アルダワ魔王戦争9-E〜向き合うは己
そこに有りしは呪いの鏡 覗き込む先には深淵。
現れるのは己と瓜二つの存在――我は汝、汝は我。
この先通りたくば、自分自身と相見えよ。
「ドッペルゲンガーのような物と思うがいい」
白衣の青年は、眼鏡を指先で押し上げながらそう無愛想に告げた。多重人格者である双代・雅一(氷鏡・f19412)のもう一人の人格――双代・惟人は手にしたタブレット端末を操作しつつ、ファーストダンジョン深部フロアに存在する鏡の間について説明を続けた。
曰く――そこにあるのは古代蒸気文明において、今や失われた技術によって生み出された呪いの鏡が存在するのだと。
そして鏡に映った対象と全く同じ姿・同じ能力を持つ、蒸気人形が産み出される。
「それこそ鏡から抜け出して来るが如く、な。つまり、写し身と戦わねばならん」
見た目も能力も同じ。しかも相手は人形――長引けば不利ではあるのだが。
「逆に言えば。相手が人形だからこそ掴める勝機もあるのではないか?」
惟人は告げる。人形は気迫や熱意を然程持ち合わせていない。また、限界を超えた能力までは模倣しきれない。そして己自身だからこそ、自分の弱点を把握出来る部分もあるだろう、と。
「幾ら技術が優れていても、命有るモノの完全な再現など不可能」
強き心と感情とを備えていれば、所詮ただのコピー人形。
「――説明は以上だ。転送を――」
そこまで言いかけた所で言葉が止まる。スッと眼鏡を外し、その表情を薄ら笑みに変えた青年は、もう一つ……と言葉を継いだ。
「俺達のような多重人格者からすれば、この呪いの鏡はある種厄介だろう」
普段から己の中の己と向き合っているようなものなのだから。
「自分の中の誰かと斬り合うような感覚になるかも知れない」
己が誰かなのか、見失わないように――そう微笑むと、雅一は転移の力を解放した。
天宮朱那
天宮です。同じ顔が二人とか好物。
プレイングボーナスは「自分自身に打ち勝つ方法」
冒険フラグメントですが、実質は己を写した蒸気人形との戦闘。
人形の喋りは模倣ですが温度低めです。
同じユーベル・コードで殴りあう戦いになろうかと。
攻略の方法は、フラグメントを参照になさると良いでしょう。
合わせプレは最大2名様までとします。その場合は互いの名前とIDの記載と同日送信をお願いしたく。
また多重人格者の方は戦う人格とコピーされた人格は同じでも別でも構いません。記載無ければ同人格対戦。別にする場合はそれぞれが解る様に明記願います。
技能の『』【】等のカッコ書きは不要です。技能名並べたのみのものは割と描写があっさりします。具体的な使用方法の記述があれば生きた描写になるかと。
オープニング公開からプレイング受付します。
マスターページやTwitterなどでも随時告知をしますので宜しくお願いします。
第1章 冒険
『鏡写しの蒸気人形』
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POW : 人形などには負けない気合と熱意を高める事で、蒸気人形に打ち勝つ
SPD : 技量や速度を極限まで高める事で、蒸気人形が模倣しきれない攻撃を放ち、蒸気人形に打ち勝つ
WIZ : 客観的に自分自身を見る事で、自分自身の弱点を把握。その弱点を利用して、蒸気人形に打ち勝つ
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水鏡・怜悧
詠唱改変省略可
人格:ロキ
(ある種厄介、ですか。お二人はきっと仲がよろしいのですね)
鏡に写る瞳は紫
「いつも通り、躾といきましょうか」
ため息1つ、鏡から距離を取る。出てきたアノンはUDCを纏い黒狼の姿へ。高速近接戦闘を仕掛けるために突進してくる
「ワンパターンですよ」
高速移動に合わせて土属性の触手を地面に刺し、突き上げるように岩を生成し吹き飛ばす。着地点に沼を作り、バランスを崩したら電気の触手で縛り上げてマヒ攻撃
「本物なら荒れ狂って抵抗するのでしょうが…」
そういえば最近は躾の回数も減ってきたなと微笑み
(さっきのよりオレのがつえーし。いつかロキもレイリも喰うからな)
(そうならないように気をつけますよ)
(「ある種厄介――ですか」)
水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)――の中の一人格「ロキ」はそう思う。
案内した多重人格の彼らは恐らく仲が良いのだろう、とロキは思う。自分と同じ顔の存在と斬り合う事に痛みを感じるのであれば、己の中の自分と対峙する事を望まないのであれば――と。
だが、怜悧の中に住まう人格達は違う。
「いつも通り――」
鏡の前に立つ。映し出されたその瞬間のみ、彼の中の彼が変化する。
瞬いたその瞳の色は、紫。
鏡に映る姿が、鏡の外の怜悧とは違う動きを見せた。硝子の面に手を伸ばし、とぷんと水の中から浮かび上がって這い出るかのように、その姿を現実のものとした。
『――オレは引っ込んだのかよ』
「ええ、躾といきましょうか」
軽く溜息をついて鏡から距離を置いた怜悧の瞳は再びロキの碧色。人格「アノン」として現出した鏡の蒸気人形は顔をしかめた。
『良い機会だ――食ってやるよ。お前も、レイリも、オレ自身も』
アノンがそう告げると同時に、黒き液体のような物が彼を包み込む。黒き玉虫色の金属生命体の如きUDCを纏ったその姿は黒き狼へと彼を変貌させた。
『ガアァァッッ!!』
獣と化したアノンのその突撃を見てもロキは眉一つ動かさず。飛んでくる前脚やその牙に対して淡々と対処するのみだと言わんばかりであった。
「ワンパターンですよ」
地属性の触手が放たれ、地面を穿ったかと思えば、突進してきた黒狼の真下より突き上げるように岩が生成されて相手を吹き飛ばした。
『ガァッ!?』
更にその着地点には放たれた水属性により池か沼かと言う水溜まりが生じており。空中で体勢を整えるも間に合わずに足をそこに滑らせ落とす黒狼。
『ふざけやがって――』
纏ったUDCを解き、抑揚の無い口調で此方を睨み付けるアノン。だがそんな言葉に意を介さず、ロキは触手を無造作に差し向けた。電気を纏った雷属性のそれを。
「残念ですけど、私はアノンの事は十二分に把握しているんですよ」
その戦いの所作も、感情の動きも、全て文字通り手に取るように。
触手は写し身のアノンを縛り上げる。高圧の電流をこれでもかと流しながら。
『――っ!!』
「本物なら荒れ狂って抵抗するのでしょうが……」
悲鳴すら上げず、然程抵抗するまでも無く、その攻撃に屈して蒸気と共に消え去ったアノンの写し身を見送ったロキはぽつりと呟く。
「そういえば最近は躾の回数も減ってきたかな……」
(「さっきのより、オレのがずっとずっと強ぇーし」)
脳裏に響いたのは本物のアノンの声か。ロキがふふっと微笑むと、躍起になったような声が更に続けて来る。
(「いつかロキもレイリも喰うからな。覚悟しとけよ?」)
「――そうならないように気をつけますよ」
ロキはそう言って、鏡の間を静かに後にしたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
大豪傑・麗刃
やあ。心がないとはいえ、きみはわたしだ。ならばわたしがきみと望む戦いも心得ている事だろう。
知っていると思うが、わたしの戦い方は。
ギャグ
真剣勝負の場にお笑いを持ち込み相手を笑わせ(あるいはくだらないと怒る、あきれる、白け切る等)、喜怒哀楽恐の雑念を呼び起こす事で普段通りの実力を出せなくする。まさに趣味と実益を兼ねた戦法!
それができないようでは、わたしには勝てん。
さあ見せてもらおうか!きみが使える、最高のギャグを!!
……あれ?
心のない相手にギャグって通じるの?
いいや通じる。
気合の入ったギャグ(それ以前にユベコ)に通じない相手などいないたぶん!!
必殺のギャグでギャグ転サヨナラホームランを放るらん!!
「やあ」
大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)は鏡より這い出た己の写し身を前に、軽く手を挙げて声をかけた。
「心がないとはいえ、きみはわたしだ」
『……そう、わたしはきみだ』
「ならばわたしがきみと望む戦いも心得ている事だろう」
その言葉に、麗刃の写し身は一瞬動きを止めた。その言わんとしている事が理解出来てしまった、から。
「知っていると思うが、わたしの戦い方は――」
ギャグ(GAG)……笑わせる為に流れと関係なくぶち込まれる即興的な台詞や動作。
麗刃の戦い方は実に特殊である。真剣勝負の場に笑いを持ち込み、相手を笑わせる――もしくは怒らせるか呆れさせる等により、様々な雑念を呼び起こす事で相手の実力を削ぎ落とすと言う。
なお似たような戦い方として『セクシーコマンド―』が幻の格闘技として一部に知られているが、それはまた別の話である。
「この趣味と実益を兼ねた戦法……それが出来ないようでは、わたしには勝てん!」
『うぐぐぐ……』
「さあ見せてもらおうか!きみが使える、最高のギャグを!!」
その言葉に彼の写し身は苦悶の表情を浮かべる。多少の感情は持ち合わせているらしいが、ギャグというものを理解し、応用――即ち自分で発するレベルの感情は足りていないのだ。
そんな様子を見ながら、麗刃も実はふとある事に気がついて額から流れる汗が止まらなくなりつつある。
(「……あれ? 心の無い相手にギャグって通じるの?」)
喜怒哀楽が薄いらしいって聞いたけど、笑ったりするんだろうか。
いいや、通じる。気合いの入ったギャグに通じない相手などいない! ――たぶん。
「征くぞ! 必殺のギャグでギャグ転サヨナラホームランを放るらん!!」
――。
――――。
沈黙が場を支配する。
(「す、スベった……のだ?」)
焦りで更に流れる汗が止まらなくなる気がしたその時。
目の前で固まっていた麗刃の写し身は、耳から鼻から蒸気をブシューッと噴き出して、そのままその場に直立姿勢のまま前のめりにぶっ倒れた。
「ををっ!?」
『――ひどい、これは、ひ ど い』
そう声を上げて蒸気人形はそのまま姿を消した。
「ひ、ひどいって何がなのだ!?」
ウケて悶絶して倒れたのか、あまりのくだらなさに悶絶して倒れたのか。
色んな意味で破天荒な同キャラ対戦はもやもやを残しつつも呆気なく勝負がついたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ラリー・マーレイ
POWで行動。
自分と向き合うってむず痒い気分だな。……ちょっと頼りなさそうに見えるのが気が楽……いや、寂しいか。
こういう時は一番シンプルで一番信頼出来るUCを使おう。長剣を構えて一の剣で攻撃する。
基本の素振り通りの攻撃を、全てを断ち切る斬撃に昇華させるUC。今の自分の全力を込めた剣撃に気合いを込めて撃ち込むよ。
相手も同じ技を使うなら多分剣の軌跡も同じ。応用が効かないのがこの技の弱点だ。何合か打ち合う。
やっぱり互角か。だけど、人形と僕との違いは成長出来る事だ。自分と打ち合う事で自分の限界を突破してみせる!
相討ちの恐怖を勇気を振り絞って押さえ込む。相手より一瞬でも早く一の剣の斬撃を撃ち込むよ。
「自分と向き合うってむず痒い気分だな」
ラリー・マーレイ(少年冒険者・f15107)は、改めて己の姿を映し出した鏡を見ながらそんな事を呟いた。
全く自分と同じ姿の者が鏡の硝子越しに動き出すと、そこから抜け出てくる様子――まるで水面から出てくるかのようだ。
「……ちょっと頼りなさそうに見えるのが気が楽……いや、寂しいか」
『僕自身にそう言われるとこっちも悲しくなるな」
鏡像のラリーはその言葉に肩をすくめて腰に佩いた剣を抜く。両刃の剣はラリーの愛用のそれそのもの。武器すら完全にコピーすると言う事か。
「見るからに強そうな相手じゃない分、お互い気楽だろう?」
そう言ってラリー自身も剣を構えた。向こうも同じく構える。全く寸分の違いも無い。
さぁ、仕合おうか。
ラリーは構えた長剣を頭上に掲げて振り下ろす。長らく繰り返された素振り通りのその型は一挙一動が完成された彼の必殺剣へと昇華されたもの。
それに対し、写し身もまた同じ様に普段素振りと同じ所作で剣を振るい、ラリーの剣戟を受け止めた。
「やっぱり動きは知られてるか」
『そりゃあ、僕自身だし当然だと思わないかな』
互いに数歩退く。一番シンプルで一番信頼出来る己の技。だからこそ、今の自分の全力を籠めて、気合いを注ぎ込んで放てる技。
だがしかし。応用が効かないのがこの技の弱点でもある。何度も、何度も打ち合う事、数合。互角だと言う事を強く感じさせる、技と技とのぶつかり合い。
(「やっぱり、互角か」)
更に数合、剣を交えながらラリーは思う。自分との打ち合いによって、自分自身が見えてくる。この技の弱点を認識し、自分の限界を見出し、突き破る……!!
「はぁっ!!」
『いやぁっ!!』
相討ちの恐怖が消えた。その強さが人形との差。
一瞬。刹那に過ぎない一瞬、ラリーの一の剣は放たれた。
向こうの刃が耳の後ろを掠め、髪の毛が数本中を舞った気がしたが、そんなことはどうでも良い。
『――見事だな、僕』
「ああ、お陰でまた成長出来た」
斬撃を受けた先から蒸気を噴き出しつつ崩れ落ちていく写し身。剣を鞘に収め、ラリーは消えていく相手を最期まで見つめ続けていたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
天元銀河・こくう
ふむん
映した者を複製する鏡か
今更、己の『マガイモノ』を見たところで新鮮味はないな
なにしろ、わたし自身が『ホンモノ』の複製体だ
劣化した己相手なら、遠慮は無用
(肩上のぬこが、ふわあとあくび)
その通りです
我々は『ふたつ』も必要ない
完膚なきまでに殲滅してご覧にいれましょう、ぬこ様――
ぬこ様と同化し戦闘形態(真の姿)へ
以降、すべての言動に好戦性と凶暴性をプラス
武器は使用せず、徒手空拳にて下す
極限まで動きを早めたステップで写し身の追従を許さない
攻撃や回避はスカイステッパーを駆使し
上下空間も利用した立体的な戦術で対応する
即興ダンスの如き華麗さも見せつけてやろう
貴様にも『バグ』があれば
我々に勝てたかもしれんな
「ふむん――」
天元銀河・こくう(黒猫看守・f16107)は目の前の鏡から抜け出してきた自分の写し身たる蒸気人形を見て、まずはこう一つ唸った。
映した者を複製する鏡か、と脳裏に反復する。
しかし彼女は自分と全く同じ姿の相手を見て、何一つ心が動かない。
『……“やはり”驚きはしないのか』
「今更。己の『マガイモノ』を見たところで新鮮味はないな」
写し身も解っているのだろう。淡々とした確認のような問いかけをしてきたのを、こくうは小さく鼻で笑う。
「なにしろ、わたし自身が『ホンモノ』の複製体だ」
『ならば、わたしは複製体の複製体……と言う事になるな』
肩を竦めて写し身が言う。感情が乏しいとは言えど、流石にこの事を皮肉にでも思ったのだろうか。
「劣化した己相手なら、遠慮は無用」
そう告げれば、肩の上に鎮座するぬこ様が大きくふわあと欠伸をなさった。
「ええ、その通りです。我々は『ふたつ』も必要無い」
ぬこ様の首元をそっと撫でて差し上げたこくうが手を伸ばせば。
するっと肩から降りたその不思議な生き物らしきものは少女の周囲をくるっと回ってその胸元から吸い込まれ――。
「完膚なきまでに殲滅してご覧にいれましょう、ぬこ様――」
同化し変化したその姿。凜々しく其処に立つは戦いの正装に身を包んだ少女。
気がつけば、向こうも同じくその姿を戦闘モードにシフトしていた。
「そこまで複製するのか」
『ああ、わたしは鏡写しの存在だからな』
構えるその所作の全てが左右対称なだけで一緒。
どちらも武器は用いない。己の身体一つのみが武器故に。
「――ッ
!!」『……っ!!』
地を蹴ったのもほぼ同時だっただろうか。その極限まで動きを早めたステップ。写し身の追従すら許さない――そのつもりでいたが。
「はっ!!」『たぁっ!!』
拳が重なる。撃ち合うタイミングも早さも互角。
ならば……と、こくうは空を蹴る。空間全てが彼女の足場。立体的なその動きだけならば、写し身も同じく追従してきた――のだが。
「ふんっ!!」
『――なっ』
攻撃が一方的になる。写し身の想定してない動きがこくうにプラスされていた。
――即興ダンスの如き、華麗なさまをみせてやろう。
そんな思いを抱いて戦うだなんて。その舞うような動きに翻弄されながら、一方的に徒手空拳の攻撃を浴びせられる人形には、到底理解出来ようもない。
やがて最後に掌底を受けた写し身は、床に崩れ落ちる。四肢より蒸気を吹き上げて、そのまま霧のように溶けて消えた。
「貴様にも『バグ』があれば――」
――我々に勝てたかもしれんな。
こくうは写し身が消えた床を見下ろしながら、ぽつりとそう呟いたのであった。
成功
🔵🔵🔴