●物書きは叫んだ
帝都大博覧会。
様々な人が集まり、様々な物を見て、見せるそんなお祭り騒ぎ。
老若男女職業問わず、話し、飲み、笑う。そんなお祭りのとある場所。他所とは少しだけ雰囲気が違うそこは文芸の一角。
お祭りというには静かすぎるそこは、皆が一心不乱に紙へ黒のインクを染み込ませていた。
ただの黒のシミが文字となり、ただの文字だったものが意味を持つ。意味を持ったものは文と呼ばれ、それが続いたものを文章と呼んだ。
売れたい。
感想が欲しい。
読まれたい。
ただ書きたい。
そんな希望と欲を持った人々を人は文筆家、もしくは小説家といった。
そこに一人、女性が入ってきた。
絹のような黒の髪をはためかせた彼女は小説家の中の一人の本を手に取る。
一枚、もう一枚めくる。
本を読む彼女の顔はよく見えない。
しかし手には力が入ってきているのか、本には皺が寄ってしまっている。
「ちょっとあんた……」
小説家が彼女に文句を言おうとした。
しかし小説家の言葉はそこで止まった。
言葉を止めたのは黒い手。彼女の足元から生えてきたそれは小説家の口と首を締め上げて。
「どうして……どうして!!」
次の瞬間、文芸の一角は赤く、血生臭く、彩られた。
●よくわからん
「お、来たな」
招集、というには随分と場違いな格好だった。猟兵達の前にいるのは綿貫・武蔵(羅刹の剣豪・f13777)。片手にはつい先日発売されたばかりの小説。
とても人気なようで、すでに重版出来しているそれを武蔵は嗚咽交じりに読んでいた。
「いやほんと……くそっ、泣けるじゃないか」
鼻をずび、と啜りながら目元を拭う。既に一度号泣でもしているのか、目元が赤く腫れている。
あらかたの猟兵が集まったことを確認すると、武蔵は本を閉じて猟兵達へと向いた。その目が真っ赤に充血していることを猟兵達は突っ込まない。
「今度、帝都大博覧会が開催されるのは知ってるか?」
猟兵達の大半はそれに肯定の意を込めて一つ縦に頷く。大々的に広告やチラシなどがあちこちで配られて宣伝されている。猟兵達が帝都を歩く以上、見ないことはない。
「そこで『小説家の集団が殺される』という予知が見えた……おそらくオブビリオン――いわゆる影朧だろう」
武蔵はさっと近くに置いてあった紙にその主犯を描く。
黒髪を腰あたりまで伸ばした女性。袴を来ていてそれだけでは帝都では普通のことだ。
しかし普通のことではないとするならば、その女性の周りを手の形をした影が蠢いていることだ。
「これが向こうの武器なのだろう。あとは手下と思われる書生の青年の姿もあった」
女性の隣にもう一つ人型が描かれる。袴を着た男性。こちらは異形のようなものは無い。
「文芸というのは一見地味だが、その中身は夢に満ち溢れているんだ……それを壊されてもらっちゃあ困るぜ」
武蔵は目の前の猟兵達に視線をやる。
「何のためにこんなことをしたのか俺にはよくわからん。だが何かしら深い理由があるはずだ。あんた達にはそれを探してもらって影朧を止めてもらいたい」
頼む、と武蔵は一つ頭を下げる。
猟兵達はそれを見て各々何かを思い、行われている帝都大博覧会へと向かい始める。やがて武蔵の前から誰もいなくなる。
ふう、と一息ついて武蔵は再び本を読み始める。
その本は『人気女性作家の恋愛と悲嘆、そして絶望の物語』。
題は。
――魔縁ノ作家。
荒木るんど
こんにちは。荒木るんどです。
今回はサクラミラージュでのお話です。
帝都大博覧会、文芸の一角を襲う影朧は何が理由でこんな事をしてしまうのか。
ぜひ調べて見つけてみてください。
●第1章 日常『帝都大博覧会』
影朧の恨みや理由を探してみてください。
もしくは帝都大博覧会を楽しんでください。
●第2章 集団戦『『大文豪』名も無き者たち』
大量の『名もなき文豪』が現れます。
頑張って蹴散らしましょう。周りには気をつけて。
●第3章 ボス戦『魔縁ノ作家』
ただ倒すか。それとも説得するか。
それはプレイング次第。
説得する場合はしっかりとした説得をプレイングに明記してくださいませ。
今回のお話はこんな感じです。
プレイング受付は12/2(月)~からです。
それではお待ちしております。
第1章 日常
『帝都大博覧会』
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POW : ご当地グルメや地酒を楽しむ
SPD : 工芸品や民芸品を買う
WIZ : 発表会や展覧会を観る
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可愛猫・仮面
大博覧会というのはすごいのであるなあ。
客に紛れて本を物色しつつ、噂話にも耳を傾けるのである。
一応、UC「ネコチャンを呼ぶ」にてねこちゃんロボを呼んでおくのである。
ロボとはいえネコチャン……本物に近いタイプならどこにいてもおかしくないのである。
噂話を聞くにはぴったりであるな。
ふむ……しかし我輩たち、本はあまり読まないのであるが……
「きれいな絵! あたしでも読めそーだよ、にゃんちゃん!」
うむ。中身も絵本に近い本なのである。
ふりがなもあって優しいのである。
これはお小遣い大放出であるな!
「だめだよ~。二人で一冊ずつって、決めたでしょ!」
むう……そうであった。幼女先輩はえらいのであるな。
「えへへ~。」
机の上々に置かれた本に興味を示し、驚嘆の声をあげるのは可愛猫・仮面(我輩は猫ではない・f23412)。
仮面の足元にはおとなしく猫がついてきていた。しかしそれは生物の猫ではない。
ユーベルコード『ネコチャンを呼ぶ』で読んだ小型の戦闘用のロボ『ねこちゃんロボ』だ。この猫型のロボットことネコチャンと仮面達は色々なコーナーを巡りながら噂話を聞いていた。
得た噂話は数年前にひっそりと引退して亡くなった小説家の話。
そして他の話を聞くついでに、可愛らしい絵が描かれた本を手に取っていた。
謎の袋――幼女先輩を被った彼の姿に小説家達は一度、二度、人によっては三度も仮面達の姿を見る。そして何かインスピレーションが沸いたのかガリガリと紙に向かい始めるが、仮面は気にしない。
「きれいな絵! あたしでも読めそーだよ、にゃんちゃん!」
「うむ。中身も絵本に近い本なのである。我輩たち、本はあまり読まないのであるが……ふりがなもあってこれなら読めそうなのである」
「だねー!」
評論コーナーでは目をぐるぐる回して手に取った本をすぐに手元に置いていたが、子供向けの小説コーナーではその可愛い表紙と中身にいたく感動していた。
「どれを買おうか迷うのである……あれも欲しいし、これも欲しいであるな……」
「だよねー、迷っちゃうよ!」
「これは全部買ってしまってしまうのも手であるな! お小遣い大放出であるな!」
むう、と仮面は彼の周りに置かれている本達を見やる。全て一冊ずつ買うとなると結構な出費になりそうだった。
「だめだよ~」
そんな仮面をたしなめるように幼女先輩が声を上げる。
「二人で一冊ずつって、決めたでしょ!」
「むう……そうであった。思わず買ってしまいそうになるところであったな」
ハッ、とまるで宝の山を見ていたかのようにぼうっとしていた仮面は我に返った。
「幼女先輩はえらいのであるな」
「えへへ~」
大成功
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薙殻字・壽綯
……懐かしいなあ。帝都大博覧会は昔…物書きだったころに……よく、足を運んでいました
美味しいものがたくさんあって、人もたくさん、熱意にあふれていて……文芸は、特に賑やかで楽しいんです
…私は眺めているだけでしたが、静寂の中に確かにある喧噪に心踊らされて感情燃えたぎって、だから僕も負けてられな…あ、……。浮かれて、います…ね
……影朧の調査を、しにきたんでした
文芸を運営の人や、見学している人がいれば、話を…聞きたいですね……
最近、流行の小説はなんでしょうか?それと…今、注目を浴びている作家さんを知りたいです
長い黒髪の女性作家の噂など、耳にしませんでしたか?ゴシップでも、なんでも。理解、したいのです……
懐かしそうに、文芸コーナーの一角に視線をやる姿が一つあった。
薙殻字・壽綯(物書きだった・f23709)は昔、物書きだったころの記憶を遡ってあの頃の郷愁を感じていた。皆、静かなのに熱く、静かなはずなのにどこかうるさい。
自分の感情がいつの間にかメラメラと燃え始めて、自らの欲望を何としてでも文章として作り上げようとする――。
「おっと……影朧の調査を、しにきたんでした」
普段よりも少しだけ浮かれている気持ちに気が付いて少しだけ恥ずかしそうに壽綯は本来の目的を思い出す。
壽綯は周りをキョロキョロと探す。壽綯の足を運んだ時間帯はまだ早めのせいかまだ混んでおらず、すぐに目的の人は見つかった。
「あの……すみません」
「はいはい、どうしましたか?」
文芸コーナーの入り口に立つ男性、腕章には『運営・案内係』と書かれている彼に壽綯は声を掛けた。
案内係はゆっくりと話す壽綯の言葉を一字一句聞き漏らさないように耳を傾ける。
「最近の……流行りの小説は、ありますか?」
「最近の流行りですね! この間発表された人気小説順位のコーナーがありますので、そこにご案内いたしますね!」
「あ、ありがとう、ございます」
案内係はニコニコと笑顔を浮かべて壽綯を案内し始める。壽綯は案内係の横を歩き、情報を収集し始める。
「あの……最近、この界隈で何か、ゴシップみたいなのは、ありましたか?」
「最近かぁ……あまり文芸界隈はあまりそういうの聞かないですねぇ……」
「たとえば……長い黒髪の女性作家の先生の噂など……」
「あぁ、もしかしてあの先生のこと!」
大分前の話だけどね、と案内係は壽綯へと口早に、しかし少しだけ声を潜めて話し始めた。
それは一人の女性作家の話。かなり売れていた有名作家だったが、どこからともなく現れた根も葉もない噂、そして愛憎にまみれた恋愛も合わさって失意の中に亡くなった作家の話を案内係は壽綯へ話した。
「といっても全部噂ですからね。あ、つきましたよ」
「あ、ありがとうございます」
話している間に目的のコーナーへとたどり着く。壽綯は案内係から聞いた噂をしっかりと頭の中に刻む。そしてまたほかの情報を集めるために近くにいた見学者に声をかけた。
大成功
🔵🔵🔵
カラコブ・ガラズィマ(サポート)
『悔い有る人生に価値など無い、皆で楽しもうじゃないか』
キマイラの戦場傭兵×シーフ、22歳の男です。
普段の口調は「ねっとりうるさい(私、~くん、です、ます、でしょう、ですか?)」、敵には「威圧的(私、アナタ、言い捨て)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。その世界の機関で修復可能な程度であれば他猟兵や公共物の損壊は気にしません。
奇襲、強襲、吶喊、略奪を得意とし戦闘以外の事は積極的に世界別の協力機関に丸投げします。
知的な雰囲気を出そうとしている脳筋です、最終的には全て暴力で解決しようとします。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
イネス・オルティス(サポート)
『この鎧は一族伝統のもの、恥ずかしくなんて……』
アックス&ウィザーズ辺境のどこかにある隠れ里に住む一族の女戦士
〔一族伝統の鎧〕のビキニアーマーを愛用し主に〔巨獣槍〕という槍を使う
”ダッシュ”で近づき”なぎ払い”、”串刺し”等をよく行う
ボン・キュ・ボンのナイススタイルで、ビキニアーマーを普段使いしているため
無意識に周りを”誘惑”している事があるが本人は気づいていない
また”恥ずかしさ耐性”があるためか自分の格好より任務の達成を優先する傾向がある
アドリブ・絡み・可 ””内技能
描写はセクシーレベルまで
「ふむ、なるほど。文芸、ですか」
カラコブ・ガラズィマ(快楽主義の蛮族・f09723)は机に置かれているたくさんの本を見遣り、顎に手を添える。ゴシック調のドレスから生えるすらりとした足は妖艶で、そして文字を読むその姿は見る人のほぼ全員に知的な印象を与える。
一冊取っては置き、一冊取っては置き。最初の数ページに目は通すもすぐに手に取った本を元の場所へと置いてしまう。
文芸の一角のうち、数メートルほどでカラコブは読書を終えて文芸コーナーを後にしてしまう。
「あったま、痛いですね……」
その実、本の中身を理解していたわけではなく、ただ文芸に親しんでいる、という雰囲気を醸しているにすぎなかったわけで、普段あまりしない行為にカラコブの頭は限界を訴えていた。
カラコブは人のいないところへと身をひっそりと隠す。そこは何も展示していない一角、言うなればデッドスペースの部分だ。ただ一台、誰も使っていないのか埃の被った公衆電話の類がそこに置いてあるだけだった。
「ま、これくらいは、ね」
右手をその公衆電話へと触れる。触れる直前にカラコブの手はその姿を変化させ、百足の頭部のような姿となる。まるで顎のような箇所は敵を捕食するための顎肢だ。それ以外にもまるで公衆電話を確かめるように、触角がうねうねとそれに巻き付く。
ユーベルコード『生命のストロー』。
百足の頭部と化したカラコブの手は公衆電話にかみつく。むしゃむしゃと喰えばカラコブの眉間に寄った皺が薄れていく。
「ちょっとあなた、何勝手に壊してるのよ」
ちょうどそこに通りがかったのはイネス・オルティス(隠れ里の女戦士・f06902)だ。胸と股以外をあられもなく露出させた鎧――所謂ビキニアーマーというやつである――を身に纏い、カラコブが休んでいる一角まで近づく。
「良いでしょう別に。誰かが直してくれるでしょう?」
「だからって、こんな人が見そうな所で場違いなことやっちゃだめよ」
「アナタがそれ言います?」
カラコブは視線を落とす。TPOという観点から見るのであれば、どちらも場違いなのだが、視線に困る、という点においては明らかにイネスの格好はそこに合っていない。
お堅い雰囲気が色濃く残る文芸の一角に突如として現れたビキニアーマーである。そして一心不乱に文字を書いていた人々がこぞってその鎧と体躯に視線を奪われていたことも容易に想像が出来ていた。
イネスにとっては特に恥ずかしさという感情はそれ程無いのだが、周りの文筆家達は端から端まで赤面していたのをイネスは気付いていない。
「どちらにせよ、色々と情報は手に入れたから、共有するよ」
「本当? 助かります」
「文芸の人達に聞いた限りでは少し前にとある女性作家がいたらしいの」
イネスは聞いた情報をカラコブへと共有し始める。
誰も入れなさそうなほど深い恋愛をしていた女性作家。帝都にいればその作家の小説を知らないものはいない、というほど売れていた有名作家だった。しかし順調な恋愛はそれほど長く続かず、相手の男が浮気をしてしまった。
女性作家はそれを咎めたが、男は一本の小説を書いて行方をくらましてしまった、という。
その小説は『血みどろの彼女』。男が書いたその小説の内容は『付き合っていた女性が浮気をし、やがて元の男を殺して新しい男と駆け落ちする』というもの。
それは最初から最後まで嘘の塊にすぎなかったが、読者達はそれを信じ込み、女性作家に罵詈雑言を浴びせ始めた。
女性は心を病んだが、男への恋愛は一切途切れなかった。
やがて女性作家は文字を書かなくなり、悲しさの中、病死してしまった、という。
「本当だったらこの男、どうしようもないやつよね」
イネスはカラコブに話しながら怒りを覚える。そして何よりも、影朧となったというのが、この女性作家である、というのも容易に想像ができた。
「ただ……その男に復讐するのならともかく、そこらへんの男性作家全員に危害を加えるのは、ね」
イネスは話し終えて、一つため息をついた。
「ま、噂として聞いただけだから、また何か情報があったら教えてね」
「もちろん、わかりました」
大分顔色の良くなったカラコブへとイネスは声をかけると、一旦博覧会の外へと出る。外での聞き込みも大事だ。
ちょうどその時、数人の書生と思われる集団とすれ違った。
「先生! 待ってください」
「…………」
女性は黒髪を腰あたりまで長く伸ばし、寡黙にイネスの脇を通り過ぎていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
岡田・依子(サポート)
『貴方は、私を…赦(ころ)してれる?』
【人物】
普段の口調は女性的で、相手の事は年齢にかかわらず(相手の下の名前)~君orちゃん、と呼ぶ。
冷たく、ニヒリスティクな印象を与える剣士ではあるが、基本的に女性的な口調、所作。強者との戦いの果てに果てることをを過去への贖罪と考え、渇望している。
妖刀「喰骸(クガイ)」解放時は冷徹さが増すと共に、秘めていた好戦的な側面が顕になる。
『死を喰らいなさい――喰骸』
【戦闘】
命を削るような戦い方で、必要であれば傷付く事、血を流す事を厭わない。危うい側面もあるが、基本、理性的な仕事人気質なので状況に応じてのサポート、連携も弁えて戦う
よろしくおねがいします
神楽坂・神楽(サポート)
アルバイトでUDCエージェントをしている女子高生です。
「私の目や耳はごまかせないよ♪」
「それじゃあ、取っ捕まえさせてもらうよ♪」
「バイト代になれー!」
持ち前の超常的な運動能力と知覚力をもって、そしてUDC組織から貸与されている超常のワイヤーを操って、調査や戦闘を行います。(それぞれアイテムを参照いただければと思います。)
基本的に敵の目的や境遇などは気にせず、モグラ叩きのモグラを叩くが如く、敵をボコボコにします。
UDCアースではオブリビオンを捕縛してUDC組織に引き渡すことを狙いますが、それ以外の世界では捕縛した後にそのまま切り刻んでポイします。
[SPD]
ジャスティス・ボトムズ(サポート)
★アドリブ大歓迎
正義を執行することに全力を注ぐぜ。
敵と認識した相手は叩き潰す。
それが俺の正義だ。
俺は闘争や探索などあらゆるものをシンプルに考えて行動するのを好む。
戦い方は武器での攻撃と素手での格闘を敵を見て使い分けている。
物事はシンプルに考えて動いた方が白黒ついて分かりやすくなるってもんさ。
正義を執行するという意志は俺にとって絶対だ。
何があっても絶対にこれだけは曲げないぜ。
やること決めたら後は全力で突っ込んでいくだけだぜ。
技能は怪力、鎧砕き、存在感を使って力で問題解決を目指す。
正義を執行するのにはパワーをフルで発揮するのが俺好みだぜ。
正義の力で敵を叩き潰して、優しさを持って民間人に接するぜ。
文芸の一角に姿を現したのは、三つの人影。
「わあ! 本がたくさん!」
神楽坂・神楽(バイトエージェント・f21330)は結んだ髪をひょこひょこと跳ねさせて辺りを見回す。普段これほどの紙の束を見ることが少ないためか、目をキラキラと輝かせていた。
「神楽ちゃん、一応周りも少しは気にかけてね。といっても、これはすごいわね」
一歩後ろを歩きながら神楽と同じく辺りを見回す岡田・依子(希シ念慮・f20829)もまた、数々の本に目を奪われていた。文字だけでなく表紙の絵も芸術的なものからコミカルなものまで、様々だ。
「少しくらい見ていっても良いよな? 見ながら周りも警戒するからな!」
ジャスティス・ボトムズ(正義の執行者・f22965)は既に二人よりも前へと歩み出ると置かれた本を手に取っていた。
「これとかどうかな? 面白そうな小説♪」
ジャスティスに続いて神楽も置かれている本を手に取って吟味し始める。神楽が手に取ったのはいわゆる古本と言われる類のものだ。
出店しているのは古本屋なのだろう。一帯は古本ばかりが置かれている。そして神楽が手に取った古本は数年前に大流行りした小説だ。
「お婆さん! これ買うよ♪」
神楽はあらすじを少しだけ見遣るとそれを店番へと渡す。
普段からアルバイト代を貯めている神楽だが、これくらいの出費ならば問題は無いのだろう。
題は『そちらの桜の花びらは』。神楽は早速パラパラとページをめくってその内容を確認し始める。
数ページ経たずに三角関係が展開され始め、その数ページ後には主人公以外の女が三人も出てきて男を取り合っている。
趣味にあっているのかあっていないのか、表情だけではわからないが、るんるん、と口角を上げて先へと進める神楽の手元をジャスティスと依子が覗く。
「恋愛……? いえ、恋愛というよりもドロドロしてそうね」
「俺それ見たことあるぜ。もう亡くなった有名作家が作ったやつだよな」
ジャスティスは店番をしていたお婆さんへと話しかける。
お婆さんはゆっくりと縦に頷く。
――そうさね……数年前、この文芸界に大きな事件があったのさ
そしてゆっくりと話し始めた。
――黒髪の綺麗な作家がいたんだ。誰もが引き込まれてしまうほどリアルな描写で、でも奇抜な内容はそりゃ読んでいて面白かったのさ。
しかしその話は未完のまま終わってしまったという。
「それは、どうして……」
悲しそうな顔をするお婆さんに思わず依子は問いを投げかける。
――心を病んでしまったのさ
作家は男に騙されて、騙された男のせいで文芸界からも放されてしまった。それが原因かはわからないが、その作家は書くのを止めてしまった。
そして騙した男の胸と腹を掻っ捌いて、唯一心臓だけ取ってどこかに消えてしまったという。
「その作家は今、生きてんのか?」
――いや、とうに死んでしまったよ。たしか険しい崖から飛び降りたか何だかで。でもそれも随分と不可解な死に方って聞いたさ。
◆◇◆◇◆
お婆さんのいた一角から少し離れた場所。人がほとんどいない所に三人は場所を動かしていた。あれから色々な場所で本を吟味……もとい情報を収集していた三人だったが、今回のターゲットである黒髪の影朧というのが件の小説を書いたその女性作家であるということは容易に想像がついた。
「……きっとその作家さんが今回のターゲットなのかな」
「そう思うわ。最初の情報とも合っているわね」
「と言ったところで、俺達その作家の顔は知らないんだよな……」
三人は周りに漏れないような声量でひそひそと話し続ける。目下問題とするならば、その作家の人相を知らないのだ。
一つため息をついて依子が一つ提案を出す。しかしその顔はあまり乗り気ではなさそうだ。
「本部に戻ればデータくらいはあるかもしれないけれど、それじゃあ少し時間がかかるわね」
「でもだからって、こんな沢山人がいる中で虱潰しに探すのも疲れるよ~……」
狙うべきターゲットはわかったものの、そのターゲットがどのような風貌なのか、黒い長髪以外の情報が無い三人は途方に暮れ始める。
「昔から作家をやってそうな人にどんな顔か聞いてみる、ってのが一番手っ取り早いかもな」
「ジャスティス君の言う通りかしらね。端から探すよりも効率的だわ」
三人は再び情報を聞き出すために文芸の一角に繰り出す。最初に向かったのは初めに噂について聞いた古本のお婆さんだ。
「お婆さん! もう少しだけお話聞きたいんだけど良いかな?」
神楽は色々な所はぼやかしつつ、黒髪の作家がどんな顔だったかをお婆さんに尋ねた。
お婆さんは斜め左上を見ながら「えーと」と少しの間考えていたが、ぽつりぽつりと作家の特徴を挙げ始めた。
曰く『肌が白い』『華麗に髪が結ってある』『誰もが見るほどに美しい見た目』『目が奪われそうなほど美しい唇』などなど。
何個か特徴を言ったところで、お婆さんの声が急に止まった。訝しげに三人がお婆さんを見遣ると、お婆さんの視線は一点に固定されていた。
三人はその視線の先へと各々の視線を移す。
そして、お婆さんが止まった理由がわかった。
視線の先にいたのは、とても美しい女性、そしてそのお付きと思しき男性の姿だった。
女性は艶めく黒い長髪を腰辺りまで伸ばし、綺麗に結ってあった。その顔は全員の意見が合うほどの美貌で、肌はまるで織り立ての絹のように白く滑らか。
お婆さんが挙げた情報がそのまま体現したかのような女性はゆっくりと、周りを見ながら文芸の一角の入り口をくぐった。
ど、どうして……とお婆さんの喉から掠れた声が漏れ出る。わなわなと身体は震え、顔は真っ青だ。まるで幽霊でも見ているかのようだった。
「まさか……」
依子は思わず呟いた。
――ど、どうして死んだはずのお主がここに……!
お婆さんの呟きを聞くのと同時に三人は各々の武器を取り出す。三人の勘はその女性を敵と感じ取っていた。
「さて♪ お仕事の始まりだね!」
「敵は叩き潰すだけだ!」
事件を起こさせないために、三人は女性に向かって早速詰め寄った。
否、詰め寄ろうとした。
しかし、その間に何者かが立ちはだかった。
成功
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第2章 集団戦
『『大文豪』名も無き者たち』
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POW : 何故、お前たちは評価される?
対象への質問と共に、【評価されなかった自身たちの著作】から【有象無象の登場人物たち】を召喚する。満足な答えを得るまで、有象無象の登場人物たちは対象を【周囲のあらゆる武器たりえるもの】で攻撃する。
SPD : 何故、我々は評価されなかった?
対象への質問と共に、【評価されなかった自身たちの著作】から【有象無象の登場人物たち】を召喚する。満足な答えを得るまで、有象無象の登場人物たちは対象を【周囲のあらゆる武器たりえるもの】で攻撃する。
WIZ : 何故、『大文豪』は評価されなかった!?
対象への質問と共に、【評価されなかった自身たちの著作】から【有象無象の登場人物たち】を召喚する。満足な答えを得るまで、有象無象の登場人物たちは対象を【周囲のあらゆる武器たりえるもの】で攻撃する。
👑11
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女性の前に立ちはだかったのは彼女と共に歩く男達だ。書生の姿をした彼らは武器を向ける猟兵達を見据える。
「……貴方達は彼らが憎いですか」
彼女は男達に言う。男達はこくり、と頷いた。
「憎いから、彼らを殺すのです」
彼女は猟兵達の向こうにいる小説家達に視線を向ける。
「私の全てを奪った小説を書く人々が憎い……憎い!」
感情を露にした彼女と呼応するかのように、男達は各々本を取り出す。何かを彼らが呟けば彼らの周りの地面から人々が現れた。
勇者、旅人、一般人、飛行士。色々な人々が召喚されていた。それは男達が作り上げて、誰にも見られなかった小説の登場人物。
「貴方達の作り上げた登場人物達で、ここにある小説をと小説家を皆残らず、始末しなさい!」
女性の掛け声とともに、男達と登場人物達は一斉に襲い掛かった。
シホ・イオア(サポート)
『前へ進む、痛みと祈りがシホの背中を押してくれるから』
怖くなって緊張すると 口調が硬くなる
背中の聖痕で相手の悩みや痛みを感じ取ってしまうため
敵でも癒したい・終わらせてあげたいという方向で動く
罠や防衛戦では建造物を作り豪快に解決することが多い
自衛手段を持たないものがいる場合は救助を優先
ユーベルコードは遠距離戦に強いものが多いが
残像を纏い剣と光輪を使って接近戦も行ける
輝いているため隠れるのは苦手
連携アドリブ歓迎
可愛猫・仮面
わ、わ、普通のひともいるのであるぞ!?
あわわ……大変なのである。
避難と護衛をしなきゃならないのである!
散らしていたUC「ネコチャンを呼ぶ」のネコチャンをそのまま使うのである。
ネコチャンは護衛と、避難誘導をしてもらうのである。
我輩たちも避難誘導して、とにかく他の猟兵が守りやすいようにしておくのである!
連携取って、護衛と避難と戦闘をこなしたいものであるな……
護衛を行う関係上、自分から攻め込むことはしないのである。
その辺りは他の猟兵にお任せしたいのである。
「あ、あわわ……大変なのである!」
可愛猫・仮面(我輩は猫ではない・f23412)は今まさに一般人に襲い掛からんとしている登場人物達の光景をその網膜に捉える。猟兵であるが故、そこで思考を止めることはなく、すぐに行動へと移し始めた。
「とにかく、避難誘導をしなきゃならないのである!」
仮面は事前に召喚していたねこちゃんロボ――通称ネコチャンで登場人物達を生み出した張本人である書生の男達の攻撃を妨害する。
――何故、我々は評価されなかった?
書生達はそうしきりに呟き、辺りに原稿用紙をばら撒く。それは真っ黒になるまで文字が書かれていて、そして地面へとひらりと舞う。
地面についた瞬間、その原稿用紙はメキメキと人型へと変貌していく。
「うっ……こんなに大きな悩み、なんだね……」
同じ場所で避難誘導の手助けを行うのはシホ・イオア(フェアリーの聖者・f04634)だ。シホの背中には聖痕があり、ひどい痛みを感じ取っていた。
それは目の前にいる書生の悩み。書生の心の痛み。書生が持つ感情がシホの身体に酷く干渉していた。
「シホ! だ、大丈夫であるか!?」
「仮面さん……大丈夫だよ。お客さん達は……?」
「もう殆ど避難し終わったである。手助けするである!」
顔を痛みなのか、悲しみなのか、暗く染めるシホの後ろに仮面は立つ。既に文芸コーナーにいた一般人達はその場から去っており、他のブースとの扉も固く締められていた。
その場にいるのは猟兵達と、女性が一人。そして書生と書生が生み出した人々――登場人物達だけだ。登場人物達の格好はまちまちだが、その瞳に光はない。
書生が生み出した登場人物達は近くにあったテーブルを持ち上げる。と思いきや、それを仮面とシホにめがけてぶん投げた。
「ネコチャン!」
ユーベルコード『ネコチャンを呼ぶ』で召喚したネコチャン達を仮面に一斉に号令をかける。ネコチャン達は投げられたテーブルの側面に飛び掛かることでシホに飛んできたテーブルの弾道を横へと反らす。
「ありがとう……輝石解放、ガーネット。影よ、シホの身を映して群れと成せ」
仮面のアシストを傍目で見ながら、シホは自身の持つ剣を横に構える。シホが言葉を紡げばシホの周りにシホの分身がズラリと現れた。
ユーベルコード『サモン・サーヴァンツ』。書生が生み出した登場人物達に匹敵するほどの分身が文芸コーナーへと広がる。
「あの急に現れた登場人物の人達……何か動きを抑えられると良いんだよね」
シホは登場人物達からの攻撃を剣と自身の周りに形成された光輪で防ぎながら仮面へと伝える。
「動きを抑える……であるか?」
仮面のネコチャン達とシホの分身、合わせれば何とか登場人物達の数と同等になるかもしれない。しかし今まさに書生達は新たな登場人物達を生み出し続けている。
さすがに時間が経ってしまえば数の不利は猟兵側にあることは明白だった。
「どうすれば……よいのであるか……」
ふと仮面は数分前の出来事を思い出す。後方で落ち着いて見ていたからこそ、仮面が聞き逃さなかったことがあった。
「さっき『何故、我々は評価されなかった?』って言っていたである。これについて何か言えば良いと思うのである!」
シホへと危害を加えようとする登場人物達をネコチャン達と自身の武器であるクレヨンセットを使って刃を防ぎながら、思い出したように仮面はシホへと伝える。
「そ、そうだと思う!」
二人は何かを確信したように敵全体を見遣る。今まさに登場人物達が続々と増えて、その手には周りにある武器になりそうなテーブルや椅子といった、そして投擲物として本やペンがあった。
「勝機が見えてきた、であるな」
「そうだね♪」
二人は少しだけ、口角をあげた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シャーロット・ゴッドチャイルド(サポート)
ダークセイヴァ―の貧しい農村に生まれた聖なる力を宿した女の子です。暗い過去を背負った子ですが、いつも周りに気を使っていて笑顔を絶やしません。
ホーリー・ボルト~光の精霊の力で、光属性の魔法の矢を放ちます。
エレメンタル・ファンタジア~炎の精霊を呼び出し、炎の竜巻を巻き起こす。予想以上の威力のため、制御するのがやっと。
絶望の福音~10秒後の未来を予測する。
生まれながらの光~左の手のひらにある聖痕から他者を癒す。
「お前たちがいるからみんな悲しい顔をするんだ・・・シャーロット、絶対ゆるさないんだから!」
エロやグロに巻き込まれなければ大体のことは大丈夫です。
カミンスキー・テレサ(サポート)
多重人格者の學徒兵×力持ち、14歳の女です
口調は設定を参照して下さい
普段(テレサ)は軍人口調で、生真面目な性格の優等生
規律を重んじ従順に従い行動しますが、世間知らずで割と天然です
馬鹿なので力と勢いで解決します
自己犠牲心が強く、他人を優先して行動します
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
「お前たちがいるからみんな悲しい顔をするんだ……シャーロット、絶対ゆるさないんだから!」
金色の髪を優雅にたなびかせながら、シャーロット・ゴッドチャイルド(絶望の福音・f23202)は目の前で今まさに辺りの家具を使って危害を加えようとする登場人物達に自身の持つエレメンタルロッドをかざす。
「へえ、ちゃんと答えてあげれば多少力任せでもいけるんだね?」
その隣ではカミンスキー・テレサ(奔放なる放浪者・f23215)が別人格でありゾフィアと名乗る存在が霊刀で書生の持つ本を斬り飛ばしながらにやり、とまるで何か面白いものでも見つけたかのように口角をあげた。
「なぜ、評価されなかったのか、だよね?」
そりゃもちろん、とテレサは続ける。
「少しだけ実力が足りなかったんだろう。キミも気づいているんだよね?」
テレサは瞬時にかがんで書生の足元に潜り込む。と同時に書生の足をグッとつかむとまるで重さなど感じないかのような剛力で書生を持ち上げた。
ユーベルコード『びったんびったん』。そのまま振り回しつつ人のいないところに書生を投げつければ、直ぐに書生は目をクルクルと回して気を失ってしまった。
その書生が生み出した登場人物達も、テレサの放った一言を聞くとその場で動きを止めてしまった。登場人物達はハッと何かに気が付いた様子でテレサを見ていたが、サラサラ、と頭のてっぺんから砂が零れ落ちるように、粒子となって消えていく。
まるで答えを得たかのように、登場人物達は消えてしまった。
「一人目、撃破だね」
テレサはゾフィアという人格が表に出たまま口角を挙げたまま呟く。
「手! 大丈夫!?」
シャーロットは目を見張って怯える書生達を見ているテレサへと近づく。よく見ればテレサの手は先ほどの振り回しの時かそれとも書生の最後の足掻きなのか、手の甲に深めの切り傷ができていた。
悶えるほど痛くはないが、気づいてしまうと気になる程度の痛みだろう。
「すぐに治すから! ちょっと待っていてね」
シャーロットはその傷に向けて自身の左手を翳す。シャーロットの左の手のひらには聖痕があり、その痕からはテレサの傷を癒すように光が放たれていた。
数分もしないでテレサの手から傷が消え去ってしまい、テレサは思わず「おお」と驚いた。
「ありがとう。少し気になる痛みだったから」
「気にしないで! また何か怪我をしたら呼んでね!」
シャーロットはその顔に笑顔を浮かべて一つお辞儀をすると、戦場となっている文芸コーナーを器用に走り抜け、怪我を負った猟兵達を探しに行ってしまった。
片手にはエレメンタルロッドを持ち、途中襲い掛かる登場人物達に炎の魔法を浴びせている。
残されたテレサはシャーロットの背中を面白そうに見ていたが、やがて敵へと視線を移した。
成功
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薙殻字・壽綯
…憎悪は否定しません。しかし、芽を摘んではなりません。……憎しみは、せめて私にぶつけてください
確かに、評価は大事ですね。作品が評価されても、作者が評価されるのは稀です、から…
……自分に素直に。…その評価は、ご自身が決めるものです。……自己満足ですよ。ただ、……生み出した作品を否定してはいけない
…私は、もう物を書いていませんが、書いてよかったと思えるものばかりです。…どんな結果であれ、形に残せたから。私は、これでいいと、思っています
……質問には、質問で返しましょうか
ご自身の作品は憎いですか?……そこに、愛は含まれませんか?
愛を含まぬ作品ならば、今一度目を通し、貴方からの感想を。それが、評価です
――何故、『大文豪』は評価されなかった!?
黒髪をひらひらと舞わせる女性を取り囲むように書生達が自らの本から架空の『登場人物達』を召喚させていく。
次々と召喚されていく登場人物達を薙殻字・壽綯(物書きだった・f23709)はじっと見つめていた。
もし自分も貪欲に周りへ評価を求め続けていたら。
こうなっていたのかもしれない、と、うすら寒ささえ感じていた。
「……憎悪は否定しません。しかし……芽は摘んではなりません」
しかし壽綯は書生達を見透かすようにじっと見つめて、そして書生達の唸る『問い』へと立ち向かう。
ボロボロになったテーブル。周りには既に紙切れとなってしまった、創作物があった。もしかしたら、それは稀代の小説になっていたかもしれない。
もしかしたら、それは誰かの心に寄り添い、支えて、時には涙さえも流させるものになりえたのかもしれない。
書生達は、静かに彼らへと近づく壽綯に気が付きその瞳を壽綯へと向けた。
書生達の瞳は明らかに理性を失っていた。口からはまるで呪詛のように評価という言葉が吐き出されていた。
「……確かに、評価は大事ですね。作品が評価されても、作者が評価されるのは稀です、から……」
壽綯は懐から一冊の文庫本を取り出す。戦闘の衝撃で表紙がめくれ中のページが露になる。
ただ黒く、何度も何度も塗り重ねられた頁がそこにあった。
決して見えないように、それは隠されていた。
「……生み出した作品を否定してはいけない」
パラパラと懐かしそうに壽綯は文庫本のとある一ページを開き、その黒く塗られた行を愛おしそうになぞる。
「……自分に素直に。……その評価は、ご自身が決めるものです。……評価というのは自己満足ですよ」
ハッ、と。
書生達の動きが止まった。まるで何かを取り戻したかのように。
その瞳には光が映っていた。
「ご自身の作品は憎いですか? ……そこに、愛は含まれませんか? 愛を含まぬ作品ならば、今一度目を通し、貴方からの感想を」
書生への質問と共に、壽綯の持つ文庫本から南天の花花があふれ出る。ユーベルコード『食み出しもの黒む』。
小さく、そして白い花びらは瞬く間に書生へと向かい、書生達、そして書生達が生み出した登場人物達を包み込む。
書生達は、しかし、それに抗わない。
きっと満足な答えが見つかったのかもしれないし、もしかしたら壽綯の言葉が答えだったのかもしれない。
「――それが、評価です」
その言葉とともに彼らはその場に崩れ落ちて、消えた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『魔縁ノ作家』
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POW : 〆切の無間地獄
非戦闘行為に没頭している間、自身の【敵の周辺空間が時間・空間・距離の概念】が【存在しない無間の闇に覆われ、あらゆる内部】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
SPD : ジャッジメント・ザ・デマゴギー
自身の【書籍、又は自身への誹謗中傷】を代償に、【誹謗中傷を行った一般人を召喚、一般人】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【敵に有効な肉体に変質・改造し続ける事】で戦う。
WIZ : イェーガー・レポート~楽しい読書感想文~
対象への質問と共に、【400字詰原稿用紙を渡した後、自身の書籍】から【影の怪物】を召喚する。満足な答えを得るまで、影の怪物は対象を【永久的に追跡、完全無敵の身体を駆使する事】で攻撃する。
👑11
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モース・レフレクソン(サポート)
ボスは強力な攻撃が必要だ。アイアンフェザーを構えて、強力な牽制射撃をしつつ一気に近づく。そして近距離で装甲突破型アンチマテリアルライフルを撃つ…が、これも牽制射撃だ。
後ろか側面に回り込んでユーベルコード掌底発破(パームバーンを叩き込んでやる。
肉片にするつもりで行くぞ。
クリミネル・ルプス(サポート)
関西弁の元気な肉体武闘派人狼。
人狼の身体能力と鍛えた格闘技で戦う。
痛み等の耐性用いての潰し合い上等。
体内に蓄積させた糖原物質を使用した搦め手も使う。
周囲(空間、物質)の匂いからの状況把握推察も可能。
基本は『生き残る事』だが、オブリビオンは許さない姿勢。
特に命や尊厳を踏み躙る系統には本性(真の姿など)が出る。
【ネタ、絡み、合わせなど歓迎です】
【肌の露出やエッチな事には羞恥心はあまり無い。彼氏持ちで一線は超えさせない】
・真の姿時
身体能力の向上と体の変化。
戦闘思考が先立ち、やや、残忍(確実にトドメ刺す)
『あら……あなたも……私をっっ!!』
女性の黒髪がうねる。まるでいつかに聞いた「見たものを石に変える化け物」。見たものはそんな感想を抱くだろう。それはモース・レフレクソン(サイボーグの戦場傭兵・f06734)とクリミネル・ルプス(人狼のバーバリアン・f02572)も同様だった。
しかしそれを見たところで猟兵達は怯むことはない。
むしろあるものは瞳の中に炎を燃やし、あるものは自身の義務と心の中で呟き、あるものは哀れを感じ、あるものはただただ目の前の敵を倒すことだけを考えていた。
「アンタが親玉だな」
「ウチら、アナタを倒さないといけないんや」
モースとクリミネル。この二人にとっては目の前のソレはあくまで倒すべきものとして認識したようだった。
「肉片にするつもりで、行くぞっ」
「もちろんや」
最初に動いたのはモースだ。
両手に二丁拳銃を構えると容赦なく女性ーー魔縁ノ作家に向けて鉛玉を放つ。その鉛玉の間を縫う様にクリミネルは走ると魔縁ノ作家へと急接近する。
「ちょっと痛いかもしれないけど、まぁ我慢してや」
巨人の手を大きく振りかぶると魔縁ノ作家目掛けて振り下ろす。敵はそれを一切避けることなく、一心不乱に何かを読んでいる。近づいたクリミネルがそれを見たところでそれには何も書いてない。あるのは真っ黒のページだけ。
そしてもう一つ感じたおかしなことにクリミネルは思わず眉間にシワをよせる。
「……当たってないんやろか……いやでも」
「アンタ、ぼやっとするな!」
クリミネルの後方からモースの声がする。それと同時に空になった薬莢を捨てる音。次弾が来る、と判断したクリミネルはそこからすぐさま離れる。
クリミネルのいた場所をすぐ後にモースの放った弾丸が再び魔縁ノ作家を狙い撃つ。合計12発。しかしそれでは終わらない。
「舐めてるのかっ」
モースは動かない敵に焦れたのか距離を詰めて長距離アンチマテリアルライフルを叩き込む。その一発は凄まじい衝撃をあたりへとぶっ放す。ビリビリと壁が揺れて辺りに散乱した紙が竜巻の中に入ったかの様に吹き荒ぶ。
「……んっ!?」
ここでモースも自身の中に潜んでいた気味悪さに気が付きその場から後方へと急激に下がった。
「やっぱり……効いてないんや」
「……嘘だろ」
どれだけ弾丸と肉弾を当てても、魔縁ノ作家は本を読んでいた。何事も起きておらず静かな場所にいるかのように。
忌々しげに真っ黒の本を読み進めていた。
『あら、それだけ?』
敵は挑発する様に、猟兵達を見た。
猟兵達がどれだけ攻撃を加えようとも、本を読んでいる彼女には傷一つついていなかった。
「まずあの本を止める必要があるみたいや」
「そう簡単にはいかないか」
猟兵達は唇を噛んだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
数宮・多喜(サポート)
『よっし、アタシに任せときな!』
一人称:アタシ
三人称:通常は「○○さん」、素が出ると「○○(呼び捨て)」
基本は宇宙カブによる機動力を生かして行動します。
誰を同乗させても構いません。
なお、屋内などのカブが同行できない場所では機動力が落ちます。
探索ではテレパスを活用して周囲を探ります。
情報収集および戦闘ではたとえ敵が相手だとしても、
『コミュ力』を活用してコンタクトを取ろうとします。
そうして相手の行動原理を理解してから、
はじめて次の行動に入ります。
行動指針は、「事件を解決する」です。
戦闘では『グラップル』による接近戦も行いますが、
基本的には電撃の『マヒ攻撃』や『衝撃波』による
『援護射撃』を行います。
「そんなところに閉じこもってても、誰も相手なんかしてくれないよ」
数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は周りの事など気にせず真っ黒の本を読み進める魔縁ノ作家へと声をかける。他の猟兵達の攻撃を片っ端からなかったことにする本に狙いを定める。
「そんな可愛いのに、そんな可愛くない顔して読むなんてやだねぇ」
魔縁ノ作家は返答しない。
しかし多喜はそこでやめない。声をかけ続けて集中を切らすのが目的なのだ。
魔縁ノ作家へとゆっくりと近づき、それ以上近づくことができないところまでそばによる。魔縁ノ作家の周囲は黒く染まっていて、闇に覆われていた。
「あたし、あんたの本をどこかで読んだことあるんだけどさ」
『――――』
「結構良い小説だよねぇ、あれ」
『――――』
「なんというかさ、ドロドロな恋愛だったけど結構泣けるし」
『――――』
「あんな生き方も楽しそうだとは思ったよ」
『――に、な――っ』
闇の塊から声が聞こえる。
多喜の耳にも辛うじて届くような微かな声だ。
「なんだって?」
『あなたに、何がわかるのよっ!!』
塊が薄れていく。真っ黒の本を読んでいた手は震え、その瞳は四白眼になるほど見開かれていた。
「褒めてほしいんじゃなかったのかい?」
『あなたに私の苦しかった生き方がわかってたまるものかっ!』
重力に逆らうように魔縁ノ作家は髪を逆立てる。まるで髪の一本一本が命を宿しているかのようだ。
しかしこれで真っ黒の本への集中が途切れた。
「わからないから、読むんだよな?」
多喜は魔縁ノ作家に怯えず、相対した。
成功
🔵🔵🔴
薙殻字・壽綯
……貴方は、悔しくて腹立たしくて、心残りがあるから本を読むのですね
……憎いのは、誰ですか?
貴方を裏切った男性、貴方を中傷した読者、……それとも、こんな質問をする私か……嘘つき男を想い続けた、一途な貴方か
……誰ではなく、何なのかもしれません
人は、貴方を傷つけました。人を憎み怖れ、攻撃するのは仕方ないことだと思います。……私は、貴方を物理的には傷つけたくありませんので、攻撃は外野に向けて放ちます。露払い、ですね
……私の言葉が、刺さればいいのですが。…痛いのは、飛んでいけしませんか?
憎しみ、恨み……それだけでない激情を、どうか私に教えてください。どうか、話してみて、くれませんか?
可愛猫・仮面
ふむ……難しい敵なのである。
我輩たちの手札でどうにかなるものか……
まずはやってみるのであるな。
何事も挑戦である。
さて。
UC「ふわふわのネコチャンを呼ぶ」にてふわふわのネコチャンを呼ぶのである。
ふわふわのネコチャンは悪魔のネコチャンであるから、ある程度は何とかしてくれるはずなのである。
代償はもちろん、これである!
「ネコチャン、おやつだよ~!」
頼むのである、ふわふわのネコチャン!
……え?
読書感想文であるか?
我輩……そういうの、苦手である。
「もー、なさけないなー! あたしがかく!」
頼むのである、幼女先輩……
「えっとねえ。『はいけい よみがながほしいです! けいぐ』!」
なんか違う気がするのである。
「……憎いのは、誰ですか?」
一見すれば化け物と評されそうなほど鬼気に満ちた魔縁ノ作家を見て、薙殻字・壽綯(物書きだった・f23709)はポツリと呟いた。
「……貴方を裏切った人ですか? それとも中傷した人……もしくはこんな質問をあなたにする私でしょうか」
その瞳はじっと魔縁ノ作家を見据えている。
「あるいは……嘘つき男を思い続けた、一途な貴方ですか」
『その全員よっ!』
壽綯の言葉が図星だったのか、それとも怒り狂うためのスイッチだったのか。
魔縁ノ作家は絶叫すると壽綯へと紙を投げつける。何枚もの原稿用紙だ。
『どうしてこんなに憎らしいのっ!』
魔縁ノ作家の魂の叫びは文芸コーナーへと響き渡り、そして真っ黒の本から黒い人型――影の怪物があふれ出てきた。
「……ど、読書感想文であるか?」
「ちょっと! なんかへんなのがおってくるよっ!?」
影の怪物をよそに、可愛猫・仮面(我輩は猫ではない・f23412)とともにいつ幼女先輩が手に原稿用紙を持ちあたふたしていた。
「とにかくあの怪物を何とかするのである! 『ずずいっと来るのである、ふわふわのネコチャン!』」
ユーベルコード『ふわふわのネコチャンを呼ぶ』。仮面はすぐ近くに落ちていた電子機器を手に取ると大きく頭上へと掲げる。
まるで影の怪物と対抗するかのように電子機器からはまるで軟体生物のような塊が召喚される。
『ふわふわのネコチャン』だ。何匹ものふわふわのネコチャンが、その国宝級のふわふわな毛並みを携えて辺りを闊歩する。それに目を奪われないものなどいない。
一体それが影の怪物に聞くのかどうかは定かではないが……。
「ターゲットが増えれば狙われる確率も少なくなるのである! 説得は任せるのである、壽綯!」
「……わかりました」
仮面は影の怪物から逃れるように文芸コーナーの中をネコチャン達と一緒に走り回る。影の怪物はゆっくりとその数を増やしていくが壽綯へと近づく個体はいない。というよりも近づけない。
『あなたたちは、何者ですか?』
壽綯と魔縁ノ作家の周りには花吹雪が舞っていた。
ユーベルコード『レゾンデートル』。質問に答えない限り、影の怪物達にとって花吹雪は刃に変化する。しかし影の怪物は喋らない。つまり二人に接近しようとすると刃に切り刻まれてしまうのだ。
そんな影の怪物達を一瞥し、壽綯は一歩、一歩と魔縁ノ作家へと歩を進める。
「……貴方は、悔しくて腹立たしくて、心残りがあるから本を読むのですね」
『そうよ』
「……人は、貴方を傷つけました。人を憎み怖れ、攻撃するのは仕方ないことだと思います。――でも」
『……でも?』
「その憎しみを周りにぶつけるのは……違うと思います」
『――――!』
魔縁ノ作家は息を呑んだ。一瞬だったが、影の怪物も魔縁ノ作家と同期して動きを一瞬だけ止めた。
「……あなたには沢山の、言葉があります。憎しみ……恨み、だけではないと、思います」
壽綯は地面に落ちていた原稿用紙に手を伸ばす。400字しかかけないそれを数枚手に取ると、魔縁ノ作家へと手渡す。
「作家であるあなたの、激情をどうか……私に教えてください」
◆◇◆◇◆
「ぁぷっ……これで何度目の原稿用紙であるか……?」
文芸コーナーを走り回る仮面の顔に、まるで花吹雪と同じくらいの量が舞う原稿用紙が襲いかかる。といってもただの原稿用紙だ。
近くでは影の怪物とネコチャンが激しい攻防をしている。しかし影の怪物はどうやら無敵なのか、ネコチャンがどれだけ前足でつついても倒れる気配はなかった。
「やっぱりどくしょかんそうぶんをわたさないといけないんじゃない?」
「えぇ……我輩そういうの、苦手である」
「もー、なさけないなー! じゃああたしがかく!」
「頼むのである、幼女先輩……」
仮面をターゲットとする影の怪物から器用に逃げ回りながら、原稿用紙を少しずつ埋めていく。少しずつ、というよりも『少し』だけだが。
「えっとねぇ……『はいけい よみがながほしいです! けいぐ』! どう!?」
「なんか違う気がするのである……でもまぁ、持っていくのである」
幼女先輩の読書感想文?と同時に仮面の読書感想文を花吹雪の中の壽綯と魔縁ノ作家へと持っていく。
仮面が二人の元へとたどり着くと二人は驚いたように目を見張った。あれだけ化け物のようだった魔縁ノ作家は、すっかりと一人の女性のような姿へ戻っていた。
「……どうしましたか?」
「こ、これっ! 読書感想文書いたである」
『……本当?』
仮面は魔縁ノ作家へと二人分の原稿用紙を渡す。拙い文字で書かれた文章を魔縁ノ作家はゆっくりと噛みしめるように読んでいく。
幼女先輩の読書感想文は一度見て、ぷっ、と吹きだした。
『感想、ありがとう。うれしいわ』
魔縁ノ作家は先ほどとは考えられないほどの笑顔を浮かべて仮面へと礼を伝えた。
「やっぱり……感想は嬉しい、ですか」
『ええ。とても。感想を貰って嬉しくなるのは物書きの性だわ』
「なら良かったのである!」
三人はハハハ、とその場にそぐわないような明るい笑い声を挙げた。
『ねぇ、何か私に聞いて』
魔縁ノ作家は壽綯へと話す。その瞳はもう狂気よ嫉妬に取りつかれた化け物ではない。そして、自分がどうすべきか、もわかっていた。魔縁ノ作家は自身へと刃を向くであろう茄子の花びらに手を伸ばす。
壽綯は困ったように眉をハの字にした。少しだけ、名残惜しかった。
◆◇◆◇◆
猟兵達の目に映ったのは、魔縁ノ作家がその形を崩して、花びらとなった瞬間だった。
原稿用紙と混じって、桜の花びらが辺り一面へと広がる。そしてこれが戦いの終了の合図であることを理解した。
影の怪物はいなくなり、文芸コーナーは静寂に包まれたのだった。
数時間後には復旧し、帝都大博覧会は無事成功と相成った。そして帝都大博覧会の数日後、本屋にはある本が並べられていた。
それは『人気女性作家の恋愛と悲嘆、そして絶望の物語』。少し前から置いてある本だがリニューアルされている。重版されたのだろうか。
その表紙に描かれた『彼女』はどこか楽しそうだった。
ちなみに、匿名希望で本文に読み仮名がつけられるようになったのだが、それはまた別の話。
大成功
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