夜明けを迎えた島
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「やあ、今日も精が出るね」
「酋長! それにアンジェラ様も! おかげさまで!」
燦々と照らす太陽の下、畑仕事や漁に勤しむ人々の様子を見て回る一組の男女がいた。
ひとりは人並み外れた美貌の男性。もうひとりは髪に花を咲かせた白い翼の女性。
このアルバ島を代表するふたりのリーダーは、村の皆から慕われる存在であった。
「アンジェラさま、これ! 浜辺でとれた貝殻、あげる!」
「まあ、ありがとうございます。あなた達に祝福があらんことを」
遊んでいた子供からの贈り物を受け取って、アンジェラと呼ばれた女性が微笑む。
その傍らではダンピールの酋長が、島民たちの生活に不満がないか話を聞いている。
「なにか不足しているものがあれば、次の交易商人が来たときに手配しよう」
「へへぇ、ありがてえこってす。ルドヴィク様たちのおかげで万事安泰でさあ」
農具を片手に笑う島民の言葉どおり、この島の暮らしは平和そのものであった。
日々の労働は忙しいが決して過酷という程ではなく、万が一に備えての蓄えもある。
人々はみな、この幸せな日々が明日も明後日もいつまでも続くと信じて疑っていない。
「神よ。今日も貴方の恵みに感謝いたします……」
言い伝えによれば、この島はかつて夜闇に包まれた絶望と悲劇の世界にあったという。
その当時のことを知る島民はもはや1人もいないが、彼らは自分たちがこの世界に辿り着いたのを神の奇跡だと信じている。信じて祈れば必ず神は応えてくださるのだと。
だが、「夜明け(アルバ)」と名付けられたこの島に今、新たな脅威が迫っている。
それに気付いている島民は、まだ誰一人としていなかった。
●
「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「グリードオーシャンのとある平和な島で、コンキスタドールが暗躍しているようです」
鉄甲船によるエンパイアの外洋調査の果て、発見された新世界グリードオーシャン。
果てしない大海原が広がるこの世界には、様々な異世界から落ちてきた「島」が点在している。その文化や生活様式は島ごとに様々だが、それらにとって共通となる脅威がコンキスタドール――呪われた秘宝「メガリス」を手にし、オブリビオンと化した者達だ。
近年のグリードオーシャンでは、このコンキスタドールが勢力を拡大し、世界を支配しつつあるという。その横暴かつ悪辣な振る舞いから人々を守るのが猟兵達の使命だ。
「皆様に向かってもらうのは『アルバ島』と呼ばれる島です。人口は1000人に満たず、島民の種族や文化様式から元はダークセイヴァーから落ちてきた島だと推察されます」
島民達は主に農耕や漁業を生活手段として慎ましくも穏やかな生活を営んでいる。闇に覆われたダークセイヴァーと違って、この世界には暖かな太陽の恵みがあり、圧政を敷くオブリビオンの領主はいない――そのため生活水準は比較的良好で安定しているようだ。
「島民のリーダー格となっているのは、ダンピールのルドヴィクという男性と、オラトリオのアンジェラという女性です」
島が落ちてきた当時の住人の末裔であるふたりは、ルドヴィクが酋長として人々の纏め役となり、アンジェラが祭祀を執り行う司祭として精神的支柱となっている。どちらもまだ若いものの、上手く役割を分担して人心を安定させているようだ。
「この島をコンキスタドールが狙った理由は、島の何処かに眠っている『メガリス』が目的のようです」
不可思議な力を持つ呪われし秘宝メガリス。それを手にした者は生き延びればユーベルコードに覚醒するが、さもなくば死んでコンキスタドールとなる。敵はそれを集めることで己の力をさらに増すためにアルバ島を狙っているようだ。
「すでに敵は島内のどこかに潜伏しているようです。現状、島民に被害は出ていませんが、それは敵の目的がメガリスであり、島民のことなど"眼中にない"からに過ぎません」
もしもコンキスタドールがメガリスを見つけてしまえば、その力を使ってまず最初にやる事は想像に難くない。連中は意味もない虐殺や蹂躙をこよなく愛する手合いだ。
「平和に暮らしている島民にいらぬ不安をかけないためにも、ここは秘密裏にコンキスタドールを討伐し、何も言わずに去るのが得策でしょう」
島への訪問はエンパイアから持ち込まれた鉄甲船を使用する。猟兵達は自由な海賊や交易商人などを装って島民と接触し、交流を深めながらコンキスタドールの計画を阻止する――というのが今回の大まかな作戦となる。
「敵がメガリスを探しているのなら、こちらが先に発見すれば有利になるはずです」
島に残された言い伝えやダークセイヴァー時代の遺構などにメガリスの情報が隠されているかもしれないし、島民でも一部の者のみが知る情報などもあるかもしれない。島を巡りながらその辺りのことを調査していけば、自ずと敵の発見にも近付くことだろう。
「島民はあまり島外の住人との交流は無いようですが、特に排他的ということもありません。外の世界の珍しい物や話を手土産にすれば、きっと歓迎してくれるでしょう」
グリードオーシャンの海は異常な海流や気象で常に荒れ狂っているため、余程の腕利きか命知らずでもなければ航海を行わない。そのため島民達は滅多に触れられない「外」の刺激に飢えているところもあるようだ。
「この島をコンキスタドールから守り抜けば、新たな島への調査にも向かえるはずです」
異常気象の影響か、この世界ではグリモアの予知とテレポート、そして島間の飛行に制限がかかっている。鉄甲船を使って周辺の島々を順番に解放していくことで、徐々にグリモアの使用可能範囲を広げていけば、いずれはこの海の全容も明らかとなるだろう。
「皆様には不便をかけるかもしれませんが、どうかよろしくお願いいたします」
リミティアはそう言ってぺこりと頭を下げると、手のひらにグリモアを浮かべて鉄甲船へと猟兵達を転送する。羅針盤は正常、目指すべき進路は夜明けを迎えた島、アルバ島。
「出港準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
グリードオーシャンに出港! こんにちは、戌です。
今回の依頼はグリードオーシャンにて、平和な島に迫るコンキスタドールの暗躍を阻止し、これを撃退するのが目的となります。
冒険の舞台はアルバ島。詳細についてはオープニングを参照ください。
この島のどこかに眠っている「メガリス」をコンキスタドールが探しているので、敵に見つけられる前にこっちで見つけてしまおう! というのが作戦です。
第一章では島民との交流や島内の探索を通じて情報収集を行います。
島はそれほど大きくはないので、猟兵なら1日以内で一巡りできるでしょう。
交流を通じて信頼を得られれば、島民から重要な話を聞けるかもしれません。
情報収集が順調に進めば、以降は暗躍するコンキスタドールとの戦いとなります。
現時点では敵の能力については不明ですが、第二章では集団戦、第三章ではボス戦となります。島民に被害が出る前にとっちめましょう。
新しい世界での冒険、どうか楽しんでいただければ幸いです。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『島を一巡り散歩』
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POW : お弁当を持って一巡り散歩。良い景色の場所で食べるお弁当は、きっと、美味しいよ。
SPD : 一巡り散歩のタイムアタック、誰が一番先に一周できるでしょう
WIZ : 島の住人達と交流したり、観光名所を巡りながら、島を一周してみます
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キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
「星錬」で外洋の果てを超えた先にこんな世界があるとは…
まぁ、この暖かな日差しは冷えた体にはありがたいな
変わった物や珍しい物を集めたり見るのが趣味の海賊を装って島民と接触する
まずは漁師達を手伝って信頼を得ようか
水着で海を泳ぎ、大型の食用魚を獲ったり、漁場を荒らす巨大鮫と言った危険な魚を狩れば心象も良くなるはずだ
水中でUCを発動、片腕を水中銃や巨大な銛に変えて獲物を仕留めていく
私の趣味でな、この島での伝承や遺跡を知りたい
代わりと言っては何だが、この獲物はそちらに進呈しよう
と、あくまで友好的に接して情報収集を行う
青い海、輝く太陽、色鮮やかな魚達…
フッ、たまにはこんな任務も悪くはないな
「『星錬』で外洋の果てを超えた先にこんな世界があるとは……まぁ、この暖かな日差しは冷えた体にはありがたいな」
エンパイアからの航海で固まった身体をほぐすように、うんと伸びをしながらキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は鉄甲船から異界の島に降り立った。
南国の気候に近い太陽と美しい海に囲まれた自然豊かな島。そこでは牧歌的な営みを送る人々が、久方ぶりにやって来た外海からの船を物珍しげに見上げていた。
「やあ、漁の準備かな? 精が出るな」
「おぅ……あんたは?」
まずは交流の一環として、キリカは海辺で小舟の支度をしていた島民と接触する。
漁師らしく良く日に焼けたその男性は"外"からの来訪者にぎこちなく応じる。それは警戒しているというよりも、滅多に無いことにどぎまぎしているという風だ。
「海賊だよ。なに、別に悪さをしに来たわけじゃない。この島のことに少し興味があってな……今から仕事というなら私も手伝おう。これでも腕には自信がある」
友好的なふるまいで笑顔を浮かべ、彼らとの距離を縮めようと申し出るキリカ。
青い海と白い日差しに映える黒の水着が、彼女の大人びた魅力をいっそう引き立てていた。
「この辺には最近、漁場を荒らすデッカい鮫がいるんだ。気をつけてな」
「ああ。心配ない、すぐに仕留めてみせよう」
漁師達と共に海に出たキリカは、小舟から海の中に綺麗なフォームで飛び込む。
そこに広がっていた光景は、まるで水族館のように様々な魚達が水の中を活き活きと泳ぎまわり、貝や海藻や珊瑚などがそれを彩る美しい光景だった。
(これは素晴らしいな)
UDCアースのリゾート地にも匹敵する豊かな海を眺めながら、人魚のように泳ぎまわるキリカ。食用として手頃な大きさの魚を見つけると、彼女は【ラ・ミラージュ】にて自らの片腕を水中銃や巨大銛に変異させ、戦場仕込みの技で仕留めていく。
「こんなものでいいか?」
「ああ十分さ! ありがとう!」
やがて小舟の上はキリカが獲った魚でいっぱいになり、この辺りの漁師に恐れられていたという巨大ザメも、今や彼女の銛に貫かれて白い肌を水面に晒している。
「私の趣味でな、この島での伝承や遺跡を知りたい。代わりと言っては何だが、この獲物はそちらに進呈しよう」
「いいのかい? そりゃあ願ったり叶ったりだ! 何だって聞いてくれ!」
気前のいい提案に漁師達からも笑みが溢れ、海辺はそのままキリカの歓迎会となる。
一度緊張がほぐれてしまえば、島民達は実に陽気で気さくで、人当たりのいい人々だった。
「美人の女海賊さんに感謝を込めて、乾杯だ!」
「「乾杯!」」
獲れたばかりの魚をその場で調理する漁師飯。新鮮な海の幸に人々が舌鼓を打つ中で、キリカも振る舞われた料理と酒に口を付けながら彼らの話に耳を傾けていた。
この島がかつて別の世界にあった頃からの古いお伽噺。その当時の名残だと噂される建物。宴の雰囲気に浮かれた人々の口からは、そんな話がすらすらと流れてきた。
ひとつひとつは曖昧で些細な情報でも、繋ぎ合わせればメガリスを見つける手掛かりとなるはずだ。キリカは彼らの話を一言一句聞き逃さずに頭に叩き込んでおく。
「青い海、輝く太陽、色鮮やかな魚達……フッ、たまにはこんな任務も悪くはないな」
美しい紫の長髪を海風になびかせながら、キリカはふっと艶めく笑みを浮かべる。
この光景に島民からの歓迎と美食まで加われば、自然と心もほころぶというもの。
せっかく新しい世界に来たのだ。これが任務だと分かってはいるが、少しくらい観光気分に浸るのも良いだろう。
大成功
🔵🔵🔵
新山・陽
wiz
海原に沈む美しい夕日を眺め、朝日を浴びながら海岸沿いを散策するのに相応しい島だと思い、立ち寄らせていただきました。ご案内いただいても?
【礼儀作法】に適った態度で、島の案内をお願いします。
安全に散歩したいのです。と、現地の危険な場所や、滞在して過ごすにあたって注意すべきことを【情報収集】します。
また、都会で販売されているベーグルを手土産に、島民の食の好みなど聞いたり、島の子どもには【コミュ力】で、都会のヒーローが活躍する話を聞かせ、秘密基地のわくわく感を伝えて、できるだけ仲良くしようとします。
夜明けを意味するアルバに、二度目の夜はまだ早いでしょう。
守ろう。そう、思います。
「海原に沈む美しい夕日を眺め、朝日を浴びながら海岸沿いを散策するのに相応しい島だと思い、立ち寄らせていただきました。ご案内いただいても?」
清潔な身なりと落ち着いた物腰、そして礼儀正しい態度で島民に話しかけたのは新山・陽(悪と波瀾のお気に入り・f17541)。海賊や冒険家といったイメージとは遠い振る舞いに島民らは面食らったようだが、特に警戒した様子は無さそうだった。
「安全に散歩したいのです。土地勘のある方に案内していただければ幸いです」
「こんな何もない島を回っても大して面白くないと思うがねえ。ま、そう言うなら」
滅多にない来訪者からの頼みを無下にはできまいと、島民は快く案内を買って出る。
ありがとうございます、と社会人の笑みを浮かべながら、陽は島内の散策に出発するのだった。
「この辺にはたま~に毒ヘビが出よるから、草薮にはあんまり近付かんようにな」
「はい。覚えておきます」
自然豊かな島と海の境を歩きながら案内役の忠告に従って、島内の危険な場所や滞在して過ごすにあたって注意すべきことを頭に入れていく陽。どうやらこの島に人間を脅かすような猛獣はほとんど居ないようだが、島の中心に近付くにつれて緑が深くなり、悪くすると遭難の危険もあるということだ。
「あの辺には島の人間も特別な時にしか入らねえ。一人では行かんほうがええ」
「よく心得ておきます。ご忠告ありがとうございます」
もし敵が潜んでいるとするなら、怪しいのはその辺りだろうか――と、脳裏で思考を巡らせつつ、あくまで観光としての体で島の地理についての情報を収集していく。
聞いていた通り島の大きさはそれほどではなく、日が沈むまでには一周できそうだ。
「そうだ。こちらは私の故郷の食べ物なのですが、宜しければどうぞ」
「おう? なんだいこりゃあ、パンみてえだけど……うおっ、甘え!」
散策の途中、陽が手土産として島民に渡したのは、ヒーローズアースの都会で購入したベーグルだった。限られた農作物と海産物だけを食べて暮らしてきた島民にとって、もっちりと柔らかく、そして果物よりも甘いパンは始めて味わうものだろう。
「お口にあえば幸いです。島民の皆様はどのようなお食事が好みなのでしょう」
「俺らの好物といったらまず魚だがよ。こんな甘くて美味いモンは滅多に食えねえなあ……海の向こうにはこんな食い物があんのか」
「なになにー、何食べてるのー?」
「そっちのお姉さんはだれー?」
嗜好品の少ない島では砂糖を使った甘味はご馳走となるらしい。話を聞いていると、海辺で遊んでいた島の子どもたちが興味を惹かれててこてこと駆け寄ってくる。
幸い持ってきた手土産にはまだ余裕がある。陽は彼らとも交流を深めようと、人当たりのいい笑みを浮かべてベーグルを差し出した。
「お姉さん、島の外から来たんだ!」
「外ってどんなとこなの? おしえておしえて!」
はむはむとベーグルを頬張りながら、好奇心旺盛な子供たちは外界の話をせがむ。
彼らに陽が語るのは、故郷ヒーローズアースで活躍する都会のヒーロー達の話。秘密基地を拠点としてヴィランの悪事に立ち向かう、ワクワクするような英雄譚だ。
「ひみつきち! かっこいい!」
「見てみたいなあ、ヒーロー!」
子供たちは目をキラキラと輝かせながら、すっかり陽の話に聞き入っている。
明るく無邪気な反応を微笑ましく感じながら、陽はふと空を仰ぎながら思う。
(夜明けを意味するアルバに、二度目の夜はまだ早いでしょう)
守ろう。そう、強く思いながら、彼女はこの太陽に照らされた島で交流と調査を続けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
アリアケ・ヴィオレータ
アドリブ・連携OK
【SPD】
夜明けの美しさを知らないなんざ、ひでぇ世界もあるもんだ。
じゃ、同じ『夜明け』の名を持つオレが島を狙う奴らをぶっ倒してやるとするか!
まずは奴らがどこで何を狙ってるか探らにゃいかんな。
つっても、オレは頭を使うのは苦手だし……島を見て回って怪しいトコを探してみるか。
あーそうだな、島の奴らがメガリスの存在を知らないってんなら、
あんまり人の手が入ってねえ奥地か……それとも逆に厳重に保管されすぎてんのか……
とにかく、なんかそんな感じの怪しいトコが見つかるといいんだが。
……ついでに今回の獲物(コンキスタドール)も見付かれば一突二魚(一石二鳥の漁師風表現)だな。
「夜明けの美しさを知らないなんざ、ひでぇ世界もあるもんだ」
そう呟いたのはグリードオーシャン出身の深海人、アリアケ・ヴィオレータ(夜明けの漁り人・f26240)。この海で生まれ育った彼女はまだ、アルバ島がかつて存在したという夜闇の世界の事はよく知らない。けれど"それ"の過酷さは想像に余りある。
「じゃ、同じ『夜明け』の名を持つオレが島を狙う奴らをぶっ倒してやるとするか!」
もう二度と、この島の『夜明け』が脅かされることの無いように。武器であり仕事道具である銛を担ぎながら、有明(アリアケ)の漁師は島の調査に乗り出す。
「まずは奴らがどこで何を狙ってるか探らにゃいかんな。つっても、オレは頭を使うのは苦手だし……」
小難しいことを考えるより身体を動かすほうが得意なアリアケは、とにかく島を見て回って怪しいトコを探してみることにする。幸いそれほど大きな島でも無いようだし、手当たりしだいに探ってみてもそれなりの成果は見込めることだろう。
「あーそうだな、島の奴らがメガリスの存在を知らないってんなら、あんまり人の手が入ってねえ奥地か……それとも逆に厳重に保管されすぎてんのか……」
この島の集落は主に海辺に面したあたりに集中しており、中心部は手つかずの自然が広がっている。誰かが隠している可能性もなくはないが、まずは奥地から調べてみるかと、アリアケは生い茂る森の中へと足を踏み入れていく。
「なんか怪しいトコが見つかるといいんだが……っと?」
銛を振るって蔓草を払いながら進んでいくと、"手掛かり"は思わぬ形で出てきた。
野生の獣のものとは明らかに違う、大きなものを引きずったような痕と誰かの足跡。それもまだ比較的新しいと思しきものが森の中に点在しているのを見つけたのだ。
「ここには島の人間もあんまり立ち入らないって言うし……」
だとすればこれは、メガリスを狙うコンキスタドールのものである可能性が高い。
島民に気付かれずに潜伏するには、確かにここはうってつけだろう。同時に敵がこの森に潜んでいるということは、近くにメガリスがある可能性も俄然高まった訳だ。
「……こいつは一突二魚だな」
一石二鳥の漁師的表現を口にしながら、アリアケは歯を剥き出しにして豪快に笑う。
メガリスを探すついでに今回の獲物の手掛かりまで見付かるとは実にツイている。お互い探すものが同じなら、これを追っていけば出し抜くチャンスも生まれる筈だ。
夜明けの漁り人はぐっと銛を握りなおすと、足跡がいったい何処に向かっているのか、注意深く探索と調査を続けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
(アルバ島に降り立って日差しに目を細めながら島全体を見渡しす)
平和な島です。
本当にこの島に邪な輩が潜んでいるなど考えたくもありませんが...。
(広場のような開けた場所で立ち止まる)
ここでいいでしょう。
(目を閉じ、すっと手を真横にピンと伸ばすと{絢爛の旋律}で『ダンス』を始める)
このリズムは繁栄と栄華のリズム
この島に相応しいリズムです。
こうして踊ることで注目を集めて
島民の皆さんをこの広場に集めるとしましょう。
リズムと色を見ればわかるはずです。
どす黒いリズムの持ち主がだれなのか
「平和な島です」
まぶしい日差しに目を細めながら、播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)はアルバ島に降り立つ。見渡せば目に入るのは南国風の美しい自然と、のどかな暮らしを営む人々の様子。穏やかな「色」と「リズム」に満ちた光景が広がっていた。
「本当にこの島に邪な輩が潜んでいるなど考えたくもありませんが……」
呪われし秘宝を求めて、コンキスタドールがこの平和を脅かすと言うなら――そうなる前に事件を阻止したい。静かな決意を胸に秘めながら、少女はゆったりとした足取りで島内を歩いていく。
「ここでいいでしょう」
やがてクロリアは、島の集落にある開けた広場でふと立ち止まると、目を閉じる。
すっと手を真横にピンと伸ばし、背中の翅を微かに震わせて、奏でるは『絢爛の旋律』。蒼天に輝く太陽に照らされながら、リズムに合わせて彼女はダンスを躍る。
それは独特でありながらも人の目を惹きつける。近くを通りがかった島民は自然と足を止め、ひとり、またひとりと増えていき、やがて大きな人だかりとなっていく。
「わあ、きれい……」
「いいぞ姉ちゃん!」
陽気な口笛と手拍子、そして惜しみない歓声が島民たちから踊り手へと送られる。
人々の高揚を感じながらクロリアはさらに熱を込めて、蒼天に輝く太陽と陽光に照らされ輝く大地を表現した、力強くも躍動感のあるダンスを披露する。
(このリズムは繁栄と栄華のリズム。この島に相応しいリズムです)
燦然と輝くグリードオーシャンの太陽の下、夜明けの名を冠する島で躍る彼女の姿は、眩しいほどに美しく。珍しい外海からの来訪者を一目見ようと、島中から多くの島民が広場に集まってくる。
(この中に、ダラキュな方はいるでしょうか)
栄華のダンスを踊りながら、クロリアは集まってきた島民達の様子に気を配る。
彼女は認識した対象を「色」と「リズム」に置き換えて同期するという特殊な能力を持っている。例えばこの場の高揚した人々の雰囲気は赤のリズム、というように。
(リズムと色を見ればわかるはずです。どす黒いリズムの持ち主がだれなのか)
他の者達とは明らかに違ったリズムを発する者がいれば、それは恐らく潜伏中のコンキスタドール――この島に害を為す者だと推察できる。どんなに巧妙に悪意を隠していたとしても、クロリアの共感覚を誤魔化すことはできない。
(……いました)
人だかりの向こう、広場の端、そこにクロリアが探していたリズムの持ち主がいた。
欲望と悪意に満ちた、吐き気がするようなドス黒いリズム。その人影はどうやら女性のようだったが、こちらと目が合うとすぐに踵を返して広場から遠ざかっていく。
どうやら向こうも此方が猟兵だとは気付いたらしい。今はまだメガリス捜索を優先して事を構えるつもりは無いのか、森に覆われた島の中心部に向けて去っていった。
(貴方の「色」と「リズム」は覚えました)
クロリアは敵が消えた方角をしっかりと頭に留めると、すうっと鋭く目を細める。
次に会ったときは逃がしはしない。リアに充たされたこの島の色とリズムを、あんなものに塗り潰させはしないと――彼女は決意を新たにするのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
ダークセイヴァーでは見慣れた造りの建物や様式
それが陽の光の下にあると言うのは不思議な感覚だな
宇宙バイクを足にして島を探索する
このバイクも外の世界の珍しい物だ
興味を持っている様子の島民にはこれをネタに話しかけ、会話の中で島の情報を得たい
「ここではあまり見ないかもしれないが島の外にはこんな乗り物もある。気になるなら、乗ってみるか?」
「俺は島の外から来たから、この島の事情には疎くてな。何か島の歴史や面白い話が聞けると有り難い」
仕事の為…というのはもちろんだが、個人的な興味もある
他の世界から落ちて出来た島
そんな物があるとは考えもしなかった
ここに、そしてこの先に何があるのかと、ついそんな事を考えてしまう
「ダークセイヴァーでは見慣れた造りの建物や様式。それが陽の光の下にあると言うのは不思議な感覚だな」
燦然と降り注ぐ陽光を浴びながら、夜明けの島アルバを駆ける一台の宇宙バイク。
その乗り手、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は島の情景を眺めながら穏やかな笑みを浮かべる。何の変哲もないのどかな村落も、それがあの夜闇の世界からやって来たものの末裔だと思えば、どこか感慨深く感じられるものだ。
「おや兄さん、外から来た人だろう? 変わったものに乗ってるねえ」
畑仕事をしていた島民のひとりが探索中のシキに声をかける。滅多にない島外からの来訪者というのもあるが、やはり興味を引いたのは彼の乗る宇宙バイクのようだ。
「鉄の馬なんて始めて見たよ。噛み付いたりしないのかね?」
「ここではあまり見ないかもしれないが島の外にはこんな乗り物もある。気になるなら、乗ってみるか?」
「おっ、いいのかい!」
丁度いい会話のネタになるだろうとシキが提案すると、島民は喜んでやって来る。
レラと名付けられた彼のカスタムバイクは、派手さはないが実用性重視で丈夫で速い。ろくな舗装もされてないこの島の道でも怯まずガンガン進んでいける。
「しっかり掴まってろよ」
「おおっ!! こりゃすげぇ!!」
座席の後ろに島民を乗せると、アクセルを噴かして急加速。唸るエンジンの音と振動、風を切って駆ける感覚――それらは島民がこれまで味わったことのない刺激だ。
興奮した顔で喝采を上げているところからして、どうやら気に入ってもらえたらしい。
「いやあ、いい体験させてもらったよ! 何か礼をしなくちゃな!」
「気にしなくていい。だが、礼と言うなら、そうだな……」
島の外周をひとっ走り駆けた後、大満足の島民と握手を交わしながらシキは言う。
恩に着せるつもりはさらさら無かったが、彼にはこの島に来た本題の理由がある。
「俺は島の外から来たから、この島の事情には疎くてな。何か島の歴史や面白い話が聞けると有り難い」
それは仕事のため――というのはもちろんだが、個人的な興味もある。
(他の世界から落ちて出来た島。そんな物があるとは考えもしなかった)
広がる大洋と異界の「島」からなる未知の新世界・グリードオーシャン。
ここに、そしてこの先に何があるのかと、ついそんな事を考えてしまう。
「島の歴史ねえ。そういうのなら酋長のルドヴィク様が詳しいだろうが」
そう言いながら島民は、自分が知っている限りのこの島の逸話を語ってくれた。
遠い昔、この島がグリードオーシャンに落ちてきて間もない頃。未知なる異世界で不安に怯える人々を纏め上げたのが、現在の酋長と司祭のご先祖だったという。
彼らはその手に光輝く「宝」を掲げ、これは神の御業であると説いた。自分達がこの地に落とされたのは災いではなく、神の導きによる「救い」なのだと。
「闇の中にいた俺達のご先祖達を、神様は光の中にすくい上げて下さった。それから俺達はいつも神様に感謝を欠かさず今日まで平和に暮らしてこれたのさ」
どこまで本当のことかは分からないけどな、と笑いながらその島民は語った。
彼らにとってはダークセイヴァーの事はもう、半ば伝説に近いお伽噺のようだ。
「今の酋長も立派な方だが、当時の酋長も偉いお方だったらしいぜ。当時は島の真ん中らへんにあった村を移転させて、今の海辺に移すよう命じたのもその人らしい」
そのお陰で現在の島民は漁業で生計を立てられるようになり、生活は安定している。
島の暮らしが現在の平和な形に落ち着くのにも、様々な経緯と歴史があったようだ。
「なら、昔の村の建物などは、まだ島の中央に残っているのか」
「だと思うよ。もっとも殆ど壊れて遺跡になってると思うがねえ」
ふむ、とシキは思案する。島民の言い伝えに出てきた「宝」がメガリスだとすれば、かつての村の遺構にその手掛かりが残されているかもしれない。島の中央部は今や深い森に覆われているが、調査してみる価値はありそうだ。
「なるほどな。興味深い話だった。感謝する」
「いいってことよ! また乗せてくれよな!」
笑顔で大きく手を振る島民と別れ、シキは再びバイクのエンジンを吹かす。
目指すは島の中央部。そこに「何が」あるのかは分からないが、確かめずに帰ることはできないと、高鳴る心臓の鼓動が訴えていた。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
ダークセイヴァーの土地に、光が……
たとえ世界を異にしようと……この平穏な光景を、決して侵させはしない
シスター服やダンピールの容貌は警戒心を解す一助になる筈
【守護霊獣の召喚】で呼び出した獅子に【騎乗】して訪れる
珍しい大型動物で子供の興味を惹き、大人を会話に引きずり込む
可能ならルドヴィクとアンジェラの両名にお目通り願う
私は島々を巡り、伝承を収集する旅の者です
これは私の相棒、黄金の獅子……この島では珍しいようですね、獅子よ、子供たちと遊んであげてください(パフォーマンス)
この島には面白い伝承がある、と聞いてやってきました
とても古い物語のようで、そういう話に詳しい方がいらっしゃれば……
「ダークセイヴァーの土地に、光が……」
見慣れた印象のある村落が太陽に照らされている光景を目の当たりにして、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は感動を抑え切れなかった。
夜闇に包まれたかの世界から零れ落ちた一片が、悪しきヴァンパイアの圧政から免れ、こうして日の下で平和な暮らしを営んでいる。それはまさに奇跡に等しい。
「たとえ世界を異にしようと……この平穏な光景を、決して侵させはしない」
固く、強く、決意を拳に握りしめ、オリヴィアは黄金の獅子に跨り島に上陸する。
この地に潜んだ邪悪なオブリビオン――コンキスタドールの企みを挫くために。
「わぁ、わぁぁ! なにこれー!」
「でっかーい! かっこいい!」
見慣れない動物に乗って島を訪れたシスターに、最初に反応したのは子供達だった。
【守護霊獣の召喚】にて呼び出された黄金の獅子は、その勇ましい姿と佇まいで童心を惹きつける。オリヴィアは集まってきた子らに微笑みかけながら挨拶をする。
「私は島々を巡り、伝承を収集する旅の者です。これは私の相棒、黄金の獅子……この島では珍しいようですね、獅子よ、子供たちと遊んであげてください」
ウォン、と一声鳴いた獅子はオリヴィアを背中から下ろすと、好奇心旺盛な子供たちの遊び相手となる。遠慮のない子らはたてがみをもふもふしたり尻尾を引っ張ったりと好き放題だが、無茶振りに慣れている獅子は怒ったりせず辛抱していた。
「おや。これはすみません、子供たちがご迷惑を……」
「いえ、お気になさらないでください。獅子もきっと喜んでいます」
子供たちの様子に気付いて島の大人たちがやって来ると、オリヴィアは本題に入る。
神に仕える者であることを示すシスター服、そして島の酋長と同じダンピールの容貌は、信心深い島民らの心を解きほぐす一助ともなっていた。
「この島には面白い伝承がある、と聞いてやってきました。とても古い物語のようで、そういう話に詳しい方がいらっしゃれば……」
「島の昔話ですか。それなら酋長のルドヴィク様と司祭のアンジェラ様に聞くのが一番でしょう」
島民たちは特に警戒した様子もなく、島のリーダーの住まいの場所を教えてくれた。
両名とも忙しい立場ではあるが、島外の者が会いたいと言えば決して無碍にはしないだろう、と。
果たして、オリヴィアがそこに向かってみると、酋長達は快く迎え入れてくれた。
「ようこそいらっしゃいました、旅のお方」
「何もない島ですが、どうかお寛ぎください」
他の島民の住まいよりも幾らか広いくらいの質素な邸宅で、穏やかに微笑むダンピールの男性がルドヴィク。そしてオリヴィアのものとはややデザインが異なるものの、質素な修道服を身にまとったオラトリオの女性がアンジェラであった。
「お目通りをお許しいただき、感謝いたします」
礼に則って丁寧に挨拶をしてから、オリヴィアは改めて島の伝承について尋ねる。
ダークセイヴァーから落ちてきたこの島の昔話――島のリーダーである酋長と司祭は、それについてより深く知る人物であった。
「この世界に流れ着いたばかりの私達の先祖を支えたのは神の力――ではありませんでした」
「その『宝』がメガリスと呼ばれるものであると先祖が知ったのは、ずっと後の話です」
突然異世界に落ちてきた当時の人々の混乱は大きく、長きに渡る圧政を受けてきた村の生活は逼迫していた。太陽の恵みがあったとしても、どうともならないような窮状を覆したのが『神の奇跡』として島民らに伝えられる宝――メガリスだったのだ。
「メガリスの力を得た当時の村長と司祭は人々を導き、生活の基盤を安定させました。しかしやがて、その力が危険なものであることも理解したのです」
メガリスとは呪われし秘宝。それを手にして生き延びた者はユーベルコードの力に目覚めるが、適合できなかった者は死してコンキスタドールと化す。いずれこの力が災いを為すことを悟ったふたりは、メガリスを誰も知らぬどこかに封印したという。
「そのメガリスは、今どこに?」
オリヴィアのその問いかけに、酋長と司祭は無言のままそっと首を横に振った。
現在のふたりにもその在り処は伝えられていないか、あるいは知っていても軽々には教えられないか。いずれにせよ島民の安寧を担う者としては当然の返答と言えた。
「貴女が悪しき人間でないことは分かります。だからこそ真実をお話しました」
「ですが願わくば、この話は島民には伝えず、心の中に秘めて頂ければ幸いです」
「ええ、心得ております」
オリヴィアはこくりと頷くと、窓から外の景色を眺める。青い海が広がる浜辺で、子供たちが黄金の獅子と戯れ、日焼けした大人たちが漁に精を出す様子が見えた。
この平穏な暮らしに余計な波風を立てたくはない。メガリスの件も、コンキスタドールの件も、彼らには伝えることなく秘密裏に解決する――それが最上だろう。
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドラ・クリソベリル
【WIZ】
メガリスねぇ……闇雲に探したって仕方ねぇな。現地の連中に話をしてみるか
ほらよ、大人の連中に缶の酒をやるよ。折角だ、飲みながら語るぞ。
島のことは聞いておかねえとな。特に現地の連中でもあまり立ち入らないような場所は抑えておくぞ。まぁ多少怪しまれても軽く酔わせれば誤魔化せるだろ。ほら飲め
酒が気に入ったんならもっとくれてやるからその分アタシに強力しろ。
「メガリスねぇ……闇雲に探したって仕方ねぇな。現地の連中に話をしてみるか」
海風に煙草の煙をくゆらせながら、そう呟いたのはアレクサンドラ・クリソベリル(突然変異種・f22521)。決して広くはない、だが狭くもない土地で、効率的に目的のものを探すには、やはり現地住民の助けを借りるのが一番だろう。
「なあ、ちょっと聞きたいんだが」
「おう? 何だいあんた、外の人だね?」
近くの連中に声をかけると、帰ってきたのは警戒よりも好奇心の強い反応だった。
グリードオーシャンのほとんどの人々は、自分が生まれた島から出ることなく暮らす。危険な外洋を超えてきた島外の来訪者には、ある種の憧れもあるようだ。
「なんでも聞いてくれよ! その代わり、あんたの話も聞かせてくれよな」
「別に大して面白い話は持ち合わせてねえけどな。ほらよ」
土産話のかわりにアレクサンドラがくれてやったのは、缶に入ったアルコール。
この世界の文明水準ではまず見られないものだろう。見よう見まねでプルタブを開けた島民たちは、一口飲むなり「うめえ!!」と歓声を上げた。
「折角だ、飲みながら語るぞ」
自身も愛飲する缶チューハイを喉に流し込みながら、アレクサンドラは島民と情報のやり取りをする。酒の力というのはやはり大したもので、元より陽気だった海の男たちは酒精が回るにつれてますます饒舌になった。
「この島のことについて聞かせてくれ。特に現地の連中でもあまり立ち入らないような場所とかな」
「俺らでも入らない場所ねえ……島の真ん中のほうには、滅多なことが無い限り近付かねえな。深い森が広がってて、うっかり迷子になったら出られねえからな」
ひっく、と赤ら顔でゆらゆらと身体を揺らしながら島民は語る。いわくその森を抜けた島の中央部には島民の先祖が暮らしていた村があると言うが、実際に確かめた者はいないらしい。
「後はそうさなあ……島の反対側にある入り江は波が複雑になってて、凶暴なサメなんかがうようよしてやがる。危険過ぎるもんで漁師でも寄りつかねえよ」
「へえ、そりゃおっかないな」
逆に言えば島民に気付かれず島に上陸するにはその入り江はもってこいだろう。
コンキスタドールの連中はそこから入りこんだのかもな――と考えを巡らせながら、アレクサンドラは顔色ひとつ変えないまま缶チューハイを煽る。
「けどあんた、どうしてこんな事を聞くんだ?」
「ああ? 別にいいだろ何だって。ほら飲め」
怪訝そうに首をかしげる島民に新しい酒の缶を押し付け、疑問を強引に誤魔化す。
このまま酔わせてしまえば怪しむことも忘れるだろうし、うまくすれば自分が何を聞かれたかも忘れてくれるだろう。幸い島民はこの異国の酒がえらく口に合ったようで、もうすっかり出来上がりつつあった。
「酒が気に入ったんならもっとくれてやるからその分アタシに協力しろ」
「へへへ、しゃーねえなあ……ひっく! 何でも聞いてくれよ姐さん!」
すっかり酒盛りの雰囲気になった場で、酒を振る舞いながら情報をかき集めるアレクサンドラ。彼女自身を除いて、ここに集った連中はきっと明日は二日酔いだろう。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
他所の世界から、ある日突然海のど真ん中に落っこちるんか。そういう目に遭っても生きていけるんだから、つくづくおれら人間はタフな生きモンだ(笑って)
ともあれ、ここの世界はまだ右も左もわかんねーし。
コンキスタドール……だっけ?は怖そうだけど、旅のし甲斐もありそうだ。
ここの人たちはもとはダークセイヴァーに居たんか。
元の世界と作法とかはそんなに変わってねえと思うし、今までの依頼で見知ったダークセイヴァーの〈世界知識〉を思い出しながら、〈コミュ力〉を活かしてコンタクトを取ってみる。
一応ここでは見た目通りの旅人って名乗っておくかな。ヘンな作り話とかは苦手だけど、ここに来るまでの道中を土産話にする感じで。
「他所の世界から、ある日突然海のど真ん中に落っこちるんか。そういう目に遭っても生きていけるんだから、つくづくおれら人間はタフな生きモンだ」
面白そうに笑いながら、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)はアルバ島を歩く。
きっと今の暮らしまでには様々な苦労があったのだろうが、それでも人々は力強くも平和な生活を営んでいる。立派なものだと、心から彼はそう思う。
「ともあれ、ここの世界はまだ右も左もわかんねーし。コンキスタドール……だっけ? は怖そうだけど、旅のし甲斐もありそうだ」
この先には一体どんな島が待っているのか、旅人して興味が沸かない訳がない。
そのためにも、まずはこの島の事件を解決して、次の島への道を開く必要があった。
(ここの人たちはもとはダークセイヴァーに居たのか)
ざっと島民たちの様子を見て歩いたところ、環境による生活様式の差はあれど、作法などは元の世界とそんなに変わっていないようだ。そこで嵐はこれまでの依頼で見知ったダークセイヴァーの知識を思い返しながら、無礼にならないよう接触を取る。
「やあ。今日の漁の調子はどうだ?」
「大漁さ! っと、あんたは外から来た人だね」
よく日に焼けた漁師らしい男が、ニッと笑いながらコンタクトに応じる。この小さな島では島民全員が顔見知りらしく、島外からの来訪者ならばすぐに分かるようだ。
「しがない旅人だよ。この島のこととか珍しい話とか、色々聞いてみたくてさ」
嵐は見た目通りの名乗りをあげると、自身がここに来るまでの道中に体験したことを土産話にして情報収集を試みる。ヘンな作り話をでっち上げるのは苦手だが、この世界の島々が他世界から落ちてきたものなら、過去の依頼の体験談が使えるだろう。
「これでも色んな世界……島を渡ってきたからな。面白い話なら沢山あるぜ」
「へえ、若いのに大したもんだなあ。俺もガキの頃は海賊なんかに憧れたもんだが」
過酷な潮流や異常気象が荒れ狂うグリードオーシャンの外洋は、常人が航海するには余りに危険な海だ。だからこそ、その荒海を渡ってきた人間は敬意の対象ともなるし、その体験談は大きな価値が認められるようだ。
「ここには大したものは何もないが、それでも良いか?」
「いいさ。あんた達にとって当たり前の話でも、おれにとっては新鮮だしな」
島に伝わる言い伝えや、日常のちょっとした出来事など、島民の語るあらゆる話を嵐は心のメモに書き留める。一見すれば些細な情報も、纏めればコンキスタドールが狙っている呪われし宝――メガリスの在り処へとつながる手掛かりとなるはずだ。
見知らぬ土地の話を聞いて、自分の体験を語り、交流を深めていく。それは旅の醍醐味のひとつでもあり。蒼天から降り注ぐ日差しのように、嵐の心は温まっていた。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
(「商品」として所持品の本の人間用複製品用意)
島を渡りそこに伝わる御伽噺を収集
本に纏めている冒険商人としてルドヴィク様と接触
礼儀作法も活かせますし…心情的に海賊は避けたいところ
…著作権等を鑑みると海賊並みの悪行ですが…
子供達への読み聞かせや一時の娯楽に如何でしょう?
竜退治の騎士に東方の国の奇妙な儀式、地下大迷宮に挑む竜騎士の話もありますが…やはり暗夜の世界、吸血鬼と半吸血鬼の決闘が気になられますか
代金の代わりに島に伝わる伝承や祭祀の情報かそれに詳しい方へのご紹介を頂けますか?(暗にアンジェラ様との接触を要求)
二人の情報を元に後でUCでの探索を行いますが…
もう少し伝承に耳を傾けていたいですね…
「突然の来訪にも関わらず、こうして歓迎していただき感謝しております」
「いえいえ。こんな寂れた島にまで来てくれる商人の方は多くはないので」
アルバ島のやや内陸寄りに建てられた質素な邸宅で、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)と酋長のルドヴィクは相互の交流を深めていた。
鉄甲船に乗ってやって来たトリテレイア達猟兵に対して、島のリーダーであるルドヴィクの態度は友好的だった。荒海によって隔てられた他の島々と接する貴重な機会を、無碍にすることは無いという判断のようだ。
「それで貴方は、私達に売りたいものがあるとの事でしたが」
「はい。私が扱っている商品はこちらの本になります」
すっとトリテレイアが差し出したのは、異世界の各地で聞き知った騎士道物語やお伽噺を書き記した本を、人間用に複製したものだった。各地の島を渡りそこに伝わる御伽噺を収集し、本に纏めている冒険商人というのが彼の名乗った肩書きである。
(礼儀作法も活かせますし……心情的に海賊は避けたいところ……著作権等を鑑みると海賊並みの悪行ですが……)
お伽噺には作者が定かではない話も多いことだし、異世界に来てまでそれを咎めるような者はいないだろう――と、機械仕掛けの騎士はとりあえず自分を誤魔化しておく。
「子供達への読み聞かせや一時の娯楽に如何でしょう?」
「これはこれは、よくぞこんなに集められましたね」
重ねれば電話帳サイズの分厚さになる本の束を、ルドヴィクは手にとってページを捲る。この小さな島では娯楽も少ないのだろう、落ち着いていても目は興味津々だ。
トリテレイアはその反応を観察し、彼がどの話に特に興味を持ったか気付いていた。
「竜退治の騎士に東方の国の奇妙な儀式、地下大迷宮に挑む竜騎士の話もありますが……やはり暗夜の世界、吸血鬼と半吸血鬼の決闘が気になられますか」
「ええ、そうですね。今はもはや遠い、私達の先祖の故郷が思い浮かびますから」
ダンピールの青年は頷く。自分たちの暮らすこの島が、かつてはこのお伽噺と同じ暗夜の世界にあったことを彼は知っている。酋長としての立場上、他の島民よりも詳細に。
「明日をも知れぬ絶望の中で、私達の先祖は暮らしていました。故にこの世界に"落ちて"きた時、彼らはそれを福音と――神の与えた奇跡と疑わなかったそうです」
事実、それは奇跡に等しい出来事だったのだろう。ひとつの村とその住人が丸ごと異世界に転移するなど、ヴァンパイアであっても予測だにしなかったに違いない。
「今や真に受ける者も少ない"お伽噺"ですが、確かにそれは実在した過去なのです――と、長々と失礼しました。まだ本の代金を支払っていませんでしたね」
商談に戻ろうとするルドヴィクであったが、トリテレイアは最初からこの島の人々から金銭を貰うつもりは無かった。求めている対価はそれとは別種のものである。
「代金の代わりに島に伝わる伝承や祭祀の情報か、それに詳しい方へのご紹介を頂けますか?」
「……対価と言うには安すぎる気もしますが、貴方にとってはそれが次の"商品"になる、ということですか。でしたらアンジェラに尋ねられると良いでしょう」
この時間ならば教会に居るはずです、とルドヴィクは要求された対価に応じた。酋長である彼に並んでこの島のリーダー格である司祭の彼女だが、接触すること自体に特別なアポイントは必要ないようだ。
「――そうですか。酋長からのご紹介で。そういうでしたら喜んで」
かくして教会に向かったトリテレイアがそこで出会ったのは、修道服に身を包んだオラトリオの女性だった。ダークセイヴァー様式の礼拝堂で祈りを捧げていた彼女は「あとで私もそのお伽噺を読んでみたいものです」と微笑みながら語りはじめた。
「私達司祭と酋長の一族の先祖は、右も左も分からぬままこの世界に迷いこんだ村人を『神の奇跡』によって救済し導きました。かつての世界には存在しなかった『太陽』を神の象徴として崇めながら――ですがそれは神の奇跡ではありませんでした」
「それは、一体どういう……」
「メガリス。海を渡って来られた貴方のほうが、よくご存知かもしれませんね」
"それ"がいつからこの島にあったのかは分からない。確かなのはアンジェラとルドヴィクの先祖が見せた「神の奇跡」はメガリスに与えられたユーベルコードだったこと。異世界で人々が新たな生活の基盤を築くには、超常的な力が必要とされたのだ。
「海に囲まれた暮らしが安定の兆しを見せた後、先祖は自らの手でメガリスを封じました。これ以上、その呪われた力に頼ることは災いを招くと判断したのでしょう」
そして酋長と司祭は、メガリスによって為された事象を全て「神の奇跡」に置き換え、この島に新たな信仰を確立させた。メガリスの存在を隠蔽し、同時に人心を安定させる。そのために作られた祭祀を護り続けることが、司祭の一族の役目なのだ。
「がっかりさせてしまったかもしれませんね。ですがこれがこの島の本当の歴史です。ルドヴィクが紹介したということは、貴方は信用のおける方なのでしょう」
これからも自分は信仰という"お伽噺"を護り続けていくだろうとアンジェラは語る。
太陽の下で、皆が何不自由なく暮らしていける。神が見守ってくれていると心から信じられることが、人々の心の平穏に繋がると信じているから。
「……貴重なお話をありがとうございます。もし宜しければ、もう少しお話を聞かせて頂いても構いませんか?」
「ええ、勿論です。貴方からは沢山のお話をいただいたそうですから」
アンジェラは微笑み、司祭の一族に伝わる過去の話や目立った事績について語る。トリテレイアはその中に含まれるメガリスに関わる情報を聞き逃さぬよう記憶する。
後ほどこの情報を元に【自律式妖精型ロボ】を偵察に向かわせ、探索を行う予定だ。コンキスタドールよりも早くメガリスを見つけなくては。しかし今は――。
(もう少し伝承に耳を傾けていたいですね……)
この島の平和のために作られたお伽噺。そしてその平和が作り上げた言い伝え。
大事に仕舞われた彼のオリジナルの本に、また新しいページが書き加えられることになった。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
良い島ね…まさか、新しい世界で同じ故郷の同族と会えるとは思わなかったわね。
同族がこの穏やかな島で平和に暮らしてるのがわたしは嬉しいわ。
「日差しが眩しいのー」
雪花の他、【虜の軍勢】にて遺構等の調査にエビルウィッチ、邪悪エルフ、ダークセイヴァー出身の黒い薔薇の娘たちを召喚。
元同世界の出身(の末裔)で同族という事でルドヴィクと話をしたり、アンジェラと交流したり。
ここへ来た経緯を話し、故郷の話や他世界の話等も語りつつ、遺構や伝承等の情報を集め、眷属達に調査を指示するわ
絶望と悲劇に塗れた世界だけど、それに抗い、人々はしっかりと生きてるわ。
いつか、この島みたいに夜明けが来て平和な世界が訪れると信じてね。
雛菊・璃奈
綺麗な島…。
穏やかで元はダークセイヴァーの島なんて感じられないくらいだね…。
メイド6人と仔竜達連れて参加…。
ルドヴィクさんやアンジェラさんに挨拶して、猟兵である旨や事情を説明…。
後はメイド達による今まで各世界で身に着けた【料理】を披露して島の人達と交流…。
いろんな世界の料理で親睦会でも開かせて貰おうかな…。
わたしも地元(サムライエンパイア)の料理なら多少できるし…。
いっぱい人が来れば情報も集めやすいと思うしね…。
この島(世界)の料理とか特産品も興味ある…。
「お魚新鮮!」
「海産物豊か!」
「フルーツも手に入りそう!」
お刺身とか焼き魚とか美味しそうだね…。お刺身の風習ってあるのかな…?
「綺麗な島……。穏やかで元はダークセイヴァーの島なんて感じられないくらいだね……」
青い海と豊かな自然、そして何よりも眩い太陽に照らされた島を見渡して、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)はぽつりと呟く。彼女が連れてきた6人のメイド人形と3匹の仔竜も、主に浜辺に水揚げされた食材を見てキラキラと目を輝かせている。
「良い島ね……まさか、新しい世界で同じ故郷の同族と会えるとは思わなかったわね」
「私も、父以外のダンピールの方とお会いしたのは今日が始めてですよ」
海風に金髪をなびかせるフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)の言葉に、酋長であるダンピールのルドヴィクは笑顔で応える。その向こうでは司祭のアンジェラが、穏やかな微笑みをたたえて料理の支度をしていた。
「お魚新鮮!」
「海産物豊か!」
「フルーツも手に入りそう!」
璃奈のメイドたちは新世界の食材にうきうきと心躍らせながら、各世界で身につけた料理の腕前を披露していく。情報収集のためにはまずは島民との交流、そのためには親睦会を開かせて貰うのが一番効率的だろうと、彼女たちは考えたようだ。
「お刺身とか焼き魚とか美味しそうだね……。お刺身の風習ってあるのかな……?」
「魚を生のまま食べるのですか……? それは、始めて聞くお料理ですね……」
璃奈が故郷エンパイアの料理の話をすると、台所のアンジェラが目を丸くする。
料理とはある意味で異文化交流の集大成だ。折角ならいろんな世界の料理を味わってもらおうと、メイドたちは腕によりをかけた品々をテーブルに並べていく。
「同族がこの穏やかな島で平和に暮らしてるのがわたしは嬉しいわ」
「ありがとうございます。貴女は、私達の先祖と同じ世界から来たのですね」
そうして始まった親睦会の席上で、ふたりのダンピールが言葉とグラスを交わす。
フレミアと璃奈はすでに自分たちが猟兵である旨や、この島に来た経緯と事情を話していた。島内にコンキスタドールが潜んでいると知って酋長と司祭は驚いていたが、島民の安全を第一とすることを条件に猟兵達への協力を約束してくれた。
「こんな形ではありますが、お会いできて本当に嬉しい。もし宜しければ先祖の故郷の話を聞かせて貰えませんか?」
「ええ、構わないわ。ただ少し暗い話も混ざってしまうと思うけれど」
今だ闇に包まれたダークセイヴァーの様子や、少しずつ変化しつつある情勢をフレミアは語る。その他にも依頼で訪れた世界の情景や出来事など、話題は尽きない。
ルドヴィクもこの世界に流れついた先祖がいかにして今日まで暮らしてきたかをつぶさに語り、お互いの知らない世界についての理解を深めあうのだった。
「この島の料理とか特産品も興味ある……」
「だったらこの鍋を食いなよ嬢ちゃん! 美味いぜ!」
親睦会はやがて島中の人々が集まってくる、大規模な宴会の様相を呈してきた。
笑顔で島民が璃奈に勧めたのは、いかにも漁師飯といった感じの豪快な鍋料理。
見てくれは雑然としているが、魚介の身と一緒に放り込まれたアラや骨から出汁が染み出して、食欲をそそるいい匂いを上げている。
ぱくりと一匙すくって口に運べば、濃厚な魚介類の旨味が口いっぱいに広がった。
「ん……美味しい……」
「そいつは良かった! ウチの特産品といったらほとんど魚だからな!」
もっと食え食え! と久方ぶりの客人を盛大にもてなしたいのか、次々と新しい魚料理を運んでくる島民達。その一方では仔竜たちが会場をぱたぱたと飛びまわり、島の子供たちに「かわいい!」と追いかけ回されていた。
「おかわり!」
「いっぱい作った!」
「デザートもある!」
振る舞う相手が多ければメイド達も気合が入るのか、台所のほうもフル稼働である。
アルダワ料理、エンパイア料理、ダークセイヴァー料理――島民にとっては味わったことの無い料理の数々は大いに喜ばれ、披露する傍から皿が空になっていく。
生魚ということで最初は驚かれたお刺身も、いざ口にしてみれば大好評のようだ。
もちろん猟兵達は親睦会を楽しむだけではなく、情報収集もきちんと行っている。
(いっぱい人が来れば情報も集めやすいしね……)
メイド達が作った異世界の料理に舌鼓を打つ島民から、璃奈はこの島に伝わる話や最近気になった事など、雑多な情報を集めていく。それらを統合するとやはり怪しいのは島の中央部、島民達も近付かないという森の奥地にある古い村の遺構だろう。
「昔、探検だって言って森の深くまで入ってったヤツがいたなあ。そいつが言うには、森の深くで古びた神殿みたいな遺跡を見たらしいぜ」
「その人と場所について、詳しく教えてくれる……?」
美味い食事には人の舌を滑らかにする効果もあるらしい。いつもより陽気で饒舌となった島民の話に耳を傾けて、璃奈は重要と感じる情報をピックアップしていく。
「メガリスが封じられた場所は、私やルドヴィクにすら伝えられていません。けれど隠すとするならば、当時から残っている遺構が怪しいと思います」
「そうね。詳しく聞かせて貰えるかしら?」
フレミアはこの島の伝承に最も詳しいアンジェラやルドヴィクとの交流を通じて、メガリスの隠し場所として怪しい場所に目星を付けていく。そして璃奈や他の猟兵との情報とも照らし合わせ、絞り込んだ箇所に【虜の軍勢】を捜索に向かわせた。
「わたしの可愛い僕達……さぁ、いらっしゃい♪」
エビルウィッチ、邪悪エルフ、そしてダークセイヴァー出身の黒い薔薇の娘たち――様々な世界でフレミアが虜にした眷属の娘たちがアルバ島に姿を現す。その中でただひとり、日頃から主人と一緒にいる「雪花」だけが少しへにゃりとしていた。
「日差しが眩しいのー」
雪女見習いである彼女にとって、南国さながらに日差しの強いこの島は少々堪えるらしい。主人との繋がりが深いこともあって、溶けてしまうほどでは無いようだが。
「森の木陰の中なら少しは涼しいでしょう。行ってらっしゃい♪」
にっこりと微笑みかけて、フレミアは愛しい眷属たちを遺構の調査に送り出す。
ユーベルコード使いである彼女らであれば、コンキスタドールとの不慮の遭遇があっても対処できるだろう。最悪でも情報を持ち帰って帰還することは出来る筈だ。
「あとはあの子達が情報を持ち帰るのを待ちましょう。島民の安全はここでわたし達が守るわ」
「ありがとうございます。……貴女達は故郷でもこうしてずっと戦ってきたのですね」
無駄のない情報収集や配下への指示、そつのない役割分担といった手際を見ていたルドヴィクとアンジェラは、感嘆の表情を浮かべながら猟兵たちに感謝を伝える。
フレミアはにこりと微笑みを返すと、酒杯を手に取りながら故郷の話の続きをする。
「絶望と悲劇に塗れた世界だけど、それに抗い、人々はしっかりと生きてるわ。いつか、この島みたいに夜明けが来て平和な世界が訪れると信じてね」
そのために自分も戦っている。どんなに闇が深くとも、光に満ちた明日のために。
このアルバ島のような平和な光景が、いずれあの世界中に広がることを目指して。
「この島の夜明けを、オブリビオンなんかに終わらせたりはしない……」
楽しそうに親睦会のテーブルを囲む人々を眺め、璃奈もまた決意を新たにする。
呪われし秘宝メガリス。邪悪なる略奪者コンキスタドール――そんなものに、この島の平和が乱されるなどあってはならない。自分達はそのためにここに来たのだから。
大成功
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カビパン・カピパン
グリードオーシャンに出港、アルバ島に到着!
爽やかに依頼を受けたものの…
「ヤダヤダヤダヤダ超行きたくない行きたくない行きたくない」
アルバ島上陸早々にカビパンは幼児退行を起こし、駄々をこね始めた。
カビパンは余程悲壮な顔をしていたのだろうか、明らかに可哀相な人を見るかのような目で放っておけない島の住民たちが声をかけた。
その後なんと…
チヤホヤされて最大限甘やかされていた。
アルバ島の住民に既に馴染んで気がつけば話の輪の中心。
そしてアンジェラと邂逅する。
片やとある教団の女教皇として精神的指導者に君臨するカビパン。
片やアルバ島で司祭として精神的支柱となっているアンジェラ。
似て非なる二人で話し合いとなる。
「ヤダヤダヤダヤダ超行きたくない行きたくない行きたくない」
猟兵達が島の調査を進めるなか、ひとりジタバタと浜辺で駄々をこねる女性がいた。
彼女の名はカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)。当初は爽やかに依頼を受けて出港したものの、アルバ島に上陸した早々にぐずりだしたのである。
急な心変わりといい恥も外聞もない幼児退行っぷりといい、御年21歳とは思えない振る舞いにアルバ島の島民達も困惑していたのだが――。
「あ、あのう……大丈夫ですか?」
よっぽど悲壮な顔をしていたのだろうか、いつまでもぐずり続けるカビパンを見るに見かね、明らかに可哀想な人を見るかのような目でお人好しな島民たちが声をかけた。
もしもここまでが全部カビパンの演戯だったとしたら、彼女は大層な女優であろう。
――その後。
「あっはっは、苦しゅうないですよー」
カビパンは一部の島民たちから盛大にチヤホヤされ、最大限甘やかされていた。
泣く子と地頭には勝てぬというが、泣く子が教皇だった場合はもっと手に余るというか。なまじ人心掌握術に長けた彼女は寄ってきた島民の親切心にうまく取り入り、今ではすっかり馴染んで気がつけば話の輪の中心に。
「はいカビパンさん、こっちも美味しいですよ」
「外の世界のお話、もっといっぱい聞かせてください!」
目の前に並ぶのはごちそうの数々。レパートリーが魚介類に偏るのがちょっと難だが。
海の向こうに憧れを抱く島民達に適当な説法や異世界の話をして、がっちり彼らの心を引きつけたカビパンはちょっとしたお姫様のような扱いであった。
「……そちらの方が、なにかお困りのだったのですか?」
「あっ、アンジェラ様!」
そこにやって来たのは島の司祭であるアンジェラ。浜辺で駄々をこねている人間がいると報告を受けて様子を見にやって来たようだ。この島にカウンセラーという職業は無いが、あえて人々の悩みを聞いたり心を落ち着けさせるのは彼女の役割である。
「よく分かりませんが、もう大丈夫のようですね。始めまして、外のお方」
「ええ、始めまして司祭殿。こうしてお会いできたのも天佑でしょう」
かくして両者は邂逅する。片やとある教団の女教皇として精神的指導者に君臨するカビパン、片やアルバ島で司祭として精神的支柱となっているアンジェラ。似て非なる2人は興味を惹かれるところもあったのか、自然とお互いのことを話し合うことになる。
「そうですか。カビパン様もこれまで大変な苦労を……」
「あなたの方こそ、苦労の絶えないお立場でしょう」
浜辺から島の教会に席を移して、まったりと語り合う異界の教皇と司祭。とりとめのない日常の出来事から苦労話まで、年齢も割と近い女性ふたりの会話はよく弾む。
すっかりと相手の信頼を得たカビパンはよそいきの顔で聖女のように微笑みながら、島民たちの歓待を満喫しつつメガリスに関わる情報を集めていくのだった。
大成功
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ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
あたし、基本的に宗教だのカミサマだの大っ嫌いなんだけど。
…この島では、ちゃんとそういうのが拠り所として機能してるのねぇ。
…信仰とか儀式とかってこういうモノよねぇ、本来。
話のタネなら文字通り売るほどあるけど、まずは興味を引かないとねぇ。
珍しいものかぁ…この世界、基本は島ひとつで完結してるし、土地も限られてるわよねぇ?となると、きっと牧畜とか難しいわよねぇ。ベーコンとかジャーキーとか、肉系の保存食なら貴重でしょうし、興味引けないかしらぁ?
●絞殺で○取引しつつ○情報収集してみるわぁ。
この際玉石混交でも問題なし。噂でも童歌でも、とりあえず片っ端から集めましょ。
「あたし、基本的に宗教だのカミサマだの大っ嫌いなんだけど。……この島では、ちゃんとそういうのが拠り所として機能してるのねぇ」
情報収集の一環として島を巡る傍ら、太陽や教会に向けて祈りを捧ぐ島民を目にしたティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)はしみじみと呟く。
漁業や農業といった一次産業に依存した生活は、ままならぬ自然に左右されやすい。だからこそ彼らは豊漁や豊作を神に祈り、一日一日の"何事もない"日常に感謝する。それは特別な行為というよりも、生活の一部として溶け込んでいるようだった。
「……信仰とか儀式とかってこういうモノよねぇ、本来」
下手に指導者が影響力を行使したり、世俗に染まりすぎてもいないのも良いのだろう。この島の信仰は人々の心の拠り所として、正常に機能しているようだった。
「さて、しみじみとしてないでお仕事もちゃんとしないとねぇ」
ティオレンシアはある程度島の様子を把握すると、何を糸口にして情報を集めるかを考える。島民は外からの人間に対して友好的で、外界の珍しい話を好むようだ。
「話のタネなら文字通り売るほどあるけど、まずは興味を引かないとねぇ」
手土産とするならこの島ではなかなか手に入らない珍しいもの。そう考えたティオレンシアは持ってきた「あるもの」を荷物から用意しつつ、近くにいた島民に声をかける。
「はぁい、こんにちはぁ。ごめんなさいねぇ、ちょっとお話聴かせてもらってもいいかしらぁ?」
「ん、俺ですか? 別に構わないですけど、何でしょう」
首をかしげるその島民に、ティオレンシアは人当たりのよい態度と礼儀作法を念頭に入れて交渉する。口元に微笑みを浮かべながら、差し出すものは一枚の干し肉。
「この島にある変わった品物とか、古い言い伝えとか知らないかしらぁ? もし教えてくれるのなら、お礼はこれでどうかしらぁ」
「えっ、これって……肉ですか! うわぁ!」
それを見た島民の目の色が明らかに変わった。思わず溢れた声は喝采である。
なんだなんだ? と近くにいた島民たちも、それに気付いて集まってくる。
(この世界、基本は島ひとつで完結してるし、土地も限られてるわよねぇ? となると、きっと牧畜とか難しいわよねぇ)
ざっと集落を見てまわった限りでも、牛や羊などの家畜はこの島にはいなかった。
畜産が行われていない集落なら、ベーコンやジャーキーといった肉系の保存食は貴重なはず。そう考えたティオレンシアの手土産はばっちり島民の心を掴んだようだ。
「魚は毎日食ってますけど、獣の肉は久しぶりですよ! 何でも話します!」
「あっお前ズルいぞ! 俺にも一枚くれ!」
「もし、数があるのでしたら、子供たちにも分けてあげても良いですか?」
ただでさえ外界からの珍しい文物には目がない人々である。その食いつきようは寧ろ予想以上で、途中で持ってきた保存食が無くなってしまわないか心配になるほど。
ともあれ、これなら情報を引き出すのに苦慮することは無いだろう。集まってきた島民にジャーキーを配りながら、ティオレンシアはにこにこと話を聞き出していく。
(この際玉石混交でも問題なし。噂でも童歌でも、とりあえず片っ端から集めましょ)
メガリスの所在が島民に伝わっている可能性は薄いだろう。しかし逆に完全に秘匿することも難しいはず。案外そうした何気ない話題にヒントが隠されているかもしれない。
ティオレンシアは島民が語る"ご先祖さまの話"や"由来の知らない童歌"といった雑多な情報をかき集め、頭の中で整理して照合し、手掛かりをピックアップしていく。
情報とは時に武器となる。それを良く知る彼女はこの島に潜むコンキスタドールを出し抜き【絞殺】するための道筋を、すでに掴みつつあった。
大成功
🔵🔵🔵
シェーラ・ミレディ
ふむ。この島のどこかにメガリスが、なぁ。
以前の戦争で厄介だった覚えがある。敵の手に渡る前に、此方で確保しておきたい所だ。
僕は口が上手いわけではないが、踊りならばそれなりだ。
旅の芸人を装って島民の興味を引き、まずは華麗に踊って見せてから「新しい振付けを考えるため、刺激を受けられそうなものを探している」と言って情報を集めよう。
わらべ歌のようなものにヒントが隠されているかもしれないし、珍しいものがあればそれがメガリス本体かもしれない。
ある程度話を聞き出せたら礼を言い、得られた情報をもとに島を散策だ。
発見できればよし。何もなくても、『この場所にはなかった』という情報が得られる。
※アドリブ&絡み歓迎
「ふむ。この島のどこかにメガリスが、なぁ」
一見するとごくごく平和で穏やかな南国の小島としか見えないアルバ島の情景を見渡しながら、シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は顎に手を当てて考える。
「以前の戦争で厄介だった覚えがある。敵の手に渡る前に、此方で確保しておきたい所だ」
サムライエンパイアの戦いにてかの秘宝の使い手が猛威を奮ったのはもう半年以上も前だが、その脅威は今だ記憶に残っている。それがこの平和な島で再び繰り返されるのは避けねばなるまい。
(僕は口が上手いわけではないが、踊りならばそれなりだ)
旅芸人を装って島に上陸したシェーラは、注目の集まりやすい集落の広場にやって来ると、まずは島民の興味を惹くために舞をひとさし踊ってみせる。
戦場においては銃を手に敵を殲滅する彼の舞踏は、今は純粋に人々を魅了するために。しなやかに躯体を動かし指先にまで意識を通わせ、華麗なる踊りを披露する。
最初は興味本意で集まってきた島民たちも、いつしかすっかりシェーラの姿に魅せられ、やがて踊りが終わったときには惜しみない拍手と共に喝采を送るのであった。
「いやぁ、見事なダンスだったなあ!」
「おにいちゃん、すっごくキレイだった!」
もともと娯楽の少ない島ということもあるのろう。キラキラと目を輝かせる島民らに「ありがとう」と感謝を述べてから、シェーラは本題について話を切り出した。
「新しい振付けを考えるため、刺激を受けられそうなものを探している。この島に伝わっている物語やわらべ歌、あるいは珍しい物について聞かせて貰えないか?」
古くから島民に伝わる話にヒントが隠されているかもしれないし、珍しいものがあればそれがメガリス本体かもしれない。より良い芸のためだと言えば、シェーラの踊りに魅せられた人々は喜んで自分たちの知っている話題を語ってくれた。
「この島に昔からあるわらべ歌なら、こんなのがあるよ」
そう言って島民が歌ったのは、このアルバ島の情景を表したひとつの詩だった。
子供でも覚えやすいシンプルなメロディで、夜明けの太陽に照らされる海の美しさや、漁師たちの勇ましい銛捌き、教会に響く鐘の音――そういった何気なくも尊い日々を神に感謝し、明日も"夜明け"が来るようにと祈る詩。島民の素朴な生活と信仰心が現れた良い歌だったが、聞いているうちにシェーラはふと疑問を抱く。
「……鐘の音? この島の教会に鐘は無いようだったが」
質素な建物が並ぶこの島で、例外的に立派に造られた教会の姿は、この広場からもよく見える。しかしその頂には、一般的な教会にあるような鐘はついていない。
それを尋ねられると島民はああ、と、こともなげにその理由を答えてくれた。
「このわらべ歌が作られた頃、村が今のところに移転する前の教会にはあったそうだよ。ただ、動かすには不便だったもんで置いてきたそうだ」
この島がダークセイヴァーから落ちてきた当時、人々は島の中央部に村を築いていた。そこから漁に適した沿岸部に移ってきたのが現在の集落で、今でも森の奥には放棄された村の遺構が残っているらしい。
(……歌にするほど印象的なものを、わざわざ置いていくだろうか?)
この島の住人の信心深さはシェーラもよく見ている。であれば「教会の鐘」というのは信仰上の大事なシンボルであろうに、それを村ごと放置していった――? 根拠としてはすこし弱いかもしれないが、その点には何か引っかかりを感じる。
ありがとう、と他にも様々な情報を聞かせてくれた島民達に礼を言うと、シェーラはかつて村があったという島の中央部を目指して探索を開始する。
(発見できればよし。何もなくても、『この場所にはなかった』という情報が得られる)
アルバ島の中央部は鬱蒼とした森に覆われている。枝葉や蔦をかき分けながら、シェーラは迷いなくその果てを目指す。確信は無いが彼の胸の奥では、自分たちが少しずつ真相に迫っているという実感を覚えはじめていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『呪われた船首像』
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POW : まとわりつく触腕
【下半身の触腕】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 掻き毟る爪
【水かきのついた指先の爪】による素早い一撃を放つ。また、【自らの肉を削ぎ落す】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 呪われた舟唄
【恨みのこもった悲し気な歌声】を聞いて共感した対象全てを治療する。
👑11
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アルバ島の島民との交流を通じて、猟兵たちが掴んだ情報を取りまとめた結果。
コンキスタドールの狙っているメガリスは、この島の中央部――鬱蒼とした森に囲まれた、ダークセイヴァー時代の村の遺構に隠されている可能性が高まった。
かつて、この世界に落ちてきた島民の先祖は、メガリスの力で生活の礎を築いた。
だが彼らはやがて人智を超えた力を危険視するようになり、自らの意志でメガリスを手放した。今やその事実を知る者はごく僅かであり、全ては「神の奇跡」とされた。
その封じられたメガリスが、かつての村の遺構の何処かに残されているかもしれないのだ。
果たして、島の中心に辿り着いた猟兵達は、そこで異常なものを目の当たりにする。
女性の上半身に烏賊の触手をくっつけたような異形の魔物の群れが、廃墟となった村の遺構のあちこちを這いずり回っていたのだ。
「なぜ、猟兵がここに……?」
難破した船の船首像が魔物化したというコンキスタドール『呪われた船首像』。
猟兵と鉢合わせした彼女らは昏く淀んだ目を丸くする。どうやら彼女らもここにメガリスがあると考えて来たようだが、肝心のものはまだ見つけられていないらしい。
情報については猟兵達のほうが一歩有利だ。メガリスの隠し場所として最も有力なのは、この旧い村に遺された教会。しかしそれをこいつらに教えてやる義理は無い。
「邪魔を……するな……!」
怨念に満ちた眼差しを向けながら、呪われた船首像の女達は殺気をぶつけてくる。
この世界においても猟兵とオブリビオンは相容れぬもの。どちらも相手にメガリスを渡すわけにはいかない以上、邪魔者を排除するのは彼女らにとって必定だった。
闇に包まれた世界――ダークセイヴァーの面影をより色濃く残した村の廃墟にて、メガリスを巡る猟兵とコンキスタドールの戦いが始まった。
新山・陽
wiz こんにちは。奇遇ですね。私も実は邪魔だと思っておりまして……。対峙する相手としては、これ以上なく適していると思いませんか。
『蔑みの眼差し』を向けて敵集団を【挑発】します。
攻撃に対し【見切り】で回避を、『悪意ある助力』からナタを用い【武器受け】からの【部位破壊】を、敵の触腕に試みます。
呪われた船首像の「呪われた舟唄(WIZ)」に対しては、UC【真価の片鱗】を発動させて動きごと歌声を止める、または、聞いていても共感する思考を鈍らせて、動きが鈍った敵にナタを振るおうとします。
「どうぞ遠慮なくこちらへ。島民の皆さんより、襲い甲斐のある通りすがりなら、ここに私がおりますよ」
「こんにちは。奇遇ですね。私も実は邪魔だと思っておりまして……。対峙する相手としては、これ以上なく適していると思いませんか」
穏やかな表情と言葉遣いで、しかし蔑みの眼差しで見つめながら怪物共に語りかける陽。
明確な敵意を前にして、呪われた船首像もまた殺気を露わにしてにじり寄ってくる。
陽からすれば好都合。挑発に乗って宝探しよりも戦闘を優先してくれるならしめたものだ。
「邪魔をするなら、殺してやる……!」
黒ずんだ異形の触腕が鞭のようにしなり、目前の標的を叩きのめそうと襲いかかる。
怒りに任せたその攻撃を陽は冷静に見切り、「悪意ある助力」からナタを受け取る。
虚空から現れた刃物を攻撃の軌道に合わせて振るえば、触腕はばっさりと切断され、断面からどす黒い血飛沫がシャワーのように噴き出す。
「アアァァァァァァッ!!?」
「ヨクモ……ヨクモ……!」
甲高い悲鳴を上げる呪われた船首像。逆恨みの籠もった彼女らの言葉は【呪われた舟唄】となり、禍々しきメロディが傷ついた同胞のダメージを回復させようとする。
そうはさせじと、陽が発動するのは【真価の片鱗】。周辺に現れた空間の歪みから暗号めいた奇妙な文字列が浮かび上がり、敵集団の周りをぐるりと取り巻いていく。
「凍結へ誘え」
「な……なん、だ
……!?」
これは物理的にではなく情報的に敵の動きを封じるユーベルコード。暗号の幻覚を見てしまった女達の舌は回らなくなり、歌詞の意味に共感できなくなるほどに思考は鈍化する。苦痛は一切なく、まるで微睡みの檻に囚われるような行動制御術だ。
「ぅ……あ……」
傍から見れば何もないところで呆然と立ち尽くしているようにしか見えない連中に、陽はナタを持ったまま悠々と近付いていく。情報凍結された敵の行動と思考は、その接近に反応することも、身構える動作さえも緩慢なものだ。
「さようなら」
まな板の上の鯉に包丁を振るうように、陽のナタが呪われた船首像を断ち切っていく。
断末魔の悲鳴が木霊する。それはもう戦いと言うよりも一方的な「処理」であった。
「どうぞ遠慮なくこちらへ。島民の皆さんより、襲い甲斐のある通りすがりなら、ここに私がおりますよ」
チリのように消えていく骸達にはもう一瞥もくれず、次の敵へと呼びかける陽。
挑発的な言葉の裏にあるのは、島民達にはけして被害を出させまいという想い。
貪欲な殺戮者たるコンキスタドールを前に、彼女は冷静に的確に「仕事」をこなしたいくのだった。
成功
🔵🔵🔴
播州・クロリア
ダークセイヴァーの残滓の様な敵ですね。
黒灰色の、沼のように光を飲み込む淀んだリズム...
邪神とその使途の類にありがちなリズムです。
つまりはダラキュですね。
(直立し目を閉じて祈るようなポーズをした後{渦流の旋律}で『ダンス』をする)
このリズムは渦です。
淀み濁ったものを飲み込み
洗い流すリズムです。
(UCで{錆色の腕}を鋸に変え襲い来る触腕を切り払いながら敵の身体に切りつける)
貴方のような存在はこの島には似合いません。
骸の海へ還るべきです。
「ダークセイヴァーの残滓の様な敵ですね」
暗鬱とした雰囲気を纏った異形の群れを前にして、クロリアはそんな感想を抱く。
コンキスタドールはあくまでもグリードオーシャンで発生したオブリビオンだ。だがクロリアの目と耳は、彼女らの存在にあの暗黒の世界と近しいものを感じていた。
「黒灰色の、沼のように光を飲み込む淀んだリズム……邪神とその使途の類にありがちなリズムです。つまりはダラキュですね」
「なにを訳の分からないことを言っている……邪魔をするならお前も死ね……!」
独自のフレーズで相手を「悪いもの」と断じたクロリアに、呪われた船首像の群れは【まとわりつく触腕】を伸ばす。彼女らの欲するものはメガリスのみ、探索の邪魔となるものは全て捻り潰すまでだ。
「ほんとうに酷いリズムです。長くは聞いていたくないですね」
迫りくる触腕を前にして、クロリアは直立したまま目を閉じて、祈るようなポーズを取り――直後に"渦流の旋律"に合わせてダンスを踊りはじめた。渦の中に巻かれる木の葉のような、あるは流れる水のような動きで、敵の攻撃をひらりと躱す。
「何だ……その動きは
……!?」
「このリズムは渦です。淀み濁ったものを飲み込み、洗い流すリズムです」
全てを薙ぎ払い押し流す大渦と、岩の中をすり抜ける水の流れを表現した旋律の中で、クロリアは触腕という濁流をいとも容易く潜り抜け、敵集団に肉迫する。
「ダラキュな貴方に相応しい腕が決まりました」
驚く女達の前で「錆色の腕」を振りかざし、クロリアは【蟲の腕】を発動する。
鋼よりも固く、本人の意志に応じて千変万化に形を変える彼女の片腕は、鋭利なギザギザの刃を備えた鋸となった。
「一度は海に沈んだ藻屑なら、今度こそ解体して廃材にしましょう」
渦流の旋律に乗せて振るわれる大鋸は、襲い来る触腕をばっさりと切り払う。
激痛で相手が怯めばその間隙に一歩踏み込み、円を描くような動作でもう一撃。
錆色の斬光が閃いて、呪われた船首像の下半身と上半身を真っ二つに両断した。
「貴方のような存在はこの島には似合いません。骸の海へ還るべきです」
あの島民たちと奏でたリズムを思い出す。この島には栄華と絢爛こそが相応しい。
邪悪なるリズムを撒き散らすダキュラを駆逐すべく、クロリアは剛と柔のリズムに乗せて蠱の腕を振るい、呪われた船首像のための死の舞踏を舞うのだった。
成功
🔵🔵🔴
フレミア・レイブラッド
邪魔をするな、はこちらの台詞よ。同胞が治めるこの村の平穏を脅かすのであれば…わたしは全力を以て排除する!
我が眷属達に命ずる…全力を以て始末せよ!
【吸血姫の契り】で第一章で召喚した眷属達を強化し連携して戦闘を指示。
邪悪エルフには【灰は灰に、倒木は下僕に】でゴーレム生成、黒い薔薇の娘たちは自身の血を与えて【ジャックの傲り】を発動させて自身と共に前衛を担当。
雪花とウィッチには吹雪と【ファイアー・ボール】で後方支援を指示するわ。
自身は眷属達に【念動力】の防御膜を纏わせつつ、前衛で炎と雷撃を纏わせた魔槍【属性攻撃、怪力、早業】を振るい、斬り裂き焼き払っていくわ。
悪いけど、欠片も容赦はしないわ。
「邪魔をするな、はこちらの台詞よ。同胞が治めるこの村の平穏を脅かすのであれば……わたしは全力を以て排除する!」
親睦会にて縁を深めたルドヴィク達の顔を思い浮かべながら、島を荒らすコンキスタドールの群れに堂々と宣戦布告するフレミア。その傍らでは雪女見習いが、エビルウィッチが、邪悪エルフが、黒い薔薇の娘が――虜の軍勢が臨戦体勢を取っている。
「フレミア・レイブラッドが血の契約を交わします。汝等、我が剣となるならば、吸血姫の名において我が力を与えましょう」
フレミアはその全員と【吸血姫の契り】を交わし、眷属の能力を大幅に強化する。
姫の血を受けて一時的に吸血鬼化した彼女らは、紅く染まった瞳で敵軍を睨めつけた。
「我が眷属達に命ずる……全力を以て始末せよ!」
憤激する主君の号令一下、吸血姫の眷属達は一丸の軍勢となって行動を開始する。
コンキスタドールが何するものか。愛する姫君が始末せよと仰せになられたのならば、彼女らの掴むべき結末は勝利以外にありえない。
「灰は灰に、倒木は下僕に」
邪悪エルフたちが杖を掲げて呪文を唱えると、村の遺構に散らばっていた廃材が巨大なゴーレムとなって立ち上がり、倒木の豪腕にて呪われた船首像の群れを薙ぎ払う。
「なぁ、っ?! なんなんだこれは
……!?」
豪快な一撃が敵を動揺させた直後、真紅の魔槍「ドラグ・グングニル」を手にしたフレミアが、黒い薔薇の娘たちを引き連れて敵陣に吶喊。戦いは乱戦へと移行する。
「フレミア様に仇なす愚かな者達め。貴女達の相手など私達で十分よ」
主人の血を与えられたことで【ジャックの傲り】を発動させた黒薔薇達は、恩寵に報いるべく闇の力を解き放ち、黒い呪槍と羽ペンを振るって敵を蹴散らしていく。
かつては敵としてフレミアの前に立ちはだかった者だが――いや、だからこそ彼女らはよく知っている。かの幼艶で気まぐれな吸血姫の怒りを買った者の愚かしさを。
「雪よ!」
「炎よ!」
後方からは雪花とエビルウィッチ達が吹雪と【ファイアーボール】を放ち、前衛の戦いを支援する。やはり吸血姫の契りによって大幅に強化された彼女らの魔力は、全てを凍てつかせ焼き尽くす、極寒と灼熱の嵐となって敵陣を蹂躙していく。
「お前達もオブリビオンのはず……なのになぜ猟兵に味方する……ッ!!」
「この子達はみんなもう私の可愛い眷属よ。一緒にしないで欲しいわ」
虜の軍勢の大攻勢を受けて、【まとわりつく触腕】を振り乱す呪われた船首像達。
フレミアはその汚らわしい触腕が振れぬよう、眷属達に念動力の防御膜を纏わせる。
見えざる力場がコンキスタドールの攻撃を阻む。もう虜の軍勢は止められない。
「悪いけど、欠片も容赦はしないわ」
フレミアは氷のような冷たい怒りを込めて、炎と雷撃を纏わせた魔槍を振るう。
斬り裂くと同時に焼き払う。バラバラに刻まれた女達の肉体は即座に消し炭となって、断末魔を上げる間もなく骸の海へと還っていく。
その勇姿を目にした眷属たちがより一層奮起することで、戦いの天秤の傾きは大きくなっていく。吸血姫と眷属の戦いはもはや一方的なものになりつつあった。
成功
🔵🔵🔴
雛菊・璃奈
貴女達もメガリスを探してここに来たんだよね…?
悪いけど、メガリスは渡さない…。この平和な島を脅かさせはしない…!
「イカ?」
「食べれる?」
「料理?」
「きゅ~?」
いや、食べないし食べたくないよ…。
メイド6人と仔竜達を引き連れて参加…。
【unlimitedΩ】を展開し、終焉の魔剣を敵集団へ一斉斉射…。
併せて黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】を放ち、吹き飛ばすと共に敵を呪力で侵食…。
メイドと仔竜達はそれに合わせて【暗殺】による暗器と【未熟なブレス】による炎のブレスで援護…。
後は一斉攻撃で大勢を崩した敵を神太刀で回復力を封じつつ、黒桜の呪力で一気に敵集団を呪力で呑み込み、仕留めるよ…。
「貴女達もメガリスを探してここに来たんだよね……?」
島の中心部を徘徊していたコンキスタドールと対峙し、呪槍・黒桜を構える璃奈。
始めて遭遇する異世界のオブリビオン。だが相手が何者だろうと彼女の成すべきことは決まっている。
「悪いけど、メガリスは渡さない……。この平和な島を脅かさせはしない……!」
決意を込めてぎゅっと呪槍を握る。その後ろでは6人メイドと3匹の仔竜たちが、呪われた船首像の群れをじぃっと、特に下半身に興味を引かれた様子で観察していた。
「イカ?」
「食べれる?」
「料理?」
「きゅ~?」
「いや、食べないし食べたくないよ……」
緊張感があるのかないのか分からない家族たちにぽそりとツッコミを入れつつ。
気を取り直して、璃奈は【Unlimited curse blades Ω】の詠唱を紡ぎはじめる。
「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……立ち塞がる全ての敵に終焉を齎せ……!」
魔剣の巫女の呼びかけに応じて顕れるのは"終焉"の属性を帯びた魔剣・妖刀の現身。
数百を超えて展開された呪われし刃は、彼女の号令によって一斉斉射され、破壊の豪雨となって敵集団に襲い掛かった。
「――――ッ
!!!!」
其は全てに終わりを齎す力。巫女の呪力で強化された終焉の刃を受けたコンキスタドール達は、全身を斬り刻まれて消滅するか、串刺しにされて身動きを封じられる。
璃奈はそれに併せて呪槍の力を解放し、黒桜の花吹雪を巻き起こして敵陣を薙ぎ払う。身構える間もなく吹き飛ばされた船首像達の身体を、槍の呪力が侵食していく。
「こいつ、強い、ッ!!」
千々に陣形を乱された女達が表情をしかめると、相手は璃奈だけでは無いとばかりにメイドと仔竜達が追撃する。投じられた暗器が標的の急所を穿ち、未熟な炎のブレスが船首像を焼き焦がしていく。
「ご主人!」
「援護する!」
「焼きイカ!」
「きゅ~!」
「いや、だから食べないけど……」
ともあれ援護はありがたい。敵が完全に体勢を崩したのを見ると、璃奈は妖刀・九尾乃神太刀を抜刀しながら敵陣に踏み込み、手近にいた敵から次々と斬り伏せていく。
その刀に宿る神殺しの力は、超常なる存在の再生能力を封じる作用がある。傷ついた船首像がどんなに【呪われた舟唄】を奏でようと、その傷は一向に再生しない。
「どうして――ッ!?」
「これが島の平和を乱そうとした報い……」
愕然とする女達の至近距離に入りながら、璃奈はもう一度黒桜の呪力を解放する。
敵陣のど真ん中で巻き起こった漆黒の呪力は、周囲にいた敵を纏めて呑み込んでいき――断末魔の悲鳴が木霊したあとには、怪物の群れは一匹残らず消え去っていた。
成功
🔵🔵🔴
カビパン・カピパン
アルバ島最高!
海の幸は美味しいし島民は優しいし、アンジェラさんは似た境遇だから話も合うし素晴らしい島ね。
『ヤダヤダヤダヤダ超行きたくない行きたくない行きたくない』
――か・こ・の・こ・と♪
今の私は最高にチョベリグなんだから、グリードオーシャンはいい世界!
そんなルンルン気分で散歩していたら、突然烏賊女が現れた。島の特産物で食べれるのかしら。
でもへったくそな唄で気分はチョベリバ。
しかし今日の私は物凄くご機嫌。満面の笑みで烏賊女に挨拶した。ニコニコと笑いながら
「同じ島に住まう良き友人よ。愛をもって共栄を」
なのに殺気を飛ばしてきた。
カビパン様に殺意を向けるとはふてー野郎だ!
「てめぇらぶっ殺してやる!」
「アルバ島最高!」
清々しいくらいにウッキウキな笑顔で、島の歓迎を楽しんだカビパンは歓声を上げた。
「海の幸は美味しいし島民は優しいし、アンジェラさんは似た境遇だから話も合うし素晴らしい島ね」
お腹いっぱいご飯を食べて、気のあう相手とも友人になれて、とても晴れやかな気分。
こんな彼女がつい数刻前までは海岸で駄々を捏ねて『ヤダヤダヤダヤダ超行きたくない行きたくない行きたくない』と不平を零しまくっていたとは――。
(――か・こ・の・こ・と♪ 今の私は最高にチョベリグなんだから、グリードオーシャンはいい世界!)
そんなわけでルンルンと鼻歌交じりに島を散歩していたカビパンは、いつしか島の中心までやって来ていた。そこで出くわしたのは、何やらヤバげな気配を放つ烏賊女。
「島の特産物で食べれるのかしら」
さすがにこんなゲテモノを島の特産扱いするのは、島民に若干失礼な気もするが。
実際には特産物どころか島を脅かすものであるコンキスタドールの集団は、猟兵との戦いで傷を負った同胞を回復すべく【呪われた舟唄】を奏でている。
(へったくそな唄ね)
恨みのこもった悲し気な歌声に、有頂天だったカビパンの気分は一気にチョベリバ。
しかし今日の彼女は物凄くご機嫌であり、多少気分を害された程度では怒らない。
ニコニコと満面の笑みを浮かべながら、女教皇面をしてやんわりと挨拶する。
「同じ島に住まう良き友人よ。愛をもって共栄を」
彼女の本性を知らない人ならばコロッと絆されそうな、凛々しく優しげな振る舞い。
だが、そもそも猟兵とオブリビオンは相容れぬ宿敵同士。聖なる光をまとうカビパンに気付いた呪われた船首像達は、殺気を飛ばしながら触腕を伸ばしてくる。
いつになく寛容であったカビパンも、この態度には流石にカチーンときた。
「カビパン様に殺意を向けるとはふてー野郎だ!」
明確な敵対者となった烏賊女共の殺気に反応して【本人はただ便利な光と思っている】聖なる光が輝きを増す。時には癒やしを、時には裁きをもたらす女神の加護は、悪意を追尾するレーザーとなってコンキスタドールの集団に降り注いだ。
「てめぇらぶっ殺してやる!」
「ギャァァァァァッ
!!!?」
彼女に手を出してしまったのが運の尽き。ぷっつんとキレたカビパンが聖杖をぶん回すと、聖光の裁きはより苛烈さを増し、悲鳴を上げる烏賊女共を薙ぎ払っていく。
こいつらが何者で何をするつもりだったのかなんて、彼女にはどーでも良かった。
とにかく死んで詫びろと言わんばかりのカビパンの怒りは、その視界から敵が一人残らずいなくなるまで、収まることは無かったという。
成功
🔵🔵🔴
シキ・ジルモント
◆SPD
こちらが得ているメガリスの情報を悟らせないように振る舞う
余計な詮索をさせない為、目の前のオブリビオンを退治する事を優先してみせる
ひとまず探索は後、奴らを倒すのも今回の仕事のうちだ
こちらを排除しようと狙うなら好都合、わざわざ探す手間も省ける
速度を強化して暴れられる前に、
一体ずつ確実にユーベルコードによって急所を狙撃し速やかに仕留める(『スナイパー』)
常に姿を晒して敵の注意を引き、遺構への被害を防ぎたい
元ダークセイヴァーと聞いた時は少し身構えたが
この島はとても平和だと、実際に見て回ってよく分かった
そんな場所に、戦いの痕跡は出来る限り残したくない
たとえ廃墟となってしまった村だとしても同じ事だ
「お前達も、メガリスが狙いか……?」
「さて、どうだろうな」
敵意を込めて睨みつける呪われた船首像の群れに、冷静な振る舞いで応じるシキ。
こちらの手の内をわざわざ敵に教えてやる必要はない。ましてメガリスの情報について余計なことを口にして、その所在を悟られでもするのは絶対に避けるべきだ。
「オブリビオンの居るところに猟兵が現れる、何の不思議もないだろう」
はぐらかすように淡々と語りながら、ハンドガン・シロガネをホルスターから抜く。
相手もそれ以上の問答は無用とみたか、触腕を蠢かせて一斉に襲い掛かってきた。
(ひとまず探索は後、奴らを倒すのも今回の仕事のうちだ)
シキは銃を両手で構え、近付いてくる敵の一体に狙いを定める。無言で対象を睨み、引き金を引く瞬間息を止め――正確な照準から撃ち出される【ブルズアイ・エイム】の弾丸は、吸い込まれるようにコンキスタドールの頭部を撃ち抜いた。
「ガッ
……!!」
濁った色の体液を撒き散らしながら倒れ伏す同胞に、他の連中は目を見張る。
生半可なことでは肉弾戦の距離を詰める前に撃ち殺されると悟ったのだろう。
呪われた船首像たちは自らの触腕の一部を自切し、余計な肉を削ぎ落とすことで素早さの強化を図る。だが、それよりもなお速く、次なる銃弾が彼女らを襲った。
「…………」
【掻き毟る爪】で暴れられる前に、シキは冷静かつ迅速に標的を排除していく。
シロガネの前の持ち主から教わり、幾度となく繰り返した射撃姿勢。すっかりと身体に染み付いた構えで引き金を引くたびに、射線上のコンキスタドールが倒れ伏す。
「ギャッ!!」
「キサマ……!」
響く銃声を聞きつけて、付近を探索していた敵も次第にこちらに集まってくる。
だが、新たに増えた敵にも彼はまるで動じることなく、ただ淡々と銃口を向ける。
(こちらを排除しようと狙うなら好都合、わざわざ探す手間も省ける)
粛々と任務を遂行するストイックさの元、洗練された動作で速やかに敵を仕留めるシキ。しかし敢えて彼が姿を晒すのは敵の注意を引き、遺構への被害を防ぐためだ。
(元ダークセイヴァーと聞いた時は少し身構えたが、この島はとても平和だと、実際に見て回ってよく分かった)
そんな場所に、戦いの痕跡は出来る限り残したくない。たとえ廃墟となってしまった村だとしても同じ事だ――それがストイックな表情の裏に秘めたシキの本心だった。
流れ弾も無駄玉も一切撃たず、彼の銃弾は敵だけを貫く。島を荒らそうとした報いを受けた呪われた船首像達は、彼に触れることさえできぬまま骸の海に還っていった。
成功
🔵🔵🔴
トリテレイア・ゼロナイン
(敵形状に依頼「さまよえる狂気と異端の魔女」を想起し)
……切り替えましょう
私にはそれが物理的に「出来る」
戦場を●情報収集し敵分布を確認
わらべ歌からメガリス保管有力候補の教会から引き離す為に攻め込み
●盾受け●武器受けで触腕防御し●怪力での近接攻撃で応戦
十分引き付け包囲されたと●見切れば
少し突出し過ぎましたね
等と呟きつつUC使用
レーザーの●スナイパー射撃
直後に●防具改造で取り付けたスモークを作動し●目潰し
その隙にスラスタの●スライディング移動で包囲突破
主目的は煙に紛れ数機のロボの教会への潜入
追撃への応戦と同時並行で遠隔●操縦し調査
宝その物は見つからずとも、調査を先んじて行い素早い確保に繋げましょう
「…………」
島を荒らす「呪われた船首像」の姿を目の当たりにした時、トリテレイアが想起したのはダークセイヴァーで相対した「異端の魔女」と、彼女を巡る依頼の記憶だった。
世界も発生の由来も異なる以上、恐らくは他人の空似というものだろうが――かのオブリビオンとの戦いは、彼にとって苦い記憶としてメモリーに刻み付けられていた。
(……切り替えましょう。私にはそれが物理的に「出来る」)
悲劇の記憶データにロックをかけて、機械仕掛けの騎士は目の前の戦いに集中する。
戦場と化した村の遺構をサーチし、徘徊するコンキスタドール集団の分布を把握。
わらべ歌の内容から分析した、メガリス保管有力候補の教会から敵を引き離すことを優先目標として、儀礼剣と重質量大型シールドを構えて敵陣に攻め込んだ。
「……! 猟兵……敵!」
3m近い重武装ウォーマシンの姿は、相手の注意を引き付ける格好の標的となる。
周辺にいた呪われた船首像たちはメガリスの捜索を中断し【まとわりつく触腕】を振りかざして彼ににじり寄って来た。
「邪魔を……するな!」
攻撃力を重視して勢いよく叩き付けられる一撃を、大盾で防御するトリテレイア。
戦闘機械としての出力を活かし、怪力で触腕を押しのけながら儀礼剣で応戦する。
その勇戦ぶりを手強いとみた船首像達は、ならば数で畳んでしまえと増援を呼びよせて彼の周りを包囲しはじめる。
「少し突出し過ぎましたね」
等と呟きつつも、囮としての目的を十分に果たしたトリテレイアは両肩の格納・コントロールユニットから【自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード】を発進させる。
飛び立った鈍色の機械妖精の群れは、限界まで充電されたエネルギーをレーザーとして一斉照射し、コンキスタドールの群れに攻撃を仕掛けた。
「グァッ!? なんだ、コイツラ!」
「心強い味方というわけです。……動かしているのは私なのですが」
本来は戦闘用ではないとはいえ、偵察機ゆえの高精度の照準から発射されるレーザーは的確にターゲットの急所を貫く。敵群が怯んだのを見たトリテレイアは、その直後に装甲部に取り付けたスモーク装置を作動させ、白煙で自らの周囲を埋め尽くす。
「スラスター出力最大」
煙幕の中に紛れた機械騎士は、脚部からジェットを噴射し地面を滑るように駆ける。
前面に構えた盾が巨大な質量兵器となって、包囲の一角にいた船首像を突き飛ばす。
「ゴギャッ!?」
「逃げたぞッ!!」
トラックに衝突されるよりも酷い有様となって吹っ飛ばされた敵をよそに、包囲を突破するトリテレイア。煙に巻かれた船首像たちは慌ててその後を追い駆けていく。
その一方で、展開された妖精型ロボは誰にも気に留められることなく、煙に紛れてトリテレイアとは逆方向に――放棄された村の教会に向かって音もなく飛んでいく。
(宝その物は見つからずとも、調査を先んじて行い素早い確保に繋げましょう)
トリテレイアは追撃してくる敵に応戦しながら、同時並行で妖精達を遠隔操作する。
それはメガリスの早期発見と確実な確保という、この戦いの"次"を見据えた布石。
秘宝を求めるコンキスタドールがここにいる敵で全てではない事を、彼は予感していた。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
あわよくば、コンキスタドールに見つからねえようこっそりメガリスを手に入れたかったけど……いや、そうなったら島の人たちが襲われてたかもしれねえか。世の中上手くいかねえな。
怖ぇけど、やるしかねえか……!
クゥを呼び出して騎乗。脚を活かして、付かず離れずの間合いを保ちながら〈スナイパー〉で狙撃。弱ってる奴を優先的に叩いて、数を減らす。
近くに他の味方が居るんなら適宜〈援護射撃〉を飛ばして、攻撃や防御を支援する。
こっちに矛先が向いてるんなら、〈見切り〉で躱しながらカウンターを狙うなり、〈目潰し〉〈武器落とし〉で攻撃そのものを妨害するなりして被害を減らす。それでも防ぎきれねえ分は〈オーラ防御〉で耐える。
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
…正直、「よく手放せたなぁ」ってのが素直な感想ねぇ。
人間、生活レベルを落とすほうが上げるより何倍もエネルギー要るもの。
向こうは見た目からして手数多そうだし、正面からは当たりたくないわねぇ。
ミッドナイトレースに○騎乗してグレネードの〇投擲による○爆撃と●轢殺で機動戦仕掛けるわぁ。
触腕は軌道を〇見切って回避。空中のほうが避けやすいかしらぁ?こんなナリでもUFOだもの、ホバリングもVTOLもお手の物。○空中戦ならこっちの領分よぉ?
これでも多少はスピードに自信あるもの。数を頼む程度でそう易々と捉えられるなんて思わないでねぇ?
「……正直、『よく手放せたなぁ』ってのが素直な感想ねぇ。人間、生活レベルを落とすほうが上げるより何倍もエネルギー要るもの」
それが、この島の先人達の逸話を聞いたティオレンシアの率直な感想であった。
危険性を理解したうえでメガリスを放棄する。それまで秘宝の力に大いに助けられてきた島民にとってその決断は容易では無かったはず。だが、そのメガリスがこうしてコンキスタドールの脅威を呼び寄せたことからも、それは英断だったのだろう。
「あわよくば、コンキスタドールに見つからねえようこっそりメガリスを手に入れたかったけど……いや、そうなったら島の人たちが襲われてたかもしれねえか」
世の中上手くいかねえな、と荒れ果てた村を徘徊する敵を眺めながらぼやくのは嵐。
今回の作戦目標は島民の暮らしを脅かさぬままにコンキスタドールを排除すること。
集落から離れた場所に敵が集まっているこのタイミングこそが、結果的には襲撃を仕掛けるベストな状況だろう。
「向こうは見た目からして手数多そうだし、正面からは当たりたくないわねぇ」
「怖ぇけど、やるしかねえか……! 力を貸してくれ、クゥ!」
ティオレンシアはバイク型UFO「ミッドナイトレース」に跨り、嵐は【我が涅槃に到れ獣】で呼び出した黄金のライオンに飛び乗ると、ほぼ同時に勢いよく駆け出した。
仕掛けるのは愛騎の脚を活かした機動戦。エンジンの唸りと獅子の咆哮を轟かせながら、敵集団からつかず離れずの距離を駆けまわり、遠距離武器による攻撃を放つ。
「ギィッ!?」
「グァッ!!」
ティオレンシアの手から投擲されたグレネードが炸裂し、爆風と破片を周囲に撒き散らす。そこに嵐がスリングショットの追撃を合わせ、傷だらけになった呪われた船首像を石礫の弾丸が撃ち抜いていく。
「こいつら……よくもッ!!」
強襲で大損害を受けたコンキスタドール達は【掻き毟る爪】と【まとわりつく触腕】を振りかざして反撃する。だがそれは怒り狂った獣の群れを彷彿とさせる単調な暴力で、幾つもの修羅場を見てきた猟兵達からすれば軌道を見切るのは容易かった。
「これでも多少はスピードに自信あるもの。数を頼む程度でそう易々と捉えられるなんて思わないでねぇ?」
口元にいつもと変わらぬ微笑をたたえながら、ティオレンシアは鮮やかなハンドル捌きでミッドナイトレースを駆る。バイク型とはいえれっきとしたUFOらしく、ホバリングやVTOLといったバイクには不可能な機動を見せ、空中から敵を翻弄する。
「すっげぇ怖ぇ、けど……お前ならやれるよな、クゥ。一緒にいくぞ!」
嵐は普段の仔ライオンから立派な成獣へと変身した相棒に声をかけながら、一心同体の動きで攻撃を躱しざまにカウンターを見舞う。放たれた弾丸は船首像の目や武器となる部位に的中し、ダメージを与えると同時に敵の行動そのものを阻害していく。
「特訓の成果を見せてあげるわぁ」
激しい機動でバイクを乗り回しながらも、騎乗するティオレンシアの照準はまったくブレない。強化された動体視力でうろたえる敵の様子を捉え、手榴弾を投げ込む。
的確に敵陣の真っ只中に着弾したそれは、爆音と共に呪われた船首像の群れを吹き飛ばし、着実に数を減らしていく。これが彼女の騎乗戦闘術【轢殺】だった。
「ま、まずい……っ、ギャァッ!?」
「悪いけど、逃がすわけにはいかねえんだ」
不利を悟って後退しはじめる敵を追い打つのは嵐。焔の軌跡を描きながら駆けるクゥの脚力から逃れられる者はなく、此方の攻撃の射程内であり相手の攻撃が届かない、絶妙な距離を保ちながら撃ち出される弾丸が、ぴしりと敵の足を止める。
「今だ」
「えぇ」
絶妙の援護射撃を受けたティオレンシアが愛銃「オブシディアン」のトリガーを引く。
タンッ、と鋭い銃声が鳴り響き、眉間を撃ち抜かれた船首像は地に倒れ伏し、それきりピクリとも動かなくなった。
「タフに暮らしてるやつらの生活を、邪魔しないでくれよな」
「手放された物だからって、こんな連中に渡してやることは無いわよねぇ」
それからも嵐とティオレンシアは、弧を描くような高機動で敵を追い詰めていく。
例えるならそれは牧羊犬に追い立てられる羊の群れのように、為す術もなく翻弄されたコンキスタドールの群れは、射撃と爆撃の中で狩りたてられていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
血の気のない肌と妖物の下半身……ダークセイヴァーの面影を残す場によく映えるというのが逆に腹立たしいですね
【守護霊獣の召喚】で【騎乗】したまま吶喊
黄金に輝く聖槍を振るって【存在感】を放ち、獅子の咆哮で【恐怖を与える】ことで、教会に意識を向かせないように(おびき寄せ)
先は子供相手に我慢させましたからね……ここからは得意の戦働きです!
【破魔】の力を宿した聖槍で斬り打ち穿ち、屈強なる獅子の爪牙で捻じ伏せる
幾つの世界を超えようと、我が聖槍は貴様たちの心臓を抉り抜く!
肉を削いだ惰弱な爪など、百本束ねようと我が獅子の爪一本にも及ばない!
「血の気のない肌と妖物の下半身……ダークセイヴァーの面影を残す場によく映えるというのが逆に腹立たしいですね」
あの夜闇の世界でも違和感のない異形の怪物を前にして、顔をしかめるオリヴィア。
折角光あふれる地に落ちてきたというのに、ここだけはまるで元の世界に回帰したかのよう。この光景が島民の集落にまで広がってしまう前に駆逐しなければなるまい。
「天来せよ、我が守護霊獣。邪悪を引き裂く爪牙となれ――!」
オリヴィアは高らかな宣言と共に守護霊獣に騎乗し、破邪の聖槍を構えて吶喊する。
聖槍が放つ黄金の輝きは強欲なるコンキスタドールの注目を引きつけ、戦場に轟く獅子の咆哮が恐怖を呼び起こす。敵のメガリスの捜索を中断させ、教会に意識を向かせないようにおびき寄せるのが彼女の狙いだ。
「先は子供相手に我慢させましたからね……ここからは得意の戦働きです!」
存分に暴れる機会を与えられた獅子は、敵陣に勇躍すると屈強なる爪牙を振るう。
肉を引き裂かれどす黒い血飛沫を散らし、呪われた船首像が悲鳴を上げる。さらにオリヴィアも破魔の力を宿した聖槍を操り、居並ぶ敵を次々と斬り打ち穿っていく。
「幾つの世界を超えようと、我が聖槍は貴様たちの心臓を抉り抜く!」
人騎一体となったオリヴィアと守護霊獣の戦いぶりは勇壮であり、その輝きが届くところに邪悪の永らえる術はなく。尽くが爪牙に捻じ伏せられるか聖槍に貫かれるかの末路を辿る。
「ギャァアアァァァッ! 痛い、痛いぃぃぃぃッ!」
「よくも……やってくれたな……殺してやる……ッ!」
悲壮な絶叫が響く中、呪われた船首像は激昂して【掻き毟る爪】をギラつかせる。
余分な肉体を自損することで身軽となって速度を強化。荒ぶる旋風のような勢いで紅い爪がオリヴィアを襲う――だが、その猛攻が彼女らを傷つけることは無かった。
「肉を削いだ惰弱な爪など、百本束ねようと我が獅子の爪一本にも及ばない!」
霊獣の巨体に受け止められた爪撃は、その毛皮を裂けずにポキリと折れてしまう。
愕然とする悪霊どもに叩き付けられる反撃の猛打。黄金の軌跡を描いた獅子の爪は、呪われた船首像の身体をばっさりと両断し、ただの壊れた廃材へと変える。
「この地に汝らの住まう場所なし。再び水底に沈むがいい!」
堂々たるオリヴィアの言葉に呼応して、黄金の獅子が勇ましき咆哮を轟かせる。
その勇姿を前にしてコンキスタドール達は青ざめ、まるで歯が立たないと知って蜘蛛の子を散らすように逃亡を図るが、今さら猟兵達がこいつらを見逃すはずがない。
獅子が地をひと蹴りすれば双方の距離はたちまち埋まり、無防備な背中を聖槍が貫く。オリヴィア達の追撃から逃げ延びることのできた敵は皆無であった。
大成功
🔵🔵🔵
アリアケ・ヴィオレータ
アドリブ・連携歓迎
【SPD】
なんつーか雨を蓄えた重たい雲みてぇな村だな。
夜明けを知らない世界の遺物ってのも頷ける。
さて、と見つけたぜ、ねじくれ脚共!
虐殺とか蹂躙とか、そういうのは今のこの島には相応しくねぇ。
お前らにメガリスは渡さん、ここで俺に漁(ト)られな!
「滄海の王魚よ、大海原進むその一息をお借りする!」
UC【ホエール・スプラッシュ】を発動。
背後に集った海水の強力な噴射を推進力として使い、
銛を構えて高速で敵に突撃。
お前らの爪が届くより早く、『串刺し』にしてやるぜ!
「なんつーか雨を蓄えた重たい雲みてぇな村だな」
森の奥に眠る古い村の跡を見て、アリアケが抱いた第一印象はそんなところだった。
ここだけ太陽の恵みが遮られているかのように、昏く、陰鬱な雰囲気が漂っている。
「夜明けを知らない世界の遺物ってのも頷ける」
この場所はまさしくかつてのアルバ島の残滓だ。もはや近寄る者もなく荒れ果てるに任せられていた廃墟の中を、異形の化物共がメガリスを求めて彷徨いまわっている。
「さて、と見つけたぜ、ねじくれ脚共!」
銛を突きつけながらアリアケが叫ぶと、呪われた船首像達がいっせいに振り返る。
じっとりと湿った敵意と怨念の視線。だがそんなもので夜明けの漁り人は動じない。
「虐殺とか蹂躙とか、そういうのは今のこの島には相応しくねぇ。お前らにメガリスは渡さん、ここで俺に漁(ト)られな!」
この世界の人々の暮らしを乱し、海を荒らす獲物を仕留めるのがアリアケの生業。
陸の上だろうと目の前に怪物がいるからには、成すべきことは何も変わらない。
「メガリス……手に入れる」
「邪魔をするなら……殺す!」
いきり立ったコンキスタドールの群れは【掻き毟る爪】をギラつかせながら迫る。
軟体動物のような下半身の見た目よりもずっと機敏な動き。対するアリアケは敵陣に向けて「鋭銛:不知火」を構えると、海まで届けとばかりに勇ましく叫ぶ。
「滄海の王魚よ、大海原進むその一息をお借りする!」
それは鯨が持つ潮吹き能力を強化して獲得する【ホエール・スプラッシュ】。
ふっと背後に集った海水が凄まじい勢いで噴射され、彼女の身体はジェット推進のごとく前方へと突撃した。
「お前らの爪が届くより早く、串刺しにしてやるぜ!」
スピードに乗ったアリアケは、空を泳ぐように四肢を動かしながら鋭銛を繰り出す。
彼女の銛もまたメガリスのひとつ。巨大鯨や海竜さえも仕留める、呪われし魔銛。
その一撃は呪われた船首像が爪を振り下ろすよりもずっと速く、敵陣を突き抜けていった"不知火"の先端には、怨念にまみれた心臓が突き刺さっていた。
「――――ッ
!!!?!」
一体いつの間に、と、刺突の軌跡を見ることさえ敵わなかった化物の群れは、胸にぽっかりと空いた穴に手を当てながらばたりと倒れ伏し、骸の海に還っていく。
「一丁上がり!」
と、日に焼けた顔に太陽よりも眩しい笑顔を浮かべて、アリアケは銛を担ぎ直す。
いつしか空には雲が晴れ、明るい日差しが陰鬱な雰囲気を戦場から吹き飛ばしていった。
成功
🔵🔵🔴
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
フン、「邪魔をするな」とはこちらのセリフだ
早々に海へと叩き返してやろう…骸の海にな
エギーユ・アメティストを敵集団に振るって攻撃
鞭を叩きつけたり、先端の紫水晶で本体ごと触腕を叩き切るように攻撃する
さらにデゼス・ポアも放ち、周囲を飛び回り敵を切り裂きながら密かにUCも発動
不可視の操り糸を自分の周囲に張り巡らせる
さて…お前達に構ってる暇はない
面倒だ、一斉に来い
とこちらは一歩も動かず敵を挑発
向かって来たらそのまま操り糸で切断
糸を避けて進む敵には操り糸とデゼス・ポアを指先で巧みに操作して死角から斬撃する
先ほどの料理と違って、こちらは全く食欲をそそらんな
フッ、暫くイカ料理は遠慮しておこうか
「メガリスはわたし達が手に入れる……邪魔をするな猟兵……!」
「フン、『邪魔をするな』とはこちらのセリフだ」
怒りの形相を浮かべる呪われた船首像の群れに、キリカは冷たい眼差しで応える。
この島の人々からすれば、こいつらの方こそ平穏な暮らしを乱す邪魔者に違いない。
勝手に乗り込んできておいて邪魔をするなとは、盗っ人猛々しいにも程があろう。
「早々に海へと叩き返してやろう……骸の海にな」
次はもう二度と這い上がってこれないよう、深い、深い、過去という名の水底に。
キリカは低い声色で告げて、純白の革鞭「エギーユ・アメティスト」を振るった。
「捻り潰してや―――グェッ!!」
【まとわりつく触腕】を伸ばしてキリカを攻撃しようとした船首像は、しなる革鞭を強かに叩き付けられて悶絶する。陽光に照らされて白亜の軌跡を描く鞭の先端には、硬く鋭い紫水晶があしらわれており、鋭利な刃物となって敵を切断する。
「思ったより柔らかいな。お前も遊んでやれ、デゼス・ポア」
迫ってくる触腕を次々と叩き切りながら、キリカは呪いの人形を敵にけしかけた。
それはキャハハハハハハ、と愉しげに哄笑しながら宙を飛び回り、躯体から無数の錆びついた刃を飛び出させて船首像を切り刻んでいく。
「さて……お前達に構ってる暇はない。面倒だ、一斉に来い」
近寄る敵をことごとく撃退しながら、キリカはまだその場を一歩も動いていない。
くいくいと指を動かしながら冷笑を浮かべてみせると、挑発を受けたコンキスタドールの群れは血色の悪い顔を真っ赤に染め、歪んだ憤怒の形相で襲い掛かる。
「殺す……殺してやる……ッ!!」
怒りで血走ったその目にはもう、敵の姿しか映っていない。だから彼女たちは気付かなかった――自分とキリカの間に、いつの間にか見えない罠が張り巡らされていたことに。
「狂え、デゼス・ポア。死を与える歓喜と共に」
「ヒヒヒヒヒャハハハハハ!!」
人形が不気味にしわがれた笑い声を上げ、【マリオン・マキャブル】が発動する。
張られていたのは不可視の操り糸。それは視認も難しいほどに細く、それでいて大型車両を吊り下げられるほどに頑強で、そしてギロチンの刃のように鋭利だった。
「殺―――ッ!??」
何も知らぬままキリカに向かっていった船首像は、自らトラップの中に飛び込む結果となり、極細の死神によって全身をバラバラに切断される。彼女らが最期に見たものは、細切れの肉片となった自分の身体であった。
「ひ―――ッ!?」
前を走っていた同胞が無惨な死を遂げたことで、ようやく残りの連中は罠に気付く。
慌てて速度を落として操り糸をかい潜ろうとするが、それもまたキリカの思う壺。
人形によって戦場に張り巡らされた糸は全て、彼女の思うがままに操れるのだから。
「逃げられると思うなよ」
「ヒギャ……ッ
!!!!」
指先の動きで巧みにデゼス・ポアと操り糸を操作して、死角からの斬撃を放つ。
目先のものばかりに気を取られていた敵は、反応する間もなく真っ二つとなった。
「先ほどの料理と違って、こちらは全く食欲をそそらんな」
バラバラになって戦場に散った敵の骸を見下ろして、キリカは小さく苦笑する。
殺し合いに小綺麗さを求めても仕方ないとは分かっていても、毒々しい肉片とどす黒い体液が混ざり合い、繊細な者なら吐き気を催すような光景が広がっていた。
「フッ、暫くイカ料理は遠慮しておこうか」
張り巡らせた操り糸を手元に回収して、散乱する骸を踏まないように避けて歩く。
敵群を一掃したキリカが次に探すのは、この連中を差し向けた敵の親玉であった。
大成功
🔵🔵🔵
シェーラ・ミレディ
島民たちから得られたヒントが示す場所に、コンキスタドールが居たとはなぁ。
とっとと排除して、宝探しと洒落込もうじゃないか!
目当ての教会を壊してしまっては意味がない。
被害を抑えたいところだが……村の外へ向かうような立ち回りをするのが手っ取り早いだろうか?
建造物の影に隠れながら、時折姿を見せて銃撃し、敵を誘き寄せようか。
敵が歌うような素振りを見せたら、先の先を取って『純情一途』。喉や顎、口を爆発する誘導弾で狙い撃ち、歌うのを邪魔するぞ。口以外から歌声が響いても、銃声や爆撃の大音量でかき消せるだろう。
悪いが、お前に用はなくてな。
どういう経緯かはわからないが、敵であるなら倒すだけだ。
※アドリブ&絡み歓迎
「島民たちから得られたヒントが示す場所に、コンキスタドールが居たとはなぁ」
運が良かったというよりも相対するのは必然か。島の中央部にいた呪われた船首像の群れを前にして、シェーラは艶めくような笑みを浮かべながら精霊銃を抜き放つ。
「とっとと排除して、宝探しと洒落込もうじゃないか!」
「宝……メガリス……渡すものか……!」
強欲なるコンキスタドール達は怒りの形相で触腕を蠢かせながら襲い掛かって来る。
だが、もはや勢いに乗った猟兵達を止める力は、彼女たちからは失われつつあった。
(目当ての教会を壊してしまっては意味がない。被害を抑えたいところだが……村の外へ向かうような立ち回りをするのが手っ取り早いだろうか?)
目的はあくまで敵にメガリスを奪わせないこと。シェーラはちらりと教会らしい廃墟に目をやると、近付いてくる敵からくるりと踵を返し、近くの建造物の影に身を隠す。
「逃がすものか……ッ!」
彼が消えた物陰に呪われた船首像の群れがわらわらと寄ってくると、すでに別の物陰へ移動していたシェーラは、ぱっと姿を見せるなり銃口を向ける。
「こっちだ」
「ギャッ!!」
発砲音と悲鳴が戦場に木霊し、どす黒い血飛沫が廃墟を塗らす。突然の銃撃に敵が怯んだうちにシェーラは挑発的な笑みを浮かべながら、再び物陰に姿を隠した。
「待てッ!!」
怒りを露わにして追い駆ける呪われた船首像。シェーラは彼女らを翻弄するように時折姿を見せては銃撃し、また身を隠すのを繰り返して村の外に誘き寄せていく。
まんまと釣られてしまった彼女たちは、気付かぬうちに教会から遠く引き離されていた。断続的に精霊銃の弾丸を浴びせられて、負傷も次第に蓄積しはじめていた。
「やってくれたな、猟兵め」
流血によって頭も冷えてきたのか、敵は【呪われた舟唄】で傷を癒そうとする。
だが呪われた船首像が歌うような素振りを見せた瞬間、先の先を取ってシェーラが攻撃を仕掛ける。
「残念だが、そうはさせない」
4丁の銃を同時に操る【彩色銃技・純情一途】。目にも留まらぬ手業から矢継ぎ早に放たれる誘導弾は、標的の喉や顎や口に着弾すると、精霊力を解き放って爆ぜる。
「―――ッ!!?」
声帯を潰された船首像は声にならぬ悲鳴を上げ、その唇から怨恨の歌声が紡がれることはない。それに代わって響き渡る銃声や爆撃の大音量は、戦場からそれ以外の音をことごとくかき消していく。
「悪いが、お前に用はなくてな。どういう経緯かはわからないが、敵であるなら倒すだけだ」
傷を癒やす手段も、反撃する機会も与えずに。シェーラは容赦なく引き金を引く。
銃声は詠唱となって弾丸に込めた精霊力を増し、一途なまでの集中砲火は標的を骸に変える。
そして銃火の演奏が鳴り止んだとき、そこに生き残った敵は誰もいなかった。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『女賞金稼ぎ』
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POW : ハンタータイム
全身を【右目の義眼(メガリス)から放たれた青い光】で覆い、自身の【これまで殺した賞金首の賞金合計額】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : 殺戮斧旋風
自身の【右目の義眼(メガリス)】が輝く間、【呪われた戦斧】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : カースバウンティ
【自分が過去に殺した賞金首】の霊を召喚する。これは【手にした武器】や【怨嗟の呻き声】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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呪われた船首像の群れを駆逐した猟兵達は、そのまま放棄された村の探索を行う。
長い年月と自然の侵食によって多くの建造物が原型を留めてはいない中、比較的かつての面影を保っていたもののひとつが、村外れに建てられた教会であった。
島民から収集した情報を元にすればメガリスの隠し場所として最も怪しいのはこの場所だ。重点的に探索を進めていくと、やがて彼らは目的のものを発見する。
礼拝堂の祭壇の中に隠されていたそれは、片手で持てるサイズの黄金のベルだった。
ちょうどこの教会の鐘塔にかけられている鐘の形によく似ている。相当の年季物のように見えるが、軽く振ってみればまるで新品のように澄んだ音を響かせた。
猟兵達はその音色から不可思議な魔力の波動を感じ取る。これこそが、かつてこの島の人々を救ったという呪われた秘宝――メガリスに間違いないだろう。
「――こんなところにあったのか。チッ、先を越されちまったな」
感慨にふける間もなく、教会の入り口のほうから誰かの声と殺気だった気配がする。
振り返ればそこに立っていたのは、無骨な大斧を担いだ豊満な肢体の女性であった。
一見すると人間のような姿をしているが――纏いし邪気は呪われた船首像よりも遥かに強い。
「あのグズども、何の役にも立ちやしねえ……まあいいさ。結果的にはお前らがかわりにメガリスを見つけてくれた。これでアタシのコレクションがまた増える」
かき上げられた前髪の下で、露わとなった右目の義眼が妖しげな青い光を放つ。
彼女もまたメガリスの所有者。呪われた秘宝の力によって悪へと堕ちた者。
財宝と賞金を目当てにかつては海賊を、今では平和に暮らす人々を虐殺する『女賞金稼ぎ』。彼女こそがアルバ島に上陸したコンキスタドールの首魁である。
「さあ、そいつを寄越しな猟兵共。素直にアタシに従えば、お前らだけは生かしてやってもいいって気分になるかもしれないぜ」
異形化した右腕で斧を持ち上げ、口元に浮かべた嗜虐的な笑みからは、とてもそのような温情は感じられない。返答如何によらず彼女はこの島にいる全員を殺すつもりだ。
邪魔をする猟兵も、ただ平和に暮らしているだけの島民も区別なく。破壊と虐殺は彼女にとって何よりの娯楽であり、生者を殺めることに理由はいらなかった。
――この悪辣なる女賞金稼ぎにメガリスも、島民たちの平和も渡してはならない。
夜明けを迎えた島の明日を巡る戦いは、クライマックスの時を迎えようとしていた。
播州・クロリア
(ほんの少し顔をひそめる)
貴方のその雰囲気...
とてもダラキュです。
私の大嫌いな方に
よく似ています。
顔を見たこともない人ですが
とにかく不愉快です。
(液体に満たされた容器の中にいる自分に向かって喋り続ける女性のイメージを浮かべながら)
完全に八つ当たりですが
貴女には滅んでいただきます。
(足を肩幅ほど開き、力を抜いた状態から{霹靂の旋律}で『ダンス』する)
このリズムは...
(直後『衝撃波』で一気に敵に接近し、UCを発動。怒りの感情で巨大化しながら『怪力』で殴りつける)
一瞬です。
「貴方のその雰囲気……とてもダラキュです」
女賞金稼ぎと対峙したクロリアは、嫌気を示すようにほんの少し顔をひそめて呟く。
己の欲望のために他を踏み躙る強欲。全てを自らの思うがままにせんとする傲慢。
「私の大嫌いな方によく似ています。顔を見たこともない人ですが、とにかく不愉快です」
脳裏に浮かぶのは、液体に満たされた容器の中にいる自分に向かって喋り続ける女性のイメージ。まるで夢の中の出来事のように朧げで、なにを囁かれたかもはっきりとは覚えていいない――けれど、脳よりも体が、全身の細胞が、ソレを拒絶している。
「完全に八つ当たりですが、貴女には滅んでいただきます」
「交渉決裂ってことか。いいぜ、ならブッ殺してやるよ!!」
明瞭な敵意を感じ取った女賞金稼ぎは、ニヤリと笑いながらメガリスを起動する。
【ハンタータイム】が発動し、女の右目の義眼が青く輝くと同時に凄まじい気迫が放たれる。一体何人の賞金首を、これまでにその斧にかけてきたのだろうか。
対するクロリアは足を肩幅ほど開くと、ふっと全身の力を抜く。戦闘態勢には見えぬその状態から舞うは"霹靂の旋律"。雷光と轟音を表現した、刹那と畏怖のリズム。
「このリズムは……」
脱力した状態からの瞬間的な"力み"。その直後、クロリアの身体は爆発的な速さで地を駆け、後方に衝撃波を飛ばしながら女賞金稼ぎに肉迫する。警戒していたはずの相手に、斧を振らせる間すら与えないほどの猛スピード。
「あぁん……ッ?!」
見開かれた青い瞳が捉えたのは、眼前にて巨大化していくクロリアの体躯だった。
【バイオミック・オーバーロード】。目の前にいる敵への――そこに被る過去の残像に対する怒りがクロリアを巨人に変える。彼女はその感情を躊躇いなく解き放つと、錆色の金属に包まれた拳を握り締めた。
「一瞬です」
轟、と唸りを上げて叩きつけられた一撃。落雷と聞き違えるほどの轟音が戦場に響き、どてっ腹にめりこんんだクロリアの巨拳は、女賞金稼ぎを大地にめり込ませる。
「ごは……ッ!!」
破砕された地面が衝撃で大きくめくれ上がる。反動で大きくバウンドした女賞金稼ぎの身体は、その勢いのまま教会の外までふっ飛ばされてゴロゴロと地を転がった。
「や、るじゃねぇか……!」
斧を支えとして立ち上がった彼女は、口からにじむ血をぐいと拭って笑みを作る。
それは負傷の痛みを覆い隠す笑みであり、怒りと殺気が綯い交ぜとなった殺戮者の笑みであった。
大成功
🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
「さあ、そいつを寄越しな」
水商売恰好の女が声をかけてきた。
何が欲しいのだろうか、と考えた結果、自分が手に持っている聖杖が欲しいんだろうなと結論至った。
「そんなに欲しいの?いいわよ」
「はっ?」
あまりも素直な返事に面喰らう。
聖杖を女賞金稼ぎに投げた瞬間、カビパンは
「さよならクソ女神杖。いやっほー、最高!」
歓喜の声をあげた。
「いえーい、嬉しい。ほんと嬉しい!」
この扱いに流石の女神もぶちギレた。
聖杖先端の宝珠が輝いて、カビパンを強制【リバレート】
(…え、ちょっと身体が勝手に!?)
カビパンの全身が輝いた。
辺り一面を覆う強烈な聖なる光。
そこにはカビパンと言う名の女神の写し。
女賞金稼ぎVS女神(操られて)
(「さあ、そいつを寄越しな」って。あの女は何が欲しいのだろう)
よくわからん水商売風の格好の女の言葉を反芻しながら、カビパンは考えていた。
これまでの情報を統合すれば相手の狙いがメガリスだと分かりそうなものだが、ここまで主として島民にちやほやされたり、行きがかりの烏賊女をぶっ殺したりしていただけの彼女は、他の猟兵よりも状況把握に若干の遅れがかかっていた。
(あ。もしかしてこの杖が欲しいとか?)
考えた結果、相手は自分が持っているなかで一番値打ちがありそうに見える、聖杖が欲しいのだろうなという結論に至る。女神の力を秘めた宝珠を埋めこんだこの杖は、一般的な価値観からしても確かにお宝の部類に入るだろう。
「そんなに欲しいの? いいわよ」
「はっ?」
――だが、それはカビパンにとっては別に惜しくもなんともない、何なら積極的に手放してもいいくらいの物だった。あまりにも唐突で素直な返事に女賞金稼ぎが面食らった直後、彼女は手にしていた聖杖をぽいっと投げつける。
「さよならクソ女神杖。いやっほー、最高!」
これで面倒くさいしがらみから解放されるとばかりに、歓喜の声を上げるカビパン。
なんか自分の思っていたのと違うものを寄越された女賞金稼ぎは「何だコイツ?」という怪訝そうな顔でそれを見ていた。
「いえーい、嬉しい。ほんと嬉しい!」
そんなに女神の力に嫌気が差していたのか、カビパンの喜びようは相当である。
が、さすがにこの対応には、いつも彼女に加護を与えている女神もブチ切れた。
聖杖先端の宝珠が輝き、本人の意志を無視した強制【リバレート】が発動する。
(……え、ちょっと身体が勝手に!?)
溢れ出す女神の加護でカビパンの全身が輝き、強烈な聖なる光が辺り一面を覆う。
そこに立つのはもはやカビパンではなく、カビパンと言う名の女神の写し。
なかなかやる気を出そうとしない彼女を見かねて、ついに女神が強制介入したようだ。
「よくわからねえが、やる気みたいだな!」
(いや、違うんですけど!?)
カビパンの想いは言葉にならない。聖光の発露を敵対行動とみなした女賞金稼ぎは義眼を輝かせ、【カースバウンティ】にて過去に殺害した賞金首の亡霊を召喚する。
「八つ裂きにしろ!」
亡霊たちは怨嗟の呻き声を上げ、生前使用した凶器を手にカビパンに襲い掛かる。
だが、女神に主導権を奪われたカビパンは、真夏の日差しもかくやという烈光を放って汚らわしい悪霊を寄せ付けない。
(これ後でめちゃくちゃ疲れんだけど!)
本人の抗議も虚しく、操られたカビパンの身体は亡霊を灼き祓い、平時ではありえない運動能力で駆ける。じきに襲ってくるであろう反動など知らんとばかりに、あっという間に敵の元まで近付くと、驚く女賞金稼ぎの手から強引に聖杖をもぎ取る。
「なっ……ぐあっ!?」
直後、奪い返された聖杖から閃光が放たれ、邪悪なるコンキスタドールを貫いた。
ジュッと肉が焼け焦げる音がして、女賞金稼ぎの顔が苦痛に歪む。それを見たカビパン(in女神)は満足げな表情になると、颯爽と前線から離脱していく。
――この数秒後、カビパンは全身の疲労と筋肉痛を味わいながら昏睡することになるが、それはまた別の話。あんまり度が過ぎると教皇にも天罰は下るというお話だ。
成功
🔵🔵🔴
シキ・ジルモント
◆SPD
島の安全を確保するのが今回の仕事だ
よってメガリスを渡す事も、コンキスタドールに従う事もあり得ない
斧が島民に向けられる前に、この場で始末させてもらう
ユーベルコードで増大したスピードで、敵の戦斧の攻撃回数に対応する
攻撃範囲から離脱したり、銃撃で斧の軌道を逸らして攻撃を捌きたい
斧の攻撃を捌いたら、反撃の為に真の姿を解放する(※月光に似た淡い光を纏う。犬歯が牙のように変わり瞳が輝く)
真の姿の解放によって更にスピードを上げて不意をつき、
敵が反応して防御に移るより速く、『零距離射撃』を叩き込む
ゆっくり相手をしている暇は無い
島民達に気付かれる前に終わらせたい
平和な島の暮らしに、荒事の記憶は不要だろう
「島の安全を確保するのが今回の仕事だ。よってメガリスを渡す事も、コンキスタドールに従う事もあり得ない」
シキはあくまで冷静な態度のまま、排除対象たるコンキスタドールに銃口を向ける。
ストイックなその仕事への姿勢は、島民の安寧を最優先とするがゆえのことだ。
「その斧が島民に向けられる前に、この場で始末させてもらう」
細められた碧眼に獣の輝きが宿り、普段は抑えている人狼の獣性が解き放たれる。
野性の眼光にて獲物を睨め付けながら、人狼のガンナーはさっと大地を蹴った。
「ハッ、調子に乗るんじゃねぇ。始末されるのはテメェらの方だ!」
メガリスの義眼を青くギラつかせながら、女賞金稼ぎは猛烈な勢いで斧を振るう。
呪われた戦斧にて全てを薙ぎ払う【殺戮斧旋風】。目にも止まらぬ早業で繰り出される乱撃の渦を、シキは【イクシードリミット】により増大したスピードで対応する。
(速い。だが視えないほどでは無い)
研ぎ澄まされた反応速度にて斧の届く範囲から離脱し、銃弾を刃に当てて軌道を逸らす。その卓越した射撃技術とリミッターを解除した肉体の俊敏性は、メガリスの力を得たオブリビオンにも一歩も引けを取りはしない。
(どんな攻撃にも隙は生まれる……ここだ)
一撃、二撃、三撃と防御に徹し、九度目になる斧刃を捌いた直後、シキは真の姿を解放して反撃に転じた。その身は月光に似た淡い光に包まれ、犬歯が牙のように変わり瞳が輝く。其は満月の夜の人狼の、凶暴なる野性の力の更なる発露。
「ッ!?」
不意にスピードの上がった動きに女賞金稼ぎが瞠目した直後、シキは戦斧のリーチを疾風のようにくぐり抜けて、獲物と手が触れ合うほどの距離にまで肉迫していた。
押し当てるのは冷たい銃口の感触。幾多のオブリビオンを喰らってきた彼の牙――ハンドガン・シロガネが咆哮を上げる。
「ゆっくり相手をしている暇は無い」
「テメェ……ッ、ぐあっ!!?」
女賞金稼ぎが防御に移る間もなく、零距離から撃ち込まれた弾丸が肉と臓腑を抉る。
島民達に気付かれる前に終わらせたいと望むがゆえに、シキの銃撃には一切の容赦も躊躇もなく、重たい発砲音が木霊するたびに標的の身体から血飛沫が舞う。
(平和な島の暮らしに、荒事の記憶は不要だろう)
ここで敵を全滅させて、何も語らずに去れば、全ては何事も無かったことになる。
最初から事件なんて何もなかった――そんないつもと変わらぬ島の日常を守り通すために、シキはトリガーを引き続ける。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
メガリスの所有権を主張するつもりはありませんが、言動を鑑みるだけでもこの島にとって貴女は脅威
島民の平和の為、骸の海にお引き取り願います
相手は歴戦
義眼の死角を狙っても慣れから対処されるか、メガリスで「視て」いる可能性もありますね…
マルチセンサーでの●情報収集で速度、戦斧のリーチ計測により飛翔からの攻撃を●見切り、振りぬかれ最大威力が乗る被弾位置より踏み出し●怪力での●武器受け●盾受けで受け流し同時に布石として敵右側狙いの近接攻撃
数度の交錯後の迎撃に格納銃器を右側狙いで●だまし討ち
…散々、「右」を意識させたのです
回避した先にUCを左から回り込むように射出し拘束
地に叩きつけ●シールドバッシュで追撃
「メガリスの所有権を主張するつもりはありませんが、言動を鑑みるだけでもこの島にとって貴女は脅威」
猟兵の攻勢に女賞金稼ぎが怯むや、間を置かず前線へ踏み込んだのはトリテレイア。
右手に剣を、左手に盾を。胸には守護の誓いを秘め、島を脅かす外敵に挑み掛かる。
「島民の平和の為、骸の海にお引き取り願います」
「お断りだね! アタシは誰の指図も受けるもんか!」
儀礼剣が振り下ろされるよりも速く、女賞金稼ぎの義眼型メガリスが青い光を放つ。
【ハンタータイム】によって空に舞い上がった彼女は、自らの邪魔をする目障りな連中を見下ろしながら、呪われし戦斧を振りかぶった。
(相手は歴戦。義眼の死角を狙っても慣れから対処されるか、メガリスで「視て」いる可能性もありますね……)
生半可な奇策ではあのコンキスタドールの意表を突くことはできまい。トリテレイアはマルチセンサーをフル稼働させ、飛翔する敵の速度や斧のリーチの計測にあたる。
「ブッた斬ってやるよ!」
対する女賞金稼ぎが繰り出すのは高高度からの急降下攻撃。本来の飛翔速度に重力加速度を上乗せした戦斧の一撃は、直撃すればウォーマシンの装甲でも無事では済むまい。
(回避は困難……ならば受け流すのみ)
トリテレイアは退くのではなく敢えて踏み出すと、振り抜かれた戦斧が最大の威力を発揮する被弾位置よりも前で女賞金稼ぎの攻撃を防御する。黒ずんだ大斧の刃と白く塗られた重質量大型シールドが激突し、衝撃波と共に火花を散らす。
「お返しです」
「なんのッ!」
同時に放たれる儀礼剣による斬撃は敵の右側を狙ったもの。本来ならば死角となる角度からの攻撃は、しかし即座に反応した女賞金稼ぎに弾かれる。戦いはそのまま近接戦へともつれ込み、剣と斧が奏でる刃の音色が、廃墟となった教会に響き渡る。
「オラオラ、こんなモンかぁッ!」
一対一での殴り合いであればユーベルコードで強化された女賞金稼ぎに分がある。
数度の交錯を経て、戦斧の猛攻にじりじりと押しやられていくトリテレイアは、不意をついて機体各部の格納銃器を展開し、再び敵の右側面を狙った銃撃を仕掛ける。
「ハッ! 右ばかり狙いやがって、見え見えなんだよ!」
稲妻のような空中機動を以って銃弾の雨を避ける女賞金稼ぎ。死角からの攻撃だろうと予測できていれば脅威では無いと、その口元には嘲るような笑みが浮かんでいた。
――だが、女賞金稼ぎが勝ち誇った時、彼女はトリテレイアの術中に嵌っていた。
「……散々、『右』を意識させたのです」
予測した回避運動の先に「左」から回り込むように射出されたのは【両腰部稼働装甲格納型 ワイヤー制御隠し腕】。視覚的な死角ではなく、意識的な虚を突いたその一手は、狙い過たずに標的を捉えた。
「騎士の戦法ではありませんが……不意を討たせて頂きます」
「なぁッ!? この、放しやがれッ!!」
避ける間もなく隠し腕に拘束された女賞金稼ぎは、じたばたと暴れるがもう遅い。
トリテレイアはそのままワイヤーを巻き上げて腕を収縮させ、空中の敵を勢いよく地面に叩きつけた。
「ごげッ!!」
女賞金稼ぎの身体はぐしゃりと鈍い音を立てて墜落し、息が詰まるほどの衝撃が襲う。
体勢を立て直す暇を与えず、トリテレイアは即座に落ちてきた標的に接近すると、シールドバッシュによる追撃を叩き込んだ。
「お引き取り下さい」
「ぐぎゃぁッ
!!?!」
とてつもない重量と強度を誇る大盾に殴打され、吹き飛ばされる女賞金稼ぎ。
無様な悲鳴を上げながら地を這わされるうちに、その身は血と泥に塗れていく。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
お気遣い痛み入るわ。ぜも残念ね。わたしは貴女を生かしてあげるつもりは無いの。…この島に土足で踏み入った事を後悔すると良いわ。
【吸血姫の覚醒】を発動!
【高速・多重詠唱、全力魔法、属性攻撃、誘導弾】で多属性の誘導魔力弾を連続発射!
敵が飛行しようと時間差で連射して敵を追い込み、隙を作って一気に高速飛行で接近。
雷撃を纏った魔槍の一撃【怪力、早業、属性攻撃】を叩き込み、更に魔力弾で追撃して動きを封じ、魔力を魔槍にチャージ【力溜め】。
【限界突破】の【神槍グングニル】でその義眼のメガリスごと、その頭と身体、吹き飛ばしてあげるわ!
我が同胞と同胞が治めるこの地を汚す者…我が槍にて無へ還るが良い!
雛菊・璃奈
お断りするよ…。貴女はこの島だけじゃなく、世界に災厄を招く…。
貴女にメガリスは渡さない…。
ラン達は下がる様に指示し、【九尾化・魔剣の媛神】封印解放…。
無限の終焉の魔剣を顕現させ、【呪詛】で更に強化し一斉斉射で賞金首の霊と敵本体共に攻撃…。
敵が魔剣に対応してる間に凶太刀の加速と神速の二重加速で接近し、バルムンクとアンサラーの二剣へ持ち替え…。
敵の戦斧の一撃をアンサラー【呪詛、武器受け、オーラ防御、カウンター】で反射…。
敵が虚を衝かれた瞬間に【呪詛、衝撃波】を纏ったバルムンクの渾身の一撃【力溜め、鎧砕き、鎧無視、早業】で戦斧ごと一気に叩き斬るよ…。
貴女はここで仕留めるよ…。夜明けの邪魔はさせない…
「クソッ、コンキスタドールでもない奴らが調子に乗りやがって……メガリスさえ大人しく渡せば、このアタシがせっかく情けをかけてやろうって言ったのによぉ……」
戦斧を支えとして傷ついた身体を起こしながら、女賞金稼ぎは憎々しげに悪態を吐く。
端から見逃す気などさらさら無かったことには頑なに触れず、逆恨みにも等しい怒りが、激しい殺気となって猟兵達にぶつけられた。
「お気遣い痛み入るわ。ぜも残念ね。わたしは貴女を生かしてあげるつもりは無いの」
「お断りするよ……。貴女はこの島だけじゃなく、世界に災厄を招く……」
殺気から一歩も退かず、怒れるコンキスタドールと対峙するはフレミアと璃奈。
夜明けを迎えたアルバ島の平和を脅かし、我が物顔で略奪と破壊と殺戮を繰り返す貪欲なる魔性。そんな輩に情けをかけられる謂れもなければ、放置する理由も無い。
「……この島に土足で踏み入った事を後悔すると良いわ」
「貴女にメガリスは渡さない……」
音もなく燃え上がるような決意を漲らせて、ふたりはユーベルコードを発動する。
真紅の魔力と漆黒の呪力が解き放たれ、戦場を大いなる力の波動が席巻していく。
「我が血に眠る全ての力……今こそ目覚めよ!」
「我が眼前に立ち塞がる全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」
【吸血姫の覚醒】を果たしたフレミアの背には4対の翼が生え、17~8歳程の外見へ変化したその姿は、畏怖さえ抱かせる威厳と美しさを備えたヴァンパイアの姫君。
そして【九尾化・魔剣の媛神】の封印を解いた璃奈の尾は九つに分かれ、周囲を崩壊させるほどの呪力の奔流と共に、"終焉"の力を宿した無限の魔剣が顕現する。
「ハッ……そっちも殺る気ってことか。いいぜ、返り討ちにしてやらあ!!」
ニヤリと鮫のような笑みを浮かべて女賞金稼ぎが吠えると、その身はメガリスから放たれた青い光に包まれ、【カースバウンティ】によって賞金首の亡霊が姿を現す。
亡霊は怨嗟の呻き声を上げながら手にした武器を振り上げ、かつて己の首を取った女賞金稼ぎの走狗として猟兵達に牙を剥く。一体どれだけの賞金首を餌食にしてきたのか、その数は数十名は下らない。
「ラン達は下がってて……」
「「「頑張ってご主人!」」」
声援を送りながら退避していくメイド達を確認してから、璃奈は顕現させた魔剣の切っ先を亡霊とコンキスタドールに向ける。媛神の呪詛によって更に強化された終焉の刃は、この世のあらゆるものに滅びを与え、無に還す絶対的な力の具現。
「呪われし剣達……我が敵に終焉を齎せ……」
囁くような璃奈の号令と共に無限の魔剣は一斉斉射され、視界を黒く染めるほどの豪雨となって敵陣に襲い掛かる。その圧倒的な力の物量を前にして、賞金首の亡霊たちは刃を交えることもなく貫かれ、断末魔の絶叫だけを遺して消え去っていく。
「チッ! 使えないヤツらだ!」
配下を蹴散らされた女賞金稼ぎは舌打ちをひとつ打つと【ハンタータイム】によって獲得した飛翔能力で空に舞い上がり、無限の魔剣による蹂躙から逃れようとする。
だが、上空に逃れた彼女を襲ったのは、炎に風、氷に雷――多種多彩な属性を宿した魔力弾による対空射撃の嵐だった。
「どこに逃げるつもりかしら?」
高速で呪文の多重詠唱を行いながらフレミアが問う。その指先から連続発射される魔弾は生きているかのように標的を追尾し、どこへ逃げようとも追い込んでいく。
「このッ、鬱陶しいんだよ――っ、がぁッ?!」
女賞金稼ぎは戦斧を振るって魔弾を弾き落とそうとするが、時間差を開けて飛来したさらなる魔弾が迎撃をくぐり抜けて着弾する。思わず敵が怯んだ隙を突いて、フレミアは真紅の翼を広げると、瞬間移動と見紛う速さで天に飛び立った。
「墜ちなさい!」
「ぎゃぁッ!?」
一瞬で距離を詰めた吸血姫の手には、雷撃を纏ったドラグ・グングニル。雷光の軌跡を描いて叩き込まれた一閃は、女賞金稼ぎの腹部を深々と抉り、地に叩き落とす。
さらにフレミアは墜ちていく敵に雷の魔力弾で追撃を仕掛け、反撃の機を許さない。
「く、そが……身体が、痺れ……ッ!」
撃ち下ろされる雷撃のダメージは女賞金稼ぎを感電させ、動きを大きく鈍らせる。
その際を狙って彼女に急接近したのは、妖刀を構えた魔剣の媛神、璃奈であった。
「降りてきたね……こっちはもう、準備はできてる……」
妖刀・九尾乃凶太刀がもたらす加速の呪力と、媛神の封印解放による神速の強化。
その二重加速によって刹那のうちに距離を詰めた璃奈は、即座に魔剣「バルムンク」と「アンサラー」の二剣に得物を持ち替え、女賞金稼ぎと対峙する。
「覚悟はいい……?」
「ふざけんなッ! アタシがこんな所でやられる訳が!」
思うように身体が動かない中、女賞金稼ぎは義眼のメガリスを輝かせながら戦斧を振るうものの、見えすいた大振りの一薙ぎは璃奈のアンサラーに受け止められる。
其は敵から受けた攻撃の威力を跳ね返す報復の魔剣。自らの一撃を反射された女賞金稼ぎの身体は大きく仰け反り、その瞳は虚を突かれたように大きく見開かれる。
「な……ッ」
体勢を崩された女賞金稼ぎは、僅かな間一切の行動がままならない"死に体"となる。
その瞬間、璃奈は全ての呪力をバルムンクに溜め込んで、渾身の一撃を叩きつけた。
「貴女はここで仕留めるよ……。夜明けの邪魔はさせない……」
大上段から振り下ろされる、呪詛と衝撃波を纏った剛剣の一太刀。
魔竜さえ屠るその刃を前に、いかなる防御も装甲も意味を成さない。
「――――ッ
!!!!!?!!」
破れかぶれに掲げられた戦斧の柄を真っ二つにへし折って、バルムンクの斬撃は女賞金稼ぎを深々と叩き斬った。声にならない絶叫と共に、真っ赤な鮮血が戦場に散る。
――そして、その直上ではフレミアが、魔槍への魔力のチャージを完了させていた。
「その義眼のメガリスごと、その頭と身体、吹き飛ばしてあげるわ!」
振りかぶった真紅の魔槍は数メートルもの長さに及び、圧縮された魔力が太陽のごとく煌めいている。其の名は全てを滅ぼす神殺しの槍――【神槍グングニル】。
「我が同胞と同胞が治めるこの地を汚す者……我が槍にて無へ還るが良い!」
怒りを込めて放たれた渾身の一投は狙い過たず、動けない標的に着弾する。
直後、隕石衝突のごとき衝撃が起こり、真紅の爆光の中に敵の姿が消えた。
「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁッ
!!!?!!」
耳をつんざくような悲鳴が戦場に木霊する。やがて光が収まったとき、大地に穿たれた巨大なクレーターが、フレミアの神槍の破壊力の大きさを物語っていた。
「いぎぃぃぃあぁぁぁ……畜生がああぁぁぁ……ッ!!」
女賞金稼ぎの頭部は右側面がごっそりと抉れ、眼窩に嵌っていたメガリスには亀裂が走っている。そして胴体には、肋骨をへし折られ心臓にまで迫るほどの深い太刀傷。
あの状況からよくも致命傷を避けたものだと、逆に感心してしまうような有様。
メガリスを巡る猟兵とコンキスタドールの戦いの天秤は、大きく傾きつつあった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鏡島・嵐
やっぱりイヤな予感は当たってたんか。
おれらがもっと早くメガリスを持ち去ってたら、コイツは腹いせに島の人たちを皆殺しにしてただろうな。
世の中上手くいかねえって言ったけど、前言撤回。ある意味おれらの理想通りに事は運んだわけだ。
何せここでテメェを倒せば、怖ぇ思いはしても後味悪ィ思いはしねえで済むわけだしな……!
《笛吹き男の凱歌》で能力を強化し、そこに〈援護射撃〉を重ねることで、味方の攻撃の威力と精度を可能な限り引き上げる。
勿論〈スナイパー〉や〈フェイント〉も活用して、仲間が決定的な一撃を撃てるタイミングを作り出す。
防御でも〈目潰し〉や〈武器落とし〉を駆使して、相手の攻撃を徹底的に妨害するように。
アリアケ・ヴィオレータ
アドリブ・連携OK
【WIZ】
テメェみてぇな嘘つきの外道にはメガリスは渡せねぇぜ!
「ここはテメェの漁場じゃねえんだ、とっとと消えな!」
銛を構えて啖呵を切る。召喚された幽霊の攻撃は、
銛や全身に纏わせた『覇気』で防ぐことを試みるぜ。
「ついでにこいつも食らえ!」
「金剛杵相似の長角魚、その劇毒をお借りする!」
UC【カウフィッシュ・ポイズン】を発動。
近くにいる幽霊共に毒粘液をお見舞いしてやろうか。
幽霊共をしのいだら賞金稼ぎに向かって不知火を『投擲』だ!
「よし、漁(ト)るぞ、不知火!」
『串刺し』にしてやる、テメェは骸(テメェ)の海に沈んでろ!
「やっぱりイヤな予感は当たってたんか。おれらがもっと早くメガリスを持ち去ってたら、コイツは腹いせに島の人たちを皆殺しにしてただろうな」
コイツはそういうタイプの奴だと、厳しい顔でコンキスタドールを睨みつける嵐。
この手の輩は理不尽に破壊を振りまくからこそ恐ろしい。もしも何事もなく最短でメガリスを回収していれば、それが惨劇を招く結末になったかもしれないのだから。
「世の中上手くいかねえって言ったけど、前言撤回。ある意味おれらの理想通りに事は運んだわけだ」
愛用のスリングショットの弦を引き絞りながら、彼は真剣な目で敵を睨みつける。
戦うことへの恐れはある。だが今ここで逃げれば、絶対に後悔することになる。
「何せここでテメェを倒せば、怖ぇ思いはしても後味悪ィ思いはしねえで済むわけだしな……!」
穏やかに暮らす島民の平和を守るために、少年はなけなしの勇気を弾丸に込める。
「ち、くしょ……メガリスを、メガリスを寄越しやがれ……!」
「テメェみてぇな嘘つきの外道にはメガリスは渡せねぇぜ!」
ゆらり、と傷ついた身体で動きだした女賞金稼ぎに、銛を突きつけるはアリアケ。
秘宝には指一本触れさせまいと、堂々たる振る舞いで相手の進路上に仁王立つ。
「ここはテメェの漁場じゃねえんだ、とっとと消えな!」
漁り人らしい威勢の乗った啖呵を切れば、相手もまた彼女をギロリと睨みつけ。
邪魔をするなと言わんばかりに召喚された【カースバウンティ】の亡霊が、凶器を振りかざして襲い掛かってくる。
「そこをどきやがれ……!」
「嫌なこった! アンタが退きな!」
亡霊の怨嗟の呻き声にも怯まずに、構えた"不知火"をぐっと握りしめるアリアケ。
その少し後ろでは、嵐が射撃体勢を取ったまま【笛吹き男の凱歌】を発動する。
「魔笛の導き、鼠の行軍、それは常闇への巡礼なり。……耳を塞ぐなよ?」
召喚された道化師が奏でるノリのいい演奏は、心震わせた者に勇気と力を与える。
アリアケの胸の奥で高波のような昂揚感が湧き上がり、全身から強大な覇気が迸る。
鎧のように身体を包む練り上げられたオーラは、賞金首の亡霊の攻撃をやすやすと防ぎ、覇気を纏った銛の先端が亡霊の手から武器を弾き飛ばした。
「ついでにこいつも食らえ!」
亡霊の攻撃を凌いだ直後、アリアケは【金剛鰒の粘毒】を発動して反撃をかける。
「金剛杵相似の長角魚、その劇毒をお借りする!」
覇気の鎧に加えて全身に纏うのはコンゴウフグの毒粘液。ユーベルコードの力で致死性の猛毒にまで昇華されたそれは、すぐ目の前にいた亡霊共に浴びせかけられた。
『グアアァァァァァ―――ッ
!!!?』
断末魔の絶叫が廃墟に響き、苦悶の表情を浮かべて消滅していく賞金首の亡霊共。
敗れ去った彼らとは対照的に、アリアケの纏う覇気はその気迫を増し続けていた。
「畜生がッ。だったらアタシの手でやってやらぁッ!」
息をつく間もなく、短くなった斧の柄を握り締めて女賞金稼ぎが踏み込んでくる。
怒りの形相で叩き込まれる戦斧の一撃は、手負いなれども侮れない威力があろう。
「やらせるかよ!」
だが、そこですかさず嵐が狙い澄ました援護射撃を放ち、敵の行動を妨害する。
撃ち出されたスリングの弾丸は的確に女賞金稼ぎの斧と義眼――メガリスに命中し、攻撃の目測と軌道を狂わせる。アリアケはそれを見逃さずにさっと身を翻し、致死の戦斧を躱しながら鋭銛を投擲する構えを取った。
「ありがとよ。よし、漁(ト)るぞ、不知火!」
大振りな一撃が外れた後に生じる隙は、反撃する者にとっては絶好の好機となる。
劇毒による強化と凱歌による昂揚感、ふたつのユーベルコードによって高まった力の全てを、アリアケはこの瞬間、この一投に込める。
「まずい……ッ?!」
「逃がさないぜ」
女賞金稼ぎは斧を手放してでも回避を試みようとするが、嵐の追撃がその機を潰す。
頭部を狙った正確なスナイピングで敵の虚を突き、仲間が決定的な一撃を撃てるタイミングを作り出す。
「串刺しにしてやる、テメェは骸(テメェ)の海に沈んでろ!」
万難を排して投げ放たれたアリアケの鋭銛は、狙い過たずに賞金稼ぎを貫いた。
どてっ腹にどすりと大きな穴が空き、女の口からは悲鳴と共に鮮血が溢れ出す。
「ぐがあぁぁぁぁぁッ
!?!!」
よろよろと一歩二歩、幽霊のように覚束ない足取りで後退する。その姿から出現時の覇気は衰え、手負いのコンキスタドールはいよいよ窮地に立たされつつあった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
フン、そのデカい得物を振り回す腕力だけは大したものだな
当たらなければ意味は無いが
敵UCに合わせカウンターでUCを発動
手首から巨大な毒銛を飛ばして攻撃
敵が素早い動きで避けたり戦斧で叩き落す動作を観察してパターンを読みつつ見切りで回避に専念
敵の攻撃が残り少なくなったらカウンターで巨大な銛を発射
同時に、敵の避ける方向を予測して指先から動きが鈍る強力な神経毒を注入した針のような細い毒銛を飛ばす
命中し動きが鈍ったら一気に反撃
デゼス・ポアやナガクニでの斬撃を喰らわせる
気分次第では素直に生かしてやってもいいか…お優しい事だ
私はお前が従おうと従うまいと関係なしに骸の海に沈めてやると言うのにな
「クソが……クソがクソがクソがッ、舐めんじゃねえぞぉッ!!」
劣勢に立たされた女賞金稼ぎは、短くなった斧を振り回して怒り狂ったように叫ぶ。
気に入らないものは全て壊し、欲しい物は力ずくで手に入れてきた。そんなコンキスタドールにとってこの戦況は受け入れがたく、また不快なものだったのだろう。
「フン、そのデカい得物を振り回す腕力だけは大したものだな。当たらなければ意味は無いが」
そんな相手を挑発するように冷たい眼差しを向けて、キリカはすっと手をかざす。
【殺戮斧旋風】を巻き起こす女賞金稼ぎに対抗して、彼女が発動するのは【ク・デ・トキシック】。芋貝の能力を身に宿し、猛毒の銛を生成するユーベルコードだ。
体内の鉄分やカルシウムを集めて生成された銛は、キリカの手首から勢いよく射出される。だが、当たればただでは済まないであろう巨大な毒銛を、女賞金稼ぎはぶおんと斧をひと薙ぎして叩き落とした。
「舐めんじゃねぇ! アタシを不機嫌にさせた報いを思い知らせてやる!」
罅割れた義眼を爛々と輝かせながら、凄まじい速度で戦斧を振り回す女賞金稼ぎ。
豪快ながらも機敏なその挙動は、矢継ぎ早に放たれる毒銛をまるで寄せ付けず、尽く打ち払いながらキリカとの距離を詰めていく。
「よほど腹に据えかねたようだな」
一方のキリカは冷静に、敵の動作を観察しながら反撃に転ずる機会を窺っていた。
反撃を差し挟む隙も無いほどの超高速の連続攻撃。だがそれは無限に繰り出せるものでは無いはずだ。毒銛で牽制して回避に徹しつつ、攻撃が途切れる瞬間を待つ。
「このッ、ちょこまかとッ!!」
連撃の最大回数が近付くにつれて、女賞金稼ぎの顔には苛立ちと焦りが浮かびだす。
それを見たキリカはここぞとばかりに巨大な毒銛を生成して、勢いよく発射する。
「そろそろこちらも行かせて貰おうか」
「だから、舐めてんじゃねぇッ!」
その攻撃はもう見ている。だから女賞金稼ぎは初撃と同じように毒銛を斧で捌く。
そう、その動きこそキリカは予測していた――本命は彼女の指先から同時に放たれた、針のように細いもう一本の銛だ。
「痛ッ!? なンだ、こりゃ……」
斧を返す間もなく突き刺さった銛は、文字通り針に刺された程度の威力しかない。
だがその先端に塗られた毒は、銛同様にキリカの体内で生成された特別製だった。
「深き海からの贈り物だ、遠慮なく受け取ると良い」
小型生物のみならず人間すら容易く死に至らしめるイモガイの能力を、さらに強化した即効性の神経毒。それは一瞬のうちに標的の体内を巡り、末端から全身に至るまでの神経の働きを阻害する。
「ぐ、ご、ぁ……ぐる、じ、ッ……テメ、よくも……ッ!」
言葉を発しようにも思うように舌が回らず、呼吸すらもままならない。痺れて動かなくなった手からは大斧が取り落とされ、女賞金稼ぎはがくりとその場に膝をついた。
「気分次第では素直に生かしてやってもいいか……お優しい事だ」
毒の有効性を確認すると、キリカは短刀「ナガクニ」を抜いて一気に反撃に出る。
俊足の踏み込みから放たれる斬撃に合わせ、彼女の人形――デゼス・ポアもまた無数の錆びついた刃を放ち、忌むべきオブリビオンを切り刻む。
「私はお前が従おうと従うまいと関係なしに骸の海に沈めてやると言うのにな」
「ぐ、ぞ、待て、やめ……ギッ、ギャァァァァッ
!!!?!」
身動きさえままならぬまま斬撃の嵐を喰らわされ、女賞金稼ぎが悲鳴を上げる。
刻まれゆく身体からは花弁のように血飛沫が散り、戦場を紅く染め上げていった。
成功
🔵🔵🔴
新山・陽
SPD 貴女の海は骸の海ですよ。案内が要りますか?
敵の殺戮斧旋風に対し、UC『ラッシュ』を発動させ攻撃回数全てを体術で捌くよう試みます。
初撃など、ラッシュで賄えない攻撃は【咄嗟の一撃】や【野生の勘】で凌ぎ、あえて距離を詰めることで斧の間合いから外れるよう工夫し、行動の終点を【見切り】、相手の軸足に対して【部位破壊】で踏みつけ、ダメージを与えようとします。
多少のダメージは仕方がないと考え、他の猟兵のみなさんの邪魔にならないようタイミングを見計らい、自身を【かばい】ながら距離をとります。
貴女が最後の暗闇です。私達がメガリスを手にしたまま、島民の皆さんに必ずくる夜明けを証明してみせますとも。
オリヴィア・ローゼンタール
汝、盗む勿れ、隣人の財産を貪ってはならない……などと、説いたところで聞く手合いではありませんね
聖槍を振るって戦斧と打ち合う
大戦斧を自在に操る膂力を有していても、武器の性質的に直線的な軌道こそが最大威力を発揮し、本人の気質からもそれを好む筈
【見切り】、【武器で受け】流す
単純な膂力のみで我々を制せると思わないことです!
亡霊の数を恃みにしてくれば、【全力魔法】【紅炎灼滅砲】で370本の極大破壊光線を放つ
召喚されたのが被害者であれば攻めあぐねたでしょうが、同類のならず者が屈従しているだけならば容赦は不要――焼き尽くす!
爆炎を目眩ましに利用し、駆け抜け(ダッシュ)、【怪力】を以って聖槍で【切り込む】
「貴女の海は骸の海ですよ。案内が要りますか?」
実戦的格闘術"システマベーシック"の構えを取りながら、陽は女賞金稼ぎに問う。
欲望のままに海を荒らすコンキスタドールは、傷ついた身体で戦斧を握りなおすと、憤怒と殺意の籠もった視線で彼女を睨み返した。
「ふざけんじゃねェ……ここはアタシの海だ! お前らこそ骸の海に沈めてやるよ!」
右目に埋め込まれたメガリスの義眼が輝きだし、保有者の攻撃速度を加速させる。
呪われし大斧による竜巻のごとき【殺戮斧旋風】。その暴風圏に巻き込まれたものは、何であろうとも只では済むまい。
「やりますか」
真っ向から襲い掛かってくる殺戮の戦舞を、陽は落ち着いた所作のまま迎え撃つ。
まずは初撃を野性の勘で見切り、拳の甲で逸らしながら踏み込む。長柄の武器を相手にする際は、退くよりも敢えて距離を詰めたほうが間合いを外すうえで効果的だ。
「バラバラになりやがれッ!」
女賞金稼ぎも即座に斧の柄を短く持ち直すことで距離に対応してくる。暴風を巻き起こしながら放たれる戦斧の猛攻に、鍛え抜かれた体術の【ラッシュ】で捌く陽。
激しい攻防が繰り広げられる中、煌めくような金と銀の軌跡を描いて、さらに1人の猟兵が前線に飛び込んできた。
「汝、盗む勿れ、隣人の財産を貪ってはならない……などと、説いたところで聞く手合いではありませんね」
黄金の穂先持つ破邪の聖槍を携え、悪虐の徒に挑み掛かったその者はオリヴィア。
平和な島民の暮らしを乱す者にかける情けなどありはしない。その刺突は初手から相手の心の臓を貫かんと振るわれる。
「ちぃッ! うざってぇ!」
女賞金稼ぎは舌打ちしながら刺突を弾き返すと、さらなる殺意を込めて戦斧を振るう。
立ち塞がる猟兵を纏めて薙ぎ払わんとしたその一閃は、しかし聖槍に受け流される。
(大戦斧を自在に操る膂力を有していても、武器の性質的に直線的な軌道こそが最大威力を発揮し、本人の気質からもそれを好む筈)
たとえ攻撃の手数が圧倒的だろうとも、パターンを見切ってしまえば対応は可能。
横薙ぎ、あるいは振り下ろしに読みを絞り、右からならば陽、左からならばオリヴィアというように、2人は言葉を交わすまでもなく連携して敵の攻撃を凌いでいく。
「単純な膂力のみで我々を制せると思わないことです!」
「クソがっ。だったらこれならどうだ!」
業を煮やした女賞金稼ぎは【カースバウンティ】を発動し、自分が過去に殺した賞金首の霊を召喚する。二体一での分が悪いならば、数の優位を覆そうという魂胆か。
『うぅぅぅぅああぁぁぁぁぁ……』
死してなお魂魄を束縛された亡霊共は、怨嗟の呻き声を上げながら武器を構える。
その数は十か、二十か、いやそれ以上。ひとつの群として展開可能な人数が、この女賞金稼ぎがこれまでに奪ってきた命の数を物語っていた。
「行けテメェら! この猟兵共をブッ殺せ――ッ!?」
援軍を呼んで勝ち誇った女賞金稼ぎの表情は、すぐに戦慄で凍りつくことになる。
亡霊共には一瞥すらくれぬまま、陽がさらに自分の懐まで踏み込んできたからだ。
「何人増えようとも、貴女さえ仕留めれば全て消えるのでしょう」
陽の行動は最初から一貫している。むしろ亡霊召喚の瞬間に敵の攻撃が終点に達したのを好機とさえ見切り、洗練された体捌きでカウンターを仕掛けてみせた。
互いに触れ合えるほどの至近距離から繰り出すのは軸足狙いの一撃。しなやかな外見とは裏腹に重い踏みつけを喰らった敵は、たまらず悲鳴を上げてバランスを崩す。
「ぎぃッ!? て、テメェ……ッ!」
足に走った激痛から女賞金稼ぎが立ち直るよりも速く、陽はその場から離脱する。
本体に代わって亡霊達が追撃を仕掛けるが、それを想定して己の身をかばっていた彼女には、大したダメージは与えられない。
「貴女が最後の暗闇です。私達がメガリスを手にしたまま、島民の皆さんに必ずくる夜明けを証明してみせますとも」
バックステップで距離を取りながら、島を脅かすコンキスタドールに陽は告げる。
この後退はけして逃避ではなく、他の猟兵の邪魔にならないためのもの。そしてまさに示し合わせたようなタイミングで――オリヴィアのユーベルコードが起動する。
「召喚されたのが被害者であれば攻めあぐねたでしょうが、同類のならず者が屈従しているだけならば容赦は不要――焼き尽くす!」
陽の後退直後に敵陣を襲ったのは、紅蓮の炎熱を集束した極大なる破壊光線の嵐。
総計370本にも及ぶ、その破壊の奔流の名は【紅炎灼滅砲】。地上に降りた太陽のごとき閃光と灼熱は、不浄なる亡霊をことごとく灰燼に帰し、骸の海へと葬り去る。
「あ、熱ぢっ、あぢぃぃぃぃッ
!!?!」
そして陽の攻撃で体勢を崩していた女賞金稼ぎもまた、灼滅砲から逃れることはできなかった。凄まじい爆炎が肉を焦がし、それに伴う光熱が視界を白く染め上げる。
その刹那を射抜くように、オリヴィアは聖槍と共に矢のごとく戦場を駆け抜けた。
「貪欲なる者よ、自らの欲望の炎に焼かれ、この地より疾く去るがいい!」
並外れた膂力を込めた聖槍の一撃が、一条の閃光となって女賞金稼ぎを薙ぎ払う。
そのままオリヴィアが駆け抜けていった直後、背後より真っ赤な血飛沫が散る。
「が、は―――ッ!!」
破邪の槍を受けたコンキスタドールの傷は、まるで焼け爛れたようになっている。
アルバ島に訪れた暗闇の命運は、今や夜明け前の残影のように儚いものであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シェーラ・ミレディ
過ぎた力が身を滅ぼしていることにも気付かず、末がこれか。
全く、無様なものだなぁ。
生憎、ご機嫌取りをする理由もない。──そう、お前を倒してしまえば、メガリスを悪用される心配もない上、島民の安全も確保できるのだからな!
などと挑発し、敵の攻撃を誘う。
元賞金首の霊が出てきたら『相思相愛』で射抜くぞ。
そも、霊が現世に迷い出てくること自体が不自然なのだ。存在が不確かなものになぞ、僕が傷付けられるはずもなかろう?
霊の身体で射線を隠しながら、賞金稼ぎ本人を狙おう。
弾頭は呪殺誘導弾。そら、お前に殺された罪なき者達の怨念だ。ありがたく受け取れ!
※アドリブ&絡み歓迎
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
退けば追わない、とか、お前らだけは見逃す、とか。そのテの事吐かす輩が言葉通りに行動することなんて、あたしの知る限りほっとんどないのよねぇ。オブリビオン…こっちだとコンキスタドールか、ならなおさら。
単純に手数が増える、ってのは正直キツいわねぇ…
なら、攻撃自体の脅威度を下げちゃいましょ。
●縊殺で対処の選択肢を削って単調な攻撃を誘発させるわぁ。どれだけ手数が増えようと、当たらなければ無いのと一緒よねぇ?
攻撃の軌道○見切って○乱れ撃ち喰らわせてやるわぁ。
あの人たちの生活は壊させないわぁ。
…宗教だのカミサマだのが大っ嫌いなのは、たぶん一生変わらないでしょうけど。
「畜生……折角情けをかけてやったのに……てめぇら、もう許さねえからな……」
「退けば追わない、とか、お前らだけは見逃す、とか。そのテの事吐かす輩が言葉通りに行動することなんて、あたしの知る限りほっとんどないのよねぇ」
満身創痍でほざく女賞金稼ぎに、ティオレンシアは微笑みんだまましれっと返す。
これまで散々に弱者を奪い殺すことで生きてきた輩の言葉に信用などあるものか。
「オブリビオン……こっちだとコンキスタドールか、ならなおさら」
「生憎、ご機嫌取りをする理由もない。──そう、お前を倒してしまえば、メガリスを悪用される心配もない上、島民の安全も確保できるのだからな!」
愛用のリボルバー拳銃を抜いたティオレンシアに合わせて、精霊銃を構えながらシェーラも啖呵を切る。銃口を向けられながらこうも挑発されれば、女賞金稼ぎのちっぽけなプライドも退くに退けまい。
「テメェら、もう勝った気でいるのか? フザけんな……!」
怒りと憎しみを糧として、破損したメガリスの義眼が今一度青い輝きを発する。
同時に、女賞金稼ぎの周囲には【カースバウンティ】で召喚された賞金首の亡霊が現れ、怨嗟の呻き声を上げながら進撃を開始する。
『ウオォォォォォォォ……ッ!!!』
コンキスタドールに命を奪われた彼らの心にあるものは、生者に対する恩讐のみ。
まるで3流のパニックホラー映画のように、何十という亡者が猟兵達に押し寄せる。
「そんなものが、僕に通用するとでも?」
だがシェーラは不敵な笑みを浮かべながら、元賞金首の霊目掛けてトリガーを引く。
【彩色銃技・相思相愛】。術式を刻んだ銃弾は亡霊共を次々に射抜き、単にダメージを与えるのみならず、その構造的な欠陥を浮き彫りにする。
『ウゥゥアアァァァァァ
……!?』
猟兵達に振り下ろされた亡霊の武器は、すかっ、とまるで幻のように空を切った。
困惑し、手で掴み、あるいは噛みつこうとしてもやはり触れられない。半透明に透けた身体が朧げに揺らぐ。
「そも、霊が現世に迷い出てくること自体が不自然なのだ。存在が不確かなものになぞ、僕が傷付けられるはずもなかろう?」
手品の種明かしのように、くるりと精霊銃を弄びながらシェーラは口角を上げる。
死者は死者らしく、亡霊は亡霊らしく。彼岸の存在は此岸へと干渉する力を撃ち抜かれ、ただ視界を遮る程度の存在と化した。
「テメェぇェラああァァァァァァッ!!!」
そこに限界を超えた憤怒の形相で、女賞金稼ぎが猛然と斧を振り上げ吶喊してくる。
役に立たない亡霊共を切り刻みながら、無差別に繰り出される【殺戮斧旋風】。
シェーラは咄嗟に亡霊の陰に隠れて身を躱し、そしてティオレンシアは――。
「単純に手数が増える、ってのは正直キツいわねぇ……なら、攻撃自体の脅威度を下げちゃいましょ」
竜巻のような猛攻を仕掛ける標的へと、撃ち込むのはルーンの銃弾とグレネード。
狙いはダメージを与えることよりも、敵の心理的な対処の択を削ること。銃撃と爆撃による牽制を食らえば、ただでさえ追い詰められて頭に血の昇った女賞金稼ぎの選択肢は単調な攻撃に絞られる。
「ああぁぁぁウザってぇ! さっさと死にやがれぇッ!」
血反吐を吐き散らしながら振るわれる戦斧、だがその軌道は余りにも読みやすい。
見てくれだけは威圧的な虚仮威しを、ティオレンシアはひょいと避けてみせる。
「どれだけ手数が増えようと、当たらなければ無いのと一緒よねぇ?」
敵の攻撃のパターンは覚えた。相手がどれほど必死になって斧を振ろうが、呪われし刃が彼女に触れることはもはや無いだろう。ちょっと煩い扇風機のようなものだ。
「くそがぁ―――ッ
!!?!」
怒りと屈辱に支配された女賞金稼ぎの後方より、ふいに響き渡る4発の銃声。
そこには、霊の身体に射線を隠したシェーラが、4丁の精霊銃を構えて立っていた。
「そら、お前に殺された罪なき者達の怨念だ。ありがたく受け取れ!」
弾頭は呪殺誘導弾。無力化された亡者達の陰から放たれたシェーラの銃撃は、標的には弾道が読めず避けがたい。まして別のものに意識を向けていた最中なら尚の事。
「ぐぎゃぁッ
!!!?!」
腕を、脚を、胴を、頭を、次々と撃ち抜かれ、獣のような悲鳴を上げる女賞金稼ぎ。
銃弾に込められた怨念に肉体を侵食され、苦悶と激痛で堪らず戦斧を取り落とす。
――敵の攻撃が止まった、この瞬間をティオレンシアが見逃す筈がなかった。
「あの人たちの生活は壊させないわぁ」
標的を完膚なきまでに【縊殺】せんとする、強化のルーンを刻んだ銃弾の乱れ撃ち。
卓越した早撃ちと高速装填の技術による、絶え間ない鉛玉の雨が女賞金稼ぎを襲う。
「……宗教だのカミサマだのが大っ嫌いなのは、たぶん一生変わらないでしょうけど」
それでも、神への信仰を確かな心の支えとして、健やかな生を営む者はいる。
彼らの生き方を否定するほどティオレンシアは狭量ではないし、無粋でもない。
まして、そんな人々の平和を壊そうとするオブリビオンにかける情けなどあるものか。
「ぢ、ぐ、しょ……メガリスを……メガリスをよこせ……」
またたく間に蜂の巣となった女賞金稼ぎは、教会に向かって震える手を伸ばす。
もはや妄執に等しいその貪欲さを見て、シェーラは呆れたようにため息をひとつ。
「過ぎた力が身を滅ぼしていることにも気付かず、末がこれか。全く、無様なものだなぁ」
銃口を頭部に向けて引き金を引く。呪殺誘導弾は吸い込まれるように女賞金稼ぎの右眼窩へと的中し――青い輝きを放つメガリスが、パキンと音を立てて砕け散る。
「許さねえ、お前ら、絶対に――ぢぐしょおおオォォォォォォッ
!!!!!!!!」
猟兵達への怨嗟の言葉と断末魔の絶叫を遺して、女賞金稼ぎは骸の海へと還った。
塵のように消失した肉体の跡に残されたのは壊れたメガリスの破片だけ。それもまた、海から吹いてくる風に乗ってどこかへと散っていく。
――それがアルバ島で繰り広げられた、メガリスを巡る戦いの終わりだった。
かつてアルバ島を守護した黄金のベルのメガリスは、無事に猟兵達の手へと渡る。
全ては島民達は何も知らぬままに。彼らにとっての今日は、ただ少し珍しい客人がやって来ただけの、いつもと変わらぬ穏やかな日常の1ページに過ぎないだろう。
そう。それこそがこの島の最大の宝であり、猟兵達が守り抜いた"夜明け"だった。
大成功
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