アルダワ魔王戦争8-D〜ディス・ポイゾナス・ヘル
●毒の女王
「傾注、これまでの戦い、本当にお疲れ様」
アイリ・フラジャイル(イレギュラーケース・f08078)はグリモアベースに集った猟兵達へ作戦の説明を始める。戦争開始からおよそ半月、戦況は以前猟兵優位のままである。それでも、と険しい表情でアイリは言葉を続けた。
「もう大魔王の喉元まで迫っているけど――まだ油断は禁物よ」
しかし、猟兵達には他にもやれる事が残っているのだ。それは何も戦って勝つ事だけが目的じゃあない。続けてスクリーンに映し出されたのは、ヘドロの様な悍ましい沼地。
「このエリアは蒸気迷宮から排出される有害物質を集めた区域。大魔王の迷宮だけじゃない、アルダワ全体の蒸気機関から排出された有害物質が集まってるの。その毒性は、猟兵の身体すら毒で蝕むわ」
例えばフラスコチャイルドの様な比較的汚染に強い体質でも耐えられない。蒸気魔導の負の側面が一挙に集められた、この世界の澱そのものなのだ。そしてこの様な極限環境にも敵はいる。ざわつく一同を見渡して、アイリは静かに言い放った。
「ここにいるオブリビオンを倒す、それが作戦目的よ」
「ただ、敵は【廃液を浄化する蒸気機関】を体内に内蔵しているから、その毒を無視して戦闘をする事が出来るの。さらに厄介な事に――」
苦虫を潰したような顔をして、アイリはスクリーンに敵の情報を映し出した。真紅のドレスに身を包んだ傲岸不遜な面構えのエルフの様な女性が、悪魔じみた不気味な四足獣の背に乗っている姿が見える。
「元々毒を操る強敵よ。そして邪悪な精霊達の女王……レアエナ・レムルムと呼ばれる最悪の存在」
あらゆる生命を傷つけ虐げ滅ぼすことをなによりの喜びとする、正にこの世の悪を体現した様なオブリビオンだ。続けてアイリは、彼女の内なる超常を説明する。
「肉体と精神を同時に苛む炎、邪悪な精霊の力を行使した超自然攻撃、そして毒と病と死を司る精霊獣を召喚する――毒の戦場において、これ程厄介な相手もそうそう居ないわ」
特に毒を司る悪魔じみた精霊獣がその力を行使すれば、何が起こるかも分からない。猛毒の沼に極悪なスパイスを振りまく様な所業……故に行動は慎重に行うべきだ。
「皆には十全な毒対策をした上で臨んでほしい。それにここの攻略が進めば、今後アルダワの蒸気機関から出る有害物質を除去する研究が進むかもしれないの。だから」
ちなみに異世界の戦争で手に入れた万能宇宙服や種々のアイテムは役に立たない。それ程までにこの世界の毒は強烈という事だ。だからこそこの毒沼を制する事が、アルダワの未来へ繋がると信じてアイリは猟兵達に告げる。
「未来の為に、皆の力を貸してほしい」
小鳥状のグリモアが展開してゲートが――猛毒の汚泥の臭いを運び、開かれた。
ブラツ
ブラツです。このシナリオは1フラグメントで完結し、
「アルダワ魔王戦争」の戦況に影響を及ぼす、
特殊な戦争シナリオとなります。
本シナリオは廃液に汚染された毒沼で敵オブリビオンと戦い、
これを倒す事が目的です。その為には以下の点に注意して下さい。
●プレイングボーナス……毒に耐えながら戦う方法。
以上です。正しく毒に対処出来たと判断した場合、
判定が非常に有利になります。
●今回の注意事項
オープニング公開後、幕間が追加されましたら、
以降お好きなタイミングでプレイングを頂ければ幸いです。
それでは、よろしくお願い致します。
第1章 ボス戦
『レアエナ・レムルム』
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POW : イグニス・マレフィクス
レベル×1個の【肉体と精神を同時に苛む緋色】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD : 邪霊幻想
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
WIZ : 息吹で空を、視線で森を、歩みで大地を殺すもの
自身の身長の2倍の【毒と病と死を司る精霊獣】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
👑11
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●暗黒の毒雨
広がる毒の沼に大穴を穿つ様に、天井から無数の黒い液体がぽつぽつと零れ落ちる。これら全てが猛毒――蒸気魔導が生み出した負の創造物にして奇跡の残滓。その暗黒が寄り集まって形成された猛毒の沼は、原初の大海の様に時折爆ぜて、その毒を辺りに撒き散らす。
『フッ……本日も随分いい天気だこと』
一面を埋め尽くす暗黒――光すら飲み込む様な悍ましい情景の中に一人、血の様な赤いドレスの女がふわりと立っていた。少なくとも足場があるらしい。よく見れば小島の様に無数の岩塊が、その岩肌をちらりと汚泥の中から覗かせている。
『にしてもわざわざ……こんな所まで来るなんて、ねぇ』
小首をかしげて妖艶に笑む女――レアエナ・レムルム。邪悪な精霊の女王は口元を歪ませて、現れた猟兵をこれ見よがしに挑発した。
『まあ、精々踊りなさいな……息が続く限り、相手してあげるわよ』
ここの毒は単一では無い。続々と流し込まれる蒸気魔導の澱が、秒単位でその組成を変化させるのだ。更に毒の沼に落ちれば視界は無きに等しく、ただでさえ薄暗い迷宮は暗黒の豪雨が降り注ぎ、油断すれば沼の外でも視界を遮られる。
この毒を如何に切り抜けレアエナに致命の一打を与えるか――ざあざあと打ちつける暗黒の雨の中、静かに戦いの幕が開いた。
※プレイング募集期間:現時点 ~ 2/18(火)8:30 迄
アニー・ピュニシオン
【POW】
毒がヤバいで諦めるなんて、つまらないわ。
子供らしく我儘に精一杯抗わせてもらうから!
今の私は毒とすら友達になれない子だけれど、
いずれは災害ともお友達になってみせるもん。
【行動】
選択UCで【任意の属性】を【毒】に変更し、
自分がその環境と同化する事で、毒や汚染を対処させてもらうわ!
廃液があるという事は可燃性の物があるわね。
火を使ったら大爆発しちゃう!という訳で、
敵に近づいたら爆発するリボンの蝶を投げておく。
真っ黒な雨が降ってるし、黒いリボンの子を向かわせるわ。
廃液や毒ガスに着火して大爆発が起きたら、
UCの狭い隙間に入り込む能力で、
良い感じの所(地面に空いた穴や壁の隙間)に咄嗟に逃げるわね。
バジル・サラザール
こんなところで待ち受けてるあなたも相当な好き者じゃないかしら?
マスクや手袋等基本的な対策に、『毒使い』『医術』の知識、素の『毒耐性』を利用したりして、毒を回避したり、症状に対処したりしましょう
戦闘は毒を以て毒を制す。『毒使い』の技能を生かした『バジリスク・ブラッド』で強化したバジリスク・ポーションやウィザードロッド等で攻撃するわ.
私の毒も耐性があるかもしれないし、多様な毒で攻めましょう
毒が回りきらないよう短期決戦狙いね
敵の攻撃は『野生の勘』等を利用しつつ、回避や防御、相殺しましょう。ポーションで消火できたりしないかしら
毒薬変じて薬となる、この経験を浄化の研究に役立てましょう
アドリブ、連携歓迎
●ハレーション
「こんなところで待ち受けてるあなたも――相当な好き者じゃないかしら?」
暗黒の雨の下、傲岸に佇むレアエナの前にバジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)が姿を現す。マスク、手袋、ゴーグル、帽子、そして持てる知識を総動員しつつ、己の耐性を生かして毒への備えは万全。猛毒の沼からせり出す岩塊へ体をくねらせ器用に跳び移り、レアエナへの距離を詰める。
『そんな強がり、いつまで続くかしら……ねぇッ!』
語気を荒げるレアエナ。真っ赤なドレスをひらりと翻し、舞う様な動作で炎を投げ放つ。それは肉体と精神を同時に苛む超常の炎、降りしきる猛毒の雨に当たっても消えない炎が毒の汚泥に広がって、周囲が黒と赤に埋め尽くされる。これでもう逃げ場は無い。雨と炎の轟音が響く空間――刹那、そこに凛とした可愛らしい声が届く。
「ええ、強がります。抗います。子供らしく精一杯、こんな事で諦めない!」
アニー・ピュニシオン(小さな不思議の国・f20021)が虚空からひらりと姿を現すと共に、全身を超常の輝きが覆う。その光に包まれた暗黒の雨は毒の汚泥に飲まれる事無く、アニーの肌にじわりと取り込まれた。
『それがアナタの超常、ここの毒と同化したの……ハハッ!』
己の属性を毒に変えて、猛毒を制す。かつての戦争で猟兵達が見せた奇跡の様に――だが、それを成す為には足りない要素があった。
「な、一体……!」
『無限に変質するこの毒に、いつまで喰われずにいられるかしら!』
かつてのオロチウイルスは致死性の猛毒、本質的に違うとはいえ、対抗する為に猛烈な速度で変質する肉体を適切に補う事によってワクチンを作り出した。この毒も同じ、猛烈な勢いで変質する超常めいた、正に蟲毒の様な呪いに近しい。アニーの属性が如何に毒になろうとも、その力が沼の猛毒を上回らなければ取り込まれてしまう。徐々に蝕まれ項垂れるアニー。だがその瞳は未だ戦いを諦めてはいない。
「無理はいけないわね」
ふわりと白衣が――黒く塗り潰されながらも、その下のアニーを包む様に広がった。バジルがアニーの側へ跳び移り、己の一張羅を貸しつつロッドを翳して診察を始めた。救える命があるならば、放っておく事など出来ない。ましてや年端のいかぬ幼子ならば尚更――猟兵であれど、それは同じだ。
「でも、ありがとう。大体分かったわ、ここの毒が」
変性した肉体の反応を確認し、魔術的な走査を行う。幸いまだ識っている毒だ。即座に生成した毒にして薬――己の血をアニーに含ませて、ゆっくりとその身体を起こしてやる。
「生物学的な毒だけじゃない。蒸気魔導の澱、まるで呪いの様な魔術的な毒も」
アニーを蝕む毒は長い時間をかけて紡いだ知識で抑える事が出来た。しかし時間は余り無い。立ち上がったアニーは目を見開いて、レアエナを睨む。
『貴様、何をした!?』
先程まで死に掛けていた小娘が、女王を前に無礼な態度を崩さない。ありえない――広げた炎が渦を巻いて集束し、猟兵達に襲い掛からんと立ち昇る。
「何って……毒には毒を、よ」
『それで耐えるつもりかしら。まだよ――!』
文字通り、毒を持って毒を制した。しかし猛毒の雨は降り止まず、放っておけば確実に身体は蝕まれる。更にはレアエナの超常が――肉体と精神を蝕む呪いの業火が迫り来る。
「引火したら……危ないのよ!」
瞬間、炎が爆ぜた。アニーが飛ばした蝶の様なリボン――それは全てが爆弾。迫る炎の威を削いで、狙うはレアエナの首一つ。
「行って!」
「それじゃ、手伝いましょうか――!」
渦巻く炎が爆風で散り、開かれた虚空に放たれるは無数の十字架。それぞれが煌々と光を灯して、正面に翳されたアニーの手にバジルが己の手を――超常の力を重ねる。己が身に宿す化物の力、超常の猛毒が光の十字架を紫色に染め上げて、一斉に放たれる!
『馬鹿め、そんな攻撃で……!』
無数の十字架は光の剣、猛毒の超常が上乗せされた最凶の刃。炎を裂いて自在に飛び回る光剣を必死の形相で制御するアニー。秒単位の投薬で少女を支えるバジル。いつしか炎が晴れて、その先に邪悪の権化がその姿を晒す。
『馬鹿、な――!』
刹那、アニーの姿が消えてレアエナの懐に。その艶めかしい大腿から悍ましい色の血が流れる。超常の発露――狭い猛毒の雨の間をすり抜けて、アニーが飛び込み必殺の刃を突き立てたのだ。
「これならば、逃げられ……」
『貴様、よく、も
…………!』
暗黒の雨が二人の姿を隠す。再びバジルが前を見た時、既にレアエナはその姿を消していた。アニーとバシルの一撃を受けて、奴は逃げ出したのだ。
「飽和した毒に耐えられなかった……か」
しかしレアエナの体内には浄化機関が。時間が経てばまた戦場に姿を現すだろう。それでも逃げる程の手傷を負わせたのは収穫だ。
「ま、毒薬変じて薬となる。この経験を浄化の研究に役立てましょう」
岩場に倒れるアニーを掬い上げ、バジルは遠くを見やる。少なくともレアエナは毒に対して万能という訳じゃない。狙うならばそこだ――二人ごと包み込む様に白衣を広げて、バジルはその場を後にした。
大成功
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アイシス・リデル
あなたは……
誰かを傷つけたり、汚したりするのが好き、なのかな?
だったら、要らないね
わたしはくさいのも、きたないのも慣れてるし
つよい【毒耐性】だってあるから
むしろ周囲の毒をみんな、不浄の器の力で、わたしの中に取り込んで……「食べて」
【暴食者】でおっきく、つよくなって戦うよ
そうやって周りの毒をお【掃除】しちゃえば
きっと、他の猟兵の人たちも戦いやすくなる、よね
わたしは、こういうところをきれいにするために
きっと、そのために生まれて来たから
嫌われるのだって、慣れてるもん、ね
そんな炎なんて、毒液の身体で消しちゃうから
減った身体は、またおっきくなればいいだけ、だよね
そのための毒なら、ここにはいっぱいあるもん
トリテレイア・ゼロナイン
「魔」とは縁遠い身
御伽噺の様に私には出来ぬことが出来ると幻想を抱きがちでした
この光景、落胆の念を禁じ得ません…
いえ、この身が澱を払える一助となるならば、喜んで力を振るいましょう
●防具改造で装甲や内部機構の劣化を抑える●環境耐性処理を強化
汚泥から覗く岩塊や天井にUCの杭状発振器を射出か必要とあらば●投擲
バリアを発生させ「橋」や「床」「覆い」を作成
橋を渡り接近
炎を●怪力での●武器受けで切り払い●盾受け防御
擬似感情への悪影響は自身を●ハッキングしダメージ無視
逃げる相手へ格納銃器での●スナイパー射撃で牽制
すかさずアンカーを射出し●ロープワークで引き寄せUCの檻に閉じ込め
内部で弱体化した女王へ剣の一撃を
●パンドラボックス
「この光景、落胆の念を禁じ得ません……」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の演算領域を占める思い――『魔』とは縁遠い我が身だからこそ、アルダワでは御伽噺の様に私には出来ぬ事が出来るという幻想を抱いていた。
「いえ、この身が澱を払える一助となるならば、喜んで力を振るいましょう」
しかし目の前に広がる猛毒の災禍は、生命を蝕む悪意の澱は、どこでも同じ様に世界の背後で溢れ出る。決して止める事の出来ない猛毒――それでも、己の機械の身であれば幾何かは防げるだろう。ざあざあと視界を埋める暗黒の雨も、ボコボコと泡を吹く猛毒の沼も、幸い金属腐食作用はそれ程でもない。だがナノマシンのように蠢く不明な呪的要素が、この空間に満ちるモノが尋常な毒でない事をトリテレイアに伝えていた。
『……今度は騎士か。いや、人形ね』
「……だとしたら、どうだと言うのです?」
不意にセンサへ反応が――レアエナが先の戦いから転移して逃れ、岩塊の上に突如現れたのだ。剣を抜いて沼へと足を踏み入れるトリテレイア。装甲の隙間はシーリングされ自浄装置はフル稼働、微かな振動音を響かせつつ、周囲を走査して戦場を把握する。視線の先の邪悪を封じ込める為に。
『人形はね、壊すのよ。醜くなるまで――!』
レアエナの咆哮と共に炎が渦を巻いてトリテレイアに迫る。すかさず天井に射出したワイヤーを巻き上げて緊急離脱、牽制の弾幕を張りながら炎の猛追を躱し続けるが、その手を休める暇も無い。レアエナが自在に操る超常の炎は、狙った獲物を逃しはしないのだ。触れれば肉体と精神を苛むそれを、剣で払って機会を伺う。
「ウイルスプログラムの形を取った精神干渉系呪術、それに猛毒ですか……」
「あなたは……誰かを傷つけたり、汚したりするのが好き、なのかな?」
更に盾を構え炎の追撃を凌ぐトリテレイアの足下がぞわりと蠢いた。崩れた猛毒の沼はそのまま人の形に――アイシス・リデル(下水の国の・f00300)の姿を晒す。
「だったら、要らないね」
それはレアエナへの宣告。既に超常を発揮してこの猛毒を取り込んでいたアイシスは、己の中で暴れ狂うそれすら我が物として力を増幅させる。超常じみた強烈な毒耐性が成す奇跡の様な尋常。そして生きるモノに愛を向ける儚げな汚泥の少女は、それを冒涜するモノを決して許さない。
「わたしはくさいのも、きたないのも、あぶないのも……慣れてるし」
アルダワの下水で、英雄世界のラブ・キャナルで、宇宙要塞の罠の中で、幾度となく繰り返してきた――そういう『あぶない事』を。
「それに全部食べちゃえば……」
「アイシス様、そんな事をすれば!」
その度にわたしの身体は強くなった。今も同じ――周囲の毒をみんな、不浄の器の力でわたしの中に取り込んでしまえばいい。そうすれば他の猟兵の人たちも戦いやすくなる、よね。
「だいじょうぶ。わたしは、こういうところをきれいにするために……」
ブラックタールの本領、不定形の全身が大きく引き伸ばされて、全ての汚泥を飲み込む様に薄く、大きく広がっていく。
「きっと、そのために生まれて来たから」
いつの間にかトリテレイアの足元の汚泥は、潮が引いた様にその嵩を限りなく下げていた。
「ならば――戦術変更、バンカーシュート」
瞬間、トリテレイアの超常が戦場を包み込む。アイシスの身体が毒を取り込み、より強大な姿となれば、トリテレイアが天井に打ち込んだ無数の杭が電磁障壁を展開し、レアエナの退路を塞いで炎の超常を封じ込める。指向性電磁波が不可視の壁を作り上げて毒の流入を防ぎ、一転してレアエナは猟兵達の猛攻に追いつめられた。
『フン、やってみなさい――どこまでここの毒に耐えられるか!』
グン、と伸ばされたアイシスの巨腕に捕らわれて、レアエナの全身を猛毒が蝕む。超常の炎も穢れし子に飲み込まれ、最早その威は意味を成さない。それでもレアエナは不敵に笑いながら、囚われの身のままでアイシスを挑発した。
『これはただの毒では無いわよ、澱んだ魂が生み出したこの世の災厄そのもの!』
悍ましい呪詛を込めて放たれた言葉こそ、この猛毒の沼の本質。世界から捨てられた廃棄物――穢れた災厄なのだと。
「そうですか。ならば私は――」
蒼銀の巨体から暗黒の汚泥が排出され、天井の杭から放射された光が構造物を――橋のような形を造り、毒の大腕に捕まり高く掲げられたレアエナへ続く道となる。
「きっと、災厄を祓う為に生まれたのでしょう」
『造り物の人形如きが、何を!』
超常が齎すのは障壁だけでは無い。その本質は戦場を意のままに形作り、敵を弱体化させる事。トリテレイアは蝕まれる五体をハッキングして着地。自身を無理矢理動かす事で光の橋を駆け上がる。アイシスの援護があればこそ、被害は想像以上に小さい。拘束されたレアエナの前で長剣を大きく引いて、霞の構えで屹然と対峙する。
「侮らないで貰いたい、女王」
『馬鹿な!?』
一閃――アイシスの指の隙間にトリテレイアの神速の突きが冴え渡る。隙間から滑り込む様に入った切先がレアエナの脇腹を貫いて、その姿が不意に消えた。
「反応消失――逃げましたか」
残された力を振り絞り、邪悪な精霊の力を借りて猛毒の大腕から逃れたのだ。それ程までにアイシスの超常と、トリテレイアの一撃はレアエナの想像を遥かに超える攻撃だったのだ。しかし力を使い過ぎたアイシスは大腕から元の少女の姿へと戻り、ふわりと地面に落ちてしまう。
「アイシス様、お身体は――」
「だいじょうぶ、いっぱい食べただけだから……」
急ぎ地上に飛び降りて、間一髪少女を抱えるトリテレイア。鋼鉄の腕にべったりとブラックタールの全身が張り付くが、それを意にも介さず駆ける。
「恐らくあのレアエナも、十分に喰らったでしょう」
超常が造った道を渡って沼より上がったトリテレイアは、未だ降り注ぐ暗黒の雨を眺めて呟いた。この雨の様に間違いなくダメージは奴を蝕んでいる。敵を追い詰めた実感を胸に、騎士は少女と共にその場を離れた。
大成功
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アルトリウス・セレスタイト
毒か
スカムキングのそれと違いもあるまい
『絶理』『無現』『天護』で自身に触れる毒の存在を否定。影響を回避し交戦
攻撃分含め魔力は『超克』で“外”から汲み上げる
破界で掃討
対象は召喚物含むオブリビオン及びその全行動
高速詠唱を『刻真』で無限加速、『再帰』で無限循環
天を覆う数の魔弾を「瞬く間もなく」「途切れること無く」生成
包囲する形に誘導し斉射
対象外へは無害故、遠慮も不要
炎、幻想、獣
纏めて飲み込むまで
目標のあらゆる行為を攻撃の密度速度物量で圧殺する
付近に危険な状態の猟兵があればそちらの守り優先
退避の時間稼ぎなど
※アドリブ歓迎
アルナスル・アミューレンス
毒の雨ねぇ……。
でも、黒い雨みたいなフォールアウトじゃないだけ、まだましかなぁ。
まぁとりあえずは、毒耐性備わっているし、多少は大丈夫じゃないかなぁ。
動きにくそうだけど、足場があるのはまぁいいやね。
クイックドロウから、弾幕を以て制圧射撃を行って時間稼ぎするよ。
第六感を働かせて動きの先を見切り、邪魔するように撃ち込むよ。
こっちが見られなきゃ、都合がいいからね。
偽神兵器、拘束制御術式開放――
仕方ないけど、「怒涛(ワカレ)」ようか。
影の様に/水の様に、不定形の異形の我が身を広げ、
嵐の様に/津波の様に、襲い掛かり毒すら糧とし飲み込み敵を捕食するよ。
有害無害有象無象の区別無く、僕のカミは君を貪り喰らうよ。
●ゴッドイーター
「毒の雨ねぇ……」
ざあざあと降りしきる暗黒の雨の下、アルナスル・アミューレンス(ナイトシーカー・f24596)が溜息をつく。
「でも、黒い雨みたいなフォールアウトじゃないだけ、まだましかなぁ」
マスクの下の表情は伺えない。それでもこの状況に心底うんざりしている様な――まるで己の故郷の様な惨状に――素振りが、手練れの雰囲気を否応にも醸し出す。
「――なんて、言ってる場合でもなさそうだ」
ふらりと影が、転移したレアエナが表情を歪ませてアルナスルの目の前に現れた。しゅうしゅうと煙を立てる姿は恐らく、体内の浄化機関をフル稼働させている所為だろうか、ブリーフィングの自信に満ちた表情とは余りにもかけ離れた姿に、アルナスルは苦笑する。
『また猟兵か、本当にしつこい……!』
「獲物を仕留める迄が仕事でね」
語ると共に音も無く機関銃を抜き放つアルナスル。鉛玉が開幕のベルを鳴らして、暗黒の雨と共に弾丸の雨を十重二十重に張り巡らせる。
『それに、鬱陶しい――ああ!』
あくまで牽制、されど一発一発は世紀末を穿つ牙。当たれば痛いどころでは無い――こんな環境じゃ、体内にどんなモノが侵入するかも分からない。舞う様に弾雨を避けながら、レアエナは手を振りかざして超常を――暴れ狂う巨大な嵐を巻き起こした。
『吹き飛べ!』
「貴様がな」
刹那、その威が即座に削がれる。不可視の烈風に纏わりつく様に、淡青の光が顕現する。レアエナの背後、アルナスルと共に挟み込む様にアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)がゆっくると姿を現した。
「毒か――だが、スカムキングのそれと違いもあるまい」
違いがあるとすればアルダワ特有の魔術的な毒性――それでも、余程のモノでなければ原理は同一、淡い光がその理を否定すれば、結果に至る事は無い。それでも。
『何度も言わせないで。ここの毒はただの毒じゃあないってね!』
ぞわり、と身体がうずく。成程、折り重なった呪詛と極微小かつ苛烈な生存競争――無限の蟲毒がこの毒の源ならば、何れは新たな理を導く事もある、か。ならば限り無く否定するまで。淡青の光がより強く、蒼銀の光と化してあらゆる猛毒を弾かんと輝きを増した時、大地が揺れた。
『行くわよ精霊獣! さあ地獄を振りまいて!』
漆黒の雷光が猛毒の沼に落ちる。それこそがレアエナの切り札、毒と病と死を司る精霊獣が実体を現して、その背にレアエナを乗せ、汚泥を跳ねて駆け抜ける!
「成程。だがそれこそ些細な問題だ」
僅かに視線を交わしたアルナスルに目配せし、汚泥の上を浮かびながら滑る様に追撃するアルトリウス。無限に加速した超常の魔弾は途切れる事無くレアエナと精霊獣を狙い撃ち、その行く手を遮り続ける。
「お前達だけ、分かれば十分」
当たれば一溜りも無い蒼光の飽和攻撃。三百五十本の光条が天より暗黒の雨すら破り、邪悪な女王を穿たんと執拗に追い掛けて。
『原初の魔術、いや――違う。精霊術式でも無い』
僅かに掠っただけで全てを喪失する様な痛み。置換魔術で辛くも切り抜けながら、目の前に現れた蒼銀の脅威にレアエナは舌を巻いた。
「お悩みのようだね、手伝おうか?」
『五月蠅いッ!』
その横にアルナスルが――同じ光を浴びながらも影響はない模様。つまり、あの光は自分達だけを消す為に作られた、その為だけに機能する原初の法則そのもの。
『貴様にかまっている暇など無い!』
「それは残念――仕方ないけど、『怒涛(ワカレ)』ようか」
焦るレアエナは気付いていなかった。精霊獣に跨り疾駆している自分に、何故アルナスルが併走出来ているかを。何故アルナスルが光の弾雨の中よりレアエナを狙っているのかを。
「偽神兵器、拘束制御術式開放――」
瞬間、ぐにゃりとアルナスルの肉体が崩れ落ちて、まるで泥の様に広がってレアエナと精霊獣を包み込んだ。それこそがアルナスルの超常、己の五体を神をも喰らう刃と化す、異形の異能だ。
「有害無害有象無象の区別無く、僕のカミは君を貪り喰らうよ」
『馬鹿な、貴様も……!』
万象を具現化する理、神をも喰らう異形の津波、この期に及んで現状維持を試みるレアエナに勝機などありはしない。精霊獣の足が嵐の様に姿を変えたアルナスルに喰われて、その五体を天より降り注ぐ魔弾が穿つ。後にはもう、何も残りはしなかった。
「……っと、この辺りが限界か」
「大丈夫か?」
僅か数刻の後、レアエナを喰らった異形は元の人の姿へと戻り、ふらつくその身体を淡青に光る男が支える。
「奴の半分は喰らった、筈」
「ああ。奴は飲み込んだ。喰らい尽くした」
アルナスルが元の姿へ戻る刹那、レアエナは使役していた大半の精霊を犠牲にして地獄めいた猛攻より逃れた。その時アルトリウスに映った姿は、最早上半身しか残らない、異形と化した邪悪な女王の哀れな姿だった。しかし。
「たとえまだ生きているとして」
最後の力を一しきり、超常が呼び起こした邪霊の幻想が彼女と精霊獣を再生した。追撃も出来たがそうすれば仲間の身体が持たない――後を仲間に託して、アルトリウスは力を使ったアルナスルの元へと参じたのだ。
「長くは無い、だろうねぇ」
レアエナが消えた方角を見やるアルナスル。女王の力の殆どを喰らったのだ。奴の生命もあと僅か――そう思案し、捕食者はニヤリと口元を歪めた。
大成功
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カグヤ・アルトニウス
とりあえず、自爆狙いですね
アドリブ歓迎
(UC)
対象:ディストーションフィールド
効果:内部の害ある物を清水に作り替える
(行動:WIZ)
浄化している…という事は彼女もこの毒素に耐えられないという事ですね
そうすると、私に出来る事は一つですね
まず、排気と浄化効果の範囲から推定して【廃液を浄化する蒸気機関】の位置を特定
テレポートで踏み込んで【暗殺】を使って機関周辺をエクストラ・ブルーで貫き、【念動力】で【二回攻撃】による追撃によって切先から放たれる【衝撃波】を偏向・集束して機関を打ち抜きます
これを一撃離脱で繰り返せば…流石に機関は壊れるでしょうね
機関が壊れれば精霊獣に侵食されて滅びると思いますが…
ネリー・ウェリー
毒の対処…んう、あんまり思いつかないなー
けど虎の子を得るには虎の巣穴に入らねば、だよね
ネリーが倒れてもみんながいるもの!の心意気で、最低でも次に繋がる情報収集ができればいいかなって
宇宙服でも無駄ってことは、溶かしてくる系な毒?各種耐性はお守り程度に考えよう
解毒もできなさそうだから、代わりに生命力吸収!もう一人ネリー呼んで二倍吸収!
やられた分はやる!あと、やられる前にやれるならやる!
元を断つのが一番簡単だよね!
気になるのは敵の浄化機関
女王さまのお尻の水の辺りとか?
壊せば倒すの楽になると思うんだけど、残しておいた方がいいのかな
んんー…目星付けたとこに一撃入れてみて、相手の反応見てみるよー
●カウンターアタック
「毒の対処……んう、あんまり思いつかないなー」
暗黒の雨に打たれながら、ネリー・ウェリー(ティアウィッチ・f22338)は迫る影をつぶさに見やる。かの万能宇宙服ですら通用しない恐るべき猛毒だ。だが初めてではない。歴戦の猟兵はそんな事、とうの昔に経験していた。
「けど虎の子を得るには虎の巣穴に入らねば、だよね」
「ええ……とりあえず、自爆狙いですね」
傍らでカグヤ・アルトニウス(辺境の万(面倒)事(請負)屋・f04065)が顎に手を当て思案する。既に超常で、全身に張り巡らせた歪曲空間内を清浄な空間に――それでも毒性のある細菌や、呪詛めいた魔術的な猛毒を全て排出する事は叶わない。自前の特製防護服のインジケーターに示された活動限界は凡そ300秒。だがそれだけあれば十分、かつて宇宙要塞の猛毒空間の戦いでは一瞬だった。それに比べれば十分猶予はある。びちゃり、と泥の撥ねる音が近付いて、ネリーとカグヤはそれぞれの得物を構えレアエナと対峙した。
『――いい加減、諦めたらどう?』
「あなたこそ。では行きますよ」
精霊獣に跨って現れた邪悪の女王は、目の前で屯する猟兵に気付き悪態をつく。袂を分かった暗黒の雨を飛び越えて仕掛けたのはネリー。色んな耐性も精々お守り程度。ならば削られる生命をそのまま奪い返す! 顔面のモニタから溢れる光源がチカチカと明滅すれば、電子の花弁がふわりとレアエナの方へ殺到する。
『鬱陶しい、その花弁ごと埋め尽くしてあげるわ!』
手にしたリモコンが倍速で追撃を指定すれば、レアエナの超常が巻き起こした暗黒の竜巻が花弁を容易く飲み込んで、放たれた烈風がネリーを岩肌に突き飛ばす。流石に一筋縄ではいかない、それでもモニタから溢れる闘志は未だ絶えず、ネリーはひたすら反撃の機会を伺った。
「痛……でも大丈夫、ネリーが倒れてもみんながいるもの!」
「倒れちゃ駄目ですよ、こんな所で」
そっと手を差し伸べてネリーを起こすカグヤ。自慢の防護服も真っ黒に染まって、されど宇宙を駆け抜けた自慢の一張羅は健在。インジケーターの残活動時間が180秒の値を示すも、未だ行動に支障はない。
「うん。やられた分はやる! あと、やられる前にやれるならやる!」
『何
……!?』
起こされたネリーのモニタがニヤリと歪んだ気がした。瞬間、レアエナが起こした超常の背後で真っ青なネリーが――超常の分身がレアエナへと飛び掛かり細い肩の上へ乗りかかる。
『精霊獣!』
叫ぶレアエナ。ネリーの分身を振り払わんと暴れ狂う精霊獣の動きを観察して、矢張りとカグヤは確信した。
(浄化している……という事は彼女もこの毒素に耐えられないという事ですね)
レアエナの吐息から、そして精霊獣の奇妙な毛皮の内側より不明な煙が漏れている。それがどうやら『猛毒の排気』であるらしい。レアエナと、精霊獣の体内に仕組まれた『廃液を浄化する蒸気機関』から漏れる彼女らの命脈。これさえ断つ事が出来れば条件は五分。目の下のナビゲータがその位置を割り出して的確な攻撃ポイントを算出すれば――後は仕掛けるのみ。
「そうすると、私に出来る事は一つですね」
抱き起こしたネリーを岩の上に乗せると、カグヤは突如姿を消した。刹那の後、再び姿を現したカグヤはいつの間にかクリアブルーの光剣を携えて精霊獣に斬りかかった。念動による極限定的なテレポーテーション。二つの超常を重ねる猶予がある戦場では無い、故に出来る事を最大限、この短距離ならば叶うと踏んだ起死回生の一撃。
『懐に……!』
一閃――奇妙な仮面の様な精霊獣の顔面、その喉元を貫いた切っ先から不可視の衝撃と、念動力の連鎖爆発が巻き起こる。更に転移――続けて背後に回り込んだカグヤの二太刀目が、横薙ぎに精霊獣の筆の様な大きな尻尾を斬り払う。それこそがカグヤが割り出した精霊獣の浄化機関の位置。バチバチと音を立ててこれまでとは違う黒煙が噴き上がり、巨大な化け物は苦しそうに暴れ回る。
「ネリーさん!」
「ここかな……元を断つのが一番簡単だよね!」
レアエナの背には未だ真っ青なネリーの分身が。そして正面には本人が――カグヤの念動で跳躍された小柄なテレビウムがそのまま張り付いて、挟み込む様にその生命力を吸収する。舞い散る花弁が葬送の様にレアエナを包み込んで、狙うは浄化機関――目星を付けていた腰部に纏わりつく様に、鮮やかな花の嵐がその力を奪っていく。
『アアアアアア
!!!!!!』
咆哮するレアエナに合わせる様にたたらを踏む精霊獣。スッとネリーの手を取って最後の転移――稼働限界まであと僅か、遠く戦場を離れたカグヤ達の目に映るのは、猛毒に浸食されのたうつ邪悪の暴れ狂う姿だった。
大成功
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ヴィクティム・ウィンターミュート
──気に食わねェツラだな
自分が負けるなんて微塵も思ってねえ
視界に入る全てを格下のように思ってるんだろ?
…後悔することになるぜ、テメェ
こちとら止まってる場合じゃないんでね
最初から切り札を出すぜ…来い、骸の海
Void Link───スタート
別世界の"最強"から奪ったもんでね…
こいつに触れれば、どうなるか分かるかい?
例えばそう、有害物質に触れれば…
『毒性を帯びた』という過去を、あるいは『有害物質を排出した』という過去を強奪する
即ち過去改変…これが虚無の権能
当然、テメェとその精霊獣の『過去』も強奪できる
知識?経験?それとも始まりか?
奪ってやる、テメェを構成した時間を全て
『現在』を舐めすぎだぜ、テメェ
エドゥアルト・ルーデル
…年齢がなー!あとなー!半分ぐらいならなー!
若返る毒とか無いの?
有史以来毒ガス攻撃は「貧者の兵器」と呼ばれるぐらいお手軽な手段でござる
当然対策はいくらでもある!防毒の基本はガスに触れないこと!
まずはガスマスクでござるね!呼吸器系をやられるとイチコロですからな!
忘れちゃならないのは皮膚呼吸、全身をこの【流体金属生命体】で覆いつくし毒の吸収を防ぎますぞ!
豪雨で視界が塞がれるのは相手も同じ…ならば最後は近接戦闘が主になるだろうな
銃撃と【UAV】からの爆撃を加えつつ【精霊獣】が近くによってきたら流体金属君を纏ったパンチ!
この流体金属は生命力を吸い取る特別性でな…共有している今なら効くだろう?
メンカル・プルモーサ
…毒か…【闇夜見通す梟の眼】により召喚した解析用ガジェットにより毒を分析…
…毒使いの知識を応用した医術の知識で医療製薬術式【ノーデンス】により一時的に毒の影響を中和する薬を作成…服用しておくね…
…沼に落ちたら拙そうだから箒で飛んでおいて…
…遅発連動術式【クロノス】により定期的に浄化復元術式【ハラエド】を発動させて毒を薄めるよ…
…ふむ…相手に廃液浄化機関があるんだね…
…ならば…精霊獣の攻撃をオーラ防御による障壁で凌ぎつつ…その位置を解析用ガジェットで解析…
…位置を把握したら【撃ち貫く魔弾の射手】で浄化機関を貫くよ…
…元々毒を操るらしいけど…そんなもの装備してるからには毒の影響をうけるだろう…
●デコンポーザー
「……年齢がなー! あとなー! 半分ぐらいならなー!」
暗黒の雨の下でのたうつレアエナと精霊獣を見やり、エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)がわざとらしく振舞う。その全身は銀色の流体金属に覆われて、顔には胡散臭いガスマスクを。傍目にはモンスターの類にしか見えない。
「若返る毒とか無いの?」
「……毒か……」
シュコーシュコーとこの世の終わりみたいな呼吸音を上げるエドゥアルトの言葉に、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が続く。あくまで普通の格好――超常で呼び起こした無数の解析ガジェットが既に環境を把握して、毒に対応する中和剤を服用していたから。それでも変性し続ける猛毒を、いつまでも受け続けられる訳ではない。
「ん……でも……」
空飛ぶ箒に腰掛けて、視線の先には苦しみの声を上げるレアエナ。自身に浄化と停滞の術式を重ね掛けしても完全に払う事は出来ない猛毒だ。だからこそ、こんなものを浴び続ければあの敵だって普通にしてはいられない筈なのだ。
「これで、終わり」
解析結果、対象の攻略法はとっくに把握していた。後はそれを証明するだけだ。
『よくも、よくも……!』
「──気に食わねェツラだな」
精霊獣の上で恨み節を上げるレアエナに、外套を暗黒に染めた男が近寄る。
「自分が負けるなんて微塵も思ってねえ。視界に入る全てを格下のように思ってるんだろ?」
『だったら……どうする』
猛毒の雨を一身に受けて、男は怯まず顔を上げる。常軌を逸した蛮勇――否、この男の超常にしてみれば、他愛の無い事象。
「……後悔することになるぜ、テメェ」
腕を上げ、外套の中からチカチカと点滅する電脳兵装が姿を現して――瞬間、世界の色が更に深い漆黒に染まる。
「こちとら止まってる場合じゃないんでね。最初から切り札を出すぜ……」
Void Link――スタート。ヴィクティム・ウィンターミュート(End of Winter・f01172)は己を包む全ての悪意を、音も無く奪い尽くした。
「オイオイオイ、終わったわアイツ」
二人の前で発現したヴィクティムの超常――忘れる訳も無い、先の戦争で目にした最悪の災厄そのもの。虚無の――骸の海。
「エドゥアルトこそ、そんな装備で」
「クフゥ、全く問題ない。そもそも有史以来毒ガス攻撃は『貧者の兵器』と呼ばれるぐらいお手軽な手段でござる。当然対策はいくらでもある! 防毒の基本はガスに触れないこと! まずはガスマスクでござるね! 呼吸器系をやられるとイチコロですからな! 忘れちゃならないのは皮膚呼吸、全身をこの――」
明らかに異形と化した総身を声高らかに解説し始めるエドゥアルトに、尋ねながら長話に付き合う義理は無いと、そっと距離を置いて再びレアエナを観察するメンカル。仕方ないね。
「おーい」
「……ふむ……やっぱり体内に廃液浄化機関があるんだね……」
先の戦いで受けた傷痕から夥しい量の煙を吐いている。半壊した機関がフル稼働しているのだろう。未だ奇跡的に機能を保ってはいるが、つまり――それを破壊すれば。
「……元々毒を操るらしいけど……そんなもの装備してるからには毒の影響をうけるだろう……」
「まあ、毒を扱うからには解毒装備は常識ですからな。だから」
言いながらメンカルは三日月の飾り杖を敵へ向けて、その隙間から照準の様に魔法陣を出現させる。距離を測り――後は時を待つのみ。そして傍らでは、全身を流麗な金属で覆ったエドゥアルトが泥を撥ねて何やら厳めしい道具を用意していた。敵の弱点は分かった。毒への対処も万全。迎撃対策も――大丈夫だろう。だから。
「後は、そいつを奪っちまえばいい」
展開したUAVを飛ばしつつ右腕をゴキリと鳴らして、傭兵は状況を開始した。
『これは、骸の海――!』
「別世界の“最強”から奪ったもんでね……こいつに触れれば、どうなるか分かるかい?」
より昏く――『骸の海』そのものを呼び出したヴィクティムは、僅かに宙に浮かんだまま音も無くレアエナの方へ距離を詰める。
「例えばそう、有害物質に触れれば……」
降りしきる暗黒の雨も呼び出された漆黒に触れれば、全てが『無かった』様に姿を消してその威を失う。
「『毒性を帯びた』という過去を、あるいは『有害物質を排出した』という過去を強奪する」
発動した超常は現在を奪い過去へ還す。つまり『猛毒の雨に打たれたヴィクティムは存在しない』から『猛毒がヴィクティムの身体を巡る』事も無い。
「即ち過去改変……これが虚無の権能」
『そんなの……毒抜きが派手になっただけの事よ!』
たじろぐレアエナが精霊獣の腹を蹴る。恐らく攻撃も通らない――そして、それ以上の嫌な予感が脳裏を過る。早く、ここを逃げなければ……!
「まだ分からねえか。当然、テメェとその精霊獣の『過去』も強奪できるんだぜ」
漆黒の中、明滅するデバイスがエコーがかった音声と共に答えを放ち。
「知識? 経験? それとも始まりか?」
正に死の宣告――しかし精霊獣は先の戦いの手傷が深い。最早、自由に動き回れる状態では無いのだ。そして精霊獣はレアエナとその生命力を共有している。
『止めろ、止めろ近寄るな……!』
「奪ってやる、テメェを構成した時間を全て」
ギリギリとアクチュエータが軋む音だけが響いて、そっと伸びた漆黒が怪物の額を撫で――その存在を奪い尽くした。
「特定出来た。撃ち貫くよ……」
「それじゃあ拙者は乗り込みますかな――と」
間一髪、消え行く精霊獣から離れたレアエナ。しかしリンクを外した代償――己の浄化機関の位置を遂に特定されてしまう。
「豪雨で視界が塞がれるのは相手も同じ……ならば最後は近接戦闘が主になるだろう」
同じく、飛ばしたUAVから対象の状況と戦場を把握するエドゥアルト。恐らくこのミッションは一瞬。それぞれが牙を突き立てて、戦いは終局へ向かう。
『精霊獣が、貴様――!』
虚無に喰われた相棒に届かない手を伸ばし、怒りの形相でヴィクティムを睨みつけるレアエナ。暗黒の雨が自慢の真紅を真っ黒に染めて、濛々と浄化の蒸気を吐きながら。
『せめて、貴様だけでも!』
「余所見してていいのかよ」
邪悪な精霊を統べる女王だった。気に入らないものは全て潰して、世界は思うが儘――そして死んだ。全てはその傲慢さ故、思い通りにならない状況が己の最後をフラッシュバックさせる。バチバチと翳した左手に紫電が纏わりついて、忌々しい漆黒へ一矢報えると、そう思ってしまった。
「そうやって見下してっから――奪われるんだ」
瞬間、UAVの猛烈な爆撃がレアエナの片腕を吹き飛ばす。同時に背後から迫る金属めいた何かが音も無く中段突きを放ち――体内の浄化機関を握り潰した。そして。
『な……力が……!』
「この流体金属は生命力を吸い取る特別性でな……共有している今なら効くだろう?」
特に虚無に喰われたならば尚更だ。それに派手な魔法が持ち味ならば、近づいて封じてしまえばいい。そして猛毒を防ぐ流体金属生命体に包まれたエドゥアルトが文字通りレアエナの生気を吸い取れば、その悍ましい正体――骸骨の様な醜い老婆の顔が姿を現した。
『た、助け……』
「十分生きたろ?」
エドゥアルトが呆気なく言い放った直後、レアエナの頭が爆ぜる。遠くより放たれたのはメンカルの魔弾――事前に浄化機関の位置を共有し、動きを止めた所で必殺の一撃を。頼りの精霊獣は奪い尽くされ、猛毒の中を生きる術を失い、命乞いする暇すら与えない無慈悲な一撃が全てを終わらせる。
「『現在』を舐めすぎだぜ、テメェ」
降りしきる暗黒の下、『現在』は『過去』を乗り越えた。
いつかはこの猛毒だって、全て『過去』になる時が来るだろう。
静寂の中、全てを洗い落とす様に雨音だけが響いていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵