アルダワ魔王戦争1-A〜私はわたし、あなたはだあれ?
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グリモアベースの片隅に、肆陸・ミサキ(孤独に苛まれる者・f00415)は居る。
持ち込んだ椅子に座り、脚を組んで手を重ねて置き、やって来た猟兵を見てニヤリと笑った。
「や、待ってたよ。魔王、倒しに行くんでしょう?」
ぴょい、と降りて、ぴしっと指を立てたミサキは言う。
「いいかな?」
一言の前置きを入れて、少女は状況を淡々と語り始めた。
「僕が導くのは、出口のわからない迷宮。一見するとただの一本道で、たまーに十字路とか曲がり角とか、そういうのがあるよ」
もちろん道なりに進むだけでは、どこにも辿り着けはしない。壁を右手に歩いていればいつかはゴールに……等と言う、いわゆる迷路的な造形はしていないダンジョンだ。
「道には隠し通路や隠し部屋が点在している。入り口はご丁寧に隠蔽されていたりするし、分かりやすいものは罠だって思った方がいいだろうね?」
そういう、出口が無い通路の出口を見つける。
端的に結論を言うと、そういうことになる。
ただ。
「ただ。いいかい、迷路にはオブリビオンがいる。それも、僕の予知では把握しきれない隠し部屋や隠し通路からの奇襲を得意とするオブリビオンが、だ」
しかもそれは、どうやら敵対した相手に合わせた戦法を得意とするらしい。
集団として現れ、猟兵の使う技を観察し、最適解を計算して相対する。
「まあ、精度の高さはわからないけど、油断しない方が得策だろうね。出来れば奇襲される前に、隠れてそうな所とかわかればいいのだけれど」
と、言葉を一度締め、ミサキはグリモアを取り出してまた笑う。
「いってらっしゃい」
見送りのセリフを最後に、猟兵はアルダワの迷宮へと挑むのだった。
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侵入者の気配を、彼らは見逃さない。
倒すべき相手だ。
これより先、更なる踏み込みは、許さない。
ぴょんぴょん跳び鯉丸
戦争なのでとりあえず、まあいつも通りに。
大体の情報はOPの通りです。
気を付けるべきところは気を付けて、まずは一つ、クリアしていきましょう。
第1章 集団戦
『クローン・ドール』
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POW : ミスリル・ウェポン
【液体金属の体を変形させて作った武器・兵器】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【苦手な間合いや防御・回避・反撃の癖】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD : マインド・コピー
【戦術思考と戦闘経験をコピーすることで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : ミレナリオ・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【正確に全く同じユーベルコード】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
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秋山・小夜
アドリブ、絡み歓迎
コード発動はおまかせします。
「事前情報からすると、かなりめんどくさそうな相手ですね。」
まずは様子見として、周辺を警戒しつつ、80cm超電磁加速投射砲グスタフ・ドーラと超電磁加速投射砲 紫電改で数発弾を撃つ。
数発撃ったら、右に妖刀 夜桜、左に巨大メイス崩山を持ち、近接戦に移行する。時折紫電改を展開して牽制したり、とりあえずとれる手段をとる。
ヤバくなったら逃げます。
ペイン・フィン
さて、と
ダンジョンアタックと行こうか
情報収集、世界知識をベースに
視力、暗視、第六感、聞き耳の感覚強化系技能で、周囲の情報を確認
隠し通路、隠し罠
見えにくい物を見て、耳を澄まし、時には感で対応
また、迷彩、目立たない、忍び足の隠密系技能を併用
なるべく敵に気づかれないように、こっそりと
敵に出会ったら、状況に応じて対応
不意打ちには見切りで対応し
逆にこちらから攻撃できそうなときは、先制攻撃を乗せただまし討ちで
戦闘時はコードを使用
敵が、こちらの思考と経験をコピーするなら
自分では分かっていても対処のしようのない攻撃をするだけ、だよ
拷問具8種を瞬間複製し展開
群れでも単体でも関係なく、範囲攻撃で蹂躙するよ
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迷宮に降り立った小夜は、一息を入れる。
他にも数人、猟兵がいたはずだが、今、周囲に見えるのは多分自分一人だと、そう把握する。
「……説明を噛み砕くと、かなりめんどくさそうな相手、ですね」
目の前と背後には薄暗い一直線の通路。周辺の気配を探ってみるが、小夜にはわからない。
だから、様子見だ。
「ふ……」
二つの銃器を展開。それはどちらも電磁系の物で、正面、貫かせる勢いのチャージを始める。
反動を予測して腰を落とし、引き金となる部位へ手を添えそして、
「待った」
「!?」
その動きを制止する声に、一瞬の硬直を得た。
警戒はしていたし、気配を探ったにも関わらず気付かなかった、自分以外の存在からの接触だ。驚きは一際大きい。
「ここでそれを撃つのは、まだ早いと思う」
それは、小夜より少し早く着いていた、ペインだった。
小夜の行動を止めた彼は、一拍、立てた指を口元に当てて、
「狭い上に、それ、音が大きい。こちらの位置を知られてしまうし、地の理が無いから危険だよ」
言う。
現状ではその武装を活かせない理由と、それから。
「でもこの狭さなら、誘きだした奴等を一網打尽に出来るかもしれない」
使用することのメリットについてだ。
「……ああ、なるほど」
小夜の理解も早かった。そういうことなら、という事もだし、自分がペインに気付けなかった訳もだ。
「隠し部屋が、あるのでしょうか」
よく見れば、いつの間にか横合いに窪みがある。恐らくそこに、ペインが居たのだろう。
直近まで気付けなかったということは、索敵などに関しては、自分よりも格段に上手であるという証拠だ。
「前後からそろそろ来る。通路には、そこまで大きな空白は無かったから数は大したこと無いだろう。だから」
「わたしがこちらで」
「自分がこっち」
背中合わせにした二人の、それぞれの正面に、鈍色の兵隊が姿を表した。
●
現場が狭いと、ペインは戦場を把握する。
相手の奇襲を防ぐのに都合よく、こちらの行動範囲として不服も無い。
だから先んじて動く。元々、時間を掛けると不利になる性質の相手だ。
「攻めあぐねる、というのは、悪手でしかない」
攻める。決定と同時に展開するのは、無数の拷問器具達。
相手の体は液体金属で出来てはいるが、全体的に造形が人に近しい辺りから察するに、
「急所も痛みも、同じだろう?」
指に当たる部分を器具で潰し、関節に鞭打って先端の爪で引き剥がす。
苦悶は見えないが、動きの鈍り方からして推察は概ね正しいだろう。
故に、ペインは続けて攻めた。
相手は群れ。こちらの拷問器具での攻撃を、観察している。
だが、
「だからどうした、という話だ」
戦術、経験、それらをコピーしたとして、ペインの培った歴史と知識に追い付くには、時間が足りない。
膝を砕く器具が頭を砕くし、抱かせる石の重みは腰を潰す。
そういう、付け焼き刃でどうにか出来る範疇に無い。彼は勿論の事、彼女にしてもそうだろう。
「制圧してやるよ」
口調をがらりと変えた小夜は、自分に迫るドールの攻撃を、装備したグスタフ・ドーラで受け止める。
次いで、レールガンの砲先に取り付けた刃で、削ぐように敵を切り付け後ろへ一歩。
「ぶっこめ」
轟撃の一射を叩き込み、下げた足を今度は前へ。
装備は手を離し、空いた手で腰後ろに下げた刀の鞘を握る。
「──!」
踏み込んだ足に重心を掛け、姿勢を落とし、横薙ぎに一閃。ドールを一体両断して、今度は逆の手に掴んだ大メイスの叩き付けで向かって来る敵を頭から潰した。
「こんなもん?」
二人が武装を落ち着かせる頃には、形のあった何かだったものが通路に散乱していた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黒玻璃・ミコ
※スライム形態
◆行動
ふーむ、隠し通路の迷宮とは厄介ですね
こう言う時は【空中戦】の要領で
ほよよんと壁や天井を【念動力】で跳ねながら
【暗視】も可能な素敵な【視力】のお目々では迷宮内の壁の色の違いや
【聞き耳】で音の違いを聞き分けて隠された場所を探して進撃しましょう
厄介な災魔は敢えて【毒使い】で目に付く毒々しい腐食毒を精製し
【範囲攻撃】をするつもりと見せ札にした上で
単調な攻撃の振りをして油断させ
最後は【カウンター】気味に【黒竜の遊戯】による物量で封殺しましょう
とは言え中々に厄介な強敵です
時には【第六感】に素直に従って私自身も緊急回避するとしましょう
◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブOK
清川・シャル
なかなか面倒な能力をお持ちの様ですね
根負けしないように頑張りましょう
苦手な間合い等は無いつもりですが、とりあえずUC発動です
色んな武器を試してみましょう
Amanecer召喚、レーザーと音圧での攻撃
ぐーちゃん零で射撃
そーちゃんのチェーンソーモードで殴る攻撃
桜花乱舞で殴り、氷柱を出し、SoulVANISHでのコンボ
櫻鬼の仕込み刃と修羅櫻での連撃
出来る事を出来る事から臨機応変に
手段は選びません
敵攻撃には激痛耐性、氷盾、見切りに、咄嗟の一撃、カウンターで対応
蛭間・マリア
迷宮に良くない物が封じられているのは、どこも一緒なのね。
肝心なのは、それにどう向き合うかだけれど…それはこの戦争の結果次第かしら。
隠し部屋でも通路でも、閉じていたものを開くには、動かすための隙間が必要なはず。
"蛭間の血液製剤"で"ドーピング"して嵐王憑依を。
嵐を纏った状態で、「小さな隙間を風が通る音」に聞き耳を立てながら進んでいくわ。
敵が表れたら、"投げメス"でけん制したところに暴風を放射、
動きを封じたところを切り捨てるわ。
回避を狙う相手なら、動けない状況を作ってやるだけのこと。
茲乃摘・七曜
心情
迷宮探索…惑わされないように気を付けましょう
指針
Angels Bitsを用い超音波の反響で隠されたものを探る
「不自然に長い通路や高い天井…構造的におかしく感じる場所を災魔の大きさと特徴を考慮して調べましょう
行動
調べ終わった場所に流転の起点となる魔導弾を隠しておき戦闘に備える
移動時は周囲の音に警戒し不意打ちに備え
属性弾を主体とする引き撃ちをしながらの遠距離戦を基本に探索
※近接格闘が不得手でないことを隠匿する
「災魔に囲まれないよう、うまく立ち回らないといけません
対ミレナリオ・リフレクション
事前準備をすることで発動までの時間を相手よりも短縮する
「油断なく準備はきっちりと…着実に進んでいきましょう
リコリス・ミトライユ
絡み・アドリブ歓迎
隠し部屋や隠し通路……壁とかパンチして感触でわかんないかなあ
あたし、鈍感だからムリかも。
薄くなってたら穴が開いちゃうからそれで見つかるかもですし
やるだけやっておきましょうっと。
相手のお人形さん、真似っこするのはいいですけど……。
どこまで真似できるんでしょう。
全部は真似っこできないと思うのですよね。
とんとん、って踵を鳴らして、【ムーングラヴィティ】
あたしでもわかんないくらい、早くなっちゃいますし。
それに、蹴り合いっこならあたしのほうが慣れてますもん。
くるくる、って空中を回って、止まったり、跳ねたり。
上手くタイミングを見計らって
カウンターのキックでキックを叩き潰してあげるのです。
栗花落・澪
【星海花】
なんか僕達もSkyFish団の一員と勘違いされそう
まぁいいんだけどね(苦笑)
屋内だし、高さには限度があるけど
翼の【空中浮遊】で高所の警戒を担当
耳には自信があるからね
【聞き耳】で僅かな音も漏らさず拾い
【見切り】で僅かな変化や違和感も警戒
万一のために【オーラ防御】を纏う
合わせて【催眠歌唱】を響かせることで
潜んでいる災魔を少しでも眠りに誘い
よろめかせることで足音を立てさせる狙い
研究させないためにUCは最後まで温存
敵が襲撃してきたら【指定UC】で分身を出し
ユベコの効果は分身を出すところまで…
ここから先は想定外だよね?
雷の【高速詠唱、属性攻撃】で一斉攻撃!
ちょ、ヘスティアさん煩い聞こえない…!
ヘスティア・イクテュス
【星海花】
大魔王、昔話みたいな存在本当にいたのね…
魔王っていうからにはお宝とかあるのかしら?
さぁ、さくさく進んでお宝入手と行きましょうか!
SkyFish団出撃!
ティターニアで低空を飛行し移動
わたしはアベルを使って熱源探知【情報収集】で奇襲の警戒ね
位置は後方、前に人がいれば苦手な近距離へ踏み込まれるのを避けれるはず…
後方からはタロスでバリア【オーラ防御】を張って壁に
武器はフェアリー等遠隔操作兵器による遮蔽物(前方の二人)を無視しての包囲射撃【一斉発射&援護射撃】
零ーお宝まだー!(聞き耳してる澪の耳元で大声)
天星・零
【星海花】
UC【ウェビル・ジョーカー・オブ・ウィスパー】のウェビルと会話しつつ栗花落さん、ヘスティアさんと行動
指定UCと【戦闘知識+情報収集+追跡+第六感】で弱点死角と地形や敵の行動パターンを全て記憶把握
武器
近接Ø
遠距離グレイヴ・ロウ
星天の書-零-で【オーラ防御】
『あまり傷つけたくはないですが…仕方ありませんね。ふふ…ちょっと熱いですけど頑張ってくださいね』
武器の十の死の『焼死』を司る骸から炎を噴き出させ敵を溶かして行動不能に
・迷路
指定UCの超記憶で全て記憶し、それをもとに出口を探る
また、目印にØで壁または床に傷痕を付ける
『お宝はありませんよ!』
耳元で大声で
召喚UCの口調は秘密の設定参照
フェイフェイ・リャン
白雨(f02212)と一緒にダンジョンアタックするヨー!
隠し通路から不意打ちしてくるらしいネ。
ここは慎重に慎重に。
アルダワ魔法学園の生徒のワタシにとって、地下迷宮はホームネ。このエリアは初見だけど!
ワタシが先導して、白雨には背中を守ってもらうヨー!
戦闘知識からくる予測、第六感による直感、咄嗟の一撃での対処。
後ろを気にせず集中できるから、いつもより安心感が違うネー!
戦闘になれば『屠龍拳』を振るうヨ。ワタシに対応する敵は白雨が叩く。白雨にフォーカスしたならワタシが叩く。ワタシたち相手に二兎を追うつもりなら一兎も捕らえられないアルヨ!
心禰・白雨
フェイフェイ・リャン(f08212)と参加する
作戦だフェイフェイ。
俺達は罠の探知に使える確実な手札はねえ。
だから隠し通路と隠し部屋は敵に動いてもらって調べる。
俺が蜘蛛巣のように通過した道へ上下左右に糸を巡らせる。
後方から来る敵は俺が糸で認識する。
前方から来る敵はお前が推理して対処する。
俺が糸で牽制した物をお前が一発で粉砕する。
お前が先に接敵したら逆に俺が糸で絞め殺す。
そうするりゃあいつ等何も覚える間もなく殺せるさ。いい考えだろ。
アイテムから絹蜘蛛をロープワークで張り巡らせ。
その影にさらにフェイント、赫絲を仕掛け武器受けだ。
ダンジョンで勉強したお前の勘、信じてるぜ!
舘林・祀
隠し通路に隠し部屋……お宝でも締まってあるのかな?
それならちょっとやる気はでるんだけどなぁ
こう、ちまちま1つ1つ確認って苦手なのよね
ひとまず敵の奇襲を警戒しつつ
数メートルおきに壁、壊してみましょうか
崩れないわよね?うん、きっと大丈夫
気合を入れて一撃。穴の先には何が見えるかな?
当たりを引くまでしばらく壊し続けてみますか
そのうち敵さんも登場するんでしょ
アタシの動きを覚えるっていうんなら、覚える間もなく一撃で粉砕すればいいじゃない
≪一撃必殺≫
多少の傷なんて舐めりゃ治るのよ
相手のどてっぱらに穴をあける一撃
ただそれだけを狙って
●
「昔話みたいよね」
と、ヘスティアが言った。
背部に広げたジェットパックのスラスターでふわりと浮きながら、繋げた端末のAIが耳朶に報告を通している状態だ。
「いやほら、大魔王だし」
澪と零の疑問する視線に彼女は、わかるでしょ? の気持ちをこめて言う。
「魔王って言うからにはお宝とか……お宝! さくさく進んでお宝ゲットね!」
テンションが高い。
勢いに乗せて「SkyFish団出撃!」とか叫んでいる。
「なんか、僕達までSkyFish団の一員と勘違いされそう」
苦笑しながら澪は、いやいいんだけどねと呟きを付け加えて飛ぶ。
ヘスティアとは高さを変え、迷宮の高い所に滞空して進んでいく。
「ハッハー仲良しこよしでトレジャーハントってことかぁ!」
「ああ、ええ、こちらも大分、今回は高めで」
そして地上を行く澪の傍らには、ピエロ姿の霊が控えていた。今日の調子は良さそう、いや悪いのか?
「で」
「はい?」
見上げるヘスティアの視線に、澪は小首を傾げる。それから、ああ、と一瞬遅れの理解を示して頷いた。
「まだ、何も聞こえないかな。微かな音でも、余程遠くない限りわかると思うんだけど」
どうだろうか。息を吸い、高音の声を前方へと響かせてみる。
特定の音波で届いた相手に催眠を掛ける、そういう歌だ。
「うーんそっかー……零の方は?」
「さて、こちらもどうでしょうか」
壁にマーキングの傷痕を残しながらの零は、問われた声に薄く笑って、
「ただ、迷うということは無いでしょう。見逃しも無いと、そう思いますよ?」
耳の良さと催眠の澪に、ヘスティアは緩く見えてその実、AIを用いた探知で後方からの支援をしてくれている。
抜けは無い筈だ。
そう自信を持っている。
「あ、違くて」
ふわっと、ヘスティアは零と澪に近づく。
いい? と前置きして、す、と息を吸い込んで。
「お宝はまだなの!?」
「いっ──!」
澪の耳がキーンとなった。
精度をあげるべく神経を尖らせていた為、彼女の声は周りの想像よりも遥かに影響が大きい。
だから、文句を言おうと下を向くと、零がむむっとした表情で口を開いていた。
いいよ、言ってやってくれ。
そう心中で応援して、
「お宝はありませんよ!!」
「ちょ──ッ」
澪の耳がキーンとなった。
「煩くて聞こえないでしょ!!」
怒髪、天を突く。
というわけではないが、しかし、連続した痛みに澪が吠えた。その瞬間。
「──!」
前方から、ドールの群れが押し寄せてきた。
「聞き漏らした……!」
ある意味、恐ろしく良すぎるタイミングだった。
ただ奇襲されたと言うわけではなく、状況としてはイーブンの関係性だ。
だから、ヘスティアは後ろに、零と澪は前に立って、
「よし」
即座の行動を起こした。
「行くよ遮へ、じゃない前衛!」
「今なんて?」
まず、ヘスティアは背面のジェットパック、ティターニアを交差の形に広げた。
内蔵した幾つかの兵器を起動させ、射出の前段階に置く。
「さて、あまり傷付けたくはないのですが、仕方ありませんね?」
同時に、零は骸、焼死の概念が宿ったソレを媒体として、炎を呼び寄せた。
「……じゃあ、一気に攻めるよ。真似も理解も学習も、全部間に合わないくらい、圧倒的に!」
同時。
澪は、ミニマムな自身のコピーを無数に召喚して、面の配置をさせる。
そして。
「行け──!」
足元を灼熱が溶かし、万雷の雷が降り注いで、無数の光線と爆撃弾が空間そのものを圧し潰す事で、大量に居た筈のクローン体を丸ごと、消失させた。
●
軽やかな足取りの二人がいる。
フェイフェイと白雨のコンビだ。
前を行くフェイフェイは弾むように、後ろを付いた白雨は静かに、その歩みを進めていく。
「さあさあ、白雨、慎重慎重に進むネ!」
「おう、ダンジョンで学んだお前の勘、信じてるぜ!」
「地下迷宮はワタシのホームだヨ任せるネ! まあここは初見だけど!」
足取りと同じように、やり取りする言葉も軽やかだ。緊張感が無い、という訳でもなく、気負いすぎず、緩みすぎず、という感じだ。
いい雰囲気だと、フェイフェイはそう思う。
いつ敵との戦闘になるのかわからないというのはあるが、今、全身にかけた力は安定していて、充足感もある。
不足が無いと、そういう安心があった。
そしてなにより、
「邂逅ー……!」
目の前から肉薄してくる相手を見据えて、半身を前に出して構える。
……前に三!
右と左と真ん中。正面から来るドールは加速して、左右の二体はそれぞれテンポを遅らせている。
どれかに対処した隙を突いて、フェイフェイへ一撃見舞う狙いのものだ。
「ふー」
息を吐き切り、腰の高さに構えた拳を軽く握って止める。
前、右、左と来て、
「龍拳──!」
ノーモーションの突きを、眼前のドールに叩き込んだ。
鈍い音が鳴り、めり込んだ拳はドールの体に波紋の揺らぎを与えてから吹き飛ばす。そうして前だけを見続けた彼女を挟撃の手が迫った。
「作戦通りだぜ、フェイフェイ」
だが届かない。極細と張られた糸が一瞬で二体を宙吊りにして固定する。
「ワタシを狙えば」
「俺が絞める」
クンッと引き絞られた糸が、絡んだドールの全身を折り締め上げる。
瞬殺だ。
事を成した白雨はステップを踏むように前へ出て、フェイフェイの肩をぽんっと叩いて追い越し、
「俺を狙うなら」
「ワタシが砕くネ!」
背後から迫ってきていた追加の三体を、仕込んだ糸の巣で捕らえた。
それに対して、フェイフェイは振り返りの踏み込みを一つ。軸足にして、体を回し、気合いと共に上段の回し蹴りを放った。
「さあ、学ぶ間も無く処理していくぞ」
「応ー! 気を付けて進んで行くヨ!」
安定と安心を得た二人は、変わらない足取りで迷宮を征した。
●
ふよふよとした黒鞠みたいだ。
スライム形態となって、転送された通路を念動力で進むミコの姿は、そう言うのが最も適切に見える。
ただそれは、意味や理由の無い遊戯とは違う。
「隠されている、というのは、厄介ですね」
下から上、右に移って左に跳ねる。
時には体をゆっくり回し、来た道の再確認を挟んでまた前進していく。
「部屋が、三つ……通路が二つ、ですか」
いくつかの角度で四方の面を観て、隠匿された箇所を見極めていた。それは、些細な違和感から来る判断だ。
例えば壁面。岩盤で出来ているそれの、途切れた様な不揃いの縦線があれば、それは壁の継ぎ手である可能性が高い。
色が微かに違うとか、自分の出した音の響き方が違うとか、そういう事からも判断は出来る。
「なのでまあ、とりあえず。出てきてもらいましょうか」
そう言いながらミコは、ドン突きの壁に背を預ける動きで振り返った。と同時に、精製したくすむ緑色の粘液体を放射する。
そこに、敵が居た。
液体を想起させる、滑らかな表皮の敵だ。
「む」
そいつは、自身の両腕を平べったい面に変え、こちら、毒液に正面から突っ込む形で肉薄を決行する。
「耐えられると、そういう自信ですか」
なるほど確かに。金属性の体に毒と言うのは、効き目の薄いだろうと知っている。
ただ、そのイメージがある上で毒を使った以上、コレは効き目のある組成であるということをまた、ミコは知っていた。
「──!」
実際、受け止めたドールは思考に驚きと警告を感じることになる。表面を滑る様に流れた液体は、撥水される事なく粘着し、そして即座にその盾をボロボロに変化させた。
「腐食毒です、効くでしょう?」
金属に効くのは錆びだ。何せあらゆる人類が、鉄を可能な限り錆び無いようにと知恵を絞る程、その問題は重篤なのだから。
「まだまだ行きますよー」
ばら蒔く毒が踊る。
複数体居るドールの左右から、散らばるのを防ぐような軌道で、だ。
接触すれば不利を味わうと学習した相手は自然、それを避けて内側に寄っていく事になる。
だから、ミコは薄く笑って、
「拘束制御術式──解放」
迸る強大な魔力、その全てを真正面に指向させ、
「さよなら、だよ」
圧倒的な力で空間ごとをねじ伏せた。
●
「父様、母様……力を貸してください」
金属の重なる音が鳴った。
突き出された鋭い一撃を、シャルがチェーンソーでずらした音だ。
駆動する微少の刃に削られたドールの腕剣は、飛び散ったケツから液体に変わって体へ戻っていく。
……なかなか、面倒ですね。
思考は吐息に変えて捨て、浅く吸い込んだ空気を溜めに前へ出た。
踏み込んだ足に体を預けて前傾し、低い位置で振り抜いたチェーンソーで敵の足を切り離す。次いで、間髪入れずに返す動きで脇下から脳天に向かっての裁断を叩き込んだ。
「っ、ふ、ぅ」
倒した、と、思う。強い再生力があるわけではないドールは、体を分割されたことで活動を停止した、と。
だが一息吐く間も無く、後詰めの個体が目前まで接近していた。
身を捩る動きに、敵は振り上げの蹴りを合わせてくる。直撃を回避はしたが、弾かれたのはチェーンソーのそーちゃんだ。
その、隙とも言える一瞬の無力化に、また別のドールがシャルの横手から行った。
「じゃ、ま……!」
その顔面に、彼女は裏拳を叩き込む。衝撃に、花が咲く様な燐光が舞って、それが散った途端にドールは氷柱に固められた。
「リロード……ファイア!」
シャルは止まらない。袖に忍ばせたパイルバンカーに、魔力を込めたカートリッジをぶちこんで爆発力を瞬間的に上げ、敵に打ち込んで破砕した。
制圧する。
距離を取ったドール達が、息を揃えて金属弾をばら蒔くのを、召喚したスピーカーの音波で防ぎ、反撃のレーザーで薙ぎ払う。
「これで」
アサルト兼ねたグレネードランチャーを腰に構え、装填した12発。
「終わり!」
それを、残ったドール達に直撃と爆風のお見舞いをした。
●
吸い込んだ息を、静かに、大きく吐き出したマリアは、到着した迷宮を見回した。
辺りは、広い空間だ。半円の形をした空洞は、幾つかの道に続いていて、どこかに正解の道があるのか、それとも全てが行き止まりなのか、答えのわからない思考にまた息を吸い、吐き出した。
「迷宮に良くない物が封じられているのは、どこも一緒なのね……」
思うところがある。まあ個人的というか、身内というかだけれど、と。
「けれど、まあ、肝心なのは向き合い方だもの」
ここで自分が考えを巡らせても仕方がないと、マリアは袖を通した白衣を着直して、内側から小袋の血製を取り出した。
小さな口を開いて、喉の奥に流し込んで経口接種。治癒力向上の面、というのもあるが、どちらかと言えば触媒としての意味合いが大きい行為だ。
「吹き荒れよ」
短文の唱えは、彼女の身に風を宿す。それは攻防に役立つ部分もあるが、閉ざされた迷宮内だと違う面での役割がある。
「……聞こえたわね」
風の音だ。
それぞれの通路に飛ばした風は、行き止まりの道を容易く教えてくれた。選択肢を絞った後は運も絡むが、その中で次に優先して選ぶ基準も既にある。
「通路、部屋、いずれにせよ、繋がるのなら隙間があるはずだから、ね」
普通では感知出来ない極小の通り道を、風の流れが教えてくれる。そしてそれが少ない道が彼女にとって都合よく、また敵に取っては隠し場を暴かれたに等しくて。
「だから、終わり」
無造作にアンダースローで投げたメスが、壁の隙間に突き立つ。そして、その奥にいたドール達を、空間ごと吹き荒ぶ暴風が絡み取って揉みくちゃにしてバラバラにした。
●
震える。
それは、長い通路の中腹で起きていた。
「不規則ですね」
歩いていく七曜の、震えの発信源となりながらの進行だった。
両脇に浮かせた拡声器を源に、広範囲に響く超高音は、反響を伝えて拡散する。
そうする理由は勿論、隠されたモノを見つけるためだ。
「……ふむ」
徐に見上げた七曜が見るのは、ただの天井だった。
少しだけ高さがある。それは別におかしいという訳ではないが、拡声器を向け、音の返りを待って一拍。
「ハズレ」
見つけた天井の隠し部屋に弾丸を撃ち込んだ。そこに敵は居ないが、
「……次です」
撃ち込んで行く。道中の壁にもそうしたし、これから進む先でもそうする。
「さて、上手く立ち回りませんと」
両手に銃を握り、不意に立ち止まった七曜は、拡声器の音を止めて銃口を前にして。
「当たりです」
引き金を引いた。射撃された弾丸は一直線、前方左右の壁へ着弾して、薄い厚みのそれを壊す。
そうして現れるのは、潜んでいたドール達だ。
「──!」
前へ、七曜に向かって彼らは跳ぶ。
前傾姿勢の前のめりは、まるで流体と化した様な細さと鋭さだ。
「おっと」
慌てず、臆さず、七曜は後方へと跳ねる動きで加速しながら、左の銃弾を撃ち込む。
迫る敵の先端へ、氷結の属性を混ぜ込んだ弾丸だ。一瞬遅れて右、純粋な破砕力を高めた重撃の弾丸を追撃に放って、凍り付きの瞬間に砕く調整で一つを破壊した。
「囲まれるのは流石に厳しいので……っ」
加速する。
ドールは前へ、七曜は後ろへ。
跳び、撃ち、時に相殺され、遅々とした高速の追撃戦は長く、しかし唐突に終わりを迎えた。
「もういいでしょう」
七曜がその動きを止めたのだ。
ふぅ、と一息吐き出して、使いっぱなしの両腕をだらりと下げた隙だらけの姿に、ドールは違和感と好機を同時に感じて肉薄し、そして。
「万物流転」
ドールは、七曜の背後から迫る幾筋もの軌跡を見た。それらは、自分達の左右を通っていく。
いや、それだけではない。
上、直上ではなく前や後ろの斜め、左右……床側や背面からも、それは伸びている。
ユーベルコードだ。
そう理解したとき、ドールの対応としてインプットされていた相殺の発動は、既に間に合わない。
「有限が作り出す無限の円環……幽玄たる時間の監獄へ、ようこそ」
術式は完成した。
描かれた複雑式の模様に絡めとられたドール達に、その檻から抜け出す術は用意されていない。
いや、例え用意されていたとしても、
「では、早速だけど、さようなら」
一つ一つ、丁寧に破壊していく銃口が、その猶予を与えてくれなかった。
●
「うーん……」
閉塞的な迷宮の中、壁を前にしてリコリスは唸っていた。
こんこん、こんこん、と。
軽く叩いて感触を確かめている。
「……わかんないなぁ」
隠されているなら壁の向こうは空間があって、叩いた感触とか音とか、そういうの。
「あたし、鈍感だから……」
判るかもしれないと、そう思ったり、やっぱり無理だったりで、うーん、とまた唸る事三回。
「隠し部屋に隠し通路でしょ? 金銀財宝お宝でも仕舞っててくれたらやる気も出るんだけどなぁ」
はぁ……と、大きな溜め息を、祀は壁に向かって吐き出した。
苦手な分野だ。胸中で呟きつつ、腕組した姿勢のままじぃっ、と壁を見つめる。
「一つ一つ確認していくのって、苦手なのよね」
というかどこがソレなのかの判断も出来ない。そうなってしまうと、祀として、導きだされる結論は一つだった。
「当たるまで壊すかっ」
無造作に壁をぶち抜いた。
適当に十歩程歩いてまたぶち抜く。そこに空間があろうとなかろうと、そのうち当たりを引くかもしれないと、そう思って。
そして。
「あ、ここ、壁薄そう」
二人の言葉と、二つの打撃が重なった時、秘されていた部屋の両側が粉砕された。
「あ」
「あ」
「どうも」
「ども……?」
数メートル挟んだ向かい側に、仲間が居る。
それに気付いたリコリスと祀は、視線がぶつかると同時に会釈した。
奇遇ですね、だとか、貴女も壁を? だとか、そういう当たり障りの無い会話からきっかけでも、と。
社交性を考えた二人の眼前に、天井からバラバラとドールの大群が降ってきた。
「わ、急に──」
すっ、と、突然の登場に構えを取ったリコリスは、向かい、当たりを引いた! と目の前のドールを粉砕する祀を見た。
起き上がりモーション中の敵の頭部に、叩き付ける様な拳で一撃だ。
「先手必勝……?」
なるほど、効率的かもしれない。
事前に確認していた敵の能力を考えるに辺り、まず自分は思考を挟んでいた。その点、祀はまず行動して、彼女のペースで戦闘を開始している。
「あたしもやろっと」
トントン、と、リコリスは床を踵で踏み鳴らす。
それは、ユーベルコードを発動する合図。全身に淡い光を纏って、ふわりと体を宙に遊ばせる。
「どれくらいまで真似っこ、出来ますか?」
動きを見たドールは、リコリスに続く動きで浮かび上がった。
原理を理解している訳ではない。ただ、同じ能力の発現が出来るというだけだ。
だから。
「──!?」
次の瞬間、ドールの体は壁に激突していた。
驚愕を覚え、不思議な出来事に硬直する体へ、リコリスは跳び蹴りの動きで穿つ。
「速すぎて、あたしでもわかってないですもん。初めては上手く行きませんよね」
ぐい、と膝を曲げ、伸ばす反動で宙へ戻る。行く先、同じように浮かぶのに成功して、制御にしくじるドール達がいた。
行く。
一直線、間を突っ切る動きで飛び、その通り過ぎるついでの様に蹴り飛ばす。
……しょーじき、当てるのは勘ですけどー。
砕いた感触に急制止。体の天地を真逆に返して、墜落する勢いで真下に上がる。
次第に慣れ始めたドールはそんなリコリスを追い、直角の急降下を描いて床へ。距離を詰めた相手が、激突寸前に左へ逃げたのを視線で追い掛け、
「はは、ドンピシャ!」
祀の正拳突きが鳩尾にぶちこまれた。
砕ける、というよりは、散らばる、と表すのが正しい。そう思うようなドールの壊れ方は、液体金属故の特性か。
「ま、どっちでもいいよ!」
舌舐めずりして、見上げた視界。リコリスの真似で浮かぶドール達に狙いを定めた祀は強めに跳ぶ。
片足を振り上げ、落とす動きで踵を敵に引っ掻け体を上へ。足掛かりにして更に跳び、握り込んだ拳を打ち下ろす。
「残らず全部、粉砕する!」
単純で、単調な攻撃だった。だがだからこそ、ドールは対応に窮する。
動きが読めてもそれをどうにかする手段がない上、これまで、彼女は一撃の拳で全てを破壊していた。
要は、当たれば死ぬ、という状況だ。
それに加え、高速で空間を飛び回るリコリスの存在は、一つの部屋に収まった閉塞的な環境では彼らに不利に働く。
故に。
「これで」
「おーわり」
脚と拳の交錯が、最後の一体を粉々に砕いた。
大成功
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リンタロウ・ホネハミ
ほお、隠れた場所からの伏兵がわんさか出てくるエリアっすか
戦ってのは基本待ち構える側が有利……っすけど、今回は別っすね
歴戦の傭兵“骨喰”リンタロウが出ますんで!
そんじゃまずはコウモリの骨を食って【〇〇六番之卑怯者】を発動!
コウモリの超音波ソナーで探索すりゃあ、隠し通路だろうが隠し部屋だろうがヘソクリだろうが何だって見つけられるっつーもんっすよ!
奇襲に対して心構えが出来てるなら真っ向からやり合うのと大差ないっす
そして真っ向からやり合うならオレっちが負ける道理はねぇ
戦術思考と戦闘経験をコピーしたところで、ガキの頃から鍛え上げたこの筋力による暴力はどうしようもねぇっしょ!(ダッシュ・怪力)
●
地響きの様な音と振動の中だった。
遠く、近く、周辺のあちこちから来る衝撃だ。
ビリビリと震える空気に打たれながら、リンタロウは、今起きているであろう戦闘を思う。
「ま、戦ってのは基本、待ち構える側が有利なもんっすからねぇ」
状況としては皆同じだろう。転送された迷宮で、何処から来るか知れない敵を探りながら進み、それらを撃破する為に立ち向かうのだ。
受ける側からすると、そういう獲物がテリトリーに入る瞬間を静かに待っていればいいのだから、タイミングだとか初撃のペースを奪うだとか、選択肢は豊富になる。
ただ、それは基本としての話。
「オレっちは別っすけどね」
懐から取り出した細く長い骨を見て、彼はニィッと笑う。
それは、蝙蝠の骨の一本だ。
蝙蝠は良い。少し解体にコツは要るが、調達のし易さが特に良しだ。
これがゴリラとか豹とかになるとキツイ。躊躇で噛み砕く歯が止まる程度にはキツイ。
「んじゃ、行くっすよ」
骨を奥歯に挟み、力みを一つ入れて噛み砕く。
二度、三度と咀嚼して、喉を傷付けない程度の細かさにしてから呑む。
そうすることで、リンタロウの体は変化を得た。
それは。
「 」
音の無い音を発する能力を使用出来る事だ。
発動して暫く。目を閉じ、じっとしていた彼は唐突に駆け出していく。
「見つけた……っすよ!」
音。それも、蝙蝠特有の超音波は、発した波が返ってくるまでの時間や変質を捉えることで発揮される。
いわゆるソナーと言うべきもので、今のリンタロウの耳には、音による周辺地帯の情報が送られて来ていた。
その中で、敵の存在を感知出来たのは一つだけで、しかもそれは袋小路の隠し通路の様だ。
「逃がさねぇ」
行く。
察知されたことは敵も気付いただろう。そしてリンタロウが迫っていることも。そうなると相手は、待ち構えるのではなく迎え"撃たされる"事になる。
身を晒し、突撃してくる相手に、受け身でいる事を選ばされているのだ。それは初動の流れをリンタロウに奪われる形となって、
「──ッ」
隠れ場から出た瞬間、骨剣の叩き付けが脳天を砕いた。
次いで、逃れようと左右へ別れたドール達の動きがある。リンタロウは握りを両手に変え、向かって左の方向へ重心を落とすと一拍。
「 らァ!」
溜めを作って、フルスイングの大振りで右列を叩き斬った。
ただそうすることで、無防備な背中を左のドールに見せる事になる。敵として、その隙を突かない理由は無い。
「!」
リンタロウは、倒れる様に地へ伏せた。
ドールの動きは、ソナー探知で把握している。紙一重のタイミングは、勘ではなく正しい理解として知っている。
だから、地面に添えた片手を、頭上をドールの攻撃が素通りしたタイミングで強く叩き、跳ね上がる最中に振り返りの剣撃。
「なんだよ」
斬った。
胴を薙ぐ軌跡で両断する。
「オレっちの戦術も経験も、わかってねーっすね、あんたら」
肩に骨剣を担ぎ、一呼吸の整えを入れたリンタロウは薄く笑う。
「ま、例え分かってたとして、ガキ時分から鍛えてきた筋力の暴力だけは、どうしようもねぇっしょ」
一歩を踏み、剣を腰に溜める様に下げ、前へ。
「真っ向勝負ならオレっちの圧勝っしょ?」
残存するドールの全てを、彼は叩き潰す。
大成功
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