アシュリーを代表に、四十代くらいまでの様々な種族の男女で構成された『騎士団』は、本来の『騎士』の姿と比べたら子どものごっこ遊びに見えるかもしれないが、それでもこの場所では要としてその存在を確かなものにしていた。
夜毎の見張り、喧嘩の仲裁、廃墟の修繕の手伝い、食料の調達――共に暮らす住人たちのため、様々なことをこなしてくれる彼らは、住民たちにとって頼りになる存在であり。
「騎士団と言っても、その単語でお前たちが想像するようなものではない。しっかりとした鎧もなければ、頑健な武器もない。叙勲を受けたわけでもない。『自警団』と呼ぶほうがふさわしいだろう」
彼の言い方が若干辛辣であるのは、なにか個人的感情が混ざっているのか……それはわからぬけれど、確かに彼らは『騎士団』と呼ぶには足りないものが多く、『自警団』ならば、というところだ。
「『騎士団』が住人の生活を守り、手助けをすることで、住人も騎士団への信頼を厚くしていった。『騎士』として足りないものは多々あれども、その心は、そして住人たちにとっては彼らは、紛れもなく『騎士』なのだろう」
そんな『騎士』たちの守る人類砦が、オブリビオンに狙われている。希望の芽を摘み取るべく、オブリビオンたちは容赦なく彼らの生活拠点である『城』へと襲いかかるのだ。
「城といってもかつて城だったと思われる廃墟に手を加えたもの、だ。防衛力など期待できない。オブリビオンに襲われれば、『騎士団』の者たちでも殺戮と滅びを回避できない」
篁みゆ
こんにちは、篁みゆ(たかむら・ー)と申します。
はじめましての方も、すでにお世話になった方も、どうぞよろしくお願いいたします。
このシナリオでは、オブリビオンを退けることで人類砦やそこに住む人々を守ることが目的となります。
小テーマ・騎士、騎士道精神
第一章・集団戦では、人々を守りながら多数の敵と戦います。
第二章・ボス戦では、メンタルに触れる内容と戦闘とご選択頂ける予定です。
第三章・日常では、二章が成功している前提ですが、オブリビオンの襲来で希望を見失いかけている人々を元気づけてあげるような、住民との交流になります。
※三章に限り、ご要望があればグリモア猟兵のリーナスもお手伝い、交流などさせていただきます。初対面でも大丈夫です。
●お願い
単独ではなく一緒に描写をして欲しい相手がいる場合は、お互いにIDやグループ名など識別できるようなものをプレイングの最初にご記入ください。
また、ご希望されていない方も、他の方と一緒に描写される場合もございます。
●プレイング受付日程
オープニング公開後に、冒頭文を挿入予定です。その際にお知らせいたします。
また、マスターページの【変更連絡】をご一読いただけますと助かります。
初めての方はマスターページをご一読いただけますと、様々な齟齬が少なくなり、互いに少し幸せになれるかと思います。
皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております。
第1章 集団戦
『『暴虐の青風』カエルラマヌス』
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POW |
●蹂躙する騎竜
戦闘中に食べた【犠牲者の血肉】の量と質に応じて【身を覆う青紫色の鱗が禍々しく輝き】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
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SPD |
●飛躍する騎竜
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
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WIZ |
●邪悪な騎竜
自身の装備武器に【哀れな犠牲者の一部】を搭載し、破壊力を増加する。
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👑11 |
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴 |
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●日常は斯くも脆く
この『人類砦』には5箇所の見張り台がある。見張り台と言っても城であった廃墟の一部を利用し、足場をつけて登れるようにした程度。
それでも高い位置から拠点の内外を見渡す、という用途は果たしている。
ここを拠点としたばかりの頃と比べて住人の人数も増え、『騎士団』の人数も増えた。もちろん、すべての騎士団員が戦いの経験を持っているわけではない。武器の扱いすらおぼつかぬ者もいる。
だが、この拠点での『騎士』のなすべきことは、何も戦いだけではないのだ。
拠点の修繕や人々の生活の手助け……やることはたくさんある。
戦いを伴う、人々を保護して拠点へと連れてくる役目は、主に『闇の救済者』として立ち上がった者たちが行っていた。そして合間を縫って、望む者には武器の扱い――といっても満足な武器が人数分あるわけではないが――を教えたりしている。
「アシュリーさん、もうすぐ夜明けですね」
「そうだな、このまま何事もなく朝を迎えられることを祈ろう」
人間の青年ジョナスの問いに、アシュリーは頷いて答えた。
騎士団の人数が増えたことで、夜間の見張りも二人以上で行うことが可能になっていて。ジョナスは武器の扱いこそ未熟だが、足が速い。何かあった時に伝令として拠点内を行くには適している。
常夜のこの世界においても僅かな光が刺すこともあり、それを基準にこの拠点の皆は生活リズムを整えていた。今はちょうど、ほとんどの者が深く眠りについていることだろう。
「怯えながら朝を持つ生活から解放されるなんて、思わなかったです」
「……そうだな」
感慨深げに告げるジョナスではあるが、アシュリーは絞り出すように相槌打っただけだった。
(今もなお、危機から脱したわけじゃない。この見張りは、住民を安心させるためだけのものではない。でも、ここで正論で水を差してしまえば、ジョナスの士気は下がってしまう)
ここに住む人々は、ヴァンパイアたちの支配から解放されたことで、怯え続ける日々から解放されたことで、ようやく『安堵』を噛み締めている。誰しも一度得たそれを手放したくない――手放すことなんて考えたくないのはよく分かる。
けれども、未だにヴァンパイアの支配に苦しんでいる人々を解放し続けているアシュリーたち『闇の救済者』は、この状態がいつ壊されてもおかしくないことを身を持って知っていた。
「俺、見張り交代したら、リリアンと一緒に採取に行く約束しているんです」
「寝ないでいくのか?」
「大丈夫ですって。少しでも彼女と一緒にいたいですし……いえ、採取の手伝いも立派な仕事ですから!」
本音が先に漏れてしまったジョナスの様子に口元に笑みを浮かべ、アシュリーは木製の容器を手に取る。見張りにつく前に女性からもらった果実水の入った容器だ。
それを開けようとしたその時、視界になにかが映った気がして、アシュリーは立ち上がる。
「どうかしたん……」
「ジョナス」
自身を見上げるジョナスの言葉を制し、アシュリーは視界に映る『異物』を凝視した。
「あれは……」
視界にあった『異物』は、徐々に大きくなっていくとともに数を増して行き。
「ジョナス、詰め所に走れ! 各見張り台にも伝令! 敵襲だ!」
「えっ……あ、は、はいっ……!!」
転びそうになりながら、言われるがままに見張り台から降りていくジョナス。アシュリーは前方に見える敵の群れから目を離してはいない。
徐々に大きくなり来る敵は、複数。視界を埋め尽くさんばかりに展開されているそれらは、青みを帯びた体表の竜。
竜としては小型であり、おそらく騎竜として使役されるタイプだろう。攻めてくる彼らの背に操者が乗っているように見えないのは、僥倖か、それとも凶兆だろうか。
(住民が避難するまで――いや、無理だ)
眠りについている人々を起こして、全員避難させるには相当の時間と労力が必要だ。敵の進行速度を考えれば、到底その時間はない。
(なら、せめて騎士団員たちが守備につくまで――)
アシュリーは果実水を一気に飲み込み、容器を置いた。そして佩いていた剣を抜き放つ。
「できるだけのことは、してみせる……!」
彼の背に広がるのは、真白き翼。
絶望に背を向けて、騎士は立つ――。
* * *
ジョナスが騎士団詰め所にたどり着くよりも早く、竜たちが接近していることは他の見張り台にいた者たちの目にも映っていた。
「え……敵……ってあの数はないだろうよ!」
「なによ、あれ……」
「報告に走れ!」
「ハッ……やってやろうじゃねーか」
そう、竜はアシュリーの見張っていた方角からだけ攻めてきたのではなく――この拠点を囲むように全方位から迫ってきたのだ。
数の暴力を活かした全面包囲。
猟兵たちが到着した時にはすでに、見張り台を起点とした拠点の一角が落ちていた。
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●戦況
皆さんが到着した時、すでに拠点は敵と交戦中です。
拠点に向かって敵の背後から、横から、敵の合間をすり抜けて自警団員とともに、など初期配置はご自由に設定できます。
指定のない場合は、こちらで判断します。
敵の侵攻が深い(住民の危険度が高い)順 ※見張り台を起点とする
●その地にいる主な騎士団員名と主な武器:状況
A・ルーサー(人間男性、弓):駆けつけた騎士団員数名死傷。竜は一部住宅に向かいつつある。
B・ドリス(ダンピール女性、銃):騎士団員数名死傷。数名の騎士団員が戦闘中だが一部拠点内に侵入を許している。
C・セシル(人間男性、斧):騎士団員数名死傷。数名の騎士団員が戦闘中だが時間の問題。
D・ダンカン(人狼男性、槍牙爪):騎士団員数名死傷。数名の騎士団員が戦闘中だが時間の問題。
E・アシュリー(オラトリオ男性、剣使い):騎士団員数名死傷。数名の騎士団員が戦闘中。他所より徐々に敵の数が増している。
※騎士団員は一番強い者でも猟兵よりは弱いです。
※一般的な『騎士』というほどの装備は持っていません。
※猟兵が全部の箇所に行き渡らずとも悪い判定にはならないので、助力したい場所へ自由に向かってください。
※何処に向かうか指定なしの場合は、お任せとして判断させていただきます。
●プレイング受付
11月7日(土)8:31~開始。
※締め切りなどはマスターページと旅団『花橘殿』にて随時告知します。
※のちほど、マスターページにこのシナリオの運営方針などを記載しますので、ご一読いただけますと幸いです。
セリオス・アリス
【双星】A
アドリブ◎
故郷の街には騎士団があった
…ただの人ではあったが
守ろうとしてた背中を覚えている
その意思を次いでるヤツも…隣にいるしな
守るって覚悟決めたヤツらなら
託したっていいだろ
敵はこっちで引き付けるが…
あぶれた分は任せたぜ
出来んだろ、それくらい
鼓舞するように強く明るい音で呼びかけて
アレスに視線を向ける
こんな状況だ、文句言うなよ
そんかし…信じてるぜ
アレスが見失わないから大丈夫だろ
歌うは【囀ずる籠の鳥】
敵を煽って、誘って、惹き付けて
獲物はここだと主張する
住人や街には踏み込ませない
襲ってくる敵は攻撃を見切り避け
風の属性を纏わせた剣で斬りつけ蹴散らす
避けきれねえ分は
アレスがなんとかしてくれるだろ
アレクシス・ミラ
【双星】A
◎
失った故郷の騎士団の…守る為に戦う背中を思い出す
たとえ、真似事かもしれなくても
人々の盾となり、守る覚悟があるのなら
彼らも「騎士」だ
前線に出て盾で敵を押し返し
鼓舞するように凛と
此処は私達が引き受けます
騎士団の皆さんは怪我人の救護と住人の避難誘導もお願いしたい
武器を手に戦う以外にも…人々を「守る」事は出来ます
彼の言葉に少し心配が過ぎる、けど
―分かった。君を支えるよ
その代わり、僕から離れないで
惹きつけられた敵も、街へ向かおうとする敵も逃しはしない
この目に捉えたものは【天破空刃】で斬り伏せてみせる!
セリオスに迫る敵があれば
庇うように盾で受け止め、光纏う剣で斬りつけよう
君を絶対に…見失わない
――聞こえる。獰猛な獣の咆哮が。剣戟の音が。希望を捨てずに立ち向かう人々の、命の音が。
もう存在しない彼らの故郷、その街には騎士団があった。彼らはただの人でしかなかったが、『守る』為に戦うその背中は何よりも力強く、輝いて見えて。
脳裏に蘇る姿は、尊敬と憧れをいだくのに十分すぎた。
ちらり、セリオス・アリス(青宵の剣・f09573)が視線を向けたのは、隣に立つ彼。すでに騎士剣と盾を構える彼は、故郷の騎士団の意思を継いでいる。
(たとえ、真似事かもしれなくても)
その手に『双星暁光『赤星』』と『閃盾自在『蒼天』』を宿し、アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)は『人類砦』へと視線を向ける。
(人々の盾となり、守る覚悟があるのなら――彼らも『騎士』だ)
その蒼に宿すは強き思い。揃いの『蒼』で彼を見つめたセリオスは、地を蹴る。
(守るって覚悟決めたヤツらなら、託したっていいだろ)
自身の動きに彼がぴたりとついてきているのを感じる。
ふたりは、『双星』であるがゆえに。
* * *
見張り台を起点として『騎士団』の敷いていた防衛線が、崩れている。横から敵の間を縫って、それを盾で押し返すようにしながら前線へと滑り込んだふたりは、素早く状況を確認すべく視線を走らせた。
「あ、あなた達はっ……!?」
弓を手にした騎士――ルーサーが声を上げる。
「此処は私達が引き受けます!」
返すアレクシスの声は凛としていて。屈強というよりもしなやかな強さと安心感をいだかせた。
「騎士団の皆さんは怪我人の救護と、住人の避難誘導もお願いしたいっ……」
盾に感じる敵の力と数からその強さを読み取って、彼らには荷が重いと判断した。けれども騎士団を前線から引かせるのは、それだけが理由ではない。
「武器を手に戦う以外にも……人々を『守る』事は出来ます」
ここはすでに突破されていて、住宅地に向かった敵もいるという。ならば、彼らに託すべき『守り』は――。
「敵はこっちで引き付けるが……あぶれた分は任せたぜ」
なにか言いたげに口を開きかけたルーサーに、セリオスが告げる。
「出来んだろ、それくらい」
「っ……!」
挑発にも似た明るい声色のそれは、鼓舞を孕んでいる。すでに血にまみれたルーサーは、小さく唇を噛んで。
「動ける騎士団員は住宅街へと向かえ! 住民たちの避難を優先せよ!」
ルーサーの指示で団員たちが拠点内へと向かう。それを確認したセリオスは、『双星宵闇『青星』』を握り直して。視線を向けるのは、もちろん――。
「こんな状況だ、文句言うなよ」
言い出したら彼が簡単に意を変ずる者でないことは、アレクシスが一番知っている。だからこそ、憂いがよぎるのだ。
「そんかし……信じてるぜ」
「――分かった。君を支えるよ。その代わり」
それまで均衡を保っていた盾へと、アレクシスは力を入れる。押された騎竜たちが不満げな声を上げたけれど。
「僕から離れないで」
そんな騎竜たちにアレクシスは白銀の剣を振り下ろした。彼の蒼はセリオスの蒼を捉えてはいない。けれど。
「アレスが見失わないから大丈夫だろ」
嬉しそうにそう紡いだセリオスは、騎竜たちの群れの中心へと身を躍らせてゆく。
そこにあるのは絶対的な、信頼――。
セリオスは紡ぐ。その旋律に乗せるのは、煽って、誘って、惹きつけるちから。
獲物はここだ、かかってこいと、全身でその存在を騎竜たちへと刻みつけてゆく。
(街には、住宅街には踏み込ませねえ)
跳ぶように迫り来る鋭い爪を、舞うように見切って避けていく。所々で同士討ちが起こったのは儲けもの。
その背面から、側面から斬りつける刃には、風を纏わせて鋭さを増して。
「ギャアォォォォォォォ!!」
(ああ、これは避けられねえな)
剣を振り抜いた先、セリオスの視界に入ったのは、騎竜の鋭い爪。
避けられない、直感でそう悟ったけれど。焦りや諦めは微塵もなかった。だって――。
ガツッ……!
鋭い爪がぶつかる金属音、一拍ののち。
「光一閃、駆けよ、果てまで!」
極光がすべてを斬り裂いてゆく――その蒼が捉える限り。
彼の金糸がセリオスの視界に溢れて。
そして、雄弁に語る。
――君を絶対に……見失わない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
桜雨・カイ
D.
これ以上敵に侵入させるわけにはいきません
ここはまだ中へ入られていない、ならばここを止めます
【錬成カミヤドリ】発動
普段なら防御にも錬成体を割きますが、今回はその余裕はなさそうです。
最大数を錬成して、敵の目を砦から少しでも逸らすために、砦の外側から一気に攻撃を仕掛けます。
あなたたちの敵はこちらです!
砦の人達は、今のうちに体制をを立て直して下さい!
余裕ができれば怪我人の応急処置もできるはず
どうかお願いです…一人でも多く助かって下さい
相手は飛んで砦の中に入るつもりでしょうが、それもさせません
【念糸】でその身を絡め取ったあと
こちらも他の人形を踏み台にして、空中へ駆け上がって攻撃します!
禍神塚・鏡吾
技能:鼓舞、集団戦術、時間稼ぎ、部位破壊、体勢を崩す、空中浮遊、目潰し
場所はお任せ
アドリブ・連携歓迎
(此処に来るのも何年ぶりか。
嫌な思い出しかない世界でしたが……或いは過去に立ち向かう良い機会かも知れません)
「よくぞ耐えてくれました。この場は猟兵に任せて、騎士団の皆さんは戦えない人の避難をお願いします!」
初期配置は拠点内
目立つ色に塗装したレギオンを召喚
浮遊して見張り台まで移動し、戦場を俯瞰します
レギオンは敵1体に3体以上で当たらせ、1体犠牲にして残りに敵の脚を攻撃させましょう
部位破壊、又は体勢を崩して時間を稼ぎます
突破してきた敵は、光源を鏡で増幅した光で目潰し、その隙にレギオンで止めを刺します
嗚呼、常闇の世界で青き暴竜が拠点に殺到しているのが見える――。
(此処に来るのも何年ぶりか)
もはや数えてなどいないけれど。
感慨深さなど無いけれど。
禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)の肌を撫で上げるこの世界の風の匂いは、変わっていない。
(嫌な思い出しかない世界でしたが……或いは過去に立ち向かう良い機会かも知れません)
心中で息をつき、同じ方向へと向かう彼へと声をかける。
「桜雨さん、そちらはお任せします」
「はいっ。鏡吾さんもお気をつけて!」
応えた桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は、拠点へと向かう鏡吾とは別の方向――敵の群れへと向かってゆく。
(これ以上、敵に侵入させるわけにはいきません)
この量で戦力の少ない拠点を攻められているとすれば、すでに内部へと入られている場所が生じてしまっているのも頷ける。
けれどもそちらへは、他の猟兵が向かってくれたに違いない。
(ここはまだ中へ入られていない、ならばここを止めます――)
カイが喚び出すのは、己の本体であるからくり人形の複製体。九十体近い青年サイズの人形は、さながらひとつの部隊だ。
いつもならば、自身や本体の防御にも錬成体を割くところだが、さすがに今回はその余裕がないと判断して。
拠点の外側から一斉に攻撃を仕掛ける――騎竜たちの意識を少しでも多く、引きつけるように。
「あなたたちの敵はこちらです!」
注意を引くべく声を上げるカイ。同時に錬成体たちは、騎竜を軽く傷つけては後方へと跳んで、騎竜たちを拠点から引き離そうとする。
(砦の人たちが、今のうちに体制を立て直してくれますように……)
鏡吾を始めとした猟兵たちが内部へと向かったはずだ。きっと、大丈夫だろう。余裕ができれば、怪我人の応急処置もできるはずだ。
(どうかお願いです……一人でも多く助かって下さい……)
切なる祈りがその、青い瞳に宿る。
それを『隙』と見たのか、数体の騎竜が宙を蹴って跳んだ――。
「――させません」
だがそれは、カイの想定内だ。『念糸』を放ち騎竜たちを絡め取ったカイは、近くの錬成体を踏み台にして自身も空中へと駆け上がる!
「「ギャアォォォォォォォォ!!」」
焦りか威嚇か、醜い鳴き声を上げる騎竜たち。しかしこのくらいでカイは怯まない。
そんなに脆い覚悟で、ここに立ってはいないのだ。
* * *
「アンタらは……」
拠点内に現れた鏡吾に問うたのは、返り血を浴びた人狼と思しき男性、ダンカン。彼の後方には、動けなくなった騎士団員たちが投げ捨てられている――否、これ以上深い傷を負わないよう、とどめを刺されないよう、彼が自身の後方へ投げたのだと鏡吾は一瞬で理解した。
彼に付着した血液は、敵のものよりも仲間のもののほうが多いかもしれない。
「よくぞ耐えてくれました。この場は猟兵に任せて、騎士団の皆さんは戦えない人の避難をお願いします!」
ダンカンと視線を合わせつつも、鏡吾は敵への警戒を怠らない。
(敵の動きが変わりましたね……桜雨さんのおかげでしょうか)
執拗に拠点内へと攻め込もうとしていた騎竜の数が、明らかに減っていて。だからこそ、今が彼らと猟兵たちが入れ替わる絶好のタイミングだと言えた。
「っ……」
鏡吾の言葉を受けてもなお、猟兵という存在の到来を受けてもなお、ダンカンには自身が戦わねばという思いがあるのだろう。だから。
「皆さんのほうが、私たちよりも明らかに拠点内に詳しいでしょう。誰がどこに居住しているか、どの場所に人がいるか、私たちにはわかりません」
迅速な避難対応には、情報が必要です――金の瞳で彼を真摯に見つめる鏡吾。
「これは、適材適所です」
皆まで言わずとも、彼ならば分かるだろう。
騎士団が敵と戦って猟兵たちが避難誘導をするよりも、猟兵に戦いを任せて騎士団が避難誘導をしたほうが効率がよく、ゆえに助けられる命も多いはずだ。
「……任せるぜ?」
「ええ、お任せ下さい」
絞り出すように告げたダンカンに、鏡吾はゆっくりと頷いて。
次の瞬間、ふたりは弾かれたように別方向へと動き出した。
「騎士団、比較的軽傷の奴は傷の深い奴に肩を貸してやれ! 走れるやつは近くの家のやつを起こして中心部へと誘導しろ!」
ダンカンの指示に、それまで消耗する一方だった団員たちの表情が変わる。
「さて……」
そして敵へと向かった鏡吾が喚び出したのは、蛍光色に塗装されたエレクトロギオン。四百体近いそれらを従えて地を蹴り、そのまま浮遊して見張り台へと立つ。
ここからだと戦場の光景がよく見える。騎竜たちがカイと彼の錬成体たちへと向かって流れを変えたのも見えたけれど、もちろん騎竜全てではない。
「最後の一線は、超えさせませんよ」
蛍光色のレギオンを、三体以上纏まって騎竜へと向かわせる。目立つ色をした見覚えのないそれに本能的に警戒心をいだいたのか、騎竜たちの意識がレギオンに注がれて。
うち一体を的に、あるいは弾として騎竜の相手をさせているうちに、残りでその足を狙う。関節を破壊するように、あるいは巨躯がバランスを崩して倒れるように。
「ギャァァァァァ!」
「ギャッ!?」
不意をうたれた騎竜が驚きや痛みから声を上げ、自らを傷つけた謎の物体を始末するべく、または大勢を立て直すべく躍起になっていた。
レギオンは程々の強さを持つものの、一撃で消滅してしまう。だが、数にはまだ余裕がある。
それでも中にはレギオンを突破して、当初の目的通り拠点内部を目指そうとする個体もいた。
「おとなしくレギオンに夢中になってくれていれば、よかったのですけれどね」
そのような個体が出ることを、もちろん鏡吾は予測していた。手にしたのは、騎士団が置いていったカンテラと『鏡』。
カンテラの放つ光を、鏡に映して。そして角度を調節すれば、真っ直ぐに光線が放たれる――。
「シギャァァァァァァ!?」
突如目を襲った焼けるような痛みに、騎竜はその場で地団駄を踏むように暴れる。たとえ痛みがおさまったとしても、その赤い瞳はもはや何も映さない。
暴れる騎竜に、レギオンたちが容赦なく襲いかかる。
レギオンを感知するすべも余裕もない騎竜は、ただただレギオンたちになぶられてゆくだけだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ブラミエ・トゥカーズ
☆
B
砦の中、ドリス含め生存者の所に顕れる。
臭いを辿れば”混じり”がいるとはな。
ここは、なんとも狭く、空気も悪く、汚れも酷い。
酷く不衛生であるな。
だからこそ余の宴に相応しき所であるな。
人間達。余が護ってやろう。故に、恐怖せよ。
【POW】
敵へ正面から無防備に優雅に近寄る。
喰われると同時にUC使用、戦場を覆い尽くす。
疫病をばらまき、貧血、飢餓、狂乱による共食いを狙う。
放っておいても伝染する数を付与した後、砦に戻って優雅に霧から集まる血を楽しむ。
余に血を捧げたい者がいれば歓迎するぞ?
あの蜥蜴共、美味くなさそうであるからな。
なに、グラス一杯でよい。
陽が昇れば慌てて従僕日傘or適当な物陰に隠れる。プスプス
東雲・一朗
☆
▷服装と武装
帝都軍人の軍服、少佐の階級章付き。
刀と対魔刀の二刀流、2振りとも腰に帯刀。
▷行先
Bのドリスの元
▷撃退
民の為、志を胸に武器を執った彼らは紛う事なく我らと同じ。
騎士、軍人、表す言葉の違いは些細な事、我らは共に戦う同志だ。
「騎士達よ!援軍が駆けつけたぞ!」
桜花の霊気【オーラ防御】を纏いながら敵中【切り込み】突破、敵を二刀【2回攻撃】にて斬獲しながらドリスの元へ。
「貴官は我が隊と共に銃列隊伍を組め!まずは敵を退け態勢を立て直すのだ!」
【威厳】ある声で素早く指揮を執り、【戦闘知識】を元に【団体行動・集団戦術】を用いて【大隊戦術指揮『壱』】を発令、騎士達と共に【制圧射撃】を行い敵を一掃する。
少数とはいえ拠点内へ敵の侵入を許してしまったことで、その女性は酷く焦っていた。
二十代前後に見える美しい彼女は、血と汗と敵の体液にまみれながらも指揮を続けている。
本来ならば、自分が敵を追ったほうがいいのは分かっている。けれども、ただでさえ半ば崩れた前線を離れてしまうのは――そんな彼女、ドリスの前に突如現れたのは。
「臭いを辿れば『混じり』がいるとはな」
白いを通り越して青白い肌。尖った耳。口から覗く牙――。
「っ……!!」
ドリスが銃を構える。なぜここに『ヴァンパイア』がいるのだ、と、彼女の思考に混乱の赫い雫が落とされる。
けれどもこの『吸血鬼』、ブラミエ・トゥカーズ(”妖怪”ヴァンパイア・f27968)は余裕綽々で言の葉を紡ぐ。まるで己に向けられたその銃口など、些事であるかのように。
「ここは、なんとも狭く、空気も悪く、汚れも酷い。酷く不衛生であるな」
ぐるり、あたりを見回すブラミエ。彼女を狙うドリスの手は、震えている。
この世界においてヴァンパイアとは、恐怖の代名詞にて圧倒的な支配階級であるからして。
「だからこそ、余の宴に相応しき所であるな」
ブラミエの余裕も意味のわからぬ発言も、その気になれば簡単に自分たちを始末できるからだろう――ドリスを始めとした騎士団の者たちにはそう思えてならなかった。
だから。
「人間達。余が護ってやろう」
「えっ……」
「故に、恐怖せよ」
ニヤリと口元を歪めた彼女の言葉の意味が、理解できなかった。
* * *
(民の為、志を胸に武器を執った彼らは紛う事なく我らと同じ)
サクラミラージュの軍服に身を包んだ精悍な壮年男性――東雲・一朗(帝都の老兵・f22513)は、拠点へと急ぎながら思う。
世界は違えど、武器も練度も違えども、その思いは同じ。
(騎士、軍人、表す言葉の違いは些細な事、我らは共に戦う同志だ)
桜花の霊気を纏い、外套を風になびかせて、走る。
両の手に携えた刀で迷いなく敵を切り捨てながら、先へ、先へ。
疾(と)く、かの元へたどり着くべし、と。
* * *
拠点に到着した時に一朗の瞳に入ったのは、攻め寄せる騎竜に対してではなく、『猟兵に』対して恐怖の表情で銃を向ける女性――。
「トゥカーズ殿。誤解を解かずに遊んでいる状況ではないと、分かってるのだろう?」
そうだ、銃口を向けられている『猟兵』は、確かグリモアベースで見かけた顔だ。彼女の『存在』が、現地の者に混乱を与えかねないと思い、頭の隅に名前を記憶していた。
「やれやれ。その手の些事は貴公たちに任せる」
告げて彼女――ブラミエは、前線へと向かった。
「あ……の……」
言葉を絞り出すドリス。彼女の周りにいる騎士団たちも、恐怖で表情が固まったままである。だから。
「安心しろ、我々は猟兵だ」
そう、吸血鬼とはいってもブラミエはこの世界のヴァンパイアではない。カクリヨファンタズムにおける、お伽噺や伝説などのテンプレ的特徴を持つ、西洋妖怪に分類される吸血鬼なのだ。
この世界の住人である騎士団の者たちが、ヴァンパイアというだけで畏怖してしまうのも仕方のないこと。けれども今は、詳しく説明をして理解を求めている時間が惜しい。だから一朗は、敵ではないと、簡潔に伝わる言葉を選んだ。
「騎士達よ! 援軍が駆けつけたぞ!」
そして高らかと声を上げれば、力の籠もったそれに背中を押されて、騎士団たちに気力が漲る。
「貴官は我が隊と共に銃列隊伍を組め! まずは敵を退け態勢を立て直すのだ!」
「は、はいっ!」
他の団員たちに拠点内へ侵入した敵を追うようにと指示を出したドリスは、一朗の指揮に従うべく銃握る手に力を入れた。
* * *
「さて、如何に料理してやろうか」
ブラミエは敵へと近づく。
正面から。
無防備に。
そして優雅に。
「グヴヴヴヴ……」
獲物が自分から向かってきた――その『異常』に気づくほどの知能がないのか、はたまた好きに暴れてもいいという状況に興奮しているからなのかはわからないけれど。
「グァウッ!!」
数体の騎竜が我先にと、ブラミエの身体に噛み付いた――その時。
獲物の姿が消えたことに気づくのが先か、己の身体の不調に気づくのが先か。
霧へと変じたブラミエは、青の騎竜たちの間を飛んで、飛んで、飛んで。
奴らが『霧』を視認するよりも、『霧』の孕む疫病を吸い込むほうが早い。
(この蜥蜴共、美味くなさそうであるな)
放って置いても伝染するくらいの数感染させれば、良いだろう。
ブラミエである『霧』の通った場所にいた暴竜たちは。
体勢を保てず巨体をふらつかせる個体、狂ったように近くに居るモノに攻撃をする個体、同種へと噛み付く個体、仲間であるはずのソレを蹴り飛ばして、拠点へと向かう個体――。
「総員、構え!」
拠点では、一朗の召喚した第十七大隊の軍人たちが、隊列を組んで銃を構えている。その中に、ドリスの姿もあった。
敵の動きがこちらを攻めるだけではなくなったことに、一朗は気がついていた。恐らくそれが、先に敵へと向かったブラミエの技によるだろうことも。
冷静に状況を分析した結果、暴走状態と思われる敵個体の接近に備え、指揮を執る。
仲間であったはずの個体をも、障害物としか思っていないような動き。真っ直ぐにこちらへと向かってくるだけの個体の数を素早く数え。
まだ、遠い。
もう少し、引きつけてから。
可能な限りの個体を、巻き込めるように。
第十七大隊の技能や装備については、誰よりも熟知している。そんな一朗だからこそ、最も効果が高い一瞬を見極めて。
「――撃て!」
威厳ある号令に寄って放たれる弾丸。
面制圧が如き砲弾が、騎竜たちへと降り注いだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
トリテレイア・ゼロナイン
ようやく芽生えたこの地の希望
それを護るべく立ち上がった人々に助太刀せずして何が騎士でしょうか
センサーでの●情報収集で戦闘音探査
味方の手が少ない箇所へ
この物量…命護る為に手段は選べません
殲滅優先
敵の持つ「食料」…遺体の損壊もやむを得ません…
UCで突撃
頭部、肩部格納銃器展開し●乱れ撃ちスナイパー射撃
近づく敵は●怪力で振るう剣を●なぎ払い、大盾で殴打
センサーでの●情報収集で周囲の状況を●見切り●瞬間思考力で対応
四方八方の攻撃を脚部スラスターでの●推力移動滑走で回避や●盾受け武器受けで防御し騎士団員達をかばいます
負傷者は退避させ、余力ある方は私に続き敵を掃討!
私達の背後…力無き人々を忘れぬよう!
フィッダ・ヨクセム
☆
服装武装は普段通り
二足で行動出来る範囲UCで半獣化する
一番流血の臭いが濃い所を嗅ぎ当てて、そこに加担する
本体バス停は、騎竜共の意識をこちらに向ける為に投擲してやるぜ?
魔術で鎖の長さを増やした銀鎖を本体に繋いどく(ロープワーク)
ついでに迷彩でなるべく見えなくしておけば、俺様武装なしの獣だろう?
ハハ、ノー武装だ格好の的だな?さあ狙え!(存在感を出す)
来ないならこッちからだ!
最も近い騎竜に飛び乗ッて、騎乗だ
暴れるだろうな?だが好都合
鎖に繋がったバス停本体を、背の上から遠心力を利用して怪力で振り回す!
おい頭下げろ、怪我するぞ!
……生憎、ハイエナは騎士から大分遠いんだわ!
俺様は頭下げるなんてゴメンだね
(ようやく芽生えたこの地の希望)
今、粉々に打ち砕かれようとしている希望。
(それを護るべく立ち上がった人々に助太刀せずして、何が騎士でしょうか)
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は自らに問う。今の己のベースとなっているのは、騎士道物語・御伽噺のたぐいで。
初期からの行動基準・理想はそれを元にしている以上、自身が紛い物の騎士であると自覚しているとしても――それでも、騎士として。
「思いッきり暴れられそうだなァ」
視界に満ちる『青』にそう呟いて、フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)は『Emergency』で自らの肉体の一部を、妖怪鬣犬へと変える。
二足歩行できる範囲に留めたからして服装に影響はないが、鋭敏になったその嗅覚に触れるのは、血の臭いばかり。
一瞬だけ、一瞬だけ。
他の誰にも悟られぬよう表情を歪めたのは、血の臭いが想定より濃かったからか。
血の臭いの濃さが意味する先へ、思考が走ったからか。
「同じ方向に目をつけたか」
「はい。こちらが一番、敵の数に対して戦力が少ないと判断しました」
同じ方向へと走り出したトリテレイアに声をかければ、センサーを使用して己が向かうべき場所を判別していた彼は、フィッダへとそう答える。
「あァ、一番、血の臭いが濃い」
すでに会敵している猟兵もいるようだが、なにぶん敵の数が多い。
(この物量……命護る為に手段は選べません)
殲滅を優先する――そう決めたトリテレイアは、もうひとつ、確認するように自身の心の中で告げる。
(敵の持つ『食料』……遺体の損壊もやむを得ません……)
遺体を傷つけぬようにしたいという思いは山々だが、その気持ちを押し通して新たな遺体を生んでは元も子もない。分かっているから――断腸の思いで覚悟を決めた。
「俺様は敵を引きつけるぜ」
「私は一点突破します」
任せた――皆まで言葉にせずに、ふたりは別の方向へと地を蹴る。
「よッと」
拠点へと向かう敵の群れの中へ、フィッダが投擲したのは――歪んだバス停。歪んではいるが鈍器として優秀なそれは、彼の本体でもあるのだが。
ドスッ……突然降ってきたそれに、僅かに停止した騎竜たちが、次の瞬間警戒を顕にした。
(さァて……)
もちろん、本体を捨て駒にしようというわけではない。魔術で長さを増し、更に迷彩加工を施して目視されづらくした『銀鎖』を、本体に繋いである。
つまり現在のフィッダは、武装なしの獣に見える。
「ハハ、ノー武装だ格好の的だな? さあ狙え!」
もちろん挑発だ。無視できぬほどの存在感を顕にして、大きく声を張る。
じりじり、じりじり。
バス停とフィッダの様子を窺っているような騎竜たちは、次の瞬間彼へと向かって駆け出した。
* * *
最も人手が少ないと思われる地点――ルーサーのいる見張り台を目指すトリテレイアは、頭部と肩に格納している銃器を展開し、前方の敵を撃つ。
道を空けさせるための乱射であるが、彼の持つ卓越した狙撃技術がそれをただの乱射で終わらせることはなかった。
的確に手足を撃ち抜かれて、醜い声を上げる騎竜たち。そのまま体勢を崩した個体もいれば、傷を負わせたトリテレイアに向かい、怒りに任せて突進してくる個体もいた。
けれどもそれらの個体は、ありったけの力を込めて振るわれた長剣のひと薙ぎで両断され、地に伏せる。
進むトリテレイアへ向かって来る更なる個体には大盾を打ち込んで、怯んだ隙に脚部スラスターによる滑走で拠点との距離を詰めた。
「助太刀に参りました!」
そう告げて、反転。拠点へと向かい来る敵へと向き直る。
センサーを使用して常に周囲の情報を収集しているからこそ、その時取るべき最善の行動を選ぶことができた。
「負傷者の退避を続けて下さい! 余力のある方は避難誘導、または私に続き敵を掃討!」
告げて、滑るように移動して敵の攻撃を防ぎ、そして掃討してゆくトリテレイア。その白銀の体は、暗く淀んだ空を切り裂いて現れた希望の彗星の如く。
(私達の背後……力なき人々を忘れぬよう!)
彼ら騎士団は猟兵と比べれば、対オブリビオン戦力としては心許ない。
けれども誰かを護りたいと、そのために戦いたいと思うならば、戦わせてやりたいとトリテレイアは思う。
その分、己が彼らをカバーしつつ戦えばいいのだ。
自身もまた、彼らを守りたいと思うがゆえに。
* * *
「おらよッ!」
自身目指して突進してきた騎竜たち。彼らをギリギリまで引きつけて――フィッダは跳んだ。
獲物が目の前からいなくなったにもかかわらず、急に止まれぬ数体はそのまま拠点から離れて駆けてゆく。
「ギャァッ!?」
耳障りな声を上げたのは、フィッダのいたあたりで足を止めた――否、止めさせられた一体の騎竜。
「ハハッ……暴れろ暴れろォ!」
その背には、フィッダ姿が。跳んだ彼は目をつけていた一体の背へと着地し、その足を止めたせたのだ。
だが、騎竜とて黙って乗られたままでいるわけではない。彼を振り落とそうと、酷く暴れる。
(好都合だ)
ロデオ状態のフィッダは、脚に力を入れて振り落とされぬようにしつつ、何かを引き寄せるように手を動かす――そう、視認性を落とした鎖を、鎖で繋いだ己の本体、バス停を引き寄せたのだ。
「おい頭下げろ、怪我するぞ!」
形ばかりの忠告。引き寄せたバス停を、遠心力を利用して振り回す。怪力あっての戦法ではあるが、鎖を視認できぬ騎竜たちにはどこから得物が飛んでくるのかわからず。
しかも彼の騎乗している騎竜が、自らの本能に従って暴れているものだから――軌道など、読めるはずもない。
鈍器として十分すぎるほど力を発揮したバス停は、次々と敵を殴打していった。
この戦法は、荒すぎるだろうか?
でも。
「……生憎、ハイエナは騎士から大分遠いんだわ!」
そういうのは、そういうのが得意な奴に任せればいい。自分は、そういう奴らが担えない部分を受け持とう。
「俺様は、頭下げるなんてゴメンだね」
獰猛に嗤いながら、フィッダは鎖を振り回し続けた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ユーイ・コスモナッツ
◎
シャルさん(f00330)と
いけない、すっかり囲まれてる!
急いで加勢しましょう、シャルさん!
言うが早いか【流星の運動方程式】
最大の取り柄である機動力をいかして、
遊撃として立ち回ります
騎竜を倒すことよりも、
砦の人達を守ることを優先
間に割って入ったり、
抱えあげて避難させたり、
時には囮になったりと
騎乗と空中戦の技能には自信があります
急降下に急上昇、高速旋回、曲芸飛行……
無茶な機動もなんのその、
とにかく誰も傷つけさせない!
守るだけが戦いではないことは百も承知
けど大丈夫、シャルさんが一緒だ
私が救助に専念すれば、
彼女は攻撃に専念できるはず
ですよね、シャルさん!
と、目と目で伝えて、さあ次へ!
シャルロット・クリスティア
◎
ユーイさん(f06690)と
後手に回りましたか……あまり時間の余裕はなさそうですね。
どうにか進行を鈍らせなければ……!
レンに騎乗。空から仕掛けます。
持ち前の視力と闇夜鷹との連携で戦場を俯瞰、空中機動力を活かして猟兵の手が薄い=危険度の高いエリアを見極め、ユーイさんに指示を飛ばしつつ遊撃に回ります。
彼女は守り手、であれば蹴散らすのはこちらの役割。
ガンブレードに風の魔力を纏わせ切れ味を底上げしつつ、速度と質量を乗せた急降下攻撃、たかがトカゲの鱗程度抜くのは容易い!
騎士……って柄でもないですが。今回ばかりはご同伴にあずかるとしましょう。
人の底力、見せつけてやりますよ!
「いけない、すっかり囲まれてる!」
「後手に回りましたか……あまり時間の余裕はなさそうですね」
わらわらと拠点へと攻め寄せる青の騎竜たちを見れば、誰であっても危機的状況なのは一目瞭然だ。
「急いで加勢しましょう、シャルさん!」
「どうにか進行を鈍らせなければ……!」
隣に立つ少女に声をかけるが早いか、ユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)は『流星の運動方程式』を発動させて自身の機動力を上げる。
対するシャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は、翼竜のレンへと飛び乗り、一気に上空へ。闇夜鷹の『エイル』と共に戦場を見下ろして。
「ユーイさん、そのまま右前方へ!」
シャルロットの指示を受け、ユーイは『反重力シールド』に騎乗したまま速度を上げる。
騎竜と騎竜の間をすり抜ける彼女の存在は、時には中途半端に知覚しようとした騎竜たちが目を回し、互いにぶつかり合うほど。
自身最大の取り柄とも言える機動力を活かし、ユーイはシャルロットの支持する方向を目指していく。
(現在、あの場所が一番危険度が高いと思います)
上空から広い視野で状況把握に努めたシャルロットは、斧を振るって騎竜たちを相手にしながら指示を出している男性――セシルのいる見張り台へと向かうことに決めた。
(もう少しでっ……)
騎竜たちの間から、戦う人影が見える。ユーイは高度を上げ、そしてそのま前進!
一見無茶に見える動きも、空中戦に長けた彼女が『反重力シールド』に騎乗すれば、なんのその。
忽然と消えた彼女に、襲いかかろうとしていた騎竜たちが互いに衝突したことなんて、気にしていられない。
「助けに来ました!」
「えっ……!?」
敵の群れの中から何かが飛び上がったと思ったら、次の瞬間には自分たちの前に少女がいた――セシルたち騎士団は、夢でも見ているのだろうかと目をしばたかせる。
「他の場所にも仲間が向かっています。私と、空にいる彼女は、ここを守ります!」
告げてユーイは、前線で動けなくなっている団員を庇い、その流れでピックアップして後方へと運んで下ろす。その動きを見て、我に返ったセシルが声を上げた。
「動ける者は彼女の運んだ負傷者を、拠点内へと避難させろ!」
「っ……はいっ!!」
ユーイの機動力で、たちまち前線から負傷者が救出・運搬されてゆく。
(守るだけが戦いではないことは、百も承知)
ここへ訪れたのがユーイひとりだったら、状況はまた違っただろう。
(けど大丈夫、シャルさんが一緒だ)
そう、今のユーイはひとりではない。
(私が救助に専念すれば、彼女は攻撃に専念できるはず)
(彼女は守り手、であれば蹴散らすのはこちらの役割)
騎士団を守り、救助を続けるユーイに対し、レンに騎乗したまま拠点側から敵と相対したシャルロットは。
握りしめた『アルケミック・ガンブレード』に、風の魔力を纏わせる。
増した切れ味に、速度と質量を乗せるべく急降下の命を出し――。
――――ッ!!
最前線の騎竜たちの群れと高度を合わせたのは、ほんの一瞬。
再びレンと共にシャルロットが宙空へと戻ると、ずるり、最前線の数体の首が胴体からずれて、落ちた。
悲鳴すら上げる余裕を与えられなかった彼らの胴体は、暫くの間その場で動いて、続く騎竜たちの妨げとなってくれる。
「たかがトカゲの鱗程度、抜くのは容易い!」
再び急降下して飛翔――ふと拠点へと視線を向ければ、ユーイの緑色の瞳と視線が絡んで。互いに小さく頷き合う。
ほんの僅かな間だったけれど、目と目を合わせて思いが伝わったから。
(騎士……って柄でもないですが。今回ばかりはご同伴にあずかるとしましょう)
素早く拠点、救助活動に専念しているユーイの背後へと迫る一体の騎竜。シャルロットがそれを見逃すわけがない。
(人の底力、見せつけてやりますよ!)
救助活動に支障が出ない角度を瞬時に判断し、シャルロットは何度目かの急降下を始めた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と
・防衛地点おまかせ
戦場に入った途端、目に入る光景
赤に染まる地、夥しく流れる血の臭い
そして、目の前の青き邪竜が誇らしげに身に纏うモノは
ああ
なんという地獄
ここでもまた惨劇が繰り返されるというの
歌え、レクイエム【怒りの日】
犠牲者の魂に哀悼と慰めを
生き残った騎士団員たちと民衆に神の慈悲と救済を
そして悪逆の竜には悉く神罰を
お前たちは人々を殺めるばかりか、死者の尊厳までも貶めた
許すものか
魂の一欠片も残すものか
裁きの光輝に灼かれ疾く滅せよ
頬を伝い、はらはらと流れる涙
たとえささやかでもその身に背負う願いの尊さを
立ち向かう勇気と優しさを守って
どうかこれ以上、悲しみのない世界を……
ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と
自ら盾となって騎士団員を庇い、激痛耐性、覚悟で耐える
ここは俺たちに任せて、君たちは村人たちの避難を
彼らには慣れ親しんだ君たちの存在が必要だ
逃げることは恥ではない
命あれば必ず再起の時は訪れる
生きろ。生きて希望を繋ぐのだ
生きたまま食われ、死後もその遺骸を辱められた騎士団員の苦痛と恐怖を
愛しい人を殺された騎士や村人の嘆きを
そして……それらを目の当たりにしたヘルガと俺の尽きせぬ怒りを!
全てをこの剣に乗せ、地獄の業火で焼き尽くす
【怒れる狼王】は決して貴様らを許さない
その穢れた牙も肉も骨も砕き焼却して
塵も残さず消し去ってやる
……助けられなくて、すまない
君たちの無念は、必ず晴らす
嗚呼、嗚呼――……なんということだろう。
視界に入ったのは、赫に染まる地、夥しく流れる血の臭い。
「ああ……何という地獄」
目の前の光景に対し、自然と零れ落ちた言葉。
ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)の視線の先にいる青き邪竜は、『それ』を誇らしげに纏っている。
「ここでもまた……惨劇が繰り返されるというの……」
ヘルガの中に蘇るのは、決して消えぬ記憶。遠き日の出来事と言うには、生々しすぎて。凄烈すぎて。
今、この拠点で行われている虐殺が、記憶の中のそれと重なって――。
「ヘルガ」
「……ヴォルフ」
傍らに立つ夫、ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)の呼び声に答えたヘルガは、けれども視線は邪竜に据えたまま。
嗚呼、邪竜が騎士団員を、住民を襲おうとしている。
ふっと、ヘルガの隣から気配が消えた。その意味を、視覚で捉えるより早くヘルガは理解しているから。
「っ……!」
犠牲となった騎士団員の腕や頭を搭載した邪竜の攻撃を、ヴォルフガングがその身を以て庇い受けた。
ふたりが向かったのは、すでに騎竜の侵入を許してしまった地点。他の猟兵が前線へと立ってくれているからして、侵入した竜を追って拠点内へと入ったのだ。
そこで相対することになったのは、自らの装備に、命尽きた騎士団員の一部を搭載した竜たち。
住民の避難にあたっていた騎士団員も、避難しようとしていた住人たちも、そして避難の指揮を執っていたルーサーも、その酷い行いに衝撃を受けて動けなくなっていた。
「ここは俺たちに任せて、君たちは避難を続けるんだ」
「っ……でも……」
「彼らには、慣れ親しんだ君たちの存在が必要だ」
敵の攻撃を受け止めるヴォルフガングの声に、正気に戻ったルーサーが声を絞り出す。
「逃げることは恥ではない。命あれば、生きていれば、希望は繋がる」
「……、……」
ヴォルフガングの言葉は正しい。けれど、今の彼らに必要なものは。
「ここから先へは侵入させない。そして――彼らの無念は俺たちが晴らす」
「……!!」
そう。ルーサーたちだけではなく、ヴォルフガングとヘルガもまた、竜たちの行いに不快感と燃え上がるような怒りを覚えている。
その言葉で、ルーサーたちも彼らの思いを知ったから――遠ざかるのは足音と、すすり泣く声。
「ああ、嗚呼――……」
目の前の、悪夢のような醜悪な光景が、夢であればいいのに。
そうではないことを誰よりも知っているからこそ、願ってしまう。
真白き両の翼を広げたヘルガが紡ぐのは、祈りの音。
――無辜の願いを冒涜し命を愚弄する者よ。何者も因果応報の理より逃れる術は無し。今ここに不義は潰えん。悪逆の徒に報いあれ――。
光が、生じた。
多くの光条となりて、邪竜たちのみを多方向から貫く。
それは、裁きの光。
犠牲者の魂に、哀悼と慰めを捧げる。
生き残った騎士団員たちと民衆に、神の慈悲と救済を願う。
そして悪逆の竜には、悉く神罰を。
「お前たちは人々を殺めるばかりか、死者の尊厳までも貶めた」
その青く輝く瞳からこぼれ落ちる雫をそのままに、ヘルガが告げるのは罪状と、それから。
「許すものか、魂の一欠片も残すものか、裁きの光輝に灼かれ疾く滅せよ――」
光条に貫かれる竜たちの鳴き声などに、耳を貸すことはない。
「生きたまま食われ、死後もその遺骸を辱められた騎士団員の苦痛と恐怖を。愛しい人を殺された騎士や村人の嘆きを」
裁きの光を受けている竜たちが滅するのを、そのまま黙って見ているつもりはない。ヴォルフガングが纏うのは、地獄の業火と呼ぶに相応しき炎。
「そして……それらを目の当たりにしたヘルガと俺の尽きせぬ怒りを!」
すべてを剣へと乗せて、竜たちを見据える。
「怒れる狼王は決して貴様らを許さない。その穢れた牙も肉も骨も砕き焼却して、塵も残さず消し去ってやる」
ヴォルフガングの声から、抑揚が失われた。その青き瞳が凪いで見えるのは、怒りがすべてを超越したからだ。
「地獄の炎に焼かれて消えろ!」
地獄の業火は正しく竜だけを焼く。一度、二度、三度……幾度も振るわれる刃によって、竜たちの体は斬られたそばから焼かれてゆく。
いつしかその、醜い鳴き声は、聞こえなくなっていた。
(たとえささやかでもその身に背負う願いの尊さを、立ち向かう勇気と優しさを守って……)
燃えて崩れ落ちた残骸は、風に運ばれてゆく。騎士団員の身体の一部も、同様に。
「……助けられなくて、すまない」
その場に何も無くなっても、ヴォルフガングは視線を向けたまま。ヘルガは、はらはらと落ちる涙を拭うこともせず、彼の元へと歩んで寄り添う。
「君たちの無念は、必ず晴らす」
「どうかこれ以上、悲しみのない世界を……」
誓いと祈りとが、風に乗ってそらへと昇りゆく――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
サフィリア・ラズワルド
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【幽冥竜の騎士団】を召喚しアシュリーさんの元へ向かいます。
アシュリーさん、指示をお願いします。私達はここのことをよく知りません、だから指示してください、今この時だけ幽冥竜の騎士団の指揮権を貴方に渡します。
いいですよね?おばば様!……リーダーであるおばば様も良しと言っていますから大丈夫です。
さあ遠慮せずに、彼らは霊体です。やられてもあの世に帰るだけです。
ペンダントを竜騎士の槍に変えて構えます。
『行くよ皆!我等は平和を望む者の盾!我等は明日を望む者の刃!』
アドリブ協力歓迎です。
「皆、行くよ!」
サフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)は、喚び出した幽冥竜――戦士した仲間たちを連れたおばば様と共に、空を飛んでアシュリーの元を目指した。
四百を超える竜騎士たちは、空を占めるように近づいてくる。新手かと、アシュリーたちが警戒する素振りを見せたのも当然だ。
けれど。
「アシュリーさんですね!? 私達は助力に来ました。指示をお願いします」
「っ……味方!? ということは、君たちは……」
「はい、猟兵です」
闇の救済者として立ち上がったアシュリーは、猟兵たちのことを知っている。その実力も目の当たりにし、尊敬さえしていた。
多くの竜騎士を率いて現れた少女が猟兵だと言うならば、納得できる。名前を教えてほしいと言われ、サフィリアは丁寧に名を名乗った。
「サフィリアさん、来てくれてありがとう。敵の数が徐々に増えているように感じる今、頼らせてもらうことになるだろう。しかし……君の部隊? は、君が指揮をした方が……」
「いえ、私達はここのことをよく知りません。だから、指示して下さい。私達を一番効果的に『使える』のは、アシュリーさんだと思うんです」
胸に手を当てて真っ直ぐに告げるサフィリア。
「今この時だけ、幽冥竜の騎士団の指揮権を貴方に渡します」
いいですよね? おばば様! ――多くの竜騎士たちを連れてきてくれたおばば様に尋ねれば、ゆっくりと頷き返してくれた。
「……リーダーであるおばば様も良しと言っていますから大丈夫です」
「そう、かい? それじゃあ……」
「さあ遠慮せずに、彼らは霊体です。やられてもあの世に帰るだけです」
「霊体……」
やられてもあの世に帰るだけで、根本的に消滅するわけではない――サフィリアはそのような意味で告げたのだが、アシュリーにはいまいちピンとこないようだ。
しかし、問答を続ける時間がないことを、彼は知っているからして。
「では、最終防衛ラインに残る者以外は、隊列を組んで波状攻撃で敵を迎え撃ってくれ!」
アシュリーの指示に従って、拠点を守る竜騎士達と敵に相対する竜騎士たちが素早く分かれる。
サフィリアは『ラピスラズリのペンダント』を握りしめて念じた。するとペンダントが、『竜騎士の槍』へと変形してゆく。
「改めて。サフィリアさん、力を貸してほしい」
「はい、もちろんです」
アシュリーの要請に頷き、サフィリアは槍を手に声を上げた。
「行くよ皆! 我等は平和を望む者の盾! 我等は明日を望む者の刃!」
「「「オォォォォォォォォ!!」」」
竜騎士たちが呼応して、騎竜たちへと襲いかかる。
この間に騎士団は、負傷者を後方へと下げて、体制を立て直すことができるだろう。
成功
🔵🔵🔴
吉備・狐珀
住宅に侵入させないことはもちろんですがこの拠点を守ることも大切です。この先も今日のようなことが起きないとも限らないのですから。
ウカ、ウケ、月代、全力でいきますよ。
UC【神使招来】使用
ウカ、四神宿るその神剣で疾風を起こし月代の衝撃波と共に竜を吹き飛ばしし、竜の進入を阻止してしまいなさい。
この地を守る為に戦った者を己の武器に使い、望まぬ破壊行為をさせるなど言語道断です!
ウケ、後方から月代達を援護射撃しつつ、破魔の力を宿した御神矢で武器を浄化し開放するのです
ウカ達が竜の進行を阻止している間に、結界をはり負傷した騎士の方々を救助活動しつつ共に戦うため祝詞を唱え鼓舞を
絶対にこれ以上犠牲を出したりしません
「住宅に侵入させないことはもちろんですが、この拠点を守ることも大切です」
拠点に殺到する数多の騎竜たちを見据え、吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)は静かに紡ぐ。
彼女の傍らには、『倉稲魂命『ウカ』』と『保食神『ウケ』』、そして仔竜の『月代』が。
「この先も、今日のようなことが起きないとも限らないのですから――ウカ、ウケ、月代、全力でいきますよ」
狐珀が喚ぶのは、ウカとウケに眠る近衛兵の霊。四神の力を宿す宝剣を持つ近衛兵と、破魔と浄化の力を宿す弓矢を持つ近衛兵が、狐珀の指示を待つ。
「ウカ、疾風を。月代の衝撃波と共に、竜を吹き飛ばしてしまいなさい」
戦場に於いてなお凛とした声。その藍の瞳に秘められた意思を感じ取り、ウカと月代が動く。
宝剣の周りに渦巻く風。月代が体表に纏う風のオーラ。
それらが最高潮に達したその時、振り抜かれた宝剣から放たれた疾風が、オーラが姿を変えた重量ある風が、狐珀たちの前方にいる騎竜たちへと飛んでいく。
一体、二体……また一体。その巨躯を吹き飛ばし、体勢を崩させてもなお風の勢いは衰えず。
狐珀は駆ける。彼らの作り出した『道』を。三体の人ならざる仲間と共に。
彼らは彼女に並走しつつ、押し寄せる敵がいれば攻撃を仕掛けて吹き飛ばしていった。
「……!!」
拠点付近で戦っている見覚えのある姿を見つけた狐珀は、頼もしさとともに安堵を感じる。
そのまま拠点に走り込んだ狐珀。ウカと月代は反転し、襲い来る騎竜たちを迎える構えだ。
嗚呼、視線の先にいるのは。
嗚呼、他の騎竜たちとは違う。
胴に装着した装備から生えているのは、竜のものではなく――。
「この地を守る為に戦った者を……」
狐珀は、体内を巡る血が沸騰する感覚に、逆に冷静さが増すのを感じた。
「……己の武器に使い――望まぬ破壊行為をさせるなど言語道断です!」
それが効くと、確証があるわけではない。けれども、勝算が無いわけでもなく。
「ウケ、後方から月代達を援護射撃しつつ、その御神矢で武具を浄化し解放するのです」
ウケの持つ弓矢は、破魔と浄化の力を宿す。 ならば、この、悪夢のような『呪い』から、勇敢なる騎士を解放できるかもしれない。
矢が、放たれる。常なる弓使いでは行えぬ連射――清浄なる鏃は、竜の鱗を割り、肉へと食い込む。
聞こえてくる竜の尋常でない叫びは、浄化の力がその邪悪なる体を廻っている証左。
その叫びを聞き、狐珀は拠点内へと向かって走り出した。
結果を見届けないのは、彼らへの信頼。そして自分にできることを成すため。
「――、――、――」
唱えた呪(しゅ)で結界を張り、更に奥へと向かえば。
「私にもお手伝いさせて下さい!」
負傷した騎士団員たちを連れている、血にまみれた騎士団員たちに追いついた。
「結界を張りました。すぐには壊されることはありません。前線にも、戦力を置いてきました」
「……そうか。お前ら、ここは安全になった。少し休め」
狐珀を一瞥したのは、人狼の男性ダンカン。彼の命で、負傷者を運ぶべく動いていた団員たちが座り込んだ。
自力で動くことが難しい負傷者に肩を貸し、または運搬にあたっている彼らもまた、例外なく傷を負っている。
「走れる奴らは先に行かせた。住人の避難のためにな。だから」
助かった――ダンカンはそう告げる。
仲間たちを運ぶ彼らもまた、体も心もギリギリだったのだ。
「医術の心得があります。応急手当をさせて下さい」
そう申し出て、狐珀は団員たちの様子を見て回る。
彼女が手当をしながら唱えるのは、不思議な音程と抑揚の言葉。歌のようにも聞こえるが、歌と言い切るのは何か違う。
この世界の人々には馴染みがないかもしれない。
狐珀が唱えていたのは、祝詞。
(絶対にこれ以上、犠牲を出したりしません)
強い思いを乗せて、騎士たちを鼓舞する詞(うた)――。
成功
🔵🔵🔴
フォルク・リア
◎
場所はA
呪装銃「カオスエンペラー」やフレイムテイルを用い
【範囲攻撃】で敵を攻撃。
攻撃してダメージを与える事より
自分に引き付ける事を目的として【挑発】。
敵の気を引きながら【残像】を伴った【ダッシュ】をして
間をすり抜け敵の先頭の敵に追い付く。
挑発して集まった敵の群れを見て
「やれやれ、ようやく追いついた。
しかし仕事は此処からか。」
今まで敵に与えていた殺意を利用して
敵全体に作用する様に誘いの魔眼を発動。
【呪詛】により肉体を蝕み。感覚を狂わせ動けなくさせて
騎士達が攻撃する為の隙を作る。
騎士達に
「今のうちにこいつらを仕留めてくれ。
これ以上数が増えると流石に手に負えなくなる。」
と協力して殲滅していく。
放たれるは、弾丸ではなく呪詛。
放たれるは、暴食なる炎鞭。
威力よりも多くを対象とすることを重視して放たれたそれらは、騎竜たちを襲い、その鱗を舐めるように焼く。
後方からの攻撃に騎竜たちが足を止めて振り返るのを、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)はフードの下から捉え。
その攻撃に挑発された騎竜たちは、我先にとフォルクを目指す。
――そう、それでいい。
ギリギリまで引きつけて、見えた道筋。地を蹴りフォルクは、己の出し得る最速でその道筋をゆく。
騎竜たちが見ているのは、彼の残像。そこに獲物はいないと、いつ気づくだろうか。
「やれやれ、ようやく追いついた」
敵集団の戦闘へと追いついたフォルクは、それを追い越してのち。
「しかし仕事はこれからか」
くるりと反転して、騎竜たちと対する。
今、彼の背後にあるのは、拠点と騎士団員たち。そして拠点の中にはもちろん、戦えぬ住人が。
「さあ、始めるか」
――常世を彷徨う数多の怨霊よ。禍々しき力を宿すものよ、その呪詛を解き放ち。混沌の眼に写る魂を混沌の底へと誘い連れ去れ――。
詠唱に呼応して闇に浮かび上がるのは、無数の赤眼。瘴気を纏ったそれは不気味さを帯びており、闇に並ぶその姿はそのままでも狂気をもたらしそうだ。
騎竜たちが一瞬、怯んだように見えた。それが、致命的な隙となる。
「グァ……」
赤眼は騎竜たちを見据えたまま――否、その本領は常人に目視できるものではない。
放たれるのは呪詛。肉体と精神を蝕み、五感を狂わせる強力なそれは、フォルクの挑発に乗った騎竜たちを例外なく蝕んでいく。
呪詛が全身に回る頃には、騎竜たちの様子がおかしいことが誰にでも分かるだろう。
真っ直ぐに歩けない。立っていられない。方向感覚がおかしい。近くに居る味方の存在がわからない――症状は様々ではあるが、呻き、鳴くその姿は、戦場に在る者とは程遠い。
「今のうちにこいつらを仕留めてくれ」
ゆるりと振り返ったフォルクは、騎士団員へと声かける。
「これ以上数が増えると、流石に手に負えなくなる」
この地点は一番敵の侵入が早く、そして犠牲者も多い。
けれども彼らがまだ戦うというならば、協力する準備はもう整っていた。
成功
🔵🔵🔴
クラウン・アンダーウッド
☆
最少の戦闘で敵の合間をすり抜け、拠点を目指し猛進。拠点に到着するや否や10体のからくり人形を展開し、騎士団とオブリビオンの戦闘に介入して騎士団員を守らせる。
クラウンは負傷者の元へUCの炎を飛ばし治療するが、助けられなかった死者を見つけて憤る。
あぁ、全く。自分の力不足をいやに感じるねぇ。もっと早くから居れれば良かったのに...
粗方負傷者の治療を終えたらクラウンも戦闘に参加。犠牲者の一部を搭載しているオブリビオンを確認次第、接近して強引に一部を剥ぎ取り頭を潰していく。
五感を研ぎ澄まし、感じるすべてから情報を得る。
それを分析し、クラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)は拠点へと向かった。
最少の戦闘でたどり着けるルートを、その都度更新しながら。
目から耳から肌から――感じるものすべてから必要な情報を摘出して。
向けられた鋭い爪をガントレットで受けていなし、噛みつこうと高度を下げた頭に丁度いいと、飛び乗って宙へ。
着地から間を置かず、敵の合間を縫ってゆく。
見えた――他の猟兵の姿もある。けれども手は、どれだけあっても余るということはないはずだから。
クラウンは拠点に到着するや否や、即座に十体のからくり人形を展開して。向かってくる敵達を騎士団員の元へ行かせないよう、守るように彼らを操作していった。
視線を巡らせて、拠点の状況を把握してゆく。先に到着した猟兵が、前線で動けなくなっている騎士団員を後方へと運んでいる。下げられた負傷者を安全地帯へと運ぶ指揮をしているのは、セシルという騎士団員だろう。
(状況は大体わかったよ)
クラウンの周囲に現れ始めたのは、神々しく輝く炎。それを放つ先は前方の敵ではなく――いつ敵に踏み潰されてもおかしくない、前線で動けなくなっている騎士団員たちだ。
「っ!?」
「なっ……!?」
自分たちへと向かってくる炎に、団員たちは酷く驚いた。けれども彼らは動くことができない。炎を避けようとすることすらできないのだ。
できるとすれば、固く瞼を閉じることくらい――。
「えっ……」
「……身体が、軽く……」
けれども覚悟していたしていた熱さは、痛みは彼らを襲うことはなかった。
確かに何かに包まれた感覚はあったのに。
痛いどころか、それまでの痛みが消え、鉛のように重かった身体が動くようになったのだ。
「癒やしの炎だよ。動けるようになったら、退避して後方を手伝ってあげて!」
自らの身に起こった奇跡を、実感している暇など無い。クラウンの声でそれを思い出させられた団員たちは、立ち上がって後方へと駆けていく。
――けれども。
「――、――……」
炎を向かわせたはずなのに。癒やしの炎で包んだはずなのに。
起き上がれない者がいる。ピクリとも動かない者がいる。
癒やしの炎の力は強大ではあるが、万能ではないのだ。
命の灯尽きた者を、癒やすことはできない。命の火種がない身体をいくら癒そうとしても、身体(そとがわ)だけ癒やすことができたとしても。
――魂を呼び戻すことは、できないのだ。
「あぁ、全く」
ハットを目深にかぶり直し、誰にも見咎められぬ角度で唇を、噛みしめる。
「……自分の力不足を、いやに感じるねぇ」
小さく紡いだのは、自虐。その裡(うち)に燃え盛るのは、憤り。
「もっと早くから居れれば良かったのに……」
猟兵は万能ではない。
グリモアの予知も、万能ではない。
それは分かっている、分かっているけれど。
ほんの少しのラグで失われた命があるのだから、たらればの話をしても許されるだろう?
「……、……」
それでも自分にできることを。
クラウンは他の猟兵の負傷者ピックアップと合わせて、できるだけ負傷者が自力で後方へと向かえるようにと炎を操った。
だが――それが視界に入ってしまったのだ。
見なかったことになど、できるはずがない。
身に纏った防具から、人間の一部を生やした騎竜なんて――。
「――」
もはや、言葉を発することすらしない。
この感情を的確に表す言葉なんて……。
地を蹴ったクラウンは、その騎竜に接敵する。彼の手には、アレキサンドライトでできたナイフ『Hoffnung zurück』が握られていた。
騎竜が知覚するよりも早く、究極の切れ味を持つそのナイフで防具を、鱗を、肉を抉り。
強引に引いて奪い取ったのは、奴らには不相応な部分。
奴らにくれてやるなんて、許しがたいそれを胸に抱いて。
トンッ、と地を蹴って宙空へと跳んだクラウンは、重力に逆らわずにそのまま――騎竜の頭へと、ナイフを突き立てた。
希望は戻る――その名を冠したナイフでクラウンは、騎士団員たちの希望を取り戻すのだ。
成功
🔵🔵🔴
西塔・晴汰
【晴ル】◎
敵は増えてきてるけど、今ならまだ……!
……って、ええっ!?
いやほら、戦場で多少の怪我は仕方なくないっすか……ダメ?
相手は早いし空中で飛ぶ。
オレが相手するには不利っすけど……オレ一人じゃなきゃあ何とでも!
先行したルーナが撹乱してくれりゃあ、地上から狙い撃つ隙だってできるっすからね!
【楔】が放つのは金色の炎、矢の雨みたいに浴びせてやるっす!
こいつはじゃじゃ馬だからオレの加減なんて効かないっすけど、騎龍相手に加減の必要無いっすからね!
落ちてきた奴には直接槍の斬撃を見舞ってやるっす!
……わかってる。オレたちの手の届く限り、誰一人だってやらせるモンか!
やるっすよ、ルーナ!
ルーナ・オーウェン
【晴ル】◎
晴汰とE優先で手薄なところ
たくさんの人を守る砦
落とさせるわけには、いかないから
でも晴汰、無理は駄目だから
怪我したら、怒るよ
しないくらいの勢いなら、きっとしないから大丈夫
お待たせ、私たちも手伝う
戦いには、慣れてるから
騎士を襲う敵や市街地へ向かう敵を優先して攻撃
『縮地法』で移動を短縮しながら、敵の死角から隠し持ったマチェットと銃で攻撃するよ
できれば声を掛け合って、晴汰とターゲットを合わせたいな
空をジャンプしてたって、上から現れれば対処できないでしょう?
その時は落下の勢いを乗せた斬撃で攻撃するね
落とした子たちは晴汰、任せたから
誰一人欠けたりさせたくないから
力を貸してね、晴汰
うん、やろう
「敵は増えてきているけど、今ならまだ……!」
「たくさんの人を守る砦、落とさせるわけにはいかないから」
騎竜たちの数は、徐々に増えているように見えた。
このままにしておいては、アシュリーのいる地点を突破されてしまう可能性が高い。
ぐっと『覇狼の楔』の柄を握り直した少年、西塔・晴汰(白銀の系譜・f18760)の言葉に、こくりと頷いたルーナ・オーウェン(Re:Birthday・f28868)の白銀の髪が揺れる。
「でも晴汰、無理は駄目だから」
「……って、ええっ!?」
「怪我したら、怒るよ」
今にも敵の群れの中へと走り出してしまいそうな晴汰に、ルーナはしっかりと釘を刺す。
「いやほら、戦場で多少の怪我は仕方なくないっすか……ダメ?」
彼女の顔色を窺うように問えば。
「しないくらいの勢いなら、きっとしないから大丈夫」
ルーナはぽつり、告げた。
「よし、行くっすよ!」
「うん」
ふたりは拠点に向かい、走り出す。
* * *
「お待たせ、私たちも手伝う」
「オレたちにも手伝わせてほしいっす!」
先行した猟兵が連れてきたのだろう竜騎士たちが、すでに戦いを始めているけれど。
ここへと向かっている敵は、増加の一途を辿っているから。きっと、役に立てるはずだ。
「ありがとう、是非力を貸してほしい!」
「戦いには、慣れてるから」
アシュリーの言葉に頷いたルーナの姿が、消えた。
霊体へと変化した彼女がその場に残したのは、微かなノイズのみ。
「ギャッ」
聞こえてきた醜い鳴き声は、他の個体よりも拠点近くへ迫ろうとしていた騎竜のもの。姿を消したルーナが敵の死角から現れて、マチェットで攻撃したのだと晴汰には分かった。
(相手は早いし空中で飛ぶ。オレが相手するには不利っすけど……オレ一人じゃなきゃあ何とでも!)
そう、今はルーナが共にいるのだ。
彼女の『縮地法』は制限こそあれ、その制限の中では距離を問題にしない。敵が宙へと踊り上がれば、ルーナはその死角に出現するだけ。
次々と仲間が死角から襲われて、騎竜たちがざわめいている。ルーナの姿を見つけてはそちらへと迫る騎竜たちも、その爪が、牙が触れる前に彼女を見失っている。
「晴汰」
「おしっ!」
ルーナが指したのは、彼女を探す騎竜たちの中心で、宙へと躍り上がる個体。
晴汰の返事を確認したルーナの姿が、消える。そして。
「空をジャンプしてたって、上から現れれば対処できないでしょう?」
飛んだ個体の死角へと転移したルーナは、まず至近距離から銃で一撃。次いで、落下の勢いを乗せてマチェットで斬り裂いた。
「任せたから」
落ち行く個体を、そこにいるルーナを、騎竜たちは獰猛な瞳で狙っている。
今が好機だ――そう判断した晴汰は、『覇狼の楔』の封印を解き放つ。
(こいつはじゃじゃ馬だからオレの加減なんて効かないっすけど、騎竜相手に加減の必要無いっすからね!)
むしろ加減なんてしないほうが好都合だ。
「金狼よッ! その力を借りるっすよ!!」
晴汰の声に応じて槍先が輝く。そして発せられた金色の炎の矢は、まっすぐ騎竜たちを狙うのではなく。
一度、空へと昇り、そして――雨のように降り注いで、多くの騎竜へと突き刺さり焼いていく。
ルーナが落としてきた個体には、晴汰が直接槍をお見舞いした。
命尽きた騎竜は、青いシミのようになって消えていくけれど。
それでもまだ、多くの騎竜が残っている。
「誰一人欠けたりさせたくないから」
「……わかってる。オレたちの手の届く限り、誰一人だってやらせるモンか!」
「力を貸してね、晴汰」
「やるっすよ、ルーナ!」
思いは同じ。
背中を任せられる相手がいる、共に戦うことのできる相手がいる、それはとても頼もしいことで。
「うん、やろう」
晴汰の声に頷き、ルーナは再び敵を撹乱するべく、姿を消した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リーヴァルディ・カーライル
☆
…たとえ主から叙勲を受けていなくても
…たとえ特別な力を持っていなくても
…誰かの為に困難に立ち向かう勇気があるならば、
貴方達は誰が何と言おうと立派な『騎士』よ
左眼の聖痕で死傷した騎士の魂を暗視して見切り、
心の中で彼らに祈りを捧げてUCを発動
…聞け。戦場に倒れし騎士達の魂よ
死してなお、この地を守護する意志があるならば我が声に応えよ
…貴方達の遺志は私が引き受ける
共にこの地を襲う暴虐を打ち払いましょう
彼らの魂を降霊して全身を呪詛のオーラで防御して覆い、
限界突破した空中戦機動の早業で敵陣に切り込み、
闇属性攻撃の魔力を溜めた大鎌で敵陣をなぎ払う
…この地に芽生えた希望を、お前達に潰えさせたりはしないわ
少女は、ドリスのいる見張り台近くの戦場に立った。けれども彼女は、拠点へと向かおうとはしない。
拠点へは、他の猟兵が向かっているはずだから。
だから彼女は、敵に近い位置に佇む。
(……たとえ主から叙勲を受けていなくても……たとえ特別な力を持っていなくても)
その紫水晶の瞳が捉えるのは、戦闘中の騎士団員や騎竜たちの姿だけではない。
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の左眼に刻まれた聖痕は、彼女に命尽きたる騎士たちの魂をも見せるのだ。
(……誰かの為に困難に立ち向かう勇気があるならば)
騎士たちの魂を見据え、リーヴァルディは心中で祈りを捧げる。
「貴方達は誰が何と言おうと立派な『騎士』よ」
その言葉は、現在戦い続けている彼らにだけ向けられたものではない。リーヴァルディの左眼に映る、確かにそこにいる魂にも向けた言葉だ。
「……聞け。戦場に倒れし騎士達の魂よ」
決して大きな声ではない。戦場に於いて、簡単にかき消されてしまいそうな声量だけれど。
届けたい相手に届けば、それでいいのだ。
「死してなお、この地を守護する意志があるならば我が声に応えよ」
リーヴァルディの左眼の聖痕が一瞬強く光を放ち、そして次の瞬間。彼女の全身を覆ったのは、優しくも悲しみと無念を捨てられぬ魂たち。
「……貴方達の遺志は私が引き受ける。共にこの地を襲う暴虐を打ち払いましょう」
胸元に手を当てて、リーヴァルディは騎士たちの魂へと語りかける。
その身に漲る力が、彼らの返事だ。
「――っ!」
飛躍的に上昇した戦闘力で、リーヴァルディは敵陣へと突っ込んでいく。騎竜たちに、彼女の姿を捉えることができた個体はいないだろう。
彼らはきっと、己が斬りつけられたことに気づくよりも早く、その命を失ってゆく。
呪詛のオーラで防御した状態の彼女が振るうのは、『過去を刻むもの』。死者の思念を吸収して力とするその鎌には、闇属性の魔力が上乗せされている。
知覚される前に群れの中に入り込み、目にも留まらぬ速さで大鎌を振るえば。
数瞬後にバタリバタリと倒れた騎竜たちは、青いシミとなって消えていった。
「……この地に芽生えた希望を、お前達に潰えさせたりはしないわ」
まだ、まだ……。まだ足りない。
もっと、もっと倒さねば、希望は――。
散ってしまった騎士たちの無念を抱いて、リーヴァルディは戦場を進んでゆく。
苦戦
🔵🔴🔴
ルパート・ブラックスミス
(場所指定無し。敵を【おびき寄せ】るべくとにかく激戦区へ)
…退け、砦の騎士たちよ。お前たちは住民たちの避難と直衛を。
この場は、黒騎士が引き受ける。
(UC【燃ゆる貴き血鉛】を纏う大剣で敵を【なぎ払い】斬撃に載せた炎鉛で【範囲攻撃】。犠牲者の死体に群がるなら諸共【焼却】する)
疼く。
一度死に、ヤドリガミとして鎧に宿った魂が、かつてない程の衝動に駆られる。
騎龍共にではない、何処かにいる『彼女』に。
記憶は未だ一欠片も蘇らないのに。存在を知覚し探さずにいられない。
何処だ。
見えているのだろう、この青い炎が。
俺は、黒騎士ブラックスミスは此処だ。
…いるんだろう!!
(鋭くも思いの外、流麗な『声』を必死に響かせて)
他の場所と違い、ここに向かってくる敵は増え続けている。ならば、ここが――。
ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は、静かに、静かに告げる。
「……退け、砦の騎士たちよ。お前たちは住民たちの避難と直衛を」
「っ……」
黒き全身鎧を纏うルパートの表情を、窺い知ることはできない。けれども彼が『抑えようとしている』ものを、アシュリーは肌で感じとったようで。
「……わかりました。お任せします」
「ああ。この場は、黒騎士が引き受ける」
アシュリーを始めとした騎士団の者たちが、拠点内へと向かう足音が聞こえる。
ルパートはその場で、真っ直ぐに騎竜たちと向かい合った。
すでに他の猟兵たちが騎竜の数を減らしていっている。
騎竜が増えるのが早いか、猟兵たちが殲滅するのが早いか――しかしルパートには、それよりも気を引かれてならないことがあった。
――疼く。
(一度死に、ヤドリガミとして鎧に宿った魂が、かつてない程の衝動に駆られる。これは――)
この衝動は、騎竜どもに対してのものではない。それははっきりと分かっている。
何処かにいる、『彼女』に対してのものであると。
失った記憶は未だに一片たりとも蘇らないのに。己の魂が、その存在を知覚している。
いる、のは分かっている。ならば、探さずにいられるだろうか。
騎竜たちと猟兵たちとの戦いが、酷く遠いものに思える。
青き流動炎しか詰まっていないその鎧の中から、衝動と何がしかの想いが、零れ出てしまいそうだ。
「……何処だ」
呟きは、酷く低い声。
鎧から溢れる青き炎はこの場に於いて、酷く目立つはずだ。
「見えているのだろう、この青い炎が」
眼前の光景が、次々と騎竜たちが青いシミとなって消えていく光景が、まるで紗幕越しのように見えて。
「俺は、黒騎士ブラックスミスは此処だ」
ルパートは己の存在を誇示する。
騎竜たちにではなく、どこかにいると断言できる『彼女』に。
勘違いをして迫ってきた騎竜は、一瞥もくれず青い炎で燃やし尽くした。
それでも、それでも。『彼女』は姿を見せない。
「……いるんだろう!!」
荒げたはずの『声』は、鋭くはあるが思いの外、流麗だ。鎧の中から発せられたというよりも、肉声に近い。
必死に、必死に、必死に。
届けと、届けと、届けと。
なんとしても『彼女』に会わなくてはならぬ――その想いは強い。
理由は思い出せぬけれど、青き炎が酷くうねるほど、『衝動』は強く。
その『衝動』に内包された想いの種類は、今はまだわからぬけれど。
きっと『彼女』に会えば――。
いつの間にやら拠点の周囲には、青いシミが広がるばかり。
ルパートは、自分がどれだけの騎竜を倒したのか覚えていないけれど。
一瞬の沈黙。
そして、響き渡るその声、は――。
成功
🔵🔵🔴
拠点が囲まれるように襲撃を受けているのを知っていたからして、自分たちの守った区画の安全が確認されれば、誰からともなくまだ戦いを続けている別の区画へと向かった。
拠点の前に集う猟兵たちを視界に入れ、彼女は酷く上品に笑んだ。今は狂気に染められているように見えるその顔(かんばせ)は、もしかしたら遠い昔には男性たちを魅了したのかもしれない。
軍服に身を包み、少佐の階級章を戴いた彼は、歴戦の猛者である。腰に佩いた二刀と共に駆け抜けた戦場は、数え切れぬほど。踏んできた場数が多ければ、『見て』きたモノも多い。
ドリスが、彼女たちが強さを求める気持ちはわかる。目の前で己の無力さを見せつけられて、仲間を守れず、失って。そして自分たちよりも圧倒的に大きな力を持つ、『猟兵』たちの戦い振りを見たのだ。彼らに救われたのだ。
戦闘音に混じって響くそれは、赤子や子どもたちの泣き声。不穏な空気を敏感に感じ取り、聞こえてくる音に恐怖が爆発したのだろう。子どもたちの泣き声は連鎖して広がってゆく。
そこここに広がる青いシミに、気を取られているいとまなどない。ブラックスミスを名乗る黒魔術師のいる方向とは別の方向から拠点へと進入した月水・輝命(うつしうつすもの・f26153)は、急ぎ他の猟兵たちと合流して。