アースクライシス2019⑭〜白黒つける
●クライング・ジェネシス、パンダと相見える
中国、成都ジャイアントパンダ繁育研究基地。いわばパンダの動物園といったここには国内外から観光客が多く来園する。そこへ、ソイツはやって来た。
「パンダ! パンダパンダパンダッ!! 可愛いだけでチヤホヤされる世界なんざ、俺の『骸の海発射装置』で吹き飛ばしてやるからな……ッ!!」
パンダの檻の前で騒ぎ立てるのはオブリビオン・フォーミュラ『クライング・ジェネシス』その人だ。周囲の観光客は色んな意味でヤバイ存在の出現に一斉に避難した。ぽっかりと人が居なくなった空間でクライング・ジェネシスが怨嗟を吼える。
「その目、その態度……気に入らねえんだよッ!!」
クライング・ジェネシスの憎悪の籠る視線の先で、パンダは暢気に笹を食べていた。
●グリモアベースにて
「皆さん、クライング・ジェネシスが現れました。」
聖典のグリモアを閉じ、アルトリンデ・エーデルシュタインが猟兵達に呼びかける。オブリビオン・フォーミュラが現れたのだ。
「場所は成都ジャイアントパンダ繁育研究基地、です。」
何とも言えない表情でアルトリンデが場所を告げる。中国にあるそこは名前の通りパンダの動物園といった場所だ。ジャイアントパンダが多数いるほか、レッサーパンダも見る事ができる。
「現れたクライング・ジェネシスは、そこでパンダ相手に啖呵をきっているようですので止めてきてください。」
現状、クライング・ジェネシスは観光地の破壊はしていない。どうやら大勢の人の前で猟兵を倒す為の舞台としか見ていないようだ。だが、可愛いだけでニュースにすらなるパンダに思う所があったのかもしれない。
「戦場となるのは開けた場所ですので、戦うのに支障はないかと思います。」
観光客も巻き込まれないように遠巻きに見ている為、さほど気にせずともいいだろう。クライング・ジェネシスも猟兵を倒す事を第一としているようで、観光客やパンダには手を出さない。
「何ともいえない状況になっていますが、強敵との戦闘です。気を付けて臨んでください。」
そう言葉を括り、アルトリンデは猟兵たちを送り出すのだった。
こげとら
しばらくぶりです、こげとらです。
オブリビオンフォーミュラ『クライング・ジェネシス』との戦闘となります。
難易度は『難しい』、プレイングボーナス無しですと成功しにくいかもしれません。またこのシナリオには下記の特別なプレイングボーナスがあります。
プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
(クライング・ジェネシスは必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
戦場は中国にある成都ジャイアントパンダ繁育研究基地。パンダ動物園と思っていただければ間違いありません。他にもパンダに関するアレコレもありますが、戦闘には特に関与しませんので。
広めの芝生の広場みたいな場所での戦闘になります。モニュメントやトイレ、フードコートなどがまばらにありますので、障害物を利用する事も一応、可能です。
残り時間も限られていますが、皆で勝ちましょう!
よろしくお願いします!!
第1章 ボス戦
『クライング・ジェネシス』
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POW : 俺が最強のオブリビオン・フォーミュラだ!
全身を【胸からオブリビオンを繰り出し続ける状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 貴様らの過去は貴様らを許さねェ!
【骸の海発射装置を用いた『過去』の具現化】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【相手と同じ姿と能力の幻影】で攻撃する。
WIZ : チャージ中でも少しは使えるんだぜェ!
【骸の海発射装置から放つ『過去』】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を丸ごと『漆黒の虚無』に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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ウィルヘルム・スマラクトヴァルト
パンダ相手に啖呵? 奴は一体…。
まぁ、倒さねばならない相手には違いありません。
止めてくるとしましょう。
先制攻撃は「第六感」で予知して攻撃を「見切り」、
「残像」を残して回避します。
しかし、回避出来ない場合は緑の大盾による「盾受け」、
緑の斧槍による「武器受け」、「オーラ防御」でダメージを抑えつつ
「気合い」で耐えます。
先制攻撃を耐えたら「クリスタライズ」発動。
『漆黒の虚無』に同化するように透明になり、
「怪力」で緑の斧槍による攻撃。
まず「ランスチャージ」を敢行して「串刺し」を狙い、
すかさず「2回攻撃」で緑の斧槍を「なぎ払い」追撃します。
その予知を聞いた時、ウィルヘルム・スマラクトヴァルトは思った。
「パンダ相手に啖呵? 奴は一体……」
世界をカタストロフで滅ぼそうとするオブリビオン・フォーミュラが、何故。だがその由を詮索するよりも、ウィルヘルムは己の成すべき事を為すために成都ジャイアントパンダ繁育研究基地へと転送される。
「まぁ、倒さねばならない相手には違いありません。
止めてくるとしましょう。」
そして現地に降り立ったウィルヘルムへと、パンダに啖呵を切っていたオブリビオン・フォーミュラ『クライング・ジェネシス』は振り返る。パンダへ向けていた呪詛をその眼差しに宿したまま。
「よーやく来たか、猟兵ヨォ……お前たちも骸の海に沈めてやるよ!!」
もはや言葉を交わす気はないとばかりに、骸の海発射装置から次々と『過去』が放たれる。
「予知どおり……!」
身を翻したウィルヘルムを掠めて『過去』が地面に『漆黒の虚無』を穿つ。弾道が分かっていれば初撃を躱すのは問題ない。狙いを逸らすよう残像を残して回避を続けるウィルヘルムだが、撃ち出される『過去』を躱しきれる事はなく。大盾で受け止め、斧槍で受け弾く。それでも撃ち込まれた数が多く、『漆黒の虚無』で埋め尽くされてゆく空間に抗するようにウィルヘルムのオーラが瞬いた。
「ハハッ、猟兵も大した事ねぇな! ギャーッハッハッハッ!!」
そして『過去』の弾幕がおさまった後には地面に『漆黒の虚無』が広がっているのみであった。姿も残さずにウィルヘルムは消え、クライング・ジェネシスは己が勝利を確信して高笑う。だが、それは。
「その隙は逃しません。」
【クリスタライズ】で姿を隠していたウィルヘルムが哄笑しているクライング・ジェネシスへと緑の斧槍を構えてランスチャージをかける。虚をつかれたクライング・ジェネシスの身体に突き立った斧槍をウィルヘルムは力を籠めてなぎ払った。振り抜かれる斧槍に裂かれながらクライング・ジェネシスは吹き飛ぶ。
「やってくれたなァ……?」
いや、距離を取る為にあえて吹き飛んだのか。一度、仕切り直す為に大きく距離を取ったクライング・ジェネシスは身体の傷に指を這わせた。この恨みを忘れる事無く、猟兵へと返す為に。
成功
🔵🔵🔴
佐伯・晶
いよいよ元凶のお出ましか
世界を救う為にも負けられないね
自分の攻撃と知ってれば対策できるね
ガトリングの攻撃は神気で弾の時間を停めて防御
僕なりのオーラ防御だよ
技能的にも防御>射撃攻撃だし
覚悟してれば停めれると思うな
状態異常も使い魔やワイヤーの時を停めて防ぐよ
邪神の涙を使われた場合は氷結耐性もあるし
そもそも自分ごと攻撃するものだから何とかなるかな
体が凍って死なず、魔力で凍ったまま体を動かせる
神様の体だからできる芸当だけどね
範囲内敵味方無差別だからご愁傷様
相手の能力を確認する前に先制するのも問題だね
味方を巻き込まないよう転送順は気を付けるよ
攻撃を凌げたら邪神の涙と射撃で攻撃
凍って動きが鈍った隙をつくよ
吹き飛ばされたクライング・ジェネシスが着地する。ダメージはあったであろうが、依然としてその力は健在だった。身体の傷を何事も無いように振舞うその姿に、佐伯・晶はその存在の圧を感じていた。
「いよいよ元凶のお出ましか。世界を救う為にも負けられないね。」
その言葉にクライング・ジェネシスの口の端が歪む。やれるものかと、そう応じる言葉の代わりに晶に金色の影が放たれた。金の髪をなびかせて迫るそれは、『過去の晶』。出現と同時にガトリングを構え、躊躇いなく晶へと撃ち放った。だが、その弾丸は晶の身体に届く前にまるで時が止まったかのように静止する。
「自分の攻撃と知ってれば対策できるね。」
晶の神気によって攻撃が止められたと見るや、『過去の晶』はワイヤーガンと使い魔で晶の動きを阻害しようとする。が。
「僕の技能的にも射撃より防御向きだしね。」
自分の事は自分がよく分かっている。元より晶の攻撃手段よりも自分の持つ防御手段の方が優れていた。ワイヤーと使い魔も時を止めて防ぎ、『過去の晶』を見やる。次に来るとすれば、止められない攻撃。『過去の晶』は周囲に極低温の物質を放った。
「ナァ!? キサマってヤツは、なんてモン使いやがる!!」
それは晶のユーベルコード【邪神の涙(ゼロ・ケルビン)】によるモノ。自身も凍り付きながら周囲を無差別に凍らせる業。
「ご愁傷様。相手の能力を確認する前に先制するのも問題だね。」
巻き込まれた晶も無論、凍り付いている。だが、もとよりこのユーベルコードを持つならば凍結への対策は必須。故に晶と『過去の晶』はその動きを鈍らせながらも動けていた。芯まで凍てついて尚、動けるのはそれが神の身体ゆえか。だがクライング・ジェネシスにその備えは、ない。
「人間にはできない無茶だよなぁ。」
放たれたのは晶の【邪神の涙(ゼロ・ケルビン)】。それはクライング・ジェネシスを凍り付かせて動きを鈍らせる。その隙を晶の放った銃弾が穿った。
「まだだ……この程度で、終われねェ!!」
だがそれでも、クライング・ジェネシスは倒れる事無く凍てつく空間から離脱する。撃ち込まれた弾丸の痕から、血の雫を零しながら。
成功
🔵🔵🔴
ニコ・ベルクシュタイン
笹食ってる場合じゃねえ!と言いながら登場すれば良いのだな、任せろ
お前もお前だ、オブリビオンフォーミュラでありながら
いたいけなパンダ相手に何だ、其の…悪の首魁として恥ずかしくないのか
パンダ達を巻き込まぬよう、しかし笹や樹木の足場は有効に
「地形の利用」をさせて貰うぞ
「ダッシュ」からの「ジャンプ」や「スライディング」で
敵が放つ過去の着弾範囲が極力少なく、まばらになるよう立ち回る
生憎と俺は「時計」にて、一度刻んだ過去は顧みぬのだが
骸の海より生じた其れはさぞや醜い「もの」なのだろうな
お前には此の花を贈ろう、奇跡の虹の花【花冠の幻】を
未来を刻み歩みを止めぬ俺の意志の体現と知れ
過去は決して未来を超えられぬ!
凍り付いた空間を抜ける為、大きく跳んだクライング・ジェネシスが着地したのは笹を食べてるパンダの前だった。ガサッと笹を捨て、身構えるパンダ。そこへ一人の男が現れる。
「笹食ってる場合じゃねえ! と言いながら登場すれば良いのだな、任せろ。」
パンダの心境を代弁するが如く颯爽と姿を見せたのはニコ・ベルクシュタイン。クライング・ジェネシスはニコへ向け、問答無用とばかりに『過去』を発射する。木々の間を縫い、笹を飛び越え移動しながら躱し、ニコはクライング・ジェネシスへと問いを投げた。
「お前もお前だ、オブリビオンフォーミュラでありながら。
いたいけなパンダ相手に何だ、其の……悪の首魁として恥ずかしくないのか。」
その言葉を聞いたクライング・ジェネシスは吼えた。
「うるせぇ! 無能力者が嗤われ、ただ可愛いだけのヤツがチヤホヤされる!
そんな事を許しておけるかァッ!!」
言ってる事は正しい気がするが、それをパンダ相手に言うのは如何なものか。そうとう拗らせているようだと見切りをつけたニコは流れ弾にパンダたちを巻き込まないように立ち回る。一所に留まらず、着弾で『漆黒の虚無』へと変わる地形をっ集中させないように、まばらになるように。
「生憎と俺は「時計」にて、一度刻んだ過去は顧みぬのだが。」
激情に任せて『過去』を放つクライング・ジェネシスを見据えてニコが間合いを測る。周囲の『漆黒の虚無』は動きを妨げるような位置に無い。
「骸の海より生じた其れはさぞや醜い「もの」なのだろうな。」
迫りくる『過去』を、地に堕ちた『虚無』を一瞥し、ニコは自分の武器を抜く。
「お前には此の花を贈ろう、奇跡の虹の花【花冠の幻】を。
未来を刻み歩みを止めぬ俺の意志の体現と知れ。」
その手に在る刃が解けて無数の花びらとなる。【花冠の幻(レインボー・フラワーズ)】の名に違わぬ虹色の薔薇の花吹雪は、『虚無』で蝕まれた地に幻想的な光景を広げた。
「過去は決して未来を超えられぬ!」
そして、その花びらは舞うようにクライング・ジェネシスへと吹き付け。
「それでも、俺は! 過去を、恨みを忘れねェッ!!」
虹の薔薇の花びらが、その慟哭も包み込みクライング・ジェネシスの身体を切り裂いていく。花びらが収まった後には、その場から引いたのかクライング・ジェネシスの姿はなかった。彼の負った傷の多さを物語る血の痕だけをその場に残して。
大成功
🔵🔵🔵
宮落・ライア
繰り出し続ける……つまり出てきた奴まとめてぷちっとできる方法があればいいのだな?
とりあえず先制が来るけれど、繰り出し続けるというのであれば
出始めは少ないから【見切り】で避け、【ダッシュ】で距離を取る。
その後に【見えざる手】を巨大かし【薙ぎ払い・衝撃波】で一掃。
そしてすかさず【二回攻撃】で相手の胸を塞ぐようにして
巨大化した見えざる手で相手を【グラップル】。
思いっきり力任せに塞げば出てこなくならないかな。
そのまま【怪力・鎧砕き】で押しつぶすように握り締める。
振り回してシェイクしたり叩きつけたりもありかな?
元人間?なら守りが堅くても三半規管とか脳とか内蔵にダメージいったりして。
広場に落ちてきたクライング・ジェネシスを見つけたのは宮落・ライアだった。そしてライアが動くより早く、クライング・ジェネシスの全身が蠢動する。
「俺が最強のオブリビオン・フォーミュラだ!」
既に幾度かの戦闘の後、傷を負いながらもクライング・ジェネシスの戦意は衰えない。むしろ傷の痛みをも恨みへと変えて猛るが如く、胸から次々とオブリビオンが吐き出されてゆく。
「先制されても、出始めなら……」
増えゆくオブリビオンが大群となる前にライアは迫りくるオブリビオンの攻撃を躱し、ダッシュで距離を取った。自分が反撃をする間が稼げれば、例え大群相手でもなんとかなる。その為には群れに呑まれる訳にはいかないと、駆けたライアが十分な距離を取って身を翻した。こちらへ向かうオブリビオンは列をなし、それを生み出しているクライング・ジェネシスは動く事は出来ない。
「繰り出し続ける……つまり出てきた奴まとめてぷちっとできる方法があればいいのだな?」
そしてライアが振るうは【受け継がれた見えざる手(ウケツガレタミエザルテ)】。オブリビオンの列を薙ぎ払えるほどに巨大化させた見えざる左手を、振り下ろした。地を打つ手がオブリビオンを叩き潰し、巻き起こる衝撃波が周囲を薙ぎ払う。
「なァ!? いったい何しやがっ……ぐッ!?」
オブリビオンを一掃され声をあげるクライング・ジェネシスの胸へとライアが見えざる左手を押し付ける。軋んだ音を立てながらもクライング・ジェネシスの守りは崩れない。だが胸を塞がれた事で生み出し続けるオブリビオンが出れずに潰されていった。そのままライアは巨大化した左手でクライング・ジェネシスを握り込む。
「守りが堅くても、このまま振り回されたらどうかな?」
クライング・ジェネシスが元人間ならば、振り回したり叩きつけたりすれば守りの上からでも脳や内臓にダメージがあるかもしれない。それでなくとも三半規管を狂わせられれば有利にはなろう。
「ぐ、えぇぇ……」
散々振り回した後には、潰れたような呻き声を上げて倒れたクライング・ジェネシスの姿があった。
成功
🔵🔵🔴
ミュリエル・フォルクエイン
連携歓迎
「参ります」
先制攻撃対策に突っ込んでゆくと見せかけてフェイント、方向を転換しダッシュと逃げ足及び自前の翼で空に逃れ、上空と言う地形を利用しつつ空中戦へ
回避行動にもフェイントを織り込みつつ見切って躱そうと試みます
外れてもその上に立つ自身の戦闘力を高めるのであれば
「当たらない上で、立てない場所目掛けて攻撃させればいいだけのことです」
何もない空なら外れた攻撃が当たって虚無に変えられるのも雲ぐらいしかない筈
回避前提なのでどうしても躱せない時のみ盾で受けます
「負けるわけにはいきません。花よ、風よ――」
凌げるか耐えきれた時はカウンターでUCを使って攻撃、怯めば鎧無視攻撃の乱れ撃ちで追撃します
国栖ヶ谷・鈴鹿
●SPD
【過去のぼく】
過去のぼくを惹きつけるのは未知の技術!
[メカニック]で準備してきた浄化火炎放射器!宇宙の超兵器の改良型さ!アイツが荒した場所にこうして吹けば!ね、良い感じに綺麗になった!(という風に過去ぼくを実演して引き付けて引き離す)
【boss】
パンダすごくかわいいじゃん!モノトーンでおしゃれだよ!というわけでクライングジェネシスには二丁機関銃の[一斉発射&制圧射撃]で一気に押し切っちゃおう!
このオーバーロードした武器を発射口に投げ入れて爆発させて終わりにしようか!
ここまでの軌跡は、過去のぼくには決してないもの、ぼくは決して止まらない、天才だからね!
クライング・ジェネシスが身を起こし、かぶりを二度、三度と振る。そして口から血の塊を吐き捨てた。
「……ッ、ハァ! やってくれたな、猟兵ども……ッ!!」
一緒に罵声も吐き出し、気炎を上げる。色濃くなる恨みを募らせた瞳は二人の猟兵、ミュリエル・フォルクエインと国栖ヶ谷・鈴鹿を捉えていた。そして、軋む音を上げ始めた『骸の海発射装置』を稼働させる。まずはミュリエルから倒すと決めたか、鈴鹿へは一つ、その他多数の『過去』をミュリエルへ向けて放った。
「参ります。」
ミュリエルはその『過去』の弾幕へと真っ向から突っ込む……と見せかけ、直前で上空へと舞い上がる。駆けていたスピードで地を蹴って翼を広げて空へ逃れるミュリエルを、逃す物かとクライング・ジェネシスは骸の海発射装置から次々と『過去』を撃ち出した。
一方、鈴鹿へと放たれた『過去』はその姿を少女へと変じていた。それは鈴鹿とほとんど変わらぬ姿。過去の自分を前に、鈴鹿はこの為に用意してきた『ある物』を取り出した。
「過去のぼくを惹きつけるのは未知の技術!」
それは即ち、今の自分のみ知りうる技術。取り出されたのは宇宙の超兵器を鈴鹿の技術で改良した浄化火炎放射器だ。つまり、元の火炎放射器を知らない過去の鈴鹿にとっては未知の技術。それを目にした過去の鈴鹿の目の色が変わった。
「アイツが荒した場所にこうして吹けば! ね、良い感じに綺麗になった!」
「すごい! どうなってるの!? スペック教えて!」
鈴鹿が地面に出来ていた『漆黒の虚無』で蝕まれていた地面に浄化火炎放射器で焼いていくと、徐々に元に戻っていく。その光景に過去の鈴鹿は目を輝かせた。戦闘の跡を浄化火炎放射器で燃やして綺麗にしながら、鈴鹿は過去の自分を船上から引き離していった。
同刻。ミュリエルは空の雲、太陽の光などあらゆる状況を利用してクライング・ジェネシスの放つ『過去』を躱し続けていた。
「チッ、ちょこまかと……だが、躱し続けられるのも今の内……ッ!?」
クライング・ジェネシスの僅かな動揺。外しても地形を『漆黒の虚無』へと変えクライング・ジェネシスに優位な状況を作り出せるはずが、現状はどうだろうか。
「ようやく気づきましたか。当たらない上で、立てない場所目掛けて攻撃させればいいだけのことです。」
最初の攻撃で出来ていた『漆黒の虚無』もいつの間にか無くなっている。ミュリエルを追い込み、虚無に乗って一気に畳みかけようと考えていたクライング・ジェネシスの目論見は崩れていた。
「それなら躱せない量の『過去』で圧し潰すまでだァ! 俺の恨みを思い知れェッ!!」
クライング・ジェネシスの『骸の海発射装置』が、さらに多くの『過去』を撃ち出す。まるで天へと注ぐ黒い雨の如き『過去』をミュリエルは縫うように躱し、避けきれないものは盾で受ける。
「世界もパンダも猟兵も、全部この骸の海で飲み込んでやるよ! ギャーッハッハッハッ!!」
クライング・ジェネシスの哄笑を耳に、ミュリエルはタイミングを計っていた。もうすぐ訪れる、反撃へと移るその時を。
「パンダすごくかわいいじゃん! モノトーンでおしゃれだよ!」
クライング・ジェネシスの骸の海発射装置に弾丸が雨あられと撃ちこまれる。自分の過去を振り切った鈴鹿が二丁機関銃を絶え間なく撃ちながら駆けてきていた。鈴鹿の接近を上空から把握していたミュリエルも、無論この隙を逃す事はない。
「負けるわけにはいきません。花よ、風よ――」
ミュリエルが放つ【鈴蘭の嵐】がクライング・ジェネシスへと襲い掛かる。鈴鹿の制圧射撃と、ミュリエルの無数の花びらに打たれてクライング・ジェネシスの動きが鈍る。そこへさらにミュリエルが乱れ撃つ矢が降り注いだ。
「ぐ、アァ! まだだ、まだ俺は過去の恨みを晴らしちゃいねェッ!!」
鎧すら貫き通す矢の連射を受け、クライング・ジェネシスが膝をつく。それでも尚、空に舞うミュリエルを睨もうと上げた視線の先に。
「ここまでの軌跡は、過去のぼくには決してないもの、ぼくは決して止まらない、天才だからね!」
接近していた鈴鹿が、撃ち尽くしてオーバーロードした機関銃をクライング・ジェネシスの『骸の海発射装置』の発射口へと投げ入れた。辺りに一際大きい爆発が広がった。
成功
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甲斐・ツカサ
漆黒の虚無、上等さ!
その中にも輝くものがあるんだって見せてあげるよ!
そう、黒と白が入り混じったパンダみたいにね!
『過去』を残像を使って回避しながら、『漆黒の虚無』に【Aby-STerra】の立体映像で星空を投影
そう、漆黒の虚無に煌めく星が浮かび上がれば、そこはもう無限に広がる星の海、お前の為の舞台じゃなくて、オレが大好きな景色さ!
漆黒の虚無改め立体映像で出来た星の海
そこを駆ける為の【Ray-GuSTAR】を縦横無尽に走らせて、星の海を広げていこう!
見渡す限りの星の海に立って、オレの手にも六×六の星の輝き!
この世界だけじゃない、渡り歩いた沢山の世界で見た星空を再現するような流星雨を降り注がせる!
爆煙が舞う中、クライング・ジェネシスが立ち上がる。全身に傷を負いながらも今だ消える事なき恨みを糧に、『骸の海発射装置』を稼働させた。目に映るこの世界を護る者すべて、『過去』で叩き伏せる為に。そのクライング・ジェネシスの前に立つは甲斐・ツカサ。
「漆黒の虚無、上等さ!」
残像を残し、放たれた『過去』を躱したツカサは抉れた地面が『漆黒の虚無』へと変わるのにも怯まずに立体映像投影型電脳ゴーグルAby-STerraを起動した。
「その中にも輝くものがあるんだって見せてあげるよ!
そう、黒と白が入り混じったパンダみたいにね!」
ゴーグルが投影するは立体映像の星空。それは漆黒の虚無の中に在ってさえ満天の輝きを映した。ツカサはその星空へと宇宙バイクRay-GuSTARに乗り、駆けてゆく。
「そう、漆黒の虚無に煌めく星が浮かび上がれば、そこはもう無限に広がる星の海、お前の為の舞台じゃなくて、オレが大好きな景色さ!」
その星の海を、そこを駆けるツカサを漆黒に押し潰さんとクライング・ジェネシスは『過去』を放ち続ける。
「今更……輝くものなんざ、俺には無いんだよ! 俺の世界にはなァッ!!」
『骸の海発射装置』が限界を超えて酷使され、耳障りな音を上げて火花を散らす。クライング・ジェネシスの猛るままに数多の『過去』が降り注ぐように放たれた。
「この世界だけじゃない。」
一面に広がった虚無に星空を映し、ツカサが駆ける。其の手に在るは星々の輝き。ヒーローズアースで見上げる星空とは異なる輝きも交じり、広がってゆく。
「渡り歩いた沢山の世界で見た星空を再現するような流星雨を降り注がせる!」
見渡す限りの星の海に立ち、【輝き疾れ、六×六の星(ステラ・ジクシス)】の輝きがツカサの手から放たれる。星々の輝きは希望の光に似て、顔を上げぬ者には見えぬ煌き。数多の世界に因む色とりどりの光が矢となってクライング・ジェネシスの身体を貫く。世界を恨み、過去に繋がれたその心にも星の輝きは届いただろうか。
ツカサの放った色とりどりの流星雨が止む頃にはクライング・ジェネシスは倒れていた。その勝利は流星の輝きと共に、成都ジャイアントパンダ繁育研究基地を訪れていた人々の心に刻まれた事だろう。こうして、パンダを脅かすオブリビオン・フォーミュラとの戦いは終焉を迎えたのだった。
大成功
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