Alive Inside!
●瓦礫の中で
闇と、静けさ。
呼びかけに応えていた子の声が絶えて、数日。
全身の痛みを我慢しながら手を伸ばし、孤児院の先生に持たされた食料袋に手を突っ込む。
最後の麦一粒を口に入れて噛み、飲み込む。
水が、欲しい。
どすっ。
動悸が跳ね上がる。頭上から鈍い音。
あいつらだ。私達を狙ってる。ここ数日、ずっと。
どすっ。
どこかで瓦礫が崩れる音がする。
音を立てちゃだめ。口元を押さえる。唇に当てた指の感触はまるで枯れ木みたいだ。
どすっ。
きっと誰かが見つけてくれる。最初はそう思ってたけど、拠点はとっくに移ってるだろうし、みんな私達の事をとっくに諦めてたら。あいつらがいつまでも居なくならなかったら。
もしこのまま誰も見つけてくれなかったら……。
●時間との戦い
「アポカリプスヘルで……わわっ!」
グリモアベースの片隅で、資料を思わず取り落としたのはクララ・リンドヴァル(白魔女・f17817)だ。
「す、すみません。急を要する案件でして」
気を取り直して資料を配りながら、彼女は予知の内容を話し始めた。
「一週間ほど前に出現した『オブリビオン・ストーム』から現れた軍勢により、拠点(ベース)が一つ壊滅しました。
オブリビオンは物資の略奪を行わず、破壊と……虐殺を行い、どこかへと去っていきました」
徹底的な破壊活動の末に、拠点は瓦礫の山と化した。
「その中に……生存者がいます」
子供が2人。身体の小ささを活かし、崩壊した建物に隠れて虐殺をやり過ごしたか。
「いつ崩れるかもわからない狭い空洞に身を潜め、わずかに所持していた食料で命を繋いでいます」
子供たちの詳しい場所まではわからなかったことを詫びつつも、拠点内で生存しているのは確実だという。
虐殺を逃げ延びた者たちは、数キロ離れた地点に新拠点を築きつつある。
「彼らはいずれ旧拠点を訪れるでしょう……しかし、それでは到底救助には間に合いません」
オブリビオンの再襲撃を恐れているのは間違いない。失った物資に見切りをつけているのかも知れないし、瓦礫を片付けることが出来るだけの人員もいない。
拠点再訪の優先度を下げるには、どれも十分な理由だ。
「皆さんには彼らに代わって、瓦礫に埋れた生存者の救助をお願いしたく思います」
夜明けと共に救助開始だ。
「正午ごろに、オブリビオンの群れが襲ってきます」
拠点を破壊した者たちとは違い、肉を狙う。
生存者には目もくれず、全員が猟兵を優先して狙ってくる。
「これを退ければ、一安心でしょう」
生存者の報せは、新拠点にいる者たちにとって吉報となるだろう。加えて物資のほとんどが無事であることを伝えれば、すぐにでも動きを見せるに違いない。
クララは資料――地図の緑色のバツ印を示す。
「物資は全て、ここの食料庫にありました。コンテナに積められているので天候による劣化こそしませんが……積み込みには時間がかかるでしょう」
新拠点側も無い無い尽くしの状態だ。新拠点への運搬手段は、小型のトラック一台しかない。
「可能なら、作業が少しでも早く済むように、手伝って頂けると助かります」
力の弱い子供が真っ先に脅威に晒される。それはとりわけ、アポカリプスヘルではありふれた悲劇なのかも知れない。
「それでも子供たちは世界の希望です、こうした事件を少しずつ解決していけば、いずれ人類の再建に繋がると――そう、信じています。準備が整った方から転送します。どうか、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
そう言ってクララが手に残った魔導書をぱらりと捲れば、グリモアが光り輝き、猟兵達の視界を優しく包んだ。
白妙
白妙と申します。宜しくお願い致します。
今回の舞台はアポカリプスヘル。放棄された拠点跡に取り残された生存者を救出し、脅威を排除。その上で物資ごと新拠点に送り届けるのが目的です。
●旧拠点
直径100メートルほどの小さな拠点です。
今は瓦礫の山と化しています。
●第1章【冒険】
敵襲により崩壊し放棄された拠点跡から、生存者を救助します。
生存者は二人の子供です。
●第2章【集団戦】
生存者や食料を狙っていたオブリビオンとの戦いです。
痩せた生存者には目もくれず、猟兵に狙いを定めて突っ込んできます。
●第3章【日常】
旧拠点から物資を運び出し、何らかの方法で新拠点に送り届けます。
掘り出し、トラックへの積み込み、新拠点への運搬、生存者のケア……得意な分野を活かして頂ければ。
新拠点は、旧拠点から目視できる場所にあります(上画像の左端にあるビルくらいの距離です)。
拠点同士を繋ぐ道は荒地ですが、おおむね平坦です。
プレイング開始受付はお手数をおかけしますが、各章ごとにマスターページを参照して頂けると幸いです。
第1章 冒険
『命の灯を絶やさぬために』
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POW : 崩壊した建物の瓦礫や野生生物を力ずくで排除し道を切り開く。
SPD : 敵に見つからないように抜け道を探し出し、危険を避けて進路を確保。
WIZ : 拠点跡に残された僅かな生命反応を探り、生存者の居場所を推測、救助。
👑11
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紫谷・康行
無くなったものは何か
失ったものは何か
無くなったものは見つかるかもしれない
失ったものはもう戻らない
失う前に見つけられれば
物探しの魔法を使い生存者を探す
「存在を示す力ある言葉において命じる
いまだ消えぬ命の炎を示せ
人の意志を持ちし絶えざる希望を現せ
光となって我が心に現れよ」
生存者の命を光として心に映し
その場所を探そうとする
光の強さは生命力と生きる意志の強さ
時に呼びかけ
時に希望の言葉を紡ぎ
生存者の生きる意志を呼び起こそうとする
道探しの魔法を使い
鍵を開け、閉ざされた道を開き
明かりをともす
「道を拓け」
と魔法の言葉で告げる
万能ではないがこの言葉で開ける道もあるだろう
瓦礫の封を解くことができるだろう
●
薄明の中に浮かび上がるのは、破壊された街並みと。
その光景をぼんやりと眺める、紫谷・康行(ハローユアワールド・f04625)の姿。
(「無くなったものは何か。失ったものは何か」)
滅びゆく世界に身を置いていた康行にとって、目の前の光景は驚きを見せるほどのものではない。既に多くが無くなり、多くが失われたのだ。
(「無くなったものは見つかるかもしれない。失ったものはもう戻らない」)
その中には取り返しがつくものもあり、つかないものもある。
二人の命は……願わくば、前者であって欲しい。
ならば。
康行はこれから取るべき手段を探すため、瞳を閉じて瞑想に耽る。
「――存在を示す力ある言葉において命じる」
やがて彼が紡いだ言葉は、人探しの魔法。
「いまだ消えぬ命の炎を示せ。人の意志を持ちし絶えざる希望を現せ。光となって我が心に現れよ」
呪文を唱え終わり、数拍。
ちかり。
康行の瞼の裏で、光が瞬く。
ひとつ……ふたつ。命の煌き。
極めて微細な反応ではあったが、死の気配に満たされたこの場において、やはりそれは眩く感じられるものであった。
やがて目を開け、周囲を見渡す康行。
障害物の少ない場所を見定め、崩壊した拠点への第一歩を、ゆっくりと踏み下ろした。
崩壊した拠点には瓦礫や木材、ガラス片や生活用品などが散乱している。お世辞にも歩きやすいとは言えない。そんな中で康行は時折立ち止まりつつ、生存者の命を絶えず心に映すことで、その居場所を掴もうとしていた。
魔術のみを介して生存者を探す康行には、二人のいる大まかな方角しかわからない。だが、彼らの命の強さがわかる。
「……」
二人の生存者のうち、片方は半ば希望を失いかけている。
もう片方は希望を失っていないが、強い不安と憂いを感じている。
康行は希望と呼び掛けの言葉を、二人の命に直接投げかけていた。
呼び声と共に光は炎のように揺らめき、僅かずつではあるが輝きを強めていく。
それは紛れも無く、生命力と生きる意志の強さの、発露。
何よりも本人の生きる意志を呼び覚ますそうとする康行の懸命の試みは、二人の生存確率を着実に引き上げていくものであった。
廃墟の奥へ向けて探索を続けていた康行だったが、瓦礫の山を前に、歩みを止めた。
地図によると、ここはコンクリートの建物が立ち並ぶ区画と外壁が接する場所だったらしい。人の背をゆうに超える破片が柱や鉄筋と絡み合い、康行の行く手を塞いでいる。
多くの者はここで踵を返すだろう。だが。
(「――この先に居る」)
光を頼りにここまで来た康行の胸には、揺るがぬ確信。
先に進むために。後の猟兵が続けるように。
多くの制約を抱えつつも目的に適った魔法を、康行は迷わず行使する。
「道を拓け」
簡潔にして明瞭。
道探しの言葉が、廃墟に吸い込まれていく。
目の前の巨大な破片の群れが、カタカタと音を立て始めた。
次いで、それらがガラガラと音を立て、両脇に移動する。
鉄筋が引っ掻き音を立て、柱が倒れ、ざぁっ、と粉塵が流れ落ちる。
やがて、あたかも海が割れるかの如く――瓦礫の山に、一筋の道が示された。
巻き込まれた電球や電灯がぽつぽつと灯り、道標のように薄明を照らす。
未だ粉塵の舞う空気に茶色の癖毛を晒し、剥き出しの地面を歩み出す康行。
「――失う前に見つけられれば」
人知れず呟いた康行の言葉には、確かな矜持が滲んでいた。
成功
🔵🔵🔴
ポノ・エトランゼ
『WIZ』
極限状態が続くと危ない……何より心細いでしょうね
隠れているのだから、呼びかけることもできないわね
早く見つけましょう
他の猟兵さんも持ってきているかもだけど、発見時のための水を用意しておくわ
私に出来る事を
力仕事は苦手だから、仲間と情報を共有・バトンタッチ
アイテムの小鳥型サーチドローンを放って、生命反応を探ってみるわね
同期させた端末の映像を見て何か分かれば良いけれど
崩壊した建物の隙間にも入り込んで、時々、敵に聞こえない程度の小鳥の囀りを
子供たちが何か反応を示してくれれば良いなぁ
発見出来たら怖くないよって手を差し伸べて
怯えさせない様、陽の光に紛らせてUCで子供二人の回復を
アドリブ・連携歓迎
フェルメア・ルインズ
◎アドリブ連携歓迎
ここがアポカリプスヘルか
こういう力こそ全て!っていうのは、嫌いじゃないが……
懸命に足掻く人間っていうのも嫌いじゃない
観光はあまり期待できないが、助けてやるか
■行動
ここは久しぶりになるが、アレを使うか
まずはそこら辺の土を丸めて泥団子を十数個ほど作り
適当な顔でも描いて……
後は【UC】発動、泥団子に生命を与えて『知性』重視の即席の使い魔を作る
よし、久しぶりだが上手くいったな!
それじゃお前ら、瓦礫の隙間に転がって入って生存者の捜索だ
見つけたら声を出して知らせろよ
生存者を発見出来たら瓦礫を【怪力】で撤去して救助
崩落しないか、内部や周囲の泥団子達に【情報収集】させながら
慎重に撤去していく
●
荒涼とした大地に太陽が昇る。
両脇の電灯は余力を使い果たしたかのように輝きを失っていた。だが、魔術師の築いた道そのものは、未だ健在だ。
その道を一人辿るのは、ポノ・エトランゼ(エルフのアーチャー・f00385)。彼女は俯いたまま顎に手を当て、生存者に思いを巡らせていた。
(「極限状態が続くと危ない……」)
約一週間。
今日まで生存者が放置されていた時間である。飢餓と呼べる状態に陥ってから、果たして何日経ったか。
一刻でも早く生命の危険から救い出せるように、ポノは新鮮な水を用意していた。
(「何より心細いでしょうね」)
予知では子供たちは繰り返し襲来するオブリビオンを恐れ、物陰から動けなかった。
物音に怯えながら、暗闇の中で独り助けを待つ。その不安は想像を絶する。
新たな脅威を呼び込まないためにも、静かに捜索を進めるに越したことはない。
「早く見つけましょう」
まとわりつく思考を一旦切り、紫の瞳を前へ向けるポノ。
彼女の視線の先には――幾重にも拘束具を嵌められた少女がうずくまっていた。
フェルメア・ルインズ(拘束されし魔神・f21904)だ。
「どうしたの?」
ポノの呼びかけに軽く振り向き、再び視線を地面に落とすフェルメア。
腰をかがめてフェルメアの手元を覗き込めば、そこには野球のボールほどの泥団子があった。
フェルメアは巨大な手枷が邪魔するのも構わず、そこらへんの土を丸めて、こねこねしていた。
「久しぶりにアレを使おうと思ってな」
水で濡らした土を器用にこねて、丸めて――砂でコーティング。
続いて、フェルメアは木の枝を拾い上げる。
「適当な顔でも描いて……」
最後に地面に置けば、泥団子は自力でころころと転がり始めた。
「よし、上手くいったな!」
今この瞬間、神フェルメアの手で、即席の使い魔がアポカリプスヘルに創造された。
「それじゃお前は瓦礫の隙間に転がって入って、生存者の捜索だ。見つけたら声を出してオレに知らせろよ」
「あの、フェルメアさん。ちょっといいかしら?」
「ん?」
「この子、声、出せるの?」
思わずそう問うポノに。
「ああ、出せるぜ」
そう答えるフェルメア。
ポノが泥団子をまじまじと見れば、泥団子の方も素朴な表情でポノを見上げていた。
「これでも結構賢く作ってあるんだぜ。情報を集めて来る事もできるしな」
なるほど――そう言われると喋れそうな雰囲気が漂っている気もする。
なんとなくだが、ポノは追及をやめてしまった。
「それじゃあ私はドローンを放って奥の方を探してみるわね」
「ああ。期待してるぜ」
去っていくポノの背中を見ながら、フェルメアは一人呟く。
「アポカリプスヘル……こういう力こそ全て! っていうのは嫌いじゃないが」
それは神――否、魔神の視座とでも言うべきか。
「懸命に足掻く人間っていうのも嫌いじゃない。観光はあまり期待できないが、助けてやるか」
フェルメアもまた彼女なりに、生存者の安否を気遣っていた。やがて再び足元に目を落とすと、追加の泥団子をこさえにかかるのだった。
瓦礫の上を青い鳥が行ったり来たり。ポノの小鳥型サーチドローンだ。
ドローンから送られてくる情報を、ポノは同期させたスマートフォンで逐一チェックする。
自律AIで制御されたドローンによる捜索は的確だ。崩壊した建物の隙間にぴょんぴょんと入り込み、囀る。
囀りは瓦礫の奥で反響し、効率良く生存者の生命反応を引き出せる。
ただしその音はポノの配慮によって、周囲の存在に気取られない程度に抑えられている。
一方、地上ではフェルメアのこねあげた十数個の泥団子が跳ね回っていた。
無駄のない動きだった。
フェルメアの手によって『知性』を人間以上に引き上げられた泥団子たちの探し方は、試行を繰り返すたびに着実に最適解に近づいていく。
空と地上。二人の連携と情報共有の元に、捜索範囲が絞られていく。
「もう一回言うぞ。見つけたら声を出して知らせるんだ」
「……」
果たして泥団子の声とはどんなものなのか。やはり少しだけ気になるポノだった。
捜索を始めて一時間も経った頃。
「あっ!」
ポノの端末に写り込んだのは、もぞもぞと動く、細い脚先。
かなり奥まった場所で、小鳥型サーチドローンが生存者の一人を発見した。
「あっちよ!」
小鳥の囀る方へ、ポノとフェルメアが駆けつける。
そこには、根元から崩壊した家屋。
ポノはすかさずフェルメアへとバトンタッチ。
フェルメアは泥団子たちを瓦礫の周囲や内部に潜り込ませ始めた。
瓦礫の組み合い方を分析させるためだ。
周囲の瓦礫が崩壊しないように、次にどかす瓦礫を使い魔に選ばせる。
それらをフェルメアは撤去していく。
「おらっ」
大きく力を制限されている筈のフェルメアだが、それでも彼女の膂力には並ならぬものがある。
手枷を嵌められた両手で瓦礫を掴み上げ、落とす。
慎重に、冷静に。
爪先、膝、胴、腕……生存者の痩せた体が、フェルメアが瓦礫を取り除くたびに、順々に日光に晒されていく。
ポノはその様子を食い入るように見つめていた。
「――っしゃあ!」
最後にフェルメアが、瓦礫の山から一人の少年を抱き上げた。
少年を抱えたまま、道の真ん中へ。
今度はフェルメアがポノにバトンタッチ。
少年は思ったよりも衰弱が激しいようだ――ならば、出来る事は全てやる。
まずは水分補給。ポノは急いで懐から水を取り出し、少年の口に当てた。
生存者が心の奥底で最も焦がれていたであろう、冷たい水。
それが今、少年の喉にゆっくりと注がれていく。
続いて陽の光に紛れて少年に降り注ぐのは、聖なる光。
体中の傷が、みるみる塞がっていく。
最後にポノは手を差し伸べる。
怖くないよ。怯えなくていいよ。そう言いたい気持ちを込めて。
やがて、少年はポノの手をぎゅっと握り返して来た。
少年の手には、確かな力が戻っていた。
「良かった……」
もう大丈夫。
「何か言いたいんだろ?」
先に気付いたフェルメアがそう言って指差したのは、微かに動く少年の唇。
疲労を訴える自身の身体に構わず、背を曲げ、長耳を少年の口に近づけるポノ。
「……近くにいるのね?」
探索の終わりは、着実に近づいていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ガルディエ・ワールレイド
生存者を探して、彼らを崩れかけの廃墟から救助するぜ。
先ずは周辺の瓦礫を崩さないよう気をつけながら探索。
勇気づける鼓舞も兼ねて声を出し、子供の反応を探る。
「救出に来た! 避難先の当ても有る! 焦らずに返事をしてくれ!」
その活動や他猟兵の探索で場所が判明すれば脱出を助ける。
赤い宝玉《竜宝珠ワールレイド》を《念動力》で浮かせて、子供達の元へ届ける。
「その宝石はオーバーテクノロジーを用いた脱出用のアイテムだ。それに触って欲しい」
厳密にはそういうアイテムじゃ無いが、こう言った方が通じるだろう。
条件を満たせば【竜の財宝】を発動して念動力で《竜宝珠ワールレイド》を回収。子供達を解放後に状況を説明するぜ。
シャルロット・クリスティア
あまり時間はかけていられなさそうですね……手早く行きましょう。
小さな子供に防衛戦闘のノウハウがあるかは微妙ですが……。
それでも、外からの襲撃を凌いでいられているのなら奥深くにいるのは間違いないでしょうね。
少なくともすぐ崩れそうな場所にはいない。
地形をよく確認し、居場所に目星をつけて行きましょう。
火薬やロープ、楔など道具はそれなりに持ち歩いています。
手では辛いおおきな瓦礫も、砕くなりどかすなりはある程度できる筈。
後は……そうですね。すぐに敵が来るわけでないのなら、声を使うのもいいでしょう。
何処にいるのかと大声で呼びかける。単純ですが大事な事です。
人の声が聞こえたら、やはり安心するでしょうからね。
●
猟兵たちの救助活動により、一人目の生存者は無事救助された。とはいえ。
「あまり時間はかけていられなさそうですね……手早く行きましょう」
青地に金の装飾をあしらったコートを揺らし、廃墟を歩みながらシャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)が言う。
「小さな子供に防衛戦闘のノウハウがあるかは微妙ですが……」
彼女が気にしていたのは、予知で生存者を襲っていたオブリビオンだ。
「心得があったとしても、凌ぐのがやっとかも知れねぇな」
漆黒の甲冑を身に纏い、シャルロットの隣を歩くのはガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)。
「それでも、今まで外からの襲撃を凌いでいられたのなら、奥深くにいるのは間違いないでしょうね」
二人は一人目の生存者が見つかった地点から、さらに奥へと進もうとしていた。
「――少なくともすぐ崩れそうな場所にはいない」
推測を重ね、生存者の居場所にある程度の目星をつけていくシャルロット。
「平坦で崩れにくい場所だろう。あるいは、瓦礫そのものが発生しにくい場所か」
この周辺でそれらの条件を満たす場所は限られる。
会話をしながらも周囲の地形を確認していたシャルロットが目を留めたのは、外壁からはやや離れた、住宅地。
ここも今では更地と化しているが、手前のビル群と比べて、積もった瓦礫の低さは一目瞭然だ。
「捜索範囲はだいぶ絞れたが、時間のほうは残り少ない。疲れ切った生存者を勇気づけるためにも、俺たちの方から声を出していこうぜ」
「そうですね。敵がすぐに来ないのなら。それに人の声が聞こえたら、やはり安心するでしょうからね」
捜索手段について一致を見たシャルロットとガルディエは、目星をつけた区域へ向けて歩を進めるのだった。
破壊の跡生々しい廃墟の只中を、声が響き渡る。
「救出に来た! 避難先の当ても有る! 焦らずに返事をしてくれ!」
「助けに来ました! 聞こえたら返事をしてください!」
シャルロットとガルディエは、周囲の瓦礫を崩さないように気を配りつつ、呼びかけを行っていた。
(「これで反応を示してくれるといいんだが」)
生存者の身を案じる二人の頭上にある太陽は、少しずつ真南に近づきつつあった。
「!」
周囲に気を配っていたシャルロットの視界の端で、何かが動いた。
その空を射抜かんばかりの狙撃手の蒼い魔眼が、はるか遠くにある瓦礫の隙間で何かが動くのを、正確に捉えたのだ。
「あっちです!!」
先導するシャルロット。追い付くガルディエ。
まだ姿は見えないが、少女は倒壊した家屋に閉じ込められているようだ。
「大丈夫か!!」
ガルディエが大声で呼びかければ。
「うう……」
暗闇の奥から、弱弱しい声が返ってくる。
なんとか間に合ったようだ。
家屋のあちこちには何かが体当たりしたような跡がある。おそらくオブリビオンの仕業だろう。
破壊は広範囲に渡っていた。撤去作業の足場になりそうな場所にも瓦礫が落ちている。このままでは作業は難航しそうだ。
「これを使いましょう!」
シャルロットがトラッピングツールから取り出したのは、頑丈なロープ。
手をかける場所の見当たらない大きな瓦礫をシャルロットが器用に縛り、二人でロープを引けば、瓦礫はあっけなく引きずられていく。
「足場を確保した後は手でどかした方が早そうだ。崩さないよう、慎重にいこう」
「はい。楔も用意してありますので、必要ならば仰ってください」
本格的な救出活動に移るべく、シャルロットとガルディエは周囲の瓦礫を撤去しつつ、倒壊した家屋に少しずつ近づいていった。
少女は外観よりも奥に居た。オブリビオンから助かったのも、そのせいかも知れない。
そのぶん作業も難航するかと思われたが、二人が協力し合う事で、想定以上の速さで瓦礫を撤去することが出来た。
作業が進むうちに、少女の頭が日光に照らし出された。
おそらくは空洞内部にも、何かを目視出来るだけの光が届いていることだろう。
ガルディエは身に着けていた赤い宝石のペンダントを念動力で浮かせ、少女の元へと送り届ける。
竜宝珠ワールレイド。一族に伝わる宝玉である。
ペンダントは闇の中をゆっくりと進み、少女の目の前でふわふわと漂う。
「その宝石はオーバーテクノロジーを用いた脱出用のアイテムだ。それに触って欲しい」
「……」
必要な情報を選び、少女に伝えるガルディエ。少女は一瞬迷う素振りを見せたものの、やがて意を決したのか痩せ細ったその手を伸ばし、ペンダントに触れた。
吸い込まれる少女。その先はダンジョンの最奥の部屋。安全地帯だ。
ペンダントがガルディエの手に再び収まる。
一部始終を眺め、安堵の溜息を漏らすシャルロット。
「……間に合いましたね。さぁ、急いで手当てをしてあげましょう」
「ああ……ま、こういうのも竜の権能……ってな」
ガルディエはそう答え、不敵に笑ってペンダントを首に下げなおすのだった。
大成功
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第2章 集団戦
『ハヤブサさま』
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POW : 獲物発見
全身を【風のオーラ】で覆い、自身の【肉を求める意思】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : 抉り喰らう
【嘴】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【習性と味】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 貪欲なる意思
【肉を求める意思を籠めた】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【仲間】の協力があれば威力が倍増する。
👑11
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●
猟兵達の救助により、生存者は無事に救助された。
二人とも手厚い看護を受け、今は宝珠の中の世界で回復を待っている。
太陽が天高く上った頃。
周囲を警戒していた猟兵が、地平線の向こうに丸いものを幾つも見つけた。
『ぴょろ』
ハヤブサさま。
オブリビオンストームに斬り裂かれた鳥類達の成れの果て。
動くものを見つけたならば襲い掛かって来る、危険なまるもふだ。
だが、ハヤブサさまたちは互いの丸い身体を寄せ合っている。
いつもとは違う状況を前に相談でもしているのだろうか。
やがて向き直ると、ゴーグルをちゃきっと装備。
どうやら襲う事に決めたらしい。
『ぴぴー!』
一羽が甲高く鳴くのと同時。
『ぴー!』
『ぴょろろろー!!』
短い翼をパタつかせ、もふもふの身体を若干地面にバウンドさせつつも。
猟兵たちに向けて猛スピードで突撃してきた。
紫谷・康行
飛んでくるなら自由を奪えばいい
当たらなければいいのだから
相手のバランスを崩せばいい
ただ真っ直ぐ飛んでくるなら仲間が倒してくれるだろうからね
味方の後方に位置し【コード・ポテンシャル・ゼロ】を使い相手の熱を奪い動きを止める
仲間に襲いかかってきた相手の翼か足の動きを止め移動する方向を変えられなくしたり
迫ってくる相手の片方の翼と足の動きを止めてバランスを崩したりして相手の足並みを揃わなくさせたり
先行する相手に使って玉突きを起こそうとしたりする
大事なのは味方に有利な状況を作ること
後方から戦況を見て効果的に相手を混乱させようとする
近づいてきた相手は闇払いで斬り捨てる
「少しクールダウンするのもいいと思うよ」
フェルメア・ルインズ
◎アドリブ連携歓迎
なんだありゃ?
また偉い可愛らしいのが来たもんだな……
だが、あの殺気は正に狩る者のそれだ
見た目で油断させるつもりなんだろうが、オレには通用しねえよ
■戦闘
ああいうのが好きな奴は、もふもふとかしてみたいんだろ?
どれ、オレももふもふしてやるか……ただし、この炎の腕でなぁ!
【UC】で周囲に炎の腕を出せる限り出し
それぞれを操作して迎撃する事で突進を阻止、敵を捕まえたら
そのまま炎腕で思う存分もふってやる(【属性攻撃】【焼却】)
もし炎を潜り抜けてくる奴が居たら
手枷で【武器受け】か、硬化した覇気で【オーラ防御】
そんなに炎が嫌ならしょうがねえな
オレが直接もふもふ(【怪力】で握り潰し)してやるよ!
●
瞬く間に砂煙に包まれる地平線。
その砂煙の中から、ハヤブサさまたちが姿を現した。
「なんだありゃ? また偉い可愛らしいのが来たもんだな……」
視界の中で徐々に大きくなって来るまるもふたちを見て、フェルメアは思わずそんな声を漏らす。
横楕円形のフォルムに不釣り合いな短い手足を振って、全力で駆けて来る。正直、とても可愛らしい。
だが、フェルメアは彼らのゴーグルの奥に潜む殺気を見逃さなかった。
彼らの肉を求める意思は、猛禽そのものだ。
「見た目で油断させるつもりなんだろうが、オレには通用しねえよ」
不敵にそう笑うフェルメア。
そんな彼女の後方に陣取っていたのは、康行。
焦茶色の癖毛と灰色のローブが、風ではためき始める。
音を立てて迫って来るハヤブサさまを、茫洋とした顔で観察する。
その視線の先には、フェルメアに向けてまっすぐ突っ込んでくる、先駆けの一団。
彼らは有り余る食欲に任せた集団突撃を敢行しようとしていた。
「……」
ややあって、一番先頭のハヤブサさまに向けて言霊を紡ぐ康行。
『ぴよ!?』
ハヤブサさまの片足に、一瞬の冷たさ――後は、硬直。
康行が発現したのは、熱運動を無にし、動きを封じるプログラム。
片足を封じられた先頭のハヤブサさまは地面を踏み損ね、そのまるまるとした体がバランスを崩す。
そのまま、ずさーっ、と地面をスライディングする。
後続のハヤブサさまたちが互いをひしゃげさせながら、思いっきりぶつかる。
狙い通りの玉突き事故だ。
(「――飛んでくるなら自由を奪えばいい。当たらなければいいのだから」)
康行に先駆けを破られ、勢いを削がれたハヤブサさまだが、なおも後続は広く展開し、猟兵達の戦列に突っ込んでくる。
「お願いするよ」
「サンキュー。……ああいうのが好きな奴は、もふもふとかしてみたいんだろ? どれ、オレももふもふしてやるか」
フェルネアの周囲の空気が熱を帯びる。
「……ただし、この炎の腕でなぁ!」
ハヤブサさまたちを迎え撃つように広範囲に展開されたのは、地獄の炎で造られた腕――その数、42本。
「よし、行け!!」
フェルメアの号令と共に炎の腕が赤く燃え上がり、その掌を敵に向けた。
『『『『ぴぴーっ
!!!』』』』
真正面から突進するハヤブサさまたち。
炎と風が、激突した。
前線を猛スピードで襲うハヤブサさま。
彼らをフェルメアと炎の腕が押し留めていた。
「ほら、早く逃げないと捕まっちまうぞ?」
『ぴぴっ!』
突進を阻止されたハヤブサさまのうち、数体は腕を操るフェルメアに向かおうとする。彼らが駆け出そうとした瞬間。
『ぴよ?』
康行が紡ぐコードが、ハヤブサさまの片翼と片足を、次々に封じた。
少なからぬ数のハヤブサさまたちが康行にバランスを崩され、そのまるもふの体を地面に横たえる。
動かせる手足をバタつかせていた彼らを、フェルメアの炎の腕がわしっと掴み上げた。
「思う存分もふってやるぜ!」
他の炎の腕もまた殺到してもふもふすれば、ハヤブサさまたちは瞬く間に燃え上がり、消し炭となる。
(「大事なのは味方に有利な状況を作ること」)
康行がコードを発動する度に、ハヤブサさまたちはその足並みを乱されていく。
ある者は突撃のタイミングを見失い、またある者は進行方向を固定され、そのまま味方に突っ込んでいく。
後方から戦況を眺めつつ、康行は味方の支援に徹していた。
康行の的確な支援を受け、敵の攻撃を迎撃する事に成功していたフェルメア。
そんな彼女の横に、混戦に紛れて一体のハヤブサさまが、ずいっと現れた。
『ぴよ』
嘴の振り落ろし。
「させるかっ!」
両手を翳し、手枷を顔面のすぐ横に構え攻撃を防ぐ。
ガキンッ、と甲高い金属音が響き、凄まじい衝撃と共にフェルメアはハヤブサさまとすれ違いになる。
一足先に振り向こうとしたハヤブサさま――その体がガクリと揺らぐ。またしても、康行の支援。
生みだされる、大きな隙。
「そんなに炎が嫌ならしょうがねえな。そんならオレが……」
『ぴよ!』
そのまるもふの胴体を、横合いからどしっと両腕で掴むフェルメア。
「オレが直接もふもふしてやるよ!」
ぎゅー。
そのまま一緒に倒れ込み、地面に押し付ける。
『ぴよよっ!?』
ハヤブサさまはその身体を餅のようにひしゃげさせたかと思えば、
ぼんっ。
風船が破裂するような音を立て、大量の羽毛を残して消滅したのだった。
フェルメアの敷いた迎撃網から、ついにハヤブサさまの一体がごろんとまろび出た。
『ぴよ』
そのまま起き上がり、単身、康行に向けて突撃を開始した。
止められた翼の代わりに短い足を使い、ちょこちょこと走る。凄まじい執念だ。
砂煙を上げ、みるみる康行との距離を詰めるハヤブサさま。
『ぴよーっ!』
勝鬨とばかりに鳴き、嘴を振り落とそうとした、その時。
白い軌跡。
「少しクールダウンするのもいいと思うよ」
闇払いによる、横薙ぎ一閃。
両断されたハヤブサさま。突撃の勢い余って康行の横をすり抜け、そのまま白い光となって消え失せた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ポノ・エトランゼ
生存者も無事に見つかって安心安心……って、見た目可愛いんだけど、結構物騒なオブリビオンがきたわねー
安全地帯で保護されているし、ここは思いっきり戦っちゃいましょう
UCの、植物の蔓で網漁してみるわ
敵が戸惑っているうちにエレメンタルロッドを構えて、えいっと攻撃
風属性の竜巻を起こして、敵をぐるんぐるんに回しちゃいましょう
敵の目が回ってふらふらしてきたら、ちょっともふってみたいかも……
隼って模様が綺麗だけど、ハヤブサさまもなかなか(じいっと観察もふり)
可愛いけれど
皆さんをお肉として見ているし、まあ、すっぱり撃破ね
ぱっと手を離して炎攻撃で焼き上げます
……これ、拠点での食糧にできるかしら?
アドリブ・連携歓迎
●
「見た目可愛いんだけど、結構物騒なオブリビオンがきたわねー」
風のオーラを纏い、戦場を猛スピードで飛翔するハヤブサさま。
彼らのまるもふな見た目と物騒極まりない習性のギャップに、思わずそうこぼすポノだった。
「でも生存者は保護されているし、ここは思いっきり戦っちゃいましょう」
後顧の憂いは絶たれている。何物にも煩わされる事なく、ポノは自らの想像の翼を広げる。
「……」
やがてポノの周囲に、緑が芽吹き始めた。
ポノを円状に取り巻くように斜めに伸びて来たのは、真新しい植物の蔓。格子状に組み合わさり、緑色の壁を構成する。
続いて風の精霊に呼びかければ、エレメンタルロッドを中心に巻き起こるのは、小さな竜巻。
蔓もまた渦を巻き、一塊になってポノの手元に収まった。
ポノは蔓の一端を掴んだまま、ハヤブサさまの一団に向けて軽い助走をつける。
「えいっ」
少し溜めを作った後に腰の回転を使い、風の精霊の力も借りて投網の要領で放り投げれば、柔らかな緑色の塊は高く高く放物線を描く。
やがて落下を始めた時、塊は空気の抵抗を受け、ばさっと開いた。
蔓で編み上げられた大網だ。
『ぴぴーっ!?』
突如頭上に現れた大網により、ポノの視界内を飛んでいたハヤブサさまたちは一網打尽にされてしまった。
すかさずポノは戸惑い暴れるハヤブサさまたちに駆け寄り、エレメンタルロッドを翳す。
迸る魔力が再び風の流れを呼び起こし、今度はさっきとは比べ物にならない大竜巻を引き起こす。
『『『ぴよよ~~~~っ
!??』』』
蔓と共にぐるんぐるんに回されるハヤブサさまたち。
やがて全員が目を回し、ふらふらにされて、その場にへたりこんでしまった。
「……」
彼らを前にして、ポノはふと呟く。
「ちょっともふってみたいかも……」
そーっと歩いて一羽に近づく。
「隼って模様が綺麗だけど、ハヤブサさまもなかなか」
ポノはハヤブサさまをじぃっと観察する。
白と黒の縞模様。その並びは野生動物のみが織りなせる美しさを確かに備えつつ、まるもふの体型に合わせて良い塩梅で簡略化されてもいた。
近くに寄ってみると、なかなかの存在感だ。
手で触れてみれば、ハヤブサさまの羽は想像以上に温かくて、ふかふかしていた。
「……」
ポノはハヤブサさまに体を埋めてみた。
「ん~」
至高の抱き心地。しばしの間、まるもふの体を思う存分堪能するポノだった。
(「可愛いけれど、皆さんをお肉として見ているし、まあ」)
名残惜しい気持ちを抑えつつ、体を引くポノ。
彼女がぱっと手を離すと同時に、巨大な炎が燃え上がった。
哀れハヤブサさまたちは焼却されてしまった。
黒焦げと化したハヤブサさまたち。目をバッテンにして、小さな両足を空に向けている。
続いて、その体をぼろりと崩れさせたかと思うと、徐々に灰と化し、風に吹かれて消えていった。
後には焼き足りなかったと思しき一羽だけが残った。辺りにはいい匂いが漂っている。
「……これ、拠点での食糧にできるかしら?」
良い具合にローストされたハヤブサさまを前にそう呟く。この世界では貴重な食糧になるだろう。
物思いに耽っていたポノだったが、やがて他のハヤブサさまたちを相手すべく、なおも新たな植物を生み出すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・クリスティア
見た目は可愛らしいですが、獰猛な相手です。油断すると命にかかわりますね……。
基本は肉弾戦しかできないと見て良いでしょう。であれば、射程距離の優位を存分に活かす。
幸い、瓦礫の多い地形です。完全に身を隠すのは出来なくとも、バリケード代わりにすることは出来る。
壁にできれば、攻撃方向はある程度制限できます。
後は弾幕。ばら撒いてやれば接近を阻むことくらいは難しくないでしょう。
後は相手がどう動くかを見極め、撃ち落としていくのみです。
迎撃、防衛は重火器の本領発揮です。
迂闊に近づいてくる相手は遠慮なく蜂の巣にさせて頂きますよ!
●
破壊の跡が刻まれた廃墟。
その中でも、大きな瓦礫や建物の遺構が比較的多く遺された場所に、シャルロットは身を潜めていた。
瓦礫に身を隠し、戦況を窺う。
(「見た目は可愛らしいですが、獰猛な相手です」)
戦場をぴよぴよと鳴きながら跳ねまわるハヤブサさまたちを前にして、シャルロットは警戒を怠らない。
(「油断すると命にかかわりますね……」)
丸っこいフォルムをした嘴はしかし、確かな破壊力を秘めている。彼らが集団で戦場を飛び回れば、それは脅威以外の何物でもない。
(「――まずは出方を伺ってみましょう」)
顔だけを出し、大型の機関銃を構えるシャルロット。
狙いは、目の前を横切るハヤブサさまの一団。
ぱん。ぱん。ぱん。
シャルロットが単射で引き金を引けば、牽制の銃撃は数匹のハヤブサさまの頭に、一発ずつ命中した。
『ぴよ!?』
まるまるした体をシャルロットのいる方向に大きく捻るハヤブサさまたち。
『ぴぴーっ!!』
ズレたゴーグルをかけなおしつつも、たちまち数羽が廃墟に向けて猛スピードで走ってきた。
ハヤブサさまが跳ねるたびに瓦礫が踏み躙られ、あちこちでガラガラと音を立てる。
全員でシャルロットを探し回るハヤブサさま。
ついに一羽が体を伸ばし、シャルロットのいた瓦礫を裏を覗き込む。
『ぴよ……?』
だが、そこには既にシャルロットの姿はなかった。
その頃シャルロットは、少し離れたコンクリートの柱の陰にいた。
彼女は気配を絶ち、物陰を移動していた。
「(……覚えました)」
被弾時の動き方の細かな癖を、である。
シャルロットは牽制から身を隠すまでの僅かな時間に、ハヤブサさま一体一体の動きを、正確に観察していた。
そして。
(「やはり、基本は肉弾戦しか出来ないと見て良いようですね」)
そのような相手に対してガンナーがやる事は一つだ。
(「射程距離の優位を存分に活かす」)
そして、周囲の障害物をバリケードにする。
行動が大きく制限されるこの場所へ、シャルロットは相手を誘い込んでいた。
シャルロットは柱から顔を出し、構え、撃つ。
ぱん。ぱん。ぱん。
『ぴよ!!?』
『ぴっ!!』
また頭に命中。しかし今度は体勢が大きく揺らぐ。明らかに威力が増している。
『ぴよーっ!!』
今度こそシャルロットに向けて突進を仕掛けようとするハヤブサさま。
だが周囲には柱以外にも多くの遮蔽物が存在し、思うように動けない。
結果的に狭い場所に向けて一列に殺到する形になったハヤブサさまに、シャルロットは狙いを定める。
展開される弾幕。
降り注ぐ弾の雨にハヤブサさまたちは薙ぎ倒され、次々と消滅していく。
巧みな位置取りによって攻撃方向を絞った結果、シャルロットの弾幕はその厚さを大きく増していた。
シャルロットはなおも弾幕をばら撒き、反応を見切った相手に対しては、正確な狙撃を叩き込んでいく。
重火器の長い射程と地形を活かし、多勢を相手に全く近寄らせないシャルロット。
しかし、ついに一羽のハヤブサさまがシャルロットに肉薄する。
「――!」
シャルロットは素早く柱の陰に身を隠す。
突き出された嘴が空を切り、ハヤブサさまのまるまるとした体が盛大にたたらを踏む。
その体に向けて、銃身を切り詰めたシャルロットのダブルバレルが、轟音と共に火を噴いた。
至近距離からの強烈な一撃に吹き飛ばされ、そのまま爆散するハヤブサさま。
シャルロットは再び柱から顔を出し、弾幕を展開する。
全てのハヤブサさまが沈黙するのに、そう時間はかからなかった。
大成功
🔵🔵🔵
ガルディエ・ワールレイド
どっちかと言えば、喰われる側の外見をしてる気がするんだが、見かけによらず獰猛そうな奴らだな。
◆戦闘
武装は《怪力/2回攻撃》魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流。
【竜神領域】を使用して《空中戦》を仕掛けるぜ。
飛翔して雷の《属性攻撃》を纏わせた武器で《なぎ払い》が基本。
また敵の覆う風のオーラには《念動力》をぶつけて相殺し、強引な突破を狙う。
可能ならば、念動力を更に届かせて敵の動きを一瞬でも妨害したい。この速度域での戦闘なら、一瞬の足止めで命取りだろうさ。
敵の獲物を狙う意思(《殺気》)を読んで、回避や《武器受け》での防御を行う
『竜宝珠ワールレイド』は懐に仕舞っているが、その付近への被弾は最優先で防ぐぜ
●
ハヤブサさまからは捕食者の精悍さはそれほど感じられない。
「どっちかと言えば、喰われる側の外見をしてる気がするんだがな」
ガルディエにとっても、彼らのもふもふした体型は、むしろ捕食される側にありがちなものだと、そう感じられた。
『ぴー!』
『ぴよよー!!』
確かに猟兵達により数を大きく減らしたハヤブサさまだが、それでもなお意気盛んな彼らは、そう簡単に狩らせて貰えない存在のようだ。
「見かけによらず獰猛そうな奴らだな」
その最後の一団がガルディエの頭上を飛び回り、隙を窺っている。
どうやらハヤブサさまたちは空中から一方的に攻めるつもりらしい。
ならば、と、ガルディエはその身に宿す黒竜の権能を、限定付きながらも行使する。
不可視の念動力で覆われたガルディエの体が、宙に浮いた。
そのままぐんぐんと高度を上げるガルディエ。
風のオーラをまとい旋回するハヤブサさまたち。そのど真ん中に向けて、自身の巨大な念動力を叩き込む。
『ぴーっ!』
ぼんっ、と空中で跳ね飛ばされるハヤブサさま。
頭上を取ったガルディエは、体勢を崩したハヤブサさまに狙いを定め、急降下。
すれ違いざまに、両手に持った魔剣レギアと魔槍斧ジレイザを一閃させる。
「おらっ!」
竜魂の力を借りた横薙ぎは紅い光を纏い、同時に二体のハヤブサさまを斬り捨てた。
『ぴぴーっ!』
仲間を倒されたためか、はたまた自慢の風のオーラを破られたためか、興奮状態に陥ったハヤブサさまたちが、翼をぱたつかせてガルディエに一斉に襲い掛かってきた。
ガルディエは踵を返し、そのまま空中戦へと移行するのだった。
空を駆け、赤い光を迸らせるガルディエ。
その度にハヤブサさまを斬り捨て、遂に残り二体を残すのみとなった。
風のオーラを纏って体当たりしてくる一体を往なし、ジレイザによる突きを叩き込む。
残り一体。
「――!」
上方から、刺すような感覚。
彼らの肉を求める意思とはすなわち戦意。
その戦意が殺気となり、ガルディエの反射的な行動を誘発した。
軽く体を捻ったガルディエの視線の先には――猛スピードで迫るハヤブサさま。
突撃と共に仕掛けられた啄みをジレイザで構えて防げば。
ガキンッ! と音と立てて赤々と火花が散る。
「……」
体勢を立て直しつつも、懐の竜宝珠の無事を確かめるガルディエ。
小さくなっていくハヤブサさまの背中に向けて、ガルディエは自身の念動力を、思い切り打ち込んだ。
『ぴよっ!?』
果たして、ガルディエの射程ギリギリで、ハヤブサさまがその体を大きくぐらつかせる。
高速戦では一瞬の隙が命取り。
ハヤブサさまは自身のスピードを制御出来ず、体勢を崩す。
ガルディエはレギアを一閃した。
再び地上に降り立ったガルディエ。そこには墜落したはずのハヤブサさまたちの亡骸は無かった。
主の遺した隼の羽だけが風に吹かれて、ガルディエの足元を駆け抜けていったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『物資を運び出せ!』
|
POW : 力こそ最強! あふれるパワーとフィジカルで物資を運ぶ
SPD : 速さこそすべて! テクニック&スピードを用いて物資を運ぶ
WIZ : 知恵こそ最良! 頭脳や技術、超常の力を用いて物資を運ぶ
👑5
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|
●
新拠点から到着した小型のトラックには大人たちが詰めていた。
その中から女性が走り出て来る。
孤児院の先生らしい。少年と少女の元に行き、抱擁する。
それから猟兵達に向けて、3人でぺこぺこと何度も頭を下げる。
活発な少女と、大人しめの少年。
オブリビオン・ストームの被害で両親を亡くしてからは、孤児院で姉弟同然に育ったそうだ。
「本当にありがとうございました」
「ありがとー」
「ありがとう」
一方、大人たちは物資の回収作業を始めた。生存者の報に勇気づけられたのだろうか。
ものすごい勢いで食糧庫の瓦礫が撤去され、両手持ちサイズの緑色のコンテナ群がほぼ完全に露出したところで――限界が来た。
無理な作業で大半がへたりこんでしまった大人たちを、少女と院長が心配顔で見回っている。
少年はその様子を見守りながら、うずくまって焚火の番をしている。
新拠点に全ての物資を運ぶには、今あるトラックで2往復ほど必要だろう。
運転手は動けるものの、荷台に物資を積み込むだけでも重労働だ。
既に太陽は沈みかけている。
このまま夜を越す積もりらしい彼らに、何か出来る事は無いだろうか。
ガルディエ・ワールレイド
まぁ、此処まで来たら乗りかかった船って奴だ。
作業を手伝うぜ。
疲れた奴らは無理せずに休んでてくれ。
【POW】
トラックへの積み込みと、荷降ろしを手伝う。
《怪力》を活かして荷物をトラックの間近ま運び、トラックへの最後の積み込みは【竜神気】で行うぜ。
荷台のスペースに効率よく乗せれば、より多くの荷物を積める筈だ。
あと積んだ荷物が落ちたりしないよう、ロープでしっかり固定する。
あと、可能なら助けた子供達に軽く挨拶。
「お前らを助けられたのは、お前ら自身が諦めずに救助を待ってたからだ。立派だったぜ。」
ポノ・エトランゼ
私に出来る事は少ないけれどサポートに回ってみる
まずは皆さんの肉体疲労の回復をしちゃいましょう
UCは私も疲れちゃうけど、まあ何とかなるでしょ
ローストした敵がまだあったら、どうぞって渡す
拠点を破壊した者だったら無理そうだけど
一応……食料になるかなって
あとは、陽が暮れそうだから明かり
ランプを探したり火を増やしたり
皆さんが作業しやすいように光や火の精霊にお願いして明るめにしてもらおうかな
お願いできるかしら?
で、微力なんですけどコンテナ運びを手伝うわ
両手持ちサイズなら、何とか運べると思うの!
疲れたら
少年に体は大丈夫? って聞いて
焚火の側で休む
私にやれる事って本当に少ないから、ちょっとずつ頑張ってみるわ
フェルメア・ルインズ
◎アドリブ連携歓迎
よしよし、とりあえずはこれで一段落か
子供たちも無事に保護者と合流できたし、良い流れだ
しかし、凄いやる気と手際の良さだな……襲撃直後だってのに
この行動力、やっぱ人間ってのはたくましいもんだな
■行動
オレも車とか持ってりゃいいんだが、残念ながら持ってないし
運転もできねぇしなぁ……
とりあえずはこのコンテナを運べばいいのか?
そのぐらいだったら【UC】も利用した【怪力】があれば幾らでも持てるし
そっちに専念するかね
手枷が付いてても持ち方のコツさえ掴めばこのぐらい軽いもんだ
後は出来ることがあまり見つからねぇな……
魔法で火も出せるから少年と一緒に焚火の番でもしてるか、夜は冷え込みそうだしな
紫谷・康行
無理は良くないものだ
無理は体力を奪い、心を弱らせる
休むことも必要だろう
なら、そのために番をする事にしようか
闇の精霊を呼び出して周囲を警戒させる
何かあったら知らせてもらうように言いつけて
自分は少年や大人たちと話をする
寒さをしのぐ方法や、コンピューターの使い方、薬草の知識などなど、伝えられることを出来るだけ伝える
また、心を穏やかにいられるように、できるだけ話を聞き相談に乗る
少年に何になりたいか聞き、できるだけ背中を押す
「君のその手には出きることがある
信じて続ければきっとね」
手の平に灯りを作りながらそう言う
そのあとで、寒さに強い穀物の種を渡す
育つといいのだけどね
また来るよ
●
ぱぁっ。
癒しの光が人々を包み込む。
「これで少しでも作業が早まると良いけど」
そう呟くのはポノ。立ち上がる力を与えられ、それぞれ動きを見せ始めた人々に、ガルディエが声を掛けていく。
「お疲れさん。疲れた奴は無理せず休んでいてくれ」
休息が必要な人員を一足先に去らせた後は、元のように人々が忙しく立ち働く光景が残った。
「よしよし、良い流れだ……とりあえずはこのコンテナを運べばいいんだな?」
緑色のコンテナ。両手持ちだ。
手枷の嵌められた手でその一つを掴み、持ち上げる感触を確かめるフェルメア。
「これなら何とか運べそうね」
運搬が主になる作業に少しだけ懸念を覚えていたポノだったが、これなら少しずつでも作業を前に進められるだろう。
残された時間は少ない。瓦礫に聳え立つコンテナの山を前に、猟兵達は運搬作業を開始した。
光から逃れ去るように、梟にも似た影が一羽、夕闇に溶け込んでいった。
康行の召喚した闇の精霊だ。
夜の荒野には無数の危険が潜む。
人々が束の間の安寧を得られるように。康行は精霊に周囲を哨戒させていた。
「……」
羽ばたく精霊の後姿を見送った後、康行は休息を取る人々の所へと足を向けた。
難航が予想されていた物資の運び出し作業だが、その心配は杞憂に終わった。
「手枷が付いてても、持ち方のコツさえ掴めば、このぐらい軽いもんだ」
山のような物資を軽々と抱え上げ、器用にバランスを取りながら運搬していくフェルメアと。
「乗り掛かった船って奴だ」
高い身体能力を持つガルディエ。この二人が中心となり、作業のスピードを大幅に早めていた。
「よいしょっと」
ポノが廃墟から使えそうなランプを幾つか見繕い、食糧庫とトラックの間に等間隔に設置していく。順にスイッチを入れていけば、点々と闇を仄蒼く照らす。だが数が少なく、まだまだ心許ない。
「それじゃあ、お願いするわね」
その言葉と同時に、ポノの呼び出した光と炎の精霊達が辺りを飛び回り始めた。周囲がみるみるうちに明るさと――温かさに包まれる。
今や運搬ルートはくっきりと照らし出された。足下の心配が無いほどに。
「すごいすごい!」
三人の活躍にはしゃぐ少女。
「オレも車とか持ってりゃいいんだが、残念ながら持ってないし、運転もできねぇしなぁ……」
輸送手段を所持していないフェルメアだが、だからこそ積み込み作業に徹する事に最初から決めていた。作業を開始してまだ経っていないはずだが、既にトラックの傍には彼女の手で物資の山が積み上げられており、その大きさは今も増し続けている。住人がコンテナの中身を確認をしているが、それが間に合わないほどのペースだ。
「運転手は動ける。俺たちは積み込みと荷降ろしの方を片付けて行こうぜ」
新拠点への輸送手段こそトラック頼みだが、その分積み込みのスピードが上昇している。大した問題にはならないだろう。
ある程度の荷物が溜まったところでガルディエはトラックの荷台から人員を降ろし、コンテナに向けて意識を集中する。
ややあって、ぐらりと重いコンテナが軽々と浮き上がった。
ガルディエが己の内から湧き出る力を精確に操作していけば、コンテナは何らかの秩序に従うかの如く、荷台に隙間なく収まっていった。
「それにしても、凄いやる気と手際の良さだな……襲撃直後だってのに。この行動力。やっぱ人間ってのは逞しいもんだな」
人類の生存本能の為せる業か。あるいは疲労を回復したところに思わぬ助っ人も現れ、勇気づけられたのか。いずれにせよ、猟兵達の動きにリードされるように、数時間前の機敏さを取り戻している。若干先走り気味だが、逞しい人々と言える。食糧庫跡とトラックの間を忙しそうに立ち働いたり、両手持ちのコンテナを抱え上げ、リレーをする人々の中には、ポノの姿も見え隠れする。
「……よし。これで荷物が落ちる事はないだろう」
荷物にかけたロープを軽く引き、しっかり固定されていることを確認するガルディエ。荷下ろしをすべく荷台に乗り込んだガルディエの合図と共に、トラックは夕闇に沈む新拠点に向けて走り出した。
「もうひと頑張りだ。トラックが戻ってくる前に、残りのコンテナを掘り出しちまおうぜ」
トラックを見送り、人々にそう呼びかけるフェルメア。作業は順調だ。
その頃康行は休息を取る大人たちに自身の知識を教授していた。寒さ対策、コンピューターの使い方、薬草の見分け方、などなど……。この世界を生き抜くのに必要な知識ばかりだ。
「他にも聞きたいことがあったら聞くと良い」
特筆すべきはその多くが康行自身の経験の山積でもあるという事だろう。いつものようにとぼけた康行の語り口だが、その響きには自然と迷いの無さが見え隠れする。人々はそんな康行の言葉に否応なく惹きつけられ、やがて、それぞれが相談を持ち掛け始めた。
康行はそのひとつひとつに丁寧に答えていく。彼らが少しでも心穏やかにいられる事を願いつつ。
トラックの傍で物資の選り分けをしていた院長にポノがおずおずと話しかける。
その手にはたった今空いたコンテナと、それに乗せられたハヤブサさまのロースト。
「一応……食料になるかなって」
「あら、ありがとうございます。大きなお肉ですね。とても助かります」
今食べてもいいですけど……向こうで焼き直して干し肉に加工するのもいいですね。貨幣代わりにもなりますし。うん。
受け取ったロースト肉を前にそんなことを呟いているうちに、何かに気付いた様子を見せる院長。
「ちょっと待って下さいね」
傍に積まれたコンテナをごそごそと漁り、何かを取り出す。
「だいぶ疲れてるみたいですし、これ、差し上げます……あの子達はもう食べましたから」
ポノに手渡されたのは、色鮮やかな果物の砂糖漬けが入った瓶だった。
康行の元を訪れ、様々な質問をしていった大人たち。
彼らは康行に感謝しつつ、再び運搬作業に戻っていった。
その場に残されたのは、あの少年だ。焚火を少しだけ離れ、少年は康行の言葉に耳を傾けていた。
康行は少年に将来の夢を問う。
「僕は……」
医者になりたい。人々を救い、助言をしてあげられる医者に。
間違いなく人々の役に立つ。だが、この世界ではとりわけ乗り越えるべき障害が多いであろう彼の夢を、しかし、康行は後押しする。
「君のその手には出来ることがある。信じて続ければ、きっとね」
康行の掌に灯るのは、丸い光。まるで人々に希望を与える少年の運命を暗示しているかのような。
少年に近づき、光を手渡す。
やがて光が収まり、少年の手に現れたのは、穀物の種。
「それは寒さに強い品種……育つと良いのだけどね」
また来るよ、と踵を返す康行。
彼の背中に、微かな少年の呟きが聞こえた、気がした。
「……ありがとう」
ぱちぱちと焚火が燃えている。
様々なサポートに立ち働いたポノは、一足先に焚火の傍で休んでいた。
「体の方は大丈夫?」
「うん……」
少年はかなり回復しているように見えるが、やはり疲労の色は隠せない。薪を足す手が追い付いていないようだ。そんな彼に代わって、たまにポノは火に薪をくべる。
最後まで出来る限りの事をする。そんな気持ちと共に。
二人だけの、穏やかな時間だった。
空には静かな星をちりばめた円天井が、見渡す限りの彼方まで打ち開けていた。
そこへ作業を終えた人々が焚火の周囲に集まって来た。どうやら積み込み作業が完了したらしい。焚火の周りには喧騒が満ち溢れる。
その中心には、ガルディエとフェルメアがいた。すっかり人気者だ。もしかしたら、優秀な奪還者と思われているのかも知れない。
「向こうじゃ回収した物資でパーティーの準備中らしいぜ。行くか?」
少年とポノの隣に腰を下ろすフェルメア。炎の魔法を唱えれば焚火の火勢が一気に強まり、賑やかに語り合う人々の顔を照らす。
「お前らを助けられたのは、お前ら自身が諦めずに救助を待ってたからだ。立派だったぜ」
今回の救出劇は、彼らの生きる意志の強さの賜物だっただろう。誇らしげに笑う少女の頭を撫でながら、ガルディエが言う。
「よお、トラックが来るまで一緒に番をしようぜ」
フェルメアが少年に笑いかければ少年は恥ずかしそうに会釈を返す。
そんな二人の表情を交互に見て、思わず笑みを漏らすポノだった。
大きな犠牲の上に、世界に希望がもたらされた。
猟兵達が救った命はこれから先も人々を勇気づけ、やがては人類の破滅を避ける助けとなることだろう。
大成功
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