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果ての宙より

#スペースシップワールド #戦後


●宇宙船スペランツァ号の航海日誌
 漂流XXX日目。
 銀河帝国の襲撃により、コアマシンのある動力室を失ってから、XXX日が過ぎた。
 今日、ついに食料が底を尽いた。
 直に水も無くなる。
 いずれ、酸素の残量も全員の命を繋ぐには足りなくなるだろう。
 何が『希望』だ。そんなもの、どこにもありはしない。

 ……ああ、子供達の歌声が聞こえる。
 彼らはこの状況でも、いつかコアマシンが見つかると信じている。
 いつか、故郷となるであろう星に辿り着けると信じている。
 もし我々にひとつでも『希望』が残されているのならば、それはきっと……。
 奇跡というものがあるならば。願わくば、彼らだけでも。
 どうか、どうか、彼らだけでも、どうか――。

●彼方へ
「グリモアベースへようこそ。本日の新着情報は1件です、お聞きになりますか?」
 オブリビオーネ・オブザーバトリィ(忘れられた観測所・f24606)は、グリモアベースを訪れた猟兵達へと呼び掛ける。
 その声に呼応するように、周囲の情景が広大な宇宙のそれに変わる。
「今回受信致しましたのは、スペースシップワールドに関する情報となります」

 銀河帝国との大規模な戦いから、季節がひとめぐりして。
 徐々に平穏を得つつあるスペースシップワールドだが、すべての脅威が去ったわけではない。
 帝国の残党や、それに滅ぼされたものから生まれた過去の残滓。それに、未知のいきものたち。広大な宇宙は、まだまだ危険や不思議に満ち溢れている。
「今回、皆様方に討伐していただきたいのは『宙海月』と呼ばれるオブリビオンの群れです」
 ゆらゆらと宇宙空間を漂うそれらは、他者を襲うこと自体はあまり無いらしいのだが、体内に電気を宿しているため電子機器の類を狂わせてしまうという。精密機器で溢れている宇宙船にとっては天敵と言えるだろう。
 それが大量発生しているというのだから、見逃すことはできない。
「宙海月は現在、とあるスペースデブリ帯を巣にしているとの情報をビオーネは受信しております」
 かつて帝国の襲撃に遭い、破壊された宇宙船達の残骸が漂流の末に流れ着いた場所。
 まだ誰の手も付けられていないというそこには、今を生きる人々の助けとなるものも多く眠っているかもしれない。
 宙海月を排除すれば、そこに眠る人々を弔うことは勿論、今後積極的に資源回収を行うことだって可能になるだろう。
「場所が場所ですので、宇宙船の残骸等を足場にしての戦闘となりますが。幸い、我々猟兵は先の戦いで非常に高性能な宇宙服を手に入れております」
 銀河帝国戦で使用した、普段の装備の上から着用することが出来る透明な宇宙服。
 特殊な環境であるが故、相応の工夫は必要になるだろうが、あれならば宇宙空間でも平時と然程変わらない立ち回りが可能となる。
「デブリ帯までは、ワープドライブ搭載の宇宙船で向かうことになります。船の手配は済んでおりますので、ご安心ください」
 オブリビオーネはグリモアを起動すると、宇宙船への転送準備を始める。
 その途中で。
「……そうでした、ビオーネはもうひとつ情報を受信しておりました。移動の間、宇宙船ではちょっとした催しがあるとのことです」
 思い出したように、電子の娘は小さなホログラムのランプを掌の上に表示した。
「願いを籠めたランプを、宇宙空間に流すイベントだそうですよ」
 星型、丸、三角、四角――他にも沢山。様々な色や形のランプ達。
 それを、願いや想いと共に星の海へ流す。
 籠められたものを宙へと伝え終えたランプは、やがて星々のひとつになるのだとか。
「それでは、転送を開始致します。いってらっしゃいませ」
 説明を終えたオブリビオーネは、猟兵達を遠き宙へと送り出していくのであった。

●ある少女の航海日誌
 あれから、どれほどの時が経ったのだろう。
 わたしは未だ、『彼ら』を見つけられないままでいる。

 どこにいますか。
 飢えていませんか。
 凍えていませんか。
 息は苦しくないですか。
 子供達の歌声は、まだ響いていますか。

 スペランツァ。わたしの『いきる』意味。
 必ず、必ず見つけてみせるから。

 必ず――、


鱈梅
 こんにちは、鱈梅です。
 今回はスペワでしっとり行きたいと思います。
 精一杯努めさせていただいますので、どうぞ宜しくお願い致します。

 ゆったり進行のきもちで。
 第一章:願いを込めて宇宙空間にランプ等を流します。
 ランプは障害物に当たると簡単に割れる安全仕様。
 様々な色や形のものがありますので、好きなものをお探しください。
 また、行動例はあくまで例ですので、ご自由にお楽しみいただければと思います。
 第二章:『宙海月』との集団戦になります。
 第三章:宇宙船に引き寄せられてきた存在とのボス戦になります。

 キャパ等に限りがありますので、書けそうな範囲での採用になるかと思います。
 再送はいつでも歓迎しております。
 それでは皆様のプレイング、お待ちしております。
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第1章 日常 『星に願いを』

POW   :    ランプと願いを宇宙に流す

SPD   :    ランプ以外のモノを宇宙に流す

WIZ   :    ランプは流さずその光景を眺めている

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●星生みの宙
 放たれた願いが、そらを染めていく。
 用意されたランプ達は、どれひとつとして同じものはないのではないかと思うほど多彩で。
 ひとの数だけ願いがあるように。ひとの数だけ想いがあるように。
 集まった人々は皆、思い思いに自分の想いを託すそれを選ぶ。

 楽しげにランプを見せ合う幼子達。
 願いたい事が多すぎると笑う若者。
 静かに、誰かに祈りを捧げるように灯りを流す母子。
 万感の想いを滲ませて、遠くなっていく光を見送る老人。
 様々なひとがいる。様々な願いが、想いがある。
 祈りの数だけ星が生まれ、宙へと還る。

 そうして、束の間の旅は穏やかに過ぎていく。
ヘルガ・リープフラウ
あの戦争から1年
帝国の残した傷跡は徐々に癒えつつあるとはいえ、今も全ての脅威が去ったわけではない
この世界の人々の安住の地は未だ遠く
志半ばに倒れた人の数はきっと計り知れない

様々な世界を旅して聞いた伝承
生を終え天に召された人は、夜空に輝く星になるのだと
リアルの星を知るこの世界の人にとっては、ただのおとぎ話かもしれないけれど
人々が『星』に託す願いは、きっと何時の世も変わらない。

ランプに願いを籠めて流せば、小さな光は遠く離れ、やがて星屑になる
もう誰も、理不尽と悪意と絶望に泣くことのないように
闇に閉ざされたわたくしの故郷も
安住の地を求めるこの世界の人々も
どうか、遍く世の人々に、希望の光と幸あれかしと……



●星送る歌
 生み出された星が、またひとつ宇宙へと放たれていく。
 穏やかな時を過ごす宇宙船の人々を眺めながら、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)はかつての戦いに思いを馳せる。
 銀河帝国との戦いから、1年が経った。
 過去より蘇り、この宙に生き残ったものすべてを殲滅せんとした彼の帝国は潰えた。
(……けれど。帝国の残した傷跡は徐々に癒えつつあるとはいえ、全ての脅威が去ったわけではない)
 帝国の残党や、発見された未踏宙域に潜む新たな脅威。
 時にそれらと戦いながら、今も安住の地を探す果てしない旅は続いている。
 全ての居住可能惑星を失った宇宙世界、無数の巨大宇宙船の中で日々を送る人々。
 新たな故郷を探す者。諦めて生活の安定に励む者。
 宇宙船で産まれ、宇宙船を終の住処とした数多の者達。
 志半ばに倒れた人の数は、きっと計り知れないのだろうとヘルガは思う。
「ねぇ、ねぇ。おねえちゃんは、なにをおねがいするの?」
 ランプを選び終えた少女が、無邪気に笑いながらヘルガへと問うた。
「……わたくしはね、」
 そっと内緒話をするように。ヘルガは身を屈め、胸の内に湧き上がって来たそれを少女に零す。
 見知らぬ宙のこどもは、ヘルガの託すそれを聞いて「わたしもそれにする!」と願いを籠めなおすようにランプを抱きしめた。
 その姿がとても愛おしく思えて。ヘルガは柔らかく笑った。

 すっかり懐いた少女と共に、ヘルガは仄青い光を宿すランプを星の海へと放つ。
 どこか雪割草に似た形のランプは、ヘルガの願いを乗せて彼方へと泳いでいく。
 遥か遠く離れた小さな光は、やがて星の海に混じり、見分けがつかなくなった。
 見送りながら、ヘルガは徐に唇を開く。
 天使の歌声と愛されたそれが紡ぐのは、星を送る歌。
(――闇に閉ざされたわたくしの故郷も、安住の地を求めるこの世界の人々も)
 もう誰も、理不尽と悪意と絶望に泣くことのないように。
 どうか、遍く世の人々に、希望の光と幸あれかし、と。
 ヘルガは祈りを籠めて歌う。
(人々が『星』に託す願いは、きっと何時の世も変わらない)
 猟兵として様々な世界を旅し、伝え聞いた幾つもの伝承。
 交わる事無き場所であろうに、その話は不思議と沢山の世界で耳にした。
(生を終え、天に召された人は、夜空に輝く星になる)
 本物の星の海に抱かれたこの世界の人々には、御伽話に聞こえるかもしれない。
 もしかしたら、「この世界にもあるよ」と笑うかもしれない。

 この歌を終えたら、隣のこの子に聞いてみようか。
 ヘルガをきらきらとした顔で見つめている少女へと視線を落として。
 雪割草の娘は、繋いだ手をぎゅっと握り直した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メイスン・ドットハック
【WIZ】
何か久しぶりにまったりできておる気がするのー
こういう幻想的な光景をみながらお好み焼き食べるのも乙じゃのー

ランプを見ながらこれまでの一年を振り返る
引き篭りをするために銀河帝国を潰す活動をして、終わったかと思ったら他の世界の危機に駆けつけて、さらにグリモア猟兵の力まで得てさらにいそがしくなって。

やばい、僕、全然怠けられていない!

本来はは引き篭もって電脳世界で悠々自適のはずがどうしてこうなった
だがランプを見終われば、再び仕事が待っている

くそー、絶対に自堕落ライフを手にしてやるけーのー!

オブリビオン死すべしの気持ちで、お好み焼きを頬張り、士気を高める

アドリブ絡みOK



●ウィザードの慟哭
「うんうん、こういう幻想的な光景をみながらお好み焼き食べるのも乙じゃのー」
 メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は、お好み焼きを頬張りながら、星々と灯りが作り出す光景を眺めていた。
 ふわりと香る甘辛いソース、鼻を抜ける芳ばしい鰹節と青海苔の風味。
 まったりとしたマヨネーズと爽やかな紅しょうがの酸味がアクセントになって、キャベツの甘みがより引き立つ。
 それら全てを、山芋でふわふわになった生地が包み込みマイルドに仕上げている。
 どこかの言葉で言うなら『関西風』。今日の気分は定番の豚玉。カリッと焼けた豚バラがまた美味い。
 地域によってレシピや形は違えど、みんな違ってみんな良い。焼きそばが入ってても美味い。
 ゆったりと宇宙を泳ぐランプを楽しんでいた人達まで、ちらちらとメイスンのお好み焼きに視線を送っている。だって美味しそうな匂いなんだもの。
「何か、久しぶりにまったりできておる気がするのー……」
 メイスンは、今日に至るまでの日々を振り返る。
 この1年、思い返せば色々あった。それはもう、色々盛り沢山だった。
 引き篭りをするために銀河帝国を潰す活動をして。
 終わったかと思ったら、他の世界が危機に陥り。
 そちらの脅威達もばしばし潰して、よっしゃ終わったと思ったら、グリモア猟兵の力まで得て。
 予知に戦いにと、更に忙しくなって。
 あ、あのランプ、ちょっとお好み焼きに似てる。
「……、……やばい、僕、全然怠けられていない!」
 気付いてしまった衝撃の事実に、メイスンに電撃が走る。
 彼女の脳内プランでは、本来ならば今頃は自由気侭に引き籠もっているはずだった。
 ウェルカム引き籠りライフ、カモン自堕落ハッピーエンド。
 汗水垂らして働くなんざノーサンキュー、悠々自適に楽してなんぼ。
 だらだらのんびりお好み焼きを楽しむ毎日。うーん、想像しただけで心が躍る。

 それが、どうしてこうなった。

 今だって、ランプを見終わり現地に着けば、再び仕事が待っている。
 面倒だけれど、引き籠るために渋々頑張ってきた。
 なのに、何故仕事は自分を放してくれないのか。
 しょうがないね、色々覚醒したものね。放っておかれるはずがなかったよね。
「くそー! 絶対に自堕落ライフを手にしてやるけーのー!」
 オブリビオン死すべし、慈悲は無い。
 その言葉を胸に、メイスンは残りのお好み焼きを勢いのままに頬張り、これから待ち受ける仕事への士気を高めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふわぁ、このランプ、アヒルさんにそっくりですね。
この広い宇宙をどこまでも飛んでいきそうですね。
このランプにしますね。

ところでアヒルさんは何をお願いしたんですか?
どうせ、世界を羽ばたくアヒルさんみたいなお願いですよね。
私の願いはそんなアヒルさんの願いが叶いますようにです。
アヒルさんには内緒ですけど。

アヒルさんランプを宇宙に流したのはいいのですが、なんで障害物の多い方に流れていくのでしょうか?
そして、まだ割れずに流れていくのは何故なんでしょうね。



●大きな帽子と宙飛ぶアヒル
「ふわぁ……このランプ、アヒルさんにそっくりですね」
 フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、並んだ大小様々なランプの中から、あたたかな白い光を灯すものを選び取る。
 両掌にすっぽりと収まる大きさのそれは、フリルの言葉通り、彼女の相棒であるアヒルさんガジェットによく似ていた。
「このランプにしましょうか。ね、アヒルさん?」
 広大な宇宙をどこまでも羽ばたいていきそうなそれを、アヒルさんにも見せながらフリルは笑う。
 うん、双子って言われても違和感がないくらい、形だけじゃなく大きさや色合いまでもが本当にそっくりだ。
 宇宙へと流したら、きっと、本物のアヒルさんが飛んでいるように見えるのだろう。
 その姿を想像してみたら、なんだかとても楽しくて。フリルは笑みを深めた。

 フリルとアヒルさんの願いを乗せて、アヒルさん型ランプは宇宙へと羽ばたいていく。
 その姿を見送りながら、フリルは首を傾げた。
「なんで障害物の多い方に流れていくのでしょうか?」
 自ら困難に飛び込んでいくかの如く、他のランプが密集している方へと流れていくアヒルさん型ランプ。
 このランプ達は安全性に配慮し、障害物に当たると簡単に割れる素材で出来ている。
 破片はデブリにはならないという、宇宙の不思議技術の詰まった特別仕様であるとか、先程ランプを選ぶ時に宇宙船の人が言っていた気がする。
 あんなに沢山のランプの中では、すぐにランプ同士で衝突して割れてしまうのではないか。
 そう心配していたのだが。
「すごい……あんなにたくさん集まってるのに、全部よけてます……」
 器用にランプの隙間を縫って、悠々と星の大海を泳ぐアヒルさん型ランプ。まるで意思が宿っているかのようである。
 さすがアヒルさんです、と腕の中のアヒルさんガジェットを抱え直し、フリルは何か納得したように頷いた。

「……ところで、アヒルさんは何をお願いしたんですか?」
 ふと、遠くなっていくランプと、アヒルさんを交互に見ながら、フリルは問う。
「どうせ、世界を羽ばたくアヒルさんみたいなお願いですよね」
 アヒルさんがどんな願いをしたのか、フリルにはわからないけれど。
(私の願いは、そんなアヒルさんの願いが叶いますように、です!)
 それは、当のアヒルさんには内緒の、やさしい願いごと。
 フリルはアヒルさんと一緒に、もう殆ど見えなくなったランプの健やかな旅路を祈るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
銀河帝国攻略戦が終戦し一年
クエーサービーストの発見に、全宇宙船へのワープドライブ搭載完了など様々なことが起こりましたね

最近は故郷よりも異世界での戦闘ばかりでしたが、故郷に平穏が齎された恩をお返ししていると考えれば誇らしくも思えます

(流れるランプを窓から眺めつつ光学センサーでの●情報収集で文字を読み取る。沢山の願い事の中に「お父さんの魂が還ってきますように」という文字を見つけ)

…攻略戦では猟兵以外にも沢山の軍人が参加しましたね

(宇宙では遺体が遺族の元へ戻らぬことは多い、だから)

(小声で瞑目するようにセンサーアイの光を落とし)

魂無き鋼の身ですが、騎士として祈らせて頂きましょう
大切な方々のご帰還を…



●いのり
 燈灯を流す人々から、少し離れた場所。
 そこで、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、窓越しに願いが流れる様を見ていた。
 すぐ横を、願いを掛け終えた子供達が競うように駆けていく。
(銀河帝国攻略戦が終戦してから、もう1年経つのですね)
 子供達の後ろ姿へと目を遣りながら、トリテレイアはこの世界で起こった様々な出来事に思いを巡らせる。
 全宇宙船へのワープドライブ搭載完了。
 未踏宙域に関する文献の発見。
 未知への挑戦と、クエーサービーストという新たな脅威。
 帝国の脅威は去ったが、この世界の人々の旅路はまだ続いている。
(……最近は、此処よりも異世界での戦闘ばかりでしたが)
 それも、この世界に――故郷に平穏が齎された恩を返しているのだと考えれば、誇らしくも思えて。
 騎士兜の隙間から漏れるセンサーアイの光が、微笑むように細められる。
 トリテレイアは、平穏の象徴のようにのびのびと遊ぶ子供達から窓の外へと視線を戻すと、再び泳ぐランプを眺め始めた。

 星に花、動物や食べ物、シンプルな円形や、何とも言えない複雑な形のものまで。
 宇宙へと、種類豊かなランプが流れていく。
 今し方、目の前を流れていった白馬の形のものなんて、ロシナンテⅡにそっくりだ。
 只、こうして眺めているだけでも、結構飽きないものである。
 表面に絵や文字で願い事を書いているものも少なくはない。幼子が描いたと思わしき味のある絵を目にした時には、思わず笑みが溢れた。
 人々の数だけ放たれた、沢山の祈りや願い事。
 それを優しく見守るトリテレイアの光学センサーが、またひとつ、新たな願いを捉えた。

 ――『お父さんの魂が還ってきますように』

 まだ拙い文字で綴られた、切な願い。
 息が止まるような心地というのは、このようなことを言うのかもしれない。
(ああ、そうだ。……あの攻略戦には、猟兵以外にも沢山の軍人が参加していた)

 生きて帰った者。
 戦場に散った者。
 間に合った者。
 間に合わなかった者。
 眠るように綺麗だった者。
 損壊が激しかった者。
 なにも残らなかった者。

(宇宙では、遺体が遺族の元へ戻らぬことは多い――だから、)
 瞑目するように、センサーアイの光を落とす。
 捧げるは黙祷。
 あの願いの主の父に。
 平穏を得るため、命を懸けて挑んだ者に。
 宙へ還ったすべての者に。
(この身は魂無き鋼なれど、)
 機械の騎士は祈る。
 帰りを待つ人々の元へ、大切な者達が還れるように。
 斯様な願いを抱く者が、少しでも減っていくように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライラ・サンタマリア
【LR】

願いは鈴蘭の形を模して
白輝いて、愛らしい其れは幸せの花

『再び幸せが訪れる』
年々、祈りを捧げる姿ばかり堂に入っていって
事実考えてる事だなんてまるで無い
願う程空いだけだなんて
迷える子羊には口が避けても言えないものです

嗚呼、其れでも、そうだなあ
割れずに泳ぎ切る事が出来たならば
少し位、彼に優しくしてあげたって良い
ぱちり、目を開ければ屹度
どうせ同じ様な事を思っているに違いない
傷つく事が怖くて、勝手に託した気になっているのでしょう
壊れてしまったら、今日は仕方がないと片付けてしまうんでしょう

……ばか

抱き締めてくれたって別に良いのに
掻っ攫う事だって出来る癖に

ばか。

今日の帰りのお酒は貴方の奢りででしてよ


ローウェン・カーティス
【LR】

想いを乗せる器はネリネの花束を模して
輝く花と呼ばれる其れならば
此の星の海でも、一際美しき星と成れるでしょう

『また会う日をたのしみに』
慌ただしく、然し何気なく過ぎ去る日々
時に空虚を感じることもあった其れ
然し。そんな日々を変えてくれた、縁が在って

星々の大海へ、流した想い
まるで壊れやすくて、頼りがない其の器
若しも彼方へと辿り着いてくれるのなら
私の此の手も、届く気がする

嗚呼、あと少しの勇気が有ったなら
星の海に比べればちっぽけな、此の境界を超えられるのだろうか
其の境界を踏み越えた時
貴女は、いつもの様に私を笑ってくれるのだろうか

ええっと…お誘いは吝かではありませんが
わ、私何か致しましたでしょうか?



●花燈りに乗せて
 多彩なランプの中には、花の形をしたものも多くあった。
 季節の括りなく淡い光を宿して咲くそれらは、脆く儚いようで、それでいて力強くも見えて。
 ライラ・サンタマリア(ライアーライアー・f10091)は、少し考えてから、徐に鈴蘭を模した愛らしいランプへと手を伸ばした。
 白く輝く花が、ライラの手の中でしゃらりと音を立てて揺れる。
 ――『再び幸せが訪れる』
 確か、そんな花言葉だったはずだ。
(幸せ、)
 己の幸せ、他の幸せ。
 聖堂で日々祈りを捧げる際、頭にあるのはそのどちらでもない。
 年々、祈りを捧げる姿ばかり堂に入っていって、事実考えてる事などまるで無い。そう自覚している。
 だって、願うほどに空しさが増すだけで、
(……迷える子羊には、口が避けても言えないものです)
 建前に見せかけの幸せを嘯く娘は、苦笑を漏らす。
 困った時の神頼み。お祈りする理由なんて、そんなもの。
 そう言ってはいるけれど。
(嗚呼、それでも、そうだなあ)
 もし、春の訪れを告げる幸せの花を模ったそれが、割れずにこの大海を泳ぎ切る事が出来たならば。
(少しくらい、彼に優しくしてあげたって良い)
 ちらりと目を遣った先。傍らに佇むローウェン・カーティス(ピースメイカー・f09657)が手に取ったのは、ライラのそれとは異なる花燈り。
 輝く花と呼ばれるもの。ネリネの花束を模したランプ。
(この花ならば、きっと。この星の海でも、一際美しき星と成れるでしょう)
 ――『また会う日をたのしみに』
 その花言葉を持つ花。
 慌ただしく、しかし何気なく過ぎ去る日々の中、時に空虚を感じることもあった。
 けれど、そんな日々を変えてくれた縁が在った。
 何気ない日々が、どこか空ろだったものが充たされていくような感覚。
 いつからか、気付けば彼女に会うのを心待ちにしている自分が居た。
「……流しましょうか」
「ええ、」
 どちらからともなく、そう言った。
 以前よりも近い距離。されど、寄り添うと言うにはまだ遠く。
 ふたり並んで、星々の大海へ想いを流す。
 壊れやすそうで、頼りがなく見える己の願いの器から手を離しながら、ローウェンは思う。
(もしも、彼方へと辿り着いてくれるのなら)
 臆病な己のこの手も、境界を越えられるだろうか。
 星の海に比べれば遥かにちっぽけなそれを、踏み越えて行けるだろうか。
 そうしたら、
(貴女は、いつもの様に私を笑ってくれるのだろうか)
 もしかしたら、届くのだろうか。
 もし、己にその勇気が有ったのなら。
(……『幸せな思い出』)
 先程の言葉の他、ネリネが抱く別の意味。
 思い出だけでは終わりたくないと、燻る想いが叫ぶ。
 叫ぶのだけれど、
(嗚呼、それでも、今はまだ)
 託すだけ託しておいて、肝心の伝えるべき言葉は噛み殺す彼が目を閉じた代わりに、今度はライラがぱちりと目を開く。
 隣を見れば、実に読みやすい顔で物思いに耽る、迷える子羊の姿。
 どうせ、己と同じ様な事を思っているに違いない。
 この顔は絶対そうだ。
(傷つく事が怖くて、勝手に託した気になっているのでしょう)
 そうして、壊れてしまったら、今日は仕方がないと片付けてしまうんでしょう。
 彼の流した、ネリネの花言葉を思い出す。
 与えられた意味は『忍耐』だったはずだ。
「……ばか、」
 抱き締めてくれたって、別に良いのに。
 掻っ攫う事だって出来る癖に。
 耐え忍ぶ必要なんてどこにもないのに、願いを託す花までそんな意味を選ぶとは。
 ねぇ、独り善がりなことだとは思わないの。
「ばか」
「えっ、」
 再度零したそれが、漸く男の耳に届く。
「今日の帰りのお酒は、貴方の奢りで、でしてよ」
「ええっと……お誘いは吝かではありませんが……わ、私、何か致しましたでしょうか?」
「ばか」
 三度、拗ねたように娘が呟く。
 聖夜に晒した醜態と、本音のかけら。
 ねぇ。
 あの日、あなたに弱さを、甘えを覗かせた意味を、少しくらい考えても良いのではなくて?

 帰ったらしこたま呑んでやろう。
 それで、少しは気付くと良い。
 あなたになら、そんなものを見せても大丈夫かな、なんて。
 そう、少なからず思ってるわたくしが居るってことを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コルチェ・ウーパニャン
コルチェはお星さまのカタチのランプを流すね。
もしかしたらよく考えたら星型って、地面から眺めたときのお星さまのカタチだから、なんか変かも?
……でもでも今、流してみようと思って、思った!
コルチェたちが地面から見たお星さまってこうなんだよ、
トゲトゲしててフシギだけど、コルチェはこのお星さまが好きなんだよってお話出来たらなーって!

お願いしたいことは…コルチェのだいじなおともだちたちが、
お腹がへったり、さみしくなったり、つらい思いをせずに、
ソフトクリームとかそういうおいしいものをいーっぱい、食べられますように!
コルチェもそうできますように!
…フワフワーっていっちゃうランタンさん、どこまで旅ができるかな?



●きらきらひかる
 数多あるランプの中でも、やっぱり一番人気なのは星型のそれである。
 一口に星型と言っても、やたらトゲトゲしたものから、わりとツルッとしたものまで様々だ。
 人の想像の数だけ存在する、けれど、不思議と一目で星と分かるそれらの前で、コルチェ・ウーパニャン(マネキンドールのピカリガンナー・f00698)はうんうん悩んでいた。
「お星さま、いっぱいある……!」
 数分前。コルチェは星型のランプを流そうと決め、意気揚々とこの一角へ足を運んだ。
 ――もしかしたら、よく考えたら星型って、地面から眺めたときのお星さまのカタチだから、なんか変かも?
 心にちょっぴり浮かんでいた、そんな疑問を吹き飛ばすかのように賑やかに並んだお星さま達。天の川ってたぶん、こんな感じだろう。
(でもでも、そしたら、どのお星さまにしようか?)
 悩むコルチェの感情を映して、髪がくるくる色を変えながら複雑に光り始める。
 試しに、ハリネズミみたいにトゲトゲしすぎているランプを手に取ってみた、その時。
「おねーちゃん、それにするの?」
「おねーちゃん、髪の毛光ってる」
 後ろから、小さな女の子と、それより少し大人びた男の子の声がコルチェに問う。
 振り返ってみると。
「!、」
 兄妹だろうか、よく似た顔の子供がふたり、コルチェをじぃ、と見上げていた。

 3人が仲良くなるのは、それはそれは早かった。
 聞けば兄妹も、コルチェと同じく星型のランプを流すつもりだという。
「こっちもきれーだよ!」
「でもそれ、形つまんなくない? こっちのが良いよ」
「んー、コルチェは、どっちもステキだと思うなぁ」
 ああでもない、こうでもない、とわいわい騒いで。たくさん笑って。
 悩んだ末にコルチェが選んだのは、きっとみんなが一番想像しそうな、オーソドックスなお星さまの形のランプだった。
 手の温度か何かに反応する仕組みだったのかもしれない。乳白色のそれを手に取ると、なんと虹色にぴかぴか光り始めた。
「そのおほしさま、おねーちゃんに似てる」
「わかる、おねーちゃんって感じがする。さっき光ってたし」
 コルチェとにじいろお星さまを交互に見ながら笑う兄妹も、どうやら自分だけのお星さまを見つけたらしい。
 ふたりのそれは、つるりとまぁるい、宇宙から見た星のかたちだ。
「コルチェたちが地面から見たお星さまってこうなんだよ」
 トゲトゲしててフシギだけど、コルチェはこのお星さまが好きなんだよ、と自分の星を指してコルチェは笑う。
「ほんとにそうなんだ……おはなしの中だけだと思ってた」
「いつか、僕らも見れるかな」
「きっと見れるよ!」
 その時は一緒に見ようね、なんて。小さな約束を交わして。
 コルチェ達はそれぞれランプへと願いを籠める。
(お願いしたいことは……)
 コルチェのだいじなおともだちたちが、
 お腹がへったり、さみしくなったり、つらい思いをせずに、
 ソフトクリームとかそういうおいしいものをいーっぱい、食べられますように!
 コルチェもそうできますように!
(あと……、)
 コルチェは、目を閉じてランプに願いを籠める兄妹に視線を落とし、

 ――このふたりも、そうできますように!

 ぴかぴか笑顔で、そう付け加えた。

「……フワフワーっていっちゃうね。どこまで旅ができるかな?」
「んーっとね……いっぱい、いーっぱい先まで!」
「それで、旅の終わりには、本物のお星さまになるんだよ」
 おねーちゃんのランプは虹色だから、きっとすぐにわかるね、って兄妹が笑ったから。
 そうだね、って、コルチェも笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リインルイン・ミュール
ふむ……灯籠流しのようなものでしょうカ
意味合いこそ少し違えど、祈りという意味では似たようなもの
何処の世界にも、こういうのはあるのかもしれませんネ


淡い青緑の光を放つ、星の様なまあるいランプを探して
所謂「未踏宙域」の方向が分かれば、そっちの方に向けて流します

過去は殆ど覚えていませんが、ワタシもこの世界の出身デス
きっとこの世界のヒトビトの多くが抱いているであろう願いが叶うよう、祈りましょう
長い旅路、昏い宙の中、希望の光を見失いませんように
いつか、光を繋いだ旅路の果てに、還るべき星を見つけられますように

この灯火も星の一部になるのなら、願わくば、生命を育める星に……なぁんて、ちょっと夢を見過ぎですかネ!



●ははなるほしに
 宙に瞬くひかりが、時を経るごとに増えていく。
 その代わりに、用意されたランプが、半分程に減ってきた頃。
「ふむ……灯籠流しのようなものでしょうカ」
 くりん、と首に当たる部分を傾げながら、リインルイン・ミュール(紡黒のケモノ・f03536)は、また新たに漆黒の大海へと旅立っていく灯火達を見送っていた。
(何処の世界にも、こういうのはあるのかもしれませんネ)
 猟兵として様々な世界を巡る中、似た催しや儀式をいくつか見た。
 本来ならば、交わることのない世界。
 それぞれ、異なる文化を築いているはずの場所。
 だが、皆、意味合いこそ少し違えど、祈りという意味では似たようなものだった。
 それは、この世界も例外ではないのだろう。
(ならば、)
 過去は殆ど覚えていないが、己もまた、この世界の出身だ。
 自分も皆に倣って、きっとこの世界の人々の多くが抱いているであろう願いが叶うよう、祈ろうか。

 数ある中からリインルインが選んだのは、淡い青緑の光を放つ、星の様なまあるいランプ。
 それは、いつか何処かの世界で見た、生命育むそれの姿に似ていて。

 ――長い旅路、昏い宙の中、希望の光を見失いませんように。
   そしていつか、光を繋いだ旅路の果てに、還るべき星を見つけられますように。

 この願いを託すには、これ以上無い程ぴったりだと、リインルインは思う。
「さて……」
 確か、未踏宙域と呼ばれる領域があるのは、こちらの方角だっただろうか。
 この宙で生きる同胞達の希望が、還るべき星が、どうかそこに在るようにと。
 こうしている今も探索が続いているのだろう彼方へ向けて、リインルインはそっと灯火を流す。
 仄かな光を放ちながら、緩やかに回りながら宇宙を流れていくそれは、まるで本物の惑星のように見えて。
(この灯火も、いつか星の一部になるのなら、)
 願わくば、生命を育める星に。
 そうして、誰かの故郷になると良い。
「……なぁんて、ちょっと夢を見過ぎですかネ!」
 浮かんだ己の考えを笑い飛ばすように。
 けれど願いも滲ませて、リインルインは明るい声を上げた。
 つくりものの面であるが故、表情こそ変わらないが、その声音には確かに照れが混じっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宮落・ライア
ボクは…ただ眺めるだけかなー。
何かに願う願いも無いし、何かに乞う望みも無いから。
自分自身で叶える決意があればいいから。

そう、ボクに願いなんて無い。
願う事も望む事も…………(少しだけ言い澱み、そして自分に言い聞かせるように)…無い。
ボク自身で、ボクだけでやらなきゃいけないんだから。
何かに願っちゃダメなんだ。


ここに流れるランプの多さがボクが守らなくちゃならない願いの数だって
目に焼き付けよう。



●救いの先
 集まった人々の中には、ひかりを見送るだけのものも居る。
 特段託す願いを持たぬ者。
 催しとしては楽しむが、内容への興味自体は薄い者。
 そして――己の力だけで叶えてみせると強く誓う者。
 宮落・ライア(ノゾム者・f05053)も、そのひとりだった。
 何かに願う願いも無いし、何かに乞う望みも無い。
 自分自身で叶える決意があれば良い。
「願う事も望む事も、」
 それはずっと変わらないのだと、改めて口にしようとして、少女はほんの少しだけ言い澱む。
 けれど、
「……、……無い」
 暗示を掛けるように、言葉として吐き出された、それ。
 まるで、自分に言い聞かせているかのようで。
(ボク自身で、ボクだけでやらなきゃいけないんだから)
 己が、今の己になったあの日。
 しかばねの山に生かされて、数多の願いをのみこんだ、あの瞬間から。
 多くに選ばれ、多くに託され、多くに救われたが故に、何かに願ってはいけないのだと、少女は自ら己を縛る。
(そう、ボクに願いなんて無い)
 だって、これは願いではない。
 望むではない。臨むのだ。
 『なりたい』のではない。『ならなければいけない』のだ。
 報いらなければ、己には価値があるのだと、証明しなければいけないのだ。
 だって、そうじゃないと、
「だから、ボクは、ヒーローに――」
 その身を苛む、削られるような痛みが増してきた気がして、ライアはぎり、と己の腕を握る。
 ライアをかたちづくるもの。滾々と流れているそれらが、どくどくと脈を打つ。

 生きている。
 生かされている。
 こうして、今も。この瞬間も。

 耐えるように歯を食いしばり、ライアは俯いていた顔を上げた。
(生きているのならば、)
 ここに流れるランプの多さが、己が守らなくてはならない願いの数だ。
 英雄として、ヒーローとして。
(目に焼き付けろ)
 この光景を。
 人々の願いを。
 自分の為すべきことを。
 ああ、そうだ。
 足を止めずに走り続けなければ。

 ヒーローを、のぞむのならば。

大成功 🔵​🔵​🔵​

櫟・陽里
エリシャ(f03249)とランプを流す
どうやって作ったか不思議な宇宙技術っぽい球体ランプ
緑色が好きかな

可能ならちょっとだけ宇宙遊泳
無理なら宇宙船で1番大きい窓までエリシャを誘う
惑星や星雲なんかを解説したい
宇宙育ちだからさ、庭みたいなもんだ

本物の自然に憧れてた俺に
アックス&ウィザーズの大地と満天の星空を見せてくれたお礼
その時、宇宙からの星空も見たいって言ってくれたから

これが宇宙空間
人なんてちっぽけな存在は一瞬で飲み込む冷たく無慈悲な
でも恐ろしく美しい銀河を見せてくれる事もある
果てなくどこまでも、可能性は無限大の!

願いは自分で叶える!が持論なんだけど
今日だけ、そうだな…住める惑星がありますように!


エリシャ・パルティエル
陽里(f05640)と
自身の持つグリモアに似た金色の星型のランプを選ぶ

宇宙の景色をゆっくり眺めるのは初めてよ
陽里の育った世界…しっかり目に焼き付けたいわ
A&W育ちのため、目に映る全てが新鮮
あの丸いのが惑星? あれが星雲…幻想的でとっても綺麗…
ふふ、宇宙が庭だなんて。スケールが違いすぎるわ

ええ、あの時宇宙からの星空が見たいと思ったの
きっと素敵だと思ってたけど、やっぱり素敵だったわ
陽里と一緒だからかしら?

美しいだけじゃない、生きる者にとっては冷徹な空間
そうね宇宙に終わりはないのかも
厳しさの中に希望を隠しているの

美しい景色に感謝と祈りを込めてランプを流す
陽里とまた一緒に美しい銀河を見れますように…



●宙を泳いで
 どうせなら、星の海の中で流そう、と。
 継ぎ目ひとつ無い、淡い緑の光を放つ球状のランプを片手に、櫟・陽里(スターライダー ヒカリ・

f05640)はエリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)を宇宙へと誘う。
 そこまで距離が離れすぎなければ、少しくらいは大丈夫であるとの確認は取ったし、越えてはならない境界も聞いた。
 念の為、宇宙船の青年が教えてくれたその目安よりも、いくらか手前のところまでと決めて、2人は宙を泳いでいく。
「あの丸いのが惑星?」
 無邪気に問うエリシャの手には、彼女が持つグリモアにも似た金色の星燈り。
 それとはまた違う形である本物の星に、彼女は目を輝かせる。
「そうそう。それと……あっちの方の、あのもやもやしてんのが星雲」
「あれが星雲……幻想的でとっても綺麗……」
 ほぅ、と感嘆の吐息を漏らしながら宇宙の景色を楽しむエリシャに、自然と陽里の解説にも熱が入る。
「俺、宇宙育ちだからさ。庭みたいなもんだ」
「ふふ、宇宙が庭だなんて。スケールが違いすぎるわ」
 一通り解説し終え、どこか照れたように笑う陽里につられて、エリシャの顔もほころんだ。
 アックス&ウィザーズで育ったエリシャには、目に映る全てが新鮮だった。
 夜空を地上から見上げたことはあれど、こうして間近でゆっくりと星々を眺めるのは初めてだ。
 星の大海原を――陽里の育った世界を、エリシャはしっかりとその目に焼き付ける。
 傍らでその姿を見つめる陽里の眼差しもまた、柔らかく。
「……本物の自然に憧れてた俺に。アックス&ウィザーズの大地と、満天の星空を見せてくれたお礼」
 その時、宇宙からの星空も見たいって言ってくれたから。
 櫟の名が示すように。先祖代々大切に継いだ、かつての故郷への憧れが陽里にはあった。
 猟兵として覚醒め、グリモアを持つ者達に導かれ、いくつもの世界の四季や自然に触れた。
 そのどれもが、胸を熱くするもので。アックス&ウィザーズのそれも、そのひとつだった。
「ええ。あの時、宇宙から見たらどんな風に見えるのだろうと思ったの。……きっと素敵だと思ってたけど、やっぱり素敵だったわ」
 陽里と一緒だからかしら?、なんて。悪戯っぽくエリシャは笑うと、再び広大な宇宙へと視線を向ける。
 人なんてちっぽけな存在、一瞬で飲み込んでしまう、生きる者にとっては冷徹な空間。
 けれど、それは時に恐ろしい程に美しく、人々を魅了する。
 冷たく無慈悲なその厳しさの中にも、きっと希望を隠しているのだと思わせる。
「果てなく、どこまでも。可能性は無限大の!」
「そうね、宇宙に終わりはないのかも」
 笑い合い、2人並んでランプに願いを籠め、宇宙へと送り出す。
 陽里が小さな緑に籠めるのは、宇宙の民が皆、願うもの。
(願いは自分で叶える! ――が、持論なんだけど)
 今日だけは、星に願うのも良いだろう。

 ――住める惑星がありますように!

 その傍らで、エリシャが手の中の金に籠めるのは、隣の友との明日を繋ぐ願い。

 ――陽里とまた一緒に美しい銀河を見れますように。

 新たな願いを受け取った宙は、燈灯達を彼方へと運んでいく。
 未だ見ぬ希望の地へと、導いていくかのように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

三岐・未夜
願いごと
……昔はさ、いっぱい、あったんだけどな
(ずっとずっと前の、こどもでいられた頃のお話)

今はね、いっこだけなんだ
願いごと
……僕の大切なひとたちが、ずっと、ずっと、幸せでいられますように
其処に己をカウントしないこどもじみた、何処にでも有り触れた願いを託すのは、星の形をした青いランプ
こどもで良いんだ
有り触れてても良いんだ
でも、願う気持ちだけは、本当なんだよ

……あのね、好きなひと、いっぱい増えたんだよ、僕
ともだちも、出来たんだよ
遠ざかる青い星へ、訥々と語り掛けるように
今がさ、楽しいから
……未来を夢見る振りくらい、しても良いかなって
何時か
……何時かさ
本当に、…………なんて、ね
見送るのを、止めた



●欠けることなく
 ランプの数は、もう少ない。
 はじめは大勢居た人々も、その殆どが願い終えたのか、まばらになってきた。
 三岐・未夜(迷い仔・f00134)は、星の形をした青いランプを抱き締めて、静かになっていくその場所をぼんやりと見つめていた。
「願いごと、かぁ」
 誰に言うでもなく、ぽつりと呟いて、やんわりと抱いた青い星へと視線を落とす。
(……昔はさ、いっぱい、あったんだけどな)
 それは、ずっとずっと前の、己がこどもでいられた頃のお話だ。
 でも、今は。
「今はね、いっこだけなんだ、願いごと」
 星へと訥々と語り掛けるように、未夜は唇から言葉を零す。

 ――僕の大切なひとたちが、ずっと、ずっと、幸せでいられますように。

 何処にでも有り触れている、こどもじみた願いごとだと、未夜は思う。
 それでも。
(こどもで良いんだ)
 有り触れてても良いんだ。
(願う気持ちだけは、本当なんだよ)
 そうも、思って。

 人の少ない場所を探して、そっと星を宙へと還す。
「……あのね、好きなひと、いっぱい増えたんだよ、僕」
 手放した青い星がゆっくりと遠ざかる。
「ともだちも、出来たんだよ」
 青い星が、他の灯火に混じる。
 それはまるで、たくさんの人々に囲まれているようで。
「今がさ、楽しいから。……未来を夢見る振りくらい、しても良いかなって」
 誰にも言えない本音。
 己に巣食ったものに、時を奪われていくこどもの、精一杯のつよがりと甘え。
「何時か、」
 もし、のみこまれずに済んだなら。
 のみこまれないすべを、見つけることが出来たなら。
「……何時かさ、本当に、」
 頼りなく震えてしまう声を押し殺す。
 じわりと視界が、ひかりが滲む。
 願いを託した星は、もう見えない。
「……、……なんて、ね」
 未夜は俯いて、それ以上見送るのを止めた。
 濡れた目元に貼り付く髪が気持ち悪い。

 良いんだ。
 知ってるんだ。
 そんなもの、ゆめものがたりだって。

(……だから、さ)

 例え、其処に己が居なくても。……居ることが、できなくても。
 大切なひとたちが幸せであれば、それで、それで――

 ――りん、

 耳に、鈴の音。
 ポケットで声を上げる、黒い星。
 あたたかい手に腕を掴まれて、引っ張り上げられたような感覚。
 普段よりほんのり鋭い音を響かせたそれは、なんだかちょっと怒っているようにも聞こえて。

 ――お前さぁ、ほんとさぁ。
 ――ヤダわ、みっつ揃って大三角でショ?

(あぁ、そうだ)
 まだ。
 まだ、終わったわけじゃない。
 今まで歩んできた道のりを示す、傷の増えた黒。
 好きな人が増えた。
 ともだちも出来た。
 前よりは弱くなくなった。
 少しずつだけど、今も前に進んでいる。
 希望を捨てるには、まだ早い。

 此処から帰ったら、会いに行こう。
 大切な場所で待つ、だいすきな人達に。
 それで、伝えよう。

 だいすきだって。
 明日もまた、宜しくって。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『宙海月』

POW   :    電撃
【体内に宿る電気】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    防衛本能
自身の肉体を【非情に肉厚な状態】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    強力電磁波
【精密機械に限り、電磁波】が命中した対象を燃やす。放たれた【電磁波により、機器から発火した】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●デブリ帯にて
 星生みも終わり、暫しの時が経ち。
 船は無事に目的地へと辿り着く。
 宇宙に幾つも存在する、そのひとつ。
 望まぬ旅の終わりを迎えた船達が眠る場所。
 宙に散った者達が眠る場所。
 希望を守るために切り捨てられたもの達が眠る場所。
 いのちが繋がれていると、示すもの達が眠る場所。
 その、静かな眠りを妨げるように。
 新たな棺を増やそうとするかのように、『それ』らはその場所を漂っていた。

 ふわふわと泳ぐように漆黒の大海で揺れるもの。
 ゆるりと船体の残骸に絡みつくもの。
 時にばちばちと放電しながら群れをなす、夥しい数の宙海月。
 新たな獲物の気配に気付いたか、それとも防衛本能からか。
 こちらに気付いた宙海月達が、一斉に電気を纏い始めた。
 このままでは巻き込んでしまうだろう。

 戦い慣れぬ舞台であろうと、きっと大丈夫。
 足場は、かつての夢の残骸。
 いのち守るは、叡智とたゆみない努力の結晶。
 この宙に眠る人々の希望が、君達の力になってくれる。

 猟兵達は協力してくれた船の人々へと礼を告げると、星の海へと飛び出した。
リインルイン・ミュール
大人しいとはいえ、船にとっては危険なオブリビオン
少し気の毒にも思いますが、これもヒトの為デス。しっかり退治しましょう!


自分に念動力を使い、浮かせて投げるようにしてデブリを飛び回りマス
黒剣を鞭剣状に延ばして振り回せば、沢山の敵のどれかには当たる筈
攻撃に慣れられたら、斬ると見せかけフェイント掛けて、逃げた先に軌道を合わせUC使用

彼らに思考と呼べるものがあるのかは判りませんが、少なくともこれで回避方向、癖、攻撃予兆、弱点が理解出来るでショウ
肉厚になっても極力裏側を狙えるよう、デブリを利用し一瞬隠れてから騙し討ちを試み
或いは突き刺してから、剣に纏わせたフォースオーラのエナジーを炎に変換しての鎧無視攻撃



●宙翔けるけもの
 棺と化した船に絡みつく宙海月を遠目に眺めながら、リインルイン・ミュール(紡黒のケモノ・f03536)は、ふむ、と尾先の真銀の感触を確かめる。
 漆黒の宙に、柔らかくたなびく純白の触手。
 風に揺れる薄衣のようにも見えるそれは、思わず息を止める程に美しい。
(少し気の毒にも思いますが、)
 だが、普段は大人しいとはいえ、宙を往く船にとっては危険なオブリビオン。
 それが、これ程まで群棲しているのならば、本格的な災いとなる前に排さねばなるまい。
「これもヒトの為デス。しっかり退治しましょう!」
 にこぱぁ、という効果音が似合いそうな朗らかな声と共に、リインルインは船体を蹴った。
 そのまま、念動力で加速しつつ、手近な宙海月の元まで弾丸の如く宙を翔けていく。
「数撃ちゃ当たる……いや、数居りゃ当たるってヤツです、ヨ!」
 これだけ密集しているのだ、沢山の敵のどれかには当たる筈。
 声音で笑うと、リインルインは鞭剣状へと変じた尾の剣を宙海月目掛けて撓らせた。

 時にデブリを蹴って勢いをつけ直しながら、リインルインは宙海月の密集宙域を縦横無尽に駆け回る。
「……それにしても、数が多いですネ」
 結構倒した気がするのだが、どうにも数が減った気がしない。これは些か湧きすぎではないか。
 それに、単純な攻撃には慣れられたか、先程から命中率が落ちている気もする。そろそろ効率が悪くなってきた。
「うーん……思考と呼べるものがあるのかは判りませんが。まぁ、イケるでショウ!」
 例え思考が無くとも、読み取れる別の何かはあるだろう。リインルインはフェイントに惑わされた宙海月のひとつを光焔で穿つ。
「と、言うわけで――心身を穿光に曝して下サイ、ワタシがソレを識る為に」
 穿たれた宙海月の思考が、同調したリインルインの中へ流れ込んで来る。
 回避する時、何を考えるのか。何処に行こうとするのか。ちょっとした癖すら、手に取るように分かる。
 身体情報、思考の型、攻撃予兆――そして、弱点までもを読み取ったリインルインは、宙海月達へと再度尾を振るった。
 初撃を逃れた宙海月も、次撃で綺麗に刈り取られ。始めの頃と同じ様に、大量の宙海月が宙の藻屑と化していく。
「うんうん、上々ですネ!」
 勢いを取り戻したリインルインは、次々と宙海月を骸の海へ叩き返して回る。
 今まで以上に身の危険を感じた宙海月達が、防衛本能によって非常に肉厚な姿となろうが、比較的斬り裂き易い裏側を狙って他の海月やデブリの影から騙し討つ。
「表側の弾力はなかなかですけどネ?」
 リインルインは器用に触手を避けつつ、弾力の然程無い部位に剣を突き刺すと、纏わせた丹色の念気で最後の宙海月を焼き尽くした。
「さて。この辺りの海月は、だいたい倒せたでしょうカ……」
 身体を解すようにゆったりと伸びをしながら、ぐるりと周囲へ視線を向けてみれば、少し遠くで他の猟兵が起こしたのであろう爆発が目に入った。
 このデブリ帯は広い。まだまだ時間は掛かりそうだ。
「あまり休んではられませんネ。ささっと終わらせて、みんなでのんびり帰りましょう。そうしまショウ!」
 リインルインは明るく笑うと、加勢のために爆発が見えた方角へ向けて飛び立った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宮落・ライア
ほんと、ただ漂うだけなら幻想的なんだろうけれどな。
それが害あるのなら関係なく斬り飛ばす。
お前たちがこの場所を作った原因なのなら、たとえ意思がないのだとしても悪だ。

電気を纏うのは面倒だなー。近づいて切れない。
まぁ、近づけないのなら近づく必要はないか。
適当な足場に降り、構え、力を溜める。
標的を決めたら全力の気合いと共に海月を森羅万象断で薙ぎ払う。
肉厚になっただけで斬れない訳ではないだろう?



●それが悪であるのなら
「ほんと、ただ漂うだけなら幻想的なんだろうけどな」
 星々の大海を、電光と共に舞う宙海月の群れ。
 周囲に船の残骸がなければ、この光景を純粋に楽しめたのであろうが。
 其処に残された人々の営みや、生命の痕跡が宮落・ライア(ノゾム者・f05053)にそれを許さない。
 始めは宙海月達も、ただ此処に流れ着いただけだったのかもしれない。
 けれど、彼らが持つ性質は、決して無害とは言えないものである。
 此処で眠る船達の末路に、ひとつも関わりがないとは、何の犠牲も出していないとは言い切れない。
 ライアは手にした刃を軽く振り、その重さを確かめる。
 光を反射した刀身が、ライアの心を映すように、ぎらりと鋭く閃いた。
「……よし、」
 幻想的だろうが、何だろうが構わない。
 害があるのなら、関係なく斬り飛ばすだけだ。
 だってボクは、ヒーローなんだから。

 デブリ帯を素早く移動しながら、ライアは宙海月の様子や出方を観察する。
 遠目ではあるが、他の猟兵と交戦しているのであろう姿が見える。
 至近距離から放つ高威力の電撃。
 弾力に富み、生半可な衝撃は殺しきる肉厚な身体。
 今、あちらで爆発を起こしたのは、電磁波か何かによるものか。
(面倒だなぁ)
 攻撃自体を躱すことは出来るだろうが、電気を纏われるのは厄介だ。近付いて斬れない。
「まぁ、近付けないのなら近付く必要はないか」
 ライアは、ちょうど目に付いた程良い大きさの足場に陣取ると、すぅ、と息を吐いた。
 刃の柄を握り直し、静かに構えを取る。
(鋼も、山も、海も、空も、空間も……断ち切ったあの記憶にはまだ届かない)
 視線を走らせる。
 ゆらゆらと身体を揺らしながら此方へ近付いてくる一団が見える。
(それでも――『まだ』だ)
 標的は決まった。
 後はただ、振り抜くのみ。
「――ッはぁ!!」
 危機を察知した宙海月達が、自身の肉体を変じさせようが、もう遅い。
 裂帛の気合と共に放たれた森羅万象を断つ一撃が、肉厚な身体を呆気なく斬り裂いて、宙海月のいのちをひと薙ぎに払う。
 宇宙空間に、はらはらと白の残骸が舞い散る。
「肉厚になっただけで、斬れない訳ではないだろう?」
 電気を纏う暇も与えないよう、斬り残した宙海月達も返す刃で屠りながら、ライアは言い捨てる。
「お前たちがこの場所を作った原因なのなら」
 或いは、このような場所を作る原因となり得るのなら。
「たとえ意思がないのだとしても、悪だ」
 そう、断罪の一言を残すと、ライアは次の獲物を探してデブリを蹴った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

三岐・未夜
……ちょっと喝入れられたし
ちゃんとお仕事してから帰るよ
全くさあ、まさかのふたりともグリモア猟兵になっちゃってさ
…………もっと強くなんないと
じゃないと、ふたりの悪夢をなかったことにして笑って終わりに出来ないじゃんね

デブリを足場に、電脳魔術で軌道を計算しながら物量で攻めるよ
踏んでごめんね、ちょっと足場になってね
誰かのランプの破片とか混ざってたら願いを踏むみたいでやだし、ちょっと謝ってからで

雷纏ってるし、地属性の矢にすべきかな
【範囲攻撃、属性攻撃、操縦、誘導弾、全力魔法】で薙ぎ払うよ
倒し切れなくても後続の誰かが敵を倒す手助けになれば良い
【第六感】で判断して、船を狙おうとする奴から倒して行くよ



●こいぬ座流星群
(全くさあ、まさかのふたりともグリモア猟兵になっちゃってさ)
 三岐・未夜(迷い仔・f00134)は、ポケットの中の黒い星を握り締め、思う。
 3つ揃いのストラップ。残りの青と白、それぞれを持つふたりのともだち。
 まさか、青だけでなく白の方まで覚醒するとは。本当に、いつの間に。
「……、……もっと強くなんないと」
 じゃないと、ふたりの悪夢をなかったことにして、笑って終わりに出来ないじゃんね。
 ふたりとも、ちょっと油断してると、すーぐどっかに行っちゃいそうになるし。
 抱え込んだまま勝手に消えちゃいそうになるし。
(まぁ、僕だって、人のことは言えないけれど)
 星を宙に流しながら考えていたことを思い返し。ちろり、小さく舌を出す。
「……ちょっと喝入れられたし。ちゃんとお仕事してから帰るよ」
 笑いながら呟いて。鈴の音を相棒に、未夜は宙へと飛んだ。

 たん、たん、とデブリを飛び石代わりに宙域を駆けながら、未夜は落ち着いて計算できる場所を探す。
(踏んでごめんね、ちょっと足場になってね)
 心の中でそっと謝罪しながら、なるべく宇宙船の残骸であると分かるものを選び進む。
 だって、もし、いつか誰かが流したランプの破片なんかが混ざっていたら。
(……願いを踏むみたいでやだし)
 願いを、想いを踏むのも踏まれるのも御免だ。
 故に、多少面倒でも手間は惜しまない。
 漸くちょうど良さそうな場所を見つけた未夜は、遮蔽物になりそうな残骸の影にさっと身を隠した。
 素早く展開するは電脳魔術、計算するは最適な軌道。未夜が最も得意とする、物量攻撃のための布石。
(雷纏ってるし、地属性の矢にすべきかな)
 破魔矢に付与する属性を決めると、息をするような自然さでちからを練り上げる。
「えーと……とりあえずー……」
 送ってくれた宇宙船に近いとこに居るやつから片付けてこ。
 なんとなく「やばそう」と判断した宙海月を最優先に、未夜は矢を放った。
 流星群の如く、宇宙空間を凄まじい量の破魔矢が翔ける。
 穿たれた宙海月が次々と撃ち落とされ、その身を宙へ散らしていく。
 難を逃れた宙海月が、所構わず電磁波を放って矢の主を探すが、終ぞ叶わず。
 新たに降ってきた矢の餌食となり、藻屑と消えた。
「んー……こんなもん、かなぁ。だいたい居なくなった気がするんだけど」
 例え倒しきれずとも、此処に居るのは未夜だけではない。後続の誰かが、或いは、近くで戦う他の猟兵の手助けになれば良い。
 己の身を守ってくれた残骸に背を預け、未夜はほぅ、と息を吐いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

コルチェ・ウーパニャン
連れてきてくれてありがとう。
宇宙船を巻き込まないように、で、迷子にもならないように気を付けて距離をとるよ!

それにしてもすっごい電磁波! 当たったらコルチェこわれちゃう……!
だから…ミレナリオリフレクション!

うーっ、でも電磁波なんて見えないよう!
ピカリブラスターの設定をキュルッと変更!
電磁波モードに切り替えて、ねらいは拡散タイプに!
これで、とりあえず盾にしまーす!

電磁波のかわりに宙海月さんたちの動きを見なくっちゃ!
なんとなく、飛んでくるときの感じが分かったぞーっって思えたら
飛んでくる電磁波ガピガピ撃ち返しちゃう!

隙を見つけたら電磁波モードのまま、
ピカブラの全力の制圧射撃で…キュルルーン!!だよ!


櫟・陽里
宇宙空間は庭、って言っちゃったからね
そりゃもう自由自在にカッコよく戦うところをお見せしなきゃ、だな!
相棒バイクに騎乗し張り切って飛び出す
タイヤで残骸を走る事もできるし
ジェットエンジンで飛び回る事もできる

敵の動きは緩やかだ
素早く駆け抜ければ攻撃をかわすのは難しくないはず
もし仕方なく敵に触れてしまうなら
電撃はバイクのボディとシールドで受け流して宇宙空間に放電

他の猟兵が困っていそうなら二人乗りするか声かける

チャンスを見計らいSide by side発動
バイクをデブリに擦って火花を散らしそのまま敵に体当たり!
敵を燃やしてダメージを与えればそれで良し
行けそうなら猛スピードで突っ込んで大穴開けてやるぜ!



●ぴかぴかひかる
「連れてきてくれてありがとう!」
 コルチェ・ウーパニャン(マネキンドールのピカリガンナー・f00698)は宇宙船の人々に手を振りながら、デブリ帯へと飛び立っていく。
 此処から先へは、巻き込まぬように猟兵達だけで向かわねばならない。
 見れば、先程一緒に星を流した兄妹も、千切れんばかりにぶんぶんと手を振ってくれている。
 むん、と決意を新たにしたコルチェは、他の猟兵を見失わぬようにしながら、スラスターを調節して適当な大きさの残骸の上へと着地する。
「ひゃわっ」
 デブリでも同胞でもないものの出現に、宙海月達がざわざわと揺れる。
 心做しか、纏っている電気も一層強さを増した気がする。
 遠目で見ていた時よりも威圧感のある光景に、コルチェは思わず一歩下がった。
 ――その直後。
 ごがぁんっ、と一瞬前までコルチェの居た場所から炎が噴き出した。
 宙海月の放った強力な電磁波の所為で、足場にしていた宇宙船の残骸が爆発したのだ。
「あわわわわっ!?」
 コルチェは慌てて数歩飛び退く。引火したら大変だ。
「こんなの当たったら、コルチェこわれちゃう……!」
 警鐘を鳴らすように、コルチェの髪が赤やら青やらにぴかぴか光った。

 一方、その頃。
(……宇宙空間は庭、って言っちゃったからね)
 櫟・陽里(スターライダー ヒカリ・f05640)は無二の相棒のコンディションを確かめながら、数刻前のやり取りを思い返していた。
 暁の星と宙を泳ぎながら、照れ隠しに告げたことば。
 庭と言うなら、最高の走りをせねばなるまい。
 それでもって、
「そりゃもう自由自在にカッコよく戦うところをお見せしなきゃ、だな!」
 あとはもう、有言実行あるのみ。陽里は相棒に跨ると、勢いよく宇宙空間へと飛び出した。 
 今日も相棒の調子は最高、己の身体によく馴染む。
 一気にデブリ帯へと突入し、手近な残骸へと飛び乗ると、ジェットエンジンを吹かして不規則に並ぶデブリをコースに駆け巡る。
 いくら強大な威力を持つ攻撃と言えど、当たらなければどうということはない。
 射程範囲に入らなければ、超高速で放たれようが問題はない。
 雷のようなスピードで緩慢な宙海月を翻弄しながら、陽里は心のままに疾走する。
「……あれ?」
 駆け抜ける最中。陽里の目が、宙海月が放つものとはまた別の種類の光を捉えた。
 なんだか、赤やら青やら、目まぐるしく色を変えながら明滅している。明らかに電撃のそれではない。
(他の猟兵か?)
 鈍間な固体をついでに跳ね飛ばし、陽里は光の見えた方向へと相棒を走らせた。

 髪のぴかぴかを収めたコルチェは、そこそこ頑丈な残骸の影でピカリブラスターを片手に宙海月達の動きを観察していた。
 設定は電磁波モードに切り替えた。拡散できるようにキュルッと弄るのも忘れてない。
 これで、とりあえず盾にできるはずだと思うのだが――、
「……うーっ、でも電磁波なんて見えないよう!」
 問題はそこである。
 なので、敵の動きから攻撃を予測しようと一旦隠れたは良いものの。
 先程の髪の光に反応して集まってきたのか、最初より宙海月の数が増えている気がする。
「どうしよう……」
 一か八か、飛び出して撃ちまくるしかないかも。
 コルチェが覚悟を決めて、飛び出す準備をした、その時だった。
 轟音と共に、宙海月の包囲網をぶち破って一台の宇宙バイクが現れた。陽里である。
「乗りな!」
「!、うん!」
 コルチェがバイクの後部に乗り込んだのを確認すると、陽里は襲い来る電撃を相棒のボディやシールドで受け流しながら、アクセル全開でその場から離脱する。
「ありがとー……! このままコルチェもお星さまになっちゃうかもって、ドキドキだったー……っ!」
「困った時はお互い様ってな! ……それにしても、さすがにあの数は多すぎるな」
「だいじょーぶ! コルチェね、やっと見つけたの!」
 陽里の言葉に、コルチェはピカリブラスターを揺らしてにこっと笑った。

 獲物を見失うも、その場に留まり次の機会を待っていた宙海月が、次々に跳ね飛ばされ、焼き尽くされていく。
 その合間を駆けるのは陽里とコルチェを乗せたバイク。
 デブリとバイクの摩擦で生じた火花が、その軌道やタイヤ痕を辿り燃える炎が、どんどん焼き海月を量産していく。
 それに慌てたか、宙海月達が電磁波で応戦しようとするも、
「いっくよー!!」
 コルチェの髪が、何かを読み込むかのようにぴかぴかと光る。
 次瞬、ピカリブラスターから放たれた電磁波が、宙海月達の放ったそれとぶつかり合う。
 コルチェは宙海月達に囲まれて機を窺う中で、彼らが電磁波を撃つ際の前兆となる動きを見つけていた。
 そしてその狙い通り、寸分の狂いもなく正確に放たれたコルチェの電磁波は、相手の電磁波を余波も残さず相殺した。
「やった、成功したよー!」
 勢いのままに、コルチェはがんがんピカリブラスターを撃ちまくる。
 キュルルーン! という軽快な音が轟く度に、焼き海月達が更に増えていく。
「このまま突っ込むぞ!!」
「りょうかーい! いけいけ、おーっ!!」
 最早、ふたりを止められるものは何処にも居ない。
 ふたつのひかりは、破竹の勢いで宙海月達を撃ち払っていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふわぁ、クラゲさんです。
綺麗ですね、でもこのままですとこの宇宙船もここで眠る他の船と一緒になってしまいます。
なので、近づかせませんよ。

あの電撃は遠くにまで届かないみたいですね。
サイコキネシスで押し戻してしまいましょう。
クラゲさん同士をぶつけたらショートしそうですね。
ごめんなさい、私たちもここで永遠に眠り続けるわけにはいきませんので。



●宙舞う海月と大きな帽子
「ふわぁ、クラゲさんです……」
 フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、ふわふわと宙を楽しそうに泳ぐ海月達が作る幻想的な光景に、暫し魅入っていた。
 まるで絵本や御伽噺のワンシーンのような、けれど何処か恐ろしさを感じるそれは、状況は違えどアリスラビリンスで覚醒めた時に感じた雰囲気に似ていて。
「綺麗、ですけど。……このままですと、この宇宙船もここで眠る他の船と一緒になってしまいます」
 宙海月達が巣食い、絡みついているのは、志半ばで眠りについたのであろう船達。
 この船も同じ末路を辿らせてしまうことだけは、絶対にさせていはいけない。
「なので、近づかせませんよ」
 そうですよね、アヒルさん。
 決意を固めるように。勇気を分けてもらうように。
 フリルは、ぎゅっとアヒルさんガジェットを抱き締めた。

 アヒルさんと共にデブリのひとつへと降り立ったフリルは、先に交戦していた他の猟兵達の立ち回りを見ながら、考えていた。
(クラゲさんの、あの電撃は遠くにまで届かないみたいですね)
 宙海月が繰り出す攻撃の中で、最も警戒しなければならない電撃攻撃。
 体内に宿る電気による、超高速かつ大威力であるそれは、当たれば一溜まりもないであろうが、射程範囲自体は狭いようであった。
「なら、遠くからなら大丈夫でしょうか」
 今居る場所ならば、隠れられそうな残骸は沢山ある。
 例え電磁波の方が飛んできても、別の残骸へと移って避ければどうにかなるだろう。
 フリルは、自分よりも大きな残骸の影に身を隠すと、目を閉じて意識を集中する。
 彼女の中に眠る力が呼び覚まされる。
 周囲のデブリ達が、その影響を受けてガタガタと揺れ動き始めた。
「――っ、えい!」
 放たれたサイキックエナジーが、見えざる手となって宙海月達に襲い掛かる。
 身体の制御がきかなくなったことに混乱した宙海月達は、体内の電気を放出することで事態が解決しないか試みる。
(そうだ、クラゲさん同士をぶつけたらショートするかもしれません)
 フリルは己の方に宙海月達が来ないよう、さりげなく念力で彼らをその場に押し留めながら、思いついたそれを実行してみた。
 ぶつかり合った宙海月達は、フリルの狙い通り、合わさり増幅されて許容量を超えるレベルとなった電撃でショートし、焼き尽くされていく。
「……ごめんなさい、私たちもここで永遠に眠り続けるわけにはいきませんので」
 幼い顔に憂いを宿して。しかし、手を止めることはせず、フリルは宙海月同士を衝突させ、その数を減らしていく。
 宙海月達は、最後までフリルの存在に気付くことなく、わけもわからぬまま互いに互いを葬り去っていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(宇宙船の残骸に瞑目するようにセンサーアイの緑の光を落とし)

…さて、掃討を始めましょう

近接戦を得手とする私にとって相性が悪い相手なのでUCで宇宙船から持ち込んだのはウォーマシン用のレーザーキャノン
センサーでの●情報収集で索敵を行いつつ、機械馬に●騎乗し残骸の間を縫うように、或いは足場として●踏みつけ鋭く方向転換し包囲されぬように移動
レーザーの●スナイパー射撃で着実に仕留め、再び密集したと●見切ればレーザーキャノンを●ハッキングし●限界突破
●なぎ払うように連続照射し一掃

これでこの宙域の資源回収も捗るでしょう
朽ちることも許されぬより、未来への礎となる…少なくとも、私はそうであって欲しいと希望します



●とむらい
 騎士兜の隙間から覗く瞳の緑光が、瞑目するように落とされる。
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は暫しの間、永久の眠りについた船達へ祈りを捧げると、再び瞳へと光を灯す。
「……さて、掃討を始めましょう」
 死者への祈りは済んだ。
 後は、今を生きる者達の為、戦うのみ。
「しかし、宙海月ですか……」
 向けた視線の先には、精密機械を狂わせる宙海月の群れ。
 かつて戦ったこともあるそれらは、機械の身であるトリテレイアにとって、非常に相性が悪い相手である。
 ついでに、己が得手としているのは近接戦。対して、相手は近付けば強力な電撃を放ってくる。
 正面からぶつかるのは得策ではない。
 ならば、どうするか。
「――ああ、あれを使いましょうか」
 思案の末に機械騎士の頭脳が叩き出したのは、まさに最適解と言えるものであった。

「我ながら、節操が無いとは思いますが……」
 苦笑するような声音で呟いたトリテレイアが手にしているのは、ウォーマシン用のレーザーキャノン。
 理想ばかりでは何も救えぬ。目的を達成するためならば、時として現実を見て策を講じる必要がある。
 使えるものならば、手段選ばず何でも使う。少なくとも、この場においての最適解はそれだ。
 愛馬を駆り、デブリ帯へと突入したトリテレイアは搭載された各種センサーを駆使して周囲の様子を探る。
 程なくして、作戦遂行に必要な情報すべてが集まった。センサーの感度は本日も良好である。
 トリテレイアは残骸の間を縫うように、時に足場や遮蔽物として使いながら、遠距離からのレーザー射撃で宙海月達を一体一体着実に仕留めていく。
 此方に気付き接近してくる集団が居れば、素早く踵を返して事前に導き出していたルートへと進路を変え、安全な場所から敵を撃ち落とした。
 決して包囲されぬよう計算された冷静な立ち回りに、宙海月達は只々翻弄され、その数を減らしていった。
「後は……彼処の群れで最後でしょうか」
 センサーが捉えた新たな反応。
 視線を向ければ、生き残った宙海月達が今まさに密集していくところだった。
 トリテレイアは新たに作られた群れに照準を合わせ、レーザーキャノンを構えると、そのシステムにハッキングを仕掛けた。
 強制的にリミッターを外し、自壊寸前まで性能を引き上げる。
 次瞬、性能の限界を超え、連続照射が可能となったキャノンから、数多の光が放たれた。
「これで、この宙域の資源回収も捗るでしょう」
 宙海月達の消失をセンサーでも確認してから、トリテレイアはキャノンを降ろす。
 朽ちることも許されぬより、未来への礎となる方が、ずっと良い。
 きっと、此処で眠る彼等も、それを望むだろう。
「……少なくとも、私はそうであって欲しいと希望します」
 静寂を取り戻した宙域に、そう零して。
 はがねの騎士は今一度、瞳の緑光を落とした。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『失われた船の核』ロスティア』

POW   :    高エネルギー収束砲
【長時間のエネルギー充填】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【高エネルギー砲】で攻撃する。
SPD   :    リペアシステム
自身からレベルm半径内の無機物を【敵ユーベルコードも含めて、自身の修復装甲】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
WIZ   :    ジャミングコード
対象のユーベルコードに対し【対象の意識に浸透するあべこべの詠唱コード】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑7
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●希望の在処
 デブリ帯を荒らす宙海月を一掃し終えて。
 猟兵達は本当に取り零しがないか、ある者は己や愛機に搭載されたセンサー等で、ある者は己の足で残骸の間や内部を探りながら、最後の確認を行った。
 一際巨大な船の残骸を集合場所として、猟兵達は休息を取りながら、各々が得て来た情報を共有し合う。
 どうやら、もう脅威は残っていなさそうだ。そろそろ戻っても大丈夫そうか。
 ふと、目印にしていた残骸へと視線を落とせば、大きく抉り取られた装甲の奥に、居住区域らしき空間の一部が見えた。
 その壁や床一面に塗料で綴られていたのは、かつて其処に暮らしていたのであろう誰かが残したメッセージ。

 ――スペランツァ号。

 メッセージに目を通したひとりが呟いた。それが、この残骸の――この船だったものの名前なのだろう。
 いつか、誰かが生きていた場所の名前なのだろう。
 ――帰ろう。
 別のひとりが口にしたそれに、誰からともなく頷いた。
 此処で自分達が為すべき事は為した。後は、この世界に生きる者達に委ねよう。
 猟兵達が引き上げの準備を始めた時だった。

『――ますか、』

 ある者のセンサーが、新たに出現したそれの気配を捉えた。
 ほぼ同時に、異変に気付いた者達も警戒するように周囲へと視線を走らせる。
『そこにいますか』
 集中した視線の先に、それは確かに佇んでいた。
 虚ろな目で猟兵達へと問いかけるそれは、場違いにも少女のかたちをしていた。
『飢えていませんか』
『凍えていませんか』
『息は苦しくないですか』
『子供達の歌声は、まだ響いていますか』
 少女のかたちをしたそれは、矢継ぎ早に問いを重ねながら、猟兵達から少し離れた場所へと降り立った。
『この姿になって、どれくらい経つの』
 かくん、と首を傾げる彼女に、猟兵達は一斉に臨戦態勢を取り始める。
 少女を守るように、足元の残骸からめきめきと装甲が錬成されていく。
『わたしは、いつ“帰って”きたの』
 少女は尚も要領を得ない問いを口にし続ける。
『わたしは何を探しているの』
 それまで無表情であった少女の表情が、泣きそうに歪んだ。
 細く頼りない指が銀の髪を掴む。
『……、い……わか……な……、……ない、わからない――わからないわからないわからないわからないわからないッ!!!!』
 頭を掻き毟る少女の姿に、ノイズが走る。
 その身体の奥に垣間見えたのは、彼女が本来あるべきかたち。彼女が何者なのかを示すもの。
 宇宙の民にとっては、いのちに等しきもの。

 ――宇宙船の動力機械。

『わたしには、もう、わからないッ!!』
 少女が――少女の姿をしたコアマシンが、血を吐くように吼える。
『いくら探しても見つからない! ずっとずっと、見つけられない! ――もう、名前も、形も思い出せない!!』
 骸の海に堕ちる過程で何があったのか。
 骸の海から滲み出す過程で何があったのか。
 何故その姿を取るに至ったのか。
 猟兵達にはわからない。知る術もない。
 けれど、ただひとつ確かなのは、彼女が過去の化身――オブリビオンであること。
 人々の未来を祈るものから、未来を喰らうものへと変じたこと。
 宙域の外で待つ船に危害を加えないとは、決して言い切れないこと。
『わたしは何なの? わたしは何処から来たの? わたしは何処に帰るの?』
 少女は周囲の残骸を滅茶苦茶に取り込みながら、足りないピースを求めるように猟兵達の方へと手を伸ばす。
『わたしの、いみ……わたしの、きぼう、』
 その瞳は、猟兵達を通して別の何かを見ているようであった。
エリシャ・パルティエル
陽里(f05640)と

宇宙船のコアマシン…人々を守ってきた存在…
目の前の残骸が希望の名を持つ宇宙船のなれの果てなのだとしたら
彼女が守りたかったものはもうないのね…
でもこのままじゃこの世界で生きる人の希望を奪う存在になってしまう

陽里はオブリビオンに対して冷徹だと思ってたけど…
親みたいな存在…そう、家族は大切だもの
いつもあたしの気持ちを尊重してくれるから
今日はあたしが力になるの

バイクに乗せてもらって
銀河に散った命に祈りを捧げる
怪我をした仲間には癒しを

コアマシンは生きる希望
あなたがいたから子どもたちも笑顔でいられたの
あなたはできることをしたのよ
大丈夫、失われてなんかいない
希望は受け継がれていくから…


フリル・インレアン
【極さん(f00331)をお呼びします。】
アヒルさん、ごめんなさい。
私たちはあのユーベルコードと対峙しないといけないみたいです。
絶対に助け出しますから、それまで辛抱していてください。

アヒルさんが修復装甲に変換されてしまいますが、私にはどれがアヒルさんだったか分かります。
それはあなたにも同じことが言えるのではないでしょうか?
あなたの存在してきた意味が修復装甲に変換されて、あなたの周りに在るのですから。
お菓子の魔法で修復速度を遅らせます。
その隙にあの方の目を覚まさせてあげてください。

効果が切れれば無機物は元に戻るはずですから、アヒルさんも無事ですよね。


幻武・極
【フリル(f19557)に呼ばれてきたよ】
やれやれ、フリルに呼ばれてきたけど、そういうことか。
キミの過去のしがらみを引きはがせるのはボクだけのようだね。
一応、キミたちの生きた頃の希望の一つは叶っているよ。
銀河帝国は壊滅したからね。
まあ、そっちが本懐ではないだろうけどね。

さて、フリルが作ってくれたチャンスに幻武流超奥義を打ち込ませてもらうよ。

最期の瞬間は彼女がオブリビオンになってまで探し求めていた場所に送り届けてもいいかな?
このスペランツァ号の動力室が彼女の居場所だからね。


櫟・陽里
エリシャ(f03249)と二人乗り

宇宙船で生まれ育ったんだ
船は…コアマシンは親みたいな存在
感謝しかない
安らかに送ってやりたい

スペランツァ号、聞こえるか?
こちらRA13ss…救援に来た
よく頑張ってくれたな、ありがとう
あんたが背負ってきたものの事は引き受ける

もう大丈夫だ

騎乗で敵に接近
俺の操縦技術、そう簡単に攻撃が当たると思うなよ?
ライは奪われちまうかな?
まぁ…返ってくるならいいさ
ライを介してスペースノイドの雑多な情報を送る
人々の笑顔の画像、生活の様子、乗り物の仕組み…
沢山の宇宙船の名前
あんたも仲間の一員だ
思い出して落ち着いてほしい

敵にも祈りを…って、エリシャに教わったんだ
乗り物全般への愛もあるしな


ヘルガ・リープフラウ
・アドリブ、連携歓迎

悲しいけれど、あの船の残骸を見るに、恐らく乗組員たちはもう……
だけど彼らが抱いた『希望』は、まだ潰えてはいない
残された物資と彼らの意志は、同じ宙の果てを目指す同胞たちに受け継がれている

だから、もう心配しないで
あの子達のところに……骸の海に帰りましょう

祈りと優しさをこめて歌う
【聖霊来たり給え】と
出来ることなら、かつて彼女が聞いた『子供たちの歌』と同じ歌を
今を生きる人々の希望の灯火を絶やさぬように
志半ばに散った人々、そして彼女自身への慰めになるように
自分のかけらを喪失したまま永遠の苦しみを生きるのは、きっと辛いことだから

最後はどうか、宙に輝く星となって、人々を見守って……


トリテレイア・ゼロナイン
擬似人格を持つコアマシン…!
ある意味同胞ですが、犠牲が出る前に討たなくては
しかし何故、残骸に執着して…

普段凍結している●世界知識、SSWの船舶情報解凍
スペランツァ号の顛末検索

…御伽の騎士は苦しむモノに何をするか…
賭けになりそうです

接近しワイヤーアンカーを打ち込み強制有線●ハッキング
状態を●情報収集しつつ演算能力●限界突破
UCで解析し現状把握能力修復を試行

充填完了を●見切り●怪力シールドバッシュで砲身を殴りつけ片腕犠牲覚悟で直撃回避

今が何時か、己が何か、スペランツァ号の顛末
例え『過去』でも、すでに亡くとも…
大切な物を見失うのはそれ以上に悲しいこと

試行後、電子●破壊工作

もう、十分です
お休みください


三岐・未夜
……もしかして、宇宙船に乗ってたひとを探してる……?
待っててくれるはずのひとが居ないって、帰るべき場所が分からないって、……きっとすごく、こわい
思わず胸元の鍵を握る

ね、ねぇ、きみ、コアマシンなんだよね
船の名前は?このスペランツァ号はきみの船の名前じゃないの!?
塗料を確認して、行方を伝えられないかな
何か。何かないのかな
だって、……さびしいよ、これじゃ

【祈る】よ、彼女のための何かがないかって!
攻撃は【見切り】で回避、出来る限りスペランツァのメッセージを読んで回るよ
倒さなきゃいけないのは分かってる
でも、でもさあ……ひとを想い続けた機械とその民の想いが、【手をつなぐ】ことくらい、出来たって良いじゃん


リインルイン・ミュール
船を、或いは乗せて守っていたヒトビト(船としての存在意義)を探している……?
……その探しものは、多分もう、過去にしかなくて
ですから、お還り下サイ。今を生きる者達の祈りを、希望を、壊してしまう前に


船なら電気には弱いと判断。全身纏うオーラにエナジーの雷を流し、籠手で殴りつけ、尾の剣を槍状に変えて貫きマス
武装自体は残存しているようなので、エネルギー充填等の反撃兆候を察知したら即座に回避行動へ

通常の攻撃に加えて、UCの呪歌に祈りも乗せて歌いましょう。音が通る限り、装甲も意味はないですし……既に過去であるキミに、今も連綿と続く願いだけは聞き届けて欲しいので
あべこべにされて歌えなくなったら、通常攻撃を続行


宮落・ライア
あれは救うべき存在?
そうだね。そう、迷子は救わなきゃいけない存在。
なら、命を張ろう。

最大充填じゃなくても撃てるかも知れない事を念頭に置いて行動。
砲なら突っ込めば死角に入れるだろうからとりあえず突っ込む。
何を言うにもとりあえず接触してからでしょ。
残骸が邪魔なら怪力で引き剥がす。

ここに居るよ。
餓えてないよ。
凍えてないよ。
苦しくないよ。
もう大丈夫。
ずっと探してくれてありがとう。
ありがとう。スペランツァ。
私たちが君を見つけたから。
君の意味も希望も引き継がれてるから。
だから、スペランツァももう大丈夫。
頑張ったね。

何があったのかも知りもし無いけれど、何も思い出せないなら
看破される事も無いでししょ。


コルチェ・ウーパニャン
ごめんね、未来へ連れて行けなくてごめんね……
あなたを苦しめないで戦う方法も、慰める方法も、コルチェ、思いつかないの。
……コルチェ、ピカブラからシールを射出します…
お呼び出しするのは太陽フレア……『電磁の波』!

ガビガビのガオガオの電磁波が、機械がムズかしいこと考えるのを邪魔するよ。
ガビガビの電磁波、撃ってるコルチェもツラいけど、あべこべの電磁波が飛んでくるのも、二倍ツラいけど……髪もパリパリするけど、頑張れる……と思う!

息、苦しくないよ。おなかへってないよ。
でも、さみしい。
心配なのは、あなたのこと。
ロスティアちゃん、落ち着いて。
いつかキモチの嵐がすんだら、コルチェと一緒に、お話しよう。



●核の記憶/少女の記憶
 うっすらと『記憶』に残っているもの。
 『彼ら』から引き離されて。
 それでもわたしは生き残って。
 漂って、漂って、漂って。
 ぶつかって、壊されて、燃え上がって。
 全部、途切れて。
 終わって。

 なのに、今もまだ、わたしはこうして彷徨い続けている。
 こんな姿になっても、尚。

 どこにいますか。
 飢えていませんか。
 凍えていませんか。
 息は苦しくないですか。
 子供達の歌声は、まだ響いていますか。

 もう、幾度繰り返したかわからない問いを、また口にする。 
 わたしには、もう、『彼ら』がわからない。
 わたしの『生きる』意味だったはずなのに、もう『彼ら』の名前も思い出せない。

 でも、進まないと。
 探さないと。
 わからなくても、見つけないと。

 ――ねぇ、わたし、なにを探してたんだっけ?


●果ての宙より
『――どこにもいない……見つからない、見つけられない……帰れないッ!!』
 死した船達の欠片を繰りながら、過去の亡霊は吼え続ける。
 少女に取り込まれた残骸達が、彼女を護る装甲に、砲台に、次々と組み替えられていく。
(擬似人格を持つコアマシン……!)
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)にとって、彼女は同胞に近しい存在だ。
 姿かたちや役割は違えど、同じはがねの身体を持つもの。護るために作られたもの。
 本来の役目から解き放たれようと、果たす対象を失おうと、それでも尚、何かを護ろうと振る舞うもの。
 されど、目の前のそれは既に、
(……犠牲が出る前に討たなくては)
 宙域の外には自分達の帰りを待つ船が居る。
 彷徨い行けば今を生きる数多の船が居る。
 決して取り逃がすわけにはいかない。
「しかし何故、残骸に執着して……、」
「……もしかして、宇宙船に乗ってたひとを探してる……?」
 トリテレイアの零した疑問に、三岐・未夜(迷い仔・f00134)の呟きが重なる。
 迷子のように嘆く彼女の姿に、未夜は思わず胸元で揺れる鍵を――己の帰るべき場所の鍵を、強く握り締めた。
 待っててくれるはずのひとが居ないって、帰るべき場所が分からないって、それは、きっと。
(……きっとすごく、こわい)
 彼女のことは、ことばの端々から読み取れる範囲でしか分からないけれど。
 そのことだけは、とてもよく分かるから。
「――ッね、ねぇ! きみ、コアマシンなんだよね!?」
 故に、考えるよりも先にそう尋ねていた。
「船の名前は? ……そうだ、あの船……、スペランツァ号は、きみの船の名前じゃないの!?」
 ふと、先程見かけた残骸に綴られていた名前を口にする。
 広大な宇宙にかつて在った、途方もない数の船。彼女の探す船の名がそれである可能性は、あまりにも低い。
 だが、ゼロではない。そう思ったのだが。
『わからない! わからない! もう何もわからないッ!!』
 少女は、頭を振って問いを拒絶する。
 激しい狂乱状態に陥っている彼女には、言葉だけでは届かない。
「ダメだ、まずは落ち着かせないと……何か、何かないのかな……」
 彼女に冷静さを取り戻させるような何か。彼女の記憶を呼び覚ますような何か。
 それだけの衝撃を与えられる何か。
(だって、……さびしいよ、これじゃ!)
 彼女のための何かがないか、答えを探すように懐刀に触れる。
 焦っていた頭が、すぅと冷えていく。
(そうだ、メッセージ……!)
 傷付くのにも飽きたんだ。
 だから、己に出来る精一杯を。
 未夜は手近なデブリを蹴ると、変換に巻き込まれ流されていく残骸を追って飛び出した。
 トリテレイアもまた、2人の遣り取りから普段凍結している知識群を解凍する。
 呼び出すのは、この世界に生きる過去・現在すべての船舶達の情報。
(……スペランツァ号の顛末は、)
 膨大な量のデータの中から、望むそれを導き出す。
(これは、)
 展開された内容に、騎士兜の隙間から漏れる緑光が目を瞠るように強さを増した。
 後は、これをどう伝えるか。
「……御伽の騎士は、苦しむ存在に何をするか」
 どうやら、賭けになりそうだ。
 ぎしり、と要となるそれの調子を確かめて、トリテレイアは動き出した。

「宇宙船のコアマシン……人々を守ってきた存在……」
 エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)は、櫟・陽里(スターライダー ヒカリ・f05640)のバイクの後部座席から少女と変じたコアマシンを見つめていた。
 希望の名を持つ宇宙船。
 それが、少女の探しているそれなのであれば。
 目の前の残骸が、その成れの果てなのだとしたら。
「彼女が守りたかったものはもうないのね……」
 亡霊となってまで彷徨い続けた結末がそれとは、あまりに報われない。
「でも、このままじゃこの世界で生きる人の希望を奪う存在になってしまう」
「……そんなものには、したくない」
 エリシャのその言葉に、陽里が掠れた声で呟いた。
「そんなこと、させたくない」
「陽里……」
「宇宙船で生まれ育ったんだ。船は……コアマシンは親みたいな存在なんだ。……感謝しかないよ」
 コアマシン――宇宙船の動力機械。宙を征く船の心臓。
 居住可能惑星の無いこの世界で、星間物質から兵器や推進エネルギーだけでなく、食料や必需品までをも作り出すことが出来るそれは、文字通り宇宙の民の命だ。
 機械が無ければ生きられないこの世界で、自分達をここまで生かし、育み、守ってくれていた大切な家族だ。 
「だから……安らかに送ってやりたい」
 今までは、些細なミスや僅かな見逃しが船1隻の全滅に繋がると、オブリビオンには厳しく当たってきた。
 けれど今回ばかりは、どうしても。
(陽里は、オブリビオンに対して冷徹だと思ってたけど……)
 其程、大切なものなのだ。
 親みたいな存在とまで称する程に。
「……そう、家族は大切だもの」
 陽里の腰に添えた手に、エリシャはきゅっと力を込める。
(いつも、あたしの気持ちを尊重してくれるから)
 そうやって支えて、助けてくれるから。
「今日は、あたしが力になるの」
 力強く告げるエリシャに、陽里の口元が少しだけ綻ぶ。
「……ありがとな」
 胸に灯るあたたかいもの。
 傍に居てくれることの心強さ。
 陽里はぎっと表情を引き締めると、愛機のグリップを握り直しエンジンを吹かす。
「しっかり掴まってろよ!」
「ええ!」
 目指すは敵陣。コアマシンの化身の懐だ。

(あれは、救うべき存在?)
 宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は己の内に問い掛ける。
 彼女はオブリビオンだ。過去の残滓だ。世界を滅ぼすものだ。ただ其処に存在すること、為すことすべてが悪となる、哀れな亡霊だ。
 ならば、問答無用で断罪し、滅するべきか?
 ――否、それ以前に迷い子だ。
「そうだね。そう、迷子は救わなきゃいけない存在」
 道に迷って泣く子供には、手を差し伸べるがヒーローだ。
 そして、ヒーローであるならば、堕ちたものに慈悲深く手を差し伸べることも必要か。
「なら、命を張ろう」
 獲物を握り、ライアは笑う。
 ヒーローらしく、快活に。いつも通りの笑みを。
 さて、そうと決まれば、まずは。
「何を言うにも……とりあえず、接触してからでしょ」
 身を低く構え、亡霊目掛け、跳ぶ。
『ッ、!』
 武器を片手に己へ向かって突撃して来るライアに気付くと、コアマシンの少女は構築し終えた砲台にエネルギーを急ぎ集め始めた。
 武装した集団。敵対行動。己を阻むもの。壊そうとするもの。
 オブリビオンとしての本能が、あれは敵だと警鐘を鳴らす。
『わたし、わたしはッ! 探さないと! 見つけないと!』
 完全に猟兵達を敵として認識した少女は、護りを固めながらライアへと砲身を向ける。
(これは……最大まで充填しなくても撃てそうな雰囲気だね)
 本格的な砲撃に比べればある程度威力は落ちるだろうが、元々の威力も分からない以上、脅威には変わりない。別の攻撃方法や武装を構築される可能性もある。
(面倒な事になる前に、懐へ飛び込みたいとこだけど――、と)
 砲を見据えて思考するライアの視界に、少女の死角から迫る別の猟兵の姿が映る。
 宙色の身体に、獣の面――リインルイン・ミュール(紡黒のケモノ・f03536)だ。
『ここで止まるわけにはいかないの! 進まないといけないの!』
(船としての存在意義、) 
 乗せて守っていた人々。
『役目を、生まれた意味を果たさないといけないのッ!!』
(その探しものは、多分もう、過去にしかなくて)
 きっともう、途方も無い時間が過ぎていて。
「……ですから、お還り下サイ。今を生きる者達の祈りを、希望を、壊してしまう前に」
 リインルインは全身に纏ったオーラへと雷を流しながら、敵意を宿して吼える少女の装甲を槍状に変じた尾の銀剣で穿つ。
 そのまま間髪を入れず、ライアから注意を逸らそうと思い切り籠手で殴り付けた。
 数枚の装甲が大きく拉げ、少女の姿が露わになる。
「よし、これなら届く!」
 リインルインが生んだ隙を利用して、ライアは砲の死角へと滑り込む。
 邪魔な装甲を引き剥がし、少女との接触を試みる、が。
「!、離れて下サイ!」
 剥がされた装甲の不穏な動きに、危機を逸早く察知したリインルインが飛び退きながら叫んだ。
 呼びかけに反応したライアが反射的に少女から距離を取ったのと、剥がしたはずの装甲が一瞬前までライアの首があった場所へと回帰したのは、ほぼ同時だった。
「護りに使うだけでは無い、ということですカ……」
 上手く剥がしたとしても、迂闊に捨て置いては命取りになる。かと言って、剥がさねば物理攻撃を阻む壁となる。
 おまけに、錬成に必要な材料は其処此処に溢れかえっている。補充も追加も容易いであろう。
『――エネルギー充填、最低限まで到達』
 少女の機械的な声と共に、砲身に眩い光が集束する。
『目標、敵対勢力。――高エネルギー収束砲、発射します』
 刹那。
 蓄積されたエネルギーが解放される。余波で少女の周囲の残骸が焼き払われる。
 生身の人間相手には充分すぎる威力を持ったそれが、猟兵達を呑み込まんとした、その時。

「――いと尊くも優しき聖霊よ。善き魂を庇護し導く聖なる光よ、」

 ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)の澄んだ歌声が戦場に響く。
 彼女の紡ぐ祈りが、願いが、ひとの想いの数だけ力を増して、猟兵達を守る盾となる。
(あの船の残骸を見るに、恐らく乗組員たちはもう……)
 抉り取られた装甲、剥き出しの居住区域。数刻前に討伐した宙海月の群れ。
 脳裏に浮かぶ、彼らが迎えたのであろう結末。
(だけど、彼らが抱いた『希望』は、まだ潰えてはいない)
 残された物資と彼らの意志は、同じ宙の果てを目指す同胞たちに受け継がれている。
 それを絶ってしまうのは、きっと、少女とて望んでいないはずだ。
(だから、もう心配しないで)
 聖霊来たり給え。
 御身を信じ祈る者に、災禍を祓い闇夜を照らす、七つの秘蹟を与え給え。
「――Amen,Alleluia.」
 エネルギーの奔流を受け止め切り、ヘルガは少女へと向き直る。
「子供達が歌っていたのは、どんな歌だったか覚えていますか?」
『こどもたちの、うた……』
 砲台への再充填を行う手が止まり、少女の瞳が戸惑うように揺れる。
『わからない……、……何も、わからない……』
 胸を、髪を掻き毟る。
 少女を取り巻く装甲が、渦巻く苦しみを表すように震え始める。
『あんなに聴いてたはずなのにわからないの……毎日聴いてたはずなのにわからないの……ッ!』
 少女の慟哭に、ヘルガはそっと目を伏せる。
 自分のかけらを喪失したまま、永遠の苦しみを生きるのは、きっと辛いことだ。
『だから……だから、これ以上聞かないで! 何もわからないの! わたしだって知りたいの! わたしの邪魔をしないで!』
 止まっていたエネルギーの充填が再開される。同時に、装甲だけでなく、新たに複数の砲台までもが形成され始める。
 1台だけでもあの威力だ。それが複数になればどうなるか、想像に難くない。 
「一応、キミたちの生きた頃の希望のひとつは叶っているよ。銀河帝国は壊滅したからね」
 砲台の完成を阻もうと、幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)も弾丸のように少女へと突っ込みながら語り掛ける。
「まあ、そっちが本懐ではないだろうけどね」
 行く手を遮ろうと展開された装甲を蹴り飛ばし、道を開く。
 極は、フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)の誘いを受けてこの宙域を訪れてから、ずっと妙な感覚に襲われていた。
 ちりちりと頭の奥が疼くような。ざわざわと胸が騒ぐような。いくら宙海月を倒しても落ち着かないそれを、不思議に思っていたのだが。
 再度壁を作ろうと此方を見た少女と目が合った瞬間、極はその理由を本能的に理解した。
(……やれやれ、そういうことか!)
『……あ、なたは……嫌ッ!! 近付かないで!!』
 少女も極に何かを感じ取ったのであろう。瞬く間に周囲の物を取り込んで防衛壁を錬成、構築していく。
 巻き込まれたのは残骸だけではなかった。
「あっ!」
 無機物でさえあれば、ユーベルコードすら自身の修復装甲に変換出来る力を持ったそれは、フリルの腕の中に居た、彼女の大切なガジェットのアヒルさんまでをも吸い込み、取り込んでいく。
「アヒルさん、ごめんなさい……絶対に助け出しますから、それまで辛抱していてください」
 それには、あのユーベルコードを、彼女の暴走をどうにかして止める必要がある。
(そうです、あの魔法なら……!)
 堅い決意を瞳に宿して、フリルは己のユーベルコードを展開する。
 それと共に、ごそごそと彼女が取り出したのは、戦場には似付かわしくないそれ。
 ――愛らしくラッピングされた、手作りのお菓子。
「あ、あの……私のお菓子の魔法で修復速度を遅らせます、その隙にあの方の目を覚まさせてあげてください」
 フリルは声を振り絞り、他の猟兵達へと声を掛けながら、戦場に居るもの全ての手元にお菓子を転送していく。
 彼女の意図を察した猟兵達の表情が綻び、張り詰めた空気が僅かに和らぐ。
 それとは対象的に、フリルの行動が理解出来ないコアマシンの少女の顔が険しいものとなる。
 それこそがフリルの狙いだった。
『なっ……!?』
 少女が武装を構築する速度が、一気に遅くなる。
 時を盗むお菓子の魔法が、お菓子を楽しむ余裕の無い少女の時の流れを、ゆるやかなものへと強制的に変えたのだ。
「ありがとう! あとでゆっくり食べるね!」
 コルチェ・ウーパニャン(マネキンドールのピカリガンナー・f00698)はお菓子の小袋を大切に仕舞うと、時を盗まれた少女へと意識を戻した。
「ごめんね、未来へ連れて行けなくてごめんね……」
 未来へ連れて行けていれば、過去にならなければ、大切なことを忘れないで済んだのだろうか。
 そんなの、考えたって仕方のないことだって分かってはいるけれど。 
「……あなたを苦しめないで戦う方法も、慰める方法も、コルチェ、思いつかないの」
 ならば、せめて。少しでも苦しみが和らぐように。
 コルチェはピカリブラスターをシール射出モードに切り替え、トリガーを引いた。
 一時的なものではあるが、フリルによって行動を阻害されている今、少女にシールを回避する術は無いに等しい。
 それでも足掻こうとする少女の額に、ぱしりとシールが貼り付いた。
「お呼び出しするのは太陽フレア……『電磁の波』!」
 喚び出されたガビガビの電磁波が、ガオガオとシールから溢れ出し、少女の思考を、演算を妨害する。
 そのあまりの強力さに、シールの端がぴらぴらと今にも剥がれそうにはためいた。
「もうちょっとだけ剥がれないで、がんばって!」
『――ァ、ぐ、……さ、せない……これ以上、わたしの邪魔は、させないッ!!』
 少女は、シールの制御に集中していたコルチェの意識にジャミングコードを放ち、抵抗を試みる。
 ただでさえ、撃っているだけでも精一杯だというのに、制御しているものとはあべこべのコードが脳内に入り込もうと暴れ狂うのだ。
 少しでも気を抜けば、すぐに負けてしまいそうになる。
(髪がパリパリする、けどッ)
 視界の端に、少女の装甲の一部が元の無機物に戻っていくのが映る。
 コルチェ達が作った大きなチャンスを活かそうと、他の猟兵達が奮闘しているのが見える。
「頑張れる……と思う!」
 後はもう、気合の勝負だ。踏ん張るしかない。
 フリルとコルチェが少女の行動を封じている間に、極やライアが彼女を守る装甲を剥がし、斬り飛ばしていく。
(出来ることなら、かつて彼女が聞いたものが分かれば良かったのだけれど)
 ヘルガもまた、再び旋律を奏で始める。
 今を生きる人々の希望の灯火を絶やさぬように。
 志半ばに散った人々、そして何より少女の慰めになるように。
 それに合わせるように、リインルインも魔力を込めた歌声を響かせた。
 いくら大量に装甲を作り出せようと、相手が音ならば意味はない。
 祈りを乗せた賛美歌と呪歌が、味方には加護を、装甲の先の少女には打撃を与えていく。
「既に過去であるキミに、今も連綿と続く願いだけは聞き届けて欲しいので」
「あの子達のところに……骸の海に帰りましょう」
『だめッ……こんな、ところで……わたし、まだ、何も……ッ!』
 苦し紛れに撃たれた充填途中のエネルギー砲を巧みな操縦で躱しながら、少女へと1台のバイクが迫る。
 陽里とエリシャだ。
「――スペランツァ号、聞こえるか?」
 怪我をした仲間に癒しを齎しながら、2人は少女に向かってバイクを駆る。 
「こちらは、RA13ss……救援に来た」
『きゅ、うえ、ん……?』
 思ってもみなかった言葉に、少女の攻撃が一瞬止む。
「よく頑張ってくれたな、ありがとう。……あんたが背負ってきたものの事は引き受ける」
 一か八か。愛機を介して、陽里は少女へと数多の情報を送信する。
 それは、人々の笑顔の画像であったり、生活の様子であったり、陽里がこよなく愛する乗り物の仕組みであったり、沢山の宇宙船の名前であったり、様々で。
 共通しているのは、どれもこの宙に生きる人々に纏わる画像や映像だということ。
「あんたも仲間の一員だ……思い出して、落ち着いてほしい」
 家族に、仲間に感謝を。
 乗り物へは愛情を。
 そして――敵にも、祈りを。
「もう大丈夫だ」
 エリシャに教わった、その意味が。今なら解る。
 例えひとの敵となろうとも、宇宙の民として。乗り物というもの全てを愛するスターライダーとして。
(祈りたい、)
 心から、そう思う。
『……わからない、』
 幾度となく繰り返したそれを、少女はまた口にする。
 けれど、その声色は、表情は、先程までに比べると落ち着きを取り戻し始めていた。
『思い出せない、』
「大丈夫……思い出せます」
『――ッ!?』
 少女の胴体にワイヤーアンカーが打ち込まれる。
 彼女の注意が陽里へと向いている間に接近していた、トリテレイアのものだ。
「申し訳ありませんが、暫しこのまま耐えていただきたい」
 引き抜こうとする少女を押え込み、トリテレイアは己に搭載された機能を結集し、ワイヤーを通じて彼女へと強制的に有線ハッキングを仕掛けた。
 はがねの騎士に感情すら疑似再現してみせた人ならざる演算能力。それを以て、全力で彼女の状態を解析していく。
(とはいえ、さすがにこれは……なかなか……!)
 自身にも予測以上の負荷が掛かるが、トリテレイアはそのまま処理を続行する。
 御伽の騎士は、苦しむ存在に何をするか。
 己は、苦しむ同胞に何をしてやれるのか。
 限界など乗り越えてしまえ。
 理想と現実の境界を超えろ。
「……ああ、やはり」
 解析により見つかったのは、予想していた通りのもの。
 ――現状把握能力の損傷。
 トリテレイアは早急にその修復を試みる。 
『何をッ、何をしているの! わたしの中で、何をしているの!』
 騎士を殴り飛ばそうと急回転した砲身を、逆にシールドで殴り付け。時間を稼いで。
「これで、仕舞いです」
 修復完了を確認すると、トリテレイアもまた、彼女にとある情報を送り届ける。
 今が何時か。
 己が何か。
 そして、宇宙船スペランツァ号のデータ。
 かつてこの宙に存在した、希望の名を持つ船の顛末。
『……銀河帝国の襲撃により……コアマシンを、喪失』
 正しく現状が把握可能になった少女は、己が何者であるかを、今まで皆に掛けられてきた言葉の意味を、陽里に見せられたデータの意味を漸く理解する。
『……スペランツァ……わたしの、船……わたしの、大事な、』
 例え過去でも、すでに亡くとも。
 大切な物を見失うのはそれ以上に悲しいこと。
「ですが、全てが失われたわけではない」
 トリテレイアが見つけ出したデータ。スペランツァ号の辿った軌跡。
 彼らの物語には、続きがあった。

「――『ハロー、ハロー。こちらは、宇宙船スペランツァ号……だった船だ』ッ!」

 未夜の声が戦場を裂く。
 居住区域であった場所。スペランツァの民がメッセージを、想いを残した場所で、黒狐のこどもは叫ぶ。
「俺達はッ、銀河帝国の襲撃により、コアマシンのある動力室を失った!」
 倒さなきゃいけないのは分かってる。
 でも、伝えなきゃ。
 伝えたいんだ。
「……ッ、正直、もうこれで全部終わっちまうんだって覚悟してたんだけど、」
 だから、彼女に届くように力の限り声を張り上げる。
 出来る限り、スペランツァの残したメッセージが彼女に伝わるように。
「漸く、スペランツァ号は他の船団に発見された!」
 だって、だってさぁ、
「俺達は、これよりこの船を放棄し、受け入れを許可してくれた船へと移住するッ!!」
 ひとを想い続けた機械とその民の想いが、手をつなぐことくらい、出来たって良いじゃん!

 なぁ、俺達のコアマシン。
 きみはまだ、この宙を漂っているのかな。
 それとも、既に星の海へと還ってしまっただろうか。

「ここに居るよ」
 ライアの声が、メッセージを読む声に重なる。
 それは本来ならば、何も思い出せないなら看破される事も無いだろうと、スペランツァ号の者なら何を言うだろうと考えて口にした、慰めの言葉であったが。
「飢えてないよ。凍えてないよ。苦しくないよ……もう、大丈夫」
 奇しくも、彼らが船に残したメッセージと同じもので。
「ずっと探してくれて、ありがとう」
「息、苦しくないよ。おなかへってないよ」
 コルチェもまた、共に少女への言葉を連ねる。
「でも、さみしい」
 あなたが苦しいのが。あなたが悲しいのが。あなたが泣いているのが。
「心配なのは、あなたのこと」
 どうか、落ち着いて。
 周りを見て。声を聞いて。ゆっくりで良いから、思い出して。
「キモチの嵐がすんだら、コルチェと一緒に、お話しよう?」
「私たちが君を見つけたから。君の意味も希望も引き継がれてるから」
 だから、スペランツァももう大丈夫。
「頑張ったね」
 少女の動きが、漸く止まる。
 防御壁の構築も止み、砲台に集束していたエネルギーが霧散していく。 
「どんな形になろうと、私にはどれがアヒルさんだったか分かります」
 変換された修復装甲のひとつを指し、フリルは微笑んだ。
 嘘でも何でもない。あれがアヒルさんであると、フリルは確信している。
「それは、あなたにも同じことが言えるのではないでしょうか?」
 冷静さを取り戻しつつある今なら、きっと彼女にも分かるはずだ。
「あなたの存在してきた意味が、今、あなたの周りに在るのですから」
 誰も居なくなってしまったけれど。形も少し変わってしまったけれど。
 それでも、スペランツァ号は此処に在る。
「コアマシンは生きる希望。……あなたがいたから子どもたちも笑顔でいられたの。あなたはできることをしたのよ」
 エリシャも頷き、柔らかく笑う。
「大丈夫、失われてなんかいない」
 想いは託され、今も何処かで生き続けている。
 希望は受け継がれていく。
『……、……もう、探さなくていいのね』
 少女の目から戦意が消える。
『此処に居たのね』
 装甲だったものが、次々と元の姿に戻っていく。
 フリルが指し示していた装甲も、無事にアヒルさんのかたちを取り戻す。
『わたしの役目も、終わったのね』
 少女が、何かを求めるように視線を極へと向けた。
「……どういう縁があったのかは、わからないけど。……これだけはわかるよ」
 極は静かに構えを取る。
 先程、交戦中にお互い感じ取ったもの。
 妙な感覚の正体。
「キミの過去のしがらみを引きはがせるのは、きっと、ボクだけだ」
 だから、此処に『呼ばれた』。
 極の言葉に、壊れゆくコアマシンの少女は微笑みながら頷いた。
 少女を縛る因果の鎖。
 それを唯一断ち切れるもの。完全なる眠りを齎せるもの。
 それが極だった。
「――幻武流超奥義、」
 故に、細く息を吐いて、踏み出す。

 彼女に、安息を与えるために。


 身体の至る箇所を損傷し、ばちばちと漏電しながらも、少女の表情は至極穏やかであった。
「彼女を、スペランツァ号に送り届けてもいいかな?」
 あとはその時を待つばかりとなった少女を抱いて、極は他の猟兵達に問う。
 彼女がオブリビオンになってまで探し求めていた場所だ、反対する者はこの場には居ない。
 極に手を引かれ、迷い子はついに己の船へと辿り着く。
「動力室があった辺りでいいかな」
 そう尋ねる極に、少女はゆるく首を横に振った。
 力を振り絞るように伸ばされた手が指すのは、居住区域。
『……叶うなら……どうか、皆のところに、』
「わかった。キミがそれを願うなら、そちらにしよう」
 居住区域に着くと、極はメッセージの綴られた壁の前で彼女の手を離した。
「着いたよ」
 ずっとずっと探し求めていた場所。
 永遠とも思える旅路の終わり。
『そう……、スペランツァ、そうなのね……』
 残されたそれにぺたりと触れ、全てのことばを焼き付け終えると、少女の姿をしたコアマシンは目を閉じた。
 維持する必要のなくなった身体が、爪先から崩壊を始める。
 ひかりの粒となって、星の海へとその身が還る。
『わたしこそ、ありがとう』
 これ以上無い程、幸せそうに咲って。

『ただいま、スペランツァ』

 最後のひかりが、宙へと溶けた。


●ある宙の民からの手紙
 ハロー、ハロー。
 こちらは、宇宙船スペランツァ号……だった船だ。
 俺達は銀河帝国の襲撃により、コアマシンのある動力室を失った。
 正直、もうこれで全部終わっちまうんだって覚悟してたんだけど――ギリギリ、首の皮一枚繋がったよ。
 奇跡って、あるんだな。

 漂流生活XXX日目、になるのかな。
 漸く、スペランツァ号は他の船団に発見された。
 助かったんだ! 助かるんだ!

 俺達は、これよりこの船を放棄し、受け入れを許可してくれた船へと移住する。
 なぁ、俺達のコアマシン。
 きみはまだ、この宙を漂っているのかな。
 それとも、既に星の海へと還ってしまっただろうか。

 どうか、心配しないでほしい。
 大丈夫だよ。
 ここにいるよ。
 飢えてないよ。
 凍えてないよ。
 もう、息も苦しくない。
 子供達の歌声だって、いつもと変わらず響いてる。

 俺達の希望は、まだ潰えていない。
 船として、形としては消えれども、スペランツァ号は此処に在る。

 ありがとう、きみのおかげで、俺達はここまで旅を続けてこれたんだ。
 きみがいたから、生きているんだ。
 ありがとう。


 もしも、
 もしも、これを誰かが見つけてくれたなら。
 このメッセージを読んでくれた人がいるのなら。
 どうか、どうか覚えていて。

 この船のことを。
 此処に俺達の故郷があったってことを。

 ――ああ、この船は、確かに俺達の故郷だったんだよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月06日
宿敵 『『失われた船の核』ロスティア』 を撃破!


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#スペースシップワールド
🔒
#戦後


30




種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト