●満天の星空
アルダワ魔法学園の一角。地下迷宮の上に建造された校舎の屋上から色とりどりの光が零れ、夜中にも関わらず穏やかな騒めきとどこか浮ついた暖かな空気が満ち溢れる。
クリスマスの会場として整えられた屋上にで、有志による演奏が行われ、様々な料理が並び、手作りの小物が要所に飾られ魔法学園の生徒達が思い思いの時間を過ごしている。
●クリスマスパーティーへの招待
「メリークリスマス。少々、早いですが今年も一年お疲れ様でした」
穏やかに口元を緩めながらグリモアベースに訪れたあなた達を茲乃摘・七曜(魔導人形の騙り部・f00724)が出迎える。
「今回、集まって頂いたのはアルダワ魔法学園の生徒さん達が、クリスマスパーティーの準備を整えてくださったのでそちらのお知らせとなります。皆さんが転校生として魔法学園を支えてくださったことに対するお礼ということなのでぜひ楽しんで行ってください」
「目玉…というと少しあれかもしれませんが会場の一角には、この日の為だけに用意した機械のクリスマスツリーが用意されており時間経過で様相が変わるサプライズがあるそうです。その他にもクリスマスケーキやその他の料理、会場を彩る演奏、この日に合わせた小物の販売等もしているようですので見てまわるだけでも楽しめると思います」
●メリークリスマス!
日頃の喧噪は帳の向こう。迎える事の出来た穏やかな時間をそれぞれが大切に過ごしてゆく。
カタリツヅル
カタリツヅルと申します。ご覧いただきありがとうございます。お初にお目にかかる皆様は初めまして、お会いしたことがある皆様はありがとうございます。ご縁を頂けましたら皆様の想い出に花を添えさせていただければと思います。
【補足】
・機械式クリスマスツリー
ざっくりいいますと巨大な絡繰り時計のようなものです。時間経過でサンタクロースが宙を翔けたり、人形が踊ったり、ツリー自体の形が変ったりします。眺めているだけでも楽しい感じに仕上がっています。
・料理コーナー
クリスマスケーキから、七面鳥のようなもの……クリスマスの定番が揃っています。調理場も魔法学園の生徒に話を通せば借りられますので歓迎する側に回りたいという方も歓迎いたします。
・小物コーナー
クリスマスキャンドルやスノードーム、ツリーを模した置物などクリスマスを彩る小物が置かれています。魔法学園の生徒が作成したものが売られていますが、自分自身で作成することもできます。
・演奏関連
魔法学園の有志が屋上の一角で演奏しております。落ち着いて聞くためのスペースもありますのでゆっくりと会場を眺めつつ過ごすことが出来ます。また、希望すれば演奏にも参加できますので興味があれば是非。
【補足2】
お声がけいただければ茲乃摘・七曜(魔導人形の騙り部・f00724)は少し顔を出させていただきます。
また、拙作に登場した魔法学園の生徒もお声がけがあればお邪魔させていただきます。希望される場合は警備部や迷宮懇親会の実行委員の生徒……等、登場作を指定していただければと思います。
第1章 日常
『アルダワ魔法学園でクリスマス』
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POW : パーティー会場で、ご馳走をお腹いっぱい食べたり飲んだりする
SPD : パーティーでゲームをしたり、歌を歌ったり、かくし芸を披露したりする
WIZ : 恋人に愛を囁いたり、友達同士でプレゼント交換をしたりする
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🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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●聖なる夜の喧噪
日頃、地下迷宮に潜り閉塞された空間で過ごすことの多い魔法学園の生徒達が世界を護る英雄としての側面ではなく……年相応の学生としての顔を見せる。
ある生徒は夜空に向けて高らかに管楽器を吹き鳴らし。それに応えるように機械仕掛けのクリスマスツリーが様相を変え…。また、ある生徒は綺麗に飾られた蝋燭へと灯りをともし。星明りと朧な炎に照らされたテーブルへと祝祭の料理が饗される。
猟兵たちが…、魔法学園の生徒達が…、護った日常が形を成し訪れるあなた達を温かく迎え入れる。
ソフィア・リューカン
パーティー!ご飯もいっぱいー!……い、今のうちに食べられるだけ、食べておかないと……
まずは料理コーナーでたっくさん食べておくわ!せっかく美味しい料理がたくさんなのよ!ここで食べそびれると、今度はいつになるか……!他の人に負けないよう、ほっぺいっぱいに食べちゃえ!礼儀なんて今は置いておいてね!
たくさん食べて動きにくくなっちゃったら……クリスマスツリーを見に行きましょ!折角だしね!
わー……でっかいわ!あれも蒸気機構で動いているのかしら?それとも精霊さんかしら?どちらにしてもすごいわね!ジェファーソンとレイニーを抱きしめながら座って、のんびり眺めましょ!
あ、グリモア猟兵さーん!お暇ならお話しましょ?
●賑やかな魔法学園の屋上
時に柔らかく時に派手に奏でられる音楽が屋上に満ち溢れ、普段は訪れることの少ないその場所を楽しそうに見渡した猟兵が求めるものに気が付き歩みを変える。
●喧騒と魔法と蒸気の聖夜
ボタンを模した装飾が素敵な深紫色のリボンを揺らすソフィア・リューカン(ダメダメ見習い人形遣い・f09410)が、糸巻とボタンの模様が可愛らしい家族から贈られた大切な服の裾をはためかせ、鼻をくすぐる美味しそうな匂いに向けてまっしぐらに進んでゆく。
「パーティー! いい匂いー! ご飯もいっぱいー! お菓子もたくさんだわー! 流石、クリスマスね! おぉぉっー!」
感嘆の叫びと共に煌びやかな会場の様子を撫子色の瞳に映し込むソフィアが様々な料理が並べられた一角へと辿り着き、目移りするような光景に満面の笑みを浮かべ腰元のポケットに入れられた二体の人形と共に飛び込んでゆく。
(……い、今のうちに食べられるだけ、食べておかないと……)
――若干の必死さを心の奥に秘めながら。
●クリスマスの一幕
家族愛の人形遣い見習いが様々な料理を会場の一角へと運び、白髪と青髪が生命を贈与されたかのようにひとりでに動き出す。
●たべられるだけ!
会場の一角で食器の積み上げられる音が淡々と響く。ほっぺを膨らませながら幸せそうに、それでも料理は零すことなく丁寧に、作った人への礼儀は忘れず食事の作法は放り投げながら食事を続けるソフィアの周囲にはまだまだ沢山の料理。分厚く切られた焼かれた肉に香ばしく揚げられた細切りの芋。一口サイズに輪切りにされた固めのパンには溶けたチーズ、燻製肉のスライス……鮮やかな魚の切り身。微かな湯気を立てる香草の散らされたクリーム色のスープからは魚介類の匂い。
(ここで、たっくさん食べないと! せっかく美味しい料理がたくさんなのよ! それに、食べそびれると、今度のチャンスはいつになるか……!)
そんなソフィアの想いに反応してジェファーソンが食べ終えた食器をテーブルの端に移動させ、次の皿を要求するようにレイニーが無愛想にも見える表情で料理を作っている一角へと手を振る。そんな人形達の補佐を受けながら他の人に負けないようにソフィアが食事を続けてゆく。
(どれも美味しい……! コルセットを緩めればまだ食べれるわ!)
●クリスマスの一幕
満腹になった家族愛の人形遣い見習いがポケットへと戻った二体の人形と共に蒸気と歯車の奏でる音の元へと移動してゆく。
●蒸気魔法式クリスマスツリー
夜空を思わせる光の中を幾つもの人形が舞い踊る。思う存分に食べきったソフィアが、折角だし!見に行きましょ!と僅かに重く感じる身体でクリスマスツリーの近くに設置されたベンチへと移動した、その僅か後。時々刻々と様相を変えていく機械の巨木をジェファーソンとレイニーを抱きしめながら見上げ。
「わー……でっかいわ! あれも蒸気機構で動いているのかしら? それとも精霊さんかしら? まぁ、どちらにしてもすごいわね!」
瞳をキラキラさせながらのんびりとした時間を過ごし…、ソフィアの目の前を鮮やかな橇を牽いたトナカイと真っ赤な衣装を着たサンタがお菓子をばら撒きながら通り過ぎてゆく。
「わぁ! ……本物のお菓子も混じっているのね!」
いま食べるともったいないわね…!とお菓子を服に仕舞いかけたソフィアがふと会場を歩く黒衣を纏った七曜へと気が付き、朗らかに声を掛ける。
「あ、グリモア猟兵さーん! お暇ならお話しましょ?」
「あら、こんばんは。えぇ、ぜひ」
そう言って隣に座った七曜の視線がソフィアの抱える二体の人形へと移動し。
「抱えられてる可愛らしい人形さん達は大切なものなのかしら?」
「家族からの大切な贈り物なのよ! こっちがジェファーソンでこの娘がレイニーね!」
そうして、家族のことを楽しそうに語るソフィアの話を七曜が穏やかに口元を緩め時間が過ぎてゆく。
●終幕
新たなお菓子の包みをサンタから貰ったソフィアがベンチから立ち上がり七曜へと向き直る。
「っと、帰らなくちゃだわ! あっちの料理はとても美味しかったからお勧めよ!」
「では、お気をつけて。えぇ、食べに行ってみますね」
―――時計の針がクルリと時を刻んで翌日。場面は変わってささやかなその後の話。
●おねえちゃん
クリスマスパーティが終わり、魔法学園の生徒達が忙しそうに片付けをするなかソフィアがあくせくと働いてゆく。
「まだちょっと身体が重いわ…! でも、今が頑張り時なのよ!」
時間が過ぎて、日が傾き始めるころ。様々な手伝いをしたソフィアの手元には蒸気機械式の実用品から可愛らしい小物等の――クリスマスプレゼント。数日遅れになることを謝るメッセージカードを添えられたプレゼントボックスが、仕送りと共に家族に送られてゆくのをソフィアがやり切った表情で少し寂し気に見送る。
「来年はきっと一緒にお祝いするのよっ…!」
成功
🔵🔵🔴
アルバ・ファルチェ
【月と狼】
絡み・アドリブ歓迎。
メリークリスマス!
せっかくの日だし楽しまないとね。
セラとユエちゃんは何が見たい?
僕はそうだなぁ、全部!…なんてワガママかな?
ふふ、ちょっと浮かれてるかも。
ツリーを眺めたり、ユエちゃんと飛び入りで演奏を楽しんだり。
最後は調理場を借りてクリスマスケーキ…ほど凝ったものは出来ないけど、パンケーキを重ねてクリームとフルーツで飾り付けて2人にプレゼントしたいな。
一緒に作るのも楽しそうだけど、今日は僕が2人のために作りたい。
いつもお世話になってる2人に、感謝の気持ちを。
…来年も、仲良くしてね。
わ、セラからもプレゼント?
ありがとう、大事にするね!
セラータ・ファルチェ
【月と狼】
絡み・アドリブ歓迎
ん、メリー・クリスマス
楽しむのはいいが、はしゃぎすぎには気をつけろよ
俺は別に特に何ってのは無いな…
全部って…ふっ
まぁ、回れるだけ回ってみるか
ツリーを見た後の演奏は二人のを見守るだけにしておこう
…?スノードームか……ふぅん
思い出の品みたいのがあってもいいな…
二人に気付かれないよう、二匹の狼と綺麗な月が浮かぶ風景のスノードームを作ろうか
プレゼントにはそれぞれの瞳の色と同じ色のリボンをかけよう
へぇ、パンケーキか
ありがとう、アル
俺からはコレな
メリー・クリスマス。これからもよろしく
月守・ユエ
【月と狼】
アドリブ可
「すごい
これがアルダワのクリスマス!
ふふ、参加できるのは全部しよ?ねっ」
歌い手として演奏と聞いて惹かれないわけがない!
演奏者に声をかけピアノを借りる
この日を彩る音楽を僕もこの世界に贈りたい
聖なる夜に祝福を
讃美歌のように美しく煌く曲を
クリスマスの賑やかさを絶やさぬように軽快さを交えて演奏披露
この世界で生まれたシンフォニアの力で皆に幸せな一曲を届けるの!
メリークリスマス
世界も
アルくんやセラくんも
皆に沢山の幸あれ
演奏後
「わ!アルくんパンケーキで、セラくんはスノードーム!僕が演奏に浮かれているうちに、2人とも女子力高い事を…!
ありがとう、ね!
こちらこそ、これからも仲良くしていこう」
●賑やかな魔法学園の屋上
軽やかに響く音色に重なり震えるように高く独特な音とともに解放された蒸気が、頭上に輝く星灯りを淡くにじませて新たに訪れた猟兵達を出迎える。
●演奏と料理と創作の聖夜
糊のきいたシャツの上からシックな黒いジャケットを羽織り僅かに着崩したアルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)が、屋上に続く扉を勢い良く開放し…クルリと振り返り同行する二人へと向き直る。
「メリークリスマス! 屋上なんて初めて来たけど……これはすごいね。さぁ、せっかくの日だし楽しまないとね!」
「ん、メリー・クリスマス。確かにすごいな。……楽しむのはいいが、はしゃぎすぎには気をつけろよ」
周囲を見渡す弟の様子にフード付いた揃いのジャケットをきっちりと着こなしたセラータ・ファルチェ(蒼蒼の盾・f03368)が、口元を緩めながら隣へと視線を移し…そこにいるのは満面の笑みで会場を見つめる月守・ユエ(月ノ歌葬曲・f05601)。頭上を覆う夜空に浮かぶ月と重なるようなカジュアルな衣装で瞳を輝かせたユエがわくわくと声を零す。
「すごいっ! これがアルダワのクリスマス! あっちにちょっと見えるのがクリスマスツリーで…向こうからは音楽が聞こえてきてるね♪」
そうして、華やかな雰囲気をさせる会場へと入った三人が楽しそうに予定を組み立ててゆく。
「それじゃ、セラとユエちゃんは何が見たい? 僕はそうだなぁ、全部! …なんてワガママかな? ふふ、ちょっと浮かれてるかも」
「ふふっ、じゃぁ私も浮かれてるかな! ねぇ、アルくん、セラくん。参加できるのは全部しよ? ねっ??」
「俺は別に特に何ってのは無いが……。全部って…ふっ。まぁ、回れるだけ回ってみるか」
●聖夜の一幕
蒸気を噴き上げる機械式の巨木に向けて月ノ歌姫が楽しそうに歩みを進め、その後ろ姿を追う双子の盾騎士が近づいてくる歯車と蒸気の音に次第に視線を上げてゆく。
●絡繰り仕掛けの巨木
無数の歯車が絡み合う音が蒸気に彩られ変化してゆく。機械の巨木に備え付けられた絡繰りから色とりどりの灯りが中空へと放たれ、屋上の一角を鮮やかに染め上げ。その様子を感心したように見上げるユエ達の前で様々な人形が動き始める。
「綺麗ー! すごい! この人形達も可愛らしいっ…!」
巨木の枝から伸びる操り紐に繋がれた人形達が聖夜のパレードを模して地面をユーモラスに歩いてゆき…、それを追ってユエが楽しそうに笑いながら走り出す。そして、その頭上を聖夜を象徴するサンタクロースとそれを引くトナカイ達の人形がお菓子を撒きながら翔けてゆく。
「ユエちゃん! 足元、気を付けて! っと、ありがとうね! サンタクロースからのプレゼントなんて久しぶりだよ。僕もちょっと追いかけてこようかな?」
「……、確かに綺麗だな。こういうのも悪くない。あぁ、すまないな」
雪雲を模した蒸気の中をかけるサンタクロースとトナカイ達がツリーを一周し、ユエの様子を見ていたアルバとセラータをかすめるようにお菓子を落としながら通り過ぎる。
受け取ったお菓子へと視線を落としたアルバが巨木を廻り戻ってきたユエと合流し共にサンタクロース達を追いかけ始め、その様子を楽し気に蒼い双眸へと映しこんだセラータが菓子の包みを開け中に入っていた焼き固められた甘いパンを口へと放り込む。
「ユエもアルも周りに気をつけろよ。まぁ……楽しんでいるならいいか。ふむ、これはなかなかおいしいな」
●聖夜の一幕
機械仕掛けの人形の舞台に混じった月ノ歌姫と紫蒼の盾騎士が人形達に見送られ輪から外れ、それを出迎えた蒼蒼の盾騎士が煌びやかな生徒達の集まった一角に向けて先導するように歩き始める。
●揺らめく灯と煌めく置物
柔らかな暖かさが心落ち着ける香りとともに広がってゆく。クリスマスキャンドルが飾り付けられたアーチをくぐり、魔法学園の生徒達がこの日のために用意した様々な聖夜に見合った小物が揺らめく炎に照らされる様を眺めていたセラータ達の前に涼し気な輝きを見せる硝子球が現れる。
「……? スノードームか……ふぅん。なかなか、よくできてる。……たしか、作るのもできたんだったか?」
透明な硝子球の中にアルダワ魔法学園の校舎が精密に再現されている一品を手に取ったセラータが、クルリと手首を返し中身が攪拌されたスノードームがその名のままに魔法学園の模型に雪を降らせる。その様子に気が付いたユエが見比べていた手製のクリスマスキャンドルを両手に踵を返し、販売をしている女生徒を片手で拝みウィンクをしてごめん…ちょっと借りるね!と伝えたアルバがそのあとに続く。
「おー、ホワイトクリスマスだね! それも綺麗! それと、こっちもすごいよ! ほら!」
「ユエちゃん、待ってよ…もう。へぇ、アルはスノードームを見てたのか。向こうはキャンドルが置かれてたけど…、中身がサンタだったり、蒸気機械ぽくなってて火をともしたら動いているように見える物とかなかなか面白い感じだったよ」
そうそう…どれも煌びやかだったよね!とユエがアルバとセラータに微笑み。
「じゃぁ、次どうしよっか? 残ってるのはお料理の置いてあるところと演奏をしているところだよね!」
「よかったら、先にアルダワのクリスマスのお菓子を見てみたいかな?」
「ん、構わない。次はそちらに行こうか。……あぁ、少し先に行ってもらってもいいか?」
そう言って、ユエとアルバを見送ったセラータがスノードームを売る生徒に声をかけ少し言葉を交わした後、踵を返し先を歩く二人を追いかける。
●聖夜の一幕
揺らめく灯りに照らされる紫蒼の盾騎士と月ノ歌姫へと小走りに蒼蒼の盾騎士が追い付き、様々な甘い匂いの混じった別の喧騒を纏った一角へと三人が消えてゆく。
●華やかなお菓子と料理の庭
賑やかな喧騒の中を楽し気な生徒達が行き交う。これまでの雰囲気とは違った騒がしさと陽気さがアルバ達の周囲を満たしてゆき、よい匂いをさせる柔らかそうなパンを、綺麗にデコレ―ジョンされたケーキを、香ばしい匂いをさせる焼き菓子を……それぞれに薦める生徒達の声が響く。
「これはいいね! セラにユエちゃん。なにか食べたいものあるかな!? やっぱり、こういう騒がしい感じもクリスマスって感じがするし、手作りのお菓子も良い雰囲気だよね」
魔法学園の生徒が手渡してきたクッキーを受け取ったアルバが、口に広がる甘味に笑みをこぼしつつ残りをユエとセラータへと手渡し。
「サクサクしてておいしい! う~ん、ケーキとかもどれも興味あるけど先に食べちゃうと食べ過ぎちゃうかも!」
そう……歌い手として演奏場と聞いて惹かれないわけがないし!とユエが万全の状態で歌えるように目移りしながらも軽いものだけを少しづつつまみ…。
「これも悪くないが…、俺はこれと言って食べたいというものはないからユエとアルの食べたいものでいい。とはいっても、こういう雰囲気のなかで食べるものはどれも不思議と旨く感じるな」
セラータがアルバから受け取ったクッキーを口に放り込みながら口元を楽しそうに緩め、周囲の生徒達から歓迎される二人と同様に近寄ってきた生徒へと感謝を伝えてゆく。
そうして、僅か後。会場に聞こえる音楽が大きくなり幾つもの楽器がおかれ多数の演者が演奏を行う雛壇が見えてくる。その煌びやかな演台にユエがわくわくとした様子で足音を軽くし。
「あー、見えてきた! 僕もこの日を彩るための音楽をこの世界に贈りたい」
「ん、楽器も借りられるとのことだったな。ユエの歌、期待している。アルはどうする?」
一足先に駆け出したユエを見送ったセラータが僅か足を止めた様子のアルバに、先ほど自分自身を重ねながら問いかけ。
「あぁ、僕もすぐ追いかけるよ。せっかく機会だからユエちゃんと一緒にやりたいしね! ただ、ちょっと用事を済ませるからユエちゃんに少し遅れることを伝えてくれるとうれしいな」
●聖夜の一幕
舞台裏へと駆けてゆく月ノ歌姫を見失わないように蒼蒼の盾騎士が歩みを早め、用事を済ませた紫蒼の盾騎士が周囲の生徒を身軽に避けながら舞台裏へとたどり着く。
●祝福を歌う二重奏
聖夜を祝う調べが代わる代わる奏でられて中空に溶けてゆく。付近にいた魔法学園の生徒達に演奏への参加方法を確認していたセラータが、ユエへと特に手続きが必要ないことを伝える。そして、祝祭の音色が緩やかに締めくくりへと向けて旋律が響きを変え、セラータに見送られたユエが舞台裏から軽やかな足取りで壇上へと上がってゆく。
「ありがとね! お借りしますっ! あっ、アルくんも間に合ったみたいでよかったよ!」
「っと、お待たせユエちゃん! ちょうど曲の切れ目みたいだね。それじゃ、始めようか」
演奏場のピアノを奏者から借り受け会場を冷まさないように旋律を紡いでいたユエに、セラータから用意されてはいたが奏者のいなかったリュートを受け取ったアルバがその近くへと腰を下ろし音色を重ねてゆく。
そうして、聖なる夜に祝福を紡ぐように生きることを賛美するかのように煌めく曲が響き始める。ピアノを弾くユエの足元を覆うように蒸気が流れ、蒸気魔法機械の動作音とともにその身をライトが照らして纏った衣装が月のように柔らかく輝く。その隣に座るアルバは瞳を閉じてユエの声をより遠くへと届けるようにリュートをつま弾き、一房だけ色の違う髪が柔らかなに輝きに照らされる。
――さぁ、僕らは歩き出す
――答えはなくても大切な人とともに
――知らない場所へと懐かしい場所へと
――繋いだ手のぬくもりを心に灯して
――幸せを分かちに、幸せを探しにいこう
――掛け替えない明日を迎えに歩いてゆこう
(世界もアルくんやセラくんも…皆に沢山の幸あれ!)
壇上で奏で歌うユエとアルバを客席で眺めるセラータが周囲に溶けてゆく旋律に身を任せながら耳を傾け。
(いい歌だな。こんな機会を作ってくれた魔法学園の生徒達には感謝しよう)
聖夜の夜空に響く歌声が途絶えるまでセラータが穏やかな時間に身をゆだねて瞳を閉じる。
●聖夜の一幕
演奏を終えた月ノ歌姫が紫蒼の盾騎士と共に会場へと向けて一礼し舞台裏へと降りてゆき、蒼蒼の盾騎士がその様子に手を振りながら身振りで集合場所を伝えて一足先に席を立つ。
●メリークリスマス!
――舞台の奥へと消えていったユエとアルバを見送ったセラータが周囲の邪魔にならないように素早く移動を始め、生徒達とぶつからない様に注意しながら僅かな駆け足で向かった先はスノードームを販売していた生徒の元。
「あ、お帰りなさい。準備はできていますよ。それと、不要だったかもしれませんが3組分用意をさせて頂きました」
「ん? それはすまない。そうだな、プレゼントにするなら2組で構わなかったが……記念品にするなら3組あったほうがいいな。ありがとう」
そう礼を伝えたセラータの前に並べられたのはスノードームを構成するための材料。狼を模した一対の人形へと紫と蒼の瞳を嵌め込み、一房の毛を黒く染め上げ、満月を模した黄金色の鈍石に影をつけるようにさりげなく音符を刻んでゆく。
――時同じくして、舞台裏で迎えに上がってきた生徒と話すユエに一言、断りを入れたアルバが人並みを器用に縫いながら料理の提供されていた一角を目指して駆けてゆき、声を掛けたのは去り際にお願いを伝えていた生徒。
「っと、ごめんね! 準備できてるかな!? すぐに作業にかかれると嬉しいんだけどっ…!」
「はい、大丈夫ですよ。場所はそこの彼と代わってください。材料はすぐにお持ちします。あと、集合場所にもお持ちしましょうか?」
ほんと…ありがとね!配達もお願いするよ!と魔法学園の生徒と交代して料理場に入ったアルバの手元にパンケーキのタネとカットされたフルーツ……絞り器に入れられた生クリームがてきぱきと用意される。そして、すぐに甘やかな匂いが熱せられたフライパンから上がり出来上がったパンケーキが重ねられおいしそうに飾り付けられてゆく。
――また別の場所では先にクリスマスの会場に戻ったアルバを見送ったユエが演奏場を管理する魔法学園の生徒と話を交わす。
「お疲れです。素敵な演奏をありがとうございました」
「こちらこそ、飛び入りなのに場所を貸してくれてありがとね! で、それは何かな!?」
首を傾げたユエの目の前にあるのは幾つもシリンダーが組み合わさった箱状の自動演奏器――オルゴール。カチリカチリと捩子が巻かれ……、微かな回転音をさせながら鳴り始めるのはユエの奏でたピアノの演奏を模した旋律。おー、と驚いた表情を見せるユエに魔法学園の生徒がオルゴールとそれを飾る装飾を手渡す。
「へぇ、あのピアノそんな仕掛けもあったんだ。改めてありがとね♪」
―――そうして、僅か後。集合場所に席を確保し待つセラータの元にアルバが合流し僅かに遅れてユエが辿り着き、目くばせをしたセラータとアルバが胸をなでおろしつつ小声で声を交わし。
(結構、ぎりぎりだったけど間に合ってよかった。セラは待たせちゃってごめんね?)
(いや、気にするな。……待っている間もなかなか楽しかったしな)
まぁ……実際は俺も少し前に来たわけだが、という思いはおくびにも出さずセラータが頷く。その様子にだいぶ待たせたかと心配になったユエが二人へと申し訳なさそうに声を掛ける。
「ごめんね! 生徒さんからサプライズというか提案があって色々準備してたんだ! もうちょっとで届くと思うからもう少しのんびりしていかない?」
「あぁ、それならちょうどいいかな。あっ、ここだよ! こっちによろしく!」
「アル…? あの、生徒は? ん、いい匂いだな」
複数の皿を持つ給仕風の生徒へとアルバが手を振り、テーブルに並べられた皿には三段に重ねられたパンケーキ。クリームとカットフルーツを間に挟みケーキのように飾られたそれにユエが瞳を輝かせ。
「いつもお世話になってる2人に、感謝の気持ちを。…来年も、仲良くしてね」
「へぇ、パンケーキか。ありがとう、アル。じゃぁ、俺からはコレな。それと、来年もよろしく頼む」
ユエとアルバの皿の横に黄金色のリボンと紫色のリボン……それぞれの瞳の色をした装飾をされた小さめの箱をセラータが並べる。
「わ、セラからもプレゼント? ありがとう、大事にするね! それにお揃いっていうのも素敵かな!」
小箱から取り出された蒼と紫の双眸を持つ二頭の狼が満月へと遠吠えを上げる情景を封じ込めたスノードーム。それらが三人の手元へと並び…。
「わぁ! アルくんパンケーキで、セラくんはスノードーム! 僕が来るまでに、2人とも女子力高い事を…! ありがとうね!」
パンケーキはおいしいし…、スノードームは素敵!と微笑み零すユエに魔法学園の生徒が近づき小箱を渡し去ってゆき、翼と蒼瞳の狼が刻印されたオルゴールをセラータに、翼と紫瞳の狼が刻印されたオルゴールをアルバに…。満月と音符が刻印されたオルゴールをユエ自身へと配ってゆく。
「それじゃ、僕からはこれだね! さっきの演奏をオルゴールにしてくれたものだって! あと、小物入れにもなってるみたい! こちらこそ、これからも仲良くしていこ♪」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
アマータ・プリムス
さて、今宵はクリスマスですね
たまには故郷のこの世界で祝う、というのもいいでしょう
「今はこんなものがあるんですね……」
機械式のクリスマスツリー、これは初めて見ました
時間であれこれ変わるようですし少々眺めていましょう
おや、演奏もやっているのですね
それではちょっとお邪魔させていただきましょう
舞台をお借りして、歌い奏でるのは特別な誰かと過ごす日の歌
今日はクリスマス、めいっぱい楽しみましょう
何曲か演奏しましたらお礼を言って舞台を降ります
「メリークリスマスです、七曜様」
七曜様に挨拶をして飲み物を片手に他愛のない話をいたしましょう
「当機からのクリスマスプレゼントです」
最後にチケットを渡しこの学園を後にします
●賑やかな魔法学園
明るい表情をした生徒達の流れに身をあわせるように、微かに聞こえてくる祝祭の音色を目指して校舎の中を銀色の旅鞄を提げた一人の猟兵が進んでゆく。
●魔法学園の聖なる夜
華やかに飾られた魔法学園の構内を屋上に向けて進むアマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)が、幾度も修繕を繰り返し着続けているヴィクトリアンメイド服の袖を大切そうに見下ろし言葉を零す。
「ふむ、皆さん楽しそうな良い表情ですね。さて、今宵はクリスマス……たまには故郷のこの世界で祝う、というのもいいでしょう」
アマータがかつての記憶を懐かし気に思い起こしながら軽い足取りで階段を上がってゆき、周囲に喧騒と輝きが溢れてくる。
●特別な一日
聖夜を祝う言葉で迎え入れられたアンティークドールのメイドが特徴的な機械の巨木を目指して歩いてゆく。
●機械式クリスマスツリー
重厚な稼働音と共に蒸気が幾たびか噴出し夜空へと溶けてゆく。機械仕掛けの巨木を中心に踊っていた人形たちが巨木の中へと消え……、会場に用意されたベンチへと腰かけたアマータの前で、絡繰り仕掛けが組み代わる音が響き巨木の影が形を変える。
「今はこんなものがあるんですね……。機械式のクリスマスツリー、これは初めて見ました」
その様子を興味深そうに見つめるアマータの瞳に映りこむのは巨大な時計の文字盤。巨木の内部から露出したそれの長針と短針が指し示す数だけ、時を告げる鐘の音が刻まれ、澄んだ音が周囲へと拡がるたびに機械の巨木のそこかしこから先ほど消えていった人形たちが現れ、人形劇を為してゆく。
「ふむ、これは素敵な演出ですね。普段のパレードのような雰囲気も面白いですし…なかなか工夫されているようです」
郷里の変化を人形劇と巨木を通してを楽しむアマータに別の一角から奏でられる音楽が届き、ベンチから身を起こしたアマータがヴィクトリアンメイド服を整えながら言葉を零す。
「そういえば、演奏もやっているのでしたね。ちょっとお邪魔させていただきましょうか」
●特別な一日
絡繰り仕掛けの人形劇に見送られたアンティークドールのメイドが華やかな演奏場へと向かってゆく。
●Ars longa, vīta brevis
夜空に届けるように聖夜を祝う調べが奏でられてゆく。楽しそうに演奏する生徒達を舞台裏から眺めるアマータに順番を告げに別の生徒が現れ、銀色の旅鞄から蒸気機関式ギターを取り出したアマータがお礼を伝えて舞台へと向かい…、蒸気を烟らせる音と共にスポットライトがアマータを照らし出す。
(今日はクリスマス。でしたら、歌い奏でるのは特別な誰かと過ごす日の歌。さぁ、皆様もめいっぱい楽しみましょう)
そうして、舞台の中央へと立ったアマータが蒸気機関式ギターを優しく弾き始め、奏でられる音が弾き出されるように音符の形を取りアマータの周囲を舞い踊る。
――愛しさが溢れるように募ってゆく
――この気持ちをありがとうと一緒にキミに伝えたい
――キミと共に居られる特別な今日はとても輝いて
――でも忘れないでね、きっと明日もキミの隣を歩いてる
時に穏やかに時に激しく色褪せる事のないかつての主たちと過ごした日々や今を共に歩む友人達との日々を想い、声に籠めて数曲を歌い上げたアマータが最後の曲の余韻と共に深く一礼する。
「メリークリスマス。ご清聴ありがとうございました。皆様の聖夜が素敵な日であらんことを」
●特別な一日
拍手に送られ舞台を辞したアンティークドールのメイドが聖夜を満喫する会場を見てまわってゆく。
●人形たちの聖なる夜
穏やかな騒めきが祝祭の夜をそれぞれに彩ってゆく。周囲の様子を楽しみながら進むアマータが、大きめの荷物を持った七曜の姿を見かけ軽く手を振り声を掛ける。
「良いところで出会えました、七曜様。よければお話しませんか? 飲み物でも飲みながら」
「えぇ、是非。私もお話したいと思っていました」
そうして、僅か後。シェリー・グラスにパインとチェリーで模した鈴飾りを添えたクリスマスらしい薔薇色のカクテルとサワーグラスに一粒ベリーが浮かぶクリスマスツリーを模した白緑のカクテル……それぞれを手に持ったアマータと七曜がグラスを合わせる。
「メリークリスマスです、七曜様」
「メリークリスマス、アマータさん」
涼やかな音に祝いの言葉が重なり、それを皮切りに静かでありつつも不思議と姦しく言葉がかわされてゆく。そして、他愛のない楽しい話している間にグラスが空になり……足元に置かれた銀色の旅鞄が内側から叩かれ、留め金を弾いて小箱を持った白い手袋をつけた案山子の手が飛び出してくる。いつまで喋ってんダヨ?というかのような雰囲気の手を旅鞄へと叩き返したアマータが受け取った小箱に入れられたサーカスのチケットを七曜へと差し出し。
「当機からのクリスマスプレゼントです。ぜひ、見に来てくださいね」
「ありがとうございます。私からはこれをよければ使ってくださいね」
そう言った七曜がの差し出した箱を受け取ったアマータが、なるほど帽子ですか大切にしますね、と荷物を銀色の旅鞄へ納め席を立つ。
「それでは、当機はここで失礼します。良い聖夜を、七曜様」
「私はもう少し残ります。アマータさんも良い聖夜を」
成功
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