アルダワ魔王戦争1-B〜相対するは三位一体大魔王
●三位一体、第一形態
そこかしこに奇妙な機械が置かれたその部屋は、研究室と呼ぶには巨大だった。だが、中央に座す主の巨躯を見れば部屋の広さも頷けようか。
「リョウヘイガ、キタ! リョウヘイガ、キタ!」
「いよいよですな、『上の頭』殿。『腹の口』殿もやる気に溢れているようで何より。」
「おではらへった おではらへった。」
蒸気科学の研究設備である機械から噴き出す蒸気の中、上機嫌に会話をするのは一つの影。『上の頭』『真ん中の人』『腹の口』の三つの部位それぞれが言葉を発し、話しているのだ。
「再び戦場に立つのも大魔王なればこそ。吾輩も気力十分ですぞ。」
「キアイジュウブン! ガンバル!」
「おではらへった おではらへった。」
ガシャリと歪な巨体が周囲の機械を押しのけて立つ。この程度の施設、損壊は気にしないという事か。もうもうと上がる蒸気の中、大魔王第一形態『アウルム・アンティーカ』は高らかに声をあげた。
「さあ、おふたりともいきますぞ! いざ出陣!」
●グリモアベースにて
「皆さん、ダンジョンアタックお疲れ様です。探索のかいあって大魔王の居る区画が明らかになりました。」
アルトリンデ・エーデルシュタインが聖典のグリモアを閉じて呼びかける。予知に現れたのは第一形態だがそれでも最奥に居る大魔王と戦うには必要な事。
「該当区画は蒸気科学の研究施設のようで、あちこちに用途不明の蒸気機械が存在します。足場に問題はありませんが、障害物は多いです。」
そして機械からは蒸気が噴き出しており、場所によっては視界が遮られるほど立ち込めているという。場所を選べば視界の開けた所で戦う事も出来るだろうし、逆に機械や蒸気を利用して戦うのも良いだろう。
「大魔王第一形態は三つの顔を持っており、近接担当の『腹の口』、戦術判断と機械兵器担当の『真ん中の人』、魔導楽器群の演奏担当の『上の顔』が居ます。」
別に存在する訳ではなく、あくまでそれら三つ纏めて大魔王第一形態である。分離する事はないが、思考や認識はそれぞれ行える。その上で連携もしっかりと取れている為、無策で突っ込んでは苦戦しかねない。
「大魔王の認識能力、反応速度も通常のオブリビオンとは比べ物になりません。まず確実に先制攻撃をされるでしょう。」
その為にもいかにして大魔王のユーベルコードを凌いで反撃するかが肝となる。下手に受け損なえば、そのまま押し切られる可能性も高いだろう。
「ダンジョンアタックも序盤、大魔王の第一形態ですが、強敵です。ですが皆さんならば必ず勝てると信じています。ご武運をお祈りいたします。」
そう言葉を括り、アルトリンデは猟兵たちを送り出すのだった。
こげとら
しばらくぶりです、こげとらです。
このシナリオは一章完結の戦争シナリオとなります。敵は大魔王第一形態、難易度は『やや難』です。
またこのシナリオでは下記の特別なプレイングボーナスがあります。
●プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
(敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
戦場は研究施設の中で、あちこちに大型の機械があります。その機械から噴出する蒸気で部屋のあちこちで視界が悪い場所ができています。大魔王第一形態の内、『腹の口』は視界が悪くてもほとんど影響ありません。『上の顔』『真ん中の人』は視界の影響は受けますが、魔導砲や魔導楽器群の攻撃は全周囲に影響を与える為に視界に関わらず当てられます。
周囲の蒸気機械は頑丈ではなく、攻撃一発でだいたい壊れます。その為、ただ機械の影に隠れる程度では先制攻撃は防げません。その他にも何かあれば活用できるかもしれませんが。また、機械は壊れた際に多くの蒸気を噴出する事もあります。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております!
第1章 ボス戦
『大魔王第一形態『アウルム・アンティーカ』』
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POW : 真紅崩天閃光撃
【突撃し、『腹の口』が放つ真紅の光線】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : 黄金殲滅魔導重砲
【『真ん中の人』の背部に装着された魔導砲】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 絶対奪命皇狂曲
【『上の頭』が角を指揮棒のように振るう状態】に変身し、武器「【聞く者の正気を奪う全身の魔導楽器群の音色】」の威力増強と、【黄金の竜翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
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大神・零児
本来なら戦闘で耳を塞ぐべきじゃねぇんだが
魔導楽器群の音色はマルチギアイヤフォンの集音機能をオフに、ノイズキャンセラーオン
両耳に付けて外部の音をシャットアウトする事と狂気耐性で対処
マルチギアとC-BAの機能をリンクさせフル活用、第六感、野性の勘も使い、戦闘知識、世界知識からも情報を引き出し敵の動きのパターンや思惑等の情報収集をし攻撃タイミングをはかる
飛翔するなら体当たりも警戒し敵を常に視覚かマルチギアやC-BAの各種センサーで捕捉し続け、見切りで繰り出される攻撃を回避
なるべくおびき寄せ、早業のフェイントで敵が体制を少しでも崩すように見切りで回避
体制を崩したらUCで多対一にしてボコる
アドリブ共闘可
金色の巨体が周囲の機械をなぎ倒しながら向きを変える。その正面には一人の猟兵の姿が現れていた。大神・零児の姿を見るやいなや、アウルム・アンティーカの『真ん中の人』が『上の頭』に指示を飛ばす。
「来ましたぞ、『上の頭』殿! 手加減も様子見も不要!」
「リョウヘイ、キタ! ゼンリョク、ゼンリョク!」
『上の頭』がその両側にある角をまるで指揮者のように振るう。鍵盤が独りでに踊るように弾かれ、奏でるは【絶対奪命皇狂曲】の狂おしき旋律。だが、その時には零児もまた行動に移っていた。
「本来なら戦闘で耳を塞ぐべきじゃねぇんだが。」
零児が耳に着けているマルチギアイヤホンの集音機能をオフにし、さらにノイズキャンセラーをオンにする。両耳をイヤホンで完全にふさいだ上での行動は、吹き荒れる狂気の旋律を耳に入れる事を防いでいた。音が直に脳を揺さぶられるのでなければ零児の狂気への耐性でも耐える事は出来そうか。
「キイテナイ! キイテナイ!」
「イヤホンで耳を塞いで聞いてない、と……え、曲が効いていないのですかな?」
黄金の竜翼を羽ばたかせて飛び上がったアウルム・アンティーカは言葉を交わして状況を把握していた。その間にも零児はマルチギアと獣型機械獣C-BAの機能をリンクさせて相手の動きを観察、得られた情報をデータと統合して攻撃のタイミングを計っていた。
持てる知識から得たデータに俺の第六感と野生の勘。それを敵の動き、会話から読み取れる思惑に当てはめれば――。
蒸気の合間から見える黄金の巨体。曲が効かないとなればアウルム・アンティーカがとる行動は。
「ならば勇壮なる曲に合わせて、いざ突撃!」
「おではらへった おではらへった。」
その質量、速度をのせた突撃。零児の視界だけでなくマルチギアやC-BAの各種センサーも使って情報を集め、敵を警戒していた零児は突撃を受ける直前に僅か体を揺らして回避した。フェイントを使った動きに速度をのせた体当たりは追随できずに床にぶち当たる。
「生きては帰さん。」
その床に広がるは零児の放つ【悪夢顕現「結界崩壊」(ビャウォヴィエジャノモリノカタストロフ)】の万色の稲妻と詠唱銀の雨。アウルム・アンティーカは打ち据えられながらも零児を叩き伏せんと立ち上がろうとする。
「小癪な、ですがこの程度……」
「マワリニ、ナニカイル!」
降りしきる雨の中、万色の稲妻を取り込み床から無数の抗体ゴーストが立ち上がる。手に手に持った武装をアウルム・アンティーカに叩きつけた。体勢が崩れた今、再び舞い上がらせるものか。零児は抗体ゴーストの群れと共に大魔王を斬りつけてゆく。その雨が終わる頃、さしもの大魔王と言えども無視する事の出来ない傷が、その身体に無数に刻まれていた。
成功
🔵🔵🔴
イデアール・モラクス
まずは第一形態という訳か、良いだろう…全力の小手調べだ!
・先制対策
『高速詠唱』の『全力魔法』で自らの身体に【音を完全に遮断する代わりに魔力索敵能力を向上させる魔法を自身に付与】し、同時に魔導ビットのビーム『乱れ撃ち』で周囲の機械を破壊して蒸気を噴出させ、視界を塞ぎ音を阻害する。
・攻撃
UC【魔剣の女帝】行使
真の姿となり魔剣を無尽蔵に召喚し『一斉発射』で雨霰と射出、圧倒的弾幕の『範囲攻撃』と成して『制圧射撃』をかけ『蹂躙』
「私から逃れられはせぬ」
そして高速飛翔の『空中戦』で斬り込み、敵の迎撃は『属性攻撃』で炎を纏わせた魔剣ドミナンスで斬り払い『武器受け』しながら『薙ぎ払い』『焼却』。
※アドリブ歓迎
雨が止む。再びもうもうと蒸気が立ち込める中、アウルム・アンティーカの『上の頭』が人影を捉えた。
「ダレカクル! ダレカキタ!」
ぐるりと大魔王の三つの顔が向き、二対の瞳が来訪者を視る。煙る蒸気の奥から現れたのはイデアール・モラクス。
「まずは第一形態という訳か、良いだろう……全力の小手調べだ!」
イデアールが術式を全身に巡らせる間にもアウルム・アンティーカ、その『上の頭』は再び角を指揮棒のように振り、全身の魔導楽器群を鳴り響かせた。イデアールが全力を籠め、高速で構築した術式がその身を包むのと【絶対奪命皇狂曲】の狂奏はほぼ同時。イデアールの行動から次の手を打たんとする『真ん中の人』の視線を爆発的に広がった蒸気が妨げた。
「なるほどなるほど。蒸気機械を壊して蒸気を噴き出させて目くらまし、ですか。」
声と共にアウルム・アンティーカの巨体が動く気配がする。機械を破壊するためにビームを撃った魔導ビットを戻し、イデアールが蒸気の向こうに大魔王の姿を見る。今やその身を覆う術式により音は完全に遮断されている。その代わりに魔力索敵能力を向上させる魔法を纏い、イデアールは【魔剣の女帝(ソード・エンプレス)】により真の姿を解放した。次は、こちらから攻める番だ。
「さあ、滾らせてもらおうか!」
蒸気を裂き、イデアールに召喚されし無数の魔剣がアウルム・アンティーカへと奔る。間断なく雨霰と放たれる魔剣はまさに無尽蔵とも言うべきか。魔剣の雨を避けるべく、アウルム・アンティーカは黄金の翼で舞い上がった。
「むう、これは厄介な。『腹の口』殿、頼めますかな?」
「おではらへった おではらへった。」
大魔王の四肢が唸り、飛び来る魔剣を叩き落す。それでも尚、幾本も魔剣が突き立つが致命傷には程遠い。だが本命は魔剣の中を縫うように、自在に飛び回る大魔王に向かって飛び込んできた。
「私から逃れられはせぬ。」
魔剣ドミナンスを振い斬り込んできたイデアールをアウルム・アンティーカの尾が阻む。打ち据える大質量の尾撃をイデアールは受け流し、その流れに滑らせるように魔剣を大魔王の身体に叩き込んだ。魔剣に纏わせた炎が弾ける。胴体の装甲を吹き飛ばされながらアウルム・アンティーカが床に叩き落された。四方八方から魔剣の雨が飛び貫く中、アウルム・アンティーカの巨躯がまるで呻くように軋む。さらに上から勢いをのせて斬りかかったイデアールの魔剣が一閃され、防がんとした大魔王の腕を弾き飛ばしてその身を切り裂いた。一際大きく炎が薙ぎ、周囲の機械がなぎ倒され。爆炎の如く広がった蒸気が収まった後には、その身に大きく傷跡を残したアウルム・アンティーカの姿があった。
大成功
🔵🔵🔵
ソラスティベル・グラスラン
蒸気で視界が霞みますが…あの巨体ははっきり見えますとも
大魔王、アルダワの迷宮の主……勇者として、待ち望んでいましたよ!
いざ、勇猛にッ!!
大魔王の突撃に、【勇気】を胸に突撃あるのみッ!
【盾受け・オーラ防御】で守りを固め、【怪力】で受け止める!
光線は命中箇所を破壊する、ならば確りと「狙う」必要があるはず
受け止めた衝撃を利用し空中へ、発射の瞬間を【見切り】翼で真上へ飛翔【ダッシュ・空中戦】
翼で空気を叩き急降下!発射後の隙を狙います!
恐れを捨て前へ、その禍々しき黄金を砕く為に!【鎧砕き】
蒼雷の竜よ、雷の大斧よ
今こそ応えて、我が【勇気】に
災厄の一矢を断つ、汝の名は
【我が名は神鳴るが如く(サンダラー)】
瓦礫と化した蒸気機械の山を割り、アウルム・アンティーカが身を起こす。既に幾たびも傷を受けてなお大魔王の威容は損なわれる事はなく。その姿を前にソラスティベル・グラスランは感情の昂りを感じていた。
「蒸気で視界が霞みますが……あの巨体ははっきり見えますとも。」
白む蒸気の向こう、アウルム・アンティーカの『腹の口』が赤く輝くのが見える。こちらに気づいているのか、その輝きは徐々に強さを増していた。
「大魔王、アルダワの迷宮の主……勇者として、待ち望んでいましたよ!」
自分を狙う赤の輝きを前にソラスティベルは怯むことなく前に足を踏み出した。
「いざ、勇猛にッ!!」
突撃。蒸気を蹴立て、アウルム・アンティーカが一直線にソラスティベルへと突き進む。対するソラスティベルもまた盾を構えて迎え撃った。
「勇気を胸に突撃あるのみッ!」
蒸気の霧を突き抜けたアウルム・アンティーカ、その『真ん中の人』が立ち向かうソラスティベルの姿に驚嘆の声をあげる。
「吾輩たちの突撃に、真正面から当たるとは!」
「おではらへった おではらへった。」
『腹の口』に引かれるようにさらに加速した大魔王の巨体がソラスティベルの盾に衝突する。盾に重ねたオーラが弾け、さらに盾に搭載された蒸気機関がその衝撃を押し返す。だがそれでも突撃の衝撃は凄まじく、ソラスティベルは宙へと弾き飛ばされた。
「おではらへった――」
ソラスティベルを狙う『腹の口』に真紅の輝きが満ちる。だがそれこそが、ソラスティベルの待っていた瞬間。ソラスティベルの背に竜翼が広がる。そのまま跳ね飛ばされた衝撃をも利用して大魔王の真上へと飛んだ。
「蒼雷の竜よ、雷の大斧よ。」
『腹の口』から放たれた【真紅崩天閃光撃】は狙いを外されソラスティベルの横を掠めて天井に突き立つ。
「今こそ応えて、我が勇気に。」
ソラスティベルの翼が羽撃きアウルム・アンティーカ目掛けて急降下した。その手に握るは蒼空色の巨大斧。
「災厄の一矢を断つ、汝の名は。」
【我が名は神鳴るが如く(サンダラー)】
轟音が部屋を打つ。大魔王に打ち込まれた蒼雷を纏う大斧は深く斬り込み、大魔王を裂く一撃は金色の巨体に深々と傷跡を残していた。
大成功
🔵🔵🔵
コトト・スターチス
魔王……!
とってもつよつよですが、まけませんっ!
まずは視界がわるいところで姿を見せないようにして
魔王の音色を【狂気耐性】でたえつつ、音波データを【情報収集】しますっ
解析が終わったら「ねこへんしん」!
魔王の方が速度や気配察知に優れていても、音を出しているのはそっち
音の大きさや響き具合から魔王の位置を割り出して、最高速度で一直前に突撃して【空中戦】をしかけますっ
同時に、魔王の音波を打ち消す音をスマホから出して、攻撃を弱めます!
(電子的・魔力的に解析し、逆位相の信号・魔力を発射する)
メイスで自分を癒しつつ、魔王目掛けてガツンと【気絶攻撃】!
「これが、電子の精霊で辻ヒーラーの僕の戦い方ですにゃーっ!」
アウルム・アンティーカの巨躯には遠目でも分かるほどに傷が刻まれていた。だが、それでもその闘志に翳りは無い。そのアウルム・アンティーカを前に気合を入れるコトト・スターチスの姿があった。
「魔王……!
とってもつよつよですが、まけませんっ!」
アウルム・アンティーカの三つの意識が敵を探る。その視線に捉われないよう蒸気の噴き出る機械の影に身を隠すコトト。
「姿を見せませんか。居るのは分かっておりますが……」
「ミエナクテモ、ニガサナイ!」
どこに居ようが狂音からは逃れられないと『上の頭』が角を振り、再び【絶対奪命皇狂曲】を奏でだす。心を蝕み精神を崩すような狂騒の音色をコトトは己が狂気の耐性を頼りに耐える。ギシギシと頭の中でナニカが軋む音が聞こえながらもコトトは流れる音波のデータを集めていた。止まない狂奏の中、集積したデータの解析が終わると同時にコトトは飛び出した。
「へんしんっ! 聖天使猫モードですにゃー!」
その身を【ねこへんしん(ホーリーエンジェリックキャットフォーム)】で真の姿である神聖でかわいい聖天使猫モードに変じてコトトは蒸気の中を翔ける。蒸気で白む中であっても大魔王の奏でる音、その大きさ、反響から位置を割り出し、一直線に飛び掛かった。
「む! 『上の頭』殿、近づいていますぞ!」
「デモ、ミエナイヨ! 『マンナカノヒト』!」
「おではらへった おではらへった。」
黄金の竜翼を広げて宙を飛ぶアウルム・アンティーカがコトトを迎え撃たんと四肢を構える。だが、『真ん中の人』の視界が効かない故に対応が一刻遅れた。それでも奏でる音は近づけば強まる、それで足を止めれば……そう考えた大魔王の思惑を打ち崩す音が叩きつけられる。それはコトトのスマホから発せられている大魔王の音を解析し、打ち消す為の音。逆位相の信号・魔力で構成されたコトトの発する音が、大魔王の狂奏の音圧を和らげる。
「これが、電子の精霊で辻ヒーラーの僕の戦い方ですにゃーっ!」
己が身をメイスの力で癒しながら、コトトの全力の一撃が『上の頭』にガツンと炸裂する。ぐらりと傾ぐ巨体、止まる演奏。アウルム・アンティーカの内、『上の頭』はその一撃で意識を飛ばされていた。破壊されたわけではない故に一時的な機能不全だろうが、その間に得られるアドバンテージは大きなものになるだろう。
成功
🔵🔵🔴
ナイ・デス
闇が喰らうというなら
光も、です
先制魔導重砲を【念動力】で防ぐ
ただ少し、着弾までの時間稼ぎを
0.05秒と少しが、あればいい。あれば
『イグニッション』
『』は防具初期技能
攻撃の隙間か最も薄いとこ『野生の勘で見切り』
『勇気』念動力で自身【吹き飛ばし】『空中戦ダッシュ』飛び込む
手足鎧と『オーラ防御でかばい』受け【覚悟、激痛耐性、継戦能力】突破
『地形の利用、迷彩』僅かに抵抗したが消し飛んだ、そう思わせ、思っている僅かでもその間に
機械の蒸気に紛れ『暗殺』
口に反応されても近づけていれば【鎧無視攻撃】刃刺し『怪力』拳も一緒に打ち込み
【生命力吸収】する光の『誘導弾』【零距離射撃】
大魔王、光で飲みこみ、喰らいます!
体勢を崩し地に堕ちるアウルム・アンティーカに向かい、ナイ・デスが駆ける。『上の頭』が停止している今ならば隙も大きくなっている。この好機、逃す事は出来ない。
「闇が喰らうというなら。
光も、です。」
ナイの姿にいち早く反応した『腹の口』が真紅に輝く口腔を開く。あまりに直線的、だがそれ故に避ける間など与えないほどの速度で突撃したアウルム・アンティーカの『腹の口』から【真紅崩天閃光撃】が放たれた。躱す間もなくナイの身体を真紅の光線が撃つ。ナイの身を護る念動力も、圧倒的な交戦の前に瞬く間に消し飛ばされてゆく。だが、それでも瞬くほどの時間は稼げた。
「0.05秒と少しが、あればいい。あれば――」
真紅の光が収まった後にナイの姿はなく、吹き散らされた蒸気が渦を巻く。
「終わりですかな。ふむ。」
「おではらへった おではらへった。」
光線の放たれる轟音に紛れていなければ、あるいは聞こえたかも知れない。そしてその声が聞こえていれば、気が付いていたかもしれない。ナイが消え去る時に残した言葉、それは。
『イグニッション』
【エクストリガー【ディリゲント】(エクステンドオーブ)】の掛け声だったのだから。光線に呑まれる直前、0.05秒で防具を身に着けたナイは自身を念動力で吹き飛ばして大魔王の視界の外に移動していた。身体の痛みを抑えこみ、ナイは再び捕捉される前に蒸気に紛れて大魔王へと飛び掛かった。完全な奇襲、まさに暗殺の業。だがそれでも反応したのは『腹の口』の本能のなせる業か。
「おではらへった――」
だが防御するには遅い。顔を向けた『腹の口』にナイの刃が固い外殻すらものともせずに突き刺さった。そのまま対の拳を打ち付ける。
「大魔王、光で飲みこみ、喰らいます!」
打ち付けたナイの拳から放たれた光がアウルム・アンティーカを撃った。突き抜ける光が黄金の巨体から生命力を抜き取ってゆく。
「おで、おで、で、でで……」
頭を揺さぶる衝撃に『腹の口』から火花が散る。ナイの放った光は、『腹の口』に多大なる損傷を負わせていた。
成功
🔵🔵🔴
アルトリウス・セレスタイト
出て来て早々で済まないが退場の時間だ
先制含む攻撃へは『絶理』『刻真』で「攻撃されていない時間」に自身を置き影響を回避
攻撃含め必要魔力は『超克』で外から汲み上げ供給
破界で掃討
対象は魔王及びその全行動
高速詠唱を『刻真』で無限加速、『解放』で全力の魔力を注ぎ、『再帰』で無限循環
天を覆う数の魔弾を狙いを定めぬ弾幕として射出する全周攻撃
射出の瞬間を『再帰』で無限循環させ、一切の休み無く攻撃を継続
対象外へは無害ゆえ遠慮せず
視界は遮るので適宜味方猟兵の動きに合わせ誘導
或いは魔王がその隙間に滑り込もうと考えるか
であればそこへ、魔力を溜めた体内で魔弾を束ねた致命の一弾を届けておく
アウルム・アンティーカの『腹の口』の動きがぎこちなくなっている。近接担当の不調となれば防御行動全体に支障が出かねない。思案する『真ん中の人』に復調した『上の頭』が声をかける。
「ダイジョウブ? ドウナッタノ?」
「おお、『上の頭』殿が目を覚まされましたか。」
記録と情報を同期したアウルム・アンティーカの前に、アルトリウス・セレスタイトが姿を現した。
「出て来て早々で済まないが退場の時間だ。」
アルトリウスの言葉に『上の頭』が小癪なと応じ、魔導楽器群が狂気を誘う音色を奏でる。だがアルトリウスが身を置くは『絶理』『刻真』で断たれた『攻撃されていない時間』。すでに幾度の戦いを経て消耗した魔導楽器の音が届く理はない。そして其処より放たれるは蒼光の魔弾。
「行き止まりだ。」
『超克』により外から汲み上げた魔力を以て【破界(ハカイ)】が放たれる。アルトリウスが紡ぐ高速の詠唱を『刻真』で無限加速、『解放』で全力の魔力を注ぎ、『再帰』で無限循環する。極に達するその力は天を覆う魔弾の雨となって降り注いだ。躱す事など能わぬ無数の魔弾であれば狙う事など必要ない。周囲に構わず放たれた蒼い光は、しかし大魔王以外を傷つける事無く迸る。蒼き無窮なる極光の果てに穿つアウルム・アンティーカの巨躯は、『再帰』で無限循環する射出に間断なく曝されてゆく。と、なれば大魔王の取るべき行動など決まっていよう。
「ならば、あやつの居る空間に滑り込むまで。」
ギシリ、と空間が軋む。だが、その先はアルトリウスの予測を超える事はなかった。
「であればそこへ、致命の一弾を届けておくまでの事。」
アウルム・アンティーカの身体が爆ぜる。魔力を蓄えた体内にアルトリウスの届けた魔弾を束ねた致命の一撃は、内部から大魔王の身体を破壊した。アウルム・アンティーカの各部から火花が散り、その思考にノイズが走る。
「ぐ、さすがは猟兵。やってくれますな!」
膝をついたアウルム・アンティーカ、だが『真ん中の人』の言葉に『腹の口』が持ち上がる。未だ倒れずに在る大魔王。だが戦いは終わりへと向かっていた。
成功
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セシリア・サヴェージ
第一形態ですらこの迫力。さすがは大魔王と呼ばれるだけのことはありますね。
『腹の口』が放つ光線への対策ですが……
まず暗黒剣を地面に突き立ててしっかりと固定することで設置型の盾のようにします。
その後ろに隠れることで【武器受け】に加えて被弾の衝撃で体勢が崩れるのを防ぎます。
さらに剣の前面に【オーラ防御】を展開して暗黒剣が破壊されるのを防ぎます。
これが今の私に出来る最大の防御です。
反撃にはUC【漆黒の剣閃】を使用します。
防御中に【力溜め】を行い、暗黒の力を最大まで高めてから放ちましょう。
アウルム・アンティーカの巨体が咆哮する。部屋が鳴動するかのような叫びは、受けた痛みの大きさを物語っていた。そして、その傷を受けてなお依然に脅威として在るという事も。部屋へと辿り着いたセシリア・サヴェージが特大剣である『暗黒剣ダークスレイヤー』を握る手に、力が籠る。
「第一形態ですらこの迫力。さすがは大魔王と呼ばれるだけのことはありますね。」
セシリアの身を護るは手にした暗黒剣のみ。どこまで大魔王の攻撃に耐えられるか。否、耐えねば勝機はないだろう。意を決して足を踏み入れたセシリアに『腹の口』が向く。
「おではらへった おではらへった。」
「マタキタヨ! リョウヘイ、キタ!」
「ここで引いては大魔王の名折れというもの。『腹の口』殿もやる気十分ですしな!」
然り。答えに代えて『腹の口』がセシリアに突撃し、真紅の光線を放つ。セシリアは大魔王の突撃を目にした時点で、即座に暗黒剣を床に突き立てていた。深く突き立て固定した暗黒剣の後ろに身を隠すセシリアに真紅の輝きが襲い掛かる。剣にしかと手を添えて受け止め、さらにセシリアは剣の前面にオーラの防壁を展開した。
「これが今の私に出来る最大の防御です。」
大魔王の【真紅崩天閃光撃】がセシリアの展開するオーラと鬩ぎ合い、激しく魔力の光を散らす。まるで小舟で嵐に曝されるが如き暴力的な奔流の中、セシリアは暗黒剣が破壊されぬようオーラに力を籠め、そして自分自身が吹き飛ばされないよう力を溜めながら全霊で抗った。もしここで体勢を崩すような事があれば、例え剣が無事でも致命的な攻撃に身を晒す事になっただろう。だがセシリアの守りが崩されるより早く、大魔王の巨躯に限界が訪れる。
「むぅ、蓄積した損傷が此処に来て……『腹の口』殿!」
「おで――」
微かな破裂音とともに、光線が弱まる。その好機にセシリアが地に立てた暗黒剣を抜く。弱まった光線ならばオーラだけでも凌ぐ事は出来る。ならば。
「この一撃で断つ……奔れ闇よ!」
セシリアが暗黒剣を一閃する。放たれた【漆黒の剣閃(ダークネスウェーブ)】が真紅の光線を切り裂きながら大魔王へ向けて奔る。漆黒が真紅を裂いて黄金へと突き立ち、『腹の口』を捉え。
「『腹の口』殿……!」
「おで……はらへった……」
大きく裂かれた『腹の口』がその言葉を最後に沈黙する。今までの戦いで損傷の蓄積していた身体では、セシリアの一閃を耐える事は出来なかったのだ。三位一体、その一角がついに崩れ去った。
成功
🔵🔵🔴
シール・スカッドウィル
さて、少し厄介な……フル稼働と……本来の性能は出ないが、やるか。
繋にA/Bを接続、魔力弾に幇の力を装填。
上下二連装を利用した<2回攻撃>、及び空間接続式装填術を用いて連射。
魔力弾には幇で音<属性攻撃>を与えることで迎撃。
高速がどのタイミングで来るか……だが、こちらにはヴェノモイドがある。
俺が気づかなくても、こいつは近付くものを確実に自動迎撃する。
そしてアンノウン――今回はハイドインでの運用。
正気を失くす音? あぁ、構うまいよ。今回は怒りに任せる。
元々は、俺はそういうものだ。
【竜兵】の力を乗せて、アンノウンを高速流動。
久しぶりに、あらゆるものを削り取る砂鉄の獣となって暴れてみるとしよう。
ガクリ、とアウルム・アンティーカの身体が崩れる。近接戦闘を担当していた『腹の口』が停止した故に、四肢の制御が一時的に乱れたのだ。
「マンナカノヒト! ハラノクチガ!」
「なんのこれしき。吾輩たちは三位一体で『アウルム・アンティーカ』、まだ負けた訳ではありませんぞ!」
そう口にする『真ん中の人』の視線は新たに現れた猟兵、シール・スカッドウィルの姿を見据えていた。失っていた身体の操作系を『真ん中の人』が受け持ち、立ち直る大魔王の姿にシールは独り言ちた。
「さて、少し厄介な……フル稼働と……本来の性能は出ないが、やるか。」
繋にA/Bを接続、魔力弾に幇の力を装填。大魔王は『上の頭』が攻撃を担当するようだ。響く魔音。だが音ならば対抗する術は用意してある。上下二連装を利用した連続攻撃、及び空間接続式装填術を用いて連射。放たれる魔力弾には幇で音の属性を与えてある。幾度の戦場を経てひび割れた楽器になど負ける事は、無い。
「飛びますぞ! 『上の頭』殿!」
「チョクセツ、ブツケル!」
アウルム・アンティーカが黄金の竜翼を広げ、高速で飛翔する。弾丸で迎撃されるならば至近から叩き込むまで。だがそれも近づく事ができれば、だ。
「俺が気づかなくても、こいつは近付くものを確実に自動迎撃する。」
シールのヴェノモイドが大魔王の接近を妨害する。それでも距離が縮まった事で強まる魔音がシークの心を蝕んだ。徐々に正気を失ってゆくシークは、しかし構うまいとアンノウンを流動させる。湧き上がる怒りのままにシークは猛る力を解き放った。
「元々は、俺はそういうものだ。」
なればこそ。久しぶりに、あらゆるものを削り取る砂鉄の獣となって暴れてみるとしよう。【竜兵(ドラゴンウォリアー)】の力を乗せ、アンノウンが高速で流動する。その力の渦の中、ついに耐え切れなくなったアウルム・アンティーカの巨体が崩壊を始める。
「ぐ、う、ここまでですな。されど、第二、第三形態の吾輩が……!」
その言葉を最後に大魔王第一形態『アウルム・アンティーカ』は崩れ去り、骸の海へと還っていった。こうして、この区画における大魔王との戦いは猟兵の勝利で終わるのだった。
大成功
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