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【Q】悪巧み進行中? 海底工場の鋼神!

#ヒーローズアース #【Q】 #鋼神ウルカヌス


●残滓は海底にて
 知られざる文明の一つ、アトランティス。
 海底に沈む高度文明の都市において、ほんの少しの前、大規模な戦いがあった。天才的頭脳を持つ科学者により、オブリビオン・フォーミュラを含む多くのオブリビオンのクローニングという狂気の計画が進行しており、それを猟兵たちが奮戦でもって打ち砕いた、という戦いであった。
 その戦いの中で、天才科学者の研究所や工場はことごとく破壊し尽くされた――と、思われていたのだが。
「やはり、奴の頭脳は恐るべきものであったということだな。私の力だけでは、これほどの生産力は持ち得なかった」
 廃材と破壊痕に囲まれた一角に、巨躯の影がある。黒く重厚な全身甲冑に身を包んだ、威容の大男の影が。
 彼の周辺には、駆動音を響かせる機械の群れがあった。ところどころ破損していたり、何やらエネルギーでも不足しているのか、か細い警告音を鳴らしたりもしているが、おおむね問題なく稼働していた。
「それでも、神鋼兵団を組織するにはまだまだ時間が必要だな」
 軽く嘆息する。
 作業の効率は、彼が覚悟していたよりは幾分マシになってはいる。それは間違いない。しかし、彼の目的を思えばそれでも不足している。
 神鋼兵団を形にできる前に、万が一、猟兵に知られたら……いや、万が一ということもないと、彼は確信していた。遠からず猟兵らはここを突き止め、戦いを挑んでくるだろう。
 目線を横に動かす。
「防衛の要は貴様だ。然るべき際には、励め」
「はっ」
 巨躯の彼の脇にたたずんでいたもう一つの影が、頭を下げる。
 すらりとした、女性とおぼしきボディライン。ふさふさした豊かな尻尾。そして、まるでそれらを覆い隠さんとしているような、無骨で不気味なデザインの重甲冑。そんな影が。

●神鋼は未だ潰えず
「ウルカヌス。覚えてるよな?」
 グリモアベースに集った猟兵たちに、大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)が言う。
「先のヒーローズアースの大戦で取り逃がしてたわけだが、未だに討滅に至っていない。奴はあっちこっちに潜伏して、神鋼の鎧を量産しようとしてるみたいだ」
 神鋼の鎧を装備した兵団を整えて猟兵らに反攻作戦を仕掛ける。それが彼の計画だった。
 現在のところは鎧の生産、供給は不十分であるようだが、放置していればいずれ致命的な脅威へと育つだろう。芽が出る前に、潰してしまわなければならない。
「今回、皆に行ってほしいのはアトランティス。先の戦いでクローン工場なんかがあった区画だけど、ウルカヌスはそれらの残骸同然の施設を無理矢理動かして鎧を生産してる。しかも、単独でポツンといるわけじゃなく、手勢も引き連れつつ、だ」
 まずは集団戦。将来有望なヒーロー候補を拉致、クローンニングしたモノが元となったオブリビオンで、デザインの際に本来あるべきタガが外されている。ゆえに恐るべき火力を持つ強敵ではある――が、それでも常識的なオブリビオンの範疇の内であり、さほど問題なく対処できるはずだ。
 だが、厄介極まる存在が二つある。
「一つ、完成した神鋼の鎧を装備した個体がいること」
 神鋼の鎧は、聖地にあっては完全無敵を誇る、鋼と炎の神力の結晶である。今回の戦場は聖地ではないのでそこまでの性能は持たないが、それでも物理、魔法、その他状態異常に対する耐性はかなり高く、ごり押しは困難だ。鎧の隙間を縫うような攻撃を仕掛けるなど、何かしらの工夫は必須となる。
 そんな鎧を装備しているのは、人狼に似た外見のオブリビオンだという。高度な電脳能力を使って周辺の機械を意のままに操るという特性を持つため、戦場との相性は抜群である。つまり、鎧の脅威を差し引いたとしても充分すぎるほどの強敵なのだ。
「もう一つ……当たり前だけど、ウルカヌスとも戦って、撃破しなきゃいけない」
 ジェネシス・エイトの一角、鋼神ウルカヌス。
 その武勇の凄まじきことは今さら語るまでもない。猟兵が対峙したならば、間違いなく先手は彼に取られる。ゆえに、先制されるのはどうしようもないと割り切って、それへの対策を立ててから挑むというのが肝要となる。
「オブリビオンとの戦いなんざいつだって厄介なモンだが……今回は特に面倒くさい部類かもしれねえ。『油断しない』『しっかり対処法を考える』これは絶対厳守だからな」
 ただでさえ鋭さのある双眸に真剣な光を宿らせつつ、朱毘は念押しした。
「生きて帰ってくるんだぜ」


大神登良
 オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。大神登良(おおかみとら)です。

 目標はウルカヌスの撃破、戦場は海洋都市アトランティスです。周辺は海水に満たされていますが、適応光線や謎パワー等によって、猟兵の呼吸や戦闘行動には支障がありません。
 第二章、第三章にはプレイングボーナスの設定がありますので、ご留意ください。

 第一章は、集団オブリビオンとの戦いです。ここには特にギミックはなく、普通の強さの集団敵との普通の戦いになります。
 第二章は、神鋼の鎧を装備したボスオブリビオンとの戦いです。神鋼の鎧はありとあらゆる攻撃に対して高い耐性を発揮します。そのため、『「鎧の隙間」を狙う』ようなプレイングにはボーナスが付きます。
 第三章は、鋼神ウルカヌスとの戦いです。猟兵たちを大きく上回るレベルを持つ強敵と考えてください。必ず、猟兵が選択したユーベルコードと同じ能力値を使うユーベルコードを用いて、先制攻撃をしてきます。そのため『うまく先制攻撃への対処法を実践する』ようなプレイングにはボーナスが付きます。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『強化人間『マギニア』』

POW   :    コード・ブラスト
【周囲の空気を自身の周囲に収束する】事で【暴風操縦モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    コード・エゴ
自身の【微かに残っていた自我】を代償に、【自身に掛かる数十倍の重力】を籠めた一撃を放つ。自分にとって微かに残っていた自我を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
WIZ   :    コード・グロウ
自身からレベルm半径内の無機物を【太陽光】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
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 まず可憐と称してよいだろう少女たちが、ずらりと集結している。
 薄く笑う者、不機嫌そうな者、真顔の者――表情こそいくらか種類があるものの、顔の造作そのものは全く同一である。
 強化人間『マギニア』――かつて、邪悪と狂気の衝動に従ったヴィランたちによって生み出された、哀しきクローンたち。
 自壊をも辞さぬ忘我の軍勢が、今、その牙を猟兵たちに向ける。
マギア・オトドリ
……対象は、私とは違う同機能の個体と判断します。その姿がオブリビオンとしてであるならば、討たせて頂きます。

封呪包帯を解き「code=MAG:1A」の封印を解放し術式発動、「鋼鉄結晶」へと崩壊術式を付与。発生する激痛自身は慣れている事、己と同じ境遇にあった存在を救うという覚悟の元、行動を継続。
対象の高速化を確認。自分のとは別の技術と判断、暴風を操縦する相手の周囲に「第五元素エーテル」を拡散させ、周囲の重力を数倍に変化させ対象の行動を抑制。
動きが鈍った対象に、崩壊術式を付与した鋼鉄結晶をぶつけて吹き飛ばしていきます。その際、崩壊術式により対象のコードを崩し無力化。行動不能となった所を仕留めます。



●近く遠き姉妹たち
 マギニアたちの顔ぶれを見たマギア・オトドリ(MAG:1A・f22002)は、己の胸中が鋭爪で引っかかれたように感じた。
 『憐憫』? あるかもしれない。彼女たちはマギアと同じ者たちだ。いや、正しくは同じ機能を持つ別個体の群れなのだが、それでも境遇を同じくする存在である。望まずしてオブリビオンに堕した姿を見れば、哀れも覚える。
 『恐怖』? ないとはいえない。マギニアたちという存在は、マギアがかつて経験した地獄を再び思い起こさせるに充分だった。
 だが、それよりも強くあるのは。
「討たせて頂きます……救うために」
 右目と左目に巻かれた封呪包帯をほどく。白日の下にさらされたcode=MAG:1Aが術式を発動させ、マギアに激痛を与える。だが、彼女はそれを気にも留めない。
 『覚悟』が痛みを忘れさせた。
「――……」
 マギアの覚悟に触発されたのか、マギニアらの目がマギアに集中する。
 それと同時、比喩的な意味でなく空気が変わる。マギニアらの【コード・ブラスト】に操られたそれは颶風と化し、マギニアたちを乗せて滑走する。
(私とは違う技術……)
 そして疾い。
 それを認めたマギアは、第五元素エーテルを奔出させた。星を造り天を成す魔力そのものが、雨とも煙ともつかぬ不可解な様相を見せつつマギニアらを包む。
「――!」
 マギニアらは身に纏った暴風を操り、壁と成す。エーテルは風の壁を突破するあたわず、散らされる。
 が、実はそれでも充分なのだということに、彼女たちは気付けなかったらしい。
 場に干渉したエーテルが、一帯にかかる重力を増やす。それによってマギニアらの動きが鈍る――わずかに過ぎないが、しかし鋭敏化していた反射神経との齟齬が、速度のみならず動きの精度をも低下させる。
 つまりは、大きな隙ができるということ。
「ハァッ!」
 人の胴体ほどの大きさを持つ鋼鉄の巨塊が、怪光放つ術式痕に後押しされるようにマギアの手を離れて飛ぶ。そのまま先頭のマギニアに炸裂して吹き飛ばし、後続の数人を玉突き事故よろしく巻き込んだ。
「グ……!」
 戦列の崩壊を免れた個体が真上に飛翔してから、両足を下にして急降下する。自我を犠牲にでもしたのか目の焦点が合っていないが、それでも狙いは正確だ。
 しかし、鋼鉄結晶の片割れを繰り出し、真正面から受け止めた。
「――ッ!?」
「負けない……負けられない、あなたたちには!」
 鋼鉄結晶を通して放たれたマギアの気迫の魔力が、マギニアを再び吹き飛ばした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シホ・イオア(サポート)
『前へ進む、痛みと祈りがシホの背中を押してくれるから』
怖くなって緊張すると 口調が硬くなる
背中の聖痕で相手の悩みや痛みを感じ取ってしまうため
敵でも癒したい・終わらせてあげたいという方向で動く
罠や防衛戦では建造物を作り豪快に解決することが多い
自衛手段を持たないものがいる場合は救助を優先
ユーベルコードは遠距離戦に強いものが多いが
残像を纏い剣と光輪を使って接近戦も行ける
輝いているため隠れるのは苦手
連携アドリブ歓迎


レーナ・ムーンレス(サポート)
『今日も元気に萌え萌え弩キューン』
 バーチャルキャラクターのバトルゲーマー×サウンドソルジャー、永遠の17歳(32歳)の女です。
 普段の口調は「バ美肉ソプラノ(私、あなた、~さん、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)」、時々「イケボ(私、~君、~さん、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●光輝と癒やし
 空を舞うシホ・イオア(フェアリーの聖者・f04634)の背中が、輝きを放っている。癒やしの聖痕、オーバー・ザ・レインボーが生み出す光輪である。
 ただでさえ敵味方を見境なく癒やそうとし、その痛みをシホに押っ被せるという性質を持つそれは、この場においてはおよそ最悪の働きを果たした。自我というものが殺されているマギニアらは、それという自覚もないままに自分で自分を傷付け続けており、その痛みはシホを苛みに苛んだ。
 といって、シホの心には毛先ほどの動揺もない。この程度の最悪は、彼女にとっては日常だからだ。
 暴風に乗って襲ってくつマギニアらの集団に対し、シホは宝石剣エリクシアを向ける。
 だが。
(速い!?)
 そして数も多い。
 それらが連携を取りつつ、多角度から肉弾戦を仕掛けてくる。
 残像を置き去りに距離を取る――が、それでも速度と数の圧力凄まじく、振り切れない。
 シホの眼前に迫ったマギニアが、鉈のようなかかと落としが放ってくる。それをどうにか剣で受け流した次の刹那、横に回り込んだ別のマギニアの正拳が脇腹に突き刺さった。
「あぅっ!?」
 シホの【トリニティ・エンハンス】が赤、青、緑の光の鎧となって彼女を護ってはいるが、それでも強烈な衝撃が加えられる。くの字に折れたシホの体は空を裂きつつ飛び、激突した先の謎の機械群を破壊して瓦礫の山へと変えた。
「く……!」
 すぐさま、瓦礫を払って立ち上がる。
 小さくないダメージは受けたが、剣はまだ手から離れてはいない。まだ戦える。
 シホがそう思った、そのとき。
「――ハレルヤ、ハレルヤ、誉れあれ♪」
「――?」
 不意に響いたのは、歌声だった。
 音源であろう方にちらりと目を向けると、それは廃棄された機械がうずたかく積み上げられ、小山のようになっている一角である。
 小山の頂にいたのは、レーナ・ムーンレス(電子の美少女アイドル・f09403)だった。
 レーナの身を包むのは、青や紫のグラデーションが綺麗なフリルスカートが特徴的な、自身専用のアイドル衣装。ごちゃついた廃棄物の山頂にあるには、ミスマッチな煌びやかさであった。しかし、彼女はそこがまるで大観衆の集まったステージであるかのように、威風堂々たるポージングを決めている。
「魂よ歓喜せよ 足よ奮い立て 聖なる者は進み続ける♪」
 そうしてレーナの歌っている歌は、聖歌であった。
 ただの歌ではない。癒やしの力を込められたユーベルコード【大天使の聖歌(レーナノイヤシノウタ)】によるそれである。
 聖者たるシホにとって、それはとても『刺さる』歌だった。
 刺さった歌は瞬時にして全身に行き渡っていく。その癒やしの力は脇腹のダメージのみならず、背中を苛む痛みさえも和らげていった。
 しかし、そんな厄介な歌を披露するレーナのことを、マギニアらが見過ごしてくれるはずもない。
「ハレル――わっ!?」
 マギニアの集団がレーナを睨み付けるや、【コード・グロウ】によって発生した太陽光が灼熱のビームと化し、レーナを狙い撃つ。
 過剰で苛烈なライトアップを、レーナはすんでの所で仰け反って回避した。
 そのまま小山から転げ落ちるかと思いきや、しかしレーナは踏ん張ってみせる。さらに。
「――ハレルヤ、ハレルヤ!」
 体勢を立て直しつつ、聖歌を途切れさせることなく歌う。弾けるような笑顔とパフォーマンスをキープする――瞠目すべきタフネス、そしてガッツであった。
 それを脅威と見たか、あるいは単に「叩くなら回復役から」という定石に従ったのか、マギニアらのヘイトがレーナに一気に向く。
(……流石にマズッたかな?)
 なお気丈に笑みを浮かべるレーナの頬を、冷や汗が一つ、伝う。
 だが。
「やらせ、ない――!」
 シホの宝石剣が一際強く光り、いくつものカラフルな輝石を生み出す。
 同時、輝石は四方に魔力の光槍を放った。よそ見をした瞬間の隙を突かれた形になったマギニアらは、わずかに反応が間に合わず、まとめて薙ぎ払われた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鈴桜・雪風
幾ら呼吸が出来るようになっているとは言え
樹木に海水は有害でしてよ?

この環境では、わたくしの出来ることはそう多くなさそうです
「つまりは――寄って、斬る。事件を斬れぬのなら、この傀儡達を斬って捨てるのみですわ」

素早い術士というのは正直、相性が悪いのですけれど…
幸い自我もなく狂気に侵され、単純な動きしかできぬ御様子
でしたら、詐術にかけるのが一番ですわね

敵が間合いに踏み込んでくるならそれで良し
返す刀で斬り捨てましょう
遠間から術でこちらを削ろうとするなら…
一度引く素振りを見せ、追撃のために加速したのに合わせ反転
一挙に間合いに踏み込んで斬ります
「加速すればするほど、とっさの反応が難しくなる。道理ですね」



●電光石火
 戦場は海底であって、周囲を満たすのは空気ではなく海水である。
 そんな環境の中で猟兵らが支障なく呼吸や活動できているのは、オーバーテクノロジーの産物、適応光線の賜物なのだが。
「……落ち着きませんわね」
 渋面を作りつつ鈴桜・雪風(回遊幻灯・f25900)が、自らの頭の桜に手を伸ばす。
 桜の精たる彼女にしてみれば、その心情も無理はない。海水はその濃度の都合上、植物から水分を奪う毒となる。その辺も含めてうまいことなってるという説明もグリモアベースで受けてはいるが、本能的な忌避感は完全にはぬぐい難い。
 しかし現状、そんなことをいつまでも気に掛けている余裕もない。
 周囲には殺気立ったマギニアの群れ。要はすでに鉄火場であり、探偵の本領を発揮して事件を紐解く段なぞは、すっ飛ばされている。
「つまり、今よりわたくしにできることは――斬って捨てるのみですわ」
 抜刀する。
 暴風を乗りこなしつつ飛翔するマギニアたちは、火力の高さは感じられるが、思考を鈍らされているために動きは単調であると、雪風は看破した。
(でしたら、詐術が一番ですわね)
 刀を構えつつ、雪風はスッと後方に退く。
 と、雪風の読み通りマギニアらは加速して真っ直ぐに突っ込んでくる。
(そうやって加速すればするほど――)
 マギニアたちの動きを見て取った雪風は急速で踵を返し、あべこべに一気に踏み込んだ。遠距離戦の間合いが、瞬き半分のうちに近接戦のそれになる。
(とっさの反応が難しくなるのが道理!)
 横薙ぎの【剣刃一閃】が放たれる。刹那、剣の間合いの内に入ったマギニアら三、四人がまとめて斬り払われる――かに思われたが。
「ッ!?」
 急制動、あるいは方向転換によって、マギニアらはそれを回避した。【コード・ブラスト】によって爆発的に増大していたのは速度だけでなく、反応も、である。その冴えだけは雪風の読みよりも上だった。
 次の瞬間、正面から、左右から、頭上から、マギニアらが同時に殴りかかってくる。
(まずい!)
 ひりつくような危機感。
 しかし刹那、雪風はとっさに刃を返しつつ左に跳ぶ。
 交錯するマギニアの拳が雪風の頭を掠め、桜を一輪だけ散らす。だが雪風の刃の方はマギニアの胴を捉え、両断していた。
 マギニアは速い――が、動作は単純で、軌道も呼吸も読みやすいには違いない。
(一瞬焦らされましたが、出し抜くのは難しくありません!)
 刹那のうちに気を取り直した雪風の目に、連携を崩されてもたついているマギニアらが映る。その一群目がけ、雪風は間髪入れずに剣を見舞った。

成功 🔵​🔵​🔴​

フィロメーラ・アステール
「おー、なんか元素が漂ってるな!」
これは確か星の……いや宇宙の……いや、えーと?
今はいいか、大切なことじゃない!

敵はなんか太陽光を撃ってくるみたいだな!
そかそか。
ところで星の輝きは太陽光とかを反射したりするヤツなんで!
もうオチはわかったな!?

……流れ星の光は違うって? 細かい事はいいんだよ!

【紲星満ちて集いし灯光】を使い、光精を召喚!
連携しあって反射の【オーラ防御】バリア展開!
そいつを集束して【カウンター】【属性攻撃】を食らわすぞ!
まあ集束がうまくいかなくても【目潰し】にはなるかな?

反射自体が失敗しても……あたし流れ星だし!
強烈な光とか宇宙的高熱に【環境耐性】ついてるんで!
(都合よく流れ星)


緋奈森・鈴音
海の中で戦うのって初めてよねー。
動きに支障がないように水着に着替えて行こうっと……どうせならリゾート気分でのんびりしたかったー!

太陽光に変えて操作するって言ってもー、光だしまっすぐしか届かないわよねー。
なので狐火を周囲に全力で召喚するわねー。
狐火で蒸発した海水の泡を使って空気の屈折率を変化させ続けて、攻撃にしろ別の目的があるにしろ狙い通りの場所に光が届かないようにすれば、相手の思惑通りにはいかないわよね?
狐火を動かし続けていたら屈折率による軌道の修正とかも追いつかないだろーし。
その間に動かした狐火や、左右に浮かばせた鉄拳(ルーンソード+手裏剣)で攻撃していくー。

早く終わらせて海を満喫したいの!



●光と熱と星と
「海の中で戦うのって初めてよねー」
 緋奈森・鈴音(妖狐の化身忍者・f03767)がマイペースにつぶやく。
 そのいでたちは布面積のやや少なめなワンピース水着で、鈴音の凶悪なプロポーションと相まってかなりの(物理的でない)破壊力を発揮していた。適応光線によって普段通りの装束でも支障はないと説明を受けてはいたものの、早く事を終わらせた後に海を満喫したいという気持ちが勝ったような形になっている。
 無論、だからといって別に鈴音は現状を舐めているわけではない。
「周りが海水なら……」
 ぼう、と数十の【フォックスファイア】が鈴音の身の回りに出現する。
 そして『それ』と意識すると、炎に炙られた海水が蒸発し、気泡へと変じる。
 地上では見る機会などないであろう奇っ怪な光景ではあったが、それはおおむね鈴音の想像した通りの現象だった。
「攻撃するつもりにしろ何にしろ、絶えず屈折率が変化し続ける空間を突破して太陽光を届かせるのなんて、まず不可能よね?」
 対峙するマギニアらの集団に向かって、鈴音が言い放つ。これで、敵の手の一つは潰した。近接戦も不得手ではなさそうだが、鈴音ならどうとでもさばける。
 ――と、思ったのだが。
「――!」
 遠間を保ったままにマギニアらが一斉に鈴音に向かって手を掲げた途端、鈴音とマギニアらの間にあった天然の屈折レンズがかき消えた。
「は!?」
 鈴音が唖然とする。が、それは瞬く暇もないほどの間。
 およそ頭で思考するより先に鳴らされた警鐘によって、鈴音は狐火を集合させて己の眼前で壁を成した。
 一拍あって、その火壁に対して膨大なる狂熱の圧力が加えられたことが、手応えで知れる。
 マギニアの操る【コード・グロウ】は、無機物を太陽光に変換してしまう魔術。その射程内でさえあれば、場を満たす海水もまたその種になる。鈴音が炙っていた海水もまた、例外にはなり得ない。狐火そのものを書き換えてしまうなどまでは、流石に不可能であるにせよ。
「これは、誤算だったかしら……!」
 炎壁を境に拮抗する灼熱が圧縮を繰り返し、太陽光というよりはそれ自体が一個の小さな太陽のような渦巻く熱エネルギー塊となっていく。
 押し返してしまいたいところだ――実際、敵が二、三人程度ならそれも可能だっただろう――が、多勢に無勢だった。
 では、仮にこのまま逆に押し返されてしまったら? 無論、火葬場のいらない事態になるだろう。嫌な想像に、鈴音の頬が引きつる。
 しかし、だ。何も鈴音は独りで戦場に立っているわけではない。
「海の中なのに、空の元素を感じるな! これは星の……いや、宇宙の……って、今はそんな場合じゃないか!」
 星の煌めきがそのまま声になったような声が響く。その主は、今しも鈴音らのいる戦場に飛び込まんしているフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)だった。
「光輝の縁を知るモノよ、集まれ-!」
 甲高い号令と同時、数百の光精が出現する。集まるというよりは、ほうき星の尾よろしくフィロメーラの飛翔する軌跡をなぞるように彼女から放出されている、といった絵面であったが。
 それら光精の姿は、きらきらと強く光を放つ細粒である。いや、光を放つというよりは、ガラスや鏡の破片のような、反射による輝きであるように見て取れる。
「知ってるか? 惑星や衛星って、恒星――太陽とかの光を反射して輝くんだぜ!」
 ニヤリと笑いながら、幸運の流星の化身たる彼女は講釈をたれる。
 そして光精たちは凶暴なる炎熱の拮抗に、割り込むように突っ込んでいく。
 誰が見ても無謀としか映るまい。数こそ多いが、鈴音の操る狐火などに比してあまりに矮小脆弱な光精の群れである。割り込んだ端から為す術もなく蒸発してしまうに違いない――と、思って当然。
 そして実際、それに近しいことは起きた。マギニアらの操る太陽光のビームを一発撃たれるや、光精たちは消滅してしまう。
 だが、同時に跳ね返しもしたのだ。
 それはある種のマジナイを発揮していたといえるだろうか。超常の理論下の現象同士だが、『太陽光』と『星』としてその性質を定義づけられているため、その性質通りのことを起こしてしまうというような。
 何であれ、マギニアらの放つ太陽光は反射された分だけ威力を減じ、また反射された己の太陽光で数名のマギニアらが灼かれたことで、拮抗は崩れた。
「ありがたいわね……行けーっ!」
 鈴音の狐火が、小さな太陽そのものと化した爆熱塊を押し返す。
「――!」
「……!?」
 マギニアらも必死に抵抗するが、最早傾いた天秤は元には戻らない。
 マギニアの集団の中央に太陽が炸裂し、極大規模の爆発が彼女たちの全てを呑み込んだ。
 強烈にして無慈悲なる光と音の暴威が去った後――何も、残っていない。

 かくして激闘の果て、マギニアらは壊滅に至ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『アルファ・ハウル』

POW   :    ロス・ロボス
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【支配下に置いた機械】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD   :    ウルファイズ
レベル×1体の、【額】に1と刻印された戦闘用【に改造した狼型ロボ】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    ケーナイン・ジステンパー
対象のユーベルコードに対し【可用性を侵害する大量のデータやパケット】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
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●機械墓場の支配者
「まさか、アレらを全滅させるとは……」
 感心したようにつぶやきつつ進み出てくるのは、黒狼を連想させる耳と尻尾を持つ、女オブリビオン。黒いぴっちりしたボディスーツの上に、サイバー風にアレンジした西洋甲冑とでもいうべき鎧を纏っている。
 あの甲冑が、神鋼の鎧。
 絶対無敵とまではいかないものの、恐るべき防御力を誇るという話は、グリモアベースで聞かされている。正面から砕くのはかなり厳しい、とも。
 付け加えて。
「……だが、ここは我がテリトリー。貴様らがどれほどの使い手だろうと、ここで戦う限り貴様らに勝ち目はない!」
 彼女のサイバーゴーグルが淡く青白い光を放つと同時、周辺にうち捨てられていた機械の残骸たちが、息を吹き返したように「ヴン」「ヴン」と起動音を鳴らす。
 アルファ・ハウル。
 高度な電脳をもって機械群を使役する、まさにこの場で戦うために存在しているかのような、難敵中の難敵。
 神鋼の鎧に機械群。金棒を両手に持った鬼のごときオブリビオンを、猟兵たちは攻略しなければならないのだった。
マギア・オトドリ
……私自身の改造では電脳化はされてないでしょうが、最悪術式介入される事を検討し、行動します。

即座に指を鳴らし、接近。と、同時にロボットへ強襲。数は多かれど、個々自体は屈強に非ず。囲まれぬよう移動を繰り返し貫手にてAI部を抜き取り、行動を取れぬようにします。

対象自体には神鋼の鎧を纏っている様子。事前情報の時点で不明である以上、総当たりです。術式を更に自分に付与し、限界以上の高速化での拳激によるラッシュを仕掛けます。場所は可能な限り同部位でなくばらけて狙っていきます。対象もそれを理解し離れるか、吹き飛ばすなりするでしょう。なのでそれをされぬよう足払いにてとっさの判断を削り、ラッシュを継続します。



●頭状花序
 起動音を鳴らした機械群の所々から、幾筋ものレーザーポインタじみた赤い光が発せられる。
 それらが眼光だと気付くのに間はいらない。二個一対となった眼光を中心に機械の残骸が集合していき、いくつかの塊に纏まっていく。塊は四つ足の肉食獣――狼のような形のロボットとなり、威嚇の声を思わせるエンジン音を鳴らした。
 アルファ・ハウルの機械を操作する能力。それを目の当たりにしたマギア・オトドリ(MAG:1A・f22002)は一抹の不安を覚えた。強化人間たるマギアは、ひょっとしたらアルファ・ハウルの支配下に置かれる可能性があるのではないかと。
 まあ電脳化などは施されていないはずだし、仮にも猟兵の意志で制御されている体の操作権など、易々と奪えるものではないだろう――が。
(最悪の場合、術式介入されるかも……)
 しかし、だからといって引っ込んで小さくなっているなど、マギアはごめんだった。
 パチリと鳴らした指の音がトリガーとなって、マギアの周囲全ての時間の流れが遅くなる。
 それは錯覚であり、現実にはマギアの認識と動作が【クロックアップスピード】によって加速したのだ。
 己自身の動作さえ鈍く感じる認識世界の中で、マギアは狼たちに目を走らせる。見たところでどこが心臓部ともつかなかった――外観を生物に似せているからといって、弱点構造の類まで同じであるとは限らない――が、さほどの体格でもないので、雑な壊し方でも無力化はできよう。
 群狼のただ中を駆けつつ、槍のような貫手が、刃のような手刀が、狼型ロボを斬り裂いていく。
「――足止めさえできないだと!?」
 マギアの手数が【ウルファイズ】の頭数を上回る。その超速にアルファ・ハウルが舌を巻いた。
 そんな彼女の眼前に、拳を振り上げたマギアが肉迫する。
「ァァァ!」
 マギアの拳が広範囲に突き出され、菊の花が咲いたかのような像を結ぶ。一見無駄撃ちだが、装甲のうちどこからどこまでが神鋼の鎧なのかを見極めるための手段だった。
 胴は当然『それ』。肩。前腕を覆う籠手。足。太もも。
(全身くまなく?)
 顔面――に伸びた拳は、右腕でガードされる。わざわざガードしたということは。
(そのサイバーグラスは自前か!)
 右腕を押しのけるようにしながら、追撃の拳を放つ。
「――ッち!」
 アルファ・ハウルは鼻先を拳に弾かれて出血しつつも、後方に跳ぶ。させじとマギアの足払いが飛ぶが、しかしそれは神鋼のレッグアーマーに威力を大きく減じられた。
「――ッ!」
 悔しさに歯がみする。が、糸口はつかんだマギアであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

緋奈森・鈴音
合体すると大きくなる分、放熱部や吸気口とか狙い易くなる部分も増えるはずー。
海中にいるから防水能力はあるだろーけど内部や元々沈んでた機械まで対応できてるかしらー?

炎と風と水の魔力を総動員した属性攻撃!
相手に海水の奔流をぶつけ続けながら相手の周囲の温度を最大限に上昇!
どれだけ攻撃に耐性有っても、隙間からの水の侵入や内部で発生する高温の水蒸気を阻める?
もし周りの海水がなくなってもそのまま水蒸気を送り続けるー!

そうやって熱湯と高温の水蒸気で鎧の中身を直接攻撃するわねー。
海水蒸発後に残る塩とかでも取り込んだ機械部分で漏電したり機能不全を起こしたりって二次被害も狙って仲間の攻撃チャンスに繋ぐわー。


鈴桜・雪風
鎧の隙間を狙わねば、攻撃が通らないとのことでしたね
加えて周囲の機械と合体し、更に守りを重ねますか
なんとも用心深いことですが……生身の体がそこに『在る』以上、至る筋道はございましょう

「髪が乱れるので余り使いたくないのですけれども!背に腹は変えられませんわね」
UCを起動して分析力を向上
敵の2重の鎧の可動域や反応速度を見極めて、刃を通せそうな箇所を探します
「関節にはたしかに隙間がありますが、動きが激しいので当たるかどうか……。でも、背面の機械を脱落させた上であの尻尾を狙えば……」
動物の尾はただの飾りではなく、平衡器や探知機の役目をすると聞きます
神鋼の鎧の中にしまい込むわけには行かなかったのでしょうね


フィロメーラ・アステール
「なるほど、あの鎧が……」
あれ?
いま鎧の上から無機物が合体してロボになった?

特別製の鎧みたいだしロボ部分までは間に合ってないとか!
まあ、本体はロボの中で鎧を着こんで……待てよ。
敵本体とロボの、電子的な接合部分を狙えるかな?

【轟天たゆたう二色の星譜】発動!
星の声たる電磁の波……電波に姿を変え、敵がロボを操作するため接続している繋がりを探る!
機械に詳しい訳じゃないし、動き方は【第六感】に頼った直感任せになるけどな!
人知を超えた【早業】の世界じゃ、感覚頼りの方がいいかも!
機械へ指示を出す中枢を辿る感じ?

一瞬でも手が届けば、【気合い】を込めた電波の【衝撃波】を放ち、敵の電脳にダメージを与えられるはず!



●破鎧
「小粒で数を揃えたところで無駄か。ならば……」
 アルファ・ハウルの体の周囲に、機械の残骸が寄り集まってくる。そしてごちゃごちゃと原理不明の結合、接続を繰り返し、シルエットを肥大化させていく。
 やがて出来上がったのは、キャタピラ付きの極太な両足と、削岩機めいた巨大爪が備えられた豪腕とを持つ、高さ四メートルほどの戦闘ロボットであった。
「更に守りを重ねますか」
 鈴桜・雪風(回遊幻灯・f25900)がつぶやく。
 ただでさえ神鋼の鎧によって守備を万全であるところ、密集機械のアーマーまで加わるとなると、攻撃を届かせるのは容易ではないだろう。面倒な、と思うのは自然だった。
「守りだけではない!」
 アルファ・ハウルが雪風に豪腕の打ち下ろしを見舞う。
 受け止めるに難いと断じた雪風は、するりと横に跳ぶ。と、思いの外高速の一撃が一瞬前まで雪風の顔面があった間を通り過ぎ、髪の先端を千切る。
 雪風は息を呑んだ。鈍重そうな見た目の割に、ロボットの動作は鋭く速い。アルファ・ハウルによって緻密に制御されているため、ポテンシャルを最大限発揮できているのだろう。
 ロボットが追撃の一撃が振るうより、しかし、三色の魔力によって練り上げられた光の奔流がその胴体に炸裂する方が早い。花火のようにカラフルで美しい爆発によって、ロボットが大きくよろめく。
「む……!」
「的が大きくなる分、狙い易くなるかと思ったけどー」
 【トリニティ・エンハンス】の奔流を放ったのは緋奈森・鈴音(妖狐の化身忍者・f03767)だった。
「堅いし速いなんて、厄介ね」
 鈴音の眉間にしわが寄る。直撃させたというのに、ロボットの装甲にダメージはない。
「でも、あれって神鋼の鎧とは違うよな? 鎧の上から合体してたし」
 鈴音の横でふわふわきらきら飛んでいるフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)が首を傾げる。
「それはそうでしょうね。ただ、神鋼ほどじゃなくても防御力は高いわ」
「ふむむ……」
 神鋼の鎧でないならば、火力でゴリ押しして押せないこともないかもしれない。が、それで首尾良くロボット部分を破壊できたとして、息の上がった状態で神鋼の鎧を纏ったアルファ・ハウル本体を相手しなければならないということになる。それは、いかにも不利になる。
「効率よくロボ部分だけ剥がせれば……待てよ?」
 ふと、フィロメーラは閃く。
 アルファ・ハウルが優れた電脳力によって機械を操っているのなら、本体とロボットの間に(原理は超科学的であろうが)電子的な接合があるのはまず間違いない。ならば、物理的ではなく電子的なアプローチによって、ロボットのパーツを剥がし落とせるのではないか?
 そういった攻め手を持つ者といえば、まず挙げられるのは腕利きの電脳術士やバトルゲーマーなど。
 フィロメーラはそういった典型例からは外れる。だが。
「星の声たる電磁の波!」
 ヴヴヴ、と小型のモーターが動くような音が鳴ると同時、フィロメーラの姿がぶれる。
 振動している――というよりは、純粋に輪郭が、フィロメーラを構成する『結びつき』そのものが曖昧になった。
「レッツ、超電磁波ムーブ!」
 刹那、フィロメーラの肉体が淡いレモン色の残滓を置き去りに、ほぼ不可視のモノに変わる。
 【轟天たゆたう二色の星譜(ワンマンチャネラー)】によって電磁波に変異したフィロメーラは、誇張抜きに光と同等の速さで戦闘ロボットに向かって奔り、その装甲の隙間に滑り込んだ。
 強引、豪快なる電子の速攻。
「狙いはわかる――し、悪手とも言わない」
 ロボットの胸部、コクピットの内にあって、アルファ・ハウルは落ち着き払っていた。
「だが、電脳戦もまた私の土俵だ。そんな素人丸出しの攻撃は通用せん!」
『――くっ!』
 ロボットのアーマーの中を駆け巡るフィロメーラは、それが何であるとも認識しがたいデータの大攻勢を受ける。人知を越えた早業の世界にあって、己の直感と幸運とを頼りに回避していくが、しかし、巧みさに大きく勝るアルファ・ハウルに次第に追い詰められていく。
『このままじゃ……!』
 体が元のままであれば呼吸すら忘れていたであろう、絶体絶命の状況。
 しかし。
「背面――背中から腰に掛けてですわ!」
 雪風の声が鋭く飛ぶ。
 雪風は己の頭に手をやって、わしゃわしゃとかきむしっていた。髪が乱れるので好んでいなかったが、事態が事態だけに「背に腹は代えられない」と【此の世に不可思議など有り得ない】によって分析力を上げていた。
 その分析力が導き出した答えは『尻尾』だ。動物の尾はただの飾りではなく、平衡器や探知機の役目をする。だからだろう、戦闘ロボットと合体する前の鎧姿でも露出していたのが見えていた。合体した後も、デリケートなその部位の周囲は結合が甘くなっている可能性が高い。
 ――と、そこまで詳細に根拠を説明している暇などなかったが。
『わかった!』
 仲間を信用したフィロメーラはただの一瞬の迷いもなく、その言葉に従った。
「何、を……!」
 ロボットの胸部から焦りの声が上がる。同時、フィロメーラに対する電子的攻撃が一層の激しさを増した。
 針の雨の中を駆けるような絶望的な感覚が、フィロメーラの精神を冷却する。だが同時に、フィロメーラは何となく『広くなって回避しやすくなった』とも感じた。
 つまり、電子的結合の甘いところに至っているということ。直感的に、フィロメーラはそれと知った。
『――喰らえっ!』
 ここぞと見たフィロメーラが、全霊の気合いを込めた衝撃波を放つ。
 不可視の電磁波から生み出された不可視の爆風。それは外からは、戦闘ロボの背中一面が内部から大爆発を起こしたように見えた。
「っ!?」
 かなりの重量を持つはずの戦闘ロボが、大きくつんのめって前のめりに倒れる。同時、先刻までその全身から鳴っていた駆動音が止まる。
 通常であれば、コクピットのアルファ・ハウルも即死して然るべき会心の爆発だった。が、神鋼の鎧で守られていた彼女は、せいぜい尻尾を焦がした程度で、さほどのダメージもない。
「くそ、味な真似を……!」
 動きを止めてただの足枷と化したロボットをうち捨て、アルファ・ハウルが飛び出てくる。
「まだこっちのターンは終わらないわよー」
 出鼻を狙って、鈴音が再び三色の奔流を放った。
 だがアルファ・ハウル焦る様子もなく、軽く腕を掲げるようにして防御姿勢を取る。神鋼の籠手に覆われた腕は、鈴音の魔力光線をあっさりと受け止め、毛筋ほどの揺るぎもない。
「侮ったか? 鋼の神より賜った鎧だ。我が【ロス・ロボス】よりも防御力は遙かに上だ」
「知ってるわよ、そんなこと」
 あっさりと鈴音は言った。
「でも、いくらあらゆる攻撃に対する耐性があるといっても、隙間からの水の侵入まで阻めるかしらー?」
「……何!?」
 サイバーグラスの奥の目が見開かれる。
 単純な魔力の奔流によるプレッシャーは、いわばブラフ。アルファ・ハウルがそれに気を取られているうちに、鈴音の水と風の魔力よって操られた海水は鎧の隙間から入り込み――さらに炎の魔力によって水蒸気に変えられ、鎧の内側にて超高温と暴圧とが生み出された。
「――ッ――!?」
 強固無比な鎧は翻って熱と圧とを一切外に逃がすことなく、アルファ・ハウルの肉体をこれ以上ないほどに痛めつける。
 圧殺された内臓が限界まで血と酸素を吐き出す――が、しかし最後の意識の一欠片でもって、アルファ・ハウルは神鋼の鎧をパージした。
「っ、ぁ――ァ――ッ!」
 恐るべきしぶとさ。だが、彼女が反撃の一手を猟兵たちに打つより先に。
「ああ、これでやっと刃が通りますわね」
「!?」
 名にし負う風のごとく、瞬時にしてアルファ・ハウルの眼前に寄った雪風が、抜き打ちに刀を閃かせる。
 逆袈裟一閃。
 一片の呼気さえ残されていなかったアルファ・ハウルは微かな悲鳴もなく体を両断され、やがて藻屑のごとくとなって消滅した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『鋼神ウルカヌス』

POW   :    超鋼神装
無敵の【金色に輝く『神の鎧』】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD   :    鋼と炎の神
自身の身体部位ひとつを【自在に液体化も可能な超高熱の金属】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ   :    原初の神炎
自身からレベルm半径内の無機物を【使用者以外の全てを焼き尽くす原初の炎】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

●原初の鋼と炎の神
 威圧感が、戦場に顕れる。
 しっかりと気を持っていなければ、何をされたわけでもないうちから膝を折ってしまいたくなるような、そんな圧倒的な威圧感が。
「いくらここが聖域でないとはいえ……我が神鋼の鎧を纏った狼を破るか」
 怒りや失望というよりは、感心といった色合いの強い声でもって、威圧感の主――鋼神ウルカヌスは言った。
「いや、さもあろうと言うべきか。あの大戦で勝ちを拾うような貴様らであれば、この程度のことはこなしてしまうのが道理だろうな。ふん、何たる忌々しさか」
 言いつつフウーッと吐く吐息には、海中にあってなお爛々と輝く炎が混じっている。
 そして巨岩のごとき拳を握りしめながら、ウルカヌスは続けた。
「しかし、これ以上の邪魔は許さぬ。死ぬが良い」
鈴桜・雪風
鋼と炎のイクサガミ
畏れ敬い、畏み申し上げましょう
『鎧を想造したのは間違いですよ』と(悠然と髪をかきあげながら)

御身が鍛えたその鋼
確かにわたくし如きの刃など通さぬでしょう
隙間さえなければ、ですが

鎧という形をとった以上、その形に縛られます
人の形を人の姿のまま動かすための可動域がそのまま御身の隙となる
神鋼を打てるなら、いっそその箱に閉じこもり辺りを焦土へ変えれ続ければ打つ手も無くなりましたのに

…と、言葉で揺さぶりをかけて彼のカミが先制発動するユウベルコヲドへの対策とします
これで一抹の疑念でも持てば鎧は揺らぎます

反撃に転じる時狙うのは、言葉通り鎧の隙間
関節も鎖帷子で固めているなら
狙うは最大の開口部―顔



●破顔一衝
 鋼神ウルカヌス。
 その五体は黒を基調とした超鋼鉄の鎧に包まれている。広い面は分厚いプレートを重ねており、関節は竜鱗を思わせる帷子が覆う。さながら人型を取った城塞のごとき姿であった。
 ただ真に恐るべきは、彼にはまだ『上』があるということ。
「私は貴様らを侮らぬ」
 ウルカヌスの身を包む黒い鎧が輝きを増す。それは元よりの黒光りではなく、黄金色の輝き。神域に至った威圧感を放つ、【超鋼神装】の御業であった。
「……鋼と炎のイクサガミ」
 金色の威容を前にした鈴桜・雪風(回遊幻灯・f25900)が唇を震わせた。
 畏怖は覚える。
 しかし、恐怖はない。
 猟兵たる彼女にとって、由来が何者であれオブリビオンは斬るべき敵に違いない。無類の強敵ウルカヌスが標的であることも散々念押しされたことであって、覚悟はとうにできている。
 そして、取られた先手は鎧の強化に過ぎない。
 厄介ではあれ、致命の一撃を喰らうわけでないという僥倖、活かさずして何とせん。
「畏み申し上げましょう。『鎧を想造したのは間違いですよ』と」
 悠然と髪をかき上げながら、雪風は言い放った。
 そんな彼女を見やりつつ、ウルカヌスは片目を微かに広げる。
「無駄だ。詭弁を弄して我が鎧を綻ばせるつもりだろうが――」
「詭弁ではありません。事実です」
 髪が乱れるのもいとわず、雪風はわしゃわしゃと指を蠢かせる。
「御身が鍛えたその鋼、確かにわたくし如きの刃など通さぬでしょう。ならば、箱でも作って閉じこもり、炎を吐き続ければよろしかったのに、わざわざ人の形、鎧の形におなりになって、隙をお作りにならなくても」
 くくっ、と喉を鳴らす。慇懃に見せて、明らかに挑発を含んでいる。
「この私に――我が鎧に隙がある、と? 戯れ言を」
 そう言って、ウルカヌスは一笑に付す。
 だが、ほんの一抹。
 あってはならぬ動揺が、彼の胸中によぎってしまった。
 猟兵たちには実績がある。先の大戦でヒーローズアースを守り切った事実。そしてまさに今、神鋼の鎧を与えられたオブリビオンを撃破して彼の前にたどり着いている事実。
 そんな揺らぎを、雪風は見逃さなかった。頭にあった手を柄に伸ばして半瞬、抜刀に半瞬、手首を返すには半瞬と掛からず、神速の刺突はさらに速い。疾い!
「ッ!」
 兜の開口部、顔面に伸びた刺突に対し、ウルカヌスは退いた。
 その動きもまた速い。ゆえに雪風の刺突は、切っ先が微かにウルカヌスの鼻の頭を裂くに留まった。
 だが。だが。
 無敵であるはずの神の鎧に守られ、あらゆる攻撃に対して退く理由など持たぬはずの彼が、退いたのだ。それは紛れもなく『疑念』の顕現だった。
 彼の鎧の『無敵』を自ら否定させる致命的な一閃。雪風が放ったのは、それだ。
「……まずは一太刀、届かせましたわ」
 一太刀にてウルカヌスの神威を突き破った雪風は、艶然とほほえんだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

火土金水・明
「相手は『ジェネシス・エイト』の最後の一人、こちらも本気を出して戦わないと危ないですね。」
相手の先制攻撃に対しては、【見切り】【野生の勘】【第六感】の技能を駆使して回避を試みます。
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【高速詠唱】し【破魔】を付け【フェイント】を絡めた【全力魔法】の【サンダーボルト】を【範囲攻撃】にして、『鋼神ウルカヌス』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】【火炎耐性】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでも、ダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。



●一矢の雷
「炭すら残さず消してくれる!」
 ウルカヌスの怒号が大気を――いや、正しくは大海を、と称するべきか――震わせた。
 同時に、ウルカヌスの周囲一帯の海水が、存在を【原初の炎】に書き換えられる。神域に至らぬ者全てを焼き払い、焦がし尽くす、無慈悲なる灼熱の煉獄へと。
 顕現した炎の海は、火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)を一瞬にして呑み込んだ。
「ぐっ……!?」
 明は砕けんばかりに奥歯をかみしめた。
 敵はジェネシス・エイトの一角。侮る気持ちなどあったわけもない。それでも、己の目で見極めれば、勘を働かせれば、いかなる炎を浴びようと回避する隙を見出すことはできるだろうと踏んでいた。
 だが結果だけを見れば、周囲一帯が原初の炎の種になる無機物――海水に満たされた戦場においては、それは甘い見通しだったといわざるを得ない。視界一杯を埋め尽くすかのような圧倒的物量の炎には、一分の逃げ場もなかった。
 ゆえに、明は炎に包まれた。
 だが。
 それでも歴戦のマジックユーザーたる明には、高水準の対魔防御力があった。火炎系に対しても、神域のそれには及ばないにせよ、かなりの耐性を誇る。
 ゆえに、外は炎、内は沸騰する血流に心身を蹂躙されてなお、ギリギリのところで命を保てていた。
 とはいえ意識の大半は持って行かれているし、視界も歪曲して使い物にならない。
(でも、少しでもあがいて、次の方につなぐ……!)
 全霊の魔力を総動員させる。
 歪む視界でウルカヌスを確と捉えることはできない。それでも構わぬとばかりの、広範囲への術式展開。
「受けよ……天からの贈り物!」
 絞り出すような明の絶叫と同時、【サンダーボルト】の白光が輝いた。
 それは、広さでいえばウルカヌスの生み出した炎の海にも比肩しうる、雷の豪雨であった。炎と雷とがぶつかり合い、熱と光が乱れて絡み合って拮抗する。
 ただし、それは一瞬。
 なぜなら、燃え盛り続ける炎に対して雷の輝きはただの一瞬だから。ただの一瞬の拮抗が過ぎれば、再び炎が押し戻す――そのはずだった。
(まだ――っ!)
 しかし、明は同規模の万雷を間髪も入れずに二度、放っていたのだ。
「――何!?」
 想像を超えて訪れた『二瞬目』に、ウルカヌスが瞠目する。
 その二瞬目は微かながら拮抗を破って、万のうち一本の雷をウルカヌスへと至らせた。
「ぐぉっ!?」
 無敵の神性を失っていた鎧はその一本を防ぎ切ることあたわず、ウルカヌスへ確かなダメージを与えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

マギア・オトドリ
かつての神よ。討たせて、頂きます。

相手は鋼と炎を司る神、ならば権能もそれに準ずるもの。故、放たれるであろう炎に対しての備えを。
懐のドロップスを噛み砕き自身に氷結の効果を付与、神が手繰る炎を受けてもある程度行動を継続できるようにし、焼け落ちた四肢を「地獄の炎」で補完。
詠唱を継続しエーテルを拡散、周囲の地形を相手諸共闇に閉ざします。闇の中でも神の炎は煌々と光り輝いているのでしょう。だからこそ夜目は優れてない私でも相手の姿は分かります。
炎の中から脱出し、位置を分からせないよう鋼鉄結晶と翠顎毒牙の投擲。それにより闇に紛れ、足音を消す歩法で急接近、術式発動による怪力を活かした捨て身の拳撃を叩き込みます。



●決死拳
 ウルカヌスの繰り出す【原初の炎】は、その名の通り『炎』の何たるかという点について、最も顕著な性質を持っているといえる。その性質とは、いわば『熱いもの』『焼くもの』ということである。
 そんな炎の中で命を保っていられるのは、炎の生み出し手たるウルカヌスのみ。他の存在は例外なく焼き払われる。
 そのはずだったが。
「なぜ……貴様は生きている!?」
 炎のただ中にあるマギア・オトドリ(MAG:1A・f22002)を見据え、ウルカヌスはうめく。
 無論、マギアは悠々とそれを実現させているわけではない。氷結のルーン・ドロップを口に含めるだけ含んで噛み砕き、それでもなお炎が絶え間なく五体を蝕み続けるために、蝕まれた端からブレイズキャリバー由来の地獄の炎で補っていくという、力業でもって対抗しているのだ。
「……暗月、よ……我が声に、応え……」
 吐息も蒸発するような炎熱の猛威の中、マギアは意識と戦意を途切れさせずに詠唱する。
「仇なすモノを、喰らえ……!」
 詠唱が完成すると同時、マギアの体が闇色に包まれる。そして間を置かずして、ちり紙に墨滴を垂らしたように、マギアを中心に闇が広がっていった。
「!?」
 己も闇に包まれたウルカヌスは、一瞬、己の生んだ炎がかき消されたのかと錯覚した。
 実際には闇によって炎の輝きが目に見えなくなっただけで、炎それ自体が燃焼をやめたわけではなかった。そのことはすぐに『手応え』から知れた――が、広がった闇の中、マギアがどこにいるのかがわからなくなる。
 普段ならば、だからどうだとも気に掛ける必要もない。どれほどの目くらましをしようが無意味だからだ。場のどこに潜もうが原初の炎に包まれている以上、敵は必滅あるのみ。
 しかし、彼女は炎を凌いでいた。
(どこにいる――何を仕掛ける!?)
 ウルカヌスがマギアを見失っている一方、マギアはしかし、ウルカヌスの位置を正確に把握していた。超絶の強敵、かつての神たるオブリビオンのウルカヌス、その圧倒的存在感は、かえってマギアの生んだ闇程度では隠れきれるものではなかった。
 炎と闇の地獄の中、マギアは無音でウルカヌスに迫る。それほど精密に動かせるのが不思議なくらいに、肉体は痛めつけられている――が、それはむしろ【新月の憤怒(ツキハタケリクルウ)】の効果を限界まで高めていた。
(かつての神よ。討たせて、頂きます)
 ダメージの分だけ研ぎ澄まされた、マギア史上指折りの凶猛さを宿した拳が奔る。
 それと認識することさえ許されず、ウルカヌスは顔面にその拳を喰らって仰け反り、後方に倒れた。
「流石の生命力……一口で、ずいぶんごちそうになりました」
 ぶち当てた拳から多量の生命力を吸収し、急速に体を治癒させながら、マギアはつぶやいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィロメーラ・アステール
「うむむ、さすがのプレッシャー……!」
でも負けるわけにはいかない!
戦争の残り火として消えてもらうぞ!

原初の炎は敵が操作するものということは、意識的に動かす必要があるはずだ!
つまり、かく乱&回避を極めればいい!
【オーラ防御】バリアの輝きを纏い、無数の【残像】が【迷彩】効果を発揮する変則【ダンス】ステップで【空中戦】を行い、炎をかわす事に注力!

いずれ敵は「炎を広げて逃げ場をなくす」という手段に気付くんじゃないかな?

これまでの回避はその対応を誘うための【演技】だ!
【全力魔法】でバリアの【火炎耐性】を高め、【気合い】の空中【ダッシュ】で炎を突き破るぞ!
そして【カウンター】の【スーパー流れ星キック】だ!


緋奈森・鈴音
鎧以外は無敵なのかしらー?
(赤い粉を取り出し周囲の色が変わるくらい撒く)
状態異常や防御を優先した風と水の魔力で水流を操って相手を包み込むように攻撃ー。

鎧のお陰で直接的なダメージは届かないだろーけど細かい泡で視界を防がれたり、水が隙間から侵入したり、息苦しさを感じたり……既に鎧を超えて何かされているんじゃないかって思わない?
見えない所から何かされるかも?
ほら、鎧の隙間から入った水が触れた場所、何か異常を感じない?

本当に最後までその鎧を信じられるかしら?

鎧を弱体化させたら一斉攻撃!

あっ、こぼしちゃってた赤いのはおねーさん愛用の唐辛子ー。
(※絶望的な辛党御用達の慣れてない人はまず耐えきれないレベル)



●されど流星は黄金の如く
 猟兵たちの粘りの前に、圧倒的実力を持つはずのウルカヌスは劣勢に立たされていた。
 そんな状況にあってウルカヌスが頼みにしたのは、やはり鋼神の名にし負う、鋼の鎧。
「この上は、やらせはせぬ……!」
 ウルカヌスの鎧が、再び黄金色に輝き始める。【超鋼神装】によって神性を宿された鋼に、無敵の防御力がもたらされた。
 堅固不抜の鎧の前には、どれほど猟兵が攻勢を仕掛けてきたとしても無意味。一旦、これで悠々と凌いでから、じっくりと反撃すれば良い。
 そんなことを考えつつ――ふと、周囲を見回す。
 そして視界の悪さに気付く。奇妙な細かい気泡と由来不明の赤い色が、目に映る範囲一杯に満ちている。
「本当に最後までその鎧を信じられるかしら?」
 赤の向こうから、くすくすという笑い声が届く。
「鎧を超えて何かされているんじゃないかって思わない? ほら、鎧の隙間から入った水が触れた場所、何か異常を感じない?」
「――……」
 緋奈森・鈴音(妖狐の化身忍者・f03767)の声に、ウルカヌスは顔をしかめた。
 赤い物体の正体はよくわからないが、少なくともそれを操っているのが鈴音の【トリニティ・エンハンス】の魔力であるというのは、感じ取ることができる。また、伝声についても魔力を影響させているらしく、響き方から鈴音の確たる位置がつかめない。
 ウルカヌスは、フンと鼻を鳴らした。
「隙間、隙間と一つ覚えなことを。要は、他に思い付く策もないということに過ぎぬのだろうが。いい加減、飽きが来るわ」
「んー、一つ覚えっていうか、実際に確実に勝てる方法だから採用しているってだけかしらー?」
 鈴音は言う。
「だって、先年のヒーローズアースでの大戦から、たった今し方の戦いまで……その鎧、同じ方法で何度破られたか数え切れないわよ」
「――!」
 ウルカヌスの表情が、憤怒のそれになる。沸騰した激情が空間ろとも周囲を歪める。鈴音のいたずらによる赤――絶望的辛党が愛用する特別製唐辛子――の海が、炎の赤に取って変わられる。
「黙れッ!!」
 ウルカヌスの【原初の炎】が、彼を中心に全方位へと放たれた。燃え広がる、などという表現では生やさしく、それはまさしく爆発であった。
「あらー?」
 あわてて鈴音は、爆炎の壁から逃れるように後退する。確たる位置こそ割れていないといっても、無差別広範囲の攻撃の前ではその優位性の意味はなくなる。
 だが。
「おかげさん!」
 そんな鈴音と入れ替わるように、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)が炎の壁目がけて突撃していった。
「は!?」
 鈴音は驚愕した。フィロメーラの突撃は一見、自殺行為である。
 しかし、実は彼女は、ウルカヌスが原初の炎を広げて逃げ場を奪うという手段に出ることを、あらかじめ想定していた。気持ち、そのタイミングは彼女が想定したよりも早くはあったものの、対策を取る上ではさしたる問題はない。
 つまり、やろうと思っていたことをやれば良いだけなのだ。
 つまり、耐火炎の全力バリアを張った上で炎を突き破る、という、気合いのゴリ押し。
「うむむ、さすがのプレッシャー……でも!」
 神の炎である。突破が容易であろうはずはない。
 それでも、これと標的を定めた炎でないため、比較的マシには違いなかった。
 流星の輝きが黄金色の尾を引きつつ、苛烈極まる炎の中を貫き、進む。炎に押されながらの進行速度は決してスピーディとはいえなかったが、それでも確実に進む。
 そんなフィロメーラの気配を、ウルカヌスは捉えていた。
(どうせ、一つ覚え――)
 胸中で嘲り混じりにつぶやき、黄金色に輝く手甲に包まれた両腕を顔面の前で交差させる。思い出されるのは、顔に付けられた傷。
 凌いでひねり潰すのに、何の造作があろうか、とウルカヌスは思う。
 だが。
「スーパー! 流れ星!! キーーーック!!!」
 フィロメーラの【スーパー流れ星キック(スーパースター・ドロップキック)】は黄金の烈光となり、ウルカヌスの胸の真ん中、最も広く最も分厚い装甲がしつらえられている部位に炸裂した。
「な!?」
 刹那、ウルカヌスは驚愕した。なぜ、最も無駄なところを攻撃するのか?
 次の刹那、ウルカヌスはさらに驚愕した。なぜ――その一撃で、鎧に亀裂が入ったのか?
 なぜ、その一撃が鎧を貫き、ウルカヌスの肉体をも貫かんとするのか?
「お、お、お――!?」
 断末魔の中、果たして気付いただろうか。
 鈴音に散々揺さぶられ、鎧を破られた記憶を呼び起こされた時点で、とっくに彼の鎧の無敵性は奪われていたという事実に。たとえ神の鎧であろうと、疑念によって弱体化したそれであれば十二分に撃ち破れるだけの力を、かの流星は持っていたのだという事実に。
「消えてもらうぞ、戦争の残り火!」
 金色に輝く流星はウルカヌスの体を貫き、背中から抜けて出る。
 制御を失った炎の神威は鋼神の体内を暴れ回り、数瞬の後に極大の爆熱と化して紅蓮の大輪を咲かせた。
「おわぁっ!?」
 爆風に曝された猟兵らはよろめいたり吹っ飛んだりしたものの、ダメージらしいダメージはない。
 そして――ウルカヌスは跡形もない。

 かくて、この地におけるオブリビオンの暗躍は、完膚なきまでに叩き潰されたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年03月22日


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#ヒーローズアース
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#【Q】
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#鋼神ウルカヌス


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠高砂・オリフィスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト