5
アルダワ魔王戦争1-B〜三位一体の蒸気機械王~

#アルダワ魔法学園 #戦争 #アルダワ魔王戦争 #大魔王 #アウルム・アンティーカ #オブリビオン・フォーミュラ


●ファーストダンジョン・迷宮区域「蒸気科学実験施設」
「テキガクルヨ! テキガクルヨ!」
 そう言って骸骨の上に生えた顔の口が喋る。そして朗らかに骸骨が喋る。
「おお『上の頭』殿、ご教授ありがとう。なかなかの進軍速度ですな」
「おではらへった おではらへった」
 そして竜の頭の腹部の口が喋る。それを愉快と思うのか、骸骨『真ん中の人』は頼もしさを感じ、頭を叩く。
「これはこれは『腹の口』殿。相変わらず旺盛な食欲ですな。良きかな良きかな」
「ガンバッテ! マンナカノヒト!」
「ははは、これこれ、吾輩の角を両手代わりにして拍手なさいますな。そして、おふたりにも頑張って貰わねばなりませんぞ。吾輩達は三位一体で『アウルム・アンティーカ』なのですからな」
 そう、この会話している恐るべき黄金の機械こそ、大魔王であり、第一形態「アウルム・アンティーカ」なのだ。
「おではらへった おではらへった」
「わっはっは、戦場こそが『大魔王』の本懐、気分が高揚しますな! では意気揚々と、いざ出陣!」
 そして翼を広げ、アウルム・アンティーカは飛翔する。猟兵達と相まみえん為に。

●グリモアベース・ブリーフィングルーム
「早くも大魔王出現じゃのー。まずは第一形態が現れたけーのー」
 そう言って電脳ウィンドウを開くグリモア猟兵・メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は緊迫感を持って説明をしようとしている。敵の本丸とも呼べる相手が現れたのだから、それも無理はない。
「大魔王の第一形態、アウルム・アンティーカじゃ。巨体と三つの頭部を持ち、それぞれが意志を持って攻撃をしてくる。厄介な相手じゃのー」
 『腹の口』と呼ばれる竜頭が近接戦闘、『真ん中の人』と呼ばれる骸骨頭が戦術判断と機械兵器、『上の頭』の骸骨頭の額の顔が魔導楽器群の演奏をそれぞれ担当している。それぞれが役割を果たすと隙が少ないと言える。
「さらに敵はこちらの先手を打ってくるけーのー。防御などの対策は必要じゃろーのー」
 いかに相手の攻撃を防御し、攻撃につなげて攻略していくか。それが鍵となる。そしてこの戦いはファーストダンジョン最深部にいる、最終形態へと繋がる為の試金石となる。
「強敵ではあるが、頑張って欲しいのー。健闘を祈るけーのー」
 こうしてメイスンは大魔王近くへの転移を開始する。大魔王との死闘、その初戦の火蓋が切られようとしていた。


ライラ.hack
 なんて蒸気機関だ。敵ながらかっこよすぎると感動。
 どうもこんばんわ、ライラ.hackです。

 このたびは姿を現した大魔王第一形態「アウルム・アンティーカ」との戦いとなります。
 難易度は普通より高めなのでご注意ください。

 そしてこのシナリオでは以下の特殊ルールがあります。
 ●プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
 (敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)

 以上となります。大魔王との初戦、皆様の奮戦に期待致します。
 それでは皆様の素晴らしいプレイングをお待ち致しております。
120




第1章 ボス戦 『大魔王第一形態『アウルム・アンティーカ』』

POW   :    真紅崩天閃光撃
【突撃し、『腹の口』が放つ真紅の光線】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    黄金殲滅魔導重砲
【『真ん中の人』の背部に装着された魔導砲】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    絶対奪命皇狂曲
【『上の頭』が角を指揮棒のように振るう状態】に変身し、武器「【聞く者の正気を奪う全身の魔導楽器群の音色】」の威力増強と、【黄金の竜翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
シーザー・ゴールドマン
【POW】
やあ、初めまして。私はシーザー・ゴールドマンだ。
なかなか趣味の良い姿をしているね。
第一形態の大魔王殿、会えて嬉しく思うよ。

先制対策
分身(残像×存在感)にて初撃を受け、UC発動までの時間を稼ぐ。
「流石は大魔王。大した破壊力だね」

その後は『ウルクの黎明』を発動。
オーラセイバーを振るって、超高速の空中機動戦へ。(空中戦)
敵の攻撃は直感(第六感×見切り)で回避からのカウンター。

大技は破邪の太刀(怪力×鎧砕き×属性攻撃:灼熱×破魔)
聖なる灼熱の斬撃



 大魔王が張り巡らした「ダークゾーン」の一部を振り払い、姿を現した新しい迷宮区画。そこは蒸気科学の実験施設だった。そのエリアの王として君臨しているのが、大魔王。その第一形態である「アウルム・アンティーカ」
 3つの頭を持ち、それぞれが思考し、攻撃を仕掛けてくる。その対応能力は幅広く、まさしく災魔達の王として能力を備えているともいえよう。
「テキガキタヨ! テキガキタヨ!」
「えさがきた、おではらへった」
 『上の頭』が警告を発し、『下の口』が食欲を口にする。そして『真ん中の人』の視線の先には、真紅の吸血公爵シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)がすでに戦闘態勢を整えて佇んでいる。
「やあ、初めまして。私はシーザー・ゴールドマンだ。なかなか趣味の良い姿をしているね」
「お褒め頂き光栄ですな、シーザー殿。吾輩達こそ、大魔王『アウルム・アンティーカ』であります」
 シーザーの紳士の挨拶に、朗らかに答える『真ん中の人』。そこには大魔王としての実力を裏打ちする自身すら覗かせる。そのことにシーザーは逆に喜ばしいことだと密かに歓喜する。
「第一形態の大魔王殿、会えて嬉しく思うよ」
「こちらもですよ。このような所でなければお茶でもご馳走したいところですが、あいにくとここは戦場。それに『下の口』殿が腹を空かしておりましてな」
「それは承知しているよ。では殺ろうか」
 その『真ん中の人』との会話が終わった瞬間、『下の口』が大きく咆哮し、その翼が羽ばたき猛然とシーザーへと突撃を開始する。そして口を開いた真紅の光線が吐き出される。
 その光線はまさしく天を崩さんと言わんばかりの、閃光の一撃。まともに食らえば塵と残らない。実際、シーザーの身体が引き裂かれたに見えた。だがその身体は霧となって消えていく。

「流石は大魔王。大した破壊力だね」
 そして物陰から再びシーザーが現れる。そこには傷一つついていない。
「マボロシ! マボロシ!」
「高度な幻影術ですか。やりますな」
 そう、シーザーの圧倒的な存在感と気配を乗せた高密度の分身。残像と呼べるものではあるが、目くらましとして初手を防ぐには十分とも言える。
「ですが同じ手は二度は通じませんぞ?」
「おではらへった、つぎはあてる」
 『真ん中の人』は高度に戦況を分析し、『下の口』の砲撃で容赦なく敵を滅ぼす。まさしくお互いを補う連携攻撃ともいえる。だがシーザーもそれは承知の上だ。
「もちろんだ。楽しませて貰おうか」
 そして発動するは「ウルクの黎明(デウス・ポテスタース)」。無尽蔵の魔力を容赦なく引き出し、それを輝く真紅のオーラとして身に纏って戦闘力を強化する。そして恐るべき速さで飛翔を開始する。
「空中戦ですか。望むところですぞ!」
 シーザーが展開するは、超高速の空中機動戦。オーラセイバーを振るい、敵を切り裂かんと動き攻撃し続ける。対するアウルム・アンティーカは『下の口』が真紅の破壊光線を吐き出し続け、『真ん中の人』が指示したかの如く、手足の爪や尻尾を振るい、シーザーを撃ち落とさんと破壊を巻き起こす。
 どちらも高度な攻撃を展開し、先を読み、その先を読んだ攻撃と機動を繰り返す。高度な読みあいではあったが、思考が一人分だけシーザーに分が悪くなる。
「これで終わりですな!」
「しね、そしてくう」
 そしてシーザーの位置を把握した『真ん中の人』の指示を受け取った『下の口』が真紅の閃光が放たれる。
「さすがだ。だが、終わりではない」
 読み合いで負けたとしても、行動で上回ればいい。その光線が来るということに賭けていたシーザーは身をひるがえし、肩に被弾しながらもギリギリで致命傷を避ける。そしてそこから放たれる一撃こそ、必殺。
 聖なる灼熱の斬撃。邪を砕く炎を宿りし一閃。そのオーラセイバーはアウルム・アンティーカに突き刺さり装甲を破壊する。
「むうッ!」
「イタイ! イタイ!」
 久々の痛覚。久々の損害。大魔王にして、最強たる災魔の王に一太刀を浴びせたことにシーザーは笑みを浮かべる。そして『真ん中の人』も驚愕を持って称賛する。
「やりますな、シーザー殿」
「まだまだだ。これから楽しんでくれたまえ」
 そして肩から流れる血を舐めながら、一時退くシーザー。初戦は十分という判断もあるが、猟兵達の猛攻は続く。その確信と共に、今は大魔王を上回ったという余韻に浸るのも悪くないと思案するシーザーであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニィナ・アンエノン
わー、大魔王かっこいー!
どんな感じなのかなぁ、分解して調べたいなぁ……
まぁ先にやっつけてからだね☆

魔導砲はどっちかって言うと狙って撃つってよりは数撃ちゃ当たるって感じかな?
これ【スナイパー】の勘ね☆
射程も広いとなると、下手に動くよりその場でバイクの後ろで【オーラ防御】しながら【盾受け】で大事な所と銃を守った方がいいかな。
各種【耐性】もあるし、頭を下げて我慢我慢。
何とか耐えられたら反撃開始、と言ってもバイクも結構やられてるだろうから撃つしかないね。
一応狙うのは真ん中の人!外しても頭や口に当たりそうだし!
とゆー事でグッドナイトを力の限りコピーして【一斉発射】の【範囲攻撃】だー!


クー・フロスト
◎アドリブ連携

●心情
巨大なドラゴンさんだね
お友達から、新型兵器を貰ったよ!
どうやら銀河皇帝戦で使った兵器の改良版?らしい
有効活用していこうかな!

●戦闘
対処法:POWに対抗します
突撃&光線を回避する為に、軌道を読み直感による回避を行います
万が一、被弾してもバリアによりダメージを軽減します
(第六感、見切り、オーラ防御)

反撃の際には、素早く死角に隠れて攻撃する隙を伺います
(早業、闇に紛れる)

UCを使用し『機械鎧兵』ブルーゴースト・セカンドに搭乗
武装は下記を選択
『弾数式強化セラミック・ツインブレード』(投擲、咄嗟の一撃)
『高出力拡散グラビティチャージ』(焼却、2回攻撃)
投擲⇒射撃の順で攻撃し離脱します



 蒸気科学実験施設を我が物顔で飛翔する、大魔王『アウルム・アンティーカ』。手傷を追ったとはいえ、その威風は衰えず健在である。実際、このエリアを支配し、侵入者が来ればそのすべてを排除する気でもいる。そしてそんな絶対的な強者の存在に挑む二人の少女。
「わー、大魔王かっこいー!」
「巨大なドラゴンさんだね!」
 黄金に煌めく蒸気機関に胸がときめくガジェッティア、ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)。そして機械ドラゴンに歓声を上げるのは和服少女にして死神を名乗る、クー・フロスト(《甦生氷姫》氷の死神少女・f08503)。どちらも無邪気なことには変わらず、『真ん中の人』も苦笑する。
「はははっ、猟兵というのは愉快な御仁が多いですな」
「どんな感じなのかなぁ、分解して調べたいなぁ……調べていい?」
 無邪気なニィナの探求心。それが満載した問いに思わず『真ん中の人』の骸骨の顎がカタカタと上下し、爆笑が漏れ出す。
「わっはっはっ! 吾輩達に勝てればいかようにも! ただし負ければ『下の口』の餌ですがな」
「おではらへった、おではらへった」
 すでに『下の口』は我慢できずに突撃態勢に入っているし、『上の頭』は二人を見逃さないと視界に捉えている。そして『真ん中の人』も抜け目なく二人を観察しているのだ。
「うーん、やるしかないね」
「まぁ先にやっつけてからだね☆」
 クーはオーラを身に纏って敵の挙動をしっかりと観察を開始し、ニィナも乗り込んできた宇宙船のパーツで改造したカスタムバイクから降りてガジェット「グッドナイト:ガジェッティアーズランチャー」を構える。
「では『下の口』殿はあちらの青髪少女を、吾輩はあのバイク少女をやりましょうぞ」
「わかった、おではらへった」
 3つの意志があるということはそれぞれがバラバラでも対応できるということだ。『下の口』がクーに対し、その口からすべてを破壊する真紅の光線を吐き出す。対し、『真ん中の人』はバイクと共にニィナを殲滅せんと背面に装着された魔導砲を稼働。そこから無数の光線を頭上に打ち上げ、それが落下して雨のように降り注ぐ。
 その無慈悲な赤き熱線に対し、クーはただ死を恐れず冷静に見極めていた。死を司る者だからこそ、その芸当は可能だったかもしれない。寸前のところでその光線を避け、さらに追撃してくる真紅の光線を回避し続ける。オーラ防御は念のためとはいえ、容易く突破されるだろうし、光線が掠めるたびに肉が焼ける臭いを感じてしまう。
「やってくれるね。でもお友達からの新兵器も貰ったし、有効活用していこうかな!」
 そう言って反撃のチャンスを待つクー。
 一方で、ニィナは『真ん中の人』魔導砲はどちらかと言えば、狙って撃つってよりは数撃ちゃ当たる感じのものだと想像を付けていた。
「これスナイパーの勘ね☆」
 その勘は奇しくも的中し、まさしく雨嵐のように光線を降り注ぐ感じのものだ。射程も広範囲であることから回避は難しい。ならば、とニィナは下手に動くよりその場でバイクの後ろでオーラ防御しながら、バイクを盾として扱い、大事な所と銃を守る選択を取った。
「ほほう、そうきますか。ですが耐え切れますかな?」
 そこから魔導砲からスコールのように天下る砲撃。バイクは頑丈とはいえ、この無差別攻撃に完全に耐えられるものではなく、徐々に破壊されていく。オーラで防御しながら頭を伏せているニィナも次々とくる衝撃に、防御で耐えきれないダメージが蓄積されていく。
 こうして魔導砲撃が終わるころには、破壊の跡が凄まじく、煙が充満している。この砲撃で破壊されない物体はなく、生きている生物がいるとは思えない。
「では吾輩もあちらを手伝うとしましょうかな……!」
 だがその煙が晴れた時、『真ん中の人』は驚く。ニィナは生きていた。五体満足とはいえず、体中はボロボロであり、バイクも跡形もなく破壊されている。だが生きている。そして反撃のチャンスは来たとばかり、すでに能力「ガジェット忍法・弾丸祭の術(ガジェットアーツバレットフェスティバル)」を発動し、グッドナイトを力の限り複製させて、全銃口をアウルム・アンティーカに構えていた。
「一応狙うのは真ん中の人! 外しても頭や口に当たりそうだし!」
「ぬう、まずい!」
「一斉発射だーーーー!」
 回避行動をとろうとする『真ん中の人』だが、『下の口』がクーに対して光線を発射し続けているために行動が一歩遅れる。そして放たれる銃弾の嵐。アウルム・アンティーカの装甲も硬いし防御・回避も取るが、これだけの集中砲火をすべて防げるはずもない。『真ん中の人』の頭上に命中し、態勢が崩れ、さらに『下の口』の目に銃弾が被弾して、真紅の光線が一時止まる。
「めがいたい、めがいたい」
「今がチャンス! この銀河皇帝戦で使った兵器の改良版らしいのを使うべき!」
 こうして攻撃が止まった隙に、物陰に移動し視界から外れたクーは、能力「《機械鎧兵突貫》機兵乗りの戦術」を発動。そして用意しておいた『機械鎧兵』ブルーゴースト・セカンドに搭乗する。最初から搭乗していなかった理由は、万が一の破壊の可能性を考えてのことだ。隙ができるまでは温存、ということだ。
 そして握られるは「弾数式強化セラミック・ツインブレード」と「高出力拡散グラビティチャージ」である。まずはセラミック・ツインブレードの投擲だ。機兵乗りの戦術は近接用ではあるが、威力を乗せるには投擲でも十分に効果を発揮できる。降り注ぐ巨大ナイフの群れアウルム・アンティーカの装甲を貫く。
 その体制が崩れたところを確認し、グラビティチャージによる重力属性光線の接近射撃を敢行する。まさしく体制が崩れていていなければ犯せない危険行動。だがそれが今は功を奏した。重力と熱戦を帯びた光線は蒸気文明の結晶の装甲を破り、大魔王にダメージを与える。
「ぬううううううううう!」
「マンナカノヒト! イッタンヒク!」
 強烈な重力熱線に装甲をねじ焦がされ、『上の頭』が冷静な判断を下す。そしてそれに従うように翼を羽ばたかせ、ニィナの銃撃とクーの機械鎧からの離脱を図るアウルム・アンティーカ。
 だが双方も追撃できる余力はない。だが確実に大魔王に癒しがたい傷を与えることはできた。追い詰めている証拠だと思い、クーは多大な被害を追っているニィナの元に向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナターシャ・フォーサイス
貴方が大魔王、我らが導くべき哀れな魂なのですね。
三位一体…と言うことは、貴方がたが正しいのでしょうか。

ともあれ、我々もまた使徒としての責を果たしましょう。
先制攻撃は守護結界を張り、多少なりとも抑えましょう。
その攻撃が意味を成すのは正気のあるもののみ。
天使達にはそもそも通用しないのです。
そして貴方がたのその力は封じます。
同時にもたらされる加護によって、貴方は己が力で倒れゆくのですが…
それは、救済を掲げる使徒としては見過ごせぬもの。
天使たちと共に、【高速詠唱】【全力魔法】【2回攻撃】の聖なる光で闇と罪を祓い、楽園への道行きへ誘いましょう。

どうか、貴方にも楽園のご加護のあらんことを。



 アウルム・アンティーカは黄金の機械がパキパキッと修復する音が響き渡る。大魔王として、災魔の頂点として特別な個体である彼には蒸気文明のある恩恵が施されている。それはつまりスチームガジェットによる自動修復機能だ。細やかな損傷が少しずつ塞がってきているのがわかる。
「ナオリニクイ! ナオリニクイ!」
「ふむ、やはり猟兵の攻撃は特別ですな」
 とはいえ、その黄金機構であってもすべてを完全修復できるわけではない。特に重い損傷個所のダメージはかなりの時間を要することになるだろう。逆に言えば、時間を掛ければ元通りになるという意味ではあるが、猟兵達がそれを見逃してくれるはずもない。
「おではらへった、えさみつけた」
「ほう、『下の口』殿。見つけましたかな」
 そう言って『真ん中の人』はその発見方角へと目を向ける。そこには啓示に導かれ、魔王を鎮めに来た聖者、ナターシャ・フォーサイス(楽園への導き手・f03983)が歩み寄る。そしてその姿を見るなり、両手を組み祈りを捧げる。
「貴方が大魔王、我らが導くべき哀れな魂なのですね」
「はははっ! 吾輩達が哀れとは。『上の頭』殿と『下の口』殿がいれば、吾輩達に死角はないですぞ?」
「ソノトオリ! ソノトオリ!」
「おではらへった、おではらへった」
 敬虔なる祈りを捧げるナターシャを嘲笑うかの如く飛翔するアウルム・アンティーカのそれぞれの意志達。大魔王たるもの、神に祈りはしない。その絶対なる自信を見て、ナターシャの信仰を理解する日は永遠に来ないことをその瞬間で悟る。
「三位一体…と言うことは、貴方がたが正しいのでしょうか」
「多数決で言えばそうでありましょうな。だが所詮、正しいことなど勝者のみが決めることでしょう」
 戦場でこれ以上の語りは無用。アウルム・アンティーカが翼を羽ばたかせ、飛翔し戦闘態勢に取る。ナターシャは教えに理解を得られないことに悲しみを浮かべつつ、戦う道を選ぶ。
「……ともあれ、我々もまた使徒としての責を果たしましょう」
 祈りを捧げながらナターシャは守護結界を展開する。並大抵の攻撃ならば寄せ付けない、聖なる結界。その鉄壁さはナターシャの信仰の厚さを象徴しているだろう。
「ほほう、結界ですか。だが、『上の頭』殿には無意味ですぞ?」
「グサク! グサク!」
 そう言って『上の頭』が角を指揮棒のように振るう状態に変わり、絶対奪命皇狂曲が奏でられる。パイプオルガンが奏でられる絶命の魔曲。
「こ、れ、は……! クッ!」
「はははっ、物理攻撃ならば厄介でしょうが、教えを説くのかわかりませんが音は筒抜けのようですな」
 その曲は聞く者の正気を奪う。そして単純な魔導楽器群の音波攻撃の影響もあり、耳から内部器官へのダメージもある。その合唱にナターシャは自身の精神が蝕まれていることを感じる。
「ですが私の信仰は……使命は……」
「抗いますな。ですが、肉体の方も耐えられますかな?」
「ムダナテイコウ! ムダナテイコウ!」
 『真ん中の人』の指摘通り、多少の音遮断の効果はあるものの、ナターシャの精神力は刻一刻と限界を迎えつつある。そして耳から血が流れだし、目が虚ろになっていく彼女に比例するように、守護結界が弱まり始める。
「よく耐えましたな。ではトドメといきましょうか」
「ヨクヤッタ! ヨクヤッタ!」
 苦しむ敵に死という最後の慈悲を。そう思って『上の頭』は破滅の曲のタクトを振るう。だがその感情こそ、彼女が待っていたものだった。
「……ありがとう、ございます。あなた方にも、救済の心は、あったようですね」
 そう、その救いの心こそ、ナターシャの能力「召喚:楽園の祝福(サモン・グレイス)」の発動条件である。まばゆい光と共に天使達が降臨し、優しい光がナターシャを包み込む。その光が魔曲の音色を弾き飛ばす。
「キイテイナイ! ハジカレル!」
「これは、反射能力ですか!」
「……その攻撃が意味を成すのは正気のあるもののみ……天使達にはそもそも通用しないのです」
 ボロボロになった身体を奮い立たせて立ち上がるナターシャ。そして天使達は一斉に光を放つ。その光は闇を祓う力と共にユーベルコードを封じる効果を持つ。『上の頭』の奏でる魔導楽器群に正気を奪う禍々しさが、消失していく。
「まさか、自分の身体を犠牲にしてまで、これを待っていたということですか」
 ただ自身に救済の感情を抱かさせる為に。その行き過ぎた自己献身の姿にさすがの大魔王も理解はできずとたじろぐ。
「……あなたが成すべきことは、救済を掲げる使徒としては見過ごせぬもの。ならばこそ……」
 そして天使達の力を集約し、ナターシャから闇を祓う光の閃光が放たれる。それは邪悪なる魔導楽器群に突き刺さり、邪を焼く力となる。
「ヒカリ! イタイ!」
「……楽園への道行きへ誘いましょう」
 そう言って力が続く限り、天使達と共に戦う姿を見せるナターシャ。そして『真ん中の人』は考える。攻撃反射の防御、こちらのユーベルコードを封じる光、そして闇を祓う光。このまま攻めるにはリスクが大きいことに。
「これは痛み分けですな。ここは引きましょう」
 戦略的判断を下し、翼を飛翔させナターシャから逃走を開始するアウルム・アンティーカ。実際、ナターシャの傷は重く、動いて追える状況ではない。それ故の決断であった。
 遠ざかる黄金の大魔王を見つめ、それでもナターシャは祈らずにはいられなかった。
「……どうか、貴方にも楽園のご加護のあらんことを」
 傷を負おうとも、正気を侵されようとも、その信仰は潰えず。ナターシャはその祈りを持って、大魔王を退けたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メンカル・プルモーサ
…ふむ、これが魔王……の、第一形態か…
これぐらいは倒さないと以降の形態を倒せるわけでも無し、と…
…魔王の正気を削る音色に対しては静音術式を自分の周囲に展開……
音を消す事で対処…当然、その分情報が減るからそこは他のセンサーを展開してフォロー…
…音色を軽減しきれなかった場合は狂気耐性で何とか耐えるよ…
…そしてこちらからは【縋り弾ける幽か影】を発動…その魔道楽器群は脅威だからね……ステルス自爆ガジェットにそこを狙わせて貰うよ…
…ステルス自爆ガジェットの到達までは魔王の攻撃に対して防御寄りに立ち回る事で時間稼ぎをするとしよう…


水貝・雁之助
アレンジ連携歓迎

ふむ、音楽かあ
ある意味、得意分野だし迷宮ならやりようによっては此方の音を反響させて敵の音を阻害なんて事も可能だし、どうにかいけそうかな?
曲は笛だからアレンジになるけど、シューベルトの魔王とかも皮肉げ聞いて良いかも、だね


お前達に誰も傷付けさせはしないさ

敵のUC対策で大きめの音を出す楽器を『楽器演奏』
体当たり等は迷宮という『地形を利用』し壁やその場にある物品を盾にして防いで対応

防ぎきったら演奏は続行しつつUC発動
そのまま、自身は『地形を利用』し音を響かせ悉平太郎に敵の音が聞こえない様に支援

悉平太郎だけに攻撃が行かない様に『地形を利用』し攻撃は防ぎつつ適度に敵の気を引く様に動く



 大魔王のアウルム・アンティーカとの死闘が繰り広げられる蒸気科学実験施設。徐々に破壊を蓄積されつつも、今だ力を誇示するように飛翔する大魔王。だがそれを撃ち落とさんと挑む猟兵達はまだまだいるのだ。
「…ふむ、これが魔王……の、第一形態か…」
「ものすごく興味を惹かれるんだな」
 表情も変えないながらも、その瞳はガジェット研究者の一族として名高いプルモーサ家の一員として興味の色を浮かべるメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)。そして表情というものを伺えないシャーマンズゴーストながら、そのフォルムに音楽と芸術性を見出している画家でもある水貝・雁之助(おにぎり大将放浪記・f06042)。この二人が立ち塞がる。
「ふむ、吾輩達の形態に興味がおありかな? ですが今は戦争の時間。名残惜しいですが、鑑賞の時間は終わりですぞ?」
「タタカイ! ハジメル!」
 そして『上の頭』が角を指揮棒にして、身体の魔導音楽群が準備に入る。絶対奪命皇狂曲が始まろうとしていた。
「これぐらいは倒さないと以降の形態を倒せるわけでも無し、と…」
「音楽かぁ……」
 その魔王の戦気に呼応するようにメンカルと雁之助も迎え撃つ準備を始める。敵の行動は速い。まずはそれを防ぐことこそ、反撃の一手となる。
「クルエ! クルエ!」
 そして奏でられる魔の楽曲。聞く者の正気を奪い、身体内部をも浸食する音の攻撃。耳を塞ぐくらいでは容易く潜り抜ける、魔力の籠った音色であった。
「…静音術式、展開」
 大魔王の正気を削る音色に対し、メンカル予め準備しておいた音を遮断する術式を周囲に展開。音を消す事で対処すると共に、音情報遮断弊害防止のためにセンサーを展開してフォローすることも忘れない。
 だが予想以上にアウルム・アンティーカの絶対奪命皇狂曲は力を持っていた。音が術式を浸食破壊をし、音を割り込ませようとしている。これにはさすがのメンカルも気怠く苦笑し、何とか狂気に耐えようとする。
「曲は笛だからアレンジになるけど、シューベルトの魔王とかも皮肉げ聞いて良いかも、だね」
 しかしそのメンカルの覚悟を遮ったのは、雁之助の演奏であった。形見の龍笛から奏でられるその音色はメンカルに安心感と冷静さを取り戻し、そして魔曲の音を相殺する力となる。サウンドソルジャー顔負けのその力を持った音は、この蒸気技術実験施設の地形も考えて奏でており、より増幅効果は高くなっている。
「どうにかいけそうかな?」
「ほほう、『上の頭』殿の皇狂曲を凌ぐとはやりますな」
「ナマイキ! ナマイキ!」
 その声に反応するように、高速飛翔からの爪の攻撃で引き裂こうとするアウルム・アンティーカ。だが咄嗟に蒸気パイプを利用し盾にした雁之助は、メンカルの前に立ち塞がって防御する。
「お前達に誰も傷付けさせはしないさ」
「ですがいつまでも凌げるとは思わないことですな!」
 静音術式と雁之助の楽器演奏で絶対奪命皇狂曲と拮抗している状態。だが一度バランスが崩れれば、一気に持っていかれかねないのが大魔王の実力である。
「悪逆を為せし非道の猿神を討ち滅ぼせし悉平太郎! 人々の涙を止めるために僕たちに力を貸して欲しいんだなー!」
 そして雁之助も攻めの一手に出る。能力「降臨悉平太郎」によって、猿神殺しの柴犬「悉平太郎」を召喚。それを見て、メンカルも静音術式を悉平太郎にも施す。
「攻撃…任せたね」
「任されたんだなー!」
 そして悉平太郎は蒸気技術施設を飛び跳ね、一気に空を飛翔するアウルム・アンティーカに襲い掛かる。絶対奪命皇狂曲を奏でながら、高速飛翔する大魔王を捉えるのは困難だが、雁之助が増えを奏でながら器用に施設物品を進路上に飛ばし、機動を一時的に緩めさせる。
「ワオオオオオオオオ!」
 勇猛に吠え悉平太郎はその一瞬の隙を逃さない。飛び掛かり噛み付きによる牙を突き立てようと口を広げる。だが『下の口』が咄嗟に腕で防御し、その装甲に牙が突き立てられる。
「あぶなかった、おではらへった」
「今一歩でしたな」
 そしてもう片方の爪で悉平太郎を切り裂き、攻撃の目を潰そうとする『真ん中の人』と『下の口』。
「……汝は炸裂、汝は砕破。魔女が望むは寄り添い爆ぜる破の僕」
 メンカルの詠唱が響き渡る。そして攻撃の瞬間、アウルム・アンティーカの機体が爆ぜる。何事かと思い、周囲を見渡す『真ん中の口』。そして目を凝らし見つけたのは、発見しづらく地形に溶け込んだ飛行型ガジェットだった。
「これは……、この犬は囮でしたか!」
「ヤラレタ! マダクルヨ!」
 そう、メンカルの「縋り弾ける幽か影(ステルス・ボム)」のステルス自爆ガジェットがすでにアウルム・アンティーカを包囲していたのだ。すべては気づかせない為に、派手な悉平太郎の攻撃を隠れ蓑にして密かに召喚し、展開していたのだ。
「その魔導音楽群は脅威だからね……そこを狙わせて貰うよ…」
 そしてメンカルの指令の元に自爆ガジェットが魔導音楽群に殺到する。強烈な爆撃が楽器を破壊し、一時的に演奏を中止せざるを得なくなる。
「ホウイキケン! ホウイキケン!」
「ですな。ここは死地からの脱却です!」
 そう言ってアウルム・アンティーカは悉平太郎を振りほどき、ステルス自爆ガジェットの包囲が薄い箇所に突撃。多少の被害を覚悟で突破して、研究施設奥へと飛翔していく。

「何とかなったんだなー」
「うん…思った以上に…うまくいったね」
 そう言いつつ二人は見えなくなった大魔王を確認して安堵する。あの厄介な魔導音楽群に打撃を与えたことはこれからの戦いが優位になるだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

中村・裕美
「……これが大魔王……オブリビオン・フォーミュラだけあって……なかなかの迫力」
ともあれ自分の出来そうな所から頑張ってゆこう

先制対策
空間に【ハッキング】を仕掛け、自身の【残像】による幻影を生み出し、戦闘に加わる動きをして囮に。自分は【迷彩】で姿を消し周囲の構造物に身を隠し、【罠使い】で周囲に落とし穴等を設置し、万一攻撃が来た時逃げ込めるようにする。

「……いくら広かろうとここは迷宮……【地形を利用】……させてもらう」
更に【罠使い】で天井から槍を降らせる罠を作成。相手の飛行パターンを【見切り】、槍を振らせ【ドラゴニックエンド】
「……マーキング完了。……真の姿を見せなさい……スカイフォール」


ナミル・タグイール
にゃー!でっかい金ぴかが喋ってるにゃ!
あのお宝はナミルのデスにゃー!(突撃)

先制攻撃は突撃しながら頑張って避けるにゃ
口の向きに気をつけながら【野生の勘】で逃げる
避けきれないなら手足の一本はあげる覚悟にゃ(欠けた部位は呪詛で形だけ修復

腹ビームが打てないくらい密着してしがみついたらUC発動
もっと素敵な金ぴかになれデスにゃ!【呪詛】
逆に強くなっちゃうかもだけど、呪われて人格もおかしくなるはずにゃ
同士討ち始めればラッキー
連携崩れればその間にナミルが斧でドッカーンしてやるにゃー!

魔導放は纏う呪詛でガードしながら術式を破壊
正気を奪われても金ぴか欲しいにゃの呪詛で上書きにゃ!ぶっ壊して持ち帰るデスにゃー!



 蒸気が噴射されて、機構が動きを始める。ここは蒸気技術の進歩のための施設であるのだ。それくらいはあるのだろう。そしてその上を飛翔するアウルム・アンティーカにとっても日常茶飯事でしかない。
 だがその日常風景に混ざる異物を発見する。大魔王の6つの目に映る人物は二人。一人は女性、そしてもう一人は獣人だろうか。
「……これが大魔王……オブリビオン・フォーミュラだけあって……なかなかの迫力」
「にゃー! でっかい金ぴかにゃ!」
 ぼそぼそっと聞こえにくい声で喋るダウナー系少女、中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)。珍しい宝を発見して明るくはしゃぐ大型猫科キマイラ、ナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)。この対照的な二人が待ち構えていた。
「ほほう、面白い組み合わせですな。そちらのキマイラの方は黄金好きですかな?」
「金ぴかが喋ってるにゃ! あのお宝はナミルのデスにゃー!」
 そんな黄金に目のないナミルは戦闘態勢にも入っていない裕美を置いて猛然と突撃を開始する。もはや連携も何もない、まさに欲望に任せた突撃。
「はっはっはっ! 『下の口』殿のような方ですな!」
「おではらへった、おできんぴかきょうみない」
 愉快に笑う『真ん中の人』の指摘に、『下の口』は珍しく反論する様子だ。あそこまで欲望に忠実ではないと。
 だが容赦など必要もあるはずもない。突撃するナミルも、立ち尽くす裕美も等しく滅ぼす。そんな意志を乗せた真紅の光線が『下の口』から吐き出される。命中すれば、破壊あるのみ。
「……ともあれ自分の出来そうな所から頑張っていく」
 そう言っている裕美の身体を真紅の光が貫く。だがその身体は破壊されていくことなく、霞のように消えていく。そして現れるは、複数の裕美の姿。
「ほほう、これは幻影……見たところ、シーザー殿とは別種ですな」
 裕美が展開したのは電脳魔術で空間をハッキングし、自身のホログラム幻影を生み出し、それを複数設置することで目標の拡散を狙ったのだ。『下の口』は構わず真紅の光線は次々と裕美の幻影を破壊していくが、実は本体はその中にはいない。
「……すごい攻撃……いたらまずかった」
 電脳魔術によるミラージュ迷彩を駆使して周囲の建造物に溶け込み、姿を隠す裕美。幻影が機能している間は見つかることはないだろう、と砲撃を続けるアウルム・アンティーカを見ながら、反撃の準備を始める。

 一方の突撃していたナミルに対しても真紅の光線が向かってきていた。
「頑張って避けるにゃ!」
 対してナミルが行ったのは勘による回避だった。自身の野生の勘をフルに動員した回避行動。もちろん口の向きにも気を付けて、発射角度・タイミングを見極めている。
「まさに獣ですな。ですが、それだけでは吾輩達からは逃げられませんぞ?」
「ムボウ! ムボウ!」
 そんなナミルの行動を即座に分析した『真ん中の人』が軌道修正を施し、『下の口』に回避行動に基づいた精密狙撃を行うように仕掛ける。その狙いすまされた一撃はナミルの足を撃ち抜き、当たった箇所は細胞が破壊される。
 足を片方失ったことで、ナミルは止まると『真ん中の人』は確信した。『下の口』も倒れ込む方向に光線の発射口を向けている。だがナミルはここで予想を覆す。
「手足の一本くらい、あげる覚悟にゃ!」
 失った箇所を自身にため込まれた呪詛で構築するという荒業を繰り出すナミル。古今東西、ありとあらゆる呪いをため込んだナミルならではの芸当であろう。もちろん、形だけ修復ではあるが走るのは十分である。真紅の光線の着弾地点を疾駆し、そのままアウルム・アンティーカに飛びつく。
「おでおもい、おまえはなれろ」
 飛びついたのは『下の口』の顎部分。ここまで密着してしまえば真紅の光線は出せない。だが異物を取り除くべく、両腕を叩き込もうとするアウルム・アンティーカ。
「もっと素敵な金ぴかになれデスにゃ!」
 だがその前にナミルの能力「小人の指輪(カタラ・アンドヴァリ)」が発動。周りの黄金を全て呪いの黄金に変えるほどの強烈な呪詛を腕から直接『下の口』に送り込み、汚染する。意識ある『下の口』はその呪いに飲み込まれ、挙動不審になる。
「おりゃがぎごらで まればれおかりなずれい」
「これはまずい! 『上の頭』殿!」
「ハナレロ! ハナレロ!」
 身体の制御を『上の頭』が引き継ぎ、魔導音楽群による音波攻撃でナミルを叩き落とそうとする。だがそのタイムラグを見逃すはずもない。
「黄金よこせにゃー! 斧でドッカーンしてやるデスにゃー!」
 落とされる前に黄金を奪う。能力に汚染された『下の口』の顎を黄金斧「カタストロフ」を振りぬく。派手な破壊音と共に、呪いに汚染された黄金の装甲が弾け飛ぶ。金の雨のような光景にナミルははしゃぐ。
「にゃーーーーー! これはナミルのデスにゃー!」
「……やっと、隙できた……ありがとう……」
 ナミルの一撃に空中でバランスを崩すアウルム・アンティーカ。それを見計らって裕美が天井から槍を降らせる。その仕掛けこそ、電脳魔術で仕掛けたトラップ。飛行パターンを読んで、そこに止まるように予測して仕掛けたが、ナミルが動きを止めてくれたので好都合であった。
「……いくら広かろうとここは迷宮……地形を利用……させてもらう」
 天井から降り注ぐ槍に咄嗟に反応するが、一本がアウルム・アンティーカに突き刺さる。だがその一本こそ、裕美のドラゴニック・エンドの条件。
「……マーキング完了。……真の姿を見せなさい……スカイフォール」
 そして手持ちのドラゴンランスから召喚した竜こそ、覇空竜スカイフォール。漆黒の竜は命中した槍目掛けて空を駆け、一気に装甲を食い破る。硬さなど関係ないと言わんばかりの竜の顎はしっかりと黄金を咥え込んでいた。
「むう、『下の口』殿が戻るまでは撤退ですな」
「ソノトオリ! ソノトオリ!」
 強烈なドラゴンの噛み付きを受けても、『真ん中の人』はしっかりと戦局を分析して判断を下す。ナミルはすでに確保した黄金に夢中だろうし、裕美は恐らく追ってこない性格だろうと、瞬時に分析した結果でもあった。
 こうしてアウルム・アンティーカは失った装甲に目もくれず、空を疾駆する。裕美はスカイフォールから戻ったドラゴンランスを受け取り、手ごたえを噛み締める。そしてナミルの勝利の咆哮が響き渡る。
「にゃー! 金ぴかたくさんデスにゃー!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ソラスティベル・グラスラン
この黄金の像が、大魔王なのですか……!?
この巨体でまだ第一形態とは…ふふ、期待させてくれるではありませんか!
最後までしっかりお付き合い致しますよぉ!

大魔王の突撃に対し取る行動
【勇気】を胸に、こちらも突撃あるのみッ!
光線は命中した箇所を破壊する、ならばしっかりと「狙う」必要があるはず…
只管に前へ【ダッシュ】、まずは遠近間隔を狂わせ、
発射の瞬間を見切り、斜め前に跳びます!
跳ぶと同時に翼で空を叩き、更に急加速!【空中戦】

此処に誓うは不退転の意思、『勇者』とは誰より前に立つ者!
至近距離こそがこの大斧の間合い
頭から腹、三位一体纏めて断つ!【鎧砕き】
竜よ、雷の大斧よ…今こそ応えて、わたしの【勇気】にッ!!



「おではらへった、おではらへった」
「よしよし『下の口』殿。どうやら治ったようですな」
 呪詛が抜けて精神状態が戻った『下の口』に安堵を浮かべる『真ん中の人』。そして中空を飛び、損傷した装甲を少しずつ回復している状態ではあるが、そこにオレンジの長髪を靡かせ、闘志を漲らせたソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)が現れる。
「この黄金の像が、大魔王なのですか……!?」
 自身が何度も読みふけった英雄譚。その中にもこんな機械仕掛けの魔王はいなかった。それ故に想像外の大魔王にソラスティベルは驚き、そして奮い立つ。
「この巨体でまだ第一形態とは…ふふ、期待させてくれるではありませんか!」
「ほほう、吾輩達を見て勇気を滾らせるとは。これは勇者と呼ばれる者ですかな?」
「まだそれに見合う者ではありませんが、目指すものではありますよ」
 そう言って蒼空色の巨大斧「サンダラー」を構えるソラスティベル。アウルム・アンティーカはそれに呼応するように戦闘態勢を取り、一部の隙すらも見せない。
「では大魔王と勇者の死闘といきましょうか!」
「最後までしっかりお付き合い致しますよぉ!」
 そしてソラスティベルは大魔王に対してダッシュする。その巨大斧をその黄金の身体に叩きつけるべく、近づかなくては意味がない。
 だが愚直すぎるほどの一直線。命中すれば破壊される『下の口』の真紅の光線の前に、あまりに無謀と呼べる突撃である。だがしかしソラスティベルはそれを理解している。だからこそ、ありったけの勇気を振り絞り、光線に当たる時間が少ない一直線を選んだ。
「ならば、その勇気を砕きましょうぞ」
「おではらへった、おではらへった」
 狙うはソラスティベルの身体の真ん中、つまり心臓だ。回避が一番難しく、当たる面積が多い場所。ここならばどんな回避をしても確実である。
 そして放たれる真紅の一撃。横に避けても腕や脇に当たる。上に飛んでも足や下半身に当たる。後ろに下がってもやはりどこかに当たる。逃げ場はない、と『真ん中の人』は確信する。
 だが勇気とは常に前に活路を求める。ソラスティベルが回避に選んだのは前だった。加速してさらに斜め前に飛び、光線が頭上を掠める。
「しっかり狙ってくれましたね!」
 光線は命中した箇所を破壊する、ならばしっかりと「狙う」必要があるはず。その精密狙撃こそ、ソラスティベルは待っていたのだ。そしてその回避すると同時に、翼で空を叩き、更に急加速する。一気にアウルム・アンティーカの前に現れる。
「此処に誓うは不退転の意思、『勇者』とは誰より前に立つ者!」
 放つは必殺、一撃で決める雷の一撃。勇気を示し、後は力を示すのみ。
「アブナイ! アブナイ!」
「竜よ、雷の大斧よ…今こそ応えて、わたしの勇気にッ!」
 放たれる「我が名は神鳴るが如く(サンダラー)」。蒼雷を纏う大斧がすべてを砕き、敵に終焉をもたらす。至近距離ではまさに必殺となりえる、頭から腹、三位一体纏めて断つ斬撃。
 だが意志を3つ持つアウルム・アンティーカだからこそできた芸当。『上の頭』が咄嗟に身体の制御権を握り、飛行回避を実施。それによってサンダラーの両断をそらしたのだ。
 しかし完全に避けきれるものではなく、『真ん中の人』の肩に被弾し、その装甲を粉砕して弾け飛ばす。黄金の欠片が空を舞い、地面に降り注ぐ。そしてすかさず、アウルム・アンティーカはソラスティベルから距離を取る。渾身の一撃を放った後のソラスティベルにそれを追って、斧の間合いを保つ余力はない。

「やられましたな。ですが、覚えましたぞ勇者殿。次は借りを返しましょうぞ」
 距離を取り、離脱を開始するアウルム・アンティーカ。動きを読まれた今、再び接近して攻撃を叩き込むには、至難である。それを理解しているからこそ、見送るほかなかった。
 大魔王を撃退し、その身体に確かなる傷を与えた。だがまだ、まだ勇者と呼ばれるには足りないと、ソラスティベルは思う。 
「まだ、一歩及ばない。でも絶対に、相応しい勇者に私はなる!」
 サンダラーが与えた傷に満足はしない。ファーストダンジョンの最深部に待つ大魔王をこの手で倒し、勇者となるため。彼女の成長と戦いは終わらない。

成功 🔵​🔵​🔴​

天道・あや
早速大魔王登場!?…と思ったら姿が違う…?…成る程、第一形態。…戻れるの!?う、うーん、流石魔王(?)…でも、やることは変わらないか!…例え何形態だろうと何形態あろうと…全部倒す!いざ…勝負!

【ラジカセ】の音量MAXで敵の演奏を聴かないようにガード!…は厳しいかもだけど軽減!(激痛耐性)
そしてラジカセを持ちながら敵の動きを【見切り】…そしてタイミングを…演奏って事は曲の音が低くなったり、止まったりする瞬間がある筈!その時にすかざす【レガリアス】をフル稼働させて敵に【ダッシュ、ジャンプ】で接近!そして【サウンドウェポン】を構えてUC発動!(歌唱、楽器演奏、属性攻撃雷)

次はあたしの歌の番!


大神・零児
本来なら戦闘で耳を塞ぐべきじゃねぇんだが
魔導楽器群の音色はマルチギアイヤフォンの集音機能をオフに、ノイズキャンセラーオン
両耳に付けて外部の音をシャットアウトする事と狂気耐性で対処

マルチギアとC-BAの機能をリンクさせフル活用、第六感、野性の勘も使い、戦闘知識、世界知識からも情報を引き出し敵の動きのパターンや思惑等の情報収集をし攻撃タイミングをはかる

飛翔するなら体当たりも警戒し敵を常に視覚かマルチギアやC-BAの各種センサーで捕捉し続け、見切りで繰り出される攻撃を回避

なるべくおびき寄せ、早業のフェイントで敵が体制を少しでも崩すように見切りで回避

体制を崩したらUCで多対一にしてボコる

アドリブ共闘可



 蒸気科学実験施設の、奥まで撤退してきたアウルム・アンティーカ。ここまで来たということはかの大魔王が徐々に王手に追い込まれつつある証拠でもあるのだろう。だがそれでも『真ん中の人』は笑う。
「はははっ、猟兵はやりますな。だが戦争とはこうではなくては!」
「タノシイ! タノシイ!」
 戦いこそ大魔王の本懐。闘争こそ、その行動原理。知恵を持とうともそれは変わりはしない。そんな愉悦に包まれた大魔王に、UDCアースのアイドル、天道・あや(未来照らす一番星!・f12190)と黒き人狼、大神・零児(人狼の妖剣士・f01283)が挑む。
「早速大魔王登場!? と思ったら姿が違う……?」
 あやがその機械仕掛けのアウルム・アンティーカに対して驚いてすぐに首を傾げているを見て、ため息代わりに零児が答える。
「予知のこと言っているならあれは第三形態だ。こいつは第一形態。話、聞いていなかったのか?」
「成る程、第一形態……戻れるの!?」
 あやが納得したかと思えばまた驚きに変わる。その表情がコロコロを変わるのを見て零児は息を吐く。これが戦い前の雰囲気とは思えない。
「うーん、流石魔王? でも、やることは変わらないか! 例え何形態だろうと何形態あろうと……全部倒す!」
「その結論に至れたなら上等だ。ただ、戦るだけだ」
 そんなやり取りを傷を自動修復しながら聞いていたアウルム・アンティーカは、話が終わったようなので口を開く。
「終わりましたかな、愉快なお嬢さん方。吾輩達はいつでも」
「律儀な魔王だ。その余裕、崩してやるよ」
「いざ……勝負!」
 あやと零児が戦闘態勢に入ったと同時にと、『上の頭』が動く。角が指揮棒のように動き、魔導音楽群が稼働し始める。奏でられるは敵を殲滅する魔曲。
「キケクルエ! キケクルエ!」
 絶対奪命皇狂曲。聞く者の正気を奪い強力な魔の音。さらにその耳を揺さぶる音は三半規管はおろか、内臓にもダメージを与える。まさしく破滅を呼ぶ楽曲である。
 これに対し、あやはヘッドフォンを付けてラジカセにセットし音量MAXで、敵の演奏を聴かないようにガードする。そして零児はマルチギアイヤフォンの集音機能をオフに、ノイズキャンセラーにオンにする。奇しくも両者共に聴覚を犠牲にしながらの戦いを選ぶ。
「本来なら戦闘で耳を塞ぐべきじゃねぇんだが」
 零児が呟く通り当然、五感の一部を塞ぐ不利もあるが、強力な絶対奪命皇狂曲は有効な策である。だがその強力な音はそんな対策をこじ開け、侵入してくる。
「このくらい……耐えられる!」
「この程度で正気を失っちゃあ、この妖刀の主とは言えないんでな!」
 あやは内部を揺さぶる激痛を耐え、零児は精神を侵す音に抗う。それぞれが強さを見せる中でアウルム・アンティーカは高速で飛翔しながら動かない二人を爪で狙う。
「皇狂曲を耐えますか。ならばこちらはどうですかな」
 その両腕から繰り出される爪の攻撃。それをあやは目を動かして敵の攻撃を見切り、回避。さらに零児は視覚をマルチギア、外部知覚をC-BAに増幅させリンクさせることにより攻撃を回避。そして敵の動きを読み切りパターンを分析し、妖刀「魂喰」で反撃の斬撃を繰り出す。
「ほう、この状況で反撃までできますか!」
「スゴイ! スゴイ!」
 賞賛を送るアウルム・アンティーカを冷徹に観察しながらも、さらに敵の動きや情報を読み取ろうとする零児。絶対奪命皇狂曲は奏で続けられており、依然と状況は不利。だが反撃はできるはずだと、爪を黒剣「黒鞘」で受け止める。
 そして交戦している零児の横でわずかにラジカセの音から入り込む音に変調を感じ取るあや。演奏である以上、曲の音が低くなったり、止まったりする瞬間がある。そして交戦に意識がいくことにより曲の威力が落ちているとあやは判断する。そのタイミングを見逃さなかった。
「心が痺れるようなあたしの思い! 聴かせてあげる!」
 つかさずインラインスケート「レガリアス」をフル稼働し、圧縮空気で一気に加速。そのまま飛翔し、サウンドウェポンを構える。そして放つは「サンダー!ミュージック!(ビリビリノバリバリノドッカーン)」。
「いっくよーー! いぇーーい!」
 身体はおろか、心まで響くような大音量の音楽。痺れる音楽は電撃の力を纏い、絶対奪命皇狂曲の間曲を縫ってアウルム・アンティーカに響く。その感電に一時硬直が発生する。
「ナイスだ、絶対に生きては帰さん」
 この隙を零児が見逃すはずもない。すかさず能力「悪夢顕現「結界崩壊」(ビャウォヴィエジャノモリノカタストロフ)」を発動させて、万色の稲妻と詠唱銀の雨を頭上に降らせる。その数多くは硬直により多く被弾し、黄金の装甲が傷つけられる。だが真骨頂は、外れた詠唱銀達だった。
「ぬう、これは……」
「ユウレイ! ユウレイ!」
 そこに現れしは無数の武装した抗体ゴースト達。異世界の戦力が顕現し、さらに零児にも力が溢れる。
「だから言っただろ、生きて帰さんって」
「あたしも忘れてもらっちゃこまるよー!」
 あやは演奏でさらにアウルム・アンティーカを縛ろうとする。今度止められてこの集団に攻囲されれば、多大なる被害を被るのは必定であった。
「多勢に無勢。戦略的撤退が無難ですな」
「ニゲルガカチ! ニゲルガカチ!」
 そう言って『真ん中の人』は魔導砲を地面に撃ち込み、崩壊させ二人の態勢を崩した隙に、一気に空まで飛翔。戦闘地域からの完全離脱を鮮やかに果たしたのだ。
「……やれやれ、大魔王ってのは厄介だな」
「でも、これって勝利だよね! いえーい!」
 飛び去って逃げていくアウルム・アンティーカを見てピースサインをするあや。そんな無邪気な姿を見て、やれやれと首を振る零児であった。ただこの戦果は確実に勝利へと、大魔王へと近づいていく結果となるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ナイ・デス
喰らうもの、世界を喰らい尽くしたい大魔王。その第一形態。上の頭、真ん中の人、腹の口、さん、ですか
私は、猟兵。世界に選ばれたらしい、世界を守るもの、ナイ、です
お腹、空いているのですよね?なら……食べさせて、あげましょう!私も、食べますが!

【念動力で自身吹き飛ばし空中戦】突撃
【覚悟、激痛耐性、継戦能力】
先制攻撃を受け、完全にか、完全にではないか、破壊されて発動する
『未だわたしは此処にいる』

光から私が現れ不意打ちの【鎧無視攻撃】黒剣鎧の刃で【串刺し零距離生命力吸収】する光が、喰らう

何度壊されても、壊さない無力化戦術されても、自ら死んで
未だわたしは此処にいる
演奏も
既に死ねない狂気に染まってる
止まらない


フェルト・ユメノアール
うーん、ボクが言うのもなんだけど大魔王にしては随分ファンシーな風貌だね
でも油断はしないよ
世界の平和とみんなの笑顔を守るため、絶対にキミを倒してみせる!

相手の演奏を妨げられないなら、それ以上の音でかき消すよ
イッツショータイム!
ボクは手札からスペルカード、【熱狂の遊戯舞台】を発動!
エリアにいる味方ユニットの能力をアップさせる!
魔導楽器による精神攻撃を歓声で軽減し、いつもの『パフォーマンス』時のように気分を高揚させて耐えきる

そして、『トリックスターを複数投擲』して攻撃
さらに白鳩の姿に戻した『ハートロッドを動物使い』で操り相手の行動を妨害
その隙に相手の真下に潜り込み、『カウンター』の一撃を加えるよ



 稲妻と銀の雨、そして電撃のごとき演奏は確実にダメージとして残っていた。その肉体損害を冷静に分析しながらアウルム・アンティーカは自身の領域を飛翔する。すでに逃げ場はないかもしれない。だが果てるにしても戦場の上が大魔王たる彼の望むところだ。
「それに吾輩を狙う輩にはまだ困りそうにはありませんしな」
 そう言って視線の先には、二人の猟兵。本体不明・死ねども死ねずのヤドリガミ、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)。明るき道化師少女、フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)。彼女達は損害の蓄積がわかるアウルム・アンティーカの威容を見ても、決して油断はしない。
「喰らうもの、世界を喰らい尽くしたい大魔王。その第一形態。上の頭、真ん中の人、腹の口、さん、ですか」
「如何にも、吾輩達は大魔王アウルム・アンティーカであります」
 無垢な真紅の瞳で話すナイに、『真ん中の人』は丁寧に答える。そんな中でも自動修復機能を稼働させる狡猾さも見せているが、フェルトは頭をひねりながら、大魔王を見つめている。
「うーん、ボクが言うのもなんだけど大魔王にしては随分ファンシーな風貌だね」
「お褒め頂き光栄ですな。そういうあなたはエキセントリックな風貌ですぞ?」
 そうだよねー、と言わんばかりに明るい笑顔で返すフェルト。そんな中で、ナイは表情を変えずに言葉を紡ぐ。
「私は、猟兵。世界に選ばれたらしい、世界を守るもの、ナイ、です」
「なるほど、ナイ殿。では吾輩達に挑むのですな」
 こくんっと縦に首を振るナイ。それにこたえるようにフェルトも真剣な顔つきになる。
「油断はしないよ。世界の平和とみんなの笑顔を守るため、絶対にキミを倒してみせる!」
「なるほど。では吾輩達は世界を壊すために、あなた達を倒すと致しましょうぞ!」
「はらへった、はらへった」
 『真ん中の人』がナイに対して、発射口を定め、すべてを破壊する真紅の光線を放とうとする。だがナイは一切動じずに戦闘態勢を取る。
「お腹、空いているのですよね? なら……食べさせて、あげましょう! 私も、食べますが!」
 そして問答無用の光線が放たれる。猟兵ならばとんでもない行動をとる、とアウルム・アンティーカは警戒していたが、真紅の光線はナイの心臓を貫き、その身体を破壊する。ゴフッと血を吐き出し、なけなしの力を振り絞って飛翔し攻撃を使用とするが、無慈悲の光線がナイの頭を吹き飛ばし、そのまま熱線で斬り刻み、五体バラバラに念入りに破壊される。
「終わりですか、ナイ殿。残念ですな、ではそちらのあなたは鎮魂歌を捧げましょうぞ」
「シネ! クルエ!」
 フェルトはナイの死に呆然としそうになるが、すぐに絶対奪命皇狂曲の対抗策の能力を発動しようとするが、相手の方が早い。『上の頭』の指揮棒の元、恐るべき正気を奪う魔曲が奏でられる。それに精神を蝕まれ、身体の内部を揺さぶられていくフェルト。
「うっ……ぐっ……!」
「油断はしないと言いましたが、全力を尽くしても勝てるとは限りませんぞ?」
「そう、だから死んだからといって、生きていないとは限らない」
 そのさきほど聞いた死人の言葉に『真ん中の人』は意識を傾ける。その聞き覚えのある声の方角にあるのは光。そしてその中から死んだはずの、確かに殺したはずのナイが現れたのだ。そしてその場所はアウルム・アンティーカの死角、背後だ。
「未だわたしは此処にいる」
 そしてそのまま黒剣鎧の刃を大魔王の身体に突き立てる。完全なる不意打ちの一撃。演奏も続けながら、『真ん中の人』は驚愕する。
「馬鹿、な! 確かに殺したはずでは!」
「わたしは本体が壊れたら死ぬ。でも本体はこれではない。肉体は死んでも、また再生する。それが、わたし、ナイ、です」
 これこそナイの「未だわたしは此処にいる(フェイタルムーブ)」。瀕死でも死すらも超越し、敵を殺す能力。だがアウルム・アンティーカはその黒い刃がさらなる破壊に向かう前に行動を開始する。
「なるほど、死なず殺さず、されど死ねないようにすればよろしいのですな!」
 絶対奪命皇狂曲の音波を飛ばし、ナイを一瞬怯ませた後、腕の爪で両腕を切断する。そしてその後拘束して死なないようにすれば完璧である。だがそれを許さない存在がいた。
「イッツショータイム! ボクは手札からスペルカード、熱狂の遊戯舞台を発動!」
 皇狂曲の演奏から一瞬でも逃れたフェルトは、能力「<スペルカード>熱狂の遊戯舞台(エキサイティング・エンタメフィールド)」を発動。幻影の観客と煌びやかな舞台が召喚される。そして観客の歓声により魔曲を押し戻し、このエリアにいるナイとフェルトの能力を上昇させる。
「派手な真似をしますな!」
「まだまだ、ショーはこれからだよ!」
 皇狂曲とステージの熱狂が拮抗している間に、フェルトは派手な装飾が施されたダガー「トリックスター」を数本投げる。それと同時にハートロッドを白鳩に戻して、相手に飛ばす。トリックスターを腕で叩き落す大魔王だが、飛んできた白鳩に視界を遮られ、一瞬視線を切ってしまう。
 フェルトはその視線が切れたのと同時に、マジックのように死角に滑り込む。狙うは真下からの死角の一撃。そして奇しくも舌を噛み切って再び再生したナイが光の中が出現するのと同時タイミングだった。
 フェルトの白鳩が手元に戻り、ハードロッドとなり、強烈な打撃を舌の口の顎に叩き込む。顎がひび割れ、そこにナイの黒剣鎧の刃が刺し込まれる。鎧を砕く一撃は、『下の口』の顎を完全に破壊したのだ。
「おでいふぁい、おでいふぁい」
「くっ、ここまでですか……。ですがまだ終わりませんぞ!」
 砲撃は不可能になった『下の口』の不利を悟り、『真ん中の人』はこのエリアの最奥へと逃げ込む。不死のヤドリガミに、強化ステージを持つピエロ少女。この場で相手をするには被害が大きくなると判断してのことだ。
「何度壊されても、死ねない。だけど、あなたには死がある」
「もう逃げられないよ、大魔王」
 逃がした獲物は大きいが、安くない傷を与えた。あと少しであの黄金の機構を止めることができる。その勝利を手繰り寄せる機会を作った二人は、死が待つであろう大魔王の行く先を見つめていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ウィリアム・バークリー
【ボーダー】3名

さすが大魔王の風格ですね。だからといって呑まれるわけにはいきません。
「全力魔法」で「オーラ防御」を「範囲攻撃」化して、三人を音響攻撃から防御します。

今回は飛べないと著しく不利。「空中戦」で飛行して、大魔王の突撃を「見切り」ながらIcicle Edge(氷の「属性攻撃」)で反撃します。
長々と眠っていた古の大魔王に、『今』の力を見せつける!

同行二人が攻防の中心になったら、急いで「高速詠唱」するElemental Cannonの仮想砲塔を形成、スチームエンジンで補助しつつ、「全力魔法」で『腹の口』めがけて魔力砲弾を叩き込みます。

レン、カズマ、そっちは大丈夫!? ぼくも戦線復帰するよ!


レン・ランフォード
【ボーダー】の皆と参戦
三位一体の魔王、私達三人で打倒します
ウィリアム君、瀬尾さん頑張りましょう!

相手が変身して音を放つタイミングを「見切り」
「破壊工作」用の爆弾を起爆させ音の相殺を狙います
勿論耳は塞いで更に「狂気耐性」と「激痛耐性」で耐えます

飛翔による体当たりなどは「第六感」と「野生の勘」で察知し
伏せたり「ジャンプ」したりで回避します

凌げたら天羽々斬を発動し、自分も「空中戦」へ
十六の刃を楽器と角めがけて射出し「武器落とし」
自分も接近し武器で攻撃と見せかけ通り過ぎる「フェイント」二人への援護とします
攻撃が決まったら更に私も後ろから「暗殺」するように「だまし討ち」です


瀬尾・カズマ
ボーダー3人参加です

ウィルー!防御魔法サンキュー!
UC発動。ニョグを影から召喚。ニョグをどぷりと沼のように広げ、影沼からクラーケンのような大触手群を生やす。俺も先制攻撃は触手を壁のようにして相殺狙うぜ。
蓮たちは空中戦か。大触手を足場にしたり、落ちる二人をキャッチしたり、攻撃の盾になったり、飛翔した敵の足を引っ張って動きを止めたり。サポート専心。隙あらば攻撃加勢もするけど。役割理論コレ大事。アンタならわかるだろ、魔王陛下。我ら三人と御身の三位一体、最後に笑うのはどっちかな。

いいぞ二人ともぶちかませ!!道は俺が開ける!!
俺のことは気にすんな。死んでも支援は緩めねえ

アドリブ・共闘歓迎



 ついに出陣した拠点に戻ることになってしまった大魔王アウルム・アンティーカ。ここは蒸気科学実験施設の最奥。かつて大魔王第一形態が眠っていた場所でもある。
 稼働したからには意味がある。大魔王として戦い切らなけばならない。そしてそれはここに来た猟兵達によって果たされようとしている。それが自身の勝利でない可能性が大ではあるのだが。
「だがそれも悪くはないかもしれませんな、『上の頭』殿」
「マダマケナイ! マダマケナイ!」
 そう言ってすでに焼石に水になった損傷箇所を自動修復していると、ここにまで猟兵が乗り込んでくる。喫茶店「ボーダー」からここに乗り込んできた猟兵、ウィリアム・バークリー(ホーリーウィッシュ/氷の魔法騎士・f01788)、レン・ランフォード(近接忍術師・f00762)、瀬尾・カズマ(ニョグダノオトシゴ・f25149)の3人である。
 同じ場所から、同じ気持ちで大魔王打倒へと戦場へと赴いた猟兵が3人。そこにいるのは手負いの大魔王。だが最後の力ほど、最も油断ができない底力を発揮するものなのだ。
「さすが大魔王の風格ですね。だからといって呑まれるわけにはいきません」
 幾多の猟兵に傷を負わされてようとも、衰えない戦気。それにウィリアムは敏感に反応する。だが碧眼で大魔王を見据えて視線から決して外さないレンは決して怯むことはない。
「三位一体の魔王、私達三人で打倒します。ウィリアム君、瀬尾さん頑張りましょう!」
「おう、任せろ!」
 その激励にカズマは陽気に答える。その身体には怪物「ニョグ」を宿しており、身体から時々不定形なものが蠢いている。そんな3人を見て、『真ん中の人』は笑う。
「はっはっはっ、連携で吾輩達に挑みますか!」
「カエリウチ! カエリウチ!」
 そして『上の頭』が角を振るい、数々の猟兵達を苦しめた絶対奪命皇狂曲が始まる。もはや正気を奪うどころか消し飛ばす、内臓も破裂させるが如き、強烈な音調の演奏。外敵を滅ぼさんとするアウルム・アンティーカの本気が今、現れる。
 それに対し、ウィリアムが即座に防御魔法を範囲展開。防御のオーラをドーム状に構築し、破滅の音から二人を守る。さらにレンも破壊工作用の爆弾を準備する。
「ウィルー! 防御魔法サンキュー!」
「ですが、高速攻撃にはついてこれますかな!」
 これに対し、アウルム・アンティーカは皇狂曲を演奏しながら、高速飛翔して爪による引き裂き攻撃を敢行する。それによって音が近くなり防御魔法でも防げないほどの音量になるかと思われたが、大魔王が近づく瞬間に、レンが破壊工作用の爆弾を起爆させ、その爆音を持って魔曲を遮る。そして爪による攻撃はカズマが影より召喚した触手を束にして盾にすることで防ぐ。
「やらせるかよ」
 一旦足止めようのように手に触手を掴ませるカズマだが、もう片方の手を振り回して触手をバラバラにされてしまう。チッと舌打ちしながらも、カズマは自身の役割を果たそうとしていた。
「サポート専心。役割理論コレ大事って奴だ」
「ナイス足止め、瀬尾さん」
 カズマの防御の隙に、レンが能力「風纏・天羽々斬」を発動させ、空中に飛翔する。そして自在に飛翔する十六の刃を魔導音楽群に向けて射出して、パイプや楽器を壊しにかかる。刃が突き刺さるたびに皇狂曲が弱まっていく。
「ぬう、『上の頭』殿の素晴らしき音楽群達が!」
「まだまだ! Icicle Edge!」
 魔術によって空を飛翔したウィリアムによって、極めて低温の氷柱の槍の雨が降り注ぐ。それらが命中して凍結をすれば、高速に動くレンが動いてくるだろう。故にアウルム・アンティーカは緊急回避し、皇狂曲を結界の要であるウィリアムに向ける。
「あなたが脱落すれば、この連携は崩れますな」
 『真ん中の人』の指摘通り、ウィリアムの防御結界がなくなれば、皇狂曲を防ぐ手段はなくなる。だからこそカズマに迷いはなかった。ウィリアムの盾になるように前に立ち塞がり、その爪を身体を張って止める。
「コイツタテニ! コイツタテニ!」
「アンタならわかるだろ、魔王陛下……我ら三人と御身の三位一体、最後に笑うのはどっちかな……」
 そして身体に蠢くニョグの触手をアウルム・アンティーカに絡めて動きを封じ、さらに締め上げるカズマ。
「いいぞ二人ともぶちかませ! 俺のことは気にすんな。死んでも離さねえ!」
 それによってレンが高速飛翔して、アウルム・アンティーカの背後を取る。日本刀「クレセントムーン」とビームソード「オーガクラッシャー」が狙うは、頭部の一撃必殺の攻撃。だが最後の防衛手段と言わんばかりに背後の魔導砲を発射しようとする。
 だがカズマが最後の力を振り絞って、ニョグの触手を飛ばし、魔導砲の砲門を曲げる。エネルギーが暴走した機関が爆裂を起こし、それによってカズマも空中に投げ出される。そしてその爆裂の合間にクレセントムーンが『真ん中の人』のコメカミに突き刺さり、オーガクラッシャーが「上の頭」を粉砕する。
 そして機関の爆発に巻き込まれた機体を氷柱の槍の束で貫いたウィリアム。顎を粉砕され、機関爆発で瀕死だった『下の口』もこれで完全に機能を停止することになった。
「見事、ですな。三位一体、見事でした……ぞ」
 そういってボロボロになって崩れていく黄金の機体。表情を窺い知ることはできなかったが、最後の様子からしてもアウルム・アンティーカは戦いには満足していたのかもしれない。

「レン、カズマ、そっちは大丈夫!?」
「私は大丈夫。それより、投げ出された瀬尾君を助けないと!」
 アウルム・アンティーカの滅びを見届けたウィリアムとレンの二人は、地面に墜落したボロボロになっているだろうカズマの救出に向かう。
 同じ三位一体であっても、身体が別の方が優れている。そして絆も強いということを見せつけた3人。そして多くの猟兵達の健闘が、大魔王の一角たる黄金の蒸気機械王打倒に繋がったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月05日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アルダワ魔法学園
🔒
#戦争
🔒
#アルダワ魔王戦争
🔒
#大魔王
🔒
#アウルム・アンティーカ
🔒
#オブリビオン・フォーミュラ


30




種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト