アルダワ魔王戦争4-B〜臓腑の天使
●人に似た人ならざる悍ましき者
その姿は、遠目にはドレスを纏った天使にも似て荘厳。
間近に目視すれば、悪魔よりも忌まわしく、悍ましい。
臓物の山に泰然と腰を下ろし足を広げるフォルムは、人の女性に似ている。
透けた質感の不気味に腫れ上がったような腹部は、内部に赤色の目玉にも似た器官が蠢く。
頭蓋のあるべき頭部は巨大な一つ目にすげ代わっており、その後方に突き出た、大きな飾り物のような豪奢に結い上げられた髪のような、肥大化した剥き出しの脳に直結している。
臓物の山から、人型部分から、脳から、各所から後方に突き出た突起物は、果たして翼なのか触手なのか枯れ枝なのか。
これが大魔王。第三形態『セレブラム・オルクス』の姿。
「一気呵成の素晴らしき精兵達だ」
男とも女とも、有機的とも機械的ともつかぬ声で、大魔王が呟く。
そこはファーストダンジョン第四層。
生ける臓物の内部の如く、異臭と消化液にまみれて脈打つ洞窟で、第三の姿の大魔王が猟兵達を待っている。
●グリモアベース:ゲネ
「アルダワ魔王戦争、早くも第四層突入だ!」
ゲネ・ストレイ(フリーダムダイバー・f14843)の呼びかけがグリモアベースに響き渡った。
「今回の依頼は単純。大魔王第三形態をぶっ倒してきてくれ!」
ホロモニターにでかでかと映し出されるのは、大魔王第三形態『セレブラム・オルクス』。
見るも悍ましい第三形態の周囲は、赤黒くてらてらとした、嫌に生物的な質感の洞窟だった。
「戦場は生き物の内臓の内部のような空間だ。床、壁、天井はぶよぶよしていて、あちこち脈打ち消化液や毒液が染み出し続けている。なかなか精神的にくるものがあるな……十分注意してくれ」
加えて敵は大魔王。やはり一方的に猟兵にやられてくれるはずもなく、確実に先制攻撃を行ってくるようだ。
猟兵が動けるのは、大魔王がユーベルコードを撃った後。肝要なのは、確定している敵の攻撃をいかに防御して反撃するか、だ。
「大魔王の形態変化は半ばってところだろう。撃破規定数はまだまだ足りていない。敵の最終形態を引きずり出すため、第三形態撃破、よろしく頼む!」
ホロモニターを埋め尽くした転送術式の輝きが、戦乱のアルダワ魔法学園へと猟兵達を連れ去った。
そらばる
アルダワ魔王戦争、大魔王第三形態戦。
悍ましい臓腑の大魔王を撃退しましょう!
●プレイングボーナス
このシナリオでは、以下の特別なプレイングボーナスが発生します。
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プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
(敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
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上記に基づく行動をすると有利になります。
●戦場
生物の内臓の内部のようなぶよぶよの洞窟。
不気味に脈打ち、消化液や毒液が染み出しています。
●大魔王第三形態『セレブラム・オルクス』
大魔王の第三形態です。
嫌悪感を誘う不気味な外観ながら、魔法能力は極限まで高められています。
その肉体は鈍重ですが、強力な呪詛を帯びて近付く者を蝕みます。
執筆の進捗やプレイング締め切りなどは、マスターの自己紹介ページで呟いております。目安にどうぞ。
それでは、皆さんの自由なプレイングをお待ちしています!
第1章 ボス戦
『大魔王第三形態『セレブラム・オルクス』』
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POW : クルトゥス・フィーニス
自身の【翼1つ】を代償に、【知性ある存在を蝕む禁呪】を籠めた一撃を放つ。自分にとって翼1つを失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD : フルクシオー
自身の身体部位ひとつを【粘性を帯びた液体のように見える呪詛の塊】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : プーリフィカーティオ
【巨大な眼球による魔力を籠めた『凝視』】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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天御鏡・百々
なんとも悍ましき姿……
これも大魔王だというのか
『プーリフィカーティオ』が『凝視』にて発動するというならば
鏡にてその視線を反射することで対処出来るのではないか?
敵の魔力が高すぎるようならば
神通力(武器)の障壁(オーラ防御81)でその力を弱めよう
その上で、『鏡像反攻儀』にて魔眼の力を返してやるぞ
あやつが纏いし強大な呪詛
破魔68の力で相殺も出来るであろうが、あまり近づくべきではないか
天之浄魔弓(武器:弓)から放つ光の矢にて反撃するとしよう
(破魔68、誘導弾12、スナイパー5)
●神鏡のヤドリガミ
●本体へのダメージ描写NG
●アドリブ連携歓迎
レン・デイドリーム
なかなか強烈なのが出てきたね……
相手は強力な魔王だ
心してかかろう
相手の視線から逃れれば初撃は凌げるかな
洞窟内の内臓っぽいものに身を隠せるならそこに急いで滑り込もう
それから【呪詛耐性・オーラ防御】で身を固めて出来るだけ毒液と敵の魔術の効果を軽減するよ
……気持ち悪いね、シュエ
動けるタイミングで【呪詛】を籠めたUCを
あとは僕が囮になりつつ戦士の霊に戦ってもらうよ
【衝撃波】を放って僕に視線を向けさせて、【第六感】で危機を感じたら再び洞窟内の設置物に身を潜める
その間に戦士に進軍してもらって、一気に敵を攻撃させるよ
なんかほら、生き物みたいだし槍も炎もよく効くんじゃないかな
戦士の体は僕の【呪詛】で守るよ
黒玻璃・ミコ
※スライム形態
◆行動
うーむ、各形態が其々異なるのにも意味がある気がしますね
大魔王は個体を指すものでは無いのでしょうか
肉塊や粘液にまみれたフロアとは好都合です
毒液や消化液さえ耐性を持つ私が身を隠すのに役立つでしょう
迷宮の構造物の一部に擬態し
存在を気取られる事無く闇に潜み
逸る事無く着実に距離を詰めて暗殺の機会を伺いましょう
【黒竜の闇帳】が命中せずとも否、命中しなかったからこそ
五感を閉ざす闇の中では貴方の能力は宝の持ち腐れと化します
知恵の前に深淵を見通す瞳を得るべきでしたね
この闇に潜む腐食毒と魂喰らいの霧に惑い滅びなさい
竜種に非ざる大魔王では私を止められません
※他猟兵との連携、アドリブ歓迎
●魔王の視野を閉ざせ
どくりどくりと血液が巡る音が聞こえる。洞窟全体が生物的に脈動し、不快な体液を滲み出している。
その中央に佇むシルエットに、天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は息を呑んだ。
「なんとも悍ましき姿……これも大魔王だというのか」
「なかなか強烈なのが出てきたね……相手は強力な魔王だ、心してかかろう」
レン・デイドリーム(白昼夢の影法師・f13030)も珍しく表情を曇らせ、最大限に警戒を高めながら洞窟内に密かに視線を走らせた。
大魔王第三形態『セレブラム・オルクス』。その臓物の王は、仮面のように凍りついた無表情のまま猟兵達を見渡し、しかし不思議と微笑んだような気配があった。
「一気呵成の勇者達。なるほどこれが猟兵か」
頭部の眼球がぎょろりと動く。知らぬものを知らんとする知的好奇心に満ちた凝視。
視線を浴びる寸前、レンは咄嗟にあらかじめ目星をつけていた壁際へと走り、床から突き出た臓物の塊の裏に滑り込んだ。オーラで身を固め、呪詛と毒を退けながら息を潜める。
「……気持ち悪いね、シュエ。……おや?」
白い触手と共に肉塊越しに照射されるプレッシャーを耐えながら、ふとぬらぬらとした壁に目をやると、
「あ、どうも」
と、壁の一部がぺこりと頭を下げるような動きをした。
新手の名状し難い敵性生命体……かと思いきや、その正体は内壁に擬態したスライム形態の黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)であった。
「いやいやどうもご親切にどうもどうも」
察したレンににこやかに道を譲られ、狭い隙間や物陰の闇をずりずりと這い進んでいくミコ。
肉塊に粘液まみれのフロアとは好都合。毒液消化液に耐性を持つミコにとって、この戦場は障害にもならない。
「うーむ、各形態が其々異なるのにも意味がある気がしますね。大魔王は個体を指すものでは無いのでしょうか」
姿に似合わぬ高度な思索を巡らしながら、巧みに敵の視野を避けて敵の懐へと着実に進攻していく。
一人に凝視を躱され、隠れ潜むもう一人には気づかない魔王は、興味深げに眼球を蠢かす。
「即座に身を隠す知恵と判断力、そして……真っ向から立ち向かう勇気」
レンが隠れた肉塊から、間近へと視線を引き戻す目玉。
その瞬間、百々が胸元に掲げていた鏡にさらなる重圧がのしかかった。
「く……っ」
強烈な魔力を神通力で耐える百々。巨大な目玉の魔力はその視野全体に及んでいたが、直視、さらに凝視という形で収斂されてしまうと、かかる負担は一気に跳ね上がる。
「その小さき身体で、耐えうるのか?」
それが本当に叶うのか? 大魔王の声音にはそんな好奇心の色さえ帯びる。
「……かような業、些かの障害にもならぬなっ」
百々は神通力を全開にして障壁を築き、凝視に込められた魔力を押し返すように中和し始めた。と同時に、鏡に魔力が集約していく……
「因果応報、汝が力、我が身に映して返してやろうぞ……!」
本体である神鏡が燦然と輝き、まばゆい白光で大魔王の姿を塗り潰した。瞬間的に視覚を奪われた大魔王が呻き、もとより鈍重な動きがさらに鈍る。
「──今だね」
機会を捉え、レンは召喚術式を解放しながら臓物の裏から飛び出した。脈打つ洞窟を駆け抜けるその傍らに、ありったけの呪詛を籠められた古代の戦士が実体化し、並走。敵の間近に接近したと同時に、主従は左右に散開した。
「魔王殿、こっちだ」
未だ視界を取り戻せずに停滞している大魔王へと、あえて注意を惹くよう衝撃波を連発するレン。魔王は横合いから殴りつけてくる衝撃と気配を頼りに、徐々に視界を取り戻し始めた巨眼を動かし、狭まった視野でなんとかレンの姿を捉えようとした。
「あとは頼むよ」
視線の動きを察知したレンは、即座に遮蔽物となる肉塊の裏側に身を隠した。
と同時、拡大している敵の死角を巧みに利用し、古代の戦士が一気呵成に突撃した。槍が臓物の山を深々と突き刺し、内部で炎を噴き出して激しく焼き切る。汚らわしい黒煙と、腐った肉の焼け焦げる異臭が辺りに充満した。
「ひどい臭いだね……でも読み通り、槍も炎もよく効くみたいだ」
凝視の反撃から戦士を呪詛で守ってやりながら、レンはさらなる攻勢を重ねていく。
「直接視覚を奪う技量、間接的に死角を作る知恵……」
応戦しながらも大魔王の呟きは興味深げに響く。
と、その時。
「感心している場合ですかねぇ」
大魔王の足元で、奇妙な声が上がった。
瞬間、暗黒の魔力が大魔王を中心に渦巻いた。ようやく視力を取り戻しかけたかと思えば、一気に黒々と塗りつぶされていく視界。屠竜の魔女の暗黒の魔力は、大魔王の五感さえ遮り、鈍らせていく。
「五感を閉ざす闇の中では貴方の能力は宝の持ち腐れと化します。知恵の前に深淵を見通す瞳を得るべきでしたね」
大魔王の足元で堂々と言ってのけたのは、先ほどまで肉壁に擬態していたスライム、すなわちミコであった。
あえて暗黒を直撃させることなく周囲に張り巡らせたのは、大魔王を暗闇の中に閉ざすため。
「存在を気取られる事なく私の懐に及ぶ大胆不敵、全ての五感を潰すこの禍々しい魔力……」
大魔王は空を仰ぐように身を反らすと、腹部から染み出した呪詛で全身を覆い始めた。粘性を帯びた液体にも見えるそれで、闇に抵抗しようというのだろう。
しかしミコの暗闇はそれを許さない。
「竜種に非ざる大魔王では私を止められません。この闇に潜む腐食毒と魂喰らいの霧に惑い滅びなさい」
闇の奥に澱む忌まわしき毒が、霧が、たちまち魔王をくるんで侵食を開始した。
じわじわと拮抗する呪詛と毒素。しかし呪詛は徐々に後退を始め、軍配は闇に上がりつつあった。
「魔王であるこの身さえ喰らうか、なんという胆力」
もはや称賛にも似た言葉に呼応するかのように、大魔王の前方で強烈な光が輝く。
それは、天之浄魔弓に集束していく破魔の神力。
「その強大な呪詛、剥ぎ取らせてもらおうぞ」
白光は一本の光の矢へと収斂し、百々の手元より解き放たれる。闇を切り裂く、一直線のまばゆい軌跡。
腹部の異常な膨らみに光の矢が突き立ち、全ての呪詛を浄化し尽くしていく。
無防備になった大魔王へとすかさず襲い来る、毒と霧と槍と炎。
「総力を以てして敵を殲滅せんとする執念……素晴らしい」
蹂躙され、異臭を立ち昇らせながら、大魔王はやはり微笑んだような気配を滲ませた。
大成功
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シン・コーエン
単独希望
知性が高い程、苦戦しそうな相手だな。
ならば俺はひとりの修羅と化して大魔王を討とう!
(と、真の姿たる強敵との戦いに歓喜する修羅の表情になって戦闘突入。)
『UC対策』
修羅(知性は高くない筈)と化した上で、【第六感・見切り】で本能的に禁呪を回避。避けきれない場合は【灼星剣(サイキックエナジーの剣)の武器受けとオーラ防御】で防ぐ。
作戦で敵を追い詰めるのではなく、本能的に最善の一手を見出して行動するやり方で、大魔王のUCに対抗する。
シンのUCが発動すれば、灼星剣による【2回攻撃、衝撃波、光の属性攻撃】を加えた、荒ぶる修羅の連撃で大魔王を斬り刻む!
(理性を失うので、禁呪の効果が更に減少する筈。)
●修羅の進撃
「知性が高い程、苦戦しそうな相手だな……」
悍ましい異形の見た目は、それだけで健常な人間の常識と精神を浸食する。物事を見極める知力の高さによっては、一瞬で正気を持っていかれかねない。
ゆえに、シン・コーエン(灼閃・f13886)は仲間達を制止するように、一人、大魔王の面前へと歩み出る。
「ならば俺はひとりの修羅と化して大魔王を討とう!」
決然とした眼差しが一転、変貌する。
それは、強敵との戦いに歓喜する修羅の表情。
「勇気、献身、あるいは……」
呟く魔王の脳髄より生え出た小さな翼が一つ、解けるように砕け、不気味な記号のような文字列を描き出し始めた。
その意味を知ってはいけない、知ろうとしてはいけない、深淵に気づいてはいけない……
「──それがどうしたぁッ!」
修羅と化し、思考をシンプルな闘争本能へと注ぎ込むシンは、直感と動体視力に任せて跳躍し、宙を駆け殺到してくる文字列を回避した。
蛇のようにしなり、生き物のように執拗に追いかけてくる文字列。修羅は本能で最善手を見出す。シンは続けざまの二撃、三撃から転げるように逃れると同時に灼星剣を構えて、一点に殺到してくる文字列を正面から受け止めた。
深紅の輝く刀身と文字列とが激突する。サイキックエナジーの力場と禁呪の魔力が拮抗し、凄まじい衝撃波が洞窟中に伝播していく。
「しゃ、ら……くせぇッ!!」
拮抗を制したのは、修羅。
赤いオーラが大量の文字列を豪勢に弾き飛ばした。
瞬間、修羅から一切の理性が消え失せた。
文字列を押しのけた勢いのまま、前傾姿勢で飛び出すシン。秩序だった並びを失いバラバラに暴れる文字の海へと構わず突撃、理性を失ったシンに禁呪を解する知性はなく、疾風の如く突っ切っていく──
己の術を破られてなお、興味深げに観察する大魔王の元へ。
「狂気にすら身を任せても戦い続ける矜持、か」
炎の如く深紅に燃える灼星剣。
知性を棄て去った荒ぶる修羅の連撃が、知を求める大魔王を、とてつもない衝撃と輝きをもって斬り刻んだ。
大成功
🔵🔵🔵
ソラスティベル・グラスラン
なんと邪悪な気配…これが大魔王の呪詛
…いいえ、今こそ勇者を張るときです、いざ勇猛に!
光の加護よ…ナイくん、どうかわたしを守って…!
竜の翼により飛翔し周囲を旋回【空中戦】
空中なら前後上下左右、全方向に回避は可能…!
狙いがつかぬよう最初から全速力で!【ダッシュ】
全ての翼を警戒、死角からは【第六感】で感じ取る
回避が困難なら【オーラ防御】で僅かでも翼の勢いを軽減
蒸気盾で防ぎ【見切り】空中で受け流し、盾から呪いが伝染する前に投げ捨てる【呪詛耐性・盾受け】
狙うは大魔王の『目』!
後の全ては【勇気】に任せ突撃!
投げた盾に隠れて大魔王へ飛びこみ
必殺の大斧を、その頭の眼球に!
最後に勝つのは、勇気ある者ですッ!!
メグレス・ラットマリッジ
【POW】
ひー、ふー、みー……翼は四対。耐えられるか否か……。
いけませんね、戦う前から弱気になっては。チェストとは知恵捨てと心得たり!
隠れる場所も無ければ足場も悪い、これなら避けるよりカウンターに集中した方が確実でしょう
既に呪い塗れの心身が呪詛弾を軽減してくれると信じ、片方の翼を落とすべく狙いを定め斧を投げます(UC・呪詛耐性)
その後は体勢を崩している間に迫り、急所と思わしき腹部に思いきり斧を食らわせます
体が言うことを聞かなくとも意地と外敵を排除する使命感で走ります
人を呪わば穴二つ、投擲と振り下ろしの二撃に全てをかけて
●魔王を斬り裂く斧
「……素晴らしき戦士、猟兵達よ。その力を存分に振るい、願わくはここに朽ちよ」
数多の傷を背負い、大魔王は臓腑の肉体を揺らす。
背に負う翼が大きく背後へと伸びる。そのいくつかが、枯れ枝めいた先端部分からほろほろと崩壊が始まると同時に、悍ましいまでに圧倒的な魔力が場に渦巻き始めた。
「なんと邪悪な気配……これが大魔王の呪詛」
ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は震えるように息を呑んだ。
「ひー、ふー、みー……翼は四対。耐えられるか否か……」
冷静に数えつつ、メグレス・ラットマリッジ(襤褸帽子・f07070)の表情も険しく曇る。
しかしソラスティベルは、自身と仲間の怖気を共に振り払うようにかぶりを振った。
「……いいえ、今こそ勇者を張るときです、いざ勇猛に! 光の加護よ……ナイくん、どうかわたしを守って……!」
魔王の翼が砕けて文字列を成し始めると同時、竜の翼を広げて一気に中空へと躍り上がるソラスティベル。
その勇猛さに背を押されたように、メグレスは口許をほころばせた。
「いけませんね、戦う前から弱気になっては。チェストとは知恵捨てと心得たり!」
と同時、魔王の背の翼が一対、完全に消失した。
一呼吸の沈黙。洞窟の拍動がうるさく鼓膜を打つ。
──次の瞬間、二つの文字列が疾走した。一つは空中のソラスティベルへ、一つは地上のメグレスへ。
「空中戦で遅れは取りませんよ……!」
翼はためかせ全速力で敵の周囲を旋回するソラスティベル。空中で捻りを加え回転を加え、蛇の如く執拗に追い迫る文字列を、前後上下左右全方向へと巧みに回避し続ける。
一方、文字列から隠れるような場所もなければ足場も悪い地上で、メグレスは回避という選択肢を捨てていた。
「この身も心も既に呪い塗れ。耐えられぬ道理などありません」
襲い来る文字列を、メグレスは全身で受け止めた。
「──────!」
全身を文字列に侵食され、メグレスは声もなく瞠目した。
肉を、心を、知を蝕んでいく狂気。世界が纏っていた秩序の皮が剥がれ、その下に隠されていた混沌たる真の姿が露わになっていく、悍ましい感覚。世界が歪む、常識が歪む、自分自身が歪んでいく……
「……宙を制する躍動。己が身を投げうつ蛮勇。その正常な力と意志は、我が歪みの力に抗するものか」
大魔王は猟兵の力を測るように翼をもう一対砕いた。新たな文字列がソラスティベルとメグレスをそれぞれに襲う。
「来ましたね……!」
敵の全ての翼を警戒していたソラスティベルは即座に対処した。オーラを全力全開で拡大し、同時に迫りくる二つの文字列を、掲げた蒸気盾で正面から受け止め、空中で拮抗状態にもつれ込む。
残る最後の文字列は、狂気に真っ向から対峙するメグレスを襲った。新たな侵食に、メグレスの身体が雷に打たれたようにびくりと跳ねる。
しかしその眼差しは死んでいない。
「……っ、この程度……!」
全身に黒い文字を浮かび上がらせながらも、奥歯を食いしばり、メグレスは耐える。狂気的な禁呪の侵食に己が身に纏う呪詛で対抗し、捨て身でフランキスカを振りかぶる。
「その翼──頂きます!」
光沢のない、純粋な闇を固めたような黒の手斧が、全身全霊の力を乗せて、まるで弾道の如き軌跡を描いて敵の傍らを通過した。
一拍の沈黙を置いて、さらなる禁呪を発動しようとしていた片翼が、大魔王の肉体より切り離された。バランスを失い、のろりとのけ反る臓腑の天使。
「──今が好機!」
じわじわと蒸気盾を侵食する呪詛が生身に伝染する直前、ソラスティベルは大魔王めがけて盾を投げ捨てるや、それを追いかけるように空中を疾駆した。
(「あとはもう、必要なのは勇気だけ
……!」)
想いを奮い立たせ、恐怖を押しのけ、狙うは一つ、大魔王の『目』。
同時に、メグレスも我が身に鞭打ち駆け出した。文字列に侵されたまま言うことを聞かない身体を、意地と使命感で動かし、全力で走る。
「外敵、は……この手で、排除、します……ッ!」
再度投擲された黒斧が、姿勢を崩した魔王の膨れ上がった腹部に深々と突き刺さる。
「最後に勝つのは、勇気ある者ですッ!!」
投げつけられた盾の背後から飛び出したソラスティベルが、掲げた大斧を巨大な目玉に振り下ろしたのと、さらに肉薄したメグレスが二本目の黒斧を、人を呪わば穴二つ、と腹部に振り下ろしたのは、同時。
全てをかけた全身全霊の一撃が、大魔王の目と腹にいちどきに炸裂し、その肉を割る。
「……見事」
血液とも闇とも知れぬ黒々とした液体を噴き出しながら、大魔王は端的な称賛を猟兵達へと送った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セラフィール・キュベルト
なんと禍々しい姿でしょうか…そしてそれ以上に、この凄まじい呪詛の力。在るだけで脅威、という領域ですね…。
これは、何としても祓わねばならぬ存在です。
【呪詛耐性】【破魔】の力を総動員にて漂う呪詛に抵抗。
敵の眼球の視線に捕われぬよう、【空中浮遊】での飛行・精霊様(angelus luxis)からの発光による【目潰し】を駆使し回避。
捕われた場合は己の【呪詛耐性】に、【祈り】による信心の発露を上乗せし、以て抵抗・脱出を試みます。
ユーベルコード発動の機が巡り次第、聖花乱咲・浄魂霞流を発動。
攻撃と同時に、魔王の周囲を覆う呪詛の浄化と、呪詛に蝕まれる味方の治療を試みます。
榛・琴莉
先制攻撃をどうにか出来るような術はないですね、残念ながら
なので、受けた上での反撃です
Haroldで【武器受け】と【オーラ防御】、
それと【呪詛耐性】である程度ダメージを抑えられる…と思いましょう
付着した呪詛の塊に動きを阻害されては困りますし、
氷の【属性攻撃】で冷気を放って氷らせ、砕き落とします
ある程度軽減出来たとはいえ、大魔王の一撃を喰らった後では、
私はまともに動けないかも知れませんが…
【鳥狩】にはそんなこと関係ありません
翼の機能は無事です、飛べますねHarold。【空中戦】です
狙いは腹部もしくは頭部の目玉
一気に距離を詰めて【零距離射撃】
【全力魔法】で氷の【属性攻撃】です
失礼しますね、魔王様
●白翼と銀翼
かち割られた人型の腹と目玉から霞の如き暗黒を噴き出しながら、大魔王は変わらぬ無表情で猟兵達を見下ろしている。
確実にダメージは重ねているはずなのに、おそらく消滅寸前まで存在が薄まっているとわかるのに、その窮状が態度に微塵と現れない。
その異常さ、姿の異様さ、纏う呪詛の濃さ。吐き気を催す何もかもに、白き聖者たるセラフィール・キュベルト(癒し願う聖女・f00816)は悲愴に眉尻を下げた。
「なんと禍々しい姿でしょうか……そしてそれ以上に、この凄まじい呪詛の力。在るだけで脅威、という領域ですね……」
存在そのものがあらゆる生命を脅かす災い。
捨て置くことは決してできない。セラフィールの瞳に、決然とした光が煌めく。
「これは、何としても祓わねばならぬ存在です」
セラフィールの全身が淡い輝きを帯び始め、聖女の破魔の力が辺りに漂う呪詛を退けていく。
「穢れを祓う真正にして神聖の浄化……ならばさらなる呪詛にて侵し尽くそう」
大魔王の肉体に粘液に似た呪詛が染み出し、傷口を塞ぎつつ下へ下へと這い下りていく。臓物の山は瞬く間に粘液にまみれ一体化し始めた。
「敵の攻撃の発動をどうにか出来るような術はないですね、残念ながら。さりとてこのまま攻撃にうって出ても確実に潰される……となると、受けるしかない、か」
冷静に警戒を高める榛・琴莉(ブライニクル・f01205)のコートが、風もないのにひとりでに蠢いた──次の瞬間。
呪詛の塊となった臓腑の山からじわじわと辺りの地面に染み出した粘液から、突如として長く鋭い突起が、針山の如く無数に突き出した。
猟兵達は危険を察知し即座に動いた。セラフィールは白い翼で空中へと回避。琴莉は後方に大きく退きつつ、コートの裾や袖口から水銀めいた不定形の小型UDC群を解き放った。
粘液から気化するように滲み出る呪詛を、小鳥の形に変じていく小型UDC群が押しとどめる。琴莉自身もオーラと耐性で支えるが、辺りに取り巻く呪詛は質量すら感じさせ、じわじわと肉体を蝕んでいく。
さらに追い打ちをかけたのは、地面を這い伝う粘液状の呪詛。針の如き突起は今度は鞭のようにしなりだし、先を争って次々に琴莉を襲い始めた。
「それで動きを阻害されては敵いませんね……っ」
瞬発的に冷気を展開する琴莉。吹き荒れた極寒が辺りに展開する粘液を凍らせ動きを止める。途端、呪詛の気化が緩み、全身を侵食する感覚が急速に遠ざかっていった。
「さて。とりあえずは凌いだものの、難儀な状況には変わりなし……」
触手状のまま目前で凍りついている突起を砕き落としつつ、琴莉はぼやく。魔王の呪詛を正面から浴びた消耗が否応なくのしかかる。
それを補うように水銀状の鳥達が集まり、琴莉の身体に取りついて銀色の翼を形成していく。
「翼の機能は無事です、飛べますねHarold」
応えて力強く羽搏く銀翼が、まるで主を操るように空中へと連れ去った。
銀の翼が向かうその先では、セラフィールが己の翼を駆使して眼球の凝視を凌いでいた。
「あれほどの傷を負って、まだ機能しているのですか……」
セラフィールは必死に飛翔しながら、光の精霊の強烈な発光で視野を奪って対抗した。が、視線はどこまでも執拗に追いかけてくる。
「見えずとも、視ることは可能だ」
大魔王は精霊の発光からセラフィールの位置を逆算し、光の中でも構わず凝視した。たちまち空中で動きを縛りつけられるセラフィール。
「う、く……この世のありとあらゆる尊き御霊よ……どうか、御力を……!」
どこまでも純真な強い祈りが、セラフィールの身の内から燦然たる輝きとなって溢れ出す。あまりにも強力な浄化の力に圧倒され、ついには魔王の凝視も力を失っていった。
銀翼が魔王の目前に躍り出たのは、その時。
「──これで決着です」
目玉に直接突きつけられた銃口から、琴莉の全力の魔力を籠めた極寒の弾丸が吐き出される。
凝視を破られた直後の眼球は抗う力もなく、癒着の不完全な傷口に弾丸の侵入を許し──
直後、氷の花を咲かせるように爆発した。
大魔王が声も上げずに崩れていく。この世の穢れや狂気そのもののような肉体が、ぐずぐずと形を失い、大量の呪詛を吐き出していく。
悍ましい不浄の光景に、ついと横切る白い花弁。
それはセラフィールの祈りに満ちた、白百合の花びら。
「純潔の証たる白花、貴き母の徴たる聖花。秘めたる光解き放ち、以て万物を清め癒し給え……」
白い花弁が舞う。今際にさえ振り撒かれる悍ましき呪詛を浄化し、仲間達を蝕む呪いを清め、場を鎮めていく。
「……私と猟兵、どちらが勝つか……未だ視えぬか……」
吐息のような呟きを残して、大魔王第三形態『セレブラム・オルクス』の肉体は、悍ましき内臓の洞窟に同化するように溶け消えていった。
大成功
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