●グリモアベース
タビタビ・マタタビ(若き猫黒騎士・f10770)は、アルダワ魔王戦争の戦果を労いつつ、新たな依頼の説明を始めた。
「前に、ヒーローズアースで戦ったオブリビオン『ジェネシス・エイト』達のことは覚えてる? その1体、鋼神ウルカヌスは生き延びて、反撃のチャンスをうかがっているんだよ」
鋼と炎の神力を使って『神鋼兵団』なる兵力を整え、大規模な反攻を狙っているようだ。
「でも、ウルカヌスの居場所を予知できたんだ。今いるのは、ラグランジュポイント。地下を構成する宇宙船の中だよ」
廃棄された区画であり、現在の住民が知ることのない場所だ。その場所を隠れ蓑に、ウルカヌスが戦力を集結させているようなのだ。
「戦力の大半は、プルトン人だよ。神鋼の鎧を装着した、強力な部隊になる予定なんだけど……まだ準備が間に合ってないみたい」
そのため、数は多いが、普通に対処が可能だ。
問題は、ボスクラスの存在である。
「星纏騎士・メテオーロ。神鋼の鎧を装着して、高い防御力を持ってるよ。神鋼の鎧が最大の力を発揮できる聖地じゃないから、完全ではないみたいだけど……強い事にかわりはないし、鎧の隙間を狙っていくのが有効だね」
そして、この騎士を突破すれば、宇宙船のラボにて、ウルカヌスとの戦闘となる。
「ウルカヌスは、戦争みたいに絶対に先制攻撃してくるよ。対抗する準備がないと、ちょっと大変かも」
ただでさえ、相手は強敵。何も作戦がない場合、苦戦は免れないだろう。
「レディ・オーシャンは追い詰めたみたいだし、ウルカヌスも倒して、戦争を完全に終わらせてほしいんだ! よろしく!」
にゃっ、とタビタビが両手を挙げた。
七尾マサムネ
手ごわい鋼神に一撃を!
●一章
ラグランジュポイント・地下通路内で、プルトン人の集団と戦います。
神鋼の鎧は装着していないので、特別なプレイングは必要ありません。
●二章
元々は宇宙船の室内運動場だったホールにて、星纏騎士・メテオーロと戦います。
神鋼の鎧を着けているので、物理・魔法・精神系問わず、高い防御力をもっています。
隙間を狙いましょう。
●三章
旧宇宙船の研究施設を利用したラボで、色々準備中のウルカヌスと戦います。
ウルカヌスには絶対に先制されてしまうので、何とかしのいでください。絶対に先制してきますので(大事な事なので二度言いました)
それでは、皆様のご参加、お待ちしております!
第1章 集団戦
『プルトン人』
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POW : フルメタル・スキン
全身を【地球には存在しない未知の金属でできた装甲】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃を学習し、味方全体で共有。その蓄積】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD : ブラックアイド・ヒューマンズ
【眼以外は完璧に地球人に擬態した潜入工作員】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ : アンノウン・ウェポン
【未知の科学技術で作られた光線銃やその銃剣】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
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ラグランジュポイントを構成するのは、衝突した多数の宇宙船。
住民は、その上に文明を築きあげ、暮らすようになったわけだが。地下には、元の宇宙船の面影を感じさせる構造が残っている。
今、猟兵達が進む通路も、その1つ。しかし、かつての衝突の影響で、通路はまるで迷路のようにねじれ曲がっている。
その曲がり角から、異形が現れる。
「ガイトウデータ、ナシ。シンニュウシャトニンテイ」
「ハイジョ、スル」
金属をこすり合わせたような声の主こそ、プルトン人。
ウルカヌスにより、反攻の戦力として集められた者達。ウルカヌスの警備を兼ねた彼らが、侵入者……とりわけ猟兵を見逃すはずもない。
開戦だ。
神酒坂・恭二郎
「さて。仕上げはきちんとしないとねぇ」
戦争参加は出来ながったが、その後始末の協力はさせてもらおう
取り出したるは「スペース手拭い」。風桜子を通すことで千変万化の武器になる一品だ
相手の攻撃をギリギリまで【覚悟】で引きつけ【力を溜め】、一瞬の【早業】で技を放つ
槍として突き、鞭として絡め、斧として振り下ろす
相手がこちらを学ぶなら、その学びの裏を取るまでだ
「学ぶことは良いが、そこで終わると大事だね」
十分に誘き寄せたプルトン人の集団に対し、抜刀からの風桜子の【衝撃波】で【範囲攻撃】を叩き込みたい
【アドリブ・連携歓迎】
中村・裕美
「……プルトン人……彼らのUFOにはお世話になったわ」
おかげで宇宙だけでなく水中用に改造して、苦手な海中にも行くこともできた。多少の感謝の念はある
「……それとこれとは別に……倒させてもらうけど」
片手にドラゴンランスを構え、相手の攻撃をはそれで【武器受け】する構え。その間に、相手の装甲に【ハッキング】【防具改造】を施し、学習能力にバグを起こさせる。装甲を関節部含めガッチガチに固めさせて身動きできなさせるとか、もしくは口まで覆って呼吸できなくさせるとか
「……過ぎたるは……及ばざるが如しね」
相手が動けなくなったり、装甲を解除したら【串刺し】攻撃の後、ドラゴニックエンドで蹴散らす。
時間の経過と、区画形成時の歪みで、いささか無機質感を減じた通路内。1人の剣豪と電脳魔術士が、敵群と相対していた。
「さて。逃走の鋼神、仕上げはきちんとしないとねぇ」
剣豪、神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)が取り出したるは、一枚の手拭い。かの戦争には参加できなかったが、その分、ここで後始末はきっちりさせてもらおう。
一方、電脳魔術士、中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)にとって、プルトン人は恩人である。いや、猟兵達にとって、かもしれない。
「……プルトン人……あなた達のUFOにはお世話になったわ」
おかげで宇宙空間はもちろん、水中用に改造して、裕美の苦手な海中にも行くこともできた。
「……それとこれとは別に……倒させてもらうけど」
UFOを使ったのも、今ここに転移してきたのも、目的は同じ。オブリビオンを駆逐する、という。
「ノガスナ」
「ショリセヨ」
心なしか、プルトン人の殺意が高い。もう二度と技術はやらんぞという、鋼の意志を感じる。
一気呵成。自分達に殺到するプルトン人達に向け、恭二郎は、にぃ、と口の端を持ち上げる。
プルトン人の攻撃が命中する寸前……手拭いが、敵の腹を貫いていた。いいや、それは槍である。
恭二郎が神秘なる『風桜子』を通せば、手拭いがぴぃんと伸びて武器となる。
だが、武器とわかれば、敵も油断はしない。
「ラーニング、カンリョウ。キョウユウカ」
倒れ行く個体の置き土産。
恭二郎の槍撃を学習し、プルトン人達は、即座に鎧に反映した。神鋼の鎧には及ばずとも、大した技術ではある。
「ソノブキハ、モウツウジナイ」
「ずいぶんお手軽な勉強だねぇ」
槍を引き抜く恭二郎。
だが、プルトン人の構えた光線銃に、何かが巻き付いた。鞭だ。槍から持ち替える時間などなかったはず。
それも当然だ。一瞬で槍の形を捨て、鞭の形を選んだのだから。光線銃を持つ太い腕に巻き付いた鞭を、恭二郎が引き、狙いを逸らす。
「ラーニング、カンリョウ……」
恭二郎は、殺気を感じて、背後からの狙撃を回避。
今度は斧に変えて、敵の頭部を、装甲ごとかち割った。
「ラーニング……」
「学ぶことは良いが、そこで終わると大事だね」
動揺までも共有化したプルトン人に、恭二郎が皮肉を放った。
通路内に、光線が飛び交う。一直線に発射されるものもあれば、雷光のようにギザギザとした軌跡を描いてくるものもある。
その出力はまだユーベルコード級ではないが、敵の装甲は裕美の攻撃も学習する。厄介だ。
しかし、恭二郎同様、裕美にも対策はある。
裕美は、光の乱舞をドラゴンランスで払いのけながら、接敵。敵の装甲に手をかざした。
「……イジョウハッセイ」
電脳魔術の干渉を受け、異星金属で出来た装甲の隙間から、ばちり、と小さく火花が散る。
「キョウユウカ、イチジテイシ……フカ」
異常を感じ、とっさに機能をシャットアウトしようとしたが、間に合わない。
裕美にハッキングされたプルトン装甲が、強化を開始する。それも、もっとも単純な方法として、装甲は硬化を選んだ。それは、稼働の要であり、弱点でもある関節部まで及ぶ。
弱点が弱点のまま放置されるのには、当然、理由がある。身動きができなくなるからだ。今のプルトン人達のように。
更には、全身をくまなく防御するべく、頭部はおろか、口元までマスクを形成。ただし、装着者の呼吸を配慮しない形で。
「……過ぎたるは……及ばざるが如しね」
等身大フィギュア状態となったプルトン人たちを、裕美が串刺しにしていく。
裕美の干渉を逃れたプルトン人達は、裕美や恭二郎の四方から突進を仕掛けた。遠距離はもちろん、近距離武器さえ使えないよう、囲んでしまうつもりか。
だが、恭二郎は慌てず騒がず、敵を待ち構えた。
刹那、伏せたまぶたを開き、一閃。
「……!?」
プルトン人達が、一斉に吹き飛ばされた。全身には、無数・大小の刀傷が刻まれている。
銀河一文字、恭二郎の愛刀の為せる業。
「見たかい『風桜子』の力。これはそう簡単に学習できないだろう」
とん、と肩を刀の峰で叩きながら、恭二郎が告げた。
「ソウコウ、パージセヨ」
味方へと告げるプルトン人。
装甲自体を脱ぎ捨てる事で、ようやく自由を取り戻す。だが、その時を待っていたものがいた。裕美の呼び出したドラゴンだ。
防御力を失ったプルトン人達に、幻獣の猛威に抗う術はなかった。
ドラゴンが通り過ぎた後には、鎧の残骸が転がるのみであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鈴木・志乃
本当、すっかり、コイツ(ウルカヌス)の存在を忘れてたよ
もう戦争終わって何か月も経ってるのにね……まだ居る
このまま放置は危ない、なんとしても倒さなきゃ
前プルトン人と戦った時は大分苦労したけど、今回はこの技で刺さるといいなっ
【オーラ防御】展開後UC発動
【高速詠唱の全力魔法】による【精神攻撃、催眠術、ハッキング】でプルトン人の『敵味方の認識をすり替える』よ
たとえ完全に入れ替えることが出来なくても、相当混乱はするはず……
味方の共有、連携で成り立ってる存在にこそこういう技は有効だよね
さてちゃんと刺さるといいんだけど!
攻撃は第六感で見切り鎧砕き出来る魔改造ピコハンで武器受け
そのままカウンターでぶち壊す
ヨナルデ・パズトーリ
アルダワでの戦も終わろうという状態じゃしなあ
妾達の世界の戦の残り火もとっとと潰さねば後々困るというものよ
平和の為にもしっかりと遣るべきことはやっていかねば、じゃしな
魔法は原則『高速詠唱』で『範囲攻撃』
『先制攻撃』で『マヒ攻撃』の『呪詛』入り闇の『属性攻撃』『全力魔法』で
『目潰し』
其の侭『暗殺』の要領で『存在感』を薄れさせ『目立たない』様にし逆に
『存在感』を持たせた『残像』を囮にしつつ『闇に紛れ』攪乱
UC発動
『野生の勘』で敵の動きを『見切り』高速飛行の『空中戦』で敵に肉薄
『怪力』の『なぎ払い』や『マヒ攻撃』の『呪詛』入り『全力魔法』で『蹂躙』
敵の攻撃は『野生の勘』で『見切り』『オーラ防御』で防ぐ
亜儀流野・珠
ふは、懐かしい顔だな!
ウルカヌスもしぶといがお前達もしぶといなプルトン人達よ。
排除と言うなら逆にお前達をこの世界から排除してやろう!
通路……狭いがそこを活かしていくか。
奥義「千珠魂」、俺たち召喚だ!
大量の俺たちで通路を満たし、プルトン達を押し流してやろう!
先頭の俺たちは飛び掛かり自由を奪え!
その次の俺たちは木槌「砕」でひたすら殴れ!
その次の俺たちは……とりあえず押し寄せておけ!
数で圧倒させて貰おう!
勿論俺も戦うぞ!
集団の前方に混じって「砕」でガンガン殴る!
少々強引な戦法ではあるが敵拠点に突入するときは勢いが大切だからな!
「ハイジョセヨ……グハッ」
プルトン人が、最後まで言い終わらぬうちに。
「アルダワでの戦も終わろうという状態じゃしなあ。妾達の世界の戦の残り火も、とっとと潰さねば後々困るというものよ」
ヨナルデ・パズトーリ(テスカトリポカにしてケツァルペトラトル・f16451)の魔法が、プルトン人達を吹き飛ばした。
相手は、いわば神の眷属。しかしてヨナルデは神。ならばどちらが勝るかは、言うまでもあるまい。
プルトン人達との戦闘に突入しながら、鈴木・志乃(オレンジ・f12101)は、奥に潜む巨悪の存在を懸念していた。
「本当、すっかり、ウルカヌスの存在を忘れてたよ」
アースクライシスを生き延び、今も健在であるジェネシス・エイト最後の一体。このまま放置していれば危険度は増すばかり。
機会を得たのなら、ここでその存在を削っておかなければ。
「ハイジョ、スル」
「ギジュツ、カイシュウ」
猟兵達の戦闘を目の当たりにして、プルトン人達は、その力に興味を抱いたようだ。
だが、亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)がやすやすと技術を渡すはずがない。
というよりも、技は技でも、技術というより技能、という方が正しい。
「ふは、懐かしい顔だな! ウルカヌスもしぶといがお前達もしぶといなプルトン人達よ」
嬉々としてプルトン人達を蹴散らしながら、珠が言った。
「排除と言うなら逆にお前達をこの世界から排除してやろう!」
「さあ、妾達に道を開けよ!」
ヨナルデの魔法が、威力を発揮する。
巻き込まれたプルトン人達は、麻痺を、或いは目潰しを受け、自由を奪われていく。いかに装備が立派でも、それをまとい、使う肉体が万全でなければ意味はない。
魔力を迸らせ、豪快に敵群を相手していたヨナルデは、一転、ひそやかに気配を殺していく。
もっとも、プルトン人達には、ヨナルデの勢いは変わらぬように見えただろう。だが実際の所、それは残像。本体は、通路の照明を破壊して作り出した暗がりの中に身を沈める。
「ハイジョセヨ」
リミッターを解除した光線銃と銃剣を駆使して、ヨナルデを攻めたてるプルトン人。しかし、残像ゆえ、消えては現れ、敵をかく乱する。
「イッセイコウゲキ!」
壁際へと追い詰めたヨナルデへと、一斉に光線が浴びせられた。
だが、不意にその姿が消えた。残像としての役目を終えたのだ。ターゲットを見失うプルトン人。
「此方じゃよ」
プルトン人が振り返った瞬間、魔神が来た。
黒きジャガー……黒曜石の鎧に身を包んだヨナルデが、骨血の翼で人工の空気を叩いて加速。
ごく自然な身のこなしで銃撃をかわすと、黒曜の斧にて、プルトン人の前衛を薙ぎ払った。空中を舞う同朋には構わず、後方のプルトン人群が光線銃を構える。
だが、迸った光線は、ヨナルデの周囲に発生した防御膜によって、光の粒子と化して四散する。
珠達が戦場とするのは、通路。と言っても、元々が宇宙船の通路であるため、幅はさほど広くない。それなら、その不利を地の利として使わせてもらおうではないか。
「行け俺たち! プルトン人を押し流せ!」
「「おおー!」」
珠の背後から、大勢の分身が飛び出した。
通路は、瞬く間に珠の集団で満たされ、進軍してくるプルトン人達を押し返し、そして宣言どおり押し流していく。
第一波、先頭の分身たちは、プルトン人達に飛び掛かり、身動きがとれぬよう捕まえてしまう。
その間に、第二波の分身達が、木槌を振るって殴打を開始。
更に、第三波……は、することが無いのでとりあえず押し寄せておく。前方の分身が削られてもすぐ補充できると考えれば、無駄ではないというか有効だ。
「そっちが数でくるなら、こっちはそれ以上の俺たちで圧倒させてもらおう!」
珠軍団VSプルトン軍団。殴りかかる珠、銃剣で切りかかるプルトン人。
「キョウイド、ジョウショウ」
志乃達を制圧せんと、殺到するプルトン人。志乃は、間近の一体の顔面を蹴って跳躍。空中で身を翻すと、オーラを展開した。ユーベルコードをこめぬ光線では、弾かれるばかり。
そして、反転攻勢。志乃を源として迸った聖光が、プルトン達を照らす。
「ラーニングセヨ……」
装甲が志乃の光を分析、対抗策を講じようとするが、機能不全を起こしたように処理を停滞した。
志乃の光が干渉したのは、プルトン人の肉体でも鎧でもなく、認識そのものだった。
「テキヲハイジョセヨ」
「テキヲハイジョ……」
プルトン人達の光線銃が、お互いを捉えた。
トリガーを引けば、同士討ちの始まりだ。志乃の干渉によって、敵味方の区別を反転させられたのだ。
物理的損傷がないので、万全な状態で相打つプルトン人達。あっという間に混戦状態に陥った敵を見て、志乃は胸を撫で下ろす。
「よかった、今回は刺さってくれた」
干渉の効きの悪い個体や、比較的性能の高い個体こそ生き延びていくが、混乱が生じるのは避けられなかった。
学習の共有化を実行していられる状態ではない。数や連携を力とするプルトン人にとっては、最大の能力を奪われたに等しい。
学習能力を失えば、プルトン人は単なる過去の化身。以前より成長した志乃がよりよく対応できるのも、道理であろう。
同士討ちを始めたプルトン人達を見て、ヨナルデが大笑する。
「結束無くして、妾達を阻む事など叶わぬぞ!」
先ほどより威力を増した神の魔法が、嵐を巻き起こした。
少女の姿をした厄災が、鋼神の眷属達を滅ぼしていく。プルトン人達の攻撃を、塵芥1つ寄せ付けず。
敵に、ヨナルデや珠も加わった混戦の中に、志乃自身も飛び込んだ。志乃の事は味方だと認識しているはずだが、流れ弾やら巻き添えやらが発生中。
第六感に従い、乱戦を切り抜けると、ピコハンで敵を鎧ごと打撃する。魔改造済み、しかも神鋼の鎧のレプリカですらないのなら、砕くのは容易い。
志乃の進路上、軍勢が粉砕されていく。
戦況は、珠達の方が優勢。そこにきて、珠ご本人の出番である。
分身軍団の前方に混じり、自身も木槌を容赦なく振るいまくる。『砕』の名を冠する武器は伊達ではない。鎧ごと、プルトン人達を撃退していく。
「攻めるに勢いと書いて攻勢! 敵拠点の突入には勢いが大切だ!」
「レッセイ、イチジコウタイセヨ」
じりじり、と後ろに下がっていくプルトン人達。
だが、珠らが通路を突破する頃には、無事なプルトン人はおらず。すべからく骸の海へと還っていくのだった。
「プルトン軍団、突破完了! さあ次行ってみよう!」
珠軍団が、勝ち鬨を上げた。
大成功
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第2章 ボス戦
『星纏騎士『メテオーロ』』
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POW : 星纏外装『試練遂げし英雄よ』
全身を【試練を遂げた英雄の星座の力を宿した軽鎧】で覆い、自身の【格闘術を強化し、敵対者は悪という思い込み】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : 星纏外装『邪悪に傾く天秤よ』
【敵対者は悪であり、自らは正義だと主張する】事で【天秤座が刻まれたガントレットの騎士】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 星纏外装『夜天の衣を纏いし女神よ』
全身を【魔法を跳ね返す月明かりのような白銀の軽鎧】で覆い、自身が敵から受けた【痛みと負傷、否定されたという思い込み】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
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障害となるプルトン人を一掃した猟兵達は、進軍を再開した。
通路の構造は複雑だったが、無事、次なるポイントへの到着を果たす。すなわち……新たな刺客の元へ。
「あれだけいたプルトン人を切り抜けてきたのか? 猟兵とはまこと恐ろしい戦力だ」
星光の粒子煌めく黒衣の男性……星纏騎士・メテオーロ。その雰囲気から、邪念は感じられない。
だが、邪念などよりも強い圧が、猟兵達へと吹き付けた。
「君達の強さは認めよう。だが、誤った強さはすなわち邪悪。処断しなければならない。正義の名のもとに」
正義。そう告げたメテオーロの体を、神鋼の鎧が覆っていく。
「鋼神より賜りし神なる鎧、そして俺の使う星纏外装。鉄壁を越えた鋼壁を、君達が越えられるかな?」
オブリビオンに堕することで、正邪の認識を反転させた騎士が、猟兵の粛清を開始した。
神酒坂・恭二郎
「そりゃあ人斬りは悪だわな。騎士の御仁」
飄々と笑んで、腰の大業物を抜く
「面白い。一つ意地比べと参るかね」
『一乃太刀の型』に構えた
此度は居合にて仕る
仕組みは単純。こちらとあちらで己に迷いが無い方が勝つ勝負だ
全身の脱力と同時に丹田に【力をため】、騎士様の攻撃を至近に見据え
迫る攻撃を目一杯引きつけて【見切り】、一瞬の【早業】で【抜き打ち/クイックドロウ】
この一刀があの軽鎧に通らねば死ぬだけだ
【覚悟】なんて何時だって単純な物だ
「ま、てめぇの嘘を人様に押し付ける奴に、負けてやるつもりはねぇんだがな」
【アドリブ、連携歓迎】
ヨナルデ・パズトーリ
考えなしの正義、己を顧みぬ正義程邪悪な物はないと言うに
妾は嘗て奴等に国を滅ぼされ民を虐げられし時に其れを見てきたがの
ま、とはいえそれは言うても酷か
二つ教えてやろう
妾、テスカトリポカには幾つも司る物が有るがその中に夜の天が有ってな?
そして魔術も司るが戦士の守護神でもある
魔術抜きでも斯様な守りに負けられぬさ
UCを『高速詠唱』で発動
『怪力』による斧の『投擲』で隙を付き高速飛行の『空中戦』で肉薄し『破魔』の力を纏った『オーラ防御』による『シールドバッシュ』『鎧無視攻撃』を隙間にぶちかます『二回攻撃』による『先制攻撃』
鎧の隙間と敵の動きは『野生の勘』で『見切り』攻撃は『残像』で回避しての『カウンター』
先ほどの狭い通路から一転。広い空間へと飛び出したヨナルデ・パズトーリを迎えたのは、メテオーロの鋭い眼光だった。少なく見積もっても、歓迎ムードではない。
「引き返す事をお勧めするよ。でなければ、断罪するしかなくなる」
騎士の要求を、ヨナルデは一笑に付した。
「考えなしの正義、己を顧みぬ正義程邪悪な物はないと言うに。妾は嘗て奴等に国を 滅ぼされ民を虐げられし時に其れを見てきたがの」
そう告げて、しかし、ヨナルデは嘆息した。
「ま、とはいえそれを此奴に言うても酷か」
メテオーロは、過去の具現。過去はもはや変わらぬ、変えられぬ。
「先に、俺からやらせてもらっていいかな?」
ヨナルデの前に踏み出したのは、神酒坂・恭二郎だ。
「無論構わぬが、死に近づくようであれば妾も捨て置けぬぞ」
「神様の手を煩わせないよう、気張らせてもらうさ」
騎士と剣豪。共に刃に命を託すもの。
しかし、騎士の方は、むしろ魔法を得手とするようだ。
「その刃、正義の為に振るえば良いものを」
「そりゃあ人斬りは悪だわな。騎士の御仁」
凛々しくも厳しい顔つきのメテオーロに、恭二郎は飄々と笑んだ。腰の大業物を抜く。
「我が格闘術、刀剣一振りで破れるものじゃないぞ」
「面白い。一つ意地比べと参るかね」
メテオーロの手から、魔力があふれる。それは英雄の加護宿る軽鎧となって、守りを神鋼の鎧と相互補完する。
対する恭二郎は、『一乃太刀の型』に構える。居合だ。
ふ、とメテオーロが、口元を緩めた。この対決、ただ一瞬にて雌雄が決するものと理解したのだ。
「仕組みは単純。こちらとそちらで己に迷いが無い方が勝つ。そういう勝負だ」
「承知している。如何に悪とは言え、正々堂々とあれば、俺も騎士道にかけて受けないわけにはいかない」
距離を置き、睨み合う二者。その気迫は、船内の人工大気を介するまでもなく、双方の体と心に伝わる。
全身の力を抜く恭二郎。同時に丹田へと力を溜める。
先に仕掛けたのは、メテオーロだった。
「正義は勝つ。それは理屈ではなく概念だ……!」
悪と信じた恭二郎に、メテオーロが超速で迫る。繰り出される拳。防がねば直撃は必至。
括目するヨナルデ。
だが、まだだ。恭二郎は、攻撃を目一杯引きつけて……見切った。
恭二郎は、一瞬の早業で抜刀。銀河剣聖の無敵を再現、いや、独自の解釈を交えて己が技とする。
それは覚悟の一撃。この一刀があの軽鎧に通らねば、ただ死ぬだけ。
正義と覚悟が、交錯する。
一拍、二拍。永遠に続くかと錯覚する静寂の後、倒れたのは、メテオーロ1人だった。
「正義がくじかれる、とは……」
「ま、てめぇの嘘を人様に押し付ける奴に、負けてやるつもりはねぇんだがな」
軽鎧を解き、膝を屈するメテオーロ。恭二郎は、ヨナルデを振り返り、
「さあ後は存分に」
「妾の出番が無くなるかと冷や冷やしたぞ」
恭二郎に軽口で応えると、ヨナルデは、立ち上がるメテオーロに指を立てた。
「二つ教えてやろう。妾、テスカトリポカには幾つも司る物が有るがその中に夜の天が有ってな? そして魔術も司るが戦士の守護神でもある。魔術抜きでも斯様な守りに負けられぬさ」
「悪に請うべき教えはない。女神の加護よ、我が元に!」
ヨナルデとメテオーロが、時同じくして光に包まれる。
メテオーロが新たに装着したのは、白銀の鎧。月光の如き静かな輝きが、痛みと怒りに応えて増していく。
そしてヨナルデは、黒曜の鎧を身にまとう。白と黒、相反する両者が、ぶつかり合う。
ヨナルデは、握った斧を、斬撃範囲外から投擲。ぎぃん、と鈍い音を反響させて、それを弾くメテオーロ。
その一動作の間に、骨の翼で飛翔したヨナルデが接近していた。防御態勢を取る間もない。ヨナルデが与えない。
虚空より作り出した光壁に、破魔の力を付与して、メテオーロへと叩きつけた。荒々しき動作の狙いは無論、神鋼の鎧にカバーされていない箇所だ。
守りの薄い箇所を突かれ、メテオーロの端正な顔が苦悶に歪む。
吸収しきれなかった打撃力が溢れ、騎士の体を吹き飛ばす。
空中で態勢を立て直し、着地を試みるメテオーロ。
だが、金属の床を踏んだ時には、ヨナルデが武器を手にしていた。先ほど投じたはずの斧だ。
騎士の反撃をかわし、斧が鎧の間隙を薙いだ。
「女神の加護か。だが其れでは女神そのものである妾に勝てる道理がなかろう」
「お見事」
アルカイックスマイルを浮かべるヨナルデに、恭二郎が手を1つ打った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鈴木・志乃
……私もオブリビオンになったらこうなるんだろうな
この人のオリジナルはどんな人だったんだろう
空しいね
相変わらず厄介な鎧だなぁ……
でも目が空いてるなら勝機はあるよ
開幕即UC発動
【催眠術、精神攻撃、ハッキング】
敵と味方の認識をすり替えさせてもらう!
上手く行かない可能性もあるけど、混乱ぐらいはするはず
高速詠唱で仮想敵の幻想を生み出しそれを殴ってもらおうか
実際にはその地点には罠を張っといて……
敵の姿にもよるね、罠の種類は
拳とか肌見えてるならワイヤートラップに毒仕込むし
見えてないなら油ぶちまけて高速詠唱で発火させて炎の中突っ込ませる。んで酸欠にさせる
……なかなか行き当たりばったりだなぁ
鈴木・志乃は、対峙するメテオーロに複雑な感情を抱いていた。その1つは、親近感に類似するもの、かもしれない。
「……私もオブリビオンになったらこうなるんだろうな」
メテオーロのオリジナルは、どんな人物だったのだろう。
正義に固執する姿勢は近視眼的だが、邪念の欠片もないように見える。かつてはヒーローだったのかもしれない。
「……空しいね」
正義と悪は、立ち位置次第で簡単に翻る。しかし、この敵の考えは異なるらしい。
「正義は揺るがないものだ」
志乃の攻撃を待ち受けるメテオーロ。
神鋼の鎧だけでは飽き足らず、指で虚空に星座を描く。英雄を示す配置は、メテオーロに軽鎧を授け、二重の護りとした。半端な攻撃では通らないだろう。
「さあ、来るがいい」
「相変わらず厄介な鎧だなぁ……けど、目が開いてるなら勝機はあるよ」
志乃が、床を蹴った。
空中に、電子回路の如く、光が幾筋も駆け抜ける。それは志乃の元に収束。
迸る聖光。室内をあまねく照らしたそれは、メテオーロにも届く。
「精神系攻撃? だがこちらには神鋼の鎧の防御がある」
その絶対の自信が、わずかな隙を生んだ。
駆け抜けた聖光は、メテオーロの瞳を焼いた。わずかでも届けば、志乃の目的は果たされる。
光が収まった後、メテオーロの眼前には、新たな敵の姿があった。
「そうか、俺は君を敵だと思わされていたのか。そして倒すべきは……奴!」
志乃をかばうように、メテオーロが敵影へと飛翔した。
(「上手く刺さってくれて一安心だね」)
今のメテオーロは、志乃のユーベルコードにより、敵味方の認識をすり替えられた状態。
そして、敵と定めた相手は、志乃の作り出した幻想……仮想敵に過ぎない。
神速を発揮して、幻影の元へとメテオーロが到達した瞬間。
炎が立ち昇った。幻想の位置に志乃が仕込んだトラップが発動したのだ。
「こんな火で、鎧に傷をつけようとは。なんと浅慮……かはっ!?」
炎の壁に閉じ込められてもなお、平静を保つメテオーロだったが、その細面が歪みに襲われた。酸欠状態に陥ったのだ。
「こ、れは……」
「正直、行き当たりばったりの作戦かなと思ったけど……結果オーライかな。確かに、傷はついてないね、うん」
成功
🔵🔵🔴
中村・裕美
「……この鎧は……厄介」
相手の防具に【ハッキング】を試みるが、おそらくは弾かれる。だが、隙間等脆弱な部分などは【情報収集】しておく
「……仕上げは……任せる」
そう言ってシルヴァーナに人格を切り替える
「正義か悪かなんて、自分を正当化させるための言い訳に過ぎませんのに」
【瞬きの殺人鬼】を発動させ、ドラゴンランスで敵の攻撃を【武器受け】でいなしつつ、【残像】を残すようなステップで相手を翻弄してかいくぐる。
そして、相手の鎧の隙間を正確に【見切り】、【串刺し】で【部位破壊】
「シンプルに敵か味方かで、いいじゃありませんの。思い込みは視野を狭めますわ……聞こえているかしら?」
タイムリミットが来たら裕美に戻る
亜儀流野・珠
正義か。まあ好きに主張すればいい。
何が正しく何が間違いかなど誰にも決められん。
だが気に入らんもの全てを悪と断じていては間違いにも気付けんぞ?
武器は脇差「夕桜」を使用だ。
「天眼」を発動し相手の動きをしっかり見切り、適当に会話でもしながら避け続けよう。
時には夕桜で攻撃を受けたり、蹴り飛ばして距離を取ったりもしながら。
避け続けつつ、相手の防具及び神鋼の鎧のスキマを探る。
刺すべき場所を見極められたなら次は攻撃のタイミングを見極め……飛び込み、差し込む!
成功しても失敗してもそこで防戦は終い、後はひたすらに夕桜を突き立てる!
一回で足りんなら十回でも百回でもだ!
この刃が邪悪と言うなら耐えてみろ!
「黙って聞いていれば正義正義とやかましい」
亜儀流野・珠は、びしいっ、と指を突きつけた。正義を標榜する騎士・メテオーロへ。
「とはいえ、まあ好きに主張すればいい。何が正しく何が間違いかなど誰にも決められん。だが気に入らんもの全てを悪と断じていては間違いにも気付けんぞ?」
「人々を惑わす主張こそ悪。正義とは揺るぎないものなのだ……おっと」
メテオーロのご高説を遮って。
中村・裕美が試みたハッキングは、神鋼の鎧の前にあえなくキャンセルされた。
「……この鎧は……厄介」
反撃、メテオーロの手刀をぎりぎりかわすと、裕美は後退した。
相手は、神鋼&白銀の鎧の二段構えで来た。
だがイケメンだ。何処となくリア充の雰囲気を感じる。無性に許しがたい。
「悪とは、数を以て押し寄せるもの。来るがいい!」
メテオーロは、腕に天秤座の輝きを重ねた。それは重厚なガントレットとなって顕現、珠へと殴り掛かった。
「さあ、断罪を受けろ!」
「正義とは物理の事ではないはずだが?」
脇差で敵の拳をいなしながら、言葉を返す珠。
メテオーロの攻撃には、迷いが一片もない。珠を悪と断ずることで、技はより強じんなものとなり、更に加速していく。
だが、洗練されている分、かわしやすくもある。
珠の『天眼』は、メテオーロの挙動を見通している。呼吸、足運び、体の捻り……あらゆる挙動を先読みするレベルで避ける。
「くっ、だが、悪は逃さない!」
流星の如きガントレットの一打が、珠に突き刺さる!
「そのような淀んだ拳で『夕桜』を破る事などできんぞ!」
直撃を、珠の脇差が止めていた。相手の腹を蹴り、空中で弧を描いて着地。
「守るばかりでは、正義は越えられないぞ」
「鎧でたっぷり守られた奴が言うことか!」
今こそ好機。珠の目が輝く。
珠や裕美たちは、ただただメテオーロの攻撃を避け、あるいは攻撃を加え続けていたわけではない。立ち回る中で、相手の鎧の隙間の位置を見定めていたのだ。
「さあ、望み通り攻撃してやろう!」
『夕桜』が閃く。突き立つは、鎧の間隙!
「くっ、鎧の『アキレス腱』を見出したというのか」
「動きを見ていれば、動くのを邪魔しない部分は見極められる!」
さあ、防戦の時間は終わりだ。
「……仕上げは……任せる」
裕美が言葉を紡いだ直後、その顔つきが変化した。もう1つの人格、シルヴァーナにバトンを渡したのだ。
裕美の変化に、メテオーロも気づいたらしい。
「心が変わろうとも本質が悪である事はかわりない。正義は破れない」
「正義か悪かなんて、自分を正当化させるための言い訳に過ぎませんのに」
優雅口調のシルヴァーナが、黒竜槍をくるりと回して見せる。それが、スイッチとなったかのように。
槍撃が繰り出される。反射的にとっさに身を引くメテオーロだが、シルヴァーナの攻撃は止まらない。
猛攻の間隙を埋めるように、珠がメテオーロの周囲を駆け回り、四方八方から刺突を放つ。その全てが、鎧の護りの隙を突いていく。
「この程度の痛み、耐えられぬとでも?」
「一回で足りんなら十回でも百回でも繰り返してやろう! この刃が邪悪と言うなら耐えてみろ!」
珠の猛攻の前に、メテオーロは防戦一方。神鋼の鎧の絶対防御が意味をなさぬ以上、それを守りと言っていいものか。
「鎧の加護がなくても、俺には研鑽の果てに辿りついた技がある!」
「アハハ! 威勢がいいことですわね!」
残像を置き土産に、隙の無いステップでメテオーロに殺戮を加えていくシルヴァーナ。
裕美の調べ上げた弱点を突く。70秒程度とタイムリミット付きとはいえ、今のシルヴァーナの身体能力は6倍にも達する。狙いは何処までも正確だ。
「ぐっ……!」
脇腹を突かれ、血の粒を散らして、バックステップするメテオーロ。
再びまとった白銀の鎧は、負傷による力の強化をもたらす。だが、その力を発揮する前に、シルヴァーナは決着を目指す。
「シンプルに敵か味方かで、いいじゃありませんの。思い込みは視野を狭めますわ……聞こえているかしら?」
メテオーロに、辛辣を浴びせるシルヴァーナ。
その必殺の槍撃が、かざしたメテオーロの掌を腕ごと貫く。
そして反対側からは、珠の刃が。
「正義が悪に凌駕されるとは……これは悪夢、だ……」
「あら、もうおしまいですの? 殺し足りないですわね?」
シルヴァーナが裕美にイニシアティブを譲るのと、メテオーロの全身が星光の粒に変わるのは、ほぼ同時であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『鋼神ウルカヌス』
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POW : 超鋼神装
無敵の【金色に輝く『神の鎧』】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD : 鋼と炎の神
自身の身体部位ひとつを【自在に液体化も可能な超高熱の金属】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : 原初の神炎
自身からレベルm半径内の無機物を【使用者以外の全てを焼き尽くす原初の炎】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
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いよいよ猟兵達が辿り付いたのは、宇宙船の織りなす迷宮の深部。
そこは、熱気と鉄の匂いに満ちた空間だった。
「来たか! 猟兵ども」
炎と鋼渦巻くラボ、儀式場と化した部屋で、鋼神ウルカヌスが振り返った。
その存在感は、ここまでに遭遇したオブリビオン達の比ではない。これが神……ジェネシスエイトの一角の力か。
「我が神鋼兵団の再編、幾度も阻まれたが、此度はそうはゆかぬぞ」
ウルカヌスの左腕に炎が。
そして右腕に、鋼の魔力が沸き立つ。
「我が炎力と剛力。絶対の防御にして絶対の攻撃。かの大戦の後もここまで生きながらえた理由を、その身を以て知るがよい」
ウルカヌスの一言一言が、大気を震わせる。
「さあ、挑み来るがいい。骨と魂の髄まで焼き尽くしてくれよう!」
ウルカヌスは、絶対先制の力を発揮する。
猟兵のあらゆる攻撃を凌駕し、先を行く。ならばそれを如何に防ぐか。そして反撃へとつなげるか。猟兵の技の見せ所である!
レティエル・フォルクエイン
先制攻撃は第六感も頼りにして残像を纏いできるだけ見切ってカウンターに攻撃を仕掛けると見せかけるなどフェイントを交えつつダッシュやジャンプスライディングも使ってとにかく逃げ回ります
「先制攻撃さえ凌げればこっちのものなんだから!」
攻撃をしのげたら反撃すると見せかけて(フェイント)UCを発動、ダンスのレッスンを開始
「さ、新曲の振り付けのおさらいおさらい」
「やっぱりこのステップ、タイミングが難しいなぁ」
ダンスで疲れたら、今度はサインの練習など非戦闘行為を途切れさせず聖域によってダメージを与え続けます
「んー、ウルカヌスさんはレティちゃんのサイン、右のと左のどっちがいいと思う?」
「レティちゃんは真剣だよ」
ウルカヌスが一歩を進むたび、金属の床が、マグマの如く沸き立つ。
部屋を満たす熱気は、レティエル・フォルクエイン(オラトリオのサウンドソルジャー・f15293)へも容赦なく吹き付ける。
「我は炎と鋼を統べるもの。その権能の具現を見るがよい!」
ウルカヌスの蹴りが放たれた。到底、レティエルへと届く距離ではない。
その事実をあざ笑うかのように、足が伸びた。流体金属としてしなやかさを得て、鞭のようにレティエルを打ち据えんとするのだ。
だが、その意外性は、レティエルの第六感によって看破されていた。
ウルカヌスは、流体化した脚を自在に操り、レティエルを追撃していくが、そのいずれもが残像を撃ち抜くにとどまった。
「まだ終わりではない!」
なおも猛威を振るう神の蹴撃を、跳躍、或いはスライディングでかわす。
鋼神の作り出せしコロセウム、業火に包まれし室内を、レティエルはひたすらに駆け巡る。
「先制攻撃さえ凌げればこっちのものなんだから!」
前に出るレティエルのカウンターを恐れ、ウルカヌスが足を引き寄せた。
だが、ウルカヌスの背後を取ったレティエルが仕掛けたのは……ダンス、だった。
「さ、新曲の振り付けのおさらいおさらい」
「む……?」
レッスン、スタート。
リズムをとり始めるレティエルに、鋼神はもとより険しい顔を更にしかめた。
踊る、踊る。およそ戦闘行為とはかけ離れたレティエルの行動に、さしものウルカヌスも真意をはかりかねていた。
「猟兵の行動に無意味なものはないはずだが……読めぬ!」
ウルカヌスの体が、唐突に弾かれた。レティエルの作り出した聖域によって、損傷を受けたのだ。
なおも肉体を蝕むダメージに、さしものウルカヌスも苦悶を露わにする。
「神……否、オブリビオンそのものを拒絶する聖域、だと……!」
「やっぱりこのステップ、タイミングが難しいなぁ」
ふう、とレティエルが額の汗をぬぐって水分補給。
よし、と気合を入れ直したら、机と色紙、ペンを揃えて、サインの練習。
「んー、ウルカヌスさんはレティちゃんのサイン、右のと左のどっちがいいと思う?」
「戦神ならずとも、これは戦への冒涜である! ふざけているのか」
「レティちゃんは真剣だよ」
真剣だった。
真剣ゆえに、鋼神を拒絶する力は強くなり、その身にダメージを刻み続けるのだった。
成功
🔵🔵🔴
神酒坂・恭二郎
「こいつは見事な偉丈夫だ。一勝負と行きますかね」
覇気に満ちた神気に笑みが零れる
こいつは本物中の本物。ここまで来て外れなしだ
・方針
太刀を弓を射るように構え刺突の構えを取って【力を溜める】
相手の先制攻撃に対し、【カウンター】で突きを合せる
無敵の鎧には弾かれるだろうが、【衝撃波とオーラ防御】で相手の威力を相殺して致命打を回避したい
「もう一丁だ」
狙いは二回目の交錯
全く同じ個所に【早業で部位破壊】の突きを試みる
これ程の相手に針の穴を通すような精度は、正しく【捨て身の一撃】となる
そして【覚悟】で押し通せば勝機となる
この灼熱の瞬間こそが挑戦の報酬だ
それにあの鎧に傷の一つでも残せれば、後続への助けとなるだろう
神酒坂・恭二郎は、会いまみえる事の叶ったウルカヌスの姿に、思わず感嘆した。
「こいつは見事な偉丈夫だ。一勝負と行きますかね」
空気どころか肉体をも震わせる神気に、恭二郎は怖気づくどころか、笑みを零した。
(「こいつは本物中の本物。ここまで来て外れなしだ」)
剣の、武の道を歩む恭二郎にとって、たとえオブリビオン、たとえ神であろうとも、強者との相対は心躍る体験だ。
「猟兵の底力はよく知っている。此方も全力を尽くして応じよう!」
空間が鳴動した。
ウルカヌスの放出した神気が、金色の粒子へと変換される。それは鎧の形をとって、鋼神を守護神へと変貌させる。
「これぞ神の守り! この姿になった我を突破することは、神ならざる身では不可能……むぅ?」
鎧の完成を待たずして拳を振り上げていたウルカヌスは、恭二郎の太刀の構えを見て、怪訝を浮かべた。
まるで弓を射るような構えだ。刺突を繰りだすべく、力を溜めていたのだ。敵の先制を阻むことは出来ぬ。ならば、その直後を狙うしかない。
「如何なる抗いも無意味としてくれる! 砕けよ、力なきものよ!」
轟、と音を立てて繰り出されたウルカヌスの拳に、恭二郎の刺突が、反撃として繰り出された。
果たして、宙を舞ったのは、恭二郎の方だった。勢いよく吹き飛ばされ、入り口へと押し返される。
オリジナルともいえるウルカヌスの鎧の前には、恭二郎渾身の技も通じぬか。だが、相手の拳の威力を削ぐことには成功していた。
恭二郎が防御として放った衝撃波が四散し、オーラの破片が光の粒となって戦場を彩る。
傷は最小限。そして恭二郎の戦意は、ひとかけらも削がれてはいない。
「もう一丁だ」
「失敗せし手を二度使うか!」
交錯、二度目。
恭二郎の会得せし技の全てを、ただ刹那に注ぎ込む。
恭二郎が突いたのは、先ほどと全く同じ箇所。これ程の相手にそれを為すのは、針の穴を通すような精度が必要。まさに、賭け……捨て身の一撃と言えよう。
そして、それを確定させる最後にして最大の要素は、恭二郎の覚悟。
「我が金色の鎧に瑕疵を刻んだ、だと……?」
「神の試練に打ち克ったってわけさ。ああ、ご褒美はいらない。全身の血がたぎる戦い……この灼熱の瞬間こそが挑戦の報酬」
今、鎧の傷は小さくとも、恭二郎に続く猟兵達が、必ずやそれを勝機に変えてくれるはずだ。
成功
🔵🔵🔴
火土金水・明
「相手は、『ジェネシス・エイト』の最後の一人。」「前回の戦争を、これで終わりにしましょう。」
相手の先制攻撃に対しては【見切り】【野生の勘】【第六感】の技能を駆使して回避を試みます。
【SPD】で攻撃です。
攻撃方法は、【高速詠唱】し【破魔】を付け【フェイント】を絡めた【全力魔法】の【螺旋強襲】で『鋼神ウルカヌス』を攻撃します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】【火炎耐性】でダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでも、ダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。
ヨナルデ・パズトーリ
最早言葉は不要
貴様は此処で滅び骸の海に還るがよい!
魔法は原則『高速詠唱』で『範囲攻撃』
『呪詛』を込めた氷雪の『属性攻撃』『全力魔法』で『目潰し』
『存在感』を薄れさせ『目立たない』様にし逆に『存在感』と『殺気』を
持たせた『残像』を複数だし攪乱
炎の動きを『野生の勘』で『見切り』つつ『残像』で回避
当たりそうな炎は『火炎耐性』を高めた『オーラ防御』を拳に纏わせた
『シールドバッシュ』『グラップル』や氷の『属性攻撃』『全力魔法』等で対応
凌ぎきったら『高速詠唱』でUC発動
高速飛行の『空中戦』で肉薄
斧による『怪力』の『鎧無視攻撃』を叩き込み『傷口をえぐる』様に『零距離射撃』
『全力魔法』をぶち込む『二回攻撃』
火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は、ウルカヌスの尋常ならざる存在感に、圧倒されていた。
「『ジェネシス・エイト』の最後の一人……ですが、これまでの敵に打ち克ってきたように、鋼神であろうと不滅ではないはず」
七色の杖に、銀の剣。
ウィザードとして、明がここまで培った練度の全てを投入して、この神を討つ!
「最早言葉は不要、貴様は此処で滅び骸の海に還るがよい!」
「いいや、土塊に還るのはそちらの方だ!!」
高らかに宣言するヨナルデ・パズトーリへの返答は、炎の乱舞であった。
ウルカヌスの神力を受け、変質した無機物だ。宇宙船のコンソール、座席、ラボの研究資材……それらが、鋼神の眷属となって、ヨナルデへと襲来する。
先ほどの騎士とは比較にならぬ、高密度のエネルギー! 神たるヨナルデでさえ、まともに受ければ灰燼に帰するであろう。
だが、無策で神との戦場に踏み入るほど愚かではない。
翼で熱気を叩き、疾駆するヨナルデの周囲に、多数の残像が現れる。無秩序に動き回るターゲットを、神炎は実直に追走する。
「我が炎、逃れられると思うてか!」
大蛇の如くうねる赤熱が、次々と残像を喰らい、消滅させていく。その莫大な火力ならば、実体であったとしても瞬時に焼滅させてしまったであろう。
残像を消し飛ばし、ヨナルデ自身へと喰らいつかんとする炎を、対火炎防御を宿した拳が打ち返した。
なおも突破してくる炎は、突然、氷結した。ヨナルデの高速魔術の発動だ。
だが、一旦は氷塊に包まれた炎は、追加の炎により氷解、再びヨナルデへと迫る。
なんという苛烈。だが、複数の防御策によって、ヨナルデに届いた炎は、かろうじてしのぐ事の出来るレベルまで削り取られていた。
「さあ、前回の戦争を、これで終わりにしましょう」
「否、終わらせはせぬ。我が神鋼兵団が、この世界を蹂躙する!」
告げる明に、ウルカヌスが、掌打を繰りだした。
無論、ただのパンチではない。肉体組成を変化、液体状とする事で、ゴムのようにリーチを延長したのだ。
周囲の景色が、歪む。神拳より発せられる超高熱だ。
迎え撃たんとする明の眼前で、拳は、突如、軌道を変えた。液体化したメリットを生かし、捉えさせぬ構えだ。
「金属とは1つの形に定まるものにあらず、流れ、変化するもの!」
「さすがは鋼の神、ですね」
とてもではないが、正面から防ぎ切れるものではない。明は、全てのリソースを回避に注いだ。
神性を帯びていようと、発生した熱は物理現象である。そして、如何に不規則であろうとも、この拳には軌道が存在する。
魔法の箒にまたがった明は、研ぎ澄ましたあらゆる勘を総動員して、パンチをくぐり抜けていく。
「まだ終わらぬ!」
何度回避しても、急角度、高速の方向転換で、明を執拗に狙う。その身をコーティングしたオーラを、炎熱が剥がしていく。
そして、遂に。
拳が、明の体を貫く!
「滅せよ……否、この手応えは!」
「残念、それは残像です。……正直、危ない所でしたけど」
ローブの端を何度も焼かれながらも、しかし、明は全てをかわしきった。その額には、珠のような汗が浮かんでいる。
「さあ、反撃の狼煙だ! 神性を持つのが貴様だけと自惚れるなよ!」
熱風を突き破り、黒き颶風と化したヨナルデの反撃が開始された。
ウルカヌスに叩きつけられるのは、氷雪の嵐。粒子一粒一粒にまでこめられた神の呪詛が、鋼の肉体を蝕む。
「我が視力を奪うつもりか! だがその程度で!」
だが、神の作る隙は致命となる。
ウルカヌスが、剛腕の一振りで吹雪を払いのけた時には、ヨナルデの接近を許している。
神力をこめた戦斧が、鋼神の鎧を穿つ!
「うぬう! 我が鎧に瑕疵を!」
「妾の持て成しは未だ終わらぬぞ!」
零距離からの攻撃。氷結の全力魔法が叩きこまれる。
ウルカヌスに、巨大な氷の華が咲いた。それも、二輪。
体勢を崩すウルカヌス。しかしこの戦い、安堵の暇はない。明は、高速で魔法の言葉を紡ぎあげると、ウルカヌスへと突撃した。
箒の先端部に、巨大ドリルが顕現する。攻撃力の全てを注ぎ込んだ螺旋の一撃が、鋼神の鎧と火花を散らす。
押し返されそうになるドリル……その回転力が、不意に、増大した。
明が振り返れば、そこにはテスカトリポカにしてケツァルペトラトルなるもの……ヨナルデの威容があった。
「妾の加護も使うが良い! 存分にな!」
ヨナルデの後押しが、遂に、神なる鎧を穿つ。猟兵達に勝利をもたらすために!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
中村・裕美
「……圧からして……量産型とは桁違い」
対策に、自分や味方の服や防具に【ハッキング】【防具改造】を施し耐火性能上昇
あとはセンサー類で空間の【情報収集】、熱源・炎の発生を【見切り】、研究施設の機械等を遮蔽にして【地形の利用】で逃げる
隙が出来たら空間のパラメータを弄り【現象改竄】。吹雪を生み出し、相手の炎を相殺
また、【早業】で並行作業としてウルカヌス自身に強力な霜を発生させて相手の足元中心に凍りつかせ、液体金属も固める。それでも足を液状化させたなら踏ん張りが効かなくなるということで、吹雪をぶつけて体勢を崩させる
「……炎と鋼は文明の象徴。……ならば……人の積み上げてきた文明の力で……乗り越えてみせる」
亜儀流野・珠
生き延びた理由? 知っているぞ!
ずっとこそこそ隠れていたからだろう?
姿を見せていた者達は皆撃退されたからな。
つまりはお前も終わりだ、ウルカヌス!
先制に備え、壁を生やせる「金璧符」を前方床に数枚貼り防御としよう。
それで防ぎ切れない、壁をも砕くような攻撃なら巨大ハンマー「B.Kハンマー」を突き出し盾とする!
その後はハンマーで相手の攻撃を殴って防ぎながら接近、そのまま本体も殴りに掛かる!
攻撃も防御も全て殴りで。分かりやすくて良い!
頃合いを見て一旦離れ、「大薙ぎ」発動だ!
スペースが十分にあれば振りかぶり殴り掛かる、
無ければ突き出したまま巨大化させ圧し潰す!
お前の鎧と俺の槌、どちらの鋼が強いか勝負だ!
室内に突入するなり、熱と金属の匂いが、中村・裕美の全身を包む。
その源である神を、裕美は、眼鏡の奥の瞳で見据えた。
「……圧からして……量産型とは桁違い」
神鋼の鎧を授けられしオブリビオンも厄介であったが、その作成者を前にすると、あれは加護の一握りに過ぎなかった事を思い知らされる。
「我が力の真価は守りにあらず。破壊と創造、炎は全てを滅し、鋼が新たな世界を生み出すのだ」
ウルカヌスが両腕を掲げると、宇宙船の遺物が、ことごとく炎に変容を開始した。その全てが裕美に牙を剥き、襲い掛かる。
景色は歪み、大気は熱せられる。創世神話の一篇を体験しているような、そんな錯覚にさえ陥る。
押し寄せる神炎……質・量ともに申し分のないそれが、裕美へと怒涛の如く押し寄せる。
しかし裕美のハッキングは、既に始動していた。防具の耐火性能を急激に向上。更には、神話の竜さながらにうねり、荒れ狂う炎の渦を、見切っていく。
だが、直撃は避けても、その生み出す熱だけでも、裕美の体力や集中力を削いでいく。
不幸中の幸いは、鋼神の儀式場、研究施設としてのありようを残していてくれた事だった。裕美は、コンソールの陰に身を隠し、或いは特殊カプセルを盾として、炎を逃れていく。
室内が炎一色に塗りこめられた後……しかし、裕美は健在であった。
業炎が収束した後、熱を払って現れたのは、亜儀流野・珠だった。
「生き延びた理由? 知っているぞ! ずっとこそこそ隠れていたからだろう?」
珠の指摘に、鋼神は沈黙で返した。
「図星か! 姿を見せていた者達は皆撃退されたからな。つまりはお前も終わりだ、ウルカヌス!」
「我は不滅なり!」
声とともに、ウルカヌスの両腕が、流体化する。
伸縮自在、しかし本来の剛力を保持したままの神なる拳。
次元をも打ち砕かん威力の掌打! 珠達などすぐさま消し飛ばすほどの威力が、床もろとも破壊する。
宇宙船の構造材が宙を舞う。だが、それもウルカヌスの闘気の前に瞬時に気化していく。
「これにて決着としよう……」
しかし、煙を破って健在を示したのは、珠!
「ハンマーが無ければやられていた!」
金璧符によって作り出した防壁が、威力を防ぎ切ったのだ。そして最後に切り札となったのは、『B.Kハンマー』。やはり、力には力。
「……鋼神でも、空間そのものには干渉できないはず……」
ウルカヌスの火勢が弱まった、今こそがチャンス。
裕美は、空間に干渉、パラメータを書き換えた。荒れ狂っていた熱風は吹雪へと転じ、炎の勢いを押し返し始めた。
ぶつかり合う熱気と冷気。
「ぬう?」
ウルカヌスの足元に霜が生じ、鋼神の氷像を創造せんと手を伸ばす。
「この程度の氷気、我が炎の前には……」
ウルカヌスが力を籠めるのに合わせて、温度が上昇していく。だが、裕美の空間改竄も止まる事はなく、肉体を固めていく。これでは、液体金属への変化もかなわない。
「……炎と鋼は文明の象徴。……ならば……人の積み上げてきた文明の力で……乗り越えてみせる」
裕美が、静かに、しかし確かに宣言した。それは、青い焔の如く。
「……今なら……神さえも討てる……」
「感謝するぞ魔法使い!」
自由を奪われたウルカヌスへと、嬉々として跳びかかる珠。
ウルカヌスの覇気も、裕美のハッキングによって強化された防具が受け流していく。
そしてハンマーが、ウルカヌスの全身を打ちすえる。ひたすらに!
攻めもハンマー、守りもハンマー。相手の力を全てねじ伏せていく。
「どうだ分かり易くていいだろ!」
ウルカヌスを壁際へと追いつめていく珠。
が、反撃の気配を感じ、ウルカヌスの巨体を蹴って離脱。
だが、守勢には回らない。ここで一気に決着をつける!
珠の力を受けたハンマーが、脈動する。またたく間に倍化した巨大ハンマーを、渾身の力にて振りかぶる。
ここまでの激戦で、周囲の構造物は、ほとんど消滅。猟兵との激突で破壊され、あるいは、ウルカヌスによって炎に変換されたためだ。
「砕けろ神! お前の鎧と俺の槌、どちらの鋼が強いか勝負だ!」
「神に及ぶか試してくれよう!」
激突する二者。
そして、音がした。ぱきり、ぱきりと。
「鋼が朽ちる、とはなッ……」
ウルカヌスの鎧が、肉体が剥離し、床に触れる直前、消滅していく。
珠が突いたのは、猟兵達が傷つけた鎧の部位。
神だろうと、オブリビオンの行き付く先は、ただ1つ。骸の海だ。
「次こそは必ずや我が悲願、成し遂げて見せよう……」
捨て台詞を残し、消え去るウルカヌスを見届ける裕美。
そして珠は、ハンマーの柄で床を叩いた。
「大勝利、だ!」
大成功
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