愛を勝ち取る為に.......合コンするぞ!
●奪還者はリア充の夢を砕かれるか
「へへっ……これだけ大量に持ち帰れれば、合コンでモテモテだぁ」
「欲がねぇなあ、相棒。俺はこのブツを持ち帰ったら、キャサリンと結婚するんだ……!今日、恋人になって、明日はプロポーズ、明後日には結婚!完璧だぁ」
噂の廃墟で見つけた大量の物資、水に食料、毛布。そのお宝を目の前にして、奪還者(ブリンガー)の仕事は大成功だ!やった!と男の2人組がガスマスクの下でニヤケていた。
その喜びに浸る男達を邪魔するように影がさした。2人の足元まで道のように伸びた光に人影が映る。
「おい……誰か来たみたいだぞ。この影を見ろよ」
勘のいい片方の男が相棒。と呼んだ男を小突き、息を潜めて注意を呼びかける。
「ほんとだ。……カワイイ女の子だといいなあ〜」
「まっ、期待しないでおこうぜ」
ただ、希望は捨てていない。もし、若いミニスカの女の子だったら……。なお、筋肉があり、頭もよく、彼氏がいない子なら最高……!
そんな妄想にふける男2人に声をかける者がいた――。
「1人ぐらいは、イイ男がいると思ったのに、残念だねぇ」
明らかに姉御系セクシーお姉さんのような声に、男2人は声が聞こえた方向へ、人影へ全力で振り返る。
「「誰だお前は!?」」
そこには、腕を組み、仁王立ちする1人の女がいた。
「アタイは『機拳流』の武術家の1人さ。覚えときなぁ」
でも、死ぬんだけどねぇ。と、舌なめずりをしながら、女は付け加える。
「くっ……!キャサリン、すまない。こっちのキレイなネーチャンの方が強そうで好みなんだ……」
「合コンに来てくれないかなぁ」
「……思っていた反応とは違うが、いい。ま……死にな」
女は構えを取る。目にも止まらぬその突きは、男2人の頸動脈を切り裂く。
床には、血しぶきが雨のように降り注いだ。
●合コンを成功させよう!
「皆さん、アポカリプスヘルでオブリビオンと合コンが……いえ、集まっていただき感謝、感謝であります!」
ピウ・アーヌストイト(ちんまい大家・f24841)は何かを言いかけ、猟兵達へ頭を下げる。
「では、私が予知した内容について、説明するでありますよ」
ピウが予知したのは、拠点(ベース)で開催される合コンの為、はりきってしまった男2人の末路であった。
なぜ、その2人組は廃墟を訪れたのか――?
「オブリビオンである、『機拳流』という女武術家集団が――流した噂のせいでありますよ」
その噂の中身は――。
『とある廃墟にたくさんの物資がある』という、嘘みたいな本当の噂。その廃墟に大量の物資があるというのは事実である。
そこが『機拳流』のアジトでなければ、本当にいい噂だったのだが……。
「という事で、猟兵の皆さんには奪還者達よりも早く、その廃墟のオブリビオンを倒しに行って欲しいであります」
ついでに、物資を廃墟近くの拠点――合コン開催地に届けてしまえば、猟兵達は優秀な奪還者として歓迎されるであろう。
「アポカリプスヘルを活気づける為だと思って、皆さんにはぜひ、合コンに参加して欲しいでありますよ〜」
また、未成年者は大人達とは席を離して、未成年者同士で合コンごっこをする事が予定されている。すでに意中の相手がいる者に、未成年者達をフォローし、注意する役目を任せるようだ。
「合コンを成功させる為にも、『機拳流』のアジトについて詳しく説明するであります」
テレポートにより、猟兵達は奪還者よりも早く廃墟に侵入する事ができる。
「ただし、『機流拳』のアジトにはガス系の罠が至る所に仕掛けられているであります」
ガス系の罠――毒ガス、催涙ガス、色付きガス……等、種類は様々だ。
「その後は、女武術家集団『機拳流』との戦闘になるであります。一旦、物資と合コンの事は忘れて戦いに集中して欲しいでありますよ〜」
予知した奪還者2人組が脳裏をよぎる。
「短くまとめると……」
アポカリプスヘルの合コンを成功させる為に、罠だらけの廃墟に行って、オブリビオンを倒して、物資を持ち帰った拠点で合コンしようぜ!という話だ。
合コンは、女傑のキャサリンが仕切っている。会えれば、ピウよりも詳しく説明してくれるだろう。
「皆さんなら絶対、モテモテになれるでありますよ。よろしくお願いするであります!」
蛙柳
初めまして、蛙柳(ありゅう)と申します。
⚠️注意⚠️章の幕間を投稿してから、プレイングを受け付けます。
『第1章』
廃墟の中にテレポートします。罠だらけの廃墟を進む方法をプレイングに書いてください。罠の効果はガス系です。
『第2章』
物資と合コンは気にせず、オブリビオンの集団と戦ってください。
以下、蛙柳のMSページから抜粋。
ギリギリの戦闘を楽しみたい方は―。
🔴⋯成功判定でも、スリルがありつつ成功した結果になります。
苦戦描写が苦手な方は―。
🔵⋯苦戦判定では、危険が少なくとも苦戦した結果になります。
上記の記号をプレイングの文頭にお使いください。
『第3章』
戦闘終了後、奪還者2人組と鉢合わせして、トラックで物資を運んでくれます。猟兵達の手柄は横取りしません。
合コン会場前に着き、キャサリンが快く歓迎してくれます。
キャサリンお勧めの『NPC』を指名するか、好みのタイプと自己紹介をプレイングに書いてください。ハーレムもOKです。LGBTにも配慮します。基本の種族は『人間』『デッドマン』『フラスコチャイルド』『賢い動物』です。
合コンを省略してデートしたり、奪還者2人組とキャサリンに話しかけたりするのもOKです。NPCの指名が被ってもなんとかします。
プレイングに同意者の記入がない限り、猟兵同士の合コンは実現しません。
過激なプレイングは採用しません。未成年の飲酒・喫煙は禁止です。
『キャサリンお勧めNPC』
チャラい双子で人間の20代男性。
兄『アンリミ』&弟『アーリー』
厨二病の科学者でデッドマンの20代女性。『マーチ』
小柄なフラスコチャイルドの20代女性。『ニコレイジー』
不幸属性で賢い動物(狼)の30代男性。『ファンブル』
第1章 冒険
『レイダーの縄張りを突破せよ』
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POW : この際小細工は不要、力ずくで歩哨や罠を排除しつつ突破を試みる
SPD : 周りを観察し、仕掛けられた罠の解除や警備の手薄な所を見つけ、素早く突破
WIZ : 警備の動きなどを計算し前進、またはレイダーの仕掛けた罠を利用し撹乱を狙う
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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●ガス臭くってかなわない
ここは『機拳流』が潜む『噂』の廃墟。
プシッ、シュー、シュー。と気の抜けた音が静かな廃墟に響く。
壁の割れ目、天井に張り巡らされた配管から漏れ出す、耳障りなガスの音だ。無残にも割れた窓へとガスの気配が逃げ出していくのを感じる。
目を凝らせば分かる。足元のワイヤー。不自然な壁のスイッチ、レバー。
奥に進むには、罠を乗り越えていくしかない。
リゼット・アルテュセール
【SPD】で判定
「潜入か。歩哨がいる以上、モタモタしててもリスクが
上がるだけ…ね。よし、いざという時は頼むわ」
と自作のからくり戦闘人形を撫でて行動開始。
テレポートしたら周辺の構造や警備の動き方などを
【情報収集】して、進行プランを立てるわ。
無理はせず、引くべきには引いて、待つべきは待つ。
でも判断は迅速にね。
そして歩哨の目をかいくぐりつつ前進、ワイヤー
トラップ等があった場合は人形に抱えてもらって
【空中浮遊】してやりすごすわね。
単純な罠については後続の為にも解除しておきましょう。
言動は基本的に理知的かつ余裕ありげに。
潜入成功なら【オペラツィオン・マカブル】で
人形を強化し不意打ちの準備をするわ。
●
リゼット・アルテュセール(旅する人形遣い・f12168)は危険な廃墟へと、人形と共に足を踏み入れる。
「潜入か。歩哨がいる以上、モタモタしてもリスクがあがるだけ……ね」
この廃墟の何処かにいるであろう、監視の目を危惧して迅速に進む事を選択した。
「よし、いざという時は頼むわ」
リゼットは自作のからくり人形を撫でる。戦闘時でも頼れる、信頼と命を預けたパートナーだからだ。
怪しげな廃墟だとしても、ここでもきっと頼りになるだろう。
切り替えが早く、即決断したリゼットは部屋の構造を調べる事に努める。
壁に片手をつけながら、廃墟の中をぐるりと回る。壁のザラザラとした感触が指先から――突如、その感覚が消え失せた。
「なに?指が……」
リゼットの指が壁の小さな穴に触れている。そう理解すると同時に、兵士達の下品な笑い声が響いた。
とっさに指を引く。
「もしかして……」
指が入る程の穴から、覗き込む。
――すると、想像通りに覗き穴の向こうには武装した兵士が数人、寄り集まっていた。
何の話をしているのだろうか。何か情報が得られるかもしれないと、辺りの気配を探る事も忘れず、耳をすました。
どうやら、お互いに見回りをサボっている事の面白さで盛り上がっているらしい。どこだっけ?いつだっけ?と誰かが言う度に大笑いしている。
これなら、リゼットが1枚の壁を隔てて話を聴いている事にも気づかないだろう。だが、油断は禁物だ。
話の内容が廃墟の構造へと変わっていく――。
「なるほどね。……単純な造りだわ。もう、用はないわね」
この廃墟をどう進むべきか、リゼットの中ではもう決まっている。
そこは、何という事はない通路だが――。
「この道は、ワイヤーだらけ。そうよね?」
からくり人形はリゼットを軽々しく抱えて、ワイヤーがあるらしき所を浮遊して越えていく。
今にも消えそうな照明が照らし出したワイヤーを一瞥もせず、その目は次の罠が待つ通路へと向けられていた。
「ここが、レインボースイッチと呼ばれていた所ね」
その先の壁には、あからさまな丸ボタンが7つ並んでいる。
全てのスイッチを押すと、数秒後に7色の色付きガスが噴射するとの事だ。
「面白さ優先……と言っていたわね」
リゼットは兵士達が言っていた事をただ、うのみにしている訳ではない。
1人だけ、嘘をついている者がいた。『忘れてしまった』と。さりげなく、他者をフォローする事も忘れていない。
同じ仲間であるはずなのに――気を遣っていた。
「処世術……とはいえ、あなたからの情報を利用させて貰ったわ」
賭けに近かったかもしれないが、観察していた自分の目を、感覚を信じた勝利だ。
でも、まだ勝った訳ではない。終わっていない。考えながらも罠を回避していく。
来るべき時に備えて、リゼットは戦いの構えを取る。体に力を入れず、リラックスする。
いつ、敵が来てもいいように。
成功
🔵🔵🔴
防人・拓也
SPDで行動
「合コンはともかく、大量の物資があるのは気になるな」
と言ってUCを発動し、分身と共にガスマスクを装着。分身に後方を警戒させながら、廃墟の中へと進む。
ワイヤー系の罠を見つけたら足を止めてコンバットナイフを使い、戦場で培ってきた戦闘知識と破壊工作のスキルを活かして解除を試みる。不自然なレバーやスイッチは無視。
警備兵を見つけたら物陰に隠れて様子を伺う。やり過ごせるならそのまま隠れてやり過ごす。無理そうであれば狙撃銃『OB-D110 SASS』で静かに狙撃で暗殺する。
「…しかし合コンのために物資を取りに行くというのは、理由としてはいかがなものかと思うな」
と行動中にボソリ。
アドリブ・連携可。
●
「合コンはともかく、大量の物資があるのは気になるな」
合コンよりも物資に興味を示した、防人・拓也(コードネーム:リーパー・f23769)。
速やかに召喚した自分の分身とシンクロした動きで、ガスマスクを装着する。
これで、何かの間違いでガスを吸ってしまう事もなくなり、行動不能になる事も防げる。
それでも、もう1人の自分に後方警戒をやらせる。オブリビオンのアジトで油断をしてはならない。
慎重に事を進めるのがいずれ、実を結び――いざという時、危険を回避できるのだと防人は知っている。
よし、と静かに2人の防人は指で決められたサインで、お互いに敵がいない事を伝え合う。
着々と順調に進んでいく。
『待て』と前方を先行する防人から、サインが出た。片割れは足を止め、見張り役を務める。
「罠だ……」
息を潜めて呟く。発見したワイヤーは1本の線ではなく、複数の糸がメチャクチャに張り巡らされていた。
ここを通らなければ先に進めないというのに。
いけるか……?いや、かつて特殊部隊に所属していた俺なら、いける。この罠を解除できる。
いつ敵が来るか分からない。罠をどう解除する?防人はあらゆる可能性を熟考する。短い時間で出した答えは――。
もしや、フェイクがあるのではないか――?ワイヤーを使った罠とはいえ、これはおかしい。
決して、浅慮な考えではない。今まで培ってきた経験が、知識が訴えるのだ。
それが正しいかどうか、今から実証する。
サインから内線に切り替え、防人は遠くから、もう1人の自分にワイヤーに触るように指示する。念の為だ。
数本のワイヤーに触れた分身から、触った感想と考察について無線越しに伝えられる。
分身が『生きている』という事は、防人の考えが合っていたという証明になる。それでも、まだ終わらない。
「トラップ解除。先に進む」
偽装されたワイヤーにコンバットナイフを宛てがい、手が震える事もなく、経験と知識を頼りに邪魔なワイヤーだけを切断していった。
これなら、ワイヤーに引っかかる者もいないはずだ。
「……しかし、合コンのために物資を取りに行くというのは、理由としてはいかがなものかと思うな」
防人は静かにぼやいた。
ガスの音に紛れて、足音が聞こえ始める。この足音は……1人分。曲がり角の先から――。
「厄介だな。やるか」
見回りの兵士が曲がり角を進んだ先には――。数本のワイヤーが通路を塞いでいた。めんどくせぇ、と引き返していく。
背中を向けた兵士は、ゆっくりと――。前かがみに倒れる。うなじに空いた穴からは赤い血が漏れ出していた。
「ターゲット沈黙。……クリア」
窓に足をかけ、防人が構えていたのは狙撃銃『OB-D110 SASS』だ。
まさか、証拠隠滅の為に取っておいたワイヤーが役に立つとは。急ごしらえとはいえ、防人による見せかけの罠は効果を発揮した。
寝ているかのように死体を偽装し、防人達は進む。
物資の持ち主、オブリビオンの元へ。
大成功
🔵🔵🔵
ベイカー・ベイカー
来たぜ、アポカリプスヘル初依頼!
…え、合コン?そりゃあいい。面倒なことはさっさと終わらせてお楽しみといこうぜ。
でもなー、ガスか…よし、【戦闘知識】と他の【世界知識】で罠の内容は大体分かるんで引っかからないように気をつけながら一旦廃墟の外に出る。
そして廃墟から距離を取ってUC発動。この仕事の内容と合コンのことは忘れないようにしながら他の色々な記憶を代償に射程距離を底上げした炎【属性攻撃】の【全力魔法】で廃墟を【範囲攻撃】。
廃墟にガス爆発を起こさせてガスも罠も全部吹き飛ばしてから悠々とアジトを踏破する。
なんか色々忘れちまったみたいだけど、この後合コンがあるんだ。その希望だけで俺は生きていけるぜ…!
久遠・翔
アドリブ絡み歓迎
🔴
罠解除ならシーフにお任せっすよ
口元を布で防護しながら選択UCと手業を駆使して罠を解除していきます
破損個所がある場所はUC高速建築を応用して破損個所を修復。荒いかもしれないですが応急処置的にはいいかと思うので
ちなみに合コンの話は考えていません
と、言うのも俺の精神も魂も男なんっすけど体が現在女性なんでややこしいからって理由っす
…何故かこの体になって女性を惹きつけるようになったのですが、それはまぁいいとして…
後続の人が進みやすいように罠を解除し道を整えながら進みます
…少なくともこの場所には媚薬ガスがない事を祈ります
そういう施設もあったんでね…何故かそこだけ解除失敗してますし(汗)
●
「来たぜ、合コン……いや、アポカリプスヘル!」
面倒な事はさっさと終わらせたい。初めてのアポカリプスヘルにお楽しみが待ってる!と意気込むのはベイカー・ベイカー(忘却のススメ・f23474)だ。
パラパラとメモ帳を捲りながら、アレが怪しい。これは危険。と軽々と罠を回避していく。
ベイカーが辿り着いたのは廃墟の外。
「よし、やるぜ……仕事、仕事。合コン、合コン」
廃墟から離れた場所。忘れてはいけない記憶を刻みつけながら、そこに彼は立っていた。
彼にとって、さほど重要ではない記憶から薄まっていき、忘れていく。
あの時の事も……いや、なんだったか。夢でも見たんだろう。ベイカーの記憶は霞んで蕩けていった――。
消えていくベイカーの記憶とは正反対に、忘却の炎は厳かに燃え上がっていく。
忘れた記憶を惜しむ事なく、廃墟の一角を炎が包み込む。哀愁漂う風景をガスの大爆発がぶち壊した。
●
「わっ!……向こうでなんかあったっすか?」
遥か遠くで爆発したはずの音が久遠・翔(性別迷子・f00042)の耳まで届く。
きっと何かがあったかもしれないと翔は爆発音の元へ駆けていく。
「おお……罠で爆発したっすか?」
翔の目に飛び込んできた景色は、金属片と瓦礫が飛び散った、破壊の痕跡だった。
爆発した勢いの凄まじさを物語っている。
「恐ろしいっすね……」
辺りに人の姿がない事から、もしかしてと嫌な想像は止まらない。
ただ、立ち止まる訳にもいかず、いやいやとネガティブな考えを振り切る。
気持ちを切り替えた翔は、瓦礫の残骸を材料に、罠を除き、廃墟の壁と道をたちまち修復していく。
漂うガスも口元の布が防いでくれる。
「これで、通れるようになったっすね」
もし、ここにもアレなガスがあったら――。
翔の中でジンクスとフラグができあがっていく。これも高速建築の能力だろうか?
あんなガスは跡形もなく吹っ飛ばして欲しいっす――と願う翔であった。
「おっと、罠っすね。シーフの俺ならこれぐらい簡単っすよ!」
さくさくと翔は器用に――魔法のように、鍵に変異した指先で罠を解除していく。
この進み具合ならオブリビオンの元まですぐ――。
ただし、合コンに参加する事までは考えていない。
精神も魂も男。体は女という複雑な事情を抱えている翔に合コンは荷が重い。
「――って、なんか変な音がするっす!さっき、解除したはずっすよ!」
あっという間にガスに包まれた翔の口元の布に染み渡っていき、体から力が抜けていく。
「やっぱり……っす」
●
「なんか色々忘れちまったみたいだけど、この後合コンがあるんだ。その希望だけで俺は生きていけるぜ……!」
罠のなくなった廃墟を楽しげに歩く者がいた。ベイカーである。
途中で少々、違和感のある場所もあったが……気のせいだろう。安全に越した事はない。
「ん?誰か倒れてるぜ。おーい」
床に倒れている、長い灰色の髪が特徴的な人物へと声をかけた。
「……っす」
か細いが、無事を伝える女性の声が返ってくる。
死んでいる訳ではなく、生きている事に少々ほっとした。でも、きっと嫌な事があったに違いない。
「俺はベイカー。嫌なことなんて忘れちまおうぜ。手伝ってやろうか?」
ベイカーからの上手い話に、彼女はなけなしの力でふるふると頭を横に振る。
「お、れは……久遠・翔っす……忘れ、たら……また」
引っかかりそうな気がするから。そんなニュアンスを翔から感じ取り、それもそうかと受け止めた。
「そうか。気が変わったらすぐ言うんだぜ。俺はすぐ、忘れちまうからな」
しかし、せめて肩でも貸そうかというベイカーの提案すらもはねのける。
「今、触られるのはちょっと……あ!変な意味じゃないっすよ!気持ちは嬉しいっす!ほんとうっすよ!」
汗をだらだら流し、顔を真っ赤にしながらも起き上がって、よろよろの体で必死に否定する。
その様は、よっぽど嫌な事があったのだろうか?本当に忘れなくていいのか?とベイカーの疑念を深めていた。
つまずきながらも、慌てて走り出した翔の背中を、小さな炎がちろっと掠める。
「あれ……?あ、ベイカーさん。罠なら俺に任せて欲しいっすよ!」
寒さに震えるように、己を抱きしめているが、先程よりも気丈に振舞っていた。
「そりゃあ助かるぜ、翔」
何事もなかったかのようにベイカーは態度を繕う。この事もすぐに忘れてしまうだろう。
「ただ……体がちょっと変……で、覚えてないっす。症状は身に覚えが……。えっと、そんなのおかしいっすよね?」
「そんなことないさ。よくあることだぜ」
俺は詳しいんだ。と即座にベイカーの否定が返ってくる。首を傾げながらも翔は純粋にその言葉を信じる。
「じゃあ、ベイカーさんはなんか知ってないっすか?俺が覚えてなくても――」
「さぁな」
どこか、素っ気ないながらも。その短い言葉には、様々な感情が燻っていた。
翔の巻き込まれ体質に巻き込まれ――必死に罠を回避する連続でそれを忘れかけてしまうのはまた、別の話。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
バーン・ストラフェス
【SPD】
【アドリブ、連携大歓迎】
合コン…は諸事情で傍観希望だけど、物資は欲しいから行くか
ガスはガスマスクである程度防御できるとして…
【視力】と【暗視】で目を凝らしてトラップがあるか確認して避けて行動するか
壁のスイッチとかには不要に触らないぜ
…まぁ、合コンに参加しないのは昔彼女いたからだけど…
オブリビオン・ストームに呑まれて死んだし、トドメを刺したのは俺だからな…
ヤッベ、余計なことまで思い出しそう…とっとと先行くか
エスタシュ・ロックドア
合コンかぁ、良いね良いねモチベ上がってきたぜ!
罠があるんだっけか
よし、正面からぶち破る
【毒耐性】で大抵の毒ガスは気にならねぇし、
それでも効きそうなら『群青業火』発動
全身から業火を上げ、その勢いでガスを払ったり燃やしたりして無効化を図る
可燃性ガスがあってもまぁ【火炎耐性】があるし大丈夫だろ
見張りがいたら、丁度いい情報源だ
応援呼ばれる前に【ダッシュ】【怪力】【グラップル】
鳩尾に拳を沈めて呼吸を乱し、すぐ締め上げて床に倒す
【恫喝】で優しく道を聞こうか
大声出すなよ
安心しろ、オブリビオンじゃなきゃヒトの命は取らねぇ主義だぜ俺ぁ
必要なら少しばかりキュッと締めるけどな
用が済んだらちょっと気絶してもらうかぁね
●
「よし、正面からぶち破る」
気合十分。エスタシュ・ロックドア(碧眼の大鴉・f01818)は拳を鳴らし、目の前の罠を見据える。
足下に、ピンと張られた1本のワイヤー。
「こんなケチくさい罠じゃ、俺を止められねぇぞ?」
意に介さないエスタシュの蹴りにより、ワイヤーは嫌な音を立てて引き千切られ――蹴り破られた。
瞬く間に、シュシュシュと漏れ出した毒ガスが、通路に満ち満ちていく。
「ああ……ケチくさくねぇけど、ガスがくせぇ……!こりゃ、燃やすしかねぇか」
ガスの中、鼻をつまみくぐもった声で仕方なさそうに呟いた。
「さぁて、どんどん燃えろ、燃えろ〜」
火がワイヤーを伝っていく――そんな生優しい光景ではない。
『地獄の裂け目』という言葉が彼の傷跡に相応しいのではないだろうか。地獄の業火が噴き出し、全ての物を燃やし尽くす。
もしくは、数多の切り傷が群青色の炎を吐き出しながら、笑っているようにも見える。きっと、炎さえも喰らうのだろう。
地獄の前には、ありとあらゆる小細工が灰となり塵となって無に帰った。
「ふぅー、これで綺麗サッパリだぜ」
ただ、気になるとしたら――腕を顔に近づけて臭いを嗅ぐ。
「ま、大丈夫……だな」
自身にガスの臭いが移っていない事に安堵する。客観的には、危機的状況の後である。彼はどこまでも規格外であった。
そして――この世ならざる地獄絵図に足を震わせる者がいた。
この廃墟を巡回をしていた者だ。
エスタシュは声をかけ決断する――。
「おいおい、待てって」
一気に距離を詰めて、殴ると。
エスタシュの拳が沈んだ鳩尾を押さえながら、兵士は逃げようと――するが、腕を掴まれ関節を締め上げられ、床に押し付けられる。
何が目的だ、とうつ伏せになった兵士は悔しげに唸る。
――大声だすなよ。道、知ってんだろ?――エスタシュの囁き声に兵士はうなだれ、逃亡は不可能だと目を伏せた。
「安心しろ、オブリビオンじゃなきゃヒトの命は取らねぇ主義だぜ俺ぁ」
兵士はオブリビオンを何かのコードネームと判断し、彼の言葉に耳を傾ける。
「必要なら少しばかりキュッと締めるけどな」
その脅しに兵士は全身を震わせ、歯をガチガチと鳴らし始めた。声を発しようと努力はしてるようだが、まだまだ時間がかかりそうだ。
「素直なヤツは嫌いじゃねぇ」
鬼の笑う顔も、人を食ったような笑顔に見えるのか――ひいっ、と兵士は情けない声を漏らした。
「さて、あっちはどーだか」
一度合流し、二手に分かれた相手の事を思い浮かべる。エスタシュは力づくで偵察。あっちは慎重に偵察。
こちらはもう役目を果たしたと言えるだろう。
「ったく、なんであんなに俺のこと心配するのかねぇ」
ははーん、さてはトラウマ系かと勘づきつつ、詮索なんて野暮な事はしない。そういうモンを咀嚼して呑み込めるのは自分だけだ。
むしろ、年季の入ったあのガスマスクの方が気になる。
「あー、合コンが来い」
瓦礫が飛び散ったこんな悪路ではバイクも走れやしない。それはそれで楽しそうだが……。情報源は口下手。
なかなか、手こずりそうだ。
●
「いい加減動かないとな……こっちも」
見張りの兵士達は、バーン・ストラフェス(希望の運び屋・f24898)が瓦礫の裏に隠れているとは思いもせず、通り過ぎていく。
瓦礫の陰から動くなら、今しかないだろう。
「行くか。エスタシュは本当に大丈夫なんだよな……?」
毒には慣れていると言っていたが、本当に大丈夫なのだろうか?あの時の会話は――。
「エスタシュ。ガスマスクはいいのか?」
「いらねぇ――馴れてっからよ」
「そ、そうか……?」
こんな感じだったな。一体何をやったら、慣れる物なのか……。無事を信じるしかない。
今の所、バーンがそれを知る術はない――。
愛用のゴーグルで罠を看破し、黙々と回避していく。段々と作業のようになってくのは避けれない。
退屈しのぎに丁度いいのは考え事だ。嫌な事を忘れる為に楽しい事を考える……。だが、俺は違う。二度とあんな思いはしたくないから。俺は忘れない。忘れたくない。忘れられ、ない。
あの立場に戻りたくない。だから、忘れたら駄目なんだ……。
思い出してしまうのは、オブリビオン・ストームに呑まれて死んだ――かつての恋人。
合コンの事を全く考えようとしないのも、昔彼女がいたからだ。
トドメを刺したのは俺。
「ヤッベ、余計なことまで思い出しそう……とっとと先行くか」
誰にも声が聞かれなくて良かった。訳も分からず声が震えたから。視界が一瞬、ぼやけてしまったから。
「あ、スイッチ。……と人の声」
壁に四角い出っ張りを見つけると同時に、2人分の話し声が聞こえる。こちらの方へ近づいているようだ。即座にバーンは、手頃な瓦礫へと身を隠した。
「物資の配給、見回りの仕事、強い女性に雇われた……か――」
重要そうな単語を淡々と呟く。今はどこかへと行った2人組の兵士の会話で、何度も出てきた言葉だ。
「これは……物資でオブリビオンに雇われた、という事になるぜ」
この情報が正しいかどうか、エスタシュと照らし合わせる必要があるだろう。
●
「合コンかぁ、良いね良いねモチベが上がってきたぜ!」
「合コンは……見るだけにしとく」
暇だから話そうぜ!というエスタシュの提案に頷いたのはバーンだったが……。
まさか、合コンの話題だったとは。
「なんだ?気乗りしねぇのか?」
「……ぁ、ああ。ちょっと気分じゃない、っつーか、俺は物資があれば――」
つい漏れ出た本音。何か聞かれるだろうかとバーンは言葉を濁す。
軽く叩かれたのは肩。
「まッ!色々あっからよ。じゃ、しょうがねェ!ってな!」
ありがたくも思いがけない反応に、ガスマスク越しに目を丸くする。
この男――エスタシュの気遣いなのだろうが、ただそれだけで過去が変わる事もなく、心の雨が晴れる事もない。
ただ、それでも未来を変えたい。明るくしたい。
彼もきっとそうなのだろう。
「エスタシュは……長生きしそうだな」
「だろ!俺の背中についてこい!」
調子のいいエスタシュに、バーンは思わず笑みをこぼす。
信じたい。仲間と戦場を駆け巡り、心の底から笑い合える時が来ると、信じたい。
「所で……ここの兵士がオブリビオンに物資で雇われているというのは――」
「ホントだろうな。お前もそれを知ってるならよぉ」
それぞれ、目的や目標は違えど。
「倒すか」
「そう来なくっちゃな!」
敵の前では1つになる。それが未来を作る猟兵達の強さだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 集団戦
『邪流拳法『機拳流』の武術家』
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POW : 機拳流奥義・戯岩斗拳(ギガントパンチ)
【機械化した右腕の一撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : 機拳流禁忌・王刃悪狼怒(オーバーロード)
【体内に埋め込んだ加速装置を暴走させる】事で【オーバーロード状態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 機拳流秘伝・魔心眼(マシンガン)
【機械化した左眼で見た対象の動きを解析して】対象の攻撃を予想し、回避する。
👑11
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●酔狂な待ち人
「わざわざここまで来るとはねぇ。酔狂な奴らだよ。猟兵ってのは」
最奥に待ち構えていたのは、禁忌に手を出し、片腕と片目も差し出したアウトローな女達。『機拳流』。
「たまには休めばいい――ここで永遠にね。その方が楽さね」
フランクな態度とは裏腹に、この空間にピリピリとした殺気や憎悪が渦巻く。
「この世界はアタイら『機拳流』の物さ。あんな弱いヤツらには勿体ないよ」
見てきた奴もいるだろう?
――全く使えない見張り共を。
「勝手に恋をして、勝手に増えるヤツらと――勝手に戻ってきて、勝手に暴れるアタイら。どっちも自分勝手じゃないか」
そんなヤツらに味方する猟兵なんて――。
「どうせ、猟兵も弱いんだろ?かかってきな!」
ベイカー・ベイカー
ふーん。ところで、あんたら美人だな。あんたらも合コンに参加しない?
なんて敵にとっては【挑発】同然の言動を取りつつ【先制攻撃】でUC発動。敵に警戒を促すように俺の周囲に炎を展開する。
特にお前らの左眼がいい…じっくり解析してくれよ…と【催眠術】を交えながら炎を見つめさせる。
さて、記憶を消したくなってきたよな?そこで朗報。俺の炎に焼かれたものは記憶を消される…さあ、こっちに来い。と【優しさ】を込めて【言いくるめ】、隙を見せた連中に忘却の炎の【範囲攻撃】。
そして記憶が消えた連中に炎【属性攻撃】を叩き込んで焼き殺す。
わりぃ、さっきのは嘘だ。オブリビオンは皆殺しに決まってんだろ。さて、次は合コンだぜ!
●
臆する事もなく、女武術家集団と対峙するのはベイカー・ベイカー(忘却のススメ・f23474)。
「ふーん。ところで、あんたら美人だな?あんたらも合コンに参加しない?」
「何を訳の分からない事を!バカにするんじゃないよ!」
ベイカーのひょうひょうとした態度に、女達は殺気立つ。今は殺し合いをしているのだ。水を差す真似は許せない。
「いきなりだけどさぁ……」
射抜くような目で、ベイカーの一挙一動に集中する。
「特にお前らの左眼がいい……じっくり解析してくれよ……」
ベイカーが発する炎に1人、2人とぼう――っとして虜になっていく。
魂が抜け落ちた表情になり、体の重心はゆらゆらと揺れ始める。
「な、にを……」
あの炎を見つめると――気が遠くなる。あの炎はあたたかそう……。ああ、寒い。寒い……ぜんぶ、忘れてしまいたい。
消し去ってくれ。この記憶をあの炎にくべる。それができたなら……いいのに。炎が大きく、大きくなったら、さぞ恐ろしいくらいに綺麗だろう。
「さて、記憶を消したくなってきたよな?」
視線はベイカーの炎に釘付けだ。
「そこで朗報。俺の炎に焼かれたものは記憶を消される……さあ、こっちに来い」
見ず知らずの内に口角を上げた女達は、己を焚きつける忘却の炎へと、ベイカーの元へと近づいていく。
「ま、待て……お、まえ……何をした……ぐっ」
中には強靭な精神力で耐える者もいた。彼女の左眼は何も教えてくれない。この衝動的な感情に耐える手段はどこに?あれは、攻撃ではないのだから。あの炎に熱はない。
迷える者にベイカーは優しく微笑む。
「別に全部、忘れてもいいんだぜ。死にやしないさ。はやくこっちに来いよ。炎が消えちまうぞ」
いいんだ……。全ての記憶を燃やしてもいいんだ。はやく……行かなきゃ。
彼女達の目の前にある炎はどんどん大きくなっていく。逃げ出す者はほとんどいない。恐怖などない。
目を瞑って祈るように忘却の炎を受け入れる。その瞬間だけはまるで、禊の炎を浴びる聖女達のようだった。
「おーい、ちゃんと忘れたかー?」
彼女達の虚ろな目に映るように、手をふりふりとする。反応はないが意識はあるようだ。
「じゃ、もういいよな」
その言葉を皮切りにボッ!と炎は燃え上がる。黒い残骸など残る炎ではない。記憶を失い、体を喪っていくオブリビオンはやがて、後悔もなく骸の海へと舵を取る。
帰る場所があるものを喪失の炎は煌々と見送った。還るべき場所へと。
「わりぃ、さっきのは嘘だ。オブリビオンは皆殺しに決まってんだろ。さて次は合コンだぜ!」
全てを置き去りに過去は振り返らない。それがベイカーであった。
成功
🔵🔵🔴
リゼット・アルテュセール
🔴
【戦闘時の連携歓迎です】
派手な爆発音も聞こえたし、
どうやら味方も集まってきているようね。
攻撃は絡繰人形に任せ、
自身は人形の操作に集中するわ。
「ええ、わたし自身はそれほど強くはない
…でもわたしの作ったこの子は最強よ」
人形ならではの多重関節を使った【フェイント】
を織り交ぜて格闘攻撃を繰り出させるわ。
追い込まれるか、ここぞという時には
出し惜しみ無しに全部をぶつけましょう。
「ごめんね、ちゃんと修理するから」
と人形の【スチームエンジン】を【限界突破】させ、
自壊をするのも織り込み済みで全力攻撃させるわ。
「色々と講釈をしたいところだけど、ここは端的に。
―――腕っぷしだけで世界が回るなんて大間違いよ」
●
「おやおやぁ?お前1人で何ができるんだい?仲間にも見捨てられちまったのかねぇ」
「……。そうね」
味方の猟兵達は来ている。確実に。ただそれを敵に教える必要はないと挑発をかわす、リゼット・アルテュセール(旅する人形遣い・f12168)。
「つまらないねぇ。なら、こっちから行くよ!お前の綺麗な顔をギタギタにしてやるよ!」
執拗に顔を狙ってくる攻撃に、時折かすり傷を作りながらも、人形の拳や蹴りが至る所から武術家に繰り出される。
人形とリゼットだからこそできる、相手を撹乱する動きにも疲れが見えてきた。
「隙ありだよ!」
武術家の平手がリゼットの顔を張り倒す。そして、リゼットの動きがピタッと止まった――。
リゼットの顔色は変わらないが、人形は指の先から垂れ下がったままだ。
「ビビってんじゃないよ!どうせ、上手くカウンターしてやろうっていう魂胆なんだろ?バレバレなんだよ!」
そのままリゼットに当たる――と思った『機拳流』の鋭い拳に人形が絡みつき、魔女の鼻先で止まる。
言葉を発する事なく、リゼットは勝利への一糸を編み上げてゆく。
「な、なんだい……その手つきは」
織り込まれた力が武術家の拳を放さない。
「は、放しなっ!!さもないと……」
拮抗した力比べを黙って見ているようなオブリビオンはここにはいない。
「バカっ!猟兵1人に何手こずってんだい!人形を操るその女が弱点さ!」
「お前の方がバカだよ!ま、ま、待て……!」
何やら、オブリビオン同士で言い争いを始めたようだ。片腕を人形に縛られた女が足をもつらせながら、仲間の方へと寄っていく。
「アタイの足をう、動かしているのはアタイじゃ、ないんだよ……」
「こんなバカ、ほっとくよ!さ、お前らこの女を囲みな!」
言葉も虚しく、味方のオブリビオンには届かない。粗暴な女の蹴りがリゼットの体を吹き飛ばす。
「ぐっ……」
床に倒れ、痛みに顔を顰めた。その様を女達は嗤う。
「やっぱり、お前は弱い。ここで嬲り殺されるのがお似合いの最期さ!」
リゼットの瞳からまだ光は消えていない。人形も敵にしがみついたままだ。まだ諦めていないと、口を開いた。
「ええ、わたし自身はそれほど強くない。……でも、わたしの作ったこの子は最強よ――ごめんね、ちゃんと修理するから」
「負け惜しみ、を……?」
拮抗していた人形と女の力関係が崩壊する。突如、ついに姿勢を崩した女が宙に浮いた。
「わわわわわ、わわ
……!!」
宙に舞った女の体は、人形諸共勢いよく仲間にぶつかり、リゼットを囲むオブリビオン達を薙ぎ倒していく。
人形に取り付けられたスチームエンジンが文字通り火を吹いた。暴走した人形をリゼットは必死にコントロールする。
お願い、止まって――という願いが届いたのか、人形は地面へと墜落していった。
壊れた人形を抱き締め、リゼットは力強く立ち上がる。
「色々と講釈をしたいところだけど、ここは端的に。――腕っぷしだけで世界が回るなんて大間違いよ」
果たして、倒れた不良達に先生の言葉は身に沁みたのだろうか――。
成功
🔵🔵🔴
防人・拓也
バレないように敵から離れて『死神分隊』を発動し
「リーパー2、3、4は1人ずつ正面、右と左に展開。5、6、7、8は左正面。9、10、11は俺と一緒に右正面につけ」
と兵士たちに指示し、配置についたら
「2、3、4は敵が来たら狙撃。狙撃開始後に9、10、11は俺と右方向へ敵の後ろに回り込むように、走りながら攻撃。5、6、7、8は左方向から回り込め」
と言う。敵が来たら
「来たぞ。戦闘開始」
と指示。走ってOB-D4カービンを撃ちながら
「狙撃班以外はフラッシュバンを投げろ。敵がそれで動きを止めたらフラググレネードだ」
と指示。後ろに回り込んだら
「そのまま前進して殲滅。1人も逃がすな」
と指示。
アドリブ・連携可。
●
ありとあらゆる影に潜み、任務を遂行しようとする者『達』がいた。
そのリーダーが防人・拓也(コードネーム:リーパー・f23769)である。
「リーパー2、3、4は1人ずつ正面、右と左に展開。5、6、7、8は左正面。9、10、11は俺と一緒に右正面につけ」
冷静で的確な防人の指揮により、喚び出した『死神分隊』が足音を殺して動く。
正面へ駆けて行く者が3人、横へ広がり、左正面につく者4人。右正面につく者3人と防人に分かれる。
「2、3、4は敵が来たら狙撃。狙撃開始後に9、10、11は俺と右方向へ敵の後ろに回り込むように、走りながら攻撃。5、6、7、8は左方向から回り込め」
防人の指示を聞き洩らす事はなく、二度聞き直す者は1人もいない。
一切無駄な動きがない。統率が取れた10人と1人の軍隊。
それが『チーム・リーパー』だ。
正面の3人は狙撃銃を構え、向こうを鋭く睨みつける。
右の3人と防人はアサルトライフルを持ち、左の4人も鏡写しのように同じ装備で構えを取る。
防人はアサルトライフルのスコープを覗き込む。長年にわたり鍛えた経験を頼りに刻一刻と変わる戦場を眺めていた。
敵はどうやらこちらを探しているようで、防人がいる方角を向いた。何を感じたのやら。勘もなかなか侮れない物だ。
もし、勘ではなかったら……。猟兵への敵意か、あの左眼に秘密があるのか……。覚えておこう、と防人はこの事を頭に留めた。
こちらに――来る……!
「来たぞ。戦闘開始」
防人の声に『死神分隊』の雰囲気が変わった。物言わぬ彫像から――忍び寄る死神へ。
正面3人による狙撃が始まる。相手は遠距離の銃撃から手も足も出ず……。
しかし、それで怯むオブリビオンではない。重傷を負った仲間を盾に女武術家達は進む。
仲間が倒れたら、新しく仲間を盾に。えげつない進撃だ。
そして、その肉盾陣形の真横から銃撃を浴びせる者達がいた。
オブリビオンを挟むのは、防人と3人。反対側には4人がいた。走りながらもOB-D4カービンを撃つ手は止まらない。狙いを定めて引き金を引き続ける。
通常、銃による挟み撃ちは味方にも当たる危険性を秘めている。だが、この軍隊には当てはまらない。
それぞれがオブリビオン1人、1人の急所を狙い仕留めていく。時には遮蔽物を利用しながらも外す事はほぼない。その間も狙撃班がオブリビオンの集団を正面から狙い撃つ。
それぞれが――『チーム・リーパー』として、お互いの強さを信頼しているのだ。
その事に防人は誇らしさを感じる。冷静さまでは失わないが。ここはまだ戦場だ。
ならば、仕上げよう。
「狙撃班以外はフラッシュバンを投げろ。敵がそれで動きを止めたらフラググレネードだ」
武術家達には、防人達の内線を傍受する技術も余裕もなく、そのまま――白い閃光を目に焼き付け、耳が爆発音に殺される。
身動きの取れないオブリビオンに手榴弾が投げ込まれ――。息継ぐ暇もなく、吹き飛んだ金属片やネジが体を貫いた。
余波が防人達を襲うが、チーム独自の迷彩柄の戦闘服で凌ぐ。
それでも――何かを失って尚、呻き声を漏らしながら動き出すオブリビオン。
防人『達』には想定内だ。既に後ろへと回り込んでいる。攻撃を解析せんとする、オブリビオンの左眼を防人は撃ち抜いた。
「そのまま前進して殲滅。1人も逃すな」
たった今こそ、死神の行進が始まったのだ。
成功
🔵🔵🔴
エスタシュ・ロックドア
合コンを前に強かで器量の良い女が出てきやがった
俺好みな上に煽るじゃねぇか
いいぜ、お望み通り
弱ぇかどうか味わってみろ
【怪力】で鉄塊剣フリント振るって斬りかかる
そうやってしばらくじゃれたトコで『羅刹旋風』発動
これ見よがしにぶん回す
避けるか?
どうせ弱ぇって嘲った奴の渾身の一撃を
そこまで啖呵切ったんなら、
ここでガッツリ受けてなお立って見せてほしいもんだ
煽り返してフリントで【なぎ払い】【吹き飛ばし】だ
俺も言ったからには敵の攻撃は受ける
俺ぁ四肢が潰れても戦えるブレキャリだからな
血の代わりに業火垂れ流しつつ【激痛耐性】で耐えて【カウンター】
あえてその機械化した右腕を殴り返そうか
クッソ楽しい
たまんねぇなおい
●
「いいぜ、お望み通り――弱ぇかどうか味わってみろ」
鉄塊剣の一薙ぎで応えるのはエスタシュ・ロックドア(碧眼の大鴉・f01818)。
彼と相対するのは一癖二癖ある器量良しの女達。強面のエスタシュに退かず媚びず省みず、その生意気な目がなかなかにそそる。
まずは軽く――。といっても、硬く重く大きいフリントを一振りする毎に、筋肉の脈動が走り、駆け抜けていく。
だが、まだこれはじゃれあいの内だ。
相手もそれを分かっているようで、猫のようにしなやかに攻撃を流し、振り終わった剣に手を添え軌道をずらす。
挑発的に舌をチロチロと出し、切れ味を試すかのように振り回す鬼を煽っていく――。
「あぁ、こんなんじゃ味がしないねぇ……。一発でかいのかましてみなよぉ?」
「ほぉ……。そこまで啖呵切ったんなら、ここでガッツリ受けてなお立って見せてほしいもんだ」
猟兵とオブリビオンの睨み合い――。いや、今から始まるのは剣と拳の殴り合いだ。先攻は一枚岩の如き、人智を超えた剣。
その鉄塊剣フリントの一撃を受けて立つ、かかってこい――と手の甲をエスタシュに向け、手招く。
エスタシュは――後悔しても知らねぇぞ。と、笑った――。
弾むように女達は跳ね飛ばされる。ある者は横薙ぎに、ある者は下から切り上げられて。
頭を打つもオブリビオンの宿命が、猟兵を殺せと囁く。彼は脅威だ。生かして返す訳にはいかない。
軋む体を物ともせず、ゾンビのようにフラフラと立ち上がる。
「今度はそっちの番だな……。かかってこいよ!燃え尽きるまでなぁ!」
エスタシュの魂の叫びに応えるように、力を込めて殴る者がいた。忌まわしい怪力を封じようと羽交い締めにしようとする者がいた――。
さっきとは打って変わって余裕のない、鬼気迫る表情でエスタシュを攻め立てる。
「さっきよりいい顔してるな!でも、まだまだぁ!!こんなもんじゃねぇ!」
それに負けじとエスタシュは吠え、鬱陶しい敵を薙ぎ払った。
「俺ぁ四肢が潰れても戦える……からな。もっと本気を出してもいいんだぜ……?」
滾る闘志と共に血潮は燃ゆる。
「意外と……っ!猟兵もやるもんだねぇ」
「ははっ、今更かよ。……じゃあ俺も今、決めた。俺の拳でテメェらをぶっ飛ばしてやるよ」
フリントは硬い地面に突き立てられ、一時的に無骨なオブジェと化す。
「あれだけ、その鉄の塊で嵐のように暴れておいて……。お前も今更だねぇ」
「なんとか流だか知らねぇが、勝つのは――俺だ」
その言葉を切っ掛けに『機拳流』達とエスタシュの真の殴り合いが始まる。
拳と拳のぶつかり合いに、先に悲鳴を上げたのは――エスタシュの拳だ。それでも歯を食いしばり、オブリビオンを殴る事はやめない。
拳の傷口から漏れ出すは地獄の業火。殴れば殴る程、その拳は群青色の炎を纏う。
次に鳴くのはオブリビオンの――機械の右腕だ。何度も殴りつけられ、熱でドロドロに溶けていく腕で殴り合いを続行する事などできない。
否。
「左腕が残ってるじゃねぇか。それに俺が戦う相手はテメェだけじゃねぇ。俺の相手はテメェらだ」
及び腰ながらも、エスタシュを武術家達が取り囲む。最初の態度がまるで嘘のようだ。
「それに、だ。まだまだ味わい足りねぇよな?俺は優しーから望みを叶えてやるよ」
勇気を振り絞って飛びかかってきた女達を、殴って殴って投げ捨てる。
無我夢中に。殴り殴られ燃やし尽くす。
「クッソ楽しい。たまんねぇなおい」
オブリビオンが倒れるまで、『それは』――燃え続けた。
成功
🔵🔵🔴
久遠・翔
🔴
アドリブ絡み歓迎
ふむ…どうやら今回は素手の方がいいようですね
そう言ってククリナイフを鞘に納め構えます
舐めているのか?ですか…
UCを発動し威圧感を一気に増します
これが…舐めた態度取っているように見えるっすかね?
俺は我流っすけど…敢えて名乗るなら『雷帝流』っす
いざ尋常に…勝負!
雷光の如く戦場を駆け巡り手刀に発頸。震脚を叩き込み駆け抜け、衝撃の後に雷撃が敵に走ります
倒れて骸の海に帰る敵を見て…で?誰が弱いって?と振り向きますが…このUCのもう一つの誘惑が強化された影響で他の人達が呆けています
ちなみに首や腹なんかを中心に狙うのは性格上女性の顔を殴るのはもちろん胸や股間に触る事ができないってのが理由
バーン・ストラフェス
【アドリブ、連携大歓迎】
うげ、近接格闘が得意な奴かよ…
しゃーねぇ、距離を取りつつ攻撃するか…
常に一定の距離を保ちつつ、アサルトライフルで【援護射撃】をしていくか
隙があれば【ヘッドショット】で関節部分や義眼を攻撃したいんだが…
こっちは元は死体なんだから【激痛耐性】はしっかりあるんで、攻撃を食らってもある程度なら無茶はできるってもんだ!
●
「お前……アタイらの事を舐めてるのかい?」
彼女達の前で、武器を納め――構えを取るのは、久遠・翔(性別迷子・f00042)。
決して、相手がオブリビオンだからって――女だからって、舐めている訳ではない。
「これが……舐めた態度取ってるように見えるっすかね?」
迸る紫電。それが翔にとっての『本気』であり、イメージしうる最強の姿だ。
「ククリナイフも使わず。それで『機拳流』を倒せると……?」
「俺は我流っすけど……敢えて名乗るなら『雷帝流』っす。いざ尋常に……勝負!」
その瞬間――翔の姿が稲妻と共に掻き消えた。まるで、稲光そのものになったかのように。
「なっ……!どこに――ぐぅっ!!」
「そこか!……がはッ!」
無防備な首筋に手刀が振り下ろされ、腹に急激な圧力――発勁を叩き込まれ、吹き飛ばされる武術家達。雷光の如く駆け巡る翔の姿を捉える事はできない。
翔は構える。震脚の構えだ。足を上げ、地面に叩きつける。不思議な事に、音と衝撃は遅れて響き渡った。
と――同時に、翔が叩きつけた地面から、龍のように激しく波打つ雷撃がオブリビオンの元へ駆け抜ける。ただ、既にそこに翔はいない。
その時間、一瞬。
ぱたり、と次々に倒れた武術家達は息を引き取り、粒子となって骸の海へ帰っていく。
それを見届ける翔。
「で?誰が弱いって?」
今すぐ考えを改めろ――と、振り向くが。
「お前……強いんだねぇ。か弱いアタイに強さの秘密を教えてくれよぉ。さぁ、その体で!」
「ち、近づかないで欲しいっす!ダメに決まってるっすよ!?」
「いやいや、お前はまだ未熟だねぇ。アタイの方がスゴいのさ。ここ、触ってごらんよぉ」
「お、お断りっす!」
敵――というより、まるで友人だ。圧倒的な力を見せつけた翔を恐れる事なく、タチの悪い酔っ払いのように翔に絡もうとする。
勝者であるはず、『雷帝流』の使い手はすっかり、免疫のない女性達にたじたじである。
「そことか、そことか!絶対、俺は触らせないっすよ!触るつもりもないっす!」
しかし、回り込まれてしまった!翔が撒き散らしていたのは雷撃だけではない。女性を魅了するキラキラオーラも放出されていた。
「どどど、どうすればいいっすかー!?」
今にも、もみくちゃにされそうな翔は叫んだ。どうすればいいのかと。
その叫びを聞き届けた者がいた。
「大丈夫か!今助ける!」
挨拶代わりにオブリビオン達に鉛玉を喰らわせるのは、バーン・ストラフェス(希望の運び屋・f24898)だ。
1人の猟兵に夢中になっていた女達は隙だらけ。
銃弾が腕の関節を貫通し、翔へと伸ばされた機械の腕は地面に落とされ、カランカランと音を立てる。
「助かったっす!」
「もう少し、待ってろよ!……って、こわ!」
バーンを貫くは、女達の嫉妬の目線。一斉にこちらを向き、なぜ邪魔をするのかと強く訴えかける。
やべぇ……。とは思いつつもそれに臆するバーンではない。世の中にはもっと恐い物がある。睨まれたって大した事ではない。
アサルトライフルを構え、忌々しい義眼を片っ端から撃ち抜く。
包囲網が崩れた事を感じ取り、翔はぴょん。と雷光の力で飛び跳ねた――。
「うおっ!飛んだ……。じゃなくて、こっち来い!」
「了解っす!」
今度は脱兎の如く、包囲網を抜け出す事に成功した翔。バーンの隣へと着地する。
「今、説明してる暇はないっすけど、諸事情で女性が……えーっと、苦手というか、その、嫌ではないっすけど……」
「無理して言わなくていい。大事な事は戦えるかどうかって事だな」
「戦えるっす!俺が……」
オブリビオンの様子がおかしい。口から煙をゆっくり吐き出し、バーンを睨みつける。
「そう言ってる暇もないみたいだ……」
バーンへ、一直線に向かってくる武術家達に翔が雷撃を浴びせ、一撃を入れるがキリがない。
これはまさしく暴走族――レディースだ。
「邪魔するなあっ!!」
「落ち着くっすよ!……ああ、聞こえてないみたいっす……!」
バーンもアサルトライフルで応戦するが、猪突猛進な女達の突進は止まず、銃声が響き続ける。
「やるしかないな……!狙いは俺だ。俺の事は気にせず、一思いにやってくれ。翔!」
「そんな事できないっすよ!危険すぎるっす!」
できるできないの問答をしている間、敵は待ってくれない。やるしか、ないのだ。
「分かったっす!バーンさんを、信じるっすよ!」
銃声が止んだ瞬間を逃さず、女達はバーンへと押し寄せた。
「ぐっ……!」
四方八方のタックルを受け止め、歯をくいしばる。近接戦は苦手なのだが、やむを得ない。今は敵を1箇所に集めて維持する事に集中するのみ。
「いきますよ!手加減はできないっすよ!」
「よし!こい!」
翔が蹴りつけた地面から、雷撃がけたたましい産声を上げた。それは猟兵1人を囲むオブリビオンの集団へと迫り来る。
やがて――それは、膨れ上がった雷は大勢を包み――。
「ぐあああああぁあっ!!」
痛みに叫ぶバーンを残して、真っ黒に焦げた地面があるだけ。
これで、『機拳流』こと――オブリビオンは骸の海へと帰ったのだ。
「バーンさん、大丈夫っすか!すごく心配したっすよ!無茶しすぎっす!」
「元は、死体、だからな……。ある程度は、無茶は、できるって……、もんだ……」
「本当にひやひやしたっす。倒せて良かったすよ〜」
後、残るのみは……。
「「合コン……」」
2人は声がハモってしまう。どちらも気乗りではない。が、どうするかは会場に着いてから考えるしかない。
「物資は……どれぐらいあるだろうな」
「えーと、楽しみっすね。どれぐらいあるのか……」
少々、気まずい思いをしながらも――。奪還者が犠牲になる未来を打ち破ったのだ。それが、誇らしい事に間違いはない――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 日常
『世紀末的合コン』
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POW : 自身の魅力をアピールする
SPD : 相手の魅力を見つけて褒める
WIZ : 場が盛り上がるように立ち回る
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●地獄にも合コンはある
「アンタ達、あの廃墟から見つけてきたんだって!?すごいじゃないか!噂は本当だったんだねェ」
拠点にやってきた猟兵達を出迎えたのは、真っ赤なジャケットを肩にかけた――たくましく美しい女性『キャサリン』だ。
オブリビオンを倒し、物資を見つけた後、猟兵達は2人の奪還者と鉢合わせになった。
物資と猟兵を車に乗せながらも、彼らは語る。
憧れの女性が拠点を仕切るリーダーであり、合コンの主催者でもあるのだと。
――君達もぜひ、合コンに参加してみないか。とも。
「アタシはあの2人が大量の物資を運んできたのを見て、驚いたよ。てっきり、アンタ達は拐われてきたのかと……」
心外だと野次を飛ばしてくる2人組に、キャサリンは笑う。
「アンタら、あんまり長居できないんだってね?後、悪いヤツをやっつけたとか。2人から聞いたよ。遠慮せず、楽しんでよ」
彼女は、合コンについて説明し始める。
「あの大きめのあばら家が合コン会場さ。最低限の明かりとご飯、酒はあるよ」
彼女が指し示したのは、トタンと木の板で補修された、大きい屋敷だ。明かりと賑やかな声が漏れ出している。
「ここの決まりは、大人は大人同士。子供は子供同士。未成年の飲酒・喫煙は禁止。決まった相手がいるヤツは皆の保護者としてヨロシクねェ」
合コンを楽しみにしている者にとっては、次が本題である。
「アタシのオススメは――」
ナンパ大好き双子。コンビネーションは最高。人間の兄弟、兄『アンリミ』&弟『アーリー』。
悩みは2人で絵本作家になる夢がある事。
マッドサイエンティスト。夢見がちな白衣の悪魔。デッドマンの『マーチ』。
悩みはチョロい事。
何を考えてるか分からない。狙撃の腕はピカイチ。フラスコチャイルドの『ニコレイジー』。
悩みは子供だと間違われる事。
強面の狼。実力はあるのに運がない。賢い動物の『ファンブル』。
悩みは運がない事。
「他にも、色んなヤツがいるから自分で探しな。アンタらならあっちの方から寄ってくるサ」
ほら行けと、彼女は猟兵の背中を押す。
「さっ、まずは自己紹介ぐらいしときな。気が早いけど、別れの挨拶も考えとくんだよ?下手に誤魔化したら相手が傷つくだけ。さっさと自己紹介しないと壁の花になっちまうから、気をつけるんだよ!頑張りな!」
リゼット・アルテュセール
【アドリブ描写歓迎】
(自己紹介)
趣味は古書の翻訳、お酒はカクテル派。
彼氏ナシで、この辺りには初めて来たの。
今夜はよろしくね。
指名は双子にするわ。
危うく死にかけた戦闘の余韻で
柄にもなく感情が高ぶってるの。
教師モードは封印。
普段は相手にしないチャラ系の
誘いに乗って遊びましょう。
スタイルを強調して程々に誘惑しながら
その視線を肴にお酒を楽しむことに。
ついでにこの世界の現状も現地視点で聞いておきたいわ。
でも二人の悩みの話になったら
教師としての顔が出て親身にアドバイス。
彼らも必死に生きているのを知ると
がぜん興味も湧いてくるわね。
よかったらこのあとデートどう?
別の場所でもう少しだけ…授業を続けてあげるわ。
●
「趣味は古書の翻訳。お酒はカクテル派。彼氏ナシで、この辺りには初めて来たの。今夜はよろしくね」
乾杯、とグラスを掲げるのはリゼット・アルテュセール(旅する人形遣い・f12168)。
彼氏ナシという言葉に、多くの参加者が歓声を上げ、彼女に誰が先に声をかけるか、ざわめき始める。
しかし、浮き足立つ大勢の者とは違って――古書の翻訳に耳ざとく反応した者達がいた。
「ねぇねぇ、古書って本だよね!君も本が好きなの?僕達も好きなんだ!」
「……ええ」
カウンター席で大胆にも足を組み、余裕たっぷりなリゼットに詰め寄る青年。あまりの人懐っこさに少々、ドギマギしてしまう。
「これって、運命だよね!」
「兄さん、グイグイ行き過ぎでしょ。困ってるじゃないか」
青年の後ろから、瓜二つな青年が顔を出した。口ではこう言っても……双子の本心は一緒。兄が声をかけ、弟がたしなめる。自分達のペースに相手を巻き込むコンビネーションだ。
「わたしはリゼットよ。あなた達は?」
「ああ、ごめんごめん。失礼しました。僕はアンリミ。こっちは双子の弟の――」
兄のアンリミとそっくりの容姿を持ち、眼鏡をかけた青年。
「アーリーです。よろしくね」
にこにこ笑顔でありながらも、どこか影のある青年達だ。
「今夜だけになりそうだけど……よろしく」
彼らのペースを崩しにきた女性に『僕達』は目が離せない。
「今夜だけ、なんて。リゼットさんは情熱的な女性ですね〜」
「兄さん……それは」
決して、兄の破廉恥な発言を咎めようとしたのではない。雄としての失言があった為だ。
「そう言われても……。あなた、わたしの体に興味がないようね?」
「え、そんなことないよ!急にどうしたのリゼットさん!」
必死に笑顔で取り繕う、兄アンリミを冷めた愛で見る、弟アーリー。
「あの男達の目を見ても、気づかないのね。ほら……例えば、わたしがこんなポーズを取ったら――」
途端に、棒立ちするアンリミを金属の『ポール』に見立てて、情熱的な踊りを披露する。
時にはアンリミの腕に抱き着き、リゼットの柔軟さと豊満な肉体を活かした、派手なパフォーマンスとロマンスを繰り広げ――。
途中からは、アーリーを仲間に入れて3人で踊り始めた。ただ、手を繋ぎ、足踏みを合わせて、1人の女性の腰に手を回し、くるくると踊るだけ。即興のダンスにルールなどない。
最後は、彼の胸の中でダンスを終えた。
「これでも分からない?弟さんは分かってるみたいよ?」
「ええっと……」
思っていたよりも、情熱的なリゼットにアーリーは赤面し、目をそらす。
大人な雰囲気を持つリゼットに、翻弄される双子。そんな組み合わせが面白いと、一気に増えた野次馬達の注目の的になっていた。
その野次馬達の中にもニヤニヤとした面持ちで、リゼットだけを眺める者達もいる。
「あなたは。あなたの目的は――わたしの体じゃなくて、わたしの頭?それとも本?」
図星だったようで、兄アンリミは言葉が出ない。弟アーリーが助け舟という名の――追い討ちをかけた。
「あのね。兄さん。リゼットさんの体をガン見してたら、フツーは体の傷に目が行くの」
「そ、そっかぁ。気づかなくてゴメン!ケガ、大丈夫?」
失敗した……!とうなだれながらも、気遣う姿に少々、興味をそそられる。
「ふふ……。からかいすぎてしまったわね。本の話でも、する……?」
再び、カウンター席に座り思案する。
本当はもっと触れ合いたかったかもしれない……。戦いで一度熱くなってしまった体は、なかなか歯止めがきかない。
教師モードも封印していたつもり。わたしの体に動じない彼を見て、イタズラしたくなってしまったのよ。
最後は、どちらもわたしの体を意識してくれたみたいだけど。
こちらの胸や足を見ては、目が合えばそらす。初々しくていいわね。
「んっ……」
試しに、色っぽく飲んでみれば分かりやすく動揺する。ついつい、お酒が進んでしまうわ。
「ねえ」
「なっ、なんですか!リゼットさん?」
あからさまに挙動不審な兄アンリミの肩を、弟アーリーが揺さぶる。
「ちょっと……、兄さん。こういうの僕達らしくないよ」
「別にいいじゃない。わたしは可愛らしくていいと思うけど」
もう、リゼットさん。とアーリーはあざとく頬を膨らませ拗ねてしまう。顔を少し背けた事で横から見える、メガネフレーム。
アポカリプスヘルにもレンズや加工技術があるのかと関心を持ったものだが。別の角度から見ると少々、欠けていたり、歪んでいたり。
果たして、アポカリプスヘルは今どうなっているのか。聞いてみたいものだ。
「拗ねないで欲しいわ。アーリーさん」
「なにさ。別に僕は拗ねてないけど?兄さんの方を構ってやったら?」
「拗ね……てるわよね。まあ、いいわ。突然だけど、最近どう?」
本当に突然だなあ。といわんばかりの顔をしているが、どうやらむすっとした顔でも質問に答えてくれるらしい。
「最近ねぇ……。僕達はこの合コンが全ての人々を活気づけるって聞いたから、参加したんだ…。まあ。物資はあるだけ嬉しいけど。僕達が本当に欲しい物は手に入らないんだ……」
「それって……」
「紙と絵を描く道具が欲しいんだ。でも、誰も持ってないって。どこを探しても見つからないし。そんなんだから、兄さん。焦ってヘマしちゃったんだ。諦めた方がいいのは分かってる。でも、分かりたくない」
好きな物を語り始めれば話は止まらない。それは誰にでも当てはまるはずだ。リゼットはうんうん、と耳を傾ける。
「兄さん。ヘタレてないで僕と一緒にリゼットさんを口説いてよ。兄さんも夢を叶えたいでしょ」
「へっ!?アーリー。聞いてくれ、僕は自信がなくなってきた……。僕達の夢にリゼットさんを巻き込む訳にはいかないよ」
すっかり軟派な双子は、カウンターに俯き、ヘタレている。
しょうがないわね。とリゼットは聞き役からアドバイザーに徹する事にした。
「2人はどんな夢があるの?アドバイスぐらいならできるわよ」
「えっと……。僕達、絵本作家になりたいんです。な、アーリー」
「うん。兄さん」
2人の夢は絵本作家……。ここは、アポカリプスヘル。どうアドバイスすればいいだろうか。
「うーん、そうね。まず、2人は絵本を作る練習をした事はあるのよね?」
「ええと、材料探しを頑張ってたから、あんまり練習してないかも。兄さんとお話はいっぱい考えてたけど」
「じゃあいきなり、貴重な資源を使うのは危険ね。失敗するかもしれないわ。練習に使える材料がないのなら、地面にイメージを描いてみるのはどう?」
リゼットが提案したのは、土に棒で線を引いてどんな絵本にするか、ラフを描く練習法だ。
「確かに……いいね!地面は盲点だった!ラフって便利なんだね。初めて知ったよ!僕とアーリー、どっちが絵を上手く描けるだろうか……?」
「そこは2人で競走すればいいのよ。ずっとやっていれば――上手くなれるわ。製本の基本、ざっと知っている事は教えるわよ」
「「ありがとう!リゼットさん!」」
2人の声が綺麗にハモった。
「僕達、夢を叶えるまで死ねないよ!死にたくない!」
今の彼らは純新無垢な青年達だ。
ただ、それでは物足りない。
「よかったらこのあとデートどう?別の場所でもう少しだけ……授業を続けてあげるわ」
「「本当!?」」
それは、夢が叶うかもしれないという期待もあるが、今は……優しいこの人とできる限り長くそばにいたい。
「僕達のアトリエ予定地に来て来て!リゼットさん。アーリーもいいだろ?」
「さんせーい!本当は僕達だけの秘密基地にする予定だったけど。リゼットさんならいいよ」
「楽しみだわ」
彼女には敵わないだろう。腕っぷしも何もかも。誰かを振り回すのは『僕達』の特権だったのに。
「「僕達も楽しみ!!」」
この世界で初めて、心の底からそう思うんだ。
成功
🔵🔵🔴
防人・拓也
好きなタイプ:年下で美人でお淑やかな女性。いわゆる大和撫子な感じ。
自己紹介は
「…俺は防人拓也。26歳の元軍人だ。特殊部隊にも所属していた。以上」
と言う。アピールはないのかと聞かれた時は
「そう言われてもな…。狙撃や集団戦法、乗り物の操縦が得意なぐらいだ。そんな凄いことでもなかろう」
と少々困った顔で言う。
その後、狙撃を実戦アピール。500mくらいの距離で横に並べられた直径20mmのコインを3枚、狙撃銃で瞬く間に撃ち抜く。
「こんなもんか。俺の知り合いならもっと早く撃ち抜けそうだ」
と呟く。
別れの際は
「世の中には俺よりいい男はいくらでもいる。そいつに出会えることを願っているよ」
と言う。
アドリブ・連携可。
●
「……俺は防人拓也。26歳の元軍人だ。特殊部隊にも所属していた。以上」
簡素な自己紹介に、酔っ払った男衆からアピールはないのかと野次が飛ぶ。
普段なら、まともにしない相手なのだが……。この場の空気を読むしかあるまい。
「そう言われてもな……。狙撃や集団戦法。乗り物の操縦が得意なぐらいだ。そんな凄いことでもなかろう」
腕を組み、困り顔で自身の得意分野について、語り始める。謙虚な様を尊ぶ者もいれば、悪態を吐く者もいる。
酒の場とは、そういうものなのだろう。仕方が無い。自分はただ、物資を持ってきた功労者の1人として呼ばれただけだ。場を盛り上げる必要も、盛り下げる必要もないだろう。
ここにいるだけでいい。と言われたのだ。そんな事で奪還者達の士気が上がるならば、安いものだ。
「ん……?」
視線を感じる。敵意はないようだ。誰だ、誰が俺を見ている……?
あの女性か……。
視線の先には、豪快にジョッキをぶつけ合う奪還者達の片隅で。間違って迷い込んでしまったような可憐な女性がこちらを見ていた。
いや、迷子ではなさそうだ。胸元の谷間を肩にかけてベルトが横断しており、狙撃銃の先が彼女の肩から突き出している。彼女も立派な奪還者の1人なのだろう。
彼女は少々、いや結構好みのタイプだった。
女性奪還者達の中でも一回り若い。珍しく、髪を整えており、艶々とした黒髪だ。
一見、大人しそうだが奪還者達の輪に入っているのだ。見た目だけの女性ではなさそうだ。
別に好みの女性にいい所を見せたい訳じゃないが……。
この場のノリに合わせるなら、狙撃の腕を見せつけるしかない。これで、少しは周りの酔っ払いも静かになるだろう。
「表に出るぞ」
ヒューヒューと囃し立てる者達が防人の後をついていく。その中には彼女の姿もあった。
「これぐらい……。離れれば十分か」
彼の肉眼では、的が乗ったテーブルは米粒程にしか見えない。距離はおよそ500m。簡易的な的が彼の為に設けられた。
しかし、難易度は異常。
なぜなら、的は3枚のコイン。大きさは20mmの小さなコインだ。
彼は今、無人の小屋――屋根に登り、陣取っている。防人の腕前ならば、狙撃の場所は選ばない。ただ、今回は違った。
的は、テーブルに寝かせられたコインだ。ターゲットの周囲には様々な人間が、集まっている。
テーブルの面と平行に撃つのは危険だ。やろうと思えば、テーブルの面を抉る事なく、コインだけを狙い撃てるが。
万が一、観衆に危害を加える恐れがある為、念には念を押しておく。
上から狙えば、やれる――だろう。
そう思う防人とは正反対で、観衆達はテーブルに当たれば御の字。その程度に捉えていた。
なぜなら、常人である彼らには500m先のテーブルを狙撃する事すら不可能。だからだ。
刹那。1枚のコインに何かが当たり、弾け飛んだ。2枚、3枚と合計3回の硬質な音が響いた。
挑戦の行く末を見守っていた観衆達は息を呑む。超人の成す事に。いつ、距離と角度、射線の調整をしたのか。
誰もが呆気に取られていた。
「こんなもんか。俺の知り合いならもっと早く撃ち抜けそうだ」
スコープ越しに、酔っ払い達が肩を組み、大歓声を上げて喜ぶ姿を見届けて呟く。
俺よりも、もっと早く――。どうしたら、その境地へ辿り着けるのか。
そう考えながら、危うい事なく屋根を下りた。そこにいたのは――彼女。
「俺に、どうしてついて来たんだ?」
1人の女性が後をつけて来た事は、薄々と勘づいていた。
訝しむ防人を気にせず、彼女は儚く微笑む。
「的の近くにいたら、あなたの姿が見えないでしょう?私はもっと銃の腕を磨きたいんです。あなたが撃つ姿を目に焼きつけて、技術を盗みたかったんです」
「そうか……」
「あっという間で、あまり参考にはならなかったですけどね。勉強にはなりました。ありがとうございます!」
正直に物を言い、律儀にも頭を下げるが――。
「痛っ!髪の毛が……」
「君の狙撃銃に絡まってしまったようだな。下手に動かない方がいい」
「……はい」
この世界では銃の手入れすらままならないのだろう。筒先は表面がザラザラとしており、そこに髪の毛が引っかかってしまったようだ。銃口すらもわずかに歪んでいる。これで……撃てるのか?
アポカリプスヘルの武器について、分析しながらも彼女の髪を丁寧に解いていく。そういえば、彼女の名前を――聞いていない。
「君も自己紹介をしてくれないか」
「あ、すみません!私の名前はエレナと申します。防人さん……。私の髪を優しく扱ってくださって、ありがとうございます……。こんな長い髪、切ってしまった方がいいのかしら」
「いや、勿体ない。綺麗な髪だ。前髪さえ伸ばしすぎなければ、狙撃の邪魔にはならない。大丈夫なはずだ」
さりげない褒め言葉にエレナは照れてしまう。
「えっ……、あ……。そ、そうですか?」
「どうか、したか?」
「いえっ!いえいえ、なんでもありませんよ!」
女性の髪を解く事に集中している彼に、エレナの照れ顔や変化には気づけない。
「よし、これで大丈夫だ。でも、また……引っかかってしまうかもしれないな」
「本当にありがとうございます。お恥ずかしながら……。この武器をずっと使い続けているんです。防人さんの銃は綺麗ですよね。惚れ惚れしてしまうくらい……。どうやって手入れをなさっているんですか?」
「気になるか?また、参考にはならないかもしれないが、俺のやり方は――」
得意分野ならば、相談に乗れるだろう。彼女と銃の話をするのも悪い気はしない。
色気はないが、2人の間には和やかなムードが流れていた。お互いに、すっかり気を許している。
ただ、ひたすら銃の話で夜が更けていく――。
「あっ!すみません。防人さんをこんな夜遅くまで引き留めてしまって……。そろそろお帰りになられるんですよね……?寂しいです」
「ああ……、また新しい任務が俺を待っている。これ以上は、ここにはいられないな」
「私……、わたし……!」
その先は――。
「俺は君と話す事ができて、楽しかったよ。エレナ」
「私、も……!防人さん……」
「俺は行かなくてはいけない」
寂しげな防人の背中に、エレナは頭をつける。
「防人さんは……ズルいです。男性の方と銃の話をしたのも、防人さんが初めてで……。自分でも、こんな積極的になれるんだ。って思えて。それは防人さんの事が、――だから……」
大事な所は弱々しく、彼女は想いを伝える。
「世の中には俺よりいい男はいくらでもいる。そいつに出会えることを願っているよ」
言葉で彼女を突き放した――。
「ズルいです……!なんか、ヒドイ事されたら怒れるのに、そんな事言われたら……。怒れないです……!」
彼女は男に慣れていない。もっと、色んな人と出会えたら、考え方だって変わるはずだ。こんな狡い俺も忘れてしまうだろう。
「エレナは怒っていいと、思うが……」
その言葉に彼女は、火がついたかのように泣き始める。うおおおおおん、と。せっかくの綺麗な顔が……。いや、泣き顔も綺麗だが。良心が痛む。
まるで、子供だな。
どう見ても彼女は、まだ俺より若いのだ。仕方がないのかもしれない。
その後、立ち直った彼女は勇猛果敢にも、防人と狙撃ゲームなるものを始める。
人は狙わず、次はあれを撃つ。次はこれを撃つ。と2人で的を決めて、早く撃った者の勝ち。
勿論、エレナの完敗だったのだが、すっきりとした笑顔で防人に微笑んだ。彼女の泣いた痕が痛々しいが、あのまま別れていたら、きっと後悔していただろう。
とてもとても可愛らしい人。だが、防人は止まれない。留まる訳にはいかない。数多の世界の未来の為に。
それで、この世界の住人を、彼女の笑顔を守る事ができるのなら――。尚更。
「俺は行く」
「はい……!行ってらっしゃいませ!拓也さん!」
ありがとう。今はそれだけの想いだ。
成功
🔵🔵🔴
ベイカー・ベイカー
よっしゃあ!来たぜ合コン!さっきまで何してたか忘れた!というか、どこだここ!?なんだこの世紀末は!?
……ま、どうでもいいか。なんか気がついたら合コン会場にいるんだから楽しもう。さっきのワイルドなキャサリンもいいし、独自の世界観持ってそうな白衣の子も捨てがたい…おっ、見た目と年齢にギャップのある子もそそるものが……なんだあの辛気臭い狼は。
本当はめっちゃ女の子のとこ行きたいけど…!
俺は【優しさ】に溢れてるから放っておけないぜ。【コミュ力】使ってファンブルに愚痴を吐き出させる。そしてファンブルが望むなら本当に嫌な記憶は消してやる。嫌なこと忘れて心を切り替えれば、意外となんとかなるもんさ。元気出せ!
●
「よっしゃあ!来たぜ合コン!さっきまで何してたか忘れた!というか、どこだここ!?なんだこの世紀末は!?」
喜んだかと思えば、忙しなく。頭を抱えて勢いよく独り言をまくしたてる青年は――。
ベイカー・ベイカー(忘却のススメ・f23474)だ。
でも、そんなの。よくある事だし。
いつも通り、気持ちと記憶をリセットした彼に敵なし。さっきまでの記憶がないが、この合コン会場において、アウェー感など微塵も感じない。
多分、合コンの為に色々頑張ったんだろう。自分。これは、労わってやらねば。
つまり。合コンを楽しもう!!
どうでもいい事を忘れ、ぼーっとしていたベイカーをここまで引っ張って来たのは、キャサリンだ。
ザ・アポカリプスヘル美人もなかなか悪くない。面倒見もいいようだし。
でも、あの子も捨てがたい。
彼の視線の先にあるのは、なんだかヤバそうな科学者の少女だ。
わざわざ持ってきたのか、丸いフラスコに様々な酒を混ぜている。ケケケ……!とおぞましい叫び声を上げており、とても楽しそうに遊んでいた。
少しくすんだ白衣に、液体が飛び散り、彼女は目が離せない。
「おっ、あの子は……」
一見、幼い少女が合コン会場に紛れ込んだのかと、錯覚してしまいそうな程に彼女の見た目は幼い。
キャサリンづてに聞いた情報だが、あれで成人しているらしい。見た目と年齢のギャップにそそるものが――。
なんだアレは。あの辛気臭い狼は。
四足歩行の身でありながら、器用に椅子に座り、浅い丸皿でちびちびと酒を飲む狼がいた。
口周りや胸毛は白く、真っ黒な背中から哀愁が漂う。ふさふさの尻尾は垂れ下がっており、欠けた丸皿が寂しさに拍車をかける。
本当は……!本当は――。めっちゃ女の子のとこ行きたいけど……!
あの狼を――放っておけないぜ。俺の溢れんばかりの優しさが……火を吹くぜ!
「よっ!そこの狼!お隣失礼するぜ!」
「む?確か、貴様は……キャサリンが話していた、奪還者達の1人だったか?」
「んー?多分、そんな気がするぜ!」
狼が振り向くと、くりくりとしたハシバミ色の瞳がベイカーを見つめた。
外見は動物でも、能力は人間並。それに、人間より優れた何かがあるかもしれない。おもしれー。とベイカーはじっくりと観察し始める。
「俺はベイカーってもんだけど、イイ声してんなー。聞き惚れちまったぜ」
そこに嘘偽りはない。大げさには言っているが。狼こと彼の声は、深みのあるバリトンボイスだ。
「そ、そうか……。俺の名はファンブル。ベイカーは俺なんかに話しかけててもいいのか?」
満更でもなさそうで、名を教えてくれる。むしろ、不器用ながらも気遣ってくれているようだ。
「別に。問題ないぜ?ただ、気になった事があってだな……」
「気になった、事……だと?」
彼はベイカーに興味を持ち始めている。切り込むなら、今しかない。
「ああ。どうしてそんなに落ち込んでるのか、ってな。愚痴でもいいから、俺が話を聞いてやるぜ?」
「貴様には、関係のない話だ……」
うーん。こじれちまってるな。でも、ここでめげる訳にはいかないんだよな。
「いやいや。関係大アリだぜ。俺はファンブルと楽しく飲みたいんだ。もしかしたら……、俺が解決できるかもしれないぜ?」
「そんな……、まさか――」
後、一押し。
「俺は、今夜中にはいなくなっちゃうんだけどな。どうだ?ファンブルの悩みを聞かせてくれないか?」
「う、ううむ……。では、話そう――」
それは、ファンブルという――1人の男の不幸話だった。賢い動物として生まれ、同族に囲まれて貧しくも楽しく、暮らしていた。
だが、ある日住み家はオブリビオン・ストームに呑まれ、自分1人が生き残ってしまった。
幸運であっても、彼にとっては不幸。不幸は続く。
その場で気が合った仲間達とチームを組む事もあった。しかし、死神は彼の傍にいるのだ。仲間だけが死に、自分だけが生き残る。それを何回も繰り返してきた。
ついに自分についた名は、『仲間殺しのファンブル』。殺したくて殺している訳ではない。彼の運の悪さに常人の命が耐えられないのだ。
今日も。合コンに向かう道中で不幸に見舞われた。
俺が殺した――仲間の親友だと語る者に襲われた。敵は俺ではない。俺に纒わりつく不幸だ。死神だ。
それとも、これは不幸ではなく、自業自得とでもいうのか。俺はただ――。
「俺は……ただ。生きる事すら許されないのか」
「ファンブル……」
ここで、同情や理解したフリは悪手だ。不意討ちこそ最善手――のはず。
うなだれた狼に救いの言葉を、魔法をかけていく。
「なんだ、ベイカー?同情なら……」
「違う。おい、ファンブル。そのままでいいのか。ファンブルが望むなら本当に嫌な記憶は消してやる」
「そんな事、できる訳が……」
できる。じゃなきゃ、人生やってらんねー。
ベイカーの本気が伝わったのか、黒狼――ファンブルは耳をピン、と立てた。
「嫌なこと忘れて心を切り替えれば、意外となんとかなるもんさ。元気出せ!」
「ベイカー……!そんな簡単に忘れられる物だったら、俺は――」
「あー、話は聞け聞けー。そうだ、お試し。お試しやってみようぜ」
お試し……?と首をかしげるファンブルに、お茶目にウインクするベイカー。
ベイカーは、狼が使っていた浅い皿を別の場所へと動かす。何をするのか、ファンブルは一挙一動を目で追う。
「怖くはないから、じっとしていて欲しいぜ」
「いや、怖い!なんだ、その炎は……!」
狼の目にちらつくは、忘却の炎。恐れていたのもつかの間。
「くっ……?俺は……何を、見た……?」
「ファンブル、俺が皿の位置を動かしたのは覚えてるか?」
「……!いや、この位置ではなかったはず。しかし、いつ動かしたのだ?」
きょとんと目を丸くした、ファンブルの姿を確認する。
「じゃ、記憶を戻すぜ……」
狼の目に、また炎が映り込む。
「俺は……、本当は覚えていた……?訳が分からん」
世にも奇妙な体験をしたファンブルは、悩ましげにうなだれる。
「どうだ?俺は本当に記憶が消せるって、これで分かってくれると嬉しいぜ」
「う、うむ。これは信じるしかない。疑ってすまなかった。ベイカー」
記憶を消せるかどうか、最初に疑ったのはファンブルだ。申し訳ない、という気持ちしかない。
「ふー、やっと本題に入れそうだぜ。さ、消したい記憶を俺に教えてくれよ」
「そうだな……」
その目はただ下を向く。ベイカーと目が合う事はない……。一生懸命、考えているのだろう。うー、だのあー、だの何の意味もない言葉が狼の口から漏れる。
「俺は、不幸を忘れてはいけないと思う。例え全てを忘れて楽になれたとしても――。死んでしまった人だけは忘れてはいけないと思っている」
「ふーん、それで……?」
「俺の不幸とは関係のない記憶。俺がまだ幸せだった頃、好きな女性に振られたんだ。それを忘れたい。それを、ベイカーに消して欲しい。あれは不幸ではなかったが、哀しかった。振られたという経験が俺を臆病にさせる」
「そう、来たか……」
もっと大事な記憶を消してくれと頼まれるかと思っていた。でも、ファンブルにとってはそれも大事な記憶のはずだ。
「いいぜ。消してやるよ」
「ああ、頼む……!」
覚悟を決めた男の顔だ。その目は炎を睨む――。
「ベイカー、そろそろ女達に声をかけに行ったらどうだ?」
「おう!後で行くぜ!」
「いや、今行け。女達の視線が怖い……。ただ、貴様と飲んでいるだけなのに……」
鬱屈した雰囲気はなくなったはずなのに、女性達の嫉妬の目に怯え、縮こまり、尻尾を丸めていた。
「じゃあ、ファンブル。俺と一緒に声かけに行こうぜ!」
「なっ……!俺の悪名は広がっている。そんな事をしたら貴様まで……」
悲観的な考え方までは変わらないようだ。この狼、どこまでも悲観的。
「大丈夫、大丈夫。この俺がついてるからな!」
対照的にベイカーはどこまでも楽観的だ。
「何か、忘れているような……まあ、いい。俺が振られたら、貴様のせいにしてやる」
「ははっ、それだけ元気なら大丈夫だぜ」
ファンブルはしゅたっと床に下り、ベイカーを振り返る。
「早く行かないと、置いていくぞベイカー」
「はいはい、そんなに元気になってくれて、俺も嬉しいぜ」
「……俺が、元気になって嬉しいだなんて、変な奴だ。――ありがとう」
「ファンブル……?なんか言ったか?できれば、もう一回」
「本当は、聞こえているだろう……。もういい」
声は不機嫌、尻尾は上機嫌。素直になれない狼をベイカーは追いかけていった。
成功
🔵🔵🔴
エスタシュ・ロックドア
合コンこっちが本番だった
いやさっきの戦闘めちゃくちゃ楽しかったからよ
こっちでも楽しもうかぁね
よう、俺ぁエスタシュ
自由を愛するライダーだ、よろしくな
【存在感】を放ちつつ自己紹介するぜ
俺のこの体格、傷跡、そして男前なツラ(どやぁ)
モテないということがあろうか、いやない
気の強そうな女に声かけつつ、
来るもの拒まず去る者追わずでハーレムと化……さない
ついつい【第六感】で他の連中の目当てを察して、
無意識でアシストし始めるんだよな
俺は仲人のおばちゃんか
いや飲み食いして騒ぐのは楽しいがな?
あー、あとはお若いモン同士で
自由を愛する俺はバイクと蜜月ってる方がよさそうだ
シンディーちゃんに【騎乗】
颯爽と去っていくぜ
●
「よう、俺ぁエスタシュ。自由を愛するライダーだ、よろしくな」
歯を見せて笑う、男前――エスタシュ・ロックドア(碧眼の大鴉・f01818)。
彼の登場により、周りにいる者達の目の色が変わり、色めき立つ。
屈強な肉体、歴戦の傷跡、凶暴な笑み。どれも際立って目立ち、彼らの視線を集めた。
エスタシュも目立つ事に満更でもない。
そんな彼を強く見つめるのは鉄パイプを床に突き立てる、気の強そうな女だ。
とりあえず、声かけとくか。
「おい、俺に何か用か?」
「ほぉ。用があるのはテメーの方じゃねぇのか」
女はニヤリと笑う。男まさりなその様は、今にでも殴りかかってきそうだ。
「あ?俺の事を見てたからよ」
「見てちゃ悪いのかよ?」
まさに一触即発。お互いに喧嘩腰で睨み合う。ただ、本気ではない。その光景を見て、のほほんとした女が声をかけてくる。
「あ。マリーずるーい。私だってエスタシュさんと喋りたいわぁ」
「喋りたくて喋ってる訳じゃねえよ。……こんなヤツと」
「こんなヤツだぁ?」
のほほんとした女。殺伐とした女と男。なかなかのカオスである。
更に、先陣を切った女性に、抜け駆けは許さないと大勢の女性がエスタシュの元へと詰め駆けてくる。
それを見て、諦める男。嫉妬する男。反応は様々だ。
そこにエスタシュは勘づく。
ああ、あの男はあの女が好きなんだな。とか。あの女はあの男に妬いて欲しいんだな。とか。
とてもとても、まどろっこしい。さっさと告れや。くっつけや。そう思いイラついてしまう。
――しょうがねぇな。
「おい、マリーだっけ?お前こっちに来い」
「ん?――っておい!腕を引っ張るな!力つええ!」
男まさりなマリー。彼女の腕を引っ張り、ある男の元へと連れていく。
「おらあっ!」
エスタシュに背中を突き飛ばされたマリーは、優しげな男によって、受け止められた。
「いき、なり、何しやがる……あの男ォ!って……え」
「だ、大丈夫?マリー?」
気づけば、マリーは本命の男の胸元にくっついていた。
「大丈夫に決まってんだろぉ!ま、マリー様ならな!ど、どけよケヴィン……!」
突然の急展開に、しどろもどろになり赤面するマリー。怒りで顔の赤さを誤魔化した。
「嫌だ、どかない」
「えっ……」
マリーはこの男が嫌いだった。こんな荒れた世界で、争いを嫌い、避けようとする女々しい男。でも、そんな優しい男がマリーは好きだった。
こんな優しいヤツはケヴィンしかいない、と。
しかし、この世は弱肉強食。強き者が尊ばれる世界。腕っぷしの強いマリーは、相手を選び放題。選り取りみどりだ。そんなマリーがケヴィンを選べば、周りはどう思う?
きっとケヴィンの名誉を傷つけるだろう。馬鹿にするだろう。それで平気でいられるマリーではない。
だから、ケヴィンを諦めてエスタシュという男に選ばれようとした。あわよくば、嫉妬してくれないかと思った。
でも、その考えは甘かったみたいだ。
「なあ。エスタシュさんとやら。君はマリーをわざと突き飛ばしたな。マリーに謝ってくれないか」
男は声を震わせながらも、エスタシュに選択を迫った。
「あぁ?なんで、俺が謝らなきゃいけねぇんだ?むしゃくしゃしてやっただけだ。俺は強いんだぜ。なにやっても別にいいだろ?」
2人の関係を大体、分かっているエスタシュはチンピラ役にノリノリだ。
「マリーに謝れ……!僕は君を許さない……!」
このケヴィンという男は本当に甘いのだろう。エスタシュを押さえつける力も武器もないように見える。
先走った正義感。いつか巨悪に押し潰されそうだが……。嫌いじゃねぇ。
もしかしたら、この男の強さは、弱い奴を思い通りにする強さではないのかもしれない。強い相手にも立ち向かう強さ、だろうか。
少し買い被りかもしれないが。
「よし、じゃあ俺が一発殴って、倒れなかったらその女に謝ってやるよ。それでいいだろ?」
「構わない……!」
「ケヴィン!やめろ……!」
これは茶番だが、嘘偽りのない男気を、根性を見せて欲しいものだ。エスタシュが大分譲歩している事を分かっているのか、男はなかなか退かない。
それを心配する女。こうして見ると……普通の女だな。そう思う。
「よーし、歯を食いしばれよ……」
お前の男を見せろよ……!じゃなきゃ、興ざめだぜ。
「いくぞおぉおお!!」
少々、骨が砕けたかのような不吉な音が鳴り響く。
「ぐっ、ぐうっ……!ぼ、くはっ、負け……ない!」
鼻や口から血を流そうが、足が震えようがケヴィンは倒れなかった。
エスタシュの馬鹿力に、本当ならばケヴィンは立っていられないはずだ。フラフラとしており、今にも倒れてしまいそうで――。
そんなケヴィンに手を貸す者がいた。
マリーだ。彼女は恋焦がれた男の背中を支える。
支えてはいけない。というルールはない。別に彼1人でマリーを守る必要はないのだ。マリーが彼を守り、彼がマリーを守る。それもおかしくはない。
「やれやれ……。約束通り、謝ってやるよ。悪かったなマリー」
「……!ああ、ケヴィンを殴りやがった事はまた別だがな……」
あまりの呆気なさにマリーは毒気を抜かれる。勘のいいマリーが、エスタシュのやった事に気づくのはそう遅くないだろう。
マリーに支えられた、ケヴィンは殴られ、歪んだ顔のまま笑った。
「ありがとう……!エスタシュさん」
「……礼は、いらねぇよ。なかなか男前の顔になったんじゃねえの?」
そう――願う。
「あー……」
俺は仲人のおばちゃんか。一応、飲み食いして騒ぐのは楽しいと感じる若い男だがな?
熱々な男女の元を去り、冷えた夜空の下でバイクこと、シンディーちゃんに腰掛ける。
あとはお若いモン同士で。よろしくよろしく……。
俺は自由を愛する男。俺以外の男の幸せや価値観を否定する訳じゃねえが、自由な方が俺は好きだ。女に縛られるのは……死ぬほど嫌でもねぇ。でも、合わねぇな。
俺にはバイクと蜜月ってる方がよさそうだ。
エスタシュの視線の先には夜の帷に覆われた荒野が映る。走りがいがありそうだ――。
「よし!行くぜシンディーちゃん!」
バイクを跨いでエンジンをふかす。楽しい楽しいドライブの始まりだ。
この男には無慈悲で優しい、冷たい風が心地いい。
今日もまた――。果てのない、暗闇の中を照らして駆けて行く。
成功
🔵🔵🔴
バーン・ストラフェス
行く奴は行ってこい
俺はキャサリンや他の奴らを運んできた奪還者と世間話や仕事の話でもするか
「にしてもラッキーだったな。最近話題の猟兵がこんな形で会えるなんてよ。あいつら、どこもかしこも引っ張りだこって聞いてるしな。」
「…え、俺?いや、そっちは興味ないわ。生きてるもんは生きてる同士でやりゃいいだろ。少なくとも、俺はそういう考え方してるし。」
「……先に言っとくけど、32だよ、こっちは…。」
「あ、なんか届け物とかないか?相手が無事ならなんとか届けてみるけどよ。」
アドリブ、絡み大歓迎
●
行く奴は行ってこい、と始まりから壁に寄ったのはバーン・ストラフェス(希望の運び屋・f24898)だ。
その男へ声をかける者達が現れる。
奪還者である男2人と紅一点のキャサリンだ。
「ん?体調でも悪いのかい、無理すんじゃないよ」
「そうだ、そうだ」
「大丈夫か?」
口々に3人はバーンを気遣う。どことなく訳ありな雰囲気を感じ取っているのだろう。この荒れ果てた世界では、哀しい事によくある事だ。
「ああ、大丈夫。丁度、3人と――話したいと思っていた所なんだ」
自分達と何を話したいのだろう?3人は顔を合わせる。
「この拠点まで、物資と俺達を運んでくれてありがとう。後、ここにいる皆の笑顔が輝いているのはキャサリンのおかげなんだろう。きっと……」
バーンがふと見せた寂しげな笑みに、キャサリン達は思いを馳せる事しかできない。
不意をつかれるも、先に我に返った男達が手を差し伸べた。
「いや、お礼を言うのはこっちの方だぜ。俺はボブ。バーン、よろしくな!」
「そうそう!こっちこそ、ありがとな!俺はデリー。俺もよろしくしてくれよ!」
その手が意味するは、挨拶代わりのハイタッチ。それを拒否する理由など今はない。楽しげな乾いた音が次々と響いた。
「ハハハハハ!3人とも、若いねェ。羨ましいよ」
「えっ、姐さん……何歳――」
彼女の地雷を踏み抜いた男、ボブにキャサリンの平手打ちがクリーンヒットする。
同じ事を考えてしまった自分も巻き込まれてしまうのかではないかと、後ずさるバーン。だが、後ろは壁だ。
「ああ、もう!そんなビビるんじゃないよ」
「キャサリン……さーん。落ち着いて、落ち着いて」
拗ねるキャサリンと、宥めるデリー。意外とお似合いなのかもしれない。
「いてて……痛い目にあった」
余程、痛かったのだろうか。叩かれた頬を押さえるボブは涙目だ。
その様を見た彼らはくすりと笑いを漏らし、女は豪快に笑う。とても和やかな雰囲気だ。アポカリプスヘルとは思えない。
「にしてもラッキーだったな。最近話題の猟兵がこんな形で会えるなんてよ。あいつら、どこもかしこも引っ張りだこって聞いてるしな」
猟兵について、話を切り出したバーンだが――。どうやら、自分が猟兵の1人である事は伏せるようである。
「猟兵?引っ張りだこといえば……凄腕の傭兵団なんじゃないか、って噂されてる奴らの事か?」
「おお、アイツら猟兵って言うんだな。知らなかったぜ!デリーが知らねーなら、俺は知らなくて当然だぜ!」
「威張る事かい……」
猟兵――という名はまだ浸透していないようだが、彼らに意味は伝わったようだ。
和気あいあいとした彼らを見ていると、まとも担当がデリーなら、ボケ担当はボブ。ツッコミ担当はキャサリンといった所か。
猟兵の情報をバーンが持っている。と、なると――。
「もしかして――」
「いや、ないない。俺は猟兵じゃないからな」
「へー」
「ほー?」
デリーの疑問に、即座に否定したのはバーンだ。猟兵キャンセル。それに納得するボブと疑うキャサリン。3人の関係性をやっと、バーンは掴めてきたような気がする。が、キャサリンには怪しまれているようだ。
誤魔化しきれない――か?
「じゃあ、一緒にいた奴らが猟兵という奴で、アンタは違う……。果たしてそうかねェ」
「そういうもんだ。俺は運び屋さ」
「ま、そういう事にしておくよ」
見逃されたような気がしなくもない――。
「話がズレちまったが、バーンのいう通り、猟兵の奴らに会えてラッキーだったぜ!デリーもそう思うだろ!」
「だな。俺達が来た頃には全てが終わってたみたいだが、あの汚れ具合。ツラ。一仕事終わらせてます、って顔だったなー」
「ま、ボブとデリーにも一仕事が残ってて良かったよ!また、ブツを運んでくるならコイツらに頼みな!」
弾むように会話をする彼らは、バーンにとっては焦がれた物で、眩しい物だが――。目の保養にはなる。
聞き役も悪くない――そう思い始めていた頃だった。
「っていうか、アンタも合コンに混ざりなよ!さっきから、とある女がアンタの事を見つめてんのさ。話しかけんのが恥ずかしいなら、アタシが紹介してやろうか?」
「……え、俺?そっちは興味ないわ。生きてるもんは生きてる同士でやりゃいいだろ。少なくとも、俺はそういう考え方してるし」
彼の中では、もう――時が止まっているのだ。彼にとって、この世は温かみのない凍えた世界。過去が未来を奪うのなら、未来なんてもう――。
沈みかけた意識をキャサリンの冷やかな声が呼び覚ます。
「冷めてるねぇ」
その目は、バーンがまだ青いといわんばかりだ。
「……先に言っとくけど、32だよ、こっちは……」
「アタシからしたら、若造だよ!プンプン!」
キャサリンの年齢は置いといて、プンプンと怒りを口に出されては、色々と気が削がれるもの。
「まあまあ、キャサリンさん」
「そうだぞ!落ち着け姐さん!でも、本当に何歳――」
後は言わずもがな。
これは話題を変えるしかない。もう、収拾がつかなくなっている気がする。
「あ、なんか届け物とかないか?相手が無事ならなんとか届けてみるけどよ」
「んー、アンタが運び屋だっていうのは本当だったのかい。じゃあ、仕事が欲しいならボブとデリーに聞きな。運び屋の事は運び屋サ」
「まだ、疑ってたのか……」
この拠点のリーダーである以上、ある程度の寛容さと観察力が必要な事は分かるが……。キャサリンの用心深さに感心すると同時に少々、呆れてしまう。
「バーン、よく聞けよ。ここに集まっているのは腕のいい奪還者だ。ということは……、腕が悪い奪還者もいるって事だ。そいつらに物資を分けに行くのが今回の俺達の仕事だぜ」
「そうそう。普段はデリーと俺がやってるけど、バーンもいればいつもよりもっと早く終わるな!」
そこは既に会場の外。
デリーとボブのトラックが並ぶ。また、巧妙に隠されていたバーンの移動拠点――トラックもお出ましだ。
真剣なデリーと、楽ができると笑うボブ。まあ、これはこれでいいコンビなのかもしれない。
ただ、気がかりなのは……。
「部外者の俺が言っていいかどうかは分からないが、いいのか?それで――」
「ああ。キャサリンさんが決めた事だ。異論はない」
「俺はよく分かんねーから、反対はしてねぇ!賛成もしてないけどな!」
郷に入っては郷に従えという奴だろうか。こちらも、来たばかりで道理や仕組みなど分かるはずもない。
一先ず、納得するしか、ない。
「じゃあ、行くぞ!バーン。俺達についてこい!」
バーンは頷き、運ぶ物資を更に、無理矢理に積み込んだトラックに乗り込み、ハンドルを握る。
ちょっとした安全点検も忘れない。
明かりの少ない、アポカリプスヘルの町を2人の男と共に駆け抜けた。
「おっ!おかえり。ボブ、デリー、バーン。バーンは大丈夫だったかい?」
「ああ、バッチリさ!結局、トラックの中身を見せて貰えなかったが……」
「何、入ってたんだろうなー。気になるよな!デリー!」
合コン会場に戻れば、まるで母親のように、バーンを気にかけるキャサリンが迎えてくれる。
それに、バッチリだと答えるデリー。子供っぽいボブ。さっきばかりの事なのに、なぜがこのやりとりが懐かしく感じる。
「母親か何かか……」
不満げにバーンはぼやいた。
その囁きを聞き逃すキャサリンではない。
「バーン、アタシはアンタに話したい事がある。こっち座りな」
指し示したのは、テーブルで挟んだキャサリンの向かいの席だ。
しょうがなく、大人しく席についたバーンを見て、呟く。
「これから、アタシが言う事は酔っ払いの世迷言だと思いな」
「ああ……」
ちなみに、ボブとデリーの2人は背景に徹している。
「アタシはまだ、アンタがどんな言葉を求めているかは分からない。でも、アタシは絶対、死人の言葉を騙らないと誓うよ」
「死人……?」
キャサリンは神妙に頷く。
「よく、さ。言うだろ。生きてる奴に向かって――。死んだアイツが喜ばない。とか、悲しむ。とか。でも、死者の言葉なんて赤の他人に聞こえるはずがないのサ」
バーンは今、生きている死人だ。破綻はしていないが矛盾はしている。死者の声――。果たして、届くのだろうか。届くべき人の元へ。
「まあ、猟兵?とかいう奴らならできるのかもしれないけど。アタシが言いたいのは――死者の代弁なんて絶対しないよ。って事サ。アンタが何かを探していてもね」
バーンには、まだ分からない。キャサリンがそう伝えてくる理由を。
「さて、見回りでもしてくるかね」
すくっと立ち上がったキャサリンは、悩めるバーンを見て目を伏せるが――。何事もなかったかのようにボブとデリーを連れて、テーブル席から立ち去っていく。
「何が言いたいんだ……酔っ払いは――」
彼はまだ探している。何か分からなくても。どうしてなのかも。
例え、夜が明けても、日が沈んでも、地を駆け抜けても。
彼は、何かを探している――。
成功
🔵🔵🔴
久遠・翔
アドリブ絡み歓迎
とりあえず自己紹介だけは済ませつつ、目立たないを使って会場を抜け出します
と、言うのも…皆さん楽しそうにしているのに合コンに興味ない俺がいてもしらけるだけっすからね
ついでに拾ってきた鉄屑や石を選択UCを使い合コン会場の補強をします
何でこんな事しているかって?だって楽しく過ごすんなら快適な方がいいじゃないっすか…って、ぇ?
振り向くとニコレイジーさんが
な、なんでここに…?
後を付けてきたって…合コン楽しめばいいのにと苦笑
気になったからって…ニコレイジーさん可愛いですけど大人なんですからそういう勘違いされるような事言っちゃダメっすよ?(誘惑74)
一休みで屋敷の縁側に座ると彼女も何故か隣に
●
「俺は久遠翔っす。よろしくっす」
頭をぺこりと下げると、久遠・翔(性別迷子・f00042)の長い灰色の髪が踊る。
翔に声をかけようと伺う者もいるが、ノーセンキュー。
あたかも、飲み物を取りに行ったかのように見せかけて――。己の気配を殺す。
彼女の姿は、人の集団という背景に紛れて消えた。
合コン会場の外まで出てしまえば、もう大丈夫なはずだ。
皆、思い思いに合コンを楽しんでいる。合コンに興味がない自分がいても、場をしらけさせてしまうだけだろう――。
冷たい夜風が翔を包み込んだ。
翔は腰の小さなバックから取り出したるは、廃墟で拾ってきた鉄屑や石を使い、合コン会場の外装の補強を始めた。突貫工事でありながらも、壁の隙間はしっかりと埋められていく。
「なんで、こんなことをしているの?」
「だって楽しく過ごすんなら快適な方がいいじゃないっすか……って」
あれ?今、誰に返事した?誰に話しかけられた……?疑心暗鬼に駆られて振り返ると――。
「ぇ?」
おっす。と手を挙げ話しかけてきたのは、見た目は子供。中身はおとな……?な少女だ。
「ん。やほー、わたしはニコレイジー。よろしく。子供じゃないからね、大人だよ」
「あ、はい。俺は久遠翔……っす。あのー。な、なんでここに……?」
翔が不思議がっている事に、よく分からず首をかしげるニコレイジー。
「あなたの後をつけてきたー。はい、おわり」
「ええっ、後をつけてきたって……合コン楽しめばいいのに――」
あまりのニコレイジーのマイペースっぷりに、翔の調子が崩され、つい苦笑いを浮かべてしまう。
そして、後をつけようと思っても、普通は姿を見失ってしまうはずだ。
今や翔の姿は夜闇に溶け込んでいる――。
この少女は一体何者なのか……。
「気になったからー。じゃ、ダメ?」
メトロノームのように首を左右にかしげる姿は、ただの純新無垢な子供にしか見えない。
少女の強者オーラも気になるが――。この無防備さは、男にとって目の毒である。
「気になったからって……ニコレイジーさん可愛いですけど、大人なんですからそういう勘違いされるような事言っちゃダメっすよ?」
「かわいい……?わたしが、かわいい……。うれしー」
少女の身を憂い、恥ずかしがりながらも、翔は少し脅すように顔を近づけるが――。彼女にとっては、翔の存在こそが蠱惑的な毒であった。
ほっぺたを両手で多い、ぽーっとするニコレイジー。
翔に言われた『かわいい』という言葉が、ニコレイジーの頭と心を掴んで、ぐわんぐわんと揺さぶる。
狙った相手は逃がさない。そんな彼女の目から見て、翔の周囲にはキラキラとしたエフェクトが飛び交って見える。しかし、照準がブレる事はない。
ターゲット……ロックオン。
先程までのぽややんとした雰囲気とは打って変わって、ギラギラとした雰囲気を翔は感じ取って身震いした。
これは……危険である。と。
「あ、あの――。大体、終わったので今から休むっす!」
「まって、わたしもついてく――」
「ニコレイジーさんは合コン会場に戻って欲しいっす!それじゃ――」
優れた危機管理能力で、脱兎の如く逃げ出した翔――。
少女の歩幅では、ついてこれないであろう速度で走り去っていく。
「あっ、いっちゃった……でも、あしあとはうそをつかないから――。かんたんにみつけられるね」
それで、諦めるニコレイジーではなかった……。
「な、なんか……思ったよりも疲れたっす……」
底知れぬ少女から逃げてきた翔は、屋敷の縁側に腰掛けると呟く。
それに応える者が1人。
「だいじょうぶ?」
「な、なんとか……なんと、か?」
いつの間にか、横に座っていたのは1人の少女。ニコレイジーだ。
「って、ええ!!」
あまりの衝撃に、翔の心臓は飛び出しそうになってしまう。
元々は男性であり、慣れない女性と距離が近いというのもあるが、今回の驚きは……ときめきというよりホラーである。
「……びっくりした。翔がきゅうにおおごえだすから。びっくりしたよー」
「……。びっくりしたのはこっちっす!なんでいるっすか!近いっす!」
離れてくださいと翔が動けば、ニコレイジーも動く。一定の距離を保ち続けていた。
「えーと、なんでがなんで?翔のあしあとをおいかけてきただけだよ。これでも、すごうでの奪還者だー」
翔が聞きたいのはそういう事ではないと思うが……。
ニコレイジーの言う通り、彼女は翔の足跡を追いかけてきた。明かりの少ない夜道で、彼女の目が光る。
明らかに人が通ったであろう道。靴底の跡。折れた枝。土がかかった石。それを見逃す事はない。
ここは死と隣り合わせの世界。アポカリプスヘル。どんなに小さい事でも注意深く観察しなければ、生き残れない。
索敵と追跡。それが彼女の生きる術だ。それさえあれば、銃を握る必要すらない。
彼女がその引き金を引く時は――。不埒な輩が追いかけてきた時だけだ。
「でも、足跡なんていっぱいあるっすよ?どうやって、俺が分かったっすか?」
「わかる。翔のくつのかたち、もようをおぼえたから」
「ひっ……!」
何気ない言葉だが、言われた本人としては恐怖を感じる。おかしいな。合コンから逃げてきただけなのに。
このままではいけない。なにか話題を……。
「どうして、俺にまた、ついてきたっすか……?」
それは、翔にとって純粋な疑問であった。
もしかしたら、いつも通り謎のフェロモンが出ているのかもしれないが……。でも、いつもなら今頃、好き放題されているはず。
現在は、恐怖を感じるだけで危害を加えられてはいない。どうしてだろうか。
何も考えてないのか、考えているのか。すぐに彼女は言葉を発する。
「おつかれさん。わたしがいやしてあげちゃうのだ。ゆっくり……しろー」
「はぁ……」
幼い横顔が微かな月明かりに照らされる。どこか大人びていて――綺麗だ。彼女はなぜか、翔の方を向かず、月を隠そうとする暗雲を見上げていた。
その横顔に違和感を感じ、翔は意を決して覗き込もうとする。
「み、ないで……」
絞り上げたような掠れ声がニコレイジーの口から漏れる。本当に、一体どうしたというのか。
「ニコレイジーさん……?」
「じつは、いまがんばってたえている……が、げんかいだ……いま。めっちゃはんたいがわのほほをつねってます」
「……どういうことっすか?」
「……。……ふんぬぬ」
翔の一挙一動に連動するように、彼女は体を震わせ、か細い唸り声を上げる。何を耐えているのだろうか。
謎の報告が本当ならば、翔からは見えない側のほっぺたをつねっているらしい。
「わたし、がまんだ、がまんするのだ……」
ますます様子がおかしいニコレイジーの姿に翔がしびれを切らした。
「さっきから、よく分からないっす!俺にも分かるように教えて欲しいすよ!」
ダン!木の乾いた音が響く。
「だって、こういうことしちゃうから」
翔は縁側を背に、ニコレイジーに押し倒されていた。いわゆる、床ドンだ。
あまりの展開に、不覚にも翔はドキッとしてしまう。果たして、それは――。
「翔。これでわかった?」
片方のほっぺたを全力でひっぱりながら、ニコレイジーは翔に問いかける。笑ってしまいそうな顔で、彼女の目は真剣だ。
キョトンとした表情で、翔は応える。
「別に、そんな嫌じゃないっすよ?」
「マジで?」
よく分からなかった彼女の、素の表情を引き出せたような感じがする。
はー、とため息を吐くと、ニコレイジーは翔から体を離した。
「なんか、わたしばかみたい。翔はちょーむぼーびだしー。いみないー」
「え?え?え?俺なんかやらかしたっすか?」
彼女につられて翔も起き上がる。
また、2人は並んで縁側に座った。
「あーもー、つかれちゃった。これ、翔のせい。きゅーいーでぃー。しょうめいかんりょー」
「俺、何もしてないっすよね?ね?」
すっかり、彼女は機嫌損ねてしまったようで、聞く耳を持たない。
ただその頬と耳は赤い。
これ以上、ニコレイジーと話せる事はないと翔は諦め、天を仰ぐ。
明日の見えない、空を見上げた翔の肩に何かが触れる。
「ニコレイジー……さん?」
そこには、翔の肩に寄りかかって寝息を立てるニコレイジーの顔があった。
ドアップだ。近い。
でも、可愛い。まつ毛は長いし、寝顔も綺麗だ。そして、なにより……。
自分を信用してくれている感がすごい。すごくいい。
「すぅ……すぅ……、翔……こんなに……きくて、……いの、食べれないよぉ……すぅ」
「ニコレイジーさん、寝ちゃったっすか?」
どんな、夢を見ているのやら。相手は寝ているから大丈夫と、顔を近づけてみる。ただ、寝言を聞きたい……だけだから。
彼女の髪からか。懐かしく、優しい。そんな匂いに翔も微睡んでいく。
「眠く、なって……きた、っす……」
ニコレイジーは翔に危害を加えまいと必死に自分を律した結果、疲労で寝てしまった。
彼女はどこまでも、どこまでもマイペースだ。でも、なるべく1人で抱えすぎないで欲しいと思う。
ただ、今は眠りたい。肩に寄りかかる温もりと共に。
翔は目を閉じた――。
成功
🔵🔵🔴