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柔らかな灯火

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 クスクス、クスクス。
 夜の帳が降りた森の中、少女の笑い声が木霊する。
 クスクス、フフフ。
 少女は笑う。少女は嗤う。
 獣も寄り付かない森の中、少女は嘲笑う。
 なんて哀れなのだろう。なんて惨めなのだろう。なんて滑稽なのだろう。
 可哀想なアナタ。私が全て塗り潰してあげましょう。
 暗い、喰らい、暗闇で。


 既に人がまばらになったグリモアベースの一角。
 各々の日常に、依頼に、出張らってはいるものの飛び込み依頼というのはやってくる。
 グリモアベースに一人のグリモア猟兵がやってくると、それに気付いた者が集まった。
「遅くまでご苦労なこった。ま、知っての通り依頼だ」
 猟兵に一瞥をくれると木詞・真央(f10513)は資料に視線を落とす。
 相変わらずやる気のない身なりだが、わざわざ資料を作る辺り仕事には真面目に取り組んでいるんだな、と。
 猟兵達がヒソヒソと話しているが真央はそれを無視して依頼の話を始めた。
「場所はダークセイヴァーの村、それに隣接する森の中だ」
 予知にあったのは村に大勢の亡者が押し寄せる場面。
 放っておけばその村は亡者の手によって壊滅することだろう。
 しかし、幸いなことに予知のお蔭で亡者が村に辿り着く直前に辿り着くことが出来る。
 亡者は森から現れるので、猟兵達が森から現れる亡者を全て倒せば村に被害は出ない。
 具体的な数は分からないが、少なくとも十数体は現れるとのこと。
 猟兵が戦闘を始めれば亡者は猟兵のみを狙って動くようになるので、意図的に村の中で戦うような真似をしなければ、村に戦火が飛び火することもない。
「亡者に関しちゃそんな所だ。適当に蹴散らしてやれ」
 そこまで言うと、真央はため息をつく。
 その顔は酷く面倒くさそうなものだった。
「ここは辺境の村で近くに領主はいないんだが、面倒くさいのが森に潜んでるみたいだな」
 詳しくは分からないが、と前置き。断片的な予知について語り始めた。
 曰く、その森には吸血姫が潜むと。
 村では昔から森に入ることを禁じられていた。特に女性の立ち入りだけは厳重に。どうしても入らなければいけない時は、複数の男性のみで入ること。
 その決まりは絶対とされ、子供達にも森には吸血姫がいるから入ってはいけないと言い聞かされている。
 だが、どんな時代、どんな世界、そこがどこであろうと規律を守れない者は現れる。
 好奇心に誘われたが最後、少女は吸血姫の末路を辿る羽目になった。
 その民話が実話かどうかは定かではないが、亡者が村を襲うということは亡者を操るものがいるということ。
 ま、亡者を倒しても油断しないことだ、と言いのけた真央に一人の猟兵が質問した。
 その吸血姫になった少女は助けられないのかと。
 静まり返る一同に対し、気怠げに目を細める真央。
 それは必要な情報なのか、助けてどうなる、戦闘に関係ないだろ。
「……知らん。俺は知ってる情報を提供するしてお前らを運ぶだけだ。その先は好きにやれ」
 少女を助けられるとは言わない。だが、助けられないとも言わない。
 そんな真央の言葉に猟兵達は各々納得して頷いた。
「蛇足は入ったが戦闘概要はそんな所だ。詳しい情報は後で資料を確認しとけ。お前らにはもう一つやってもらうことの説明をしなきゃならない」
 それは村を救った後の事。
 一先ずの脅威が取り除かれた村には暫くの平穏が訪れるだろう。
 今後の為に村の復興を手伝い、それを以て今回の依頼を締めくくれというのだ。
 真央の言葉に猟兵達は活気づく。人々を救い、笑顔を取り戻してこその猟兵だ。
「はしゃぐのはいいが、ちゃんと敵を倒してからにしろよ」
 ふあっ、と、大きな欠伸をする真央の言葉でブリーフィングは締めくくられた。


天路
 皆さんこんにちは、始めまして、天路です。
 今回はダークセイヴァー世界でのシナリオとなります。
 皆様の活躍を期待しております。

●シナリオ補足
『1章 集団戦 篝火を持つ亡者』
 特筆すべき事はありません。
 複数の亡者が出現するので蹴散らしましょう。

『2章 ボス戦 ゼラの死髪黒衣』
 森に潜む黒衣の吸血姫(吸血鬼)です。
 本体は黒衣の方で、取り憑かれている少女はただの村人です。
 依頼の成否に少女の生死は関係ありません。
 結末は皆様のプレイング次第です。

『3章 日常  救われた者達』
 一先ずの脅威が去り、村人達は猟兵に感謝することでしょう。
 村人達は猟兵の申し出を快く受け入れてくれるので、
 復興の手伝い、子供達と遊ぶ、何か行事を行う等など。
 村の近くには川もあるので灯篭流し等をしてもいいかもしれません。
 どうか皆様にとっても良き思い出となる一幕に。

 日常部分はお友達をお誘いの上で参加されることをオススメします。
 村の復興に関わらずに遊びに来られるだけでも村人の活力へと繋がります。

 また、木詞・真央(f10513)も村に滞在していますが、どなたかにプレイングでお誘いを頂かない限りどこかで寝て過ごしています。
 誘われた際は復興の手伝いや話し相手、プレイングの内容に沿って行動します。
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第1章 集団戦 『篝火を持つ亡者』

POW   :    篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ザッ、ザッ。
 素足で土を踏み締める音。
 名前を無くした亡者が進行する。
 掲げる篝火の先に見ゆる村。
 かつてその村で過ごしていた記憶はもうない。
 あるのは命令だけ。
 
 ――村を滅ぼせ、人を駆逐しろ。
メリー・ユメノコウジ
「村の人たちのためにもなんとか亡者は倒さないとですね。」

基本は他者がいれば連携するように援護を優先。
【おびき寄せ】を使用しなるべく1対1か敵が多くならないように引き剥がす。
【高速詠唱】使用し召喚しためぇめぇさんを体当たりさせようと試み。
「もっふもふのめぇめぇさんですよ~♪」
亡者が増えるとあわあわしつつ回避の時は【野生の勘】や【祈り】を使用
怪我人など周りに注意を払う。

「な、なんとか倒せた、のかな?」
最後にキョロキョロ周りを見渡して大丈夫なのかは確認する。


山田・真尋
うーん…割としんどそうな依頼だにゃあ。
でも、亡者は土に還さないといけないにゃよ。

まずは村に到着次第、終わるまで村人が外に出ないように釘刺すにゃ。
助けが来た安心感から、変な行動を取る人もいるしにゃ。
様子を見に来る可能性が高いのは少女の血縁かにゃあ。気になるもんにゃあ。
でもぐっと堪えて村の中で待ってくれにゃいかと頼むにゃ。

戦闘は、森から出てくる亡者をばっさばっさ真打・尋兼で斬っていくにゃ。

一度に複数が出てきた場合は【練成カミヤドリ】で速攻で倒すように心がけて、囲まれない立ち回りをするにゃ。
森の中にまでは入らないにゃよ。




 猟兵達が現地の村に辿り着くと、村の入り口で何人かの村人が周囲を見回していた。松明の明かりに照らされるその顔は一様に不安や焦りの感情が色濃く出ている。
「みんにゃ、こんな時間に外に出てちゃ危ないにゃよ?」
 その様子を見ていた山田・真尋(妖刀のヤドリガミ・f10961)が村人に話しかけた。これから村の近くで戦闘が始まる。間違って近づかないよう釘を差しておこうと。
 そんな真尋の登場に村人達は驚き半歩後退る。こんな時間、辺境の村に何の用かと。常ならば警戒されていただろうが今は事情が違った。
 村人は顔を見合わせ、一人の女性が前に出て真尋に話しかける。
「あの、旅のお方。村に来る途中女の子を見掛けませんでしたか? 私の娘なのですが、今朝家を出たきり帰ってこないのです。村の中や近隣の川まで探したのですが見当たらず……もしかしたら、一人で森に……」
 次第に女性の声は震え、ついには顔を覆って泣き崩れてしまった。一人の男性が寄り添うようにして宥めているが、周囲の村人が向ける憐憫の眼差しには、どこか諦めた様子も見受けられた。
 『曰く、その森には吸血姫が潜むと』
 一同の脳裏にそんな言葉が蘇る。
「にゃはは、そういう事ならうちらに任せるにゃ!」
 そんな村人達の鬱屈とした空気を破ったのは真尋だった。
 どんと胸を張り、笑みを浮かべる。
「いきなり現れたうちらを信用しろとは言えにゃいけど、どうか今は自分達の身の安全を考えて欲しいにゃ。頼むにゃ」
 真尋の言葉に再び村人達は顔を見合わせて相談をする。
 実際、旅の人間がいきなり何を言っているんだと訝しみはしている。だが、既に辺りは夜の闇に包まれている。こんな状態では捜索も行えないどころか獣に襲われるかもしれない。
 それを分かっているから、村人達はお願いします、と猟兵達に頭を提げてそれぞれの家へと帰っていった。少女の母親も何か言いたげではあったが、これ以上村に迷惑はかけれないからと引き下がる事を了承した。
「しんどい依頼になりそうにゃあ」
 素直に従ってくれた事に安堵する真尋だが、先の事を考えると楽観はできない。
 その視線は自然と森へと向けられた。

 暗い暗い闇の世界。木々が生い茂るも生気が見られない深い闇。
 そこには、ぽつぽつと、揺ら揺らと。
 木々の隙間から橙色の明かりが浮かび上がっていた。


「村の人たちのためにもなんとか亡者は倒さないとですね」
 亡者なんて見た日の夢見は最悪極まりないだろう。
 せめて夢の中だけでもいい思いをして欲しい。
「そんな訳でよろしくお願いしますね? もっふもふのめぇめぇさんですよ~♪」
 彼女の高速詠唱によって召喚されたのは、文字通りもっふもふのめぇめぇさん、羊そのものであった。
 メリーが近くの亡者に杖を向けて指示をすると、めぇめぇさんはめぇ~と鳴き声を上げて亡者にタックルをかました。
 柔らかくふわふわな外見とは裏腹に、中々の勢いがあった突撃に亡者は為す術なく吹き飛ばされる。亡者の耐久力が元々低いのか、はたまためぇめぇさんの一撃が予想以上に強力だったのか。めぇめぇさんに吹き飛ばされた亡者は一撃を受けただけで灰となり、風にかき消されていった。
 だが、まだ亡者を一体倒しただけ。
 森からは次から次へと別の亡者が現れてくる。
 増える亡者にメリーはあわあわと逃げ出した。
 野生の勘に従って逃げ出したメリー。その背後には新たな亡者が突如として現れていた。逃げ出すのが遅ければその手の篝火に焼かれていたことだろう。
 走るメリーが逃げまとう子羊に見えたのか、数体の亡者達がおびき寄せられる様に集まってきていた。
 戦場に響く鳴き声二つ。めぇめぇ、にゃあにゃあ。
 そこに颯爽と飛び込んできたのは真打・尋兼を構える真尋だ。
「さぁ、土に還るにゃよ!」
 一振り、二振り、三振り四振り……計十一の剣戟が同時に複数の亡者を襲った。
 真尋が刀を一つ振るえばバサリと亡者が斬り伏せられる。それは錬成カミヤドリによって生み出された刀も同じ。亡者の肉を、骨を、刃こぼれ一つさせずに切り裂いていく。
 その隣でメリーもまた反撃に出ていた。
「せめていいゆめを見るめぇ。お願い、めぇめぇさん!」
 羊を数えて、さぁ夢の世界へ。
 襲いかかってきた亡者は灰となり、そこには残された篝火に照らされる二人の姿。
 「な、なんとか倒せた、のかな?」
 メリーはキョロキョロと周囲を見渡すが、もう動くものは見えなかった。
 ホッと一息をつくも、遠くではまだ戦いの音が響いている。
 どうか皆無事でいますように。祈りを胸に、二人は次の戦場へと走り出す。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

寧宮・澪
んん、少女は……助けたい、ですよー……。
その前、の前哨戦、頑張りましょかー……。

亡者達には、【鈴蘭の嵐】をー……。
どうぞ、綿津見に、お帰りなさい……そんな、【祈り】、込めて……。
【戦闘知識】で、群れの弱い部分、狙いますよー……。

こちらへの攻撃は、【オーラ防御】で軽減したりー、【見切り】で、避けたり。
森の【地形の利用】、で、木の影に隠れて軽減、とか。

さっさと倒して、女の子、助けに行きましょね……。

アドリブ、連携お任せですよー……歓迎です。


月上・まめこ
まめこ達にできることは、目の前の敵を蹴散らして、つかの間の安寧をあげることだけ。
……もどかしいよ、まめこ達はこの村の人たちを常に守っていられるわけじゃない。
仮初の未来への展望しかあげられないんだ。

数が多いなら数で対抗した方がいいよね、【エレクトロレギオン】で数を補うよ。
影に触れないように。難しいけれど、気をつければやれない事はないってまめこは思う。
【新たなる亡者】で増援されるならまめこはそっちを潰して回るね。
必要ならまめこ自身も『compression』で捻り潰すよ。ある程度は【怪力】でどうにかできると思うけど、無理なら味方に助けてもらうしかないね……




 次から次へと、亡者は這い出てくる。
 それは森から、影から、土から。
 一纏まりでいる限り、亡者は次の亡者を生み出していく。
 ならば、その全てを包んでしまおう。
 ここは現世。常世の住民がいつまでも居てはいけない。
 たとえそれが自らの意思でなくとも、ただ自らの場所に還ろうとしているだけでも。
 お帰りなさい、綿津見へ、在るべき場所へ。
 響く旋律は、誰の為。
 燦めく鈴蘭の花が舞う。悲しき亡者の魂を導くため。
「あの少女は、助けたい、ですよー……。ですので、どうぞ皆さん、お眠りなさい……」
 ぼんやりと、だが澄んだ声で。寧宮・澪(澪標・f04690)は謳い上げる。
 想いは祈りに。詩は力に。
 謳匣を通して響く歌声は、亡者に、連なる魂に。
 そしてこの場にいる猟兵に。
「まめこ達に出来ることを、やれることを!」
 物言わぬ躯となった亡者を月上・まめこ(できない子・f03007)は両の手で捻り潰す。
 蒸気機構に巨大な鉤爪を備えた”compression”で潰された亡者は、サラサラと、砂のように手をすり抜けては鈴蘭の花と共に空を舞う。
 きっとこの行為に意味はない。いくら目の前の敵を倒して、その先につかの間の安寧が訪れても、それは仮初の未来。
 常に守っていられる訳じゃない。もどかしい思いに下唇を噛みしめる。
「大丈夫、ですかー……?」
 ほわほわとした澪の声に、まめこはハッと我に返り。
「ごめんなさい、まめこは……わたしは大丈夫です!」
「感傷も、程々に……。さっさと倒して、女の子、助けにいきましょね……」
「はい!」
 澪の言う通り、感傷に浸ってる時間はなかった。
 まめこ達が居たのは森の入口。奥から次の亡者達が襲いかかってきていた。
 増援に対して咄嗟にまめこは、何十体ものエレクトレロレギオンを召喚する。
 数には数を、進軍してくる亡者の群れに対してこちらも機械の群れで対抗した。
 亡者の振り回す篝火にレギオンは為す術なくやられていくが、まめこもそれは承知済み。
「そーれ!」
 まめこは掛け声と共にcompressionを大きく振りかぶった。
 そして力任せに振るわれる鉤爪の鋭い一撃は亡者の体を容赦なく捉える。それはまるでシュレッダーにでも掛けられたかのようで。たった一撃で細切れにされた亡者はべちゃりと音を立てながら地面に躯の山を築いた。
 亡者が灰となり消えるのを見向きもせず、まめこは次の亡者もまたその手で引き裂いていた。
 それが三体目に差し掛かった時だ。
 力任せに振るった一撃が亡者に回避された。ならばと両の手で包むように繰り出した一撃もまた、亡者とは思えぬ動きで回避された。
 こちらの動きが読まれている?
 篝火によって生まれる影。影を生み出す篝火は周辺に幾らでもある。何より亡者は森を背にして奥から現れているのだ。その為亡者の影に混ざるように木の陰も伸びており、いくら警戒をしていても見えない影が生じてしまう。
 そう、気づけば敵の術中。まめこの動きは完全に敵の亡者に読まれていた。
 普段通りのまめこであれば気づけていたかもしれない。故に、この僅かな気持ちの揺らぎが戦況を左右する。
 身を守ろうとレギオンに指示を出すが、既に喚び出したレギオンは残っておらず。
 せめて少しでも護りを固めようと、篝火から放たれた炎と自分の間に鉤爪を割り込ませたのだが。
「こちらへ、どうぞー……」
 木々の間で長い棒は取り回しが悪い。澪は森の中という地形を上手く利用して敵の攻撃を見切っていたのだ。
 そのお陰見で澪はまめこの危機を危なげなく救うことに成功した。
 そしてヒラリ、またヒラリと、鈴蘭の花弁を舞わせながら澪が動く。
 今一度、綿津見へ誘おう。
 鈴蘭の花が亡者を取り囲むのに合わせ、まめこも飛び出す。
「まめこだって!」
 蒸気機関と魔導の融合。出力を上げた鉤爪が、駆動音を轟かせながら単純な腕力では出せない速さで振り抜かれる。
 片や詩の旋律と花弁が。
 片や蒸気機械と怪力が。
 相反する二つの音で戦場を支配し、鎮魂曲となり亡者を見送っていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アドルファス・エーレンフリート
「亡者、亡者か 滅ぶべき時を逸したか 見るに堪えん、介錯を承ろうではないか」
「灰に還れ、地に還れ、輪廻へ還るのだ」

概要
得物たる鉄塊剣に【炎血付与】にて地獄の炎を付与しまっすぐ行って焼き潰す、アウトレンジの敵には【ブレイズフレイム】を飛ばし、精密な一撃を要するのであればマスケット銃でスナイパー
私はここにいるぞと、目立つように音や光を撒き散らして暴れる

補足
あまり血を使いすぎても後が辛い、代用品である【揮血精髄】を触媒にして炎を喚ぶ


アルトリンデ・エーデルシュタイン
無力な民を虐げるのもですが、静かに眠るべき者たちをも彷徨い戦わせるのは看過できません。彼らに今一度、安らかな眠りを。

夜ともなれば闇で視界も狭まり味方同士の連携もしにくいでしょう。本来の使い方ではありませんが、生まれながらの光をあたりに飛ばして皆さんの戦闘の一助とできれば。無論、怪我をした方が居れば聖なる光で癒します。
御旗を掲げ皆さんを鼓舞しながら私も戦います。悪しき力に囚われた者には破魔の力持つ聖剣で。私の祈りが天に届くならば、この者たちに安息を与えん事を。
囲まれたとしても慌てずに。剣や斧槍で受けながら、纏めて払える位置まで下がりつつおびき寄せてなぎ払います。




「亡者、亡者か。滅ぶべき時を逸したか。見るに堪えん、介錯を承ろうではないか」
 自らの獲物たる十字大斧鉄塊を肩に担ぎ、迫る亡者にアドルファス・エーレンフリート(立てば胡乱げ 座れば不審 歩く姿は白々しい・f07048)が啖呵を切る。
 その佇まいは正しく戦士のそれだ。
 ニヤリと笑う口元、どこか胡乱な語気、何より本人から醸し出される雰囲気。
 それらが彼を戦士と呼ばせないでいた。
「ええ、この様な行いは到底看過出来るものではありません。御旗のもと、今一度彼らに安らかな眠りを与えましょう」
 対してアルトリンデ・エーデルシュタイン(神なき祈り・f00243)は聖職者然とした態度。
 死者を冒涜するような行いを咎めるべく、悲しき亡者に光り在れと、祈りを捧ぐ。
 迫る亡者を前にアルトリンデは生まれながらの光で視界の確保を試みようとした。
 篝火によってある程度の視界は確保出来ているものの、まだまだ足元は覚束ない。
 この場で戦う者達の助けになれば、と、光を掲げようとしたアルトリンデをアドルファスが手で制した。
「そういう事なら私に任せてもらおう。焼かれながら斬り潰される、気に入っていただければ良いのであるが」
アドルファスが揮血精髄を使って十字大斧鉄塊に血液を纏わせる。鉄塊を染め上げた血液は次第にパキ、パキ、と音を立てながら火花を散らす。ご照覧あれ、と掲げれば。纏われた血液は瞬く間に燃え上がり、鉄塊は業火となる。
 その激しすぎる炎は周囲を十分過ぎる程に照らし、亡者の影を全て後ろへと追いやっていた。
 あまりに豪快な手口にアルトリンデは目を丸くしていたが、お蔭で自分は体力を消耗せずに戦いに挑むことが出来たのだ。ならば前線で剣を振るおう。この祈りを胸に、亡者に安息を与えよう。
「灰に還れ、地に還れ、輪廻へ還るのだ」
「その行く末に光り在れ、私が導いてみせます!」
 二人の働きは正しく一騎当千。
 アドルファスの大立ち回りは亡者の注意を大いに引いていた。
 雑になぎ払い、雑に焼き尽くす。介錯を承るの言葉に偽りなく、その大味な火力は亡者に苦しむ隙きを与えることなく灰燼へと帰していた。
 そしてそれに追従するアルトリンデもまた、聖剣『エクスシア』によって悪しき呪縛に囚われた亡者を浄化していた。
 聖剣が宿すは聖霊の祝福。その輝きは陰ることなく、破魔の力を持って穢れた魂を清浄する。
 亡者が新たな亡者を生み出そう物ならアルトリンデが。
 亡者が篝火から火を放とうとすればアドルファスが。
 二人の有無を言わせぬ連撃が為す術なく亡者の群れを屠っていく。
「ふむふむ、実に痛快である。アルトリンデ君との戦いには、自然と気分も高揚してくるネ!」
「……ありがとうございます。高揚し過ぎて森だけは燃やさないでくださいね」
 ピタリと嵌った連携にアドルファスは気を良くして話しかける。
 そういうつもりで鼓舞していた訳ではないのですが、と言いたいところだったがアルトリンデは口を噤む。
 勇気づけ、立ち上がらせる。士気を上げて迷わず突き進め。決して調子付かせる為の鼓舞でない。
 それを言わなかったのは、アドルファスが決して巫山戯てはいなかったから。
 周囲を取り囲むようにしていた亡者に対して、背中合わせになった二人は同時に腕を横に薙ぎ払う。
 片や切り裂いた腕から地獄の炎を放って亡者を焼き尽くし。
 片や聖別された銀のグレイブを持って亡者の邪を祓う。
 二人の周囲を灰となった亡者が空を舞い、静寂が訪れた。
 アルトリンデは静かに祈りを捧げると、アドルファスに向き直った。
「癒やしを施しますので傷を見せてください。これで終わりじゃないんですから、無理をしてはいけませんよ」
「これはこれは。いやはや、アルトリンデ君は正しく聖職者の鏡であるな」
 相変わらず軽薄なアドルファスをやれやれと思いつつも、その傷を聖なる光で癒やしていく。
 
 亡者の殲滅まであと僅か。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュカ・エンキアンサス
…ふうん。
死人が蘇るなんて、幸せなのかそうでないのかわからないね。
でも生者を脅かすのはいただけない。この世は、生きてる人のためのものだよ

というわけで亡者の集団を見つけたら戦闘体勢。
可能なら【地形の効果】を利用して、バイクで近くまで寄るけれども不利になりそうだと判断したらこだわらずに降りて近寄るよ
そして問答無用で発砲する
知り合いの亡者とかなら、ちょっとは遠慮するかもしれないけれど。俺に走らない人だからね
いや…知ってても遠慮しないか。もう死んでるんだし
まあ、絶望の福音も駆使して囲まれないように移動しながら数をこなす。どちらかというと倒すよりも援護射撃がメイン。かっこいいところは人に任せる
柄じゃない


クリス・ホワイト
【WIZ】
村に伝わる伝承というべきか、なかなか興味深い話だね。しかし真偽がどうあれ、脅威は退けなくてはいけないものだ。僕も微力ながら、手伝わせてもらおうかな。

それにしても、亡者か。
死してなお眠れないとは、悲しい存在だね。彼らに優しい眠りが訪れないのなら、僕たちが眠らせてあげるしかない。
新たな亡者が生まれないよう、3つの魔力で自身を強化してから周囲の亡者を【過ぎ去りし花燭】で一掃させてもらうよ。そうすれば、少しはみんなの手助けになるだろうからね。

(連携、アドリブ歓迎)




 ――ブォン!
 
 この世界に似つかわしくない音を響かせながら、正面にいる亡者を蹴散らすように発泡してリュカ・エンキアンサス(人間の探索者・f02586)は現れた。
「後少しで亡者達を一掃できる。手を貸そう」
 バイクの機動性を活かして戦場を見て回っていたリュカは、戦いが終わりに近づいているのを感じ取り、自らも戦線に降り立った。
「そのようだね。僕も微力ながら、手伝わせてもらおうかな」
 シルクハットを被り直してクリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)はステッキを構える。
 煌めく剣戟、澄み渡る旋律、燃え上がる業火。
 各戦場が優勢なのは聞かなくとも分かるだろう。
「伝承が真実か偽りか。実に興味深いが、その前に君達には退場してもらわないといけないね」
「うん。今を生きてる人の為にも、死人が蘇るなんてのはいただけない」
 故に亡者は全て倒させてもらう。
 リュカのアサルトウェポンが開戦の号砲を告げた。
 銃弾は容赦なく亡者の体に浴びせられていく。
 肩を抉る。指を吹き飛ばす。腹に穴を開ける。腕を、足を、頭部を粉砕する。
 装填していた弾を全弾撃ちきって一体の亡者を完全に行動不能へと追い込んだ。
 これは赤の他人。既に死んだ人間。だから遠慮する必要もないし、現に今、何の躊躇いもなく引き金を引くことが出来た。
(もしもこれが知り合いだったなら、俺は……いや、関係ないか。これは既に死体、誰でもない)
 雑念を振り払い、味方を援護すべくリュカはクリスの方へと向き直る。
 クリスは三種の魔法陣を展開して、三つの魔力を取り込み自身を強化した。
 篝火から放たれる炎はクリスの小さな体躯を包むには十分過ぎる大きさを持っている。当たれば一溜まりもない炎を、クリスは緩やかに、しかし危なげなく。衣服を乱さない最低限の動きで炎を躱してみせる。
「眠れない時は羊を数えるといいと聞く。どうだね、君達も数えてみるかい」
 クリスのステッキが指したのは戦場の一角。そこでは喚び出された羊が亡者に突撃する姿が見受けられた。
 何も本当に羊を数えて眠ることを期待していた訳ではない。ただ、もしも言葉が通じるのなら。何か少しでも、彼らの気持ちを鎮めることが出来るではないかと。
 そんな思いも虚しく、亡者は呻き声のようなものを上げるだけで他の戦場には見向きもしなかった。
「意思すら持たず肉体を操られている、か。悲しい存在だね」
 押し付けられる篝火に動じることもなく、亡者の腕に取り付くバイカウツギの花弁がその動きを抑制した。
 それはいつの間にかクリスの手を離れていたステッキで。彼の毛並みと同じく気品な白い花弁となり織りなされる花燭。
 すると別の個体が動きを封じられた亡者の影から現れた。
 暗闇に紛れた完全な不意打。この場にいたのがクリスだけなら或いは。多少の手傷を負わせることも可能だったかもしれない。
「絶望の福音……悪いけど既に未来は見てきたよ。残念ながら、亡者にもたらす福音はないようだ」
 リュカの放った弾丸は影から現れる亡者の位置を正確に予測していた。
 未来を見てきた。言葉の通り数手先の未来を見たリュカは、亡者が攻撃を仕掛けてくる場所を前もって攻撃することで、その攻撃を”回避”したのだ。
 リュカの援護射撃にクリスがシルクハットを軽く持ち上げ会釈する。後はご自由に、と銃口を逸らしたリュカに対し、フフリと笑みを浮かべるクリス。
「お気遣い感謝する。さて、これが最後となるが……君、花は好きかい?」
 問に答えはいらない。
 白い花弁が亡者を包む。
 優しく、眠りに誘うように。
 もう誰にも起こされないよう、在るべき場所へと案内しよう。
 過ぎ去りし花燭と共に。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『ゼラの死髪黒衣』

POW   :    囚われの慟哭
【憑依された少女の悲痛な慟哭】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    小さな十字架(ベル・クロス)
【呪われた大鎌】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    眷族召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【眷族】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 亡者による村への進軍を制した猟兵は森へと入った。
 微かな月明かりだけが森の中を照らす。
 右も左も分からない。
 だが、確かに聞こえてくる声がある。

 ――クスクス、クスクス

 幼い少女の笑い声。
 その声を頼りに走る猟兵達はついに辿り着いた。
 開けた森の広場。
 そこでは月明かりに照らされた一人の少女が笑みを浮かべている。
 黒い装束に大鎌を携えて。
 微かに覗かせる肌は病的に白かった。
 身構える猟兵達を前に少女は嘲笑う。

 ――この子は渡さない、アナタ達も帰さない

 母親に贈る花を摘みに来た優しい少女。
 その身は囚われ、吸血姫へと染まりつつある。
 可哀想に、可哀想に。
 嘲笑い歪んだ笑みを浮かべる少女の頬を、一筋の涙が伝った。
メリー・ユメノコウジ
「なんとか助けたい…そのために力を尽くすです。」
助けられる命を散らす必要はない。
【世界知識】等から似た事例がないか巡らす。
基本は味方との連携と援護、怪我人がでないかを重視。
眷属召喚されれば【おびき寄せ】で確実に1対1の状況へ、不利な状況は避ける。
回避には【第六感】【野生の勘】を働かせる。
攻撃には【高速詠唱】で召喚しためぇめぇさん使用
その際、可能な限り弱体させ引き剥がせないかは常に念頭に置く。
「もっふもふのめぇめぇさん、お願いするのですよ…!」

「私達が貴方を助ける…だから、貴方も諦めないで…!」
己の怪我よりも少女を助けたいという【覚悟】を胸に神へと【祈り】
語りかけ続けます。


アルトリンデ・エーデルシュタイン
か弱き少女一人を救えずして何が猟兵か。
オブリビオンを倒すのが第一だとしても、少女は助けます……絶対に。
ですから今しばらく辛抱してくださいね。

まずはその黒衣を何とかしなくては。相手の攻撃を斧槍での武器受けで弾きながら、聖剣で少しづつ黒衣を切り裂いていきます。焦りは禁物、少女に大けがをさせないように気をつけながら慎重に見極めましょう。
眷属が現れたら、少女を巻き込まないよう少し引いてなぎ払います。

少女が大けがを負った場合や少女の体力の消耗が激しい場合は生まれながらの光をかけて命を繋ぎます。
少女の心が負けないよう鼓舞しながら、全力を尽くします。
我が祈りは此処に。大丈夫です、貴女を見捨てたりはしません。




『あらあら、随分と大勢でいらしたわね。こんな時間にピクニック? それともお茶会かしら?』
 少女は楽しそうに問い掛ける。
 その表情からは酷く愉しげな様子が見て取れる。
 子供のように、無邪気に、純粋に。自分の行為に一切の疑問を持たない無垢な笑みだ。それが”少女”のものなのか”吸血姫”のものなのか。
「なんとか助けたい……そのために力を尽くすです」
「オブリビオンを倒すのが私達の務め。だとしても、それは少女を助けない理由にはなりません」
 人一倍少女を救ってみせると意気込むメリーとアルトリンデ。
 それは猟兵だからではなく、一個人として見過ごせない。直接頼まれた訳ではないが、少女が望んで吸血姫に囚われた訳ではないのなら、身を削ってでも助け出す。
 少女を前に、今一度自らの胸に覚悟を懐き、信仰する神に、そして自分自身に祈りを捧げる二人。
 その様子の何がおかしかったのか、少女はクスクスと笑う。
『随分と”この子”の事を気にしてるみたいねぇ。もしこの子に何かあったら、どうされちゃうのかしら?』
「もしもは起こり得ません。その子は私達が助けます。だから”貴女”も諦めないでください!」
 吸血姫ではなく囚われた少女への言葉。そこに少女の反応はない。あるのは吸血姫のニヤリと笑う顔だけ。
『フフフ……フフフフ。助ける、諦めないで……ああ、素晴らしいわ』
 少女がその場でくるりと回り、ドレスの裾を翻すかのように、黒衣を舞わせた。
 フワリ、と浮かんだ裾が地面につくと、少女は持っていた大鎌の刃を自らの腹部に押し当てる。
『じゃあ、こうしたらどうなるのかしら?』
 ずぶ……刃がゆっくりと、少女の腹部に押し込まれた――かのように見えた時だった。
「いくのですよ、めぇめぇさん!」
 闇夜を疾駆する白きもふもふが、その大鎌を持つ手を弾き飛ばした。
 高速詠唱によって喚び出されためぇめぇさんは、油断している少女の隙をついて攻撃を防いだ。
 それだけでなく、めぇめぇさんは黒衣に噛みつき少女から引き剥がそうとする。
 そう、メリーは依頼前にグリモア猟兵が助けるなと言わなかった事を思い出していた。
 他の似たような事例からの憶測。一般人に取り付くタイプのオブリビオンは他にも発見されている。その中にはオブリビオンさえ取り除けば助けられたという事例もある。
 今回も同じケースならば、多少手間が掛かっても助けられる可能性がある、そういった予知を見ていたから否定をしなかったのではないか。
 それを確かめるべくメリーはめぇめぇさんに黒衣を引き剥がすように命じたのだ。
『ちょっと、家畜の分際でやめなさい!』
「それは貴女もです吸血姫!」
 メリーの意図を理解したアルトリンデが聖剣を振り抜いて黒衣の裾を裂く。
 めぇめぇさんに纏わりつかれて自由に動けなかった少女は、裾を裂かれてビクリと体を震わせた。
 纏わりつくめぇめぇさんに苛立ちが募り、大鎌の柄で弾き飛ばそうと振るったものの、メリーの指示で距離を取って難を逃れる。
 続けてアルトリンデは聖剣を振るう。大振りな大鎌で剣の相手は困難だろうと。
 その判断は正しかったようで、アルトリンデの振る聖剣は防戦一方の少女の黒衣に着実に切り傷を残していく。
『くっ、助けるって言いながら剣を向けるなんてどうかしてるわ!』
「剣を抜かずに救えるのであればそうしましょう。ですが、貴女から救うには剣が必要そうですから、ね」
 大きく横払いに振り抜いた聖剣を少女は後ろへ飛び退いて回避した。
 だが、そこには既にメリーとめぇめぇさんが待ち構えており。
「私達が貴方を助ける……だから、貴方も諦めないで……!」
 私達だけではなく、貴女の力も貸して欲しい。
 諦めない想いを、私達が繋いでみせる。
「もっふもふのめぇめぇさん、お願いするのですよ……!」
 自らの想いを託して、めぇめぇさん渾身のタックルを少女へとお見舞いした。
 聖剣による切り傷とめぇめぇさんのタックル。
 ゆっくりとした動きで起き上がった少女の顔に笑顔はなかった。
 不機嫌で、不貞腐れて、苛立ちを隠さない。
『私はね、もっと絶望した顔が見たいの。怯えて恐怖に震える姿が見たいの。この子みたいにね?』
 少女が地面にある自らの影を、大鎌で切り裂いた。
 切り裂かれた影は血飛沫を上げ、周囲の地面に影を撒き散らす。
 影からは少女と同じ外見をした眷属。
 同じ大鎌を持ち、同じ黒衣に身を包み、顔だけが影に塗り潰されていた。
 影から無数に現れる眷属に二人は思わず慄く。
 その様子に少女の頬が緩む。

『ああ、そうよ。そういう顔が見たかったの。ねぇ、もっと遊んで頂戴?』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



 一発の銃声が少女の笑いを撃ち破る。
 白い花弁が道案内となり囲まれた猟兵を逃がす。
 この物語を悲劇で終わらせないために。
クリス・ホワイト
【WIZ】
事実は小説よりも奇なり、とはいうけれど……奇しくも民話は実話であったようだね。
親元へ帰ることすらできないなんて、ひどい話じゃないか。
彼女を救いたいという猟兵がいるならば、その助力くらいはしたいものだ。けれどそれは、決して容易なことではないのだろうね。

僕にできることとすれば、召喚された眷属が皆に悪さを働かないよう、端から消していくことくらい。
【エレメンタル・ファンタジア】で【花の竜巻】を起こせば、眷属もまとめて消せるかもしれないね。
【全力】で使えば少しやりすぎてしまうかもしれないが、そこはまあ、許しておくれよ。

(連携、アドリブ歓迎)


リュカ・エンキアンサス
バイクから降りて身を隠し、銃を狙撃用のものに変える
はなれたところから照準を合わせる
おそらく。猟兵たちは説得しようとするだろう
温かな言葉をかけるだろう。
だからそれでも説得が不可能であると。ほかの者達の身が危険だと、感じたときにはためらい無く撃つ。それが仕事だから。
そのまま遠距離からの射撃でほ屠れればそれでいいけれど。無理そうなら普通に戦う

もし万が一、彼女が俺の目の前にいて声をかける機会があったら?……そうだね
まずはキミの名前を聞こう
それからその名を呼ぼう
帰っておいで。お母さんがきっと待ってるよ。と、
そう伝えよう
帰る家があるのは大切なことだから。
それは当たり前のように見えて……とても尊いものだから




 優しい言葉を掛け、頼もしい言葉で励まし、そして救ってみせよう。
 でも、駄目だったら?
 そのせいで仲間が危険に晒されたら?
 リュカはバイクを台座代わりにして狙撃用のアサルトウェポンを構える。
 茂みの障害をクリアしたリュカの目には、広場で戦いを繰り広げる仲間と少女の姿が写っていた。
 救出が失敗に終わったなら自分がこの引き金を引こう。わざわざ優しい彼らに重荷を背負わせることもない。
 そう思って様子を伺っていた。案の定一筋縄で救出は成功しない。
 少女が生み出した眷属に囲まれた仲間。しかし、その顔に諦めの色はない。
 想像以上の眷属に驚いている様子ではあったが、まだ戦う意志は捨てていない。
「この世界は物語の様に甘くない。想いだけで変えれる程、優しくはないよ」
 力を振るうことでしか解決できない問題も出てくる。力無き想いに意味はない。
 それでも想いを胸に戦うというのなら、今この引き金を引こう。
 この物語の行末を見届けるために。

 森の奥から飛来した銃弾は少女の耳を掠めるようにしてフードに穴を開けていた。
 続けて二発目、三発目と銃弾が放たれるが眷属が身を挺して少女を庇う。庇った眷属は力尽きたのか、その姿を霧散させて後ろにいた少女の驚いた顔を覗かせる。
『あらあら、いきなり頭を狙ってくるなんて物騒ね。この子を助けたいんじゃなかったの?』
 リュカに聞こえるようにと発せられたわざとらしい大声に、これが返事だとばかりに銃弾が放たれる。
 それらは同様に眷属に庇われて少女には届かない。
 銃弾が届かないことを悔しがっていると思ったのか、少女は上機嫌に笑う。
『そんなか弱い力じゃ私に傷一つ付けられないよ? 隠れてないでもっと近づいてきたら?』
「ではお言葉に甘えて、一つ助力に参上しようか」
 現れたのは銃弾の主であるリュカではなく、シルクハットを目深に被りステッキをつくクリスであった。
 少女を救う猟兵がいるならば手を貸そうと暗闇に身を潜めていたのだ。
『あら、可愛らしい猫ちゃんね。貴方もこんな所に迷い込んじゃったの?』
「お褒めに預かり光栄だよ。だが、私はその子に用があってね。親元に帰してあげたいのだが、如何かな?」
『それは駄目よ! この子は私が手に入れたの。私の手足としてしっかり働いて貰うんだから』
「それは残念だ。ああ、こんな形でしか導くことが出来ないのが本当に残念だよ」
 クリスの落胆する声は、花の香りの乗った風と共に少女に届けられた。
 それは魔法により起こされた人為的な竜巻であり、花吹雪の舞。精霊が悪戯でもするかのように、現実に幻想を巻き起こす。
 クリスが力を込めれば込めるだけ、竜巻は肥大化していき、遂には地に足をつけていられなくなった眷属を巻き上げてしまった。
 巻き上げられた眷属は自由に動けないだけでなく、風の中を舞う白い花弁に体を切り裂かれている。
 小さな小さな白い花弁だが、その花弁一つ一つに魔力が込められており、それは最早刃と言っても過言ではない殺傷力を持っている。
 当然巻き上げられた眷属は切り傷が増え続け最後には霧散してしまっている。
『ちょっと猫ちゃん、それはおイタが過ぎてよ!』
 竜巻を起こすクリスに斬りかかろうと、踏み堪えていた少女が大鎌を構えた時だ。

 ――それはお前もだ、吸血姫。

 再度響き渡る銃声と共に、銃弾は少女の肩を撃ち貫いていた。
 キミが来るべき場所はこんな暗い森の奥深い場所ではない。
 帰る家も、待っている人もいる。
 それを忘れるな。
 リュカの銃弾に乗せた想いは激痛となって少女の中を駆け巡る。
『アアァァッ!! 一度ならず二度も撃ったな!! お前達本当にこいつを――』
「無論、助けるとも。容易でないのは重々承知。僕は僕に出来るやり方で手伝うまでさ」
 綺麗事だけで済ませられるのはお伽噺の中だけ。
 ここは現実で、物語のように上手くはいかない。
 だが、現実だからといって上手くいかない道理もない。
「君に一つ、ハッピーエンドの条件を教えてあげよう」
 竜巻に更なる力を込めてクリスが言う。
 全力を込めた花吹雪の舞が少女を飲み込むのも厭わずに。
「物語の最後はね、少女の心からの笑顔で締めなければいけないのだよ」
 クリスの瞳に映る涙を流す少女。
 それは君のものだ。君が受けている痛みだ。
 どうか、後一歩。こちら側へと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



 少女は暗闇に泣く。
 助けてお母さん、痛いよお母さん。
 約束を破ってごめんなさい、心配掛けてごめんなさい。
 誰か、お願い、私を――
寧宮・澪
渡さない、帰さない、なんてー……聞けません、よー?
可哀想って、嘲笑うくらいなら……やらなきゃ、いいんですよ。
うん、返してもらいますしー、帰りますのでー。

黒衣だけ倒すんですよねー……。
うまーく、【戦闘知識】、活かして、隙を作れないでしょか……。
【時間稼ぎ】して、他の人が黒衣をやれるように、したいですねー……。

回復は、お任せをー。
【Resonance】で、いっぱい【優しさ】、【祈り】、【鼓舞】、込めて。
少女、助けたい、オブリビオン倒したい。
一緒に、【手をつなぐ】。
皆で帰るんですよー……。
そう想って、【歌唱】しますよー。

攻撃は【オーラ防御】や【見切り】で軽減しましょか。

アドリブや連携お任せですー。


イェルクロルト・レイン
チッ、めんどくせーことに巻き込みやがって
女が死のうが知らねえが、救われたい意志があるなら少しは気張れ
最後まで叫き、嘆き、足掻いてみせろ
こんなクソみてーな世界で生きていきたいなら甘えは無用だ

大鎌を狙って無力化を図る
少女を狙う奴が多けりゃ全力攻撃
女が泣こうが喚こうが、なんとも思わないね
救う気の無い奴らの中で、正義を気取る気はない
どっちでもいいんだ、おれは

器用な真似はうまくいかないだろうがな
多少傷付くぐらいは構わない
鈍い感覚にゃこれぐらい何ともない
喉笛咬み千切る前に終わらせてくれ

死んだなら、それまで
生きたなら、さっさと帰れ
どうせ誰かが面倒見るだろ
必要なら花は持ってってやる




 少女は謳い上げる。
 謳匣を通して森に響き渡る歌声は、旋律は、音色は。
「響いてー……共に、応えてー、鳴りたまふー……」
 それは少女の詩に共鳴した者を癒やす魔法の旋律。
 ここまでの戦闘で少女の体には少なからず傷が与えられている。
 それは必要なものだったとはいえ、このまま放置して事を進めるには痛々しすぎる。
 何よりそれで少女が助けを拒んでしまっては元も子もない。
 精一杯の優しさと、心からの祈りと、皆の想いを込めて。
 澪は歌唱する。
『不愉快……ええ、とても不愉快よ。でも残念ね。貴女いくらこの子の傷を治そうと、貴方達がいくら私を引き剥がそうと、この子と結びついている私を剥がせない限り助けるなんてことは出来ないのよ!』
「チッ、うっせーな」
 面倒なことに巻き込みやがってとイェルクロルト・レイン(叛逆の骸・f00036)は悪態づく。それは誰に向けてか。
「生きたいなら勝手に生きろ。死にたきゃ死ね」
 言いたいことを言ったイェルクロルトはのそり、のそりと少女に近づく。
 下手をすると取り付かれた少女以上に不健康な痩せた体躯に気だるげな表情。
 その体で一体何をするのかと。弱っているとはいえこの様な人間に遅れは取らない。
 大きく振り被った大鎌を、愚直にもイェルクロルトの脳天目掛けて振り下ろす。
 ガキンッ、と到底人の頭を割った時には出ない音を立て、次いで少女とイェルクロルトの間の地面に大鎌の刃が突き刺さっていた。
 それはただ突き刺さっているだけでなく、周囲の地面にヒビ割れを起こしている。
「おっそ。この程度避けてみろ」
 素っ気なく言い捨てるイェルクロルトに、少女は未だ何が起きたか理解できずにいた。
 緩慢な動きで歩み寄っていた。対応できるような構えも取っていなかった。
 だが、攻撃を防いだと思われるイェルクロルトの左腕は確かに銀色の獣の毛に覆われていた。
 この男は不味い
『――――ッ!!』。
 そう本能的に感じ取ったのか、少女は、吸血姫は悲痛な慟哭を上げた。
 それは紛れもなく少女の声で、周囲にいた猟兵達は一様に耳を塞ぐなり音を遮断するなりの行動を取っていた。
 澪も詩を紡ぎながらオーラ防御で衝撃波を防いでいる。
 ただ、一人を除いて。
「ヒスってんなクソ女。黙れ」
 慟哭する少女を、涙を流す少女を、煩いと足蹴した。
 慟哭は遮られた。大鎌は砕かれた。眷属はいなくなった。
 もう吸血姫に残っている物は何もない。少女の体を除いては、もう、何も。
 イェルクロルトが黒衣を引き剥がそうと俯く少女に近づいた時だった。
『私はまだ、死にたくないのよ!』
 それは吸血姫の悪足掻き。
 吸血姫は剥き出しになった犬歯をイェルクロルトの喉笛に突き立てた。
「……」
『フーッ! グゥゥウウ!!』
 まるで獣のように唸り声を上げながら喉笛を噛み千切ろうとする。

「では、その子を、返してもらいますのでー……」

 後少し、もう一咬み、といった所だ。
 間延びした声が吸血姫の耳に届いた。
 返してもらう? 何を?
 疑問が浮かび、流れ、流されていく。
 澪が紡ぐ詩は共鳴するもの。
 歌唱に込められた優しさ、祈り、願い等の想い。それらに共鳴する者に癒やしの力を授けるというものだ。
 澪は戦いが始まってから常に謳い続けていた。
 
それは少女の傷を癒やすためだけではなく、少女を吸血姫から救い出すため。
(私達は、貴女を、助けたいのです……)

 救えると信じて。
(皆で、帰るんですよー……お母さんも、待ってますので……)

 救えると信じて。
(痛みに、怯えないで……それが、貴女だと、自覚して……)

 救えると、信じて。
(さあ、手を繋いで……一緒に、帰りましょう……?)

 猟兵達の想いが、繋げた傷跡が、最後の一歩により形となる。
『……!? 何で、何で私から離れて……!?』
「それは、貴女の、お蔭でしてー……?」
「普通の女が喉笛噛み千切るかヒス女」
「それが、この子の行動と乖離していた、故……? の、拒絶、かとー……」
 イェルクロルトに恐怖し、怯えた末の悪足掻き。
 その行為は本来の少女であれば到底行わない行為であり、吸血姫と少女の意識を分断させる為の、少女の最後の一歩を踏み出させたのだ。
『あーあ、折角手に入れた玩具だったのに、残念』
 取り付くべき対象を失った為か、猟兵に付けられた傷が致命傷に達したのか。
 吸血姫の黒衣は次第に糸が解れてローブの形を保てなくなっていった。
「人は、おもちゃでは、ないのですー……」
『ああ、そうだったわね。アンタ達人間なんて家畜――』
「煩い。早く消えろ」
 吸血姫の黒衣が全てを言い終わる前にイェルクロルトが足蹴する。ボタボタと首から血を流しながら。
 その衝撃に耐えきれなかった黒衣は力を無くした糸と成り果てて、暗い森の奥へと消えていってしまった。
 残されたのは猟兵と囚われていた少女のみ。
 悲しい結末は回避され、一時の平穏を勝ち取ったのだった。


 気を失っている少女の手には、気がつけば淡く光を発する花が握られていた。
 それは少女が森に入って探していた月光花。
 少女が最初から持っていたのか、誰かが摘んできたのかは分からない。
 ただ、毟り取るように摘まれたのか根に土が残っていた。
 それでも月明かりに照らされる少女の顔には、笑顔が浮かんでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『すくわれたものたち』

POW   :    収穫や畑の手入れなど男衆の仕事を手伝う

SPD   :    糸紡ぎや洗濯など女衆の仕事を手伝う

WIZ   :    己の持ちうる知識を子供たちへ教える

👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 囚われていた少女は無事に母親の元へと帰された。
 森に潜む吸血姫の脅威も去り、村には束の間の平穏が訪れるのだった。

 森の脅威が去ったとは言え、この村は辺境も辺境。
 行商人が訪れる数も知れており、農作物は欠かせない。
 猟兵による物資の支援や作業の手伝いがあれば村人達は大いに助かるだろう。

 そして、村では一つの行事が行われることとなっていた。
 それは旅人から伝え聞いたのか、猟兵がもたらしたのか、灯篭流しという文化だ。
 場所によっては送り火、とも言うそうだ。
 現世に留まってしまっている死者の魂を常世へと送り出す。
 村人達はその行事に是非とも猟兵達に参加して欲しい、とのことだった。
アルトリンデ・エーデルシュタイン
迷える魂を安らかに送り出す行事ですか。私もぜひ、参加させていただきましょう。

えっと、灯篭を作って中に火を灯して流すんでしたか?
他の村人さんたちと一緒に灯篭を作っていきます。もしかしたら小さな子も居るかもしれませんし、私で手伝える事でしたら一緒に手伝います。

あとは穏やかに送ってもらう為にも軽食を持って行きましょう。
私で出来るのはサンドイッチくらいですが……作れるだけ作ってお弁当箱に入れて持って行きますね。
故人を偲ぶためにも、ちゃんと今を生きないといけませんから。

灯篭流しの時は静かに冥福を祈りましょう。
天に召されるすべての魂が迷うことなく、安らかにあらんことを。




 アルトリンデは村の集会所を訪れていた。
 そこでは今夜の灯篭流しに向けて灯篭の準備が行われている。集まっているのは村の少年少女から女性陣。
 アルトリンデはその中でも6、7歳くらいの少年達に囲まれていた。
「はい、これで完成ですよ」
「ありがとうお姉ちゃん!」
 少年はアルトリンデにお礼を言い、出来上がった灯篭を友達と見せあっていた。
 その光景に微笑みを浮かべながら見守っている。灯篭があるということは、それは誰か知り合いが無くなっている事を意味している。
 それ自体は悲しい事だし、喜べる事ではない。だが、今を元気に生きている少年達の姿は紛れもなく良き事。
(どうかこの子達の未来に祝福を。悲しみに塗り潰されないよう……)
 アルトリンデが静かに祈りを捧げていると、少年達の方からぐーっとお腹の鳴る音が聞こえてきた。
「……お腹空いた」
「しょうがないよ。収穫するまでのしんぼーだって、パパが言ってたよ」
「えー、今お腹が空いてるのにー」
「でしたら皆さん、サンドイッチでも如何でしょうか」
「え?」
 アルトリンデがぽん、と手を鳴らすと少年達の視線が一斉に集まった。
 そこにアルトリンデが手作りしてきたお弁当箱いっぱいのサンドイッチが差し出される。
 自分に出来るせめてもの支援。そう思って作ってきたサンドイッチに、子供達は顔を輝かせた。
「よろしければ他の方々もどうぞ。あまり量はありませんが」
「我々も頂いてしまっていいのですか?」
「はい。今を生きるにも食事は必要不可欠です。ですので、どうか遠慮なさらずに」
「……ありがとうございます、聖女様」
 村人達のお礼に思わず顔が赤くなってしまう。
 自分は自分に出来ることをしただけ。聖女と崇められるほどの事ではない。そう否定したい言葉が喉まで出掛けていた。
 だが、村人達の心から救われた、自分に感謝する言葉、それが伝わってきたから。
「皆様に幸あらん事を――」
 村人達の中心で静かに祈りを捧げる。
 猟兵として、聖者として、この村の行末に祈る。

 日が落ちて、灯篭流しの時間が訪れた。
 アルトリンデは共に灯篭を作った少年達に手を引かれ、一緒に川へと灯篭を流すことに。
 静かに冥福を祈るアルトリンデを真似してか、少年達も静かに黙祷を捧げていた。
 どうか、天に召されるすべての魂が迷うことなく、安らかにあらんことを。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メリー・ユメノコウジ
「本当に良かった…助けられて。」
少女の無事に安堵しながらも目の前のことに向き合うべく気を引き締め。
【世界知識】や【学習力】で己の得た知識を子供達へ。
今回のような怖い事もあるけれど世界はけして冷たくないことも救いがあることも含めて伝えたい。
怪我した人などいるのなら生まれながらの光で癒やして回る。

灯篭流しに参加、【祈り】【優しさ】を込めて。
「これからも私達は生きていく…居なくなってしまった人たちの分まで。」
「どうかいつのときも諦めないで、神も私達も見捨てない。希望を最後まで持って生きてほしいですめぇ。」
聖者らしく語りかけて死者へは安らかな眠りをただ祈る。
希望となるように猟兵として己もありたい。




「本当に良かった……助けられて」
 メリーはぽつりと呟いた。
 それは心からの安堵が溢れたものだろう。もしも少女を助けられなかったら夢見が悪い、なんて話では済んでいなかった。自分達の力が、そして少女の運が、良い方向へと導いてくれた結果。
 そう、どんなに絶望的なこの世界でも、救いはあるのだということ。
 メリーは自らの知識に経験談を踏まえて村の子供達に話すのだった。
「私、お姉ちゃんみたいに強くなる! 強くなってパパやママを守るの!」
「ぼくもー!」
「俺だってー!」
 それは伝染するように、子供達の心を灯していく。
 勇気、思い遣り、希望。
 前を向き、未来という光を見る。
 その心に宿した灯火はきっと、間違いなんかではない。
「はい、皆で頑張っていくですめぇ」

 ゆらゆらと揺れる灯篭。
 儚くも柔らかい、灯火の輝き。
 それは子供達に灯った希望の光に似ていて。
「これからも私達は生きていく……居なくなってしまった人達の分まで」
 その光にメリーは祈る。どうかお願い、安らかな眠りを。
 そして――
「どうかいつのときも諦めないで、神も私達も見捨てない。希望を最後まで持って生きてほしいですめぇ」
 生者に、死者に。
 聖者と、猟兵と。
 子供達の、村の未来を、見守っていてください。彼らこそが貴方達がそこに居たという証。
 だからどうぞお眠りください。
 子供達が憧れた猟兵が、希望となりいつか世界すら照らして見せるから、めぇ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リュカ・エンキアンサス
お祭り、とか俺には遠い存在だし、参加するのは性にあわないけれど。
帰るまでには時間があるから、手伝いぐらいはしていこう。
生憎だけど畑仕事には縁がない人生だから、重いものを運ぶ手伝いなんかをさせてもらう。
途中で吸血姫に捕まってた女の子のことも、ちらりと横目で見ておこう。
いや、別に声はかけないけれど。いざとなれば殺すつもりだったし。
……そんなやつに、声かけられてもきっと嬉しくはないだろうから。

終わったら灯篭流しでものんびり見ながら時間を潰そう。
……人は、死んだら終わりだ。悼んだって仕方が無いのにな。
きっと生きてる人間のために、必要なんだろう。
悪いとは言わない。
ただ……住む世界が違うんだなって、思った




「悪いな坊主。荷物運びなんて手伝わせちまって」
「俺に手伝えるのはこれくらいだから。気にしないでいいよ」
「そうかい? ありがとな」
 リュカは空いた時間で農作業の手伝いをしていた。
 畑仕事には縁がなく、一から教えてもらうよりできる範囲で手伝いをしよう、という判断だ。実際村人からすれば単純に作業工程の一つが減りとても助かっている。
 そんな畑仕事も順調に終わり、リュカに次の仕事が回ってきた。
「すまないが、今収穫した物をあっちの民家に配っていってくれないか」
「民家に配っていけばいいんだね、分かったよ」
 収穫した野菜をそれぞれの民家へと配達。
 少し体力がいるのを除けば内容は難しくない。リュカは特に苦もなく、黙々と仕事をこなしていた。
 そんな時だった。見知った顔を見つけたのは。
 それは昨夜の吸血姫、に取り憑かれていた少女。病的に白かった肌や、戦闘で負った傷は全て治っていた。
(後遺症も無いみたいだし、吸血姫の気配もない。気づかれる前に離れておこう)
 頼まれた野菜を家の入口に置き、その場から離れようとした時だった。
「あの、私を助けてくれた人、だよね?」
 家から出てきた少女がリュカに声を掛ける。しまったな、と内心でため息をつきながら振り返り。
「それは他の人だよ。礼ならその人達にするといい」
 事実、自分はいざとなれば殺そうとしていた身。そんな人間に礼などは不要だろう。
 だからリュカは、それだけ言うと再び背を向けて手伝いに戻ろうとした。
「ううん、貴方も私を助けてくれたよ。だから、ありがとう。お蔭でお母さんにもお花を渡せたよ!」
 それは少女の心からの言葉。
 否定したいところもあったが、少女がそれで良いというのであれば。
「……うん、どういたしまして」

 流れる灯篭を見詰めながら、だがリュカの心は死者に対して向けられていなかった。
(この行為に、意味はない。死者は死者、その先には何もないのに)
 それはリュカの死生観。
 人は生きている限り、歩き続けるしかない。いない人間を悼むことに何の意味があるというのか。
 頭では分かっていても、その行為は自分の理の外のもの。
 いつか自分にもそんな日が訪れるのか。
(でも、死者を想って作るこの灯りは、綺麗だ)
 そんな心の声が、灯篭と共に流れていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

寧宮・澪
無事で、よかったですよー……うんうん。
おかーさんも、よくなるといいですねー……。

灯篭、流しですかー……いいですねー。
どうぞ、常世へ、迷いませんよーに……。
そんな【祈り】を込めて、流しましょー……。

子供たち、希望者には、子守歌を教えましょかー……【謳函】から、流して。
色んな世界の、色んな歌を。
寝てたそーな、グリモア猟兵さんも、いたことですしー……。

おやすみなさい、いい夢をー。
夢路辿って、綿津見にー……三千世界に響きませー……。
どうぞ安らか、ゆるりと眠りたもうー……。




 川原に少女の澄んだ声が、その歌声が、流れていく。
 謳函によって流れるのは子守唄。
 死者に対しては安らかな眠りを。
 そして現世から常世への案内として。
 もう間違って現世に迷い込まないように、静かにお眠りください。
「ありがとうございます。何だか懐かしくて、落ち着く歌ですね」
「お姉さん、歌うのとっても上手だね!」
「ありがとう、ですよー……」
 そのふわふわと、ぼんやりとした様子ながら、澄んだ綺麗な旋律を奏でる澪。
 助け出した少女とその母親に連れられるようにして灯篭流しに参加していた。
 死者を見送るために紡いだ詩。
 それに興味を持ったのか、近くにいた何人かの子供達が澪の周りに集まってきていた。
「それでは、皆さんにも、子守唄を教えましょかー……」
 澪の提案に子供達は喜んだ。娯楽の少ないこの世界では、子供達にとって未知の物は何だって興味津々で楽しいのだろう。
 喜ぶ子供達のその奥、川原の土手に寝転がって灯篭流しをぼんやりと眺めている見知った顔を見掛けたから。
 亡くなった人達へ、今を生きる子供達へ、ついでに気怠げなグリモア猟兵へ。

 ねんねんころりよ おころりよ
 ぼうやはよいこだ ねんねしな

 それはどこの世界かの子守唄。
 母が子供に安息を与えるように、少女は謳匣に声を乗せて、柔らかな音色を響かせた。
 聞くものに安息を与える歌声に、子供達は皆耳を澄ませている。
 歌声を背に、灯篭はゆらゆらと川を流れていく。
 生者にも、死者にも、ただただ安息を。

「夢路辿って、綿津見にー……三千世界に響きませー……。どうぞ安らか、ゆるりと眠りたもうー……」
 おやすみなさい、いい夢を。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クリス・ホワイト
【WIZ】少女が無事に親元に帰れたようで、本当によかった。仕事のうちとはいえ、後味は良い方がいい。

あれは灯篭流し、というんだね。知らない文化だけれど、とても素敵だと思うな。僕も是非参加させてもらうよ。
大人たちは忙しいだろうから、僕は子供たちの相手をさせてもらおうかな。村たっての行事は子供たちにも楽しんでもらいたいからね。
灯篭流しのやり方を教えてもらうのでも良いし、冒険譚を聞かせてあげるのも良いだろう。

あとは、真央くんがもし近くで寝ているようなら僕も声をかけるよ。君も仲間のひとりなのだから。それに、寝てばかりだと猫になってしまうかもしれないよ?

(連携や交流、アドリブ歓迎)




「猫さんもありがとう!」
「なに、これも仕事だからね。それでは、僕はこれで失礼させてもらうよ」
 助けた少女の元を訪れていたクリスは、母娘に見送られてその場を後にした。
 いざとなれば仕事として割り切る、クリスもその一人だったが、最悪の結末を迎えずに済みホッとしていた。やはり仕事も物語も、後味は良い方がいい。
「おっと、まだ終わってはいなかったね」
 村の中を歩いていたクリスの目に入ったのは村の子供達。
 男性陣は畑仕事に、女性陣や小さな子供達は今夜の準備に。
 そしてそれ以外の子供達は村の空き地に集まっていた。
 村から出れず、満足な食事も出来ていないからだろうか。子供達の間に流れる空気はどこか重苦しかった。
 その空気を変えるべく、クリスは子供達の前に現れた。
「やあ、君達。もし良ければ僕の話を聞いていかないかい?」
「……話?」
「そう、話だ。胸躍り、心躍る、ワクワクドキドキの冒険譚だ。興味はないかい?」
「……聞きたい」
「いいだろう――それじゃあ、冒険をはじめようか」
 そうして始まった語りは、まさしく聞いている子供達の心を躍らせる冒険譚だった。
 それはお伽噺から始まり、アックス&ウィザーズの実際の冒険の話まで。
 古今東西、様々な世界の様々な物語を。
 クリスの巧みな語りに、子供達は圧倒言う間に飲まれていた。
 いくつめかの物語を語り終えた時には辺りも暗くなり、夕飯の時間となっていた。
「良い時間になってしまったね。今日の物語はここまでとしよう」
 切り上げようとするクリスに子供達は残念そうに声を上げる。
 最初の暗かった雰囲気はなくなり、今は皆クリスの語った物語に夢中となっている。
 その様子に、クリスは笑みを零し。
「いつの日か、次は君達の物語を聞けることを楽しみにしてるよ」
 暗く閉ざされた世界を照らす、子供達の希望ある冒険譚に期待して。

●柔らかな灯火
「寝てばかりいると、猫になってしまうかもしれないよ?」
 頭上からかけられた声に、重く閉ざされた瞼を、ゆっくりと持ち上げる。
 白い毛並みにトレードマークのシルクハット。クリスの姿に、しかし開いた瞳は相も変わらず気怠げで揺れ動くことなく。
「……喋る猫が言うとマジっぽいだろ、やめろ」
「それは面白そうな話だね。でも、今はこっちに参加するべきじゃないかな。君も僕達の仲間なのだから」
「……猫仲間じゃないだろうな」
 自らの手や顔を触って確かめる真央に違うよ、と笑いながら訂正し、ステッキで川原を指す。
 クリスと、そして体を起こした真央の眼前には無数の灯篭が流れていた。
 ゆらゆらと流れ行く。
 その灯篭を前に、何を想うのか。
 アルトリンデとメリーは祈った。聖者らしく、その魂に安らかな眠りを。
 リュカは俯瞰した。自分とは違う在り方、それが作り出す灯りを。
 澪は謳った。死者にも生者にも、等しく安息あれと。
 クリスは感嘆した。自身の知らない文化を、その想いも光景も素敵だと。
 そして灯篭に照らされた熱の灯らないセピア色の瞳。その瞳は何を見るのか。
 
 それぞれの想いを胸に。
 柔らかな灯火が川を流れていく。
 現世を、常世を。
 ゆらゆら、揺ら揺ら。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月17日


挿絵イラスト