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Alice in despair

#アリスラビリンス


 それは、醜悪な怪物だった。
 獅子のような足、人のような腕、鳥のような翼、恐竜のような顎に鼠のような頭。歪な獣の集合体、いわゆる合成獣(キメラ)のような見た目をしたそれは、半開きになった口から唾液を振りまきながら、地面を抉るように蹴りつけながら、一人の少女を追いかけていた。

 少女は走る。
 なぜここにいたのか、ここに来る前は何があったのか、果たして自分は何者なのか。
 その全てを知らずとも、この状況から脱するべく、為すべきことは理解していた。

 扉を見つける。
 それがこの状況、自分を追いかける怪物から逃げ延びるための唯一の方法だった。
 きっとそうすれば、この絶望的な状況から脱出できる。生き残り、元の家に帰ることが出来る。
 ――――そう、思っていた。

 ズキリと、頭が痛む。逃げ続けていた足が止まる。
 逃げれば助かる。家に帰ることが出来る。絶望的な状況を脱することが出来る。
『本当に?』
 どうして自分はこんな場所に来たのだったか。なぜ助かるのだとわかった上で、足が止まったのか。
 一際頭が痛み、その理由を理解した時。
 少女はその場に崩れ落ちた。
 自分はもう、救われないのだと――――


⚫グリモアベースにて
「さて、いつも通りみんなに仕事の依頼よ」
 普段通りの口調で、龍崎・紫苑(人間の剣豪・f03982)は猟兵達へと話を始めた。
「今回の予知で見えた世界は、アリスラビリンス。オーガに襲われているアリスを、みんなに助けてもらうわ」
 それは、大して違いのない、今までと変わらない依頼だ。
「――――ただ」
 ここだけ聞いたのであれば。
「少し、様子がおかしいのよ。アリスも、オーガも。アリスは普通の子達とは違って、命からがら逃げ回っているわけじゃない、オーガもアリスのことを噛み殺そうとしてる訳じゃない。
どうも……アリスにオーガが語りかけてるような……そんな風にもみてとれる」
 本来、アリスはオーガにとって目の前に転がり込んできた玩具兼食事だ。
 弄び、喰らう、それだけの認識と解釈してまず間違いない。
 過去にはデスゲームにアリスを参加させ、弄んでいた事例もある。
 しかし、今回はそのような訳では無い。
 語りかける、対話を試みている。
 オーガがアリスに対し好意を感じた事例もある故、その可能性も考えられる。
 または、アリスに何らかの異常が見られるか。
「詳しいことは、予知じゃよく分からなかったけど、それでもこのアリスとオーガが他の者たちとは様子が違うのは確か。みんなにはその調査もお願いしたいの。
アリスを助けることには多分、必要なことになるだろうから……」
 猟兵達にそれが可能だろうかと、少し不安を感じはする。しかし、送り出す側の自分が猟兵たちを信じずに誰が信じるというのか。
 両頬を平手で叩くと、目は覚めたとばかりに猟兵たちへ向き直る。
「君たちならきっと、今回の事件も解決してくれるって信じてる。だから、行ってらっしゃい」
 大層な言葉は要らない。
 ただ信じて送り出せばいいのだと、アリスラビリンスへのゲートを開きながら、紫苑は笑みを浮かべ、猟兵たちを送り出したのだった。


篠崎涼牙
「この2ヶ月何してたの?」と聞かれれば、試験やらなにやらがあり、あと11月の圧倒的物量の執筆に疲れ果ててサボってました。お久しぶりです、大体2ヶ月ぶりの篠崎涼牙です。

 復帰初回の舞台はアリスラビリンス。なにやら不穏な雰囲気のアリスをこの世界から救い出すのが主目的となります。
 ただし、今回は普通に扉へ連れていくだけではありません。アリスの心も救う必要があります。
 言葉での説得はもちろん、アリスが『救われたい』と思えるような態度を示すのも一つの手です。

⚫第一章『『真の姿』魔法少女マスコットの怪物』
 ボス戦です。
 最初アリスを追いかけていた醜悪な怪物、その正体は魔法少女のマスコットの真の姿です。
 このオブリビオンはアリスではなく、目の前の脅威となった猟兵たちを標的として攻撃を放ってきます。
 アリスは戦場に近づくことなく、アリスラビリンス内を放浪しているだけなので、まずは怪物を倒しましょう。

⚫第二章『籠の鳥のアリス』
 冒険フェイズです。
 アリスは心を閉ざし、自らのユーベルコードで檻を作り出し、外界からの干渉を拒絶します。
 アリスへと語りかけ、心を開かせてから、籠を破壊し、アリスをユーベルコードの中から救い出しましょう。

⚫第三章『墜ちたアリス』
 集団戦です。
 自分たちの扉に辿り着けず、オブリビオンに堕ちたアリスたちが、アリスを世界から逃すまいとその行く手を阻みます。
 アリスへと飛んでくる攻撃を捌きながら、扉へとたどり着きましょう。

 サポートプレイングは時間があれば採用、執筆します。
 友人や仲間と参加される場合は、『相手』、もしくは『グループ名』を記入した上でプレイングをお願いします。

 かっこよく執筆出来ればいいなと思っているので、是非ご参加ください! お待ちしてます!
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第1章 ボス戦 『『真の姿』魔法少女マスコットの怪物』

POW   :    食べる食べル食ベルタベルゥゥ!
真の姿を更に強化する。真の姿が、🔴の取得数に比例した大きさの【怪物達と融合した姿】で覆われる。
SPD   :    絶望ノ刻
レベル分の1秒で【対象をあと一歩の所まで追い詰め、とどめ】を発射できる。
WIZ   :    君ノ力ヲ解放シテアゲルヨ!
自身からレベルm半径内の無機物を【侵す触手が、攻撃した対象を悪堕ち魔法少女】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
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アリス・ラーヴァ
※アドリブ・連携歓迎

アリスちゃんを助けたらいーのねー?
アリスと同じ名前なんて、どんな子なのかしらー?
仲良くなれるといーなー。

(敵に出会い)
ひぃっ!なにこの怪物達ー!
あの大きなお口でアリスを食べるつもりなのねー?
みんなー、たすけてー!(『アリス』の妹達成虫+幼虫を大量に呼び出す)
みんなで協力して(【団体行動】)やっつけるのー、鋏角で【串刺し】にて【傷口をえぐり】ながら【マヒ毒】を流しこむのよー。
がんばってー、【激痛耐性】と【継戦能力】で敵の攻撃を我慢して戦うのー。
(怪物の融合に対して)
いやー!こわーい!(パニックになり敵に噛みつき、ビッタンビッタンしながら【ダッシュ】で駆け回り周囲を【蹂躙】)


イフ・プリューシュ
アドリブ・絡み歓迎
POW

まあ、なんて愛らしさのかけらもない姿なのかしら!
マスコットっていうのは、こういうかわいい存在であるべきなのよ!
イチイ、ムスカリ、アマリリス!その子たちを捕まえて!

金の杖をふるって、おともだち達を操るわ
【フェイント】や【踏みつけ】なんかを駆使して追い込むわね
どうしても捕まえるのが難しいようなら、攻撃して弱らせるのもありかしら

それにしても、語り掛ける……って、何をしようとしているのかしら?
一応話を聞いて、何かアリスについて分かればいいのだけれど
何も話してくれないようなら、【デッドマンズ・スパーク】をおみまいするわ
……腕は飛んでしまうけれど、怖がらせないように早めに治すわね



 猟兵たちがワープを終え、最初に見た景色はおよそ人ではかたどれない、地面を抉ったよような跡だった。
 そして、グリモア猟兵に送り出されるのは事件の現場からそう離れてはいない。
 つまり、
『アリス、アリス? ギャハハハハ!?』
 少女を執拗に追いかけていた元凶、醜悪な怪物、魔法少女に付き従うはずのマスコットの成れの果ての姿が、そこにはあった。
「ひぃっ!? 何この怪物たちー!!」
「まぁ! なんて愛らしさの欠けらも無い姿なのかしら!」
 ある程度その姿を予想、妄想していたのだろうが、そのどれもが予想を裏切られた様子で、アリス・ラーヴァ(狂科学者の愛娘『貪食群体』・f24787)とイフ・プリューシュ(あなたの『生』に祝福を!・f25344)の二人は開口一番、そう言葉をこぼした。
 息つくまもないが、いかな猟兵であれどそんな状況は日常茶飯事だ。
「みんなー! 助けてー!!」
 アリスは叫び、仲間でもある妹たちを呼び出す。
「マスコットなら、このくらい可愛らしい存在であるべきよ! イチイ! ムスカリ! アマリリス!」
 イフもそれに続き、金の杖を振るい、ぬいぐるみたちを呼び出した。
『ギャハハハハ!? ギャハハハハ!?』
 それを見てなお、怪物は下卑た笑いを続けるだけだ。コミュニケーションの余地はなく、猟兵たちを迎え撃つ気満々のようだった。
「怖い怪物だけど、でも負けないのよ! いくよみんな!!」
「その子達をつかまえて!」
 二人の声を皮切りに、アリスの妹たちとイフの操る友達が、マスコット目掛けて迫っていく。
 狂ったように笑い続けるマスコットに臆せず、一際巨大なマスコットへと妹たちと友達が肉薄していた。
 妹たちは、鋏角での突き刺しはマスコットの体に切り込み、その肉を抉り喰らっていく。
 マスコットと言えど痛覚はあるのだろう、雄叫びを上げながら身を捩り、振り払おうと地団駄を踏む。
 その地団駄を掻い潜りながら、マスコットの上に飛び乗ると、その背中を蹴りつけ、踏みつけていく。
「話は……聞いてくれなさそうね……!」
 会話を交わすことは無い、そう判断したイフは片腕を構え、手のひらをマスコットへと向ける。
「危ないから、離れてね!」
 その言葉に、妹たちもぬいぐるみたちも危険を察知したらしく、マスコットからゾロゾロと逃げていく。
 そして、マスコットが異変に気づいた時には時既に遅く、片腕の破裂とともに稲妻の奔流が放たれる。
 時間にして一瞬、閃光が放たれたと思った時には既にマスコットの全身は焼けただれていた。
 しかし、他の取り巻きのマスコットがその傷口に触れると、粘土と粘土を捏ねて混ぜるように、ぐにゃぐにゃに歪み融合していく。
 確かに、マスコットに対し痛手をおわせ追い詰めてはいたが、その結果より凶悪に、より醜悪な容姿となってマスコットはその場に健在していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シエナ・リーレイ
■アドリブ絡み可
とても可愛らしいわ!とシエナは『お友達』候補に微笑みます。

『お友達』を求め彷徨うシエナ
ある意味狂い切っている彼女はどんな醜悪な見た目の相手でも親愛と好意を向けます
そんな彼女を利用しようとマスコット達が触手を伸ばします

まずはあなた達だよ!とシエナは『お友達』候補を愛で始めます。

触手により過去の所有者の怨念や人形化と憂鬱の[呪詛]が溢れ出し普段は隠れた仮初を操る繰り手を露わとなる真の姿を晒したシエナ

『お友達』候補と仲良くなる為に触手諸とも[怪力]で愛で『お友達』候補が眠ればユーベルを使い『お友達』に迎えます

あなたも『お友達』になりましょう!とシエナは『お友達』候補を誘います。


クロス・シュバルツ
※アドリブ、連携OK
危険だが、まずは対話を試みたい
念の為【血統覚醒】でヴァンパイアに変身した上で接近

元々はマスコット姿であったのなら、真の姿を表すに至った理由がある?
少なくとも、単にアリスを喰らう為、とは思えないですが

2人の間に何があったのかは分からない、けど
もしアリスに対して思う事があるのなら、その思いを伝えたいから
教えて欲しい

最後まで対話は諦めないが、通じないのであれば覚悟を決める
怪物が相手、なら俺も……怪物として戦います
鎖による【部位破壊】【傷口をえぐる】【串刺し】で動きを抑え込む
敵の攻撃を避けられない時は【オーラ防御】で耐えつつ、厳しければ【ドーピング】による【限界突破】も活用します


マグダレナ・クールー
オウガはアリスを追う、アリスは逃げる
オウガはアリスに語る、アリスは塞ぐ
オウガに訳は聞きません。話はアリスから伺いますので、口を閉じてもらいます

リィー、あれは対話ですか?
《エイギョウトークカ?…ケイヤクハタン!》
ええ、破壊です。押し売りには断りを入れなければなりません
仲間が欲しいのならば、オウガブラッドの胃の中へ導きましょう。喰らってあげます

身を寄せ合った結果を見るに、丁寧に一体一体をと串刺すのは手間ですね…
ですが、気合です。力任せに薙ぎ払い、細切れになるまで刻み続けます
わたくしは攻撃に専念しますので、リィー守護をしてください
《オテスキニ。ツマミグイ。オイシイ!》



「まぁ! とっても可愛らしいわ! とシエナは『お友達候補』に微笑みます」
 融合し、より凶悪な見た目となったマスコットにそう賞賛の声を上げたのはシエナ・リーレイ(取り扱い注意の年代物呪殺人形・f04107)だ。
「…………それには同意しかねますが……対話を試みるのは賛成です」
 自らの肉体をヴァンパイアのものへと変化させ、クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)もそのための準備を完了させる。
『ギャハ! ギャハハハハ!!』
 しかし、語りかけようとも返ってくるのは下卑た笑い声。そして敵意をもって向けられる、触手による薙ぎ払いだ。
「させません! リィー! よく狙いなさい!!」
《オナカガスイタ!イタダキマス!》
 しかしその触手は、対話を試みるという二人のために、後方で待機していたマグダレナ・クールー(マジカルメンタルルサンチマン・f21320)と、その視覚を支配するオーガ、リィー・アールによって、受け止められた。
「すみません、助かりました!」
「ありがとう、とシエナは感謝を口にします」
「感謝の言葉は構いませんから、そのオーガを迎撃してください!」
 マスコットは、触手を受け止められた事に気づくと、怒り狂ったように触手を周囲へと無差別に叩きつけ始める。
 無差別の攻撃ともなると、その軌道予測も難しくなり、一人一人がその対処をせねばならない。
「……距離を詰めるにも、この猛攻の前じゃ難しいですね……!」
「それじゃあ、シエナに任せて! とシエナは触手の攻撃を請け負います」
 そして、シエナが前進すると触手は狙い済ましたというように、その華奢な体目掛けて薙ぎ払われる。
 しかしそれは振り抜かれることなく、その体で受け止められた。
 気がつけば、シエナの背後にはまるで操り人形を操るような、両の手が出現していた。
 その体に似合わない怪力で、触手をがっちりと抱え、動かないように固定しているのだ。
「ありがとうございます!!」
「行くわよリィー!」
 触手による猛攻が収まれば、いくらでもやりようはある。クロスが鎖を取り出し、マグダレナはリィーへと指示を飛ばす。
 触手が動かなくとも、両の剛爪を振るうことでクロスとリィーを攻撃するが、クロスはそれを紙一重で体を傾け躱し、鎖をマスコットの腕へと絡みつかせ、なお距離を詰め続ける。リィーはその爪を延長させた爪で受け止めて、思いっきりマスコットの腕を弾きあげた。
 マスコットは大きくバランスを崩し、大きな隙が生じるのを確認すると、クロスはその下を掻い潜りながら後方へと抜けると、その背中へと鎖の先端を投擲し、串刺しにし、その行動を制限する。
 思うように動けないマスコットはそのまま転倒し、もがき始めるがそれも次第に納まっていく。
 リィーの酸欠を誘発する泡の影響で、酸素が欠乏し、意識が薄らぎ、気絶寸前へとなっていた。
 そして、動きが止まるとシエナはそのマスコットの元へと歩み寄る。
「……あなたも、わたしのお友達になって!とシエナは特性のおまじないをお友達候補にかけます」
 微笑みながら、そう告げたシエナ。すると、マスコットの体の各所に糸が繋がれ、まるであやつり人形のようになっていき、マスコットのオーガはそのまま息を引き取り、完全にシエナの支配下へと置かれることとなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『籠の鳥のアリス』

POW   :    力ずくで籠を破壊する

SPD   :    錠前を針などで開ける

WIZ   :    鍵を探して開ける

👑11
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イフ・プリューシュ
アドリブ・絡み歓迎
WIZ

こわれた腕はちゃんと直して
怖がられないよう、おともだちと一緒にアリスに語り掛けるわ
この籠を開ける「鍵」は…いったいアリスの心の、どこにあるのかしら?

アリス、アリス。はじめまして、わたしはイフ
こっちは、イフのおともだちよ
こわがらないで、だいじょうぶよ
ここにはあなたを傷つけるひとなんていないわ

ねえ、どうしてアリスは、籠の中になんているのかしら?
鳥籠の中には、安らぎがあるわ。それはイフも知っているの
世界には、こわいものもいーっぱい、だもの
でも外には、素敵なものもたくさんあるのよ、ほら

UCを使って、癒しの白い花弁を降らすわ
少しでも、アリスの気を引けないかしら



 まるで鉄格子のように並ぶ鉄柱の隙間から、少女は外の世界を傍観する。
 理解出来たのは二つ。
 この世界は自分がいた元の世界とは違うこと、そして鉄柱……この巨大な鳥籠の外に群がり、牙を剥き出しにしている怪物たちは私のことを目当てにしていることだ。
 私に戦う力はない、かと言って鳥籠が破壊される心配はない。
 こうしてただ一人、孤独を過ごしていればきっといつかは終わりが来る。それで問題は無い。膝を抱えて、顔を埋めて、それが訪れるのをただ待ち続ける……
「…………あら、可愛らしい服を着ているのに、俯いてしまっては台無しよ?」
 どこかふわふわとした、それでもどこか芯の通った声が耳に届く。気がつけば、群がっていた怪物たちの姿はここにはなく、白い花弁を纏った少女を先頭に、ひとつの集団がそこにはいた。
「……あなた達は……?」
「イフ達は……そうね、あなたを救いに来たヒーロー、みたいなもの。ここには怖いものがいっぱいあるでしょう? だから助けにきたの」
「…………救けに……」
「えぇ、そうよ」
 この鳥かごから出ていらっしゃい? そう少女……イフは私に手を差し伸べる。
 私は、手を伸ばし返そうとして、やめた。
「……いいよ、私はこのままで」
「あら、どうして?」
「…………助けて貰っても、元の世界に帰っても、もう居場所なんてないから」
 イフは、その言葉を聞くと、不思議そうに首を傾げた。
 助けると言ったのに断ったのだから、不審に思うのも仕方はないから、当たり前の反応と言える。
「…………あの人が言っていたのは、こういうことだったの……」
 ボソリと、イフは呟く。
「……居場所がない、あなたがそう思う理由を教えてもらえないかしら?」
 追求が来るのは、予想外だ。
 でも、話してもどうすることも出来やしない。私はここから出られない。だから、話すことにした。
「…………私は……人を殺したの」
 取り戻した記憶にあった、自分の罪を。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 アリスの少女――霞瑞希(かすみ みずき)の家庭はそれなりに裕福で、金銭面での不自由はほとんどなかった。
 しかし、家庭環境は良好とは言えなかった。
 両親と瑞希、そして姉の四人で暮らしていた。
 しかし、姉が才に恵まれていた事で、両親は妹の瑞希にそれを求めていたのだろう。
 瑞希も優秀でこそあったが、姉のそれには遠く及ばないものだ。両親は姉妹を比較し、姉を出来のいい娘と溺愛し、瑞希を出来損ないとして、娘としても見ることがなくなってしまった。
 それでも何とか暮らしてこれたのは、姉が両親の比較など気にせず、可愛い妹として、瑞希のことを見ていたからだった。
 両親が瑞希への悪態をつけば、姉がこれを庇ってくれる。
 それを恥ずかしく思ったことがある、けれど姉は唯一自分を家族として見てくれる、そして唯一自分が家族と思える人であったことに違いはなかった。
 
 そんなある日。
 姉との帰宅時間が偶然同じになり、二人で歩きながらの帰宅途中のことだった。
 学校であったことや、テストの点数が良かったなどの会話をしている最中、突然に姉に瑞希は突き飛ばされた。
 なぜそんなことをされたのか、それは数瞬後に嫌でも理解することになった。

 歩道に突っ込んできた乗用車、大きくはね飛ばされおびただしい量の血を流す姉。
 姉が自分を庇った、その事実を気づくのに時間はかからなかった。
 目撃していた人が救急車を呼んだのかもしれない、それとも自分で呼んだのかもしれないが、ともかく、意識がない姉に付き添い救急車に乗り、病院へ向かった。
 病院から連絡を受けた両親も慌てて駆けつけた。
 姉は一命を取りとめた。ただ、意識を取り戻す可能性はほとんどないと、そう医師に告げられたそうだ。
 その時に言われた両親からの言葉は、脳裏に焼き付いている。
『事故にあったのがお前だったら良かったのに』『お前があの子の未来を奪った、未来を殺したんだ』
 
 そこからの記憶は曖昧だ。
 ただ、自分を認めてくれる姉を失い、両親からもそんなことを言われてしまった。
 絶望感と虚無感に打ちひしがれ、ただ夜の街を彷徨い、辿り着いた高台からその身を投げた。
 もうこの場所に自分の居場所は無いのだと、そう諦めて。
クロス・シュバルツ
※アドリブ、連携OK
あのオーガからは、何があったかは聞けず終い、ですか
アリスから、何かを聞けると良いのですけど

俺と彼女の境遇は全く違うだろうけど
ただ、彼女の絶望には、何処か共感できるところもあります
上手く言葉に出せないけれど、救ってあげたいと思う

……これまで何があったとしても。何かを失ったとしても
救われてはいけない人なんて、いないと思う

何を言っても、最後は力づくで壊すしかない、というのも嫌な話ですが……
鎖を自分の腕に巻きつけて、血を吸わせる
【ブラッド・ガイスト】を発動
鎖を束ねて、鋸刃の剣に変形。鋸を使って、少しずつでも檻を削っていく
例え望まない、余計なお世話だと言われても。引きずり出す



「姉さんは目覚めない。その原因となった私をあの人たちは認めてくれない、それどころか嫌悪してる。そんな世界に私の居場所はない。そして救われる価値もない、救われても何も変わらない」
 だから、救いなんて要らない。
 こうしてここで、朽ち果てるのを待っていた方がいい。
「…………その気持ちは、わかる気がします。」
 私の話を聞き終えると、青年――クロスがそう呟き、言葉を続けた。
「僕も、似たようなことを経験しました。世界も、実際の状況も、違いますけど、誰からも認めて貰えず、大切なものを失うその絶望感を、少しは、理解できます」
「……なら、分かるでしょ、私は救われる必要なんて……」
「それは違います」
 キッパリと、クロスは私の言葉を否定する。
「僕はあなたでは無いから、あなたの気持ちの全てを理解することはできません。でも、救われる必要がない、その価値がない。それだけは、ハッキリと否定できる」
 ただ強く、それが真実であるように、確固たる信念を持ってクロスは告げた。
「まだあなたのお姉さんは死んでしまった訳では無いんでしょう? そしてまだあなたも生きている。手遅れではないはずです」
 それから、クロスは鎖を腕に巻き付ける。
「……『ブラッド・ガイスト』」
 言葉と共に、鎖が徐々に真紅に染まっていき、その形を剣へと変化させた。私がそれを見て呆然としていると、クロスはまた口を開く。
「あなたのお姉さんは、あなたを救うために命を張って庇ったんです。あなたにはそれだけの価値があるんです。だからその命をここで無駄にしないでほしいと思う」
 真紅の、鋸刃をもつ剣を構える。
「例えあなたが望まなかったとしても、あなたのお姉さんが信じたあなたの価値を無駄にしないために、あなたをここから引きずり出します」
 檻に向け、剣を振り下ろす。本来ならただ弾かれるだけの剣が、その鋸刃くい込み、その骨組みを抉り取っていく。
「…………私は……」
 そうだ、姉さんは私を救おうとして、事故にあった。
 なのにそれを私が諦めてしまったら、無駄になってしまう。
 それになにより……
「…………まだ、ありがとうを言えてない」
 命を救ってくれたこと、一緒に家に帰ってくれたこと、妹として接してくれたこと。
 それにまだ、感謝の言葉を伝えられていない。
 ここではまだ……私は死んじゃいけない。
 途端に、ギャリィ!と、金属が削られる音がする。
 クロスの剣が、鳥籠を構成する鉄柱の一つを斬った音だった。
 この籠に出口はない、あとはこの人達に、これを壊してもらうしかない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

名切・水無子
色々聞く必要は…もうなさそうですねぇ
でもみなこから、ひとつだけお聞きしますねぇ
あなたはお姉さんを愛していますか?…む、赤面しなくてもよろしいのでは。はい、愛ですよぉ?まぁ目を見れば分かりますけど、愛です。
あなたのお姉さんはあなたを愛していますよ。でなきゃね、命を賭すなんてふつうは出来ません。家族だから、妹だから?なんであれ、根底にあるのは「愛」です。あなたは愛されています、これは揺るぎようのない事実です。
もう一度お聞きします、あなたはお姉さんを愛していますか?

答えがなんであれ、刀を構えてUC発動
「捨て身の一撃」なので破片が飛んだら大変ですからぁ
ーーーさがっててくださいね



 金属同士が擦れ合い、酷いノイズが鳴り響く。紅の軌跡が幾度も振るわれ続け、鳥籠を破壊しようとその一部を抉り続ける。
 そんな光景を、何度繰り返しているだろう。
 気がつけば現れていたこの鳥籠は、おそらく私の世界を拒絶する心が具現化したものなのだろう。出口はなく、破壊も困難だ。こうして、外に出ると決意を固めても、その差異は微々たるものだった。
 その間、こうして私は眺めることしか出来ない。それが酷く、不甲斐ない。
「……色々話を聞き、説得する必要は……もうないようですね?」
 剣を振るい続ける青年の背後から現れた少女――名切・水無子(忘蝕妄愛・f23915)は、瑞希に語りかけるよう口を開いた。
「でも、一つだけ。みなこからお聞きしますね?
あなたは、お姉さんを『愛して』いますか?」
「あ、愛し……っ」
 突然の質問に、思わず狼狽する。そういったことを意識したことがなかった分、不意打ち気味に放たれた言葉に、赤面してしまう。
「む、赤面しなくてもいいのでは? ……でも、見れば分かりますわ。」
 確認したいものが見れたとばかりに、水無子は深く頷いた。
「あなたのお姉さんは、自分の命も顧みずに妹であるあなたのことを庇い、重症を負ったのでしょう? それが『家族愛』であれ、『親愛』であれ、少なくともあなたのお姉さんはあなたを『愛して』います。これは、揺るぎようのない事実です」
「…………姉さんが……?」
「はい、そうです。では、もう一度お聞きしますね? あなたは、お姉さんを『愛して』いますか?」
 しばし、思案する。
 家族の中で唯一、私のことを家族として見てくれた。才能の有無ではなく、霞瑞希という人間として認めてくれていた。
 そんな姉に、私が感じていたのはきっと――
「……私は……、姉さんのことを『愛してる』」
 まだ、それがどういう類のものなのか分からないけれど、姉とともにすごしていた時に感じたあの暖かい感情はきっと、愛なのだろう。
「……えぇ、えぇ」
 再び、水無子が深く頷く。
「それでは、少々本気を出しましょう」
 右膝を曲げ、左足を後ろに。腰に溜めるように刀を置き、体を捻る。
「破片が飛んでは危険ですから――――少し、離れていてくださいね?」
 そして、張り詰めた弦が切れたように、全身を酷使して刀が引き抜かれ、鳥籠めがけての一閃が放たれる。
 幾本もの柱がその一撃を持って両断され、鳥籠の損傷は非常に大きくなっていた。
 私が外に出るにはまだ少しスペースが足りないが、あと一息と言ったところだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マグダレナ・クールー
希さん。貴方は、誰も殺してはいません。事故に合っていい人間はいません
決して貴方ではない。勿論、貴方のお姉さんでもありません
痛かったですね、心を傷つけられて。居場所がなくなるのは、つらいです

……此処を出る決心がついたのですね。では、わたくしは籠をこじ開けます
大丈夫ですよ、心優しきアリス。家には帰らなくていい。お姉さんに、会いに行きましょう
眠っていても言葉は届きます。伝わります。だから、大丈夫です
一緒に行きましょう。わたくしたちが貴方を扉の先へ送り届けます



「……ここを出る決心が、ついたようですね」
 渾身の一閃を放った少女を後ろの方に下がらせながら、籠の方へと女性――マグダレナ・クールー(マジカルメンタルルサンチマン・f21320)は片手にハルバードを握り、歩み寄ってきた。
 ハルバードの間合いまでたどり着くと、その足を止める。
「わたくしの方からも一つ、お話させてもらいますね」
「…………」
 他の三人に比べると、少し大人びている印象を受けた私は、もしかしたら説教が始まるのかもしれないと、少し身構えながら、先を促した。
「そんな警戒なさらないでください、少し、お節介を言いたくなっただけです」
 そんな私の様子を見て、何を考えてるのか察したようで、少し苦笑しつつ言葉を紡ぐ。
「瑞希さん、貴女は誰も殺してはいません。
事故にあっていい人間もいません。ましてや貴女が事故にあっていいわけもありません」
 あぁ、私はきっと慰められているんだな。
 言葉を聞き、どこか安心するような感覚をおぼえて、初めてそう気づいた。
 憐憫などではなく、同情でもなく、ただそんなことは無いと、優しく教えてくれている。
「……それでは、箱をこじ開けます」
 軽く腰を落とし、ハルバードを脇に構える。
 深く呼吸をして、体を引き絞る。
 一歩踏み出し、体を捻る。二歩踏み出し、ハルバードを振り上げる。
 三歩目、振り上げられたハルバードが鳥籠へと激突し、鉄柱がひしゃげていく。そして、振り抜かれたハルバードにより、既に傷ついていた鉄柱が砕け散った。
 あまりの衝撃に思わず蹲り、耐える体勢をとったが、破片が飛んでくることは無かった。
 少しして、肩を叩かれる。顔を上げると、その手の主はマグダレナだった。
 それから、首に手を回されると、優しく抱擁された。
「……痛かったですね、心を傷つけられて。居場所が無くなるのは、とても辛いです」
 優しく、背中を叩かれる。それは、私が辛い時に姉がしてくれたものと、よく似ていた。
 まるで自分の中の枷が壊されたようだった。必死に押し込めていた自分の感情が決壊して、外に流れ出す。
 気がつけば、私は泣いていた。声を上げて、年甲斐もなく泣いていた。今まで溜め込んでいたものを、全部吐き出すように。
 その間も、マグダレナは優しく、抱きしめてくれていた……

「もう……大丈夫……ありがとう……」
 ひとしきり涙を流してから、マグダレナをの腕から出ると、涙を拭った。
 今になってみると、少し恥ずかしい。
「……大丈夫そう……ですね?」
 そんな私を見て、マグダレナは微笑むと、手を差し伸べる。
「それでは、一緒に行きましょう。心優しきアリス。あなたの扉がある場所へ。
家に帰らなくてもいい、お姉さんに、あなたの気持ちを伝えに行きましょう?」
「……うん、行こう」
 私は覚悟を決めると、マグダレナのその手をとる。
 きちんと、言葉で感謝を伝えるんだ。
 そう改めて決心して、マグダレナたちと共に、現実世界へ帰るための扉がある方向へと、走り出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『墜ちたアリス』

POW   :    アリスラビリンス
戦場全体に、【過去のアリス達の「自分の扉」】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD   :    永遠のお茶会
【アリス達が手づから注いだ紅茶】を給仕している間、戦場にいるアリス達が手づから注いだ紅茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    地獄の国のアリス
自身の【記憶と身体】を代償に、【自身を喰べたオウガ】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【鋭い爪や牙】で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

⚫とあるアリスの心境変化
 私――霞瑞希には戦うだけの力はない。アリス――と私のような人間は言うらしい――である私に齎された異能力は、先程のような『世界から自分自身を隔離する鳥籠』を生み出す力だった。それも破壊されてしまった今では何の役にも立たない。
 けれど、それは私がこの現状を受け入れるという意志を持ったことだと、猟兵の人達は言ってくれた。
 だから、後悔はしない。ただ目標へ向けて突っ走るだけだ。
マグダレナ・クールー
アリス。アリス?
リィー、あれは、アリスですか?オウガですか!?
《マヨエルモノニ!マズソウ……イラナイ!》
また、迷える者ですか。……わたくしは、瑞希さんを扉の向こうへと送るのです。それを邪魔するならば、殺すまで
喰いはしません。オウガだとしても、アリスだった者ならば
迷える者には救済を。堕ちた者には破砕を

迷路は、厄介ですね。素直に出口を求めて走り抜けますが、道中に出会った者は全て串刺しにしていきます
迷路を攻略する際、一度通った道には目印として壁を傷つけ、印を残しながら進みます。硬度があっても、引っかき傷くらいは残ると思うのです

瑞希さんは、大丈夫です。扉へと迎える貴方なら、きっと



 鳥籠を破壊し、私の感覚を頼りに扉のある方角をめざし、走っていく。
 周りには味方である猟兵の人達が、私を無事に送り届けるべく、周囲への警戒をしていた。
 走った距離は、分からない。けれど、相当走ると、扉までの距離がそう遠くないことを、感覚が知らせてくれた。
「――――止まってください!」
 突然の声に、全員がその足を止める。
 声の主――マグダレナ・クールーは一歩前へ進むと、真正面に群がるような影を見据えた。

 それは、ケタケタと笑うように肩を震わせながらそこに立っていた。
 見た目は純新無垢な少女だが、その表情がまるで人の温かみを感じさせないようなものだった。言うならば、笑顔の仮面を貼り付けたような、酷く冷めたものに感じられた。
 
「……アリス……? リィー、あれは、アリスですか?」
《マヨエルモノニ!マズソウ……イラナイ!》
 マグダレナは小さく相棒へと問いかけると、否定の言葉が返ってくる。
「……つまり、オーガですね」
 武器を構える。
 敵を前にしたのならば、以下にどんな理由があろうとそれを見過ごすことは出来ない。
 なにより、この先に扉があるというのだから、それを無視することは出来なかった。

 しかし、そう簡単にはことは運んでくれないようだった。
 地面が揺れる。地面が割れる。
 まるで天変地異でも起きてしまったように、それは現れた。
 地面を割り、這い出してきたのは所狭しと並んだ扉。救われるアリスを妬む堕ちたアリスが作り出した、希望を阻む嫉妬の具現。
 その道のりを阻む迷路だった。

「そう簡単には行かせてくれないようですね……」
 しかし、足を止めてはいられない。
「行きますよ瑞希さん」
「わ、わかった……」
 不安になりながらも、手を引かれて迷路の中へと飛び込んでいく。
 幾度も現れる曲がり角、待ち伏せる堕ちたアリス。手に持つハルバードを一閃し、切り伏せながら奥へと進んでいく。
 行き止まりにたどり着くと、そこに傷をつけ目印をつけていく。

「…………やっぱり、無理なのかな」
「……瑞希さん?」
 長い、複雑な迷路で思わず私は弱音を零した。アリスである私を妬み、こうして阻むものがいるというのは、想定外だ。
 このままじゃ、現実世界に戻れないのではと、そんな漠然とした不安が襲ってきた。
「……大丈夫ですよ、瑞希さん」
「……え?」
「貴女は、扉へと向かうことが出来るアリスです。自分の境遇とも向き合えた、強い人です。貴女なら扉へとたどりつける、私たちがそれを手助けします」
 マグダレナはそう言うと、軽く頭を撫でると、高らかに宣言した。
「レジスタンストレーニングです。負荷をかけて脂肪を削ぎ落しますよ、リィー」
《ダメイットニ!!ザハンパツ!レジスタンス!!》
 握られていたハルバードがひび割れる。
 けれど劣化では無い、幾重にも施されたその封印が破られていく様子だった。
 少しして現れたのは、刃毀れたポールアックス。
 全力を出した彼女を筆頭に、一行は迷路攻略を再開した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロス・シュバルツ
※アドリブ、連携OK
ここに至る迄に使ったUCの代償もあり、少しふらつくけど、まだ倒れる訳にはいかない
彼女を無事に送り返すまでは

この守りながらの戦いは……傍にいるのも離れるのも危険な、嫌な状況だ

【闇夜の翼】を発動、上空から迷路を覗けないか試す
飛べば目立つし、その分注意を惹けるだろう
飛べるならば、他の猟兵も案内しつつ、一気に堕ちたアリスの元へ向かう
飛べない場合は警戒しながら少しずつ進む

もう救えない存在であっても、無意味な甘さでも。不要な苦しみは与えたくない(【部位破壊】等、一部技能は封印)
中距離から鎖で牽制しつつ、一気に近づいて黒剣で攻撃
被弾は【オーラ防御】で軽減しつつ【激痛耐性】で何とか耐える



 しばらく迷路を攻略していたけど、結果としてまだ抜け出すことが出来てはいなかった。
 迷路の複雑さ、敵の多さもそうだが、通路の幅がそこまで広くはないのも影響していた。
 虱潰しに通路を一つ一つ潰していれば、消耗が激しくこの迷路をぬけてからが辛くなる。
「……やるしか……ない」
 集団の中にいた青年――クロス・シュバルツはポツリと、呟く。
 ここにたどり着くまでに使ったユーベルコードの代償が体を蝕み、その足取りは少しだがふらついていた。しかし、決意を固めたように声を張り上げる。
「俺が飛んで、上空から迷路を見ることが出来るか確認してきます! もし出来なかったら、先にオーガ達の元に向かって引き付けておくので、その隙に攻略を!」
 他猟兵の返答を聞かぬまま、その身に闇を纏うと跳躍、そして空中で翼を展開し、飛行を開始した。
 迷路から脱出したクロスの姿を、迷路を展開しているオーガたちが捉えると、まるで非難を浴びせるように呻き声が響く。
 しかしそれを意に介さず、迷路の正しいルートを猟兵達へと伝え、攻略していく。邪道であるが、背に腹は変えられない。
 しばらくすると、迷路の通路が変形する。正確には、新たに扉が追加され、上空からの観察を阻む天井が生成されていく。
「あと少しで出口です、そっちは頼みました!」
 最後まで案内できなかったのが心残りだが、大きな時間短縮にはなった。

 思考を切り替えると、迷路へ進行しようとするオーガの一団の中心へと、黒剣を振り下ろしながら『着弾』した。
 衝撃を周囲に撒き散らしながら、オーガを見すえる。
「貴女たちは、もう救える存在ではないけど。せめて苦しまずに眠ってください……っ!」
 救われることのなかったアリス、たとえそのあり方が分かってしまったとしても、無用な苦しみを与えるのは心が痛む。
 改めて剣を構えると、地面を蹴り剣を振るう。こうして誰かを傷つけることが無くなるように、そんな思いを胸にひめながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベルベナ・ラウンドディー(サポート)
「戦闘は得意な方に譲りますよ」

竜派ドラゴニアンの青年
テンパるとラフになる以外、基本は穏やかな物腰
銀河帝国の密偵技術を基礎に剣技、バイク、独学の結界術など多岐に渡る技能を有する
所以に偵察や破壊工作など非戦闘行為こそ出番と自覚し
かたや戦闘は手早く最小限、譲りがちです
ヤンチャだった過去はうしろめたく
あまりに力量差があると説得や降参を促し、逃走も許すタイプの甘さです


●特徴として
その場で起きた過去の出来事を映像用の炎に映し出せるユーベルコードの使い手です
設定や背景の描写する際の進行役や
或いは敵や参加猟兵の強さや設定などの説明素材としてもお役立てください


ブリッツ・エレクトロダンス(サポート)
黒豹キマイラのハッカー&EDM系DJです。
キマイラフューチャーの旧人類が遺した遺物(レリック)には結構興味があります。

得意分野:音楽(EDM)、電子機器や蒸気機械のハッキング、SNSを辿ったりする情報収集

ユーベルコード:
・「敵の攻撃を迎撃、攪乱、妨害」「味方の援護」など、攻撃的・防御的なサポート戦術を使う傾向があります。
・また、疾風神雷による衣服の全損を躊躇わない傾向もあります。

行動面:
・多少の(怪我などの)リスクで大きなリターンが得られるなら躊躇はしません。
・割と常識人、というかツッコミ陣営です。

その他注意事項:
・マタタビを与えてはいけません。大きなにゃんこになってしまいます。



「いくら、なんでも……キリがありませんね……」
 黒剣を握る青年は既に、息を荒らげていた。
 それもそうだろう、たった一人で何十人、下手をすれば百人にも達する数を一人で相手取っていたのだから。
 それでもなお、きっと迷路を抜けてくるだろう仲間たちを待ち続け、屈する様子はなかった。
 しかし、いかな猟兵といえど、万能という訳では無い。距離を詰めるべく踏み込んだ足が縺れ、膝をついた。
 ―――しまった! そう思った時には時すでに遅い。ふらりと現れたアリスが大きくその腕を振り上げる―――
「セヤァ――――――ッ!!」
 裂帛の気合いと共に突き出されたのは、硬い鱗に覆われた竜の腕だった。予期せぬ事態に反応しきれなかったのか、防御体制を取ることもなくその一撃を受けたアリスは大きく吹き飛ばされる。
「……間に合ったようですね」
 そこに居たのは二色の髪をもつドラゴニアン、ベルべナ・ラウンドディー(berbenah·∂・f07708)だった。
 膝を着く青年に手を貸し、立たせると少し後方に下がっているように伝える。
 既に彼は十分役割を全うした、ならば後は自分たちに任せてもらうべきだと、判断したのだ。
「後ろで見ていろ、という訳ではありません。私たちが道を作ります、そしたらあの少女を扉の前まで連れて行ってください。お願いできますね?」
 道を開くには、それなりの戦力がいる。そして少女に万が一のことがないようにするには、それが最も合理的と判断したのだ。
 黒剣をにぎる青年も、反論することはなく頷き、後ろはと下がっていく。
「よぉブラザー、作戦会議は終わったか?」
 入れ替わりのように現れたのは、黒豹のキマイラ、ブリッツ・エレクトロダンス(★3:クロヒョウDJ・f01017)。
 合流した猟兵たちと共に、前線へとでてきたようだった。
「ええ、この人数相手にできる限り有効な作戦です。貴方にも協力してもらいますよ」
「おっと、そりゃあ責任重大だ。だが任せな、俺ァ本番に強い男だぜ?」
 そして、作戦を告げられたブリッツは笑みをこぼす。
 だが、「力任せ」なその作戦、嫌いではない。
「それじゃあ早速始めようぜ!! 突発ライブ開始だぁ――!!」

"セキュア" ユーベルコードキャプチャー

"コンテイン" ユーベルコード強制収容領域

"プロテクト" ユーベルコード隔離領域

 ブリッツの合図とともに戦場を覆うように展開されていくのは、『ユーベルコードを無効にするユーベルコード』
 無数に展開されるそれらは目下にいるアリスたちを冷徹に見据えていた。
「対ユーベルコード封印プログラム! 起動するぜ!!」
 その掛け声とともに一際強く輝く俺らを、飛翔する竜が『鷲掴む』。
 掌握。
 ユーベルコードを掴み、干渉するユーベルコード。
 展開された無数のそれらを一つのユーベルコードとして見なすことで、いっせいに掴むことを可能にした後に、急降下を開始する。
 全弾必中が条件となるならば、叩きつければ問題ない――!
「でぇりゃあ!!!!」
 迫真の声ともに、プログラムはアリスたちへと侵入、その内部のユーベルコードを司る部位を麻痺させる。
 貼り付けた薄い笑みは絶えることは無いが、しかし自由の効かなくなったように錯覚するアリスらは、どこか困惑気味にも思えた。
「動きが止まっている今がチャンスです!! ブリッツ!!」
「任せなブラザー!!」
 そして暴風が吹き荒れ、雷鳴が轟く。
 その発生源はブリッツの肉体だ。体を雷鳴が包み込み、風を纏っていく。
「俺の名にて命ず、吠えろ!!『疾風迅雷(シュトルムブリッツ)』!!」
 直後、その姿が掻き消えると同時に、その一直線上のアリスが次々と破壊されていく。
 高速の一撃を、自らの衣服を犠牲とすることでさらなる加速を実現し、文字通り道を切り開いていった。
「さあシスター!! 今のうちだ早く行け!!」
 こじ開けられた道が見つかれば、それを埋めさせんと他の猟兵たちも前線へと向かい、道を塞ごうとするアリス達を食い止める。
 そしてその隙に、黒剣を握る青年は少女の手を引いていく。
 烈風、爆音、雷鳴、咆哮。
 様々な音が、力が吹き荒れるその場所を駆け抜けた二人の前にあったのは巨大な扉だった。
 青年が触れても開かない、鍵は少女の想いなのだから。
「……ありがとう、助けてくれて」
 少女は感謝を伝える。青年は多くを語らず、小さく頷いた。
 そして少女は扉を押し、眩い光が扉から漏れ出て――――――

「…………色んな人に、助けてもらったんだ」
 自分の不可思議な体験を、少女――瑞希は病床に伏す姉の手を握りながら、そう呟いていた。
 自分は不必要なものなんかじゃないと、必要としてくれる人がいるのだろうと。
 多くの人が手を取って、励まし、こうして帰ってくることが出来た。
「……私、頑張るね。姉さんの代わりとか、そういうのじゃなくて。両親(あのひと)たちを見返せるように、認めて貰えるように、姉さんの妹じゃなく、霞瑞希って人間として……」
 手を握る。
 それは、新しく固めた決意の表明。
 助けてくれた人たちへの、恩返しになればいいなと思いながら。
『…………応援……してるよ』
「…………えっ?」
 か弱くも、握り返されたその手に。
 瑞希は顔を上げると、微かに笑みを浮かべ、涙を零した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アト・タウィル(サポート)
『どうも、アトです。』
『ふふ、それはどうも。』
『私にできることなら、なんなりと。』

ねじくれた魔笛≪Guardian of the Gate≫を携え、ふらっと現れる女性。性質は大人しく、いつも笑顔を浮かべているが、その眼は深く開いた穴のように光を写さない。大体平常心で、驚くということがあまりない。その代わり、空気は読むので、必要に応じて驚いたふりなどはする。

戦闘では、魔笛を用いてUCを使う。音楽系はもちろん演奏で、サモニングガイストもそれに合わせて現れる形。ミレナリオ・リフレクションでは、相手のUCが剣などを使う場合は必要に応じて武器としても使う。

後はお任せします、自由に使ってください



「…………帰すことは、出来たようですね」
 失われた扉を見て、アト・タウィル(廃墟に響く音・f00114)は呟く。
 任務としていたアリスの救出は、成功した。
 本来なら帰還するのだが、それこそ無数に存在する堕ちたアリスがそれを許さない。
 戦い続ける猟兵達にも、疲弊の色が見え隠れしていた。
「……さて、心を救ったあの子がいないなら、全力を出すのは問題ないでしょう。少々手荒ですが、狂わないでくださいね」
 戦場にいる仲間たちへか、はたまた自分自身にか。
 呟いたアトは、魔笛を奏でる。
 それは聞くものを狂気に陥れる魔の旋律、命なきものを変質させる狂気の音色。
「人を操るものは狂気…私の見たものをあなたに……『狂気の操り人形(クレイジー・パペット)』」
 それは、破壊されたアリスたちへと向けられる。
 もの言わぬ彼女らの体は歪み、変質し、その体からは無数の触手が現れる。
 救うべき相手がいるのだから、こんな猟奇的な絵面は見せられない、そんな配慮から自重していたユーベルコード。
 さぁ、終わらせましょう、この戦いを。
 微かな声とともに、触手たちはアリスたちへとその手を伸ばす。
 少女の救出、その影の功労者として、彼女は賞賛されるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年04月13日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス


30




種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ポーラリア・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト