7
それでも、リスが認めてくれるから

#キマイラフューチャー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#キマイラフューチャー


0




●リスだけが、認めてくれたから
「やっぱり、才能無いのかな......」
 キマイラの少女は悩んでいた。自らの動画再生数が伸びない。時折入る人もバット評価だけして帰っていく。
「私じゃ、ダメなのかな......」
 憧れだった。素晴らしい音楽や歌声でみんなを魅了していく画面の向こうの世界を見て、彼女は自分もそこに行きたいと、目指したいと思った。
 しかし、立ちはだかる壁を突破できないのだ。会心の出来だと思った動画なのに、それなのに......。
「もしかしてさ、それ作ったの、君、なの?」
 そんな時だった。端末の眺めながら公園で沈み込んでいる少女に、一匹のリスが声をかけたのは。
「う、うん。……でもダメなの。全然見てもらえなくて、いいねだってたったひとつ……」
「......それさ。ボクなんだ。いいねしたの。いい歌だよね!」
「えっ......!」
 少女が顔をあげて、リスを見る。彼の笑顔はとても輝いていて、間違いなく本音で言っていた。
「きっと、もっとたくさんの人に聞いてもらったら、きっとわかってもらえるよ!」
 だから、そんな顔しないで。そう言って微笑んだリスを、彼女は一生忘れないだろう。

●例えそうだとしても
 彼女は間違いなくリスに救われていた。
 彼女にとってはリスがオブリビオンだろうとなんだろうと、自分を一番最初に認めてくれたかけがえのない存在だったのだ。
「でも、放っとくわけにもいかんのじゃ」
 グリモアベースでいつになく真剣に悩むウルフシャ・オーゲツ(ヤドリガミのフードファイター・f00046)に不思議な顔をして近付く猟兵たち。
「キマイラフューチャーで一人の少女が世界へ羽ばたこうとしとる……のを、叩き落として欲しい」
 その少女はあるオブリビオンに励まされ、音楽イベントでラップバトルに参加するらしい。ただ、その少女の才能は最悪だった。しかし、それをあるオブリビオンがいいねとあまりにも言い続けることで、キマイラフューチャーの住人が、あれ、この音楽って実はいいんじゃないか、と毒されていき……。
「あの世界の音楽が死んでしまう」
 最終的には音楽好きの人々から癒しが奪われ、想像もできない被害に発展してしまうのだという。今はそうでもないが、このまま進化していくと電波ソングを超えた洗脳ソングが世界を征服しかねない。
「その足がけとなる、この音楽イベント。そこで彼女を完膚なきまでに叩きのめしたらウチらの勝ちや……簡単じゃろ?」
 そうかもしれない、そうかもしれないが……。
「どんな手段取るにしても、結果的に、ウチらが希望を刈り取ることになるかもしれんね」
 今から向かうとイベントの真っ最中。そこで直接オブリビオンをいきなりどうこうしてしまう、ということも考えた。しかし、会場は生放送中、それが流れると音楽を暴力で殺したというまた別の事件になりかねない。穏便にすませるとすれば、正面から音楽で戦うことになるだろう。
「おそらくラップで破れても彼女とオブリビオンはまだ諦めず音楽で挑んでくる。それをさらに叩きのめし、音楽イベントで注目をかっさらったまま終了を迎えるのが目標というところじゃな。……あとは、そのオブリビオンを片付ければおしまいじゃ」
 確かにそれで世界は平和になるだろう、しかし、それではその少女は……。
「……世界平和目的の為の致し方のない犠牲、そういうのも、あるんじゃろ」


しべりあ
 私がTRPGのシナリオ作るときはこんな感じが多いですが、超主人公体質のPC1がいるのでマスターが説得されてます。
 どうも、しょしんしゃのしべりあです。シリアスになると思います。やってみます。
 シナリオの先生から教えてもらったことがあります。物語を作るときは、主人公をどうしても抜け出せそうにない最悪な事態に陥らせてください。その次に、その主人公がどうやってその事態から抜け出せるかを必死に考えてください、と。いまだにうまくできません。
 さて、ラップバトルって難しいと思いますが、うまく韻を踏んでみてください、マッスルでも勢いでもいいです。私も頑張ります。
 シナリオの成否にはさほど関係がありませんが、この少女をどうするか、というのがシナリオ後味にものすごく関わってくると思います。
 目的を達成するだけなら、猟兵の皆様ならば造作もないことでしょう。
 結末がどうなるかは、みなさん次第です。
 もし、ご縁ございましたら、何卒よろしくお願い致します。
133




第1章 冒険 『クラップ・ラップ・パーク!』

POW   :    韻とか良いから魅せてみろ、ボディランゲージラップ!

SPD   :    純粋なラップへの愛をみせろ、正統派原理主義ラップ!

WIZ   :    世論への不満をぶちまけろ、社会風刺ラップ!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

琴葉音・ラース
希望の目を摘み取ってしまうのは、正直いい気分じゃねーっす。
それでも今は音楽を奏でるだけ。
「ラップ特化型サウンドソルジャー、琴葉音ラース、出陣っす!」

サウンド・オブ・パワーで味方を強化しつつ、自分の思いをぶつけるっす。

「諦めない心へリスペクト、だが今の君は首輪付いたペット、目を覚ませるため命をBET」
「よく見てみなよこの現状、歓声飛び交うまさに戦場、遠慮はしないよ自分らは言動。便所に流される覚悟はできたかい?猟兵の本気ラップを見せてあげようかい!」
「弱肉強食の音楽界、才能開かず落ち込み後悔。何故そこまでしてこだわるんだい?探せば他にも凄く良い才能があるんじゃない?」



●明確な才能の無駄遣い
 その少女の登場で、会場は凍りついた。リリック(歌詞)自体は言うほどおかしくないかもしれない。だが、余りにも独特なリズムのためにノリきれなくなり、どうディスっていいかわからないうちにいつのまにか終わっている。そんなラップを叩きつけられ、ステージのラッパーたちはバトルを継続できずに倒れ伏していた。DJもなぜ俺のリズムからこの少女のリズムが産まれてきたのだと目が死んでいた。でも手は動いていた、プロ根性である。
 少女の肩には一匹のリス。リスは彼女を褒め称え、彼女はその声援に応えていく。
「ラップ特化型サウンドソルジャー、琴葉音ラース、出陣っす!」
 そんな舞台の氷を一気に叩き割って飛び込んできたのは一人のラッパー、琴葉音・ラース(激情爆音ラッパー・f10509)だった。
「よく見てみなよこの現状、歓声飛び交うまさに戦場、遠慮はしないよ自分らは言動。便所に流される覚悟はできたかい? 猟兵の本気ラップを見せてあげようかい!」
 猟兵はこの世界ではまさにヒーローだ。登場するだけで冷たくなっていた会場に熱い歓声が沸き起こり、ボルテージは急上昇していく。
「うっそ、本当に? マジリスペクト、私の憧れ今この目の前。遠慮をしない? 私もしない! あなたとだったら下水に行くのもアドベンチャー! さぁ楽しみましょう、レッツバトル!」
 少女が憧れていたのも猟兵たちの動画だった。憧れの存在を目の前に闘志を燃やす少女。彼女は他のラッパーをいろんな意味で打ち倒していったことで無駄に自信をつけてしまっていたのだ。挫けさせるには一筋縄ではいかなそうだった。
「弱肉強食の音楽界、才能開かず落ち込み後悔。何故そこまでしてこだわるんだい?探せば他にも凄く良い才能があるんじゃない?」
「弱けりゃやられるこの世界、どこでも変わらぬ大魔界、好きなもの焦がれて何が悪い。憧れさせた、アンタが悪い! それにワタシの才能は最高、ついてこれない世界が異常!」
 ラップバトルというのはたとえ相手を尊敬しながらも笑顔で貶す必要がある恐ろしい戦いである。少女(の肩に乗るリス怪人)と猟兵たちとの戦いの火蓋は切って落とされた。
 ちなみに、少女は音楽を愛してやまないサウンドソルジャーへの挑戦者だったが、その実、相当名の知れたゴッドペインターだった。彼女が自ら作成した宣伝用のポスターは相当素晴らしい尊さを持っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

赤月・句穏
【WIZ】
ラップですか。あまり興味はないのですが他ならぬアリアの同居人さんのの呼びかけですし、がんばりませんと!
「本当、本当、それがあなたのベストソウル?今ではみんな、あなたの音楽讃えて、褒めて、チヤホヤしてる、でも本当?本当?誰もあなたの音楽、聞いてない、誰かが良いねしたから、ただの流行りだから、わかってないない、熱い魂其処に、ないない、ねえ?あなた、本当に、それで満足あなたが、欲しいのは、注目?、ないない、其処に熱いソウルはあるのかい、ないない、だってそうでしょ、熱いソウル!本当に響く音楽に、嘘つくなんてナンセンス、さぁ、踊って歌え、流れに逆らえ、それが本当のあなたのソウル」



「本当、本当、あなたのソウル? 世界が間違い、でも本当? たとえ世界がいくらあっても 誰にも届かない、あなたの声」
 ステージへ入れ替わる様に飛び込んできたのは赤月・句穏(界渡りの旅行者・f05226)。
 魂の言葉を聞き取るのは非常に難しい、今回は特別意訳付きでお送りしよう。
「あなたの声聞く人たち、それは誰かが『いいね』したから? それじゃ、わからない、わかっちゃない。熱い魂伝わらないない、ねえ?」
 句穏が歌う。本当に音楽を聴いてほしいなら、誰かが聞いたからじゃない、自分の意思で自分が聴きたいから聞いてもらうべきだ。
「聞かせなきゃ誰にも伝わらない、きっかけはなんでも構わない! 世界が聴こうとしないなら、世界に聴かせるしかないない!」
 少女は返す。しかしそれでも、知られることなく埋もれてしまえばどれだけ素晴らしいものでも埋もれてしまうではないかと。
「あなた、本当に、それで満足? あなたが、欲しいのは、注目? ないない、其処に熱いソウルはあるのかい、ないない。世界に間違い、聞かせるならそれ相応のソウルをそうそう!」
 句穏は問う。あなたは注目されたいだけなのか、魂はそれでいいのか? 本当に世界を変えたいのならば、もっと本用の自分の心で向き合わないといけないのではと。
「私のソウル伝えたいソウル、みんなに届かず一度はダイブ、マグマ煮え滾る世界をスウィム! ドロドロ溶けた熱いソウル、みんなを溶かし、巻き込むウェイブ」
 少女は叫ぶ。伝えたいことはあった、でも届かなかった、届けられなかった。どん底にたどり着いた時の煮え滾った気持ち、それを今みんなにぶつけていくんだと。
「だってそうでしょ、熱いソウル! 本当に響く音楽センスに、嘘つくなんてナンセンス! さぁ、踊って歌え、流れに逆らえ、それが本当のあなたのソウル」
 句穏は今一度訴えかけた。本当に熱い魂ならどんな煮え滾るマグマにだって溶けやしない、本当の心をもう一度ぶつけて、自分に嘘をついちゃダメ、他人がいいねと言ったからじゃなく、自分自身の世界を見つめなおして!
 少女は句穏を眩しそうに見つめながら、それでもマイクは放さない。

成功 🔵​🔵​🔴​

上野・イオナ
音ゲーやるし、リズム感はある程度あると思うけどやっぱり本職には敵わないかな。
という訳で純粋なラップバトルを見に来た人には申し訳ないけど僕なりのパフォーマンスしよう!
「♪ここで参上、最強ビギナー
相手は下手くそ、ある意味キラー」
「♪しかしまさか絵の尊さという真逆の方向からも僕を殺す
このパフォーマンスでおまえをココから取り除く!」
ここからラップをしながらリズムに乗って用意した電子キャンバスに相手に負けない尊さのイラストを描いてやる!
僕のイラストを見てイラストの方向に戻って言っても良い、ディスられることで本当のイイネが貰える用に本気でラップを努力するようになっても良い、何か彼女の琴線に触れてくれ!



●揺れる心、折れぬ心
「♪ここで参上、最強ビギナー、相手は下手くそ、ある意味キラー!」
 少女のソウルが揺さぶられている間に上野・イオナ(レインボードリーム・f03734)が飛び込んでくる。彼が手に持つはラジカセ……ではなく電子キャンパス。
「♪しかしまさか絵の尊さという真逆の方向からも僕を殺す! このパフォーマンスでおまえをココから取り除く!」
 ラップのリズムに乗りながら、彩られていくキャンパス。少女のそれを眺める瞳に映るのは懐かしさと、闘争心
「決して私も筆は折ってない! けど、その尊さは、持ってない! あなたのカラーは私が映るミラー! あなたは言った私はキラー! けどあなたを狙うとおこるエラー!」
 彼女の腕は疼いていた。彼の描く絵はすばらしい。
 それは、自分に何かを訴えるような、忘れていること呼び起こさせるようなメッセージ。 
 少女は自分を見つめ直しつつ、筆に視線を向ける。しかし、それでもマイクは離さない。
「それでも今はこの舞台、ラップのリズムを刻む時代! あなたの事は嫌いじゃない! でもそれ認めちゃ負けじゃない!」
 彼女は負けを認めるわけには行かなかった。いいねと言ってくれている、リスがいる限り。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファン・ティンタン
(あぁ……何でこんなことに)
新刊の購入列にいたはずが、気付けばラップバトル会場に…
マイク渡されて登壇になってるし…

…はぁ、期待しないでよ?

「私シロウト、あなたへのシャウト、敵意は無いけれど、潰しとかないと。つまらんラップで返してご覧?それじゃあすぐパーク伽藍がらん。嫌なら死ぬ気で魅せてみなよ、そのダサ栗鼠以外に褒める皆を」
「そもそもあなたは何をした?音ソロ活動ドツボ見た?止めて悩めてその先どして?何で助けて言わんのて」
「才無きはツライ、それで貴女はクライ、でもそんなのは貴女だけじゃない。誰かと傷を舐め合い、それでも互いを高め合い、いつか互いを讃え合え!」

…あなたはまず、競い合える仲間を作りなよ



●足りなかったもの
 ファン・ティンタン(天津華・f07547)がその場に立っているのは単純な話、並ぶ列を間違えていたのである。
 次々と前に並ぶ者たちが倒れていき、何か様子がおかしいと思った時にはすでに手遅れ、気がつけばラップバトル会場のステージの上でマイクを握っていた。
「……はぁ、期待しないでよ?」
 一般バトル参加者の中の唯一の生き残り、という扱いになり無駄に盛り上がりを見せている会場。
 ため息をつきながらもファンはリズムを取りはじめる。
「私シロウト、あなたへのシャウト、敵意は無いけれど、潰しとかないと。つまらんラップで返してご覧? それじゃあすぐパーク伽藍がらん。嫌なら死ぬ気で魅せてみなよ、そのダサ栗鼠以外に褒める皆を」
「どうぞ潰してご覧あそばせ、私が追うのは遠いアコガレ。私の言葉にパークは全滅、ここから始まる一つの伝説。死ぬ気で起こすハリケーン、あとこのリスはマジイケメン」
「そもそもあなたは何をした? 音ソロ活動ドツボ見た? 止めて悩めてその先どして? 何で助けて言わんのて」
「……っ! どうしていいかなんてわからない! 私に来たのはこの子あたたかい! 助けてなんて、助けてなんて、どうしてどうしてなんでなんで!」
「才無きはツライ、それで貴女はクライ、でもそんなのは貴女だけじゃない。誰かと傷を舐め合い、それでも互いを高め合い、いつか互いを讃え合え!」
 そう、少女には色々足りていなかったが、それでもだれか、ライバルが、友がいればよかったのだ。もし彼女に声をかけてきたのがリスでさえなければ、もっと明るい未来があったのかも知れない。
「……あなたはまず、競い合える仲間を作りなよ」
 ファンは、涙を浮かべた瞳で自分を見つめる少女に、静かに語りかけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『到来、音楽観賞ブーム!?』

POW   :    派手なロックで場を支配しよう!

SPD   :    ポップで明るく楽しく、ノリノリでいこう!

WIZ   :    クラシックで美しく聞き惚れさせよう!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●震えるハートに燃え尽きるほどのビートを
 猟兵たちのラップを受け、少女がマイクを落とす。
 リスは困惑した。彼女のセンスは大勢に聞いて貰えばきっとわかってもらえると思っていた。
 確かに少女のリズムは独特だった。しかし、リスは何度も聞くうちにそれがなければ生きていけないというほどにまでのめり込んでいたのだ。
 そう、リスは、第一の理解者でもあり、第一の洗脳の被害者でもあったのだ。
「まだ、まだだよ、キミはラップだけじゃない。最初は聞く人がキミの初心者でも大丈夫なラップにしたけど、こうなったら強烈なのをぶちかましてみんなにわかってもらおう!」
 リスは少女へ語りかける。
「でも、でも……」
 しかし、少女は今、迷いの中にいた。音楽で迷っている彼女の眼を覚ますのは、音楽だけ。彼女がこの先どこの道に行くにしても、今この場で導くことができるのはキミたちのリズムだ。
 ロックに決め、ポップに乗せて、クラシックの美しさを魅せる。本気の音楽ならばきっと彼女に思いが届くだろう。そのまま手を差し伸べれば届く可能性もある。
 少女を、そしてリスを正気に戻すためにも、魂の鼓動を叩きつける時が来ていた。
ステラ・ハシュマール
「ラースに呼ばれてきてみれば、これはこれは……」

一音楽を愛する者として、この惨事は見逃せないね。
しかもなんの因果か彼女はゴットペインター……ボク、ブレイズキャリバーになる前はゴットペインターだったんだよね

「奇妙な繋がり……他人の気がしないね」


ブレイズフレイムで炎のヴァイオリンを生み出すよ。
演奏するのは【G線上のアリア】。
実力を教えるとかじゃなくて、ただ聞いて欲しい。
【楽器演奏2】で、下手なりに今のボクの心を表現するよ。

「音楽って絵と一緒でさ、誰かの力になれるんだ。ボクも手伝うからさ、一緒に絵で誰かを救えるヒーローにならない?」

手を伸ばしてそう聞いてみるよ。
取ってくれたら嬉しいな。



●差し出された手は眩しくて
 静かに佇む少女の元に、ヴァイオリンの音色が届く。
「……この、曲……」
 音楽の父とも言われる人物が作曲したものが元となったその曲は、姿を変え形を変えてもキマイラフューチャーに知られていた。
 穏やかな旋律に、荒つつあったら少女の心が落ち着きを取り戻していく。
「ラースに呼ばれてきてみれば、これはこれは……」
 奏者であるステラ・ハシュマール(炎血灼滅の死神・f00109)その少女の様子を見ながら痛ましく感じながら過去を思う。
 音楽を志しながらも、元々は絵に触れていた者。そんな奇妙なつながりは、ステラと少女を結びつける縁となって、ここにあった。
 少女はじっとステラを見つめる。その演奏は、決して超絶な技巧を持って行われているものではない。それでもなぜか心に響き、目が離せない、耳を塞げない。
 リスはそんな少女を静かに見つめる。寂しそうに、置いていくなという様に。それでもリスは言葉を出さない。音楽を志す者に、音楽の邪魔をすることはできない。リスが音楽を奏でる者ではなくとも、音楽を愛する者には変わりなかったのだ。
 演奏が終わり、静かに少女の拍手が響く。
「音楽って絵と一緒でさ、誰かの力になれるんだ。ボクも手伝うからさ、一緒に絵で誰かを救えるヒーローにならない?」
 少女に迷いがないかといえば、嘘になる。しかし、その曲を聴いて、再度自分に問いかけたのだ。絵は捨てるのかと。
 ステラの差し出した手を見つめる。その手が筆を手放したのはいつなのだろう。
「手を取って、音楽は……諦めるの……?」
 呟く様な、独り言の様な声。彼女へと手を伸ばしかけた少女へ、一匹のリスが静かに問いかける。
「キミは誰かを救いたいからでいいの!? 世界の全てをキミが救うんでしょ、その音楽で!」
 リスの問いに少女の迷いはまだ続く。少女が筆を置いたのは、それで救えるものがいないと悩んだから。
 誰かのために何かをしたかった。そこに現れたのが音楽だった。
 もう少し手を伸ばすだけで、絵でも音楽でも本当に必要としていた、友だちが、ライバルが、競い合う仲間が待っているというのに、少女はまだ、手を取れない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アノルルイ・ブラエニオン
君の望みは……
本当に音楽でなければ叶えられないことなのか
そして、本当に音楽をやりたいと思っているのか?

音楽は、音楽以外の何物でもない
それで何かしようって言うなら
別のなにかが、例えば自分を客観的に見る残酷さが必要になる

私はただ音楽である音楽を愛する
こんな風に!

【楽器演奏】【歌唱】【パフォーマンス】ついでに【鼓舞】を使って、吟遊詩人の語りを行おう

「これより語るは……
巨大にして獰猛なる大空の覇者、ワイバーンと、
それを打ち倒せしイェーガー達の物語……」

アックス&ウィザーズ世界での冒険譚を音楽に合わせて語るぞ

語り終わったら
「評価はいらない、やりたいことをやっただけだから
……それで、君のやりたいことは?」



●聞いた旋律は愛しくて
「君の望みは……本当に音楽でなければ叶えられないことなのか?」
「……っ!?」
 アノルルイ・ブラエニオン(変なエルフの吟遊詩人・f05107)の問いに、少女は答えることができない。
「そして、本当に音楽をやりたいと思っているのか?」
 迷いの中にいた少女にとって、その言葉はあまりにも辛く、しかしだからこそ、効く。
「憧れだからってだけで、追いかけちゃいけないってことなの?」
 少女は静かに、問いに問いで返す。首を横に振りながらアノルルイはゆっくりと語り掛ける。
「音楽は、音楽以外の何物でもない」「
 はっ、とした顔で、少女はまっすぐにアノルルイを見つめる。
「それで何かしようっていうなら、別のなにかが、例えば自分を客観的に見る残酷さが必要になる」
 果たして少女は自分で自分を客観的に見ることができていただろうか。
 自分としてはいい出来だったと思っていた。しかし、評価は伸びていない。自分の音楽はほかの人には負けじとも劣らないと思っていたのに、なぜ。
 例えば基本を学んだか? 例えばセオリーは踏襲したか? 例えば、いきなりオリジナリティを出そうとしてないか?
 少女はそれを怠った、いや、分からないまま手探りで進めていったのだろう。そして、足りていない物を、誰も指摘しなかった、してくれる人がいなかった。
「お兄さんは、別の何かを持ってるの?」
 少女のまっすぐな問いかけに、アノルルイは、いいや、と首を振り、楽器を握る。
「私はただ音楽である音楽を愛する……こんな風に!」
 音を奏で始める『詩人のリュート』その旋律に乗せて、アノルルイの歌声が響き渡る
「これより語るは……巨大にして獰猛なる大空の覇者、ワイバーンと、それを打ち倒せしヒーローたちの物語……」
 それはここではない異世界の物語。まるで本当に聞いてきたかのような現実感。そして、聞き手の少女自身もその場に参加しているかのような臨場感。
「……こんな音楽もあるんだ、いや、そっか、これが音楽なんだ」
 果たして他の人の音楽をここまで真剣に聞いた日があっただろうか。憧れだったあの動画も、ただただ憧れただけだったのかもしれない。自分は真剣に向き合えてなかったのだろうか。
 やがて演奏は終わりを迎える。少女は思わず拍手をしようとするが、その手はアノルルイにそっと止められた。
「評価はいらない、やりたいことをやっただけだから……それで、君のやりたいことは?」
 その時少女が思い返したのは音楽の事ではなく……。
 幼いころ、描いた絵を家族に褒められた、自分でも忘れかけていたような遠い遠い記憶であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファン・ティンタン
このリス、どこぞの別話では悪い噂しか聞かなかったんだけど…
ともかく、このままじゃ少し気持ちを引き出しにくいかな
ねぇ、リス。少しだけ、この子借りて良い?

観客が喧しいこの場から一旦離れるべく【緑の夢】にて、少女を無限遠の草原へ招待
少女の本音を聞ける場を設ける

ねぇ、あなたは何になりたいの?

一頻り話を聞いてから、ちょっとした小話
コレ、あなたが描いた表紙の本じゃない?
絵買いってヤツ、中身の小説は散々だったけどね

才を無駄にするなとは、言わない
けど、あなたが手放そうとする才にも、憧れる人はごまんといるんだよ

空気を変えるべく【Piciformes】で記憶の底に眠る拙いメロディを【楽器演奏】
私には…コレが精一杯



●私にはこれが精一杯、と彼女は呟いた
 少女は自らの過去と向き合いながら、立ち止まる。
 その様子を見たファンは、リスの方へと向き直る。
「ねぇ、リス。少しだけ、この子借りて良い?」
 本当は行かせたくなんてない。戻ってこないかもしれない。でも、それでも。
「少しだけなら、いい」
 意外と素直に怪人は頷いた。
「じゃあ、そうさせてもらうわ」
 リス怪人はあちこちで出没している。正直なところ、いい噂はあまり聞いたためしはない。
 確かにこのリス怪人は少女をそそのかしてはいる。しかし、それはあくまでも彼女の背中を押しているだけに過ぎない。くじけそうになっていた彼女を、支えただけに、過ぎない。
 ファンは少女と共に小さな【翡翠輝石】に触れる。
 刹那、眼前に広がる広大な平原。キマイラフューチャーには存在しない、緑広がる大地。
 急に変わった視界に戸惑い、呆然とする少女へ、ファンは問いかける。
「ねぇ、あなたは何になりたいの?」
 少女は思い出す。小さい頃から絵が好きだった。
 描いたらみんなが褒めてくれたし、何より描くのが、そしてうまくかけた絵を見るのが楽しかった。
 しかし、成長するにつれ、だんだんとそれが当たり前となった後に、生まれてきたのは自分への疑問。
 このままでいいのか、この絵は、これでいいのか? みんなは本当に見てくれているのか?
 ぽつりぽつりと語られる彼女の気持ちを聞きながら、ファンが取り出したのは一冊の本。
「あ、それ……」
 見覚えがあった、ないわけがなかった。
「コレ、あなたが描いた表紙の本じゃない? 絵買いってヤツ、中身の小説は散々だったけどね」
 苦笑を浮かべながらファンは啄木鳥の形をしたオカリナ『Piciformes』を取り出し、眺める。
「才を無駄にするなとは、言わない。でもね、あなたが手放そうとする才にも、憧れる人はごまんといるんだよ」
「……私の、才能……」
 ああ、この目の前の人は、私の才能を認めてくれてる。それが何より嬉しかった。それが、たとえ音楽じゃなかったとしても。
 ファンが息を吹き込み、啄木鳥が歌い始める。その旋律は、どこか懐かしくて、少女は大切な何か、どこかに落としてきた想いのようなものを見つけられた気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マニッシュ・ベリー
「もう我慢できねぇー!」
黙って見ていたけど我慢の限界だぜ。
アイスブルー色のギターを背負って観客席から飛び出す。
そんな悲しい顔でステージ立ってちゃ火傷するぜハニー!
君のそんな顔、誰も見たくない…!

UC、【歌唱】、【パフォーマンス】で彼女にノリノリの音楽を聞かせよう。そう、【勇気】が湧くようなロックを。体が自然と動いちゃうような!
観客との一体感で音楽の楽しさを味わってもらうんだ。
音楽はセッション。もっとみんなの声を聞いてみな!
それはきっと、他のことでも一緒さ。一人だけじゃ盛り上がらないから。

「型にハマらないのはロックだけど、押し付けるのはロックじゃねぇぜ!」



●最後に必要なのは燃え上がるための熱い心
 緑の平原から少女は帰ってきた。ただいまと声をかけられたリスは、おかえりと静かに出迎える。
「答えは見つかった?」
 リスは少女を見つめ、笑顔で声をかける。
「うん、だんだんと思い出してきたよ、私の、原点」
 少女は答える。涙の跡は見えるが、最初の頃よりは随分といい顔だ、とリスは思った。
「どうする……?」
 多くは問わない。ただ、一言だけ。
「私は……」
 二人の間に風が吹く、静寂がしばし場を包む。
 しかし、ここは音楽イベント会場。静かなままは、許されない。
「もう我慢できねぇー!」
 そして誰もそれを望まない。皆が望むは熱い心。
「そんな悲しい顔でステージ立ってちゃ火傷するぜハニー!」
 アイスブルーのギターを背負い、観客席から飛び出すは、熱い心のにくいヤツ、マニッシュ・ベリー(ロッキンブルー・モンスター・f12703)。
 マニッシュはある意味少女の理想。音楽で世界を笑顔に、を実践する者。
「君のそんな顔、誰も見たくない……! さぁノリな! 観客たちも眠ってるのかい!?」
 魂を込め弦を震わせ、歌い出す。少女の音楽で壊滅していた観客たちも、目を覚まさずにはいられない。
「……すごい」
 音に乗り目覚める会場。盛り上がる人々。それは少女の見たかった風景、自分ではたどり着けないと、諦めた風景。
「……でも、わたしには、できることは、ある」
 少女が決意を目に宿す。手に取る筆は身の丈に。描くキャンパスはこの世界。そして、刻むステップは空をいく。
「……なんだい、そういうことかい」
 くくっ、と楽しそうに笑うマニッシュ。
 勇気が湧くような、体が自然と動いちゃうようなロックを。たしかにそう思って演奏をし始めた。だが少女を見ていてわかった。少女は空を駆け、踊る者だった、その上で描く者なのだと。
 観客との一体感を音楽の楽しさを全身で表現しながら、それを筆の先に表していく。
 音楽はセッション。マニッシュの、会場の、みんなの声と合わさって、彼女の踊りはキャンパスとなった会場とともに完成していく。
「そうさ、なんだって同じさ。一人だけじゃ盛り上がらない」
 マニッシュのソウルを発端とした彼女の作品は完成を迎える。
 見るものを勇気付け、挫けたものも奮い立たせる熱い魂をもつまでに、そのステージは昇華されていた。
 それは筆を手に踊る少女と、ギターをかき鳴らすマニッシュすら、組み込まれた、一つの絵画。
 その日、全キマフューが泣いた。そして尊さに倒れた。
「そっか、キミの真髄は、そこにあったんだね」
 ステージをみて、リスが呟く。彼も少女を理解をしたのだろう。
「型にハマらないのはロックだけど、押し付けるのはロックじゃねぇぜ?」
 マニッシュがステージから飛び降り、リスの前に立つ。
「ああ、そうだろうね、そうだろうさ」
「リスさん……私……」
 マニッシュの隣に立つ彼女の瞳に、もう迷いはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『いいねリス』

POW   :    強いっていいね! いいね!ボム
【いいね! 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【いいね!ボム】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    足がはやいんだね! いいね!ビーム
レベル分の1秒で【いいね!ビーム 】を発射できる。
WIZ   :    いいね!って思ったらみんなあつまれー!
戦闘用の、自身と同じ強さの【共感者】と【いいねリスの分身】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠青景・黒影です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●キミの決意にいいねを捧げ
「ああ、わかってる。そして、それがキミの選んだ道ならばボクは止めたりは、しない」
 リスは少女のファンなのだ。真のファンは推しがいく道がどこであろうと笑顔で送り出すのだ。
 ファンのためにアイドルがいるのではない、アイドルがいるからファンが生まれるのだ。
「猟兵たちよ、ぼくたち、いいねリスは間も無く消えて行くだろう」
 決して交わらぬ敵として、リスは猟兵たちを見る。
「だとしても、ボクは彼女のファンなのだ。なにより彼女の音楽のファンなのだ。たとえ彼女が音楽の道から外れたとしても、彼女の音楽を消して忘れない、語り継ぎ、広め、残していくものだ」
 音楽グループが解散したからといってそのものたちが残した音楽は消えない。
「ボクは全身全霊をもって、彼女の音楽をこの世に知らしめる。……君たちはそれを止めに来たんだろう?」
 新しい音楽が増えないとしても、彼女の音楽は十分に人を狂わせる力を秘めている。想定よりは被害を抑えられるだろうが、だからといって放置するわけにはいかない。
「だったら、やってみるがいい。そのためにボクが、いいねリスが消えるとするならば、それは本望!」
 リスはやる気だ。全力のいいねでこちらをいいねしてくるだろう。
 ならば猟兵たちのできることは望み通り、相手してやるのみだった。
「さぁこい猟兵! これが彼女を新たな道へと向かわせるお前たちへの最後の試練だ!」
アノルルイ・ブラエニオン
彼女は間違っていた――しかし、間違いに気づき正しい道に戻ろうとしている。
間違いを自ら正そうとする姿勢には価値がある。

お前もまた間違った。
それを正さないのも勝手だが――
「音楽」なら話は別だ。

音楽の担い手として、悪しき音楽は駆逐する!

【楽器演奏】を最大限利用し【サウンド・オブ・エンタイスマント】を使用
あの少女の音楽に染まりきったこいつは、私の音楽では感動できないかも知れない――
だが真の音楽の価値は普遍、誰の心にも響く。
あの少女に届いたように……
だから、音楽で私は戦う。
これは吟遊詩人……サウンドソルジャーとしての意地だ!
これは『矯正』だ、間違いを認めさせるため……
真の音楽を聞かせねばならない!



●心を揺さぶれ、異界の旋律
「間違いを自ら正そうとする姿勢には価値がある」
 リスの前に立つアノルルイ。彼はリスに危害を加えようとしているわけではない。
「彼女は間違っていた――しかし、間違いに気づき正しい道に戻ろうとしている」
 だが、その行いは直接の攻撃よりも、許し難いものかもしれない。
「キミは、間違いには価値がないとでもいうのかい?」
「そうではないし、お前が自身の間違いを正さないのも勝手だが――」
 アノルルイが持つのは楽器のみ。
「それが『音楽』なら、話は別だ」
 これから行おうとするのは真っ向からの音楽性の否定。この世に残してはならない悪しき音楽の駆逐。
 それは、少女の音楽(あしきおんがく)を残していくというリスの覚悟と真っ向からぶつかる行為に他ならない。
「ならばやってみるがいい、その姿勢は『いいね』を送ろうじゃないか!」
 リスの言葉に応えるように、アノルルイは『詩人のリュート』を奏で始める。持ちうる演奏技術を全力で注ぎこみながら。
「真の音楽の価値は普遍、誰の心にも響く。あの少女に、届いたように……」
 少女の音楽に染まりきったリスには、アノルルイの音楽では感動できないかも知れない。しかし、だとしても。
「音楽で私は戦う。これは吟遊詩人……サウンドソルジャーとしての意地だ!」
「……!」
 口を開きかけたリスは、ぐっとこらえる。そう、彼は音楽を愛するリス。演奏の最中に口は挟まない。
 力強い旋律に乗せ物語を紡ぐ。常に音楽に魅せられ、追い続け、吟遊詩人としての在り方を示すそれは、アノルルイそのもの。
「これは『矯正』だ、間違いを認めさせるため……真の音楽を聞かせねばならない!」
 リスが存在をかけるなら、アノルルイもまた、自らの全てをぶつけていく。
 演奏が終わる、観客が湧き、会場が震える。
「真の音楽……ああ、ああああああ……」
 リスも、震える。届いている。アノルルイの音楽は、彼にも届いてるのだ。
「ボクは素直に、いいね、とお前に伝えよう。だが、だとしても。この音楽を、奪わせはしない!」
 感動に打ち震えながらも、彼の意志はまだ固かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


●どうか最後のその時まで
「リスさん、なんで、なんで戦わなきゃいけないの!?」
 少女が叫ぶ。たとえ歩む道を違えたとしても、リスと心を通わせた時間が消えるわけではない。
「これは、避けられない事なんだ。ボクは……」
 リスは理解していた。少女のためにも、消えなければならないと。ならば、ならばせめて!
「愛した音楽に、いいねしながら生きるのみ」
 そう、力尽きるその時まで。
 感動に震え、うまく動かない体を、無理に動かす。
 腕を振り上げながら、リスは猟兵たちへと、駆けていく。
ファン・ティンタン
リス、私はあなたの在り方が嫌いになれないみたい
あなたほど戦いにくい相手は、初めてかもね
…それでも、私はあなたを過去へと還さなければならない
だから、せめて―――彼女の糧になりなさい

リスからの攻撃は避けず、【覚悟】をもって受ける
その上で、【嘘針誕懐】を発動
リスの心を今一度、キマイラの少女の前で問う

【嘘針誕懐】を受けた者が私の問いに嘘をつけば、その身は嘘の重みで張り裂ける

リス、あなたに問うよ

あなたは、彼女の音楽を心から愛していたかな

あなたはエゴでなく、彼女のために“いいね”を送ったかな

あなたは、彼女のために消える覚悟、出来ているかな


結果がどうなっても
私はあなたを覚えていてあげる

その心意気、“いいね”



●少女には聞かせるわけにはいかない、本当の心
「リス、私はあなたの在り方が嫌いになれないみたい」
 近付いてくるリスに正面から向かい、ファンは語り掛ける。
 戦いにくい、素直にそう思う。
 きっと、リスがオブリビオンでさえなければ、新しい道を歩む少女と共に歩めていたのだろう。
「……ボクも、いいねを、送らせてもらう!」
 猟兵たちは真摯に少女と向き合った。リスにはできない方法で少女を救った。
 少女はこれから、より多くの人に感動を届けることになるだろう。その事実を、リスは素直にいいねと語る。
 先ほどの音楽による震えで、うまく狙いの定まらない【いいね!ビーム】を放つことはできない。
 少女を傷つけるわけにはいかないのだ。ならば、後は至近距離でいいねするしかない。
 リスは立ち塞がるファンへと向かう。
「私はあなたを過去へと還さなければならない。だから、せめて」
 ――彼女の糧になりなさい。
 ファンは覚悟を宿した瞳を向けたまま、リスを正面から受け止め、見つめる。
「どういう、つもりだい?」
 隙しかなかったはずだ。なぜボクをこの距離まで近づけさせた。リスはファンを見つめ返す。
「リス、あなたに問うよ」
「なんだって……?」
「あなたは、彼女の音楽を心から愛していたかな」
 問いと共に放たれるそれは、嘘を糧とする小さな針。
「当たり前だ!」
 針はそのまま消えていく。リスは、いいねに嘘をつかない。
「あなたはエゴでなく、彼女のために“いいね”を送ったかな」
 再度放たれる針。リスは気が付いてはないない。いや、分かっていたとしても避けはしなかっただろう。
「その通りだとも!」
 また、針が消える。リスも彼女を救いたかったのだ。一人でだれも見向きもされていない少女を、その音楽を。
 ただ彼には、『いいね』と認めることしかできなかった。間違いを正すことは、できなかった。
「……あなたは、彼女のために消える覚悟、出来ているかな」
「消えて、たまるかっ!?」
 刹那、針が成長し、リスの体を貫く。
「ぐうううっ……これ、はっ……!」
 ふらふらとファンから離れ、膝をつくリス。
 結局、針が反応したのは最後だけ。この問いに、その答えに、【嘘針誕懐】が発動した。
 それはすなわち、リスは……。
「……。そう、そういうことなのね」
 ファンは、リスがどうするつもりか、わかってしまった。
「その心意気、“いいね”」
 だから、一人ぐらいは、リスにいいねを送る猟兵がいてもいいと思ったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・ハシュマール
男らしいいいねリスだね、気に入ったよ。君のような暑い心を持つものとの戦いは全力でいかせてもらうよ。

炎血のミケランジェロを発動。
燃え盛る16連撃で薙ぎ払い、傷口を抉らせてもらうよ。

「すでにその心は美しい、ならば画竜点睛。一筆加えてさらに昇華させてあげるよ!」

「これがワタシが送る最高の手向け華、受け取りなさい。炎血のミケランジェロ!!」



●熱い思いにいいねを添えて
 ふらつき、膝をつく。だが、まだだ。まだリスは猟兵たちへと歩むのをやめない。
「男らしい、いいねリスだね。気に入ったよ」
 ステラはリスと向かい合い、真っ直ぐ視線を交わす。
「その素直な言葉、いいね! さぁ、ボクはまだ倒れていないぞ……!」
 リスも視線を逸らさない。ただやられればいい? そんなわけはない。ボクは生き様を示すんだ。その瞳は雄弁に熱意を持って語りかけてくる。
 猟兵たちに、なにより少女に、無様な格好を見せられない、と。
「すでにその心は美しい、ならば画竜点睛。一筆加えてさらに昇華させてあげるよ!」
 血液が形を成し、手に握る。その熱い心に報いるために、振るうは全力。
「ボクは、見せつけなければならない!」
 キミの事を思うものがちゃんといた事を示すために。道を変えた先でくじけることがあっても、何度でも前を向いて立ち上がれるように。
「これがワタシが送る最高の手向け華、受け取りなさい。【炎血のミケランジェロ】!!」
 覚悟を決めた悲痛な嘘の傷口を、ステラの燃え盛る16の刃が抉る。
 リスがいいねボムを手に握ったのは、刃が過ぎた後だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


●いいねよりも、一人じゃないと伝えたかった
 いいねではなく、嘘をついてしまった罰だというのだろうか。
 身を焦がす炎を受けきって、崩れそうな身体を奮い立たせる。
 「……ミケランジェロか、いいね、ある意味そのとおり、だ」
 彼もまた一人で最後の最後まで芸術に没頭し続けた人物。
 最高の芸術家と生前から評価されるも長い生涯に弟子を残すことなく、時代と権力者の波に飲まれながらただただ作品を残し続けた天才。
 少女もまた天才だと思う。
 しかし彼女の真価は、孤独の中で花開くものでは、ない。
 ……はて、一体ボクのどこにそんな記憶があったんだろう。
 妙にすっきりしてきた意識のせいだろうか。
マニッシュ・ベリー
……ハニーを次のステージへ進ませるために…?
いいねリス…おまえロックじゃん…。他のオブリビオンの誰よりも!
その気持ち、しっかり受け取った!
お前と同じステージに立てたこと、ホコリに思うぜ…!
勝手に立ったのはオレだけど!

ボムだかビームだか知らないけど
【武器受け】しながら【グレイテスト・ヒッツ】で真正面から殴りにいく!

お前が愛したハニーが見てるから!
ああ!だから!こっちも本気でいくぜえ!


…もし無事に終わったのなら、
最後にハニー達の曲をアレンジして演奏するぜ…。
ハニー達の音楽(魂)が確かにここにあったことを忘れない!


ファン・ティンタン
何だってハッピーエンドに勝る終わりはない
私の主も…そういう結末を望む人だったはずだから

だから、私もやれることをやるだけだよ


力尽きるだろうリスに、最後の問いを投げかける

もしあなたが、己に課せられたモノから解放されるとしたら…
あなたは最期に何を望む?

リスの望みがキマイラの少女の望みと重なるようならば
私は、一縷の可能性に賭けてみようと思う

【転生尽期】
私は、命じる
彼の者、潰える前に、為すべきを成せ

願わくばその一時…彼の者らに心からの音の楽しみを

(【転生尽期】の成否にかかわらず、発動後は魔力枯渇によりスリープモードに移行
ヤドリガミとしての人型を顕現維持できなくなり、【天華】としてその辺にぽてっと転がる)


上野・イオナ
ヤバイ“尊い”本能で感じるよ。
少女が描いた絵もそうだけと、リスと少女の関係がエモくて尊い。「マジ無理、鬼ヤバい」
だけど僕が猟兵である限りオブリビオンのリスは倒さなければいけない。 それなら【グラビティスプラッシュ】を使い攻撃しながら地面を塗りつぶして絵を描く。それはリスと少女の絵。本来なら絵の道に戻った彼女が描くべき絵かもしれない、だけど
「僕だって絵描きなんだよ!こんな最高なもの描くしかないじゃないか!」

二人への最大限のリスペクトを込めて地面に描いた絵を写真撮ってスマホに保存した。

いいね



●迸る思いをボムにのせて
「マジ無理、鬼ヤバい」
 少女の描き上げた絵に二人の想いを感じ、イオナは震える。
 なぜこのリスはオブリビオンなんだ。そう思いすらしながら、それでも彼は剣を取る。
「どう、したんだい。もっと、見せてみなよ。いいねできないじゃ、ないか……!」
 その身を焦がす炎の刃を受けても、リスはいいねをやめはしない。
「だったら、ちゃんと見てなよ……」
 この題材を描くには、少女が筆をとる方がふさわしいかもしれない。だとしても……
「僕だって絵描きなんだよ!」
 イオナの剣は地を走る。矛先をリスに向けながら、会場全体を走り回り翻弄する。
「こんな最高なもの描くしかないじゃないか!」
 リスへの攻撃と同時に、地面に描かれていくのは、少女とリス。
「は、はは、なるほど、これは、いいね!」
 ずっと少女と共に歩めればいいと思っていた。それが叶わないのは、もういいとも、思った。そんな諦めを忘れさせるような感動をその絵から感じながら、リスは両手に完成したいいねボム抱え、走り出す。
「いいねリス……おまえロックじゃん……」
 走るリスの前に立ちはだかりながら、マニッシュは思う。
 リスが本当にいいねをしていたいのは少女に対してだろうと。
 しかしそれではダメなのだ。そうしてしまえば、いずれまた少女は自分の中へと閉じこもって、大切なことを見失ってしまう。
 彼女に必要なのは肯定だけしか、いいねだけしかできないリスではない。先程の対話でわかったのだ。足りなかったのは外に目を向けるため、語り合い、競い合う仲間。それと巡り会うためには、リスはオブリビオンとして猟兵の手で倒れなければならない。
 今更、少女に思いを寄せ続けた、ただのリスにはなれないのだから。
「その気持ち、しっかり受け取った!」
 ならばすることはただ一つ。自らの本体で、受け止めるのみ。
 アイスブルーのギターが光る。勝手に立った舞台だったが、今はそれをも誇りに思う。
「ボムだかなんだか知らないけど全部受け止めてやるぜ!」
「その覚悟……いいね!」
 おそらくこのボムが生み出せる最後の力、ならば外すわけにはいかない。
 確実に当てるなら、至近距離で、叩き込むほかない。
「気張りな! お前が愛したハニーも見てるぜ!」
「言われずとも! そういう猟兵、キミも吹き飛ばされる覚悟はいいのかい!」
 近くなる、近くなる、だんだんその時が近づくのが、わかる。
「ああ! こっちも本気でいくぜえ!」
 辺り一面を吹き飛ばす勢いで振られたギターは、リスの覚悟と衝突し——
 刹那、激しい爆音と爆煙が会場を覆い尽くした。

●さいごのねがいごと
 気がつけば草原に倒れていた。
 天国ってやつかな、と思ったけど、身体中が痛くて全然動けない。
 意識だけが妙にはっきりとしている。
「もしあなたが、己に課せられたモノから解放されるとしたら……あなたは最期に何を望む?」
 聞き覚えのある声だった。何て猟兵だったっけな。ああ、そういえば名前も聞いてなかった。でも、ボクも名乗ってなかったしお互い様かな。
「……そうだね、ずっと彼女といたかったっていうのが本音だけど……」
 素直に言葉が出る。何でだろ。変なの。
「このイベントだけでも、十分かな」
 長くはいちゃいけないのは変わらない。だから、だからせめて。
「彼女の踊る姿を見ていれたら、それはきっと……」
 ボクには過ぎた幸せなんだろう。

●【転生尽期】
「私は、命じる。彼の者、潰える前に、為すべきを成せ」
 まったく、なんて顔で眠ろうとするんだ。これでは、ハッピーエンドには程遠い。
 ならばせめて、せめてもう一歩だけでも、未来へと歩ませられたら。
「願わくばその一時……彼の者らに心からの音の楽しみを」
 主も、そういう結末の方がお好きでしたよね。

●夢幻の夜
 爆煙が漂う様を、観客たちは見守る。
 あれはイベントの催しだったのだろう。だから、きっとこの後もクライマックスがあるはずだ、と。
 その期待に応えるように、日が傾き、暗くなりつつあったステージをライトが照らす。
 晴れゆく爆煙の中から響き渡る、アイスブルーに輝くエレキギターの旋律。
 編曲されることで、音楽は生まれ変わる。
 少女はその旋律が、自分のものだとわかった。
 でも、全然違う。
 自分は確かにこうしたかった、こうすればよかったんだ。
 それが、詰まった曲。
 便乗した演奏者たちが負けじと楽器を取り出し、即興のセッションが始まりだす。
 ならばと、少女も動こうとして、辺りを見渡す。
 リスさんは、リスさんはどこだろう?
 歌が聞こえてきた。思わず振り返り、視線を交わす。
 なんだ、そこにいたんだ。
 ——うん、ねえ……踊ってみせてくれないかな?
 なによ、今更改まって……しっかり見てなさい!
 少女は笑顔を浮かべ、筆と踊る。
 相方の、今この場で仲間となった者たちの音楽に乗って、それはもう楽しそうに。
 鮮やかな剣の舞も加わり、未完成だった絵を完成させんとし、少女も負けじとステージに彩りを加えていく。
 皆が笑顔だった、ステージが、会場が一つとなって、その作品を完成させていった。
 誰かがそれを動画にし、写真をスマホに収め、アップされたものにはいいねが集まる。
 それが、たとえ一夜の夢だったとしても、少女はその夢を胸にこの先も歩いて行けるだろう。
 物言わぬ一振りの白い護刀は、会場の片隅で穏やかにその様を眺めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月27日
宿敵 『いいねリス』 を撃破!


挿絵イラスト