回路を反応させ始めた。
「分かった。じゃあぼくの回路をこうして……」
「聖なる光に乗せれば大丈夫よね。それじゃあ行くわよ!」
 ロランからもらった魔力を聖なる光に混ぜていき、どんどん掌へと集中させていくチェリカ。
 その強い気配に何かを察したのか、船首像達は再び彼女の方へと殺到し始めた。このままでは囲まれてしまうが……むしろそのくらいが好都合だ。
「そっちから来てくれて助かるわ。隙ありぃぃぃっ!」
 チェリカが船首像達へと掌をぶつけると、そこから凄まじい光と衝撃が溢れ出す!
 これぞ必殺の『零距離チェリカ砲』。その一撃を身体で受け止めた船首像達は一気に吹き飛び、光に包まれ消えていく。
「わあ、やっぱりチェリカちゃんすごい……!」
「ロランの魔力のおかげよ。さあ、もっともっと敵を倒しましょう!」
 二人で嬉しそうに耳を立て、攻撃の成果を確かめあって。
 けれど船首像はまだまだ存在しており、ボスだって控えている。次なる戦いに備え、二人は更に自分達の輝きを増していった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK

「落ちてきた」っていうけど、元の世界ではどうなってるんだろ?
土地がなくなるって事なんだろ?えぐられたようになるんだろうか?

助けるためにまずは殲滅だな。
俺自身は【存在感】を消し【目立たない】ように立ち回る。
【マヒ攻撃】を乗せたUC五月雨で【暗殺】攻撃をしかけ、また隙を見て近くに来た敵には胡で【マヒ攻撃】を乗せた【暗殺】攻撃をする。余裕があれば【傷口をえぐり】ダメージ増を狙う。
マヒは他の手助けになれば。

相手の攻撃は【第六感】による感知と【見切り】で回避。回避できないものは黒鵺で【武器受け】し可能なら【カウンター】を叩き込む。
どうしても喰らうものは【オーラ防御】【激痛耐性】で耐える。




 ゆっくりと自らの気配を殺しつつ、黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は洞窟の奥を目指していた。
 この島は元々UDCアースにあったそうだが、この洞窟にもその痕跡が残っているのだろうか。
 ぱっと周囲を眺めてもそれを判断するのは難しい。住民達の方がその特徴を色濃く残しているのだろうか。
 そもそも「島が落ちる」という現象が不可解だ。
 そうするとUDCアースのこの島があった地点は抉れたようになっているのだろうか。
 土地がなくなるというのはそういう事なのだろうと瑞樹は推測する。
 けれど……今はとにかく、目の前の事を片付けよう。
 瑞樹は洞窟の奥、唸り声をあげる呪われた船首像達を見た。
「(助けるためにまずは殲滅だな)」
 自らの本体である黒いナイフ『黒鵺』を取り出し、瑞樹はユーベルコードの力を高めていく。
 するとナイフは次々に複製されていき、ふよふよと瑞樹の周囲を漂い始めた。
「(相手も素早いだろうし、出来るだけ静かに数を減らしていこう)」
 既に海賊達は牢から脱出し、猟兵と共に戦っている。それは瑞樹にとって好都合だった。
 戦いの影、皆の邪魔にならない位置をしっかりと確認し、まずは一体の船首像の背後へ。
 短く息を吐きつつ、念力でナイフを弾き出せばナイフは真っ直ぐに船首像の左胸を貫いた。
 驚いた船首像が振り向くより早く、瑞樹は影の中を更に突き進んでいく。
 しかし洞窟の中は既に乱戦状態だ。どうしても敵の脇を通りかかる必要も出てくる。
 一体の船首像が瑞樹の存在に気がつけば、鋭い爪で彼の身体を抉ろうと距離を詰めてきた。
「ッ……甘い!」
 咄嗟に黒鵺で相手の爪を受け止め、その衝撃を身体を使って和らげる瑞樹。ナイフを握るのとは逆の手で刀の『胡』を鞘から引き抜き、一気に前方を切り払う。
 輝く刃は船首像の肉を切り裂くが、その刃に乗せられた麻痺の力が敵から叫ぶ力を奪い去っていた。
「喰らえ!」
 更に他の敵が気づくより早く、瑞樹は複製した黒鶴を前へと飛ばす。黒い刃は的確に船首像の胴を抉り、その命を奪っていく。
 どさりと敵が倒れる音を利用して、瑞樹は再び闇の中へと潜み始めた。
「(どこの世界でも、どんな場所でもやるべき事は変わらないな)」
 猟兵はどの世界においてもオブリビオンを倒していく。初めて来る世界でも、ここが別の世界からやってきた場所でもそれは変わらない。
 それならその「いつも通り」をやりきるだけだ。
 瑞樹は黒鶴と胡の鞘を握りしめ、続く戦いに没頭していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ハルア・ガーラント
――よし、どうせ頭の花も光っていますし開き直っちゃいましょう。

【WIZ】
薄暗いと怖いし、何より敵に有利になりそう。洞窟に入る前に手近な花を摘み取り[星灯りのランプ]を灯します。

敵の姿が見えたらUC発動。天獄製の巨大な聖碇を[咎人の枷]に接続。洞窟の壁に当て過ぎて崩落させないよう気を付けながら、[念動力]で振り回し一気に[なぎ払い]ます。[吹き飛ばし]た敵も念動力で速度をつけ敵集団へ押し込みます。

歌われる前に倒してしまいたいけど、止められなかったら。
あのっ、海賊さん、耳を塞いでください!
[セイクリッドデバイス]を最大出力にして叫び歌って声を打ち消してみます!

ぜえぜえ……今、助けに行きますからね!




 洞窟の中に仄かな光が灯る。
 その正体はハルア・ガーラント(オラトリオのバロックメイカー・f23517)の髪に咲く白い花だ。
 屋外ならば気になるほどの光量ではないが、薄暗い洞窟の内部においては十分に目立つその光。ハルアもその事はよく理解している。
「――よし、どうせ頭の花も光っていますし開き直っちゃいましょう」
 隠れて行動する事が難しいのならば、いっそしっかりと灯りを手に入れよう。
 そう考えたハルアの腰には、花を笠にした小さなランプも携えられている。
 優しい灯りが側にあれば、薄暗い洞窟だって怖くない。
 けれど敵もやはり容赦はしてくれないか。船首像達はハルアが携えた灯りに気づき、強い殺意を向けながら接近してきていた。
「そちらがそのつもりなら、わたしだって……!」
 ハルアは翼に絡みついていた咎人の枷をゆるりと解いて、ユーベルコードの力を高めていく。
「これでっ……ぶっぱなしてやります!」
 高まったユーベルコードは天獄への門を開き、そこから巨大な聖碇を呼び出した。
 聖碇と枷が繋がれば巨大な武器の出来上がり。ハルアはしっかりと枷の鎖を握りしめ、敵へと狙いを定め始めた。
「いき、ますよ!」
 なるべく洞窟の壁や天井、そして仲間達に気をつけつつハルアは聖碇を振るっていく。
 聖なる光を纏った聖碇は次々に船首像達を薙ぎ払い、彼女達の身体をどんどん奥へと弾き飛ばした。
 敵を吹き飛ばす時も仲間の方ではなく、なるべく敵集団の方へと狙いを定めて。仲間同士でぶつかりあってバランスを崩したのならこちらのものだ。
「はぁぁっ!!」
 更に念動力の力を強め、敵の塊へ向けて聖碇を投げ込めば彼女達は聖なる光によって弾け飛んでいく。
 しかし敵の数はやはり多い。聖碇を逃れた船首像が息を吸い込み、呪われた歌を奏でようとしていた。
 ちょうどその側には海賊の姿も見える。このままでは彼らも巻き込んでしまうだろう。
「っ……あのっ、海賊さん、耳を塞いでください!」
「え? ああ、わかった!」
 頭の花に手を差し込みつつ、ハルアは海賊へと大声で呼びかける。
 海賊が耳を塞いだのと同時に、ハルアは花からセイクリッドデバイスを取り出していた。
「止まって下さい!!」
 船首像が歌うより早く、ハルアは叫び、歌った。
 デバイスを通して発せられたその音は見事に敵の動きを押し留め、隙を作り出す事に成功する。
「歌うなら、楽しい歌を歌って下さい!」
 そしてそのまま聖碇を振るい、歌いかけていた船首像もきっちり倒すハルア。
 なかなか激しい動きをしたためか、彼女は少しだけ息切れをしてしまっていた。けれどその瞳に灯った戦意は消えていない。
「ぜえぜえ……今、助けに行きますからね!」
 ハルアは真っ直ぐ海賊達を見て、更に敵を倒すべく前へと駆け込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『略奪船長』

POW   :    海賊船長の長口上
自身の【敵を見下して悦に入り虚栄心を満たす欲求】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    海賊流戦闘術
いま戦っている対象に有効な【取り回しの良い片手武器】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    彷徨える海賊船
【ボロボロのカトラス】で武装した【ガリガリに痩せた奴隷戦闘員】の幽霊をレベル×5体乗せた【朽ち果てた海賊船】を召喚する。

イラスト:山庫

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達の活躍により、船首像は無事に退治出来た。
 海賊達も解放され、猟兵達へと感謝の言葉を述べている。
「おかげで助かったよ。どうなるかと思ったぜ」
「でも……あいつがもうすぐ戻ってくるな……」
 海賊達が不安げに周囲を見回すと同時に、別の足音が洞窟の中へと響き渡る。
「おいおい……これはどういう事だ? 見張りは全員やられちまったか?」
 洞窟へとやってきたのは海賊風の格好をした大男だった。
 けれど猟兵達なら一目で分かる。彼はオブリビオン……コンキスタドールへと変貌してしまっていると。

「やっぱりすぐに殺しておくべきだったか……いや、だが俺様にも考えがあったんだぜ」
 男は下卑た笑みを浮かべ、猟兵達と海賊達を舐めるように見回した。
「お前達を島の住民の前で処刑しようと思ってたんだがな……猟兵も一緒に殺せば、もっと俺様の力を誇示出来るな」
 男が海賊を生かしていたのは島民への見せしめにする予定だったから。
 かつての仲間をそのように扱おうとするのは、彼が心まで怪物になってしまっているからだろう。
 この男――『略奪船長』を放っておく事は出来ない。
 カラール島を救うため、そしてこの世界のためにも。今は戦うべき時だ。
山梨・玄信
ちと出遅れたが、何とか辿り着いたぞい。
ほう、大した自信じゃな。どれ程の腕か見せてもらうぞい。

【SPDを使用】
先ずは第六感と見切りで敵の攻撃を回避しつつ、冷静に敵の動きを観察するのじゃ。
武器を召喚して来たら、気の放出(範囲攻撃+鎧無視攻撃)をぶちかまして気を逸らしてから、衝撃波を手に当てて武器を叩き落すぞい。

観察して覚えた敵の動きの癖を突いて、踏み込んで攻撃を仕掛けるぞい。
ダメージを入れる事より、当てる事を優先して攻撃じゃ。
当てたらそのままUCを発動。敵の気を読んだら本命の攻撃を全力で放つぞい。

「ほう、海賊の成れの果てか。お主には相応しい海があるぞい…骸の海という海じゃ!」

アドリブ歓迎じゃ。




「ちと出遅れたが、何とか辿り着いたぞい」
「あぁ? なんだ?」
 緊張状態の洞窟に声が響く。略奪船長が入り口側へと顔を向ければ、確かにそこには一人の少年――山梨・玄信(ドワーフの破戒僧・f06912)の姿があった。
「迷子のガキ……いや、猟兵か。はん、お前もまとめて殺してやるさ」
 略奪船長は玄信が猟兵であると見抜いたが、どうにも侮っている様子。
 それはコンキスタドールに覚醒したからの自信か、それとも彼の元々の気質か。
「ほう、大した自信じゃな。どれ程の腕か見せてもらうぞい」
 玄信も応えるように構えを取り、早速戦いの幕が上がる。
 先に踏み込んだのは略奪船長の方だ。彼の手元には呪力を帯びたサーベルが握られており、その禍々しいオーラは洞窟内を更に暗く照らし出す。
「真っ二つにしてやるぜ!」
 略奪船長は一気に玄信の側まで接近すると、素早くサーベルでの一閃を放ってきた。
 かなりの素早い攻撃だが、しっかりと観察すれば避けられないものではない。玄信はその黒い輝きから目を逸らさず、最適なタイミングで攻撃を躱していく。
「ちょこまかと……鬱陶しいぜ!」
 しかし攻撃はこれで終わりではない。略奪船長は更に玄信に接近し、何度も何度もサーベルを振り下ろす。
 一撃でも食らってしまえばその部分は容易く斬られてしまうだろう。だからこそ玄信は相手の方を見続け、ひたすら回避と観察に意識を向けていく。
「(確かに動きも武器も立派じゃが……わしをどうこう出来るような攻撃ではないぞい!)」
 相手の癖も分かってきた。そうすれば隙が生まれる瞬間も見定めやすくなる。
 略奪船長が大きく刃を振るった瞬間、玄信は自らの身体に気を巡らせ始めた。
「破ッ!!」
 そして集めた気を解放すると、それは巨大な力の波と化して略奪船長を打ちのめす!
 玄信はすかさず手元にも気を集中させ、それを弾丸のように前へと放った。気で出来た衝撃波は前へ前へと突き進み、見事に略奪船長の腕へと的中した。
「い、痛ェなおい!」
 衝撃により略奪船長はサーベルを落としたようだ。攻め込むなら今だろう。
「今度はこっちから行くぞい!」
 前へと踏み込みつつ、玄信は道着の帯に手を伸ばす。略奪船長が目を疑うより早く、しゅるりと帯が解けて道着が落ちた。
 服を脱いだ勢いで玄信は更に加速していき、一気に略奪船長との距離を詰める!
「お主は海賊の成れの果てか。なら相応しい海があるぞい……骸の海という海じゃ!」
 玄信の加速スピードは凄まじいものだが、相手のどこをどう狙えばいいかはこの戦いで学んできた。
 略奪船長が最もバランスを崩しやすく、ダメージを受けやすい状態。それをしっかりと見定めた玄信は星のように洞窟を駆け、一気に相手の腹へと拳を伸ばす!
「お主の動き、見切ったぞ!」
 その一撃は見事に略奪船長を吹き飛ばし、彼の身体を洞窟の壁へと叩きつけた。
 拳や身体についた土埃を払いつつ、玄信は倒れ伏す敵を見下ろしている。
「大した腕ではなかったのぅ」
 その表情は少年のそれであり、勇ましい戦士のものでもある。
 略奪船長との戦いは猟兵達のペースで始まったのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニトロ・トリニィ
アドリブ・協力歓迎です!

僕は君に勝って、そこの海賊達から色々な話を聞きたいんだ。
だから悪いけど、君に首を差し出すつもりは無いんだよね。

行動
今回は盾役として、さっき助けた海賊達を守ろうかな。
《第七感》でどこから攻撃が来るのかを予測しつつ、蒼き灼熱盾で〈かばう/盾受け/激痛耐性〉だ!
〈二回攻撃/シールドバッシュ〉で〈カウンター〉を狙ってみるのも良さそうだね。

僕の背後なら多分大丈夫さ!
任せておくれよ、僕は結構頑丈だからね。


黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

メガリスの試練、かなり分が悪い賭けに思うんだが…それでもやるのが海賊なのだろうな。

真の姿に。
先ほどと変わらず、俺自身は【存在感】を消し【目立たない】ように立ち回る。
UC炎陽の炎を収束させ船長に攻撃。幽霊船が召喚されたら戦闘員が下りてくる前に船ごと焼き払ってやる。
近くに来た敵には胡で【マヒ攻撃】を乗せた【暗殺】攻撃をする。余裕があれば【傷口をえぐり】ダメージ増を狙う。
相手の攻撃は【第六感】による感知と【見切り】で回避。回避できないものは黒鵺で【武器受け】し可能なら【カウンター】を叩き込む。
どうしても喰らうものは【オーラ防御】【激痛耐性】で耐える。




 土煙の中から略奪船長がのそりと立ち上がる。彼の瞳には憎悪の色が宿っているが、驕りの色も消えてはいない。
「なかなかやるじゃねぇか。けど俺様もまだまだ元気だぜ、どんどんかかってきやがれ」
 彼の見た目は人に近いが、その身体能力は既に人を凌駕している。
 改めてその事実を突きつけられ、周囲で戦いの構えを取っていた海賊達は恐怖で少しざわめきだした。
 そんな中、海賊達を守るようにニトロ・トリニィが前へ出る。
「僕は君に勝って、そこの海賊達から色々な話を聞きたいんだ。そのためには皆を守らせてもらうし、僕も君に首を差し出すつもりは無いんだよね」
 ニトロにとって海賊達は守るべき存在であり、自身の記憶の手がかりになるかもしれない相手。
 彼らを決して傷つけさせはしない。そんな決意がニトロの青い瞳を輝かせていた。
 自らの地獄を蒼き灼熱盾へと変え、ニトロはしっかりとそれを構える。
「海賊の皆、僕が盾になるからあいつを攻撃して欲しいんだ。大丈夫、絶対に守るよ」
「兄ちゃんがそういうなら……正面は任せたぜ!」
 海賊達はマスケット銃を手に取り、ニトロへ向かって大きく頷く。

 一方、黒鵺・瑞樹も洞窟の影から会話の様子を伺い、次に取るべき行動について考えを巡らせていた。
「(あのコンキスタドールが生まれたのは『メガリスの試練』の結果なんだよな)」
 もし試練を行わなければ、略奪船長はただの粗暴な男として一生を終えただろう。
 けれどもし試練を乗り越えたのなら、彼は頼もしい戦力としてこの世界を切り開いたかもしれない。
 分の悪い賭けは残念な結果に終わってしまった。けれど、それでも海賊達は先へと進むチャンスを得ようとした。
「(……それでもやるのが海賊なのだろうな)」
 ならば、せめて海賊の掟を完遂させてやろう。
 瑞樹は自らの力を解放し、月読尊の依代へと姿を変える。右手には胡、左手には刀へと変形した黒鵺。戦いの準備は万全だ。
「(他の猟兵や海賊達が派手に動いてくれるならやりやすいな)」
 瑞樹の役割は月の影のように潜み、着実に敵を討つ事。そのために霊力を高め、動く時を静かに待った。

「話し合いは終わったか? 行くぜ!」
 大きく動いたのは略奪船長だ。彼は再び呪われたサーベルを呼び出して、ニトロと海賊へ向かって切り込んできた。
「あの攻撃なら……見切れるね!」
 第七感を発揮させ、ニトロは略奪船長の突撃を見定める。
 10秒後に彼がどう動くか。どのような角度で、どのくらいの速さで斬撃を放つか。
 リミッターを解除された脳は容易くその攻撃を見抜いていく。
「この位置がベストかな」
「何ッ!?」
 迫りくる刃に合わせ、ニトロは灼熱盾を前へと突き出した。タールの腕なら相手が予想出来ないような位置に盾を構える事も簡単だ。
 呪われた刃はあっさりと盾が弾き、飛び散る青い火花が略奪船長の身体を襲った。彼は悲鳴をあげてバランスを崩しているようだ。
「さあ、今だよ!」
「ありがとな!」
 勿論このチャンスは逃さない。ニトロの合図に合わせ、海賊達は一斉にマスケット銃を発砲していく。
 飛び出した弾丸は敵へと殺到し、彼の身体に大きな傷をつけ始めた。
「このっ……!」
 しかし相手も人外だ。略奪船長は人並み外れたタフネスで傷の痛みを堪え、反撃としてサーベルから衝撃波を放ってきた。
 それに合わせてニトロは再び前へと飛び出す。盾だけでなく身体も使い、ニトロはしっかりと海賊達を攻撃から守り抜いた。
「兄ちゃん、大丈夫か!?」
「僕の背後なら多分大丈夫さ! 任せておくれよ、結構頑丈だからね」
 海賊達へと顔を向け応えるニトロ。その表情は涼し気な笑顔だ。
「その分、あとで色んな話を聞かせて欲しいな。それが本当に楽しみなんだ」
「俺達も兄ちゃんと話すのが楽しみだ。だから頑張ろうな!」
 互いに声を掛け合えば気合も十分。ニトロと海賊達は続く戦闘へと意識を向けた。

「この野郎……これならどうだ!」
 このままではニトロの防御が突破できないと考えたのだろう。略奪船長は更に呪われた力を使い、洞窟の中に何かを呼び出し始めた。
「さあ行け奴隷共、こいつらを殺せ!」
 呼び出されたのは彷徨える幽霊海賊船だ。その上には大量の奴隷戦闘員の霊が乗せられており、このまま彼らが上陸してしまえば形勢は不利になるだろう。
 そこで動いたのは瑞樹だった。右手に握った胡に神の力を宿らせて、彼が呼び出すのは清めの炎。
 眩い炎は瑞樹の周囲を飛び交いつつ、薄暗い洞窟の中を照らし出した。
「炎よ、すべてをなぎ払え!」
 瑞樹が胡を振るうと同時に、清めの炎は一斉に前へと飛び出す。
 炎のうち半分は略奪船長へ、もう半分は海賊船へ。
「チッ……隠れてやがったのか」
「こういうのが得意だからな」
 眩い炎は海賊船を燃やし、乗組員達も纏めて浄化していく。けれど彼らの表情が安堵しているのは、奴隷としての役割から解放されたからだろうか。
 その様子に瑞樹も少しだけ安堵する。それと同時に抱くのは決意。
 このまま略奪船長を生かしておけば、生きたままあのような状態にされる人が出てきてしまう。
 そんな事は見過ごせない。誰かの幸せを踏みにじるような相手は好きではないから。
 瑞樹は再び影へと身を潜め、次の攻撃の機を伺う。
「待て、この野郎!」
 略奪船長の方は正直に瑞樹を追いかけ始めたようだ。このように単純な相手ならば暗殺者の敵ではない。
 敵が影へと踏み込む前に、瑞樹は再び胡に清めの炎を纏わせていく。
「さっさとやらせてもらう」
 しっかりと相手の構えを見定め、胡を振るいつつ影から外へ。
 瑞樹の斬撃は的確に略奪船長の胴を切り裂き、吹き出す血ごと炎で清めていった。

 ニトロと海賊達の連携、瑞樹の暗殺術。そのどちらもが略奪船長の力を奪い、彼を骸の海へと近づけていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

高柳・零
WIZ
ああ、あれは見張りだったんですか?
てっきり飾りか何かだと思ってましたよ。

「海賊の皆さんを生かしていて下さった事には感謝します。お陰でこうして救出出来るんですから」
召喚された幽霊船には積極的に攻撃を仕掛けます。
盾とオーラで戦闘員の攻撃を弾き、剣の連続攻撃(範囲攻撃)で一気に片付けます。

「部下がこんなに痩せ細っているなんて…船長の程度が知れますねえ」
剣を鞘に収め、UCを発動します。
敵の頭の上に浮かんで挑発し、隙を見て拳で殴ります。
カウンターを狙って来るでしょうから、そちらは盾でガードします。
「あなたのような輩は直接ぶっ飛ばします!」

アドリブ、絡み歓迎です。




「ああ、あのコンキスタドールは見張りだったんですか? てっきり飾りか何かだと思ってましたよ」
 バスターソードを構えつつ、高柳・零は略奪船長へと言葉を放つ。
「確かに使えねぇやつらだったな。これならさっさと海賊どもも殺しておけばよかったか」
 猟兵達から受けた傷を押さえつつのそりと立ち上がる略奪船長。彼の顔からはまだまだ驕りの色が見えていた。
「いいえ、海賊の皆さんを生かしていて下さった事には感謝します。お陰でこうして救出出来るんですから」
「そういうのは俺様を倒してから言いな!」
 零の言葉に苛つきを隠さずに、略奪船長は呪われた力を行使していく。
 呼び出されたのは先程とは別の海賊幽霊船だ。
「まずはあれをどうにかしないといけませんね」
 奴隷戦闘員が船から降りるより早く、零は前へと駆け出す。
 幽霊海賊船はかなりの大きさだが、造り自体はそれ程頑丈ではないようだ。思い切り剣を振るえば、その船体にも大きく傷はつく。
「そいつを殺せ!」
 略奪船長の怒号と共に戦闘員達が動き出した。彼らはカトラスを片手に零へと殺到していく。
 しかし戦闘員達の身体は痩せ細っており、武器も手入れがされておらずボロボロだ。彼らの攻撃はオーラの鎧で身を守れば簡単に耐えきる事が出来た。
「部下がこんなに痩せ細っているなんて……船長の程度が知れますねえ。今解放しますよ」
 バスターソードに聖なる力を籠めて、零は一気に周囲を薙ぎ払う。
 その輝きは衝撃はへと姿を変え、戦闘員も幽霊船も次々に切り裂いていく。
 魂が浄化されたためか、切り払われた戦闘員達の表情はどこか安堵したようなものだった。
「てめぇ……!」
「あとはあなただけですね。神よ、哀れな過去と闘う力を!」
 怒りに任せ、サーベルを片手に零へ向かって駆け出す略奪船長。そんな彼の頭上を、零はひらりと飛んでいく。
 気がつけば零は光り輝く聖騎士へと変身していた。聖なる光により空を舞い、剣ではなく輝く拳で敵を討つ。略奪船長のような外道と戦うのに相応しい姿だろう。
「いきますよ!」
「この野郎!」
 略奪船長も既に人ならざる身だからだろうか、かなりの跳躍力で洞窟内を駆け回りなんとか零を捕まえようとしているようだ。
 それに合わせて零も敵が届くギリギリの高さを飛んでいた。相手の振るうサーベルは盾で受け止め、反撃の隙を伺っていく。
 攻撃を一発一発しっかりと受けきって、相手が体勢を崩した瞬間をしっかり狙って。
「あなたのような輩は直接ぶっ飛ばします!」
 拳に聖なる輝きと怒りを籠め、零は強く拳を握る。そしてそのまま前へと飛び出し、狙うは敵の土手っ腹。
 勢いよく突き出された拳は見事に略奪船長の胴を撃ち、彼の身体を洞窟の壁へと叩きつけた!
「一人で骸の海に行って下さい。あなたは船長でも何でもありませんから」
 吹き飛ばされた略奪船長を見下ろしつつ、静かにそう言い放つ零。
 彼の聖騎士としてのあり方は確かに悪を滅びへと近づけさせていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハルア・ガーラント
ち、力や恐怖で支配しても、いつかきっと破綻します。

【WIZ】
怖いけど退くつもりはありません。
解放した海賊さん達には具合の悪い海賊さんを守って貰いますね。
[咎人の枷]を[念動力]で操作し[なぎ払い]、先端で[マヒ攻撃]。敵の攻撃は[第六感]で攻撃のタイミングを掴み後方へ飛翔、回避。船の残骸があれば、それを念動力で動かし障害物として設置。

海賊船……乗組員の皆さん、あんなに痩せて。死後も奴隷として酷使されるなんて、そんなの辛い。UC発動し[祈り][慰め]を込め鎮魂の意を込めた親愛歌を[歌唱]。
もう、戦わなくていいんですよ。

これで、あなたを守る人はいません。
猟兵さんや解放した海賊さんと共に総攻撃です!




「畜生、どいつもこいつも使えないな……」
 イライラした様子に立ち上がる略奪船長を見て、ハルア・ガーラントは表情を強張らせていた。
 相手は見るからに悪党で、残虐な手段を使って海賊や島民を傷つけようとしている。
 怖い。怖いけれど、でもここで退くのはもっと怖い。
「ち、力や恐怖で支配しても、いつかきっと破綻します」
「んだと……野郎ども、やっちまえ!」
 略奪船長が幽霊海賊船を呼び出しけしかけてくるが、ハルアはその光景から目を逸らさない。
 海賊達も島民も、幽霊船に乗せられた戦闘員達も助けるのだ。
「海賊さん達、もし傷ついている方がいたら守ってあげて下さい」
「分かった、姉ちゃんも気をつけてな!」
 海賊達に後方を任せ、ハルアは一歩前へと進む。
 翼に括り付けた咎人の枷に力を籠めて、ふわりと宙に舞わせれば戦う準備も万端だ。
 幽霊船からは次々に戦闘員が迫ってきている。ハルアは彼らへ向けて、枷を思い切り薙ぎ払った。
「少しだけ我慢して下さいね……!」
 枷の先端につけられた重りが次々に戦闘員を打ちのめし、彼らを麻痺の魔力で拘束していく。
 迫りくるカトラスの刃は飛んで避けて、出来るだけ早く戦闘員を無力化すべくハルアは洞窟を飛び回った。
「(……なんて酷い)」
 戦闘員達の身体は痩せ細り、着ているものも武器もボロボロだ。
 彼らも過去の存在ではあるけれど、死後も奴隷として酷使されているなんて、見てられない。
 ハルアは戦闘員達から離れた位置へ降り立つと、静かに呼吸を整えた。
 せめて彼らを優しく骸の海へ。そんな気持ちを籠めて、ハルアが奏でたのは天使言語の歌だった。
「もう、戦わなくていいんですよ」
 暖かな祈りの歌は戦闘員達から苦しみを取り除き、その魂を癒やしていく。
 それに合わせて戦闘員達はどんどん浄化され、骸の海へその身を沈めていった。その瞬間、彼らが感謝の言葉を囁いたのはきっと気の所為ではないだろう。
「これで、あなたを守る人はいません」
「生意気な……!」
 優しい祈りの歌は略奪船長にだけは届かなかったようだ。きっと彼には歌に震えるような心も残っていないのだろう。
 けれど、ここにはまだまだ歌を聞いてくれた人がいる。
「姉ちゃんの歌、聞いてたら勇気が湧いてきたぜ」
「行くぞ、野郎ども!」
 海賊達はハルアの歌に励まされ、より力強く戦う意志を固めてくれていた。
「みなさん、ありがとうございます。それでは……総攻撃です!」
 号令と共に海賊達が駆けていき、手にした武器で次々に略奪船長を攻撃し始めた。
 ハルアも残った幽霊船の残骸を用いて壁を作り、敵の動きをどんどん制限していった。おかげで海賊達も戦いやすそうだ。
 皆の連携は略奪船長にしっかりとダメージを与え、着実に彼から力を奪っていく。
「こんな風にみんなで力を合わせるのが、本当に大切なことなんです……!」
 ハルアの優しさと意志は過去の奴隷達を救い、今を生きる人に力を与える。
 そして悪しき過去を滅ぼし、未来への道を切り開いていくのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロラン・ヒュッテンブレナー
★アドリブ歓迎
チェリカちゃん(f05395)、ボスが来たよ!
【WIZ】>【SPD】

チェリカちゃん、ぼく、相手の事調べてみる
引き付けてくれる?

【ダッシュ】【残像】【地形の利用】で回り込むね
【第六感】【野生の勘】【勇気】で武器攻撃を避けるよ
人狼のスピードの見せ所なの
隙を見つけたらUC「戦場を見通す叡智の瞳」(SPD)の魔術陣でボスのアナライズ【学習力】するよ
何度も狙ってぶつけるの【情報収集】

チェリカちゃんと魔力で【手を繋ぐ】で情報共有なの
もう全部、見えたの
チェリカちゃん、行こう

ボスに近づいて【高速詠唱】【多重詠唱】でUC「捕え抱き締める虚無の手」発動なの!
ぼくの【全力魔法】見せてあげる


チェリカ・ロンド
見て見てロラン(f04258)!いかにも悪そうな海賊だわ!

洞窟の中じゃ魔法が使いづらいから、【魔神化】して接近戦よ!私の新しい力、見せてあげるわ!
右手に光聖剣(でかい)、左手にルーンソード改!これでいくわよ!
ロランが敵の弱点を探すまで、湧いて出た奴隷戦闘員の幽霊をしばくわ。
魔力の翼で飛びながら、【空中戦】で強襲、両手の剣で【なぎ払い】!みんなまとめて浄化してあげる!
できれば海賊船も壊したいわ!

魔力で共有された情報をキャッチしたら、連携
さすがねロラン!えぇ、いきましょう!
ロランが敵をUCで叩きのめすタイミングに合わせて、破壊【属性】の【全力魔法】を付与した二本の剣で、バラバラに切り裂いてやるわ!




 略奪船長は多くの傷を負いつつも、まだ立ち上がる。戦意も衰えてはいないようだ。
「見て見てロラン! いかにも悪そうな海賊だわ!」
「そうだね、チェリカちゃん。あれがボスだよ!」
 そんな敵の姿を見ても、ロラン・ヒュッテンブレナーとチェリカ・ロンドは恐れずに前を向いていた。
 恐らくここが正念場。全力で戦いに挑む時だ。
「チェリカちゃん、ぼく、相手の事調べてみる。引き付けてくれる?」
「分かったわ。派手に動き回るのは得意だもの。任せて!」
 やるべき事を確認し、二人は別々の方向に駆けていく。

 略奪船長はそんな彼らの様子を忌々しげに見つめている。
「ちょこまかと……俺様だって力に目覚めたんだ、全員殺してやる!」
 船長が呪われたサーベルを掲げると、洞窟の中に再び海賊幽霊船が姿を現した。
 洞窟の中はそこそこの広さがあるとはいえ、大きな船が出現したのならば立ち回りはより難しくなるだろう。
「このままだと魔法が使いづらいわね……。それなら私の新しい力、見せてあげるわ!」
 チェリカは幽霊船に向かって駆け出しつつ、徐々に姿を変えていく。
 菫色の髪は真紅に染まり、白い肌は褐色へと変化して。吸血鬼の血と聖者の光がチェリカを魔神へと変身させ、彼女に力を与えていた。
「ちょっと乱暴にいくわよっ!」
 右手に光聖剣バルムンク、左手に魔剣ルーンソード改を携えつつ、チェリカは一気に空を駆ける。
 魔力の翼を用いれば幽霊海賊船の上部へ飛ぶのだって簡単だ。
「いっけぇぇぇ!!」
 チェリカは両手に力を籠めて、思い切り二振りの剣を振りかぶった。
 剣に宿った聖なる光は凄まじい破壊のエネルギーへと姿を変え、勢いよく幽霊船へと飛んでいけば……一気に敵を薙ぎ払う!
 船にも戦闘員にもその衝撃が伝わるが、彼らへ向けられたのはただの破壊の光ではない。
 聖なる輝きが戦闘員達を包み込むと、少しずつその魂は癒やされていくのだ。
「さあ、どんどん浄化してあげるわ!」
 チェリカの勢いは止まらない。海賊船が浄化しきれるまで、彼女は何度でも剣を振るう。

 幽霊船が徐々に無効化されていき、略奪船長の顔に焦りの色が浮かびだしていた。
「あのガキ……そういえばもう一人はどこに行った?」
 きょろきょろと周囲を見る略奪船長の元に、勢いよくロランが迫る。
 洞窟の中の岩や壁、戦闘によって生まれた残骸。それらを上手く足場にしつつ、ロランは最短距離を走っていた。
「こっちだよ!」
「なっ……待て、この野郎!」
 自身へ向かって振り下ろされるサーベルをひらりと躱し、ロランは略奪船長の胴へ掌を叩きつけた。
 ふわふわの手に浮かべた魔術陣が相手のデータを読み取り、瞬時にロランの脳へと伝えてくれる。
「妙な真似をしやがって……」
 大きなダメージは無くとも『何かをされている』という事は実感しているのだろう。焦る略奪船長は更に激しくサーベルを振り回し始めた。
 攻撃の勢いは激しいが、相手の情報を読み取りだしたロランならば問題ない。
 人狼としての足の速さも活かしつつ、ロランは何度も掌を敵へと触れさせていく。
「もう全部、見えたの」
 何度も何度も魔術陣を起動すれば、相手の動きは完璧に学習出来た。
 相手の癖や弱点、武器の取り回し方。これらを脳に叩き込み、ロランは一気に後退していく。
 略奪船長も負けじと追いかけるが、洞窟内部の状況だってロランの方がしっかり把握しているのだ。 
 獣の足でしっかりと地面を蹴って、ロランはチェリカの方へと駆け抜けた。

 チェリカが無事に幽霊海賊船を浄化し終えた頃に、ロランが彼女へと近づいていた。
「チェリカちゃん、手を出して!」
「ええ、分かったわ!」
 二人がしっかりと手を握りあえば、掌を通して魔術の回路が繋がっていく。
 そうして伝わるのはロランが集めた敵の情報。二人で把握すればより完璧だ。
「これで大丈夫なの。チェリカちゃん、行こう」
「さすがねロラン! えぇ、いきましょう!」
 チェリカは翼で空を駆け、ロランは獣の足で地を駆ける。
 二人を迎え撃とうと略奪船長が刃を振るうが、彼の動きは把握しているのだ。その攻撃は簡単に躱す事が出来る。
「電脳空間アクセス。空間パラメータ解析……局所重力作成式構築……」
 足を前へと進めたまま、ロランは魔術の詠唱を始めていく。
 機械のように無機質な声色は、彼の魔術陣をより強力なものへと書き換えていた。
「マナ充填、現実投影完了……。魔術陣、展開……」
 脳にある器官が魔術の回路を全力で稼働させ、掌へと魔力が集中すれば準備は万端。
 ロランはその小さな手を敵へと向けて、全力の重力波を放つ!
「捕え抱き締める虚無の手!!」
 生み出された重力波は洞窟の床ごと略奪船長を押しつぶし、その身体に凄まじい負荷を与えていく。
 これで彼はもう動けない。思い切りぶっ飛ばすならこのタイミングだろう。
「ありがとう、ロラン。さあ、私も行くわよ!」
 チェリカは真紅の髪を更に輝かせつつ、全身に光を巡らせていく。
 二振りの刃に乗せるのは破壊の力。一切合切遠慮なしの最大火力だ。
「聖なる力の破壊力、見せてあげる!」
 翼を全力で羽ばたかせ、チェリカは敵へ向かって真っ直ぐに飛んだ。
 その勢いを殺さないまま、まずはルーンソード改で一閃。骨を断つような一撃が略奪船長を襲うが、彼の身体は重力波によって動く事はない。
「もう一発……これで、終わり!!」
 次に振るったのは光聖剣バルムンクだ。
 巨大な刃から生み出されたエネルギーは流星のように突き進み、略奪船長の身体を切り裂いていく!
 その光が消えると同時に、略奪船長の身体も骸の海へと消え去っていった。

「やった、チェリカちゃん。ありがとうなの」
「ロランこそ。助かったわ、ありがとう!」
 戦いが終わり、手を取り合って喜び合うロランとチェリカ。
 海賊達も皆無事のようだ。こうして一切の死者を出す事なく島の平和は守られた。
 猟兵達の活躍は、この島に平和を齎したのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『珊瑚礁の海』

POW   :    大きく息を吸って長時間潜水

SPD   :    魚と泳ぎ回る

WIZ   :    船の上から観察

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 略奪船長との戦いは終わり、海賊達も無事に掟を果たす事が出来た。
 その事は島の住民にも伝わっており、彼らも猟兵達を労いにやってきたようだ。

 海賊達は勝利を祝した宴を行うため、しばらくこの島に滞在する。
 島民達も猟兵や海賊達のために食事や休憩出来る場所を用意してくれた。
 このまま島に残って遊んでいくのも悪くないだろう。

 この『カラール島』の周囲には、美しい珊瑚礁の海が広がっている。
 海の中には色とりどりの珊瑚が住んでおり、それに惹かれてやってきた魚達が楽しく暮らしているようだ。
 気温は暖かく気候も穏やか。海の中に入って泳ぐのも問題ないだろう。
 小舟や水着が必要ならば海賊や島民に言えば貸し出してくれるし、他に欲しいものがあれば聞いてみるのもいいだろう。

 無事に平和を取り戻した島で、少し早いバカンスの時が始まった。


 3章プレイングは【4月5日(日)8:31~】募集開始とさせていただきます。
 よろしくお願いします。
ハルア・ガーラント
あのっ、良かったらクリナムさんも一緒に海を楽しみませんか?

島民の方から水着を貸して貰います。
んと、この赤いギンガムチェックのビキニがいいかな。少し恥ずかしいので薄手のパレオを腰に巻きます。あと……浮き輪も。

わたしは泳げないので……まずは浜辺で寛ぎながら一緒に果汁たっぷりのジュースやアイスを口にしながら景色を楽しみます。
ん~美味しい。クリナムさん、少しだけ交換しません?
その後はクリナムさんが泳ぐようなら飛んでついて行きたいです。
……大丈夫です、保険として浮き輪を持っていきますから!

浜に戻った後は、宴にも少し顔を出します。
皆さんの笑顔を見て、ここに来て良かったとわたしも幸せな気持ちに。




 平和になった島の空気は暖かく穏やかで。
 その雰囲気を楽しみつつ、ハルア・ガーラントは海の周りを歩いていた。
 すると目に入ったのはクリナムの姿。ハルアは早足でそちらへと近づくと、恐る恐る声をかけてみる。
「あのっ、良かったらクリナムさんも一緒に海を楽しみませんか?」
「あら、ありがとう。でもその格好、暑そうね」
 ハルアが着ていたのは軍服を模したワンピース。馴染んだ服装だが、海辺で遊ぶには少々窮屈かもしれない。
 それなら、とクリナムが指差したのは島民達の集落だった。

「あの……これで大丈夫、ですか?」
 島民達の案内を受け、ハルアは相応しい服装――水着を貸してもらう事になった。
 選んだのは赤いギンガムチェックが可愛らしいビキニだ。腰にしっかりパレオも巻けば肌の露出も気にならない。
 ついでに浮き輪も貸してもらえば慣れない海でも万全だろう。
 初めて着るような服装と、それに伴う開放感。ハルアの白い翼は楽しさでパタパタと小さく動いていた。
「よく似合っているわ。それで、どうしましょうか?」
「あちらに気になるお店があったんです。そこに寄ってから海に行きませんか?」
 ハルアが見かけていたのは浜辺に面したジューススタンドだ。
 早速店へと立ち寄って、二人分のジュースやアイスを頼めば準備も万端。
 二人は砂浜の上へと腰掛けて、海を見ながら共に甘味を楽しんでいく。
 波は穏やか、風は暖か。長閑で晴れ晴れとした景色が二人を包む。
「ん~、美味しい。新鮮な味がします……!」
「良い果物が採れるんでしょうね。美味しいわ」
 戦いに疲れた身体に優しい甘さが沁み渡る。ニコニコ笑顔のハルアを見て、クリナムもゆるく笑みを浮かべていた。
「そうだ。クリナムさん、少しだけ交換しません?」
「そうしましょうか。ふふ、ありがとう」
 互いの甘味を一口ずつ交換したり、味の感想を言い合ったり。二人の様子はどこにでもいる少女達のようだ。
 次に二人で向かったのは海の方向。クリナムが泳ぐのに合わせ、ハルアは翼で空を飛ぶ。
「飛んでいくので大丈夫かしら。海、綺麗よ?」
「実はあんまり泳いだ事はなくって……あ、大丈夫です! 保険として浮き輪を持っていますから!」
「確かに空から見る海も新鮮かもしれないわね。それなら……一緒に行きましょうか」
「はい! 海、キラキラしてて綺麗です。カラフルなのは珊瑚礁でしょうか……」
 初めて見る光景、薫る潮風。海に直接は入らなくても感じられるものはたくさんある。
 クリナムについていきながら、ハルアはしっかりと体中で海を感じていた。

「あ、海賊さん達もいますね」
 海から戻ってくる最中、ハルアの目に写ったのは海賊達の姿。
 戦いを終え宴を行う彼らは本当に楽しそうだった。
「あの、海賊さん達のところに顔を出してもいいですか?」
「構わないわ。きっと彼らも喜ぶと思う」
 風や海水で乱れた髪を整えつつ、ハルア達は海賊達の方へと歩み寄る。
 彼らもハルアの姿を見れば手招きして待ってくれている。
 ここに来てよかった。平和を守りきれてよかった。
 そんな気持ちが改めてハルアの胸に湧き上がり、浜を進む彼女の足を早めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニトロ・トリニィ
アドリブ歓迎です!

WIZかな?

みんなお疲れ様!
犠牲が出なくて良かったよ。
それじゃ早速… 宴の始まりだ!

行動
僕は海賊達から色々な話を聞こう!
具体的には冒険譚や海賊船での生活かな。
消えた記憶に繋がる手掛かりがあるかも知れないしね!

話を聞くだけってのも申し訳ないし、自分の体験談でも話そうかな。
内容はそうだな… アックス&ウィザーズで竜と戦った話なんてどうだろう?
気に入ってくれると良いんだけどね!




 わいわいと島の中に賑やかな声が響き渡る。
 浜辺では海賊達が物資を運びながら宴の準備を進めていた。
 ニトロ・トリニィも彼らの輪に加わりつつ宴の始まりを待っている。
「みんなお疲れ様! 犠牲が出なくて良かったよ」
「兄ちゃん達のおかげだよ。こっちこそありがとう!」
 明るく声をかけてくるニトロに海賊達も楽しげに返事を返した。ここにいる誰もが晴れやかな笑みを浮かべている。
 酒や食べ物をどんどん並べ、輪の中央には火を炊いて。
 それが終わればここからはひたすら楽しむだけだ。
「それじゃ早速……宴の始まりだ!」
 ニトロの掛け声に合わせ、皆で酒の入った杯を乾杯。冷たい酒類は戦いの疲れを癒やしてくれた。

「それで、兄ちゃんは俺達の話が聞きたいんだったか?」
「そうそう。皆なら僕の知らないような冒険譚とか、船での暮らしについて知っているだろうから」
 ニトロが尋ねたのは海賊達の話だ。
 純粋な興味もあるが、何より初めて聞く話はニトロの記憶の手がかりになるかもしれない。
「一番ヤバかったのは今日の出来事だが……宇宙船で出来た島での冒険も大変だったな」
「宇宙船って事はスペースシップワールドから落ちてきた島なのかな。詳しく聞きたい!」
「ああ、あの時はな……」
 焼いた肉を摘みつつ、海賊達は話を続ける。
 例えば宇宙船の中に取り残された巨大な生物との戦いだったり。桜の咲く島で美しい秘宝を見つけたり。
 他の島で行ったメガリスの試練の話もあった。新しく何かを見つける度に、彼らは様々なものに挑んできたようだ。
 それから船での生活というのはなかなか大変なようだ。
 気まぐれな気候、物資の管理、船員達の体調管理。どんな些細な事にもしっかりと対応し、彼らはここまでやってきていた。

「何か気になる話はあったかい?」
「どの話も面白いよ! 海での冒険って大変なんだね……」
「俺達は逆に、兄ちゃんがどんな冒険をしてきたか気になるぜ」
 海賊達に言われてふと気づく。確かに自分の体験談を話すのもいいかもしれない。
「そうだね。せっかくだから僕も……そうだな、竜と戦った話なんてどうだろう?」
「竜? そいつはすげぇ!」
 ニトロが語ったのはアックス&ウィザーズでの冒険譚。
 仲間を集めて異形の配下を倒し、戦いを挑んだのは巨大な竜。それに負けじと武器を振るい、仲間と共にただひたすらに勝利を目指した。
 竜の巨体が地に伏した時の満足感と達成感は今も鮮明に思い出せる。
「竜殺し、なんて称号をもらったりもしたよ!」
「本当に凄いぜ……もっともっと聞かせてくれよ!」
 海賊達はニトロの話に瞳を煌めかせている。どうやら話は気に入ってもらえたようだ。
「次は魔法学園での戦争の話はどう?」
「それも面白そうだ。あ、酒もつまみもまだまだあるからな。兄ちゃんもどんどん食えよ!」
 互いに今までの冒険について語らい、美味しい酒や料理に舌鼓を打って。
 今日の話が過去の記憶に繋がるかは分からない。けれど今のニトロの胸は思い出で満たされていく。
 賑やかな空気に包まれながら、宴の時は過ぎていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フロース・ウェスペルティリオ
ウチは船の上で軽食をとりつつのんびり景色を眺める事にするねぇ。んー、水中のサンゴさんもちょっと気になるし、せっかくなのでナノさんに遊んでてもらおうかなぁ。

ウチはキラキラゆらゆらしてる水面を眺めたり、波の音を聞いたりしながら、冷たい飲み物を飲んでいるよ。小腹が空いたらフィッシュフライのサンドイッチでも摘まもうかなぁ。
近くに誰かいたら、船を休憩所や荷物置き場代わりにご提供。飲み物や軽食等もお裾分けするねぇ。
ナノさんは水中でお魚さんっぽい形で泳いだり、イソギンチャクさんやサンゴさんっぽく岩にしがみついてたりして遊んでいるかと。戻って来たら、お土産話(というか、お土産記憶)に期待です。




 きらきら煌めく海の上に小さな船が浮かぶ。
 その上で寛ぐのはフロース・ウェスペルティリオ。柔らかなクッションに背中を預け、眺めるのは水面と青空。
 彼の傍らにはフルーツジュースとサンドイッチが置かれており、のんびりするにはぴったりの状況が作られていた。
「良い眺めだねぇ……でも、海の中もちょっと気になるかなぁ」
 船の上から眺める海も美しいけれど、海中に広がる珊瑚礁も見てみたい。
 そこでフロースが呼び出したのは小さな自分の分身『ナノさん』だ。
「ナノさんは海の中で遊んでおいで。行ってらっしゃい。気を付けてねぇ」
 フロースの手元から飛び出したナノさんは、ぽちゃんと海の中へと落ちて悠々自適に泳ぎだした。
 あの子からの土産話を待つ間、船での旅を楽しもうか。
 冷たいジュースを口に運びつつ、フロースは再び周囲の景色を楽しみだす。

「おや、猟兵さん。楽しんでるかい?」
 ふと、フロースの側を通りがかったのは島民の船だ。
 数人の島民が漁か何かから帰ってきたところのようで、船の上には魚の入ったバケツが見えた。
「うん、楽しんでるよぉ。ここの海は綺麗だねぇ」
「ああ、俺達自慢の海なんだ。珊瑚も綺麗で、魚も美味いんだぜ」
 そう言いつつ島民はバケツをフロースへと見せてきた。バケツの中の魚達は活きが良く、確かに美味しそうだ。
「島の方でもオススメされたねぇ。それで、こんなのを作ってみたんだよ」
 そう言いつつフロースが差し出したのはサンドイッチだ。中には島の魚で作ったフィッシュフライが挟まっている。
 この調理方法は思いつかなかったのか、島民達は興味深そうにサンドイッチを眺めていた。
「よかったら食べてみるかい? 漁でお疲れだろうし、少し一緒に休憩しようよ」
「そりゃあ良い! ありがとうな、猟兵さん」
 島民達にサンドイッチとジュースを分けて、共に船を浮かべて雑談を。
 世間話なんかも盛り上がりつつ、フロースの緩やかな時間は過ぎていく。

 休憩を終えた島民達と別れた頃に、ナノさんもフロースの元へと戻ってきた。
「おかえり、ナノさん。それじゃあ……お土産記憶、見せてねぇ」
 再びクッションに背を預け、フロースは静かにナノさんと記憶を共有していく。
 最初に見えたのはどこまでも広がる青い海と、その下に広がる色とりどりの珊瑚礁。
 小さな魚の姿をしたナノさんが珊瑚礁の中を泳ぎ回れば、そこに暮らす魚達も仲間として迎え入れてくれる。
 またある時は、ナノさんはイソギンチャクのような姿へと変身していた。
 そのまま岩にくっついて、珊瑚と一緒に水の流れを感じてみたり。
 美しい光景と優しい水流がナノさんを包み込み、滅多に見ることが出来ない世界を垣間見た。
 その記憶をしっかりと脳裏に刻み、フロースはにっこりと微笑む。
「ナノさんも楽しかったかい? 今日は楽しかったねぇ」
 海の碧も空の蒼、どちらもとても印象的で。
 その二つをたっぷりと楽しんだフロースは、もう暫く船の上でのんびりするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
【湯煙】
瑞樹兄さん、千秋兄さんと

瑞樹兄さんはお疲れ
いやー…しっかし海綺麗だな
借りた水着に着替えて
瑞樹兄さんと千秋兄さんは泳げんの?
川!すげー!
尊敬の眼差し
てーか…サイボーグの人って海入って大丈夫なんだ?
あー…まぁ苦手なら仕方ねぇよな
浮輪は浮輪も楽しそうだし

とりあえず泳ぐか
しっかり準備体操し海へ
オーラ防御で薄く顔回り覆って空気保ち長く素潜り
すげぇ…珊瑚ちょう綺麗
魚もすげぇわ
捕まえられそうなくらいいるし
手を伸ばして
うわ逃げられた

顔出して
あれだな…水族館そのまんまだ!
目輝かせて
珊瑚とかUDCアースの日本もヒーローズアースの日本も
そう簡単に見れねぇもんなぁ
奥州…東北とは違うよな

魚めちゃ新鮮そうだもんな


草野・千秋
【湯煙】
瑞樹さん理玖さんと
アドリブ等歓迎

瑞樹さんはお仕事お疲れ様でした
新しい世界でもドタバタは耐えないようで
(ひょこっと現れる)

カラール島には珊瑚があるのですね
そうそうUDCアースにもあるんですよ珊瑚畑
日本では南の島国行かないとなかなか見られないやつです

そうです僕はサイボーグ、生体パーツはあるのですが
実は泳ぎは改造前から下手なんですよね……お恥ずかしい
(拙い足取りで浮き輪をつけてのろのろ泳ぐ)
わぁ、お魚さんも色とりどりできれい
子どものように目を輝かせて
碧い海をサイバーアイの視力で覗き込む

疲れたら休憩がてら海産物とか食べたいですね
魚介類は料理技能でさばいたり


黒鵺・瑞樹
アドリブOK【湯煙】3人

空色のハーフパンツの水着で。
海っていうとエンパイアウォーの時の軍艦での戦いか、そのさなかのSSWぐらいでしかなかったから楽しみだ。
胡は預かってもらって本体だけ持っとくか。さすがにないと心もとない。

(理玖に)泳ぎは平気だぞ、まぁ大体川泳ぎだったが。むしろ普通に泳ぐより素潜りの方が好きだな。宝探しみたいで。
…千秋は手伝いいるか?でもまぁ浮き輪があるなら、平気か…?

ここの海は奥州の海と違って色とりどりらしいしどれほどのもんだろう?
おお、ほんとにきれいだな。珊瑚、綺麗だな。
魚は…食えるんだろうかと思ったけど言わんでおこう。水族館行った時もつい思っちゃたけどこの癖何とかしたい。




 戦いも終わり、次は海でも楽しもうか。
 そう思い立って水着に着替えた黒鵺・瑞樹の元へ、二人の青年が姿を現した。
「瑞樹兄さんはお疲れ。海も島も綺麗だな!」
「瑞樹さんはお仕事お疲れ様でした。新しい世界でもドタバタは耐えないようで」
 やってきたのは陽向・理玖(夏疾風・f22773)と草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)。
 彼らは瑞樹の活躍の報せを受けてカラール島へとやってきたようだ。しっかりと水着も借りて、共に海を楽しむ準備も万端の様子。
「二人共ありがとう。海なんて久しぶりだから楽しみだ」
 友人達の姿を見て瑞樹も緩く微笑む。海に来るのはサムライエンパイアでの戦争やスペースシップワールドのリゾート艦以来だろうか。
 念の為に装備した『黒鵺』の存在を確かめつつ、まずは身体を解す瑞樹。その横では雑談も始まっているようだ。
「カラール島には珊瑚があるのですね。UDCアースにもあるんですよ珊瑚畑。僕の故郷だと南の島国へ行かないとなかなか見れないやつですが……」
「へぇ。サムライエンパイアでも奥州の海なら珊瑚はあったな。ここのはもっと色とりどりらしいけど」
「二人共詳しいんだな。珊瑚礁、楽しみだぜ」
 瑞樹と並んで理玖もしっかりと身体を解している。その隣では千秋が持ち込んだ浮き輪を懸命に膨らませていた。
「……そういえば、瑞樹兄さんと千秋兄さんは泳げんの? てーか……サイボーグの人って海入って大丈夫なんだ?」
 柔軟体操を終えた理玖がぽつりと呟く。
 彼自身は問題なく泳げるが、瑞樹はヤドリガミで千秋はサイボーグ。何かしらの問題はあるかもしれない。
「泳ぎは平気だぞ、まぁ大体川泳ぎだったが」
「川! すげー!」
「むしろ普通に泳ぐより素潜りの方が好きだな。宝探しみたいで」
「素潜り……やった事ないんだよな。やっぱりすげー!」
 瑞樹に向けてきらきらとした尊敬の眼差しを向ける理玖。その横では千秋が浮き輪を抱えつつ、困ったような顔をしていた。
「実は僕……泳ぎは改造前から下手なんですよね……お恥ずかしい。生体パーツはあるので、海の中には問題なく入れますよ」
 頬をかきつつ二人を見る千秋。そんな彼へ向けて、瑞樹と理玖は励ますように笑みを浮かべる。
「そっか。千秋は手伝いいるか? いや、浮き輪もあるし大丈夫か……?」
「あー……まぁ苦手なら仕方ねぇよな。浮輪は浮輪も楽しそうだし」
 一緒に海の中まで入れるのならばきっと大丈夫だろう。
 柔軟体操も終わり、浮き輪もしっかりと膨らんだ。ここからは楽しい時間だ。

 まずは海の中をゆっくりと進み、少し深いところまで。
 理玖が先頭になって周囲を眺め、千秋が後ろで浮き輪に頼りつつ進む。その間では瑞樹が二人の様子を伺っていた。
「海、冷たくて気持ちいいな!」
「ああ。実際に入ってみるとなかなか……千秋は大丈夫か?」
「はい、大丈夫です……!」
 進むスピードはゆっくり目だが、その分海の流れと潮風をたっぷりと楽しめる。
 三人はどんどん先へと進んでいき、いよいよ珊瑚礁が広がるスポットまでたどり着く。
「それじゃあ……行くぞ!」
 最初に水中へと飛び込んだのは理玖だ。顔の周囲をオーラで覆い、出来るだけ長く潜れるようにすれば準備もばっちり。
 海の中で彼を出迎えてくれたのは色鮮やかな珊瑚達と、悠々と泳ぐ魚達。
「(すげぇ……珊瑚ちょう綺麗)」
 青い瞳をきらきらと輝かせ、周囲をきょろきょろ眺める理玖。そんな彼の様子を見て、瑞樹も海中へと入っていった。
「(おお、ほんとにきれいだな。珊瑚、綺麗だな)」
 事前に聞いた話の通り、奥州の海とは違った景色が彼を出迎えてくれる。
 見たことない海の生き物達ものびのびと暮らす、その光景は胸を打つものだった。
 千秋もサイバーアイを起動して、恐る恐る海の中へ。
 最初は緊張していたけれど、広がる珊瑚礁を見ればすぐに彼の心は感動でいっぱいになった。
「(わぁ、お魚さんも色とりどりできれい)」
 ぷかぷかと泳ぐ魚達もカラフルで可愛らしい。その様子に千秋の瞳も子供のようにきらきらと輝く。

 三人は海中で改めて顔を見合わせ、それぞれが海を楽しみ始めた。
「(魚もすげぇわ。捕まえられそうなくらいいるし)」
 自分の周囲を泳ぐ魚達へ向けて、理玖は慎重に手を伸ばしてみる。
 そしてギリギリのところで一気に腕を突き出し、魚を捕まえようとしてみるも――水中での動きは彼らの方が機敏のようだ。残念ながら魚達には逃げられてしまう。
「(あっ……! うわ逃げられた。でも泳いでる姿も綺麗だな)」
 残念そうに苦笑を浮かべる理玖だが、それでも彼の様子は楽しそうだ。
 そんな友人の様子を見て、瑞樹の頭に一つの考えが浮かぶ。
「(魚は……食えるんだろうか)」
 サムライエンパイアの魚と違って、ここの魚はカラフルなものも多い。けれど捌いてみたらどうだろう。
 そう思いつつも瑞樹は軽く頭を振る。この言葉を口にしたら雰囲気が台無しになってしまうかもしれない。
 水族館行った時もつい思っちゃったなぁ。この癖なんとかしたい。そんな事を思いつつ、瑞樹も周囲の景色を楽しんでいた。
 千秋はすっかり海の光景に夢中のようだ。あまり激しくは泳げないけれど、だからこそゆっくりと魚達の様子も観察出来る。
「(本当に綺麗ですね……今日は海の中まで入れてよかったです)」
 一人だったらここまで来る気は起きなかったかもしれない。一緒に来てくれた友人達に感謝もしつつ、彼もまた海の流れを静かに楽しんでいく。

 一通り海の中を楽しみ、三人は一緒に海の上へと顔を出した。
「あれだな……水族館そのまんまだ! めちゃくちゃ綺麗だった!!」
 瞳をきらきらと輝かせて感激を語る理玖。その横では千秋もうんうんと頷いている。
「はい、本当に綺麗でした。お魚さん達も珊瑚礁も美しかったです」
「水族館……確かにあんな感じだったな。あんな光景を直接楽しめるなんてびっくりだ」
 瑞樹もまた微笑みつつ言葉を交わす。その様子は静かながらも本当に楽しそうだ。
「珊瑚とか、UDCアースの日本もヒーローズアースの日本もそう簡単に見れねぇもんなぁ。それに奥州……東北とも違うよな」
「南国って感じだったな。これなら色んな世界で珊瑚を見に行く人がいるのも分かる気がする」
「僕も、こんな光景は写真や映像でしか知らなかったので感動しました……!」
 伝聞や人が撮ってきた映像でしか知らない世界を実際に見る。初めての経験に、三人の瞳はずっときらきらと輝いている。
 そしてこんな光景を分かち合える友達がいる。それもとても嬉しくて、互いを見合わせる三人の表情は笑顔だった。
 けれど海に入り始めてそろそろ時間も経っている。休憩も必要だろう。
「そろそろ島で休憩しようぜ。なんか食うのもいいかもしれねぇな」
「浜辺に店も出てるみたいだな。あとは簡単な調理場なんかもあるみたいだ」
「調理場があるなら何か作りますよ。海産物でバーベキューなんかいいんじゃないでしょうか」
 この島では新鮮な海産物も販売しているようだ。それを皆で食べるのもまた楽しいだろう。
「やった、千秋兄さんが作ってくれるなら絶対美味いだろうな!」
「腕によりをかけて作りますよ。他にも出来そうな料理があれば試してみましょうか」
「やっぱり皆も魚食いたくなったのか? あれだけ元気な姿を見てるとな……」
 わいわいと、楽しく声をあげながら三人は浜を目指す。
 海の中でも海の側でも、楽しい時間はいくらでも過ごす事が出来るだろう。
 そしてその時には友人達も一緒だ。話した事、笑いあった事は忘れない。
 たくさんの思い出を胸に刻みつつ、三人の時間は賑やかに流れていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロラン・ヒュッテンブレナー
★アドリブ歓迎
無事にボスもやっつけれたね、チェリカちゃん(f05395)
島の人に歓迎されたの

チェリカちゃん、島の人にとっておきの場所、教えてもらったよ【情報収集】
海の中なんだけど行ってみる?

水中用のエンチャント魔術があるの【深海適応】【水泳】【遠泳】
【手を繋】げは共有できるの

うん、一緒に泳いでくれるって【動物と話す】
海の動物さんたちと一緒に深い所まで
チェリカちゃんのおかげで、綺麗なサンゴの広場が見えるの
海の中で輝くチェリカちゃん、きれいだなぁ

むぅ、体が重いの…
毛がお水たっぷり吸ってるからね
(ぎゅーっと腕や尻尾の水気を切る)

わわ、チェリカちゃんありがと
(照れつつも気持ちいいのか耳がぴこぴこ)


チェリカ・ロンド
どんな敵も、ロラン(f05395)となら楽勝ね!
ふふ、みんなに褒めてもらっちゃった。がんばったかいがあったわ!

とっておきの場所?海の中!?わぁい、行く行く!
ロランと手を繋いで、水中の魔法をもらいながら、海を泳いでいくわ。ねこ水着の真価(?)が発揮されるわね!
水底は暗いだろうから、UCを常に発動して、髪の毛を光らせとくわ。聖なる懐中電灯よ!

海中の景色に目を奪われながら、ロランと一緒に海を進むわ
見て見て!お魚がきれい!サンゴ礁も光ってる!
イルカとか、いるのかしら?いたら並んで泳いでみたいわ!

お疲れ様、ロラン。水がすごいわね……私も拭くの手伝うわよ! 
耳を念入りにわしわしして、髪の毛もごしごし!




 ぱたぱたと、水着姿の少年少女が浜辺へと走る。
「無事にボスもやっつけれたね、チェリカちゃん」
「ええ。どんな敵も、ロランとなら楽勝ね! がんばったかいがあったわ!」
 楽しげに話しつつ海を目指すのはロラン・ヒュッテンブレナーとチェリカ・ロンドだ。
 二人は戦いの後、島民の元を訪れていた。
 島民達は自分たちの救世主である猟兵達を手厚く迎え入れてくれた。たくさんの感謝の言葉を受け、二人も嬉しそうだ。
 少しの休憩を終えた後、二人が遊びに出たのは珊瑚礁の広がる海。
「そうだ。チェリカちゃん、島の人にとっておきの場所、教えてもらったよ」
「とっておきの場所?」
「海の中なんだけど行ってみる?」
「海の中!? わぁい、行く行く!」
 ロランの提案を受け、チェリカの顔がぱぁっと明るくなった。そんな友人の嬉しそうな顔に合わせ、ロランの尻尾もぱたぱた揺れる。
「でも、海の中ってどうやって行くのかしら?」
「ぼくに任せて。チェリカちゃん、手を繋いで欲しいの」
 二人でしっかりと手を結び、ロランが短く呪文を詠唱。
 そうすると二人の身体は魔術の光で覆われていく。
「水中用のエンチャント魔術だよ。手を繋いでいれば共有出来るの」
「わぁ、凄いわ! それなら私も!」
 チェリカも聖者としての力を高め、髪を介して光を発し始めた。輝く紫の髪は太陽の元でも独特の光を放っている。
「聖なる懐中電灯よ! 水の底は暗いだろうからね!」
「綺麗だなぁ……ありがと、チェリカちゃん。それじゃあ、行こ」
「ええ! ふふ、ねこ水着の真価が発揮されるわね!」
 楽しげに笑い合いつつ、二人はいよいよ海の中へと足を踏み入れる。

 浜から少しずつ奥へと進み、ゆっくりと泳いでいくチェリカとロラン。
 二人を迎え入れたのは色とりどりの珊瑚礁とたくさんの海の生き物達。
「わぁ……! 海の中ってこんな風になっているのね……」
 感動で目を輝かせつつ、周囲をきょろきょろと眺めるチェリカ。
「見て見て! お魚がきれい! サンゴ礁も光ってる!」
「本当だ。きらきらしてるの」
 二人の発する光は海の底を明るく照らし、それに合わせて珊瑚達も眩く輝く。
 魚達も二人の周りを泳ぎ、共に水中遊泳を楽しんでいるようだ。
「イルカとか、いるのかしら?」
「あ、あっちにいるみたいだよ」
 少し離れた場所には悠々と泳ぐイルカの姿もあった。
 二人でそちらに向かい、まずは楽しく挨拶を。ロランには動物と言葉を交わす知識もあったため、簡単な意思疎通も取る事が出来た。
「せっかくだから一緒に並んで泳いでみたいわ!」
「うん、一緒に泳いでくれるって。とっておきの場所まで一緒に行けるの」
 イルカも二人に近づいて身を寄せて、小さく鳴き声をあげている。
 その様子が人懐っこくて微笑ましくて。新しい友達と共に、更に二人は海の中を進んでいく。

 島民達が教えてくれたとっておきの場所。それは海中に広がる珊瑚礁の広場だった。
 開けた空間に様々な色や形の珊瑚が暮らし、不思議なグラデーションを作り上げている。
 その周囲には魚はもちろん、ウミガメや大きなタコといった生き物達も暮らしているようだ。
 ロランは彼らとも言葉を交わし、共に海を楽しむ事を約束する。
「皆ぼく達を迎えてくれたの。しばらくここでゆっくりしよう」
「そうしましょうか。さっきまでの場所も綺麗だったけれど、ここは本当に綺麗……」
 うっとりと広がる景色を眺めるチェリカ。彼女の発する聖なる光は、その光景を優しく照らして際立たせている。
 ロランも海の景色を楽しんでいるが、それ以上に目を引いたのはチェリカの姿だ。
「(海の中で輝くチェリカちゃん、きれいだなぁ)」
 光を纏いつつ海を楽しむ友人の姿。それは見慣れた少女のそれでありながら、どこか神秘的にも見えていた。
 そんなロランの視線に気付き、チェリカが彼の方へと振り向く。
「ロラン、どうしたのかしら」
「チェリカちゃんがきらきらしてて、きれいだなぁって。海の中もきらきらしてるの」
「ふふ、ありがと。ロランがここに連れてきてくれたからよ」
 少し照れくさそうに笑うチェリカにつられ、ロランもゆるく笑みを浮かべる。
 二人共生えた尻尾をゆらゆら動かし、その度に海水もゆらりと揺れた。

 たっぷりと海を楽しんで、そろそろ帰る時間がやってくる。
 帰りの景色もしっかりと眺め、浜へと戻る頃には夕日が島を包んでいた。
「むぅ、体が重いの……」
「お疲れ様、ロラン。水がすごいわね……」
 猫耳と尻尾から水気を払い、髪を絞るチェリカの横ではロランが水気に苦戦していた。
 彼の髪や耳もたっぷりと水を吸っていたが、それ以上に獣の足や尻尾が水でいっぱいになっているようだ。
 ぎゅうっと腕や尻尾を絞ってみるが、これはなかなか時間がかかりそう。
「私も拭くの手伝うわよ!」
「わわ、チェリカちゃんありがと」
 浜辺に置いておいたタオルを手に取り、チェリカはロランの身体をわしわしと拭いていく。
 まずは耳を念入りにごしごしと。タオルが水浸しになればその度に絞る事も忘れない。
「はい、耳はこれで大丈夫ね。次はこっち!」
 耳を念入りにごしごしされれば、次に長い髪をごしごしと拭いていくチェリカ。
 その様子は弟を気遣う姉のようだ。
「くすぐったいけど、なんだか嬉しいの」
 恥ずかしそうに顔を赤く染めつつも笑うロラン。それに合わせて耳や尻尾も大きくぴこぴこと動いていた。
「……はい、これで大丈夫ね!」
「ありがとなの。おかげで体も軽くなったよ」
「どういたしまして!」
 ロランの言葉を受けてチェリカは得意げに微笑んだ。その顔も嬉しくて、ロランもつられて笑っている。
 改めて荷物も片付け、二人は帰路へとつきはじめた。
「今日は楽しかったね。ありがと、チェリカちゃん」
「こちらこそ。また遊びにいきましょ!」
 再び手を繋ぎ、跳ねるように島を進む二人。その様子はどこにでもいる少年少女のようだ。
 またこうやって遊びに行こう。そう約束する二人を、鮮やかな夕日と優しい潮風が包んでくれていた。


 こうして猟兵達は海賊の掟を完遂させ、島の平和を守る事が出来た。
 海賊達はまた海へと旅立ち、カラール島には穏やかな時間が戻ってくるだろう。
 珊瑚礁の海も広がり続け、海の生き物達ものびのびと暮らし続ける。
 この平穏を守り抜いたのは紛れもなく猟兵達だ。

 だからこそ、この島は何度でも猟兵達を暖かく出迎えるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年04月11日


挿絵イラスト