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アルダワ魔王戦争8-E〜願禍

#アルダワ魔法学園 #戦争 #アルダワ魔王戦争 #エリクシルの妖精


●願いをひとつ、禍をひとつ
 蒼く輝く銀の肌と髪。
 心を感じない、蒼穹の目。
 羽化したばかりの蝶を思わすやわらかな翅。
 かのものの名は『エリクシルの妖精』。
 願いを告げれば、如何なる願望であれ叶える妖精なり。

「汝の『望み』を『言う』が『よい』でしょう」

 ――だが。
 『望んだ通り』『願い』が『叶う』なんて、『誰が』『言った』?

●アルダワ魔王戦争
「“あれ”は“何”だろうね?」
 マシンウォーカーに乗った櫻小路・砥紋(浪漫界導・f22674)の長い鍵尻尾がゆらり立ち上がりながら揺れ、ゆっくり、ゆっくり下ろされた。
 まあ、何であれ、だ――祇紋は煙管からぷかぷか繋がる虹色煙を揺らして目を細め、“あれ”を倒してきて欲しいんだよと笑みを浮かべる。
「『エリクシルの妖精』とやらは放置しちゃあおけないよ。“どんな願いだろうと叶えてくれる妖精”らしいがね、どうもあれは、御伽噺に出てくるような可愛い妖精じゃあないらしい」

 迷宮を攻略するさなか現れた、身長10mもある巨大な妖精。
 冷たい美しさを備えた妖精に何かを願う――例えば、『自分の未来を代償に』『死んだ母親』に『会いたい』と願ったとする。
 そう聞いてたいていのものが思い浮かべる結末は、死んだ母親が蘇る――つまり生きた母親との再会だろう。願った者の寿命が減る可能性は大いにあるが、それでも失った母親と再び過ごせるのなら支払うに値するものだと。そう、思えるかもしれない。

「だがね、あの妖精にかかるととんでもない事になる」
 可能性その一。
 『死んだ母親』そのものを発現させ、そこで対象の時間を永遠に留める。
 可能性その二。
 『死んだ母親』という瞬間を、未来永劫、対象に与え続ける。
「僕が思いついたのはこんなもんだが、更におぞましい結末も有り得るだろうね。だから君たちは、願望を口に出したり思い浮かべるんじゃあないよ。それも、“一切”だ」
 もし伝われば、それはすぐさま恐ろしいダメージとなって降りかかり、戦闘不能を余儀なくされる。そして願った内容は3月1日――カタストロフが起こった時、望まぬ形で現れる筈だ。
「何とかして自分の心を強く律しておくれよ。でなきゃ、死んだ方がマシだって思う結末がやって来るかもしれないからね」
 君たちがそんな風になるなんて、僕は御免だよ。
 そう言った祇紋の表情は猟兵たちを案ずるもの――ではなく。そんな事になんてならないんだろう? 僕はちゃあんと解っているからね――という、それはもう“フフン”な笑みだった。


東間
 閲覧ありがとうございます、東間(あずま)です。
 とんでもない妖精が現れてしまいましたね。何としても、撃破を。

●受付期間
 個人ページ、もしくは【https://twitter.com/azu_ma_tw】をご確認ください。
 導入場面の公開はありません。
 有り難くも多数のプレイングを頂いた場合、全採用が難しくなる可能性がございます。ご了承くださいませ。

●プレイングボーナス【エリクシルの妖精に願いを伝えない】
 願いを伝えない・伝わらないようどうするか、お書きください。
 心からの願いではない嘘や冗談の類だとしても、悪意によって恐ろしい形となって叶えられる可能性がある為、そういったものでも伝えたり思い浮かべたりするのは止めた方がいいでしょう。

●お願い
 複数人参加はキャパシティの関係で【二人まで】。
 二人参加の方は迷子帽子の為、【相手の名前とID】の明記をお願い致します。
 プレイング送信日=失効日がバラバラだと、納品に間に合わず流さざるをえない可能性がある為、送信日は統一してくださるようお願い致します。
 日付を跨ぎそうな場合は、翌8:31以降の送信だと〆切が少し延びてお得。

 以上です。
 皆様のご参加、お待ちしております。
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第1章 集団戦 『エリクシルの妖精』

POW   :    力翼
【魔力を纏った翼を震わせながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【残っている他の妖精達】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    汝の『望み』を『言う』が『よい』でしょう
対象への質問と共に、【虚空】から【新たなエリクシルの妖精】を召喚する。満足な答えを得るまで、新たなエリクシルの妖精は対象を【秘めたる真の欲望を暴く精神波】で攻撃する。
WIZ   :    ドッペルゲンガー
戦闘用の、自身と同じ強さの【交戦中の猟兵と同じ姿を持ち、同じ武器】と【同じユーベルコードを使う『鏡像存在』1体】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
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清川・シャル
願い、かぁ。あったりしますけど、貴女に言う義理無いですもんね。
固く心を閉ざしてただ只管戦闘に挑みます
強く「貴女を倒す!」なんて言ったら願いになりそうですもんね〜何も考えませんよ。

こんなでかい妖精がいてたまるか〜などと言いながらぐーちゃん零を構えてUC起動。
毒使い、マヒ攻撃、呪殺弾の弾丸で制圧射撃、範囲攻撃して吹き飛ばしを狙います
視力で視認して念動力で確実に当てに行きます
撃ち終わったらそーちゃんで呪詛を帯びたなぎ払い攻撃
敵攻撃には第六感、武器受け、見切り、カウンターで対応



 『エリクシルの妖精』という“もの”を知った時、清川・シャル(無銘・f01440)はくりくりとした目で「んー」と頭上を見て、それから、目線を戻した。
(「願い、かぁ……」)
 あったりしますけれど――。

 コ、コ、コ、ココッ、と、固い地面を駆け抜ける音は軽やかに。しかし旋律めいた音を響かすシャルの心には何も無い。倒すという意志。戦う理由。戦場において自然と湧くだろう何もかもが、無い。晴天の目はただただエリクシルの妖精を映し、捉えていた。

『わたしたち』は『自動なる者』。
 『自動なる者』にして『宝石の妖精』。

 エリクシルの妖精が紡ぐ声もシャルは“ただの音”として受け止めて、躑躅のように鮮やかな『ぐーちゃん零』の銃口を圧倒的大きさで迫り来る一体へ向ける。
「こんなでかい妖精がいてたまるか~!」
 辺り一帯に声が響いた瞬間、弾丸と炎と煙が一斉に“開いた”。その範囲は巨竜が翼を広げたかのような、しかし勢いは無慈悲な嵐に近い。『ぐーちゃん零』から放たれた全てにシャルの“目”も加わった一斉射が、妖精たちの額を、肩を、脚を、衝撃以外のモノも孕んで貫いていく。
 痛みを感じないのか。それとも、知らないのか。左目を中心に頭部の一部を欠いた妖精が一体、シャルを見た。

『この世界』の『万能宝石』は――。

「それっ、と!」
 言いかけた言葉に心を傾ける事無く、お次は桜色がキュートな鬼の金棒『そーちゃん』をフルスイング。残っていた頭部はゴッと重たい音を一瞬残して吹っ飛んで。岩壁と轟音響かせるキスをしながら砕け散った。
 妖精がどれだけ言葉を紡ごうと、蒼銀の間を飛び回る小さな春色の心は固く閉ざされたまま。どんな言葉だって響きはしない。だって、『あんな妖精に言う義理無いですもんね』。

成功 🔵​🔵​🔴​

リューイン・ランサード
身長10mの巨大なエリクシルの妖精の群れ。
一目見れば判る。
アレはとんでもなく危険な存在。
僕に何とかできるのか・・・<汗>、でも、やるしかない。

砥紋さんの言葉に従い、願いは全て心の奥底に封印。

心を落ち着かせ、恐怖を克服してUC発動。
黄金の三対の竜翼と二股の竜尾を持つ真の姿になり戦いを挑む。

エリクシルの妖精達の突進は【翼を使った空中戦、第六感、見切り】を駆使して、小さいが故の小回り効く機動とUCによる高速飛行能力を組み合わせて回避します。
同時に回避の際のすれ違いざまに、UCによる戦闘能力強化に【光の属性攻撃、破魔】を上乗せした、エーテルソードと流水剣による【2回攻撃】でエリクシルの妖精を斬り倒す!



 別の妖精が倒されていく最中だというのに、リューイン・ランサード(竜の雛・f13950)を捉えた蒼穹の目には何の感情も浮かんでいない。蒼銀の髪をなびかせ、やわらかな翅を震わせる。かすかに聞こえた音が低かったのは、巨大であるが故か。
 額から頬へ、つうー、と汗が伝うが、リューインは拭う事もせず、エリクシルの妖精を見つめ続ける。
(「あれが、『エリクシルの妖精』」)
 あれは危険だ。それも、五感が“とてつもなく危険だ”と訴えるような存在が、10m近い大きさで目の前に複数存在している。
(「僕に何とかできるのか……」)
 リューインは無意識のうちに唾をのみ、唇をきつく結んだ。
 だとしても、やるしかない。
(「大丈夫、対処法は解っています」)
 願いの全ては心の奥底に封じよう。
 心を落ち着かせれば揺らいでいたものは全て静まり、凪いでいく。
「行きます!」
 恐怖というものを乗り越えたと同時、リューインは風の塊となって飛んでいた。
 全身をバリアで覆い尽くしたその勢いは空気そのものを裂きながら、空中を翔る黒き風となって妖精へと向かっていく。
 感情を映さぬ妖精は、そんな己より遥かに小さな存在を突進で衝突ついでに掴み、潰そうと思ったのか。妖精からすればどうというものでもない、しかしリューインから見れば大樹の幹にも近い指先を伸ばしていく。
 しかしリューインの姿は蒼銀の指の間を鮮やかにすり抜け、輝く螺旋の軌跡を残しながらぐんぐんと翔ていった。それが薄れ始めたほんの僅かな間に蒼銀の指はぼとぼとと落ち――そして更なる軌跡を描き、蒼銀の妖精を斬り倒していく。

成功 🔵​🔵​🔴​

コノハ・ライゼ
あらぁ、気軽にお願いしちゃう性質だから心しておかないとネ
……ええ、無くすのは得意だもの

呼吸ひとつ、精神研ぎ澄まし戦う事だけを考える
何も望まない、勝つ事さえ
生命を喰らい尽すのはノルマであり攻撃はその手段

突進へはその巨体も考慮し『見切り』跳び避ける
巻き込まれたら逆らわず受け身とり衝撃軽減、『激痛耐性』で凌ごう

大きい的は狙いやすい
「柘榴」で自身の肌裂き【紅牙】発動、大型の鉈刃と成す
翅やより攻撃が響きそうな場所を『スナイパー』で狙い叩きつけ
『2回攻撃』で『傷口をえぐる』ようもう一打
深く刃を沈ませ『生命力吸収』で体力補う

それでも、願いなど無くても。生命を得れば笑みも漏れる
満ち足りてるからネ、ゴチソウサマ



 ――あらぁ。
 くすりと笑う声。細められた目。しんと冷え、研ぎ澄ましたものを零して、浮かべて。コノハ・ライゼ(空々・f03130)は一呼吸の後、ひゅ、と駆けた。
(「気軽にお願いしちゃう性質だから心しておかないとネ……ええ、無くすのは得意だもの」)
 駆ける勢いに流され踊る黄昏めいた髪の下。双眸に映るのは巨大な妖精たち。
 しかしその心は、魂は何も望まない。『勝つ』という、戦場において当たり前の事さえも――戦場ではしょっちゅう“頂いている”ものへの、イロイロまでも。
 生命を喰らい尽くす事はコノハにとって願いでも何でもない。
 ノルマであり、攻撃はその手段。
 故に、ただ“喰らい尽くす”というその一点へと駆けるコノハの足は決して止まらない。
 『願い』を『叶える』だけの妖精もまた、別の妖精に背を押されながらコノハ目がけ速度を落とさず突っ込んで来た。衣のように震わせた翅から、ヴヴ、と、妖精らしさ溢れる姿とは不釣り合いな音を響かせたその突進は、他の協力の甲斐あってか突っ込んだ先を圧倒的な破壊力でもって砕き――。
「デッカイと狙いやすくてイイわ」
 砕け飛んだ地面の欠片。その一つを足場にしているコノハは、突進の直前にヒラリと跳び避けた後。
 肘から手首まで一気に刃を滑らせる。肌の色を映しながら裂いた刀身に真紅が走って、『柘榴』が“咲いた”。一気に開いて変じたそれは巨大な妖精にすら噛み付く鉈刃と成り、蒼銀の左肩に触れたそこからスパンッ。斬ったというより、割るようにして妖精の身を喰い、まだある部分――言うなれば可食部位へと、もう一度。
 喰い付かれ倒されていく妖精の全身が空気を薙いで、ごお、お、と音を響かせる。
 その間も刃は喰いついたまま。更に奥へ、奥へ。
 啜りあげた生命が、何もかもを無しにしたトコロへ染み込んで、ああ、と笑みが漏れた。
「満ち足りてるからネ、ゴチソウサマ」
 願いなんて無くたって、“こう”だから。
 だから、“ここ”にアンタは要らないの。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エンティ・シェア
願いたいこと、叶えたいこと…
…あるさ。最近ようやく思い出せた未練が
それがまともに叶うってんなら縋りたくもなるのかね

――つっても、俺はその手の戯言は嫌いなんだ
口ばっかりよく回る胡散臭い野郎に騙されて以来な
後悔したわ。すげー後悔したわ
よくもまぁ「未練を解消させてあげよう」なんて甘言に乗ったもんだわ

暴けるもんなら暴いてみろよ
こちとら小煩いお喋りの話を延々流す毎日に慣れてんだ
てめぇに寄越してやる願いなんざ一つとしてねーんだよ
餌時で呼び出した虎を全部合体させる
相手はでかいおもちゃだ。こっちも相応にでかくしてやんなきゃな?
そら、存分にじゃれてこい
予備は沢山あるみたいだから、壊れても気にしなくていいぞ



 『エリクシルの妖精』に何かを願えば、その願いは悪意をもって捻じ曲げられたカタチとなり、理不尽な代償を支払わされる。その話に、エンティ・シェア(欠片・f00526)は、ハ、と息を吐いて笑った。
 願いたい事。叶えたい事。
 それを。最近になってようやく思い出せた未練が、ある。
 それが『まともに叶う』のなら縋りたくもなるのだろうが、エンティは“口ばかりよく回る胡散臭い野郎”に騙されて以来、その手の戯言は嫌いだった。
(「後悔したわ。すげー後悔したわ」)
 あの時の自分はよくもまぁ、「未練を解消させてあげよう」なんて甘言に乗ったものだ。昔から言うだろう、『うまい話には裏がある』と――。

 転送先で見た相手のスケールは確かに桁違いだった。大き過ぎて、妖精ではなく石像を前にしているようだ。ぴくりとも動かない顔、無感情な眼差しと声のせいもある。
 これが妖精かよ。そう呟いたエンティは、それはもう心底嫌そうな表情をしていた。
「暴けるもんなら暴いてみろよ」

 汝の『願い』を『言う』が『よい』でしょう。
 されど『わたしたち』は汝の『願い』を『知りません』。

 求めるものは。願いは。届かないと解っていても、手を伸ばすものは、何。
 ずるり。虚空から現れた新たな妖精の、奇妙なまでに鮮やかな青い目。そこに自分が映されたと感じた瞬間、何かが音もなく全身を撫でて――いや、違う。体の内側に無遠慮に突っ込まれた手が骨の内側から心に入り込んで、深い場所を掻き回して漁って。心を“持っていこう”とする。
 見えない波に攫われかけた心。退がりかけた足。
 それが――とん、と音を立てて留まった。
「悪ぃな。こちとら小煩いお喋りの話を延々流す毎日に慣れてんだ。てめぇに寄越してやる願いなんざ一つとしてねーんだよ」
 小煩いお喋りとは何だとブーイングが飛んでくる前に、エメラルドの目は不敵に笑う。その周りは現れた虎の群れに囲まれて――そのうちの一体が揺らした尾に、するりと片手をあそばせて。
「そら、存分にじゃれてこい」
 言った瞬間ひとつになった虎が雷鳴の如き音を響かせて飛んだ。
 蒼銀の身に爪と牙を食い込ませ、噛み千切ってと、まずは一体。しかし“予備”は、格好のでかい玩具は沢山ある。壊したところで誰に叱られるものでもなく――虎の蹂躙は、まだまだ続く。

成功 🔵​🔵​🔴​

イリーツァ・ウーツェ
私に願い等無い
後悔に夢、希望も持たない
私は唯、約定を遂行するだけ
願望では無く、
約定だから果たすだけ

私は何も求めない
解らない事、持たない物
過去、未来、欲望
総じて興味が無い
願い求めよと言われる方が、私は困る

約定に従い、オブリビオンを殺す
林檎が意味も無く地に落ちる様に
私は貴様等を殺す
黙って殺す

念には念を入れる
UCを展開
消去対象は、敵の意識
突進するなら、都合が良い
意識を失えば、統制が取れまい
渾身の力で、殴砕く
尾で薙砕くも良いだろう

頭と四肢、羽を砕けば死ぬか?
手を抜かず、丁寧に処理しよう



 『願い』などというものは、イリーツァ・ウーツェ(負号の竜・f14324)に無い。
 後悔。夢。希望。願いの種となるものを持たない男は、ただ、約定を遂行するだけだ。
 そこに『約定を遂行する』という願望は無く、在るのは一つ――約定であるが故に果たす。従う。オブリビオンを、殺す。それだけであり、その意味、理由等というものはイリーツァには不要であり無用なものだ。
 故に男は赤い瞳に映る巨大な蒼銀を殺しに行く。
 地面を蹴り、得物を手に駆ける。

 『この世界』の『万能宝石』は『完全』。
 『制約』無しに『無限の願いを叶えるもの』。

 妖精が紡ぐそれをイリーツァは認識していたが、何も求めないイリーツァに対し、妖精の言葉はただの音にしか成り得ない。己へと迫る、巨大であるが故にひどく緩慢に見えた妖精を捉え、構える。
(「過去、未来、欲望。総じて興味が無い。願い求めよと言われる方が、私は困る」)
 その感情をどうにかしたいとは思わない。願わない。
 己は約定に従いオブリビオンを殺す者。それは、枝から離れた林檎が地に“落ちる”以上の意味を持たない事と同じ。何も持たないが故に、かける言葉もまた、存在しない。
 一言も発しないイリーツァに迫る妖精たちは、浜辺に挿された旗を取り合うひとに似て。しかし明らかに異質なものであるそれらの行動は、大変都合が良い。己を目標とした突進という、明確な意識がある。
 ――それを、イリーツァは“消した”。
 がくんとバランスを崩した巨体の群れは突進の勢いを殺すという事も出来ず、地面、または妖精同士でぶつかり、轟音を響かせ、周囲を破壊していく。無で固定された頭部、翅、四肢。イリーツァはそれらを無言で殴砕き、尾で薙砕いていく。
 オブリビオンを殺す。死を避ける。
 約定の二と四を果たすその手際は、非常に丁寧な――“殺し方”。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シェーラ・ミレディ
僕は人形だが、それでも願いくらいはある。
それを表に出すなとは……なかなか、難しい戦いを強いられそうだな。

まずは僕自身に催眠術で、敵を倒すよう暗示をかけておく。
後は思考と言語を暗号化して、自分にも完全には把握できないようにしておけば、後は身体が勝手に敵を倒してくれるという寸法だ。
半ば眠っているような感覚だろうか。願いを想起することもなく、外部へ伝達する手段も封じてしまえば、心置きなく戦える。

敵の攻撃はUCで撃ち落とそう。
加えて四丁の精霊銃で乱れ撃ち、制圧射撃、一斉発射。
弾丸による蹂躙で鏡像の動きを抑え、敵本体を傷付ければ偽物も消え失せる。
これだけの弾雨、躱せはすまいよ。

※アドリブ歓迎



 人形でも、願いくらいは在る。
 それを表に出すな、内に抱くなと注文がついた戦いの場で、シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は、ぱち、と瞬きをした。淡いアメジストのような瞳に、長い睫毛の影が踊る。
 蒼銀に煌めく巨大な妖精。それと相対し、戦う自分。
 確かに自分の目で見ているというのに、“そういう夢”を見ている気分だった。
 何が?
 何故だ?
 そう思う心はたちどころに掴めないものとなって。しかし手足は何かに導かれるようにして動き続ける。軽やかに駆けて妖精と距離を取り、地面を滑るようにして止まって振り返って――夢の次は鏡とでもいうように、エリクシルの妖精の前にはシェーラと寸分違わない姿がひとつ在った。
 だが「そんなもの」という思考と言語は暗号へ。
 僕を無断で映したな、と、妖精の行いを正すといった願望も生まれない。
 全ては自分自身にかけた暗示、“敵を倒す”というそれが始まり。行動の種。それが願望ではなく行動を強いるものである以上、エリクシルの妖精がどれほどの精度でもって心を覗こうと、シェーラを害する事は叶わない。
 半ば眠っているような今を、願いを想起する事無く外部へ伝達する手段も封じた今を作りだした過去の行動は、シェーラの今と未来を守る鉄壁の守りとなっていた。それをシェーラはハッキリと理解はしていないが――もう一人の自分が銃弾を放った瞬間。それを見た瞬間。それを殺す弾丸を放った瞬間。そのどれも、表情は静かなまま。
 確かに目の前で起きている事を、舞台を見るような表情で目に映して。弾丸が弾丸を貫いた瞬間、花天月地、羞花閉月、迦陵頻伽、沈魚落雁という四丁の精霊銃を華麗に操った。
 同じものを持つ存在を作ろうとも、ドッペルゲンガーはシェーラがシェーラ自身に施したような暗示まで持ってはいない。シェーラの意識から生じたものでありながら、意識の外で瞬間的に取られた攻撃。しかも四丁の精霊銃から成る攻撃は凄まじい音となって降り注いで。
(「ああ……これだけの弾雨、躱せはすまいよ」)
 ゆらりと向いたアメジストは、次々に風穴をあけられた妖精消えていく様を、静かに眺めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
アァ……賢い君、賢い君
見て見てアレ、願いを叶えてくれるンだって。
オカシイネェ。

願いって叶えてもらうモノ?
違う、違う、願いは自分で叶えるモノ!

コレの願いは自分で叶えたサ。
だーれも知らない自分だけの願い。
知りたい?知りたい?
教えなーい。

だからもう願いは無い無い。
なんにもなーい。

アァ……賢い君、行こう行こう。
君と一緒にあのアイツ……誰だっけ?
まァ、イイヤ。
薬指の傷を噛み切って、君に食事を与えたら
あとはもう君に身を委ねるだけ。

属性攻撃は君の毒
じわじわと蝕む毒の炎。
イイねェ……。

願いは無いって言ってるだろう?
アァ……願った方がイイ?

やーだね
願いは無いカラ願わない!

バイバイ。



「アァ……賢い君、賢い君。見て見てアレ、願いを叶えてくれるンだって」
 オカシイネェ。
 エンジ・カラカ(六月・f06959)はいつものように賢い君へと囁いて、笑顔を浮かべて、駆けていく。
 『願い』って『何』だっけ? 『叶えてもらう』『モノ』?
「違う、違う、願いは自分で叶えるモノ!」
 エンジはふわふわ据わらぬ笑みを浮かべ、地を蹴った。暗くなってきたそこ――妖精が被せてきた影の外に着地すると、弧を描いた唇へと左手をそおっと被せる。大きなアレは制約無しに無限の願いを叶える――叶えてくれるンだって。
「残念。コレの願いは自分で叶えたサ」
 そしてこれまた残念な事に、その願いはだーれも知らない。
「知りたい? 知りたい? でも教えなーい」
 エンジは子供のようにくすくす笑い、近付いてきた妖精の影から跳んで離れていく。叶えたから無い。誰も知らないから無い。無い無い無い、無い尽くし。アァでもわかってるサ、大丈夫、大丈夫。賢い君にうっとりと視線を向け、振り返る。
「行こう行こう。君と一緒にあのアイツ……」
 誰だっけ?
 ぱち、と瞬きした月色の目は、同じ姿形を持つ男を見て首を傾げた。
「――まァ、イイや。賢い君、賢い君」
 君に食事を与えよう。
 君にコレを委ねよう。
 願いなんてどこにも無いけれど、賢い君にこうする事はいつもと同じ“当たり前”。全て預けた瞬間、戦場に踊った煌めく赤。燃える赤い糸は“もう一人”をくるりと巻いた後に勢いを増し、見上げ続けたら首が痛くなりそうな蒼銀へと翔ていく。
 じわじわ、じわじわ。君の毒で燃えているのは誰だっけ。
 アレと、アレと――コレだ。
「イイねェ……」
 噛み締めるように呟いて左手を抱き寄せると燃える糸が“もう一人”を裂いて、消した。ぎぎぎ、と落ちてきた鈍い音は賢い君に抗う妖精から。しかし燃えて蝕む糸は鋼めいた肉体にどんどん食い込んでいく。

 汝の『願い』を――。

「ンン? 願いは無いって言ってるだろう? アァ……願った方がイイ?」
 それが妖精の願いか。けれどエンジは、んべ、と舌を覗かせ笑った。
「願いは無いカラ願わない!」
 賢い君もそう言ってる。
 それじゃあバイバイ。サヨウナラ。

成功 🔵​🔵​🔴​

泉宮・瑠碧
…願いが駄目というのは…
僕とは相性が悪いな
なら、僕が無くなれば良い

最初から
悲しみの精霊に精神と心の大半を預けておく
逃げたいとさえ願わない様に、ただ茫々と在る

僕は弓を手に森域水陣
希望的観測の無い純然たる状況分析による戦闘知識と
第六感だけで動く

頭の中には悲しみに揺れる水面
妖精や鏡像存在は水面に浮かぶ羽根
羽根を拾い、放す事に願いなど要らない

自身の足元には先に結界の矢を撃ち込んでおく
相手の攻撃は主に見切りやオーラ防御で凌ぎ
結界は発動したとしても意味は無い
森の気や浄化だからな

狙いは基本的に妖精
鏡像存在へでも妖精を巻き込む様に矢を分散させて範囲攻撃
妖精が傷付けば消えるなら囮と同じだ

退室してから
すまない、と



 この状況――願うという心の行為そのものが“駄目だ”といわれる状況は、泉宮・瑠碧(月白・f04280)とは相性が悪い。精霊の力を借りる時。討つべき敵が最期を迎える時。瑠碧は幾度も願ってきた。
(「なら、僕が無くなれば良い」)
 自分というもの――精神と心の大半を悲しみの精霊に預けた今、瑠碧の心は異質としかいいようのない妖精を前にして『逃げたい』とさえ願わない。頭の中は悲しみの水で満たされて、切なく揺れるばかり。澄んだ青い瞳は茫々と目の前へ。
 揺れる水面に映る蒼銀の妖精と鏡像存在はそこに浮かぶ羽根。
 羽根を拾い、放す事に願いなど要らない。
 ただの行動であるそこに、願いは生まれない。
 すい、と動いた指先。清らかな森の気を抱いた水の矢。瑠碧と『瑠碧』の放ったユーベルコードは全く同じだ。しかし、泉宮・瑠碧本人と、瑠碧を映した『瑠碧』という決定的な違いが存在していた。その違いが、両者の間に“戦方”というもう一つの差を生み出していく。

 ――ぱしゃんっ。

 『瑠碧』の放った水の矢が、瑠碧の足元から鮮やかに展開した結界によってかき消され――先に“次”を放ったのは、瑠碧の方だった。
 矢と同じく森の気を含んだ浄化の結界には、悲しみの泉に抱かれた瑠碧の心と同様、願いというものが存在していない。先に撃ち込んでおいた行動そのものにも。今の瑠碧を動かすのは、希望的観測の無い純然たる状況分析と、これまでの時間で培ってきた知識、そして研ぎ澄まされた感覚のみ。
 結界という現象によって生じた隙を清らかな矢が翔ていく。
 狙いは一つ。しかし矢は蕾が花開くようにして弾け、広がった。さららと降り注ぐ水の矢は妖精と鏡像存在を分け隔て無く捉え、光を弾きながら射抜いていく。
 水面に映っていた影二つ。
 どんどん欠けて、崩れて消えて。
 そうして水面に何も映らなくなった時、ぽつりと落ちた言葉が、そこを揺らすのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蓮条・凪紗
ミルラ(f01082)と。

おー、クソでかいの現れよったな。
オレの知ってる妖精とちゃうわ。

願い、なぁ?
悪いけど、願い事は実家に置いてきたわ。
何せうちは神社やさかい。自分とこの神さんが叶えてくれとるんで間に合っとるからな!

ミルラ、コイツしばいたろな!
彼女の武器が手を掠め、己の血で魂喰の衝動引き起こす。
伸ばした両手の爪で相対。デカブツやし、突進は読んで避け。
戦友の車輪が蹂躙した所に追い打ちで傷を抉り引き裂く。
ミルラが狙われたら身を挺し庇う。
擦れ違い様に食欲に任せる様に爪を突き立て、生命力を奪って回復したるし、平気や。

まぁ…正直言うと、ほいほい願い叶えられてもオレらの実家商売あがったりやし、な?


ミルラ・フラン
凪紗(f12887)と

天使や女神とも違う、ありゃなんなんだい本当に

願い、ね
これでも教会の娘、神の花嫁たる尼なのさ
そういうのは神とその倅にだけ祈るモンだからね!

おうとも凪紗
このスカした別嬪ボコスカにしてやろうか!
Signorina Torturaは棘付き大車輪に変化
回る刃先は戦友の手を一瞬だけ掠めていく

凪紗がそれで行くなら、あたしはこれで
(瞳は薔薇色、髪はより鮮やかに)
【存在感】と【誘惑】で妖精共を複数惹きつける
向上した力で、棘付き大車輪を軽く操って【蹂躙】【2回攻撃】
突進してくるのを巻き込んで轢き殺す

そーいう願いを簡単に叶えられたら、懺悔も告解も要らないってーの
(首のロザリオに触れて)



「おー、クソでかいの現れよったな。オレの知ってる妖精とちゃうわ」
「天使や女神とも違う、ありゃなんなんだい本当に」
 大仏様と肩並ぶんとちゃうかなと見上げた蓮条・凪紗(魂喰の翡翠・f12887)に、煙草の煙をすぱーっと吐いたミルラ・フラン(薔薇と刃・f01082)。降り立った二人の雰囲気は戦いに赴くというよりも、エリクシルの妖精観光ツアー。

 『わたしたち』は『自動なる者』――……。
 『この世界』の『万能宝石』は『完全』――……。
 『制約』無しに『無限の願いを叶えるもの』――……。

 自己紹介とするには解るようで解らない声。願い、というキーワード。その二つに修道女(バイト)と神社の跡継ぎは、ふうん、と唇の端を上げた。途端、ラフだった雰囲気に獰猛さが混じる。
「随分とお優しいようだけど、相手を間違えたね。あたしはこれでも教会の娘、神の花嫁たる尼なのさ。そういうのは神とその倅にだけ祈るモンだよ!」
「せやな。悪いけど、願い事は実家に置いてきたわ。何せうちは神社やさかい。自分とこの神さんが叶えてくれとるんで間に合っとるからな! ミルラ、コイツしばいたろな!」
「おうとも凪紗。このスカした別嬪ボコスカにしてやろうか!」
 『聖職者 とは』と検索するほどの言葉を放った二人に青い目が向くが、駆ける二人が放ったものは願いではなく行動宣言。何も掴めずに終わった妖精の“目”――ただこちらを見て突っ込んでくる妖精たちをミルラは「ざまあみろ」と鼻で笑い、掴んだ『Signorina Tortura』に己の意志を注いでいった。
 ばらりと解けた拷問道具が棘付き大車輪に変わっていく。回る刃先は容赦ない鋭さを見せ――ひゅっ。一瞬だけ掠めだ凪紗の手に引っ掻き傷めいた真っ赤な痕を付けた。裂けた皮膚の下からぷつりと滲み出した赤は、肌の上を“のぼって”翡翠宿した指先へ。
「手間省けたわ! おおきにな!」
 魂喰の衝動を両手の爪に顕して、思いきり地面を蹴る。頭から突っ込んできていた妖精を避け、大地を破壊した頭部を足場にしたらまた跳んで。さあさあ、どこから裂いてやろうか。
 見下ろし笑う目に映り込んだ赤色は普段見るよりも鮮明に。長髪翻すミルラが輝くような薔薇色の双眸を妖精へ向け、微笑めば、妖精たちは光に向かう蛾の如くミルラを目指し始めた。狙い通り――しかしアレは、両手に花というには邪悪が過ぎる。
(「金目のものにもなりゃしない」)
 はん、と笑って大車輪を軽く操れば、大車輪は空気すらも裂くような音を立て、突っ込んできた妖精たちを次々に斬って裂いて轢いてと容赦なく蹂躙していった。派手にやられた姿は、巨体という事もあり大変わかりやすくって。
(「――ああ、このデカブツからにしよか」)
 開いた指は扇のように。凪紗は鋭い爪先を妖精の身に突き立てると、更に深く沈めて抉って、引き裂いた。妖精の生命とはどんなものかと思っていたが――存外、不味くない。しかしソレはソレ、コレはコレだ。
「まぁ……正直言うと、ほいほい願い叶えられてもオレらの実家商売あがったりやし、な?」
 跡取りとして神社存続に直結する部分は見過ごせない。神聖な場所ではあるが、俗世に存在する以上どうしても金銭が関わるのだ。それに、妖精の“願いの叶え方”にも問題がある。
「ミルラは告解聞くバイトしとんのやろ?」
「まあね」
 大体寝てるって? 起きていますとも。金の匂いがした時なんか特に。
 だからねえ、と赤い唇は弧を描き、鮮やかに彩った指先が首のロザリオに触れる。
「そーいう願いを簡単に叶えられたら、懺悔も告解も要らないってーの」

 ――きっと神もお困りになるでしょう……なぁんてね。
 ――八百万の神々も、こないな妖精は嫌やろな。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルバ・アルフライラ
くくっ、何とも悪辣な妖精よな
然し――これでこそ妖精の在り方として相応しい
残念ながら貴様等に願う事なぞない
…御帰り願おうか

心に秘めた願いを秘すなぞ容易
故に、我が前に立ち塞がるオブリビオンは鏖にする迄
虚空に描くは魔方陣
高速詠唱にて召喚するは【女王の臣僕】
範囲攻撃にて多くの妖精を一網打尽にしてくれよう
敵の行動を常に見定め、攻撃は魔術によって相殺
この身砕けぬよう見切りに徹する

但し、とんだ不敬者がいたものよ
鏡像を召喚されるとなると少々厄介である
我が魔術が齎す脅威は、私が一番知っておるでな
ならば――真先に狙うべきは、それを召喚した敵であろう
貴様の死を以て、此度の不敬を不問とする
寛大なる措置に感謝するが良い



 “何もしないで叶う願い”など、在りはしない。
 美味なる料理が欲しければ、店を訪れるか、作ってもらうか、作るかしなくては。
 美しくなりたいのなら、日々の食事、運動、化粧、衣服といった面を気にかける必要がある。
 それは突然現れた『エリクシルの妖精』にもいえる。願いを叶えてもらいたい場合は、代償を支払うという過程を経なくてはならない。
 ――その場合、願いは悪意でもって捻じ曲げられたカタチとなって現れるが。

「くくっ、何とも悪辣な妖精よな」
 アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)は黎明の彩宿した髪をなびかせ、足を止めた。ゆるりと細めた瞳に映る妖精は、妖精と呼ぶに相応しい見目をしている。願いの叶え方には、些か問題が在ると言えるが。然し――これでこそ妖精の在り方として相応しい。
 その妖精が『自分たち』は、『制約』無しに『無限の願いを叶えるもの』だと、何度も、何度も語る。その言葉――音にアルバは「そうか」と呟いて。
「残念ながら貴様等に願う事なぞない」
 アルバにとって心に秘めた願いを秘するなぞ容易い事。誰にも触れられぬようにしてしまえば、後は常と同じく、己の前に立ち塞がるオブリビオンを塵にするまで。
「……御帰り願おうか」
 風もないのに、アルバの髪がふわり踊った。
 直後、虚空に生まれた魔法陣から無数の蝶が羽ばたいていく。青く煌めく群れは星雲のようにやわらかに広がって――その煌めきを見下ろしていた妖精が、動きを止めた。妖精の前に黎明の煌めきが一瞬広がった次の瞬間、それは『アルバ・アルフライラ』の形を成す。
「――ほう。とんだ不敬者がいたものよ」
 不肖の弟子が此処に居たら、さて、何と言うか。
 否。言うより先に手が出るか、足が出るか。両方同時か。
 楽しげに笑ったアルバだが、もう一人の己が展開する魔術が齎す脅威がどれ程かは、己が一番知っている。星輝く瞳は不敵に笑い、蒼銀の妖精を捉えたまま紡いだ魔術を鮮やかに踊らせた。
「貴様の死を以て、此度の不敬を不問とする。寛大なる措置に感謝するが良い」

 この身を砕こうとするその不敬も、塵となる事で不問としようか。

成功 🔵​🔵​🔴​

シュリ・ミーティア
願うなと言われたから素直にそうする
でも、そもそも何も浮かばない
もちろん食べたいものとか行きたい場所とかはあるけど
多分、そういうことじゃないって分かる

だけど『望み』なんて、『希望』なんて、私は知らない
知らないから、教えられないよ。ごめんね
道を尋ねられた時のように平然と応え

…知らないことは、いけないことなのかな
考えて、ふるりと頭を振って
そういうのも多分考えるのは良くない

この妖精がそれを教えてくれるとも思えない
それならやっぱり、私が願うことなんて、ひとつもない

戦闘
距離を取って戦い、敵の動きを良く見る
視力、ダッシュを使ってダメージ回避、軽減
死角に回るなどして隙を見つけ集中開始、千里眼射ちで攻撃



 グリモアベースで“願うな”と言われた。
 だからシュリ・ミーティア(銀色流星・f22148)は素直に“そうした”。
 いや。そもそも“何も浮かばない”。
 食べたいもの。
 行きたい場所。
 そういうものはあるけれど――あるだけで。だから多分、“そういう事じゃない”んだ。

 謎めいた言葉を響かせる妖精に見下ろされそうになり、シュリは駆ける速度を高めた。これで距離は取れた筈、なのだが、相手が大き過ぎるせいで実感が湧きづらい。
 それでも、足を止めてはいけない。目を放してはいけない。あの妖精と自分の相性を考えれば、繰り出されるユーベルコードは――。

 汝の『望み』を『言う』が『よい』でしょう。

 虚空より召喚された新たなエリクシルの妖精が、シュリを目指して浮遊を始める。紡がれる言葉は他の妖精と全く同じ。丁寧な言葉遣いで望みを言えと繰り返す新手の妖精と、その召喚主に、シュリはごめんねと言った。
「『望み』なんて、『希望』なんて、私は知らない。知らないから、教えられないよ」
 だからごめんね。
 その言葉は、道を尋ねてきた他人へ返す時のように。平然と。
 だってどっちも知らない。そういう時は謝るものでしょ。でも――。
(「“知らないこと”は、“いけないこと”なのかな」)
 ふるり。考えかけた思考を、軽く頭を振る事で止める。そういう事を考えるのも、多分良くない。それが鍵になってしまう可能性だってあるかもしれないし、何よりあの妖精が、“それ”を教えてくれるとも思えない。
(「それならやっぱり――……」)
 走る速度はそのままに。自分を追って呑み込みに来た衝撃波をある程度殺して、丁度良く“はまった”感覚に合わせて思いきり地面を蹴る。飛び込んだ先は誰かとの戦いで城壁のように隆起した地面の影。そこから死角に回れば、自分の姿は妖精たちの視界から掻き消えて。
 ――10秒。
 シュリの目が妖精たちをぴたりと捉える。
「私が願うことなんて、ひとつもないよ」
 ごめんね。
 肩がぶつかった相手へ謝るような声の後、矢の雨が別れを告げながら降り注ぐ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月17日


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト