アルダワ魔王戦争3-B〜大丈夫、彼は健全なウォークです
「ドゥへへへ……! おめーらよく聞くだも。もうすぐここに、猟兵の奴らが来るだも」
鼻息荒く、ウォークグルェート(以下ウォーク)が集った緑の連中を見回した。
ゴブリンだ。オブリビオンではなく、この洞窟に住み着いている立派な生物である。
もっとも、人にとって害であることに変わりはない。
「猟兵はどういうわけか美男美女揃いだも。ムカつくも! ……しかしこれはチャンスだも。男はまぁどうでもいいけど、可愛い女はおめーらにとってもご馳走だも?」
興奮した様子で、ゴブリンが棍棒やらなんやらを振り上げた。喚く亜人を宥めつつ、ウォークは満足げに頷いた。
「わかる、わかるも。おめーらの気持ち。オラも同じだも」
待ち侘びたのだ。この時を。触手をくねらせ、その先端に滴る汁に目を細める。ようやく、こいつを満足させるときが来た。
「ぐふ、ドゥへへ……。たっぷり愉しませてもらうんだも」
ゴブリンたちに女を捕らえさせ、まずはこの触手で、己の飢えを満たすのだ。手下どもには、その後におこぼれをくれてやればいい。
「……スカートをめくったり服を破ったり……お、お尻もタッチしちゃうんだも!」
舌なめずりをするウォークに、ゴブリンたちが腕を振り上げかけて止めた。稚拙な思考しか持たない彼らだが、「ピュアかよ」「性欲が七歳児のそれ」「俺らより脳みそ少なそう」などとボソボソ話し合っている。
まぁ、なんであれ――ウォークとゴブリン、二大ファンタジックセクハラモンスターが、ここに手を組んだ。
◆
グリモアベースで猟兵を迎えたチェリカ・ロンド(聖なる光のバーゲンセール・f05395)は、うんざりした様子で項垂れていた。
その背後に映る洞窟の景色を見れば、理由は分かる。緑の亜人が群れをなし、その中央に触手を振り乱すウォークが立っていた。
「……まぁ、予知しちゃったもんはしょうがないわ」
ため息混じりに、チェリカは説明を始めた。
曰く、大魔王へと至るために進んでいるダンジョンの一角が、ゴブリンの巣になっているとか。
そこに湧いたオブリビオン、ウォークグルェートがゴブリンを手懐けた。彼らには、互いに共通する目的があるのだ。
チェリカは頬を掻きつつ、少し頬を赤らめた。
「つまりは、その、アレよ。セクハラよ」
ゴブリンどもは数を力として襲いかかってくる。もっとも攻撃よりも下品な欲に意識が全振りな上、オブリビオンですらなく、しかもめっぽう弱いので、倒すのは容易だ。
ウォークはグルェートなオブリビオンだが、こいつもセクハラすることしか頭にないので、逆手に取るなりすればいくらでも対処は可能だろう。
「そのセクハラなんだけど……小学生男子レベルよ。悪くてせいぜい服を破られる程度だから、あんまり気にせずぶん殴っていいわ」
いやらしい触手を振り回すあのナリで、意外と度胸がないらしい。また、男性には興味がなさそうなので、男女で協力すれば、より容易い相手となるはずだ。
「……というわけなのよ。忙しい戦争中に、こんな連中に足止め食らうなんてね」
やれやれと首を振りながら、チェリカは呆れたように肩を竦めた。
「ウォークはいかにも三下で馬鹿っぽい感じだし、ゴブリンをしこたま蹴散らせば、ビビって何もできなくなるんじゃないかしら? 難しいこと考える必要のない敵だから楽ね」
酷い言われ様だが、事実でもある。力を見せつけるための相手は無数にいるので、試す価値はあるだろう。
「じゃあ、行ってらっしゃい。ボーナスゲームだと思って、好きに暴れてきて!」
軽い調子で手を振るチェリカの胸元で、ロザリオが輝き、グリモアが浮かび上がる。
どこか投げやりな光が、猟兵たちを洞窟へと導く。
七篠文
どうも、七篠文です。
今回はアルダワ魔法学園。戦争となります。
あたまわるい系健全シナリオです。シリアスはこいつじゃ無理です。
野生のゴブリンが巣食う洞窟で、ウォークグルェートと戦います。
襲い来る無数のゴブリンをしばき倒しながらウォークを目指し、触手野郎をボコボコにしましょう。
なお、このシナリオは『野生のゴブリンを戦闘から離脱させる』ことで、プレイングボーナスがつきます。
ゴブリンをより多く倒すか、またはその他の方法で追い払うと、ボーナスは大きくなり、ウォークがビビります。
腰を抜かしたところに渾身の一撃をブチ込んでやりましょう。
ちなみに、ゴブリンはとても弱く、腕を振るだけで振り払えます。またウォークはエロガキのいたずらレベルのことしかできないので、貞操が失われるようなことは絶対にありません。ご安心を(?)
ウォークを倒せばシナリオクリアです。ゴブリンも逃げ出します。
●
七篠はアドリブをどんどん入れます。
プレイングのままを希望される方は、「アドリブ少(または無)」と書いてください。
過度に性的な表現が含まれたプレイングは採用できません。
ステータスシートも参照しますが、見落とす可能性がありますので、どうしてもということは【必ず】プレイングにご記入ください。
それでは、よい戦争を。皆さんの熱いプレイングをお待ちしています!
第1章 ボス戦
『ウォークグルェート』
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POW : 大斧の一撃 + 服破り + ずぶ濡れ
【触手から吐き出した粘液】が命中した対象に対し、高威力高命中の【防具を破壊する大斧での一撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 触手乱撃 + 捕縛 + うごめき
【悍ましい触手】【粘液まみれの触手】【いやらしい触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 悲しき性質 + 壊アップ + 狙アップ
自身の【欲望が理性を上回る性質】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
イラスト:因果
👑11
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グリモアの光が洞窟に差し込み、ゴブリンたちが狂喜乱舞する。その中心で、ウォークはごくりと生唾を呑み込んだ。
「い、いよいよだも」
興奮と緊張に真っ赤に充血した目で猟兵の登場を見守る彼は、高鳴る鼓動に合わせてうねる触手を落ち着かせることもできなかった。
必死に深呼吸しながら、手順を指折り数えていく。
「ま、まずは触手で奇襲だも。練習した通りにすればできるはずだも。そのあとはゴブリンどもに任せるも。一人くらい捕まえてくれるはずだも……」
首尾よく女を捕まえて、それからが本番だ。そう、それから――。
「……それから、ど、どうしたらいいんだも?」
やりたいことはたくさんある。パンツも見たいし、いろんな場所をツンツンしてみたい。
でも、どこから? どのようにして? そもそも、どのタイミングで? ウォークには分からなかった。
なぜなら、彼は青々としたさくらんぼだからだ。この触手を生やした豚は、女の子と話したことすら、なかった。
「やっぱ挨拶とかはいるかもしれないも。い、いきなり触るなんて……破廉恥だも!」
近くにいたゴブリンが、舌打ちした。
ロベリア・アナスタシア
(アドリブ連携絡み歓迎)
ゴブリンとウォーク、これ以上ない期待できる組み合わせだわ♪
……え、服取るだけ?もっとエッチな事しないの?
ほら…触ったりじっくりねっとり、それ以上の事もシテ良いのよ…?
(とりあえずゴブリンとウォークグルェードに見せつける様に
誘惑してみるが、度胸なしなのを見ると)
……もう良いわ、ゴブリンはさっさと立ち去りなさい。
私、意気地ない奴に様は無いの。(冷めた視線)
(逃げない奴には、強酸性の劇毒薬を調合してじゅぅと床を焼く
事で、ゴブリン共を恐怖させる)
…アンタも邪魔。(更にウォークグルェードが通せんぼしようとすれば
劇毒薬を数個調合して直接投げぶつける攻撃(毒使い))
グリモアの光から最初に現れたのは、一人の女だった。
ロベリア・アナスタシア(『快楽』と『影』と『媚薬』を司る美魔嬢・f23913)は、洞窟に降り立つや、妖艶に唇を舐めた。
「ゴブリンとウォーク、これ以上ない期待できる組み合わせだわ♪」
初手からプロの方(?)である。ゴブリンたちが口々に「はい確変入りました!」「今なら神を信じる」「約束された勝利の乳」などと叫んでいる。
飛びかかるゴブリンたちをロベリアが豊満な肉体で受け止めようとした、その時だった。
「待つんだも! ま、まずは親分のオラからだも!」
あれやこれやを触ろうと伸ばされたゴブリンたちの手が止まる。何やら毒づきながらも、彼らはロベリアの前に道を開けた。
バッチコイ状態だったロベリアは、残念そうにため息をつきながらも、ウォークの待つ場所へ向かう。
彼女には勝算があった。いくら奴がウブらしいとはいえ、女の肢体を使って本能を刺激してやれば、辛抱たまらないだろう。その後は十八禁シナリオへと早変わりという寸法である。
「ふふ……さぁ、来て?」
目の前に立ち、両手を広げる。その仕草だけでいろんなものが揺れたり震えたりして、それだけでゴブリンが抱き合って、互いの幸福を称賛し合った。
さて、ウォークである。目を点にして、触手を近づけは離しを繰り返す。
身をよじり、一歩近づき、ウォークの触手を手に取って、ロベリアは微笑んだ。
「あなたの好きにして……?」
「……う、うおおおやってやるんだも! い、いくんだも!!」
全身を真っ赤にして、ウォークが触手を振り乱す。ロベリアの身体に触れた途端に、その衣服を引きちぎった。
あぁやはり、男は本能に逆らえないのだ――。
目を閉じてこれからに期待していたロベリアは、数秒してから首を傾げた。
「あら?」
衣服を破かれてしまい、もう何も纏えていないロベリアの前で、両膝をついたウォークが、両手でガッツポーズをしている。
「成し遂げた……成し遂げたも! オラはとうとう、女の裸を見たんだも!」
「……え? 服取るだけ? もっとエッチな事しないの?」
あっけに取られてしまったが、まだロベリアは負けていない。豊かな胸をウォークの腕に押し付け、脂ぎった豚の体に指を這わせる。
「ほら……。触ったりじっくりねっとり、それ以上の事もシテ良いのよ……?」
「おあおおお!? それ以上ってなんだも!?」
動揺するチェリーパワー高めの触手野郎に、ロベリアは目を細める。
「それはほら……」
耳元で囁かれる数多の卑猥な行為に、ウォークの触手がピンと伸びた。興奮した作用ではない。
「そ、そそそそんな……! お互いを何も知らないのにそんな、不純だも! なんて女だも! このスケベ!」
「……」
一歩身を引いて、ロベリアは心底残念そうにため息をついた。服まで犠牲にしたというのに。
服の残骸から取り出した薬瓶と素材で劇薬を調合、冷めた目をウォークに向ける。
「もういいわ。私、意気地ない奴に用は無いの」
敵の顔面に、強酸性の劇薬をぶちまける。豚の鳴き声をあげて倒れるチェリーウォークが、ロベリアに手を伸ばした。
「おあっ顔がッ! まっ、待つも! ここは一つずつ手順をこなすも! まずは映画館デートから!」
「お断りよ。……そうだ、ゴブリンがいるじゃない!」
まだここには、自分を求めてくれる亜人がいる。目を輝かせて振り返り、ロベリアは露骨に胸の谷間を強調してみせた。
「あなたたちは、まだ物足りないでしょ……?」
しかし、ゴブリンたちは両手を突き出し首を左右に振りまくっていた。不機嫌即強酸はノーサンキュー。
「……」
ロベリアは無言で劇薬を調合し、ゴブリンに向かって投げつけた。
成功
🔵🔵🔴
ソフィア・エーデルシュタイン
とても微笑ましい殿方がいらっしゃると聞いて
わたくし、自分の興味には忠実ですの
ぜひともお話を伺いたいと思っておりますわ
ですので、邪魔をなさらないでくださいまし
煌矢でゴブリンを蹴散らしてウォークさんの元へ
適当に凍らせて足止め致しましょう
ウォークさんですわね、お初にお目にかかりますわ
早速で申し訳ないですけれど、その触手、少し触らせて頂けませんか?
わたくし、柔らかそうなものは好きですの
なんだか不思議な感触ですのね。ふふ
あ、わたくし、お触り厳禁ですのよ
不貞を働くおつもりなら、残らず引きちぎりますわよ
それとも、わたくしの愛するきょうだいと同じ姿になります?
煌矢で削ぎ落とします?
スマートで、美しくなれますわ
顔面に強酸をぶちまけられた上に初めて見た女性から完膚なきまでに振られたウォーク。傷心のあまり、膝を抱えて蹲ってしまった。
ゴブリンに「会話が成り立ってたから前進してる」「お前には高嶺の花よりドブ川の草が似合う」などと慰められてるのかディスられてるのか分からない彼に、歩み寄る女がいた。
「とても微笑ましい殿方がいらっしゃると聞いたのですが……」
ソフィア・エーデルシュタイン(煌珠・f14358)は好奇心が赴くままに、触手を生やした豚の前にしゃがみ込んだ。
「あなたが、ウォークさん? お初にお目にかかりますわ」
「あ、ど、どう、どうも。ウォークグルェートです」
話しかけられただけですでにパニック状態のさくらんぼ力高めなウォークに、ソフィアは微笑みながら青玉髄の楔を展開、飛び掛かるタイミングを計っていたゴブリンを根こそぎ蹴散らした。
目の前で突然ゴブリンが跳ね散らかされる様に、ウォークが悲鳴をあげる。無視して、小首を傾げた。
「わたくし、自分の興味には忠実でして。早速で申し訳ないですけれど、その触手、少し触らせて頂けませんか?」
「ひぃぃぃこえぇぇ、えっ!? オラの、オラの大事な部分に!?」
「えぇ。ぜひとも」
「そんな、シャワーも浴びてないのに……恥ずかしいけど……恥ずかしいけど逆らえないも!」
玉髄の楔が怖いからという言い訳をしつつ、彼は本能に忠実に従った。
差し伸べられた水晶の手に、ウォークはおずおずと触手を乗せた。
優しく撫でられ、時に握られ、そのたびに「あん」だの「うぅん」だのと声を上げるウォークはゴブリンがガチで吐くほどのキモさだったが、ソフィアに気にした様子はない。
「なんだか不思議な感触ですのね……。ふふ、わたくし、柔らかいものは好きですの」
心のままに触手で遊び、にこやかに笑みを浮かべる彼女に、ウォークはもう惚れていた。
「……け、結婚したいんだも……!」
「なんですか?」
「いやいいやなんでもないも! ちゃんと手順は踏むべきだって教わったも!」
先ほど強酸を顔面にぶちまけられた出来事である。
目の前で触手を愛でる女にすっかり心奪われていたウォークは、うっとりにっこり。ゴブリン連中が「純愛ものじゃねぇぞ」「リア充になれると思うなクソ豚」などとヤジを飛ばしているのも聞こえない様子だ。
しかし、悲しいかな。彼はどこまでいってもウォークだった。いきり立った触手の先端が、本人の意思に反して蠢く。
(あっ……! ダメだも、ダメなんだも! あっあっ……!)
本能のままに、それでも他の触手豚どもに比べれば遥かに紳士的に、ぬめった触手がソフィアの腰に回された。
(アァッ――!)
艶やかで滑らかなクリスタリアンの肌に触れ、ウォークが天国を垣間見た瞬間、ソフィアは撫でていた触手を握り潰した。
「アオーッ!!」
汚い絶叫を上げて、ウォークがのたうち回る。激痛はもちろん、彼にとってはメンズシンボルを破壊されたにも等しい。
ソフィアは潰れた触手を放り捨て、よく分からないがとりあえず不快な汁で汚れた手を、ひれ伏すゴブリンから渡された布で拭った。
「わたくし、お触り厳禁ですのよ」
「ブヒィ……ブヒィ、いてぇだも。オラの触手が……」
「反省されました? まだ不貞を働くおつもりなら、残らず引きちぎりますわよ」
「ヒィィィィ!?」
しりもちをついて後ずさりをしたウォークは惨めにも失禁、近づくソフィアに土下座した。ちなみにゴブリンは離れた場所で石ころキャッチボールに興じている。
「ごめんなさいだも! ごめんなさいだも!」
「悪い触手ですこと。煌矢で削ぎ落して、わたくしの愛するきょうだいと同じ姿になります?」
「ひ、ま、待つも! ちゃんと躾けるも、悪い触手をきちんと叱るも!」
めっ! と触手相手に独り芝居をするウォーク。しかし、ソフィアの周りにはすでに青い楔が展開されていた。
「これで、スマートで美しくなれますわ」
「ブヒィィィ!?」
次々に触手が削がれ、男性で言えば股座に延々と楔を打ち込まれているような状況に、ウォークは泡を吹いてぶっ倒れるのだった。
成功
🔵🔵🔴
ハロ・シエラ
ええ、まぁ……そうですね、同感です。
他の戦場を思えばアレですが、予知とあれば放っておくにも行きませんか。
早い所片付けて差し上げるお手伝いを致しましょう。
と言う事でとりあえず乗り込みます。
剣は抜かず、両掌から発するユーベルコードの冷気でその辺のゴブリンを手当たり次第に凍らせます。
大丈夫です、死ぬほど寒いですが死ぬ事はありません。
寒さによる【マヒ攻撃】と言った所でしょう。
さて、見た目や性格はどうあれ首魁はオブリビオン。
身体能力も上がるようですし油断はしません。
襲ってきた所をユーベルコードで凍らせ【早業】で抜き放ったレイピアをもって【カウンター】で返り討ちにしまてやりましょう。
「……なるほど、同感です」
友人であるグリモア猟兵がうんざりしていたことに、ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は全力で共感した。
「他の戦場を思えばアレですが、予知とあれば放っておくにも行きませんか」
敵の前情報から気乗りはしないが、友人が早くこの事件から解放されるためにも、手伝うことにする。
すでにハロの周りには、大量のゴブリンが蠢いている。連戦連敗のウォークに従う気はもうないらしく、少女を捕獲してお楽しみタイムに突入する気満々だ。
オブリビオンですらない亜人に半眼を向けつつ、ハロは両手を広げ、指先まで伸ばす。
掌から赤い冷気が噴き出し、襲い掛かるタイミングを待っていた先頭のゴブリンが凍り付いた。
氷像と化した仲間を指さして笑ったゴブリンも凍り、事態に目を剥いた緑肌どもがパニックに陥る。
その様子を見ながら、ハロはなだめるように言った。
「大丈夫です。死ぬほど寒いですが死ぬ事はありません」
どこからか「それ死ぬより辛いんじゃね?」というゴブリンの声が聞こえてきたが、諸々まとめて凍らせてしまったので、誰が言ったのかは分からなくなった。
悪趣味なオブジェを量産してしまったことに眉を寄せつつも、ハロは首魁たるオブリビオンに向き直った。
「さて」
「か、固めフェチとか、レベル高いんだも!?」
「人の技を性癖呼ばわりしないでください」
イラッと来た感情のままにレイピアを抜き放ち、その輝く切っ先をウォークへ向ける。
その動作だけで、敵は怯えた様子を見せた。ヘタレオーラがすぎる。
「なんだもおめー、やんのかも!? オラはウォークの中でもグルェートだも!?」
「もちろん、外見はどうあれ油断はしません」
「み、見た目のことを言ったも! おっかぁに『人は外見じゃねー』って教わんなかったのかも!?」
「そうですね。失礼しました」
素直に詫びて、ハロが腰を落とす。注意深く冷静な、カウンターの構えだ。
「性格もちょっとアレでしたね」
「おめーホント傷つくからやめろも! アレってなんだも!?」
「気持ち悪いです」
「んもおおおおお!!」
号泣しつつ怒り狂ったウォークが、触手を振り回す。憤怒の感情を性欲に変えて、ハロに襲いかかった。
ソフトタッチにハロを絡め取ろうとうねり迫るピンクの肉蔓は、思ったよりも速い。膨れ上がる欲望に比例して、身体能力も向上しているようだ。
しかし、肉欲に従って放たれる攻撃ほど、見極めやすいものもない。
触れるか触れないかと言う距離に近づいた触手が、吹き荒れた赤い冷気を受けて凍りつく。
ウォークが目を丸くした刹那、白刃が煌めいた。同時に、豚の絶叫が洞窟に響く。
「アオーッ!?」
ハロが剣を振って粘液を落とすと同時に、べちゃべちゃと汚い音を立てて床に転がる触手。切断された自分の息子たちを前に、ウォークが崩れ落ちた。
「お、オラの触手……よくも……!」
「また生えるんじゃないですか?」
なんとなくしぶとそうな気がして尋ねると、ウォークは立ち上がって怒りのままに叫んだ。
「んな都合よく生えるわけねーも!」
ズパン! と濡れタオルを広げたような音と共に、ウォークの背から新たな触手が誕生した。
「……」
「……生えたも。てへ」
舌など出しておどけるウォークだが、ただ気持ち悪いだけでハロの心は微塵も動かなかった。
別に当たらなくてもいい勘が当たってしまったことにため息をつきながら、ハロはもう一度切り落とす作業にかかるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ルナ・ステラ
普通のウォークさんにより怖くない感じです?
でも、油断は禁物です!
地上だと捕まる可能性が高いかもなので、帚に乗って上から魔法で数を減らしていきましょうか。
—って、さっきからウォークさんがニヤニヤしてます!?
(まさか、下から覗かれてる!?)
恥ずかしいよぅ...
ひゃあっ!?
(隙を突かれて、粘液を...)
ネバネバして動きづらいです...
ゴブリンさんとウォークさんに捕まって...
(えっ?挨拶してきました!?意外と優しい?)
きゃあっ!
お尻触っちゃダメです!
(前言撤回です!満足気にしている隙に!)
【高速詠唱】でUCを発動して数を一気に減らし、腰を抜かした所に残ったお星様を【全力魔法】でウォークさんに!
ルナ・ステラ(星と月の魔女っ子・f05304)は、こいつを知っていた。戦ったこともあるが、ろくなものではなかった。
そもそも触手相手には、大抵どうしようもないことばかり起こるのだが。
しかし、どこか――見た目は変わらないけれど――記憶にある触手豚の化物とは違うようだ。
「普通のウォークさんより怖くない感じです?」
無論、油断はできない。ゴブリンも大勢いるし、ウォークは切られた触手を再生していた。
近づくのは危険だ。地上にいては奴らの思うがままなので、ルナは箒で空高く飛び上がった。
「まずは上から魔法で……!」
指先に魔力を集中させて、星の光を溜めていく。眼下を見れば、そこにはルナの攻撃を警戒している敵が――いなかった。
皆、手を叩いて歓声を上げている。ハイタッチをしているゴブリンまでいるし、ウォークに至っては地面に寝転んで涙を流し、こちらを拝んでいる始末だ。
「ありがてぇ……ありがてぇだも……!」
「?」
訝し気に首を傾げ、ルナは注意深くウォークとゴブリンを観察した。
飛び回るたびにスタンディングオベーションが鳴り止まない状態だ。洞窟の中は今、感動のオーケストラ会場のようになっていた。
「あっ」
ルナは気が付いた。奴らの視線が、自分のお尻に集中していることに。何がとは言わないが、真下からは見えているのだ。
そういえば今日のは、少し大人なイメージを意識して、ちょっとだけ大胆なものをチョイスしていた。
「……っ!!」
首も耳も真っ赤になったルナは、しかし箒を握っているためスカートを抑えられず、泣きそうになった。
「やだっ! 恥ずかしいよぅ……」
羞恥心に負けたルナの手から、魔力が霧散する。バランスを崩し、箒から落下した。
しまったと思った時には、もうゴブリンの手がルナの体を掴んでいた。足首にはウォークの触手まで巻き付いている。
「いやー! 離してー!」
バタバタと暴れるルナは、ゴブリンの手によってウォークの前へと差し出された。
さっさと済ませて早く寄こせと中指を立てる亜人を置いて、ウォークグルェートがしゃくり上げて泣く魔法少女にごくりと唾を呑む。
「か、かわいいだも……! こんな子が、あんな大胆なブツを履いてたなんて!」
「言わないでくださいー!」
赤い顔を手で覆うルナの仕草に、ウォークは今日何度目かの恋に落ちた。
「お、オラ、ウォークグルェートってんだも。よろしくだも!」
「ふぇ? ウォークグルェートさん……?」
悲劇のヒロインと化していたルナは、まさかの挨拶に目を丸くした。ウォークは青い瞳に魅了されながら、何度も頷いた。
「そ、そうだも! オラはおめーと仲良くしたいんだも!」
握手を求められ、ルナはとりあえず応じた。豚男の掌は、ベタベタしていた。
スカートで手を拭っていると、痺れを切らしたらしいゴブリンがルナに抱き着いてきた。
「ひゃっ!?」
それは、悲しい事故だった。
驚いてゴブリンを押しのけた反動で、ルナは一歩後ろに下がってしまった。そこにあったのは、女の子の手を握れた感動に打ち震える、ウォークハンド。
何度も言う。これは事故だ。よろめいたルナのお尻が、ウォークのギットギトな手に触れてしまったのは、あくまでも事故である。
とはいえ、そこに伴う柔らかな感触とどうしようもない幸福感は、本物なわけで。
「う、うぉぉぉおおおおッ!!? オラとうとう大人の階段上っちまっただも!」
歓喜に打ち震えるウォーク。棚から牡丹餅とはこのことだ。形も近いし。
だが、その時。ルナの中で、何かが切れた。
「わたしのお尻……触りましたね!?」
「えっ。いや今のは不可抗力で」
「触ったってことですね! もう許しません!」
怒ったルナの全身から迸った魔力が、今のところ彼女を運んだだけのゴブリンたちを片っ端から張り倒していった。
昏倒していく亜人の群に腰を抜かしたウォークに、ルナは別の意味で顔を真っ赤にして、頬を膨らませた。
「女の子のお尻は、触っちゃダメです!」
「いや待つだも!? 今のはそっちが突っ込んできて」
「問答無用ですーっ!」
小さな掌の張り手から流れ星(それとたらい)が飛び出し、頬だけでなく全身を強打したウォークは、悲鳴を上げて洞窟の奥へと転がっていった。
大成功
🔵🔵🔵
露木・鬼燈
程度の低いセクハラでも断固阻止!
女性への不埒な行為は許さないっ!
今回はそんなノリでいくっぽい。
まずはゴブリンへの対処。
個々の能力は低いみたいだし…
秘伝忍法<結>を発動し、20体を女性の護衛へ。
残りはゴブリン狩りに向かうのです。
小さくても装備と技量で狩れるよね。
急所に魔剣を叩き込めば殺れるはず。
気配を消し、壁や天井も利用して襲撃するのです。
やられたり自爆で数が減っても補充するからね。
ウォーク戦では自爆特攻で触手を防ぎ、爆炎で視界を封じる。
分身との情報共有で敵の位置ははっきりとわかっているからね。
意識の外から戦槌で必殺一撃を急所に叩き込むっぽい!
ナニかが潰れたような感触だけど…敵だしいいよね!
本山・葵
・UCで射程内のゴブリンを一気に焼き払いビビらせる
「邪魔っす!さっさと逃げないとこんがり焼くっすよ!」
・セクハラを受けたら、最初はびっくりするが、すぐに怒ってグルメツールでおしおきする
「うひゃあ!?なにしてくれるんっすかっ!」
「このエロウォーク!切り落とすっすよ!(何処を?)」
技能:早業、気合い、なぎ払い
※アドリブ、共闘ご自由にどうぞ。
無数のゴブリンに囲まれた本山・葵(ユートレマジャポニカ・f03389)は、しがみついてくる緑の亜人を引きはがしながら、苛立っていた。
「あぁもう、鬱陶しいっすね!」
輝く眼鏡から、二本のレーザーが発射される。葵が目を向けたゴブリンたちが次々に熱線を受け、もんどりうって倒れていく。
「邪魔っす! さっさと逃げないとこんがり焼くっすよ!」
「逃がすなんてとんでもない!」
突然の声は、上空から。無数の小さな分身を従えて落下してきたその男は、漆黒の魔剣を一振り、葵にたかっていたゴブリンを切り裂いた。
一瞬で景色がゴアに切り替わり辟易する葵の前で、彼――露木・鬼燈(竜喰・f01316)は、映画のヒーローもかくやという感じで、魔剣の切っ先をゴブリンの向こうにいるウォークへと向けた。
「程度の低いセクハラでも断固阻止! 女性への不埒な行為は許さないっ!」
「いや、そこまでしなくてもいいんじゃないっすか?」
「甘い甘い! ゴブリンに触手ウォークなんて、女性にとっては最凶の危険生物っぽい。残らず駆逐するですよ、わさびさん!」
「わさびじゃないっす! このタイミングで間違えるっすか普通!?」
地団駄を踏む葵の周りに、二十人のプチ鬼燈が集結、やはりミニサイズの魔剣を抜いて、彼女を護るために真剣な顔でゴブリンと対峙した。
なんだか人形劇みたいで可愛いなと葵が思った次の瞬間、プチ鬼燈たちは嬉々とした笑顔でゴブリンどもを切り刻み始める。小さくなっても戦闘大好き、安心安全のオリジナルクオリティである。
護衛の鬼燈も大概暴れまわっているが、問題は遊撃鬼燈だ。男を排除しようと牙を剥くゴブリンたちを、ボロ雑巾のように切り刻んでいく。
そのえげつない様子に、ウォークが悲鳴を上げた。
「ブヒィィ!? なんて残虐な野郎だも! 誰か、警察呼んで!」
恐怖に反応して、触手がぶるぶると震えている。気持ち悪いなと鬼燈は素直に思った。
プチ鬼燈が壁や天井からも飛び斬りを見舞い始め、鬼燈ワールドと化した洞窟。しかし、葵も負けてはいなかった。
「こうなりゃやってやるっすよ! 眼鏡レーザーを受けてみるっすー!」
ギラリと光った眼鏡のレンズから、収束した光が放たれる。出力を上げた光線が、ゴブリンの群を薙ぎ払っては燃やしていった。
圧倒的な火力に、鬼燈が拍手をする。
「わさびさん、やるですね! まるで怪獣みたいっぽい!」
「誰が怪獣っすか! あとわさびじゃねーって言ってるっす!」
いじりに来る鬼燈に、律義に突っ込む葵である。しかし、二人は馬鹿な話をしながらも、しっかりとゴブリンをしばき倒していた。
ふと、プチ鬼燈が足を止めた。ゴブリンにぽかぽか殴られても、一歩も動かない。
壊れたのかしらと葵が首を傾げた瞬間、プチ鬼燈が爆発した。
「うえぇぇぇっ!?」
激しい爆炎に飲み込まれ、ゴブリンたちが吹き飛ばされていく。先陣を切って自爆したプチ鬼燈に、仲間たちが涙ながらの敬礼を送っていた。
そして、そいつらも一斉に爆発を開始。洞窟は阿鼻叫喚の地獄絵図になっていく。熱風に煽られながらもビームを発しつつ、葵は鬼燈(本体)に叫んだ。
「ちょっとちょっと! 鬼燈さん、何してんすか!?」
「え、自爆だけど」
「見ればわかるっすよ! なんで自爆なんてしてるんすか!」
「え、強いからだけど」
「あー会話がしたいっす!」
苛立ちを眼鏡ビームに込めて、葵はゴブリンの群を突き進む。その数はいろいろと都合よく増えているようで、それがまた鬱陶しい。
分身体の自爆援護の中を悠然と進む鬼燈にとっては、敵の数などあってないようなものだ。さすがに数が減ってきたが、問題にはならなかった。
徐々に近づいてくる小型人間爆弾の群れと眼鏡レーザー砲に、ウォークは完全に怖気づいていた。
「やばいも……やばいも! これは洒落になってないも!!」
逃げなければ。しかし、やられっぱなしというのも、なんだか嫌だった。あの魔剣士は女みたいな顔立ちだが整っていて、しかもスタイルもよくてムカつく。
どうにか一泡吹かせたい。やはりここは、ウォークらしくいこうと決めた。
女の子のお尻にタッチ(過失)できたことで謎の自信を得た彼は、思い切ってゴブリンをなぎ倒し、前進した。
「うおおおおだも!」
「なっ……」
予想外の行動に、葵は目を丸くした。いかにヘタレとはいえ、オブリビオンだ。その攻撃力は侮れない。
一度下がろうとした足を、触手に絡めとられる。そのまま持ち上げられ、ウォークのそばに運ばれた。鬼燈の手が空を切る。
「葵さんッ!」
「くそっ! 離せ、離せーっす!」
抵抗する葵を見上げて、ウォークがガッツポーズをした。
「っしゃー! 女の子ゲットだも! おしとやかなタイプとは違うけど、まぁそこは我慢するも!」
「ちょっと! なんで自分が妥協されなきゃならないんすか!!」
「ふへへ、外見は超上玉だも! これは楽しみになってきたも!」
ニヤニヤしながら、豚の触手が葵の足をなぞる。その気色悪い感触に、思わず悲鳴を上げた。
「うひゃあっ!? なにしてくれるんすかこのエロウォーク! 諸々切り落とすっすよ!」
「強がっていられるのも今のうちだも。……ぐふふ、言ってみたかった言葉、快感だも!」
勝利の愉悦に酔うウォーク。洞窟の奥へと逃げながらも、彼はこの後のお楽しみで頭がいっぱいだった。
まずはご両親に挨拶しようなどと考えている彼は、気づかなかった。その背後に、小さな人影が迫っていることに。
ぴたりと足に引っ付く感触に、立ち止まる。見れば、プチ鬼燈が張り付いて、臭いやら感触やらに絶望的な顔をしていた。
「なんだおめー! 勝手にくっついといてその顔はやめろも!」
ウォークは気づいていなかったが、葵には見えていた。次々とプチ鬼燈がやってくるその向こうに、満面の笑みの鬼燈がいることに。
「……ほ、鬼燈さん? ちょ待って、早まらないでほしいっす!」
葵が懇願した直後、爆発。凄まじい爆風に、ウォークが吹っ飛んだ壁に激突する。
触手から解放されつつ転んだ葵は、その手に巨大な食事用ナイフを握った。
「よくも……やってくれたっすねぇぇぇ!」
フードファイト用ナイフが煌めき、触手を切り落とす。半ば八つ当たりである。
本日二度目の大事な部分喪失に、ウォークが絶叫した。
「ヒギィィィッ! おま、これ洒落になんねーほどいてーんだも!?」
「知ったこっちゃないっす! さぁウォーク、覚悟するっすよ!」
揺らぐ爆炎の中で、葵が眼鏡をかけなおす。その輝きが放たれるより早く、敵の背に触手が再び生え揃った。
「……しまった」
舌打ちする葵に、ウォークがニタニタと不気味な笑みを浮かべる。
「残念だったも。触手再生を身に着けた今のオラは、魔王すら凌駕する存在だも!」
高笑いする触手の豚男に、葵は心底腹が立った。なんならもう一度ビームで触手を焼き切ってやろうと思った、その時。
ウォークの背後から股座に放り込まれた戦槌が、ドズンと酷く鈍い音を立てた。
「ぉ」
目を点にしたウォークが、股間を抑えて蹲り、倒れる。
漆黒の戦槌を放り込んだ鬼燈は、得物を担ごうとしてやっぱり止めてから、痛みやら衝撃やら息子の安否やらで呼吸も出来ていなさそうなウォークの顔を、しゃがんで覗き込んだ。
「まだ生きてるね」
「ぉま……ちょと……これ……。今、どんな感触……したも……?」
「ナニかが潰れたような感触っぽい」
「……! オラの男が終わったも……」
大粒の涙をボロボロ流して泣き出すウォーク。さすがにちょっと気の毒で、鬼燈は背後の葵を振り返った。
葵は服についた煤やら粘液を払いのけながら、ため息をついた。
「敵なんだから、同情はいらないんじゃないっすか?」
「そりゃそうだね」
とはいえ、同じ男として思うところはある。鬼燈はウォークにもう一度向き直り、言った。
「まぁほら。どうせまた生えてくるですよね?」
「オラのコレは触手じゃねーも!」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エーカ・ライスフェルト
(そんなの本能でやれちゃうでしょ、と思っているけどそうなると腕力足りない私が危険なことになりそうだから黙っていようと思っている顔をしている)
【エレクトロレギオン】で兵器を呼び出すわ。ハリセンかウレタン棒だけを装備させた最弱装備でね
「つがいが欲しいなら動く前にやり方を考えなさい。獲物を集めて甲斐性を証明するとか、口説き方なんていくらでもあるでしょうに。どうしてよりにもよってこんなの(ウォーク)と組むの」
「あと、そもそも関わったら駄目な相手もいるから注意しなさい」私とか、オブリビオンやその協力者に対して引き金軽いし
ゴブリンは怪我させない様に兵器で押しのけ後退させ、ウォークは潰すつもりで【念動力】を
ウォークという連中は、もっと野蛮で腕力に頼る化け物だと思っていた。恐らく、間違ってはいない。
この敵もきっと、本性はそうに違いないのだ。強打された股間を抑えて蹲るウォークグルェートに半眼を向けながら、エーカ・ライスフェルト(ウィザード・f06511)は考える。
やろうと思えば、本能でやれてしまうはずだ。いろいろと。それだけの力は有しているはずなのだ。
最もそれを教えてしまえば、腕力の足りないエーカ自身が危険になるので、言わないが。
「……それにしても、多いわね」
すでにエーカの周りには、ゴブリンがいた。囲まれてしまっている。先ほど仲間がしこたま倒したはずだが、次から次へと現れるのだ。
やはりこいつらもオブリビオンなのでは、と思わないでもないが、予知で違うと判断されたのだから仕方ない。エーカはゴブリンどもへと笑みを浮かべた。
「運がいいわね、あなたたち。昔の私だったら、容赦なくその脳天を貫いていたわよ」
桃色のドレスを剥ぎ取ろうとしていたゴブリンの手が、止まる。エーカから放たれる猛者の空気が、軟弱な亜人を押しのけた。
口々に「お前強気な子タイプだろ」「モノには限度がある」「BANZOKUはちょっと」などと好き勝手言う緑の連中に鼻を鳴らして、戦闘用機械兵器を召喚する。
三百機近くの機械兵器は、その手にハリセンやらウレタン棒やら、おおよそ戦闘用としては最弱の武器を装備していた。
非殺傷が過ぎる武器だが、それでもゴブリンどもを追い払うには十分だった。道を開けるよう誘導されて、最前列は正座までさせられる亜人たちに、エーカは腕組みをして講義を開始する。
「あなたたちぇ、つがいが欲しいなら動く前にやり方を考えなさい」
一人のゴブリンが挙手をして、「それが分かってれば苦労しません」などと言った。周りのゴブリンが笑うが、どいつも似たようなものである。
ため息をついて、エーカは人差し指を立てた。
「獲物を集めて甲斐性を証明するとか、いい寝床を用意して包容力をアピールするとか、口説き方なんていくらでもあるでしょうに。どうしてよりにもよってあんなのと組むの」
向こうでいまだに股間の痛みに悶えているウォークを指さすと、ゴブリンたちは頷きながら「なるほど」「分かりみが深い」「世界の真理」と納得し始めた。
ついでにと、エーカはゴブリン一同を見回した。
「あと、そもそも関わったら駄目な相手もいるから注意しなさい」
他でもない、エーカのことである。それについては誰もが承知しているようで、何度も頷き、中にはどこからか取り出したメモ帳にペンを走らせる者もいた。
その後もしばらく、【エーカ先生の非モテ脱出講座~宇宙蛮族編~】を聴講したゴブリンたちは、一皮むけた男のような顔をして、満足げに各々の巣へ帰っていった。
また一つ、善行を重ねてしまった。我ながら丸くなったものだと微笑みながら、エーカは洞窟を進む。
願わくば彼らの未来に幸あれ、などと考えながら、念動力を練り固めていく。亜人たちがオブリビオンでないのなら、その命を奪う理由は、今のエーカにはない。
そう、たまには共存を目指しても罰は当たらないはずだ。猟兵として、世界を守る者として。不可視の力を拳の形に変えながら、一人目を細める。
気づけば目の前に立っていたウォークが、遠慮がちに声をかけた。
「あのう、もうちょい構ってくれるかも? 一応オラ、ここのボスなんだもべふぃッ」
躊躇なく振り抜いた全力の念動力が、触手を生やした豚男を洞窟の奥へと殴り飛ばした。
ゴロゴロと転がる音を無視して、エーカは洞窟の壁に手をやった。
「せいぜい、がんばりなさい。……応援してあげるわ」
エーカは教え子たちの未来に想いを馳せながら、遠くで立ち上がったウォークに、もう一発お見舞いした。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
(ウォークの欲望の内容を聞いて)
ひょっとすると、この中で一番純真なのは彼なのかもしれませんね
UDCアースで触手教団に潜入した際に入手した余計な情報を想起してげんなりしている私より余程…
女性に失礼な言動や行為はお辞めになった方がよいですよ…と注意しつつ、センサーでの●情報収集で所在や襲撃を確認したゴブリンへUCを●スナイパー射撃
あちらは「やる気」のようですので容赦はしません
ゴブリン用通路も塞ぎ、氷像となって彼の戦意を削ぐ役割も果たして頂きましょう
視線を避けたい猟兵の方がいれば(いたら)体躯で●かばいつつ●怪力での大盾殴打で制裁
世の悪漢が全てこのようであれば、涙に暮れる方も少なく済むのでしょうが…
フランチェスカ・ヴァレンタイン
さくらんぼな… ウォーク……?(その表情は何とも言いがたい様相を呈していた
翼を使って大きく跳び、洞窟の壁面や天井を蹴っての三次元機動でゴブリンの集団へ強襲を仕掛けてなぎ払っていきましょう
乱戦にでもなれば蹴りも多用するため多少のハプニングも起こるかとは思われます、が
いつものフィルムスーツ姿に加えて、数の差を補うために【天つ華裂き 威を哮るもの】でも使っていれば、件のウォークには視覚的にかなり目の毒な光景になっているものかと?
逆にゴブリン連中は発奮させてしまうでしょうがー…
群がってきたら群がってきたでUCの爆導索の良いカモ、ですね
ウォーク諸共に広範囲を巻き込んでの一斉起爆で一掃と参りましょう…!
「さくらんぼな……ウォーク……?」
そんな存在があり得るのか。フランチェスカ・ヴァレンタイン(九天華めき舞い穿つもの・f04189)の表情は、なんとも言い難い様相を呈していた。
これまで見てきたウォークどもと言えば、性欲の限りに女を貪り、その尊厳を食い千切る連中だ。
いや、奴もそうなのだろう。だが、度重なる失恋(物理)により傷つき嘆くウォークグルェートを見ていると、どうにもそう思えない。
それは、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)も同じだった。機械の身でも分かるほどに、違和感を覚えてしまう。
「ひょっとすると、この中で一番純真なのは彼なのかもしれませんね」
触手と聞いて蘇る記憶と言えば、UDCアースで触手教団に潜入した際に入手した、思い出したくもないアレやコレやである。そうした余計な情報を想起して肩を落とす自分の方が穢れている気がして、虚しくなった。
とはいえ、奴はオブリビオン。野放しにすれば、世界の脅威となる可能性のある敵だ。限りなくゼロ近くとも、可能性はあるのだ。
二人は戦闘に突入した。
洞窟の壁面を蹴って跳躍、そのまま翼を広げて飛翔したフランチェスカへと、ゴブリンたちが「エロの化身じゃねーか!」「存在が誘ってる」などと無茶苦茶言いながら手を伸ばし、引きずり下ろそうとする。
機械であり男であるトリテレイアは、すっかり無視された形だ。なんだか釈然としないながらも、肩部格納銃器を展開、特殊弾頭をぶっ放す。
超低温化薬剤封入弾頭が炸裂し、辺り一帯の分子運動を低下させて急速凍結させた。無論、その場にいたゴブリンたちはなす術もなく氷像と化す。
「……女性に失礼な言動や行為はお辞めになった方がよいですよ」
窘めたところで聞いてくれるかは分からないが、少なくとも氷像に恐怖したゴブリンは近寄らなくなった。
一方フランチェスカは、天井や壁を足場に、縦横無尽な三次元起動を展開し、斧槍と体術によってゴブリンを圧倒していた。
しかし、数が多い。一体一体は少ないが、油断していると危険だと判断し、纏うフィルムスーツの装甲装備をパージした。
豊満な肉体美を惜しげもなく晒す形となり、しかも高速戦闘するたびにあれこれ揺れて仕方のないものだから、ウォークは前かがみになったまま動けなくなった。
「やべーも、プリンみてーになってるだも!」
興奮のあまり触手までもがピンと張り詰めている光景は、だいぶ精神的にくるものがあったので、二人の視線は自然とゴブリンどもに向いていた。
狂喜乱舞する亜人の群れに、トリテレイアが特殊弾頭を叩きこむ。ゴールシーンのサッカーファンめいたゴブリンたちは、散布された薬剤によって、フランチェスカに拍手を送る姿勢のまま凍りついた。
「彼らの入り口もいくらか塞いだのですが……それでも増えますか」
戦闘にもならないほどに優勢だが、数の力が凄まじい。これだけの繁殖をどう為したのかを、トリテレイアは考える気にならなかった。
ゴブリンをいなしながら、フランチェスカの背後に回った。その背を隠すようにして大盾を構えると、彼女は振り向きざまに微笑した。
「あら、紳士ですのね」
「引き寄せすぎですよ、フランチェスカ様」
「わたしはただ、四の五の言ってられないので本気を出したまでですけれど?」
「……どちらにしても、この数です。このままでは押されてしまう」
見れば、ゴブリンたちは仲間の氷像を倒し踏みつけてでも、フランチェスカを手に入れようと押し寄せてきていた。
ウォークはと言えば、トリテレイアとフランチェスカに倒されたゴブリンたちを見て、二の足を踏んでいるらしい。依然前かがみである。
酷い乱戦状態になり、二人は接近戦を強いられる。ゴブリンたちはやはりフランチェスカを集中的に狙うので、トリテレイアは戦いやすい反面、そちらにも気を取られていた。
フランチェスカのしなやかな足が振り上げられ、ゴブリンの側頭部をしたたかに打つ。仲間が蹴り飛ばされる姿よりも、ゴブリンどもの視線はその蹴りに向けられていて、「もはや芸術」「生命の神秘を見た」などと口々に感想を言い合っている。動くたびに女体の美しさを自然に押し出す形になってしまう姿に、一部のゴブリンが手を合わせて拝み始めた。
妙な連中だとフランチェスカが眉を寄せた時、トリテレイアが短く告げた。
「彼です」
「!」
直後、大盾に衝撃。トリテレイアに突っ込んできたのは、ウォークグルェートだった。目を血走らせ、機械騎士の向こうを見ている。
「オラにも、オラにも見せるんだも!」
草むらで如何わしい本を見つけた小学生のようになっているウォークは、ウォーマシンの巨体が押し込まれるほどの力を発揮した。
なんとなく屈辱感を覚えながら地面に脚部パイルを打ち込み、トリテレイアはフランチェスカへと振り返る。
「策はおありですか?」
「……もちろん」
妖艶に微笑んだ瞬間、二人の周囲が爆ぜた。ゴブリンの群れと、無論ウォークを巻き込んだ広範囲爆発が、洞窟を揺らし、崩す。
緒戦で空中を移動していた際に、フランチェスカは爆導索を設置していたのだ。念動式のワイヤーは、敵に悟られることもなかった。
爆発音の中に、ウォークグルェートの悲鳴が聞こえる。
「まだぢゃんどみでないんだもぉぉぉッ!!」
爆炎に包まれていて見えないが、トリテレイアにはその声が、どうしても泣いているようにしか聞こえなかった。
嗚呼、必死とはこういう声を言うのだな。そんなことを、心の遠くで考える。同時に、余計な欲を持たずに済む機械でよかったと、心底思った。
炎と煙が晴れた頃、ダンジョンを揺るがす大爆発に吹き飛ばされたゴブリンたちは、洞窟のあちらこちらで倒れていた。痙攣して、動きそうにない。
突っ込んできた結果、爆導索の中心地に立ってしまったウォークは、衝撃波で触手を数本失くしてしまい、半泣きの状態で仰向けに倒れていた。
「うぅ……オラがボスのはずなのにぃ……」
なんだか気の毒な奴である。若干の同情を覚えながらも、トリテレイアは豚男に歩み寄った。豚のような悲鳴を上げるウォークに、首を横に振る。
「世の悪漢が全てあなたのようであれば、涙に暮れる方も少なく済むのでしょうが……」
それも、ずっと続くものではないだろう。上半身を起こして後ずさりしながらも、彼の視線はフランチェスカしか見ていないのだから。
トリテレイアは大盾を構えた。
「……それはそれですね。お覚悟を」
剛腕によって振るわれる大盾が、敵の側頭部を殴り倒した。意識を手放し短い眠りについた純真なウォークに追撃する気にもなれず、剣や諸々の銃火器を収納する。
どうせまた起き上がるのだろうが、他にも猟兵が通るので、後は彼らに任せることにした。
ようやくいやらしい視線や手から解放されたフランチェスカは、人心地ついたとばかりにため息をついた。
「まったく、お盛んな連中には困りますねー」
「厚着をされたらいいのでは?」
「……検討してみますわ」
「……ぜひ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
佐伯・晶
色々気が抜ける状況だけど
ここを抜けなきゃいけないから
真面目に戦おう
女神降臨で変身して戦うよ
それなりに丈夫な素材だし
汚れても創りなおせばいいしね
割と素肌が見えてるから
囮になるかもしれないし
ゴブリン達はガトリングガンの掃射と
使い魔の麻痺で威圧して追い払おうか
攻撃は神気で時間を止めて防御
これは僕なりのオーラ防御だよ
ウォークはわざとらしく
スカートを翻したり
胸元ちらつかせたりして
迎撃に向いた場所に誘い込もうか
物陰に潜ませた使い魔に麻痺させて
ガトリングガンで攻撃するよ
正直色仕掛けなんてなれてないから上手くないけど
それでも効きそうな気がするよ
邪神に笑われてるけど無視しよう
どうせ代わりにやってくれないだろうし
触手を再生したウォークはしかし、心の傷までは癒せない様子だった。
連戦連敗。ここを通る猟兵は皆彼を敵と見なしているのだから、仕方ないのだが。
「くそ……こうなったら大胆にいくも。い、いきなり抱き着いちゃったり、ちゅ、ちゅーもしちゃうんだも!」
気合いを入れてレベルの低い志を掲げるウォークに、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は担いだガトリングガンを落としそうになった。
なんだか色々と気が抜ける状況だ。とはいえ戦争は今も続いているのだから、ここで足を止めている暇などない。
待ち受ける魔王のもとに辿り着くには、ここを抜けなければならないのだ。
「……真面目に戦おう」
自分に言い聞かせて、晶は最近使い慣れてしまいつつある邪神の力を解放した。
身に纏うは宵闇のドレス。携行型ガトリングガンを構えた優美な少女の姿に、洞窟の穴から飛び出したゴブリンが「女の子に大型兵器とは玄人志向」「ギャップ萌えもいいよね」「いい……」などと歓声を上げた。
「……」
晶は半眼で妖精型の使い魔を召喚し、麻痺の状態異常魔法を撒き散らした。ゴブリンどもの自由が一瞬にして奪われていく。
痺れて動けないところに、容赦なくガトリングのトリガーを引く。弾幕の嵐に、ゴブリンたちが大変スプラッタでゴアな光景を繰り広げていく。
「ブヒィィッ!? おっかねぇだも!!」
ものの数秒で血みどろになってしまった洞窟に、ウォークグルェートが悲鳴を上げた。触手がへたりと垂れてしまって、完全に萎えているのが分かる。
ゴブリンの攻撃に晶は時間を止めて対抗し、ガトリングで撃ち抜いていく。弱い者いじめをしているような気持になったが、連中は少女の体を持つ晶を虎視眈々と狙っているのだ。戦わないわけにはいかない。
やがて今いるゴブリンを一掃し終えてから、晶は赤熱した砲塔を冷やしつつ、ウォークを見た。巨躯が入り込める岩場の穴に隠れてしまっている。
「ここ、こっちくんなだも!」
完全に腰が引けているらしいウォークの籠城作戦を終わらせる方法を、晶は少しだけ考えた。
敵の性質を考えれば、誘い出す手段は一つだ。しかし、それを行なうのが、どうにも気が進まない。だが、無視して進むのも、猟兵としていかがなものか。
迷った挙句、晶は周囲を見回して仲間がいないことを確認し、咳ばらいを一つ、スカートを短く折り畳んだ。
「み、見てるかな」
ふわりと一回転、短くなったスカートが花びらのように広がり、中身が覗く。ウォークが目を見開いた。
「ンッ!?」
「へ、へへ。せっかく二人きりだからさ、見せてあげようと、思って」
色仕掛けの言葉など、ろくに出てくるわけがない。晶は男なのだ。わざとらしく胸元をちらつかせる自分を、何度も殴りたくなった。
精神の向こうで邪神が笑うのが分かった。顕現していれば手を叩いて爆笑していただろう気配に、赤面して歯噛みをする。
「覚えてろよ……!」
しかし、ウォークには効果てきめんだった。すっと岩穴から出てきた敵は、壁に手をついて目を鋭くさせ、妙に出来る男っぽい立ち振る舞いを見せる。
「お嬢さん……。慣れないことは、するもんじゃないも」
呆けながらもガトリングガンを構える晶に、どうやら自分よりウブな女に出会えたと勘違いしたらしいウォークは、首を横に振って続けた。
「オラには分かるも、おめーの気持ちが……。早く大人になりたいからって、背伸びは厳禁だも。オラと一緒に、丁寧に大人の階段をぶへぇ」
ばら撒かれた弾丸が、ウォークの全身に突き刺さった。激痛にもんどりうって倒れる豚男に、晶は肩で息をしながら、吐き捨てた。
「確かに今はまともな体じゃないけど……それでも、頼むからお前と一緒にはしないでくれ」
その表情は嫌悪でも怒りでもなく、ただただ真顔の、全力全開の拒絶であった。
大成功
🔵🔵🔵
アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎
下衆め。己の欲求を満たすために人を傷つけることを選ぶとは。
例えそれが幼稚な欲求だとしても、その悪意がいつ深化するか分かったものではありません。
犠牲者が出る前にここで片づけてしまいましょう。
先ずは邪魔をするゴブリン達を『属性攻撃』ホワイトマーチで少し過剰に討ち倒していきます。
自分達の未来に冷たい苦痛が待ち受けている事を認識させ、私の『存在感』を発揮し『恐怖を与える』事さえできれば自ずと瓦解しましょう。
諸悪の根源への道が開けた後は屠るのみです。
粘液攻撃は凍らせ、又は『見切り』躱しつつ、ウォークがもう悪さができないよう無残な氷像へと変えていきますよ。
雛菊・璃奈
…妙に初心というか、純真というか…悪いウォークじゃない…?いや、こんな事してる時点で悪いかな…。
えっと…まぁ、邪魔するなら容赦はしないよ…。ゴブリンなんかは弱いのに反してもっと悪い事考えてそうだし…。
放置して後々学生の子達に被害とか出ても大変だしね…。
初手で【unlimited】を展開…。
更に黒桜の呪力を解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】してゴブリン達を一気に吹き飛ばし、【unlimited】の魔剣の一斉斉射と共にゴブリン達を一掃・殲滅…。
ウォークが気圧されてる隙に【unlimited】を再展開し、【呪詛】で強化した魔剣の群れを全身に叩き込んであげるよ…。
「……下衆め」
淡々と断じたその声に、ウォークグルェートは場の空気が変質したのを確かに感じた。
なんというか、こう、穏やかじゃない雰囲気である。アリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)は吹雪の如き魔力を纏いながら、敵たる豚男を睨みつけた。
「己の欲求を満たすために、人を傷つけることを選ぶとは」
今すぐにでも殺すと言わんばかりの覇気を滲ませるアリウムに、ウォークが「ブヒィィ!?」と悲鳴を上げて転倒した。
青年の隣でその様子を見ていた雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は、欲に忠実なオブリビオンを見てきた経験上から、首を傾げた。
「……妙に初心というか、純真というか……。悪いウォークじゃない……? いや、こんなことしてる時点で悪いかな……」
「その通りです。奴はオブリビオン、世界に仇成す敵。それは間違いのない事実だ」
「そっか……。放置して後々学生の子達に被害とか出ても大変だしね……」
スタイル抜群の狐娘の登場に肩を組んで青春唱歌を歌っていたゴブリンたちは、アリウムと璃奈が戦闘モードに入ったことで、顔面蒼白になった。正座をする者までいる。
「お、おめーら! 目の前に女の子がいるってのに、何してんだも! 男がすたるも! さっさと捕まえるも!」
叫ぶウォークは、すでに土下座していた。ゴブリンから唾を吐きかけられ、ケツを蹴られている。
その光景に、璃奈は調子を崩されてしまっていた。額を抑えてため息をつきつつ、首を横に振る。
「えっと……まぁ、邪魔するなら容赦はしないよ……。ゴブリンなんかは弱いのに反してもっと悪い事考えてそうだし……」
「そう。ウォークも含め、例えそれが幼稚な欲求だとしても、その悪意がいつ深化するか分かったものではありません」
冷気を纏う細剣【氷華】の切っ先をゴブリンとウォークに突きつけて、アリウムははっきりと断言した。
「犠牲者が出る前に、ここで片づけてしまいましょう」
「了解……」
璃奈が薙刀状の呪槍【黒桜】を構えた。刃から浮かび上がる黒い桜の花弁にも似た呪力が、次々に魔剣や妖刀に姿を変えていく。
ゴブリンたちは察した。「あぁこの人たちガチだわ」と。
二人の剣士が同時に地を蹴った。そこからは、あまりにも圧倒的だった。
あわあわと口に手を突っ込んで見守るウォークの前で、ゴブリンたちが次々に斬り伏せられていく。
アリウムの剣が美しい線を描き、斬りつけられたゴブリンが瞬時に傷口を凍てつかせた。自然治癒すら拒絶する超低温に、のたうち回って苦しみ始める。
逃げ惑う亜人たちの頭上から、呪詛の衝撃波が降り注ぐ。璃奈だ。三百をゆうに超える魔剣と妖刀が、欲望の亜人を片っ端から貫き切り裂き、薙ぎ払う。
「こ、こえーだも……。こえーけど、でも」
本能には逆らえないのか。ウォークの目は、どうしても璃奈を追いかけていた。自分の命を狙う気満々の少女から、目が離せない。
クールビューティな雰囲気のある美少女だ。スタイルもいい。九尾という亜人に、親近感を抱いているのもあった。当の本人はたまったものではないだろうが。
「可愛いんだも……!」
「随分と余裕だな、ウォーク」
「ブヒッ!?」
あさっての方向から聞こえた声に、豚男が飛び跳ねる。すっかり視界から外してしまっていたアリウムは、その足元に大量のゴブリンを積み上げていた。
「辿り着いたぞ、諸悪の根源」
呼吸もまるで乱れていない。ゴブリンどもはもしかしたら、戦いにすらなっていなかったのではないかと、ウォークは背中に流れる汗を感じながら息を呑んだ。
念のために捕捉を入れておくならば、ウォークグルェートは強力なオブリビオンだ。猟兵一人で勝つのは非常に厳しい相手と言える。彼もまた、本気を出せば結構いける。
ただ一つ問題があるとするならば、彼はヘタレだということだ。女性関係においても、戦闘においても。
幾百の魔剣を墓標のように地面突き立て、自身は黒塗りの魔槍を担いだ璃奈が、ほとんど表情を変えずにやってきた。
「こっちは片付いたよ……。アリウムさんは……」
「見ての通りですよ」
「よかった……。怪我もないみたいだね……」
「えぇ。璃奈さんも」
大群を相手にしたのだから、仲間同士が労い合うのは当然のことだ。しかし、ウォークはそのやり取りに、大変な敗北感を感じていた。
イケメンと美少女が楽しそうにしている。なんだかとっても疎外感を覚えてしまうのだった。そもそも敵なのだが。
このまま泣き寝入りなんて、嫌だ。やっと女の子と会話が出来て、スカートの中身も拝めて、お尻まで触ってやったというのに、どうして負けた気にならなければならないのだ。
「そうだ、そうだも! オラは勝者なんだも! 人生の勝ち組なんだもぉぉぉッ!」
触手を振り乱し、白くて不快な液体を撒き散らしながら、ウォークが絶叫した。妙な臭いのする粘液が璃奈に降りかかる。汁がついた服に穴が開き、拡がっていく。
「服が……!」
巫女服を破損した璃奈は、バックステップで間合いを離した。そこに、ウォークが本日初の攻撃らしい攻撃、大斧による一撃を叩きつける。
黒桜で受け流す。重い刃に視線を取られた刹那、再びあの粘液が迸った。大量だ。浴びてしまえば、璃奈の衣服は完全に破壊されかねない。
璃奈は突然肩を掴まれ、後方に下げられた。アリウムだ。二人の間に割って入り、粘液を触手もろとも斬り飛ばす。
刃から発せられる冷気の魔力が、切り捨てた触手と粘液を凍りつかせた。ウォークの顔も氷塗れになる。
「うっ――ってぇぇぇぇッ!? また触手斬ったなも! なんで猟兵は触手ばっか狙うんだも!? エッチ! ヘンタイ!」
「斬りやすいからに決まっているだろう」
生き残ったゴブリンが、地に伏せたまま「それな」と呟いた。
極端な低温により敵の再生能力を奪ったかに見えたが、ウォークはすぐさま背中から新たな触手を生やしてみせた。なかなかにしぶとい。
お気に入りの服に穴が空いてしまい、狐耳と尻尾をしょんぼりさせていた璃奈は、再び魔剣を召喚し、無言でウォークに歩み寄った。
「……」
「あっ、狐子ちゃん! まずは、その、じ、自己紹介だも!」
「……」
「オラの、あの、名前は……」
「……」
「……」
彼女は真顔でウォークの顔を見つめていた。
豚男が無言で立ち上がり、汚れた膝の土を掃った。身だしなみをチェックし、生えたての触手の具合を確かめてから、誰もいない洞窟の奥に目を向ける。
そして、走り出す。足を振り腕を振り、涎を垂れ流しながら、逃げる。
遠く遠く、あの闇の向こうへ。
「逃がさないよ……!」
魔剣群を再展開した璃奈が、ウォークの背中を指さす。一斉に射出された刃たちが、暗闇に消えた敵を追いかけた。
やがて、暗がりの向こうから、豚の悲鳴が聞こえてきた。やれやれと腰に手を当てて、ところどころ虫食いのようになってしまった巫女服を見下ろし、璃奈はため息をつく。
「服……また繕わないと……」
「それでは戦えないでしょうし、一度、戻ろうか。追わずとも、仲間が奴を倒してくれるはずです」
「そうだね……」
アリウムと璃奈は頷き合って、倒れたまま痙攣して動かないゴブリンの山を乗り越え、来た道を一旦引き返していった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
杜鬼・クロウ
【兄妹】
アドリブ歓迎
オイオイ温すぎンだろ
エロ本見たら赤面して逃げ出す純朴さじゃね?
(触手苦手だが男に興味ねェなら平気か
面倒くせェ
まずコイツら片すぞ(目見ず
愛ねェわクソが
玄夜叉で掌を切り血流し【沸血の業火】使用
ゴブリン達の頭や心臓を電光石火で剣で薙ぐ
派手に血飛沫飛ばす
敵の攻撃は見切り・カウンター
ハ、この俺が止められるかよオラァ!(恫喝
弟は一切助けず
返り血浴びウォークへ仁王立ち(威厳
なァ…テメェは巨乳と貧乳なら何派?
俺は巨乳派
秘蔵本見せたかったぜ
”妹”で良かったなァカイト君よ?
内心ざまァ!とガッツポーズ
弟が嫌がる程、普段の鬱憤が晴れ凄く嬉しい虐めっ子兄(小学生か
ウワ…(唖然
俺はお前が怖ェよ離れろ
杜鬼・カイト
【兄妹】
……はぁ。さすがに青すぎる
なんか見てて可哀そうになってきたな
さっさと壊しちゃうか
はい、兄さま!
オレと兄さまの愛の力をみせつけてやりましょうね♪
って、なんかオレばっかりゴブリンに狙われてる!
この恰好で女だと思われてるのか…?
ああ、兄さま助けてください~~!
………?
って!!なにウォークと胸の大きさの話してるんですか!?
ちなみにオレは美乳派だけど、そんなことはどうでもいい!
兄さまの元へ急いで移動
【赤い糸は結ばれて】で敵の行動を制限
「動くな!」
勝手にオレを女だと勘違いしたのはそっちだろ
邪魔するなら壊す!!(恫喝、殺気)
血の跳ね返りも気にせず兄さま目がけてまっしぐら
……あは、怖かったです兄さま~
徐々に、ウォークは成長しているらしい。一応、男として。
「くっそ! あんな目に遭うなら無理矢理捕まえて……住所くらい交換しておくんだったも!」
成長しているらしいのだ。一応。だが、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)にはまるで納得いかなかった。
「オイオイ温すぎンだろ。エロ本見たら赤面して逃げ出す純朴さじゃね?」
「……はぁ。さすがに青すぎる。なんか見てて可哀そうになってきたな」
兄にぴったりと寄り添うようにして立つ杜鬼・カイト(アイビーの蔦・f12063)も、同意を首肯で示した。
セミロングの黒髪にセーラー服姿のカイトを見て、ゴブリンたちが首脳会議めいた握手を交わし始める。しかし悲しいかな、彼は男であった。
猟兵たちに順次しばかれた結果、ウォークはもうズタボロだった。それでも触手が再生しているところを見るに、本能はまだ萎えていないらしい。
そしてそれは、多くの同胞をボロ布のようにされたゴブリンも同じだった。どこからか湧いてきて、クロウとカイトを取り囲む。
やたらと近い弟を押しのけながら、クロウが身の丈と同等の刃渡りを持つ魔剣【玄夜叉】を一振り、ゴブリンを牽制した。
「面倒くせェ。まずはコイツらを片すぞ」
傍らのカイトへと、断固として目を見ずに告げる。兄に声をかけられただけで多幸感が危険域に達したカイトは、赤と青の瞳を輝かせながらブンブンと頷いた。
「はい、兄さま! オレと兄さまの愛の力をみせつけてやりましょうね♪」
「愛ねぇわクソが」
「またまたぁ!」
ふざけ合いながらも、二人は同時にゴブリンの群れへと突っ込んだ。
魔剣の一閃でゴブリンどもをなぎ倒したクロウが、その刃で己の掌を斬った。鮮血が噴き出し、血糊の中で壮絶な笑みを浮かべる。
それだけで亜人たちは委縮し、「うっわ痛そう」「悩みでもあるの?」「自分を大切に!」などと言いながら遠ざかっていく。
あらぬ誤解を招いてしまったが、そんなことはどうでもいい。流れた血を代償に、クロウは驚異的な身体能力を手に入れた。
「そンじゃあ――いくぜェッ!」
ゴブリンたちの頭や心臓を、魔剣で斬り、突き、死に至らしめる。奥でウォークが豚の悲鳴を上げて失禁した。
石を投げたりして応戦するゴブリンだが、到底相手にならない。血塗れの魔剣を担いで、クロウは緑の亜人たちに強烈な眼光を向けた。
「ハ、この俺が止められるかよオラァ!」
一斉に首と手を横に振り、「もう結構です」と全力でアピールしたゴブリンたちが、方向転換した。
その先にいたのは、カイトだ。応戦するも数に圧倒され、取り囲まれる。
「……!? なんかオレばっかりゴブリンに狙われてる! まさか、この恰好で女だと思われてるのか…?」
そりゃそうである。なぜそこを疑問に思うのかと、先陣を切ったゴブリンが首を傾げた。
しかし、これはチャンスでもあった。カイトは両手を胸の前で組み、出来る限り乙女な声で叫んだ。
「ああ、兄さま! 助けてください~~!」
そう、これであのスーパークールなイケメンの兄が颯爽と現れてくれるはず。さらにゴブリンをバッタバッタと斬り倒し、あわよくばお姫様だっことかも……。
しかし、ふと見回した先にいたクロウは、返り血に塗れて腰を抜かしたウォークの前に仁王立ちしていた。
「なァ……テメェは巨乳と貧乳なら何派?」
「こ、殺され……えっ、美乳派だも」
「って!? なにウォークと胸の大きさの話してるんですか!?」
ゴブリン軍団の中で、カイトは地団駄を踏んだ。ちなみに彼も美乳派である。
クロウが眉を吊り上げ、ウォークの胸倉を掴んだ。
「おい……俺ァ巨乳と貧乳ならどっちだって聞いたんだよ! 答えになってねェだろうがッ!」
「ブヒィィッ!? お、おっきいのが好きですぅぅぅ!」
「そうだろそうだろ。俺もなんだよ。秘蔵本を見せてやりたかったぜ」
仲間を得たかのように満足げに頷くクロウは、横目でちらっとカイトを見た。未だにゴブリンどもに取り囲まれているが、その先頭に立つ亜人は、触れた瞬間に「なんだ男か」とUターンしている。
兄とウォークの乳談義に、カイトは「弟のオレでもそんな話したことないのに!」とジェラシー満々であった。
「くっ……! オレは、兄さまの元へ行かなければならないんだッ!」
左手を掲げ、小指の指輪が輝くと同時に、白詰草の花吹雪が洞窟に吹き荒れる。
純白の花びらの中でゴブリンにタッチアンドリターンを繰り返されるカイトを見て、クロウは怯えて竦むウォークをよそに、うんうんと頷いた。
「“妹”で良かったなァ、カイト君よ? 今日ほどお前がその格好でいたことを、俺が喜んだことはねェぞ」
内心では「ざまぁ!!」とガッツポーズをしていることは、言うまでもない。弟の嫌がる姿を見るほど、普段の鬱憤が晴れていくことはない。
しかし、カイトも必死だった。交代で迫るゴブリンに向かって、白詰草に宿した制約の力を解き放つ。
「動くなッ!」
単純な命令だった。当然、亜人どもが守れるわけもない。
そして、それは彼らにとって致命的な結果をもたらした。手足を動かしただけで、肉が爆ぜてどす黒い血が舞う。パニックを起こしたゴブリンたちが押し合い、さらに血肉の波を作っていく。
あまりにもグロテスクな光景に、ウォークが「こいつらも殺戮ガチ勢だも」と泡を吹き始めた。一方クロウは、カイトの醜態が終わってしまったことに舌打ちしていた。
返り血を気にもせず、カイトは死にゆくゴブリンたちを押しのけ、時々掴んだ血塗れの肉塊を地面に投げつけながら、兄のもとへとまっしぐら。
「あは! 怖かったです兄さま~」
クロウのそばにいたウォークを蹴り飛ばし(特に意味はない)、カイトが兄に縋りつく。
赤い粘液で染まった手を伸ばされ、クロウはカイトの飛びつきを回避した。今は特に触ってほしくない。
「ウワ……俺はお前が怖ェよ」
「そんなこと言わないでくださいよ~」
「離れろ後生だから」
すり寄ってくる弟を引きはがす兄の構図を、蹴られた衝撃で結構な距離を転がったウォークは、震えながら見ていた。
そして、ふと気づく。
「あれ……? これ、オラいらなくねーかも……?」
はしゃぐカイトを鬱陶し気に押しのけるクロウを眺めながら、ウォークは笑みを浮かべた。
乳談義の果てに顔面を蹴られただけの存在。あぁなるほど、今の自分は、ゴブリン以下だ。
豚男の目から一筋の涙が零れたことを、杜鬼兄妹(弟)が知ることはなかったし、別に知らなくて困ることもなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
セルマ・エンフィールド
……まぁ、やることに変わりはありません。敵は撃つだけです。
両手でデリンジャーを『クイックドロウ』、こちらに迫る触手を氷の弾丸で狙い、凍結させて防ぎます。
なんというか動きが……厭らしいというより遠慮を感じるんですが。
ゴブリンがこちらへ来たら【絶対氷域】を。
オブリビオンが関わらないのであれば、この世界のことはこの世界の人に任せるつもりなので……手を出さないのであれば見逃します。
今すぐに逃げれば凍り付く前に範囲外に出れる……かもしれませんよ。逃げられなかったら、私に襲い掛かったのが悪いということで。
邪魔なゴブリンがいなくなったら【絶対氷域】で巻き込んだウォークをフィンブルヴェトで狙い、撃ち抜きます。
だいぶ痛い目に遭わされたと見えるウォークが、ゴブリンにしこたま説教されている。
正座でしょぼくれる豚男に対し、緑肌の亜人が「無能グルェート」「さくらんぼキチガイ」「その触手だけ置いて死ね」などと、ありったけの罵詈雑言を浴びせていた。
なんだか酷く可哀相に見えてきたが、余計な感情を何とか封じて、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)はデリンジャー銃に氷の弾丸を詰め込んだ。
「……まぁ、やることに変わりはありません。敵は撃つだけです」
対象がオブリビオンならば、チェリーウォークだろうとレジェンドヴァンパイアだろうが、撃ち抜く獲物であることに変わりはない。後は、気の持ちようである。
ゴブリンがセルマに気づいた。汚名返上のチャンスをやろうとでもいうのか、ウォークのケツを蹴っ飛ばしてセルマを指さす。
立ち上がったウォークが、咆えた。
「うおぉぉぉ! やってやるも! 今に見てろも!」
セルマに言っているのかゴブリンに言っているのか分からなかったが、ともかく敵は銀髪の少女を捕獲せんと触手を展開した。
デリンジャー銃を発砲、着弾した触手が凍り、その度に「あぅん」「うはぁん」とウォークが気持ち悪い声を出した。精神攻撃と断じて、耳から締め出す。
ウォークが間抜けなせいでつい油断してしまうが、敵は一応強大なオブリビオンである。触手の全てを防ぎきれず、セルマの眼前に、うねる肉蔓が迫った。
「くっ――!」
後退するか、撃ち抜くか。考えている間にも、触手が近づく。
しかし、近づいた触手は、セルマの体に近づいては、遠慮がちに離れていった。
「……?」
訝し気な顔でウォークを見ると、彼は首まで真っ赤にして「ちょ、ちょっとタンマだも」とモジモジしている。ゴブリンが「諦めんなよ!」「今イケた、ワンチャンあった」などと応援しているが、触手は主のもとへと戻ってしまった。
舌打ちをして口汚くウォークを罵ったゴブリンの群れが、一斉にセルマに駆け出す。自分たちがやった方が早いと判断したらしい。
連中はオブリビオンではない。であれば、彼らのことはこの世界の人々に任せるべきだと、セルマは銃を下ろした。
彼女の足元が、凍てつく。全てを氷に包み込む絶対零度の冷気が吹き荒れ、取り囲もうとしたゴブリンが寒そうに腕を抱きながら足を止めた。
「私はあなたたちに興味がありません。手を出さないのであれば、見逃します」
静かに告げられた言葉に、ゴブリンたちは互いの顔を見合わせて考えた。
寒いのは嫌だし、凍るのはもっとごめんだ。だが、目の前に美少女がいる。逃がすのはもったいないし、いっそこの子で暖を取ればいいのでは? 天才的発想だ、それでいこう。
そういうことになったらしい亜人どもが、セルマに飛び掛かる。しかし、拡大した絶対氷域に触れた先陣が凍結、落下して砕けたことで、残ったゴブリンは即引き返していった。
「おめーらの諦めも大概はえーんだも!?」
手下を失ったのも何度目かのことだが、一人残されたウォークは、しりもちをついて歯をがちがちと鳴らした。
「お、オラは怯えているのかも……? こんな可愛い子に、オラはビビってるのかも……?」
「それもあるでしょうが、歯が鳴っている原因は違いますよ」
「えっ」
気づけば、セルマの領域はウォークの足元にまで広がっていた。地面についたケツはすでに凍り始めている。なるほどと、豚男が手を打った。
「そっかそっか! オラは寒かっただけだも、女の子にビビってたわけじゃねーんだも!」
「そのようですね」
愛用のマスケット銃【フィンブルヴェト】に通常弾を装填しながら、セルマは頷いた。ウォークはにこにこと続ける。
「いやー安心したも。おめーみたいな可愛い子の前で腰ぬかしたなんて、ダサいったらないんだも」
「そうですか」
構える。狙いはウォークの、眉間。
「でもこれで、オラは男の威厳を保てたってことだも!」
「それはなによりです」
「だも! ところでおめー、なんで銃をオラに向けてるんだも?」
返事の代わりに放たれた弾丸が、ウォークの眉間を強打した。
ひっくり返ってのたうち回る触手の化け物を見下ろすセルマの視線は、まさしく絶対零度の冷たさだった。
大成功
🔵🔵🔵
ルベル・ノウフィル
【金平糖2号】
緋雨殿と
破廉恥な。女性にイタズラをしてはいけませんぞ。
早業は全てに活用
◆対ゴブ
緋雨殿の方針に従いますぞ
オブリビオン以外、僕はそれほど拘りません
僕の敵はオブリビオンだけですから
と言いつつ
狼の鳴き声で咆哮して怯えさせてみましょう
「今からお前たちを狩りますよ
このお兄さんはお前たちを許さないのだそうです
早くお逃げなさい」
◆対敵
緋雨殿に気を取られている敵の足元にトンネル堀り、足を取りましょう
UD遊戯
杖に「過去から現在まで見聞き経験した全ての破廉恥な記憶」を喰わせましょう
記憶を棄てる捨て身の一撃、鎧無視攻撃
僕に邪念は不要
敵を倒す、それだけのための存在であればいい
滅べ
お前の存在を僕は許さない
天翳・緋雨
【金平糖2号】ルベル君と一緒に
ゴブリンにオーク、ね…
彼らが何を思い描こうと自由ではあるけれど
実際に危害を加えたら
滅するしか無いよね
UCは【宙船】を
大気圏内での扱いは難しいけど他の猟兵さんに被害が出ない様に出力を繊細に調整するよ
…勿論大丈夫ですとも
ルベル君はゴブリンを見逃したいみたいだね
女性に襲い掛からなかったら不問としますか
(去勢とかが後顧の憂いを絶つためには良いのではと思わなくもない)
粘液は浴びたくないから第六感を総動員
バンダナを解き放ち第三の眼を顕現
ダッシュやジャンプを軸とした空中機動+纏った残像で幻惑しつつ
攻撃の発動を感知し見切っていく
攻撃は【宙船】によるオーラを纏った体当たりで充分かな
なんだかこの洞窟に居場所がない気がしていたウォークグルェートに、さらなる試練が降りかかる。
「破廉恥な。女性にイタズラをしてはいけませんぞ」
腕組みをして言ったのは、ルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)。そしてその隣にはもう一人、青年がいた。
「ゴブリンにオーク、ね……。彼らが何を思い描こうと自由ではあるけれど」
天翳・緋雨(時の迷い人・f12072)は、柔らかな表情をしている。だがなぜか、ウォークはその場から一歩も動くことができなかった。
漂っているのだ、彼らからも。戦闘ガチ勢の気迫が。
「実際に危害を加えたら、滅するしか無いよね」
「ブ、ブヒィィィ!?」
ゴブリンの群れを掻き分けて逃げながら、ウォークはこれまでの自分の罪を数えた。
服を破る、女の子と会話をする、触手を触ってもらう、自己紹介をする、スカートを覗く、お尻を触る……。
これは許されるべきでは? と思わなくもないが、ルベルと緋雨の目を見るに、死刑確定である。情状酌量の余地について弁論している間に刑が執行される勢いだ。
追いかけようとした二人の前に、ゴブリンたちが立ちふさがる。二人が男なのでどうにもやる気が感じられないが、一応は壁になろうということらしい。
縦労働社会の縮図が垣間見えるが、二人の猟兵も止まるわけにはいかない。緋雨は襲うのか襲わないのかはっきりしないゴブリンを見据えて、口早に唱えた。
「対“時元”障壁展開……。相剋演算開始――!」
吹き荒れるサイキックオーラが、緋雨の体を包み込む。その余波で亜人が何人かどこかにすっ飛んでいったが、大気圏内で発動した際の誤差としては、微細なものである。
「……容赦はしない。それでいいかい?」
「緋雨殿の方針に従いますぞ。僕の敵はオブリビオンだけですから」
言ったルベルに頷いて、緋雨が腰を落とした。オブリビオンとして復活を果たさないほどに、徹底的に。
そう思った瞬間、狼の鳴き声が洞窟に響いた。ルベルだ。咆哮する人狼に、ゴブリンたちが一斉にびくりと肩を震わせた。
吼える声には、人ならざる者に届く意味があった。即ちそれは、「今からお前たちを狩りますよ。このお兄さんはお前たちを許さないのだそうです。早くお逃げなさい」というもの。
これから待ち受ける痛い目と、それを回避する方法を教えてもらったゴブリンに、選択の余地はなかった。
「定時なんで」「見たい番組があるから」「アマゾンの受け取りが……」などと言い訳をぼやきながら、亜人たちが洞窟のどこかに去っていく。
思わず拍子抜けした緋雨だが、隣で少し気まずそうにしているルベルを横目で見て、微笑を浮かべた。
仕事には真剣で、戦場以外に居場所がないと言うことすらあるルベルだが、本当は優しい少年なのだ。オブリビオンでもない者を殺めることを、良しとしなかったのだろう。
緋雨は困ったように笑いながら、頭を掻いた。
「まぁ、今のところは女性に襲い掛かれてもいないし……不問としますか」
本当は去勢ぐらいしたほうが後顧の憂いを断つことになるのではと思ったりもしたが、こちらにペコペコ頭を下げて穴の中に消えていくゴブリンを見ていると、そうした気にもなれなかった。
亜人の群れがひとしきり帰路についた後、ルベルと緋雨はウォークの前に立った。部下だと思い込んでいた連中の爽やかな裏切りにあった彼は、憤慨していた。
「くっそー! ゴブリンの奴ら冷てーも! 男が相手じゃやる気にならないってのは分からなくもないけども!」
少々気の毒な気もしたが、それはそれ。緋雨は一歩前に出て、サイキックオーラを輝かせながら、静かに告げた。
「欲に塗れた結果だよ。ウォーク、キミが今後誰かに危害を加えるかもしれないことを考えると、放っておくわけにはいかない」
「そんな正論言われても困るんだも! そういうの慣れてないんだも!」
「……だそうだ。どうする、ルベル君。もう一度咆えてみるかい?」
問われたルベルは、即首を左右に振った。
「いえいいでしょう。倒します」
「ちょっとは躊躇ってほしいんだも!? ……ちくしょー、こうなりゃやってやるんだも! オラだってダンジョン任されたボスだってところを見せてやるも!」
立ち上がったウォークは、触手を唸らせ、珍しく戦闘モードに突入した。
広げたピンクの肉蔓が、頭上から二人に迫る。迸る装備破壊の粘液。後退したルベルを確認してから緋雨はバンダナを解き放つ。
額に隠されていた第三の目が顕現、肉眼を超えた第六感をその眼に捉え、全ての粘液を紙一重で回避した。
超高速移動にも耐えられるサイキックオーラに包まれた緋雨は、壁を蹴り天井を利用し、まるで飛んでいるかの如き軌道でウォークを攪乱する。
「ちょこまかすんなも! 男の相手なんてしてられないんだも!!」
「それはボクらも同じさ。キミに足止めされている暇はない」
声は真横から。薙ぎ払った触手が、緋雨の体に叩きつけられる。しかし、すり抜けた。緋雨の姿をしていたそれは、オーラの粒子となって消えていく。
「んなっ!?」
「残念。それは残像さ」
「あっおめーそれ、オラも言ってみたい台詞だも! ずりーも!」
背後の気配に振り返ろうとした瞬間、ウォークは地面と水平にすっ飛んだ。
緋雨の体当たりだ。無論ただの突進ではなく、宇宙空間移動用サイキック【宙船】による、時空干渉タックルである。
もんどりうって倒れ、腰を抑えつつもウォークが立ち上がった。なんだかんだ言って、彼はやはりボス格のオブリビオンなのである。
「いってぇぇぇも! 死ぬかと思ったも!?」
「当然、首を獲るつもりでかかっていますぞ」
声は足元からだった。目をひん剥いて真下を見たウォークは、初めて地面が盛り上がっていることに気が付いた。
地面を掘り足元に潜り込んだルベルが、地中から飛び出す。杖に喰わせた「過去から現在まで見聞き経験した全ての破廉恥な記憶」を代償に、自身の周囲に死霊の刃を纏う。
「僕に邪念は不要。敵を倒す、それだけのための存在であればいい……!」
「ちょ待ても! オラシリアスは苦手で――」
不快な柔らかさに触れたのは一瞬、肉を切り裂く衝撃と共に、ルベルはウォークの腹をぶち破った。
「ぐッ――あっ!?」
腹に大穴を開けたウォークに、目線だけで振り返る。記憶の一部が抜け落ちても、ルベルの瞳に宿る強い意志は、衰えていなかった。
「……滅べ。お前の存在を、僕は許さない」
「ぐっぞぉ……まだ何もシていないのにぃぃぃっ!!」
目から血の涙を流しながら叫び、ウォークグルェートが仰向けに倒れ、そして爆発した。
肉片やら触手片やらが飛んできて辟易したが、緋雨はそれらを振り払ってから、ルベルに駆け寄った。
「ルベル君、大丈夫かい?」
「えぇ。記憶を少し失いましたが、なんでしょうか、まるで生まれ変わったかのような、すごくスッキリした気分ですぞ」
「そうか、よかった。……よかったんだよね?」
「無論ですとも!」
にこやかに答えるルベル。彼がそう言うのならと、緋雨は記憶を削ったことについて、それ以上深く聞くことはなかった。
なにはともあれ。
こうしてウォークとゴブリンによるセクハラ連合軍は大敗を喫し、ダンジョンの一部は安全な通路となった。次なる戦場に向かって、猟兵たちが駆け抜けていく。
誰かが仲間に聞いた話によれば、それからしばらくの間――なんらかの形で戦争が終結するまで――、亜人族の住処に続く横穴に、下手な字で「猟兵お断り」と書かれた看板が掛けられていたそうな。
fin
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴