【Q】紫線の彼方、大海を見つめて
●
たたと駆けてくる足音がした。
「レディ・オーシャンを倒したんだって!」
現れた弦月・宵(マヨイゴ・f05409)は、手短に『レディ・オーシャン』によって行われていた儀式と、その阻止に成功した旨について話す。
「詳しくは依頼の記録を見たほうが早いかな。その後に起こったことが本題なんだ。
去年の夏、エンパイアウォーがあった時のことを覚えてる? あの時に引き上げと、修復をした鉄甲船の様子がおかしいみたい」
儀式の阻止に成功した猟兵たちは、鉄甲船の艦首から細く『紫の光』が放たれていることに気付いたらしい。そしてその光が示す先は、恐らく全ての艦に共通し、同じ方向に向かって伸びている。
「オレ、あの艦なら外洋に出られるって聞いた時に、いつか海の向こうへ行けたらって思ったんだ! きっとあの光の先に何かあるんだよ」
●
『グリードオーシャン』
かつて第六天魔王「織田信長」は海の向こうをそう呼んだ。オブリビオンを招来し、侵略を行おうとした場所でもある。
「気を付けて。きっと、楽しいだけの航海にはならないと思う」
これまでに誰も、その外側へは行けなかったのだから。
「水と食料、医療キットあと、少しくらい艦が壊れても、直せるだけの資材と工具は乗せて行った方がいいよね。今言ったものは最低限、積み込みが終わってると思って大丈夫だよ! オレに出来るのはここまで」
あとは……と口元に指を当てた宵が、あっ、と集まった猟兵たちを振り返った。
「艦の名前はねー、『木っ端エビ船(こっぱえびせん)』!」
それはそれは幸先不安な名前だが、名付け親は大変満足のようで。
宵は笑顔で送り出すのだった。
そして、その名付けが呼んだわけではないだろうが、やがて艦は大嵐に巻き込まれることになる。
四方八方から吹き付けてくる風に、忽ちマストが悲鳴を上げ、縛り上げたはずのロープが端から千切れていく。
海は海でうねりがあちこちに渦を生み、横波に舵を取られて右へ左へ。そのままにしておけば、幾ら艦といえども転覆するのは時間の問題だ。
いつ脅威の海洋災害を抜けるのか、またいつオブリビオンに目を付けられるか分からない危険な旅路であるが、どうか『紫の光』の指す場所へ辿りついてほしい。
祈る宵の手の中で、グリモアが輝いた。
サヤエンドウ
サヤエンドウです。
お目に留めて頂きありがとうございます。
グリードオーシャンを求めて、エンパイア沖に出航です。
●概要
第一章…冒険 :『脅威の海洋災害』大嵐に遭遇。
第二章…集団戦:大嵐の中『兵器百般』が出現。
第三章…ボス戦:大嵐の中
『???』が出現。
●シナリオの傾向
クリア条件は『紫の光』の示す場所への到達です。
2・3章のはじめに艦の損傷や進行状況の描写を挟みます。
大嵐の中での戦術、利用する術などの考察があれば、
戦闘を優位に進めることができるでしょう。
●
プレイング受付のタイミングは追ってご連絡します。
諸々の傾向についても併せ、マスターページをご参照ください。
※緊急のお知らせを記載する場合もあります。
・アドリブ(A)・絡み(K)はNGの場合のみ。
【A×、K×、AK×】【絡みNG】など、ご記入ください。
・お相手がいらっしゃる場合。
【相手のお名前(呼称や愛称)と、ID】または、
【グループ名(【】付きだとより確実です)】を必ず入れてください。
迷子防止にご協力お願いいたします。
皆様の冒険譚をより引き立てられるように頑張ります。
よろしくお願いいたします。
第1章 冒険
『脅威の海洋災害』
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POW : 肉体の力で体力任せに海洋災害に立ち向かいます
SPD : 素早い行動力や、操船技術で海洋災害に立ち向かいます
WIZ : 広範な知識や、素晴らしいアイデアなどで海洋災害に立ち向かいます
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※ 業務連絡
大変お待たせしておりました。
3月10日(火)8:30より、プレイング受付を開始します。
ご縁がありましたらよろしくお願いいたします。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー
シホ・エーデルワイス
外洋の果てを見たいという親友の願いを叶えたい
仲間に自分のできる事やUCの効果を事前に説明
重い積荷は荷崩れしない様に船体への固定を提案
積荷が崩れたら怪我や破損だけでなく
船の重心バランスが崩れて
転覆しやすくなると思うから
船酔いする方には<医術>で酔い止め等を処方し手当て
緊急時は舳先のなるべく最先端で【翼域】の結界で船を周辺海域ごと包みます
ただ嵐の間中ずっと維持し続けるのは困難ですので
ここぞという時に使い
その間に仲間には船の修理や休養を取って頂ければと思います
主よ
どうかこの船をお守り下さい
嵐が過ぎて空が晴れても波が落ち着くまで時間が掛かりますので
油断せず注意します
<第六感と聞き耳>で敵襲も警戒します
鈴桜・雪風
(嵐の中でもゆったりとした空気のまま)
わたくし、嵐を砕くほどの武勇はないのですよ?
この船で出来ることと申されましても、そう多くはないでしょう
そう、せいぜい……
風と波と波間の岩礁と今後の天候変化を計算に入れて、船体へのダメエジを最小限に抑える進路を導き出す程度でしょうか
ああ、他の猟兵様もいらっしゃいますし、その方々の能力も計算に入りますわね
いづれにせよ、超人的な術や力で船に干渉することは叶いませんが……
【此の世に不可思議など有り得ない】。如何に複雑怪奇な天の気とて、冷静に見極めれば光明の一つ二つは見つかるものでしょう
流れる木っ端は川の流れに逆らわず、しかしいづれ大海に流れ着くものなのですから
ギャレット・ディマージオ(サポート)
●設定等
ダークセイヴァー出身の冷静沈着な黒騎士です。
かつてオブリビオンに滅ぼされた都市で自分一人だけ生き残ってしまった過去を悔いており、人々を守り、被害を防止することを重視して行動します。
●行動方針
⛺冒険では、事態の解決に向けて自分の出来る範囲で全力を尽くして行動します。
負傷する危険性のある行動でもリスクを顧みずに行い、囮になることも辞さない構えです。
「絶望の福音」での先を見据えての行動や、「無敵城塞」での防御を固めての力押し、黒剣を変形させての工作等を得意とします。
他は全てお任せします。
別の猟兵との交流や連携等も自由に行ってください。
どうぞよろしくお願いします。
●
いざ、猟兵たちを運ぶ鉄甲船は嵐の海域へと漕ぎ出でる。
シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)と鈴桜・雪風(回遊幻灯・f25900)を中心に、艦のそこここでは既に嵐に対する備えが取られていた。
出航からさほど時間も経たぬうちから、風は勢いを増す一方だった。逆巻くようにうねりを上げる波間を縫うように、艦は光の指す方角へと進む。ただ舵を切るだけでは済まなくなるのも、時間の問題だろう。
誰ともなく操舵室に集まったみなの顔を見渡して、嵐の訪れを感じながらも雪風はゆったりとした空気を崩さぬまま。
「シホさんは、艦に結界を張られることが出来るのですわね」
すすと、淑やかに髪に手をやりながら、彼女は早々に周囲の猟兵へいくつかの質問を用意する。
「ええ。私の祈りを拠り所に、周辺の海域ごと結界で外部からの攻撃を遮断することができます」
事前に自身のできることや、ユーベルコードのことを伝えていたシホが改めて肯定し、それは素敵な能力ですわ、と雪風が感嘆する。
「ただ、嵐の間中ずっと、その状態を維持し続けるのは困難ですので、祈りはここぞという時に使いたいと思っています」
「ええ。ええ、是非そうしてください。他の皆様はいかがかしら?」
もう1人、共に乗り合わせた猟兵を、ギャレット・ディマージオ(人間の黒騎士・f02429)といった。
彼もまた、これまでも経験から二人と共に積極的な船内活動に勤しみ、嵐に対する被害防止に努めた。
「私は10秒先の未来を見据えて行動している。飛来物などがあれば、防御を固めるか、黒剣の変形による工作によって対応するつもりだ」
兜を深々と被り淡々と語る騎士にも、それは頼もしいですわ。と雪風は朗らかに返す。
各々の能力の効果や及ぶ範囲を丁寧に聞き終え、あなたは? と問い返されてはんなりと微笑んだ。
「わたくし、嵐を砕くほどの武勇はないのですよ? この船で出来ることと申されましても、そう多くはないでしょう」
そう、せいぜい……。
「おい! 何でもいい、近くの物に掴れ」
言いかけた刹那、ギャレットがそれを遮り、僅か数秒後にガタリ! と大きく船体が傾いた。
「ロープが切れたようだ。一部の帆が下がっている」
その場にいながらにして、【絶望の福音】はマストに駆け寄り詳細を確かめる自身の姿を鮮明に脳裏へと描き出した。
「予備のロープはございますわ、それで一刻も早く応急措置を。船体を立て直すのです」
彼は指示に短く答え、雨風の中に走り出す。
その背中にシホが続く。
「私は下の積荷を見てきます。重い荷は荷崩れを警戒して船体に固定してありますが、万が一ということもあります」
頷き合った猟兵が船内に散った。
船底部に近い倉庫まで来たシホは、無事に納まっている荷を見て胸を撫で下ろす。出発時に提案し、船が揺れる前に対策を取っていたことが功を奏した。怪我や破損の危険ばかりでなく、波任せに荷が動いたのでは船の重心バランスを崩す原因になりかねない。
外洋の果てを見たいという親友の願いを叶えるためにも、ここで艦を転覆させるわけにはいかないのだ。
「シホさん! 来てください!」
上階から呼ばれる声にすぐさま踵を返し、艦首へ向かってほしいという要請に彼女が向かえば、果たしてそこから見えたのは、幾多にも重なるように発生した渦を巻く海だった。
「大丈夫です」
暴風と揺れる船の上、ともすれば海へと投げ出されない危険な状況の中、艦首から舳先へ、その先端ぎりぎりへと立ったシホは、光の先一点を見据えて両手を組んだ。
「主よ、どうかこの船をお守り下さい。……守護翼展開」
祈りの詠唱を捧げると、彼女の背負う翼が艦と後方に広がる海域のすべてを包み込んだ。
【翼域】の果てなき守護翼の聖域の加護を受けたその空間では、それまでの波風が嘘のように静まり返り、ただ温かくも感じる波しぶきと雨が、耳朶を打つばかりだった。
「今のうちに船の修理や休養を行ってください。加護の外の海は落ち着く様子がありませんし、敵襲も予想されます」
祈りが続く限り、警戒を怠りませんから。そう言って、シホは祈りを高めるために一度目を閉じた。
その頃。
ギャレットもまた、マストと帆布の固定箇所を2倍の量に増やし、大方結び直し終えたようだった。前方の渦に引き寄せられるように、艦は走行していく。今の静けさも一時のものならば、暫らく帆を張る必要はないだろう。
「流石ですわね……」
ほうと息をつくように、操舵室から出てシホとギャレット、海を見比べた雪風が呟いた。
薄青い雪色の髪に絶えず添えた指先は、風に乱れる髪を整えるどころか更に乱し、次なる手を考えていた。
ふいと逸らされた視線が天を見、風を読み、波間の潮を見通して海流へと向けられる。
「この領域には、航海の障害になるほどの岩礁や浅瀬はもうありませんわ。それよりも警戒すべきは、天候の変化……特に風は、今後どの方向から吹き付けてきてもおかしくないようです。急な突風によって、突然煽られるようなことがないようにしておかなければ。それからあの大渦……あれは暫くすれば一度消えますわね」
先ほど、同船した仲間には告げ損ねた言葉の先。
彼女にできること、それは艦に影響を与える波と風、そのほかすべての事柄を計算し、船体へのダメエジを最小限に抑える進路を導き出す……その程度のこと。しかしその実、彼女の能力の程度とは、他の猟兵が扱うユーベルコヲドと遜色ない域に達している。
「超人的な術や力で、船に干渉することは叶いませんが
・・・…」
たおやかに彼女の唇は紡ぐ。
「【此の世に不可思議など有り得ない】」
如何に複雑怪奇な天の気とて、冷静に見極めれば光明の一つ二つは見つかるものでしょう。
数歩欄干に歩み寄り、嵐に翻弄されながらも沖を指し続ける艦に触れた。
「流れる木っ端は川の流れに逆らわず、しかしいづれ大海に流れ着くものなのですから」
航海は半ば、目的地、未だ見えず。
成功
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レイブル・クライツァ
この鉄甲船とは二度目まして、かしら?
海老みたいな色と言えば良いのか、海老みたいに優雅に海を泳ぐ姿を想像すれば良いのかしら…宵さんの発想力が羨ましいわ
無事辿り付けるよう、全力を尽くすわね?
障害が災害なのはアレなのだけれども…船に対しては敵って認識だから、全く問題なく倒せると思うの
ミレナリオ・リフレクションで再現と参りましょう?
雨の流れで風向きは読み易いし、速さは音でも確認出来るから
大嵐は大鎌の回転力を生かした逆回転で相殺して
大波は白黒で波模様に沿って真っ二つにする様にして、船が通れるだけの道を開拓
漂流物は使えそうなら、船にぶつかる前に勢いを削いでから拾って
使えそうになければ、まあ砕くの一択よね?
●
嵐の前の静けさならぬ、嵐の中の静けさを得た『木っ端エビ船』は快調に海を滑る。だがその加護にも限界はある。
艦の甲板に出たレイブル・クライツァ(白と黒の螺旋・f04529)は、綺麗に修繕されて傷のなくなったマストや、大穴が空いていたはずの船体を目で追いながら、記憶の中の鉄甲船をなぞった。
「この鉄甲船とは二度目まして、かしら?」
形こそ同じであれ、見違えた艦の凛々しい様相に語尾を濁す。操舵室に、見慣れぬ海老頭の壁飾りを見つけてしまったから、もあるかもしれない。
木材の地色を残しつつ、全体に黒っぽい撥水コーティングを施された艦は、まあ見ようによっては海老の色? とも言えるのかも……?
「海老みたいな色と言えばいいのか、海老みたいに優雅に海を泳ぐ姿を想像すれば良いのかしら……」
けれど海老は泳ぐ時、確か後ろ向きに跳ねるような動きをするはず……いまいちその姿と艦の動きが結び付かず、首を傾げる。同時に、名付け親である猟兵の発想力を羨ましく思うレイブルであったが、当の本人はおそらくお腹がすいていて、類似した名前のお菓子をもじった! と供述することを断言しておく。
「無事辿り着けるよう、全力を尽くすわね?」
彼女の密かな天然要素が炸裂していた頃、海は俄かに嵐の海域へと戻りつつあった。
海に浮かぶ船にとって、外からの脅威である災害は障害となる。ならば、船の敵という認識になるとレイブルは定義する。本来ならユーベルコードを対象とする技だが、その要領で対応すれば、問題なく倒せると思ったのだ。
「【ミレナリオ・リフレクション】で、再現と参りましょう?」
激しさを増し、叩きつけるようにして降る雨粒から風向きを読み、耳元で轟々となる風の音を聞き分けて速度を知る。
そうして、レイブルが手にした大鎌は、対多数戦を意識した大型のもの。慣れた手つきで柄を回転させ、その力を活かした風を発生させると、艦を取り巻く大嵐と相殺する。
一方向からでなく吹き荒れる暴風に苦戦はしつつも、先にそれを予測していた猟兵からのアドバイスも味方した。
「これで
……!!」
ようやくまた進みだした艦の前方。聳えるように立ちはだかった黒影に、視線が下から上へと移る。
艦の進行を妨げたのは、大津波だった。風に煽られてせり上がった水面が、すぐそこにまで迫っていた。
船首楼の上でひらりと身を翻し、構えを変えると、縦軸に並ぶ波の飛沫の筋に沿うようにして白黒の陰影を見定める。
真っ二つに切断された波の間を、艦は悠々と漕ぎ抜けた。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『兵器百般』
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POW : 騒霊カミヤドリ
【纏っている妖気の色が血のような赤】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : ひとりでに動く武器
【念動力で浮遊すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【自身が持つ武器としての機能】で攻撃する。
WIZ : 武器の知恵
技能名「【武器攻撃】【武器受け】【戦闘知識】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
👑11
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●
同じ艦に乗り合わせた猟兵たちは、海からの脅威を払い除けた。
その後も荒れた海の様子に変わりはないものの、沖を示していた導のほうに変化が起きた。
突如として『紫の光』の中から、オブリビオンの群れが出現したのだ。
現れたオブリビオンの一団は『兵器百般』、多種多様な武器がポルターガイストのように飛びまわる怪異……。
特にここは長く未踏とされてきた、サムライエンパイアの外洋。或いは志を胸に、或いは夢に導かれて、また或いは侵略を野心として漕ぎ出した者を悪夢の如く飲み込んできた魔の領域。
その無念に惹かれたか、その数は瞬く間に増えて艦を取り囲んだ。
我々を置いて、何処へ征こうというのだ……ナァ……?
そうダ……この先はイケナい……何もナイ。
アッテはナらない……沈メ……我らのヨウニ……。
はたまたその嘆きは、海の底に取り残されて朽ちた、彼ら自身の無念でもあるのか。
揺れの絶えない足場の悪い艦の上、暴風荒れ狂う空もまた、条件は同じであろう。
そんな悪条件の中、如何にして敵と対峙するか。
猟兵たちは判断を迫られる。
だがここで引き返す訳にはいかない!
『紫の光』は、まだ先を示してる。
進め。その果てを、見届けるまで――。
鴨嘴・ケンゴ(サポート)
戦闘をメインに活躍させて欲しいっす。
戦闘での行動は変形する偽神兵器を使って、カッコいい剣撃と銃撃、捕食による敵のデータ収集と偽神兵器の強化を行うっす(メタ的に言うとゲームのゴットイーターな感じ)
敵は絶対殺す又はデータ収集すると言う意思で戦う為に戦闘中は性格が変わったように攻撃的になります。
(口調 少年(おいら、~くん、~さん、~っす、~っすよ、~っすね、~っすか?)
敵には 野生の感覚が蘇る(オレ、アンタ、言い捨て)っす。
●
ひょこりと甲板に顔を覗かせた鴨嘴・ケンゴ(カモノハシのストームブレイド・f24488)は、空中に漂う兵器たちを見て……驚くどころか目を輝かせた。
彼にとって敵を捕食しデータ収集をすることは、一般人がおいしいご飯を求めるのと同じこと。いわば本能だ。
「もし当たっても恨まないで欲しいっす!」
周囲への注意を呼び掛けた後、彼はその本能を爆発させる。
偽神兵器【骸食】を駆使し、自身の身体以上の大きさを誇る大剣を砲撃の型へとフォームチェンジさせる。
その間にも、標的を見つけたとばかり刃をぎらつかせ迫りくる『兵器百般』だが、間合いを詰め切るよりも先に、【これで一掃するっす!!】と叫んだケンゴの偽神兵器が弾をばら撒いた。
無数のエネルギー弾に、彼を包囲する武器が数々と撃ち抜かれ、甲板に、海にと落ちていく。
しかし、仲間意識どころか相手の力量を測る意志さえ持たぬ武器たちは、怯むことなく彼の間合いへと侵入する。
その幾つかは幸運にもケンゴを間合いの内へと捕らえる。だが。
「……あんましオレを舐めんな」
斬りかかる刀の鍔が、ガギッ……と鈍い音を立てて動きを止めた。
砲撃型より瞬時に変形した【骸食】が、その凶刃を振るう。真二つになった刀や、甲板に散らばった武器らを己が力へと変えるため、吸い寄せるようにしてケンゴの手元に引き寄せた。
「ああ、これオブリビオンってより操られた武器? 食い甲斐がないが、その念動力だけいただくか」
宿った力の源を啜った彼は、興味なさ気に金属の塊を投げ捨てるのだった。
成功
🔵🔵🔴
フローリア・ヤマト(サポート)
『大丈夫よ、私達に任せて』
『うるさいわね……ちょっと黙らせるわ!』
呪いにより余命1年と少しの、クールな美少女です。
口調は上記のように少しツンとした感じですが、人間が嫌いなわけではなく、仲間や人々のことを心の底では大切に思っており、戦闘でもうまくサポートしようと立ち回ります。
また、敵に対しても怯むことはなく、時には挑発めいたセリフも交えながら、死角や弱点を突いて確実に仕留めることを狙って戦います。
フローリアのユーベルコードは、嵌めている「呪いの指輪」から黒い糸や影を放つ……みたいなビジュアルイメージなので、そのように描写していただけると嬉しいです。
●
荒れる海、波間に翻弄される艦の上に、黒い蝶が舞い降りた。
「潮臭いし、艦は揺れるし……何よ『木っ端エビ船』って、センスないにもほどがあるわよ」
突っぱねるようにツンと言い放ちながら、その蝶は方々から吹く風に逆らわず飛ぶ。蝶の名はフローリア・ヤマト(呪いと共に戦う少女・f09692)。
空に飛びあがった彼女に気付き、血のような赤い妖気を纏った弓が矢を射かける。
「あら、私に見惚れてくれるあなたの持ち主は、もういないのね」
風の中、その無差別な攻撃をフローリアはひらりと躱し、目を細めた。手に嵌めた指輪から立ち昇る、風に散ることのない影が彼女の羽、【紋黒蝶】の正体だ。
彼女には時間がない。
呪いの指輪の力で兄を蘇生させ、代償に余命を抱えた身体を、猟兵として生きることで理を歪め……。同じく歪んだ存在である兄を運命から守るため、自らに呪いを科した指輪に力を借りて、戦っている。
だが、いや、だからこそ。
彼女は、呪いの、絆の分だけ強くなるのだ。
肌の上を這うようにして、影はフローリアの力を増強する。斑紋を描き、指先から武器へと侵食範囲を広げるように、倭刀と彼女を繋いだ影が獲物を捉えて鎌首を持ち上げる。
少女は、己を導く影に従うまま手にした倭刀を振りかざし、見えざる力と共に刃を振り下ろした。
一撃のもとに、武器が砕ける。
「なーんだ、この程度なのね?」
自身を狙う弓矢を、切っ先を向ける刃を、次はあなたと言わんばかりに青い瞳がなぞる。
たじろぐ武器たちを前に、少女は不敵な笑みを浮かべた。
成功
🔵🔵🔴
鈴桜・雪風
ああ、船幽霊の類ですの?
志半ばで力尽きた無念、夢破れた残念、追い抜こうとするものを呪う怨念
よろしいですわ
桜の精の誇りにかけて、それら鎮めてみせましょう
嵐に乗せて【桜の癒やし】を吹き付け、宙舞う刀剣達を安らかな眠りに誘います
――そう、あなた方はよく頑張りました
前人未到の海へその身一つで漕ぎ出した、その挑戦にこそ価値があるのです
真の勇気を示したあなた方を、誰も笑いは致しません
だから、胸を張って故郷へ……暖かい場所へお帰りなさいませ
土産にあなた方の冒険譚を聞かせて差し上げて――
眠りに落ちれば浮かび続けることすら叶わないでしょう
そのまま波間に沈み、在るべき水底へ戻りなさい
●
嗚嗚ォ……嗚嗚ォ……と怨み言を纏わせて、嵐の中に姿を現した『兵器百般』は、怨霊と言って差し支えない。
「ああ、船幽霊の類ですの?」
鈴桜・雪風(回遊幻灯・f25900)は、世界や場所を問わず存在する彼らに向けて、目を細めてみせた。
「志半ばで力尽きた無念、夢破れた残念……」
ひとつ、彼女は歩を刻む。ふたつ、彼女は言葉を刻む。
「追い抜こうとするものを呪う怨念」
吹き荒ぶ雨風に、桜柄の和傘は閉じたまま。
「よろしいですわ」
彼女が選んだ退散の方法は、その魂を癒す道。
しゃんと背を正した立ち振る舞いが、これまでに帝都で対峙してきた闇の深さを物語っていた。
「桜の精の誇りにかけて、それら鎮めてみせましょう」
それは、その闇を泳ぐ少女の子守歌。
子供に聴かせる夜毎語りを唄うような、やわらかな声音はそのままに、【桜の癒し】が吹き渡る。
嵐に乗せて、舞い散る桜花は艦の舳先を越え、船尾のデッキを越えてなお遙か……。
桜吹雪に触れたモノに、ふわりと意識を溶かすかのような安息を齎す。
『我らは間違ってなどいない! 海の先には陸地があるんだ』
雪風へと一直線に飛来した鉾が、直前で避けた彼女の頬を掠めて赤い線を引く。
『航海を始めて……日目、遂に水が尽きた。船はもう、引き返せない』
『誰もが笑った。だが俺たちは、俺たちの決断を……』
嗚呼……と哭く声無き声に、幾重にも迫る刃の風切り音に、彼女は耳を傾ける。
「――そう、あなた方はよく頑張りました」
像を結ばぬ持ち主の陰が、彼女には見えているようだった。
「前人未踏の海へその身一つで漕ぎ出した、その挑戦にこそ価値があるのです」
艦を取り巻く武器に、いや、その武器に凝る持ち主の魂に染み込む、肯定の言葉。
それは浄霊と呼ばれる、霊を鎮める方法だった。
悲しくて、辛くて、暗く沈んでしまった魂に、光を届けて浄化する。
「真の勇気を示したあなた方を、誰も笑いは致しません」
ぴたりと、武器らの攻撃が止んだ。
「だから、胸を張って故郷へ……暖かい場所へお帰りなさいませ」
驚いたように距離を取り、故郷……と懐かしむように『誰か』が呟いた。それを皮切りに幾つもの声が波のようにさざめき、広がる。
『母ちゃん……帰りを待ってるかな』
『あいつにゃ、長く会ってねぇ……』
「土産にあなた方の冒険譚を聞かせて差し上げて――」
ついと細い指で指し示した沖に、海に囚われていた魂たちは故郷をみた。
暖かな光の中、手を振る懐かしい顔に手を振り返して、駆け寄っていく。
憑き物が晴れた器たちは、眠りの中、海の中に。
終の眠りに落ちれば、浮かび続けること叶わず。
波間に沈み、水底で還る。
成功
🔵🔵🔴
レイブル・クライツァ
敵として判り易い形は大歓迎よ?
亡霊が取りついた武器とか、楽しそうよね…理性的に動いてくれるなら、だけれども
嘘を吐く時点で怪しいのは判り切っているし――通らせてもらうわ
とはいえ、戦場的に相手の方が動き易い事を踏まえて
彷徨の螺旋で指示を出す形で立ち回るわ。
自身の位置取りは敵に背を向けない様気を配り
護人達には派手に交互に斬りかかってもらうフリしながら、じわじわと熱と冷気で叩き続けての破壊による威力減退狙い
…そのまま消えてくれるなら良いけれど、読まれてるなら次
戦い方の型破りをするのが好きだったのよね、彼ら
死なずに試せるならとぼやいていたのよ、と笑みながら
刺されながら魔力を暴発させての武器破壊をさせるわ
●
シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は、瞳に装着した【聖瞳】エリカを通して周辺状況を確認する。
「これはまた……盛大な歓迎ね……」
彼女の呟きも然り。荒れる波間に上下を繰り返す足場の悪い状況。吹き付けてくる雨風に、長く目を開けていることすら困難だが、その風に漂いながら青い炎の如き妖気の尾を引く『兵器百般』。その様子はどこか、心動かされるもののようでもあり……。
シホは視覚情報を分析しつつ、その光景を録画して保存する。本当なら、直に見せてあげたかったと、そう思いながら。
気持ちを切り替え【聖笄】と【聖銃】、紫陽花柄のヘアバンドと二丁拳銃に意識を向け、攻撃体制へと移行する。光学迷彩で姿を隠したシホは、揺れる甲板を駆けて再び舳先へ。
自動拳銃に込めたのは、風雷属性攻撃の誘導弾。
「雷光よ、偉大なる天の光によりお導き下さい」
破魔の祈りと共に、高速で連射される魔法弾。その銃弾が弾けた途端、パリリ……と小さな稲光が発生し、同じく金属で造られている周囲の武器らに伝播する。
帯電し、動力である妖気を清浄な祈りの光によって掻き消され、彼らは再び海へと還っていく。
一度の除霊を終えたシホは、休まず銃を構えるが、
「!!」
彼女の身体を脳天から一刀に、鋭い太刀の一線が奔った。
次の瞬間、太刀の刃が斬り込んだのはその柔らかな肉……ではなく、舳先の濡れた木の断面だった。
「その攻撃パターンは予測できていました」
同じ場所から銃撃をし続ければ、いずれその居場所は敵にも知られる。そのことを予め念頭に置いていた彼女が、奇襲を避けられぬ理由はなかった。
軽いステップで甲板へと立ち戻った彼女だが、もとのように舳先での戦闘を続けるのは厳しいだろうと思う。
念動力で飛来する太刀の幾本かを連続で避け、隙を突いては反撃とばかり風雷の銃弾を撃ち込む。
その数が半ば減ったころ、シホは船の損傷が気になった。
猟兵と武器らとの戦闘痕もさることながら、嵐はまだ続いており、横波に打たれる度に艦は大きく傾ぐ。ギギギ……、ミシミシと嫌でも耳に付く艦の悲鳴は、次第に大きくなるばかりだった。
「祈りに集中する機会を……」
今はまだ、シホに狙いを定めている敵の注意がある。だがそれさえ気にしなければ、揺れや戦いの疲労は、それまでの経験や立ち位置を把握することで抑えていた。
「私の祈りを拠り所に、この身を盾とし、一時の安息をもたらし給え」
シホが優先したのは、艦の上の仲間が大勢を立て直す時間稼ぎ。彼女が【翼域】と定め、広げた翼の結界内に敵の攻撃は届かない。
戦闘を終え、破損個所の修理が行えるようになるまで、あと、少し。
成功
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※業務連絡
上記のリプレイですが、採用時にご提出されてたPC:シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)様とPC:レイブル・クライツァ(白と黒の螺旋・f04529)様のプレイングを誤って選択した状態で、掲載しております。
大変申し訳ありません!!
多少、読みづらくなるかと思いますが、下記に本来掲載予定であった、PC:レイブル・クライツァ(白と黒の螺旋・f04529)様のリプレイを掲載させていただき、改めて同内容のリプレイをPC:シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)様のプレイングと共に掲載させていただきたいと思います。
内容が重複してしまい、読まれる際にもご不便をおかけしてしまうかと思いますが、一度掲載したリプレイを取り消すことができないため、この方法で、救済措置とさせてください。
以後、本当に気を付けます。すみません。
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嵐に鳴く風の音に交じり、武器らの嘆きが轟々と渦巻く。
『沈メ……沈メ……こノ先には、ナニモなイ』
幾重にも反響する音は、人の声とも金属音とも混じり合い、不明瞭な雑音として木霊する。
レイブル・クライツァ(白と黒の螺旋・f04529)は舳先から沖を差し続ける『紫の光』へと柔らかな金色の目を向けた。それは紛れもなく、光の果てにある何かを指し示すもの。
『在リはシない……貴様らハ、ここデ沈む』
「敵として判り易い形は大歓迎よ?」
亡霊が取りついた武器とか、楽しそうよね……理性的に動いてくれるなら、だけれども。
それは独り言とも、目の前にある掃討対象への期待とも。
彼らにとっては、何も得られなかった外海でも、それがイコール誰にとっても無益であるとは限らないのだ。
「嘘を吐く時点で怪しいのは判り切っているし――通らせてもらうわ」
逆恨みのような怨念を語るモノは、敵以外の何ものでもない。
吹き荒れる風に乗って空から襲来する武器たちの動き……それはただ状況に流されているのか、否か。どちらにせよ、揺れる艦に足を付けて戦うレイブルよりも、戦場的に相手のほうが動き易そうに見える。
ならばと召喚び出したのは【彷徨の螺旋】。夕焼色の死神と片眼鏡の剣聖は、レイブルが死角を補うため、操舵室を背にしたのを見届けたように、ふわりと敵陣へと接近した。
艦を囲む武器らへと、そのまま無造作に斬りかかっていく。
剣聖の、針を通すような一閃に刺し貫かれた刀。
死神の、雨風ごとぶった斬らんとしたような大鎌の強打で砕けた盾。
剣聖の剣技で、倒れなければ死神が。死神の太刀筋を、いなされれば剣聖が。まるで技を競うように軽やかなのは、召喚主であるレイブルが楽しそう、と興味を寄せていたからか。
多勢相手となるその不利は、二人の放つ熱と冷気を交互に叩きつけていくことでじわじわと、破壊を狙えればと思ったが。
しかし、二人の護人の勢いを見るに、その効果が表れるよりも押し切るほうが早いようだ。
それに。
「戦い方の型破りをするのが好きだったのよね、彼ら」
それは、いつかに交わされた言葉。
ゲンソウがまだゲンソウではなかった頃。
「死なずに試せるならとぼやいていたのよ」
笑みを浮かべた彼女の瞳は、次第に間合いを詰められる二人を悠然と映していた。
レイブルの視線の先で、その存在を形作る輪郭に刃の一つが突き刺さる。
途端、その刀身が爆ぜた。何が起きたのか、見る者がいたとしても即座にその現象を理解することはできなかっただろう。
体内に潜り込んだ頃合いを見計らい、護人はその身の魔力を暴発させて刀身の破壊を成した。
ああ今、二人なら、どんな顔をしたのだろう。
シホ・エーデルワイス
これはまた…盛大な歓迎ね…
宵にも直に見せてあげたいです
せめてこの光景を【聖瞳】の録画機能で撮影しましょう
引き続き船の最先端で常時<空中浮遊し【聖笄】の光学迷彩で目立たない>状態になり
【聖銃】から無念を祓い
金属に良く伝導し
吹き散らす
<破魔祈りを込めた風雷属性攻撃の誘導弾を
高速詠唱による連射で範囲攻撃>
居場所を特定され攻撃されたら
<第六感と聞き耳で見切り残像>で回避
船の損傷が酷くなった頃合いを見て
【翼域】の結界でなるべく敵を結界内に入れない様
船の表面を包み仲間が体勢を立て直す<時間稼ぎ>
揺れや戦いの疲労は<継戦能力、地形耐性、環境耐性、空腹耐性>で凌ぐ
戦後
時間が許す限り【聖紗】で船の破損個所を修理
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シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は、瞳に装着した【聖瞳】エリカを通して周辺状況を確認する。
「これはまた……盛大な歓迎ね……」
彼女の呟きも然り。荒れる波間に上下を繰り返す足場の悪い状況。吹き付けてくる雨風に、長く目を開けていることすら困難だが、その風に漂いながら青い炎の如き妖気の尾を引く『兵器百般』。その様子はどこか、心動かされるもののようでもあり……。
シホは視覚情報を分析しつつ、その光景を録画して保存する。本当なら、直に見せてあげたかったと、そう思いながら。
気持ちを切り替え【聖笄】と【聖銃】、紫陽花柄のヘアバンドと二丁拳銃に意識を向け、攻撃体制へと移行する。光学迷彩で姿を隠したシホは、揺れる甲板を駆けて再び舳先へ。
自動拳銃に込めたのは、風雷属性攻撃の誘導弾。
「雷光よ、偉大なる天の光によりお導き下さい」
破魔の祈りと共に、高速で連射される魔法弾。その銃弾が弾けた途端、パリリ……と小さな稲光が発生し、同じく金属で造られている周囲の武器らに伝播する。
帯電し、動力である妖気を清浄な祈りの光によって掻き消され、彼らは再び海へと還っていく。
一度の除霊を終えたシホは、休まず銃を構えるが、
「!!」
彼女の身体を脳天から一刀に、鋭い太刀の一線が奔った。
次の瞬間、太刀の刃が斬り込んだのはその柔らかな肉……ではなく、舳先の濡れた木の断面だった。
「その攻撃パターンは予測できていました」
同じ場所から銃撃をし続ければ、いずれその居場所は敵にも知られる。そのことを予め念頭に置いていた彼女が、奇襲を避けられぬ理由はなかった。
軽いステップで甲板へと立ち戻った彼女だが、もとのように舳先での戦闘を続けるのは厳しいだろうと思う。
念動力で飛来する太刀の幾本かを連続で避け、隙を突いては反撃とばかり風雷の銃弾を撃ち込む。
その数が半ば減ったころ、シホは船の損傷が気になった。
猟兵と武器らとの戦闘痕もさることながら、嵐はまだ続いており、横波に打たれる度に艦は大きく傾ぐ。ギギギ……、ミシミシと嫌でも耳に付く艦の悲鳴は、次第に大きくなるばかりだった。
「祈りに集中する機会を……」
今はまだ、シホに狙いを定めている敵の注意がある。だがそれさえ気にしなければ、揺れや戦いの疲労は、それまでの経験や立ち位置を把握することで抑えていた。
「私の祈りを拠り所に、この身を盾とし、一時の安息をもたらし給え」
シホが優先したのは、艦の上の仲間が大勢を立て直す時間稼ぎ。彼女が【翼域】と定め、広げた翼の結界内に敵の攻撃は届かない。
戦闘を終え、破損個所の修理が行えるようになるまで、あと、少し。
成功
🔵🔵🔴
一駒・丈一
(船底の倉庫から甲板に姿を現わす)
…酷い揺れだったが大分落ち着いたか?船の名前と同じく木っ端微塵になるかと思ったぞ。キマフュのアトラクションの方がまだマシだ。
(っと、甲板に出るなり、同業の猟兵が戦闘を行ってる姿を目の当たりにし)
やれやれ。まだ着いていなかったか。
悪いが、骸に成り果てる予定はまだ先でね。更にいえば、墓は陸地を希望している。
故に、招かれざる客人を追い払う手助けと行こう。
剣戟は船の帆を傷つける可能性がある故、
敵に対してはUC「贖罪の雨」各個撃破を試みよう。
当てるには敵の間合いに入る必要はあるが、持ち主亡き武器の軌道ならば、これまでの【戦闘知識】での【見切り】である程度は凌げよう。
●
続く猟兵とオブリビオンの交戦だが、その間にも艦は揺れに揺れた。
時折、一時的に訪れる凪のように穏やかないとまは、船底の倉庫の荷の無事を確かめ、慣れない身体を慣らすために貴重な休息となる。
「……酷い揺れだったが大分落ち着いたか? 船の名前と同じく木っ端微塵になるかと思ったぞ」
と、一駒・丈一(金眼の・f01005)は独り言ちた。
特に船底は揺れの影響を受けない場所であるはずが、その船底ですら娯楽文明世界・キマイラフューチャーのアトラクションの方がまだマシに思えるなど、どういう波を呼んだのか。危うく艦名の由来に、事実伴う悲劇の冒険譚が後付けされるところだった。
それまでより少しはまし、と頃合いを見計らって甲板に上がり、彼が目にし光景は空中に数を残す怪異と、同業の猟兵たちが奮闘し入り乱れる戦場。
「やれやれ、まだ着いていなかったか」
島影も見えぬとなれば、丈一が望む陸地はまだ遠いようだ。
『沈メ……底ハ静かゾ』
ギチギチと耳障りに騒ぎ立てる武器らは、怨み言を繰り返す。
「悪いが、骸に成り果てる予定はまだ先でね。更に言えば、墓は陸地を希望している」
故に、杭を構えて立つ。
「招かれざる客人を追い払う手助けと行こう」
『誰モ、辿リつけハセん!!』
陸……という言葉に反応してか、武器らの矛先は一斉に丈一を向いた。
足場と立ち位置を確認する際、チラと視線だけで覗ったのは、今は括りつけられている艦の帆で、剣戟では傷付けてしまう可能性を考慮し、【贖罪の雨】は各個撃破を試みる。
雨風の勢いを味方に付け、浮遊する武器らは甲板に叩きつけるように飛来する。
その動きは多少、人の手を離れた魔性のモノめいた動きではあったかもしれない。だが所詮、武器は武器。丈一の見知った武器のそれらからは大きく外れる程ではなく。
過去をなぞるだけの持ち主亡き武器の軌道ならばと、長く傭兵を営んできた彼はあっさりと斬撃を見切る。
こちらから寄らずとも間合いのうちに入ってくれる斧を躱し、次いで背を斬りつけにかかった太刀諸共、靴の底で蹴り払う。
「これは禊だ。その血と共に己の罪を洗い流せ」
降雨の雫に変わり、彼らに降り注ぐのは贖罪の銘を持つ杭の雨。
一投、一投を的確に急所へと的中させていけば、武器らは宙へと逃れるよりも早く、刀身ごと凝る妖気を削がれていく。
艦を襲った怪異の全てが打ち砕かれた時……次なる航路は拓かれた。
行き先を光で指し示し、荒波を進み続ける艦は、
乗船者が居ずとも沖を目指したのだろうか。
それは否。
無人の艦が行き着くもまた、水底のみ。
艦は黙したまま。
過去からの誘いに引き込まれることなく。
導きのままにひた走る。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『ケセランパサラン』
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POW : 分裂
【分裂し、もう1体のケセランパサラン】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD : 恍惚
【10秒間、ふわふわ浮いている事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【戦意を喪失させるウェーブ】で攻撃する。
WIZ : 幸福
【可愛い】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【ケセランパサラン】から、高命中力の【敵を庇いたくなる気持ちにさせる光線】を飛ばす。
👑11
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甲板に出ていた全ての猟兵が、艦の進む先に浮かぶ『巨大な紫色の光球』に気付いた。
ずっと線状に沖を指していた『紫の光』は現れた光球に収束し、果てを迎えている。
ここが目的地……?
そこには、一足先に辿りついた艦から聞かされていた情景は何もなかった。
代わり、光球と共に現れたモノが、瞬く間に視界を白く染める。
その白くふわふわと纏わりついてくるモノに関して、サムライエンパイアの民間伝承を思い出した者はいただろうか。
怪異の名を『ケセランパサラン』。
その生物の詳細はいまだ謎に包まれているが、人知れず人間を消滅させてしまうという。
またこの怪異は、多く倒せば倒すだけ、その地に幸せが訪れると言われていた。
これは旅の僥倖か、はたまた外洋が未踏とされてきた所以の一つか。
ひとつ確かなことは、これが最後の試練になるだろうということだ。
フィロメーラ・アステール
「おいーす、幸せが到着し……あれ早かった?」
じゃあ倒すところまで進めてお祝いだな!
いわゆる予定調和!
それでこいつが敵?
なんかぬぼーっとしてるヤツだな……別に倒さなくても……。
はッ!?
これは新手の【精神攻撃】だ! 知識がないと危ない所だった!
戦意喪失を振り切り【イスカンダルウェイブ】を発動する!
魔法の大声に乗せて、精神波を放つぜ!
みんな騙されるなよ! こいつは倒すべき敵だ!
団体行動をマジカルドーピングして勇気を鼓舞し、自分や仲間の闘志を再燃させ、敵の精神攻撃に対抗するぞ!
あとは光【属性攻撃】の光線で援護射撃したり、【念動力】で【グラップル】することでふよふよ動くのを固定したりして支援だー!
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吹き荒れる風にも負けず、ふわふわと艦の上空を漂いはじめた『ケセランパサラン』は、一見悪さをする様子もなく、状況は一時収束したようにも見えた。
そして。
「おいーっす! 幸せが到着したぞー!」
元気いっぱいの声が艦中に幸運を告げた。
幸せの使者の名は、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)。
小さな体をくるんと一回転させ、両手を広げて決めポーズを取ったところで、白いふわふわと目が合った。
「……あれ、早かった?」
見た目はともかくソレはオブリビオンであると、猟兵の勘が訴えてくるので、どうやら自分はフライングしたらしいことを悟る。
しかし、彼女の切り替えも早い。
「じゃあ、倒すところまで進めてお祝いだな! いわゆる予定調和!」
倒してしまえば、登場の順番など、些事なのである。
「それでこいつが敵?」
すいすいとふわふわのところまで飛んで近づいてみるが、ふわふわは大きな2つの目をパチクリさせてフィロメーラを眺めてくるだけ。小さなほわほわも、それぞれに猟兵を目で追っているようで……。甲板の猟兵も「よく見たらかわいいかも」なんて、危険な感じはしなかった。
「なんかぬぼーっとしてるやつだな……別に倒さなくても……」
倒す必要はない。だって、危険はない。
……いや、『ケセランパサラン』は……そうやって、相手の戦意を、
「はッ?!」
体に白いふわふわが触れた時、我に返ると共に冷や汗が頬を伝った。
オブリビオンが危険じゃないわけがない!
「これは新手の精神攻撃だ! 【イスカンダルウェイブ】を発動する!」
星の軌跡『エンパイアウォー』。魔法に乗せた大きな声を武器に、彼女は燐光を纏い甲板の猟兵間を飛び回る。
「みんな騙されるなよ! こいつは倒すべき敵だ!」
彼女に敵の知識がなければ危ないところだったかもしれない。だが、見破ったからには反撃開始だ。
精神波には精神波で対抗!
みんなで力を合わせて、戦う勇気を!
自分も仲間も闘志を取り戻せるように、大和魂を発信。
皆がそれぞれに敵を見据えたところで、フィロメーラは満足気に自身も攻撃態勢を取る。
ずっと浮いている以上、いつまた戦意喪失を狙ってくるか分からない。
その時はあのふわふわを星の輝きで撃ち落としてやるし、星の引力で動けないように引き付けてやったり。
仲間にラッキ-チャンスを届けるんだ!
大成功
🔵🔵🔵
城田・紗希(サポート)
基本的には考えるより行動するタイプ。
でもウィザードミサイルの軌道を考えて防御しづらくしたり、少しは考える。
暗器は隠しすぎたので、本人も何が出てくるかはわかってない。
逆恨みで怒ってる?…気のせいデスヨ。UCの逆恨みじゃアルマイシ。
戦闘はウィザードミサイルの集中砲火、もしくは単体攻撃の連続使用。
必要に応じて、カウンターでタイミングをずらしたり、鎧破壊で次の人を有利にしておく。
……防御?なんかこう、勘で!(第六感)
耐性……は、なんか色々!(覚えてない)
富井・亮平(サポート)
【解説】
オブリビオンと戦うという設定のヒーローマスク。
マスクを被るとボディの人格が変わるような感じ。
謎のオブリビオン文明の話とか、地球侵略を狙うオブリビオン星人の話とか、適当な事を言いながら頑張る。
関係なくてもオブリビオンのせいにして行動する。
行動そのものはマトモ。
【行動】
ヒーローっぽい行動であれば何でもします。
戦闘は主に魔法剣士スタイルですが、機械も扱えます。
ガジェット形状は固定していません、必要に応じ自由に変なメカを使わせて下さい。
UCを使うと「黒幕が出てきて敵を改造する」「謎のお助けキャラが登場する」などのヒーローっぽいイベントも発生させられます。
「このイェーガーレッドに任せておけッ!」
●
並び立った2人は、同時にキッと上空の白いふわふわを睨みつけた。
「「あいつは、私が倒す!」」
その2人、城田・紗希(人間の探索者・f01927)と富井・亮平(イェーガーレッド・f12712)は、被った台詞にそうだろう、そうだろう、と鼻を鳴らし腕を組む。
「あいつは地球侵略を狙うオブリビオン星人だからな! 一見可愛い形をしていようとも立派な悪の組織の一員だ。今に、民間伝承の中にオブリビオン文明の根を張り、……云々かんぬん」
人知れず人間を消滅させて、なんとかかんとか。あることないことを語り始めた亮平の講釈は暫らく続き……、
「そんな奴らと戦う猟兵戦隊イェーガーレンジャーッ! イェーガーレッドがこの私だ! さあ、次はブルーが名乗る番だ」
そう言って締めくくられた。ちなみに、『ブルー』とは紗希を指して言ったようだが、1人で戦隊を名乗る彼と紗希との間にフレンド関係はない。
「誰ですか? ブルーって。それに、お話しちょっとよく分かりませんでした」
しれっと言ってふわふわに向き直り、紗希は親でも殺されたかのような眼光になる。
「あいつは、私のおやつを盗んだ犯人です!!」
しん……。
いや、あのオブリビオンは何を食べるんだとか、今現れた人外の存在がいつ紗希のおやつを盗んだのかとか、どこか別の場所で盗まれて、ここまで追ってきた? のだとすれば、それほどにまで情熱をかけられるおやつとは一体何だったのかとか……。
なんという情熱、なんという執念! そんな思考が亮平の脳裏を駆け巡った、かどうかはさて置き。
「先手は私でいいですか?」
断りを入れた紗希だが、その返答を聞くことなく【食べ物の逆恨み】を発動させた。
海に浮かぶ艦の上であり、彼女の服の都合もあってサイズのほうは控えめながら、戦闘能力を大幅に高めた彼女は、軽い踏み込みと共に宙へと跳び、仕込んでいた暗器の一つから、たまたま出てきたサバイバルナイフで斬りかかる。
震えるように分裂した『ケセランパサラン』が一度消えて紗希と距離を取るも、彼女は驚異的な動体視力で出現場所を見つけ出し、ウィザードミサイルで狙い打つ。
「……はっ! レッドの私を差し置いて目立つなど!」
フリーズの解けた亮平は【ガシェットショータイム】を唱え、マスクと敵の視線を遮る盾付きの魔法剣を召喚した。
妖精の鼓舞も受け、戦意喪失ウェーブを防ぎながら敵の位置を特定。
火の精霊に力を借りて魔法弾を撃ち込みつつ、ふわりと漂う本体を両断する。
「ブルー。まさかとは思うが、それは逆恨みではないよな?」
「……気のせいデスヨ。あと、ブルーじゃないです」
白いふわふわを散らした『ケセランパサラン』は、逃げるように艦の上空を漂う。
成功
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一駒・丈一
【砦】
シホと連携して敵を撃つ。
揺れる地形以前に、こういう戦場は苦手なんだ。
この足場で浮遊する敵を撃つのは難しいが…どうしたものか。
そんな思案の中、シホの【霊装】を使用する案を受ける。
不安定さが軽減されるならば、試す価値はある
【霊装】によって築かれた足場を踏みしめ敵に挑む。
これであれば、俺の苦手意識も軽減された状態で戦いに挑めよう。
敵がウェーブ発動時間は10秒程度。
ならば、発動前にUC『罪業罰下』で視認している敵を【早業】にて一網打尽に斬り伏せる。
悪いが当船は安全運行を心がけているものでね、早めにご退場いただこう。
シホ・エーデルワイス
【砦】
あ!丈一さんも来ていましたか
そういえば…揺れる地形は苦手でしたっけ?
実は私もあの敵は少々苦手です(←可愛い好き)
良ければ足場の不安定さを軽減しますので代わりに攻撃をお願いできますか?
丈一さんを【霊装】で揺れに影響されず戦える様にする
私の<空中浮遊と空中戦の戦闘知識を元に
陸地にいる感覚で戦える様
足元を念動力>の力場で固める
細かな機動調整はお任せ下さい
自身に催眠術をかけ
敵への感情よりも丈一さんの支援に専念するよう思考を誘導する
敵の攻撃は<狂気耐性付きオーラ防御でかばう>
他<第六感と聞き耳で戦況全体に注意し適時コミュ力>で助言
戦後
船に破損個所が無いか外からは翼で飛んで確認し
あれば【聖紗】で修理
鈴桜・雪風
古い伝承でしか聞いたことがございませんが
此方の世界でも居りますのね、ケサランパサラン――幸運びの霊獣
かの獣の逸話は幾つかパタアンがあるそうですけど……
ひとつ試してみましょうか、『斬れば増える』という言い伝えを
傘から仕込み刀を抜いて、ケサランパサランを一刀両断にしていきましょう
この霊獣の生態にはそれなりに興味が湧きますけれど
神隠しを行うという噂もございますし、あまり好き勝手触れさせるわけには参りませんので
何より――今はあの紫光の謎の方が優先ですので?
あまり邪魔をしないで下さいませ
わたくし、我慢強いほうだと思っていますけれど
こうまでお預けが続くと少し怒ってしまいますわよ?
レイブル・クライツァ
…(瞬き)潮風に晒され過ぎて、黴が湧いたとかかしら?
(ヴェールを三角巾風につけ直し、薙刀に掃除用の布をつけ)
埃っぽい見た目ではあるから、掃除が必要よね
哭白ノ夢を敢えて直接ではなく、近くで武器を振る形で静電気を発生させて
それに引き寄せる感じでいくとして、撒く魔力も合わせた感じに調整しつつ
纏めてポイ的な感じで出来れば良いのだけれど…
季節が季節だから、たんぽぽの綿毛みたいな気もしてくるのよ
一応、船の損傷具合も確かめつつ、悪さしない様に見落としなく片付けていくわ
辿り着くまでが任務ですもの。気を抜いているつもりは無いのよ?
途中までが波乱万丈で物騒だったから、温度差で風邪をひきそうよね、とは感じたけれども
●
【砦】の2人が戦場に立つ。スカートの裾をはためかせ、甲板を移動したシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は、程なく艦の揺れにたたらを踏む一駒・丈一(金眼の・f01005)と顔を合わせた。
「あ! 丈一さんも来ていましたか」
「……ああ」
足場に苦戦する様子を見られ、丈一は僅かに眉根を寄せる。
先の一戦。好戦的なオブリビオンは、誘導によってそれなりに有利な間合いを取ることができた。だが、次に現れた奴はどうか? 見上げれば、小さな妖精と共に浮かんでいるほわほわが数体、やんわりとこちらを見てる。だがそれだけ。浮遊するばかりで挑発に乗るような敵意を感じない。
「この足場で浮遊する敵を撃つのは難しいが……どうしたものか」
思案に耽り言葉少なな丈一に、シホは首を傾げ、思い出す。
「そういえば……揺れる地形は苦手でしたっけ?」
聞けば、
「揺れる地形以前に、こういう戦場は苦手なんだ」
返答は早かった。
「実は私もあの敵は少々苦手です。可愛いので、敵と思うのは……」
苦笑したシホが見上げた先、ほわりと浮かんだ『ケセランパサラン』から、ぽこんっと生まれた新たな白いふわふわが落ちてくる。
思わずソレを両手で受け止めれば、ふるふると喜んだように身体を揺する。それは何やら、柔らかな光を宿して輝いているような気さえする。
こんなに可愛いものを、害のないものを、倒す必要などあっただろうか……。
これはただの怪異。サムライエンパイアの、怪異の別称は……。
「みんな騙されるなよ! こいつは倒すべき敵だ!」
パンッ! と頬を叩かれたかのような衝撃が2人を正気に戻した。
「そうでした。これが相手の能力でしたね。……丈一さん、よければ足場の不安定さを軽減しますので、代わりに攻撃をお願いできますか?」
問いに続け手短に、自身のユーベルコードによる支援内容を説明したシホに、丈一は頷いた。
「不安定さが軽減されるならば、試す価値はある」
●
白く煙るように浮かぶ謎多き生物を、鈴桜・雪風(回遊幻灯・f25900)は識っていた。
古い伝承でしか聞いたことがございませんが。と、知識を紐解く彼女は、識っているが故にアレが敵であることを忘れない。
「此方の世界でも居りますのね、ケセランパサラン――幸運びの霊獣」
名前の由来や正体などについては諸説ある。だが結局、全ては謎であるという。
高を見上げていた視線を落とし、半ば瞼を閉じるように思いを巡らせた雪風は、口元に薄く笑みを浮かべて呟いた。
「かの獣の逸話は幾つかパタアンがあるそうですけど……ひとつ、試してみましょうか」
彼女もまた、謎を求め闇を泳ぐ者。
「『斬れば増える』という言い伝えを」
謎多き桜の精が、その片鱗を覗かせる。
●
また、レイブル・クライツァ(白と黒の螺旋・f04529)は数度の瞬きをし、それでも消えない白いふわふわの正体を考えあぐねていた。
「……潮風に晒され過ぎて、黴が湧いたとかかしら?」
彼女のところにも、謎多き生物故か荒れる風に影響を受けることもなく、ふわりと湧くようにして増えては落ちてくる。
じっと見つめてくるつぶらな目玉と視線を交わして、数秒。
レイブルはおもむろに、髪を覆う漆黒のヴェールを取る。
三角巾風につけ直し、何処からか取りだした布を薙刀の刃に添わせて装着して、良しとばかりに柄の先で床をコツンと鳴らした。
「埃っぽい見た目ではあるから、掃除が必要よね」
まさかのお掃除用スタイルに哀し気な瞳で埃ではないと訴えかける『ケセランパサラン』だが、伝わった様子はない。
●
丈一は、シホより【霊装】の加護を得る。
「この身は剣、この身は鎧、この身は翼、あなたに祝福を」
聖霊体となったシホは憑依により丈一に自身の攻撃力を預ける。そして、空中戦に不慣れな丈一を、同じ感覚を共有するシホがサポートしつつ、念動力で足場を作り、固めることで苦手意識なく戦えるように努めることした。
まずは、甲板に近い位置から階段状に足場を伸ばす。築かれた足場を踏みしめ、接敵する感覚は、地上で岩場をかける時に近いように思われた。
「これであれば、オレの苦手意識も軽減された状態で戦いに挑めよう」
握り締めた介錯刀を手に、奴がウェーブを発動するよりも疾く、【罪業罰下】が一閃する。
スラリと抜き放たれた切先には、先程までの戸惑いも情けも、もう映らない。
それは、シホもまた同じ。
自身に催眠術をかけた彼女は、敵の動きを視界に捉えても、もうその姿を最初のようにそれと認識しない。
第一に、丈一さんの支援に専念する。そのためにはソレがどんな形をしていても、感情を向けないと自制心を誘導していた。
「そのまま敵を挟んで直線状に跳んで下さい。同じ高さに次の足場を。そこから視認を避けて死角となりそうな位置に、2・3点の足場を設置します。目視で確認してください」
空中での戦闘知識に基づいて、シホは的確な指示を出し、同時に細かな微調整を全面的に引き受ける。
「確認した」
相手の技の発動条件には、10秒の浮遊と視認という条件がある。
安定した足場とそれだけの時間があれば、奴との距離など目と鼻の先。
くるりと振り向いた大きな瞳。
丈一はそれに姿を映される前に、煙に巻く。
小さな取り巻きがチラチラと探してはくるけれど、ある程度であればシホのオーラが狂気を寄せ付けない。
ふと、全身の力を抜いて直滑降に数メートルの落下。真下の足場に爪先から着地し、膝をついて衝撃をいなし……刀の柄から両手を手放すには及ばない。
「悪いが当船は安全運行を心がけているものでね、早めにご退場いただこう」
閃いた剣戟は、雷光のようであった。
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雪風は、手にした和傘から仕込み刀を引き抜いた。
桜柄に併せ、枝垂桜のように装飾を施された可愛らしい意匠の傘とは裏腹に、実直な刀身は青白い閃光を纏って日の光を反射する。
白魚のように線の細い彼女の手に、細い柄の直刀はよく馴染んだ。
揺れる艦の上を慎重に移動し、先のダメージに高度を落として浮かぶ『ケセランパサラン』に斬りかかり……。
【剣刃一閃】が、真綿のような霊獣を一刀両断にする。
踏み込みと共に振るわれる太刀筋は白いふわふわをひと薙ぎにし、中から溢れ出るモノもまた、やはり煙のように実体がない。溢れたモノは、見守る彼女の目の前でふわふわと丸い形状を取り戻すと、やがてそこにはひとまわり小さい『ケセランパサラン』が生まれた。
「あら、まあ……」
伝承は正しかった。ならば即座に遠くへ移動するというのもまた正しく伝わった伝承だろう。その瞳が開かれる前に、同様に斬り伏せる。
もう一閃と返した切先は、揺れに阻まれて数個体に僅かに届かず。巻き込むことができた個体の中では、更に分かれて飛び去るもの、消えるものと一貫性がない。
「この霊獣の生態にはそれなりに興味が湧きますけれど」
惜しむように口ずさむ言葉とは裏腹に、その動作には迷いがない。
生物とも、植物とも。未だ明かされぬ謎に対する興味は彼女の中で限りなく魅力的に、語りかけてはくるのだが、
「神隠しを行うという噂もございますし、あまり好き勝手触れさせるわけには参りませんので」
なにより――今はあの紫光の謎のほうが優先ですので?
逃げる霊獣を追い、彼女は舞う。
「あまり邪魔をしないで下さいませ」
あくまでも穏やかに笑みを浮かべて、刃は振り下ろされる。
「わたくし、我慢強いほうだと思っていますけれど、こうまでお預けが続くと少し、怒ってしまいますわよ?」
手近に獲物を失って、あとは光球を見やるばかり。
●
レイブルは【哭白ノ夢】による高速の斬撃を行う際、あえて綿埃か黴っぽいその生物に直撃させず、ぎりぎりを掠める形で静電気を発生させようと試みた。
斬撃が外れた際に周囲に散る魔力の残滓も、それに合わせて調整しつつ、すいすいと空中に刃を滑らせる。
じぃっと見つめていた『ケセランパサラン』は暫らく身動きができず、突然、はっとした感じで何かを察した。
彼女の思考は完全にお掃除モード。
これは……、静電気によって綿埃を吸着させようとしている!
纏めてポイ的な感じで片付けようとしている!!
違うのだ。ふわふわもこもこ、確かに黴か埃のようには見えるが、その正体は怪異であって実体はないのだ。
「季節が季節だから、たんぽぽの綿毛みたいな気もしてくるのよ」
そうだったら、平和です。とても。
この勘違いを正そうと、『ケセランパサラン』はふわりふわりとレイブルの周囲を取り囲む。
どれほど穏やかそうに見えても怪異は怪異。人に纏わりつき、人知れず消滅させてしまう紛うことなきオブリビオンだ。
白く凝る霊体が、レイブルに触れた、その時。
瞬きの間にすべてが掻き消えた。
「ああ、纏めなくても普段通りで消えてしまうのね」
残されたのは、レイブルのみ。
どれほど穏やかそうに見えても猟兵は猟兵。最終的にその気配に、気づかぬわけがなく。
「黴ではなかったようだけど、一応、船の損傷具合も確かめておこうかしら」
気配は消えた。けれどまだ気を抜くつもりもない。悪さをしないように見落としなく片付けていくつもりだ。
お掃除モードで。
「辿り着くまでが任務ですもの。途中までが波乱万丈で物騒だったから、温度差で風邪をひきそうよね、とは感じたけれども」
けれど、アレを『可愛い』と思ってはいけない気がしたのだ。
●
ずっと目指し続けていた『紫の光』。
ふいにその光球の中に僅かな『白い光』が混ざり込んだ。
『ケセランパサラン』の発した光とは違うもの。
その向うに、南の島々が見えたような気がした。
あれが『グリードオーシャン』なのだろうか……?
木っ端は岸へと流れ着く。
この艦の、外洋を越える処女航海はもうすぐ終わりを迎える。
しかし、新たに見つかった新世界への航海は、これから始まるのだ。
未知を征く彼らの未来に、どうか幸多からんことを――。
大成功
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