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アルダワ魔王戦争7-A〜静止の空間

#アルダワ魔法学園 #戦争 #アルダワ魔王戦争

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 アルダワ魔法戦争。大魔王の復活により始まった戦争は、アルダワ魔法学園を、ひいては世界にも影響するものだ。
 猟兵達は大魔王を撃破するため、学園地下の迷宮“アルダワ”よりもさらに深部、かつて大魔王を封印したはじまりの領域“ファーストダンジョン”へ突入していく。


 通路がある。
 均等な通路幅で長く伸びていくそれは、緩やかなカーブを持っており、回廊と、そう言える通路だった。
 そしてそんな回廊の壁には、多数の絵画が飾られており、その内の一つが怪しく光を放っていた。
「――――」
 その絵画に描かれているのは、この回廊と同じく、どこかの屋内にある通路を描いたものだが、描いてあるのは行き止まりだった。
 行き止まりの壁を正面から見据えた、そんな構図の奇絵画は、描かれた壁も奇妙だった。
 赤い壁が金で縁取られ、中央には金の字で六芒星が、そして六芒星の頂点と中央に幾ばくかの文字が書かれている。
 そして、何より目を引くのは壁の下部だ。怪しい紫の炎が壁を舐め上げている。

 ●
「――侵攻をお願いしますわ」
 猟兵たちの拠点、グリモアベースでフォルティナは言う。
「“アルダワ魔王戦争”……。アルダワ魔法学園の命運を賭けた戦争は、迷宮内の様々な箇所で行われていますが、皆様に向かっていただきたいのは、下層にある絵画が並んだ回廊ですの」
 “ファーストダンジョン”、その地図の左下側を示しながら、
「そこにある絵にはオブリビオンが描かれてるんですけれど、その絵画達は、“呪いの絵画”と、そう言われているんですわ」
 それは何故か。
「回廊を進む侵入者を“絵の中に引きずり込む”……。そんな能力を持っているからですわね」
 絵画の中は、描かれた光景がそのままに広がっている。時には炎の海、時には宇宙、時には深海や異世界といった様々な光景の中、やはり、描かれているオブリビオンもいるのだ。
「……もうお解りですわね? 皆様にはこれから、そんな“呪いの絵画”の中にわざと引きずり込まれてもらい、そこにいるオブリビオンと戦闘、そして撃破してもらいますわ」
 フォルティナは、一枚の画像を出す。
「皆様に入ってもらう絵画はこの、一枚の壁が描かれた絵画ですわ」
 その絵画の中に広がっている世界は、何か。
「『時間が完全に静止した空間』……。災魔、デモンズ・ウォールが描かれた絵画の中はそんな世界ですの」
 いいですの? と、フォルティナは指を立てて、現場の状況を説明する。
「絵画の中に入った瞬間、皆様の身動きは取れず、しかしデモンズ・ウォールは動けると、そう予想されていますわ。
 それはデモンズ・ウォールが、“骸の海”の一部がそのままオブブリオン化して、世界に出てきたような存在だからですの。
 時も命も止める、『動く「死(止)」の概念』は、もはや時間というものを超越した存在……そういうことなのかもしれませんわね」
 難しい、そんな表情そのものでフォルティナは腕を組む。
「つまり皆様に考えてもらいたいのは、そんな時間静止空間でどう戦うか、ですわね……」
 そこまで言うと、フォルティナは開いた手を見せ、そこに光を生み出す。
 オレンジ色の光はグリモアだ。
「――まとめますわね?」

 ・オブリビオンが描かれた絵画は、侵入者を絵の中に引きずり込む。
 ・絵の中は、現実とは違う異世界が広がっている。今回の場合は、『生物の時間が完全に静止した空間』
 ・わざと引きずり込まれて、時間が静止した空間でオブリビオンと戦ってくださいまし。←どうすればいいんですの。

 グリモアで空中に文字を書き終えると、フォルティナは手中に残ったグリモアの輝きを一層強くする。
「アルダワ魔法学園の命運をかけた戦争……。危険な戦いになるかと思いますが、皆様、ご武運をお祈りしますの!」


シミレ
 シミレと申します。TW6から初めてマスターをします。
 今OPで24作目です。アルダワ魔法学園は三回目です。
 不慣れなところもあると思いますがよろしくお願いいたします。

 ●目的
 ・時間が静止した空間でオブリビオンの撃破。

 ●説明
 ・アルダワ魔法学園で戦争イベントが始まりました。学園の地下にある迷宮“アルダワ”よりもさらに深部、“ファーストダンジョン”にいる大魔王を討伐するため、猟兵達は行きます。
 ・その道中、呪われた絵画が並ぶ回廊があります。絵画にはオブリビオンが描かれており、迷宮の侵入者を絵画の中に引きずり込みます。
 ・絵画の中は、その絵画独自の世界が広がっており、『時間が完全に静止した空間』とそんな中でも動けるオブリビオンが待っています。

 ●プレイングボーナス
 今回の依頼は現場が独自の異世界です。
 ですので、以下に基づく行動をプレイングに書いていただければ、プレイングボーナスが発生します。

 プレイングボーナス……絵画世界の雰囲気に合わせた戦い方をする。

 ※プレイングボーナスとは、プレイングの成功度を複数回判定し、最も良い結果を適用することです(詳しくはマスタールールページをご参照下さい)。

 ●他
 皆さんの活発な相談や、自由なプレイングを待ってます!!(←毎回これを言ってますが、私からは相談は見れないです。ですので、なおのこと好き勝手に相談してください。勿論相談しなくても構いません!)
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第1章 ボス戦 『デモンズ・ウォール』

POW   :    死と虚無の支配者
【恐怖 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【触手を纏う名状し難い地獄の王のようなモノ】から、高命中力の【死と虚無に満ちた触手】を飛ばす。
SPD   :    シリアス・デモンズ・ウォール
【巨大な全身 】から【それだけで人を殺せそうな程の殺気】を放ち、【蛇に睨まれた蛙の気分になる程の威圧感】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    世界も命も止める柱
レベル×5本の【時間停止(命中時、十三秒間) 】属性の【物理ダメージをともなった特殊な柱】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠泉・星流です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

才堂・紅葉
「時間静止か……まったく、あいつら当てにしてるわよ」
概念系は苦手だが、そこは錬金学部の連中が作った『凍結時間融解』ガジェットがある
「凍結」と言う概念に対し「融解」と言う概念をぶつけ停止時間に対応する物らしい
理屈は意味不明だが自信に満ちていたので押し込まれた。まぁ、これで問題ないだろう
『時間停止空間内でボタンを押してください』
連中の説明に欠けがあったことを除けば
当然、静止した

「詰めが甘いな馬鹿弟子は」
ぼんやりと輝いて出てきた影が告げる
『生物の時間が完全に静止した空間』を亡霊が動く

「死者は死者同士、私が君とお付き合いしよう」
手の甲の紋章が輝き

「ハイペリア重殺術……極星」
紅葉も知らない奥義が炸裂した




 紅葉は、思う。
 時間静止、か……。
 概念系は苦手なのよね、と口の中で呟きながら、回廊の中を歩いていく。
 曰く、今から向かう先にある絵画は、時間が静止した空間へ引きずり込む性質を持っている、と。
 それをグリモア猟兵から聞いた後、紅葉がコンタクトを取ったのは、知己であるアルダワ魔法学園の錬金学部だった。
「――というわけです」
 事情を説明し終え、紅葉が掌を差し出したところ、向こうから押し付けられるように渡されたのは、物品だけではなかった。
「……!」
 知識だ。
 水が勢いよく、また豊かに流れるように、よどみなく話すさまを、滔々と、そう言う。
 こいつら……!
 読経や暗誦という言葉が、自分の脳内に浮かぶのを自覚しながら、努めて笑顔で尋ねた。
「そう。――それで、これ、何?」
「え……? ――要するに! 時間って熱量と共通する部分があ――」
 要してないわよ? と、スマイルしながら片眉が僅かに上がるが、これは未熟ではなく寧ろ器用な女の特権。そう思いながら、やはり言葉を続ける。
「そう……。――それで、使い方は?」
「え……? 横のスイッチを押せばいいけど……。――で! “凍結”された時間は“溶――」
 その後は自分でもよく覚えていない。結論を言うと、今、歩いているわ。
「まったく……。あいつら、当てにしてるわよ……」
 訝しげな表情で掌大のガジェットを掲げる。“頼り”ではなく、“当て”という言葉が出てくるのが、お互いの距離感ということだろうか。そんな風に嫌気無く思いながら、ガジェットを見つめる。
「『凍結時間融解』ガジェット……」
 そのまま過ぎないかしら、と思うが、分かりやすいのは大事だ。。
 曰く、“凍結”と言う概念に対し“融解”と言う概念をぶつけて、停止時間に対応する物ということで、つまり紅葉にとって理屈は意味不明だ。
「まぁ、自信に満ちていたから、これで問題ないでしょう……」
 紆余曲折はあるが、確かな知識と技術力を持っている連中だ。つまり紆余曲折の後に生じる結果も確かと、そう言うことだ。
「……と、ここね」
 曲がり角を曲がらず、止まる。この先だ。
 ここを一歩でも踏み越えたら、“来る”
「行くわよ……!」
 そう言って、
「……!」
 一歩を踏み込んだ。
 同時。
「――!」
 曲がり角の向こうから、莫大な引力が生じ、こちらの体を引き寄せていく。
 来たわね……!
 肌身離さないよう、衣服の内側に仕込んだガジェットのスイッチを押して、身構えた。
「――――」
 そして、そこまでが紅葉の意識の全てだった。


「熱力学の問題でよくあるよね! “この時、Xは断熱状態とする”みたいなやつ! アレ、つまりは熱のやり取りが外部とは生じてませんよ~~、って状態なんだけど、それ時間に応用すると、『凍結』されてる時間だったら“このとき、Xは断『時』状態とする”ってなるわけだ! 熱力学のは学習問題だから計算が複雑化しないように、計算がしやすい理想状態としてそう書いてるわけだけど、時間となるとこれが理想じゃない! だって、時が止まるんだもの! なるべくして段『時』状態になる! 外側と時間のやり取りが生じません!
 ――つまり、『凍結』した時間を『溶解』したいんだったら、“『凍結』した時間の中に入って、そこでボタンを押さなきゃならない”んだよね!」


 デモンズ・ウォールの前方、そこに、絵画の引力に捕らわれ、この世界の中に引きずり込まれた侵入者がいる。
 険しい表情で、戦闘態勢に身構えた少女だ。
 が、
「…………」
 それだけだ。動かない。
 そこで、死の壁は理解する。この敵は対応を失敗した、と。
 戦闘態勢を取っていることから、こちらの存在に気付いているのだろうが、時の静止に対応できていない。
 間違いだと、そう判断し、その命を奪うため、攻撃を送った。
 勝負は一瞬、否、瞬くものが存在しない空間なのだ。一瞬よりも早く、決する。
「――詰めが甘いな馬鹿弟子は」
「!?」
 そのはずだった。


 スーツ姿の男は紅葉の近く、何も無いはずの空間から、朧気に輝きながら出現した。
「…………」
 馬鹿弟子と、そう形容した彼女に視線を一度送ると、死の壁へと悠然と歩みを進めていく。
「……!」
 時が静止した空間でありながら動き続ける男へ、デモンズ・ウォールは強大なプレッシャーを与えてくるが、
「死者は死者同士、私が君とお付き合いしよう」
 男は意に介さず、両手の甲に描かれた紋章、そこから青白い光を放ち始める。
「ハイぺリア重殺術……」
 歩みは止まらず、敵との距離を詰めると、
「――“極星”」
 一気にその力を炸裂させた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ランスロット・ルーフー
※アドリブ・連携歓迎
シエロ殿の予知を信じるならば、あくまでも静止するのは生物の時間。絵に引きづり込まれる瞬間に渾身の【怪力】を込めてアリスランスを絵の中に投げつけます。
そうすれば私が絵の中で止まったとしても槍は投げられた勢いでそのまま敵を貫くでしょう。槍は生物じゃありませんから通常の物理法則で動くはずです。
まあ、そもそもUCで無敵の鎧を装備した私は止まりませんが。とあるヒーローは無敵状態ならば停止した時間の中でも動けたと聞いたことがあります。実際の法則はどうであれ、私の想像では動けるのだと信じます。信じるアリスナイトは無敵です。
無敵なので恐怖することなく、【ランスチャージ】で貫いてトドメです。




 時が完全に静止した空間の中、デモンズ・ウォールは、ここに囚われてくる侵入者を待ち構えていた。
 “ファーストダンジョン”内部に存在する絵画の回廊、そこで、ある曲がり角を曲がった瞬間、この絵の中の世界に引きずり込み、身じろぎすら取れない相手を、刹那の間に殺す。
 それが己の戦法であり、己は待っている。
 侵入者である猟兵を既に探知し、つい先ほど引力で捕らえ、今、引きずり込んでいる最中だからだ。
 待つ。するとすぐに、眼前の空間が歪み、
「!?」
 眩く光る、高速の槍が飛んで来た。
 正面直撃コースだった。


 加速の乗った槍の一撃は、突入前の慣性に従ってデモンズ・ウォールに正面衝突。
 穿ちを意味する衝突音の後に響くのは、重量ある金属が弾かれず、壁を食らう音だ。
 食らい続けていく。
 そして、中ほどまで壁内に埋まったところで、やっと槍が停止する。
「……!」
 敵襲。その一語を己の思考回路に叩き込み、デモンズ・ウォールは同時に理解する。猟兵が、絵画世界へ突入する直前に、槍を投じたということを。
 間違いなく、“この空間の特性を看破”した一撃だった。
 つまりこの後、敵はこのような攻撃を連続して送ってくる。
「……!」
 そう思い、急ぎ防御行動を取ろうとしたが、
「!?」
 停止していたはずの槍が、動き始めた。
 鳴り響いた激音と、それに付随する振動が己の身体である、壁内を駆け巡る。
 力任せに引き抜かれていくのだ。
「――――」
 視界の中、輝く白槍を持った猟兵の、身を翻す姿が見える。
 何故。


 成功ですね……!
 絵画世界に引きずり込まれたランスロットは、“時間の静止”というこの世界のルールに影響されないまま、己の選択が当たっていたことを確信した。
 己が打った手は二つだ。
 一つは、
「――!」
 眼前、数メートルを越す赤壁に、自分が投げたアリスランスが突き刺さっているのだ。
 シエロ殿の予知を信じるならば、あくまでも静止するのは“生物”の時間……。
 つまり、非生物は対象ではない。それが解ればあとは簡単だ。
「……!」
 絵画世界に引きずり込まれる直前、持っていたアリスランスを怪力任せに投げつけ、自分も後に続く。
 そうした結果が、先ほどまでだ。
「そして、二つ目は……!」
 突入後、しかし静止せず、床を蹴って跳躍。“鎧を追加で着込んでいる”が、己は構わず足に力を入れる。
 奇襲を受けて混乱している敵の元まで跳び上がり、刺さっている槍の柄を掴むと、
「や……!」
 一気に引き抜いた。穂先の煌めきが、残光として彩る。
 ランスという重量物を得たことで、変化した身体の重心を、身の翻しで整える。
 時間の静止という制約は、己が身に一切感じない。
「いえ……」
 と、今の思考を否定する言葉を、自分で放つ。
 それは、どういった感覚か解らないまま“受けて”、最期まで解らないものなのでしょうね……。
 時間の静止とは、そういうものなのだろう。そんな、対策不能とも言える概念の中、己は宙を舞い、
「……!」
 空中から床に着地すれば、時の静止を受けぬことを察したデモンズ・ウォールが、極大なプレッシャーを即座に与えてきた。
 正しく壁のように押し寄せてくる重圧は、こちらの身を竦ませるものだろう。しかし、
「――笑止! 今や“無敵”の私に、そのような念が何するか!」
 思う。
 自分は“無敵”だと。
 聞けば、とあるヒーローは、己が無敵の状態であれば時間が停止した中でも動けたと。
 思う。
 ならば、“そう”であり、自分も“それ”だと。
「――――」
 重ねて着こんだ鎧が、相手のプレッシャーを弾き飛ばしていくのが感覚的に解った。
 無敵と信ずる根拠が、今、やはり“そう”していく。
「“敵は無し”と書いて、この“無敵の鎧”! この空間も、貴様の重圧も、もはや私の障害ではないと知れ!」
 ランスを回し、構え直す。身を深く沈め、
「――!」
 床を蹴り飛ばした。
 止まらない。


 赤壁と白槍の激突は、強烈で、しかし一瞬ではなかった。
「……!」
 ランスロットが留まらず、さらに地面を踏み込み、槍へ力を押し込んでいくのだ。
 加速と、体重、そして怪力が乗った一撃。巨壁を相手に、ただ己の全力を送る。
 そうしていけば、デモンズ・ウォールの前面が激しく穿たれ、抉られ、やがて、
「貫け……!」
 その向こう側へ、激突の力を通した。

成功 🔵​🔵​🔴​

フィロメーラ・アステール
「生物の時間が完全に静止した空間、かぁ」
つまり生物じゃなくなればいい?
例えば光! 光が止まってたら何も見えないし?

【轟天たゆたう二色の星譜】を使い突入だ!
自分の全身を光に変換して【ダッシュ】する!
そして【空中戦】……って次元でもない気がするけど!
とにかく空間を駆けめぐり、自分自身が聖なる【破魔】【属性攻撃】の光となって敵を討つぞ!

効果が切れたら時間停止、逆に使いすぎるとそれはそれで、自分が自分じゃなくなるような怪しい気分!
……という、実は恐怖を感じずにはいられない微妙なバランスだけど、そこは【勇気】を振り絞って!
あと【気合い】で! むしろ根性で!
早く勝負を決めたいので【全力魔法】を込めて突撃!




 フィロメーラは回廊の中を浮遊しながら、顎に指を当てていた。
「生物の時間が完全に静止した空間、かぁ……」
 フィロメーラが今向かっている戦場、そこを支配する法則だ。呟いて、すぐに思い当たることがある。
「……つまり生物じゃなくなればいい?」
 呟き出た内容は突飛だが、同時に、そうだと、すぐに得心もする。生物の時間が完全に静止するならば、それ以外は無事ということで、恐らくそれはアタリだ。
 ……例えば光。光が止まっていたら、何も見えないし。
 時間が静止した中、オブリビオンは動けると言っていた。ならば光や大気といった基本的な要素は、“動いたまま”だ。それすらも停止していたら見えないし、動けない。
「だったら……!」
 自分には通用する手段がある。フィロメーラは口角を上げ、急ぎ絵画の元へ向かっていった。


 災魔デモンズ・ウォールは判断した。たった今、侵入者がこの絵画世界に突入し、こちらの理解を超えた事象で襲い掛かり始めたことを。
「……!?」
 時間が静止した空間の中にありながら身を貫くような、否、それどころか存在ごと滅するかのような、強烈な攻撃がやって来る。
 間隔に絶え間が無いことを、不断と言う。
 だが、そんな不断の攻撃でありながら、
「…………」
 周囲に敵影は、一切無い。
 そうだ。それが一番の疑問だ。敵の姿は無く、しかし攻撃は突如として生じ、今も続いている。
 何故。何処から。誰が。どうやって。様々な疑問が湧いて出て、しかしそのどれもクリア出来なかった。


 ……やっぱり予想通り!
 時間静止という制約を受けず、フィロメーラは絵画空間を縦横に翔けていた。
 生物の時間が静止するのならば、非生物に。その発想は正解だった。
 自身を電磁波と変え、“光”そのものになったフィロメーラは、
「……!!」
 何ものにも邪魔されず、突き進んで行った。
 フィロメーラは思う。今、己は速度の極みにいると。
 ダッシュとか空中戦とか、もうそういう次元じゃないねこれ……!
 文字通り“光の速さ”なのだ。視界の流れ去りは圧倒的で、壁や床は規則性をもって歪曲した姿を見せる。
 フィロメーラの進行方向とその逆で、それぞれ色調偏差が生じ、もはや元の視界とはかけ離れている。
 秒速約三十万キロメートル。周囲全てが尋常ではなくなった、そんな状態だが、
 行けるよ……!
 星と宇宙、そして光の性質を持つ妖精は、それらを十全に把握し、空間を翔けていく。
 絵画の中へ飛び込んだ時は一条だった“光の身体”は、空間の中の壁や床といった構成物にぶつかり、反射。幾条にも拡散する。
 そんな“身体”は、さらに反射、拡散と身を分けていき、
「……!!」
 全方位から、デモンズ・ウォールの壁面を破魔の力で穿っていった。
 手応えを正しく五感で得ながら、しかしと、フィロメーラは思う。
 好調だけど……、短期決戦あるのみ!
 敵は未だ気づいておらず、こちらの独擅場だ。このまま削り切るのもアリだと思うが、効果が切れた瞬間、時間が停止しここに取り込まれる危険性がある。そうではなくとも、逆に使いすぎると、それはそれで問題がある。
 自分が自分じゃなくなるような怪しい気分……!
 この絵画の中へ入る前の自分を見失いそうになる。それは姿形もそうだが、精神的な部分も、だ。
 一瞬で距離を詰め、壁や床にぶつかれば拡散していく。いまや幾条もの光となった自分だが、そんな特性を得ながら戦闘を続けているのだ。
 ……こ、これ、どんどん拡散し続けたらあたしって……。
 と、恐ろしい未来を考えそうになるが、
「……!!」
 勇気を振り絞る。
 普段であれば音として大気を震わせる気合の声は、光の今は波長の変化だ。
「――――」
 七色に煌めく光。それを察知したことで、オブリビオンは初めてフィロメーラを認識した。
「……!!」
 突如、出現した虹。それに対して急ぎ反撃のユーべルコードを放とうとしたデモンズ・ウォールだが、フィロメーラにとって世界はもはや秒速三十万キロメートルなのだ。
「――!」
 遅いよ、と瞬いた虹光は、今まで拡散していた光を一箇所に収束させると、巨大な光柱を形成する。
 直径数十センチメートルの太い光、そう視認できたのは刹那よりも短い間だけだった。
 その次の瞬間にはデモンズ・ウォールへ距離を詰め、壁面を一瞬で焼き、砕き、削り、
「――!!」
 道中の残骸を溶解させながら、裏側まで貫通していったからだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
時間停止か
良いだろう。止めてみろ

要は止めようとしても止まらなければ問題ない
『絶理』『天護』『無現』で時間停止の影響を否定しつつ絵画の前へ

引き込まれたら行動開始

始源を展開
対象はオブリビオン及びその全行動
万象一切を砕く破壊の原理を宿す魔弾として生成
因果の原理により対象外へは無害とする

高速詠唱を『刻真』で無限加速、『再帰』で無限循環
天を覆う数の魔弾を瞬く間もなく生み出し、途切れること無く斉射

魔弾自体も『刻真』で無限加速し生成・射出・着弾を「同時」に
爆ぜる魔弾の飽和攻撃で向けられる攻撃も飲み込んで圧殺する

※アドリブ歓迎




 生物の時間を停止させる。
 己が向かう戦場の情報を知ったアルトリウスは、しかし至ってシンプルに思考していた。
「――良いだろう。止めてみろ」
 言って、歩みを止めず、身に纏う淡青の光を数度瞬かせる。たったそれだけだ。
「――!」
 次の瞬間には、強大な引力に一切の抵抗を見せず、絵画空間へ引き込まれていった。


 突然。その一語が現状に正しく、また、敵が認識するのもまずその言葉だろうと、アルトリウスは判断した。
「――――」
 空間へ突入した直後。周囲を光球で埋め尽くしたのだ。三百を超す数は、視界を覆うほどの莫大量。
 しかしそれだけに留まらず、なおも増え続けていく。
「……」
 アルトリウスが詠唱を続けているからだ。
 大気を震わせる声はもはや声として認識できないほどの高速で、それに合わせて周囲の光球が、加速度的にその数を増やしていく。
 まるで詠唱による結果を、リピート再生しているように。
 やがて、両者の頭上が光球で覆われる。天井全てを覆う程の数だが、それらは全てアルトリウスが突入してから刹那の間によって生じたことだった。
「……!?」
 これが猟兵の攻撃であると、死の壁がやっと察知したのが、戦場を包む気配でアルトリウスにも解った。しかし、
「――舞え」
 一瞬の内に準備を終えたアルトリウスが、短く呟くと、果たして言葉通りのことが起こっていった。


 薄暗かった通路が、無数の光球によって真昼のように照らされている。世界全てが淡青色でレイヤーされたような、そんな幻想的な光景の中、アルトリウスは思考する。
 ……要は、止めようとしても止まらなければ問題ない。
 時を止める。この空間を支配する法則についてだ。
 単純故に強力な制約だが、それに対するアルトリウスのアンサーは、同じく単純で、しかし圧倒的な能力によって成し遂げられた。
「――――」
 “原理”。世界が構成される前の法則だ。


 アルダワ魔法学園をはじめ、各世界を有する“躯の海”。時にはオブリビオンすらも排出する超常の空間だが、そこすらも“世界”と考えれば、その“外側”にあるものは何か。
「――“原理”だ」
 今、アルトリウスが生じさせている莫大量の光球が“それ”だ。そして、この光球群だけでもない。
 ――“絶理”、世の理から術者を切り離し、断絶する楔。
 ――“天護”、望む全ての未来を照らし、標となる希望。
 ――“無現”、この世に有り得ざる光で、存在を覆う繭。
 断絶し、望む未来を照らし、この世ならざる光で否定せしめれば、この世界の影響を受けない。
 ――“刻真”、世界の底に揺蕩い万象を包む、時の原理。
 ――“再帰”、幾度となく巡らせ、無限を為す礎となる循環の原理。
 時を果てなく加速し、果てなく循環させれば、万象の一切を砕く破壊の光球が無数で世界を彩る。
 そして、彩りが広がった。変位したのだ。オブリビオンへ向けて、一直線に斉射されていく。
 着弾。しかし、途方も無い攻撃力の結果を確認することは困難だった。
 激突し、爆ぜて広がった激光で、空間の色が飛んだのが一つの理由であり、そしてもう一つは、
「――――」
 光球が先ほどまでと変わらない位置にいるのだ。
 それは宙に揺蕩うものだけでなく、変位の途中や、着弾の瞬間まで、すべての光球において先ほどまでと位置が変わっていないのだ。
 それは何故か。
 射出と着弾、その二つと全くの同時に、後続の光球が生成されていくのだ。
 等速の現象が連続すれば、それはまるで一繋ぎのフィルムの用に、同じ光景を繰り返していく。
 射出され、着弾し、生成される。途中、体表を朽ちさせながらもオブリビオンが反撃のユーべルコードを放つ。が、時間停止の能を持った柱は光球の前に飲み込まれていく。
 圧倒する。その言葉通りの光景がこの空間の中で続いていくのだ。
 しかしやがて、
「――――」
 破壊の“原理”を正しく浴びるように食らったオブリビオンは、もはや形を保てず、崩れていった。
「…………」
 それを確認したアルトリウスは一つ頷くと、
「――――」
 崩壊していく絵画空間の中から、急ぎ脱出した。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月19日


挿絵イラスト