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アルダワ魔王戦争9-A〜ホープス・アンド・ドリームズ

#アルダワ魔法学園 #戦争 #アルダワ魔王戦争 #大魔王 #ウームー・ダブルートゥ #オブリビオン・フォーミュラ

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 ……ついに、ファーストダンジョンのすべては突破された。
 ダークゾーンを抜けた先、"はじまりの玄室"に座すはすべての根源。
 すなわち大魔王の本体にして最終形態。やつの名は……!

「……嵐の魔物(ウームー・ダブルートゥ)か。なんと禍々しき名よ」
 それと同じ名を持つ魔物は、旧き書板に名を遺しているという。
「"誰もが一目で恐怖に屈し"、(Whoever beheld them, terror overcame him,)
 "……傷一つつけられなかった"(…and none could withstand their attack.)」
 グリモア猟兵、ムルヘルベル・アーキロギアは旧き神話の一節を詠んだ。
「されどかの大魔王は、神話の怪物よりもなお強大で恐ろしいモノであろう。
 なにせ彼奴は、相対したものの希望……願望、祈り。そういったものを喰らう。
 恐怖が彼奴の形態を呼ばい、一度迷路に囚われれば出ることは叶わず……」
 少年めいた賢者は顔を顰める。
「間違いなくこれまでで最強の存在だ。しかし、彼奴を討たずして勝利はなし。
 例の戦略級殺人鬼とやらのことも気になるだろうが、どうかあれを討ってほしい」
 加えて大魔王は、あらゆるユーベルコードに対して先手を打つ。
 願望を、恐怖を喰らい、絶対先制の名のもとに裁きを下す"世界を喰らうもの"。
 対抗する手段があるとすれば、それは……。
「……いかなる奇跡をも起こす力、すなわち邪悪を打倒するという"希望"であろうな。
 それを喰らう相手に希望を以て挑むというのは、なんとも矛盾した話だが……。
 "希望が人間を形作る。大きな希望を持て"――という言葉もある。けして諦めるな」
 そう言って、ムルヘルベルは本を閉じた。
「我輩は信頼と決意を以てオヌシらを送り出そう。生きて帰れよ」
 それが、転移の合図となった――されど。
 大魔王は、その祈りすらも喰らってしまうのかもしれない。


唐揚げ
 OP中の一節は有名な『エヌマ・エリシュ』からの引用です。
 最後の戦い、以下の備考をご参照の上よろしくお願いします。

●プレイングボーナス条件
『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』
(敵は必ず先制攻撃するので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
 ※大魔王はこれまでの形態の中で『最強』です。

●プレイング受付期間
『2/17 08:30~』
 から、
『2/19 08:30前後』
 まで。

●プレイング採用について
 できるだけ多くのお客様をご案内できればと思っています。
 それではご武運を。最後の戦いに臨むとしましょう!
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第1章 ボス戦 『『ウームー・ダブルートゥ』』

POW   :    ホープイーター
【敵対者の願い】【敵対者の望み】【敵対者の祈り】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    ホープブレイカー
【敵が恐れる大魔王形態(恐れなければ全て)】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    ホープテイカー
戦場全体に、【触れると急速に若返る『産み直しの繭』】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。

イラスト:hina

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――畏敬すらも喚起させる美貌とは、かくの如くを指すのだろう。
 黄金比を保つギリシャ彫像めいた肉体は完璧に整っており、
 底冷えするような眼差しをたたえた双眸と顔立ちは、震えがするほど美しい。

 だが。
 猟兵達にはわかる。
 それは許してはならぬもの。
 絶対に世界にあってはならぬもの。
 オブリビオンフォーミュラ――世界を破壊する残骸の根源!

『祈るがよい』
 うっそりと目を見開き、それは言った。
 声音すらも、完璧に調律された楽器のように抑揚を保っている。
『願うがよい。
 望むがよい。
 求め、足掻き、切磋し、努力し、見果てぬ夢を掴もうとするがよい』
 天上から響く神々の恩寵めいた声音で、それは言う。
『我は、肉とともにその願いを喰もう。
 我は、骨とともにその願いを砕こう。
 我は、血とともにその祈りを啜ろう。
 世界は我に喰らわれるために存在し、ゆえに汝らもその一つに過ぎぬ』
 たしかにそれは美しい。
 声も、顔も、肉体も、畏怖しそうなほどに。

 だが。
『猟兵よ、我らの天敵よ』
 それは、邪悪だ。
『願いを抱き、望みを希い、祈りとともに死んでいけ』
 けして相容れず、この世界にあってはならぬほどに!
 巨大な玉座を前にして、最後の戦いがいよいよ幕を開ける――!
●業務連絡:02/20 04:19
 02/21プレイング失効のお客様へお手紙をお送りしています。
 基本的なプレイング受付自体は終了していますのでご了承ください。
マリー・ハロット
【WIZ】
あなたがだいまおーの最終形態?もっとうぞぞってしてたり、がおーって感じだったりするのかもってだけど、なんだかカッコいいかんじだね!
触れたら若返る繭かぁ、マリーだとすぐ赤ちゃんになっちゃう?
だったら最初は【オーラ防御】でガードしながら、【空中浮遊】と【空中戦】で触れない様にして、すぐにUCを使って、飛行能力とかを強化するよ!
めいきゅーは【第六感】に従って進んで、糸が絡んできたりするなら【念動力】と『ヴォーちゃん』でなぎ払っちゃうよ!
最後は全力の【念動力】を乗せた『ヴォーちゃん』(偽神兵器)の一撃をお見舞いするよ!
マリーは楽しくいきたい……生きたいの! 邪魔しないで!!



 偽神の心臓が脈動し、マリー・ハロットの全身に活力を漲らせる。
 並のオブリビオンでは抗うことすら出来ず蹂躙されるであろう、強大な力だ。
 サイキック・パワーを全身に纏い、惜しみなく燃やして攻撃を繰り出す。
 マリーの戦い方は幼く、シンプルで、それゆえに力強く厄介なものである。

 ……しかし。
『我を打ち砕いて未来を掴もうという"希望"、実に眩いものだ』
 ばっさりと胸部を斜めに切り裂かれた大魔王は、平然としていた。
 いや、そのダメージは重い。いかにヤツが強大な災魔であろうと。
 しかし見よ――その傷は、まるで逆回しの映像めいて急速に回復していく!
「……"若返りの力"、そういう使い方もあるんだね」
 不気味な繭まみれの迷宮の中で、マリーと大魔王は相対していた。
 そして大魔王の異常な再生の正体は、まさにその繭である。
 触れたものを急速に若返らせる、極めて危険な繭……。
 それは敵を無力化させる罠であるとともに、大魔王の傷を癒やす糧でもある。
 すなわち攻撃を受けた瞬間から"若返る"ことで、擬似的に傷を治癒するのだ。
 大魔王と仇なされる強大なオブリビオンだから取れる、あまりに無謀な回復!
『絶望したか? それでよい。我は血肉とともに希望を喰らうものなれば』
「絶望? そんなのしないよ! マリーは楽しく生きたいんだから!!」
 マリーは戦意を振り絞り、再びサイキック・パワーを噴射し飛行した。
 傷を完全に癒やしたウームー・ダブルートゥは、煩わしげに腕を振る。
 ただそれだけで、凄まじい魔力が迸り繭もろとも大地を薙ぎ払った!
「……っ!!」
 衝撃に吹き飛ばされながらも、マリーは途切れかけた意識を必死でつなぐ。
 この敵を倒さなければ、己の短い生を繋ぐならも出来ないというなら。
 生きたいという原始的欲求すらも、その希望をも大魔王は奪うというなら。
 マリーは抗う。世界がどうだの、そんなことは関係ない。
 ようやく勝ち得たこの生を、絶対に終わらせないために!
「邪魔、しないで……どいてっ!!」
『なおも歯向かうか。よかろう、我はそれを許す』
「――マリーを、見下さないで!!!」
 がぎぃんっ!! 偽神兵器の刃と、大魔王の魔力纏う手刀が打ち合った。
 戦力差は膨大――だが見よ。マリーがわずかに競り勝つ。
 大魔王の柳眉がぴくりと動いた。それは驚愕ゆえか、苛立ちか。
 幼き少女の渇望は、ついに大魔王のもたらす絶望を払ったのだ!
「全力で、いっくよ……!!」
 すべてのサイキック・パワーを乗せた刃が、さらにもう一度振るわれる。
 大魔王の放出した魔力とサイキックエナジーがぶつかり合い、閃光が迷宮を包む。
 そして光の中からたたらを踏み退いたのは……大魔王の、巨体。
 その体には、少女の意地とでも言うべき鮮烈な傷跡が刻まれていた……!

成功 🔵​🔵​🔴​

鍋島・小百合子
POW重視

彼奴が魔王と呼ばれる災厄の存在か
どんなに姿を変えようと己が勇気を打ち砕けぬ事を知るがいい!

「必ず倒すという希みを持つ事…その思いは揺るがぬ!」
まずは敵の出方を伺うべく隠密重視(目立たない、忍び足、闇に紛れる併用)にて長弓で攻撃
矢劇薬を仕込んだ矢を数本番いて一点集中で乱れ撃ち(視力、スナイパー、マヒ攻撃、毒使い、鎧無視攻撃併用)
こちらの存在に気付かれた場合は残像を発現しつつ回避重視
先制攻撃を乗り越えたらUC「黄金勇霊装」発動
黄金の甲冑を纏い勇気に比例した戦闘力を得たら飛翔能力とダッシュ・残像で翻弄しつつ矢を当て続けた場所を薙刀で乱れ突きにす(乱れ撃ち、鎧砕き、串刺し、空中戦、破魔併用)



 鍋島・小百合子は、野生の獣さながらに息を潜め気を伺っていた。
 大魔王ウームー・ダブルートゥ。彼奴は敵対者の希望を喰らうという。
 比喩ではなく、ユーベルコードによってそれを己のものとするのだ。
 先制攻撃を出し抜くには、意識外からの一撃で虚を突く他になし。
 ……なるほど小百合子の考えは正しい。不意打ちはあらゆる敵に有効だ。
 卓越した戦士である彼女の隠密能力は随一であり、よく周囲に紛れてもいた。
 しかし、相手は大魔王。このアルダワ世界における最強のオブリビオンである。
 劇薬入りの矢を放った瞬間、敵は小百合子のほうをぎろりと睨んでいた。
(気付かれた? 否……わらわに最初から気づいておったのか?)
 眉根を顰め慮外の可能性に思索を巡らせるが、考えている暇はない。
 小百合子はさらに数本の矢を放ち、同時に弾かれたように駆け出した!
『いじましいものだ。小虫のごとく身を潜め、我を討とうとは』
「嘗めるでないぞ大魔王! わらわは震えて縮こまっていたわけではない!
 貴様を必ず倒すという希(のぞ)みを抱き、この戦場に来たのじゃから!」
『――ならば、その希望』
 放たれた矢に対し、ウームー・ダブルートゥは眠たげな半眼で腕を振った。
 鏃がその身を貫く前に、まるで見えない壁に阻まれたかのように空中で静止。
 そしてウームー・ダブルートゥが拳を握り込むと、矢はべきりとへし折れた。
「……!」
『その血肉とともに、余さず喰らってやろう。喜ぶがよい』
「ほざけ……!!」
 絶大な魔力障壁により弾かれた。小百合子が認識できたのはそこまでだ。
 彼女がその身を黄金の甲冑で鎧おうとした瞬間には、次の攻撃が放たれていた。
 見えない魔力が鐘突き棒のように凝縮され、小百合子の身を狙い突き出される。
 みぞおちに叩き込まれた威力が全身を駆け抜け、そして吹き飛ばした。
「かはっ!!」
『よき絶望なり』
 霞む視界のなか、大魔王は怜悧な相貌をぴくりとも動かさず、彼女を見下ろす。
 勝利は当然。所詮猟兵など、己の供物に過ぎぬとでも言いたげな瞳。
 ……傲慢な瞳。それは奪うもの、人々を虐げるものの見せる共通の貌だ。
「……勝手に、わらわを喰らったつもりになるでない……」
 斯様な眼差しを持つものに、猟兵として、武家の娘として、敗けられぬ。
 虐げられる人々の苦痛と絶望が、限界に近い小百合子の体を突き動かした。
「わらわは鍋島・小百合子! 貴様を討つためにここに参ったのじゃ!!」
 叫び立ち上がった小百合子の体を、眩い黄金の甲冑が鎧った。
 大魔王は驚愕を浮かべることもなく、淡々と処刑の一撃を繰り出す。
 だが小百合子のほうが疾い! 残像すら生み出しその攻撃を回避して飛翔。
 遅れて見上げたウームー・ダブルートゥが見たのは、無数の刃閃――!
『我に願いを喰らわれ、なおもそこまでの力を繰り出すか。面白い』
「はぁああああ……っ!」
 高みの見物のつもりでふんぞり返っていられるのもここまでだ。
 怒りと意地を籠め、小百合子は魔力障壁を薙刀の乱れ突きで斬り裂く。
 刃は届かない。見えざる大魔王のオーラがすべてを防ぐ――否。否!
 通して見せる。かの者を討つために。なんとしてでも!
『……!!』
 そして大魔王は、はじめて瞠目に目を見開いた。
 届かぬはずの攻撃が、その切っ先が。彼奴の鋼めいた筋肉を斬り裂いたからだ!
『何……!』
「言ったはずじゃぞ――わらわは、貴様を討つために来たのだと!」
 黄金光が流星めいて駆け抜ける。そして大魔王は遅ればせながら理解したのだ。
 ここにいるのは供物でも獲物でもなく、一体の天敵であるということを。

成功 🔵​🔵​🔴​

皐月・灯
――肌感覚でわかるぜ。コイツはヤバい。
もしかしたら、今までやり合ったどんなヤツよりも。

ああ、だとしても。

「この世全てを喰らう」……なんて言われてよ。
……このオレが、黙ってるわけねーだろ。

望みを喰らうのがヤツの性質なら、
オレが恐れる魔王の姿ってのは、「コイツとはやりたくねー」って望みを食われたんだろ。
なら、来るのはユーベルコードを写し取る第五形態だ。

ソイツの懐に飛び込んだ後、《大戦神ノ槍》を発動。
急に速度を跳ね上げて翻弄、腕を【見切】って掻い潜り、【カウンター】を決める。

更に【全力魔法】を発動。
本命に、最大の一撃を叩き込む!

――「大魔王」なら、コイツが似合いだ。
てめーにゃ、何にも、喰わせねー!



 まるで聳え立つ山のようだ――と、皐月・灯は思った。
 頂上の見えない巨大な山。大魔王の放つプレッシャーはそれに等しい。
 地を這う只人は、それを神と見紛って頭を垂れるほかないのか。
 ……世界の真理を知らぬ古代の無垢な人々ならばともかく、灯は現代人だ。
 そして数多の世界を飛び回る猟兵。いまさらかりそめの神などに屈しはしない。
 たとえそれが生半可な神格をも超えるであろう、強大な敵であるとしても。
『感じるぞ。汝の裡にありし恐れ。我に対する畏敬の念を』
「……ようはビビってるって言いてーのか? だったらそう言いやがれ」
 灯はフットワークを刻みながら、ぎろりと大魔王を睨めつけた。
 大魔王はくすりとも笑わない。人外の存在に皮肉めいた諧謔趣味はないのだ。
『か弱き我が獲物よ。我は汝の恐れを形とし、生への渇望を引き出そう。
 恐れの前に額づき屈するがよい。極限の絶望の中にこそ、希望はあるゆえに』
 ゆらり――と大魔王のシルエットが歪み、影法師が分離した。
 ルビーのように輝く禍々しい双眸。カリカチュアライズしたような邪悪な体。
 間違いない、あれは大魔王の第五形態、モルトゥス・ドミヌス……!
「……っ」
 覚悟していたとはいえ、最悪の相性の敵が現れたことに灯は舌打ちした。
 気圧された……かもしれない。彼はその弱さを心の奥に押し込み、拳を握る!

『恐れ』よ! 『畏れ』よ!! 『怖れ』よ!!!
『我』は『裁定者』にして『処刑人』なり。『汝』にもはや『活路』なし!!

「ぶっ倒された野郎がほざいてんじゃねー!!」
 灯は自ら駆け込んだ。モルトゥス・ドミヌスの両目がぎらりと輝く。
 大気が不穏な音を立てて掌に吸い込まれ、致命的な攻撃を予感させた。
 ユーベルコードを喰らう両手。間違いなくそれは灯にとっての天敵である。
 彼の攻撃はすべて超常の力によるブーストを前提としているのだから。
 アザレア・プロトコルの魔力そのものを喰らわれては、彼は回避すら出来ない!

 ……だが!
「カウンターなら、こっちのほうが慣れてんだぜ……!」
 空気をも削り取る掌を躱し、灯はモルトゥス・ドミヌスの胴をぶち抜いた。
 あえて自ら危険に飛び込み、敵の防御を掻い潜っての攻撃的なカウンター。
 そう。たしかに灯は、魔力によって身体能力を向上させ戦うスタイルだ。
 しかし灯の蓄積してきた戦闘経験、築き上げてきた勝利と敗北の歴史は、
 これまでの戦いの一つ一つは、紛れもなく灯自身が相対し経てきた過去である。
 たとえ敵がユーベルコードを喰らおうとも、踏みしめた過去は彼を裏切らない!
『我が写し身を一撃で砕くか。見事である』
「たかをくくってんじゃねー、相手はてめーだッ!!」
 霞めいて消え去る第五形態を切り裂き、弾丸めいて灯が飛び出した。
 大魔王は片手を伸ばし、魔力障壁を展開してその突撃を真っ向から受け止める。
 バチバチバチバチ……! 拳と障壁の魔力が拮抗し、電撃が迸った!
『だが哀れなり。汝では我には届かぬ』
「……かもな。てめーは強いよ。だが……!!」
 灯の眦から血が一雫溢れた。どくん、と心臓が悲鳴のように拍動する。
「てめーにゃ、何も、喰わせねー」
『否。我は世界を喰らう。知性体を、その希望を、何もかもを』
「てめーにゃ! 何も!! 食わせねー!!!」
 世界を喰らうものなどを、灯は絶対に見過ごさない。見過ごせない。
 たとえ己の命を代価として支払ったとしても……!
「気合入れろよ、俺の体! こいつは、絶対に倒さなきゃならない敵だ!」
『…………!』
「アザレア・プロトコル・ユニゾン――! 灼き尽くしてやるよ、大魔王!!」
 灯はもう一方の拳を突き出し、全身の魔力回路を励起させた。
 肌のあちこちが裂けて血が吹き出す。電撃が逆位相に収束し彼を包んだ。
 灯は――否、輝けるプラズマ光の流星は、ついに魔力壁を突破!
『何……』
「うおおおおおオオオオオオオオッ!!」
 人が見せる命のきらめき。魂を燃え上がらせて生み出す決死の炎。
 その輝きがいま、傲慢なる大魔王を――まっすぐに、貫く!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワン・シャウレン
このダンジョンの果て、はじまり
貴様もまたそう見えるの
形態と称したも大魔王として
成程…身につまされるは必然であったか

先制の迷路を迎え華幻流水をもって最後のダンジョンを踏破しよう

繭の道を此方からも浸食するよう水を拡げ結界にて上書き進む
水上なら滑る事も可能
地形の利用、地形耐性も駆使し繭の変化や攻撃があっても同様
自身も水とオーラ防御を纏い繭の接触を避ける
万一触れても人に比べ即戦闘に支障はきたさぬ筈

その上で水を織り交ぜ活かし戦闘
向こうも速さに自信があろう
見切りに第六感も用い動きを捉える為に武装召喚
怪力と全力魔法で叩き込む

望みを糧と言うたが所詮それは陰
希望を掴む手に勝る道理なし
消えよ世界に取りつく寄生虫よ



 ファーストダンジョン、その最下層。それがこの玄室と玉座だ。
 大魔王を封印し永遠に閉じ込めておくためだけに作り出されたこの迷宮。
 猟兵達の地上からの侵攻は、いわばダンジョンを逆に遡っていたのである。
「なるほど、さすがは大魔王……"迷宮"を生み出すユーベルコートとはのう」
 ワン・シャウレンは、生物の巣穴めいた不気味な迷宮を落ち着いて見渡した。
 奇怪な繭は心臓めいて脈動しており、あきらかに危険だ。
 グリモアの予知からもたらされた情報を知っているならばなおのこと。
 ワンは繭に触れないように注意しながら、敵の気配を探りつつ迷宮を進む。
 大魔王は姿を見せない……よもや、迷宮に自分を閉じ込め逃げ出したか?
 否。四方から感じられるこの強烈なプレッシャーが違うと知らせている。
 腰を落とし身構えるワンの足元から、徐々に水が揺らぎながら広がっていく……。
(人形たる我が身が"若返った"としても影響は少ない。とはいえ……)
 水気によって迷宮そのものの領域を侵食しながら、ワンは思案した。
 この迷宮、何か違和感がある。ただ敵を若返らせ無力化するだけのものか?
 何かもっと別の使いみちがあるのではないか。迷宮の存在そのものが危険だ。
 これといった確証があるわけではないが、ワンは漠然とそう思っていた。
 ゆえに彼女は迷宮そのものを無効化しようとする――そして、その判断は正しい。

「!!」
 ワンが弾かれて振り返った瞬間、迷宮の壁がぼろぼろと砕け散った。
 獣じみた下半身を躍動させ、姿を表した大魔王が襲いかかる!
「やはり疾いな――しかし!」
 水の領域によって力を高めたワンは、その攻撃を見切ることが出来る。
 それどころか敵の攻撃をいなし、脇腹に一撃を叩き込むことすら!
 大魔王の大理石めいた肉体が削がれ、体力を削る……と、思われたその時。
『なるほど、我の気配を探っていたか。見事なものである』
 大魔王は平然と繭に触れた。そして傷を治癒したのだ。
「! ……なるほどのう。旧き者たるお主に若返りなど関係ないか」
『然様。この迷宮にある限り我は無敵であり、汝に希望はありえない』
 強大なオブリビオン……つまり"過去の残骸"たる大魔王。
 彼奴にとっての"若返り"とは、いわば治癒力の増進に他ならぬ。
 迷宮の中にある限り、あれは傷ついたところで回復してしまうのだ!
『――しかし』
 大魔王の鋭い双眸が、ワンを睨んだ。
『我が迷宮を侵食する汝のユーベルコードは見逃せぬ。死ね』
「断る。消え去るはお主よ、世界に取り憑く寄生虫めが!」
 ワンは真正面から大魔王の挑戦を受け入れた。気と魔力がぶつかり合う!
 神速の打撃が交錯し、互いの肉を裂き――そして、一撃を叩き込んだのは!
『……ぬう!』
 ワンである。掌底が大魔王の腹部をたたき、巨体を吹き飛ばした!
 傷ついた体で気息を整え、ワンは深く深く腰を落とし拳を構える。
「希望を喰らう陰が、希望を掴もうとする人の強さに勝る道理はないのじゃ」
『……その言葉、汝の力を以て証明してみせよ。我はそれを喰らうのみ』
 邪悪と清廉がぶつかり合う。力量差、もはや互角!

成功 🔵​🔵​🔴​

楼・静鳳
アドリブ・連携歓迎
感情がわからぬ数歳ヤドリガミ

常と同じに挑むだけで良いらしい

祈った記憶は一度くらいあるが
俺には願いや望みという感情がない
敵と対峙し思うのは「これは倒すべきモノ」という只の認識
倒したいという高揚や負傷への恐怖もない
痛みに鈍い性質【激痛耐性】かも知れないが

「魔王、俺は美味いだろうか?」
応えも期待しない只の疑問
思考は演算機械の様に攻撃の回避方法を弾き
躱したい意思もなく只ヒトガタが動く
【武器受け】と見せかけた【残像】残し
【怪力】【空中浮遊】で重力下で有り得ぬ方向に己を【吹き飛ばし】躱し
すぐさま敵の方向へ己を【吹き飛ばし】本性の剣でUC攻撃
願いも望みも祈りもない只の

斬るという確定の意思


ビスマス・テルマール
●POWとUC対策
わたしの願いを糧にするなら
貰いましょうか

『なめろう』を全ての世界に布教し広げる郷土料理に収まらない物にする

貴方に使いこなせるとは思いませんが

『空中戦』で『ダッシュ』で駆けながら

『第六感』で敵の攻撃を『見切り』『オーラ防御』で『属性攻撃(デコイ)』で覆った実体『残像』を置きつつ回避し撹乱

隙見て『早業』でUC発動

撹乱を続けつつ

敵に『属性攻撃(なめろう)』を込めた『一斉発射』の弾幕を『大食い』させます
※一発ごとに
ハワイアン

トマト味噌の魚介類の

茄子の

南瓜の

肉類の

ズワイガニの

イカの等

『属性攻撃』を変え

なめろうの無限の可能性をぶつけ

敵の付け焼き刃を打ち砕きます

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


ノイジー・ハムズ
漸く、漸く!
異世界の勇者候補、ここに参上です☆

…私に揺らめく感情はなく、猟兵としての行動は全て他者の夢の跡
謂わば縁在る人々やオブリビオン全ての『希望』であり『兵器』
故に決して絶望せず…

つまり!
私の空虚な願いを食べても、縁は切れません!
そういう事です☆

攻撃強化ならば、それを上回る攻撃で
防御強化ならば、それを上回る攻撃で
やることは変わりません!

限界突破・全力魔法・激痛耐性・属性攻撃!

此の戦争、遠に限界は超えてますが…
大魔王を冠する貴方に逢う、その為に来た道!

魔法で剣を拡張、存する総ての魔力と闇と光の属性を付与!
悲鳴の主は、身体か時空か…いえ、きっと時空です☆

全てを捻じ切れ!
万象喰らいの漆黒点・斬!


アマニア・イェーガー
私は世界を歪めるモノ、されど世界に寄り添うもの
希望なんか信じてない…けど、希望を守りたい、守るものだと信じてるの

私は願わない、望まない、そして祈らない。そんなもの要らないわ
"一度倒された過去の存在"である貴方に再びの結末を届けに来ただけだもの

「希望を持たない」ことで強化を封じる作戦ね
勿論完全には封じれないでしょう
UC発動まで【視力】での観測
攻撃への【破壊工作】【ハッキング】
【世界知識】や魔術をフル活用して【時間稼ぎ】ね

私が辿り着いた根源、その力

ええ、こんなもの普段は使えないわ。でも「希望を喰らう絶望」なんてルール違反もいいとこでしょ?
理(ルール)の外側の力、身をもって味わうといいわ


七篠・コガネ
僕は食べるという能力を知りません
ええ、何でも食べられる貴方が羨ましいですね

【激痛耐性】と【武器受け】で耐え凌ぎ
可能であれば【カウンター】を狙ってみます

遠くにいても攻撃が通りそうですからね
ならば距離を空けたって無駄
どうせ僕はロボット。どうせ僕は…殺戮兵器!
ならば大人しく兵器となりましょう
願いも恐れも自我すらも持つ事を許されないんだから!
敵に向かって【ダッシュ】しつつUC発動

飛行するなら後を追ッテ【空中戦】へ持チ込み
検知モードに視界を切リ替えて防御の薄いとこヲ【一斉発射】で狙イマす…
あぁもう駄目…段々…制御デキナイ…

………………。

『ターゲット、捕捉 帝国ノ敵、存在否定 殲滅、開始』…


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

あたしの望みかぁ…なんだろ?
まぁとりあえず今は、あんたをブッ潰したい、とは思ってるけど。

…とは言うものの。多分あたしの火力じゃどうあがいてもダメージソースには力不足なのよねぇ。
…この際、火力は捨てるわぁ。あんたを倒すのは、あたしじゃなくてもいいんだもの。
〇目潰し・拘束・〇マヒ攻撃、遅延起動と接触起動を織り交ぜた〇だまし討ち…
強化をどれだけ相殺できるかは分からないけど。手札と手管洗い浚いブチまけて、●圧殺で徹底的に邪魔してやるわぁ。

…ホント、ボス連中ってどうしてこう「雑に強い」のかしらねぇ…
まあ結局は「虎が強いのはそいつが虎だからだ」ってことなんでしょうけど。



 大魔王ウームー・ダブルートゥの力。
 それは、敵対者の希望・願い・祈りを喰らうという恐るべき異能だ。
 多かれ少なかれ、ヒトは何かを求める。欲望があるからこそ進化してこれた。
 それ自体を糧とするならば、つまり敵よりも絶対に強大になるということだ。
 同じユーベルコードを活用するとしても、正面からの戦いでは太刀打ち出来ない。
 ……ゆえに、あえてその"願い"を捨て去るというのは正しい選択である。
 といっても、厳密に言えば楼・静鳳の場合は"望み"という感情そのものがなく、
 ノイジー・ハムズの善悪を超越した精神形態は、希望とはまた異なるもの。
 実際に己の中のそうした感情を封印したのは、アマニア・イェーガーくらいだ。
 ともあれ、そうした猟兵達は望みを持たないがゆえにそれを対策とした。
 たしかにそれは正しい。そもそも喰らう欲望(モノ)がなければそれまでだ。
 強化は成り立たず、大魔王は実質一手封じられた状態で戦うに相応しい。
 それはたしかに名案だ――ただし、相手が"大魔王"でなければ、だが。

『愚かなり』
 傷ひとつない超然たる面持ちで、ウームー・ダブルートゥは言った。
 その眼差しは、そもそも同じ地平に立つ存在が見せるものではない。
 天上の神々が地上の哀れな人間を見下ろすような、そんな眼差しである。
 一方でその睥睨を受ける静鳳、ノイジー、アマニアは、歴然と傷ついていた。
 それでも膝を突かずに武器を下げないのは、彼らの一流たる証左だろう。
『我は希望を喰らうもの。ゆえに願いを持たず、あるいは棄て我に挑むとは。
 忘れたか。我はオブリビオン・フォーミュラ。汝らとは"次元が違う"のだ』
「……まるで勝ったような物言いをするわね。気に入らないわ」
 アマニアは吐き捨てた。彼女の戦意は萎えるどころか燃えるばかり。
 その殺意を双眸に籠めてぎらりと敵を睨めつける――大魔王は一顧だにしない。
 糧とすべき希望を持たぬモノなど、あれにとっては獲物ですらないのだ。
 それがわかるからこそ、アマニアは苛立っていた。殺意すら抱いている。
「たしかに私は希望なんか信じてない。願いも、望みも、祈りもしないわ。
 ……けれど、それは"過去の残骸"であるあなたも、同じことでしょう?」
 然り。
 いかに強大とて、オブリビオンは"過去に打倒された存在"。
 もっとも彼奴は、この世界の蒸気勇者達をして封印するが関の山だった。
 他のオブリビオンとはそこが異なるものの……アマニアの言葉は事実だ。
 ならば打開できるはず。同じユーベルコードという力を持つ猟兵ならば。
 それでもなお、そもそもからして強大たる大魔王との差は、やはり歴然なのだ。
 彼奴は願いを喰らう。だが願いを持たずして対抗することは出来ぬ。
 矛盾である。その矛盾を体現するからこそ、あれは"大魔王"たるのだろう。
「……訳のわからぬことをのたまうならば、さっさと俺を破壊し殺してみせろ。
 俺達はまだ誰も倒れてはいない。お前を倒すまでは挑み続ける、何度でも」
「そのとおりです☆私に絶望なんて言葉は存在しないんですよ!」
『……やはり愚かなり。ならば疾く死ぬがよい。汝らは喰らう価値すらない』
 大魔王は無造作に筆を振るい、魔力の波でノイジーと静鳳を吹き飛ばした。
 だが、ふたりは倒れない。立ち上がり、なおも武器を構え挑もうとする!
「いつまでも勝ち誇っていないことね――あなたの敵は私達だけではないわよ!」
『――ほう』
 アマニアの電脳魔術を強大な魔力で妨害しながら、大魔王が視線を動かした。
 その視線をなぞるようにいくつもの銃弾が飛来し、そして空中で静止する。
 瞬間、死角から飛び出したのは――ビスマス・テルマールだった。
「わたしの願いを喰らってみなさい、大魔王! あなたに使いこなせるなら!」
「やっぱり弾丸が届かないわねぇ……ま、いいわ。サポートするわよぉ」
 ティオレンシア・シーディアは舌打ちしながらもさらなる弾丸を撒き散らす。
 大魔王はそれを防ぎながらビスマスを吹き飛ばそうとする。
 が、ビスマスはいくつものデコイを生み出すことで攻撃を躱しさらに接近。
 様々な食物を模した奇妙な鎧装で己の身を覆い、全力を籠めた一撃を繰り出す!
『なかなか妙な"願い"だ。しかしやはり、我には届かぬ』
 確実に入ると見えたビスマスの攻撃は、大魔王にたやすく防がれる。
 ビスマスが驚愕に目を見開いた瞬間、その身を不可視の魔力が槌めいて打った。
「ぐっ……! わたしのなめろうに対する思いを、上回るとでも……!?」
『知性体どもよ、汝らの願いがどんなものであるかは、どうでもよいことだ。
 汝らが願いを抱き祈る限り、すべては我の糧となる。ただそれだけのことなり』
「……なら、あたしの"あんたをブッ潰したい"って気持ちもかしらぁ?」
『然り。ゆえにこそ我は"世界を喰らうもの"なのだから』
 何の感情も籠もらない言葉に、ティオレンシアは心の中で毒づいた。
 これまでの世界のオブリビオン・フォーミュラも大概な連中ばかりだったが、
 今回は輪をかけてふざけている。自分より強い相手をどう斃せというのだ?
 あるいは強靭な精神力を持つ者ならば、それを覆せるやもしれぬ。
 命を厭わぬ特攻を仕掛ける者ならば、慮外の一撃を流星の如く燃やすだろう。
 ティオレンシアにそれはない。畢竟、彼女はただの銃使いである。
 それが誇りでもあり足枷でもあったが、彼女ひとりでの打倒はまず不可能。
 どうする。誰を支援し、どのようにしてこの鉄壁の試練を突破する!?

 ……八方塞がりの戦況に変化をもたらしたのは、新たにやってきた猟兵だった。
 大魔王はその気配のほうへ目を向け、『ほう』と平易な声音で呟く。
 超越的な眼差しを受け、ウォーマシンの少年……七篠・コガネは、眦を決した。
『よい願いをしている。我好みの芳醇な薫りを感じるぞ。若き猟兵よ』
「……そう言われても、僕は"食べる"という能力を知りませんからね」
 コガネはそう言って、重く息を吐いた。
「ええ、正直、なんでも食べられるあなたが羨ましいとすら思います。
 ……だから僕は、僕にとって一番"やりたくないこと"をしに来ました」
 コガネの双眸がぎらりと輝き……その雰囲気が、一瞬で変質した。
 大魔王の柳眉がぴくりと動く。直後、コガネはすさまじい速度で疾走!
『汝、よもや――』
「ええ、そうです! 僕にはいくつもの願いが、望みがあります!
 そレをあなたが喰らうとイウなら! 僕は"ソレを捨て去りまショウ"!!」
 一瞬で大魔王の眼前に接近したコガネは、恐るべき殴打を繰り出した。
 大魔王は魔力障壁でこれを受け止める――だが、受け止めきれない!
 障壁が砕けて威力が噴き出し、大魔王の肉体を削り取ったのだ!
『望みを持つモノでありながら、それを封じるのでなく捨て去ると言うのか。
 それはすなわち、汝が知性体であることを放棄する証ぞ。まさに愚かなり』
「アナたを倒セるなラ、ソレ……で、構いマ、せン……!!」
 攻撃。攻撃。攻撃。一切の防御や回避を考慮しない前のめりすぎる攻勢。
 その姿を見た猟兵達のうち、あの銀河帝国攻略戦に参戦した者達の脳裏に、
 恐るべき銀河帝国の殺戮兵器――デストロイウォーマシンの姿がよぎった。
 コガネは人間的理性を焚べ、己の中の殺戮機構を起動したのだ!
 その攻撃は、願いを喰らった大魔王の護りすらも越えて幾度も届く。
 人間的表情を喪ったコガネの攻撃を捌きながら、大魔王は眉根を顰めた。
『理解できぬ。我を討つためにそこまでするというのか? 愚かの極みなり。
 願いを持たぬ者がなぜ戦う。知性を棄ててまで我を討たんとする理由はなんだ?』
「――わからないでしょうね、あなたには」
 アマニアは言った。彼女もまた覚悟を決め、己の心と身の限界を越えたのだ。
 "理"の外側より力を汲み上げ、敵を抹殺するという捨て身の覚悟を!
 先ほどの倍以上の速度と威力を籠めた電脳魔力波が、大魔王の肩を灼いた!
「理由を問うなんて大魔王らしくないですね☆ あなたが出来だから、ですよ!
 私自身は空虚なものでも、私が繋いできた縁は決して無為ではありません!」
 フェアリーであるノイジーの全身から、すさまじい魔力が噴き出した。
 掲げた剣は天井を貫かんほどに伸び、時空が震えて悲鳴をあげる。
「敵が強ければ強いほど、私の戦意も増します。これがその証明です☆」
 あらゆる属性を練り上げた魔力の太刀は、大魔王の魔力障壁をたやすく裂いた。
 膨大な魔力と魔力が相殺しあい、迸り……勝利したのはノイジー!
 すべてをねじ切る万象喰らいの刃――その輝きを隠れ蓑に、静鳳が駆ける。
「そもそも俺は、その問いかけへの答えすらも持たん。だが確かなことがある。
 ――猟兵(おれたち)は敵(オブリビオン)を倒す。ただ、それだけだ」
 牽制の魔力攻撃を自らの体を犠牲に受け止め、さらに一歩。
 致命の間合い。振り抜くのは願いも望みも祈りもないただの確定的な斬撃。
 ただ振るだけで届かぬというならば、この身の総てを捧げて斬ってやろう。
 静鳳に矜持や意地はない。だが同時に、己の命に対する躊躇や逡巡もない。
 ふたつの斬撃が重なり合い、大魔王の胴体にすさまじい剣閃を刻んだ!
『……理解、出来ぬ。獲物ですらもなきモノが斯様に、我を……』
「それがあなたの限界、そしてわたし達が超える通過点だということです!
 わたしの願いは、あなたが喰らった程度で尽きませんよ、大魔王!」
 戦線復帰したビスマスの連続射撃! 敵はそれを魔力で相殺していく。
 それでもビスマスは諦めない。彼女もれっきとした猟兵なのだから。
 他人から見ればどれだけ珍妙で奇天烈な願いであれ、それは彼女の根源だ。
 その強さ、しぶとさは、たとえ大魔王でも否定できないのである!
 大魔王はさらなる攻撃を防ごうとした。だが間隙をくぐり抜けた弾丸が、
 その弾丸に刻み込まれたいくつものルーンが、わずかにそれを遮った。
「あんた、あたし達を獲物だなんだって見下してたでしょお?
 ――どれだけ強いやつでもねぇ、そういうとこから足元を掬われるのよぉ?」
 ティオレンシアの浮かべた笑みを見た大魔王は、不可解な感情を抱いた。
 あるいはそれは、人にとっての恐怖であったかもしれぬ。
『殲滅。敵ヲ殲滅スル――僕ハ、敵(あなた)ヲ……倒す……!!』
 そしてコガネの全身から生えた無数の砲塔が、おびただしい光を迸らせた。
 猛攻の前に大魔王を護るべき障壁は存在せず、破滅がその身を呑み込む。
 奴は万が一にも、己の天敵たる猟兵を小物と見下すべきではなかったのだ。
 望みがあろうとあるまいと、
 その心が空虚であろうと、
 彼らは敵を――他ならぬ彼奴を倒すため、ここに集まった勇敢な戦士達なのだから!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

天御鏡・百々
我らの願いは、祈りは、希望は、大魔王に喰らわれる程弱いものでは無い
この戦いに勝利して、それを証明するとしよう

『産み直しの繭』、若返りの力か
我が仮の体は、これを得てから外観は変わっておらぬが
なるべく触れぬようにすべきか
仮の体を得る以前まで若返ることが出来るならばどうなるか解らぬ

念動力17で宙に浮き
神通力の障壁(オーラ防御81)も使って迷路に触れぬように
迷路を大魔王の元まで進んでゆこう
その中では、『鏡渡り』にて
念動力で先行させた小さな鏡へ移動するという手段も使うぞ

最後は鏡渡りからの奇襲で
大魔王を真朱神楽にて一閃する

●神鏡のヤドリガミ
●本体の神鏡へのダメージ描写NG
●アドリブ、連携歓迎


御薬袋・稀子
UCを発動し、迷宮に歩を進める。若返りの迷宮、つまるところ時間との勝負になる。
強制執刀状態へ移行。自身の寿命を削りつつ、己の肉体を弄り偽神細胞の力で老化させていく。
道を阻むものはメスで切り開き、邪魔な穴は糸で塞ぐ。
何故だろう、若返りは言うなれば死から遠ざかる行為なはずなのに、死への恐怖は消えることは無い。やはり心の平穏を保つためにはあの魔王を排さねばならない。貴方の在り方は病です。他者に一方的な死を与えるその存在は、病でしかない。
だから私が切り開き、組み直しましょう。
緊急手術を始めます。その手足を縛り、動きを阻害。邪魔な武器は切り開き、破壊する。
……あとは他の方々にお任せしましょう


黒川・闇慈
「魔王も最終形態のお出ましですか。これは気合いを入れませんと。クックック」

【行動】
wizで対抗です。
まずは先制攻撃への対処です。どうにも繭に直接触れるとまずそうですねえ。ホワイトカーテンの防御魔術を球状に展開し、直接触れないようにしましょう。
その間に高速詠唱、呪詛の技能を用いてUCを使用します。歩いて迷路を攻略していては危険です。変身が完了したら飛行しつつ、第六感の技能を活かして出口を探しましょう。
迷路を抜けたら魔王に攻撃です。全力魔法の技能をもって呪力砲撃を撃ち込んで攻撃です。

「皮肉ですねえ……希望を喰らう貴方の姿が私の好奇心という希望を刺激しているのですから。クックック」


アドリブ歓迎


メイスン・ドットハック
【WIZ】
産み直しの繭のー
厄介な能力をもっておるけど、希望を捨てんし自分で掴み取るのが僕等じゃけー

先制対策
揚陸艦ロストリンクをAI自動制御浮遊し、その上に乗った二足歩行戦車に搭乗して出撃
AIと自身で電脳魔術による空間【ハッキング・情報収集】して敵の挙動を解析、【第六感・操縦・視力】駆使で回避
最悪ロストリンク撃墜でも、戦車を繭に接触しないようにする

先制後はUC「電磁力もまた自然の摂理」で電磁の津波を発生させ、電磁場のフィールドで地面を満たす
電脳魔術で戦車の足に電磁力を付与して、反発浮遊
一気に接近して戦車の全兵装を持って【誘導弾・一斉発射・蹂躙】を叩き込む

猟兵の底力舐めるなのー!


アドリブ絡みOK


須藤・莉亜
特に言う事もないか。

触れると若返っちゃう迷宮は面倒だなぁ。
ということで、放り込まれたら悪魔の見えざる手を足場にして、触れちゃわないようにしてからUCを使う。
んでもって、暴食蝙蝠のUCを発動。迷宮を埋め尽くす勢いで無数の蝙蝠に変化。数で出口と敵さんを探していく。もちろん、迷宮に触れないように気をつけながらね。
敵さんを見つけたら、殺気を【第六感】で感じ取り、動きを【見切り】つつ、全方位から【吸血】を狙っていく。

一滴の血さえあれば再生し増え続ける僕達全部で吸い殺す。


シェーラ・ミレディ
ようやく最奥か。
これで最後の大魔王だ。──引導を、渡してくれるッ!

事前に精霊の祝福を得て(呪詛耐性)、若返りに対する対策としておく。
繭には触れないようにするが、近くにあるものは焼き払ってしまおう。硬度が高かろうが、最大出力(属性攻撃、全力魔法)であれば燃えるだろう。

「これが攻撃だって? 笑わせるな!」
大声で敵を挑発し、誘き寄せるぞ。何、燃える迷路を突っ切るのも手間なものでな?
炎に巻かれて、多少なりとも負傷してくれたなら儲けもの。……本命は、炎に隠した悪霊だ。
『尤雲殢雨』。炎を纏った悪霊達が、大魔王を抱きしめる。
そんな蔑称を冠するほどだ、恨まれる心当たりはあるだろう?

※アドリブ&絡み歓迎



『……我が、斯様に傷を受けるとは』
 猟兵達の意地の猛打を受け、大魔王は淡々と呟いた。
 理解できぬ。なぜあれらは、望みを棄ててまで我を倒そうとするのだ?
 それどころか、願いや望みといった知性体の常を持たぬ虚無的な者までいる。
 それが猟兵だというのか。だとすればその在りようそのものが理解できない。
 かつて白痴たる大魔王は、新たに得た知性をどう使うか測りかねた。
 かつての己ならば――つまりこの知恵を棄てたならば、もっと容易かったか?
 おそらくは、否。己の無意識の部分がそう告げていた。
『……だがそれもまたよし。知性体達よ、我を斃そうと願い、祈るがいい。
 我は喰らうもの。我は貪るもの。すべては我への贄であり、糧でしかない……』
 呟く大魔王を中心として術式の結界が広がり、大迷宮を生み出した。
 いくつもの繭がへばりつき脈動する、生物的で不気味な大迷宮を。
 大魔王を討たんとしていた猟兵達は、その中に囚われることとなる――。

「……さて、そんなわけで予想通り放り込まれたわけだけど」
 周囲を包み込んだ巣穴めいた光景を見、須藤・莉亜は無感情に言った。
 気だるげに紫煙を纏うダンピールには、困惑や義憤は見られない。
「うむ。この繭、すでに効果はわかっておるがやはり触れるべきではないな。
 我のこの身はヤドリガミたる霊体とはいえ、どんな影響があるかわからぬ」
「となると、こいつを慎重に避けながら大魔王を探さないとだねぇ」
 天御鏡・百々は、莉亜の言葉にこくりと頷く。
「我の障壁と貴殿の不可視の力場があれば、それは容易いことであろう」
「問題はどうやって相手の居場所を探すか……か。何かいい案あるかな?」
「我の分身体たる小さな鏡を先行させよう。万が一敵がいても斥候が出来る」
「なるほど。なら僕は――ちょっと"身を削る"としようかな?」
 謎めいて言った莉亜の体がぐにゃりと歪み、そして霧めいて黒ずむ。
 キキキ、チチチという甲高い鳴き声と羽ばたきの音……それは蝙蝠の群れだ。
『これなら出口も敵さんも探し放題だからね。それじゃあ移動しよう』
「心得た。偶然同道した身ではあるが、我の力を貴殿に貸すとも」
 そうして百々と莉亜(が変じた蝙蝠の群れ)は、注意深く迷宮の探索を始める。
 常に張り詰めるプレッシャーは、間違いなく大魔王のものである。
 大元がどこにいるのか……一瞬たりとて気の抜けない迷宮探索行の始まりだ。

 一方シェーラ・ミレディは、目につく繭を次々に精霊の炎で焼き払っていた。
 何が宿っているかもわからない奇怪な繭は、どくんどくんと脈動を続ける。
 焦げた内側から臭ってきたのは、肉を焼いたような不快な匂いだった。
「……こんなもので僕らを捕らえるとは。とことん悪趣味だな」
 あるいはこれこそ、あの無限災群の大元だったのだろうか。
 思索を巡らせる余裕も、確かめるような暇もない。
 シェーラは先ほどからずっと、鋭い敵意を感じ続けていたからだ。
 彼はすう、と大きく息を吸い込み、腹を決めると天を仰ぎ、叫んだ。
「――これが攻撃だって? 笑わせるな!!」
 迷宮の中に、シェーラの叫びが響き渡り、木霊する。
「希望を喰らう大魔王を名乗っておきながら、こんな小手先で僕らを倒すと?
 僕らはこの程度で屈するほど心弱い存在などではない。さあ、出てこい!」
 ……返ってくる声はない。だが、敵意は変わらずシェーラを包む。
「それとも、あれだけの大言壮語を吐いておいて臆したか? 大魔王!!」
 シェーラの言葉は勝ち気で挑発的だが、彼女はこめかみに冷や汗をかいていた。
 先の見えない迷宮で、どこにいるかもわからない敵の殺意に晒され続ける。
 それはただでさえ致命的なほどに堪えがたい、非常に苦しい拷問のようなもの。
 ましてや相手が、この世界最強のオブリビオンであるならば。
 どこから襲いかかってきてもおかしくない――不安と恐怖が鎌首をもたげる。
 端正な顔立ちを汗が伝い、シェーラはぐいと腕で拭った。
 これはいわば根気勝負だ。音を上げたほうが敗けるだろう。
 "ホープテイカー"とはなんとも皮肉な名前である。
 あちらからすれば、獲物が弱ったところを収穫するだけなのだから……!
(焦るな。奴は必ず食いついてくる。必ず――その隙を、逃すな)
 シェーラは心のなかで己を鼓舞し、さらに声を張り上げた。
「出てこないならば、こんな迷宮はすべて灼き尽くしてやる! さあ――」
『……獲物がよく騒ぐ。汝の恐怖、そして祈り。すべて見え透いているぞ』
「!!(――来た!)」
 シェーラは弾かれたように振り返る。だがそこに大魔王はいない。
 直後! 燃え盛る壁が崩壊し、獣身の異形が凄まじい速度で現れた!
 炎をものともせずチャージを仕掛け、シェーラを吹き飛ばしたのだ!
「ぐ……っ!!」
 身構えていたことが幸いし、シェーラは突進を直接受けずに済んだ。
 だがシェーラが炎に隠した悪霊達に、攻撃の命令を下すより敵の動きが疾い!
 もはやこれまでか――その瞬間、轟音が迷宮内に轟いた!

『何?』
「二重に備えておいて正解じゃったのー!」
 轟音の正体は、間に割って入ったメイスン・ドットハックによるものだ。
 より正確に言えば、彼女が大魔王に叩き込んだ戦車砲の砲声である!
 二足歩行戦車の肩にしがみつき、メイスンは大魔王を睨みつけた。
「おかげで揚陸艦は台無しにされたがのー! ただいま到着じゃー!」
『我の食事を邪魔するか。その行いは万死に値するぞ』
「――私達が、あなたの"食事"をわざわざ見過ごすとでも?」
 さらに新たな気配! 大魔王は、死角から繰り出されたメスを受け止めた。
 刃めいて鋭い瞳をレンズの下で輝かせ、御薬袋・稀子は舌打ちする。
「ようやく見つけましたよ大魔王。ここまで来るのにはだいぶ骨が折れました。
 ……が、残る"病巣"はあなただけ。さあ、ここからは手術(オペ)の時間です」
『我は病にあらず。世界そのものを喰らう存在なり』
「他者に一方的な死を与えるその存在は、病でしかないッ!」
 鋭いメスが大魔王の肌を、肉を斬り裂き、血が迸った。
 だが大魔王はその傷に構わず、魔力波を噴き出しふたりを攻撃。
 さらに近くにあった繭を無造作に握りつぶし、わざと若返りの呪いを受けた!
「……! 医者として、そんな荒療治は見過ごせないですね」
 稀子は眉根を顰め、その現象――摂理に反した急激な回復を睨む。
 強大なオブリビオン・フォーミュラにとっては、若返りなどむしろプラス行為。
 奴は自らの時間を巻き戻すことで傷を"なかったこと"にしているのだ。
 寿命を燃やし偽神細胞の力で無理矢理に迷宮を突破してきた稀子にとっては、
 その行為自体が医療への、そして彼女自身への侮辱と言える。
『我に生半可な攻撃は通用せぬ。そして我は汝らを喰らいつくそう。
 恐怖し、絶望せよ。枯れ果てたこころに浮かぶ希望こそ我の美味なれば』
「悪食にもほどがありますねぇ。ならば、こんな攻撃はどうですか?」
 大魔王はその声に振り返らず、攻撃のための魔力を障壁に転化した。
 背後から迸る闇色の炎はたやすく防がれた。そして現れたのは黒川・闇慈。
「ふむ、この程度では火力が足りませんか。クックック」
『……次から次へと。我の糧になることを望むか、猟兵ども』
「いいえ? 私の望みはあなたの打倒。そしてあなたという存在の解明です。
 皮肉ですねえ……希望を喰らうあなたの姿が私の好奇心を刺激するのですから」
 黒き魔術師はこともなげに言い、再び魔力を収束させた。
 メイスンもまた二足歩行戦車の総ての武装をアンロックし、準備する。
 だが彼らは理解していた。真正面からの攻撃では大魔王の防御は崩せないと。
 はたしてどうする――その時彼らが聞いたのは、無数の蝙蝠達の鳴き声!
『僕から特に言うこともないから、代わりにたっぷり吸い殺させてもらうよ?』
『……これは』
 無数の蝙蝠=莉亜は訝しむ大魔王を闇のように包み込み、全身に噛み付いた。
 大魔王は衝撃波めいて魔力を放ち、あるいは獣のように暴れこれを振り払う。
 だが、あまりに数が多すぎる。そして血を吸えば莉亜のペースだ。
 吸血は彼の力を与え、減らされた分身をさらに増やしていくのだから!
『喰らうものである我の血を啜るなど……!』
「吸血じゃ物足りないのか? なら――燃えろ。悪霊に抱きしめられて!」
『!!』
 その時、シェーラが動いた。ついに焔の悪霊達を解き放ったのだ!
 めらめらと燃える炎から現れた無数の女めいた影が、巨体に絡みつく。
 数多のいのちを喰らいし大魔王、いわばそれは憎悪を浴びる象徴も同然。
 生を、簒奪者を憎む悪霊達は、吹き飛ばされようと抱擁を止めぬ!
「他者を奪い、貪り、ただ無為に世界を滅ぼすあり得べからざるもの。
 ――その総てを、改めさせていただきます。偽神細胞、超過駆動……ッ!」
 稀子の両手から無数の糸が迸り、さらにメスが大魔王の手足を切り裂いた。
 邪悪なるオブリビオンの一切の行動を否定し縛り付ける、拒絶のオペ。
 彼女自身の寿命を代価とするそれは、ついに大魔王の攻撃と防御を奪い取る!
「――我らの願いは、祈りは、希望は! 喰らわれるほど弱いものではない!
 我らは勝利を以てそれを証明しよう。ここが貴様の墓所だ、大魔王よ!」
 鏡の世界を跳躍し死角を得た百々の薙刀が、大魔王の脇腹を切り裂いた。
 さらに刃を返しての一撃! 身動きの取れない大魔王は防ぐことも治癒も不可能!
 無数の鏡がその身を照らし出し、逃げることすらも許さない!
『これは……これは!!』
「さて。では今度こそ、最大火力で失礼しますよ。クックック」
「猟兵の底力……嘗めるなのー!!」
 そして闇慈の、メイスンの最大火力が、迷宮ごと大魔王を吹き飛ばす。
 超然と構える簒奪者の口から漏れたのは、驚愕、疑問、そして苦痛の絶叫!
 奴はもはや、追い詰められ始めた一体のオブリビオンに過ぎない……!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

願いや望み、祈り…か
宵を思う心を使われるのは癪だが…宵の言う様それ以上の力で打ち勝ってみせよう
先制攻撃を見越し身に『オーラ防御』を纏いつつ左手に展開した光の盾と右手のメイスを構え宵を『かば』う様に立ち『盾受け』『武器受け』にて敵の攻撃を受けよう
幸い『激痛には耐性』があるのでな…多少の攻撃では倒れん
それに、背後の宵の事を想えば倒れる訳にはいかんだろう?
攻撃に耐えられたならば手のメイスを『怪力』任せに打ち付け『カウンター』を
もし体勢を崩してしまったならば宵へ攻撃を繋げんと其の侭押し留めんと試みよう
頽れさせ等する訳なかろう
お前を傷つける攻撃は全て俺が受け止めよう。…宵、攻撃は頼んだぞ


逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

僕たちの願い、望み、祈りで敵が攻撃するならば
僕たちはそれと同等、いえ以上のものをもって相対しましょう

敵の先制攻撃は「野生の勘」「第六感」「見切り」にて強化された攻撃の察知に努め
「オーラ防御」「激痛耐性」「毒耐性」「電撃耐性」「火炎耐性」「氷結耐性」で防ぎましょう

防ぎきれたならば【天星アストロノミー】で防御力を強化 次なる一手に備えます
返す刃で「マヒ攻撃」「鎧砕き」「目潰し」「全力魔法」をのせた「衝撃波」で敵を「吹き飛ば」そうとこころみます

この世界はあなたの思う通りにはさせません
そして僕たちは死にません
たとえ傷つき屑折れても、この心だけは貴方には砕けませんとも!



 大魔王はかつて、知性を持たぬ存在、いわば災厄そのものだった。
 ただそうであるがゆえに世界を喰らい、そうであるがゆえに希望を奪う。
 そこに悪意はなく、ゆえに慈悲も躊躇もなく、後悔や悔悛もない。
 だからこそ彼奴はその隙を突かれ、封印の憂き目に遭ったのだ。
 長き時を雌伏し、大魔王は己に必要ないはずの知性を得た。
 すべてはこの封印を脱し、今度こそ世界のすべてを喰らい尽くすため。
 獲物である知性体と同じ知恵など所詮はそのためでしかない。
 だが――いま、大魔王ウームー・ダブルートゥは、困惑していた。
 必要ゆえに獲得した知性が、やつに本来必要ない感情を与えていたのだ。

 何故だ。
 何故猟兵(こいつら)は、こうまでして己に抗う。己を討とうとする。
 オブリビオンと猟兵は天敵同士――彼奴はオブリビオンであるがゆえそれを本能的に理解している――だからか?
 否、それだけではない。この状況はそれだけではありえない。
 なぜ奴らはこうまでも食い下がり、己はここまで傷を負わされている?
 何が。奴らと己で何が違う。一体何が!
『理解できぬ。汝らのすべてが理解出来ぬ。なぜ汝らは我が前に立つ』
「……答える必要はないが、その困惑が面白いからあえて言ってやろう」
 数多の攻撃を受け止め、ボロボロの有様の男が言った。
 血まみれの相貌に、ザッフィーロ・アドラツィオーネが浮かべたのは笑み。
「たしかに俺は……いいや、俺達はお前の言うとおり、願い、祈るもの。
 望みこそが俺達の原動力……だがそれは、お前を肥やすためじゃない」
 ザッフィーロは振り返らない。ただ、背中に護る大切な男の存在を思う。
 彼の存在が、信頼がある限り、どんな傷であろうと耐えられる。
「どれほどお前が俺達の望みを喰らおうと、俺達は必ずお前を打ちのめす」
『理解できぬ! 希望を喪った者が、どうやって我を超えると云う!』
「哀れですね。知性を得たがゆえに、そんなシンプルな疑問に囚われるとは」
 ザッフィーロの防御を任せ、逢坂・宵はひたすら魔力を練り上げていた。
 打ち砕かれるのを承知で何度もオーラの障壁を張り、余波を受け止め続ける。
 無謀な行いだ。たかが猟兵ひとりが大魔王の暴威を受け止められるものか。
 ……だがその不可能を、ザッフィーロは可能としている。
 だからこそ彼は立っている。そして宵は笑みすら浮かべて、言った。
「僕たちの願いと祈りをあなたが喰らうならば、僕らはなおも望みましょう。
 未来を。勝利を。大切な人の無事を。あなたが喰らうよりも強く、いくらでも」
『我が喰らうよりもなお、だと? ……あり得ぬ。それは不可能だ』
「出来るのですよ。現に僕らはあなたの前に立っている。そうでしょう?」
 大魔王の疑問は晴れぬ。だが、無意識の部分から声がした。
 もはや構うな。ただ殺せ。殺し貪れ。すべては獲物であり贄である。
 ……然り。己は大魔王と呼ばれるもの。その名などもはやどうでもよい。
 すべての知性体は己に恐怖し、絶望のなかで血肉を捧げるべき贄なのだ。
 己が討たれるなど認めぬ! 大魔王は咆哮し、さらなる力を纏った!
「来るぞ、宵。そろそろ俺も限界だ、強化を頼めるか?」
「ええ、ザッフィーロ君。次の一撃は私が全力で凌ぎます。だから」
「――任せろ。やられたぶんは叩き返す。倍返しでな」
 大魔王は獣性を剥き出しとし、弾丸じみた勢いで突進を仕掛けた。
 ザッフィーロの、そして宵の希望を喰らったその力は、もはや無双。
 彼らの力をそのまま己のものとし、燃やしながら振るうも同然である。
 耐えられるはずはない。防げるはずはない――そのはずなのだ。だが!
「この世界は、あなたの思うどおりにはさせません……星よ!」
 宵の周囲に天体図めいた無数の輝きが生まれ、そして迸った。
 ザッフィーロをも包み込んだ輝きが、巨大な障壁となり大魔王を受け止める!
 魔力と威力が拮抗し――そしてついに、その暴威を吹き飛ばした!
『何――』
「我が鍛錬の結晶、そしてお前の捕食を超えるこの希望。受けてみろ」
 ザッフィーロはメイスを握る手に総ての力を籠め、跳躍した。
 己をひとつの暴力装置と化し、ただ攻撃のために全存在を捧げる。
 魔力障壁も、強大な肉体の防御も砕く強烈なカウンターが脳天に炸裂!
 大魔王の頭蓋が砕けて血が噴き出し、巨体がのけぞった!
「この心が砕けぬ限り、勝機はつねに僕らの側にあるのですよ」
 盾めいて広がっていた光が収束し、視界を灼くほどに白熱した。
 引き絞られた矢のごとき星の輝きが、大魔王の肉体をまっすぐに貫く!
『ありえぬ……なんだこれは。これが、知性体の力なのか……!?』
 地下深くに住まいし大魔王が知らぬもの。
 それは星の如くに一時のみ、けれど力強く輝く――いのちの灯火だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

叢雲・源次
【煉鴉】

どこにでもある幸福を塗り潰し、己が身勝手なままに喰らう
俺の過去に、そういった者がいた…そいつがどうなったか、だと?
今頃骸の海で藻掻いているだろうよ

行くぞグウェンドリン…此処が分岐点だ

ウォールデバイス…フルアクティブ。グウェンドリンの力場に合わせ斥力場を展開
攻撃の余波が身を抉ろうとも退く事は無い

>Inferno_cylinder overdrive

未来の事など誰も分かりはしない
だからこそ人は希望を抱く

これを最後の知恵と知れ

>RDY BURST

生きるという事は、こういう事だ

『神殺絶刀』
突き出した対神太刀からエネルギーの奔流が放たれる


グウェンドリン・グレンジャー
【煉鴉】

願い、望み、祈り……そんなの、決まって、る
お前を、喰らい、倒す
(腰から黒い翼と尾羽を生やして)

行こう、源次。私達の、力で、あいつに、牙を、突き立て、よう

Imaginary Shadow、念動力で、二人分、の、力場、展開
突き抜けた、分【激痛耐性】で、対処

今度は、こっちの、番……【空中戦】と【念動力】で飛翔、【第六感】で、攻撃のチャンスを、予測
今なら……いける。同時、一気にやろう

鴉は、天の使い、同時に、災禍を、呼ぶ鳥
黒き、死の女神……の、化身
【生命力吸収】【捕食】【属性攻撃】乗せて、決死の、飛び蹴り
属性は、天属性
いくよ……これが、私の、全力全霊
『天使の鉄槌(Angel's Hammer)』



 敵対者の願い、望み、祈り――それはすべて大魔王の糧だ。
 敵意、殺意……つまり"やつを倒す"という思いもまた同様である。
 つまり敵対者が大魔王の打倒を望めば望むほど、大魔王は強大となる。
 とんでもない話だ。倒そうとすればするだけ強くなる相手をどう倒す?
 知恵を捨てるか。それはむしろ悪手、なにせ敵は強大なフォーミュラなれば。
 意志を封じるか。一流の仙人や求道者ならぬ身ではただの付け焼き刃だろう。
 ゆえにただ挑むしかない。勝利を信じ、願い、決意して挑むしかない。
 それがどれだけ敵を強くするとしても。絶対に退けぬと心から思うならば。
 傷を厭わず、恐怖をねじ伏せ、真正面から挑むしかないのだ。
 ――ふたりにとって幸いだったのは、それが最大の得手だったことである。

 二重の力場が吹き飛び、張ったゴムが爆ぜるように衝撃が荒れ狂った。
 目に見えない力場の残骸は、さながらガラスの破片めいて身を斬り裂く。
 だが叢雲・源次は止まらない。前を向き、一心不乱に刃を振るう。
 空中を飛び敵を撹乱するグウェンドリン・グレンジャーもまた同様。
 大魔王の攻撃はひとつひとつが致命的であり天災級の破滅を伴っていた。
 一撃ごとに大地が爆ぜ、天井が裂け、壁が砕け力場は割れていく。
 その身を、骨すらも砕かれ、筆舌に尽くしがたい苦痛が彼女らを襲う。
 いくら耐性があるとはいえ、無理やりねじ伏せるのには限界がある。
 彼らが人外の力を得た猟兵であろうと、知性体である限りは。
 ……だが止まらぬ。その様が大魔王にはあまりにも奇異に映った。
『答えよ。汝らはなぜ我に挑み続ける。なぜ運命を享受せぬ』
「……お仕着せの絶望なんて、私はいらない。私は、認めない」
「是非も無し。敵がいるならば倒す、それは当然のことだ」
 グウェンドリンと源次は淡々と答え、そして己らの攻撃を粛々と繰り出した。
 大魔王の纏う鎧めいた魔力はそれらをことごとく防ぎ、むしろ弾き返す。
 だが大地を転がり、あるいは壁に叩きつけられたふたりはすぐさま立ち直ると、
 一切勢いを減じることなく……むしろさらに発奮して挑戦を繰り返す。
 愚直? そうとも言える。だが攻撃の度合いはむしろ鋭さを増し続けている。
 それが不可解だ。かつての大魔王ならば一顧だにせず喰らい尽くしたろう。
 疑問は隙を生む。そこを貫き、刃が、あるいは黒翼が少しずつ傷を増やす。
『愚か極まる。汝らの行為に意味はない。我は不滅。我は無敵なのだから』
「そう嘯き、どこにでもある幸福を塗り潰し我侭に喰らうような奴がいた」
 深く身を落とし、居合の構えを取ったまま、源次が言った。
 度重なる攻撃が彼の人工皮膚を削ぎ落とし、クローム体を顕にする。
 壊れかけのマネキンめいた有様で、鋼をこね合わせた男は続けた。
「――今頃そいつは、骸の海で藻掻いているだろう。貴様もそうなる」
「……行こう、源次。私達の、力で、あいつに、牙を、突き立て、よう」
「応」
 最大の攻撃が来る。だがあれらにとっては、つまり最期の攻撃だ。
 もはやそれで余力は尽き果て地に伏せるだろう。我はそれを喰らえばいい。
 だが何故だ。細胞が、無意識の部分が叫んでいる。全力で防げと。
 ……不要。我は喰らうもの! すべての獲物は平らげねじ伏せるのみ!
『……猟兵よ。我は汝らを理解できぬ。ただ叩き伏せ喰らう。それだけだ。
 汝らの願いは何も生まぬ。我が糧となりそれまでのこと。絶望し、恐怖せよ』
「「…………」」
『……哀れなり』
 大魔王は張り詰めさせていた魔力=敵対者から喰らった力を己の身に凝縮した。
 その体が倍近くに膨れ上がり、吐き気を催すほどのプレッシャーが張り詰める。
 獲物を消し飛ばす最大最強の一撃。裏を返せば、最大最高のチャンス。
「未来のことなど誰もわかりはしない」
 ちゃき、と鯉口を切る。
「だからこそ人は希望を抱く。これを最期の知恵と知れ。大魔王」
 炎獄機関(インフェルノシリンダー)、過剰励起(オーバードライブ)。
 極限の緊張が主観時間を鈍化させる。その中でなお大魔王の速度は見えぬ。
 捕らえきれぬ神速。それでいい。己はただ――この刃で伐るのみ!
「生きるということは、こういうことだ――!!」
「……これが、私の、全力全霊」
 乙女は空を舞った。暴威はその翼をももぎ取ろうとする。
 砕けゆく黒翼を力強く羽ばたかせ、少女はいまひとつの槌に変わる。
 神を殺す絶刀。
 天使の鉄槌。
 拮抗しそして勝利したのは――全く同時に放たれた、ふたりの攻撃!
『……バカ、な!!』
 かつての大魔王ならば、その当惑すらも見せなかっただろう。
 攻撃を凌がれたばかりか凌駕され、その身を断たれ喰らわれ、大魔王は叫んだ。
 無慈悲なる刃と鉤爪は、容赦なくその存在に癒えぬ傷を穿つ。
 すべてはただ、あるべき邪悪をあるがままに倒すために。
 ――ヒトの持つ心の力は、大魔王などには喰らい尽くせない!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルディア・ディアマンテ
これが大魔王の本体…これで最後の戦いですわね…
絶対にここで倒しますわよ!
世界に生きる数多の生命の為にも…こいつの存在を許してはいけない!

大魔王との戦いはまるで自分自身との戦いのようね…ならば小細工無用!
先制攻撃に対しては、全力をもって真正面から受け止める!
自分自身の力に…借り物の力になんて絶対負けない!

吹き飛ばされようが、叩きつけられようが、何度でも繰り返す!
絶対に負けない強い意志と、恐れず立ち向かう勇気と共に!

耐えきって大魔王に接近したらUC奥の手を使用
万全の状態でも代償の大きなこの力、放てば無事では済まさないでしょう…
ですが、今こそこの力を使う時!
大魔王よ!光になれぇぇぇぇ!!



 オブリビオンとは過去の残骸、存在するだけで世界を破滅へ追いやるもの。
 世界そのものを喰らうと豪語する希望の刈り手、大魔王はその典型例だ。
 ……だがそうしたわかりやすい部分よりも、もっと根源的な時点において、
 ウームー・ダブルートゥはその始原、フォーミュラ足る思考回路をしていた。
 理解できないのだ。未来を勝ち取るためにいまの危険を選ぶ猟兵の思考が。
 己の命を賭けてでも勝とうとする、矛盾した行いが。
 だからこそやつは数多の傷を受け……それでもなお理解できなかった。
 ルディア・ディアマンテの意志力は、そんな疑問をさらに掻き立てることとなる。
『……知性体は生きるために何かを願い、望むもの。汝の行いは非合理的だ』
「ええ、わかっていますわそんなことは……あなたに言われるまでもない」
 ハルバードを支えに立ち上がり、ルディアは言った。
 もはやその身はあちこちを切り裂かれ無惨な有様……だがその瞳は。
「けれども。ヒトは理屈ではありません。戦いとはそういうものでしょう。
 この世界の数多の生命のため、わたくしは"いま"にすべてを賭けるのです」
『……汝には恐怖がある。名誉や称賛を望んでいるわけでもない。
 我にとってはどうでもいいことだ。だが、なぜだ? なぜまだ立てる……』
「あなたに――いいえ、わたくし自身に! 敗けたくないからですわ!!」
 ルディアは髪を振り乱し、叫んだ。その身を魔力波が吹き飛ばす。
 大魔王はさらに獣身で突進し、そのままルディアを踏み潰そうとした。
 だが! ルディアはボロボロのハルバードで、攻撃を受け止める!
『……何一つ解らぬ。汝らはなんだ? 猟兵とはそういうものなのか?』
「さあ、どうなのでしょう。ただひとつたしかなことがあるとすれば――」
 ルディアは己の裡から湧き出た不安や恐怖を押し殺し、にやりと笑った。
「わたくし、こんな有様でなお心が弾んでいますの。誇らしいですわ!
 あなたのような邪悪を、世界のために倒せる。そのために戦えるんですもの!」
 大魔王は――おそらく恐怖らしきものを抱いた。
 けして倒れず、諦めない乙女の姿に、本能的に慄いたのだ。
 その一瞬を逃さず、ルディアは己の全存在を賭けて術式を起動した。
 すべての魔力と生命力を賭けた一撃。ハルバードが黄金めいて輝く!
『己の死すら厭わぬか、猟兵――!』
「……大魔王よ! 光に、なれぇえええええっ!!」
 誇りと信念をこめた一撃が、邪悪なる肉体を光へと還元していく。
 乙女の意識は光に呑まれ白に沈んだ。だがそれでもなお彼女は笑っていた。
 悔いなき戦いを遂げ――そして己らの勝利を、心から信じていたがゆえに。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

リンセ・ノーチェ
アドリブ・連携歓迎

深呼吸
息と心を整える
イメージは僕の訪れてきた大自然

大魔王は願い・望み・祈りをその力にする…から、勝機もある

自然は願いも望みも多分祈りもせずそこに在る
そして僕の心は「この世界と皆を―」
「護れたらいいな」じゃない
「護りたい」じゃない
「護れます様に」でもない

「護る」(確信)だ
攻撃を自然の導くまま【野生の勘】で【フェイント】使い【見切り】躱す
騙したい・躱したいじゃない―ただそうなるように在るだけ
恐怖は【勇気】で勝利の確信に変える
慢心じゃなく痛みを恐れないだけ
そう、痛み苦しみも僕達への生の贈り物

「大魔王
僕達はー勝つよ」
確定の未来を宣言しそれに至る道としてのUC使い銃と杖での【二回攻撃】


尾守・夜野
「強化?そんなもん知るか!」
強化されるなら…それを剥ぎ取るまで
…なお俺の場合、過去に村が俺を残して全滅した関係上根底にある望みは自滅願望
まぁ…皆の代わりに生きてる関係上自殺とかまでは考えてないレベルだが
なそれを写して…果たして強化になるのか不明だが…
死ぬまで死ねないみたいな感じだから…防御とか上がってると予想
なら別に攻撃は避けられるレベルだろうから初撃は見てかわす

その上で攻撃し、強化解除弱体化が入ったのを確認した上で

「何度願いを写し取ろうと無駄だ!」
先よりも鈍くなった攻撃、柔くなった防御を潜り抜け
「首をおいていけ!」
…敵に対して思うのは罪滅ぼし
願いや夢とかいうのとはまるで正反対のそれ


篝・倫太郎
ふぅん?
願い、望み、祈り……
それらを砕いた先にある、諦念や絶望や悲観……
そんなモンが大好きだよな、この手のは

実際のとこ、勝つか負けるか、だけだろ
勝ちたい、でも、勝たなきゃなんねぇ、でもねぇ
強い方が勝つ
それだけが純然たる事実

先制対応
先に述べた心情を元に戦闘に集中
攻撃は見切りと残像で回避

俺には出来る事しか出来ない
これまでの積み重ねは思考の範囲外にあって経験が身体を動かす
そうであることを俺は『知って』いればいい
そこに願いも望みも祈りも不要

先制攻撃対応後は篝火を攻撃強化に使用
華焔刀でなぎ払い
刃先返しての2回攻撃
攻撃には破魔と鎧無視攻撃を常時乗せてく

例えば
これで倒れるなら俺が弱い、それだけの話……だろ?


虎熊・月霞
願えば願う程、希望を持てば持つほどそれを喰らって強くなる――正しく魔王だねぇ。……喰らえる量に際限はあるのかなぁ?まぁどれだけ食べられようと、希望って言うものは心の奥から幾らでも湧き上がってくるものだよ。これは根競べ勝負になりそうだねぇ。

対策としては
攻撃重視なら正面から受けない様に
防御重視なら同じ箇所を削る様に
状態異常重視なら回避優先で避ける様に
かなぁ?まぁ先制でバフだと止めるのは難しいねぇ

かなりの強敵だけど、たとえ倒れても後に続き人がきっといる。僕は人の心を信じる、だから刀を振り続けるよぉ。たとえどちらも折れてしまったとしてもねぇ。
……何だか柄じゃないけど、まぁたまにはねぇ。

アレンジ・共闘可


アリス・レヴェリー
どの形態よりも落ち着いた感じなのに、感じる力は凄まじいわ
きっとその攻撃は誰よりも苛烈なものなのでしょうね

まずは『刻命の懐中時計』の結界全てを多重にわたしの周囲に展開。各形態を押し留めてきたとはいえ、長くは保たない覚悟でその隙にお友達と魂を重ねる

……きっとわたし一人だったら、求めてしまったでしょう。でも大切なお友達がいるの
誇り高い力を貸してくれる金の獅子が、数え切れない叡智を与えてくれる純白の大鯨が、優しく導いてくれる星の大鷲が、わたしと一緒にいてくれる

これは願いでも望みでも祈りでもない、わたしの決意と希望。彼らとの【褪せぬ約束】

炎を、大地を、風を、水を、全てを束ねた星の息吹をお見舞いするわ


カイム・クローバー
へぇ、魔王様だっつーからどんな見た目の化け物かと思っていたが。なかなかのイケメンぶりじゃないか。…俺には劣るがな

人の『想い』が好物か?悪食ぶりは健在のようだ。メシの趣味は合いそうにねぇな。
動きを【見切り】、危機感知の【第六感】と【残像】を用いて躱していく。機動力が上がる訳じゃねぇのが救い。動きを視界に捉え、二丁銃での距離を保った戦いをしながら中心の水晶狙い。…それでも獣の四足相手じゃ不利はある。が、此処まで【フェイント】。
動きを見切った上でワザと攻撃を喰らって瀕死状態に。…UC発動だ。魔剣を携えた巨人の【二回攻撃】、黒銀の炎の【属性攻撃】、【範囲攻撃】。
怪獣大決戦さ。特等席で見物させて貰うぜ



 我が滅ぶ? 斯様に脆弱な知性体どもに追い詰められて?
 ……認めぬ。そもそもあり得ぬ。我が喰らうべき贄に滅ぼされるなど。
 足りぬならば我はさらに喰らおう。
 願いを。
 望みを。
 祈りを。
 喰らい尽くして己を強め、愚かな知性体どもを薙ぎ払ってくれよう。
 我は捕食者。
 我は世界を喰らうもの。
 我は"大魔王"と呼ばれるもの。
 さあ敵対者よ。願え。祈れ。望め。我が糧を差し出せ。
 喰らわせろ――もっとだ。もっと。もっと!!

「おいおいおい、イケメンぶりが台無しじゃねえか! 俺に嫉妬したか?」
「そんな冗談言ってる場合じゃないだろ――来るぜ!!」
 尾守・夜野の警告に従い、カイム・クローバーはバックステップした。
 直後、さきほどまでふたりが立っていた場所が、爆ぜて砕けた。
 火山の噴火が起きたような激烈な破壊。それは大魔王がもたらしたものだ。
 あらゆる望みを喰らい、祈りを纏い。願いを糧として己を強化した獣。
 双眸を燃えるほどに輝かせ白い獣じみた息を吐き出すさまは、まさに怪物。
 その身に刻まれたおびただしい傷跡が、あれの苦戦ぶりを知らせている。
「追い詰められて理性を投げ出したかよ。……厄介だな」
「躊躇がなくなったっていうことだからね。もともとしてなさそうだけど」
 篝・倫太郎の言葉に、リンセ・ノーチェがそう言って頷いた。
 戦闘開始時に見せていた超越者めいたこの世ならざる余裕はもはやなく、
 ゆえにかえって恐ろしい……追い詰められた獣ほど厄介なものはないからだ。
 先の攻撃こそ大ぶりであったからこそかろうじて見切れたが、
 あれが全力とは思えない。倫太郎は敵の動きに全神経を注ぎ集中しながら、
 こめかみをこぼれ落ちた冷や汗を拭う。こればかりは本当の修羅場だ。
「あっちが斃れるのが先か、こっちが全滅するのが先か。根比べ勝負だねぇ。
 しかも僕らが生存を願えば願うほどあっちは強くなる……うーん、理不尽だ」
「……最初よりも、感じる力の凄まじさが増しているわ……まるで嵐のよう。
 あの第二形態よりもずっと烈しくて、あんなもの絶対に喰らいたくないわね」
 虎熊・月霞はおっとりとした様子で言い、アリス・レヴェリーが顔を顰める。
 ごまかしようのない強敵。ふたりとも腕利きだからこそそれがはっきりわかる。
 武術を究めた達人は、相対しただけで互いの力量を測り勝敗を悟るという。
 存在格からして強大な存在との戦いは、もはやその時点から始まっているのだ。
 心弱き者は戦いが始まる前に心折れて降伏する。
 いまこうして大魔王の暴威に抗っている時点で、彼女らは一流と言えよう。
「ならどうする。どうか一思いに食べてくださいって頭を下げてみるかい」
「……それこそ笑えないジョークだな。敗けるよりも悪い」
 倫太郎が言えば、カイムはそうだろ? と肩をすくめてみせた。
 戦うしかない。彼らはそのためにここへ来た。そして、勝つために。
 敗けるためでも、死ぬためでもない。未来を勝ち取り進むために。
「ようはあの強化能力を剥げばいいんだ。それなら俺にいい手がある」
「なら、僕がその隙を作ろうか。……そういうの、柄じゃないんだけどねぇ」
 月霞はあっけらかんとした様子で言って、無造作に一歩踏み出した。
 大魔王が自動的に反応し、筆舌に尽くしがたい殺気を月霞へと注ぐ。
 笑みがひきつる。やれやれとため息をついて、月霞は己の心身を死地に置いた。
「底なしの食欲ってどういう気分なんだろうねぇ? 満たされないんだろう?
 ……僕はちょっとキミを哀れに思うよ。でもまぁ、敗けられないからさぁ」
『……とことん理解できぬ。汝らのその非合理的な思考、死を願う心が』
「いや? 僕らは死にたいわけじゃないさ。むしろ逆なんだよねぇ」
 野太刀の柄を握り、月霞は深く――深く深く腰を落とした。
「僕は人の心を信じる。だから刀を振り続けるよ。ただ、それだけさ」
 そして同時に、彼女の姿は一陣の紫電と化して戦場を駆け抜けた。
 音さえも後に置く、光にすら手が届くであろう稲妻じみた雷速の一撃。
 並のオブリビオンであれば、この初太刀でケリがつく。
 ゆえに彼女は日頃、手間を疎んで一撃必殺で勝負を決めようとする。
 この太刀は違う。これはあれには通じまい――それが皮膚感覚でわかる。
 だが、それでいい。刹那の如き一瞬であれ、やつの隙を作れるなら。
 刃のごとくにこの生命を細く鋭くしなやかに研ぎ澄ませ、斬り捨てよう!
『ならば斃れよ。汝の願い、もはや我は食らい尽くしたり……!』
「それは――どうかなッ!」
 ざんっ!!
 空間をも断ち切るほどの斬撃が駆け抜け、大魔王の腹を裂いた。
 その負傷を厭わず、大魔王は破滅の槌めいた拳を振り下ろす。
 月霞は避けない。被弾を覚悟でその場で体を反転させ、さらに一撃!
『……!!!?』
 大魔王の攻撃は、それよりも先に届くはずだった。
 誰もがそう思っていた。だが現実は、月霞の一閃が先を行った!
『あり得ぬ……!!』
「……ッ」
 攻撃を受けた月霞は血を噴き出しながら吹き飛び、壁に背を打ち付けた。
 そこへ飛来する弾丸! カイムの魔銃から放たれた不意打ちの射撃だ!
「けどこのくらいは弾ける――そうだよな?」
 大魔王が腕の負傷を覚悟で弾丸を薙ぎ払った時、カイムは懐にいた。
 月霞の生み出した隙を次へ繋ぐため。彼は魔剣を――否、大魔王が疾い。
『次から次へと。自ら死を選ぶ愚行。度し難し!』
「だったらさっさと死んでくれよ。正直気が気じゃないんでね!」
 斃れるカイムと入れ替わりに、ついに夜野が大魔王の虚を突いた。
 大魔王はその夜野の願いを喰らい速度を得ようとする――だが、出来ぬ。
 彼の根底にあるのは一種の自滅願望。己の罪に対する贖いを求める弱さだ。
 死ぬべきときまで死ねないという執念は、願いでも祈りでもない。
 そしてふたりの犠牲の上に得た好機を夜野は見事に掴んだのである!
「恨みの連鎖なんて断ち切らせるものかよ。尽きるまで付き合ってもらうぞ!」
『我を、呪うか!』
「何度願いを写し取ろうったって、無駄さ……!」
 呪われた刃が刻み込んだ呪詛は傷口から大魔王を侵し、弱らせる。
 その身に宿した膨大な魔力が、まるで穴の空いた風船のように抜けていく!

 だが愚かなり。知性体どもよ、我はあらゆる望みを喰らう。
 汝らが我に挑むならば、すなわちその意気が我が活力となるのだ。
 ……そのはずだった。だが大魔王は、あるべき活力がないことを訝しんだ。
 来る影は三つ。倫太郎、リンセ、そしてアリス。
 その三者の誰もが、大魔王が喰らうべき望みを宿していなかったのだ。
 ならば彼らは知性を獣めいて堕し、無心で食らいついたか?
 否。それでは大魔王のそもそもの強大さを抜けることが出来ぬ。
 ならば彼らは神仙のように心を封じ、無我の境地に至ったか?
 それも否。彼らは腕利きではあるが、そこまで俗世を離れてはいない。
 ではなぜか――倫太郎の心にあったのは、義憤でも殺意でもない。
(俺には出来ることしか出来ねぇ。だから、やるだけだ)
 強い者が勝つ。弱い者は死ぬ。
 世界がどうだのは"後付"だ。戦場においてはそれが真理だ。
 彼はそれを自覚している。シンプルな摂理は時として助けとなる。
 たとえばこんな時――死を厭わぬ一撃を叩き込むような時には。
 だから彼の心は冷えていた。敗けるなら、所詮"それだけの話"だからだ。
 彼ひとりであれば届かなかっただろう。しかし、活路を開いた者達がいる。
 そしてアリスの胸に満ちていたのは、信頼と決意、褪せぬ約束への思い。
 結界の内側に現れた幻の獣達と魂を重ね、その力を得て龍身へと至る。
(((――どこまでも共に。たとえ死地であろうと、どこまでも)))
 誰にも穢せぬ約束と、寄り添ってくれる友らの存在が彼女を支えていた。
 星空のような翼をはためかせ、光のように疾く翔ぶ。
 己は一人ではない。友と、同じように戦う猟兵達がここにいる。
 ならば怖れも願いもない――ただ、まっすぐに翔べばいいのだから。

 大魔王はそれでもなお、彼らを阻もうと攻撃を繰り出した。
 これを撃ち落とし、続く一撃を躱したのはリンセだった。
 自然を、世界を護る。そのために戦う。リンセの根幹はそうしたものだ。
 護りたい、という願いではない。
 護れればいい、という希望でもない。
 護れますように、という祈りでもない。
「大魔王。僕達は――勝つよ」
 何があろうと守り抜く。決意と似ているようで異なる一つの確信。
 そこには少なからぬ大魔王の糧もあったが、あまりにも足りなかった。
 もしも彼がたったひとりで無謀な戦いを挑んでいたらどうだったろう?
 無駄な過程だ。彼は戦狂いでもなければ、死にたがりでもない。
 だからこそ彼は仲間の力を借りる。肩を並べ、心を同じくし、戦える。
 枯れることなき守護の決意は、ありえないはずの現実を彼にもたらす。
 ――すなわち。リンセの銃撃が大魔王の障壁を切り裂き、胸部を貫いたのだ!
『勝つ、だと? 知性体が。贄どもが。我に?』
「そのために僕らは来た。だから君は敗けるのさ。当然のように」
 リンセの言葉に遅れて、まず炎を纏う風の如き刃がさらに肉体を裂いた。
 倫太郎の振るう剣に、余計な感傷は一切ない。まるで獣の牙のようだ。
 あるいは風に揺られ吹雪に晒されながらも燃え上がる、気高き篝火か。
「お前がただの獣のようなモノだったなら、わかんなかったけどな」
『『『――星の息吹、おみまいしてあげるわ。喰らいなさい……!!』』』
 そして幻獣の力を得たアリスのブレスが、大魔王の巨体を呑み込んだ!
 かりそめの望みを剥ぎ取り、願いの鎧を融かし、祈りの刃を砕く!
 慄く大魔王の視界を覆うもの――それは、なおも巨大なる炎獄の魔神。
 灼熱の国を支配せし巨人の幻影。カイムがその生命を代価に生み出すモノ。
 大魔王の血走った目が、倒れたはずの男を見た。
 血まみれの色男はにやりと笑い、これみよがしに中指を立ててみせる。
 "特等席で見物させてもらうぜ。せいぜい抗ってみろ"。
 その皮肉に大魔王が何かを云うより先に――黒銀の魔剣が振り下ろされた。
 床を、天井を、壁を吹き飛ばし、巨人の一撃が猟兵達の後を追う。
 意地と決意と信念と、研ぎ澄まされた刃が切り裂いたその間隙を!
「あいにく僕らは、痛みや苦しみだって受け止めることが出来るのさ。
 だってそれは、いまを生きる僕らへの贈り物なんだから――」
 リンセの言葉は、大魔王に送る惜別めいていた。
 自然の守護者は破壊者に容赦しない。だがそこには憎しみもない。
 異色の瞳は、燃えて斬られる巨体を、ただ見つめ続ける――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

煌天宮・サリエス
若返り。権力者が知れば求めそうなものでありますが……少々物騒すぎますね。

萌ゆる大地の書と銀薔薇の薙刀の併用。
魔導書を地と見立てて薔薇を生み出す。
そして、生み出された薔薇は私の手であり、足であり、目である。
薔薇は迷路を解くため蔓を伸ばし、繭に触れないよう私を運び迷路を踏破する。
ここが地下迷宮である以上、大地の生命力をどこからでも引き出せ魔力に変換することができる。

大魔王から直接攻撃が来たら光の盾と余裕があれば薔薇の蔓で防ぎます。
踏破すれば恐れるモノはない。魔薬【英雄幻視】とUCを使う。
薔薇による拘束と生命力吸収。そして、薬と神代の怪物の力を宿すことで得た純粋な暴力をもって大魔王を討つ。


ソナタ・アーティライエ
あれが最終形態……真の大魔王とでも呼ぶべきでしょうか
神々しさすら感じさせる威容に心挫けそうになりながらも
なけなしの[勇気]をもって己を[鼓舞]し、立ち向かいます!

迷宮がどのような性質を持つものか分かりませんけれど
このまま進むのは危険だと、胸の内で騒ぐもの[第六感]があります
迷宮に触れないように、自身を守るようにと重ねる形で
【天の回廊】によって新たな迷宮を作り出しましょう
空間の断絶を足場や壁とし、入れ替えを駆使し
叶うのならば新たな道を上書きして、短時間で踏破を狙います

大魔王の許へたどり着けましたら
入れ替えによって背後の死角へ転移
一瞬の隙をついて、断絶を刃として大魔王の背に向けて攻撃を放ちます


ハロ・シエラ
今まででも十分恐ろしかったですが、この姿にはまた格別な脅威を感じます。
それこそ神に挑むような……でも、戦います。

まずは迷路ですね。
【第六感】によって方向と触れてはいけない部分を感知しながら進みます。
可能であれば【破魔】の力を乗せた炎の【属性攻撃】やユーベルコードで繭を焼き払いながら。
特に床などが繭で出来ていたら回避が難しいので。
もし私が若返ってしまったら、他の方よりも先に戦闘不能になってしまいそうなので狭い所などは注意しなければ。
出口は一つなので辿り着いても敵が待ち構えているでしょう。
一旦【残像】で【フェイント】をかけ、攻撃をやり過ごしてから、【全力魔法】のユーベルコードで攻撃を加えましょう。


パーム・アンテルシオ
私には、祈る資格なんてない。
私には、望む資格なんてない。
私には…願う資格なんてない。
だから、そんなもの…私の中には無い。
無ければ、ダメなんだよ。そうじゃないといけない。

けれど…本当に。欠片でも。それがまだ、私の中にあるのなら…
いいよ。全部、食べちゃって。一欠片も残さずに。
私には、そんなもの、必要ないから。
私の中には、在っちゃいけないものだから。

九ツ不思議…土蜘蛛。
それじゃあ、比べてみようよ。
私の中にあった…あるかもしれない、ソレと…
この迷宮の中に満ちた。満ちていた。あなた達が作り出した、絶望と。
どっちが強いか。私も、知りたいな。

…希望が人間を形作る。それじゃあ…
わかるのかな。この戦いで。私は…



『……傷を……癒やさねばならぬ』
 大魔王は、さらに来る猟兵どもの気配をいくつも感知している。
 そしてその身は重体。いつ滅んでもおかしくないほどの傷を負っていた。
 己が、奪い喰らう以外の行動を強要される――それが屈辱をもたらす。
 屈辱。怒り。殺意。そんなものは本来大魔王に必要ないものだ。
 ただあるがままに奪い、喰らい、貪るだけの白痴たる怪物には。
 皮肉なことに、封印を解き放つために得た知性が、不要な感情を与えた。
 その事実がさらに大魔王を苛立たせ、苛立ちがさらに苛立ちを生む。
 悪循環だ。大魔王は獣じみて唸りながら、術式を発動した。
 己の傷を癒やすゆりかごであり、敵対者を退行させ捕らえるもの。
 時を遡る繭が眠る迷宮結界――希望を刈り取るための箱庭を。

 だがヤツにとっては残念なことに、悠々と回復する隙は与えられなかった。
 まず最初に、迷宮そのものを上書きしようとする気配を感じたからだ。
 それを許容する大魔王ではない。気配の大元へとすさまじい速度で進んだ。
 壁をぶち抜き、怒りの雄叫びをあげながら、背後より襲いかかる。
 その術者――ソナタ・アーティライエは、突然のことに虚を突かれた。
 迷宮の権能を警戒し、むやみに探索せず対抗しようとした判断は正しい。
 しかし大魔王の腹の中とでも言うべき迷宮で、ユーベルコード発動の暇はない。
 ゆえにこうして先制攻撃を受ける。敵はだからこそ強大なのだ。
 気配を察知されたことが彼女の不運。そして幸運だったのは……。
「大魔王とも仇なされるものが、ずいぶんな慌てようですね?」
「……もはや背後からの不意打ちも厭いませんか。哀れな」
 煌天宮・サリエスとハロ・シエラが、迷宮の中にいたことだろう。
 サリエスはその銀刃から生み出した薔薇を伝わせることで、
 ハロは破魔の炎によって不気味な繭を焼き払うことで、かろうじて間に合った。
 ふたつの刃が大魔王の鉤爪じみた腕を寸前でせき止め、押し留めている。
『……邪魔を、するな……!!』
「お断りします。ここは大地の底、私にとってはいくらでも魔力が得られますから」
 サリエスは薄く笑いながらさらなる薔薇を生み出し、大魔王を拘束しようとする。
 とはいえ、やすやすと捕まってくれるほど大魔王は生ぬるい相手ではない。
 魔力波が薔薇の蔦を薙ぎ払い、斬りかかったハロの刃と炎を防ぐ。
 しかしそこに隙が生まれる。ソナタがユーベルコードを発動する隙が!
「迷える子羊、導く御手――もはやこの迷宮は、わたし達を脅かしません!」
『汝……! 我が迷宮を上書きするなど。よくもやってくれた!』
 怒りの形相を浮かべ大魔王は魔力を放つが、ソナタには届かない。
 今のこの空間は彼女のもの。空間を支配し、自在に入れ替えられる。
 空間そのものを断絶させることで致命的な魔力波を防ぎ、下がることも。
 彼女はそのまま背後に回り込んでの不意打ちを検討し、棄却した。
 あの様子から見て、大魔王は多少の不利を無視してでも己を狙うだろう。
 そうなれば死ぬ……それは怖くない。恐怖を超える勇気がある。
 彼女が状況判断したのは、すべてこの強敵に勝つためのこと。
 一度己の窮地を救われたならば、この力を以て仲間の後押しをすべし!
「もはや恐れるものはありませんね。獅子の座の力よ、ここに――!」
 続けざまにサリエスは獅子宮の力を己に宿し、獅子の如き咆哮をあげた。
 先ほどの倍近い速度の疾走、そして斬撃! 大魔王の体に新たな剣傷!
『ぬう……!』
 怯む大魔王、しかし絶えず絡みつく薔薇の蔦と空間の袋小路が回避を許さない。
 大魔王は双眸を燃えるほどに輝かせ、願いを喰らい己の力とした!
『汝らの希望は我が糧なり。我は不滅なり!!』
「……!(まさに神の如き威圧感……けれど)」
 怯みかけた心を奮い立たせ、ハロは己の内側からさらなる魔力を汲み上げる。
 炎が白熱して燃え上がり、あらゆる邪気を払う破魔の力を生み出した。
「私はもはや恐れません。あなたを斃し、平和を勝ち取ります!」
『不可能だ! 世界は我が喰らうためにこそあるッ!!』
 大魔王の魔力障壁が、破魔の炎を――防げない! 炎が凌駕する!
 文字通りこじ開けた間隙をハロの刃が伝い、肉を、そして骨を断つ!
『まだだ、まだ……!!』
「――そんなに、希望を食べたいの?」
 背後からした声に、大魔王は弾かれたように振り向いた。
 そこにはいつの間に居たのか、パーム・アンテルシオが立っている。
 幼気な少女はしかし、けして少女らしからぬ表情を浮かべていた。
 諦観のようにも、絶望のようにも見える――しかし異なる面持ちを。
「いいよ。そんなにほしいなら、私の望みを全部食べちゃって」
『……なんだと?』
「私にそんな資格はない。だから、私にそんなものは必要ない」
 大魔王は訝しみ――しかし選択肢はなく、新たにパームの願いを喰らった。
 少女の祈り。希望。それは大魔王にとっては美味たるものだった。
 捻じくれた感情。あってはならないものを封じ込めようとするからこそ。
「美味しい? ――なら、私の"ソレ"と、比べてみようよ」
 見よ。パームの背後、影から現れたもの。それは見上げるほどの巨大な蜘蛛。
 いくつもの骸骨を体に浮かべた呪わしき土蜘蛛が鋏角を鳴らす。
『……なんだ、それは』
「あなたと同じものだよ。魂を、絶望を、残骸を喰らうもの」
 土蜘蛛が吠える。大魔王は牙を防ごうとした……だが、出来ぬ。
 薔薇の蔦が、見えざる空間の断裂が、その身を拘束し、破魔の炎が灼く!
 そして蜘蛛は喰らう。世界を奪い喰らうはずのものを、獰猛に。
 そのさまを淡々とした面持ちで見つめながら、パームは思った。
 ハロも、サリエスも、ソナタも、その不思議な威圧感に呑まれた。
「……私には、祈りも希望も願いも、あってはいけないんだから」
 それは己を雁字搦めに縛り付ける少女の吐露。
 希望がヒトの証明であるならば、パームはその存在を否定する。
 それで魔を討てるならば。彼女にとっては、喜ぶべきことだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

死之宮・謡
アドリブ歓迎

良いな…嗚呼、とても良い悪意だ…
心地好くも不快な…
何も願わぬし望まぬし祈らぬよ…
唯、私は証明しよう…
なぁ同輩よ…簡単な話だろう?
どちらが上か…唯それだけの話だ…


・SPD
私は何も恐れない
遮断の「呪詛」を籠めた黒霧(属性攻撃:水)を展開して先ずは奴等の初撃を回避
後の反動など考えず【天世界】発動
破滅の「呪詛」と「破魔」…矛盾の籠った闇呪宝玉を大槍にして黒炎(呪詛・属性攻撃・全力魔法)と共に突貫
相手の攻撃は重いものだけ「見切って」回避し受けたダメージは「生命力吸収」で回復
敵対者は「なぎ払い」ながらひたすら前に前に…

戦闘終了後は其処らに寝転んで反動からの再生を待つ



 死之宮・謡という存在には、あまりにも欠如したものが多い。
 人間らしい感情の数々は抜け落ち、そのひとつが"恐怖"だった。
 恐れないだとか、勇気を振り絞るという話ではない。
 恐怖"出来ない"のだ。それはある意味で利点であり欠陥とも言える。
 此度はどちらか――少なくとも彼女にとっては利点だっただろう。
 なにせ恐るべき敵の群れと、心ゆくまで殺し合えたのだから。

 第一形態、アウルム・アンティーカ。
 第二形態、レオ・レガリス。
 第三形態、セレブラム・オルクス。
 第四形態、ラクリマ・セクスアリス。
 第五形態、モルトゥス・ドミヌス。
 これまで猟兵達を阻んだ大魔王の各形態、すべて。
 それらが同時に出現し、謡を切り裂き打ちのめし呪い融かし叩き砕いた。
 常人なら……いや並の猟兵ならば一度ごとに死んでいるだろう。
 だがそれを浴びてなお、謡は楽しげに笑いながら叫んだ。
「ははは。はははははは! いいな、とてもいい悪意だ! それで終わりか!?」
 黒炎が大魔王どもを焦がす。謡の体すらも。
 焔の地獄と化した戦場を縦横無尽に駆け抜け、謡は嗤いながら敵を引き裂く。
 その身を追い込まれれば追い込まれるほど、
 傷つけられれば傷つけられるほど、
 "超越"の術式がもたらす力は強まる。謡はどこまでも戦える。
「どうした。もっと私を追い詰めてみせろ。私が敗者だと引き倒してみせろ!
 だが私は認めん! 貴様らが下だ。勝利すべきは私だ! 私だけだ!!」
『――愚かなり。願わず、呪わず、祈りもせず、死地を求めるか』
「愚か? 愚かだと? 語るに落ちたな同輩よ。知性を得た結果がそれか?
 私は認めぬ。私以外の者が上に君臨する世界など。そんなものは――」
 黄金の頭部を叩き潰し、謡がヒトならざる笑みを浮かべる。
「貴様が滅ぼす前に、私が滅ぼしてやる」
『…………ならばたどり着いてみせよ。我が前に』
「無論だとも! さあ、続きだ。すべてすべてすべて、叩き潰す!!」
 哄笑と破砕音だけが、響き続けた。
 前へ進む。ただ前へ。己以外の存在を足元へ這いつくばらせるために。
 その反動がその身を捉え地に引きずり下ろすまで、謡は前に進み続けた。
 大魔王は理解できぬ。その有様はあまりにも破滅的だ。
 世界を喰らうものにすら、その餓えと底なしの欲求は受け入れられぬ。
「……やはり貴様が下だ。期待外れだよ、同輩」
『……!!』
 そして傲慢なる女の一撃は、ついに大魔王に届く。
 無数の屍を越え、彼女なそのエゴを世界に示してみせたのである。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ナミル・タグイール
またお願い聞いてくれるにゃ?…今度は急に吹っ飛ばしたりしないにゃ?
金ぴかいっぱい欲しいデスにゃー!!

願ったんだから叶えろにゃ!金ぴか寄越せにゃー!
攻撃は斧で迎え撃つ【捨て身】
こっちだって【呪詛】で斧とパワーを強化してなんとか頑張るにゃ!どっかんにゃー!【怪力】

願い叶えてくれないにゃ?魔王のくせにケチにゃ!
願いも叶えて身に付けてる金ぴかアクセも寄越せにゃー!
欲望のままに金ぴかに飛び込むにゃ!
斧でザックリ…を囮にして体を金ぴか爪でザックリしてやるにゃ!
ナミルのお願いがつまった金ぴか爪にゃ!良いことが起こるはずデスにゃ!
ちょっとでもかすれば発動するからあとは【野生の勘】でなんとか逃げるにゃー!



「ぐにゃーっ!!」
 ボロ雑巾めいた有様のナミル・タグイールが地面を転がる。
 見下ろす大魔王の眼差しは冷ややかだ。どこまでも無感情だった。
「な、なんでデスにゃー! 願ったんだから叶えろにゃー!!」
『……汝はなんだ? 我を願望器か何かと勘違いしているのか』
「にゃ!? 金ぴかくれないんですにゃ!?」
『……もうよい。汝の願いは喰い飽きた』
 大魔王の魔力波が無慈悲にナミルを吹き飛ばす。毬めいてバウンドした。
 しかし黄金の斧を支えに立ち上がるナミルの目はぎらぎら輝いている!
「大魔王のくせにケチにゃ……! 金ぴかは全部ナミルがいただきですにゃ!!」
『…………』
 ナミルは欲望を剥き出しにする。当然、大魔王はそれを喰らい尽くす。
 しかしナミルの欲望は底なしだ。大魔王が己を強化するよりもなお!
「どっかんにゃー!!」
『獣の如きあさましさ、汝が知性体のひとつだと……?』
「ナミルバカにしましたにゃ!? 許さんにゃー!!」
 まったくふざけた、愚かと呼ぶのもためらわれる猪突猛進。
 だが見よ。大魔王の攻撃がナミルを吹き飛ばすが彼女は立ち上がる。
 そして防がれているはずの斧は、徐々に大魔王に届きつつあったのだ!
『理解出来ぬ……他の猟兵どもとは違う。だが汝をも我は理解できぬ!』
「難しいこと言ってごまかそうったってそうはいかないデスにゃー!!」
 なんだこいつは。なぜこの我が、欲望を食らい尽くせぬのだ。
 知性を得たことが仇となり、大魔王は疑問を抱いた。抱いてしまった。
 その隙を突いて、ナミルはついに黄金の爪で大魔王を引っ掻いたのだ!
『この呪詛……我を縛るか。不遜なり……!』
「動きが鈍くなったにゃ? いまにゃー!!」
 捨て身の一撃! 大魔王はナミルの命を奪うつもりで魔力を放つ。
 だがまとわりつく呪いがそうはさせぬ。斧の一撃が骨を砕いた!
『ぬう……!』
「ぐにゃあああ……戦略的撤退にゃー!!」
 大魔王が苛立ち目を血走らせたときにはもう遅い。
 ナミルは追い詰められた猫めいて(実際猫なのだが)さっさと逃げていた。
 呪いだけがあとに残される。大魔王は苦痛と屈辱に呻く……!
 ある意味で、その存在は世界を喰らうものにとっての天敵だった!

苦戦 🔵​🔴​🔴​

霑国・永一
今までの人間離れした見た目とは裏腹に、中々どうして理知的とさえ言える雰囲気だなぁ。しかし力量は本物、俺みたいな普通の男がどこまでやれるやらだ

先制攻撃で恐れるべき魔王の形態は第二で。
現実味の薄い他の魔王より、日常でも見かける分猛獣は怖いと分かりやすいからねぇ。(という建前で、実際は近接中心だろう技が対処しやすいからチョイス。本音は一人も怖くはない)
常に距離を取り、障害物や狭そうな場所を逃げ回ってなんとか時間稼ぎ。
ユーベルコード使えるようになったら、本当は怖い魔王は居ないと言って魔王全員召喚して貰おう。
そこで同時に狂気の使役発動して、召喚された魔王全てを操り、嵐の魔物へ一斉突貫さぁ。見応えあるねぇ



 大魔王は言葉などに頼ることなく、敵対者の願いや恐怖を見抜く。
 その点において、霑国・永一の立てた作戦は前提から崩れてしまっていた。
 いくら言葉で策を弄したところで、その不遜を大魔王は見抜く。
 ゆえに彼の前に現れたのは、第二形態どころの話ではなかったのだ。
『オイクソ野郎!! いつまで"俺様"に任せるつもりだァ!?』
(とは言ってもなぁ。痛いのとか俺、厭だからねぇ)
『まったくクソだな! いますぐ死んでやろうか、あぁ!?』
 別人格の罵倒も無理からぬもの。なにせ相手を押し付けられたのだ。
 五つの形態が放つ魔力・突撃・言葉……多種多様を死物狂いで躱し避け、
 ひたすらに時間を稼ぐ。当人は精神世界で見物と来ている。
(そんなのは御免だねぇ。なあに、もうすぐだよ。だから耐えてくれ)
『クソが! 逃げ回るなんざ俺様の流儀じゃねえのによぉ!!』
 いつだ。"その時"はいつ訪れる。主人格は何をしている!
 別人格の苛立ちを精神の揺らぎとして感じながら、永一は意識を集中させる。
 一瞬の間隙さえあれば、あの厄介な召喚体を"盗める"のだ。
 その欲望もまた、大魔王は見抜いている。ゆえに奴は手綱を手放さぬ。
 簡単な話だ。あとはただ、自分の別形態があれを殺すのを待てばいい。
(構えてるねぇ……けど、そういうのから盗むのが楽しいんだよなぁ)
 精神世界で、永一は鮫のような笑みを浮かべた。
 それもまた、およそヒトらしからぬ不気味な笑みだった。

『もう我慢出来ねえ! いいか、殺すぞ!? 殺す!! 死んだら恨め!!』
 ついにしびれを切らし、別人格は魔王どもの中心に飛び込んだ。
 あまりにも無謀。すべての形態の攻撃が彼を出迎え、体を引き裂く。
 もしも彼が狂気を持たねば、精神をもバラバラにされただろう。
 だが別人格は嗤う。嗤いながらめちゃくちゃに刃を振り回した。
 獣ともヒトとも異なる狂ったダンス――それが魔王に、疑念を生んだ。
(――そら、やっぱり。知性を持ったのが仇になったねぇ)
『!! 我が術式を……我が形態を、奪い取るつもりか!』
 大魔王は永一の干渉に抗う。瞬間、矛盾を起こした召喚体が消え去った。
 盗まれるぐらいならば消し去ろうというわけか。だがこれで護りはない!
『ハハハハハ! がら空きだぜクソ野郎がぁ!!』
「知ってるかい? 盗人はねぇ、フェイントだって出来るのさぁ」
 召喚体などどうでもいい。永一が狙っているものは最初からただひとつ。
 本物の強敵相手に意表を突き、その生命を盗み取ることのみ!
 狂った男の鋭き刃が、大魔王が護りを固めるより疾く肉体を斬り裂く。
 大魔王は知性を持ったことをいまほど恨んだことはあるまい。
 筆舌に尽くしがたい怒りと屈辱が、己の頭を支配したのだから――。 

苦戦 🔵​🔴​🔴​

祇条・結月
独り相撲だ、って思うことはある
猟兵をしてるのも
ほんとにしなきゃいけないことから逃げて、
……それから

つまんない事はここまで
行こうか

怖いのは第四形態
大魔王に魔女と呼ばれ、
人々に魔女って憎まれるあの人達への、「魔女」って呪い

一瞬「友達」を想起して

せめて目を逸らさない【覚悟】


二柱の魔王に囲まれても、動きを【見切り】【敵を盾にする】風に走る
……元が同じでも、今は二柱、だろ
意思疎通までカンペキって風には見えないな

もし本来は出来るんだとしても今は2人、でしょ
そこは境界
付け入る隙は、作るものだよね

……意味なんか、ない
これは僕の独りよがり
ただ今のままでは嫌だ、っていう、我儘
それでもこれが、僕の意地だから



 この行為に意味はない。
 非合理的でかつ非効率的で、戦術的な意味もほとんどない独りよがり。
 そんなことはわかっている。誰に言われるまでもない。
 当の大魔王"ら"にそれを指摘されても、祇条・結月は意志を変えなかった。
 ……もっとも、彼の恐れる大魔王が召喚された以上、
 そして彼がたしかな敵意を持ってこの戦場に降り立った以上、
 もしも後悔して許しを乞うたところで、慈悲はもたらされなかっただろうが。

 個体としての形態が滅んでも、それは大魔王の一側面でしかない。
 ゆえに召喚された"それ"――つまり第四形態、ラクリマ・セクスアリスには、
 やはり"彼女ら"……奪われ苦しめられる魔女たちが囚われていた。
『我らを相手に生き残れるつもりならば、愚かというほかない』
『然り! 我らは喰らうもの。貴様はただ奪われるのみよ!』
「――わかってるさ。でも、僕の気持ちを否定させやしない」
 矢継ぎ早の攻撃――魔力波、腕の叩きつけを回避しながら、結月は言った。
 脳神経が悲鳴を上げる。全神経と五感と第六感を敵に集中させる。
 砕け散る女どもの脳漿も、臓物も、何もかもをただ見届ける。
 覚悟が彼の体を突き動かし、数度は訪れた致命の危機を越えさせていた。
 恐怖。恐怖がある。だがそれは死ぬかもしれないという恐怖ではない。
(このままで終わるのは、厭だ。今のままだなんて、厭だ)
 脳裏によぎる見知った魔女の姿をかき消し、血反吐を吐くほど駆けた。
 そして敵の隙を突こうとして――暴威が、彼のみぞおちを突き抜ける。
「が……ッ!!」
 がんっ!! と壁に叩きつけられ、結月は苦痛と息苦しさに呻いた。
 肺のなかの空気が根こそぎ吐き出さされ、悲鳴すらあげられない。
 魔王どもが来る。己を弱者と見下ろす奴らが。奪い取るものどもが。
「…………さ、ない」
『『……?』』
「僕は……お前たちを、許さない」
 折れた肋骨の痛みに顔をしかめながら、結月は立ち上がった。
 双眸が輝く。大魔王らはなんらかの不穏な気配を察知し、素早く動いた。
 だが結月はそれよりも疾い。攻撃を"透過"し、ワイヤーを張り巡らせる!
「お前達を見過ごすなんて出来ない。これがどれだけ無意味でも」
『……これは、悪魔の権能か!』
「僕は意地を貫く。――だから、僕を見るな。ただ、滅びろ……!!」
 少年は悪魔に己の体と心を差し出し、そして封をした。
 双眸から涙の如く血を流しながら、糸の結界で大魔王を絡め取る。
 女どももろとも、タールめいた異形の巨体を引き裂く。
 声なき悲鳴はきっと耳朶にこびりついて、夜毎に思い出すだろう。
 それでもいい――ただこのまま終わらせるのは、嫌だった。
 時としてそんな子供じみた意地が、道理をひっくり返すこともある。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジャスパー・ドゥルジー
【ゲヘナの紅】で繭の迷路を燃やしながら進む
壊せなくとも触れるのを防止くらいはできるだろ
まー俺の場合適度に若返って最終的に長生きっつーのも悪くはねェけど?
わざわざ術中に嵌ってやるってェのは気に喰わねえからな

奴の禍々しいオーラに対抗する様に炎をくべる
奴が希望を糧にするなら喰らえねェほどの希望で対抗するまで
ハイパーポジティブジャスパー様にはうってつけだろォ!?
あの石ごと燃やし尽くす気で懐に飛び込むぜ

何時もの如く多少の負傷は【激痛耐性】でスルー
【かたわれ】で空を翔け距離を詰める
ナイフと炎で一撃浴びせ【生命力吸収】
とっておきの痛みを呉れたお返しだ
俺もあーげる♪



 希望。いい言葉だ。自分のためにあるような、実に前向きな言葉だ。
 ジャスパー・ドゥルジーは鼻歌を歌いながら心からそう思った。
「なァおい、これ以上うってつけな戦いがあるか? なァそうだろォ?
 ハイパーポジティブジャスパー様にかかれば、こぉんな迷路もよォ!!」
 燃えていく。
 脈打つ不気味な繭がくろぐろと燃える炎に呑まれて消えていく。
 笑っていた。ジャスパーはけらけらと、狂ったように嗤い続けていた。
 何がおかしくてそんなに嗤う。希望を抱く者はそんな顔をしない。
 そんなおぞましい笑みを浮かべて、口端を裂けそうなほど吊り上げない。
 悪魔だ。それは間違いなく、悪魔の浮かべる笑みだった。
 炎が己を焦がすのも厭わずにジャスパーは嗤う。嗤いながらすべてを燃やす。
 希望を抱く前向きな男など、どこの誰がほざいた空言か。
 ここにあるのは、ただのどうしようもなく邪悪な悪魔でしかない。

 焔の中、大魔王と悪魔は対峙する。
『……哀れなり』
「あ?」
『知性体でありながら"ならざるもの"に焦がれ、己を捻じ曲げるか。
 汝は我が贄にすらなれぬ。汝の望むモノにも、何にもなれぬのだ』
「……ハ! ハ、ハ、ハハハ!!」
 背筋を折れんばかりに反らして、ジャスパーは笑った。
 ひとしきり笑って――額に青筋を浮かべながら、両手指で口を釣り上げる。
「"そんなこたァ最初(ハナ)からワカってんだよ"」
『…………』
「食わず嫌いはよォ! よくないぜ大魔王サマァ!?」
 ばさりと偽りの翼をはためかせ、愚かな悪魔もどきが空を駆けた。
 大魔王は手を上げ、下ろす。それだけで獲物未満の男は死ぬ。
 ――はず、だった。地に打ちのめされたもどきはしかし、死んでいない。
『何』
「痛ェエー!! ハハハハ!!」
 笑っていた。大魔王はもう一度見えざる槌を落とした。
 骨が砕ける。手足をあべこべに曲げながら、男はやはり笑っていた。
「でもざァんねん。俺は死なないんだァ」
『――バカな』
「痛い痛い痛い痛い痛ェ痛ェ!! だーかーらァ!!」
 一瞬のうちに、悪魔もどきが目の前にいる。
 "もどき"? なるほどたしかにそれは悪魔ではない。
 悪魔に焦がれてそうなろうとした人間の成れの果て。人でなし。
 ……だがもしかすると、その男は、
「俺もあーげる♪」
『……ッ!!』
 悪魔よりも恐ろしい、形容しがたいナニかなのかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔴​

マレーク・グランシャール
【神竜】篝(f20484)と

迷路の突破(敵ユーベルコードの打破)を最優先
幼児になってしまったが浮遊出来る篝に抱いて貰い移動
母の胸とはこのようなものか
まるで子供になった気分だ

幸い迷路の出口は一つ
そして槍が使えずとも俺にはユーベルコードがある
『金月藤門』の効果で敵の目を欺いて移動、『泉照焔』で攻撃を見切って回避
それでも駄目なら【蒼炎氷樹】で敵の動きを一時停止
その隙に素早くすり抜ける

迷路を抜ければ大人に戻るだろう
その時こそ俺の魔王殺しの槍が唸るとき
我が心に燃える蒼い炎よ、今一度凍気で焼け
動きを止めたら篝が召喚する俺の分身に紛れて意表を突いてランスチャージ
羽の一枚くらいは付け根から骨ごと砕かせて貰うぞ


照宮・篝
【神竜】まる(f09171)と

白き躰……
全てを受け容れ染まる無垢の色でありながら、
逆に全てを飲み込む光の色でもある
私も受容の女神ではあるけれど……
君のようになるには、染まり過ぎてしまったのかも知れないな

繭に捕われたまるが、小さな子供に…!
小さなまるも愛らしくて、なお愛おし…いや、今はそれどころでは!
私の竜、どうか道を開いてくれ(【黒竜鈴慕】)
繭の糸に触れないよう、まるを抱えて【黒虎轟】に乗り、空中浮遊して脱出を目指そう
出口は…私自身が標の焔だ
【退魔水晶】で糸を灼きながら、【泉照魂籠】で路を照らし出口を目指すぞ
この繭から脱出さえできれば…!

産み直し、か
…産まれ直しても、私はまるを愛するよ、必ずだ



 不気味に脈打つ繭の呪いが、マレーク・グランシャールを絡め取った。
 かろうじて解放された龍の姿は……あどけない幼子のそれである。
「なんと! まるが、小さな子供に……!」
 照宮・篝は思わず快哉めいた黄色い声をあげかけたが、自制する。
 絶えずふたりを包む大魔王のプレッシャーが、そんな気の緩みを許さぬ。
 彼女は女神だ。だからこそ、ヒトの軛を越えたモノの本質を理解する。
 すべてを喰らうもの。
 すべてを受容するもの。
 他者を己のものとするという意味では、ある意味でそれらは似通っている。
 だからこそシンパシーがあり、そして相容れない部分があった。
 大魔王もおそらくそうだろう。ゆえに注がれるものは強い、強い強い敵意だ。
「すまない、篝。俺を抱えてくれないか」
「も、もちろんだ。……黒虎轟、私達を運んでくれ!」
 一刻も早く出口を目指そうとふたりは迷宮を駆け抜けた。
 ――その程度のことは、当然あちらも読んでいる。
 仁王立ちする大魔王の視界に二人が現れ、交錯したのはすぐの話。
「……!! 私の龍よ……!」
 致命の危険を察知した篝は、即座に片角の黒曜飢龍を召喚した。
 大魔王は無慈悲に膨大な魔力を纏い、軍馬じみた吶喊でこれを踏み潰す。
 龍の槍が、雷がその身を傷つけるが、その程度は厭わぬか。
 それだけ追い詰められているという証――だが、それゆえに危険!
「篝を傷つけさせはせん……!」
 子供の姿であろうと、マレークのユーベルコードは十分な力を持つ。
 女神もろともその体を薙ぎ払おうとした大魔王の腕が、蒼炎に止められた。
 血走った双眸がふたりを睨めつける。底冷えするような凝視。
『我が糧となれ。猟兵よ!』
「……あいにくだが、私はもうまるのものだ」
「オブリビオンの戯言に耳を貸すつもりはない。退け」
 ふたりの拒絶の意志は槍となって大魔王を串刺しにし、退かせる。
 蒼炎は飛び散った血を伝って繭を壁を灼き、脱出すべき出口を見出した。
「この迷宮から出られさえすれば……まる!」
 篝は己の身を厭わず、両手を伸ばしてマレークの体を差し出した。
 迷宮の外へ。瞬間、呪いは解けマレークは本来の長身を取り戻す。
 大魔王が背後から迫る。己を厭わず子の安寧を願うは、まさに母の本能か。
 その暖かさに懐旧めいたものを抱かぬ龍ではない。
 しかし彼女は、護るべき妻だ。マレークの双眸が蒼く燃える!
「俺の蒼き炎は、他のものとはわけが違うぞ」
『……なおも我を縛るか、忌々しい……!』
「その程度で済ますものか。大魔王よ、その羽、貰い受ける」
 韋駄天の如く、マレークが駆けた。
 さらなる無数の龍が召喚されその身を覆い隠し、大魔王の肉体に喰らいつく。
 薙ぎ払う。消し去る。しかしそこに間隙がある。
 篝の掲げた水晶の輝きをなぞるように、マレークは己の槍を振るった。
 鋼のごとき大魔王の筋肉をぶちぶちと切り裂き、強靭なる翅を食いちぎるように!
『我が……喰われる、だと!?』
「奪い取られた気分はどうだ。これから何度でも味わうことになるぞ」
 分身たる龍たちを従え、マレークは凄絶な殺気を放ち傲然と言う。
 血を流す大魔王は傷口を抑えながら、射殺すばかりに睨み返した。
 その後ろに守られる篝は、水晶の輝きを絶やすことなく男の背中を見つめる。
 そこにあるのは願いでも祈りでも望みでもない。
 かけがえのない男に与えられる――惜しみなく、尽きることのない愛だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ワズラ・ウルスラグナ
嵐の魔物、いや魔王か。
奇しくも俺の愛剣の名も嵐。これは滾ると言うものよ。
さあ咆えろサルヴァ! 開戦だ!

先手対策は何よりも準備だ
戦獄の焔で武器・防具改造を施し、初手を受け切る為に剣・翼・尾を盾とする
ユーベルコードを発動させるまでの間、持てる全てで攻撃を凌ぐ
敵のユーベルコードは強化のみ、なら攻撃自体は摂理の内として戦闘知識で対応出来ないか試みる
回避でも防御でも良い、冷静に最適な対応を

凌いだなら戦獄龍狂嵐にて願いを理性ごと捨てる
対策と同時に敵の強化を上回る超強化を
それでも届くかは知らんが、死力を尽くして挑む
元より俺の願いは「戦」のみ、是が非でも叶えて貰うぞ

愛しき敵よ、願わくば
あっさり負けてくれるなよ



 傷つけられ餓えた大魔王は、まるでよだれを垂らす餓狼めいていた。
 ワズラ・ウルスラグナはそれを好ましく思う。彼は戦狂いゆえに。
 理知的に超然と構え、物憂げに弱者を見下すような敵よりはよほどいい。
 もちろん、そんな君臨者を戦場に引きずり下ろすのもまた格別だ。
 しかしやはり――彼にとっての本懐は、根源から凌ぎを削る死闘にある。
 たとえば今のような状況こそ、まさにワズラにとっての天啓だった。

 翼膜を爪が引き裂き、とぐろを巻く尾の筋肉はズタズタに切り裂かれた。
 鍛えられた名剣すらもたやすく弾く鉄壁の鱗も尾も、あっけなく。
 苦痛がこみ上げる。血が吹き出す。――心地よい。愛おしささえ感じる。
「なるほど"嵐の魔物"、いやさ大魔王か! 名に負うて不足ないな、愛しき敵よ!」
『感じるぞ。汝の望み。闘争を望み、願い、そして祈るか。度し難し!』
「そう寂しいことを言うな。蚕食を求めるのはお前とて同じだろう!」
 龍と獣は互いに蒸気の如き息を吐き、牙を剥き出しにして喰らいあった。
 かたや嵐の魔物の名を背負い、暴威を以て世界を脅かす始原の残骸。
 かたや嵐の銘を刃に与え、己を一つの暴力装置とする殺戮の狂乱者。
 ぶつかり合う牙と爪は火花を生み、絶えず輝くそれは稲妻めいていた。
 呵呵と嗤うワズラの哄笑はまさに雷鳴のようで、炯々たる両目は雷光のよう。
「吼えろサルヴァよ! 我らの敵を斬り裂くがいい!!」
 応報の刃が大魔王を穿つ。骨ごと筋肉を断ち切り半ばまで食い込んだ。
 大魔王はそれを厭わず縄の如き血管を浮かべた片腕で、ワズラの胴を突いた。
 互いに重い一撃。両者ともに吹き飛び、傷口と口蓋からおびただしい血。
 大魔王を突き動かすのは餓えであり、そして敵対者=ワズラの願望だ。
 喰らい、傷を塞ぎ、活力とし、F1燃料めいて燃やし続ける。
 ではワズラは。彼にそこまでのでたらめなユーベルコードはない。
 ……だから? これほどの恋焦がれるような戦いで斃れるなどありえない。
 斃れる道理がない。ゆえに倒れぬ。次の一撃を、次の次の一撃を求める。
 狂乱にありながら、ワズラの脳はどこまでも冷えていた。
 さながら嵐の内側、"目"と呼ばれる場所は凪の静けさに包まれるように。
 だからこそ彼は唯一無二の修羅足り得る。高揚と冷静は彼にとって同義だ。
 大魔王がワズラを殺しきれないのは、そこに経験差があるがゆえ。
 大魔王はたしかに強大でありワズラを凌駕し、願いによって強化されていた。
 しかしそれゆえに経験が足らぬ。互角拮抗の戦いの経験が足りない。
 どのように防げば攻撃をしのげるか。
 どのように避ければ余波を躱せるか。
 "どうすれば生き残れるか"の経験が不足している。
 ……とはいえ、蓄積したデータベースから最適なものを選べるかどうかは、
 あくまでその者の判断力による。経験だけで力量差は埋められない。
 張り詰めた綱の上で舞踏を踊るような丁丁発止を、ワズラはこなしていた。
 嗤いながら。冷え切りながら。およそ人にできることではなかった。

 ――どうん!!
 銅鑼のような轟音が響き、ふたつの巨体が互いに離れた。
 ワズラは魔剣サルヴァを担ぎ、ぐるぐると唸るように喉を鳴らす。
「……我が願いある限り、倒れぬか」
『然り。汝の願望は我が活力なれば』
「いいだろう!!」
 双眸が燃えた。裡なる地獄の炎に、戦獄の輝きに。
「ならば俺は理性を捨てよう。本能のままこの身を晒し、焔と嵐を起こそう。
 ――分かっているだろう我が敵よ。俺の願い、祈り、望み。そのなんたるかを」
『……よかろう。そのすべてを我は喰らい尽くす』
 恋人の睦言めいた愛しき宣戦布告に、ワズラは身を震わせた。
 炉の如くにごうごうと傷口から焔が吹き出す。刃が悲鳴じみて嘶く!
「いざ、本能の儘に――願わくば、あっさりと死んでくれるなよ」
『我を満たしてみせよ、龍よ。汝が我が敵を名乗るならば』
 歓喜と戦乱の咆哮が大魔王の声に応えた。ヒトの言葉はそこで絶えた。
 生まれたのは嵐と嵐。壁を、天井を、床を削り取る暴威のぶつかり合いだ。
 魔剣が唸る。大魔王の魔力が防ぐ。
 爪が振るわれる。翼が弾く。
 斬り、裂き、貫き、喰らい、穿ち、貪り、抉り、ほじり、折り、砕き、貫く。
 なんたる酸鼻たる光景。されどなんと雄々しく神話めいた死闘か!
 嵐は拮抗していた。強大なる大魔王に、真正面から抗う戦獄の業火!
 打ち合わされる刃と爪の音叉は、神なる雷のように空間を震わせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

龍之・彌冶久
大魔王と来たか。
それは随分と斬り甲斐がありそうな。
然し勇み足で来たはいいものの――

――呵々。あまり善くないなぁ、この繭は。

(若返り。超度で時を遡っているのが判る。)

やれ、困ったな。
老耄がそうも若返るとなぁ――――







―――鬱陶しい。

(伝わるか。
脈を経て届く鏖意が。
"斬り捨てる"と云う、確乎たる、刃金の如き截断の意が。)

(お前と迷宮は今、龍の逆鱗に触れた。)

("魄"の揺らぎを彼方に感じる。
畏れたな。
其処にいるな。)

(天・地・陽・陰・焔・濔・颯・霆・魄・刻。全ての脈を瞬時に紡ぎ(属性攻撃)、唯――)

断つ。







―――一時、年甲斐を喪ってしまったようだなぁ。
いや、あいすまぬ。

昔の俺は怒り易くてな。赦せよ。



 はたして、どれだけの傷を受けたのか。
 死闘に次ぐ死闘、絶え間なく抗い続ける猟兵ども。
 ある猟兵は戦いを望み、
 ある猟兵は虚無を以て相対し、
 ある猟兵は意地を貫き、
 ある猟兵は希望を謳った。
 そのどれもが大魔王には理解できぬ。あり得ぬ傷、あり得ぬ敵だ。
 己のいのちを度外視して己に歯向かう知性体など、矛盾している。
 だから大魔王は追い詰められていた。その現状を理解できず認められない。
 ゆりかごめいた迷宮で己を包み、癒そうとしてなお。
 大魔王は知らぬ――その感情が、ヒトの言う怒りであることを。

「おう、おう。ひどい有様だ。だが滾っているな、大魔王よ」
 ゆらりと現れた男がひとり。餓えた狼めいた双眸が睨み返す。
 龍之・彌冶久は凝視を受けて呵呵と笑い、飄々と肩をすくめてみせた。
「己の時を遡って傷を癒やすか。いやはやまったく、合理的な判断よな。
 しかし、これはよくない。この繭――これは、とても"よくない"ものだ」
『…………』
 彌冶久はため息をついて繭に触れた。その身が、存在が時を遡る。
 大魔王は敵意を籠めて彼を睨み……そして、驚愕に目を見開いた。
「――鬱陶しいな、実に」
『……なるほど。定命の理を外れし者。汝の本質は、それか』
 大魔王は相対する"それ"の裡に、喰らうべき願いを見出そうとした。
 だが、そこにはなにもない。願いも、祈りも、希望もない。
 ただ刃のように研ぎ澄まされた、"斬り捨てる"という確定的な鏖意のみ。
 ……大魔王はくつくつと笑い出した。笑わずにはいられない。
 ついに突きだされたのが、斯様にあり得ざる超越者とは……!
『ハ、ハ、ハ――ハハハハハ! 汝のようなものが、知性体の側に回るか。
 我は識っているぞ。知性ではなく、知恵でもなく、魂として識っている』
「…………」
『――汝は、"我ら"と同じモノだろう。まったく度し難し』
 "それ"は――彌冶久の姿をしているはずのモノは、ゆらりと構えた。
 大山鳴動するような、大河が流れるような、淀みなくそして恐ろしい身動ぎ。
 大魔王は痛感した。世界の外側より来たりしものゆえに理解する。
『龍よ。我は汝を喰らうぞ。汝は如何にする』
「……知れたこと」
 眼光が鋭く細まった。
「ただ、断つのみ」
『断ってみせるがいい。出来るものなら――!!』
 大魔王の体が倍近く膨れ上がり、咆哮して一体の獣と化した。
 その身その心に畏れはなく、ただ同類への名状しがたき敵意のみがある。
 ならば断てぬか。
 ならば斬れぬか。
 否なり。
 前に立つならば断つ。
 敵であるならば斬る。
 かの神は、それゆえに神たるのだから。

 ――凪に吹き抜ける一陣のそよ風めいた、静かな剣閃がひとつ。
 吶喊した大魔王の巨体はばっさりと切り裂かれ、どしゃりと崩れ落ちた。
 手の裡の脈が解け、それは――彌冶久は、嘆息して構えを解く。
「いやまったく、相すまぬ。最期くらいは腹をくちくしてやるべきだろうに。
 昔の俺は怒りやすい上に欲がなくてな。赦せよけだものよ、だが自業自得だ」
 彌冶久は振り返らない。消えゆく亡骸に背を向けたまま飄々と歩く。
「年甲斐を失くすのは、まったくつまらんものよなあ」
 それが、大魔王の第一の滅びとなった。

成功 🔵​🔵​🔴​


 知恵など必要ないのだ。
 我は喰らうもの。
 我は奪うもの。
 ただそうあるべきもの。
 忌々しい。
花剣・耀子
誰もが為したいことを為せるように。
誰ひとり理不尽に泣くことがないように。
誰も、……誰も。叶うなら、死なないように。

あたしが剣を持つ理由。
希望が無ければ此処に立ってはいないのよ。
――だから、おまえがそれを喰うのも判っている。

此方の致命を狙う軌跡だけは咄嗟に斬り祓って、逸らして。
逸らしきれなければありったけの呪詛で鈍らせるように。
一拍でも止まれば充分よ。
剣を振るだけの命が残れば上々。踏み込みましょう。

元より、願いも望みも祈りも、叶うなんて約束は何処にもない。

けれど、だから何だというの。
おまえがどれだけ喰らおうと、絶望には程遠い。
あたしの剣は、何もかもを斬り果たして先を開く為にあるのよ。

散りなさい。



 誰も理不尽に屈することなく、悲しみの涙を流さなくていい世界。
 誰もが現実に押し潰されることなく、為したいことを為せる世界。
 誰もが、早すぎる死に見舞われず、満足な人生を謳歌出来る世界。
 ……絵空事だ。子供だってもう少し現実的な空想を思い描くだろう。
 けれど、叶わないことを願い、どうかと祈りを捧げ、望みを目指す。
 それが人間だ。
 愚かで、不完全で、非合理的で――そして輝くような一瞬の生。
 花剣・耀子が剣を握るのは。
 ヒトには斬れぬモノを斬るのは。
 つまるところ、そんな赤ん坊のような無垢なねがいのためだった。

 ――大魔王にとって、それはこの上なく芳醇な果実である。
 めきめきと音を立てて異形は膨れ上がり、筋肉は倍近く隆起していた。
 ただでさえ圧倒的な威圧感が文字通りに桁違いまで跳ね上がる。
『望むがよい。祈るがよい。願うがよい。我は汝の希望を肯定しよう』
「……ただ喰らうがためにあたし達に希望を奨励する。本当、悪辣ね」
『悪辣? それは違う。我は汝らを苦しめたいわけではないのだから。
 我は"喰らうもの"。そうであるがゆえに、そうする。それまでのことである。
 ――ゆえに贄よ、不安を抱くことはない。汝には、嘆きすらも必要ないのだ』
 言って、大魔王の巨躯が消えた。色付きの風となって大地を駆けた。
 耀子はレンズの下で眉根を顰め、己がバラバラに四散する幻視を振り払う。
 足を止めればそうなる――ゆえに動け。先の先の先を読んで活路を拓け。
 真正面からの突撃。地面ごと薙ぎ払う円弧の斬撃で勢いを殺し、逸らす。
 直撃は避けられた……けれどもそれは耀子の無事を意味しない。
『不合理だ。なにゆえに足掻く』
「……死にたくないからよ」
 大魔王は悠然と振り向く。不意打ち、追撃、いずれも懸念する必要はなし。
 直撃は避けた。だが波濤の如き突進の余波が、華奢な体を吹き飛ばしている。
 剣を支えに立ち上がる姿は、ただ一撃でボロボロの有様だ。
 一方大魔王は、無傷。まとわりつく呪詛も、春の風のようにこそばゆい。
『ならば汝は、はじめから我の前に立たねばよかったのだ。それが最善であろう。
 我の前に敵として立つがゆえに、汝はこうして傷つき苦しんでいるのだから』
「……知恵を得ても、所詮はその程度ね。把握は出来ても理解は出来ないのかしら」
 耀子は剣を構えた。
「あたしは"死にたくないからここへ来た"のよ。"だからおまえを倒す"の」
『……度し難し』
 大魔王のプレッシャーが巨躯に凝縮した。まったき死の前兆。
 次の突撃は、凌げぬ。避けることも逸らすこともまず不可能だろう。
 それが己のねがいの力であるというならば、それでいい。
 どれだけ強き祈りであれ、希望はただの灯りでしかない。
 それを叶えるのは、望みを抱いて前へと進むヒトの歩みなのだから。
「ここでおまえを斬るのも、願いを叶えるのも、結局は……同じこと」
 そのために命が必要ならば喜んで賭けてやろう。
 重心を前へ落とす。大魔王は理解しがたそうに顔を歪め、そして消えた。
 主観時間が鈍化する。耀子は考えず、細胞が指し示す通りに動いた。
 嵐の如き暴威が頬を掠める。耀子は敵の側面を取る己の姿を遅れて知覚した。
 意識と肉体のズレ。剣客が求道の果てに至る、一種の境地。
 大魔王の双眸が見開かれる。驚愕? 怪訝? どちらでもよい。
「――ひとつ、教えておいてあげるわ」
 極限の刹那のはざまで、その言葉は声にすらならず心の中で融けていく。
 けれど敵対者の望みを喰らう大魔王には、思考の速度で届いただろう。
 水のようによどみなく両手が滑る。刃が大理石めいた肉を裂く。
 反動が己の全身を斬り裂く。だが吹き飛ぶよりも斬撃のほうがわずかに疾い。
「あたしの剣は、何もかもを斬り果たして先を拓くためにあるもの」
 手応えが来る。己のいのちを刃に乗せる――鋭く呼気、振り抜いた。
「――散りなさい」

 ――ズッ、ドォオオオオオンッ!!
 弾頭が炸裂したような轟音が響き渡り、壁が天井が床が爆ぜる。
 吹き飛んだのはふたり。瀕死の耀子と――重い刀傷を受けた大魔王である。
 瓦礫に抱かれながら、耀子は握りしめたままの柄の手応えを引き寄せた。
 命がある。……命は残っている。自然と笑みが溢れた。
 眼に焼き付くのは、苦痛と驚愕に見開かれた大魔王の"いいざま"な顔。
「おまえがどれだけ喰らったって、絶望には程遠いわ」
 ひゅうひゅうと鳴った喉は、きっとそんな言葉を発そうとしていたはずだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

リア・ファル
【FH】
POW

「今を生きる人々の明日の為に」

これは、ボク自身の願いではなく
望みでもなく。祈りでもない

ボクは三界の魔術師
人々の媒として、その願い、望み、祈りを繋ぎ運ぶ戦艦(モノ)
ボクが背負った命令(オーダー)だ!

先制攻撃を『イルダーナ』で回避
全力演算
(情報収集、操縦、逃げ足、空中戦、限界突破)

『ヌァザ』を突き立て、次元回廊接続

「特別配送用の徹甲外殻だ、魔王穿つべし!」
UC使用! つかささんと、オリヴィアさんを乗せて魔王へ発射!

つかささんは頭部狙いだ!
「名付けて、【鬼神焦熱・超電磁砲(レールガン・バーニング)】!」

続いてオリヴィアさん!
「トドメだ! 聖天活殺・超電磁砲(レールガン・ロンギヌス)!」


オリヴィア・ローゼンタール
【FH】

あれが大魔王……邪悪の首魁!

白き翼の姿に変身
貴様はここで討ち滅ぼす
これは願いでも祈りでもない、絶対的な確定事項だ!

聖なる魔力を身に纏い(オーラ防御)、飛翔吶喊(空中戦)
【怪力】を以って聖槍を打ち振るい、二人の準備が整うまでの【時間稼ぎ】
発射の詠唱が聞こえた瞬間、弾かれたように離れる

リアさんの元に帰投し、超電磁砲に砲弾として装填され、射出
次弾装填完了、耐衝撃魔力防御完了――いきます!

飛翔中に【終焉を呼ぶ聖槍】を発動
荒れ狂う膨大な破壊の魔力を聖槍に凝縮(属性攻撃・全力魔法・限界突破)
流星のように胸部の紅い宝石を穿ち貫く(串刺し・鎧砕き・ランスチャージ)
ぅおおおおおおっ!!


荒谷・つかさ
【FH】

敵の先制攻撃はリアのイルダーナに同乗して回避
避けきれないなら大剣による切り払い(見切り、武器受け)で迎撃を試みる

凌ぎきったらリアのUCに弾丸として装填され、射出
飛翔中に【鬼神爆炎掌】発動、爆炎の弾丸と化して大魔王の頭へと吶喊
「うらああああああッ!!!」
着弾時にきっちり頭を掴み、爆砕
その後、オリヴィア達の追撃が来るまで肉弾戦(怪力、グラップル)で時間稼ぎ

願い、望み、祈り……不確定な未来への不安から生まれるものよね。
私のそれを喰らおうというのなら無駄よ。
何故ならば、私には積み重ねてきた鍛錬(過去)がある。
自信、と言い換えても良いわ。
そう……私は、私達は勝つ。
そこに欠片も疑いなど無いのよ。



 リア・ファルの駆るイルダーナが、悲鳴のようなエンジン音を鳴らした。
 限界を越えたフルスロットル。頑丈な機体がガタガタと軋む。
「リア、大丈夫!? 無理そうなら、作戦の変更も」
「大丈夫!! 任せておいて、つかささん!」
 後部座席にタンデムしていた荒谷・つかさは、リアの表情に言葉を失った。
 気丈に笑っている……だがその裏にあるのは不安と懸念、そして恐怖だ。
 その彼女があえて"大丈夫"と豪語するならば、これ以上は野暮というもの。
 彼女は言っているのだ。"どうかボクを信じて任せてほしい"と。
「……わかったわ。なら、あとはオリヴィア次第ね」
 つかさは背後を振り返る。そこに、形を持つ嵐が迫りつつあった。
 望みを喰らって強大な力を得た大魔王ウームー・ダブルートゥ。
 イルダーナを、ふたりを掴み握り潰そうと伸ばされた指先はしかし、
 弾丸じみた勢いで割って入ったオリヴィア・ローゼンタールの聖槍に弾かれる。
「相手は私です、大魔王! 正々堂々と勝負しろ!!」
『煩わしい。そうまでして最初に死にたがるか、敵対者よ』
「嘗めないでください。私は死にに来たのではありませんよ!!」
 オリヴィアは白い翼をばさりとはためかせ、聖槍を打ち振り戦いを挑んだ。
 普段の倍近いサイズに膨れ上がった大魔王は、激烈な刺突を鬱陶しげに払う。
 そして異形の翼を打ち振って暴風を巻き起こし、オリヴィアを巻き込んだ!
「くっ……!」
 ここでペースを奪われるわけにはいかない。オリヴィアはさらに高く飛翔する。
 分厚い暴風のなかからぬうっと伸びた片腕が、その足首を掴んだ!
『我が頭上を羽ばたくことは何者にも許されぬ。地に堕ちよ』
「――ッ!!」
 オリヴィアの視界が急スピードで上から下に流れた――KRAAAASH!!
 鞭のように無造作に自分の体を叩きつけられたと気づいたのは、衝撃のあと。
 骨にヒビが走るほどの強烈な激痛。オリヴィアは肺の空気をすべて吐き出す。
『汝の戦意、敵意。実に芳醇なり。ゆえに我が手ずから仕留めてくれよう』
「……こ、の……!!」
『嘆く必要はない。汝の希望は我が糧となる』
 ガッ、ゴッ、ズガンッ!!
 右、左、右、左、右、左……オリヴィアは山なりに振るわれ叩きつけられる。
 まるで濡れた絹を振り回すような、あまりにも無造作で無慈悲な処刑。
「……勝ったつもりに、なるんじゃ……ないッ!!」
『まだ抗うか。度し難し』
 オリヴィアは腹筋の力を限界まで振り絞り、掴まれた状態で起き上がった。
 そして受け身をとって地面衝突の衝撃を受け流し、槍の穂先を手首に突き刺す!
『小賢しいなり』
「貴様は! ここで! 討ち滅ぼすッ!!」
 血まみれのその体のどこに、それほどの力が眠っていたのか。
 稲妻じみた速度の刺突を無数に繰り出し、オリヴィアは反撃に打って出る。
 大魔王は両腕でその攻撃を受け流し――獣の肢で、力強く床を蹴った。

「――リア、ストップ!!」
「りょ、了解!」
 突然のつかさの言葉に、リアは慌ててターンしてブレーキを踏んだ。
 直後、大岩を叩きつけられたような衝撃にマシンがぐらりと揺らぐ。
 その正体がオリヴィアであり、つかさが彼女を抱きとめたのだとわかったのは、
 血まみれのオリヴィアが拳大の血を吐いて呻く声を聞いた瞬間だった。
「よく頑張ったわね。準備完了よ。回収の手間も省けて助かったわ」
「…………ッ」
 つかさの言葉にオリヴィアは何かを答えようとして、痛みに顔をしかめた。
 おそらく肋骨が砕かれている。重傷だ。だがリアは労りの言葉を呑み込んだ。
 今すべきことは、戦うことだ。リアは己を強いて魔剣端末を振るった!
「そういうことさ! 分析完了、次元回廊確立! 準備はいいね、ふたりとも!」
「もちろんよ。いい気になった大魔王に一泡吹かせてやるわ」
 リアは頷き、次元を越えて己の本体にして母艦の主砲を顕現させる。
 目の前に電脳視界が現れ、彼方から猛駆するおそるべきものの姿を捉える。
 世界を喰らうもの。望みを喰らいその力を糧とするもの。……大魔王!
「さあ大魔王! 特別配送用の徹甲外殻だ。防げるものなら防いでみろ!!」
 つかさとオリヴィアは主砲に収まる――そうだ、彼女ら自身が弾丸なのだ。
 敵が希望を喰らい過去から現在を脅かすというならば、
 少女達はその生命と意地を賭け、現在から未来へと手を伸ばす。
「主砲、魔錬徹甲弾に切り替え――特別仕様の超電磁砲、お代はいらないよ!」
 大魔王は吠える。それはまさしくすべてを喰らう魔獣めいていた。
 ならばそれを穿ち滅ぼすは、妖精境の名を持つ己の――否。
「今を生きる人々の、明日のために」
 祈りのように言葉をつぶやく。だがそれは祈りではない。
 彼女は人々の媒となりその希望を運ぶもの。ヒトとヒトを繋ぐもの。
 命令(オーダー)――魔王、穿つべし!
「初弾装填! 名付けて鬼神焦熱・超電磁砲(レールガン・バーニング)ッ!!」
 ガコン――ZDOOOOOOOOOOOM!!
 つかさは燃え上がる一条の焔となった。迫りくる大魔王の頭部へ吶喊!
 その手から生まれた爆炎が全身を包み込み、スピードを喰らって燃え上がる!
「うらああああああああッ!!!」
 KRA-TOOOOOOOOOOOOOOOOM!!
 鬼の腕(かいな)が大魔王の額を砕き、燃やす。だが無傷ではいられない。
 同時に叩き込まれた槌のごとき腕が、つかさの内臓を破裂させた。
 ごぼっ、と滝のように血を吐きながら、つかさはその腕をもう一方の手で掴む!
「……私は、私達は勝つ! そこに欠片も疑いなど、ないのよ!!」
『我の視界を妨げるな、贄よ……!』
「お断りね。私のこの手と! 仲間達の力で! お前を!! 倒す!!!」
 大魔王は見た。焔の向こう、闇を斬り裂く白き光の弾丸を。
「――聖天活殺・超電磁砲(レールガン・ロンギヌス)!!」
 リアの口上とともに、弾丸と化したオリヴィアが"飛来"した。
 魔力を、命を、己の全存在を破魔の光に変え、オリヴィアが駆ける!
「ぅおおおおおおおおお――ッ!!」
『命を焚べて我を討とうとするなど……愚かなり、猟兵……!!』
 次いで大魔王が発したのは皮肉ではなく、苦痛の絶叫だった。
 ひとつの鏃と化した聖なる槍の穂先が、その胸部を串刺しにしたのだから!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

一駒・丈一
【砦】

リオの「闇の音の嵐」で「迷路」を破壊してもらい
その後アテナの「勝利女神の祝福」で彼女の助力を得よう

アテナと俺のUC 発動前に、其々第一形態の複製体が現れるが
一体も二体も変わらん。纏めて薙ぎ払う他ない

敵達の攻撃は
肩の妖精アテナの声に従いつつ【継戦能力】で【見切り】
リオが発動させている闇の嵐を隠れ蓑にし、【呪詛耐性】で耐えつつ、その嵐を活用し大きく跳躍。
これは言わば【地形の利用】。
そして、味方のUCで増強されたUC『罪業罰下』にて…第一形態、そして本丸の最終形態を視界に収め
纏めて【早業】にて一閃だ。

3人の力の合わせ技で、敵を断つ。
残念ながら俺達は諦めが悪くてな。明日を願わずにはいられんのだよ


アテナ・アイリス
【砦】
いままで倒してきた形態が増えようとも、わたしは決して負けないわよ。さあ、いくわよ。
【武器受け・見切り・オーラ防御100・第六感50】と「アキレウスの鎧」のダメージ半減効果を使って、魔王たちの攻撃をかわしつつ、躱せない攻撃は致命的な打撃を受けないように受け止める。

さすが強いわね、このままだと勝てないかもしれないわね。仕方ないわね丈一、わたしの力を貸すわ。

UC「勝利女神の祝福」をつかって、丈一に憑依して、能力値加算の効果でパワーアップさせる。自分は妖精サイズのイメージで肩に乗って、叱咤激励・アドバイスを行う。

「ほら、なにやってるのよ、そっちよそっち。」「さあ、いまよ、やっちゃいなさい!」


リオ・ウィンディア
【砦】
ボス戦場緊張する
でもね、一人では行けない場所も3人ならどうとでもなる
この3人の戦いはきっと貴方の【呪詛】になる
さぁ奏でましょう!
【楽器演奏】によるUC発動
まずは迷宮対策かしら
材質が繭なら如何に丈夫だろうとも、絡めとって出口まで一直線よ
「嵐よ、吹き荒れよ」
さらに大魔王に対して呪歌による【歌唱】と共に、3人の姿を【目立たないように・呪詛】で覆い隠し【闇に紛れさせる】わ
一駒さんの動きに合わせてUCを操作し全面サポート
私も【忍び足・盗み攻撃】で攻撃し
わずかなチャンスを作りましょう
【早業】の連携を仕掛けて一気に敵を撃ち落とす
そうそう、さっきの迷宮の繭をお返しするわね
嵐で絡め取った繭を【盗み攻撃】よ



『ははははは! いやまったく愉快ですな、吾輩らが戦場を共にするとは!』
『テキガイルヨ! テキガイルヨ!』
『おではらへった。おではらへった』
『……せいぜい働け、我が第一形態よ。汝こそは恐怖より形作られしものなれば』
 第一形態アウルム・アンティーカ"達"の猛攻を、大魔王本体は無表情に眺めた。
 所詮は一側面。ウームー・ダブルートゥにとっては雑魚も同然だ。
 だが、それと相対する一駒・丈一とアテナ・アイリスにはそうではない。
 すでに越えた道程――だとしても、強大な大魔王の一形態は間違いなく強敵。
 ふたりは妖精の声に従い、不壊の鎧の力でもって攻撃を躱しいなす。
 だがアウルム・アンティーカどもの攻撃は、それを置いてもあまりに熾烈!
 そして当然、大魔王本体もまた、ランダムな魔力波により攻撃を行うのだ!
 ――なによりも彼らはいま、不気味な繭の迷宮に囚われていた。
 触れれば急速に若返る繭の呪いを避けるには周囲に注意するほかなし。
 そして袋小路の地形は、すなわち彼らの回避余剰空間を奪い去る……!
「あなたの目が私達を見ることを、私は許さないわ……!」
 リオ・ウィンディアは呪いの旋律に声音を乗せ、大魔王へと解き放った。
 呪歌は大魔王の目を覆い隠し、その姿を覆い隠す――はず、だった。
 しかしウームー・ダブルートゥは、たやすくそのヴェールを振り払う。
『吾輩らをただの雑魚と侮りましたかな? いやはや油断大敵ですな!』
『大魔王の名は伊達ではありませんぞ。ただでは済ませませんとも!』
 二体のアウルム・アンティーカが、まったく同時に強力な魔導砲を放つ!
 まともに喰らえば戦闘不能確定のそれを、アテナのオーラ障壁が防いだ。
「油断大敵ですって? 余計なお世話よ。わたし達は覚悟の上なんだから!」
 迸る魔導砲の余波が障壁を貫き、アテナの体を傷つけた。
 アキレウスの鎧をもってしても、そのすべての威力までは防ぎがたい。
「ひとりならば勝てないだろう。だがいまの俺達は三人でひとつのチームだ。
 言っておくが、俺達は諦めが悪いぞ。とどめを刺すなら念入りにしておけ」
 魔導砲の威力が減衰した瞬間、丈一が韋駄天のように駆け出した。
 介錯の刃が黄金の躯体を穿つ。怯む黄金の大魔王ども、しかし!
『それこそ愚かの極みである。我が汝らを喰らうという未来は変わらぬ』
 ウームー・ダブルートゥの目が燃えた。見えざる魔力の衝撃が丈一を打ちのめす!
 この迷宮は敵にとっては逃れ難く触れれば致命的な呪いの牢獄となり、
 ウームー・ダブルートゥにとっては無限に傷を癒やす有利な空間となるのだ。
 そもそも攻撃が……届かない! 趨勢はあきらかにあちらに傾きつつある!
「やっぱり、この迷宮をどうにかしなきゃ……!」
「防御はわたしが請け負うわ。手はず通り、頼むわよリオ!」
「……一発二発喰らった程度で倒れはしないさ。安心しろ」
 口元の血を拭って不敵に言うふたりの言葉に、リオはこくりと頷いた。
 一度で諦めてはならぬ。たとえ敵がどれほど強大であろうとも!
「三人ならきっと、どうにかなる――さぁ奏でましょう! 嵐の詩を!」
『笑止。嵐とは我であり、すなわち薙ぎ払われるは汝らである』
「それはどうかしら。一駒さんが言っていたでしょう? 私達は、諦めが悪いと」
 ごおうっ!! と、分厚いカーテンめいた闇の嵐が吹き荒れた。
 大気を切り裂くようなアップテンポの旋律が響き渡り、魔力を高める。
 風よ歌え。闇よ踊れ。これなる悪魔どもを押しのけ、我らに活路を!
「Bienvenidos! 私達の舞台を、見せてあげましょう!!」
『あいも変わらず目くらましか。愚かなり――そこだな』
 ウームー・ダブルートゥのの視線に追従し、双魔導砲が再び放たれた。
 だが再びアテナが割って入る! オーラ障壁を展開――しかし、砕け散る。
 しかし彼女の負傷を犠牲として、丈一は範囲外へと跳躍成功!
「まとめて薙ぎ払わせてもらうぞ、大魔王」
 ざうっ!! と、因果を逆転せし魔剣の一閃が空間ごと黄金を切り裂いた。
 アウルム・アンティーカ二体の胴体から名状しがたい鮮血めいた液体が吹き出す。
 だがウームー・ダブルートゥは無傷! 形態を盾に身を護ったか!
「鋭さが足りないわ! 力を貸してあげるから、もう一度やってやりなさい!」
 いつの間にか丈一の肩には、幽体化したアテナの姿があった。
 男はちらりと眼下を一瞥。血まみれで斃れた本体の姿を捉え、頭を振る。
「わたしのことは気にしないで。勝つためにここへ来たんでしょう!」
「……ああ。お前もリオも頑張ってくれているんだ、俺とて発奮するさ」
 大魔王は掌から魔力を放ち、上空の丈一を貫こうとした。
 しかし、出来ない。忍び寄っていたリオのダガーが、脇腹を裂いていたからだ!
「私をただの子供か何かと思ったのね? 油断大敵、よ?」
『――小賢しい』
 大魔王はリオを――否。そうすれば丈一の攻撃を通す形となる。
 状況判断を迫られる。そしてその一瞬があればふたりには十分だった。
 リオの小さな体が魔力波に呑まれ吹き飛ぶのが見える。丈一は腹を決めた!
「もはや逃さん。残骸へと還れ、大魔王」
『おのれ、贄ごときが……!』
「言っただろう――俺達は諦めが悪いのだと」
 因果を超えし一閃、再び戦場を薙ぎ払う。
 崩れ行く迷宮とともに大魔王どもを真っ二つに切り裂く、白々とした刃!
 それはたしかに、勝ち誇る大魔王を断ち、その罪に相応しき傷をもたらしたのだ!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

クロト・ラトキエ
ニュイ/f12029

…嵐の魔物。
神話の時代なら終わりましたよ。

人と格も桁も違うなら、一撃とて痛打だろう。
が、知るUCと原理は同じ。
故に強化へ対処すべきは、
変え辛い『速さ』を識り。
間合い。武装、術式と、敵を知り。
厭う傾向。視線。選択、からの体幹や踏み込み、腕脚の挙動…
知識に照らし万事を想定。
見切り、避け。
迫り、討つ。

切に望むは、生存を。幸福を。
今迄なら己の事のみだったろう。
…けど今は。
共に在る少年へ、
大切なひとへ、
唯々――

孤高の君。
“誰かへの希望”を、お前は何に換えられる?

UC全開、風の魔力を攻撃力に、鋼糸へ全通し
敵の行動に乗じて散開、斬撃はニュイと同時に。
この想い、かーなーり痛くて重いですよ!


霧島・ニュイ
クロトさん/f00472

希望は食べ物じゃないんだよー?
僕には欲しいものもこれから先も沢山あって
大好きな人と一緒に居たいだとか
記憶を思い出して家族と再会したいだとか
戦いが終わった先に希望を見出している
決して途切れる事のない希望であり欲

でもさクロトさん
欲と希望って変わりないよね?

敵の攻撃を観察し、見切る
見切り切れないときは武器で受け
厳しい時は、急所だけは躱しきる

吸血鬼化して羽根で飛ぶ
くるりと身を翻し
死角から攻撃したり、フェイントを織り交ぜて相手が構えていない場所で銃弾で騙し討ち
2回攻撃で手数を増やし、スナイパーで命中率を上げる
攻撃を躱し、距離を詰めていき挟み撃ち

クロトさんも大好き
信じているよ



 あらゆる願い、望み、祈り……すなわち"希望"を喰らい、力となす。
 なるほどそれはまさしく奇跡の力、ユーベルコードに相応しい。
 そもそもからして強大なオブリビオン・フォーミュラであるならば、
 纏う力は無限に等しく、引き上げられた能力は神のようなのだろう。
 大地を駆ければ名のごとくに嵐が巻き起こり、敵対者を引き裂くのだろう。
 ――しかしそれは、畢竟ただの"力"だ。
 どれだけ疾く、
 どれだけ強大で、
 どれだけタフであっても。
 ただの力であるならば、つまりは見て感じて対応してしまえばいい。
 その疾さを、威力を、限界を識り、理解し、最適な一手を重ねればいい。
 視線。体幹の揺らぎ。踏み込みのタイミング、挙動、わずかな癖。
 五感で得られるすべての情報を網羅し吟味し取捨選択し、活かせばいい。
 ……なるほど、クロト・ラトキエの考えた"対策"は実際正しい。
 檻の中の猛獣を恐れる者はいない。
 壁の向こうを走る車を恐れる者はいない。
 どれだけ強大な一撃であろうと、当たらなければどうということは、ない。

 事実である。
 だが"事実である"というだけで達成できるほど、現実は甘くない。
 言うは易し、行うは難し。ましてや敵は最強のオブリビオン・フォーミュラ。
 それが血反吐を吐きながら走り続けるようなものだと知っていて、なお。
 クロトは、真正面から大魔王の暴威に抗うことを選んだのである。
 何故? ――そんなことは、問うまでもない。
『ヒトが神や魔物を畏れ頭を垂れるような時代は、もう終わったんですよ』
 いつもどおりの笑みを浮かべて言うその姿を、霧島・ニュイはよく覚えている。
 だからこそ、ニュイはクロトのことを信じていたのだ。

 驚くべきことに、ふたりの猟兵はたしかに総てを視て識り、対応してみせた。
 床を踏み砕いて迫る大魔王の突進を躱し、壁を吹き飛ばす殴打を受け流す。
 見えざる魔力波が迸ればそれよりも疾く跳躍し、壁を天井を蹴って走る。
 縦横無尽、目にも留まらぬ早業。……だがやはり、無傷とはいかない。
 かつて共に相対した、あのヒーローズアースのフォーミュラとはまた別。
 単純無比に強大な"一"たる獣の暴威は、そもそもヒトが抗えるモノではない。
 嵐の魔物(ウームー・ダブルートゥ)。その名の示すところはすなわち天災の比喩。
 剣の達人がいたとして、刃を振るって嵐を切り裂けるか?
 怒鳴り散らして風を阻めるか。
 全速力で駆けて旋風から逃れられるか。
 否。否である。人間は災禍には抗えない。防ぐことも逃げることも出来ない。
 ――ただの人間であれば。奪われ貪られる糧であれば。
『ちょこまかと、小賢しい。何故に我のもたらす終わりを拒絶する?』
「変なこと言うんだなー。死にたくないなんて当たり前でしょ?」
「それが不思議なんでしょう。あちらからすれば、戦うという行為自体が、
 わざわざ自分から死にに来るようなもの……なんでしょうから。違いますか?」
 大魔王は言葉なくじろりとふたりを睨めおろし、答えとした。
 差は歴然。大魔王は無傷であり、クロトとニュイには無数の手傷。
 死角を得て刃を振るおうと必ず敵はそれを見切り、倍の攻撃で応報する。
 ヒトは嵐に抗えない。災禍からは逃れられない。それがただのヒトであれば。
『汝らが希望を抱く限り、我には勝てぬ』
「……そりゃー、僕の希望とやらは途切れやしないけどさ?」
 ニュイは言った。
「喰らわれるために何かを願ってるわけじゃないから、抵抗はするよ」
「…………」
 クロトはわずかに沈黙した。
 かつての己ならばどうだっただろうか。
 願いとは生存であり、望みは生き残ることでしかなかった。
 他者に捧げる祈りなど存在せず、泥を啜ってでも死を拒絶した。
 だが、いまは。レンズの下の眼差しが、ちらりと少年を一瞥する。
「孤高の君、神話の怪物よ。あえて僕は問いましょう」
『何?』
「――"誰かへの希望"を、お前は何に換えられる?」
 大魔王はその言葉を反芻し、意図を探ろうとした。
 だがわからない。そもそも大魔王の知恵はすべて捨て去るためのもの。
 ただ喰らい奪うだけの存在に、他者を想う心は本質的に理解できぬ。
 旨いか、そうでないかの違いでしかない。オブリビオンとは、そういうものだ。

 もとより答えを期待して投げかけた問いではない。
 クロトとニュイは一瞬だけ視線を交わし、ともに影となって駆けた。
 大魔王は無益な思索をやめ、まず不可視の魔力波と翼の羽ばたきで迎撃する。
 床を強烈な衝撃が削り取る。ニュイはあえてそれに乗った。
 呪わしき血の証たる翼で風に乗り、身を翻して大魔王の頭上を取る。
 ――視線が返る。ウームー・ダブルートゥはその動きを見切っていた。
 放たれた銃弾を魔力障壁で防ぎ、同時に繰り出されたクロトの不意打ちを妨害。
 鋼糸が振り払われる。獣じみた肢が苛立たしげに地面をひっかき荒ぶる。
 大地を揺るがすような猛打。かすめた衝撃がクロトの骨を軋ませる。……前進。
「クロトさん!」
 少年の声が聞こえた。赤い瞳は、魔王越しにクロトを見つめていた。
 クロトは頷き、己の魔力を風へと変える。振り払われた鋼糸はフェイント。
 それはさらに広く編み上げられ、一帯を包む結界と化している。
 挟み撃ちの態勢――ニュイが仕掛けた。大魔王はそちらの迎撃を優先。
 踏みとどまった少年もろとも床を踏み砕き、吹き飛ばす。大魔王はとどめを、
「させませんよ?」
 みしり、と全身が軋んだ。巨体を、鋼糸が絡め取っている。
『我を、縛るなど』
「ご安心を。すぐに開放してあげます――その体を斬り裂いてね」
 大魔王は彼方を見た。叩きのめしたはずの少年は立ち上がっている。
 血の如き双眸が炯々と輝く。もう使えない片腕を支えとしマスケット銃を構える。
 狙いは、眉間――銃撃と斬撃は同時に。
「僕には欲しいものもこれからもたくさんある。大好きな人とも一緒にいたい。
 ――だから斃れたりなんてしないよ。どれだけ痛めつけられたって」
「では反撃といきましょう。――この想い、かーなーり痛くて重いですよ!」
 双撃到達。大魔王の巨体を、銃弾と鋼糸が穿ち、切り裂く!!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ステラ・アルゲン
【星門】カガリと
祈り、願い、希望
その全ては我が剣が守るべきものにして我が力の根源ともなる
守るべきものを喰らう貴様を許せるはずもない

繭から逃れるようにカガリの内へ
器物の身になったならば彼を手に持つ
お前がいるからこそ私は【勇気】を抱いて大魔王に立ち向かえる

私は貴様が喰らう物の塊のような存在だ
さぞその身に数多の希望を喰らったことだろうな?
――ならば喰らった願いごと貴様を斬り捨てるまでだ!

攻撃はカガリに防いで貰う
最強といわれる大魔王だ、慎重に攻撃の時を見極め【流星一閃】

我が剣は願い叶える剣にして願いを斬り捨てる剣
願いを叶える為ならば他の願いを斬り捨てでも叶えよう
貴様を打ち倒すという願いのために!


出水宮・カガリ
【星門】ステラと

世界が己に食われるために存在する、というのは…己にとっては無駄が無いが、食われる方にしてみれば堪ったものではないぞ
特に理由もなく、希望を持って生きているだけで食われてしまうのだから
我らは、魔王の家畜として、生を受けたのではないゆえに

繭が展開される時は、【鉄門扉の盾】を【隔絶の錠前】で施錠して、門の内側が繭に侵されるのを防ごう
それでも、カガリは繭に触れてしまうから、器物の門(盾)に戻ってしまうやもだ
その時は、ステラに本体を運んでもらおう
繭の中では【追想城壁】を発動して、繭の影響を受けないように
戦闘後は、そのまま出口まで運んでもらおう



 人は命なき器物を神の如く崇め、空を駆ける流星に祈りを捧げる。
 それはすべて、どうか我の望みを叶えたまえという自分勝手な欲望だ。
 願いの内容がどうであれ、人間の行いはすべてエゴに由来する。
 ステラ・アルゲンと出水宮・カガリはそれを知っている。とてもよく。
 なぜならば彼らはヤドリガミ――霊性を得た器物なのだから。
 自分勝手な望みがあった。
 身を引き裂かれるような願いがあった。
 切なる祈りがあった。
 ……すべては昔。何もかも、その当人とともに過ぎ去った。
 叶ったものもあれば叶わなかったものもあり、
 喜びの感謝もあれば、呪いのような憎悪を向けられたこともある。
 いい悪いの話ではない。その一つ一つが彼女らを構成する過去なのだ。
 さながら、天に輝く星星を結んで星座が描かれるように。
 どれひとつ欠けたとしても、いまのふたりには結びつかないだろう。
 だからステラもカガリも、大魔王を認めるわけにはいかなかった。
 彼らはそのために生まれたわけではない。
 彼女らに願った人々も、その望みも、何もかも。
 奪われ、貪られ、消えていくために生まれたものではない。
 これは――彼らにとっての、引くことの出来ない生存競争なのだ。

 捉えたすべてを始原へと巻き戻し生まれ変わらせる呪いの繭。
 逃れることの出来ぬ大魔王のゆりかご。その只中にふたりはいた。
 否――もはやカガリはその霊体を維持できず、本来の城門たる姿である。
 ステラはその本体を携え、もう一方に流星の剣を握り相対していた。
 一体、何と? ……無論、敵とだ。大魔王、ウームー・ダブルートゥ。
『実に美味である。汝のその存在、まさに我が喰らうべき糧と言えよう』
 傲慢にそう言ってのける大魔王の五体には、活力が満ちていた。
 ステラはその言葉を笑いもせずに一蹴し、眦を決して見返す。
「そうとも、私は流星より生まれしモノ。貴様が喰らうものの塊のようなものだ。
 ――ならば私達は、貴様の喰らった願いごと貴様を斬り捨てるまで!!」
『"達"? 異な言葉を。もはや"それ"には何も出来まい』
「……カガリを、"それ"と言ったか」
 みしりと、剣を握る手が音を鳴らした。
「ならば教えてやる。私達の力……貴様に対する、この燃える怒りを!!」
 カガリは韋駄天のように駆けた。大魔王は両手を広げ父のように迎え入れる。
 たかが剣戟で切り裂かれたところで、もはやその身は討てぬとばかりに。
 そして両腕に縄の如き血管が浮かび上がり、膨大な魔力が渦巻く。
 大魔王は抱擁するように両手を閉じた――壁のような圧力を伴う魔力の波。
 ステラの剣が届くより早く、見えざる質量は彼女を左右から押しつぶすだろう。
 トマトソースのようにその霊体を押し潰し、大魔王の喉を潤すだろう。
 だが、そうはならない。彼女はひとりではないからだ!
『――されど亡都の扉は此処に在り。カガリは此処に居るぞ、大魔王!』
『何……!?』
 ごうん!! 魔力の障壁を押しのけ相殺するのは、巨大な城壁の幻影!
 ステラの掲げた城門たる盾に、人の知性を持つ双眸がぱちりと瞬いた。
『このカガリを相手に、壁で押し潰すとはまったく無謀なことをするものだ。
 カガリはお前の力を絶対に通さない。お前にも、何も食らわせはしない』
『我が魔力を防ぐだと? 汝は……』
『見てわかるだろう。カガリは城門であり、境界を分かつ門だ』
 そして今は、愛すべき半身を護る気高き盾!
 その霊力は裡へと閉じ込めたステラを、繭の呪いからすらも護る。
 ステラはまっすぐに駆ける。速度を得た刃は星のように気高く輝いた!
「我が剣は願いを叶える剣にして、願いを斬り捨てる剣でもある。
 貴様を打ち倒すという願いのため、私は他の願いを斬り捨ててみせよう!」
 剣閃一条! 逆袈裟の剣閃が威風堂々たる大魔王の巨体を斬り裂いた!
 吹き出す血をも拒絶し、カガリの霊性は流星の乙女を護り続ける。
 その絆、その決意がある限り、彼らはいかなる悪意をも跳ね除けるだろう。
 それがたとえ、強大なるオブリビオン・フォーミュラであれ!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
他力本願なことだな、魔王
自力で捻じ伏せてから名乗ってみろ

先制は『励起』で出力を必要なだけ上げ、『刻真』で若返りを打ち消して行動
魔力は『超克』で“外”から汲み上げる

破界で掃討
対象は召喚物含むオブリビオン及びその全行動
高速詠唱を『刻真』で無限加速、『再帰』で無限循環
天を覆う数の魔弾を「瞬く間もなく」「途切れること無く」生成
『天冥』で全ての過程を飛ばし「目標に着弾した状態で」斉射する

まずは迷宮。そして本体
喚ぶなら各形態の魔王も
魔弾の魔力は唯の目印
如何に戻そうと、お前を滅ぼす創世の権能は世界より前からあるぞ

強化も過去の魔王も消去対象だ。好きに使うが良い
全て飲み込んで圧殺するまで

※アドリブ歓迎


玉ノ井・狐狛
希望ねぇ?
とっととお還りいただけないかね、大魔王サマよぅ。


🛡
いわゆるボスラッシュか。
別形態どもが大いにハシャいでくれたんでな、どれもパターンは予習済みだぜ。
打撃や射撃はクセを踏まえて回避。魔法もタネの知れた手品と同じ。
こと防御に徹するなら、今更当たってやれる理由はねぇよ。


つっても分体どもが邪魔すぎるし、そもご本人サマが別格ときた。まともにやると厄介が過ぎる。
こんなときァ、バフを縦積みだ。味方が近くにいりゃ、そいつらもまとめてな。

最終バトルだ、ド派手に――派手に、参りましょう。

【天元】。最大六十回の全能力強化を。
ねがいの力、とくと御覧じませ。

――急急如律令(とっととくたばれ)、ラスボス野郎。


才堂・紅葉
「悪いけど、この場所は譲れないのよね」
二度も居場所は奪わせない
「コード・ハイペリア」
真の姿の【封印を解き】、古びた拳銃と六尺棒を構える
恐れる魔王は第二の獅子王。暴虐の化身だ

超レア詠唱弾を出し惜しみせず放出。第二を牽制をしつつ本体と渡り合う【怪力、グラップル、オーラ防御、激痛耐性】

(きっつ……こりゃ長くは持たないわね)

すぐにボロ屑にされるが【気合】で踏み止まり、冷静に【情報収集と戦場知識】で奴等の連携の穴を【見切る】

勝機は第二の大振り。【野生の勘】でその攻撃に“乗り”、自身を大魔王へ【吹き飛ばし】

「地の底に……還りなさいっての!!」
大魔王に超重力【属性攻撃】の飛び膝から、即【二回攻撃】で踵落しだ


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

願いや祈りを喰らったところで、希望をへし折れるとは限らない
逆に貴様の傲慢な意思を、僕ら猟兵がへし折ってやる!

恐れる大魔王形態といえば、やはり第四形態か
地味に嫌な攻撃が揃っていたからな…

もっとも、出現してもやることは変わらない
狙うは最終形態ただひとつのみだ

第四形態出現を確認し【魂魄解放】発動
「地形の利用、ダッシュ、闇に紛れる」+高速移動で第四形態の死角を回り込みつつ最終形態に接近
第四形態を呼び寄せられないうちに「先制攻撃、2回攻撃、怪力、鎧無視攻撃」+衝撃波で脚を狙って滅多切りだ!
相手の攻撃は「第六感、武器受け、オーラ防御」で抑え込もう

悪いな
猟兵は諦めが極めて悪いんだ


夕凪・悠那
さすが大魔王、台詞のスケールが大きい
でもふざけるな
世界はお前のものじゃない

ボクは直接戦ったことないけど情報は収集してた
その中で最も厄介だと感じたのは、言霊を現実化する魔王
第五形態『モルトゥス・ドミヌス』
――やるしかないか

『ラプラス』最大稼働
大魔王の挙動を観測([情報収集])し続け、第五に先制されても腕を[見切り]躱す

[早業]で【英雄転身】
役は聖なる騎士
[オーラ防御]で身体を覆い、第五を『仮想具現化』した騎士で[時間稼ぎ]して本体狙い
そう長くは抑えられないだろうから短期決戦
死角に回り込むよう動き隙を伺う
機を逃さず聖剣解放
必殺の一撃を叩き込む
(光[属性攻撃+力溜め+限界突破+全力魔法])

アド絡歓


バルディート・ラーガ
ヒヒ。かの憎っくき大魔王にも、真っ向から勝てる腕力なんざ無エ。
俺の頭ン中にあるのはこすッからい悪知恵のみよオ。

ここまでの迷宮、隠し立ては何も無し。
戦って勝ちを取ったのは第一・二・四・五形態。
第三形態とは『まだ』刃を交えちゃいねエ。
『まだ』勝ちの見え無エ相手は『恐ろしい』。なア?

攻撃を「ダッシュ」で躱しつつ、第三形態を視認したらば
第三の攻撃を見て「捨て身の一撃」最終形態の懐へ。
地獄の炎で炙り絡める「グラップル」でとっ捕まえる!
第三が操るのは『知性ある存在を蝕む呪詛』しからば
成長したてめエにも覿面じゃアねエかと読みやすが
『いかがでしょう』?ヒヒ!
あっし自身はギリギリで腕足尾をパージ、離脱狙いです。



『我を恐れよ。我こそは世界を喰らうもの。すなわち汝らを貪るものなり。
 ――来たれ我が同一者達よ。我が敵対者どもを喰らい尽くし、献上せよ』
 大魔王ウームー・ダブルートゥの号令に従い、いくつもの幻影が現れた。
 幻影? 否。それは幻などではない……実体を持ち質量を持つ大魔王そのもの!
「さすが大魔王、セリフのスケールが大きい。……でも、ふざけるなよ。
 世界はお前のものじゃないし、ボクらはお前の贄なんかでもない!」
「しかしこいつア厄介ですぜエ……ヒヒ、これだから強敵相手ってのはア」
 殺気立つ夕凪・悠那をからかうように、バルディート・ラーガが言った。
 しかし飄々としたドラゴニアンの男にも、余裕や油断は一切ない。
 彼らが相対するのは第五の大魔王、モルトゥス・ドミヌス。
 そしてバルディートの戦ったことがない、第三形態セレブラム・オルクス……!
「そうやって勝ち誇っていろ、僕ら猟兵が、貴様の傲慢をへし折ってやる!」
「……二度も居場所は奪わせない。悪いけど、この場所は譲れないのよね」
「いわゆるボスラッシュってヤツかぁ? まったく派手なこったぜ」
 館野・敬輔、そして才堂・紅葉の前にもふたつの異形が現れた。
 魔女どもを捉えし第四の大魔王、ラクリマ・セクスアリス。
 一方紅葉だけを睨みつけてごるるる、と唸るのは……第二形態レオ・レガリス。
 玉ノ井・狐狛はどうやって彼らを支援すべきか思案し、そして舌打ちした。
『――もはや汝らに逃げ場はない。絶望するがよい』
 大魔王は巨大な繭の迷宮によって周囲を包み隠してしまったのだ。
 複雑怪奇な迷宮は、それぞれの猟兵を隔離し孤立させてしまう。
 そしてウームー・ダブルートゥの言葉通り、もはや逃げ場は――ない。

 ……ならば、諦めるか? 否!
 誰もがそう思っていた。そう、たとえば紅葉のように。
『どうした! 勇ましいのは言葉のみか? なんと他愛のないことか!!』
「暴虐の化身がよく囀るじゃない。まだ終わりじゃないわよ……!」
 暴力を獣の形に捏ね上げたようなレオ・レガリスの、すさまじき猛撃。
 紅葉は己の宿すコード・ハイペリアの封印を解いて立ち向かうが、分が悪い。
 大魔王のいくつもの形態の中で、レオ・レガリスはもっとも物理に特化した形態。
 それがユーベルコードによって召喚されたものであれ、膂力は絶大。
 拳銃の弾丸などものともせずにまっすぐチャージを仕掛け、紅葉を吹き飛ばす。
 もしも彼女が斃れたならば、そのまま前脚で踏みつけ引き裂くだろう。
 だが見よ。紅葉は血反吐を吐き捨てながら、かろうじて踏みとどまっている!
『……ほう』
「言ったでしょう。私はもう、この場所を奪わせない。二度と!!」
『よくぞ吠えた! それでこそ我が喰らうに足る獲物なり!!』
 竜巻のごとき突進が来る。紅葉は退かず避けず、真っ向から組み合う!
 骨が砕け肉が裂けようと、意地が、気力が彼女を斃れさせない。
 とうに肉体の限界を越えようとも――!

『なるほど。お前はこれまでの私以外の形態を滅ぼしてきたか。
 未知たる私に恐れを抱く。それもまた、知的生命体の必然であろうな』
「ヒヒヒ……さアすが大きなお目々をしてるだけはありやすねエ。ご明察、ご明察」
 一方、バルディートとセレブラム・オルクス。
 大魔王の指摘に対し、蛇めいたドラゴニアンは飄々と喉を鳴らし頷いた。
 一度打倒した形態に恐れを抱くほど、彼はやわな男ではない。
 しかし時として、未知という恐怖は人をたやすく脆弱にしてしまう。
 ましてやそれが、恐るべき呪詛と魔力を持つ怪物の如き異形ならば……!
『猟兵よ。私はお前達の奮戦を評価しよう。敬意を識っていればよかったのだがな。
 ――ゆえにお前は必ず殺す。我が呪いはいかなる毒よりも重く苦しいぞ……!』
「おっかねえでやすねエ、っとォ!!」
 バルディートは言い終わらぬうちに地面を蹴って駆け出した。
 直後、彼の居た場所から動脈血めいた、おぞましい魔力が噴き出す。
 巨大な単眼がバルディートを睨む。目に見えない呪詛が彼を絡め取る!
 バルディートはどう攻める? その狡猾さでどう呪詛を上回る。
 ……見よ! バルディートは――大魔王を無視し、逃走を測ったのだ!
『!? 目的は私ではなく、"我"か!』
(まったく察しがいい。さアて、このままうまく引き込めりゃ……)
 すぐ背後から迫る呪詛の気配に冷や汗をかきながら、バルディートは迷宮を走る。
 必要な材料は揃った。あとは目的のウームー・ダブルートゥを発見するのみ……!

 そして敬輔は、ラクリマ・セクスアリスを相手に苦戦を強いられていた。
 彼のプランは、あくまで第四形態を無視し本命の最終形態を叩くことだった。
 迷宮が形成されてしまった以上、本体を探すのには時間がかかる。
 あるいは相手が第四形態以外であれば、出し抜くことも出来たかもしれぬ。
 しかし思い出してほしい。ラクリマ・セクスアリスの持つ権能を!
『ハハハハハ! 魔女どもの力が我に教えているぞ。貴様の動き、狙いをな!』
「……やっぱり貴様は厭なヤツだよ。その悪辣さも、厄介さもな!」
 そう、体内に取り込んだ魔女達の異能を利用した予知能力である。
 敬輔の思考は見透かされ、彼は徐々に徐々に追い詰められていたのだ。
 ならば、もはや仕方ない。搦手で太刀打ちできる相手ではないだろう。
 敬輔は躊躇なく己の寿命を燃やし、高速移動に突入した!
『ほう、魂を焚べて力を得るか。定命の存在らしい短慮さだな!』
「黙れ。人の命をなんとも思わない貴様に、俺の覚悟を揶揄される筋合いはない!」
 振るわれる巨大な腕を避け、黒剣でタールめいた異形の肉体を切り裂く。
 声なき悲鳴をあげて絶命する魔女達の最期を、その目に焼き付けて。
 もはや彼女らのような悲劇を繰り返させるわけにはいかない。
 なんとしてでもこの幻影を乗り越え、本体を討たねばならぬのだから!

 ……そして、悠那。
 ゲームキャラクターの衣装……聖なる騎士の甲冑で己を鎧った彼女は、
 覚悟を決めた眼差しでモルトゥス・ドミヌスを睨んでいた。

『愚か』なり! 『安楽』を『放棄』し、なおも『抗う』とは!!
『我ら』は『裁定者』であり『喰らうもの』。『贄』に『勝てる道理』は『なし』!!

「……そういうところだよ。お前達はずっとそうやってボクらを見下してきた。
 世界を喰らうだの、希望を奪うだの、勝手なことばかり言い続けて」
 鋭き破魔の剣を握りしめる手に、みしりと力がこもる。
「ボクはお前を……お前らを絶対に認めない。だってボクは、猟兵だ。
 お前みたいな"大魔王"なんて、もう何百回も斃してきたんだからなッ!」

『否』! 『汝』の『生』はここで『終焉』を『迎える』のだ!!

「言ってろ! なんてことないゲームみたいに踏破してやるよ、大魔王!」
 空気を飲み込み唸る不穏な両手が、鉤爪めいて悠那を襲う。
 触れること自体が致命的なそれをかろうじて躱し、悠那は聖剣を振るった。
 後ろには退かない。進むべきは前であり、この敵はあくまで道程に過ぎぬ。
 大魔王なんてものは、最期には勇者に倒され消えていくものだ。
 そうして世界はハッピーエンドを迎える。誰もが飽きた王道の中の王道。
 だが、それでいい。絶望がすべてを喰らうバッドエンドなど彼女は認めない。
 絶対に。……絶対に! その意気が、第五魔王を凌駕する!

『何故』だ!? 『裁定者』たる『我』が……!?

「――お前の動きはもう学習したよ。さっさと消えろ、モブ野郎」
 眩く輝く聖剣の一撃が、第五の大魔王を呑み込んだ――!

 ――まどろむように目を閉じていたウームー・ダブルートゥが、瞼を開いた。
 直後。昏き迷宮が、外から降り注ぐ星の如き魔弾によって崩されていく。
 凍てつくような眼差しが射すくめる先――大魔王を見下す男がひとり。
『我が迷宮を滅ぼすなど、なんと無粋で愚かな猟兵か』
「迷宮だけで済むと思うな。俺達はお前を滅ぼしに来たのだからな」
 その男――アルトリウス・セレスタイトは、うっそりした声で言う。
 身振りすればそれだけで無数の魔弾が生まれ、そして降り注いだ。
 ウームー・ダブルートゥはしかし、絶大な魔力障壁を張り魔弾を相殺。
 余波によって迷宮が崩れていくなか、なおも傲岸不遜な態度を崩さぬ。
『望みもなく、願いもなく、祈りもしない者では我を滅ぼすことは出来ぬ』
「……その是非をいちいちお前と論議するつもりはない」
 アルトリウスの謎めいた物言いに、大魔王は眉根を顰めた。
「"その必要もない"」
『なんだと?』
「――お前を滅ぼす者達がここにいることを忘れたか?」
 大魔王は訝しみ――そして背後から襲いかかる殺気に振り返った。
 紅葉だ! 血まみれで満身創痍だが、その目には戦意が漲っている!
『我が第二の形態を討滅しここまで来たか!』
「当然でしょうが! 地の底に還りなさいっての!!」
 抉りこむようなジャンピングニーを、大魔王はクロスガードで受けた。
 巨体をして衝撃を殺しきれず、ざりざりと大きく後退する。
 紅葉はさらに空中を蹴って接近。ハンマーのような踵落としを見舞う!
『なんだ、これは? 汝はもはや満身創痍。これほどの力はないはず』
「そうね、私だけだったらそうだったでしょうとも!」
 その答えは、くすりという皮肉めいた笑い声が知らせた。
 いつからそこにいたのか。呪符を指に挟んだ狐狛がひらひら符を揺らす。
『貴様……!』
「悪いねェ。だが最初にふざけた小細工を弄したのはアンタのほうだぜェ?
 ――だからアタシもやらせてもらったよ。たっぷりと、強化(バフ)をな」
 然り。狐狛の発動した"天元"の術式が、猟兵達に力を与える。
 都合60回の複合能力強化! 身体を、精神を、魔力をたぎるほどに!
「知ってるかィ? 退魔の符にゃア決まって同じ文言が書き込まれるんだぜ。
 ――急急如律令(とっととくたばれ)ってな。アンタにゃ似合いだろう!」
『小賢しい真似を……!!』
「おっとォ! アタシに殺意燃やしてる場合かねェ!?」
 紅葉の連撃! 大魔王は体勢を崩しかけ、そこに一陣の風が吹き込んだ。
 魂を燃やし速度に変えた、敬輔による激烈な斬撃である!
 衝撃波を伴う黒剣の刃は強靭な前脚を叩き切り、体幹を揺るがす!
『ぬう……!』
「貴様の弱点は、そうやって俺達を獲物だと見下し油断していることだ。
 猟兵(おれたち)は諦めが極めて悪いのさ。どんな敵でも諦めないほどに……!」
 大魔王は敬輔を魔力波によって吹き飛ばそうとする。
 だが、なぜだ? 突如見えない糸に絡め取られたように体が動かぬ!
「ヒヒヒヒヒ! やアっぱりなア? どうですかい、ご自慢の呪詛は!」
『……!!』
 バルディートが絡みついている! その身を地獄の炎へと変えて!
 さらに彼を追って呪詛を迸らせたセレブラム・オルクスの膨大な魔力。
 知性ある存在を呪うその力は、知恵を得た大魔王当人にすらも作用するのだ!
『我が形態の力を我に振るうなど……!』
「"いかがでしょう"? ヒヒ! あっしの焔も喰らってくださいやア!」
 腕を打ち振るおうとする大魔王に先んじ、バルディートは腕と尻尾を切断。
 燃え盛るそれは呪詛とともに大魔王の体を縛る枷となり……そして!
「――もらったよ大魔王。そんなに腹が減ってるなら好きなだけ喰らいなよ」
 聖剣を輝かせ、稲妻じみた速度で来たる少女。悠那!
「ボクらの怒り。お前をぶっ倒すっていう願いの力を――!!」
『お、おおおお……ッッ!!』
 打倒の意志を籠めた刃が、長く伸びて大魔王の胴体を斬り裂いた。
 祈りでも願いでも望みでもなく。
 必ず敵を倒すという、揺るぎなき確固たる意志とともに!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

鳴宮・匡
【アサルト】


希望、なんて持たなくたってきっと生きてはいけただろう
……それでも、それはただ息をしているだけだ
昔の俺は、きっとそうだった

【静の流影】で全身を覆う
この影は、相手の攻撃の特性を殺せる
迷宮の影響も一時的なら無効化できるだろう
あくまで一時的だ
お前の切り札が頼りだぜ、ヴィクティム

音の反響や視認できる範囲の構造から
迷宮の構造を把握して出口を探り進行
接地や壁に触れざるを得ない場合は“影”を厚くして対応

常に敵の襲撃は警戒しておき
回避を軸に、避けきれない時は打点をずらして受け
ヴィクティムへ相手を向かわせないように凌ぐ
あいつの準備が整ったら反攻開始だ

もう、生きることを諦めたくはない
――だから、勝とうぜ


ヴィクティム・ウィンターミュート
【アサルト】

迷路の発生は止められない
触れれば若返る…つまり、積み上げた経験が失われるか?
攻撃は瞬間的なサイバネ【ハッキング】で神経をオーバーロード、回避する

さて、『願い』を始めよう
腹が裂けるほどの願い…食いきれると思うな

Void Link、スタート
『Void Beg』
人間性と命を食い潰し、骸の海よ…深く繋がれ
積み上がった過去を求めて、深く…広く
大魔王に食い荒らされた全ての憎しみと恨みを、掬い上げる
奴を殺す力を、こいつらに…いや、『俺達』に
今日は大盤振る舞いだ!一時主役を張ってやる!

『産み直しの繭』が何だ?触れる前に斥力と障壁で弾く
さァ行くぞ!大魔王…絶対的エースを殺す為の!
ジョーカーを掲げろ!


ネグル・ギュネス
【アサルト】
触れれば──か
では、まずはその利点を潰させて貰おう

【スターダスト・トリガー】起動、…変身。
俺が背負いしモノを、貴様如きが食い散らかせると思うな

飛翔し、迷路を飛び回る事で触れないように移動及び接近
攻撃や迷路の狭い箇所はしっかり見切るか、武器で受け弾いてやるとも

貴様は強い、強いだろう!
だから、スターダスト・トリガー逆巻き、限界を超え、封印を解き、身体が悲鳴を上げるような無理やりな軌道を描きながら飛び、破魔の弾丸を乱射してやる!
残像を利用し、まるで分身からも射撃されているようは錯覚を味わえ!

願いを抱き、望みを背負い、祈りを力に生き抜く!
それが猟兵で、人間だ!人間わや舐めるなよ魔王!



 大魔王は云う。
 希望――願い、望み、祈りこそが知的生命体を知的生命体たらしめるのだと。
 望みとはすなわち欲であり、エゴであり、何かを奪い踏みにじる力だ。
 ヒトは、世界は、時間という有限の資源を浪費して三次元的に未来へと進む。
 この世界に――否、宇宙において、何かを犠牲にせず生きられない者はいない。
 その中でもヒトら知的生命体は、多くのものを糧とする。
 より良き生活を願い、
 より優れた未来を望み、
 より確かな幸福を祈って。
 だからこそヒトは素晴らしい。
 だからこそヒトは愚かしい。
 ――望みがないならば、それは獣も同然……いやさ、それ以下だろう。
 生きているだけのモノをヒトとは言うまい。
 生きるためにすべてを犠牲にするモノも、ヒトとは言いがたいが。

 であれば、いまの鳴宮・匡は間違いなく"ヒト"であるだろう。
 懊悩を知り積み上げた犠牲と罪に苛まれ、己は人でなしだと云う。
 無知の知と同じだ。皮肉にも彼がそう己を定義すればするほど、
 本来の"凪の海"にはありえないはずのエゴは確立され、彼をヒトたらしめる。
 泥を食むような生が途方もなく苦しく、辛く、哀しいことを彼は識っている。
 ただ――それでももう、匡は生きることを諦めたくないのだ。
「だから、勝とうぜ。こんな奴に、何もかもを喰わせるのはもったいないだろ」
「当然だ。オレは決して認めるものか。さあ来い、大魔王ッ!!」
 匡の放った弾丸と、それに付着した影が、彼らを包む迷宮の全容を明らかにする。
 さながら昏い深海に、一筋の光が差し込むかのように。
 ゆりかごのような繭に包まれ、傷を癒そうとしていた大魔王の姿を!
 そしてそれを睨み、ネグル・ギュネスは吠えた。打倒と敵対の意志を。
 鋼を、生身を、肉体を星の如き蒼き輝きが覆い、稲妻に変じて大地を這う。
 輝きはやがて綺羅星のような装甲に変わり、気高き男を鎧うのだ。
 ネグルは変身完了と同時に大地を蹴り、むしろ逆に大魔王に挑みかかった。
 先制攻撃? 若返りを強制する呪いの迷宮? 知ったことか!
『貴様は強い、強いだろう! だが! それでも!! 何も奪わせはせん!!』
『猟兵……そこまでして我を滅ぼさんとするか……!』
『そうやってオレ達は歩んできた。そしてこれからもなァ!!』
 ごうっ!! 矢のようなまっすぐな蹴撃、そして影の弾丸の雨!
 大魔王は魔力障壁と翼を盾めいて閉じることで、この二重攻撃を防いだ。
 そしてさらに迷宮を拡張・展開し、その術式の"層"を深める。
 装甲を纏おうと影で鎧おうと、けして抗えぬ呪いで絡め取るために。
 脆弱な知的生命体など、赤子に戻ってしまえばなんの価値もないゴミクズだ。
 積み上げた知識を、過去を、何もかもを漂白するために繭で包もうとする!
「くれてやるかよ。俺の願いも望みも、くそったれな過去も全部な。
 テメェみたいな三下野郎にゃ、もったいなくて値段もつけられねぇよ!!」
 覆いかぶさるようになだれ込む繭と呪いに抗うのは、端役の意地!
 ヴィクティム・ウィンターミュートは己の持つ電脳魔術で力場を形成し、
 かりそめの迷宮を内側に築き上げることで大魔王の圧力に抗った。
 大魔王は瞠目し、この小癪なハッカーをまず最初に殺そうと荒ぶった。
 波濤のような突進と猛撃。ニューロンを焼け付かせ見切り、躱す。
 触れられれば死ぬ。己にはネグルのような気高さも、匡の死神めいた目もない。
 ならばどうする? 諦めるか。勝利を。未来を! ――否!!
「骸の海よ、俺の命と人間性をくれてやる。応えろ。応えろ!!」
『何をしている? 認めぬ! 知的生命体が我を滅ぼそうなどと!』
「――邪魔をするなよ。お前の相手は俺だろ」
『いいや、"オレ達"だ!!』
 滅びの影弾と青白き星の光条が螺旋のように重なり放たれた。
 ネグルの怒りを、匡の渇望を乗せて、魔力障壁を切り裂き白影が迸る。
 大理石めいた大魔王の肉体を貫き、その暴威をも"殺して"しまうのだ!
『どうだ、相棒? オレの射撃もなかなか様になっているだろう?』
「いま云うようなセリフかよ。――けどまあ、悪くはないさ」
 男達は笑みめいた声音で言い、なおも輝きを、影を、弾丸を放ち続ける。
 大魔王は獣じみて雄叫びをあげ、体が削れるのも厭わず突撃した。
 弾幕がそれを押し止める! そうとも、今日はとっておきの晴れ舞台なのだ。
 間隙をこじ開け流星が穿つのではない。
 不意を打ち死神の鎌で首を刈り取るのでもない。
「ヴィクティム、お前の出番だぜ」
『答えろよ。お前の願いはなんだ!?』
 虚無を通じて骸の海と接続したヴィクティムは、深く息を吸い、吐いた。
「勝利だ」
 もう一度云う。
「俺は勝ちたい。何をしてでも! 命も人間性もいくらでもくれてやる!!
 ――今日は端役としてのプライドも支払ってやるよ。大盤振る舞いだ!!」
 主役はこの男。虚無を通じて数多の呪いと憎しみが殺到する!
 大魔王は再び瞠目した。それは願いではない、望みではない、それは……。
『過去(われ)を、過去を以て滅ぼすだと? なんたる愚かさ!』
「テメェを恨めよ。あるがままに喰らい奪ってきたその愚かさをな!」
 多くの者が願いを、望みを、祈りを奪われてきた。
 その無念がここにある。形ある虚無はくろぐろと燃えていた。
 ヒトには耐えられぬそれを直視する。己の過去と対峙した死神のように。
 ヒトには背負いきれぬそれを汲み上げる。未来を信じ進む騎士のように。
「さァ行くぞ! 絶対的エースを殺すための、ジョーカーを掲げろッ!!」
 影が渦巻き星が燃えた。それは世界そのものを照らし呑み込む光/闇だ。
 大魔王は魔力を放つ。虚無が拒絶した。くろぐろとしたそれは"主役"の片腕へ。
『あり得ぬ。我は世界を喰らうもの。願いを、望みを、祈りを貪るもの!』
「だから、俺は殺しに来た」
 死神は言った。
『人間を嘗めるなよ、大魔王』
 鋼を纏う男は言った。
「――そして、"だからこそ"テメェは敗けるのさ。当たり前のようにな!」
 ヴィクティムの振るった拳が、星の輝きに照らされ影を長く長く伸ばした。
 大魔王の断末魔をも、その存在をも飲み込み、虚無が迸る。
 声援はない。戦いの終わりはいつも、血生臭く疲れ果てたわびしいものだ。
 けれども鋼の男は、ハッカーは吠えた。匡はしかと滅びを見つめた。
 それこそが生であり、前へと進むおのれらの支払う犠牲なのだと。
 その意志は、簒奪者ごときには決して奪えず、喰らい尽くせないのだ。

 そしてこれこそが、大魔王にとっての第二の滅び。
 世界を喰らうものは、それゆえに当然のように死するのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 願いと望みと祈りがある限り、我は滅びぬ。
 だが知的生命体の希望こそが我を追い詰め、滅ぼしつつある。
 我が知恵をもってしても、この度し難き矛盾は理解できぬ。
 やはり白痴がよい。あるがままに喰らい貪る性こそ我にとっての至高。
 しかし。
 この身に燃えるこの感情が、知的生命体の云う"憎悪"ならば。
 我はこの存在を炎に焚べ、彼奴らを滅ぼし喰らい尽くそう。

 天敵どもよ。
 我は汝らがなにゆえに天敵たるかを、真に理解したり。
 あるがままに奪われ、死ぬがいい――!!
紅呉・月都
アドリブ歓迎

あ?俺の願い?望み?祈り?
テメエの餌になるってわかってんのに教えるわけねーだろ
頭わいてんじゃねえの?
敵の糧となる希望は断固として伝えずに戦闘開始

願ってどうにかなるもんじゃねえ
今、自分が持ってるもんで護りたいもん護んだよ
これはテメエが欲しがってる物じゃねえ
俺の決意だ!!
戦闘知識を利用し、敵の動きを見切って攻撃を回避
回避出来なければ武器で受けなぎ払い、致命傷は避ける
受けた傷の痛みは激痛耐性で対処

他人の希望喰うことしか頭にねえ奴に俺らは負けねえ
死ぬのはテメエだ!!
味方が与えた傷を抉るように部位破壊、気絶・マヒ攻撃を重ねる
怪力を使った鎧無視攻撃で串刺しに

ヒトの希望を喰らう災厄は失せろ!!!



「おぉらァッ!!」
『――……いじましきもの。その足掻きもまた心地よい』
 紅呉・月都の裂帛の気合を籠めた斬撃を、大魔王はたやすく受け止める。
 その身は倍近くに膨れ上がり、この世ならざる威圧感を放っていた。
 刃が肉を貫くことはなく、応報の一撃が月都が叩きのめすのだ。
「っづぅ……!! テメエ……!」
『我は見抜いている。汝の願い。望み。祈り――我を討つという希望を』
「……そうかよ。大魔王サマのお目々はお見通しってわけだ」
 言葉にしようとすまいと、彼奴の双眸は敵対者のそれを識る。
 ゆえにこそ大魔王は強大なオブリビオン・フォーミュラなのである。
 だが、それならそれでいい。月都は心を整え刃のように鋭くした。
 敵が己の敵意を糧にするとしても、この身を突き動かすのは願いなどではない。
 祈り、望むだけで物事が叶うなど、そんな都合のいい話はない。
 月都を突き動かすもの。その根幹に宿るもの。それは――。
「テメエのような野郎を滅ぼすっつう、俺の決意だ!!」
 月都は走った! 魔力波を刃で叩き切り、活路を拓く!
 反動がその身を斬り裂いてなお斃れず前へ。敵を倒すために、前へ!
『――異なり。なぜそうまでして我に抗おうとする?』
「抗う? 違うな、俺は! テメエを! 斃しに来たんだよッ!!」
 刃を炎が覆う! 大魔王の繰り出した殴打と交錯し――命中!
 月都は衝撃を受けて壁に叩きつけられるが、大魔王も無傷ではない。
 いや、傷は重い。斬撃はその完璧な均整の取れた肉体を裂いていた。
 傷口は燃え上がる炎によってけして癒えず、そして……これは。
「……まだ、終わりじゃねえぞ」
 焼け付くほどの紅焔の鎖が、傷口と月都とを繋いでいた。
 月都は立ち上がる。そのさまを大魔王は傲然と見下ろし――否。
『……猟兵。我らの天敵。なるほど、これが汝らの強みか』
 対等な敵として、然るべき敵意を以て見据えた。
「ヒトを脅かす災厄を滅ぼす。俺はそれを為すまで、斃れねえ……!」
 ボロボロの有様で炎を燃やす月都の意気は、それほどまでに強かったのだ。
 燃え上がる鎖が、いま、男と始原の残骸とを対等の戦場に縛り付ける……。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

カタラ・プレケス
アドリブ歓迎

……嗚呼、本当に純然たる悪は眩しすぎる
でも、君の言葉に誇りはない
何処までも単純で軽すぎる
なら、全霊をもって滅ぼそう

願いは自身の敗北 望みは自身の損傷 祈りは自身の破壊
それが勝利だと自らを騙せ
思考を呪ってそうだと信じろ
そうして相手を自滅させろ
そしたら駆けろ
鈍い身体を無理やり動かせ
傀儡の呪詛で限界を超えろ
そうして触れろ触れれば死だと思い込め
触れたら最後に全てを解いて思い出せ
思い出したら武器で傷を与えろ
血さえ出たなら掠り傷でも構わない
そうして触れたまま【刹那の永遠】発動
例え僅かな出血でも治らないまま六千年たったなら
致死量超えての致命だろう
「それじゃあ、一秒先の六千年後にさようなら」



 大魔王ウームー・ダブルートゥは、超常の瞳で希望を見透かす。
 言葉を弄そうとかき乱そうと、願いを抱き望み祈るならばすべてわかる。
 だからこそ彼奴はそれを喰らい力とする――出来るのだ。

 ゆえにカタラ・プレケスは、己を呪い思考を覆い隠した。
 願いは敗北であり、
 望みは傷であり、
 祈りこそは己の破滅であると。
『我が眼を惑わすなど、贄に許されることではない』
 大魔王の魔力がカタラの精神をメスのように抉り、こじ開ける。
 カタラは己の体をも呪う。血を吐き、腐らせながらそれに抗う。
 なんという矛盾。そして苦行。だがそれは効果的だった。
 大魔王がその真実を穿つより先に、カタラの指先は届いたのだから。
 心と体を呪詛に浸し、偽りの破滅を願い、ただそのままに傀儡めいて跳ぶ。
 穿ったのはかすり傷に過ぎない。されどもたらされるのは永劫に等しく。
「……純然たる悪は、本当に眩しいものだ」
 明らかな不吉な気配を訝しむ大魔王に対し、カタラは言った。
「けれど、君の言葉には大事なものがない」
『なんだと?』
「――誇りだよ」
 青年は言った。
「どこまでもシンプルで、透き通るかのように眩しくて――だからこそ単純だ。
 そして、軽すぎる。悪意も、信念も、拠って立つものがなにもありはしない」
『…………』
「ならぼくは全霊をもって滅ぼそう。君の無為な破壊を否定しよう。
 空っぽの虚無に喰らい尽くされていい世界なんて、どこにもないんだから」
 呪詛よここにあれ。我が身を侵した破滅をいまこそ彼方へ。
「――それじゃあ、一秒先の六千年後にさようなら」
『……!! こ、れは……!!』
 "刹那の永遠(カウントゼロ)"。
 永劫に等しい時間経過の呪いをもたらす破滅的な一撃。
 大魔王の傷は爛れ腐り広がりその身を犯す。
 大魔王は、慄いた。そして呪いの根源たるカタラを吹き飛ばした。
 もはや彼に意識はない。だが呪いはここにある。払いきれぬ呪いが。
『……これが、知的生命体の持つ悪意。希望でも絶望でもない意志なのか……!!』
 苦痛に悶える大魔王の声音は、超越者に非ざるほどに震えていた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アイリ・フラジャイル
何が魔王よ
頼れる仲間が倒された自分自身だけなんてね

ガジェット起動、マシン展開
人型兵器は先の戦いでボロボロ――分かってる
もう最大稼働する程の余力が無い事は

同時に次元障壁展開、これで時間は稼げる筈
私だけじゃない、皆の魂の一撃を当てる為の時間よ
己を鼓舞して敵の動きを学習し
召喚された魔王の攻撃を全て私へ!

操縦してるガジェットの人型兵器は精々破片除け
その武器受けで直撃を避けて
高速移動の残像で本体からの攻撃を散らし
敵の足元へ――狙いは赤い宝玉!

辿り着いたら機体を空中へ飛ばし
その中から飛び出て剣の封印を解き
限界を超えて捨て身の一撃で砕いてやるわ

それまでどんな攻撃も耐えてみせる
お前を倒す為に生まれたのだから!


レティス・シェパード
(アドリブ・連携可)
大魔王の最終形態…!学園で常々噂されてた存在が目の前に…!
お、臆してばっかじゃいられね…です!この時のために学んできたんだから!

繭の迷路が張り巡らされたら『シンパセティック・ホーン』と<第六感>で出口を探ります。
繭の破壊は安易でなくとも、<念動力>で繭を動かし退けながら、繭に囲まれ包まれる前に突破したいです!
…相手は最強の大魔王、この迷路を抜け出せないまま終わるかもしれません。
それでも主が授けてくれた、今この瞬間の思考を動かしている炉心は守り抜きます。
此処まで積み重ねた思い出を、それを幸福だと感じる心を奪われるのは嫌だから…!
【召喚術・天の寵児】!この心は誰にも渡しません!


霧枯・デスチーム
【2m半のガジェット・ブラザーに乗って行動 アドリブ・協力歓迎】
「嵐ってワクワクするよな、ブラザー」
『男の子ですからね、ガージは』
いつも通りだ。違うのはヤバさだけ。

POW
願いはダンジョンで死んだガジェット乗りの仲間達の安息。
それが相手になるなら本望だぜ。生き残りの自分への報いとしてはこれ以上ない。

敵の攻撃を全能力を駆使して反撃し受け躱し、ユーベルコードを使用してでも近づき、【鎧無視攻撃、捨て身の一撃】を混めたパイルバンカー銃剣を叩き込む。
「戦うぜ!アルダワのデスチームは最後まで!それがケットシーの、霧枯の恩返しだ!」
このアルダワに証明してやる。あいつらの死が無駄じゃ無かった事を!



 いにしえの蒸気勇者達が築き上げたファーストダンジョン、この迷宮。
 その堅牢さと入り組んだ構造、そして大魔王の強大さが伝えている。
 彼らの勇ましさ、犠牲の多さと、その覚悟を。
 同じように仲間達に先立たれた身の霧枯・デスチームにとって、
 顔も知らぬ"先達"のその死闘は、想いを馳せざるを得ないほどに重かった。
 一方のアイリ・フラジャイルもまた、大魔王を倒すために生み出されたモノ。
 ゆえにこそ造られたモノであるその身に燃えるような敵意と決意を乗せて、
 アイリはこれまでの戦いを死物狂いで駆け抜けてきた。
 己の存在が、そして為すべき使命が数多の犠牲の上に成り立っているならば。
 かの邪悪、なんとしても討ち果たさねばならぬと心に誓って。
 ……そんな二人に比べれば、レティス・シェパードは平凡なものだ。
 彼ら彼女らのように勇ましく飄々とは在れないし、今だって怯えている。
 けれども。自分だってこのアルダワの一員で、そして猟兵なのだ。
 世界の存亡を賭けたこの大勝負。臆したまま見守っていていいのか?
 否。断じて否! 人形たる少女にも、張るべき意地と根性があるのだ!
 だから彼女は戦場にいた。逃げるためでも地を這うためでもない。
 勝つために。大魔王を滅ぼすために、ひとりの猟兵として!

 天蓋めいて戦場を覆う、呪われし繭の迷宮。
 その中を闊歩するには、大魔王が召喚した数多の形態である。
 すなわちこれまで猟兵が討ち滅ぼしてきた、大魔王の一側面にして強大な敵!
 黄金のアウルム・アンティーカは強大な魔導砲を放ち、
 獣の化身たるレオ・レガリスは暴威を振るい獲物を引き裂く。
 セレブラム・オルクスの呪いは生まれ変わりすら許さず敵を腐らせ、
 魔女を捕らえしラクリマ・セクスアリスは未来を見通しそして捻じ曲げる。
 裁定者を嘯くモルトゥス・ドミヌスの言葉は、現実すらも捻じ曲げる。
 そして君臨する大魔王。誰がこんな軍勢を突破できるという?
 ――否、違う。突破するのだ。命を賭けてでも!
 魔王どもの暴威が来る――それを防いだのは、アイリの次元障壁!
「来なさい、大魔王ども! 私を滅ぼしてみなさい!」
「!? ま、待ってください! それはいくらなんでも……!」
 アイリの無謀な言葉に、レティスは思わず声を荒げた。
 だが同じミレナリィドールである蒸気兵器は、振り返らず言う。
「大丈夫。これまで斃してきた敵にやられるほど、私はやわじゃないもの!」
『まったくワクワクしちまうナそのセリフ! そうだろブラザー!?』
『男の子ですからね、ガージは。なら、やるしかないでしょう』
 ゴシュウ、と人型ガジェット・ブラザーが蒸気を噴き出す。
 コクピットに乗るケットシー――すなわちデスチームは、笑っていた。
 なんとしてでも攻撃を届かせるしかあるまい。ガジェット乗りの血がたぎる!
「そ、そんな……で、でも、それなら私だって……!!」
 次元障壁と数多の暴威がぶつかり合い、すさまじい輝きで迷宮を照らした。
 繭の放つ呪いは猟兵達を捉えようと鎌首をもたげている。
 若返りの力。それはすなわち抵抗すら出来ぬ過去への巻き戻りだ。
 勝負は一瞬――必要なのは、この迷宮を打ち崩すための数多の力!
『諦めよ。汝らに勝機はなし。頭を垂れ希望を差し出すがよい』
「……嫌です! 主が授けてくれた、この炉心(こころ)だけは、絶対に嫌!
 今日まで積み重ねてきた思い出を、幸せだと感じる心は、あげません!!」
『いい啖呵だ! それじゃあ頼むぜご同輩!』
『バーニア、フルバースト。吶喊します』
 ゴシュウ――デスチーム=ブラザーは一陣の風となり戦場を駆ける。
 そしてレティスは、祈るように己の杖を握り、願った。
 それが大魔王の糧になるとしても。喰らわれるよりも早く、もっと強く。
「来たれ。来たれ、災厄を祓う天の寵児。どうか私達を護って、道を開いて!」
 そして現れた天の寵児――白羊の群れが、デスチームに続く。
 この緊迫した状況に似合わぬ、ファンシーな見た目の羊達である。
 だが見よ。怒涛の羊達は戦場を、すなわち迷宮を踏破し壁を突破していく!
 アイリがかろうじて防ぐ大魔王どもの攻撃をも、何もかもを!
 産めよ。増やせよ。天の寵児達よ、地に満ちよ!
 敵が絶対の恐怖を以て、世界を絶望に塗り替えるというのなら。
 ありきたりなバッドエンドを否定し、何もかもを塗り替えし返してしまえ!
『なんだ、このふざけた獣どもは。このようなものが、我の分身を圧すだと!』
「……ふ、ふふ。あはははっ! そうよ、だって私達は猟兵だもの!
 あなたなんかは想像すらも出来ない力が、私達にはあるんだから!!」
 アイリは次元障壁を展開したまま、ボロボロの人型兵器を駆動させた。
 羊達の後押しを受け、デスチームとアイリの機体が肩を並べる!
『戦うぜ! アルダワのデスチームは最後まで!
 それがケットシーの、霧枯の恩返しだ!!』
「お前のもたらす絶望なんて――私達には、何も怖くないわ!」
 大魔王は分身達の力を吸い上げ、特大の魔力で二機を吹き飛ばそうとした。
 レティスは祈り続ける。どうか平和を。希望を。喰らいつくせぬほどの輝きを。
 己に力はなく、英雄のような勇気はなく、神のような権能もなく。
 ただそれでも、奪われることを否と叫ぶ心はここにある。
 ゆえに祈る。そしてその祈りこそが、願いを喰らう大魔王を討つ剣なのだ!
「う、ウチは、私は! あなたには絶対に、臆さねーです!!」
『……!!』
 気高く輝く少女の勇気が、鋼を駆る戦士達の背中を押す。
「行くわよ――私の全存在を賭けて! 私は使命を果たす!」
『アルダワに、テメエに! 証明してやる、あいつらの死が無駄じゃなかったと!』
 封印を解き放たれた黄金竜の牙が、奇跡もたらす刃が、大魔王を貫く。
 未来へと進もうとする若者達の意志は、残骸などには遮れない……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロク・ザイオン
★レグルス

(あまたのひとびとの、猟兵の、流した血と)
(それでも足掻く、咆哮と)
(おれを呼ぶキミの声が)

――《きこえた》!!!

(願い、祈りになる前の
いのちの叫びをおれが負おう
失くした言葉を紡ぎ直せ
おれは、おれたちは)

《“LEONIDS"》!!

(灼熱と紫電の流星群と共に降り
湧き出す全ての魔王を、軍勢を【薙ぎ払い】ジャックを【庇う】
砕いた地、崩れる迷宮を【地形利用、ダッシュ】
【野生の勘】で【鎧を砕く】一点を見抜き
第六の病の綻びに【早業】の一撃を
だっておれの相棒が、
標的の何ひとつ穿てずにいるはずがないだろう!!)

《たすけて》。
ジャック。
……きこえたよ。


ジャガーノート・ジャック
★レグルス

(第三・第四形態。必死の思いで倒した魔王達とまた対峙しようとは。)
(更に目前の第六形態。
いかに持てる技能全てを駆使し挑み戦い凌ごうとも、長くは耐えきれない。
あと一撃で自分は倒れるだろう。風前の灯火だ。)
(――が)

それでも。

何れだけお前が強かろうと。
何れだけ打ちのめされようと。

何一つ
諦める理由にはなりはしない。

思い出すが良い、魔王。
我々がお前達に齎した滅びを。

傷を負って尚諦めず
お前達を討つ為に征く我々の
闘志と未来を願う心を――!!

――さぁ、最後だ。
偶には逆もいいだろう。
(普段は此方が助ける事が多いのだから。)

キュウエンネガウ
"HELP ME".

――聞こえたか、ロク。
(ザザッ)



 四面楚歌とは、おそらくこのような状況を云うのだろう。
 第三の大魔王、セレブラム・オルクス。
 魂をも呪い腐らせる、恐るべき異形の巨体。
 第四の大魔王、ラクリマ・セクスアリス。
 電子の悪魔に代価を捧げ、それでようやく灼き尽くした強敵。
 それらふたつを同時に相手取るなど、そもそもが土台無理な話なのだ。
 ジャガーノート・ジャックはよく抗った。誰もが称える健闘だ。
 打ちのめされ、腐らされ、侵され、冒され、呪われてなお。
 鋼の獣は雷撃を迸らせ、無数の破壊兵器を模倣・複製し、吹き払った。
 倒れそうになるたびに兵士の仮面を被り、立ち上がり、抗った。
 抗った……抗い続けた。けして斃れまいと願い、望み、祈った。
 それこそが大魔王の糧である。なんともふざけた話だろう。
 斃れまいと希望を抱けば抱くほど、奴はそれを糧として強くなる。
 傷は癒えて存在格は膨れ上がり、攻撃はさらに苛烈となる。
 ……そして、首魁にして大敵、そもそもの討伐目標。
 大魔王ウームー・ダブルートゥ。すべての根源。始原たるフォーミュラ。
 それは無傷で、気だるげにジャガーノートを見下していた。
『そこまでか、鋼を纏う者よ』
《――……》
『汝の中にはいまだ希望を感じる。しかしもはや汝の体が音を上げたな。
 その絶望を我は喜ばしく思う。希望は、絶望の中でこそよく輝くゆえに』
《――……そうとも。本機の力はここまで。あと一撃といったところだ》
 淡々とジャガーノートは言った。それは、疑いようのない事実だからだ。
《――お前達は強い。本機の性能では、お前達を討つには至らなかった》
『では問おう――なぜそれでもなお、汝は希望を抱けている?』
 ジャガーノートは言った。
《――諦める理由がない》
『何?』
《――思い出すがいい、大魔王。我々がお前達にもたらした滅びの数々を》
『…………』
 ジャガーノートは顔を上げる。
 赤いバイザーが、眼光のように鋭く大魔王を見据えた。
《――傷を負ってなお諦めず。お前達を討つために征く我々の闘志を》
『そんなものは、まやかしに過ぎぬ』
《――否。我々の未来を願う心は、お前には喰らい尽くせない》
 もはやジャガーノートは立ち上がれない。
 君臨する大魔王とその化身どもは、まもなく彼を打ち据えるだろう。
 このままでは。だが希望は、潰えていない。
《――たまには逆の立場もいいだろう》
 鋼の獣は――少年はそう言って、短く通信を送った。

 "救援要請(HELP ME)"。

 ――直後!!
『何!?』
 KRA-TOOOOOOOM!!
 無数の流星群が、稲妻と灼熱が降り注ぎ、大魔王の分身を灼き尽くした。
 燃えるたてがみめいて髪をなびかせ、降り立ったひとりの女。
 その刃が呪わしき異形どもを薙ぎ払い、灼き尽くし、そして大魔王を襲う。
 大魔王は視た。希望の根源。鋼とともに立つ狩人。森を護る者。
 もはや彼女は言葉を持たぬ。それはすでに焚べてしまったゆえに。
 されど。その事実は彼女にとって絶望を意味しない。
 彼女には歩むべき"これから"があり、いくらでも取り返せるからだ。
 ――そう、少なくとも彼女の言葉は、取り返すことが出来るだろう。
 彼女の、言葉は。電子の悪魔の嘲笑は今は遠く。ここには届かない。
 それでいい。ここにあるべきは希望の灯火。相棒を救うための刃。
「……きこえたよ、ジャック」
 ロク・ザイオンは、相棒を振り返って微笑んだ。
 ふたりの間に言葉はいらない。鋼の獣は頷き、立ち上がった。
『互いの存在が、汝らの希望足り得るだと? 我はそのような願いを知らぬ』
《――願いではない。祈りでも望みでもない。これは、"絆"と云うのだ》
「…………」
 ゆえにただ肩を並べていればいい。それで、いくらでも戦う力が湧いてくる。
 刃を、銃を構え、いま星の名を持つ双光が屹立した。
《――第二ラウンドだ。喰らいつくせぬ希望の味を痛みとともに知れ》
 大魔王を射すくめる赤き眼光が、稲妻を伴い――再び、輝く。
 どれほど傷つこうとも、諦めることなく。何度でも、気高く雄々しく!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と

貴方は強い、他に比類無き程に
ですが…だからこそ、幾度となく敗れたのでしょう
一人で戦い続けた、貴方だから

【オーラ防御・盾受け】で守り【怪力・見切り】で受け流す
【第六感】で察知し万全な【継戦】を
只管に耐え延びて前進

剣となったナイくんを手に飛翔!
物語の英雄たちと並ぶ為に、何より愛した大魔王
本来『勇者』とは勝利を願われ、望まれ、祈られる者故に逆は無い
手繰るは己が元より持つ力のみ

ですが唯一願います、『艱難辛苦』を!!
無数の試練を越え!我らが真に『勇者』となる為に!

一人では乗り越えられない苦難も、誰かと共になら
この子が教えてくれたんです
―――覚(お)きて、【光束ねし綯剣】


ナイ・デス
ソラ(f05892)と

……孤独、ですね
喰らうもの。あなたと比べれば、私達は小さな一つ、でしょう
けれど
私達は、協力を。誰かの為と、託すことができる、です

喰らうのならば、どうぞ
【覚悟、激痛耐性、継戦能力】耐えて

私の願いは、望みは、祈りは
ソラの力となること、です!

『ソラの剣』発動
剣となって、ソラに力を、聖者の光を

剣化で五感失っても【第六感で情報収集】知覚し【見切り】
【念動力】で【オーラ防御や吹き飛ばし空中戦ダッシュ】など回避や
無敵の剣として防御サポートし

あらゆる攻撃に対しほぼ無敵の刃は、攻撃切り裂いて【鎧無視攻撃】
ソラの力にと
【生命力吸収】大魔王が、過去が、今に生る、在る為の力を奪う光を、輝き放つ!



 ぞぶり、と。
 ナイ・デスの体を獰猛な牙が貫き、そして肉を骨ごとこそぎ取った。
 大魔王は希望を喰らう。それは知的生命体の肉とともに。
 覚悟とともにその身を晒したナイの肉は、その通りに貪られた。
「ナイくん!!」
 盾を構えるソラスティベル・グラスランは声をあげた。
 血を流して倒れる少年の体を受け止めて、きっと大魔王を睨みつける。
 血を啜る邪悪は、何の感情も示さぬままに少女を見下ろした。
『美味なり。知的生命体よ、汝らの希望は昏き絶望のなかでこそ輝く。
 我を憎め。呪え。許さじと憤り、是が非でも斃したいと願うがいい。
 その望みが、祈りが、我にとっての糧となり、我が力となるのだから』
「……あなたは強いです。ほかに比類なきほど。これまでの誰よりも」
 ソラスティベルは言った。
「ですが……だからこそ、幾度となく敗れたのでしょう。
 ……可哀想ですね、大魔王。あなたは結局、どこまでも孤独なんです」
『……? 何を言っている。我はフォーミュラ。我は孤であり一である』
「そうですね。言葉を重ねたところで、決して伝わらないのでしょう」
「……それ、でも」
 ソラスティベルは、はっと少年を見下ろした。
 蒼白になりながらもナイは呼吸をたしかにし、少女を見返す。
 消滅をも踏破する再生能力を持つ生粋の"聖者"にとって、傷の多寡はない。
 しかしそれでもなお、希望そのものを貪る大魔王の簒奪は"効いた"。
 痛みよりも耐え難き喪失の恐怖がその身を、精神を脅かしている。
 常人であれば、立てぬ。並の猟兵でも喪失感に囚われ戦意を失っただろう。
 だが、ナイは立ち上がる。彼の希望はまだ、潰えていない。
「あなたと比べれば、小さな一つの私達でも……誰かと手を取り合い、託せる。
 誰かのために、祈り、誰かのために願い、望む……それが、私達、です」
『……他者のためにこそ希望を抱く。それもまた知的生命体たる所以か。
 だが、それも所詮我の糧である。ゆえにこそ我は汝らを喰らう者なのだ』
「いいえ」
 決然たる面持ちでナイは言った。
「私の願いは、望みは、祈りは。あなたには、喰らい尽くせません」
『……何?』
「――私の希望は、ソラの力となること、です!」
 聖者の輝きがあたりを満たす。そして少年は、一振りの剣となった!
 あらゆる攻撃にほぼ無敵にして、無限の救済をもたらす白亜の刃。
 輝きを内包するその剣を手に取り、ソラスティベルはこくりと頷いた。
「そうです。わたしひとりでは乗り越えられない苦難も、誰かと共になら……!」
『無益な行いだ。我を超えることは、出来ぬ』
「いいえ! やってみせます。なぜなら!!」
 ソラスティベルは剣を振るい、迸る魔力を切り払った!
 そして雄々しく翼を広げ飛翔する。盾を掲げ、襲い来る暴威を受け止める!
「わたしは大魔王(あなた)を、そして"勇者"を愛しています。
 物語の英雄と同じように、その存在を討ち滅ぼし、勇気を証明しましょう!
 ――わたしの願いはただひとつ英雄を英雄たらしめる無数の艱難辛苦です!!」
 試練よ来たれ。強大な敵と大いなる壁をもって我を阻むがいい。
 我は勇気を胸に、絆を繋いでそれを乗り越えてみせよう。
 この手の中に握りしめた、誰よりも大切なこの少年とともに。
 多くの仲間とともに。何度でも何度でも、絶望を払い前へと進もう!
 勇者。……勇者! なんたる忌々しき響きか!
 大魔王は本能的な怒りを覚えた。なんとしてもこれらを討たねばならぬと。
『戯言を言うな! 我は何者をも、世界をも! 喰らい尽くす!!』
「言ったはずです――それは出来ないと。この世界には、わたし達がいる!」
 聖なる光が迸る。与えられる傷を、暴威を退け、飛翔速度を増す。
 大魔王は溢れるほどの望みを喰らい、その身を一回り、否、二回りは膨らませた。
 ならばソラスティベルとナイが纏う光は、それをも超えるほどに眩い!
「この手にありしは一振りの光――」
『共に、在りしは、強き意志なり、です!』
 ソラスティベルの髪が、何者にも染まらぬ清廉の白へと変じた。
 瞳は赤く輝く。まるで少年と同じように。光がふたりをひとつとする。
 一心同体の境地。乗算された希望は大魔王の蚕食をも越え、ついに迷宮を満たす!
『これが……これが! 勇者の輝きなのか。なんと、なんと忌々しい……!!』
「――覚きて、"光束ねし綯剣(クラウ・ソラス)"――!!」
 不敗にして不諦、そして不滅たる光の魔剣が、いま、邪悪を切り裂く!
 神話に謳われる英雄のように、朝を告げる暁のように――!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

灰神楽・綾
【曙草】
希望、願いねぇ
俺は世界平和とか大それた事は考えてないな
大魔王様と楽しく殺し合いがしたいってのと
クロウと一緒に勝って帰れたら良いなってくらい

全方位からの先手攻撃に備え
無数のナイフを自身の周りに
バリアのように念動力で飛ばす
更にEmperorで武器受けで防戦
被弾は激痛耐性で耐え意識強く保つ

UC発動
残像発生させ縦横無尽に飛び回り
ナイフ放ち敵を妨害&牽制
クロウへの攻撃は紅い蝶が肩代わり
又は割って入ってでも庇い
負傷も厭わず盾役に徹するのが俺の役目

…で終わると思った?

ここからは俺を守ってねクロウ
流した血でありったけのFerrum Sanguis形成
四方八方から念動力で投擲
俺の血と心を込めたカウンター


杜鬼・クロウ
【曙草】

絶望を好むので無く
願望を喰らい糧とする敵は
あまり遭遇してこなかったなァ
猟兵(きぼう)を前にしたテメェはまさに真骨頂
最大限力を発揮させちまうたァ皮肉な話だ

ならば
幾ら喰らわれようが
其れを覆す
何度でも
その為に
此処にいる(剣振り下ろし

変わらねェな、お前は
愉しくなりすぎてコロっとヤられてンなよ
必ず帰る

綾のナイフ利用し自身かばう
敵の攻撃を剣でいなす
UC使用
防御力up

綾の身は案じず敵集中
炎と大地の精霊宿し玄夜叉の周りに砂塵と紅焔纏わせ目眩まし
硬化した砂尖らせ熔岩の粒を放ち
灼熱の剣で穿つ

俺に護られるか弱いお姫サマじゃねェだろうが

綾の渾身の血の投擲に合わせ
掻い潜り至近距離からの一打
心の臓中心に部位破壊



『寄越せ。汝らの希望を! 願いを! 望みを!! 祈りを!!!』
 咆哮。すさまじい威圧感を放つ大魔王が戦場を蹂躙した。
 降り注ぐ神の雷めいた獣の肢を躱し、灰神楽・綾は駆け抜ける。
 足を止めれば死ぬだろう。根幹的な存在力の差があまりにも大きすぎた。
 並走する杜鬼・クロウは長大な黒魔剣を担ぎ、無造作に横薙ぎに振るう。
 神殿の石柱めいた獣の肢は切り裂かれ――しかし、止まらない。
「餓えてるねぇ。追い詰められて腹が減っちゃったのかなぁ?」
「ハ。野郎にしちゃ猟兵(おれたち)は熟れた果実も同然のご馳走だ。
 辛抱が効かなくなったンだろうよ。だからって喰らわれるつもりはねェが、なッ!!」
 クロウは外套をはためかせ急ブレーキをかけ、剣を床に突き立てターンする。
 直後、彼のすぐそばから魔力波が噴き出す。地雷めいた罠攻撃だ。
 クロウはその勢いを殺さぬまま、床から抜き放った剣を弓なりに振るった。
 大魔王の腹がばっさりと切り裂かれる。だが傷はすさまじい速度で縫合修復!
 有り余る希望を喰らったことで、あらゆる力が強化されているのだ!
「だったら俺は腐りかけのフルーツかね? 楽しく殺し合いてえだけだもの!」
 しかし、そんな再生は綾が許さない。ナイフを針めいて鋭く投擲。
 昆虫標本めいて肉を貫いたナイフが傷口を"開腹"し、再生を阻害する。
 煮えたぎるような熱を孕んだはらわたがこぼれ落ち、男達を返り血で染めた。
『……!! 贄ごときが、我を裂くなどと……!』
 大魔王は床を砕きながら跳躍し、空中でその巨大な体を縮こまらせた。
 萎んだ? 否。着地したその体には、膨大なまでの活力が満ちている。
 拡げられていた傷口も、何事もなかったかのように再生しているほどだ。
 体に漲る活力をあえて凝縮することで、サイズ差を捨て去る代わりに力を高めたか。
「いいねぇ。デカブツよりも手強そうで燃えてくる」
「……変わらねェな、お前は。楽しくなりすぎてコロッとヤられンなよ」
 クロウが言えば、腰を落としたまま綾はころころと楽しげに喉を鳴らした。
 笑っているようでもあり、戦いには生真面目なクロウをからかうようでもある。
「それも俺の願いだから安心してよ。帰るなら勝って一緒に、でしょ?」
「……そういうこった」
 クロウもまたにやりと笑う。男達はそのまま大魔王を見据える。
 陽炎めいて闘気を纏う大魔王の双眸が、ぎらりと輝いた。――猛進!
 大気を霞ませるほどの速度で床を砕き、真正面からふたりを叩き潰すために!
 綾のナイフが杭めいて突き立つ。だが無効! 獣の肢は踏み潰し蹴散らした!
「あれは喰らいたくないな――」
「ハッ、だったら止めてやンよォ!!」
 クロウが駆けた。たなびくコートは、まるで羽ばたく鴉の翼のようだ。
 両の足で根を張ったように地面を踏みしめ――KRAAAAAASH!!
 黒魔剣と盾めいて掲げ、衝撃を受け止める! ざりざりと床を焦がし後退!
『退け。我の邪魔をするな』
「断る。俺らはテメエを斃しに来たンだぜ?」
『――ならば汝から死ぬがよい。我が天敵よ!』
 KRAAAASH!! 膨大な魔力が衝撃波となってクロウの体を吹き飛ばした。
 入れ替わりに綾が飛び込む――先んじたのは念動力で操られたナイフの雨。
 大魔王はこれを翼で祓う。そこに突き出されたのは強靭なハルバードだ!
「さすがオブリビオン・フォーミュラ、楽しくなってきた! まだまだいけるだろ!」
『殺戮を望む者よ。わかるか。汝の希望は我が糧である』
「つまりそう簡単には死なないってわけだ。たまらないね」
 ガ、ガ、ガガガガガガッ!!
 刃と牙と爪と矛がぶつかり合い、互いに傷を刻み嵐を起こした。
 丁々発止の拮抗を綾のほうが掻い潜り、一瞬にして大魔王の背後に回る。
 その軌跡をなぞるように虚空に朱の色彩――それは蝶となって羽ばたいた。
『羽虫ごときが! 我を遮るなッ!!』
 ごうっ!! 竜巻の如き魔力波が紅き蝶の群れを吹き飛ばす!
 前後左右を幻惑的に飛び交いナイフを投擲する綾を、大魔王は疎んだ。
 どちらから殺す。どちらから喰らう――ぎらつく眼差しはクロウのほうへと。
『感じるぞ。不敵なる貴様の希望! 我の貪食を見下す愚かな驕慢を!』
「あ? だったら喰ってみろよ。何度でも覆してやるがなァ!」
 ――ゴガンッ!!
 黒魔剣と大魔王の拳がぶつかり合う。……クロウの体がたたらを踏んだ。
 重い! 一撃ごとに大魔王の攻撃は鋭く早く重くなっている!
 これこそが希望を喰らう能力。敵対者の願いを糧とする大魔王の権能!
 しかし、さらなる追撃は綾が防ぐ。まるでクロウを護るように。
「俺の相手もしてくれよ? 寂しいじゃないか」
『汝から死にたいと見えるな』
「ははっ――本当、楽しい相手だ」
 直後、防ぎきるなど到底不可能な神速の猛撃が綾を襲った。
 蝶の群れの力をもってしても殺しきれぬ負傷が彼を追い詰める!
「天照へ祝を奏上し請い願う――」
 黒魔剣が鏡めいて輝きを孕んだ。渦巻くのは焔と大地の精霊の力。
 砂塵と紅焔を纏い、クロウが矢のようにまっすぐに飛び込む。大魔王の眼光。
「昏き禍つこれなる灼熱の剣にて祓わん……行くぞオラァ!!」
『他愛なし! 汝の殺意は我が力よ!』
 灼熱の剣と魔力障壁が拮抗! 万事休すか……!?
 そこへ割り込むと見えた綾――しかし浮かべた薄い笑みは、何かが違う。
「仲間を健気にかばって倒れて、それで終わると思った?」
『何』
「それじゃあつまらないだろ。殺し合いってのは命を取り合うからいいんだ!」
 呵呵と狂気に歪んだ笑い声を喉から漏らし、綾は流れる血をすくい取った。
 掌の上でそれは鋭いナイフに変わる。ひとつ、ふたつ、みっつ――。
 よっつ、いつつ、十、二十、百、二百!!
「俺の血と心を籠めた返礼(カウンター)、受け取ってくれよ!」
 ――カカカカカカカッ!
 肉を貫く深紅の刃が、大魔王の全身をあますところなく穿った。
 ぐらりと巨体が揺らいだその時、ついに魔力障壁を灼熱剣が食い破る!
「テメエにゃ一番のご馳走をくれてやる。キッツい一撃、喰らっとけや!!」
『猟兵ァアア……ッ!!』
 けざやかに輝く刃は、胸部を貫き骨を、肉を、血を、その存在を灼き焦がす。
 邪悪なるものを滅ぼすために。クロウの双眸がぎらりと輝いた……!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神元・眞白
【WIZ/割と自由に】
こんにちわ大魔王。対の羽がとてもきれいですね。
名残惜しいのですが出会いには別れもあります。そして今、この時。
日々に願いを、明日に望みを。貴方は何も言わず、ただ、そこで、朽ちてゆく――。

迷路の壁沿いに皆を先行させて配置。バケツリレー的に移動を。
私達なら少しの間触れて若返ってもそれは体が新しくなるのと一緒。
飛威、先行して。相手がいるなら皆を纏めて応対を。私も追いつく。
退く演技をしながら迷路の中に引きこんで、相手が動きにくい様に。

迷路の途中で相手と相対するなら相手を壁へ押し付ける様に。
皆には悪いけど、何人かは相手を押さえる役目をしてもらうかも。


ヴィリヤ・カヤラ
迷路は触ったらダメみたいだけど影はどうかな?
影に潜ませてる月輪で迷路の壁を触って大丈なら、
地面と壁伝いに一気に範囲を広げて迷路の出口を見つけてみるね。
影と『第六感』で出口に向かって『ダッシュ』で駆け抜けるけど、
壁には触らないように気を付けるね。

私の願いは父様を殺すこと。
本心がどうであっても私にとっては、たった一人の父様だから
この願いは喰らわせないし邪魔もさせない。
奪われるなら貴方を喰らってでも奪い返す。

武器が使えるならどれだけの怪我でも諦めないよ、
敵の攻撃は『見切り』と『第六感』で可能な限り避けて
鮫の口に見立てた影の月輪で下からと
【ジャッジメント・クルセイド】の上からの攻撃で挟み込むね。


フェルト・フィルファーデン
ふざけ、ないで……人の願いを、何だと……!
殺すわ。完膚なきまでに。アナタだけは、絶対に生かして帰さない!

迷路に閉じ込められたら、この小さな体躯を利用し繭に触れないよう空を飛び
慎重かつ高速で【第六感に野生の感】も駆使して進むわ。
たとえ幼くなっても、わたしの性根は、諦めの悪さは何一つ変わらない!足を止める理由になりはしない!

ええそうよ。叶わぬ願いを未だに引きずって、ついこの前もそれで痛い目を見たばかりよ!
それでもこれはわたしの願い!そして希望の為世界を救う、新たな願いもわたしの願いよ!
何一つ、誰の願いであっても、決してアナタが好きにしていいものなんて無いわ!

お願い、力を貸して。皆の希望を救う為に!


ユーザリア・シン
【WIZ】猟兵達へ祈りながら歩く
結局のところ、妾にはそれしか出来ぬ。
あの美しき邪悪がこの祈りを喰らおうとも、妾にはそれしかできぬ。
迷わば、死ぬ。
死ねば、迷う。
ならば信じて進むしかあるまい。
一切迷わず進めば、いずれどこかにたどり着くであろう。
なにせ妾たちは、産まれ出たという過去を、やり直すことは出来ぬ。
過去は、変えられぬ。
それは魔王とて同じであろう。
ならばこの偽りの産道は、最初から踏破しているも同然よ。
そしてそうであるなら、妾の祈りは、妾の願いは誰にでも届くであろう。
願いを与えよ。祈りを与えよ。
喰らわせ、砕かせ、啜らせて――そのうえで、獲物を狩るのだ。
妾たちは、猟兵なのだから。


ヌル・リリファ
アドリブ連携歓迎

のぞみは、貴方がつよくなってしまうからって簡単にすてられるものではないから。(マスターの役に立てる自分でありたいのは変えられない)

わたしがマスターの最高傑作にふさわしいわたしであるために。貴方がつよいのならわたしもただつよくなれるようにする。それだけ。
これは、貴方がつよければつよいほどわたしもつよくなれるから。

そうして、わたしのおもいが簡単にくらえるものではないとしめす。

強化したうえで先制攻撃がくるのなら、はじけるものは【衝撃波】で、のこりは【盾受け】【見切り】で攻撃にてんじれるまでは、致命傷だけはさける。

どれだけ怪我をおっても一太刀はいれる。そのためのちからはのこしてみせる。


ユエイン・リュンコイス
世界を食らい、希望を飲み乾すと嘯くか…それは困るね。ボクの求めるモノは、世界無くして在り得はしないのだから。

ボクの希望は『世界を眺むる』こと。見る物がどれも美しくあれと願い、出会う者はきっと素晴らしいはずだと望み、痛ましき悲劇に立ち会えば祈りを捧ぐ。世界が失われて、どうしてそれを果たせようか。
これを咀嚼し、キミは何を得る?
万象を見通す瞳か、自らの意のままに現実を変える異能か。何であっても構いはしない。
この輝きは旧きを焼く焔にして、世界を照らす昇華の煌めき。決して消せず、目を逸らせぬ一撃であるとボクは信ずる(UC起動。属性攻撃、限界突破、焼却)。

願いに焦がれ、望みを欲し、祈りを抱いて消えて逝け。


アルナスル・アミューレンス
全部の君を食べたわけじゃないけどさぁ。
何となく、わかった様な気がするんだ。

君は辛かったんだねぇ。
「大魔王」
「完全なる存在」
「討つべき脅威」
「恐れられるモノ」
かくあれかしと願う「思い」の具現。
何某かの思いがあってこそ成り立つ災厄。
故に、「自己」が無い、のかなって。

なら、
哀れもう。
悲しもう。
同情しよう。
君の存在を。
願われて何者でもならなくなりつつある僕だから。

願いも、望みも、祈りも無く。
虚ろなる君を思おう。
喰らってきた幾千もの命と共に。

第六感で動き、相手の先を見切り、逃げ足を生かして避けて詰めていくよ。

大丈夫だよ。
君の存在も何もかも、僕が「消却(クラウ)」から。
本能のままに、捕食し尽くしてあげる。



 希望をそもそも持たぬ者もいれば、希望を捨てされぬ者もいた。
 たとえば、アルナスル・アミューレンスは前者に当たる。
 淡々と敵を喰らい、消し去り、滅殺するアルナスルにとっては、
 大魔王は"孤独であり、自己が存在しない可哀想な存在"だ。
 怒りはない。
 憎悪もない。
 ただ憐憫と同情があり、敵であるがゆえに喰らうという結論があった。
 ヒトにしてヒトに非ず、化け物にして化け物に非ぬ者。
 願いによって何者でもなくなりつつあるアルナスルだからこそ、何も抱かない。
 それは慈悲深く――おそらく大魔王にとっては、屈辱的だった。

 一方で、女達は後者――つまり、希望を棄てきれない者達だった。
 ヴィリヤ・カヤラの根幹にあるのは父から命ぜられたたった一つの言葉であり、
 つまりその盟約……他ならぬ父を討つという呪いめいたねがいである。
 恐怖がある。逡巡がある。たとえ父がまったきヴァンパイアであろうとも。
 ヴィリヤにとっては父であり、そして同時に恐るべき存在でもあった。
 彼女は折にふれて思う。"もしも父と相対したら、自分は戦えるのか"と。
 答えはわからない。ただ、それを他の誰かに仮託するつもりもなかった。
 ましてや、オブリビオンの糧に差し出すなど言語道断。
 大魔王の心の臓を喰らってでも奪い返すという決意すらあった。
 その身に流れる血と同じように、その希望はおそらく呪いだった。

 怒り、憎悪するフェルト・フィルファーデンにも希望があった。
 いや、より正確に言うならば、彼女は希望のためにこそ戦っている。
 国を、民を、何もかもを失い、それでも世界の平和と明るい希望を願う。
 そうでなくば彼女は戦えなかった。今もそうだ。それだけが彼女を繋ぎ止める。
 それを奪い、喰らう? ……認められない。看過できない。許容できない。
 殺さねばならない。己の根幹を否定するあの邪悪なる大魔王を。
 ゆえに少女は怒っていた。憎悪がその心を支配していた。
 ねがい。あのつくりものの自動的な存在――エリクシルの妖精は言った。
 愚かにも彼女は、裏切られると分かっているその囁きに乗った。
 彼女がどれだけ意固地に抗おうとしても、願わずにはいられなかった。
 奪われたものを取り戻したいという希望。もしかしたらという期待。
 ゆえに彼女は地を嘗めた。その痛みと屈辱は体と心に強く刻まれている。
 だから、彼女は戦わずには居られない。殺意を抱かずにはいられない。
 それを奪われれば、もうフェルトは何者でもなくなってしまう。

 ヌル・リリファ――造られし戦闘人形たる少女の場合はどうだろうか。
 厳密に言えば、彼女のそれは願望というよりもアイデンティティに近かった。
 "マスター"が定義した、最高にして最優の傑作たる己であること。
 何よりも優れた、"マスター"のための人形。そうあるべきという希望。
 少女は多くのものを知らぬ。ヒトの機微を、その感情を知らぬ。
 その思いは幼子のように無垢であり、呪いめいて頑なでもあった。
 だが仕方ない。ヌルは、"そうでない自分"を識らぬし想像も出来ない。
 する必要もない――己はそうあれかしと願われて造られたモノ。
 であればヌル自身こそが、"マスター"の希望であり彼女の希望でもある。
 捨てるなどありえない。ただ喰らわせるなど、もっとありえない。
 戦い証明するのみ。たとえ大魔王がどれだけ強くなるとしても。
 呪縛のようなアイデンティティは、それゆえに戦闘人形を最高傑作たらしめる。

 ユエイン・リュンコイスは、恋焦がれる誰かがいるわけではない。
 己を縛る過去は踏み越えた道程であり、ゆえに彼女は世界を愛していた。
 高き塔よりはるけき世界を望み、眺め、見るものがどうか美しくあれと願う。
 いくつもの出会いのたびにきっと素晴らしいはずだと次を望み、
 ありふれた痛ましき悲劇に立ち会えば、鎮魂と慰撫の祈りを捧げる。
 つまりは世界を構成するすべてが、ユエインにとっての希望なのだ。
 生きること、旅すること、過ごすこと……そのどれもをユエインは愛する。
 綺羅星のように美しく思い、尊く感じ、だからこそ護ろうとする。
 捨てされるような願いではない。それは心なき人形になれというのと同じだ。
 ユエインは人形である。半身とする黒き機人と同じ、造られしもの。
 されど――造られしものにも心はある。心があれば願いも、望みもある。
 彼女はそのことを悲しみはしない。どれだけ辛いことがあろうとも。

 いくつもの願いがあった。
 いくつもの望みがあった。
 いくつもの祈りがあった。
 大魔王はそれを喰らった。糧とし己を強め、暴威を振るった。
 だが。
『何故だ』
 己のゆりかごであり獲物を閉ざす牢獄。繭に包まれた迷宮。
 崩れ行くそのなかで、もはや滅びるのを待つ大魔王は呟いた。
『我は喰らうもの。奪い、貪り、滅ぼすもの。なぜ我が滅ぼうとしている?』
「だって、あなた自身は何も望んでいないもの」
 大魔王はその声に顔を上げた。神元・眞白がそこにいた。
「こんにちわ大魔王。そしてさようなら、哀れな過去の残骸さん」
『……なんだと』
「名残惜しいのですが、あなたはもう消えてしまうから。当然のように」
『我は滅びぬ。我は消えぬ』
「いいえ。人々が日々を願い、明日に望みを抱き、祈る限り、あなたは消える。
 私は聞いてみたかった。――大魔王。あなたは、それで満たされたの?」
『…………』
 言葉は返ってこない。大魔王は打ちひしがれているようにも見えた。
 その姿をもうひとりの女――ユーザリア・シンが見下ろしている。
「感じるであろう。妾の祈りを。猟兵達の勝利を願い、望むこの希望を」
『……それは、我の糧だ』
「然り。されどそれ以上に、妾の祈りは猟兵(われら)にとっての力でもある」
 聖者たる女王は淡々と言う。
「我らの大敵よ。相容れぬモノよ。おぬしははじめに気づくべきだったのだ。
 おぬしが無限に希望を喰らうならば、我らも同じように希望を糧とするのだと」
『……我は、喰らうものとしてすら敗けたというのか』
「この偽りの産道こそが、他ならぬおぬしがそれを認めていた証ではないか」
 不気味な繭はもはや脈動していない。
「おそらくおぬしは、希望を得たかったのであろうよ。自分だけの希望を。
 ――我らの願いを、祈りを、望みを喰らい、それでもなお叶わぬことだが」
『……否。違う、我は世界を喰らうもの。我はウームー・ダブルートゥ。
 我は嵐の魔物。我はオブリビオン・フォーミュラ。我は。……我は!!』
 大魔王は雄叫びを上げて立ち上がる。迷宮が崩れ行く。
 滅びを拒絶する残骸を滅ぼすために、希望を抱きし乙女達が現れた。
「私は正直、世界をどうこうしようっていうこと自体はあまり気にしてないよ。
 オブリビオンってそういうものだし、言葉で納得できるものでもないから」
 言いつつしかし、ヴィリヤは滅びという裁きをもたらす光を輝かせた。
「――それでも私は、私の望みを誰にも渡さない。これは私のものだから」
 破滅をもたらす光が柱のように降り注ぐ。大魔王は魔力でこれを防ごうとした。
 だが、それは出来なかった――いのちを糧に輝く人形の騎士達がいたからだ。
 何よりも鋭きその刃が、王女の号令に従いその身を貫いたからだ。
「何一つ、どれひとつ。誰の願いであっても、アナタの好きにしていいものなんてないわ」
 フェルトは言った。怒りと決意と、信念に双眸を燃やして。
「わたしは諦めない。どれだけ傷ついたって、願いを棄てたりなんてしない!
 希望のため世界を救う。アナタ達を滅ぼす! 何度後悔したって……!」
「……わたしのおもいは、簡単にくらえるものなんかじゃないよ」
 数多の交錯で傷つきながらも、ガラス色の瞳を一切曇らせることなく、
 否……むしろ強く空色に輝かせるヌルが、ルーンの刃を手に立っていた。
「あなたがつよくなるなら、わたしはそれ以上につよくなる。それだけ。
 だってわたしは、マスターの最高傑作。そうでなければいけないから」
 それは、糧であるはずだ。大魔王が奪い喰らうべき贄であるはずだ。
 だが大魔王は識らなかった。ヒトの……猟兵の抱く思いの強さ、深さを。
 いかに世界を喰らうものにも喰らいつくせぬものがあるということを。
「旧きもの、封印されし白痴の獣。ボクは君の滅びもしかと見届けよう。
 この輝きでその存在を昇華し、君が還るべき場所へと叩き返そう」
 ユエインの操る黒鉄機人――その右掌が、白熱し光熱を放った。
 絶対昇華の鉄拳。邪悪を滅ぼし世界を照らす昇華の煌めき。
「願いに焦がれ、望みを欲し、祈りを抱いて消えて逝け。
 ――憎悪はないよ。キミはきっと、他の誰よりも純粋すぎたんだ」
『やめろ』
「"大丈夫だよ"」
 大魔王の足元に、ぽっかりと黒い穴が開いた。
 闇よりも昏き虚。アルナスルが変じた、すべてを喰らい消し去る虚無の穴。
「虚ろなる君よ。君が幾千の、幾万の命を喰らい、奪ってきたように。
 僕もまた希望もなく、ただ君を本能のまま、あるがままに捕食しつくすからね」
『やめろ……』
「知ってるかい? これが――因果応報っていうのさ」
『やめろ。我は、我は簒奪者。捕食者であり世界を滅ぼすものなのだ!
 望みに焦がれ、願いを欲し、祈りを求めていたなど。我は――我は……!!』
 もはやそれは、大魔王などという大それた存在ではない。
 すべての虚飾を剥がされ、孤独をあらわとし、滅びていくただの残骸だ。
 彼ら彼女らが幾度も滅ぼし、そしてこれからも滅ぼしていくであろう過去の残骸。
 オブリビオン。過去より来たり現在を破壊するもの。
 光が、熱が、刃が、虚無が、その残骸を完全に砕き、飲み込み灼き尽くす。
 ……それを見届け、ユーザリアはもう一度祈りを捧げた。
 虚ろなる残骸に奪われてきた、名も顔も識らぬ数多の犠牲者達に。
 そして、望みを望み、願いを願い、祈らぬままに死んだ哀れな残骸に。
 戦いは終わった。後には何も残らない。
 希望すらも。哀れなる虚無は、何も遺さず骸の海へ消え去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月26日


挿絵イラスト