●ただ、総てを喰らい尽くすまで
その空気がいやに冷たく、冷え冷えと感じられるのは、ただ標高が高いと言う事実のせいだけではないのだろう。
形容しがたい悪寒。
自然豊かな、鬱蒼とした森の中であるにも拘らず、その場所には『生気』と言うものが一切感じられなかった。
物音が無いわけではない。
絵画のように静止しているわけでもない。
かさり、草の合間を何かが通り抜ける音がする。
見上げた木の葉の先で、灰色の雲が風に乗って流されている。
特段不思議でもない光景のはずなのに、その空気はまさしく『異様』であった。
●笑う門には
「いろいろ情勢が動いて大変な時期ではありますが、ひとまずこれは『良いニュース』って事でいいんでしょうね」
グリモアベースは今日も大忙し。
そこかしこでグリモア猟兵の指示や転送の光が飛び交い、喧騒が止まることは無い。
そんな人だかりの一角で、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は周囲の猟兵にそう言って切り出した。
「アックス&ウィザーズにおける皆さんの活躍のおかげで、遂に群竜大陸への上陸が可能となりましたよ」
天空に浮かぶ巨大な大陸。
勇者の痕跡を辿り、封印を守るクラウドオベリスクを破壊して回り、そして天空城にて幻術を打ち破る。
これまでの事に関わってきた猟兵も数多くいる事であろう。
そうした積み重ねが、今こうして一つの実を結んでいた。
「というわけで、早速ですが皆さんには群竜大陸の攻略を始めて頂きたいんですね」
広大な未踏の大陸。一筋縄ではいかないだろうが、まず最初の一歩。
踏み出さなければ始まらない。
「まず最初に広がっている区画は、通称『魂喰らいの森』と呼ばれる場所です。
その中の1区画の担当をお願いすることになるわけですが……流石に伝説の帝竜のお膝元、ざっと仕入れた情報だけでもかなり危険そうですね」
順番に特徴を述べて行きますね、とシャルが手元の資料をめくる。
「まず、その名の所以ですが……この森は生息している動植物……虫や鳥、果ては草一本に至るまで、文字通り『生物の魂』を食料としているようなんです。それは、たとえオブリビオンでも例外ではありません」
ざわ、とどよめきが走る。
とても穏やかな話とは言い難い。
「生物に纏わりつき、魂を啜り、そして魂を抜かれた生物を使役し、森の番人として戦力とする……。確かに、最初の防壁としては十分ですね」
とは言え、ここを突破しないことには調査は進めようがないのもまた事実。
ではどうやってここを攻略すればいいのかと言うと。
「根本的な対策としては『気を強く持つ』ことですね。
吸われないような強い魂であれば、森の力に対抗することは十分に可能です」
とは言っても、ピンとこない人も多いでしょうから……と、シャルはひとつ人差し指を立ててみせた。
「キャンプファイヤーとかいかがでしょう?」
と言いますと。
「まずは森の外、安全なエリアに転送しますので、そこで一晩過ごしていただいて英気を養い、翌日に改めて突入をお願いしたく。魂を強める儀式……と言うと大仰ですが、単純に野営を楽しんでいただければそれで大丈夫ですよ。ポジティブな思考はそれだけで魂食いへの耐性を持ちますので」
火種や食料は持ちこめるし、澄んだ夜空は星もよく見える事だろう。
仲間たちと談笑するもよし、一人で時間を潰すもよし。
思い思いに夜の時間を過ごして、各々楽しんでいればよい。
「そして、森の中には先ほど言った通り、魂を抜かれたモノが番兵として徘徊しています。
迎撃していただくのはもちろんですが、区画内で最も強い個体……その体内に、森の『核』と呼ぶべきものがあります。それを取り出すことが出来れば、森はその力を失い、消えて行くことでしょう」
森に生息する動植物だけでなく、これらの番兵も、通常の戦闘能力に加えて『魂を喰らう』力を有するのだという。
ゆめゆめ、森に喰われることの無いように。
「危険な場所ですが、油断せず、確実に橋頭堡を築いていきましょうね!……と、あ、そうだ」
なんだなんだ。
準備を始める猟兵達の背中で、シャルがポンと自身の掌を叩く。
「切除された『魂喰らいの森の核』ですが、すごく美味しい伝説級の食材になるらしいですよ」
あぁそう。
ふねこ
冬キャンプはやったことないなぁ。
どうも、だいたい一か月ぶりくらいのふねこです。
そろそろ一周年ということで(?)アックス&ウィザーズのご案内をさせていただきます。
例によって、更新タイミング等の大雑把な目安はマスター自己紹介にも随時書いていこうと思いますので、そちらもよろしければご確認くださいませ。
以下、補足情報になります。
第一章では、森の外の開けた台地で野営していただきます。
食料、火種、テント等の野営道具は基本的に「ある」ものと考えて頂いてOKです。
襲撃等も無い(警戒するならするでまったく構いませんが)ので、思い思いに夜を過ごしていただければと思います。
ただうっかり森に入らないようにあまり離れすぎないようにだけ注意。
第二章、第三章では森の中で魂の抜けたオブリビオンと戦闘していただくことになりますが、特殊ルールとして、
「通常のユーベルコードに「魂を啜る効果」を加えてきます」。
第一章での行動ほか「楽しい思い出を強く心に念じる」など、「心を強く持つ」ようなプレイングがあれば戦闘を優位に進めることが出来ます。
ちなみに核は最高級の牛肉の味とサボテンの果肉のような食感を持ち、持ち帰れば、半径25cm程度の一般的な球形の核で金貨500枚(500万円)程度の値段がつくそうですわよ奥様。
そんな具合で、皆様のご参加お待ちしております!
第1章 日常
『魂の祝祭』
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POW : 大いに食べて飲んで、力の限り騒ぎ楽しむ
SPD : 記憶に残る華麗な芸や踊り、話術などを披露する
WIZ : 魂が力強くあれるよう、歌や祈りを捧げる
👑5
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●浮遊大陸の夜
グリモアの光を潜って転移した先は、小高い丘の上だった。
澄んだ冷たい夜風を遮るものはほとんどなく、少々肌寒さを感じさせ、この大陸自体が遥か天空にあるせいか、遠目で流れている雲は低く、ともすれば自分たちが立っている場所と大差ない高さを漂っているものもありそうだ。
眼下に広がる広大な深い森が、件の『魂喰らいの森』なのであろう。
ここから見下ろす限りは、特にこれと言った動きは見られない、ただの森のように見える。
あくまでも立ち入った者を喰らうだけ……ということなのかはわからないが、少なくとも今、猟兵達が立っているこの場に危険が及ぶようなことはなさそうだ。
本格的な探索と戦いが始まるのは、夜が明けてから。
ひとまず一度頭の隅に追いやって、今はこの夜を楽しもう。
エシャメル・コッコ
ついにやってきたな新天地! といってもコッコ、アックス&ウィザーズは初めてだからどこでも新天地な!
今回はちょーキケンな森の中を探索すると聞いて、コッコちょーはりきってるな!
森に入る前にみんなでお泊りキャンプはいたれりつくせり初競りな! コッコ全力でファイヤーするな!!
薪はいっぱいお山のように積み上げるな!
キャンプといったらご飯はカレーな、お鍋いっぱい作っちゃうな!
そんで暗くなったらキャンプファイヤーの火をつけて、炎の周りをみんなと一緒にぐるぐる踊るな!
ひよこさんもひよこ軍団も踊るな! コッコもひよこさん直伝ピヨピヨダンスで盛り上げていくな!!
本番は明日からな! 今日は全力でキャンピングなー!!
アレックス・エイト
天空に浮かぶ城のみならず、大陸そのものが浮かんでいようとは
ただの冒険であれば心躍るものもありますが、ここはかの帝竜が統べる地…そう呑気に構えてはいられませんね
とはいえ、気を張り詰め過ぎていてもいざという時に力は出し切れない
提案されていた通り英気を養う事にしましょう
飲み、食らい、歌い、踊る
私が知る兵達は皆、そうして活力を得ていました
それに倣い、ひとまず私は皆さんへの食事の提供を手伝う事にしましょう
野営道具と周辺の石や岩を利用して大きなかまどを作ったり、
火加減の調整や簡易な調理など
串に刺して焼くぐらいなら私にも出来ますので
昔、兵達の演習に付き合った時の野営のように
目一杯に楽しもうではありませんか
「天空に浮かぶ城のみならず、大陸そのものが浮かんでいようとは……」
群竜大陸に降り立ったアレックス・エイト(Geisterritter・f22485)のモノアイに映りこんだのは、地平線まで続く広大な大地。
一見すると地上と大差ないようにこそ見えるが、流れる雲の異様な低さが、この地が相当な高度にあることを理解させる。
この足元がどれほどの厚みかは、地面を見ただけでは推測もできぬが、この下にまた空があるのだと思うと不思議なものである。
「これがただの冒険であれば、心躍るものもありますが……」
眼下に広がる森に、視線を移す。
魂を喰らうと言われるその森は、不気味なほどの沈黙を保っている。
そう、ここは彼の帝竜が統べる地。そう呑気に構えてはいられない。
……とは言え。
「森に入る前にみんなでお泊りキャンプはいたれりつくせり初競りなー!」
2メートル半の巨体の横でくるくるはしゃいでいる少女&ひよこ軍団をちらりと見やって、アレックスは鋼鉄の肩の力を抜く。
気を張り詰め過ぎていても、いざという時に力は出し切れない。
提案されていた通り、これくらいの緩さで、今は英気を養ってもバチは当たるまい。
さて、そんな具合にはしゃいでいた、ひよこを引き連れた少女――エシャメル・コッコ(雛将軍・f23751)であるが。
群竜大陸という新天地どころか、アックス&ウィザーズに降り立つのも初体験。
森が危険な代物なのは頭ではわかっているものの、初めて尽くしの体験に、テンションがここまで上がるのも納得の話である。
持ち込まれた薪を山のように積んで、それとは別に鍋を火にかける用の焚火もセット。
次はこれ、次はあれと、じっとしている時間ももったいないという様子で次々と支度を進めて行っている。
そんなコッコが今晩のメニューに選んだものはと言うと。
「キャンプといったらご飯はカレーな、お鍋いっぱい作っちゃうな!」
みんな大好きカレーライス。
肉と野菜とルーとを鍋いっぱいに放り込み、(さりげなくアレックスが石で囲って形を整えた)焚火にかけて――。
――あおいで!
「カレーは火力がイノチなー!」
焚火を力の限り仰ぐコッコ。ぐるぐる回ってはしゃぐひよこ。鍋の高さを調節するアレックス。
――まぜて!
「焦がさないようにしっかり混ぜるなー!」
ぐりぐりと鍋をかき混ぜるコッコ。ぐるぐる回ってはしゃぐひよこ。こぼれたカレーを拭き取るアレックス。
――まごころ こめて!
「りょーりはアイジョーなー!」
なんかオーラを飛ばすコッコ。ぐるぐる回ってはしゃぐひよこ。見てみぬふりをするアレックス。
……まぁ、昔に城の兵達の演習に付き合った時の野営はここまで大騒ぎではなかったような気はしないでもないが。
飲み、食らい、歌い、踊る。
かつて先人たちがそうやって活力を得ていたように、我々もそれに倣い、目一杯楽しもう。
少女の歓声と柔らかなモノアイの光を見下ろしながら、月は高さを上げて行く。
成功
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荒谷・つかさ
凄く美味しい伝説級の食材を狩りにいくのね。任せて頂戴。
(初っ端から何かがおかしいがある意味通常営業のつかささんであった)
もう楽しみで楽しみで仕方のない様子で、キャンプファイヤーの支度をする
丸太をずんばらりと斬り、割り、怪力で組み上げ
水が必要と聞けば大樽を担いで調達し
料理が始まれば上機嫌で肉や魚を焼いて回る
もう鼻唄まで歌っちゃうレベルで浮かれてる
普段ほぼ無表情なのにずっと微笑顔なくらい表情も緩い
始まったらがっつり食べ、がっつり呑む
明日のためにもカロリーと気力はきっちり補充しとかないとね
魂を啜る敵?
そんな有象無象より伝説の食材の方が大事でしょ?
(割と真面目に食材の事しか頭にないつかささんであった)
リューイン・ランサード
【POW】
ここが群竜大陸ですか、そして最初の第一歩が『魂喰らいの森
』・・・。
早速帰りたくなってきました<汗>。
でも、この期に及んで帰ろうとしたら、シャルさんに後ろから撃たれるかもしれないし、頑張って依頼を達成しましょう。
と、半分冗談で自分を鼓舞して開き直る。
キャンプファイアーするという事なので、燃やす木を組み立てるのを手伝ったり、周囲に木材を置いて簡単に形を整えて、みんなが座るベンチ代わりにしたりと、下働き関連の仕事をこなします。
料理は上手い訳では無いので引っ込んでいますが、人手が足らないなら調理も頑張ります。
準備が整ったならば、のんびりと炎を見つめ、夜空を見つめ、料理を食べて英気を養います。
メリル・チェコット
魂喰らいの森かぁ……えらく物騒な話だよね……。ちょっと怖いな。
気を強く持つ、っていうと自信ないけれど……、
要はポジティブシンキングなんだよね!
ポジティブなのは大得意!
明日の為にも、今日めいっぱい楽しまなきゃ!
羊達も何匹か連れていって、キャンプファイヤーの前で大道芸みたいなことしたら、他の人も楽しめるかな?
玉乗り、縄跳び、輪くぐり何でもござれだよ!
芸ができたら、たくさん褒めてあげないと。
いつもありがとう、あなた達のおかげで頑張れそうだよ。
夜はみんなで眠ろうね。
「魂喰らいの森かぁ……」
パチパチと火の粉が弾ける音がする。
その灯を背に受けながら、メリル・チェコット(コットンキャンディ・f14836)は夜の闇にぼんやりと浮かび上がるかの森を見据えた。
魔竜の支配下とされる大地、そこに広がる第一の関門。
魂を喰らう森。何とも物騒な話である。
「……早速帰りたくなってきました」
その横で、リューイン・ランサード(竜の雛・f13950)が焚火に薪を投げ込みながら、力なく肩を落とすのが見えた。
なんでこんな依頼受けてしまったんだろう、と思っても後の祭り。
「でも、この期に及んで帰ろうとしたら、シャルさんに後ろから撃たれるかもしれないし、頑張って依頼を達成しましょう」
「え、あの子そんな物騒なの?」
「いえまぁ、冗談ですけど……」
なんだかメリルにグリモア猟兵の間違ったイメージが植え付けられそうになったが、そこはそれ。
そう言うことにして自ら退路を断つ。ここまで来たらもう開き直るしかない。
「そうそう、私も気を強く持つ、っていうと自信ないけれど……ポジティブなのは大得意だから!」
メリルがぽんぽんとリューインの背中を叩いた。
あまり難しいことは考えることはない。ただ、明るく在ればそれでいい。
太陽のようなメリルの笑みに、リューインも釣られて肩の力を抜く。
そして、そんな二人の他にも、鼻歌まで歌って楽しそうな人物が一人。
「明日のためにも、カロリーと気力はきっちり補充しとかないとね」
両の手にそれぞれ三本ずつ串焼きを挟みこんだ荒谷・つかさ(『風剣』と『炎拳』の羅刹巫女・f02032)だった。
はて、とリューインは首を傾げる。
以前別の戦場で目にしたことがあった気がするが、もっとクールと言うか無表情だったような気が。
「……随分上機嫌ですね?」
「当然じゃない。凄く美味しい伝説級の食材が待ってるのよ」
言い切りやがった。
領域の突破だとか森の話とかすっ飛ばして迷わずその話題を出しやがった。
「森や敵に対する不安とかは……」
「そんな有象無象より伝説の食材の方が大事でしょ?」
あっはい。
完全に問答無用のつかささんにリューインはこれ以上突っ込むのをやめ、メリル共々差し出された串焼きを受け取る。
――そういえば、思い返してみれば、準備の時からもずっとにこにこしていたような気がする。
もしかしなくても、この日とずっと食材の事しか頭になかったのかもしれない。
まぁ、あの様子なら森に魂を喰われることはまずないだろうし、頼もしい事には違いはないからそれはそれで良いか――。
リューインとメリルは同時にそんな事を思ったとか思ってないとか。
掛け声とともにジャンプした羊が、メリルが手にした輪の中を潜るたび、わぁと周囲から歓声が響く。
食事の後は余興の時間。
キャンプファイヤーの炎をバックに、メリルと羊たちの大道芸が場を沸かせる。
楽しい思い出は来たるべき戦いへの力となる……。
そんな名分はあるにしろ、それを抜きにしても今宵は目一杯楽しもう。
「はーい!みんなよくできました、ありがとう!」
自身の身体と大差無さそうなボールから飛び降りた羊に駆け寄って、拍手の音を身に浴びながらメリルは羊たちを撫でる。
みんなのおかげで頑張れそう。いつもありがとうねと、感謝の気持ちをめいっぱい。
ふわふわの毛の下で、大事な仲間も楽しそうにめぇと鳴いた。
大成功
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第2章 集団戦
『毒牙虫』
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POW : 針付き鎌
【毒針】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 針付き鋏
【毒針付きの鋏】が命中した対象を切断する。
WIZ : 1匹いれば
【忌避】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【30匹の仲間】から、高命中力の【攻撃】を飛ばす。
👑11
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●浸食する虚
翌朝。
十分に英気を養った猟兵達は、満を持して『魂喰らいの森』の中へと分け入っていく。
陽の光もまばらな、鬱蒼とした薄暗い深い森。
木々のざわめきは聞こえても、鳴き声は無い。
気配はしても、生気は無い。
自然豊かなはずなのに、その実、命の息吹を感じられない矛盾した世界が、そこには広がっていた。
物音がありながらも不気味な静けさの森の中を進む猟兵達の周囲で、にわかに草木が騒めきだつ。
がさがさ、がさがさ。
背の高い草々の隙間、その刃を研ぐ者の姿がちらりと映る。
それは、体長数十センチ……大きいものでは一メートル弱くらいはあるだろうか。
毒牙虫と呼ばれる害虫の群れであった。
虫の顔に表情と言うものはない。
だが仮にあったとしても、獲物を取り囲む彼らに表情と言うものは果たして浮かんでいただろうか。
既にこの毒虫は、この虚ろな森の尖兵……ただ魂を喰らう、防衛システムの一部と成り果ててしまっているのだから。
ひときわ大きく草が揺れた。
羽音。
鳴き声一つ上げることも無く、森の番兵が侵入者へと襲い掛かる。
メリル・チェコット
SPD
……ここが魂喰らいの森。
なんだろう……寂しくて、不気味。
心が弱くなりそうだったら、昨日のこと、羊達のことを思い出して。
芸も大成功だったし、みんなでキャンプファイヤーするの、すっごく楽しかったもんね!
大丈夫!
虫相手だったら、弓矢だと接近戦になるほど不利だよね。
ユーベルコード【メリーメリー・ゴーランド】で、あの子を召喚。
わたしの背よりもずっと大きくて、ふわふわで、脚の早い、優しい羊。
毒虫に捕まらないようにしたいの。一緒に戦ってくれる?
背中に騎乗して、敵との接触は避けながら流鏑馬みたいに射っていこう。
近く戦っている仲間がいたら、その都度【援護射撃】でサポートにも入りたいな。
アレックス・エイト
毒を盛り、意識を朦朧とさせる事で気を強く持つ事を許さず、効率的に魂を喰らう…
ただでさえ厄介な毒虫ですが、なるほど、番兵としてはうってつけです
油断はせず、ここで確実に仕留めるとしましょう
こうも遮蔽が多くては、どこから不意打ちされるか分かったものではありません
ウィザードハットの動体及び生体センサーで周辺の索敵を開始
敵の位置を把握し、ジャッジメントブレイズを放ちます
特に他の猟兵に死角から襲い掛からんとする者に重点的に牽制を
本命に会う前に無用な消耗はせぬように致しましょう
…姫様…。貴女達と共に育んだこの魂、
容易く喰らい切れる軽さではないという事を証明してみせます(古びた懐中時計を握りしめ)
織座・このみ
●心情
本当に、御霊のいない森なんですねぇ
それはそれで落ち着けますけどぉ
……のんびりと出来る場所ではないですよねぇ、やはり
●行動
ユーベルコード:霊具顕現・破魔矢
を使いますよぅ
姉様と二人で鉾先鈴を手に
【祈り】を込めた神楽舞を奉げましてぇ
そうして顕しました大量の破魔矢を
毒牙虫が視界に入る度に撃ち出しますねぇ
舞いながらも姉様と二人で周囲を警戒しまして
なるべく近づかれる前に仕留めたいですがぁ
見落としたのは【野生の感】【第六感】で舞いながらも避けますよぅ
避けきれないようでしたら【オーラ防御】で防ぎますねぇ
※内心・思考の口調は、プレイング記述の話し言葉と違い、訛り気味
人前では狐面外さない
協力、アドリブ歓迎
静かなものだと思う。
物音の話ではなく、もっと感覚的な虚無だ。
「(それはそれで落ち着けるもんやけども)」
狐面の奥で、織座・このみ(半身は焔となりて傍らに・f04890)の瞳は油断なく周囲を伺っている。
御霊……魂を喰らう、生気の抜けた森。
下手をすれば自らも仲間入りとなれば、のんびりできる場所ではない。
「来ます」
「はいさ。……姉様」
アレックスの機械音声が警鐘を鳴らす。
それに応じるかのようにこのみが一声かければ、ふわりと傍らに降り立つのは、その身を炎に巻かれた瓜二つの少女の姿。
炎の少女――姉このかと、このみの握る鉾鈴がしゃらりと音を立てた。
その音に触発されたのか、周囲の藪の物音がにわかに激しさを増し……。
耳障りな羽音と共に毒牙虫が一斉に躍り出た次の瞬間には、その体表に次々と突き立てられる無数の破魔矢。
しゃらり、しゃらり。
清らかな音色に合わせ、着物の袖が翻る。
神霊に捧ぐ奉納の神楽舞。降ろす御業は破邪の矢也。
十重二十重と喚び出された無数の破魔矢の密度は、機敏な羽虫であろうとそう簡単に回避を許すわけがない。
出てくる場所がわかれば、そこ目掛けて浴びせかける、それだけである。
そして出てくる場所については、彼がやってくれる。
「左右後方。左は私が!」
アレックスのモノアイがぎょろりと後方を向くと同時、機械杖から炎が奔る。
帽子を思わせる頭部ユニットのセンサー。動体、熱源、果てはわずかな物音やこのみ達の鉾鈴の音の反響まで、あらゆる情報を用いて姿を隠した襲撃者たちを暴き出す。
遮蔽が多く、四方からの不意打ちが十分にありうるこの環境に加えて、毒による衰弱は『気を強く持つ』ことが最大の対策である森の特性を考えれば、一撃が致命傷になりかねない。
なるほど、番兵としてはこれ以上ない適役だろう。
だからこそ、先んじて位置を把握し、先手を取り仕留める。
毒が気化し、肉と甲殻が焼ける臭いがした。
同時、逆側、背中越しでこのみが息を飲む音が聞こえる。
その向こうに動体反応ひとつ。
舞によって喚び出すこのみの破魔矢であるが、射出直後にはどうしても数は減る。
息つく間もない波状攻撃に際し、丁度密度の薄くなったタイミングで一匹が矢の雨を逃れたらしい。
それも本来ならアレックスが即座に迎撃を取れるのだが、別方向の対処に回っているのであればそれも難しい。
「メリルさん!」
「まっかせて!」
アレックスの声が響いた直後、一本の矢……このみの破魔矢とは別の一射が毒牙虫を縫い付けた。
がさりと草の合間をかき分けて、虫とは違う巨大な影が飛び出す。
それは背中に一人の少女を乗せた、巨大な羊だった。
「間に合ったかな?」
「はい、助かりましたぁ」
礼を告げるこのみの表情は狐の面に隠れて見えはしないが、その声からは心もち安堵の色が伺える。
それだけ伝われば大丈夫と、メリルは満面の笑みで答えて矢を番え直した。
素早く、そして力強いおおきな羊。
鬱蒼とした森の中でも、その身体は十分にその機動力を発揮する。
アレックスが索敵を担い、このみ達が面制圧に優れるのであれば、己が担うべきは遊撃。
周囲を駆け巡り、薄くなった守りを即座に埋める。
遠距離戦を得意とするもの同士、接近を許すのはこの状況下では死と同義。
緊張感が不気味な空気と混ざりあい、容赦なく精神的な疲労を強いてくる。
正直、寂しくて不気味な、怖い場所だと思う。
それでも、ここにいるのは一人じゃない。
一緒に火を囲った仲間もいれば、心強い相棒もいる。
これだけ強い光があれば、太陽は陰らない。
力を合わせ、何重にも重ね合わせられた強固な迎撃態勢は、物理的にも精神的にも易々と突破を許すことはない。
そう、ここはいわば前哨戦。こんなところで歩みを止めている場合ではないのだから。
「(……姫様……)」
貴女達と共に育んだこの魂、容易く喰らい切れる軽さではないという事を証明してみせます。
アレックスが機械杖を強く握り込むと同時、センサーが次の毒牙虫の反応を捉える。
来るがいい。この灯、喰らいきれるものではないと知れ。
各々の矢が、次なる獲物に鏃を向けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エシャメル・コッコ
ついに魂喰らいの森へとつにゅーな!
一晩中キャンプでファイヤーした今のコッコに恐れるものはなにもないな!
それにしてもしんきくさい森なー、こんなとこじゃ美味しいプリンなんて見つかりそーにないな?
プリンもお花もなくて、あるのはキノコと虫と変な叫び声だけな?
そんなこと言ってたらでっけー虫がでてきたな! ちょうどいいな、プリンパワーみなぎるコッコが相手な!!
虫が相手ならとにかく叩くに限るな!
【ピヨピヨサークル】で足止めしつつ【ひよこんぼう】でめったうちな!
はたしてピヨピヨしながらでも毒針は撃てるな? そんなわけないな!
かつてヘラクレスアリスオオカブトと引き分けたコッコに勝てると思ったら大間違いなー!!!
荒谷・つかさ
煮ても焼いても食えない毒虫に興味は無いわ。
サクッと駆除して先に進むわよ!
毒の虫なら有効なのは岩石に火炎、超能力と飛行……逆に格闘技は効きにくい、で良かったかしら。(何の話だ)
まあ問題は無いわね。
私、技の範囲はそこそこ自信あるもの。
近距離にしか届かないなら、距離を取って対処するまでよ
【轟烈鬼神熱破】発動
まずは低威力広範囲の拡散モードで炎を撒いて延焼させていく
適当に燃やしたら、今度高火力高貫通力の収束モードで固そうな奴から撃ち抜いていく
万一近くに寄られたら、どこからともなく取り出した丸太で吹き飛ばして距離を稼ぐわ
私の魂を啜ろうだなんて百年早いのよ。
伝説の食材が待ってるんだから、負ける気がしないわ。
ざくざくと、草を踏みしめ力強く歩く足音が二対。
「一晩中キャンプでファイヤーした今のコッコに恐れるものはなにもないな!」
「伝説の食材が待ってるんだから、負ける気がしないわ」
弱い魂であればたちまち喰らわれる結末になるであろうこの森の中でも、彼女らの魂を喰う事はそうそうできることはないだろう。
なんてったってこの通り、我が道を突き進んでいるわけなのだから。
「でもこんなしんきくさい森じゃ、美味しいプリンなんて見つかりそーにないなー」
そんな事をぼやきながら(恐らくキャンプに持ち込んでたんだろう)プリンをつかさと仲良く食べ歩きするコッコ。
その匂いに釣られたわけではなかろうが、二人の周りでがさがさと物音がした。
無論、番兵であるオブリビオンが闊歩していることなど二人も承知、驚くようなことではない。
「毒の虫なら有効なのは岩石に火炎、超能力と飛行……逆に格闘技は効きにくい、で良かったかしら」
「そんなこと言ったらフェアリーさんはいるだけで危険なー。コッコオラトリオだから関係ないけどなー」
何の話だ。
とまれかくまれ、ここで怖気づいてはいられない。
「煮ても焼いても食えない毒虫に興味は無いわ。サクッと駆除して先に進むわよ!」
「ちょうどいいな、プリンパワーみなぎるコッコが相手な!!」
何故ならこの後に美味しい食材が待っているから――!
先手必勝。コッコが揺れる茂みにスプーンを突きつければ、付き従うひよこ軍団が一目散に飛びかかって行く。
ひよこ目掛けて草陰から飛び出す毒牙虫、羽ばたき舞い上がって飛び退くひよこ軍団!
棘付き鎌を空振りした毒牙虫に、容赦なく炎を浴びせるのはつかさの方だ。
「ひよこ……つまり鳥。だから飛行。そして炎。完璧ね」
だから何の話だ。
掌から勢いよく放たれた炎が拡散し、爆ぜる。
毒牙虫の主な攻撃手段は鎌や鋏、牙である。
即ち、どれも直接攻撃。近づかれる前に仕留めてしまえば何の問題もない。
苦悶の鳴き声一つ上げずに焼かれ、絶命の直前まで攻撃態勢を崩そうとしない様は生き物とは思えぬ不気味さを漂わせていたが、それもコメディ時空に片脚突っ込んだ二人には何の影響もない。
……まぁ、うん。相手が悪かったんじゃねーかな。いやタイプ相性の話じゃなくて。
「虫が相手ならとにかく叩くに限るなー!」
ひよこ軍団に頭上を飛び回られ、強制的に混乱している絵面にさせられた毒牙虫に、コッコが殴りかかる。
ぴよぴよ。
ぴよぴよぴよぴよ。
ファンシーな効果音と共に星とひよこエフェクトが飛ぶ。
コッコの持つ鈍器(名称「ひよこんぼう」)は非殺傷武器だ。ぴよぴよさせても殺すことは出来ない。
彼女一人であれば、一時は凌げても根本的解決には至らなかっただろう、が、悲しいかな(悲しいかな?)この場にはこの人がいる。
「私の魂を啜ろうだなんて――」
ぷちっ。
「――百年早いのよ」
完全に食欲に支配されたつかささんが振り下ろした丸太。憐れピヨピヨ毒牙虫は理解する間もなく下敷きに。
「かつてヘラクレスアリスオオカブトと引き分けたコッコに勝てると思ったら大間違いなー!!!」
丸太の上でひよこ共々勝利ポーズをとるコッコ。
しばらくシリアスな空気は寄り付きそうになかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リューイン・ランサード
虫の軍勢はそれだけでも厄介なのに魂まで吸収するとは。
キャンプの楽しい盛り上がりや美味しかった料理を思い出して、やる気を出します!
盾役は必要だと思うので、UCでドラグーン召喚して後方より操作し、仲間を【かばう】。
ドラグーンは最前線で、【炎の属性攻撃】を纏わせた剣で虫達を【2回攻撃で、なぎ払っての、範囲攻撃】で焼き斬る。
敵攻撃は【第六感と見切り】で虫の攻撃を予測して回避。
避けきれない攻撃はビームシールドの【盾受け】で防ぐ。
後方のリューインは【盾受けとオーラ防御】で防御しつつ、【風の属性攻撃、全力魔法、高速詠唱、範囲攻撃】の風魔法を発動。
味方を巻き込まないように注意しつつ、虫達を斬り裂いて倒します。
六代目・松座衛門
「ここが『魂喰らいの森』。気を強く持っていないと!」
少し遅れたが、竜帝への道を拓くためならば、協力は惜しまないぞ!
迫りくる無数の『毒牙虫』達を、人形「暁闇」による【武器受け】で動きを封じている間に、自分が多節棍「双爪丸」でトドメを刺したり、操作糸「領」を使い【敵を盾にする】等で、迎撃していく!
そうして、多数の敵相手に戦闘をする緊張感を利用して、自然と『気を強く持つ』ようにしよう!
また、一際大きな個体からの鋏による攻撃に対し、UC「霞返し」を発動!
成功した場合、喰らうはずだった【毒針付きの鋏】を両手に備えた人形「暁闇」で反撃する!
アドリブ、連携歓迎
「虫の軍勢はそれだけで厄介なのに、魂まで吸収するとは……」
侵入者を拒絶する……どころか防衛戦力に追加すると言う、『魂喰らいの森』。
第一の関門としては十分すぎるほど有用で、だからこそ侵入する側からすれば厄介な事この上ない特性に、リューインは舌を巻く。
森と言う地形の利はどうしても相手に分がある。
魂を啜る力への抵抗こそ『気を強く持つ』という根性論で何とかなるとしても、それだけで物理的な戦闘に対抗できるわけでもなく、四方八方から襲い掛かる敵の攻勢に対し、リューインは防戦一方にならざるを得ない状況になっていた。
呼び出した機械竜は、よく死角をカバーしてくれている。一人であれば、今頃間違いなく虫の餌食となっている。
そして竜も、リューイン自身も、虫達を屠る程度の火力は持ち合わせている。
少し、ほんの少しの隙さえあれば、一掃することも難しくはない。
だが、その少しの隙を中々見いだせない。単純な物量と遮蔽の多い戦場は、それほどまでに厄介なものであった。
そう、リューインが一人であれば。
「悪いな、遅くなった!」
一声。
突如として聞こえてきた新しい音にリューインが振り返る間もなく、物陰から伸びた鉤爪が毒牙虫の横腹を深々と抉っていった。
一拍おいて、躍り出る影、二つ。
リューインの視界の端に、暗い森の中ではよく目立つ、鮮やかな赤いジャケットが映った。
それでも、確認するよりも早く体は動く。
とりあえず味方だ、その事実と大体の位置さえわかればいい。
両掌に魔力を込める。
味方であれば猟兵だ。身の回りの自衛くらいはできる筈。
だとすればその位置は巻き込まないように、残りの目に入る場所に、込めた魔力を風に変えて解き放てば、強烈な真空波が毒牙虫を散散に引き裂いていく。
一瞬ながら目まぐるしい反撃を一通り済ませ、ようやくリューインは一息つき、救援者の姿を見ることが出来た。
「よ、前にも会ったな」
軽く手を振って挨拶する赤いジャケットの青年。
傍らに銀仮面のからくり人形を連れた見覚えのある彼は、六代目・松座衛門(とある人形操術の亡霊・f02931)と言う。
「すみません、助かりました」
「少し遅れたが、竜帝への道を拓くためだ。協力していこうぜ」
松座衛門の登場とそれに伴う反撃で、敵の攻勢は確かに緩んだ。それこそ、こうして会話を交わすくらいの余裕もあった。
だが、周囲にはいまだ毒牙虫の姿は数多く。
「気を強く持って行かないとな!」
「はいっ!」
松座衛門が節根を構え、リューインの機械竜がその死角をカバーするように立つ。
その瞳には、油断はないが弱気もない。
魂を喰らわれるつもりなど、毛頭ない。
ただでさえ、対多数の簡単ではない戦況なのだ。
魂喰らいを許すような弱い心では、仮に食われることがなくとも、こんな状況を切り抜けることなど到底不可能。
逆に言えば、ここを切り抜けられるという強い気持ちが、自然と魂喰らいをも防ぐのだ。
からくり人形『暁闇』が先陣を切り、松座衛門が続く。
その後ろをリューインの機械竜がカバーし、殿をリューイン自身が引き受ける。
一人では押しつぶされる。
二人では拮抗するのが精いっぱい。
だが、心強い相棒を含めれば、ここにいるのはしめて四人。数の上でも遅れはとらぬ。
もう思い通りにはさせぬと言わんばかりに、暁闇の腕がひときわ大きな毒牙虫の腹を深々と貫いた。
成功
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第3章 ボス戦
『浮遊するアトランティクス』
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POW : 奔る蒼雷
【迸る電撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【落雷に匹敵するほどの雷撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 暴れ蒼雷
【莫大量の電撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 穿ち蒼雷
【雷撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に帯電させることで】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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●天を翔る雷
毒牙虫はあらかた一掃できたであろうか。
戦闘音はいつしか止み、猟兵の周囲には、再び不気味な沈黙が降りる。
だが、森が健在である以上、倒した虫たちの中に『核』は無く。
そしてそれらを仕留めてみせた猟兵達は即ち、核の持ち主たる『最強の番兵』が出るべき相手であるということに他ならない。
ぱちり。
木々の間に、蒼い光が走った。
ぱちり、ぱちり。
いつの間にか太陽は陰り、分厚い雲に覆われた空。
その下に広がる森は暗く、その光はより眩しく映ったことだろう。
光の方角に目を向けた次の瞬間、轟音と共に幾重にも連なる蒼雷が木々をなぎ倒した。
焦げた臭いの漂う開けた空間に姿を見せたのは、浮遊する巨大なアオミノウミウシであった。
常に浮遊する程の電磁場を生み出す体表はばちばちと稲妻を走らせ、柔らかな鰭をゆっくりと動かしながら、どこが目なのかもはっきりとはわからぬ顔を猟兵へと向ける。
怒るでも、猛るでもない。
ただ淡々と、心を喰われた蒼い堕天使が、侵入者へと裁きの雷を落とし始める――。
エシャメル・コッコ
ついに見つけたな、おまえがこのエリアのボスな!
おまえを倒せばちょーウマウマなすんごいのが手に入ってプリンも山程食えると聞いたな!
このコッコ、プリンがかかってるとなれば容赦はせんな!
そしてかしこいコッコはわかってるな、おまえは電撃ビリビリが得意な!
一方コッコはピヨピヨが得意な! これはもうコッコが勝ったも同然の結論な!!
ずばりコッコが先におまえをピヨピヨさせて、おまえがコッコをビリビリさせる前にコッコがボッコボコにしてやるな! ボコボコッコの刑な!!
というわけでひよこ軍団、あいつの頭の上でピヨピヨするなー!
……ビリビリ? コッコはビリビリしないから大丈夫な! 健闘を祈るな!(無慈悲にけしかける)
織座・このみ
●心情
これがこの森を形作っている核ですかぁ
このような非道な森を無くすためにも退治せねばなりませんねぇ
●行動
ユーベルコード:多重降臨・神軍顕現
を使いますよぅ
姉様と二人で鉾先鈴を手に
【祈り】を込めた神楽舞を奉げまして、皆さまに
雷神やその眷属の御霊を降ろして強化させていただきますねぇ
「皆さま、まいりますよぅ」
神霊を宿した魂はそう簡単には啜れませんよぅ
更には雷神ですからぁ雷にも強いですしねぇ
舞の最中に攻撃されるようでしたら
【野生の感】や【第六感】で舞いながらも避けますよぅ
※内心・思考の口調は、プレイング記述の話し言葉と違い、訛り気味
人前では狐面外さない
協力、アドリブ歓迎
「これがこの森を形作っている核ですかぁ……」
このみが狐面の奥でどのような表情をしているかは、傍目には解らない。
だがその鼻先は真っ直ぐに、目の前の巨大なアオノミウミウシ……『アトランティクス』と呼ばれるそれに向いており、その声には確かな決意がうかがえる。
この非道な森――たとえその一区画に過ぎないとしても――の主にして、最高戦力にして、生命そのものと言える存在。
この森を突破し、破るためには避けて通れない強敵。
それはつまり……。
「おまえを倒せばちょーウマウマなすんごいのが手に入ってプリンも山程食えるわけだな!」
「(そんな話やったっけ?)」
違う気がします。
プリンがかかってるとなれば容赦はせんなー!とか気合十分なコッコを後方で眺めながら、このみは首を傾げる。
……やる気があるのはいいことだからそのままにしておこう。核を換金すれば高級プリンくらいなら買えるだろうし。
まぁ、そんなことはどうだっていいのだ。今考えたところで、捕らぬ狸の皮算用。
今考えるべきなのは、目の前のあいつの攻略法である。
ふわりと着物の裾を翻し、矢鱈めったらに放たれる蒼雷をやり過ごす。
巨体なこともあり、動きは比較的緩慢だ。
それでも、その大きな身体に込められた電気エネルギーは相当のものらしく、ただいるだけで周囲にはパチパチと電撃が走り、攻撃として放たれるものは密度も威力も馬鹿にならない。
「かしこいコッコはわかってるな、おまえは電撃ビリビリが得意な!」
せやね。間違いは言ってないね。
油断すればツッコミに回りたくなる思考を何とかして落ち着かせ、このみは傍らの姉と共に、しゃらりと鉾鈴を鳴らした。
「ひと、ふた、みぃ、よぉ――」
五、六、七、八、九、十。
捧げ、願い、奉る。おいでませ、雷神様。
アトランティクスの蒼雷とはまた違う電光が、ぱちりと森を照らし出した。
戦士に加護を、聖戦に光を。
神の加護を受けた魂は、そうそう森も喰らえまい。そして雷神の加護と言うことは、ある程度であれば電撃に対する耐性も生むことになる。
流石に直撃を耐えるほどではないにしろ、周囲に漂う電磁場程度なら無視することもできよう。
「皆さま、まいりますよぅ」
雷神の権能は、このみ自身のみならず、奉納に共感し、理解できたものすべてに効果を及ぼす。
故にコッコにも効いている。
「つまり勝ったも同然だなー!」
気合も十分、自信も十分。あとはやるだけ。
「コッコが先におまえをピヨピヨさせて、おまえがコッコをビリビリさせる前にコッコがボッコボコにしてやるな!ボコボコッコの刑な!!」
ビシィとひよこんぼうの先端をアトランティクスに突きつけ、我先にとお付きのひよこ軍団がアトランティクス目掛けて殺到していく。
「頭が混乱すればピヨピヨする。つまりピヨピヨすれば頭が混乱するということな!」
毒牙虫相手にも行った強制ピヨピヨ戦法を以て、奴の動きを封じようと言うのである。
……だが、一つだけ。
ほんの些細なことに気付くことが出来れば、このみも彼女を止められたのかもしれない。
雷神の加護は、奉納を行った自身だけでなく、共感した者にも等しく効果が与えられる。
そう、共感した者である。
……悲しいかな、コッコ本人はともかく、ひよこ軍団には、舞も鈴の音も、理解も共感も、できないのである!
「「あ」」
二人の声が重なった。
ヒレ、一撃。
そのひと振りと、それに伴う電磁的な力場によって、憐れひよこ軍団はぽーんとあまりにも軽々と吹っ飛ばされてしまったのであった。
「……」
「大丈夫な!コッコはビリビリしてないからへーきな!!」
果たしてそう言う問題なのだろうか。
このみは内心で、コッコとひよこ軍団の友情に亀裂が入らないことを祈った。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
リューイン・ランサード
うわあ、強そうな敵が出てきました<汗>。
これが『核』持つ最強の個体でしょうか。
ならば何としても倒さないと。
とビビリながらも翼を広げて空に飛翔し、攻撃タイミングを図る。
電撃を如何に防ぐかがカギとなるので、【鉄の属性攻撃、全力魔法、高速詠唱】で何本かの長い鉄の杭を創造し、敵に対して射出。
リューインも後を追うように【オーラ防御】を身に纏って突入。
鉄の杭を避雷針として雷撃を防ぎ、更にリューインの前面にフローティングビームシールドを浮遊させてビームで【盾受け】しつつ接近。
【第六感】で危険を感じれば【見切り】と併せて回避。
最後に【空中戦】による素早い動きで一気に接敵して、右手に宿した震龍波を敵に叩き込む!
アレックス・エイト
凄まじい出力の雷…流石は森を守る最後の砦といったところでしょうか
幸いにも動きは鈍そうですが、あの雷撃はもはや空中要塞ですね
一攫千金を狙う方々には申し訳ありませんが、核の無事に気を回している余裕はなさそうです
センサーを稼働、的を絞らせぬよう帯電地帯を避けながら魔導スラスターで高速移動し、
バレットによる牽制を行います
【誘導弾】を背後や左右からも撃ち込み、そちらへ気を引かせているうちにトールハンマーの発動を
…生半可な威力では吸収されてしまうのがオチです
充分に雨を浴びせて力を奪い、充分に魔力を溜め…
そして敵が攻撃に移ろうと電撃を溜め込んだ瞬間に雷の槌を打ち降ろし、許容量以上の雷撃を浴びせて焼き切ります
迸る雷鳴。
その威力は、雷神の加護によるバフを受けた猟兵の身をもってしても、壮絶だと言わざるを得ない。
「これが『核』持つ最強の個体ですか……」
「そのようで。流石は森を守る最後の砦といったところですね……」
四方八方に放たれる雷撃から距離を取りつつ、リューインとアレックスが身構える。
動きこそ鈍いものの、壮絶なエネルギーの放射。戦車どころか、これでは空中要塞だ。
だが、それでもビビっていては思う壺……どころか、そのまま魂を喰われかねない。
「なんとしてでも倒さないと……!」
「あまり高度を取りすぎないように。開けた場所に出るのは、雷相手だと逆に危険です」
「はいっ!」
翼を広げるリューインに、アレックスの注意が飛ぶ。
ある程度の指向性を持たせているだろうとは言え、開けた場所にポツンといれば、雷を誘導しかねないことは想像できる。
幸い、周囲は森。そこに潜む高度を維持すれば、遮蔽にも導雷にも活用できることだろう。
地面から飛び立ったリューインに気付いたのか、アトランティクスがその身を大きく震わせれば、ばちりばちりと、その周囲にまた電気が駆け巡り始める。
刹那、白く輝く魔力の弾丸が飛んだ。
アレックスだ。
無詠唱による簡単な魔術。ホーミング性の付与により木々を縫って次々と弾丸をアトランティクス目掛けて放り込みながら、スラスターを用いて側面を回り込む。
一発一発は有効打たりえない。
だが、それでも次々と打ち込まれる魔力弾はその度に電撃とぶつかり合い、力場を揺らし収束を乱す。
スラスターによる高速移動もあり、狙いをつけることもままならない。
そこで、アトランティクスは攻撃方法を『狙い撃ち』から『全方位への無差別攻撃』へと切り替える。
「させないっ!」
チャージ自体を阻害するには至らなかった膨大な電力が解き放たれる寸前、リューインが撃ち降ろしたのは、魔力で生成した鉄杭。
アトランティクスの動きが緩慢とは言え、ゆらゆらと揺れ動く相手に空中で回避機動を取りながらの射出となると、狙ったところへ飛ばすのは難しい。
ドス、ドスと、鉄杭が音を立ててアトランティクスを掠め地面へと着弾する。
お返しとばかりにアトランティクスが鰭を広げた。
轟音、閃光。
だが、直撃すればただでは済まぬ蒼雷も、リューインにもアレックスにも届くことは無く。
その雷撃を一身に受けた鉄杭と、不運にも流れ弾に当たった木々のいくつかが粉々に砕け散った。
馬鹿げた威力だと、リューインは舌を巻く。もし杭がターゲットを取ってくれなかったらどうなっていたかは想像したくない。
だが、結果として回避は成り、リューインはその隙に接近することが出来た。それで十分。
「世界に遍在するマナよ、全てを破砕する波と化し、我が躰に宿れ――!」
そしてここまで近づいたのならば。
右手、莫大な魔力を込めに込めた拳を、顔面目掛けて叩きつける。
リューインの3倍はあろうかというアトランティクスの巨体が、軽々と宙を舞った。
――ぽたり。
木々をなぎ倒しながら身を捩るアトランティクスの身体に、一粒の雫が落ちる。
――ぽたり、ぽたり。
雫が増える。
雨だ。アレックスが生み出した、魔術の降雨。
普通の雨であれば、電気を通し悪戯に被害を増やすだけであっただろうが、これに限っては話は別だ。
「"鳴神の咆哮は猛き勇士に恵みと勝利を齎す"――受けなさい」
動きを止めたアレックスが杖を掲げた。
収束する魔力が、稲光を走らせる。
アトランティクスも、この力を奪う雨が彼の手によるものだと気づいているのだろう。
蒼雷を再チャージ。今はもう、二人の間に遮るものは何もない。
――まだだ。まだ撃つな。
ギリギリまで。相手のチャージも、自身の魔力も、限界まで溜めに溜める。
下手な電撃は、ただ相手に吸収されるのがオチだ。
だからこそ、相手の電気も試させて、その上で最大出力を叩き込む。
キャパシティを超えた電撃を与えることが出来なければ意味はない。
空気を震わせていた雷鳴が、ふっと一瞬だけ止まる。
――今。
「トールハンマー……発動」
瞬間、世界が白く染まり、大地ごと砕かんばかりの振動が響き渡った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
荒谷・つかさ
出たわね、伝説の食材!
核だけじゃなくてその身も美味しく食べてあげるから、大人しくなさい!
刃噛剣を装備し対峙
また、所持武器全ての柄に金属糸を追加で編み込んだ髪縄を括り付けておく
基本、飛んでくる電撃に対しては刃噛剣で「武器受け」して対処
金属の剣なので避雷針の要領で誘雷、髪縄をアース代わりにして雷撃を逃がす
攻撃は【鬼神剛腕砲】を使用
直接接触しないよう、所持する武器を投げつけて攻撃する
特に剣や斧は刺さればそこから髪縄を通じて電撃を地面に逃がしてパワーダウンを狙えると推測
武器が尽きたらその辺の岩や木を引っこ抜いてぶん投げるわ
ふふ、仕留めたらどんな料理にしてやろうかしら。
……え、売るの?
……そんなー。
ステラ・クロセ
わたしの家、黒瀬家は武道の名家です。
両親は割と見栄と体裁を気にするので、色々と無理をして万年貧乏です。
このままでは弟へのクリスマスプレゼントはもちろんお年玉も出ない。
そう!『魂喰らいの森の核』、それをゲットしてアタシがサンタさんになるから!!
「そこの電気ナマズ!雷撃を撃てるものなら撃ってみなさい!ただし、一発そこに外してからね!」
挑発気味発言でわざと敵を強化させてから戦いに挑もうとする。
【勇気】を強く持ち、UC【真紅と翠緑の誓い】で自己強化してから、刀を高く上げ、避雷針となって動きます。
雷撃が飛んで来たら命中直前に避けるか武器を投げ捨てて回避。一応3本持ってるし!
※アドリブ連携歓迎
メリル・チェコット
ものすごい音と稲光……!
魂を食べられちゃうのもやだけど、電撃ビリビリもやだな……とにかく攻撃を避けるのに注力しよう。
あれだけ大きくて光ってると、避けながらでも外さずに矢で射抜けそうだね。
それにしても、このオブリビオンの中に……伝説級の食材と噂される、あの森の核が。
……俄然やる気が出てきた! 頑張ろう!
避けるのに専念しつつも、隙を見て弓で応戦。
確実に当てられそうな距離・タイミングを測って【牡羊座流星群】発動。
貴方のその蒼い雷と、わたしの流星群、どっちがこの寂しい森を明るく照らせるかな!
「ものすごい音と稲光……!弱っててこれなの!?」
目を焼くほどの閃光と振動が収まった。
その中心には、許容量を超えたエネルギーに傷つきながらもいまだに蒼雷を迸らせるアトランティクスの姿があった。
その立役者であるウォーマシンが、ドラゴニアンに連れられて戦線を離れていく様子が横目に見え、メリルはほっと胸をなでおろす。
ひとまずあちらは無事なようだ。後はこちらの心配をしていればいい。
敵は強大だ、とてもではないが、油断して勝てる相手ではない。
油断していなくとも、必ず勝てると言い切るのは難しいだろう。
それでも――。
「このオブリビオンの中に……伝説級の食材と噂される、あの森の核が?」
「「そのとおり(だよ!)」」
「うわびっくりした!?」
なんか気付いたら両脇に自分よりやや小さめな人影×2。
鮮やかな金髪をひとまとめに束ねた姿が特徴的な少女剣士……名をステラ・クロセ(星の光は紅焔となる・f12371)と言った。
もう一人?終始食材の事しか頭にないつかささんだよ。
まぁそれはそれとして。
事実として、核……伝説級の食材が待っているとすれば、やる気も俄然出るというもの。
……最初にこの情報を伝えておいたグリモア猟兵の判断はもしかしたら正解だったのかもしれない。
ポジティブなやる気は、意外なほど効果的に魂喰らいから猟兵達を守ってくれていた。
「そんなわけでそこの電気ナマズ!雷撃を撃てるものなら撃ってみなさい!」
「えぇっ!?」
それでも、さすがにステラのこの宣言にはメリルも度肝を抜かれる。
アオミノウミウシはナマズじゃない。いやそんなことは問題ではなく。
「だ、大丈夫なの!?」
「だいじょーぶ!!」
言うが早いか、アトランティクス目掛けてステラが突っ込んでいく。
メリルが止める暇も無かった。
「た、確かに前に出てくれると助かるけど……うわっ!?」
「だったらそのままタイミングを伺ってなさい。雷は私達で何とかするわ」
一発飛んできた流れ雷。
それを手にした刃噛剣(ソードブレイカーさながらに敵の武器を絡め取るための剣)で弾き飛ばしながら、つかさが一歩前へ。
その瞳はまっすぐ前を見据えており。
「やはり電気は電気ね。アース代わりに髪縄を括り付けておいたのは正解だったわ。じゅるり」
「あの、今」
「気のせいよ」
「あっはい」
さて、その一方で自ら敵を挑発し最前線を買って出たステラ。
肉薄する猟兵にアトランティクスが次々と雷鳴を撃ち放って行く。
その中を、真っ直ぐに刀を突き出しながら、走る、走る、走る。
一見すると危険な行為にも思えるそれは、そうしてでも仲間を守るという決意の裏返し。
流れ弾こそ多少なり出ているが、それでも攻撃のほとんどはステラが引き受けており、ちらりと後ろを振り返れば、そこに映る仲間の姿に傷はない。
至近距離、遂にアトランティクス渾身の一撃がステラを捉えた。
回避は間に合わないと悟るや否や、ステラは導雷を担っていた愛刀を放る。
頬を強烈な蒼雷が掠めた。だが、被弾にはならず。……十分だ。
二本目、抜刀。
決意を込めたステラの刃が唸る。
守るべき仲間のため、そして何より……。
「サンタさんを待ってる弟へのクリスマスプレゼントのために!あんたを討つ!!」
――黒瀬家は武道の名家である。
そして、その家を束ねるステラの両親は割と見栄と体裁を気にする質であり、なんだかんだで無理もする。
……何が言いたいかと言うと、貧乏なのである。
大切な弟たちに渡せるクリスマスプレゼントも、年明けのお年玉も、このままではあげることが出来ないのである!
そんなもろもろの事情が篭りに篭った一撃が、アトランティクスの背中に突き立てられた。
巨体がのたうち回る。溢れ出た魔力が電撃となって、四方八方に走り始める。
「離れなさい!」
つかさの声が飛んだ。
ステラの足がアトランティクスの背を蹴り、つかさの投擲した大斧が鰭の根元に深々と食い込み、総ての力を振り絞ったかのような稲妻が迸った。
一瞬の出来事。
すこしでもステラの離脱が遅れていれば、つかさの大斧が電気を逃がしていなければ、きっとただでは済まなかったことだろう。
ゆらりと、中空を漂うアトランティクスの鰭から力が抜けたように見えた。
「今だよ!」
「おっけー!」
またとないチャンス。今なら反撃の心配もない。
ステラが叫び、つかさが身を引く。
ぎりりと弓を引き絞ったメリルとアトランティクスの間を遮るものは皆無。
「あなたの雷に負けないくらいに……この寂しい森を明るく照らし出してあげる!」
奔れ、流星。
解き放たれた一本の矢。
それを追うように、何条もの光の矢が驟雨となり、続く。
もはや避けられる道理も、耐えきれる道理もない。
音を立てて、矢が次々とアトランティクスの巨体に突き立つ。
あまりにも煌びやかで、物騒な通り雨。
過ぎ去った後には、遂に地面へと墜ちたアトランティクスの亡骸のみが残され……周囲の木々が、急速に色を失い始めるのが見て取れた。
「やったぁ!!」
「ふふ、伝説の食材……どんな料理にしてやろうかしら……」
「だーめ!これは資金にしてアタシがサンタさんになるんだから!!」
「(´・ω・`)」
「…………」
――結局、核は最終的に半分に分けて、片方換金してもう片方を猟兵達で食べることになりました。
一人当たりの割り当ては……まぁ、お察しください。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴