芽吹け希望よ、唄えよ命
●芽を摘むもの
長らくオブリビオンの圧制が続く世界があった。
地は痩せ、民は疲弊し、やがて途絶えるかに思われた。
だが、猟兵たちの戦いに触れて心に希望を宿した人々が、
オブリビオンに反旗を翻すべく立ち上がった。
ダークセイヴァー、人類砦。
此度の物語は、ここよりはじまる。
見張りの兵士が鐘をならして数刻の後。
積み上げ築いた砦の石壁が、巨大な腕によって打ち壊される。
圧倒的な物量で攻めるは、邪法で築かれた岩と土塊の兵士。
防戦にまわる人々を意にも介さず、薙ぎ払う。
妻、子ども、オブリビオンに殺された大切な人の形見。
物言わぬ巨兵にそれらは等しく無価値だ。
だから、死は平等に降り注ぐ。
奮える手で剣をとる兵士をまた一人、土塊の巨腕が圧し潰した。
そして岩石の巨兵のはるか後方、戦いの行く末を見守る人物がいた。
「ふむ。もう少し抵抗してくれるかと思ったが」
夜色のコートに身を纏う貴族然とした男は、剣戟の音の飛び交う砦を暫し眺めてが。
「所詮、民草。私が手を下すまでもなく、滅びた……か」
粉塵のほかは瓦礫と屍の山と化した、かつての砦に。
男は興が冷めたかのように、踵を返した。
●希望の灯、絶やす事なかれ
「皆、あつまって! お願いしたい事があるの!」
手にグリモアを浮かべ、リグ・アシュリーズ(f10093)が大きく手を振る。
「ダークセイヴァーで戦う人たちの砦が、オブリビオンに襲われる光景が見えたの」
闇の救済者――オブリビオンに立ち向かう抵抗勢力として現れた彼らは、人類の生存圏として砦を築いた。
彼らの簡素な砦は暫くの間の守りとはなったが、強力なオブリビオンに目をつけられ、今まさに無に帰そうとしている。
でも今から行けば間に合うわと、リグは付け加えて。
「どうかこの敵の撃退……ううん。禍根を残さない為にも、倒してきてもらえないかしら!」
敵の尖兵として送り込まれるのは、岩石と土塊からなるゴーレム。
「何体ものゴーレムたちが砦を囲んで壁を突き崩していたわ。力も脅威だけど、数と配置が厄介そうなの」
砦は決して大きくないとはいえ、それを囲む敵となると、
必然とこちらも分断戦を強いられる事となる。
「だから、できれば一人か二人で一体。確実に倒す事をオススメするわ」
一箇所でも壁が大破すれば、砦としてはしばらく機能しない。
今後の事を考えれば、できるだけ損傷がない方が望ましい。
「ゴーレムは、目の前に人がいればそちらへの攻撃を優先するみたい」
たとえ力に自信がなくとも、味方が来るまで持ち堪えれば、
砦を守り切ることができるかもしれない。
ゴーレムを倒した後に姿を現すのは、黒のコートに身を包む指揮官の男。
「彼は後方で戦いの行く末を見守ってるわ。ううん……巻き起こる悲鳴を楽しんでるようにも見えた」
印象に残ったのはその眼差し。
冷静に見えてその実、次なる獲物を探す嗜虐嗜好に満ちた目。
猟兵たちが力を十分に見せつければ、彼は興味を惹かれて現れるだろう。
「彼がどんな力を持つのかは、分からないわ。でも、一人でゴーレムの群れを率いるくらいだもの。強力なオブリビオンのはず」
だから油断せず、力を合わせて倒してほしいのと、リグは語る。
「全てが無事終わったら、そうね……砦の修繕はきっと、誰かがやってくれると思うわ。だから、私たちにしかできない事をするのがいいかなって思うの」
それはたとえば、小さなお芝居をして住人たちを励ます事。
歌が得意な者は共に歌ったり、
心得があるなら傷ついた人の手当てをするのもいいだろう。
人類の生存圏として建てられた砦には、小さな子どもたちも匿われている。
この世が怖いものだけではない事を示してやれば、
きっとこれからも希望を持って歩んでいけるだろう。
ここまでを語り終えたリグは、改めて集まった猟兵たちの顔を見る。
皆戦う意志に満ちた、いい目だとリグは思った。
だからありったけの信頼を声に乗せ、呼びかけはごくシンプルに。
「皆ならきっとできるわ!」
いってらっしゃい! 明るい声と共に、グリモアの道は開かれた。
晴海悠
はじめまして! 晴海悠と申します。
これから皆様の冒険を彩るお手伝いをいたしたく思います。
あなたのやりたい事を、全力でぶつけて下さい。
全身全霊のリプレイをもって、お返しします!
各章、冒頭に短い断章を追加し、
断章の公開後は随時プレイング受付といたします。
最初だけ、最後だけなど、お好きなタイミングでご参加下さい。
(複数名の合わせプレイングは2~3名までならはりきって承ります!)
『1章 集団戦』
砦に襲いかかるゴーレムとの戦いです。
リプレイは皆様の到着直後より開始となります。
(なので現場へ急行する、などの文章は必要ありません)
ゴーレムは砦の破壊より皆さんとの戦いを優先しますが、
長らく放置した場合はその限りではありません。
また砦のそばで戦うと巻き込み被害が出る可能性もあるため、
砦を守る場合は誘導する手立てがあるとよさそうです。
ゴーレムの攻撃手段はフラグメントをご確認下さい。
どの程度砦を守れたかにより、3章の描写が変化します。
『2章 ボス戦』
黒コートの男。現時点での詳細は不明。
1章時点では戦いに介入しません。
『3章 日常』
砦が無事なら、住民を励ますための章となります。
演劇や歌を披露するなり、フラグメントの選択肢以外にも、
自由な発想で動いてみて下さい。
壊れた砦の補修は住人たちが行いますが、
DIY方面で活躍したい!という方も大歓迎です!
なお今回、リグは呼ばれても登場致しません。
最後まで皆様の物語として、お楽しみ頂ければと思います。
それではリプレイでお会いしましょう!
どうぞ、いい冒険を! 晴海悠でした。
第1章 集団戦
『グレイブヤードゴーレム』
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POW : なぐる
【拳】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : ふみくだく
【踏みつけ】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【の土塊を取り込み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ : さけぶ
【すべてをこわしたい】という願いを【背中の棺群】の【怨霊】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
イラスト:V-7
👑11
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砦に重く響く足音が迫る。
軽い地響きすら起こしながら近寄るそれは、
木の板を打ち付けて造られた砦の外壁を見下ろしていた。
あるいはその壁材は、壊れた家屋より剥ぎ取られたのだろう。
柱に残る互い違いの線は、幼き兄弟の背比べの跡か。
ともすれば、笑い声の幻さえ聞こえそうなその外壁めがけ。
土塊の巨兵は、その腕を高々と振りかぶった。
シキ・ジルモント
◆SPD
止まれ、そこまでだ
人を滅ぼすよう命じられているんだろう、相手になってやる
砦を狙うゴーレムの前に飛び出し銃で攻撃を行う
ダメージは度外視、注意を引きたい
砦に被害を出さない為ゴーレムの注意を引きながら砦から遠ざかる
砦から十分引き離したら攻撃を開始する
ゴーレムの脚を狙い、同じ個所に何度も射撃を撃ち込む(『スナイパー』)
一撃では意味が無くても、同じ場所に衝撃を受け続ければそこは脆くなり、崩壊へつながる筈だ
脚部を破壊する事でゴーレムの動きを止めたい
動きが止まればその巨体も大きな的でしかない、この隙にユーベルコードを叩き込む
ようやく、この世界にも希望が見えてきた所だ
その希望を奪わせるわけにはいかない
春乃・結希
よーしっ。最初から全開で行くよ!with!
召喚と同時にUC発動
強化された脚力【怪力】での踏み込みにより、瞬時に最高速度へ到達
砦に近いゴーレムへ突撃します
すみませーん!ここから先は通行止めでーす!
狙うは脚
音速を超える速度そのままに、『with』を叩きつけます【怪力】【鎧無視攻撃】
一度で破壊できなければ反転し、立てなくなるまで脚を狙います
もし動きを読まれ受け止められたら地上に降り、どんな敵でも絶対に引かない【覚悟】を持って大地を踏み締め、【怪力】で振るうwithで、巨碗と撃ち合います
この世界に、やっと見えてきた希望…砦には、絶対に行かせない
withと私で、護りきって見せます!
未だ昏き世界。たたずむ簡素な砦は今、巨兵の軍勢に飲まれようとしていた。
辛うじて咲いた白く小さな花が踏みにじられ、土へと還る。
後に花は咲かないだろう――墓土混じりの足跡から感じられるのは、呪詛と怨嗟に塗れた死の気配のみだ。
そうして進軍を続けるゴーレムの巨体に、静止の声が投げかけられる。
「止まれ、そこまでだ」
鋭い目を一段と細め、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は銃を構えた。
無論声のみで止まる相手ではなく、彼は続け様に短い発砲音を響かせる。
固められた土砂の肌の上、銃弾のかすれる音がした。
「人を滅ぼすよう命じられているんだろう。相手になってやる」
銃撃に気づいたのか、シキの敵意に反応したのかは定かではないが、ゴーレムはその重い足取りをこちらに向け歩み始めた。
地を揺らがす衝撃音の中、銃弾が幾度も見舞われる。
シキは冷静にハンドガンを構えていたが、迫るゴーレムを留めきれるかが危ぶまれたその時だった。
「行くよ、with! 最初から全開でっ……!」
漆黒の大剣を引きさげ、春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)が空を駆ける。
風のエネルギーと強烈な自己暗示で限界まで速度を高めた彼女は、風切る音すら置き去りにして斬りかかった。
剣と鉱物の触れる、硬く無機質な音が響き渡る。
「ここから先は通行止めです! お引取りくださーい!」
そのまま二転、三転、身を翻した結希は休む間もなく剣を振るい、ゴーレムの脚部へと叩き付ける。
移動を妨げられるのを嫌ったか、ゴーレムが岩石の腕を高々と掲げた。
「くっ……!」
結希、これを避けず。
剣の刀身を盾に、強化された自身の足を緩衝材に、不退転の覚悟でその拳を受けきった。
しかし、腕に残る鈍い衝撃は殺しきれない。
ここからどう巻き返すか、そう思案した時だった。
パシィンッ。
銃撃音と共に、何か破片の砕け散る音が響く。
シキの撃ち込み続けた弾丸は寸分違わず敵の脚、結希の大剣がくれてやった亀裂を叩いていた。
「一撃では効き目がなくともな。衝撃を加え続ければ脆くもなるだろう」
シキの銃持つ手に不可思議の力が宿る。
ゴーレムが動きを止めた今、普通の銃弾では足らずとも。
人智を超えた猟兵の力、ユーベルコードなら。
「ようやくこの世界にも希望が見えてきた所だ。みすみす奪わせるものか」
弾を全て撃ち尽くさんばかりの、高速の連射。
撃ち込まれた鉛玉同士が溶鉄の如く膨れ上がり、岩石の巨体を内から崩す。
「……! あとは、これでっ……!」
結希がここぞとばかりに大剣を振りかぶり、真一文字に振り抜く。
「砦には、絶対に行かせない。withと私たちの力で、護りきって見せます!」
剣より遅れ、音速の衝撃波が吹き抜ける。
内と外の両側から加わる衝撃に、ゴーレムの巨体は二つの岩塊となり崩れ落ちるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
レイラ・アストン
闇の中、立ち上がった人々の心の光
此処で失わせはしないわ
お力添えしましょう
一体を確実に撃破
かつ砦に被害を出さぬように
まずは、敵を引きつけるのが得策かしらね
ゴーレムに杖から魔弾を放ってぶつけましょう
私に気付いたら
砦から離れるように退避を開始
『逃げ足』を生かして敵と距離を取りながら
魔弾の引き撃ちを続けるわ
――怨霊の声がする
苦悩、絶望…もう、終わりにしましょう
砦から十分に離れてのち、放つは【精霊と見る夢】
属性は風、現象は竜巻
…師匠の得意な組み合わせね。私も彼に似てきたのかしら?
怨霊たちを、風が在るべき所へ運んでくれますよう
どうか安らかに
この世界の闇は、あなた方の無念は必ず晴らすから
※連携、アドリブOK
薬師神・悟郎
今回はいつもと違う不安を感じたが…
絶望しかない世界に灯った希望を奴等の好きにさせてたまるか
優先して狙うのは砦を攻撃するゴーレム、次点で味方が苦戦しているゴーレム
効果があれば良しと、ゴーレムの素材に合わせ複製した暗器に様々な属性を付与し攻撃
敵の体全体に浴びせるように全体攻撃、投擲
その際に第六感、野生の勘でゴーレムの動きを観察、情報収集
攻撃が効いていると判断した部位があれば、積極的に狙い部位破壊
使える技能は全て駆使し短期決戦を狙い確実に討伐
撃破後は最初の優先順位通りに次を視野に入れ狩りにいく
味方がいれば、彼らに合わせ前衛後衛、臨機応変に行動し連携重視の行動を
…俺の嫌な予感とやらが外れれば良いんだが
不吉な、生暖かい風が頬をさらう。
今日のような日に過去何度、出会った事か。
「運に恵まれない自覚はあるんだがな」
薬師神・悟郎(夜に囁く蝙蝠・f19225)は己の胸中に予感めいたものを感じ、振り払うように首を振る。
並び立つレイラ・アストン(魔眼・f11422)が杖から魔力を展開し始めた。
先端に揺らめく水晶から、淡い光が漏れ出る。
「お力添えしましょう。待ち受ける敵が何であれ、成すべき事は変わらないもの」
瞑目して、魔力の向かう先を定義する。
眼前には砦に迫る土塊の巨兵。
「闇の中、立ち上がった人々の心の光。此処で失わせはしないわ」
「……ああ。絶望しかない世界に灯った希望を、奴等の好きにさせてたまるか」
レイラの魔力光が束となり、魔弾となり。
巨体をしたたかに撃つ音が、戦いの火蓋を切る合図となった。
「行け」
悟郎の持つ苦無が瞬く間に数を増やし、ゴーレムの巨体へと投げ注がれる。
複製された暗器には飛雷の銘が宿され、着弾点からは雷電が次々とほとばしる。
しかし電流が地面へ流されてしまうのか、効き目が薄い。
ならば何か代わりの有効打はないかと、悟郎はあらゆる感覚を働かせ敵の動向に目を配った。
レイラは魔弾を放っては後退を繰り返し、徐々に砦から土塊の巨体を引き剥がしていく。
自身の退路も確保し、全力で魔力を打ち込める場所へといざなうが。
「……っ!」
僅かに退避の遅れた悟郎が、間一髪砦側へと身をかわし、ゴーレムの踏み付けから逃れる。
危うく身を危険に晒しかけたが、ギリギリまで接近を許し観察を続けた事で得られたものもあった。
「背中のあれは棺桶か? その付近に何か、集まっているように見えたぞ」
見ればゴーレムの背には透き通った体の霊体が集い、何事かを呟いている。
その光景は死の気配に敏いレイラにも視えていて、悟郎の傍らで静かに頷きを返す。
「ええ……怨霊の声がするもの」
苦悩、絶望からなる怨嗟の声は、既によからぬものを次々と呼び寄せている。
放置すれば、怨霊達の敵意がこちらへ向くのは時間の問題だろう。
「魔力を編むわ。少しの間、サポートをお願いできるかしら」
「承知した」
短いやりとりと共に、投じられる苦無。
此度宿るのは疾風。気流の刃が吹き荒れ、墓土の肌に裂傷を生んでゆく。
「もう終わりにしましょう。あなた方を在るべき所へ、運んでくれますよう」
やがてレイラの紡ぎ上げた魔力が、さらに強い風を呼ぶ。
精霊達の演じる白昼夢。
風の大竜巻がゴーレムの肌に吹き付け、傷を広げ、集った怨霊ごと押し流していく。
彼を思わせる組み合わせだと、レイラは心の中で自身の師の姿を浮かべた。
竜巻に飲まれ動力源を失ったのか、ゴーレムの巨体は結びつきが解けたように崩れていく。
天へと去り行く霊の姿を、青い瞳が見届けた。
「どうか、安らかに」
この世界の闇を、数多の無念を、晴らすことを誓いながら。
「……俺の嫌な予感が外れてくれれば、良いんだが」
悟郎の静かな言葉だけが、後に残されていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エンティ・シェア
敵を砦から引き剥がすためにライオンライドを使用します
僕、これ苦手なので、移動中は「俺」に変わりますね
足元でちょろちょろして、適度に距離を開けさせるよう、撹乱出来れば良いでしょう
あちらが砦から離れてでもこちらを狙うようになったら、僕の出番です
石くれを殴ってぶちのめせば良いんでしょう?
お任せください。血を調達して、大金槌でも用意して楽しく振り回して遊びます
うろちょろしてる間に色々取り込まれてそうですし、足元を崩して倒れさせたいです
さて、石にも土にも手足は必要ないでしょう?
全部、削ぎ落としてあげます
僕、一時期好事家のための拷問官をしておりましたので
どこかで見ていそうな誰かを愉しませてあげませんとね?
コルチェ・ウーパニャン
うわーーっ!ダメダメっそれはダメ―っ!!待って待ってー!!
コルチェの髪の毛を警告色の赤にピカピカーっ!
一体選んで注意をひいて、できるだけ砦から離れるよ!
巻き込むものが出来るだけないところまで逃げたら、シールトリック!
地面のしっかり埋まってるおっきな岩とか、ずっしり生えてそうな木とかにシールを張り付けて、
呼び出すのは、光の津波!ガオーーン!
すべてをこわさせてあげることは、コルチェ、出来ない!
怨霊さんたちをゴーレムさんごと光の津波で押し流しちゃって、えっと、賛同者のボスウ?を減らす作戦!
ね、ゴーレムさん。
そのお願いは、すっごくコウトウムケイだね。
だってここに、コルチェたちが来たんだもん!
緋色の髪、赤に染まったストール。
この大地において一層際立つそれらを風になびかせ、敵を見据える者がいた。
「さて、まずは砦から引き剥がさないとですね」
エンティ・シェア(欠片・f00526)はそういって黄金の獅子の背にまたがる。
「僕、これ苦手なので、移動中はお任せしますね」
呟くや否や、先ほどまで喋っていた者の気配が消え、入れ替わるように彼の中で別の意識が瞼を開く。
「……面倒事全部俺に丸投げしてんじゃねーよ」
エンティの中に眠る、先刻とは異なる人格。
彼がそのままゴーレムの足元を駆け回り、注意を惹き付けようとしたその時。
無彩色の世界に似つかわしくない、赤く光る何かが目に入った。
「うわーっ! ダメダメっそれはダメーっ! 待って待ってー!!」
砦に向かうゴーレムの進路を阻むように、コルチェ・ウーパニャン(マネキンドールのピカリガンナー・f00698)が両手を広げて立ち塞がる。
コルチェは魔法の光ファイバーでできた髪の毛を警告の赤に点滅させ、敵の気を惹こうとしていた。
ゴーレムに色の識別感覚が備わっているかは不明だが、コルチェの行いは敵の進路を変えさせるには十分だったらしい。
「わぴゃーっ!」
巨大な脚が地面を抉るように振り回され、コルチェの立っていた地面を更地にする。
目をつぶっていたコルチェはふと、自身の座る真下に揺れを感じた。
「……ったく。拾い物は三つで手一杯だっての」
コルチェを獅子の背に無事回収したエンティが、ため息混じりに一人ごちる。
「金のライオンさん! えへへ、コルチェとピッカピカつながりだね!」
そのままジグザグを描くように敵を誘き寄せた二人は、ここらでいいかと砦から離れた地に足をつける。
エンティの瞳に宿る気配が再び変わる。
「さて、僕の出番ですね。あの石くれを殴ってぶちのめせば良いんでしょう?」
黒熊のぬいぐるみから赤いものがぞぶりと溢れ出し、拷問用の突起のついた大金槌を形作る。
その柄を握り、エンティは敵の脚めがけて愉快そうに振るうが、彼の頭上では怨霊たちが集い始めていた。
――ニクイ。クルシイ。スベテ、ワレラノヨウニホロビテシマエ。
生者への恨みが呪いの言葉となり、ゴーレムの周囲を漂い始める。
――スベテ、コワシテシマイタイ。
「うーん、ざんねん! コルチェ、そのお願いを聞いてあげることは、出来ない!」
コルチェはそう言うと、特売と書かれたシールを手近な岩に貼り付ける。
シールトリック――効力を発揮したシールの輝きが収まった後、岩から溢れ出すは光の奔流。
「だってそのお願い、すっごくコウトウムケイだよね。それにもう、コルチェたちが来たんだもん!」
押し寄せる光の大波濤は怨霊たちを浚い、遠く彼方へと連れ去っていく。
怨霊たちの念も動力源のうちだったのか、突き動かすものを失ったゴーレムの動きは鈍い。
それでも尚、二人を蹴散らさんとするゴーレムに、エンティの槌が迫る。
「石にも土にも手足は必要ないでしょう? 綺麗に削ぎ落としてあげますよ」
一時期、特殊な嗜好を持つ人の前で拷問官を勤めたという彼は、効率の良さとは程遠い、長く苦しみを与えるやり方で土塊の手足を削いでゆく。
「はわわわわ……なんだかちょっとあだるてぃー……!」
コルチェが意味を分かってか分からずか声を漏らすのを聞き、エンティは嗤う。
「ええ、このぐらいでいいのですよ。どこかで見ていそうな誰かを、愉しませてあげませんとね?」
そう悪戯っぽく笑みを浮かべ、彼は遠くへ視線を送った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
オズ・ケストナー
紅(f01176)と
ちょっとまったーっ
走ってかけつけるよ
わあ、すごいっ
おっきなロウくんだ、つよいつよいっ
わたしもガジェットショータイム
おっきなピコピコハンマー(みたいなもの)が
あれ、わたしが持てないくらいおおきい
はっ、ロウくんの武器だよ、クレナイっ
ロウくんが殴打するたび
にゃー
みゃー
ふにゃー
ハンマーから声がする
ふふ、ロウくんがお話ししてるみたいでかわいいね
わたしたちはロウくんおうえんだんだよっ
拳を握ってぴょんぴょん応援
いけーっ
そこだっ、がんばれロウくんっ
クレナイ、くるよっ
ふみつけの回避
相手はおおきいんだもの、逃げ回れば踏むのはむずかしいはず
砦から離れるように逃げて
ふふ、おにさんにはつかまらないよ
朧・紅
オズさん(f01136)と《紅》人格で
アドリブ歓迎
ここは通さないのですーっ!
一緒にかけつけ
血液パックの紅血を撒けば【空想造血】で巨大ロウくん登場
そのまま不意打ちラリアットで砦から遠くへ吹き飛ばしちゃうのですよ!
はっ!武器!ロウくん!
ロウくんは僕の半身《朧》のイメージで作ったですから
めっちゃんこ強いのですよ!
かわゆき姿と裏腹に軽きフットワークでピコハン握り【戦闘技術】で荒々しく殴りシバき打ちのめし叩き割っちゃうのですよ!
だが響くは猫の鳴き声
です!お喋りなロウくんかわゆき(ほわわ
にゃーん!
やっちゃえロウくん!
ふうるすいーんぐ!!
はい!鬼さんこちらーですよ
踏みつけ回避
ちょこまか一緒に砦離れる誘導です
地響きを轟かせるゴーレムの前に、響く声。
「ちょっとまったーっ」
ふわふわと毛先のカールしたブロンドの髪を風に揺らし、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)は両手を広げてゴーレムの進路を塞いだ。
同じく、立ち塞がる影がもうひとり。
「ここは通さないのですーっ」
朧・紅(朧と紅・f01176)は軽くほっぺを膨らませ、砦を庇うようにして割って入る。
駆けつけた二人だったが、比較的背の高いオズをもってしてもその巨体は見上げる程大きく。
踏まれればひとたまりもないだろう――が、だからこそ取れる作戦もある。
「クレナイ、くるよっ」
「はい! 鬼さんこちらー、ですよ」
小回りが利くのを生かして、二人は鬼ごっこのように逃げ惑う。
足と足の間を駆けてはちょろまかし、砦から引き離したところで、紅は躊躇いなく自身の血液パックをばら撒いた。
空想造血、血液を操る紅の切り札のひとつ。
紅い血がむくむくと膨れ上がり、今巨大なモノを象る。
「ね、クレナイ、これって」
現れたのは――巨大で目つきの悪いネコ。
「はわわ、これは……巨大ロウくん!」
紅の持つぬいぐるみそっくりなネコは『ぶみゃー』と不機嫌そうに一鳴きし、そしてゴーレムの巨体へとラリアットをかます!
「いくのですー!」
突き上げた拳に励まされるかのように、ネコは突撃し――。
ぽよん。
「うやー!?」
血液対土塊の体では力負けしたのか、あっさりはじき返されるネコ。
「こんどは、わたしがっ」
ガジェッティアの見せ場に、オズが取り出したのは……おっとここでピコピコハンマー!?
「あれ、れ。わたしが持てないくらいおおきい」
取り出したハンマーを支えるのも二人がかりで一苦労。
そうこうしてる間にゴーレムの足音が迫り、巨大な足裏が二人めがけて降ってくる。
「うや、はわわ、あぶないのですーっ」
ドスン。
この世の終わりかとも思える音がしたが、未だ五体は健在。
不思議に思って頭上を見れば、なんと巨大ネコのロウくんがハンマーを握り、打ち返しているではないか。
「……!」
オズと紅は目を見合わせる。二人の力は予測不能。何を呼び出すかもわからないが、使い方を理解できれば強い。
「これ、ロウくんの武器だよ、クレナイっ」
はっとして頷く紅。そのまま力いっぱいロウくんめがけ叫ぶ。
「やっちゃえ、ロウくん!」
声援を受けた巨大ネコはピコピコハンマーを振りかぶり、敵めがけて撃ち抜く。
にゃー。みゃー。ふにゃーお。
ピコピコとなる音の代わり、なぜかハンマーからはネコの鳴き声。
音は可愛いが、往復ビンタのように振り回されるハンマーにゴーレムの身体がなす術なく左右に揺れる。
「ふふ、ロウくんがお話してるみたいでかわいいね」
思わずなごむオズ、紅もきゃわわと思わず頬をゆるめたが。
いまは戦いの最中、猫の可愛さに頬染めきゃっきゃするのは後のお楽しみ。
二人の眼差しが真剣味を帯び、ありったけの声援が飛ぶ。
「がんばれロウくんっ」
「ロウくん、ふるすいーんぐ!!」
ぶみゃーお。
気の抜けた低音ボイスと共に、巨大ネコはゴーレムの膝を打ち砕くのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クラウン・メリー
砦を壊すなんて許さない
きっと大切な思い出だって残っているはずなのに
人が襲われそうになったら
翼をはためかせて俺が代わりに攻撃を受け止める
心配されたら笑顔で答えるよ
血が出ても大丈夫、俺強いから!
犠牲になんてさせない
悲しむ顔なんてみたくない
もう、後悔はしたくないんだ!
こっちこっち!とカラフルなボールをジャグリングして
砦から遠い場所に誘き出す
ふふ、やっと二人っきりになれたね!
沢山のフリチラリアが敵の周囲にふわりと舞う
花に変化していたのはめらめらと燃える輪
実はそれ火の輪なんだ!
我慢してね!
火の輪で敵を拘束し攻撃されないようにする
最後は腕を狙って黒剣で二回攻撃
嫌がることをする、そんな悪い子にはお仕置きだ!
アニー・ピュニシオン
私達が来たからには貴方達の野望はそこまでよ!
砦が大事だからね、もう目立つ様に大声で登場して注意を逸らすわ。
挨拶が済んだら『Love※Crime』で空飛ぶ光剣の群れを背後から出し
足腕の関節部分に光剣を操りながら刺して態勢を崩せるかも。
それでゴーレムの動きを抑制しようと試みようと思います。
相手の動きが止まったら、第六感で弱点を探す、もしくは背中の棺群の怨霊が弱点かもしれないから集中的にサクっと光剣を向けていくわね。
折角の楽しそうな場所を壊されるなんて悲しいからね。
なので、無粋な輩にはご退場願い頂きましょ、そうしましょ。
青い帽子、手にはバトン。
ブロンドの髪をばさりと広げ、おもちゃの国から来たような出で立ちの少女が高らかに宣言する。
「ストーップ! 私達が来たからには貴方たちの野望もそこまでよ!」
腰に手を当てぷんすこお怒りのポーズ、自身の出せる最大級の声。
大胆な行動に出たアニー・ピュニシオン(小さな不思議の国・f20021)の方へと、土塊の巨人が向き直る。
「つかみはオッケー、あとは砦から引き離さなくっちゃ……!」
アニーの周りを漂っていた光が次々と集い、十字架型の剣となって並ぶ。
バトンを振れば、それが発射の合図。
光の剣は次々と針のように飛び、ゴーレムの膝へと集中攻撃を浴びせる。
鈍重な動きでこちらへ向かう、巨体の重量は相当なもの。
さらに動きを鈍らせようというアニーの目論見を読んでか、ゴーレムは手の甲で払いのけようとするが。
「そんな事、させないよっ!」
白い翼をはためかせ、滑り込むようにしてクラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)が割って入る。
受け身をとったが、地面に転げた際に多少擦りむいた。アニーが心配そうに声をかける。
「あ、ありがとうっ。でも大丈夫!?」
「大丈夫! 俺強いから!」
見せる笑顔は強がりか、それとも笑顔が彼の常だからか。
ふと、視界の端に砦が映る。猟兵達の奮闘あってまだ大した被害もないが、もし壊されてしまえば中の住人はひとたまりもないだろう。
何より、この砦を築くまでに多くの苦悩があり、汗と涙が流された。
大切な思い出だって、きっと残っているはず。
「ふたりで頑張って、無粋な輩にはご退場願いましょ。折角の居場所を壊されるなんて悲しいからね!」
励ますように声をかけるアニーの目を見て、クラウンも頷く。
「うん。誰かの悲しむ顔なんてみたくない。もう、後悔はしたくないんだ!」
決意と共に取り出したのは、カラフルなボール。
それらを次々とジャグリングして、敵の目を引く。
「こっち、こっち!」
砦から遠い方へと誘えば、アニーもバトンをトワリングしながら光の剣を浴びせる。
周囲に建造物のない所まで来て、そろそろねとアニーが最大限の力で光の剣を量産し。
「プニツィオーネ! そのまま悪いゴーレムさんを貫いて!」
掲げたバトンを一気に下ろせば、天から下る罰のように、ゴーレムの背に無数の十字架が突き立ってゆく。
刺さる十字架の戒めを振り解こうと、ゴーレムが身をよじる。
しかし、巨体の周囲にはいつの間にか花が咲き乱れ、逃げ場はとうにない。
「お花のプレゼントだよ! 実は正体は別のものなんだけどね!」
フリチラリア――鈴生りになって宙に浮かぶは、クラウンの髪に咲くのと同じ可憐な花。
しかし手品が解ければそれは元の姿、相手を取り囲み束縛する火の輪となって敵の自由を縛る。
拘束され身動きの取れないゴーレムに、二人が駆け迫る。
「これで終わりっ!」
「人を悲しませる悪い子にはお仕置きだっ!」
二度振るわれた黒剣が腕を斬り落とし、露わになったゴーレムの中核を光の剣が貫く。
胴体から崩れ落ち動きを止めるのを見て、クラウンとアニーは高々とハイタッチをするのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と!
敵を砦から、遠目で観察ー。
拠点を守るためには。
ん、遠くへおびき寄せて、個別に叩く!(にっぱり)
迷彩ケープを被り、疾走発動!
ゴーレムの感覚器を引き付けるよう、わざと音を立てて傍を駆け抜けるよ!
さあ、おいらについておいでー♪(明るく歌いながら逃げる)
でっかい拳は、勘で避け。
避け切れなくても、如意な棒で叩いて軌道を逸らし、受け流す。
空中で踊るように駆け続け、体勢は崩さない!
砦から離れたら。
仲間の猟兵たちの元へ一体ずつ配達して行こうー♪
ハイ、ヨロシク!
最後に残った一体は、おいらたちで倒す!
くるり振り向き、拳を皮一枚逸らして、カウンターで拳を叩き込む!
どーだ、まいったかー♪
木元・杏
まつりん(祭莉・f16565)と
ん、砦の遠くへ(こくりと頷き)
うさみみメイド人形のうさみん☆、ゴーレムは大きい
体をジャンプで飛び駆けゴーレムの目前で、攻撃は逃げ足で回避しつつ存在アピール
さ、こっち
砦から離れた場所へ誘導していって?
わたしは幅広の大剣にした灯る陽光を手に地上を駆けて
まつりんが狙われたら灯る陽光でゴーレムの足を叩き斬り、気をこちらに向けさせる
足元もちゃんと見て?
踏みつけが来るタイミングを【絶望の福音】で見定め
ぐっと大剣にオーラを集中
命中を武器受けとオーラ防御でぐっと堪えて拠点防御
そのまま大剣で足を押し返し体勢を崩させる
まつりんの拳の威力、存分に味わって?
玉ノ井・狐狛
※アドリブや連携などお任せ
まったく乱暴なこった。
攻城戦にハシャぐのァわかるが、もっとスマートにできないもんかねぃ。
あんなパワーキャラ相手のインファイトなんざ御免こうむるぜ。
というワケで、ふみつけ攻撃は回避させてもらおう。攻撃動作が始まるタイミングで▻見切ってずらかる。
▻視力▻おびき寄せ
そのついでに、ちょいちょいと札を貼らせてもらおう。
▻早業
離れてから◈UC使用、デクの動作に干渉する。
まるごと乗っ取る必要はねぇ。腕や脚の付け根を筆頭に、重要な可動部の周りに集中する。
アレに考えるアタマはねぇだろうから、それでも無理に動かそうとする――と、アレ自身の力で壊れるって寸法だな。
▻破壊工作
砦の郊外で戦いが繰り広げられる最中、外壁の上から戦況を眺める双子の姿があった。
木元・祭莉(どらまつりん・f16554)。額に手をあて遠くを見晴らしていた少年は、自身の観察結果を傍らの妹にこう伝えた。
「んー。これまでの所、八割くらいはうまく引き離せてるみたい?」
「よかった。それでまつりん、私たちはどうする?」
木元・杏(杏どら焼き・f16565)に尋ねられると、祭莉はにぱっと笑みを浮かべ、答える。
「遠くへ誘き寄せて、個別に叩く!」
「ん。それがいいね」
頷く杏。共に生まれ育った双子の兄妹、拠点を守りたい気持ちは一緒だった。
改めて外壁の上から周囲を見渡し、まだノーマークの個体がうろついてるのを見て、そちらへ向かう。
近づいて見てみれば、そこにはゴーレムが2体。
そして巨躯に挟まれ合間を飛び交うようにして、着崩した和装の女性が戦っていた。
「まったく、乱暴なこった。城攻めにハシャぐのァわかるが、もっとスマートにできないもんかねぃ」
玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)。
賭け事を生業として切った張ったの世界に身を置く彼女だが、それを行えるのも社会の決まり事があってこそ。
駆け引きもなく攻め潰す強引さと無粋さには、思わず呆れた口になる。
「よっ、と……こんなデカブツ相手にインファイトなんざ、御免こうむるぜ」
見切って踏み付けを回避した際、狐狛の視界に跳ね回る何かが映り込む。
「そっちお願い、うさみん☆」
軽やかに宙を舞うのはうさみみメイド人形、杏のもう一人のパートナーだ。
互いの存在に気づき、杏と狐狛は頷きを交わす。
「いっちょ共闘と洒落込もうじゃないかい。そっちのデクはお任せしていいかい?」
「ん、もちろん!」
2体相手取るのが厳しいなら、こちらも分担すればいい。
ゴーレムたちの波状攻撃をかわしながら、二人は砦から遠くへ敵を誘導する。
「さあ、おいらについでおいでー♪」
同じくゴーレムを誘導しようと、祭莉が歌を口ずさみながら駆ける。
力を解放した少年は野山を駆け回る野火の如く、白い炎を纏っていた。
俊足や身軽さを活かし、あるいは人形を操り、三人は後退を続けていく。
だが、いつまでも完璧に避け続ける事は難しく。
「……!」
自身の未来が見えたかのように、杏が立ち止まり。
陽光の名を宿す大剣にオーラを集中させ、敵の来る方へ構えた。
「おおっと、こんな所で立ち止まっちゃ……」
狐狛はそう言いかけるも、杏の瞳に何か確信めいたものを感じ口を噤む。
「ん。ここはまかせて」
勢いを増したゴーレムの巨大な脚が迫る。
それは二人を踏みにじり、潰そうとして――すんでの所で剣の刀身がそれを阻む。
周囲を見渡せば大きな岩と地形の窪み、確保されたスペースが二人の身を護っていた。
下手に動けば、逆に踏み潰されていただろう。
「はァん、こいつは見事。アンタもなかなかに肝が据わってるじゃねぇかい」
数ある選択肢からリスクのど真ん中を突く、その姿勢が博徒の琴線に触れたのか。
「こりャ、アタシもひと肌脱がなきゃ廃るってもんサ」
言うや否や、ちょいと失敬と狐狛の手が動く。
瞬く間の動作。ゴーレムの脚に御札を貼り付けた狐狛はさっと距離をとり、五感を己の手に集中させる。
「怪談奇譚しめて百選、語り紡ぐは書翰箋――」
術の発動と共に、術符がゴーレムの一部を乗っ取る。
佰器夜行――札を貼り付けた無機物を式神と化し操る、狐狛の技。
自身の脚が言う事を聞かないなどと夢にも思わず、知性なきゴーレムはその巨体を大きく傾かせる。
隣でもう一体と接戦を繰り広げていた祭莉が、チャンスとばかりに目を光らせた。
自分めがけて襲い来る、ゴーレムの腕をしかと見据え。
「せー、のっ……!」
轟音と共に来る拳を紙一重でかわし、翻したその身でカウンター。
白い炎の力で何倍にも強まった拳が敵の巨躯を捉え、アッパーカットのように撃ち抜く。
トドメとばかりに蹴りを見舞えば、よろめいたゴーレム同士は激しく衝突し。
二体同時に崩れ落ちる様を見て、三人は喝采の声をあげるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
リーヴァルディ・カーライル
“血の翼”を広げ残像が生じる早業で空中戦を行い、
大鎌を武器改造して先制攻撃のUCを発動
怪力任せに魔槍で敵を吹き飛ばし砦から引き離す
…ん。何とか間に合ったみたいね。
此処は救世の御旗の下に数多の希望が集う場所。
これ以上、この地をお前達の好きにはさせない。
無数の霊魂を左眼の聖痕で暗視して見切り、
【断末魔の瞳】を発動して取り込み魔槍に呪力を溜め、
全身を呪詛のオーラで防御して再突撃した後、
死棘の呪詛を爆発する2回攻撃を放つ
…聞け、土塊に縛られし数多の霊達よ。
その怨嗟が真に向かうべきは此処じゃない。
…汝らの生命を奪った者に報いを与える事を望むなら…。
我が声に応えよ!その望み、我が名において叶えよう…!
ティル・レーヴェ
なんとまぁ
見上げるだけで首が痛くなりそうなお相手よのぅ
とは言え土傀儡に遅れを取ってはいられまい
小さき身でも宿す猟兵の力は本物と振るうて魅せよう
此の地へと送ってくれた友にも勝戦を捧げたい
其れに妾の立ち回る姿が
砦の内に集う者達への鼓舞にも変わればと
立ち回りは空中戦
受ける衝撃はオーラ防御駆使して耐える
翼より放つ羽は敵の背を狙い棺から壊しゆこう
全てを壊しゆきたいと願う思いはどこから生まれたのじゃろう
怨霊となりて尚響く哀しき願いはここで終わりとしてやろう
終わりて眠れ
彼岸を経ての目醒めは幸あれかし、と
近くに負傷した仲間がいれば癒しの陣を足下へ
さぁ、まだ行けような?
共に此の地を守ろうぞ
※他者共闘、アドリブ可
ここまでの戦いで、猟兵たちは敵の数を大きく減らす事に成功していた。
そして、駆けつけるようにして馳せ参じた猟兵が此処にまた一人。
「……ん。何とか間に合ったみたいね」
最後に残る敵の懐めがけ、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が空を駆ける。
血の翼を背に生やし、魔槍に変形させた大鎌の穂先で鋭く穿つ。
そのまま人のいない方向へ弾き飛ばすようにして、強引に距離を取らせた。
敵へと吶喊し矛を交える、その光景を眼下から眺めていた者がいた。
「なんとまぁ、勇ましきこと。それに比べ其方らは、見上げるだけで首が痛くなりそうなお相手よのぅ」
紫の瞳に敵の巨躯を見据え、ふわりと嫋やかに羽根を伸ばし。ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)の凛とした声が、荒みきった野に響き渡る。
「とは言え、土傀儡に遅れを取ってはいられまい」
自身の翼に燐光を宿せば、一枚の羽根のように浮かび上がる身体。
小さき身ながらも果敢に戦えば、共に闘う猟兵たちへの鼓舞にもなるだろう――そして、待つ者達に勝利の報せを届ける為にも、今はこの巨大な敵に一矢報いねばと心を決める。
その様子を見て、リーヴァルディもまた、血の魔力で編まれた翼を広げた。
「此処は、救世の御旗の下に数多の希望が集う場所」
後ろに背負う砦では、戦う力無き者たちが避難を続けている。
それは、ここダークセイヴァーに於いての、人々が勝ち得た数少ない生存圏。
そして摘み取らせてはならない、芽吹いたばかりの希望。
「これ以上、この地をお前達の好きにはさせない」
リーヴァルディの瞳に、強い光が宿った。
轟音を立て襲い掛かる拳を魔槍でいなし、衝撃を和らげる。
ゴーレムの殴打は巨体を誇るだけあって二人まとめて薙ぎ払う程で、ティルもまたオーラを展開して衝撃を削いでいた。
一度、リーヴァルディが手傷を負うも、ティルの描く花の陣がその身を包んで癒していく。
「……すまない、助かる」
軽く礼を言うダンピールの騎士に、オラトリオの少女は目配せで返す。
翼より白き羽根を放って応戦していたティルは、敵の背に怨霊達の力が注がれるのを感じ、急ぎ棺を壊しに向かった。
全てを壊したいとさえ願う思いは、何処から生まれたのか。
怨霊となった者達の生前を思えば気の毒ではあるが、その願いは破滅をもたらし、荒野に空しく木霊するのみ。
「まこと、哀しき願いよの……ここで終わりとしてやろう」
白き羽根が舞い散り、連なり、矢の如く束ねられ。
それは墓所のゴーレムの背負う棺へ吸い込まれるかのように突き立ち、邪気払いの力で集った霊達を霧散させる。
そして体勢を立て直したリーヴァルディが、宙へと再び舞い上がった。
「聞け、土塊に縛られし数多の霊達よ。その怨嗟が真に向かうべきは、此処じゃない」
放たれる叫びを呪詛をもって相殺し、そのまま全身を漆黒の呪詛で彩る。
「汝らが真に報いを与えんとするなら……我が声に応えよ!」
死者の想念を吸い取り我が物とする魔槍。その力を以って、怨霊の一部を従える。
再度の突撃に込めるは、死者の想いと解放の願い。
ゴーレムの体内へと注がれた呪詛が溢れかえり、鮮やかに死の棘を生やした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『夜の貴族『ベルナート』』
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POW : 絶望のオーラ
【瞬時に拡散する邪悪な属性魔法の広範囲攻撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : 影に溶け込む恐怖
敵を【対象に複数の状態異常を与える不可視の眷属】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
WIZ : 血の武装
全身を【殺害した人々の血を対価に創造した魔法の鎧】で覆い、自身が敵から受けた【ダメージを癒し、相手のレベル】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:瓶底
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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全てのゴーレムを倒した瞬間、わざとらしい拍手が届く。
振り向けば、貴族然とした男が背後に立っていた。
「成程、これは興味深い。並み居るあれを退けたか」
現れた男は端正な顔立ちを惜しげもなく晒し、靴音を響かせこちらへと歩む。
黒いコートを纏い、その下は赤い貴族服に身を包む――否。
猟兵たちの心がざわつき、直感が警戒を告げる。
あれは血だ。
幾千もの人を骸と化し、その血を編み魔力で鎧としたのだ。
なぜならば。
その鎧は刈り取った心臓がまだそこにあるかのように、微かに脈打っていた。
「何ら余興もなく終わるものかと案じていたが。貴様らは、幾らか私を愉しませてくれるのだろうな」
ざわり。
血の武装がうねり脈打つだけで、周辺の草や木々が活力を失う。
色濃く地に落ちる影からは、死の気配。
姿は見えずとも、中に潜む不可視の眷属たちは隙あらばいつでも猟兵たちの喉を掻ききるだろう。
そして、黒コートの男が掌をかざせば。
地に闇色の波紋が拡がり、視る者の肉体だけでなく心をも深く、侵食する。
絶望が色を持つならば、こういうものだ、と。訴えかけるようであった。
血の鎧を破るには、その強度と再生を突き破るほどの力を。
影に溶け込む眷族へは、痛みをものともせぬ覚悟を。
絶望の帳を晴らすには、闇を塗り替えるほどの意志か希望を。
携えて臨む必要があるだろう。
「猟兵、猟兵、何するものぞ。全て我が手中、掌握の中。――私のこの手で、刈り尽してくれよう」
そこに居るであろう、自身の縁者には目もくれず。
白髪の男――夜の貴族『ベルナート』は、嗤ってその手をもたげた。
玉ノ井・狐狛
※引き続きお任せ
娯楽を求めるのはひとの性だ。
それをとやかく言うつもりはねぇが、アタシも仕事でなァ。
►カードをさっきのバトルで見せてるからな。当たったときのリスクを考えりゃ、やっこさんは防御や回避を厚めにしなきゃならねぇハズだ。
►八卦で▻目潰し、►紗で▻オーラ防御あたりも使って相手をする。
さて、あの手合は――愉しみがどうのと言いつつ、結局は思い通りにならないとイラついてくるモンだ。
一連の戦闘行動は、それを誘うための▻挑発。
頃合いでよろめいた風を装って、相手の大技の直撃をもらう。
▻おびき寄せ
ソレを◈UCで無効化、お返しだ。
▻カウンター
あいにくと手のひらを返すのは得意だし、踊ってやる趣味もねぇさ。
エンティ・シェア
お客様のお見えなら、丁重におもてなししませんとね
色隠しで処刑形態に転じておきましょう
貴方への殺意を込めて、いたぶるための道具ではなく、殺すための道具へと
どうぞ最後まで楽しんでいって下さい
得物は振り回しやすい刃の形状に
踏み込んで振り抜くような、間合いの図りやすそうな武器に
そちらは広範囲の攻撃だそうですから、さぞ有利でしょうね
可能な限りの回避、耐性を駆使して間合いを詰めて
その結果、致命傷を受けたって、いい
演技は得意なんです
それで油断してくれるなら、何よりです
これは、貴方を何が何でも殺すための道具
毒でも炎でも銃弾でも、何でも吐き出します
さぁ、どうぞ苦しむ顔を見せて下さい
貴方の足を止められれば、十分だ
クラウン・メリー
君は自分さえ楽しければそれで良いんだね
俺とは真反対だな
皆で楽しんだ方が嬉しいし
幸せな気持ちで心がいっぱいになると思うんだ
楽しみ方は人それぞれだけど
人が嫌がることはしちゃだめって言われなかった?
わからないなら
俺が楽しませる方法を教えてあげる!
プレゼントボックスをジャグリングして
ほらほら、この中から好きなの選んで?
プレゼント選びってなんだかわくわくするよね!
ふふ、遠慮は無用だよ!
敵にプレゼント(爆弾)を投げつけて煙を覆わせる
その隙に大玉を自由自在に操って敵の頭にどーん!
まだまだ!
大玉を黒剣に変化させて二回攻撃
敵の攻撃には飛んで避けたり黒剣で抵抗するよ
多少の傷だって大丈夫!
絶望なんて無くしてあげる!
男と対峙したクラウン・メリーは、まるで分からないといった風に首を振った。
「君は自分さえ楽しければそれで良いんだね。俺とは真反対だな」
喜びを分かち合う――そんな温和な価値観とは対極に位置する目の前の男。
いや、最早人間の価値観の話ではない。違えてしまったのだ、道を。
「人が嫌がることはしちゃだめって言われなかった?」
問い質すようなクラウンの眼差しにも、男は理解しがたい、する必要もないと言うように一瞥を返すのみ。
「娯楽を求めるのはひとの性だ。それをとやかく言うつもりはねぇが」
どうしようもないものを見たかのように大きくため息をついた後、玉ノ井・狐狛が見得を切る。
「アタシも仕事でなァ」
手に手繰り寄せるは薄絹。武器らしき武器を持たぬ彼女に、ほう、と男の好奇――いや、警戒の目が注がれる。
「どうあれ、お客様は丁重におもてなししませんとね。……どうぞ最後まで、楽しんでいって下さい」
恭しく挨拶を述べるエンティ・シェア、しかし彼の声に宿るは裏腹に底冷えするほど冷めた色。
その手の中では、拷問器具が効率的に死に至らしめる処刑道具へと、武具が姿形を変えていく。
対価として注いだのは、殺意という名の他者への感情。どす黒い色を隠し、武器に封じる事で、抑えきれぬはずの激情でさえも制御可能な力とした。
「その言葉、違わぬものだといいが。ああ、撤回などさせぬよ。何せこれから口を利けなくなるだろうからな」
男が、動く。
闇色の波紋が広がり、地に伏したくなるような重圧が身体を襲う。
「どこまでも自分勝手だね」
全身の虚脱感を感じながらも、クラウンが一歩前へと歩み出る。
「人を楽しませる方法……わからないなら、俺が教えてあげる!」
そう言って彼が取り出したのは、プレゼントの箱。
いっそ戦場に似つかわしくない無邪気さで、シガーボックスのようにジャグリングして見せる。
「ほらほら、好きなの選んで?」
唐突に曲芸を始めたクラウンに、男は不可解な奴だと表情で訴える。
「余興になるとでも思ったのか」
「思うよ! だってプレゼント選びってわくわくするからね!」
返事が面倒だ、とでも言うかのように再び襲う重圧。魂が地の底に引きずられる感覚。
その様子に、これは何度も喰らってはやれないと狐狛は判断する。
(「この手の手合は――愉しみがどうのと言いつつ、結局は思い通りにならないとイラついてくるモンだ」)
地面に広がる色濃い闇へ、霊力纏う薄絹をかざす。
(「その性分をどう使うか、ってトコかねぃ」)
タンッ、と打ち付ければ清浄な霊力が広がり、僅かだが影響力が薄まった。
その隙にとクラウンは、小脇に抱えていたプレゼントを投げつける。
「選んでくれないからこっちで選んじゃった!」
男の頭上まで来たプレゼントは叩き落とされ、宙高く煙を撒き散らす。
「やはり目くらましの爆発物か……安易な」
言いかけたところで狐狛が花火玉を投げ込み、男の身を白煙に包む――が。
「それが安易だと言っている」
腕を一振り、ただそれだけで風に飛ばされる花火の名残。
だが、男の声に苛立ちの色が混じるのを三人は聞いた。好機と見て、まずエンティが駆ける。
(「武器の間合いの外からの、広範囲への一方的な攻撃。そちらはさぞ楽でしょうけれど」)
先に傷を受けたのはこちらで、演技だけでない苦しさが思わず顔ににじみ出る。
だが、それも織り込み済み。
(「いいでしょう。これでいっそう、油断を誘いやすくなった。侮ってくれるなら、何よりです」)
手にした武器は振り回しやすい刃の形、相手をただ刎ねる事だけを想定した処刑人の剣。
かすめるように振るえば、断罪の意志を宿した剣が相手に切り傷を刻んだ。
彼に続けと駆けた狐狛が、霊符を貼り付けようとして手をかざし――しかし、今度の動きは見切られていた。
「まずは貴様からだ。堕ちよ」
体勢を崩した狐狛の頭上に、特大級の魔力が集まり闇色の球となる。本来なら広域に注がれる魔力を凝縮し、一人にぶつければどうなるか。
紛れもなくそれは、意識を刈り取る一撃必殺。
誰もが息を呑む中、狐狛の唇が静かに笑った。
「……貴様。何をした」
まっすぐと狐狛へ吸い込まれたはずのそれは、瞼を開ければ男の魂深くへと『絶望』を刻んでいた。
「何、ちょいと賭けで巻き上げたまでサ。初物の呪詛返し、たんと味わいナ」
受けた攻撃を帳消しにして敵には倍返しする、一発限りのだまし技。
特大級の貧乏籤を掴まされた男の歯を噛む音が、耳元まで聞こえた。
「いいですね、その顔。ここまで耐えた甲斐があったというものです」
眼前を見れば、処刑人の剣を携えたエンティが迫る。
「さあ、どうぞ苦しんで下さい。刀身を受け止めたところで止まりませんよ」
男は剣を肘で受け止め防がんとするが、刀身からは毒が流し込まれ、男の腕をじわりと嫌な熱さが苛む。
そして、後ろに控えるはもう一人。男の顔に、黒い影が落ちる。
「貴様……それがお前の能力か」
高々と持ち上がる、人の身で持ち上げたとは思えぬ巨大な鉄球。
それを軽々と担げているのは、彼の信念の成せる技だ。
先のジャグリング、戦場での不利な行いの真の意味。
道化師である事を貫く限り、その信念は彼に力を与え続ける。
「最後には皆で笑ってみせるって決めたんだ。絶望なんて無くしてあげる!」
今宵最初の見世物は常軌を逸した大玉ころがし。
さあ、とくとご覧じろ。光をも呑む黒い鉄球が今、黒コートの男を打ちのめす。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
レイラ・アストン
悪意が人の形で目に見えている、なんて
おぞましいとしか言いようがないわね
今を生きる人の未来の為
今は亡き人の鎮魂の為
消えなさい
可能な限り仲間と協力
奴を生かしてはおけない――皆様、想いは同じでしょう?
私はそれを叶える為、力を使うわ
血鎧に編み込まれた人の無念…『呪詛』の流れを『見切り』
こちらが効果的に攻撃を叩き込める箇所を把握
仲間にも情報を共有するわね
敵も大人しくはしていないでしょうけれど
好機は自らの手で掴み取るわ
【蛇視】を解放し、敵の動きを縫い止め
猛攻を仕掛ける隙を作り出しましょう
私自身も杖から魔弾を放ち攻撃に参加
敵の攻撃は可能なら『逃げ足』を駆使し回避
回避不可なら『オーラ防御』『呪詛耐性』で耐える
シキ・ジルモント
◆SPD
いまだに自分が狩る側でいる事を疑わないとは、侮られたものだな
真の姿を解放(※月光に似た淡い光を纏う。犬歯が牙のように変わり瞳が輝く)
同時にユーベルコードを発動する
数も不明な見えない眷属を倒しきる事は難しい
攻撃を多少受ける事は『覚悟』の上、前提として行動する
状態異常で鈍る動きは真の姿の解放とユーベルコードで補い、オブリビオン本体を集中して狙う
眷属の攻撃は増大した反応速度で無理のない範囲で避け、同じく増大したスピードで本体に接近し不意を突きたい
眷属が追い付き再度邪魔されるまでに
可能な限り本体へ銃での『零距離射撃』を試みる
少し強引なやり方だが、あの余裕の表情を崩せるなら
ここまでした甲斐もある
アニー・ピュニシオン
貴方が敵の大将ね?罪無き人々の希望を土足で踏み躙ろうとするなんて酷い人だわ!
砦の脅威は去ったわけでは無いのでFirst Pushを発動して全力の短期決戦で行かせてもらうよ!
得物は血を吸う光斧を使わせてもらうね。鎧は叩き切れなくても血は掠め取らせてもらうよ。
奪った血で、刃が煌めきを帯びたらチャンスの時まで温存しておくわね。
危ない時は第六感で察知して回避したり、硬い相手に有効的な攻撃が出来ないから、いざとなれば我が身を味方や砦の盾にするわね!あとは任せたよっ!
誰かが悲しい目にあったらね、私が楽しく笑えないの。だから、貴方の計画はここまでにさせてもらうわよっ!
あらためて見る男の風貌に、レイラ・アストンが冷え切った視線を注ぐ。
「悪意が人の形で見えている、なんて。おぞましいとしか言いようがないわね」
その横ではアニー・ピュニシオンが頬を脹らせて立ち、やっと辿り着けたといった口ぶりで男を問い質す。
「貴方が敵の大将ね?」
「だったらどうだと言うのだ?」
悪びれず、少女の言葉など意にも介さない男の様子に、アニーは腹立たしげに続ける。
「罪深き人々の希望を土足で踏み躙ろうとするなんて、酷い人だわ!」
ぷりぷりと怒る様は、いかにも少女然としていたが。その背に砦を庇い立ち、いつでも護れるよう備える姿に、ふとレイラは頼もしさを覚える。
「いまだに自分が狩る側だと疑わないとは、侮られたものだな」
シキ・ジルモントがそう呼びかければ、男は事実だろうと短く返すのみ。
やはり、問答の通じる相手ではない。アニーが二人に目配せをし、味方だけに聞こえる声で伝える。
「一気に攻め入る覚悟はあるかしら?」
レイラがその意図を確かめるように、言葉を返す。
「奴を生かしておけない、想いは同じはず。……何か、策があるのね?」
アニーは静かに頷き、こう答える。
「私、あなたたちの力を何倍にも上げられるわ。でも時間が経つと反動がきちゃうの。それでもいい?」
その提案は、一歩間違えれば全員を窮地に追いやる諸刃の剣。しかし、今この場に居る二人には願ってもない提案だった。
「俺は元より短期決戦を挑む気だ。好都合だろう」
「なら全力で支援するわ。やりましょう」
シキが同意を示し、続いてレイラが短く答えるのを確かめ、アニーは敵へと向き直る。
「ええ、いきましょ。私達の強さ。見せてあげるっ!」
瞬間。三人の背を光が包んだかと思うと、それは全員の身体能力を著しいまでに引き上げた。
脚力は増し、駆け抜けた後には白い残像が尾を引く。
常人離れした動きで、三人は狙いを絞らせないよう瞬く間に散る。
真っ先に駆けたのはシキだった。彼の体を月光に似た淡い光が包み、更なる変化が巻き起こる。
(「数も分からぬ眷族を倒しきるのは無謀。なら、強引に押し通るまでだ」)
彼に訪れる、獣の変化。普段抑え隠していた彼の性――人狼としての本性が現れ、糸切り歯が牙のように鋭く伸びる。
次々と注がれる眷属の魔手、被った痛手を無視するかのように駆ける。
二重の強化に耐えかね破裂しそうな心臓を、いま少し保ってくれと念じ突き動かす。
眷属も今の彼の全力は追いきれまい。
辛うじてかすめた数本の指先が、彼の肌に紅く朱を引いた。
「今を生きる人の未来の為、今は亡き人の鎮魂の為。――影を背負う者よ。疾く、消えなさい」
レイラが魔力を紡ぎ、眷属の潜む影めがけて魔弾を次々と撃ち込んでいく。
仲間の通りやすいルートを計算し、切り開かれた路。
彼女の支援を受け、血を吸う魔力を秘めた斧を抱えたアニーが駆ける。
「貴方の計画、ここまでにさせてもらうわ。私が怒ってる理由、わかる?」
「さてな。恨まれる覚えはないが」
男の冷たい答えにも構わず、斧の刃先を胴めがけて叩きつける。
「誰かが悲しい目にあってたらね、私が楽しく笑えないの。だからよっ!」
ガンッ。
渾身の一撃は血の鎧に阻まれる。効き目が薄いことを悟ったアニーが慌てた表情で斧を構え直す、が。
「違うわ。そこじゃない」
艶やかに響くレイラの声。攻撃の隙を見出せるよう、とっておきの切り札を出す。
凝縮した呪詛をその眼から放ち、浴びせる。
身もすくむ蛇の凝視。その感覚は男の脊髄を伝い、手足の付け根から指先に至るまでを痺れさせる。
「今よ。左の脇腹を狙って」
鎧を巡る呪詛の流れ。それを読み取ったレイラが鎧の継ぎ目にあたる部分を見つけ、指示を出す。
言葉に従ったアニーが斧を突き立てれば、成程それは先ほどより手ごたえ深く男の腹に食い込む。
「おのれ……ぐっ!」
アニーを振り払った直後、男の体が激しく傾いだ。
死角から最大速度で回り込んだシキが、男の背に銃口を押し当てていた。
「その余裕を崩せるなら、ここまでした甲斐もある」
無防備な背に炸裂する零距離射撃。
常人なら肩の外れかねない衝撃が、男の脊椎を次々と撃つ。
直後、ようやく追いついた眷属がシキを捉え、深々と魔手を突き立てる。
「……今のは、効いたぞ」
苦しげに、痛打を受けてよろめき立ち上がるベルナート。
それを見届け、三人は安全な距離まで退避する。
やがて加護が切れ、三人はしばし昏倒する事となるが――彼らの後は、次なる猟兵が受け継ぐ事となる。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
春乃・結希
ゴーレムなんかに猟兵が負けるわけないんだから
最初から出てくればいいんですよ
…あなたにも負けませんけど
あなたが絶望を広げても、私がそれを焔で焼き尽くす
UC発動
焔の翼を広げると共に、自信に付き従う火球を召喚
withと共にある限り、私は最強。絶望なんてしない
自己暗示による絶対的自信と【勇気】、背負う翼の光により、闇のオーラを打ち払い接近
ダメージは【激痛耐性】で無視、地獄の炎で損傷を補完
withとwandererで牽制しつつ、回避の難しいタイミングで火球を命中させ
周囲の空間ごと焔で包み込みます
全てがあなたの手の中に?笑わせないでください
withと私は、今までも、これからも、自分の意思で歩いて行くのです
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と。
白炎の巨狼オーラを背負って(真の姿)。
アンちゃん、行こう!
この場にいる猟兵さんたち全員で、アイツ倒すよ!
おっちゃん。
元々はゴーレムを前衛に出して、遠距離から範囲攻撃するタイプだよね。
今だって、眷属放って間を取ってるし。
それなら。
低い姿勢から、ダッシュで突撃。
舞扇を呼び出し、次々と投射して。
範囲属性攻撃は耐性と破魔で耐え、ダンスのステップで大地を踏みしめて。
小さな爆発で、目晦ましを浴びせながら。
アンちゃんが飛び込むと同時に、絆を手繰り寄せて加速!
体当たりで拳を叩き込んだら、ヒットアンドアウェイ!
絆をぐるぐる絡めて、おっちゃんの行動を阻害するよう動くね!
猟兵舐めんな!
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
嫌な人
見た目だけでなく本能が告げる
この人を砦に近付けては駄目
存在を許しては駄目
まつりんと目と息を合わせ
皆とも力を合わせ、倒す
真の姿解放
姿は変わらず瞳が青に
…来る
第六感で感じ取る気配はどす黒い何か
見えなくてもその悪気、すぐにわかる
ん、【花魂鎮め】
幅広の大剣にした灯る陽光からオーラ放出して身に纏い
身に降りかかる異常は防ぎ
周囲に対する異常は環境耐性で凌ぐ
そのまま懐に飛び込み、近距離から大剣を振りかぶり衝撃波と共に貴族を薙ぎ払う
自分の攻撃時以外は後衛から
まつりんや皆へもオーラを飛ばし防御
この砦は未来への希望
貴方が穢してはならない
まつりんと声を合わせ
わたし達を、なめるな!
嫌な人――そう、木元・杏の直感が告げる。
単に見てくれから受ける印象ではなく、魂が拒む感覚。
真の姿を現し、青に転じた杏の瞳が強い警戒をもって敵を見据える。
この人を砦に近づけては駄目だ、存在を許してはならないと本能が告げていた。
「ゴーレムなんかに猟兵が負けるわけないんだから、最初から出てくればいいんですよ」
春乃・結希が、挑発するような声で敵意を紡ぐ。語気は強く、勝利を信じて疑わぬかのように――あるいはそう言い聞かせ、自分を鼓舞するかのように。
「……あなたにも負けませんけど」
「ほう、大した自信だ。よく吼える。さすがは猟兵、いや……さして獲物も仕留めぬ猟犬か」
挑発に挑発で返す敵の声には耳を貸さず、結希はそのまま焔の翼を広げる。
「アンちゃん、行こう! あんなヤツの言葉、耳を貸さなくっていい」
延々と続く問答に木元・祭莉が耐えかねて身体を揺さぶり、白くゆらめく炎で身を包む。炎は巨大な狼を象り、彼の背を護りながら敵を見下ろしてみせた。
握る拳に、力が宿る。
「この場にいる猟兵さんたち全員で、アイツ倒すよ!」
「やってみせよ。精々足掻く事だ」
言葉の終わるのも待たず、三人の地を蹴る音が響く。
はじめに飛び出したのは結希。火球を従えて愛用の大剣で斬りかかり、脚力強化のブーツで飛びのいては敵を翻弄する。
身を屈めて走る祭莉が舞扇を次々と投じれば、敵との間に見えない繋がり、絆が結ばれて。
しかし敵も黙って座している訳がなく、これまでも猟兵達を襲った闇色の静寂が地に満ちる。
「その程度で!!」
耐える結希を支えるのは過剰なまでの自己暗示。背負う焔の翼で大地を照らし、愛剣withが傍らにある事が彼女を支え、奮い立たせる。
それでも襲い来る肉体への痛みと負荷は歯を食いしばって堪え、眷属に負わされた傷は地獄の炎を燃やして覆い隠す。
しかし敵の攻撃は絶望のオーラだけではない。
(「……来る」)
三人の中で一際、鋭敏な感覚を持つ杏。
広がる闇に乗じて何かが迫るのを感じた彼女は、光の剣に清廉なオーラを込め、それを衝撃波のように飛ばして振り払った。
一閃。影から伸びた眷族の手腕が斬り飛ばされ、散り散りになるのを感じ取る。
「その、どす黒い気。見えなくても、すぐにわかる」
衝撃波は貴族の男にも迫り、すんでの所でかわされたが、男はそこで気づく。
自分の身動きを縛る、不可視の何かが絡み付いていた。
「おっちゃん。元々は遠くから安全に戦うタイプだよね?」
祭莉が何かを手に持ち、笑っていた。
引き寄せる仕草をすれば、男はよろめくように祭莉へと引き寄せられる。
手繰り寄せたのは、大人には見えない夢色の絆。
「あなたが何度絶望を広げても、私がそれを焔で焼き尽くす」
引っ張られ、大きく体勢を崩した瞬間。結希が焔の翼から火球を放ち、命中させる。
それが彼女の攻撃の始まりの合図。
「全てが手の中? 笑わせないでください」
灯したかがり火に風を、送るように。緋色の翼を強く強くはためかせ、灼熱の焔を放つ。
業火は空間ごと男の身を包み、天へと迫る勢いで燃え盛る。
「withと私は今までも、これからも、自分の意思で歩いて行くのです。あなたに行く先を決められて、たまるもんですか……!」
血をも焦がし尽くす業火、その火中の男に向け、烈火の如き怒りが飛んだ。
次々と加えられる攻撃。割って入ろうとした眷族を、しかし杏の衝撃波が斬り飛ばした。
「この砦は未来への希望。貴方たちが穢してはならない」
そのまま貴族の男にまで届く衝撃の波。杏の身を護るかのように白銀の花弁が舞い、清廉なる気で辺りを包む。
そして、男に迫る影がもう一人。
手にした絆を頼りに、殴り込みをかけた祭莉が手の甲で弾き飛ばされる、が。
「そんなに嫌なら、おっちゃんの方から来てよ!」
駆け寄れないならこっちから引っ張ればいい。
舞踏を舞うように大地を踏みしめ、引き寄せては拳の一撃を何度も見舞う。
「おのれ……小僧!」
男の顔に苦渋の表情が滲む。年端もゆかぬ者共に、かくも苦戦を強いられるとは。
「猟兵を――」
「私たちを――」
「なめるな!!」
身を焦がす残り火の中。拳と衝撃波に挟み撃たれるように、男の背中がくの字に折れた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
コルチェ・ウーパニャン
その血は、あなたのじゃない!
心臓も、そのコートも、あなたのものなんて、ホントはこの世界に、ひとつも無いんだよ!
皆をくるしめて、オシャレしたってダメ!
返して……あっ、こ、コルチェのでもないけど……!
ぜんぶこの世界の、みんなに返して!
ピカリブラスターにキケンシールをぺったん!
出力最大……!ヤケコゲがヨロイの血を蒸発させたり固めちゃうよ……
コルチェひとりができることがちっちゃくたって、
少なくともこれ以上は何も、うばわせない!
攻撃最短ルートはピカブラが知ってるよ……コルチェはピカブラと皆を信じるだけ!
握ったピカブラがオーバーヒートしても、コルチェの指が熱くても!
離すわけにはいかないぞ……!!
オズ・ケストナー
紅(f01176)と
声揃え
せいばいだよっ
眷属はオーラ防御で防げるだけ防ぐ
クレナイ、ありがとうっ
ちょっとくらい痛くたってへいき
毒もすこしなら耐えられるもの
だから走っていける
そうかんたんに、かられないよ
前へと駆けながらガジェットショータイム
身の丈ほどの注射器
なにも薬がはいってない
ってことは、抜くのかな?
瞬時に判断して針を突き出す
防がれたってだいじょうぶ
生命力吸収を狙うのはその鎧
目配せして
本命はクレナイがねらってくれるっ
クレナイの動きを隠すように立ち
ギリギリで背後からのギロチンを躱す
クレナイだってすごいよっ
きみをたのしませるためにたたかってるんじゃない
砦のひとたちに笑ってほしいから、ここにいるんだよ
朧・紅
オズさん(f01136)と《紅》人格で
アドリブ歓迎
悪い子さんは成敗です!
紅朧月!
半数は【第六感】で攻撃察知して僕とオズさんを武器受け防御
オズさんの邪魔はさせないですよ
齧っちゃメッ!です!
状態異常は《紅血》の癒しと激痛耐性で凌ぐです
残りでベルナートに牽制攻撃
ナイショの話
僕の《紅血》もね
数多の咎人やオブリビオンの血を啜った貪欲さん
血に染まったギロチン刃は弾かれても
鎧の血を喰らい生命力吸収で徐々に弱体化させるのです
わぁオズさんちゅーちゅーすごいっ!
オズさんの立ち位置に一瞬躊躇
でも信じて
その薄くなった所に一点集中ギロチン刃連続突撃ぃ
そやー!
朧とは気が合いそうですけどねぇ…
僕も皆の笑顔の方が見たいのです
次第に消耗の見え始めた男に、タイミングの揃った声が降り注ぐ。
「悪い子は成敗ですっ!」
「せいばいだよっ」
朧・紅と、その隣に並び立つオズ・ケストナー。
戦場に似つかわしくない容姿の二人に、男が冗談めいた答えを寄越す。
「随分と可愛らしい客だな。猟兵でなければ館に招き、仕えさせても良いのだが」
だが、すぐにその眼差しは邪悪なものへと変わる。
「或いは、こちらへ加わるのはどうだ? 無論、鎧の材料としてだが」
その禍々しい鎧を見て、コルチェ・ウーパニャンがたまらず叫ぶ。
「その血は、あなたのじゃない!」
命ある他人から奪われた血。持ち主はどんなに残りの人生を歩みたかった事だろう。
畳み掛けるように、コルチェは悲痛な思いを寄せる。
「皆をくるしめてオシャレしたって、ダメ! 心臓も、そのコートも、あなたのものなんて。ホントはこの世界に、ひとつも無いんだよ!」
「……コートは自前だが」
う……と思わぬ所で返しに詰まるコルチェ。紅が「うやー……」と気の毒そうな視線を送ったように思えたが、気のせいか。
「とにかく、返して! あっ、こ、コルチェのものでもないけど……」
一度切った啖呵。がんばれコルチェ。
思わず尻すぼみになりかけた声を、勇気を出し切るようにして、張る。
「ぜんぶ、ぜーんぶ……この世界の、みんなに返して!!」
言葉の粗は目立てど、筋は通したか。聞き届けた男が数秒、黙る。しかし返事として返されたのは、呆れたようなため息一つのみ。
「断るといったら、どうするのだ」
「……こうするもん!」
コルチェはすかさず、光線銃にシールを貼り付ける。『キケン』『警告』『WARNING』――赤に白抜きで書かれたシールはたちどころに光り輝き、愛用の光線銃・ピカリブラスターに常軌を逸した力を与えた。
「もう知らない! 出力最大……撃てばどうなっちゃうか、コルチェにも分かんないぞー!」
コルチェの銃に光が集まる。
チャージには暫く時間が要りそうだ――その様子を見て、紅とオズもまた各々に動き出す。
駆け出す二人を眷属の指先が捉え、引っ掻こうとする。
「齧っちゃメッ! です!!」
オズに近づく魔の手の数本を、紅の武器が弾き飛ばす。
見れば彼女の周りにはギロチン刃が幾つも浮かび、念動力で飛び交っていた。
「クレナイ、ありがとうっ。ちょっとくらい痛くたって、へいきだからねっ」
オズの肉体は特別製、痛覚もまた人間のそれとは異なる。
毒も痛みもまったく平気なわけではないが、少なくとも。
この身体だから、できる事がある。
「いくよっ」
急ぎ取り出したガジェットは、注射器の形をしていた。しかし中を覗いても、中に入っているのは空気だけ。
首を傾げ一瞬使い道を考えたオズは、次の瞬間ある閃きに至る。
「もしかして、抜くのかな?」
迷わず針を突き出せば、それは男の纏う鎧へと刺さり。
「何を……」
男が問うのも待たず、えいっと引き抜けば、鎧を形成していた血がどくどくと注射器へ流れ込む。
それは、或いはかつての犠牲者が解放されたかのようでもあり。
忌々しげにオズを振り払おうと拳を振るった男の視界に、一条の光が映る。
「指が熱くたって、離してなんかあげないもん……!」
ピカリブラスターに光が次々と集まる中、思いの丈を振り絞るように甲高い声が渡り響く。
「コルチェのできることが、ちっちゃくったって! もう何も、うばわせない……!」
湿った泥土すらも焦土に変えるほどの熱線が、荒野を一直線に駆ける。
繰り出す間にも出力を上げるコルチェ必殺・熱線銃の光が、男の鎧を次々と凝固させ、消し飛ばしていき。
「おのれ……貴様ら……!」
焦りの見える男の拳をギリギリまで引きつけて受け止め、オズが答える。
「きみを、たのしませるためにたたかってるんじゃない」
心宿すミレナリィドールの少年は、達観した眼差しで男を見つめていた。
たとえ言葉はたどたどしくとも、その眼は男の心を見透かし――その心は、道理を履き違える事はなく。
「砦のひとたちに笑ってほしいから、ここにいるんだよ」
その言葉がまるで合図だった。準備が整ったとでも言うように、襲い来る拳をすかして身をかわす。
彼の背中で隠していたその先には、ギロチンの刃を従え、紅が迫っていた。
「とびっきりの連携攻撃、見せるのです!」
鎧の脆くなった箇所めがけ、チェーンソーのように回転するギロチン刃が見舞われる。
一点突破の連続攻撃。
ズタボロになり使い物にならない自身の鎧を見て、男はさも不愉快そうに口の端の血を拭い取った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
薬師神・悟郎
最悪だ
どうして此処に、何故と疑問は幾つもあるが
奴は俺の事など知らないだろうし、それがとても腹立たしい
複数の耐性とオーラ防御で備え、祈りで自身をかばう
第六感、野生の勘で眷属共の位置を特定
念動力や殺気で誘き寄せ奴等の情報収集
聞き耳、視力、暗視を駆使し弓で麻痺毒と属性攻撃の牽制
地形の利用を使用しながら逃げ足+闇に紛れ目立たないよう存在感を消し好機を伺う
一番成功率が高い瞬間を逃さず、破魔を付与したUC発動からのベルナートへ先制攻撃
暗殺の要領で的確に狙い早業で投擲
失敗もしくは一部のみの成功であるならば、以降も積極的にUCの使用を試みる
初めまして、そしてさようならだ
俺が貴様を父と呼ぶことは二度とないだろう
リーヴァルディ・カーライル
…ん。心配しなくても、すぐに退屈なんて感じなくなる。
お前は今日、此処で討ち果たされて、骸の海に還るのだから…。
…その纏っている血の報いを受ける時よ、吸血鬼。
今までの戦闘知識と第六感から敵の殺気を暗視して見切り、
不可視の敵の奇襲を魔力を溜めた大鎌のカウンターで迎撃
…無駄。お前達の姿は見えなくても私には見えているもの。
お前達が放つ殺気が…はっきりとね。
第六感が好機を捉えたら多少の負傷は気合いで耐え、
自身の生命力を吸収して治癒しつつUCを発動
完全に吸血鬼化して限界突破した右腕の怪力で、
残像が生じる早業で大鎌を乱れ撃ち全周囲をなぎ払いながら敵に切り込む
…道は私が切り開く。巻き込まれないように注意して。
ティル・レーヴェ
嗚呼、なんと忌しき衣か
其処に脈打つものは其方が奪った未来か
これ以上奪わせはせぬよ
今を生きるものの行き先を
全てが其方の手中などと、笑止
握りし其れを解いてやろう放ってやろう
その手より溢れゆくものを刮目せよ
命は、自由は其れを抱く其々のもの
其方の好きにはなりはせぬ
UCでの味方の癒しを主体に動き
他者との連携を視野に入れ立ち回り
体勢崩した味方がいれば間に入りかばう
攻めに転じる際は破魔の力乗せた歌に全力魔法込め
UCで増加した攻撃回数に加え2回行動も試みる
敵からの攻撃は空中戦で回避を狙いつつ
躱しきれぬものはオーラ防御で軽減を試みて
妾は、猟兵は1人ではない
如何に堅固であろうと穿ってみせよう
※他者共闘、アドリブ可
最悪だ、と思わず声が漏れた。
かつて追いかけたであろう背中が今や、こんなにも遠い。
いつからなのだろう。生前から道を違えていたのか、骸の海の所業か。
ああ――何故、どうして此処に。
尽きぬ疑問を振り払うように、フードの下、首を揺さぶる。
(「どの道奴は知らないのだ。俺の事など――」)
ただ一つ、縁ある自分だから分かる事があった。
自身の知る限りの攻撃手段、加えて守護の祈りを自身に付与する。
――その魂が、彼の強さを識るが故に。
薬師神・悟郎は、常日頃戦地に赴く時以上の準備を整えた。
「攻める好機に身を護る、か」
これまでの幾多の攻防、多少なりとも疲弊している自覚があるのか。
男は冷めきった、微塵も愉しくないと言った口調で呟く。
しかし、それに次ぐ二の句は変わらず、辛辣で。
「だから手緩いのだよ」
その視線を受け止め、リーヴァルディ・カーライルが語気を強める。
「……心配しなくても、すぐに退屈なんて感じなくなる」
手に握るは大鎌。仇敵を狩る、ただその目的に特化した彼女の象徴。
「お前は此処で討ち果たされ、骸の海に還るのだから」
「さて、そうなれば良いのだが。いい加減、鎧も新調せねばならぬのでな」
その言葉の意味する所は、まだ自身の復活と再起を信じているという事か。
しかし身に纏う血の鎧は、傷ついてはいるが未だなくなってはおらず健在だ。
加えて、男が指を鳴らせば。
「今暫くは、この修繕でもたせるとしよう」
魔力が注がれたのか。僅かにではあるが、その機能を取り戻していた。
(「……嗚呼、なんと忌わしき衣か」)
紫の瞳が見るに耐えかね、長い睫毛と共に伏せられる。
ティル・レーヴェはまぶたの裏、男がその手で奪った無数の命に思いを馳せていた。
あったであろう未来。訪れたであろう、幸せ。
個々の人生、その行き着く先がよりにもよってこんな――禍々しく脈打つばかりの、ただの鎧だとは。
「全てが其方の手中などと、笑止」
今一度、畏れの色を掃うように手を振りかざす。その手に現れるは朝告げの囀。願いを、祈りをこめ音を運び届ける為の音響装置。
「これ以上奪わせはせぬよ。命は、自由は其れを抱く其々のもの――其方の好きには、なりはせぬ」
「やってみせよ、小娘」
声と共に、見る者の心を黒く染め上げる波動が地を伝った。
昏き力に対抗するかの如く、少女は光り輝く聖衣を纏う。
「妾の前、誰一人倒れさせはせぬ。この光を以って、皆の夜明けとなろう――!」
魂を奈落へ引きずる力。それと拮抗するかのように、リーヴァルディは自身の中に力が湧くのを感じた。
暖かい支援を背に受け、駆ける。
「道は私が切り開く。巻き込まれないように注意して」
右腕を完全に吸血鬼の力に委ね、常時なら身に余る怪力を解放する。
大鎌を薙げば残像の後に眷属たちが消し飛び、草刈の後のように道が開く。
見えざる敵の避け方は、これまでの戦いの記憶が教えてくれた。
全てとは行かずとも致命的なものを避け、代わりにと魔力を込めた大鎌を影へ突き立てる。
「無駄。姿はなくても、殺気が見えている。こんなにもはっきりと、ね」
眷属をいなし、時に反撃を加えながらリーヴァルディは男へと距離を詰める。
その上空、眷属の魔手は宙高くティルの元へも及ぶが、破邪の歌を高らかに響かせれば届く寸前、それは爪の先からぼろりと崩れ落ちた。
それでも削ぎきれぬものは気配を殺した悟郎が位置を見極め、矢を射て眷属たちを影に縫い止めていく。
やがて、三人と男の距離が縮まり、互いに刃の届くまでに至った。
「妾は、猟兵は一人ではない」
ティルが音響装置を通し、歌声を何重にも増幅して届かせる。
響き、満ち満ちる破邪の力についに眷属たちの気配が消えた。
続いてリーヴァルディが大鎌を持って大きく薙ぐ、が――コートに隠された分、本体の位置を見誤ったか。
わずかに切っ先が足らず、絶命させるには至らない。
「逃げ回ったものだが、これでようやく一人。なかなかに、楽しかったぞ」
男がリーヴァルディに手を伸ばした、その刹那の出来事だった。
太い、拘束用の縄が男の首に絡みつく。
それは、到底日向を歩む者の手筈ではなかった。
これまで目立たず支援に徹し、ただ一瞬の好機を狙う、暗殺者の如き手腕。
「くっ……この技、その姿……そうか、お前は」
もがく手を手枷が絡めとり、呪詛の魔法を紡ごうとした口にも枷がかまされる。
躊躇いなく振るう力は、在りし日、あり得たかもしれない日々との訣別の証。
「初めまして――そしてさようならだ」
縛り首にされた男の背中に、苦無が深々と突き立つ。
杭を打たれたような姿勢のまま、男は闇色の灰となり、風に溶け消えてゆく。
「俺は貴様とは違う。貴様のような者を、父とは呼ぶまい。呼ぶことは……二度とないだろう」
聞こえた言葉に、耳を疑うようにティルとリーヴァルディが振り返る。
忘れ去られた者共が迷い出るだけなら、いざ知らず。
運命とは、かくも残酷無慈悲なものか。
今はとうに消えたオブリビオンの最期の声が、鼓膜に焼き付き木霊する。
決して爽やかとは言えぬ、湿った風の吹きぬける中。
フードに隠された悟郎の唇が、静かにわなないていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 日常
『演劇をしよう!』
|
POW : めっちゃでかい声や豪快な演技で目立つ
SPD : 格好いいアクションで観客を魅了する
WIZ : 暗記した台詞をスラスラ語ったりアドリブで盛り上げる
|
長く、じりじりと魂を灼くような戦いであった。
ある者は怒りに叫び、ある者は全力を投じ、傷つかぬ者などいなかった。
だが、砦の人々を脅かすオブリビオンはもういない。
土塊のゴーレムたちを率いて砦を潰さんとした彼の男の命運は、確かに費えたのだ。
集まった猟兵たちの前には奇跡的にほぼ無傷な砦の姿があり、
木の立て板の合間からは、集落を救った英雄の姿を見ようと
子らが無垢な瞳をのぞかせている。
戦いを乗り越えた者たちは、何を思うだろう。
余力があるなら、脅えていた者たちに寄り添い、生きる活力を分けてやるのもいい。
演劇をしたり冒険譚を聞かせれば、子どもたちはすぐに心を開くだろう。
手当てや修繕の申し出も、音楽や唄も、歓迎されるはずだ。
もし今回の戦いに思うところがあるのなら、一人静かに過ごすのもいいだろう。
危機は去った。全ては自由だ。
ただ、忘れないでほしい。
ひとたび門を潜れば、砦の人々は貴方たちを待っていて。
暖かく、歓喜と共に出迎えてくれるであろう事を。
レイラ・アストン
被害が少なくて何よりだったわ
戦いの他に、私にできること…
ぱっと思いつかないわね
砦の中を歩きながら考えましょうか
人々は普段、どういった暮らしをしているのか
どんな想いを胸に抱いているのか
この世界のことを少しでも
自分の目で見て確かめておきたいから
もし良かったら案内してくださる?
なんて、子供たちに声を掛けてみたりして
お代は…砦の外の世界のお話でどうかしら?
数多の生き物が棲まう海
赤と青が混じり合う夜明けの空
世界には素敵な色が満ち溢れているのよ
…私にできること、見つけたわ
この地に、色を齎しましょう
【精霊と見る夢】
属性は花、現象は吹雪
降らせた色とりどりの花が
誰かの希望になりますように
※連携、アドリブOK
シキ・ジルモント
砦の周囲を見て回り、被害の状況を確認する
人手も物資も限りがある、無駄なく作業を進める為にはまず状況の把握が必要だ
情報を住人に伝えて一区切りついたら、こちらを見ている視線の主に、何か用かと声をかける
相手は子供のようだ、こちらに興味があるなら話し相手くらいにはなろう
襲撃を受けた直後で不安もあるだろうが、誰かと会話する事で気が紛れるかもしれない
…そうだな、以前ダークセイヴァーであった仕事の話をしてみるか
この砦の住人のようなヴァンパイアの圧政に抵抗する者たちと協力して、
道中の困難を越えて敵を退け、一つの集落を救った時の話だ
希望を持って生きている者が他にも存在している事を伝えて、不安を少しでも払拭したい
ティル・レーヴェ
目の前より去りし脅威に
皆の心が春となればいい
傷つきし体も心も
ゆるりと癒し行ける日々が
この先にありますよう
そう願いつつ
今此処に在る皆々の
心と体を癒す一助になれば、と
怪我人や体休める面々の集う場へと赴いて
未来を希望を、晴れやかな其れを
願いて歌へと変えよう
響かす歌声とともに展開する鳥籠が
癒しの場のみならず
舞台にも変わればいい
共に奏でる者が在れば其れも縁
常夜の世界にも彩りを
不安に揺れた心にも温もりを
妾も其方らもひとりではないから
ともに歩む、此処に集う皆がいる
共に望める、臨める未来がある
繋いで、紡いで、これからもずっと
もう理不尽に奪われることがなきように
願いて歌おうそして誓おう
これからも命を護りゆくよと
砦の門を潜れば、こちらを注意深く見守るいくつもの眼差し。
目を輝かせる者。両手を組んで拝むようにこちらを見る者。
人々の顔つきと、やがて口々に述べられるありがとうの言葉に実感が湧く。
救ったのだ。自分たちは、この人々の未来を。
歓迎でもみくちゃにされる集団を一旦離れ、シキ・ジルモントは砦の周囲を巡回していた。
人手も物資も限られ、急ぎ修復をしなければいつ賊が忍び込むかも分からない。
無駄なく作業を進める為にはまず、状況の把握が必要――そう考えたからだ。
(「戦いでの直接の破損は少ない……が」)
風雨に晒され、そのままになっていたのだろう。
砦の外壁を支える支持材がところどころ、朽ちているのを見つけた。
放置すれば外壁の一部が崩れ、倒壊する危険もある。
幼い子や逃げ足の遅い老人が通りかかればどうなるか、想像に難くない。
シキは手書きで簡素な見取り図を作成し、砦の住人に渡す。
「南西側の外壁。ここは早めに修繕した方がいい。それから――」
指摘を受けた見張り兵は感謝の念を繰り返し伝え、急ぎ手配すると約束してくれた。
その頃、砦の内部の別の場所には、当て所なく散策するレイラ・アストンの姿があった。
(「戦いの他に、私にできること……ぱっと思いつかないわね」)
特別華やかな特技もなく、変わった持ち味といえば魔術と、人より視えてしまう事ぐらい。
その目を通して胸の内に収める事はできても、想いを表に出し人に伝えるのは、思いの外難しく。
歩いていれば何かできる事も思いつくかと砦の内を彷徨ううち、だいぶ経ってしまった。
それでも無為に時間を過ごすつもりはなく。
人々が普段、どんな想いを抱き、暮らしているのか。この世界の事を少しでも見て、確かめておきたかった。
角に差し掛かった時、不意に子どものぱたぱたと駆ける音が聞こえた。
遊んでいた子どもたちはこちらに気づき、楽しげに手を振る。
どうやら猟兵たちの存在と姿はすっかり知れ渡っているらしい。
「ねえ……もし良かったら砦の中、案内してくださる? 貴方達のお気に入りの場所、とか」
お代は、外の世界の話で。なんて冗談めかして言えば、幼い相手はすっかり本気にしたようで。
「お姉ちゃん、こっち!」
小さな幾つもの手のひらに、レイラは瞬く間に連れ去られてしまう。
辿り着いた先は小さな休憩所。
砦の人々の数少ない憩いの場は、そこで休む大人たちの目が届く事もあってか、子ども達の格好のたまり場となっていた。
「あのね! ここでね、お花のおねえちゃんがお歌を歌ってくれてるの!」
見れば、先客がいた。
ティル・レーヴェはこちらの姿を認めると穏やかな笑みと共にゆるりと手を振り、そして唄に戻った。
空気に優しく響むような声で歌い届ける。
目の前の脅威は去り、今訪れたひと時の平穏。
(「傷つきし体も心も、ゆるりと癒し行ける日々が、この先にありますよう――」)
高いソプラノの歌声が辺りに満ちれば、いつの間にかそこは彼女の鳥籠の中。
静謐な祈りに満ちた空間は、怪我をした者も遊び疲れた子らも等しく包み、癒していく。
先客はティルだけでなく、シキもまた子どもたちに連れられここを訪れていた。
「以前、ヴァンパイアの圧制に抗う者たちの蜂起を手伝った事がある。ちょうど、この砦の人たちのような」
それは奇しくも同じ世界の、遠く離れた地でのこと。
コウモリの待ち構える洞窟を抜け、別の集落の救援に向かった話に、子らは目を輝かせる。
「ホウキ、ってなにー?」
「うっそだー! 俺たちの他にも戦ってる人いるの!?」
「ああ。戦ってるのはあんた達だけじゃない」
「じゃあ、生きてたらいつか会える?」
いつか、きっとな。矢継ぎ早に寄せられる質問にどれから答えたものかと苦慮しながらも語るシキの話は、同じ地続きの世界を生きる子らにとっての確かな希望となり。
「ねえ、お姉ちゃん。私、お姉ちゃんの話が聞きたい」
「私? そうね……」
レイラもまた話をせがまれ、砦の外、異なる世界の物語を語る。
それはたとえば、数多の生き物が棲まう海。
夕暮れ時には地上近く降りた虫たちを狙ってカモメが飛び交い、夜明けには彼方水平線にて赤と青が織り重なる。
「……世界には、素敵な色が満ち溢れているのよ」
「いろ?」
そこまで語って、子らの反応に我に返る。
この子たちはまだ、鮮やかな色というものを知らないのだ。
「……私にできること、見つけたわ」
悟りを得たような声がこぼれ。かざした掌から、空間に魔力が満ちる。
ティルはその光景を、しばしうっとりと眺めていた。
「おお、これは……!」
彼女の唄う鳥籠の中、花吹雪が舞い散り、舞い上がる。
灰と闇で塗られていた子どもたちの視界に、未知の色が宿る。
それは、精霊の織り成す技。
この地に色をもたらさんとレイラの喚ぶ、色とりどりの花びらが舞い落ちる。
折りしも共演となったティルは表情を綻ばせ、花の舞う様に合わせていっそう高らかに歌う。
ともに歩み、此処に集う皆がいる。
一人では叶わぬ道のりも、共に紡いでいけば、いつかきっと栄えある未来に辿り着く。
ティルは小さな胸に手を当て、願いをこめて歌い続けた。この砦いっぱいに響け、とばかりに。
(「この砦の、世界の人々が。もう理不尽に奪われることがなきよう、妾は今ただ願いて歌おう」)
そして誓おう。これからも、命を護りゆくよ、と。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…ん。生憎と演劇の類いは得意じゃないから、
子供達を楽しませるのは他の人達に任せる事にするわ。
…その間、私は怪我人や病人の治療を申し出る。
医者や聖者ではないけれど多少の心得はあるし、真似事ぐらいならできるもの。
まずは【常夜の鍵】から“多量の保存食”を取り出して、
村人達で使ってもらうように渡した後、傷病者の元へ案内してもらう
…これだけあればしばらくは保つはず。
それじゃあ、怪我人の元へ案内して。
今までの戦闘知識と問診を照らし合わせて症状を見極め、
両眼に魔力を溜め患部を暗視して見切りUCを発動
患部に自身の生命力を吸収した血を一滴垂らして治療する
…これで良し。後は安静にしていれば大丈夫よ。
玉ノ井・狐狛
アタシがするのァ、そうだな、ちょっとした娯楽を教えるくらいか。
カード遊びをいくつか披露しよう。
ひとり用、ふたり用、もっと大人数向き。いろいろだ。
一回あそべば案外さくっと覚えられるモンだし……試合や博奕をするワケじゃないんだ、正確に覚える必要もねぇ。当人たちの間で成立すりゃァそれでイイ、ってな。
で、解散前に、◈UCでアタシのカードを何セットか複製して、村の連中に渡しておく。
ほら、道具がなきゃあそべねぇだろ?
言う必要はないだろうが、コイツぁ普通のカードじゃない。
霊符、ひらたく言うなら“効力のあるお守り”として機能する。
持ってるだけでも、下っ端を近寄りづらくするくらいの役には立つだろ。
コルチェ・ウーパニャン
えへへ……コルチェダイコン役者だから劇は出来ないなあ……
でもね、色々お話は出来ると思うの。
コルチェ、子供たちへ、およその世界の話をしてあげたいな!
お星さまはここでも見えるね。お星さまを探してお空を旅するお船の話や、
壁をコンコンってするだけでおいしい食べ物がいっぱい出てくる世界の話、
いろーんな人たちがあつまって、みんなで通う、楽しい魔法の学校のお話……
その世界はみーんな、とりあえず、平和になった世界なんだよ。
苦しかったときもあるけど、今はみんな、にこにこ暮らしてるよ。
みんなが暮らすこの砦も、今は暗くっても、いつかピカピカピーのお日様が射すときがくるからね……
子ども達を楽しませる役は、自分には向かない。
リーヴァルディ・カーライルはそう考え、けが人や病人の治療を申し出た。
医者ではなく、奇跡を起こせる聖者でもない。
だが、長く戦場に身を置いてきた者として、採れる選択肢はあると判断したのだ。
治療に使える場所を探していると、小さな診療所に通された。
急造の砦だけあって医療器具などロクにないが、安静にできるスペースがあるだけでも環境は整っていた。
砦の人たちに病人やけが人がいたら知らせるよう伝え、持っていた非常食を配りながら問診を行う。
「……もし動けない人がいたら、私の方から向かうから」
改めて一人ひとり状況を聞けば、戦いの音に驚いて腰を抜かした老人はいたものの、戦いそのもので傷ついた住人はいない事に、リーヴァルディはほっと胸を撫でおろした。
大人たちが治療を受ける横で、退屈した子どもたちが遊び始めた。
「おんや、大変そうだねぇ。何ならアタシも手伝おうかぃ」
協力を申し出た玉ノ井・狐狛が、ゲーム用のカードを床のマットに拡げる。
「そうさな、ちょっとした遊びくらい覚えてて損はないだろ」
未知の遊びに、集まった子らの目が好奇の色に輝く。
並べられた札の役や意味をすぐ理解したわけではなかったが、華やかな絵柄は興味を引くには十分だった。
遊び方を解説していく――が、何分はじめは難しい。
「なァに、細かい決まり事は当人同士で決めりゃ、何とかなるモンさ。試合や博奕をするワケじゃあるめぇ。アンタらが楽しけりゃそれでいい、ってなァ」
その言葉に安心したのか、子どもたちからは矢継ぎ早に質問が飛ぶ。
「すっげ、角のあるオオカミだ! 俺こんなの見たことねー!」
「これ、なに?」
「こいつァ蝶々さ。甘い蜜求めて花の周りをひらひら飛ぶんでぃ」
猪、鹿、蝶。この近隣では見たこともない動物たち。
まだ半信半疑ながらも、子らは未知への想像力を膨らませる。
「……あたし、このちょうちょう? 見てみたいなー」
ぽつりと呟かれた言葉。未知への好奇という名の芽生えた新たな気持ちに、狐狛はふっと笑みをこぼし。
「アタシに勝ったら、もっと色んな話聞かせてやるよ」
思わず勝負師の血が騒いだが、軽く本気を出した方が子どもには喜ばれるというもの。
覚えたての役、勢いよくめくられる絵札。
こいこい――子ども達の歓声じみた声が、響き渡る。
油断したのか、それとも子らに運が味方したのか。
約束通り、自身の見てきた世界の話を狐狛が語り始めた頃。
えへへ、とバツが悪そうにコルチェ・ウーパニャンが入ってきて、狐狛の近くに体育座りで腰掛けた。
「皆を和ませたいけど、コルチェ、ダイコン役者だからなあ」
疲れた心を癒せたらとあれこれ考えはしたのだが、如何せん、お芝居や音楽の心得はなく。
しかし、狐狛の様子を見てはたと気づく。
「そっか! おそとの世界の話なら、コルチェにも出来るね!」
コルチェの話聞きたい人ー! と診療所の座敷に座って光ファイバーの髪をぴかぴかと光らせれば、なんだ今のすっげー! と群がる子どもたち。
一瞬で打ち解けたコルチェは、これまで旅した世界の話を子らへと語り聞かせる。
「あのね、お空にお星さまが浮かんでてね! お星さまを探してお空を旅する、船に乗ってたことがあるの」
「お星さま? ふね?」
「うん! 他にもね、壁をコンコンってするだけでおいしい食べ物がいっぱい出てくる世界があってね」
「うっそだー! 食べ物って、誰がどうやって作ってんだよ!」
猟兵たちが渡り歩いてきたのは、豊かな想像力をも飛び越えた世界。
子どもの口をして絵空事だと断じられ、ウソじゃないもん! とコルチェは口を尖らせる。
つい同じ土俵でケンカしそうになるも、見ていた狐狛にたしなめられて咳払いをひとつ。
大丈夫。コルチェの方がお姉さん、我慢だ我慢。
「コルチェお姉ちゃん、その世界って楽しいことだらけなの? 危なくないところ?」
自分達の世界とはあまりにかけ離れていて、ユートピアにも思えたのだろう。
傍らで聞く少女の寄せた問いに、コルチェは嬉しそうに笑みをこぼす。
「えへへ。皆たいへんな事はあったけどね。その世界はみーんな、いまは平和になったんだよ」
蘇る、直近の戦いの記憶。
「痛いことも、危ないことも、なくなったんだよ」
迷宮を駆け抜け、魔王を倒し――そして魔法の学園に戻った笑顔を、コルチェは思い返していた。
生命力を凝縮したリーヴァルディの血が一粒、はたりと滴り落ちる。
特異な治療法にはじめ住人は戸惑いこそしたものの、信頼を引き出せたのは猟兵たちの努力の成果でもあり。
「……これで良し。後は安静にしていれば大丈夫よ」
額の汗を拭う。最後の患者は原因を見定めるのが容易でなかったが、先日藪の中に立ち入ったと聞き、即座に脚を診た。
傷口から菌が入るのは、古今問わずよくある事。
正しく判断できたのも、問診を行い自身の経験と照らし合わせたからだろう。
「ありがとうございます……なんとお礼を言っていいか」
「ううん、礼には及ばない。私はできる事をしただけ」
往診を終えたリーヴァルディが診療所へと戻ると、狐狛が質問責めから抜け出してきていた。
手にしていたのは、子どもたちに配ったのと同じ札。
何の変哲もなく見える札を軽く宙にかざせば、隠された紋様が浮かび上がる。
「霊符……ひらたく言うなら効力のあるお守りさ。当面は役に立つだろ」
急ごしらえだが精巧な出来。ゲームや賭け事に精通した彼女らしい心配りに、なるほどとリーヴァルディは感心して頷く。
「そういうアンタも一仕事終えた、ってトコかねぃ。何軒も駆け回ったって顔に書いてらぁ」
「ん……そんなに顔に出てる?」
ユーベルコードを使っての治療は思いの外集中力が要り、疲労が色濃く出ていたらしい。
こういった疲れなら悪くないと、リーヴァルディは静かに笑う。
「ああ、でも――」
狐狛が振り返り、肩越しに見えた光景に目を細める。
一緒になって眠ってしまったミレナリィドールの少女の膝の上、子どもたちがすやすやと寝息をたてる。
その様は、まるで彼女を血の繋がった姉だと慕うようでもあり。
眠りに落ちる前、最後に落としたコルチェの優しい囁きがよみがえる。
――みんなが暮らすこの砦も、今は暗くっても。
――いつか、ピカピカピーのお日様が射すときがくるからね。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
グレイ・アイビー
悟郎(f19225)と
猟兵になったばかりのぼくがいたところで足手まといにしかならなかったと思いますし、アニキの言うことは気にしてねぇです
ぼくに父親はいない、それでいいですって
それよりもやるべきことはまだあるんじゃないですか?
そっちはぼくも手伝うんで、いつまでもぐじぐじしてないで早く行きますよ
子供達が修繕の方に興味を見せれば、危ねぇですし安全なところで遊ばせてきますよ
体力には自信があるんで、肩車なりごっこ遊びなりしても良いんですが、せっかくだし何か催しをしてる猟兵がいれば、そちらに混ぜてもらいましょうか
おや、アニキも来やがりましたか
それならぼくたちの仲間に入りやがれです
人数が多い方が楽しいですよ
薬師神・悟郎
グレイ(f24892)
腹違いの弟を相手に今更だが…少々気まずい
今回の討伐対象の事を相談しなかったのは心配をかけたくなかったからで
言い訳にもならない言い訳を並べて弟に引き摺られていく様子は情けないだろうなぁ…
気持ちを切り替えれば、修繕の手伝いをしよう
手先はそれなりに器用な方だと思う
必要なものはその都度UCで作成して効率の良い作業を試みる
ベルナートの被害者のことを思えば、奴と俺達との関係のことは隠しておくつもりだ
気付かれないのならそのままで
再び頑張ろうとする彼らを怯えさせる必要もないからな
さて、作業が落ち着けばグレイの様子を見に行こう
笑い声がこちらまで聞こえてきたが、とても楽しそうに過ごしているな
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)とー!
戻りましたーっ♪(耳と尾はしまっとく)
おうちはだいじょぶだったー?
畑や寺子屋は? え、寺子屋ないの!?
んっとね、おいらたちの故郷ではね。
春には大きな木の下に、敷物敷いて、ご馳走持ってきて。
そこで、歌ったり踊ったりするんだー♪
一緒にやる? それじゃ。
(ド真顔で)今から教える振り付けを、全部覚えなさい。(びしっ)
(『大地の歌』の振り付けを根気よく教える)
(春の運動会のお遊戯の如く)
そう、そこでくるりと! 次の拍で右左前後、右足でぴょん!
覚えた?
よーし、本番行くよー♪
メカたまこ、バックダンス&コーラスよろしくー!(コケー×70)
やぶさか2(ツイン)、新曲いきまーす♪
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
あ、子供たち!
まつりんと一緒に駆け寄って
皆の顔、ん、怪我してない
畑も無事…よかった
ほっとしてふと顔を上げれば
まつりん、この大きな木の枝の先にお花咲いてる
お花見しよ?(嬉しそうに笑って)
お花見、畑の豊作を祈る儀式でもある
沢山育ちますようにって、神さまにお願いするの
踊りの人はまつりんへ
歌を歌う人はこっち、来て?
教えるのは大地の歌
♪
暗い大地に光が差して
見て?双葉が小さな顔を出す
空に憧れるようにのびる枝先
ほら、花が咲く
みんなの希望、みんなの夢
ここが始めの一歩
向かうのは未来
さあ、手を取り合って、ジャンプ!
♪
本番はまつりんの踊りに合わせて
歌いながら、皆で畑に種も撒く
戦いの喧騒が過ぎ去り、日常を取り戻し始めた砦の中、並び歩く二つの影。
薬師神・悟郎は、その表情に気まずさを隠し切れずにいた。
彼の隣には、グレイ・アイビー(寂しがりやの怪物・f24892)の姿。
今更ではあるのだが、異母兄弟というのは何かと気を使う。
加えて、父は共通であるという事は――。
予感に過ぎなかったとはいえ、悟郎が何も告げずに出たのも、つまりはそういう事情だった。
「そんな目しなくたって、アニキの言うことは気にしてねぇですよ」
まだ猟兵の力に目覚めたばかりの弟は、自身に声がかからなかった事もやむなしと受け止めている様子だった。
ぼくに父親はいない、それでいいですって。
目の前の弟はそう言うのだが、兄の心中は彼ほど割り切れない。
大方、心配をかけさせまいと自力でカタをつけようとした事が、悟郎の泳ぐ視線からも見て取れた。
「それよりも、やるべきことはまだあるんじゃないですか?」
弟が視線で促せば、彼らの前には屋根の壊れた家屋。
「いつまでもぐじぐじしてないで、早く行きますよ」
グレイに手を引かれ、悟郎は気持ちを切り替え後をついて行く。
世の中多くの兄弟(兄妹)がいれば、兄というのも様々で。
こちらは木元・祭莉、とにかく元気が取り柄の兄。
祭莉は狼の耳や尻尾を隠し、人間の子と同じ姿で砦を訪れていた。
姿形も皆違うのが当たり前の猟兵、それが理由で怖がられることはないだろうが、人狼の特徴を隠したのは彼なりの気遣いでもあり、また子ども達と近づきたい気持ちの表れでもあった。
「戻りましたーっ♪」
「ん、ただいま!」
双子の妹、木元・杏と共に門をくぐると、年の近いヒーローの姿に砦の子たちが駆け寄ってくる。
「お前、俺と同じくらいだろ? なのに戦えるってすっげーなー!」
ベタ褒めされて鼻高々の祭莉、ふんぞり返るその顔はすっかり天を向いていて。
そんなやりとりを横目に、皆の無事な顔を見て杏も安心した様子。
「おうちはだいじょぶだった? 畑や寺子屋は?」
「てらこや?」
聞き慣れない単語に首を傾げる子どもたち。その様子に、寺子屋ないの!? と祭莉は軽くショックを受ける。
「寺子屋は、ね。字を習ったり、おべんきょするところ。似たようなところ、ないのかな?」
そういって鏡合わせに首を傾げる杏。と、その拍子に頭上にあったものが目に入った。
あれは、モクレンに似た品種の花だろうか。
木の枝に咲いた花は芳しい香りを漂わせ、この世界に春を告げている。
「わ……綺麗。お花見、したいね」
「おはなみー?」
再び、寄せられる疑問符まじりの声。寺子屋はまだしも、お花見を知らないとは。
あまりに損だとばかり、祭莉が切り出す。
「んっとね、おいらたちの故郷ではね。春には大きな木の下に、敷物しいて、ご馳走並べてお祝いするんだー♪」
「ん。畑の豊作を祈る儀式でもある。沢山育ちますようにって、神さまにお願いするの」
こくこく、と頷く杏。
「一緒にやってみるー? 歌ったり踊ったり、楽しいよ!」
やるー! お花見やるー! 元気よく返る返事に、祭莉の目が光る。
「それじゃ。今から教える振り付けを、全部覚えなさい」
突如、鬼教官スイッチの入る祭莉。
うわ、あれ、マジの目だ――子どもたちがたじろぐのが、そばに居た杏にも感じ取れた。
家屋修繕の手伝いにまわった悟郎は、次々と修理をこなし、現場を移っていた。
金槌やカンナ、使い慣れた道具を幻術で精巧に模造し、持ち前の器用さで使い分けていく。
寸法を測っては部材を整え、今度は壊れた屋根に野地板を張り――要領のいい彼は引く手数多で、先ほどから休む暇もなく働いている。
悟郎が修理を行う間、遊びに来ては危ないからと、グレイは子どもたちの遊び相手を引き受けていた。
「お兄ちゃん、肩車してー」
「はいはいっと……おや、まだまだかわいい体重ですね。ちゃんと好き嫌いせず食べてますか?」
子どもを肩に背負って鬼ごっこに興じれば、肩の上から興奮した子の叫び声が上がる。
子どもの体力は無尽蔵に見えて、いつ切れるか分からない。
全力で相手すると見せかけ六割の力なのは、いつでも連れ帰れるようにとの気遣いからで。
(「こういう時はアイツも、すっかりお兄さん――だな」)
そんなグレイを横目で見ながら、悟郎は今日の戦いに思いを馳せる。
いろいろ思うところはあり過ぎる、が。
砦の人々に対し、悟郎は砦を襲った敵との事を何ら話さず、伏せていた。
(「再び頑張ろうとする彼らを怯えさせる必要もないからな」)
嫌な事は遠く、忘却の彼方へ。
骸の海より遠く、二度と還らぬ場所で、今度こそ眠っていてくれと静かに願う。
一方その頃、グレイが子どもたちと遊んでいた場所では、いつの間にか悲鳴まじりの声が響き渡っていた。
「きゃー!!」
つい童心に返り、全力でかますジャイアントスイング。
子どもは大いに喜ぶが、もし親が見てれば保護者会案件ではある。
興奮冷めやらぬうちに、振り回されていた子どもが声をあげた。
「あれ? 何か聞こえない?」
耳を澄ませば聞こえてくる歌声にそちらを見ると、畑のすぐ傍ら、合唱する子どもたちの姿があった。
――暗い大地に光が差して。
――見て? 双葉が小さな顔を出す。
杏が子どもたちに教えたのは、自分たちで作曲した『大地の歌』。
彼女の周りをコーラス隊が取り囲み、祭莉率いるダンス少年ズが足をもつれさせながら踊る。
「そこでくるりと! 次の拍でぴょん……って、一拍おそーい!」
今のパート、最初から! と息巻く祭莉はすっかり先生モード。
コーラス隊は楽しそうな一方、生まれてこの方ダンスなど踊ったことのない少年達は必死の形相で。
「お花見楽しいー!」
「お花見むつかしい……」
くしくも、男女でくっきり感想が二分されてしまった。
「何やら、楽しそうに過ごしているな」
遠くまで聞こえた笑い声に悟郎が様子を見に来てみれば、よく来てくれたとばかりにグレイに腕を掴まれ。
「アニキも来やがりましたか。それならぼくたちの仲間に入りやがれです」
「お、おい……」
いつの間にかバックダンサーを務めていたグレイに唖然としながらも、引かれる手には抗えず。
「おにーちゃんたちも覚えた? もう本番いくよ!」
この祭莉、有無を言わさず巻き込む気である。
豊穣を願い、畑に撒く種もみもしっかり手元に準備して。
「メカたまこ、すたんばーい! バックコーラス、よろしく!!」
『コケー!!!』
後ろでガヤを務めるは70羽分のニワトリ型ロボ。
なんだそれは……と悟郎が身をすくめるも、けたたましい鳴き声の前には声すら届かず。
「それではやぶさか2(ツイン)、新曲いきまーす!」
来たる春、そして豊穣を願い。
ここに花見という名目のライブが開催されたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
春乃・結希
この世界の希望のひとつ、守れて良かった…!
身体を動かす方が役に立てるかも
砦を修繕してる人達に声を掛けて、何かお手伝い出来ることが無いか聞いてみます
私に出来ることなら何でも言ってください、こう見えて、重い物だって持てますよ!【怪力】
子供達とも遊びたいな…私が運んでる資材に乗って貰って一緒に運んだり
軽い資材だったら子供達にも持って貰って、競争するとか!
私だって負けないよー!よーいどん!
最終的に鬼ごっこになっても楽しいかもっ
やっぱり子供達には、いつも笑顔でいて欲しいです
こんな世界でも、子供達の笑顔は希望の光になると思うから
またここが狙われたとしても、何度でも守ってみせます
だって、私達は最強なので
朧・紅
オズさん(f01136)と《紅》人格で
ぅや?ちっさい子たちがこっちを見てるですね
怯えてるです?
……僕たちにも何か出来ることあるでしょうか
!!
すぐに気づくのですよっ
ローズウッド製の赤いハーモニカでオズさんの口笛と二重奏ぴーぽろろ♪
ぷぇっ
あっ音外れました
まだ上手じゃないのです
オズさんのフォローにぱちくり笑顔
外れちゃった音も笑顔を連れてきてくれましたっ
投げられるボールに合わせてぴるるっとアクセント
練習のせいか
息はぴったりさん♪
大丈夫、上手く投げれるよって想いを乗せ
メロディで応援
わぁわぁオズさんすごきっ!(思わず演奏忘れて拍手!
オズさんと笑顔に花咲かせ
みんなに沢山振り撒いて一緒に楽しいの心を繋ぐのです
オズ・ケストナー
紅(f01176)と
その場にしゃがんで目線を合わせ
にこにこ手招き
ピィと口笛
ガジェットショータイム
カラフルなボールをたくさん出す
クレナイはそれでわかってくれるはず
れんしゅうのせいかを見せようと思うんだっ
ハーモニカの音色に合わせて
口笛ふきつつジャグリング
最初は2つ、子供たちが近づいたらもう1つ
クレナイが外した音に合わせてへろーんとボールを投げて
わっとっと、と落としそうになるふり
シュネーが放ってくれた1つも合わせて
4つのボールを
下を向いている子にはシュネーがボールを転がし
わたしのところに投げてみてっ
と声かけ
どんなに低くてもキャッチして
5つを成功させるんだ
たのしいを口笛に乗せ
えがおもぜんぶキャッチだっ
壊れる事もなく全容を保つ砦を見渡し、感慨深げに声をあげる少女がいた。
「守れて良かった……!」
この世界で人類の勝ち取った数少ない生存圏。
紛れもなく希望のひとつをこの手で守りぬけた実感に、春乃・結希は高々と拳を突き上げ、そのままうんと背伸びをした。
何か手伝いたいが、こういう時の仕事は身体を動かす方が向いている。
砦に修繕を施す人たちを見かけ、できる事がないか聞く事にした。
「手伝ってくれるのかい? そうだな……今ちょうど手が足りないところではあったんだが」
「任せてください! こう見えて、重い物だって持てますよ!」
力自慢をアピールしてみた所、住人は本当に頼んでいいのかためらいながらも、柱に使う角材の運搬を手伝ってほしいと伝えた。
柱が朽ちてしまった家屋の取り替え作業を予定しているというのだが、柱材は明らかに結希の背より長く、重々しい。
いかに猟兵といえど、少女の力では持ち上がりそうもなく見えた、のだが。
「せーのっ」
腰を入れて担げば肩に乗るそれに、大工たちが腰を抜かす。
運搬先へと担ぎ歩きはじめると、見るからにやんちゃそうな少年が駆け寄ってきた。
「姉ちゃん、すげー! なんでそんなの持てんの!?」
足元をちょろちょろする子に危ないですよと言いかけたが、自分がしっかり持てばいいだけと割り切る。
ついでに手袋を貸し、小さめの棒材を持ってもらえば、並び歩く姿はまるで姉弟のようで。
「このまま競争しよっか! よーい……どんっ!」
何とも元気な二人の姿を、若いモンはいいなあ、と手を振る大工が見送った。
一方その頃。朧・紅とオズ・ケストナーは、小さい子ども達がじっとこちらを見ているのに気がついた。
「うや? なんだかじっと見られてるですね」
怯えているのか、人見知りしているのか。
こちらに興味はありそうだが、彼らはなかなか近寄っては来ない。
ふと何かを思いついたオズが、しゃがんで目の高さを合わせて手招きをする。
「クレナイっ」
ピィ、と口笛を鳴らせば本日三度目のガジェットショータイム。
けれど、今回呼び出す装置は戦いのためのものでなく、ぽんっと勢いよくカラフルなボールを撃ち出していて。
「……! わかったのです!」
日頃から多くの時間を共に過ごしてきた紅はオズの意図に気づいて、急ぎ自分の手荷物を探る。
取り出した赤い楽器、ローズウッドで出来たハーモニカを吹き始めれば、木製特有の枯れた、まろやかな音が響き渡り。
合わせて口笛を吹きながら、オズがボールを宙に放り投げる。
それは、ずっと練習してきたジャグリング。
宙高くのぼっては手の中に戻るボールに魅せられ、子どもたちが一人、また一人と集まってくる。
口笛との二重奏を奏でながら、紅は楽しげにサーカス風の音楽を奏でていたが。
「……!」
ぷひゅる。気の抜けた音が出てしまい、外した音にずっこけるようにオズがボールを落としかける。
おっと危ない、地面ギリギリのところでつま先キャッチ。
わっと笑い声に続き、さり気なく見せた上級テクに拍手が沸き起こる。
「まだまだふえるよっ」
オズにがんばれとエールを送るように、彼の大事な家族、シュネーが4つ目のボールを彼の手めがけて放り上げた。
路地裏にバタバタした足音と、捕まえたー! と甲高い声が響く。
「お姉ちゃん、早い……!」
結希たちの遊びはかけっこから、いつの間にか鬼ごっこに変わり。
捕まった少年が止まりきれずに笑い転げていたところで、ふと声を上げた。
「あれ? あっちで何かやってる」
二人で様子を見に行くと、愉快な曲調に合わせてポンポンと、色とりどりの球が宙を舞っていた。
見に行こうとした結希は、家の影に隠れて遠巻きに見ている少女がいる事に気づく。
角材をおろし、傍へ寄って目線を合わせ、尋ねる。
「どうしたのー?」
声をかければ黙ってこちらを見る瞳。言葉こそなかったが、何が気になっているかは一目瞭然で。
「近くで見てみたい?」
こくり、と返される頷きを見て取り、手を引いて通りへと連れ出す。
「すみませーん! この子と一緒に、私も見てていいですかっ」
結希が声を上げれば、恥ずかしそうに顔を伏せる少女。
その様子を見てオズと紅が互いの顔を見、頷く。
白い髪をふわふわとなびかせ、アシスタントのシュネーがボールをその子の方へと転がした。
「わたしのところに投げてみてっ」
おそるおそるボールを手に取る少女。オズに届かせようと放り投げた、が、低い。
「ナイストスッ」
そのボールを結希がwithの刀身で受け止め、連係プレイでぽんっと宙高く放る。
皆が見守る中、紅のハーモニカが下降する音色で鮮やかに落下音を奏で、そして。
(「……やったっ」)
「わ、すごいのですっ」
オズの手に見事、5つ目のボールが収まり輪を描きはじめる。
難易度の高いクライマックスに拍手が沸きあがり、紅も演奏を忘れて両の手のひらを叩く。
ボールだけでなく、子ども達の笑顔もキャッチできた事を喜ばしく思いながら、オズは一回転してボールを受け取り、鮮やかにフィナーレを締めくくる。
「大丈夫ですよ」
最初の不安げな表情も忘れて見入っていた少女に、結希が告げる。
「またここが狙われたとしても、何度でも守ってみせます」
だって、私達は最強なので!
決して強がりでない本心からの言葉に、路地裏から見ていた少女はこの日初めて、笑顔を花咲かせた。
大成功
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クラウン・メリー
一息ついたら子供達に近づいて
もう大丈夫!と笑顔を向ける
うんうん、一緒に遊ぼっ!
子供達の手を繋いでるんたるんたと踊り
疲れている子やまだ少し怯えている子には
しゃがみ込んで話しかける
もう大丈夫だよ!ふふ、そうだ!
笑顔のまほうを掛けてあげる!
何も持っていない掌をきゅっと握り
ぱちんと指を鳴らして、掌を開けば包み紙で包まれた小さな飴玉が
はい、どーぞ!
子供の笑顔を見れば笑顔で返し
手を繋ぐ
さぁ、みんなで踊ろう!
ミニクラ!音楽よろしくね!
小さいクラウン達を召喚させて
笛や太鼓などを使い、愉快な音を奏でて一緒に踊る
ほら、ほら!
おばあちゃんも、お父さんもみんなで!
今日と言う日を楽しい思い出として
塗り替えられますように
エンティ・シェア
……「エンティ」が、空室の住人でぬいぐるみを貸してくれると、言うので
とりあえず、人形劇でも、しようかと
黒熊を敵に見立てて、白兎に倒させてみたり
音楽が聞こえてくるなら、揃いで踊りでもさせてみたり
後は…まぁ、子供達に抱かせてみたり、しましょうか
怪我をさせないように、人の近くでは、動かしません
……かわってください
僕には、眩しすぎます
……救ったものを見ずに帰るなんて勿体ない、なんて
そういうのは、貴方の役目でしょうに…
仕方がないので、修繕の手伝いも申し出ましょう
ぬいぐるみが働いているというのも、新鮮で可愛く見えて、良さそうです
僕自身も、働きます
…眩しい
あぁ、でも
この光景が長く続けばいいとは、思いますよ
アニー・ピュニシオン
(……砦を守る事ばかり考えていて、その後の計画を何も考えていなかったのでどうすればいいのか分からない!)
と、とりあえず私の仲間でも呼んでみましょう。
そして皆で一緒に隠し持っていた飴やクッキーでも配るとするわ。
多分、これが一番無難に喜んでくださると信じて。
来る人にティッシュ配りをするかの如くお菓子を配り、
空気に徹し……。
あ、帽子とか引っ張らないで。これ以上、何も出ないよっ!
後はきっと誰かが素敵な演劇や即興のコンサートやらの
素敵な催し物を開いてくれるはずだと私の未来を託していくわね。
辛かった分、お菓子片手に存分に楽しんでくると良いわ。
その裏で私はほくそ笑んでいるからね
そして大方修繕の終わった砦の中、辺りをおろおろ見回してどうしましょ、と慌てるアニー・ピュニシオンの姿があった。
(「砦を守る事ばかり考えていて、その後のことを何も考えてなかったわ!」)
人々を守りたい一心で戦うあまり、そればかりで心が占められてしまったのだろう。
プレッシャーから解放された彼女の心はいま、白地図のように真っ白だった。
「と、とりあえず私の仲間でも呼んでみようかしらっ」
おいでなさいっ、と召喚したのは愉快な仲間たちのツギハギ団。
その名の表す通り、動くぬいぐるみや陽気な小人、リボンの蝶。
数ある不思議の国を縫い合わせたような混成部隊が姿を現し、アニーに付き添った。
「あとは、隠し持ってた飴やクッキーを皆で一緒に配れば……きっと喜んでくださるわよね?」
おずおずと道行く人にお菓子を手渡せば、首を傾げながらもありがとうと受け取る人々。
まるで都会の街頭で見かけるティッシュ配りのようになってしまった。
後はきっと誰かが、素敵な催し物を開いたりしてくれてるはず。
「これで私の役目は終わりねっ。ふふ、いい仕事したわっ!」
あとは皆の笑顔を影で見守り、幸せなのはいい事ね! とほくそ笑むのみ。
――そんな人見知りさんことアニーの思惑は、すぐに打ち砕かれる事になる。
家からそろりと様子を伺い出てきた子どもを見つけ、クラウン・メリーは笑顔で手を差し伸べた。
「もう大丈夫! 危ないのは遠くへ行ったよ!」
こもっていたその子はにわかには信じられない様子で、本当? と聞き返す。
本当だよ、俺たちが追い払ったから。目線を合わせて繰り返し伝えると、子どもは安心したように出てきてクラウンのそばへ寄る。
「お兄ちゃん、ほっぺに赤いのついてる。青いのは、涙?」
頬につけたマークが珍しかったようで、尋ねる子どもにクラウンは笑って返す。
「これはね、ピエロの証さっ!」
「ぴえろ?」
聞き慣れない単語、だったが。楽しげに語るクラウンの様子に、きっと悪くないもの、痛くも悲しくもないものだと理解したのだろう。
このお兄さんは、何か新しくて楽しいものを教えてくれる。
そんな眼差しで、少年は続きを期待してじっと見つめる。
「ふふ、そうだっ。笑顔のまほうを掛けてあげる!」
見てて、と少年の目の前で何も持ってない掌をきゅっと握り。
3、2、1――ぱちんっ。
指を鳴らして開くと、そこには包み紙にくるまった小さな飴玉。
「はい、あげるっ」
「わ、いいの? あまーい!」
ころころと口の中で飴玉を転がす少年に、喉につめないようにねと言って聞かせ。
「さあ、ここからは楽しい時間のはじまりだっ。ミニクラ、音楽よろしくね!」
呼び出されたのは、小さな小人サイズの無数のクラウンたち。
クラ、クラ! と口々に声を上げながら、彼らの周りを取り囲む。
「わ、お兄ちゃんがいっぱい増えたー!」
足並みもバラバラ、まるでこの世は楽しい事ばかりとおどけ歩くように。
砦の中の集落を、愉快なマーチが練り歩く。
赤い髪の下、緑の瞳を惑いに揺らし、「彼」は佇んでいた。
その手に握られているのは、黒い熊と白兎のぬいぐるみ。
普段このぬいぐるみを好んで操るのは、笑顔を湛え、多くの人をグリモアの旅へと誘う、「私」と名乗るエンティ・シェアだ。
しかし今日、ぬいぐるみを手にしているのは――。
「……とりあえず、人形劇でも、してみましょうか」
子ども達の手前、何もせず立っているわけにもいかず。
黒熊を敵に見立てて白兎に倒させやられたフリをさせれば、動く人形に興味を示した子ども達があれ、なあに? と周囲を囲み始める。
遠くから、賑やかな音楽が届き始めた。
あれに見えるは共に戦った猟兵、アニーとクラウン。
陽気なツギハギ団は愉快に行進を続けるミニクラたちとすっかり意気投合したようで、以降は傍観に徹するつもりだったアニーも満更でもない様子だった。
「これはこれで楽しいわね! あ、帽子とか引っ張らないで。これ以上何も出ないよっ!」
手持ちのお菓子の尽きたアニーは、周囲を囲んだ子どもたちにお菓子をねだられ苦戦気味。
せっつかれても無いものは無いのだ。
「……柄では、ないのですが」
彼らの楽しげな様子をお手本にして、聞こえてきた音楽に合わせてぬいぐるみの体を揺らす。
母親に抱きかかえられていた乳飲み子が、しきりに手を伸ばしてきた。
エンティが「僕」に貸した白兎と黒熊は、かわいく見えて特殊な人形だ。
だから子どものそばでは動かさず、小さなその手の意思に委ねる。
動きを止めた人形を、もみじの手のひらが暫し握って離さない。
まるで、得難い幸福、幸せの青い鳥を捕まえたとでも言うようで。
「……かわってください。僕には、眩しすぎます」
声を絞り出すように、きっと見ているであろう「私」へと訴えかける。
救ったものを見ずに帰るなんて勿体ない、なんて。
「そういうのは、貴方の役目でしょうに」
耐えられない、と目を瞑りかけた赤い髪の彼のそばを、アニーとクラウンが横切った。
お疲れ様! と言うようにウインクを飛ばし、マーチは集落一帯に楽しげなメロディを届けに向かう。
「ほら、ほら! おばあちゃんもお父さんも、みんなで!」
暗く影の落ちるこの世界を、塗り替えるように、ひと時のマーチが過ぎ去っていく。
残された道の真ん中で、小さな手が名残惜しそうに人形を握っていた手を開く。
「ありがとうございました! ほら、お兄ちゃんにお礼は?」
まだ言葉にならない声をあげ、うだうだ、ぶーと赤子は赤い髪の男に向けて手のひらを向ける。
笑っているのかもまだ定かでない表情の中、瞳だけは静かに彼を見つめていて。
「……ああ、でも」
耳を澄ませば聞こえるほどの、小さな声で。
「この光景が長く続けばいいとは、思いますよ」
それは誰へ宛てたのか。数少ない本音が、風に流れた。
そして別れを告げ、猟兵たちの去った後。
夜を迎え皆が床についた家屋の中、すやすやと眠る子ども達の姿があった。
眠る子の傍ら、炭の破片で木の板に描かれたのは、亡き両親の面影。砦のような建物の絵。
そして十六の勇ましくも優しい、自分たちを救ってくれた英雄たちの姿。
守られた未来。日記はこれからも綴られていくだろう。
人々に顔を上げさせ前へと向かせる、希望の唄として。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2020年03月31日
宿敵
『夜の貴族『ベルナート』』
を撃破!
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