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水底に揺れる輝き

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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 ざらざらと音を立てて小さな玉が落ちていく。
 幅広で深さもある川に渡された橋の上で転げた荷車を慌てて立て起こしても、もう遅い。
 たったのひとつでも落とすまいと手を伸ばしても、陽射しにちらりと光るトンボ玉は掠めることもできずすべて川へと飛び込んでしまった。
「ありゃあ……こいつは参ったな」
 荷運びをしていた男は、言葉とは裏腹にさして参っていない様子で唸ると、すでにたすき掛けしてまくり上げていた袖をまくり上げる仕草をひとつしてから、川へ入る準備をする。
 ああ参った参った、こいつを全部拾い上げるのは骨が折れる。川の水も冷たかろう。時間をかければ社に届けるのも遅れてしまうし日も落ちる。いや参った参った。
 実際のところ、本当にさして参ってはいない。
 大急ぎで届けろとも言われていないし、それよりはひとつと損ねることなく運び届けることのほうがよっぽど重要なのだ。
 だから、まあ、……冷たいのは嫌だなあ。
 息を吐き、ふと誰かの気配に気づく。
 通りがかりの何某に、急いでなければ手伝いを頼もうか。
 そう思いそちらを向いた男が目にしたのは、赤黒い血がこびりついた忍者刀を手にした見知らぬ集団と、その後ろに佇む角持つ女の浮かべる笑みだった。


 くふん、と溜息をつき、天霧・白雪(人間のブレイズキャリバー・f02151)は猟兵たちに頭を下げた。
「サムライエンパイアでね、ちょっと困ったことになっているのよ」
 彼女が語るには。
 かの地のとある村にてそれなりに名の知られた社があり、そこでは正月の縁起物として干支のトンボ玉を分けているという。
 今年の干支は亥。なので、縁起物もイノシシを模したもの。
「これくらいの大きさなんだけど、とってもかわいい意匠に仕上げられているんですって」
 やや嬉しそうに言いながら白雪が人差し指と親指で示した大きさは、おおよそ2センチ。
 これを社まで運ぶ途中、橋を通りかかったところで荷車を落としてしまい、小さなイノシシたちは川の底へ。
 ただそれだけならばどうということもないのだろうが。
 それよりほどなくして、羅刹が率いる妖魔忍者の集団が村を襲うのだ。
「ひとりの村人が蜻蛉玉を拾おうとしているところに妖魔忍者が現れて、一撃。それが始まり」
 かつて僧兵として深き信仰と強き法力をもって一揆衆を従え戦ったほどに優れた統率力を持つ女羅刹に指揮された妖魔忍者たちにより、あっという間に村人は皆殺しにされてしまうだろう。それで終わり。
 皆にはそれを阻止してほしいと、白雪は溜息をつくように告げた。
「難しいことはないから安心していいわ。まずは、妖魔忍者たちの掃討。それから、首魁の羅刹の討伐。戦場になると想定される橋は平らで充分に幅があるから落ちる心配はないわ」
 それが災いして、トンボ玉がひとつ残らず落ちてしまったのだが。
「ね、簡単でしょ?」
 確かに簡単と言えば簡単だが、討伐までは簡単と限らず、簡単に言ってくれる。
 しかしてそれは猟兵たちへの信頼から来るものだ。
 それに。
「敵を倒したら、トンボ玉を拾うのを手伝ってあげてほしいのよ。冬の川の中に落ちたたくさんのトンボ玉を、ひとりで全部拾い集めるのって大変だもの。……うまーくいったら、トンボ玉を譲ってもらえたりするかもね?」
 言っていたずらっぽく笑い示した指の動きは、人差し指と親指をくっつけた、OKで。
「さて、他に質問は? ない? 分かった、それじゃあいってらっしゃい!」


鈴木リョウジ
 こんにちは、鈴木です。
 今回お届けするのは、忍者と羅刹とトンボ玉。

 第1章【集団戦】攻めよせる妖魔忍者との戦闘。
 第2章【ボス戦】妖魔忍者を指揮している羅刹である女僧兵との戦闘。
 第3章【日常】川に落ちたたくさんのトンボ玉をみんなで拾います。

 トンボ玉は、色もイノシシの意匠も様々で、陽射しや光に照らすときらきらと輝くよう。
 お正月の縁起物として社に届けるものですが、やりようによっては譲ってもらえるかもしれません。

 それでは、よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『妖魔忍者』

POW   :    忍法瞬断
【忍者刀】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    忍法鎌鼬
自身に【特殊な気流】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    忍法鬼火
レベル×1個の【鬼火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

真木・蘇芳
おいおい、武器ももたない相手に斬りかかるなんてどこまで卑怯なんだい?
【先制攻撃】を利用してまずはおっさんを守りつつ殴る。
不意打ちをする奴は正面から戦えない弱い奴なんだろ?
後ろの女はそんな奴らに囲まれて粋がってる勘違い女だ。
天狗鼻の代わりに角折ってやる。
おっさんには荷車を盾にして貰おう。
さて、容赦しない、慈悲もない、暴れさせてもらうぜ。


※アドリブ大歓迎、喧嘩好きの悪党不良外道プレイングだと嬉しいです。


諏佐・姫夜
戦う術のない村人一人に多数で襲いかかるとはなんと卑劣な。
纏めて退治してくれる!

村人を庇うように忍者の前に躍り出て戦闘開始
「卑劣な忍者共、私が相手だ!」などと声を上げ私の方へ注意を向かせる
戦闘では周囲の忍者をなぎなたでなぎ払いつつ、必要があれば村人の安全を確保する
ある程度振り回した(かつ村人の安全が確保できた)ところで羅刹旋風を使い一気にたたみかける
忍者の攻撃対策に間合いには注意を払い、もしなぎなたの間合いの内側に入られたら妖刀を抜いて対処する

「貴様等が何者であろうと、か弱き者を虐げるというのなら!
容赦はしない!全て滅ぼしつくしてくれる!」

【アドリブ・共闘は自由に】


郁芽・瑞莉
縁起物の干支のトンボ玉、川に落ちてしまったとの事。
清浄なる水での禊と思えば、拾うのも苦では無さそうですよね。
私も回収をお手伝い申し上げたいのですが……。

まずは人々を襲おうとする輩を排除して、からでしょうか。
過去が現在を奪う事はさせません! まずは妖魔忍者の排除ですね。

荷運びをされていた方にはこの場は預かりますので、
戦闘の影響がない場所まで退いていていただきましょう。
「まずはお命をお大事にして下さい。この場は預かりますので」

【破魔】の力を薙刀に宿して、
巫覡載霊の舞で敵を衝撃波を以って【なぎ払い】ます。

「邪なる忍びの者よ、我が舞を以って魔を破らんことを!巫覡載霊! 郁芽・瑞莉、参ります!」



 諏佐・姫夜(日に背を向けて歩む者・f02771)が駆けつけたまさにその時、妖魔忍者の一体が忍者刀を哀れな犠牲者へ向けて振り上げる。
「戦う術のない村人一人に多数で襲いかかるとはなんと卑劣な。纏めて退治してくれる!」
 ぎりとなぎなたを掴む手に力を込め、村人を庇うように忍者の前に躍り出た。
「卑劣な忍者共、私が相手だ!」
 声を上げた猟兵へと注意が向かい、得物を構え直すよりも早く。
「っらぁ!」
 先制攻撃を狙い、横合いから一息に殴り付ける!
 不意打ちを受ける形となった妖魔忍者がもんどりうって倒れ伏し、強撃を放った相手はぱしんと拳を手のひらに打ち付けた。
「おいおい、武器ももたない相手に斬りかかるなんてどこまで卑怯なんだい?」
 真木・蘇芳(羅刹の化身忍者・f04899)が悪辣に笑う。
 現れた猟兵たちに妖魔忍者たちはじりと距離を取りながら包囲するように位置を変え、その後ろで、僧服の女羅刹が口許に笑みを浮かべながら用心深く彼らを見る。
 蘇芳は女羅刹をまっすぐに見据え、いっそ悪辣に笑った。
「不意打ちをする奴は正面から戦えない弱い奴なんだろ? 後ろの女はそんな奴らに囲まれて粋がってる勘違い女だ」
 天狗鼻の代わりに角折ってやる。
 言って、つ、っと額を指した。
「あ、あんたたちは……」
 驚いて腰を抜かした男を守り寄るのは郁芽・瑞莉(陽炎の戦巫女・f00305)。
 安心させるように微笑みかける。
「縁起物の干支のトンボ玉、川に落ちてしまったとの事」
 清浄なる水での禊と思えば、拾うのも苦では無さそうですよね。
「私も回収をお手伝い申し上げたいのですが……」
 携えた得物に手をかけ、敵に目を向けつつ男へ言う。
「まずはお命をお大事にして下さい。この場は預かりますので」
 戦闘の影響がない場所まで退けと促す彼女に、蘇芳も首肯して荷車を顎で示した。
「おい、あんた。危ないからその荷車を盾にして隠れていろ」
「それは困る……本当に困る。トンボ玉を運ぶのにこいつがないとえらく苦労するんだ」
 なにしろ、2センチほどの大きさのものをたくさん運ばなければならないのだ。
 手で運ぶにも、包んで運ぶにも、難がある。荷車が必要であれば、盾として使いようもない。
 そう思案する間にも、隙を狙い攻撃を仕掛ける妖魔忍者を姫夜がなぎなたでなぎ払いつつ男へ呼び掛ける。
「ことが終われば快く手伝おう。今はまず、自分の身を第一にしてくれ!」
 皆に言われて逆らう道理もない。
 戦闘に巻き込まれない場所へ男が逃げるまで猟兵たちは妖魔忍者たちを牽制し、充分に状況が整ったと判断すると放つ気配を変えた。
「さて、容赦しない、慈悲もない、暴れさせてもらうぜ」
 不敵に笑い、跳躍した蘇芳の一撃が敵の一体へと迸った。
 防ごうと構えた得物を砕き、勢いに乗せてその身体を打ち倒す。
「邪なる忍びの者よ、我が舞を以って魔を破らんことを! 巫覡載霊! 郁芽・瑞莉、参ります!」
 続いた瑞莉が構えたなぎなたに破魔の力を宿し、舞う足取りで放つ攻撃は衝撃波となり妖魔忍者へと襲いかかった。
 ざあっと叩きつける衝撃になぎ払われ、敵の陣列が崩れたところへ姫夜が飛び込む。
「貴様等が何者であろうと、か弱き者を虐げるというのなら!」
 吼えて一歩踏み込み、一気に畳み掛けた。
 必中といかずとも激しく繰り出される攻撃を防ぎながらも食らった妖魔忍者はぐらと体勢を崩し、倒れ伏すと同時に消えていく。
 残滓を払うようになぎなたを振り、猟兵はオブリビオンを睨み据えた。
「容赦はしない! 全て滅ぼしつくしてくれる!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

鎹・たから
トンボ玉、きっと綺麗でしょうね
うつくしいものを作る人達を襲う忍者は、許しません
たからが必ず、ほろぼしましょう

たからは羅刹旋風で忍者を蹴散らしていきます
【暗殺、2回攻撃、先制攻撃、範囲攻撃】活用
なるべく多くを巻き込むよう意識

攻撃が当たり辛いかもしれませんが
たからは囮のようなものです
ご一緒した皆さんの攻撃こそ本命です

猟兵同士の連携重視
敵の隙を突きつつ、村人達の安全を最優先に
撃ち漏らしのないよう確認を怠りません

万が一、村人が危険であれば身を挺して庇います
【かばう、オーラ防御】を活用

村人猟兵問わず、怪我人が居れば薬箱から薬を出し治療しましょう
【救助活動、医術】が役立つと思います


藤野・いろは
彼のトンボ玉を心待ちにしている人も沢山いるでしょう
何よりそのような物を作る人を失う訳にはいきませんね
お兄さん、ちょっと助太刀をさせてください、ええ無事に届けないといかませんからね
天下自在符を見せて身分と事情を手短に説明し、押し寄せる忍者と対峙していきましょうか
尤も既に数と姿が割れている忍者、恐れるに足りないはずです
間合いを保ち1対1を心掛けて各個撃破をしていきましょう
相手の高速な斬撃は脅威ですが、同時に隙があります
特殊な気流を身にまとうその瞬間を狙いカウンターをしていきましょう
「破魔」の力を帯びた妖剣には「鎧など無意味」
これぞ先の先ーー太刀にて紅引き、紅を差す。飾る銀に見惚れるなかれ



 獲物を見定めた妖魔忍者が異様な気をまとい、地を蹴ると同時に嵐の勢いで攻撃を波状に放つ。
 己が身を削りながら猟兵目掛けて繰り出された衝撃を、我が意を得たりと藤野・いろは(天舞万紅・f01372)が一閃で受け止めた。
 相手を見極めようとするが癖か、初手は受け手になりがちな戦い方も此度の戦さに合致する。
「彼のトンボ玉を心待ちにしている人も沢山いるでしょう。何よりそのような物を作る人を失う訳にはいきませんね」
 愛用の刀でいつでも一撃を放てるよう構えるいろはにうなずき、鎹・たから(雪氣硝・f01148)は六華の紋に触れる。
「トンボ玉、きっと綺麗でしょうね」
 そしてそれは、決して穢してはならない。
「うつくしいものを作る人達を襲う忍者は、許しません。たからが必ず、ほろぼしましょう」
 敵を前に雪舞う風の如く凛として告げる。
 と、ふたりの猟兵が口にした『トンボ玉』という言葉に反応して、離れたところに隠れている男が顔を覗かせた。
「お兄さん、ちょっと助太刀をさせてください、ええ無事に届けないといけませんからね」
 いろはが天下自在符を見せて身分と事情を手短に説明する。
 その隙を狙い奇襲を仕掛けた敵の刃を鋭く打ち返し、
「尤も既に数と姿が割れている忍者、恐れるに足りないはずです」
 先に業を振るう仲間もある。であれば難敵と怯む必要もない。
 小柄な体躯を躍らせ、たからが敵群に飛び込みその身が持てる技術を存分に駆使して戦う。
 暗殺。2回攻撃。先制攻撃。範囲攻撃。無論すべてが効果的に働くわけではない。
 対するいろはは、敵との間合いを保ち1対1を心掛けて各個撃破を狙った。
 相手の高速な斬撃は脅威だが、同時に隙があると踏み、特殊な気流を身にまとうその瞬間を狙いカウンターをしていく。
 個で見れば、さして敵を倒せていないたからのほうが不利に見えた。
 故に。敵もまた狙いやすいと判じて、たからへと攻撃を疾らせる。
 自身に向け殺到する殺気と攻撃を前に動じず、猟兵は己の役目を果たす。
 攻撃が当たり辛かろうが、それが彼女の狙いなのだ。
「たからは囮のようなものです」
 ご一緒した皆さんの攻撃こそ本命です。
 たからが身を引いたと同時に、いろはの一撃が迸った。
 『破魔』の力を帯びた妖剣には『鎧など無意味』。
「これぞ先の先ーー太刀にて紅引き、紅を差す。飾る銀に見惚れるなかれ」
 づぉんっ!
 弧を描き放たれた衝撃は、今まさにたからを襲うため隙を見せた妖魔忍者を凪ぎ払う。
 さながら将棋倒しに倒れていく敵から目を離さず、ふたりの猟兵は次の獲物へと注意を向けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と合わせてく

【WIZ】
まぁったくめでたい日に水差すンじゃねぇわよっつう
統制とれた敵だっつうならコッチもしっかり合わせれたらいいンじゃナイ?
他の猟兵の動きも見つつたぬちゃんの援護するように動くネ

『高速詠唱』にて【月焔】発動
正面を主とした敵全体を牽制するよう炎をばら撒く
消えぬ内に『2回攻撃』で仲間の近くにいる敵数体へ合体した炎を撃ち込むヨ
鬼火や鎌鼬の反撃へは炎を当てて相殺し『かばう』
特にたぬちゃんのおっきいライオンが狙われたりしないよう注意しとくねぇ

接近されたり切り込んでく仲間が少なければ
「柘榴」振るい『傷口をえぐる』ネ
そのまま『生命力吸収』しちゃえば一石二鳥ってヤツ


火狸・さつま
コノf03130と参加

【SPD】
立ち位置や戦況により臨機応変に対応
声を掛け合い連携をとり立ち向かう

【ライオンライド】にて黄金ライオン呼び寄せ騎乗
ライオンを操り駆け突撃
【先制攻撃】狙う
敵からの攻撃は【見切り】にて避けるか【オーラ防御】にて防ぐ
受けたダメージは【激痛耐性】にて凌ぎつつ
ライオンの強烈なパンチと、かみつきを主に敵をなぎ倒す

※窮地に陥り、味方共々危ない場合のみ、【捨て身の一撃】を繰り出す



 立て続けの猟兵たちとの戦いに布陣が崩れ、態勢を立て直そうとする妖魔忍者たちの眼前で、不意に月白の炎が躍る。
 蒼褪め冷たい炎は月光の如く敵へと降りかかり、にわかに起きた混乱はすぐに収まるがそこへ黄金の獅子が飛びかかった。
 弧を描いて敵を引き裂く。
 だが、それですべて滅するほど敵も惰弱ではない。
 打ち倒されたものは消えゆくままに、残る妖魔忍者は即座に戦闘の構えを取った。
「まぁったくめでたい日に水差すンじゃねぇわよっつう」
 身丈の倍もある黄金のライオンを駆る火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)を伴い、コノハ・ライゼ(空々・f03130)が飄とした風で吐く。
 だが、まあ、残る敵もそう多くはない。
「さっさと片付けようか」
 呼び掛けるでないコノハの言葉に言葉で応える代わりにさつまはライオンへと指示を出した。
 高速詠唱により息をつく間も与えず月焔を放ち、敵の攻撃を恐れず黄金のライオンがその爪と牙を剥く。
 戦況に変化があればさつまが告げ、彼を狙うものがあればコノハが炎を繰りかばう。
 戦場が、炎と獣により蹂躙される。
 隙をついて一体の妖魔忍者が肉薄し、さつまへと閃撃を放った。
 見切る、否、かわしきれないと判じオーラ防御でダメージを軽減し、
「たぬちゃんになにしてくれンの」
 コノハの放った月焔が重なり彼を狙った敵もろとも周囲を焼き尽くした。
 礼代わりにとさつまもライオンを駆り、その巨躯から繰り出される拳と鋭い牙での咬撃で、敵を凪ぎ倒す。
 せめて一矢報いんと捨て身で猟兵へ攻撃を食らわせようと素早く飛びかかる敵に、コノハは柘榴の名を持つナイフを振るってその身に突き立て、深く。深く傷口を抉る。
 傷を抉られるごとに力を奪われ、敵はぞぶと赤黒い血を噴き低く呻きに似た声を吐き、得物を取り落とす。
 それが、妖魔忍者の最後の一体だった。
 得物を振るって血を払い、猟兵は一点を見る。
「さて、残るは」
 なぎなたを手に立ち尽くす女羅刹の顔には、それでも笑みが浮かんでいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『一揆を指揮する女僧兵』

POW   :    仏罰降臨
自身が戦闘で瀕死になると【仏罰を降す御仏の幻影 】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    仏罰代行者
自身に【信仰による法力 】をまとい、高速移動と【仏罰の雷】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    極楽一揆衆
【戦死して極楽に旅立った一揆衆 】の霊を召喚する。これは【槍】や【鍬】で攻撃する能力を持つ。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は加賀・依です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

諏佐・姫夜
残るは首魁のみか。
例え同胞であろうとも、敵とあらば倒すのみ!

武器を妖刀に持ち替え、妖剣解放を発動し全力で攻撃に当たる
【破魔】の力を宿した衝撃波を主軸に、大振りの攻撃と【二回攻撃】を織り交ぜながら攻める
相手からの攻撃は衝撃波で【なぎ払い】相殺するか、【激痛耐性】で耐えてから【生命力吸収】である程度の回復を図る
回復が見込めない、もしくは間に合わないと判じた場合は防御を捨て【捨て身の一撃】を叩き込む

敵もそうだが味方の動きも注意深く見て、連携を取りながら確実に敵を仕留める


鎹・たから
同じ羅刹でも
あなたとたからは違うようです
人を傷つけるあなたは、悪です
たからがほろぼします

【範囲攻撃】で拡大化した終雪で攻撃
【暗殺、2回攻撃、先制攻撃、気絶攻撃】を活用し敵の行動範囲を狭めます
足元などを狙って確実に機動力を落としましょう

霊を召喚されたら終雪を【範囲攻撃】と【衝撃波】で巻き込むよう意識
【ダッシュ】で近づき連珠を使い【グラップル、鎧砕き】で粉砕します

猟兵同士の連携重視
味方が危機に陥る際は【オーラ防御、かばう】で支えます

仏に仕える身であれば
あなたは正しく人々を導くべきです
それをやめてしまった瞬間
あなたは信仰を捨てたのと同じ
極楽に旅立った人々を、操る権利などありません


真木・蘇芳
さてと、あんたのご自慢の兵隊達はご覧の有り様だ。
あんたの采配、引き際の悪さが全滅を招いた。
笑いつつ、忍者の頭を潰す。
あとは頭を潰すだけ、宣言通り角をへし折る。
そう言い女僧兵を殴りにいく。

※アドリブ大歓迎ですー!



「さてと、あんたのご自慢の兵隊達はご覧の有り様だ」
 まさしく鬼神の凶暴な笑みを浮かべ、蘇芳は足元で倒れ伏したまま未だ形を残す妖魔忍者を爪先で蹴り、
「あんたの采配、引き際の悪さが全滅を招いた」
 笑いつつ、妖魔忍者の頭を潰す。
 ぎりと歯噛みし、しかし女僧兵……否、羅刹は再び軽薄に笑みを浮かべる。
 たかだか雑兵を倒した程度でいきがるかと言わんばかりに。
「残るは首魁のみか。例え同胞であろうとも、敵とあらば倒すのみ!」
 武器を妖刀に持ち替え、姫夜が立ち尽くす女羅刹を睨み据えた。
 じらと溢れ出る妖刀の怨念をその身にまとい、常外の力を宿して。
「あとは頭を潰すだけ、宣言通り角をへし折る」
 そう言い放ち、ぐっと蘇芳の構えた拳に力が集まる。
 堅牢なるその力こそは、何ものも打ち砕く意志。
「『排撃の、パンツァーファウスト!!』」
 吼えて放つ拳は高速で重く、しっかりと目標定めていたが、薄笑みを浮かべた女僧兵にかわされその体躯を打ち抜くことはかなわなかった。
 舌打ちして次手に移行する彼女をカバーして、破魔の力を宿した姫夜の一閃が放たれるがこちらもかわされてしまう。
 攻撃とはこうするものだと揶揄するかに連珠を鳴らして雷を喚び起こし、猟兵たちへと迸らせる。
 猟兵たちは四方を撃つ雷撃に避けきれずダメージを受けてしまうが、戦意が削がれるほどではない。
 敵味方双方の行動を確かめながら姫夜は大振りの一撃を放ち、隙だらけと嗤う女僧兵の間合いを狙って蘇芳が拳打を繰り出す。
 たんっと身を転がして攻撃を回避し、たからは怜なる表情で敵を見つめた。
「同じ羅刹でも、あなたとたからは違うようです」
 たとえ種族が同じとて、その根幹までも同じとは限らない。
 同じだとは信じたくない。
「人を傷つけるあなたは、悪です」
 であれば、どうする?
 羅刹の少女が向けるまっすぐな断罪に、女羅刹は嘲る笑みで問う。
 答えなど決まっている。
「たからがほろぼします」
 決意を告げるように胸に当てた掌をオブリビオンへと向けた。
 できるものならやってみろと言わんばかりの嘲笑を浮かべ、ず、っとなぎなたを掲げた女僧兵の周囲に人影が集まる。
 各々に槍だの鋤だのを手にしたあれこそは戦死して極楽に旅立った一揆衆の霊、過去に囚われたまやかしだ。
 女羅刹のあまりにも傲慢な振る舞いに、猟兵は抱いた感情をユーベルコードへ託した。
「『凍えなさい、ほろびなさい』」
 言葉を紡ぐ。天から降り注ぐ雪と霰の奔流は冷璃の檻となり敵を捕らえ、その身を襲う。
 範囲攻撃と衝撃波の技能を用いて多くを巻き込み、ダッシュで近づくと連珠を使いグラップルと鎧砕きを行使して粉砕する。
 奔流に飛び込んだ姫夜が渾身の力を込めて一息に凪ぎ払い、蘇芳もただ討つために拳を叩き込んだ。
「仏に仕える身であれば、あなたは正しく人々を導くべきです。それをやめてしまった瞬間あなたは信仰を捨てたのと同じ」
 ざざ……と奔流が名残の雪を散らせてとけてゆくなか、一揆衆の姿がはらはらと消え去る。
「極楽に旅立った人々を、操る権利などありません」
「おお、お前みたいなろくでもないのをそれでも信じた奴らを使い捨てにするくせに、偉そうな面してんじゃねえよ」
 険しい顔で告げるたからに次いで蘇芳が笑う。
 もはや余裕を見せず敵意をむき出しにする女僧兵へ、姫夜は妖刀を突きつけた。
「その聊爾許してなるものか。いざ、覚悟せよ!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

火狸・さつま
コノf03130と参加

「はよ倒して、玉…」


【POW】
立ち位置や戦況により臨機応変に対応
声を掛け合い連携をとり立ち向かう

『ちょいと遊ぼうか』
トンッと足踏み鳴らせば
足元より出でて飛び掛かる炎の仔狐
【燐火】にて【先制攻撃】狙う


敵からの攻撃は【見切り】にて避けるか【オーラ防御】にて防ぐ
受けたダメージは【激痛耐性】にて凌ぎ
燐火にてコノの援護しつつ自らも巨大斧で攻撃

窮地に陥り、味方共々危ない場合【捨て身の一撃】を繰り出す


コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と合わせてく

【WIZ】
残すのはお行儀悪いモンねぇ
綺麗に、喰らわなきゃネ

たぬちゃんの攻撃に合わせ、血を払った「柘榴」で斬り込む
『傷口をえぐる』よう狙い突き立てるのはいわば陽動
『2回攻撃』で『だまし討ち』、【月焔】の炎を全弾集中し死角より撃ち込む
勿論何度も使える手じゃねぇンで
仲間の攻撃に合わせ、退路塞ぐよう【月焔】の炎撃ち込んだり
隙を見たら柘榴で仕掛け『生命力吸収』を狙い
敵に援護と攻撃の動きを悟られにくくしたいトコ

敵の繰る幻影や霊は可能な限り躱し凌いで本体を狙うか
斬り込む仲間がいれば邪魔させぬ様炎で援護すんね

村人に攻撃がいきそうな時は『捨て身の一撃』で攻撃止め『かばう』ヨ



 倒される覚悟などするものか。
 ひとまずは距離を取るために下がろうとする女僧兵に、ふたりの猟兵が行く手を遮る。
 此奴らもあの猟兵どものように御託を煩く並べるか。
 苦い顔の彼女に向けられた言葉は。
「はよ倒して、玉……」
 まったく関心のないさつまの一言だった。
 せめて悪態のひとつもあるかと予想していただろうオブリビオンは今度こそ呆然とし、代わりにコノハがこらえきれずに笑い出した。
「残すのはお行儀悪いモンねぇ」
 くつくつ喉を鳴らす猟兵の言葉に、顔を朱に染めて激昂した女僧兵は、手にするなぎなたを構えて地を蹴った。
 おお、ひとりとて残してなるものか。忌々しい猟兵どもめ!
「綺麗に、喰らわなきゃネ」
 自身に目掛けた殺意を受け止めながら、飄としたなかに獣めいた剣呑さを含み、最前血に濡れた刃を払った柘榴を再び構える。
 果たして獲物はどちらで、狩るのはどちらか。
「『ちょいと遊ぼうか』」
 さつまがトンッと足踏み鳴らせば、足元より出でて飛び掛かる炎の仔狐。
 愛らしい仔狐の形を成した狐火はさながらじゃれつくようにまつわり、女羅刹を燃え染めた。
 狐火を振り払おうとするその隙をついて、コノハが傷口を抉るよう狙い突き立てるのはいわば陽動。身を翻して2回攻撃でだまし討ち、月焔の炎を全弾集中し死角より撃ち込む。
 2度も蒼炎に包まれ怪鳥の如き悲鳴が空気を震わせ、怒りに満ちた瞳が猟兵を睨みつけた。
 その目につくようひらとナイフをちらつかせ、再度の攻撃をにおわせる。
 優位になったつもりか。幾度も同じ手に掛かると思うな。
 ぎらりとその切っ先と挙動に意識を向けた女僧兵の耳と目に、
「勿論何度も使える手じゃねぇンで」
 軽口めいたコノハの声と、巨大斧を大きく旋回させ叩き斬ろうとするさつまの姿が入った。
 罠にかけられたと思ったその時月白の炎が退路を絶ち、挟み討ちの形でしたたか攻撃を受ける。
 残念でした、と短く聞こえた。
 無論女僧兵も猟兵たちの動きを予想して動くが、うまいことそれをはずしてくる。せめて一刃報いてやろうとうかがうものの、一撃入れたとて凌がれ猟兵に深い手傷を負わせるには至らない。
 致命傷というほどに体力を削れはしないが、猟兵たちはオブリビオンに対し確実にダメージを与えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

上里・あかり
一刀さん(f03105)と
あのヒトだって好きでオブリビオンになった訳じゃないと思います
きっと何かあったんだと。理由はわかりませんが。

敵のUCは厄介です。なのでこちらから積極的に攻撃して、【達人の智慧】を使って仏罰降臨を封じます
一刀さんの攻撃を気付かれないようにできるだけ注意を引きつけて戦います。
どういったいきさつで村を襲おうとしたのかは存じませんが、誰かを傷つけようとする事は許しません!

そういえばさっき放った刀はどこに落ちてるかな?
一刀さん、これで怒られないですみますね

アドリブ可能です


守谷・一刀
あかりん(f06738)と
いくら敵とはいえ、女を相手にするのはやだねえ……
ま、仕方ないか
あかりん、頼んだぞ

こっちの攻撃避けられると面倒だからあかりんに囮になってもらって隙をついて弓で攻撃だな
どうしようもない場合は俺も刀で斬り合うけど
本当はあかりん囮させたくはないんだがな
俺もできるだけ敵の動きを注視して不意打ちに横槍したりピンチを教えてやりたいね

で、あかりんの攻撃でUC封じに成功したら【一刀一矢】で一気にダメージ与える作戦な
あんまこの刀は使いたくないが……ま、仕方ないか
後でじいさんに怒られるな

アドリブ可


鎹・たから
攻撃は届いている
ならば最後まで戦いましょう

この身に幽鬼を宿します
どんな代償を払おうとも構いません
この痛みは力との引き換えなのです
極楽に旅立てない武者達の魂の力を
たからは正しい力としてお借りします

主に手裏剣とフォースセイバーで攻撃
【ダッシュ、暗殺、先制攻撃】で先手を取ります

隙を突きながら常に懐に飛び込む覚悟
【2回攻撃、気絶攻撃、鎧砕き】で確実にダメージを重ねましょう

猟兵同士の連携を重視し
味方が危機に陥れば【かばう、オーラ防御】で支え

あなたは極楽浄土に旅立てません
地獄の鬼に会う必要もありません
たから達が、跡形もなくほろぼすのですから


郁芽・瑞莉
信仰に厚く、未来の為に戦った方でしょうに。
今やオブビリオンとなり、見る影もありませんね…。
有為転変は世の習いと言いますが、過去の自分が人々を襲うなんて、
さぞ嘆いていることでしょう。
オブビリオン、祓い清めさせていただきます!

相手の攻撃を薙刀による【武器受け】や【オーラ防御】でいなしつつ。
味方の攻撃で怯んだところを狙って攻撃を仕掛けますよ!

森羅万象の力を引き出す合一霊符、刃の字を各色の霊符に浮かばせて、
女僧兵に【投擲】、それぞれの符から炎や水、風や氷、光や闇などの
属性を宿して、【破魔】の力を乗せた【属性攻撃】の刃の嵐。
「千符刃練」にて引導を渡します!

終ったらお約束通り、回収を手伝いへ参りましょう。



 おのれ。おのれ、おのれ……!!
 女羅刹は僧衣を血に染め、怨嗟を吐きながら猟兵を睨みつける。
 端正な顔を憎悪に歪めるオブリビオンの姿に、守谷・一刀(一矢をもって悪を断つ・f03105)はひとつ溜息をついた。
「いくら敵とはいえ、女を相手にするのはやだねえ……」
 彼の嘆息を聞いて上里・あかり(あかりを照らすもの・f06738)は首を振る。
「あのヒトだって好きでオブリビオンになった訳じゃないと思います」
 きっと何かあったんだと。理由はわかりませんが。
 真意を見定めるようにまっすぐに見つめるあかりに瑞莉が頷き、同じく敵を見据える。
「信仰に厚く、未来の為に戦った方でしょうに。今やオブビリオンとなり、見る影もありませんね……」
 何があったかなど確かめる手立てはなく、ただ目の前には『女僧兵』の姿をした羅刹があるのみ。
 その信仰が何だったのかも、何を求めて戦ったのかも、何もかもが今や無意味だ。
「有為転変は世の習いと言いますが、過去の自分が人々を襲うなんて、さぞ嘆いていることでしょう」
 ならば、猟兵たちの取るべき行動はひとつ。
 瑞莉の手元で霊符が閃く。
「オブビリオン、祓い清めさせていただきます!」
「攻撃は届いている。ならば最後まで戦いましょう」
 得物を構えるたからの身体に人ならぬ力が宿り、それと同時に色白の肌を裂いて血が染める。
 涙をこぼすように頬を伝う血を見て痛ましげな視線を向ける一刀に、たからは彼を顧みず口にした。
「どんな代償を払おうとも構いません」
 この痛みは力との引き換えなのです、と続ける少女は、細い身体に余るほどの力を宿してオブリビオンと対峙する。
「極楽に旅立てない武者達の魂の力を、たからは正しい力としてお借りします」
 血に濡れても凛とした表情を崩さない彼女の意志は強く固い。
「ま、仕方ないか」
 くしゃりと髪を掻き、一刀はすと目をすがめた。
「あかりん、頼んだぞ」
「はい!」
 短く応え、刀を手にあかりが地を蹴り女僧兵へと飛びかかる。
「どういったいきさつで村を襲おうとしたのかは存じませんが、誰かを傷つけようとする事は許しません!」
 裂帛の気合いと共に得物を振り抜く素早い一撃はかわされたが、立ち止まることなく次の攻撃へと移った。
 経験の浅い彼女の隙をカバーしてたからが敵の懐に飛び込むように攻め込み、敵からの攻撃は瑞莉がなぎなたで受け止める。
 既に浅からぬ傷を負っている女僧兵の攻撃の勢いは落ちていたが、それでも油断はならない。
(「本当はあかりんに囮させたくはないんだがな」)
 恐れることなく敵に立ち向かうあかりの姿に心のなかで詫び、一刀は弓構えに近い姿勢を取る。
 その手に持つ刀は凪ぎ斬るためでなく、弓につがえるその姿は、知らぬ者には奇妙に見えただろうか。
「あんまこの刀は使いたくないが……ま、仕方ないか」
 会。的である敵を一点に見据え、その時を見定める。
 きりと張りつめた緊張と共に弦を引き絞り、
「『この一矢、くらいやがれ!!』」
 放った一撃はしかし、命中すると思った瞬間に女羅刹の振るったなぎなたに弾かれた。
 舌打ちして反撃に備え一歩引いた一刀の脇からたからが飛び出し、フォースセイバーを素早く閃かせて斬りつける。
 敵が斬撃にたたらを踏み姿勢を崩したと見て、瑞莉がすっと鋭く霊符を散らせた。
「『符より引き出されし、神羅万象の力よ……。刃を為して、魔を穿ち祓い給え!』」
 散布した霊符から各々に属性を宿した刃がつむじ風のように放たれ、敵のまとう僧衣ごと斬り裂く。
 女僧兵は悲鳴をあげて悶え、なおも体勢を維持しようとするがかなわず膝をついた。
 なぎなたにすがるようにしてかろうじて倒れずにいる女僧兵へ、たからが言い捨てる。
「あなたは極楽浄土に旅立てません」
 その語調は鋭く、刃の如くに。
「地獄の鬼に会う必要もありません。たから達が、跡形もなくほろぼすのですから」
 言葉が終わるよりも早くあかりの滑らせた一閃がオブリビオンを叩き斬った。
 女の姿がざあっと消えていく様を一瞥してから、一刀は少女たちをねぎらう。
「お疲れさま」
「おつかれさまでした!」
 応えて、ふとあかりはあることに思い至る。
 そういえばさっき放った刀はどこに落ちてるかな?
 くるりと視線を巡らせて、無造作に横たわり陽射しを返してちらと光を放つ刀に目を留めた。
 あったあった。拾い上げて確かめてみても、傷や刃こぼれはないようだ。
「一刀さん、これで怒られないですみますね」
 どうぞと差し出すと一刀は受け取り、彼自身も刀の様子を確かめて、それから収める。
「あかりん、ありがとうな」
 気取らない礼に笑みで返す。
 と。恐る恐る顔を出してこちらを見ていた男に瑞莉が会釈した。
「すべて終わりましたのでご安心ください」
「あ、ああ……本当にありがとう。申し訳ない」
 男は猟兵たちの元へ出てくると、ぺっこりという擬音がぴったりなほどに頭を下げる。
 しかしその表情が冴えない理由を、猟兵たちは分かっている。
 たからが川を覗き込むと、川面に踊る陽射しの反射のその向こう、ちらちらと揺れるきらめきが見える。
「ええ。もちろんお手伝いいたします」
 微笑んで告げた瑞莉に、男は今度こそ安堵の表情を浮かべた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『水底の玉』

POW   :    川の中に入って水底のトンボ玉を素潜りで拾い集める。

SPD   :    釣り竿や網を使って船の上からトンボ玉を釣る。

WIZ   :    川の流れを読んでトンボ玉の流れ着きそうな河原を予測する。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 男が言うには。
「ひとつ残らずさらわんとならん。まあ、この川はさほど流れも早くはないし、そう深くもないんだが……なにぶん、ものが小さいからねえ」
 そうして親指と人差し指とで示したのは、おおよそ2センチほど。
 小さいというにはそれほど小さくもないが、かといって大きいというほどでもない。
「遠くまで流されたり、川の深くに落ち込んだりしてはおらんと思うから、拾うのにそう苦労はかからんだろうけども……」
 まあ、冷たかろうなあ。溜息をついて川のなかを見つめた。
「あんたらばかりに苦労させるのもなんだから、こっちもやるけどねえ。無理のないようにしておくれよ。水のなかで転んだりせんようにな」
 素朴ないたわりを口にして、ふうむ、と覚悟を決めて……川のなかに入るのをためらう。
 うむ、……ううん。ああ、……うーむ。うん。唸っても足は進まない。
 そうこうしているうちに、ふと男は猟兵たちに向き直った。
「ああ、うまいこと拾ってくれたら、ひとつやふたつくらいはあんたらにあげよう。全部だの半分だのは無理だが、助けてもらった礼もある。社には事情を話せば納得してもらえるだろう」
 ダメなら、まあ……追加でどうにかするさ。
 笑って言うからには、そこまで深刻ではないのだろう。
「さて、じゃあ、お願いするよ」
火狸・さつま
コノf03130と玉

さて、お待ちかねの
「玉、狩り…」
表情はさほども変わらずとも
わくわくしたおめめで
じっと川を見つめ
「任せろ」
こくり頷き
そっと手を浸ければ
「……冷た、い?」
おててをシュッシュッ!と玉早取りのジャブ練習
多分、無理

ともすれば……
狸っぽい色合いの狐姿へと変化
人語会話は出来んが
雪山もへっちゃらな冬毛、万能


【POW】
【見切り】にて玉の集まりを見定め
するっと潜り
玉を回収し戻る
それを繰り返す
大丈夫、冬毛水はじく
肉球や鼻部分は【オーラ防御】でも防ぎつつ【激痛耐性】にて凌ぐ

陸に上がり、思い切りぶるんぶるんして水飛ばせば何て事は無い
後で社。行く。と、頷き返答する


コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

あー職人さん?アンタは焚き火でも焚いて番してて
だって縁起モン運んだ人が風邪とかシャレになんないじゃナイ
まあ任せときなさいって

つか玉狩りじゃなくて玉拾いデショ
ツッコミつつもざぶざぶ水に入っ……って冷たっ!超さっむい!
たぬちゃん遊んでないで拾う!
ぎゃいぎゃい騒ぎながら
たぬちゃんに沢山落ちてるトコ教えてもらって
目の粗い布なんかで底から浚えよう
粗方拾ったら下流へ移動して細かく零れた物を探し
たぬちゃんに拾ってもらう

にしても可愛らしい、十二支揃えたくなっちゃうネ
頂けるというなら、ねぇたぬちゃん
体乾かしたら社に参りに行こうヨ
そこで頂いた方がご利益ありそうじゃナイ



 なかなか川に入る踏ん切りがつかない男に、コノハが声をかける。
「あー職人さん? アンタは焚き火でも焚いて番してて」
 そう言われても、しかしなああんたたちだけに苦労させるのは、となおもはっきりしない。
 任せっきりは申し訳ない。でも寒いし冷たい。悩んでしまうのは猟兵たちにも分かる。
「だって縁起モン運んだ人が風邪とかシャレになんないじゃナイ」
 まあ任せときなさいって。
 笑って言うと、それならばと安堵した様子で頷いていそいそと準備に入る男の背を見送った。
 さて、お待ちかねの。
「玉、狩り……」
 表情はさほども変わらずとも、わくわくしたおめめでじっと川を見つめるさつま。
「任せろ」
 こくり頷き、そっと手を浸ければ。
「……冷た、い?」
 刺すような冷たさに、ゆっくりと手を浸してなどいられず、ぱっと水の中から手を引いた。
 そうしてもう一度手を入れては手を引いて。
 おててをシュッシュッ! と玉早取りのジャブ練習。
 多分、無理。
「つか玉狩りじゃなくて玉拾いデショ」
 ツッコミつつもざぶざぶ水に入っ……
「って冷たっ! 超さっむい!」
 なにしろ真冬の川である。そりゃあ冷たいし寒いし悲鳴だってあげてしまう。
「たぬちゃん遊んでないで拾う!」
「……む」
 ともすれば……
 狸っぽい色合いの狐姿へと変化。
 人語会話は出来んが、雪山もへっちゃらな冬毛、万能。
 と、ちょっぴり自慢げ。
「じゃ、頑張ろうか」
 …………。
 ちょっと、ためらう。
 そうしているうちに、燃える臭いと煙が彼らのところへたゆたってきた。
 見やれば男が用意している焚き火が、少し気合い入れすぎなんじゃないかというくらいの勢いで燃え上がっている。
 近くに寄ればきっと温かいだろう。
 よし。
「たぬちゃん、頼むヨ」
 コノハの言葉にさつまは、主に寒さと冷たさを振り払うために気合いを入れた。
 水面の反射のその向こうをじっと見つめ、集まりを見定めコノハに伝えて自身もするっと潜り、玉を回収し戻る。
 するっと、とは言ってもいくらか水は跳ねるしその勢いで波打つし、それに時折吹く風がそおっと冷やしていく。
 ぎゃいぎゃい騒ぎながら、目の粗い布なんかで底から浚え、小石やなんかを取り除いてはていねいにしまう。
 大丈夫、冬毛水はじく。と主張するさつまは、それでもやっぱりどこか寒そうだ。
 それを繰り返し、粗方拾ったら下流へ移動して細かく零れた物を探し、さつまに拾ってもらう。
 もふもふ冬毛はびっしょり濡れてしまったけれども、陸に上がり、思い切りぶるんぶるんして水飛ばせば何て事は無い。
 すぐ近くで「うわ冷たっ!」とか聞こえたけど。
 コノハはトンボ玉を指でつまんで陽射しに透かし、ちらちらきらめきを覗き込む。
「にしても可愛らしい、十二支揃えたくなっちゃうネ」
 頂けるというなら、ねぇたぬちゃん。
「体乾かしたら社に参りに行こうヨ。そこで頂いた方がご利益ありそうじゃナイ」
 お誘いにさつまは、後で社。行く。と、頷き返答する。
 もしかしたら、新しい出会いもあるかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

諏佐・姫夜
【WIZ】

事が終われば手伝おう、と言ったことだしな。
荒事は終わったわけだ、言った通り快く手伝おう。

川の流れを観察し、トンボ玉が流れ着きそうな場所にあたりをつけて回っていく。
遠くまで流されたり、深くには落ちていないだろうということだが油断はできないからな、少し広めの範囲で探してみようか。
見つけたらひとつひとつ丁寧に手で拾っていく。
拾いこぼしがないように注意を払い、丹念に探して拾い集めていこう。

ふふっ、聞いていたとおりとても可愛らしいイノシシだな。
これを手にした子供たちの喜ぶ顔が目に浮かぶようだ。


鎹・たから
【POW】
お任せ下さい
たからは冷たいのは得意です

元の数がわかるなら教えてもらい
何個拾えたか都度確認

ジャケットを脱いで素潜りで集めます
転ばぬように注意深く
水中では目視をしっかりと
きらきら光る物をよく確認しますね

よく澄んだ透明度の高い冷たい水の中
魚は泳いでいるのでしょうか
真冬ですから居ないかもしれませんね

トンボ玉を拾ったら容器に入れて失くさぬよう
一定数集まる度に男性に渡します

頂けるならば、ひとつだけ
とても小さく美しいかがやき
大切にしますね

…くちゅん
少しくしゃみが出ました
やはり早く温まる方がいいかもしれません


郁芽・瑞莉
人に仇なす者達は無事に祓いましたし、今度は人助けですね!

清浄なる冷たい水で清められた頃合い。
冷たさが身に沁みるでしょうが、
水の中に入って一つずつ引き上げましょう。
これでも泳ぐのは好きですし、【失せ物探し】は得意なんですよ。

冷たい水には眉を一瞬顰めるも、真剣な表情に。
川の水に肌がだんだんと赤くなりながらも元気よく動き回ります。
「流石にこの時期の冷水は堪えます……。心頭滅却の為にも回収に集中しましょう!」

皆さんの動きを阻害しないように努めつつ、協力して回収に努めます。
回収後はお一つ分けて頂き、腰帯に付けてみます。
「ありがとうございます!こうやって帯に付けると縁起と女子力高い感じがするでしょうか?」


花剣・耀子
あら。お困りなの?
縁起物を沈めては、験が悪いわね。
通りすがりも何かのご縁だわ。あたしで良ければ手伝いましょう。

深くないなら潜らなくても大丈夫かしら。
玉網を用意して、足を浸けて入りましょう。
川面をよく見ながら移動しつつ、光るものがあったら底を浚って拾いましょう。
足裏にそれらしい感触があったら拾い上げるのも忘れずに。

……うん。まあ。でも。寒いわ。
寒いわね……知ってた……。
ぼやいても始まらないので、ちゃっちゃかやるわね。頑張る。

たくさん拾えたら、ひとつだけ頂いて良いかしら。
あたしは仕事を手伝った訳でもないし、欠けてしまって奉納に向かない物があれば、で。
何も無くても、徳を積むのは悪い気分ではないのよ。


真木・蘇芳
あぁ、寒そうだなぁ
寒いのは嫌だし玉よりこの荷車を直すのが先じゃあないか?
荷車とか簡単に急に倒れるものでもないだろ?
橋が悪いか、荷車が悪いかしてるんだろ?
大事なら日常点検しておこうぜ

※行動はおまかせしますアドリブ大歓迎、あまり玉を拾いに参加したがらないです。



 水底を眺めれば、落とした主をからかうようにまだまだトンボ玉がちらちらと光っている。
 それを見やり、瑞莉はぐっと拳を握って気合いを入れた。
「人に仇なす者達は無事に祓いましたし、今度は人助けですね!」
 清浄なる冷たい水で清められた頃合い。
 冷たさが身に沁みるでしょうが、水の中に入って一つずつ引き上げましょう。
 そう告げた彼女に、男はううむと唸った。
 あまり無理はしないようにと案じる彼に、大丈夫と頷いて見せた。
「これでも泳ぐのは好きですし、失せ物探しは得意なんですよ」
 安心させるように笑って、川の中へと入っていく。
 冷たい水には眉を一瞬顰めるも、真剣な表情に。
 川の水に肌がだんだんと赤くなりながらも元気よく動き回り、丁寧に拾い集めていく。
 けれども、次第にやる気よりも冷たさが堪えて動きが鈍くなってきた。
「流石にこの時期の冷水は堪えます……。心頭滅却の為にも回収に集中しましょう!」
 気合いを入れ直し、いっそう真剣にトンボ玉を見つめ探す。
 他の猟兵たちの動きを阻害しないように努めつつ、それでいて取りこぼしがあれば声をかけ、協力して回収していって。
「いやあ、助かるよ。もしよければ持っていくかい?」
「よろしいのですか?」
 ぱちぱちとまばたきして問うと、まあこれくらいなら後で足せばいいと笑った。
 それではお一つ頂きます、と選んだトンボ玉を腰帯に付けてみる。
「ありがとうございます! こうやって帯に付けると縁起と女子力高い感じがするでしょうか?」
 嬉しそうに問うた彼女の腰で、ちかと揺れる光。
 それは、彼女の笑顔に似て清廉だった。

 いやしかしやはり冷たかろうになあと溜息をつく男に、姫夜が首を振る。
「事が終われば手伝おう、と言ったことだしな」
 荒事は終わったわけだ、言った通り快く手伝おう。
 猟兵たちはオブリビオンを倒せばそれで終わりだが、トンボ玉を拾い集めなければこの男の苦難は終わらないのだ。
 申し訳ないと頭を下げる男に問題ないと告げて、さぷさぷと川に分け入れば、その冷たさでむしろ意識が清明とする。
 川の流れを観察し、トンボ玉が流れ着きそうな場所にあたりをつけて回っていく。
(「遠くまで流されたり、深くには落ちていないだろうということだが油断はできないからな、少し広めの範囲で探してみようか」)
 思案し注意して探してみれば、なるほど確かに厄介な場所にはないがうっかり見落とすような場所にも落ちている。
 他の猟兵たちも充分に注意しているが、それにも限度はあるだろう。
 見つけたらひとつひとつ丁寧に手で拾っていく。
 拾いこぼしがないように注意を払い、丹念に探して拾い集めていくと、すぐにトンボ玉がいっぱいになった。
 集まったトンボ玉をいくつかころり、ころろと手のひらの上で転がし、凛とした表情を浮かべる顔がふわとやわらいだ。
「ふふっ、聞いていたとおりとても可愛らしいイノシシだな」
 これを手にした子供たちの喜ぶ顔が目に浮かぶようだ。
 口にして、その姿を思い描く。
 それはとても、優しい様子で。

 頼んだこととはいえ申し訳ないなあ。深く溜息をつく男にたからがとんと胸を叩く。
「お任せ下さい、たからは冷たいのは得意です」
 元の数がわかるなら、と訊くとそれなら数はいくつだと教えてもらい、それではとジャケットを脱いで川に入ると素潜りで探し集める。
 転ばぬように注意深く。水中では目視をしっかりと。
 きらきら光る物をよく確認すると、沈み落ちているトンボ玉だけでなく、時折水面と水底との間をちらり何かが光った。
 よく澄んだ透明度の高い冷たい水の中、魚は泳いでいるのでしょうかと視線を巡らせる。
(「真冬ですから居ないかもしれませんね」)
 思った矢先、たからの視界をさっと横切った。
 冬は魚をあまり見ないが、まったくいないわけではない。川の深いところにもぐったり、水の留まる場所に集まったりしているのだ。
 魚たちを驚かせないようにも注意して、トンボ玉を拾ったら容器に入れて失くさぬよう。
 一定数集まる度に男に渡し、何個拾えたか都度確認すると。
 冷たいなか頑張ってくれているからと、持っていかないかと差し出された。
 たからはきらきら光るトンボ玉をじっと見つめて、
「頂けるならば、ひとつだけ」
 ひとつ選んでつまみあげた、とても小さく美しいかがやき。
「大切にしますね」
 そっと握り礼を言った次の瞬間。
「……くちゅん」
 不意に出た小さな声。
 大丈夫か風邪を引いてないかと慌てる男へ、少しくしゃみが出ましたと応える。
「やはり早く温まる方がいいかもしれません」
 ふるりと濡れた身体を震わせて告げる彼女に苦笑して、さあ早く焚き火へあたるようにと促した。

 ぱっしゃんぱっしゃんと水を跳ねながらトンボ玉を探し拾う猟兵たちを眺める。
 あぁ、寒そうだなぁ。
 蘇芳の溜息に、男もこっくり頷いた。
 荷車を倒してトンボ玉を散らばせてしまったのは自分のせいなのに。本当に申し訳ない。
 この男は生来小心なのだろう。自分が大変な目に遭うのも嫌だが、自分のせいで誰かが大変な目に遭うのも嫌なのだ。
「寒いのは嫌だし玉よりこの荷車を直すのが先じゃあないか?」
 不意の言葉に、男がへっと間の抜けた声をこぼした。
「荷車とか簡単に急に倒れるものでもないだろ?」
「あ、ああ……確かにしばらく不具合はなかったと油断していたな」
 さりとて常日頃から気にかけるほど繊細なものでもないから、本当に油断していた。
 荷車に不具合があれば男だけの問題ですむ。しかし、橋のほうに不都合があれば男だけの問題ではすまない。
 なんとなれば行き交う場所がひとつ使えなくなってしまうのだ。
 ほらな、と呆れたように言ってみせ、蘇芳がくいと荷車と橋を指で示した。
「橋が悪いか、荷車が悪いかしてるんだろ? 大事なら日常点検しておこうぜ」
「とはいえ、ろくに道具があるわけでないからなあ。軽く様子を見るくらいしかできんが……」
 蘇芳がトンボ玉を拾うのに渋っていると気付かず、彼女の言うなりに男は従う。
 確かめるのは大切だ。確かに。

 うんうん唸る男に、花剣・耀子(Tempest・f12822)が声をかけた。
「あら。お困りなの?」
 問われて男はこれこれこういうことでねえ、とことのあらましを説明する。
 縁起物を沈めては、験が悪いわね。
「通りすがりも何かのご縁だわ。あたしで良ければ手伝いましょう」
「いやあ……申し訳ない。本当に申し訳ない」
 男は全自動申し訳ない機になりつつあった。
 そんなに気にしないでくれとなだめて、さて、と川を見つめた。
 深くないなら潜らなくても大丈夫かしら。
 玉網を用意して、足を浸けて入ると、冷たい感触がしんと伝わってきた。
 川面をよく見ながら移動しつつ、光るものがあったら底を浚って拾ってみる。
 足裏にそれらしい感触があったら拾い上げるのも忘れずに。
「……うん。まあ。でも。寒いわ」
 寒いわね……知ってた……。
 ちょっと途方に暮れそうなくらい寒い。
 かといって、このままじっとしていても冷たいし、時折吹く風は強くないけれどもやっぱり冷たい。
 大丈夫かと心配する男に手を振って応え、ふう、と息を吐いた。
「ぼやいても始まらないので、ちゃっちゃかやるわね。頑張る」
 ぐ。と気合いを入れる。
 そうして猟兵たちが探し集めたトンボ玉を数えて、そこから彼女たちに渡した分を差し引いて、それでちょうどぴったりだと安堵する男に、耀子がふと問うた。
「ひとつだけ頂いて良いかしら」
 言ってから、ああ、と続けた。
「あたしは仕事を手伝った訳でもないし、欠けてしまって奉納に向かない物があれば、で」
 何も無くても、徳を積むのは悪い気分ではないのよ。
 そう断ると、男はとんでもないとぶんぶん首を振って、好きなものを選んでくれと集まったトンボ玉を差し出した。
「妙なのを退治てくれたのも、寒くて冷たいなかトンボ玉を拾ってくれたのも、それから荷車やらの様子を見てくれたのもえらい助かったよ。本当に感謝だ」
 言うなりぺこぺこと頭を下げる。
 大仰な仕草は、とにかくそれ以上の言葉も行動も出てこないからだろう。
 この男の心からの礼なのだ。
「おかげで全部集まった。うん。ありがたい。自分にゃトンボ玉をやれるくらいしか礼ができんが、本当にありがとう」
 こっくり頷いて、ああ、まあ、と頭をかく。
「……まあ、社に届ける分は少しばかり足りないが、話せば分かってくれるさな。数を揃えるよりも、礼儀を通すほうが神さまもよっぽど喜んでくれる」
 言って、もう一度頭を下げた。

 これはそれから少し後の話であるが。
 その社で今年配られたトンボ玉は猟兵たちが『命を賭して』集めたと知られ、例年よりも大人気で……男はもう一度トンボ玉を社に届けることとなった。
 今度こそは、手入れされた荷車を倒すこともなく、もちろん、安全が確認された橋からトンボ玉をすべて落としてしまうこともなく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年01月30日


挿絵イラスト