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アルダワ魔王戦争9-D〜侵入者に死を！

作者：水見

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●今はまだ静謐
　襲い掛かる災魔、様々に形態を変えていく魔王、行く手を阻むトラップの数々。次々と襲い掛かる困難を打ち破り地下迷宮を踏破して行く猟兵達。
　その行く先に、一本の通路があった。
　丁寧に整えられた石造りの通路は一見するとなんの障害もないように見える。
　しかしそこは侵入者を容赦なく始末するために作られた『光の石棺』が待ち受ける危険な場所だった。
　通路に踏み込めば最後。光る石棺から放たれる大出力のレーザーにより侵入者は容赦なく焼き尽くされるだろう。
　そして石棺の奥に控える災魔達が万が一にも生き残る侵入者がいないように確実に息の根を止めに来る。
　だがここを無視して迂回する事はできない。
　迷宮を踏破し魔王を倒すためにここを進むか、すべて諦めて退くか二つに一つ。

●殺意の高すぎる石棺
「ダンジョンもいよいよ最下層だよ！みんな最後まで頑張ろうね！」
　キャロ・エレフセレリア（たーのしー！・f12156）がぐっ！と親指を立てると、猟兵達を応援する横断幕を巻きつけた相棒のメガロスが立体映像を映し出した。灰色の石が敷き詰められた石造りの通路だったが、天井や壁のあちこちにキャロがタブレットでペイントしたドクロマークがついている。
「これは『光の石棺』って言ってね、密閉型蒸気反応炉の膨大なエネルギーの光―――大出力のレーザーを撃ってくる危険なデストラップなんだよ！」
　しかもこの光る石棺のレーザーは回避不能。侵入者がどれだけ素早かろうが勘が鋭かろうか問答無用で当てて来る。逃げ場はない。
「通路に入る前になんとかしようって思ってもダメみたい。石棺全体がレーザーの出力装置になってるから塞げないし、石棺そのものを破壊する事もできないの！」
　絶対に避けさせない。必ず当てると言う意思が強すぎる。
「でもこのレーザーは最初の一発しか打てないみたい。威力が高すぎるせいで連発できないのかな？だから皆はこの回避不能の殺人レーザーをどうにかして耐えて！一発目さえ耐えれば二発目は来ないよ！」
　でも……とキャロは光る石棺にはもう一つダメ押しがあると言った。
「通路の奥には『兵士の呪鎧』の群れが控えてるんだ。普段ならそこまで危険な相手じゃないけど、レーザーで大ダメージを受けた状態で戦わないといけないから、かなり辛いと思う！」
　だからいかに【大出力レーザーのダメージを軽減】するかが重要になるんだよ！とキャロは言う。
「何の用意もなしにレーザーを受けたら大怪我でろくに動けないまま控えの兵士の呪鎧にバッサリ！なんて事になるかもしれないよ！みんな対策はしっかりね！」
　念押ししながら、キャロは猟兵達を送り出した。

第1章 集団戦 『兵士の呪鎧』

POW   :    突撃陣形 【密集陣形を組ん】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。 SPD   :    防御陣形 【後衛】から【遠距離攻撃】を放ち、【前衛が盾で押し込むこと】により対象の動きを一時的に封じる。 WIZ   :    機動陣形 【鋒矢陣形を組むこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【衝撃力の高い突撃】で攻撃する。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

　猟兵達が辿り着いた石造りの空間はしんと静まり返っていた。ここに絶対不可避の強力なビームを放つ石棺と集団で襲い掛かって来る災魔が待ち受けている事を知ってる者にとってはかえって不気味な静寂だった。
「皆さん、ここは私が得意とする場のようです！」
　白い髪から突き出た白い耳をピンと立て、静寂を破った弥久・銀花（隻眼の人狼少女剣士・f00983）が罠が待ち受ける場所に「ちゃちゃっと行ってきますね！」と飛び出した。
　躊躇いなく石棺が配置された空間に足を踏み入れ―――。
「あ゛っつ゛ーーーー！！」
　一瞬視界が白く染まるような錯覚。そして直後全身に襲い掛かって来る熱。
　石棺からのレーザーをまともに受けた銀花は思わず悲鳴を上げた。
「……、どんな攻撃にも負けません！」
　『不死身の人狼』の超再生能力で受けた傷を急いで癒して行く。レーザーをまともに受けた分傷は深く、再生しきるには時間が必要だ。
「兵士の呪鎧が来る前に再生しきれるかが鍵ですね……」
　傷の治癒に集中する銀花の足元に白い煙のようなものが流れて来た。それは黒鵺・瑞樹（界渡・f17491）が生み出した水蒸気だった。
「レーザーって確か強力な光の束、みたいなものだったよな……？」
　これまで『レーザー』と称されるものを見て来た瑞樹はその経験を基に対策を考えた。
「一か八かになるが……炎よ！」
　水の系譜の龍の仔『伽羅』が得意とする水の力に、瑞樹が金谷子神及び三宝荒神の清めの力である『炎陽』の炎を加える。瞬く間に水が蒸発し水蒸気が立ち込めた。
　光は水蒸気の中で拡散・反射すると聞く。レーザーが光の束と考えればこれでいくらか威力が軽減できるはず。
　瑞樹が水蒸気の中を進むと、周囲がカッ！と眩く光る。
「ぐっ……！」
　激痛が走る。しかし強烈な光は水蒸気の中でいくらか拡散されたようで、瑞樹の足を止める事はなかった。これなら次の戦いもこなせるだろう。
　瑞樹は水蒸気の中で目立たないよう気配を消して銀花に近付いた。
「傷は？」
「これくらい平気です！あなたの方は大丈夫ですか？」
　明らかに平気とは思えないダメージを負っている銀花だったが、深く聞く前に左の眼窩にある黄玉の義眼が通路の奥から炎魔『兵士の呪鎧』が群れを成してやって来るのを捉えた。
　傷は充分に癒えていない。構えるだけでも痛みが走る。だが銀花は呪鎧の群れに突っ込み、大きな盾を構えた『突撃陣形』を切り崩しにかかった。
　構えられた盾を避けるのではなく、鎧すら砕く怪力を頼みに盾にしがみついて腕を伸ばし、首や脇などの急所を狙って刀を突き刺す。
　倒しきれなければ掴んだ盾をそのまま振り回すジャイアントスイング。
「さあ、かかって来なさい！ドンドン倒してあげます！」
　派手に暴れる銀花をなんとかしようと背後に回ろうとした呪鎧の一体が突然崩れ落ちた。
「思った通り側面に回れば回避はたやすい。その弱点を突くのもな」
　右手に打刀『胡』、左手に本体でもある大振りな黒いナイフ『黒鵺』を携え、瑞樹は暗殺した呪鎧にとどめを刺す。気配を決して回り込む事で呪鎧の『機動陣形』から逃れたのだ。
　気付いた呪鎧が瑞樹をしっかりと目視して鋒矢陣形を整える。今度は実を隠しての奇襲はできないが、瑞樹は第六感で攻撃を捉えて躱し盾の裏に回り込んで刃を突き立て、斬る。
　ファーストダンジョンも最下層。ここで足止めを喰らうわけにはいかない。全て倒して通路の先に進むのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

『わーい、悪い人なのー。パパが悪い人は食べて良いって言っていたからたのしみー！』
　きゃっきゃと無邪気にはしゃぐアリス・ラーヴァ（狂科学者の愛娘『貪食群体』・f24787）は蜘蛛に似た濡れ羽色の甲殻と何でも噛み砕く顎をギチギチと鳴らした。そう、彼女の言葉は他人にはギチギチと顎を鳴らす音にしか聞こえない。言葉は全て脳内に直接響くのだ。
『いただきまーす！』
　頑強な体に無邪気な少女の心を持ったアリスは通路に現れた呪鎧の群れに嬉々として飛び掛かる。
『あら？光が……』
　何の警戒もせずに飛び込んだアリスの体は一瞬でレーザーの光に包まれ、焼き尽くされて石畳の上に転がった。
　ギーギー……ギチギチギチ……と顎を鳴らした後はぴくりとも動かないアリス。その後ろからひょっこりと今倒れたアリスと全く同じ姿のアリスが現れた。
『……びっくりしたー。アリスがひとり減っちゃったのー』
　倒れたアリスが瀕死で放った『だめ～後はおねがい～』の願いを受けて、次のアリスと大地を埋め尽くさんばかりの数の『妹達』がやってきたのだ。
『次は来ないみたいだねー。今のうちに突撃よー』
　アリスと妹達が嬉々として陣形を組み、呪鎧の群れに襲い掛かる。襲い掛かられる側になった呪鎧もアリスと妹達を『突撃陣形』で迎え撃ち、両者の間で倒し倒され激しい消耗戦が始まった。
　しかし猟兵達に対して数で圧倒的なはずの呪鎧もアリスの妹達の中央密集型の陣形を抜けず、ならばと回り込めば足が止まったと見たアリスが陣形から外れた呪鎧を包囲して鎧すら貫く前肢で突き刺し、鋏角で噛み砕き咀嚼してしまう。
『お肉もいーけど金属もおいしーよねー』
　金属がひしゃげて砕けるすさまじい音を立てながら咀嚼して行くアリス。無邪気な彼女にとって、もはやここは戦いの場ではなく妹達との食事を楽しむ団欒の場だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「レーザーとは物騒デスネ」
　背中にモチモチした感じの『モチモチ』と言う文字型グリモアを背負ったモッチ・モチ（ボス専門バスター・f09023）は先行した仲間達を襲ったレーザーに備えて人の身長程もある『大型銀製ナイフ』を抜く。
「不可避であれば受けて立ちましょう。処刑台に立っている気分ですが」
　ボロボロのフェルト帽を被ったメグレス・ラットマリッジ（襤褸帽子・f07070）のちょっとダウナーな言いようにモッチは任せろとナイフを掲げた。
「大丈夫デス！このナイフを鏡代わりにレーザーを反射させマス！」
「私もお手伝いしますね」
　メグレスはモッチを心強い味方と思っているが、レーザー対策任せきりにするつもりはなかった。紫雷を纏う『雷杖』に血液を注ぎ込み雷撃を強化する。
　モッチが石造りの通路に足を踏み入れると即座に光る石棺からの閃光。モッチが掲げたナイフにレーザーが当たる直前、強化した雷撃を放ってレーザーの勢いを削ぐ。
「熱っ！アツアツアツっ！？」
「直撃していなくてもこの熱量……！」
　雷撃と掲げたナイフは確かにレーザーの威力を削いだが、レーザーの持つ強烈な熱がモッチとメグレスを焼いた。更に痛みを堪える暇もなく、現れた兵士の呪鎧の群れが二人に殺到する。
　レーザーでは倒す事のできない猟兵達の登場によって通路を突破されかけているためか、向こうも必死だ。
「モッチモチの沼へご招待♪―――トリモチとらっぷみたいにそのままくっついててくだサイ♪」
　後衛に遠距離攻撃を任せて『防御陣形』を取った呪鎧達だったが、モッチの放った『自在念弾の弾力包囲網（モッチモチフィールド）』によって絡め取られ足が止まる。
「メグレスさん、あとはお願いしマス！」
「少々気乗りはしませんが……」
　メグレスはちょっと躊躇って、しかし一人で突っ込むのも寂しいからとひょいとモッチを拾い上げた。
「さあ、指輪を探して」
　現れたのは鎧を纏った黒い鉄塊。実体の無い騎馬の亡霊。『幽馬騎乗（テリブル）』によって馬上の人となったメグレスは拾い上げたモッチを後ろに乗せ石造りの通路を走る。
　遠距離攻撃をかわし『機動陣形』で矢のように迫って来る一団をかわし、捉えられないように手綱を操る。馬上の揺れは傷付いた体に響いたが、けしてスピードを緩めない。
「わー♪お馬さんデス！速い速い！」
　風を切って走る亡霊の騎馬に痛みよりもテンションが上回ったモッチは自在念弾を打ちまくり、次々と呪鎧の足を絡め取る。メグレスはそこに向けて騎馬を走らせた。
「さあ、乙女二人分の重さが乗った質量の暴力、足を取られたその姿勢で受け切れますかねー！」
　ズキズキと傷む体と足止めされたとは言え頑丈な鎧と大盾で身を固めた一団に突撃する緊張。声を張り上げなけなしの元気で奮い立たせて突撃した。
　ゴシャアッ！と騎乗したメグレスとモッチにも伝わる鈍い衝撃。盾を構えて突撃体勢を取る呪鎧を速度と重量の乗った蹄が踏み砕き、撥ね飛ばす。後に残ったのは無残なまでに歪んだ大盾と鎧の残骸のみ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

　白銀の鎧に身の丈ほどもある大盾。トリテレイア・ゼロナイン（紛い物の機械騎士・f04141）は兵士の呪鎧とは似て非なる、騎士道物語に出てくるような姿をしていた。
「防御は念入りに……事前準備が物を言いそうな戦場のようですね」
　見るからに頑丈そうな『超重フレーム&偽装甲冑装甲』の展開部分を閉じ、対レーザー用装甲を厳重に施した。あとは戦場に踏み入るのみ。
　『重質量大型シールド』を構えて石造りの通路に入ったトリテレイアのセンサーが巨大な熱量の発生を察知。光る石棺のレーザーは巨大な盾すらも溶解させて行く。
「この程度のダメージならば想定内です」
　破損して使い物にならなくなった大盾と対ビーム用の追加装甲をパージ。各部の損傷状態をチェックし、受けたダメージや損傷に応じて各部の出力を調整する。覚悟の上で挑んだ『全サ連メカニック班謹製　追加機動装甲（フルアーマー・トリテレイア）』を焦らせる程の被害はない。
「流石の全世界サイボーグ連盟メカニック班の技術力、良い仕事ぶりですね……あとは性能を引き出す使用者の問題ということです！」
　閉じていた装甲を展開。外套のようなスラスタ付き追加装甲が全身を覆い、戦闘力を向上させる。
　飛行可能になったトリテレイアはスラスタを吹かして地面スレスレを飛ぶ。格納していた銃器で襲い掛かって来る呪鎧をなぎ払った。
　密集した『突撃陣形』を銃撃と機動力で翻弄し、怪力で振るわれる剣でなぎ倒しその陣形を文字通り切り崩して行く。
「私達はこの奥に進まなければなりません。全て薙ぎ払わせてもらいましょう！」
　スラスタを全開。今出せる最高速度で疾駆するトリテレイアの剣と銃器が残り全ての呪鎧を屠った事で、光る石棺と災魔の群れに守れらた通路の攻略が完了した。

　かつて大魔王を封印したはじまりの領域『ファーストダンジョン』の完全攻略は目前。全ての謎を解き明かすため、猟兵達は更に奥へと進んで行く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2020年02月19日