●その魂を蝕むもの
――まだ、足りぬ。
切り立った峡谷に、その村はあった。あちこちに焚かれた篝火が薄闇の世界に在ってなお、村を明るく熱している。そこに集う住民たちは、ある者は棍棒を、ある者は斧を、またある者は鋤を持ち、まるで敵襲に備えるかのように見える。
もっと武器が、防具が、人が、資源が、あらゆるモノが、必要だ。
無いならば集めるしかない。この世界に蔓延る闇を掃う為には、例え奪い取ってでも力を蓄えなくてはならない。住民たちを睥睨するように黒き騎士が列をなす。それは守る為の盾ではなく、奪う為の牙。
この世界から、ヴァンパイアを駆逐する為には――!
ならばもっと集めねばならぬ、奪わねばならぬ。脳裏に囁く声のままに、彼女は手にした槍を握りしめる。跨る愛馬の嘶きは誰に届くことなく、ただ峡谷を吹き荒ぶ風に紛れていった。
●グリモアベースにて
「皆さん、『狂えるオブリビオン』の所在を予知しました。」
聖典のグリモアをぱたりと閉じ、アルトリンデ・エーデルシュタインが周囲の猟兵たちに呼びかける。
『狂えるオブリビオン』、それはかつてのヴァンパイアが『異端の神々』の土地を制圧せんと攻め込んだ際に『異端の神々』に憑依されたオブリビオンの事だ。倒せども倒せども新たなオブリビオンに憑依し、その肉体と魂を奪う異端の神々にヴァンパイアは制圧を断念したという。それ故に『狂えるオブリビオン』の居る一帯にはヴァンパイアの支配は及んでおらず、『狂えるオブリビオン』を倒して一帯を解放できればヴァンパイアの支配のない居住地を作る事も可能だろう。
「場所は以前予知した荒野からほど近い、切り立った峡谷になります。」
荒野から奥に望む不毛の山に向けて、まるで巨大な刃で裂いたが如き谷が続いている。その中に今回の予知した狂えるオブリビオンが居る集落があるという。
「人のいる集落、です。もちろん異端の神々の地に在る以上、まっとうなモノではありません。」
狂えるオブリビオンはまるで軍備を増強するかの如く近隣から物資を、人を収奪しているのだという。老若男女、様々な人が攫われた挙句に異端の神の狂気に浸されて狂えるオブリビオンの傀儡となっている。それは即ち、狂えるオブリビオンを倒すために赴いた猟兵に住民たちが敵対する事を意味する。
「ですが狂えるオブリビオンを倒し、異端の神を退ければ住民の狂気は晴らす事ができます。極力、殺さずに突破するようお願いします。」
猟兵にとって住民は敵となるほどの強さはないが猟兵たちを奥へ行かせまいと密集して立塞がる。さらに住民たちは死傷する事にも頓着しない為、無力化する場合は工夫が必要だろう。
また住民を避けようにも道は狭く、さらに集落は峡谷を利用して上まで伸びている為にオブリビオン目掛けて飛びこえるのも難しい状況だ。下手に建物を崩せばそれだけで住民が死ぬ可能性もある。
「さらに厄介な事に、この地に蔓延する狂気が『すべてのヴァンパイアを倒すために力を合わせる事』なのです。」
あらゆる犠牲を無視し、あらゆる手段を講じてでもヴァンパイアを駆逐すべし。それはかつて辺境に攻め入ったヴァンパイアに対する異端の神の怒りか。或いは憑りつかれたオブリビオンの執念か。もしこの狂気に侵されてしまえば、住民同様に狂えるオブリビオンと共に周囲から無秩序に簒奪を繰り返す存在になり下がるだろう。
「ですので、忘れないでください。何の為にヴァンパイアと戦ってるのかを。」
そして、住民を突破できたとしてもまだ狂えるオブリビオンには辿り着かない。集落の最奥に在る広場には狂気に侵されたオブリビオンの騎士が猟兵を迎え撃つべく待ち構えている。これらを倒して初めて、狂えるオブリビオンへの道は開かれる。
「この異端の神の狂気は、目的は兎も角として手段は決して相いれません。そしてその先にダークセイヴァーの救いもないでしょう。」
何を為すか、何の為に成すか。既に狂気に浸された者に諭す言葉はない。
「敵は『異端の神』に憑依されし『狂えるオブリビオン』。皆さんの力で、どうかかの地を、そして人々を解放してください。」
そう言葉を括りアルトリンデは猟兵たちを送り出すのだった。
こげとら
しばらくぶりです、こげとらです。
4本目の辺境殺神戦となる今回は、奥にいる『狂えるオブリビオン』まで突破していく流れになります。
前までのシナリオとは舞台が近いというだけですので知らなくても問題はありません。
第1章は『異端の神』の狂気に浸され傀儡となった住民を突破し、奥を目指していきます。
集落はオブリビオンのいる館、その周囲に広がる広場を中心に広がっています。上方向にも、谷の間に橋を渡してその上に家があるような感じで広がっていますので上空から突破する場合でも何らかの対策は必要となります。住民は猟兵を見つけると行く手を塞ごうとしてきます。住民の数は多く、通り抜けた場合も後ろから追ってきますので場合によっては囲まれる可能性もあります。
建物は、猟兵が壊そうと思えば壊せるぐらいの強度です。ただし、対策なしで崩すと住民が下敷きになる可能性はあります。
成功条件は奥の広場まで突破する事ですので住民の生死は関係しませんが、上手く住民を負傷させずに突破するような行動にはプレイングボーナスを付けようと思います。
また、『いかなる手段、犠牲を以てしてでもヴァンパイアをすべて倒すべし』という狂気が蝕んできます。狂気に対する対策、あるいは何のためにヴァンパイアを倒すのかがあると良いかもしれません。
続く第2章は広場でのオブリビオンとの戦闘、その後の第3章で館から出てきた狂えるオブリビオンとの戦闘となります。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております!
第1章 冒険
『傀儡と化した領民達の包囲網を突破せよ』
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POW : 真正面から力を生かした強行突破
SPD : 技能や道具を生かし素早く駆け抜け突破
WIZ : 知識や魔法で対策を施してから突破
👑11
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シホ・イオア
世界の痛みが、聖痕の痛みがシホの背中を押してくれる。
だから犠牲を払って敵を倒すなんて手段をとることはないよ。
悲しみを止めるのが、痛みをなくすのがシホの願いだから。
囲まれたりするのは嫌だし怪我をさせるのも嫌だなぁ。
うーん、ここは豪快にレッツ・リフォーム!
「輝石解放、ゴールド! おいでませ、妖精のお宿☆」
進む道や家を城壁で囲ってみたり
障害物を乗り越えるように橋を架けてみたり
簡単には追いかけられないようにしちゃおう。
目立つのがだめなら谷の壁にトンネル状の道(妖精サイズ)
を作りながら移動すればいい気がする。
連携アドリブ歓迎。
薄暗い空の下、陽の光も届かぬだろう峡谷の底。焚かれた篝火に照らされる集う人々の表情は皆、異様だった。
「ヴァンパイア……倒さねば……」
「すべて……すべて……」
生きるに必要な最低限のこと以外、すべてが狂気に浸された思考。歳に、性別に関係なく皆一様の表情を浮かべている様は非人間じみている。シホ・イオアはそんな集落の様子を岩の影から窺っていた。目に映る光景は、この世界を蝕む闇の一端にも思えた。
「世界の痛みが、聖痕の痛みがシホの背中を押してくれる。
だから犠牲を払って敵を倒すなんて手段をとることはないよ。」
吹き抜ける風に狂気が囁く。闇を掃うには、ヴァンパイアを駆逐するには痛みも必要だ、と。狂気の声にシホはちがうよ、と呟く。シホの聖痕が引き受ける世界の痛みを感じながらも、だからこそシホははっきりと告げた。
「悲しみを止めるのが、痛みをなくすのがシホの願いだから。」
集められた住民たちに痛みを強いるのはシホの望む所ではない。だが、シホがフェアリーの小さな体とはいえ、あの群衆の中を突っ切ればたちまち追い回されるだろう。
「囲まれたりするのは嫌だし怪我をさせるのも嫌だなぁ。」
住民たちを分断しながら追いつかせないようにすべきだが、一般人相手に攻撃で足止めなどすればただではすむまい。考えたシホが出した策は。
「うーん、ここは豪快にレッツ・リフォーム!」
シホが【マイ・キャッスル】で作り上げた城壁が集落を隔てる。住民たちが何が起こったかと右往左往するうちにシホは簡単に追いつかれないように壁を、橋を、建物を作り上げていった。
「輝石解放、ゴールド! おいでませ、妖精のお宿☆」
それは輝石の煌きの中、まるでお伽噺の妖精の里に似て。幻想的な光景とは裏腹にその造りは追う者を妨げ、惑わせる。作り上げた建物の上を翔けるシホの姿を見つけた住民たちが捕まえようと追いかけるも、ある筈のない場所に出来ている壁、行き止まりの筈の袋小路に架けられた橋に思うように追いかける事は出来ずにいた。
「侵入者……敵か、敵か……」
「どこに……」
新しく現れる建造物を住民たちが探し回る。その様子を遠目に見て、シホは峡谷の崖に掘り進めたトンネル状の道の中に戻った。
「こっちには気が付いてないみたいだね♪」
作った妖精サイズの小道を通り、あるいは壁や建物を建てながらシホは集落の奥へと進んでいく。
成功
🔵🔵🔴
サンディ・ノックス
解放・星夜を使用
水晶の小人達を住民に向かわせる
小人には攻撃させず飛び回り邪魔なものと住民に認識させ破壊させ
俺に向かってくる住民の数を減らす
残りの住民からの攻撃は見切り回避して進む
『あらゆる手段を講じてヴァンパイアを駆逐せよ』
これはかつて俺が侵されていた狂気そのものだ
俺は本来守るべきダークセイヴァーの人々をこの考えに則り利用し
吸血鬼を殺す手段に使っていた
…天涯孤独だったけど今は幸せだ、ここは第二の故郷なんだよと嬉しそうに話していた奴がいた
あいつは俺を友と呼んだ
でも俺はその第二の故郷も同じように利用して…
だから俺はこの狂気には絶対に呑まれてはいけない
俺を責め立てたあいつの表情を思い出して走り続ける
集落がにわかに慌ただしくなる。誰か侵入したのか、武器を持ち、灯を手にして動きまわる住民の姿を目に、サンディ・ノックスは【解放・星夜(カイホウ・セイヤ)】により小人を模した、青い水晶を召喚した。
――あらゆる手段を講じてヴァンパイアを駆逐せよ。
サンディに吹き付ける狂気が、そう囁いてくる。既視の狂念がサンディの胸の裡を刺激する。往くべき先をしかと見据え、サンディは水晶の小人たちを住民に向かわせた。
これはかつて俺が侵されていた狂気そのものだ。
集落を抜けるべく駆けだしたサンディはこの地に満ちる狂気にかつての自身の姿を見た。ダークセイヴァーを救うには、ヴァンパイアの支配を終わらせるには、ヴァンパイアをすべて倒さねばならない。確かに、そうではあるだろう。だが。
俺は本来守るべきダークセイヴァーの人々をこの考えに則り利用し、吸血鬼を殺す手段に使っていた。
住民たちは飛び回る水晶の小人に気をとられ、足並みそろわず疎らにサンディへと突っかかってきた。数も連携も頼りない攻撃など、足止めにすらなるまい。それでも必死にサンディへと向かってくる狂気の形相は、サンディにいつか見た情景を突き付けてくるようだった。
……天涯孤独だったけど今は幸せだ、ここは第二の故郷なんだよと嬉しそうに話していた奴がいた。
追憶の情景の中、サンディを見つめる人影があった。その目を自分は直視できるだろうか。記憶と同じなら、その人影は。
あいつは俺を友と呼んだ。
自分は、どうだっただろうか。集落のあちこちに焚かれた篝火の炎が、呼び起されたあの風景に重なり、まるで燃えているように見えた。あの時、自分は――。
でも俺はその第二の故郷も同じように利用して……
篝火が崩れる。住民が投げ、サンディが躱した木の棒が当たったのだ。燃え落ちる炎の中に浮かぶ人影はあの時と同じ表情をしていた。サンディを責めたてた、あの時と。延焼しないよう篝火の残骸を手早く壊し、消した炎を後にサンディは奥へと向かい走る。
「だから俺はこの狂気には絶対に呑まれてはいけない。」
消えた炎の光が、熱が、瞼に焼き付くように。思い出すその姿が、その表情が、サンディを糾し続けるかぎり。かつての自分が侵されていた狂気に再び囚われる事はないだろう。
大成功
🔵🔵🔵
レパイア・グラスボトル
虐げられた弱い人々が群れる姿に、どの世界も同じと思い。
洗脳された様に、気味悪さを感じる。
奪い殺すなら楽しむべきである。
死んでも帰る可能性があるのだから。
【SPD】
UCを最初から使用。
異端の神とやらを殺せば、猟兵として報酬が手に入る。
何であろうと邪魔者を蹴散らして報酬を得る。
いつも通りの生業である。
メタ:
彼女も呼ばれたファミリーも深くは考えていない。
蹴散らし奪い、ついでに他の猟兵の路を作るだけである。
ポストアポカリプスに持って帰れる物は奪う。
食料はその場で食べる。暴れながら。
一端、目的達成後、目の前に怪我人がいたら善悪所属問わず治療。
治療用フラスコチャイルドの本能故に。我に返って不思議に思う。
集落が慌ただしくなれども住民の表情は変わらない。狂気に浸され、傀儡と化し、ただ一つの目的に従事させられる。虐げられた弱い人々が群れる姿に、レパイア・グラスボトルは吐息をついた。
「どの世界も同じか。けど……」
レパイアの育った世界にも似たような弱者は居た。だが、その者とて何かしかの意志はあるだろう。それが生にしがみつくにしろ絶望に沈むにしろ、その人の情動が在るモノだ。それがない、というだけで――洗脳されたが如き人の群れとはこうも気味が悪いものか。
「奪い殺すなら楽しむべきだろ?」
死んでも帰る可能性があるのだから。ならばレパイアのする事は決まっている。元より猟兵として報酬を得られればいいのだ。邪神の憑くオブリビオンを倒せばいいというのなら、邪魔者は蹴散らすまで。彼女の、いつも通りの生業である。
「ヒャッハー! 狼煙を上げろ!! みんな、略奪の時間だよ!!!」
狂気に満ちた陰鬱な空気を吹き飛ばすかのようなレパイアの【レイダーズ・マーチ(リャクダツリョダン)】に呼ばれたレイダーたちもまた、傀儡がどうとか細かい事は考えていない。目の前にはあちこちから物資を詰め込んだ集落がある。それだけ分かれば後は些末な事だろう。
「ヘッヘッヘェ……たんまり溜め込んでるじゃねぇかよ!」
「ヒャッハー! 新鮮な食糧だァーー!!」
レパイアと共に十数人のレイダーたちは集落へと雪崩れ込んだ。たちまちあちこちで乱戦が起き、レイダーたちは住民を蹴散らして溜め込んでいた物資……主に食料を奪い、食らい、さらに暴れてゆく。レパイアもまた目についた肉を食いながら邪魔な木の壁を破壊した。入り組んでいようが、障害物は壊すか奪うかして進めばいい。後からくるヤツも通りやすくなるだろう。
「行く先は……向こうだな。ん?」
奥まで進む目途をつけたレパイアの視界の端にうずくまる男が見えた。乱戦で足を怪我でもしたか、動けない男にレパイアは近づいた。暴れようとする男を抑えつけ、有無を言わさず怪我の確認、消毒、治療までを手早く終わらせる。大事はないだろうと息を吐いたレパイアは、ふと我に返った。
「アタシは何で、手当なんて……」
その行動は、レパイアの治療用フラスコチャイルドの本能故に。意識せずに行った治療行為を不思議に思いながらも、レパイアは奥を目指した。
成功
🔵🔵🔴
ヴェル・ラルフ
僕はこの身を流れる吸血鬼の血が大嫌いだ
けれど、オブリビオンに感じるこの憐憫は──
ピアスに触れる
忘れてはいない、猟兵でいる理由を
全ての吸血鬼が憎い訳じゃない
僕が戦う理由を、奪われるつもりはない
[覚悟]を決めて
操られている彼らを傷つけないために
おいで、【雄凰】
ヒトの2倍もある大きな蛇食鷲
その姿は人々に[恐怖を与える]
雄凰に騎乗して
さあ、羽撃いて
そのまま奥を目指す
人々が空へ向ける攻撃は、その力強い翼が起こす[衝撃波]で[なぎ払い]
雄凰は足技が得意でね
正確に蹴り返すかもしれない
雄凰が防げない攻撃は僕が[見切]ってナイフを[投擲]して応戦
傷はつけないで
後で機嫌を取るのが大変なんだ
★アドリブ歓迎
峡谷を吹き抜ける風の唸りは狂気の声を乗せ。じわりと脳裏に沁み込もうとする人ならざる者の想念を、ヴェル・ラルフは締め出した。
――すべてのヴァンパイアを倒すべし。
狂気が囁く。ダンピールたるヴェルにも。
「僕はこの身を流れる吸血鬼の血が大嫌いだ。
けれど、オブリビオンに感じるこの憐憫は──」
ヴェルがピアスに触れた。朱殷色のピアスに指先が触れる感覚に、己が裡を確かめる。
「忘れてはいない、猟兵でいる理由を。
全ての吸血鬼が憎い訳じゃない。」
先へ進めばより狂気は強まるだろう。故にこそ、忘れてはならない事がある。あるいは、それは狂えるオブリビオンが忘れ去ったモノかもしれない。
「僕が戦う理由を、奪われるつもりはない。」
覚悟を決めて、ヴェルは集落へ向かう。
「おいで、雄凰。」
ヴェルの声に応え来たるはヒトの2倍もある大きな蛇食鷲、【雄凰(ユウオウ)】。その背に乗ったヴェルを見つけた住民は軽く恐慌をきたしていた。これまでの猟兵の侵入による騒ぎに加えての雄凰の飛来はさらに混乱に拍車をかける事になった。
「さあ、羽撃いて。」
ヴェルの意を受け雄凰がその強靭な翼で風を起こしながら飛ぶ。それでもヴェルを止めようと住民たちが向かってくるが、翼が巻き起こす衝撃波で纏めて吹き飛ばされて近づく事すらできずにいた。建物の陰から風を避けて飛び掛かろうとする者も雄凰の足に蹴り落とされていた。ならばと上から飛び掛かろうとする者にはヴェルの投げるナイフが牽制する。
「傷はつけないで。
後で機嫌を取るのが大変なんだ。」
空を飛ぶが故に、住民が飛び掛かろうとする動きを阻害するだけでほとんどが攻撃らしい攻撃をできずにいた。悠然と、それでいて雄々しく翼を広げるその姿は、傀儡と化してなお人々の心を強く揺さぶる。ヴェルのピアスは奥にはヴァンパイアは居ないと伝えている。だがヴェルは奥からヴァンパイアの支配地域と似た気配を僅かに感じていた。
成功
🔵🔵🔴
リーヴァルディ・カーライル
…ん。何の為に吸血鬼と闘うのか、ね。
…人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を…。
それがかつて私を救い、私を導き、
私を護り殺された、大切な人達から託された誓い。
…忘れはしない。違えることなどありえない。
救うべき 人達を傷付ける救済を私は認めないわ。
全身を存在感を隠す呪詛のオーラで防御して闇に紛れ、
今までの戦闘知識と経験から村人達の視線を暗視して見切り、
気配を遮断しながら死角に潜り込む早業で潜入する
…他の猟兵が注意を引き付けてくれている?
第六感が危険を感じるか死角がなければ
自身の生命力を吸収してUCを発動し不可視化してやり過ごす
…待っていて。今、狂える神の呪縛から解放してあげる…。
集落のあちこちから住民たちの慌ただしく動き回る音が聞こえる。数人の猟兵が奥へと進んだ事で隠れ潜む者への警戒が甘くなったのか。リーヴァルディ・カーライルが纏う存在感を消す呪詛のオーラは、視野の狭まった住民たちの意識を逸らすには十分だった。
「……ん。何の為に吸血鬼と闘うのか、ね。」
リーヴァルディが、その手にした鎌で今まで幾人のヴァンパイアを葬ってきたろうか。その為すべき先に在るモノを、リーヴァルディは見失ってはいない。
「……人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を……。」
その想いを揺るがさんと今もリーヴァルディの耳に狂気は囁く。どれ程の犠牲を積み上げようとも、すべてのヴァンパイアを倒すべし、と。だがそれはリーヴァルディの歩む道とは決して交わらぬ道。
「それがかつて私を救い、私を導き、私を護り殺された、大切な人達から託された誓い。」
故にこそ、リーヴァルディが道を踏み外す事はない。影から影へと渡るように、物陰を縫ってリーヴァルディは集落を奥へと進む。徐々に強まる狂気の気配がまるで眼で見詰めてくるようだった。気配の主、この地に在る『異端の神』は確実に、こちらの動きを把握している。自らを誘うような狂気の先を見据えつつ、リーヴァルディは言葉を続けた。
「……忘れはしない。違えることなどありえない。
救うべき 人達を傷付ける救済を私は認めないわ。」
騒めく気配は嗤ったのだろうか。突如、横合いの壁が崩れて住民が数人まろび出た。別の猟兵を追いかけた勢いで壁を壊してきたのか。ふら付き立ち上がった住民が辺りを見渡した時には既に、第六感で察知したリーヴァルディは【見えざる鏡像(インビジブル・ミラー)】で姿を消していた。一様に胡乱な表情であたりを探す人々の姿、それは決してリーヴァルディの想う救済ではないだろう。
「……待っていて。今、狂える神の呪縛から解放してあげる……。」
そっとその場を立ち去るリーヴァルディが残した言の葉は狂気に囚われた者に届く事はない。だが、その心無くして狂気の楔を解く事は出来ない。
狂気が強まる。辿り着いた先は集落の奥にある館、その前に広がる庭というにはあまりに殺風景な其処はどこか処刑場じみた雰囲気が漂っていた。皮肉にも、それはヴァンパイアの戯れが成す雰囲気にも似ていた。
大成功
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第2章 集団戦
『闇に誓いし騎士』
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POW : 生ける破城鎚
単純で重い【怪物じみた馬の脚力を載せたランスチャージ】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 屠殺旋風
自身の【兜の奥の邪悪なる瞳】が輝く間、【鈍器として振るわれる巨大な突撃槍】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 闇の恩寵
全身を【漆黒の霞】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
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六代目・松座衛門(サポート)
ヤドリガミの人形遣い×UDCメカニック。人形を用いて異形(オブリビオン)を狩る人形操術「鬼猟流」の使い手です。
ヤドリガミの特徴として、本体は腰に付けている十字形の人形操作板です。
普段は「自分、~君、~さん、だ、だろう、なのか?)」と砕けた口調で、戦闘中は言い捨てを多用します。
UCはほぼ人形を介した物で、非常に多数の敵を相手にする場合以外は、人形「暁闇」か、その場にある生物を模った石像等を操り戦います。
人形「暁闇」:「鬼猟流」に最適化された人形で、自律しません。ワイヤーガンやフレイルのように使いつつ、UCを発動させます。
機械的な仕掛け(からくり等)に興味を持っています。
集落の奥に広がっていたのは、何もない広場だった。奥には、おそらく領主の館であろう建物が見える。今となっては収奪した物を詰め込みすぎて館というにはいささか物々しい装いとなっているが。
「まるで集めるだけ集めてみましたって感じだな。」
見渡した六代目・松座衛門の印象がそれだった。広場に何も無い分、周囲の雑多な建物や物資、そして館の雑然さが際立っている。
「それで、これだけ集めたのがあいつらってわけか。」
猟兵の侵入を阻むべく、広場に黒き騎兵が列を為していた。それは、かつてはヴァンパイアの下で主の命のままに収奪を繰り返していた『闇に誓いし騎士』。ヴァンパイアの配下であったオブリビオンですら、『異端の神』の狂気は捕えるというのか。
「その身……その力……ヴァンパイアを倒すために……」
闇の恩寵を纏いし騎士たちが松座衛門へとランスを向ける。対する松座衛門は臆することなく戦闘用人形「暁闇」を舞わす。
「見た所、あの中には絡繰りはないか。いいぜ、それなら見せてやろう。」
戦場は障害物などない広場。敵は多数、その上騎兵。されどそれが松座衛門が人形捌きを披露するに何の障害となろうか。
「鬼猟流 人形操術、とくとご覧あれ!」
騎士がランスを構えて突進する合間目掛けて松座衛門が操る暁闇が駆ける。馬の蹄を躱し、死角から暁闇が放った弾丸が騎士の体勢を打ち崩した。たちまち列が乱れる騎士たちへと松座衛門が暁闇を躍りかからせる。まるで数多の目を持つかの如き的確な攻撃。相手は一人の筈、何故……苦悶に呻く騎士に応えるように、高らかに告げられるはこの舞の演目か。
「人形操術を応用すれば、こんなことだって! 「即席人形劇」!」
目を凝らせば見えたかも知れない、ガラクタのような人形の数々。それは松座衛門が繰り出した【鬼猟流 裏芸「即席人形劇」(キリョウリュウ・ウラゲイ・ソクセキニンギョウゲキ)】。撒かれたガラクタ人形は松座衛門の目となって、見えざる死角すら的確に把握していたのだ。
出鼻を挫かれる形となった闇に誓いし騎士たちはこれ以降、隊列を組みなおす事は出来ずに乱戦を余儀なくされるだろう。各個撃破をしてゆくも、攪乱しつつ削り取っていくも良い。或いは強力な攻撃を用いてなぎ払う事も出来るかもしれない。
『狂えるオブリビオン』の前の最後の障害との戦いが始まった。
成功
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シホ・イオア
心を侵され望まぬ行いをさせられるのは敵であっても悲しいこと。
せめて、安らかな眠りを。
輝石解放、サファイア! 浄化の雨よ、降り注げ!
上空からユーベルコードで攻撃していきましょう。
敵もよく見えるし簡単に届く距離じゃないから対応もしやすいはず。
霞の残像を使えば的も絞りにくいと思うしね。
乱戦の中に飛び込むなら
【見切り】【敵を盾に】体の小ささを生かして立ち回ります。
連携アドリブ歓迎。
サンディ・ノックス
同業者の作ったチャンスを活かそう
あいつへの想いと【狂気耐性】で蔓延する狂気には負けない
胸鎧と一体化して黒の全身鎧姿に変身
暗夜の剣は大剣に変形させる
各個撃破する方針
まず狙うのは馬、脚が狙いどころだろう
【怪力】も活かし強引に敵の防御も押しきって斬る
敵の攻撃は【フェイント】をかけて空振りを狙い
成功したら【カウンター】して本体に一撃入れてやろう
内包する魔力を高めているから攻撃を受けたとき即座に【オーラ防御】も可能
魔力を高める一番の理由は招集・赤夜を発動するため
近接攻撃だけと思わせてもうひとりの俺が【だまし討ち】、己を構成する魔力を放出
不可視だけれどおしゃべりな「俺」は煽っても反応がない敵に不満そうだな
隊列を崩された『闇に誓いし騎士』たちは嘶く馬を御し体勢を立て直そうとする。だが突撃中に受けた混乱は、すぐに立て直せるものではない。この好機に斬り込むべくサンディ・ノックスは己が胸鎧と一体となる。
「同業者の作ったチャンスを活かそう。」
黒い全身鎧姿へと変じたサンディの心にあるは、かつて自分を友と呼んだ者への想い。鎧で覆われるサンディの、その心を蝕もうとする狂気が遠のいてゆく。手にした暗夜の剣を大剣へと変形させ、サンディは黒き騎士の群れへと突き進んだ。
騎士が隊列を崩して広がったところへと突き進むサンディ、その様子は上空にいたシホ・イオアからも見えていた。騎士たちの動きはまるで機械のように一つの意志に統率されているように見える。まるで人間味、そして生気を感じられない騎士の動きにシホの輝石が輝きを強めた。
「心を侵され望まぬ行いをさせられるのは敵であっても悲しいこと。」
眼下に広がる光景は、この場にいる誰が望んだものでもないだろう。既に引き返せぬ狂気の淵へと沈んだ者は、もはや救い上げる事は叶わない。故にシホは思うのだ。
「せめて、安らかな眠りを。」
たとえそれが、かつてヴァンパイアの側にあった者であったとしても。シホの周囲を輝石が舞う。
「輝石解放、サファイア! 浄化の雨よ、降り注げ!」
シホの放った【ホーリー・レイン】が降り注ぐ中、サンディが騎士の乗る馬を叩き切る。怪力を乗せた一撃が馬鎧ごと馬の脚を断ち切り、乗っていた騎士が地に放り出された。騎士は転がる勢いのまま立ち上がるも、馬を失っては生ける破城槌と謳われた突撃は出来なかろう。それでも騎士はサンディへと槍を構える。そこには如何な感情も窺う事は出来なかった。
「……その力、ヴァンパイアを倒すために……」
寄越せと言うのか、あるいは協力しろとでも。サンディの胸をあの日の眼差しが刺す。騎士の言葉を一顧だにせずサンディが剣を振う。騎士が突き刺すべく繰り出した槍は、剣で斬ると見せかけて横に動いたサンディを捉える事は出来ずに空を切った。翻した剣で切りかかろうとしたサンディの後ろから別の騎士が突撃をかける。サンディが自身の内に高めた魔力で防ぐかと思った矢先、浄化の力持つ水球が降り注いだ。
「上からなら動きもよく見えるし、援護は任せてね!」
シホが上空から降り注がせる無数の水球が騎士たちの連携を崩し、サンディが各個撃破するのを助ける。時折、馬の膂力を用いて高く跳びかかってくるも霞の残像に紛れて飛び回るシホを捉えるのは容易な事ではない。そして、戦場をかき乱すのはシホの【ホーリー・レイン】だけではなかった。サンディが切り倒した騎士から剣を引き抜く。浄化の水球が降り注ぐ中を強引に抜け、サンディへと貫きかかろうとした騎士が突如、横殴りに切り飛ばされた。
「単純な攻撃だけじゃ飽きるでしょ?」
サンディの声音で聞こえた言葉、だがそれは果たして彼の発した声だっただろうか。十分に魔力を高めたサンディが、その魔力を放ち【招集・赤夜(ショウシュウ・セキヤ)】で呼んだ不可視の“もうひとりの自分”は既に次の相手へと向かっていた。不可視の自分が切りつけ体勢を崩した騎士にサンディも切りかかる。
「おしゃべりな『俺』は煽っても反応がない敵に不満そうだな。」
時折聞こえる呟きは、もうひとりのサンディが零しているものか。騎士は変わらず狂気を口にし、不可視の声に応える者は無い。不満をぶつけるかのように力を籠めた一撃がサンディに向かった騎士の不意を突き、合わせて振われたサンディの剣が鎧ごと押し切った。だが、如何に不可視と言えどもサンディの作り出した似姿は一つ。そうと悟られれば数で騎士が圧してくるだろう。されどそれは状況を判じる猶予があれば、だ。騎士の合間を霞が通り抜ける。
「ほら、こっちだよ!」
騎士の動きを十分に観察したシホが乱戦の只中に飛び込んできていた。上から降り注いでいた水球は至近から放たれ、さらにシホを狙って攻撃しようにも他の騎士を盾に逃げられる。中には突撃の勢い余って味方を突き刺す騎士まで出ていた。元より小さいフェアリーの身体を活かし、宝石剣の鞘が作る霞の残像を纏って舞うシホが攪乱する。騎士たちはサンディの攻め手の絡繰りを見抜く余裕すらなく一騎また一騎と討ち取られていった。
大成功
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リーヴァルディ・カーライル
…ん。吸血鬼に仕えていた騎士達まで従えるなんて…。
ここで異端の神の狂気を止めなければ、
手の付けられない災厄になる可能性がある…。
…ならば、こんな場所で足止めされている場合じゃない、か。
邪魔よ。道を開けなさい闇の騎士達…!
常以上の気合いを込め限界突破した殺気を敵に叩き付け、
敵の第六感を惑わし先制攻撃を見切られ辛くしてUCを発動
…無駄よ。お前達の手口は知っているもの。
闇の恩寵によるカウンターは私には通用しない。
呪力を溜めた大鎌をなぎ払い存在感を消した血刃を乱れ撃つ早業で、
死角から黒鎧や闇霧のオーラによる防御を透過して首を断つ闇属性攻撃を行う
…捉えきれると思うな。
吸血鬼狩りの業を知るが良い…。
乱戦となってからも『闇に誓いし騎士』たちに焦りも動揺も見られない。感情など、とうに尽きているかのように。かつてはヴァンパイアに捧げた力も狂気に呑まれていた。ただヴァンパイアを倒すため、リーヴァルディ・カーライルが目にしたのはそんな騎士の姿だった。
「……ん。吸血鬼に仕えていた騎士達まで従えるなんて……。」
もし狂気に呑まれれば、あの騎士たち同様にその者が持っていた矜持も忘れてしまうのだろうか。その先にある世界は果たして、ヒトの世と言い得るのだろうか。
「ここで異端の神の狂気を止めなければ、手の付けられない災厄になる可能性がある……。」
今ならばまだ、止められる。この地に満ちる狂気も源となる『異端の神』を、『狂えるオブリビオン』を倒せば払拭できるのだから。リーヴァルディの握る黒き大鎌に力が籠る。
「……ならば、こんな場所で足止めされている場合じゃない、か。」
眼前に広がる狂気に囚われし騎士の群れは未だ衰えず。されどその向こうにこそ倒すべきモノが居るというのなら。
「邪魔よ。道を開けなさい闇の騎士達……!」
狂気満つ風を断ち、リーヴァルディの殺気が迸る。常以上の気合を以て、限界を超えたリーヴァルディの意志を叩きつけられ、騎士の身が強張った。騎士が身を襲う重圧を払った時には既に、その眼前に迫る血の魔刃。リーヴァルディが先制で放った【限定解放・血の飛刃(リミテッド・ブラッドファング)】は鎧を通り抜けて騎士の身を裂いて断つ。
「……その力…ヴァンパイアを倒す、力……」
倒れ伏す騎士に構う事無くリーヴァルディに向かう騎士たちの身に【闇の恩寵】が宿る。馬の速度を載せて突き出される突撃槍を躱し、リーヴァルディが振う黒い大鎌の一閃が騎士を切り裂いた。飛沫のように闇が溢れ、騎士を包む。傷を意に介さずに騎士が打ち付ける槍を弾いて、返すリーヴァルディの一閃が騎士を屠った。
「……無駄よ。お前達の手口は知っているもの。
闇の恩寵によるカウンターは私には通用しない。」
ヴァンパイアの戦い方は幾度となく見てきている。その手勢のやり方も。如何に狂気に呑まれようとも、その身に染みついた技が抜ける訳ではない。ならばヴァンパイアを狩ってきたリーヴァルディに見切れぬ道理はない。リーヴァルディの黒き大鎌に呪力が宿る。なぎ払われた大鎌の刃を突撃槍を盾に凌がんとした闇に誓いし騎士たちを、死角から飛び来る血刃が切り裂いた。
「……捉えきれると思うな。
吸血鬼狩りの業を知るが良い……。」
挙動すら見せずに乱れ撃たれた血の飛刃が騎士たちの首を断ち、防ぐ術を失ったその身体を大鎌が薙ぐ。吹き抜けた呪力が散った後に立つ騎士の姿はなく、『闇に誓いし騎士』はその数を大きく減らしていた。
大成功
🔵🔵🔵
羽生・乃々(サポート)
キャラ説明
UDC管狐を操る普通の高校生
気弱で臆病だけど責任感強め
口調補足
「きゃあ!」「いやぁ!」等の悲鳴の類が
何故か「こゃ!」「こゃぁ!」になってしまいます
シナリオ参加姿勢
凄く大変なアルバイト位の感覚で何でも参加
怖いしお仕事請けてしまった事を毎度後悔しつつ頑張ります
「何でこんなお仕事請けちゃったんでしょう…ううう、もう帰りたいですー、こやぁ…」
冒険・日常
祭り等は普通に楽しみます
一般人でもできる事は自分で、それ以外は管狐頼り
物探しが得意かな?
酷い目に遭うのもokです
戦闘
後衛デバフ型
狙われると涙目で逃げ回りつつ
UCで相手を凄く不幸にして妨害します
突然の故障や手元が狂う等
後はお任せ、連携も歓迎です!
時は少し遡る。陰鬱たる昏い空の下、狂気蔓延る集落の奥、その広場の中で。UDCアースの普通の高校生、羽生・乃々は自問した。
「何でこんなお仕事請けちゃったんでしょう……」
目の前に広がるのは全身を黒い鎧に包んだ物々しい騎士に立ち向かう猟兵の姿。まるで映画のワンシーンのような光景だが自分がその中に居るとなれば、ましてや黒き騎士が此方へと槍を構えて向かってきているとなれば涙目にもなろう。
「管狐さん達、やっちゃってくださーいっ!」
乃々の声に従い、するりと現れた管狐たちが【管狐の妨害(フォックス・ジャミング)】を放つ。途端、あちこちの騎士たちの連携の取れていた動きが崩れ始める。ある者は馬具の留め具が緩み、ある者は蹄が跳ねた小石に馬が驚き。一つ一つは小さな不運。だがそれも、立て続けに起これば集団としての動きを大きく損なう事になる。管狐から放たれた相手を猛烈に不幸にする『呪詛』により騎士たちは隊として戦う事ができない状況に陥っていた。
「ううう、もう帰りたいですー、こやぁ……」
繰り出される突撃槍の一撃を乃々が必死に躱す。その最中も彼女の使役する管狐から放たれる呪詛。これにより闇に誓いし騎士たちは十分な数を集めて猟兵に当たる事ができずにいた。乃々に吹き付ける風が、まるで呻く声のように聞こえる。
――ヴァンパイアを、すべて、倒せ。
否。それはたしかに声だった。狂おしいまでに心をかき乱す『異端の神』の狂気の中に在って、しかし乃々には狂気どころではなかった。
「こやぁ! 何かの声がしますー……帰りたいですー……」
『異端の神』にとっての不幸な事故だったのは、乃々の意識を戦闘とその最中にもグルグルと頭の中を回る何故この依頼を受けたのだろうという後悔が占めており、狂気が忍び寄る隙間が無かったことだろう。怖がりながらも乃々は持ち前の責任感から戦闘を投げ出す事無く騎士の殲滅を陰ながら支えていた。
成功
🔵🔵🔴
ヴェル・ラルフ
僕がやるべきことへの[覚悟]を今一度思い出して
吸血鬼を屠ることを唆すこの狂気への、[狂気耐性]に
陽動のために、他の猟兵とは違う方向から攻め入ろう
怪力そうな相手だから、正面から打ち合う正攻法は遠慮したいね
まずは、[早業]を生かして[残像]を残しながら敵陣へ[ダッシュ]して陽動する
自分の足ではなく馬の上から偉そうに動いてるんじゃ、足元不如意になるよ
敵が姿を捉えたと判断したら【日輪葬送】
錯視を起こして[フェイント]をかける
君が見つけた僕は、ただの身代わりの漆黒の炎
本物は[闇に紛れ]て敵の後ろへまわり、[全力魔法]
鮮緑の光芒一閃で[串刺し]
傀儡には、負けてられない
★アドリブ歓迎
ヴェル・ラルフは広場の正面を避けて回り込んだ場所から残存する騎士を見た。今だ狂気は鳴り止まず、むしろ進むにつれてその声が強まっているようにも思える。
「僕がやるべきこと、その覚悟を忘れはしない。」
峡谷の底に射す弱い陽射しにヴェルのピアスが朱殷色に煌いた。唯、吸血鬼を屠れと囁く狂気に唆されるのではなく、己に秘める覚悟を持って倒すべき者を倒すのみ。ヴェルは他の猟兵とは別の方向から黒き騎士へ向けて疾駆した。
「怪力そうな相手だから、正面から打ち合う正攻法は遠慮したいね。」
相手が統率の取れた重装の騎士ならば尚の事。態勢を立て直されれば騎士としての力も、その膂力も十全に振るって来よう。ならばこそ、ヴェルは陽動をかけて騎士たちへと仕掛けた。
「自分の足ではなく馬の上から偉そうに動いてるんじゃ、足元不如意になるよ。」
残像を残しながら高速で接近するヴェルに気づいた騎士が向かってくる。槍が残像を手ごたえ無く穿つも騎士は惑う事無く槍を構えた。その、兜の奥の邪悪なる瞳が輝く。
「すべて倒し……奪うべし……」
屠殺旋風を巻き起こし、巨大な突撃槍が振われた。騎士たちは互いを槍が叩くにも構わずにヴェルを、その残像ごと全てを叩き伏せ……しかしその全てが黒炎の残滓を残して空を切る。
「君が見つけた僕は、ただの身代わりの漆黒の炎。」
ヴェルの声が、騎士のすぐ背後から聞こえた。振り返った騎士が目にしたのは、【日輪葬送(ニチリンソウソウ)】の漆黒の炎を纏いて闇に紛れたヴェルの姿。
「赫う鮮緑、貫け肉叢。」
その声を最後に騎士の身体を鮮緑の光芒一閃、串刺しにした。他の騎士が槍を向けた時には既にヴェルは再び闇に紛れている。そしてその身に纏う漆黒の炎がヴェルを狙う騎士に錯視を引き起こし、残した残像に惑わされている間に一騎、また一騎と背後からの緑炎の光芒に貫かれていった。
「傀儡には、負けてられない。」
闇に誓いし騎士、その最後の一騎を鮮やかな緑の光芒が串刺しにし、ヴェルは狂気の来たる奥を見やる。配下の騎士を失えば、狂気の元凶たる『狂えるオブリビオン』自らが出て来ざるをえまい。ヴェルの纏う漆黒の炎が轟と燃える。狂気に相対するその意志を示すかのように。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『暗黒騎士サンドラ』
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POW : 暗黒を纏う者
全身を【暗黒のオーラ 】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD : 黒き騎兵の戦技
技能名「【ランスチャージ】【盾受け】【踏みつけ 】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ : 闇き魔槍の騎士
【ランスを構えた 】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【愛馬】の協力があれば威力が倍増する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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ロニ・グィー(サポート)
アドリブ・連携歓迎
「サプラーイズッ!驚いた?」
基本的に極々自分勝手で悪戯好きな神様
怖いもの知らずで迷うこと無く(考えも無く)、直感に従って行動する
うまくいけばふんぞり返り、失敗しても悪びれない(が強く詰られると涙目になって逃げだす。三分後には忘れてる)
自分を信頼する人はダダ甘やかし(お菓子とかあげる)、自分の我が儘を許容してくれる人にはダダ甘える
・戦闘
たくさんの空飛ぶ球体を操って攻撃・防御する
球体のサイズや機能は様々、銃弾の様に蜂の巣にする、巨大な球で圧し潰す、ビームや雷を飛ばす等何でも適当に
影の中から全弾撃ち出しての不意打ちだまし討ちや、最後には力押し(拳・暴力)で解決するのが好き
館の扉が、開く。一際強く風が吹き抜け、一層強い狂気が渦を巻く。その中心に在るモノこそが。
「その力を私と共に振るえ、猟兵。貴公らもヴァンパイアを倒すためにこの世界に在るのだろう。」
呪われし暗黒の武具を纏い、『暗黒騎士サンドラ』は語る。だがその身は呪いに侵され、その心は『異端の神』の狂気と共に在る。故にこそ、彼女は在りし日の成すべき事のみを留めていた。目指した先すら今は過去の彼方。そこへロニ・グィーが数多の球体を伴って飛び込んできた。球体が様々に形を変え、サンドラに殺到する。
「サプラーイズッ! 驚いた?」
圧縮してゆく球体が弾け飛ぶ。その中から愛馬に跨り突撃槍を構えたサンドラが球体を蹴散らしながらロニへと突進してきた。
「おっと危ない。ほらほら、こっちだよ!」
まるで揶揄うように球体をけしかけては逃げ回るロニ。サンドラへは有効打を与えられていないが、ロニも危なげなく立ち回っている。そして。
「そろそろかな? せっかく集めたんだし、使わないとね!」
ロニの言葉と共に奥の館が、周囲に在った集めた物を集積した倉が爆ぜ飛んだ。その中からはロニが逃げ回りながら潜ませた球体が飛び出し、収奪物や建物の一部を広場に投げ飛ばす。たちまち広場には崩れ落ちた瓦礫の塊があちらこちらに散らばった。
「さあ、馬で駆けるにはちょーっと障害物が多いんじゃないかな?」
笑うロニの言葉に暗黒騎士の愛馬が嘶く。広場に瓦礫が落ちたとて『暗黒騎士サンドラ』の機動力をすべて殺ぐほどでは無い。依然としてランスの突撃をかける広さはある。だが、散在した瓦礫は大きなものなら身を隠す事も出来る。障害物として使う事も可能かもしれない。
「私と共に来ぬと言うのなら……その身、突き砕いて狂気に浸し、傀儡としよう。」
金の髪が黒き闇に踊る。『異端の神』が憑きし『狂えるオブリビオン』、『暗黒騎士サンドラ』との戦いの火蓋が切って落とされた。
成功
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サンディ・ノックス
解放・星夜発動
多方向から小人に攻撃させて、俺は瓦礫から瓦礫へ移動して敵がどう立ち回るか観察
小人を潰すか術者の俺を狙うのか、どんな攻撃を仕掛けてくるか等、敵の攻撃を躱す判断材料を集める
小人は召喚した水晶が小人を模しているだけだけど自我がある相手のように話しかけて指示を出す
3つの中から好きな方法で遊んでおいで
・魔法弾で攻撃
・敵の周りを飛び回って遊びに誘う
・馬を触る、後ろからこっそり近づいてびっくりさせると面白いかも
小人が減る頃には敵の行動パターンがある程度つかめるだろう
小人を補充しショートソード大の黒剣で攻撃をしかける
しばらくして突然長剣大に変形させてリーチ外と思わせていたところから【だまし討ち】
狂えるオブリビオン『暗黒騎士サンドラ』の瞳が青い煌きを捉える。その青い水晶で模られた小人はサンディ・ノックスが【解放・星夜(カイホウ・セイヤ)】により召喚した存在。小人たちの動きを追うサンドラの様子をサンディは瓦礫から瓦礫へと身を隠して観察していた。
「分かったかい? さあ、遊んでおいで。」
サンディはユーベルコードで呼び出された水晶の小人にも意思を持つ者と同じように語りかけて指示を伝える。その意を受けて幾体の小人がサンドラへと向かった。サンドラは自分の周囲を遊びに誘うかのように飛び回る小人に構う事無く、ただ近づきすぎた小人を邪魔とばかりに払い砕く。遊び誘う小人の舞う中、別の数体が魔法弾で攻撃を仕掛けた。
「この程度、纏めて砕くまで。」
サンドラがランスを構えると同時に愛馬が疾駆する。ランスチャージの一穿が放たれた魔法弾ごと小人を砕いた。サンディは身を隠すこちらへは向かってこないサンドラの様子、その動き、攻撃を視てゆく。
「目に映る敵対する者を優先する、かな。」
サンディ自身はまだ攻撃を仕掛けてはいない。だからこちらを探すよりも小人を攻撃するのを優先しているのだろうか。突撃を終えたサンディの跨る愛馬が驚いたように嘶きを上げて前足を振り上げた。見ればこっそり近づいた小人が後ろから馬を触ってびっくりさせたようだ。
「それとサンドラと馬の視界に入らなければ見つかりにくい。」
気配が希薄なら尚更だろう。これも狂気に精神が侵されている故か。サンディが敵の行動を観察し終え、おおよそのパターンを掴んだ頃には小人の数も少なくなっていた。再び召喚した青い水晶の小人たちをサンドラに向かわせ、サンディも黒剣を手に瓦礫の影から一気に距離を詰めてゆく。
「来たか、猟兵。だが数を頼んだところで私には通じんぞ。」
サンドラが構えるは長大なるランス。対するサンディの黒剣はショートソード程度の長さ。突進をくぐり抜けても馬の速度に追いつかねば斬る事は出来ない短さ。それ故にサンドラは【闇き魔槍の騎士】として小人諸共にランスで突き崩す事を選んだ。黒き突進が小人を砕き、青い破片を散らしながら迫る。
「もちろん、分かっているさ。」
ランスの切先をサンディが潜るように躱す。馬の突進も躱すならば、そこから短い刃で切り返す事は不可能。だが、青い煌きがサンドラの視線を遮った瞬間。サンディの振った黒剣が長剣へと変じ、伸びた剣刃がすれ違いざまにサンドラを切り裂いた。
「だまし討ちとはな……」
切られた胴から血を零し、呟くサンドラにサンディは返す。
「お前も手段は選ばないじゃないか。」
例え如何な手段を用いたとしても。その先にサンディが見据える道は狂気に彩られた暗黒騎士とは違うもの。ましてや、かつての自身を繰り返す事は、無い。
大成功
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リーヴァルディ・カーライル
…ん。生憎だけど、お前の言葉に頷くつもりは無い。
…私は人類に今一度の繁栄をもたらす為に闘っている。
その私が護るべき人達を踏みにじる訳にはいかないもの。
ゆえに、お前とは決して相容れないと知れ狂神の騎士…!
大鎌を武器改造して双剣化し吸血鬼化して魔力を溜めUCを発動
“闇の雷”と融合し全身を雷属性攻撃のオーラで防御し雷化する
…決戦呪法展開。この十秒で闇を切り裂き、決着を付ける…!
今までの戦闘知識と第六感から敵の死角を暗視して見切り、
雷速の早業で死角に切り込み生命力を吸収する双剣による2回攻撃を行い、
その行動を雷速で繰り返す限界突破した常時先制攻撃で敵を乱れ撃ちにする
…っ。ここまで、ね。後は任せた…わ。
『暗黒騎士サンドラ』から血の雫が垂れる。狂おしいまでの渇望の籠る視線が問うていた。
貴様ら猟兵も、同じであろう、と――。
「……ん。生憎だけど、お前の言葉に頷くつもりは無い。」
その視線を真っ向から受け止め、しかしリーヴァルディ・カーライルは否定する。目指す先は、その先には無いのだと。
「……私は人類に今一度の繁栄をもたらす為に闘っている。
その私が護るべき人達を踏みにじる訳にはいかないもの。」
リーヴァルディの言葉にサンドラの瞳が揺れる。だが武具から溢れ強まる呪いが、何よりその魂を蝕む狂気が、サンドラに共感を許さない。ならばこそ、既に帰れぬ道を進む者にリーヴァルディは切先を向けた。
「ゆえに、お前とは決して相容れないと知れ狂神の騎士……!」
リーヴァルディの持つ黒の大鎌が二つに割れる。鎌の刃は分かれ、柄もその形を変えて二振りの剣と成した刃を両の手に、リーヴァルディは吸血鬼の血を呼び起こした。
「その力……その力は!」
サンドラが、その身に纏う狂気が、倒すべき敵を認めて暗黒のオーラを溢れさす。リーヴァルディが溜めた魔力が“闇の雷”となりその身を奔り、瞬く間に全身を覆った。
「……決戦呪法展開。この十秒で闇を切り裂き、決着を付ける……!」
リーヴァルディが行使するは【限定解放・血の魔装(リミテッド・ブラッドポゼッション)】。纏う “闇の雷”と融合し、その雷速を己に宿してリーヴァルディが双剣を振う。
「くぅッ!」
負傷故か防御が僅かおくれたサンドラの、切り裂いた傷口から暗黒のオーラが力を与える。瞬刻、舞うリーヴァルディの剣閃にサンドラが増強された戦闘力で打ち返した。加速するリーヴァルディがサンドラの視線、その意識すら潜って死角から斬り上げ、噴き上がる血と暗黒がサンドラに更なる力を与え。
「その血は……すべて、すべて……倒す!」
刹那の永劫に交わされた無数の剣刃、リーヴァルディは貫き返さんとするサンドラのランスにすら先んじて斬撃を乱れ撃つ。弾ける雷がランスの切先を鈍らせ、リーヴァルディの双剣が吸い取る命を上回るには至らなかった。リーヴァルディが今までの戦闘経験と第六感からサンドラの動きを見切って放ち続けた猛攻が暗黒騎士を死の淵へと追い詰めてゆく。だが【限定解放・血の魔装】の力は十秒が限度、それ故にリーヴァルディは倒しきれない事を感じ取っていた。
「……っ。ここまで、ね。後は任せた……わ。」
リーヴァルディから力が抜けてゆく。暗黒騎士は満身創痍と言えるが、まだ立っている。それでもリーヴァルディには見えていた。後に続く者へと渡し繋ぐ勝機が。
大成功
🔵🔵🔵
シホ・イオア
人々を傀儡とするやりかたなんて見過ごせない!
シホが戦うのは苦しみから救うためだよ。
その力で人々を侵し傀儡とするのはヴァンパイアと何が違うのさ。
そんなことも分からなくなっているのかな?
なら、シホが解放してあげるよ!
「輝石解放、ルビー! 愛の炎よ、狂気の源をやきつくせ!」
上空から分散させた炎で狙っていきます。
サポートや連携時は誘導弾で
隙ができたら全力魔法の収束させた炎を撃ち込みます。
黒き騎士の身体が傾ぐ。『暗黒騎士サンドラ』は数多の傷を受け崩れ落ちそうになる己を、狂気孕む意志で以て馬上に留めた。
「これほどか、猟兵の力……ならばやはり、是が非でも我が下に。」
己の負傷すら気にかけず、サンドラは口の端を歪め笑う。収奪すべきは強大なる力、であればそれが眼前にある事実以外は些末な事。ヴァンパイアを倒すという、ただそれだけの為に。その後の世界を見失った狂気の騎士の行く手をシホ・イオアが遮った。
「人々を傀儡とするやりかたなんて見過ごせない!
シホが戦うのは苦しみから救うためだよ。」
ここに来るまでに見た人々。全ての意志を一つの狂気に縛られたヒトの群れに幸せなど見いだせようはずもない。何よりも、集落の様子、人々の纏う雰囲気は。
「その力で人々を侵し傀儡とするのはヴァンパイアと何が違うのさ。」
倒すべき敵の所業と酷似していた。されど、その正しさは騎士にはもはや届く事はなく。
「そんなことも分からなくなっているのかな?
なら、シホが解放してあげるよ!」
シホの意を受け輝石が輝く。ルビーの煌きが広場を篝火よりも鮮烈に照らした。
「輝石解放、ルビー! 愛の炎よ、狂気の源をやきつくせ!」
シホと共に舞い上がったルビーの輝石が愛の炎となりて。【ハート・ロンド】で放たれた数十に及ぶ炎は広がりながら、それぞれが意志を持つかのようにサンドラへと舞い踊るように降り注いだ。
「ふ、ふふ……そうだ、この力、猟兵の力も合わさればヴァンパイアとて……!」
舞い来る炎をランスで弾き、愛馬の疾駆で駆け抜けるサンドラはどこか妄念じみた気配を纏う。それは『異端の神』の狂気か、あるいは黒き武具の呪いか。シホの操る愛の炎が、サンドラの影を祓うようにその身を燃やしゆく。サンドラの視線が空に舞うシホを見据えた。炎を降らせるシホも目を逸らさない。サンドラの愛馬がその脚に力を籠め、シホ目掛けて跳躍した。
「もう狂気に囚われ続けなくていいんだよ! 愛の炎よ、集え!」
シホが分散させていた愛の炎を一つに纏める。ランスを構えて天へ向けて突進するサンドラへと、シホが収束させた全力の炎が放たれる。爆ぜる炎が広場を揺るがせ、ルビーの煌きが辺りを染めた。シホの意のままに燃える炎は周囲へ広がる事無く消えてゆく。そしてその後には。
「か、はっ……」
炎と共に地に叩き落されたサンドラの姿があった。既にその身は崩れてもおかしくはなく、されどその魂を突き動かす狂気がサンドラを繋ぎ止めている。だが、幾度と猟兵たちの力を、想いを受けたその楔はもはや長くはもつまい。
大成功
🔵🔵🔵
ヴェル・ラルフ
伸びる牙と爪、銅色の髪と鮮紅の瞳
吸血鬼そのものへと姿を変える
先刻の味方との戦いを見れば、この姿に激昂するだろうと想像する
宵いの鈴を構えて【哀惜追想】
仲間を攻撃しないように大切な人たちを思い出して、勇気を振り絞り狂気耐性
この姿は自身が苦しむことなど当たり前だと覚悟を決めさせてくれるから、命を削る痛みは甘んじて受ける
激昂して仕掛けてくるであろう敵の初手を暗視で見切ってなぎ払い、受け流して肉薄
鍛えた早業と相手の勢いも利用して疾風怒濤の串刺し
吸血鬼は僕だって大嫌いだもの
滅ぼすことに反対はしない
けれど、異端の神も、オブリビオンも
ヒトにはいらない
哀しいけれど、ね
★アドリブ歓迎
鎧の鳴る音、『暗黒騎士サンドラ』が愛馬と共に立つ。既にその身ひび割れても尚、狂気の駆り立てるままに眼前を見遣った。全ては、この世界からヴァンパイアを駆逐するために。歪むサンドラの視界に人影が映る。伸びる牙と爪、銅色の髪と鮮紅の瞳のその姿は。
「吸血鬼……ヴァンパイア……ッ!」
血と共に吐き出されたサンドラの言葉を前にその人影、吸血鬼そのものへと姿を変じたヴェル・ラルフは静かに細身の剣【宵いの鈴】を構えた。
「吸血鬼は僕だって大嫌いだもの。滅ぼすことに反対はしない。」
狂気の果てに絶望は晴れるのか。今一度、ヴェルは己の胸中に大切な人を思い浮かべる。強まる狂気の中に在って、その想いはヴェルの往く道を照らしていた。
「すべて、倒すッ!」
もはやヴェルの言葉にも反応を示さずにサンドラはランスを構えて突進する。多くの傷を負ってなお【黒き騎兵の戦技】は鈍る事無く。だが、猛るままに突かれる切先はヴェルを捉える事はなかった。吸血鬼の姿で激昂させ、誘った初手の一突きをなぎ払い、受け流しながらヴェルが肉薄する。その身につける朱殷色のピアスが輝いた。
「苛む朱殷、己を嘆け。」
【哀惜追想(アイセキツイソウ)】がヴェルの剣閃を加速させる。穿つ剣刃がサンドラの突進の勢いも乗せて数瞬の魔に幾度も突き立った。ヴェルの身体が軋む。宵いの鈴の切先が味方へと惑うたび、その軌道を敵へと向けるたび、ヴェルの命が削られる。
この姿は自身が苦しむことなど当たり前だと覚悟を決めさせてくれるから。
思う大切な者が在ればこそ、この痛みも甘んじて受け入れられる。ヴェルの刺突を受けたサンドラの盾が積み重なった損耗の末に砕けた。構わず振るわれるサンドラのランスとヴェルの剣が真っ向から切先をぶつけ、すでにひび割れたランスは耐え切れずに折れる。それでも止まらぬサンドラの胸に、ヴェルの剣が突き込まれる。
「けれど、異端の神も、オブリビオンも、ヒトにはいらない。」
サンドラの愛馬が駆ける勢いのままにヴェルの剣が黒き鎧の背に貫けた。最後の一穿に串刺しにされたサンドラから力が抜けてゆく。傾いだ身体が愛馬の背から落ちた。
「哀しいけれど、ね。」
絶望を掃うのは今を生きる者の役目故に。崩れゆく黒き騎士から剣を抜き、ヴェルはその姿が骸の海に還るのを見送った。縁たる狂えるオブリビオンが還り、繋ぎ止められていた異端の神がこの地より消えてゆく。狂気が消えれば、やがて連れて来られた人々も正気を取り戻すだろう。
今だ夜と闇が濃いダークセイヴァーに在って、猟兵たちの姿は彼らに光を齎せるか。主を無くした馬の嘶きが風に紛れる。やがて消えて主の元に還る時、猟兵たちが見せた光は狂気無き彼女にも届くだろうか。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2020年03月27日
宿敵
『暗黒騎士サンドラ』
を撃破!
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