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黒と青の狂死曲(作者 篁みゆ
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#ダークセイヴァー  #人類砦  #闇の救済者  #シリアス  #再送希望日程お手紙送りました。  #お手紙届いてない方はグリモア猟兵へご連絡下さい。 


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●芽生え始めたもの
 そこはおそらく、かつて滅ぼされた城だったのだろう。
 吸血鬼にすら見捨てられるほどに激しく破損され、長き歳月の過ぎ去った今、誰も住まぬ場所であった。
 今は微かに城としての面影を残す廃墟となっているそこの周りは、かつては城下町だったのだろう。
 ただ、ところどころに見受けられる朽ちた何か、それらを隠すように生い茂った草や苔。廃墟以上に当時の面影が残されていないため、類推するしか無いが。
 しかしそんな場所に、幾年月ぶりかに『生命(いのち)』が滞在していた。

「きしさまー!」
「あら、騎士アシュリー、今夜も見張り?」
 着古したボロ服を纏う幼子に駆け寄られた青年は、足を止めて。その子の母親である顔見知りの女性の問いに「ええ」と頷いてみせる。
「この拠点を守るのが、『騎士』の努めですから!」
 アシュリーと呼ばれた青年は二十歳過ぎだろうか、拳で胸元を叩いて自信ありげにそう告げた。
 騎士とは言っても、立派な鎧や武器を持っているわけではない。正式に叙勲を受けたわけもない。ただ、近い祖先に騎士がいた――そう代々伝え聞いてきただけだ。
 けれどもこの、ヴァンパイアの支配の及ばない地において生活の秩序を守るためには、『騎士』という役職は上手く機能している。
 アシュリーを代表に、四十代くらいまでの様々な種族の男女で構成された『騎士団』は、本来の『騎士』の姿と比べたら子どものごっこ遊びに見えるかもしれないが、それでもこの場所では要としてその存在を確かなものにしていた。
 夜毎の見張り、喧嘩の仲裁、廃墟の修繕の手伝い、食料の調達――共に暮らす住人たちのため、様々なことをこなしてくれる彼らは、住民たちにとって頼りになる存在であり。
「じゃあこれ持っていって。薄いけど、味が付いてるわ」
「果実水! いいの? 君たちの分でしょう?」
 常に闇に覆われているこの世界では、作物が育つ場所が限られていて。この果実水も他の世界のものと比べれば、ほんのりと甘味と酸味が感じられる程度のものだけれど。
 それを大切に大切に飲んでいることを、みんな知っているから。
「いいのよ。騎士様たちがいなかったら……こんなに心穏やかに暮らせることは、一生なかったでしょうから……」
 そう告げて笑む女性から、アシュリーは木製の容器を受け取った。そうすることで彼女たちが安心するのなら、それは受け取るべきだと思ったのだ。
「わかった、ありがとう。これで一晩頑張れるよ!」
 笑顔に笑顔を返してアシュリーは、見張り台のひとつへと向かっていった。

●忍び寄る黒と青
「ああ……あそこに『騎士』がいるのね」
 遠くから廃墟を見て呟くのは、黒い衣を纏った女性。
「ならば……彼らも彼の軍勢に加えなくては」
 彼女の背後には、漆黒の全身鎧を纏いしモノたちが、立っている。
「嗚呼、嗚呼、この栄誉を誇り、咽び泣きなさい――あなたたちにも『強さ』を与えてあげるわ――……」
 女性の背に浮かぶのは、その髪と同じ青い色をした翼。
 そして女性と鎧姿の者たちの足元で揺らめくのは、青き焔――。

●グリモアベースにて
「……、……」
 グリモアベースに佇む長身の男の背には、ふぁっさーとした黒い翼が広がっている。髪に咲く花も見えることから、オラトリオなのだろう。
「時間があるなら、聞いていけ」
 ぶっきらぼうな物言いの彼の手には、数枚の羊皮紙。ちなみに特段機嫌が悪いというわけではないようだ。
「ダークセイヴァーに存在する『人類砦』については知っているな? その人類砦のひとつがオブリビオンに襲われ、蹂躙される」
 グリモア猟兵リーナス・フォルセル(天翔ける黒翼のシュヴァリエ・f11123)は淡々と告げる。
 リーナスによれば、襲われる『人類砦』は遠き昔に城だっただろう場所を拠点としており、廃墟同然だった城を修復しながら居住しているという。
 人口は徐々に増えて現在300人ほどになっており、人々の自治を尊重しながらも『騎士団』と呼ばれる者たちが人々を取りまとめている。
「騎士団と言っても、その単語でお前たちが想像するようなものではない。しっかりとした鎧もなければ、頑健な武器もない。叙勲を受けたわけでもない。『自警団』と呼ぶほうがふさわしいだろう」
 彼の言い方が若干辛辣であるのは、なにか個人的感情が混ざっているのか……それはわからぬけれど、確かに彼らは『騎士団』と呼ぶには足りないものが多く、『自警団』ならば、というところだ。
 そもそも長いことヴァンパイアたちの支配下にあったこの世界の人々が、支配体制に抵抗することすら珍しいのだから。
「『騎士団』の団長としてこの『人類砦』を統率している青年は、近い祖先に本物の騎士がいたと伝え聞き、『闇の救済者』として立ち上がった者だ」
 アシュリーと呼ばれる青年は、騎士への憧れもあったのだろう、自ら騎士と名乗り、人々を守るために、人々の生活の為に日夜働いている。
「『騎士団』が住人の生活を守り、手助けをすることで、住人も騎士団への信頼を厚くしていった。『騎士』として足りないものは多々あれども、その心は、そして住人たちにとっては彼らは、紛れもなく『騎士』なのだろう」
 そんな『騎士』たちの守る人類砦が、オブリビオンに狙われている。希望の芽を摘み取るべく、オブリビオンたちは容赦なく彼らの生活拠点である『城』へと襲いかかるのだ。
「城といってもかつて城だったと思われる廃墟に手を加えたもの、だ。防衛力など期待できない。オブリビオンに襲われれば、『騎士団』の者たちでも殺戮と滅びを回避できない」
 襲い来るオブリビオンたちも、残虐で容赦のない者たちだ。猟兵たちの助けがなければ、小さな希望の芽は軽々と摘まれてしまうだろう。
「お前たちならきっと、上手くやれることだろう。期待している」
 リーナスは淡々と述べ、猟兵達を導くために三日月型のグリモアの準備を始めた。





第2章 ボス戦 『黒騎士の武具造りし黒魔術師ブラックスミス』

POW ●捧げなさい、我が黒騎士にその命を。
【黒騎士の武具を作り出す黒魔術の青き炎の海】を披露した指定の全対象に【呪詛】を放ち【この炎に飛び込まねばという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD ●誇りなさい、彼の軍勢に加われる栄誉を。
自身の【黒魔術を施した一般人たち(生死問わず)】を代償に、【創造したレベル×1体の黒騎士】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【剣や鎌、弓矢など様々な呪いの武器】で戦う。
WIZ ●換わりなさい、いずれ摘まれる贄の姿に。
【呪いの鎚及び鎚から放つ無数の鉛の花びら】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を生命力を吸収し朽ちさせる鉛の花園で覆い】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はルパート・ブラックスミスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●終焉か、それとも。
 それは悪夢のような襲撃だった。
 おびただしい数の青き騎竜に拠点を囲まれて、『騎士団』が善戦したとしても倒しきるどころか耐えきることも難しい――そんな絶望的な状況。
 けれどもそれでも諦めない彼らの前に、猟兵という名の光が、希望が現れたのだ。
 猟兵たちは、延々に続くとも思える騎竜たちの襲撃を抑えきり、気がつけば青いシミだらけの血に動くモノは彼らたちだけとなっていた。
 拠点が囲まれるように襲撃を受けているのを知っていたからして、自分たちの守った区画の安全が確認されれば、誰からともなくまだ戦いを続けている別の区画へと向かった。
 そうしていくことで自然と、猟兵たちは他の区画よりも騎竜の増加が著しい、アシュリーの守っていた区画へと集まることになったのだ。

 他の区画よりも多くの騎竜たちが攻めてくるということは、ひとつのヒントともなり得た。
 すなわち、騎竜たちを指揮している首魁がどの方面にいるのかと推察する標(しるべ)となったのだ。
 多くの猟兵達によって、騎竜の青よりも斃された騎竜たちの作る青いシミの方が多くなり、視界がひらける。
 常闇の空が、うっすらと色を変えてゆく――朝が来たのだ。
 しかしそれは、安堵を連れてきたのではなかった。
 他の世界であれば、暗闇が去り陽が射す朝は『解放』や『終焉』、そして『始まり』の象徴かもしれない。
 けれども『朝』がこの拠点に連れてきたのは――。

「ああ……暴竜たちに駆逐されし弱き騎士たちよ」

 騎竜たちの押し寄せてきた方向に、光が見える。否、青き光はただの光に非ず。焔、だ。

「あなたたちに『力』を授けましょう。『強さ』を授けましょう。そして、彼の軍勢に加わる栄誉を授けましょう」

 しずしずと近づいてくるのは、女性だ。騎竜たちの作った青いシミを、足元の青い焔で燃やしながら、焔の道を――否、彼女の歩いた道が、青き焔の道となるのだ。
 焔と同じ深い青色の長い髪には、黄金(きん)色の花を咲かせて。同じ花の意匠を持つ槌を手にし、黒きローブを揺らしながら歩んでくる。

「嗚呼……」

 そんな彼女が足を止めると、彼女の後方に控えている、漆黒の全身鎧を纏いしモノたちも足を止めて。

「『騎士たる者』が増えたようね……」

 拠点の前に集う猟兵たちを視界に入れ、彼女は酷く上品に笑んだ。今は狂気に染められているように見えるその顔(かんばせ)は、もしかしたら遠い昔には男性たちを魅了したのかもしれない。

「ああ、ああ、嗚呼! 強き者にも弱き者にも与えましょう、『力』を、『強さ』を。我が作りし武具は、間違いなくお前たちに強さを授ける」

 ガシャ、ガシャン……全身鎧の黒きモノたちが、彼女の両脇を固めるように位置度った。その胸元には勲章のように、彼女のもつ黄金(きん)の花が飾られている。
 彼女の言う『力を授ける』とは、その手で作り出した黒い武具を纏わせることで成り立つのだろう。それは猟兵たちにも分かる。
 そしてその黒い武具に身を包めば――彼女の手駒と成り下がることも。

「この、ブラックスミスの栄誉を拒否するならば――我が黒騎士たちのためにその身を差し出しなさい!」

 彼女の背に広がるのは、髪や焔と同じ深い青色の翼。
 翼を大きく広げた彼女は、宙空へと浮かび上がり、くるりと一度だけ、回転して。

「ああ――……私を『呼んだ』のは――……」

 眼下に見える『黒』へと視線を向けて、口角を上げた。



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●戦況
皆さんは、第一章で言うE地点付近にいます。
砦を守るために戦っていた人にはもちろん、拠点中心部に近い位置にいる人たちにも、彼女の声は届きます。
宙に浮かんだ彼女からは拠点内も見下ろせますので、当然ながら拠点内の騎士団員や拠点内部にいる猟兵たちもその姿を捉えることができます。

●展開選択
A:メンタルに影響
 『強くなりたい』『力がほしい』という思いに作用します。
 力を得るためには彼女の焔に触れなくてはならない、邪魔をする者を倒さなくてはならないという思いに駆られ、敵味方一般人関係なく、邪魔者に見えたりもします。
【解決方法】⇒自分で増幅する思いを抑えるなどのひとりで解決する方法と、誰かに助けてもらう方法とあります。
※正気に戻りましたら、プレイングに書いてなくとも敵へと攻撃しに行ったことになります。

B:助力
 Aのように、メンタルに影響を及ぼしてしまった人を正気に戻す行動をメインとします。
 対象は猟兵でも騎士団員でも一般人でもOKです。
※正気に戻したあとは、プレイングに書いてなくとも敵へと攻撃しに行ったことになります。

C:正面対決
 ボス『黒騎士の武具造りし黒魔術師ブラックスミス』と対決をメインとします。

各選択肢は、プレイング頭に記載して頂けると助かります。
なくても分かるプレイング内容でしたら、省略しても構いません。

●プレイング受付
 12月16日(水)8:31~開始。

※締め切りなどはマスターページや旅団『花橘殿』などにて随時告知します。
東雲・一朗
☆B

▷服装と武装
帝都軍人の軍服、少佐の階級章付き。
刀と対魔刀の二刀流、2振りとも腰に帯刀。

▷心を斬る
なるほど、絶望に追い込んでからの甘言…敵は人の弱さというものはよく知っている。
しかし人はただ脆弱なだけではない…絶頂の淵にいてなお心に光を宿すものとは知らぬようだ。
「本末転倒だ、強さは与えられた時点で弱さになる。
何故なら、他者から与えられた力は、その与えた者への絶対的な敗北と隷属を示すからだ。
ゆえに、それは弱さである」
見れば共に戦った者はドリスまでもが惑い取り込まれている。
私は『破魔』の霊気を宿す『威厳』ある声ではっきり断言し、『浄化』の【強制改心刀】で惑う者達の弱さを斬り捨てる。


 青い焔。青い翼――宙空へと浮かび上がった黒魔術師を見上げる東雲・一朗(帝都の老兵・f22513)の心には、焦りや惑いはない。
 軍服に身を包み、少佐の階級章を戴いた彼は、歴戦の猛者である。腰に佩いた二刀と共に駆け抜けた戦場は、数え切れぬほど。踏んできた場数が多ければ、『見て』きたモノも多い。
(なるほど、絶望に追い込んでからの甘言……敵は人の弱さというものはよく知っている)
 だからこそ、黒魔術師のやり口が理に適っていることも分かった。
 けれども、だけれども。一朗は、知っている。黒魔術師は、恐らく知らない――もしくは『過去』となった時にその記憶を置いてきてしまったのか。
(しかし人はただ脆弱なだけではない……絶頂の淵にいてなお心に光を宿すものとは知らぬようだ)
 一朗は一瞬たりとも迷わなかった。即座に地を蹴って駆け出したのだ。
 向かうのは、拠点内部。あの高さなら、拠点内からも黒魔術師の姿は見えているだろうから――。
 無駄のない動きで目的地へと向かった一朗は、己のそれが杞憂では済まなかったことを知る。

「あ……強く、強く……私にもっと、力があれば――」

 視線を黒魔術師に固定させられたまま、亡者のようにおぼつかない足取りで進み来るのはダンピールの女性――ドリスだ。
 彼女と同じように、ふらりふらりと歩みだしたものたちの顔にも見覚えがある。先程、一緒に戦った騎士団の者たちだ。
 ドリスが、彼女たちが強さを求める気持ちはわかる。目の前で己の無力さを見せつけられて、仲間を守れず、失って。そして自分たちよりも圧倒的に大きな力を持つ、『猟兵』たちの戦い振りを見たのだ。彼らに救われたのだ。
 力が欲しい、力があれば――そう思うなというほうが難しい。
 だから、一朗は迷わずここへと来たのだ。
 彼女たちと対峙するように立った一朗は、すらりと『旧式退魔刀』を抜いて。

「本末転倒だ、強さは与えられた時点で弱さになる」

 発せられたその声は、ぴりりと空気を震わせ、身体の芯まで届くような威厳のある低さ。
 彼女たちの視線が、一朗を捉える。

「何故なら、他者から与えられた力は、その与えた者への絶対的な敗北と隷属を示すからだ」

 彼女たちは一朗を『敵』と捉えているのだろう。けれども彼の声は、揺らがず、それどころか威厳と強さを増して。

「ゆえに、それは弱さである」

 その事実は揺るがぬと、強い意志を以て断言した一朗は、地を蹴って斬り込む!
 破魔の力乗せた言霊は、彼女たちの身体に響いたはず――ならば。

 ――!

 ――!

 ――!

 まず、上段からドリスへと一閃。
 返す刃で斬り上げるように、別の騎士団員へ一閃。
 二歩、踏み込んで振り下ろすように、次の騎士団員へ一閃。

 それは、傷をつけるための一撃ではなく。
 ただ、その心に宿る『邪心』のみを斬り捨てしもの。
 一朗の十八番であるこの技は、どの技よりも彼が矜持を持つ技。
 だから『帝都桜學府』出身である彼としては、この場で他の技を選ぶという選択肢はなかった。
 物理的に何かを斬った音はしない――けれども斬られた彼女たちは、糸の切れた操り人形のように膝を付き、あるいはしゃがみこんで。

「目が覚めたか?」
「……は、い……。私は……」

 刀を収めた一朗の言葉に、震える声で返したのはドリス。先程まで、己の中に蔓延していた思いを覚えているのだろう。その瞳は戸惑いで揺れている。

「私、は……。……私には、何が、できますか……」
「……」

 強大なオブリビオンを前にして、多少腕に覚えのある程度の彼らが役に立つとは言い難い。けれども、ここにいるのは。

「落ち着いて耳を傾けろ。聞こえるだろう?」
「あっ……」

 戦闘音に混じって響くそれは、赤子や子どもたちの泣き声。不穏な空気を敏感に感じ取り、聞こえてくる音に恐怖が爆発したのだろう。子どもたちの泣き声は連鎖して広がってゆく。

「あの子らを泣き止ませ、たとえ僅かでも安堵させることは、私たちにできることではない」
「……、……」
「あやす親たちも、不安で押しつぶされる寸前だろう」

 ならば。

「民の心の平穏を守るのも、大事な『騎士の努め』ではないのか?」
「っ……はいっ!!」

 その漆黒の瞳に射抜かれ、その重厚なる声に奮い立たされたドリスは、己の頬を己の手でパチンッと叩いて。

「行ってまいります!」

 他の騎士団員を引き連れて、拠点の奥へと向かってゆく。
 その瞳が揺らいでいないことを、彼女の声が覇気を取り戻したことを確認した一朗は、遠のいてゆく彼女たちの背に背を向けて。
(さて……あとは)
 戦場となっている方角へと視線を向け、『影切』の柄を撫で――そして。
 来た時と同じように、無駄のない動作で駆け出した。
成功 🔵🔵🔴

月水・輝命

C
WIZ
本体五鈴鏡で対峙。負傷も厭いません。
……遅くなりました。わたくしも参りますの。
本当なら、周りの方々へ手助けに行くところですけれど……わたくしは、こちらへ。
花びらを振り撒くのなら、風で吹き飛ばしましょう。
UC発動。
「破魔」による、「範囲攻撃の浄化」で、花園も無に帰しましょうか。
攻撃には、光「属性攻撃」の「オーラ防御」や、鏡像を映して(残像)「見切り」ます。
わたくしはまだ……それほどお話はしておりません。ですが、これだけは言えます。
わたくしは、信じます。信じています。
それと、強さや名誉は与えられて得られるものではありませんのよ。
うつりゆくものに、安寧があらんことを。
……道を繋げます。


 彼女が拠点にたどり着いた時、『それ』はもう、拠点を見下ろしてすべてを操ろうとしていた。
 そこここに広がる青いシミに、気を取られているいとまなどない。ブラックスミスを名乗る黒魔術師のいる方向とは別の方向から拠点へと進入した月水・輝命(うつしうつすもの・f26153)は、急ぎ他の猟兵たちと合流して。

「……遅くなりました。わたくしも参りますの」

 神妙な面持ちで、黒魔術師を見据えた。
(本当なら、周りの方々へ手助けに行くところですけれど……)
 輝命が強く握りしめるのは、己の本体たる『五鈴鏡』。ヤドリガミである彼女は、この本体を壊されてしまえば仮初の肉体を再構成することができなくなってしまう。
 それでも、それでも。ここで怯むような弱い心は持ち合わせていない。たとえ、この身が傷ついたとしても――。

「……道を繋げます」

 そう、紡いで。輝命は地を蹴る。

「――換わりなさい、いずれ摘まれる贄の姿に」

 黒魔術師の方が動きが早い。手にしたその槌が変化したのは、花びら。けれどもその花弁は、花の常ならざりしもので。

「っ……」

 その鋭さと重さは、鉛のもの。避けたはずなのに、輝命の白い頬に赤い筋が浮かぶ。

「ならば――風の如く舞い、風の如く流れる力を、ここに」

 風で吹き飛ばしてしまおう。
 自身には光によるオーラを纏わせ、鏡としての本領発揮とも言うべき鏡像を作り出す。
 それによって輝命を傷つけ損なった花弁たちは、青いシミの残る地に落ちてなお、その身を賭して黒魔術師の力になろうとしていた。
 地を覆い尽くさんと広がるのは、鉛の花園。大地の生命力を吸収し、その上に立つ黒魔術師へと力を捧げる――。

「させるものですか――」

 輝命が『五鈴鏡』を振る。その鈴の音が、破魔の力を帯びて戦場の空気を震わせる。
 震えた空気は鉛の花園に触れ、その『邪』を祓うと同時に花びらを巻き上げて。

(わたくしはまだ……それほどお話はしておりません。ですが、これだけは言えます)

 清浄な音が、響き渡る。
 同時に巻き上げられた花びらが、黒魔術師へと放たれた。
 それはすでに、鉛の花弁に非ず。
 破魔の力を宿す光の花弁となりて、悪意の元へ――。

(わたくしは、信じます。信じています)

 その花弁には、輝命の強い意志も乗せて。

「強さや名誉は、与えられて得られるものではありませんのよ」
「キャァァァァァッ!?」

 宙空に浮かぶ黒魔術師が、襲い来た花弁たちの力に悲鳴を上げる。
 けれども輝命は、まっすぐに彼女を見つめたままだ。
 油断も慢心もしない。しっかりと、自身の役目を果たすのだ。

(わたくしは、道を繋げますわ――……)
成功 🔵🔵🔴