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アンフィテアトルムの剣闘士

#ダークセイヴァー #夕狩こあら #血の狂宴 #ファンガス #『変態的破滅招来体』ランジーリ

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#血の狂宴
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#『変態的破滅招来体』ランジーリ


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「ヴァンパイアの完全な支配下にあるダークセイヴァーでは、奴等が次々に呼び寄せるオブリビオンによって破滅を進められ、人々は寂れた村で息を殺すように暮らしている」
 他の世界に比べて遙かに過酷な状況にあるだろう、と――。
 枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)は淡然と世態を説明するが、緋色の麗眸が絶望に沈んでいないのは、グリモアベースに続々と集まる猟兵を見るからだ。
 彼女は彼等の凜然たる闘志に信頼の眼差しを注ぐと、更に言を足して、
「領内では圧政が敷かれ、人々は我が身の無力を嘆きながら日々を生きるばかりだが、然しオブリビオンはそんな彼等を更に苦しめて楽しんでいる」
 まるで余興や娯楽の様に。
 戯れに人を嬲り、殺し、命を玩ぶのだと、帷が忌々しげに白磁の繊指に示したのは、荒野に隔てられた或る領地。
「この領に君臨するヴァンパイアが、捕えてきた人間同士を戦わせて楽しんでいるらしい」
 その名も『カニバリズム(同族喰い)・コロシアム』。
 人間が人間の肉を裂き、己が生き残る為に他を殺す――残虐の景。
「君達にはこの領に潜入し、捕えられた人々を救出すると共に、悪逆の主をやっつけてきて欲しいのだが」
 頼む、と月白の長い睫が持ち上がった時には、眼の前に力強い首肯が揃っており、帷はふっと玲瓏の眸を細める。
「――先ずはコロシアムの場所を突き止めてくれ。街で情報収集しても良いし、捕えられる人に紛れて潜入しても良い」
 街では領主の犬と化した官兵が闊歩しているし、血の狂宴に関する触書があるかもしれない。何かパフォーマンスをしたら、グラディエーターとしてスカウトされる事だってあるだろう。潜入方法は色々と考えられる。
「無事に潜入できたら、君達は捕われた人々を解放する代わり、闘技場で見世物のように魔獣との戦いを強いられるに違いない」
 人が人を殺し合うよう仕向ける悪逆の魔獣、キノコ型オブリビオン『ファンガス』。
 猟兵にとって左程脅威となる相手ではなかろうが、観戦を唯一の娯楽として与えられた人々が観客席に集められているので、ここは終始優勢を保って勝利しておきたい。
「ファンガスとの集団戦を制したなら、褒美とばかり領主が闘技場にやって来るだろう。この時に闘いを挑み、観衆の目の前で打倒して欲しい」
 領主の名は『変態的破滅招来体』ランジーリ。
 驚異的な筋肉美を漆黒のベビードールで隠した――いや露出した、ツインテールのマッチョ男である。
 彼はオネェ言葉を駆使し、猟兵をあらゆる角度から翻弄してくると予想されるので、くれぐれも精神衛生を保ってくれ、と帷は言う。
「変態趣味の極悪領主をやっつければ任務完了だ。君達は人々の歓声を背に無事に帰還して欲しい」
 ぱちん。
 繊麗の指を弾いて鳴らすのが、着地点を語った時の帷の癖。
 彼女が次に掌を暴けばグリモアが出現し、
「ダークセイヴァーにテレポートする。人々を苦しめるオブリビオンに、たっぷりとイバラをくれてやれ」
 さぁ往こう、と猟兵らを光に包んだ。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 このシナリオは、領主の娯楽の為に駆り集められ、生きる為に戦わせられる人々を救出する、コロシアム攻略シナリオです。

●戦場の情報
 辺境にある街の円形闘技場。
 昼食の時間帯に此処で粗末なパンが与えられます。職なき者は観客として収容され、人間同士の殺し合いに歓声や野次を飛ばさなくてはなりません。

●敵の情報
 キノコ型の魔獣『ファンガス』。
 知性は低く、言語を話さぬ為、交渉や取引は出来ません。

●ボスの情報
 街の領主『変態的破滅招来体』ランジーリ。
 筋肉と愛欲、闘争に溺れた変態の男です。
 目が苦しい戦いとなりますので、十分にお気を付け下さい。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 冒険 『血の狂宴』

POW   :    わざと捕えられ、地下コロシアムに潜入する。

SPD   :    街中を調査し、地下コロシアムの場所を探る。

WIZ   :    人々から情報収集し、地下コロシアムの場所を探る。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夏目・晴夜
……どいつもこいつも、趣味が悪い

【WIZ】
観客として収容された経験のありそうな、
有り体に言ってしまうと「職なき者」らしき方々に話を聞いて回り
地下コロシアムの情報や場所を探ります

些細な内容であろうとも、貴重な情報を提供して下さるのであれば
お礼に気持ちばかりの金銭や食べ物なんかを差し上げたい所存

情報を漏らしてくれそうにない場合には、
このお礼の存在をちらつかせて釣ってしまうのも有りでしょうか
下衆なので、できる事なら行いたくはないですが

しっかし、困りました
上手くいけば歓声というご褒美を頂戴できるのは嬉しいのですが、
今回待ち構える相手は変態の権化ですか……
変態はちょっと、私の趣味ではないんですよねえ


ルージュ・フェリスティ
っち、胸糞悪ぃ話だな。できれば目を瞑っていてたいぜ。...冗談だよ。...だがまぁ...、今月分の電気代は稼がねぇとなぁ...。
【SPD】街中に居る官兵を探してユーベルコードを使って地下コロシアムを探し出すぜ。官兵の後を追えば見つかるかもしれねぇ。
他の奴らにはできる限りの協力をするぜ。


リーヴァルディ・カーライル
…まぁ、見た目がどうあれ、行動自体は悪辣な吸血鬼そのもの
ちょっと外見が何か悍ましい変なのでも、私のすべき事に変わりはない
…私は吸血鬼を狩る。ただそれだけ…うん

…私は旅人に変装して兵士に捕まるよう、
人気のない路地を一人で恐る恐る歩く

…な、何ですか、あなた達は…!?
いや、止めてください。私が何をしたと…!?
助け…誰か、お願いします…助けて…

…ん。抵抗する振りはこれぐらいで良い?
あまり無抵抗でも怪しまれるし…多少の乱暴狼藉は、目を瞑る

…ただ、目に余るようなら…具体的には第六感が身の危険を感じたら…方針変更
兵士に誘惑の呪詛をかけて私の言いなりにして、情報を引き出す
…無駄な消耗は避けたかったんだけど、ね


田抜・ユウナ
実はダークセイヴァーに来るのは初めてだけど…UDCアースの邪神教団とどっちがマシかしらね。

町を巡回する官兵を調べるわ。
使える技能はフル活用。

まずはそこらで買い物なんかしつつ、官兵がコロシアムを出入りしてるかどうか訊ねる。
確認出来たら、コロシアムへ向かいそうな官兵に目をつけて尾行。
物陰に隠れたり、高所を猿みたいに移動したりして気付かれないように後をつけて行く。
…しっかり案内してちょうだいね。

尾行が上手く行かなかったら、非力な不審者を装って適当な袋小路にでも誘い込もう。
叩きのめして縛り上げ、コロシアムの場所を教えてもらう。
…あ、ついでに制服も貸してもらえる?


満月・双葉
【WIZ】パパが言っていました。大切な情報は、相手に大切だと思わせぬように収集しなければならない、と。
そして酒場等に情報は集まりやすい等と言う話もきいたことがあります。
情報を知っていそうな人は第六感や野生の勘で引き当てられないでしょうかね…
コミュ力で話を盛り上げつつ、時には誘惑もしてみたりして、まぁ絡まれたら恐怖を与える…のは有効と思える場合のみ…師匠に合気道なるものを教わっているので役立てましょう。
腕が経つな、こんな噂があるぞ、なーんて盛り上がりませんかね。
表情筋が死んでいるのは遺伝なので(違う)お気になさらず。
お金が無くて稼ぎたいんですよ

カエルの大捜索でこっそり噂話も集めましょう。


シキ・ジルモント
◆SPD
アドリブ歓迎

カニバリズム・コロシアムとは趣味の悪い遊びだな
今すぐぶち壊してやりたいが物には順序というものがある
…ひとまず落ち着いて冷静に、だ

まず街を調べて官兵を探す
見つけたら官兵に見つからないように尾行
奴らの行動を観察し『追跡』する事でコロシアムの場所の特定を試みる
官兵の視界に入りにくいように、また尾行の際の足音を極力消す為、狼の姿に変身して行動する

見つかりそうになったら咄嗟にユーベルコードで回避
『地形の利用』を考えそこらの物陰に隠れてやり過ごす

何か話しているようなら『聞き耳』を立てて様子を窺ってみる
コロシアムについて、もしくは捕らわれた者達について何か情報が得られるかもしれないからな


ロベリア・エカルラート
行動はPOW

さて、自分が囮になってコロシアムに潜入しようかな

これでも役者の端くれだからね、演技には自身があるよ
【誘惑】の技能と【存在感】をアピールしつつ、街を歩くよ
余所者が居るって目立てばコロシアムに連れて行かれると思うし、スカウト担当か官兵を釣って、コロシアムに潜入を試みる

殺される役としては需要があるじゃないかな
『ちょっと強気だけど怯えている一般人の娘』みたいな演技で、趣味の悪いショーの出演者としてスカウトされるように動こう

「……ま、全部ぶち壊しにするんだけどね」

おっと、嗤うのは人が見てない所で、ね


「な、なんですか……」
「負けないから……絶対生きてこの街から出てやるんだから……!」


荒谷・つかさ
【POW】
探し回るのも面倒ね……適当に捕まるのがやっぱ手っ取り早いかしら。

街中で、大道芸士としてパフォーマンスを行う。
見せる芸は瓦割りやリンゴの握り潰し、拳での岩砕き等、力自慢に見えるもの。
体格とのギャップもあるし結構目を引く筈。
もし官兵が話しかけてきたなら、スカウトであれば積極的に乗るわ。
「用心棒をしながら旅をしているの。今日は路銀が尽きちゃって」
「何かいい仕事無いかしら。希望するなら人間相手にこの力を振るえて……うっかり殺しちゃってもいいようなのが理想なんだけど(舌なめずりしつつ)」
と、殺人嗜好があるように匂わせるわ。
連行されるときは、大人しくついていって雇い主には従順だと思わせるわよ。




 行き交う馬車が土埃を弾き、喧噪を掻き立てる街。
 商人の声に湧く市場を、軍馬の嘶きが駆け抜ける――其処はまがりなりにも賑わっていたろうか、いや否。
 狂気染みた砂塵が異常な熱気を巻き上げ、城門を潜る猟兵を警戒させていた。
「家畜車かと思えば、荷馬車の格子からヒトの手が……」
「辺境から労働力を搾取して積み上げた虚構の殷賑、と」
 ロベリア・エカルラート(花言葉は悪意・f00692)が擦れ違う馬車を緑瞳に追う傍ら、満月・双葉(星のカケラ・f01681)が軋む車輪の音に冷然を隠す。
 この時、荒谷・つかさ(護剣銀風・f02032)は路傍に炯眼を射て、
「人身売買――商人が命を値踏みしてる」
 札束を弾く指に、ぎゅ、と眉根を寄せる。
 異様の景はこの街に当然として息づき、壁中に張られた触書や、殊に領主を讃える張札が一同の嘆声を絞ろう。
「カニバリズム・コロシアムとは趣味の悪い遊びだな」
 ふと足を止めたシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)が爪先に視線を落とし、拾い上げた紙片を仲間に見せる。
 破り棄てられた其れには剣闘士の名前とオッズが書かれており、街の唯一の娯楽が顰蹙を買う処か、汚金を集めて熱狂を煽っている事実が知れよう。
「胸糞悪ぃ話だぜ」
「……どいつもこいつも、俗悪な」
 ルージュ・フェリスティ(怠惰なダンピール・f03096)の舌打ちに、嘆声を被せる夏目・晴夜(不夜狼・f00145)も冷罵を隠さず。
 絶望に彷徨う者達を食い物にするのはオブリビオンの稟性か、
「ダークセイヴァーに来るのは初めてだけど、UDCアースの邪神教団とどっちがマシかしらね」
 と言つ田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)が、蓋し「何方も」と過る皮肉を溜息にする。
 至る処に張られた領主の絵姿は目に痛いが、その残虐性から目を逸らす事は出来ず、
「ちょっと外見が何か悍ましい変なのでも、私のすべき事に変わりはない」
 吸血鬼を狩る。
 唯、それだけ。
 うん、とリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が決意を確かめる視線の先、街中に観察の目を巡らせていたシキが声を落とした。
「今すぐぶち壊してやりたいが、物には順序というものがある」
 一先ず落ち着いて、冷静に。
 そして着実に辿り着かねばならない。
「ああ、今は別れよう」
「血の狂宴で、再た」
 彼の声に是を置いた一同は、それから静かに枝を分け、雑踏へと溶け込んでいった。


「できれば目を瞑っていてたいぜ。……冗談だよ」
 今月分の電気代は稼がねぇとなぁ、と肩を竦めて嘆声ひとつ、ルージュが麗し赤瞳を注ぐは街の喧騒。
 闊歩する官兵に目を付けた彼は、彼等を辿ってコロシアムの場所を探らんとするが、店々を回って税を取り立てる取税官も居れば、暴力の捌け口に街をウロつくだけの警邏兵も居る中、誰にアタリをつけようかと炯眼を絞る。
 すると視線の先、市場で買い物をするユウナが商人に話しかけており、
「ツケで買い物するお役人さんは居る?」
「あぁ沢山居るとも。ウチに払う金を賭けに使っちまう馬鹿共さ」
 アイツにソイツ、と指に示される男を先ずはマーク。
 金銭を遣り取りする傍ら、情報収集した彼女は直ぐさま尾行に移るが、複数は追い切れぬ所に協力を買って出たのがルージュだ。
「一人請け負うぜ」
 長躯の肩口をふわり巡ったのは【炎の精霊】(エスプリ・フレイム)。
 地獄の炎から召喚された愛らしき精霊は緋瞳を煌々と、官兵の影に滑り込むや内々裡に追跡を始める。
 ならばとユウナは別なる一人を灼眼に射て、
「仕事中に賭場に行くのは感心しないけど。しっかり案内してちょうだいね」
 物陰に潜み、屋根伝いに尾行して。
 その颯爽が狡猿の様だとは――女性の褒め言葉ではないにしろ、探索者としては優秀。
「まぁ、追うのが巧くいかなかった場合も手はあるし」
 非力を装って誘い込み、叩きのめしてふん縛って場所を吐かせよう。
 ついでに制服も拝借して……なんて逞しさを滲ませつつ、賢狸は双眸に宿る熾火を炯々、疾風と走った。

 自らを囮に潜入を試みる者も居る。
 旅人に扮して人気ない路地を恐々と歩くリーヴァルディがそれだ。
 年頃の娘が独り歩きをしては、殺伐の街にあってどんな目に遭うかは自身が佳く理解っていよう。
「な、何ですか、あなたは……」
 繊手を掴まれた彼女は吃驚に声を荒げるが、か細い、震える佳声に官兵の野卑た口角がクッと持ち上がる。
「迷子猫の保護も俺達の仕事でね」
「いや、止めてください。私が何をしたと……!?」
「何もしてねェうちに保護しねーと、悪ゥい連中が群がってくるだろ?」
 白磁の柔肌を舐めるように見、玲瓏の花顔に食い入る男。
 矢張り上玉だと舌を嘗めずった彼は言を足し、
「お前みたいな生娘が殺されるのを観たがる奴も居てねえ。来て貰おうか」
「助け……誰か、お願いします……助けて……」
 その実、振り払わんとする腕の強さはこれ位かと、内心で匙を見るリーヴァルディ。
 あまり無抵抗でも怪しまれると、多少の乱暴狼藉は目を瞑るつもりだったが、研ぎ澄まされた第六感が身の危険を訴えれば、方針を変えよう。
「コロシアムにブチ込んでもおっ死ぬだけだし、その前に俺が愉しんでも良いだろう?」
 紫瞳を覗き込む男に、少女は誘惑の呪詛を掛けて、
「私の言いなりになって。コロシアムまで案内しなさい」
「ハイ喜んで!!」
 態度を一転、奴隷と化した男が指先に方向を示す。
 無駄な消耗をしたと嘆息したリーヴァルディは、颯爽、その方向へ爪先を向けた。

 ひっそりと向かう足あれば、堂々と存在感を魅せる者も居る。
「歌劇場がなかったから、この街はノーマークだったけど……うん、中々の活気だね」
 と、緑瞳を好奇に巡らせるロベリアは好演技で散策中。
 悪意を識らぬ双眸の輝きは、この街の者が持つものでなかろう。余所者と奇異の目を集めた彼女は、路傍からジッと視線を送る――スカウトらしき者の気配を感じている。
 そして勿論、彼が官兵にタレ込んだ事も。
「ちょっと来て貰おうかい、お嬢さん」
「な、なんですか……」
 脅えながらも気丈に振る舞う凄艶は、魔獣を前にさぞかし佳い表情を見せよう。
 気味の悪いショーには、屠られるに相応しい「贄」が必要と、官兵は彼女の腕を強く掴み、血の狂宴へと連れて行く。
「この街じゃ別嬪が拐かされるんは遊郭じゃなくて獣の檻ン中さ」
「負けないから……絶対生きてこの街から出てやるんだから……!」
 吃、と睨むロベリアが嗤ったとは気付くまい。
(「――ま、全部ぶち壊しにするんだけどね」)
 窃笑も妙々。
 彼女は半ば引き摺られるようにして、コロシアムへ潜入を果たした。

「パパが言っていました。大切な情報は、相手に大切だと思わせぬように収集しなければならない、と」
 そして世間話程度の気安さで喋らせるに、酒場はもってこいの場所だとも聴いた。
 情報収集に街角の酒場を訪れた双葉は、「技能」として身につけたコミュ力と誘惑を以て場を盛り上げ、鋭いアンテナで会話を拾っていく。
「しっかし嬢ちゃん、キレーな顔して全く笑わねェのな!」
「表情筋が死んでいるのは遺伝なのでお気になさらず」
「いでん」
 席越しに声を掛けてくる酔っ払いにそう答えつつ、また妙に絡んでくる連中には酔いも醒めるような恐怖を与えつつ(!)遣り過ごしていた彼女は、密かに派遣していた【カエルの大捜索】が戻ってくるのをパーカーの裾に隠す。
「……やっぱり。此処にスカウトが居る」
 店内を探っていたカエルのマスコットと五感を共有していた双葉は、スッと立ち上がるやカウンター席に移り、
「お金が無くて稼ぎたいんですよ」
 師匠に教わった合気道なるものを披露する場所はないか――と、透徹たる麗眸を視た男が、袖から一枚の紙を差し出す。
「……勝ち上がれるとは思わんが、其処で生き残る事が出来たら領主から褒美が貰えるぞ」
 番号だけが書かれた、其は住所か。
 スカウトの男はそれだけ言うと酒を煽り、背中を見せて去る双葉の跫音を聴いて送った。

 探し回るのは面倒。
 ならば来て貰えば良いのだと、大々的に注目を集めたのはつかさ。
 大道芸士を装って人を集めた彼女は、力自慢の技で観客を湧かせ、
「おお、あれがKAWARAWARI……初めて見た!」
「あの細腕でリンゴを握り潰すとは、BUGEISYAかもしれんぞ」
 拳打光閃、可憐な拳が岩を砕けば、人々はやんややんやと手を叩く。
 あまりの人集りに官兵らも集まってくるが、穏便に場を収めてくれたのがスカウトの者で、
「この騒ぎ、何事だ」
「用心棒をしながら旅をしているの。今日は路銀が尽きちゃって」
「旦那、無銭飲食されるくらいなら芸の一つや二つ、宜しいじゃありやせんか」
 些事は任せろと目配せをした小男に、つかさは自らを売り込む。
「ねぇ、何かいい仕事無いかしら」
「アンタ職探しかい」
「希望するなら人間相手にこの力を振るえて……うっかり殺しちゃってもいいようなのが理想なんだけど――」
 ふふ、と零れる艶然は美しく、桜唇より覗く舌は赤く妖しく。
 彼女の殺人嗜好に適性を見た男は、ごくり唾を飲むや漸う手招き、
「良い所に案内してやる。但し俺には噛み付くなよ」
「勿論」
 血の狂宴に躍る者として、コロシアムへと向かった。

 街中に貼られた領主のバストアップに、晴夜の端整が露骨に歪む。
「しっかし、困りました」
 上手くいけば闘技場中の観客から喝采を浴びる事が叶う――褒められる事が好きな晴夜にとっては最高のご褒美を頂戴できる機会なのだが。
「今回待ち構える相手は変態の権化……ちょっと私の趣味ではないんですよねえ」
 精悍を覆う筋肉の黒光り。
 漂うオネェの馨。
「……うっ」
 流眄に見るだにアメジストの瞳が穢されてしまいそうで――不意に目頭を押さえる。
 然し彼はコロシアムに辿り着くに難渋する事はなかったろう、慧眼が探すは「先達」――つまり観客として収容された経験のありそうな、有り体に言ってしまえば「職なき者」は、案内人として剴切。
「なんだいアンタ。いい仕事でも紹介してくれるのかい」
 人殺しを囃し立てる以外の、と仏頂面で付け足す者が然うであろう。
 働き口の世話は出来ないとして、晴夜は手持の鞄の膨らみを叩き、
「――昼の出先について。どんなに些細な事でも、情報を提供して下さるのであれば、気持ちばかりのお礼を差し上げたい所存」
 ぽんぽん、と二回。
 芳ばしいパンの馨を嗅いだ男は、ならばとばかり手招いて。
 心貧しく堕とされてしまった者を釣るのは気が引けるが、下衆な手を使っても辿り着かねばならぬ悪がある。
 晴夜は彼の為にも変態の打倒を誓った。

(「仕事だからな。それが有利になるなら、狼の姿にもなってみせる」)
 官兵の行動を観察し、中でも闘技場賭博に熱心な一人に的を絞って尾行したシキは、今、コロシアム前の人集りに炯眼を注いでいる。
 時折狼の耳がヒクリと動くのは、彼等の会話に潜む場内の情報を拾っているからだろう。
「調達してきた者達の名前を確かめて、直ぐ賭けに回せよ」
「その後は地下最奥の部屋にブチ込んどけ。監視を忘れるな」
 捕われた者の人数と名前、収容先と監視の人数。
 救出に重要な情報を仲間と共有すべく、彼は聡い聴覚を更に研ぎ澄ませる。
 官兵は招かざる者の存在に気付こうか――否、シキの人狼たる鋭覚【ワイルドセンス】は一抹の不穏さえ回避し、更に我が身を良い具合に隠す物陰を見つければ、其処から冴月に似た青光の瞳が射られているとは誰一人思うまい。
 彼は漸う集まる同胞の気配を迎えると、鼻頭に入口を――観客席入口ではなく、剣奴の運び口を示して、
「――往くか」
 刻下。
 沈黙の裡に返る力強い是を受け取った。

 監視を倒し、人々を解放して。
 彼等の代わり、熱狂に湧く闘技場で魔獣と戦おう。
「せいぜい剣闘士を演じてやるさ」
「ええ、其処で戦いを観るであろう領主の首を獲る為にね」
 一同は全ての観客が収容された頃合に、殺伐の入口から光を差し入れた――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『ファンガス』

POW   :    胞子散布
予め【胞子を周囲に撒き散らす】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    闘虫禍争
自身の身長の2倍の【虫型の魔獣(形状は毎回変わります)】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    毒の胞子
【口や茸の傘】から【胞子】を放ち、【毒】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

満月・双葉
僕は山育ち、キノコと虫は(食べるないしは駆除という意味で)得意ですよ
このキノコは食べられないキノコ。大変残念です

可能ならば他の猟兵と連携してことに当たります
地形を把握し死角を利用、援護射撃で敵を掃討しやすい環境を作ります

遠近入り交じる多彩な攻撃で翻弄していきます
桜姫から衝撃波を放ち薙ぎ払い、大鎌への変形で生命力を吸収する2回攻撃を放ちます
パパ直筆の御札からは恐怖を与える呪詛、同士討ちを誘発する催眠術
薔薇の涙を投擲
大根で串刺し
スナイパーを用いお兄ちゃんの銃で遠くからまたはゼロ距離で射撃

敵の攻撃は第六感や野生の勘で見切り、見切れないものは盾受けやオーラ防御で防ぎ、毒は毒耐性で耐えます


ルージュ・フェリスティ
この茸を倒せば良いんだよな?...どうせなら派手にやろうぜ!一瞬で消し炭にしてやらぁ...!

俺のユーベルコード【業火の剣】で茸共をぶった斬る。攻撃こそ最大の防御ってな?
無論、仲間の援護は怠らず、逆にそっちメインでいくぜ。相手が動きやすいように茸を倒す。

今日は帰えれたら茸鍋にしよう。皆で早く帰ろう!そうしよう!


リーヴァルディ・カーライル
事前に防具を改造し、対毒性と存在感を消して気配を遮断する術式を付与する

…成る程。確かに、人はお前達の毒の前に何もできないでしょう
だけど、影絵の兵は人ではない…
…食い破りなさい。獣のごとく

【影絵の兵団】を二重発動(2回攻撃)
影絵の兵士の数は変化しないが、倒された時、同じ傷口を抉り生命力を術者が吸収する呪詛を付与しておく

…ん。何事も使い方次第、ね
本当は植物より、生物の方が効果的だけど…

自身は気配を消して兵団の指揮に専念
周囲の敵味方の行動を見切り、猟兵と連携して戦う

…猟兵以外の囚われた人々がいれば影絵の兵団で積極的に護り、時に盾として使う

…ここまで苦労して潜入したんだから、もう誰も死なせる気はない


田抜・ユウナ
見世物にされるってのは、気分が悪いわね。……まあ、せいぜい楽しませてやろうじゃないの。

ここは、黒子役に徹する。
【レプリカクラフト】で罠を作り、《早業》技能でフィールド上や敵の体に仕掛けていこう。
罠の系統は爆弾。爆風や煙は仲間の障害になるかもだから控えめ。代わりに光と音が派手なのを選ぶわ。
仲間の攻撃に合わせて閃光と爆音が鳴り響く。……特撮ヒーローショーみたいな雰囲気で、観客を《鼓舞》する。
悲鳴や鮮血ではない。本当の意味で観客を楽しませるための演出ってものを見せてやろう。


荒谷・つかさ
さて、懐に潜り込んだら後は暴れるだけね。
力技は得意分野よ。もちろん、それだけじゃないけれど。

キノコ型の魔物なら、当然武器は胞子でしょうね。
あんまり撒き散らされても厄介だし、さっさと焼き払うに限るわ。

入場したら【五行同期・精霊降臨術】を発動。
火行を主に、木行で補助し、炎熱を武器に付与できるようにする(攻撃力強化)。
そして「風迅刀」の「属性攻撃」技能と合わせる事で、熱風の刃を飛ばしたり高熱を帯びた刀身で切り裂いて攻撃よ。
胞子が舞ってたら優先的に熱風で焼き払うわ。

焼きキノコの出来上がりね。
でも、流石に毒キノコは食べられないかしら。


荒谷・ひかる
えへへー。お姉ちゃん(f02032)には内緒でついてきちゃった。
ここは観客席……かな?
よーし、お客さんにこっそり混じってこっそりお姉ちゃん達を手助けしようっと。

人ごみの中に紛れて【エレメンタル・ファンタジア】を発動。
炎の精霊さんと風の精霊さんにお願いして、「炎の渦」を作り出すね。
でも、わたしの目的はキノコさん達の直接攻撃じゃなくて、胞子の隔離と処分だよ。
キノコさん達のちょっと上の方で炎の渦を発生させれば、上昇気流が発生して軽い胞子は炎の渦に吸い込まれるはず!

わたし自身は、お客さん達に紛れて隠れてるね。
実は、精霊さんにお願いする以外に戦う術が無いんだよね……(こそこそ)


夏目・晴夜
まずは、捕われの人々を解放すべく地下最奥の部屋へ
教えて頂いた情報を頭に叩き込み、
監視も地下最奥の扉も全て妖刀で切り裂いていきます

但し監視は、殺すほどの悪でないなら刀の柄で気絶させる程度にしたく
あの変態に命ぜられて仕方なく、という可能性もありますしね

大きな問題なく捕われの人々の解放を果たせたならば
速やかに闘技場の舞台へと向かい、戦闘中の皆様方と合流します

合流できた時点でまだ敵が残っている場合は【謳う静寂】で広く雷撃を
遅れて登場する、というのもなかなかに格好良いとは思いませんか?
このハレルヤの事を褒めて下さってもいいですよ


ロベリア・エカルラート
相手は茸か……ま、今回は主役を仲間に譲ろうかな

胞子を撒き散らされて毒を受けるのは遠慮したいし、胞子が届きにくい後の方からシンフォニック・キュアで仲間を治療するよ

毒にやられたなら片っ端から私が治して上げる

ユーベルコードを使うための歌は、勇壮なオペラ曲
仲間を鼓舞するイメージで歌うよ

・使用技能(歌唱・医術)

念の為剣は装備して、近づいてきた敵が居たら、歌いながら白兵戦へ

「さあ、まずは第一幕。……みんな、頑張ってね!」
「さーて、せっかく聴衆も居るんだ。少し張り切ってみようかな」

「げほっ……ああもう!胞子のせいで歌い難いったら……!」


シキ・ジルモント
ヴァンパイアが猟兵に気付いたら何をするかわからない
後顧の憂いを断つ為、まず救出を優先したい
入手した情報を元に収容場所へまっすぐ向かう

見張りはユーベルコードで遠距離から狙撃
『聞き耳』で物音に注意し待ち伏せや不意打ちは避ける
肩や手足等を狙って怯ませて接近し、当身による『気絶攻撃』で気絶させ拘束する

救出後の脱出時の安全を確保する為、見張りは全員拘束する
見張りの人数の情報も把握済みだ

収容場所に着いたら鍵を開けるか銃で壊し、全員解放する
念の為名前も確認して漏れがないように気を配る
「この悪趣味な娯楽は、じきに終わる。もう剣闘士は必要ない、全員ここから脱出しろ」

救出後は闘技場へ向かおう
まだ、仕事は残っている




 虚無が漂う地下隧道を光が疾走する。
 晴夜(f00145)とシキ(f09107)だ。
「教えて頂いた情報は全て頭に叩き込みました。最奥の部屋を預ります」
 極めて静かなテノールを置いて脇の隘路へと枝を分ける晴夜。彼は、幾度の死闘で重傷を余儀なくされた――擦り切れる間際の剣奴らを収容する部屋へ走る。
 頼む、と声を置いて彼の影を送ったシキは、蓋しその場に踏み留まり、松明が灯を繋いだ突き当たり、監守の立つ囚獄を炯眼に射る。
「ヴァンパイアが俺達猟兵の侵入に気付いたら何をするかわからない」
 残虐の牙が剣奴に向けられる可能性もある、と懸念した彼は『ハンドガン・シロガネ』のグリップをダブルに握り、銃爪に指を掛け――。
「後顧の憂いを断つ」
 標的は監守。
 其の腰に下げられた鍵束。
「……」
 ユーベルコード【ブルズアイ・エイム】――瞬刻、呼吸さえ殺した全き静寂に鉄鉛が弾かれ、空間を削って伸びる弾道が一縷の狂いなく腰帯を射貫く。
「ずおっ!!」
 腰部を弾かれ体幹を崩した監守が、ジャリ、と床に落ちた鍵束を見る間もない。
 身を屈めた瞬間、後頭部に強烈な打撃を――グリップによる当て身を喰らった監守が床に沈み、代わりに拾い上げられた鍵束が錠に差し込まれる。
 シキは監守が持っていた台帳の名前を読み上げながら人数を確認し、
「この悪趣味な娯楽は、じきに終わる。もう剣闘士は必要ない、全員ここから脱出しろ」
「だ、誰だか知らねェが助かるぜ……」
「俺達はもう殺し合わなくても良いのか……?」
 不安そうに、然し希望に縋ろうと集まる視線に、聢と返る頷首。
 シキの誘導で格子扉を潜った剣奴らは、少し歩いた先、脇道より幾人かの「故障者」を連れてくる晴夜に目を瞠って、
「この方達に肩をお貸し願えますか」
「あ、アンタ……見張りの連中はどうしたんだ……!」
「変態に命ぜられ、仕方なく暴力を敷いていた輩は殺す程の悪でなし、暫しお休みして頂きました」
「!? あれだけの人数を!?」
 そう。
 晴夜は監視らを妖刀『悪食』の柄で次々と地に転がし、鉄檻を霊気の一閃で破ったとは、彼に救われた者達が力強い首肯で証しよう。
 蓋しケロリとした顔で吃驚を受け止めた晴夜は、地下道を震わせる歓声に意識を注ぐシキと眸の炯然を合わせ、
「まだ、仕事は残っている」
「ええ、私達も闘技場の舞台へ参りましょう」
 剣奴に代わって出陣した仲間の元へ――と爪先を弾いた。

「呪われし剣闘士よ、我等に興奮と熱狂を!」
「喚け! 嘆きを号(さか)び、絶望に声を裂け!」
 ――血を! 血を!
 ――死を! 死を!
 怒号と絶叫が天蓋を衝き、狂気を駆り立てる足踏みが大地を震わせる――アンフィテアトルム(円形闘技場)。
 観客が拳を突き上げると同時、丸太柵が跳ね上げられ、絶望に鎖された剣闘士らが姿を現す瞬間こそ昂揚が押し寄せるのだが、此度死の淵に立った者達は並ならぬ雄渾を迸らせていた。
「……見世物にされるってのは、気分が悪いわね」
 驟雨と降る歓声が肌を打つ様な――観客の狂熱を見渡して肩を竦めるはユウナ(f05049)。
 彼女を含め、続くルージュ(f03096)とロベリア(f00692)も気圧された風はなく、対角よりゾロゾロと這い出る茸型オブリビオンを屠るべき敵と認め、足を踏み締める。
「相手はファンガス……この茸を倒せば良いんだよな?」
「……毒を受けるのは遠慮したいし、今回の主役は譲ろうかな」
 胞子が厄介と見破るも優秀、更に双葉(f01681)は敵数と闘技場の広さに戦術を探って、
「僕は山育ち、キノコの料理と虫の駆除は得意ですよ」
 言うや否や、地形を把握した影は直ぐにも死角へ消え、戦場を己が土俵と整え出す。
 時にリーヴァルディ(f01841)は、壁と立ちはだかるファンガスの群れの向こうに、巨悪――領主の影を捉え、
「……中央の最上階。貼紙通りのツインテールが見える」
「領主を引っ張り出せる所まで来たなら、後は暴れるだけね」
 力技は得意分野とばかり、つかさ(f02032)が闘気を巡らせた瞬間、開戦を告ぐラッパが鳴り響く。
 ――血を! 血を!
 ――死を! 死を!
 観客が沸き立つ中、猟兵らは血の狂宴に踊り出た――。

「どうせなら派手にやろうぜ!」
 と、麗し端整を好戦的な笑みに輝かせたのはルージュ。
 彼は身の丈に迫る巨大剣に己が地獄の炎を纏わせながら、胞子で煙る視界を超速の剣閃で切り開いていく。
 灰色の世界に彼の双眸は緋色の光を帯と引いて疾走し、
「一瞬で消し炭にしてやらぁ……!」
 ユーベルコード【業火の剣】(エペ・フレイム)――茸の繊維に沿って縦に、ザックリと巨躯を両断する!
「ん、ちょっと待て芳ばしい――」
 猛炎に焼ける切断部を至近距離で嗅いだ彼は、一瞬、脳裡に茸鍋を思い描いた筈だ。
 然し垂涎を過らせた時には、別なる数体が身体を押し合いながら迫り、ルージュの長躯をモキュモキュと揉み込む。
 接近戦故に深入りし過ぎたか――。
 いや、時に死角より放たれた虹色の薔薇の花弁がその窮屈を弾き飛ばした。
「このキノコは香りは良くても食べられないキノコ。大変残念です」
 其は山ガール、双葉。
 此岸と疆界を別つ眼鏡を取り払った彼女は、ユーベルコード【虹薔薇の静踊】にファンガスを転がすと、お兄ちゃんが使っていた銃で急所を撃ち抜き挙措を絶つ。
 魔茸らが怒って毒の胞子を撒き散らせば、今度は呪剣『桜姫』を大鎌と変えて薙ぎ払い、衝撃波に紫煙を斬り裂きながら侵略して。
「遠きに立ち止まらず、近きに踏み留まらず。攻撃は常に多彩に」
 戦い方を教えてくれた人は、千変万化、水の如く為よと言ったか。
 双葉は家出した際に持ってきた篇帙『薔薇の涙』を投擲武器に、『大根』は殴打と穿貫の武器として縦横無尽、七色に輝く双翼を駆って戦場を躍る、踊る。
「ッ……こいつら何者だ?」
「いつもの剣闘士とは格が違い過ぎる……!」
 観客も気付き始めたろうが、蓋し彼等は猟兵という存在を知らぬ。
 平素は狂獣に逃げ惑い、嗾される儘に殺し合う愚者の破滅を観るばかりであったが、此度のコロシアムは全てが違うのだ。
 ――だが、其が痛快。
「うおおおっ、もっとやれー!」
「オバケ茸をやっつけろー!」
 歓声は熱気と成って戦場を灼き、猟兵らの闘争を掻き立てた。
「……せいぜい楽しませてやろうじゃないの」
 嘆声をひとつ、殺伐に置いたユウナの緋瞳は煌々。
 蓋し彼女は英雄然と戦うつもりはなく、悲鳴や鮮血でない「見世物」を――謂わば特撮ヒーローショーの様な爽快を齎す戦闘に彼等を鼓舞せんとする。
「爆風や煙は控えめに……代わりに派手な光と音で演出して魅せるわ」
 ユーベルコード【レプリカクラフト】――黒子になったユウナは戦塵に隠れて風と疾駆し、闘技場内や敵躯に次々罠を仕掛けていく。
 配された罠は仲間の攻撃に合わせて閃光を裂き、爆音を鳴り響かせ、吃驚に目を剥く観客を昂揚に押し上げた。
「おおおおっ血が滾る!」
「こんな戦い、観た事ないぞ!」
 血を、死をと剣闘士を煽り立てていた観客は、嘗てこの様な「生きた情動」を得たろうか。
 感情の泉に沈んでいた正義は、今こそ浮かんで水面を揺らし、自らも其処で戦っている様な――或る種の一体感を得ようとしている。
 力無き者に代わって悪を討つ。
 理不尽な力を力でねじ伏せる瞬間とは斯くも快いかと、歓喜を味わわせてくれるのはつかさも同じく。
「……この胞子。あんまり撒き散らされても厄介だし、さっさと焼き払うに限るわ」
 噴煙と立ち上る胞子を前に、真紅の鼻緒を踏み締めた彼女は、【五行同期・精霊降臨術】(エレメンタル・ポゼッション)発動――足元に光輝く五芒星を描き、美し白皙を煌々照らして精霊を呼ぶ。
「木は火を生み、火は土を生み、土は金を生み、金は水を生み、水は木を生む……これ即ち五行相生、星の理也! 五行同期、精霊降臨!」
 濡烏の艶髪が霊気に梳られ、透徹たる光が繊躯に強靱を与える。
 同時、不可視の鋭刃『風迅刀』は赫々たる炎熱を帯び、薙げば熱風に、振り下ろせば熱刃と肉を灼いてファンガスを屠った。
 ユーベルコードの相性は抜群――鬼神と踊る彼女の後にはきのこの山が累々、芳醇を漂わせるのみ。
「焼きキノコの出来上がりね。でも、流石に毒キノコは食べられないかしら」
 毒こそ甘く香るが、食べられないのが更に空腹を誘おう。
 観客はやんやと声を上げながら、血の渇きでない――純粋な空腹を覚えていた。

 時に。
 つかさが闘技場で華麗に戦う中、とととっと観客席の喧囂に紛れる影ひとつ。
「えへへー。お姉ちゃんには内緒でついてきちゃった」
 なんと。
 妹の荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)だ。
 狂熱に湧く男達を擦り抜けた華奢は、姉の美しき血宴を眼下に観るや、凜然と思い立ち、
(「――よーし、お客さんにこっそり混じって、お姉ちゃん達を手助けしようっと」)
 瞳をきりっ。
 拳をきゅっ。
 そして桜唇が頼もしい友を喚ぶ。
「炎の精霊さん、風の精霊さん、お願い!」
 紋章に証された絆に呼ばるるは火霊と風霊――此度「ともだち」の力を借りて生成される【エレメンタル・ファンタジア】は炎の渦。
 可憐な細指に螺線と紡がれた焦熱は、闘技場の上空へと吹き流れ、
「キノコさん達のちょっと上の方に居てくれれば、毒の胞子が吸い込まれていくはず!」
 狙いは胞子の隔離と処分。
 上昇気流が軽い胞子を巻き上げ、炎に呑み、すっかり烟った戦場をクリアーにしていく。
 然ればこそ見える血景にひかるは手を振って、
(「おねーちゃーん、みんなーっ! がんばってー!」)
 心の中で精一杯に声を張り上げた。

 視界が晴れた事で、観客は更なる闖入者――いや剣闘士の追加投入に愈々心を躍らせた事だろう。
「遅れて登場する、というのも中々に格好良いとは思いませんか?」
「――仕事の信頼が下がらなければな」
 俄に交錯する飄然と淡然。
 二人の小気味良い会話は忽ち喧囂に掻き消えるが、ここに晴夜とシキが合流を果たす。
 彼等は瞬時に戦況を把握するや、仕事の完了を――剣奴の解放を仲間に伝えるべく攻撃に加わって、
「言うより早い」
 シキがファンガスの脳天を鉄弾に貫くと同時、晴夜は【謳う静寂】なる雷撃に広く敵影を打ち据え、遅れた分を取り戻す十分な働きを見せる。
 今こそ喝采を浴びる時だろう、
「このハレルヤの事を褒めて下さってもいいですよ」
 誉められる事が大好きな晴夜は、驟雨と降る歓声に漸う紫瞳を細めた。

 ――血を! 血を!
 ――死を! 死を!
 最早この叫びは、剣闘士に、猟兵に浴びせられる怒号ではなくなっていた。
 今や死を望まれるは、これまで剣奴をカニバリズム(同族喰い)に駆り立てていた茸獣の方で、観衆が求める通り、猟兵は悪逆の群れを駆逐していく。
「さあ、ジャイアント・キリング第一幕。……みんな、頑張ってね!」
 番狂わせとは言いつつ、ロベリアにとっては台本通り。
 血色の髪の佳人は皆々を声援に支えつつ、厄介な毒攻撃にはユーベルコード【シンフォニック・キュア】――勇壮なオペラ曲で癒しを与え、仲間を鼓舞し、敵には覆らぬ劣勢を突きつけていく。
「戦場に歌だと……!」
「なんと美しい……」
 刻下、コロシアムを満たすは法悦。
 歌と演劇が好きな彼女とあって、歌い方も魅せ方も十分、気品漂うドレス『プリンシパル・スカーレット』の裾を戦塵に揺らし、惨憺を浴びて尚も輝く美貌の猟兵に衆目が惹き付けられる。
「さーて、せっかく聴衆も居るんだ。少し張り切ってみようかな」
 こほん。
 繊指を胸に宛て、魂の奥底から飛び切りの歌を囀ろうとした瞬間、ファンガスがボフボフと胞子を撒き散らし、ロベリアの佳声を妨害する。
「げほっ……ああもう! 胞子のせいで歌い難いったら……!」
 げほごほ。
 扨てこの時、充満する胞子に揺れる黒影――咳き込むロベリアの一瞬の隙を衝いたファンガスが、カサを揺さぶり接近する。
 然し「あわや」という時に挙措を楔打つは、リーヴァルディのユーベルコード【影絵の兵団】(タイプ・レギオン)。
「……食い破りなさい。獣の如く」
 毒の胞子が肺を食い破る前に、ファンガスを食い破る数十の影絵の兵士。
 彼等は一撃で消滅するが、多数を揃えれば強力な足止めに、また強靱な兵団として敵前に立ちはだかろう。
 気配を消したリーヴァルディは、ほつり、静かに言を置いて、
「……確かに、お前達の毒の前に人は何もできないでしょう。だけど影絵の兵は人ではない」
 幾度も同じ創痍を抉り。
 吸収した生命力を術者に与えよ、と。
 呪詛を掛けた兵団を指揮した彼女は、その成功を身体の奥底より漲る力で実感する。
「本当は植物より、生物の方が効果的だけど……」
 こんなものかしら、と語尾を持ち上げる紅唇が、妖艶なる微笑を湛えていた。

 多くの者が毒の耐性を得ていた事もあったろう。
 彼等は紫毒の立ちこめる戦場にあって一度と膝を折ることなく敵を掣肘し、見渡す限りの歓声を浴びながら、遂にファンガスの群れを殲滅する。
 燦爛と、華麗に。時に凄然として。
 其の姿は観客を大いに湧かせ、コロシアム全体を揺るがす歓声が彼等の完全なる勝利を証していた。
「今日は帰ったら茸鍋にしよう。皆で早く帰ろう! そうしよう!」
「成る程。それは良い提案です」
「……戦勝祝いとしては悪くないわね」
 一帯に漂う焼きキノコの薫香を戦果とした彼等は瑞々しい笑顔を交すが、それも一瞬の事。
 その双眸は直ぐに元の犀利を挿して観客席中央を睨め、悠然と拍手を降らす領主と視線を合わせる。
「――奴を倒してからだな」
「……ここまで苦労して辿り着いたんだから、もう誰も死なせる気はない」
 沈黙の裡に是を揃えた彼等は、剣の鋒(きっさき)を、或いは鉄筒の銃口を突き付け、堂々、首魁に向けて死の宣告をした――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『変態的破滅招来体』ランジーリ』

POW   :    本当の自分と向き合って!
【欲望】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【対象の分身】から、高命中力の【本音】を飛ばす。
SPD   :    あなたの気持ち、わかるわ!
【まるで相手の心をわかっているかのように】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    あなたの欲望を教えて?
質問と共に【視線を向けてウィンク】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ウルフシャ・オーゲツです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 眼下の景に惜しみない拍手を降らせる領主、名は『変態的破滅招来体』ランジーリ。
 強靱なる肉体を美と魅せた男は、拍手を終えた手で猟兵らを指差し、
「フフフ、猟兵ちゃんったら。私に会う為に、こんなにハッスルしてくれたのね!」
 ズキュン!
 強烈な悪寒を走らせたのは、彼のユーベルコードでも技能でもなく「素」。
 ランジーリは幾許かの恥じらいにクネクネと身動ぎしつつ、言を足して、
「剣闘士に代わってコロシアムに来て、キノコちゃん達を全部やっつけて……全てが私の為にしてくれた事だと思うと、その好意に応えずにはいられないわ」
 ――私の事、好きなんでしょう?
 と、彼等の戦闘中からずっと言いたかった台詞を、遂に告げる。
「だからハッスルのご褒美は、勿論――ワ・タ・シ!」
 グッとポーズして筋肉のカットを露わにしたランジーリは、観客席の最上部から超躍進し、遙か上空から闘技場の中央へ降りて来る。
 嗚呼、その角度では否応にも見え、見える、見てしまうではないか――!
「いくわよぉぉぉおおお嗚嗚嗚!!!」
 野太いランジーリの声が、猟兵の頭上で開戦を告げた。
満月・双葉
さて、見た目通り厄介というか、きもい

残像を残す早業と多彩な技で翻弄していきましょう
最重視は他の猟兵との連携です
僕は目立たぬ動きで死角からの攻撃を行い攪乱します
その為に地形の把握は常に行いませんとね

第六感、野生の勘などフル活用で見切り、盾受けやオーラ防御で防ぎます

御札による恐怖を与える呪詛と催眠術、ユーベルコード『冥界の女王の怒り』も合わせて正常な判断力を奪う

鎧を砕く勢いで本を投擲
大根で串刺し
銃で零距離射撃
桜姫の呪いはね、命を吸うんですよ
更に虹瞳は命を失う呪詛の瞳ですよ
タチが悪いですか?ママからの遺伝でして、御容赦を
必ず先制攻撃を心掛ける

そして、お姉ちゃん…力を貸して。

貴方に死の祈りを捧げます


荒谷・つかさ
さっきの炎の渦から感じた精霊の気配……もしかして。
(観客席のひかる(f07833)と目が合い)
……やっぱり。仕方ない子ね。(手を振る)

それはともかく……へえ。
趣味はいただけないけど、中々良い身体してるじゃない(筋肉的な意味で)。
面白そうね。お相手してもらおうかしら……!
(実は:筋肉好きで戦闘狂)

折角なので、徒手空拳で挑むわ。
「怪力」技能で基礎筋力を強化し、「勇気」「気合い」技能で思い切った殴り合いを演じる。
ある程度殴り合い、隙を見つけたら【螺旋鬼神拳】を発動。
分厚い筋肉の鎧は「鎧砕き」技能で打ち砕き、中まで「衝撃波」を通してダメージを与えるわ。

中々良かったわ、貴方。
オブリビオンなのが残念な位。


リーヴァルディ・カーライル
…ん。吸血鬼の中にも正視に耐えない変態はいる
でも、私は吸血鬼を狩る者…
たとえ相手が変態でも、容赦はしない
(可能な限り手早く始末したい)

偽物が本音(実は愛してほしい)を話すと、無表情のまま顔を赤くして否定する
…違う。わ、私は吸血鬼を…

立ち直ったら【限定解放・血の教義】を発動
吸血鬼化した生命力を吸収し、
魔力を溜めた“過去を世界の外に排出する闇”を大鎌に纏わせ維持
敵の行動を見切り、怪力任せに大鎌をなぎ払い、血の教義が傷口を抉る2回攻撃を行う
反動で自身も傷つくが気にせず、偽物ごと敵を討つ事を優先する
…それ以上喋るな!消えなさい…!

終了後、民衆から暖かい目で見られている事に気付き、
羞恥から全力で逃げる


荒谷・ひかる
(お姉ちゃん(f02032)とばっちり目が合って)
あはは。ばれちゃった……
でも、それならもうこっそりする必要もないよね!(超ぽじてぃぶ)
ようし、そうと決まれば思いっきり応援するよーっ!
お姉ちゃん、みんな、がんばれーっ!

【精霊さん応援団】を発動。
炎、水、大地、草木、風、雷、氷、光、闇。
絆を結んだ全ての精霊さん達と一緒に、お姉ちゃんたちを応援するよ!
戦うのは苦手なわたしだけど、応援……「鼓舞」するのは、得意なんだからっ!
ふれー!ふれー!いえーがー!
がんばれ♪がんばれ♪お姉ちゃん♪

わたしの欲望?
ええと……おねえちゃーん!
お仕事終わったらぎゅってして撫でてーっ!
(本心からの純粋な望み)


夏目・晴夜
悪逆非道な行いは褒められたものではないですし
灰汁が強すぎるビジュアルは見ていて苦痛を覚えますが、
そのポジティブで自信に満ちた明るい性格だけは正直有りですね
いや、やっぱ無いですね

何はなくとも【憑く夜身】でとりあえず動きを封じ、
皆様方が攻撃へと転じるための機を作りたく
自分の影とくんずほぐれつ仲良くやっていて下さい

うわ、ウインクもクソほどにムカつきますね……
私の欲望なんて、そんなの褒められたいの一言に尽きます
息する暇があるのでしたら私を褒めていて下さいよ

褒めて下さらないなら【目潰し】を
質問やウインクと共に私に期待させるような視線を向けておいて
褒め言葉のひとつも無いとか、それはちょっと酷過ぎでしょうが


シキ・ジルモント
◆SPD

(悪寒&見えてしまいドン引き)

…早く終わらせる為、真の姿を解放
(月光を纏うように全身が淡く光る。犬歯が大きく伸びて尖り、夜の狼のように瞳が輝く)

『援護射撃』で味方を支援しつつ敵の動きを観察
攻撃は予備動作を『見切り』回避、同時にチャンスを窺い銃で反撃する

初撃を回避されるのは想定内、これは『フェイント』だ
敵が避けた先を『追跡』して銃口を向け、ユーベルコードを発動した本命を撃ち込む
隙ができたら『2回攻撃』で追撃

何度調子を狂わされても立て直し容赦はしない
コロシアムもあんたも、ここで終わりだ

最後に
賭博を楽しんでいた官兵達に釘をさす
「まだこの下らない遊びを続けるつもりなら、いくらでも相手になるぞ」


田抜・ユウナ
悪趣味なコロシアムの、悪趣味な主催者
あんたにふさわしいプレゼントをくれてやるから、受け取りなさい!

というわけで【レプリカクラフト】
外見はプレゼントボックス。
内容は毒霧の噴射機。じつはコッソリ集めていたファンガスの毒胞子をたんまり詰め込んでるわ。

贈り物のタイミングには注意して。仲間を巻き込まないよう気を付ける。
可能なら、炎とかの攻撃する猟兵と協力して、敵にダメージを与えたら早々に毒胞子を焼き払うなり吹き飛ばすなりしてもらえるとありがたいかしら。

「気に入ってもらえたかしら?」
不敵にほほ笑んで、親指を下に向ける。


その他は、前回に続いて閃光や爆音で派手なショーを演出する。



「素敵な女性は、いつだって空から降って来るの」
 飛行石を持った女の子。
 傘を差して降りてきたスーパーナニー(乳母)。
 ――そして、私。
「ボーイ・ミーツ・ガール、イェーガー・ミーツ・オブリビオン!」
 ランジーリは九天の宙より猟兵を見下ろしつつ、彼等の凜然たる瞳が一点に――我が究極の肉体美に集まる瞬間に法悦の相を浮かべる。
 その猟兵は憧憬を以て彼の降臨を想望しようか――否。
「……ッ、ッッ!」
 がくり、膝を折って崩れそうになる躯を何とか持ち堪えるシキ(f09107)は、闘技場に入りて初めてのダメージ。
 見えたのだ。
 見てしまったのだ。
 高精度の命中を支える狼の視力が仇となったか、全身に悪寒を疾走らせる彼に、やっと大地に降り立ったランジーリが頬笑む。
「フフ、美しさに目が眩んだようね」
 魅了されたのよ、と足される言を掻き消す銃声は、彼の全力の「拒否」。
 然し高速旋回する鉄鉛の軌道は予測の範疇と目を細めたランジーリは、頬を掠める鋭弾に「照れ屋さん♪」と声を置くと、闘技場を舞台に踊り出す。
 其は宛ら狂気の踊躍。
 この筋肉の塊は、先にユウナ(f05049)が巡らせた罠を我が為の演出と身に纏い、閃光と爆音を連れ立って駆け抜ける。
「あんたさっき慥か……自分の事、『女性』とか『ガール』とか言ったわね」
「イエスッ!」
 同性と認める訳には往かぬと、ランジーリを追う無刃のワイヤー。
 其をクネクネとした動きで躱すも気持ち悪く、リーヴァルディ(f01841)は柳眉をきゅ、と顰めつつ、クルースニクの筒先に邪影を追う。
「……ん。吸血鬼の中にも正視に耐えない変態はいる」
 例えばあの様な、と細指は銃爪を引いて、
「でも、私は吸血鬼を狩る者……たとえ相手が変態でも、容赦はしない」
 目標に向かって誘導を得る『呪壊弾』が弾かれるが、これはランジーリの手刀が軽やかに撃ち落とし、嗤笑を得るのみ。
「猟兵ちゃん達が挙って私を狙って……美が罪とは言ったものね」
 コココ、と笑って表情筋にカットを入れる変態。
 然れば須臾、晴夜(f00145)は『夜纏い』を颯爽と翻して懐を侵略し、
「そのポジティブで自信に満ちた明るい性格だけは正直有りですね」
「私が好きと」
「いや、やっぱ無いですね」
「いけず」
 好意を敵意に躱す代わり、剣閃と拳閃を角逐させ、敵の俊敏を殺した。
 だが足を止めたランジーリは、彼の次撃を愛と受け取るより先、ウインクの乱舞に猟兵の心を捕えんとし、
「さぁ、私に貴方達のパッションを教えて頂戴ッ!」
 その中のひとつが、狂宴の天香桂花たるつかさ(f02032)に投げられる。
 悪しき瞬きが命中したならば、彼女は胸奥に秘めた欲望を暴かぬ限り、ダメージを負うことになるのだが――、
「先刻の炎の渦から感じた精霊の気配……もしかして」
 見ていない!
 彼女は同じ琥珀色の瞳を輝かせる愛妹ひかる(f07833)を観客席に見出し、「ついて来たのね」と嘆息を零している。
「……あはは。ばれちゃった……」
 見つかってしまったひかるはと言うと、ならばもう隠れる必要はないと義気凜然、先程まで心の中で叫んでいた激励を声に出し、力いっぱいの応援を捧ぐ。
「お姉ちゃん、みんな、がんばれーっ!」
 周囲の男々しい歓声を縫って澄み渡る佳声は斯くも愛らしく。
「……仕方ない子ね」
 つかさは手を振り返すと、今度こそランジーリに向かって疾駆し、『光耀の羅刹紋』に殺意を迸らせた。
「趣味はいただけないけど、その筋肉、中々良い身体してるじゃない……面白そうね。お相手してもらおうかしら……!」
「望む処よ、いらっしゃァ嗚呼いィィッ!!」
 真向勝負を挑む凄艶に、気配を殺した双葉(f01681)は死角から援護して、
「貼紙の絵姿通り、見た目通り――厄介というか、きもい」
 魔を宿す双眸より【冥界の女王の怒り】(アンガーオブペルセポネ)を解き放ち、死を視るより悍ましい恐怖に挙措を奪わんとした。
「私を覗き見するファンも居るようね!」
「あっ気付いた」(チッ)
「恥ずかしがらなくていいのよ! さぁ私に、皆の欲望を見せて頂戴ァイ!」
 本当の自分と向き合って――!
 自意識過剰なランジーリはアンテナ感度も抜群、地下アイドル宜しく一人一人の瞳を視てウインクして回り、猟兵の隠れたる欲望を炙り出していった。

 ランジーリは深淵に眠る「欲望」を萌芽させ、輪郭を与えた「分身」に「本音」を叫ばせる。
 先ず術に嵌ったのはリーヴァルディだ。
『――愛をください。私は愛して欲しい!』
 同じ佳声が生々しかろう。
 精巧に模られた分身が愛の渇仰を訴えると、よく似た本物は無表情で否定し、
「……違う。わ、私は吸血鬼を……」
『……貴女こそ違う。本当に欲しいのは吸血鬼の血なんかじゃない!』
 白皙に挿す薔薇色の熱が真実を示すか――然しリーヴァルディは戸惑いを振り払う様に掌を返すと、過去を刻む死神の大鎌を握り込め、【限定解放・血の教義】(リミテッド・ブラッドドグマ)を分身に叩き返した。
『貴女の口から言ってみて。愛して欲しいと』
「……それ以上喋るな! 消えなさい……!」
 水平に一薙ぎ、手首を返してもう一薙ぎ。
 纏う闇の深さが自身すら傷付けるが、痛痒を嚥下した少女は己が「フェイク」に死を告ぐ。
「……可能な限り手早く始末しないと」
「同感だ。早く終わらせよう」
 幾許にも動揺を滲ませるリーヴァルディに代わって疾風を駆るはシキ。
 真の姿を暴いた彼は、全身に月光を纏って淡く照り、犬歯は鋭利を増して伸び、尖る――月下の銀狼とは斯くあろうか、青瞳は夜の闇を斬り裂く光の如く冴ゆる。
 対の炯眼が射貫くは、猟兵の欲望にウットリ艶笑を浮かべるランジーリ。
 須臾に弾かれたペレットが脳天を狙うが、軌道を予測した変態は之を回避。
「私を仕留めようなんてダイタンね!」
 クネッと科を作って見せるランジーリは、蓋し彼こそ「想定内」と読んでいる事を知るまい。
「予測してみろ。自身が破滅する未来まで」
 ユーベルコード【コンセントレイト・ラピット】の直前の一撃はフェイント――敵が避けた先を追跡した銃口は本命を、「同箇所へ同時に命中する二発の銃弾」を撃ち込み、ランジーリの屈強なる上腕二頭筋の腱を断裂させた。
「――ッ痛ァい!!」
 まさに要を殺されたか、野太い悲鳴が上がる。
 そして激痛が楔した一瞬を、つかさが見遁す筈がなかったろう。
「徒手空拳で思い切り殴り合いをしたかったのだけれど。少し精彩を欠いたかしら」
「……きゃ、ッ……ッッ!」
 抉り込むように繰り出た一撃は【螺旋鬼神拳】(スパイラル・オウガナックル)。
 紫電一閃、超高速かつ大威力で炸裂した正拳突きは鳩尾に沈み、分厚い筋肉を強烈なインパクトに圧し潰すや、骨の髄まで震盪させる。
「んんンンンンッッ! シビれるわ!」
 大きく反らした上半身をグイと戻したランジーリが返報の拳を繰り出す。
 拳と拳、力と力の純粋な角逐は全き五分――剣闘ならぬ拳闘が、観る者に痛快を味わわせた。
 その熱狂の程は、観客席に座るひかるこそよく分かろう。
「ふれー! ふれー! いえーがー!」
「イェーガー? イェーガー!!」
「がんばれ♪ がんばれ♪ お姉ちゃん♪」
「おーっ! ネーちゃんいけー!!」
 大きな身振りで声援を送る少女は最早存在を隠さず、彼女より「猟兵」なる語を知った男達は拳を突き上げて死闘を観る。
 そして彼等は、この可憐もまた猟兵と知るに然程時間は掛からなかったろう。
「絆を結んだ全ての精霊さん達と一緒に、お姉ちゃんたちを応援するよ!」
 炎、水、大地、草木、風、雷、氷、光、闇。
 個性溢れた精霊を揃えて発動するは【精霊さん応援団】(エレメント・ルーターズ)。
 心優しき少女は戦闘は苦手でも、他者を、特に姉を思い遣る気持ちは誰より強く、その欲望を――本音を暴くに、「お姉ちゃんに誉められたい」「ぎゅってして、撫でて欲しい」という純粋以上は引き出せないだろう。
「わたし、おねえちゃんのお仕事が終わるの、待ってるね!」
 そんなに待たなくても大丈夫、と言ちたのは憶測か予測か。
 然し時は確実に、猟兵に優勢を齎していた。

 転機となったのは、ランジーリのウインクを双葉が攻略した時。
「お姉ちゃん……力を貸して」
 今は亡き双子の姉、【死した片割れ】(ミツキカナ)を召喚した彼女は、濡烏の凄艶にウインクを代わらせる事で、欲望が生む分身を阻止するに成功する。
 亡姉の視線が瞶めた者の生命を削る傍ら、双葉もまた彼女より譲り受けた『虹瞳』を以て命を吸い、手に握る呪剣『桜姫』は大鎌と変じて血を啜る――全てが生命力を吸収する禁忌の技。
「ちょっと貴女……さっきから私のリビドーをネコババしてない!?」
「タチが悪いですか? ――これはママからの遺伝でして、御容赦を」
「貴女のママってどんなママよォ! この、ドロボウ猫!」
 ランジーリはヴァンパイアだが、生命力を吸収する術を持たない。
 つまり疲弊・損耗させる事で水を開けられると読んだ彼女が、戦局を有利に運んだのであるが、ランジーリが気付いた頃には遅く――既に俊敏が落ちた後。
「貴方に死の祈りを捧げます」
「そんなの要らないわっ! 私が欲しいのは貴方達のパッション!」
 食欲、性欲、庇護欲、承認欲求。
 自己実現、或いは自己超越の欲求――全ての欲望が極上の果実と、変態は執拗なウインクで猟兵らを追い立てる。
「そのウインク、クソほどにムカつきますね……」
 と、不可視の操り糸に影を縫い、不気味な瞬きを封じるは晴夜。
 見目麗しい彼の、玲瓏たる両唇が斯くも乱暴な物言いをするとは珍しい。
 それ程まで辟易しているのか、灰狼の麗人は自らは素気無く、繊指は【憑く夜身】(ツクヨミ)を妙々操って挙措を断ち、
「私は間に合っていますから。ご自分の影とくんずほぐれつ仲良くやっていて下さい」
「くんずほぐれつ……厭らスィ!」
 ジタバタするにも筋肉を見せびらかすランジーリに、また苛立つ。
「貴方には欲求ってモノがないの? 私なら本当の姿を見せてあげられるのに!」
「私の欲望なんて、そんなの『褒められたい』の一言に尽きます。息する暇があるのでしたら、私を褒めていて下さいよ」
 即答。
 そして真実なる故にノーダメージ。
 鬱陶しげに長い睫を落とした彼は、其を再び持ち上げた時には吃、と睨めて、
「私に期待させるような視線を向けておいて、褒め言葉のひとつも無いとか、それはちょっと酷過ぎでしょうが」
「えっヤダこの子、強請るのが上手……ッ!」
 ドッキーン、と胸を押えたのは敵の最大の失策。
 ランジーリは心臓でなく眼球に『悪食』を――痛烈な目潰しを喰らい、あまりの激痛に上半身を逆のくの字に反らせる。
「ぐぅうぉぉおお嗚呼嗚呼ッ!!」
 醜男の悲鳴が天を揺るがし、再び半身を戻した丁度良いタイミングでプレゼントボックスを渡すはユウナ。
「はい、これ」
「はい、んんンンン!?」
「悪趣味なコロシアムの、悪趣味な主催者。あんたに相応しいプレゼントをくれてやるから、受け取りなさい!」
「まぁ嬉しい」
 赫眼の少女が繕った第二の【レプリカクラフト】は、先の集団戦でこっそり集めていた「ファンガスの毒胞子」をたんまりと詰め込んだ毒霧噴射機。
「……開けても?」
「勿論」
 実の処、自ら開けようが開けまいが関係ない。
 スイッチを手にしたユウナは仲間を連れて距離を稼ぎ、観客の視線が集まった処で、プレゼントを解放する――!
「んぐぅ嗚嗚嗚ッッ……ッッ――!!」
 損耗しきった頃合に吸い込んだ毒は、体内を巡らずとも死に至らせよう。
 紫毒に包まれたランジーリは強靭なる筋肉を砂と解き、サラサラと土に還って、やっと吸血鬼らしい最期を見せて終焉を知らしめる。
「――気に入ってもらえたかしら?」
 不敵に頬笑み、親指を下に向けるユウナ。
 小気味よい勝利宣言が歓喜を突き上げたか――闘技場は喝采に湧いて猟兵を褒め称えていた。

「中々の手練れだったわ。オブリビオンなのが残念な位」
 良い手応えだったと拳を握り込めるつかさの元へ、駆けてくるひかる。
 彼女と入れ替わりに闘技場から出て行ったのはリーヴァルディか、観衆から温かい視線を注がれていると気付いた彼女は、羞恥心から全力で此処を逃れたようだ。
 尚も止まぬ拍手と共に舞うは、今や紙クズと化した賭券で、賭博を楽しんでいた官兵達がガッカリ肩を落としていた処、シキの鋭眼に釘を刺される。
「まだこの下らない遊びを続けるつもりなら、いくらでも相手になるぞ」
「は、ひゃい……!」
 そう、彼等には本来の仕事がある。
 領主が倒され、圧制から解放された今、浮き立つ民衆を正しきに導く事こそ、公僕の役儀。
「あまり酷いと、また来ますよ」
「私達には支配構造を壊した責任がありますから」
 見守りはしつつ支配するつもりが無いのは、彼等の自由な足で歩いて欲しいから。
 良い未来をと観客席を見渡した彼等には、大地を揺るがす程の歓声が満ち、健闘を讃えるだけでない――感謝と敬意が疲弊した身体を慰める。
 猟兵らは彼等に手を振って応えると、万雷の拍手と歓声に送られ、無事なる帰還を待つ帷の元へと戻った――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月24日


挿絵イラスト