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アルダワ魔王戦争8-BⅡ〜我等は伝説を紡ぐ者なり

#アルダワ魔法学園 #戦争 #アルダワ魔王戦争 #宝石災魔


●『グラン・ギニョール』の宝物庫 ― 冥き空の彼方より
「飛翔✕飛翔✕飛翔……」
 迷宮の暗闇に隠された宝物庫で、それは輝いていた。
 赤・青・緑の三つの首を従えた、女の姿をした異形である。
「探索✕グリモア✕発生源……」
 首たちの輝きを照り返し、異形は多面体の宝石のように、万色を見せる。
「大魔王✕無限災群✕壊滅……」
 それは、朱き竜のように。
「わたしたち✕使命✕継続……」
 それは、蒼き骸のように。
「飛翔✕完成✕あと少し……」
 それは、翠の鬼のように。
 或いは、未だ成らざるナニかのように。
「飛翔✕飛翔✕飛翔……」
 脈打ち、煌めき、輝きながら、それは迷宮の天井を見上げる。
 否、それは天井を抜けた先の空を、その更に『向こう』を見つめていた。
「探索✕グリモア✕発生源……」
 その彼方への飛翔の時を、その異形は待っていた。

●グリモアベース ― 我等は威風堂々と凶星を墜とす
「アルダワ魔王戦争お疲れ様……と言いたいところだけど、もう一幕だけオファーがあるわ」
 クリスティーヌ・エスポワール(廃憶の白百合・f02149)はそう猟兵たちに問いかける。
「場所は、戦略級殺人鬼『グラン・ギニョール』の宝物庫。宝物庫とは言うけれど、収められているのは、もっと物騒なものよ」
 それは、グラン・ギニョールが万能宝石と災魔から作り出した怪物、『宝石災魔』。
 複数の個体が確認されているが、今回戦うのはその一体だ。
「宝石災魔自体は未完成のオブリビオンよ。ただ、完成の暁には『世界を移動する能力』を獲得するらしいの。そう、私たちグリモア猟兵と同じ力を敵も得ることになるわ」
 そうなれば、その災厄はアルダワに留まらず、他世界にも及ぶだろう。
 無論、グリモアベースも例外ではない。
 そうなる前に、宝石災魔たちを倒し尽くさねばならない。
「幸い、グラン・ギニョールが早期に倒れてくれたお陰で、能力の完成まで多少の時間があるわ。デッドラインは3月1日16時。それまでにこの戦場を制圧できれば私たちの勝利よ」
 とは言え、この宝石災魔も万能宝石を内包するだけあって、強敵だ。
 大魔王の各形態などと同じく、宝石災魔がユーベルコードで繰り出す攻撃は、必ず先制攻撃となる。それにどう対処するかが、攻略の鍵となるだろう。
「最後の最後まで強敵続きだけれど、ファーストダンジョンを完全攻略したみんななら打ち勝ってくれると信じているわ。この力を敵に渡さないよう、よろしく頼むわね!」
 クリスはそう言うと、グリモアを起動させた。


西野都
 エクストラミッションは起こるもの。
 こんにちは、西野都です。
 本シナリオは戦争シナリオのため、1章完結となります。
 また、難易度が【やや難】となりますのでご注意ください。

 本シナリオでは、「敵のユーベルコードへの対処法を編みだす」ことでプレイングボーナスを得ることができます。
 つまり先制攻撃をどう防御し、反撃するかが重要となってきます。

 なお、判定は上記の通り厳しめとなります。
 また、プレイングをお流しする場合もありますので、あらかじめご了承願います。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『宝石災魔』

POW   :    龍脈✕女神✕断龍剣
【喰らった者に活力を与える『赤の首』】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【ユーベルコードを吸収する剣】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    瘴気✕屍王✕模倣死者
【敵の肉体をコピーする『青の首』】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【首から下の肉体形状】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    霊紋✕鬼霊✕地獄絵図
レベル×5体の、小型の戦闘用【高速飛翔する『緑の首』】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
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シン・コーエン
(グリモアベースに突入される訳にはいかないので)ここで殲滅しよう。

UC対策
敵の剣がUCを吸収するのか、ならば剣で受けられない超近接の間合いからUCを放とう。

灼星剣は作らずに村正で戦う。
【空中浮遊・自身への念動力・空中戦】で宙を自在に舞い、【残像】で多数の分身を作って幻惑し、【第六感・見切り】で敵攻撃を予測して躱す。
そして躱しざまに村正を振るった【2回攻撃・風の属性攻撃・衝撃波】で敵を斬り裂く。

UC使用可能になれば上記の動きで敵攻撃を躱して、剣で受けられない敵の懐に入り込み、UC:灼星拳刀を宿した拳に【炎の属性攻撃・衝撃波・念動力】も上乗せして敵肉体に叩き込む!
「お前達の使命はここで潰える。」




「探索✕グリモア✕発生源……」
 宝石災魔は、迷宮の天井を見上げながら、謳うように呟く。
 赤と青と緑の輝きを従え、暗闇の垂れ込める宝物庫で自らも輝くその姿は、確かに「宝石」の名に相応しい。
 だが、それは災厄をもたらし、グリモアベースという希望を蝕む呪いの宝石だ。
「ここで殲滅しよう」
 それを直感し、シン・コーエン(灼閃・f13886)はその一事を決意した。
 彼の纏う黒い礼服が強風を受けたかのようにはためくと、その爪先が迷宮の床を離れ……次の瞬間、弾丸のようにシンの身体は宝石災魔へと飛び込んでいった。
「接近✕確認✕猟兵……」
 気配を察知し、宝石災魔が素早く向き直る。女の形が手を掲げると、周辺をたゆたっていた赤い首がその上に飛来し……万色に輝く腕が、首の口へとねじ込まれた。
 その手に握られるのは一本の柄。引き抜くにつれ、赤い首が「折り畳まれる」。口腔が、目鼻が、髪が反転し、女神の如き形を失い、めきめきと音を立てて変生する。
 そして姿を表したのは、首と同じく赤い輝きを放つ一振りの剣。
 溶岩を思い出させる鈍い光と禍々しき気配を放っている。
 その正体を、シンは知っていた。
「予知にあった、ユーベルコードを吸収する剣か……!」
 刹那、シンが手にした日本刀、銘「村正」を抜き放つと、その姿が急激にブレる。多重映りのように重なっていた輪郭が、瞬時にシンの似姿へと姿を変えていく。
 いつの間にか、宝石災魔は単騎のはずの猟兵の、大軍勢に囲まれていた。
「猟兵✕一切✕鏖殺……」
 女の姿をした宝石災魔が、赤い首の変生した剣を片手で振るう。
 竜の咆吼の如き唸り声を上げ、生誕したばかりとは思えぬ剛剣の一撃が、シンの残像たちへと襲いかかった。無数のシンが溶岩の奔流を思わせる剣閃の中に消えてゆく。
「だが、その攻撃は見切っている」
 先制攻撃は予知されていた。そして無数の残像を放った。宝石災魔は本体の所在が分からず、その全てを滅ぼそうと薙ぎ払いのような広範囲に及ぶ一撃を放つだろう。だが、それは個々の対象への精密さを犠牲にすることを意味する……!
 シンは村正の柄を握りしめる。その美しく青く輝く刃紋は、宝石災魔の剣とは真逆。
 風の気を通し、清浄なる空へと還す一振りだ。
 大振りの攻撃は、大きな隙となる。そこへ反撃の一撃を放とうとした、次の瞬間。
「……!?」
 シンは突如攻撃姿勢から、刀を縦に立てた。そこへ。
「残余✕猟兵✕殲滅……」
 神速とも言える身体捌きから放たれた宝石災魔の剣の突きが、シンへと襲いかかった。立てた刀の鍔が、続いて刀身が軋んだ音を立て、燃えるような熱を放つ突きの一撃を受け流していく。
 一撃の余波は、シンの肉体を蝕む。礼服はあちこちが焦げ、皮膚も何箇所か焼け焦げ、悲鳴のように痛みを上げる。残りの分身も全て消滅した。
 だが。
「それだけだ!」
 災魔の剣が通り過ぎた瞬間、シンは風の気を全開放し、そのまま振り下ろした。
 目にも留まらぬ二連撃は、無防備に伸び切っていた宝石災魔の腕を捉え、十文字に切り裂く。
 思わぬ一撃に、宝石災魔が声にならぬ悲鳴を上げた。
 同時に、シンは念動力の全飛行能力を解放し、その懐へと飛び込む。
 敵の剣がユーベルコードを吸収するならば、その威の及ばぬ場所へ行けばいい。
 そして、それは……敵の懐に他ならない!
 村正を鞘に収め、シンは拳を握りしめた。その腕に、赤く輝く剣が浮かび上がり、剣から発せられた炎が拳を包む。
 そう、これぞシンの愛刀にして分身たる灼星剣。
 そして、それを腕に宿したユーベルコード【灼星拳刀】が無防備な脇腹に突き刺さる!
「お前達の使命はここで潰える」
 衝撃が、そして一瞬遅れて炎が宝石災魔の細い身体を突き抜けた。
 手応え、あり。
「苦痛✕猟兵✕損傷……!」
 骸が砕けるようなとしか表現できぬ声を上げ、宝石災魔が大きく揺らいだ。

 それを見届けるかのように、万能宝石の照り返しで村正の鍔が鈍く光る。
 宝石災魔の一撃を凌いだそれは、かつて高潔なる強敵が遺したものであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

加賀・琴
うっ、あれは……サイキックアブソーバーの?
それに彼女は……まさか、完成した刺青の……うずめ様の、巫女?
っっ!頭が、私は一体なにを……?

先制攻撃の緑の首は、逃げながら高速飛翔する首を誘導して上から来る首を無くすか減らすかして、ギリギリまで引き付けてから天女の羽衣で舞い上がり避けます
そのまま【破魔幻想の矢】でお互いがぶつかるか、あるいは揃って追ってこようとする首を纏めて射貫きます
2回攻撃の早業で素早く次の矢を番えて二射目の破魔幻想の矢での追撃も入れて緑の首を次々と掃討していきます
かつてサイキックハーツに至った神も、こうなっては……所詮まがい物ですか
地獄絵図など私がすべて祓わせていただきますっ!




 先制攻撃は成った。宝石災魔の従える首はでたらめに飛び回り、刺青のようにも見える文様を全身に刻んだ女の体は、初めて感じるであろう苦悶の感覚に苦しんでいる。
 その姿を目の当たりにしつつ、加賀・琴(羅刹の戦巫女・f02819)は、油断なく弓を番えていた。
 だが。
――古ぼけた機械の集積体――
 突如、琴の脳裏に、一部だけ鮮明な鮮明な幻像が挿入される。
「あれは……サイキック……」
――全身に刺青を施した羅刹――
「完成した刺青の……」
 幻像は琴の記憶を混濁させる。頭痛とともに、とりとめのない呟きが漏れる。
――■■■様は言いました――
「巫女……?」
 彼女の肉体には、先祖たる「依媛」の呪詛の刺青が刻まれている。それが宝石災魔の何かと共鳴して起きたものか、はたまたグリモア猟兵の予知と似たものか、そのどれでもないのか、彼女に知る術はない。
「私は一体なにを……? ですが……!」
 確かなのは、眼前の宝石災魔は倒さなくてはならない事だ。
 琴は、弓を握る手に再び力を込めた。

「猟兵✕一切✕鏖殺……」
 先行して動いたのは宝石災魔であった。
 緑の首が女の頭上に飛び上がり、その髪を振り乱した。いや、違う。
 髪そのものが伸びて線となり、背後の空間に巨大な絵図を作り出しているのだ。
 そして、そのモチーフに、サムライエンパイア出身の琴は心当たりがあった。
「六道の……地獄絵図ですか!」
 仏道に曰く、極楽に往生できぬ者は人道・天道を含めた六道に輪廻し、生の苦しみを味わうという。その内でも、罪過を帯びた魂が転生し、それを贖うために存在する苦痛の道こそ地獄道。
 その絵図に描かれた鬼たちが一斉にこちらを向き、飛び出した。
 緑の首の似姿となった獄卒たちは、琴を地獄の則の通りに引き裂き、貫き、焼き尽くさんと飛来し、殺到する……!
「させませんっ!」
 琴が逃れながらも鋭く矢をつがえ、放つ。
 2体の緑の首が同時に額を射抜かれ、一瞬の内に緑の焔と化して消えた。
 だが、その焔を突き破り、更なる首たちが琴へと迫る。
「地獄絵図✕猟兵✕殺戮……」
「それでは、地獄道に捕らえることなどできませんよ!」
 緑色の牙が琴を捕らえる寸前、琴の身体が宙に舞った。
 牙たちは目標を失い、打ち鳴らされるのみ。
 そして、琴のそれは単なる跳躍ではなかった。
 そう、脚力で飛んだ者が、空中で動きを止めて矢をつがえるなど、あるはずがない……!
 それは、琴が纏う天女の羽衣の神通力である。纏う者を天女の如く、空に舞わせ、自在に飛翔させる力。
 そして、つがえるはユーベルコード【破魔幻想の矢】。
「遠つ御祖の神、御照覧ましませ」
 女の柔らかい肉体を引き裂こうとした首たちは、清浄なる気を帯びた破魔の矢の雨に次々と撃ち抜かれ、不浄な緑の焔と化して霧散した。
 地獄絵図を展開する緑の首は、絵図から更なる小さな緑の首を召喚し、天女の力を継ぐ巫女へと殺到する。
 その数は、先に召喚した数の数倍に渡る。
「危険✕危険✕危険……」
 琴どころか迷宮すら噛み砕き、飲み込まん怒涛の群れが蝗のように琴に襲いかかった。
 だが、その牙が琴を噛み砕くことは叶わない。
「八雲たつ……」
 神楽舞の歌を謳いながら、袖を大きく翻す。
 謳うは催馬楽神楽の第一座、神読。
 須佐之男命が八岐大蛇を討伐した際に謳ったと言われるものだ。
「出雲八重垣……」
 舞いながら番えた矢が、首の一つを貫く。
「妻こめに……」
 間に合わぬ首には、直接矢を握り、その眉間を貫き、その焔も吹き散らす。
 琴に群がっていた首が掃討され、地獄絵図を作り出す緑の首が見えた。
「八重垣つくる、その八重垣を……」
 再び矢をつがえ、その首をきっと見据える。矢に力が籠もるのが分かる。
 刹那、再び頭が疼く。琴も知らぬはずの言葉がこぼれ出る。
「かつて極点に至った神もこうなっては……所詮まがい物ですか」
 極点とは何か? 神とは?
 言葉を紡ぐ琴すらも分からぬ言葉の羅列。だが、今それに意味はないと頭を振る。
「地獄絵図など私がすべて祓わせていただきますっ!」
 琴の放った再度の【破魔幻想の矢】は颶風を伴い、無数の破魔の矢となって殺到した。
 幾多の召喚しようとした首が散らされ、それに数倍する数の矢が、地獄絵図と、それを展開する緑の首に突き立った。
「苦痛✕苦悶✕苦戦……」
 緑の首が鬼のような絶叫を上げるとともに、地獄絵図は消滅していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

白雪・まゆ
あのハンマーさんは、こんなのを作っていましたのですか……
同じハンマー使いとしましては、放ってはおけないですね。
しっかり後始末、しておくのですよ!

相手の先制攻撃には
【野生の勘】と【第六感】を使って、
相手の攻撃を察知、【ダッシュ】で躱していきたいと思います。
「かんたんには、あたりませんのですよ!」

攻撃は
相手の攻撃をダッシュでかわした勢いそのままに、
【捨て身の一撃】と【鎧砕き】を乗せた
【Cannonball Crush】を、めいっぱいで叩き込んでいきますですね。

粉々に砕いて、砂にして、
どこにも行けなくしてあげるのです。

次に宝石になれたときには、
綺麗な石になって欲しいのですよ。


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

そりゃ相手だってやられっぱなしのバカじゃないし。できるんならそのくらいはやってくるわよねぇ。
…させてやる義理なんてありゃしないけど。
きっちり全部叩き壊してやりましょ。

…これが一番勝率高いかしらねぇ。だいぶ博打になるけど。
〇目潰し・足止め・フェイントに残像、手札ひっくり返して撹乱しつつ〇ダッシュで接近。剣の間合いの内側から〇零距離射撃で●滅殺を叩き込むわぁ。
UCを吸収するのはあくまでも「剣」だもの。そこに当てなきゃいいんでしょ?
…いっそ串刺しにでもしてくれたほうが手間省けるかしらねぇ?

悪いわね、あんたにはぜーんぜん関係ないことなんだけど。
――アタシ、赤って嫌いなの。




「あのハンマーさんは、こんなのを作っていましたのですか……」
 三色の首と、その輝きを照り返して万色に煌めく宝石災魔。
 それを見やり、白雪・まゆ(月のように太陽のように・f25357)は、下にボディスーツを着込んだロングコートをなびかせ、超鋼金属製のハンマーを構える。
「そりゃ相手だってやられっぱなしのバカじゃないし。できるんならそのくらいはやってくるわよねぇ」
 その傍らに立つバーテンダーの装いの女性は、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)。笑顔の中で、細められた瞳が鋭く光る。
 手にした得物は「オブシディアン」。黒鉄光る6連装リボルバーである。ガンプレイ用にカスタマイズされた銃が、手の中で踊っている。
 その銃の動きが、ピタリと止まった。銃口が、宝石災魔の方向を向く。
「……させてやる義理なんてありゃしないけど」
 ティオレンシアのドスの効いた声。それに、まゆもピンクの髪を揺らし、頷く。
「はいです、同じハンマー使いとしましては、放ってはおけないですね!」
「ふふっ、どうやら気が合うみたいねぇ。きっちり全部叩き壊してやりましょ」
「もちろんです! しっかり後始末、しておくのですよ!」
 二人の気配に宝石災魔が反応し、赤い剣を掲げる。
 その禍々しい輝きを見るや、まゆとティオレンシアは弾かれたように走り出した。

「斬撃✕殲滅✕断龍剣……」
 宝石災魔が剣を振り下ろした。赤熱した剣の軌跡によって石畳が瞬時に溶解し、さながら地脈より溢れ出た溶岩流のようなほとばしりとなり、猟兵たちへ襲いかかる。
「来たわねぇ……それじゃ、目をつぶって、ねぇんっ!」
「はい! いち、にの、さん、です!」
 宝石災魔の一撃を前に、二人が左右に飛び退いた。その肌に熱を感じる間もなく、同時に目を閉じる。
 刹那、擬似的な溶岩噴流を引き裂いて、猛烈な光が溢れた。
 青と緑の首2つと女の姿の災魔が、虚空を震わすほどの絶叫を上げる。
「何とか上手く行ったみたいねぇ」
 ティオレンシアがその場に残した閃光グレネードが、高熱の中で太陽が弾けたかのような猛烈な光となり、宝石災魔の目を灼いたのだ。
 その視覚は完全に機能していないのを、ティオレンシアは確信する。事実、二手に別れた彼女とまゆには反応できていないのだ。
 今のうちと、彼女は一気に距離を詰めようと走り出す。
 だが、まゆの鋭い声がそれを遮った。
「まだなのです!」
「……!?」
 考えるより先に側転。一瞬前まで彼女の首があった位置を焦熱の剣が通り過ぎた。
 熱よりも、寒気が背筋を冷たく濡らす。
 あの声に従わなければ、首が胴と泣き別れ、あるいは一瞬で肉体の全てが灼き滅ぼされていたかもしれない。
 そして思い至る。
「そう、見えているのねぇ……『目』以外でっ!」
「たぶん、そうなのです!それでもっ……!」
 宝石災魔の標的が変更され、超高熱を纏う赤い剣の剣閃がまゆを襲う。
 首を、腕を、足を、胴を、あるいは肉体全てを焼き滅ぼさんと振るわれる。
 だが、
「かんたんには、あたりませんのですよ!」
 伏せ、転がり、跳び、時には受け流し、まゆはその攻撃をかわしていく。
 それは、先読みや動体視力などでは決してない。
 勘という言葉で総称される諸感覚を束ねた何か、あるいは背筋を走る寒気という形で表される、それですらない感覚。
 その命じるままに、まゆはハンマーを携えて走っていく。宝石災魔に向けて。
 その姿は、このアルダワ魔王戦争が初陣とは思えぬほど、堂々としたものだった。

「ふふふっ、あたしも負けてられないわねぇ」
 ティオレンシアは、オブシディアンを手に下げて、ふたたび立ち上がった。
 ギャルソンとしての制服は、既にあちこちが埃で汚れてしまっているが、目立つところだけを手で払い、体裁を整える。
 細く開いた目が、鋭く眼前の敵を見据える。
 宝石災魔は絶望に灼ける剣を振るい、まゆを斬り伏せんとしている。
 ティオレンシアには、その意識は向けられていない。
「なら、決めさせてもらおうかしらぁ!」
 猛然と、彼女は宝石災魔に向けて走り出す。その足がステップを踏み、残像を生み、時に一歩下がってフェイントを交えながらも、着実に距離を詰める。
(……これが一番勝率高いかしらねぇ)
 手の中のオブシディアンに、ちらりと視線を向ける。ここまで一発も放っていない、この銃こそが彼女の勝算であった。
(だいぶ博打になるけど)
 既にティオレンシアの接近に気づいているはずだが、宝石災魔は未だまゆを相手にしている。
 距離は残り10歩。9歩少し詰めればいい。
 そう思ったその時。
「よけてくださいっ!」
「えっ……!?」
 身体を回転させ、瞬時に目標をティオレンシアに変えた宝石災魔が、赤い剣で突きを見舞った。
 まゆには、その剣とティオレンシアの影が交わって……貫かれたように見えた。
「ティオレンシアさん!」
 最悪の予感に、思わず彼女の名を叫ぶ。
 だがそこに、おかしげなクスクス笑いが響く。
「攻撃✕命中✕何事……?」
 宝石災魔も訝しげな声を上げる。
 笑っていたのはティオレンシアだ。剣を抱え、焼け焦げた匂いを漂わせながら。
 突きを紙一重で躱し、その剣を左腕で抱え込んでいたのだ。
 猟兵とは言え、石畳を瞬時に液化する高温を放つ剣を抱えて無事ではいられない。
 だが、ティオレンシアは生きていた。そして、猟兵にとってはそれで十分だった。
「……悪いわね、あんたにはぜーんぜん関係ないことなんだけど」
 無事な右手を軽く振り、リボルバーの弾倉を振り出す。その中には銃弾が6発。
 蘇りかけた想い出を封じつつ、ティオレンシアはきっぱりと言った。
「――アタシ、赤って嫌いなの」
 剣を抱えた左腕を離し、手の中に銃弾装填用の道具……クイックローダーを握る。
 そして、伸び切った赤く輝く腕に向けて弾倉を掲げ、その尾部を打ち据えた。
 装填されていた銃弾の雷管は一斉に発火、六発の銃弾が一斉に放たれる。
 バレルが事実上弾倉しかない以上、精度に期待はできないが、至近距離ならば問題にならない……!
 ユーベルコードの力を乗せた銃弾が、無防備な刺青の腕に突き刺さり、一斉炸裂。
 宝石災魔が骸を思わせる叫び声を上げる。
「さぁ、今よぉ!」
「はいです、めいっぱいで叩き込んでいきますです!」
 まゆが、宝石災魔の懐へと飛び込み、手にしたハンマーを両手で構える。
 超常の力が、細い体に満ちていく。
「粉々に砕いて、砂にして、どこにも行けなくしてあげるのです!」
 ユーベルコード【Cannonball Crush】。彼女の身長を上回る長柄の、超重量のハンマーを叩きつけ、破壊をもたらすユーベルコード。
 その一撃が、態勢を崩した胸へと吸い込まれた。
 命中点から放射状にヒビが入る。
 宝石災魔が、首たちが口々に、骸のように、龍のように苦悶の叫びを上げた。
「苦痛✕苦痛✕苦痛……!」

 崩壊の時は近い。
 まゆとティオレンシアはそう確信していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

栗花落・澪
【藍花】

★Venti Alaに風魔法の【高速詠唱、属性攻撃】を纏わせ
【激痛耐性+オーラ防御】と組み合わせ鎌鼬の防壁を発生
【聞き耳】で敵の動きに伴い発生する音を聞き死角を補いながら
翼の【空中戦】で回避行動
近づいて来る首を風の刃で弾き飛ばし少しでも数減らしつつ

ネロさん、無茶はしないでよ!

初撃を凌げたら【指定UC】の【歌唱】を響かせ癒しを

歌は手を止めなくても出来るからね
その間に纏っていた風魔法を放出する事で
自分の防壁がオーラ防御のみになる代わりに衝撃波に触れた首達に【範囲攻撃】
更にネロさんの技に反応して生成された剣に向けて
雷の【高速詠唱、全力魔法】で弾き飛ばし
あわよくば感電による足止めを狙い

今だよ!


ネロ・バロック
【藍花】

先手を取られても【武器受け】【覚悟】【見切り】【残像】で被弾を避けて、召喚された首には【2回攻撃】【生命力吸収】を食らわせて突破してやる

無茶しないで勝てる相手かァ?
バックアップは任せた!
頼りにしてるぜ、澪

ユーベルコードを封印されちまったら戦い難いったらねぇからな!
剣の攻撃は避けながら首の方は多少のダメージは覚悟する
澪が回復してくれるしな

【目立たない】【暗殺】で距離を詰めた後、
【見切り】【残像】に加えて【フェイント】で敵の攻撃を掻い潜り
澪が剣を弾いてくれたタイミングで
懐に潜り込んで【2回攻撃】【捨て身の一撃】からの唯我独尊斬りをぶちかましてやる!

これでジ・エンドだ!吹っ飛びやがれ!




 その猟兵たちは、対照的な存在であった。
 その片翼、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は細い指を胸に沿わせ、微かな声で詠唱した。
 細い体躯に絹糸のような髪、少女のような整った顔立ちに、それを包む少女らしい服装は、見た者に「天使」という言葉を想起させる。
 澪に喚起された風たちは舞うように澪の周りを包み込み、その力を彼の靴「Venti Ala」へ与えていく。
 だが、宝石災魔もそれを黙って見ているわけではない。
「風属性✕増大✕先制攻撃……」
 女のような叫びを上げた緑の首が、その背後に地獄絵図を展開。
 描かれた獄卒が、一斉に澪の方を凝視し、同時に小型の緑の首として絵を抜け、飛び立つ。
 小さいとは言え、緑の首の似姿である。端正な顔に鋭い牙が緑色の輝きを放つ。
 群狼のように殺到する首たちは、澪を八つ裂きにしようと大口を広げ……。
「風たちよ、お願い!」
 四翼が、弾けた。澪の背の翼に加え、風属性を帯びた靴も翼を生やし、広げたのだ。
 澪を包み込んでいた風が弾け、それを受けた大口を広げた首の幾ばくかが不浄な緑の焔となって、四散した。
 澪の纏っていた風が真空の刃と化し、首たちを両断したのである。
「生存✕不許可✕追跡……」
 再び彼を追い始めた首に対し、澪は四翼を羽ばたかせ逃れる。
 背後からも首たちが迫るが、その全てを澪は察知していた。
「君たちの場所は、風が教えてくれてるよ!」
 吹き荒れる暴風の中でも、澪に味方する風たちは、彼に仇なす者たちの立てる音を届けていたのだ。
 澪の春色のジャケットと、純白の四翼がふわり、と舞う。
 同時に真空の刃が振るわれ、不浄の焔が音もなく散り消えた。
 それでもなお飛来する首たちを前に、
「ネロさん、無茶はしないでよ!」
 そう澪は叫んだ。

「無茶しないで勝てる相手かァ? バックアップは任せた!」
 澪の視線の向こうで、もう片翼の猟兵、ネロ・バロック(餓狼・f02187)は叫び返した。
 細身ながら質のいい筋肉が脈動し、長い藍色の髪を従えて迷宮の石畳を駆ける。
 背に背負うのは黒の大剣。ルーン文字の刻まれたそれは、確かな呪力と重量を併せ持つ、「圧殺」を旨とする武器だ。
 柔らかな印象の澪とは違う、野性的でしなやかな、猟犬を思わせる少年であった。
 宝石災魔がようやく走り寄るネロに気づいた。
「断龍剣✕抜剣✕灼滅……」
 赤い首を灼熱の剣に鍛造し、そのまま振り下ろす……!
 だが、その攻撃は空を切り、迷宮の床に叩きつけられる。
 右に飛ぶと見せかけ左へ、左の影を唐竹割りにすれば残像が消え逝き、その次の一撃を上体を反らしてかわしてみせる。
 だが、更に一撃。そのネロの動きをも読んだ、どう動いてもかわしようのない一撃。
 だが、ネロにとってはそこまでが予想内。
「まぁ、そう来るよなァ! 分かってんだよ!」
 ネロは黒の大剣に手をかけると、そのまま全体重を乗せ、振り下ろされる宝石災魔の赤い剣に全力で叩きつけた。
 黒と赤が激突し、火花を派手に散らしながら金属の軋む音が響く。一撃の重さに、筋肉と骨格も悲鳴を上げる。
 だが、ネロは止まらない。
 大剣が帯びたルーンの護りを頼みに、剣の腹で敵の一撃を押し退けながら走る……!
「緑首✕一群✕攻撃……」
 宝石災魔は、澪に向けていた緑の首の一群を割き、ネロに差し向けた。
 一群とは言え、頭上を覆い尽くすほどの首が飛来し、少年の服が裂け、赤い血が飛び散る。
 その時、首のいくつかが緑の焔となり、散った。
 宝石災魔の剣の一撃を受けきり、新たに振るった一撃だ。
 その焔は、散るや否や黒の大剣に吸い込まれ、服に広がりつつあった血の染みの広がりの速度が鈍る。
「それも、分かってんだよ……」
 黒の大剣で斬った首の生命力を、自らの傷を塞ぎ、賦活するのに用いたのである。 無論、全快には程遠い。だが、その次に繋がるまで持てば十分だ。
「頼りにしてるぜ、澪!」
 ネロは彼にとっての天使たる澪に向けて叫んだ。

「任せて、ネロさん! ……皆の行く先に、幸多からん事を」
 敵を拒絶する暴風の中、両手を広げ、澪は旋律を刻み、歌い始める。
 旋律を刻む度、歌詞を唇に乗せる度。
 地の底深くの迷宮の更に奥、秘匿されたはずの宝物庫の空気が清められていく。
 ユーベルコード【sanctae orationis】。澪の神秘を湛えた歌声によって発動するそれは、共感する者の傷を癒すだけでなく、迷宮の主の失われたファーストダンジョンにおいて、残り香のような気配をも打ち払う効果をもたらしていた。
 その歌声は、澪の纏う暴風を隔ててなお、ネロの耳に届く。
 幾重にも切り裂かれた傷口が塞がり、癒される。
 今なら地上まで駆け上がれる気がするほどの活力が満ちていく。
 天使は、彼を守り、背中を押してくれたのだ。
「本当に頼りになるぜ、澪ッ!」
 立ち上がり、キッとその先に立つ宝石災魔を鋭い視線で睨みつける。
「脅威✕再来✕再攻撃……」
 地獄絵図から顕現した緑の首たちが、再びネロに襲いかかろうと牙を剥く。
 だが、宝石災魔は考えていなかった。歌と魔法の制御は別だということを。
(歌は手を止めなくても出来るからね……!)
 澪の背と足の四翼が羽ばたき、彼を守っていた暴風が、前方に指向性を持った。
 その先には、今まさにネロに襲いかかろうとしていた首たちがいる……!
 緑の首の写し身たちは、暴風のシュレッダーに切り裂かれ、不浄の緑の焔と化して風に散る。
 ネロの前方が、開けた。
「じゃぁ、行くぜ……覚悟しな宝石野郎!」
 黒の大剣を肩に背負い、ネロはしなやかな動きで走り出す。
 猟犬のように素早く、敵の急所を一直線に目指して。
「龍脈✕女神✕断龍剣……!」
 させじと、宝石災魔は剣を高く振りかぶった。
 渾身の一撃をもって、脅威たる猟兵を確実に潰そうというのだろう。その一撃は、この戦いの中でも最大の威力を持つと戦場の誰もが確信した。
 しかし、その動きこそがこの戦いにおける、宝石災魔の最大の失策だった。
「神鳴よ、百雷となりて我が朋友の道を拓け!」
 澪の放った全力の雷が、その切っ先を捉えた。
 雷魔法のエネルギーは衝撃となり、振るおうとしたその剣を弾く。
 手放すことはなかったものの、高々と弾かれた剣に腕が引っ張られ、正面の防御は完全にがら空きとなった。
 これこそが、最大の好機。
「今だよ!」
「おう! これでジ・エンドだ! 吹っ飛びやがれ!」
ネロの黒の大剣のルーンが青く輝き、同時に跳躍した。
 宝石災魔の胸に飛び込むように、一直線に飛翔する。
 飛翔の力を持たぬネロにとって、一歩間違えば両断の危機すらある捨て身の一撃。
 だが、大きな隙を晒した上、雷魔法による感電で動きの鈍っていた宝石災魔に、その一撃を迎撃することは叶わない……!
「爆ぜ……やがれッ!」
 神秘の、ユーベルコードの光を帯びた斬撃、【唯我独尊斬り】。
 二連撃となった斬撃を吸収することは叶わず、ひび割れた胸には更に十字の傷が刻まれ、その圧は衝撃波となって突き抜け、宝石災魔の背中側の石畳を粉々に破壊した。
 宝石災魔の本体はその中へと突っ込み、澪とネロはかの災魔に初めて膝をつかせるどころか、ダウンを取ることに成功したのだ。

「……もう、無茶しないでって言ったよね!」
「何言ってんだ、澪がいたから、無茶できたんだ」
「その言い方、ずるくない?」
 対象的な二人。天使と猟犬。
 言葉を交わし合う澪とネロの顔には、同じように笑みが浮かんでいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レッグ・ワート
気持ちはわかるが状況的な物騒をあつらえるのマジでやめて。

とりま迷彩起こしたドローンで各自の立回りの情報収集は通しでやる。運びや陽動や回避支援が要れば、都合聞きつつバイク運転してこう。最初にその辺に落ちてるもの投げるか障害物にぶつけるような避け方して、首に物理が当たるか見ときたいね。見切りで避けるなり鉄骨で武器受けて、本体を怪力込めた鉄骨でぶん殴れれば上等だ。
当たっても頭まで真似なきゃ、仮にとんでもリソースだろうが戦闘補助の機能が少ないだろ。ってか仕様の補助領域無しでフィルムの演算捌ける気がしない。何にせよこの場合はゴッドスピードライドでバイクに接続して防盾も変換。まとめて轢きにかかるぜ。




「飛翔✕可能性✕低下……」
 迷宮の暗闇に隠された宝物庫で、それは朽ちようとしていた。
 従える赤・青・緑の三つの首はひび割れ、毀たれ、欠け、異形たる女の姿の胸には、刺青のような文様よりも多くの無数の亀裂と十字傷が刻まれていた。
「わたしたち✕使命✕継続……」
 それでも、宝石災魔は立ち上がる。
 龍の、骸の、鬼の声で、まだ成していないことを成すために。
 宝石災魔の骨子たるひとつ、万能宝石はまだ輝いているのだから。
 ……レッグ・ワート(脚・f02517)、通称レグが戦場へ飛び込んだのは、その時だった。

「気持ちはわかるが状況的な物騒をあつらえるのマジでやめて……って、マジでやめて!?」
 レグは声帯機能の限りに絶叫した。
 はじめは、宝石災魔の境遇に、そして最後は自分の状況に向けて。
 彼自身は、奪還支援型と定義されるウォーマシンである。すなわち、後方支援や撹乱行動等を念頭に置いて設計されている。
 無論、「奪還」と銘打つからには敵中への突入も想定されている。
 だが、それはあくまで事前の情報収集を元にルートを組み立て、宇宙バイクの快速をもって強襲し、対象を奪還、敵の追撃を断ち離脱するという前提あってのものだ。
「ってか、俺がトリなんてな……」
 戦場の情報は、天井近くに配置したドローンから逐次収集している。光学迷彩を起動させたドローンは、宝石災魔に気づかれることもなく、激戦を余すことなく目撃し、レグの記録領域に刻み込んでいた。
 だが、同時にそれは、彼以降の猟兵の転移がないことも察知していた。猟兵の追加転移があれば、支援や運搬を相棒の宇宙バイクで行い、面倒を見るつもりだったのだが、当てが外れた格好だ。
 仕様外だ。
「とりま、ここでドンパチ避けて帰るわけにはいかないし、仕事するか!」
 レグが肩をすくめると同時に、宇宙バイクのエンジンが唸りを上げ、甲高くタイヤが叫ぶ。飄々とした言葉と裏腹に、力強い走りを見せる。
 ここに至り、最後の猟兵であるレグを確認した宝石災魔は、青の首を掲げた。
「瘴気✕屍王✕模倣死者……」
 みるみるうちに大きくなるレグの視界の中の青い首が、ミイラを無理矢理へし折るような乾いた音を響かせながら、歪み、ねじ曲がりながら形を変える。
 一通りの変形を終えた青い首は、高速で走り始め、一瞬視界から外れた。聞き覚えのあるエンジンの唸りとともに。
 その方向にバイクのテールを大きく振る。急激に回転する視界の中、レグは「それ」を確実に捉えていた。
(なるほどね、アレが予知にあった「青い首のコピー」ってやつか)
 大出力の宇宙バイクに、骨格を思わせる緑色の細身のフレーム。再起動してから常に在る、自らと全く同型のフレームが、同じく同型のバイクに乗り機動している。
 その姿はまさにレグの似姿だ。……その首が、宝石災魔の掲げた青い首にすげ変わっていることを除けば。
 青い首の乗った帝国型ウォーマシンは旋回し、突撃する。
「最後✕猟兵✕殲滅……」
 すれ違いざまに強化鉄骨の一閃。首を刈る軌跡に対し、レグは急ブレーキ。そのままバイクを大きく倒し、その場で急回転し、その一撃を何とか回避した。
 猟兵たちの戦いで破壊されていた石畳の欠片が、スウィングするタイヤを追って跳ね上がり、三日月型の粉塵を巻き起こし、小石を散乱させる。
「ふぅ、どうやら色々と想定通りみたいだな、ありゃ」
 レグはこちらに向けてUターンする宇宙バイクを見ながら、安堵の声を上げる。
 青の首のユーベルコードは、敵の肉体をコピーするというものだ。
 事実、彼の首を除く全てのフレームのみならず、手にする強化鉄骨や、宇宙バイクは見事にコピーされていた。その走りのデータから、強度や速度、出力等のスペックもレグのものと同一だろうと推測される。
(けど、頭まで真似なきゃ、仮にとんでもリソースだろうが戦闘補助の機能が少ないだろ)
 彼の装備、特に繊維型演算回路で作られた力学互換フィルムと対外フィルムの制御演算は、頭部の補助領域がほぼ必須リソースとなっている。
 硬度や耐性変換、適化調整や遮断といった機能を発揮するには、膨大な量の演算をリアルタイムでこなす必要があるため、そのほぼ全てを本体領域から逃がすことで、本体機能の遅延を防いでいるのだ。
 だが、目の前の青い首を乗せた冗談のようなウォーマシンは、それを使う様子すら見せなかった。
「つまり、あいつのリソースじゃフィルムの演算とか無理ってことだ。小石も当たるしな」
 発した言葉が、人間のような笑みの色を帯びる。
 それと同時に、レグはバイクの制御系を主演算回路と接続。防盾もバイク前面に移動させ、モーフィング機能でドリル形状に変形させた。
 ドリルの回転とエンジンの回転が完全同期し、レグの騎乗するバイクは大きく吠えた。
 その姿は、さながら鋼鉄の一角獣。
「だったら、あとは限界まで吹かすだけだ、ってな!」
 一角獣が、地を蹴った。
 迷宮の床に悲鳴を上げさせながら、エンジンと補助領域をフル回転。マントのように纏った対外フィルムのパラメーターを硬度と柔軟性に全振りする。
 その角の先には、宝石災魔。
「猟兵✕軌跡✕介入……」
 進路上に青い首のウォーマシンが立ち塞がり、エンジン音を立てて突っ込む。
 前部には同じようにドリル。激突は必至だ。
 だが。
「頭まで真似られなかったのが、お前の負けた原因だな」
 ドリルの一撃は、真正面から青い首のウォーマシンごとドリルを破砕、そのままの勢いで宝石災魔に追突する……!
「わたしたち✕使命✕果たせず……!」
 ドリルの切っ先が胸に埋まった万能宝石を砕く。
 次の瞬間、その全身はガラスのように粉々に砕け散り、レグのウイニングロードを照らすように煌めいて、二度と自ら光ることはなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年02月28日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト