●その魂を蝕むもの
寒空の下、茶けた荒野が広がっている。遠くから狼と思しき遠吠えが金属の擦れる音と共に風に乗って聞こえてくる。その風音を聞きながら、男は地を掻きむしった。
たりないたりない、ここにはなにもない。
ぎょろりと目を向け、辺りを探す。その目に既に理性はなく、その動きは既に餓えた獣を彷彿させた。
あたたかくなくても、おいしくなくても、もはやなんでもいい。
がちゃりと手にした重火器を鳴らす。前に食べたのはいつだったか、喘ぐ男の頭にはグルグルと一つの事だけが回っていた。
だれか、おれに、まんぷくできるものを、くれ……!
●グリモアベースにて
「ダークセイヴァーは、そのすべてがヴァンパイアの支配下にある訳ではありません。」
ぱたりと聖典のグリモアを閉じ、アルトリンデ・エーデルシュタインは集まった猟兵たちへと話し始める。
「かつてヴァンパイアが支配しようとして出来なかった未開の土地。その地を解放できればヴァンパイアの支配がない居住地を作る事も出来るでしょう。」
それは、ダークセイヴァーに暮らす人々が虐げられる事のない生活を送れるという可能性を意味する。だが無論、ヴァンパイアが支配を断念した土地に問題がない訳がない。
「その土地に今なお存在する『異端の神々』、これを排除しない限りは人の住める環境にはなりません。」
かつて、その土地は異端の神々が支配する土地であった。その土地を制圧すべくヴァンパイアがオブリビオンを率いて攻め込んだものの、神々は殺されてもオブリビオンに憑依して魂と肉体を奪った。その為、神々を殺しきる事ができず、結果として支配を奪う事ができなかったヴァンパイアはその土地を諦めたのだという。
「異端の神は現在もオブリビオンに憑依しています。そして憑依されているオブリビオンには一切の理性はありません。」
神が異端であるが故に。その神性に意志があるかなど人の身には理解ができぬが故に。神に憑かれたオブリビオンには一切の理性は見られず、『狂えるオブリビオン』と呼ばれている。
「さらに周辺には狂気に惹かれてオブリビオンの集団も居ます。こちらの排除もお願いします。」
加えてその一帯の地域には神の狂気が満ちており、足を踏み入れた者をその狂気が蝕む。
「具体的には、その地に長く居ればいるほど、神に近づけば近づくほど、お腹がすきます。」
たかが空腹と侮るなかれ。最初は小腹が空いたな程度だが、徐々に空腹はひどくなり最後には理性すら蝕むほどになる。
「その対抗策としてですが、まず皆さんには食事を作ってもらいたいと思います。」
空腹感が異端の神の影響によるものなので、精神的に満腹感を得られればその影響を緩和できる。凝ったものでなくとも良い、要は自分が食べて美味しいと思えればいいのだ。
「現地は荒野ですが、『切り株キノコ』という大きなキノコがあちこちに生えています。これを調理してもいいでしょうが……」
このキノコ、一抱えもある切り株に似たキノコで毒はない。それどころか味も無い。生でも食べれるが、キノコの食感しか楽しむ所がないだろう。
「その為、切り株キノコを食べるなら調理は必須となるでしょう。このキノコは焼けば焼くほど固くなり、煮れば煮るほど柔らかくなります。」
量だけはたくさんあるので、上手く調理できれば腹も満たせるだろう。
「皆さんが満腹感を得る頃には、周囲のオブリビオンも集まってくると思います。」
オブリビオンも飢餓感に苛まれているが、彼らは食事を目当てに集まるのではない。何を奪い、喰らっても満たされぬが故に、満腹感を持つ者を喰らいに来るのだ。
「相手は神が憑きし『狂えるオブリビオン』、これを倒せばこの地域から異端の神を退散させる事ができます。絶望の世界に安住の地を作る為に、皆さんの力をお貸しください。」
そう言葉を括り、アルトリンデは猟兵たちを送り出すのだった。
こげとら
しばらくぶりです、こげとらです。
今回はヴァンパイアの手の及んでいない地を解放しようというシナリオになります。
舞台となるのは荒野。足を踏み入れると、どこからともなく常に狂えるオブリビオンの声が聞こえてきます。身を隠せるくらいの岩があちこちにある以外、樹も草も存在しない土地になります。
第一章はまずは食事を用意して美味しく食べましょう。『切り株キノコ』は大量に生えてますが、そのままでは美味しく食べれません。他の食材や調理機器などは持ち込んでかまいません。
この章で作った食事は大量に作り置きしておく事ができ、このシナリオ通して自由に使う事ができます。また、他の猟兵の方が大量に作った料理を食べてもかまいません。その場合は、当人に許可なく一人で食べ尽くすのはご遠慮ください。
第二章で飢餓感に苛まれるオブリビオンとの集団戦、第三章で異端の神が憑依している『狂えるオブリビオン』との戦闘となります。どちらも言葉は通じません。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております!
第1章 冒険
『その食材の名は……』
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POW : 焼いたり切ったり、すぐにできる簡単レシピで挑戦!
SPD : 丁寧且つ手早く、毎日の食卓的なスタンダードな家庭料理で挑戦!
WIZ : 創意工夫で美味しさアップ! オリジナリティあふれる創作料理で挑戦!
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春乃・結希
お腹空いたらイライラしますよね、わかるわかる
戦う前にしっかり食べておかないと!
旅人の私、キャンプ飯はお手の物です
皆にも食べて貰いたいし、大きなお鍋で作れる…やっぱり定番のカレーかな!
時短の為、予め食材は切っておいて、あとは鍋に入れて煮るだけ!にしておきます
美味しいキノコもあるみたいだから、折角やし薄切りにして入れてみようかな?
大きなザックにカレーの食材(ルー・玉ねぎ・人参・じゃがいも・牛肉・お水)、ナイフと小さなまな板を詰め込み、外側にお鍋をくくりつけ、よいしょよいしょと岩陰を見つけて調理開始です
……うわ!お米忘れたー!
もし良かったら他の猟兵の方にも食べて貰いたいし、私もお裾分け貰いたいです!
見渡すかぎりに広がるは、岩肌が覗く荒涼とした大地。風に乗り時折聞こえる遠吠えは、満たされざる餓えに喘いでいるかのようだった。『異端の神々』の狂気が蝕むこの地に足を踏み入れた春乃・結希の耳に、その餓えた風音に混じって微かな、しかしいやに耳に残る声が沁み込んでくる。
満たされぬ満たされぬ、どれだけ奪おうと、どれだけ喰らおうと、なぜ……
焦燥すら超え、狂気に達した声。その声が結希に空腹感を募らせてゆくように感じる。おそらく、この地にある限りこの空腹からは逃れられまい。だからこそ結希は持ってきた物を広げて準備を始めた。
「お腹空いたらイライラしますよね、わかるわかる。
戦う前にしっかり食べておかないと!」
旅人である結希にとって野外での調理は慣れたもの。お鍋を括りつけたザックを背負って、よいしょよいしょと調理スペースとして良さそうな岩陰に。そして小さなまな板とナイフ、食材を取り出して調理開始!
「皆にも食べて貰いたいし、大きなお鍋で作れる……やっぱり定番のカレーかな!」
作る時間を少しでも短縮するために予め切ってから持ってきた玉ねぎ、人参、じゃがいも、牛肉といった具材にルーやお水をザックから取り出す。後は鍋に入れて煮るだけになるよう準備しておいた具材を鍋に入れ、火にかける。
「美味しいキノコもあるみたいだから、折角やし薄切りにして入れてみようかな?」
ナイフで切り取った『切り株キノコ』も一緒に入れて、煮込む事しばし。辺りには食欲をそそる芳醇なカレーの香りが広がった。具材にもカレーがなじみ、旨味がよく染み出している。さて、それでは実食、という所でザックを覗いた結希を驚愕の事実が襲った。
「……うわ! お米忘れたー!」
なんたること。カレーはルーだけでももちろん美味しいが、他の食材と合わせるハーモニーもまた格別だ。いっそのこと、薄く切ったキノコを固めに焼いてナンの代わりにしても良いかもしれない。だがそれよりも折角のカレーだ。一人で食べるよりも……
(もし良かったら他の猟兵の方にも食べて貰いたいし、私もお裾分け貰いたいです!)
結希が煮込む鍋いっぱいのカレーは、そんな想いを香りに乗せて。近くに来た者にはその存在を知らせるだろう。
大成功
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鳶沢・成美
僕も一応”料理”出来なくはないけど
やっぱり簡単に用意できるのがいいかなと思う
さすがに調味料の類は持ち込まないといけないだろうけど
切り株キノコか、焼けば焼くほどかたくなるのなら……
切り株キノコを一口サイズか、ちょっと大きいくらいに薄切りにしてよーく焼く
これを塩なんかで味付けすればチップス的な奴になるはず。
そうだ、厚さをもう少し厚めにすれば、煎餅みたいな感じになるかも
これならそれなりの量がわりと簡単に用意できると思う
硬めにすれば、食べるときによく噛むことになるから満腹中枢も刺激されやすいし
調味料をかえれば味も変わるし、チョコとかでトッピングも面白そうです
あ、そうだUCで食卓とか作っておこう
見渡す限り荒野には人の居た痕跡すらなく、ただ岩肌のあちらこちらに切り株のようなキノコがあるのみ。鳶沢・成美の目に映ったのはそんな景色だった。
「僕も一応“料理”出来なくはないけど、やっぱり簡単に用意できるのがいいかなと思う。」
『異端の神々』の支配下でありオブリビオンもいる土地、かける手間は少ない方が良いだろう。そう判断した成美はさっそく調理するための準備を始めた。
「さすがに調味料の類は持ち込まないといけないだろうけど。」
食材は切り株キノコがあるにしても、味付けをするならば現地調達だけでは心もとない。取り出した様々な調味料からどれがいいか、どの調理法が合うかを思案する成美。
「切り株キノコか、焼けば焼くほどかたくなるのなら……」
一口サイズか、それより少し大きめに薄切りにした切り株キノコをよく焼いてゆく。初めはキノコ特有の弾力があったが、火が通るにつれてパリッと堅くなった。ほんのり香ばしい香りの漂う薄切りキノコ。
「これを塩なんかで味付けすればチップス的な奴になるはず。」
軽く塩を振りかければ、見た目も食感もポテトチップスによく似たキノコチップスになっていた。試しに一口食べてみた成美。パリッと小気味良い音と共に、香ばしい風味と程よい塩味が口内に広がる。
「そうだ、厚さをもう少し厚めにすれば、煎餅みたいな感じになるかも。」
試しに煎餅をイメージして少し厚めに切ったキノコを焼いてみる。表面はパリッと堅め、中は火を通しすぎないように程よく。まずは塩を振って一口。
「厚さと火の通り具合を変えれば色んな食感ができそうだな。」
煎餅とチップス、2種の焼キノコは適度に硬いため、食べるときによく噛むことになるから満腹中枢も刺激されやすい。それに調味料を変えれば味も変える事ができる。
「これならそれなりの量がわりと簡単に用意できると思う。」
チョコとかでトッピングも面白そう、と考えながらキノコを焼いてゆく成美。食事をとるならと【日曜大工ノ術(サンデーカーペンター)】で作った食卓に様々な味の焼キノコのチップスと煎餅を並べる成美の元へ、美味しそうなカレーの香りが漂ってきた。カレー味も良いかもしれない。そう思った成美が近くの岩場でカレーを作っている者を見つけたのは、それからほどなくの事だった。
大成功
🔵🔵🔵
十文字・武
<アドリブ連携詠唱省略ok>
へっ、言っておくがな?
世界中を放浪して、世界中の旨い物を食って来た、このオレだぜ?
くっくっく……そのオレに、料理をなぁ……。
…………丸焼きしかできねぇよ。
まずい、まずいぞこれは。
いや、料理も不味いとか言ってる場合じゃなくっ!(丸焼キノコ齧りつつ)
あー、そうだな、ここは。
周囲の猟兵の様子を伺い【情報収集】。
大量にカレーを作ってる者、チップスのような物を作ってる者。
主食に軽く摘める物……なら、あと必要なのは……(既に貰う気で居る者)
サラダだ!
洗って千切って皿に乗せるだけなら、オレにも出来るっ!……きっと!
指定UCで猫騎士団召喚!
得意の鼻で新鮮野菜を探し当てろ!
荒涼とした荒野に狂気を孕む声が響く。その中を舞う風にはほんのりと美味しそうな香りが乗っていた。十文字・武はその風を肺腑に吸い込み、荒野を見渡す。
「へっ、言っておくがな?
世界中を放浪して、世界中の旨い物を食って来た、このオレだぜ?」
不毛の地と呼ぶにふさわしい風景、自生するはキノコのみ。そんな中に食材すら持ち込まずに来た武だが、その顔には自然と笑みが浮かんでいた。
「くっくっく……そのオレに、料理をなぁ……。」
手に採るは『切り株キノコ』、一穿が閃き、燃える炎にくべられる。やがて出来上がる、その料理の名は。
「…………丸焼きしかできねぇよ。」
人は己の力が及ばぬと知った時、自然に笑みが漏れるという。様々な食材、様々な料理を食べてきた男、武は焼けたキノコを齧りながら独り言ちる。
「まずい、まずいぞこれは。いや、料理も不味いとか言ってる場合じゃなくっ!」
味のしないキノコの丸焼きを齧りながら武は思考を巡らせる。一人で何ともならぬのであれば、他の人の知恵を借りるべきか。ならば他の猟兵たちはどうしているのだろうかと人の気配を感じた岩陰を覗いた武。
「大量にカレーを作ってる者、チップスのような物を作ってる者。
主食に軽く摘める物……なら、あと必要なのは……」
既に貰う気満々である。否、これは役割分担というものだろう……きっと。美味しく食事をする為には多様な味の料理が並ぶにこした事はないはずだ。だが武に料理は出来ないし調理器具などもない。だがそれでも、なにか、なにか自分が作れるものがあるはずだ……その時、武の脳裏にある料理が閃いた。
「サラダだ!
洗って千切って皿に乗せるだけなら、オレにも出来るっ! ……きっと!」
その後の武の行動は早かった。【カラバ侯爵領のユカイな仲間達(ムテキ・サイキョー・カラバニャンコーズ)】で召喚した猫騎士団を荒野に散開させる。猫の鼻ならば、この不毛の荒野でも新鮮野菜を見つけられるかもしれない。やがて戻って集まった猫騎士団によるもふもふみゃーみゃーな癒し空間の真ん中には、十分な量の新鮮野菜が集められていた。
「でかした!」
早速、サラダづくりを始める武。しかし、猫たちはこの荒野のどこからこれだけの野菜を集めたというのか。
成功
🔵🔵🔴
鳴夜・鶯
【バカ騒ぎクッキングスタジアム】
みなさんこんにちは〜ようこそ
黒騎士クッキングスタジアムのお時間です♪
司会はボク、794こと、うぐがお送りします。
本日の食材は、此方自生のキノコ🍄
はぃ大きくて立派ですねー
残念ながら味も無く食感だけのようですがどの様に調理をされるのでしょうか?
ワード・マスマー発動
何処かで聞いたことのある料理番組のテーマソングを演奏すれば
料理の鉄○ぽい人が現れ、勝手に反対から現れた○人ぽい人と料理対決をおっ始めます。
調理スペースはヒートアップしております!
さーて料理が完成するまで、しばらく掛かりそうです!!では完成までボクの音楽をお楽しみ下さい!!
同じ頃、少し離れた岩場では鳴夜・鶯が歌の準備を行っていた。程よく岩が集まり小さなスタジアムのようになっている場所を見つけた鶯は、この場所ならば最適だろうと声を張り上げた。
「みなさんこんにちは〜ようこそ。
黒騎士クッキングスタジアムのお時間です♪
司会はボク、794こと、うぐがお送りします。」
サウンドソルジャーである鶯の声は、荒野の風に負けずによく通る。見る者が見れば、テレビ番組の司会者のように映ったかもしれない。鶯はまるで見ている者が居るかのように傍にある『切り株キノコ』を示した。
「本日の食材は、此方自生のキノコ🍄
はぃ大きくて立派ですねー。
残念ながら味も無く食感だけのようですがどの様に調理をされるのでしょうか?」
そして鶯が荘厳な音楽を演奏する。【ワード・マスター】により具現化されたスタジアムが岩場の風景を覆った。私の記憶が確かならば、今、鶯の演奏しているテーマソングで始まる料理番組があったという。スタジアムに、二人の料理人が現れる。かつて頂点に君臨せし3人の内の2人の対決が今、行われようとしていた。
片方はキノコを細長く切ってゆく。もう一方は一口大に切ったキノコを炒めていた。細切りキノコが寸胴鍋に入れられて湯でられている間、もう一方はとろみのあるエビチリ風の餡にキノコを合わせてゆく。
「調理スペースはヒートアップしております!」
ふと、鶯の視界の端で猫が見えた気がした。飾り付け用の野菜を持って行ったようだが、こちらの調理には支障はない。それよりも料理対決である。既に両者仕上げに入っており、しばらくすれば出来上がるだろう。
「さーて料理が完成するまで、しばらく掛かりそうです!! では完成までボクの音楽をお楽しみ下さい!!」
一層、盛り上がりを見せる音楽に合わせるかのように料理人たちの動きもラストへ向けて動き出す。やがて演奏の終了と共に幕を閉じた料理対決の後に残っていたのは、キノコで作った麺の上に甘辛のキノコソースがかかった料理だった。キノコ麺の量も十分、ソースを変えれば味も色々と楽しめるだろう。
成功
🔵🔵🔴
リドリー・ジーン
切り株キノコ...まずは軽く焼いて一口食べて。
うぅん、たしかにこのままだとあまり美味しくないのね。
...では、私は持ってきた食材でグラタンにでもしてみようかしら。
量も少量ずつ...ホイルで小分けにすれば他の方とも分けて食べれるし、うん、いいわよね。
こっちのキノコはチーズをかけて焼いただけで...あら、美味しそう...これはお酒のおつまみにも良さそうな...
だめだめ、流石に飲まないわよ流石に。
...いつのまにか周りらからも良い匂い。香ばしい香りに食欲が...
できたグラタン片手に猟兵の皆さんのところに回って行こうかしら。ふふ、食事会ね。
切り株キノコはその名の通り、一抱えもある切り株のような傘を持つキノコだ。傘の重さのためか柄は太く短くほとんど傘と一体化している。リドリー・ジーンはそのキノコを少し、切りとった。
「切り株キノコ……まずは軽く焼いて一口食べて。
うぅん、たしかにこのままだとあまり美味しくないのね。」
香ばしく炙ったキノコは程よい弾力があるものの、まったく味が感じられない。やはり調理は必須、それも味付けは他の物を主体にするべきだろう。キノコの味や食感を確認し、リドリーは何を作るかを決めた。
「……では、私は持ってきた食材でグラタンにでもしてみようかしら。」
ホワイトソースやチーズの風味が前面に出る上、キノコの食感も楽しむ事ができる。寒いこの季節にアツアツのグラタンはご馳走と言えるだろう。
「量も少量ずつ……ホイルで小分けにすれば他の方とも分けて食べれるし、うん、いいわよね。」
大皿で纏めて作るもの良いが、場所が屋外でありオーブンなどは使えない事や取り分けのしやすさなどを考慮してホイルで包む。持ってきた様々な食材から出る旨味がホイルに包まれて加熱される事でキノコにも染み渡り、濃厚なチーズにも負けない味わいとなる一品だ。チーズの焼けるいい匂いが漂う中、火加減を見ていたリドリーの目に止まったのは、切ったキノコ。
「こっちのキノコはチーズをかけて焼いただけで……あら、美味しそう……これはお酒のおつまみにも良さそうな……」
香ばしい香りと共に、溶けたチーズが視覚的にも食欲を刺激する。摘まんで食べるには丁度良く、チーズと酒の相性は言わずもがな。あったかい酒で身体を温めるもよし、逆に冷たい酒の味わいをキノコのチーズ焼きで温めた舌で堪能するのも良さそうだ。ありありと浮かぶ、魅惑の光景にリドリーは頭を振る。
「だめだめ、流石に飲まないわよ流石に。」
見ればグラタンもいい具合に焼けている。そのチーズの良い香りに混じって、周囲からも美味しそうな香りが漂ってきていた。『異端の神々』の狂気が蝕む飢餓が無くとも、お腹がすくには十分な雰囲気。ここへ来た猟兵たちも皆、何か美味しいものを作っているに違いない。
「できたグラタン片手に猟兵の皆さんのところに回って行こうかしら。ふふ、食事会ね。」
リドリーは出来立てアツアツのグラタンが冷めないうちに、美味しそうな香りの元へと向かっていった。
大成功
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第2章 集団戦
『蜂起する銀狼軍』
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POW : シルバーバレット
自身の【命】を代償に、【他の構成員を超強化。彼ら】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【銀の弾丸】で戦う。
SPD : 決死の覚悟
【自ら頸動脈を切断する】事で【最終戦闘形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 抹殺の意思
【戦闘後の確実な死】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【高速連射形態】に変化させ、殺傷力を増す。
👑11
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木の食卓に料理が並ぶ。カレーにチップス、サラダに麺、そしてグラタン。他にもいくつか作った料理が持ち寄られ、猟兵たちは美味しい食事に腹も心も満たされていた。これならば、この『異端の神々』の領域に在ってもしばらくは飢餓に苦しむ事はないだろう。無論、余裕があれば食事を挟んで、空腹を満たすのも良いかもしれない。満たされた猟兵たちを恨むかの如く強い風が一陣、吹き付けていった。
なぜ、なぜ……我は満たされぬというのに、なぜ……
風に乗って聞こえる声が強まる。その言葉に導かれるかのように遠吠えが聞こえ、遠目にもこちらに向かってくるオブリビオン『蜂起する銀狼軍』の姿が見えた。かつての遺志は既になく、今はただ飢餓の狂気を目に映すのみ。餓えた狼を思わせる苛烈さを纏い、癒えぬ飢餓を満たす為。銀狼の兵は猟兵たちへと向かっていった。
十文字・武
<アド連携詠唱略ok>
満たされぬ飢えに狂う狼ねぇ?
これまた、どっかで聞いたような話なこった。
まぁ、なんで有ろうとオブリビオンに堕ちた以上、消すしかねぇんだが……。
さて、どちらがより餓えた狼だろうな?
UC【悪喰魔狼と七匹の子ヤギ】血と肉と魂を捧げ、悪喰たる魔狼を召喚
消耗は【激痛耐性】と退魔刀の【生命力吸収】で堪えろ
魔獣に戦線を荒らさせ孤立させろ。集団で無けりゃ怖い相手でもない【戦闘知識】
各個撃破に【なぎ払え】、【串刺し】にしろ
豆鉄砲如きが数発当たったくらいでオレが死ぬか【激痛耐性】
……腹が減る?
目の前に幾らでも獲物が居るだろうよ。喰らってやれ【恐怖を与える】
いつかの未来のオレを悉く皆殺しにしろ
鳶沢・成美
現れましたね、腹いっぱい食わしてあげたくもあるのですが、
そんな余裕もなさそうですね
”目立たない”様に立ち”戦闘知識”と”第六感”でタイミングを見計らって
”全力魔法”で”範囲攻撃”の【氷雪竜巻】で攻撃
”誘導弾”の応用で敵味方の識別をちゃんとしておこう
……具体的にどうやっているかわからないけど、
なんか敵だけに当たっている気がします。流石魔法ファジーですね
そうだ、さっき”料理”したキノコチップスを【氷雪竜巻】の風に乗せて放ってみよう
あれだけの空腹感、飢餓感だし気を取られて隙を見せてくれるかも
アドリブ・絡み・可 ””内技能
リドリー・ジーン
香りに釣られてきたのね?
残念だけど、おすそ分けは出来ないわ。
折角作って頂いた食卓、守り切っていきましょうか。
この場で【援護射撃】で援護と牽制。
銀狼がこちらに近寄るならば回数指定UCで足元から木々を勢いよく伸ばして飛ばしてしまいましょう。
空中ならばいい的ね、確実に射撃で当ててみせるわ。
…そうね【狂気耐性】はあるとはいえど、心もとないかな。皆さんが作ってくれた食べ物を摘まんで頂くわ。
皆の様子はどうかしら? 影から出現させた手に食事を持たせて運ばせてみる?
…貴方が捕まっちゃうのは無しだからね、折角の食事を落とすのはダメ。
遠吠えに引き寄せられるように次々と姿を見せる『蜂起する銀狼軍』。餓える狂気に蝕まれ、手にした銃を構えながらもただひたすらに猟兵たちへと迫ってくる。その姿に鳶沢・成美は立ち上がり、ちらりと自分たちが料理した食事の数々を一瞥した。
「現れましたね、腹いっぱい食わしてあげたくもあるのですが、そんな余裕もなさそうですね。」
相手はまるで、餓えた猛獣の群れ。それが向かってくるならば、食事の差し入れよりも叩き伏せるが常道といえよう。成美は銀狼兵の動きを見ながら、その正面に立たぬよう移動する。相手の注意を引かないように成美は仕掛けるタイミングを計った。逆に、十文字・武は正面から立塞がる。
「満たされぬ飢えに狂う狼ねぇ?」
集団で銃器を使うなら接近せずともやりようはあったろうが、既にその思考も残っていないのか。我先にと突き進む銀狼の集団。あの速度ならば接敵するのも間もなくだろう。
「これまた、どっかで聞いたような話なこった。
まぁ、なんで有ろうとオブリビオンに堕ちた以上、消すしかねぇんだが……。」
武は常軌を逸した銀狼の集団に向け、退魔刀を抜き放つ。歪む口の端に乗せるは如何な感情か。
「さて、どちらがより餓えた狼だろうな?」
武の身体を解き放たれた【悪喰魔狼と七匹の子ヤギ(グリム・リーパー・ビースト)】が喰い破った。その後方、いまだ美味しそうな香りが漂う食卓の傍に立つリドリー・ジーンもロングボウを手にしていた。
「香りに釣られてきたのね?
残念だけど、おすそ分けは出来ないわ。」
銀狼の軍がいくら奪い、喰らおうともその飢餓が満たされる事はない。その目に映るいかなご馳走であっても、彼らが満たされる事はないのだ。空腹が常に蝕むというのならば、彼らを骸の海へと還す事は飢餓の狂気から解放する事にもなるだろう。弓に矢を番え、リドリーは前に立つ武の援護をすべく狙いをつける。武から現れたオウガ、巨大な黒狼『悪喰魔狼』は銀狼兵の群れの只中へと突進していた。
「魔獣に戦線を荒らさせ孤立させろ。集団で無けりゃ怖い相手でもない。」
速度を落とす事無く真っ向から魔狼にぶつかった銀狼が吹き飛ばされる。その銀狼が地面に叩きつけられる前に、自らの命を捧げているのを武は目にした。命を代償にした【シルバーバレット】が周囲の銀狼兵の力を増し、さらなる狂気をもって駆り立てる。
喰らえ! 喰らえ! 喰らえ!!
渇望のままに銃口を向けた銀狼兵をリドリーの矢が貫いた。銀狼軍のあの様子では味方への誤射など気に留めまい。矢を放ったリドリーへと幾人かの銀狼の視線が突き刺さる中、リドリーはさらに前に立つ武への援護射撃を続けた。それを好機と見たか、リドリーへと殺到した銀狼の身体が宙を舞う。
「折角作って頂いた食卓、守り切っていきましょうか。」
リドリーの歌声に応じるように【森羅(シンラ)】で成長した木々やツタが地面から飛び出て銀狼を撥ね上げたのだ。
「空中ならばいい的ね、確実に射撃で当ててみせるわ。」
この距離で回避の出来ない相手を狙うなど造作でもない。食卓へと向かう銀狼をリドリーは撃ち抜いていった。だが、さらに数を増してくる銀狼軍を各個撃破していけるのか。徐々に増してくる空腹が戦闘の集中力を蝕んでゆく。後続の銀狼軍が武と魔狼を飲み込まんとしたその時、氷の竜巻が吹き荒れた。
「舞え、氷の竜よ。アイストルネード……なんちゃって。」
機を窺っていた成美の【氷雪竜巻(アイストルネード)】が後から現れた銀狼軍も纏めて無数の細かい氷の粒で穿つ。今まで目立たないように立ち回っていた成美からの全力魔法は銀狼軍が対処する隙を与えずになぎ倒していった。だがその氷の粒は巻き込んでいるはずの武や魔狼へはまるで避けているかのように当たる事はない。
「……具体的にどうやっているかわからないけど、なんか敵だけに当たっている気がします。流石魔法ファジーですね。」
吹き荒れている【氷結竜巻】は成美の思い描いた通りに敵味方を識別していた。だが、ここまで【氷結竜巻】が上手く決まったのは成美が気づかれずに立ち回っていたからこそ。次に同じ事をしてもここまでの成果は出せない。ならば、この機会を逃す事は出来ない。徐々に強まる空腹感が集中力をも蝕む中、飢餓に喘ぎ始めた魔狼へと武は叱咤を飛ばす。
「……腹が減る?
目の前に幾らでも獲物が居るだろうよ。喰らってやれ。」
武に応えるかのように魔狼の咆哮が響く。血濡れの魔狼の姿に恐慌をきたしたかのように、幾人かの銀狼が武へ向けて銃弾を放った。
「豆鉄砲如きが数発当たったくらいでオレが死ぬか。」
自分の血か、返り血かもわからぬ赤で染まった武は自分を貫く銃弾に構わず銀狼を退魔刀で斬り捨てた。魔狼への代償と戦闘による負傷、常人ならば屈していよう激痛を抑えこみ、血と共に流れゆく生命力を斬った相手から奪って補う。手にした血濡れの刀光をその眼に映し、武は次の銀狼へ向けて斬りかかった。リドリーもまた、この好機を逃す事無く武や成美へ近づく銀狼を矢で射っていく。だがその最中でも蝕む空腹。
「……そうね、狂気に耐性はあるとはいえど、心もとないかな。」
食卓から軽く食事を口へ入れていたリドリーは、他の者は大丈夫だろうかと思っていた。僅かでも空腹を満たせたら。そう思い、リドリーの影から現れた手に食事を持たせて向かわせた。
「……貴方が捕まっちゃうのは無しだからね、折角の食事を落とすのはダメ。」
手を見送り、リドリーは弓を構え直す。食事をとる時間は弓矢の援護射撃で稼げるだろう。その手から軽く食事をとった成美は手に摘まんだキノコチップスと上に狂う銀狼軍を見て、はたと思い付く。
「そうだ……」
料理はまだまだ食卓に残している。それを使えばさらに状況を動かせるかもしれない。
武は魔狼と共に、銀狼軍の真っただ中での戦闘を続けていた。周囲から飛んでくる銃弾を受けながらも魔狼が暴れて分断された銀狼をなぎ倒し、串刺しにする。どこからか現れた手が持ってきた料理を合間に喰らった時以外は刀を振い続けていた。なおも群がる銀狼へと斬り込もうとしたその矢先、再び氷の竜巻が吹き荒れる。咄嗟に身を護る銀狼を斬り伏せた武が見た物は。
「キノコチップスか。」
氷の竜巻で巻き上げられたキノコチップスが銀狼軍へと散らばる。その香ばしい香りに銀狼たちの動きが揺らいだ。
「あれだけの空腹感、飢餓感だし気を取られて隙を見せてくれるかも。」
成美の読み通り、与えたチップスを噛み締める銀狼の顔から狂気が薄れる。僅かに満たされた銀狼が他の銀狼に喰らわれた。それを纏めて叩き切り、武は魔狼と共に動きの鈍った銀狼軍へと斬り込む。成美の氷結竜巻が討ち倒し、リドリーは空腹に惑わされないよう料理を届けながら武と成美の援護をしてゆく。
三人の攻勢により集まってきた銀狼軍はその数を大きく減らすのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
春乃・結希
鳴夜・鶯さんと一緒!
まぁとりあえずサラダからだよねっ(もぐもぐ
お米が無いのはもうしょうがないから、このキノコチップを付けて(ぱく)…美味しい!
うぐさんその麺も良さそうですね私もちょっと欲し…あっもう行くんですか?も、もうちょっと食べたかった…(しぶしぶ)
うぐさんの歌で超パワーアップした私に怖いものはありません!
一瞬で間合いを詰めてぶっ飛ばして…うぐさん危なーい!(自分を盾にして【かばう】
【激痛耐性】で多少の痛みは無視して突っ込んでいきます
接近できたらとにかく攻撃!
『with』を振り回したりUCで蹴り飛ばしたりします
うぐさんが歌ってるうちに終わらせてみせる…!
…はっ!料理達は無事っ?
鳴夜・鶯
春乃・結希と一緒に参加
来たね、なんかすごい飢えてるけど
まだきのこ麺あるけど食べる?
今ならカレーも付けるけど?
気さくに話しかけつつも戦闘体勢を取る彼等を見て
嫌そうに眉を顰めます。
辞めときなよー…
♪ボク達は【無敵】の歴戦の猟兵♪そんなトロい弾丸じゃ当たるわけない♪弾丸より早い【スピード】で全て【避けて叩き落とす】♪
剣を振るった衝撃で【吹き飛ばす】♪
完全無欠のHERO♪♪
歌唱+催眠のワードマスターを発動。
結希と自分に⬆︎の歌詞の様な能力を付与。
制限時間は4分弱
初撃は【無敵結希シールド】で弾を避けつつ
結希の行動と合わせて囮になりながら強化ライブを続けます。
やっちゃえ!結希!
今の君は無敵のHEROさ♪
食卓を前に春乃・結希は皿を取った。腹を蝕むは空腹、眼前に料理、とくれば為すべき事は一つ。
「まぁとりあえずサラダからだよねっ」
もぐもぐ。
「お米が無いのはもうしょうがないから、このキノコチップを付けて……」
ぱくっ!
「美味しい!」
食べても食べてもお腹が空いているような感覚が付きまとい、結希は並ぶ料理を美味しくいただいていた。ふと隣を見ると、食事を終えて立ち上がった鳴夜・鶯が食べていたキノコ麺も美味しそうに見える。
「うぐさんその麺も良さそうですね私もちょっと欲し……あっもう行くんですか?も、もうちょっと食べたかった……」
しぶしぶといった様子で立ち上がった結希の姿に、鶯の口元も綻ぶ。友人となった二人は揃って銀狼軍へと向かった。
「来たね、なんかすごい飢えてるけど。」
自分たちが感じていた空腹感、それ以上の飢餓感に長い間苛まれているのだろうか。お腹が空いているならば、と鶯が声をかけた。
「まだきのこ麺あるけど食べる?
今ならカレーも付けるけど?」
隣にいた結希がキノコ麺に反応した気がしたが、それより鶯の気を引いたのは誘いに乗らず武器を構えた銀狼軍だった。
奪って喰らえば同じ事。
餓えた狂気に満ちた目は、そう語っていた……それで飢えを凌げた事など無いというのに。
「辞めときなよー……」
折角のお誘いなのに、と嘆息する鶯が銀狼軍を迎え撃つべく歌声を上げる。
♪ボク達は無敵の歴戦の猟兵♪
♪そんなトロい弾丸じゃ当たるわけない♪
【ワード・マスター】を乗せた歌声が鶯と結希に力を与える。身構える銀狼軍へ向けて、結希が漆黒の大剣『with』を手に突っ込んでゆく。
「うぐさんの歌で超パワーアップした私に怖いものはありません!」
一瞬で間合いを詰めた結希に銀狼軍が襲い掛かるも、結希は数の不利ゆえに受けた傷の痛みを無視して『with』を振り回し、ぶっ飛ばした。鶯の【ワード・マスター】が結希の身体を護っている為、結希は普段よりも負傷を気にせず攻撃を続けられている。
♪弾丸より早いスピードで全て避けて叩き落とす♪
その歌声を止めようと銀狼が銃口を鶯へと向けた。例え倒せずとも、歌声が止まれば結希の動きも鈍らせられよう。銃声と共に放たれた弾丸は、しかし鶯へと届く事はなかった。
「うぐさん危なーい!」
結希が自らを盾にして鶯を庇う。銃弾は結希の大剣に止められていた。鶯の歌声を背に、結希は再び銀狼の群れへと突っ込んでいった。その背を見送りながら鶯は結希の立ち回りを助けるように、時に囮となって銀狼軍の注意を引きながら歌い続ける。
♪剣を振るった衝撃で吹き飛ばす♪
『with』を振り回して銀狼軍を纏めて吹き飛ばす結希。銀狼の幾人かが倒れ、その命を代償に他の銀狼の戦う力が強まる。
♪完全無欠のHERO♪♪
そして奥に位置していた一団が、銃口を二人へと向けた。駆ける結希に鶯の歌声が重なる。
――【ワード・マスター】の制限時間は4分弱。
――うぐさんが歌ってるうちに終わらせてみせる…!
銀狼軍が高速で連射する【抹殺の意思】を乗せた銃撃へと結希は真っ向から突っ込んだ。
「やっちゃえ! 結希!
今の君は無敵のHEROさ♪」
鶯の歌声に押され、結希は弾丸の雨の中を突き進む。大半が鶯の歌に阻まれ、幾筋かが結希を貫き、赤き雫が舞う。
「ここも私の間合いです……!」
そして最後の距離を蒸気魔導により脚力を強化するブーツ『wanderer』で踏み抜き、結希は残る銀狼軍の一団へと【超強いキック!(チョウツヨイキック)】を放った。超高速かつ大威力の蹴りで残らず吹き飛ぶ銀狼軍。その姿が骸の海へと還った後には、ただ荒野を風が吹吹き抜けていた。これを最後に、一帯の『蜂起する銀狼軍』をすべて倒した事を確認した結希は、はっと振り向いた。
「……はっ! 料理達は無事っ?」
その言葉に鶯が示した先には、戦闘の前と変わらずに食卓に座す料理の数々。まだ食べてない料理たちが結希を待っているかのようだった。
大成功
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第3章 ボス戦
『赤の狩猟者』
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POW : もっと、『赤』を魅せてくれ
【鮮血を求める狩人】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : おっと、そこは危ないよぉ?
【敵の足下】から【トラバサミ等の罠】を放ち、【対象の脚部に噛みつかせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : ねぇねぇ、もっとオレと遊んでよ!
【重火器による無差別射撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
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風が鳴く、風が泣く。狂気を孕む風が、凪ぐ。
みたせ、はらをみたせ……
あれほど吹き荒んでいた風も今は無く、それ故にその足音はイヤに大きく聞こえた。
「あぁ……うまそうだ……」
狂気で満たされた瞳が猟兵たちを捉える。いくら喰らえど満たされぬ、貪食たる『異端の神』に憑かれし狂えるオブリビオン『赤の狩猟者』の目には、すべて飢えを満たすモノと映るのだろうか。奪って得る物など、何もないというのに。
今、この一帯を蝕む狂気の源泉に取り憑かれし狂えるオブリビオンとの戦いが始まろうとしていた。
十文字・武
<アド連携詠唱略ok>
あぁ、うまそうだろう?
この世の全てが自分のエモノに見えて堪らんだろうさ。
良く解る。ホントウに良く解るぜ、オブリビオン。
が……手前ぇと違って、オレはまだ猟兵なんでな。
味方を喰らう訳にも行くまいさ【獣心封環によりオウガの侵食を遮断】
UC【悪喰魔狼と笛吹き男】起動。
銃口を読め、彼我の立ち位置を把握しろ【戦闘知識】
己に向かう弾丸は【武器受け】で斬り落とせ。
無差別に味方へと飛ぶ弾丸を、召喚する獣の顎を射線に割り込ませ、盾にしろ。
火力は揃っている。前線にて敵を釘付け始末は味方に任せろ【団体行動】
だが火力だけに目を向けて良いのか?隙があれば飛び込むぞ?【捨て身の一撃・串刺し・激痛耐性】
鳶沢・成美
うん、カレー饂飩は至高……まあキノコ麺ですがね
しかしこれ、UDCアースとかに持っていけば低糖質的なあれで流行るかもしれない
ま、菌類をホイホイ持ち込んじゃいけませんがね
”追跡””誘導弾”で確実に【火雷神道真】を当てる様攻撃
つまりはホーミングってやつですよ
雷の電撃で”武器落とし”や”マヒ攻撃”、よくある話ですよね
念には念を入れて”2回攻撃”しておきましょう
”狂気耐性””呪詛耐性”で耐えられているうちに倒したいところですね
アドリブ・絡み・可 ””内技能
時は少し遡る。『赤の狩猟者』の来る前に、銀狼軍との戦闘を終えた鳶沢・成美は食卓に戻っていた。
「うん、カレー饂飩は至高……まあキノコ麺ですがね。」
先ほど食べたにもかかわらず、カレーキノコ麺のなんと美味しい事か。いや増す空腹も程よいスパイスとなって成美の腹を満たしていった。
「しかしこれ、UDCアースとかに持っていけば低糖質的なあれで流行るかもしれない。 ま、菌類をホイホイ持ち込んじゃいけませんがね。」
ことり、と空になった器を置く。成美を蝕んでいた空腹は満たされ、他の猟兵たちも各々食事を終えたようだ。この、心を満たす満腹感ならば狂えるオブリビオンとの戦いも問題ないだろう。加えて狂気も呪詛にも耐える備えをしている成美。
「耐えられているうちに倒したいところですね。」
そして、現れた『赤の狩猟者』の飢餓に狂える瞳が、温かな食卓へ射貫くような視線を投げる。
「あぁ、うまそうだろう?」
その食卓を一瞥し、十文字・武は赤の狩猟者へと視線を戻す。塞ぐように対峙した武へと、赤の狩猟者の渇望が向く。
「この世の全てが自分のエモノに見えて堪らんだろうさ。
良く解る。ホントウに良く解るぜ、オブリビオン。」
武自身、己を喰らうオウガを連れる身。或いはその飢餓に狂う姿に己を見たか。風も凪ぐ静けさの中、武が退魔刀を抜く音が涼やかに響いた。
「が……手前ぇと違って、オレはまだ猟兵なんでな。
味方を喰らう訳にも行くまいさ。」
武が刀を向けるのと赤の狩猟者の持つ重火器が火を噴くのはほぼ同時だった。飛んでくる銃弾を身を捻り躱し、刀で斬り落とす。オウガの浸食は耳環『獣心封環』で抑えられている。身体の動きに問題はない。さらに追撃をしようとした狩猟者へと雷が後方から放たれた。
「道真さんよろしくー」
成美の声と共に放たれた【火雷神道真(ライジーン)】は無数の雷の礫となって襲い掛かった。周囲を埋め尽くさんばかりに広がった雷が、狩猟者へと雪崩打つように迫る。その一つ一つが敵を追う誘導弾となって避けようとする狩猟者を四方八方から打ち据えた。全身を焦げ付かせながらも銃を撃ち放つ狩猟者。だが、その周囲は狩猟者を喰らわんと変容していた。
「飢えたる餓鬼よ! 暴食たる闇森の獣よ! 終末の宴に応じ顕れよ! ジェイルファングビーストォッ!」
武が【悪喰魔狼と笛吹き男(ジェイルファング・ビースト)】により周囲の岩場を無数の狼の顎へと変換する。成美へと向けて放たれた弾丸を狼の顎が射線に割り込み、阻む。砕けた顎に構わず、統率の取れた行動で数多の狼の顎が喰らい付かんと狩猟者を狙った。狩猟者の攻撃が、動きが阻まれたその間に成美の第2撃が放たれる。
「念には念を入れて2回攻撃しておきましょう。」
成美の目は、狩猟者の動きが鈍っているのをしかと見ていた。雷に打たれて身体が麻痺しているのだろう。思うように動かないのならば、もう一撃入れれば重火器を落とす事も出来るはず。だが次に雷を受ければどうなるかは痺れた体で戦う狩猟者にも分かっている事。無論、狩猟者の動きを抑える武にも。
火力は揃っている。前線にて敵を釘付け始末は味方に任せろ。
銃撃を斬り、返す刀で斬り込むも銃身で弾かれ。それでも尚も喰らい付くように刀を振う武より、後方より再び放たれる成美の【火雷神道真】を防がねば。狩猟者が武と共に成美を仕留めるべく重火器の無差別射撃を放った。周囲にばら撒かれる弾丸、狩猟者が見るは雷とそれを放つ成美の姿。
「だが火力だけに目を向けて良いのか? 隙があれば飛び込むぞ?」
その言葉を耳にした狩猟者の身体に武の刀が突き刺さる。ばら撒かれた弾丸は尽く狼の顎に阻まれた。盾となり砕けた顎の向こう、成美が雷の礫を殺到させる。打ち据える雷の中、敵を串刺しにするなど捨て身以外の何物でもない。身を打つ痛みを無視して武は刀を貫き通した。突き抜けた刀身を伝い、赤の狩猟者の身体を雷が打つ。その一穿は雷光の尾を引き、狩猟者を吹き飛ばした。
「が、あぁ……ッ!!」
全身を、その内をも焦がしながらも赤の狩猟者は顔を上げる。受けた傷は深く、消耗も激しい。だがその心を焦がす飢餓は、未だ消えてはいない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
春乃・結希
鳴夜・鶯さんと一緒!
ふぅ…頑張ったからお腹空いたねー…
では、さっき食べそこねたカレー麺から(ずるずるー)美味しい!
そしてこのグラタンを…(ふーふー、ぱくっ)
お、美味しすぎる…
はー幸せやなぁ…あっ、うぐさんもう行くんですか?
よーし、頑張ろうね!
狼達がチップス食べて一瞬狂気が薄れてたのを私は見ていましたっ
赤い人も同じ反応をすることを期待して、カレーにつけたチップスをばら撒いてみます
うぐさんは本気モードやし、私も目の前の敵に集中!
うぐさんの援護で出来た隙を見逃さず【ダッシュ】で確実に距離を詰めていきます
十分近づいたら【激痛耐性】でダメージを無視しつつ、一気に踏み込んでUCを発動!
…はっ、料理達はっ?
鳴夜・鶯
春乃・結希と一緒に参加
あんまり食べ過ぎると…動けなくなるよ?
結希の様子に苦笑しながら気配に気が付きます
う~~ん『赤の狩猟者』も予想以上に飢えてるみたい
…残った料理で少しは気が引けると良いんだけど
はぁ、こういう相手には歌を聴いてもらえそうに無いし
いつも通り戦うとマジ相性が悪そう
ギターケースを開け、取り出したヘッドホンを付け
「サウンド・オブ・マイチューン」の再生ボタンを押します
仕方ない死ぬよりは後の筋肉痛だよね
4分弱のスペシャルタイム!!結希行こう!援護は任せて!!
「情報収集」と「見切り」で罠と攻撃のタイミングを見極めつつ
「早業」の「射撃」で「呪殺弾」を正確に重火器に叩き込み
行動を阻害して行きます
銀狼軍との戦いを終えた後、春乃・結希は食卓へと戻っていた。しばらく前に食べたばかり、されど結希は空腹を感じている。それは風の如く吹き付ける飢餓の狂気ゆえか。
「ふぅ……頑張ったからお腹空いたねー……」
早速、結希は温かな湯気の上がる器を取る。ふわりと沁みる温かさと共に鼻腔をくすぐる食欲をそそる香り。
「では、さっき食べそこねたカレー麺から……」
ずるずるー。
「美味しい! そしてこのグラタンを……」
ふーふー、ぱくっ!
「お、美味しすぎる……」
寒い冬の空の下、味わうカレー麺とグラタンは格別に美味しかった。美味しい食事に満たされてゆく結希に鳴夜・鶯は苦笑を浮かべる。
「あんまり食べ過ぎると……動けなくなるよ?」
本命との戦闘はまだ、これからなのだから。ほどほどに、と続けようとした鶯がこちらへ近づく気配に気づく。既に他の猟兵と戦闘を始めたようだ。自分たちも向かうべく立ち上がった鶯に結希が顔を向ける。
「はー幸せやなぁ……あっ、うぐさんもう行くんですか?」
鶯の様子に敵が来た事を察した結希も立ち上がった。
「よーし、頑張ろうね!」
狂えるオブリビオン『赤の狩猟者』を倒すべく、二人は駆け出す。辿り着いた先で赤の狩猟者は既に満身創痍となりながらもなお、飢餓に突き動かされるように獲物を探していた。
「う~~ん『赤の狩猟者』も予想以上に飢えてるみたい。
……残った料理で少しは気が引けると良いんだけど。」
赤の狩猟者の様子では、まともな思考は残っていないだろう。幾年の長きに渡って蝕んでいる飢餓は狂気の域に達している。その姿にため息一つ、鶯はギターケースを開けた。
「はぁ、こういう相手には歌を聴いてもらえそうに無いし。
いつも通り戦うとマジ相性が悪そう。」
あのオブリビオンに言葉は届かない。ただただ飢餓を満たすモノしか目に映らない。憑依している『異端の神』の狂気を肌で感じながら鶯はギターケースから取り出したヘッドホンを付けた。
「仕方ない死ぬよりは後の筋肉痛だよね。」
覚悟を決め、鶯は再生ボタンを押す。流れて来る曲は【サウンド・オブ・マイチューン】。
「4分弱のスペシャルタイム!! 結希行こう! 援護は任せて!!」
鶯の声と援護射撃と共に、結希が赤の狩猟者へ駆けだす。赤の狩猟者が結希を撃ち抜かんと銃口を向けるたび、重火器を鶯の呪殺弾を込めた射撃が弾く。狙いが僅かに逸れ、結希を掠めて地を抉る銃弾。鶯が援護してくれている、そう強く意識し結希は剣の届くまで距離を詰めるべくひたすらに前へ進む。射撃のたびに重火器を撃たれ、苛立つ狩猟者の視線が鶯へと移った。
来る……!
狩猟者の攻撃をひたすら妨害しながら、相手の癖を見ていた鶯は、その視線の動きで狩猟者の次の行動を読む。鶯が大きく跳び退くのと、地面からトラバサミが餓えた獣の如く咬みついたのはほぼ同時だった。ひた走る結希の背後で、金属の咬み合う音が響いた。狩猟者の視線から、鶯へと何かしたのは確かだ。だが、結希は唯前へと顔を向ける。
うぐさんは本気モードやし、私も目の前の敵に集中!
むしろ鶯へと攻撃を仕掛けたのなら今は一気に距離を詰めるべきだ。漆黒の大剣『with』を叩きつけるべく結希は残った距離をダッシュで駆ける。その結希を見る赤の狩猟者の目が変わる。血を求める狩人のソレへと。この距離での重火器の乱射などすべて逸らす事は出来ない。トラバサミを間一髪で躱した鶯の射撃が重火器を叩くも距離が詰まればその分、多少ブレても当たってしまう。必殺を期し、赤の狩猟者が引き金を引こうとしたその時、結希が持ってきた物をばら撒いた。
「狼達がチップス食べて一瞬狂気が薄れてたのを私は見ていましたっ!」
それはカレーにつけたチップスだった。食欲をそそるスパイシーな香りと共にチップスが舞う。料理を目に、赤の狩猟者がチップスに喰らい付く。それは、彼が誰かに振舞われた、狂気に囚われてから、初めての、料理。いくら自分が奪い喰らっても満たされる事のなかった飢餓が、わずかに薄れるのを狩猟者は感じた。狙いも定まらずに放たれた銃弾を、結希は無視して最後の距離を詰める。鶯の銃撃が赤の狩猟者の重火器を撃ち、幾度となく撃ち込まれた呪殺の弾がついに重火器を破壊した。
「これがうぐさんと私の全力です!」
結希が放つ【あなたと一緒なら…!(アナタトイッショナラ)】、全身全霊を込めて振り下ろされる『with』が赤の狩猟者を両断する。周囲の地形ごと破壊する一撃を受け、赤の狩猟者は己を繋ぎ止めていた狂気ごと砕かれた。その最後に言葉はない。何故なら、彼は噛み締めていたから。奪う事では満たされる事のない飢餓を満たす、誰かに振舞われた食事を。
「……終わったね。」
赤の狩猟者が骸の海へと還ったのを見届け、鶯がヘッドホンを外す。オブリビオンに憑依していた『異端の神』も繋ぎ止める楔を失い、この地から消えていた。振り返った結希が不意に思い出したように声をあげる。
「……はっ、料理達はっ?」
食卓は変わらず、そこに在る料理もまた、変わらずに。もはや飢餓を促す狂気はないが、それでも食べれば美味しいと思うだろう。皆で食べる為にと作った料理はそれだけで、きっと何よりのご馳走なのだから。
大成功
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