4
逆巻く怒濤

#アルダワ魔法学園



 学園迷宮の一つ、その中程の階層で、巨大な生物が首をもたげた。
 一見すると蜥蜴のようだが、その頭には一対の角があった。錬金術により生み出された怪物。周囲の有象無象とは一線を画す力を誇る、黄金の巨獣。
 彼はその高い戦闘力を見込まれてフロアボスの座につくと、忠実にその任を果たした。今もまた招かれざる客への備えとして、迷宮内部の構造を変化させたところである。
 課せられた仕事はそれで終わりであったが、何やら今日は様子が違った。
 視線の先には上層への道。
 代わり映えのしない作業に飽いたのか、来ない敵を待ち続ける日々に疲れたのか、その内心は定かでないが。この日彼は、持ち場を離れる事に決めた。
 体躯に見合う足音を響かせ、旗印のように翼を広げて、黄金の竜が地上を目指す。


「すみません、火急の案件でして」
 猟兵を呼び集めたドラゴニアンの竜騎士、カルパ・メルカは軽くお辞儀をして、挨拶もそこそこに二の句を続けた。
「突然ですが、アルダワ魔法学園までお付き合い願いたく」
 アルダワ魔法学園と言えば、高度に発達した蒸気と魔法の世界だ。
 世界の名としても知られる学園の地下には多くの迷宮が存在し、そこには災魔──オブリビオンが封印されている。
「地下迷宮の一つで、魔物の集団が上層へ移動する動きを察知しまして。防衛戦力を募集中です」

 災魔と戦う為に設立された学園とは言え、そこには戦う力を持たない住人も多くいる。
「その為、地上到達前に迷宮内で迎撃する段取りになっていまして」
 幸い敵の進路は把握できており、待ち伏せが可能だ。既に学生の部隊が展開している。
「浅い階層に、多人数での戦闘行動が可能な広い部屋がありますので、そこに合流して頂く形になります」
 直近の探索時から変化していないようです、と道中の経路が記された資料を示す。その上に貼られた、罠は解除済みとのメモ書きが揺れた。
 刻一刻と姿を変える迷宮ではあるが、今回に関しては戦闘だけ考えておけば問題ない。
 上層へ通じる道は背後の一つのみ。守り切れば勝ちの単純な勝負だ。

「続いて、敵戦力の構成について説明しますね。二種類います。まず向かってくるのが、フラスコスライム。沢山います」
 迷宮で発生する一般的な魔物であり、回復力に優れるゼリー状の生物だ。
 戦闘力は高くないが、経験を積んで上位の魔物に進化を遂げる場合がある。後々厄介を招かないように、確実に撃破しなければならない。
「今回は尋常でない数が集まっていますから。うっかり仕留め損ねないように気を付けて下さいね」
 逆に言えば、そこさえ注意すれば苦戦する敵ではない。隙を見せなければ程なく蹴散らせるだろう。
「で、道が開けるくらいに片付いたら、後半戦に取り掛かって貰う事になります。奥に控えるのが、錬金術ドラゴン。こちらは一匹だけ」
 ドラゴン。剣と魔法と竜の世界などでもその名が知られる、この界隈では有名な脅威の一つ。天然のそれと同様、錬金術で生み出された竜も優れた戦闘力を持つ。
 外見的にはこういう羽の生えた爬虫類ですね、とドラゴニアンは己の翼を広げてみせた。見落とす心配のない、分かり易い姿だ。
「迷宮にはフロアボスと呼ばれる強力なオブリビオンがいるのですが、この個体がそれです」
 通常のものと異なり、自らを錬金術で強化し続ける性質があるようだ。昨今は猟兵にしか退治できない災魔が増えたと聞くが、それに当たるものと考えて良い。
「戦闘力、統率力の両面で群れの頭ですね。油断ならない相手ですが、これを倒せば任務完了ですので。頑張りましょう」
 頭を除けば後は烏合の衆だ。残敵掃蕩は学生に任せて、一足先に切り上げて構わない。

「そうそう、終わったら学園の大浴場を貸してくれるとか何とか」
 相当数の敵を相手取った後、血と粘液にまみれているだろう事は想像に難くない。
 汚れを落としがてら、仲間と親交を深めてみてはいかがだろう。きっと疲れも吹き飛ぶはずだ。学生達が雪崩れ込んでくれば、静かに休憩とはいかないかもしれないが。
「活躍を期待しています。武勇伝を聞かせて下さいね」


井深ロド
 はじめまして、井深と申します。
 頑張って上手い具合に何やかんやしますので、お付き合い下さい。
54




第1章 集団戦 『フラスコスライム』

POW   :    スライムブレス
【ねばつく液体のブレス】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    スライムバイト
自身の身体部位ひとつを【奇妙な獣】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    フラスコアブソープション
小さな【自分のフラスコ】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【フラスコ空間】で、いつでも外に出られる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
グレゴリオ・カルディヤ
グワッハハハハ!!
迷宮に潜るも久々だ、血が滾ってしようがねぇ!
まずはフラスコスライムだったか?
任せとけ任せとけ、とにかく叩き潰せば大抵のことはなんとかなるもんだ!

向かってきた先頭のスライムにドラゴンオーラをぶっ放して爆破するぜ
衝撃で周りのやつらが多少鈍ってくれりゃあしめたものよ
【ドラゴニアン・チェイン】で繋いだ先のスライムを、鈍ったやつに目掛けて叩き付けてやらぁ!!
(繋いだ個体が砕けたら、近くの個体に再度ドラゴンオーラ発射からの繰り返し)

(しばらく続けて)
まだいんのかよ!!
ぶっ壊したやつから飛び散った液体で全身ねっばねばして気持ち悪ぃぞコラァッ!!!


メリュジーヌ・ヴィーブル
わー!いっぱい来るね!たいへんだね!
メリュ、がんばってやっつけちゃうよ!

戦い方はね、距離を取りながら、一番たくさんスライムが集まってるところに、ドラゴニック・エンドをどっかーん!ってするよ。これでいっぺんにやっつけられたらいいんだけど、うまくいくかな?



マッチングパズルの大扉前を素通りして、蒸気配管に沿って道なりに進む。順路を辿る事しばし、目印が途切れた。
 代わりに視界へ飛び込んできたのは多様な学園服の背と、彼らの前へと躍り出たグレゴリオ・カルディヤを出迎える、一面の青。青。青。
 試験管の内で蠢く、能天気な面をした軟体。部屋を埋め尽くすフラスコスライムの群れ。
「わー!いっぱいいるね!」
 たいへんだね、とあまり大変そうでない調子で声を上げたのは、後ろから顔を覗かせたメリュジーヌ・ヴィーブル。
 深刻さを感じない声色に、疲労を浮かべた学生の一人が思わず視線を向けた。転校生の実力は承知しているが、いかな強者でも寡兵では、と。
 そんな心配を豪快に笑い飛ばして、古兵が告げる。
「ハハハ、任せとけ任せとけ」
 情報通りの大群だ。余人なら全く気の滅入る光景だろうが、彼の血の滾りを静めるには丁度良い。
 言うが早いか、最前のスライムへと一撃が叩き込まれた。爆発。衝撃が奔り、罅割れた住処の奥で気の抜けた顔に焦りが浮かぶ。
 燃える意気の如くに迸るドラゴンオーラに慄いたか、周囲の歩みが一瞬止まり、そして男はその隙を逃がさない。
「叩き潰せば!大抵の事は何とかなるもんだ!」
 オーラの鎖で繋がれたエモノが宙を舞い、至近の同族へと横殴りに打ち付けられて、更に何体かを巻き込んで弾け飛ぶ。
 グレゴリオの持論が真に正しいものかどうか、親子以上に歳の離れた若輩の学生達には判断の付かぬところであったが、少なくともこの場においては正解と見て良いようだ。
 いや、仮に誤っていようともさしたる問題ではなかっただろう。何しろこれは集団戦である。
「よーし!メリュも、がんばってやっつけちゃうよ!」
 殴打の勢いで隅へと押しやられ、一ヵ所に固まった敵集団を纏めて竜の槍が貫いた。
 仲間の活躍に続けとばかりに放たれた、メリュジーヌのドラゴニック・エンド。割れた硝子瓶から放り出された死に掛けを、駄目押しの召喚ドラゴンが薙ぎ払い、力を失った粘体が足元に散らばり落ちる。
「グワッハハハ!やるねぇ嬢ちゃん!」
「えへへー」
 弾頭の再接続で生じる隙を補う追い討ちに、能動的に敵を集められる攻撃手段。即席の連携ながら、双方の長所がよく噛み合っている。
 お互い単独でも十分な働きが可能ではあったが、やはり作業効率は高いに越した事はない。いかにストレスを溜めずに戦うか、というのは長期戦では大切だ。
「もういっちょいくかぁ!」
「はーい!」
 元気な声と破砕の音を響かせて、粘液の海が広がっていく。彼らが気持ち悪い程に液体を浴びるのは、まだまだ先の話だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ティエル・ティエリエル
「ふむふむ、まずはスライム退治、冒険譚の基本だね♪」

「ライオンライド」で体長40cm程度の子供の黄金のライオンを呼び出し跨ると、1匹ずつ確実にスライムを潰していくよ。
SPDでかく乱して、焦って攻撃してきたところにカウンターで細身のレイピア型の獣奏器でザクザクと刺すよ。
騎乗技能のおかげでライオンくんに乗ってても体勢を崩したりはしないよ☆

ライオンくんにはフラスコを割ってもらったり、地面に落ちたスライムの残骸をきっちりと踏み潰してもらうね♪
もし、囲まれそうになったらライオンくんと協力して包囲網を一気に突き抜けるね。



「ふむふむ、まずはスライム退治、冒険譚の基本だね♪」
 基本の一言で片付けてしまうのが憚られる量のゼリー状生物が眼前に犇めいていたが、なるほど、冒険譚とはそういうものだろう。
 退屈な冒険を後生大事に語り継ぐ吟遊詩人がいるはずもない。彼らの詩の多くは、凡百の冒険者を凌ぐ英傑の、あるいは大いに脚色を加えた架空の物語であり‥‥黄金の仔獅子に跨り戦場を駆け巡るティエル・ティエリエルの姿は、まさしく伝承のそれであった。
 黄金の風が縦横無尽に吹き抜けて、その度に硝子片が砕け飛ぶ。
 猫と見紛わんばかりの小柄な獅子と、更にそれより一回りは小さいティエルだが、その突進力は人間大のそれに並ぶどころか大きく上回る勢いであり、そして当然ながらこれはただ速度に任せた暴走ではない。敵の目は小さな勇士を追い切れず、運良く逃げ延びたスライムは足裏で入念に磨り潰されて、攪乱に惑わされずどうにか反撃にまで漕ぎ着けた手合いは、一矢報いる事なく獣奏器の突剣で穿ち抜かれた。
 ライオンくんがしっかりと働き過ぎたが為に、音に聞く英雄譚のように心躍る状況ではなく、一方的な蹂躙となっていた事はある意味で誤算だったが、妖精姫は驕る事なく剣を振るう。
 果たすべき高貴なるものの義務は、まだ終わってはいない。文字通り、獅子奮迅の活躍は続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

茲乃摘・七曜
心情
さて、これ以上魔法学園に近づかれるのは困りますね

戦闘
周囲を囲まれないよう第六感を使用し警戒し協力して戦線維持を意識
「ここから先は行き止まりです

攻撃
Pride of foolsによる2回攻撃4とAngels Bitから全力の音に全力魔法2に
フェイント1による陽動も交えながら手数で勝負する
周囲の仲間との連携が必要な場合は援護射撃2で行う
「ガラス部分を砕けば活動も止まるでしょうか?

防御
攻撃はロンググローブの盾受け2で受け流すよう行動
フラスコに触れた場合、吸い込まれないように強く意識をする
「そう簡単に後れを取る訳にはいきませんね

治癒
仲間や自身に疲労がたまった場合シンフォニック・キュアでの治療を実施


雛菊・璃奈
ん…見た目はちょっと可愛いんだけど、ね…たくさんいるなら…たくさんの数で殲滅すれば良い…『unlimited curse blades』で敵集団へ斉射…。まとめて倒すよ…。斬って潰して粉砕して…殲滅してあげる…。剣の弾幕を潜り抜けて来る敵はそのまま抜け出た瞬間に手持ちの妖刀で叩き斬る…。

仲間の猟兵の人達がいるなら、その人達の作戦を邪魔しない程度に追い込んでまとめて貰えると、一気に殲滅しやすいかも…。
なんだったら、協力して追い込んでから一気にユーベルコード使うとか、ね…。



「見た目はちょっと可愛いんだけど、ね‥‥」
 間近に迫る彼らの、その単体の外見のみを評価するならば、それなりに可愛い部類に入ると言って良いのではないだろうか。
 ただ、数を揃えた時にそれだけ可愛さが増すと取るか、逆に気持ち悪いと感じるかは評価の分かれるところであろう。被害を被った生徒諸氏の瞳には既に、あの無垢な顔が悪魔の微笑みに見えてきていたが、雛菊・璃奈にしてみればまだまだ可愛らしいだけのものだ。
 確かに、数は力である。それこそが敵の頼みとするところであり、しかし、そこにおいては璃奈も負けてはいない。
「呪われし剣達‥‥わたしに、力を‥‥」
 呼び掛けに応え、顕現する『unlimited curse blades』──その名の通りに、無尽蔵とも思える剣の群れ。これこそが彼女のユーベルコード。世界の法則さえ覆す力。
 こうなれば後は質の勝負だ。そして、そこらの雑魚に歯が立たぬ程度のものが、御大層に呪いの名を冠するはずもなかった。
 刃の弾幕が、戦列を削り取っていく。

 無論、埒外にある身だからこそ雑魚の一言で済むのであり、そうでないものにしてみれば脅威に違いない。
 物静かな妖刀の巫女とは対照的な、盛大に暴れ回る魔力の現身を眺めて、茲乃摘・七曜は思案した。あのような頼りになる同僚がこの戦いに早期から参戦してくれているのは、単に学園側の初動が早かったというだけの理由ではない。
 地上から戦場まですぐなのだ。それはつまり、ここと魔法学園との間に第二の防衛線を構築する余地が限りなくゼロに近い事を意味する。
 これ以上近付かれては困りますね、と内心で呟いて、機械人形はスライムへと銃口を向けた。
「ここから先は行き止まりです」
 刃の雨を迂回して後背を衝かんとした個体を第六感と五感の全てとで捉えて、黒水仙の長手袋で払い除けると、愚者の名を冠した精霊銃で返り討ちにする。
 これまでにも幾度となく、様々なフェイントを織り交ぜて観察してきた事で、敵の挙動は完全に把握していた。二挺拳銃から放たれる魔法力の弾丸は素早く正確に犠牲者の山を築き上げて、夜色の帽子で隠れた目元により、贄はその射線を看破できない。
 あまりにも簡単に活動を停止する為、それが硝子部分を砕かれたからなのか、中身へのダメージが蓄積されたからなのか判然としなかったが、ともあれ状況は順調に推移していた。
 七曜は、追い込んだ一団が魔剣の雪崩に圧し潰されたのを見届けて、歌声で仲間を癒し始める。そろそろ、本番だ。
 転げ出たフラスコを自らの手で斬り捨てた璃奈の視線の先には、先程までとは違う色が混じっていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『錬金術ドラゴン』

POW   :    無敵の黄金
全身を【黄金に輝く石像】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    ドラゴンブレス
【炎・氷・雷・毒などのブレス】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    アルケミックスラッシュ
【爪による斬撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に錬金術の魔法陣を刻み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
雛菊・璃奈
ここからが本命、だね…。

ドラゴンブレスは射程範囲が決まってるし、できるだけ敵の範囲外から攻撃するよ…。
アルケミックスラッシュも近接技だから敵の射程外からなら、それ程脅威にはならない…。
ただ、魔法陣は残しておくと厄介だから、敵への攻撃と一緒に魔法陣も削り取る様に『unlimited curse blades』で斉射を行って破壊を試みるよ…。

…真の姿が解放されてるとはいっても…多分、わたしの力だけじゃ倒しきるには火力が足りない、かな…。
敵の目や関節部、翼膜等、装甲の薄そうなところに当る様、斉射の際は狙ってみるよ…。
特に敵のブレスの時は口内を狙えるし、チャンスかな…。


ティエル・ティエリエル
「ふむふむ、あれが錬金術で作られたドラゴンなんだね?ようし、本物のドラゴン退治の前に練習だよ☆」

翼のあるドラゴン。飛ばれたらライオンくんじゃ不利だよね?
自前の羽で浮かび上がってライオンくんには安全な場所に退避しておいてもらうね。
んん?ボクのこと心配してくれるの?ふふん、大丈夫、任せておいてよ!

戦闘ではドラゴンの斬撃を華麗に避けながら、傷ついた仲間達の周りを忙しく飛び回って「小さな妖精の輪舞」を使ってどんどん癒していくよ☆
【翅から舞い散る妖精の粉】はダンジョンの中でだってキラキラ光って見えるんだから♪



スライムの青の向こう側、オイルランプの灯りに照らされて、巨大な何かが鈍く煌めく。
 我らが大将を出迎えんと、フラスコの海が二つに割れる。
 姿を現したのは、黄金。依頼主が言うところの、羽の生えた爬虫類。
「ふむふむ、あれが錬金術で作られたドラゴンなんだね?」
 窮屈な道から解放された事を喜ぶかのように、立派な翼が目一杯に広げられた。雄叫びが戦場に轟く。
 そう、あれこそがドラゴンだ。
 蜥蜴モドキと揶揄できるものではない、その巨躯。本物の前の練習どころか、既に英雄譚の題材として申し分ない、その威容。正真の怪物。

 恐怖で慄く気配を背後に感じながら、しかし猟兵達は威圧に負けず動き出す。
 あの巨体が宙を舞うに十二分なこの大部屋では、この小さな地上戦力では分が悪いと、ティエル・ティエリエルが飛び上がり‥‥控えめな力がドレスの裾を引いた。
「んん? ボクのこと心配してくれるの?」
 大丈夫。不安がる仔獅子の頭を一撫でして後方へと退避を促すと、瞬後に身を翻す。間近を掠める炎の吐息。
 確かに楽な相手ではないが、不利な条件ばかりでもない。この広い空間は敵にも自由を許すが、適切に使えば自分達が身を躱すにも有効だ。毎度々々今のように危ない橋を渡らずとも良い。
 竜の炎に焙られた雛菊・璃奈は、しかし一度でブレスの射程を見極めて、更にカウンターの妖刀を口内に撃ち込んだ。
 怯んだ隙に安全圏へと逃れて、璃奈は冷静に脅威の程度を見定める。爪や牙での攻撃が先のそれより遠くまで届く事はあるまい。ならば。
「斉射‥‥」
 一定の距離を維持すれば安全のはずだ。攻撃と足止めを兼ねた魔剣の群れが目標へと殺到して、刃が飛膜を貫き、関節を抉り、表皮とぶつかる。連続する金属の音。
 敵の防御を容易に叩き割っていた先刻までとは異なる、苦戦を知らせる音。それは徐々に激しさを増して。
「なるほど‥‥本命、だね‥‥」
 前座の比ではない圧倒的なタフネスに物を言わせ、剣の雨を腕尽くで押し退けた黄金竜が顔を出した。予期していた以上の力を目の当たりにして、しかし慌てる事なく、真っ向から打ち掛かる爪撃を今度は過たず回避する。
 全て分かっていた事だ。前哨戦を経て、多少なりとも己の真の姿に近付いた感覚があるが、自分一人で倒し切るにはまだまだ足りない。
 それでも、自分一人で倒し切れずとも、床に刻まれた魔法陣を削り取る事は可能であったし。何より、ここにいるのは一人ではなかった。
 妖精姫が宙を踊る。錬金術の黄金にも劣らぬ輝きが領域を満たし、翅から舞い散る妖精の粉が、妖狐の熱傷を癒していく。
 戦いは、まだここからだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

グレゴリオ・カルディヤ
ほー……あれが作り物の竜か?
見た目は割合悪くねぇな。金ピカってのも高級感あっていいじゃねぇか!
(またひと暴れできそうだ、と中々にご機嫌)

よぉしよし、デカブツ相手ってのは色々やりようもあるんだが。
やっぱあれだな、思いっきりぶん殴ってぶっ飛ばすのが一番早い!
……思考停止ってやつじゃあねぇぞ?
出鼻挫くにもダメ押しするにも、デカい一撃ってのは役立つもんだ。
まぁそれをやれるだけの力と、ちょうどいいタイミングで仕掛けられる経験がねぇと選択肢にゃあ入らねぇな。
つまりは俺だからできるってわけだ! グワッハハハハ!!
(バトルアックスを構え、意気揚々と【グラウンドクラッシャー】。技能:勇気・捨て身の一撃)



「ほぉー‥‥あれが」
 見た目は割合悪くねぇな、とグレゴリオ・カルディヤは値踏みする。
 戦地において、見栄えというものは意外と馬鹿にならない要素だ。首魁が襤褸を纏っていては部隊の士気に関わる。
 当然、派手であればある程に良いというものではないが、高級感があるとして男は合格点を付けた。相対する側にしてみても、伸すなら多少は豪奢な敵である方が良い。箔が付く。
 さて、この局面でそんな益体もない事を考える暇があるというのは、それだけ心に余裕があるという事でもある。
 反響する威嚇の声に気圧される事なく、老兵は冷静に対デカブツ用の戦術を組み立てた。
「やっぱあれだな。思い切りぶん殴ってぶっ飛ばすのが一番早い!」
 出した答えは、力押し。
 思考停止じゃあねぇぞ、と内心で言い訳する。どれ程の人間が信ずるか甚だ疑問であったが、今は置いておこう。
 この場において問題となるのは、考えたか否かではなく、勝てるか否か。
 故に、これは正解だ。
 彼の戦闘経験は適切な機を見極め、彼の胆力は死線への踏み込みを可能にして。そして彼の肉体は、従心を過ぎたとは思えぬ膂力を発揮した。
 轟音。武骨な戦斧が竜の皮膚を割き、砕けた床材が舞い上がる。
 俺だからできる。そう豪語するだけの一撃が戦場を揺るがして、苦悶の叫びが鳴り響いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

メリュジーヌ・ヴィーブル
【真の姿解放描写】
全身に赤い光の線が走り、灰色だった眼も朱く染まる。同時に、彼女の内部から旧い竜言語がこだまする。『全兵装を解放。当機はこれより最終戦闘行動に移行します。大いなる精霊の加護のあらんことを』

【心情】
わーっ!ドラゴン!大きい!キラキラしてる!
あいつをやっつければいいんだよね?
メリュ、なんだかすっごい力が湧いてくる!負けないぞー!
(彼女は「真の姿」になってから聞こえてきた竜言語の意味を理解していません)

【戦法】
まずは距離を取って様子を見る
敵がユーベルコードを使おうとしたタイミングでミレナリオ・リフレクションを使用し、これを相殺
その隙をついて懐に潜り込み、ドラゴンランスで攻撃!



「大きい! キラキラしてる!」
 未知との遭遇に目の色を変えた、この旧い機械人形には不明な点が多い。
 何しろ当人にも分からない事だらけだ。例えば、己の内から発せられるこの言葉が何なのか、メリュジーヌ・ヴィーブルには見当も付かない。
『──全兵装を解放』
 だが、分かっている事もある。例えば、無彩色から鮮やかな朱へと文字通りに変わった目の色と、全身を駆け巡る赤の光とは、どうやら機能不全によるものではないという事。
 他にも、あいつをやっつければよい、という事や、今すっごい力が湧いている、という事。
 それに、あいつをやっつける、その方法も。
『──当機はこれより最終戦闘行動に移行します』
 黄金の腕が持ち上がった瞬間、彼女は迷わずその下へと踏み込んだ。
 観察して記憶した、肉を抉り、大地を刻む前の予備動作。それを過たず再現して、振り下ろされる竜爪と、割り込んだ竜槍とが、鏡合わせの軌跡を描いて激突する。
 ミレナリオ・リフレクション。
 傍からは無謀な挑戦に見えた。あの体躯の差で、同じ結果を引き出せるものなのか。
『──大いなる精霊の加護のあらんことを』
 答えは、可。
「負、け、な、い、ぞー!」
 全てが同じではなかったが、真の姿から溢れ出す力は、圧倒的な質量の差をも埋めてみせた。相殺。
 ただ一つ、同じでなかったもの。それは気構え。
 押し勝つと、そう確信していた竜の体が泳ぐ。
 見開いた瞳には、我が身を貫く騎士の姿が映っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ガロ・ウィンダミニア
作りものとはいえドラゴン。奴を倒せれば俺の武も高まるというものだろう。

俺の頼りは丈夫な身体と無骨な大剣だけだ。どんな相手だろうが正面から挑むのが性に合う。
硬そうな見た目だが、叩き斬るのみ。

ドラゴニアン・チェインで爆破し、守りを削いで大剣で叩き斬る。技能→勇気、鎧砕き


茲乃摘・七曜
心情
心情
小細工なしの真っ向勝負ですね

指針
猟兵の真価は連携出来ることと意識し仲間の回復と錬金術ドラゴンの阻害を主軸に行動

回復
【歌唱】で優しく暖かに歌い上げ一人で戦っているわけではないことを伝え【シンフォニック・キュア】で味方の回復を行う

対ドラゴンブレス
ブレスを各種耐性で耐え負傷は激痛耐性で誤魔化し
【歌唱】でAngels Bitからブレスの逆属性の攻撃を【全力魔法】【属性攻撃】【範囲攻撃】で顕現し仲間への負傷を和らげる
「歌えている限りは問題ありません安心して攻撃に集中してください」

真の姿
内部魔導機構の超過駆動
見た目は変わらず身体を動かすたび・歌うたびにオルガンを奏でるかのような高音が微かに響き渡る


ドロンゴン・コーフィー
えーえー、ドラゴンだー、すごい、ホンモノ?
え、作り物?
鱗とか角とか骨とか、持って帰れないかなー!?

ドラゴンってのは、強いんだ。(ぶっちゃけ伝え聞いただけなので、本人の思い込みが大部分の主張)
まともに攻撃を貰ったら、僕は哀れ泥飛沫……。
普通なら、ね。でも僕も、ドラゴンなのさ!

【この身は夢幻、我が名は竜】を使用、フラスコの残骸、砕けた壁や床なんかも装甲として武装して、より強そうな姿を目指す。ドラゴンの攻撃を受け止めて戦うために、この身を真に、竜とする。
さあこっちを見ろ。僕の方が君よりスゴい、ドラゴンさ!
(防御強化)

技能『存在感』、共闘者がいれば『かばう』



轟音。ドラゴニアンの放つ闘気の一撃が煌めく外皮を剥いで落とし、破壊の力に見合うだけの余波が戦場を巡る。爆ぜる空気がスライムの海を波立たせ、フラスコの残骸を巻き上げた。
 ガロ・ウィンダミニアの勢いは止まらない。
 体勢を立て直す隙を与えず、巨大な鉄塊の如き剣が撃ち付けられて、爆破の傷を過たずなぞる。
「ドラゴンってのは、強いんだ」
 聖騎士は僅かに眉根を寄せた。
 手に返ったのは、肉を切る感覚からは程遠い、鈍く異質な手応え。着実にダメージを積み重ねてはいたが、期待していたよりも大分、浅い。
 なるほど、ドラゴンとはこういうものか。同道する竜頭のブラックタールの言わんとするところを理解して、いや、何故に彼が敵の力量を自慢げに語るのかは今一理解できなかったが、ともあれ男は認識を改めた。
「作り物とは言えドラゴン、か」
「え、作り物? ホンモノじゃないの?」
 どうだろう。何を以てドラゴンと定義するかにもよるだろうか。
 何やら一瞬で情報の確度が急落した気もするが、ともかく、眼前のあれが強い事は間違いない。竜人は巨剣を構え直す。
 どうするか、などと考えるまでもない。やる事は変わらず一つだ。ただ、叩き斬るのみ。正面から挑むのがガロの性に合っており、彼の頼みとする手札にも搦め手の選択肢はない。
 当初の想定より一段上の相手ではあるが、まあ良いだろう。容易に斬り捨てられる程度の敵をどれだけ倒してみたとて、武勇の誉れにはなり得まい。
 難敵は望むところであり、それに、仮に斬れずともさしたる問題ではないのだ。彼は今、一人ではない。

 そう伝えるように、戦の只中で、全く不釣り合いな風琴の音が耳へと届いた。
 奏でていたのは、一体の魔導人形。
 魔法の根源を直接制御し、時に世界すら従える茲乃摘・七曜の力は、魔導機構の超過駆動により更なる神性を帯びて、正に天上の歌声となって戦場に響き渡る。
 苛烈な攻撃を和らげ、あらゆる傷を癒す、なくてはならない生命線。
 猟兵の真価は連携にあり、とは彼女の言だが、その持論の通りに、黒の淑女は類稀なる力で戦線を支えた。
 支えてしまった。
 彼女に失敗があったとすれば、それは働き過ぎた事。彼女の歌は、一人で戦っている訳ではないと、そう仲間に語り掛けていたが、他ならぬ彼女自身が一人で仕事を担い過ぎた。
 黄金の眼光は己の敵を確かに認識して、討ち滅ぼすべく動き出す。

 金色の竜は巨体に見合わぬ動きで軽やかに舞い上がり、霊気の鎖を断ち切って、忌敵の息の根を止めるべく飛翔する。
 今更説明を繰り返す必要もない程度には、その力は圧倒的だ。まともに攻撃を貰えば、魔導蒸気文明の粋たる機械人形と言えど破壊は免れまい。
 しかし。彼女も今、一人ではない。
「ああ、僕は哀れ泥飛沫‥‥なんてね」
 痛みに備えていた七曜は、自身の目に映ったものを理解するまでに若干の時間を要した。
 マーブル模様の粘体が、竜の爪を受け止めている。
 これは誰だ。この声には聞き覚えがある。しかし彼の身体は、タールの名の通りに漆黒のそれではなかったか。
「何を隠そう、この僕もドラゴンなのさ!」
 ドラ‥‥ゴン?
 かの液状生命体の首と思しき箇所には、確かに竜の如き頭が乗っていた記憶があるが。ドラゴン?
「ドラゴンなのさ!」
 二回言った。
 いや、彼がそう言うのなら、きっとそうなのだろう。作り物がドラゴンの名を冠するのだ。彼、ドロンゴン・コーフィーがドラゴンになったとて構うまい。
 スライムの海を掬い上げ、拡張された粘性の五体。それを覆う石材の鱗。雄々しく広げられた硝子片の翼。頭頂に頂く鋼管の角。戦場から掻き集めた廃物を鎧う、その異形。
 何より、降り掛かる猛威を押し返すその力。確かに、一介のタールのそれではない。
 それは正しく。
「君よりスゴい、ドラゴンさ!」
 青黒の泥が立ち上がり、黄金の竜が後退る。
 かの身に夢現の境なし。覚えて刻め。彼は今より、ドラゴンだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

彗殿・晃
ドラゴンっ!いいっすねぇ、いつかやってみたかったっす、ドラゴンスレイヤー!
せっかくだから今なるっす!

戦闘もだいぶ経ったから破片とか鱗とかあるはずっす、なかったらなかったでそれでよしっす!
アルケミックスラッシュには要注意しつつデュアルウェポンで牽制して接近っす。
ドラゴンブレスには残骸で作ったスクラップシャッターを盾にして弾くっす。
強引に接近していくっす、攻撃に備えて無敵の黄金を使おうがもう遅いっすよ!
殴って!作って!壊せれば!おれの勝ちっす!【エクストラアタック】でヤツの鱗を外装にしてかき集めて作った大質量で真正面から高速でぶん殴るっ!!



「ドラゴンっ! いいっすねぇ!」
 残骸の陰から飛び出すと、牽制の可変式光弾銃を一発、二発。並の魔物であれば牽制と言わず止めにまで持ち込めるところなのだが、そう簡単にはいきそうもない。
 彗殿・晃は思わず笑う。戦場で拾い集めた破片が材料とは言え、大盾を一息で溶断するその火力。光弾を跳ね除けるその守り。聞きしに勝る強さだ。
 そして、だからこそ竜は油断した。木っ端どもが幾ら寄り集まったところで物の数ではないと。盾に阻まれた数秒も、気を逸らされた数秒も、それで何になるものでもないと。
「エクストラアームっ!」
 勝敗を決したのは、その数秒。
 隙を突き、踏み込んだ少年の手には廃材の塊。大質量で殴り倒す必殺の一手。
 竜は読んでいた。その身に纏う黄金が一際輝く。あらゆる攻撃を跳ね除ける無敵の黄金。
 もう遅いっす。野生児は笑った。石像へと変ずるべきその全身が、既に欠けていると知っていたから。
 真正面、大きく振り被る少年の手には輝く黄金。かの竜から剥ぎ落した鱗の断片。
「こいつで締めっす!」
 そう、これが締め。
 剣の傷。斧の創。槍の疵。爪の瑕。全てを積み重ねた先の、最後の一手。
「ゴーっす!」

 この戦いで幾度目かの轟音が部屋を揺らし、この戦いで初めての静寂が部屋を包む。
 その中心には二つの黄金。一つは地に倒れ伏す躯、一つは天高く掲げられた拳。
「竜殺し! なったっす!」
 鬨の声が上がった。討滅、完了。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『学園大浴場でリフレッシュ!』

POW   :    じっくり湯船につかり、温まって疲れを癒す

SPD   :    素早く体を洗ったりして隅々まで綺麗にする

WIZ   :    浴槽や脱衣所などで交流し、精神を癒す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
ティエル・ティエリエル
「ここが学園の大浴場?わーい、お城のお風呂よりおっきいー☆」

脱衣場で衣服をぽーんと脱ぎ捨て、タオルを巻いて(or水着を着て)大浴場に飛び込むよ。
まずは身体を洗わなきゃね……わわわっ、泡だらけになっちゃったよ♪

その後は、風呂桶の中にお湯を注いでもらってボクはその中に浸かってるね。
浴槽の中をぷかぷか浮かんでみんなとお話でもしようかな?

学生さん達が雪崩れ込んできたらボクの活躍をこれでもかって聞かせてあげるよ、えっへん!
えっ、ダンジョンで擦りむいたところが痛いって?しょうがないな、ボクが治してあげるよ!


メリュジーヌ・ヴィーブル
わーい!お風呂だ!お風呂だ!
メリュ知ってるよ、お風呂に入るときはね、服をぬがなきゃいけないの!
えへん。メリュかしこい!

うわーー!広い!すっごい広いお風呂だ!こんなの……こんなの泳げちゃうじゃん!!やばいよ!!
うわあああーーっ!!(興奮のままに頭からドボン)わあああーーっ!!(そのままバシャバシャと無軌道に泳ぎ回る)

……ふー。(落ち着いたらしい)
でも、よかったね!ドラゴンやっつけたし、みんなお風呂入って、うれしそう。
メリュねえ、みんながうれしいと、メリュもうれしいんだ!えへへへ……。

【使用能力値:あえて言えばSPD……?自分でも判断つかないのでおまかせします】



「わーい! お風呂! お風呂だ!」
 苛烈な戦いを終えた猟兵達を待っていたのは、噂の大浴場であった。
 本当はその前にお偉い人による出迎えと、作戦終了に際して労いの言葉などが予定されていたそうだが、賢明なる彼女らは華麗に回避してきた。忘れて頂いて良い。
「お風呂に入るときはね、服をぬがなきゃいけないの!」
 メリュ知ってるよ、とメリュジーヌ・ヴィーブルが胸を張った。かしこい。
 風呂に入る前には服を脱ぐ。世界の壁を越えて共通するルールである。異世界の住人たるフェアリーも、衣服をぽーんと脱ぎ捨てた。
 お姫様とは思えない所作だが、ここは彼女のいた城ではない。固い事は言わないでおこう。
 放り出された衣服はスタッフが畳み、汚れの激しいものは洗濯してくれるとの話だ。安心である。ついでに脱衣所と浴室は男女で分かれているので、その手のトラブルが起きる心配もない。安心である。
「わーい、お城のお風呂よりおっきいー☆」
 タオルを巻いて大浴場に飛び込むと、ティエル・ティエリエルは目を輝かせた。
 そう、ここは彼女のいた城ではなく、六倍の体躯を持つ種族の為に設えられた場。
 更に言えば、この魔法学園は単なる教育機関ではなく、迷宮への対策の為により多くの人員を必要とする。その浴場が肥大化するのも必然と言えよう。妖精の目線でなくとも驚きの面積である。
「お風呂に入るときはね、体をあらわなきゃいけないの!」
 興奮のあまり浴槽に頭からダイブし掛かっていた機械人形は、早くも泡だらけになった妖精姫を見て慌ててそれに倣う。よく自制した。かしこい。
 この後も様々な人々が利用する湯船に、得体のしれない粘液が混ざったりしたら大変な迷惑となる。綺麗に使いましょう。約束だ。

 風呂桶の船の上、ティエルが大波に揺られる。
 温水の海が荒れているのは、かの機械人形が凄い勢いで泳ぎ回っているからだ。湯船はプールではないが、自制できなかった。かしこくない。かわいい。
 ともあれ、広いだけでなく洗面用具が充実していた事もあり、体はしっかり洗い終えた。今は入ってきた第一陣の学生達に、己の活躍を語り聞かせている最中である。
「そこに颯爽と登場したボクが、並みいるモンスターをちぎっては投げ! ちぎっては投げ!」
 常ならば、話盛ってない? と突っ込まれそうな内容であるが、恐ろしい事に概ね間違いない。その上にこの場で、アフターケアとばかりに傷まで癒して貰ったとなれば、誰に嘴を容れられるはずもなく。
 もはや聴衆と言うより感嘆の言葉を呟くだけのbotになりつつあったが、まあ、思考を放棄できるのも平和なればこそ。
 水面に顔を出したメリュジーヌが、それを眺めて嬉しそうに笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

グレゴリオ・カルディヤ
(POW)

グワッハハハハ!!
デカブツもぶちのめしたところで気分良くひとっ風呂と!
たまらねぇなぁオイ!! なぁ!
(そこらにいた学生へと急に振る)

んで早速浸かりてぇとこだが……さすがにねっばねばしてんのは取らねぇとな。そんなもんが浮いた風呂なんざダメだ。
(かけ湯ついでにざっと汚れを落として)
よぉしそんじゃあ芯まで温もるとすっか!!
おめぇと俺どっちが長く浸かっていられるか勝負な!
(そこらにいた学生へ急に振る)

やっぱ風呂はいい……筋肉が喜ぶ温度だぜ……。
はー、やべぇないつまででも浸かっていられるぜマジで。
おめぇもそう思うだろ?
(付き合わせている学生へ急に振る。自分は長湯超余裕。技能:気合い)



汗を流した日には、やはりひと風呂浴びるに限る。
 グレゴリオ・カルディヤは上機嫌だ。
 さもあらん、勝ち戦の後である。その相手が滅多とお目に掛かれない大物となれば猶更に。
 そして何より、単純にこの浴場の質が良かった。流石に蒸気の世界と言うだけの事はある。熱エネルギーの扱いはお手のものか。
 こびりついた粘体を洗い流すと同時、体に心地良い温度が運ばれた。これならばゆっくりと疲れを癒せるだろう。

「押忍! お先に上がらせて頂きます!」
「なんだぁ、もうへたばったか?」
 はたして、これを休憩と呼んで良いものか。浴室はいつしか我慢大会の様相を呈していた。
 きっかけは、どちらが長く浸かっていられるか、との老人の戯言。
 聞き流せば良いものを、どこにも体育会系の人種は存在するようで。結構な人数が乗せられて、この勝負に巻き込まれつつある。
 ちなみに、聡いものは早々にかけ湯の段階で察知して、今は遠巻きに眺めている。学問の徒は利巧だ。
「たまらねぇなぁ‥‥いつまででも浸かっていられるぜ」
 筋肉が喜ぶ温度だ、と夢心地のグレゴリオが呟くと、全くだと答えが返る。
 どんな温度だよ、と野暮な事を訊ねるものは疾うに脱落して、もはや一人も残っていない。
 この場にいるのは真の強者のみ。この熱闘は、今しばらく終わりそうにない。

 良い子の皆は茹で上がる前に適宜水分を補給しましょう。約束だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

茲乃摘・七曜
白銀・雪斗(白雪の鷹・f00725)と同行

心情
たまには、ゆっくりするのもよいですね

行動
●雪斗さんを誘い改めて訪れた
以前の依頼やアックス&ウィザードの世界に関してのんびり話す
「よいお湯ですね。雪斗さんにとってはこの世界が興味深いのでしょうけど...広大な大地には惹かれるものがありました」
こちらの世界も広い場所はあるのですけどどうしても猟兵ですと迷宮に関わることが多いですからと答えつつ
「そうですね、でしたら機会が合ったら素敵な場所教えて頂けますか?」


「そうでした、錬技の迷宮は無事に学園の管理下に戻っておりますよ」
猟兵としての心強い言葉を聞き
「私がまた違う予知をしたときには頼りにさせて頂きますね」


白銀・雪斗
茲乃摘・七曜(f00724)と同行

お風呂にゆっくり浸かるのは癒やされるし好きだな
のんびり七曜と話をしよう


七曜に誘われて訪れ
相槌を打ったり、応えたりしつつ
「ああ、良いお湯だ。アルダワには、こんな大きなお風呂もあるのだな」
私の故郷……アックス&ウィザーズの森には、こんな大浴場は無かったから驚いたよ、と付け加え
「広大な大地か……
私にとってはそれが身近なものだが、七曜のように惹かれる者もいるのだな」
嬉しく感じ、柔らかく微笑み
七曜の言葉には「ああ」としっかり頷く


錬技の迷宮の現状を聞き
「そうか、無事に平和が戻って良かった」
「まだまだ私達、猟兵の力が必要な世界があるのだろうし、これからも頑張っていきたいな」



良いお湯だ。二人、どちらからともなく溜め息が零れた。
 喧噪を極める戦場を行き来する猟兵にとって、こうして何をするでもなく、ただゆっくりとできる時間はありがたい。
「アルダワには、こんな大きなお風呂もあるのだな」
 故郷の森にはこんな大浴場はなかったから、驚いたよと白銀・雪斗。
 魔法、ダンジョン、それに竜。言葉にして並べてみれば、現在知られている七つの内では比較的似通った要素を多く持つ二つの世界だが、こうして実際に訪れてみれば、そこはやはり別の世界だ。新しい発見で溢れている。
 それは、興味深そうに視線を巡らすエルフの少女だけでなく、彼女をこの場に誘った機械人形にしても同様で。
「私にとっては、そちらの広大な大地にも惹かれるものがありました」
 茲乃摘・七曜は、過日に訪れたアックス&ウィザーズの大地へと思いを馳せる。
 この世界が狭いという訳ではないが、事件が一ヵ所に集約されるその性質上、猟兵は魔法学園の近辺に縛られがちだ。遠征の機会という点では、異界の地平はとても広く感じられた。
「広大な大地か。七曜のように惹かれる者もいるのだな」
 雪斗にとっては身近な、あって当然とも言うべきものだったが、高く評価して貰って悪い気はしない。
 お互いに隣の芝生は青く見えるようだと、そう笑い合う。
「ええ、ですから。機会があれば、素敵な場所を教えて頂けますか?」
 身近にあり過ぎて忘れているだけで、きっと実際に青いのだろう。
 故郷の景色を思い浮かべ、雪斗はしっかりと頷いた。友人を伴っての旅は、常より楽しく感じるはずだ。

 良いお湯だ。長居したくなるのが人情というもので、そうなると自然と会話も膨らむ。
 今の話題は、黄金竜との死闘について。
 取り留めのないお喋りの中にもオブリビオンの影が絡んでしまうのは、ある種の職業病だろうか。
「錬技の迷宮は、無事に学園の管理下に戻っておりますよ」
 共通の話題として挙がる程、あのような怪物が世に現れているとは、中々に難儀な事であるが。そのどちらの騒ぎもつつがなく収束した事は不幸中の幸いだろう。
「そうか、平和が戻って良かった」
 ひとまずはその後の経過も良好だ。そう聞いて、撫子色の髪を揺らしながら少女は一息つく。
 問題の数が一つや二つで済まない事は身を以て承知しているが、少しずつでも減らせるに越した事はない。今までも、これからも。
「まだまだ私達の力が必要な世界があるのだろうし、これからも頑張っていきたいな」
 頼もしい言葉を耳にして、七曜は静かに微笑んだ。友人を伴っての戦いは、常より心強く感じるはずだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月02日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アルダワ魔法学園


30




種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト