アルダワ魔王戦争5-C〜暗き水底のガジェット
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「順調の攻略が進んでおるようじゃが、ようやく半分進んだかどうかというところのようじゃ」
ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)はファーストダンジョンの攻略進行を確認し、改めて猟兵達に向き直った。
「今回、おぬしらに頼みたいのは水没蝸牛地帯と呼ばれる場所の攻略じゃ」
ガングランは羽ペンを取り出すと、目の前の紙にさらさらと絵を描いていく。完全に水没した、ねじくれた構造の水中洞窟だ。
「この洞窟内で、水中適応改造を受けた強力なオブリビオンが待ち構えておってな。それに加え、構造上光の届かない水中での戦いを強いられる事になるじゃろう」
それに加え、向こうは光源があろうと無かろうと改造のおかげで問題ない。今のままでは、オブリビオンに一方的に蹂躙されてお終いだ。そうならないよう、事前の準備と作戦が必要だ。
「光に関しては、水中でも使用できる光源があれば問題ないのじゃろうが……やはり問題はどう水中で戦うかじゃな」
厄介なのは、戦場となる水中洞窟だ。向こうに身を潜められれば、水の外からでは攻撃は届くはずもない。必然水中での戦闘となるが、まず万が一の状況で水の外に逃げるのも一苦労なのだ。戦闘中ずっと、水の中にいることを想定して対処する方法が求められるだろう。
「今回、おぬしらの敵はビッグブラザー・ミアという体長二メートル半の人型ガジェットじゃ。水中適応改造を受けた水中戦仕様じゃな。厄介な敵じゃ」
どう水中に対応するかは、参加する猟兵次第だ。ガングランは、こう締めくくった。
「何にせよ、越えねばならぬ場所じゃ。着実に足場を作るためにも、作戦を練ってあたってくれい」
波多野志郎
水中での人型ロボット戦はいいですよね、どうも波多野志郎です。
今回はアルダワ魔王戦争にて、ねじくれた構造の水中洞窟で水中戦をしていただきますッ!
今回のプレイングボーナスは、「水中で戦う為の工夫をする」事です。どんな工夫で水中戦に挑むか、皆様のアイデアをお待ちいたしております。
それでは、存分に強敵との水中戦をお楽しみくださいませ。
第1章 ボス戦
『ビッグブラザー・ミア』
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POW : シュレッダーチャージ
【突撃し膝蹴りからのチェーンソー 】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : ブラッドショルダーモード
自身に【与えた負傷を生命力に変換する穢れた呪い】をまとい、高速移動と【生命力を破壊力に変換して放つ赤い衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : メガデスキャノン
自身の【パイロットの生命力 】を代償に、【背部の大砲から全てを爆砕するエネルギー】を籠めた一撃を放つ。自分にとってパイロットの生命力 を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
👑11
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才堂・紅葉
「ビッグブラザー・ミアか……聞いた名前ね」
知り合いの猟兵の駆る機体の兄弟機だろう。つまり操縦者は…
一欠片の感傷を覚えて捨てる
やる事は一つだ
錬金学部特注の「ガジェットブーツ」は噴射機構で水中を“蹴って”移動出来る。更に流体の抵抗性を緩和する特殊な波動の発生器を併用し水中戦に備える【メカニック、衝撃波】
「その戦術は知ってるのよ」
ブラッドショダーに対する【戦場知識】で持久戦を挑む
【呪詛耐性に破魔】の刻印された「六尺棒」で呪いを散らし【怪力】で受け、衝撃波を【野生の勘】で回避
生命力の供給を封じ消費を強いる
これを徹底する
隙があれば紋章の浮かぶ手を当て【生命力吸収】する
「悪いわね。貴方の運命は私じゃない」
サリー・オーガスティン
【SPD】
元々が宇宙バイクのジェイク。
ここは【武器改造、メカニック】で水中仕様に改造だ。
光源はヘッドライトが上手く通じれば良いんだけど。
さて、敵も水中戦仕様かぁ……
ならば「叩き合い」になるのは覚悟の上だ。
【勇気】をふるって、【第六感】も動員して。
【迷彩、地形の利用、騎乗、操縦、追跡、ダッシュ】で、敵以上の高速移動と、衝撃波から逃れるのと。
「速さで負けるのは、ボクにとっては屈辱だからね」
【スナイパー、一斉発射、2回攻撃、零距離射撃、誘導弾、なぎ払い、援護射撃、だまし討ち、吹き飛ばし】で攻撃して、倒す!
「タイヤで走る感覚が無いのはつまらないけど、ボクは負けるのは癪なんでね」
※アドリブ・連携共歓迎
漆島・昂一
※連携アドリブOK
魚人の強化装甲・ディープズフレームを装着
[暗視、水泳]機能で臆せず水中へと侵入していく
水中戦っていうのも中々に見かけるなこの迷宮は…
ま、だから意気揚々とこの装甲を使えるんだが。
敵の膝蹴りは動きに[見切り]をつけ、[水泳]で脇下部から潜り抜けて回避・翻弄する
こちとら今は魚人で、水中戦なんだ。らしく行かせてもらうぜ。―得物は使わせてもらうけどな!
こちらからの反撃は銃剣【切断機構】を使用、まだトドメ刺せる段階じゃないんでな、パーツの切り崩しを実行して戦力の減退をメインに戦う
トリテレイア・ゼロナイン
●防具改造で耐水、耐電性能をある程度向上
水中用装備で機動性、運動性を確保(●水泳●地形の利用●環境耐性)
それに加えてセンサーによる●暗視も備えた以上、環境への適応という点では後れを取りません
あとは力量勝負、アルダワに迫る危機を払う為に討たせて頂きます
(音響)センサーによる●情報収集で敵の所在と攻撃を●見切り
膝蹴りを●怪力での●盾受けで防御
チェーンソーを握る腕をUCによる●だまし討ちで抑え攻撃を阻止
●ロープワークで捕縛して動きを封じつつ水中用装備のランスの穂先を胸部装甲の間隙…首筋に押し付けランスの推進機構を作動
ゼロ距離●ランスチャージの●串刺しを敢行
やはり水中では騎士のようにはいきませんね…
テラ・ウィンディア
水中戦は苦手なのに最近はこういうのが多いよなぁ
いい加減ちょいとばかり慣れて来たよ
対水中
水着装着!
【属性攻撃】
土属性で水への負担を減らす(土克水
モードグランディア発動
重力フィールドを流線型に変化させて水の中をそれこそ飛ぶように勧める形状に
【戦闘知識】で敵の動きと癖と攻撃の前動作を把握
前述の工夫と【空中戦】で水の中を飛ぶように進みながら
槍で【串刺し】にして装甲を貫き
敵の強烈な攻撃は【見切り・第六感・残像】を駆使して幻惑しつつ回避に努める
今のおれはぺんぎんさん
水の中だろうと飛んでみせるさ!
後は剣と太刀に【早業】で切り替えては猛攻
更に【踏み付け】で槍を更に装甲の奥へと貫いてダメージを更に深めに掛かる
御剣・刀也
水中戦ね
動きは遅くなるし、制限されるし、中々やりづらいな
ま、手がないわけじゃない。その上で、ぶった斬ってやるよ
シュレッダーチャージで突撃してきて、膝蹴りからチェーンソーで切ろうとしてきたら、水で体が軽くなっているので武器受けであえて膝蹴りを受けて、そのままの勢いで、回転し、一気に近づいて捨て身の一撃で斬り捨てる
相手の突撃の勢いが強いなら、足を割り込ませて、蹴る力を利用して、相手に近づいて捨て身の一撃で斬り捨てる
「やれやれ。水中ってのはやりづらい。ま、一直線に突進してくるだけなら、やりようはいくらでもあるがな」
明石・真多子
水中戦なら軟体魔忍におまかせ!水を得た蛸の力を見せつけちゃうよ!
元から海底で生活してたタコにとって光が無いのは問題なし!
吸盤が水の匂いを嗅ぎ分けて敵の位置は丸わかりだからね!
ぺたぺたと吸盤で張り付きながら洞窟を進んでいこう!
うわ、ヘンテコな機械が沈んでる!
これが悪い奴だね!軟体魔忍の力を見せてやる!
まずは『タコ墨』を使った水圧カッターのタコスミケンで攻撃だ!
……う~ん流石に固いね。生身相手なら結構効くんだけど。
そうこうしてたらなんかヤバそうな攻撃の気配!
【軟体忍法墨潜りの術】で敵に付着したところにワープ!
やり過ごしたら絶好の好機だね!
とりゃー!パイプとかカメラとかタコ腕で引き千切っちゃえ!
メンカル・プルモーサ
ふむ、水中洞窟ね……水中での戦いなら改造装甲車【エンバール】を潜水モードにして対応するよ…
光源は車のライトと車載レーダーで対応すれば問題無いだろう…
…それで…相手はビッグブラザー…まあロボか…それなら…
…背面の大砲からの一撃には十分に注意、運転しながら回避をして…
浸透破壊術式【ベルゼブブ】を車体に仕込んでハッキング…カメラアイからウィルスを浸透させてセンサー類をやエネルギーコントロールシステムを混乱させるよ…
…そして【空より降りたる静謐の魔剣】を召喚……軌道操作により弧を描くように射出をしてロボの手足を氷結させて動きを封じて仲間を援護…
最後に氷の大剣により機体を断ち切るよ…
ダミア・アレフェド
・心情
暗い水の中……水は私の故郷ですから、恐れませんよ
・戦闘
暗さは【暗視】でカバー、【水泳】【野生の勘】で泳ぎますよ
お洋服は濡れても大丈夫なのですよ
「皆さんの支援をしますよーティアマト」
水の精霊、原初の海『ティアマト』に力を借りますよ
【全力魔法】【高速詠唱】でUCを発動させて水の渦を複数作って敵を動けなくさせますよ
「蒼海よ、私に力を貸して」
【祈り】ながら渦を操りますよ
「リヴァイアサンの加護もあるので怖くありませんよ! 暗闇も機械さんも!」
攻撃は【野生の勘】で回避するか【オーラ防御】で防ぎますよ
『蒼海の夢』を光の【属性攻撃】にして【誘導弾】で後方から攻撃ますよ
※語尾に『~よ』を付けます
●水没蝸牛地帯
そこは陽の光も届かない、水の底だった。ファーストダンジョン、水没蝸牛地帯――入り組んだ洞窟の構造が蝸牛の殻に似ている事から名付けられた名である。
「水中戦は苦手なのに最近はこういうのが多いよなぁ。いい加減ちょいとばかり慣れて来たよ」
水着姿に着替えたテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は、自らに土属性を施す。土剋水、五行相剋において土は水をせき止め剋するものとされている。その思想を利用して、水への負荷を軽減したのだ。
「グランディアよ……全ての存在がもつ原初の力よ。我が身に宿り力と成せ……! グラビティフィールド……展開!」
モードグランディアの発動と共にテラの周囲に展開されるのは、超重力フィールドだ。そのフィールドを流線型に変化させると、一発の銃弾のようにテラは水の中へと潜っていった。
「暗い水の中……水は私の故郷ですから、恐れませんよ」
テラを見送って水へと入ったのは、ダミア・アレフェド(蒼海の人魚・f01502)だ。服が水に濡れる事に、抵抗はない。下半身魚のキマイラ――人魚であれば、水の中こそダミアの領域だ。
「ふむ、水中洞窟ね……なら……」
「こっちも元々が宇宙バイクのジェイクだからね。水中仕様に改造すれば問題ない」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が陸上水上水中のあらゆる状況を走破出来る改造装甲車【エンバール】に、サリー・オーガスティン(鉄馬の半身・f02199)がツアラータイプの宇宙バイクジェイクにそれぞれ搭乗する。エンバールは元より水中での活動を想定されており、ジェイクも水中用の改造が施してある――そのまま、水中洞窟へと消えていった。
「水中戦っていうのも中々に見かけるなこの迷宮は……ま、だから意気揚々とこの装甲を使えるんだが」
漆島・昂一(/邪神結合外殻システム『ABYSS』・f12856)は、魚人の強化装甲偽神外殻(アウターフレーム):ディープズを身にまとい、水の中へと沈んでいく。まさに魚人にふさわしい速度で、先を行く者達の光源を追って昂一は水底へと進んでいった。
――その頃、明石・真多子(軟体魔忍マダコ・f00079)は外壁をタコ足を使って進んでいた。真多子曰く、「水中戦なら軟体魔忍におまかせ! 水を得た蛸の力を見せつけちゃうよ!」との事だったがタコとは元より水中でも海底、種類によっては深海を生息地にしている事が多い。
その吸盤が水の匂いを嗅ぎ分け、岩壁をペタペタと進む察知器官と移動手段を兼ね備えている――まさに、ここはタコの独壇場。今の真多子は文字通り、水を得たタコだった。
(「うわ、ヘンテコな機械が沈んでる!」)
不意に水の匂いに、通常ではない金属の匂いが混じった。もっと言えば、鉄錆にも似ているが血のそれよりもなお濃厚だ。物陰に隠れていたとしても、すぐに真多子には知覚出来ただろう。
(「これが悪い奴だね! 軟体魔忍の力を見せてやる!」)
(「ビッグブラザー・ミアか……聞いた名前ね」)
意気揚々と進む真多子の背後、ガジェットブーツの噴射機構を使って水を『蹴って』進む才堂・紅葉(お嬢・f08859)は、その人型ガジェットの姿に思い出す。
(「……兄弟機よべ。つまり操縦者は……」)
脳裏に浮かんだのは、知り合いの猟兵とその機体だ――欠片の感傷を覚え、紅葉は捨てる。あれは災魔、オブリビオンだ。
(「やる事は、一つよ」)
その瞬間、ビッグブラザー・ミアが動いた。メガデスキャノン――背部の大砲から全てを爆砕するエネルギーを籠めた一撃が、問答無用で放たれた。
●水底の戦い
(「おっとっと!」)
真多子がタコ墨を使った水圧カッター、タコスミケンで光線の一つを相殺する。鈍い衝撃が水を震わせ、乱流を生んだ。
(「水中戦ね、動きは遅くなるし、制限されるし、中々やりづらいな。ま、手がないわけじゃない。その上で、ぶった斬ってやるよ」)
御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)が獅子吼を抜く――そこへビッグブラザー・ミアが赤い衝撃波を伴って高速移動で突っ込んでくる! 地上のそれと違い、水の中の衝撃波が巻き込む範囲は大きい――刀也は獅子吼の斬撃で、その流れを一部断ち切って後ろへ下がった。
(「アルダワに迫る危機を払う為に討たせて頂きます」)
その衝撃波を受け止めたのは、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)だ。防具改造で耐水、耐電性能を向上。水中用装備で機動性、運動性を確保してある。だからこそ、盾を構えるのが間に合った――赤い衝撃波とビッグブラザー・ミアの巨体を、トリテレイアは重質量大型シールドで受け止めた。
(「……ッ」)
だが、トリテレイアの大型シールドに亀裂が入る。それほどの質量、それほどの衝撃だったのだ。本来なら踏ん張れない水中で吹き飛ばされるはずが、背後に壁でもあるかのように感じられた。
(「今、です!」)
しかし、動きは止まった――トリテレイアのセンサーは、即座に動く仲間の気配を察知していた。
「こちとら今は魚人で、水中戦なんだ。らしく行かせてもらうぜ――得物は使わせてもらうけどな!」
強化装甲・ディープズフレームによって昂一が加速、銃剣墓(バヨネットグレイヴ)『JOHN_DOES』をビッグブラザー・ミアの背へと突き立てた。その衝撃にビッグブラザー・ミアの巨体が僅かに沈む。人型ガジェットは身を捻ると膝蹴りを、昂一へ放った。
「おっと!」
それを銃剣による射撃の反動で後退し、昂一は回避。だが、ビッグブラザー・ミアはチェーンソーの追撃を放った。回転する刃が届く、その寸前だ。紅葉の六尺棒がチェーンソーの腹を叩いて軌道をずらした。
(「その戦術は知ってるのよ」)
チェーンソーが外れ、ビッグブラザー・ミアは再び赤い衝撃波を放って上昇する。その衝撃を見切って、紅葉と昂一は間合いをあけた。
(「皆さんの支援をしますよー、ティアマト」」)
ダミアの水の精霊、原初の海『ティアマト』の力を借りた全力魔法が、無数の渦を作り出す。
(「蒼海よ、私に力を貸して」」)
そして、ダミアの祈りに応えて複数の渦が急速に接近、ビッグブラザー・ミアを挟むように拘束した。
「……まあロボか……それなら……」
メンカルがエンバールを大きく旋回させ、人型ガジェットをハッキング。浸透破壊術式【ベルゼブブ】を仕込むと、ビッグブラザー・ミアのカメラアイからウィルスを浸透させてセンサー類をやエネルギーコントロールシステムを混乱させた。
水中戦を可能とする改造を施されていたビッグブラザー・ミアにとって、センサー類の追加は必須と言えた。だからこそ、一瞬でもその命綱を失う事は致命傷足り得る――。
(「今のおれはぺんぎんさん、水の中だろうと飛んでみせるさ!」)
流線型の重力場で水を貫き、テラが迫る。確かにその突き進む時に生まれる水流の動きはペンギンの泳ぎのそれによく似ていた。その嘴に当たる切っ先に紅龍槍『廣利王』を構えて、テラは高速で突撃する!
突き刺さった炎の龍の牙より作られた槍の切っ先が、ビッグブラザー・ミアの装甲を貫いた。それでもビッグブラザー・ミアはメガデスキャノンを放ち、その威力の反動で水底へと退避に成功する。
(「「叩き合い」になるのは覚悟の上だ」)
それを追うのは、サリーが駆るジェイクだ。メガデスキャノンの光線を真横に、一気に間合いを詰めて体当たりする! それをビッグブラザー・ミアは、両腕をクロスさせて受けきった。
『――――』
続けざまに、真多子のタコスミケンが追撃する。だが、ビッグブラザー・ミアの装甲で弾け、そのボディを墨で黒く汚すだけだ。
(「……う~ん流石に固いね。生身相手なら結構効くんだけど」)
ビッグブラザー・ミアが、改めて構え直す。赤い光をまとうその姿に、紅葉もまた六尺棒を握り直す。
(「持久戦と行きましょうか」)
答えはないとわかっている、それでも紅葉はそう目の前の人型ガジェットへと告げた。
●深い水底の闇に沈んで
(「ええ、こうなるのはわかってたわ」)
紅葉はビッグブラザー・ミアの消耗が激しい事を、その動きで再確認した。元々、ビッグブラザー・ミアは操縦者のエネルギーを吸収、動力源とする人型ガジェットだ。特に戦闘の根幹であるブラッドショルダーモードを使用すれば、その消費も激しくなる。
戦場に出て、帰還する事を想定されていない特攻兵器――それがビッグブラザー・ミアなのだ。
だからこそ、多数の猟兵に囲まれて高速機動戦に持ち込まれればブラッドショルダーモードを長時間使用しなくては対応できない。それを最初から知っていれば、持久戦を選択するのは当然の事だった。
(「騎士の戦法ではありませんが……不意を討たせて頂きます」)
トリテレイアは両腰部稼働装甲格納型 ワイヤー制御隠し腕 (ワイヤード・サブ・アーム)を作動。そのワイヤーでビッグブラザー・ミアを縛り上げていく――後方へ下がって振りほどこうとするビッグブラザー・ミアに、ダミアが動いた。
(「リヴァイアサンの加護もあるので怖くありませんよ! 暗闇も機械さんも!」)
背後から迫ったダミアが、羽の生えた魚型のグリモアを放つ。蒼海の夢は光属性を帯びると同時、深い闇の中を泳ぐように走りビッグブラザー・ミアの背部に着弾した。
(「やはり水中では騎士のようにはいきませんが――」)
着弾に続き、ワーヤーをたぐったトリテレイアが水中用装備のランスの穂先をビッグブラザー・ミアの胸部装甲の間隙――首筋に押し付けた。そしてランスの推進機構を作動、零距離で打ち込んだ!
首筋にランスが突き刺さり、強引にビッグブラザー・ミアは身を引いて致命を避ける。だが、それで終わらなかった。
(「軟体忍法、墨潜りの術! 油断禁物だよ隙あり~!!」)
肩の墨の汚れへと軟体忍法墨潜りの術(タコスミセンプク)で瞬時に移動した真多子が、とりゃー! と首筋のエネルギーパイプをタコ足で引き千切る! その瞬間、ビッグブラザー・ミアの胸部で爆発が起きた。
『――――!!』
ビッグブラザー・ミアは、敢えて水底へと進んだ。赤い衝撃波を、残りのエネルギーで今まで以上に振りまきながら猟兵全員を破壊光線で薙ぎ払える位置を確保しようと突き進み――。
(「速さで負けるのは、ボクにとっては屈辱だからね」)
だが、その隣をサリーのジェイクが並走する。時間にすれば、五秒と満たない。しかし、高速の両者にとって五秒は決着をつけるのには長過ぎる時間だ。
サリーはビッグブラザー・ミアを追い抜き、振り抜きざまDragoon Musketの銃口を向ける。放たれた銃弾が、ビッグブラザー・ミアの両肩を穿った。大きく速度を落としたビッグブラザー・ミアに、サリーは水底に当たる寸前にジェイクを∪ターンさせる。
(「タイヤで走る感覚が無いのはつまらないけど、ボクは負けるのは癪なんでね」)
サリーの援護射撃が稼いだ時間で、紅葉がビッグブラザー・ミアへ追いついた。手の甲にハイペリアの紋章を青く浮かび上がらせ、その手で触れる。
(「悪いわね。貴方の運命は私じゃない」)
紅葉の生命吸収に、ビッグブラザー・ミアが暴れる。放たれる鋼鉄の拳――それを断ち切ったのは、刀也の雲耀の太刀だった。
(「やれやれ。水中ってのはやりづらい。ま、一直線に突進してくるだけなら、やりようはいくらでもあるがな」)
こちらの動きが鈍るのなら相手に自分に近づけさせればいい、それだけだ。刀也は視線でそう告げて、ビッグブラザー・ミアを蹴って移動した。
(「――喰らえ!」)
その直後、真下からテラが人型ガジェットに襲いかかる! 星刃剣『グランディア』、小剣の形状から大剣へと変形したその刺突が、ビッグブラザー・ミアを上へと押し上げた。
そこに待ち受けていたのは銃剣墓(バヨネットグレイヴ)『JOHN_DOES』を構えていた昂一と、エンバールに搭乗したメンカルだ。
(「〈Cutting Enhance.〉有無は言わせねえ。ブッた切れろ!」)
「停滞せしの雫よ、集え、降れ。汝は氷雨、汝は凍刃。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
昂一の銃剣・超振動切断機構(バヨネット・カッターシフト)が横一閃に、メンカルの空より降りたる静謐の魔剣(ステイシス・レイン)による氷の大剣が縦に――同時に、振るわれた。
十字に断たれたビッグブラザー・ミアが、爆発四散する。水を伝わる振動は猟兵達の全身から、この水底の戦いが終わったのだと感じさせるのに十分なものだった……。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2020年02月13日
宿敵
『ビッグブラザー・ミア』
を撃破!
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