ぐるぐるカップとおかしのアリス
●
ここは、パステルカラーが踊るファンシーな遊園地。
ぐるぐるまわるティーカップに座り、少年と少女は向かい合っていた。
ぐるぐる、ぐるぐる。ぐらーりぐらり。
ポットの帽子を被った少年が頭を傾けると、手持ちのカップに紅茶が注がれる。
によによ笑う少年とは対照的に、少女は人形のような無表情で俯いていた。
少女の乾いた唇が、小さく、小さく、動く。
『いいこでいるの、つかれちゃった……』
フリルドレスの袖から覗く手首を反対の手で掴んで、青痣ごと握りしめる。
キュートなお顔は綺麗だけれど、その体にはどれだけの傷が隠されているのだろうか。
「ここでは幾らでも毒を吐いてもいいんだよ、アリス! 我慢する必要なんてない」
アリス――自分の名ではないその名で呼ばれると、少しだけ胸が軽くなる。
無理矢理与えられた甘過ぎる服にも、名前にも。少女はもう、うんざりしていたから。
それでも何を話していいか分からないし話す気にもなれない、と少女は首を振る。
少年は肩をすくめて、自分が注いだ禍々しい色の紅茶を一口飲んだ。
ぐらーりぐらり。ああ、頭が揺れて気持ちがいい。
「帰りたくないんだね、アリス。それならずーっとここにいるといい!」
キミなら、ステキな毒入りスイーツになれるよ。
少年は自分のカップを少女に差し出した。
――いいの? 少女はすがるように視線を上げた。
口元だけで笑う少年の瞳はポットに隠されて、本心は覗けない。
それでも――あの人の手よりも、この手を取りたいと思ったのだ。
そうして、少女は自分から紅茶を飲んだ。
毒がめぐって、ぐるぐるぐるり。
まわり続けるカップの中のスイーツとなって、少女は穏やかな眠りについている。
●
「あんなに小さい子が、こんなカタチで『絶望』しているとはね……」
猟兵達に召集をかけたグリモア猟兵メリー・アールイー(リメイクドール・f00481)は、心苦しそうに表情を曇らせていた。彼女自身も外見は幼女なのだが、百年の時を器物として過ごしたヤドリガミである為、その心境は孫くらいの子を想う祖母に近いようだ。
今回猟兵達に向かってもらう世界はアリスラビリンスだ。
その国にはとあるアリスの扉があるのだが、扉を見つけた事で元の世界の記憶を取り戻したアリスは、深い絶望に沈んでしまっている。
このまま忘れていたかった。帰りたい家なんて、私にはない――。
そんなアリスと、この国のオウガは出会ってしまった。
心を閉ざした人形のようなアリスをいたく気に入ったオウガは、この国をアリスの過去を元にした『絶望の国』に塗り替えて誘惑をする。
「……ずっとここにいるといい、というオウガの誘いに、アリスは頷いた。そして今はオウガの能力によって『おかし』の姿に変えられているよ。このまま放置を続ければ、アリスの中の『毒』が増幅していずれはオウガに変異してしまうだろう。そうなる前に……アリスを絶望から救ってもらいたいんだ」
絶望の国の舞台は、ファンシーに飾られている小さな遊園地だ。
ティーカップのアトラクションの敷地に、オウガとおかしのアリスはいる。
この国を作り替えたオウガは『ぐらぐらくん』という、ティーポットの頭を持つ元愉快な仲間だ。毒や眩暈などの異常状態を付与してくるので、戦闘の際は対策が求められる。
また、戦闘場所はティーカップのアトラクションの中になる。面積はかなり広めだが、床は常に回転しているので、足場はとても不安定な状態だ。
そして多数のティーカップも回転していて、その中央のテーブルには、それぞれおかしが置かれている。その中のどれかが、おかしに変えられたアリスなのだろう。
猟兵が現地へ跳べば、まずオウガが立ち塞がり戦闘となるはずだ。その間にアリスを探すのは困難だろう。まずは、ティーカップに被害が及ばないように戦ってもらいたい。
「あたしが見た予知はここまでさ。オウガを倒してアリスが元の姿に戻るならいいんだが……アリスの心の毒が浄化されないうちは、元に戻れない可能性もあるね。アリスの心をどうやって絶望から救い出すのかは……あんた達に任せる事になる。おかしの姿でも、声は届くはずだ……彼女に、あんた達の言葉を伝えてやっておくれ」
また、この国のオウガは一体だけではないはずだ。他のオウガが襲ってきた時には、その対応も必要となる。どんな敵が現れるかは不明だが、臨機応変に対処して欲しい。
「もう一度言うが、あたしからのお願いは『アリスの心を絶望から救って欲しい』、だよ。彼女にとって、どんな道が救いになるのか……彼女と一緒に考えてやっておくれ」
準備が出来たら送ろうか。メリーはボタン型のグリモアを回転させて転移の光を放つ。
どうかこの幼いアリスの道に光が見つかりますように。そう願いを込めて。
葉桜
OPをご覧いただきありがとうございます。葉桜です。
ファンシーに飾られた甘ったるい世界ですけれど。
それが、彼女にとっての『絶望の国』なのです。
第1章。ボス戦『ぐらぐらくん』。
遊園地のティーカップのアトラクションが戦場です。
回転する床と回転するティーカップに注意して戦って下さい。
ティーカップのどれかには、おかしに変えられたアリスがいます。
被害を加えないようにお願い致します。
第2章。冒険『回り続ける世界』。
心を閉ざしているアリスに語り掛けて、絶望から救って下さい。
詳しい状況は幕間でご説明致します。
第3章。集団戦
『???』。
オウガの群れが再び襲ってきます。
詳しい状況は幕間でご説明致します。
アリスは10歳前後の少女です。
名前は不明です。予知によると『甘い名前』のようですが……。
過去も詳しくは語られていません。OPの予知が少しばかりのヒントです。
後はアリスと会話しながら、情報を引き出して下さい。
アリスとは、第2章と第3章で会話が出来ます。
今回の依頼の目的は『アリスの心を絶望から救う事』です。
アリスの扉はこの世界にあります。アリスも扉を見つけています。
しかし、アリスが扉をくぐる事は必須ではありません。
この物語のエンディングは、皆様の導きによって決まります。
第1章のプレイングは、OP公開から募集開始です。
プレイングを締め切る際には、マスターページやツイッターで告知致します。
また、第2章以降でプレイング募集期間を設ける場合もご連絡致します。
それでは、ご参加お待ちしております。
第1章 ボス戦
『ぐらぐらくん』
|
POW : 紅茶をどうぞ!
【毒紅茶】を給仕している間、戦場にいる毒紅茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
SPD : くるくるくるり、僕と踊ろう!
【踊り】を披露した指定の全対象に【毒紅茶を飲みながら回り続けたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
WIZ : くらくらぐらぐら楽しいでしょう!
技能名「【部位破壊(三半規管)】【猛毒】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
十文字・武
アドリブ連携詠唱省略ok
子供の絶望に付け込むオウガもオウガだが、こんなに成るまで放っておいた親も何をやってるんだか
まだ餓鬼のオレが言う事でもないが
って、予知によると痣?虐待?……まさかな
っと、考え込んでる暇は無ぇな
まずはこのイカレタオウガを畳んじまってからだ
指定UCで高速移動状態へ
回転する床も、身を低く獣の様に歩幅を広く走り続け安定させろ
止まって回転しなけりゃ、惑わされることも無い【ダッシュ・戦闘知識】
ティーカップを避けながら斬撃を飛ばせ【なぎ払い】
戦闘中に紅茶を飲みたくなる自分に笑うしかねぇが、これが奴の業か
毒よりは自傷のがまだマシだ。紅茶を欲して乾く舌を噛み締め耐えろ【激痛耐性・狂気耐性】
ニオ・リュードベリ
アリスの事情は分からないけれど、オウガになってしまうなんて結末は見過ごせない
早く助けないと……
彼らのアリスへの誘いに湧き上がるのは強い猜疑心
それをレギオンにしてぶつけてやる!
上手く敵を誘い込んでね
けれどティーカップは攻撃しちゃ駄目だよ
アリスがどこにいるか分からないもんね
あたし自身はランス片手に応戦するけど、足場が悪くて下手に動けないや
それなら相手がこちらに来るのを待ち受けるだけ
その紅茶、美味しいんでしょう?
それなら飲ませにおいでって【誘惑】するよ
勿論毒入りなんていらないけどね
少しくらい飲んでも【激痛耐性】で耐えよう
相手が上手くこちらへ来たなら【串刺し】するよ
次は甘くて素敵なお菓子を用意してね!
●
ぐ る ぐ る ま わ る こ う ちゃ は い か が ?
ぐ ら ぐ ら ま わ る ティー パー ティー へ よ う こ そ !
かわいらしく作られた機械音声とポップなBGMが、お客様を出迎える。
二人の猟兵は、遊園地のティーカップアトラクションの敷地内にテレポートされていた。
ピンクにブルーにイエロー。パステルカラーのカップが周りを回転している。このカップの中のどれかに、おかしにされたアリスがいるはずだ。
「子供の絶望に付け込むオウガもオウガだが、こんなに成るまで放っておいた親も何をやってるんだか……まだ餓鬼のオレが言う事でもないが」
「アリスの事情は分からないけれど、オウガになってしまうなんて結末は見過ごせないよ」
互いに記憶のない未成年のオウガブラッドとアリス適合者である、十文字・武(カラバ侯爵領第一騎士【悪喰魔狼】・f23333)とニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)は、オウガによって歪められた少女の物語のエンディングを覆しにやってきたのだ。
「事情ねぇ。予知によると、痣が……まさかな」
『虐待』。その言葉を口にしようとした武の声を遮るように、爆音が響いた。
グ グ グ グ ラ グラ マ ワル マワ ル。
グルグル グッスリ ユメノナカ! ミンナワスレテ オネンネシヨウ!
突如最大音量で流れた音声と逆再生され音楽に、二人は思わず耳を塞ぐ。
すぐに元のBGMに戻ると、ティーカップの中央で踊っていたティーポットの少年オウガが、ぷんぷん怒って跳びはねた。
「下手な事言わないでよね! 聞きたくない言葉を聞いたら、アリスが壊れちゃうかもしれないだろ。折角おかしになって安らかに眠ってるんだ」
代わりに僕とお茶会をしようよ。回る床で更に回転する少年は、ぐらんぐらん頭を揺らしながら手持ちのカップに毒紅茶を注いでいる。
「……っと、考え込んでる暇は無ぇな。まずはこのイカレタオウガを畳んじまってからだ」
「そうだね。あなたのアリスへの誘い……素直には信じられないよ!」
ニオは自分が抱いた猜疑心により【リアライズ・バロック】を召喚すると、少年オウガへ解き放った。
ウソツキウソツキシンジラレナイアマイコトバニハドクガアル――。
疑りの怪物達がおぞましい声で鳴きながら、ティーカップの隙間を飛びまわり、少年オウガの元へと集結した。少年オウガが飲もうとしていたカップ目掛けて、その左手ごと喰らいついてやる。毒紅茶を取り込んだ怪物は、役目を終えると溶けるように消えて行った。少年オウガは怪物に飲み込まれて失った手首の先を、きょとんと見つめている。
「あーあ、もっとくらくら楽しくなれるはずだったのに……」
毒紅茶の毒は本物だが、少年オウガにとっては能力を強化する薬のようなものなのだろう。敵の強化を防いだ今が攻め時だ、と武は【悪喰魔狼と狼少年】を発動させる。
「世界を騙せ! 自身を騙せ! 【ディスガイズ・ビースト】ォォッ!」
武が吼えた直後、その場にはもう誰もいなかった。彼に憑依したオウガ『悪喰魔狼』の獣魂呪詛が彼の身体を屈強なオウガへと変貌させようとする。それを拘束服で無理矢理ギチリと人型に抑え込んでいるが、長く鋭く伸びた爪は獣のそれだと一目で分かるだろう。
身体強化するとほぼ同時に、その溢れんばかりの脚力で回転床を蹴っていた。身を低く歩幅を広く、獣のような走法で体勢を保ったまま少年オウガへと駆けて行く。
「止まって回転しなけりゃ、惑わされることも無ぇだろ!」
走りながら回転カップの動きを見定め、直線上に敵を捉えた所で斬撃を放つ。獣爪から飛ばされる真空刃は、少年オウガの身体の中央に深々と食い込んで、鮮血の十字を描いたのだった。
「そんなに頑張らないでよ、おにーさん。気分転換に、僕とくるくるしよう」
きっと楽になれるよ。痛みを感じていないのか、少年はくるくる回って踊り続ける。
くるりくるり――その姿を視界に入れてしまった武は、異様な感情に襲われてしまう。
(紅茶を飲んでまわりたい? はははっ、何なんだそれ、ふざけてやがる!)
笑うしかない精神攻撃。新しく注いだ紅茶を届けに来た少年オウガはもう目の前だ。
ヒュッ――カァン!!
カップを受け取ると思われた武の手から放たれたのは、獣爪の斬撃だった。しかし、その不意打ちは少年オウガの頭のポットにより弾かれたようだ。ヒビが入っていないか、小さな片手が心配そうにポットをさすっている。
それにしても、何故武は精神攻撃から逃れられたのか。その答えとして、彼の口の端からは自身の赤い血が流れていた。紅茶を欲して乾く舌を、己の牙で噛み締め服従させたのだ。
「毒よりは自傷のがまだマシだ」
「うわー、頑張るねぇ……それなら、そっちで大人しくしてるおねーさんはどう?」
くるりくるり――少年オウガは踊りながら武から離れて、足場が悪くて自由に動けずにいるニオへ近付いて行く。その時、ニオは俯いた姿勢のまま、思いもよらないお願いをしたのだ。
「その紅茶、美味しいんでしょう? 私にも貰えないかな」
「勿論さ! 君にもきっと満足してもらえるはずだよ!」
そのお願いに笑顔で飛び込んできた少年オウガは、回転床を器用に跳んで、ニオにカップを差し出した。カップの中では禍々しい色の紅茶の水面が静かに揺れている。
ニオはカップを受け取るように手を出して――掴んだのは、少年の腕。
「来てくれてありがとう。でもね、毒入りの紅茶はいらないんだ」
欲しかったのは、このチャンス。自分から近づいてきてくれた少年オウガを引き寄せながら、美しき白銀の槍を突き刺したのだ。
「うああ! ひどい騙したな!」
「ごめんね、次は甘くて素敵なお菓子を用意してね」
ひどいひどいと泣きながら、少年は回転床を使って遠ざかっていく。
この紅茶だって、とっても甘いのにな。
甘くて気持ちが良くなる毒紅茶が欲しい人、他にもいない?
ちゃぷんちゃぷん。ポットの中にはまだまだ沢山残ってる。
失った片手、切り刻まれた胴体。血色に染まる少年はそれでもくるくる回る。
穴の開いたどてっ腹からは、飲みこんだ紅茶がちょっぴり漏れていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
改めてオウガって元の姿があるんだな、と。愉快な仲間だけでなくアリスもそうなってしまうのか…。
踊られる前に倒す。
残念ながら甘い物は苦手なんで遠慮する。
【存在感】を消し【目立たない】ようにしてUC菊花で奇襲をかける。代償は寿命。攻撃には【マヒ攻撃】を乗せ【暗殺】を仕掛ける。
相手の物理攻撃は【第六感】で感知【見切り】で回避。回避しきれない物で可能なら黒鵺で【武器受け】での受け流しからの【カウンター】。それも出来ない物は【オーラ防御】と【激痛耐性】【毒耐性】【呪詛耐性】【狂気耐性】でしのぐ。
回る事への誘惑は、呪詛か狂気かよくわからんが多分そのあたりだと思う。
●
ぐ る ぐ る ま わ る わ た し も あ な た も 。
ぐ ら ぐ ら ゆ か い に お ど り ま し ょ う !
おかしく歪んだ夢の国。絶望の遊園地に人知れずひとつの影が過ぎる。
壊れかけの身体で愉快に踊り続ける少年オウガは、何者かが無断でアトラクションに乗り込んだとしても気付きもしない。
己の気配を消した隠密活動を得意とする黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は、回転する床を無音で駆けると、ティーカップの中へと忍び込んだのだった。
速やかに侵入したカップの中央には、苺のジャムクッキーが用意されている。
(見た感じ、ただのお菓子のようだけれど……これがアリスの可能性もあるのか)
今の時点では判断出来ない。まずは元凶のオウガを倒すのが先だ、と。
瑞樹はカップの中で身を潜めながら、外の様子を窺う。
回転床の上で回転するカップの中で、回転しながら踊る少年オウガを視界に映すと、一瞬ぐらりと目の前が揺れた――瑞樹は即座に視線を反らす。回る事への誘惑は、呪詛か狂気か。どちらにせよ少しばかり耐性のある自分なら、強い意志を持てば抵抗出来るようだ。
瑞樹はカップが少年オウガへ最も接近するタイミングを見計らっている。
「はっ!」
そして、絶望を断ち切る為、飛び出すように昇った青月の瞳が煌めいた。
大振りのナイフ『黒鵺』が鞘から抜かれる。射干玉の黒刃が多彩に飾られた少年オウガの衣装ごと、肉や骨まで届くように深く、息をもつかせぬ早業で切り刻んでいく。
命の光と引き換えに九度閃いた斬撃は、深紅の『菊花』を艶やかに咲かせた。はらはら舞う衣装の切れ端、そして――。
「あ、あれ……なんで僕の足があそこにあるの?」
尻もちを着いた少年オウガは、切り飛ばされて回転床に落ちる自分の足を只茫然と見つめるしかなかった。
「おにーさんひどいよ。これじゃあ上手に踊れないじゃないか」
短くなった足と片手で器用にぴょんと跳び上がり、回転するカップの縁に着地した。膝下を無くした足をぶらぶらと揺らして、頬を膨らませている。瑞樹と同じで、少年オウガは痛みも毒も麻痺も効きにくい強い耐性を持つ体質のようだ。
「踊らされるつもりはないんでね。……お前、元は愉快な仲間だったんだろ。そんな姿になってまで……何がしたかったんだ?」
「勿論、アリスを助けたいのさ! 不幸せな世界に帰るより、僕達とこの国で過ごす方がずっと幸せだろう? それなのに君達が邪魔ばかりするから、もう滅茶苦茶だ!」
不思議の国で命を授かった心優しい疑似生物、だったモノ。心も体も歪んで壊れながらも、その願いは初めからひとつだったのだ。しかし、その方法を認めるわけにはいかない。
それがアリスの願いを叶えるたったひとつの方法だとは、限らないのだから。
少年オウガは片手で注いだ毒紅茶で喉を潤して、一緒に飲むかいと瑞樹を誘うが、直ぐに首を振られた。甘いものも、毒の甘さで誤魔化される結末も、瑞樹の好みには合わないようだ。
大成功
🔵🔵🔵
ラリー・マーレイ
僕の力で通用するかは分からないけど、女の子が危険な目にあってるなら何とかして助けないと……。
アトラクション内に転送されたら、剣を抜いて身構え敵の姿を探す。
毒や状態異常への耐性には特能を持ってない。長期戦は不利だ。
みんなの攻撃でダメージを受けてる。短期決戦で勝負を仕掛ける!
UC【死点打ち】。加速の呪文を【高速詠唱】し、身体速度と思考速度を強化。
相対的に鈍速化した回転する設備の中を一気に敵に向かって駆け抜ける。
手足を切り落としても反応が薄かった。人間の姿は擬態かな?血が流れてないなら心臓は弱点じゃない。なら、奴の存在の中心部は……。
頭部のティーカップへ【捨て身の一撃】!これでどうだ!
ノル・イース
……おい。さすがにその身体じゃもう踊れないだろう。
しかし元愉快な仲間が因果なことだな。アリスと一緒に過ごしたいと言いながらおかしになったアリスを食うつもりなんじゃないのか。
グルグルは勘弁だ、【サイコキネシス】で自分の身を少し浮かせて移動しよう。回らずに済む。
愉快な仲間は『心のしるし』を持ってるんだろう? お前の場合はそのティーポットか? 何にせよ毒紅茶を解放してやろう。サイコキネシスでポットの蓋を開けて傾け、中を空にする。無理ならメイスで殴って壊すか。後は、必要なら徒手に生んだレイソードでオウガの胸を貫こう。
――アリスはオウガじゃないお前といたかったと思うぞ。もう一度愉快な仲間に生まれて来い。
●
ぐ る ぐ る ま わ る よ 。 ど こ ま で も 。
ぐ ら ぐ ら う た お う 。 ご い っ し ょ に !
片手と両足を切り落とされた少年オウガは、ぐるぐるまわるティーカップに腰掛けて、BGMに合わせて歌を口遊んでいた。体中を鮮血で染めても、その笑顔が苦痛に歪む事はない。
「……おい。さすがにその身体じゃもう踊れないだろう」
「そうなんだよ、こんな体にされて困っちゃうよね。もうお届け出来ないからさ、おにーさんから紅茶を飲みに来てくれない?」
ノル・イース(I'm "0"・f24304)は【サイコキネシス】で自分の身体を回転床から浮かせながら、少年オウガへ近付いて行く。紅茶を飲む為ではなく、彼に尋ねておきたい事があったのだ。
「紅茶はいらない、グルグルは勘弁だ。……しかし、元愉快な仲間が因果なことだな。アリスと一緒に過ごしたいと言いながら、おかしになったアリスを食うつもりなんじゃないのか?」
ノルの質問に驚いた少年オウガは勢いよく首を振り、手をバタつかせながら否定した。
「そんなことしないよ! アリスの今のお菓子の姿は、オウガになる途中なんだ!」
僕はポットでアリスはお菓子。これからお茶会仲間になるのだと少年オウガは主張する。ポットの影から覗いたのは純粋な子供らしい笑顔だった。
「おにーさんも仲間に入れてあげようか?」
そこに悪意は無かったとしても、その誘いの答えはNOだ。
差し出された紅茶を受け取る事無く、ノルは見えないサイキックエナジーによって少年オウガのポットの蓋を外そうとした。
「うわあっ、何をするんだよ!?」
慌てた少年オウガは自分の蓋をガッチリと押さえて抵抗する。自分の身体は幾ら傷つけられても無反応だったのに、やはりこのオウガは……。
その頃、もう一人の猟兵もこの絶望の国へとテレポートされていた。
「僕の力で通用するかは分からないけど、女の子が危険な目にあってるなら何とかして助けないと……」
真っすぐな決意を胸に、ラリー・マーレイ(少年冒険者・f15107)は戦場となっているティーカップのアトラクションで、仲間と少年オウガが対峙している光景を目の当たりにする。
「僕も手伝うよ! ペーザンメ・ヌーン・ターイ……!」
自分には毒やぐるぐるまわる事への耐性はない。長期戦は不利だと判断したラリーは、【死点打ち】に必要な加速の呪文を即座に唱えた。ラリーの魔力に反応して、ショートソードに彫られたルーンの文字が淡く光る。
アクセラレーション――身体も思考も強化されたラリーの世界では、ぐるぐるカップの回転も止まったように鈍足化して見える。超速思考の中、ラリーは少年オウガが乗るカップまで一気に駆け抜けた。
(手と足が切り落とされてる……それでも反応が薄そうだ。奴の存在の中心部は……)
ラリーが目星を付けた少年オウガの急所、頭部のティーポットが彼の瞳には光って映る。そしてそれと同じ答えを導き出していたノルも、美しいアイスブルーのオーブメイスを握りしめていた。
「愉快な仲間は『心のしるし』を持ってるんだろう? お前の場合はそのティーポットか?」
「くっ……ダメダメ、ダメだよ! これだけは壊さないで……!」
残念ながら、少年オウガの願いは聞き入れられない。
前方からメイス、後方からショートソードがポットを狙い、インパクトの瞬間に魔力を収斂させた強烈な殴打が、神すら殺せる致命点への斬撃が、少年オウガの『命』を砕く。
「これでどうだ!」
「うぁああああ!!」
毒紅茶だけでなく、心と魂の入れ物でもあったポットを破壊された少年オウガは、悲鳴を上げて回転床に倒れ込んだ。ノルとラリーに見下ろされながら、まわる、まわる……。
「あーあ、やられちゃったか……もう一度、アリスとお茶を飲みたかったな……」
「今のままの君じゃ応援出来ない。……でも、」
「アリスはオウガじゃないお前といたかったと思うぞ。もう一度愉快な仲間に生まれて来い」
続けたノルの言葉に、ラリーも頷く。鋭い瞳の奥の朝焼け色はとても温かかった。
そうかなあ。少年は薄く微笑んで静かに歌う。
お か し の ア リ ス は ゆ め の な か 。
な ま え を よ ん で 、 や さ し い こ え で 。
ヒ ン ト は ぐ る ぐ る 、 き お く の な か に 。
歌い終わった少年は、紅茶に混ぜた砂糖のように、ぐるぐる床に溶けて消えて行った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 冒険
『回り続ける世界』
|
POW : 回転に逆らって進む
SPD : 回転を有効活用して進む
WIZ : 回転しないように工夫して進む
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●
お か し の ア リ ス は ゆ め の な か 。
な ま え を よ ん で 、 や さ し い こ え で 。
ヒ ン ト は ぐ る ぐ る 、 き お く の な か に 。
歌い終わった少年が消えると、今度は世界までもがまわり始めた。
ティーカップのアトラクションを中心として、外側の景色がぐるぐるまわる。
おかしを乗せたティーカップも、変わらずぐるぐるあちらこちらへ。
外側の世界は、まわりながら少女のトラウマを映し出していた。
BGMの代わりに、少女の声が流れてくる。
○○○から○○してる。そんな由来の甘い名前。
ママにとっても○○されてる、○○○ちゃんにぴったりね。
わたしもだいすきって、わらわないと、いけないの。
ほかのこどもとさわいじゃダメ。いつでもママのそばに。なんでもママにきくように。
ママはいつもただしいから、わたしはいうとおりにするだけでいい。
でも、すこしでもまちがうと、もうだめ。おうちはとってもこわいところ。
おなかばかりなぐられるのがくるしくて、うででかばった。
袖から見えるでしょう!? せなかもけられて、ながいフリルでかわいくされる。
パパがいなくなってから、ママはおひめさま。そして、わたしはおにんぎょう。
おにんぎょうはおひめさまのいうとおり、いつでもいいこでいないといけないの。
なぐられてもけられてもかみをひっぱられても……。
……もういいかな。もうやめていいかな。いいこでいるのも、いきるのも……。
ティーカップの中にあるお菓子は五つ、全て別の種類だ。
イチゴジャムクッキー。
チョコレートタルト。
ハチミツレモンキャンディー。
ホイップココアマフィン。
カスタードアップルパイ。
この中に必ずアリスはいる。
今はおかしの夢の中で、沁み込んだ毒を深めているはずだ。
アリスに毒がまわり終わる前に、少年が教えてくれたように名前を呼んで起こそう。
しかし、アリスにとって大嫌いな名前を呼ぶだけでは、きっと苦しめてしまうだけだ。
彼女を絶望から救う為には、どんな言葉をかけたらよいだろうか。
ぐるりぐるり。まわり続ける世界の中で、猟兵達は思いをめぐらせる。
●
(第2章の執筆はおそらく『1月5日以降』となります。『1日2日8時半以降』にプレイングを頂けると大変助かります。ご参加お待ちしております。)
ノル・イース
名前を呼んで、か。
って、おい、まだ回るのか?
……こころからあいしてる、心愛――ココアか。確かに甘い名前だな。
ともかくホイップココアマフィンのところへ移動するか。【サイコキネシス】でマフィンの置かれてるティーカップの縁を掴み、己の身体をそこへ引き寄せよう。
はじめましてだな、ココア。怖いところに帰れとか言わないし良い子でいるのはやめていいから少し話さないか。俺の名はノルという。0って意味だ。存在しない筈なのに一応こんな風に生きてる。見えるか?
与えられた容れ物に自分を押し込めることはないさ。その外側には広い世界がある。お前と友達になりたい奴もいる。独りでグルグル悩んでないで、出てこい。大丈夫だ。
ラリー・マーレイ
【召喚の呪符】使用。飛竜を召喚、騎乗して空を飛んでティーカップまで飛んで行く。
ホイップココアマフィンに声をかける。
「心愛ちゃん、だよね。迎えに来たよ」
事情は分かったよ。大変だったね。
でも子供だからって親に逆らっちゃいけないなんて事ないよ。むしろ、嫌な事は嫌だってはっきり言わないと。親だって間違える事はあるんだから、黙ってちゃ駄目だよ。
殴られたら殴り返しちゃえよ。親子なんだから喧嘩くらい当たり前だって。
怒るかもしれないけど、少年少女同士、腹を割って話してみよう。現実的な解決は大人に任せた。
母親も、旦那さんと別れて娘に依存し過ぎてるのかな?虐待は良くないけど、安易に子供と引き離すのも良くないよね。
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
俺には思い当たる名前は思いつかないけれど。
いい子でいるのが疲れたらやめてもいいと思う。でも、生きる事はやめないで欲しいと思ってしまう。
もしかしたら生きていてもいい事なんてないかもしれない。でも全くないとは言えないだろう。
君のような小さな子にこんなことを言うのは酷なのかもしれない。
それでも可能性がゼロでは無いのなら。
君が生きる事をやめないのなら。人形をやめたいのなら。何をしたい?
もしお母さんと離れたいというのなら俺たちは手助けができると思う。
どうしたらいいのか俺は道を示せない。
頑張った末だ「簡単に捨てるな」なんて言えない。
けれど、まだ君には生きる事を手放して貰いたくはないんだ。
ニオ・リュードベリ
アリスの名前……あんまり自信ない、かな
「○○してる」って部分が「あいしてる」じゃないかって
そうしたら……「あい」の入る甘い食べ物って「あいす」かなって思うんだ
……素敵な食べ物なのに、それがアリスを苦しめてるの?
さっきの戦いで『虐待』って言葉が遮られてたよね
確かにあのお家に帰らなきゃって思ったら絶望しちゃう
でもね、世界にあるのは「おうち」と「ママ」だけじゃないよ
ほら、ここだって「おうち」の外で
「ママ」以外にあたし達もいる
あなたの元の世界にも「おうち」以外の場所が
あなたを助けてくれる人がいる
甘いフリルを外して、他の人に頼ってもいいんだよ
それは「わるいこ」がやる事じゃない
だから……目を覚まして……!
●
「名前を呼んで、か……って、おい、まだ回るのか?」
ティーカップがまわり、床がまわり、景色までもがまわり始めた。
猟兵達の周りをまわるのは、アリスをぐるぐる悩ませる悪夢のような現実の記憶。
ノル・イース(I'm "0"・f24304)は先程と同じように『サイコキネシス』で身体を浮かせながら、アリスの名前を探す為、静かに思考を巡らせる。
○○○から○○してる。そんな由来の甘い名前。
ママにとっても○○されてる、○○○ちゃんにぴったりね。
先程途切れ途切れに聞こえた誰かの声がヒントなのだろう。
自信はないけれど、と。ニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)が話の口火を切った。
『○○してる』の部分は『あいしてる』ではないだろうか。
「そうしたら……『あい』の入る甘い食べ物って『あいす』かなって思うんだ。でも……素敵な食べ物なのに、それがアリスを苦しめてるの?」
難しい顔で首を傾げるニオの問いに、黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は自分も分からないと首を振った。
「俺には思い当たる名前は思いつかないけれど……少なくとも、アイスが入っているお菓子は此処にはなかったぜ」
瑞樹は一通りティーカップの中身を覗いてみたが、中にあるお菓子は『イチゴジャムクッキー、チョコレートタルト、ハチミツレモンキャンディー、ホイップココアマフィン、カスタードアップルパイ』の五種類だった。
このお菓子の種類もヒントなのではないか、と提案してみる。
「゛符の盟約に従い疾く来たりて我に従え゛」
ラリー・マーレイ(少年冒険者・f15107)は『召喚の呪符』で喚び寄せた飛竜に騎乗して回転床から飛んだ。ノルもサイコキネシスで同じ方向へ進んで行く。二人とも、どうやら答えが分かったようだ。
「『こころからあいしてる』だろ。……確かに甘い名前だな」
ノルはホイップココアマフィンのティーカップの縁を掴んで、身体をそこへ引き寄せた。飛竜に乗ったラリーも一緒に覗き込む。
「はじめましてだな、ココア」
「心愛ちゃん、だよね。迎えに来たよ」
ママにとってもあいされてる、ココアちゃんにぴったりね。
( そ の な ま え を よ ば な い で ! !)
ホイップココアマフィンの激しい拒絶の声に合わせて、ぐるぐるの回転数が上がる。
振り落とされそうな勢いに負けないように、ノルは歯を食いしばってカップにしがみ付く。そんな必死さを見せないように、出来る限りの優しい声で語りかけるのだ。
「怖いところに帰れとか言わないし、良い子でいるのはやめていいから。少し話さないか」
最初の拒絶の後は返事が無いし、彼女の姿は依然としてお菓子のままだ。それでも声は届いているはずだと信じて。
「俺の名はノルという。0って意味だ。存在しない筈なのに一応こんな風に生きてる。見えるか?」
安心させるようにぎこちなくても笑顔を見せよう。
「与えられた容れ物に自分を押し込めることはないさ。その外側には広い世界がある。お前と友達になりたい奴もいる」
(そんなひと、いない。ママじゃないひとと、ほとんどいっしょにいないもの)
ポツリ。消えそうな呟きに、ノルは目を細めた。
「……いるよ、少なくともここに一人」
他にも、きっと。ノルの言葉を聞いても、ココアマフィンは静かなままだけれど。
少しだけ、カップの回転は和らいだようだ。
「事情は分かったよ。大変だったね」
アリスがノルの優しさに触れた後、ラリーは別方向からのアプローチを試みる。
彼女は自分の感情を殺し過ぎている。一度爆発させてあげてもいいかもしれない。
「でも子供だからって親に逆らっちゃいけないなんて事ないよ。
むしろ、嫌な事は嫌だってはっきり言わないと。
親だって間違える事はあるんだから、黙ってちゃ駄目だよ。
殴られたら殴り返しちゃえよ。親子なんだから喧嘩くらい当たり前だって」
怒るかもしれないけど。少年少女同士、腹を割って話してみよう。
ガチャンガチャンガチャン――!!
アリスのいない他のカップが、突如立て続けに割れた。
それは子供が癇癪を起して、物に当たり散らしているようだった。
(だから、わたしがわるいこなんでしょ!? わかってるからほっといて!!)
それは絞り出したように掠れた悲痛な泣き声だった。
「大丈夫だよ。あなたは少しも『わるいこ』じゃない」
パニックになりそうなアリスを、ニオのあたたかい声が包んだ。
ようやくアリスのいるカップに辿り着いたニオは、少々疲弊していた。
ぐるぐるに耐性がない身で、回転ばかりの世界を歩くのは一苦労だ。
それでもあなたに届けたい言葉があるから。ニオは微笑みながら語りかける。
「あなただけが頑張らなくてもいいの。甘いフリルを外して、他の人に頼ってもいいんだよ」
世界にあるのは『おうち』と『ママ』だけじゃないから。
ここだって『おうち』の外で、『ママ』以外にあたし達もいる。
元の世界にも『おうち』以外の場所で、きっとあなたを助けてくれる人がいる。
(たすけるって……どうやって?)
「そうだね……とりあえず今は、あなたの嫌いな『甘さ』を取ってあげられるよ」
こんな風に。ニオはココアマフィンを飾るホイップを、指ですくって自分の口に入れてしまった。うん、すっごく甘いね、と。悪戯っ子のように笑ってみせて。
現実的な解決策はよく考えないと、彼女を本当に救う事は難しいかもしれない。
それでも、まずは彼女の心を救う事が最優先だと思ったのだ。
「君は決して『悪い子』ではないけれど。いい子でいるのが疲れたら、やめてもいいと思う」
いつの間にかカップの傍に控えていた瑞樹もアリスに語り掛けた。
「でも、生きる事はやめないで欲しいと思ってしまう」
もしかしたら生きていてもいい事なんてないかもしれない。
でも全くないとは言えないだろう。
君のような小さな子にこんなことを言うのは酷なのかもしれないけれど。
それでも可能性がゼロでは無いのなら。
「君は十分頑張った。頑張った末だ、『簡単に捨てるな』なんて言えない。
それでも……君が生きる事をやめないのなら。俺たちは手助けができると思う」
(……どうすればいいのか、わからないの)
「『どうしたらいいのか』俺は道を示せない。でもココアが『どうしたいのか』、聞く事は出来る」
人形をやめたい? お母さんと離れたい? 瑞樹は尋ねる。
彼女にとっての『言ってはいけない言葉』達に、息を飲む気配がする。
「ねぇ、ココア。言ってはいけない事、願ってはいけない事なんて、ないんだよ」
さっきの戦いで『虐待』という言葉が遮られていた。あの家に帰らなければならないなら、確かに絶望してしまう。ニオは抱いた絶望を肯定する。
「現実的な解決は大人に任せた。ココアは自分の気持ちをガンガン言っていいんだよ」
もっと好きに生きていい。ラリーは子供らしく生きる自由を説く。
「独りでグルグル悩んでないで、出てこい。大丈夫だ」
ほら、沢山いただだろう。ノルは仲間達と一緒に手を伸ばす。
わ、たし、わたしは……ママから、あのひとから、にげたい、の。
いきるのをやめなくても、いいなら……そのほうほうを、おしえてほしい。
分かった、一緒に考えよう。
伸ばされた手と、手が繋がる。
ココアマフィンは、ちいさな女の子に変わっていた。
フリルの取れたシンプルなワンピースから覗く腕の痣は痛々しい。
猟兵達の手をその小さな手で握りしめながら、彼女は暫く溢れる涙を止められなかった。
こうして、おかしのアリスを、ココアを起こす事に成功した猟兵達。
しかし、これで彼女の絶望が完全に拭えたわけではない。
彼女がこれからどういう道を歩むのか、共に考えてあげる必要がある。
「お母さんと離れたいというのなら、その方法を考えよう」
「でも、勿論虐待は良くないけど、安易に子供と引き離すのも良くないよね。母親も、旦那さんと別れて娘に依存し過ぎてるのかな」
猟兵達が相談をしていると、周りをまわっていた景色が突然止まった。
ティーカップの回転も止まり、賑やかだったBGMも止まる。
今度は、この絶望の世界が眠りについてしまったようだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『虹色雲の獏執事』
|
POW : 「邪魔が入るようですね。番兵さん、出番です」
自身が【自身や眠っているアリスに対する敵意や害意】を感じると、レベル×1体の【虹色雲の番兵羊】が召喚される。虹色雲の番兵羊は自身や眠っているアリスに対する敵意や害意を与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD : 「お疲れでしょう。紅茶とお菓子はいかがですか?」
【リラックス効果と眠気を誘う紅茶やお菓子】を給仕している間、戦場にいるリラックス効果と眠気を誘う紅茶やお菓子を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ : 「外は危険です。こちらにお逃げください」
戦場全体に、【強い眠気と幻覚を引き起こす虹色雲の城】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●
眠りについた絶望の世界に、大きな虹がかかった。
虹の橋を渡って眠気を司る『虹色雲の獏執事』達が続々と遊園地にやってくる。
「おはようございます、アリス。少しお目覚めが早かったようで」
「まだ眠っていてよい時間ですよ。さあ、もう一度夢の中へ」
獏執事は紅茶を注いで、アリスを誘った。
それは毒ではないけれど、アリスを深い深い永遠の眠りへと導いてしまうだろう。
アリスを、ココアを背に庇って、猟兵達は前へ出た。
これから猟兵達は、獏執事を退治するか攻撃を避けながら、ココアの今後を考えなければならない。
10歳前後の少女が絶望しないように、生きられるようにする為には……。
そして、元の世界に繋がる扉の場所は、ココアだけが知っている。
●
(第3章の執筆はおそらく『1月11日(土)以降』となります。『1日8日(木)8時半以降』にプレイングを頂けると大変助かります。ご参加お待ちしております。)
(大変申し訳ございません。曜日を間違えていました。『8日(水)8時半』から募集開始しております。)
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流
小さな子がこの世界で生きるのは戦う術か逃げ切る術を覚えなければならないだろうな。
元の世界に戻るならばその力になる。けど戻らずここに留まるならば、それなりに力が必要だと、戦うという事を俺は示そう。
【存在感】を消し【目立たない】ように移動、【マヒ攻撃】【暗殺】を乗せたUC五月雨で確実に倒していく。
念力の制御まで制限されることはないだろう、と読んでだ。
相手の攻撃は【第六感】で感知【見切り】で回避。回避しきれない物は黒鵺で【武器受け】での受け流しからの【カウンター】。
それも出来ない物は【オーラ防御】と【激痛耐性】で、眠気は【呪詛耐性】でしのぐ。
ラリー・マーレイ
敵の技に倣う。【高速詠唱】でUC【惰眠の呪文】を発動だ。
戦場を、強制的に眠らせ無力化する雲で覆い、羊達を抑え込むよ。仲間を支援しよう。
敵の動きを抑えながら、ココアちゃんに語りかける。
逃げたいならそれでもいいんだよ。大丈夫、守ってくれる大人達はちゃんといるんだ。僕達が紹介してあげる。
だから、この世界にいる必要なんかないんだよ。
その上で、もし君が。お母さんに優しくして欲しい。お母さんと仲良く暮らしたい。と少しでも思うのなら。僕達はその手伝いだってする。
それは、この世界じゃあ、あいつじゃあ出来ない事だ。
あいつの事なんか本当はどうでもいいんだ。僕達は、君を幸せにする為だけにここに来たんだ。信じてくれ。
ノル・イース
獏は本来、悪夢を喰ってくれるんじゃなかったか?
とりあえず邪魔だしな……【サイコキネシス】で念力操作し複数の獏を束ね、まとめて締め上げてしまおう。うるさいようならオーブメイスで頭と紅茶セットを殴っておく。
さて、本題(ココア)だ。
本人も気にしているだろうし、その小さな身体に残る痣や傷、痛みの記憶を【辛苦からの解放】で消してやろう。あっちの獏の虹色よりこっちのオーロラの方が綺麗だろう?
お前は人形じゃないし、痣だらけの可哀想な子でもない。
母親から逃げて周囲に助けを求めろ。そして、自分に負けるな。勿体ない。その目をちゃんと開いて、悪夢を蹴散らせ。
過去は過去、ココからアした(明日)が始まるんだ――ココア。
ニオ・リュードベリ
今度は世界が眠っちゃいそうだね
……そうはさせない!
【勇気】をもってUC発動
無敵の鎧を着込んで、敵をランスで【串刺し】に
番兵羊もどんどん退治していこう
戦闘中は【優しさ】をもってココアの側にいるね
あのね、ココア
いきるのやめなくてもいいなら、って言ってくれてありがとう
元の世界に戻ったら、まずは大人に相談出来ないかな
先生とか警察とか、お爺ちゃんお婆ちゃんとか
腕だって隠さなくていい
誰かにココアの本当の気持ちを伝えてみよう
それは『悪い事』じゃないんだよ
むしろ一人で逃げちゃうのが悪い事かも
あたし達の手を取ってくれたみたいに、誰かの手を取ってみて
辛くなったらあたし達の事を思い出して
そうすればきっと大丈夫だよ
●
ゆめからさめたはずなのに、ゆめのようなせかいがつづいてた。
にじいろのばくは、まだねむっていていいって。
でも、わたしの『手』のさきには――。
「……俺が行こう」
右手に胡、左手に黒鵺を構えて。二刀流の剣豪、黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は一行の前に出た。
「よく見ておくんだ。元の世界に戻るならばその力になる。けれど戻らずここに留まるならば、それなりに力が必要だ。その道を、戦うという事で俺は示そう」
背を向けたままのアリスにそう告げると、瑞樹は極限まで自分の存在感を薄めた。代わりに浮き上がるのは彼の本体、大振りの黒ナイフ『黒鵺』が遊園地の空を埋めていく。
「物騒な武器を交わすのは止めましょう。それより、紅茶とお菓子はいかがですか?」
獏執事は虹色の光を放つ紅茶をふわふわお届けするが、手を伸ばす者は誰一人としていなかった。すると、敵の能力の発動によって、猟兵とアリスの動きがスローモーションになってしまう。しかし、仲間を信じている猟兵達は少しも慌てる素振りなど見せない。
敵の接近を許す中、ゆっくりと動いていた瑞樹の指が天を指す。
「 喰 ら え 」
上空で待機していた刃の雨【五月雨】が獏執事に降り注ぐ。黒い刃によって貫かれた虹色の群れは、麻痺により地面に転がされて動けないようだ。
術者の獏執事が倒されると、世界は元のスピードを取り戻す。
しかし、休む間もなく敵は虹を渡ってくる。アリスに惹かれて湧き出るオウガは、まだまだ後を絶たないようだ。
瑞樹は立ち止まることなく、敵集団の中へその身を消していく。
「おにーちゃん!?」
「行け、ココア。見えなくても、俺が守ってる」
どこに向かえばいいのかは分からない。しかし、一ヵ所に留まり続けるは危険だ。
三人の猟兵とココアは、ティーカップのアトラクションから逃げ出したのだった。
ココアの手を引くのは、ニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)だ。観覧車やお化け屋敷を横目に、小さな手を握って少女の体力を気にかけながら走り続けている。
そうだ、と。何かを思い出したように、ニオはココアに微笑みかけた。
「あのね、ココア。いきるのやめなくてもいいなら、って言ってくれてありがとう」
突然のお礼に、少女は不思議そうな顔で戸惑うばかり。
「だって……わたしはただ、にげてるだけなのに」
「逃げたいならそれでもいいんだよ。大丈夫、守ってくれる大人達はちゃんといるんだ」
ラリー・マーレイ(少年冒険者・f15107)の台詞を肯定するように、後ろからはオウガの悲鳴のような鳴き声が聞こえた。それは、別行動の瑞樹が、敵の数を確実に減らしてくれている事を意味している。
「……わたしがにげたから。わたしのせいでおいかけられてるのに。どうしてたすけてくれるの……?」
おそらく人に助けてもらう事に慣れていないのだろう。
無条件で守られてよいはずの、こんなに小さな女の子なのに。
屈んで少女と視線を合わせたラリーは切に願う。
「僕達は、君を幸せにする為だけに、ここに来たんだ」
どうか、信じて、と。
アリスを引き留めようとするオウガの群れはなかなかにしぶとい。
今度はジェットコースターに乗った獏執事達が、猛烈な勢いで空から降ってきた。
少女の信頼を得る為、ラリーは行動で示していく。
「カーフアレフ・ターイ・ヌーンザンメ……」
マジックナイトのラリーが高速で紡いだ詠唱は、【惰眠の呪文】だ。ラリーの周りに立ち込めた霧が、宙を飛ぶ獏執事達に向かって包み込む。
「なんですか、これはっ……獏を眠らせる、なんて……」
獏が一匹。獏が二匹と、ぼとりぼとり。
夢に落ちた獏執事達は次々と空から落下していく。
しかし、後続のコースターにも別の獏執事の群れが乗っているようだ。
「邪魔が入るようですね。番兵さん、出番です」
反撃の時間だ、と。今度は虹色雲の番兵羊が大量に召喚されてしまった。
「獏は本来、悪夢を喰ってくれるんじゃなかったか」
ノル・イース(I'm "0"・f24304)は呆れたように獏執事にオーブメイスを向ける。
永遠の眠りなどが、本当の救いであるものか。
自分達の方へ集団で突っ込んでくる番兵羊を、【サイコキネシス】の見えない力がまとめあげた。ぎゅぎゅっと虹色雲を圧縮させて、観覧車の向こう側まで放り投げてやる。
一方で、接近する獏執事からココアを庇うように、【アリスナイト・イマジネイション】の戦闘鎧を纏ったニオが、アリスランスを構えていた。
「そういえば、ココアから貰っていたものがあったね」
少女を守りたいという優しさと勇気が、ニオの想像力を増幅させていた。
ココアマフィンから拝借した甘いホイップは、ニオの背中に白い翼を授ける。
機動力を上げた低空飛行で一気に距離を詰め、白銀のランスが虹色を纏めて貫いたのだった。
「さて、ココア。生きると決めた世界は選択肢でいっぱいだ」
周囲の獏執事を倒し終えて静まり返った遊園地の真ん中で、ノルはココアに語り掛ける。
まずは、ここに残るのか、それとも元の世界に帰るのか。
ここに残るなら、瑞樹が示したように力が必要だ。元の世界に帰るなら、勿論俺達も手伝うが、お前自身が逃げて誰かに助けを求めに動かなければならない。
その言葉を受けて、ココアは俯いてしまう。
自分ではもう分からないから、教えて欲しいって言っているのに……。
ココアの心情が伝わったのか想定していたのか。ノルは声を和らげて、こう続ける。
「でも、それを選ぶには、お前は少し、傷つき過ぎた。
だから、その痛みを消してやろう」
クレリックの力を持つノルが左手を天に向けると、オーロラの光が集められた。
それは、【辛苦からの解放】。オーロラがココアを包む込むと、傷の痛みと心の痛みまでもが消えていく。次第に、腕の痣も薄れていった。
「……待って。痣は隠さなくていいんじゃないかな」
誰かに本当のココアを見てもらって、本当の気持ちを伝えるのも必要だと思う。
ニオの静止の言葉に、ノルも納得したように頷いた。
「そうか、それも選択か。
ココア、お前が気になるようなら、身体の痣や傷も全て消せるが、どうする?」
ココアは目を丸くして固まっていた。
痛くて辛くて悲しくて。今にも崩れそうな傷だらけの心で今まで耐え続けていたから。
『母から受けた痛み』を癒やされた世界は、とてもクリアで、美しくて、眩しかった。
「……ココア?」
心配そうな声に我に返ると、滲んだ涙を拭って首を振る。
「このままで、だいじょうぶ。いままで、かくして、きづいてもらえなかったから。
こんどは、わたしを、みてもらう」
「ああ、お前は人形じゃないし、可哀想な子でもない、そう決断できる、強い子だ」
「あたし達の手を取ってくれたみたいに、誰かの手を取ってみて。
先生とか警察とか、お爺ちゃんお婆ちゃんとか……」
「そうだ。母親から逃げて周囲に助けを求めろ。そして、自分に負けるな。勿体ない。その目をちゃんと開いて、悪夢を蹴散らせ」
次々と降り注ぐあたたかい言葉に、うん、うん、とココアは何度も頷いた。
それともうひとつ。元の世界に帰った後の選択肢も、ラリーは提示する。
「もし君が……お母さんに優しくして欲しい。お母さんと仲良く暮らしたい。と少しでも思うのなら。その気持ちも助けてくれる人にぶつけてみるといい」
今は難しいかもしれないけれど。そんな道もあるのだという事だけ、覚えておいて。
ココアはラリーの言葉を噛み締めるように目を瞑って。そして、分かったと小さく口にする。そうして開かれたその目には光が宿り、まっすぐと前を向いていた。
さあ、どこへ進む? もう、ココアの答えは決まっていた。
「とびらは、でぐち。ゆうえんちの、でぐちにあるの」
元の世界に繋がる扉を目指して、猟兵とアリスは帰路に就く。
途中で戦闘を終えた瑞樹と合流して、皆で出口へと向かった。
夢の終わりを告げるBGM。閉園の音楽が流れる。
遊園地の大きな門の根元に作られた、小さな扉が静かに主を待ち続けていた。
アリスの扉を通れるのは、アリスだけ。
ここで、お別れだ。
「辛くなったらあたし達の事を思い出して。そうすればきっと大丈夫だよ」
最後に、ニオはココアの小さな身体を抱きしめる。
「たすけてくれて、ありがとう。おねーちゃん、おにーちゃん」
笑えるようになって本当に良かった。
少女が見せた笑顔に、猟兵達も救われたような気持ちになる。
「過去は過去、ココからアした(明日)が始まるんだ――ココア」
大嫌いだという少女の名前に、ノルはそんな新しい意味を乗せて呼んだ。
生まれ変わった自分の名前を、いとおしそうに何度か呟いて。
照れ臭そうに笑うと、ココアは猟兵達に手を振って、扉を開けた。
そうして、少女は長い長い夢から醒めた。
あれはゆめ? ただのゆめ? ――ううん。
「ここから、あしたを、はじめるの」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵