アルダワ魔王戦争3-A〜饗応の試練場
●目も眩むような輝きのなかで
魔王が奥底に眠るファーストダンジョン。
奥への探索が進むにつれ、迷宮の様々な顔が露見していく。
その玄室には、まばゆいばかりの金塊が天井を貫かんばかりに積み上げられていた。
輝きによって部屋全体が怪しくまばゆい、うっとりと眺めてしまいそうになる。
金塊の周りには色取り取りの金銀財宝。
宝石、財貨、きらびやかな装飾品の数々。
その類に詳しくなくても、手に取ってみたいという気持ちに駆られてしまいそうだ。
だが、それは罠だ。
魔王が残した遺物か。それとも古代の英知か。
人呼んで黄金鉱脈。
この玄室は財宝を生み出し、見た者にそれを独り占めしたいという強力な欲望を植え付ける。
仲間同士で殺しあい、最後の一人は番人となって新たな侵入者に立ち塞がるという訳だ。
「渡さない……これは私の、私だけのもの」
この玄室に鎮座する少女もその欲望に取り憑かれた者だ。
侵入した者を財宝を奪う不届き者と思い込み、それは図らずも、魔王の手先となって猟兵たちの行く手を阻むのだった。
●グリモアベースにて
「皆様、アルダワにおける魔王戦争、お疲れのことと思います。新たなエリアが判明しました」
深々と一礼し、ライラ・カフラマーンが居並ぶ猟兵達に説明を始める。
猟兵達の活躍によってダークゾーンが晴れ、ある程度迷宮の先へと進めるようになってきた。
今回ライラが猟兵達に探索を願うのは、新たなエリア「黄金鉱脈」と呼ばれる場所である。
「そこには数多くの財物があると伝え聞きました。迷宮の奥にある財宝、それは冒険者にとっては夢のある話でございましょう。しかし、これは悪夢を呼ぶものでございます」
財宝、と聞いて眼の色が変わりそうになった猟兵を落ち着かせるように、コホンとライラは咳払いをする。
「黄金鉱脈は人々に限りない欲望を起こし、相争って自滅するように仕向ける罠でございます。猟兵と言えども、その強欲には抗うことは難しいかもしれません」
この戦争の目的は魔王の討伐、味方同士で争っては敵に利するばかりだ。
「この黄金鉱脈の罠を断ち切る手段。それは金銀財宝に目もくれず、魔王討伐のために私欲を捨てて立ち向かうのが良いでしょう」
ライラが杖の先で地面を軽く叩くと、霧が変化し姿を形どる。
それはファーストダンジョンの迷宮。
黄金鉱脈へと続く、大きな扉だった。
扉はキラキラと輝き、その先の期待を膨らまそうと、見る者を欺いていた。
「おそらく、欲望に囚われた何者かが皆様方を待ち受けているでしょう。皆様はその襲撃と欲望に負けず、ファーストダンジョンを攻略してくださるようお願いします」
そう言ってライラは、深々とまた頭を下げたのだった。
妄想筆
妄想筆です。戦争に参加されている方々、お疲れ様です。
今回のシナリオは3-A、黄金鉱脈の攻略になります。
このエリアは人々に耐えがたい欲望を発生させます。
金塊を見た者はそれを所有したいという欲に駆られます。
敵も同じで、猟兵達を強奪者とみなして襲いかかってくるでしょう。
参加される方は欲望への対処、敵への対処を工夫しながら戦ってください。
『金塊の魅力を否定し、無欲になる』
これがこの迷宮の攻略の鍵です。
ボス戦は敵が生み出す駒群と猟兵たちとの戦いになるでしょう。
なるべく多くの人を採用したいと思っていますが、流れてしまったら申し訳ありません。
よろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『黒駒の人形姫ロラ・プロスト』と『駒盤遊戯』
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POW : 人形帝国・駒盤遊戯・電撃騎兵
【ナイトの速度と旋回性能の上限を解除する】事で【ナイトが紫電と暴風を纏った全身鎧姿の人馬】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : 人形帝国・駒盤遊戯・軽装姫兵
【8体のポーンがそれぞれ麗しい姫騎士の姿】に変身し、武器「【ポーンの銃剣が変化した魔法弾の撃てる魔剣】」の威力増強と、【ポーン達の身から溢れ出る膨大な魔力】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
WIZ : 人形帝国・駒盤遊戯・救世天使
対象の攻撃を軽減する【聖域を展開したビショップが聖炎纏う熾天使】に変身しつつ、【邪心を滅ぼす光輪と邪悪を滅する聖雷】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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黄金鉱脈と呼ばれる玄室。
金塊は自身を光源として、部屋全体を明るく輝かせていた。
天井を染め、壁を照らし、床にひしめき散らばっている金銀財宝を煌めかせていた。
その財宝床を踏むながら、歩兵たちは周囲を警戒していた。
その手に銃剣を構え、財宝と主を狙う不届き者がいないか周囲に注意を払っている。
彼らの中心には積み上げられた金塊を玉座として、一人の少女が静かに座っていた。
ロラ・プロスト。
黒駒の人形姫と呼ばれた彼女は、今は金塊の欲望に取り憑かれていた。
我を失っている姫に対し、半人半馬の騎兵は左右に恭しく控え、その命を待っていた。
天を突くような巨大なランスも黄金の輝きに照り返されて、怪しく輝く。
だが彼らの忠誠は変わってはいない。黄金は君の物。
臣は我が身を投げ打って忠を全うするだけだ。
木杖を持った僧兵も、騎士から離れた場所にそれぞれ控え、主君のための賛美歌を高らかに歌っていた。
彼らの声が届いているのかどうか。
小さき少女は黄金に照り返され、その巨塊をうっとりと見つめているだけであった。
「渡さない……この財宝は私だけの物。ここは……私の王国、私の世界」
欲望に囚われた者の末路。
猟兵たちが、その欲を捨てて立ちむかわなければ、彼女が鎮座する場所に居座るだけであろう。
花盛・乙女
試練場などと大層な名前で呼ばれていたから楽しみにしてきてみれば…
元より金欲など無い私でも欲が芽生えるのだから、だんじょんというのは恐ろしい。
欲を絶するには難しいことはいらん。
明鏡止水の境地に至れば…などとは分かっているが我が身はまだ未熟。
欲を散らす他あるまい。
欲を抑える為「怪力」をこめた拳骨で自らの額を殴る。
…痛い!とんでもなく痛い!痛すぎて金の事などどうでもいい!
という腕力で無欲作戦だ。
さて、眼前には丁度八つ当たるにも良い敵もいる。
馬になろうがなんだろうが、この羅刹女の刀の錆びにしてくれる!
…ん?そもそも貴様の征伐が目標だから別に八つ当たりではないな?
大義名分も出来た!大人しく錆びになれい!
祓月・清十郎
ふんふん、見る者を狂わせる宝物でござるか
…つまり、最初から見なければいいのでは?(コペルニクス的転回)
喚び出した傑戸衆達へ目一杯の木天蓼を渡し、戦場全域に煙幕を張ってもらうでござる
…何も見えないでござるね。まぁ、拙者心眼とかそういうの全く無いので普通に身動き取れないでござる。ぶっちゃけ邪魔になるので土鍋被って目立たないよう隠れてるでござる
けれど燻し銀な傑戸衆達は視界が塞がれていても全然余裕でござろう
あとは煙に紛れ忍具忍術で全方位から徹底的に闇討ちでござる
仮に何かの拍子で宝物を見てしまったとしても、彼らはプロの仕事忍
報酬を受け取った以上、眼前の金銀財宝には目もくれず仕事を完遂してくれるでござるよ
エウトティア・ナトゥア
※アドリブ・連携歓迎
ほうほう、キラキラ綺麗じゃのう。
見る者を圧倒する何かがあるのは確かじゃな。
じゃが、山積みはいかんのう。風情がないと思わぬか?
それに故郷でコンコンコンしたら膨大な量の貴金属も入手できるしのう…イマイチ食指が動かぬのじゃ。
のう、人形の姫よ。黄金が欲しいならそんな所にしがみ付いていないで、わしの故郷で思う存分コンコンコンしたらどうじゃ?
と言っても聞きそうにないのう。ちと諌めるとするか。
【巨狼マニトゥ】に【騎乗】し、【野生の勘】で敵の攻撃を見切って金塊を駆け上がるのじゃ。
金塊の天辺で【掌の創造】を発動し、財宝を土塊に変換して操作し敵を埋めてしてくれるわ。
そこで頭を冷やすがよいぞ。
ナミル・タグイール
金ぴか天国にゃ!最高にゃー!
全部ぜんぶナミルのにゃ!誰にも渡さないにゃー!!
(居座る気まんまん猫)
邪魔するやつは全部敵にゃ!金ぴか欲しがってるやつも全員敵デスにゃー!
元からの強欲の【呪詛】に罠も合わさって欲望ましまし
ナミルが独り占めにゃー!
UC発動してパワーアップにゃ!【呪詛】と【怪力】もりもりにゃ!
そのまま欲望と衝動のままに敵をどっかーんと潰してやるにゃー!
ちょこまかうざったいにゃ!当たるまでずっとやるからにゃ!
敵の攻撃なんて無視にゃー!【捨て身】
敵が金ぴかのことを話すたびにイライラムカムカ
ナミルのデスにゃ!あげないにゃ!
欲望アップでどんどんサイズもでっかくなる
…狭いにゃ!痛いにゃ!
シノギ・リンダリンダリンダ
黄金に魅入られる者に黄金は似合いませんよ?
独り占めなど、勿体ない……美しいものは皆にも分け与えるべきでは?
まぁ元より全ての黄金は私のもの。略奪?人聞きの悪い。回収ですよ?
この世界の全ての黄金は自分のものであり、それを誰かに分け与える事も許可できる優しい大海賊。自分の事をそう信じ切っている狂人的な精神力と、「呪詛耐性」「狂気耐性」で黄金の魅力に打ち勝つ
【飽和埋葬】で無法者な死霊たちを召喚し、敵の生み出す駒を数で押す
「敵を盾にする」、「傷口をえぐる」、「恐怖をあたえる」、「蹂躙」する
自分自身も拳で応戦しつつ、相手の心を折るような戦い方をする
黄金はお前だけのものじゃありません。私のものですよ?
アノルルイ・ブラエニオン
黄金への所有欲をどうすれば善いか?
……よし、音楽だ
熱狂的な音楽で物欲を忘れてしまうのだ
狂ったようにヴァイオリンを弾く
時に激しく、時に静かに
表現に集中
物欲からくる葛藤を曲に変えて!
物欲すら克服するそれは敵にとって【恐怖を与える】【楽器演奏】となろう
敵と出会っても弾き続ける
ナイトの突進は【見切り】で回避を試みつつUCで対応する!
ルール「汝、走るべからず!」
最終的には人形姫にもルールを突きつけたい
「汝、黄金を愛するならば、その血肉を黄金に捧げよ!
その身に黄金を深く刺し入れよ!」
リュカ・エンキアンサス
…
マフラー(更夜)の下に、ブローチ(Zwei)を留めて
家族とか友達とかにもらったもの
なくさないようにして
……行こうか
とりあえず場
戦闘になったら灯り木で、距離をとりながら撃って、
周囲に協力できそうな人がいるなら、協力する。援護射撃で人形の糸や少女の手なんかを狙って、確実に追い詰めていければいい
で、黄金なんだけど
…
口に出すまでもないんだけど、そんなものはいらない
マフラーをぎゅっと握りしめる
本当に欲しいものはそんなものじゃないんだ
こんな風に武器で殺して手に入るものは違うんだ
…本当に欲しいものがちゃんとあるから、俺は大丈夫だよ
俺みたいなのには、本当の意味では永遠に手に入らないって、わかっているから
四王天・燦
《貧乏神》2人
眼の色が変わる猟兵…
戦場に入るや欲で過呼吸に
シホの催眠―それ以上に手を握られ頭が冷める。
瞳に映る親友に比べ、黄金の安っぽいこと。
「ちょっと照れ臭い」
手と頬が熱くなるぜ
前衛でアークウィンドの武器受けで応戦。
ナイトの足元にデストラップを投げて搦める
「シホ、少しだけ牽制頼む」
ダッシュで抜けて黄金塊に触れ裏切りにも見える所有宣言。
そして符術[貧乏神降臨]執行。
代価は現在所有権のある黄金全て!
莫大な供物を得た貧乏神様に駒の殲滅を願う。
極貧グラップルをブチ込むぜ
シホと共にアタシはロラを呪詛で機能停止させる
「貧乏神様…この黄金は人の手に余る。持って行くか朽ちさせるかしてよ」
残りも現世から葬るぜ
シホ・エーデルワイス
≪貧乏神≫
2人
アドリブ歓迎
私は根無し草で日々世界中を巡っている身
富を得ても使い道がありません
それに…聖痕の宿命がある以上
何時その時が来ても良い様に日々を生きています
過呼吸の燦と<手をつなぐで瞳を覗き込みつつ
優しさを込めて催眠術で救助活動>により落ち着かせる
燦!私の目を見て!燦の一番大切な物を思い浮かべて!
それはきっと巨万の富では得られないはずです
任せて<時間稼ぎ>は得意です
【華霞】で花弁を黄金が舞っている様に見える<迷彩と残像で誘惑し
燦が目立たない様に援護射撃>で撹乱
攻撃は<第六感と聞き耳で見切りオーラ防御>
雷は聖剣を投げて避雷針の<電撃耐性>
燦の目と声は欲に染まっていない故
所有宣言には動じず
テイラー・フィードラ
私個人としては国を興す資金源として財宝は欲しいものではあるが……しかし、この思考自体が魅力に惹かれつつあるのだろうな。ならば手っ取り早くなくす方が集中できるか。
故郷を滅ぼした竜への殺意を思い起こしながら悪魔召喚の契約詠唱を可能な限り圧縮し召喚。
相手からは姫騎士が呼び出されるのであろうが、グレムリンには無視の指示を。彼奴には財宝に掛けられた呪術の類の解除、並びに破壊活動に集中させる。それにより、私の欲深な思考を抑制させよう。
相手も駒を私や悪魔に向かって動かす事だろう。だが、その数も半数に裂かれるはずだ。その隙を狙う。
フォルティに騎乗し抜剣、財宝の山を蹴り砕かせながら人形共を切り伏せていくぞ。
重苦しい巨大な両扉がゆっくりと開く。
迷宮突破のため、玄室へとなだれこんできた猟兵達が見た物は、まばゆいばかりの黄金であった。
そこかしこに散らばる金銀財宝。
無造作に転がされた貴金属から生えたように、金塊で積み上がったバベルの塔が、天井を貫かんばかりにそびえ立つ。
その頂点に、同じく金で出来た玉座に、少女はまどろみながら座っていた。
おそらくあれが玄室の主なのであろう。
一同は自分の目に入って来た黄金郷、財貨の饗応に心を揺さぶられ始めた。
「金ぴか天国にゃ! 最高にゃー!」
文字通り眼をぎらつかせ、まっさきに動いたのはナミル・タグイールであった。
財宝になにより目がなかった彼女は、この玄室の呪いを色濃く受けてしまっていた。
彼女の身体に刻み込まれた強欲、金欲の呪いが考えることを停止させていた。
「全部ぜんぶナミルのにゃ!誰にも渡さないにゃー!!」
その渇望が、彼女の身体を変貌させる。
筋肉が隆起し骨格が増大する。
ナミルは一匹の魔物へと変貌し、黄金塔へと駆けていった。
不埒な侵入者に対し、控えていた兵士達が迎撃態勢を取った。
銃剣を構え、ナミルに対して一斉に射撃を開始する。
だがそれは、変質したナミルの表皮一枚で止められた。
「にゃはははははーーーーー! どくにゃーーーー!」
彼女は兵士を歯牙にもかけず、黄金の頂点、金塊の玉座へと駆けていくのだった。
「ナミル様、黄金に魅入られる者に黄金は似合いませんよ?」
メリケンサックをはめた手で、鮫型の得物を構えるはシノギ・リンダリンダリンダ。
尻尾の先についた紐を引っ張ると、けたたましい音をたてて鮫の口からチェーンソー刃が飛び出した。
彼女は海賊である。
手下を連れ、船長として略奪を繰り返してきた。
全ての財宝は自分のものだと信じてきた。
では何故シノギは、欲望の狂気に侵されてないのだろうか?
否。
彼女は欲望に支配されていた。
海賊の流儀、船長の誇り。
奪った物は分かち合い、時には己の取り分から部下に与える度量の広さ。
この部屋に入った時、黄金を目にしたとき、それはすでに全て彼女の物なのだ。
障害を排除して、あとは皆で手柄に応じて分け合えば良い。
海賊におえる略奪と蹂躙の狂気が、黄金の狂気をヘッドロックで押さえつけ、タイガースピンで地に落とし、ロメロスペシャルで完全に封じ込める。
「さて、回収といきましょうかね」
シノギの目は、こちらへ向かってくる兵士達へと向けられていた。
「はぁ……はぁ……ぐっ」
さきの二人とは違い、その場にうずくまる四王天・燦。
彼女の息は荒く、そして苦しそうだった。
武器を取ることも出来ず、胸を押さえて悶えていた。
彼女にはあの二人と違って狂気が足りない。
欲望をはねのける、心の強さが足りなかった。
そこへ狂気が押し寄せ、彼女の精神に働きかけ、そそのかしていく。
欲しい。
黄金が欲しい。
仲間を殺してでも、奪い取ってでも。
この部屋の主に成り代わって、全てが欲しい。
「燦?」
親友の異変に、いちはやくシホ・エーデルワイスは気づいた。
そばへ駆け寄るが、燦は自分が来たことにすら気づいてはいない。
もしかして、とシホは顔を上げる。
目に黄金の輝きが映る。
しかし彼女にとってその色は、何の感情も浮かんでこない。
代わりに燦の苦悶の表情が、刻まれた聖痕を疼かせる。
その痕が、シホに己の宿命を思い出させるのであった。
「人々を救う為に必要であれば生贄となる……そんな私に富貴は必要ありません」
犠牲と献身、彼女が望むのはそれだ。
まやかしの輝きとは違う。
苦しさにあえぐ燦の手を取り、もう片方の手で彼女の肩にそっと手をかける。
優しく語りかけ、身体をゆさぶる。
「燦、聞こえますか?」
「ぐ……が……」
白く発光するシホの身体から、手をつたって燦の身体も包み込まれ、淡く光る。
その目が開かれると、それはやはり狂気へと蝕まれていた。
違う。
彼女の眼は違う。
今年の抱負を願いに、賽銭箱で見た彼女の横顔。
燦はこんな眼をしてはいなかった。
「燦! 私の目を見て! 燦の一番大切な物を思い浮かべて! それはきっと巨万の富では得られないはずです」
普段より感情を荒げて叫ぶシホ。手を握る力が、同時に強くなる。
そして二人の身体は、玄室のまばゆきをはね除けるように、白く強く輝くのであった。
「ほうほう、キラキラ綺麗じゃのう。見る者を圧倒する何かがあるのは確かじゃな」
巨狼マニトゥにまたがって、エウトティア・ナトゥアはまばゆい黄金塔を見上げていた。
しばし見つめ、ぼそりと呟く。
「じゃが、山積みはいかんのう。風情がないと思わぬか?」
その問いにマニトゥはひと声吠えてこたえる。
この世界では黄金は貴重であるかもしれないが、彼女の故郷は違った。
コンコンコンと装置を叩けば、あればあるだけタダで手に入るからだ。
ゆえにキマイラフューチャーには金品を争う住人はいない。
享楽を邪魔する怪人が世を乱すだけだ。
満たされた者の余裕。
それがエウトティアの心を確かな物とした。
だが一緒にやってきたアノルルイ・ブラエニオンはそうではなかった。
「美しい……」
じゃらんとリュートをひとつ鳴らし、感嘆の声をあげる。
素晴らしい黄金。その景観をどう表現していいか。
彼にはそれがわからなかった。
そしてその感嘆が裏返り、禍々しさに変容してアノルルイの心を蝕んでいく。
欲しい。
この美しさを独り占めしたい。
リュートを落とし、弓を持って駆逐したい。
そんな欲に駆られ始めていた。
「いかん!」
彼の手から楽器が離れた。
その両腕に担がれるは、新たな武器か?
敵を撃ち、味方をも葬り去る、必殺の弓矢か?
否。
断じて否。
彼が持つべき物は弦楽器。
自らを反省するかのように首筋にバイオリンを打ち据えると、弓を持ってその弦を弾き始めたのだった。
それは時に激しく時に静かに、目の前の黄金にも、迫り来る敵にも、戦う味方にも、等しく目をくれず、ただ黙って演奏し、自分が奏でる音に集中する。
「愚かな欲望よ! 消えて無くなれ! だって私は吟遊詩人なのだから!」
自らを鼓舞するように言い聞かせ、一心不乱に引き続けるアノルルイ。
その姿に、今度はエウトティアが感嘆の声をあげた。
「見事じゃのう」
満たされた者たち、キマイラフューチャーに物欲は無い。
それ故に生み出す者たち、己から何かを作り出せる創作家には敬意を払う。
財宝に心動かされなかったエウトティアの心が、内に秘めた激情を発散させるようなアノルルイの演奏には、心を揺さぶられるのだ。
「コンコンコンでは物は手に入るが、アーティストはそうはいかぬ。では行こうかmニトゥ、偽りの輝きを討ち払いにいくとするかのう」
マニトゥが吠え、敵陣へと駆ける。
エウトティアは弓を構えアノルルイの代わりに、迫ってくる兵士に向かって矢を放つのであった。
黄金の地は激しさを増していく。
敵味方争う戦場で、リュカ・エンキアンサスは深いため息をついた。
何処へ行っても、どの世界に行っても続く、戦い。
今もこうして黄金を前に、魔物と猟兵が争っている。
主義主張は違えども、目の前の者を倒すことで乗り越えようとするのは、敵味方ともに同じなのであろう。
固い物が手に触れる。
どうやら思わずブローチを握りしめていたようだ。
柔らかなマフラーが、手の甲を優しく抱きしめてくれていた。
手の平に収まる感触。それは見ずともわかる。
澄み渡った星空をイメージした装飾。その下に留められた二枚の白い羽。
それはリュカに、勇気を与えてくれる。
無くしたくはない、大切な物を護る勇気を。
目の前の黄金とは違う、柔らかい温かな何かを。
「本当に欲しいものはそんなものじゃないんだ」
ブローチから手を放して、彼は銃器を握る。
それは冷たく硬く、ずっしりとした重みを両手に感じさせてくれた。
「俺みたいなのには、本当の意味では永遠に手に入らないって、わかっているから」
哀しみの色を瞳に浮かべ、リュカは引き金を引く。
その銃口の先で兵士が穿たれる。
今日も、そして明日も明後日も。戦場でリュカは戦うのだ。
「試練場などと大層な名前で呼ばれていたから楽しみにしてきてみれば……」
小首を傾げ花盛・乙女は気落ちした声をだす。
修行の一環になればと今回の探索に手をあげたものの、到着してみればそれは道場とも呼べぬ悪趣味な部屋であった。
こんな所では稽古は出来そうに無いが、それでも敵は討たねばならぬ。
幼きころから鍛錬に打ち込んでいた彼女の半生は、物欲というものから彼女を遠ざけさせ、目の前の黄金の魔力にたやすく心を奪われない誇りを形成したのであった。
そんな彼女ですら、少しばかり心を動かされてしまうのは、黄金の持つ魔性の怖さと言ったところか。
「あれを一つ持ち帰れば鞘の意匠、いや鍔の細工……いっそのこと、新しい打ち刀をこしらえるのも出来そうだな」
いや、いかんと自らに湧き出た邪念を討ち払う。
自分は敵を倒しに来たのだ。黄金を手に入れることではない。
テイラー・フィードラの心にも、邪念が渦巻きはじめていた。
あの財宝を独り占め出来れば王国再建を、故郷を取り戻すことができるかもしれない。
邪念は欲望を、殺意を生み出し膨らませる。
ブツブツと横で呟く花森。
その首筋に剣を向けたいという衝動が、テイラーの身体を奔った。
「無様だな」
自嘲し、剣を抜くテイラー。
内で相争うは亡国の元。王の取る道にあらず。
功臣を処刑し、富を貪るが王の道か?
否。
自分は違う。
それではかのモノと同じではないか。
脳裏にあの日の出来事がよぎる。
己が力を誇示すかのように蹂躙し、暴虐の限りを尽くし、故郷を滅ぼしたドラゴンの姿を。
自分は違う。
「思い出せ、あの日の屈辱を」
両手で剣を握りしめ、怒りに身を投じるテイラー。
彼の心が殺意に染まっていく。
それは欲にかられた者の思いではない。
魔物を討ち払わんと欲する、雪辱の思いだ。
「必要無し! 私は自分の手で成し遂げる!」
馬をかりて疾走する彼のマントがひるがえり、そこから小悪魔共が現れる。
「グレムリンよ、あの黄金を好きにするがいい! 誰の手にも渡らぬよう破壊せよ! 争いの元など、私は要らぬ!」
高潔と殺意に己を浸して敵陣へと突っ込んでいくテイラー。
その姿を見て花森は叫んだ。
「しまった! 先駆けを盗られてしまっではないか」
不明を恥じるように、額に全力で拳を打つ。
痛みが彼女の頭に突き刺さる。
だがそれは当然のこと。
戦場でいくさを忘れる剣士など、嗤われて当然の存在だ。
ぐわんぐわんと揺れて滲みる鈍痛が、彼女に誇りを思い出せてくれた。
見れば、すでに敵兵士達は味方と剣を交えている。
それが視界に映ったとき、花森は黄金のことを忘れ、刀を抜いていた。
「さぁ、どこからでもかかって来るがいい!」
女剣士もまた、戦中へと身を投じたのであった。
「ふんふん、何ともはや物騒な有様でござるな」
祓月・清十郎は土鍋に半身をうずめながら、戦況を注視していた。
敵味方争う黄金の修練場。
そこから我が身を隠し、祓月はそっと策を練る。
そびえ立つ金塊の塔。あれが何らかの魔性を秘めているのは事実であろう。
であれば、たとえ番人を処理出来たとして、待ち受けるは猟兵同士の争いだ。
「何とかせねばならぬでござろうな」
マタタビを囓り己の正気を取り戻しながら、祓月は愚痴る。
そして、ある結論に至ったのだった。
「……つまり、最初から見なければいいのでは?」
大胆な発想。しかしそれは的を射ている。
見えない物は有りもしないも同然だ。やってみる価値はある。
しかし彼には、そのすべを持ってはいない。
「やはり彼らの力を借りるでしかないのでござろうか」
マタタビを噛みちぎり、祓月は指を鳴らした。
ドロロンドロンと煙がおこり、忍装束の者達が現れる。
傑戸衆。
彼の心強き傭兵達だ。
「おお、傑戸衆。お願いがあるでござる。この部屋全域に煙幕を張ってもらうでござる。あの黄金を隠すような強烈な奴をお見舞いして欲しいのでござる。ついでに敵を屠って貰えると嬉しいでござるな」
恭しく多量のマタタビを積み上げながら、祓月は地に這べってお願いする。
が、彼らは腕組みしたまま動かない。
目と目が合う。
が、彼らは腕組みしたまま動かない。
両手を組んで祈る祓月。
が、彼らは腕組みしたまま動かない。
手を開き、サドルバッグをひっくり返す祓月。
そこから追加のマタタビが落ち、山を更に盛り上げた。
無言で頷き、それを徴収する傑戸衆。
あちこちに散らばり、その姿を消していく。
そしてやがて、黄金の灯は煙に包まれ、輝きを失っていった。
「ではでは、よろしく頼むでござるよ」
そして祓月は土鍋を被り、彼もまた闇に潜んでいったのであった。
燦が意識を取り戻した時、そこに見たのはシホの姿であった。
心配そうな彼女の表情。
それを見て燦は黄金の欲に取り憑かれていたことを思い出した。
献身的に語りかける、彼女の言葉も。
遠目に映る金塊の山。
今はそれに何の感情も抱かない。
あれは目の前の親友のように、語りかけてはくれないからだ。
「何だか恥ずかしい所を見せちゃったな」
よいしょっと起き上がり、武器を抜く。
「ちょっと照れ臭い」
背中越しにシホへと語りかける。
後ろ姿に話しかけてくる彼女の声は、それでも優しかった。
「いいえ、気にしないでください。それが私の役割ですから」
役割。宿命。
シホはいつだってそうだ。
振りかえって、燦は頬を描きながら笑う。
「じゃあ、今度シホがピンチの時は、アタシが助けるよ。……だって、友達だもんな!」
はにかむ彼女の目に、もはや凶気は写ってはいない。
宿命など関係ない。
そう言いたげな彼女の表情に、シホもつられて笑う。
「ええ、その時はお願いしますね」
「うし! じゃあ……始めますかねぇ!」
他の猟兵との遅れを取り戻すべく、燦は戦陣へと赴くのであった。
一番乗りはナミルであった。構える斧が小さくみえる。
塔の頂上へといち早く駆け上がった彼女の躯は、すでに来たときよりも倍以上の体躯となっていた。
玉座にはべるは夢うつつの姫君、ロラ・プロスト。
襲来してきた輩から姫を護ろうと、左右に控える騎士が立ち上がる。
半人半馬の彼らは巨大なランスをナミルに突きつけ、カツカツと蹄を鳴らした。
立ち去れ下郎。
彼らの態度からは、そういう素振りが見て取れた。
だがナミルに、無言のコミュニケーションは通じない。
「ナミルが独り占めにゃー!」
下で戦っている者達にも届く、大きな彼女の声。
それはどうやらロラにも届いたようだった。
ゆっくりと玉座から立ち上がり、ナミルを刺すような眼で射貫く。
その眼光には、怒りの色がありありと浮かんでいた。
「貴方も私を、私から奪おうとするの……?」
一歩、二歩、三歩。
片手と片手をゆっくりと頭上に上げながら、小さき姫は侵入者と対峙する。
そして両手を掲げて配下の人形達、ドールズナイトに命を下す。
「みんな、やっちゃって! コイツらを、私の黄金を奪おうとする人達を殺し尽くして!」
少女の手から細く長い糸が各人形へと伸びたような気がした。
騎兵、歩兵、僧兵。
瘧にかかったように彼らの身体が震え、様子を変える。
姫君に仕えし臣民は、君命をまもらんと己が姿を変えていったのであった。
2体の騎士がフワリと浮いて、ナミルに突撃する。
それは突進というよりは雷光。
紫電をまといしランスが、ナミルの皮膚を貫いた。
が、それにも構わず彼女は斧を振るう。
風に煽られる羽のように、優雅に交わして離れた場所に騎兵は着地した。
ランスを捧げ持つその身に、激しき風が鎧となって付き従っていた。
「邪魔するやつは全部敵にゃ!金ぴか欲しがってるやつも全員敵デスにゃー!」
当たらなければ、当たるまでやる。
2つの紫電竜巻に、一つの黒旋風が向かっていった。
「おやおやこれは? 何やら大変なことになってきましたよ?」
群がる兵士達を倒しながら、シノギは戦況が変わったことに気づく。
しかし彼女の口調に動揺は見られない。
周りを支えるは死霊従者たち。その数五十を超える、死してなおシノギに忠を尽くす、勇敢な海賊共だ。
兵士と海賊。
職種は違えども、黄金を求めて戦うなら海賊の方に分が有るような気がするのだ。
寄せてくる兵士たちを押し返すが、彼らの様相が変化していく。
兵士達がピンと糸で引っ張られるように硬直すると、そこからするりと、糸が切れたように脱力する。
再び立ち上がった時、その姿は無骨な軽装兵士から、見目麗しき女騎士へと変貌を遂げた。
一体、また一体と、その姿を変えて羽ばたくのだ。
「我ら、ロナ様のために!」
溢れる魔力で翼を創り、彼女たちは飛んだ。
そして頭上から見下ろし、シノギと海賊たちに銃撃の雨を浴びせ始める。
先ほどのまでの攻勢がマスケット銃なら、今度の攻撃はまるで自動小銃だ。
魔力弾が降り注ぎ、海賊は船長の盾となって庇う。
「死体を。敵の死体を使うのです!」
号令に、海賊達は倒した敵兵を担いで持ち上げる。
死体の壁で銃弾を防ぐならず共。
「ふぅむ、頭上からの攻撃って卑怯くさくないですか」
さてはてどうしたものか。
隙間から攻勢の切れ目をうかがっていると、別の銃弾が姫兵を撃ち落とす。
それは敵の銃撃に劣らぬ、激しき応戦。
空にむかって放つは、リュカの発砲。
夜空に浮かぶ星々をつかみ取るような、正確無比の射撃。
それは閃光のように動く姫兵の動きを捕らえ、撃ち落としていく。
空から、地上から。
姫兵と歩兵が、一人の青年目がけて殺到する。
彼の射撃を止めようと。
「……星よ、力を、祈りを砕け」
淡々と、リュカは銃を構え引き金を引いた。
流星群のようにそれは銃口から溢れ、目に見える全てを撃ち砕く。
がしゃん。がしゃん。
左右を一瞥するリュカ。
彼の周りに立つのは、死体を持ち上げる海賊。
彼が狙撃しやすいようにと、バリケードとなって敵からまもろうとしているのだ。
遠く、敵と応戦しているシノギと海賊達の姿が見える。
「加勢しますよー」
顔の両側でピースを作り、無表情に喋るシノギ。
彼女の顔は、リュカの顔を真似た物であったのだろうか。
何でもいい。
自分は戦うだけだ。
リュカはバリケードの間から銃を構え、天を撃つ。
そしてまた一体、飛行する敵兵が地に墜ちた。
「さあさあ、みなさん。反撃といきましょうか」
部下達に発破をかけ、シノギもまたチェーンソーを振るうのであった。
「どうした化け物共、私はここにいるぞ!」
白馬に跨がって戦場を駆り、テイラーは兵士達を斬り伏せる。
頭上からの魔弾、それを手綱を寄せて身をよじりかわす。
みれば無数の兵士、塔を飛び交う飛行兵。
多数の敵が彼を狙う。
テイラーの予想通りの展開であった。
「いいぞ、食らいくがいい!」
わざと塔の位置から離れるように動く。
遠目にはグレムリンが金塊の塔に羽ばたき群がり、解呪を試している。
煙幕によって更にみえづらく、この乱戦では注意を払いにくいであろう。
テイラーは魔力の源はあの金塊にあると見ていた。
あれが効果を上げれば何らかの益を上げるに違いない。
己に敵が集まるほど、味方にとって有利になるだろう。
そう信じ、あえて矢面に立とうと彼は声を張り上げた。
「どうした兵卒! 王族の手柄首よ、獲って主へ献上する忠勇の輩はおらんのか!」
頭上高くからその声に誘われたのか、姫兵が魔剣を携えて突進してしてくる。
「ならばその首、切り落としてくれる!」
見上げるテイラーは、口端をあげて両腕を構えた。
白馬は意気を組み、敵の正面へと身体をかえ駆け出した。
剣刃一閃。
剣と剣が交差し、そして離れていく。
テイラーの頬から血が滴り落ちた。
翼ごと斬られた姫兵は、勢いを弱めず地に叩きつけられはね返り、その骸を晒した。
頬の血を無造作に拭い、テイラーは他の者を挑発するように叫んだ。
「どうした、私はここにいるぞ」
愛馬フォルティが、煽るように床の財貨を蹴り上げ、敵に放つ。
そして誘われるように敵兵が、またやってくるのであった。
「ふむ、颯爽と馬を駆るというのは、なかなか凜々しい勇姿じゃのう」
エウトティアの声に、マニトゥが抗議するかのように吠えた。
彼女はポンポンと狼の頭を撫で、冗談じゃと笑う。
その目はやはり、黄金の塔にむけられていた。
今戦っているのは敵の手駒であって、敵本人ではない。
そして敵が鎮座するのもあの黄金の塔。
「こんなまやかしにしがみついてないで、いっちょわしの故郷を進めるべきかのう」
あの黄金をなんとかすれば、敵の心に動揺を埋めるかもしれない。
塔へと進もうとするエウトティアに、雷光が迫る。
マニトゥが跳ねてかわし、その方向へとうなり声を上げた。
それは青白く輝く炎に包まれた僧兵。
杖を振りかぶると、雷がまたこちらへと襲ってきた。
「ポーンにナイト、お次はビショップか。はてさて、あそこに鎮座するのはクイーンかキングかのう?」
矢継ぎ早に飛んでくる聖雷を、疾風のように避ける巨狼の背で、エウトティアは弓をつがえて僧兵へと射かける。
僧兵が両腕で円を描くと、光輪が現れ矢束はそれに阻まれた。
「流石はビショップ、攻守に優れておるのう」
ならば次の矢を、と構えるエウトティア。
彼女を狙おうと僧兵が杖を振り上げようとしたとき、四方から飛んでくるクナイが、聖雷を光輪へと変えさせ、攻撃を止めさえた。
「お主らは」
現れた集団に、エウトティアは問いかける。
全身黒。忍装束に身を包んだケットシー達。
そう、傑戸衆であった。
「我が命我が物と思わず、忍務如何様にて果たすべし、木天蓼は日の光月の光、偉大な香味にまみれて死す定め、我らその名も傑戸衆!」
見栄を切り、一人を残して後が散る。
姿を残した一人が、前を見つめたままエウトティアに話しかける。
「祓月殿との約定、敵を屠るという忍務により其方に助太刀致す。ここは我らにお任せを」
そう言い残し、足下へとからくり玉を叩きつけるケットシー。
玉からは煙幕が激しく起こり、エウトティアもろとも灰煙へと身を隠し包んだ。
暗幕の先で、金属音と雷撃の音が聞こえ始める。
「加勢とはありがたい。マニトゥ、これを生かして一気に駆け抜けるのじゃ」
マニトゥがひと声吠える。
巫女と巨狼の姿は、黄金塔の方へと消えていった。
空飛ぶ騎兵二人による連携攻撃。
ナミルはそれを受けながら、当たらぬ斧をブンブンと振り回していた。
「ちょこまかうざったいにゃ! 当たるまでずっとやるからにゃ!」
目の前に黄金を目にしながら、それを手に入れられないでいる。
その事実にナミルは激昂し、昂ぶりに合わせて筋骨が更に増大していた。
そのため相手の攻撃は致命傷にはなっていないのだが、相手にも致命傷を与えられずにいた。
当たれば一撃粉砕の彼女の斧だが、音速で動く敵の身体に当てるのは難しい。
互いの隙を無くすように、つかず離れずの二体の連携。
心は頑丈でいるが、歴戦の猟兵であるナミルにも、疲れの影が見え始めていた。
玉座に座るロラは動かない。
頭に血が上っているナミルが彼女を見ればすぐにわかったであろう。
その肢体に、ヒビが入り初めているのを。
だがナミルが気づくことは無かった。
闖入者が金塊を駆け上がり、双方の一手を相手にしたからである。
「二体一とは卑怯千万……この花森 乙女が相手だ!」
額に血を滲ませ、花森が刀を抜いて躍りかかる。
騎兵が分断され、一体一が二組出来上がる。
仲間の乱入に、ナミルは冷静さを少し取り戻すことが出来た。
「おお! かんしゃデスにゃ! これで相手ぶっころでお宝ゲットですにゃ!」
ぶんぶんと勢いよく斧を回すナミル。
おそらく感謝をあらわすために手をふっているのだろうが、それは小旋風を巻き起こし、大気を震わせるに他ならない。
「あいにくと、財貨を得るに値しない器なのでな。遠慮しておこう」
自嘲気味に笑い、刀を敵へとむける花森。
額をつるりとなで上げ、その笑みはすぐに不敵さへと変わる。
「それに……今の私はむしゃくしゃしているのでな。まあ、たんなる八つ当たりなのだが、そもそも貴様の征伐が目標だから別に八つ当たりではないな? 大人しく錆びになれい!」
勢いよく踏み込み、上段斬りを敢行する花森。
受けるのを避けて上空へと逃げる敵の背に、カマイタチがその装甲を露わにした。
「おっと、忘れちゃ困るな。アタシも黄金に要があるんでね」
風が唸る短剣をかまえ、燦も姿を現した。
姫君は動かず、玉座に鎮座したままだ。
数の優位。
そして質においても猟兵は勝っている。
「おおう? ぞくぞくと現れたにゃ! でもでもお宝はナミルのものデスにゃー!」
ナミルの明るい声。
「おっと渡さないぜ? 何しろアレをアタシのものにしなければいけないんだからな」
「まあまあ両名とも。とりあえず話は敵を倒してからで良いだろう」
三者三様、それぞれの得物を手に、猟兵は騎兵へと襲いかかる。
ロナはその戦闘を、ただ玉座からみつめているばかりであった。
「死になさい……私の黄金を奪うものは……みんなみんな死ねばいい……」
猟兵達は戦う。己が武器を手に取って。
だが独りアノルルイは弾き続ける。
楽器の調べを武器にして。
黄金への欲望、葛藤。
それらを頭に秘め、合戦の怒号をBGMに彼は弾く。
争いの虚しさを、音楽の美しさで塗り替えようと、ただ一心不乱に。
彼の願いは歌となって、曲と一緒に部屋中にやがて響くのだ。
刃が交える戦場に、彼はただ歌う。
己の理念がままに。
サンライト! ゴールデンライト!
ウィー アー マッドネス ファッキングタイム!
煌めく黄金 輝くお姫様
見つめる彼女に僕の心もお熱さ
ああ 抱きしめたい でも 壊れてしまうかもしれない
手に入れたい でも出来ない
この思いをどうすればいいの?
キラキラ輝く 美しい君よ
手を伸ばしても 他の奴らが邪魔するのさ
ああ ああ あーあー もどかしい!
サンライト! ゴールデンライト!
ウィー アー マッドネス ファッキングタイム!
スリーピングプリンセス コールミー ラブユー!
バット バット ジャスト キルミー?
ホワイ? ドゥーイング? ファッキングタイム!
ゲット ザ トレジャーゴールド
レッツゴー エルドラド レッツゴー フューチャー
アアー! アアー! アーアー!
WHOOOOOOO!!!
ブレイジングハート! ドントタッチ!
アイラブ ゴールデン!
ウォンチュー! オール ユー!
熱情の律動は高らかに響き、天辺へと。まどろむ姫君への耳にも届く。
見よ、眠り姫は目覚めた。
それは彼女にとって、耳障りな雑音に聞こえたのだ。
「……あの痴れ者を。曲を弾くのを止めさせなさい」
静かに片手を上げる。
そのか細い呟きは、下で戦う兵士の心に届いた。
複数の姫兵達が、エルフの詩人の元へとむかう。
側面から激しい銃弾が放たれ、彼女たちは穿たれて地に墜ちる。
リュカは一瞥しただけで、銃口を他の標的へとむける。
自分が撃ち、敵が倒れた。ただそれだけだ。
そしてまだまだ他に敵はいる。
弾をこめ直し、彼はすぐに次の標的へとその手腕を披露するのだ。
姫兵の背後に、細く長い糸が見え隠れする
兵士の動きは速い。
だが操られる先の糸に、そのような動きは無い。
「止まって見える」
まるで星のように。
引き金を引くと、また姫兵が一体地に墜ちた。
銃を放てば誰かが死ぬ。それは当然のことだ。
海賊達のおかげで敵からは距離を置けている。
ならば、外せる訳がない。
リュカは淡々と、空飛ぶ兵士にむかって引き金をひく。
「さてさて、大分わかってきましたでしょうかね」
シノギは海賊共に指示をしながら、自分も前線に立っていた。
頭上からくる銃弾がなければ、兵士達など相手をするのに不足はない。
なにしろ駒の数ではこちらの方が優位であるからだ。
「戦中にての弾き語り。いいですよ、いいですよ、私そういうの嫌いではありません」
方陣を組んでアノルルイの方へと。
彼を護衛するようにむかう。
マイクではなく、チェーンソーを持って、迎え来る敵の荒波に独り立つ。
「争い、そしてウォークライ。いいですね、だいぶ海賊らしくなってきたんじゃないですか」
海賊が曲刀を振るう。それはペンライトのように光り輝き敵の首を跳ね飛ばした。
深々と剣を突き刺し捻ると、船長の元へと押し出した。
その哀れな兵士にむかって、得物を振り下ろすシノギ。
敵はバラバラになった。
敵を屠る度に、海賊たちの士気が高揚していく。
アノルルイの曲にあわせて、くちずさみはじめる。
兵士の首を敵陣に投げつけ、シノギはうそぶく。
「黄金はお前らだけのものじゃありません。私のものですよ? さあさあかかってきなさい」
「あぐっ……」
ロナに苦悶が浮かんだ。
片腕に深く亀裂が入りはじめ、手の甲にはまるで銃創のような傷痕が穿たれ、破片がパラパラと膝元に落ちた。
だが彼女は動かない。玉座を、王国から逃げない。
「……ビショップ」
もう片方の手を上げ、下知をくだす。
僧兵は更に青白く輝き、杖を振るう。
床が青白く輝き、魔方陣が展開される。
その方陣へと密集し、陣形を組み直す兵士達。
破損した部分が蒼く光り、修復されていく。
僧兵二人による防御円によって、陣形は立て直すかのように思われた。
その密集陣形に上から瓦礫が落下し、敵を押しつぶした。
塔の中腹あたりで、エウトティアがその惨状を見下ろしていた。
周りにはグレムリンが飛び交っていた。
彼女が触れた部分は大きく欠け、塔の自立を妨げるまでに破損していた。
「そこで頭を冷やすがよいぞ」
解呪に成功した金塊の山。
エウトティアはそれに己の力を込め、ただの土塊にと変えたのであった。
塔から転がり落ちたその巨塊は、集まった敵をまとめて片付ける結果を生んだ。
それは同時に、黄金の塔を傾かせる結果をも生む。
塔は崩壊し、地へと崩れ落ちた。
二体の騎兵は左右から玉座を抱え、優雅に着地する。
わなわなと震えるロナの片腕にも、やはり亀裂が入り始めていた。
ナミル、花森の両名も、無事に着地し、騎兵を見据える。
対峙する場に燦の姿は見えない。
彼女はシホのそばによって、何事かを囁いていた。
「……だからシホ、少しだけ牽制頼む」
その言葉にシホは頷いた。
そして燦もロナの元へとむかう。
決着をつけるためにと。
地へと降り立った姫君に、突撃する騎兵が一人。
「貰ったぞ!」
テイラーが白馬を駆ってやってきたのだった。
姫の盾になろうと人形騎兵がその行く手に立つ。
ランスを構え、同じく突撃しようと。
そしてテイラーの元へと進撃する敵の耳に、詩人の声が響いた。
「汝、走るべからず!」
突撃を予知していたかのようなアノルルイの声が、バイオリンの一調べとともに騎兵の動きを鷲掴む。
見えない壁にぶちあたったかのようにもんどり打った騎兵の胸に、深々とテイラーの剣が突き刺さった。
「や~~~~~~~~~っと! 捕まえたにゃーーーーー!」
今までの鬱憤を晴らすべく、ナミルが勢いよく斧をフルスイングし、そこへ一撃を加えた。
騎兵の身体はその威力に耐えられず、文字通り原子の塵へと四散した。
ならば、ともう一体の騎兵がかけようとする。
きらきらと輝く鱗粉がその周りを覆った。
蛍? いや違う。
それは黄金の輝きであった。
キラキラと輝く、黄金の花弁。
それ自体に攻撃の意志はない。
だが、敵の足を止めるにはそれで充分だった。
幻惑の輝きから、燦が踊りかかる。
咄嗟にランスで受け止める騎兵。
刺し殺そうと槍を突き出すが、燦は後ろに飛んでそれをかわす。
追いかけようと前へと出た騎兵の脚を、鋼糸が引っ張った。
攻撃は囮。罠を掴ませないための、上段攻撃。
「はあっ!」
ワイヤートラップにてつんのめった人形騎兵の腹を、花森の裏拳が手荒い歓迎で迎えた。
くの字に折れ曲がり、宙へと吹っ飛ばされる敵騎兵。
着地する前に花森の刀が、その介錯を務めたのだった。
猟兵達が玉座の元へと集まる。
床に散らばる金銀財宝、崩れ落ちた金塊、その破片の数々。
それに横たわるは多くの人形兵士達の亡骸。
一人、また一人と、戦場を生き延びた猟兵達が玉座の元へと集まってくる。
玉座に座るロナは動かない。
ただ恨みがましい眼を猟兵にむけて、ブツブツと呟くだけだ。
「のう、人形の姫よ。黄金が欲しいならそんな所にしがみ付いていないで、わしの故郷で思う存分コンコンコンしたらどうじゃ?」
エウトティアが姫に問いかける。
しかしロナは玉座にしがみついたままだ。
「渡さない……黄金は、誰にも渡さない……」
「ふむ、弱ったのう」
オブリビオンを倒すのが猟兵の使命ではあるが、こうも無抵抗だと流石に気が引ける。
ならば私がやろう。
そう言いかけてテイラーが一歩足を進める。
同時にリュカが歩を進めるのを確認した。
互いに顔を見つけ、お互い一歩足を引く。
ナミルとシノギは何も言わないでいた。
その目はちらちらと、崩壊した黄金山に向けられている。
「黄金の魅力、か。年頃の娘にとって着飾るのはまた魅力。まったくだんじょんというのは恐ろしい」
花森が嘆息する。修行に明け暮れていなかったら、自分もどうなっていただろうか。
「お姫様は夢を抱いて眠りにつく。英雄の詩にふさわしい結末だろう」
ヴァイオリンを鳴らすアノルルイの響きはもの悲しい。
「汝、黄金を愛するならば、その血肉を黄金に捧げよ! その身に黄金を深く刺し入れよ!」
その調べが鎮魂曲へと調べを変える。
シホが天に向かって銃声を放った。
その銃声は花弁を降らし、小さき姫君の周りにも舞い降りる。
それはキラキラと漂い、幻想的な黄金の色彩を輝かせる。
ロナの眼に光が宿った。
彼女の眼に写るのは、キラキラ光る幻想郷。
全てが黄金に輝くエルドラド、自分の理想郷であった。
「黄金……私の黄金……」
ロナがゆっくりと立ち上がる。
肢体は軋みを上げてギクシャクとその手足を動かした。
ヒビはすでに亀裂と化し、指先が割れて粉となって崩れてく。
王国を護るために数多くの人形を動かしたロナの身体は、その負荷に耐えきれず崩壊を起こしてしまっていた。
ふわりふわりと舞う黄金を求めて、ロナは一歩、また一歩と夢遊病のように脚を動かした。
その度に身体のいずれかの箇所が崩れ、無残な姿を晒していく。
主を失った玉座に、燦がそっと手をかける。
財宝は嫌いじゃない。だが黄金は人を狂わす。
「貧乏神様……この黄金は人の手に余る。持って行くか朽ちさせるかしてよ」
燦の願いを神は聞き届け、黄金を所有できることの嬉しさに半狂乱の笑い声を上げる。
そして願い通りに、黄金で出来た玉座を奪い、虚空へと消えていった。
ロナが黄金をかき集めようと両腕を開いた。
しかしそれはむなしく虚空を掴み、胸を押さえるだけであった。
ぷっつりと糸が切れたように、ロナは前のめりに倒れ落ちた。
その亡骸は、満足そうな笑みであった。
猟兵達は、番人が待ち受ける黄金鉱脈を、見事突破したのである。
●ファーストダンジョン・黄金鉱脈攻略 それから~
崩れ落ちた黄金の塔。
その中から財宝を手に入れようとナミルは瓦礫を押しのけ漁っていた。
「お、これはなかなか。お宝ゲットデスにゃー!」
目に付いた貴金属を袋へと押し込み、他に何かないか探そうとする。
そしてシノギも、召喚した海賊達を駆使し、人海戦術でめぼしい物を回収していたのだった。
「あ、ずるい! ナミルにもそれよこすデスにゃー!」
「いえいえ、ナミルさんの邪魔はしてませんよ? 見つけた物はその人の物、だからこれは私の物で、それはナミルさんの物なのですよ」
海賊達が集めてきた回収物を広げ、値打ちがあるかどうか検分するシノギ。
喧々囂々と非難の声が辺りにとどろく。
「いいんですか?」
シホが横で身体を休めている燦に尋ねた。
彼女の眼に、物欲に取り憑かれた色はない。
やれやれと言った感じで二人のやりとりを見つめていた。
「別にいいんじゃない? アタシのじゃないし、所有物は貧乏神が全部持っていっちゃたしね」
あの瓦礫からは欲を駆り立てる何かは感じられない。
多少拝借しても、この先影響があるとは思えなかった。
疲れたと、ばかりに深呼吸する燦は安らかだ。
ありがとう、と燦はシホに礼を述べる。
「アタシ一人じゃ、どうなってたかわからなかったよ。シホがいてすごく助かった」
「いいんですよ」
それが私の宿命、といいかけるシホの手に、燦はそっと手をかける。
「やっぱり持つべきものは親友だよ。黄金とかじゃなくてさ」
眼を瞑って微笑む彼女に、シホはそうですねと笑うのだ。
「今回は自分を見直す良い鍛錬となった」
花森はその身を休めて、刃こぼれが無いか確かめている。
連戦続きでかなりの疲労を与えている。
肝心の要所で折れてしまってはたまらない。
自分の分身を労り、そっと鞘に納める。
「鍛錬とはの。剣士というのは気難しいのう」
瓦礫跡を見つめながらエウトティアは考える。
黄金の魔力。
この階層にはそれが待ち受けていた。
その持てなしを跳ね返したのは、猟兵達の心。
それぞれの心である。
まあ中には眩んだ者がいたかもしれないが、それは些細なこと。
全員生きたことに感謝しよう。
「いやー大変ないくさでござったな」
疲れた疲れたと、座り伸びをする祓月。
きょとんとした目でみつめられ狼狽える。
「ど、どうしたでござるか?」
「はて……忍び装束はどちらに?」
「お主、もしかしてこそこそ隠れてはおらんだか?」
「酷いでござる! 傭兵を雇うのもすべでござろうよ! 手痛い出費、赤字でござるよ!」
張り上げる祓月に冗談冗談と二人が笑った。
床が剥がれて露出した土床。
それを掘り起こし、人形の破片を埋めてランスを墓標とする。
その持ち手に古いアミュレットをかけて、テイラーは黙祷を捧げた。
「優しいんですね」
背にリュカが語りかける。
違う、とテイラーは心の中で答えた。
これは自戒だ。
自らの王国という幻想に固執し、臣下を破滅に導いた亡国の王。
我が身を振り返り、自分はそうはならぬと、テイラーは誓うのだ。
リュカは墓標に捧げてあるアミュレットを見つめる。
ロラ・プロストが胸を押さえるに倒れた最後。
奇しくもその手に握られていたのは、胸より下げていたアミュレットだった。
彼女とあれに、どんな因縁があったのか自分は知らない。
彼女が欲しかったのは黄金だったのだろうか。
それとも別の、何かであったろうか。
本当に欲しかった物。
リュカはマフラーをほどいて、大きくため息をつく。
その襟元にブローチが輝く。
遠く、猟兵達の喧噪がここまで聞こえる。
彼女は目が眩んで見えなかったのかもしれない。
それぞれ思い思いに身体を休めている猟兵の耳に、詩人の調べが聞こえてくる。
アノルルイは激戦をくぐり抜けた英雄達を称えようと、戦いの時とは違った演目を弾いていた。
それは玄室全域に静かに響き、ある種の感傷を起こすのに成功していた。
迷宮の探索はまだまだ続く。
なにしろ猟兵達は潜り始めたばかりだからだ。
この深く、果てしないファーストダンジョンの地を。
大成功
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