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アースクライシス2019⑰〜戦女神の闘争舞踏

#ヒーローズアース #戦争 #アースクライシス2019 #戦神アシュラ #神の空間

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「『戦神』、か……」
 グリモアベースの片隅で、目前に見えた光景に、無意識に自らの右腰に差した『月下美人』の柄に手で触れる様にした北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)が息を吐く。
 気がつけば、何人かの猟兵達が優希斗の周りに集まっていた。
「さて皆……ヒーローズアース2019が佳境に入ってきているのはある程度知っているだろう、と俺は思う。そこで皆には、少しでも確実に、ジェネシス・エイトを一体でも減らして貰う為に、一人の敵を強襲して欲しい」
 その敵の名は、『戦神アシュラ』
 既にかなりの数が予知されており、かなり逼迫した状況に陥っている『ジェネシス・エイト』の一人。
「戦神アシュラは、阿修羅城、と言う城を支配している。此処は、パンゲア大空洞で発見された石板を解析する事でしか到達できない、神の空間の一つであり……同時に、戦神阿修羅の手で、惨殺された人間の死体で埋め尽くされた、『修羅』とも呼ぶべき血なまぐさい空間だ」
 その数多の犠牲者達の屍の上に、戦神阿修羅は佇んでいる。
 ――新たな犠牲者となるであろう、猟兵達を待ち受けながら。
「この戦神アシュラが所望しているのは、皆との血の舞踏。そして、その先にある勝利と新たなる死体。こんな敵を見過ごすわけには行かない」
 ――だから、戦神アシュラと舞踏を行ない、これに勝利して欲しい。
 小さく囁かれた優希斗の呟き。
 その瞳の奥には、微かな怒りの火がちらついていたが……程なくして彼はけれども、と息を一つ吐いた。
「戦神アシュラもまた、ジェネシス・エイト。当然、皆よりも先にユーベルコードによる攻撃を仕掛けてくるのは間違いない。だから……皆には、戦神アシュラの初撃に対策を施し、その上で攻撃を仕掛けて欲しい」
 そこまで告げたところで、小さく息を吐く優希斗。
「……戦神アシュラは大分追い詰められている筈だ。今の皆が全力を出せば、必ず打ち倒すことが出来るだろう。……どうか皆、宜しく頼む」
 優希斗の言葉に背を押され。
 光に包まれた猟兵達が……グリモアベースを後にした。


長野聖夜
 ――其は、戦女神との死の踊り。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 と言う訳で、ジェネシス・エイト、『戦神アシュラ』との戦いをお送り致します。
 尚、この戦いは下記戦場で行なわれます。
 戦場:阿修羅城。
 残虐な手段でアシュラレディによって殺戮された人々の死体に地面を埋め尽くされた、おぞましい修羅の城です。この戦場の一角に、このアシュラレディが佇んでおります。
 また、今回の戦いの難易度はやや難、且つ下記ルールが適用されます。
=============================
 プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
  *戦神アシュラは必ず先制攻撃を行ないます。
  *この先制攻撃をいかに防御して反撃するかの作戦が重要となります。
=============================
 尚、上記対策がない場合、判定は『苦戦』以下しか出ませんので、平にご容赦を。
 今回のプレイング受付期間及び、リプレイ執筆期間は下記の通りです。
 プレイング受付期間:公開直後~🔵or🔴規定値達成まで。
 リプレイ執筆器官:11月29日(金)夜~11月30日(土)一杯迄。
 基本的には1VS1を想定しておりますが、今回は、連携も受け付けます。
 もし、連携描写が欲しい方がおりましたら、最初に連携可と、お書き下さい。
 尚、連携描写ありの方の返却は、11月30日(土)中になる予定です。

 ――それでは、良き殺戮舞踏を。
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第1章 ボス戦 『戦神アシュラ』

POW   :    戦女神光臨
【悪の『戦女神』としての神性】に覚醒して【戦いのためだけに造られた武器への無敵状態】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    阿修羅三眼装
【額の第三の眼を開く】事で【目にした者の戦闘行動を封じる『終戦神』】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    阿修羅破界撃
対象の攻撃を軽減する【神気を纏った『戦勝神』】に変身しつつ、【六刀本来の姿たる全てを断つ『破壊神』の刃】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘NG
過度なグロ描写NG
WIZ

物凄い殺気ね……
人間を憎み、オブリビオンを愛する私でも寒気を感じるわ

相手の先制攻撃、破壊神の刃を【見切り・残像】で避け
【早業】による刹那の【2回攻撃】で反撃よ

貴女の憎悪、私の愛で癒してあげる!

愛など要らぬと言われた挙句
二本の腕で防御され、残る四本の腕で反撃されるだろうけど
光の【属性攻撃】で目をくらませ
夜魔の翼の【空中戦】で後ろに飛んで回避

愛を拒絶された事で『歪愛・救済の華』発動。
61体の女性が無数の触手を放ち
目がくらんだままのアシュラの全身を拘束し
動きを封じると共に、変身・強化を解除

これでもう攻撃を軽減されないわ。
彼女の憎悪を飲み干すように【生命力吸収】のキスを




 ――ヂリ、ヂリリ……。
(「物凄い殺気、ね……」)
 全身を弄っていく様な凍てつく様な殺気がヒシヒシ、とのし掛かる重圧に寒気を感じたドゥルール・ブラッドティアーズが、息を潜めて呟きを一つ。
 ドゥルールが感じ取ったそれを発していたのは、死臭放つ人々の死体の山の頂に立ち、正しく殺気そのものを刃と化してドゥルールを見下ろす、六本の腕を持つ女。
 ――戦神、アシュラ。
「来たね、猟兵! このムカツク……けれども決して油断の出来ない新種の侵略生命体!」
 その凍える様な殺気に根付くのは、深き憎悪。
 その憎悪を真正面から受け止めながら、何処か妖艶さを感じさせる仕草を示しながらで、甘い蠱惑的な言の葉を紡ぐドゥルール。
「それがあなた……戦神アシュラの持つ深き憎悪なのね。理解出来るわ、貴女の憎悪は。人間や、猟兵へと、向けるその憎しみは」
 あいつらは、私の存在を否定した。
 私の存在を否定した人間達を……私は、決して許しはしない。
「忌々しい新種の侵略生命体が、知った様な口を利くな!」
 叫びながら自らの全身を、弱き者が目前に立てば畏怖してしまいそうな程に神々しい輝きに包み込む戦神。
 その神々しさに目を奪われ、思わずほぅ、とドゥルールが息を一つ吐く。
 ――嗚呼、何と美しく、愛しい『生』ある者達への憎しみであろうか。
 その憎しみこそ、自らの永遠の友とするに相応しい。
 ……だから。
 ドゥルールの愛欲に触れ、不意に現れた謎のハートを背負いながら。
「貴女の憎悪、私の愛で癒してあげる!」
  艶やかな声音と共に、ドゥルールがそう断言した。


「はぁっ!? アタシを愛する?! 巫山戯たこと抜かしてんじゃないよ!」
 ドゥルールの愛を鼻で嘲笑い。
 金色、と称すべき神気をその身に纏いながら、戦神アシュラが数多の死体の山を駆け抜け、瑞々しい肢体を風に靡かせ肉薄してくる。
 六本の刃の全てを黄金色に、輝かせて。
 森羅万象全てを断ち切る『破壊神』の刃を、六本の腕で振るうその姿は、正しく戦神であり、破壊神である存在そのもの。
 それらの六本の刃の軌道をドゥルールは見切り、素早く大地を蹴り、自らの残像を持ってそれらの攻撃を躱そうとするが……。
「その程度の速さでアタシの刃を見切ろうなんて、甘いんだよ!」
「なにっ……?!」
 生まれ落ちた残像を、軽々と中の両腕に持つ二刀で斬り捨て、その攻撃を避けきろうとするドゥルールに肉薄し、更に下段の二刀を撥ね上げる戦神アシュラ。
 放たれた2にして、1なる刀による不意打ちが、容赦なくドゥルールの不死鳥の衣を斬り裂こうとした、その刹那に。
「この……!」
 すかさず懐に隠し持っていた短剣を振り上げるドゥルール。
 悲鳴の様な風切り音と共に振るわれた諸刃の刃が、戦神アシュラを貫かんことを欲するが。
 ――キーンッ!
 上部の二刀の内一刀で、戦神アシュラはその刃を受けきり、左手の刀を切り返す様に振るいながら、大地の死体を蹴り上げた。
「……っ!?」
 思わぬ挙動に咄嗟にバックステップを行ない、死体と上段から振り下ろされた刃を躱すが、その時には先程薙ぎ払う様に振るわれていた残りの四刀が、ドゥルールの体を斬り刻んでいた。
 ――血飛沫が宙を舞い、ドゥルールの口から、苦悶の呻きが零れ落ちる。
 僅かな時間差で放たれた六刀の刃が、黄金の光と共にドゥルールを斬り裂き、強かな斬撃を与えていたのだ。
「くっ……!」
「それだけの攻撃でアタシを出し抜こうなんて甘いんだよ!」
 憎悪の力を刃に落とし込んだ戦神アシュラがそのまま全てを斬り刻む無数の斬撃を、ドゥルールに振るう。
 返す刃で悲嘆の剣から、呪詛を籠めた衝撃波を解き放つが……それだけでは、神気を纏った『戦勝神』たる戦神アシュラの防御を突き崩す事は出来ない。
「アンタの愛なんてアタシには要らない! アタシに必要なのは、この刃で微塵と化す、アンタ達の新鮮な遺体だ!」
 ――戦神アシュラは、ドゥルールを『拒絶』した。
「ならば……」
 その手から閃光を迸らせ、一瞬戦神アシュラを怯ませて、夜魔の翼を蝙蝠の翼へと変え、空中に飛翔するドゥルール。
 その手から放った光から、61体の女性達を召喚して。
『貴方に救いを』
『さあ、楽園へ参りましょう』
 扇情的なデザインの衣服に身を包んだ女性達の衣服の下から伸びでる無数の触手。
 変身や強化を解除し、快楽に溺れさせる触手達の群れは……しかし、戦神アシュラの振るった六刀の刃による衝撃波に叩き落とされ、ドゥルールを斬り刻んでいく。
 痛みに喘いで地に落下するドゥルールを見つめながら、戦神アシュラが凍える様な殺気を放ったまま、斬り捨てる様に告げた。
「拒絶だけでアタシを倒せると思われるとは、アタシも舐められたもんだね!」
 ヒュッ、と六本の刃に付着したドゥルールの血液を払い落とした戦神アシュラの様子を見ながら、悔しげに歯軋りを一つしたドゥルールの意識が闇に落ちていく。
(「もっと、初撃への防御に重点を置いた戦い方をすれば、良かったわね……」)

 ――そう、思いながら。
 

苦戦 🔵​🔴​🔴​

九条・救助
戦神だろうとなんだろうと、ここで止める!トドメを刺すッ!
俺は『ウェンカムイ』!悪神の血族!

戦勝神形態か……攻撃を軽減する、っていうのなら!
氷矢で牽制しつつ間合いを取り、攻撃を警戒。隙を見出し氷の【属性攻撃】を仕掛ける
ダメージは通らなくたって……凍りつけば、動きは鈍る
【神格共鳴】で自己を強化し、近接戦闘だ。氷属性は継続し、敵の動きを阻害することを念頭に置き、相手の優位性を引きずり落とす!

だが一筋縄ではいくまい。敵の猛攻の中、俺も無傷ではいられない
……だから不意を打つ
武器を失い無手になったと思わせ、勝利を確信した敵の油断に不意を打つ
血を凍らせて生成する叛逆剣で反撃だ
この血が、お前に応報する!




「くっ、援護が間に合わなかったか!」
 先行した猟兵が人々の死体の山に埋もれて光に包まれ、グリモアベースへと転送される姿に微かに悔しげに九条・救助が唇を噛み締める。
 救助はあの猟兵の安全を心中で祈りながら、きっ、と溌剌さを宿した鋭い眼差しで目前の敵、戦神アシュラを睨付けた。
(「これだけの沢山の人を殺して、その上オレ達の仲間に深手を負わせた……!」)
 ――許せない。絶対に此処で倒してやる!
 義憤から燃える闘志を胸に秘め、何処か氷の冷たさを思わせる眼差しで、戦神アシュラを見つめる救助。
「次はアンタか! その目、中々楽しませて貰えそうだねぇ!」
「戦神だろうと何だろうと、関係ねぇ! 俺はアンタを止める! 此処で止めを刺してやるっ!」
「はっ! 威勢が良いねぇ、気に入ったよ! それじゃぁ、アタシの怒りを何もかもぶちまけた、楽しい楽しい殺戮舞踏を始めようじゃないか!」
 ペロリ、と舌舐めずりを一つしながら。
【神気を纏った『戦勝神』】形態の儘に、戦神アシュラが救助に向かって突貫した。


(「! 戦勝神形態が、攻撃を軽減するって言うのなら……!」)
 心は熱く、けれども思考は冷静に。
 そう自分に言い聞かせながら、救助は突貫してくる『戦勝神』形態の戦神アシュラに鋭く槍めいた氷の杖、クトネシリカを突きつける。
 その先端に集結させるは、大気中の水分から生成した氷の矢、レタルアイ。
「……凍り付けっ!」
「その程度で!」
 叫びと共に後退しながら弾幕の様にレタルアイを解き放つ救助の攻撃を、戦神アシュラが上段の二本の刀で叩き落としていく。
 だが、叩き落とす度に刃に氷が少しずつ張り付いていく様が目に見えて分かった。
「このっ……!」
 全てを断ち切る『破壊神』の刃ではあるが、物質は物質。
 故にそれらの氷が纏わり付き僅かに重くなるのを煩わしく感じたか、死体達の上で刀を擦過させ、摩擦熱で纏わり付いた氷を叩き割り、死体をも斬り裂く衝撃波を解き放とうとする戦神アシュラ。
 ――だがそこに、僅かだが隙が生まれた。
 そしてその隙を、救助は決して見逃さない。
「凍れっ!」
 叫びと共に、救助は戦神アシュラの足下を凍てつかせる氷結魔法を解き放った。
(「ダメージは通らなくたって……凍りつけば、動きは鈍る……!」)
 ――ビキビキビキッ……!
 戦神アシュラの足下の死体の山が凍てつき、彼女の動きを、ほんの一瞬だがせき止めた。
 その間隙を、拭う様に。
「俺は『ウェンカムイ』! 悪神の血族! 行くぜ……カムイライズ!」
 救助が突進しながら自らの裡に宿したウェンカムイ……『悪神』の神格と共鳴し、自然界に無数に存在するとされる『悪神』の一柱たる凍神形態へ自らを変じさせた。
 同時に、まるで鎖から解き放たれた魔狼の息吹の如き、絶対零度の暴風を背面に展開し、飛翔して一気に加速する。
「そのまま凍てついていろよ、お前はっ!」
 叫びながらクトネシリカの先端から氷の魔術を放出し続け、戦神アシュラの自由を許さず接近、至近からクトネシリカを戦神アシュラに向けて突き出した。
「ちっ! この程度でアタシは倒せやしないよ!」
 軽く舌打ちを一つしながら、応じる様に六刀を振るう戦神アシュラ。
 全てを断ち切る『破壊神』の一太刀を紙一重で躱す救助だったが、斬撃の余波が容赦なく凍神と化した自らの体を斬り刻み、それが確かな傷痕と化す。
「こんなんで、オレがやられるかよっ!」
 六刀による斬撃に、クトネシリカを撥ね上げる様に振るって応じる救助。
 穂先が戦神アシュラの体を掠め、その体に小さな傷を一つ作った。
「よくもアタシの体に傷痕を! とっとと逝っちまいな、『猟兵』!」
 容赦の無い罵声と共に、中二本の腕に持った刀を振るう戦神アシュラ。
 凍神と、戦神。
 共に『神』の称号を抱く存在の戦いは熾烈を極め、互いに互いを斬り刻み、薙ぎ払い、貫いていく。
 それはさながら、『死の舞踏』
 激しい御技の応酬だったが、その戦いの中で優勢を保ち始めたのは……。
(「くっ……やはり、一筋縄ではいかないかっ!」)
 ――戦神アシュラ。
 凍てつく冷気飛び交う戦場の中で行なわれる激しい槍と剣による殺戮舞踏は、やはり実力的に勝っている戦神アシュラに軍配を上げている。
 救助の体の彼方此方に刻み込まれた刺し傷、切り傷による痛みの中で、戦神アシュラの致命傷となる一撃を与える術を考え続けていた救助の目が鋭く細められた。
(「こいつに一撃を与えるためには、やはり不意を突くしかない……!」)
 ――と、その時。
 クトネシリカを持つ手が、戦いの中で震えだしたのに気がつく救助。
(「となると、恐らく……」)
 次の一撃で、全てが決まる。
「貰ったよ!」
 叫びと共に下段から刀を撥ね上げて救助の腕の腱を断ち、その武器を取り落とさせようとする戦神アシュラ。
 救助がその一太刀を受けて、クトネシリカを取り落とした。
 ――ボタ、ボタ。
 片腕の腱を斬り裂かれ、そこから滴り落ちる血液が、地面の死体を叩く鈍い音が辺り一帯に広がっていく。
「ぐっ……!」
「そこだ!」
 勝利を確信し、大上段から六刀を振り下ろす戦神アシュラ。
 その瞬間を、救助は見逃さない。
 ――抗え。
 ――応報せよ。
 救助は、致命傷となりうる戦神アシュラの一撃を目の辺りにした自らの血液のその叫びを、大地に滴り落ちるその音から、確かに耳にする。
 ――故に。
「この血が……お前に応報するっ!」
 かっ、と両目を見開き零れ落ちた血を凍結させ一本の赤き剣を作り出し、その刃を、まだ動く左手で握りしめて下段から振り上げた。
 ――その一撃は、戦神アシュラの臍から、右肩迄を、確かに鋭く斬り裂いている。
 だが……戦神アシュラの一撃もまた、救助の全身をざっくりと斬り裂いていた。
「……相討ち覚悟だったか!」
 怒りとも賞賛とも取れる舌打ちをする戦神アシュラの呟きに全身から血飛沫を上げる救助が軽く頭を振る。
「それでも、届かなかった、がな……」
 ――けれども。
 手応えのある確かな一撃を与えることは出来ただろう、と救助には思えた。

 ――その満足に、胸を浸して。
 救助は最後の力を振り絞って、絶対零度の暴風を戦神アシュラに向けて叩き付ける様にしたその反動を利用して。

 素早く、戦場から離脱した。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ウィリアム・バークリー
さすがにジェネシス・エイトはしぶとい。ぼくでも少しでも戦局を動かす一助になれば。
……酷い場所ですね、これは。主の性根も知れるというもの。

初めまして、殺戮の女神。ウィリアム・バークリーと申します。あなたには骸の海にお帰り願うため罷り越しました。
では、参ります。

「礼儀作法」で礼を尽くすことで時間を稼ぎ、指先で小さく魔法陣を生成。
術式にする以前の精霊力をありのまま、「全力魔法」「属性攻撃」で叩き付けます。
それで先制攻撃を凌げたら、Active Ice Wallで盾を作り、アシュラ神の斬撃を受け止めながらIcicle Edgeで氷槍を雨と降らせます。

あなたにはこれ以上誰も殺させません。過去は骸の海へ。




 ――死臭の漂う、その場所を訪れて。
 思わず苦々しい表情を浮かべたウィリアム・バークリーが、独白の様に呟いた。
「……酷い場所ですね、これは。主であるあなたの性根も知れるというもの」
 穿たれ、大きく斬られた傷を持ち、それでも尚その場に立つ、戦神アシュラを咎める様な眼差しを向けながら。
「今度はアンタか!」
「初めまして、殺戮の女神。ウィリアム・バークリーと申します。あなたには、骸の海にお帰り願うため、罷り越しました」
「ふん! アンタがアタシに勝てるとでも思っているわけ!?」
 凍える様な殺気を纏い、戦勝神として六刀を構える戦神アシュラの問いにウィリアムが、軽く頭を横に振る。
「そうですね。例え、あなたを倒しきることが出来なくとも。あなたの力を少しでも削ぐことは、ぼくにも出来るかと存じ上げます」
「そうかい! だったら、やってみせな! 『猟兵』!」
 叫びと共に、戦神アシュラが縮地の要領で肉薄してくる。
 その様子を見つめながら。
 指先でチョイチョイ、と小さな魔法陣を、ウィリアムは描き出していた。
(「……挨拶の僅かな間に、精霊達の力を掻き集めることは出来ましたが……」)
 圧倒的な速さで肉薄してくる戦神アシュラに内心で軽く歯がみをしながら、掻き集めた精霊達の力を解き放つウィリアム。
「……Icicle Explosion!」
 そのまま掻き集めた氷の精霊達の精霊力の制御を放棄してただ、純粋な『力の爆発』として叩き付けた。
 先の猟兵の残した凍結の痕をも飲み込み、解き放った凄まじいまでの爆発は……。
「……その位の爆発で、アタシを止められると思うなよ!」
 ――勝利神としての神気によって大きく減殺され、戦神アシュラの勢いを削ぎ取り切れない。
 即座に次の術式を起動させるべく、周囲に青と紅葉色の魔法陣を展開したウィリアムは、不意に、ビクリ、と身を竦ませた。
(「体が……動かない……?!」)
 まるで、金縛りにあったかの様に身動きが取れなくなる。
(「……っ! これって……?!」)
 遅まきながら、ウィリアムは悟った。
 戦神アシュラの額にある第三の目が開かれ、ウィリアムを睥睨しているその事に。
(「Active Ice Wallの術式に気付かれ……?!」)
「アンタが複数のユーベルコードに頼るなら、アタシだってそれに対抗するさ!」
 勝利の笑みを浮かべた戦神アシュラにウィリアムが軽く舌打ちを一つし、顔色を変えながらも、咄嗟に叫んだ。
「『Icicle Edge!』」
 展開されていた魔法陣から飛び出した氷柱の槍が、残虐に戦神アシュラを貫かんと襲いかかるが、アシュラはそれらの殆どを六刀の内四刀で斬り捨て、その氷柱の槍による攻撃を掠り傷に留め、残された二刀の全てを断つ『破壊神』の刃を振り下ろす。
 振り下ろされた刃がウィリアムの体を容赦なく斬り裂き、声を上げるまもなくウィリアムの視界が暗闇に閉ざされていく。
「複数の力を使うつもりだったのなら、どちらにも対応できる手を考えておくべきだったな!」
 吐き捨てられたその言葉を耳に受け、悔しさにその身を浸しながら。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ可

戦神を名乗る者、か…
優希斗さんにはその二つ名に思うところがあるのだろう
…なら、僕が一太刀浴びせる

第三の眼に見られると戦闘行動が封じられるのか
なら、見られないように動いて背後から強襲か
あるいは…第三の眼自体を封じるか?

「視力、暗視、見切り」で第三の眼が開く瞬間を見極め
開く寸前に投擲用ナイフを眼に「投擲」だ
おそらく僅かな時間しか稼げないが、視界から逃れられれば十分

ナイフ投擲後即「早業、ダッシュ」で正面から逃れる
逃れたら【魂魄解放】を発動
「地形の利用、ダッシュ」+高速移動で円を描くように走って翻弄

背後を取れたら「早業、2回攻撃、怪力」+衝撃波で強襲だ!
血腥い戦神よ、ここで散れ!




(「戦神を名乗る者、か……」)
 次々に倒れ、止めを刺されるよりも前にグリモアベースに送還される猟兵達の姿を認めながら、館野・敬輔が内心で呟く。
 その脳裏に過ぎるは、この戦いを予知したグリモア猟兵優希斗と、その腰に差されている『月下美人』
(「確か……『戦神』と呼ばれたオブリビオンの呪詛を帯びた刀、だったか。そりゃこの二つ名には思う所があるだろうな……」)
 ――けれど、彼には戦神アシュラを斬る余裕がない。
 ……なれば。
「……僕が代わりに、お前に一太刀浴びせよう、『戦神』アシュラ」
「はっ! 良い度胸だね! 『猟兵』!」
 先程咄嗟に開いたのであろう、第三の目は既に閉ざされている。
 僥倖だ、と敬輔には思えた。
(「さて……僕に戦神アシュラの動きを見極められるか……?」)
 抜き放った黒剣を、両手で握って下段に構え。
 敬輔が、戦神アシュラの動きに対峙するべく、真剣な表情で睨み合った。


「さあ、行くよっ!」
 雄叫びを上げながらも、敬輔の立ち居振る舞いに、一気に攻める愚を悟ったか。
 下の二本の刀を大地の死体達に突き立て、そのまま怒りと憎悪による力を乗せた衝撃波を解き放ち、牽制してくる戦神アシュラ。
 その攻撃を青き結界で受け止めながら、敬輔が鋭く目を細めている。
(「第三の目に見られると、動きが封じられるのか。なら見られない様に、背後から強襲、か?」)
 ――否。
 敬輔の落ち着いた佇まいに、敢えて踏み込まず衝撃波を叩き付けてくる戦神アシュラから、その様な隙を見出すことは出来そうに無い。
 ――となれば。
(「答えは一つ、か」)
「中々やるみたいだね! ならば……これならどうだい、『猟兵』!」
 鱶の笑みを浮かべた戦神アシュラが、その額にある第三の目を開こうとした、その刹那。
「……そこっ!」
 その瞬間を戦神アシュラの表情、そして筋肉の動きから読み取った敬輔が、腰に差した投擲用ナイフを逆手に引き抜きそのまま投擲。
「! アタシの目の動きを読み取ったか!」
 咄嗟にその攻撃を躱すべく体を僅かに傾ける戦神アシュラ。
「皆……頼む!」
 本当に僅かに生まれた時間を利用して、黒剣の中の少女達に語りかけながら、戦神アシュラの視界から陽炎の様に姿を掻き消す敬輔。
 敬輔の黒剣の刀身は赤黒く光り輝き、更に白い靄達が敬輔の全身を覆って、敬輔に爆発的な速度を与える。
 ――お兄ちゃん。
 ――この速度でも、多分戦えるのは……。
「ああ……分かっている!」
 頷き返しながら周囲の死体や、氷の様な戦いの痕を利用して、円を描く様に戦神アシュラの周りを駆け抜ける敬輔。
 戦神アシュラは動かない。
 六刀を構え、高速移動する敬輔の動きを静かに見つめていた。
(「くっ……背後を取れずとも!」)
 内心で呟きながら敬輔が徐々にその包囲を縮めていき、斬撃の衝撃波を第三の目の死角から叩き込む。
「! そっちか!」
 白き靄を纏った斬撃による衝撃波を二刀で受け止め、凍り付き、微かに重くなった刃が欠ける音を耳にしながら、戦神アシュラが残る四刀の内、二刀で上下段から挟み込む様に斬り上げと斬り下ろしを同時に行なった。
 放たれた二閃に板金鎧事自らの身を斬り刻まれ、苦痛が体に駆け巡るのを、歯を食いしばって耐えながら、衝撃波を叩き出すべく撥ね上げた黒剣を大上段から振り下ろす。
「血腥い戦神よ、ここで散れ!」
 逆袈裟に振り下ろされた刃が、戦神アシュラの体の左肩から右脇腹にかけてを斬り裂いていく。
 それは……奇しくも先の戦いまでで他の猟兵が与えた傷と、真逆に刻み込まれた戦神アシュラの傷。
「ハァッ!」
 斬撃の痕から血糊を噴き出しながらも、残された最後の二刀を左右から薙ぎ払う様に振るう戦神アシュラ。
 放たれた二刀が、敬輔の右胸から左胸に掛けてを斬り裂くと同時に、大量の血飛沫が宙を舞った。
(「これ以上は、危険だな」)
 ともあれ、一太刀を浴びせる役割は果たしたのだから、これ以上は高望みだろう。
 そう判断し、黒剣を突き出して刺突の衝撃波を放って戦神アシュラを牽制し、手負いながらも敬輔はその場を撤退する。

 ――後を、他の猟兵達に託しながら。
 
 
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ナイ・デス
第三の眼にみられたら、戦闘行動を封じられる……
原理はよく、わかりませんが
みられなければいい、ということですね

【迷彩】纏って【闇に紛れて忍び足ダッシュ】姿を隠し、目にされず加速していき
【念動力】で自身の背を押し【吹き飛ばし】更に加速
【激痛耐性】限界超えて、身体壊れ始めながらも、速く!
進めば黒剣で【串刺し】そう構え
『瞬断撃』発動。もっと速く!
もうみられても、大丈夫

戦闘行動は封じられ、足はとまっても
加速した私の体は、急には止まれない
真っ直ぐに、減速することなく、アシュラさんへ突き進む
たいあたり!お腹がすいたので、目を閉じて
【生命力吸収】無差別に、周辺から力を奪う
近くにいる、アシュラさんからも!




(「第三の目にみられたら、戦闘行動を、封じられる……」)
 一説、一説を区切る様に。
 与えられた情報を基に、思考を続けていたナイ・デスが、撤退した猟兵と入れ替わりに、周囲の死体達と区別がつかなくなるであろう迷彩を施し、闇に紛れて音も無く戦場に忍び込む。
 戦神アシュラは、ナイの気配に気がついているのだろう。
 斬り裂かれた体を軽く解す様にし、改めて六刀を構え直した。
「ほぉぅ! 今度は、鼠が一匹潜り込んできた様だね!」
 わざとらしく大仰に、六本の手を広げる戦神アシュラが第三の目を開き、戦場を睥睨する。
(「原理はよく、分かりませんが。みられなければいい、ということですね」)
 早く、速く、疾く……!
 周囲に溶け込む様に、正しく風の如く戦場を疾駆するナイの事を戦神アシュラの目が捕らえきれていないのだろうか。
 獲物を捕らえる肉食獣の様な笑みを浮かべたままに戦神アシュラが、大声で叫ぶ。
「さぁて何処に隠れているんだい、『猟兵』! アタシは短気なんだ! さっさと出てこないと、アンタの事を微塵切りにするよ!」
 戦神アシュラの挑発に臆することなく、首輪型の念動力増幅器を起動させるナイ。
 更に身に纏ったパイロットスーツの背から光を同時に射出して、自らの背を吹き飛ばして、自身の体を益々加速させていく。
 戦神アシュラの目にも留らぬほどの瞬足に、ナイの肉体が耐えきれる筈も無い。
 光により吹き飛ばされた背が焼け爛れ、更に酷使された体から、皮膚が剥がれ始めている。
 想像を絶する速度に達した肉体は、絶えず激しい激痛を、信号としてナイへと送るが、その激痛は、激痛耐性で無理矢理皮膚を再生させ、辛うじて堪えていた。
(「速く! もっと、もっと速く!」)
 戦神アシュラの目に入らぬ様、加速してジグザグに動いて戦場の中を駆け回りながら、瞬く間に、戦神アシュラあを『黒剣』の射程圏内に捕らえるナイ。
 分離していた二振りの短剣を、指先に付けた様な武器へと化させたナイの一矢が、戦神アシュラの体を速度と共に貫かんと襲いかかった。
「現れたね!」
 吠えながら、見開いた第三の目で、ナイを睨み付ける戦神アシュラ。
 けれども……。
「『ただ速く、もっと速く』……! もう、止まれない……!」
 超々音速で自転している、とされる地球の速度をも遙かに超えた神速とも言うべき速度で繰り出された黒剣と、イの体は、戦神アシュラの第三の目に射貫かれてその足を止められても尚、慣性に従って突貫する。
「何て、速さだ……!」
「たいあたり!」
 その加速を付けた黒剣で、既に刃に斬り裂かれていた両胸の傷を貫き、更に止まることの無い速度による体当たりを戦神アシュラに叩き込んだ。
 ナイの全身の力の込められた体当たりが、戦神アシュラの腹部を容赦なく強打。
「ガハッ!?」
 ビチャッ、と口から喀血しながら全力を出し尽くしてその身をボロボロにしているナイに向けて六刀で一気に迫る戦神アシュラ。
 上腕からの袈裟と逆袈裟、中腕からの刺突と薙ぎ払い、下腕からの弧を描きながらの斬り上げ。
『終戦神』として解き放たれた刃が、既に第三の目によって足を縛り上げられ、動けなくなっていたナイの両肩から両脇腹に掛けてを斬り裂き、更に刺突が腹部に突き刺さり、横薙ぎの一撃が胸部を斬り裂く。
 既に加速するために酷使された肉体が更に損傷し、そこに駄目押しとばかりに、下段からの弧を描いた斬撃が、ナイの肉体を斬り刻んだ。
(「ここまで、かな……」)
 空腹だけでなく、痛みを感じながら、ナイの体は限界以上の負傷を受けてその場に崩れ落ちる。
「まだだ! まだ、アンタ達にアタシは倒されない!」
 その身を抉った刺し傷と、体当たりで大きな痣を腹部に作った戦神アシュラの勝鬨の雄叫びを聞きながら。
 
 

成功 🔵​🔵​🔴​

天星・暁音
武器が多ければ強いって訳じゃないんだからね

本当はしなくていいならやりたくないけど、それが例え骸であっても使えるのなら使う
そういう覚悟はとうに
決めているから…謝る資格なんかないから謝らないよ
好きなだけ恨んで…

自分の武器に押しつぶされてみるといいなよ
おっきくなーれだ。



防具効果で空を飛びながら、勇気と覚悟で相手の攻撃を見据えて見切り、オーラ防御や敵を盾にでそこらへんの屍を盾にするなどして攻撃を防ぎ受けたなら激痛耐性で耐えます

コードの物の大きさを変える力で敵の持つ六刀全てを振り回せないほど大きくして自重で押し潰しかつ自由に動かせ力で伸ばした曲げたりして持ち主である阿修羅に攻撃します。




 ――痛い。
(「もう、そんな覚悟はとうに決めているのに……」)
 共苦の痛みを通じて感じる『それ』が、苦渋の想いを天星・暁音の胸に宿させる。
 それは世界の、そして阿修羅城で死した者達が死せる直前に感じた痛み。
(「本当は、しなくていいならば、やりたくない。でも……」)
 ――必要であれば、躊躇わない。
 体を穿たれ、腹部に青痣を作り、更に両肩から脇腹に掛けてを斬り裂かれてこそいるが、士気は未だ挫けていない戦神アシュラが、暁音を認めて六刀を構え直した。
「次はアンタって訳だ、猟兵!」
「そうだね。ああ、そうだ。一つだけ」
 六刀を構え直した戦神アシュラに、星杖シュテルシアを突きつけながら。
 暁音がその六刀の刃に一瞥をくれた。
「武器が多いからって、強いって訳じゃないんだからね」
「ふん! 言わせておけば! そこまで言うなら良いだろう、アンタにこの刃の切れ味、思い知らせてやる!」
 叫びながら、神気を纏った『戦勝神』へと変貌し、暁音に斬りかかってくる戦神アシュラの動きを、暁音は目を細めて注視した。


 ――ふわり。
 神気戦闘服に籠められた神気を解放し、空中に浮かび上がる暁音。
 彼の足下には、数多の死体。
 その死体からギリギリ離れない程度の高度を維持する暁音に向かって肉薄、走り込む様に全てを断つ『破壊神』の刃を擦過させ、容赦の無い衝撃波を撃ち出してくる戦神アシュラ。
 その刃を暁音は……。
「……謝る資格なんかないから、謝らないよ。だから、好きなだけ、恨んでね……」
 共苦から伝わる『彼等』の苦しみと痛みにその身を苛まれながら、積み重ねられた死体の山に星杖シュテルシアを突き刺し、撥ね上げる。
 衝撃波による瞬く間に斬り捨てられ、肉片となって散っていった彼等の恨み、憎しみを共苦が吸い上げ、それが容赦なく暁音の心と肉体を痛めつけた。
 その間に、衝撃波を第一波として本命の六刀による時間差攻撃を繰り出そうとする戦神アシュラ。
 空中を飛びつつ彼女に肉薄されながら、暁音がその辺りに転がっている遺体を容赦なく盾にして、戦神アシュラからの攻撃を減じさせ、振り下ろされた刃を、星の輝きを伴った月と丸水晶型の結界を編んで受け止める。
 人間の遺体を盾にすることに何の感慨も抱いていない様に見える暁音の姿に、戦神アシュラが、愉快そうに口の端を綻ばせた。
「アンタは、アタシを殺しに来たんだろう? そのアンタがアタシと同じ事をするとはね!」
「勝つ為だよ。今更これに躊躇う様な、そんな甘い覚悟は持ち合わせていない」
 告げながら星杖シュテルシアを戦神アシュラに突きつけて、更に左手に星天の書を持ち、頁を捲る。
 そうして捲られた頁の一節を、淡々と、暁音は諳んじた。
『全ての物の奥底に眠る魂たちよ。俺の声に応えて……』
 その暁音の呟きに応じる様に。
 ――ズシリ。
「――っ?!」
 刃を凍てつかされ、慣れてきていた筈のその重さが急激に増し、ズシリ、と腕を拉げさせられる様な圧迫感を、戦神アシュラは覚えた。
「なっ……なにっ?!」
「言ったよね? 武器が多ければ強くなるわけじゃないって。自分の武器に、押し潰されてみると良いよ。おっきくなーれ、だ」
 そう小さく告げた暁音の言の葉に従う様に。
 戦神アシュラの持つ六刀の重量がまるで鉛の様に圧し掛かり、戦神アシュラの腕を押し潰さんとする。
 それは、『破壊神』の刀が、持ち主である戦神アシュラに反抗した証。
「くっ、そんな、バカなっ!」
 やむなく六刀を手放す戦神アシュラだったが、すかさず暁音は一時的に自らの支配下に置いた六刀に命じた。
「戦神アシュラを斬って、六刀」
 暁音の命に応じる様に。
 六刀がまるで生き物の様に蠢き、戦神アシュラの腕や足を斬り裂き、更に傷ついたその体の傷を更に穿つ。
 それらの攻撃を、『戦勝神』の神気で辛うじて軽減する戦神アシュラだったが、防戦一方なのには変わりが無い。
 体中をズタズタに斬り刻まれ、ゲホッ、と軽く喀血した。
 だが……暁音の方もユーベルコードに注ぎ込む力の限界が近い。
『破壊神』の刀を操るほどの魔力は、暁音であっても無限に維持できず、激しく魔力を消耗した疲労から、遂にユーベルコードを解除する。
(「限界か……でも、此処まで追い詰めれば十分だろう」)
 そう判断した暁音が、傷だらけになりながらも、態勢を立て直そうとする戦神アシュラの前から素早く身を引いて撤退した。

 ――戦いは、今、後半に差し掛かろうとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛月・朔
【POW】
武器:ヤドリガミの念動力
UC:ヤドリガミ七変化

◆心情
この趣味の悪い城もいい加減見飽きました、そろそろ終わりにしたいものですね。

◆戦闘
神殺しの呪詛をアシュラにぶつけます。

この身はヤドリガミの仮初の肉体、その内面を悪神を呪い打ち払い、人々の平穏を願う祈りを籠めた神殺しの呪詛(【呪詛】【祈り】【精神攻撃】)で満たします(【防具改造】)。ちょっと呪いの人形の気分ですね。

そして交戦の最中にアシュラの攻撃をわざと受けその瞬間に呪詛と化したこの身をアシュラに纏わりつかせ、神を殺す呪いと成ります。
そのあとUCを唱え召喚したもう一人の私に全力の【念動力】で首を締めてトドメを差してもらいます。




(「この趣味の悪い城もいい加減見飽きました。そろそろ終わりにしたいものですね」)
 傷だらけの戦神アシュラが、尚健在であることを確認した雛月・朔がそう思いながら息を一つ吐く。
 体中に傷を負っている今の戦神アシュラは、差し詰め半死半生、と言った所か。
「全く、アンタ達は次から次へと! キリが無いったら、ありはしないね!」
「そう思うならさっさと倒れて欲しいのですが。言動が全く一致していませんね」
 ややキツい口調でフワフワと宙を浮く様にしながら断じる朔をフン、と鼻息も荒く一瞥する戦神アシュラ。
「いいや、これからさ! これからアンタ達を一人でも多く微塵切りにして殺せば気分が昂揚する! アンタの言いなりになんぞ、誰がなってやるものか!」
「そうですか。では仕方在りませんね。さっさと死んで下さい」
 うーらーめーしーやー、と手をヒラヒラさせながら告げる朔に、戦神アシュラは雄叫びをあげ、六刀と共に襲いかかった。


(「さて、神殺しの呪詛、となりましょうか」)
 そう、この身はヤドリガミの仮初めの肉体。
 であればこそ、自らの身を呪詛へと変える事も不可能では無い。
「それでは、あなたのその憎悪の内面と、悪神を打ち払わせて頂くとしましょうか」
 ――人々の平穏を願う、祈りを籠めて。
 フワフワと幽霊の様にその場に浮き上がりながら、朔は戦神アシュラが『破壊神』の六刀を振るって、自分を斬り裂くその瞬間を待っている。
(「斬られると、呪詛と化して取り込んで殺すって……まるで、何処かの呪いの人形みたいですね」)
 そんな内心の呟きを声に出さず。
「死にな! 『猟兵』!」
 戦神アシュラが叫びながら『破壊神』の力を体現化した黄金の波動を纏った六刀を力の限り朔に向かって振るう。
 六閃の刃が、怪しげに輝き朔を斬り裂いた、その瞬間。
 ――ふぉん!
 少し間の抜けた音と共に、神殺しの呪詛と化した自らの肉体を、戦神アシュラに纏わり付かせる事に成功する朔。
 体に負った六刀による斬撃の傷は浅くは無いが、それでも、彼女を呪詛で締め上げるだけの力は、辛うじて残されている。
「さて、さっさと殺されて下さい。『おばけは不滅なんです』」
 神殺しの呪詛と化した自らの肉体で戦神アシュラを締め上げ、その全身に黒い痣の様な傷を作りながら、ユーベルコード起動の鍵を唱える朔。
 その朔の呼び出しに応じる様に。
 朔が瀕死の時にのみ呼び出すことの出来る、青白い輪郭をした幽体の自分が、戦神アシュラの目前に姿を現わし、彼女の首を締め上げんと襲いかかった。
「……この程度でっ!」
 神殺しの呪詛により締め上げられる苦痛に、我武者羅にその場で暴れて瀕死の朔を振り落としながら、自らの首を締め上げようとしていた亡霊であるもう一人の朔に刃を振るう戦神アシュラ。
『全てを断つ』とされる『破壊刀』は、自らの首を締め上げることを欲していた分身である朔を、文字通り一刀両断に斬り裂いた。
(「いえ……この場合は、六刀両断って所ですかね」)
 そんな事を考えながらも、一つの結論に辿りつく朔。
 それは、自分の策により生み出された呪詛でかなりの痛痒を与えた事。
 止めを刺すことこそ出来なかったけれども、十分な戦果を上げられた、と判断し、瀕死の体に鞭打って、朔はその場から撤退した。
 二箇所の大きな袈裟の斬り痕と、その身を穿たれた鋭い刺し傷。
 そして、凍てつき重さを感じさせる刃と、全身を焼き尽くすかの様に起動させられ、その身に刻み込まれた呪詛。
 かなりの重傷を負いながらも……尚、戦神アシュラはその場に立っていた。

 ――次に現れるであろう、猟兵達を迎え撃つために。

成功 🔵​🔵​🔴​

荒谷・つかさ
……良いわ。「我ら」が相手になってあげる。
積み上げた咎、せめてここで雪いでいきなさい。

こちらのコード発動までに斬りかかってくるなら刃の軌道を見切り、刃噛剣と鬼瓦で防御(武器受け、オーラ防御)して負傷を最小限に
凌いだなら【心魂剣】発動
これだけ犠牲者の屍を積み上げているのならば、その霊もこの空間に満ちているはず
心魂剣の本質は『対話』……霊魂との意思疎通が、本来の目的
故に、その神性の守りを突き抜ける

過去に無い程の数の霊魂を受け入れる事による負荷は「気合い」でカバーし、集った犠牲者の想いを束ねた剣をぶつけてやる

例え神であっても「我ら」の屍を積み重ね続けた因果からは逃れられぬ。
因果応報。邪神、滅ぶべし!


加賀・琴
連携可(単独も可)

戦神アシュラですか、阿修羅……仏教の守護神ですが、彼女の場合は仏門に取り入れられる前の、UDCアースでいうヒンドゥー教のアスラ(悪魔・魔神)としての色が濃いのでしょうか?
しかし、荒ぶる狂気の戦神であることには代わりありませんね
ならば、私は神職、巫女としてやるべきことをやらせていただきます

第三の眼で戦闘行動を封じられますが、あくまで神事として。戦神アシュラと阿修羅城に満ちる罪穢れを【神楽舞・荒魂鎮め】を舞って鎮め、祓い清めさせていだきます
場が悪すぎるというか阿修羅城は穢れのみで構成されているような場所ですが、戦神共々可能な限り祓い清めて鎮めさせてもらいます


森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ可

うげぇ、なんだよここ…
てめえ、戦神じゃなくて殺戮神じゃねえのか?

まあ、どっちでもいいか
ここで砕け散ってもらうぜ!

戦勝神への変身は阻止できねぇ
刃を回避するしかねえが、これも至難の業か
無敵の鎧召喚も間に合わねえなら、避けるか逸らすかだ

両手の双槍の長さを変えながらアシュラを「ランスチャージ」で翻弄
懐に近づけさせるわけにはいかねえんだよ
可能なら顔や腕を狙うぜ

隙が生じたら「高速詠唱」でアスモデウス召喚、攻撃に転ずるぞ
72の権能の一つ、地獄すら焼き尽くす業火を持って、戦神アシュラを焼き尽くせ!

…できれば、周りの死体ごと焼き尽くしてくれ
少しは浮かばれてほしいからな


宝城・アスナ
連携可

むぅ血生臭いところじゃの
ふん、戦女神か。戦神アシュラ、元々悪神なのか、それとも信仰や神話の変化によって変質したのかは知らんが妾はおぬしが嫌いじゃの
妾は邪竜に堕とされた地母神。豊穣など自然の恵みを司る属性を分割されて失い。冬や山火事、火山などの死や自然の脅威といった属性のみを押しつけられた討たれるべき怪物に堕とされ殺された妾と違い、汝は神であろうに、神のまま堕ちるとは度しがたいのじゃ

武器が効かずとも関係ないのじゃ
これは火山噴火や山火事などの自然の猛威の具現、死をもたらす冥府の炎じゃ!
そうこれが妾の【邪竜の吐息(ドラゴンブレス)】なのじゃ!
この悪趣味な城にされた屍達ごと火葬にしてくれようぞ!


司・千尋
連携、アドリブ可

悪趣味な城だが使えるモノは使わせてもらおう


常に周囲に気を配り敵の攻撃に備える
少しでも戦闘を有利に進められるように意識しておく

第三の眼の対策として
死体を飾り紐にひっかけて振り回して視線を切ったり
紐を血液に浸して振り回して目潰しを狙う
どのくらい効果があるかわからないが
やらないよりはマシだろう


こちらからの攻撃は「錬成カミヤドリ」で全方位から攻撃する事で行動の阻害を狙う
足元や背後等の死角、敵の攻撃の隙をついたりフェイント等を駆使
確実に当てられるように工夫する

敵の攻撃は可能なら相殺
難しいなら防御してダメージを減らす
ある程度のダメージは覚悟の上で攻撃を優先
本体さえ無事なら多少の傷は問題ない


彩瑠・理恵
連携可、共闘推奨

戦神アシュラ。ハハッ、戦神ね
この城を見ればやってる事といい、名前といい、ボク達六六六人衆みたいだわ
……出来ればボクが相手をしたいと思うけど、相性が悪すぎるわね。武器への無敵に戦闘行動封じとか
チッ、此処は大人しく引っ込んで理恵に譲るわ

リエ程致命的ではないですが私も相性いいとは言えませんね
初手を取られ無敵状態になられたら、やはり私が出来るのはこれしかないですね
上方に指鉄砲を向けて【模倣再現・殲術再生弾(キリングリヴァイヴァー・コピー)】です
私には無敵を突破出来ません。ですが、それを出来る皆を支援することはできます
貴女が相手するのは世界を平和に導いた力を得た猟兵です、覚悟してください




「これは……随分とゾロゾロ来たものだねぇ!」
 既に体中に傷を負い、ほ立っているのもやっと、と言うその状態の中で。
 前後左右から自分を包囲する猟兵達の姿に気がつき、戦神アシュラがまるで酩酊しているかの様な表情で、猟兵達を迎え撃つ。
「うげぇ、なんだよここ……。てめぇ、戦神じゃなくて、殺戮神の間違いかなんかじゃねぇか?」
「確かに、悪趣味としか言えない城だな、ここは」
 死臭に鼻を歪め、手で顔を覆う様にしながら。
 問いかける森宮・陽太に同意する、とばかりに司・千尋が小さく首肯を一つ。
「ふん、戦女神か。戦神アシュラ、元々悪神なのか、それとも信仰や神話の変化によって変質したのか、どっちなのかのう」
「どうでしょうね。もしかしたら、彼女は阿修羅……仏教の守護神ですが、彼女の場合は、仏門に取り入れられる前の、UDCアースでいうヒンドゥー教のアスラ(悪魔・魔神)としての色が濃く出ているのかも知れませんね……」
 嫌悪を籠めた表情を浮かべて、誰に共なく問いかける様に呟く宝城・アスナに過去に得た知識を基に、加賀・琴が軽く頭を振りながら返事を返す。
「ふん、どちらにせよ、妾は戦神アシュラ、おぬしのことは嫌いじゃのう。どの様な事情にせよ、汝は神であろう。けれども、汝は神の儘にオブリビオンに堕ちるという度し難いことをしたのじゃからな」
 鼻を鳴らして戦神アシュラを非難するアスナを嘲弄するかの如く、全身から怒気を漲らせて鼻息も荒く高々と叫び返す戦神アシュラ。
「ふん! アンタ達に神のなんたるかなんぞについて講釈される理由は無いよ! アタシは此処までアタシを追い詰めたアンタ達が憎い! アタシを此処まで追い詰めたアンタ達や、嘗ての神々に復讐さえ出来ればそれでいいのさ! 今こそ、まさにその時だからね!」
「そうかよ。まっ、どっちでも良いけれどな。ここで砕け散って貰えりゃ、それまでなんだからな!」
「ええ……そうね」
 陽太の呟きに静かに首肯したのは、瞑想するかの様に目を瞑る荒谷・つかさ。
 その心は明鏡止水の如く静まり返り、耳は、周囲の死人達の無念と怨嗟の声を聞き取るべく、鋭く研ぎ澄まされている。
「あなたの相手は……『我ら』が、してあげるわ。だから、今までに積み上げてきたその咎を、せめてここで雪いでいきなさい」
「……我等? はん! まさか、アンタはコイツらの声が聞こえるとでも言いたいのかい!? 流石は新種の侵略生命体『猟兵』だね!」
 つかさの言葉を嘲るかの如くそう叫びながら、戦神アシュラが、口元に嗜虐的な笑みを浮かべる。
(「成程な……こいつが本性って訳か」)
 そう……この嗜虐的な笑みから放たれる邪な波動こそ、悪の『戦女神』としての彼女の神性。
 その上から黄金色の神気を纏って、『戦勝神』へとその姿を変貌させていき、同時に六刀が『破壊神』の力を纏った真の姿へと変わっていく。
 そして第三の目が……ゆっくりと見開かれた。
「もう此処まで来たら仕方ないねぇ! アタシに残された最後の力で、アンタ達を一人残らず斬り刻んで、冥府に行って貰おうじゃないか!」
「……荒ぶる戦女神、アシュラ。荒ぶる狂気の戦神であるあなたを、私達は見逃すわけには行きません。あなたのその魂、鎮めさせて頂きます」
 琴の一礼に口元に、鱶の笑みを浮かべながら。
 戦神アシュラが、その場で駒の様に『破壊神』の刀で大回転を行ないながら、突進を開始した。


(「戦神アシュラ。ハハッ……『戦神』、ね!」)
 駒の様に回転しながら千尋達をズタズタに斬り裂くべく踊る戦神アシュラの姿を見た彩瑠・理恵……否、そのもう一人の人格<六六六人衆>と名乗る者、リエは愉快げな笑みを抑えきれない。
(「この城を見ればやってる事といい、名前といい、ボク達六六六人衆みたいだわ!」)
 その言葉の真意を理解出来る者は、恐らく極一部であろう。
 故にリエの思考を読み、その言葉に頷けるのは、この場では理恵唯一人。
(「そうですね、リエ」)
(「けれども、武器の無敵状態に、戦闘行動封じとは……ボクとは相性が悪過ぎるわね」)
 邪悪なる神性に覚醒し、その上で『勝利神』としての神気を纏い、更に第三の眼を開いてその者の戦闘行動を封じようとしている。
 千尋が、周囲の死体に飾り紐を引っ掛けて振り回し、第三の眼の視線を切り、つかさが回転皆殺し駒として迫り来るその刃を見切ってその刃を躱し、更に陽太が伸縮自在の濃紺のアリスランスと、淡紅のアリスグレイヴを振るって回転しながら襲いかかってくる戦神アシュラの動きを攪乱しているが、まともに第三の眼を直視してしまった琴は、今動けぬ。
 すかさず戦神アシュラが理恵を狙って駒の如く回転しながら理恵を斬り刻まんと攻めかかってきた。
 鋭い刃が理恵の武蔵坂学園高校女子制服を斬り刻み、その体に深手を負わせるが、理恵はそれでも臆せず、空中に向けて指鉄砲を作り出す。
「私には、戦いのためだけに造られた武器への無敵状態を突破する術はありません。ですが、それをしようとする皆さんの援護をすることは、出来ます」
 ――そう……それは。
「『キリング、リヴァイヴァー!』」
 嘗て、世界を導いたとされる英雄達の物語にて切り札として使われる、光条を生み出す光の弾丸。
 ――模倣再現・殲術再生弾。
 天に向かって撃ち出されたその一弾が天空から無限の光条を齎し、今、戦場で戦う陽太達猟兵に、無敵の力と回復力を与えてくれる。
「! こいつはあの時、あんたが使った……!」
「ほっほぅ! これは力が湧いてくるのぅ!」
 以前にもうけたことのあるその弾丸の光を浴びた陽太が驚きの表情を浮かべ、戦神アシュラの体当たりを真正面から受け止めようとしていたアスナもまた、裡から溢れ出てくる力に満たされ、何処か愉快そうに笑みを浮かべた。
「成程……この様な力もある、と言う事か」
 千尋が何処か納得した様な表情でポツリとそう呟きながら、先程遺体に引っ掛けた飾り紐が浸された血液を振りあげる。
 それは、駒の様な回転攻撃の中でも最も被害の少なかったつかさに向けて六刀を振るい、つかさを斬り裂こうとしていた戦神アシュラの第三の眼にまともに直撃し、戦神アシュラの眼を潰し掛けていた。
「……ちぃっ!」
 第三の眼でつかさを睥睨し、その動きを止めようとしていた戦神アシュラがそれに舌打ちをしながら、『破壊神』の力を解放した六刀で、恐らくこの六人の中では最大の脅威となるであろう、つかさを斬り刻まんと刃を振るう。
 だが……。
「アンタの好きにはさせねぇよ!」
 陽太がその六刀の軌跡を逸らす様に、淡紅のアリスグレイヴを伸張しながら、戦神アシュラの懐に飛び込む様に突進。
 半ば割り込まれる様な形で懐に飛び込まれた戦神アシュラが舌打ちを一つしながら咄嗟にバックステップで距離を取りつつ、六刀の内、下腕の二刀をつかさに向かって振り上げた。
 陽太のランス捌きにより、態勢が崩れた状態で放たれたそれらの刃は、勢いを削ぎ落とされた事も手伝い、つかさの鬼瓦の篭手で一刀を受け止められ、更に歯噛剣の背に作り上げられたギザギザがもう一刀を絡め取り、そのまま剥奪する様に奪い取る。
(「この力……」)
 死者達の声に耳を傾けていたつかさを包み込む、理恵が放った光条。
 その光条の温かさに、何処か懐かしさの様なものを感じるのは、果たしてつかさの気のせいであったのだろうか。
(「まあ、この違和感は気になるところだけれど……今は決着を付ける方が先ね」)
 そう胸中で結論づけたつかさが、周囲に浮かび上がる大量の無念を抱える霊達へと語りかけている。
 あまりにも莫大な数の霊達の存在は、それだけでもつかさの心と体を蝕み、その感情を彼等が抱えるどす黒いもので塗り潰そうとするが……つかさは意に介さず軽く頭を振った。
「あなた達の想い、無念、痛み、苦しみ……荒谷・つかさが、確かに受け取ったわ」
 つかさがこの大量の『霊』達と対話をする、その間に。
 理恵の力を得たアスナが吠えた。
「のぅ、戦女神アシュラ。同じ神でありながら、何故妾と汝はこれ程までに違うと思う?」
「神!? アンタが神を名乗るなんて片腹痛い! さっさとくたばりなさい、この女!」
 叫びながら凍り付き、重くなっている一刀を、アスナに振るう戦神アシュラ。
 だが……アスナが受けたその傷は、理恵の解き放った光条によって、瞬く間に癒されていく。
「妾は、邪竜に堕とされた地母神じゃ。今では豊穣など、自然の恵みを司る属性を分割されて失っておる。故に、妾は冬や山火事、火山などの死や自然の脅威といった属性のみを押しつけられた討たれるべき怪物として堕とされておる」
「ならばどうして、アンタは其方にいる!? 憎いんでしょ! 殺してやりたいんでしょ! アンタを邪竜に堕としたその相手が! なのに何故、アンタは地母神として、そこに立っている!?」
 叫ぶ戦神アシュラにそうじゃな、とアスナは笑う。
「妾は邪竜に堕とされたと言えど、元々はとある神話の地母神じゃ。その記憶が、妾にはある。故に、人々は妾にとって正しく『子供』。親が子を守るのは当然のことじゃろう。じゃから、汝の存在が解せぬのじゃ! 神でありながら、過去に……闇に堕ちた汝がな!」
 そう叫びながら、その口から邪竜のドラゴンブレスを吐き出すアスナ。
 吐き出された邪竜の炎が戦神アシュラを熱で嬲り、既に傷だらけとなったその体を焼いていく。
「! くっ、何故……?!」
「妾のブレスは、火山噴火や山火事などの自然の猛威の具現、死をもたらす冥府の炎! 戦いのためだけに造られた武器を無効にする神性では、妾の炎を受け止める事は出来ぬ!」
 アスナの叫びに呼応する様に理恵の解き放った光条が、邪竜のドラゴンブレスの輝きをより一層増し、戦神アシュラの全身を焼き払う。
 その瞬間を、千尋は見逃さない。
「……行け」
 小さく告げながら、全部で29の器物を生み出して、それをからくり人形を操るかの如く、念じることで動かす千尋。
 全方位から放たれた器物達が、戦神アシュラの背面や死角から、アスナの邪竜のドラゴンブレスによってその体を焼かれていた彼女の体を容赦なく打ち据えた。
 既に体中を蝕む呪詛と体中にある傷により、戦神アシュラはそれらの攻撃を避けること能わず、為す術も無くその体の傷を次々に増やしていく。
「くっ……こ、このっ!」
「よし、好機だな! 行くぜ! 我が契約に応じてその72の権能が一つ、地獄の炎を持って、戦神アシュラを焼き尽くせ! 『アスモデウス』!」
 アスナの炎と、千尋の攻撃に完全に隙が出来た戦神アシュラにダイモンデバイスを突きつけて、その引金を引く陽太。
 陽太の呼びかけに応じた『色欲』を司るともされる大悪魔アスモデウスは、陽太との契約に従い、その口から炎の息吹を吐き出した。
 大悪魔の炎と、邪竜の炎。
 二つの『闇』を司る炎の息吹を吹きかけられた戦神アシュラは、千尋によって動きを止められていたことも相まってその全身を炎の渦に飲み込まれ、激しい火傷を更に悪化させていく。
 先程自らの身を砕こうとした呪詛と炎が重なり合い、戦神アシュラは紅蓮の炎に包み込まれ、最早火だるまの様な状態になっていた。
「こ……こんな、こんな、バカなっ……!」
「これが、嘗て世界を平和に導いた、とされる力を得た猟兵達の力です、『戦神』アシュラ」
 理恵が静かに告げる、その間に。
 ――フワリ。
 天女の羽衣をはためかせ、粛々と神楽舞を捧げる琴。
「これは、阿修羅城と戦神アシュラ、神でありながら穢れた貴女を、祓い清めさせて頂く神事です。どうか、お納め下さいませ」
 神楽扇を振るい、荒ぶる神の魂を鎮める舞を奉納し、その動きを牽制する琴。
「何が、神事だ! その様なものでアタシを止められると……!」
 叫びながら六刀を振るい、琴を斬り裂こうとする戦神アシュラ。
 ――その時、だった。
「……そこまでだ、『神』」
 それは、辺り一帯に響く様な、何重にも響き渡る声。
 押し寄せてくる圧倒的なまでの殺された者達の無念の想いを、憎しみを気合いで制し、自らの体に集う魂達の『念』を一心に受け入れたつかさから放たれた言葉。
「つかささん、それは……」
 それは、琴の鎮める力とはある意味では相反する力。
 即ち、全なる魂を一つに集め、目前の『悪神』を断ち切る力。
 明鏡止水の心の下に集いし死者達の魂の力は、『つかさ』という存在が操る、一本の巨大な光の剣と化した。
 ――その人々の意志と、心と、魂の力の名の下に。
「なっ……何だ……何だよ、その力は……! う……動っ……!」
「逃がすものか」
 つかさに集う巨大な魂の力に、本能的に恐怖を覚えた戦神アシュラが後ずさり、その剣による一撃から逃れようとするが、その時には千尋が呼び出した29の器物達が戦神アシュラの体を打ち据えて、その行動を妨害する。
 更に、今までに積み重ねられてきた全ての傷が……遂に限界に達したか、戦神アシュラが、グラリ、とその身を傾がせた。
 その瞬間を狙って、つかさが断罪の言葉を告げる。
「例え神であっても、『我ら』の屍を積み重ね続けた因果からは逃れられぬ」
 ――否、それを告げたのは、つかさではない。
 この地面に敷かれし、無数の人々の死体から現れた、無念の魂を持つ犠牲者達。
「因果応報。邪神、滅ぶべし!」
 叫びと共に、両手で握りしめた紫色の巨大な光の剣……【心魂剣】を横薙ぎに振るうつかさ。
 振るわれた犠牲者達の魂によって作り出された巨大な剣は、既に傷だらけとなっていた戦神アシュラの体を、横薙ぎに断ち切っていく。
「ば……バカな……! 何で、なんでアタシの無敵の防御が……!」
「【心魂剣】……我が刃の本質は、『戦い』に非ず! 死した霊達との対話にあり!」

 ――故にその刃は、その神性を容赦なく断ち切れる。

 つかさが、【心魂剣】を横薙ぎに完全に振り切ったその時。
 全身に火傷を負い、両肩から脇腹に掛けてを斬り裂かれ、刃を凍てつかされ、更に圧迫され、呪詛による負傷を蓄積し、限界に達していた戦神アシュラの体は、上半身と下半身の真っ二つに分かたれ、そして……光となって、消えていった。


「これで終わり……か」
 残心するつかさの様子を見て軽く頭を振りながら、ふぅ、と陽太が息を一つ吐く。
 それから呼び出したままでいたアスモデウスの方を振り向いた。
「なあ、アスモデウス。出来れば、周りの死体達も焼き尽くしてくれないか? 少しは、浮かばれて欲しいんだ」
「そうじゃな。つかさじゃったか? あの者に集い、その無念を叩き付ける事で浮かばれた者達もおるじゃろうが……この悪趣味な城を造るために使われた屍達を、妾も火葬してやる事には異存は無いぞ」
 陽太の言葉に、そう頷き掛けたのはアスナ。
 そのアスナの言葉に一つ頷き、代価を払いながら、アスモデウスに再び地獄の炎を解き放って貰い死体達を火葬する陽太。
 アスナがそれに合わせる様にドラゴンブレスを口から吐き出して、残された屍達を炎に包み込んで火葬する。
「それならば、私は鎮めましょう。この荒ぶる魂達の霊を。そして……彼等が静かに眠ることが出来る様、祈りましょう」
 告げた琴が神楽舞を奉納し、戦神を倒し、彷徨える魂となった者達を鎮めるべく静かに神楽舞を舞い始めた。
 ――それらは、殺された者達への、手向けの祈り。
「戦神アシュラ……これで、完全に倒しきれたのかしら?」
 つかさの呟きに、答えられる者は誰も居ない。

 ――かくて、戦神アシュラの一部は……再び骸の海へと沈んでいった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月30日


挿絵イラスト