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キマフュ冬のネコまつり

#キマイラフューチャー #戦後


●キマフュ冬のネコまつり
 キマイラフューチャーのとある一角。
 冬の寒さにも負けず、住人達は今日も今日とて面白おかしくなんやかんや騒いでいた。
「あったかい飲み物あるよー!」
「ミカンー、ミカンのおかわりはどうよー?」
 賑やかな声と共に振舞われる、冷えた体を芯からぽかぽか暖める飲み物や食べ物。
 皆一様に、其処此処に設置されたコタツに入って、思い思いにぬくぬくしながら、平和にミカンなんぞを剥いている。
 そして、その傍らや天板の上で丸くなり、寛いでいるのは、

「にゃーん」

 たくさんの猫達だった。

●おコタでにゃんにゃん
「グリモアベースへようこそ、ビオーネは皆様方の来訪を歓迎致します」
 巫女を模した姿の電子の娘――グリモア猟兵、オブリビオーネ・オブザーバトリィ(忘れられた観測所・f24606)の声がグリモアベースに響く。
 周囲に集まった猟兵達の顔をひとりひとり見つめると、娘は変じていくグリモアベースの情景を指し、予知を告げた。
「新着情報は1件、キマイラフューチャーでの事件になります」

 彼の地を襲った未曾有の危機から、早いもので幾数月。
 住人達はあまり気にしていないようではあるが、怪人の残党はまだまだ残っている。
 怪人の方はというと、以前よりはぐっと減ってきたとはいえ、時折懲りずに騒動を起こしているとかなんとか。なんとも傍迷惑な話である。
「今回も、なんやかんやでイベント会場に現れ、色々と引っ掻き回して面倒事を増やしていくようでして」
 真顔で淡々と述べているが、既に言葉選びが緩い。
「オブリビオンはオブリビオンですので。皆様方にはイベント会場に潜入していただき、現れた怪人を速やかに排除していただきたいのです」
 ゆらりと、映し出されていた情景がイベント会場のそれに変わる。
「お祭りの内容ですが……コタツなるものに入り、温かな飲み物で暖を取りながら猫と戯れる催しである、との情報をビオーネは受信しております」
 その言葉と共に、グリモアベースに大写しになる、大量の猫。
 あっちもこっちもそっちもにゃんにゃん。
 コンコンコンで現れた猫用おやつに群がるにゃんにゃん。
 コタツで眠るキマイラの頭にのっかるにゃんにゃん。
 モフり倒されて嫌そうな顔をするにゃんにゃん。
「怪人の正体は不明なのが申し訳ないのですが。……行っていただけますか?」
 数人の猟兵が無言で頷くのを確認すると、オブリビオーネは満足そうにグリモアを起動したのであった。


鱈梅
 初めまして、新人MSの鱈梅です。
 精一杯努めさせていただいますので、どうぞ宜しくお願い致します。

 内容はゆるーくのんびり行く感じで。
 第一章:コタツにinして猫と遊びます。コンコンコンすると猫用のおやつとかが出てきます。会場内には温かい飲み物や軽食の出店もあります。飛び入り出店も可能です。
 第二章:会場にあらわれた怪人との集団戦です。にゃんにゃんしてる。
 第三章:どさくさに紛れて現れた怪人とのボス戦です。にゃんにゃんはしてない。

 一章は、断章の追加はありません。
 キャパ等に限りがありますので、書けそうな範囲での採用になるかと思います。
 再送はいつでも歓迎しております。
 それでは皆様のプレイング、お待ちしております。
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第1章 日常 『猫の集会所』

POW   :    猫たちを無心に愛でる

SPD   :    猫たちを一心に慈しむ

WIZ   :    猫たちを熱心に尊ぶ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
ライラ・サンタマリア
【LR】


はあ、此の……こたつ、でしたか
何たって温い!(とろん)
ローウェンさん、お蜜柑剥いて下さいまし
わたくしの美しい手が黄色くなってしまっては困りますわあ

って、あら
葦の海の奇跡が如く猫に避けられてるじゃないですか、あなた!
普通に肩の力を脱いて居れば向こうから動物は近寄って来るもの何ですけどねえ

どれどれ
わたくしがちょっと猫さんとお話して来ましょうか
いーえ、待ちませんー

頼もう、あの青年なのですにゃ
ふんふん、ふん、ふん…… うふふふふ!
其れは何だかお気持ちが分かりますわ

何と仰ってたかお知りになりたい?
『アイツ、過保護過ぎてサボテンとか枯らすタイプだにゃー』
だそうですよ
中々の観察眼ですこと、ふふっ!


ローウェン・カーティス
【LR】
寒さも極まる此の季節
成程…これは一度入れば中々に抜け出せそうにありません
暖炉の温もりとはまた違う…何というか、人を堕落させる心地良さがありますね…?
…早速堕落してしまった方がいるようですが
はいはい、仰せの儘に

それにしても…釣れませんねえ
いえ、動物に好かれないのは最早生来のものなのですが…
何分、其処に佇んでいるだけでも避けられるもので…

ああ、どうかお待ちを!
何といいますか、話を聞かずともロクな回答が返って来ない気しかしません!

…で。にゃあにゃあと鳴いている風にしか聞こえなかったのですが
あの御仁…御猫?は何と仰っていたのですか

初対面の猫に其処まで穿たれた視線で見られる私とは、一体…?



●葦の海の真ん中で
「成程……これは、一度入れば中々に抜け出せそうにありません」
 ローウェン・カーティス(ピースメイカー・f09657)は、暖炉の火とはまた違う心地好さに、ほう、と吐息を漏らした。
 しんしんと冷え込みを増し、寒さ極まるこの季節。
 ともすれば人を堕落させてしまいそうな魔性の温もりに、ついつい気の抜けた欠伸が出そうになる。
 最も、早速堕落してしまった者も居るようではあるが。例えばそう、傍らに。
「はあ、此の……こたつ、でしたか。何たって温い!」
 ライラ・サンタマリア(ライアーライアー・f10091)は、翠緑の双眸をとろりと蕩けさせながら、だらだらとコタツの温もりを堪能していた。
 だってコタツあったかいもん、仕方ないね。
「ローウェンさん、お蜜柑剥いて下さいまし」
「はいはい、仰せの儘に」
 騎士たるもの、常に女性を守るべし。
 わたくしの美しい手が黄色くなってしまっては困りますわあ、なんて強請る彼女の為に、ローウェンは籠に詰まれたミカンをひとつ、手に取った。

「それにしても……釣れませんねえ」
 ローウェンがぽつりと零した呟きに、ライラはミカンを摘まむ手を止めて小首を傾げる。
「いえ、動物に好かれないのは最早生来のものなのですが……」
 彼曰く、其処に佇んでいるだけでも、不思議と動物達に避けられてしまうという。
 その彼の言葉を裏付けるように、そりゃもういっそ清々しいほど綺麗に、猫達はローウェンの周囲を避けている。さながら、葦の海の奇跡である。
「普通に肩の力を脱いて居れば、向こうから動物は近寄って来るもの何ですけどねえ」
 とは言え、目の前の彼を眺めてみても、変に力が入っているような様子はない。
「どれどれ、わたくしがちょっと猫さんとお話して来ましょうか」
 気になったなら、直接聞いてみるのが一番だ。動物と話すこと等、ライラにとっては朝飯前。日常の一端である。
「ああ、どうかお待ちを! 何といいますか、話を聞かずともロクな回答が返って来ない気しかしません!」
「いーえ、待ちませんー」
 ローウェンの静止も空しく、ライラはするりとコタツを抜け出すと、比較的近くに居た猫の元へと向かう。

 ――頼もう、あの青年なのですにゃ。
 ――にゃあにゃあ、にゃうぅん。
 ――ふんふん、ふん、ふん……、……うふふふふ!
 ――にゃふん。
 ――其れは、何だかお気持ちが分かりますわ。

 話し声に耳を傾けるも、ローウェンにはただ猫が鳴いている風にしか聞こえない。
 楽しげに話されているそれが、自分の話題だと分かっているから、非常にもどかしい。
 ライラが話を終えて戻ってくると、ローウェンはそわそわと問いかける。
「あの御仁……御猫? は何と仰っていたのですか」
「お知りになりたい?」
 彼の問いに、ライラは猫のように目を細めると、悪戯っぽく口元に指を当て。
「……『アイツ、過保護過ぎてサボテンとか枯らすタイプだにゃー』だそうですよ?」
 中々の観察眼だと笑う彼女とは対照的に、答えを得たローウェンはがっくりと項垂れる。
「初対面の猫に其処まで穿たれた視線で見られる私とは、一体……?」
 そんなローウェンを尻目に、ライラは食べかけのミカンへと手を伸ばす。
 その手の先には、それはそれは丁寧剥かれ、白い筋まで綺麗に取られたミカンがあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユキ・パンザマスト
ユぅキはこったつーでまっるくーなる~♪
ええ、勿論丸くなるばかりのユキではないすね!
せっかく猫だまりにきたんですもの!

そこのかわいこちゃん達ユキと遊びませんかー?
ほらほぉら、遊び盛りなそこのおチビさんも!
童心忘れたおじいさん猫も! 
運動が必要な、横にでっかい猫さんも!!
(両手と尻尾での猫じゃらし三刀流しゃきーん!)
(したたたぱたたたぱたくた)
おっ、この動きについていけるとはツワモノですねえ!

はー遊んだ遊んだ! そろそろおこたでぬくまりましょっか!
コンコンコンで煮干しやちゅーるを振る舞って、
ユキはおこたアイス……やや、これはまたたび?
(そのままうつらうつら)
(猫達と丸まりお昼寝すやぁ)


三岐・未夜
……ねこ。
疲れた狐が一匹、猫に癒されにやって来た。

こたつとか潜るに決まってるよね。
やっぱり冬はこたつだと思う。何なら春の中頃くらいまではこたつだと思う。
ぬくいし猫かわいいしこれ依頼なの忘れそうなんだけど……。
猫いっぱいいる……しっぽ振ったら猫釣れるかな?
……わ、わわ、いっぱい来た待って待って多い待っ、
猫の反射神経には勝てなかった。
飛び付く猫に当然のように負けて、しっぽにくっつく猫たちとこたつと共に丸まって眠る体勢に。
何かもうひっぺがすなんて出来ないし良いかなって。
これも仕事だから大丈夫、サボってないよ大丈夫。

あとで猫たちの写メでも撮ろうかなぁ、LINEで送ったら喜ぶかも。



●たそがれふたりとコタツとにゃんこ
「ユぅキはこったつーでまっるくーなる~♪」
 歌う声も軽やかに、ユキ・パンザマスト(暮れ泥む・f02035)は弾むような足取りで猫だまりへと飛び込んだ。
「そこのかわいこちゃん達、ユキと遊びませんかー?」
 誘う声は鮮やかに。招集の鐘を鳴らすように、ユキは猫達へと呼び掛ける。
 自分達によく似たその瞳と、ゆらゆら揺れる三刀流の猫じゃらしに惹きつけられ、はじめに遊び盛りのやんちゃな子猫が飛び出した。
「おっ、この動きについていけるとはツワモノですねえ!」
 したたた!ぱたたたっ、ぱたくた!
 猫心を絶妙に刺激する魅惑の猫じゃらし捌きに、普段は日がな一日眠っている老猫も、童心を思い出したか、のっそりと立ち上がる。 
 それを見て、横幅ばかり成長しすぎた食いしん坊猫まで「爺さんが行くなら自分も」と言わんばかりに重い腰を上げた。
 さらに、偶然なのだろうが。
「……ねこ」
 にゃあにゃあ賑やかな声に引き寄せられ、ふらふらと黒狐まで現れた。
「おや、みゃさんじゃないすかー! こんなとこで奇遇すね!」
 少し疲れた顔の黒狐――同じ団地に住まう、三岐・未夜(迷い仔・f00134)の登場に、思わずユキは目を瞬いた。
「あ、ユキも来てたんだ?」
 己の名を呼ぶ聞き慣れた声と見知った顔に、ぱぁと未夜の表情が輝く。
 あまり外に出るのは得意ではない故に、なんだかほっとした心地だ。
「わあ、猫いっぱいいる……僕も、しっぽ振ったら猫釣れるかな?」
「釣れると思いますよ、ちょうどみぃんな身体もあったまってきた頃です!」
 ユキに促され、未夜はわくわくしながら自前のふかふか尻尾を猫達の前で揺らす。
 もふぅ、もふん……ふわふわ、ふわぁ……もふぁ……。
 猫じゃらしとはまた違うダイナミックな動きが、既にこれでもかと言うほど狩猟本能を掻き立てられていた猫達を誘惑する。
「ほら、おいで――わ、わわ、いっぱい来た待って待って多い待っ、」
「おおー、みゃさん大人気……って、ユキもですか!」
 我先にと飛び付いてくる猫、猫、猫。
 慌てて対処しようとするも、猫の反射神経には勝てず。あっという間に、2人仲良く猫の海に沈んだのであった。

「はーっ、遊んだ遊んだ!」
「すごかった……」
 目一杯遊んだ2人の身体を、コタツが優しく包み込む。
 まだ数匹の猫を尻尾に引っ付けたまま、未夜はごろりと横になる。
「ぬくいし、猫かわいいし……これ依頼なの忘れそうなんだけど……」
 まさに至福のひととき。でも、これも仕事だから大丈夫。サボってない、大丈夫。
 そんな彼を微笑ましそうに眺めながら、ユキはコンコンコンで出した煮干しや猫用おやつを、傍らで寛ぐ猫達へと振る舞う。
「さぁて、ユキはおこたアイスでもいただきましょ……やや、これはまたたび?」
 おやつと一緒に出てきたのか。その匂いは、遊び疲れた身体には一層心地好く。うつらうつらと自然に瞼が落ちていく。
「やっぱり冬はこたつだよねぇ。何なら、春の中頃くらいまではこたつだと思うなぁ、僕……って、あれ、ユキ?」
 話しかけるも、待てど聞こえぬ彼女の相槌。
 ぱっと未夜が身体を起こしてみれば、そこには――。
「……、」

 ぴろりん。

 カメラアプリの軽快なシャッター音と共に、データボックスへと保存されたのは、猫達と一緒に丸まって眠るユキの姿。
(後で、みんなに送ろうかな)
 写真を見た団地の仲間達の反応を想像しながら、静かにスマホをしまうと、未夜もユキや猫達のように丸まり、目を閉じたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネムリア・ティーズ
ずっと前に優しい子と暮らしていたから
ねこさんは特別で、大好きなんだ
きっとボクの表情はあまり変わらないけど…とってもわくわくする

すごい。本当に、ねこさんがいっぱいだ
…さわらせてくれる子はいるかな?
ティーズとおんなじ黒い子がいたらうれしいな

みんなみたいに、あのコタツ?にも入ってみたい

わあ……あったかい
これがコタツなんだね。日向ぼっこよりぽかぽかする
ボクはさむくても平気な身体だけど、あったかい方がすき
ねこさんがいて、あったかくて…ずっとここに居たくなりそうだ

コンコンコンとおやつを出して、近付いてくれた子にあげてみる
美味しい?…ふふ、よかった

怪人のことを忘れてぬくぬくもふもふ
幸せな時間をのんびりと



●やさしい色と
 一歩踏み出してみれば、そこは猫だらけの世界。
 通りすがりに、するりと尻尾で足を撫でていく子。
 目が合うと「にゃあ」と挨拶してくれる愛想の良い子。
 人懐こく、とてとてと後を付いて来る子。
 沢山の猫達が、気の向くままにのびのびと過ごしている。
 そんな平和な光景に心躍らせながら、ネムリア・ティーズ(余光・f01004)は空いているコタツを探して歩いていた。
「すごい。本当に、ねこさんがいっぱいだ」
 表情こそ控えめではあるが、きょろきょろと辺りを見回す夜色の瞳には、きらきらとした光が滲んでいる。
「……さわらせてくれる子はいるかな」
 愛らしい姿を眺めながら、思い出すのはいつかの日々――優しいあの子と暮らしていたときの記憶。
 ネムリアにとって、猫は特別な存在だった。
 ――ティーズとおんなじ、黒い子がいたらうれしいな。
 仄かな期待を心に咲かせて、ネムリアはちょうど見つけた空きコタツへと潜り込んだ。

「わあ……あったかい……」
 はじめて体験するコタツの温もりに、ネムリアの唇から感嘆の吐息が洩れる。
 日向ぼっことはまた異なる、身体の芯から暖まっていく感覚がとても心地好い。
 ヤドリガミだから、寒くても平気ではあるけれど。それでもやっぱり、暖かい方がすきだ。
 大好きなねこさんがいて。足の先まであったかくて。
 身体も心もぽかぽかしてくるみたいで。 
「……なんだか、ずっとここに居たくなりそうだ」
 ほわほわした心地で、周りに習いコンコンコンで猫用おやつを出してみた、その時だった。
「あれ。キミは、さっきの……?」
 ふと顔を上げて見れば、此方の様子をちらちらと窺っている猫が2匹。
 片方は、先程後ろから付いて来ていた甘えん坊な子だろう。
 その隣に佇んでいるのは――心の中でほんのり望んでいた、おんなじ黒色を宿した猫。
 そっとおやつを差し出してみれば、2匹とも仲良く膝の上に乗ってきた。
「キミみたいな子がいたら、うれしいなって思ってたんだ。……あ、もちろん、キミもね?」
 目に親しい黒色を撫でてやれば、自分もと言うように甘えん坊もじゃれてくる。
 それを見たネムリアに、淡く笑みが咲く。ふわふわとした毛の感触が気持ちいい。
「美味しい? ……ふふ、よかった」

 このひとときだけは、怪人のことを忘れて楽しもう。
 幸せな時間は始まったばかりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

幻武・極
キマイラフューチャーに猫か。
よくよく考えると不思議だよね。
人類は滅んだのに、キミ達は生き残り続けているんだからね。
まあ、細かいことはどうでもいいか。
ここだと外は特に寒くないけど、キミ達もゆっくりしていきなよ。



「キマイラフューチャーに猫か。よくよく考えると不思議だよね」
 隣のコタツの上で毛繕いをする猫を眺めながら、幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)は、いつかの戦争で語られた真実に思いを巡らせていた。
 人類滅亡後の世界――キマイラフューチャー。
 かつて、この地で開放された『無限大の欲望』によって、人類は怪人化され、滅亡へと導かれた。
 だが、そうやって人類が居なくなった今も、こうして猫達は変わらず生き残り続けている。
 ……最も、彼等が今こうして平和を享受出来ているのは、猟兵達の働きのお陰でもあるのだろうが。
 バトルオブフラワーズ。
 様々な怪人達と戦いながら、まっぷたつに割れたこの世界を駆け抜けたあの日々。
 まだ決して遠くもない、記憶に根深い出来事だ。
「まあ、細かいことはどうでもいいか」
 極は意識を思考の海から賑やかな会場へと戻す。
 辺りをゆるく見渡してみれば、この平穏を自由に過ごす住人達や猟兵達の姿。
 聴覚からも、暢気な声や音がこれでもかというほど入ってくる。
 長閑すぎる光景に、極は思わず苦笑する。
 そんな彼女の周りにも、例にも漏れずにゃあにゃあと猫達が集まってきた。
 人馴れした猫達は、構って欲しそうに極に身体を擦り付けて甘える。
 極は手近な猫を一撫ですると、コンコンコンで適当におやつを出してやった。
「ここだと外は特に寒くないけど、キミ達もゆっくりしていきなよ」
 極の言葉に「きみもね!」と返すかのように、猫はにゃあ、と一声鳴いた。

 たまには、こんなのんびりとした時間も悪くない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナイ・デス
ソラ(f05892)と

寒い冬は、こたつ、ですか
猫さん達も、楽しそう、ですね
では、ソラ。私は場所取り、しているので
買い物、お願いします。……アイス、忘れないでください、ね!

ソラを待っている間、私はにゃーんにゃん【動物と話す】
お喋り……せっかくの機会、です
猫さん達に、癒される、ですし。私も猫さん達、癒しましょう
もふり倒され、ストレスも、あるかも、ですし
暖かな『生まれながらの光』で、猫さん達を癒しながら、待ちます

疲労と癒しの人気で猫が山となって埋まる私

ソラ、おかえりなさーい……
アイスは、買えまし……アイス!

大好きなアイスみて復活

と、これは……冷凍蜜柑、です?
冷たくて、甘い……これも、アイス、ですね♪


ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と

冷凍蜜柑とアイス、出店の食べ物一通り
甘酒を水筒に入れたらナイくんのいる炬燵へ
うふふっ、素敵なお祭りに思わず頬が緩みます
何せわたしたちは猫さんと炬燵が大好きですから!

お待たせナイくーん!
あ、あれ?ナイくんがいた場所に猫さんの山が!?
お山を掘れば、ぽわぽわ光る大人気なナイくん
あはは…大好物のアイス、買ってきましたよ

ナイくんにアイスをあげたら、わたしもいざ炬燵へ!
じゃーん!炬燵といえば半纏ですね!
暖かい甘酒や食べ物を楽しんで体はぽかぽか…うふふふふ~

おや、気付けばお膝の上や半纏の中に猫さんたちが
コンコンして出てくるおやつをあげて一緒にぽかぽか
むふ~……至福ですね、ナイく~ん



●至福のひととき
「では、ソラ。私は場所取り、しているので。買い物、お願いします」
 ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は出店近くのコタツを確保しながら、ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)へと告げた。
「はいっ、ナイくんもお留守番お願いしますね」
「……アイス、忘れないでください、ね!」
「うふふ、もちろん! では、いってきまーす!」

 ナイにコタツを任せ、ソラスティベルは食べ物の出店を中心に会場を巡る。
 あたたかいもの、つめたいもの。がっつりご飯系から、軽く摘めるお菓子まで。
 どれにしようか選びながら出店を覗き歩く。
 その賑やかな雰囲気に、ソラスティベルの頬も思わずゆるゆると緩んでいく。
(何せ、わたしたちは猫さんとコタツが大好きですから!)
 そんな大好きなものが、こうして両方一気に楽しめるのだ。頬も緩むというものだ。
 一通り出店を見て回ってみれば、目当てのものはすぐに見つかった。
 別の出店で甘酒を水筒に入れてもらってから、ソラスティベルはナイの待つコタツへと早足で向かう。
 ナイの喜ぶ顔が、今から楽しみだった。

 一方、その頃。
 ナイはと言うと、コタツでぬくぬくと温まりながら、寄って来た猫達とのお喋りを楽しんでいた。
「……にゃーん、にゃん」
「ふみゃん! にゃごごご!」
「にゃっふふ……」
 このおやつが美味しかっただとか、あそこのコタツで寛いでいるキマイラがテクニシャンなのだとか、最近仲良しの子に告白を考えているのだとか。
 他愛もない話にうんうんと頷きながら、ナイはふと思いつく。
(猫さん達に、癒される、ですし。私も猫さん達、癒しましょう)
 今日はこうして一日中もふり倒されているだろうから、ストレスもあるかもしれないし。
 ナイは己の手に、暖かな光を灯す。ほわりと柔らかに猫達を包み込んだそれは、ゆるやかに蓄積されていた猫達の疲労を癒していく。
「ふにゃ~~~……」
「!、みゃあみゃあ!」
「んにゃにゃにゃ!」
 癒しの光に骨抜きにされた猫の、あまりにも気持ちよさそうな鳴き声を聞きつけ、我も我もと猫達がナイの元へと集まってくる。
 その人気は留まる事を知らず。数分後、ナイが居たはずの場所には、猫の山がこんもりと鎮座していたのであった。

 それから少しして。
「お待たせナイくーん!」
 腕いっぱいに買ってきた食べ物を抱えたソラスティベルが、元気いっぱい帰還してきた。
 だが、目の前には謎の猫の山があるばかり。ソラスティベルは不思議な光景に首を捻る。
「ソラ、おかえりなさーい……」
 彼の声はすれども姿は見えず。……いや、今、この猫山の中から声が聞こえなかっただろうか。
 試しに山を掘ってみれば、案の定ぽわぽわ光る猫まみれのナイが居た。
「あはは……大好物のアイス、買ってきましたよ」
「……アイス!」
 ナイを山から助け出しながら、ソラスティベルは天板に置いた荷物を指す。
 そこにはナイ所望のアイスと、それから――。
「これは……冷凍ミカン、です?」
「ふふー! そうです、コタツに合うかと思って!」
 ひんやりシャリシャリとした食感の後に、口の中でとろりと甘酸っぱく蕩けていくそれに、一粒口にしたナイの表情が綻ぶ。
「冷たくて、甘い……これも、アイス、ですね♪」
 それを満足そうに見届けてから、ソラスティベルもいそいそとコタツへと潜る。
「……じゃーん! コタツといえば半纏ですね!」
 持参してきた半纏を着込み、暖かい甘酒や食べ物を並べたら準備は完了。
 温もりに惹かれて膝の上や半纏の中に潜り込んできた猫達にも、コンコンコンで出したおやつをあげて、しあわせのお裾分け。
「むふ~……至福ですね、ナイく~ん……」
「です、ね……」
 2人はぽかぽかなひとときを、心ゆくまで満喫するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『にゃんこアーティスト』

POW   :    これでキミともニャン友にゃん
【対象の発言に対し、いいね】が命中した対象を爆破し、更に互いを【相互フォロー】で繋ぐ。
SPD   :    とりあえず、ぶっかけてみた
【瞬間凝固ペンキをぶっかけ芸術活動する攻撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を題材にしたアートが開始され】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    にゃんこ絵描き歌
【にゃんこ絵描き歌】を披露した指定の全対象に【真似してみたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑7
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●怪人は空気を読まない
 会場全体が、コタツの温もりと猫の愛らしさに包まれていた。
 もう、これ仕事とかお休みでも良いんじゃない?
 猟兵達の間に、そんな空気が流れ始めた頃。

「「「にゃーーーーーん!!!!!」」」

 その空気を切り裂くように、コタツで寛ぐ猫達とはまた違う、喧しさ3割増しくらいのシャウトが響いた。
 同時に、雪崩れる様に押し入って来たのは、アーティスティックに汚れた作業着を身に纏ったにゃんこ型の怪人達。
「我々はにゃんこアーティスト! 我々のアートを広めるために日々活動中だにゃん!」
「そんなわけで、移動個展の開催だにゃん!」
「予想以上の広さに、我々も心がダンサブルだにゃん!」
 怪人たちは、会場中に漂うなんとも言えない空気をものともせず、ひらすらに自分達の主張を続ける。
「にゃっふっふっふ、創作意欲がシゲキされる光景だにゃ……まさにアートだにゃ!」
「ンンーッ、そうかにゃあ……ちょっと、ビビットな感じが足りなくにゃーい?」
「あ、足りなにゃいかも! 」
「染めちゃう? 我らのアートで華麗に染めちゃう?」
「「「芸術はバクハツにゃ!!」」」
 よくわからないが、彼らの中では何かが物足りなかったらしい。
 協議の結果、彼らはどこからか取り出した瞬間凝固ペンキを手当たり次第にぶっかけはじめた。
 瞬く間に阿鼻叫喚となる会場内。蛍光色に染まるコタツ。逃げ惑うキマイラや猫達。

 さて、おいたが過ぎるにゃんこ達にはお仕置きが必要だ。
 猟兵たちは、このアーティストもどきをシバき倒すため、重い腰を上げた。
幻武・極
ああ、やっぱり現れたんだね。
せっかく、ぬくぬくしてるんだから、キミ達の相手はこのバトルキャラクターズがするよ。
バトルキャラクターズはレベル1で召喚して、ペンキ攻撃から会場を庇いに行ってもらうよ。
アートな彫像はいっぱいできるかもしれないけど、猫たちが遊ぶ遊具になればいいかな。
もちろん、芸術活動で隙だらけのにゃんこは撃退させてもらうよ。



●芸術的一撃
「――ああ、やっぱり現れたんだね」
 幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)は、好き勝手に暴れ回る怪人を、コタツに入ったまま注意深く観察していた。
 最高の武術を追い求める彼女にとって、敵の戦い方はいつだって宝の山のようなものだ。
「でも、会場を汚されるのは本意じゃないんだよね」
 そう。せっかく、こうしてぬくぬくしているのだから。
 彼女の言葉に賛同するように、ゲームデバイスを介して58体のバトルキャラクターズがその場に現れる。
 極は、それらを敢えて合体させず、猫や参加者達を護る盾として会場中へと解き放つ。
「それで好きに遊んでてよ」
「にゃにゃっ!? 新しいキャンバスがいっぱいだにゃ!」
 突然現れた大量のゲームキャラクター達に、怪人はつぶらな目を輝かせ、瞬間凝固ペンキのたっぷり入ったバケツを手当たり次第に振り回した。
「にゃっはっはっはっはん! 必殺、ライブペインティングだにゃーんッ!!」
 コンセプトも何もない、とりあえずペンキを適当にぶちまけているだけの自称『芸術活動』により、キャラクター達は次々と彫像と化していく。
「それがキミの武術か……それじゃあ、今度はボクの番だね」
「にゃっふふーん……これは……アート界に新たな1ページを刻める出来にゃん……」
 一通り観察を終えた極は、音も無くコタツから抜け出ると、怪人との距離を一気に詰めにかかる。
 だが、己の作り上げた作品に夢中な怪人は、近付いて来る彼女の気配に全く気付かない。
「ボクの武術を見せてあげるよ!!」
 裂帛の気合を乗せた一撃が、隙だらけの怪人の横っ面にクリーンヒットする。
「ふぎゃーッ!?」
 殴り飛ばされた勢いで、先程ペンキを塗りたくったばかりのバトルキャラクターズへと盛大に激突した怪人は、そのまま自らも作品の一部となったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミリア・プレスティール
テフラさん(f03212)と同行
テフラさんの固化塗料を借りて猫達を固めていくが、隙を突かれてペンキをかぶせられて固まってしまう。
調子に乗った猫達だが、ミリアの手袋型UDC『ミトン』が余った固化塗料を使い、自由を奪った猫達に逆襲を試みる。

【ミリアの心情】
ごめんなさい!でも周りの人を困られてはダメですよ?
…あれ?これってペンキ?あっ動けな…!
【ミトンの心情】
いい気になるな、毛玉風情が。俺はミリアの様に優しくは無いぞ?
そんなに芸術が好きならお前達が作品になればいい。粘土細工は嫌いか?
…しかし我ながらいい出来だ。固まった二人の横に並べて記念に撮っておこう。

※アドリブOK


テフラ・カルデラ
ミリア【f16609】と同行
アドリブ可

猫さんをもふもふしに来たのですが…空気を読めないオブリビオン達が暴れまわっているので、ユーベルコード『固化塗料粘液散布』で文字通り芸術品に変えてあげましょう♪

「一緒に芸術活動しませんか~?」と喜びそうな言葉でおびき寄せます!
これは会場を荒らさないように会場から遠ざける意味合いも含めた囮みたいなものです!やはり全員とまではいきませんが…
そして「お前が芸術品になるんだよ!」と言わんばかりに固化塗料をにゃんこアーティスト達に浴びせてドロドロカチカチに固めちゃいます!
が、さすがに数が…わぷっ…塗料が…身体に…さらに…筆で塗りたくられて…くすぐったい…あ…動け…な…



●ペイント・ペイント・クレイアート!
「猫さんをもふもふしに来たのですが……」
 テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)は、蜘蛛の子を散らすように逃げていってしまった猫達を、ほんのり寂しそうに見送りながら呟いた。
「みんな行ってしまいましたね……」
 ミリア・プレスティール(守護霊憑き被虐性少女・f16609)も、しょんぼり肩を落としながら、先程まで猫の温もりでいっぱいだった腕の中に視線を落とす。
 それもこれも、空気を読まない自称アーティスト集団の所為である。
「……それなら。あちらも、文字通り芸術品に変えてあげましょう♪」
 これが怪人達にとっての芸術活動だと言うのなら、こちらも芸術活動だ。
 テフラとミリアは立ち上がると、自前の固化塗料を手に取った。

「一緒に芸術活動しませんか~?」
 テフラは怪人達の心を擽るような言葉を選びながら、おびき寄せを試みる。
 まずは、会場がこれ以上荒らされないよう、自分達が囮になって怪人達をこの場から引き離す作戦だ。
「にゃァん?」
「誰にゃ、あいつら?」
「もしかして……我々のファンにゃ?」
 その呼び掛けに、見事に数匹のにゃんこアーティストがテフラ達の方へと寄ってくる。
「やはり全員とまではいきませんが……でも、作戦通りです!」
 言うが早いか、テフラは近付いて来た怪人目掛け、勢いよく固化塗料を散布する。
 不意を突かれた怪人の1人が、為す術もなく塗料でドロドロカチカチに固まっていく。
「にゃーっ! あいつ同業者だにゃ!?」
「ライバル出現だにゃ!」
 どうにか難を逃れた数名が、慌てて体勢を立て直そうとペンキを構える、が。
「ごめんなさい! でも周りの人を困らせてはダメですよ?」
 それを、怪人達の背後へと回ったミリアが、テフラから借りた固化塗料を思いっきりぶち撒けて妨害する。
「後ろにも居たにゃーっ!」
「誰かっ、応援を! 応援を頼むにゃー!」
 同胞の悲鳴を聞きつけた怪人達が、わらわらとテフラとミリアを取り囲んでいく。
 飛び交うペンキ、響く怒号。それでも果敢に応戦する2人だったが――
「さすがに数が……、って、わぷっ……!」
「……あれ? これってペンキ?」
 多勢に無勢。ついに、自分達にも塗料の洗礼が降りかかる。
「やってやったにゃ!」
「今だにゃ! アーティスティックに畳み掛けるにゃー!」
「「「にゃおーんッ!!」」」
 調子に乗った怪人達は、身の丈ほどの絵筆も導入して、一気にテフラ達を固めにかかる。
「くすぐったい……、……動け、な……」
「あっ、動けな……っ!」
 2人が完全に固まりきりそうになった、その時だった。

 ばしゃぁっ

 怪人共の頭上から、固化塗料が雨のように降り注ぐ。
「ぶえっ!?」
「にゃにゃにゃにゃ!?」
 勝利を確信していた怪人達は、突然の展開に目を白黒させながら固まっていく。
 彼らが最後に見たのは、余っていた塗料の入ったバケツを持った――ミリアの手袋型UDC『ミトン』の姿。
 ミトンは『いい気になるな、毛玉風情が』と言わんばかりに、ミリアの自由を奪った怪人達へと容赦のない逆襲を始める。
 そんなに芸術が好きなら、お前達が作品になればいい。
 粘土の様に形を変化させる力をその手に籠めたミトンは、びっくりした表情のまま固まった怪人達を捏ね回していくのであった。

 それから数分後。
 そこには、出来上がった『作品』をテフラとミリアの横に並べて、満足そうに記念撮影するミトンの姿があったとか、なんとか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と

コタツでうとうとしていた所、騒音にびっくり!
聞けばアートと称しこの憩いを壊そうと言うではありませんか!
許せませんっ、纏めて飼い猫の如く大人しくなって貰います!

…コタツ、暖かいですねえ…
あ、待って待ってナイくん!すぐ出ますから~!

何が「いいね」に繋がるか不明ですが、爆破は【盾受け・気合】で耐える!
くっ、フォローは防げません…
後で猫さんか貴方たちの写真を送ってください、骸の海から

この場のペンキ塗れを防ぐ為、彼らを呼びます!
わたしの【勇気】に応えて!アルダワの災魔『蜜ぷに』さん!
大量召喚した彼らに身を挺してペンキを被って貰い、
その隙に【範囲攻撃】の大斧で薙ぎ払っていきます!


ナイ・デス
ソラ(f05892)と

あぁ……忘れかけてた、ですが
怪人、くるのでしたね
【動物と話す】にゃーん
ねこさん達に避難呼びかけ

……ソラは、待っていてくれても、いいですよ?
容赦なく、片付ける、ですから。『イグニッション』

『』は防具初期技能

変身し獣耳ぴょこん『野生の勘』で『見切り』
……避けたら、会場が汚れる、ですか
『勇気』【覚悟】決め、外套でペンキ『かばい』受け
【激痛耐性、継戦能力】痛みあっても本体無事、死なないと無視
瞬間凝固したの『怪力』でばりばり動かし
【忍び足】『ダッシュ』
『暗殺』黒剣鎧から刃をだして【串刺し生命力吸収】光が奪い尽くし、塵も残さず消滅させます

……ソラ。蜜とペンキで、すごいこと、なってます



●聖者と勇気と蜜ぷにのマーチ
 憩いのひとときをぶち壊す闖入者共の無粋な声で、とろとろ微睡んでいたソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は一気に夢の世界から現実へと引き戻された。
「わ、わっ、猫さん落ち着いて……あぁぁー……」
 ソラスティベルの半纏の中で眠っていた猫も驚いて飛び出してくる。去っていく温もりが切ない。
「あぁ……忘れかけてた、ですが。怪人、くるのでしたね」
 コタツから身を起こしながら、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は冷静に周囲を確認する。見れば、何匹かの猫は突然の事態に付いて行くことが出来ず、おろおろとその場に留まっている。
「……にゃーん」
「!、なぁうっ!」
 避難経路を示してやると、猫達は「心得た」とばかりに頷いて一目散に逃げていった。これで彼らを巻き込まずに済むだろう。
「許せませんっ、纏めて飼い猫の如く大人しくなって貰います!」
 ナイに続くように、ソラスティベルもコタツから出ようとするも。
「……コタツ、暖かいですねえ……」
 外は寒い。中は温い。コタツの魔力がソラスティベルの身体と心を掴んで離さない。
「……、……ソラは、待っていてくれても、いいですよ?」
「あ、待って待ってナイくん! すぐ出ますから~!」
 じっとこちらを見る相棒の、なんとも言えない視線に慌てつつ。ある意味怪人以上の強敵を気合いでどうにか打ち倒しながら、勇者ソラスティベルも一足遅れて立ち上がったのであった。

「アイディアがもりもり湧いてくるにゃーんっ!」
「あっちもこっちも我ら色に染めるにゃーんっ!」
「ここに金色足してみたら最高じゃにゃい?」
「「それ天才~~~~~~!!」」
 2人が駆けつけた先では、数人の怪人たちがコタツを積み重ねて謎のオブジェを作り上げていた。
 原色ギトギトに染め上げられ、仕上げに金色のペンキで彩られたそれは、お世辞にもセンスが良いとは言い難かった。
「……これが、芸術、ですか」
「あ、あまりにも酷い……」
 首を捻るナイと、惨状に思わず頭を抱えるソラスティベル。
「おん? ギャラリーが来たにゃ?」
「世紀の大傑作だもんにゃ~」
「拡散してくれてもいいけど~、自作発言はダメだからにゃ~?」
 対して、空気も温度差も読めていない怪人達。こちらは何も言っていないのに、勝手に照れている始末である。その自信はどこから来るのだろうか。
「これは、容赦、いらない、ですね。――『イグニッション』」
 その一声に呼応するように、ナイと融け合った装備の性能が各々限界まで引き上げられる。
 同時に、心臓と融合した刻印の力により、ナイの身体にぴょこんと獣の耳と尻尾が顕現する。
「んにゃ? 我々とお揃いだにゃ?」
「なら、カラーリングもお揃いにするにゃ!」
 放たれたペンキに、研ぎ澄まされた本能が警鐘を鳴らす。軌道を見切ったナイは、とん、と軽い音を立てて宙を跳んでそれを回避した。
「……避けたら、会場が汚れる、ですか」
 己を捕らえ損ねたペンキが、代わりに地面を極彩色に染めながらカチカチに固まっていく様を見て、ナイは小さく呟いた。出来ればなるべく会場の被害を広げたくはない。
 ナイは覚悟を決めると、飛んで来るペンキを纏った外套で受け止め、被害を最小限に抑えようと試みる。
 受け止めきれなかった分がその身を固めていくが、構わず力技で引き剥がす。
「本体無事、なら……死なない!」
 痛みなんて意識から遮断すればいい。そうすれば我慢できる、まだ走れる、戦える。
 ナイは増幅された脚力で一気に間合いを詰めると、腕を覆う鎧を黒剣に変形させて、一切の容赦なく怪人共を貫いた。
「ぶにゃっ!?」
 眩い光が、怪人の――失われた過去の化身のいのちを奪い尽くす。
 光が収束する頃。そこには、塵ひとつ残されてはいなかった。

 一方、ソラスティベルはというと。
「うぅぅ……なんだか、見てるだけで目が痛くなります……!」
 しこたま襲い来る原色バシバシのペンキ攻撃に、じわじわと目を苛まれていた。
「あ、でも、ここの藍色とオレンジ色のコントラストは、ちょっと素敵だと思います!」
「その感想、とってもいいにゃーん!!」
 謎の原理で引き起こされた『いいね』による爆破を、咄嗟に構えたスチームシールドで耐えきるも。

 ぴろん。

「くっ……!」
 どこからかポップアップした『にゃんこアーティストさんをフォローしました』『にゃんこアーティストさんがあなたをフォローしました』のメッセージは防げない。
 いったい何に対してのフォローなのかは完全に不明である。
「これでキミともニャン友にゃん! 個展開くときはお知らせするにゃん!」
「それは結構です! 後で猫さんか貴方たちの写真を送ってください、骸の海から!」
「写真は良いけど、骸の海からってのはお断りだにゃん! ちなみに、メルマガは週1でお届けだにゃん!」
 週1で何が送られてくるのか少し気になる気持ちはあるものの、怪人達を野放しにするつもりは無い。この場をこれ以上ペンキ塗れにするのも防ぎたい。
 ならば、取るべき行動はひとつ――彼らを喚ぶしかない!
「わたしの勇気に応えて! アルダワの災魔『蜜ぷに』さん!」
 ソラスティベルは、高らかに彼らの名前を叫ぶ。
 その喚び声は勇気の名の下に、世界を、理を超えて、骸の海で眠る彼らの元への道を開く。
「なっ、なんにゃなんにゃ!? 蜜ぷにって何だにゃん!?」
「おいしいお菓子か何かじゃないかにゃん?」
「なるほど、つまり差し入れ――ぎにゃーーーーっ!!??」
「「「プニ――――ッ!!」」」
 初めて聞く名前に戸惑う怪人達の頭上に、大量召喚された蜜ぷに軍団が降り注ぐ。
「さぁ、皆さんいきましょうッ!」
「勇気ト根性デ無敵プニ!」
「確実ニ、仕留メル、プニ」
「ええ、合言葉は!」
「「「最後ニ勝ツノハ、勇気アル者プニ――ッ!!!」」」
 鬨の声を上げたソラスティベルと蜜ぷに達は、怪人達へと突撃する。
 慌てたように飛んで来るペンキを蜜ぷに達が身を挺して防ぎ、その隙にソラスティベルが怪人達を大斧でばさばさと薙ぎ払っていく。魂で通じ合った完璧な連携である。
 瞬く間に戦況を押し返したソラスティベル達は、怪人達をびしばし骸の海へと叩き返して行ったのであった。

「……ソラ。蜜とペンキで、すごいこと、なってます」
「そういうナイくんだって、すごいですよー……」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユキ・パンザマスト
[みゃさんと]
みゃさん、写真をとるとは悪戯っこめ~!
むうむう、尻尾で脇腹つんつんこしょぐり、
ま、他愛ない悪戯は元気な証拠ですゆえ。
……ニャンコどもの悪戯は、目に余りますが!

【バトルキャラクターズ】、
実体ホロ椿の枝根で猫やこたつを守り、ペンキを防ぐ障壁を作りましょ。
みゃさん、隙間から狙い打てます?
ふふ、高得点に期待すね!

垣前に陣取って、乗り越えてくる敵には【早業、先制攻撃】。
バリむしゃは怖いすか?
おっ、肝座ってるっすねえ!
【生命力吸収、捕食、大食い】!
た~べちゃ~うぞ~~!

一段落ついたらハイタッチ。
狙撃に攪乱、びゅーりふぉー!
うん? あはは、怒ってませんて!
ま、みゃさんの悪戯とおんなじですよぉ。


三岐・未夜
ユキと

ユキになら嫌われないかもしれない、なんて無意識の甘えが悪戯に出た黒狐
え、えと、あの、ユキ怒ってる……?(しょぼんとへたれる耳としっぽ)
あ、わ、待ってくすぐったいしっぽこそばい待ってユキ
……あ、あれ、怒ってない……?
気になるけど、とりあえず戦わなきゃ

【先制攻撃】で火矢の弾幕を張るよ
大丈夫。僕、シューティングゲームも得意なんだよ
【範囲攻撃、属性攻撃】で火矢を強化
【操縦、見切り、誘導弾】でユキや猫を避けて
ついでに【誘惑、催眠術、おびき寄せ】で同士討ちさせて引っ掻き回しちゃお
ばりむしゃーも平気だよ、最近見慣れちゃった

終わったらつられてハイタッチ
ほんとに怒ってないっぽい……?
ほっとしてしっぽを振る



●たそがれどきのけものたち
 ユキ・パンザマスト(不確かな、・f02035)はぷんすこしていた。
 三岐・未夜(迷い仔・f00134)の脇腹を尻尾でつんつく突きながら、むうむう鳴いていた。
 寝てる間に写真を撮るとは、なんたる悪戯っ子か。これはみゃさんにも悪戯のお返しが必要だぞ。
「あ、わ、待ってくすぐったいっ、しっぽこそばい! 待ってユキ、」
 しょぼんと耳と尻尾をへたらせて、未夜はおずおずとユキの様子を窺う。
 悪戯に滲んでいたのは、ユキになら嫌われないかもしれない、なんて無意識の甘え。
(ま、他愛ない悪戯は元気な証拠ですゆえ。……ニャンコどもの悪戯は、目に余りますが!)
 怒らせてしまっただろうかと、へにょへにょぐるぐる考え込む少年を内心にこにこと見守りながら、漏れ出る笑みもそのままに、ユキは怪人達の方へと向き直った。
(……あ、あれ、怒ってない……?)
 ちらりと見えた彼女の口元が弧を描いているのを見て、しおしおにへたれていた未夜の耳がぴんと立ち上がる。
 どちらだろう。できれば、怒らせていない方が。嫌われていない方がいい。戯れであるといい。
「……気になるけど、とりあえず戦わなきゃ」
「ほら、みゃさん行きますよーう!」
「え、あ、うん! 今行く!」
 そうだ、まずはこの怪人達をどうにかせねばなるまい。
 未夜はぷるぷると頭を振って弱気なこころを追い出すと、ユキの後に続いて混沌の只中へと走り出した。

「ふーむ……どう思いますかにゃ、この色合いについて……」
「パステルカラーのコタツに対して、唐突に入り込んできたショッキングピンクが、実に目を惹きますにゃん……」
「そちらも、荒削りながらも躍動感に満ち溢れたフォルム……良き……これは良きですにゃん……」
 出店からパクッてきた煎餅を呑気に齧りながら、怪人達は完成した作品を鑑賞していた。
 新進気鋭のアーティストとして世にデビューしてからどのくらいが経っただろう。
 お互い良い仕事をするようになったものだ。切磋琢磨してきたライバルの隣で、怪人Aは思い出に浸る。最初はペンキの扱いもよく分からず、自分の手まで一緒に固めてしまっていたっけ。あの頃の自分がこの大作を見たら、なんと言うだろう。驚くだろうか。信じられないと頬を抓るだろうか。あ、この海苔巻いてあるヤツ美味いにゃん。
「よーし、休憩も済んだところで。そろそろもう1作品――」
「いや、もう充分すよ」
 ばっさりと場の空気を切り捨てながら、ユキは肩を竦めた。
 突然の乱入者に、図々しくもまったり寛いでいた怪人達が色めき立つ。
「なっ、なんにゃお前! どこから!」
「それはこっちの台詞ですって。というか、こんなオープンな空間でどこからも何もないでしょうよ」
「あ、それ僕も思った」
「ぐぬ……まぁ、良いにゃ! ちょうど新しいのを作ろうと思ってたトコにゃ!」
「今度は生きたキャンバスってのも面白そうだにゃん!」
 怪人らしい台詞と共に、2人へと弾丸のようにペンキが放たれる。
「だから、もう充分ですって!」
 たそがれ色のけものが吼える。その鳴き声に応えるように、心象世界より藪椿が花開く。
 実体を持ったそれは、2人を護る壁となるように辺り一面に咲き乱れる。
「みゃさん、隙間から狙い打てます?」
 枝葉の間から怪人達を見据えた未夜は、慣れた様子で破魔の力を練りこみ矢のかたちへと作り変えながら、たそがれ色のひとみを細めて笑う。
「大丈夫。僕、シューティングゲームも得意なんだよ」
「そいつぁ頼もしい。……ふふ、高得点に期待すね!」
 言葉通り、更に強化されて勢いを増した燃え盛る矢が、圧倒的な物量で、だが器用に怪人達だけを押し潰す。
「にゃがががが!? これはやべーやつ! どう見てもやべーやつだにゃ!」
「きれいだにゃ……アートだにゃ……もっと近くで見るにゃ……」
「待つんだにゃー! 行ったらこんがりにゃんこ焼きの出来上がりだにゃー!」
「離せにゃー! これでも喰らうにゃー!」
「にゃばーーーーッ!!??」
 そのうちに、煌々と辺りを照らす炎の美しさに魅了された怪人が、近付くのを静止する他の怪人と同士討ちを始めた。それもすべて未夜の狙い通りだ。
「くそっ……あいつを倒せば、きっと止まるにゃ! みんなで突撃するにゃーん!!」
「「「にゃーーーーッ!!」」」
 辛うじて理性の残っている怪人達は、場を完全に掌握した未夜を止めるべく、一か八かの覚悟で障壁へ殺到する、が。
「ユキのことも忘れないでほしいっすねぇ!」
 力尽くで乗り越えようとするそれを、垣前に陣取った逢魔ヶ時の悪童が片っ端から食い荒らしていく。
「怖いすか?」
「平気だよ、最近見慣れちゃった」
「おっ、肝座ってるっすねえ! なら、遠慮なく――た~べちゃ~うぞ~~!」
 狙撃に攪乱、暴飲暴食。
 逃げ惑う過去の亡霊達の声が聞こえなくなった、その後には。髭のひとつも残されてはいなかったとさ。

「さっすが、みゃさん! びゅーりふぉー!」
 一仕事を終え、ハイタッチを求めながらユキは未夜に賞賛の言葉を贈る。
「え、あ、うん。……ありがと」
 それに、戸惑いながらもハイタッチを返して。
「……え、えと、あの……、……ユキ怒ってる……?」
 未夜は、先程から聞きたくてしょうがなかった疑問を、勇気を振り絞ってユキにぶつけた。
 その表情が、あんまりにも可愛らしかったものだから。ユキは思わず、ぷはっと吹き出した。
「あはは、怒ってませんて!」
「ほ、ほんとに……?」
「ほんとですです。……ま、みゃさんの悪戯とおんなじですよぉ」
 仕返し成功とばかりに、優しく笑う彼女を見て。漸く、未夜もほっとした心地になる。
 その背では。言葉よりも雄弁に、ふわふわと嬉しそうに尻尾が揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ライラ・サンタマリア
【LR】

なーにがアートですか、爆発ですか、もー
はー眠いですわあ、ローウェンさんどうです?
人語を解す動物でしたら仲良くなれそうなのでは?

……え、いえ
わたくしは遠慮して、ぬあーっ!
おこたの外寒いじゃないですか、いやあーっ!
(引き摺られる)
(鎚鉾を握らされる)
うえっ……酷いです
こんな無理矢理……
此れだから何処であろうとお役人って嫌いですの!
ふーんだ! です!

神は仰いました、『だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい』
つまり、猫が来たなら猫を差し向けなさいって事
まあ、猫は猫でも百獣の王ですけどね
骨の髄までしゃぶり尽くしてあげちゃって下さいな

さあ、猫さん達、避難を!
通りまーす、通りまーす!


ローウェン・カーティス
【LR】
世は違えど官憲に遣える此の身
公共の場での無秩序を創作や芸術と騙る輩を見過ごせはしますまい
人語は解する様ですが、言葉を介することは出来なさそうです、ねえ…

さぁ、行きましょうライラさん……って
ちょっと、起きてください!何時まで寝そべっておられるのです!
此処へやって来た目的をお忘れじゃないでしょう!?

言葉尻だけ捉えたら誤解を受けそうな言動はお控えくださいね!

剣に纏うは風精霊の加護
風が足取りを軽くすれば、踏込みは鋭く速く
ペンキの奔流も飛沫も彼女らの護りで弾き返して見せましょう

芸術に形は様々あれど
人様の迷惑というものを少しは省みなさい
その様な立ち振る舞いは独り善がり以外の何もでもありませんよ



●黄金の獅子と鉄の風
「なーにがアートですか、爆発ですか、もー……」
 本日いくつめかのミカンをのんびりと咀嚼していたライラ・サンタマリア(ライアーライアー・f10091)は、心底面倒くさそうに呟くと、すっかりつるつるミカンの製造業者と化していたローウェン・カーティス(ピースメイカー・f09657)へと問いかけた。
「ローウェンさんどうです? 人語を解す動物でしたら仲良くなれそうなのでは?」
「人語は解する様ですが、言葉を介することは……」
 問われたローウェンは、一度言葉をそこで区切ると、白い筋を取る手を止めてアートに狂う怪人達の方へ視線を向ける。

「にゃーッ!!」
 ざばーんっ!
「にゃにゃーん!!」
 べちーんっ!
「にゃおにゃおーッ!!」
 どばどば、どばしゃぁあっ!
「すごいにゃ、すごいにゃ! これは超大作の予感だにゃん!」
 
「……、出来なさそうです、ねえ……」
「でしょうねぇ」
 正直、見ているだけで頭が痛くなってくるような光景である。
 だが、公共の場での無秩序を創作や芸術と騙る輩を、黙って見過ごせるローウェンではない。
「あのような感じでも怪人は怪人、捨て置くわけにはいきますまい。さぁ、行きましょうライラさん……って、ちょっと、起きてください!」
 場に漂う脱力感にも負けず、生真面目な顔で立ち上がったローウェンの目に飛び込んできたのは、今まさに惰眠を貪ろうとしているライラの姿。
 まず正すべきは己の連れか。葦の海の奇跡の男は、堕落の極みに至りそうな彼女を丁寧な手付きでコタツから引っ張り出していく。
「何時まで寝そべっておられるのです!」
「え、いえ、わたくしは遠慮して――ぬあーっ!」
「此処へやって来た目的をお忘れじゃないでしょう!?」
「おこたの外寒いじゃないですか、いやあーっ!」
「寒ければ私の上着をお貸ししますから! はい、行きましょう!」
 暫しの攻防の末、勝利したのはローウェンだった。鎚鉾を強制的に握らされながら、ライラは恨みがましい目でじっとりと彼を睨め付ける。
「うえっ……酷いです……こんな、無理矢理……」
「言葉尻だけ捉えたら誤解を受けそうな言動はお控えくださいね!」
「此れだから何処であろうとお役人って嫌いですの!」
 ふーんだ! と拗ねた顔でそっぽを向くライラに、ローウェンは思わず苦笑を零した。

「そっちはどうにゃー?」
「真ん中に置くパーツが出来上がったとこにゃー!」
 和気藹々とした雰囲気で、せっせと作品制作に励む怪人達。それだけ見れば、割と微笑ましい光景ではあるのだが。
「うんうん、順調だにゃあ……あ、ここに何匹か猫を添えるってのはどうにゃん?」
「それ良いにゃん! ちょうどあそこに数匹残ってるにゃん」
「ああ、ラッキーだにゃん。ちょっと取ってくるにゃー」
 結局、彼らはオブリビオン。骸の海より染み出した、世界を蝕む存在である。
 決して相容れない思考の会話と共に、逃げ遅れ、隅の方で震える猫達に怪人の魔の手が迫る。
 ――けれど、その手は届くことはない。
「芸術に形は様々あれど、人様の迷惑というものを少しは省みなさい」
 凛とした声が怪人達の鼓膜を揺らす。次いで、彼らを取り囲むように、辺りに風が吹き荒れる。
 振り返った先、風を纏い佇むのは金糸靡く中性的な男。その隣には、金色の朝灯散る火の髪の娘。
「その様な立ち振る舞いは、独り善がり以外の何もでもありませんよ」
 男の――ローウェンの諭すような響きに、苛立ちを覚えた怪人達の毛が逆立つ。
「突然なんなんだにゃ! 我々は忙しいにゃ!」
「この風吹かせてるのはお前かにゃ! 砂埃が作品に付いたらどうしてくれるにゃん!」
「多少付いたところで大して変わらないでしょうに」
 彼らが『作品』と呼ぶものを一瞥して、ライラは肩を竦める。
 少なくとも、命ある猫を犠牲に作り上げる価値は無い。
「神は仰いました――『だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい』、と」
「……どういう意味にゃ?」
「わからにゃい……とりあえず、難しいこと言ってるのだけはわかるにゃん……」
「……つまり、猫が来たなら猫を差し向けなさいって事」
 物分りの悪い怪人達に不敵な笑みを返し、ライラは掌から地へとひかりを零す。それは粒子となり、傍らで黄金に輝く獅子のかたちを取る。
「まあ、猫は猫でも百獣の王ですけどね?」
 ライラはひらりと顕現した獅子に跨がると、追い風を背に受けながら猫達を捕らえようてしていた怪人へと一直線へ向かっていく。
「ほにゃぶッ!?」
 己よりも質量のある百獣の王に体当たりされては、遅れを取った怪人などひとたまりもない。
 為す術もなく紙のように吹っ飛んでいく怪人を尻目に、ライラは怯えて縮こまった猫達を獅子の背へとどんどん乗せていく。
「ローウェンさん、後はよしなに。骨の髄までしゃぶり尽くしてあげちゃって下さいな! ――通りまーす、通りまーす!」
 そのまま彼女は、猫達の避難を優先し戦域より離脱する。
「承りました。――ハロゥ、ハロゥ。皆さんお目覚めですか?」
 その場に残ったローウェンは、風の精霊へと呼び掛けた。
 構えた剣に、その身に、応えた精霊達の加護が宿る。
 踏込む足取りは軽やかに、だが鋭く、速く。己の内に渦巻く、鉄の嵐の如く苛烈に。
 如何なるペンキの奔流も、飛沫も、風の娘達に護られた彼を汚すことはできない。
「にゃー!? こいつ止まらないにゃー!?」
「散るにゃー! 逃げるにゃー!」
 怪人達が慌てふためき、作品を置いて逃走を図ろうとも、時は既に遅く。
「逃げるならば、せめて片付けて行きなさい!!」
 ローウェンの一喝と共に放たれた一撃で、怪人達は纏めて骸の海へと吹き飛ばされていったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『森主』

POW   :    自然の猛威
単純で重い【雷槌】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    獣返り
【野生を促す香り】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【凶暴にして同士討ちを誘う事】で攻撃する。
WIZ   :    楽園への帰還
小さな【実から食べたくなる誘惑の香りを放ち、実】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【忘却の香りの満ちた森。故郷を思い出す事】で、いつでも外に出られる。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●一難去って
 傍迷惑な自称アーティスト集団にがっつりお灸を据え、骸の海へとご退場いただいた後。
 猟兵達の奮闘のおかげで人的被害はゼロに終わり、残されていた危険物の片付けも粗方済んだ。
 そろそろ、避難していた人々や猫達を呼び戻しても大丈夫だろう。
 その場に居た誰もがそう思った、その時だった。

『――生きとし生けるもの皆、獣である。獣は森に住まうべきである』

 ひとびとが作り出したもので溢れた、この場所に惹かれたか。
 或いは、漁夫の利でも狙っていたのか。
 新たに現れた招かれざるものの声が、朗々と響く。

『安寧のぬるま湯に溺れ、ひとの世に牙を抜かれた者共よ』
『文明の檻で従順に飼い慣らされた哀れな者共よ』
『思い出せ、己が獣性を解放せよ。その檻を破り野生へと戻れ』

 そうと唱えながら、ぬぅ、と現れたのは、その身に森を内包する異形――森主だ。
 どうやら、この平和な空間がお気に召さなかったようである。
 まぁ、野生のやの字も無いですからね、ここ。

『森(われ)を讃えよ。森(われ)へ還れ』
『野生を忘れた者共よ。野生へ帰れ。在るべき場所へ帰れ――獣に戻り、森(われ)へ還れ』

 森主の頭の木々達がざわざわと騒ぎ始める。
 このままでは、一般人や猫達の方へ向かってしまうであろうことは想像に難くない。
 森主を止めるため、そして安全に祭りを再開するため、猟兵達は地を蹴った。
ナイ・デス
ソラ(f05892)と
2章で塗れたペンキや蜜は『生まれながらの光』で綺麗にしたとこ、で

まだ現れる、ですか
……UDC邪神?いえ。この星にも昔は、自然あった筈。その過去から現れた、オブリビオン、でしょうか
あくまで推測、ですけれど……

と、お話してたら自然の猛威。雷槌
私は『ソラの剣』に
無敵の剣となって、雷槌を切り裂いて

考えるのは、あとで。今はソラ、オブリビオン、倒しましょう……!

私を手にしたソラを、聖なる光で覆い常に癒して【継戦能力】高め
【念動力】で【吹き飛ばし】更なる加速を。細かな回避をフォローして

ソラの勇気と怪力を、尋常でない速度そのまま全力で
無敵の剣は森主を切り裂いて【生命力吸収】
命、奪います!


ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と

むむ、言葉を喋りますけれど、意思疎通は難しそう…問答無用が吉ですかね、ナイくん?

新手の登場にナイくんとゆるく話していると落ちてくる雷
―――その瞬間、剣と化した相棒を手に一瞬で変身!
【見切り】、【気合い】一閃!無敵の剣は万雷を割る!

野生、自由、大いに結構!その在り方は美しい!
ですがこの世界は既に手に入れているのです、独自の生き方を
人と猫が無条件で共に在れるような、弛みつつも確かな『平和』を!

おっけー、ナイくん!軽く両断しちゃいましょう!

橙の竜翼を広げ神速の飛翔
雷槌を【見切り】、剣と化したナイくんで斬り払いつつ突撃
ナイくんの助けもあり憂いは無し!
燃えよ、我らが【勇気】!!


ユキ・パンザマスト
みゃさんと

いいじゃないっすか~冬だし。
外居心地悪かったら獣も巣籠りするもんでしょ。
みゃさん、森あんなこと言ってますけど?
っはは、違いない! 凍えず退屈しない文明最高!
片付け延長といきましょか!

あ、森だから燃えますね?
みゃさんが超燃やせる(ちらっちらっ)
──みゃさん!
(駈け寄り、抵抗に気付いて)
ああ、そうだ、巣と皆を大切に想うこの仔なら。
呑まれない。

信じ、今のうちに。
他の破壊防止、攻撃先が己のみで済むよう【彼岸越境】で中空へ。
野生の勘で匂いの薄い所へ、
更に椿花弁の香で中和、翼で散布。
実には触れず、捨て身の一撃+マヒ攻撃で四つ足の機動を削ぐ!

ええ、おかえりなさい、みゃさん!
後はあなたに託します!


三岐・未夜
ユキと

え、やだよ寒いもん
大体、便利を求めて文明で生きるのの何が悪いのか分かんない
その極致みたいなもんでしょ、電脳魔術士なんて
ていうか折角片付け終わってから来ないでよ、また片付け必要になっちゃうじゃん

あ、なるほど燃やし放題
あったかくなるし丁度良いかもねぇ
あれ、……何か良い匂い……?
わ、わわっ!?ちょ、待っ、吸、い込まれるとか、冗談……じゃ、ないっ!
ぐ、と足を踏ん張って抵抗
故郷も何も、首に掛けた団地の鍵が自分の帰る場所の鍵
親友たちも家族のようなひとも、みんなみんな其処に居る

っ……ユキぐっじょぶ!
【操縦、誘導弾】で狙い定め、【属性攻撃、範囲攻撃、全力魔法】でこれでもかと火力を高めて
全部燃えちゃえ!!


ライラ・サンタマリア
あら厭だ
随分と仰々しいプランを提示されてますけど
ヒトが獣へ戻ったらあなた、環境保全等は何方がやるんです
寿命が縮んでぽこじゃか死ぬだけですわよ

全くもう、さてはて
ともあれ此処はサボテンすら枯らす男の出番では御座いません事?
なに、好き様に事が運べば
猫さん達にわたくしが口聞致してあげない事もないです
キャー! ローウェンさんカッコいいーって
つやつやお蜜柑工場長から一躍時の人ですわ
モッテモテのフワモコパラダイスをお約束出来ますけど?

……ええ、では詠唱を開始します、切り込みを頼みます!
しおっしおにして差し上げちゃって下さいまし!
残念ね
そもそもわたくし、自然崇拝はしておりませんの

神は言われた。「光あれ。」と!


幻武・極
うわあ、場違いなのが現れたよ。
自然に還れって、この時期に言うかな。
凍え死んじゃうじゃん。
キミ一人で帰っていいよ。

トリニティ・エンハンスで防御力を強化するよ。
受けた雷槌の雷を水の魔力でボクから逸らして、オーラ防御と拠点防御でしっかり受けきるよ。

被害を最小限に抑えたら、反撃開始だね。


ローウェン・カーティス
漸く一難去ったと思えば…唐突に現れて何を言い出すのか
ヒトに生まれた以上、ヒトとしての生を全うするのが定めでしょう
今更戻れなどと。その方が摂理に逆らうと云うものです

ええ…サボテンと蜜柑のお話をまだ引きずるのですか!?
いや、猫さん方と話しを取り持って頂けるのは嬉しくはありますけれども
然し何故でしょうか。想像すると些か虚しい気分になるのは…!

…いやいや、そうでなくって!
気を取り直して参りましょう…

ええ、任されたからにはやり遂げて見せましょうとも
さあ集いませ、小さき者達

火炎よ猛れ、水流よ唸れ、疾風よ謳え
我等が力、存分に奮いましょう

気を惹いて足が止まれば重畳
さて、其の動きを縫い留めたなら
――ライラさん!



●相容れぬもの
『森(われ)を讃えよ。森(われ)へ還れ』
 遅れて来た異形は、一足ごとに地を鳴らしながら、そう厳かに繰り返す。
 そんな、もし顔というものがあるならば、今まさに渾身のドヤ顔を浮かべているであろう森主を出迎えたのは、場に集った猟兵達の冷やかな視線だった。
「まだ現れる、ですか……、……UDC邪神?」
 ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は、皆に付着したペンキや蜜を己の光でぽわぽわ綺麗に落としながら、森主を見上げて首を傾げる。
 だが、ここはキマイラフューチャー。この星にも昔は自然があったはずだ、とナイは思い直す。
 ならば、これは遠き過去から染み出したオブリビオンか。或いは、先程の奴らとはだいぶギャップがあるが、これも怪人の類なのだろう。
『……森(われ)は邪神に非ず。森(われ)は森(われ)である』
 心なしか森主の声に、ムッとした色が混じる。見た目や台詞のわりに心が狭そうである。
「場違いなのに変わりはないよ。自然に還れって、この時期に言うかな。凍え死んじゃうじゃん」
 幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)は、キミ一人で帰れと言わんばかりに、しっしと手を払う。
『それもまた自然、それもまた摂理。適応できず生存競争に敗れしものは、淘汰されるが定め』
「え、じゃあますますやだよ。寒いって分かってる場所に、なんでわざわざ行かなくちゃいけないの」
「ですねぇ。冬なら尚更、外の居心地が悪かったら獣も巣籠りするもんでしょ」
 極に負けじと反論する森主に、ぴしゃりと言い放ったのは三岐・未夜(迷い仔・f00134)とユキ・パンザマスト(暮れ泥む・f02035)だ。
『巣籠りについては否定せぬ。……森の中は存外暖かい。平地よりも風は当たらぬし、洞穴の中とか冬眠に最適である。寒いと決め付けられるのは心外である』
「みゃさん、森あんなこと言ってますけど?」
「そうだとしても。便利を求めて文明で生きるのの何が悪いのか分かんない。……ていうか折角片付け終わってから来ないでよ、また片付け必要になっちゃうじゃん」
「っはは、違いない! 凍えず退屈しない文明最高!」
 その極致のようなものである電脳魔術士の一言に、文明の申し子であるバトルゲーマーは笑う。
「漸く一難去ったと思えば……唐突に現れて何を言い出すのか」
 ローウェン・カーティス(ピースメイカー・f09657)も2人に続くように口を開く。
「ヒトに生まれた以上、ヒトとしての生を全うするのが定めでしょう。今更戻れなどと、その方が摂理に逆らうと云うものです」
「ええ、それに。随分と仰々しいプランを提示されてますけど、ヒトが獣へ戻ったらあなた、環境保全等は何方がやるんです? 寿命が縮んでぽこじゃか死ぬだけですわよ?」
 彼の言葉に重ねるように、ライラ・サンタマリア(ライアーライアー・f10091)が問えば。
『徒に延びた生が、在るべき姿に戻るだけの事。森(われ)に生まれ、森(われ)へ還り、森(われ)を廻るうちに、何れ調和は取れていく』
 ざわざわと木々がさざめく。森主の言葉は、思考は、必ずしも間違っていると言えるものではないのかもしれない。ひとの驕りに対する自然の答えなのかもしれない。
 でもまぁ。
「……むむ。ここまでの会話を聞く限り、言葉を喋りますけれど意思疎通は難しそう……問答無用が吉ですかね、ナイくん?」
 ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は、ゆるりと相棒に問い掛ける。
 何事も過激派はよろしくないし、それとこれとは話が別だ。他者の縄張りに勝手に入ってきて、場の雰囲気をぶち壊しながら持論をごり押しする輩に碌な奴は居ない。
「その方が、良いかも、です、ね――ッ、」
 ――刹那、眩い光の奔流が鋭く宙を裂く。
 ざわめく森に油断無く注意を向けていたナイが、瞬時にその身を一振りの長剣へと転じたのと、その柄を握りしめたソラスティベルが閃光を鋭く斬り割ったのは、ほぼ同時だった。
『故に、森(われ)は導く。――森(われ)を讃えよ。森(われ)へ還れ』
「あちらもその気、ですか。ソラ、オブリビオン、倒しましょう……!」
「おっけー、ナイくん! 軽く両断しちゃいましょう!」
 髪と瞳をナイの色に染めたソラスティベルは、しっかりと相棒の柄を握り直す。
 これ以上の問答は必要ない。
「……んじゃ、片付け延長といきましょか!」
 ユキの一声を合図に、猟兵達は荒ぶる森の化身へと刃を向けた。

『野生を忘れた者共よ、畏れよ――そして、思い出せ』
 ぱりぱりと大気が震える。雷鳴が鈍く唸る。
 森に、世界に、雷槌が振われる。
「これ以上、仕事を増やさないでくれるかな――っと!」
 再度、猟兵達目掛けて襲い来る雷の前に、自分を覆うように水の魔力を張り巡らせ、ありったけの護りの力で己を固めた極が立ち塞がる。
 次瞬、視界が白く塗り潰される程の強烈な光と共に、凄まじい轟音と衝撃波が極を襲う。水の魔力の膜に雷電が走る。
 そのあまりの衝撃に、膜一枚隔てたところで護りを維持する極の髪が、ぶわっと逆立った。
「危ない危ない……相性が良すぎたかな」
 少しでも触れれば、ただでは済まなかったであろう。余波まで逃さず仲間達から逸らし、自然の猛威を全て受け切った極は、軽く腕を振ってじんわりと残っていた痺れを逃がす。
「さぁ、反撃開始といきたいところだけど」
 見れば、森主は完全に防がれた事など物ともせず三度目の雷槌を放つ準備に入っている。
「あれをまた撃たれるのは、少し厄介だね」
「ですわね。……ねぇ、ローウェンさん。此処はサボテンすら枯らす男の出番では御座いません事?」
 極の言葉を受けたライラは、サボテン枯らしの名手――ローウェンへと目を向けた。
「森を枯らすなんて、朝飯前でしょう?」
「サボテンのお話をまだ引きずるのですか!? そもそも、それはあくまで印象の話では!?」
「なに、好き様に事が運べば、猫さん達にわたくしが口聞致してあげない事もないです」
「ああ、猫さん方と話を取り持って頂けるのは、嬉し……いやいや、そうではなくって!」
「『キャー! ローウェンさんカッコいいー』って、つやつやお蜜柑工場長から一躍時の人ですわ。モッテモテのフワモコパラダイスをお約束出来ますけど?」
「蜜柑のお話まで引っぱるのですか!? それはともかく、何故でしょうか、想像すると些か虚しい気分になるのは……!」
 モッテモテのフワモコパラダイス。それはもう、さぞかし幸せに溢れた空間なのだろう。
 心惹かれないわけではないのだけれども。なんでしょうね、プライド的なものですかね。
 というか、ライラさん。私はいつから工場長になったのでしょう。
 いつの間にか職人から工場長へと出世していたローウェンは、尽きぬ疑問を飲み込むと、緩みかけた気をもう一度引き締めて森主へと執行剣を向け直す。
「……気を取り直して参りましょう。猫さん云々が無くとも、討たねばならないのは同じですから」
「では、雑談はこの辺りまでに致しましょうか。――切り込みを頼みます! しおっしおにして差し上げちゃって下さいまし!」
「護りの方はボクがどうにかしておくよ、被害はなるべく最小限に抑えておく」
「任されたからにはやり遂げて見せましょうとも。――さあ集いませ、小さき者達」
 雷槌に備えて再び構える極と、歌うようにを祈りのことばを紡ぐライラを背に、ローウェンもまた精霊達へと呼び掛ける。
 火炎よ猛れ、水流よ唸れ、疾風よ謳え。
 約束のことばに呼応するように、ひとり、またひとりとローウェンの傍らへと顕現し、彼に力を分け与えていく。
「我等が力、存分に奮いましょう」
 そう、静かに一言残し、戦場を金糸が駆ける。
 謳う疾風の加護を受けて迅速に森の化身へと肉薄した彼は、遠ざけようと振り回される四肢を巧みに避わし、猛き焔で強化された剣を頭部の木々へと叩き付ける。
 それを嫌がり、森主はますます彼を振り払おうと四肢を暴れさせた。
 森主の意識は、今や完全にローウェンへと縫い留められていた。
「――ライラさん!」
 避け切れぬ攻撃を、水流の力を借りて流麗に受け流しながら、後方でちからを練り上げるライラへと声を掛ける。
「ええ! ……残念ね。そもそもわたくし、自然崇拝はしておりませんの」
 名を呼ばれた修道女は、異教の徒へと指先を向けて高らかに謳う。
「神は言われた――『光あれ』と!」
 神罰の御旗の元に放たれた裁きの光は、狙い違わず自然の化身を貫いた。

 ライラに貫かれた身を捩り、憤怒に燃える森主の攻撃を回避しながら、ユキはあることに気が付いた。
「……あ、森だから燃えますね? みゃさんが超燃やせる」
 そう、森だから燃えるのだ。寒い季節もぬっくぬく、焚き火に最適なのである。
「なるほど燃やし放題。あったかくなるし丁度良いかもねぇ」
 燃やすのは得意だし。未夜もふんふん頷いて同意する。
 火の精霊の加護を受けたローウェンの攻撃で、既にちょっと一部が焦げていた森主は、聞こえてきた2人の会話に震え上がった。
 ただでさえ数は猟兵側の方が上。それに加えて機動性でも圧倒的に負けている。このままでは森が焼け野原にされてしまう。
 ならば、どうすれば良いか。答えは簡単だった。
「あれ、……何か良い匂い……?」
 嗅いだ事のないような、それでいて懐かしいような甘く芳しい香りが未夜の鼻をくすぐる。
 香の漂ってくる方へと視線をやれば、どうやらそれは目の前の森に生っている果実から放たれているらしい。
 知らず、喉が鳴る。口の中に唾液が溜まっていく。腹がくぅくぅと声を上げる。
 あの実はどんな味がするのだろう。果肉はどんな歯触りなのだろう。瑞々しく引き締まっているのかもしれない。ねっとりと柔らかく熟しているのかもしれない。
 頭の中が、あの見知らぬ果実のことでいっぱいになる。
 鼻が、口が、歯が、舌が、喉が、胃が、身体が、頭が、未夜のすべてがあの果実を欲している。
 ざり、と靴底が地を踏む。考えるよりも早く身体が動く。戦闘の隙間を縫って、あの果実が生る木へと近付いて、それで――、
「──みゃさん!」
 ユキの声に、はっ、と気付いた時には既に遅く。伸ばした手の先、指の端が僅かに実に触れていた。
『それで良い。それこそが正しき事。森に、自然に、野生に帰れ。楽園(あるべきばしょ)へと帰還せよ』
 森主が抱く森の――楽園への門が、開く。触れた先から、手が、肘が、腕が、森へと吸い込まれていく。
「ちょ、待っ、吸、い込まれるとか、冗談……じゃ、ないっ!」
 肩口まで呑み込まれながらも、未夜はぐ、と足を踏ん張り抵抗を試みる。
 一部が呑まれている所為か、頭や鼻腔へと森の香が侵食してくる。
 何もかもを忘れさせ、いきものを皆等しく獣へと戻そうとする魔性の香だ。此処こそが故郷なのだと認識を塗り替えようとしてくる嫌なにおいだ。
(故郷も何も……ッ!)
 首に掛けた団地の鍵を、囚われていない方の手で必死に握り込む。
 これが故郷だ。自分の帰る場所の鍵だ。親友たちも、家族のようなひとも、みんなみんなあの団地に居るのだ。
 咲き誇る梅も、やわらかな群青も、賑やかな躑躅も、いま共に居る鮮やかな藪椿も。ほかにもたくさん、あの場所で得たたいせつなものたち。
 こんな何もない、誰もいない森が、僕の故郷であるものか。
(ああ、そうだ、巣と皆を大切に想うこの仔なら)
 急いで駆けてきたユキも、未夜のその全力の抵抗に気付く。
(大丈夫、呑まれない)
 ならば、己はこの仔を信じ、帰還の手助けをするのみ。
 ユキは行く先を未夜から逸らすと、背の翼をばさりと広げ、空へと翔け出す。
 探すは忘却の香の薄い場所。わざわざ帰らなくとも、戻されなくとも、この身は充分野生に近い。忘れるのだってもう間に合ってますって。
「――あった!」
 此方の状況に気付いたローウェンや極達も風を巻き起こして援護してくれている。ユキもそれに合わせて椿の花弁を撒き散らし、いけ好かない森の香を打ち消していく。
 己の森へ取り込むことで猟兵の数を減らしたい森主は、香を流させまいと四肢や木々を振り乱して暴れ始めた。
「あっぶな! ……ちょっと大人しくしててもらえますか、ねッ!」
 ブレーキなんざ要らない。踏み込むのはアクセルだけで良い。
 翼で風を掴んで急加速したユキは、森主へとトップスピードで迫ると、その横っ面に強烈な一撃を叩き込む。
 その勢いも借りて、未夜も渾身の力を籠めて取り込まれかけていた身体を引き抜いた。
「おかえりなさい、みゃさん!」
「っ……ユキぐっじょぶ! やっぱりこの森、燃やした方が良さそう!」
「ええ、そいつがいい! 後はあなたに託します!」
 未夜は持ち得る力を惜しみなく注いで、数多の火球を生み出し、ひとつへと集めていく。黄昏色の炎が、未夜の心を映してばちばちと燃え上がる。
「全部燃えちゃえ!!」
 ユキの一撃で身体の自由を奪われていた森主に防ぐすべはない。
 木々ごと誘惑の実を余さず燃やされた森主は、堪らず悲鳴を上げた。

 ごうごうと音を立てて森主が燃えていく。
『何故解らぬ! 森(われ)を、讃えよ! 森(われ)へ還れ!!』
 森主の声には焦りが混じっていた。
 木々の一部が燃え落ちる中、それでも森主は持論をがなり立てながら、無差別に辺り一帯へと雷槌を落とし始める。
 都度、極やライラ達が被弾を防ぎ、森主の足止めを行うも限界はある。
 最小限の被害で済んでいる今のうちに、終止符を打たねばなるまい。
「野生、自由、大いに結構! その在り方は美しい!」
 一際大きな落雷を斬り払い、ナイを携えたソラスティベルの声が凛と響く。
「ですが、この世界は既に手に入れているのです、独自の生き方を。人と猫が無条件で共に在れるような、弛みつつも確かな『平和』を!」
 眩く輝く刀身を閃かせ、白と黄昏の光を纏った聖剣の勇者は、強き意思を胸に森主へと向き合った。
 どんなに美しくとも、どんなに理想的でも、在り方というものは誰かに押し付けられるものではない。
 何が正しいとか、何が間違っているとか、そんなものは誰かが勝手に決められるものでもない。
 それに。この暖かな催しには、異なるもの達が種の垣根を越え、同じ幸せを感じて笑い合えるような。
 そんな『平和』が確かにあったのだ。
『認めぬ……生きとし生けるもの、みな、すべて、野生に……森(われ)に……、獣性を――闘争を――、』
「……やっぱり、問答無用が吉みたいですね、ナイくん」
 森主を見つめるソラスティベルの瞳の中で、明々と炎が揺らめく。
 ぽつりと零された言葉に頷く代わりに、剣に飾られたナイの瞳と同じ色の宝玉が煌いた。
 ぎゅう、と手を繋ぐように。ナイの柄を握るソラスティベルの手に力が籠もる。
「――大丈夫。私はソラを守る、ソラの剣、です!」
「ええ! 行きましょう、ナイくん!」
 ナイへと力強く頷き返し、ソラスティベルは夕焼け色の竜翼を広げて中空へと舞い上がる。
 己へと向かってくるソラスティベルの行く手を阻もうと、滅茶苦茶に落とされる雷槌が彼女を捕らえるよりも速く。
 雷槌を時に斬り裂き、時に回避しながら、2人は尋常ではない速度で森主へと翔けていく。
 細かな回避はナイがフォローしつつ、たとえ避け切れず雷撃が身を掠めても、その身体を覆った聖なる光が常にソラスティベルを癒し、活力を与え続ける。
『森(われ)へ! 森(われ)に! 森(われ)は!』
 只管にそう繰り返し、猛威を振るう自然の化身の姿を、ソラスティベルとナイは瞳に焼き付ける。
 ナイの念動力が、仲間達の援護が、何よりソラスティベル自身の勇気が、2人に更なる加速を齎す。
「「燃えよ、我らが勇気!!」」
 最早止められる者など誰も居ない、神速と言うべき速さで森主へと辿り着いた勇者達は、その懐で無敵の剣を振るった。

 炎が、光が、いのちの灯が燃える。
 両断された森主の巨体が、炎の中に崩れ落ちる。
 変身を解除した勇者とその相棒は、寄り添いながらその光景をじっと見ていた。

●それから。
 再び訪れた脅威は、骸の海へと去った。
 今度は片付けも乱入者なく無事に終わり、人々や猫も呼び戻した後、催しは再開された。
 多少コタツや地面がカラフルに染まっていたり、ちょっぴり焦げ臭さが残っていたりはしたが、そこはまぁご愛嬌。気にする者も誰も居ない。
 怪人が起こす騒動に慣れている住民達には、こんなこと日常茶飯事なのかもしれない。

 漸く仕事を終えた猟兵達は、サインを求めるキマイラ達に囲まれつつ。つるつるミカン工場長以外は、猫達の感謝のふかもこ大サービスに蕩けつつ。
 もう少しだけ、この憩いのひとときを噛み締めてから帰路に着いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月02日
宿敵 『森主』 を撃破!


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 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#キマイラフューチャー
🔒
#戦後


30




種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はロク・ザイオンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト