愛はお金で買えません
●怪人パレヱド
そこは、酷く暗い部屋だった。
外の明かりを取る小窓すらなく、灯りは僅かにランプ1つ。
そのぼんやりとした灯りに照らされているのは、悪趣味な金ぴかスーツの男と、その足元に縛られ転がされた女性。
『よしよし。誰にも気づかれずに小夜(さよ)を連れてきたな?』
『要求通りだ。手足を縛ると薬で眠らせる以外の危害は加えてない』
金ぴかスーツの男の声に、暗がりから誰かが答える。
その誰かの言葉通り、女性――小夜は深い眠りに落ちていた。御丁寧に手足を麻縄で縛られているが、そんなおまけがなくとも、しばらくは身動き1つ取れないだろう。
『くくく、ここまでは儂の計画通り。では諸君には予定通り、派手に暴れて貰おうか。儂が小夜を連れて街を出る時を稼ぐのだ! 怪人達よ!』
金ぴかスーツの男が懐から札束を取り出す側から投げれば、暗がりから次々と伸びた腕がそれを取っていく。
『報酬分の働きは約束しよう』
『金を貰えて好き勝手出来るなんて、美味い仕事だな』
暗がりの中に潜んでいた、俗に『怪人』と呼ばれる者達は、夜の街へと飛び出して行く。
そして――。
『フハハ! 我が名は! 怪盗! ナイトメーア! 盗めぬものなどナッシング!』
黒マントを翻し建物の屋根から屋根へ跳び回る自称怪盗が。
『……死ぬ……誰かは判らぬが、今宵も誰かが死ぬ。何故なら、俺が殺すからだ』
大鎌担いだ死神気取りの自称殺人鬼が。
『愚民ども! 我が芸術作品を見よ!』
後ろにガッシャコガッシャコ動く謎の絡繰ロボ従えた自称悪の発明家が。
『ああ? 何をしているのかだと? 悪魔召喚の儀式だとみればわかるだろうが!』
唐突に往来で儀式を始める自称悪魔崇拝者が。
それはもう、街のあちこちで。
奇人変人怪人どもが、一斉に思い思いに悪事を働き始め、夜の街をあっという間に大混乱へと陥れた。
●本当は誘拐事件
「誘拐されてしまうのは、結婚を翌日に控えた小夜と言う女性だ。事件のその日が、女給をしていたカフェーの最後の出勤だった」
グリモアベースに集まった猟兵たちに、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)は予知のあらましを告げていた。
女給を辞めて結婚するお相手は、とある華族の青年。
それも数百年は続く一族の長男坊と言う家柄。
「平たく言えば、お金持ち。尤も、駆け落ち寸前の騒動もあった末の結婚らしくてね。当の本人は、玉の輿と言われるのを嫌がっているそうだ」
それでも――話を聞かないものと言うのは、往々にしているものだ。
「今回の黒幕も、そういうタイプかもしれない」
そしてルシルが猟兵を呼んだと言う事は、その黒幕がオブリビオン――かの世界サクラミラージュでは、影朧と呼ばれる存在であると言う事だ。
「成金影朧。そう呼ばれる種類の影朧だ」
生前に巨万の富を得て俗に『成金』と呼ばれたものの、落ちぶれ、没落し、悲惨な末路を辿った者達。その過去より生まれし影朧である。
それ故、地位や財産絡みの未練を持つ事が多いらしい。
「小夜が誘拐されてしまう原因も、その辺りにあるみたいなんだよね」
とは言え、まず気にするべきは『動機』よりも『手段』だ。
「黒幕の成金は、金で雇った怪人が騒ぎを起こしている内に、誘拐させた小夜を連れて街を出るつもりだ」
その時間と隙を作るのも、金で雇われた怪人達。
「実際、怪人が多すぎてね。成金影朧が人知れず小夜を連れて街を出るのにどんな手段を使うのか予知出来ない」
ならばどうするか。
「端から鎮圧してくのが、一番手っ取り早い」
街に溢れ返った怪人による騒ぎの99%はブラフ、陽動。探して追うべき本命は1人だけと言う状況。
「皆のアドバンテージは、陽動が陽動だと判っている事だ」
陽動と判っているのだ。1つ1つ精査する必要はない。騒ぎを鎮圧して数を減らせば、自ずと成金影朧のプランも見えて来る筈だ。
「怪人の中に影朧はいない。でも金に目が眩んだ連中だ。遠慮はいらないよ」
そう言う連中だ。中には口を軽くさせるのが難しくない輩もいるだろう。
誘拐を止める事は出来ない。
だが、どこに連れ去られるのか判れば――追いかけることは可能だ。
「おそらく、一つの街で収まる事件ではないと思う。骨の折れる仕事になるかもしれないけれど、一つよろしく頼むよ」
泰月
泰月(たいげつ)です。
目を通して頂き、ありがとうございます。
今回は、サクラミラージュで起こった誘拐事件を解決して頂くお仕事です。
やっとサクラミラージュで出せました。
●前提
シナリオ開始時点で、誘拐はすでに起きています。
事件を未然に防ぐようなシナリオではありません。
起きてしまった事件を、怪人や黒幕を追って解決する流れ(になる予定)のシナリオです。
細かいところはプレイング次第ですが、その点だけはご了承下さい。
●各章と流れ
1章は冒険パートです。
怪人達が、好き勝手に悪事を働いています。陽動目的。それを鎮圧していけば、2章に繋がっていきます。
どんな怪人で、どんな悪事、陰謀、奇行を、どう鎮圧するのか。
そこら辺、プレイングで好きなようにどうぞ。
どんな怪人か、から書いてきてOKです。怪盗Nとかサンプルです。
プレイングの数だけ怪人がいていいんです。
条件は『影朧ではない』だけです。
皆、頭の中に怪人の一人や二人いるでしょう? いるよね?
まあ文字数もあるでしょうから、怪人お任せでも大丈夫です。
2、3章は戦闘ありのパートとなります。
詳細は、各章の開始時に。
最後に補足情報を。
●被害者
小夜。20歳女性。色々あった身分違いの恋愛の末に、翌日結婚――の筈だった。
まあリプレイ1本分くらいあるかもしれない波乱万丈な恋愛だったと思って下さい。
カフェーの女給さんでした。
最後の勤務を終えて店を出て、自宅までの何処かで誘拐されます。
●黒幕
成金影朧。
成上・金蔵(なりあがり・きんぞう)と言う名前が一応ありますが、成金でOK。
生前は田舎の農家出身。
今回の誘拐事件を画策するにあたって、陽動の為に大量の怪人を金で雇いました。
ではでは、よろしければご参加下さい。
第1章 冒険
『帝都怪人暗躍譚』
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POW : 抵抗や逃走を行う怪人を、気力と体力で捕縛せよ!
SPD : 怪人の玄妙な計画を、知識と推理で解き明かせ!
WIZ : 奇怪な怪人儀式を、霊力と勇気で阻止するのだ!
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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氏家・禄郎
やあ、大門教授
いつ娑婆に出たんだい?
金かい? いいねえ、私も金持ちになってみたいもんだ。
さて、今回の悪魔は何だい?
翼は生えていないけど、爪が鋭くて、足は肉食獣みたいだね
なるほど、素早さで翻弄して切り裂くというわけか
ならば、簡単だ
一歩、二歩と歩み距離を詰め
爪が襲い掛かるところを【咄嗟に一撃】入れてから、『嗜み』で派手に転んでもらうよ
ああ、これで終わりじゃない
拳銃を抜いて5発打ち込んで終了だ
……おっと忘れてた、君の大門デバイスも壊しておこう(BAN!)
さて、私の番は終了だ
教授にはもう一度自由刑に服役してもらおうか
●探偵と教授
路面電車の運行が終わった大通りの真ん中に、白衣の人物が佇んでいる。
その背後には、獣のような何かが付き従っていた。
ソレがまともな獣でないのは、そういう知識のないものにも一目瞭然であった。
ゆうに2mはあろうかと言う長身に、黒と赤がマァブル模様に混ざりあった体色を持つ獣など、いる筈もない。
「ちょいと御免よ」
その異形に怯えながらも遠巻きに眺める野次馬をかき分け、進む者が一人。
「やあ、教授。いつ娑婆に出たんだい?」
氏家・禄郎(探偵屋・f22632)は、まるで久しぶりに旧知の友にあったかのような口調で、白衣の人物に話しかける。
『脱獄――と言いたいとこだがね。今回は、金払いの良いスポンサァのお陰だよ』
教授と呼ばれた白衣の者も、禄郎に気づいてニィっと笑みを浮かべる。
二人のやり取りは、教授が此処にいてはいけない人物である事を示している。
「いいねえ、私も金持ちになってみたいもんだ」
だが――禄郎には教授が此処にいる事に対する驚きはなく、教授も脱獄と言う罪を重ねた事をまるで意に介していない様子であった。
「それで? その金持ちのお友達に、後ろのそれも買って貰ったのかい?」
『悪魔がそんなに安かないのはよぉく知ってるだろう、探偵屋!』
ロングコヲトのポケットに両手を突っ込んだまま軽く肩を竦める禄郎の物言いに少し声を荒げて、教授がパチンと指を打ち鳴らせば――悪魔の姿が消えた。
否。
一瞬で、禄郎の視界の外まで飛び出したのだ。
(「速いね」)
悪魔の動きに内心驚嘆しながら、禄郎はそれをおくびにも出さずに一歩、二歩、と足を進める。
ズガンッと背後で何かが砕ける音。
数秒前まで禄郎が立っていた場所を、悪魔の爪が穿っていた。
(「翼は生えていないけど、爪が鋭くて、足は肉食獣みたいだね」)
周囲を見回せば、ひび割れた道路や半ばで切り倒された瓦斯灯が目に付く。それらも、教授の悪魔が残した爪痕だろう。
「なんだ――今回は随分と簡単じゃないか、教授」
教授に向けて事も無げに告げると、禄郎はくるりと踵を返す。一歩、二歩。悪魔から遠ざけた間合いを、今度は詰めていく。
「おっと」
悪魔が爪で引き裂こうとした腕を、禄郎は両手で咄嗟に受け止め――同時に、伸ばした足を引き戻し、悪魔の脚を踵で払う。
「英吉利仕込みのなんとやらってやつでね」
相手の力を利用して、禄郎は悪魔を浮かせ地に叩きつける。
『ッ
!?!?』
「ああ、これで終わりじゃない」
転ばされ驚く悪魔を片足で抑え込み、禄郎はロングコヲトの内側に手を入れる。悪魔に向けた鈍色の銃口が、立て続けに5発の銃火を轟かせた。
『ちっ――またジュージュツとやらか』
「おっと。君のデバイスも壊しておかないとね」
呻いた教授が白衣のポケットから取り出した何かを、禄郎は振り向き様に、残しておいた最後の一発で撃ち抜く。
カシャンッと音を立てて、それはあっさりと撃ち砕かれた。
「さて、教授。もう一度自由刑に服役して貰おうか」
『ああ。これは仕方ないな』
観念したように呟いて、教授は両手を上げて膝をつく。
『なぁ……一服貰えんかね? 探偵屋』
そのままの体勢で、悪びれもせずに禄郎に告げてきた。
成功
🔵🔵🔴
フィーナ・ステラガーデン
怪人タカアシガニマスクを発見したわ!
なんかすごい横歩きで歩きながら道行く人に
タカアシガニの素晴らしさを説きつつ
ドン引きした人に仮面を被るように強要して追いかけてるわね。
あ。こっちに気付いたわ!
いや、海底深くで長い足で鎮座してその風格が王者のようとか言われても知らないわよ!
そんなに長い足が好きならガンガゼにでも飛びついてなさいよ!
あんた影朧じゃないんでしょ!?がりまた横歩きで追いかけてくるなああ!
ああもう面倒臭いわね!
とりあえずUCでマスクだけヤキガニにしてふん捕まえるわ!
(なんかもう色々アレンジアドリブ連携大歓迎!)
●多分この世界なら700年前から食われてた
「はっ……はっ……はぁ……」
突然だが、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)は走っていた。
≡シャカシャカシャカーッ!
何故か。追われているからだ。何に?
シャカシャカシャカーッ!≡
左から右へ。右から左へ。すごいスピードの横歩きで追いかけてくる、タカアシガニのマスクを被った怪人に。
一体全体、どうしてこうなったのか。
『タカアシガニはいいぞ。何しろ脚が長い』
「え。あの、ちょっと――」
フィーナがそれを見つけた時、怪人は買い物帰りらしいご婦人を行く手を阻んで、タカアシガニについて語り出そうとしていた。
『タカアシガニはただ脚が長いだけではない。深海の海流に負けずに王者のような風格で鎮座するだけのパワーを持つ脚だ。身が詰まっている』
困惑するご婦人に、怪人はタカアシガニの魅力を熱く語り続けている
『タカアシガニの魅力は、少しは判って貰えただろう。そこで聞こう。タカアシガニは好きか? 好きならば、このタカアシガニマスクを被れ。嫌いならば、タカアシガニを好きになるようにこのタカアシガニマスクを被れ。さあ!』
「どっちにしても被らせるんじゃない!」
二択になっていない二択を突き付ける怪人タカアシガニマスクの背中に、フィーナが思わずツッコミの声を上げて――。
結果、標的とロックオンされたのである。
「がにまた横歩きで追いかけてくるなああ!」
追いかけてくる怪人の動きの奇怪さに、フィーナがたまらず声を上げる。
『そうか。判った』
「え?」
怪人が頷くのを横目で見ると、ピタリと動きを止めた怪人は、正面に向き直り――何故か四つん這いになってサカサカと動き始めた。
『フハハハハ! タカアシガニはクモガニ科! しようと思えば普通に前進可能!』
「だからって四つん這いになるなああああ!」
むしろ動きのキモさが増した怪人に、フィーナが声を張り上げる。
『そんな事より、お前はどうだ! タカアシガニをどう思う? あの脚は深海で――』
「いや、深海で長い脚で鎮座して風格が王者のようとか言われても知らないわよ!」
構わずタカアシガニを語り出そうとする怪人の言葉をぴしゃりと遮って、フィーナが告げる。それを聞いた怪人は、目を丸くして――。
『なんと……お前、詳しいな! さてはタカアシガニ好きだな!』
「あんたがさっき言ってたんでしょーが!」
ご婦人に語っていた事をうっかりそのまま返したら、フィーナは何故か怪人に謎の感動を覚えられた。
「そんなに長い脚が好きならガンガゼにでも飛びついてなさいよ!」
『ガンガゼェ?』
ズザザザザーッッ!
『あんなひょろい脚とカニの脚を一緒にしないで貰いたい!!!』
フィーナを横から追い抜いた怪人は、土煙を上げて前に回り込んで止まりながら、声高に主張を告げてくる。
「ああ……もう、面倒……臭い……わね!」
回り込まれ足を止めざるを得なくなったフィーナは、大きく肩を上下させながら、息を切らして怪人を見やる。
「あんた……影朧じゃ、ない……でしょ!?」
『だったらどうだというのだ』
走り回って疲れ果てた少女。フィーナをそのように思ったか、怪人は余裕の表情で腕を組んで佇んでいた。
「とりあえず、マスクだけヤキガニにする程度に加減はしてあげる――詠唱省略!」
『ぬ!?』
放たれた漆黒の炎が、怪人の頭に殺到し――ちゅどんっ!
フィーナの本気に比べれば、だいぶ小さな爆音が響いて――それでも怪人タカアシガニマスクは頭を黒焦げにされ、パタリと倒れ伏した。(生きてます)
大成功
🔵🔵🔵
ガーネット・グレイローズ
サクラミラージュに初上陸。成る程不思議な世界だな。
持ちこんだヒーローカー「BD.13」に乗り込み出動。夜桜咲き乱れる夜の帝都をクルマで走り抜けるぞ。
にわとり型ドローン『メカたまこEX』を空に放ち、上空から怪人の影を<撮影>。
その映像をナビ画面に転送し、確認しながら追いかける。
「止まれ! そこの怪盗全身タイツ男!」
この騒ぎが陽動なのはわかっている……帝都のマップと怪人の出現場所を照らし合わせていけば、成金爺の逃走経路もおのずと絞り込めるだろう。
足は鉄道か、蒸気船か? それとも意表を突いて自家用車か?
【烈紅閃】による宇宙カラテで怪人を叩きのめしたら、雇い主の行き先を吐かせてやる! 歯ぁ食いしばれ!
●メカたまこ、そろそろ陸海空制してません?
夜のサクラミラージュの街を、優美な車が駆け抜ける。
「本当に桜が……成る程、不思議な世界だな」
その運転席でハンドルを握るガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は、夜桜舞い散る外の光景に、ほぅと溜息をこぼしていた。
尤も、ガーネットが乗る『BD.13』の方が、外の住人達からすれば『不思議な車』に映っていたかもしれないが。
サクラミラージュにも車はあるだろう。2ドアのクーペもあるかもしれない。
だが、異世界の技術を用いた強力なエンジンと高性能CPUを搭載したヒーローカーとなると、さすがに珍しいのか。
ましてや――。
「さてと。呑気にドライブしている場合ではないな」
ましてや、開いた窓から『コケッーコッ!』と鳴きながらメタリックな鶏――にわとり型のドローン『メカたまこEX』が飛び出していく車となると、多分他にいない。
「よし。メカたまこEXからの映像は良好だな」
ドローンに搭載したカメラ映像は、ガーネットが駆る『BD.13』のナビ画面に無線通信で転送されている。
ガーネットは地上と空、2つの視点を手に入れていた。
「この騒ぎは陽動……街のマップと怪人の出現場所を照らし合わせていけば、成金爺の逃走経路もおのずと絞り込めるだろう」
陽動ならば、本命の逃走経路は逆方向になるのがセオリー。
その裏をかいて、陽動の騒ぎの中から逃走と言う可能性も考えられる。
(「足は鉄道か、蒸気船か? それとも意表を突いて自家用車か?」)
思考を巡らせながらハンドルを切り、ガーネットは手掛かりを求めて、夜のサクラミラージュにエンジン音を響かせていた。
コケーコケーッ!
やがて、車内に響く警告音。メカたまこEXが異変を検知した音だ。
「む、あれは――怪盗か」
メカたまこからの映像には、屋根から屋根へと跳び回る、宝石を手にした、細身で長身の黒ずくめの姿が映されていた。
ガーネットはそれを怪盗と仮定し――強く、アクセルを踏み込む。
ギイィィィィッッ!
タイヤがアスファルトに軋む音を一瞬響かせ、『BD.13』が急発進。そのナビが予測した怪盗の逃走ルートに先回りして、ガーネットは車を止める。
『むっ! あれは――?』
予測通り、建物が途切れ飛び移る屋根がなくなった怪盗が、路地に下りてきた。
「止まれ! そこの――……怪盗全身タイツ男!」
『違う!』
名前が判らないので、少し考えて見た目の特徴で呼んでみたガーネットの言葉に、怪盗がきっぱりと否定の声を上げた。
『確かに俺は怪盗――だが、これはタイツではない!』
怪盗は盗んできた宝石を足元に置くと、ずいっと一歩進み出ると、全身をピッタリと覆う黒い衣装をアピールするように謎のポージングを決めた。
『俺は怪盗L! これは――レオタードだ!』
「……」
怪盗の力強く野太い一言に、ガーネットは咄嗟に返す言葉が出てこなかった。
コケコッコー!
ああ。空から、メカたまこの声が聞こえる。
「……よし、とりあえず。多少手荒にいかせてもらうぞ」
気を取り直して紅いエーテルを纏ったガーネットが、地を蹴って跳び出す。
「歯ぁ食いしばれ!」
――烈紅閃。
ガーネットの放った宇宙カラテの正拳突きが、怪盗Lを一撃で打ち倒した。
「よし。雇い主の行き先を吐いて貰おうか!」
『あ、はい。田舎に帰ればどうとでもなる、と言ってました』
一度倒された後の怪盗Lは、実に従順だったそうである。
大成功
🔵🔵🔵
黒木・摩那
【WIZ】
陽動とはいえ、街は変な怪人でいっぱいじゃないですか!
早く誘拐された小夜さんを助けたいのですが、
これを放置したままにするのも色々とマズイ気がします。
ここはちゃっちゃっと手っ取り早く片づけて、ついでに情報もゲットしましょう。
『変な』怪人はお任せで。
怪人にはヨーヨー『エクリプス』でぶん殴って【先制攻撃】、武器を叩き落して【武器落とし】、そこからUC【サイキックブラスト】を叩きこみます。
とどめにサイキックワイヤーでぐるぐる巻きにしてハムにして転がします。
最後に単刀直入に。成金がどこに行ったか、尋ねます。
成金がばら撒いてるのは実は偽札と言えば口も軽くなるでしょうか【言いくるめ】。
●紅い運命
『俺は怪盗L! これは――レオタードだ!』
「はぁ……」
どこか遠くの方から聞こえて来たそんな声に、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)の口から思わず、溜息が零れる。
「さっきはカニみたいなのもいたし……変な怪人でいっぱいじゃないですか!」
とりあえず聞こえてきた声は他の猟兵が上げさせたのだろうと踏んで、摩那は怪盗何とかを敢えて聞かなかったことにした。
誘拐された小夜を早く助けたい。
さりとて、この変人奇人大集合を放置したままにするのも色々とマズイ気がする。
「ぐわぁぁぁぁぁっ!?」
「きゃぁぁぁぁっ!? だ、誰かー」
実際、他の悲鳴が聞こえていたりするし。
摩那が駆けつけてみれば、そこには青い顔でおろおろしている女性と、泡吹いてぶっ倒れている男性の姿があった。
「どうしたんですか?」
「わ、判らないんです! 兄が急に倒れて!」
どうやらこの二人、兄妹らしい。
妹の動揺の様子ではこれ以上話は聞けそうにないと、摩那は倒れている兄の方の様子を見る事にした。
(「呼吸は荒く汗が多いようですが、そのくらいで……この匂いは!」)
膝をついて様子を見た摩那が、何かに気づく。
立ち上がると、辺りを見回し――。
「待ちなさい。そこの赤いコートの方」
野次馬の奥。立ち去ろうとしていた赤いコートの男に、摩那が告げる。
「何故――そんなものを隠し持っているのですか?」
静かながらも有無を言わさぬ剣幕に割れた野次馬の人垣を抜けて、摩那は足を止めた男の背中に詰め寄る。
「貴方が持っているの、常人には相当激辛の唐辛子ですよね。自分用? いいえ、それならば気が抜けないようにしっかり密閉する筈です!」
『ちっ、バレちゃ仕方ねぇ!』
摩那の指摘に、男が振り返ってコートを広げる。その内側には、赤い液体が入った注射器がびっしりと付けられていた。
『俺は怪人、唐辛子男!』
摩那が気付いた匂い。それは――唐辛子の匂いだった。
『お前も口の中を唐辛子まみれにしてやろう!』
怪人唐辛子男は、コートの内側の注射器を素早くとると、摩那の口を目掛けて中の赤い液体を撃ち出す。同じ要領で、あの男性もやられたのだろう。
だが――。
「なんだ。この程度ですか」
絶望的な辛党である摩那にとっては、その辛さは物の数ではなかった。
『はぁっ!?』
「私を辛さで唸らせたいなら――」
驚く怪人唐辛子男の前で、摩那の服の袖からヨーヨーが飛び出す。
「最低限、ジョロキアクラスを持って来るんですね!」
摩那の放ったヨーヨー『エクリプス』が怪人の横面を叩いて殴り倒す。その衝撃で、コートの内側の注射器もすべて砕かれていた。
『う、うぐっ!?』
よろよろと身を起こした怪人の目の前で、『エクリプス』がバチリと爆ぜる。
「さて。これから高圧電流を浴びせて、それからワイヤーでぐるぐる巻きにしてハムにして転がす予定ですが――その前に、成金がどこに行ったか、話して貰いましょうか」
『……』
見下ろす摩那の視線と声に、怪人は押し黙る。
「成金がばら撒いてるのは実は偽札だとしても、そこまで義理立てしますか?」
『な、なに!?』
しかし、摩那が告げた一言で、怪人の顔色が変わった。
『くそっ……あの金で新しい唐辛子を仕入れる予定だったのに……あの野郎なら、自分の故郷の方に戻る算段つけてたぜ! 車を使うか、電車を買収するかってな』
まんまと言いくるめられた怪人は、怒りに任せて情報を吐いていた。
大成功
🔵🔵🔵
アリソン・リンドベルイ
【WIZ 午睡に誘う茉莉花香】
ーーーそうですね。世の中には、色々な方がいらっしゃいますから。その多様性は称揚されるべきかと。ただ、世間様に迷惑をかけるのは看過しかねますが…。
闇夜に跳梁する個性的な方々を眺めながら、ぼんやりと浮遊して現場に向かいます。『午睡に誘う茉莉花香、空中浮遊、医術、救助活動』で、騒動を起こす方がいらっしゃったら眠らせて無力化。非殺傷で動けなくして必要以上に力を用いず、必要なら救命救護にあたります。 ーーーええ、ええ。悪いことはいけないことよ。積極的に他者を害するのは、どう言い繕っても良くありません。…猟兵がいう台詞では無いかもしれませんが、私は暴力は好きではありませんから
●ジャスミンの香りに包まれて
ふわり、ふわり。
サクラミラージュの夜の街。桜舞うその夜空を揺れる、ガーデニアの白い花。
「聞いた通り、今宵は個性的な方々が跋扈されてますね」
アリソン・リンドベルイ(貪婪なる植物相・f21599)は、いつもの何処か眠そうなぼんやりとした表情で、ふわりふわりと空を飛んでいた。
「世の中には、色々な方がいらっしゃるものです」
呟くアリソンの若草色の瞳には、実際、色んな人が見えていた。
なんか怪しげな魔法陣を描いている怪しい人とか、何故かスピーカーついてるダルマ自転車で爆走している怪しい人、どう言う原理かわからないが謎の粘液まみれでペタペタ壁を歩いている怪しい人もいる。
怪しい人のオンパレードである。
「例え怪人の方々でも多様性は称揚されるべきですが……」
そんな怪しい人のオンパレードでも、アリソンはその在り様自体は認めてあげたいと思っていた。ただ、怪しいだけだったならば。
「世間様に迷惑をかけるのは、看過しかねますね……」
されど『世間に迷惑をかけている』と言うその一点が、アリソンが眼下に見る怪人の行為に共通して、許せないものであった。
だから、アリソンは背中の翼を広げて、ふわりと空に留まる。
「長い、永久の眠りに夢を見て……泡沫の果てまで微睡むといいのよ」
アリソンが両手を広げて、空でくるくると回る。
開いた掌から白い花弁が零れ出して、はらはらと落ちていく。それは神の贈り物とも称される甘く香る白い花。
『な、なんだこれは?』
『桜――ではな……い?』
見慣れた桜とは違う花びらに、怪人達もすぐに気づくが――気づいた時には、全員が一様に、耐え難い眠気に襲われていた。
午睡に誘う茉莉花香――ロングアフタヌーン・ジャスミンノート。
甘美な香りを放つ茉莉花の花が、アリソンの手から白い雨と降り注ぐ。
「そのまま、しばらく眠っていなさい」
空でアリソンが呟いた言葉通り、一人、また一人と、怪人達がその香りの持つ力に負けて眠りに落ちていった。
「―――ええ、ええ。悪いことはいけないことよ。積極的に他者を害するのは、どう言い繕っても良くありません」
睡魔に負けて崩れ落ちていく怪人達を見下ろし、アリソンは空で呟く。
もしも叶うなら――庭で草花に囲まれて、のんびり日向ぼっこして。そんな風に穏やかに暮らしたいと言う願いが、アリソンの中にあった。
そして。
そんな暮らしが待っていたかもしれない女性から、それが奪われようとしている。
新たな『家族』を得ようとする機会を、奪われようとしている。
それはアリソンが到底看過出来ない『悪いこと』であった。
故にアリソンは、金に目が眩んだ怪人達に、はらはらと空から白い花を降らせ問答無用で眠らせていく。
それでもアリソンは、使う力を選んでいた。
必要以上に傷つける事無く、敵を無力化させる力。何故それを使う事を選んだのかと問われれば、アリソンはこう答えただろう。
――私は暴力は好きではありませんから。
猟兵が言えた台詞では無いのかもしれない。
それでも、それがアリソンの本音である。
さて。眠らせてしまった怪人からは、当然起こさないと話は聞けない。
アリソンは黒幕の行方の情報を直接得ることはなかったが――その代わり、多くの怪人達の行動を止める事に成功していた。
大成功
🔵🔵🔵
ルトルファス・ルーテルガイト
(アドリブ連携絡み歓迎)
「…金紛いの欲望で生まれたオブリビオン…いや、影朧。
…どうせ考えてる事も碌なものでもない。
…そしてそれに動いてる怪人共も…。」
(シチュ)
『肉を解体したい…!』と包丁を振るう自称・解体王と
死神気取りの自称・殺人鬼+数十は下らぬ配下に挟み撃ちにされる
線も細い青年に『肉が無さそう…。』
『斬りがいが無いが仕方ない…。』と言いながら
迫る怪人の魔の刃。
…しかし、死線を生きる人間の差を怪人共に思い知らせる為
怪人の配下共々(殺さずに)全員斬り伏せ。
血まみれ(朱色の外套がそう見えただけだが)の儘で
「…失せろ、殺す度胸も無い人間が邪魔するな。」と【恐怖を与えて】
戦意を全て奪い去る…。
●死線を生きる人間として
『肉を解体ィ! 解体ィ! 解体ィ! 解体ィィィッ!』
夜のサクラミラージュの路地裏に響く、場違いな声。
「……」
黒いゴム製の前掛けをした大柄な男が振り下ろす武骨な肉切り包丁を、ルトルファス・ルーテルガイト(ブレード・オブ・スピリティア・f03888)は漆黒の剣で受け止める。
『解体王の兄貴に続けぇ!』
『解体!』『解体!』
解体王――前掛けの大男をそう呼んだ、その舎弟と言った様子の覆面軍団が、背後からルトルファスに切りかかった。
「――遅い」
だが、ルトルファスは(自称)解体王の腹を蹴って間合いを離すと、『守護者の大剣』を肩に担ぐ様に構え、ふっと息を吸い込む。
『『『ぐぁぁっ
!?』』』
ルトルファスが反転しながら大きく振るった黒く鈍く輝く刃の一薙ぎで、舎弟たちの持つ解体王に比べれば小ぶりな刃を悉く弾いて、押し戻してみせた。
『くっ……こいつ、肉が無いのに強い!』
『斬りがいが無さそうなのに……』
ルトルファスの重たい剣戟に、舎弟達が戸惑いの声を上げる。
『怯むなァ!』
そこに響く、解体王の声。
『俺は怪人解体王! お前らはその舎弟! 肉を解体しろ! 骨を解た――』
「無理だ」
発破をかける解体王の声を、ルトルファスが短い一言で遮る。
『――何だと?』
「お前達には無理だと言った。血の臭い一つさせずに解体王だと? 笑わせるな」
笑みはおろか眉一つ動かさず、ルトルファスは淡々と告げる。
『確かに貴様の言う通り。この肉切り包丁、成金様が都合してくれたもの。つまり、貴様が解体第一号だ!』
解体王が肉切り包丁を掲げた腕に、これまで以上に力を籠める。
『やっちまえ、兄貴ィ!』
『そんな細腕で、兄貴の本気を止められるかよ!』
舎弟達からも上がる声。
実際、解体王の大柄な身体に比べれば、ルトルファスは相当細身であった。特に腕の太さなどは、二回りの差では効かないかもしれない。
「……風霊よ……」
されど、ルトルファスが師から教わった剣は力のみで振るうものに非ず。
「その息吹を剣に宿し、悪鬼魔獣の牙角を絶つ旋風となれ!」
振るうは精霊の剣。
風刃の一裂き――エアリアルクリーバー。
風霊の加護を纏った刃が、振り下ろされる武骨な肉切り包丁を迎え打つ。
瞬間、風が逆巻いた。
(「金紛いの欲望で生まれたオブリビオン……いや、影朧か。そしてその金で動いてる怪人共。どちらも、どうせ碌な事を考えてはいまいが……殺すまでもない」)
風に長い黒髪をなびかせながら、ルトルファスは胸中で呟く。
風が治まれば、カランカランと小さな鉄の塊が幾つも落ちた。それらは風刃に切り裂かれた、肉切り包丁だったもの。
鉄すら断つ鎌鼬の剣。ルトルファスが本気で振るっていたならば、こうなっていたのは解体王だったろう。
『な……』
「……失せろ、殺す度胸も無い人間が邪魔するな」
呆然とする解体王を冷たく見やり、ルトルファスが淡々と告げる。
夜の暗さも相まって、ルトルファスの纏う外套の朱色は、解体王達の目にはまるで血を浴びたように見えていて――。
『お、お見それしました、先生ッ
!!!!』
「――は?」
やおらがばっと土下座した元・解体王にルトルファスが目を丸くする。
『あ、兄貴が先生と……つまり、大先生!』
『大先生!』『大先生!』
「いや、待て、お前達――」
さらに舎弟達にまで土下座され、さすがにルトルファスも困惑する。
『そう言えば、成金の旦那に車を満タンにしとけと言われましたね』
その分、素直になってくれたのだけれど。
大成功
🔵🔵🔵
空目・キサラ
お小夜君(f18236)と
まさか攫われたのが小夜という名前の人なんてね
…え、お小夜は嫌?
ならナイチンゲール君とでも呼んだ方がいいかい?
…なぁんて、お小夜君を揶揄うのは此処迄にしといて。現状を把握しようか
奴らは陽動目的で暴れているのだ、解った上でつられてやればいい
ほうほう怪盗メイプルハニイだって?
探偵には良い相手じゃ無いか
よし。お小夜君、動きを止めるのは任せた
なんかムキムキオネェみたいだし
肉体労働は助手の務めだ
後は僕に任せてくれ給えよ
【そして鴉は啄み喰らう】で鴉を呼ぼう
君、何か本来の目的を隠す為に目立つようなことしてたんだろう?
例えば、何かを別の場所に運ぶためとか。何か知らないないかい?
小夜啼・ルイ
キサ(f22432)と
黙ってろお小夜呼びするんじゃねぇ!!少し気にしてんだぞ!!
ナイチンゲールはもっとやめろ!!
つか、何だ此処奇人変人コンテスト会場か。そういう奴らばっかりだ
はぁ?!いつからオレがキサの助手になったんだよ!
けど沈静はさせなきゃいけないのは分かってる
ちとムカつくが怪盗メイプルハニイとか自称してる怪盗を追いかける
愛の逃避行とかやめろ。やめやがれ
ぶっちゃけ凍らせたいが、影朧じゃ無いなら避けるべきか
しゃーない。周囲や足場を【Congelatio】で凍らせる
で、張った霜で怪盗をすっ転ばせる
その後はキサに任せる。もう関わりたくねー…
……キサのそれ(鴉)、恐喝って言うんじゃねーのか…?
●本当に偶然と言いますか、適当に打ち込んで変換した結果なんすよ
「……」
「……」
どちらも無言ながら、並んだ二人の表情は対照的だった。
空目・キサラ(時雨夜想・f22432)は愉しそうに。小夜啼・ルイ(xeno・f18236)は憮然として。
「――お小夜」
「お小夜呼びするんじゃねぇ!!」
キサラがぽつりと呟いた一言に、ルイが食って掛かる。
「お小夜は嫌かい? なら、ナイチンゲール君とでも呼んだ方がいいかい?」
「ナイチンゲールはもっとやめろ!!」
くつくつ笑って告げるキサラに、ルイが眉間を寄せて睨みつける。
なんだってルイがこんなにキサラに弄られているのかと言えば――今回の事件と、ルイの苗字にあった。
「まさか攫われたのが小夜という名前の人なんてね」
そう。誘拐にあったのは、小夜と言う女性。
そしてその二文字は――小夜啼と言う、ルイの苗字にばっちり入っている。
まあ、それだけではあるのだが。
「黙ってろ!! 少し気にしてんだぞ!!」
「はいはい。お小夜君を揶揄うのは此処迄にしといて。現状を把握しようか」
「だからお小夜呼ぶんじゃねえ!」
これは、あれであろう。ルイがいちいち反応するから、キサラが面白がる。ルイが受け流せればまた違うのだろうが――性格はしょうがない。
「……まあいい。この奇人変人コンテスト状態は、さっさと沈静させようぜ」
この騒ぎを納めなければいけない。
それを思い出し、ルイは幾らか冷静さを取り戻す。
まあ、そっちはそっちで頭の痛くなりそうな連中が多いのだが。
「奇人変人コンテストかい。うまい事言うね」
「実際、そういう奴らばっかりじゃねえか。で、どっち行く?」
言い回しに感心したようにキサラに、ルイは行き先を尋ねる。
「ふむ。そうだね……手薄なのはあっちかな」
問われたキサラは、他の猟兵の向かった方向、聞こえてくる騒音から、手薄な層を判断して指で示し――二人はその方向へ、駆け出した。
『とうっ!』
「いたぞ!」「こっちだー!」
『遅い遅い!』
警邏の警笛が響く中、夜空を舞うメイド服。
正確には、メイド服を着た何者か――それが、騒ぎの渦中に辿り着いたキサラとルイを待っていた光景だった。
さらに正確に言うならば、メイド服は舞うと言っても、そこに優雅さはない。
『ふんっ!』
逞しい脚で屋根をへこませるほど力強く跳ぶと、ズンッと膝を沈めて重量級の身体でたたらを踏まずに着地する。
そこにあるのはただただ、力強さのみ。
「見なよ、お小夜君。ムキムキオネェがメイド服で空飛んでる」
「どうしてこうなった……」
これまた愉しそうにムキムキオネェな怪人を指さすキサラの隣で、ルイが思わず顔覆うという対照的な反応である。
『遅い遅い。そんなんじゃ、この怪盗メイプルハニィ――捕まるものか!』
いい気になって警邏隊を挑発している怪人は、怪盗だったらしい。
「ほほう。怪盗メイプルハニイか。探偵には良い相手だけど……」
怪盗の名乗りを聞いたキサラは、訝しみながら怪盗に近づいていく。
「なぁ、そこの怪盗君」
『……誰かな?』
「なに。通りすがりの猟奇探偵さ。それよりも君。一体、どの辺がメイプルなんだね? その衣装に楓のデザインなんてなさそうだが」
キサラの指摘した通り、メイプルハニイの服装はメイド服だ。身体のサイズに合わせた調整は当然しているのだろうが、楓の要素は見当たらない。
『ふっ……メイプルで楓だと思った?』
ちっちっと立てた指を左右に揺らして、メイプルハニイはニヤリと笑みを浮かべる。
『メイド服の下に持て余した愛にプルプル震える筋肉を隠した怪盗――略して怪盗メイプルハニイ!』
「ほとんど略せてねぇ! 無理やり略するくらいなら名前変えろ!!!」
すっげえドヤ顔で名前の意味を告げてきたメイプルハニイに、ルイが溜まらず声を張り上げていた。
「よし。お小夜君、動きを止めるのは任せた。肉体労働は助手の務めだ」
「はぁ?! いつからオレがキサの助手になったんだよ!」
スススッとメイプルハニイから距離を取りつつ助手扱いで押し付けてくるキサラにも、ルイのキレのいいツッコミが飛ぶ。
『貴方達も、ワタシの愛の逃避行の邪魔をするのね』
「愛の逃避行とかやめろ。やめやがれ」
ムキっと腕に力を込めるメイプルハニイの言葉に、ルイが再び声を上げる。
あっちにツッコミ、こっちにもツッコミ。気が休まらないったらありゃしない。ルイの中で、ふつふつと冷たい炎が燃え上がる。
『愛の逃避行の障害は、この愛のパワーでぶっ潰す!』
「黙れ。凍ってろ」
メイプルハニイが引っこ抜いた街路樹が――凍って砕け散った。
『――え?』
「ぶっちゃけ凍らせたいが、影朧じゃ無いんだよな。加減はしてやる」
ルイが無造作に腕を掲げて広げた掌を向ければ、呆然とするメイプルハニイの足元が一瞬で霜に覆われる。
Congelatio――冷たいと感じる感覚すら凍らせる事もできる氷の業。
これでも、ルイの本気には程遠い。
『え? あらららら?』
だが、担いでいた物を粉微塵に破壊され、突然の足元の変化。メイプルハニイが溜まらず体勢を崩せば、足元を氷に取られてすっ転ぶ。
「上出来だ。後は僕に任せてくれ給えよ」
「任せた。もう関わりたくねー……」
げんなりとしたルイと入れ替わりに、キサラが転んだメイプルハニイに歩み寄る。
その手には、キサラ自身の書いた書物の一つが乗っていた。
「かつて生きていたモノは、今や只の肉塊と成りて。屍肉喰らいの鴉が、其の肉を啄んでいた」
その中の一節をキサラが朗々と告げれば、書物のページが黒い光を放ち出す。
『クワァッ』『クワァァツ』
鴉の声が聞こえる。黒い羽根が舞い上がる。
キサラの書物の中から現れた啄み喰らう鴉が数羽飛び出すと、上空に上がってぐるりと一周してから、転ばされたメイプルハニイに殺到した。
――クワッ、クワッ!
『な、なにを――あ、やめ。突っつくな』
群がった鴉達が、メイプルハニイのムキムキボディを突き出す。
「君、何か本来の目的を隠す為に目立つようなことしてたんだろう?」
鴉を喚んだ書物をパタンッと片手で閉じて、キサラはメイプルハニイに問いかける。
「例えば、何かを別の場所に運ぶためとか。何か知らないないかい?」
『こ、答えるとでも――』
問い詰めるキサラに、メイプルハニイは鴉を耐えながら返す。
「存外、義理堅いタイプかね? ああ、言い忘れていたけれど、その鴉――僕が君の答えに満足するまで、消えないからね?」
そんなメイプルハニイに、キサラは笑顔で告げる。
「……キサのそれ、恐喝って言うんじゃねーのか……?」
「せめて尋問と言ってくれんかね?」
そして、数分後――。
『あの攫った女給ね。成金が生前、いくら金を積んでもモノにできなかった女に良く似ているんだって』
身体中に嘴で突かれた跡が残ったメイプルハニイは、キサラとルイに『動機』に繋がりそうな情報を齎していた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
灯璃・ファルシュピーゲル
【SIRD】一員で参加
誘拐にテロ支援とは…碌な資産運用じゃないですね
仲間と情報共有しつつ自称殺人鬼の対応へ
得物の大きさ・死神気取りな点から
街灯が少なく闇に紛れやすい
それでいて人通りがある道を狙うと推察
事前に治安機関に聞き込み
該当地域を(情報収集)
情報のもと予想地点を割り出し
UC:オーバウォッチで監視しつつ
見渡せる高所に陣取り狙撃準備
同時に指定UCで狼達を召喚
予想地域から逃走に利用できそうな
暗所・茂みのある方に隠れさせる
敵を視認次第。牽制攻撃(スナイパー・暗視)で市民から引き離しつつ
狼の居る方に逃走するよう仕向け。狼達に襲わせ制圧する
捕縛後は成金の行先や接触した人間が居ないか聴取する
アドリブ歓迎
ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動
陽動である以上、如何にして短時間で鎮圧できるかが重要ですね。
他のSIRDメンバーと無線で連絡を取りつつ状況を常に把握。
私は、怪人儀式とやらの鎮圧を行います。
悪魔崇拝と称しているそうですが・・・儀式を行って召喚でもするのでしょうか。はっきり言って、私からみたら子供の遊戯ですね。
(UCの黄衣の王を召喚し)召喚というのは・・・こうやって行うものです。
そのまま怪人(お任せ)を仕留める前に、小夜さんを誘拐した場所等、洗いざらい白状して貰います。もし白状すれば、命は助けましょう。
情報を引き出せたら、後は黄衣の王に始末を任せます。
命を助ける?ああ、それは嘘です。
※アドリブ歓迎
寺内・美月
SIRD共同参加
アドリブ・連携歓迎
局長以下SIRD全局員と連絡しつつ行動
・自称発明家と対峙。
・UC〖闘戦覚醒〗で上空待機。目立つ絡繰りロボを見つけたら急降下、UC〖剣霊覚醒〗(繊月・司霊の両刀)にて両断し破壊した後、発明家を拘束し締め上げる。
・戦闘終了後、発明家を尋問して被害者の誘拐経路や陽動を指定された、もしくは指定されていない地域等を聞き出す。
・尋問終了後、耳元で「此方に『月のノルマと有効性の証明』さえ達成できれば自由に研究できる施設がありますが…来ますよね?」と囁き発明家を(強制)勧誘する(周りがドン引く怖い笑顔で)。
・処分に困った発明家は全部こちらで(強制)勧誘。
霧ヶ峰・星嵐
【SIRD】で参加
帝都の守護者の一員として、帝都を騒がす人たちは放っておけません!
SIRDの仲間と連絡を取り合って怪人を追います
こちら星嵐、カフェに侵入しようとしていた不審人物を追っています!
服装は全身真っ黒で、そこはかとなくコーヒーの香りがします! 何か情報はありますか!?
……黒珈琲以外絶許怪人? カフェでミルクや砂糖を盗むのが主な犯行……ただの変な人ですね!
桜幻朧・七変化! 誘拐には関係なくとも、騒ぎを収めるためとっちめます!
初期技能:ダッシュのビキニアーマーに早着替え、逃げる怪人に追いつき怪力で取り押さえます
怪人を捕まえました。手が足りないところがあれば向かいます!
※アドリブ歓迎
ハヤト・ノーフィアライツ
【SIRD】の面子に連絡は入れつつ適当に。
…さぁて、とんだお祭り騒ぎだな。
こういう時は、こいつで行くか。
てなわけで指定UCを使用。
54体中14体除いて十体合体させ、【戦闘知識】を生かして指示を出し、
連携して専ら絡繰ロボの対処に当たらせる。
…捕縛はアレだが、デカブツ殴り倒す分には問題ないだろう。
別にドリルで穴開けたりミサイルで吹き飛ばしても構わんし。
残り14中10は市民の避難や【救助活動】に当たらせる。
最後の4は飛行系を選抜、ミニビークル形態のまま俺に同伴。
宇宙バイクも変形させ、【空中浮遊】し【視力、暗視、失せ物探し、追跡】で上空から周辺を【情報収集】。
わかったことは逐一周囲の味方に伝達する。
メンカル・プルモーサ
【SIRD】で参加。
陽動で戦力が低いなら分散行動だね……連絡は無線で…
…騒ぎを起こしている手頃な怪人(当社比)を術式でしばきにいってこよう…
…え?プラズマ怪人?
我が独自の研究によりあらゆる怪現象はプラズマによって解明できる…?
…絶対プラズマと違う何かだと思うんだけど…まあいいやしばこう
適当に術式とかでボコったら…コミュ力や言いくるめを駆使して情報収集……
金に雇われたと言うならそれ以上の金塊を出して買収してしまおう…
情報が本当なら上乗せも考える(考えるだけ)と…まあ金欲しさの嘘には気をつけつつ…
…取り合えず、最初に集められた場所と本人が気がついた事があるかどうか、だね…
桜小路・ゆすら
「WIZ」【SIRD】のメンバーと行動
初めてのサクラミラージュ……とりあえず観光は後回し、お仕事しないとね
スマホもあるし、仲間とは連絡取れるようにしながら怪人儀式の阻止を目的に動くよ
【コミュ力】【情報収集】を活用して街の人から言動のおかしい悪魔崇拝者的な人を見かけてないか聞き込み
それらしい人物に目星付けたら【影の追跡者】を召喚して【追跡】させて儀式の拠点を見つけよう
現場を見つけたらぱぱっと制圧
【クイックドロウ】【2回攻撃】で射撃をメインに、近づかれたら【念動力】による電撃で応戦
死なない程度に抑えて小夜さんの情報を聞き出さないと。電撃で脅そっか
あ、聞けた後の対応は仲間にお任せしちゃうね?
太刀風・橘花
【SIRD】の仲間と無線で連絡を取り合って行動だ
私は大通りで機械人形を操る不逞の輩の鎮圧に出動するぞ
相手は天才発明家を自称し、自身の偉大さを知らしめるために機械人形を通りで暴れさせているようだが……何が鉄人怪人か、憲兵隊として治安紊乱行為は許さんぞ!
【歩兵の本領】で出動させた妖狐の歩兵隊を指揮(『団体行動』『戦闘知識』)
兵を通りに展開させ、徹甲弾装填の歩兵銃で暴れる機械人形を狙い撃たせる(『スナイパー』『制圧射撃』)
徹甲弾の集中射撃で機械人形を蜂の巣にして撃破したならば、鉄人怪人とやらを捕えて尋問だ(『情報収集』)
そこの発明品のように穴だらけになりたくなければ、知っていることをすべて話すんだな
●SIRDのブリーフィング
怪人大発生。あるいは秩序無きパレェド。
そんな状況の中、桜舞う夜の街の一角に、SIRD――特務情報調査局に属する猟兵8名が一堂に会していた。
「これが陽動である以上、如何にして短時間で鎮圧できるかが重要です」
「陽動なら戦力も低いだろうし、分散行動だね」
ネリッサ・ハーディ(クローク・アンド・ダガー・f03206)の言葉に、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)がこくんと頷く。
多くの猟兵は思い思いに怪人を探し街へ繰り出していたが、それは彼らが少数で動いていたからだ。
SIRDの彼らくらいの人数で事に当たるのならば、情報の擦り合わせは重要だ。
「こちらが、今現在も無力化の情報がない怪人のリストです」
灯璃・ファルシュピーゲル(Jagd hund der bund・f02585)の『JTRS-HMS』の軍用PDA端末から、当地の治安機関から聞き出した怪人のリストを全員に送る。
「あのー……ただの変な人にしか思えないのもいるんですけど!?」
「え? うわ……これ絶対パチモンとしか思えない……」
届いたリストの中には、霧ヶ峰・星嵐(桜幻朧・七変化・f22593)が目を丸くしたり、メンカルが眉間に皺を寄せたりする様な反応を取らせる奇人の類も、載っていた。
「これは……情報は確かなのですか?」
リストに一通り目を通した寺内・美月(霊将統べし黒衣の帥・f02790)も、そう尋ねざるを得なかった。
「あちらもこの事態に混乱している事と、資金を得て今回初めて活動しているとみられる怪人がいるとの事で、情報の確度は決して高いとは言えないでしょう。ですが『嘘はない』のは保証できます」
(「誘拐の陽動にテロ支援とは……碌な資産運用じゃないですね」)
胸中で呟きながら灯璃が告げれば、美月も納得したのか一つ頷き返す。
「むう。こんなに怪人が出ているのか。憲兵隊もこんな事態は、流石に寝耳に水であろうからな……許し難い!」
自身も憲兵隊の将校でもある太刀風・橘花(軍人狐・f23328)は、当地機関を慮りながらも、ガンッと軍刀の鞘を打ち鳴らして怪人達に対する怒りも露わにする。
「こいつぁ、確かにスクランブルだ。とんだお祭り騒ぎだな」
そんな橘花の様子を横目に見ながら、ハヤト・ノーフィアライツ(Knight Falcon・f02564)は口元に小さな笑みを浮かべていた。
「……とりあえず観光は後回しね。お仕事しないと」
桜小路・ゆすら(桜色エレクトロ・f20895)は小さく吐いた溜息で、初めてのサクラミラージュに少し躍りかけていた心を抑え込む。
意気、士気の統一。
情報の擦り合わせ以外に、一同に会するに適する理由をもう一つ挙げるならば、この場合はそれになるだろう。
統一と言っても、同じレベルに押し並べる必要はない。
だが、橘花が露わにしたような感情は、時に伝播する。
「では、行動開始です。何かあれば、随時無線で状況連絡を」
止めるべき相手は見定めた皆の様子に、ネリッサが口を開く。
SIRD――Specialservice Information Research Department。出動。
●数自慢の発明――橘花
ガシャーン! ガシャーンッ!
昼間は人々が行き交い、道端にはカフェーの屋外席も並んで大通りの真ん中に、喧しく耳障りな金属音が鳴り響いている。
音の正体は、鈍色の機械人形の群れだった。
ガシャーン! ガシャーンッ!
機械人形達の鉄の手足が、その進路にある植え込みやテーブル、街灯など行く手にあるものを構わず破壊していく。
『フフフフハハハハハッ! 見ろ、この寸分狂わぬ大行進を!』
その音に負けじと哄笑を上げる男が一人。
油で薄汚れたツナギの上の顔は――何故か溶接マスクで覆い隠されている。
『これほどの数、この鉄人怪人でなければ作れまい!』
「――何が鉄人怪人か!!!」
鉄人怪人を自称した勝ち誇る声をかき消すように、響く怒号。
いつの間にか、橘花が機械人形の群れの前に立っていた。余程急いで駆けつけたのか、その肩は大きく上下している。
「憲兵隊として治安紊乱行為は許さん!」
『ぬぅ。やはり見つかったか。だが、この鉄人怪人の偉大さを示すために、この機械人形大行進、こんなところで止めてなるものか! 行け、我が機械人形!』
止める。その意思を露わにした橘花に怯まず、鉄人怪人は機械人形の行進速度を上げてみせた。
『たった一人でこの数を止められるものか。やはり私が発明怪人最強だ!』
「歩兵、前へ!」
数には数。機械人形の数を誇る鉄人怪人の目の前で、橘花の周りに武装した妖狐の兵士36人が現れた。
「徹甲弾装填! 歩兵銃、構え!」
橘花の指示で、妖狐兵達が手にした銃に弾倉を取り付け、初弾を装填。銃把を肩に当てて構えると、敵集団に銃口をピタリと向ける。
「相手は機械人形だ。容赦なく蜂の巣にしてやれ! ――射ェ!」
最後の指示を橘花が声高に告げれば、三十六の銃口が一斉に火を噴いた。弾頭を強化された弾丸が、機械人形の身体を軽々と撃ち砕いた。
『あぁぁぁぁ!? 私の機械人形がっ!?』
溶接マスクを抱える鉄人怪人の前で、一体、また一体と、機械人形が次々とバラバラになって崩れ落ちていく。
――動く機械人形がいなくなるまで、あっという間だった。
「……なんだ? もう終わりか?」
当然あるだろうと構えていた反撃が一切なく、橘花は拍子抜けしたような気分を覚えて内心で首を傾げる。
『何故だ……何故判った……』
そんな橘花の目の前で、鉄人怪人はわなわなと両手を震わせていた。
『何故判った! 機械人形の数を増やす事に前払いの報酬をすべて使ってしまい、搭載予定だった飛び道具を揃えられていないという弱点がある事を!』
…………。
…………。
とても悔しそうな鉄人怪人の様子に、橘花も妖狐兵達もさすがに押し黙り――。
「歩兵、囲め」
気を取り直した橘花の指示で、妖狐兵が鉄人怪人を取り囲み、銃口を向ける。
「そこの発明品のように穴だらけになりたくなければ、黒幕の成金に関して知っていることをすべて話すんだな」
鉄人怪人は己を取り囲む妖狐兵をぐるりと一瞥してから、橘花を見やり――観念したのか、ゆっくりとその場に膝をつく。
『くくく……やはりやられたか、鉄人怪人!』
そこに、鉄人怪人と違う新たな怪人の声が聞こえた。
●空飛ぶ発明――ハヤト
『数だけ増やせば良いと言うものではない。やはりある程度の、サイズが必要!』
新たに現れた怪人の背後に並んでいるのは、4体の絡繰ロボ。
先の機械人形に比べると随分と大きく、更に頭と肩についたプロペラで浮いている。
『この俺、プロペラ怪人のプロペラ絡繰ロボこそ最強! さあ、蹴散らして――』
「見つけたぜ」
屋根の上でほくそ笑む怪人の背中に、ハヤトの声が空から降ってきた。
否。
降ってきたのは声だけではない。
「殴り倒せ!」
プロペラ絡繰ロボに負けないサイズの何処かに『10』と刻印された戦闘用ロボが4体、上空から強襲して、プロペラ絡繰ロボに体当たりで突っ込んでいく。
『何っ!?』
驚き振り仰いだプロペラ怪人の頭上に、飛行形態に変形させた宇宙バイク『グランドファルコン』に跨ったハヤトがいた。
その周囲には、4体のミニビークル形態のロボが随伴している。
「住宅街の上をノロノロ飛びやがって。やっと仕掛けられたぜ」
ミニビークル形態のの4体の索敵機能を駆使して、ハヤトはずっとプロペラ怪人を追っていた。橘花の無線にも、少し前に『任せろ』と短い通信が飛んでいる。
『なん……だと……』
ずっと上を取られたと知って、プロペラ怪人は動揺を隠しきれない。
『くっ。だが、俺はあんな数で金を使い切る輩とは違うぞ! プロペラロボ、ミサイルを撃て!』
プロペラ怪人が声を上げると、プロペラ絡繰ロボがふわりと浮き上がり、その膝をガシャンッと折り畳んだ。
膝の中に内蔵されていた小型ミサイルが、計8発、同時に放たれる。
「足だけか――だったら、充分足りる。ファルコン・フォース!」
だが、その隠し玉にもハヤトが浮かべた笑みを消すことはなかった。温存しておいた戦闘用ロボ10体が飛び出すと、すべての弾頭を抱えて、空へ放り投げた。
ファルコン・フォースでハヤトが喚べる戦闘用ロボの数は、54体。
その内、ハヤトは10体ずつを変形合体させて主戦力とし、4体は随伴と索敵に。そして市民の避難や救助のために、10体を残していたのだ。
「今ので打ち止めか? だったらそのデカブツ、ぶっ壊させて貰うぞ」
ハヤトが宣言すると、10体合わせたロボ4体の腕が、ドリルに変形する。
『ぬぐぐぐ……!』
それぞれドリルに貫かれ、4体のプロペラ絡繰ロボがバラバラに破壊されるのを、プロペラ怪人は歯ぎしりして見ている事しかできなかった。
実際、プロペラ絡繰ロボにあれ以上の武装はなかったのだ。
あの一発が、プロペラで飛べるギリギリの積載量だったのである。
●ビッグな発明――美月
『フハハハハハッ! 鉄人もプロペラもやられたか!』
そこに響き渡る、新たな怪人の声。
『やはり発明家怪人最強は、このビッグメカ怪人の様だな!』
その声は――ハヤトがいる空中よりも高い所から聞こえた。
ズモモモッと立ち上がろうとしている、プロペラ絡繰ロボよりも遥かに巨大なロボの肩の上に怪人は乗っていた。
立ち上がった巨大ロボは、三階建てのアパルトメントよりも高い。
一体、どうやって隠れていたのか。
『フハハハハッ! このビッグメカに声もないか? どうする? そんな銃とロボで戦えると思うか!』
橘花とハヤトを見下ろし、ビッグメカ怪人が猛る。
とは言え、所詮相手はただの怪人とそのロボである。どれだけ大きかろうが、二人とも戦おうと思えば充分戦えた。
ハヤトも橘花も動こうとしなかったのは、その必要がないからだ。
「じゃ、そのデカブツは任せた」
『嗚呼、任された』
呟いたハヤトの通信機から聞こえる、美月の声。
直後――夜空に白と黒の極光の輝きが生まれた。
「南木の護符による第一次封印を解除」
怪人のビッグメカよりも上空で、美月は手にしていた護符を軍服の内へとしまう。その全身を覆う白と黒は、神気と殺気が具現化したもの。
美月の空いた両手が、それぞれ白と黒の柄に伸びる。
スラリと鞘から引き抜かれる双刃。白鞘からは繊月を。黒鞘からは司霊を。
二刀を手に、美月は空中で膝をぐっと曲げ――空を蹴って跳び出した。
空から、地上へと。
滑空する美月の眼下に立つは、ビッグロボの巨体。
『上、だと……ええい、潰してしまえ、ビッグロボ!』
「繊月と司霊、両刀の第一次封印を解除」
ビッグロボ怪人がビッグロボに指示を出すのと、美月が空中で二刀の封印を解いたのはほぼ同時。だが――ビッグロボが大きな腕を上げるよりも、美月の方が速い。
白と黒の光の尾を引いて、二色の斬光が閃く。
十字を描いた美月の二刀の太刀で、巨大ロボは4つに両断されていた。
『おおおおおお、落ちる落ちる落ちるぅっ!?』
「おっと」
崩れるビッグロボの肩の上で慌てふためく怪人を、上昇してきた美月が回収。地上に降ろすと、すでに縛られた怪人とまとめて転がす。
「さて。被害者の誘拐経路や陽動を指定された場所――吐いて貰いましょうか」
縛られた発明家怪人3人に美月が刀を突き付け、橘花とハヤトも睨みをきかす。
『彼の居場所でも知りたかったか? 私が知っているのは機械人形を数体、融通した事くらいだ。用途は知らん。まあ、ダミーに使うんだろう』
『プロペラで飛ぶ車を作れるかと聞かれたので、作ってやったぞ』
『陽動指定は北以外だ』
3人とも、実に素直なものだった。ロボがなければ、本人には何の戦闘能力もない連中のようだ。
「ふむ。まあいいでしょう――ところで」
その答えに一応納得すると、美月は何故か3人の怪人に笑みを向けた。
縛られたままの彼らの前にしゃがみ込み、耳を掴んで引き寄せる。
「此方に『月のノルマと有効性の証明』さえ達成できれば自由に研究できる施設がありますが……来ますよね?」
囁いた言葉こそ選択の余地があるような物言いであったが、美月の声は有無を言わさぬ冷たさがあった。
何よりも、浮かべた笑顔が物語っている。
――来ないなど言わせない、と。
「おーい、すげえ怖い顔してんぞ」
(「見ないふり、見ないふり……」)
美月のその表情は、傍で見ていたハヤトと橘花も思わず引くほどだったとか。
●珈琲香り桜舞う――星嵐
ガシャーンッ!
派手な音を立てて、カフェーの窓が内側から破られる。
「ど、どろぼー!」
店内から響く慌てた声を置き去りに、黒ずくめの人影が走り去っていった。
「こちら星嵐、カフェに侵入した不審人物を発見。追跡します!」
その後ろを、無線で連絡を入れながら星嵐が追いかける。
「対象は、服装は全身真っ黒で、そこはかとなくコーヒーの香りがします! ……本当にいたんですね……黒珈琲以外絶許怪人」
追いかける背中を見ても、星嵐はまだどこか、半信半疑であった。
黒珈琲以外絶許怪人――カフェでミルクや砂糖を盗むのが主な犯行。
星嵐がリストで見た情報通りの、犯行である。
「これで初犯じゃないって……ただの変な人ですね!」
そう。主な犯行が判明していると言う事は、今回デビュゥの怪人ではないと言う事になるわけだ、あれ。
「っていうか、結構足速いですよ!?」
星嵐が無線をしまって追いかける事に専念しても、黒珈琲以外絶許怪人の距離は、一向に縮まっていなかった。
だが――星嵐はまだ、手を残している。
「桜幻朧・七変化!」
走りながら高らかに声を上げた星嵐の姿を、どこからともなく舞い込んだ幻朧桜の花びらが覆い隠す。桜吹雪のカーテンの向こうで、眩い輝きが放たれる。
次の瞬間、幻朧桜から飛び出した星嵐の姿は、必要最低限の部位のみを保護するビキニアーマーに変わっていた。
――桜吹雪が星嵐を覆ってからここまで、わずか0.05秒!
「誘拐には関係なくとも、騒ぎを収めるためとっちめます!」
機動性の為に極限まで軽量化したビキニアーマーの能力で、星嵐の走る速度が一気に上がり、みるみる内に黒珈琲以外絶許怪人との距離が詰まっていく。
「帝都の守護者の一員として、帝都を騒がす怪人は放っておけません!」
『ふぁっ!?』
急に大きく聞こえた星嵐の声に黒珈琲以外絶許怪人が驚き振り向いて、もう1mもない後ろにいるのを見て二度驚く。
『い、いつの間に……こ、こんな時は、食らえシュガー玉!』
慌てながらも黒珈琲以外絶許怪人は懐に手をやると、白い球を足元へと叩きつけた。
ぼふんっと白い粉が舞い上がる。
「わっ!? 何ですか、これ――って甘い? あ、砂糖!」
盗んだ砂糖を使った、黒珈琲以外絶許怪人の抵抗。舞い上がる甘い砂糖が、
だが――それだけだ。猟兵である星嵐が、それだけで止まる筈がない。
『ならば、次はオイル替わりのミルクをくら――』
「させません! 大人しくお縄につくのです!」
もう一つ盗んだもので抵抗を試みようとした黒珈琲以外絶許怪人に向けて、星嵐が『月ノ輪』を振り下ろす。
ジャララララーッ!
刀から鎖分銅へと形を変えた『月ノ輪』が、抵抗を試みようとしていた黒珈琲以外絶許怪人に巻き付いて、その動きを封じて転ばせる。
『な、何だそれは!?』
「怪人、捕まえました!」
驚く怪人に巻き付いた鎖の先は、星嵐がしっかりと握っていた。
●プラズマと黄金――メンカル
固体・液体・気体。
その3つに続く、物質の第4の状態――とされるのが、プラズマである。
それは電離気体とも呼ばれる、電磁場を伴うものであるのだが――。
「……え? あれがプラズマ怪人?」
『プラーズマー!』
メンカルの視線の先には、バカでかい鉄のランドセルみたいなものを背負ったぐるぐる眼鏡の怪人がいる。
その周囲には、パチパチと放電しているような音を立てる、半透明の影が幾つも浮かび上がっていた。
『これぞこのプラズマ怪人がプラズマで呼び出した幽霊であーる!』
見ようによっては、確かに幽霊っぽい。
実際、運悪く居合わせた人々は、ひそひそと怯えた顔で囁き合っている。
「……ただのホログラフでは?」
ただ一人、メンカルだけは、その正体をあっさりと見破っていた。
ホログラフとは、まあ光を使った立体映像である。
プラズマとは、まるで別物だ。
『ななな、なんのことだね? 我が独自の研究により、あらゆる怪現象はプラズマによって解明できるのである!』
メンカルの呟きが聞こえていたようで、プラズマ怪人の声がいきなり震える。
(「……絶対プラズマと違う何かだと思っていたけど……」)
想像以上に、パチモンだった。
「まあいいや。適当にしばこう」
軽くため息をついて、メンカルは『シルバームーン』を構える。
「紡がれし迅雷よ、奔れ、縛れ。汝は――』
『あー、ちょっと待つのだ』
戒めの雷の術式を詠唱しだしたメンカルに、プラズマ怪人が待ったをかける。
『我がプラズマで、あらゆる怪現象は解明できる! 解明できるが――我がプラズマ、攻撃力は皆無なのである!』
無駄に力強く告げる怪人の背中の機械から、カシャッと飛び出す白い旗。
『と言うわけで、降参して投降する』
「……殴っていいかな?」
パタパタ白旗振る怪人に、半眼になったメンカルがにじり寄った。
「それじゃ、黒幕について話して貰うね。アジトに集まったんじゃない?」
『むぅ……』
頭にでっけえたんこぶこさえて正座したプラズマ怪人に、メンカルが尋問を始める。
『まあ喋るなとは言われてないが……ただで喋るのも……』
結局殴られたのが不服なのか、口を尖らすプラズマ怪人。
「ただじゃないならいい?」
その様子を見たメンカルは、プラズマ怪人の前で片手を広げて目を閉じる。
「世に漂う魔素よ、変われ、転じよ。汝は財貨、汝は宝物、魔女が望むは王が呪いし愚かなる黄金」
メンカルの口が詠唱を紡ぐと、広げた掌から黄金の輝きが生じる。
愚者の黄金――ミーダス・タッチ。
その光が収まったとき、メンカルの掌の上には黄金の延べ棒が作られていた。
『!?!?!? こ、これは一体……』
「気になる? 情報が本当なら上乗せも考えるよ」
目の色を変えたプラズマ怪人の前で、メンカルは黄金の延べ棒を左右にゆらゆら。ぺしぺしと横面を叩いて、それが本物であると実感させる。
『あれはきっと昔作られた地下シェルターの類であろう。ここからは推測だが、その類であれば、緊急時の脱出経路もあるのではないか?』
メンカルが無から生み出してみせた黄金は、プラズマ怪人に効果覿面だった。
●刈るものと狩るもの――灯璃
「視覚野侵入完了――――――Ziel adfangen.少し"目"をお借りしますよ」
Overwatch。
周囲の生物の視覚を、暗闇に潜んだ灯璃が乗っとる。
鳥、ネズミ、小さな虫に至るまで。
この辺り一帯は街灯が少なく暗闇が多い地域であったが、周囲50km圏内で、灯璃の死角はほぼなくなったも同然だった。
その状態を維持したまま、灯璃は待つ。
得た情報から推察した通りならば、目を付けた怪人は今の灯璃の視界を通る筈だ。
(「来た――予想通り!」)
乗っ取った視界の中に、大鎌を持ち黒い布で体を覆った死神然とした怪人を見つけ、灯璃はそちらの方に長距離用狙撃銃『Failnaught』の銃口を向ける。
照準スコープの中に、標的の姿を確認。
(「では、狩りを始めますか」)
「Sammeln! Praesentiert das Gewehr!」
狙撃銃をそのままに、灯璃の口が唱えたのは漆黒の霧を呼ぶ言葉。
灯璃が潜んだ鐘楼の真下から、生い茂る森の様に濃密な、あらゆる光を飲み込む漆黒の霧がじわりと立ち昇る。
ターンッ!
その出現を気配で感じると同時に、灯璃の指は引き金を引いていた。
甲高い銃声が響いて、放たれた弾丸が死神を自称する黒ずくめの怪人のすぐ傍の壁に、弾痕を刻む。
『っ!? これは――狙撃!?』
驚く怪人の足元に、二発目。
『くっ……!』
ターンッ!
突然の狙撃に驚きながらも逃げ出した怪人を急き立てる様に、三発目の銃声が響く。
『……上手い狙撃手ではないようだな。安心した』
三度、弾が外れた事に怪人が僅かながら安堵を口にする。だが、それは間違い。
灯璃は撃ち損じたのではない。
わざと外したのだ。
「……仕事の時間だ、狼達≪Kamerad≫!」
充分に追い込んだところで、灯璃が告げれば、漆黒の霧が一気に広がった。
『ぬっ……これは一体?』
そして、霧に呑まれた怪人が、疑問に類する感情を抱く。
『ぬぉぉぉぉっ!?』
次の瞬間、霧の中から現れた狼のような影の群れが、怪人に襲い掛かった。
『く、喰われ
……!?』
「食われたくなければ、情報を吐いて貰います」
慌てる怪人の前に、鐘楼から飛び降りてきた灯璃が告げる。
「黒幕の事。誰か、他に接触していませんか?」
『……駅員を買収する、と言っていた。他は知らん、本当だ!』
絞り出すように告げた怪人の手から、死神のそれに似た大鎌が落ちた。
●桜雷と黄風――ゆすら・ネリッサ
「夜分にすいません。この辺に、日頃から言動のおかしい人とか、悪魔の話ばっかりする人とか、いたりしません? え、心当たりがある?」
濃いピンクの瞳を輝かせ、ゆすらが夜道を行く人に声をかける。
ものおじしない態度とコミュ力、さらに可憐な少女然とした容姿も手伝って、ゆすらは声をかけてもほとんど断られずに情報を集められていた。
まあ――ゆすらを三人称で呼ぶと、彼、になるのだが。
それを30分も続ければ、悪魔崇拝の怪人の拠点を絞るのは難しい事ではなかった。
「情報は集まりましたか?」
「うん、大体ね」
ネリッサの言葉に、ゆすらは自信あり気に頷く。
その影が盛り上がりゆすらに人型を取ると――ゆすらの先を進みだした。
「あっちの方。溜まり場があるんだって」
ゆすらが聞き出した場所は、古い倉庫が並んでいる区域の一角にあった。
ゆすらは区域の端で足を止めると、影の追跡者を先行させていく。
「ん……いるのは4人。銃を持ってる1人は護衛役かな。あとは、フード被った胡散臭いのが3人いるよ」
その3人の様子をもう少し探ろうと影の追跡者を近づけて。
そして――ゆすらは共有した視界で見てしまった。
並んだ幾つもの瓶の中に、臓器に見えるものが浮かんでいるのを。
何やら不気味な赤い塗料で描かかれた魔法陣。その上に並んだ幾つもの瓶の中に、臓器に見えるものが浮かんでいるのを。
「うわ……」
「どうやら、碌な輩ではないようですね」
ゆすらが漏らした言葉と、しかめた表情で、ネリッサも中の様子を何となく察する。
「一人は僕がやる。メインっぽい三人は、後のことも含めてお任せしちゃっていい?」
「構いませんよ。ここまで、任せきりでしたしね」
ゆすらの提案に、ネリッサがこともなげに頷く。
ネリッサとて情報探れないことはなかっただろう。だが、人に警戒を抱かせにくいと言う点で、聞き込みはゆすらの方が向いていた。
そしてこれから踏み込む場所は――ネリッサの方がおそらく向いている。
適材適所、と言うところだ。
そして、二人は儀式真っ最中の溜まり場へ飛び込んだ。
『侵入しゃ――』
「おっと!」
気づいた護衛役が動くよりも早く、ゆすらのぶかぶかのパーカーの袖から小さな銃が飛び出す。ゆすらに言わせれば「可愛い」それが放った弾丸が、敵の銃を弾き飛ばす。
「バリバリっと痺れちゃえ!」
さらに、ゆすらは掌から桜色の電撃を放ち、銃を弾いた相手を昏倒させた。
「なんですか――これは」
そしてネリッサは倒れた男を踏み越え、泰然と進んでいく。
幾つも焚かれたろうそく。
無造作に並べられた髑髏。
臓器が浮かんだ幾つもの瓶。
どれもこれも、如何にもと言った雰囲気があるし、魔術的な意味もなくはない。
だが――高名な魔術師を祖先に持つが故か、各種魔術知識に長けているネリッサの目から見れば、どれもこれも、見当違いの児戯もいい所だった。
「悪魔崇拝と称して儀式を行っていると言う話でしたが、まるで子供の遊戯ですね。こんなもので、何を召喚するつもりですか」
『なんだと!?』
『我らを愚弄するか!』
冷淡に告げるネリッサに、悪魔崇拝者たちが気色ばむ。
「召喚というのは……こうやって行うものです」
そんな反応を意に介さず、ネリッサは告げた言葉に続けて詠唱を口にする。
「The Unspeakable One,him Who is not to be Named」
風が吹く。
並んだ倉庫に阻まれ風がほとんど吹かない筈の場所で。
風はネリッサの金髪を揺らし、後ろで見守るゆすらの波打つ髪も揺らして。
ザァッ――!
一際強く風が吹き荒れて、すぐに収まる。そして、ネリッサの背後にボロボロの黄衣をまとった魔王が召喚されていた。
『な、なんだそれは……』
『そんなもの、我らの儀式で――』
悪魔崇拝者たちの魔法陣が輝き、何かが現れようとする。だが、それが形を持つ前に、黄衣の下から伸びた禍々しい触手が絡みついて、あっさりと握りつぶした。
『なっ!?』
『こ、こっちに来るっ!?』
そのまま自分たちへ伸びてくる無数の禍々しき触手に、悪魔崇拝者たちが流石に怯えた声を上げる。
「命が惜しければ、知っている限りを、洗いざらい白状して貰いましょう。白状すれば、命は助けましょう」
『白状って言っても、そんなに聞いてない!』
『夜明けまで街を騒がせろって言われてるだけだ!』
『そ、そうだ。他の奴が、街の外、北側に車置いとけって言われてたぞ』
命は助ける――本物の悪魔を従え告げたネリッサに、悪魔崇拝者達は口々に覚えている限りの情報を伝え出した。
だが――触手は止まらない。
『お、おい! 伝えた! 伝えたぞ!』
『もうこれで全部だ! 本当だ!』
「そうですか。黄衣の王――貪り尽くしなさい」
そんな三人から視線を外すと、ネリッサは淡々と黄衣の王に告げた。
『ま、待て! 話が違うぞ!』
『命は助けると――』
「ああ、それは嘘です」
慌てふためく悪魔崇拝者に、ネリッサは無情に告げる。
「こちら、ゆすら。儀式潰して戻りまーす」
ゆすらは既に踵を返して、無線機で帰還の報告を入れている。後のことを含めて、お任せ――突入前のネリッサとのやり取りは、此処まで含んでの事だ。
それに、ゆすらも判っていた。
あの臓器に見えたものが、見た通りのものであると。今回の怪人の中でも、性根は特にろくでもない部類の連中だと。
「戻りましょう。他の皆も、情報を得ている頃合いです」
「あれって、そのままでいいの?」
「――貪れば、消えますから」
その場を後にする二人の背後で、貪られる者達の悲鳴が上がっていた。
大成功
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臣上・満澗
これはまた、随分と賑やかな夜だ。
誘拐を優先して放っておけば、より甚大な被害が出ると、成程。
分かっていても優先せざるを得ない、優秀陽動だな。
殺したい、暴れたい。
よく分かるが、見過ごすわけにもいかないだろうよ。
闇に紛れ、怪力を以て暗殺を狙う急襲。
いいや、一撃で仕留められる、とは思ってはいない。
殺しはしない。
だが、夜を荒らすなら、この欲求衝動の慰めに付き合ってもらおうか。
どこか獣じみた戦い方。
怪人も獣らしく戦ったり、逆に狩人じみていたり。
楽しく書ける方向で書いてください。
アドリブご自由に。
●書生と怪僧、或いは獣と獣
(「――随分と、賑やかな夜だ」)
常の夜には感じる事がない気配を肌で感じて、臣上・満澗(月の獣・f22984)は胸中で呟いていた。
街のあちらこちらで、怪人や怪盗が暴れて逃げ回り、猟兵や憲兵の類が捕縛せんと追いかけている。
そうした騒動が、これほどの規模で起こった夜は満澗の記憶にも多くはない。
だからだろうか。常人離れした満澗の巨躯の内側で、血に飢えた獣の様な衝動が強く強く首を擡げているのは。
月の獣に魅入られた一族。
そう伝えられている血が、満澗には色濃く流れていた。
抑えきれない衝動を力に変えて、満澗は潜んでいた夜の闇から飛び出した。
(「静かに、――!」)
衣擦れの音を立てぬ様、右半身をはだけて。金色の体毛を露わにした右腕に、満澗が込めるは『狂月』の名を持つ殺意の衝動。
――月削ギ。
月すら砕けと放たれた拳が、血の臭いを漂わせた黒い僧服を横から叩いた。
『っ!!』
満澗の拳の衝撃が、黒い僧の身体を突き抜け風圧となって後ろの木々を揺らす。
『これはこれは……こんな街中で、獣に出くわそうとはな』
しかしそれほどの衝撃を、怪僧はたたらを踏んでよろけながらも耐えてみせた。
『面白い。この怪人『熊殺し』、道場の夜討ちでは満たされなんだ所だ』
口の端から流れる血を拭う怪僧の手は、その前から赤い雫がポタポタと滴っていた。
「あんたが熊殺しか。道理で、一撃で仕留められなかったわけだ」
その名を、満澗は聞いた覚えがあった。
力に溺れ破門の末に、その力をぶつける先を求め道場破りを繰り返す破戒僧。
「成程……誘拐を優先して放っておけば、より甚大な被害が出るであろう輩もいるか。分かっていても優先せざるを得ない、優秀な陽動だな」
『ほう?』
満澗の零した言葉に、怪僧が片眉を上げる。
『どうする? 見逃すか? そろそろ、成金殿が街を出るかもしれぬぞ』
「いいや。見過ごすわけにもいかないだろうよ」
怪僧の言葉に、満澗は頭を振って拳を固める。
『ならば、殺す気で参れ』
「殺しはしないが、夜を荒らすなら、この欲求衝動の慰めに付き合って貰おうか」
始まる戦いに愉悦の笑みを浮かべた怪僧に、満澗は言い放つ。
果たして――本音はどちらであったのか。
街の為か。己の衝動の為か。
その答えを置き去りに、満澗は地を蹴って跳び出す。静かに抱く嫌悪をこの一時ばかりは忘れて、衝動に突き動かされるように拳を打ち、爪を振るう。
一撃一撃が重たく、空を切った満澗の拳が叩いた石畳が砕け散る。
『ぬはははぁっ! これは良い! 面白いぞ!』
そんな満澗と戦いながら哄笑する怪僧もまた、常人離れしていた。
どこか獣じみた戦いが、月下に続く。
されど。
満澗は猟兵で、怪僧は猟兵でも影朧でもない。満澗の拳は怪僧にとって一撃で痛打となり得るが、その逆はあり得ない。
戦いが長く続けば、消耗が激しくなるのがどちらかは明らかだ。
次第に怪僧は疲れが溜まり、動きが鈍くなる。
「寝ていろ」
満澗はその僧服を強く掴むと、黄金の尾で足を払い、軽く陥没するほどの勢いで怪僧の身体を石畳に叩きつけた。
成功
🔵🔵🔴
城島・冬青
【橙翠】
人攫いの陽動のために大金使って怪人を雇うとかお金を持ってる人は違いますねー(げんなり)
さっさと乗り込んで人質を解放したいところですが手掛かりもないですし怪人を虱潰しにとっ捕まえていきましょう
さぁ来い
宝石泥棒とか絵画泥棒の類い!
…は?煮干しラーメン食い逃げ怪人??
ぇー、格好良くない…
アヤネさんに色々とツッコミしたいところですが後にしておきます
匂いは…ラーメンの美味しい匂いがしますね
怪人もラーメンを食べるんだなぁ
美味しいもの
そりゃ食べるよね(やや現実逃避)
…お仕事終わったらラーメンが食べたいなぁ
夜歩くの高速ダッシュで捕まえれば即終わ…使う前に終わっちゃった
うん、でもラーメンは譲りませんので
アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
ラーメン屋に貼り紙が
これは噂の煮干しラーメン食い逃げ怪人!
有名煮干しラーメン店を食い逃げして食通から指名手配されている
食べてすぐ走るとか健康に悪そうだネ?
ソヨゴはそんなことしちゃダメよ?
まずはコイツを捕まえよう
まずは臭いを嗅いでみて
こちらから煮干しの香りが!
行ってみる
誰かが貼り紙を貼ってる
その変な形の頭は!
本人だネ
自分で宣伝してるとは
あきれている間に逃げられる
近くの煮干しラーメン店に行こう
居た
すごく怪しいのに普通にラーメン食べてるネ
逃げようとしたところを
足を引っ掛けて転ばす
頭の鉢が割れて
終わり?
煮干しラーメン食い逃げ怪人
手強い敵だった
走ったらお腹すいたネ
サクミラピザとか食べたい
●橙翠――ただの食い逃げも怪人ってつけるとそれっぽくなる説
――はぁぁぁぁぁ。
げんなりと肩を落とした城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)が、盛大な溜息を零す。
「ダメだよ、ソヨゴ。溜息は幸せが逃げるっていうネ」
慰めるように肩を叩いて、アヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)が、どうしたの、と俯く冬青を覗き込む。
「えぇとですね。今回の黒幕、人攫いの陽動のために大金使って怪人を雇うとか……お金を持ってる人は違いますねーって」
そうは言うが、冬青は別段お金に困っているわけではないだろう。
それが敵を誘き寄せる為でも、娘とのクリスマスのお出かけで舞い上がっていたあの父親が、溺愛する娘を経済的に困窮させるなどあろう筈がない。
とは言え、羨やましいものは羨ましいものである。
「うん――深く考えない方がいいですね、これ。怪人を虱潰しにとっ捕まえて、さっさと乗り込んで人質を解放しましょう!」
「うんうん。その意気よ。事が解決したら、サクミラピザとか食べたいネ」
ぐっと拳を掲げた冬青に、アヤネが笑顔を見せる。
「いいですね! さぁ来い! 宝石泥棒とか絵画泥棒の類い!」
そして冬青が気合を入れ直し――。
数分後。
何故か、二人の姿はラーメン屋の前にあった。ピザどこ行った。
「何で!? 何でこの流れでラーメン!?」
「でもソヨゴ。残念ながらラーメンはお預けみたいネ」
動揺する冬青に、アヤネが店の扉に貼られた一枚の紙を示した。
――この店の煮干しラーメンは頂いた!
そう妙に達筆な筆字で、そう書かれていた。隅に小さな魚のマークも記されている。
「これは噂の煮干しラーメン食い逃げ怪人の犯罪証明!」
「……は?」
緊迫した面持ちで貼り紙をはがしたアヤネの横で、冬青の目が点になる。
「え? 煮干しラーメン食い逃げ怪人??」
「そう。この辺りの有名煮干しラーメン店を食い逃げし続けている、食通から指名手配されている極悪人ネ」
なんだろう。アヤネは何でそんな怪人の事を知っているんだろう。
っていうか夜にラーメン?
夜食にラーメン美味しいけど、こんな時間に食い逃げ繰り返すのは体に悪そう。
「ぇー、格好良くない……」
とか色々ツッコミたいのを我慢して、冬青は我慢できなかったそれだけ声に出した。
「とにかく、コイツを捕まえよう。煮干しの香りを追っていけば、見つかる筈」
翡翠の瞳をキリッと道に向け、アヤネがその先を指さす。
「匂いですか? うーん……ラーメンの美味しい匂いならしますけど」
目を閉じ、鼻に神経を集中した冬青だが、判ったのはそれだけだ。いきなり煮干しの香りをと言われても、そんなの猫じゃあるまいし。
「いや……こちらから煮干しの香りが!」
だが、アヤネは何故かそれをあっさりとやってのけると、冬青の手を握ってスタスタと歩き出した。まるでラーメン探偵である。
そして――。
軒を連ねるラーメン屋を何軒かスルーした先に、それはいた。
暖簾の上に、ペタペタと紙を貼ろうとしている不審者。
何故不審者か?
「煮干し……なんですかね、あれ」
「あの変な形の頭は、間違いなく本人だネ!」
煮干ししか入っていないラーメン丼を、まるで帽子の様に頭に乗せている者を不審者と呼ばずして、何を不審者と呼べと言うのか。
なお、煮干しに使われるのはカタクチイワシが多いです。
「そっかぁ。怪人もラーメンを食べるんだなぁ……」
「自分で宣伝してるとは……」
冬青が軽く現実逃避に陥り、アヤネは呆れている内に。
『っ!?』
二人に気づいた煮干しラーメン食い逃げ怪人――略して煮干し怪人が、肩をびくっと跳ね上げる。
「いた! 食い逃げだ!」
そこに気づいた店主も姿を現して――。
『……』
次の瞬間、煮干し怪人の姿が消えた。
「な、ななな……」
驚く店主だが、アヤネと冬青の耳には走り去る僅かな足音が聞こえていた。
「アヤネさん。これって――」
「透明化だネ」
顔を見合わせ、頷き合う二人。
どうやら、煮干し怪人はユーベルコヲド使いだったらしい。
そうと判れば、対処のしようはあるというもの。
「大将、この辺で、他に煮干しラーメンの店はどこに?」
「あ、ああ、それなら――」
まだ呆然としていた店主の肩を掴んで揺さぶり正気に戻すと、アヤネは敢えてやや厳しい口調で問いかける。
聞き出した店舗情報は、すぐ近く。煮干し系ラーメン多いな、此処。
「じゃあ、行くよソヨゴ」
「いつでもいいですよ、アヤネさん」
暖簾をかき分け、二人はスパーンッと引き戸を勢い良く開く。
ずずーっ。
煮干し入り丼の被り物をそのままに、ラーメン食べている煮干し怪人がいた。
「居た。すごく怪しいのに普通にラーメン食べてるネ」
「ラーメン、美味しいもの。そりゃ食べますよねー……お仕事終わったらラーメンが食べたいなぁ」
再び呆れるアヤネと、現実逃避する冬青。
『もう追いついてきただと!?』
一方、二人に気づいた煮干し怪人は、慌てていた。
『くっ……まだラーメンを食べ終わっていないのに! 今逃げても食い逃げになるが、完食せずに食い逃げするのは、怪人としての美学に反する!』
「なんですかその美学!?」
「落ち着いて、ソヨゴ。怪人ってそんなもの」
思わずツッコミの声を上げる冬青の肩をそっと叩いて、アヤネが落ち着かせる。
すーはー、深くゆっくり呼吸して。
「――よし。音速で駆け抜けます」
そこに舞い込む黒い風。
夜歩く――黒蘭の花弁を纏い、音速の壁を越えて空すら駆ける事を可能とする業。その発動は、絶対に逃がさないと言う冬青の意思表示。
『かくなる上は――!』
煮干し怪人は意を決して丼を両手でつかむと、丼ごと姿を消した。
透明化の能力は、その者の持ち物も透明化できる。丼も消せるのは、被っているそれでも明らかだった。
だが――透明になるだけだ。そこにあるのは変わらない。物音は立つし、温度だって変わらない。ラーメンの入っている丼からは、透明になっても湯気が昇っていた。
そろり、そろり。忍び足の動きを、ラーメンの湯気が伝えてくれる。
「ソヨゴ――丼、任せるネ」
湯気が暖簾を超えたところで、アヤネはスラリと長い脚を軽く前に出した。
ガッと何かがぶつかる衝撃。
『あーっ!?』
怪人の情けない声が響いて、その手から離れた丼が忽然と現れる。
「っと」
空中で丼がひっくり返るより早く、飛び上がった冬青が空中でキャッチ。
「――って、なんかすごく能力の無駄遣いしてしまった気がするんですけど!?」
ほんの数m浮かんだだけで終わってしまい、冬青は丼を手に降りながら内心頭を抱えたい気分になっていた。
ガシャーンッ!
そこに響く、割れ物の音。
煮干し怪人が頭に被っていた方の丼は、無残に砕け散っていた。
「これで終わりだネ?」
力なく項垂れる煮干し怪人を、アヤネはウロボロスの触手でふん縛る。
「煮干しラーメン食い逃げ怪人――手強い敵だった」
「そう……でしょうか。ほぼ、走ってただけだったような」
縛った煮干し怪人を足蹴に遠い目で夜空を見上げるアヤネに、お店に丼返した冬青がちょっと疲れた様子で軽くツッコミを入れる。
「食べてすぐ走るとか健康に悪そうだネ? ソヨゴはそんなことしちゃダメよ?」
「……し、しませんよ。多分」
料理しながら戦ったことはあったけど――じっと見てくるアヤネから目を逸らしながら、冬青は過去を思い出して胸中で呟いていた。
大成功
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第2章 集団戦
『果実的野菜『すいかぼちゃ』』
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POW : 闇討ち攻撃
技能名「【先制攻撃/2回攻撃/マヒ攻撃/闇に紛れる】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD : ゴールデンすいかぼちゃ
【ゴールデンすいかぼちゃ】に変身し、武器「【三叉槍】」の威力増強と、【蝙蝠の翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
WIZ : 癒し蜘蛛
【癒し蜘蛛】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11
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●怪人パレヱドの先へ
サクラミラージュの夜の街のあちこちに出没した、怪人怪盗奇人変人は、大半が猟兵達によって鎮圧された。
その中で得られた主な情報を、整理しておこう。
●街中の拠点
『あれは地下シェルターの類であろう。緊急時の脱出経路もあるのではないか?』
『陽動指定は北以外だ』
その情報を元にそう言った施設を調べれば、北にある一つが電力が違法に供給されて拠点化していたことが判明した。脱出口は、北に伸びていることも。
●逃走先
『田舎に帰ればどうとでもなる』
『あの野郎なら、自分の故郷の方に戻る算段つけてたぜ』
成金影朧――成上・金蔵の生前の情報は、猟兵が求めればすぐに提示された。
それによると、出身地はこの街から遠く北にある農村だと言う。
さらに、街のすぐ北にある農業用地は、元は金蔵の私有地であったものが、逮捕後に分譲されて街の農地となったものだと判明した。
●逃走手段
『車を使うか、電車を買収するかってな』
『駅員を買収する、と言っていた』
『機械人形を数体、融通した』
『街の外、北側に車置いとけって』
『成金の旦那に車を満タンにしとけと――』
『プロペラで飛ぶ車を作れるかと聞かれたので、作ってやったぞ』
これらの情報を合わせれば――列車か車の2択。
『臨時最終列車が発車します。この列車は全車両貸し切りの為、どなた様もご乗車にはなれません』
――深夜の駅のホームに、意味のないアナウンスが流れる。
如何にも怪しい。だが、怪人騒動が鎮圧され、落ち着きを取り戻した事で、列車内には片方が金ぴかのスーツを着た機械人形ペアが5組乗っているだけだと判明した。
残るは――。
●発見
ダミーの貸切列車が、駅のホームを出発する。
それと同時に、街の北側で二つの明かりが動き出していた。
何とも悪趣味な黄金の車のヘッドライトの明かりである。
『クククッ……貸切と言う派手なダミーと同時に儂自身が女を乗せて車で出る! この完璧な計画、誰も気づく筈がない! 噂の猟兵が来なければなぁ!』
黄金のハンドルを握って成金が呟いたフラグが回収されるまで、ほんの数分。
『バ、バカなぁっ!? もう猟兵に嗅ぎつかれただとぉ!? 役立たずの怪人共め!』
追いついてきた猟兵達にバックミラーや音で気づいて、成金が悔し気に呻く。
『ここは奥の手を切るしかあるまい!』
だが、成金はまだ手を残していた。車内にある黄金の拡声器を掴むと、外に向かってこう叫んだのだ。
『出ろ! すいかぼちゃ!』
――ぼこっ、ぼこっ。
土が盛り上がる。幾つも幾つも、あちこちで。
『ヒャッハーッ
!!!!!!』
飛び出してきたのは、黄色と緑の島縞模様。
――南瓜の皮が固すぎる。
――冬にも西瓜を味わいたい。
そんなニーズに合わせて品種改良の中で出来損ないとして廃棄された末に、影朧化した果実的野菜。予め、埋め込んでいたのだろう。
『次のハロウィンまでお預けかと思っていたぜー!』
『出番をくれた成金様の為だ!』
『ここは俺達、すいかぼちゃの縄張り! ただで通れると思うなよ!』
どうも出番に飢えていたところを金でつられたらしい『すいかぼちゃ』たちが、次々と地中から飛び出しては猟兵達に襲い掛かってきた。
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2章となりました。
判明した黒幕の逃走計画。それを追う猟兵に襲い掛かる、すいかぼちゃ。
今回は、成金を追跡しつつの、すいかぼちゃとの集団戦となります。
なお、追跡については特に難しく考えなくてOKです。
多少距離が離れても、すいかぼちゃを掃討出来れば、追いかけられます。
追跡が影響するのは、3章の戦場が何処になるか、と言う点になります。
なお追跡手段はご自由にどうぞ。
1章で街の混乱を概ね収拾できたので、車でも複葉機でもダルマ自転車でも、レンタル可能です。自前の乗り物、自前の能力でも、勿論OKです。
陸路空路もご自由に。
すいかぼちゃ、飛べますから!(爽)
プレイングは1/23(木)8:30~の受付となります。
1/26(日)までは受付の予定です。
なお、25日(土)と26日(日)のどちらでも送信可能でしたら、失効日の都合、26日に送って頂けると助かります。
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氏家・禄郎
いや、待てよ
君達、金貰ってどうする気なの?
それで米買うの?
それとも、ハロウィンの衣装の資金?
いやいやいや、とりあえず事態に対処しよう
えっと車は拝借した
良いやつだ、ちょっとやそっとじゃ壊れないし、屋根も硝子もある
窓は閉じた
シートベルトはつけた
影朧発見!
良しブレーキ!(アクセル全開)
あ、ごめん『事故』なんだ(アクセルを踏み続ける」
なんか音するし、闇に紛れて何か聞こえるけど、事故だから仕方がない
このままフルアクセルで行くぞ
ところで『団体行動』でみんな行かないか
この後が大変だしね
あ、邪魔(アクセルベタ踏み)
ガーネット・グレイローズ
前回に続き、BD.13に乗って参戦。
鉄道会社を買収して臨時便を出すのはまあいい。それを囮にして車で逃げるのもいいとしよう。
…あのな、なぜわざわざ金ピカに塗装する!? 誰が乗っているか一目瞭然だろ!
いちいち突っ込むのにも疲れた……とにかく今はあのカボチャ影朧を片付けなければ。いくぞ!
「たまこ、サポートを頼むぞ」
メカたまこを車の屋根に座らせ、<暗視>モードで<撮影>させて戦闘の補助に。続いて<念動力>で妖刀アカツキを車の窓から飛ばし、【念動武闘法】で複製。
車を運転しつつそれらを空中で操作し、すいかぼちゃと斬り合いだ。
コピーアカツキは車の防衛、三叉槍の破壊、かぼちゃ本体への攻撃と役割を分担する。
小夜啼・ルイ
キサ(f22432)と
いや、超真面目な顔でそう言われても困んだけど
本当は移動用の足無いからだろ
おい誤魔化すな…って、何だアレ
西瓜なのか南瓜なのか、ワケ分かんねー見た目しやがって。しかも喋るし
はぁ…キサ…お前も食糧認識側の人間だったのか…
アイツら倒さなきゃ先に進めないんだな?
さっきは手加減して消化不良だったが、影朧なら容赦は要らねぇ
【Congelatio】で芯まで凍らせてやる
蜘蛛だって極寒では生きられないだろ
おいキサ、働け
寒いのはわかる。けど梟もふってねぇで働け。あとお小夜って呼ぶな!
梟だけじゃなくてキサも働くんだよ!
あ、どしたよ
ぼーっと突っ立ってると置いてくぞ
(何か呟いていたのは聞こえてない)
空目・キサラ
お小夜君(f18236)と
良いかい
探偵というのは自分の足で追跡するのが常套手段なのだよ?
つまり走る(超真面目)
おや、何やら奇っ怪な…すいかぼちゃ?
さ、降り掛かる火の粉は払わねばならぬ
アレ等は美味しく食べられるのだろうかね?
【量子自殺による証明の欠点】で梟達に突かせてみよう
いやぁ、蜘蛛で僕の不眠が癒されるなら願ったり叶ったりなのだがねぇ…
ん、お小夜君が頑張って氷結させているし、僕の仕事は余りなさそうかな
…え、働け?
ははは、不苦労…じゃなかった
梟達が働いているじゃないか
ま、蜘蛛なり野菜なり。近くに来たらざくりと鋏を突き立てる事くらいはするさ
…何と言うか
未練がましい事だね
…故に円環に取り込まれる、か
●探偵は訝しむ
夜の郊外で、6つの光点が高速で動いていた。
光の源は、三台の自動車。
その内の一つ。氏家・禄郎がハンドルを握っているのは、サクラミラージュの街中でも見かけるタイプの四輪駆動車であった。
屋根も窓硝子もついており、ボディのフレェムやタイヤ周りの丈夫さが売りの一つ。悪天候の街中から郊外の悪路まで対応したモデル。
一言で言えば『ちょっとやそっとじゃ壊れない車』である。
『チクショウ! 硬いぞ、この車!』
『こっちの皮が割れちまう!』
すいかぼちゃがぶつかっても、平気である。尤も衝撃はしっかり受けているので、禄郎が車体の安定を保ってこそ、だが。
『だが、報酬分、は働かないとなー!』
それでもめげずに禄郎の車にぶつかってくる、すいかぼちゃたち。
「いや君達、金貰ってどうする気なの?」
そんなすいかぼちゃ達に、禄郎は窓を少しだけ開けて思わず尋ねていた。
――まさか米でも買うのだろうか。
――それとも、ハロウィンの衣装の資金?
などと訝しんでいる内に、禄郎の車は気づけば前を行く二台のテールランプの赤い光との距離がやや開いてしまっていた。
「――!」
『―――!』
とは言え、まだ二台がほぼ並走していて、赤い髪を風になびかせ、金の拡声器を窓から突き出し、なにやら言い合いをしているのが見える程度。
「ふむ。あの二人は何を話しているのだ?」
その言い合いを聞き取ろうと、禄郎は窓を開くべく開閉ハンドルに手をかけた。
●成金の金ピカ理論
「なぜわざわざ金ピカに塗装する!?」
街中でも走らせていた2ドアクーペの愛車『BD.13』の窓から顔を出して、ガーネット・グレイローズはほぼ真横につけた黄金の車に向かって思わず叫んでいた。
ガーネットが、どうしてもツッコまずにいられなかったのが、その車体である。
「鉄道会社を買収までしたのに、その金ピカじゃ誰が乗っているか一目瞭然だろ!」
ボディはおろか、バンパーやワイパー、タイヤホイールに至るまで金色である。金色じゃないのは窓とタイヤくらいのものだ。
確かに、此処まで金ピカな車なんか他にあるまい。
鉄道会社を買収して臨時便を出すのは、まあいい。悪くない手だろう。それを囮にして車で逃げるのも同じくだ。
だが――本命の車がこれでは、目立ちすぎる。色々台無しである。
『ふん、なんだ。そんなことか』
しかし成金影朧は、ガーネットの疑問を『そんなこと』と一蹴してみせた。
『儂の鼻は金の匂いに敏感でな。お前も上流階級の者だろう? だが――この金ピカが理解できぬ様では、まだまだ若い!』
訝しむガーネットに、成金は運転席の窓から金ピカの拡声器を突き出して――。
『成金が金持ちアピールしないでどうする
!!!!!』
それは力強く言い切った。
『金ならあると! 農民だった頃の自分とは違うのだと! それを全力でアピールしてこそ成金である! 悪趣味? 品の良さなど、生まれついての金持ちの戯言だ!』
「……」
成金の言葉に、ガーネットは思わず絶句していた。
そのあまりの金の亡者っぷりに――ではない。そこもそこで、呆れるものだが。
確かにガーネットは、ここと別の世界の貴族階級の一族の者であり、その中ではまだ若輩である。そして――故に、年寄連中に小娘扱いされる事もあった。
成金は、車の良さとガーネットの声色で当たりをつけたに過ぎない。だが、ガーネットにとっては快く思っていない所を成金が突いたのは事実。
『この娘も、玉の輿とは呼ばれたくない、金など要らぬなどと綺麗事を言っているが、金を手にすれば変わるに決まっておる! そうでなければならない!!!』
「もういい。黙――」
聞いてもいない動機の一端までべらべらと響かせる成金の声に半ば遮られながら、ガーネットは先ほどまでより低い声で呟いて、助手席の朱雀の鞘に手を伸ばす。
――コケーコケーッ!
そこに鶏の声が響いて、直後、『BD.13』がタイヤの軋む音を立てて急停車した。
メカたまこEXに反応したCPUによるオートブレーキだ。
「っ! カボチャ影朧か!」
シートベルトが食い込む衝撃が、ガーネットに冷静さを取り戻させる。
そして――。
そこに突っ込んできた車が、ゴールデンに輝いているすいかぼちゃを吹っ飛ばした。
●はっきり言って車無双
『成金が金持ちアピールしないでどうする
!!!!!』
車窓を開けた禄郎の耳に、拡声器越しのそんな声が聞こえて来た。
『さすがだぜ!』
『金があるから惜しまず出来るゴールデン!』
さらに金の亡者な言葉に賛同しながら、ゴールデンな光の尾を引いてすっ飛んでいくすいかぼちゃ。
「あのゴールデン化は……もしかして金の力なのか?」
思わず車内で一人呟く禄郎の視線の先で、先行していた車が急ブレーキ。その前を、ゴールデン化したすいかぼちゃが、すかっと空振りしていく。
「ふむ……とりあえず事態に対処しよう」
その勢いを見ながら、禄郎は黙ってハンドルを回して窓をしっかり閉めた。
あのすいかぼちゃのスピードは、中々に驚異的だ。そもそも、いかに丈夫な車を選んだとは言え、相手は影朧。その攻撃を、延々と耐えきれる保証もない。
実際、車体は結構へこみが付き出していた。
故に――。
「窓は閉じた。シートベルトはつけた」
安全確認、よーし。
「良しブレーキ!」
しっかりとハンドルを握って、禄郎は思いっきり踏み込んだ。
アクセルを。
メギョッ、ゴシャッ!
『ギャーッ!?』
まずごついバンパーが『すいかぼちゃ』を容赦なく吹っ飛ばし、落ちたところにタイヤが――南無三。
『な、なにしやがるー!?』
「あ、ごめん『事故』なんだ。この車、拝借したものだから不慣れで」
何か聞こえた気がする声にどうせ聞こえないと思いながら、禄郎は車内でいけしゃあしゃあと告げるが、その足はアクセル踏みっぱなしである。
ただの無謀運転?
否。否である。これは【ノーブレーキフルアクセル】――事故を装って乗り物で突進すると言う、立派な業である。禄郎のユーベルコードである。
探偵とは。
「成程。あいつら、皮はそこまで硬くないのか」
車がすいかぼちゃを跳ねて潰す様を見ていたガーネットが、車内で呟く。
南瓜の皮が固すぎる――影朧すいかぼちゃは、そんなニーズにお応えする形で品種改良された末の出来損ない。皮は案外、硬くないようだ。
「たまこ、サポートを頼むぞ」
屋根の上のメカたまこEXに告げて、ガーネットはさっき抜き損ねた刃を、今度こそ『透かし朱雀』から『朱月』を抜き放つ。
「神殺しの力の一端をお見せしよう」
念動武闘法――サイキックアーツ。
ガーネットが念動力で窓から外に放った朱月が、増えた。本体合わせて六十八本の刃を車の周囲に展開し、ガーネットが再び走り出す。
『行かせねー!』
そこに、別のすいかぼちゃが再びゴールデン化して突っ込んできて――。
『ごふっ!?』
自ら朱月にぶっ刺さった。串刺しになったところにガーネットは別の朱月を飛ばして、すいかぼちゃを輪切りにする。
『槍だ! 槍で突っ込めば、刀を防げる筈』
今の結果は刀に正面から突っ込んだせい。そう思いたかった。
しかし、すいかぼちゃは動く果実的野菜とは言え、所詮は野菜か果物かである。手足なんぞないのだ。その槍は、体にぶっ刺さっているだけである。
『串刺しにしてやるぜー!!! ごふっ!?』
カキーンッ!
響いた金属音は、槍と刃がぶつかる音。
すいかぼちゃの槍は、車にすら届く前にガーネットの朱月の一つに止められていた。そこにやっぱり別の朱月が飛んできて、輪切りパート2。
リーチと手数の差は圧倒的。ガーネットには、さらにメカタマコEXによる屋根からの映像も駆使して、視覚を潰している。
ガーネットはすいかぼちゃの串刺しを増やしながら、成金を追っていく。
●足で稼いだ結果
一方、その頃。
『むう……完全に撒いたとは言えんか』
それでも距離が開いたと、成金影朧は金ピカ車の中で安堵の息を吐き――肥えたその体を、ぶるりと震わせた。
『妙だな。夜とは言え、こんなに冷えるとは』
冷気を感じた成金影朧は、何とはなしに外を見て――見てしまった。
『!?!?!?!?!?』
さっき撒いたのとは別の猟兵――しかも車もダルマ自転車にも乗っている様子のない猟兵が、すいかぼちゃと戦っている所を。
『ばばばっ、ばかなっ!? あいつら――猟兵とは化け物か!?』
そして慌ててアクセルを踏み込んだ。
●凍らせて、啄んで
さて。
成金影朧をそんなに驚かせた猟兵は、誰か。
「くくっ……見たかい、お小夜。敵のあの驚いた顔」
一人は面白いおかしそうに肩を震わせる空目・キサラであり。
「んなもん、見てる暇があるように見えるか!」
掌からせっせと絶対零度の冷気を放っている、小夜啼・ルイである。
二人の――特にルイの周りには、真っ白に凍り付いたすいかぼちゃがすでに数体、転がっていた。
『ここから先へは行かせねー!』
それでもまだ、すいかぼちゃ達は土から飛び出し、或いは何処からか飛んでくる。
「さっきの怪人は手加減して消化不良だったが、影朧なら容赦は要らねぇ。芯まで凍らせてやる」
Congelatio――ルイのその氷の業は、本気で放てば絶対零度の域に達する。
品種改良種だろうが、野菜でも果実でも凍り付かずに耐えられる温度ではない。
「くそ、西瓜なのか南瓜なのか、ワケ分かんねー見た目しやがって。しかも喋るし」
「中々に奇っ怪なすいかぼちゃであるな。はて、野菜なのか果物なのか」
それでも怯まず次々出てくるすいかぼちゃに冷気を浴びせながら、うんざりそうに呟くルイと背中合わせで立って、キサラはどこか面白がるような笑みを浮かべていた。
「おいキサ。感心してないで、働け。アイツら倒さなきゃ先に進めなさそうだぞ?」
「……え、働け?」
今のところ一人で戦っていたルイに促され、キサラが意外そうに目を丸くする。
「お小夜君が頑張って氷結させているし、僕の仕事は余りなさそうかな、と」
「お小夜って呼ぶな!」
しれっと告げてきたキサラに、ルイが目を吊り上げて言い返す。
「真面目な話――俺一人でいつまでも捌ききれる保証はねぇぞ」
「確かに、降り掛かる火の粉は払わねばならぬ」
すぐに真顔になったルイに、キサラも大きく頷いた。
だが、次の瞬間には、キサラはその赤い瞳に好奇心を輝かせていた。
「はぁ……」
その様子に、ルイは今度こそ盛大に溜息を零していた。
「キサ……お前も食糧認識側の人間だったのか……」
もしかしておかしいのは自分の方なのか?
いつかの疑問がルイの中で再び首を擡げる。
だが――ルイをそうさせたキサラの好奇心は、必要なものだったのだ。
「第三者視点では。それが収束した世界なのか、分岐した世界の内のひとつなのかは判らないのだよ」
バサッ、バサバサッ!
突如、夜空に響いたのは、五十羽の梟の羽撃きの音。
量子自殺による証明の欠点――ストレンジャーノシカイ。
キサラが感じた『怪しさや好奇心』を啄む梟を喚ぶ業。
「さて。梟達に突かせてみよう」
『ぬ、ぬわー!?』
『生きたまま食われるー!?』
キサラが告げれば、梟たちがすいかぼちゃに群がっていく。
ツンツン――ガツガツ! バリバリ!
最初は嘴で突いてみる程度だった梟達だったが、その勢いは次第に激しくなり、皮を砕いては中身を貪っていく。
結構、美味しかったのだろうか。
『くそ。なら、梟もろとも眠らせてや――』
すいかぼちゃの魔女っぽい帽子の中から飛び出す、拳大かもう少し大きな蜘蛛。それはただの蜘蛛ではなく、眠りと癒しの力を持つ癒し蜘蛛。
「蜘蛛だって極寒では生きられないだろ」
だが、ルイが浴びせた冷気が、癒し蜘蛛ごとすいかぼちゃを凍り付かせた。
(「蜘蛛で僕の不眠が癒されるなら願ったり叶ったりなのだがねぇ……」)
凍り付いて砕けていく癒し蜘蛛を眺めながら、まあ無理だろうと胸中で続けながら、キサラは梟一羽を呼び寄せ、抱え込んだ。
「おいキサ」
そんなキサラに、ルイが振り向き声をかける。
「寒いのはわかる。けど梟もふってねぇで働け」
「え?」
再び働けと促すルイに、キサラが再び意外そうな顔になる。
「ははは、不苦労……じゃなかった。梟達が働いているじゃないか」
「梟だけじゃなくて、キサも働けって言ってんだよ!」
さらりとキサラが告げた自分が働かない宣言に、ルイが地団駄を踏む。
「だけどね、お小夜君。一先ず落ち着いたみたいだよ?」
キサラに言われて気づけば――二人の周りに、すいかぼちゃは絶賛食われているの以外は残っていなかった。
●追跡再び
(「結構、離れてしまったなぁ……」)
遠くなった金ピカの車のシルエットを眺め、キサラが胸中で呟く。
去来していたのは、街で怪人から聞き出した動機の一端。そして、さっき聞こえた拡声器の声。
『この娘も、玉の輿とは呼ばれたくない、金など要らぬなどと綺麗事を言っているが、金を手にすれば変わるに決まっておる! そうでなければならない!!!』
「……何と言うか、未練がましい事だね」
何となく出来てしまう推察に、キサラが遠くを見て小声で呟く。
「……故に円環に取り込まれる、か」
まだ、その確証はないけれど。
「どしたよ。ぼーっと突っ立ってると置いてくぞ」
そんなキサラを、少し先からルイが促す。小声の呟きは、聞こえてなかったようだ。すいかぼちゃの出現は今は止まっているが、また出てこないとも限らない。
この先には、まだまだいるのだろうから。
「そうだね。走るとしよう」
表情をキリッとした真顔に戻して、キサラが頷いた。
成金影朧を驚かせた二人だが、その手段は脚である。
――良いかい。探偵というのは自分の足で追跡するのが常套手段なのだよ?
――本当は移動用の足の用意が無いからだろ。
そんなやり取りをしつつも、キサラもルイも、頑張って走ってきたのである。
とは言え、決して不可能な事ではない。車は基本、道路の上を走るものだ。だが、生身ならば地続きであればどうとでも走り抜けることが出来る。
そうして道なき道を突き抜けて来たのは、二人の服や髪にまだ残っている小枝や枯葉が物語っていた。
そして、また走り出そうと――。
二人の前を、大量の赤い刀を纏わせその数本にすいかぼちゃぶっ刺したままのガーネットの車が通り過ぎていく。
キィッ!
続けてもう一台、すいかぼちゃの残骸まみれの車が、今度は二人の前に止まった。
「もしや走る気かい?」
運転席のドアを開けて出てきた(窓は歪んで開けられなくなった)禄郎が、二人の様子から察して、そう問いかけていた。
「良ければ乗って行かないか? この後が大変だしね」
続く禄郎からの提案を聞きながら、ルイはその出で立ちを、頭の先から足の先まで視線を送り――。
「もしかして……探偵、か?」
「ええ。探偵屋というやつです」
何故ここで、と内心首を傾げながら、禄郎はルイの問いに頷く。
「おい、キサ」
「ここはご厚意に乗せて貰おうじゃないか。事件解決のためなら、時に常套手段から外れるのもまた、探偵の常套手段だよ」
もの言いたげな視線を向けるルイにさらりと告げて、キサラはさっさと禄郎の車の後部座席に乗り込んでいく。
こうして、三人を乗せた車が成金影朧を追って走り出した。
「あ、邪魔」
禄郎の運転で、やっぱりすいかぼちゃ潰しながら。
大成功
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ハヤト・ノーフィアライツ
【SIRD】の面子と。
灯璃嬢の装甲車に同乗しつつ、指定UCで応戦していくかね。
【暗視、視力、聞き耳】で警戒しつつ、
【戦闘知識】で敵の奇襲タイミングと、逃走ルートのアタリをつけ【追跡】の助けに。
前方にいる南瓜は56m先から【早業、串刺し、鎧無視攻撃、怪力】で攻撃し、周囲及び後方の南瓜は味方に気をつけつつ【早業、2回攻撃、鎧無視攻撃、怪力】で薙ぎ払う。
また、状況によっては串刺しにした奴を【怪力】で【投擲】して武器にもする。
間合いの広さを活かし、【カウンター】で相手の出鼻をくじきながら立ち回ろう。
「さぁ、どいたどいた!邪魔する奴は片っ端から蹴散らしていくぜ!」
「しかし、ポマトの親戚か、こいつら…?」
灯璃・ファルシュピーゲル
【SIRD】一員で連携し無線で情報共有
ハヤトさんとM1248に乗り【追跡】戦へ
「Ja.押し通るのみ(頷きつつ)‥飛ばしますね」
【情報収集・暗視】とUC:オーバーウォッチで
路面及び周囲状況を確認し敵の奇襲に備えつつ全速追撃し
同時に【戦闘知識・運転】でハヤトさんの動きに
阿吽の呼吸で戦闘機動を合わせ。
戦闘しやすい様にベストな間合いと射撃位置を保つよう
注力して車を飛ばします
敵が数で奇襲・間合いを詰めてくる場合は
指定UCの狼と車載無人機関砲の牽制攻撃(スナイパー・援護射撃)で
敵の連携・突撃を阻害しつつ。弾幕でハヤトさんの攻撃範囲に追込み攻撃支援する
「…やっぱり西瓜は夏に食べたいですね‥」
※アドリブ歓迎
霧ヶ峰・星嵐
【SIRD】で参加
引き続き無線で連絡を取り合いながら追跡
それでは私は空から追います! 帝都桜學府の學徒たるもの、空だって戦場です!
【天空熟達】で桜の羽衣に早着替え、空に舞い上がり、最大で300km/hを超える速度で空から追跡します。
すいかぼちゃがいました! 妨害が来るということは、やはりこちらが本命みたいですね!
最高速度であれば、範囲攻撃の間合いに入ってからすいかぼちゃ本体に接近するまで1~2秒、眠らされるより前に強化された月ノ輪で勝負を決めます!
すれ違いざまに軍刀状にした月ノ輪で縦に真っ二つにしていきましょう
周到な準備、故郷に帰ることにこだわりがあるようですが、逃がしません!
※アドリブ歓迎
寺内・美月
SIRD共同参加・通信網構築
アドリブ・連携歓迎
「すいかぼちゃ…どんな味なんでしょうか?」
・武装は繊月と司霊。
・UC〖闘戦覚醒〗にて現地に急行。空中浮遊中の敵に対し最大速度で接近し強行突破を狙う。
・強行突破時のすれ違いざまにUC〖剣霊覚醒〗を発動、敵の三叉槍と蝙蝠の羽根を破壊して叩き落とし上空部を制圧する。
・制空権を確保したら上空にてUC〖黒鞘レーザー〗を使用。隠れている敵を照射し味方に位置を知らせる。この際『癒し蜘蛛』の活動範囲外にて行動。
・可食部と『癒し蜘蛛』を回収できるなら回収を試みる(後日可食部は試食し『癒し蜘蛛』は睡眠障害対策で飼育を試みる)。
●SIRD――SIDE:NightSky
桜舞う夜空に、幾つもの光の尾が伸びている。
最も多く飛び交っているのは黄金の光だ。それが星々の輝きであれば、どれほど美しい夜空であっただろう。
だが、残念ながらその輝きは星々の光ではない。
『ゴールデェェェン!』
『俺達の皮がゴールデンな限り、行かせねーぜ、人間よぉ!』
ゴールデンの輝きを纏ったすいかぼちゃの群れが、夜空で支配者面していた。
そこに迫る三色の光。
「妨害がいるということは、やはりこちらが本命みたいですね!」
一つは舞い散る花弁と同じ桜色。霧ヶ峰・星嵐は、桜色の羽衣の上に幻朧桜の花弁を幾重にも纏いて空を駆ける。
「その様ですね。流石に空にまで囮はおけなかったと見えます」
並んで飛ぶ寺内・美月は、街中での戦いで封印を解除し纏った白と黒の輝きを、そのまま纏い続けている。
「先に行きます」
そう星嵐に短く告げた美月の姿が、白と黒の混ざった残像を残して消えた。
――ドンッ!
響いた轟音は、音の壁を越えた証である衝撃音。
闘戦覚醒――神気と殺気の具現たる白と黒の極光を纏った美月の最高飛翔速度は、この時点で優に時速6000kmを超えている。
その身に纏う輝きと同じ白黒二振りの刀――白の『繊月』、黒の『司月』を抜いた音も置き去りに、美月は夜空を翔け抜ける。
白と黒の光が瞬くと、反応する暇すらなく蝙蝠の翼と三叉槍ごとバッサリ斬り裂かれたすいかぼちゃが、地上へと落ちて行った。
『ばばば、ばかなっ!?』
『金でゴールデンの輝きが強化された筈なのに!?』
自分達よりも圧倒的に早い美月の動きに、すいかぼちゃ達に動揺が走る。
そこに閃く、桜の斬撃。
『しまった! もう一人いたんだ!』
『くそっ、なんで人間が空を飛びやがる!』
「帝都桜學府の學徒たるもの、空だって戦場です!」
慌てて散開するすいかぼちゃの一体に、星嵐が追随する。
天空熟達。
舞い散る幻朧桜の花弁を尾と引いて、空を舞う星嵐の最高飛翔速度は、すいかぼちゃたちとほぼ同じ。
美月ほどの圧倒的な速さではないが、すいかぼちゃにとっては十分脅威であった。
『引き離せねー!?』
「逃がしません!」
開かぬ間合いに焦るすいかぼちゃに、星嵐は軍刀に変化した『月ノ輪』を振るう。桜の花弁を纏った三日月の如き白刃が、すいかぼちゃを真っ二つに断ち斬った。
白と黒と桜色。
三つの光が瞬き閃くたびに、夜空からゴールデンの輝きが消えていく。
『こうなったら、闇に紛れて――』
『いや、癒し蜘蛛で眠らせて――』
すいかぼちゃ達はゴールデン化以外の能力も駆使して応戦しようとするが、美月も星嵐も、二人の速さであればそれらが充分に効果を発揮する前に切り込んで、すいかぼちゃを斬り落とす事が可能であった。
『なんでだ、なんで人間がこんなに飛べる!?』
「そっちこそ、なぜ飛べるんですか!」
果実的野菜が空を飛ぶ――その意外性と速さがアドバンテージにならない状況に驚きを隠しきれないすいかぼちゃに、星嵐が問いかける。
『何故だと? すいかぼちゃが飛ばないでどうする!』
『ゴールデンの輝きが強いほど、甘くなるんだぜ!』
「わけが分かりません……」
思わず眉間を抑えたくなるのを抑えて、星嵐は軍刀を振り下ろした。
「……」
その後ろで、美月は無言で二刀を振るい、すいかぼちゃを真っ二つにしたり三枚におろしたりしたり、四つ切にしたり輪切りにしたりみじん切りにしたりしている。
「身は黄色ですか」
それだけ切っていれば、すいかぼちゃの中身も良く見える。そして、西瓜は元来が赤ではなく黄色い果肉だ。すいかぼちゃの中身が黄色でも、不思議ではない。
(「どんな味なんでしょうか?」)
切ってる内にその味が気になった美月は、後で回収しようと思いながら、無言で二刀を振るってすいかぼちゃを捌き続けていた。
その頃――地上では。
別動隊が、成金影朧を追う道を拓いていた。
●SIRD――SIDE:ground1
ゴンッ、ゴンッ!
地雷の衝撃にも耐える伏撃防護車『M1248/JSXF(M-ATV)』の車体を、次々と飛び出してくるすいかぼちゃが叩く音が響き続ける。
「ポマトの親戚か、こいつら?」
「……西瓜は、やっぱり夏に食べたいですね……」
西瓜とも南瓜ともつかない、まさしくすいかぼちゃ、と呼ぶのが一番相応しそうなそうでないような――そんなすいかぼちゃを、ハヤト・ノーフィアライツと灯璃・ファルシュピーゲルは車内から眺めていた。
とは言え、いつまでもこうしているわけにもいかない。
「だいぶ溜まってきましたね」
灯璃には見えていた。ハンドルを握る伏撃防護車の分厚い装甲の外の全てが。車に向かってくるすいかぼちゃの数が、次第に増加しているのが。
オーバーウォッチ――生物の視覚の強制共有化。
例え小さな虫でも、その気になれば灯璃の目になり得る。
「飛ばしますね」
その視界で見えたが故に、灯璃はアクセルを強く踏み込んだ。
すぐに何かを踏んで、二人を乗せた車体が上下に揺れる
だが、そんなものは物ともせずに、灯璃がハンドルを握る伏撃防護車『M1248/JSXF(M-ATV)』は道なき夜道を駆け抜ける。
『さっきは良くも踏んでくれやがったなー!!』
それを追って飛び出してくる、すいかぼちゃの大群。
土の上は、言わば、すいかぼちゃのテリトリー。
だがそれは翻せば、ここですいかぼちゃを叩いておけば、他に出現する数が減らせると言う事であった。
「お。空の二人は派手にやってんなぁ」
落ちないように中折れ棒を手で押さえながら、車の屋根から顔を出したハヤトは、偶々仰ぐ形になった夜空に瞬く光で、空の戦いを知って笑みを浮かべた。
「こっちも負けずに蹴散らさねえとな。ちょいと面白いものを見せてやるぜ!」
本来は砲撃手が乗る砲座で、ハヤトは銀色の槍を掲げる。
「しっかり味わいな!」
『機甲竜槍・ゴリアス』――竜の姿もとれる銀槍を、ハヤトは槍のまま構えて、勢い良く左から右へと薙ぎ払った。
ヒュンッ!
響いたのは、細い何かが風を切る音。
『い、いったい……何が』
次の刹那、ゴリアスの槍の刃が一瞬で大きく伸びて、地面から飛び出したばかりのすいかぼちゃを真っ二つに斬り裂いていた。
ファルコン・ランダマイズ――手にした武器の刃に当たる部分を伸縮自在に変えると同時に、常識外れに長大な武器を振るう膂力を与える業。
細く長い武器へと変貌したゴリアスの間合いは、今や56m。
『ぬぁっ!?』
鞭のようにしなるゴリアスの刃を振り回し、ハヤトはゴールデン化したすいかぼちゃに飛び立つ暇を与えずに、両断していく。
ハヤトの技量だけではない。
ハンドルを握る灯璃も、ハヤトの振るう刃の勢いを殺さぬように防護車を走らせる。
『距離を詰めちまえ!』
ならばと、すいかぼちゃは一度地中に潜り込んで、装甲車のすぐ横手の地面から再び飛び出してくる。
だが――ダダダダダッと重たい銃声が立て続けに響いた。
「見えています」
灯璃が車内から操作した、車載機関砲だ。
外の様子を見もせずに、灯璃は車載機関砲を操作して弾幕を張り、すいかぼちゃを容易に近づけさせない。
それでも――伸縮する槍と機関砲の弾幕を、かいくぐる敵もいる。
そして長い得物ほど、懐、長大な間合いの内側に隙が出来やすいものだ。
「ま、そう来るよな」
だがハヤトはすいかぼちゃが迫っても、慌てずに元の長さに戻したゴリアスを、すいかぼちゃへ向けてそっと構えた。
『ぐふっ!?』
そこに、すいかぼちゃがぶっ刺さった。
飛んで火にいるなんとやらである。
「折角だ。そのボディ、使わせてもらうぜ」
ハヤトは刺さったすいかぼちゃをそのままに、ゴリアスを伸ばして振り回す。伸びた槍の先で、刺さったままのすいかぼちゃも振り回される。
『よ、避けろ!』
『おま、こっち来ん――』
ゴシャッ!
鈍い音を立てて激突したすいかぼちゃ同士が、どちらも砕け散った。
「どいたどいた! 邪魔する奴は片っ端から蹴散らしていくぜ!」
「Ja.押し通るのみ」
風を切る音を鳴らしてすいかぼちゃを叩き落すハヤトの声に一つ頷いて、灯璃はアクセルを強く踏み込んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動
あくまでこちらの目的は目標の追跡、可能ならば逃走阻止です。これを妨害してくる存在は敵と認識、全て排除してください。
愛車のR56クーパーSカスタムで追跡。同乗者は桜小路さん。
少々荒っぽい運転になりますから、舌を噛まないように。
UCの夜鬼を目標上空に張り付かせて常に把握し追跡しつつ、他のSIRDメンバーに無線で位置・進行方向を伝えます。
同乗の桜小路さんが射撃をし易い位置に車をハンドリングしつつ、自分もG19Cで射撃。
西瓜か南瓜か知りませんが、少なくともハロウィンにしては季節外れですね。
もし可能だったら、目標の車のタイヤを狙って射撃し、逃走を阻止します。
※アドリブ歓迎
メンカル・プルモーサ
【SIRD】のメンバーと共に参加。
メンバーとは無線で情報共有をしつつ
改造装甲車【エンバール】に乗ってすいかぼちゃの群を強行突破しようとするよ…
……かぼちゃたちは纏わり付いてくるだろうから【煌めき踊る銀の月】で迎撃…
…南瓜から放たれる癒し蜘蛛は車体に仕掛けた遅発連動術式【クロノス】での術式罠によりにより車に触れた物から端に焼き切って行こう……
…万一眠ってもエンバールには居眠り運転防止用の強制覚醒機能があるから平気平気…ちょっと電流走って痛いけど…
成金の車は可能なら【不思議な追跡者】で追跡をさせておこう…これで距離が離れてもすぐに追いつけるからね……
桜小路・ゆすら
【SIRD】のメンバーと共に行動
目標を追跡、できるだけ距離を離されたくないよね
ネリッサさんの車に同乗させてもらって追い掛けるよ、カーチェイスってやつ?
とりあえず、舌噛まないように気を付けます
車の中で電撃バリバリするのなんか不安だし、Cute.の射撃で対応
【クイックドロウ】で素早く狙いを定めて【2回攻撃】の【ワンモアタイム!】
車に取りつこうとしてる敵を優先して痛みで敵をひるませよう
まー落とせたら撃ち落としちゃうけどね。かぼちゃさんはさようなら!
距離が離れちゃったら【視力】【追跡】にコンパクト双眼鏡で見失わないようにする
乗せてもらってるんだから、ネリッサさんの運転のサポートもしないとね
太刀風・橘花
【SIRD】の仲間と無線で連絡し合って追うが、密かに逃げるのにあんな派手な車を使うとは……
まあいい、憲兵は乗馬本分者、【騎兵突撃】で召喚した軍馬に乗って追うぞ!
果実的野菜か何か知らんが、憲兵の邪魔をしてただですむと思うなよ!
距離があるうちは馬上から歩兵銃で狙撃し、接近されたら左手の拳銃で抜き撃ち、右手の軍刀で斬り捨てる(『スナイパー』『クイックドロウ』『なぎ払い』)
槍で突きかかってきたならば刀で受け、すぐに斬り返す(『武器受け』『カウンター』)
正面に立ち塞がろうものなら、馬蹄にかけて文字通り蹴散らすまで!
【SIRD】の仲間も各々追跡中だが、必要なら『援護射撃』を行い相互に支援し合って追跡するぞ
●SIRD――SIDE:ground2
メキメキッ、ガササッ、メギョッ。
冬枯れの木々も、溜まってぬかるんだ落ち葉も。
メンカル・プルモーサが一人ハンドルを握る装甲車【エンバール】は、進路上の障害をその車体でなぎ倒し、或いはかき分けて、道なき夜道を駆けている。
『おい、あっちの車は武装がねーみたいだぞ!』
気づいたすいかぼちゃ達の一部が、【エンバール】へ向かって行き――カンッ!
硬い音を立てて、すいかぼちゃが弾き返された。
『なんだぁ? こいつすげえ硬いぞ!』
『硬いだけなら、まとわりついて邪魔してやれ!』
【エンバール】の堅牢な装甲に驚きつつ、すいかぼちゃ達はめげずに群がっていく。
槍が弾かれても、邪魔をするだけならば方法はあるわけだ。例えば、大口を開けて噛みついて離れないとか。
(「ま、予想通りの反応だ」)
そんな車外の様子に胸中で呟きながら、メンカルはハンドルから左手を離すと、助手席に立てかけてある銀の杖『シルバームーン』の三日月を指先でコンと叩く。
ドカンッ!
その瞬間、夜を引き裂くような爆音が響き渡った。
爆発の中心は、装甲車【エンバール】。
『な、なんだぁ?』
『自爆って……やつか?』
驚くすいかぼちゃ達の目の前で、炎を割ってエンバールが飛び出す。ほぼ無傷のその装甲から、焼け焦げたすいかぼちゃの残骸がぽろりと落ちて行った。
あの爆発は自爆なんかではない。遅発連動術式【クロノス】。その条件付けで発動した炎の術――つまり、メンカルの攻撃だ。
マインドミナBVA――小惑星級のサイズを持つ別世界の異形の外殻を、メンカルはエンバールの装甲に取り入れていた。
その堅牢さがあれば、この程度の爆炎の反動
武装とは、何も目に見える形ばかりではない。
さらに――。
「我が愛杖よ、舞え、踊れ」
ハンドルを握ったままメンカルが口を開くと、隣に立てかけられていた銀の杖――シルバームーンが淡い輝きに包まれ、装甲車の広い車内にひとりでに浮かび上がる。
「汝は銀閃、汝は飛刃。魔女が望むは月の舞い散る花嵐――!」
メンカルの口が続く言葉を唱え終えると、シルバームーンが強い輝きを放ち出す。
膨れ上がった光が、内側から車体を照らし――エンバールの車体から銀の輝きが咲き溢れて夜を照らす。
同時に、幾つもの銀光が閃いて、近寄ろうとしていたすいかぼちゃを斬り裂いた。
煌めき踊る銀の月――ダンシング・ムーン。
自身の持つ杖を、触れた物を切り裂く花弁へと変えるメンカルの術。
花弁は一つ一つが、自律稼働する刃だ。
『うげっ!?』
『くそ、近寄れねえ!』
『癒し蜘蛛で術者を――だめだぁ、蜘蛛も斬られちまう』
近付くものを悉く斬り裂く銀花刃嵐。刃の結界ともいえるメンカルの術が、すいかぼちゃもその業である蜘蛛も、車体に近寄ることを許さない。
「これなら、居眠り運転防止用の強制覚醒機能は使わないで済みそうかな。あれ……電流走るから、ちょっと痛いんだよね」
そんな外の声に、メンカルは車内で小さく息を吐いていた。
●SIRD――SkyNavi
灯璃の『M1248/JSXF(M-ATV)』とメンカルの【エンバール】。
二台の大型車は、どちらも舗装された道路ではなく、その脇の土の上を走っていた。すいかぼちゃの縄張りであると言う以上に、夜道となれば見通しも悪い。
それでいて、二台ともに成金影朧の車の方向は把握していた。明後日の方向へ道を拓いたりはしていない。
「灯璃さん。少し向きがずれています。右に寄せてください」
「メンカル様、西よりに30度くらい変えてください――そう、そのくらいです」
その理由の一つが、空をほぼ制した星嵐と美月からの無線だ。
空からの視点であれば、成金影朧の金ピカ車を見つけるのは難しくない。
空からのナビを受ける二台の装甲車は着実に成金影朧に迫り、故に土の中に潜むすいかぼちゃも行かせまいと、土から湧いて出続ける。
そして――それ故に、舗装された道を行く一台と一頭の妨害に向かうすいかぼちゃの数は、少なくなっていた。
●SIRD――SIDE:Road
――ドカンッ!
どこか遠くで、爆発音が聞こえて成金影朧の肩がびくっと跳ねる。
『お、脅かしおって。まさか、爆撃まではしてこないと思うが……』
思わず口に出して呟いた後で、成金影朧はまた別の音に気づいた。
――パカラッ、パカラッ、パカラッ!
夜道に響く、蹄の音に。
『……こんな夜中に馬が走っているわけが――なぁっ!?』
近付いてくる音に、成金影朧は車のバックミラーを見て――目を見開いた。
後ろにいる一台の車。
ハッチバックの乗用車『R56クーパーSカスタム』は、まだいい。やはり、あまりサクラミラージュでは見ないタイプかもしれないが、珍しいくらいだ。
成金影朧が驚いたのは、その横を駆けている立派な軍馬であった。
『ううう、馬だと!? この大正700年に馬だとぉ!?』
追手がかかるにせよ思ってもいなかった手段を目にして、成金影朧は慌ててアクセルをぐっと踏み込んだ。
――くしゅんっ。
立派な赤い身体の軍馬の背で、太刀風・橘花が小さなくしゃみをする。
「橘花さんの馬に、驚いて噂してたりして?」
並走するクーパーの窓から顔を出して、双眼鏡で前を覗いていた桜小路・ゆすらが笑顔で告げる。
「まさか。憲兵は乗馬本分者。何がおかしいと」
すん、と少しむずがゆそうに鼻を鳴らし、橘花が真顔で告げる。
「密かに逃げるのにあんな派手な車を使う方がおかしい――っと」
橘花が言いかけた所で、ゆすらとの距離が急に開いた。
金ピカ車の加速とほとんど同じタイミングで、ハンドルを握るネリッサが『R56クーパーS』のアクセルを踏み込んだのだ。
「噂はともかく、こちらに気づかれたようですね」
じっと前を見据えて、ネリッサが呟く。
金ピカ車のすぐ上には、ネリッサが召喚した夜鬼が憑いていた。その顔には何もなく。背中には蝙蝠の様な巨大な翼。
偉大なる深淵の主の下僕――ナイトゴーント。
五感を共有したナイトゴーントが身体に感じた加速の反動に、ネリッサはアクセルを踏み込んだのだ。
そして、反応したのはネリッサだけではない。
『すいかぼちゃ、さんっじょー!』
『まだまだいるぜ、俺達は!』
ゴロゴロ転がってきたすいかぼちゃの群れが、一台と一頭の行く手を阻まんとする。
「出たか。果実的野菜か何か知らんが、憲兵の邪魔をしてただで済むと思うなよ!」
降って湧いたと言うより転がり湧いた障害に、橘花の瞳に炎が燃える。
馬の腰に掛けていた歩兵銃を掴むと、手綱を離して構えて引き金を引く。
――パァンッ!
響く銃声。
「西瓜か南瓜か知りませんが、少なくともハロウィンにしては季節外れですね」
「かぼちゃさん? すいかさん? 豆だったら、季節に合うのにねー」
その銃声を聞きながら、ネリッサとゆすらが思わずぼやくように声を上げる。
撃ち砕かれて黄色の果肉(?)を飛び散らせる黄と緑の縞模様は、進路上を半ばまで広がっていた。
それでも、空と道路横で掃討されていなければ、もっと数が出ていた事だろう。
「さておき桜小路さん。此処からは、少々荒っぽい運転になりますから、舌を噛まないように」
「りょうかーい」
ネリッサの言葉に、ゆすらは手で口にチャックをするような仕草をしてみせた。
ゆすらが窓から身を乗り出すと、長い桃色の髪が風に流されていく。
『車から落としてやるぜー!』
抑えようかと迷う暇もなく、迫るすいかぼちゃ。
黙したままゆすらが掲げた手の中には、いつの間にか可愛いと自称する拳銃『Cute.』が握られていた。
タァンッ!
小さな銃声が響いて、撃たれたすいかぼちゃが吹っ飛び、転がっていく。
(「やっぱ、一発じゃ倒せないか」)
吹っ飛ばしはしたものの砕けてはいない――ゆすらはその結果を受け入れ、淡々と胸中で呟く。
(「車の中から電撃バリバリは、なんか不安だしね」)
身体に触れる車体の冷たさを感じながら、ゆすらは胸中で呟く。多くの場合、車の大半を構成しているのが金属部品だ。
尤も、この『R56クーパーSカスタム』は、ネリッサが相当に手を入れてカスタムしてはいるが果たして耐電性はどの程度か。
(「それに電撃使わなくっても、何とかなりそうだし!」)
『弾丸の一発くらいで!』
追っている車にも似たゴールデンな輝きを纏って浮かび上がるすいかぼちゃ。
その丸っこい身体に残った弾痕に、ゆすらは照準を合わせる。
(「傷口狙ってもーいっかい!」)
ワンモアタイム。
一度撃ってつけた傷をもう一度狙って撃ち抜く、銃の業。
ゆすらの二つ目の弾丸はすいかぼちゃの皮を撃ち抜き、その体を撃ち砕いた。
ゆすらが撃ち易いように車体を操りながら、ネリッサも片手を窓から出して、9mm径のハンドガン『G19C』ですいかぼちゃを撃っていく。
「射撃だけでは、埒が明かんな」
自身も加えれば三人で三つの銃口。だが結局各個撃破でしかないと、橘花は構えていた歩兵銃を馬上の帯に戻した。
「はっ!」
放していた手綱を掴んで軽く引くと同時に、橘花は短くされど強く声を上げ、両足で馬の腹も軽く叩く。
「先に行く! 正面に立ち塞がるならば、文字通り蹴散らすまで!」
二人に告げる声を残して、橘花を乗せた軍馬が猛然と駆け出した。
ドドドドドッ!
響く足音も、その質が変化する。
「馬よ嘶け突撃だ!」
橘花の軍馬は、そこらの馬とはわけが違う。
騎兵突撃――ユーベルコードで喚ばれた軍馬だ。
『馬だ、馬が来たぞー!』
『突き刺して、馬刺しにしてやらが!?』
馬躰を狙って突っ込んできたすいかぼちゃを、やすやすと弾き飛ばし。
地面に落ちたすいかぼちゃを、その馬蹄で踏み砕く。
軍馬の通った後に残るのは、すいかぼちゃの残骸とぶちまけられた黄色い中身。レッドカーペットならぬパンプキンカーペット状態である。
『なら、上の人間を――』
軍馬を危険だと見たすいかぼちゃが、馬上の橘花に向かって突っ込んでいく。しかしその槍は、橘花が右手で構えた軍刀に阻まれた。
「憲兵に武器を向けたな?」
軍刀で槍を払い、橘花は左手を向ける。そこに握られていた拳銃が火を噴いて、放たれた弾丸がすいかぼちゃを撃ち砕く。
馬の利点の一つが、熟練者ならば手綱を放せると言う事だ。両手が空いていれば、襲撃を凌いで斬り返すのも難しくはない。
すいかぼちゃが橘花と橘花の軍馬に釘付けにされた脇を、ネリッサの操るクーパーが駆け抜けていく。
「もう少し、ですね」
目を細めたネリッサが、アクセルをさらに踏み込んで速度を上げる。
狙うはタイヤだ。『G19C』の射程に収めようと、ネリッサが車間を詰めようとすれば、金ピカ車も速度を上げて車間を広げる。
それを何度か繰り返して――。
「ネリッサさん?」
急に減速したネリッサに、助手席でゆすらが首を傾げる。
「あのまま強引に距離を詰めれば、お互いに相当な速度になったでしょう。その状態で、タイヤを撃ち抜けば――」
成金影朧に余程の運転技術がなければ、横転は避けられない。
影朧ならば、車が横転したくらいで死にはするまい。
だが――中にいるであろう、一般人は別だ。
『――すいかぼちゃぶん投げて、減速させるか?』
無線機から、ハヤトの声がそう提案してくる。乗っている筈の灯璃の車の姿は見当たらないが、状況を把握していると言う事は近くまで来ているのだろう。
「ナイトゴーントもまだつけていますし、霧ヶ峰さん、寺内さんも空にいます。見失う事はないでしょう」
『私も不思議な追跡者を出しておいた』
答えるネリッサの声に、メンカルも無線で追跡の術式を発動したと告げてくる。
逃がさない算段は整った。
今はまだ、成金の車を止めるその機会ではない。
いつかの好機を逃さぬ様、SIRDの追跡は続く――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィーナ・ステラガーデン
ぶいーんと杖に乗って空から追いかけるとするわ!
スイカみたいな南瓜みたいな。どんな味かが気になるわね!とりあえず気になるわね!
っていうわけで収穫するわよ!(UC)
ゾンビの手ですいかぼちゃを収穫しながら
空を飛んでるやつは属性攻撃で焼いて落としていこうと思うわ!
蜘蛛は食べられないからそのまま焦がしてもいいわね!
それにしても南瓜は焼いても煮ても美味しいけど
スイカって焼くのも想像つかないけど
煮るのってどうなのかしら・・甘ったるい臭いがしそうだわ!
味が想像つかないわ
ある意味賭けよね!厳しい戦いになりそうだわ・・!!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)
●グリルスイカと言う食べ方はあるらしい
幻朧桜舞う夜空に、ちゅどんっと炎が爆ぜる。
「ほんとに、スイカみたいな南瓜みたいな連中ね!」
先端にルビーの輝く杖の上で掌を広げて掲げたフィーナ・ステラガーデンの前から、黒焦げになったすいかぼちゃが落ちていく。
焦げる前の縞模様は黄と緑で、西瓜と南瓜、両方の特徴を持っていた。
なるほど、すいかぼちゃである。
「どんな味かが気になるわね! とりあえず気になるわね!」
なにはともあれ、気になる。
気になったものは確かめずにはいられない――フィーナはそんな性格だ。
「んー?」
フィーナ良く目を凝らすと、眼下の地面に穴が開いていた。
さっき撃ち落とした、すいかぼちゃが飛び出してきた穴だろう。
「んんー?」
穴の周りは開けていて、土が見えている地面が広がっている。
つまり。
「なんか、まだいそうね。収穫するわ!」
有無を言わさぬ調子で告げた瞬間、眼下を見下ろすフィーナの深紅の瞳から煌々とした魔力の輝きが放たれた。
魔力を向けた先は――地面そのもの。
「ほら! 仲間にいれてあげなさいよ!」
ぼこっ!
ぼこぼこぼこっ!
フィーナが声を上げると、見下ろす地面のあちこちが地中から盛り上がる。
すいかぼちゃ――ではない。出てきたものは、色が全く違った。真っ白だったり土気色だったり、なんかもうほとんど骨だったり。
死者ノ懇願――その魔力が地中より呼び起こすは、六十七本の死者の腕。
『ぎゃぁぁぁぁぁっ!?』
『ゾンビ出たー!?』
突然のホラー映画展開に、慌てて飛び出して来るすいかぼちゃ達。
「アンタたちそんな恰好してるのに、ゾンビにビビるわけ!?」
思わず全力でツッコミながら、フィーナは指をパチンと鳴らす。
すると、地面から生えていたゾンビハンズが――すいかぼちゃを追って、伸びた。
『ゾンビすいかぼちゃはいやだぁぁぁ』
『こっち来るー!?』
うにょろうにょらにょろにょろろろーっと迫るゾンビハンドが、慌てるすいかぼちゃ達に掴みかかっては、地面に押さえつけていく。
すいかぼちゃ達はショックで使う事すら忘れていたようだが、腕だけのゾンビでは、癒し蜘蛛の眠りの力もおそらく及ばなかっただろう。
何しろ、腕だけである。
ゾンビハンドが押さえられるだけのすいかぼちゃを押さえつけた所に、フィーナがすいっと降下して、杖から降りる。
「さてと。南瓜は焼いても煮ても美味しいけど、西瓜ってどうなのかしらね……甘ったるい臭いがしそうだわ!」
匂いはまだしも、どんな味になるのか想像がつかない。
「煮るか、焼くか……どちらにしても厳しい戦いになりそうね!」
未知の味に挑むのは、ある意味、賭けだ。
それでも――大抵の食材は、火を通せば何とかなるものである。
フィーナが掲げた杖の上に、すいかぼちゃを(食材として)焼く炎が燃え上がった。
――そして十数分後。
「甘さが増すのね。悪くなかったわ! ……焼きすぎたかもしれないけど」
黒焦げになったすいかぼちゃの皮を残して、満足気な顔のフィーナが杖に乗ってぶいーんと夜空に上がっていった。
少し前から、背中に向けられていた視線に気づかずに。
大成功
🔵🔵🔵
黒木・摩那
かぼちゃ、すいか。合わせてすいかぼちゃ。
すいかはともかく、かぼちゃは今の季節、色々と使い方はありそうです。
かぼちゃの煮物やパンプキンパイとか。
しかし、今は料理をしている場合ではありません。追跡が優先です。
追跡手段は学生ですから、ダルマ自転車です。
自転車だからと言って、猟兵の脚力を甘く見ないでください。
相手が飛ぶので、引き続きヨーヨーで殴ります。
『エクリプス』の設定を重量を重くして打撃重視。
これに【衝撃波】を籠めて、かぼちゃの皮をたたき割りましょう。
さすがに自力でこぎ続けるのはきついので、途中で自動車に連結します。
足痛い……
●果実でも野菜でも食べ易さは大事
チリーン。
段差を乗り越えた衝撃で鳴ったベルの音色を置き去りに、サクラミラージュで人気の、前輪が大きく後輪が小さいダルマ自転車が夜道を駆けていく。
と言うか、ほぼ最高時速で爆走していた。
(「いますね……」)
それを漕いでいる黒木・摩那は、周囲に多数の気配を感じていた。
先行したであろう猟兵の者でないのは、明らかだ。
(「エクリプス――質量増大」)
摩那がハンドルを放して手にしたヨーヨー『エクリプス』は、使い手の意思で質量を変化させると言う、謎の特性を持っている。
「あの辺ですかね」
適度に質量を重くした『エクリプス』を、摩那は所謂、勘――第六感を頼りに、怪しい茂みへと投げ込んだ。
ゴシャッと鈍い音。
何かが砕けた様な手応え。
『いきなり何しやがるー!』
ガサガサと葉擦れの音を立てて幾つも飛び出して来たのは、黄と緑の縞模様。
「確かに、かぼちゃ、すいか。合わせてすいかぼちゃ――ですね!」
あわせもつ西瓜と南瓜の特徴が現れている球体を眺めながら、摩那は腕を振って『エクリプス』の二撃目を叩きこむ。
その衝撃で、ゴシャッと砕け散るすいかぼちゃ。
「もしかして南瓜より、皮脆いんですか?」
思わず漕ぐ足を止めて、フィーナが問いかける。
『俺達すいかぼちゃは、南瓜の皮が固すぎるってニーズで品種改良された末に生まれた品種だぞ。南瓜より皮が固くてどうする!』
それはそれで失敗作としてやっぱり廃棄されそうだが、今回のすいかぼちゃは、皮の固さはクリアしてた連中らしい。
つまり――。
「よし、さっさと叩き割りましょう」
摩那は、一旦止めたダルマ自転車から降りると、笑顔で『エクリプス』を構えた。
すいかぼちゃの妨害を切り抜けた摩那は、再びダルマ自転車を漕いでいた。
(「……少し、勿体なかったでしょうか?」)
バラバラに砕いたすいかぼちゃを思い出し、胸中で呟く。
(「すいかはともかく、かぼちゃは今の季節、色々と使い方はありそうです」)
かぼちゃの煮物。
パンプキンパイ。
「ですが、今は料理をしている場合ではありません。追跡を優せ――」
脳裏に浮かんだ南瓜メニューを振り払い、ペダルを踏む足に力を――力を入れようとした摩那の元に、甘い匂いとパチパチと何かが焼ける音が届いた。
そちらに視線を向けると――以前もどこかで会った気がする魔女然とした猟兵が、すいかぼちゃらしいものを焼いているではないか。
「……」
声をかけようか摩那が迷っている間に、その猟兵は長い金髪を翻して飛んでいった。
「……」
プップー!
呆然と見送る摩那の背中に、車のクラクションがかかる。
振り向けば、運転席から丸眼鏡の男が顔を出していた。後部座席には、やっぱり以前に顔を見た気がする青髪の少年も乗っている。
「良ければ乗ってくかい? それか、引こうか?」
「引いてください!」
運転席から顔を出した丸眼鏡の男の提案に、振り向いた摩那が一も二もなく頷く。
電動自転車であるダルマ自転車なら、最高時速は60kmを誇る。様々な能力を持つ猟兵ならば、その最高速度を維持するのも可能だ。
可能であるが、それは難しくない、とイコールとはならない。
「正直、足痛くなってて……」
爆走した反動が、摩那の脚を襲っていた。
最初から車にすればよかった? それはそうかもしれない。だが――。
「まあ、私は学生ですから」
ダルマ自転車を爆走させても、そんな所は結構律儀な摩那であった。
大成功
🔵🔵🔵
城島・冬青
【橙翠】
バイクで追いかけるんです?
アヤネさん、いつのまに免許を…
私も免許欲しいなー
でもうちは親がなぁ…
ん?よく考えたら私達UCで空飛べません??それで追いかければいいのでは…
あれはなんです?
鳥だ!飛行機だ!いや、すいかぼちゃだー!
向かってくるなら叩っ斬るまで!
あ…もしやバイクの上で戦闘?
わぁカオス
アヤネさんのウロボロスで落ちないように支えて貰いシートの上に立って
向かってくるすいかぼちゃと戦う
断面図は西瓜と南瓜…どっち寄りなのかな
…てか美味しくなさそうですね
夜歩くで空中戦でもいいんだけど
バイクの上で戦うってのもドラマみたいで格好いいですよね
あ、アヤネさんはちゃんと前を見てくれると私が安心できます
アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
免許はとりたて
折良くバイクが納車されたところでネ
後部シートをぽんぽんと叩き
ソヨゴにヘルメットを差し出す
どうぞ
しっかりつかまって
空?それだと絵にならないでしょ?
発車
それじゃ相手がヒーローで僕らが悪役になってしまうネ
と苦笑
攻撃はソヨゴにまかせた
僕は運転に集中
敵の妨害をすり抜けつつ
フルスロットルで黒幕を追う
ソヨゴはなぜオブリビオンを食べようって思いつくの?
UC発動
バイクから触手を生やす
ソヨゴが落ちそうな場面は触手で拾う
ソヨゴへの攻撃は触手で防ぐ
危険回避は触手で大きくジャンプ
おっと危ない!
触手で電柱にぶら下がって空中でターン
この程度で僕らを撒こうなんて甘いネ
敵を倒し終わったら
黒幕へまっしぐら
●二人乗りしたかったとか、そういう動機じゃないですよね?
――時間は少し遡る。
囮の列車が駅を出るのと、同じ頃。
「え、うわ。何ですかこれ!」
「折良くバイクが納車されたところでネ」
ピカピカの新しいバイクに目を輝かせる城島・冬青の反応に気を良くしながら、アヤネ・ラグランジェは、二つあるヘルメットの片方を手渡した。
「ソヨゴのメットもあるよ」
「え? 私も乗ってバイクで追いかけるんです?」
予想外の交通手段の登場に、冬青が目を丸くする。
「私達、ユーベルコードで空飛べません?? それで追いかければいいのでは……」
実際、冬青もアヤネも、空を飛ぶ能力は持ち合わせている。
「空? それだと絵にならないでしょ?」
しかしアヤネはそんな気がなさそうに、ソヨゴの席だよ、と言いたげにバイクの後部シートをぽんぽんと叩いてみせた。
「まあ、アヤネさんがそう言うなら」
そこまで言われては、冬青も断る理由はない。
二人はしっかりとヘルメットを装着すると、アヤネがハンドルを握り、後部シートに冬青が座る。
「しっかりつかまってネ」
促されるままに、冬青はアヤネの背中に密着し、腰に両手を回す。
そこまでしたところで、冬青はふと気づいた。
「アヤネさん、いつのまに免許を……」
「免許? とりたて」
アヤネの答えに冬青が何か言うより早く、二人を乗せたバイクは走り出した。
「おおお、風が気持ちいいですね!」
「だろう?」
疾駆するバイクの上で、冬青とアヤネは夜風を全身に浴びていた。
アヤネの運転は、とても免許とりたてとは思えない、スムーズなものだ。元々、以前から水上バイクは乗っていたのも効いているのかもしれない。
(「私も免許欲しいなー。でもうちは親がなぁ……」)
素直には許してくれないであろう親の顔を思い浮かべ、冬青が胸中で溜息を吐く。
「ん? あれはなんです?」
気を取り直そうと冬青が見上げた夜空に、輝く金色。
「鳥だ! 飛行機だ! いや、ゴールデンすいかぼちゃだー!」
「ソヨゴ。それじゃ相手がヒーローで僕らが悪役になってしまうネ」
メットもあって表情は見えないけれど、きっと目を輝かせているんだろうと冬青の表情を想像して、アヤネが苦笑する。
「大丈夫ですよ! あっちが赤いマントとかしてないからセーフです!」
「でもすいかぼちゃって、ローマ字にすると頭文字Sだよネ?」
………。
『際どい会話してんじゃねー!』
思わず沈黙した二人に向かって、突っ込んでくるゴールデンすいかぼちゃ。
「おっと、危ない」
アヤネが咄嗟に袖口から伸ばした触手が電柱に絡みつき、二人を乗せたままバイクがふわりと浮き上がり、すいかぼちゃの上を飛び越えた。
バイクが着地すると同時に、空振りしたすいかぼちゃが、地面を軽く抉りながら、空へ舞い上がっていく。
「向かってくるなら叩っ斬るまで! ……って、アヤネさん?」
「ソヨゴ、戦闘は任せた。僕は運転に専念するよ」
冬青は戦闘態勢を取ろうとしたが、アヤネは前を見たままそう告げて、バイクの速度を緩めるどころかフルスロットルで走り続ける。
「ってことは、バイクの上で戦闘ですか……」
この状況にカオスを感じながら、冬青はアヤネに掴まっていた手を放すと、器用に走るバイクのシートの上に立ち上がった。
「ウロボロス。ソヨゴを支えろ。絶対に落とすなよ?」
やや強いアヤネの言葉に急かされるように、バイクから伸びた蛇の様な触手が、冬青のふくらはぎにそっと絡みついていく。
「何と言うか……ちょっとこそばゆいですね」
ウロボロスの感触にピクリと身じろぎしながら、冬青は愛刀『花髑髏』をスラリと引き抜いた。曲乗りなんて生易しいものではない。
(「って言うかこれ、お父さんには見せられない絵になってる気が」)
そんなことを胸中で呟きながら、冬青は黒蘭の花弁を全身に纏う。
『待ちやがれー!』
『行かせるかー!』
「こっちこそ、させません!」
槍を向けて突っ込んできたゴールデンなすいかぼちゃ達。冬青はまず片方を振り下ろした『花髑髏』で槍ごと真っ二つにして、返す刃でもう一体を逆袈裟に切り裂く。
「断面は黄色かぁ……もしかして、黄色い西瓜と南瓜の配合? ……あんまり、美味しくなさそうですね」
「ソヨゴはなぜ、オブリビオンを食べようって思いつくの?」
斬った故に見えたすいかぼちゃの実の色。それで冬青がつい口に出した言葉に、アヤネが思わず振り向きツッコむ。
「今回は食べません! 食べませんから、アヤネさんはちゃんと前を見ててください」
「ハイハイ」
その頃、別の場所ではすいかぼちゃが焼かれる煙が上がっていたりしたけれど。
「まだ、結構な数がいますね……」
すいかぼちゃに向き直った冬青は、その数を見て――脇差『不死蝶』も引き抜いた。
そこはバイクのシートの上だ。立ち回るには、あまりにも狭い足場。そんな上で両手に刀を持てば、冬青の身体を支えるのはアヤネの触手のみ。
そんな事――信じてなければ出来る芸当ではない。
冬青はアヤネの運転と、アヤネのウロボロスを。
アヤネは冬青の剣の技量を。
「空中戦でもいいんだけど、バイクの上で戦うのもドラマみたいで格好いいですよね」
「派手なアクションシーンだネ」
すいかぼちゃを斬りながらの冬青の軽口に、アヤネも返す。
その間にも、時折虹色に煌めく『花髑髏』がすいかぼちゃを斬り裂き、癒し蜘蛛も『不死蝶』が斬り散らす。
アヤネもただバイクを走らせているだけではない。冬青が二刀を振るった直後に機体を左右へ滑らせて、すいかぼちゃのタイミングを外している。
たかが二刀、されど二刀だけに非ず。
二人の周囲から、すいかぼちゃがいなくなるまで――あまり時間はかからなかった。
「終わりましたよ、アヤネさん」
「ソヨゴ、すまないけどもう少しそのままで」
刀を鞘に納めて座り直そうとした冬青を、アヤネが制する。その理由は、すぐに冬青にも理解できた。
「この程度で僕らを撒こうなんて甘いネ」
二人を乗せたバイクの先に、金色の悪趣味な車が見えていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『成金影朧』
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POW : 其れが欲しいなら呉れて遣るぞ?
【自身が所有物と認識する金品】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD : ほうら、拾え!拾え!
【高額紙幣のばら撒き】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : どうだ明るくなったろう?
【懐から取り出した札束】が命中した対象を燃やす。放たれた【大尽の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
👑11
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●少しだけ昔話
――そんな汚れたお金は要りません。
それはいつかの昔の話。
自身の土地で始めた麻薬栽培から方々の闇に手を広げ、大金持ちとなった男を、そんな風に拒んだ女がいた。
それだけではなく、女の告発で男は逮捕され――獄中から生きて出る事は無かった。
そして、現在。
『くそっ! どういう事だ』
そんな過去の女と良く似た面影を持つ女性――小夜は、成金影朧の金ピカの車の中で目を閉じて眠り続けていた。
●逃げるもの、追うもの
成金影朧は気づいていなかった。
夜魔と魔女の獣が、自身の黄金の車にピタリとついている事を。
桜花纏う猟兵と、白黒の極光纏う猟兵も、空から見ている事を。
幾つもの目が男を追い続け、それを頼りに猟兵達は追ってくる。
憲兵の駆る軍馬に先回りされ、慌ててハンドルを切れば、待ち構えていた防護車から銃弾と鞭のような刃が襲い掛かってくる。
そして――直接情報を伝えられずとも、彼らの行動、銃声や蹄の音が情報となり、他の猟兵達に成金影朧の行方が広まる。
良く見る車と出くわせば、恐ろしく冷たい氷の塊に道を塞がれ、速度を緩めた所に後ろのダルマ自転車から何か金属の塊が飛んでくる。
見たことない車と出くわせば、幾つもの刀が降ってきた。
空からは炎とすいかぼちゃが降ってくる。
二人乗りのバイクに追いつかれかけた時は、サイドミラーを切り落とされた。
どこにどう逃げても、追手の猟兵がいる状態。さらに少しでもスピードを緩めれば、タイヤを狙って狙撃されるから。
だから、成金影朧は車を走らせるしかない。
そんな逃げ方をしていれば――どんな車だって、そうなる。
ぷすんっと空しい音を立てて、金ぴかの車が止まる。
ガス欠。
『ちくしょぉぉぉぉっ! こんな、こんなところで……!』
車が止まったは渓谷の少し手前だった。
渓谷まで行けば、そこには長い長い吊り橋がある。橋を渡っていれば、生前の故郷と言う古巣はすぐそこだ。
計画では、橋を落としてから車につけさせたプロペラで飛んで渡る筈だった。
古巣ならば、金でいくらでも手駒を増やせる筈だし、屋敷にあるものは全て自分の所有物だし、海外への密輸に使った伝手もある。
だが――それらは届きそうなところで、手から零れ落ちようとしている。
『おのれぇ! まだ! 儂はまだ諦めんぞ!!』
口角泡を飛ばして、成金影朧は眠ったままの小夜を抱えて車を出ると、えっほえっほと走り出した。
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3章、いよいよ成金影朧との決着の時です。
屋敷で成金が『遅かったな』とか余裕綽々ルート案もあったんですが。
無理でした。(ですよねー)
●成金影朧
小夜を抱えて、車を捨てて走っています。
そのまま吊り橋渡って、目指すは生前の故郷。
実情はどうあれ、吊り橋の先は古巣だと、彼はそう思い込んでいます。
橋を渡り切った時点で、POWのユーベルコードの威力が跳ね上がります。
転生の可能性は、なくはないですがこれに需要あります?
あれば考えます。
●小夜(攫われた女性)について
まだ深い眠りに落ちたまま、成金影朧に抱えられています。
特別何かしない限り、戦闘中でも、物音などで目を覚ますことはありません。
寝たままと言う事は、何かあっても何もできない、と言う事です。
極端な話、小夜に何かがあってもシナリオは成功します。
●位置・地形関係
◎(成金影朧&小夜)
【金ピカ車】◎→ 【吊 り 橋】 【故郷】 【屋敷】
ざっくりとこんな感じです。(航空写真的な上から見た図)
成金が吊り橋に辿り着くまでに妨害は、『各自1回は可能』とお考え下さい。
(ユーベルコードや技能の組み合わせで、変わりそうですが)
吊り橋自体の長さは、おおよそ100mほど。多分、めっちゃ揺れます。
かなり高いです。もし落ちたら、猟兵か影朧でなければ……。
救助優先、成金影朧を優先。その他なんでも、案があればご自由にどうぞ。
●プレイング受付
じっくり考えたい方もいるかな?、と言うのと、こちらのスケジュールの都合で
2/2(日)8:30~2/5(水)9:00とさせて下さい。
2/5・6で執筆、公開の予定です。
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ハヤト・ノーフィアライツ
【SIRD】の面々と。
んじゃま、捕物と行くかね。
「パーティには間に合ったみたいだな、飛ぶぜ!」
ある程度の距離まで近づいたら、手始めに灯璃嬢の車から【ジャンプ】。
【戦闘知識】で奴の動きの予測を立てつつ、【ダッシュ、空中浮遊、空中戦】を駆使しつつ
地を駆け空を飛んで、【早業】で指定UCを使用。
灯璃嬢と連携しながら、【怪力、ロープワーク】で奴の手足を絡め取る。
上手いことお嬢さんが奴から離れたらそっちも【救助活動】がてら絡め取って回収しよう。
離さない場合は奴を【怪力】で可能な限り足止めする。
離した場合は【投擲】で谷と逆側に投げ飛ばす。
攻撃は【早業、空中戦】でかわしていこう。
「…ナイスタイミングだぜ!」
灯璃・ファルシュピーゲル
【SIRD】一員で参加連携
無線で仲間と情報共有しつつ
敵の停車と同時に此方も停車
ハヤトさんの突入の動きに合わせ
即時に自身も車から躍り出て狙撃態勢へ
味方の攻撃で一瞬でも動きを鈍らせた処を
間髪入れず(スナイパー、先制攻撃、2回攻撃)及び
UC:オーバーウォッチで足と女性を抱える腕を精密狙撃。
逃走防止しつつ拘束を緩めさせる様に狙う
「engage!(一瞬、アイコンタクトして即射撃)‥後は宜しく」
仲間と包囲後は指定UCを発動
狼達を敵と女性の間に割り込ませる様に襲わせつつ
敵の動きを監視(戦闘経験、情報収集)し攻撃を予測
味方の死角をカバーするよう狙撃で敵の反撃を潰しつつ
ハヤトさんと連携して戦います
※アドリブ歓迎
ルトルファス・ルーテルガイト
(アドリブ連携絡み歓迎)
・成金討伐優先
(※かぼちゃルートを避け、回り込んで吊り橋前の成金の所へ)
「…何処へ行く気だ、金の亡者。」(『恐怖を与える』視線で怯ませ)
・先程、勝手についてきた腰巾着軍団をけしかけながら
自身はつり橋の前へ、もしも成金が吊り橋にいるのなら吊り橋の中央へ
…何をするのかといえば。
「…落ちろ。」
と『選択UC』で吊り橋に直撃させ、【直撃地点の周辺地形を破壊】
すなわち、吊り橋を破壊する。
渡らなければ、其の儘吊り橋前で立ち往生、其の儘影朧をぶった切り
渡り途中なら、一緒に影朧と落下
自身は【激痛耐性】で耐えながら、落ちてきた影朧をぶった切り
…どっちにしても、生かす道理などない。
黒木・摩那
やっと追いつきました。
もう足が棒ですよ(車に引っ張ってもらったけどね)。
小夜さん救出を優先するとして、成金の注意を小夜さんから逸らす必要がありますし、足止めもしたいところです。
まず、UC【紫電翔剣】でルーンソードを操作して、成金の周りにぐるぐる飛ばすことで牽制します。銃弾と違って、モノが大きい分、脅威が目に見えますからね。
救出が完了したら、飛ばしていたルーンソードで成金を退治します【先制攻撃】。
お金を燃やしたり、飛ばしたりしてるみたいですが、距離があると、そもそもお札が見えないんですよね。見えないお金ではせっかくの高額紙幣も価値が半減です。
ガーネット・グレイローズ
自慢の車はガス欠のようだな。ついに追い詰めたぞ!しかし、このつり橋はかなり揺れるな。サイキック能力で数センチだけ<空中浮遊>して、金蔵を追いかけよう。…さすが元農民、あの年で女性を抱えて走り続けるとは健脚だな。
「そこまでだ、止まれ!」
人質を抱えているし、いきなり全力攻撃はまずいか。まずはブラックバングルからやや出力を落とした<衝撃波>を撃って牽制だ。しばらくすると相手は札束を投げてくるだろうから、しゃがみこんで力をためて、<カウンター>の【サマーソルトブレイク】で蹴り返すぞ。
その女性を抱えたままでどう防ぐ? 燃えるのはお前か、それとも愛する人か。さあ選べ、愛か、金か!
霧ヶ峰・星嵐
【SIRD】で参加
帝都の人々に害をなす影朧……女性の敵は成敗します!
救出は他の人にお任せして、私はそれまで注意を引き付けながら時間を稼ぎます!
空中で帝都桜學府の制服に早着替えし、成金影朧の前に降り立ち、軍刀の形状の月ノ輪を構え、成金影朧が強行突破してこないよう威嚇します
他のSIRDメンバーにより小夜さんが救出されたら戦闘開始
投げられる金品は出来る限り見切り回避、仮に当たってどんな命令をされようと、帝都の守護者の矜持にかけて従いはしません!
ダッシュで接近し【強制改心刀】で一閃します
どんな人間だろうと、影朧になればできる限り転生を促すのが私たちの、學徒兵の役目です!
※アドリブ歓迎
ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動
ようやく追い詰めた様ですが…未だに小夜をさんを連れている以上、強引に攻撃する訳にはいきませんね。
まずは小夜さんの安全確保が先決です。また、橋を渡られると面倒ですから、それ以前に決着を着けましょう。
私はネゴジェーションを試みます。必要ならば、G19Cを置いて非武装なのをアピールし、成金の警戒心を多少なりとも下げます。無論、これらは他のSIRDメンバーが小夜さんを救助する行動の為の時間稼ぎです。小夜さんが救助されるまでは、可能な限り話を長引かせます。
小夜さんの救助を確認出たら、隠し持っていた結晶石を投げつけてUCを発動、成金を攻撃します。
※アドリブ・他者との絡み歓迎
城島・冬青
【橙翠】
ようやく追いつきました!
しかしこんな不安定な場所で人質を連れた相手と戦うなんて
もちろん私は小夜さんを助けますよ!
当たり前じゃないですか
成金の方はアヤネさん、お願いします!
無駄な抵抗はやめなさーい!
もし諦めて大人しくするのなら痛みを感じないよう優しく斬りますよ
…と投降を勧める
まぁしませんよね
小夜さんが吊り橋から落下したら
夜歩くでとーう!
マッハで空中キャッチしたら衝撃で小夜さんが大変なことになるので(RG18的な)速度には気をつけて救助します
彼女を安全な場所に退避させたらアヤネさんの援護へ急行
人質がいなければ躊躇しない
衝撃波を飛ばしダッシュで間合いを詰め斬りつける
その脂肪、削ぎ落とします!
寺内・美月
SIRD共同参加・通信網構築
アドリブ・連携歓迎
・全速を持って急行し、万一の事態に備え崖下にて待機。
・目標(小夜さん)を味方が奪還したならば、上昇しつつ吊り橋のロープを『片側だけ』切断し橋上にいる成金のバランスを崩す。
・敵が目標を放棄や保持な失敗、その他目標が崖下に転落するならば全力を持って目標を救出し味方に委託。委託後敵が渡りきらないように反対側(屋敷側)に急行し橋を封鎖する。
アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
間に合ったようネ
吊り橋で成金に追いつく
成金は倒すとして
小夜さんも助けるの?
ソヨゴはやさしいネ
では僕は成金を受け持とう
一応聞くけど
小夜さんを解放してくれない?
え、人質?
ゴメン僕には関係ないネ
依頼の成否に彼女の生死は関係ないもの
小夜さんを置いて全力ダッシュするのが君のベストな行動だけど
どうする?
どのタイミングでも
小夜さんが橋から落ちたら手筈通り
ソヨゴナイスキャッチ
大鎌をずるりと引きずり出し
UC展開
揺れる吊り橋に触手を伸ばし
体を支えて戦闘開始
札束に火を付けてきたら
実はこれ見たかったんだよネ
と、うれしそうに避け
じゃあこれで用済みだから
大きく鎌を振りかぶる
ソヨゴと息を合わせて終わりにしようか
メンカル・プルモーサ
【SIRD】のメンバーと共に行動。
……んー……まずは小夜を助けないとだね……
ネリッサが気を惹いている隙に…こっそり…【彼方へ繋ぐ隠れ道】を発動…小夜を私の元へと転移させるよ…人質確保ー…
…さて。人質を確保したらそっと邪魔にならない場所に置いて皆が足止めしてる間に箒に乗って吊り橋出口の方へ移動…
…【愚者の黄金】で吊り橋の出口に黄金の壁を使って故郷までの道を封鎖してしまおう…
…逃げ道を塞いだらそのまま上を取りつつばら撒いてくる高額紙幣は炎の術式で撃ち落として防御……
……上から術式による射撃で嫌がらせをして仲間の援護をするよ……
小夜啼・ルイ
キサ(f22432)と
橋を渡られたらかなり面倒そうだな
足止めに重きを置いた方がいいんじゃね?
キサが身体張るなら、こっちだってそれなりに働く
…あとお小夜呼ぶなって言ってんだろが(小声
UCの射程範囲に気を使いながら、自分の存在を勘付かれない様に
付かず離れずの距離で、物陰に隠れながらキサと成金の遣り取りを伺い見る
隠蓑に出来そうなアクションが発生したら、それも利用
気付かれないのが大事だ
キサの煽りは、見ているこっちもイラってなるな
それが狙いなのは分かってるけどさ
合図が目に入ったら、【Glacies】で成金の脚部を狙って氷柱を飛ばす
当たれば凍ってその場から身動きが取れなくなる筈だ。少しは時間稼ぎになるだろ
空目・キサラ
お小夜君(f18236)と
僕が成金の注意を引こう。お小夜君は良い具合の距離で忍んで様子見していてくれ
機が来たら僕がわざとらしく両手を広げる。それが合図だ
さて、成金を追って声を掛けねば
よく似てる、となれば
かつて手中に出来なかった女と同一では無い事が、自分で分かっているわけだ
つまり、ただ好みの人形が手に入ればそれで良いというのが本心だろうよ
まぁ金の力で何とかしようとしている時点で愚かだがね!
…と、ケラケラ笑って煽る
成金の意識が僕に向いたと確信を得たら、何か間違った事言ったかい?ってわざとらしく両手を広げる
良い感じに成金が身動きを取れなくなったら【泡沫心中】で錠剤を成金の口にザラザラ流し込むよ
太刀風・橘花
【SIRD】の仲間と行動する
敵は車両を乗り捨て逃げ出したが、人質がいる以上無理はできんな……私は仲間の援護に注力しよう
【歩兵の本領】で出動させた妖狐の歩兵を二隊に分ける
一隊は先回りをして橋を封鎖、同様に橋を抑えようとしている味方がいるならそれに協力する
もう一隊は狙撃兵を中心とし、私の指揮下で敵を狙撃できるようにする
狙撃兵に敵の足元や至近を狙い撃たせて敵を牽制し、紙幣のばら撒きなどを試みるようであれば札束もしくは腕を狙撃して阻止する(『スナイパー』『制圧射撃』)
【SIRD】の仲間が行動を起こすなら、必要に応じて『援護射撃』を行い支援するぞ
人質がいる間は狙撃で敵の行動を阻み、救出後は容赦なく攻撃だ
フィーナ・ステラガーデン
んー、正直なとこ攫われた子を殺しちゃったら目覚めが悪いわね!
抱えて走ってるならとりあえず追い抜かす気で杖に乗って吊り橋まで向かうわ!
ここで状況によって動きを変えるけれど
①成金より先に吊り橋についたならUCを使って吊り橋前で向かえ撃つわ!お金をばら撒かれたら一緒に暴風で吹き飛ばすわよ!
②同着、もしくはもうすでに吊り橋を渡っているなら吊り橋の下に向かって落ちそうならUCで陸地まで吹き飛ばすか、もしくは竜に攫われた子を乗せさせるわ!
別に落ちそうにないなら吊り橋に当たらないように「属性攻撃」による火球で足止めね!
丸焼きになるか、一緒に谷底に落ちるかどっちがいいかしら!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!
氏家・禄郎
目標:小夜の救出
ルール破りのダメージを誤魔化す為に
煙管から煙を吸って自分自身へ【マヒ攻撃】
コートのポケットに手を突っ込み、成金に向かって歩いていく
「なあ、君はどうして彼女が欲しいんだい」
『思考』開始
会話で時間を稼ぎながら頭の中をフル回転
「娘さんがかつての誰かに似ているからかい?」
「それとも、どんなに金があっても得られなかったものを知るためかい」
「分かってるだろう、その娘は似ているだけの贋作」
「けれど、金で動かない本質を持っている」
「あんたはその価値を知りたくて、攫った」
「外れかい、なら笑ってくれ。当たりなら……」
思考終了、【クイックドロウ】で抱えた少女を奪い取りにかかる
「彼女は返してもらうよ」
●追撃の初手
路面にタイヤを軋ませて、幾つもの車が止まる。
キィィィッ!
停車したバンパーがへこんだ車の後ろで、引かれていたダルマ自転車がブレーキの音を響かせる。
さらに路面にタイヤを軋ませて、『R56クーパーSカスタム』も止まり、『M1248/JSXF(M-ATV)』と【エンバール】がその後ろに止まる。
続々と車を降りる猟兵達の視線の先で、金ぴか車を乗り捨てた成金影朧は、えっほえっほと小夜を抱えて吊り橋を目指していた。
「人質がいる以上無理はできんな……」
「……んー……まずは小夜を助けないとだね……」
軍馬の上で構えていた歩兵銃を下ろした太刀風・橘花の言葉に、メンカル・プルモーサがゆっくりと頷く。
「さすが元農民。高齢だろうに女性を抱えて走り続けるとは健脚だな」
感心したように言いながら、愛車『BD.13』から離れて、ガーネット・グレイローズが片手を掲げる。
その手首でレアメタル製のブラックバングルが淡く輝きだした。
「そこまでだ、止まれ!」
『うおっ』
ガーネットが警告を発した直後、背中を押されたように成金影朧がつんのめる。
だが――それだけだった。
『今、何かしたか? この成金スーツ、安物スーツとは違うぞ!』
「……あのスーツは、ただの成金アピールじゃなかったのか」
いい気になった成金影朧の言葉に、思わず呻くガーネット。
だが、ガーネットとて、先の攻撃が効かないのは想定内。放った不可視の衝撃波は、未だ掴まっている小夜に被害が出ないように、威力をうんと弱めたものだ。
『攻撃とはな――こうするのだ!』
そんな事とは思わず、成金影朧はガーネットに札束を放り投げる。
成金影朧の手を離れた札束が放物線を描き――ボウッと燃え上がった。
「ならば私も見せてやろう――グレイローズ家秘伝の一撃!」
屈んで膝に力をためたガーネットの足が、地を蹴った。跳び上がった空中で、ガーネットが振り上げた片足が弧を描いた。
サマーソルトブレイク。
ガーネットの爪先に蹴り飛ばされた札束は、大尽の炎を纏ったまま、逆に成金影朧に向かって飛んでいく。
「その女性を抱えたままでどう防ぐ?」
成金影朧が小夜を抱えている限り、片手は確実に塞がっている。
「燃えるのはお前か、それとも愛する人か。さあ選べ、愛か、金か!」
『儂の答えは、金だ!』
だが、成金影朧はその札束を迷わず掴んだ。成金影朧の手の中で、炎は音もなく消えていく。札束を媒介に燃える大尽の炎は、術者の意のままに消す事が出来る類だ。
『儂の金の炎で儂を燃やそうなど、片腹痛い!』
さらにいい気になった様子でガーネットに言い放ち、成金影朧は再び走り出す。
だが――炎が届かないことなど、ガーネットは承知の上だ。
それでも愛か金か、と迫ったのも演技。
すべては、時間を稼ぐため。
●阻むものと降伏勧告
そして――ガーネットが時を稼いだ間に、空で桜が舞っていた。
「帝都の人々に害をなす影朧……女性の敵は成敗します!」
空中で帝都桜學府の制服に早着替えした霧ヶ峰・星嵐が、吊り橋の上に舞い降りる。
『ちぃっ! 小癪な!』
軍刀型の『月ノ輪』を突き付け行く手を塞ぐ星嵐の姿に舌打ちする成金影朧。
『だが、一人だけなら』
「っしゃ! 追い抜いたわよ!」
強引に突破する気だったか、懐から札束を手に吊り橋に踏み込んだ成金影朧の視線の先で、杖に乗ったフィーナ・ステラガーデンがやはり空から舞い降りた。
『ぐぬっ! しまった、追いつかれたか』
二人に行く手を塞がれ、さすがに足を止める成金影朧。
その金ぴかスーツの背中に、小さな光が当たっていた。
「目標を補足。距離、良し」
黒木・摩那のスマートグラス『ガリレオ』から放たれたレーザーポイント。
「軸線上に障害物なし……発射!」
紫電翔剣――クー・ド・エスパドン。
摩那の念動力によって、『緋月絢爛』が放たれる。まるで矢の様に高速で飛んだ細剣は成金影朧を追い越して、その目の前でぐんっと上昇していった。
『な、なんだ……この剣は』
困惑する成金影朧に切っ先を向けて、摩那は細剣をぐるぐると頭上を回す。
自身に刃を向けられると言うのは、落ち着かないものだ。ましてやそれが複数で、一つはひとりでに動いているとなれば――。
「無駄な抵抗はやめなさーい!」
足を止めた成金影朧に、城島・冬青が投降を勧めようと声を張り上げた。
――成金は倒すとして、小夜さんも助けるの?
――もちろん助けますよ! 当たり前じゃないですか!
投降を促す冬青の背中で風に揺れるオレンジの髪を眺めながら、アヤネ・ラグランジェは少し前にバイクの上で交わした会話を思い出していた。
この仕事に、小夜の生死までは含まれていない。
勿論、生きて助けられるならそれに越したことは無いだろう。だが、それは必須ではないのだ。アヤネだけだったら、冬青の様にそれを『当たり前』とは思えないだろう。
(「……ソヨゴはやさしいネ」)
胸中で呟いて、アヤネは少し眩しそうに翡翠の瞳を細め――。
「もし諦めて大人しくするのなら、痛みを感じないよう優しく斬りますよ!」
アヤネの目の前で冬青が告げた言葉は、摩那の細剣と星嵐の軍刀を突き付けられている成金影朧に対し、絶妙な脅しになっていた。
『誰が大人しくするか!』
「まぁしませんよね」
にべもなく成金影朧に返され、冬青が肩を竦める。
「ソヨゴ、あれじゃ説得じゃなくて脅しだよネ?」
「――え? あれ?」
アヤネのツッコミに、投降を勧めたつもりの冬青が小首を傾げる。仮に他の猟兵の行動がなかったにせよ、刀を持ってる冬青が言った時点で、充分脅しではないか。
「一応聞くけど、小夜さんを解放してくれない?」
『……何のつもりだ』
アヤネがフォローで人質解放を持ち掛けてみれば、成金影朧は訝しんでいた。
●ネゴシエーション
「でははっきり言いましょう。人質解放の交渉ですよ」
そこに、【SIRD】のネリッサ・ハーディが話に加わろうと口を開いた。
更にネリッサは両手を広げて、成金影朧に掌を向ける形で軽く掲げる。何も武器を持っていない――そうアピールするためのジェスチャー。
ネゴシエーションの一歩は、相手を交渉の席に着かせる事だ。
『ふんっ。人質をみすみす手放すものか』
「ですが決め手に欠けるでしょう」
小夜の解放を拒む成金影朧に、ネリッサが落ち着いた口調で告げる。
「その女性が人質足り得るのは、私達が彼女の無事と救出を望んでいるから。ですが、私達も完全に一枚岩ではないのですよ」
ネリッサの言葉を肯定するように、何人かの猟兵が無言で頷く。
「もしもあなたが、それが叶わないと私達に思わせる行動をとったら――こちらも強硬手段も辞さない。つまり人質を抱えていても、取れる手は限られるのですよ」
「そうそう。小夜さんを置いて全力ダッシュするのが君のベストな行動だけど?」
『………』
ネリッサの言葉に、アヤネも続ければ、成金影朧が押し黙る。
「今ここでその女性を置いていくのなら、橋を渡れるように計らいましょう。橋上にいる1人は知己ですから」
ネリッサが視線を向ければ、星嵐が無言で首を縦に振った。
『ぬぐぐぐ……ぐぅぅぅ』
人質か、橋の向こうか。
ネリッサに二択のカードを突き付けられ、成金影朧は――。
『いいや! その手には乗らんぞ! この女は人質以上に価値がある』
どちらのカードも捨てる事を選んだ。
●探偵達の推理
その選択に、ネリッサの後ろで事態を見守っていた探偵達が動き出す。
「人質以上の価値? 君はどうしてそこまで彼女が欲しいんだい?」
ずっと吹かせていたキセルに蓋をしながら、氏家・禄郎がまず問いかける。
「娘さんが――かつての誰かに似ているからかい? それとも、どんなに金があっても得られなかったものを知るためかい」
『似ている、だと? そうか。怪人どもの誰かが口を滑らせたな』
ロングコヲトのポケットに手を突っ込んだ禄郎の問いに、成金影朧が眉をしかめる。
「よく似てる――それは否定しないんだね」
成金影朧が発した言葉のその意味を、もう一人の探偵――空目・キサラは聞き逃していなかった。
「かつて手中に出来なかった女と同一では無い事が、自分で分かっているわけだ」
「言ってみれば、その娘は似ているだけの贋作のようなもの」
キサラだけではない。禄郎もまた、気づいている。
探偵になった経緯も、探偵としての活動もまるで違う。
けれども、二人とも探偵だ。目の前に犯人がいて、明かされていない謎がある。解き明かそうとせずになど、いられるものか。
「分かっていながら、何故にそこまで拘る?」
探偵としての欲求と、戦略の為に。禄郎が『思考』をフル回転させる。
「その娘さん、玉の輿と言われるのを嫌がっているそうだね。つまり、金で動かない本質を持っている。あんたはその価値を知りたくて、攫った――外れかい?」
外れなら笑ってくれ――そうと告げ、禄郎は成金影朧の様子を伺う。
『クッ……クハハハハハッ!』
そして、成金影朧は笑ってみせた。
『金で動かない本質? その価値を知りたい? そんなもの、あるものか』
告げる成金影朧の瞳に、赤い欲望の光が滾る。
『金で動かぬ心などない! この娘とて、儂の元で尽きぬ財のある生き方を知れば、考えも変わる筈だ。そうでなければならない!』
それこそが、この成金影朧の――成上・金蔵の本心で、未練。
『愛だろうが何だろうが、金で買えぬモノなどあるものか!』
かつて、愛を金で買おうとして――故に身を滅ぼした男がこの世に残した未練。
これはもう、言ってしまえば復讐の類だ。
復讐のために帰って来たのか、帰って来た後で似た顔で似た思考の女性を見つけて復讐を思いついたのか。
それはもう――どうでもいい事だろう。
「つまり、ただ復讐に都合の良い人形が手に入ればそれで良い、というのが本心か」
そんな成金影朧の本心を、キサラが鼻で笑ってみせる。
キサラが探偵として求めているのは、理解に苦しむ位の猟奇と狂気だ。言葉に表せてしまう程度では――物足りない。
「そんなもの、愛ですらない。好みの人形を求めていた方が、まだマシだね?」
『儂ほどの財力もない小娘に何が判る!』
「判るさ。金の力で何とかしようとしている時点で愚かだと言う事がね!」
キサラの指摘に成金影朧が声を荒げれば、キサラはさらにケラケラと嗤ってみせる。
『小娘が――!!!』
「何か間違った事言ったかい? 怒るのは図星の証だよ」
成金影朧の怒りの視線を浴びながら、キサラは――大仰に両手を広げてみせた。
●氷は潜む
(「良くやるぜ……見てるこっちもイラっとする」)
降りた車の陰にそのまま身を潜めて様子を伺う小夜啼・ルイの耳に、成金影朧を煽るキサラの声が聞こえる。
そうさせるためにやっている事なのは、判っている。
だが――相手がああいう影朧だから無事で済んでいるようなものだ。
(「ったく……キサにあそこまで身体張られたら、こっちだってそれなりに働くしかねぇじゃねぇか」)
胸中で、溜息を飲み込む。
どれだけヒヤヒヤさせられても、ルイはそれを表に出さないように努めていた。
今のルイが優先すべきは――成金影朧に、己の位置を気づかれない事だ。
そして、潜み様子を伺うルイの視線の先で、キサラが両手を広げる。
その仕草が合図だと、禄郎の(拝借した)車から降りる前に、ルイとキサラが交わした約束。
それを確認したルイは、車の後ろに回り――地面に伏せた。
成金影朧は靴も特徴的だ。車の下からでも、その靴だけで十分に狙える。ルイが伸ばした腕の指先に、冷気が集う。
瞬間、氷が迸った。
Glacies――業の名は、氷そのもの。
ルイの放った鋭く冷たい氷柱は、低い軌道を描いて飛び、成金影朧の膝に当たってその片足をがっちりと強固な氷で覆う。
(「いいタイミングだよ――お・小・夜」)
(「どうせまだ、お小夜、って言ってんだろ。もう紛らわしいからやめろっての」)
胸中でキサラとシンクロしながら、ルイは二発目の氷柱を放った。
●手品と包囲と
『あ、脚が!?』
「今です!」
成金影朧が気が付いた時には、足が凍り付いていた。
その驚きを見るや否や、ネリッサが横髪で隠していた【SIRD】の無線に繋いだマイクを手繰り寄せ、短く一言を告げる。
『やはり罠か!』
「さぁ――どうでしょう」
成金影朧に睨みつけられても、ネリッサは涼しい顔で受け流す。実際、無手をアピールまでしてネリッサが試みた交渉は、人質の解放を出来ると思っての事ではない。
第一の目的は、ガーネット同様の時間稼ぎだ。特に【SIRD】の為の。
「パーティの開始だ。派手に飛んでかますとしようぜ!」
車の陰から飛び出したハヤト・ノーフィアライツが、成金影朧へ向かって駆け出す。
『どうせ貴様も金が欲しいのだろう。欲しいなら呉れて遣るぞ?』
成金影朧が懐から取り出した札束を、放り投げる。
それを見たハヤトは、ちらりと後ろに視線を送り――。
「engage!」
防護車の屋根の上で灯璃・ファルシュピーゲルが短く告げると同時に、ハヤトが走る足を止めずに一歩、身体を横にずらした。
パンッ。
直後、乾いた音が響いて札束が空中で弾ける。
防護車の屋根に伏せて、灯璃が構えた狙撃銃『Failnaught』による狙撃だ。大型消音器を備えたその銃口は、音もなく弾丸を放つ。
ましてや、灯璃とハヤトが交わした合図は視線と仕草のみ。
『な、なにをした……!』
成金影朧は、何が起きたか判らずにいた。
「後は宜しく」
「ああ、ナイスタイミングだぜ!」
そして紙幣が舞う中、ハヤトが灯璃に返して、高く跳び上がった。
「さぁて、手品の時間だ。お前さんにタネが見切れるか、試してみるとしよう!」
驚く成金影朧の頭上を飛び越えながら、ハヤトが放つは極細の糸。
――ファルコン・ストリングス。
ナノマシン製の強固なワイヤーを成金影朧の腕に絡めると――ハヤトは勢いそのまま、吊り橋の外へと飛び出した。
重力に引かれハヤトの身体が落ちて行く。当然、ワイヤーは引かれる。
『な、なんだ!? 儂の腕が勝手に!?』
まるで手品の様に、成金影朧の片腕が勝手に持ち上がったところで、ハヤトは空中に浮かんで落下を止めた。
これで、成金影朧が自由に動かせるのは――小夜を抱えた腕一本。
「彼女は返してもらうよ」
言うなり、禄郎の手元で火花が散る。
両手をロングコヲトのポケットに突っ込んでいた筈の禄郎の手には、いつの間にか三十八口径の拳銃が握られていた。
聞き出したのは本心の真逆と言えたが、それでも禄郎は推理し『思考』を深めた。
その結実が、抜いた動作も見せないクイックドロウ。
そして禄郎に合わせて、灯璃ももう一度、『Failnaught』の引き金を引いていた。禄郎の一発目が肘を撃ち、灯璃の二発目が肩を撃つ。
二発の銃弾に撃たれて成金影朧の腕の力が緩んだ。その腕から、抱えていた小夜がズルリと落ちて行く。
未だ、小夜は目覚めていない。
落ちれば目を覚ますだろうか。それとも、吊り橋を支える縄の隙間から落ちてしまうだろうか。
橋の上ではフィーナが杖を手に飛び出そうと、橋の外では冬青が黒蘭の花弁を纏う。
されど、【SIRD】は誰も動かない。
その必要がないからだ。
『秘されし標よ、拓け、導け』
メンカルが装甲車【エンバール】の陰で、淡々と詠い唱える。
その声は無線を通じて、【SIRD】の面々に聞こえていた。
『汝は道程、汝は雲路。魔女が望むは稀人誘う猫の道』
彼方へ繋ぐ隠れ道――ロード・コネクト。
この局面でメンカルが行使したのは、空間転移の術。されど、それは唱えたメンカル自身を転移させるものではない。
『??? 小夜が消え――!?』
成金影朧の目の前で忽然と消えた小夜は、遠く離れたメンカルの手の中にいた。
「人質確保ー……脈拍……多分、正常……」
メンカルは確かめた小夜の無事を無線で告げると、そのまま後ろの装甲車の中へと運んでいく。
『な、なにが……今、何をしたのだ、貴様ら!』
「答える必要はない!」
ありありと動揺する成金影朧を、橘花が一喝した。
「人質がいなくなった今、最早遠慮は無用! 誘拐のみならず、それを隠すために夜の街を騒がした罪――到底、見過ごせん」
罪状を並べつつ、橘花が軍刀を掲げて気炎を上げる。
「歩兵、前へ!」
橘花が告げると同時に、小火器で武装した妖狐の兵士達が現れた。
半数は、橘花の後ろで小銃を構えて。
そしてもう半数は――谷の向こう。吊り橋を渡った先へ。
妖狐兵はそれ自体が、橘花の業だ。橘花がいる場所に、喚ばれる存在。その行動範囲は橘花を中心に1700mを超えている。
それは、吊り橋の長さよりも遥かに広い範囲であった。
●お金の力(物理)
「撃ち方用意――射ェ!」
橘花の号令で、二十一の銃口が火を噴く。
『くっ……高額紙幣だぞ、呉れてやる! ほうら、拾え!』
妖狐兵達の狙撃に対し、成金影朧は紙幣で張り合ってみせた。懐に手を入れては紙幣を何枚も引き抜いて、ひたすらばら撒き続ける。
「援護します」
灯璃が成金影朧の手を撃って阻害するが、成金影朧の手から離れた高額紙幣は、弾丸に負けじと飛び始める。
高額紙幣は橘花の妖狐兵達を怯ませ、ハヤトが絡めていたワイヤーをも断ち斬るほどの威力をみせていた。
「うぉっ!?」
自身の支えにもなっていたワイヤーを斬られ、ハヤトは少し慌てて新たなワイヤーを吊り橋に絡める。
「え、それ、本当に紙幣なんですか……? こう遠いと見えないのですが」
離れた所から『緋月絢爛』を念動力で操り飛び交う紙幣を斬り裂きながら、摩那が訝しむように声を上げる。
実際、もうあれお金って言っていいのか疑わしい。
「見えない上に疑わしいお金では、折角の高額紙幣も価値が半減です」
『だったら近くによって見ればよかろう! 何なら呉れてやるぞ?』
紙幣の価値を落とそうした摩那に、次々と高額紙幣をばら撒き続けながら、成金影朧が言い放つ。
「嫌です。もう足が棒ですよ。一歩も動きたくないんです」
その言葉をさらりと流して、摩那は車で引っ張って貰ったことなどおくびにも出さずにしれっと告げてみせた。
『お前確か車で引かれて――』
「足が棒なんです」
成金影朧のツッコミも、摩那はどこ吹く風である。
「今すぐこの棒になった足を治せますか? 治せませんよね?」
『高額紙幣も知らん庶民の戯言だ!』
摩那の無茶振りを成金影朧は右から左へと聞き流し、高額紙幣をばっさばっさ。
ばら撒かれ続けた高額紙幣が、さながら紙幣の旋風と吹き荒れる。
これには、流石に猟兵でも無傷で近づくのは難しい。
「攫われた子を殺しちゃったら目覚めが悪いから静かにしてたけど、もう遠慮しなくていーのよね!」
フィーナの口元に、にまりと笑みが浮かぶ。
トレードマークの帽子を片手で押さえ、残る片手で杖を掲げて。
「出なさい誇り高き竜!」
フィーナが高らかに告げれば、その背後の空を炎が走る。
炎は大きな円をまず描いて、その中を縦横無尽に迸る。
「全部ぶっ飛ばすのよ!」
虚空に描かれた炎の魔法陣から、まず出てきたのは顎。それは、かつて別の世界でフィーナが死闘を繰り広げ牙を突き立てた暴竜――その霊。
「そんな薄っぺらいの、何枚だろうがぶっ飛ばしてやるわ!」
絶望をも吹き飛ばす嵐を呼ぶ翼によって起こされた荒れ狂う風が、成金影朧の放った紙幣を悉く飲み込んで、吹き飛ばしていく。
フィーナが術の前に帽子を押さえたのは、飛ばされないようにだ。
『ばばばばばば』
ばかな、とか言いたかったのかもしれないが、暴風をまともに浴びている成金影朧は頬が風に流されていて、満足に喋れる状態ではなくなっていた。
なんでそんな事になったかと言えば、まだ足が凍っていたからである。
(『このままでは……仕方ない!』)
暴風の中、成金影朧が今度は札束を取り出し――それを足元に叩きつけた。
ボウッ!
札束から上がった炎が、吊り橋へと伝わっていく。
『儂の目の赤い内は、大臣の炎、容易く消させはせんぞ!』
フィーナの竜の暴風にも負けずに燃え上る大尽の炎もまた、ユーベルコード。成金影朧は札束を次々と放り投げて、周囲に大尽の炎で壁を作る。
『ふう……これで明るくなったな』
その熱で、成金影朧の足を覆っていた氷も溶けつつあった。
だが――溶けたところでどうすると言うのだ。
橋の中腹には星嵐とフィーナがいる。星嵐は今にも斬りかかれる構えだし、フィーナが先ほど放ってみせた暴竜の風は、いかに影朧とて逆らって進むのは容易ではない。
(『どうする……儂はどうすればいい』)
「――これ見たかったんだよネ」
惑う成金影朧の後ろで、どこか楽し気なアヤネの声が上がり――大尽の炎が割れた。
『なっ!?』
驚き振り向いた成金影朧がまず見たものは、湾曲した刃。
『Scythe of Ouroboros』――普段はアヤネの体内に格納されているウロボロスの大鎌の刃は、火種の札束を斬り裂いていた。
大尽の炎自体は暴風にも耐えるとしても、火種を斬られてしまえば別だ。
それは、最初にガーネットが蹴り返してみせた事でも明らかである。
『く、来るな!』
「一度見れば、充分なんだよネ」
成金影朧が慌てて放ってくる炎を纏った札束を、アヤネは炎が広がる前に次々と斬り落としていく。
その体は、吊り橋を支えるロープに伸びたウロボロスの触手で支えられていた。
「じゃあこれで用済みだから」
吊り橋の揺れをモノともせずに大鎌を振りかぶり、一歩一歩迫るアヤネは――成金影朧の目には、さながら死神に見えただろう。
『き、斬られて溜まるかっ』
成金影朧が選んだのは、前の炎を消して逃げる事。
瞬間、黒い花弁が舞った。
「人質がいなければ、躊躇しませんよ! その脂肪、削ぎ落とします!」
夜歩く――黒蘭の花弁を纏った冬青が、舞い降りるなり花髑髏を振り下ろす。
同時に、アヤネも大きく踏み込んで大鎌を振るっていた。
『ぐ、が……』
二つの刃が、成金影朧を前後から斬り裂いて――ドサドサドサッ。
大きく裂かれた金ぴかスーツの中から、落ちてくる札束。
「脂肪じゃなくて……お金!?」
「でも無傷じゃないみたいだよ?」
驚く冬青に、アヤネが大鎌から滴る血を示す。
ついに手傷を追った成金影朧。
さらに追い詰める白と黒の光が、橋の下で膨れ上がった。
●崩壊
恐らくこの場にいる誰よりも早く空を飛べる寺内・美月は、少し遠くまで離れたところで空から谷に入り込み――ずっと、吊り橋の下にいた。
上を見上げ、一人黙して佇む。
万が一、小夜が転落するようなことがあったら、上から追っては間に合わないかもしれない。だが、美月の飛翔速度なら、下から飛んで受け止める事は可能だ。
『人質確保ー』
そして――【SIRD】の無線で、メンカルから小夜の無事が美月にも伝わる。
後はもう、いつ動くか。
紙幣が飛び交い、炎が吹き荒れるのを見上げて。
「南木の護符による第一次封印を解除」
闘戦覚醒を発動した証たる白と黒の輝き。神気と殺気の具現たる極光を纏って、美月は飛び上がった。
膨れ上がった光が、ほんの数秒で吊り橋に到達する。
その光を纏った美月は吊り橋に並んだ瞬間、二刀を振るった。
白鞘の多知『繊月』、黒鞘の多知『司霊』。白と黒の刃が断ち斬ったのは、成金影朧――ではなく、吊り橋を支えるロープ。
美月は高速で飛びながら、吊り橋のロープの片側だけを斬って回っていく。
そんなことをすれば、ただでさえ不安定な吊り橋が、大きく傾き揺れ動く。
『なぬぬぉぉぉあぁぁぁ!?』
斬られた傷が痛む身体に鞭打って、傾いた吊り橋から落ちまいとまだ斬られていないロープに手を伸ばす。
成金影朧は、気づいていただろうか。
少し前までの、片腕をワイヤーで吊り橋に掛けられ、足を凍り付かされた状態であったならば、例え吊り橋が傾いても、むしろ今より安定していただろうと。
この窮地は、なまじ自由を取り戻したが為であると。
勿論、それはそれで不利な点もあるが――やる事なす事、裏目っている。
『くそ! こんなところで……やられてたまるかっ!』
斬られた腹と背中から朱を滲ませながら、成金影朧は不格好に掴まりながらも、必死に揺れる吊り橋の上を進もうとする。
「逃がしはしません!」
「丸焼きになるか、谷底に落ちるかどっちがいいかしら!」
揺れる吊り橋の左右には、空中に逃れた星嵐とフィーナがいる。
『ええい、これは儂の橋だぞ! 通さぬか!』
成金影朧の恫喝が、谷に空しく響く。
どれだけ言葉にしたところで、猟兵相手に誇れる財などこの場にないと言うのに。
よしんば二人を何とか突破したとて、橋の向こうには橘花の妖狐兵がいる。
「渡ったとして――何処へ行く気だ、金の亡者」
さらにそこに新たな猟兵の声が響いた。
長い黒髪を風になびかせ、ルトルファス・ルーテルガイトが成金影朧の正面から、吊り橋を渡ってくる。
『大先生!』『やっちまえ、大先生!』
ルトルファスの遥か後ろには、(勝手に)舎弟になった怪人と配下がいたりする。連中に着いた果実的野菜っぽい歯型が苦労を伺わせるが、まあ置いておこう。
「お前の行き先――俺が決めてやろう」
冷たく告げて、ルトルファスが両手を掲げる。
『荒ぶる土霊の拳は地を砕く、驕る者に鉄槌を下せ!』
唱えた言葉に応えた土霊の加護は、ルトルファスが掲げた両手の中に岩石の大剣と言う形を持って現れた。
「生かす道理などない――…落ちろ」
見た目通りに重たい岩石の大剣を、ルトルファスが振り下ろす。
それは陸地で使えば、地形を砕く威力を誇る一撃。
既に不安定になっていた吊り橋が――そんなものに耐えられる筈もない。
足場の板から、それを支えるロープへ。伝わる衝撃が、吊り橋を構成する物品を次々と砕いていく。
「吊り橋……壊れちゃいましたね」
「でもこれで、次はきっともっと丈夫な橋になるネ」
ウロボロスを解いたアヤネを抱えて、冬青は夜歩くの飛翔能力で崩壊する吊り橋から離れていく。
冬青の様に、飛べる力を持つ猟兵は多い。だが――。
『うおぉぉ落ちるぅぅ!?』
金はあれど空を飛ぶ力を持たぬ成金影朧は、足場を失いなす術なく落ちていく。
――筈だった。
●望むこと
「うおらぁ!」
吊り橋を支えていた杭にワイヤーを伸ばし、崩れ落ちる吊り橋の残骸を足場に跳んだハヤトの靴底が成金影朧の背中を蹴り上げる。
そこに高速で昇ってくる白と黒の光。
「殺しはしない――」
『繊月』と『司霊』の刃を返し、美月は二刀の峰で蹴り上げられた成金影朧の背中を叩いて、更に高々と打ち上げる。
「……」
上で待ち構える星嵐は、再び桜の羽衣を纏い退魔刀を構えていた。
――転生を試みたい。
作戦に移る前、星嵐は【SIRD】の面々にそう伝えていた。
何故と問われれば、星嵐にとって、學徒兵とはそういうものだから。
「影朧ならばできる限り転生を促すのが私たちの――學徒兵の役目です!」
星嵐が構えた刃に、霊力の輝きが宿る。
『くっ……何をする気か知らんが、させんぞっ!』
成金影朧は残る力を振り絞り、高額紙幣を頭上へとばら撒く。
「汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
空中に浮かんでいたメンカルが、紙幣にシルバームーンを向けて唱える。
球数を減らし、発動を速めた詠唱短縮。
「ふーん、そういう事! 手伝うわ!」
成金影朧の妨害をすればいい――メンカルの放った白炎でそこだけ察したフィーナも、杖を向ける。
メンカルの白炎と、フィーナの黒炎。
通常でありえない色の炎が、高額紙幣を飲み込み焼き尽くしていく。
『おのれぇぇ! ならば札束を呉れてや』
「時空に住みし執念の追跡者よ、我の召喚に従い彼の者を喰らい尽せ」
「Sammeln!Praesentiert das Gewehr!」
何度でも、金を出そうとする成金影朧。だが、その手が懐に伸びるよりも早く、左右の腕に二種の獣が食らいついた。
一つはネリッサが投げた小さな結界石より喚ばれた、不気味な獣。時空に潜みし貪欲な猟犬――ザ・ハウンド・オブ・ティンダロス。
もう一種は、灯璃の展開した全ての光を飲む漆黒の霧より、成金影朧の戦意に反応して飛び出した狼のような影の群れ――狼達≪Kamerad≫。
「心を入れ替えて、出直してくるのです!」
そこに、星嵐が刃を振り下ろす。
強制改心刀。
斬った相手の精神――それも邪心のみを斬る業が、成金影朧を貫いた。
空中で蹴られたり打ち上げられたりしている内に、成金影朧の身体は吊り橋があった場所ではなく、元いた――金ぴか車を停めた辺りにまで戻されていた。
そして、猟兵達が待ち構える中に、力尽きた成金影朧が落ちてくる。
果たして――その邪な心は消えたのか。それとも――。
『……。……』
「ああ、もう喋らないでいい」
泡沫心中――何か喋ろうとした成金影朧の口に、キサラが高濃度に濃縮された睡眠薬をざらざらと流し込む。
そして――成金影朧の瞳から、ぎらついていた赤い輝きが消えた。
●夜が明けて
戦いが終わって程なくして、小夜は目を覚ました。
一定時間眠り続ける類の薬を盛られていたのだろう。
猟兵達が少し朦朧とする小夜を連れて街に戻ったのは、夜が明けた頃だった。
そして――予定の時間よりは少し遅れたものの、小夜と青年将校の式は、恙なく行われたとの事である。
大成功
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