6
ラスト・トレジャー

#アリスラビリンス



「………」
 その女性はその国に入るや否や思い出した。いや、思い出してしまった。
「私は……確かにあの時……」
 その国は四角い箱のような建物が並んでおり、足元は黒く、空も黒い。にもかかわらず辺りが見渡せるのは建物から無数の光が溢れ出しているせいだ。
「やっと追いついた、見つけたよ!」
 女性の後ろに少女……の姿をしたオウガ……化け物がいた。女性はここまでオウガから逃げて来たのだ。元の世界に安寧があることを信じて。しかし。
「……逃げないの?」
 オウガは女性に問う。これまで命がけのおいかけっこをしてきたはずなのに、相手からはこれまでの必死さを感じ取る事ができない。
「もう、いいの」
 女性はその場に座り込み膝を抱えた。それが何を意味するのかオウガには理解できない、ただ一つ言えるのなら「なんだか食べる気を失った」だ。
「ねえ、そんなに落ち込んでるのならさ、わたし達と一緒に来ない?」
 それは思いがけない誘惑である、双方にとって。自然と彼女はオウガの手を取り、そしてオウガは。
「とりあえずこの四角いのしまっちゃおうか? もういらないみたいだし」
 オウガは周りの建物をラッピングされた紙箱の中へとしまっていく。その中身が何なのか、それは女性だけが知っている。


「彼女の名前は、リミ。どういう字を当てるかは知らないがね」
 アラン・スミシー(パッセンジャー・f23395)はそう言った。
「というわけで一つ頼まれ事を受けてくれないかい? 目的はオウガになりそうな彼女を救う事。まあシンプルな話さ」
 胡散臭げな男はつらつらと話す。
「彼女を誘惑するオウガを倒し、彼女の記憶を箱から開いて確認し、彼女の絶望を払い、彼女の扉の前にたむろするオウガを殲滅する」
 男は4本の指を立てる。
「正直な所、リミ嬢が自分の扉を開ける必要はない。ただオウガになるのを避けてもらえばそれで済む話さ」
 ただ何にせよ彼女の現世での苦しみを知る必要がある。記憶の箱を開ける前にその中身をある程度想定し、それを前提にリミと思いを交わす必要がある。
「それが終われば後はただの掃除と同じさ。オウガを片付けてもらえばそれでいい。なんならオウガの相手をしながら彼女に声をかけて引き戻しても良い。……こんな連中と本当に同じになりたいのか、ってね」
 男は帽子を深く被ると呟く様に口を開く。
「気が向いたら行って欲しい。一人の女性を救うのも一つの世界を救うのと同じくらい大切な事だからね」


西灰三
いつもお世話になっています。
西灰三です。
今回はアリスラビリンスの依頼をお送りします。

詳しくはオープニングの通り。
ただ第一章で彼女に接触し情報を集めておくと、第二章のプレイングをかけるのが楽になるかもしれません。戦闘に関わるプレイングも忘れずに。
なおリミの年齢は20代前半です。

それでは皆様のプレイングをお待ちしています。
247




第1章 ボス戦 『ガラスの迷宮のアリス』

POW   :    欠けたリンゴはそのまま齧り
【砕いて飛ばしたガラスの破片】が命中した対象に対し、高威力高命中の【ナイフによる一撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    綺麗なリンゴはオーブンへ
【ナイフ】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【のガラスの迷宮の構造を変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    美味しいパイを作りましょ?
【ガラスの迷宮から噴出する「オウガの炎」】が命中した対象を燃やす。放たれた【青白き】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
葛籠雄・九雀
SPD

思いを交わす、であるか。
それが上手くできるのであれば、オレはきっと、もう少し違った有様であれたと思うのであるよな。
それに、オレのような単なる第三者が口先の慰めや励ましを告げたところでな。逆撫でするに違いあるまいぞ。
慮って優しくするなど、オレの最も不得意なところである。

さて、厄介なナイフであるな。
避けて強化されるよりは、【見切り】により見極めた上でわざと当たり、【激痛耐性】で耐えてから【カウンター、毒使い、投擲、2回攻撃】+ペルシカムでUCそのものを封じたい。

別に恨みはないがこれも義務であるし、少しは静かにしておいてもらえねば、リミちゃんが考えることすら出来ぬであるからな。

アドリブ連携歓迎




(「思いを交わす、であるか」)
 どことなく足元がいつも歩く道に似ている。アスファルトを想像させるその黒は、葛籠雄・九雀(支離滅裂な仮面・f17337)自身の色によく似ていた。お伽噺の世界なら黄色いレンガの道だろうにと思いながら、彼は躊躇いもせず少女の姿をした人食い鬼に針を投げた。
「わたたっ!?」
 少女は脇から飛んできた針に対して距離を取る、彼女とうずくまるリミの間に空間が生まれて九雀はそこに入り込み更に追撃で針を投げつける。
「ちょっと! 何するのよ!?」
「少しばかりリミちゃんには考える時間が必要であるからな」
 反撃に飛んでくるナイフを、やはり針で打ち返しながら仮面はなお少女との間を詰める。落ちたナイフが黒い土瀝青を透き通る硝子へと変える。
(「あれ程にたやすく思いの色を変えられるのならば」)
 九雀の少ない記憶の欠片が思い返される。もしそうだったなら、もう少し此処にいる彼は違ったものになっていたであろう。
「あなた優しくないね」
「知っている。それに、オレのような単なる第三者が口先の慰めや励ましを告げたところでな。逆撫でするに違いあるまいぞ」
 人食い鬼は自分の方が優しいとばかりに頬を膨らませる。化け物の道に誘う事と、思い出させる痛みと。果たしてどちらが『優しい』なのか、はたまた双方とも『優しくない』のだろうか。少なくとも彼はその答えを出す力も意図もないと自認している。
「これから先オレよりもお嬢ちゃんよりも、もっとリミちゃんに寄り添える奴がくるぞ。それまでこっちの義務に付き合って欲しいぞよ」
「え~!? 義務とかどうだって良くない? 今が楽しければさ!」
 九雀は言葉とともに投げられたナイフを掴み取り、反対側の手で毒針を投げ返す。
「楽しければいいというのは同意である。けれども彼女はどうであるか?」
 仮面は言葉の代わりに時間を作る。うずくまるばかりの彼女に寄り添い、耳を傾ける者のために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴木・志乃
ずんちゃちゃちゃちゃ♪
ずんちゃちゃちゃちゃ
ずんちゃちゃちゃちゃちゃん♪
てーってれーてーれてーれっててってー(ry)

敵がUC発動した後に此方のUCを内側になるように展開する
(【精神攻撃、毒使い、マヒ攻撃】)
念動力と高速詠唱で水プシゃーして消火じゃー!!!
出来れば消火器に近いものがあればそれ使いたいね
んで跳ねた諸々でさらに敵を攻撃できればいいけどナー

あ念の為オーラ防御は展開しときますね、痛いの嫌いなんで!

リミちゃん何あったか分からんけど、良かったら何か飲まない? 水は人を元気にするよ!

と言いつつ成功した飲み物やスープ系統を此方まで持ってくる
何に反応するかで出身世界は分かるかも
【第六感見切り】




 オウガの少女が前方で食い止められている間、リミはちらりとその戦いを見ることはあってもすぐにふさぎ込んでしまう。それはどちらが勝ってもあまり変わりがないという諦観故なのだろうか。そんな彼女の耳に聞き慣れない声らしきものが流れ込んでくる。
 ストリングスを真似したようなものだろうか、その声は恐らくボイスパーカッションによるものであり、徐々にリミに近づいてくる。不意に彼女がその音のする方に目を向ければ、黒いスーツに帽子を被った鈴木・志乃(ブラック・f12101)が器用な後ろ歩きで、リミとオウガの間に入り込んできていた。志乃はオウガが猟兵を焼くために放った青白い炎に自らの迷宮を重ねて消火する。ついでに洒落た口笛付だ。彼女はオウガの追撃のない事を確認するとうずくまるリミに近づいてくる。
「やあ、リミちゃん!」
 芝居がかった調子で彼女に志乃が声をかける、自身と同じくらいの見ず知らずの彼女がなぜ自分の名前を知っているのだろうかと、初めて視線を相手の目と合わせた。
「リミちゃんに何あったか分からんけど、良かったら何か飲まない? 水は人を元気にするよ!」
 妙に元気な調子で言う志乃が、どこからか飲み物やスープ類の入った器を彼女の前に並べる。コーヒーやお茶などからポタージュスープまで。その中でリミが手を伸ばしたのが。
(「ほほう、お味噌汁……か」)
 少しだけ落ち着いた彼女の様子を見て、志乃は心の中で呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「人が変われるのは、人と繋がった時だけです。貴方の苦しさに手を伸ばす方はきっと現れます。貴方を殺そうとしたオウガが、今貴方に救いの手を伸ばそうとしたように。貴方も貴方の世界で自分の想いを発して下さい。その手を取る誰かがきっと現れます。だって今、貴方はそれに成功したばかりじゃないですか。貴方の心に添う方は、きっと貴方の世界でも現れます。だから、帰りましょう、貴方の世界へ。諦めないで下さい、想いは、行動は、必ず今と未来を変えますから」

制圧射撃でオウガがリミに近づくのを防ぎつつ、敵のUDは「鏡心華盆」で反射
オウガをリミの側に近寄せないようにしつつ説得の時間を稼ぐ


鬼桐・相馬
困ったな、俺は人を励ますのは苦手なんだ。

【POW行動】
オウガの攻撃がナイフなら[戦闘知識]を使い[冥府の槍]でこちらのみ通用する間合いを極力維持。[怪力]で[範囲攻撃]し、威力を重視した攻撃を。ナイフを[武器受け]で弾きながら、リミに声をかけてみるよ。

ここまで必死に逃げてきたというのを知った上で言う。
諦めるのはいつでも出来る。少しだけでいい、立ち上がってくれないか。……頼む。

オウガの飛ばす破片が彼女にも当たりそうであれば即座に駆け寄り、前面に[オーラ防御]を集中させつつ槍から一気に炎を噴き出させガラスを溶かし落とすよ。そのまま炎の間からオウガへ[ダッシュ]しUC発動。

その箱、大事なものなのか。




 やや気を落ち着かせた彼女はようやっと周りを見始める、それは体の中に温もりを収めたからでもあるだろう。そんな彼女の前でオウガを食い止めていた鬼桐・相馬(一角鬼の黒騎士・f23529)が目だけを動かして彼女に口を開く。
「諦めるのはいつでも出来る。少しだけでいい、立ち上がってくれないか。……頼む」
 彼はそれだけ言うとオウガとの戦いに集中する、そして口下手な黒騎士の代わりに御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)がすっとリミの隣に腰を下ろす。
「……人が変われるのは、人と繋がった時だけです」
「あなたは……」
「貴方の苦しさに手を伸ばす方はきっと現れます。貴方を殺そうとしたオウガが、今貴方に救いの手を伸ばそうとしたように」
「……ならなぜあなた達はあの子の邪魔をしてるの? あの子が私を助けてくれると言うのならその邪魔をする必要はないじゃない……」
 桜花の言葉に再びリミはふさぎ込む。しかし桜花はそれにも構わず言葉を続ける。
「貴方の本当の望みがそうなら私は止めません。ですが違うんでしょう? 貴方も貴方の世界で自分の想いを発して下さい」
「……そうしたらどうなるの?」
「その手を取る誰かがきっと現れます。だって今、貴方はそれに成功したばかりじゃないですか。貴方の心に添う方は、きっと貴方の世界でも現れます。……だから、帰りましょう、貴方の世界へ」
「そう……」
 リミは桜花から目を反らす、もう興味を失ったと言うように。
「諦めないで下さい、想いは、行動は、必ず今と未来を変えますから」
「あなたも、あの子と同じなのね」
「え?」
 不意に硝子の迷宮の破片がリミに流れ弾として飛んでくる、桜花が慌ててそれを弾いてもリミはそれから逃れる素振りさえ見せない。
「結局あなたは私を自分の思い通りに動かしたいだけ、変わらないわ」
 二つ目の破片が飛んでくる、しかしそれは今度こそと相馬が弾く。
「だが君は忘れてしまっていたとは言えここまで逃げてきた。その果てがここで自分を投げ捨てるのが望みだとするなら、それはあんまりじゃないか」
 相馬はそれだけ言い残してオウガの少女に走りより切り伏せる。燃え上がる相手から目をそらさずに相馬は問う。
「この箱、大事なものなのか」
「もう大事ではなくなったものが入ってるわ」
 桜花は派手にラッピングされた箱を見た、おそらくこの中には『苦しみ』が入っているのだろう。ただ開けるだけではリミはひたすらこの場所で時間を過ごす事になってしまうか、絶望に負けてオウガとなってしまうだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
オウガとリミの間に立ちリミに話しかける。
「随分と苦しそうだね。
残念ながら。俺にはその苦しみを分ってあげる事は出来ない。
だけど。少しだけ手を貸す事ならできる。」
オウガに対しては
真羅天掌で凍結属性の突風を発生させ
炎を消すと共にオウガ自身にも凍結と
マヒ攻撃で動きを止め邪魔をさせない。

「奴らの甘言を受け入れれば確かに
苦痛からは逃れられる。
それでも逃げずに乗り越えれば。
この先それ以上の困難があってもきっと乗り越える事が出来る。」
「聞かせて貰えないか。過去に何があったのかを。」
「話すだけでも少しは楽になるから。」
語らせる事で苦しませるだけにならない様
慎重に言葉を選ぶ。
戦闘よりリミの苦痛を和らげる事を優先。




「随分と苦しそうだね」
 オウガとリミの間に割り込んだフォルク・リア(黄泉への導・f05375)が極低温の風で、敵を抑え込む。その間にも言葉を紡ぐ。
「残念ながら。俺にはその苦しみを分ってあげる事は出来ない。だけど。少しだけ手を貸す事ならできる」
 フォルクは相手の放つ炎をも凍りつかせて時間を作る。これまでの戦いの中で傷ついたオウガは少しずつ動きを止めていく。
「奴らの甘言を受け入れれば確かに苦痛からは逃れられる」
「……うん、それは分かってる。でもあなた達は私にそうはさせたくないんでしょ?」
「ああ。逃げずに乗り越えれば。この先それ以上の困難があってもきっと乗り越える事が出来る。俺はそう考えている」
 フォルクは氷像となったオウガから視線を外し、リミに問いかける。
「聞かせて貰えないか。過去に何があったのかを」
「……私の記憶はもうあの箱の中。思い出したくもない記憶が入っているのだと思うわ」
 リミはそう言って口を閉ざした。フォルクは次の句を告げずに瞼を閉じる。
(「話す事さえ、思い出そうとする事さえ、苦しみを感じるというのなら、それは……」)

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『ドッキリの街のビックリの箱』

POW   :    複数の箱を一気に開ける!

SPD   :    開けたらすぐにダッシュ!

WIZ   :    魔法や技で離れて開ける!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​


 『大事だったものが入っている箱』それは彼女が彼女の扉のあるこの国で足を止めてしまったものが入っているもの。だとすれば彼女がアサイラムに入れられた理由であると考えられる。そしてそれはきっと彼女にとって望ましいものではない過去の記憶だ。

 ここで猟兵達に迫られる選択は2つ。
 箱を開けるか開けないかだ。開けるのならば何が中に入っているのかを想定し、それから彼女にその中にあるものに立ち向かう勇気を目覚めさせることが必要だろう。これまでの状況からアースの日本らしき所から来たというのがヒントになるだろうか。
 もう一つの選択肢は開けないという道だ。こちらを選択するのならばやるべき事は今の彼女を肯定しもう一度自分の足で歩けるようにすることだ。ただこの場合、彼女はアサイラムの外の記憶を失うだろう。
 どちらにせよ『リミの扉』に至る前までに決めなければいけない。これからの彼女の有り様を決める選択となるだろう。
鈴木・志乃
はー……みそしるうまい(ずずー)
(不味いなあ可能性が広い……)

『大事だったけど大事じゃない』
手放さざるを得なかった、か裏切られたかのどっちかだね
私も元記憶喪失だし、正直他人のこととやかく言えないよ

ただ一つだけ言えるのは
味噌汁美味しい(ずずー)

ふざけてんじゃないよ?
生きて旨いものが食える
それだけで人は幸せだってこと

だからぶっちゃけ
記憶戻す戻さないのはどっちでもいい
貴女が幸せになれるなら
私は他人がどう言おうが
貴女の幸せを優先したいね

ただ、私なら(すうっ)
『こんな現状くそったれーーっっ!!!(叫)』
って現実を全部ぶち壊しに行くかな
腹が立つからオウガの手は借りずに、自力でね!(苦笑)



開ける?開けない?




「はー……みそしるうまい……」
 先程、リミに振る舞った残りをすすりながら鈴木・志乃(ブラック・f12101)は考えを巡らせる。
(「不味いなあ……」)
 それは決して味噌汁の味のことではなく、今手に入っている情報についてだ。
(「可能性が広い……。『大事だったけど大事じゃない』か」)
 他者の問題に指針を与える場合、その問題の性質が明らかではないと伝える言葉を選ぶのが難しい。
(「手放さざるを得なかった、か裏切られたかのどっちかだね」)
 志乃は冷静に相手の状況を分析する。そしてそれは恐らく正しい、何より彼女自身の経験上から来る確信だ。
(「んー……」)
 あまり迷ってる時間も無さそうである、どうも遠方から何かが近づいてくる予感がする。彼女は意を決すると、箱を見ているリミの隣に座る。
「……あなたも私に何か言いたいことがあるの」
「そんなにはないかな。ただ一つだけ」
 志乃は器の中身を飲み込んで呟いた。
「味噌汁美味しい」
 そんな彼女に怪訝な視線を向けるリミ、それを受けて彼女は目を瞑り軽く首を横に振る。
「ふざけてんじゃないよ? ……生きて旨いものが食える、それだけで人は幸せだってこと」
 どこか遠くを見るように志乃は語った。
「リミちゃんはさ、さっき味噌汁を受け取ったよね。だからまだ本当にどうなっても良いなんていってないんだと思う」
 志乃はリミを見る、彼女はその視線から逃げるように膝の間に顔を埋めた。
「私はぶっちゃけ、記憶戻す戻さないのはどっちでもいい。貴女が幸せになれるなら」
 すっと箱に触れて彼女はリミを見る。
「私は他人がどう言おうが、貴女の幸せを優先したいね」
「私の、幸せ……」
「うん、貴女の幸せ」
 ふうと志乃はため息をついて、箱にもたれかかって言葉を注ぐ。
「ただ、私なら……こんな現状くそったれーーっっ!!!」
 突然叫んだ彼女の声にリミはびくりと驚いて志乃の方を向く、リミの顔を初めて真正面から見た志乃は頭をかいて口角を上げた。
「ああごめんね、驚かせた? ……私ならさっきみたいに叫んで、現実を全部ぶち壊しに行くかな。……腹が立つからオウガの手は借りずに、自力でね!」
 苦笑して志乃は自分ならどうするかを口にして、リミを見た。
「開ける? 開けない?」
 問いかけられたリミはよろめきながら立ち上がると、志乃の持たれていた箱にかかったリボンを握る。
「……お味噌汁」
「ん?」
「ありがとう」
「お粗末様でした」
 そして箱から現れたのは――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ(サポート)
「私の力が必要なら喜んで手を貸しましょう」
「人々を傷つけるというのであれば、私が斬る」
「護る為ならば、この命惜しくはありません」

◆性質
『暗黒』と呼ばれる闇の力を操る黒騎士。闇を纏った冷たい風貌から誤解されがちですが、人々を護り抜くという強い信念を持っている隠れ熱血漢。味方には礼儀正しく優しく接しますが、敵には一切手加減せず非情です。無茶な行動や自己犠牲も必要と判断すれば躊躇しません。

◆戦闘
『暗黒剣ダークスレイヤー』と共に力任せに暴れます。ダメージや怪我を恐れず、代償を伴うユーベルコードの使用を躊躇しません。非戦闘員が戦場にいる場合は護衛・救出を優先します。




 リボンが解かれた箱から飛び出してきたのは煌々とライトを光らせながら走る電車であった。それが飛び出した瞬間、すぐさまに近くにいたリミを轢こうと走り出して、そして。
「させるものか!」
 飛び込んできたセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)が彼女の体を抱きかかえながらその進行方向上から勢いのままに逃れた。
「大丈夫か?」
 走り去って消えていく電車を尻目にセシリアはリミを見た、少なくとも大きな傷は負ってはいないようだ。
「あれは列車という奴か……」
「……あれは」
 無傷のはずのリミが震えている、しかし何かを言おうとしているのを認めたセシリアは静かに言葉を待つ。
「あれは私がこの世界に来る前の最後の記憶」
「……乗り物と聞きましたが」
「私は線路に飛び込んだ。……きっと逃げるために」
 茫然と呟くリミから距離を取り、セシリアは膝をついて問うた。
「逃げるため……ですか。それは……」
「分からない、『誰か』や『何か』からかも知れないし、自分の苦しみからかも知れない」
 リミは立ち並ぶ箱を見た。恐らくこれらの中に答えが入っているのだろう。
「……貴女はどうしたいと考えている?」
「知りたい、けれど……」
「怖い、と」
 薄く頷く彼女を見てセシリアは沈黙する。剣の届く範囲の相手ならば切り捨てる事も出来る、しかし他者の記憶と言うのは剣で断てる代物ではない。ただ。
「少なくとも今の貴女ならば大丈夫だ、私が保証する」
「え?」
 セシリアはここに赴く前に『オウガになりかけの者を救って欲しい』と伝えられてきた。絶望の果てに化け物に身をやつすかも知れないからと。しかし、今の彼女は恐怖を感じている。それはセシリアにとって、もっとも身近でもっとも遠い感情だ。恐れというものは完全に絶望した者が持つことはない。
「貴女はまだ絶望していない。もし先程のように襲ってくるのなら私が対処しよう」
 リミを立たせてセシリアが剣を抜く、諭されるように歩んだ彼女が開けた箱から現れたのは『声』と『影』であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御園・桜花
リミ説得
リミが多少なりとも箱を開けることに了解の様子を見せたら箱を開ける
リミが友人と自分を比較して拗れ、その上で何か事件なり事故なりがあったのではと考えた
リミが下を向いて蹲り続けるのではなく普通に前を向いて歩ける心持ちになれる手伝いをしたい

「私達は、私は、リミさんのことを知りません。だから、教えていただけませんか。私は桜花と書いておうかと言います。リミさんのお名前は何と書くのでしょう」
「確かにこれ以上の苦しさはないかもしれないです。でも今の苦しさが、ずっと続いてしまうから。リミさんが空を仰ぎ見ても苦しさを感じなくなるお手伝いをしたいんです」
リミの背中を何度も優しく撫でようとする




『おお、入社試験受かったのか』
『羨ましい、頑張ってね!』
「……これは……」
 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は箱から出てきた『声』と『影』に戸惑う。リミの苦しみに他者が関わっていると桜花は見立てていたが、どちらかと言えば現れたのはプラスの反応だった。……そして何より線路へと逃げたという先程の記憶とはつながらない。
「……っ、リミさん?」
 この様子を見た桜花は彼女の様子が気になり慌てて振り返る。桜花が見れば彼女は涙を流して『影』を見ていた。
「……大丈夫ですか?」
 彼女の近くにまで寄り背中に触れる。リミの背中は先程よりは丸くない。
「……うん、大丈夫。なんだかものすごく懐かしく思えて、そう感じたら止まらなくなって……」
 手の甲で彼女は流れ出るものを拭うと、まだ潤んだままの瞳で桜花を見た。桜の枝が生えている事で気付いたのか、彼女が先程言葉を交わした相手であることに気づく。そしてまた違う意味で目をそらす。
「……リミさん?」
「ごめんなさい、さっきは酷いことを言ってしまって。あなたなりに私を助けようとしてくれていたのね」
 先程よりはやや柔らかい横顔がそこにあった。今の彼女なら言えると桜花は口を開く。
「いえ。……私達は、私は、リミさんのことを知りません。だから、教えていただけませんか。私は桜花と書いておうかと言います。リミさんのお名前は何と書くのでしょう」
「……そのままの名前なのね。良いわ、教えてあげる」
 リミは地面に『理美』と指先で描く。
「……まだ、箱はあるの。この思い出から電車に飛び込むまでの間に何があったのか。なんで私はこれを捨ててしまったのか。……今の私はそれを知るのが、怖い。そこから目をそむけたくなるような苦しみがあったんじゃないかって」
 意外なほどに理知的に理美はそう口にした。しかし桜花は彼女を見て首を横に振る。
「確かに箱の中には苦しみが入っているのかも知れないです。でも、今の恐怖がずっと続いてしまうから。……理美さんが空を仰ぎ見ても恐怖や苦しさを感じなくなるお手伝いをしたいんです」
「厳しいのね、あなたは」
「え?」
 理美は微笑んで箱のリボンに手をかける。
「立ち向かえ、って言われたの。今、あなたに」
 しゅるりと音が鳴り箱が開かれる。残る箱はこれを含めてあと2つ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
箱の中身が苦しみ……誰だって開けるのは躊躇するだろう。だが、彼女を説得し箱を空ける道をとりたい。

アースの日本から来た……そうだな、希望に満ちた職場のはずが実際は過酷な環境続きだったか、トラブルを押し付けられて精神を病んでしまう程の重荷を課せられた、あたりだろうか。

彼女に目線を合わせるように屈み、話しかける。

会ったばかりで信用できないかもしれないが……君が箱を開ける間、俺は傍にいるよ。ひとりで全部受け止めるのが苦しいなら、俺にも押し付けてくれていい。
立ち上がってくれた礼をしないとな。

優しい顔や笑顔は苦手なんだ、言葉に俺にできる精一杯の[優しさ]を込められたら。

連携・アドリブ歓迎です!




 その箱から現れたものは鬼桐・相馬(一角鬼の黒騎士・f23529)の想像と相違のないものであった。
『使えないヤツだな、これだけ手伝ってやってもノルマをこなせないとか!』
『会社は無能のために給料払ってやってんじゃないぞ!』
『どうして言った通りにできないの!』
 影から浴びせられるのはアースの日本であると聞く、組織的圧力を攻撃的に言語化したものだ。彼の世界ではこの様な悠長に過激な言葉は、民の中から生じてこないだろう。言うとしても支配者側の発言であろう。
「………」
 相馬はその様子を見ている理美の隣に行こうと歩き出す、後ろから見る限り微動だにしていない彼女の表情が気がかりだった。一歩、ニ歩と近づき彼女の横顔を覗き込もうとした時、不意に大きな音が巻き起こった。
「好き勝手偉そうに何様のつもりだーーーーっっ! お前たちなんか怖くないバカヤローーーっっ!」
 その怒号の主は理美その人で、突然の叫びに相馬はほんの少したじろいだ。彼の巨体に気付いた理美は、恥ずかしそうに口を開く。
「あっ、ごめんなさい」
「い、いや気にしなくていい。意外と大丈夫そうで良かった」
「心配してくれてありがとう。絵本に出てきそうな鬼の人」
 わずかに笑みを浮かべる彼女は、むしろ平常通りに見える。それが何を意味するのか相馬には少し疑問だった。
「ところで余り気にしていないようだったが」
「……多分、ここに来るまでの私だったから苦しかったんだと思う。でもこの世界で命がけの鬼ごっこをさせられてたら……ね」
 苦笑いを浮かべる理美を見て相馬は合点がいく。彼女もこの世界に至ってからの冒険は、決して無駄ではなかったと。そして彼と彼女は残る最後の箱を見る。
「残るはあれ、か。開けるのなら横に立とう。ひとりで全部受け止めるのが苦しいなら、俺にも押し付けてくれていい、立ち上がってくれた礼をしないとな」
「そのお礼は取っておいて。……きっとあれは私が一人で受け取らなきゃいけないものだから」
 先程の笑みはどこかへ消え、口を真一文字にし鋭く箱を見ていた。彼女には中に入っている記憶が何であるか見当がついているようであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葛籠雄・九雀
SPD

最初に言わせてもらうのであれば、記憶がなくても生きてはいけるであるぞ。
オレの経験則である。友の顔すら忘れても、命は続く。

その上で、オレは問う。
リミちゃんは、それを『失いたい』のか、ただ『逃げたい』のか。どちらであるか?
箱の中身が何かなどオレは知らん。だがリミちゃんは『解っておる』のであろう。
喪失と逃避は等価である。だが、その願望と手段が一致しなければ…望む結果は得られぬぞ。

故に、選択は――自由なのであるよ。

難しく考えることはない!
たとえ望む結果でなくとも、『生きてはいける』のである。
『先達』のオレが言うのである、間違いはない。

さてリミちゃん。
それで、どちらなのであるかな?

アドリブ連携歓迎




「言わせてもらうならば、記憶がなくても生きてはいけるであるぞ」
 箱に手をかけようとした理美に葛籠雄・九雀(支離滅裂な仮面・f17337)がそう声をかけた。この奇天烈な仮面の男は先程までオウガと、文字通り刃を交えていた人物である。振り返った理美はその表情の記された仮面を見つめた。
「それは」
「オレの経験則である。友の顔すら忘れても、命は続く」
 口のない仮面の奥から彼女に向かって言葉は続く。
「――その上で、問う。……リミちゃんは、それを『失いたい』のか、ただ『逃げたい』のか。どちらであるか?」
 最後の箱を前にした理美への問い掛け。仮面のエピキュリアンの言葉を彼女はじっと聞いている。
「箱の中身が何かなどオレは知らん。だがリミちゃんは『解っておる』のであろう。喪失と逃避は等価である。だが、その願望と手段が一致しなければ……望む結果は得られぬぞ」
 断定と助言。九雀の言葉を聞き取った理美は一旦目を伏せて、それから口を開いた。
「私は『失いたかった』し『逃げたかった』。これまで開けた箱には『逃げたかったもの』が入ってた」
 今度は九雀が彼女の言葉に口を挟まない。
「私の行動の結果、それから私は『逃げたかった』。でもそれはここに来てくれたあなた達のお陰で逃げずに受け止められるようになった。……感謝してる、ありがとう」
 彼女はもう一度振り返り箱を見やる。
「選択は――自由なのであるよ」
「うん、大丈夫よ。決めているから」
 踏み出した足が箱に近づき、伸ばした手がリボンを握る。
「中に入っている者が何を言おうとも難しく考えることはない! たとえ望む結果でなくとも、『生きてはいける』のである」
 理美が九雀の方に少しだけ首を動かして九雀を見る、彼女に視線を向けられた九雀はうなずいた。
「『先達』のオレが言うのである、間違いはない」
「ありがとう仮面さん。……私は『私』を大事にするね」
 そして最後の箱が開かれる。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『ストレンジ・レインボー』

POW   :    ソロモン・グランディの永遠
敵を【ぽこぽこ殴って皆】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
SPD   :     終末の過ごし方
技能名「【団体行動】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ   :    奇妙な虹彩
自身が戦闘で瀕死になると【アリスを素材にしてストレンジ・レインボー】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●『私』
『私なんか何をやってもダメだ』
「そうかも知れない」
『私は誰の期待にも答えられない、意味のない人間だ』
「確かに私には色々なものが足りなかった」
『だから生きていてもしょうがない、死んだほうがいい』
「――でもそれは違う」
 最後の箱に入っていたのは『失いたかった』彼女自身の影であった。しかしそれも理美自身に言葉を受け止められてかき消えていく。その姿を見送った理美は振り返ると、何かをこらえるような笑顔を猟兵に向けた。
「――ありがとう。……ここで何度言ったかな、きっと私はこの言葉さえ言えなかったからここに来てしまったんだと思う。……だから私は元の場所で言うために帰るわ」
 彼女がそう言うと同時に周囲から多くのオウガの気配が生じる。どうやらついにこの場所を突き止めたらしい。
「……最後にお願いしていい? 私が帰るのを手伝ってくれない? ……私も頑張るから!」
鈴木・志乃
あっはっは、そんだけ声出るなら大丈夫だね!
OK、そいじゃ私も本気だそーじゃありませんか。いや今までも本気だったけどね!

祈願成就の神の娘、志乃
その願い聞き届けたッ!!
UC発動
オーラ防御展開
敵攻撃は第六感で見切り敵の群れに突っ込んで行って全力魔法の衝撃波で一切合切をなぎ払い攻撃

団体行動がなんぼのもんじゃー!
皆でよってたかって叩くとか本当ろくでもないのばっかだな!
悪いけど私の目にとまったからには絶対許さん!

あっ個別には鎧砕き出来る魔改造ピコハンでぶっ叩くよ

理美ちゃんの周囲では
念動力で光の鎖を操作し早業武器受けからのカウンターなぎ払い
庇うように立ち回る

大丈夫諦めんな
その意志があれば
必ず叶うよ




「あっはっはは!」
 理美のその言葉を聞いた鈴木・志乃(ブラック・f12101)が腹の底から笑い声を上げる。目尻の笑い涙を指先で拭って志乃は彼女に応えるように大きな声を出す。
「そんだけ声出るなら大丈夫だね! OK、そいじゃ私も本気だそーじゃありませんか」
「今までのは?」
「今までのもさ! ……祈願成就の神の娘、志乃! その願い聞き届けたッ!!」
 彼女はそう言うと人の形を限りなく簡易にしたような姿の敵の群れに突撃する。彼らは走り込んでくる彼女を取り囲み腕を振り上げた。
「団体行動がなんぼのもんじゃー!」
 四方八方から振り下ろされる拳、それに耐えながら彼女はマイクを取り出して大きく叫ぶと取り囲んだオウガ達がまとめて衝撃波で吹き飛んだ。
「皆でよってたかって叩くとか本当ろくでもないのばっかだな! 悪いけど私の目にとまったからには絶対許さん!」
 背中から魔改造されたおもちゃのハンマーを取り出し、理美に近くに落ちた敵にめがけて振り下ろす。すると敵が砕けた。見た目とは裏腹のその攻撃力に理美が目を丸くする。すぐさまに志乃はその彼女の方に振り向くと、光の鎖を伸ばし近くにいた敵を追い払う。理美を守るように志乃は彼女の傍らに立った。
「大丈夫、諦めんな」
 志乃は理美の、理美は志乃の顔を見た。
「その意志があれば必ず叶うよ」
「……私が私でありつづける事が」
 志乃は頷くと前を見た、そこには顔のない敵が並んでいる。再び光の鎖を踊らせて彼女は言う。
「その願い、きっと守ってね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「どうやら進む道は決まった様だね。」
「言われるまでもない。俺はその為に来たんだ。」

理美の行動や敵の数、位置、行動を【見切り】
理美を守る様に立ち回り
攻撃された場合は【かばう】か
プロテクションフィールドで守る。

敵に対は基本的に武装で攻撃。
【範囲攻撃】【マヒ攻撃】を伴った拘鎖塞牢を使用して拘束。
直後に隙を生じない様に【早業】を使った
【2回攻撃】でデモニックロッドの闇の魔弾で攻撃。

敵の状態は十分注意、
瀕死になり奇妙な虹彩を使われたら【カウンター】【高速詠唱】
【全力魔法】を使った暴虐の黒竜王で何としても阻止する。
「困難を乗り越える決意をした者を止める事は
誰にもできない。
だから俺は、絶対に負けられない。」


御園・桜花
「はい理美さん、喜んで」

UC「桜吹雪」使用
理美の近くに陣取り理美に近付く全オウガを攻撃
第六感も使用し、理美に当たりそうな攻撃は庇う
「理美さんは貴方達には渡しません」

「理美さんがずっと下を向いたまま苦しみ続けることも、オウガの仲間になって他の誰かを苦しめる存在にならなくてすんだことも。全部理美さんが立ち向かうと決めて下さったからです。ありがとう、理美さん」
理美の手を握る
「死を選ぶくらいなら、もっと上の人や新聞社にぶちまけたっていい。接客業が好きなら、他の店に転職したっていい。この世界を抜けられた理美さんなら、きっと今を変えられます。貴女がそうできる人だと、私は信じています…ありがとう、理美さん」




「どうやら進む道は決まったようだね」
 フォルク・リア(黄泉への導・f05375)がフードの下で口を笑みの形に変える。彼は彼女の願いに応えるべく彼女の前に踏み出した。
「言われるまでもない。俺はその為に来たんだ」
 彼の呼び出した棺桶がオウガ達を閉じ込める、その間に御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)が理美の傍らに並ぶ。
「ご注文承りました。……はい理美さん、喜んで」
 桜花は銀のトレイを持って腕と腰を捻りながら集ってくるオウガの群れを見る。
「理美さんは貴方達には渡しません」
 その言葉と共に投げられた銀の円盤はぐるりと旋回して無数の桜の花びらへと変じていく。
「ほころび届け、桜よ桜」
 解けた銀盆は桜吹雪となりオウガ達を包み込んでいく。棺に囚われていた敵も例外ではなく、その香気に果てていく。しかしそれにも関わらずなお抜けてくる敵もいる。
「近づかせるか」
 桜吹雪を超えてきた相手に対し、フォルクが闇色の魔弾を連射して撃ち抜く。彼らが居る限りそうそう敵は理美へと近づけないだろう。ある程度の安全を確保していると見て取った桜花が理美の手を取った。
「……え?」
「伝えたいことがあります」
 不意に触れた手の感触に理美が振り向いた。その彼女に桜花は
「理美さんがずっと下を向いたまま苦しみ続けることも、オウガの仲間になって他の誰かを苦しめる存在にならなくてすんだことも。全部理美さんが立ち向かうと決めて下さったからです。……ありがとう、理美さん」
「ううん。それは私だけの力じゃないよ、助けてくれたみんながいてくれたから。こちらこそ、ありがとう」
 言葉を交わす彼女たち、しかし劣勢となった敵は力ずくでも理美を取り込まんと奇妙な虹色の光を放ち始める、それが邪なものであると察知したフォルクは高速で呪文を紡ぐ。
「纏う風は黒。羽撃く翼は烈風。その身に宿すは狂乱。上げる咆哮は冥府の陣鐘。抗う全てを喰らい、その宿せし力の無慈悲なる真価を示せ」
 彼に召喚された黒竜はその光を喰らい始め、理美を守る。状況に目を配っている彼に隙はない。
「困難を乗り越える決意をした者を止める事は誰にもできない。……だから俺は、絶対に負けられない」
 彼の意思に呼応するように黒竜は踏み出してオウガに牙を突き立てる。
「……そうです。この世界を抜けられた理美さんなら、きっと今を変えられます。貴女がそうできる人だと、私は信じています」
「その信頼に負けないように、今度こそ私はちゃんと歩くよ」
 そう答えた理美の表情には死の色はない。それを確認した彼女はもう一度心のなかで繰り返す。
(「……ありがとう、理美さん」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
前を向いてくれたんだな、喜んで力を貸すよ。

【POW行動】
理美を[かばう]で守りつつ戦闘。護身用として[凍てついた短剣]を渡しておく。
[冥府の槍]でこちらへ向かってくる敵を[串刺し]と[範囲攻撃]で一度に多数を倒せるように攻撃。自身への攻撃は[武器受け]で、彼女への攻撃は短剣を介して[オーラ防御]か自らを盾に。こちらに集団で殴り掛かってきたら、それを狙ってUC発動。全て燃やしてやろう。

最後の1体は理美にとどめを刺して欲しいな、出会った時より強くなっている、大丈夫だ。

君がもしこの先再び辛くなっても、この世界で君が見せた強さ、そして俺たちを思い出して欲しい。君なら大丈夫だよ。

連携・アドリブ歓迎です!




「これを」
 鬼桐・相馬(一角鬼の黒騎士・f23529)が迫ってくる敵を槍で串刺しにしつつ、その反対側の手で短剣を理美に渡した。彼女はその霜降る刃の柄を握りしめる。どうやら彼の意図は伝わったらしい。それでも理美自身は逃げるのはともかく戦い慣れしていない、それを補うべく彼は両手で冥府の槍を構える。
「俺が相手だ。前を向いてくれた彼女には手出しさせない」
 突き出した槍が敵の胴を貫く、そしてそれだけで止まらずその体が炎となって爆ぜて周囲の敵を巻き込んだ。
「すごい……っ!?」
 その様子を見ていた理美に対してオウガの一体が殴りかかる、彼女の掲げた短剣がそれをなんとか受け止めるものの膂力の違いにより押されて行く。相馬は自らと縁深いその剣に念を送ると、短剣から青黒い炎が吹き出して敵を追い払う。
「そうだ、こっちだ」
 その力が彼のものと察したオウガ達は彼に迫ると一斉に殴りかかる。相馬はあえてそれを受けると、その傷口から先程と同じ青黒い炎が吹き出す。
「よく燃えそうだ」
 取り囲んでいたはずのオウガ達は、むしろ炎に巻かれて燃え尽きていく。しかし、その全てが巻き込まれた訳ではない。様子を窺っていたオウガが、不意に理美に襲いかかった。
「………っ!」
 即座に彼女はガラスの迷宮を展開しその中へオウガを閉じ込める。壁にぶつかってよろめく敵に向かって、迷宮を超えた剣の一撃が突き刺さり敵を消滅させる。
「出会った時より強くなっている、大丈夫だ」
 敵を焼き尽くした相馬が、額の汗を拭う理美にそう声をかけた。
「強くなるってこういう感じに?」
「そういうのもある。でもそうじゃない強さももう持ってるだろう?」
 残る敵に穂先を向けて、彼女には背中を向けて彼は語る。
「君がもしこの先再び辛くなっても、この世界で君が見せた強さ、そして俺たちを思い出して欲しい。君なら大丈夫だよ」


 最後の敵を倒した猟兵と理美の前に『扉』が現れた。
「……これが私の、か」
 それは銀色の金属の両引き戸、つまり電車の扉だった。少しだけ複雑な顔をした彼女は、その冷たい取っ手に両手をかけて、一旦くるりと振り返った。
「……どこの誰かは分からないけれど、助けてくれてありがとう。ここでの冒険を覚えていられるかどうかは分からないけれど、きっとみんながいなかったら終わってたと思う。……また会えたらよろしくね。その時はもっと落ち着けて話せるといいね」
 そして理美は扉を開いて飛び乗った。見えない列車は走る音だけを残して消え去り、猟兵たちもグリモアの輝きに導かれてその場を後にして、残ったのは主を見送った彼女の国だけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年01月25日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス


30




種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ヴィル・ロヒカルメです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト