新年は温泉とともに ~湯煙に浮かぶ妖精兵団~
剣と魔法と竜の世界。猟兵達からは『アックス&ウィザーズ』と呼称される世界。
その辺境に、とある小さな村がある。小さな田畑と狩猟が主な産業の何の変哲もない農村だ。
唯一特徴があるとすれば、近くの山の山頂にある小さな温泉か。村人達に長年愛されてきた秘湯であり、村人達の密かな自慢でもある。
そんな村に、ここ最近一つの異変が起きていた。山の頂きから伸びる、巨大な岩の数々が出現したのだ。
巨岩群は遥か天空の先まで、まるで一本の道の様に伸びていたが……その先にあるものを、村人たちは知らない。冒険者たちを雇い調査する金もないし、そもそも年の暮れに向けて忙しく、そちらを調べる余裕が無いからだ。
……もっとも、その先にある物を知ったとて。村人たちに何かをする事は出来なかっただろう。
巨岩の道の、その先にあるもの。それは……『天空城』と呼ばれる、過去の遺物なのだから。
●
「……ロクな物が無いわね」
そんな天空城の一角に、女の声が響く。
女の前には、剣や槍、斧に杖、多種多彩な武具の数々。これは全て、城の最奥に存在した宝物庫に収蔵されていた物品である。
「なんで宝物庫の中身が、タダの武具ばっかりなのよ……!」
頭を抱える女。
武具はそれぞれ中々の業物ではあるが……あくまで、『中々』止まりの物。
魔道具と呼べるような物は無く、魔術の触媒となりそうな宝石なども無かったのだ。
「全く、ここの城主はとんだ脳筋城主だったみたいね」
女は様々な道具や魔法を研究する立場にある。そんな彼女がこの地に足を運んだのは……打ち捨てられた天空城から、研究材料を回収する為であった。
だがその結果は……ご覧の有様。いっそ清々しいまでの空振り具合であった。
「無駄な労力を使ってしまったわ。あぁもうっ、イライラする……!」
髪を掻き毟る女。だが次の瞬間、何かを思いついた様に表情が変わる。
「……そう言えば、麓にヒトの村があったわね。折角だし、あそこを潰して魔力を回収しましょうか」
まぁ、あんな辺鄙な所から回収できる魔力なんて高が知れてるけど。ストレス解消も兼ねて、ね。
……と。良いことを思いついた、というようにその表情は明るい。
「それじゃ、善は急げね。総員、城を出て麓の村へと向かうわよ!」
女の声に従い、『背中の翅』を羽撃かせて飛び立つ配下達。女もまた翅を羽撃かせると、その最後尾に着く。
……飛び行く一団。その行軍に、一切の乱れも見られなかった。
●
「お集まり頂きまして、ありがとうございます」
グリモアベースに集まる猟兵達を、銀の髪のグリモア猟兵が迎える。
ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)のその表情は、常の柔らかな微笑みだ。今回もまた、それ程厳しい依頼とはならないようだと猟兵達の肩から力が抜ける。
「秋の半ば頃、皆さんに攻略して頂いた『天空城』の事を覚えていらっしゃるでしょうか?」
唐突に語られたその言葉に、思わず顔を見合わせる猟兵達。
以前ヴィクトリアが予知した依頼の一つに『天空城』を攻略する依頼があった。巨岩を渡り、鱗の兵団を退け、城主である竜騎士との激闘を制した、あの依頼である。
……その一件が、どうかしたのだろうか?
「実は件の『天空城』に、何やら空き巣が入ったようでして……」
再び顔を見合わせる猟兵達。そんな彼らに、ヴィクトリアは事情を説明する。
「盗人は城主を討たれ、放棄された『天空城』から貴重品を回収したかったようなのです。まぁ、お眼鏡に適う物は無かったようですが」
それなら、わざわざ猟兵を集める必要は無いのではないか、と思う者もいるだろう。
だが、重要なのはここからだ。
「探索が空振りに終わった盗人は、その苛立ちを解消する為に……麓にある村への襲撃を企図し、動いているようなのです」
天空城を出て、巨岩群を下れば……辺境の辺鄙な農村は、目と鼻の先だ。
村には防衛力などは無い。もし盗人とその配下が村に押し寄せれば……簡単に蹂躙されてしまう事は、明白だ。
「そんな事を許す訳にはいきません。今回皆さんには、迫りくる盗人達の撃破をお願いしたいのです」
戦場となるのは巨岩群の終点、小高い山の頂上だ。
その地で敵を迎え撃ち、撃破し……麓の村を守る事が、今回の猟兵達の務めとなる。
「相手となるのは、どうやらフェアリー種に良く似た特徴を持つ集団です。質量ともに秀でた中々の難敵となります」
敵の集団は高いレベルで統率がとれている上に、数の上でも十分な戦力を保持している。長期戦となった場合は相手に有利に働く事だろう。
まるで軍隊の様に思えるその集団。だがその高い統制は指揮官の存在があってこそだ。
故に、今回の狙いは……
「ですので、今回は短期決戦。敵の指揮官を目指し、一点突破を目指す形となります」
そう、指揮官狙いの一点突破だ。
猟兵達に今回求められる動きは、分厚い敵の壁を一気に貫く火力。そして開いた突破口を駆け抜ける機動力だ。
この二つが欠けていた場合、敵の指揮官の下へと辿り着く事は難しくなるだろう。
「首尾良く敵集団を突破出来れば、後は敵の指揮官を討つのみです」
敵の指揮官も、集団同様フェアリー種に良く似た特徴を持つ敵だ。
直接的な戦闘力は然程高いという訳でも無いが、健在な配下への巧みな指示や召喚魔術を得意とする相手のようだ、とヴィクトリアは語る。
「厄介な相手ではあります。ですが、油断さえしなければ皆さんならば……」
きっと、大丈夫なはずです、と。
いつもの様に頭を下げて転送の準備に移ろうとしたヴィクトリアの動きが、ふと止まる。
「……そう言えば、舞台となる地方には奇妙な風習がありまして」
曰く、『新年最初の日の出を浴びると、一年を健康的に過ごせる』。
曰く、『その日を浴びる時は、出来る限り穢れ無き身体で居る方が良い』。
……お誂え向きに、戦場となる小山には麓の村人に愛される小さな温泉がある。
そして今の時期は年の終わり。任務を終える頃には日付も変わって新たな年となる頃だ。
「時期も丁度良いですし……戦闘後に余裕があれば、そのまま温泉を楽しんでみては如何でしょうか?」
村人達に愛される秘湯だが、別に村人以外が入ってはならないというルールは無い。常識の範囲内で楽しむのならば、後から来る村人達も嫌な顔はしないはずだ。
希望する声があれば水着やタオルの類はヴィクトリアが手配するらしい。もし何か持ち込みたい物があるのなら、持ち込んでも構わない。
地方に伝わる風習を体験する好機である。きっと心地の良い時間を過ごせるはずだ。
……とは言え、だ。
「気を楽にして癒やしの時間を過ごす為にも。まずは迫りくる脅威を討たねばなりません」
皆さんの奮闘を、期待します。
改めてヴィクトリアは頭を下げると、猟兵達を戦場に送り込むのだった。
月城祐一
さようなら2019年、こんにちは2020年。
どうも、月城祐一です。温泉行きたい……(ド直球)
今回は謎の妖精軍団を討ち倒しつつ温泉をお楽しみ頂くシナリオとなります。
参考までに、関連してそうな事件は ↓こちら↓ になります。
( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=1305 )(温泉)
( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=14627 )(天空城)
読まずにご参加頂いても問題はありませんが、よろしければ是非ご一読ください。
以下、補足です。
第一章は集団戦。『謎の空兵』が相手となります。
良く統制の効いた集団であり、数も多数と、質量共に優れた集団です。
まともにやりあった場合消耗戦となる事が不可避の為、今回はOPでも触れられている通り『指揮官を狙った短期決戦』となります。
そのため、第一章はいかにして敵集団の壁を崩し、突破していくかにプレイングの重点を置いていただければと思います。
(『十分な突破力』があると認められたプレイングにはボーナスが加わります)
戦場は小高い山の山頂。天空城へと続く巨岩群の入り口周辺です。
時刻は深夜。新年最初の日付を刻む直前となります。
真冬の冷たい風が吹き抜ける中での戦闘です。色々と対策を考えてみると良いかも知れません。
第二章はボス戦。詳細情報は章の進展時に開示となります。
第三章は日常。露天風呂でのお楽しみのひと時となります。
一応OPでも触れています通り、作中時間は年の暮れ。三章終了頃に新年最初の太陽が登る感じになりますのでご了承下さい。
辺境の農村に人知れず迫る、謎の妖精軍団の魔の手。猟兵達はその魔の手を打ち払えるか。
皆さんの熱いプレイング、お待ちしております!
第1章 集団戦
『謎の空兵』
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POW : 妖精の奮闘
敵を【爆破魔法】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
SPD : 妖精の早撃ち
見えない【マスケット銃の弾丸】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
WIZ : 小さいからと甘く見るな!
【敵合計レベル×5の謎の精兵(妖精)】の霊を召喚する。これは【マスケット銃を使った弾丸】や【魔法】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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転移を終えた猟兵達が降り立ったのは、とある小山の頂きだった。
眼下に広がるのは手つかずの自然。僅かに切り開かれた地に灯りが輝き、人々の営みの存在を猟兵達に感じさせた。
その営みは、猟兵達が介入しなければあと数時間で消滅してしまう儚い物。謎の妖精軍団の前に、尽く灰燼に帰す存在だ。
……そんな事を、許してはならない。今この場に集う者達は、過去から迫る悪意を討ち、現在と未来を守る存在、『猟兵』なのだから。
視線を巨岩群に向ける。無数に輝く星明かりの下、雲霞の如く迫り来る小さな存在の集合体が見えるだろう。
彼らこそが、今回の敵。フェアリー種に良く似た特徴を持つオブリビオン、『謎の空兵』の軍勢だ。
彼らが作る戦列を突破し、最後尾に控える指揮官を討ち果たす。それこそが、今回猟兵達に与えられた務めである。
肌を刺す年の終わりの夜の風、漂う硫黄の香りと月の輝きをその体に感じながら。
猟兵達は、駆ける。狙うは敵の指揮官、ただ一人!
ルルティア・サーゲイト
ふむ、大量の小型雑魚相手ならMAP兵器の出番である。
携えた大鎌を中空でゆらり、と振るう。流れる動きで二度、三度と大鎌を振るう。その刃先から桜の花弁が散り、全てを魅了するように舞う。
円を描く動きから垂直に飛び上り、
「天武桜花陣ッ!」
真下に大鎌を振り下ろす。地面に突き立てた瞬間、一瞬にして桜吹雪は消え、ただ斬られたという事実のみが残る。
あと、妾には縮地法があるので銃撃は当たらぬ。魔法は通るが、天武桜花陣の射程外からの攻撃何ぞ当たるとでも?
「ふん、張り付いて近接攻撃の方が面倒ではあったのう」
それはそれで別な手を使うだけじゃが。
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年の終わりの最後の夜、冷たい風に乗るように迫る影。
麓の長閑な農村を狙っているという悪意あるその集団をまず迎え撃ったのは、ルルティア・サーゲイト(はかなき凶殲姫・f03155)だった。
「ふむ、大量の小型雑魚が相手か」
月明かりに浮かぶ敵の影。その一体一体は小さいが、数の方は中々の物。それらが寄り集まり乱れず行軍する様を見れば、練度の方も中々の物であると判るだろう。
厄介な相手ではある。だが、それならそれで……
「……ならば、MAP兵器の出番であるの」
やりようなど、いくらでもあるものだ。
愛用の大鎌をゆらりと振るえば、その刃先から散るは桜の花弁。円を描くかのように大鎌を振れば、桜の花弁もまたその動きに追従するかのように円を描き、渦を巻く。
そうして渦となった桜の花弁は、風に乗り、月明かりに照らされて。見る者全ての目を惹き付け、魅了するかのように……やがて桜吹雪となって、戦場を覆うのだ。
『──目眩ましか! その程度!』
突如として出現した謎の花吹雪。視界を覆う様なそれにも、妖精の兵士達は怯まない。より密集し、勢いのままに突破しようと桜吹雪へと突っ込んでいく。
……彼らの行動は、自らの練度を信じた故の行動だ。だが今回に限って言えば、その選択は……まさしく、『悪手』の一言でしか無い。
大鎌と共に円を描いていたルルティアの動きが、変わる。緩やかな回転の動き、勢いに全身のバネを活かしつつ、タンッ! と、桜吹雪の壁を飛び越えるかのように、ルルティアの身体が軽やかに宙を舞い……
「──天武桜花陣ッ!」
そのまま敵勢の頭上をすれ違いざまに、大鎌が地へと振り下ろされる。
その鎌の刃が地に突き立てられた、その瞬間……まるで幻の様に、桜吹雪は掻き消える。
だが、しかし。その桜吹雪は、今まで確かにそこにあったのは、事実である。
その証拠は……
『グッ
……!』『な、何が……』
……全身をズタズタに斬り裂かれた兵士達の無残な姿が、示していた。
桜吹雪の正体は、ルルティアの操るユーベルコードだ。その名は、【天武桜花陣】。武器を桜の花弁に変え敵を攻撃するというそのユーベルコードである。
桜の花弁は皆、ルルティアの大鎌が姿を変えた物。その花弁で肌を撫でられれば。すなわち、肌を刃で断ち切られたと言うことである。
「ふふん。大方小柄な体格を補う為の密集陣形であったのじゃろうが……」
そんな特性を持つユーベルコードである。もし、敵が大型でガチガチに防御を固める系の手合であれば苦戦は免れなかったかもしれないが、それはそれ。
今回は、敵の能力や高い練度を逆手に取るように。その特性が大きな成果へと結びついたのだ。
『だ、だが……まだ、我らは……』
大きな負傷を負いながらも、銃を杖に立ち上がろうとする兵士達。だがダメージを負った状態で、縮地法を修めるルルティアを食い止める事など出来よう筈も無い。
満身創痍の彼らとその妨害を、鼻歌混じりに難なく躱していくルルティア。
その勢いのまま地を蹴って先へ進めば。後に残されたのは、ダメージが限界を越えたのか、その姿を虚空へ消していく兵士達の残滓ばかり。
……まずは一人、敵の前衛を突破した猟兵達。幸先の良いスタートであると言って良いだろう。
成功
🔵🔵🔴
月守・咲凛
SPDで戦闘、アドリブ共闘ダメージ描写OK
戦えない人を巻き込むのは、このお姉ちゃんが許さないのです!
スピード勝負ならシフトスコールなのです!
武装ユニットを戦闘機形態に変形させて、アジサイユニットのビームチェーンソーを周囲に飛ばせてガトリング斉射しながら一気にとつげきーです。
至近距離まで飛び込んだらドッグファイトモードで指揮官と戦いながらアジサイユニットで周りの敵を牽制します。
髪の結晶体は魔力の塊なので魔力アイテムが欲しいのなら狙ってくるかも?ですけど、ただの魔力の塊なので魔力吸収とかは受けますけど私の髪から離れたらパリンと割れて消えるのでアイテムとしては残りません。
●
吹き抜ける夜の寒風。『天空城』へと続く浮遊する巨岩群の魔力の影響か、その風の流れは、時折不可思議な変化を見せる。
かつて猟兵達を苦しめたその乱気流であるが……
「アーマーフルパージ! シフト【スコール】!」
月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)と、彼女が操る武装ユニットの前には意味を為さない。
咲凛の宣言と共に、彼女の身を包む武装ユニットが分離変形、戦闘機形態へとその姿を変える。
(今回の戦いは『スピード勝負!』 なら、シフトスコールなのです!)
グリモア猟兵が今回求めた戦法は、敵の指揮官を狙った一点突破だ。
ならば機動力と正面火力に優れた『戦闘機』はまさにうってつけの選択だと言えるだろう。
「よーし! 一気にとつげきー、です!」
風を切り、空を疾駆する咲凛。機体正面に配されたガトリングが火を吹けば、密集隊形を取る妖精兵達を次々に薙ぎ倒していく。
『お、おのれっ! 撃て、撃てェッ!!』
だが敵もただ倒されるだけではない。前線指揮官なのだろうか、とある妖精兵が声を挙げれば彼に従う兵士達が次々にマスケットを構えて発砲する。
不可視のその弾丸は、妖精の魔力も乗っているのだろうか? きっと当たれば武装ユニットにも少なくないダメージを与える事になるだろう。
だが、しかし。
「アジサイユニット、展開!」
そんな魔弾から身を守る様に、展開されたのは武装ユニットの一部だ。
【アジサイ】の名を与えられた遠隔操作型のガーディアンユニットが展開され、飛来する魔弾から咲凛を守る盾となれば……武装ユニット本体に対するダメージは、ほぼゼロに近くなる。
もし、ここである程度のダメージを受けていたら。咲凛のスピードによる突破という目論見は、露と消えていたかもしれない。
だが妖精兵の妨害は封じられ、武装ユニットには傷一つない。十分なスピードを得ることは、出来た。
そして、そうなれば……!
「てやぁーっ!!」
『う、うわぁぁぁぁぁっ!?』
ガトリングの掃射と、自身の質量とスピードすらも武器にして。兵士達が作る壁を、強行突破する咲凛。
吹き飛ばされた兵士達がいくら精兵と言えど、猟兵を相手に回せば分が悪い。抗い切れず、次々に消滅して躯の海へとその身を還していく事になる。
「戦えない人を巻き込むのは、このお姉ちゃんが許さないのです!」
そんな彼らには目もくれず、咲凛の赤い瞳が見つめるのはこの戦列の最後尾に控える敵の指揮官だ。
八つ当たりをするかのような邪悪な意思を許せぬと、咲凛の瞳は使命感に燃えて……その戦意を受けるかのように、髪の結晶体もまた光り輝くのだった。
成功
🔵🔵🔴
アウレリア・ウィスタリア
数には数で対抗しましょう
【血の傀儡兵団】を召還
さぁ、進め
ボクの血人形たち
血人形を指揮して敵の軍勢の一角に突撃して戦列を崩しましょう
複数の血人形で囲んで叩いていけるように油断なく突き進みましょう
こちらの兵団は一撃で消えますが
弾けてしまえば、それ自体が血霧として目眩ましになります
ボクは兵団の中から魔銃で敵を撃ち抜いていきましょう
兵団を抜けてくる敵には鞭剣で対応しましょう
最終的にはボクだけでも突破出来れば……
関係のない、平和に暮らす人々に害を与えるものをボクは許さない
戦場を駆け抜けて敵の指揮官を目指しましょう
多少の傷なんて気にしていられない
ボクはボクの役目を成し遂げます
アドリブ歓迎
●
多数の敵に対抗する為の対策は、いくつか挙げられる。例えば、範囲攻撃。例えば、火力を集中させた一点突破。
先に動いた猟兵達はそれぞれそんな対策で以て動き、見事に敵の戦線を突破した。
そしてまた一人、別の手段で突破を図ろうと動き出す猟兵がいる。
「……我が血は力、敵を切り裂く無数の兵団」
黒猫を模した仮面のを纏う猟兵、アウレリア・ウィスタリア(憂愛ラピス・ラズリ・f00068)の掌から滴る赤く輝く生命の雫。
血へと流れ落ちたその雫に自らの言葉を鍵とし魔力を通せば、雫は忽ち魔力を帯び、その姿を小さな人の姿へと変えていく。アウレリアのユーベルコード、【血の傀儡兵団(ブラッドマリオネット)】が、その力を発現したのだ。
小人達の姿は、アウレリアに良く似ていた。だがその特筆するべきはそこではなく、生み出されたその数だ。
「数には数で対抗しましょう」
アウレリアが生み出した小型の血人形達のその数は、実に300に迫ろうかという膨大な数。
数には数で、と言う自らの言葉通りに。アウレリアは物量による正面突破を狙って動いたのだ。
「さぁ、進め。ボクの血人形たち……!」
指示棒を振るい敵の戦列の一角を指し示せば、その意に従い血人形たちが動き出す。
只人の目で見れば、それ程の迫力とは見えぬかもしれない。だが血人形達と同じく小さな体躯が特徴的な妖精兵の視点で見れば……迫りくる一団の勢いは、まるで赤い津波の如く。
『敵の突撃を止めろ! 撃て、撃てェッ!』
兵達を取り纏める前線指揮官の指示が響き、次々に突撃の阻止を狙った射撃が放たれる。飛来するマスケット銃の弾丸や魔力弾が、一体、また一体と血人形を撃ち抜きその存在を無力化していく。
だがアウレリアにとって、そうなる事は織り込み済みだ。
『ッ? 赤い霧が
……!?』
突然生じた色を持つ霧。視界を悪化させる程のそれの正体は、アウレリアの血人形の副産物だ。
アウレリアの血人形達は数の多さとは裏腹に、その戦闘力は高くない。一度でも敵の攻撃をまともに受ければ一撃で消滅してしまう程度の能力でしか無いのだ。
だが、その『弱さ』をアウレリアは逆手に取った。一撃で霧散して弾けてしまうのならば弾けさせて……媒介とした血を霧に変えさせて、目眩ましにしてしまえばいいと考えたのだ。
果たして、その狙いは上手くいった。今の阻止射撃で半数程の血人形を失いはしたが、戦場は赤い血霧に覆われて、敵の視界を潰す事に成功したのだ。
「進め! そして道を切り開け!」
指揮棒を振るう手に力が籠もる。霧を抜けて敵の戦列へ飛び込む血人形達が、敵と刺し違えるかのように消滅していくのを、アウレリアは肌で感じ取っていた。
次々に霧散していく血人形たち。手駒が次々に目減りしていく状況ではあるが、アウレリアの戦意に翳りは無い。むしろその戦意は、益々増すばかりだ。
(……関係のない、平和に暮らす人々に害を与えるものをボクは許さない)
指揮棒を握りしめる手から零れ落ちる鮮血。アウレリア自身も先程の阻止射撃を至近に受けて、傷を負っていた。だが、それがどうした。
傷を受ける事は慣れている。血を流す事も、日常だった。多少の傷など、気にしてはいられないのだ。
「……ボクはボクの役目を、成し遂げます」
──我が血は力、敵を切り裂く無数の兵団。
決意と共に、再び血人形たちの兵団が顕現する。
流れる血、受けた傷。その全てを力に変えるアウレリア。命続く限りは無尽蔵に戦力を供給出来ると言っていいその戦い方で、彼女は真正面から敵の戦列を突き崩し、粉砕し……敵の指揮官へと、突き進んでいく。
成功
🔵🔵🔴
アネット・レインフォール
▼心情
通常、戦を左右するのは数の力だ。
いかに猟兵が絶対の一たる存在であったとしても、
決して侮る事は出来ないだろう。
練度に統制力といい、敵の過去や背後関係は気になるが…。
何にせよ、秘湯で年の瀬を…という訳にはいかないらしい
▼POW
本来なら攻撃を行う所だが…
ここで消耗し過ぎるのは得策ではない。
(猟兵達を一瞥)
【全テ守ルト誓ウ】で敵を包囲。
威力は期待できないが、盾を高速旋回させ
押潰しや隊列崩しを行い機動力を削ぐ。
一か所に集めたりフォローする事で封殺し
戦況の流れの掌握を狙う。
接近時は式刀だけ元に戻し斬り伏せるが
紋章など正体に繋がる手掛かりがあれば回収。
数が減れば指揮官へのルート確保も
連携、アドリブ歓迎
●
一撃、二撃、三撃と。猟兵達がそれぞれに強襲を仕掛けた事で、妖精兵達の戦列にも僅かな綻びが生じ始める。
……とは言え、その綻びはほんの僅かな物。完全に打ち崩せた等とは言えるような物ではなかった。
(……成程、中々の練度に統制力だ)
崩れ掛けつつも体勢を立て直す敵の軍勢の様子に、アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)が感心したかのようにほぅ、と小さく息を零す。
戦の勝敗を左右する物は幾つか挙げられるが、最も基本的かつ重要な要素はやはり『数』だ。圧倒的多数の敵を前にすれば『生命の埒外』とも言われる猟兵であっても苦しめられる事がある事が、その要素の正しさを知らしめるだろう。
数は敵が有利、そしてその上に簡単には崩れぬ練度と統制力を持つ敵であれば……決して侮る事は出来ない相手だ。
(そうなると、ここで消耗し過ぎるのは得策ではないか)
既に動いた猟兵は、まさに一気呵成と言った勢いで突っ込んでいった。
だが、これから動く猟兵達も彼女達の様に一気に押し切れるかと言えば……相手もそれなりに対応をしてくるだろう事を考えれば、難しいかもしれないとアネットは見た。
(本来なら、俺も攻撃を行うべきだろうが……ここは、少し動きを変えるか)
ならば、今回は前面に出るよりも周囲のフォローに回るべきか、と。動くアネットが取り出したのは、愛用の刃の数々だ。
年の最後の月光を受け、輝く刃達。それらを次々に宙へ放り……
「『亜式・全テ守ルト誓ウ』」
言葉を紡げば、刃達はたちまちにその姿を盾へと変えていく。アネットのユーベルコードの力を受け、その姿を変えたのだ。
「──行けッ!」
アネットの意思を受け、飛ぶ盾達。ある物は今まさに敵と交戦に入った仲間を守り、またある盾は質量を活かして敵を押し潰し、またある盾は勢いそのままに戦列に突入して陣形を乱していく。
『自身の攻撃手段全てを失う』、というその代償の為か。攻撃力こそ期待は出来ないが……フォロー役として動くという今回の立ち回り上、自身の継戦能力や仲間の防御力を引き上げるという特性はまさに適材適所。
アネットのこの行動は、他の猟兵達が動き易い状況を確実に構築する為の一助となったのだ。
(しかし、敵の過去や背後関係が気になる所だが……)
そうして仲間達を援護しながらも、アネットの鋭い観察眼は敵の様子を伺い続ける。
まるで軍人の様な敵の立ち振舞い。ならば纏う衣服や武具などに所属を示す紋章などは無いかと目を凝らすが、見覚えの無い紋章や徽章ばかり。
打ち倒された敵はすぐに消え去っていくばかりであり……その正体を探る事は、難しいだろう。
(まぁ、致し方ないか)
情報を得られぬ事に僅かに肩を落としつつ、アネットは意識を切り替えるように戦場へと傾ける。
気がかりな要素は多い。今後の戦闘も中々難しい動きが求められるだろう。
……鄙びた温泉で年の瀬の一時を過ごす、とは。簡単にはいかなさそうだった。
成功
🔵🔵🔴
ミフェット・マザーグース
WIZで判定
アテナとティエルと一緒だよ!
アテナに抱えてもらって妖精たちを突破するね
UC【一人ぼっちの影あそびの歌】
ミフェットは「歌唱」と「楽器演奏」で妖精のUCを打ち消してみんなを守るよ
打ち消せなかった分は髪の毛の触手で「盾受け」してアテナを「かばう」ね
はぐれそうならティエルも「手をつなぐ」して連れて行ってもらおう!
悪いやつのとこまでひとっ飛び!
♪
わるい妖精 ほんとにいるの?
みえる みえない 妖精の弾丸
みえない ないない どこにもない
夜空に妖精の呼び声
つどう妖精 ひとつ、ふたつ、みっつ
夜空にかがやく星空
星を数えて ひとつ、ふたつ、みっつ
かぞえていたのは妖精と星 どっち?
かぞえていたのは星の数!
アテナ・アイリス
さあ、ティエル、ミフェット、温泉に行きましょうよ。
その前に一仕事ね。
でも目の前の妖精の数が多いわね。一点突破で行きましょうか。
「フレースヴェルグ・ブラスター」の全力攻撃で、道を作るわよ。
でも、出力調整にちょっと時間がかかるのよね。焦らない、慎重に・・・。
(妖精たちが近づいてきて焦りながら、調整に集中する。)
よし、調整完了! みんな、どいてどいて、ぶっ放すわよ。
さあ道が空いたわ、行くわよ。(ミフェットを抱えて)、、、UC「ディバイン・フェザー」を使って
高速飛行であいた空間を一気に駆け抜けるわよ。
あとは、邪魔する敵をかわしつつ、ミフェットとティエルの援護をもらって突破するわね。
ティエル・ティエリエル
WIZで判定
ミフェットやアテナと一緒に指揮官のところ目指して突き進むよ!
アテナが武器の準備をしている間、悪い妖精が近寄ってこないように
【お姫様ビーム】をどっかんどっかん撃って牽制するね♪
ミフェットがお歌で敵の召喚した霊を打ち消してくれるから本体の妖精を狙い撃ちだよ☆
アテナがどっかーんってして道が空いたら突撃だーってボクも全速力で飛んでいくね!
邪魔してくるヤツは「空中戦」で華麗に避けて突き進んでいくね!
それとも、ミフェットみたいにアテナに引っ付いていったほうが早いかな?
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
●
次々と妖精兵たちの作る戦列を突破していく猟兵達。その猛攻の前に、敵の戦力は確かに減じていた。
しかし、敵は幻影を生み出すユーベルコードを操る敵である。喪った戦力を幻影でカバーし、撃ち出される砲火の密度は未だ健在であった。
妖精兵の側も、ユーベルコードを駆使すれば自分たちはまだやれる、と。確かな手応えを感じていた事だろう。
……だが。
──わるい妖精 ほんとにいるの?
──みえる みえない 妖精の弾丸
──みえない ないない どこにもない
『ん? 歌、か?』
突如響き始めたソプラノボイスに、とある妖精兵が首を傾げた。
爪弾かれる弦のリズムに合わせて響く歌は、まるで童歌の様なあどけない。だが不思議と耳を擽り、ついつい聞き入ってしまうかのような不思議な魅力に満ちていた。
……ここでその歌を認識してしまったのが、彼らの不幸の始まりであった。
──夜空に妖精の呼び声
──つどう妖精 ひとつ、ふたつ、みっつ
『……なんだ? 急に、魔力が……』
その変調を感じた時には、時既に遅し。歌に籠められた不可思議な力によって、妖精兵たちが喚び出した幻影はその力を急速に失い……掻き消えていく。
(……やったっ!)
慌てふためく敵のその様子を見て、ミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)が満足気な笑みを浮かべる。
歌の正体は、ミフェットのユーベルコードだ。相手のユーベルコードを打ち消す歌を紡ぐ事で、敵の壁を打ち崩そうと考えて……その狙いは、完璧な形で成就したのだ。
「ナイスよ、ミフェット!」
そんなミフェットを褒め称えるのは、姉の様な友人であるアテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)。親友のティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)も「わー!」っと両手を上げて大喜びだ。
幾度もの戦いを共に乗り越え気心の知れた三人である。今回もまた、三人は意見を摺合せ、作戦を練ってこの場に挑んでいた。
その作戦における重要な土台、ミフェットが担当する第一段階を完璧な形でクリアしたのだ。この喜びようも当然の事と言えるだろう。
……とは言え、まだまだ敵の幻影全てを打ち消せた訳ではない。更に成果を上積みするべく、ミフェットの喉が歌の続きを紡いでいく。
──夜空にかがやく星空
──星を数えて ひとつ、ふたつ、みっつ
『──! あそこだ! 歌を止めろ!』
だが、敵も中々の対応力を見せる。不審な歌を紡ぎ続けるミフェットの存在に気付き、無事な兵たちが銃の筒先を向けたのだ。
妖精兵たちの持つ銃は、いわゆるマスケット銃だ。古めかしい構造ではあるが、それでも立派な銃器である。もし命中すれば、無事では済まないだろう。
『撃てッ!!』
号令一下、撃ち放たれる無数の銃弾。死を運ぶ魔弾の群れが目にも留まらぬ速さでミフェット達に迫り……
「ぅぅうううーー……どっかーんっ!」
迎撃するかの如く放たれた光の波に飲み込まれて、消えていく事になる。
視線を移せば、レイピアを掲げた小さな妖精姫……ティエルの姿が目に映るだろう。今の光の波は、ティエルが撃ち放ったものなのだ。
親友であるミフェットの活躍に、ティエルは大いにテンションが高まっていた。その結果、ティエルのテンションはお姫様の気合の入った謎のビームを撃ち放てる程の最高潮に達していたのだ。
「どっかーん! さらにつづけてどっかーーんっ!!」
次から次へと、まるで戦場全域を制圧するかの様に乱れ撃たれるお姫様ビーム。光が一閃する毎に銃弾が、魔力弾が飲み込まれて蒸発していく。時折起きる爆発は、敵の魔力の暴発であろうか。
こうなっては、流石の精兵であっても抵抗は厳しいか。反撃は徐々に弱まって、防御態勢を取るので精一杯と言ったようである。
……作戦の第二段階。ティエルが担当した敵の牽制も、大成功と言って良い結果である。
「ティエルも、流石ね!」
そんなティエルの勇姿を再び褒め称えつつ、アテナの視線がチラと手元へ向いた。その掌に握られていたのは……未来的なデザインの銃だ。
ミフェットとティエルが大活躍を見せる中、アテナはじっくりと動き出す準備を進めていた。
今回の作戦、第三段階でアテナが担う役割は、大火力での突破口の形成だ。その為に必要な火力を生み出す為に、アテナは愛銃『フレースヴェルグ・ブラスター』の出力調整に掛り切りになっていたのだ。
(全力射撃は強力だけど、出力調整にちょっと時間がかかるのよね……)
とは言え、その調整には時間が掛かるのだという。
焦らぬ様に、慎重に、と……アテナは己に言い聞かせながら作業を進めるが、側を飛び交う火線に余裕を保つのは流石に難しかったか。白い頬に冷たい汗が流れるのを、アテナは自覚していた。
……だが、ミフェットとティエルの活躍で敵からの圧力が減じれば、アテナの心にも常の余裕が蘇る。そうしていつもの余裕を取り戻せれば……調整作業も、一気にペースを上げていく。
「……っ! よし、調整完了! ふたりとも、どいてどいて!」
銃の出力が最高潮に達した事を知らせるサインを見て、ミフェットとティエルに声を掛けるアテナ。その声に従う様に、仲良し少女二人組は慌ててアテナの背へとその身を隠す。
二人がしっかりと防御姿勢を取っている事を確認して、銃を構えるアテナ。その筒先が示すのは、敵の戦列のド真ん中だ。
障害は、無い。今なら間違いなく、敵の戦列を吹き飛ばせるはずだ。
「ぶっぱなすわ──!?」
そうして引き金を引こうとした、その瞬間。アテナの鋭い感覚が、自身を狙う殺気を捉えた。
殺気の下へ視線を向ければ、地に蹲ったままの兵士の一人がアテナに向けて掌を向けていた。掌から感じる魔力の歪み……爆破魔法だろうか?
敵は恐らく、蹲りながらも反撃の時を狙っていたのだろう。牽制を続けていたミフェットとティエルが下がって生まれたその一瞬の隙を突かれてしまったのだ。
……回避は間に合わない。いや、そもそも回避をすることなど出来ない。後ろには、二人の友がいるのだから。
(せめて、ミフェットとティエルは!)
身を呈してでも二人を守ろうと決意を固めるアテナ。そんな彼女を撃ち抜かんと、魔力の輝きが輝いて……
──ガガガガガッッ!!
爆炎がアテナを包もうとした、その瞬間。何か硬い物が、アテナの身体を守る様に立ち塞がった。
……ミフェットの触手の盾、ではない。もっと金属的なそれから感じる何かに、アテナは覚えがあるだろう。
(……借りが出来たわね。でも……)
よく見知った生真面目な剣の武人の顔を思い浮かべつつ、アテナの顔に浮かぶのはなんとも言えない曖昧な表情だった。
助けられたのは自身の失態だ。だがその失態を埋める様な戦友の行動は……かつてとある依頼で『勇者候補』として見出した自身の目利きが正しかった事を示すかのようで。
結果、アテナは苦味と甘味が入り混じったような複雑な感覚、と言った心持ちになってしまったのだ。
「──っと。あらためて、ぶっぱなすわよ!!」
とは言え、今はまだ戦闘中だ。盾が作る壁が解かれて射線が通れば、アテナの反撃の時はすぐに来る。
威勢よく放たれたプラズマ弾。強烈なエネルギーを籠められたその弾丸は、周囲の空気を灼き焦がしながら兵士たちの戦列を一気に打ち崩し……結果として、戦列に大きな穴を生み出す事になる。
「ふぅ……さぁ、道が空いたわ。行くわよ、ふたりとも!」
「う、うんっ」
「ようし! 突撃だー♪ ……あ、でもアテナに引っ付いた方が早いかなっ?」
そうして道が開かれれば、あとは一気に突破するのみだ。
ミフェットを抱きかかえ、更にひっつくティエルを弾き飛ばさぬ様に気を使いながら……アテナは全身を聖なる光で覆い、空を翔ける。
目指すはこの先に控える存在。邪悪な意思を持つこの部隊の指揮官、ただ一つ!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
楠木・美羅
@POW アドリヴ・絡みオッケーです
放棄された場所とはいえ空き巣に入るのはどうかと思いますけど
それよりも目当てのモノが無かったからって関係ない人を襲うなんて許せませんっ。
作戦通りの一点突破――属性魔法で乱気流を生み出して動きを制限
数は多いですが統率が取れてる分密集してるのは都合がいいです
火と風と雷の複合。【トリニティエンハンス】で攻撃に極振り
密集したフェアリーに対して【範囲攻撃】で突破口を開きますっ
「村には絶対に手出しはさせません!わたしだってやる時はやるんですっ」
突破口を開いたら風魔法で追い風を作って加速して飛んでいきます!
「ちょ、ちょっと怖いですけど多分、これが速そうですし…!」
●
先んじて動いた猟兵達の活躍により、『謎の空兵』の統制は遂に乱れた。鉄壁の戦列は崩れ、その士気も最早崩壊寸前と言った状態であった。
そんな状態に陥った彼らであるが、楠木・美羅(人間の聖者・f11798)の目に浮かぶ色に同情の色は無かった。
(放棄された場所とは言え、空き巣に入るのはどうかと思いますけど……それよりもっ!)
優しく朗らかで頑張り屋、まさに善性の少女である美羅である。だがそんな美羅であっても、許せない物は存在する。
(目当てのモノが無かったからって、関係ない人を襲うなんて許せませんっ!)
そう。美羅は心優しい少女であるが故に、他者への理不尽な暴力を振るう存在を許せない。
そしてそんな存在を許せない自分には、他者を守れる力があると識っているが故に……その胸の内に宿る正義感を燃やし、動くことが出来る少女なのだ。
「作戦通りの一点突破……!」
掌を掲げ、力を練り上げる美羅。身体を循環する魔力が膨れ上がり、呼応するかのように火と風と雷の精霊が活発に蠢く。
……その魔力の流れを感じ、敵兵も妨害に動こうと魔術を練るが……度重なる猟兵達の猛攻とそれによる消耗により、満足な形で術を生み出すには至らない。美羅が纏う魔力に攻撃を阻害され、虚しく虚空で爆ぜるばかりである。
もし、空兵の側の消耗が無ければ。美羅への妨害は十分な威力を発揮しただろう。そうなれば他の猟兵と比べると経験の面で不安要素のある美羅が対処を誤り、危険な状況へ追い込まれていた可能性は否定出来ない。
だが、今の状況に限って言えば敵はもはや満身創痍で統制も崩壊寸前で妨害も不十分だ。そんな状況であれば、美羅も何かを誤る様な事などありはしない。
「──村には絶対に手出しはさせません!」
掌で練り上げた魔力を放つ美羅。紫電を纏う炎の暴風が僅かに抵抗を示す僅かな残敵の戦列を薙ぎ払い……その抵抗を、尽く絶つことに成功する。
「わたしだって、やる時はやるんですっ!」
自身の戦果を見届けつつ、美羅は気合を入れ直すかのように自らの小さな拳をぐっと握りしめる。
この場の突破は成功したが、戦いはこれからが本番。敵の指揮官との戦いが待っているのだから。
「……ちょ、ちょっと怖いですけど……っ!」
再び魔力を練り上げて、背を押す追い風を身体に纏う美羅。その風に乗って地を蹴って跳び上がれば……まるで空を滑るかの如く、美羅の身体が飛んでいく。
少女の顔に浮かぶのは、感じる恐怖を抑え込むかのような、そんな強い使命感であった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『謎の軍団妖精魔法兵器隊長『サイコ』』
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POW : 支援攻撃令
【指定した場所に砲撃攻撃&対空攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD : 平行線の自分召喚
【平行線のもう一人の自分】の霊を召喚する。これは【同じユーベルコード】や【ユーベルコードの相殺】で攻撃する能力を持つ。
WIZ : 爆撃指令
【指定攻撃場所に空軍妖精部隊の爆発魔法】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
👑11
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●
辺境の長閑な農村へ迫る悪意。その尖兵である『謎の空兵』の一軍は、流石の練度であった。
だが猟兵達の熾烈な猛攻と迅速な突破の前にその壁は脆くも崩れ……悪意の牙の一つは、挫かれる事となった。
『……あぁ、もう。何なのよ、イライラする……!』
そうして突き進む猟兵達は、遂にその存在と相対する。
頭を掻き毟るその女の姿は、空兵たち同様に小柄だ。知性の高さを感じさせる整った顔立ちは、この女の能力の高さを猟兵達に示すかのよう。
……だが猟兵達ならば判るだろう。
『空っぽの天空城に、使えない部下達に……今度は猟兵が邪魔をするですって? 何なのよ、一体!』
この女の瞳に浮かぶのは、他者を須らく下に見る傲慢さだ。自身以外を尽く無能と見る、底知れぬ悪意の塊だ。
……そんな女を、麓の村へ通す訳には行かない。
『何よ、やるっていうの? ふぅん?』
それぞれに武器を構える猟兵達の動きに、苛立ちに支配された女の口元が僅かに変わる。変わったその形は……肉食獣が獲物へ牙を剥くかのような、凶暴なそれだ。
『……邪魔をするなら、容赦しないわ。殺して研究材料にされても文句は聞かないわよ!』
瞳に狂気の色を輝かせ、女がその腕を広げれば……どうしたことか、周囲に先程突破した空兵が、再びその姿を表すではないか!
……いや、よくよく見ればその正体は幻影だ。彼らは自発的に動く事なく、女の指示に従い援護を行うだけの存在だ。
ならば、この女を倒しさえすれば……!
果たして猟兵は、傲慢な悪意の塊である謎の妖精兵団の女指揮官を討てるだろうか。
激しい決戦の火蓋は、今まさに切って落とされようとしていた。
====================
●第ニ章、補足
第ニ章、ボス戦です。敵は『謎の軍団妖精魔法兵器隊長『サイコ』』となります。
(作中では『女妖精』や『指揮官』などで表現されます。ご了承ください。)
敵の攻撃手段は幻影兵への攻撃指令を中心とした物となります。
また魔力の扱いなどにも長けた、いわゆる『後衛タイプ』の敵となります。
多数の幻影から繰り出される猛爆をどう掻い潜り、敵を攻撃するかが重要な要素となるでしょう。
幻影については魔力的な存在であり、『物理的な撃破等は不可能』な存在です。
ただし自発的な行動は行わず、『サイコ』の指示を受けた行動のみをとるように動きます。
この存在をどうにかするには、本体である存在(『サイコ』)の撃破が一番手っ取り早い手段ではありますが……何か思いついた方は、試してみても良いでしょう。
傲慢な悪意の塊が、猟兵に牙を剥く。
猟兵よ。この悪意を討ち、惨劇の未来を食い止めよ!
皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
====================
ルルティア・サーゲイト
「またぞろ雑魚を呼ぶか。ならば蹴散らしてくれよう……天武桜花陣!」
先に見せた動きと同じ動きで桜吹雪を形成!
「と、でもやると思うたか!」
しかし、今度は桜吹雪に紛れてレイブンシフトで鴉に変じて散会し、包囲する。散会前に爆撃されると一気に溶けるのでな。
「飛ぶ、小さい、数が多い。お主等と同じよの? 言うたであろう、近接攻撃の方が厄介とな」
そのまま鴉の鋭い嘴で啄む! 集り群がる鴉の大軍。まさか自分毎吹っ飛ばす等という選択を取れる奴ではあるまい。最適解なんじゃがな。
「クカカッ、分かるか? お主の指揮官としての無能さを突いておるのじゃよ」
頭上で集い、大上段からの獅王凌破刃をオマケでくれてやろう。
●
妖精兵の軍列を率いる女妖精。彼女の指の動きに従う様に、喚び出した空兵の幻影がそれぞれに銃を、掌を猟兵に向ける。
先程までの戦いと同じ様な数的不利な状況。確かに数は戦闘における重要な要素ではあるのだが……
「……ふん、またぞろ雑魚を呼ぶか」
ニヤリ、と口の端を歪めてルルティアが呟く。
忘れてはいないだろうか? 猟兵達はつい先程、分厚い壁の如く密集していた空兵の群れを突き破りこの場へ辿り着いたのだ、という事を。
つまり何が言いたいか、というとだ。
「ならば、蹴散らしてくれよう!」
この程度の敵の群れなど恐るるに足らぬ、という事だ。
自信と戦意を滾らせて、ゆらりと振るわれるルルティアの大鎌。先程の突破戦の時にも見せたその動きに呼応するかのように、薄紅色の花弁がルルティアの周囲を漂い始める。
花弁はやがて吹雪の如き吹き荒れる。その中を円を描く様な緩やかな足取りで、鎌を振るったルルティアが舞い踊る。
そう、この動きは……
「──天武桜花陣」
まるで先程空兵の一群を打ち破った時の焼き直しか。舞い散る桜吹雪に呑まれれば、女妖精のその身を切り裂く事も容易だろう。
……だが、それは敵の側も承知のこと。
『目標、前方の桜吹雪──撃てッ!』
女妖精の命に従い、空兵の幻影から銃弾砲弾魔弾の雨霰が放たれた。
全てを吹き飛ばす殺意の驟雨。いくら厄介な目眩まし、触れれば切れる面倒な存在であっても、触れる前に散らせば良いだけの事と。
二番煎じが上手くいくとでも? と。女妖精のルルティアを見るその表情には、嘲りの色に染まっていた。
だが。
「──と、でもやると思うたか!」
その表情は、ルルティアのセリフを聞いて驚愕へと変じる事となる。
迫る殺意。それが桜吹雪ごとルルティアの身を吹き飛ばす、その直前……ルルティアの身体が無数の小さな黒い何かに変じ、散じていく。
『──避けられた!? 鴉!?』
必殺の砲撃が空振りに終わった事に、驚きに声を挙げる女妖精。彼女の言う通り、ルルティアが変じたのは小さな鴉だ。
……そう、ルルティアの狙いは最初からこの状況を作る事にあったのだ。これ見よがしな大鎌も、生み出した桜吹雪も、全てはブラフであったのだ。
「「「飛ぶ、小さい、数が多い。お主達と同じよの?」」」
女妖精の周囲を包囲するかのように、小さな鴉達が乱れ飛ぶ。その全てから響くルルティアの声に、女妖精はどれを狙えば良いかと迷いを見せた。
そうしてその迷いが……ルルティアにとっては、機となるのだ。
「「「さっきも言うたであろう。近接攻撃の方が厄介とな!」」」
言葉と共に鴉の大群が一斉に女妖精に群がれば、女妖精の身体を啄まんと鋭い嘴が襲い掛かる!
次々迫る鋭い嘴の数々を前にして、パニックに陥ったのか。悲鳴と罵詈雑言を溢れさせながら、女妖精が逃げ惑う。
(傲慢そうなこやつの事じゃ。まさか、兵に命じて自分ごと吹っ飛ばす等という選択を取れる奴ではあるまい)
もっとも、それこそがこの状況を脱する最適解であるのだが……それを口にする義理など、ルルティアにはない。
このまま一気に敵を突き、毟り、トドメの一撃を加えてやろうとルルティアは考えていた。
『ッッッ~~~!! 撃て! 私の周りの鴉を、全部追い払えッ!』
「「「──なっ
!?」」」
だがルルティアのその目論見は、自分ごと敵を薙ぎ払えと言う女妖精のその指令によって瓦解する事になる。
恐らく、恐慌状態に陥った事で『冷静な判断』を下せなくなったのだろう。一刻も早く自身を囲む連中を追い払いたい一心で、命令を下したのだ。
……その指令は、理性が発した物ではない。本能の赴くままに発した物であるのだが……
「……クカカッ! ギリギリで最適解を選ぶとは、真に無能という訳でもないようじゃの?」
それでも、九死に一生を掴む『何か』は持っているのだろう、と。
幻影兵から乱れ飛び始めた射撃や爆発から逃れつつ、ルルティアは女妖精に抱いていた評価を若干上方修正するのだった。
戦闘の最序盤で、敵に大きなダメージを与える事は出来なかった。
だが心理的には大きなダメージを与え、強い動揺を与える事は出来た。この結果はきっと、今後の猟兵達の動きに良い影響を齎す事だろう。
成功
🔵🔵🔴
アネット・レインフォール
▼心情
軍を用いた連爆か、単純だが効果的だな。
だが猟兵陣がジリ貧になるのは避ける必要がある。
…正直、これは外道の技だ。
消耗も激しい。
剣術ですら無い。
しかしその威力は覚えている。
思い出せ、あの右腕の赤い剣を――。
▼POW
敵が狂人なら話は通じないだろうが…
回収の目的等は問い質そう。
【洸将剣】でドラゴンテイマーのクリムゾンキャリバーを再現。
『…来い、ダイウルゴス!』
(不可なら只の亜竜)
黒竜の群れは砲撃の防壁と攻撃を兼ねて連続突撃。
突進や噛みつきで指揮官を狙うが、
幻影も相殺・牽制目的で巻き込もう。
有効打に欠けるなら群れに紛れて
単車で追走し轢き逃げ…もとい一閃。
消耗後は他の猟兵に任せる。
連携、アドリブ歓迎
●
(成程。空兵達と比べるとあの指揮官とやらは『鉄火場』の経験は少ないらしい)
乱れ舞う銃火と爆発を逃れ飛ぶ黒い影。指揮官の統制も何も無い、乱れに乱れた戦場の有様を、アネットの目は冷静に見つめていた。
……指揮・統制がしっかりしていた敵。先程の戦いでも敵は被害を受けつつも何度か立て直ししぶとい抵抗を見せていた。
だが、目の前の敵の指揮官はどうか? 確かに優れた魔力、軍を用いた攻撃と、厄介な能力は持っている。
しかし、だ。虚を突かれ、逡巡し、挙げ句の果てに簡単に恐慌状態に陥るその姿を見ると……『戦場慣れ』はしていないように、アネットには思えてならなかった。
(……そう言えば、奴は『天空城』から何やら回収したがっていたのだったか……)
ふと、アネットの脳裏を過るのは敵の目的だ。
元々、敵は天空城の宝物庫から魔道具を回収しようと動いていた部隊であるのだという。
敵の行動原理、正面戦闘の不慣れさ。あとひとつ、何かがあれば敵の正体に繋がりそうではあるのだが……
「いや。まずは目の前の戦闘か」
首を振って意識を戦場に戻せば、ちょうど味方が離脱し射撃音も収まりかけていた所であった。
(……しかし、何度見ても単純だが効果的だ)
敵の指揮官である女妖精は無数の幻影兵を動かし射撃に徹して動く構えを見せている。
つまり敵を攻撃するのであれば。無数の砲火との銃撃戦か、その砲火を掻い潜っての接近戦となるはずだ。
銃撃戦は、物量差を考えれば現実的ではない。では接近戦ならば? 先んじて動いた猟兵の様に、対策があるのならば可能なはずだ。
そんな対策は……
(あるには、ある。だが……)
アネットの脳裏を過るのは、『ある男』が振るった一振りの刃の姿。
かつて相対したその男は、一つの世界を滅ぼさんとしたオブリビオン・フォーミュラに助力をした存在である。
圧倒的な存在感、そしてその実力は……アネット程の猟兵ですらも苦戦を強いられた程の強敵であった。
──あれ程の男が使っていた、あの力。あの剣を振るう事が出来るのならば、目の前の女妖精が喚び出した幻影など、尽く食い尽くす事が出来るはずだ。
とは言え、だ。
(……正直、外道の技だ)
そう。あの力は外道の物。剣術でも無いし、消耗している自分にコントロールしきれるのかという不安も過る。
だが、それでも。その威力は……アネットの身体が、魂が、覚えているのだ。
(仲間の猟兵がジリ貧になるのは避ける必要がある。で、あれば……)
試してみる価値は、あるはずだ。
思い出せ、あの男の姿を。思い出せ、その右腕の赤い剣を──。
『ハァ、ハァ……よし、鬱陶しい鴉はいなくなったわね? なら、次はアンタの番よ!』
総員、構え! 女妖精の声が、遠くに響く。
自身の身体を狙う殺意の数々を感じるが、アネットの心は乱れない。アネットの脳裏には、既に一振りの刃が描かれていたからだ。
「……碌式・洸将剣!」
言葉と共にアネットの掌が輝けば、その掌に想像から創造された一振りの刃が顕現する。
禍々しき赤の刀身を持つ剣。全てを喰らい同化する獰猛な竜の力が宿る、呪われし剣。
その刃の名は、クリムゾンキャリバー。ドラゴンテイマーと呼ばれた謎の男が振るっていた、あの刃であった。
『な、なによ、その魔力……!? えぇい、撃て! 撃てッ!』
禍々しいオーラを漂わせるその刃に、女妖精の言葉にも僅かな震えが混じる。回収しよう、という声すら出なかったのは……恐らく、その刃に秘められた危うさを感じ取ったからであろうか。
ともかく、女妖精の指令に従う様に、遂に幻影達の攻撃が放たれる。無数の銃弾が、爆発が、アネットの身体を貫き弾かんと迫り……
「──来い、ダイウルゴス!」
その全てを、アネットが振るう刃から生み出された無数の黒竜が防ぎ、飲み込み、同化して防ぎ切る。
そしてそのまま幻影兵に攻め入れば……黒竜と幻影兵がまるで相殺するかのように、次々と消滅していく。
『……無機物の同化!? それにユーベルコードの相殺まで!? なんて厄介な能力を……!』
竜達の動きをひと目見て、その属性を看破したのか。女妖精が声を上げる。
だが、その声に応える義理はアネットには無い。そもそも、アネットの側にも応える余力が無いのだ。
(……思った以上に、コントロールが厳しいな……ッ!)
強力な力には、それ相応の代償が付き纏う物だ。
アネットが生み出した剣は、その能力だけを見ればまさしく最上級。だがその内側に秘められた呪い、厄介さもまた、最上級である。
自身を蝕むかのようなその力に、『洸将剣』の本来の能力であるユーベルコードを相殺する能力をも付与しているのだ。
消耗が一層激しくなるのは、自明の理であると言えるだろう。
「だが、これで……軍勢の半分程度は奪ってやったぞ」
遂に消耗限界を迎えて膝を突くアネット。その表情は激しい消耗による疲労と、それ以上の達成感に満ちていた。
そう、アネットはその言葉の通りに……女妖精の喚び出した幻影兵の大部分を打ち消す事に、成功したのだ。
(奴らの素性は聞き出せなかったのは気がかりではあるが……後は、任せた)
こうなれば、残った猟兵達ならば大丈夫であろう。
僅かに残った力を振り絞り、アネットはそのまま後退。後事を仲間達に託すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
楠木・美羅
@POW
こ、この人が隊長――思ったより小さい人ですね(悪気はない)
でも能力は厄介極まりないみたいですね。
遠距離は不利かも…とにかくまずは風の魔力を纏って回避に専念します
最初は速度を控えて多少の被弾は覚悟の上で立ち回ります
風の魔力を使った【トリニティエンハンス】
状態異常力の強化で少しずつサイコの周囲を毒で囲んでおきましょう
あの手のタイプは魔力感知能力も高そうのでバレそうですから
近づかない小賢しい手を使う後衛と思わせる布石にします
(気づかれなければラッキーで)
油断したら速度を上げて砲撃を回避
一気に近づいて手元で螺旋状に固めた風の塊をぶつけます!
容赦をしないっていうのはこちらの台詞ですからっ
レオンハルト・ヴァイスレーベ
・心情
ー自分の腹いせに村を滅ぼそうだなんて許せない!
戦う術はなくとも…ボクにできる事はある!
・行動(POW)
戦闘中は味方をかばう盾役に徹します。
『サイコ』の「支援攻撃令」に対しユーベルコード「無敵城塞」を使用。
他の攻撃に対しては、
【オーラ防御】や【かばう】を駆使して守りに徹します。
(人を惹きつける様な、澄んだ鈴の音の声で)
「ボクが皆の盾になります!その間に奴を-!」
(防御時、誓いの剣を眼前に翳しつつ)
「ボクは進む-“救世”の道を…。ここで倒れる訳にはいかないんだ!」
目的はあくまでボスの全ての攻撃を他の猟兵から守る事です。
その為なら深手の傷を負う事も厭いません。
アドリブ・連携等は一任します。
●
『ぐぐぐ……人間が、猟兵がっ、邪魔ばかりして!』
度重なる猟兵の攻撃に翻弄され、火力の源泉である幻影の多くを打ち消された女妖精。その眉は釣り上がり、瞳は怒りの色に染まっていた。
もし、この場に力無き民がいれば。憤怒に震える女妖精と、その怒気に呼応する様に歪む魔力に怯え竦む事だろう。
だが。
(こ、この人が隊長──思ったより、小さい人ですね)
猟兵である美羅ならば、その威圧感に耐える事は難しくない。
……確かに、怖い。それに持っている能力もまた、厄介極まりなさそうだ。遠距離での魔法の撃ち合いは(相手の火力が多少落ちているとは言え)厳しそうである。
だが、それでも。美羅にも退けない理由はあるのだ。
「容赦をしないっていうのは、こちらの台詞ですっ」
風を纏い、美羅の身体が滑る様に宙を舞う。
美羅は心優しき善性の少女だ。そんな彼女がこの場にいるのは、身勝手な暴力を許せぬが故。目の前の悪意の塊が齎す惨劇を防ぎたいが故だ。
……そしてそんな、弱き人を守りたい。禍々しき悪意を許せないという、そんな思いを抱いていたのは、美羅だけではない。
「──腹いせに村を滅ぼそうだなんて、許せない!」
白銀の鎧に身を包む、少年騎士。レオンハルト・ヴァイスレーベ(白の従騎士・f23015)も、美羅と同じ思いを抱いて動いていた。
オブリビオンにより郷里を滅ぼされ、自分ひとりが生き残ってしまったという境遇を持つというレオンハルトである。
それ故に、理不尽な暴力に対する怒りは人一倍強いのか。その翠の瞳には、強い使命感の炎が宿っていた。
とは言え、だ。
(ボクの力では、まだあのオブリビオンに一太刀を浴びせるのも厳しいかもしれない……)
考えなしにその手に握られた『誓いの剣』を振るう程、レオンハルトは短慮な少年では無かった。
彼我の実力差を考えれば、聳える城壁に挑むが如く簡単に弾き返されてしまうだろう。それは分かっている。
ならば、やるべきことは──。
(戦う術はなくとも……ボクに出来る事は、ある!)
少年少女の使命に燃える眼の光が、女妖精の身体を射抜く。
物理的な圧力すら感じるような強い意思。だが女妖精は、怯まない。
『ゴチャゴチャと、うっさいのよ……! 総員、構え!』
それどころか、怒りの炎を更に燃え上がらせて。その手が掲げられ……
『──撃てェッ!!』
幻影達の砲火を、二人に叩きつけんと振り下ろされる。
飛び来る鉛玉、魔力の爆炎が、死を呼ぶ驟雨となって降り注ぐ、が……
「これくらい、ならっ!」
猟兵との交戦を経て消耗したか、その密度は最初の頃と比べれば随分と減じていた。これならば、回避に専念すれば避け続ける事は難しくは無いだろう。
幻影達の砲撃は美羅の身体を捉える事なく地に降り注ぎ、虚しく爆発し散っていく。
だが、そんな状況に美羅の頬から流れるのは一筋の冷たい汗だ。
(……これじゃあ、攻撃が出来ないですっ)
地を穿つ砲撃の威力は、美羅の想定を僅かに越えていた。もし被弾をすれば無事では済まないだろう。
……美羅は当初、多少被弾は覚悟の上で敵の周囲を毒で囲み、攻撃に出るプランを考えていた。
だが、相手の攻撃の威力を考えれば、攻撃を受けるのは望ましくない。しかしそうなると、攻撃に移れない。
逆に、避け続ける事は難しくない。だが攻撃に移るなら被弾は避け得ない。
二律背反、と言えるこの状況。もし安全に攻撃に移るのならば、相手の攻撃の隙を作る『何か』があれば……
「……あっ!?」
そんな一瞬の思考が、ほんの僅かに集中力の乱れを生んでしまったのか。滑るような美羅のステップが僅かに乱れる。
そうして生まれた隙を見逃す程、女妖精は甘くはない。
『油断したわね! 薙ぎ払えッ!』
美羅の身体を目掛けて降り注ぐ魔弾。体勢を立て直し回避に移るが……避け切れない。
こうなれば、覚悟を固めようと……身体の内に宿る魔力を前回に高め、降り注ぐ雨をその身で受けようとした、その時だった。
「──やらせないっ!」
美羅と砲火の間に割って入る、白い影。剣を翳し身代わりになったのはレオンハルトだった。
次々に降り注ぐ、銃火、爆炎。牙を剥く暴威に、身に纏う白銀の鎧も凹み、穿たれていく。
『自分から飛び込んでくるなんて、バカじゃ──?』
その光景に、女妖精の口から溢れたのは嘲笑の声。だがふとした気付きに、その声に疑問の色が混ざる。
──おかしい。鎧は確かに砕かれているのに、血は流れていない……?
『──ッ! 防御系のユーベルコード! 小癪な真似を!』
そしてその疑問の答えに気付けば、悔しげに声を上げるしか無い。そう、今のレオンハルトは全身を超防御モードへと変えていたのだ。
……戦う術はなくとも、自分に出来る事を、と。レオンハルトが見出したのは、己の身体を仲間の盾とする事だったのだ。
(ボクは進む──“救世”の道を……!)
かつての故郷の滅び、無力な自身に塞ぎ込んでいた日々。その日々を越えたレオンハルトが目指す未来は、“救世”の道だ。
過去より這い寄り今と未来を奪う者、オブリビオンから全てを救うその道は、きっと険しく、果ての無い道となるだろう。
だが、その未来を突き進む為にも──こんな所で、倒れるわけには。屈するわけには、いかないのだ。
「ボクが盾になります! その間に、奴を──!」
澄んだ鈴の音の様な声が、戦場に響く。人の心を惹き付ける高潔なその響きが美羅の耳を打てば……美羅の身体も、使命を果たすべく動き出す。
「──やぁぁぁぁあああああ!!」
己を鼓舞するかの様な裂帛の気合。全身の魔力を最大出力で活性化し、女妖精との距離を一気に詰める。
その掌に螺旋状に蠢く風の塊を形成し……突撃の勢いそのままに、妖精の胴へと突き入れる!
『ぐっ、ぁぁあああああ──!?』
凝縮された捻子曲げられた風が、爆ぜる。女妖精の小柄な身体は開放された暴風に翻弄され、吹き飛ばされ……天上へと続く巨岩の一つへ、叩きつけられる!
「──やりましたっ!」
「いえ、まだです!」
確かな手応えを感じたのだろう。喜びの声を挙げた美羅の油断を諌めるかのようなレオンハルトの声が響く。
そう、美羅の一撃は確かに通じた。だが、しかし……敵は、まだ倒れてはいない!
『よくも……よくも、やってくれたわねっ!』
その全身に大きな傷を負いながらも、怒りの咆哮を上げる女妖精の戦意に翳りは見られない。
だが、判るものには判るだろう。その強力な魔力が、随分と減じている事を。
……あと、ひと押し。あと、一撃。決める事が出来れば、この悪意を祓う事は適うはずだ。
迫る決着の時。
猟兵達は最後の瞬間に向けて、その武器を構えるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ティエル・ティエリエル
SPDで判定
ミフェットやアテナと一緒に突撃だー☆
アテナと一緒にミフェットがお歌を歌っているところを守るね!
「空中戦」で飛び回りながら襲い掛かってくる幻影の攻撃を「オーラ防御」で防いで回るね!
痺れを切らせて敵の指揮官が前に出てきたら反撃のチャンス♪
アテナが瞬間移動する直前に引っ付いて一緒に敵の目の前まで飛んでいくよ!
アテナに気を取られているところにアテナの影から飛び出して【妖精の見えざる一刺し】で反撃だよ♪
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
ミフェット・マザーグース
WIZで判定
アテナとティエルと一緒だよ
ミフェットは、二人が攻撃するために囮の役!
歌でUCを打ち消せば、ボスは前といっしょにミフェットのことを狙うはず
ボスが姿を見せて命令をだした時がチャンス!
ミフェットはそれまで全力で攻撃を打ち消し続けるね
UC【一人ぼっちの影あそびの歌】
「歌唱」と「楽器演奏」で、妖精達の爆撃を打ち消すよ
危なくなったら打ち消しきれなくなるのを「見切り」して脱出!
♪
号令一つで大爆発 妖精部隊の大魔法
もひとつ次の号令一つ
だけど妖精聞いてない 大爆発で聞こえない
しばらくしてから 妖精たち 「次の命令はなんですか?」
アテナ・アイリス
ティエルとミフェットと一緒に行くわよ。
ミフェットの歌を効果が発揮されるまで、幻影から守るために、【オーラ防御】【武器受け】【第六感】【勇気】と「アキレウスの鎧」
の防御能力を使って、攻撃から身を挺して守る。
仲間には、傷一つつけさせないんだから。
サイコが姿を見せた瞬間に、UC『クロノグラフ・アクセス』を使って、
サイコの目の前に瞬間移動し、「アーパスブレード」と「クラウ・ソラス」と【2回攻撃】を使って攻撃をする。
前回の失敗も踏まえて、一人で突出したりしないわよ。
飛ぶ直前に、ティエルもこっそり連れて行って、二人で協力してサイコを倒すわよ。
わたしたちの連携の前には敵はいないんだから。
●
猟兵達の猛攻は、遂に女妖精を追い詰めるに至った。
だが、それでも。女妖精のその戦意は、挫けない。それどころかその怒りは収まる様子も見せず高まり続けるばかりであった。
その背の翅を羽撃かせ、女妖精が空を飛ぶ。猟兵達が手出しをするのが難しい高所を取ると……
『私をここまでコケにした罪……絶対に許さない! 一方的に嬲ってやるわ!』
、憤怒の表情のままに、そう宣言する女妖精。幻影も呼応するかのように周囲へ位置を移し、その掌を、抱える銃の筒先を猟兵達へと向ける。
……彼女のその選択は、戦術的には間違っていない。自身の長所と地の利を得るのは、戦術の常道であるからだ。
だが、しかし。彼女は忘れてはいないだろうか?
──号令一つで大爆発 妖精部隊の大魔法
──もひとつ次の号令一つ
彼女が相手をしている者達は、猟兵で。
──だけど妖精聞いてない 大爆発で聞こえない
──しばらくしてから 妖精たち 「次の命令はなんですか?」
猟兵達の中には、『ユーベルコードを無効化する』技を持つ者もいるのだと言うことを!
(妖精たちの爆撃は、さっきみたいにミフェットが打ち消すよ……!)
テナーリュートが紡ぐ調べと少女のソプラノボイスが童歌を作り上げ、戦場へ響き渡る。
そう、この歌は……先程の空兵部隊との戦いで、敵の攻撃を封殺したミフェットが紡ぐ歌。
猟兵達へ迫りくる爆撃、そしてその射手である幻影に向けられた歌の力が戦場へ満ちれば満ちる程……その威力は減じ、幻影もまたその姿を維持できずに消えていくのだ。
『くっ、またユーベルコードの無効化を……! えぇい、まずはあの小娘よ!』
女妖精のその指令に従い、残る幻影達の火力が集中する。
次々に迫る銃弾、爆炎。その殺意は歌に触れれば次々と霞の様に消えていく。
だが、火力に厚みが増した事で歌の効力を逃れた物が出たか。数条の火線が、ミフェットの身体を穿たんと降り注ぐ。
しかし、それらもミフェットの身体に傷をつける事は、適わない。
「フフーン☆ こんなの効かないもんねっ!」
飛来する魔力の爆炎は、ミフェットの周囲を飛んでいた妖精……ティエルがその身を呈して盾となる。
小さな体躯で年もこの場にいる者の中では最年少のティエルだが、その実力は全ての猟兵を見渡しても随一の物。そんなティエルの護りは、弱体化した爆破魔法程度が抜ける程軟なものでは無い。
その身に宿る魔力で爆破魔法を無力化すれば、ティエルの表情に浮かぶのは今日一番のドヤ顔だ。
「ミフェットには、仲間には、傷一つつけさせないんだから!」
アテナもまた、ティエルと共にミフェットを守る壁役として奮戦する。
魔力弾への対応をティエルに任せ、アテナが担当するのは銃弾への盾だ。
……アテナは先の戦いで一瞬の隙を突かれた事を悔いていた。その悔いが注意力と集中力を一層高めたのか。今のアテナの立ち振舞には、一分の隙も無い。
そしてその上で自身が今まで培ってきた数多の戦闘経験、身に纏う武具に宿る力を活かせれば。アテナの護りは、まさに『鉄壁』の一言だ。
『何よ……何なのよ、アンタ達はっ!』
繰り出される幻影からの砲撃。本来なら戦場を蹂躙するはずの圧倒的なその火力。
だが自慢の火力は尽く封じられ、取り巻きとなる幻影そのものも一人、また一人とその姿を消していく。
率直に言えば、ジリ貧だ。遠からずその火力はゼロと化し、女妖精に勝ちの目はなくなる事だろう。
……だが、このままならば。猟兵の側も、決定打を与える事は難しい。女妖精がその気になれば、逃げ果せる事は不可能ではないはずだ。
『……逃げる? 私が? ここまで侮辱されて?』
しかし、女妖精のその目は。もはや完全に怒りで我を失い、冷静な判断が出来ない状態であった。
……彼女がもし、百戦錬磨の指揮官であったならば。ここは逃げの一手を打って、捲土重来を狙っていたことだろう。
だが、彼女はとある猟兵が見抜いた様に、『実戦慣れ』していない指揮官だ。その上、強力な力と、それに裏打ちされた傲慢さを持つ存在でもある。
そんな存在が、こんな状況に追い詰められて。素直に逃げ出すだろうか?
『……もういい! 私が、自分で! ケリを着けてやるわ!』
答えは、否だ。
表情を怒りに染めたまま、女妖精がその身に宿る魔力を練り上げれば……忽ち彼女の側の空間が歪み、一人の人影を作り出す。
『──来なさい、もうひとりの私!』
『邪魔者を殺せばいいのね? 分かったわ!』
喚び出されたその影は、女妖精の並行存在だ。姿も、才覚も、その力も。全てがほぼ同じという、まさに同一存在だ。
そんな強力な力を持つ二体のオブリビオンが手を携えて。自ら猟兵達を討たんと迫る。
……だが、それこそが。三人が狙っていた状況なのだ。
「来たわね……」
二体の敵が自らこちらへ舞い降りるその姿を見て、護りに専念していたアテナとティエルが動き出す。
迫る一対の女妖精。その敵の姿を不敵な笑みを浮かべ、アテナは青と金の魔力剣を抜き放つ。
このまま、迎撃するつもりか? ならばその迎撃ごと叩き潰してやると、女妖精の表情も揃って歪む。
だが、その予想は裏切られる。
「──ティエル!」
「うんっ!」
アテナの呼び声に応えて、ティエルの小さな身体がアテナの胸元へしがみつく。
そして、次の瞬間……アテナの姿が、掻き消える!
『『──なっ!?』』
一瞬のその出来事に、揃って目を見開く女妖精。
一体何が起きたというのか。一瞬、『何種類もの時計』の姿は見えたのだが……
「──貰ったわよッ!」
『何っ、ッぁあ!?』
直後、響いたアテナの声。青と金の閃光が閃けば……女妖精の片割れが、その身体を斬り裂かれて虚空へと消えていく。
『──そうか、『転移』を!』
アテナが纏った力の残滓を感じれば、女妖精もその力の正体に気がつくだろう。
【クロノグラフ・アクセス】。アテナの持つそのユーベルコードは、時空と空間を操作する呪文である。
女妖精の指摘通り、アテナはそのユーベルコードを用いて距離を一気に詰めて……中空を飛んでいた妖精の片割れを、二振りの魔力剣で切り捨てたのだ。
『でも、残念ね! そっちは平行存在! 本体はこっちよ!』
だが、アテナが切り捨てたのは一対の女妖精の内の片割れだ。もう一体、本体の方は未だ健在。
……中空では、もう一度刃を振るうには足場が無い。それどころかアテナの身体は既に地へと向けて自由落下を始めている状況だ。
『折角の攻撃が届かなくて残念ね! そのまま地面に落ちて潰れて──』
勝ち誇った様に哄笑する女妖精。だがその歪んだ笑みは……
「とぉぉぉりゃああああ!!」
再び響いた声に、掻き消された。
『──妖精っ!? どこから
……!?』
迫りくる、小さな妖精姫……ティエルのレイピア。鋭い切っ先が纏う暴風の如き風のうねりを、女妖精は確かに見た。
刃が狙うのは、自身の胸の中心だ。回避は、間に合わない。刃が迫り、突き立てられて……
──パァァァァンッ!!
圧縮された空気が弾かれ、女妖精のその身体がまるで破裂した風船の様に弾け飛んだ。
四散した身体は即座に魔力へと変わり、虚空へ混じり、消えていく。
女妖精のその意識もまた、『躯の海』へと還っていったはずだ。
──アテナが時空を渡る、その直前。ティエルはアテナにしがみつき、共に時空を渡っていた。
そしてアテナがその刃を振るい女妖精の片割れを屠った、その瞬間。アテナの身体から離れ、残る女妖精を討たんと狙っていたのだ。
「やったー! ボクたちの勝ち、だー☆」
えいえいおー! と勝鬨をあげるティエル。その姿を、ミフェットと彼女の触手で傷一つなく回収されたアテナが笑みを浮かべて見守っている。
……この成果は、偶然ではない。ミフェットとティエルとアテナがそれぞれに知恵を働かせ、己に出来る最善を尽くした結果である。
そう、完璧な『作戦勝ち』と言って良いだろう。
……こうして、猟兵達は迫る謎の空兵軍団を打ち破った。
辺境の農村は、無事に守られたのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『温泉でリフレッシュ!』
|
POW : 熱い温泉で耐久チャレンジ!
SPD : 打たせ湯でコリをほぐそう!
WIZ : 魔法の電気が流れてる温泉で血行を促進!
|
●
辺境の農村へ迫りくる悪意は、猟兵達の活躍により打ち砕かれた。
辺境の農村は、無事に守られたのだ。
さて、戦闘を終えて一息を入れれば。猟兵達の鼻を硫黄の香りが擽るだろう。
……ふと、猟兵達はグリモア猟兵が言っていた言葉を思い出す。
この地には、温泉があるのだ、という事を。そしてこの辺境地域には、珍しい風習があるのだという事を。
曰く、『新年最初の日の出を浴びると、一年を健康的に過ごせる』。
曰く、『その日を浴びる時は、出来る限り穢れ無き身体で居る方が良い』。
お誂え向きに、月は西の地へと傾いて。東の空は太陽の光に少しずつ白み始めている。
……この後の予定が無ければ。戦いの疲れを癒やしつつ、地域の風習に身を任せてみてはどうだろうか?
====================
●第三章、補足
第三章は日常章。お楽しみの温泉の時間です。
この温泉は辺境地域の小山の頂き付近に存在する、絶景の露天風呂です。
人工物は麓の村人たちが持ち込んだ木桶程度であり、それ以外に人の手は入っていません。
まさしく天然自然が生んだ秘湯、と言った所です。
温泉は混浴となります。水着着用は義務となりますのでご了承下さい。
水着やタオル等、基本的に必要そうな物はヴィクトリアが手配しておりますが、個人的に持ち込みたい物がある方はプレイングでどうぞ。常識の範囲内であれば持ち込めるはずです。
またお声掛けを頂けましたら、ヴィクトリアがお相手させて頂きます。お気軽にお声掛け下さい。
日の登る頃には、麓の村の住人達が新年最初の風呂を楽しむ為にやってきます。
中心となる描写はそれまでの猟兵達のお楽しみの時間が中心となるかと思います。
心置きなく、新年最初の湯をお楽しみ下さい。
とは言え、公序良俗はお守り下さいね?
それでは、皆様の楽しいプレイングをお待ちしております!
====================
ルルティア・サーゲイト
「何、水着を着ねばならぬのか。別に良いぞ、妾は……見られるのが嫌いではない! む、そういう問題ではないか。まあ、そうじゃろうがな。くかかっ!」
まー、妾は痴女ではないので冗談であるが……冗談じゃよ?
ではゆるりと湯を愉しむとしよう……ふむ、温泉はサムライのイメージじゃが、A&Wでも温泉地はあるのか。まあ、温泉自体はあるじゃろうし、テルマエの文化もある。ここでは何か作法が違ったりするのかのう? 文化の違いを愉しむのも異世界人の嗜み故にな。
で、汚れ無き体で初日の出を、浴びるのじゃな?
ならば誰も居ない所なら裸体に浴びても問題はないのじゃな!
「うーむ、この開放感!」
ふふ、癖になってしまったのう。
楠木・美羅
@WIZ
ふあー、皆さん無事でよかったですね
折角のご厚意ですし、水着は去年買ったのがありましたからそれでいきましょう
混浴というのも恥ずかしいけど水着着用なら大丈夫
守ってくれた人にもお礼を言いたいですね
見当たらなかったら仕方ないのでとりあえず楽しみましょう
魔法の電気の流れるお湯ってフレーズ、なんか凄いですよね
ちょっと興味本位で試してみます。
はわぁ、絶景を見ながらこうしていると頑張ってよかったと思います
今回わたしは守られて何とかでした。もっと精進しませんと
決意を新たにまだまだわたしは頑張りますっ
●
既に日付は変わり、新たな年の始まりの日へと時は進んでいた。
「何、水着を着ねばならんのか?」
東の空は既に白み始め、新年最初の陽光の訪れを待つばかり。そんな小山の秘湯にルルティアの声が響く。
山頂から見下ろす、手付かずの自然の数々。絶景の天然温泉というロケーションであり、猟兵達のテンションも高まるのだが、そこばかりは僅かな不満であるらしい。
ルルティアの唇は不満を表明するかのように、ほんの少しだけ尖りを見せていた。
「ま、まぁ後から村の住人の方々も来られるみたいですし、ねっ?」
そんなルルティアを宥めているのは美羅だった。
美羅はその柔らかな頬をうっすらと染めていた。その理由は、湯の温かさだけでなく、慣れぬ混浴という環境への羞恥の念もあって物だ。
……まぁ、現時点では男性陣は近くにいない訳だが。気を利かせてくれたのだろうか?
「冗談じゃよ、冗談」
まぁ元々そこまで不満でも無かったしのぅ、と。生真面目な美羅の言葉を受ければ、ルルティアの表情も緩む。
……が、その目にはどこか悪戯っぽい光が浮かんでいた。
「まぁ、水着は別に良い。なにせ妾は……見られるのが嫌いではないからのう!」
ばーん、と効果音が浮き出るかのような自信満々なルルティアのその言葉。威風堂々と胸を張るその姿は、『恥じる物など何も無い』と態度で宣言するかのようだ。
「お主も良いものを持っておるのじゃから、堂々と見せつければ良いのじゃよ!」
「ふぇ!? み、水着を着てれば大丈夫って、そういう事じゃないですーっ!?」
積極的に『攻める』ルルティアの言葉と態度には、生真面目に『守る』美羅はただただ翻弄されるばかり。
新しいオモチャを見つけた、というかのように。ルルティアの口から、楽しげな笑いが溢れ出た。
「くかかっ! ……まー、ゆるりと湯を愉しむとしようかの」
ひとしきり笑って湯場へと歩みを進めるルルティアを、美羅はどこか疲れたような表情を浮かべながら追っていく。
だがそんな疲れは……掛け湯をして、湯へと身体を預ければ、即座に湯に溶け、消えていく。
「ふあー……」
思わず漏れ出た美羅の溜息。その溜息は、ただ湯が気持ちよくて溢れた訳では無い。
今日、美羅は麓の村に住む人々の命を守る為に激しい戦いを潜り抜けた。ギリギリの所もあったし、恐怖に身を強張らせる場面もあった。
だが、それらを全て乗り越えて……こうして絶景の景色を眺めていると、『頑張って良かった』と心の底から思えて来る。そしてこれからももっと頑張って精進しなければと、その決意を新たにする。
……美羅の溜息には、そんな諸々の感情が籠められているのだ。
(ふむ、温泉はサムライのイメージじゃが……アックス&ウィザーズにも、温泉地はあるのか)
そんな万感の思いに耽る美羅の横で、ルルティアも想いを巡らせる。
様々な世界を渡り歩き、オブリビオンと戦うのは猟兵の務めである。だがそれはそれとして、世界ごとの文化の違いを愉しむのもまた、異世界人である猟兵の嗜みであるとルルティアは考えていた。
そんな考えを持つ故か。ルルティアの脳裏を過るのは、世界ごとの温泉や浴場に関する考察であった。
(まぁ、温泉自体はこうしてあるわけじゃし、テルマエの文化もあろう。そうなると考えるべきなのは……)
「……ここでは、何か作法が違ったりするのかのう?」
「ふえっ? え、えーっと……どうなんでしょう……?」
ふっと溢れた疑問に、美羅はうーん、と唸り声を上げる事しか出来なかった。
現在の美羅はこの世界出身のグリモア猟兵の家に居候している身であるが、そういった作法に関して気にした事は無かったからだ。
うーんうーん、と唸る美羅。どこまでも生真面目な反応を見せる少女を好ましく思いつつ、ルルティアはそっとその場を離れていく。
(ま、周囲に迷惑を掛けなければ、多少の無作法は許されるのじゃがな?)
そう、周囲に迷惑を掛けないのであれば、多少のやんちゃは許されるのだ。(無論、限度はあるが)
……グリモア猟兵が語っていたこの地域の風習。要約すれば『新年最初の陽を、穢れなき身体で受けると健康になれる』というその風習。
その風習を実行する為には……身体を飾る水着すらも、本来ならば不必要であるはずだ。
温泉の隅、岩場の影に忍び込むと、ルルティアはそっと水着を脱ぎ捨てる。メリハリこそ少ないが細く柔らかな肢体が、艷やかな肌が顕となる。
「……うーむ、この開放感!」
この感覚は癖になってしまったかのう、などと。開いてはいけない扉に手を掛けながら。ルルティアは裸体のままに初日の出を待つ。
……その背後では、電気風呂の思いの外強い刺激に響く美羅の可愛らしい悲鳴が、浴場に響いていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アテナ・アイリス
ミフェットとティエルと一緒に、夏に買ったお気に入りの水着を着て温泉に入るわよ。
(あら、ちょっと胸のあたりがきついわね・・・。また大きくなったのかしら?)
お湯につかりながら、今までの冒険の事とか、最近の事を語り合いましょうかね。
でも、温泉にはやっぱりお酒よね。あー、とってもおいしいわ。
うふふ、楽しいわねぇ。
ちょっとおしゃべりに夢中になったったわね。酔っぱらってきたわね。
(立ち上がると、「ひらり」と音がした。)
ん、何か聞こえたようだけど・・・・気のせいよね。
あ、そこのイケメンのお兄さんたち、一緒にお酒飲みましょうよ。
あら、なにみんな慌ててるの?
※NG無し。アドリブ、連携、大好物です。
ミフェット・マザーグース
お風呂はハダカではいるもの
でも温泉は混浴で、男のヒトも女のヒトもいっしょにはいって
女の子は男のヒトの前でハダカになっちゃダメだから・・・
ヴィクトリアが水着を用意してくれて良かったぁ
入る前に、体操・・・じゃなくて、背中を流すのがルール、だよね?
あ、ティエル!ちゃんとかけ湯をしなきゃダメ!
はじめてのお風呂だから大人しく
湯船に入ったら、溶けないように注意しないと
アテナとティエルといっしょにおしゃべりしようかな?
あ、でも、アテナが男のヒトと仲良くなる時は、邪魔しないように見送るよ
・・・?
わー!? アテナ、だめー!
慌てて髪の毛をにゅーんと伸ばしてアテナの色々をあわてて隠すよ!
※アドリブ連携大歓迎だよ
ティエル・ティエリエル
ミフェットやアテナと一緒に温泉だー♪
温泉だー♪と服をすぽぽーんと脱ぎ捨ててさっそく飛び込もうとしたところを止められるよ!
混浴だから水着着用しないとダメなんだね!
温泉に飛び込んだら仰向けでぷかぷか浮きながらアテナ達とおしゃべりだよ♪
アテナがお酒を飲んでいる姿を見たら、ボクもボクも~ということでお酒の代わりにオレンジジュースを堪能♪
アテナが立ち上がって移動したら、ボクもついていくぞーとぴょーんと飛び上がって回り込むね☆
ボクがお酌してあげるぞーとオレンジジュースの瓶を持ち上げて、ちょうどいい感じに視線を遮っちゃうね♪
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
●
「わーいっ! 温泉だー♪」
「あ、ティエル! ちゃんと水着を着て、かけ湯をしなきゃダメっ!」
喜び勇んで服をスポーンと脱ぎ捨て突撃しようとしたティエルを、慌ててミフェットが捕まえて。
去年も見たようなそんな一幕もあったりもしたが。アテナとミフェットとティエルの三人は、本来の目的である温泉の時間を堪能していた。
「あぁ、気持ちいいわぁ。それにお酒も美味しいし」
うふふ、と湯の温度と酒精に頬を染めながら微笑むアテナ。
彼女の身を包むのは、昨夏買ったお気に入りの水着。健康的な肌を惜しげもなく晒す白のビキニはアテナの活動的なイメージを示しつつ、年頃の女性らしい色気も感じさせた。
まさに『才色兼備』足るアテナの肩書通りの水着なのであるが……
(……ん、あらっ? ちょっと胸の辺りがきついわね?)
胸の辺りからほんの僅かに違和感を感じ、思わず小首を傾げる。
……太った? いいや、そんなはずは無いはずだ。これはきっと、『また大きくなったから』だろう。
「アテナ、どうかした?」
「ん、なんでも無いわ」
一部の層が聞けば血涙を流しそうであるが、アテナにとってはさして大きな悩みでは無いのだろう。ミフェットの問い掛けにもアテナは軽く首を振る。
見れば、ミフェットもしっかりと水着(新型スク水)着込んでいた。昨夏購入し家に置いてあったのを、グリモア猟兵が届けてくれたらしい。
まだまだ成長途上の少女の身体を包む濃紺色のその水着はデザインよりも機能を再重視しているのだが……なぜか不思議な魅力を見るものに与えるのだ。
……ミフェットが小首を傾げる。ジッと見つめるアテナの事を不思議に思ったのだろう。なんでもないわ、と呟いて、アテナは誤魔化す様に酒器を煽る。きっと酒が回っているから変な風に見えたのだろう。
「アテナっ! ボクもっ、ボクも飲みた~い!」
「ダメよ、ティエル。お酒は大人になってから、ね?」
そんなアテナの様子に興味をそそられたか、ティエル(ミフェットの対となる様な旧白スク水姿だ)が自分にも分けて欲しいとせがむが、そこはきっちり大人としての誠意ある対応である。
とは言え、ぶーっとむくれるティエルをそのままには出来ない。オレンジジュースを酒器に注いでお裾分けすれば、むくれたティエルもたちまち笑顔へと変わっていった。
(……ふふっ、なんだかんだで長い付き合いよね)
にぱっと笑う小さな妖精姫と、湯に溶けない様にむむむっと気合を入れている沼の少女。気心知れた間柄の年下の友人達を眺めながら、アテナは思う。
思えば、こうして三人で一緒に行動するようになってから随分と長い時間が経った。
勇者の伝説を求めたあの冒険。辺境の開拓村を巡る死霊使いとの決戦。天空城、群竜大陸。その全てを、力を合わせて乗り越えてきたのだ。
……きっとこれから、戦いは厳しさを増していくはずだ。だが、三人で力を合わせればその全てを乗り越えて……今のような楽しい時間へと、変えていけるはず。
(今日はそんな想い出を語り合ったり……あらっ?)
これからの為に、今までを三人で振り返ろうかと口を開こうとしたアテナだが、ふっと何かに気がつく。
視線の先にいるのは……良く見知った、生真面目な剣士だ。その隣に腰掛けているのは、今日この場に皆を送り込んだグリモア猟兵だろうか? 二人揃って足を湯に浸け、何やらグラスを傾けているようだ。
……折角だし、今日のことの礼を言っておこうか。思い立ったアテナが立ち上がった、その時だった。
──ひらり。
(……ん? 何か聞こえたようだけど……気のせいよね?)
その違和感に、普段のアテナだったら気がつくだろう。
だが今のアテナは程良く(?)酒精が回っており、若干冷静な判断力を失っている状態だ。
その上、ティエルが「ボクもついていくぞー!」とぴょーんっと飛び上がってアテナの周囲を飛び回った事で、注意力もそちらへと向けられてしまっていた。
故に、アテナは今の自分の状態に気付けない。
「そこのイケメンのお兄さんたち、一緒にお酒飲みましょうよ!」
声を掛け手をふるアテナの胸が、ぷるんと揺れた。その胸を包む布は……どこにもない。
そう、今のアテナはいわゆる『トップレス』という状態に陥っていたのだ。
「……!? わぁーっ!? アテナ、だめーっ!」
その状態にようやく気付いたミフェットが慌てて髪をにゅーんっと伸ばしてアテナの身体を包んで隠すが……時既に遅し、である。
どたばたきゃいきゃいと騒ぐ三人娘。相手の側からどう見えたのかは分からない。
だが、ともあれだ。今回アテナに送るべき言葉は……『酒は飲んでも呑まれるな』、この一言に尽きるだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アネット・レインフォール
▼心情
うーむ…今回は謎が残ったな。
情報が少ないので推測の域を出ないが…
水面下で大きな組織が動いている可能性も否定できない。
こうしたケースで連想するのは闇ギルドの存在だが…。
ともあれ、折角の秘湯。
しっかり1年の煤を落とすとしよう。
…想定より消耗したしな
▼WIZ
(足湯で色々と考えながら)
ヴィクトリアが手隙なら挨拶がてら依頼の報告。
近隣で妙な噂や事件が続く事を懸念し
情報収集など留意するよう伝えておく。
…とは言え、あまり堅い話ばかりもな?
ワインのような日本酒を無限換装から出し
飲める者で軽く楽しもうか。
ま、こんな打ち上げも偶にはいいだろう。
ああ、言い忘れていた。
――今年も宜しく、だな。
連携、アドリブ歓迎
●
(うーむ、今回は謎が残ったな……)
女性陣が思い思いに湯を楽しむ中、アネットは一人温泉の隅で空を見上げて物思いに耽っていた。
考える事は、今日遭遇した空兵軍団の事だ。所属不明の敵、統率も取れた軍隊然とした敵、魔力や魔道具を収集するというその目的。
……単独犯である、とは考えづらい。それなりに大きな組織が動いている可能性は否定できないだろう。
(こうしたケースで連想するのは、闇ギルドの存在だが……)
だが、確証を得るには得られた情報が少なすぎる。この状況ではどれだけ推測を巡らせようと、その粋を出る事は無いだろう。
「……止めておくか」
思考を打ち切り、足を包む湯へと意識を向ける。心身に積もる煤の様な物が湯へと溶け出していくような錯覚が心地いい。
……あれだけ強力な力を振るえば当然の事ではあるのだが、今日の消耗は想定していたそれを遥かに上回る物だった。この場で出来る限り回復を図るのは、決して悪いことではないだろう。
そんな風に足湯を楽しむアネットの背に、柔らかな女性の声が掛けられる。
「お疲れ様です、アネットさん」
「んっ? あぁ、ヴィクトリアか」
そこに居たのはこの場に猟兵達を送り込んだグリモア猟兵、ヴィクトリアだった。
……グリモア猟兵である彼女なら、情報の断片から何かを見出してくれるかもしれない。話したいことがあるんだと隣へ誘えば、ヴィクトリアも遠慮がちに隣へ腰掛け足を湯へ浸す。
「……このお湯も、一年ぶりですか。それで、お話というのは?」
「あぁ、今日の依頼で気になった点がいくつかあってな……」
奇妙なまでの敵の練度の高さ、分からぬ所属、彼らが回収したものをどうしたかったのか、その目的……
もしかしたら近隣で妙な噂や事件が続く可能性があるとアネットが懸念を呈すれば、ヴィクトリアの表情にも僅かな緊張が過る。
「……情報収集などには、留意したほうがいいかもしれないな」
「そう、ですね。わかりました」
アネットの提言に素直に頷き謝辞を述べるヴィクトリア。警戒を強めましょうと言う彼女の瞳には、強い意思の光が輝いていた。
きっとヴィクトリアは言葉通りにこの地域に関する警戒を強め、情報収集に当たるはずだ。アネットの懸念もいくらかは収まる事だろう。
……まぁ、今すぐにどうこう、という事は無いだろう。それに肩に力を入れすぎても良い結果には繋がらない物だ。
「……とは言え、年の瀬や新年にあまり堅い話ばかりもな?」
言いつつアネットが手をかざせば、そこに生み出されるのは稲妻上の魔力の塊。この塊の中は、アネットがユーベルコードを利用して作り上げた異界へと繋がっている。
その異界へ向けて念じれば、飛び出てくるのは一本の酒瓶とグラスが二つ。
「あら? 日本酒ですか?」
「飲めるか?」
声をあげたヴィクトリアに尋ねれば、帰ってくる答えは『お酒は苦手ではありませんから』と控えめな答えだ。
それは重畳、とグラスに注げば……ワインを思わせる様なフルーティーで爽やかな香りが二人の鼻を擽るだろう。
「折角の機会だ。こんな打ち上げも、偶には良いだろう」
「ふふ、そうですね。では、折角ですので御相伴に与らせて頂きますね?」
グラスを軽く触れ合わさせて、それぞれに口にするのは昨年の労をねぎらう言葉。
そして続く言葉は、新たな年も変わらぬ友誼をと願う誓いの言葉だ。
「──今年も宜しく、だな」
「こちらこそ、変わらぬお付き合いの程を……」
しっとりと流れていく一時。だが好事魔多し、というべきだろうか? そういう時こそトラブルに巻き込まれるのが、アネットという男でもあるらしく。
──そこのイケメンのお兄さんたち、一緒にお酒飲みましょうよ!
掛けられた声に目を向ければ、そこには良く見知った美しい女エルフの姿が。
だがその姿は……
「ブッ!? ゲホッ、ゲホッ!」
「ちょっ、み、水着! 水着がっ!?」
あまりにも衝撃的なその姿に、場の空気も何もあったものではない。
……まぁ、なんにせよ。今年も一年、アネットの周りは賑やかになりそうであった。
●
「あんれまぁ。今年もまーた先客がおるでねぇか」
猟兵達がそれぞれに湯を楽しみ、そろそろ東の山々から陽がその姿を見せようかという頃。ようやく、村の住人達がその姿を現した。
やってきた住人達は、去年同様年寄りが中心だ。そんな彼らに猟兵達は、ある者は深く礼をして、ある者は満面の笑顔で出迎えて、ある者は手を振ってと……その反応は、人それぞれ。
先に湯を頂いていた事に関しては、去年同様に水臭いことは言いなさんな、と一言だけだ。『来年はワシらももっと早く来なけりゃならんかのう』とおどけた声も飛べば、猟兵の側からも笑いが起こるだろう。
……こうして和やかなやり取りが出来ているのも、猟兵達がその身を呈して迫りくる脅威を打ち払ったからこそだ。
そして、新年最初の陽が昇る。
一年で一番最初に地を、森を、生命を照らす神聖なその光を穢れなき身体で受け止めて。人々は皆で揃って、今年の無病息災を祈って太陽を拝む。
祝福が下るかどうかは、やはり神のみぞ知るところ。だが猟兵達の心は、確かに安らぎ癒やされたはずだ。
新年、明けましておめでとう。今年も猟兵達に、多くの幸いが訪れますように。
大成功
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