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空を拓く物語

#アリスラビリンス


●空の国
 深い海のような、雲一つない空。
 吸い込まれそうな紺碧の下、風が吹き抜け、花が咲う。

 茜に染まる空の向こう、星を探しに歩こうと誰かが唄った。
 満天の星空にはない、一番星の特別が欲しくて。

 夜の帳がおりても、彼らが踊ればそこは煌きの舞台。
 美しい夜空を彩る星は、誰の眸にもひかりを降らすの。

 ここは不思議な空の国。
 大地の代わりに敷き詰められたふかふか雲の絨毯は、歩けばふわふわ心も浮かぶよう。
 雲上にはたくさんのお花や木が育って、綺麗な川だって流れてる。

 けれどもここは空の国。
 仰げばいつだってそこにある空は。
 そこに住まう住人の……友人で、家族で、世界だった。
 見守っていてくれる。いつだって、大好きな空に会える。
 弾むように手を繋いで歩けば、大好きな空を迎えに行けた。

 その日、『いばら』が空を奪うまでは――。

●きらきらさんとそよそよさん
 青空の、遠くの森の方から、おかしな気配。空を隠すように伸び続けるいばらに、夜の世界のお星さま、きらきらさんたちが降りて来た。慌てて空を駆けて来た。階段を下りるみたいにとことこと。はねるみたいにぱたぱたと。
「あたらしいお友達かい? とげとげしているから、とげとげさんかな?」
 星が問うと、彼等のまわりを風のそよそよさんがぴゅるぴゅるり。吹き抜ける風に、きらきらさんはくるくるまわって瞬いた!
「なんてのほほんとしてるのかしらっ! こっちの夜空はまだだいじょうぶみたいだけれど、あっちの青空はもうだめよっ。だめだめよっ」
 くるくるまわって小さな竜巻になって、そよそよさんがぐるぐるさんになっちゃった!
「きらきらさんたちも手伝って! あっちの青空は、ぽかぽかさんがおりてきて、黄金のお花と戦っているわっ。このままだと、この国がいばらと黄金のお花にのっとられちゃうっ。そうしたらもう、あなたたちもお空できらきらできないのよ?」
「わ、わ、そんなのいやだっ」
 ならはやく! そよそよさんに後押しされて、きらきらさんたちも青空の方へ向かう。茜の空を、色んな時間帯の、或いは幻想的な空をこえ、走って走って煌いて。大切な空を守るため。いばらの方へときらきらら。

●空を拓け
「空の国って呼ばれているだけあって、アリスラビリンスにあるその国の空は、とっても綺麗なの」
 でもね、その空がいばらのとげとげで覆われて、住んでるみんなもきらきらの――動かない黄金にされちゃう。いつもは笑顔を絶やさない少女、エール・ホーン(ドリームキャスト・f01626)が神妙な面持ちでそう告げる。
「だからね、みんなにはまず、空の国に住んでいる子たちが、黄金のお花をやっつけるお手伝いをしてほしいの」
 黄金花と戦おうとしている愉快な仲間は、太陽のぽかぽかさん。星のきらきらさん、風のそよそよさんに雲のふわふわさん――みんな国を守るために必死に戦ってくれる。
 太陽のぽかぽかさんは、ちょっぴりあちちな太陽びーむが出せる。星のきらきらさんは、自分が放つきらきらを具現化して投げつける。風のそよそよさんは、ぐるぐると渦巻いて、小さな台風を起こす。雲のふわふわさんは、もこもこの雲を噴射できるようだ。どれも猟兵ほどではないけれど、使いようによっては黄金花と好戦できるくらいの力を秘めている。そんな彼らの戦いを手助けし、数を減らしてから自分たちはその先待つ、みんなの空を支配しようとする元凶の元へと向かってほしいのだと続けた。この国を救ってほしい。戦って、救って、また空が拓けたら。
「――普通、空は時間と共に移り変わっていくものでしょう?」
 でもその国では、空は自分たちで迎えに行くものなのだという。
 それがこの国では当たり前のことで、大好きな空を迎えに行くことが、この国の住人たちの楽しみなのだとも。具体的に言えば、場所によって空が固定されているらしい。あの場所は朝焼け空、この場所は青空、そして夕焼けに星空。昇る朝日を見に行きたいなら、朝日が昇る空を迎えに行けばいいし、煌く星空の下で流れ星を探したいのなら、夜空を迎えに行く。一定の距離を歩いて進めば、そこから見える空が滲むように移り変わって、不思議なことに、視界をしめるのはたったひとつの空――青空なら青空、夜空なら夜空という具合に、他の景色が入り込むことはない。
「――ね。お願い。みんなを助けて、一緒に空を迎えに行こう」
 その為に、どうか力を貸してほしいのだと。
 そう頭を下げてから、少女は集まってくれた猟兵達に微笑みかけるのだった。


紗綾形
 紗綾形(さやがた)と申します。
 どうぞよろしくお願いします。

 こちらは物語背景と童話系の宿敵フラグメントで合わせたちょっとした合同シナリオのひとつです。事件が起きている国は別々という扱いなので、ご参加は各シナリオご自由にどうぞ!

●第一章/集団戦『黄金花』
 OP通りの愉快な仲間たちがおります。オウガの軍勢は凄まじい大軍なので、猟兵だけでは倒しきれません。勿論愉快な仲間だけでも、倒しきることはできません。まずは協力して黄金花の数を減らし、ボスへの活路を開いてください。どのように協力するか、掛け合いなどを楽しんで頂ければと思います。

●第二章/ボス戦『いばら姫』
 無事黄金花の数を減らすことができれば、数の減った黄金花は愉快な仲間たちに任せ、いばら姫を倒しに向かうことになります。詳細は断章をご確認ください。

●第三章/日常『お伽噺の世界』
 この国でいう「空を迎えに行く」時間です。好きな時間帯、好きな色の空を見つけ、単純に景色を眺めてお話をしたり、景色を楽しみながらお茶会をしたり、愉快な仲間たちと一緒に遊んだりすることができます。不思議の国なので、虹色の空や、紫がかった空、爽やかな緑の空など、ちょっぴり変わった景色を見つけることもできるかもしれません。断章で詳細を追加します。こちらのみのご参加も、お気軽にどうぞ。

 三章はお声かけ頂いた場合のみエールがお相手させて頂きます。話し相手が欲しい時などにご利用ください。

 お手数をおかけしますが、各章プレイング受付期間に関する情報はMSページをご確認ください。
 有難くも多くのプレイングを頂けた場合、内容に問題がなくとも採用を見送らせて頂く場合がございます。(先着順ではございません)

 それではご参加、お待ちしております!
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第1章 集団戦 『黄金花』

POW   :    金色の誘惑
【めしべ】から【いい香りがする魔力】を放ち、【魔力を浴びた者を黄金に変える事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    金色の誘惑
【めしべ】から【いい香りがする魔力】を放ち、【魔力を浴びた者を黄金に変える】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    金色の誘惑
【めしべ】から【いい香りがする魔力】を放ち、【魔力を浴びた者を黄金に変える】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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旭・まどか


自ら空を迎えに行く世界、か
面白いね
叶うのならば、ずっとこの世界に居ても構わないくらいだ
……まぁ、それは夢物語でしかないのだけれど

きらきらさん
手伝って、くれるんでしょう?

――これはまた随分と物理的だけれど
お前たちはそれで良いんだね

いいよ
手伝ってくれるお前たちに、僕から施しを授けよう

見ているだけはつまらないだろう?
お前も行っておいで

手下はきらきらよりもそよそよとの相性が良いみたい

――当然だよね。識って、いるとも
お前は戦場を駆けてこそ、輝くのだという事を

疼くのならば共に駆ければ良い
風纏うお前たちの姿を、見ているよ

楽しいからって僕の事は忘れないで
魔力が飛んで来たら、ちゃんと風で飛ばして守ってよね




 白磁の指先が、柔い金の糸を掬う。
 駆けつけた場所。見渡す視界一体に広がっていたのは、天を覆い隠すように伸び続ける茨と、黄金の花だった。
 自ら空を迎えに行く世界。面白い、叶うのならばずっとこの世界に居ても構わないくらいだと。そう感じたのは、迎えに行きたい空が在るからだろうか。世界から余計なものを消し去ってくれる――そんな空が在るからだろうか。
 ずっとこの世界に――なんて願いは、夢物語でしかないことは理解っている。偽物の星を見上げるのと同じくらいの空虚を抱きしめて、それでも。
 一夜の夢が、現実となるこの世界に、旭・まどか(MementoMori・f18469)は立っていた。
「きらきらさん」
 黄金花に立ち向かう夜空の瞬きの化身。きらきらの彼らに声を掛ける。
「手伝って、くれるでしょう?」
 月明かりのような音だった。
「てつだってくれるの?」
 夜に輝く星たちにとって、その音は友達のように思えたのだろう。こてこて、左右に揺れる幾つもの星に、まどかはやや眉を顰める。
「質問に質問で返すって……否、そんなことを言っても仕方ないか」
 小さくごちて、いいよと続ける。
 手伝ってくれるお前たちに、僕から施しを授けよう。
 薄い唇から放たれる言葉のさき。
 天の――月の雫を受けて、星が纏う眩しさが増していく。
 嗚呼、嗚呼、早くやってくれ。
 ――僕にお前たちは少しばかり眩しい。
 眩しさに細められただけの眸も、やはり星たちには優しく思えて。
 ありがとう、ありがとう。空間を跳ね上がるように駆ける姿は嬉し気で、魔力が届かぬ距離から、具現化させた鋭利なきらきらを黄金花へと投げつければ、花が、葉が裂け土へと還っていく。
 その様子を見てか、傍らの灰狼が土を掻いた。
 それを撫でる素振りもなく、ただ言葉を。
「見ているだけではつまらないだろう?」
 お前たちも行っておいで。込められた鼓舞に、少年自身、気づいているのかは知れない。けれど。
「……当然だよね」
(「識って、いるとも」)
 戦場を駆けてこそ、輝くのだという事は、十分に識っている。
 ――共に、共に駆けたいと鳴いた気がしたのは気のせいか。
 その背を押すことはやはりしなくとも。
「疼くのならば、共に駆ければ良い」
 好きにおやり。風纏うお前たちの姿を、僕は見ているよ。ヒトで在った頃のことなんて、知りはしないけれど。分かることも、確かに此処に在って。風の傍ら、太陽の暖かさすら秘めた風を追う。
「すごいわ、かっこういいわ!」
 そよそよさんの風が魔力を吹き飛ばし、駆けた先の黄金を灰狼が裂いていく。戦えることが、駆けられることが楽しくて仕方ない彼らも、主人に及ばんとする魔力を、纏わせる風と共に払い退け。
「そう、楽しいからって、僕の事は忘れないでよね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

キトリ・フローエ


どこの世界でも空は綺麗だってこと、あたし、知ってるの
そんな空を自分達の手で迎えにいけるなんて、それだけでどきどきしちゃう!
夜明けの空も好き。昼間の晴れ渡った空も赤い夕焼けも
勿論、星空だって大好きなの
ここでは、どんな空に出逢えるのかしら?
大丈夫よ、みんな
あたし達の手でもう一度、いばらに覆われたあの空を拓きましょう!

星のきらきらさん達と一緒に
きらきらさんが攻撃しやすいように
範囲攻撃の夢幻の花吹雪で、敵の動きを鈍らせながら戦うわね
みんな、あの花の香りを吸ったり浴びたりしないように気をつけて!
あたしも黄金にはなりたくないから、第六感で敵の攻撃を予測しつつ
その動きを阻害したり、空を飛んで回避を試みるわ




 数多の世界を、星煌めく菫青石に映してきた少女は、キトリ・フローエ(星導・f02354)は知っている。
 どこの世界でも、空は綺麗だということ。
 ――だからこそ、思うのだ。
 空の国。そう名のついた世界の空も、綺麗に決まっている。
 今は茨で覆われてしまっていて、本当に僅かに漏れでたひかりで辛うじて視界がひらけているだけのこの場所も。棘の囲いが取り払われたなら、きっと。
 夜明けの空が好き。瑠璃紺を明るく染めるおひさまがひょっこりと顔を出す。おはようと挨拶をする、そんな日はいつもより少しだけ得をした気分になれる。
 昼間の晴れ渡った空が好き。露草の花に似た、目が覚めるような青の下にいると、歌声もいつもよりうんと響き渡る気がして。
 赤い夕焼けが好き。その燃えるような赤は、白い雲を、景色を一色に染め上げて。自分も空と一体になっているような、手を繋いでいるような気持ちになるから。
 それから勿論――。
 星空が大好き。はじまりすら知らなかった頃から、小さな身体を風に乗せ。宛てはなくとも、いつも傍にいてくれた、導いてくれているような気がした。幾億の星の下、夜の下、歌を奏でた。
「ねぇ、ここではどんな空に出会えるのかしら?」
 大好きな空を、自分達の手で迎えに行けるなんて。
 高鳴る鼓動を隠すこともせず、弾むままの心を音に乗せた。
 ステンドグラスのような羽根を煌かせる愛らしい少女の言葉に、吸い寄せられるように集まったきらきら達はキトリの傍で。
「どんなそらでも!」
「むかえにいけるよ!」
「いっしょに行く?」
 ぴょこぴょこと跳ね、楽しげに輝いた。
「あなた達と一緒だなんて、とっても楽しそう!」
 ぜひ――けれどもその前に、やらなくてはいけないことがあるから。
「その為にも、あたし達の手でもう一度、いばらに覆われたあの空を拓きましょう!」
 キトリがきっと取り戻せる、大丈夫よ。そう優しく笑いかければ、不安なんてきらきらに溢れて消え去ってしまう。がんばる、がんばる! さざめく星たちは、空飛ぶ少女に並び立った。
「みんな、あの花の香りを吸ったり浴びたりしないように気をつけて!」
「わかった!」
「ちゃんときをつける!」
 少女と星の周り、茨に混じり群生する黄金花。星たちはキトリの言葉に元気よく返事をするものの。そのめしべより排出される華やかで甘い香りを纏う魔力を、避けることは容易ではないだろう。
 キトリは、常は綻ぶ花纏う精霊である花蔦絡む杖を、小さな身体揺らしながら一振りしてみせた。すれば先端より放たれる無数の花弁が、黄金と仲間たちとの間の壁となり、魔力の排出される方向をあやふやに――或いはしっかりと阻んで。目配せすれば、その隙に。駆けあがった星たちが、少し高い場所から投げ込むきらきら。その間にも魔力が及ばぬよう、僅かな香りを羽ばたきかわしながら花を舞い踊らせた。
 キトリと星たちの攻撃に、花弁が、葉が裂け、一輪、また一輪と朽ちていく。
「やったー!」
「きみ、すごいね!」
 瞬き踊る星たちがばんざいと近づけば、一緒になってはいたっち。
「この調子で、どんどんやっつけましょ!」
 星の瞬きに負けぬほどの輝きを持って。
 少女はきらきらと、黄金花にまた、立ち向かう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァーリャ・スネシュコヴァ

空を迎えに行く…
確かにワクワクしか感じないな!
だからこそ、独り占めする輩はぶっ潰さないと!

みんな、助けに来たぞー!
敵が植物なら、俺の氷が十二分に効くはず
でも確かに数が多すぎる…
そうだ!

誰か強い風を起こせる人はいないか?
と空の国の住民に呼びかけ
いたならその住民に尋ねてみる
敵に強風を吹きかけてみてくれないか?
大丈夫、俺にいい考えがあるのだ!

住民が強風を敵に吹きかけたと同時に
俺はその風に氷の【範囲攻撃】を乗せる
そうすれば広範囲の吹雪攻撃が作り出せるはず!

吹雪攻撃で敵を減らせたり弱らせることに成功したら
『白炎舞』で範囲内の敵を一気に燃やしてやるぞ!

みんな怪我はないか?
うむうむ!とてもいい風だったぞ!




 もこもこの雲の上。降り立てば実感が湧いてくる、普通は時間と共に移り変わっていくそれを、この国では自らの足で探しに行く――否。
(「……迎えに行く」)
 青空、夕焼け空、それから星空。足の向くまま進んだ先、見上げた空が滲むように染まって包まれる。それは一体どんな感覚なのだろう、想像しても全く分からなくて。でも、ワクワクと胸が高鳴った。だからこそ。
「独り占めする輩はぶっ潰さないと!」
 どーん! と握った拳を天高く突き上げて、やる気に満ち溢れているゆきんこ、ヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)。
 そんな彼女の菫色の眸に映ったのは、どうやって戦おう、ともこもこ雲で作った壁に隠れて相談するこの国の住人たちだった。
 ふかふかと大地の代わりに敷き詰められた雲を駆けて、彼らの元へ向かう。もこもこの雲は、トランポリンとまではいかないが、走ればぽわんぽわんと弾むような足取りになって。元々バランス感覚に優れた少女は数歩だけ戸惑いを見せるも、すぐにそれを楽しむように。獣耳に似た髪も、それに合わせてふわんふわん。
「みんな、助けに来たぞー!」
 懐っこく駆け寄れば、わあと驚くのはきらきらさん。ひゅるりと渦巻いたのはそよそよさん。少し賢いふわふわさんがヴァーリャを護るように雲の壁を広くした。
「ふわぁっ、すごいな!?」
「ふわふわさんは紳士さんだからね!」
「ふわふわさんは賢いのよ」
「えっ、そんなことないです……」
 雲が控えめに俯けば、ありがとう! と笑うヴァーリャの眩しさに、更に照れたようにもくもくで顔を隠してしまった。不思議そうに覗き込もうとするヴァーリャに、星が問いかける。
「そうだっ、たすけにきてくれたんだよね? ぼくら、どうやってたたかおうってそうだんしてたんだ」
 何かいい方法、ある? こてりと少し傾いて見せる星に、ヴァーリャも一緒になって傾いて腕を組んだ。
「敵が植物なら、俺の氷が十二分に効くはず」
「こおり! こおりが出せるの?」
「じゃあきみはひえひえさん?」
「ぬわっ、俺はひえひえじゃないぞっ!? ……いや、冷たいのは好きだけどな? 俺はヴァーリャだ、よろしくな!」
「ばーりゃ!」
 少し舌ったらずに名を紡いだ星に、嬉しそうに頷く。しかし話がそれてしまったと、本筋に戻して――。
「ええっとな? 植物は氷に弱いはずなのだ、でもちょっと数が多いなって……」
 もこもこの隙間から覗けば、見えるだけでもいち、に、さん――……黄金花の数は多く、ただ闇雲に攻撃していたのでは、何時まで経っても全滅させることは困難だろう。うーんと悩むヴァーリャ。
「――そうだ!」
 菫色の眸が、実態を持たない風に声を掛けた。僅かに色づいた空気に、円らな眸が浮かぶ不思議な存在。確か。
「そよそよさん、と言ったか。敵に強風を吹きかけてみてくれないか?」
 俺にいい考えがある、そう提案するヴァーリャに。出会ったばかりの人であるけれど。助けに来た。そう言ってくれた彼女の笑顔と優しさを信じたかったから。風は頷く代わりにくるくると穏やかに渦巻いた。
 ヴァーリャの合図とともに、雲の隙間をびゅんと通り抜け、黄金花に向かって強い風を生み出すそよそよさん。甘い香りが、魔力が風に煽られていく――攻撃すらも無力化する。それがヴァーリャの作戦だ。しかしまだまだこれからとばかりに、メリェーリを振り翳し生み出した吹雪を、風によって更に広範囲に拡大させた。
「なんだかしおしおしおれてる?」
「げんきがなくなったの、すごい!」
「大成功、だな!」
 一体に広がる黄金化を一掃すべく、取り出すのは冬の名を持つ扇。――しかし生み出すのは冷たい雪ではなく。
 ――君の矛となれ、そう願った誰かの想い宿した白き炎。
 輝く花は、白く燃え逝く。
 ひとまず、とほっと息を吐いて、協力してくれた、見守っていた仲間たちに怪我がないことを確認するように駆け寄った。
「あなた、すごいのね」
 風がヴァーリャの髪を揺らす。
「とてもいい風だったぞ」
 少女は擽ったそうに微笑った――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

姫城・京杜
與儀(f16671)と

ん?王子様?
俺は超イケメンだからな!(どや
與儀は王って感じだよな
ああ、だからやっぱ俺は、王を護る騎士だぞ!

敵が植物なら炎の神な俺の出番!
ぽかぽかさんと一緒に炎大きくしたり
きらきらさんふわふわさんのキラキラもこもこに炎纏わせたり
そよそよさんの風で炎増大させ攻撃!

俺の黄金像!?イケメン像だろうけどよ…
與儀の像なら俺が毎日ピカピカに磨く…って、そうじゃねェな
任せろ、俺達がこれからもずっと主従で在る為にも
香りごと全部燃やす!

最優先は與儀絶対護る事だけど
與儀の風と合わされば、俺の炎に燃やせないもんはねェし
神の水と炎なら、空に虹だって架けられるからな!

この綺麗な空をみんなで護ろうな!


英比良・與儀
ヒメ(f17071)と

……お前この世界にいると、なんつーか…
童話の王子様とかできそうだよな
でもそういう顔するから残念極まりない
まァ、お前は俺の守護者……この世界風に言うなら、騎士か
俺の騎士くらいにしとけ

空を迎えにいく、か
雨空は嫌いじゃねェケド
俺達が迎えに行きたい空は、まァ……アレだな
そのために力を貸そう

良い香り、だけど黄金に変わる気はねェんだよ
ヒメのほうがこの相手には上手く対処でいるだろうから俺は援護
……黄金のヒメ像か…間抜けな顔してそうだな
いや、なるなよ?
そうさせねェために香りと魔力感じたら水を放って攻撃を
詰めは任せたぜ、ヒ……俺の騎士

愉快な仲間達の力も借りつつ、確実に倒していく




 不思議の国。それは嘗て捲った絵本の中に迷い込んだような世界。この空の国も例外ではなく、小さな足が踏みしめるのは、大地の代わりに敷き詰められたふかふか雲の絨毯。吸い込まれそうな花浅葱が映すのは、黄金花と交戦をはじめたばかりの、御伽話の中でしか出会えないような愉快な仲間たちだった。
「……お前、この世界に居ると、なんつーか」
 ぽつり。愛らしい少年の姿をした主、英比良・與儀(ラディカロジカ・f16671)が零した言葉に首を傾げたのは姫城・京杜(紅い焔神・f17071)。
「童話の王子様とかできそうだよな」
 燃える紅葉のような鮮やかな髪に、優し気な目元、整った顔立ちにスタイル。普通にしていれば、どこかの国の王子と言われてもおかしくはないだろう、けれど。
「ん? 王子様?」
 俺は超イケメンだからな! そんなふうに懐っこく、ふふんと鼻を鳴らしてみせる京杜に。そういう顔をするから残念極まりないんだ、そう思いながらも今更口にすることはせず、はぁと呆れたような、それでも何処か愛しさを滲ませたようなため息をひとつ零すだけに留め。
「與儀は王って感じだよな」
「まァ、お前は俺の守護者……この世界風に言うなら、騎士か」
 大きな双眸が柔く細められ、それから穏やかに閉じられる。
「――俺の騎士、くらいにしとけ」
 京杜が嬉しそうに笑んだのは何故だったか。
 俺の。当たり前に口にされる言葉を胸に。
「ああ、だからやっぱ俺は、王を護る騎士だぞ!」

 ふたりが加勢しに来たことを告げれば、黄金花から距離をとった太陽のぽかぽかさん、風のそよそよさんがやったー! と駆け寄ってくる。
「おてつだいしてくれるなら、はやく空をむかえにいけるね!」
(「――空を迎えにいく、か」)
 雨空は嫌いじゃない。雨は與儀にとって、縁深いものだから。ちらり見た先の従者も、きっと同じことを考えているかもしれない。けれど。
「俺たちが迎えに行きたい空は、まァ……アレだな」
 きっと想いは通じている。
「そのために、力を貸そう」
 與儀の言葉に、京杜は当然のように頷いた。
 敵が植物であるなら、炎の神である自分の出番。太陽のぽかぽかさんの協力を得て生み出す、それだけで大きな炎に、風の力を借りて更にそれを拡大させれば、黄金花はひとつ、またひとつと燃え屑となっていく。
「良い香り――だけど、黄金に変わる気はねェんだよ」
 相棒の方がこの相手に上手く対処できることは分かっている。だから與儀は、はじめから援護に徹することを選んだ。
「……黄金のヒメ像か……間抜けな顔してそうだな」
「俺の黄金像!? イケメン像だろうけどよ……」
 ちょっとした冗談で口にしただけなのだが、いちいち真に受ける京杜は、
與儀の像なら俺が毎日ピカピカに磨く――などとぶつぶつ続けて。
「――って、そうじゃねェな」
「いや、おう。なるなよ?」
「任せろ、俺達がこれからもずっと主従で在る為にも、香りごと全部燃やす!」
 自信たっぷりに言い放つものの、いくら炎の攻撃が強力であっても、これだけの数の敵相手だ。すべてを対処することは難しい。そんなことはきっと分かっていて、でもその心意気は確かに受け取ったというように優し気に笑んだ與儀は。甘い香り纏う魔力が、大切な相棒に及ぶ前に、手の内から生み出した水塊を放ち一掃してみせる。
 最優先は主を守ること。これは絶対だ。
 けれど、彼の風と合わされば、自分の炎に燃やせないものはない。
 それに。神の水と炎なら、空に虹だって架けられるから。
 一定の条件下でしか、生まれることのない奇跡じみた産物さえ、生み出すことは容易い。
「詰めは任せたぜ、ヒ……俺の騎士」
 言葉に、その瞬間、世界で一番幸せそうに笑む。
 お前の為に、この世界の為に力を奮おうと熱く心が燃える。
「――綺麗な空を、みんなで護ろうな!」
 合わせた背の熱。創造する炎、水。
 交わった先、生み出されるものは、花の黄金より美しく輝くだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
素敵な空
素敵な世界
黄金花も綺麗だけれど
皆の大切な場所…護らないとね

というわけで連携しようか
僕にいい考えがあるんだ

翼を広げて【空中戦】
まずは皆分散して攻撃を
致命傷は与えられなくてもいい
隙を作ってほしいんだ

ふわふわさんの雲で目眩し
広範囲が難しいなら、あっちの花には僕が★爪紅を【投擲】するね
爆発の煙幕で視界を奪ったら
キラキラさんはキラキラ攻撃で気を引いて
時間を稼いでくれるかな

足元に★どこにでもある花園を広げて
…ちょっと恥ずかしいけど【指定UC】
【高速詠唱、属性攻撃】で風を起こし
そよそよさんの台風と一緒に花弁を沢山舞い上げて
大きな花弁の渦にぽかぽかさんが熱を灯して
炎の渦の【範囲攻撃】

花は炎に弱いからね




 どんな時も見守ってくれる、素敵な空。
 空を迎えに行くことのできる、素敵な世界。
 黄金花すら綺麗だと思う心は、少女にも見える少年、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の純粋の表れだった。
「綺麗だけれど、皆の大切な場所……護らないとね」
「まもってくれる? ぼくらのそら、たいせつなそら」
 星が瞬き、雲が問えば、その眸の琥珀を柔く細め頷く。当たり前だよ、その為にここに来たのだと微笑んで。
「というわけで、連携しようか」
「れんけい? いっしょにたたかうってこと?」
「そうだよ、僕にいい考えがあるんだ」
 それまでここは、ずっと平和な国だった。悪意なんて一欠片も存在しない場所だった。ただ空を迎えに歩いて、大好きな空の下で、大好きな家族と、友達と一緒に過ごせばよかった。そんな彼等だったから、その身に宿した力の、有効な使い道が分からずにいた。
「おしえてっ、たたかうほうほう!」

 背に携えた純白の翼を広げる。
 ふわり、広げた先から零れ落ちた羽が一枚、そよそよさんの風に吹かれてひゅるりと舞い上がる。きれい、と落ちた言葉は少年には届かず、見惚れている仲間たちに不思議そうに首を傾げる澪は、早速作戦開始だよ、と笑いかけた。
 少年の指示通り、ふわふわさんはもこもこ雲を噴射して、自分たちと黄金花の間に壁を作った。それは攻撃の命中を下げる為の目眩し。澪が予想した通り、めしべから放たれる禍々しい魔力は正確さを失っていく。ある程度は避けることが可能だ。けれど念には念を――花はひとつではなく、無数に咲き誇っている。雲だけでは覆いきれない黄金花のまわり、ふわり投擲する爪紅が爆散すれば、発生した煙幕により更に命中力は削がれていった。これで黄金花の魔力を浴びる心配は大きく減った。
「キラキラさんっ」
「まかせて!」
 そうすれば今度はきらきらさんの出番だ。瞬きにより発生したきらきらな物体を、星たちが投げつけ、時間を稼ぐ間――。
 魔力を込め、聖痕を翳す。すれば足元の雲より芽吹き、軈て花々が咲き誇り、少年を取り巻く様に広がっていった。どこにでもある花園――そう少年は云うけれど、まるで奇跡のような光景だった。天使に仇なすものを払う――そこで笑う彼に仇そうと思う人がいるだろうか。そう思う程に、美しい光景だった。
「……ちょっと恥ずかしいけど」
 それまで、普通の少女のような容姿をしていた彼だったが。ひかりが包み込むと、弾けるような煌きと共に、豪華絢爛なドレスを纏った姿へと変身する。まるで童話に出てくる愛らしいお姫様のような姿となった澪は聖なる杖をくるりと回し、風の力を借りて台風を発生させ、足元の花ごと舞い上がらせていく。
「花は、炎に弱いからね」
 一気に行くよ! 太陽の光線を花びらに灯し熱く熱く。杖向けた先、自分達を守っていた雲の壁をすら吹き飛ばし、黄金は灰へと――骸へと還っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メリル・チェコット

わたしも空は大好き
羊達といっしょに、いつも空の下、歌ったり奏でたり、踊ったり
いつだって、今だって見守ってくれている
そんな空を奪うだなんて、欲張りさんは懲らしめちゃうよ!

魔力を浴びると黄金になっちゃうのは厄介だなぁ…
そうだ、ふわふわさん、あなたの雲で敵の攻撃を覆ってしまって防ぐことはできる?
魔力を浴びないよう距離をとりながら戦うけど、
あまり遠すぎるとこっちの攻撃も当たらないから、ある程度は近づきたいんだ
わたしはUCで一気に攻撃しちゃうから、守りはおまかせできないかな?

ふふ、あなたの白くてもこもこの雲、ふわふわした羊の毛みたいで素敵だねっ




「わたしも空は大好き」
 おひさまが輝かない、茨の下でも。おひさまのひかりをいっぱいにくるんだ髪を揺らし、陽だまりの優しさを宿した双眸を柔らかく細めれば。
「いっしょ?」
「そう、一緒!」
 尋ねるちいさな雲に、メリル・チェコット(コットンキャンディ・f14836)はこくり頷いた。同じは嬉しい。自分達も空が大好きだから。みたことのない少女だったけれど、きっと仲良くなれると、ふわふわ浮かび上がる。
「あなたたちは、どんな空で過ごしていたの?」
 わたしはね――。
 大切な友達で、家族である羊達といっしょに。
 紺碧の下、爽やかな風に声を乗せ歌ったり、奏でたり。夜の帳の下、煌きと一緒に踊ったり。いつもたくさんの空の下で過ごしてきたよ。いつだって、今だって――茨に覆われ仰ぐことは叶わなくとも。その上で、確かに見守ってくれている。
「そんな空を奪うなんて、欲張りさんは懲らしめちゃうよ!」
「うんうんっ! よくばり、だめっ」
「だめだめー!」
 メリルがぐぐっと拳を握って意気込めば、雲たちも少女の周りにふわふわ浮かんで、同意してみせた。
「でも、魔力を浴びると黄金になっちゃうのは厄介だなぁ……」
「そうなの、なんだかあまいかおりのきらきらがひゅーってしてきて、こわいの」
 どうしたらいい? 尋ねてくるふわふわさんたちに、メリルはうーんと考え込んで――そうだ、と。目の前の彼等ができる行動を思い出し、ぴこんと人差し指を立てて見せる。すると、なぁに? どうしたの? もこもこがそわそわとメリルに詰め寄った。
「あのね――」

 作戦会議を終え、黄金花に立ち向かわんと並び立つメリルとふわふわさんたち。
「無理はしちゃだめだよ、出来る範囲で大丈夫だから!」
「わかった! きみもむりしちゃだめだよー?」
「ふふ、ありがとう」
 メリルの優しさを受けて、まねっこするように繰り返す雲に、あなたたちは優しいねと笑いかけた。その言葉が不思議で、優しいのはきみのほうだと思ったけれど、少女の力になれるように、いっぱいいっぱい頑張りたい。それじゃあいくよ。黄金花に近づいた雲たちは、せーのという掛け声とともに、もこもこ雲をひゅーと噴射。それは黄金花と自分、メリルとの間の壁となり、香り放つ魔力が向かってくるのを防いだ。
 これで大丈夫? 振り返る雲たちに、ばっちりと目配せすれば、嬉しそうにふわりふわり。
 隙間から漏れ出た魔力を受けないように一定の距離を保ちながらも、敵を射貫ける距離を見定める。
(「うーん。もう少し、近づきたいな……」)
 そうすれば、きっと一気に敵を射止めることが出来そうで、けれど魔力を浴びてしまえば自分も黄金となり動けなくなってしまう。ならば――。
「守りは任せてもいいかな?」
 自分たちの国だ。自分たちで守りたい。だから少女の言葉に強く頷いて、雲たちは黄金花へと近づく少女の傍ら、漏れ出た魔力を吹き出した雲で跳ねのける。
 今だと放つ、数多の光り。流れ星が降り注ぐように、美しいそれらが黄金花よりも強い輝きをもって、攻撃を打ち破る。きらきらと散る花に、ふわふわさんたちはメリルへわぁと飛びついた。
「ふふっ、あなたのもこもこの雲」
 くすぐったいのに、あたたかな気持ちになったのは、その雲が。ずっと共に在ったそれと似ているように思えたからかもしれない。

 ――ふわふわした羊の毛みたいで、素敵だね。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミツハ・カイナ

空の国!いいねぇ、じっくり楽しみたいもんだ
けど、その前にあのいばらを片付けねぇといけないわけだ
どんな空も好きだけど、あのいばらは放っておけねぇな
空を迎えに行かなきゃいけねぇからな

それじゃ、あいつらと一緒に空を彩ろうか
『七彩絵具』を使ってUCを発動【アート】
夜空の紺色を星のきらきらさんがきらきらを具現化して投げつけるタイミングに合わせて放つ
夜空を翔ける流れ星になるように黄金花を夜空に塗りつぶし
夜が明けたら現れるのは太陽だろ?
次はぽかぽかさん頼むぜ
赤と黄色を混ぜた朝焼けの色をぽかぽかさんと合わせて放つ
お前ら皆やるじゃねぇか!
この調子で皆で空を迎えに行こうぜ
仲間たちを励ましながら手を休めず




「空の国! いいねぇ、じっくり楽しみたいもんだ」
 降り立った場所。足元の雲を踏みしめて、物語じみた世界に居ること実感しながらからりと言い放つ。けれど彼の明るい声とは裏腹に、仰いでも晴れ渡った空は見えない。見えるのは茨と、輝く黄金の花だけだった。
「その為にも、あのいばらを片付けねぇといけないわけだ」
 ――空が好きだ。
 好きだと思う。例え背の翼で駆けることができなくとも、そう感じる。どんな空も好きだと胸を張って言える。ミツハ・カイナ(空憬・f19350)は、空色の髪を揺らし太陽の花を綻ばせ、続けた。あのいばらを放っておくことはできない。
「……空を、迎えに行かなきゃいけねぇからな」
 飛べない代わり――とは言わないけれど。自ら空を迎えに行きたかった。空に憧れている。けれど、ないものは嘆かない。だからこそ、この足で――。

 既に黄金花と交戦を始めている空の住人たちに、加勢すると駆け寄る。
 晴れ渡る空色を髪に映し、太陽の花を咲かせたミツハに親近感を覚えたのだろうか。誰もがずっと、空と共にいた。見守ってくれていた。だからミツハを、友達のように、家族のように思ったのかもしれない。ありがとうと嬉し気に跳ねる星と太陽。
 ベルトに装着した七彩絵具の蓋をきゅきゅと外せば、混じり合う絵の具たちが彼の意図に合わせ、自在に空間を彩っていく。
「わ、わ、すごい!」
 此処に空はないはずなのに。星の投げるきらきらが、ミツハが作った夜空を駆ける流星となって、より強い輝きを放ち黄金花の花弁を、葉を裂いて。軈てそれ自体を夜空色に塗りつぶした。
「――夜が明けたら現れるのは太陽だろ?」
 次はお前の出番だと言うように、赤と黄色をが混ざり合った朝焼けの色を太陽と共に放って。
「お前ら、皆やるじゃねぇか!」
「きみがてつだってくれたからだよ!」
「ありがとう、やさしくて、たのもしいひと」
「この調子で皆で空を迎えに行こうぜ」
 礼を言われれば綻ぶその笑顔が眩しくて、嬉しくて。その声を耳にすればもっともっと頑張れる、そんな気がした。
 ――嗚呼、早く空を迎えに行きたい。彼と、一緒に。
 青空の下で笑う彼と共に在りたい、と。
 此処にいる誰もがそう感じていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

五条・巴
七結(f00421)と共に

空を迎えに行く。
なんて、なんて素敵なんだろう。

ああどうしよう、七結、ここはとてもいいね。

七結は色んな夜を知っていて、僕は色んな空を知っている。
けれど僕達はこの国の空を、夜を、まだ知らないから
数多の空を迎えに、行きたい。共に在りたい。

その為にも、お願いだ、空を返して。

きらきらさんは星を投げて、そよそよさんは星が黄金花に当たるよう軌道に乗せてくれる?
僕達は君たちが黄金とならないように放たれた魔力を打ち消す

"明けの明星"

覆われた天に矢を放つそれは、夜明けの合図

きらきらさんたちと煌めく姿
暁を舞う七結は夜に在り、夜に咲く仄かな光

またひとつ、空を知ることが出来た


蘭・七結
トモエさん/f02927

ふふ。トモエさんとても愉しそう
大いなる空には、あなたの好きな――
なんて言紡ぎながら
胸の奥は高鳴る様子で
お空のお迎え、心が踊ってしまうわ

ナユの住む世界は常夜
厚い暗雲に阻まれた常闇の空
うつくしいソラを、あまり見たことがなくて
紺碧の、茜色の
満天のソラを見映したいの
表情が移ろう空と共に在れたなら
ねえ、ナユに魅せてちょうだいな

皆さんが黄金と化さないように
黒鍵刃を喚んで薙ぎ払いを
そよそよさん、ご一緒に

もくもくさんの雲を足場に宙を舞い
幾つかの黄金花へと
“七能の結目”
さあ、ぽかぽかさん
あなたの力を貸してちょうだいな
ええ、お上手ね
とてもよい力をお持ちだこと

トモエさんの雷鳴がよおく聴こえる




 まるで大好きなおやつを待つ、小さな子供のようだった。
 いつもの落ち着いたそれはとは違う、そわそわとした声色。
 ――空を迎えに行く。
 それは一体、どんな世界? 想像しただけで、胸が沸き立つような興奮を覚える。
(「なんて、なんて素敵なんだろう」)
 この国の住人にとっては当たり前のことで、寧ろ自ら足を動かさなければならないのだから、人によっては面倒だとすら思うかもしれない。けれど、五条・巴(見果てぬ夜の夢・f02927)はそうは思わない。
「ああどうしよう、七結。ここはとてもいいね」
「ふふ。トモエさん、とても愉しそう」
 親しい友人である彼が心から愉し気に言う姿に、唇を隠すように淑やかに微笑んだのは蘭・七結(こひくれなゐ・f00421)だ。
 大いなる空には、あなたの好きな――。
 この世界にも、きっとあるのだろう。今日迎えに行くのはそれが眩く光る夜空か、それとも。
「お空のお迎え、心が踊ってしまうわ」
 愉しそう。そんな言葉を紡ぎながらも、同じように弾む気持ちは隠さずに。

 七結と巴が降り立った場所でも、既に空の国の住人たちは交戦をはじめていた。兎に角花を倒さないと! そんな様子で闇雲に輝いて星を投げつけるきらきらさんに、巴は声をかける。
「頑張っているね――うん、君はそれでいいよ」
「いい? 分かった! えいえいってする!」
 黄金花を上手く狙えと言っても、投げるだけで精一杯なのかもしれない。ならば星たちには攻撃自体に集中させ、命中率をあげるのは他の子たちに任せればいい。
「そよそよさん、星が黄金花に当たるように軌道に乗せてくれる?」
「当たるようにすればいいのね? わかったわ! もう、きらきらさんったら、しかたないんだから!」
「ありがとう。僕たちが君たちをしっかり守るから」

 皆が動かない黄金となってしまわないように、断罪を降す黒鍵の刃を振るう。風を呼び、それに纏わせれば、自らに、仲間に降りかからんとする甘く香り立つ魔力は吹き飛ばされ消えていく。
 七結が住む世界は常夜だった。
 熱い暗雲に阻まれた常闇の空の下、生きていた。
 まさに今の、この茨の下のような――。
 美しい空を、あまり見たことがなくて、だから。
 ただ、悪意なんて知らないみたいに広がる紺碧を。
 燃える炎のように情熱的な茜色を。
 想い携えながらも、雲の作った足場で宙を駆け、茨にも似た有刺鉄線の鎖を太陽光線と共に放ち花を散らしていく。
(「満天のソラを見映したいの――」)
 表情移ろう空と共に在れたなら、それは一体、どんな気分なのだろう。
(「ねえ――」)

 ――光が、射した。

 例えそれが僅かだったとしても、覆われた天を拓いたのは。
 明けの明星。降る雷が、花を焼き、姿無きものへと変えていく。
 此処からはじまるのだと、茨に覆われた世界の夜明けを告げる合図。
 きっと彼女は色んな夜を知っていて、自分は色んな空を知っている。
 けれど僕たちはこの国の空を、夜を、まだ知らないから。
 数多の空を迎えに行きたい。共に在りたい。
 星たちが戦い煌く姿、暁を舞う七結が夜に在り、夜に咲くは仄かな光。
 嗚呼、またひとつ空を知ることが出来た。それが嬉しくて、こんなにも愛しい。
 そして巴と同じ景色映す七結もまた。
(「トモエさんの雷鳴が、よおく聴こえる。それに」)
「綺麗、ね」
 眩しさに睫毛を伏せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナミル・タグイール
レパル(f15574)と一緒に
金ぴかいっぱいデスにゃ!!最高の国にゃ!
あの花が危ないにゃ?わかったにゃ!

…でもあの花の周りに金ぴかいっぱいにゃ!!
あの花も周りの金ぴかも全部ナミルが頂くにゃー!(突撃猫)
ぎにゃー!?(無策で飛び込んで固まる猫

…ありがとデスにゃ。ひどい目にあったにゃ。
金ぴか大好きだけどなるのは嫌にゃー!
金ぴかが目の前なのに動けなかったイライラを花にぶつけにいくにゃ!

イライラを全部斧に集めてフルパワー斧を振り回すにゃ
金ぴか化の魔力なんて斧のパワー【呪詛】でふっとばすにゃ!
周りの金ぴかは傷つけないように気をつけながらどっかーんにゃ!
後で貰うからにゃ!

…ナミルの金ぴかはどこいったにゃ?


レパル・リオン
ナミルちゃん(f00003)と一緒!

ナミルちゃんがすんごい楽しそうな件。
ナミルちゃん、あの花に近づいちゃダメよ!

ってナミルちゃーん!?
案の定突っ込んで黄金像になったナミルちゃんを助けなきゃ!

そよそよさん、あたしとコンビネーション攻撃よ!あたしが火属性を宿した高速パンチ連打を放って花の大軍を燃やすから、そよそよさんは炎を風で強めて燃える嵐にしてほしいの!
草タイプが相手なら、やっぱり炎が1番ね!燃えろー!

黄金になったナミルちゃんや愉快な仲間がいたら、ダッシュで駆け寄って怪力で持ち上げて、あたしが固まる前に花のないところに運ぶわ!

ナミルちゃん、自分が金ぴかになった気分はどう?(ジト目)




 茨に覆われた空の下、薄暗い雲の上でも、眩く咲き誇る黄金があった。
 それが、この国に害をなすものでなかったなら――。立ち向かわんとする住人たちも、その花を受け入れ共存する道を選ぶこともあったかもしれない。けれど、違った。花は空を迎えに行くための足を固め、物言わぬ、動かぬ黄金へと変えるのだ。オブリビオンである黄金花の周りには、既にその甘い魔力に侵された星や雲、この国に元より存在した小さな花たちがきらきらと輝きを放つ。
「金ぴかいっぱいデスにゃ!! 最高の国にゃ!」
 異なる彩を持つ双眸にその煌きを宿すと、にゃー! とうっとり。
 肉球ぷにぷにの両手で頬を抑えたのは黒猫の獣、ナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)。
「ナミルちゃんがすんごい楽しそうな件」
 友人が楽しそうな姿を見るのは嬉しい。桃色の愛らしい容姿の狼、レパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)はふかふか尻尾を揺らした。
「あの花が危ないにゃ? わかったにゃ!」
「でも、あの花に近づいちゃダメよ!」
 近づけばめしべから放たれる魔力によって、黄金に変えられてしまう。
 大切な友人が、物言わぬ像になってしまうなんてごめんだ。
「……でも、あの花の周りに金ぴかがいっぱいにゃ!!」
「そうだけど、近づけばナミルちゃんも黄金になっちゃうのよ!」
 彼女だって、いくらきらきらが好きと言え、自ら黄金へと成り果てる趣味はないだろう――。
「あの花も周りの金ぴかも全部ナミルが頂くにゃー!」
 まるでまたたびを前にした猫のように、ナミルはにゃにゃにゃと四足で雲の上を駆け抜け、黄金花へとまっしぐら。
「って、ナミルちゃーん!?」
「ぎにゃー!?」
 黄金花にあと少しで届く。雲をふわんっ、と踏みしめ、両手をにゃあと持ち上げて飛び跳ねる姿のまま固まり、ごろんとその場に転がるナミル。
 案の定黄金像になってしまった友人にも、レパルは呆れた表情ひとつみせなかった。ピンクの耳をぴょこりと揺らす。レパルが今、立っているのは戦場だ。例えそれが同じ猟兵仲間であったとしても、例外には成り得なかった。
「ナミルちゃん、今助けるわ!」
(「にゃー!! 金ぴかに届かないにゃ!!」)
 黄金像になってもそんなことを考えているなんてつゆしらず、『魔法猟兵イェーガー・レパル』はその生まれ持った脚力で素早く駆ける。魔力を浴びる隙も出来ぬほど――少女を助けるような追い風が吹いたのは気のせいだっただろうか。
「わたしの仲間もたすけてっ!」
 風を起こしたのは、茨の陰に身を潜めていたそよそよさんだった。彼女の風のおかげで、甘い香りが吹き飛ばされる。助けを求める声を放っておけるはずなんてない。
「任せて!」
 先ずは小さなきらきらさん、それからふわふわさん――風の力も借り、素早く回収していくレパルは、身に秘めたパワーで最後に黄金ナミル像を担ぎ上げ、花と大きく距離を取る。
 雲の上に下ろされたそれらは、黄金花から一定の距離を取ることで、もとの姿に戻る。眩い光は軈て薄れ、言葉を封じられていた像達が歓喜の声をあげた。
「大丈夫?」
「……ありがとデスにゃ。ひどい目にあったにゃ」
「ボクらも! たすけてくれてありがとー! こわかったー!」
「わたしもっ。ひとりになっちゃうかと思ったわ」
 ふるりと震えながら、本来のきらきらを振りまく星に、彼らが戻ってきたことにふうと風を吐くそよそよさん。あたしたちが来たから、大丈夫よと笑うレパルだったけれど、今度はその笑顔をじとりとした表情に変え。
「ナミルちゃん、自分が金ぴかになった気分はどう?」
「金ぴか大好きだけどなるのは嫌にゃー! 金ぴかが目の前なのに動けなかったイライラを花にぶつけにいくにゃ!」
 今度こそ呆れた様子で溜め息を吐く。でも、黄金花に向ける気持ちは同じだから。
 怒りを黄金のカタストロフに込め、力いっぱい振り回す。嗚呼、また――けれどもレパルの心配は無用。斧に込められた呪詛によって、甘い魔力は吹き飛ばされていく。なりふり構わずぶんぶんと振りかぶっているように見せて、実はしっかりちゃっかり周りの黄金化されたものを傷つけないように注意していたのは――。
(「後で貰うからにゃ!」)
 ざくざくと黄金花を切り裂いていくナミルに、レパルも負けてはいられない。
 先ほど受けた風の力を思い出し、提案する連携に、そよそよさんはわたしで力になれるならと恩人の言葉に快く頷いた。
 魔力が届かぬ一定の距離を保ちつつ、鍛えぬいた拳を連続で放てば、生まれる炎。それだけでも黄金の花を少しずつ燃やしていく――しかし、それを巻き込むようにしてぐるぐると渦巻く風。
「草タイプが相手なら、やっぱり炎が一番ね! 燃えろー!」
 風とレパルが生み出したそれは、渦巻く炎の嵐となり、黄金花を次々と骸へと還し、一体に咲き誇っていた煌きは消える。残るのは茨に覆われた道。
「にゃ? ……ナミルの金ぴかはどこいったにゃ?」
 黄金花が消えた。つまり、金ぴかとなっていた小さな花たちも、元の彩りの姿へと戻っていた。きょろきょろと辺りを見回すナミルに知らぬふり。鮮やかな花たちは、歌うように楽し気に揺れるだけ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エドガー・ブライトマン
やあ、大変そうだね!
花もあんなにたくさんあると困るだろう
カフンショウとやらになってしまいそうだ

私が誰かって?フフ、見て解るだろう
私の名はエドガー。通りすがりの王子様さ!
通りすがったついでにキミたちを助けてあげる

乱入するようだけど、彼らと黄金花君の間に割り込むよ
私の剣は、国の民を守るための剣なのさ

レイピアで応戦しつつ、愉快な仲間君らと共闘
彼らがケガをしそうな際は積極的に《かばう》
多少の傷では、私は多分気づけない《激痛耐性》

私が花の動きを止めるから
その間にキミらが総攻撃をしてね!
私の王族オーラ、あんまり長く持たないからさ!

“Sの御諚”

ウン、いい連携だった
キミらの国を守る力、誇りに思ってくれたまえ




 黄金花に立ち向かう星たちの輝きを眸の空に宿し、その瞬きを歌うように現れた青年。彼が歩けば、風に揺れる真白の外套。
「やあ、大変そうだね!」
「わっ、あなた、だれっ?」
 童話で描かれるような雲の上、靡いた横髪を耳に掛ける動作ですら、人目を引くその青年は、星の問いかけに優雅に微笑んでみせた。
「私が誰かって? フフ、見て解るだろう」
「わかんない!」
「だれだれー!」
 ぴょんぴょこぴょんぴょこ、飛び跳ね煌く星々。
 もしかしたらこの国には、エドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)が口にしようとしているそれの概念はないのかもしれない。成程、それなら仕方ないと、こほんとひとつ咳払いをして。
「私の名はエドガー。通りすがりの王子様さ!」
 細く白い指先を顎もとに寄せ、ずばーんと言い放つエドガーの輝きに、星々はわあと歓喜の声をあげた。
「すごいすごい、エドガー、オージサマ!」
「すごい!」
 果たして分かっているのだろうか。けれどもそんなことは気にも留めない様子で、よろしいと腰元のレイピアを抜く。
「通りすがったついでに、キミたちを助けてあげる」
「ほんと? ありがとうっ、オージサマ、つよい?」
 その言葉に、彼らと黄金花の間に。あくまで自然と足を進めた。
「私の剣は、国の民を守るための剣なのさ」
 だから強くあらねばならない。けれど、私自身が強いと思うかどうかは、私が決めることじゃない。
 強さとは心だ。愛する民を守らんとする心――その期待に応えられたかどうかは、自分で決めることではないから。
 風が吹いた。まるで追い風だ。彼の力になりたいと感じた、そよそよさんが、甘い魔力を吹き飛ばすように風を起こす。
 ありがとう。すべてが終わったら、きっと労おう――そんなことを考えながら魔力が吹き消された場所。新緑に狙いを定め駆け、切り裂いていく。花を守るように蔦を伸ばしてきた茨があれば、星々を庇うようにマントで覆い隠した。
 ギリギリ避けそこなった茨が頬を薄く裂く。白い肌に滲む紅にも、背を打つ攻撃にも顔色ひとつ変えることはない。否、その痛みに気づけていないから、ただ微笑んだ。
「茨にも、彼女の吐息の――甘い誘惑にも負けないさ」
 エドガーの言葉に、彼を心配そうに見上げていた星々は、不思議そうに瞬いた。
「私にはあれが、花を抱き愛を乞う姫君のように見えてね」
 どうか、私と共に在って。此処に、ずっと一緒に。
 甘い囁きが、魔力となって、放たれる。
 翼のような葉も、空を飛ぶためにはないのだろう。
 自分は王子だが、君の愛に応えることはできない。
 護るべきものはけして間違えない。
 通りすがりの王子様は、国民たちと共に、美しい空を迎えに行く。
 此処はそういう物語の中だ。
「私が花の動きを止めるから、その間にキミらが総攻撃をしてね!」
 私の王族オーラ、あんまり長く持たないからさ!
 ぴんと指を向けた先、宝石じみた眸から放たれる輝きに、姫君の心は奪われる。そうして畏怖する。嗚呼、嗚呼、私は貴方に見合わない――。
 完全に攻撃をやめた黄金花に、きらきらを投げつけ打ち破る星々。
 トゥインクル・トゥインクル。
「ウン、いい連携だった。キミらの国を守る力、誇りに思ってくれたまえ」
 きらきらと、星が零れるように散っていく黄金の花、ひらり。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フローライト・ルチレイテッド
ではライブと行きましょう!

反逆を歌え!皆の空を取り戻すんだ!
飛行スピーカー【真っ赤な夜】の音量を最大に。
更にUC【Metallic dance stage】でスピーカーを複製、数を追加、戦場中に展開。

声を張り上げ、拳を突き上げ、翼を広げ。
【野生の勘】で魔力の届きにくいように【地形の利用】をしつつ、その上空に【空中浮遊】し。

【楽器演奏、パフォーマンス、歌唱、鼓舞、範囲攻撃、存在感、誘惑】を駆使して指定UCを使用。

新生への希望と滅びへの反逆を歌う歌で戦う皆にエールを送ります。

飛んでくる魔力は【野生の勘】で感知し、【早業】で回避を。
【パフォーマンス】込で飛び回りながら、戦場中に歌を響かせましょうー




 暗く閉ざされた世界に光る、眩い黄金と対峙する住人達の前。
 幼い印象を与える中性的な容姿の少年は、小さな翼をいち、にと揺らし雲上へと降り立った。
「反逆を歌え! 皆の空を取り戻すんだ!」
 傍らを浮遊する、夜を照らす赤きスピーカーポッドのボリュームは最大に。
 戦場にいた住人たちは震える。突然の音に驚いたからではない。
 力強い――けれど、染み入るようなその声に、心を震わせる。
 きみはだれ? 名を問うことすら忘れ、奮い立つ。
 輝く星はぽこぽこと鋭利な物体を、風はぐるぐると回転し竜巻を起こす。そして雲は、もこもこを生み出していく。
 ああ、それでいい。フローライト・ルチレイテッド(重なり合う音の色・f02666)が口端をつり上げれば、赤きひかりは数多の星の如く戦場を照らした。彼が叫べば、どんな場所も光り輝くステージへと姿を変える。だから声を張り上げた。時に弦をかき鳴らし、熱い想いを音にした。そうやって生きてきた。残酷な世界が、暗闇が取り払われ、仄かでも――あたたかいものとなるように。
 声を張り上げ、華奢な拳を突き上げれば、それが反逆の合図。
 その身体が大きく見えたのは気のせいだろうか、ばさりと広げられた翼が空を駆ける。魔力の届かぬ場所を直感的に見定め、空を覆う茨のすぐそばで。

 ♪――歌おうぜ。
 ♪俺達は世界を塗り替えていく!

 それは新生への希望と、滅びへの反逆を歌う歌声。
 そのエールを受けて――。
「そうだ、ぼくらはこの国を守らなきゃ」
 星は輝きを増した。手にしたそれを黄金花へと投げつけ、少しずつでもダメージを蓄積させていく。攻撃の手を緩めることはない。
「ああ、なんだかあたらしく生まれ変わった気分です!」
 雲はもこもこを吹き出し、仲間と花との間に壁を作る。隙間を縫って襲い来る魔力にも、臆することなく冷静に穴を埋めていく。
「そうよ、わたしたちは負けないわ」
 風は力強く吹き荒れて。星の欠片を纏わせた竜巻で花を蹴散らした。

 ♪拳を掲げしラストは歓声の中。
 ♪Evolution NewWorld! Oh、NewWorld!

 めしべから放たれる甘い魔力を除け乍ら汗すらも輝かせ。
 ギターを熱くかき鳴らし、戦え! 戦え! 希望はすぐそこにあると!
 その歌が何より、彼らの力となるのを知っているから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

五月雨・江津河
あ?ふらふらだかそわそわだか知らねーが俺様の邪魔だけはすんじゃねーぞ!?

敵がタイリョーってことは俺様が大暴れしても誰も文句言わねえってことだよなァ
片っ端から蹴って殴って傘でぶっ刺してやんよ!

オイ風の!見てんなら俺様を手伝いやがれ!
台風に上手く乗って動きも勢いも上げてくぜ。ただでさえ強い俺様の拳がもっと強くなっちまうな!
あとは風のやつにウザってえ敵のマリョク吹き飛ばさせるのもアリだな。防御とか考えたくねーし、任せてやってもいいぜ

ん、意外と使えんじゃねーか、俺様の子分にしてやっても……ってちょこまかしてんじゃねえ!いいマトになってんだろ!?
お前らは後ろから俺様の手伝いだけしときゃいいんだよ!!

⭐︎




 ふかふかの雲の上。雲と似た髪の彩を持つ青年、五月雨・江津河(二月の雨男・f24402)は、黄金花が咲き乱れる戦場へと辿り着いたと思えば、ふわふわとした何かに囲まれてしまう。なんだと叫ぶより先、空の国の住人であるふわふわさんたちは、自分達とは違う姿を持った彼に興味津々の様子。
「おにーさん、たすけにきてくれた?」
「いっしょにたたかう?」
 ふわふわもこもこ、緩い雰囲気に言葉を詰まらせる江津河だったが、自分は彼等とは違うのだ。ふわふわのんびり、空を流れる雲のように流されてはならない。
「だー! うるせー!」
 ばっと両手で耳を覆ってから、ふるふると首を振ってぴしゃり言い放つ。
「ふらふらだかそわそわだか知らねーが、俺様の邪魔だけはすんじゃねーぞ!?」
「ふらふらでもそわそわでもないよ! ぼくらはふわふわ!」
「あ? どっちでもいーだろーが!」
「よくないもん!」
「うわっ、やめろっ、もこもこする!!」
 雲が噴射したもこもこに包まれた江津河はそれをばしばしと払いのける。ちょっとだけ触り心地が良かったのだけれど、それを口にすることはせず。
「兎に角! 敵がタイリョーってことは俺様が大暴れしても誰も文句言わねえってことだよなァ」
 片っ端から蹴って殴ってぶっ刺してやる。手にした傘をもう一方の手のひらで撫で乍ら高らかに笑った。
 さてと立ち向かわんとする前に、黄金花が放つ甘き魔力の流れを見極める。動かぬ黄金となってしまっては成す術はない。ならばと視界に入ったそよぐ風に声を掛けた。
「オイ風の! 見てんなら俺様を手伝いやがれ!」
「わたし? しょうがないわ、この国を守るためだものね」
 江津河の言葉に返事をする代わり、ぐるぐると渦巻いて竜巻を生成するそよそよさん。傘をぱしゃりと広げると、それに上手く身を預けながら上昇していく。
「おおっ、こりゃいいな! このままウザってえマリョクも吹きとばせるんじゃねー?」
「そのくらい、あさめしまえだわ! まかせなさいっ」
「ふ、任せてやってもいいぜ!」
 風に乗りながら花へと近づけば、放たれる魔力は自然と吹き飛ばされていく。
「後は俺様が片付けてやる、下に向かって追い風だ!」
 その勢いのまま、傘を閉じると先端を刃のように花に突き刺し、ぐるりと回転しながら拳で、蹴りで花びらを粉砕した。まずは一体。ぽふんと雲へと着地する江津河は、乱れた髪を掬い耳に掛けてから不敵に。
「ん、意外と使えんじゃねーか、俺様の子分にしてやっても……って」
 風に告げれば、視界の先。戦闘前に会話していた雲たちが数人、きらきらの像になりころころ転がっていた。
「ちょこまかしてんじゃねえ! いいマトになってんだろ!?」
 傲岸不遜であることは確かなのだが、面倒見が悪いというわけではないのだ。
「おいふらふら! お前らは後ろから俺様の手伝いだけしときゃいいんだよ!!」
「うわーん! だってー!」
「ふらふらしやがって! 俺様がつけてやった名前、ぴったりじゃねーか!」
 風の力を借り、今度はころころと固まってしまった彼らを回収していく。
 言葉は悪くとも、助けてくれたことが嬉しかったから。
 雲たちは江津河にきゃっきゃと懐いてしまうのだった。
「――気安く懐いてんじゃねー!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『いばら姫』

POW   :    死体の森の眠れる美女
戦場全体に、【UCを無力化し、侵入者を攻撃する茨】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD   :    千荊万棘フォレスト
【UCを無力化する広大な茨の森】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    カニバリズムローズ
【周囲の地形が広大な茨の森】に変形し、自身の【森に侵入した者の生き血(敵へのダメージ)】を代償に、自身の【森の、UCを無力化し、侵入者を攻撃する茨】を強化する。
👑11
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●いばら姫のねがい
 残り僅かとなった黄金花を国の住人たちに任せ、猟兵達は空を隠した元凶の元へと向かう。
 雲を踏みしめ進めば、厚い厚い茨の天蓋がすべてを覆い隠していた。
 明るい空なんて初めから存在しなかったかのように。
 進むほどに、黄金花すら咲かぬ、闇の世界が訪れる。

 嗚呼、嗚呼、空は迎えに行くのに。
 もうどれほど、こうして眠っていたか分からない。
 わたしを迎えにきてくれる人は誰もいない。

 眠り続ける少女は、その身を抱くように茨に守られていた。
 否――彼女が花、そのものだった。

 寂しい、寒い。
 赤なら、わたしで十分でしょう。

 想う程に茨は伸び続け、青空の向こうの空すらも浸食をはじめる。
 茜の空が、色を無くしはじめる。

 ねえ、迎えに来て。
 王子様でも、そうじゃなくてもかまわないの。
 わたしとずっと、傍にいて――。

 手をとれば、姫は嬉しげに微笑むだろう。
 その茨で心を貫けば、赤き花たちはその牙で貪るように血肉を喰らうのだ。
レパル・リオン
ナミルちゃん(f00003)と一緒!
アドリブ大歓迎!

ユーベルコード禁止ですって!?顔はかわいくても卑怯なヤツね!
だけど、止まってる訳にもいかないわ!がんばろう、ナミルちゃん!

変身できなくても、魔法少女の力を見せてあげる!
ルーンストライカー、フルパワー!うおーっ!炎の魔法よ、あたしに宿れー!
茨の壁をとにかく殴り飛ばし、逆に燃やして脆くするわ!壁を燃やして壊して怪人いばら姫の所に直行!たどり着いたら【閃虎爪】を浴びせるわ!

……自分でも無茶な作戦だと思うわ!でも1人ならともかく、ナミルちゃんと2人ならできーる!!そうでしょ…ナミルちゃん!!!

この国に、黄金にも負けない輝く空を取り戻すのよ!


ナミル・タグイール
レパル(f15574)と一緒に ◎
トゲトゲばっかりにゃー。空も金ぴかも見えないデスにゃー…。
…でも元凶ってことはきっと金ぴか持ってるにゃ!(勝手に解釈してテンション上がる猫)
にゃー!止まってられないデスにゃ!頑張るにゃー!

迷路なんてめんどくさいにゃ!
邪魔な壁は全部斧でザックリして直進にゃ
敵の攻撃なんて無視にゃ【捨て身】にゃー!
UC無力化されても知らないにゃ。斧と装飾に宿る【呪詛】で全部ぶっ壊すにゃ!
レパルと一緒の壁を狙って一点突破デスにゃ!
二人でゴリ押しで最強にゃ!ぱわーデスにゃー!

ボスを見つけたら勢いのまま飛びついて斧でどっかーんしてやるデスにゃ
見つけたにゃー!きらきら寄越せにゃー!!




 茨の森の奥。太い茨が天に向かい、絡まり合うように伸びていた。その異様な光景に顔を上げれば、そこにいたのはひとりの可憐な少女――いばら姫だった。白磁の肌は、太陽のひかりを浴びたことすらないと思わせるほど、病的な白さをしていた。
 いばら姫はその名の如く、茨に護られるように眠る。けれど、表情は安らかとは言えない。周りに咲く花は、綻ぶと表現するには余りにも凶悪な牙を携えている。
「トゲトゲばっかにゃー。空も金ぴかも見えないデスにゃー……」
 黄金花との戦闘を空の住人たちに任せ、此処に辿り着く間もナミルの頭の中は金ぴかのことでいっぱいだった。じぃと辺りを見回して、光るそれがないことを確認するとしょんぼり肩を落とす。
「……まだそんなこと――兎に角、みんなを守るために戦わなきゃ!」
 そう、ナミルへと真剣な眼差しで訴えるレパル。
 早速少女と戦おうと、右手に鋭い爪を――しかし。いつもの如く、虎の爪を鋭く巨大化させようとも、かなわない。このような急成長があり得るのかと思う程、瞬く間に張り巡らされた茨の壁――いや、ただの壁ではない。これは迷路だ、そして。
「ユーベルコード禁止ですって!? 顔はかわいくても卑怯なヤツね! だけど、止まってる訳にもいかないわ! がんばろう、ナミルちゃん!」
「にゃー! 止まってられないデスにゃ! 頑張るにゃー!」
 にゃー! と拳を、天を裂く勢いで突き上げるナミルに、やっとやる気を出してくれた、と笑顔を向けようとしたレパルだったが。
「あの子が元凶ってことは、きっと金ぴか持ってるにゃ!」
 続けられた言葉に、呆れたようにため息を零すのだった。
「迷路なんてめんどくさいにゃ!」
 立ちはだかる茨の壁を黄金の斧でざくざくと切り開いていく。迷路を彷徨い出口を探すなんて無駄! 鋭利な棘纏う蔦が襲い掛かって来ても、気にすることはない。向かってきただけ、ざっくりと切り飛ばしていけばいいのだ。ユーベルコードの無効化さえも、カタストロフに宿る妖しく光る呪詛が吹き飛ばしていく。
「全部ぶっ壊すにゃ!」
「ふふ、ナミルちゃん、凄いわ!」
 あたしも一緒に。例え変身できなくとも、魔法少女の、正義を望む力までもが奪われたわけではない。
「ルーンストライカー、フルパワー!」
 叫べば手足にくるりと纏う、赤の、青のリングが眩くひかる。
「炎の魔法よ、あたしに宿れー!」
 握りしめたレパルの拳に宿ったのは、燃え上がる正義の赤き炎。
 出口を探すより、きっとこの方が速い。速くいばら姫に辿り着いて、蹴りをつける。だって、それがこの国の住人たちの願いだから。安心させてあげたかった、その為なら多少の危険だって顧みることはない。
「壁を狙って一点突破デスにゃ!」
「……自分でも無茶な作戦だと思うわ!――でも」
 ナミルの切り崩した先に、拳を打ち付ければ、纏う炎が燃え移り、蔦を、棘を焼き脆くしていく。そうしてまたレパルが、今度はナミルが――。
「ひとりならともかく、ナミルちゃんと二人なら、できーる!!」
 そうでしょ? と名を呼ぶ友人に。
「二人でゴリ押しで最強にゃ! ぱわーデスにゃー!」
 にゃー! 返事をするように斧を振り上げる。
 ――そうして言葉通り、肩で息をする二人は、再びその少女と対峙した。
「見つけたにゃー! きらきら寄越せにゃー!!」
 少女の周りにきらきらはないのだけれど――迷路は切り抜けた。後は本体を狙うのみ。眸にその花を映し、勢いのまま駆け、斧で振り上げようとするナミルに、続けとばかりに。今度こそ、その手に鋭く光らせた虎の爪を生み。
「この国に、黄金にも負けない輝く空を取り戻すのよ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

旭・まどか


やぁ、いばら姫
いばらに覆われた独りの夜は、随分と寂しいようだね

それもそうだろう
自ら他者を拒み、迎えの足を遠のけているのは
他でもないお前自身なのだから

百の四季から、目を醒ます時だよ
王子にはなってやれないけれど、お前の孤独を終わらせてあげる


寂しがり屋にはお前のその優しさが、沁みるだろうて
行っておいで
可哀想な子を、還す為に

伸びる茨はご自慢の爪で引き裂いて
僕を狙う不届き物は、お前が挺して庇ってくれる?

どうせ裂かれても出てくるのは綿だけだ
こんなに適任な事は無いじゃないか


何時だって誰だって、還り逝く時はたったひとりだ
お前も、僕も。そして――…、

暫しの安寧を、抱けば良い
出来ればもう逢いたくは無いけれど、ね




 他の猟兵と同じく、儚げな風采の少年が見上げる先。太く成長した茨に抱かれる少女を双眸に映し、まどかは言葉を紡ぐ。
「――やぁ、いばら姫」
 まるで久々に出会った友に掛けるような言葉でもあるのに、音に乗せられた感情は読みとりづらい。
「いばらに覆われた独りの夜は、随分と寂しいようだね」
 言葉は返らない。苦しげに閉じられた少女の表情は更に歪んだように見えた。
 少女は眠り続けている。例えそれが、少女を骸へ返す為だったとしても、こうして多くの猟兵たちが少女の前に訪れた――にも関わらず、目を覚まさない。だからまどかは一聞冷たくも思えるような言葉を続けたのかもしれない。それもそうだろう、と。
「自ら他者を拒み、迎えの足を遠のけているのは。他でもないお前自身なのだから」
 オウガとなり果てる前、生前の少女がはじめて眠りに着いた時、それは自身の意志ではなかったかもしれない。もう、記憶など曖昧で、増幅する憎しみと悲しみだけを孕んで、茨を拡大し続け、この国そのものである空と自分とを、切り離すように遠ざけて。今だってほら、足元の雲さえ覆うように茨を成長させ続けている。
「――百の四季から、目を醒ます時だよ」
 王子にはなってやれないけれど、お前の孤独を終わらせてあげる。――僕たちが終わらせる。雲に吸い込まれてしまいそうなほど小さくだけ落とされた決意を、傍らの灰狼だけが拾った。
 寂しがり屋には、お前のその優しさが染みるだろう。
 時に鋭く突き放すような言葉をぶつける癖、自らが使役するそれらの優しさを識ったふうな顔で言う。優しさを認めている、傍らで見てきたのだ――それすらも、やはり意識の内にはないのかもしれないけれど。
「行っておいで」
 こうして、何度でも送り出す。
 お前の優しさがあの子に届いたとして、何が変わるわけではなくとも。救えないから救わない、勝てないから戦わない。ああ、似合わない。行っておいで――そう言わずとも。届けたかっただろうとまどかは思う。
 灰狼が、まどかの前に立ち、雲を蹴った。伸縮する茨が、上空から、足元からまどかを、狼を狙う。
 狼が小さく呻いたのは、鋭い棘を持つ蔦が主人を狙おうとしたからだ。まどかの肩を腹を目掛けて伸びて来た蔦を、飛び映え茨よりも鋭い爪で引き裂き切り飛ばす。それを当然のように見守り、まどかは動かない。
 どうせ裂かれても出てくるのは綿だけだ。お前は人形なのだから、こんなに適任なことはない――。それが本音かどうかは本人しか、知れないけれど。
 茨を裂き、花を蹴り飛ばし――裂かれても、少しずつ少女の傍へ。
「何時だって、誰だって、還り逝く時はたったひとりだ」
 お前も、僕も。そして――……。
 途切れさせた言葉の先、見つめるそれが少女を護るように牙を向けた赤き花を勢いのまま引き裂いた。
 そう、そうやって、少しずつでいい。
「……暫しの安寧を、抱けば良い」
 出来ればもう逢いたくは無いけれど、ね。
 せめて、戦うその子の優しさが、骸に還ったお前の寂しさを少しでも――。

成功 🔵​🔵​🔴​

キトリ・フローエ


…ずっとひとりぼっちだったのね
きれいな空の色も星の輝きも、おひさまのあたたかさも知らないまま

あたしは王子様にはなれないし
あなたの手を取ってあげることも出来ないけれど
どうかせめて、寂しくない場所に行けることを願うわ

茨を払わないとあの子の元へ行けないのね
茨に囚われないように気をつけつつ
破魔の力を籠めた風属性の魔法を使って
お姫様を守る茨を切り裂きながら進むわ

茨に覆われた世界は暗くて寒くて凍えてしまいそう
でも、皆で力を合わせればきっと空は拓けるはず

茨が少しでも解けて彼女の姿が見えたなら高速詠唱
狙いを定め黎明の花彩で攻撃を
あなたはオウガ。ここにいてはいけないわ
あなたの願いに寄り添えなくて、ごめんなさい




 天に向かい絡まり伸びる太い茨の中から、少女の声が聞こえた。戦場となるこの場所に訪れたすべての猟兵の耳に、眠る少女の声が響く。
 その音に、強い意志を宿していた小さな少女の眸が切なく揺れる。いつもは星煌くような菫青石が、夜の海の揺らめきを映したように揺蕩う。嗚呼、彼女は――。
(「……ずっと、ひとりぼっちだったのね」)
 きれいな空の色も、星の輝きも、おひさまのあたたかさも知らないまま。
 暗闇を移す翅で宙に浮かび、そっと睫毛を伏せた。
 自分は王子様にはなれないし、あなたの手を取ってあげることも出来ないけれど――。
「どうかせめて、寂しくない場所に行けることを願うわ」
 この場所で眠っていても、少女の願う王子様が現れるわけではない。他の誰かも、あなたの為に犠牲にすることはできない。でも、あなたは倒さなければならない相手だけれど――願わせてほしい。祈らせてほしい。
 そんなキトリの想いも、陽射さぬ天蓋の下、茨に抱かれる少女には届かない。見上げても星の粒ほどのひかりさえも見えない。これだけ厚く空を隠してなお、茨は浸食をやめないのだ。キトリは理解する、この茨を払わなければ、彼女のもとまでたどり着けないこと。言葉を届けることすら、出来ないことを。
 だから翅を揺らした。茨に囚われるわけにはいかない。伸縮し棘を、牙を向ける蔦を、心の動きを読み取るように躱し、その成長を食い止めるように破魔の力を生み出す風に乗せ、放つ。
 何度も何度も、払っても、祓っても向かい来るそれに立ち向かうのは、小さく華奢な身体には酷だ。茨に覆われた世界は、暗くて、寒くて、凍えてしまいそうだった。眠る姫が嘆いたように、此処はひとりでいるには寂しすぎたから。
 それでもキトリが諦めることはない。茨が微かに白い肌を裂いても、歯を食いしばりただ前へ進む。進める、理由がある。
 何故なら、この戦場で戦っているのは、いばら姫に立ち向かっているのは自分ひとりではないから。茨の向こうで、誰かの声が聞こえた気がした。嗚呼、みんなも頑張っている。この国を救って、愛らしいあの子たちに、大切な空を戻してあげる為に――一緒に空を、迎えに行くために。
「皆で力を合わせればきっと空は拓けるはず」
 瞬間、茨が僅かに拓けた。傍の花が牙から唾液を滴らせた。
 ――しかし、隙を逃さなかったのはキトリの方だ。
 瞬時に紡いだ詠唱。狙うは眠る少女、ただひとり。
「あなたはオウガ。ここにいてはいけないわ」
 あなたが、オウガでなかったなら。
 手を取って、一緒に空を――なんて。
 わかっている、無駄なもしもを積み重ねたって、仕方がないけれど。
 想いを、心まで殺して戦う必要はきっとない。
 その選択は、時に心を苦しめることがあったとしても。
「あなたの願いに、寄り添えなくて、ごめんなさい」
 花蔦絡む杖を向けた先、花弁が優しく舞い吹雪いた。
 花の中眠る少女の頬に、ひかったのは、きっと――。

成功 🔵​🔵​🔴​

五月雨・江津河
へっ、寝て待ってるだけの奴に結果は着いてこねーんだよ
寝言は寝て言え……って寝てんのかコイツ?マジで寝言じゃねえか……

トゲトゲに刺されるとノーリョク無効化されるんなら、その前になるたけ有利な場を作って、あとはぶん殴ればいいって事だな!

空が無くても雨降らせるこたできっからな、変形した瞬間に『酸の雨』を降らせて一部だけでも茨を枯らしてやんよ
枯れたとこ足場にジャンプしながら近づきゃ受けるダメージ抑えられるハズだな
んで殴る場所は……とりあえずヤワそうな花んとこからちぎってくか!
口ついてても首は無さそうだな、萼掴めば噛まれないだろ
茨も動くなら足で押さえつけとくか

っしゃ、テメェの薔薇で雨降らしてやんよ!



フローライト・ルチレイテッド

ハリネズミのジレンマ、とはちょっと違うようですが。
さて。
せめて目の覚めるような音を届けましょう!
指定UCを使用、衣装のカラーをチェンジ。
上の方は茨だらけなので基本地上にいつつ、
【地形の利用、早業、野生の勘】で森の届かない位置を動き回ります。
スピーカー音量は最大に。
楽曲はUCの【SSSS~キラメキのメロディ】を採用。
【楽器演奏、歌唱、パフォーマンス、範囲攻撃、精神攻撃、誘惑、マヒ攻撃、催眠術】
を駆使して楽曲を演奏、攻撃?
尚Bメロ~サビ(UC詠唱部分)の後に繰り返すコーラス(sing a sparkle song)がつきます

UC自体の効果が打ち消されていても、気にせず曲で攻撃?を続けましょう。




「へっ、寝て待ってるだけの奴に結果は着いてこねーんだよ」
 心に届く声を江津河は鼻で笑う。ひとりが寂しいと、寒いと嘆くのなら、何故自分で誰かを迎えに行こうとしないのか。己が最強である為、つねに努力を重ね生きて来た江津河には到底理解出来ない。
「寝言は寝て言え……って寝てんのかコイツ?」
 見上げた先、眠ったまま茨を伸縮させ猟兵達と交戦を始めたオウガに対し、マジで寝言じゃねえか……と眉を顰め零す。
 そうしている間にも、ただでさえ厚い茨の天蓋で覆われた其処は、相手にとって有利な茨の戦場へと化していく。
「ハリネズミのジレンマ、とはちょっと違うようですが。さて」
 近づけば、戦わなければならない――近づきすぎたとして、親しくなれるわけではないけれど、そうしなければならない理由が、自分達には、フローライトにはあるのだ。
 さてと紡いだ言葉の先、起こす行動は決めている。
 眠っているのなら、叩き起こせばいい。
 少しでも多くの猟兵達の言葉が届くように、自分にできることを。
「せめて目の覚めるような音を届けましょう!」
 言葉と共にユーベルコードを展開すれば、眩いひかりがフローライトを包み、今まで纏っていた衣装から、今、この時、この場所で輝ける最高の衣装へ。愛らしいフリルが腕や胸元を飾り、ひらひらと揺れる。きらきらとしたスパンコールは赤き花にも負けないような輝きを持った花を象り、ロングブーツに添えられて。
 パチンを指を鳴らした瞬間、浮遊するスピーカーポッドがボリュームを最大にあげる。
 ――さあ、後は声を張り上げ、歌うだけだ。
「あ!? なんだっ!?」
 鳴り響いた音に、咄嗟に両手で耳を覆う江津河だったが。
 彼が歌う先、此方にしゅるりと伸び棘を向けて来た茨が、電撃を受けたように摩擦し、動きを止めたのをみて、成程と頷いて。
 これなら棘による攻撃を受け、ユーベルコードが無効化されることはなくなるかもしれない。けれど、念には念を。もっともっと、自分たちに有利な場を作れれば――。
「あとはぶん殴ればいいって事だろ!」
 空が無くても、雨を降らせることは出来る。
 例え後付けされた能力であっても、それが江津河の力だ。
 傘を掲げた先、フローライトが足止めしている蔦ではなく、新しく成長し伸びようとしている茨があった。
「一部だけでも、枯らしてやんよ」
 メロディに混じり、激しく降り始めたのは、ただの雨ではない。
 緑の蔦は成長をやめ、地に枯れ落ちていく。
 その雨は茨を枯らす――酸の雨だった。
(「やりますね」)
 彼も中々やるようだ。フローライトは自分も負けてはいられないと、想いを更に強く、歌に乗せ。

♪ざわつくホールの向こうへ飛びゆく光る華。
♪お待ちよそう急いでくなよBaby。

 声の先、痺れを持って動かぬ茨をすり抜けるように駆け、枯れ能力を持たたなくなったそれを足場に江津河は飛び跳ね、少女のもとへと向かった。
 鋭い牙を持つ赤き花の唾液が滴り落ちれば、怪訝な表情で萼を鷲掴みにして。

♪気まぐれダンス。
♪キラキラのfairytale 愛の空へ――。

 愛の空よ、拓け、拓け。
「sing a sparkle song, sing a sparkle song――」
 少年の歌に、薔薇は少女を護る――猟兵を喰らうという、役目を果たさぬただの花へと成り果てる。
「ははっ、いいじゃねーか! 助けなんてホントはいらねーが、褒めてやるぜ!」
 江津河はその腕力で花を毟り投げ飛ばし笑う。
 少女本体に攻撃が及ぶ、まで、あと少し――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴァーリャ・スネシュコヴァ

誰も迎えに来ないからって、空の国を独り占めするのか?
そんなの間違ってる!

自分に向かって来る茨は【属性攻撃】で氷漬けにしてから叩き斬る
向かって来る茨の数が多いなら、【範囲攻撃】で範囲を広め一気に叩いて
太い茨があったなら、それに【ジャンプ】で飛び乗って
茨を凍らせ氷の道にして、その上をシャーっと滑るぞ!

敵の元にたどり着けたならすぐさま【先制攻撃】!
【ジャンプ】で飛びかかって、『亡き花嫁の嘆き』を繰り出してやる!
きっと冷気には滅法弱いはず!

いいか、俺は迎えが来ないなら
自分の足で走って、王子様の元に辿り着いてやる
ずっと待ち続けるだけじゃ絶対に誰も寄って来ない
だから、お前の言い訳は理解したくもないな!




 茨に護られる姫を見上げる雪娘に、彼女に寄り添う心は存在しない。
 菫色の眸は、僅かに怒りの色すら孕み、己に向かって勢いよく伸びる蔦は、振るうメチェーリが放つ冷気が氷結させる。
「誰も迎えに来ないからって、空の国を独り占めするのか?」
 誰も迎えに来ないから、空を隠した?
 誰もが愛する空を隠してしまえば、皆が迎えに来てくれると思った?
 ――分からないのだ。分かり合えることなど、ないのだろう。
「そんなの、間違ってる!」
 叫んだヴァーリャの持つ剣が、今度は氷を砕く。
 高い音を立て散る氷片が、大気中をきらきらと舞う。
 スケートを滑らせ進もうとした瞬間、茨の森がヴァーリャを阻んだ。
 足元の雲から目にも止まらぬ速さで成長する蔦が、いばら姫との間に壁を作る。
「逃げるのかっ!?」
 言葉は届かない。ただ、二人の間の壁が生成される寸前、見えた姫の表情はヴァーリャの感情に比例するように怒りを宿したように見えた。
 嗚呼、なんだというのだ。怒っているのは此方のほうだというのに――。
 待っているだけで、寂しいだなんて、寒いだなんて――嗚呼、苛立ちが止まらない。
 阻む茨は先ほどと同じ要領で、更に範囲を拡大させた氷結攻撃で動かぬ氷と変え、一気に砕いてしまえばいい。壁も攻撃も、繰り返し破壊すれば、敵のもとへと辿り着くのはすぐだった。新たな攻撃が成される前に、瞬時に戦場を観察したヴァーリャは、少女を護るように伸びる巨大な茨から伸びる、太い蔦を見つける。
「よし、あれだ!」
 雲上を駆け、距離を見定めたなら大きくジャンプする。
 それから舞うように両手を。頭から胴体、背の後ろまで勢いをつけるように動かして、瞬時に凍らせた茨の表面をブレードで滑りぬける。
 そうしてもう一度対峙する。眠る少女の赤き花が牙を剥く前に。
「いいか、ずっと待ち続けるだけじゃ、絶対に誰も寄って来ない」
 それは怠慢だ。そして弱さだ。例え言い訳があったとしても、理解したくもないことだ。
 もう一度、茨を蹴り上げて大きくジャンプする。
 大きく振り上げた足のブレードが向かう先、少女の一部である赤き花が、茨の一部が砕け散る。
「俺は――俺だったら! 迎えが来ないなら、自分の足で走って、王子様の元に辿り着いてやる!」
 だから迎えを待つだけのお前に、負けるはずがない。
 そうしてまた、向かい来る茨に強く足を蹴り上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
眠りの森のお姫様、ね

王子様でなくてもいいのなら
迎えに参りましょう、お姫様
触れることを許してくれるのなら
その手に優しい口づけを送りましょう

手向けの一つくらい、あってもいいじゃない?

翼で飛び回る【空中戦】と
どんな音も聞き逃さない【聞き耳】で
茨の動きを【見切り】ながら予測し、回避
同時に【高速詠唱、属性攻撃】で炎を撒いて
貴方を捕らえる茨の檻は壊してしまいましょう

花は、彼女自身
それでも…これしかないから
自身には【火炎耐性のオーラ防御】を纏い

無力化される前に相殺すればいいよね
全方位に向けた【指定UC】の【範囲攻撃】で
攻撃と同時に【破魔】で浄化
隙を作り急接近して…跪いて有言実行
こんな子供でごめんね?




 ――眠りの森のお姫様、ね。
 オウガの情報を聞いた時、彼女の嘆きを知った時、澪は考えていた。
 彼女を倒さなければならないことは知っている。
 この国の住人から空を奪ったことを、悲しませたことを許してはならない。けれど、その心にくらい、寄り添うものがあったっていいじゃないか。
(「手向けの一つくらい、あってもいいじゃない?」)
 純真で優しい少年は、琥珀色の双眸を柔く細める。
 そんな澪を、猟兵達を取り囲むように存在するのは広大な茨の森だ。
 赤き薔薇たちが、ガチガチと牙を鳴らし、速く、此方に来いと――喰らってしまいたいと唾液を滴らせている。
 真白の翼を広げた少年は、今は亡き空を求め、羽ばたいた。
 狂暴なそれらに臆することなく、眸を閉じれば研ぎ澄まされた聴覚が、すべての攻撃の音を拾いあげる。
「こっちだね」
 向かい来る牙を、伸びる棘持つ蔦をゆらりと避ける。澪にはまだ十分な余裕があった。同時に素早く詠唱した。
 姫を護る茨――否。
「貴方を捕らえる茨の檻は、壊してしまいましょう」
 声が、聞こえた気がした。嗚呼、違う。これは自分を護る為の茨だ――茨だった、はず。分からない、分からない。わたしを、とらえる……そんなこと、そんなことはない!
 姫の感情が、澪の心を刺すように届く。
 澪は小さく首を振り、既に振りまいた炎が茨の檻を焼いた。全てとはいかずとも、僅かでも。彼女の護りを崩す、大きな隙を作る。
 花は、彼女自身。燃やせば当然痛みを伴うだろう。
 それでも、こんなことしか考えつかないと、自身には炎を遮るひかりのオーラを纏っていた。
 祈るように両手を編んだ。無力化される前に、相殺を狙うべく放つ――少年から全方位に向けるひかり。神々しいそのひかりは、温かくも優しく……何故か、確かに破壊の力を持つのに。目にすれば、泣きたくなるようなひかりだった。巨大な茨全て焼き払うことは必ずとも、その威力は確かに失われていく。数秒だけ動きが止まった茨の攻撃――澪は躊躇うことなく羽ばたき、翼をたたんでから彼女の前で跪いて見せる。
(「――僕は王子ではないけれど」)
 取った手のひらは小さく、手袋越しにも冷え切っていると分かる。
 せめて、誰かが迎えに来たと――優しい記憶が残ればいいと。
 その手に、冷たい何かを溶かすような口づけを降らせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドガー・ブライトマン

やあ、いばら姫君
お待たせ。キミに会いに来たよ

――と、言っておいてなんだけど
キミの傍にいるつもりもなくてね
サヨナラを言いに来たのさ
この国の平穏をキミから取り返すんだ

キミ、寂しがり屋のクセに茨の迷路なんかで他人を拒むんだ
迷路は困るけど、茨の出所を《追跡》
そこにキミが居るんだろう?
迷路上を飛ぶオスカーと《話し》、いばら姫君の位置を把握

迷路を抜けられたなら、迫る茨を剣で払い
一瞬でもUCの途切れる隙をつく
《早業》で《捨て身》の“寵愛のR”
代償はさっき共に戦った星々の、私に対する記憶

忘れられたって構わないさ、勝てるのなら
第一、忘れるのは私がいつも皆にしているコトだし

対価は支払った
後はキミの仕事さ、レディ




 浸食する茨に、迫りくる赤き薔薇に、立ち向かう猟兵達の中。同じように剣を振るう青年がいる。
「挨拶をしたかったのに、ねっ!」
 咄嗟に振るった運命の名を持つ剣が、茨を切り落とす。この場所に訪れた矢先、足元の雲を裂き、絡まり合って天蓋へと向かう茨は、エドガーと姫を隔てる壁となったのだった。
「キミ、寂しがり屋のクセに、茨の迷路なんかで他人を拒むんだ?」
 恋に障害はつきものだ――なんて軽くため息を吐き、目を伏せ、やれやれと首を振った。
 迷路は困るし、厄介だ。でも慌てることはない。冷静に、まずは茨の出所を探ればいい。
「さあ、羽ばたいておいで」
 手袋を纏う指先にとまるツバメを空に放つ。オスカーなら、迷路を覆う茨の隙間を縫って、上空から自分を導く標となってくれるはずだ。
 そうして暗い茨の迷路を進む。恐らくだが、姫に近い場所ほど、茨は強く、太く根を張っているはず――。
 くるりと上空を飛ぶオスカーにも気を配りながら、姫の情報を得つつ、自らの目で読み取った情報と重ね、歩みを進めていく。
 出口と思われる場所に辿り着けば、空を飛んでいたオスカーがぱたぱたと舞い戻り、主人の肩へと身を委ねた。手を貸してくれたことに感謝し、労わるように触れてから、早速迫りくる茨を剣でばさりと切り払う。
「やあ、いばら姫君」
 言葉を紡ぎながらも、雲上を駆け、少しずつ姫を抱く絡まり合う太い茨へと近づいて。
「お待たせ――折角会いに来たのに、連れないじゃないか」
 眠る彼女に、声は届いているのだろうか。届いていなくとも、言葉を投げかけることはやめないのだけれど。
 会いに来た。他にも、そう言ってくれる人がいた。
 けれど、わたしを倒そうとするんでしょう? あなたも――。
 頭に響くような声は、幻聴だったかもしれない。
 それでもエドガーは、それに応えるように。
「……うん、ごめんね。キミの傍にいることはできない」
 青年は正直に話し、剣を振るいながらも言葉をつづけた。
「サヨナラを言いに来たのさ」
 約束したのだ。王族は国民との約束を違えることがあってはならない。
 この国を作る国民の願いを、祈りを聞き、守ってこそ王子だと。
 ああ、もう少しで、彼女を抱く茨へ届く。
「キミも姫なら、分かるだろう?」
 エドガーは、言葉を交わし少女の心を揺さぶって、一瞬でも隙を作ることができればと考えていた。そしてその時は訪れる。茨の攻撃が止まった。そのほんの僅かな隙に展開するのはユーベルコード――寵愛のR。
 左腕の狂気が、疼く。代償はなんだと、未だ咲かぬ蕾の中で。
 捧げる記憶は、あの星たちの記憶。
『エドガー、オージサマ! すごい!』
『オージサマ、つよい?』
 自分を慕ってくれた、その記憶を捧げよう。
「忘れられたって構わないさ、勝てるのなら」
 胸の痛みにすら、気づけない青年は国民の為、愛しい記憶を代償にした。
 心からの感情なのかは――自分ですら曖昧なのかもしれないけれど、それすら無意識の内側。
(「第一、忘れるのは私がいつも皆にしているコトだし」)
 そんなふうに、考えているからかもしれない。
「対価は支払った。あとはキミの仕事さ、レディ」
 確かに受け取ったと、その手の薔薇は花ひらく。
 向かい来る唾液を滴らせたそれとは比べようがないほど美しい狂気は、弱り始めていた少女の一部である花をいくつも打ち破った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
トモエさん/f02927

厚く成された茨の天蓋
覆った棘で身を護り、堅く堅く鎖されて
まるであなたのココロ
その姿を具現したよう

嗚呼、あなたは
忘却を恐れているのね

あなたの願いは叶えられない
『あか』の独占を、見過ごせない
けれど、ずうと憶えているわ
他の誰かが忘れても、ずうと

ねえ見て
星々の煌めきを
流るる星が魅せる景色を
願いが叶う言い伝えを
あなたは識っているかしら

わたしはね、星の子から教わったの
今度は、わたしが伝える番
月の、星の、大いなるソラのうつくしさを
わたしとトモエさんが紡ぎましょう
“帚星の耀涙”

流星たちが一線を描いてゆく
新たな星座を紡いでゆくわ
とても、うつくしいでしょう
あなたのその瞳には、どう映るかしら


五条・巴
七結(f00421)と共に

寂しいんだね
迎えを待っていたんだね
傍に、いてほしいんだね

僕は叶えてあげることは出来ないけれど、教えてあげることは出来る

空を迎えに行くように、君も空に迎えられているんだ

見上げてみて
君の覆った空の色、その先を
ほら
星が、月が綺麗だよ

星座って知ってる?
その時々の季節、場所によって見える星座は違うんだ、移動してる

君はこれから先、沢山の星座と仲良くなるんだ
ぐるりと1年、巡ったらまた君に会いに来てくれる、永遠の存在
それに、月も忘れないでね
月は写りゆく星々と異なって、姿形は変わるけれど、ずっと君を照らすから


地上では僕と七結が、君のことを忘れない
どうだろう、まだ寂しいかな




 厚く成された茨の天蓋の下、七結と巴は立っていた。
 天に向かって絡まるように伸びる太い茨の一部は燃え落ち、彼女を護る棘と花も、初めよりずっと少なくなった。
 今なら、少しは届きやすくなっただろうか。言葉なんて気休めでしかないと言われるかもしれない。けれど、言葉で救われるものがあることも、知っている。
 覆った棘で身を護り、堅く堅く鎖されて。
 この茨は、まるであなたのココロ。その姿を具現化したように七結は感じた。心に届いた声――確かに、何かの為に眠りに着いたはずなのに、目を醒ますことはないまま生涯を終えた。なんでなの、どうして――寂しい、寒いと嘆く声に。
「嗚呼、あなたは、忘却を恐れているのね」
 忘却を恐れているのに、彼女自身、何を忘れてしまったのかすら曖昧なのだろう。悲しい人だと、七結は彼女を想い、表情を曇らせた。けれど。
「あなたの願いは叶えられない」
 向かい来る、勢いよく伸びる棘纏う茨を黒鍵をもって切り払う。
 何より、見過ごせないことがある。
 それは七結にとっても、特別な『あか』。
 人にはそれぞれの物語がある、七結にもまた、あかい花を冠する物語があるのだ。だから、あなたの横暴を許すわけにはいかない。でも、それだけではあまりにも寂しすぎるから。
「ずうと、憶えているわ。他の誰が忘れても、ずうと――」
 七結の、暗闇に火を灯すような言葉に、巴もまた、柔く微笑み頷いて見せた。
「寂しいんだね、迎えを待っていたんだね」
 ――傍に、いてほしいんだね。
 巴の、月光のような言葉が、眠る姫の心を照らしていく。
 けして強いひかりではなくとも、穏やかな、数多の人を魅了してきたその音は、彼女にも届くはずだ。
「僕は叶えてあげることは出来ないけれど、教えてあげることは出来る」
 嗚呼、嗚呼、何を……答えなど知らない。寒いと嘆くのに、触れたことのない温かさを拒絶する。新たな茨が雲を裂き、巴に向かい来る。
「ちゃんと、聞いて」
 強く優しい眼差しの先、放つ矢が弾け、蔦を破壊する。
「空を迎えに行くように、君も空に迎えられているんだ」
 この茨を解いて、どうか見上げてみてほしい。
 君の覆った空の色、その先を――瞼の裏でいい。想像してみて。
 月が淡く光る美しさを――ほら、星が瞬いた。
 巴の言葉に、傍らの少女も表情を和らげる。
 ねえ、ちゃんと見て。
 星々の煌きを。流るる星が魅せる景色を――。
「願いが叶う、言い伝えを、あなたは識っているかしら」
 迫る茨を舞うように華麗に裂きながら進んでいく。
 棘が白い肌を薄く裂き、微かな赤が頬をつたう。
「わたしはね、星の子から教わったの」
 だから今度は、わたしが伝える番。
「星座って知ってる?」
 巴が紡ぐのは、空に浮かぶ数多の物語を持つ星たちの話。
 その時々の季節、場所によって違う星座を見ることができる――移動しているのだと口にした。
「君はこれから先、沢山の星座と仲良くなるんだ」
 ぐるりと一年、巡ったらまた君に会いに来てくれる――星座という友達は、君を迎えに来てくれる永遠の存在になるよ。ねえ、想像してみて。
 とても、素敵だろう。ああ、勿論、月も忘れないでねと付け足して。
「月は移りゆく星々と異なって、姿形は変わるけれど」
 ――ずっと君を照らすから。
 今度は君が、どんな形の月も、受け入れてあげてね。
 月の、星の、大いなるソラのうつくしさを――あなたに教えてあげる。
 ちゃんと、教えてあげる。
「わたしとトモエさんが、紡ぎましょう」
 響くのは産声、或いは慟哭。激しい瞬きの尾を引いて、星降る夜のような涙の花が舞い吹雪き、茨の中に君臨する姫にひとつの空を魅せる。
「地上では、僕と七結が、君のことを忘れない」
 七結の空を翔ける彗星が、少女を護る茨をまたひとつふたつと打ち破り。
「どうだろう。それでもまだ、君は寂しいかな」
 落とされた言葉に、少女はゆっくりと瞼を持ち上げた。
 目尻から零れた涙が頬に、茨に落ちる。
 眸が揺らいだのは、強い怒りではなかった。
 それはあたたかい言葉に対する動揺と、やり場のない感情だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

英比良・與儀
ヒメ(f17071)と

茨が行く手を遮る、か
空に茨の様ならまだ。だが全て覆い隠しちゃあ、何にもならねェよ
でもこれも、お前の炎なら道開くことできるよな
ヒメ、任せる

赤い色は嫌いじゃねェけど
その花の赤はくすんで見える――鮮やか、だけどな
残念ながら俺はお前の王子様にはなれねェし
そうじゃなくても傍にはいてやれねェ
お前の相手はここにはいねェから、骸の海に還してやるよ

花は水がないと生きていけない
が、過分に与えれば根を腐らせてしまうこともできる
枯らすより早く、ヒメが燃やしちまいそうだけどな
攻撃は生み出した水を遠慮なく、際限なく与えるように打つ

――だから、そこで……ドヤをするなと…
でもまァ、それがお前だもんな


姫城・京杜
與儀(f16671)と

漆黒の空でも、星が煌めく夜空なら綺麗だけど
茨で覆っちまった空は…うん、寂しい
早く迎えにいってやんなきゃな
ああ、與儀、任せとけ!
俺の炎で闇を照らして、空までの道、切り拓いてやるからな!

寂しいし、寒いのか
俺たちは王子様にはなれねェし、その手は取れねェけど
此処にいたら、ずっと寂しくて寒いだけだから
俺の炎で、在るべき場所に還してやるな
ちょっと熱いけどごめんな?

茨の迷路も、掌に神の炎生み出し燃やして出口までの道を作る
勿論、與儀を体張ってでも護る事が何より最優先

まぁ俺は王子様みたいにイケメンだけど
でも、與儀だけの騎士だからな!
なるべく苦しまずに茨姫が還れるように
容赦なく燃やしてやる


メリル・チェコット
黄金花を任せてきたふわふわさんたちがちょっと心配
怖い目に遭ってないかな……
あなたたちを信じて、わたしたちは茨を討ってくるからね

この茨の向こうに空があるなんて、信じられないくらい暗くて寒い……
いったいどれだけ寂しい想いを抱えているんだろう
早く終わらせてあげたい

喚び出すのは熱く燃えさかる炎の矢
闇を照らしてくれる、白い炎
周囲の茨を燃やしてなるべく無力化してから本体に攻撃を

もっと早く迎えにきてあげられればよかったよね……
今度こそ、安らかにおやすみなさい




 巨体をくねらせ天に伸びる茨の中。
 残り僅かとなった赤き薔薇が蠢き牙を鳴らす。
 開かれた眸に映るひかりは、見下ろした先の少年のものだった。
「漸くお目覚めか」
 見上げる双眸は不敵に微笑み、永い眠りから覚めた少女を見つめる。空に茨の様ならまだ――。
「だが、全て覆い隠しちゃあ、何にもならねェよ」
 言葉は返らなかった。代わりに拒絶するような茨が蠢き成長し、ふたりといばら姫の隔たりとなる。
「漆黒の空でも、星が煌めく夜空なら綺麗だけど――茨で覆っちまった空は……うん、寂しい」
 そんなふうに紡ぐ相棒に嗚呼と頷いて。またそうやって、拒むのか。寂しいと、寒いと嘆く癖、臆病な心を茨で覆い隠してしまうのか。それならば、選択肢はひとつしかなかった。茨が、俺たちの行く手を遮るのなら。
「お前の炎なら、道開くこと、できるよな」
 当然のように言い放つ。京杜が何の神か、考えれば誰もが分かること。けれど、その炎の頼もしさを一番良く知っているのは間違いなく與儀なのだ。
「ヒメ、任せる」
 その言葉に、嬉しげに、大きく頷いて見せる。その言葉が何より嬉しい。彼に託されることが、こんなにも誇らしい。
「ああ、與儀、任せとけ!」
 俺の炎で闇を照らして、空までの道を切り拓いてやると。今度は京杜が言い放つ番だ。
「……早く、迎えにいってやんなきゃな」
 阻む茨の先にいる少女を想って、零されたであろう言葉。
 見据える眸が優しく細められるのをみて。
 しょうがねェ奴。それでも、そんなところが――そう思いながら、與儀は瞼を落としふっと笑む。
 言葉通り、茨で作られた迷宮は、京杜が生み出す炎をもってすれば、あっという間に抜けることができた。掌に生み出した熱く燃える炎を放てば、頑丈な茨の壁もじりじりと炎に焼かれてふたりの為だけの道となった。
 寂しい、寒いと言っていた。それならば、早く駆けつけてやりたい。
 出来ることは限られている――むしろ、ひとつ。
 だけど、何かせずにはいられなくて、立ち止まる時間が惜しい。
 俺たちは王子様にはなれねェし、その手は取れねェけど。
(「其処にいたら、ずっと寂しくて寒いだけだから――」)
 俺の炎で、在るべき場所に還してやるんだ。
 進む道の上、自分へと向かい来る茨を器用に燃やしながら、手を休めることなく茨を灰に変えていく。先頭を行く男をみやる。京杜の考えていることなら、手に取るように分かった。分かっていて、届く想いがあればいいと思った。
 それに、同じように抱く想いも、確かにあるのだ。


 お日様のひかりをいっぱいにくるんだ髪を揺らす羊飼いの少女、メリルもまた、いばら姫と交戦をはじめていた。でもメリルには、ひとつだけ気がかりなことがあった。
(「……黄金花を任せてきたふわふわさんたちが、ちょっと心配」)
 怪我はしていないだろうか、怖い目に、遭っていないだろうか。
 あんなに愛らしくて、優しい子たちが、これ以上つらい目に合うなんて、いやだとメリルは思う。けれど、同時に彼らがとても強いということも、知ったから。
(「あなたたちを信じて、茨を討つからね」)
 向かい来る茨に、放つ炎の矢。一本ずつ狙いを定めれば、属性の優位も助け振り払うことは容易だ。それにしても――と眸に映す天蓋。
 この茨の向こうに空があるなんて、信じられないくらい、此処は暗くて寒い。
 そんな場所を作ってしまったのは、彼女自身なのだけれど――。
 メリルは、考えずにはいられなかった。
 一体、どれだけの寂しい想いを抱えているんだろう。
 分かってあげることは出来ないかもしれない。
 それでも思考することをやめたくはなかった。
 辿り着く結論が同じだったとしても、誰かが想ってくれた――その事実は、彼女の心に木漏れ日のような、ささやかでもあたたかなひかりを降らすんじゃないかと思うから。
「……早く、終わらせてあげたいな」


 迷路を抜けた先にも、やはりひかりはなかった。
 茨を燃やし出でた赤に、少女の眸が歪む。
「――赤なら、わたしで十分でしょう」
「赤い色は嫌いじゃねェけど」
 その花の赤はくすんで見える。鮮やか、だけどな。
 與儀に迫りくる茨を燃やしたのは、京杜の炎――與儀の、一等愛する、赤だ。
「傍にはいてやれねェ」
 與儀が生み出す水塊が、大きな音を立てて注がれ、雲の上に海を生んだ。
「花は水がないと生きていけない」
 お前の花も、そうだろう? でも、と続く言葉と共に、水は絶え間なく。
「余分に与えられれば、根を腐らせてしまうこともできる」
 巨大な茨の根元に染み行くそれは、根を柔くし、全ての天蓋を支える支柱であるそれを僅か、ぐらつかせた。
 確かに効いている、けれど、まあ。
(「枯らすより早く、ヒメが燃やしちまいそうだけどな」)
 勢いよく放ち続ける水はそのままに。
「お前の王子はここにはいねェから、骸の海に還してやるよ」
 生まれる紅葉舞い燃ゆる、激しく燃え盛る焔を見上げた。
 なるべく苦しまずに、彼女が還れるように――そんな願いが込められた焔。
 赤が茨を包み、燃やしていく。既に他の猟兵達の攻撃を受け、ダメージを受け続けていた身体は、茨は、その焔に少しずつ飲み込まれていく。

 赤き焔に混じるように、放たれるのは白き炎の矢。
 青年の赤が、彼女に全部届く様に――邪魔をするものは、全部全部、わたしが燃やす。
 自身の前にずらりと白き矢を並べ、一斉に放った。
 メリルが周囲の茨を焼き払えば、與儀の水が根に注がれ続ければ、ゆっくりと傾いていく大樹のような茨――。
 暖かいのは、炎だろうか――否。

 少しずつ、空を覆う天蓋が解けていく。
 はじめは木漏れ日のようなひかりが注いで、軈て眩しいほどの――。

 焔を、水を放つ手を止め、眩しい空を見上げた。
 あの子、骸の海で王子様に逢えたらいいなぁ、なんて言葉が耳に届いた與儀が、傍らの彼を見た。
「まぁ、俺は王子様みたいにイケメンだけど――」
 でも與儀だけの騎士だからな!
 にかっと笑う京杜に、やれやれと肩を竦めて。
「でもまァ、それがお前だもんな」

 消えゆく少女を送るメリルの耳に届いたのは、小さな声。
 空耳だったかもしれない。でも、確かに聞こえた気がした。
「――もっと、もっと早く、迎えにきてあげられればよかったよね……」
 すべてが報われることがなくても、届いた想いもきっとあったはず。
「今度こそ、安らかにおやすみなさい」
 だって、こんなにもあたたかい場所で。

 こんなにも青い空に迎えられて、少女は還ったのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『お伽噺の世界』

POW   :    元気よく楽しむ

SPD   :    知的に楽しむ

WIZ   :    優雅に楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●空を、迎えに
 深い海のような、雲一つない空。
 吸い込まれそうな紺碧の下、風が吹き抜け、花が咲う。

『ねえ、今日はここでお茶会をしましょう?』
 ぴゅるぴゅる吹き抜けるそよそよさんに、揺らされて、花のえみえみさんが葉っぱの両手をぴょこぴょこと上下に揺らして見せる。
『いいねいいね! たすけてくれた人たちがいるんでしょう?』
 ぼくら、おいしいみつのジュースをごちそうしちゃう!
 えみえみさんたちが木の実のコップに注ぐのは、彩り華やかな花蜜のジュース。
 花を浮かべたり、蜜でほんのり甘くしたホットミルクや紅茶も準備して。
『それなら、きらきらさんに甘いこんぺいとうもいっぱい降らせてもらわなくっちゃ!』
『ふわふわさんに、ふわふわとけるわたあめもつくってもらおうっ』

 茜に染まる空の向こう、星を探しに歩こうと誰かが唄った。
 満天の星空にはない、一番星の特別が欲しくて。

『きみ、まっかだね』
『あなたも、まっかですよ』
 もこもこ、あかぁく染まった雲のふわふわさんたちが、のんびり夕焼け空を眺めている。
『ねえ、ぼくらはおれいに、何ができるかな』
『……そうですね――あっ。ぼくらに乗ってもらって、いっしょに空をおさんぽする、なんてどうでしょう?』
『わあ、それはめいあんだねっ』
 ふわふわさん達に身を預け、空の国を見て回る。
 翼を持たない者達も、普段は自らの翼で空を飛ぶ者達も、彼らと一緒に過ごす時間はきっと、かけがえのないものになるに違いない。

 夜の帳がおりても、彼らが踊ればそこは煌きの舞台。
 美しい夜空を彩る星は、誰の眸にもひかりを降らすの。

 星と手を繋げば、空を歩くことができるって知ってた?
『ぜったいに手を、はなさないでね』
『ぼくらといっしょに、ねえ、おどろうっ』
 もこもこ雲を飛び越えて、手を繋いで一緒に。
 勿論見上げるだけだって構わない。
 そうしたら、のんびりと空を眺めて、ぼくらを見ていて。
 駆け抜ける流れ星になって、君たちの願いを、空に届けるから。

 ここは不思議な空の国。
 大地の代わりに敷き詰められた雲の絨毯は、歩けばふわふわ心も浮かぶよう。
 雲上にはたくさんのお花や木が育って、綺麗な川だって流れてる。
 仰げばいつだってそこにある空は。
 そこに住まう住人の友人で、家族で、世界。
 見守っていてくれる。
 いつだって、大好きな空に会える。

 ――ねえ、君はどんな、空を迎えにいく?
旭・まどか


見たい空、迎えに行きたい空
様々な表情が浮かぶけれど、どれもいまひとつしっくりこなくて
釈然としないけれど、ただ“違う”という事だけが明確だ

此処が奇怪で退屈しない場だということは理解しているのに
どうしてだろう
“僕”は、何を望むんだろか…

白馬の案内人さん
君はどう思う?

僕が見つけたい空。迎えに行きたい空は、どこだろう?

真っ青に澄み渡る空?
真っ赤に燃える空?
――それとも、僕が常に在る擬似星瞬く星空だろうか

可笑しなものだね

面白いとは感じるのに、それが何故だかわからない
そして、自分が何を求めているのかもわからない、だなんて…

君が答えを持っているなら教えてくれないか?
僕が望む空は――進むべき道は、何処なのか




 嗚呼、この国の空はこんなに青かったのか。
 綺麗だな、と素直に思った。でも、多分、それだけ。
 多分――と付けたのは、自分にもよく分からなかったから。
 見たい空、迎えに行きたい空。
 自分にとって、それは一体どんな景色なのだろう。
 様々な表情が浮かぶけれど、どれもいまひとつしっくりこなくて、釈然としない。
 ただ“違う”という事だけが明確で、その事実がまどかをほんの少しだけ戸惑わせる。
 待っているだけではない、空を自ら迎えに行くことが出来る国。
 ただ佇んでいてもその場に在り続ける青に、此処が奇怪で退屈しない場だということを改めて認識して。理解、しているのに。
 どうしてだろう――きっと他の誰かが、思い描く景色を迷いなく探しに行くように、これだという景色を心の空にぱっと浮かべることができない。
(「――“僕”は、何を望むんだろうか」)
 ――考えていると、視界の端。この国へ自らを転送した少女の、揺れる翼が映る。
 視線に気づいたエールは嬉しそうに瞬き、蹄で雲を弾いてまどかの元へと駆け寄った。
 挨拶を交わせば、エールはまどかのことがもっと知りたいと、彼の言葉に耳を傾けた。
 だって、聞いていたのだ。先ほどエールが話していたのは、星のきらきらさんたち。
 彼らはまどかのおかげで助けられたと言っていた。手伝ってくれた、あたたかな――戦う強さをくれたのだと。とても、優しいひとだったと。
「まどかくんは、どんな空を迎えに行きたい?」
 首を傾げるエールに、小さく歩む足を止める。
 こんなことを、初対面の君に尋ねるのは可笑しいかもしれないけれど、なんでだろうね。
「白馬の案内人さん。君は――どう思う?」
 笑わないで、聞いてくれる気がしたからだろうか。
 僕が見つけたい空。迎えに行きたい空は、どこだろう?
 この先を行けば、会えるだろうか。それとも、あっち?
「真っ青に澄み渡る空?」
 それはどんな鮮やかさを持っていて、心に彩を与えてくれるのだろう。
「真っ赤に燃える空?」
 それはどんな熱を孕んでいて、いくつの感情を生むのだろう。
 ――それとも、僕が常に在る擬似星瞬く星空だろうか。
 可笑しなものだと、自嘲気味に呟いた。
 この国の空を面白いとは感じるのに、それが何故だか分からない。
 そして、自分が何を求めているのかもわからない、だなんて……。
 彼の音を、エールは穏やかに聞いていた。そのひとつひとつが、大切な言葉であるように。零れ落ちて、消えてしまいそうな小さな星を、心の空に浮かべなおすように。
「君が答えを持っているなら教えてくれないか?」
 自分が望む空は――進むべき道は、何処なのか。
 こんなことを尋ねても、戸惑わせてしまうだけかもしれない。
 頭では分かっていても、何故か零れ落ちる。この国の空の下では、感情すら暴かれてしまうのだろうか。
「ボクは――」
 少女が空を仰いだ。その視線につられるように、まどかも空を見あげる。
「それはとても、素敵なことのように思えたよ」
 そしてきっと、答えは簡単だ。
「間違えたら、ボクも一緒に引き返すから」
 真っ暗な道を歩いていると、怖くなってしまうこともあるだろう。
 星が灯らない夜に浮かべる代わりを、偽りのもののように言わなくてもいいのだと笑う。
 君が星だと信じるものが、君にとっての星なのだと、空を指す。
「待って、此処、夜じゃない――」
「青空にだって、星は灯るよ! だって此処は、空の国だもの!」
 そんなのめちゃくちゃだ。そう言いかけて、はたと気づく。
 そう、此処は、空の国――。
 初対面でもぐっと距離を詰めてくるエールに、やや戸惑うも、ちょっとだけやけくそだ。
 あてどもなく彷徨って、迎えに行く空を探そうと伸ばされる少女の手に、まどかはぎこちなく手のひらを重ねた。そして、諦めたように睫毛を伏せる。見え隠れする鮮やかな眸には、希望の星が小さく瞬いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フローライト・ルチレイテッド

お茶を頂いたらそのお返しに。
星の人達や雲の人達と夜空の上をふわふわ飛んで踊りながら、のんびり歌いましょう。
【楽器演奏、歌唱、パフォーマンス、誘惑、鼓舞、存在感】を駆使して指定曲UCを。
戦いで疲れた人達?を少しでも癒せるように。
明日への勇気と希望を届けましょー。

歌詞カード(使用お任せ)

どうして人は生まれて 明日を生きていく?
いつでも頭ぐるぐる 考えすぎ
考えるのやめて 未来へジャンプするのさ

ネガティブ頭ぐるぐる それでも明日は来る
悩むのをやめて 今宵の夢の中へと

踊りだせ 歌いだせ 拭って流した涙
辛いことも 忘れて楽しむのさ
目を閉じて 夜を超え 朝日がいつか来るように
哀しいことも全て 越えて行こう




 この国を救ってくれてありがとう。
 空を取り戻してくれてありがとう。
 星煌めく夜空の下、たくさんのありがとうが飛び交った。
 木の実の器に注がれた優しい香りの紅茶を受け取れば、仄かな甘さが鼻を擽る。
「きみのうた、ぼく、すきだよっ」
「かっこうよかった! ぼくもだいすき!」
 フローライトの眸にも似た、金色の花弁が、器の中で揺れる。
 こくりと口に含んで味わえば、あたたかくて甘くて、喉にとても良さそうだと感じて、僅かに眸を細めた。紅茶を飲み干すと、器を置いて。
「いいよ。それじゃー、また歌うよ」
 これはお返しだ。戦いで疲れたであろう君たちの心を、もっともっと癒すことが出来るように、魂を込めて歌うよ。僕にはそれが出来る。
 翼を揺らし、空に浮かんだ。もっと近くにおいでよと手招けば、観客でいる気満々だった星や雲たちが顔を見合わせ、それから嬉しそうにフローライトのもとへ集った。

 ♪どうして人は生まれて、明日を生きていく?
 ♪いつでも頭ぐるぐる、考えすぎ。
 ♪考えるのやめて、未来へジャンプするのさ。

 羽ばたき空を駆けて、星の間を巡って。
 美しく響く声に、星は身体を左右に揺らして瞬く。
 言葉合わせて軽くジャンプするフローライト。
 それに合わせるように、ひょいひょいとジャンプする星。

 ♪ネガティブ頭ぐるぐる、それでも明日は来る。
 ♪悩むのをやめて、今宵の夢の中へと。

 ぐるぐると人差し指を回せば、星はくるくる。
 その言葉に、心がおどった。
 悩み何て見つからないほど、今この時間が楽しくて。

 ♪踊りだせ歌いだせ、拭って流した涙。
 ♪辛いことも、忘れて楽しむのさ。
 ♪目を閉じて、夜を超え、朝日がいつか来るように。

 ねえ、ほら、届いてる?
 明日を生きる希望が、湧いてくるでしょう。
 ふわふわと揺れる雲を撫で、少年は目を閉じる。
 きっときっと、大丈夫だと思える。
 もしまた何かあれば、この場所で、またこうして歌うから。
 いつだって、僕を呼んで。そうして、何度でも。

 ――哀しいことも全て、越えて行こう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レパル・リオン
ナミルちゃん(f00003)と一緒!

色々あったけど、手伝ってくれてありがとねナミルちゃん!
(とは言ったものの、『金ぴかがないにゃー!』とか言って暴れだしたらどうしよう…!)

夜空の星!確かに金ぴかね…!うん、みんなであのお星様を迎えに行くわよ!

とはいえ、さすがにお星様に触る事は…できたー!?あたし達、お星様と手を繋いでるわー!
星と手を繋いで、夜空の下でダンスパーティよ!

踊り疲れたら、雲に包まれておやすみなさい…
えへへ、雲のもふもふとナミルちゃんのもふもふが気持ちいいわ…♪

…この夜空の中で、まるでナミルちゃんは1つの銀河みたいにきらめいてるわ…
この世界も、あたしも…いつまでも輝けますように。


ナミル・タグイール

レパル(f15574)と一緒

お疲れ様にゃ!金ぴかに逃げられたのはぐぬぬだけど、どっかーんできて楽しかったにゃー
疲れたしのんびり…にゃ!空に金ぴかがいっぱいあるにゃ!欲しいデスにゃー!

ぴょんぴょん飛んで星までジャンプにゃ!きっと届くにゃー!
やっと金ぴかゲットにゃ!…にゃ?飛んでるにゃ!フワフワ楽しいデスにゃ!
レパルも飛んでるにゃー!しかもキラキラでとっても綺麗にゃ!
負けてられないにゃ!キラキラいっぱい集めて一緒に踊るデスにゃ!

踊り終わったら今度こそのんびり
キラキラ星を盗ん…抱えたままレパルとのんびりごろにゃん
どこ見てもキラキラいっぱいで幸せいっぱいデスにゃー…。(満足感と疲れでぐっすり眠る猫)



 晴れ渡る青空を抜け、茜に染まる夕焼けを越え、ナミルとレパルは歩いていた。
 さあ、目指す空はもうすぐそこ。
 逸る気持ちを抑えることもせず、うきうきと雲の上を跳ねるように進んでいく。
「色々あったけど、手伝ってくれてありがとね、ナミルちゃん!」
 空の住人たちと一緒に戦ったり、そんな中、ナミルが黄金像になってしまったり――それでもふたり、いばらの壁を力づくで突き進み、他に訪れていた猟兵達とも協力して、この国の平和を取り戻すことが――空を拓くことが出来た。それがこの国での、ナミルとレパルの物語――でも、それだけで終わりではない。
 金ぴかがないとナミルが暴れ出したらどうしよう。そんなレパルの心配をよそに、ナミルはにゃっ、にゃっ、と楽し気に雲を越えていく。
「お疲れ様にゃ! 金ぴかに逃げられたのはぐぬぬだけど、どっかーんできて楽しかったにゃー」
 それならよかったとほっと胸をなでおろしたのも、束の間。
 精一杯出来ることをやったのだ。流石に疲れたし、のんびりしよう――そんなふうに思って、踏み込んだ先。
 茜色が、漆黒に染まる。
 一瞬にして塗りつぶされる光景に、ふたりは見入り、息を飲む。
 けれど、すぐに表情は綻んだ。
 星が瞬いた。何もない、漆黒の空だって、星たちが踊ればそこは煌きの世界へと姿を変える。ナミルが望んだ、金ぴかの景色だ。
「にゃ! 空に金ぴかがいっぱいあるにゃ! 欲しいデスにゃー!」
「夜空の星! 確かに金ぴかね……! うん、あのお星様を迎えに行くわよ!」
 お星さまに負けないくらい、きらきらと眸を輝かせるナミルに置いて行かれないように、レパルも雲を蹴った。少し蹴っただけで、トランポリンのように高く飛び上がる身体。
「きっと届くにゃー!」
 低い場所で踊る星たちになら、確かに届くかもしれない。それでも流石に触ることはできないだろうと思った。けれど、ぐんと伸ばしたナミルの、もふもふの手のひらを掴んだのは、他でもない煌く彼らで。
「……で、できたー!?」
「やっと金ぴかゲットにゃ!」
「ゲットどころじゃ……あたし達、お星様と手を繋いでいるわー!」
 繋いだ手のひらを引き寄せて、ぎゅっと抱きしめるナミル。
「わあ、きみ、ふわふわさんみたいにふわふわだ!」
「にゃっ? というか飛んでるにゃ! フワフワ楽しいデスにゃ!」
「ぼくらといっしょだと、空をとべるんだよっ」
 星が瞬けば、すごいデスにゃ! と更に星を掲げるように持ち上げて、空中をぱたぱた。
「レパルも飛んでるにゃー! しかもキラキラでとっても綺麗にゃ!」
 ナミルの視線の先、星と仲良く手を繋いで、くるくるとダンスしているレパルが映る。
「ふふ、星と手を繋いで、夜空の下でダンスパーティよ!」
「えへへ、ダンス、たのしいっ! もっともっと、高くでおどろうっ」
 星の言葉に頷いて、ぴょんぴょんと階段を駆け上がるように夜空を登っていくレパルに、負けていられないと、きらきらさんといっぱい集めて。
「ナミルちゃん、すごいわね!?」
「金ぴかに包まれて幸せにゃ!」
 頭の上に、両手に、肩に。集められたというのもあるが、ナミルが本当に幸せそうだから、星たちも嬉しくなって、いつもよりぴかぴかと瞬いている。
 きらきら一緒に瞬いて、踊り疲れた頃。
 今度こそのんびりしようとふわふわ雲に包まれて。
「キラキラ星を盗ん……」
「ナミルちゃん?」
「何でもないデスにゃ! 星と一緒にのんびりごろにゃん!」
「ええ、おやすみなさい」
 寄り添って目を閉じれば、雲に負けないくらいもふもふの彼女の毛並みが心地よくて、ゆっくり船を漕いでいく。
 踊り疲れたはずなのに、夢の中でもふたりは星と一緒にくるくる踊っていた。
 どこを見てもキラキラで溢れた世界を満喫するナミル。
 そして、夜空の中で、たくさんの星と踊るナミルがまるで、ひとつの銀河みたいに煌いているようにみえてレパルは思う。彼女と同じように、この世界も、自分も、いつまでも輝くことができますように――と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

五月雨・江津河
空を迎えに、か。まー行ってやらねーこともねぇな!
俺様機嫌が良いからな、ふらふらも連れてってやるぜ

見たい空ねェ、虹とか雨は自分で作れっからなァ
作れねーのは……彩雲とかか……雲と光がソーゴサヨーするやつはきちーわ

彩雲見たら幸運が来るとか言うけどな、実際カクリツ的には一日に一回はハッセーしてるんだってよ
出来てもすぐ消えちまう。そーゆーゲンショーだから良いんだろうけど
つまりそのタイミングで空見てる奴が幸運ってだけなんだよな

そうだふらふら!オマエもうちょい位置ズレてみろ!
ははっ、虹色に光ってやんの!やりゃできんじゃねえか!

ま、俺様最強だからな、迎えに行くどころか彩雲捕まえるくらい楽勝だぜ!

⭐︎




 戦いが終わり、茨という脅威が消え去った空は、青かった。
 先程までは息苦しささえ感じていた気がするのに、大きく空気を吸い込めば開放感のようなものが胸に溢れる。
 空の住人たちは、それぞれ自分達を、この国を助けてくれた猟兵の元へ駆け寄っていった。勿論、江津河の元にも、同じように。
「おにーさん、ぼくらの国、まもってくれた!」
「ありがとー! ありがとー!」
 ふわふわもこもこ、相変わらず容姿通りの緩さで近寄ってくる雲たちに、そんなんじゃねえよと眉を寄せた。でも、それも一瞬のことだ。
「ねえねえ、おにーさんもいっしょに、空をむかえにいこうっ?」
 空を迎えに行く。それが彼らの日常で、楽しみで、この国では当たり前のことだと聞いた。自分はただこの国を助ける為に、猟兵としてオウガを倒す為に此処に訪れただけだったのだけれど――どうしてだろう。彼らと無駄に触れ合ってしまったからだろうか。少しだけ、興味が湧いたのだ。絶対に、素直に口にすることはないのだけれど。
「そんなに俺様と行きてーか?」
「おれさまと、いきたい!」
「おれさまじゃねーよ! 俺様は江津河だ!」
「えつか?」
 名前、教えてくれてありがとうっ。えつか、えつかとふわふわ懐く雲たちに、半分鬱陶しがりつつ、半分はまんざらでもない様子で仕方ねえと笑った。
「そんなに言うなら、行ってやらねーこともねぇな!」
「ほんと? えつか、いっしょ! やったー!」
「俺様は機嫌が良いからな。今回だけ特別だぜ、ふらふら」
 江津河がにっと口端を吊り上げると、雲は嬉しそうにふわふわ揺れる。
 ふらふらと呼ばれたって、もう気にしない。何故ってそれは、江津河が付けてくれた特別で大切な名前のように感じられたから。
「ね、ね。えつかはどんな空、みたい?」
「見たい空ねェ……」
 一先ず青空の下、ふわりと腰を下ろした江津河に、雲たちが尋ねる。その言葉に考え込むように腕を組み、空を仰いだ。
 江津河にとって、空と言えば雨だ。雨を降らせる能力を持つ自分には、雨は勿論、空に架かる虹を作ることだって容易い。
「作れねーのは……彩雲、とかか。雲と光がソーゴサヨーするやつはきちーわ」
 彩雲ってなあに? 知らぬ言葉に、雲たちは興味津々な様子だった。もしかしたら、知っているものかもしれない。でもその言葉自体が初めて聞いたものだったから。仕方ねえと説明を付け加える江津河。
「彩雲見たら幸運が来るとか言うけどな、実際カクリツ的には一日に一回はハッセーしてるんだってよ」
 出来ても、すぐ消えてしまう。儚いものほど美しく、特別に感じてしまうのは人間の性というものだろう。
「つまりそのタイミングで空見てる奴が幸運ってだけなんだよな」
 そう言って、両手を背の後ろについて、もう一度空を見上げた。偶々のタイミングで出会える雲が飾る空――なんて、いくらどんな空を迎えに行くことができるこの国だって、難しいのかもしれない。馬鹿なことを考えちまった――そう、自嘲気味に考えた時。
 ふわふわと浮かぶふわふわさんたちが、江津河の頭上で、彼の名を呼ぶ。
「えつか?」
 どうしたの? ふわりと、零された言葉の先。太陽のぽかぽかさんが笑った気がした。
 注ぐ陽ざしが、彼らを照らす。ふらりと揺れた雲の端が、僅かに――嗚呼。
「おいふらふら! オマエ、もうちょい位置ズレてみろ!」
「えっ、こっち? こっち?」
「ちげーよ! 反対!」
「こっち!」
 ひゅうと流れるように移動すれば、仄かに、でも、鮮やかに。
「ははっ、虹色に光ってやんの! やりゃできんじゃねえか!」
 からからと目を無くして笑う。江津河が嬉しそうに笑うから、ふわふわさんたちも嬉しくなって、彼に向かって飛び込んだ。
「うわっ」
 もふっと顔で、身体で受け止める。勢いのまま敷かれた雲の上に倒れ込んだ江津河は、それでも文句を言うことなく笑っていた。
「ま、俺様最強だからな」
 ふわふわとそれを抱きしめて。
「迎えに行くどころか彩雲捕まえるくらい楽勝だぜ!」
 ――彩雲を見たら、幸運が訪れる。
 幸運とは、なんだろう。嬉しくて、笑顔になれることが幸せなら、もうきっと江津河は幸運を掴んでいる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メリル・チェコット


取り戻した空のしたをのんびりと歩きながら
一緒に戦ってくれた仲間たちのもとへと戻る
いつの間にか、夕焼け空
時間が経ったからのか、場所が移ったからなのか
心にじわりと沁みる赤い色
見上げるだけで、そこにあるだけで安心できるもの
やっぱり空はみんなにとって必要
取り戻せてよかったな

ふわふわさーん!
無事でよかったよー!
他の子たちもみんな無事? 怖い思いはしてない?

お空に連れてってくれるの?
ふふ、とっても嬉しいな
どんな空を見せてくれるんだろう
この国では変わった空が見られるっていう話だけど
迎えに行く空は、ふわふわさんにおまかせしてもいい?




 晴れ渡る空の下。メリルもまた、鎖されていた空を仰ぎ、雲の上を歩いていた。嗚呼、茨のない空の下は、こんなにも自由だ。あの子とも、一緒に歩けたなら良かった。あの子がオウガでなかったら、手を繋いで、共に空を迎えに行く――そんな今もあったのかもしれない。嘆くことはせずとも、メリルの心は、そんな優しいもしもを秘めて、この先も歩んでいくのだろう。
 あの子たちは、どこにいるのだろう。
 待っていれば、会うこともできたかもしれない。
 けれどもここは空の国。
 空を迎えに行く世界。
 なんだかじっとしていられなくて、同じように、彼らを迎えに行きたいと思った。
 ふいに、空が茜に染まる。
(「時間が、経ったから――?」)
 そうも考えたけれど、違う。
 そう、ここは空の国。あてどもなく歩みを進めていたメリルが、自らの足で、空を迎えたのだ。
 見上げれば、じわりと心に染みる彩。
 心まで染め上げられるような心地がしたのは、きっと気のせいじゃない。この国の空も、故郷の空と同じように、あたたかい。見上げるだけで、いつも傍にいてくれて、そこにあるだけで安心できるもの。
 やっぱり、空はみんなにとっても必要なものだと感じる。勿論、自分も例外ではなく、この空がまた失われてしまうことがあれば、あの茨の下で感じたような悲しみを感じるだろう。その時はまた、同じように立ち向かって、空を拓くのだと思う。だから、心から思うのだ。
「……取り戻せて、よかったな」
 ぽつり零しながら視線を落とせば、自らの手のひらもまた、空の彩を映していた。思わず笑みが零れて、まるで大切なものを掴むようにぎゅっと握る。
「――……えり、……おかえりっ!」
 声に、顔を上げた。すると視線の先にいたのは、あの時共に戦った雲のふわふわさんたち。
「あっ、ふわふわさーん!」
 大きく手を振りながら名を呼べば、ふわふわと宙に浮きながら、メリルの元へ飛んで、その中のひとりがぴょんと大きくジャンプして。
「わぁ、ふふ。無事でよかったよー!」
 飛び込んできたふわふわさんをもふっとキャッチして、頬をすりすり。信頼していたとはいえ、心配はしていたのだ。元気な姿をみれば安心したように笑む。
「他の子たちもみんな無事? 怖い思いはしてない?」
「だいじょうぶだよ、きみにたたかい方、おしえて、もらったもの」
「ぼくたちがふわふわでふせいで、きらきらさんにえいってしたもらったよ!」
 それよりも、なんて。今の彼らは、もっともっとメリルとお話がしたかった。残された時間が少ないなんて、きっと分からなかったけれど、助けてくれた少女に、もっともっと大好きなこの国を楽しんでもらいたかったから。
「ね、ね、いこうっ」
「ぼくらにのって!」
「わ、お空に連れてってくれるの?」
 促されるまま、少し大きなふわふわさんに遠慮がちに身をあずけて、もふんと座り込む。
「うんっ、いっしょに空、むかえにいこー!」
「ふふ。とっても嬉しいな」
 ゆっくりと上昇して行く雲。空に近づくほど、本来真白のはずの雲は赤に染まって、燃えるような彩へ姿を変えていく。触れれば、なんだか、とてもあたたかかった。
「ねえ、どんな空を迎えにいくの?」
「あのねー!」
「えへへ、ないしょ!」
 嗚呼、一体どんな空を見せてくれるのだろう。この国では変わった空も見られると聞いたけれど――。
 でも、どんな空だってきっと、構わないのだ。
 彼らが自分を連れていきたいと思ってくれた場所なら、どんな場所だって嬉しい。

 そうして彼らが少女と共に迎えに行ったのは、おひさまが優しく光る朝焼けの下。太陽がおはようと顔を見せるその空は、青が白んで、優しい光を溢れさせる場所だった。尋ねたなら、拙い言葉できっとこう答えるだろう。
 ――君の髪は、冷たい夜の先にある、優しい希望のひかりを宿しているように見えたからだって。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドガー・ブライトマン

空を覆っていた茨が晴れたね
よかった、またひとつの国が救われたらしい

あの星々君は無事かなあ
私のことはもう覚えてないだろうけど、元気だといい

ね、エール君!キミも空を見に行こうよ
キミ、なんだか空が好きそうな姿をしているし
いいなあ翼。私も翼があれば飛べるのにな

ふわふわ君に乗って、夜明けの空を見たい
陽が昇る瞬間の空
いつも見たいと思ってるんだけど、見れないんだ

や、朝起きられなくて…


ひとつとして同じ空がないならば
それって毎日空は生まれ変わっているんじゃない?
毎日違う自分になれるようで、楽しそうだよ
エール君も、そう思わない?

新しい空を迎える瞬間
昇るひかりに目を細めて

ああ、毎朝こうやって空は生まれているんだね




「――嗚呼、清々しい青空だ」
 空を覆っていた茨が晴れる。またひとつの国が救われたことに、エドガーはほっと息を吐いた。双眸に似た色の彩を映せば、より一層鮮やかに輝いているように見える。
(「あの星々君は無事かなあ」)
 私のことはもう覚えていないだろうけれど、元気に空を迎えられているといい。そんなことを考えていると、青空の下でも、煌く星の子がひとり。ふわふわと雲を踏み、エドガーの元へと駆け寄った。
「あなたも、ぼくらをたすけてくれたひとたち?」
「――嗚呼」
 こてりと身体を傾ける五芒星の彼は、あの時一緒に戦った星のひとり。怪我もなく、元気に話しかけてくる姿に、良かったと優しく目を細める。自分は誰かと尋ねられたなら、もう一度同じように言葉を紡ぐだけ。通りすがりの王子様、私はエドガーである、と。私が覚えている限り、それはけしてなくならない事実だ。また絆を繋ぎなおすことができたなら幸い、でも、例え叶わなくとも寂しくはない――寂しさを、痛みのように感じることはない。彼らが無事であったことが、この国の空を取り戻せたことが何よりなのだから。
「――エドガー、オージサマ」
「ん、なんだい」
 やや屈んで尋ねれば、手のひらをぎゅうと掴まれる。
 助けてくれたのは彼ではないと知っている――助けてくれたのが彼だという記憶は、もうどこにもない。
「エドガー、ありがとうっ」
 私ではないとも、当然だとも言えなかった。
 晴れ渡る青空の下、ただ胸が震えた事実にさえも気づかぬまま、代わりに、握られた手に少しだけ力を込め頷いた。

 キミも空を見に行こうよ。
 声を掛けられれば、嬉しそうに微笑んで、彩雲に似た尾をふわりゆらす。
「キミ、なんだか空が好きそうな姿をしているし」
 背の翼を見てそう口にするエドガーに、得意げに翼をぱたぱたり。
「うんっ、ボク、空、大好きなんだ」
「いいなあ翼。私も翼があれば飛べるのにな」
 憧れを孕んだエドガーの言葉に、エールは眸を輝かせる。
「ねえ、あのねっ。ボク、絵本の中みたいに、王子様を背に乗せて飛んでみたいなぁと思っていたんだ!」
 ボクね、本当のお馬さんみたいな姿にもなれるんだよ。そんなふうに笑えば、嗚呼、それは素敵だね。いつかお願いしたいなぁ。そんな会話を交わして。でもここは空の国――折角ならばと。今はふたり、ふわふわ浮かぶ雲に身を預けて。
「夜明けの空を見たいんだ」
 陽が昇る瞬間の空を、迎えに行きたい。特別な思い入れがあるのかと首を傾げた少女に、エドガーは少しだけ照れ臭そうに頬を掻く。
「や、朝起きられなくて……」
「ふ、ふふっ」
 笑わないでと口元を抑えるエドガーを、かっこいいのに愛らしい人だとエールは感じる。
「いつも見たいと思ってるんだけど、見れないんだ」
 雲は、たくさんの空を越えていく。この空も綺麗、あの空も綺麗だねえと呟くエールに、エドガーは笑う。
 太陽の位置、その時の気温、大気中の成分――様々なものの影響を受ける空は、この国じゃなくたって、色んな表情を魅せてくれる。
「ひとつとして同じ空がないならば、それって毎日空は生まれ分かっているんじゃない?」
 嗚呼、そんなことは考えたこともなかった!
「毎日違う自分になれるようで、楽しそうだよ」
 ――エール君も、そう思わない?
 尋ねられれば、目をぱちくりさせてから、大きく首を縦に振る。素敵な考え方だと思ったのだ、心から。こうして息をしているだけで、空を見上げれば、いつでもまた新しい空に会える。そう思えば、明日もまた、空を見上げることが、きっともっと楽しくなる。
 ある空を越えた瞬間、ぐらりと移り変わる景色。
 顔を見せたお日様が、眩しく勿忘草を照らしていく。その輝きはまるで、空が産声をあげたように思えて、エドガーは、エールは目を細めた。
「ああ、毎朝こうやって、空はうまれているんだね」
 また見たいなぁ。空に光を灯すように、優しく瞳を煌かせたエドガーに、エールは言うのだ。それじゃあ、ばっちり起きれる目覚まし時計を買いに行こうよ! なんて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
🐟櫻沫


櫻!空を一緒に游ごうよ!
愛しい君の手をとって
ふんわり柔な雲の上
雲の上に桜が咲くなんて不思議だね

笑み咲かせる櫻宵に眦を和らげる
……本当は不思議じゃない
だって僕の隣で何時だって、美しい桜龍が咲いている

星と櫻と手を繋ぎ、空を游ぐ
櫻宵はどんな空を探すの?
星が泪を零した夜?
真っ赤な戀桜が咲き誇った夕焼けの宴?
それとも、君という櫻がこの世界に芽吹いた美しい春の宵の暁空?

…僕は君の空を捜してる
僕の識らない、櫻宵がみた空がみたい
ねぇおしえて
君のこと
櫻が一番好きな空をしりたい
いいよ、その桜龍になら食べられても

桜が吹雪いて
紡がれる言葉に照れ恥じる
ずるい、
僕と一緒に見る空
今この瞬間のこの空がまた宝物になる


誘名・櫻宵
🌸 櫻沫


ふかふか雲の上を歩く心地よさと
リルの無邪気な笑顔が嬉しくてあたしの桜も満開
雲の上に国があるという御伽噺は本当だったのね!

白雲を彩る空桜を仰ぎみて
柔く笑っている人魚を撫でる
あなたは本当に桜が好きよね
柔く暖かく激しく早鐘うつ鼓動を柔い雲に隠して
嬉しくなるわと笑み返す

あたしの探す空?
リルがあげてくれた空もどれもあたしの宝物だけれど
そのどれとも違うわ

リルはどの空を探してるの?
そんな事を言ってると怖い桜龍に食べられるわよ

探す必要はないのよ
だってほら!
あなたと共に過ごしリルが笑うこの空が
あたしの見たい空だもの
リルと一緒に歩む世界の空
それがあたしを何時だって迎えてくれる

かけがえのない、秘色の空よ




 秘色の先の瑠璃が、嫋やかに揺れる。
 そのしなやかさとは打って変わったような、無邪気な少年の色を帯びた音が、空に明るく響いた。
「櫻! 空を一緒に游ごうよ!」
 白い手のひらを伸ばせば、ふわりと重ねられる。そのまま愛しい想い人の手をぎゅっと握って、リル・ルリ(想愛アクアリウム・f10762)は愛らしく双眸を煌かせる。
「雲の上に国があるという御伽噺は、本当だったのね!」
 見渡す限り、大地の代わりに敷き詰められたふわふわの雲の上を歩く。踏み込めばふわんと弾むような心地に、少しよろめきそうになっても、誘名・櫻宵(屠櫻・f02768)の手は、先導するリルにしっかりと握られてる。大丈夫? と楽しげに首を傾げるリルに、ええ、平気よと返した。頼もしい貴方と一緒だもの。告げれば彼は少し照れたように、それでも得意げに微笑んだ。
 リルの無邪気な笑顔が、櫻宵の桜を綻ばせる。角に、背の枝に息吹く桜は溢れんばかりに満開に咲き誇り、風に揺すられれば、ふわふわと桜雨を降らせた。
 ふたりの上にあるのは、青空を彩るように歪な雲を染める、優しい薄紅だった。それは、桜の下で空を見上げる光景に、とても良く似ている。零れるひかりが優しく、心地良い。
「雲の上に、桜が咲くなんて不思議だね」
 空桜を仰ぎ見てから、傍らの人魚に優しく触れ、その髪を梳く様に撫でた。触れる手に、想い隠すことなんて出来ずに。リルはすぐに観念した様子で眦を和らげた。
「……本当は不思議じゃない」
 ――だって、僕の隣で何時だって、美しい桜龍が花笑んでいるのだから。
「――あなたは本当に桜が好きよね」
 本当は分かっている。彼が、桜が好きなのは――。痛いほどに、感じている。でも、それを自らの口で紡ぐのは少しばかり照れ臭く感じられて。脈打つ鼓動を隠すように、もう一度空を仰ぎ見た。
「……嬉しくなるわ」
 知っている癖に。そう零す前に、落とされた言葉にリルも笑う。
 櫻宵が嬉しいなら、自分も嬉しいのだ。心から。

 櫻宵と共に空を行くのなら、星の力を借りようか。
 星と手を繋いでから、宙を踏めば。不思議なことに空間を駆けあがるように浮かぶことが出来た。リルは尾鰭を揺らし、いつものように空を游ぐも、今日はいつもとは違う。すぐ傍らに櫻宵がいる。
「ねえ、櫻宵はどんな空を探すの?」
「……あたしの探す空?」
 ――星が泪を零した夜?
 その泪は何で出来ているのだろう。硝子のように、手にとることができるのだろうか。君が望むなら、君を飾るひとつとして贈ってあげたい。
 ――真っ赤な戀桜が咲き誇った夕焼けの宴?
 薄紅の優しい色も好きだけれど、燃え上がるような色もいい。鮮やかな紅の中で、染まる君はきっと何よりも美しいのだろう。
 ――それとも、君という櫻がこの世界に芽吹いた美しい春の宵の暁空?
 君が望むなら、僕はどんな空だって探しに行きたい。
「……リル。リルがあげてくれた空も、どれもあたしの宝物だけれど、そのどれとも違うわ」
 リルはどんな空を探してるの?
 櫻宵が告げ、問えば、繋いだ手の力が少しだけ強くなる。
 リルの眸が、櫻宵を真っすぐに見つめた。
「櫻宵。僕は――」
 ――僕は、君の空を捜してる。
 僕の識らない、櫻宵がみた空がみたい。
 僕と出会う前に、僕といない時にみた空――全部。
 ねぇ、おしえて。お願い。
 櫻が一番好きな空をしりたい。
 そして、新しくしった君のことを、また歌いたい。
「……そんな事を言ってると、怖い桜龍に食べられるわよ」
 櫻宵が困ったように口にしても、リルは揺るがなかった。怖くなんてない。構わないのだ。
「いいよ――その桜龍になら、食べられても」
 君になら、食べられてもいい。
 そんなことを、恥ずかしげもなく口にするリルに、今度は櫻宵が観念する番だ。少し照れ臭いけれど、あなたが望むなら、音にして伝えよう。自分はそれができないほど、子供ではないし、何より伝えることで、あなたがまた笑うのなら。出し惜しむ理由はない。
「探す必要はないのよ」
 リルが首を傾げた。浮かぶ空の中で、薄紅がひらひらと舞う。
「だってほら! あなたと共に過ごし、リルが笑うこの空が」
 何より、あたしの見たい空だもの。
 櫻宵が咲いている。嗚呼、綺麗だ。僕の、櫻――。
「リルと一緒に歩む世界の空――」
 それがあたしを何時だって迎えてくれる。こんなに幸せなことが、他にあるだろうか。
 櫻宵の言葉に、リルが白磁の肌を彼の色に染めた。
 嗚呼、なんて単純。でも、そうやって今この瞬間の空がまた、宝物になった。

 ――ずるい。
 かけがえのない、秘色の空よ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
どのお誘いも、とっても楽しそう!
なんだか目移りしちゃうね

お星様と踊ろうか
空はいつでも飛べるけど、そこで踊るのは初めてだから
いつもなら使うの恥ずかしい技だけど
今回だけは、演出として【指定UC】
★Venti Alaにも風魔法を宿して
雰囲気作りも大事でしょ?

ふふ、驚いた?
僕なら手離しても大丈夫
その高度にさえ連れて行ってもらえればね
どうぞ踊っていただけますか?

星空の中でくるくる【ダンス】
優雅に、華麗に、視線を、息を合わせて

素敵な星空だね
君達の愛した世界
僕も好きになっちゃった
また来たいなぁ…機会さえあれば
その時はもう一度お相手してくれる?

約束で縛るつもりはないけど
ただ記憶に残してもらえたら嬉しいな、って




 拓けた空を、数多の空を越え、澪が迎えに行ったのは夜空のステージ。
 ふわふわさんに乗って空を散歩するのは、きっと自分の翼で飛ぶのとはまた違った楽しさがあるのだろう。あまぁいご馳走を、みんなで一緒に食べるのもいい。どのお誘いもとても楽しそうで、目移りしてしまう。けれど折角ならと、澪は思うのだ。
 ――お星さまと、踊ってみたい。
 純白の翼をふわりと広げ羽ばたかせ、空に浮かんだ。
 空はいつでも飛べるけど、そこで踊るのは初めてだから――。
 いつもなら、使うのは少しだけ恥ずかしい技。
 でも、今日は、この空の国でお星さまと踊ることができる、特別な夜。
 舞い吹雪く花びらが、澪を取り巻いて、光る身体を包むのは美しいドレス。ステップを踏むようにたたんと雲を蹴り込めば、純白を彩る黄金のフリルが、リボンがひらひらと愛らしく揺れた。
「雰囲気作りも、大事でしょ?」
 少年が琥珀の眸を細め、こてりと首を傾げれば、星は瞬き、少年に駆け寄った。
「ふふ、驚いた?」
「すごいっ。きれい!」
「きれいで、かわいくって、きらきら!」
 星の言葉に、君たちもきらきらだよと笑う澪に、お揃いは嬉しいと星は更に輝きを増す。
「ね、僕なら手を離しても大丈夫」
「そうなの? あっ、つばさがあるものね!」
 星たちはくるり澪の背に回って、柔らかな翼を物珍し気に見る。でも、君たちが踊る高さまで行くのは少し難しいから。
「――どうぞ、踊っていただけますか?」
 勿論と飛びつくように手をとる、星ふたつ。
 背だけではない。身軽さに特化した靴にも、小さく愛らしい翼を宿し、星たちと一緒に空を駆けあがる。うんと高いところまでやってくれば、そこは一面の星たちの世界。
「ようこそ、お姫さま!」
 澪の愛らしい姿に、少女と間違えたらしい星たちは無邪気に笑う。少し気恥しい気はしたけれど、悪気がまったくない星たちを怒る気にはなれなくて、困ったように目を細めた。
 星空の中で、目を合わせ、息を合わせステップを踏み、まわり、踊る。
 優雅に、華麗に――澪が指先を向けた先、星はくるりと回って、飛び跳ねて。澪の頭上を駆け抜ける。
「わ、流れ星みたい!」
 澪が眸を輝かせれば、星は得意げに笑う。助けてくれたお礼に、君の願いを叶えたかったのだと、もう一度流れては瞬いて。
「――素敵な、星空だね」
 此処は――君たちの愛した世界は、とても美しくて、楽しくて。
「僕も大好きになっちゃった」
「ほんと? ほんとう? うれしいっ」
「うん、本当だよ。また来たいなぁ……機会さえあれば」
 手を離しても大丈夫。そう言ったけれど、今度は星の手を取って。
「ねえ、その時は、もう一度お相手してくれる?」
 約束で縛るつもりはないけれど、ただ記憶に、今日という日の記憶を――一緒に踊った記憶を残してもらえたら嬉しい。そんなふうに思って、小さな手を優しく握った。
 星は瞬く。縛るとか、そんなことは何も考えていないみたいに無邪気に光る。だって、君と過ごす時間は、ただこんなにも楽しい。
「うん、またきっとおどろうっ」
 その日を、ずっとずうっと、心待ちにしている。
 君のための空を探して、待っている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

姫城・京杜
與儀(f16671)と

與儀にこくり頷く
ああ、俺達の空をふたりで迎えに行こう

みんなが自由に遊ぶ空に、よかったって笑みながら
今は、ふたりの空を探しに
青空も茜空も好きだ
雨空には今でも色々思い抱いちまうけど
でも、虹を架けるような
優しい雨があること、俺は誰よりも知ってる

夕食の献立とか俺のイケメンな戦いぶりとか
いつもの会話しつつ
與儀が辿る気配を追い、並んで歩く

俺達の空を見つければ満面の笑顔に
與儀、與儀、すげーな!
できるだけ長く…一緒にいろんなもの共有したい
そんなの俺の我儘って分かってるけど
そっと願う分には構わねェよな?

與儀の言葉に、俺に任せとけ、って返しつつ
この空に誓う…今度こそ、死んでも俺は主を守るって


英比良・與儀
ヒメ(f17071)と

茶会の招きに笑って、後でなと
先に俺の、俺たちが見たい…
いや、空を迎えに行きたいんだ
ヒメ、行くぞ

一歩踏み出せば様変わりしていくような
その空の様は美しいと思う
青空も、茜色の空も
けど俺は少しくすんだ空色でも、そこに虹がかかる空を迎えたい
雨の気配と陽の気配で生み出されたそれが気に入りだからだ
なんとなくわかる、雨の気配。それを俺は辿ろうか
……あっちの気がする

他愛ない話をしながら歩いて、探して
見つかったら――自然と頬が緩んでしまう
いいな、これ
こういう景色を、これからも共に――見て行こうな

俺の守護者……今日は騎士か
頼りにしてるぜ
(何考えてるか、わかる。俺のために死ぬのは許さねェよ)




 空が青く、眩しい。
 それでも思う、京杜にとって一番眩しい青は、この晴れ渡る青ではない。淡い緑を溶かしたような、優しい青だ。
(「――與儀の青」)
 向けられた視線に、また何か考えてるなと彼の愛する青を柔く細める。その表情を見るだけで、心が熱くなる。
 花蜜溶かした紅茶も、この国でしか味わうことのできない雲が作った綿あめも魅力的だ。誘いにはまた後でと、此処に戻ると約束することで、彼らの優しい想いを受け止めようと思う。ふたりには、その前にやりたいことがあった。
「俺の、俺たちが見たい……いや」
 ――空を迎えに行きたいんだ。
「ヒメ、行くぞ」
 呟き見上げる主に、京杜はこくり頷き、空を仰ぎみてから、少年へと視線を移す。
「ああ、俺達の空を、ふたりで迎えに行こう」
 雲の上を歩み進めば、空の住人たちが、楽しげに其々の空を迎えていた。花が笑い、風が唄い、星が踊って、みんな幸せそうで。そんな姿を映しながら、良かったと感じる、心から。でも今はふたりの空を探したいと京杜は思う。青空も、茜空も好きだ。雨空には――今も色々な想いを抱いてしまうけれど。それでも、心を彩る鮮やかな――希望を齎す虹を架けるような優しい雨があることを、京杜は誰よりも知っていた。早く、会いたい。與儀と、一緒に迎えたい。
 一歩踏み出せば、様変わりしていくような――その空の様は美しいと思う。青空も、茜色の空も。けれど、少しくすんだ色の空色でも、そこに虹がかかる空を迎えたい。雨の気配と、陽の気配で生み出されたそれが気に入りだからだ。何故って、分かるだろう。お前には、分かるだろう。お前だけが分かっていればいいと、そう思うのは傲慢だろうか。或いは、同じ想いを抱いていると――確信に似た願望を抱く。
「なんとなくわかる、雨の気配」
 それを司る與儀には、雨の気配が何となくわかった。心落ち着くような、心揺さぶるような気配。
「……あっちの気がする」
 それを辿ろうと與儀が口にする前に、京杜の足はもう其方に向いていて。気がする、なんて曖昧な言葉であっても、それは京杜にとってのすべてだ。與儀が言うことに間違いなんてないとでも言うように、その先にあるものを見つめている。そんな姿に、仕方ない奴と思いながらも、当然のように受け入れて傍らを歩んだ。
「なあ與儀、今日の夕食は天ぷらでいいか?」
「天ぷらいいな。かき揚げ食いたい」
「かき揚げな! 野菜の整理出来ていいよな。美味そうなふきのとうもあったし、特売の鶏もも残ってるし――」
 帰ってからの話や、今日の戦いの話――他愛のない会話に花を咲かせながら歩いて、気配を辿れば――嗚呼。
 移り変わる、というよりは。一瞬にして、架かるのだ。
 青い空に、大きな大きな、七色の架け橋。
 主と従者の眸の色を足して割ったような空に、大きく橋が架かるその光景を――ふたりの景色と呼ばずして、なんと呼ぶのだろう。
「っ與儀、與儀、すげーな!」
 満面の笑顔で、興奮を抑えきれないように歓喜の声をあげる京杜に、ややあって、空を仰いだままぽつりと零される。
「……いいな、これ」
 自然と緩む表情に、言葉は続いて。
「ヒメ。ヒメ……こういう景色を、これからも共に」
 ――見て行こうな。
 紡げば、勿論だと笑う。
 できるだけ長く、一緒に、たくさんのものを共有したい。
(「そんなの、俺の我儘って分かってるけど……そっと願う分には、構わねェよな?」)
「俺の守護者……今日は騎士か」
 頼りにしていると與儀が向ける信頼は、脅迫にも似ている。
「ああ、任せとけ」
(「この空に誓う――今度こそ、死んでも俺は主を」)
 笑いながらも、足の横で握る手に、ぎゅっと力を込める京杜の行動を、主は見逃さなかった。
 お前が何を考えているかなんて、手に取るように分かるよ。
 仰ぐ空に誓いを立てる、互いを想う心は確かに重なるのに、自らの為にと身を差し出すその行動を、與儀は認めない。

 ――なあ、俺のために死ぬのは、許さねェよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴァーリャ・スネシュコヴァ

よーし、それじゃあ探険だ!
雲の上をピョコピョコ歩いて
あっ、そよそよさん!ふわふわさん!さっきはどうもだぞ!

よかったら、2人のとっておきの場所に連れてってくれないか?
おっ、乗せてくれるのか?俺、雲に乗るのが夢だったのだ
ぺたんこ座りでふわふわさんの上に乗る

時間に囚われない、自由な空を見渡して
こんな綺麗な場所で遊べるなんて、君たちは幸せものだな!
そうだ!今だけ俺もひえひえさんになれば君たちの気持ちがわかるかも

それっ!と氷の魔力で、小規模ながら雪を降らせ
幻想的な空を更に彩って
チラチラ降る雪の中でそよそよさんとふわふわさんと思いっきり遊ぶぞ!

最後に幻想的な空をスマホでパシャリ
ふふふー、自慢しよっと!




 自らが、仲間たちと共に拓いた空の下。
 意気揚々と足を進める。だって、空の国の探検なんて、考えただけで心が踊るような心地だ。言葉通り雲の上を歩けば、ぴょこぴょこと跳ねる感覚が楽しい。歩むほどに、ヴァーリャの表情は青空の下に似合いの、明るい笑顔を作っていく。
「あっ、そよそよさん! ふわふわさん!」
 少女の視線の先にいたのは、黄金花と共に戦った戦友たちだった。
 おーいと大きく手を振りながらぽよんぽよんと跳ねれば、獣耳のような髪もゆらゆらと愛らしく揺れる。少女の声に気づいた風は、雲の背を押すように、ひゅるひゅると吹雪きながらヴァーリャの元へ。
「さっきはどうもだぞ!」
 ぺこりと礼儀正しく礼の言葉を告げるヴァーリャに、風と雲も、此方こそと。
「あなたのおかげで、あの後もちゃんと戦うことができました」
「ええ、みんなできらきらのお花をたおすことができたわ」
「みんなの力なのだ! ――なあ、良かったらなのだが」
 ふたりのとっておきの場所に、連れて行ってくれないか?
 思いついたのは、空の国の住人である、彼らの大好きな空を一緒に迎えに行くこと。勿論、自分で空を探しに行くのもいい。けれどこうやって、折角縁を繋ぐことが出来たのだ。それならば、この国で過ごすことのできる残り僅かな時間を――物語を、彼らと一緒に紡ぎたいと思う。
「ぼくたちのとっておき、ですか?」
「あら、いいじゃない。連れていってあげましょうよ」
「……そうですね、それでお礼になるなら」
 ぼくに乗ってください。ふんわりもくもく、雲を吹き出したふわふわさんが、自らの体積を広げた。
「おっ、乗せてくれるのか?」
 少女は小柄ではあったけれど、身を預けやすいようにという心づかいだった。そんな様子にそよそよさんは、やっぱりあなたは紳士さんねと揶揄うように笑う。
「俺、雲に乗るのが夢だったのだ!」
 そんなふたりの会話をにこにこと聞きながら、ヴァーリャは雲の上にぺたんこ座りで腰を下ろした。
 ふわふわ雲の上は、想像した以上に心地良い。時間に囚われ、瞬く間に移り変わってしまうことのない、自由な空を見渡して、ヴァーリャは思う。
「こんな綺麗な場所で遊べるなんて、君たちは幸せものだな!」
 その言葉に、誇らしげに。風はひゅるりと吹き抜けて、雲はふわふわと嬉しそうに微睡んで。
「そうだ! 俺もひえひえさんと言われたのだ。今だけ、それになるのも悪くないな」
 だってそうすれば、君たちの気持ちが分かるかもしれない――もっと君たちと、仲良くなることができるかもしれない。そう思ったから。
 それ、という掛け声とともに、氷の魔力で降らせるささやかな雪。
 ふたりがオススメした空は、青が淡く、滲むように白む場所。
 それが少女の色に似ていたのは偶然だったのか、はたまた、彼らが少女を想って、此処に連れて来たのかは分からないけれど。
「なあ、すっごく、綺麗だな!?」
 嬉しさにスマートフォンを取り出して、パシャリと思い出を閉じ込める。あとで誰かに自慢しようなんて考えて、でも、今は。
「そよそよさん、ふわふわさん! 思いっきり遊ぶぞ!」
 ――雪が、舞う。それを揺らすように風がそよいだ。美しい青と白の間を、きらきらと雪が舞う空は――雲だって、風だって知らない。初めて知る空だった。ああ、この国にはまだ、こんなにも美しい空がある。
「ね、ひえひえさん」
 敢えてその名を紡いだのは、その心は――ヴァーリャと同じ。
 君ともっともっと、この国で過ごしたいと、仲良くなりたいと思ったからだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キトリ・フローエ
チロ(f09776)と
エールも一緒に行きましょう!

ふたりはどんな空が好き?
あたしは星空が好きだけど、いま逢いたいのは夜明けの空
チロもあんまり見たことがないでしょう?
エールみたいに優しくて、あたたかないろの空を迎えに行きたいの

あたしもふわふわさんにつかまったり、エールと一緒に空を飛んだりしながら
平和になった空の国の風景は、きっと想像以上に綺麗でステキで
住人の皆もとっても嬉しそうだから、あたしもとっても嬉しくて

あたたかくて甘いホットミルクで一息つきながら
新しい始まりの空を迎えることが出来たなら
おはようってふたりに笑顔で挨拶を
こうして皆で一緒にはじまりの空を見られたことが幸せで
頬が緩んで仕方がないの


チロル・キャンディベル
キトリ(f02354)と
エールを見つけたら手をふって

チロはお日さまぽかぽかの青空がすき!
ソルベといっしょにひなたぼっこができるのよ

夜も朝も、チロはねてるから
どっちのお空もあんまり知らないの
チロの知らないお空、見に行きたいのよ!

ふわふわさんに乗せてもらって
キトリとエールと、はじめましてのお空を探しに
飛べないのはチロとソルベだけね

ふわあ…!
青いのとピンクのと、いろいろまざったふしぎなお空
ほんとう、いっぱいのキラキラな色を持ったエールみたいなお空ね
お日さまがおはようするから、チロたちもおはようね!
おはようはね、1日のはじまりのしあわせな言葉なの
お花を浮かべた、ホットミルクがあるからもっとしあわせね




 戦いを終え、拓けた空の下。駆けつけてくれた愛らしい子の傍にひゅうっと翅を広げて。雲にも似た、真白の家族の背に身を預けていたチロル・キャンディベル(雪のはっぱ・f09776)も、大好きなキトリの姿を認めれば、ひょいと飛び降りて、雲の上。
「わっ、ぴょんぴょんするの!」
 飛び降りた先で、ぽよんと跳ねる感覚が楽しくて、もう一度。
「転ばないように――って言おうとしたけど、この上なら、きっと大丈夫ね!」
 楽し気に笑うチロルの様子に、キトリは鮮やかな菫青石を細める。
 飛び跳ねれば、視界の先、見知った翼を、尾を見つけたチロルは小さな手を高く伸ばして手を振った。声に、耳をぴょこりと揺らして。
「キトリちゃん、お疲れさまなんだよっ」
 お手伝いをしてくれて、どうもありがとう。浮遊するキトリにぺこりと頭を下げエールが告げれば、キトリはいいえと首を振る。
「ねえ、良ければエールも一緒に行きましょう!」
「わわ、ボクも? いいの?」
「一緒だと、きっと楽しいのよ!」
「ありがとうっ。えへへ、嬉しいっ」
 そうと決まれば、まずは相談だ。此処は空の国。美しい空を迎えに行くことができる世界。ならば、考えることはひとつ。
「ふたりはどんな空が好き?」
 足元に敷き詰められた雲の上、座り込むチロルとエール。なるべく同じ目線でお話ができるように――ソルベの背に、チロルはキトリをエスコートしてみせた。仲良しなふたりの雰囲気に、エールはにこにこと表情を緩ませている。
「チロはお日さまぽかぽかの青空がすき!」
 何故かと尋ねる前に、ソルベと一緒にひなたぼっこができるのよ。と続く言葉。チロルがソルベに視線を向けて、ねー! と無邪気に同意を求めれば、ソルベはのそりと頷いた。
「チロのしっぽも、ソルベも、もふもふになるのよ!」
「ふふ、なんだかお布団みたいね」
「お布団よりもふかふか!」
 えへんと胸を張るチロルに、キトリとエールは顔を見合わせてくすり。
「あたしは星空が好きだけど、いま逢いたいのは夜明けの空」
 はじまりすら知らぬまま、星の下で歌ってきたキトリにとって、やはり星空は特別だ。けれど、今逢いたいのは夜明けの空だと続けるキトリ。チロルとエールは、不思議そうにこてり。
 チロも、あんまり見たことがないでしょう?
「エールみたいに優しくて、あたたかないろの空を迎えに行きたいの」
「……ボク?」
 言葉に、傾げていた首を戻して、キトリを見つめた。見つめながらも、答えを考えれば――滲むような翼が、ひかりを迎える空の色に似ていると、そう思ってくれているのだろうかと、そうだとしたら――。エールは思うのだ、あたたかいのは、そんなふうに考えてくれる君のほうだって。でも、嬉しかったから。今はただ、眸に星を。
 チロルは、自分はその時間帯は寝ているから、夜も、朝も、何方の空もあまり知らないと口にした。知らない空を見に行きたい、一緒に。そうして三人頷きあって、空を迎えに向かう。
「でも、飛べないのはチロとソルベだけね?」
「大丈夫よ、ふわふわさんに乗せてもらいましょう!」
 近くにいたふわふわさんに声をかければ、快く承諾してくれる。礼を告げ、ひょいっと身を預ければ、ゆっくりと浮かび上がるふわふわさん。
「チロもソルベも、お空を飛んでる!」
 ふたりを乗せた雲の傍ら、キトリとエールも一緒に空を羽ばたいた。疲れたら、いつでもボクの肩で休んでね。小さな妖精さんを乗せるくらい、どうってことないと手をぎゅっと握って力こぶ(ない)を見せつけるエールに、キトリは可笑しそうに微笑む。その気づかいに、お邪魔するわね、と少しだけと身を預けたりして。
 平和になった空の国の風景は、キトリが想像していた以上にのどかで、温かく、美しいものだった。住人たちは楽しそうに手を繋ぎ、空の中、歌うように、踊るように生活している。ふと、飛ぶ一行に気づいた星たちが、手を振る代わりにきらきらと瞬いた。嗚呼、とても楽しそうだ――胸にそっと手を当てながら、良かったと心から感じる。そんなふうに、いくつもの空を越え、軈て。
「ふわあ……!」
 景色が滲んで、少女たちを取り囲む色が、瞬く間に姿を変える。
 雲で出来た地平線から顔を出す太陽。
 勿忘草に溶けるように、滲む様々な景色を映す若草の双眸は、煌きに満ちた。
「青いのと、ピンクのと――それからっ」
 いろいろまざった不思議なお空。
「ほんとう、いっぱいのキラキラな色を持った、エールみたいなお空ね」
 無邪気に向けられる言葉に、エールは照れくさそうに頬を染め笑う。でも、それならと。
「キトリちゃんみたいな空も、チロルちゃんみたいなお空も、きっとあるよ」
 そうしてそれは、絶対に綺麗なの。
 今度は、ふたりの空を迎えに行くのもいい。
 だってこの国の空は、逃げたりしないから。
 もう、閉ざされることはない――閉ざされたって、同じようにきっとまた、取り戻してみせるから。
 淡い色の空で、風と花が運んでくれた花蜜溶かしたホットミルクを手に、一息。
「お日さまがおはようするから、チロたちもおはようね!」
 此処はおはようの空。おはようは一日のはじまりの、しあわせな言葉だとチロルが笑う。
 はじまりの空で交わされるはじまりの挨拶。
 こうして皆で一緒にこの空で過ごせることが幸せで、キトリは専用の小さなカップに唇を寄せた。そんな様子に、チロルは笑顔のまま。おはようと、それから――。
「お花を浮かべたホットミルクがあるから、もっとしあわせね」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

五条・巴

七結(f00421)と

空を迎えに、行っていい?

嬉しくて早まる足、美しい空
きらきらさんありがとう。

ああ、きれい。綺麗だ。

この世界に、月が無かったら
僕が皆を迎えに行ったのにな。

迎えにきてくれなかったら寂しいから、僕が行く。

ごめん、ごめんね、七結
他の空も迎えに行きたいよね
でももう少し、あと少しだけ
ここにいさせて

七結からのやさしい聲が嬉しくて
甘えてもう少しだけ。

忘れられない、美しき場所。
憧れの地、空の国
ね、また一緒に迎えに行こう


蘭・七結

トモエさん/f02927

常夜の天空は暗澹に満ちている
何時いかなる時も昏く鎖されている
見慣れた闇夜
そんなソラ以外を、視られるというの
嗚呼、なんて心が踊るのかしら

嬉々として歩を刻んであなたの隣へ
行きましょう、トモエさん
ナユたちが出逢いたいもの
それぞれのソラの、お迎えに

見渡す限りの青、蒼、碧
なんてうつくしい空の世界
ナユは、このあおさを見映したかった
常の夜には朝は来ない
けれど、いつの日か
おんなじあおを視られると信じて

いいえ、トモエさん
ナユももう少し。この場所に居たい
目いっぱい焼き付けましょう
このうつくしさを、忘れない
ナユたちの心の中で生き続ける彩

また、お迎えに行ってもいいかしら
待っていてちょうだいね




 常夜の天空は暗澹に満ちている。
 それが七結の住む世界だった。何時いかなる時も……そう、つい先ほどまでのこの国のように昏く鎖されていた――暗い暗雲に阻まれた空に灯る、希望のような瞬き何て識らないの。見慣れた常闇。そんなソラ以外を、視られるというのならば。
(「嗚呼、なんて心が踊るのかしら」)
 細く華奢な指先を、心の在る場所に、そっと触れさせて。
 そんな七結の傍。視線の向こうで青空を仰いでいた巴が振り返る。
 ねえ、ねえ、七結――。
「空を迎えに、行っていい?」
 巴の整った唇が、もご、と結ばれる
 けして大きな声ではなかった。けれども、今にも走り出しそうな声だった。
 歩を刻んで、七結は微笑う。
 ――かわいいひと。
 音にはしない。ただ眦を緩め、あなたの隣。
「行きましょう、トモエさん」
 並び立てば、ふたり歩み出す。
 常闇を照らす光があるのなら、迎えに行きたかった。
 七結だって、巴に負けないくらいの感情を抱いているのだ。
 だから、行きましょう。
「ナユたちが出逢いたいもの」
 それぞれのソラの、お迎えに――。
 嬉しくて早まる足。強く踏み込むほどに、ふわんと浮かび上がってしまう。巴がバランスを崩しそうになれば、手を取ってくれたのはきらきらのお星さまだった。
「わ、きらきらさん、ありがとう」
 黄金花との戦いも含めて礼を告げれば、一緒に空を歩こうと誘われて。
「七結、お誘いされちゃった」
「おねーさんも!」
「素敵なお誘いね」
 星と手を繋ぎ、空を歩く。今度は雲の上で、バランスを崩すこともない。
 けれど、空を歩くというのはとても不思議な感覚だった。空間をなんてことない顔で駆けあがる星に倣って、七結も巴も、一歩ずつ高く、目指す場所へ。
「すごい、すごいよ七結。僕ら、空を歩いてる」
 巴の言葉に、ええと頷いて、踏み込んだ先。
 先ほどまであった、色とはまた違う。
 空が、表情を変えた。
 一面に広がる、前にも、後ろにも、見渡す限りの、青、蒼、碧――。
 嗚呼、嗚呼、なんてうつくしい空の世界。
 無意識に、七結の白い指が、星と繋いだ手に少しだけ力を込めた。
 ナユは、このあおさを見映したかった。
 常の夜には、朝は来ない。
 けれど、いつの日か。またおんあじあおを視られると、信じて――。
(「信じてみても、いいのかしら」)
 七結の双眸が、傍らの青年を呼ぶ。
 すると、声が、耳に落ちた。
 思わず、零れ出たような音だった。
「――ああ、きれい……綺麗だ」
 ねえ、七結。この世界に、もし月が無かったら。
 僕が皆を、迎えに行ったのにな。
 見上げる表情が読み取れない。
「……トモエさん?」
「迎えにきてくれなかったら、寂しいから、僕が行く」
 僕から、会いに行く。
 巴の双眸が、漸く七結を映した。
 互いに、いつもと違った表情を映して、くすりと笑い合う。
 そうして、浮かぶ雲に、腰を下ろして――。
「……ごめん、ごめんね。七結」
 きっと七結だって、他の空を迎えに行きたいはずだ。
 でも、もう少し、あと少しだけ。
「――ここに、いさせて」
 謝罪に込められた想いを受け止めるように、雲に置かれた巴の手に、自らの手をそっと重ねる。
「いいえ、トモエさん」
 大丈夫よ、と。
「ナユも、もう少し。この場所に居たい」
 一緒なのだと、届くように。
「目いっぱい焼き付けましょう」
 七結の艶やかな唇から零れる繊細な音が、巴の鼓膜を優しく揺らす。
 そうして、憧れの地の彩を、大切に心に生かし続けようと誓う。


 此処は、空の国。
 空を迎えに行く世界。

 ねえ、ぼくら、なんで空を迎えに行くようになったんだっけ?
 そんなの知らないよ!
 でも、だって――待ってるだけじゃあ、つまらないから!

 自分の足で、空を迎えに行く世界。
 来る日も来る日も、上を向いて歩いて。
 そうやって空を拓く――希望の国の物語。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月11日


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#アリスラビリンス


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト