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踊れや踊れ、幻櫻パレヱド

#サクラミラージュ #逢魔が辻

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#サクラミラージュ
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#逢魔が辻


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●魔境にて
 陽が、沈んでいく。
 荒れ果てた街を照らしていた唯一の光が、静かに消え失せる。
 悲嘆に暮れる者は?暗闇の到来に怯える者は?
 今宵も生き延びねばならない。
 生きていればいつか、きっと……そんな決意を改める者は?
 嗚呼……其れなら、みぃんな、此処に居るよ?

 ――ケタケタ、カタカタ。
 ――フフッ!ウフフ、アハハハハッ!

 さぁさ、良い子も悪い子も寄っておいで。
 楽しいパレヱドの時間、素敵なパレヱドは今宵も開演!
 枝垂れ桜の幕が上がれば勇猛な剣舞、華やかな舞踊が迎えてくれる。
 絡繰と少女達を彩る様に……桜の花弁がはらり、ひらり。

 行きはよいよい。
 帰りは怖い。
 ……否、絶対にカエレナイ。
 カエレナイ、カエラナイ、カエサナイ、ユルサナイ。

 紅を吸い上げて、彼岸の桜は現世に留まり続けていた。
 鮮やかなものもあれば、乾き切って赤黒く染まったものまで。
 紅を生み出す住人達の屍は……皆、不思議と安堵した様に微笑んでいた。
 ――嗚呼、今宵も彼岸花が咲き誇る。

●境界侵食
 逢魔が辻、とは。
 帝都桜學府でも対処できずに放棄してしまった、言うなれば影朧達の巣窟。
 今回、猟兵達に向かって欲しい場所は其処だと……枕・幽汰(転寝万歳・f15128)は普段通り、のんびりとした様子で告げる。
「黄昏時……夕方から夜に、変わっていく間、かな……」
 其の時点で、とある廃墟が『逢魔が辻』と変貌するらしい。
 幻朧桜とは全く異なる、影朧の桜が降らす花雨の中。
 パレヱドと称して、他の影朧達が思い思いに舞い踊っている。

 まずは無機質な絡繰兵が。
 次に夢を忘れた、元は桜の精だった者達が。
 不協和音を奏でながら、訪れた者達の心身を蝕んでいく。
 誰かが暮らしていたであろう此の場所も、今は荒んだ廃墟と化してしまった。

 ……演者達が全て一掃された後。
 逢魔が辻という舞台そのもの、支配人たるオブリビオンはどうするのか。
 其処から先の光景は、枕にはぼんやりとしか見えなかったらしい。
 だだ……何処かが欠落、変化した酷く歪な『何か』が次々と現れる。
 其の正体は一切不明。
 無理に捻じ曲げられた様な雰囲気だけは感じたと、彼は続けた。

「にぎやか、だけど。なんだか、悲しい……にぎやかさ、だよね……」
 止まる術を知らない絡繰兵達に、終息を。
 夢を忘れてしまった哀しき華達に、安息を。
 そして、どうか……愛憎悲劇しか生み出さない、此の舞台の幕を下ろして欲しい。
 他ならぬ、君達自身の手で。

「えっと……どんな『過去』が現れても、呑まれないで、ね」
 そんな一言を、真剣な眼差しで告げた後。
 普段通り、のんびりとした様子で、枕は動物や精霊と共に猟兵達を見送った。


ろここ。
●御挨拶
 皆様、お世話になっております。
 もしくは初めまして、駆け出しマスターの『ろここ。』です。

 三十二本目のシナリオは、連戦シナリオとなります。
 純戦だけではなく、心情寄りな部分が多くなるかと……。
 宜しければ下記の補足を御確認の上、参加を御検討頂ければ幸いです。

●第一章:剣舞(集団戦)
 偽りの幻朧桜?
 されど影朧ならば関係ない事。
 もっと、もっと、力強く。一心不乱に刀を振るう絡繰の武芸者。

 通常の個体よりも、攻撃力が上昇した『朧侍』との戦闘です。
 プレイングについては導入執筆後、別途期間を設けての受付とさせて頂きますので御了承下さい。

●第二章:絢舞(集団戦)
 全身を震わせて、傷を抉る様な聲を。
 自らの絶唱に合わせて、彼女達は踊り狂う。
 詳細は導入にて……。

●第三章:幻舞(ボス戦)
 元凶たるオブリビオンとの戦闘。
 演者が居なくなってしまったならば、新しく増やせばいい。
 ――さて、其の正体とは?

 本戦闘には特殊ルールが発生します。
 他、詳細については導入にて追記致します。

 以上となります。
 長々と失礼致しました。
 グループでの参加の際はグループ名を、お相手がいる際にはお名前とIDを先頭に記載をお願い致します。
 迷子防止の為、恐れ入りますが御協力をお願い申し上げます。

 それでは、皆様のプレイングを氷月共々お待ちしております。
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第1章 集団戦 『朧侍』

POW   :    桜花行進
【霊力を流し込んだ刀を構えながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【連携を行っている同型機】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    桜華狂騒
【影朧に取り憑かれ、霊力機関が暴走した状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    桜香前線
【幻朧桜を介した霊力通信】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【通信を行った同型機との一糸乱れぬ連携】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【お知らせ】
 プレイング受付開始は『3月12日(木)8時31分(予定)』からとなります。
**********

●狂騒、狂いゆくのは
 猟兵達が到着した時、既に陽は沈みつつあった。
 其れはただの廃墟から、ぐにゃりと歪んで……姿を見せる。
 ようこそ、と。まるで新たな観客達を迎える様に。

 ――ひらり、桜の花弁が揺れる。
 ――はらり、落ちる先は真っ赤な水面。

 遠目でも見える、巨大な桜の木。
 猟兵達は其れを一目見ただけで、直ぐに理解するだろう。
 あの桜こそ、此の『逢魔が辻』を作り出した元凶だと。
 そして、其の桜も己の領域に入り込んだ者達の存在を察知した様だ。

 カタ、カタ。
 ザザッ、ザッ……!
 猟兵達の進路を妨げる様に、朧侍達は激しく立ち回る。
 静と動を使い分け、一糸乱れぬ舞は間近で見ると力強さを感じるが……同時に、危うさを含んでいる様に見えた者も居ただろう。
 彼らの動きと動きの間に、悲鳴にも似た軋む音を耳にした者も居ただろうか。
 ……ああ、其れも其の筈だ。

『――ッ!』
 此の舞台に立つ朧侍達は全て、既に暴走状態に陥っている。
 影朧に取り憑かれているから?
 否、其れだけではない。
 ……恐らく、向こうに見える桜から流れる霊力の過剰供給故。
 朧侍達は一斉に舞を止めて、手にした刀を猟兵達へと向けていた。

 今の朧侍達は、速く動くものを優先して屠る――災禍にして凶化兵器。
 刀の一振りだけで地を裂き、簡単に肉を深く抉る事だろう。
 彼ら以外に何が待ち構えているのかは、まだ分からない。
 其れでも、君達が先へ進む事を望むならば。

 今も尚、内側が壊れつつある彼らに……どうか、眠りを。

【御連絡】
 プレイング受付期間:
 『3月12日(木)8時31分 ~ 3月14日(土)23時59分まで(予定)』となります。

 また、頂戴したプレイングの数次第では
 恐れ入りますが、再送をお願いする可能性もあります。
 其の際は、グリモア猟兵より手紙にて御連絡させて頂きます。

 皆様のプレイングを、心よりお待ち申し上げております。
逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

おやおやおや、なんとも物騒な桜の木ですねぇ
この黄昏時……宵の頃に不穏なものです

ねぇ、ザッフィーロ
害成す存在であるならば、正しきものへと戻すのも猟兵の仕事でありましょう
―――彼らに星の導きがありますよう

立ち位置は後衛にて
ザッフィーロの援護を「衝撃波」による「吹き飛ばし」で敵の包囲を打ち破りつつ敵らをひとまとめにする策を行いましょう
同時に「高速詠唱」にて「範囲攻撃」「属性攻撃」「一斉発射」を付加した
【天撃アストロフィジックス】にて敵らの密集した位置に撃ち込みます

僕の星は過たず敵のみを撃ち抜くだろうと
この僕が、かれを傷つけるはずないでしょう


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

夜の帳が降りる美しい時間に…本当に無粋な物だ
ああ。勿論だ
…お前の名がつく時を乱す輩は正しくこの世から立ち去って貰わねば、な

常通り俺は宵を護る様前に出、行動を
宵の衝撃波にて敵が吹き飛び開いた道へ踏み込み『怪力』を乗せたメイスにてさらに敵を『なぎ払』って行こう
…仕留められずとも、味方同士重なり合えば簡単には起き上がれまい?
背後にて詠唱を行う宵の様子を見れば、意図を汲み【鍛錬の賜物】にて敵を重ねるよう叩きつけ集めんと試みようか
詠唱が終れば満足げに桜の花弁と流星が煌く空を眺めよう
…逃げずとも俺を打ち抜く訳がないからな。美しい星を眺めながら至近の敵が消滅するのを見届けられたらとそう思う



●櫻演武 開演を告げる天撃
 ――彼らに星の導きがありますよう。
 逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)が『宵帝の杖』を振るえば、白銀の軌跡を残しながら衝撃波が放たれる。
 柔らかな動作と裏腹に、凄まじい速度で進んで行く其れは――直撃。
 吹き飛ばされた朧侍は数多く。
 だが、其の場に踏み止まる者も少なからず居ただろう。
 ……其れでも、彼は追撃の為の詠唱を開始していた。

「(ザッフィーロ、任せましたよ)」
「退いてもらうぞ」
 ばきっ、と音が鳴る。
 体勢を立て直した後、朧侍達は逢坂へと向かおうとするが……出来ない。
 ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)の二メートル近い体躯に見合う、大きな手。其れに掴まれたかと思えば、吹き飛ばされた者達と同じ場所まで投げ飛ばされたからだ。
 ――夜の帳が降りる美しい時間に、本当に無粋な物だ。
 味方同士重なり合えば、簡単に起き上がる事は出来ないだろうと。
 彼は手近な敵を掴んでは投げ飛ばし、彼は敵を重ねては山を作っていた。

『ッ!』
『――ッ、――ッ!』
「……やはり、一筋縄ではいかぬか」
 朧侍達も単体では打破不可能と判断したのだろう。
 同型機との連携を以って、まずは前衛のザッフィーロから仕留めようと。

 まずは一太刀。
 ――『stella della sera』を用いて、思い切り弾き飛ばす。
 続けて別の方向から、鋭い斬撃が放たれるが。
 ――刃が身体を断つよりも速く、ザッフィーロが其の個体を投げ飛ばす。

 ならば、三度目の正直にと。
 深く、深く。刺突を狙う、力強い刃が彼に迫る……!
 片手で得物を振るい、もう片方の手は投擲直後で伸び切っている。
 肉体の損傷を、最小限に留める事は出来るだろうか。
 彼は思案するも、其の直後……不意に微笑みを浮かべた。
 ――心配の必要が無くなった、故に。

「黄昏時に蔓延る、不穏なもの達よ」
 地を照らす太陽が沈み、宙に月が輝こうとする時。
 ……其れは、天を廻るもの。
 逢坂にとっての天狼星を守護する、眩き星雨。
 ザッフィーロが密集させた場所、そして――彼を狙う敵を等しく穿つ為に。
「――さあ、宵の口とまいりましょう?」
 数多の流星の矢が一斉に、朧侍達へと降り注ぐ!
 凶化による超攻撃力で撃ち落とすには、数が多く。
 一本一本の威力が強い為か。
 頑丈な筈の装甲もあっという間に損壊の上、破砕。
 一見、無差別攻撃にも見える雨は……不思議と特定の場所には降らなかった。
 其処に立つザッフィーロもまた、一歩も動く素振りを見せない。
「(僕の星は過たず、敵のみを撃ち抜く……彼を傷つけるはずないでしょう)」
「(逃げずとも、俺を打ち抜く訳がないからな)」
 宵の口、美しい流星が煌く空。
 逢坂は物騒な桜の木と称していたが……桜の花弁と共に舞う様子の、なんと美しい事だろう。きっと、彼の流星が美しいからか。
 ……彼らの周囲に存在していた、朧侍達は機能停止と同時に消えて行く。
 最後の瞬間まで、ザッフィーロは其の様子を見届けていた。

「ねぇ、ザッフィーロ」
「む……宵、どうした?」
「害成す存在であるならば、正しきものへと戻すのも猟兵の仕事でありましょう」
 幻櫻パレヱドは、此れだけで終わらない。
 遠くに見えるであろう桜の木や、演者とされた影朧が他にも居るのだろう。
 此の先も待ち受ける脅威に対して、決意を改めて。
 そんな逢坂の言葉を聞き、ザッフィーロは力強く頷いた。

「ああ、勿論だ」
 お前の名がつく時を乱す輩は、正しくこの世から立ち去って貰わねばな。
 ……パレヱドの深部へ、二人は同時に足を踏み出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木常野・都月
光の精霊様でも、桜の精霊様でも、あの桜の霊力を止められないのか。
俺は精霊術師なのに、何も出来ないのか。
胸の中が…凄く変だ。

敵の中の音は聞こえてる。狐だから。
でも、俺では助けられない。
何も出来ない。
ごめんなさい。

仕事だ。
速やかに倒したい。

UC【雷の怒り】を[範囲攻撃]で使用したい。

風の精霊様にお願いして、息がある敵に[属性攻撃]を使用、トドメをさしていきたい。

必要があれば、杖から、ダガーとエレメンタルダガーに持ち替えて、息の根を止めにいきたい。
[野生の勘、第六感]で敵の動きに注意したい。

敵の攻撃は[属性攻撃(2回攻撃)]の[カウンター]で対処したい。

念のため[オーラ防御]も展開しておきたい。



●櫻演武 浄雷
 精霊の石から現れては、似た様な動作をしては消えて行く。
 木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は精霊達の反応を一通り見てから、静かに目を伏せていた。
 ……自然を揺蕩う精霊達にも、手の施しようが無い状態なのだろう。

『――ッ』
 金属同士が擦れ合う音の中に混ざる、悲鳴の様な音。
 過剰な力に耐え切れず、機器が著しく摩耗しているのだろう。
 常人には聞き取れない音だろうが、狐である木常野には聞こえていて。
 だが……歪んだ霊力を一度受けた以上、正常な霊力を流しても無駄だ。
 真っ白なキャンバスに、真っ黒な絵の具を撒き散らした後……決して、元通りには出来ない様に。
 幻櫻パレヱドに使い潰されるか、猟兵達が終わりを齎すか。
 二つに一つ。どちらかしか、選べない。

「……俺は精霊術師なのに、何も出来ないのか」
 どうしようもない事実に対する、感情。
 其れを正確に理解する事は木常野には難しくて、でも……胸の中が、凄く変だ。
 悲しいとは違う。痛みではなく、もやもやが渦巻いている感覚。
 敢えて言葉にするならば――理不尽、不条理への憤り。
 精霊の石から跳び出す様に現れた、雷の精霊様が彼の背に突撃した。
 ……どうするんだ、どうしたいんだ。
 そんな問い掛けをぶつける様に。
「何も出来ない、から」
 自分の力では助けられない。
 助ける事が出来ないならば、せめて――終わらせるしかない。
 目を閉じて、覚悟を決めたならば。
 雷の精霊様が木常野の肩に乗り、己が加護を与えようと。
「――速やかに、倒したい」
 朧侍達の足音が、刀が木常野へ迫り来る。
 連携攻撃を繰り出すよりも、彼が指先で敵を指し示す方が早い。
 朧侍達がいざ、斬りかからんとした瞬間――轟音と共に、雷が落ちる!

「(ごめんなさい)」
 木常野を中心に、広い範囲へと放たれた落雷。
 ……其れは雷の精霊様が、彼の気持ちを汲んでの事か。
 風の精霊様の追撃を必要としない、一撃で敵を屠る威力を秘めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨野・雲珠
【鏑木邸一行・弐】

こほん。
本日は百鬼夜行パレード観覧ツアーに
ご参加いただきまして、誠にありがとうございます
ご当地ガイドの桜の精、雲珠と申します

拍手に謝辞を述べ、ぺこりと一礼
ただでさえ迷いやすい逢魔ヶ刻
迷ったらヨシュカくんの素敵な旗に集合です!

さてあちらに見えますのは
サクラミラージュ名物の…何でしょう…
影朧がとりついた…絡繰…?
一太刀でも受けたら根元からバッキリいきそうです
逃げ回りつつ桜の根で動きを止めます
今すぐ転生かなわぬというなら、
此度はその桜からの呪縛を解きましょう

目にも留まらぬ電光石火に、茜に染まった空を泳ぐ大魚
気づけば俺たちも演目の一部
きっとまたお会いしましょう、
今度はきっと次の世へ!


ヨシュカ・グナイゼナウ
【鏑木邸一行・弐】

百鬼夜行パレヱド!パレードは遊園地で見たこと有ります、あれはキラキラピカピカしていました
素敵なご挨拶に、よろしくお願いしますとパチパチ拍手で答えたら
迷子の時はこの旗に、ひらひら御旗を振りましょう

さぁさぁ、パレヱドが始まります!

最初に見えるは絡繰のお侍
雨野さまが根元からバッキリといかない様に
こちらへ【おびき寄せ】手のなる方へと【存在感】を
速く動く物を攻撃するのなら、駆ける【霹靂】旗もひらひらこちらへどうぞ

桜の根っこに雁字搦めに絡まって、頭上に大きな大きなお魚の影
ふふふ!夕時雨さまは大きくて強い大人のお魚。キラキラでこちらもパレヱドの様!

では、さようなら。左様なら。


夕時雨・沙羅羅
【鏑木邸一行・弐】

夕間暮れ、逢う魔が時
百鬼夜行は来る廓

慣れた刻に慣れぬ世界
頼りになるガイド、頼もしい
口上に拍手
でも僕も、最年長として引率、がんばる

数が多い
小さいと確かに埋もれそう
旗の目印、了解したが、
視界を拓くほうが早い

ウズさんが纏めて留めてくれたなら
おおきなさかなになって呑み込んでしまおう
空からひとまとめにぱくり、だ
ヨシュカさんは素早く敵を引きつけてくれるが、
かわいい旗が破かれぬよう
そちらも纏まっているならば、ざぶんと

僕は年長、最長、大人なので、
あなたたちの盾にもなろう
大人は子供を守るもの
そう聞いたから

張り切って游げば、パレエド最初の演目も終盤
一先ず海へと解いたならば
きっと救いはあるのだろう



●櫻演武 百鬼夜行パレヱド観覧ツアー
「こほん」
 咳払いを軽く一つ、改めて。
 桜の精の小さなガイドさん――雨野・雲珠(慚愧・f22865)が、くるりと反転。
 ヨシュカ・グナイゼナウ(明星・f10678)、夕時雨・沙羅羅(あめだまり・f21090)と向き合う形を取ってから。
「本日は百鬼夜行パレード観覧ツアーにご参加いただきまして、誠にありがとうございます」
 ――ご当地ガイドの桜の精、雲珠と申します。
 鏑木邸一行のみなさまのご案内、一生懸命頑張ります。
 みなさま、本日は宜しくお願い致します。
 ……生真面目な性格故か、雨野がガイドらしい挨拶を終えた後。
 ヨシュカは楽しげに微笑みながら、夕時雨は無表情ながらも彼に拍手を送っていた。
 ぱちぱち!ぱちぱち。
 二人からの拍手に謝辞を述べてから、雨野はぺこりと一礼を。

「百鬼夜行パレヱド!もしも迷子の時は、この旗に!」
 ヨシュカが取り出したるは、とある猟兵向け旅行会社の御旗。
 ――ひらり、ひらり。ぱったぱった!
 宇宙人の様なイラストが描かれた其れは、暗がりでも目立つ色合いで。
 夕間暮れ、逢う魔が時。
 此処は既に魔境と化しており、迷いやすい事だろう。
 逸れない様に気を付けつつ、万が一の時は彼が振る旗を目印にする事を二人は了承。
 だが……夕時雨はふと、懸念をぽつり。
 年長、最長、大人。大人は子供を守るもの、と聞いたから。
 そう在ろうとしていた彼だからこそ、自分達へと向かって来るパレヱドの先頭の動きに気付く事が出来たのかもしれない。
「数が多い。視界を拓くほうが早い」
「おや、あちらに見えますのは……サクラミラージュ名物の、何でしょう……?」
「パレードなら遊園地で見たこと有ります、あれは……」
 キラキラ、ピカピカ。そんな華やかさとは無縁の行進。
 金属が擦れ合う音、風を断たんとする音。
 そして、剣戟の音を周囲に響かせながら進んで行く。
 ……斬撃を受け止め切れなかった同型機がいても、知らぬ存ぜぬと言う様に。
 影朧が取り憑いた絡繰の動きを見て、雨野は背負っている箱宮の編み紐をぎゅっと握る。

「一太刀でも受けたら、根元からバッキリいきそうです」
「それは大変です!雨野さまが、根元からバッキリといかない様にしなければ!」
 ――さぁさぁ、パレヱドが始まります!
 凶化兵器と自分達による、狂乱のパレヱドのはじまり。はじまり。
 速く動くものを攻撃し続けるのならば、と。
 朧侍達へと駆けながら、ヨシュカは体内を巡る術式回路を起動する。

 ぱちぱち、ぱちぱち。
 御旗をひらひら、誘う様に。
 もっと、もっと速く。お侍さん、手の鳴る方へ。

 彼方此方へ気ままに駆け回る様は、まるで彼の隣人の様。
 朧侍達も即座に追い掛けては、時に囲もうと試みて。
 捉えたと同時、勢い良く斬りかかるが……ひょい、ひょいと躱されてしまっていた。
「動かないでください」
 刀を振り下ろした直後の敵を狙い、桜の根が伸び始める。
 ――何処から?雨野が背負う箱宮からだ。
 素早く動く桜の根を伝って、時に襲い掛かる太刀から逃れながら、彼は次々に敵の四肢を絡め取る。其のまま、一纏めにしてしまおうと。
 ……しかし、敵の連携は侮れないもの。
「ヨシュカくん!」
 彼らにとって最初の演目、其の終盤。
 朧侍達の凶刃は今も尚、ヨシュカを狙い続けていた。
 彼が高所から跳躍した直後、着地点には既に複数の敵が――。

「させない」
 ――大雨よ、唄よ。
 ヨシュカさんを、かわいい旗を、守ろう。
 ウズさんが纏めて留めてくれた敵を、呑み込んでしまおう。
 透き通る様な夕時雨の身体が、徐々に水と化していく。
 ほんの僅かに間を置いて現れたのは、とってもおおきなさかな。
 空から地面へと向かう其れはヨシュカを抜いて、一足早く朧侍達をぱくり!
 きっと、張り切って游ごうとしているのだろう。
 夕時雨が続けて向かうのは、雨野が纏めている敵の居場所。
 ……嗚呼、逃げようにも出来る筈も無く。
 彼の敵達も呆気なく、ざぶんと丸呑みにされてしまった。
「ヨシュカさん、大丈夫?」
「夕時雨さま、ありがとうございます!」
 自立機械人形による、目にも留まらぬ電光石火。
 縦横無尽に蠢いては絡繰の侍達を余さず絡め取る、桜の根。
 そして……茜に染まった空を泳ぐ、大きくて強いキラキラなおさかな。
 楽しみながら、気付いた時には彼らも演目の一部になっていた様だ。
 さて。転生が叶わずとも、一先ず海へと解放したのならば――。

「きっと救いはあるのだろう」
「では、さようなら。左様なら」
「今度はきっと、次の世へ!」
 ――きっとまたお会いしましょう!
 歪んだ桜の呪縛から解き放たれて、朧侍達は消えて行く。
 次の演目はどんな内容だろう、今度はどんな舞が見られるのだろう。
 ガイドを先頭に、三人は先へ進もうとしていた。

 ――はてさて、旧鏑木邸の大人組の様子はどうだろうか?

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

笹鳴・硝子
【鏑木邸一行・壱】

知らない街にガイド付きでお出掛けとあれば、知りたいことは沢山あります
美味しい食事ができるお店
寥さんのお好みの女給さんがいるカフェー
なつこい猫のいる小路
教えてガイドの人

はぐれたら?お二人の名前を呼び続けるとしましょうか

それでは美味しい餃子とビールの為に
はい?賭け?
それはつまりご褒美がある、ということですね?
「よろしい。――来たれ【磐具公】」
ロカジさんが雷を使うなら、私は焔と斬撃を使いましょうね
違う手段の方が数えやすいですからね
(技能【見切り・オーラ防御・鎧砕き・生命力吸収・なぎ払い・2回攻撃・武器落とし・属性攻撃】)
頭や関節を狙っていけば、人の形に似せた絡繰りならば効くでしょう


鏑木・寥
【鏑木邸一行・壱】

百鬼夜行パレード観覧ツアー、現地ガイド兼家主

とは言え特に旗もない、終わったら麦酒と餃子はある
こっちの組は皆いい大人だろ?
逸れたりはしないよなァ
はぐれたら?
……じゃあ、あの髪に集合で

はじめてのパレードはしかし、思ったより物騒だ
俺好みの女給のいる店なんて聞いてどうすんだよ
ほれ、右手左手、お好きな方をご覧あれ
視界に映りますは

腕っぷしはからきしなんだと、嘯いて
そんな事より、どうせだから賭けでもしよう、お二人さん
どっちがより多く絡繰を鎮めるか
ちゃあんと後ろで数は数えておくさ、ほんとほんと

煙管ふかして後ろに下がる
寄ってきた子にだけ、春の幻をひとつふたつ

勝った方には何が?
んー、じゃあ肉


ロカジ・ミナイ
【鏑木邸一行・壱】

やれやれ、なんて無責任なガイドなんだ!
麦酒と餃子がなかったら消費者センタアに電報するとこだったよ
はぐれたら?僕を探せばいいのよ、このロカジピンクをさ

パレードっつったら、こう、
煌びやかでギンギラでオネーサン達が舞い踊ってるもので……で
右手を見ても左手を見ても
無骨、無骨、無骨
お前ら絶対許さないからな

絡繰にはコレよ、雷よ
電撃でまとめてショートよ
ついでに刀で殴って壊したりもする

あぁん?賭けだって?
やってやろうじゃないか、今の僕はご立腹だからね
かわいい子がライバルでも手は抜かないよ
ところで家主さんや、勝ったら何くれるの?
肉?酒?えっ、高い肉!?



●櫻演武 別名:パレードを見に行って無事に帰ってくる会
 現地ガイド兼家主が居る、百鬼夜行パレード観覧ツアー。
 来た事のない知らない街、知りたい事は沢山ある。

 美味しい食事が出来るお店は?
 現地ガイド兼家主好みの女給さんが居るカフェは何処だろう?
 人懐っこい猫がたむろする小路も知りたい。

「教えてガイドの人」
「俺好みの女給のいる店なんて、聞いてどうすんだよ」
 笹鳴・硝子(帰り花・f01239)の問い掛けに、鏑木・寥(しあわせの売人・f22508)は答える気が無さそうだ。使い古された煙管から紫煙を燻らせて、煙に巻く。
 ……ご当地桜の精による、現地ガイド。
 張り切る者も居れば、然程そうではない者も居るらしい。
 特に旗や代わりを持たず。
 用意出来るのは無事に帰った後の麦酒と餃子、あと未成年用のジュース。
「こっちの組は皆いい大人だろ?逸れたりはしないよなァ」
「はぐれたら?」
「……じゃあ、あの髪に集合で」
「やれやれ、なんて無責任なガイドなんだ!」
 ――麦酒と餃子がなかったら、消費者センタアに電報するとこだったよ。
 ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)はからからと笑って、続ける。
 キムチ入り餃子と、キンキンに冷えたビールが待っているからか。
 彼の髪を目印にするという、鏑木の案には頷いて。
「はぐれたら?僕を探せばいいのよ、このロカジピンクをさ」
「それと、お二人の名前を呼び続けるとしましょうか」
「問題ないな。……しかし、思ったより物騒だ」
 自分達から少し離れた場所。
 先の方で見えた『おおきなおさかな』の姿。
 ……此処に例のパレヱドとやらが来るまで、そう時間は掛からないだろう。

「ほれ、右手左手、お好きな方をご覧あれ」
「そういえば、百鬼夜行パレード。どんな演目があるんでしょうね」
「パレードっつったら、こう、煌びやかでギンギラでオネーサン達が舞い踊ってるもので……」
 華美な衣装を身に纏うレディが、少なからず居る筈なのだ。
 おどろおどろしい影朧達のパレヱドでも、其れは変わらない筈。
 そう、普通は其の筈で……。
 ロカジは視界に映った者達の姿に、思わず硬直した。
「…………」
「視界に映りますは……絡繰、だな」
「絡繰の侍ですね」
 右手を見ても、左手を見ても。
 最初の演目は剣舞、演者は絡繰武者――朧侍。
 悲しくなる程に無骨、無骨、無骨のオンパレードだった。
「お前ら絶対許さないからな」
 ほんの少しだけ、期待していたのかもしれない。
 ロカジの呟きに込められた無念さは、他の二人にも伝わった様だ。
 ……だからと言って、掛ける言葉は無いのだけれど。
 腕っぷしはからきしなんだ。
 そんな言葉と共に、鏑木は煙管ふかしながら数歩後退して、ぽつり。

「どうせだから賭けでもしよう、お二人さん」
「はい?賭け?」
「あぁん?賭けだって?」
「どっちがより多く絡繰を鎮めるか」
 ――ちゃあんと後ろで数は数えておくさ、ほんとほんと。
 どうする?と鏑木が問い掛けるよりも早く、笹鳴とロカジは近付いて来る足音の方角を見据えていた。特にロカジは相当腹に据えかねている様で。
「つまりご褒美がある、ということですね?」
「やってやろうじゃないか、今の僕はご立腹だからね」
 風を斬る音が、徐々に聞こえ始める。
 口説きも知らぬ無骨な連中には、コレが効果覿面だろう。
「絡繰にはコレよ、雷よ」
 鮮血を喰らったロカジの妖刀、其の抜き身に雷電が迸る!
 朧侍達が剣舞の最中、敵の姿を確認した――其の時にはもう、遅い。
 美女の居ない苛立ちを込め、跳ぶ様に地を駆ければ。
 ……其処は既に、妖刀の間合い。
 斬りかかられるよりも速く振り抜けば、朧侍の全身を激しい雷が襲い始めた。
 電撃で、纏めてショートさせてしまおう。
 其れでも尚、強引に動こうとする輩は――。
「よっと」
 殴ればいい。
 オネーサン達が居ない苛立ちを込めて、刀で思い切りぶん殴ろう。
 今回ばかりは、かわいい子がライバルでもロカジは手を抜くつもりは無い。
 ……勿論。御褒美と聞いては、笹鳴も同じく。
「よろしい。来たれ【磐具公】――其の神威を示せ」
 劫、と炎が踊る。
 笹鳴が薙ぎ払う様に振るえば、朧侍達の頭部や関節に直撃――燃え盛る!
 ――人の形に似せた絡繰ならば効くでしょう。
 彼女は続けて、もう一太刀。
 今度は直接斬り付ければ、防ごうとした敵の装甲が徐々に溶けていく。
「(……春の幻を使う必要はなさそうか)」
 雷電殴打に倒れるもの、劫火斬撃に倒れるもの。
 確かに数え易いと思いつつ、鏑木は伏兵の存在に注意している。
 ……ふと、朧侍と交戦していた二人が呟いた。
「ところで、ご褒美とは何でしょう?」
「家主さんや、勝ったら何くれるの?肉?酒?」
「んー、じゃあ肉」
「えっ、高い肉!?」
「……やる気が滾りますね?」
 実際に高い肉になるかどうかは、家主次第なのだろうが。
 人のお金で食べる、良いお肉。
 其れはとても美味しい。負けられない戦い。
 更にやる気を増した二人によって、此の場の朧侍達は一掃された様だ。

 年少組の様子は……ああ、どうやら問題無さそうか。
 さあ、次の演目会場へと進もう。
 尚、御褒美の良いお肉は笹鳴が獲得したそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木槻・莉奈
シノ(f04537)と

本当、火の粉みたいだし、桜だから綺麗ではあるんだけど…
あんな物騒な桜は勘弁願いたいものね

シノ、無理しないでね
さて、シノがそうするなら…他に目立つものがいれば、紛れやすいわよね
こっちもこっちで、暗い中に白だから好都合だわ

『高速詠唱』『全力魔法』、風の『属性攻撃』を付与し速度に重きをおいた【神様からの贈り物】
『範囲攻撃』である程度纏めてダメージを加えつつ、味方へ敵の意識が向いた際に動かす事で敵の攻撃を花びらへ向けれるように
その際、射線上に自身や他の猟兵が入らないよう向ける場所には注意を
攻撃時は『武器落とし』『鎧砕き』を狙う

回避は『見切り』を基本
受けた場合は『激痛耐性』で耐久を


シノ・グラジオラス
リナ(f04394)と

暮れる陽の元の桜か
花びらが陽に焼けて、まるで火粉だな
さて、黄昏時なら好都合
派手に動けば注目の的なら、目立たず闇に紛れてみせようか

『先制攻撃』で『鎧無視攻撃』の【影綴り】で『挑発』して無差別攻撃を誘発する
『見切り』で動きを最小限にし、『闇に紛れる』と『目立たない』状態で他の敵や花びらに紛れて攻撃し、極力注意を敵同士に引き付けるように
それでもリナや猟兵を狙うなら、注目を引くように派手に暴れるのも悪くはない

リナを『かばう』で守りつつ、
ダメージは『武器受け』『激痛耐性』で耐える

しかしヤドリガミの友人がいる身としては、彼らも宿るものがある運命があったのかもと複雑ではあるかな



●櫻演武 黄昏に燃ゆる
 暮れる陽の元の桜。
 薄紅の花弁が夕焼けを映して、橙色に変わりゆく。
 そんな花弁を眺めては、シノ・グラジオラス(火燼・f04537)はぽつりと。

「まるで火粉だな」
「本当、火の粉みたいだし。桜だから、綺麗ではあるんだけど……」
 ――あんな物騒な桜は勘弁願いたいものね。
 街の入口、其処から離れた場所で悠然と咲き誇る桜。
 其れを見据えながら、木槻・莉奈(シュバルツ カッツェ・f04394)は溜息混じりに零していた。
 ……普通の幻朧桜では有り得ない、禍々しい雰囲気。
 辿り着く為にはパレヱドの演目を倒して、進まなければならない。
 金属の臭いが近付いて来るのを嗅ぎ取ったのか、シノが彼女が居る場所とは反対方向へと煙を吐き出して。携帯灰皿に煙草を押し付けて、火を消した。

「さて、黄昏時なら好都合ってな」
「……シノ、無理しないでね」
 其の言葉だけで、シノの考えを汲み取れるのは長い付き合いだからか。
 派手に動けば注目の的。
 ならば、目立たず闇に紛れて敵を屠ろうと。
 木槻の念押しに苦笑を浮かべながらも、彼は確かに頷いた。
「さて、シノがそうするなら……他に目立つものがいれば、紛れやすいわよね」
「へ?」
「こっちもこっちで、暗い中に白だから好都合だわ」
 ――派手に目立ってやろうじゃない。
 敵の臭いはまだ少し遠いが、木槻は既にルーンソード――薄花桜を手に。
 翠の眼差しは力強く、口元に浮かぶのは微笑み。
 嗚呼……自分の大切な恋人の、なんと頼もしい事か。
「リナこそ、無茶はし過ぎるなよ」
「ええ、勿論」

 そんな二人のやり取りから、少し時間が経った後。
 ザッ、ザッ……。
 地面を擦る様な音、其の数は多く。
 真正面から堂々と向かい合うは、茉莉花の花弁を周囲に漂わせた少女一人。
 ――ふわり。揺れ動く真白の花弁を視認して、朧侍達が皆構え直す。
 ――ふわり。翠の風が木槻を中心に吹き始める。
「此処から解放してあげる、過去は過去へと還りなさい」
 ――風に乗って、躍り踊れ。
 瞬間、真白の花弁は鋭い刃と化した。
 数多の花弁が縦横無尽に舞い、直撃の寸前に一つの塊を成して。
 其のまま――絡繰の集団を迅速に、正確に切り刻もうと襲い掛かる!
 ……夕暮れ時。暗闇が呑み込まんとする、今此の時。
 木槻が手繰る真白は、とても良く映えた事だろう。
 敵の視界に花弁が入る様に、彼女が風を利用して巧みに操っている事もあるが。

「(……彼らも、宿るものがある運命があったのかもな)」
 茉莉花の花弁を追い駆け、斬り払おうとする朧侍達を見て、シノは密かに思う。
 彼は戦場からそう遠くない、物陰に潜んでいた様だ。
 無論、木槻に害があれば直ぐに跳び出すつもりで。
 ……まあ、今の所は其の心配は無さそうだが。
「俺も良い所、見せるとするかね」
 闇に紛れ、眼帯で敢えて視界を封じて。
 右目に映すは現在、闇雲に刀を振るう凶化兵器達。
 彼が捉えて、彼の眼に囚われた者達の末路は。
「穿たれろ」
 ――制裁の時は来たる。
 術者である木槻に斬りかかろうとした個体を優先として、蒼い迅雷が落ちる!
 一条では足りぬならば、幾重にも。
 真白の花弁から逃れた者は、余さず蒼雷が撃ち抜いていく。
 ……蒼色の稲光が止んだ後、二人の前に立つ朧侍は居なかった。

「やれやれ、最初から危なっかしいパレヱドだ事で」
「……この先も気を抜けなさそうね」
 幻櫻パレヱド。
 此れを生み出した桜は、まだ遠い。
 其れでも、二人ならばと……視線を合わせた後、木槻とシノは共に歩んで行く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

山理・多貫
立花・乖梨(f05235)との若干の合わせになります
基本は各自で行動して時に張り合い、時に助け合うそんな感じ希望です。

///

(敵を一目みるなりガッカリ溜息)
美味しくなさそうな相手です、ね……。
さっさ、と倒してしまい、ましょう。

乖梨は元気です、ね……。
あまりはしゃぐとお腹が空きます、よ……?

無表情かつ淡々と。
愛用の大鎌を手にマントを靡かせ敵を駆逐していきます(詳細お任せ)

最初は省エネモードでしたが
乖梨の挑発に応える感じで徐々に本気モード。

「……ごめんな、さい。差がついてしまいまし、た…」
等と無表情ながらもドヤったり。



(アレンジお任せ/NGなし/自由に動かしてあげてください!)


立花・乖梨
◆共通事項
たぬちゃん(f02329)と一緒に
相手より眷属を多く倒す勝負!
(勝負の結果は明確で無くて構いません)

◆行動

(アレンジお任せ/NGなし/自由にどうぞ!)

たぬちゃん、ガッカリした顔しないのですよぅ、私も記憶を回収出来なくて悲しいのですよーぅ?

〈ダッシュ〉で先行して突撃
『デッドエンド・メモリーズ』を〈武器改造〉、たぬちゃんと同じ大鎌に。
〈2回攻撃、衝撃波、鎧無視攻撃〉で纏めて薙ぎ払い駆逐。
「おとと…意外と扱いが難しいのですねぃ、さすがたぬちゃんなのです」

たぬちゃんがピンチの時は
〈かばう、捨て身の一撃〉
助けつつ撃破数を稼ぐです

「これで、また差がつきますねぃ?」…なんて、煽ってみたりして。



●櫻演武 一進一退
 絡繰の侍が、剣舞と共に行進。
 堂々たる動きには、金属が擦れ合う音も伴っていて。
 ……見た目から判断するのは容易、だからこそ山理・多貫(吸血猟兵・f02329)は深々と溜息を吐き出した。其れはもう、ガッカリの一言に尽きる程。
「美味しくなさそうな相手です、ね……」
「たぬちゃん、ガッカリした顔しないのですよぅ?」
 ――私も記憶を回収出来なくて悲しいのですよーぅ?
 影朧の絡繰は、処刑記憶を保持している可能性が低いのだろう。
 むすぅと膨れっ面を見せながら、立花・乖梨(bye-stader・f05235)もまた残念そうに呟いていた。嗚呼、本当に残念だ。
 ……残念無念、それなら自分達で楽しみを作ろう!

「たぬちゃん、勝負しましょう!」
「勝負、ですか」
「どちらが多く、眷属を倒せるか。いざ、しょーぶ!」
「乖梨は元気です、ね……」
 あまりはしゃぐと、お腹が空いてしまう。
 迫って来た朧侍達からは、やはり美味しそうな匂いはしない。
 ……しかし、立花との勝負は少し楽しそうだと思ったのだろう。
 山理が静かに首を縦に振ると、彼女は瞳を煌めかせて敵の集団に突撃ー!
 ――こういう勝負は、先手必勝なのですよぅ!
 凄惨な処刑記憶『デッドエンド・メモリーズ』を即座に改造、大鎌へと変化。
 禍根を断つ拷問武器を使う、其の代償は――。
「……っ!て、りゃーっ!」
 刹那の間、頭と胴体が真っ二つになった感覚。
 呼吸を忘れかけたが、其れでも立花は止まらない。
 朧侍の刀が、本当に自分を真っ二つにする前に――思い切り、ブォンッ!
「おとと……意外と扱いが難しいのですねぃ」
 慣れぬ武器を全力で振り回した為か、立花は思わずよろめいて。
 此れを自分の手足の様に、使いこなしているとは。
 ……さすが、たぬちゃんなのです。
 彼女が感心していると、嗚呼、気付けば敵が直ぐ其処まで――。
「危ないです、よ……」
 立花へと迫っていた筈の敵、其の首が刎ねられる。
 綺麗に断たれた者達の背後には、愛用の鎌を手にした山理の姿が在った。
 ……更に其の後ろには、動かぬ鉄塊と化した敵の姿が。
 無事である事を確認した後、彼女はマントを靡かせながら淡々とした様子で次の敵を屠りに向かった。

「むむっ、負けられないのですよぅ」
 二人は其々、連携される前に各個撃破を狙っていく。
 時に、叩き付けるように振り下ろして。
 時には装甲が薄い所を狙って、切断を試みながら。
 省エネモードで戦っている為か、現状は立花の方が倒した数は多く。
 桜を映し出す液晶画面を大鎌の柄で穿った後、引き抜いては胴体に刃を深く食い込ませて……にっこり、彼女は山理へと笑い掛ける。
「これで、また差がつきますねぃ?」
「…………」
 此の挑発が、山理の対抗心にほんの少し火を点けた様だ。
 敵が複数密集している場所、其の中心へ入り込み――紅の双眸を見開く。
 華奢な容姿に似合わぬ剛の一閃を以って、多くの敵を薙ぎ払った!
 凄まじい音と共に倒れていく朧侍達の身体に残るのは、深く抉られた様な傷跡。
 一度と言わず、何度でも。
 彼女の大鎌を振るう速さは、徐々に上がっていく。
 立花も負けじと敵を倒していくが……次第に其の差は縮まり、そして――。

「……ごめんな、さい。差がついてしまいまし、た」
 先程までは同数。
 たった今、追い抜いた。
 ……無表情ながらも、山理の言葉は何処か満足そうにも聞こえて来て。
 そして、立花にとっては少し残念なお知らせ。
 彼女が倒した個体こそ、二人が遭遇した集団の最後の一機だったらしい。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アメリア・イアハッター
逢魔が辻って様々な色が混ざった綺麗な景色を見れて好き!
でも貴方達の踊りはなんだか怖いし悲しいね
踊りはもっと楽しく、感情豊かにやった方が楽しいよ
そんな踊りを見せてあげるから、私もその舞台に混ぜてね!

素早く動く物を追うのであれば、自身は動かないで出来るダンスを見せてあげましょ
UCを発動し、ミサイルのいくつかを敵の頭上を越えさせて敵の背後へと発射する
もし敵の背後に例の桜があるならば、それを狙って撃ってもいいかもね

敵がミサイルの第一陣に気を取られ後ろを向いたら、味方に今だ!と伝えつつ、自分もその敵の背中に向けて残りのミサイルを叩き込もう!
多彩な軌道を描いたミサイルのダンス、ちょっと付き合ってもらうよ!



●櫻演武 砲撃演舞、御覧あれ!
 様々な猟兵達が集う、此の逢魔が辻。
 黄昏時の空は……澄んだ青色と鮮やかな橙色、混ざり合った紫色。
 其処に桜が舞う光景はとても綺麗で、アメリア・イアハッター(想空流・f01896)は見上げては瞳を輝かせていた。
 逢魔が辻は危険な場所と理解していても、空への想いは止められない!
 ……向こう側に見える桜の根元、其処に着く頃には空は藍色に変わっているのかもしれない。そんな空も見てみたい。
 空への好奇心が赴くままに、彼女が歩いていると……何かの集団が見えて。

「うーん……あれが、パレヱドかな?」
 アメリアの呟きは正しかった。
 暴走状態に陥っている、朧侍達の集団。
 其れが今、彼女へと近付いて来ているのだ。
 何処か怖くて、悲しい踊り。叫ぶ様な悲鳴にも似た、嘆きの舞。
「(踊りはもっと感情豊かにやった方が、きっと楽しいよ)」
 ――そんな踊りを知らないなら、私も見せてあげる。
 アメリアは綺麗な空のキャンバスに指先を向けて、くるりと一周。
 描いた軌跡は淡く明滅を繰り返しては、描き手の声を待っていた。
「私もその舞台に混ぜてね!」
『――ッ、……?』
 空を映し出した様なミサイルが、多彩な軌道を描く様に踊り出す!
 其れは、アメリアの存在に気付いた朧侍達……の、頭上を通り過ぎて行く。
 向こう側に在る桜を狙えれば。
 アメリアはそんな風に考えていたが、残念ながら射程圏外だった。
 ――ならば、彼らと踊ろう。彼らと一緒に楽しもう。
 攻撃が逸れた事に気付いた後、朧侍達は即座に彼女へと駆け出そうと――。

「まだまだ付き合ってもらうよ!」
 先程のミサイルは囮。本命の第二陣は此れから、だ。
 彼らの踊りから伝わって来た気持ち。
 其処に、己の解放を望む様な声が聞こえて来た気がしたから。
 振り返ろうとする敵の背へ向けて、アメリアは数多の魔法のミサイルによるダンスを放つ!
 ……少し間を置いて、煙が晴れた後。
 立ち上がる朧侍の姿は、其処には居なかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

月守・ユア
アドリブ歓迎

彼岸の羽織を揺らしながら
激しく立ち回る朧侍達に
愉しげに笑みを向ける

…嗚呼、随分と賑やかそうだ
黄昏時…生と死が交わる空の下で
大きな桜の木と共にパレヱドとは洒落ている
まるで…欠落したものを埋めるかのような…
寂しく悲しき賑やかさだ…

月鬼と呪花を鞘から抜刀
――とおりゃんせ、とおりゃんせ
壊れゆくだけの哀れな朧侍よ
偽りの桜への細道を…そっと通してもらおうか

止まる事を知らぬのならば
存分に踊り狂ってしまえよ
その悲鳴と暴走ごと…受け止めてあげる

先制攻撃
呪詛を刃に唱え
”命喰鬼”
生命力吸収を用い敵を切り刻む
攻撃を受けてもカウンターで切り返す

――もう気は済んだ?
もう疲れただろう…
そろそろ静かに
眠りにつきな



●櫻演武 死告者の慈悲
 紫の彼岸花が、ゆらり。
 彼岸の羽織に合わせて、揺れる。
 黄昏時、生と死が交わる空の下で……月守の番人が微笑んでいた。

 いざや、いざや……っ!
 まるで死合おうとするかの様に。
 刀を手に、激しく立ち回る朧侍達――不意に、其の動きがぴたりと止まった。
 明らかに同型機ではない、何かがゆっくりと近付いて来たからだ。
 其の猟兵の名は、月守・ユア(月夜ノ死告者・f19326)。
「……嗚呼、やっぱり。随分と賑やかそうだ」
 大きな桜の木と共にパレヱド、とは洒落ている。
 欠落したものを埋める様な寂しさ、悲しさを感じさせる賑やかさ。
 月守は楽しげに微笑みながらも遠くを、空を見上げながら思う。
 あの禍津桜の元に着く頃には、美しい月が見えるだろうか。
 ――ふと、彼女は一歩後退。
 直後、先程まで彼女が居た場所に、朧侍の刀が振り下ろされた。

「とおりゃんせ、とおりゃんせ」
 謡う様な呟きと共に、月守は己が得物――月鬼と呪花を抜く。
 絡繰の内を支配する荒魂を、尊ぶべき生命を。
 まだか、と。二つの刃が輝きを見せる。
 止まる事を知らぬ、知っていたとしても許されぬ。
 ならば――存分に踊り狂ってしまえよ。

「その悲鳴と暴走ごと……ボクが受け止めてあげる」
 対価は、偽りの桜への細道の通行許可。
 尤も……月守は許されずとも全てを壊して、押し通るつもりだったけれど。
 壊れゆくだけの哀れな朧侍達へ、せめて……。
 感傷を抱いたのか、ただ戦狂いの血が騒いだだけなのか。
 其れを知るのは――嗚呼、そんな場合ではないか。
『――ッ、――ッ!』
『――ッ!』
 霊力を流し込んだ刀による、先の一閃よりも重い斬撃。
 連携によって逃げ場を無くす様に振るわれた攻撃を、月守は双刃を以って軽々といなしていく。
 ……其の間にも、彼女は呪詛を唱えていた。
 生命を喰らう呪いを乗せて、返しの刃で朧侍を抉る。
 何度も、何度でも。そして間を置き、静かに目を伏せてから呟くのだ。
 ――もう、気は済んだ?

「そろそろ静かに、眠りにつきな」
 月守が双刃を鞘に収めた、直後。
 其処に在った筈の朧侍達の姿はもう、居ない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
嗚呼、懐かしいなぁ逢魔が辻
世界から見捨てられた影朧達の溜まり場
気が遠くなる程の殺し合いを与えてくれる場所
また此処に来られると聞いて心躍らせた俺も
影朧の桜とやらに囚われているのかもね、なんて

…とは言え最初の相手は
愉しい殺し合いというよりは
もはや修理が不可能な人形の処分といったところか

自身の手を斬りつけ指定UC使用
わざと見せつけるように高速で動き回りながら
Duoによる2回攻撃で薙ぎ払っていく
きっと一心不乱で反撃してくるだろう
強化した反応速度でその動きを見極め
武器受けで凌ぎ、時には激痛耐性で受けながら
懐から無数のナイフを念動力で飛ばして
隙だらけの朧侍の身体に突き立てる
実は本命はこっち
言わば俺自身が囮



●櫻演武 血で血を洗う、には程遠い
 ――キィンッ!
 鮮血に塗れた黒の刃が、刀を受け止めては弾き飛ばす。
 もう片方、同じく血に塗れた紅の刃で朧侍の頭部を文字通り、叩き割った。
 ……立ち上がって来る気配は無く、其の個体はもう動かない。

「嗚呼、懐かしいなぁ……逢魔が辻」
 其処は世界から見捨てられた、影朧達の溜まり場。
 気が遠くなる程の殺し合いを与えてくれる場所。
 ……灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)にとっては夢の様な場所へと、また来られる。心躍らない訳がないじゃないか。
 ――影朧の桜とやらに囚われているのかもね、なんて。
 彼はそんな想いを抱きながらも、眼下に倒れ伏した朧侍達を見ては……小さく溜息を零していた。
「(もはや修理が不可能な人形の処分、といったところか)」
 愉しい殺し合いは少しの間、お預けらしい。
 暴走状態の朧侍達は舞い踊り、敵を排そうと動くだけの絡繰。
 内側に巣食う影朧の感情も出さず、指令のままに。殺意の欠片も無い。
 ……其れは、灰神楽が望む『殺し合い』ではないのだろう。

「せめて、ちゃんとついてきてね」
 ヴァーミリオン・トリガー。
 血塗れの刃を二振り、今も鮮血が溢れる両手で確りと握り締めた。
 自身の血を刃に付着させた、までは良いが……裂傷が深過ぎたかもしれない。
 大鎌の柄を伝い、ぽたりぽたりと紅色の雫が地に落ちていて。
 ……尤も、彼にとっては激痛とも呼べぬ、掠り傷程度の認識か。
『――ッ!?』
『――ッ、――ッ!』
 朧侍達も改めて、連携を試みるが……。
 何機かが集結するよりも速く。また一機、首が刎ねられた。
 ……此の場に居た朧侍達、最後の小さな集団。
 せめて一矢報いようとする武士の如く、彼らは灰神楽へと急接近する!
 Duoで受け止めても尚、伸びる一太刀は彼の肩を多少抉るだけに留まった。
 だが、充分に耐えられる痛み。少しだけ残念そうにしてから。

「今度はちゃんと、殺し合おうね」
 灰神楽が呟いた直後。
 無数のナイフが彼のコートから次々に跳び出して、朧侍達に突き刺さっていく。
 ……次は、殺し合いが出来るといいな。
 ナイフの雨が止んだのと、彼の呟きはほぼ同時だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フィーア・ストリッツ
凶暴化した番兵ですか?成程
あの数で凶悪な攻撃力を発揮するとなれば、大敵の外敵は排除出来るでしょうね
「ですが、それで恐れをなすならそもそも猟兵などやってないですよ。フィーアです」

狂って居るのは影朧か幻朧桜かはたまた世界そのものか
知ったことでは有りませんが、道を阻むならどいて頂くまでです

行進、パレヱドでしたか?
並んで近づいてきて頂けるならこちらにはありがたいです
【氷雪竜砲】で寄ってくる相手から順に吹き飛ばして差し上げます

何をしているのかは正直良くわかりませんが
悪趣味なことだけは判りますよ、オブリビオンですし



●櫻演武 氷葬
 行進、パレヱド。
 何をしているのか、何がしたいのか。
 フィーア・ストリッツ(サキエルの眼差し・f05578)には、此の逢魔が辻を作り出したオブリビオンの考えなど正直、さっぱりだ。
 しかし、影朧の考える様な事。悪趣味なことだけは、彼女にも判る。

「(並んで近付いてきて頂けるなら、こちらにはありがたいですが)」
 剣戟の音が近い。
 何の為に舞うのかも知らぬ、舞い手達が来る。
 狂っているのは此の影朧だろうか、其れとも偽りの幻朧桜?
 まあ……そんな事はフィーアにとって、知った事では無いのだろうが。
 彼女にとって重要な事、其れは――。
「道を阻むなら、どいて頂くまでです」
 朧侍達が行進を止めた後、各々がフィーアに向けて刀を構え直す。
 ……危うい雰囲気は感じている。
 先程までの剣舞とやらの勢いから、斬撃の脅威も理解した。
 其れでも、彼女は決して表情を崩す事はなく。
「それで恐れをなすなら、そもそも猟兵などやってないですよ。フィーアです」
 ――異論があるなら、掛かって来て下さい。
 淡々とした表情で言い切った後、フィーアの喉の奥が淡く輝く。
 其の喧嘩を買ったと言外に告げるつもりか、指令の延長線上なのか。
 霊力によって研ぎ澄まされた刀で斬り伏せようと、朧侍達が一直線に突き進む!
 ……すぅ、と。肺腑の奥まで深く、深く。
 仕込み魔術印:竜に魔力が満ちたと確信してから、フィーアは静かに息を吸い込んだ。

「(竜騎士たる私の奥の手――)」
 数を揃えての連携、其の上で凶悪な攻撃力を発揮する。
 ……成程、大概の外敵は排除出来るだろうとフィーアは思う。
 其れも、己の間合いの内に入れなければ良い話だけれど。
「――氷竜の息吹、ご覧に入れましょう」
 己の内側で変質させた空気……否、吹雪。
 フィーアは朧侍達へ向けて、其れを余さず一気に吐き出した。
 氷竜の息吹と呼ぶに相応しい、絶対零度が無謀な影朧達に襲い掛かり……凍り付いた個体から順に砕けては、跡形も無く消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢坂・理彦
逢魔が辻かぁ…帝都桜學府も対処できなかった場所って聞くだけで厄介なのは十分伝わってくるんだけど。
それが俺達になら何とかできると言うのなら試してみる価値はあるかな?

あぁ、強化と言うよりも狂化だな。
油断はできない…いや油断なんかしたら失礼だね。
さぁ、俺も舞おうか。
UC【狐神楽】
強化された墨染桜で【なぎ払い】【早業】で斬り込み。【武器落とし】を狙いながら攻撃を繰り返し敵攻撃は【戦闘知識】【第六感】で【見切り】

アドリブ歓迎。



●櫻演武 狐ノ神楽舞
 帝都桜學府でも対処出来なかった場所。
 此処を含めて、そんな影朧達の巣窟の事を『逢魔が辻』と呼ぶらしい。
 逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)が厄介だと感じるには充分過ぎる情報、其れでも……自分達にどうにか出来ると言うのならば。

「試してみる価値はあるかな……?」
 此処に向かう前、連理の絆を紡いだ彼の心配そうな表情。
 ――緑茶と和菓子の用意をして、待ってるねぇ。
 そんな風に、いつもの様に笑って、送り出してくれたから。
 お土産話が出来る様に、無事に帰らないとね。
 逢坂が改めて、決意を固めた所で……頭上から朧侍の刀が振り下ろされる!
 其れを起点として、他の朧侍達が次々に刃を突き刺そうと。
 ……しかし、彼らが刃を深く突き立てているのは。
「あぁ、強化と言うよりも狂化だな」
 振り下ろされる直前に刀をいなして、逢坂は朧侍達の集団から逃れていた様だ。
 つまり、朧侍達が躍起になって討ち取ろうとしていたのは……同じく朧侍。
 同胞だろうと見境無く、其れを狂化と言わずして何と言うべきか。
 油断は出来ない……いや、油断なんかしたら失礼だろう。

「さぁ、俺も舞おうか」
 愛用の薙刀――墨染桜を手にすると、逢坂の服が徐々に変化してゆく。
 ちりん、ちりぃん……。
 鈴の音色に合わせて、白と深藍色の対比が美しい狩衣姿へ。
 先頭の朧侍が間合いに入る前に、彼は石突で打ち上げる様に――敵の得物である日本刀を弾き飛ばして。
「よっと……!」
 其のまま、装甲が薄い部分を狙って薙ぐ様に斬り込む!
 間髪入れずにもう片方の腕を落とすべく、逢坂は墨染桜を……否、彼は迫る刃の存在に気付き、其処を迅速に薙ぎ払った。
 ……嗚呼、彼の予感は正しかったらしい。
 日本刀を振り上げた体勢のまま、朧侍達が地面へ倒れ伏していた。

「やっぱり、この姿は慣れないな……」
 ――だから、早めに片付けさせてもらうね。
 刹那、神々しさを纏う妖狐が翔ぶ。速く、速く、もっと速く。
 鈴の音色を響かせて、狂える絡繰への魂鎮めの舞を魅せている。
 彼らが還った先……ほんの少しでも安らげる様に。
 そう、心の片隅で願いながら。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナターシャ・フォーサイス
【聖雫】WIZ
哀れな魂となってなお、己を失うのですね。
そこに救いなどないのでしょう。
ならばこそ。我々が祓い、楽園へ導いて差し上げねばなりません。

導くうえで、雫さんが傷つくことは心が痛みますが…
雫さんが望むならば、そのように。
結界を張り、天使を召喚して加護を授けましょう。
貴方がたが我を忘れ終わらぬ悪夢を見続けると言うのなら。
我らは【高速詠唱】で聖句を紡ぎ、【全力魔法】【範囲攻撃】【2回攻撃】【焼却】の聖なる光をもって祓いましょう。

そして、【祈り】【催眠術】【精神攻撃】の幸福な夢をもって、手向けといたします。
どうか、あなた方へも楽園のご加護のあらんことを。

…雫さんのその危うさは、心配になりますが…


九重・雫
【聖雫】SPD
速く動けば殺されに来てくれるなんて楽でいいね。
UCで高速移動をしながら引き寄せられた敵を切り刻むよ。
【傷口をえぐる】で追い込み【吸血】【生命力吸収】で回復しながら、敵の反撃を気にせず攻め続けるよ。
あぁいいね、この感じ。
ナターシャのおかげで、傷つくほど力が増す。
今私の体から滴る血が自身の血なのか相手の血なのか分からない。
自身をボロボロにしながら皆を救う為に戦うなんて、まさに救世主じゃない?
私の糧になって?私が救世主となるための礎として砕けて?
紅を吸い上げて鮮やかに輝くのは私という救世主だけでいいの。
大丈夫。私の糧になった後はナターシャがちゃんと導いてくれるから。
幸せな最期でしょう?



●櫻演武 其は修羅か、救世主か
「哀れな魂となってなお、己を失うのですね……」
 ――そこに救いなどないのでしょう。
 此の世の理から外れた上、此の地に縛られた影朧達。
 彼らを目にした後、僅かに目を伏せて……ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)は静かに言葉を紡ぐ。
 我を失くした朧侍達は彼女と、傍らに立つ九重・雫(救世主になりたかった忌み子・f16602)の姿を認識したのだろう。
 其々が得物を構えて、今にも二人の元へ駆け出そうとしていた。

「ならばこそ。我々が祓い、楽園へ導いて差し上げねばなりません」
「ナターシャ、お願いするね」
「……雫さんが望むならば、そのように」
 眼前の朧侍達を楽園へ導く事に、異論など有りはしない。
 ただ……其の為に、九重が傷付くのは心が痛む。
 其れでも、彼女が望むのならば。そうしたいと願うのならば。
「さあ……貴方の罪を祓い、共に参りましょう?」
 ――限定解放:大天使の翼。
 ナターシャの呼び声に応えて、見目美しい天使達の姿が現れる。
 同時に彼女の全身が硬質なものへと変化、朧侍達を含めて眩い結界で囲っていった。
 我を忘れ、終わらぬ悪夢を見続けると言うのなら。
 楽園へと導く事で、彼らに終わりを齎して差し上げましょう。
 そんな彼女の動きに反応して、敵が一歩踏み出したが――。
「速く動けば殺されに来てくれるなんて、楽でいいね」
 ――否、狙うべき敵が他に居る。
 朧侍達の狙いは今、禍々しい雰囲気を纏う九重へと集中していた。
 妖刀「修羅」に封ぜられた鬼神、昏い怨嗟の念。
 壊せ。殺せ。壊せ殺せ壊せ殺せ喰らい尽くせ――ッ!
 言われなくても、と……彼女はとある一機の懐に潜り込み、妖刀を思い切り振り上げる。更に、振り下ろして。薙いで、突き刺して。
 其れから、其れから……まだ足りない……!

『――ッ!』
「くっ……!」
 嗚呼、目の前の敵に集中し過ぎてしまったか。
 高速移動によって致命傷は避けたが、九重の身体には所々裂傷が刻まれていて。
 心配のあまり、ナターシャが名前を呼ぼうとするが……彼女は微笑んでいた。
 ――あぁ、いいね。この感じ。
 ナターシャの結界の力、傷付けば傷付く程に力が湧き上がって来る。
 追撃を狙う朧侍達もほら、強化された装甲だって紙の様に。
 深手を受けても其の分、生命力を吸収すれば応急処置は出来る。
 大小にかかわらず、傷付く度に……九重は心が満たされていく気がした。

 私の糧になって?
 私が救世主となるための礎として砕けて?
 紅を吸い上げて鮮やかに輝くのは、私という救世主だけでいいの。

「自身をボロボロにしながら、皆を救う為に戦うなんて――」
 致命傷を狙う敵を、ナターシャの聖なる光が焼き尽くしていく。
 別の紅色の線を刻んだ相手は、九重が文字通り真っ二つに叩き斬っていた。
 攻撃を反射していた為か、上手く自身を狙わせる事に成功した為か。
 友達が傷付いていないと知って……九重はまた、嬉しそうに笑う。
「――まさに救世主じゃない?ね、ナターシャ」
「ええ、そうですね」
 雫さんのその危うさは、心配になりますが……。
 数えきれない程の裂傷を、そして可憐な服に所々血が滲んでいるのを見て……ナターシャはそう、言いたかったけれど。
 九重の嬉しそうな微笑みに、彼女は其の言葉を敢えて胸の内に留めた。
 代わりに地面へ横たわった朧侍達へと向けて、結界を通して夢を見せようと。

 とても、とても、幸福な夢。
 信心深き少女が救世主となる為、バラバラに砕けた者達への手向けとして。
 ……どうか、あなた方へも楽園のご加護のあらんことを。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エンジ・カラカ
狂ってる、アァ……狂ってる。
賢い君、賢い君、楽しいねェ。

知ってる、知ってる。
こーんな演目を見たコトは無いケド
きっと、たぶん、そう、大人気!
狂った舞台に飛び込もうカ、賢い君。
うんうん、楽しみだねェ。ネー。

オオカミの足は素早い、オオカミの耳はとーってもイイ。
音を聞き分けて、賢い君の糸を張り巡らせて
それから先制攻撃もしよう。

闇雲に殴るダケじゃあダメダメ。
今日のコレも賢い君もご機嫌。
避けるついでに刀の上に飛び乗って、そのまま糸を括り付けたら
操り人形の出来上がりサ。

コレと君が楽しくかっこよく、この舞台を操ろう。そうしよう。
準備はイイ?イクヨー。
せーの!

アァ……たーのしいねェ……。



●櫻演武 人形乱戦劇
「狂ってる、アァ……狂ってる」
 ――賢い君、賢い君、楽しいねェ。
 エンジ・カラカ(六月・f06959)は高い所から眺めて、カラカラと笑う。
 懐に収まっている、賢い君も御機嫌かな?
 ……彼の様子を見る限り、きっとそうなのだろう。
 パレヱド。うん、パレヱド。
 とーっても賑やかで、とーってもキラキラしている、アレ。
「こーんな演目を見たコトは無いケド……」
 知ってる、コレは知ってる。
 きっと、たぶん、そう、大人気!
 桜の花弁が舞う中、斬って斬られて進んで行く。敵味方の区別も無く。
 ――アァ、楽しそうだなァ……。

「狂った舞台に飛び込もうカ、賢い君」
 一拍間を置いて、エンジは相槌を打つ様にうんうんと頷いて。
 文字通り、手近な朧侍達の正面へと飛び込んで行く。
 着地と同時に斬りかかられるも――遅い、彼は既に距離を取っていた。
 オオカミの足は素早い。
 そして、オオカミの耳はとーってもイイ。
「闇雲に殴るダケじゃあ、ダメダメ」
 楽しいパレヱド、ならばもっと楽しくしよう。
 エンジだけではなく、賢い君もそんな気分だったのかもしれない。
 赤い糸を張り巡らせて、ニタァと彼は笑む。
 今後こそ。朧侍が踏み出して、刀を横薙ぎに振るった瞬間――。

「……残念、コレには聞こえてる」
 体勢を変える際に聞こえた、金属が擦れ合う微かな音。
 賢い君へと合図を送ると同時に、エンジは其の場で高く跳躍。
 まるで軽業師の様に……振り抜かれた後の刀身、其の上へと着地した。
 そして、振り払われるよりも速く。
 張り巡らせた分も合わせて、赤い糸で朧侍を括れば……くるりと反転。
 彼の指の動き一つ一つ、彼の個体も右へ左へと動き出す。

「コレと君が楽しくかっこよく、この舞台を操ろう。そうしよう」
 準備は出来た。
 此処からは――操り人形同士の楽しい、楽しい人形劇。
 せーの!エンジの掛け声と共に、此の舞台は始まる。

 壊れたら、また括ろう。
 居なくなる迄たーくさん、遊ぼう。
 ……そして、朧侍達は本当に居なくなった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユエイン・リュンコイス
●アドリブ連携歓迎
サアカスが第一演目は剣乱桜花な太刀合い演武。既に散るのが定めとあらば、精々華々しく吹き荒れようか。

突進してくる敵群へ【穿月】による『制圧射撃、援護射撃』の弾幕を張り、突進速度を鈍らせよう。機先を制するだけで十二分。隙を見出した瞬間、機人を前線へと吶喊させる。
生憎、ボクの両手は穿月で塞がっていてね。されども鉛弾のみでお相手するのも礼を欠く。機人の手に【焔刃煉獄】を握らせて、刃の求めに応じようか。

人形の手繰る人形が、燃え立つ刃を手に荒ぶり舞い討つ。中々に目を引く演目だとは思うのだけど。
終わりは必定、幕引きは今日この日この時この場を以って。なら最後はとびきり派手にいこうじゃないか。



●櫻演武 華は硝煙と共に
 パレヱドが第一演目、剣乱桜花な太刀合い演武。
 演者の数は著しく減少しており、残る者もあと僅か。
 だが、残る朧侍達は此の舞台から降りる素振りを見せない。
 剣舞を披露する事、部外者を始末する事。
 ……彼らに許された選択は二つだけ。

「終わりは必定。幕引きは今日、この日この時この場を以って」
 ニ挺蒸気銃――『穿月』を両手に、ユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)の双眸は恐れも迷いも映さない。
 傍らの人形、黒鉄機人と共に……彼女達は敵の正面に堂々と立つ。
 ――既に散るのが定めとあらば、精々華々しく吹き荒れようか。
 刃には刃を以って、と言いたい所だが……生憎と、彼女の両手は『穿月』で塞がっている。だからこそ、彼の機人が居る。
「我ら、邪を討つ双機人」
 黒鉄機人の右掌――絶対昇華機構、起動。
 焔刃『煉獄』――同調、開始。
 ……鉛弾のみで相手をするのも礼を欠く。
 ユエインは黒鉄機人の手に燃え立つ刃を握らせて、刃の求めに応じようと。

「昇華と銃火、これより行うは一切残さぬ焼却」
 双げき昇華術式・絶対銃華、開演。
 ――ガガガガガッ!!!
 ニ挺の蒸気銃から放たれる弾丸が、朧侍達へと襲い掛かる!
 突進を仕掛けようとした動きを止めようと。
 其れが叶わずとも、速度を鈍らせようと弾雨が降り注いだ。
 ……機先を制するだけで十二分、僅かでも足を止めさせたならば重畳。

「機人の咆哮、聴いて慄け!」
 足を止めた瞬間、黒鉄機人が前線へと吶喊。
 轟熱の刃が荒ぶり、朧侍の刀諸共に断ち斬らんと舞う。
 受け止めようと試みる個体もいたが……嗚呼、天を焦がす程の熱量には耐え切れなかったらしい。どろり、と溶けて。強靭な装甲をも溶かして。
 ――其の上で、黒鉄機人は朧侍達を派手に捩じ伏せるのだ。

 最後はとびきり派手にいこうじゃないか。
 ……使い手の意思を汲む様に。
 其れはもう華々しく、凄まじい熱量の演目だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧亡・ネリネ
*アドリブ、連携歓迎

……むぅ、イヤな音だ
壊れた楽器のようだ
あなた達は、舞台から降りられなくなっちゃったのだな

私が、私たちが退場を手伝おう
朧侍さんの鎧がきぃきぃいう音に、眉を顰めて人形を呼び起こす
今日の演目(ユーベルコード)は【舞踏組曲:第二舞曲】。第一は省略なのだ
無伴奏で、主旋律は強く叙情的に。おうたと踊りを聴かせよう

動きと音で《おびき寄せ》、人形を《なぎ払う》ように踊らせる
他の戦闘している人の盾にもなれるよう、《盾受け》したり《かばう》よう立ち回るぞ
《経戦能力》もとい演奏の体力には自信があるのだ。ふふん。

音波の《範囲攻撃》も合わせ、広範囲の朧侍さんに攻撃していくのだ



●櫻演武 退場は舞曲と共に
 ――きぃ、きぃぃ。
 朧侍さんの鎧が悲鳴を上げる。
 一糸乱れぬ連携。成程、其れは確かだろう。
 でも……彼方此方から聞こえて来る音は、旋律は、まるで不協和音の様だと。
 霧亡・ネリネ(心奏でる絡繰り人形・f00213)は僅かに眉を顰めて、袖のレースを握り締めた。

「あなた達は、舞台から降りられなくなっちゃったのだな」
 遠くに見える桜が作り出したであろう、此の舞台。
 上がったが最後、還る事が許されない檻。
 ……今も尚、イヤな音が響き続けているのを霧亡は感じていた。
 調律どころか、修理や調整すらもされずに在る『壊れた楽器』が自身へ迫るのを目にして――彼女は金と黒の指揮棒を振るう。

『――ッ!?』
「私が、私たちが退場を手伝おう」
 霧亡の身体を抱き抱える様にして、朧侍の斬撃から守ってくれた巨躯の楽器人形――フリューゲルへ御礼を告げてから、彼女は明言する。
 今日の演目は第一を省略、無伴奏の舞踏組曲:第二舞曲を。
 壊れかけても、音を奏で続けた……楽器(かれら)に対する、手向けの曲。
「フリューゲル」
 霧亡が地に立ち、すっと指揮棒を構えれば。
 名を呼ばれた人形が、頭部から音を少しだけ流す。
 ……叙情的な旋律に反応する様に、朧侍達が一目散に動き始めた!
「(速いのだ、でも……)」
 ――きぃ。きぃ。
 優れた指揮者は舞曲の中に混ざる、異質な音を聞き逃さない。
 初めは避け切れず、フリューゲルや身に纏う豪奢なドレスが傷付く場面も多かったが。徐々に其の回数が減っている。
 彼の人形は指揮に合わせて、付近の朧侍を薙ぎ払う様に踊り続けて。
 霧亡に近付こうとする敵がいれば、音波で動きを止める。
 ……舞曲も、パレヱドの第一演目も大詰めか。

『――ッ!?』
「さあ、退場の時間なのだ!」
 此れが、最後の一機。
 霧亡が手にした指揮棒、其の先端を迷いなく向ければ。
 演者の退場に華を添える様に、フリューゲルが流す音を大きくしながら――ぶぉん!と勢い良く腕を振るった。

 既に過剰暴走によって、限界だった事もあるのだろう。
 朧侍は剛腕の直撃を受けた後、壁に叩き付けられて。
 其のまま、静かに消えて行く。もう、悲鳴は聞こえない。

 ……第一の演目は今、終わりを告げたのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『夢散り・夢見草の娘』

POW   :    私達ハ幸せモ夢モ破れサッタ…!
【レベル×1の失意や無念の中、死した娘】の霊を召喚する。これは【己の運命を嘆き悲しむ叫び声】や【生前の覚えた呪詛属性の踊りや歌や特技等】で攻撃する能力を持つ。
SPD   :    私ハ憐れナンカジャナイ…!
【自身への哀れみ】を向けた対象に、【変色し散り尽くした呪詛を纏った桜の花びら】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    ミテ…私ノ踊りヲ…ミテ…!
【黒く尖った呪詛の足で繰り出す踊り】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【お知らせ】
 プレイング受付開始は『3月26日(木)8時31分(予定)』からとなります。
**********

●狂宴、夢幻に溺れて沈め
 絡繰武者の波を潜り抜けて、猟兵達は奥へと進む。
 さあさ、次の演目は何が出て来るだろうか。何だろうね?
 普通のパレードにはとても鮮やかで、煌びやかな華がつきものだけれど。

 ――フフッ……!
 ――ミテ、ホラ……綺麗、デショウ?

 ふと、耳に届いたのは……間違いない。女性の声だ。
 まさか、生存者が居たのだろうか?
 否。恐らく、其の可能性は極めて低いだろう。
 グリモア猟兵が言っていたじゃないか。
 性別までは明言していなかったが……此処には『夢を忘れた、元は桜の精だった者達』も存在するのだと。

『パレヱドノ時間、楽シイ時間……!』
『ミンナ、一緒ニ……踊リ、マショウ……?』
 其れはかつて、夢を追い続けた娘達。
 国民的スタアと呼ばれた者、華やかな舞台に立とうと努力し続けた者。
 彼女達の夢は文字通り、十人十色。
 共通点は――実際に見ている、君達の方が理解出来るかもしれない。

 ――ある娘は美しい脚に消えない、痛々しい傷痕が。
 ――ある娘は行進の最中、時折辛そうに咳き込んでいる。
 ――ある娘が身に纏うドレスには、心無い罵詈雑言が書かれていた。

 理由も様々だが……非業の死を遂げて、影朧と成り果てた娘達。
 彼女達は何故、幸せそうに笑っているのか。
 まるで、本当に夢が叶った様じゃないか。
 決して有り得ない『歪んだ過去』を今、体験している様な……。
『誰、カシラ』
『オ客様、デショウ、カ……?』
 娘達は最初、不思議そうに見つめて来るが……次第に表情が一変。
 怯え惑い、哀しみ嘆き、怒りを露わにし始めた。
 あの桜が原因なのか。どうやら、考えるだけの余裕は無さそうだ。

『ダメ』
『嫌、嫌ヨ……!』
『私達ノ居場所ヲ、奪ワナイデェェェッ!!!』
 道半ばにして潰えた夢の大きさだけ、怨念悔恨は深々と。
 華やかな世界への渇望を剥き出しにして、彼女達は敵へと呪詛を撒き散らす。
 ……同情しても良い、憐憫の目を向けても構わない。
 其れでも――君達は彼女達を倒して、先に進まなければならないのだ。

 桜の花弁が、ひらり。
 昏い呪詛を浴びて、真っ黒に染まった。


【御連絡】
 プレイング受付期間:
 『3月26日(木)8時31分 ~ 3月28日(土)23時59分まで(予定)』となります。

 連戦となる為、第一章に参加した上で負傷していた場合、其のまま引き継ぎます。
 (先の戦いにて怪我を負っていない場合は、お気になさらず……)

 また、頂戴したプレイングの数次第では
 恐れ入りますが、再送をお願いする可能性もあります。
 其の際は、グリモア猟兵より手紙にて御連絡させて頂きます。

 皆様のプレイングを、心よりお待ち申し上げております。
逢坂・理彦
夢が叶ったようだと…けれどこれは本当に夢舞台。
夢見て叶わなくて苦しんだお嬢さん方には酷なことを言うようだけど。
これは幻でしかない。

さぁ、もう一度踊りたいと言うのならそれは次の人生で。
UC【墨染桜・桜吹雪】
墨染桜は弔いの桜。この桜で送ってあげよう。

薙刀はUCに使ってるので攻撃は蒼丸で攻撃。
俺は神楽舞くらいしかできないけど。
せめてそれらしく剣舞と行こうか。
【誘惑】するように引きつけて【見切り】から【なぎ払い】



●櫻演舞 人の夢が生み出す舞台
 ――ユルサナイ。
 ――ユルサナイ、ユルサナイ。

 手にした夢を、掴んだ幸福を。
 全てを奪おうとする者達、猟兵達に向けられる視線は……鋭利な刃物の様。
 悲壮な叫び声が街中に木霊する中、逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)は黙している。ただ、泣き叫ぶ娘達を見据えていた。
 ――夢が叶ったよう、だと。
 されど。此れは桜が生み出した有り得ない過去、泡沫の夢舞台。
 酷な事を言うと理解している、其れでも……彼は静かに言葉を紡ぐ。
「これは、幻でしかない」
『嘘ヨ、嘘』
『私達ハ、ココデ……踊リタイノ……!』
 其れでも、娘達が其の言葉を受け入れる事は無かった。
 仮に受け入れたとしても、夢幻から覚める事を桜は決して許さない。
 ……彼女達もまた、朧侍と同じ。
 此の地に囚われてしまった、悲しき魂。

「さぁ、もう一度踊りたいと言うのなら」
 ――それは次の人生で。
 逢坂が持つ墨染桜が少しずつ、薙刀から花弁へと姿を変えてゆく。
 喪に服し、弔う為の……優しい薄墨がふわりと舞い始めた。
 最初から降っていたものでもなく、仲間達が生み出すものとは違う。
 異質な存在を払おうと、娘達もまた舞い踊る。
 来ナイデ、来ナイデ。ピンポイントで墨染桜を蹴り払い、彼女達は叫んでいた。
「(俺は神楽舞くらいしかできないけど、せめて……それらしく行こうか)」
 打刀・蒼丸を抜刀。
 墨染桜による桜吹雪に惑う娘達の懐に潜り込み、まずは一閃。
 地を蹴り、後方へ軽やかに着地――同時、別の娘へ横薙ぎに蒼丸を振るう。
 逢坂の剣技一つ一つが舞の様、鋭くも美しい。
 且つての憧れ、情熱を思い出したのか……足を止める娘が散見する程に。

「舞台から降りる時間だよ」
 転生は叶わないかもしれない。
 しかし、此処に留まっていては『次』は無いから。
 来世の可能性へ送り出す為に、逢坂は残る娘へ墨染桜の花弁を向けた。
 
「あぁ、綺麗だねぇ」
 墨染桜が舞う様に。
 消えゆく寸前に浮かべた、娘の本当の微笑みに……逢坂はぽつりと呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィーア・ストリッツ
幸福な夢に溺れている最中でしたか、これは失礼しました
ですが、この謎空間は完膚なきまでに破砕する予定ですので
「皆様もそろそろ現世から退場されるのが良いかと。最後の舞台ぐらいはお付き合いしますので」

死んでも夢に踊る貴女達ほどでは有りませんが、フィーアも踊るのはそれなりに得意です
なにせこの技も死ぬまで踊り果てる類のものですので
尤も――『敵が』死ぬまでですが

呪詛を纏う花弁、咲き乱れるのは構いませんが
この刃の旋風の前では、あまりに軽いです
ええ、吹き散らされぬようお気をつけ下さい

「生憎フィーアは荒ぶる影朧を鎮める心得は無いので。折り合いは自力でつけることをお勧めしますよ」



●櫻演舞 吹き荒ぶ嵐の如く
「幸福な夢に溺れている最中でしたか、これは失礼しました」
 ただ、ただ、淡々と。
 フィーア・ストリッツ(サキエルの眼差し・f05578)は、眼前の娘達に告げる。
 其の視線、言葉に憐みの色は無い。
 彼女が告げる言葉は、彼女にとって事前通告に過ぎないのだ。
 ――この謎空間を完膚なきまでに破砕する、と。

「皆様も、そろそろ現世から退場されるのが良いかと」
『嫌ヨ!ドウシ――』
「最後の舞台ぐらいはお付き合いしますので」
 其処から先、娘達の抗議の声をフィーアが聞く事は無かっただろう。
 鴉の意匠、『11』の数字が刻まれた黒い槍斧を手に、彼女は回転を開始。
 ポールウェポンの真髄、とくと御覧あれ。
 彼女の視界がぐるぐる、ぐるぐると目まぐるしく変化し続ける。
 娘達が放つ呪詛を纏う花弁、幾ら咲き乱れようと構わない。
「(この刃の旋風の前では、あまりに軽いです)」
 フィーアの身を切り刻もうと迫る花弁が、吹き散らされていく。
 彼女に届き、僅かに裂傷を負わせた花弁も存在したが……其れも最初だけ。
 加速し続ける程に、旋風の勢力も増していく。
 死した後も夢に踊る娘達程では無いが、踊る事はそれなりに得意だとフィーアは自負していた。
 ――尤も、此の踊りは敵と認識した全てが死ぬまでだが。
 時折聞こえて来る悲鳴、深手に呻く声が聞こえようが関係ない。

「生憎、フィーアは荒ぶる影朧を鎮める心得は無いので……」
 ――折り合いは、自力でつけることをお勧めしますよ。
 最高速度を乗せた、フィーアの力強い一閃が振るわれる!
 影朧を鎮める手段は無くとも、せめて此処から解放しようと思ったのか。
 其れとも、ただ単に敵だから屠っただけか。
 ……どちらか、或いはどちらでも無いのかもしれない。

 相対した娘達が全て消え去ったと同時、フィーアの動きも止まる。
 直後、彼女は負傷も気にせずに歩き始めた。
 ――さて、漸く謎空間の元凶と御対面ですね。

成功 🔵​🔵​🔴​

シノ・グラジオラス
リナ(f04394)と

仮初めの居場所は居心地いいんだろうが、所詮は仮初め。桜よりも儚いだろ
生憎と俺は優しくないんで
立ち止まるなら、無理にでも動かしてやるよ
悲劇に捕らわれ続けてるのは勿体ない
輝かしい物を見たいなら、足元じゃなくて前を向け

『範囲攻撃』の『マヒ攻撃』を付与した【束弾き】で多くの霊を穿つ
嘆きも叫びも雷の音で掻き消して、踊りには『フェイント』を交えた『見切り』、
『呪詛耐性』『激痛耐性』で耐えてリナは『かばう』

各々に囚われる姿が幼い頃のリナにも似て見えて、彼女の頭を撫でる
分かってる。ただ、リナは歩みを止めないでくれて本当によかったって思っただけだ

じゃあせめて、その半分くらいは持たせてくれよ


木槻・莉奈
シノ(f04537)と

届かぬものに手を伸ばしても、叶わぬ願いを追い続けても、苦しむだけよ
その嘆きは引き受けてあげる。だからもう、休みなさい
加害者になって、新たな嘆きや痛みを貴女達が負わないで

『高速詠唱』『全力魔法』で攻撃力重視の【トリニティ・エンハンス】
『2回攻撃』駆使し確実な各個撃破を狙いつつ
囲まれるようなら『範囲攻撃』『なぎ払い』

回避は『武器受け』を基本に
ダメージを受けた場合は『激痛耐性』『呪詛耐性』で耐久を

大丈夫よ、シノ
同情はしても、躊躇いはしないわ

…手を差し伸べて、根気よく支えてくれた人達がいるからよ
だからこそ、彼女達の嘆きを引き受けたって、私は潰れず立っていられるわ



●櫻演舞 嘆き俯く者、立ち続ける者
 ――お姫様。
 可愛らしいドレスが似合う、可憐な女の子。
 愛娘がガリガリに痩せ細って、否……痩せこけた姿に成り果てても。
 理想のお姫様にしようと、理想のお姫様を作り上げようと。
 実の母親による斜め上の教育は、矯正と呼んでも過言ではないだろう。
 そんな歪んだ、叶わぬ願望の被害者の名は……木槻・莉奈(シュバルツ カッツェ・f04394)。

「(届かぬものに手を伸ばしても、叶わぬ願いを追い続けても――)」
 苦しむだけよ、と木槻は強く思うのだ。
 ――ドウシテナノ、ドウシテ!?
 娘達の声に重なって聞こえて来る声は、彼女だけが耳にしているだろう。
 いや……彼女を見守り、今も支え続けている者――シノ・グラジオラス(火燼・f04537)ならば、似た様な声が聞こえているかもしれないね。
「仮初めの居場所は居心地いいんだろうが、所詮は仮初め」
 ――桜よりも儚いだろ。
 悲劇に囚われ続けている娘達は皆、嘆き悲しむ声ばかりを撒き散らす。
 其れが何故か、勿体無いとシノは感じていたのだ。
 まあ……彼には身内ではない者の面倒を見るつもりは一切無い。
 立ち止まるなら、無理にでも動かしてやるまでだ。

「生憎と、俺は優しくないんでな」
 敵のユーベルコードの効果か、増え続ける娘達の霊をシノは見据える。
 嘆く声が大きくなろうと、呪詛が色濃くなろうとも。
 全てを消し散らす、蒼き万雷を此処に。
 獰猛な狼を連想させる眼差しの先、バチッと蒼雷が弾ける様に光る。
 輝かしい物を見たいなら、足元じゃなくて前を向け。
「――昇天しな」
 ぱちんっ、とシノが指を鳴らした瞬間。
 針の様に正確に、蒼雷が娘達に牙を剥き始める!
 数多の矢で射抜く様に、時には編み重ねて槍の様に穿つ。
 そして……彼の激しい雷鳴が嘆きを、叫びを描き消していく。
 其の好機を見逃す筈も無く、蒼雷迸る戦場を駆ける少女の姿が在った。

「貴女達の嘆きを理解出来る、とは言わない」
 ――其れでも、似た様な感情は良く知っている。覚えている。
 願望は渇望に変わり果てて、満たされる事を知らない。
 だから……木槻は迷う事無く、告げるのだ。
「その嘆きは引き受けてあげる」
 もう踊り続ける事に囚われなくて良い、休みなさいと。
 ……加害者になって、新たな嘆きや痛みを貴女達が負わないで欲しいと。
 此の声が娘達に届かなくても、其れでも構わない。
 でも――大事な人、シノを傷付けようとする事は許さない!
 木槻が持つ薄花桜の刀身が、彼女の意志に呼応する様に淡く輝きを帯びていた。
「はあ――っ!」
 木槻はまず、シノを狙おうとする敵から斬り伏せる。
 確かな手応えを感じれば、続けざまに放つ一閃は別の個体へ。
 召喚された霊達は、彼の束弾きによって殆どが消し散らされている。
 ならば――本体である娘達を狙い、彼女は凛然とした様子で刃を振るう!

「大丈夫よ、シノ」
「分かってる」
 全ての娘達を倒し終えた後、シノが不意に木槻の頭を優しく撫でる。
 彼女の言う通り、同情はしても。其処に、躊躇いは一切無かっただろう。
 ……でも、ほんの少しだけ。
 先程の娘達と、幼い頃の彼女が重なって見えたから。
「ただ、リナは歩みを止めないでくれて……本当によかった、って思っただけだ」
「……手を差し伸べて、根気よく支えてくれた人達がいるからよ」
 だからこそ、彼女達の嘆きを引き受けられたのだと。
 潰れずに立っていられるのだと、木槻は微笑んで返した。
 ああ、本当に彼女は強い。強くなったと思う。
 其れでも――。

「じゃあ……せめて、その半分くらいは持たせてくれよ」
「……そうね、少しだけなら」
「半分」
「私が引き受けたんだもの」
 やれやれ。木槻は其れ以上、譲る気は無い様で。
 シノは苦笑を浮かべつつ、遠くの桜に視線を向ける。
 此処からでも嗅ぎ取れる血の臭い、其の濃さに……彼はふと、煙草に火をつけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木常野・都月
夢…
貴方達には夢があるのか。
影朧だけど、俺よりヒトに近いんだな。

俺は、そんな風に何かになりたいって、考えた事なかった。
猟兵になったのも、あるヒトに勧められたからだ。

だから、貴方達のその気持ちはよく分からない。
でも、その夢を大事にしてる事は、何となくわかる。
だから、これから俺は貴方達を殺すけど、恨んでくれていいよ。

[野生の勘、第六感]で、敵の動きに注意を払いたい。

UC【狐火】を使用、火力は強め。

敵の攻撃は[範囲攻撃]の[カウンター]で対処したい。
対処しきれないなら[呪詛耐性]で凌ぎたい。

必要に応じて[属性攻撃]で追撃も行えるようにしたい。



●櫻演舞 大事なもの
『私達ハ……マダ、踊リタイ……!』
 娘達が殺意を剥き出しにしながら、嘆く度に。
 禍々しい雰囲気を持つ黒色の呪詛が、彼女達の脚を侵食していく。
 ……嗚呼、なんて哀しい声だろう。
 呪詛にまで成り果ててしまった個々の願い、ヒトの夢。
 木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は静かに、言葉を紡ぎ始めた。

「夢……貴方達には、夢があるのか」
 輝かしい、煌めく舞台で踊りたい。
 皆に笑顔を与えられる様な、国民的スタアになりたい。
 ……そんな風に何かになりたい、なんて。
 木常野は、少しも考えた事が無かった。
 彼が『夢』という言葉を記憶したのも、つい最近の事だったかもしれない。
「影朧だけど、俺よりヒトに近いんだな」
 木常野が猟兵になった理由。
 助けてくれて、育ててくれたじいさんが勧めてくれたから。
 当初の彼はただ、じいさんが喜んでくれるから……猟兵になると決めただけで。
 其れ以外の理由も、彼の個人的な感情も無かったのだろう。
 少しずつ感情を学んでいるとは言えど、彼に眼前の娘達の気持ちは分からない。
 そう、分からないけれど――。
「でも……その夢を大事にしてる事は、何となくわかる」
 大事なもの、掛け替えのないもの。
 喪失の苦しみ、悲しみは痛い程に理解出来る。
 娘達にも、自分にとっての『じいさん』の様な存在が居たのだろうか。
 もし、そうだとしても……己は猟兵だから。

「だから、これから俺は貴方達を殺すけど恨んでくれていいよ」
 ――燃えろ、燃えろ、もっと燃えろ。
 ――焼けろ、焼けろ、焼け落ちてしまえ。
 木常野が持つエレメンタルロッドから、凄まじい熱量の狐火が放たれる!
 七十を超える火は複数結合し、幾つもの炎を生み出した。
 娘達が接近を試みるが、彼は炎を操り、一気に燃やし尽そうと。

「……っ!」
 攻撃力よりも、攻撃機会を増やす事よりも。
 確実に当てる事に重きを置いた蹴撃が、木常野の全身を数度打ち据える。
 ――だが、浅い。
 彼がカウンターとして放つ炎は、避け切れない程の紅蓮の波。
 其れが今、娘達を呑み込み……葬り去った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユエイン・リュンコイス
踊れや踊れ、死の舞踏(トーテンタンツ)。死んでも叶える夢在れど、死して屍拾う者もなし……キミたちの幕は既に降りている。申し訳ないけれど、ボクに出来るのは黄泉路への水先案内人だけだろうね。

頭数が揃っている上に手数も多い。こちらも『上げて』いかないとね。【F・エンジン】を稼働させて機人へ魔力を全力供給、性能を『限界突破』させよう。そのままUCを発動、過剰魔力で装甲を赤熱させて触れる花びらを片端から『焼却』。戦場を縦横無尽に駆け抜けさせながら焔の『属性攻撃、範囲攻撃』で纏めて薙ぎ払う。多少の手傷を受けても機械故の『継戦能力』で強引に動かすよ。

過去は過去へ。だけどキミ達の在り様はしかと記憶していこう。



●櫻演舞 赤灼の焔機
 死んでも叶える夢在れど、死して屍拾う者も無し。
 歪な夢幻で作られた舞台上、娘達は死の舞踏(トーテンタンツ)を踊り続ける。
 踊れや踊れ、踊り狂え。
 思うがままに、望むままに、パレヱドを楽しめばいいと。
 ……彼女達には、そんな声無き声が聞こえているのかもしれないが。

「キミたちの幕は、既に降りている」
 ユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)はそう、断言する。
 其れが全て、其れが事実。
 は各々きっと、現世で夢を叶えたつもりなのだろう。
 ……だが、悲しい哉。もう、終わった事。
 彼女達の人生(ゆめ)はとうの昔に潰えて、過去に置き去られた。
『違ウ、ワ……』
『嘘ツキ、貴女ハ……嘘ツキ、ナノネ……!』
 深き未練、強き妄執。
 はい、そうですか……なんて、娘達がすんなり受け入れる筈も無い。
 元より、ユエインは説得するつもりも無かった。
 申し訳ない、という気持ちは本心だけれど。
 ――ボクに出来るのは、黄泉路への水先案内人だけだろうね。

「こちらも『上げて』いかないと――ねッ!」
 十の絹糸が、宙に揺らめく。
 友である黒鉄機人の起動と同時、ユエインは『ファウスト・エンジン』へ接続、稼働を開始。魔力炉の内部時間を加速、加速、加速――ッ!
 汲み上げられる最大の魔力を全て、黒鉄機人へと全力で供給した。
 ――だが、まだ終わらない。
 過剰に注がれた魔力は灼熱と化して、黒鉄を赤灼に染め上げる!
 限界突破……今此の時、機人は万物を焼き尽くす焔そのものと変化したのだ。
「過去は、過去へ」
 呪詛を纏う黒桜の花弁が、赤灼の動きを止めようと襲い掛かる。
 数は多く、恐らく避け切れないだろう。
 ……片端から、焼却すれば良い話だけれども。

「だけど……キミ達の在り様はしかと記憶していこう」
 縦横無尽に機人を動かしながら、ユエインはぽつりと呟いて。
 彼の腕を振るい、娘を吹き飛ばしては進む。
 離れた個体は熱波が、少し遅れてから劫火が覆い尽くしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

九重・雫
【聖雫】WIZ
ナターシャが魂だけになった彼女達を救いたいっていうのなら…うん、ちゃんと待ってる。
ついでに新鮮なジュースを飲んで回復しとくよ。

導き手であるナターシャはあんな姿になった彼女達も救う対象なんだよね。
救世主である私が救うべきものは、私達の生きている世界であり、彼女達が世界を害する存在になった時点で倒すべき敵…なんだけど。
私達はどちらも救いを与えるものなのに、全然違う。
でもナターシャの浄化はキレイだし、嫌いじゃないから…協力するよ。
刀を鞘に収め禍々しいオーラを消す。
かわりにナターシャの浄化に合わせて、手向けに白い花びらを。(UC使用)
呪詛の力には染まらないキレイな花びらで彼女達を送ろう。


ナターシャ・フォーサイス
【聖雫】WIZ
夢半ばに倒れ、哀れな魂になってなお悪夢を彷徨う。
ならばこそ、救われるべきは貴女がたなのでしょう。
そも、我らが救うべきは、本来貴女がたなのですから。

天使達を呼び、雫さんの傷を癒します。
貴女がたの望みはなんでしょう。
貴女がたの痛みはなんでしょう。
その望みも、痛みも、私と天使達が受け止めましょう。
受け止め浄化し、そして導く。
身体の傷はこの力で癒せます。
我らが癒すは、心の傷なのです。

手向けは再び【祈り】【誘惑】【催眠術】【精神攻撃】の幸福な夢を。
進むべき導は【祈り】【全力魔法】【焼却】の聖なる光をもって。
痛みも苦しみも悲しみもない、楽園へと。
どうか貴女がたにも、ご加護のあらんことを。



●櫻演舞 導きの光は救いを齎すか
 荒んだ廃墟の筈なのに、華やかな舞台とは縁遠い場所なのに。
 ……娘達は笑う、わらう、ワラウ。
 其れが、偽りの晴れ舞台だと知らず。
 そもそも、自分達が現世に留まるべき存在ではない事にも気付かない。

「…………」
 全身に刻まれた裂傷が痛々しいが、九重・雫(救世主になりたかった忌み子・f16602)の眼差しは鋭い。
 妖刀「修羅」の鯉口を切り、何時でも交戦出来るように身構えていた。
 生前の夢を踏み躙られて、幸せも奪われてしまった。
 でも――娘達は今、影朧と成り果てた。
 どんな理由があっても、世界を害する存在になった時点で倒すべき敵。
 傷だらけの九重が、一歩踏み出そうと……其の動きをやんわりと制止したのは、ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)だった。
「ナターシャ……」
「……夢半ばに倒れ、哀れな魂になってなお悪夢を彷徨う」
 九重の殺気に反応したのか、娘達は踊るのを止めた。
 代わりに発するのは、絹を裂く様な悲鳴。

 ――ヤット、ヤット叶ッタノ。
 ――モウ、痛イノハ……ヤダ、ヨォ……!

 嗚呼、嗚呼。
 救いを求める声が沢山、聞こえて来るではないか。
 そも……我らが救うべきは本来、貴女がたなのですから。
「雫さん」
「……うん、ちゃんと待ってる」
 魂だけになった彼女達を救いたい、と。
 ナターシャがそう言うのなら、其れを無理に止める理由も無い。
 新鮮なジュースが入った保冷容器を手に、九重はそっと後ろへ下がる。
 もしも、ナターシャに命の危機が迫った時は……直ぐに動ける様に、もう片方の手には妖刀を手にしたまま。

「導くこと、此れ即ち使徒の責」
 祈る様に両手を組み、ナターシャはそっと両目を閉じる。
 生けるものが、道半ばで倒れぬ様に。
 死したものが、心安らかに楽園へと向かえる様に。
 彼女の祈りを聞き届けて、楽園より聖なる光が降り注ぐのだ。
 ――召喚:楽園の奇跡。
「貴女がたの望みも、痛みも、私と天使達が受け止めましょう」
 光と共に召喚された天使達は宙を漂い、ナターシャの言葉に頷いている。
 ……其の言葉を受け止めた、娘達の反応は様々だった。
 突然の出来事に動揺を隠し切れない者、救いを望む声を零す者。
 そして、ふざけるなと憤りを露わにする者。
『私達ノ居場所ヲ、奪オウトスル癖ニ……!』
「いいえ、此処は貴方がたに救いを齎す場所ではありません」
『黙レェェェッ!!!』
 呪詛を纏った娘達の蹴りが、何度も繰り出される。
 其れをナターシャは、天使達は……敢えて、受け止めていた。
 痛くない筈が無い。苦しくない筈が無い。
 しかし、彼女は使徒――楽園への導き手としての役目を全うしようと。
「……我らが癒すは、心の傷なのです」
 無論、ただ攻撃を受けている訳でもない。
 ナターシャは攻撃を受けた直後、娘達の頬や腕に触れていた。
 彼女達の心の傷を癒やす為の、とても幸福な夢。
 生前、夢を追っていた頃の。或いは、其れより前の光景。
 ……ただ、純粋に歌や踊りを楽しんでいた時の事。

「(私達はどちらも救いを与えるものなのに、全然違う)」
 過去の残滓、此の世界に蔓延る害。
 倒すべきである、という認識は変わらないけれど。
 先程まで飲んでいたジュース、そして降り注ぐ光のお陰で傷も大分塞がった。
 ――ナターシャの浄化はキレイだし、嫌いじゃないから。
 九重は妖刀を、鬼神の怨嗟を鞘に収めて――。
「終焉の時が来た。愚かな贄に、花一華の安息を」
 ナターシャ自身による導きの光に合わせて、九重もユーベルコードを発動。
 眩い光、そして真白のアネモネの花弁が娘達を包み込む。
 呪詛に染まらぬ花の香りに、柔らかな光に。

「どうか貴女がたにも、ご加護のあらんことを」
 ――アリガ、トウ。
 安堵した様な声が聞こえた、そんな気がした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リン・イスハガル
●心境
すたぁ、わたしには、分からない、世界。
きっと、いろいろあった。
だけど、お前たちは、いちゃいけない。だから、きるね?

●戦闘
ふらふらっとパレードに混じりながら近くにいるオブリビオンに尋ねる。
「忘れ物は、ありませんか?」
ないとか言われたらボソリと小さな声で呟く。
「いやいや、お主という存在がすでに未来においては忘れ物じゃろうに……」

はっ、ぼーっと、してた。戦わなきゃ。
近辺にいる敵も巻き込んで、イス・ハガルを使用。
味方巻き込まないように気をつける。
帰ったら、おにぎり食べたいから、頑張るね、わたし。



●櫻演舞 本当に大切なものは?
 ――きっと、いろいろあった。
 リン・イスハガル(幼き凶星・f02495)は幼心ながらも、そう理解した様だ。
 彼女のバディペット『ちくわ』は今も、主の足元をとてて、と。
 のんびり、のんびり、一人と一匹が歩いている。
「あれが、パレヱド……?」
 首を傾げるリンと対照的に、ちくわは警戒心を露わにしていて。
 そっと抱き上げようとするが……愛猫はするりと抜け出して、逃げてしまう。
 あらら、残念。しかし、近くの物陰に隠れてた様だ。
 近付いて来る娘達の中に溶け込む様に、彼女は忍び足で接近。

「(すたぁ。わたしには、分からない、世界)」
 華やかな様に見えて、其の裏ではどれ程の涙が流されて来たのか。
 ……リンには解らない。
 しかし、猟兵である彼女だからこそ、解る事もある。
「忘れ物は、ありませんか?」
『無イワ。ダッテ、私達ハコンナニモ、輝イテ――』
「いやいや」
 声が、普段よりも低く聞こえた気がした。
 低くて、まるで……闇の底へと引き摺り込もうとする、何か。
 仄暗い殺気を感じてか、娘達と呪詛を纏った桜の花弁が騒めき始める。
 咲いて、裂いて、血は流れずとも傷は増え続ける。
 其れでも尚――リンは、妖の如く、わらった。

「お主という存在が、すでに未来においては忘れ物じゃろうに……」
 現世のやり直しなど、出来やしない。
 希った晴れ舞台は、既に掌からするりと零れ落ちた。
 ――所詮、娘達は過去。
 現在からも、未来からも、置き去りにされた……最早、彼女達は人に非ず。
 にゃーっ!ちくわの鋭い鳴き声を耳にして、リンが目を瞬かせる。
「――はっ。ぼーっと、してた?」
 そういえば、と。
 本性が表に出たのか、本当に呆けていただけか。
 リンはやっと、自身が敵の攻撃を受け続けている事に気付いたらしい。
 ……このままじゃ、いけない。
 帰ったら、おにぎり食べたいから。

「頑張るね、わたし」
 黒桜の花弁が地へ落ちる。
 娘達の動きが、ぴたりと止まる。
 イス・ハガルによって生み出された氷の嵐は、リンを中心として荒々しく舞う。
 ……術者と一匹の猫以外が全て、凍り果てるまで。

成功 🔵​🔵​🔴​

エンジ・カラカ
まだまだ続く?
賢い君、賢い君、どうする?どうする?
うんうん、そうしよう。
燃やそう燃やそう。
そーんな夢は燃やしてしまおう。

アァ……賢い君が作った燃える迷宮サ。
だーって、居場所はココじゃない。
ココにいるべきじゃないヤツラは本当の場所に還らないとなァ……。

賢く生きるコトが出来なかったカラこうなった。
アァ……仕方ないネぇ……。
コレのいる世界じゃあお前らは生きれない。生き延びれない。
賢くなきゃ生き延びれない!

熱い?おかしな夢を燃やしているカラなァ……。
楽になりたい?
それじゃあ君の毒はどう?どう?
属性攻撃は賢い君の毒。
燃える糸から毒を放ち、絡まって離れない毒。

もう少しで楽になるヨ。
バーイバイ



●櫻演舞 純粋に、ひたむきに
「まだまだ続く?」
 場所は再び、高所。
 操り人形を括って、遊んで。
 其れでもまだ、此の空間は消えない。パレヱドは終わらない。
 ――賢い君、賢い君、どうする?どうする?
 エンジ・カラカ(六月・f06959)は楽しげに、懐の『賢い君』へと問い掛けた。

 さっきみたいに、括って遊ぶカ?
 アァ!毒でじわり、じわりもイイ。楽しい。
 さて……賢い君はどうしたい?何を選ぶのかな?

「うんうん、そうしよう」
 エンジ達にも迫りつつある、夢見草の娘達の集団。
 泣き叫ぶ様な声、消そうとする気も無い足音。
 敵が気付くよりも早く、彼は其の存在に気付いたらしい。
 オオカミの耳はとーってもイイ、からか。
 ……同時に、賢い君もどうしたいか決まった様だ。
「燃やそう、燃やそう。……草なら、よく燃えるカ?」
 燃やしてみれば判る事!
 こーんな夢は燃やしてしまおう。
 エンジは嘆き続ける娘達へ、赤い糸を無造作にばら撒いていく。
 敵に触れた直後――糸は轟々、燃え盛った。

『キャア……!?』
『何、ヨ、コレハ……!』
「アァ……賢い君が作った燃える迷宮サ」
 其処でようやく、娘達は屋根上の存在に気付いた様だ。
 しかし、もう遅い。遅過ぎるのだ。
 娘達の周囲には賢い君の炎、炎、炎ばかり。
 跳躍をしたくても、此の炎は呪詛も焼き尽くしているのか……跳べない。
「アァ……仕方ないネぇ……」
 純粋、ひたむき、夢に向かって真っ直ぐに。
 悲しい哉、其れは時に『愚直』とも呼べるもの。
 賢く生きるコトが出来なかったカラこうなった、とエンジは思うのだ。
 コレのいる世界じゃあお前らは生きれない。生き延びれない。
 ――賢くなきゃ、生き延びれない!
『熱イ、ヨォ……』
『舞台ガ、燃エ、チャウ……!?』
「熱い?楽になりたい?」
 ソレなら、と。
 賢い君にエンジが触れた途端、放られた赤い糸から毒が滲み出す。
 絡まって離れない猛毒が、娘達を蝕み始めた。

「もう少しで楽になるヨ」
 だーって、居場所はココじゃない。
 ココにいるべきじゃないヤツラは、本当の場所に還らないとなァ……。
 毒に呻き、次々と炎に呑まれていく姿を見つめながら。

 エンジは手をひらり、ひらり。
 バーイバイ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧亡・ネリネ
*アドリブ、連携歓迎

……お姉さん達からは、舞台にもっと立ちたかった、降りたくなかった、みたいな音がするのだ
私もそうなったら……。悲しくなりそうだ
だが、私たちの出番はまだ終わってはいないのでな。お先に進ませてもらうのだ
次は……そうだな、【諧謔】でリズムよく行くぞ
《盾受け》《オーラ防御》で《かばう》ように立ち回り、踊るように《範囲攻撃》で《なぎ払う》のだ
負けぬような《存在感》を音に乗せて演奏を続けるぞ(《経戦能力》)
お姉さんの踊りも素敵なものなのだ。だが、ここで出番を譲るつもりはないぞ



●櫻演舞 舞台への焦がれ、爛れて
 悲鳴をBGMとして、パレヱドは続く。
 娘達は嘆き……しかし、踊る事は決して止めない。

 だって、其れを望んでいたから。
 だって、此処ならずっと踊れるのだから。
 だって、だってだってだっテダッテ――私達ハッ!!!

「……舞台にもっと立ちたかった、降りたくなかった」
 お姉さん達からは、そんな音がする、と。
 巨躯の人形、フリューゲルの傍らに立つ少女――霧亡・ネリネ(心奏でる絡繰り人形・f00213)はぽつりと呟いた。
 声の調和、音程や技法なんて一切関係無い。
 各々が各々の絶望を叫び散らすだけの、酷い不協和音。
 耳が痛くなる様な多くの声、其処に込められた……悔恨、哀切。
「(私もそうなったら……)」
 きょうだいがみんな、みんな、居なくなって。
 指揮者としても、ましてや一人楽団すらも始められなくなったら。
 もしも、舞台に立つ事が出来なくなったら?
 霧亡は想像する事しか出来ないが、其れでも思う。悲しくなりそうだ、と。
 ……だが、己ときょうだいの出番はまだ終わりじゃない。

「お姉さんの踊りも、素敵なものなのだ」
 其れはきっと、霧亡の本心。
 指揮棒を構えて、彼女は静かに深呼吸を一つ。
 演目は諧謔(スケルツォ)、演者はフリューゲルと娘達。
 ユーモアたっぷりのリズムに乗せて、霧亡は糸を操り、動かす。
 呪詛纏う黒き蹴撃を、フリューゲルは時に受け止め、時に踊る様に回避。
「だが、ここで出番を譲るつもりはないぞ」
 娘達の攻撃が当たった……かの、様に見えたが。
 後方へたたらを踏む様な、フリューゲルの動作はわざとだ。
 派手に受けた振りから、くるりと一回転して――。

「――だから、お先に進ませてもらうのだ」
 回転の勢いを加えた大きな両腕が、娘達を勢い良く薙ぎ払った!
 娘達は其のまま壁に強く衝突、もう……動かない。
 演目も終盤に差し掛かったのだろうか。
 残る敵も同じく、霧亡とフリューゲルが次々に蹴散らしていく。

 今、此の時だけは。
 此処は戦場であり、娘達が望んでいた『舞台』と成っていた……かもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
おや、遅かったね梓
まぁこれくらい掠り傷のうちだし
いつもの事だしどうってことないよ
相変わらず君は俺の保護者みたいだねぇ

まるで自分達のほうが楽しいところを
邪魔しに来た悪役みたいで何だか気が引けちゃうね
残念だけど舞台は今日で閉演だよ
でも俺が観客になってあげるから
最期に存分に踊っていくといいよ

梓、手伝ってくれてもいいけど
倒すのは俺がやるからね

敵の攻撃を武器受けや見切りで躱しながら
まずは防戦に徹する
目を慣らしていくというのもあるけど
俺は彼女達の観客でもあるからね
良いステップじゃないか
梓によって敵の動きが止まった隙を見逃さず
UC発動、威力を増したEmperorで渾身の一撃
逝かせる時はせめて一瞬で


乱獅子・梓
【不死蝶】
(遅れて綾と合流)
まーた一人で勝手に行ったなお前は!
早速血を流しているしまったく
ここからはお前が無茶しすぎないように
俺が見張っておくからな

雑談はさておき次の敵を見据える
…転生することも許されず
偽りの幸せの幻想を見せられながら
この舞台の役者として延々と
踊らされていると思うと哀れだな
踊り続けるのは疲れるだろう、もう休め

すぐに倒しにかかれば良いものを…とは思いつつ
綾の希望を尊重してしばらくは様子見
まるで俺も観客にでもなった気分だな
もう満足したか綾!そろそろ休ませてやれ
頃合いだと感じたらUC発動
敵の動きを止め綾に攻撃の機会を与える
終わらない舞台に終止符を



●櫻演舞 保護者登場!?
 次なる演者達を目にした、からか。
 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は得物を大鎌『Duo』からハルバード『Emperor』へと変えた後、即座に構えようとする。
 ……此処ではない何処かで、朧侍達は全て処分されたのだろう。
 抉られた肩や掌の傷など、彼にとっては掠り傷。
 此の程度ならば、次の戦いに支障は無い。
「(さっきの絡繰よりは、良いね)」
 華やかな世界への渇欲。
 夢が潰えた事実に対する、見知らぬ元凶への無差別な怨恨。
 不特定多数に向けられる筈の憎悪は今、灰神楽に収束されている。
 嗚呼……激しい、楽しい、殺し合いが出来そうだ。
 娘達が黒く尖った足を踏み出す瞬間、彼もまた楽しげに笑っては敵へと――。

「綾……まーた一人で勝手に行ったな、お前は!」
「キュー!キュー!」
 間に割って入る影に、娘達は思わず後退する。
 だが、灰神楽は其の場から退こうとする素振りを見せない。
 其の二つの声の主をよぉく、よぉく知っているからだ。
 ――乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)と、彼の相棒の炎竜『焔』だと。

「おや。遅かったね、梓」
「遅かったね、じゃない!早速血を流しているし、まったく……」
「まぁ、これくらい掠り傷のうちだし」
「……掌は兎も角、肩の傷はそう呼べないと思うが?」
「そう?相変わらず、君は俺の保護者みたいだねぇ」
 嗚呼、嗚呼――ッ!
 此処が戦場で無ければ、小一時間程度は治療を兼ねて説教でもしたい所だが。
 漆黒のサングラス越しに捉えた敵影に、乱獅子は目を細める。
 焔もまた、嫌な気配を感じているのだろう……威嚇をする様に鳴いていて。
「偽りの舞台役者として、延々と踊らされているのは哀れだな」
『私達、ハ……憐レ、ナンカジャ、ナイ……!』
「どちらにしても……残念だけど、舞台は今日で閉演だよ」
 ……転生する事も許されず、偽りの幸福を見せられ続ける。
 乱獅子の言葉に、娘達は激情を露わにしていた。違う、と否定する様に。
 まるで自分達の方が、楽しい所を邪魔しに来た悪役みたいだと。
 そんな風に思いながらも、灰神楽は『Emperor』を全身を使い、くるりくるり。

「でも、俺が観客になってあげるから」
 ――最期に、存分に踊っていくといいよ。
 ちらりと赤レンズ越しに向けられた視線に、乱獅子は思わず溜息を零した。
 大方……手伝うのは構わないが、倒すのは自分がやると言いたいのだろう。
 直ぐにでも飛び出そうとする焔を止めて、彼は一歩後ろへ。
 代わりに灰神楽が改めて、娘達へと迫ろうと動き始めた。
「(すぐに倒しにかかれば良いものを……)」
 灰神楽の為にも、あの娘達の為にも。
 そんな思いを抱かずにはいられないが、乱獅子は止めなかった。
 仮に言った所で、素直に聞くとは思えないからか。
 ――まるで、俺達も観客にでもなった気分だな。
 灰神楽と娘達による『踊り』を見据えながら、彼は再び溜息を吐いていた。

「うん、良いステップじゃないか」
『何ヲ……!』
「狙いも良いし、殺意……いや、呪詛かな?」
 娘達の蹴撃乱舞を灰神楽は己の武器で受け止めて、外へ流す。
 もし間に合わなければ、彼女達の素早い動きを見切って躱していく。
 ……大分、目も慣れてきた。
 防戦一方の見せ掛けて、戦場を掌握しているのは灰神楽。
 さあ、次はどんな風に踊るのか。どんな舞で魅せて来るのか。
 ――瞬間、赤き竜皇の咆哮が響き渡る。
「もう満足したか、綾!」
 一時的に成竜と化した焔を背に、乱獅子もまた吼える様に声を張り上げる。
 ……そろそろ、休ませてやれと。
 終わらない幻想の舞台に、終止符を打てと。
 炎の幻覚に惑う娘達を見ては、血を統べる皇もまた応えようと。

「楽しかったよ、だから――おやすみ」
「踊り続けるのは疲れるだろう、もう休め」
 熱い、熱いと、娘達が叫んでいる。
 だが……一拍置けば、直ぐに聞こえなくなるだろう。
 紅い蝶の群れを纏った灰神楽が、皇を冠する斧槍を以って――全員の首を刎ねたからだ。

 楽しい時間、其の御礼。
 逝かせる時はせめて、一瞬で。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マナセ・ブランチフラワー
綺麗ですよ。
貴女たちは、綺麗です。

死してなお忘れられない情熱なんて、僕には一生、持てないでしょう。
夢を描いて、高みを目指した。その生き方そのものを、僕は美しいと思います。

……だからこそ、こんなところで彷徨わせるわけにはいかない。
【祈り】を胸に、杖を握る。【エレメンタル・ファンタジア】で炎の雨を呼び、道を切り開いていきます。
恨んでくれて構いません。抱いた悲しみも、憎しみも、どうぞぶつけていってください。
今の貴女たちを救うことができないのは、ちょっと悔しくはありますので。

ですけどどうか、安らかな眠りを。
そしてまたいつか、新しい夢を見られますように。

(アドリブ歓迎です)



●櫻演舞 安息、そして未来へ
 華やかな舞台。
 其処でキラキラした笑顔を浮かべる、沢山の演者達。
 見ている人々を笑顔に、元気付けられる、そんな素敵な人に。
 私も、私だッテ……ナリタカッ、た、ノ。

「綺麗ですよ」
 己の周りを取り囲み、どろどろな呪詛を叫び散らす娘達。
 彼女達全員と視線を合わせた後、マナセ・ブランチフラワー(ダンピールの聖者・f09310)は確かに呟くのだ。
 ――貴女たちは、綺麗です。
 彼はもう一度、はっきりとした声で告げる。
 人の夢は、儚いもの。其れでも描いて、高みを目指した。
 輝ける場所を目指して、己の人生を懸けた。
 ……其の生き方を、彼は美しいと感じたのだろう。
 いつか叶うと信じて……死して尚、忘れられない情熱を抱き続けている。
「(僕には一生、持てないでしょう)」
 ……だからこそ、こんなところで彷徨わせるわけにはいかない。
 抱いた夢と程遠い、此の場所に縛られてはいけない。
 マナセが金色の長杖を両手で強く握り締めれば、内に宿る炎の精霊が目を覚ます。
 そして、生み出すは炎舞う雨。
 術者である彼を中心に、激しい熱量を伴い……優しく降り注ぐ。

「…………」
 マナセは、聖者だ。
 自分の意志を貫く覚悟ならば、ある。
 でも……悲しい哉、彼に娘達を救う事は出来ない。
 此処からの解放。そして、骸の海へ還す事。
 其れしか、出来なくて……其の事実がどうしようもなく、悔しい。
「恨んでくれて構いません」
『イヤ……熱イ、イヤァ……!』
「……抱いた悲しみも、憎しみも、どうぞぶつけていってください」
 生前の恐怖、絶望。
 今、感じている悲嘆や痛苦も。
 全部、全部。受け止めて、忘れないから。
 娘達が此の先、転生した後に……新しい夢を見る事が出来る様に。

「(今の僕に出来る事は、此の程度ですから)」
 浄炎の雨は今も、降り注ぐ。
 道を切り開く為に、或いは娘達の来世の為に。

「どうか、安らかな眠りを」
 祈る様に目を伏せて、静かに開いた直後。
 マナセの視界に映ったのは、娘達の内の一人だった。
 安堵した様に微笑み、僅かに口を動かして……空気に溶けて、消えてゆく。

 ――ウレシ、カッタ、ヨ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

笹鳴・硝子
【鏑木邸一行・壱】

勝者の私は人のお財布で食べるお高いお肉を思いつつ、みなさんを監督するとしましょうねえ
さあお二人ともお頑張りなさい(偉そう)

ちなみに私はメンヘラは好みの範疇外です
せっかくの美人さん達が勿体ないあゝ勿体ない
生きているなら手を差し伸べる意味もあるでしょうが、影朧ですからね
先々々々代さんの言いつけを守った方が良いと思いますよ
――先々々々代さんって女性で痛い目をみた方なんですかね?そういうお血筋?

とまれ、やはり見ているばかりは心が痛むというもの
この蕨手刀子【流】を白い鈴蘭にして、手向けとさせていただきましょう


鏑木・寥
【鏑木邸一行・壱】

勝者は嬢ちゃんか
情けないなあ兄さん
じゃあ嬢ちゃんはちょっと休憩してていいぞ
その分そっちの兄さんが頑張る

んで、なんだそのめん。めんへら?ってのは?

でも良かったじゃないか
望みの煌びやかでギンギラなオネーサン達だぞ
……あのなあ、得意な訳ねえだろこのツラで

じゃあ俺はちっと時間稼ぎでも

と言っても俺のできる事なんて、このパレードと似たようなもんだ
全部煙に撒くだけ
疵も毒も無い、叶わない夢の続き
どうぞどうぞ飽くるまで

ただしあわせでいたかっただけなのにな、お前も
……悪いな、終わらせてやるだけの力も無くて
後は若いのと兄さんに任せるよ
"送れ"そうな姉さんは向こうへどうぞ

じゃあ嬢ちゃん、あと交代


ロカジ・ミナイ
【鏑木邸一行・壱】

あー!負けた負けた!って刀なんか放り出してたとこで
遠目には別嬪さんの集団に見えたからちょっと気を取り直したってのに
…ねぇ、この子たちって
もしかしてめんへらのお化けちゃんってやつじゃないのかい?
女子目線から見てどうなの、嬢ちゃん

こういうのには気を付けろってのが
先々々々代くらいからの教えでさ
旦那はこういうの得意だったりしないのかい?

僕はちょっとこう、離れて蛇でもけしかけとくよ
他人の恨み辛みはこいつらの好物だからさ
ほれほれ、おやつだよ
たんとお食べ



●櫻演舞 先々々々代曰く?
「勝者は嬢ちゃんか。情けないなあ、兄さん」
「……ちゃんと数えたんだろうね?」
「勿論」
 ――あー!負けた負けた!
 手にした妖刀を適当に放り出して、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は明らかに不貞腐れていた。むすっ、と頬が膨れている様にも見える。
 パレヱドだか何だか知らないが。
 改めてぐるりと見渡しても、目の保養は一人も居やしない。
 勝負にも負けて、人の金で食べる高い肉も無し。
 嗚呼……彼のやる気に支障が出てしまうのも、無理もない話だろう。
「じゃあ、嬢ちゃんはちょっと休憩してていいぞ」
「さあ、お二人ともお頑張りなさい」
 鏑木・寥(しあわせの売人・f22508)の言葉に、笹鳴・硝子(帰り花・f01239)は僅かに背を反らしつつ。どやっ、と。
 人のお財布で食べるお高いお肉、勝利の美酒と共に頂けば最高だ。
 ――勝者の私は、みなさんを監督するとしましょうねえ。

「…………」
 対照的な二人の様子を見て、鏑木は思案に耽っていた。
 ……実は男の方が食べそうだから、若干女性に気心を加えたとか。
 蜉蝣から紫煙を燻らせている間、兄さんからつい目を離した時もあったとか。
 小さな事が積もり積もって、気付いたら……?
 そんな事はきっと無いけれど、彼は言う必要も無いと判断した様だ。
「嬢ちゃんの分、そっちの兄さんが頑張るそうだ」
「ふーたりーのいーとこみーてみーたいー」
「……俺を戦力と数えねえでくれ、って言った筈だが?」
「僕も今はあんまり――あれ、別嬪さんの集団?パレヱド万歳!」
 立ち直りが早い!?
 遠目に見えた別嬪さん達を目指して、ロカジが即座に動く。
 耳に届く声は綺麗で、暗めの色合いだが華やかな衣装を纏う女性達。
 彼の荒んだ心を癒やす存在……だったら、良かったのにね。
 一目散に駆けていた足が、不意にぴたりと止まって。
「ねぇ、この子たちって……」
「ロカジさん?」
「兄さん、どうした?」
「もしかして、めんへらのお化けちゃんってやつじゃないのかい?」
 ……泣きっ面に蜂と言った所か。
 ロカジが発見し、三人が遭遇した女性達は……夢見草の娘達。
 三人を発見した直後、娘達の表情は一変。
 憎悪を露わに、仲間の霊を次々に呼び出し始めたではないか。
 だが、敵の戦力が増えた事よりも。
 そう!もっと、重要な確認事項がある……!
「女子目線から見てどうなの、嬢ちゃん」
「かもしれませんね。ちなみに、私はメンヘラは好みの範疇外です」
「んで、なんだそのめん。めん、へら?ってのは?」
「インターネットスラングの一種らしいですよ」
「へえ……でも、良かったじゃないか」
 ――望みの、煌びやかでギンギラなオネーサン達だぞ。
 鏑木の言う通り、容姿だけに注目すれば……御所望の華やかな美女、美少女達。
 笹鳴は勿体ない、あゝ勿体ないと憂いている様子を見せているが。
 さて、先頭に立つ筈のロカジは――居ない。
 何時の間にか、彼は娘達と距離を取っていた様だ。

「こういうのには気を付けろってのが、先々々々代くらいからの教えでさ」
「先々々々代さんって、女性で痛い目をみた方なんですかね?そういうお血筋?」
「内緒。旦那はこういうの得意だったりしないのかい?」
「……あのなあ、得意な訳ねえだろこのツラで」
 寧ろ、何故得意だと思ったのか。
 鏑木が煙管を片手に、深々と溜息を吐き出した。
 娘達も痺れを切らした頃合い、増殖した霊達と共に今にも駆け出さんとしていて。
 ――ただ、しあわせでいたかっただけなのにな。
 彼は静かに吸い口を銜えて、紫煙をゆらりと燻らせ始めた。
「(俺のできる事なんて、このパレードと似たようなもんだ)」
 一場春夢――時間稼ぎと称して、全部煙に巻くだけ。
 叶わない筈の夢(しあわせ)の続き。
 どうぞ、飽くるまで。どうぞ、消えゆく刹那まで。
 本当は骸の海に還す事無く、終わらせてやれれば良かったのだろうが。
 ……鏑木には、其れが出来ないから。

「兄さん、準備は?」
「上々だよ」
 好き嫌いが多く、困りものだけれど。
 好物の匂いを感じたのか、ロカジの背には七つ首の大蛇が姿を現していた。
 ……紅の双眸がぎょろりと娘達を見つめて、舌なめずりを一つ。
 巨躯に見合わぬ速さを以って、大蛇は娘達へと迫る……!
「ほれほれ、おやつだよ。たんとお食べ」
「……とまれ、やはり見ているばかりは心が痛むというもの」
「じゃあ嬢ちゃん、あと交代」
「わかりました」
 幸せな幻に連れられる様に、ふらふらと。
 不思議と来た道を逆戻りしている娘、数人を目にした後……鏑木は仄かに花香る煙を収めて、数歩後退。
 入れ替わる様に、笹鳴は隕鉄製の蕨手刀子【流】を手に、前へ出る。
 ……大蛇は七つ首全てを動かし、今も呪詛を喰い散らかし続けている。
 其れが娘本体か、或いは霊なのかは些末事。
 ロカジが飼う蛇は、他人の恨み辛みを好んで喰らうから。
 底知れない食欲のあまり、うっかり肉体も食い千切ってしまうけれど。

「(生きているなら、手を差し伸べる意味もあるでしょうが……)」
 所詮は影朧、倒すべき敵。
 でも……手向けの花くらいは、添えても良いかと。
 笹鳴の手から徐々に、気付けば多くの鈴蘭の花弁が生まれる。
 桜の花弁よりも純粋な白色、真白の花弁が娘達に降り注ぎ始めた。
 鏑木が見せている夢に微睡み、ロカジの大蛇に呪詛を喰い尽くされたならば。
 ……迷わず、直ぐに還れる様に。
 彼女の手に再び、【流】が元の形で戻って来た時……娘達の姿は消え失せていた。

「……後は若いのと兄さんに任せるか」
「寥さん?」
「ああ、何でもない」
 先に進んでいるであろう、ちいさいチーム。
 先程、遅れそうな姉さん達は逆戻りさせたが……どうなるだろうか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

夕時雨・沙羅羅
【鏑木邸一行・弐】

転生、
アリスも桜に導かれたなら、分かりやすく廻ったのだろうか
…いつ廻るか分からなくても、僕はいつまでも待つけれど

相対するのがアリスじゃないなら、僕はどちらでも良い
でも望むひとがいるなら、叶うよう動いてみる、ウズさん
ならば今回、演目は桜の演舞というやつか
それなら僕は、うたをうたおう

【霧】撒くように、【慰め】の唄を
る、ら、ら
言葉無く、震わせる
わるいことなど忘れてしまおう
ひたひたと、蜜ひたすように
この歌だけあれば良いと誘う【誘惑】
あまく、とろけて、夢を見よう

うまく夢に融けられないのなら、
そうだね、冷たい【唄】をあげる
革命の刃を、そのいのちに
ヨシュカさんの慈悲と共に
お見事、お見事と


ヨシュカ・グナイゼナウ
【鏑木邸一行・弐】


転生という理論は正直良くわかっていないのですけれど
それが雨野さまの願いなのでしたら。わたしは、ええ、お手伝い致しましょう
雨野さまが転生に全力で挑める様に、此度我らは守り桜の盾としての働きを
ね、夕時雨さま

雨野さまを狙う攻撃を【見切り】、【早業】を持って狙うはあくまで【武器落とし】
癒しの桜に散ってしまわれては困ります。レディたち、どうぞ此方へ【おびき寄せ】
甘い蜜の様なお唄が霧の中に蕩ける、夢も現も曖昧になったダンスホウル
ダンスには相手がいなければ
桜吹雪の誰そ彼に、一緒に踊って差し上げましょう


それでも、叶わない時は我々にお任せを
せめて痛みのなき様【一握】の慈悲を込めて
一刀のもと


雨野・雲珠
【鏑木邸一行・弐】

同族の影朧!?
こ、こんなことあるんだ…

転生を試みたい旨をお二人に伝えて、助力を請います

非業の過去に取り込まれたとはいえ、もとは妖精種族。
お二人に呪縛と怨念を散らして頂いて、呪詛を祓えば、
桜の精としての本分に
立ち戻らせることはできないでしょうか…

【桜吹雪】最大出力。
彼女たちに手向ける桜には、
哀れみの代わりに【鼓舞】の想いを込めます。
俺は神鹿の角、
【破魔】の桃の枝【春香る】持つ者。
影朧の鎮撫と魂送りを司る桜の精です。
お嬢さま方も、そうだったはず…!

うつくしいお二人を客演にお招きして、最期の晴れ舞台。
たくさんの花でお送りします、終幕のその先へ。
望んでください、どうか、光のさす方を。



●櫻演舞 演目:黒桜→??
 桜のつとめ。
 傷付き、虐げられた者達の魂を癒やす事。
 淀んだ『過去』ではなく、正しき『未来』へ向かう輪廻の輪に戻す事。
 とても真面目な桜の精――雨野・雲珠(慚愧・f22865)の事、責任感も人一倍。
 ……其れが、桜のつとめだから。

「同族の、影朧……!?」
 雨野は両目を見開き、心の底から驚いた様子を見せる。
 目の前には華やかな衣装を身に纏い、呪詛を叫び散らす娘達。
 彼女達の頭部には大小、形は様々なれど。
 角……否、木の枝が生えている。
 其れは紛れもなく、桜の精が生まれ持つ筈の桜の枝だ。
「こ、こんなことあるんだ……」
「……アリスは、居ないか」
「元は桜の精の影朧ですか……雨野さまも、初めて見たのですね」
 夕時雨・沙羅羅(あめだまり・f21090)とヨシュカ・グナイゼナウ(明星・f10678)もまた、各々の反応を見せていた。
 しかし、一番衝撃が大きかったのは雨野だろう。
 影朧達の魂を癒やし、転生へと導く筈の桜が。
 木乃伊取りが木乃伊と化した光景を、目の当たりにして……彼は決意を固めた。

「お二人共、宜しいでしょうか」
「雨野さま?」
「ウズさん、聞こう」
「彼女達の転生を試みたい、と思います」
 ――どうか、どうか。お二人のお力添えを。
 夕時雨、ヨシュカと真摯に向き合って、雨野は力強く願う。
 正直な所……娘達は言葉が通じる状態じゃない、恐らく理性も希薄だろう。
 転生させる事は出来ない、かもしれない。
 桜の精としての本分に立ち戻らせる事が出来るなら、其の可能性に賭けたい。
「相対するのがアリスじゃないなら、僕はどちらでも良い」
「転生、という理論は正直……良くわかっていないのですけれど」
 其れでも、と。
 片や柔らかな雰囲気を纏い、片やにこやかに笑って。
 夕時雨とヨシュカは視線を合わせて、共に頷いた。
 大切な仲間が、そうしたいと強く望んでいるのだから。
 断る理由なんて無い、叶う様に尽力しよう。

「シャララさん、ヨシュカくん……ありがとうございます!」
「此度、我らは守り桜の盾としての働きを。ね、夕時雨さま?」
「ならば今回、演目は桜の演舞というやつか」
 ――それなら僕は、うたをうたおう。
 る、ら、ら。る、ら、ら。
 夕時雨は言葉無く、声を震わせた。
 其れは霧、彼の歌声はとろける果汁の様な甘露を連想させる。
 呪詛を呑み込む様に、慰めの唄を響かせる。
 嘆く影朧も、彼女達が呼び寄せた霊達も。
 流れる水音は囁く様に、わるいことなど忘れてしまおう?
『――ッ!?』
『何ナノ、コレハ……?』
 娘達の中でも深い、深い憎悪を持っていた故か。
 こんな夢、蕩ける前に殺してしまえ!
 何人かが霊達を伴って、夕時雨と何か準備をしている雨野を――。
「癒しの桜に散ってしまわれては困ります」
 一歩、二歩、軽やかに。
 ヨシュカが開闢を手にして、娘達の蹴撃をひらりと躱していく。
 二人へ届きそうな攻撃は得物を振るい、狙いを逸らす。
 ――レディたち、どうぞ此方へ。
 黄昏時、誰そ彼の時間。
 夢も現も曖昧になったダンスホウルへ、ようこそ。
「――、――、――」
「折角の素敵な唄ですから。それに、ダンスには相手がいなければ」
 ぽたぽた、ひたひた。
 此の場を蜜で浸す様に、夕時雨の透き通る声が響き渡る。
 霧の中に蕩ける甘い蜜に溺れながら、一緒に踊って差し上げましょう。
 ……優しい桜吹雪の幕が下りる時まで。

「…………」
 二人が奮戦している間、雨野は箱宮からそっと何かを取り出した。
 清潔な布に包まれた其れは、桃の枝。
 神鹿の角から取れた、春香ると呼ばれる物だ。

 影朧に成り果ててしまう程の後悔、絶望、妄執。
 非業の過去に取り込まれたとはいえ、もとは妖精種族。
 呪縛と怨念が散らされた後、破魔の力で呪詛を祓う事が出来れば。
 ……桜のつとめを、果たせるだろうか。
 彼の胸中に不安が無いと言えば、嘘になるけれど。

「甘露の歌声、舞は軽やかに。そして――最後の演目、終幕です」
 ――ふわり。
 血の臭いが混ざり合った、桜の匂いが消えてゆく。
 代わりに雪の様にも見える桜吹雪が、三人と娘達を優しく包もうと。
 客演として美しい二人を招いた、彼女達の最期の晴れ舞台。
 手向けの桜が彩る中、雨野は息を深く吸い込んだ。

「俺は神鹿の角、破魔の桃の枝【春香る】持つ者」
 布越しにそっと握り、願う。
 どうか、望んでください。
 暗き過去ではなく、光の差す方を。

「影朧の鎮撫と魂送りを司る桜の精です」
『……レ』
「お嬢さま方も、そうだったはず……!」
『黙、レ……黙レェェェッ!!!』
「雨野さま」
「ウズさん」
 夢見ていた頃の面影は無く、演者としての本分も忘れ。
 獣の様な雄叫びを上げながら、娘達は雨野へと襲い掛かるが……届かない。
 右は、ヨシュカが一握の慈悲を籠めた一閃で臓腑を両断。
 反対は、夕時雨が革命剣による『唄』を以って、いのちの音を止める。
 結果……霊どころか、彼らが遭遇した娘達は一人も残らなかった。
 嗚呼、嗚呼。転生は叶わなかった――そう、思われたが。

『綺麗、ネ……』
「えっ……?」
 三人が来た道を振り返れば、其処には数人の娘達の姿があった。
 春の匂いを宿す煙が齎した夢(しあわせ)から覚めた後。
 少し離れた場所でも聞こえていたのだろう、見えていたのだろう。
 彼女達の脚から、真っ黒な呪詛は少しずつ薄れていて……。
『歌ッテ、踊ッテ……誰カ、ヲ……笑顔ニ……』
「はい……」
『思イ出サセテ、クレテ。アリガトウ』
 ――私達、最期ニ……舞台ニ立テタ、ンダネ……。
 数人の娘達は微笑みながら、眩い光となって……消える。
 沢山の優しい花吹雪に送られて、正しき輪廻の輪に戻っていったのだろう。
 雨野が再び、夕時雨とヨシュカへ頭を下げると……二人は良かった、と呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

…他者からの妬みに飲まれた者達か
憐れだが…宵に害成すならば手加減は出来ん
宵、怪我をするなよ?
メイスを手に切り込み『怪力』を乗せたメイスにて『薙ぎ払い』【蝗達の晩餐】を放ちつつ進んで行く
向かいくる敵は『盾受け』にて受けつつ『カウンター』を
宵は常に『かば』い行動するも、もし深い傷を負った際は宵が時間を稼いでくれている間に蠢く蝗達の上に立ち回復
宵の言葉にはこうやって助けてくれるではないかと笑みを
妬み嫉みが人々の罪穢れというならばこれも同じ様な物なのだろうな
以前も斯様な物に捕ま夢絶たれたのだろう?
憐れだが、ここに留まったとて本当の望みは叶えられなかろうに
…次の生こそ、望みを叶えるといい


逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

身を置いた環境による妬み嫉み
または、生まれ持った性質によるもの
あるいは、この世界がそうさせるのでしょうか
華やかなりし世界に取り残された娘たちよ
あなたがたの境遇には同情いたします
ですが、だからこそ僕たちはあなたがたと戦わねばならない
―――お覚悟を

突き進むザッフィーロを守るように「衝撃波」にて敵を「吹き飛ばし」つつ
同時に「高速詠唱」を行い術式を編みます

ザッフィーロが怪我を負ったならばその時間を稼ぐために
「属性攻撃」「全力魔法」「一斉発射」「範囲攻撃」をもって
【天撃アストロフィジックス】にて敵の掃討を試みましょう

まったく、心配する側が怪我していては世話がありませんね?



●櫻演舞 かくあれかし、されど聖者は祈る
「ザッフィーロ?」
「酷く、穢れに満ちているな」
 逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)とザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)もまた、夢見草の娘達と遭遇した様だ。
 美しい脚だけではなく、彼女達の周囲を漂う桜の花弁。
 何よりも彼女達自身の雰囲気が、どす黒い呪詛に塗れている。
 ……しかし、娘達はまだ二人の存在に気付いていない様だ。
 数多の、それも様々な罪や穢れに触れてきたザッフィーロだからこそ……彼女達の存在にいち早く気付く事が出来たのだろう。
「……他者からの妬みに飲まれた者達、か」
「身を置いた環境、または生まれ持った性質によるもの……」
 ――あるいは、この世界がそうさせるのでしょうか。
 娘達に問い掛けても、きっと答えは返って来ないだろう。
 憐憫を抱かない訳も無く。生前受けた仕打ち、境遇には同情もしよう。
 だが、しかし……。

「宵に害を成すつもりならば、手加減は出来ん」
「ザッフィーロには指一本、触れさせません」
 ――宵、怪我をするなよ?
 娘達が気付く前に、ザッフィーロが敵陣へと切り込んで行く!
 短く言い切られた言葉に笑みを浮かべて、逢坂もまた術式を編み始める。
『邪魔ヲ、シナイデ……!』
「無理な話だ」
 駆けるザッフィーロの影が、ぐにゃりと歪む。
 揺らいで、其れは形を変えて……数多の蝗を生み出してゆく。
 ――妬み嫉みが人々の罪穢れと言うならば、これも同じ様な物なのだろう。
 娘達が纏う、仄暗い呪詛に惹かれる様に。
 人々の罪穢の塊、蝗達は真っ直ぐに彼女達へと襲い掛かった。
『痛イ……痛イ痛イ痛イ痛イィィッ!!!』
「以前も斯様な物に捕まり、夢絶たれたのだろう?」
 肉を抉られる様な激痛が走る。
 振り払う様に、娘達が踊りに乗せて蹴りを繰り出すが……視界を遮られている為か、明後日の方向へ。
 其の隙を見逃さず、ザッフィーロはがら空きとなった脇腹へメイスを――。
「ザッフィーロ!」
「むっ……!」
 ザッフィーロは咄嗟に反対の手で、淡く光る盾を現界。
 別の方向から迫る呪詛の気配に反応して、攻撃を防いだ。
 敵が間髪入れず、次の攻撃を――否、出来ない。
 彼は一人ではない。準備は整った。
 さあ、宙を廻る星々を手繰り寄せて……流星群の矢を放とうか。
「――お覚悟を」
 華やかなりし世界に取り残された娘達へ、流星の手向けを。
 逢坂のユーベルコード――天撃アストロフィジックスによる矢は一斉に放たれて、的確に娘達を貫いていく。
 ……ザッフィーロに掠める事無く、確実に。
 一本一本の威力は凄まじく、蝗達が激痛を与えて動きを止めていた為か。
 流星群が消えた後……文字通り、娘達は一掃されていた。
 其れを確認して、ふうと逢坂は一息吐き出した。

「まったく。心配する側が怪我を負いそうになるとは……世話がありませんね?」
「こうやって助けてくれるではないか」
「当然です。言ったでしょう?」
 指一本、触れさせない。
 有言実行を果たしたからか、其れともザッフィーロだけが見ている為か。
 ……どちらも、かもしれない。
 何処か誇らしげにも見える笑みを浮かべる、逢坂の表情は晴れやかで。
 彼と向き合うザッフィーロの表情も、また同じく。

 此処に留まろうと、本当の望みは叶えられない。
 今此の時は叶わずとも……いつか、転生する事が出来たならば。
 ――次の生こそ、望みを叶えるといい。
 其れは『かくあれかし』とされてきただけ、ではなく。
 ザッフィーロ自身の優しさ……其れも含まれていた、かもしれない。

 呪詛に塗れた歌はもう、聞こえない。
 嗚呼、嗚呼……演者は皆、消えてしまった。居なくなった。
 残る影朧は――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『彼岸桜』

POW   :    【フレーム間干渉型UC】サクラメント・モリ
【各章に参加した猟兵達の分身を再現する。こ】【の分身は各章で猟兵達が使用した装備・技能】【・UC・戦法を使用し、複数人で連係する事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    【フレーム間干渉型UC】サクラメント・モリ
【各章に参加した猟兵達の分身を再現する。こ】【の分身は各章で猟兵達が使用した装備・技能】【・UC・戦法を使用し、複数人で連係する事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    【フレーム間干渉型UC】サクラメント・モリ
【各章に参加した猟兵達の分身を再現する。こ】【の分身は各章で猟兵達が使用した装備・技能】【・UC・戦法を使用し、複数人で連係する事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【お知らせ】
 プレイング受付開始は『4月日16日(木)8時31分(予定)』からとなります。
**********

●狂桜、パレヱド 終ノ刻
 ……其の桜が灰と帰したのは、何時の事だったか。

 かつて暮らしていた住民達が生まれるよりも前だった、かもしれない。
 不運な事故か、意図的な悪意故か。
 劫々と燃え盛る炎が、満開の桜を焼き尽くす。
 咲いて、散る事が花の定めならば。
 定めを全う出来ず、ただ焼かれていく最中に……其れは垣間見たのだろう。
 幻朧桜――神力を秘めし、咲き誇り続ける桜として在り続ける夢を。

 猟兵達は遂に、此のパレヱドを作り出した桜の元に辿り着いた。
 根元の周辺は正に、凄惨の一言に尽きるだろう。
 彼岸花の香りと、屍が流していたであろう血臭などが混ざり合っていて……思わず目を背けてしまう者が居ても、不思議ではない。
 赤々とした花の中央、彼岸桜は――遠目で見た時よりも、花弁が少なくなっていた。

 絡繰兵の集団へ、過剰な程の霊力を流し続けて。
 夢見草の娘達へ、偽りの過去を魅せ続けて。
 其の上で、猟兵達は誰一人欠ける事無く……此処へ来た。

 影朧として具現した際に得た、幻朧桜の特性。力。
 ――嗚呼、しかし。だがしかし!
 禍津の桜には限界だったのだろう、明らかに弱っている。
 集った猟兵達が一斉に攻撃を行えば、直ぐにでも倒せそうな程。
 まあ、そう簡単には倒されてはくれない様だが。

『…………』
 あれは、誰だ?
 判らない筈はないだろう?
 彼岸桜が残る力を使い、生み出した――歪な過去、其の具現。

 彼はだぁれ?彼女はだぁれ?
 自分自身かもしれない。
 或いは、過去に出会った誰かかもしれない。
 ……尤も、正しく現れているかは保証出来ないけれどね。

 幻櫻パレヱド、終ノ演目。
 演者は君達。そして、歪められた過去の幻影。
 愛情は憎悪に、憤怒は慈愛に。
 くるりくるりと歪められたのは見た目ではなく、心かもしれない。

 向かってくる最後の演者達を薙ぎ払い、討ち果たせば。
 ――君達の勝利、パレヱドは終幕だ。

【御連絡】
 プレイング受付期間:
 『4月16日(木)8時31分 ~ 4月18日(土)23時59分まで(予定)』となります

 連戦となる為、第一章及び第二章
 或いはどちらかに参加した上で負傷していた場合、其のまま引き継ぎます。
 (先の戦いにて怪我を負っていない場合は、お気になさらず……)

 また、頂戴したプレイングの数次第では
 恐れ入りますが、再送をお願いする可能性もあります。
 其の際は、グリモア猟兵より手紙にて御連絡させて頂きます。

 <特殊ルールについて>
 本シナリオでは彼岸桜との戦いではなく、
 彼岸桜が生み出した『歪んだ過去』と相対する事となります。
 過去の幻影をユーベルコードを用いて消滅させる事で
 彼岸桜を倒す事が出来るでしょう。

 現れる幻影は自分か、其れとも別の誰かか。
 どんな風に歪められてしまったのか。
 宜しければ、プレイング内にて書いて頂ければ幸いです。
 文字数削減の為、アドリブ歓迎の場合は
 プレイングの何処かに『○』と記入して頂ければ、其の様に判断致します。

 ペアの場合はどちらか。
 或いは、グループ参加の場合はどなたかお一人の幻影でも構いません。
 勿論、全員分の過去の幻影を考えて下さっても問題ありません。

 ――其れでは、パレヱド終盤。
 皆様のプレイングを、心よりお待ち申し上げております。
逢坂・理彦

『敵討ちができれば本望』
あれはかつての俺か…?
宿敵を倒すためにと戦って強くなろうと。
『戦うのは楽しい』
戦うことがただ純粋に楽しいと思ったことは確かにあったかもしれない。
『あぁ、この敵討ちが永遠に終わらなければいいのに!!』
ッ!?
『敵討ちを大義名分に掲げていればいつまでだって戦ってられるじゃないか!』
敵討ちが終わった後は自分はただ消えていくのみだと思っていたけれど。
俺は今も戦ってて。
それは守るための戦いだ。
それもまた別の大義名分かもしれないけど。
俺の帰りを待っててくれる人がいるからね。

だから今日も俺はそこへ帰るよ。

UC『日照雨・狐の嫁入り』



●櫻演无 帰る場所
 禍津の桜がはらり、はらり。
 散りゆく間にも、其れは歪んだ過去を生み出していく。
 其の内の一人と、逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)は対峙していた。

 嗚呼、見紛う筈も無い。
 茶色の髪、金の瞳。浮かぶ笑みは三日月の如く。
 襟巻が地面に落ちて、首の傷痕が露わになるが構うものかと妖刀を振るう。
 ――あれは、かつての俺か?
 故郷を滅ぼした元凶、『首刈り』の悪来を倒すべく。
 戦って。戦って、戦って……戦い続けていた。
 宿敵を屠る為の強さを手に入れる、其れだけを求めて。
 ……ふと、幻影の逢坂の動きが止まり、喉を鳴らす様に嗤い始めた。

『戦うのは楽しい』
「(そうだね、そう思った事も――)」
『あぁ――この敵討ちが、永遠に終わらなければいいのに!』
「……っ!?」
 幻影の己が吐き出した言葉は、逢坂を驚愕させるには充分過ぎた。
 戦いの中に、快楽にも似た楽しさを感じた事が無いとは言えないけれど。
 彼が思考を巡らせている間、幻影は言葉を吐き出し続ける。
『敵討ちを大義名分に掲げていれば、いつまでだって戦ってられるじゃないか!』
 ……ああ、そうか。
 此れが、歪み。此れが、捻じ曲がった望み。
 敵討ちが終わった後、自分はただ消えていくのみだと思っていた。
 逢坂自身はそう思っていた、けれど……。

「俺は、今も戦っている」
 手編みの若草マフラー、牡丹の煙草入れ、翡翠の指輪。
 目的が宿敵を倒す事から、大切な人を守る事に変わっただけで。
 其れもまた、別の大義名分かもしれないが。
 ――理彦くん、お帰りなさーい!
 柔和な雰囲気を纏う、愛しい人との日常を守りたい。其の気持ちに嘘偽りは無い。

「だから、今日も俺はそこへ帰るよ」
 嗚呼、雨が降る。
 其れは不可視の狐の嫁入り。
 敵討ちに囚われた幻影を貫く、針の様な数多の矢だ。
 幻影は消える瞬間まで、戦いへの執着を口にしていたが……逢坂の心は揺らがない。

 日照雨、桜雨が止んだなら。
 ……さあ、彼が待つ庵へ帰ろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木槻・莉奈
シノ(f04537)と


幻影はリナの母
歪んだのはお姫様になれない娘は要らないと捨てた無関心
この子を絶対お姫様にするという執着に

何で、ここに…
(過去に引き摺り戻されるような感覚に、目を背けて

シノ…うん…うん、大丈夫(ぎゅっと抱き着いて
逃げないけど…一つだけ心残りがあったの、思い出したの
ごめん、少しだけ待って(降ろしてもらって、向き合う様に立ち

恨んでは、いないわ
何時か私を見てくれるって信じて、“夢見るお姫様”でい続けたのは私自身だから

だけど、私はもう貴女の手を離れたの
もう自分の足で歩くの
だから…さようなら、ママ
私の知らない何処かで、幸せになってくれるよう願っているわ

シノ、もう大丈夫よ
ありがとう


シノ・グラジオラス
リナ(f04394)と


リナの母親の顔は見た事ないが、反応からしてアレが件のか
母親がリナを引き込もうとするのなら、リナを抱き上げてそれを妨害する

リナ、こんなに小さい相手にもう怖がらなくていい
それでもアレ(母親の幻影)が怖いなら、俺が消してやる
ただ、目は反らすな
ビーストマスターなら分かってるだろ?
目の前のアレも、己の欲に溺れた単なる獣だ

許可を得たら【紅喰い】で幻影を喰らって消す
例え幻影だろうと、彼女の手を穢させはしない

けれど幻影とは言え、彼女の母親を屠った手で触れるのは何となく躊躇われて
何となく服で手を拭ってから、恋人としてではなく見届けた者として
彼女の頭を撫でる
頑張ったな、リナ。お疲れさん



●櫻演无 偶像崇拝にさようなら
 ――守られるだけのお姫様なんて、まっぴらごめんなのよ。
 西洋のお姫様ではなく、武家の姫将軍の様に。
 凛とした佇まい、力強い眼差し。
 弛まぬ日々の努力が、今の木槻・莉奈(シュバルツ カッツェ・f04394)という存在を作り上げたのだろう。
 ……ああ、そうだ。
 彼女は、最初からそうであった訳では無い。

「マ、マ……?」
『莉奈、嗚呼……なんてこと……!』
 痛ましい光景を見た、とでも言う様に。
 木槻とシノ・グラジオラス(火燼・f04537)の前に、両手で顔を覆う所作を見せている女性が不意に姿を現した。其れが幻影と判断する事は、二人には容易いだろう。
 ……問題は、幻影が『誰』なのかだ。
 髪の色、顔立ち。よぉく見れば見る程、木槻に似ている部分は多い。
 何よりも、彼女の反応が証明してくれている。
「(リナの母親の顔は見た事ないが……反応からして、アレが件のか)」
「ママ、何で、ここに……?」
 お姫様になれない娘は要らないと、自分を捨てた筈なのに。
 どうして、此処に居るの?
 ――いいえ、違う。あれは幻影、の筈……本当に……?
 木槻の内側で、否定と疑問がぐるぐると巡る。息が、詰まる気がした。
 そんな彼女の様子にもまた、幻影は悲しげに目を伏せて。

『莉奈、莉奈……もう大丈夫よ』
「えっ……?」
『此れからは、ママが完璧なお姫様にしてあげる。まずはドレスが似合う様に体重管理から、かしら?髪は長いままで良かったわ、お姫様らしい髪飾りを沢山試してみないとね。他には何を、今直ぐ取り掛からなくちゃ……ええ、大丈夫よ。莉奈、私の可愛いお姫様(むすめ)。私が絶対絶対絶対絶対貴女を誰が見ても恥ずかしくないお姫様に――ッ!』
「ふざけんなよ、お前」
 幻影が伸ばした手は、届かない。
 其れよりも早く、シノが木槻を姫抱きした上で後方に跳躍したからだ。
 ……右の眼に映る感情は、激しい怒り。
 何が歪んでいるのかなんて、彼にとってはどうでもいい。
 彼女の気持ちを無視して、勝手な言葉ばかり撒き散らす輩が赦せないだけだ。
 小さく震える様子には気付かないふりをして、彼は更に強く抱き締める。

「シノ……」
「リナ、こんなに小さい相手にもう怖がらなくていい。ただ、目は逸らすな」
 ――それでもアレが怖いなら、俺が消してやる。
 例え幻影だろうと、己の欲に溺れた単なる獣だろうと。
 木槻に『親殺し』をさせたくはない、手を穢させたくはないと思ったからか。
 シノは直ぐにでもユーベルコードを発動しようとしたが……。
「ごめん、少しだけ待って」
「……わかった」
「逃げないけど……一つだけ心残りがあったの、思い出したの」
 小さな頃には出来なかった事。
 哀しくなかったと言えば、嘘になる。
 辛かった、苦しかった。心身共にボロボロだったと思う。
 其れでも……夢見るお姫様で在り続けたのは、他でもない木槻自身。
 何時かママが私を見てくれる、そんな夢を。だから――。

「恨んでは、いないわ」
『莉奈……?』
「だけど、私はもう貴女の手を離れたの」
 もう、自分の足で歩く。
 大切な友達、幼馴染。何よりも、共に在ると決めた人と。
 其れでもせめて、私の知らない何処かで幸せになってくれるよう願っている。
 ……木槻は最後に、そう告げてから。
「だから……さようなら、ママ」
『嫌、嫌ぁ……私は、貴女を、お姫様にするのよ……!』
「シノ、もう大丈夫よ」
『莉――』
 赤銅色の、巨躯の狼――スコルの爪が容赦なく幻影を引き裂く。
 何度も、何度も。幻影が、耳障りな言葉を発する事が無くなるまで。
 ……最後まで木槻の名前を呼んでいたのは親心か、其れともお姫様への執着か。
 シノは人の姿に戻った後、何となく服で手を拭ってから。

「頑張ったな、リナ。お疲れさん」
「……本当にありがとう」
 共に並び立つ騎士でいたい、と思うけれど。
 今だけは、自分を撫でる温かな手に心を寄り掛からせてもいいだろうか。
 つぅ……と一筋、涙が木槻の頬を濡らした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

霧亡・ネリネ

幻影:"きょうだい"(人のカタチを得たフリューゲル)
歪:敬愛から嫉妬へ。指揮者の姉さんが羨ましい

真っ赤な桜さん、まだ舞台から降りたくないのだ?
(自分と相対した幻を見て、表情を引き締め)
なるほど。ああ、なるほど。桜さんのアレンジが効いている。
びっくりだが、納得だ。お手本ならいっぱい見せてたしな。

……すごいな、私へ向ける幻は『フリューゲル』か。
大人の私みたいじゃないか、その姿!

嫉妬の眼差しを向ける幻に敢えて快活に笑い返し
最終演目は【機身奏填・心奏楽団】
まだ降りる気はないのだ。だって音楽が好きだからな!
本物のフリューゲルで《盾受け》《オーラ防御》を使って攻撃をいなし
《なぎ払い》で攻撃していくぞ



●櫻演无 指揮者は忘れない
「真っ赤な桜さん、まだ舞台から降りたくないのだ?」
 たーくさんの演者達は、もう先に降りてしまったのに。
 彼岸桜はまだ、消える様子を見せない。さてさて、どうするべきか。
 霧亡・ネリネ(心奏でる絡繰り人形・f00213)は首を傾げながら、傍らのきょうだい――フリューゲルへと問い掛ける。

『何もしなくていいさ』
 桜の花弁がゆっくりと、地に落ちると同時。
 誰も居なかった筈の場所に、豪奢なドレスを身に纏った人物が現れたではないか。
 中性的な顔立ち、真鍮にも似た黄金の双眸。
 霧亡へと向ける視線は、射抜く様に鋭いものだった。
「びっくりだが、納得だ。お手本ならいっぱい見せてたしな」
『……姉さんは察しがいいね。だから、指揮者に選ばれたのかな』
「ふふっ、当然なのだ!」
 嫉妬の眼差しに対して、霧亡は敢えて快活に笑い返す。
 演者、奏者としての自己評価の高さ故、もあるのだろうか。
  ……なるほど。ああ、なるほど。
 それにしても、此の幻は本当に良く出来ていると彼女は思う。

「私へ向ける幻はフリューゲル、か」
 ――大人の私みたいじゃないか、その姿!
 驚き、そして感動に、霧亡は目を輝かせながら笑っていた。
 そうだ。彼女が対峙した幻は、きょうだいが人のカタチを得た姿。
 本来、抱く筈の感情は歪んでしまったけれども。
 彼女が感動を覚える程、中々に精巧な容姿をしていたのかもしれない。
『些末事など関係ない。舞台から降りるのは姉さんの方だ』
「ん?私はまだ降りる気はないのだ」
 己よりも高い身の丈を活かして、幻影が得物を振り下ろす!
 音の調子の変化を見逃さず、聞き逃さず。
 霧亡は即座に、本物のフリューゲルで受け止めて。

 幻影には見目は良く出来ているが、欠けているものがある。
 声果てようとも、手が錆びようとも。
 其れを失ってしまえば、奏楽は絶えてしまうのだ。
 ――最終演目:機身奏填・心奏楽団。

 金管楽器のピストンを模した、滑奏音を複製。装備。
 幻影の動きに合わせて、フリューゲルで攻撃を受け止め続けて。
 音色に間が空いた、其の瞬間――!

「だって、音楽が好きだからな!」
 凄まじい速さで幻影の背後に回り、霧亡が滑走音を振るえば。
 ……指揮者への焦がれを呟き、幻影は消滅していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

九重・雫
【聖雫】
うーん…どう見てもナターシャだね。
ナターシャは敵になったら面倒だよ。
桜もそれを分かっていて私じゃなくナターシャにしたのかな。
…ちょっとむかつく。私だって弱くない。

歪んだ導き手は救済してあげなきゃね?
【UC使用】さぁルシファー、目の前にある全ては貴方が神へと至る力の糧、そして私が救世主へ至る道への糧。
浄化の光で全部薙ぎ払ってしまおう。薙ぎ払った後のエネルギーはルシファーが全部【生命力吸収】で吸い取っちゃっていいよ。
互いの糧を得るんだから交渉成立でしょう?
私を甘くみた罰を与えなくちゃ。思い知らせてあげなくちゃ。
天使が堕天使に喰われるなんて、とっても愉快。
パレヱドの終演にふさわしい演目だね?


ナターシャ・フォーサイス
【聖雫】
貴女は…私ですか。
それにしては、聖衣が黒く変色しているようですが。
…我らが教えも、酷く曲解しているようですが。
貴女が道を誤るのなら。
貴女が哀れな魂となったのなら。
使徒として、導いて差し上げねばなりません。
歪んだ私とはいえ、やるべきことは変わりませんから。

相対してわかる己の力の厄介さ…ですが、これはいかがでしょう。
真の姿、機械仕掛けの天使となり力を封じましょう。
天使を呼ぶのなら我々もまた呼びましょう。
雫さんへは反射の加護を。
どうか彼女を導くため、その力をお貸しください。
案ずることはありません。
貴女もまた、楽園の加護のあらんことを。

そして、最後に残った桜にも…
次は、美しく咲き誇れますよう。



●櫻演无 屍を重ねて方舟へ至れ
 ――楽園に至るには、肉体など不要なのです。
 人も、神も、過去の残滓も。
 肉体に縛られてしまった哀しき魂を、此の手で救済しなければなりません。
 さあ、楽園へ参りましょう。共に楽園を目指しましょう。
 痛みは一瞬、此れも贖罪の一つと心得なさい。

「貴女は……私、ですか」
「うーん……どう見てもナターシャだね」
 ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)と九重・雫(救世主になりたかった忌み子・f16602)の前に立ち塞がる幻影が一人。
 そう。其れは紛れもなく、ナターシャ本人の姿だった。
 ……尤も、其の幻影もまた歪められた存在。
 純白の聖衣や聖祓鎌は黒く染められて、漂う天使は朽ちて罅割れている。
 そんな事はどうでもいいと言う様に、漆黒の使徒は微笑んでいた。
『嗚呼、嗚呼……貴女達も肉体に囚われているのですね……』
「…………」
『肉体を滅して、魂を解放しましょう。楽園に至るには、肉体など――』
「……我らが教えも、酷く曲解しているようですが」
『さあ、曲解しているかなど判らないでしょう?』
 ――教団はもう、滅んでいるのですから。
 幻影は微笑みを絶やす事無く、二人へ聖祓鎌を向けようと。
 口にする言葉は明らかに、本物のナターシャとは違うけれど。
 敵になったら面倒な存在だと、九重は改めて感じていた。

「(桜もそれを分かっていて、私じゃなくナターシャにしたのかな)」
 ……ちょっとむかつく。私だって弱くない。
 九重の内、湧き上がったのは桜に対する苛立ちだった。
 私を甘く見た罰を与えなくちゃ、思い知らせてあげなくちゃ。
 穢れた天使に裁きを――誓約の杖を手に、彼女は堕天使を喚ぶべく詠い始める。
「我は救世主に至る者、神へと至る力ある者よ。虚ろなる影への裁きを、今此処に」
 漆黒に染められた六枚の翼。
 禍々しくも神々しい、相反する二つを有する光を纏う姿。
 悪魔であり、堕天使でもある者。
 鋭利な視線は、術者である九重へと向けられていた。

 ……さあ、取引をしよう。
 目の前にある全ては、ルシファーが神へと至る力の糧。
 そして、九重自身が救世主へ至る道への糧。

「薙ぎ払った後のエネルギーは、ルシファーが全部吸い取っちゃっていいよ」
 互いの糧を得るのだから、交渉成立でしょう?
 畏怖する様子も無く、堂々と言い切る姿を目にして。
 九重から提示された条件を聞いて、悪魔は静かに頷いた。
 ナターシャの幻影もまた、別の穢れた光を以って対抗しようと試みる。
 拮抗する光を見て、本物のナターシャは目を閉じた。
 ……堕ちた使徒の力は確かに強い。
 朽ちているとは言えど、天使の加護も確かにあるのだろう。

「……ですが、これはいかがでしょう」
 己の力が厄介だと、相対して理解したからこそ。
 ナターシャは手にした聖祓鎌を含め、真の姿へと変化し始める。
 まずは、両手両足が人のものから機械へと。
 背からは機械の翼が、まるで生えたかの様に現れて。
 其のまま、守護結界を展開。数多くの天使達を召喚して、九重へと加護を齎す。
「雫さん。どうか彼女を導くため、その力をお貸しください」
「うん、任せて」
『肉体など、楽園に至るには無用……どうして……』
「歪んだ私とはいえ、やるべきことは変わりません」
 ――哀れな魂を使徒として、楽園へ導いて差し上げねばなりませんから。
 九重の力強い頷きに頼もしさを感じながら、ナターシャは幻影へ光を放つ。
 其れは朽ちた天使達を退去させて、穢れた光を祓う力を持っていた。
 残る攻撃手段、聖祓鎌を振るおうと――嗚呼、遅い。

「天使が堕天使に喰われるなんて、とっても愉快」
 ――パレヱドの終演にふさわしい演目だね?
 九重が楽しげに笑った、其の直後。
 ルシファーが放つ光が幻影諸共、彼岸花咲き誇る地面を薙ぎ払う!
 光が晴れた後、ナターシャの幻影は影も形も無くなっていた。

「(次は、美しく咲き誇れますよう)」
 幻影の消失を重ねて、桜の花弁は更に散りゆく。
 ……花に魂が宿るのならば、吸い上げてきた生命が宿るのならば。
 其の全てに、楽園の加護があらんことを。
 機械仕掛けの天使は両手を組み、静かに祈りを捧げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月守・ユア

桜の力で眼前に現るは
黒翼を背に携えた己の姿
いつかの世界で生きて朽ちた過去の…

呆けてると
先に口開くは天使

”巡り廻っても
また…孤独から始まるんだね
僕の命は…”

ソレは酷く
悲しそうに呟く

”唯一という枷に縛られて
歪な力に命を冒されて…
また…僕は誰よりも早く死ぬ”

なんて孤独なんだ
悲痛に涙する天使

”また
独りで逝くのは嫌だ…
それならいっそ――”

アレは
僕の本音なのかな?
だとしたら、なんて惨めな姿
自嘲の笑みを零す

「それでも
尽きるまで生きるしかないよ
僕に幸福は罪だと言われたから」

”生きる事
後悔するよ?”
天使は問う

問いに頷き
刃を抜く

「いいの」

ただ呪詛だけを乗せてUCを放つ

だって
あの子への愛おしさに勝るものはないから



●櫻演无 それでも、いいの
 彼岸花の羽織を背に、歪な廃墟を駆け抜けて。
 月守・ユア(月夜ノ死告者・f19326)も、彼岸桜の元へ辿り着く。
 ……おや、どうやら先客の姿が見えたのか。
 彼女は足を止めて、其の人物を視た。
 嗚呼、嗚呼。決して見紛う筈が無いけれど、でも、あれは……。

「僕……?」
 ドッペルゲンガー、と呼ぶには明確な違いがあった。
 月守自身は、身に覚えが無いが……翼が捥がれた様な傷痕が、確かに残っている。
 しかし、眼前の幻影――揺らぐ己の背には一対の黒翼が。
 良く視れば他にも、髪には黒薔薇の髪飾りが。
 目線もほんの僅かに、幻影の方が高い様に視えるけれど。
 ……彼女が呆けている間に、黒翼の天使が言葉を紡ぐ。歌う様に、嘆く様に。

『巡り廻っても、また……孤独から始まるんだね。僕の命は』
 此の街と同じだ、と幻影は嗤う。
 歪な力に命を冒されて、蝕まれて、最期は果てる運命。
 唯一(かせ)に縛られて、本来有るべき寿命を擦り減らして。
 ……また、自分は誰よりも早く死ぬんだ、と。
『また、独りで逝くのは、嫌だ……』
 ――どうして、独りなの?
 其の理由を知っている様な、そんな気がしたのだろうか。
 月守は問い掛けを呑み込んで、代わりに自嘲めいた笑みを零す。
「(アレは、僕の本音なのかな?)」
 幻影の姿が、赤の他人だったならば。
 涙する様子を視て、何かしらの感情を抱いたかもしれない。
 だが、あれは己の姿をしていて。
 それならいっそ、と悲痛を詠う姿は……なんと惨めな事だろうか。

「それでも。尽きるまで、生きるしかないよ」
『……生きる事、後悔するよ?』
「いいの」
 呪いの銀花が、月守の眼前に舞う桜の花弁を両断。
 足りない。此れでは足りない。
 虚ろな存在でも構わない。生命を求めて、刃は――呪花は閃く。

「だって、あの子への愛おしさに勝るものはないから」
 例え、幸福は罪だと言われても。
 此の気持ちは変わらない、迷いなどない。
 大切な月歌姫の柔らかな笑顔が、月守の脳裏を過ぎると同時……幻影は横一線に両断された。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ


アァ、知ってる知ってる。
その姿は知ってる。懐かしいなァ……。
なーんでココにいる?
君はココにいるのにねェ……。

そうだろう賢い君。

目の前には明るく笑う君がいて
俺と同じ獲物を持っている
赤い糸
君から授かった、俺を操る真っ赤な糸

目の前で笑い同じ獲物を扱う君は
とてもとーっても楽しそうで
俺まで嬉しくなるんだ。

久し振りの感覚だ
こうしてまた君と遊べる
それならコレの力じゃなくて
俺として君に敬意を示すだけ

明るく笑う君は俺の望んだ君で
そうやって糸を操る君も俺の望んだ君

残念だったな。
所詮は歪んだ過去に過ぎない。
君は泣きながら俺に託して
君は最後まで俺に抵抗をしなかった

桜、知っているか
賢い君は、笑わない



●櫻演无 賢い君は笑わない
 其れは、おはようと武器が飛び交う牢獄での事か。
 其れは、絶望だらけで希望に満ちた牢獄での事か。
 とーっても楽しそうに、嬉しそうに、君は笑いながら呟いた。
 ――月が綺麗だね、なんて。

「その姿は知ってる。懐かしいなァ……」
 アァ、知ってる知ってる。
 ……なーんで、ココにいる?君はココにいるのに。おやおや?
 賢い君に問い掛けても、何故か返事がない。あれあれ?
 エンジ・カラカ(六月・f06959)の目の前には、明るく笑う人の姿。
 其の手には真っ赤な糸……そう、彼の得物と同じ物が。
『ハハッ、そうだね。あァ……とても、とーっても懐かしいよ』
 其の人物に名前はない。
 あるとすれば、彼の幻影の名は『賢い君』だ。
 友好的に笑い掛けながらも、幻影が放つ糸には殺意が染み込んでいて。
 さあ、殺そう。沢山、遊ぼう。あの日の続きをしよう!
 エンジも其れに応じる様に、赤い糸を手繰る。

 ――アァ、久しぶりの感覚だ。
 君から授かった、俺を操る真っ赤な糸。
 己の腕に、足に、幻影が操る糸が深く食い込んでいるけれども。
 同じ得物を扱う君がとても楽しそうだから、彼もまた喜びを覚えていた。

「(そう、望んだ)」
 明るく笑う君を。
 糸を手繰り、眼前の相手を屠ろうとする君を。
 エンジは望んでいた、が……所詮は歪んだ過去に過ぎない。
 君は泣きながら俺に託して。
 君は最後まで、俺に抵抗をしなかった。其れが、真実だ。
 でも、こうしてまた君を遊べるからこそ――。

「それなら、コレの力じゃなくて……俺として君に敬意を示すだけ」
 エンジの身体から溢れたのは、炎。
 真朱から解き放たれた炎は形を成して、鳥の姿を取る。
 彼を縛る幻糸を焼き尽くした後、主の意図を汲む様に幻影へと向かって行く。
 煩わしい桜の花弁ごと燃えて、燃やして。毒の抱擁に苦悶の表情を浮かべて。
 ……再び、君は居なくなった。

 桜、知っているか。
 其の事実を知らぬと言うならば。
 ――月に手を伸ばしても、決して届きやしない。

成功 🔵​🔵​🔴​

木常野・都月


俺は、過去の自分相手に何度か戦った事がある。

でもそれは過去の自分。
今の俺より劣っている前提だった。

でも過去を歪められた自分は…多分過去の自分とは別物だ。

例えば、自分の出自を知ってる俺とか。
狐にも妖狐にも成り切れない、半端な俺とは違って、きっと揺るがない物を持ってるはず。

だから俺より強そうに見えるのか?
まずは俺より格上だと思った方がいい。

[野生の勘、第六感]を使用、敵の俺に集中したい。

UC【精霊の矢】を氷の精霊様の助力で使用したい。

敵の攻撃は、[高速詠唱、属性攻撃]の[カウンター]で迎撃したい。
無理なら[逃げ足、激痛耐性]で凌ぎたい。

必要があれば[全力魔法、属性攻撃(2回攻撃)]で追撃したい



●櫻演无 知らない『過去』
 多くの依頼に志願して。
 様々な敵と相対し、戦ってきた。
 其れは、心身ともに辛苦を覚える時もあった事だろう。
 だからこそ、木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は何となく理解していた。
 ――今回の過去は、今までとは違う、と。

『解っているじゃないか、俺』
「…………」
 過去と聞いて、木常野は何が出て来るのか……幾つか予想していたけれど。
 嗚呼、じいさんじゃなくて良かった。
 幻影と言えどじいさんに攻撃をするのは、胸がぎゅうっとするから。
 自信に満ち溢れた表情をしている己の幻影を、彼は冷静に観察している。
『半端者が小細工をしようと、無駄だ』
「やってみないと分からない」
『……強気だな』
 自分の事を、何も知らない癖に。
 じいさんに拾われる前、森の中で狐として過ごすより前。
 自分が何処で生まれたのか、別の場所に居たのか……知らない。
 幻影は、木常野を嗤う。自分の『過去』を知らない癖にと、嘲笑っていたが。
 ――チィッ、チィー!
「チィ?」
 青白い月色の小狐がぷんぷん!
 とてもご立腹な様子で、幻影へ向けて鳴いていた。
 ……そう、幻影は知らない。
 出自を知らずとも、狐にも妖狐にも成り切れない半端者だったとしても。
 温かな出会いがあった事。
 誰かとの触れ合いが、自分を成長させてくれた事を。
 耳障りだと感じたのか、幻影は即座に高速詠唱を開始――禍々しい黒き矢を放つ!

「(過去を歪められた自分は、俺より格上だ)」
 同じ高速詠唱でも、向こうの方が速い。
 故に、木常野は幻影に先制される事だろうと踏んでいた。
 劣っているなど決して考えず、敵の精霊術が強力である事を想定して。
「氷の精霊様、ご助力下さい」
 木常野の周囲が急速に冷えていく。
 氷点下にも近い冷気が空気中の水分を集めて、凍らせて、矢を生み出してゆく。
 ――初撃から、全力で。
 幻影との差を埋めて、凌駕した要因はきっと……数多くの戦闘経験か。
 一本で駄目ならば、次の矢で撃ち落とすだけ。
 漆黒の矢がすべて撃ち落とされても尚、残る矢の雨が幻影を貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】○
過去なんて欠落している俺に
何を見せてくれるのかなと思っていたら…
あれは…紅い瞳の、若い女の人
勿論俺の記憶には残っていない
梓も同じだなんて奇遇だね

黒髪と銀髪の男の子二人が
女性に頭を撫でられ楽しそうにしている
じゃあ黒髪の子は俺かな?
俺達この所ずっと一緒にいるから
この桜には兄弟のように見えたのかもね

母親らしき女性を守るように
子供二人が俺達の前に立ち塞がる
梓達はどちらもイキイキと楽しそうなのに
俺らしき子は険しい顔だね
見る者全てを射殺しそうな鋭い目つき
失われた記憶の中の俺もこうだったのだろうか
そんな事を思いながらEmperorを振るう

※補足1
女性は父親は違うが綾と梓の実母
つまり二人は異父兄弟


乱獅子・梓
【不死蝶】○
お前も同じものが見えているのか綾
綾と違って記憶喪失でもない俺も
あの女には見覚えが無い

…ん?更に誰か増えたな
子供が二人…もしかして銀髪の方は俺か…?
女と子供二人が仲睦まじく過ごす様子は
まるで親子のようにも見えるな
ハハッ、ならこの歪んだ世界では
俺とお前は兄弟というわけか

いい面構えじゃないか昔の俺
母親を守る騎士といったところか
ご丁寧に焔まで再現されているな
いいぜ、焔と焔の対決なんて胸が熱くなる!
手加減無しで焔の炎を喰らわせる
それが「俺」への礼儀というものだ

※補足2
梓が物心つく前に母は死んだと聞かされ
綾は記憶喪失の為、二人共母に関する記憶は無い
実の親子としてあったかもしれない歪められた光景



●櫻演无 温かな可能性
 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)の視界に入ったのは、とある若い女性の姿だった。
 此の街の生き残り……という訳ではない、筈だ。
 柔らかな微笑みを浮かべる女性は実像ではなく、虚像。半透明の幻影。

「紅い瞳の、若い女の人……かな」
「お前も同じものが見えているのか、綾」
「梓も同じだなんて、奇遇だね」
「……あの女には見覚えが無いがな」
「勿論、俺の記憶にも残っていないよ」
 ――ならば、あの女は誰だ?
 乱獅子は即座に己の記憶を手繰り寄せるが、合致する人物は居なかった。
 もしかしたら、灰神楽の欠けた過去の中に居たかもしれないが……。
 残念。欠落している以上、思い出す事能わず。
 ……どうやら、幻影は女性だけではないらしい。
 ほんの僅か、悲しげに目を伏せた女性の元へ駆け寄ろうとする、小さな影が二つ。
「……ん?更に誰か増えたな」
 二人の子供は母に笑って欲しくて、何か声を掛けている様にも見える。
 子供達の様子に微笑み、女性は彼らの頭を優しく撫でていて。
 黒髪の少年が静かに笑う。銀髪の少年がにーっと笑う。
 とても嬉しそうに、心から楽しそうに。
 其の様子は、まるで――。
 灰神楽が答えを呟く前に、乱獅子がハハッと笑い、遮った。

「この歪んだ世界では、俺とお前は兄弟というわけか」
「さっきの戦いも含めて、俺達この所ずっと一緒にいるからね」
 ――此の桜には兄弟の様に見えたのかも、と灰神楽が呟くと同時。
 母親らしき女性を守る様に。
 此れ以上、お母さんを傷付けるな!とでも言う様に。
 二人の少年が、灰神楽と乱獅子を強く睨み付けていて。
 ……いや、二人だけではない。
 銀髪の少年が吼える様に叫ぶと、何処かから赤き竜が現れる。

「いい面構えじゃないか、昔の俺。ご丁寧に、焔まで再現されているとはな」
 幻影、しかも子供ではあるが。
 強い眼差しはさながら、母親を守る騎士の様。
 嗚呼、嗚呼。焔まで居るとは何と重畳な事だろうか。
 ――焔と焔の対決なんて胸が熱くなる!

『紅き竜よ、母さんを守れ!』
「紅き竜よ、幻影を呑め!世界を喰らえ!」

 キュ、キューッ!!!
 焔の鳴き声が重なり、紅蓮の炎が互いの中央でぶつかり合う!
 桜の花弁を焼き尽くす、灼熱の炎が舞う中で。
 灰神楽と黒髪の少年はただ、静かに対峙をしていた。

「(梓達はどちらもイキイキと、楽しそうなのに)」
 家族以外、誰も信じない。
 見る者全てを射殺しそうな、鋭い目つき。
 俺らしき子は子供らしさとは無縁の、なんと険しい顔だろう。
 母親の敵だから?家族の時間を奪う誰か、だから?
 見知った誰かに対する殺意が混ざっている様にも感じて……灰神楽は笑みを浮かべる。
「あんまり好きじゃないけどね、この姿」
『……っ、お母さんに近付くな!』
 紅い蝶の群れを見て、危険を察知したのか。
 幻影の少年が小型ナイフを手に、灰神楽へと迫るが――遅い。
 彼は刺突を軽々と躱した上で、愛用の得物『Emperor』を振り上げている。
「おやすみ」
『――ッ!!!』
 銀髪の少年が叫んだ名前は、何故か聞こえなかった。
 其れは、灰神楽自身が己の真名を知らぬ故か。彼は特に気にも留めないけれど。
 不思議に思いながらも、乱獅子は明確な隙を見逃さず。
「焔!」
「キュッ!」
 見目が幼くとも、全力で。手心など加えずに。
 其れが『俺』への礼儀というものだ。
 焔もまた、乱獅子の声に応じて――凄まじい熱量を持つ劫火を吐き出した!
 幻影の竜を、銀髪の少年を焼き尽くして。
 炎は更に伸びる、伸びていく。女性を焼き尽くそうと、迫り来る。
 ……女性は悲しげな表情を浮かべるが、決して避ける素振りは見せなかった。

 ――、梓。
 どうか……健やかに、生きてね。
 幻影の女性が零した呟きは声にならず。
 ただ、炎の波に呑まれて、静かに消えてゆくだけ。

 其れは歪められた、けれど有り得たかもしれない……温かな家族の姿。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユエイン・リュンコイス

最後は差し詰め、パントマイムの紛い物と言ったところかな。
大道芸は派手さが命。しかしてその肝たる手妻は一瞬一手間石火の早業。
細工は流々、さぁさ仕上げを御覧じろ。

現れるのは己自身。歪みと呼べるかは分からぬけれど、機人に焔刃、双銃、火砲に異能を一揃え。在るを幸いに全てを投入してくるはず。見る事が我が務め、故に見てきた物の全てを使い潰してくるだろう。敬意もなく、尊重もなく。

ボクはUCを起動しつつ、緒戦は防戦に徹しよう。桜も視界に入れられるよう立ち回る。知っている、嗚呼知っているとも。ボクの/キミの行いを、全て。
故にこそ――我が両瞳は素晴らしきモノを選び取る。
第二段階、起動。影法師ごと桜を消し去ろう。



●櫻演无 虚実改変
 ――キィンッ!!!
 機人同士が、燃え盛る刃をぶつけ合う。

 ――ガガガガッ!!!
 積載する銃火器を用いて、相手を撃ち抜かんと弾雨を生み出す。

 ユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)は糸を操り、緒戦はただ只管防戦に徹していた。
 大道芸は派手さが命、肝たる手妻は一瞬一手間石火の早業。
 最後の演目は差し詰め、パントマイムの紛い物と言ったところか。
 ……幻影の姿を視界に捉えながら、彼女はまた黒鉄機人を手繰り寄せる。
『疾れ、機人』
 後退した機人を追撃する様に、幻影の機人が凄まじい速さで前進。
 絶対昇華の炎を、わざと全身に延焼させて。
 強制的に、強引に。基本性能や内臓兵装に対して、限界突破を重ね掛けする。
 其処に、友としての敬意や尊重の意思は皆無。
 ――ただ、道具として使い潰すだけ。
「幻影だとしても、許し難いね」
『何とでも言えば良いさ、ボク』
 勝者こそが正義だと、幻影のユエインは見てきた物の全てを駆使する。
 ……見る事こそが、我が務め。
 黒鉄機人は其の務めを果たす為、共に在ったのかもしれない。
 本来の存在意義が『道具』だったとしても、彼女は黒鉄機人を『友』だと認識している。
 だからこそ、歪んだ紛い物に負ける訳にはいかないのだ。

「我が祝福されし両の眼よ、開眼せよ」
 知っている。
 嗚呼、知っているとも。
 此の眼は、素晴らしきモノを選び取る選定の両瞳。
 虚ろなりし禍津桜を剪定する、事象改変の魔眼である。
 細工は流々。さぁさ、仕上げを御覧じろ。

「――第二段階、起動」
 どろり、と。
 ユエインの両目から血が溢れるが、其れでも構わなかった。
 彼女は形を成した虚像の消去、並びに現実へと滲み出た過去の退去を続ける。
 ……音も無く消える、声も上げずに消えてゆく。
 幻影の消失を確認した彼女は、此のまま禍津桜も――嗚呼、だが、限界だ。
「くっ……!」
 骸の海へと帰すまでは、叶わなずとも。
 影法師のみではなく、残る花弁の大半をユエインの魔眼は消し散らしたのだ。
 後は、残る猟兵達に――。
 ふらりとバランスを崩した彼女の身体を、本物の黒鉄機人が支えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヨシュカ・グナイゼナウ
【鏑木邸一行・弐】

わたしですね、何故だかわからないけど蜘蛛の類が苦手で
根源的な恐怖というか
それなのにある事務所に入所した際の
初任務が化け蜘蛛の女王退治で
身の丈5mは超えてるし、戦えば爪で腹は貫かれるしで
あれは本当にまいりました

何故今その話をって?
気のせいでしょうか。見覚えのある女王さまがあそこに
(フリーズ)
(再起動)
以前倒したものより大きいのですけど?

金の瞳を光らせて大きな爪は【見切り】【早業】を持って【部位破壊】
うわ、目が全部こっち見た!やだー!
はっ!水と根っこで動きが…!今だ!ととどめの【串刺し】を

お二人共ありがとうございました…!
パフェ!それは素敵な提案ですね
是非ご案内をお願いしたく!


夕時雨・沙羅羅
【鏑木邸一行・弐】


ひとは昆虫が苦手な者が多いな
街暮らしは綺麗好きだからだろうかと思う森暮らし
いや、僕は池そのものだが
蜘蛛は害虫退治にも製糸にも役に立つから、僕個人としては歓迎したい
とは言え、嫌いなひとにしてみたら理屈じゃないか
ふぁいと、ヨシュカさん

目には目を、大きさには大きさを?
ふたりの動きを邪魔しないよう、蜘蛛の動きを封じよう
ぱくりと飲むには…大き過ぎるか?
ならば、水流で押し止めて、水圧で押し潰そう
自然に虫は付きものだから、花を枯らすのに虫退治は道理かも

…おつかれさまの慰労、パフェでも食べに行く?
良い店知ってるウズさん、流石地元民
苦手に立ち向かってくれたヨシュカさんの為にも、奢りなら任せて


雨野・雲珠
【鏑木邸一行・弐】○

「これだけは駄目」ってありますよね。
俺は桜の害虫以外なら歓迎ですから、
それこそちいさい蜘蛛なら掴んでどこかに逃が……
(絶句)
………お、思った以上にでっかかった。
……ヨシュカくん大丈……ヨシュカくん?
あ、目が据わっておられる。
シャララさん、俺たちちょっと離れましょう。

【四之宮】で足止めに参ります。
箱宮からいちど地面へ潜らせ、
腐った土と彼岸花の地下茎をちぎって
蜘蛛足にぎっちり絡めます。
流れた血を吸ったこの地ごと、お水で清められるといいですね。

やや、ご近所案内ならお任せください。
鏑木さんちのほど近くにある、素敵なカフェーを知ってます。
シャララさんのおさかな足でもゆったりですよ!



●櫻演无 苦手なものは苦手なのです
「わたしですね、何故だかわからないけど蜘蛛の類が苦手で……」
 ヨシュカ・グナイゼナウ(明星・f10678)曰く。
 彼自身の根源的な恐怖に加えて、ある事務所に入所した際の初任務。
 其れがなんと、化け蜘蛛の女王退治だったらしい。
 ……化け蜘蛛の女王が、一般的な蜘蛛と同じサイズである筈も無く。
 身の丈は五メートルを優に超える上に、動きがとても素早かったのだろう。
「戦えば爪で腹は貫かれるしで、あれは本当にまいりました」
 嗚呼、本当に参った。
 治ったから良いものの、あの女王とは二度と対峙したく無いものだ。
 え、何故今、其の話をって?其れは――。

「…………」
「……お、思った以上にでっかかった」
「ひとは昆虫が苦手な者が多いな」
 ヨシュカがフリーズしてしまうのも、無理はない。
 雨野・雲珠(慚愧・f22865)と夕時雨・沙羅羅(あめだまり・f21090)もまた、眼前に現れた幻影を見上げて……浮かんだ言葉を口にする。
 ――現れた幻影は、過去にヨシュカが戦ったとされる蜘蛛の女王。
 体躯は五メートルどころか、更に大きくなっている様な……?
 そんな歪み方をして欲しくなかった、と彼は切実に思っていたかもしれない。
「『これだけは駄目』ってありますよね……」
 桜の害虫以外ならば歓迎、と雨野は思っていた様で。
 其れこそ小さい蜘蛛ならば、掴んで何処かに逃がそうとも考えたが。
 此れは……流石に掴んで逃がすには、大き過ぎる。
「蜘蛛は害虫退治にも製糸にも役に立つから、僕個人としては歓迎したい……とは言え」
 ――嫌いなひとにしてみたら理屈じゃないか。
 森暮らし、というよりは池そのものだけれども。
 街暮らしは綺麗好きだから、昆虫が苦手な者が多いのだろうかと夕時雨は思う。
 ……まあ、花を枯らすのに虫退治は道理かもしれないが。
 ヨシュカの反応を見る限り、そんな理由を抜きにして心底苦手なのだろう。
 フリーズしたまま、彼は動かない。
 否、動けないのか……?

「ヨシュカくん大丈……ヨシュカくん?」
「……以前、倒したものより大きいのですけど?そうですか、これが歪みですか」
「(あ、目が据わっておられる)」
 ……再起動には成功したものの。
 元凶がまだ目の前に居る以上、精神面に安寧が齎される訳も無く。
 ヨシュカの眼差しに宿る複雑な感情を見て、雨野は夕時雨と共に後方へ。
「ふぁいと、ヨシュカさん」
「ヨシュカくん、ふぁ、ふぁいとです!」
「ありがとう御座いま――うわ、目が全部こっち見た!?やだー!」
 二人の声援を受けて、より一層やる気が漲る……かと思われたが。
 苦手なものは、どうしても苦手なのだろう。
 粘ついた視線が全て自分へと向けられるのが解り、ヨシュカは顔を青ざめた。
 敵の攻撃手段は嫌だけれども、覚えている。
 大きな爪に二度も腹を貫かれない様に、彼は機敏な動きで幻影の攻撃を回避。
 隙あらば、開闢にて部位破壊を試みるが、脚の数が多い。
 一本目を切り付けるよりも速く、別の脚が襲い掛かる。
 恐らく、一人で相手取るには厳しい相手。だが――。
「ぱくりと飲むには……大き過ぎるか?」
 おおきな水のさかなに変じた夕時雨が、尾びれを一叩き。
 ――直後、生み出された激流が一直線に幻影へと襲い掛かる!
 力強い水流に幻影は思わず怯むが、ヨシュカを狙う爪の動きを止める事は無く。
「俺も手伝いますね!」
 其の動きを完全に封じ込めたのは、雨野の箱宮から現れた桜の根だった。
 夕時雨が姿を変えた時、無数の根を地面へ潜り込ませていた様だ。
 腐った地面を抉り、彼岸花の地下茎を千切りながら進み、向かった先は幻影の真下。
 ……流れた血を吸った此の地ごと、お水で清められるといいと願いながら。
 動かぬ様に、ヨシュカに手を出させぬ様に。
 雨野は桜の根をぎっちりと、絡ませる。

「水と根っこで動きが……!」
 好機到来。必ず、当てる。
 ヨシュカの左目に刻まれた十字が、強い輝きを発し始める。
 桜の根によって地面に縫い留められて、水流の圧によって動きは大分鈍っている。
 即ち――見目は恐ろしくとも、図体の大きい的。
 さあさ、開闢による止めの串刺し!とくと御覧あれ!
「ふ――ッ!!!」
 巨大な蜘蛛の脳天に、ヨシュカは深々と刃を食い込ませる。
 幻影である以上、急所であると確実には言えずとも。
 今の彼には『彗啓』の加護によって、敵の核たる何かを穿つ可能性を高めていた。
 故に――此の一撃は今、必殺の刃と成る!
「ヨシュカさん、頑張った」
「すごい……!」
 巨大な幻影が崩れ落ちて、消えてゆく姿を見ながら……夕時雨と雨野は呟く。
 ヨシュカは巻き込まれない様、軽い身のこなしで着地。
 ほっと安堵の息を吐き出した後、彼はくるりと反転をして。
 手助けをしてくれた二人に対して、深々と一礼を。

「お二人共ありがとうございました……!」
「……おつかれさまの慰労、パフェでも食べに行く?」
「パフェ!それは素敵な提案ですね!」
「やや、ご近所案内ならお任せください」
 旧鏑木邸、そして此の廃墟の程近く。
 其処に素敵なカフェーがあるのだと、雨野は二人に告げる。
 夕時雨のおさかな足でもゆったり出来る、とても素敵な憩いの場所。
 ヨシュカもパフェと聞いて、左目を輝かせている。
 ユーベルコードとは違う、少年心による煌めき。

「是非、ご案内をお願いしたく!」
 苦手に立ち向かってくれた彼の希望とあらば。
 雨野が微笑み、喜んでと返した後。
 パフェのいちばん上の苺も是非、と続ける。
 ちいさいチームの最年長、夕時雨も奢りなら任せてと静かに頷いていた。

 地元民お勧めの、カフェでの一時。
 此の依頼の慰労を兼ねた、友人達との時間。
 三人では無く、六人で……いや、五人になるかもしれない?

 幻櫻パレヱド終幕まで、あと僅か――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鏑木・寥
【鏑木邸一行・壱】
今の内に慣れとけよ
花見の時期は凄いぞこっちは

ほほー、メイ子さん。強そう
きっと2人が戦ってくれるのだろうと一歩下がって
で、化け猫と……誰を取り合ったって?
何があったか詳しく聞きたいような聞きたくないような
あんた本当に27歳?サバ読んでないか?

つまり歪んでなくてもコテンパンにされた相手?
あー、でも寝首掻かれたなら不戦敗か

無言で少し前の嬢ちゃんを見る
見た感じのおっかなさなら多分負けてない
失礼って?いや、いついかなる時も女が一番怖い

おま、俺は肉体労働嫌いなんだよ逃げるな
……そもそも煙、効くのか?これ
…この猫がお前の愛しい子の夢見ても知らないからな

かくなるうえは
……よし、宜しく嬢ちゃん


ロカジ・ミナイ
【鏑木邸一行・壱】

うえっ、くっっさい
お花ちゃんの匂いもこうなるとキツいねぇ

…げっ

いや、
うわぁ…何でまた、よりによってアレが
桜の術だって話だけど、一応紹介しておこう
化け猫のメイ子さん…かつての恋仇
僕の寝首をかいてコテンパンにした挙句
愛しい相手を掻っ攫ってたのよ
めちゃ強

…意味がわからない?いいよ分からなくて
とにかく僕の猫嫌いはこの女のせいってこと

しかしメイ子…整形した?
確かもっとこう…いや、綺麗になったなって
嘘じゃないから爪立てないで!牙剥かないで!
耳と尻尾をしまって!にゃあと鳴くのをやめとくれ!

キャー助けて嬢ちゃん!廖さん!
僕は後方から火の玉を投げて応戦するよ
いいよ、持ってかれたもんに興味はない


笹鳴・硝子
【鏑木邸一行・壱】

「え、チェンジで」
そりゃあ寥さんに猫の集まる処へガイドをお願いしましたが、私の望んでいた猫は違う、こうじゃない

恋多き友人が「恋は戦争」とか常日頃言っているのですが、ロカジさんもそういうタイプでしたか。私は平和主義なんですよね。
つまりその『掻っ攫った』相手は合意の元なんでしょうか。そこ大事。

待ってください
なんで私一人前にいるんですか
か弱い乙女をなんだと思ってるんですか

「ねえ【晶】、おねえちゃんちょっと傷ついた」
愛用のペンデュラム【凝】に力を籠める
『ぼくのおねえちゃんは、こわくないよ!』
現れたざわつく影の獣の仔【晶】はメイ子に雷を落としながら、そう言った。うちの弟かわいい。



●櫻演无 げに恐ろしきもの
「うえっ、くっっさい」
「今の内に慣れとけよ。花見の時期は凄いぞこっちは」
「花見の席の料理は、寥さん持ちでしょうか」
「……考えとく」
「それにしても、お花ちゃんの匂いもこうなるとキツいねぇ」
 鼻が曲がる様な強い匂いは、眼前の桜が影朧だからではないらしい。
 鏑木・寥(しあわせの売人・f22508)の言葉に、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は思わずげんなりとした様子を見せていた。
 笹鳴・硝子(帰り花・f01239)は淡々と、周囲を見渡しているが……。
 花見と聞いて、僅かにそわそわと?
 人のお金で食べる物は、肉以外でも美味しく感じるものなのだろう。多分。

「……げっ」
 そんなおおきいチームの面々の前に現れた幻影は、見目美しい女性だった。
 キマイラか何か、だろうか。
 頭部と腰付近には、猫の耳尻尾を生やしている。
 幻影は着物の袖口を口元に寄せて、くすりと微笑みを浮かべていて。
 其の幻影にいち早く反応したのは此の男、ロカジだった。
「うわぁ……何でまた、よりによってアレが」
「知り合いか?」
「否定したいけど、顔見知り。化け猫のメイ子さん……かつての恋仇だよ」
 ロカジ曰く。
 ……彼の寝首をかいてコテンパンにした挙句、愛しい相手を掻っ攫った人物らしい。
 しかし、其の実力は折り紙付き。めちゃ強。彼の猫嫌いの原因。
 歪んでいなくてもコテンパンにされた相手、だろうか?
 ――あー、でも寝首掻かれたなら不戦敗か。
 鏑木はきっと二人が戦ってくれると信じて一歩下がりつつ、煙管を口元に。

「え、チェンジで」
『お断りよ』
「というか、A子やB美が良かっ……いや、良くない。レディはダメ、絶対」
「あんた本当に二十七歳?サバ読んでないか?」
 先に述べた女性達の件も含めて、何があったか。
 詳しく聞きたい様な、聞きたくない様な。
 鏑木は神妙な面持ちになりつつ、横目で幻影チェンジを希望している笹鳴をちらり。
 ……こっちもこっちで、雰囲気が恐ろしい。
「確かに猫が集まる処へガイドをお願いしましたが、私の望んでいた猫は違う」
『だったら、早く其処をおどき!』
「チェンジをしてくれるなら」
『はあ?』
「私は癒やされる愛らしい猫が見たいんです」
 会話の内容は平行線。
 しかし、片や剣呑な雰囲気が漂っていて。
 もう片方も猫が見たくなったのか、チェンジに応じない化け猫へ冷たい視線を送っている。
 見た感じのおっかなさなら多分、負けていない。
 鏑木はそう判断したのか、二人から更に一歩後ろへと。離れる様に。
 ……いついかなる時も女が一番怖い。
 だと言うのに、ロカジは幻影をじっと見つめつつ。

「メイ子……整形した?」
『はぁ?』
「確か、もっとこう……いや、綺麗になったなって。もしかして、これが歪――」
『おだまりよッ!!!』
「キャー!?助けて、嬢ちゃん!廖さん!」
 ――フシャーッ!!!
 決して。決して嘘では無いだろうが、幻影の不興を買ったらしい。
 耳と尻尾をしまって!にゃあ、と鳴くのをやめとくれ!
 ロカジは慌てた様子で後方へ脱兎。
 隠れる場所は何処だと、鏑木の背へと一目散に駆け寄ろうと。
「おま、俺は肉体労働嫌いなんだよ。逃げるな」
「いやいや、猫は無理」
「……この猫がお前の愛しい子の夢見ても知らないからな」
 まじないの篭った紫煙を向けようとして、鏑木はふと考えた。
 そもそも煙、効くのか?これ。
 幻に幻をぶつけて、果たして効果があるのか。
 確か、彼岸桜は幻朧桜の特性を持っていると聞いた事があるような……?
 ――かくなるうえは、方法は一つ。

「……よし、宜しく嬢ちゃん」
「待ってください。なんで私一人、前にいるんですか」
「僕は後方から、火の玉を投げて応戦するよ」
「あなた達、か弱い乙女をなんだと思ってるんですか」
 神様、仏様、笹鳴様!
 掻っ攫った相手が合意の元なのか。
 ロカジも『恋は戦争』と常日頃口にする、恋多き友人の様なタイプなのか。
 此れは彼女にとって、其れらよりも重要な問題だ。
 か弱い乙女に押し付けるとは言語道断。
『別に私はどちらでもいいけどねぇ……』
 ――どうせ、三人共殺す事に変わりは無いのだと。
 幻影は妖艶な笑みを浮かべながら、ロカジが放つ火の玉を避け続けていた。
 可愛らしい猫も見られず。幻影退治の主戦力を務めなければならず。
 はあ……。笹鳴が深々と溜息を吐きながら、凝(こごる)へ力を籠め始める。
「ねえ【晶】、おねえちゃんちょっと傷ついた」
 雷水晶を中心として、砂鉄が集まる様に……影が騒めき、蠢く。
 獣の形を成すと同時に、金色の目がぎょろりと幻影を見た。
 UDC名、晶。唸る様な音を立てて、全身に雷を迸らせている。
『な、なんだい、此の――』
『ぼくのおねえちゃんは、こわくないよ!』
 怒りの雷撃が、幻影の脳天を射抜く様に撃ち落とされる!
 幻影は即座に回避を試みるが、向かおうとした先には火の玉が飛来する。
 忌々しい、とロカジを睨もうとした刹那――眩い閃光に包まれ、焼き尽くされて、化け猫の幻影は其の場から消え失せた。
 ――うちの弟かわいい。
 猫は見られなかったけれど、弟がかわいいから良しとしよう。
 嗚呼、でも……。

「ところで、肉だけでは足りないと思いませんか。美味しいパフェを要求します」
「美人の店員さんが居る所なら、もっと良いね」
「……兄さん、全く懲りてないな?」
 美味しい食事処を希望します、と笹鳴がぽつり。
 視線はおおきいチームのガイド役である、鏑木へと。
 メイ子の幻影が消えた事で安堵したからか、ロカジの視線も彼に向けられていて。
 ――店の場所なら教えるから、行きたい奴らで行って来ればいい。
 尤も、向かうのはちいさいチームの面々と合流してからになりそうだが。

 一場春夢。
 消える運命にある禍津桜に、束の間のしあわせを。
 鏑木は煙管からゆらり、紫煙を燻らせていた。

●鎮めや鎮め、禍津幻櫻
 花弁を全て散らしてしまった為か、彼岸桜が消えてゆく。
 根元の周辺で咲き誇っていた彼岸花も、すべて。
 ……まるで夢幻の出来事の様に、戦闘による街の損傷も消え失せていた。
 しかし、確かな事実も此処に在る。
 此の街はもう、逢魔が辻へと変わり果てる事は無い。

 パレヱド終幕。
 次に迎える黄昏は、美しい光景が見える事だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年04月26日


挿絵イラスト