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アースクライシス2019⑲~ラスティング・カーニバル

#ヒーローズアース #戦争 #アースクライシス2019 #ジェスター #ラグランジュポイント


●ラスティング・カーニバル
 オロロロロ、見付かってしまいましたか……。ナーンテネ!
 お祭り騒ぎはスバラシイですね! ワタクシ、大好きですよ!
 ただまぁ、出来ればワタクシ、このままおイトマ致したく。
 え? 許してもらえない? フーム、仕方ありませんねぇ。
 ではゴホン……。
 『寄ってらっしゃい見てらっしゃい。愉快なカーニバルがやってきたよ!』

●アースクライシス2019
 ひと月にも渡る連戦を労って、憩・イリヤ(キミガタメ・f12339)はその電子色の瞳に力を籠めた。
「戦争もいよいよ大詰めなの! ジェネシス・エイトのうちの5番目、ジェスターが発見されたの!」
 先の南瓜行列に混ざり込み、ひとを喰ったような言動をする道化師。
 いくらかの猟兵が視たという予兆によると、ヒーローズアースの地上とその他の『知られざる文明』を隔てたエナジー・ゲート。それを乗り越えた異邦人であるようだが、詳細のほどは全くの不明だ。
「場所は『ラグランジュポイント』なの。ヒーローズアースの宙にある、宇宙船がいくつもぶつかって出来た『島』。その中のひとつが、巨大輸送船に改造されてるってヒーロー達が気付いてくれたの!」
 様々な物品が運び込まれている流れに気付いた彼らはさすがは『ヒーロー』だ。
 この巨大輸送船こそがジェスターの本拠地に間違いないとイリヤは拳を握る。
「知ってると思うけど一応説明するね。ジェネシス・エイト──今回の場合、ジェスターは、これまでの戦争で戦ってきた量産型とは違って、本物。でも、オブリビオンだから、何度でも蘇っちゃうの。ただし、リミットまでに何度も何度もぶっ倒しちゃえば、完全に骸の海に沈めることができるの」
 だから、力を貸してね、と。イリヤは猟兵達へと視線を投げた。
「巨大輸送船には色んな区域があって、それぞれに分類されて運び込まれてるんだって。今回イリがみんなを連れてくのは、お人形区域」
 ぬいぐるみ、マネキン、ビスクドール、マリオネット、からくり人形などなど。
 そんなものがずらりと運び込まれているようだ。
「でも、みんな戦闘するのに特に問題はないと思うの。……あと、それとね。ジェスターも例に漏れず、先制攻撃してくるから。『そのユーベルコードへの対処法を編み出す』、なんてことができたら、とっても有利に戦えると思うの!」
 でも、それもきっとだいじょうぶ、と。
 信頼して疑わぬ笑みで、イリヤは手を振った。
「……幸せなエンディングの報告を、待ってるの!」


朱凪
 目に留めていただき、ありがとうございます。
 ジェスターと聞けば動かぬわけにはいかない。朱凪です。

 まずはマスターページをご確認ください。

▼OP補足
=============================
プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
(ジェスターは必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
=============================

 お人形については『壊すかもしれない』など、わざわざ触れるプレイングが無い限りは描写致しませんので、なにか思い入れがある方はどうぞ。

▼プレイング締切
 11/24の13時まで。
 シナリオ終了条件に達成しない場合は、改めて通知させていただきます。
※注意
 戦争シナリオと重々承知しておりますが、『執筆速度は決して早いとは言えません』。
 通常通り、期限いっぱい(3日間)掛かる可能性があります。
 その旨、ご了承ください。

 では、道化師と戦うプレイング、お待ちしてます。
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第1章 ボス戦 『ジェスター』

POW   :    力押しもたまには悪くないデスね
単純で重い【魔法金属製のメイス】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    古い馴染みの仲デシて
レベル分の1秒で【意志持つ魔剣『レギオスブレイド』の群れ】を発射できる。
WIZ   :    別に見捨てても良いデスよ
戦闘力のない【名も知らぬ一般人の人質】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【呪詛により人質が傷つき、悲鳴や苦痛の声】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
天御鏡・百々
人質を取るとはなんたる卑劣な!
なんとしてでも助け出さねばならぬ!

ジェスターの攻撃は第六感10で察知し
神通力(武器)による障壁(オーラ防御81)による防御と
真朱神楽(武器:薙刀)の武器受け5で対処

救助のために……人形達に協力して貰うとするか
『神は万物に宿る』で周囲の人形を付喪神に変え、人質救助に向かわせるぞ
人質を蝕む呪詛は破魔79を付与した人形が浄化し
人質の拘束を解いて安全な場所まで運ぶのだ

人質救助は付喪神に任せ
我はジェスターと戦闘だ
防御手段は同様に
本体から放つ光による目潰し5で隙を作り
ジェスターを薙刀でなぎ払い35だ!

●神鏡のヤドリガミ
●本体の神鏡へのダメージ描写NG
●アドリブ連携歓迎


霧島・ニュイ
お人形達に興味津々

攻撃は注視、見切り避ける
力押しなら動きは大きいはず、兆候を見逃さない
レギオスは銃で打ち返す

羅刹人形のリサを操り
人質を取られると、演技力使ってしゅんとした顔になり
…わかったよー、僕を好きに攻撃していいから、その人放してよー
右手の機関銃をポイッと捨てて手を挙げて指ひらひら、ゆっくりと近づく
その隙に指先でリサを操り、人質救出させ
僕とリサちゃん、注意の向いてない方から騙し討ちでポカッ
左手に持った銃のグリップで目を殴って目潰し(左寄り両利き)
なんでだろね、なんかその顔は潰さないといけない気がする
至近距離でスナイパーと霊距離射撃を使い、銃を放ち
二丁の銃を勿忘草に変えて、ジェスターのみ攻撃



●慈悲、慈悲、無慈悲
「わぁ♪」
 くいとキャップのつばを押し上げて、霧島・ニュイ(霧雲・f12029)は周囲にずらりと並べられた種々の人形へと視線を遣った。
 ぬいぐるみ、マネキン、ビスクドール、マリオネット、からくり人形──色々な種類があるものだと感心しながら、物色するようにその合間を練り歩く。
「オロロロロ! 喜んでいただけてなによりデスよ」
 そこに響くのは道化の声。ニュイが顔を上げるまでもなく、その巨体の存在感は綺麗に整頓された人形達の中で圧倒的だった。
 棘のような炎を纏い、道化は恭しく腰を折って片手を胸に当てて一礼する。
「それではサヨウナラ!」
「そうはさせぬ!」
 緋袴揺らして天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)はその背後へと立ち塞がった。おやおや、とジェスターは肩を竦めて見せる。
「困りマシタねぇ。ならこんな催しモノはいかがでしょう?」
 百々の薙刀が閃くより迅く、道化の手許に召喚されたのは、
「ひ、ひぃっ?!」
「ああ、動かないでクダサイね、名も知らない貴方? 貴方は人質、ワタクシが逃げるための駒デスから!」
 骨の仮面の大きく開いた口がにぃい、と笑う。突如召喚されたその人間はなにも理解できずに混乱を極め、百々は奥歯を噛み締めた。
「人質を取るとはなんたる卑劣な!」
──なんとしてでも助け出さねばならぬ!
 彼女は道具、ヤドリガミ。人の助けとなることが信条だ。見捨てることなど、出来はしない。
 素早く百々は視線を走らせた。それを受けてニュイもひとつ肯き、そして悄然と肩を落とした。そして手にしていた機関銃を放り出し、両手を掲げた。
「……わかったよー、僕を好きに攻撃していいから、その人放してよー」
 ゆるゆると近付く彼に「あ、」ジェスターの意識が向く。
「近付かないでクダサイ、代わりなんて別に必要ありマセンよ。ワタクシが逃げるまでナニもしないでいてくだされば結構なんデスから」
──好機!
 人形達よ、力を貸してくれ。
 溢れ出した神通力が波動となって周囲の人形達へと亘る。神は万物に宿る──百々のユーベルコード。幾多の人形達を付喪神へと変化させ、向かわせる先は当然、人質の元だ。
「リサちゃん!」
 同時に、くんっ、とニュイの指先が動く。人形達を眺めるふりをして、その中に潜ませた椿の君。人質を救うべく飛び掛かった付喪神達とは別の角度から、同じく彼へと手を差し伸べる。
 そして彼女と彼は、直接ジェスターを狙う──。
「オロロロロ……イマイチですねぇ。いえいえ、構いマセンよ? ワタクシは。ええ、別に見捨てても良いデスから」
 ジェスターはその超大なメイスを薙ぎ払った。──付喪神達ごと、その人質に。
「「!!」」
 熟れ過ぎた果実が潰れるような音がして。
 紅が人形の残骸達に迸った。
「当然でしょう、人質なんデスから。ワタクシへ利が無いと判れば捨てるだけデス」
 『これ』があれば攻撃して来ない。『これ』があれば見逃される。それを期待するがこその『人質』だ。
「──……っ!」
 声にならない声を上げたのは、誰だっただろう。
 髪に椿飾る羅刹の人形が中空で跳ねて道化へと攻撃を繰り出せば、それをジェスターがしのぐ瞬間をついて百々も跳ぶ。
「貴様!!」
「っ!」
 輝いたのは神鏡。その反射光に紛れて、振り抜く鋭い刃。確かな手応えと共に百々が身を伏せれば、ジェスターの視界に至近距離で飛び込むのはニュイのふたつの銃口。
「なんでだろね、なんかその顔は潰さないといけない気がする」
 放たれた弾丸は過たずにその骨の仮面を削り穿つ。銃そのものを勿忘草の花弁へと変化させれば、花嵐が更に道化を襲う。forget me not──ボクヲワスレナイデ。
 たたらを踏んで、しかし道化は笑った。
「仕方ありマセンねぇ! 追加公演デス。ショウを続けましょう!」
「貴様は許さぬ……!」
 薙刀を握る手に力を籠める百々の後ろで、ニュイも花弁が寄り集まり再び姿成した銃の照準を道化へと据えた。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

草野・千秋
殺戮道化師、だと!?
殺戮、人の命を道化に使うなんて!
色々企んでいるようですが
思い通りにはしない、させない
人間(ひと)はお前の思う通り動く玩具ではない!

180秒UCで敵UCを封じてみせる
お前の使う業には人の心がない
名も知らぬ一般人を盾に出すなど許せない!
怪力、部位破壊、スナイパーで「魔法金属製のメイス」に対抗
敵するものは全て壊してみせる!
力押しなら僕だって負けない!

ぬいぐるみ、ですか
昔両親がUFOキャッチャーで取ってくれました
懐かしくてちょっと泣けてきちゃいますね
壊すのは気が咎めます

レギオスブレイドの群れも怪力で叩き落とす
名も知らぬ一般人の人質には害なき笑顔を向け
必ず、絶対に、救ってみせますから


祓戸・多喜
地球散々荒らしまわって一人だけ高跳びなんてさせないんだから!
平穏な日常の為にも全身余さずくしゃくしゃにしてあげる!

可能なら他の猟兵と連携。
転移後すぐジェスターとの位置関係確認。
距離測りつつメイスでの攻撃に対し大きな矢を正確に早撃ちし出鼻挫く。
対応策は準備整うまで近づけない事!
小さな矢を交え乱れ撃ち連射しつつ、空中浮遊と神通力で後方へ飛んで距離を取り、準備できたら反撃開始!
怪力で思い切り引き絞った大きな矢で狙い撃ってジェスターを矢で壁に串刺しにするよ!
そう簡単には消えないだろうから確実に動かなくなるまで針鼠に。
アレはこの世界にとっての災厄、障害。だったらどかさないとね!

※アドリブ絡み等お任せ🐘



●応えんや、ヒーロー
 その紅は草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)の目にも映った。
 あまりにも鮮烈に。
──殺戮道化師、だと?
 ふつふつと胸に湧き起こるのは、間違えようのない“怒り”だ。彼はヒーロー。それもスーパーヒーロー、正義の徒だ。
「人の命を道化に使うなんて……!」
 握り締めた拳。名も知らぬ一般人を盾に出すなど許せない。
「色々企んでいるようですが……。思い通りにはしない、させない」
 青いグラス越しの敵を睨め上げて、彼は力の源である『己の意思』を全身に滾らせた。
「人間(ひと)はお前の思う通り動く玩具ではない!」
「オッケー! アタシもお手伝いしちゃうんだから!」
 ざりっ、とローファーで床をにじって、長身の彼よりも更に50cm以上背の高い少女が並び立つ。その身は二足歩行の白き象、祓戸・多喜(白象の射手・f21878)。
 つぶらな瞳をウィンクしてみせて、そして彼女は矢を番えて鏃をジェスターへと差し向ける。
「地球散々荒らしまわって一人だけ高跳びなんてさせないんだから! 平穏な日常の為にも全身余さずくしゃくしゃにしてあげる!」
「オロロロロ、それは勇ましいデスねぇ!」
 身に纏う赤は棘のような炎、そして他の仲間達がつけた傷。それでもジェスターは意に介さずそのメイスを振り上げる。
「そんなもの! これで出鼻を挫いてあげるんだから、」
「ワタクシより迅く動けるとでもお思いデスか?」
 素早く弓を引き絞った多喜の、焦点を結ぶよりもずっと近くに突如距離を詰めた道化は至近距離で骨の仮面でニタリと嗤った。
「っ、」
「危ないッ!」
 振り下ろされた超大な質量。息を呑んだ多喜の身体を横から伸ばされた腕が突き飛ばす。当然その腕の主は千秋だ。
 彼の背に単純な、けれど研ぎ澄まされた打撃が叩き付けた。スーツ越しにも鈍く重い衝撃が突き抜けた。
「ぐッ……!」
 息が詰まる。殺しきれない圧と速度が、数多積み込まれ整然と並べられていた人形群へと彼の身体を叩き込み、大きな破砕音を立てた。
「いいデスね、素敵デスよ!」
「っ! よくも!」
 振り返る。崩れた人形達に埋もれて、千秋の姿は確認できない。だが、こんなところで力尽きる猟兵は居ない。感謝を信頼で押し込めて、追撃させないためにも多喜は更に矢を番え──目にも止まらぬ速さで撃ち出した。
 『剛弓ハラダヌ』で引き絞るその矢は一本一本が槍が如く強靭さを持ってジェスターを貫き斬り裂く。矢の雨の中でジェスターもメイスを振り回して叩き落とすが、間に合いはしない。
「なかなかやりマスね! 良いショウです」
 一方で千秋はジェスターの高笑いを遠くに聞く。ようやく吐いた息、全身がばらばらになりそうな鈍痛。それでも。
「、」
 ふと顔の上に転がり落ちてきたのは、小さな犬のぬいぐるみ。手に取って彼は小さく笑った。
──昔両親がUFOキャッチャーで取ってくれました。
 懐かしくてちょっと泣けてきちゃいますね、なんて胸の内で呟いて。
 そしてそっとぬいぐるみを横に置いて、他の壊れた人形達にもごめんなさいと小さく謝罪を落とし、彼は立ち上がる。こんなところで、屈するはずがない。
「ジェスター、お前の使う業には人の心がない」
「ええ、必要ありマセンよ! 愉しければ!」
 彼の秘したユーベルコードは『対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、それを180秒封じる』というものだったが、そこに至ることは難しかったようだ。
 けれど千秋は動じない。
「力押しなら僕だって負けない!」
「任せて! 邪魔者は全て跳ね飛ばしてやるんだから!」
 アレはこの世界にとっての災厄、障害。だったらどかさないとね!
 多喜は強く床を踏み締めた。全身全霊の力を籠めて引き絞り放つ、其は障害を除くもの──ヴィグネーシュヴァラ。
 びょう、と風を切る音は鏃を追うかの如く。
 たった一本の矢。それがジェスターの巨体を掻っ攫い、その肩を貫いて船の壁へと磔にした。
「がッ──!」
 声を失う道化へと、蒼銀が閃いた。それは千秋の振るう、断罪の剣。
「お前を排除する、ジェスター!」
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ナギ・ヌドゥー
愉快なのはアンタの頭だけだろう
それを何処に持ち帰るつもりだ?
……直接アンタの身体に聞くしかない様だな。

【ドーピング】により反応速度向上
敵UCに合わせ【誘導弾・制圧射撃】の弾幕を張り魔剣の群れを撃ち落とす
撃ち漏らした分は【オーラ防御】でダメージ軽減
『道化師なぞに使役されて満足か!?魔剣の名が廃るな!』【恫喝・精神攻撃】
意志がある剣なら精神攻撃が効くかもしれない

もう息切れか!?
オレの弾幕はまだまだ続くぞ!
【殺気・呪詛・呪殺弾・制圧射撃】で【恐怖を与える】
この弾幕を避けようとする動きを【第六感・野生の勘】で【見切り】UC発動
鎖を放ち質問
『アンタの真の目的とは何だ?』
言う筈が無いか……それもまた道化師



●お噂はかねがね
 笑う仮面へ冷めた視線をくれ、ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)は細く長い息を吐いた。
「愉快なカーニバル? 愉快なのはアンタの頭だけだろう」
「オロロロロ、言ってくれますねぇ。知ってますよ、アナタ! さっきの彼もそうデスが、フォーティナイナーズとか言って暴れてる方でしょう? アナタも相当にショウがお好きと見えますね!」
 手首で回される巨大なメイスにこびりつくのは、誰の血だろう。
 ざわりと腹の底から湧き上がる殺戮衝動が、彼を駆り立てていく。それは彼にとってのドーピング。ジェスターは彼の標的として“相応しい”。
 『歪な怨刃』を握り締め、ナギは周囲の人形達を一瞥する。
「こんなものを何処へ持ち帰るつもりだ?」
「さァて! どこでしょうか? ワタクシの可愛らしいおウチかもしれマセンよ!」
「……直接アンタの身体に聞くしかない様だな」
 判ってはいた。
 そしてナギ自身も、初めからそのつもりだ。
 彼の標的は『暴力を厭わない者』に限られるのだから。

 ぞる、と。
 中空から切っ先が現れ、目にも止まらぬ疾さで飛び交うのに対して、ナギは掌を翳した。避けるため──では、ない。強化改造を施された彼の掌から放たれるのは、幾多の光線だ。
 質量を伴うエネルギーが魔剣を弾き、弾かれた切っ先が別の剣の進路を邪魔するよう誘導を兼ねた光の弾幕を放つ。
「道化師なぞに使役されて満足か!? 魔剣の名が廃るな!」
 大音声の恫喝に怯む魔剣の意思ではなかったが、逆上か高揚か──意思を持つという剣達の切っ先の狙いがばらけたのは感じた。風を斬り目を狙うが如く襲い掛かって来たそれを、頬の切り傷ひとつで回避して。
「もう息切れか!? オレの弾幕はまだまだ続くぞ!」
 光の弾幕は、まるで眩い太陽のようで。
 夜が、喰い尽くされるかのようで。
 呪いの、ようで。
 ジェスターは「忌々しいデスねぇ」吐き捨てる。その、足が鈍った一瞬をナギは見逃さない。横薙ぎに投げつけた『呪魂鉄枷』が、ジェスターの貫かれた肩を噛んだ。
「答えてもらおうか。『アンタの真の目的とは何だ?』」
 それは咎狗無明縛。対象へ投げかけた質問に真実を答えれば解除され、そして。
「オロロロロ、ワタクシは皆サンに愉しんでもらいたいだけデスよ? ──ぐふっ!」
「……言う筈が無いか」
 そして答えなければ敵を喰らうユーベルコード。
 それもまた道化師、と。一抹の感嘆は口にせぬまま、彼は更に幾多の拷問器具を手に道化と対峙する。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

鳴宮・匡
◆クロト兄さん(f00472)と


兄さんよりも後方へ位置を取る
視力の届く範囲を広く走査し
周囲の音に聞き耳を立て
出現した刃の位置、狙い、軌道を見切り速射で迎撃
“眼”には自信がある
“ひとの殺し方”もよく知ってる
何処を狙っているか、何を斬り/刺したいか
初動を視れば理解は易い

可能な限り前で耐える兄さんの負傷を抑え
自身の負傷は幾らか織り込んで動く
視力と腕の動きさえ十全に保てばいい
回避と迎撃を織り交ぜて先制を凌ぎ切る

援護に徹している、兄さんを“生かそう”としている
――と見てくれるなら好都合
粘り強く機を待ち、束縛が入った瞬間
通った射線から本命の一撃
――散々曲芸を見せてくれたからな
千篇万禍、さすがに外さないぜ


クロト・ラトキエ
匡(f01612)と。

接敵と同時に駆け、距離を詰める。
ほぉら。此方、いい的ですよ。

敵を中心に、空間全体を広く見。
虚無より魔剣現れるなら、鋒の向き、射速、軌道、刺すか斬るか…
視得る全てを見切り応ずる材料に。
意志が有る、殺す気で来る…寧ろ上等。
殺し方ならよく識ってます。
故の予測。
一斉に来るなら、急所・致命傷>匡>腕脚の優先度で、
新月と青薔薇の双刃にて、往なし弾き叩き落とし。

道化のしたり顔、間合いに捉えたなら、
渾身の新月の一撃、真っ向より…態と。

逆の袖より密か、影へと落とす、ナイフ三本。
縛れ
――玖式。

道化芝居は、貴方の専売特許じゃ無いんですよ。
序でに、
これだって本命じゃあない。

最高の一射、召し上がれ



●勝手知ったる“ころしかた”
 此処はいくつめの戦場だろう。
 そんなことを考えることすら無駄。意味はなく、価値もない。
「ほぉら。此方、いい的ですよ」
 必要なのは勝つこと。生き延びること。そのためには、殺すこと。
 柔らかな笑みを浮かべ、クロト・ラトキエ(TTX・f00472)が駆ける。漆黒のコートが翻るのに、ジェスターは「ロロロ、」笑った。
「近付いて来る的は嫌デスねぇ」
 軽く手を挙げれば、『馴染み』なのだという幾多の魔剣が中空から現れる。ゆらりと自律で動き、その切っ先がクロトに、そして僅か後ろで戦場を見渡す鳴宮・匡(凪の海・f01612)に向く。
 その剣は意思を持つのだという。
 それはつまり、“殺すつもり”であるということ。
──寧ろ上等。
 眼鏡の奥のクロトの瞳がわらい、凪いだ匡の双眸が静かに一度、瞬く。視る。すべてを研ぎ澄まして。経験を総動員して、全身で。
 刃の位置、鋒の向き、射速、軌道、刺すか斬るかの狙い。

──殺し方ならよく識ってます。
──“ひとの殺し方”はよく知ってる。

 傭兵達の決意は、同調というよりもただの事実だ。
「おやおやおや! スバラシイ! ハラショー! ブラーヴォ!」
 魔剣に意志があることを踏まえたからこその対策。技能は彼らの行動を裏付けして、豪雨の如く間断なく降り注ぐほとんどの魔剣が彼らには届かない。
 空を切る刃に焦れたような単調になっていく軌道をクロトは両の手に携えた黒の長剣と青薔薇の短剣で弾き返し、道化へとひた駆けた。
 その死角から、ぞる、と刃が現れる。彼の頸を狙う──しかしその剣先もまた、彼に届きはしない。ガィン! と金属音を立てて弾け飛ぶのは、後方からの援護射撃。
 クロトは振り返ることすらなく、匡も顔色ひとつ変えもしない。彼らにとってはあまりに日常の出来事だった。
「嫌デスねぇ、本当に!」
「光栄です。道化芝居は、貴方の専売特許じゃ無いんですよ」
 にこりとクロトが微笑む。跳ぶ。こちらを仰いだ敵の骨の仮面を見下ろし、新月の剣を振るう──その袖から零れるように落ちた、三つの楔。漆黒のナイフ。
 「縛れ」楔は道化の影へと吸い込まれるように、縫い付けた。
「──玖式」
「っ?!」
 完全な不意打ち。ジェスターの動きが強張り固まり、さすがの道化も動揺を見せた。
「序でに、これだって本命じゃあない」
「散々曲芸を見せてくれたからな」
 クロトの身体で死角となっていた匡が道化の視野に入ったのは当然、射線上に敢えて位置取っていたクロトがその身を翻したから。
「!」
 ジェスターとて、フォーティナイナーズに名を連ねる匡の存在を軽視したわけではなかった。それでも手玉に取られるほど、見事な連携だったのだ。
 『BR-646C"Resonance"』。戦場で姿を見せることはほとんどないアサルトライフル。今なら姿を見せたとて構いはしない。“目”には自信がある。動きを封じられた敵を相手ならばなおのこと。
「──さすがに外さないぜ」
 匡の肩を叩くのは慣れた衝撃。千篇万禍──ゼロ・ミリオン。
「最高の一射、召し上がれ」
 放たれた弾丸は音速を超えて、クロトの言葉がジェスターの鼓膜を揺らすよりも先に、敵の左目を撃ち抜いて。
 道化の悲鳴がこだました。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

楼・静鳳
アドリブ・連携歓迎
感情というものがいまだわからぬ数歳ヤドリガミ

「力押しも悪くないが…今は俺の分が悪いか」
嗜好や善悪以前に是非に勝ち世界を護る為―全力を尽くす

【拠点防御】の構えと見せかけ【残像】残し敵の攻撃を回避する方針
通常の回避法だと遅れを取る危険性があるだろうので
【怪力】【空中浮遊】用い俺自身を【吹き飛ばし】て迅速な回避を行う
勿論、吹き飛ばされるがままなら次撃で落とされて終いだ
吹き飛ばした事で敵のメイスを回避したなら即時に【怪力】【空中浮遊】で空中を蹴り敵に突進、剣でユーベルコードを見舞い【武器落とし】
メイスを切断し落とせれば最上だが構わず髪で敵本体を【捨て身の一撃】で【串刺し】
「―行くよ」


エドガー・ブライトマン
へえ、彼がジェスター君か
道化師を名乗っているらしいけど、道化師は周りを笑顔にするものさ
彼は私達で討たなくてはね

ぬいぐるみだとかマリオネットだとか
彼女たちに見守られながら戦うことになるんだろう
カッコ悪いところは見せられないな

私の武器はこのレイピア
反撃のため、ジェスター君との可能な限り距離を詰めておこう
それともうひとつ、“Hの叡智”
今回重視するのは攻撃力
攻撃を受ける直前、遅くとも同時には発動

間合いを詰めたけど、メイスは私に直撃するのかな
《激痛耐性》があってもそれなりに痛いね
でもキミのメイスが届くなら、私のレイピアも届くだろう?
《早業》《捨て身の一撃》

肉を切らせて骨を断つ?だっけ
UDCで聞いた言葉さ


メリー・メメリ
人形だー!人形がたくさんはこばれてる!
でもでも今日のメリーは人形よりも大切なことがあるって知ってるもんね!
かかさまにもがんばるっていってきたもんね!

よーし、まけないよ!
メリーは勝つ!
先制攻撃は敵の股の下をくぐってよける!
重いメイスはきっと素早くない!
体格の差を利用するんだー

それから、へこんだ地形を利用して戦う!
フードファイト・ワイルドモード!
かかさまの肉弁当をたべて強くなったメリーをみよ!
悪いやつもこゆびで持ち上げれるもん!

振りかぶったメイスを受け止めて
そのままえいやーってへこんだ場所に投げるよ!
これなら少しは戦いやすくならないかな?!



●奔放で優雅で静謐な
「人形だー! 人形がたくさんはこばれてる!」
 室内にずらりと居並ぶ人形にメリー・メメリ(らいおん・f00061)はかかさま特製の肉弁当をせっせと口に運びながら感嘆の声を上げた。
 傍で同じく物珍し気に人形達──かわいらしい女の子のぬいぐるみだとか、彼と同じ金色の髪をきつく巻いたマリオネットだとかを眺めて、ふむとエドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)は肩を竦めて笑う。
「彼女達が見守ってくれているのなら、カッコ悪いところは見せられないな」
 見ていてくれたまえ。キミ達のために勝つよ。そんな囁きをなに気なく落とす王子様を、楼・静鳳(紫炎花燈・f18502)は小さく瞬いて見つめる。彼はヤドリガミ。けれど記憶は朧げで、それが故にエドガーのように無機物に対しても真摯に関わる“人”が我知らずと気に掛かる。
「でもでも、今日のメリーは人形よりも大切なことがあるって知ってるもんね! かかさまにもがんばるっていってきたもんね!」
 メリーの大きな若菜色の瞳がきりと見据えるのは人形達の向こう側に佇む道化師。
 釣られるようにエドガーもそちらへと視線を遣った。
「へえ、彼がジェスター君か」
 幾多の猟兵達が錯綜する戦場で、ジェスターは今なお戦い続けている。
 けれどその身に刻まれる傷は、見目には見えぬ疲労は、確かに蓄積していた。
「フームム……そろそろおイトマしたいトコロなんデスが」
「そうはいかない。君を倒す依頼を受けている」
 嗜好や善悪以前に是非に勝ち世界を護る為──全力を尽くす。静鳳はあかがねの剣を抜いて淡々と告げる。
 未だ感情や心というものは彼にとっては判らない。だからこそ行動の理由は単純だ。それは時に危うさを孕むものではあるが、それすら彼にはまだ、わからない。
「ねえ、キミ。道化師を名乗っているらしいけど、道化師は周りを笑顔にするものさ。誰も笑顔にしないキミのショウは、ここで幕引きとさせてもらうよ」
 怜悧なレイピアを胸の前に捧げて。それから泳ぐように自らに差し向けられた切っ先に道化は笑った。
「オロロロロ! 仕方ありマセンねぇ!」
「よーし、まけないよ!」
 メリーが気合いを入れると同時に振り被られた巨大なメイス。
「力押しも悪くないが……今は俺の分が悪いか」
 冷静に見極め、静鳳はぐ、と足に力を籠めた。回避。間合いを測って、確実に。狙いはメリーも同じだった。けれど。
──重いメイスはきっと素早くない!
 なによりも『先』に行動をする敵に対してその見通しは、甘かった。体格差を利用し敵の股下をくぐる、そのために身を屈めた途端に振り下ろされた容赦のない質量が彼女を叩きつけた。ドン。小さな星が落ちたみたいな衝撃が人形区画全体を震わせて、その床を大きくすり鉢状に変形させた。
「う……!」
「キミ!」
「オロロロロ、重いからこそ迅いんですよ、お嬢サン!」
 恐らくジェスターにも、余裕がない。静鳳はその紅緋の瞳を見張り、エドガーは咄嗟に呼ばわった。
 しかし幼くともメリーとて猟兵だ。
「う、うぅうう……! メリーは勝つ……っ! かかさまの肉弁当をたべて強くなったメリーをみよ!」
 フードファイト・ワイルドモード! 全身の細胞を活性化させ、戦闘力を増加させたなら、大きく凹んだ地形の中心で小柄な身体が、細い腕が、大男のメイスを持ち上げて不敵に笑った。
 元より彼女は黒曜石の角を持つ。膂力に不足はないのだ。
 素晴らしい、と口の中だけで称賛を送り、仲間達と視線を交わし合いながらエドガーは駆けた。“仕掛ける”。ただそれだけ。それだけで──充分だった。メリーは力いっぱい肯き、静鳳も首肯を返す。
 エドガーの向かう先ではジェスターが再び凶器と狂気を振り上げた。
「ならば何度だって潰して差し上げマスよ!」
「いいや、させないさ」
 この私が。
 金糸が揺れると同時に、硬いものが折れる音がした。痛みには耐性がある彼であろうとも、瞬時視野がぶれるほどの鈍痛が走り抜けた。なによりも、床にめり込む足からの衝撃と反動が大きい。それなりに痛いね、なんて。小さくエドガーは苦笑する。
 けれど。
 深呼吸をひとつ。瞬きをふたつ。そして祖国の名を心の裡で唱えたなら、彼に与うるのはHの叡智──ライト・アンド・マイト。防御力を上げることも出来たそのユーベルコードで、彼が願ったのは攻撃力。
「キミのメイスが届くなら、私のレイピアも届くだろう?」
 ほぼ懐の中と言っていい至近距離で繰り出す研ぎ澄まされた刃。
 狙うのは大男の身体を支える脚。腿。
「肉を切らせて骨を断つ? だっけ。UDCで聞いた言葉さ」
「えいやーっ!」
「なにを、」
 エドガーの刺突で体勢を崩したジェスターの腕を、メリーが掴んで放り投げる。それだけであったならば、大した奇襲にはならなかっただろう。けれど道化がふらついた先は、猟兵達への攻撃で変形し凹んだ床だった。
「っ?!」
 単純。けれど重要なその変化に、道化師の身体は大きくバランスを崩した。
 そこへ中空を蹴って音もなく間合いを詰める静鳳の姿を捉え、辛うじてジェスターもメイスを振るうものの、闇雲なその動きは返すに容易い。
 絡め取るように剣を操り、そのメイスへと狙いを定めた。
「──行くよ」
 剣刃一閃。
 掌に残ったのは軽く叩いたような感触だけ。か。と。短い音を立ててメイスの頭部が両断され。ふたつに分かれた残骸はエドガーを避けるみたいに両サイドに落ちて耳障りな音を立てた。
「く……っ! 調子に乗るのは早いデスよ! まだまだ、手はありマスから!」
 ジェスターが大仰な動作で手を振れば、中空から幾多の刃がずらりと猟兵達へと差し向けられた。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

夏目・晴夜
意思持つ魔剣を全て凌ぐのは流石に厳しいです
なので心臓や頭部と言った即死部位を狙う魔剣に狙いを絞り、
【第六感】で回避や妖刀での【武器受け】で防御
生きていれば怪我はいずれ治りますし、
私が死んだら宇宙レベルの大損失ですからね

初撃を凌げたらすぐさま妖刀の一閃から【衝撃波】を放ち、
魔剣や一帯の人形を巻き込みながら攻撃
人形の綿や破片や魔剣を周囲に散らせて視界を悪くし、
敵への目眩ましに利用させて頂きます

隙をついて『喰う幸福』の高速移動で一気に接敵
妖刀で【串刺し・傷口をえぐり】つつ、
呪詛を伴う衝撃波を刀身から体内へ直接放って差し上げます

いいですねえ、愉快愉快
極上のカーニバルですよ!
このハレルヤの気分も最高です


境・花世
一体どこからやってきたやら
はるばる御足労してもらったみたいだね
だけど残念、丁重にお引き取り願おうか

望まれざる客人と真っ直ぐ相対するのは、
傷なんて最初から恐れていないから
襲いくる魔剣の群れから目を逸らさずに、
闇に死角に紛れるものも全て視認して
裁曄で叩き落とすカウンター

避けきれない刃で血を流すならちょうどいい
薄っすらと笑ってみせたなら、
己が血を啜って爛漫の花が咲く

そちらにも、この花は咲いていた?

薄紅の花びらを一斉に向かわせて、
その禍々しい眸も躰も何もかも切り裂こう
血を啜った百花の王はどうやらご機嫌なようで、
波濤のように勢いよく散らし続けながら

――お前のいるべき世界なんて、ほら、どこにもないんだよ


花剣・耀子
呼んでもいないけれど、遭ったからにはお暇を赦すつもりもないのよ。

射出が目に留まらなくたって、目に入る質量があるなら充分。
おまえたちを只の武器とは思わないわ。
意志があるのなら、狙いを付けてくるのではないの。
そういう、致命傷を狙う攻撃だけは咄嗟に斬り払って防ぎましょう。
態々来てくれるのだもの。剣を振るう腕が残れば充分よ。
即死しなければ、いま凌げればそれで良い。

……、蛇は執念深いのよ。
アレは、受けた痛みを、傷みを、忘れない。
傷みを起点に呪詛を乗せて、お返しといきましょう。
魔剣も道化師も、全て巻き込んで斬り果たすわ。

おまえのその芸を、このせかいのヒトたちに披露されては困るのよ。
此処で幕を引いて貰うわ。



●カーテンコールはいらない
 猟兵達の猛攻によりメイスを失ったジェスターの周囲に浮かんだ、無数の剣。
 それは夜の帳の如く、隙間なく色を奪うほど。
 しかし対する猟兵達の視線は、あくまで普段となんら変わらなかった。
「一体どこからやってきたやら。はるばる御足労してもらったみたいだね」
「ええ。呼んでもいないけれど、遭ったからにはお暇を赦すつもりもないのよ」
 『裁曄』を手にした境・花世(*葬・f11024)がどこか楽し気に口角を上げて見せれば、花剣・耀子(Tempest・f12822)の蒼く冴えた瞳が淡々と告げて『機械剣《クサナギ》』を静かに構える。うん、と花世が気負わぬ応えを返す。
「残念だけど。丁重にお引き取り願おうか」
 少しも残念だなんて思っていない口振りで。
 泰然と。自然体とも言える様子で対峙する猟兵達に、ジェスターは笑った。
「オロロロロ! これは素敵なショウが拝めそうデスね? これだけの魔剣達をすべて防ぐ算段がおアリのようだ!」
 魅せていただきましょうと言わんばかりに振り上げた手に応じてレギオスブレイドの切っ先が揃い猟兵達へと狙い定め、夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は芝居がかった仕種で肩を竦めた。

「いいえ?」「ううん?」「全く」

「……ハ?」
 ジェスターが耳を疑うよりも迅く魔剣達が雨とばかりに降り注ぐ。
「全て凌ぐのは流石に厳しいですからね」
 当たり前だとばかりに告げる晴夜が相棒から『悪食』を受け取りくるりと回す。耀子は嵐のように風を裂く音の中、その切っ先を静かに見据えた。
「おまえたちを只の武器とは思わないわ」
──意志があるのなら、狙いを付けてくるのではないの。
 だから。
 言葉を交わす必要もなかった。
 誰からともなく、すいと互いの背を預け合って死角を消し合い、狙いを絞った、ただそれだけのこと。戦いに支障を来たす部位への攻撃を狙う魔剣だけに。
──即死しなければ、いま凌げれば、それで良い。
 「心臓に頭部」『悪食』が刃の端を噛んでまずいとばかりに弾く。
 「目も困るかな」『裁曄』が疾風に舞うが如く絡め取り叩き落とす。
 「態々来てくれるのだもの。剣を振るう腕が残れば充分よ」『機械剣《クサナギ》』の回転する刃が薙ぎ払う。
 猟兵達はこともなげに告げる。告げて──血に塗れていく猟兵の姿を、ジェスターは最初、唖然と眺めていた。しかし嵐が止むその直前。嵐の前となにひとつ変わらぬ彼ら彼女達の姿と表情に、思わず喝采を送った。
「スバラシイ! ハラショー! ブラーヴォ! とんだイカレたショウですね!」
「まあ、生きていれば怪我はいずれ治りますし、」
 私が死んだら宇宙レベルの大損失ですから、ね! しれっと言い放つ妖刀の一閃は圧を生み最後の魔剣や周囲の数多の人形を巻き込んで破砕した。弾け飛んだ綿や木片は、目眩まし。
「もっと褒めてくださってもいいんですよ?」
 渦巻く闇色の怨念を妖刀に纏わせ、とん、と軽く蹴ったそのときにはこれまでの戦闘で大きく欠けた道化の仮面を見下ろした。ブーツの踵をジェスターの肩に叩き付けて、晴夜はニィと笑う。わらう。
「おや。肩を怪我しておられる様子」
 言うが早いか振り下ろす刃。喰う幸福──クウフク。妖刀伝って叩き付けるのは対象の傷を悪化させる呪詛を伴う衝撃波。内側から弾けるかの如く瞬時膨張して見えた道化の身体から、醜い悲鳴が迸った。
「いいですねえ、愉快愉快! 極上のカーニバルですよ! このハレルヤの気分も最高です」
 それが狼の嗜虐性なのか。はたまた殺戮道化師に対してこの傲慢と高慢の塊である彼にも思うところがあったのか。それは彼のみぞ知るところである。
 ぱたぱたっ、と。
 彼のこめかみのかすり傷や、腕から滴る血がジェスターの骨の仮面に染み込んでいく。
 それらの紅が──視界に更に広がった気がしたときには、既に遅い。
「きみの居た世界にも、この花は咲いていた?」
 晴夜が強く蹴って刃を引き抜き距離を取ると同時、うっすらと微笑み浮かべた花世の姿が道化師の視界から消える。否、消えたわけではない。彼女の右目に寄生するUDC“絢爛たる百花の王”──大輪の八重牡丹が、彼女の全身へと広がると共にその花弁を撒いたのだ。それは血葬──イケニエ。
 その花弁は血と断末魔を啜る。晴夜だけではない猟兵達の与えた傷へと群がり喰らう狂気に構わず、牡丹の化生は、
「王もご機嫌のようだ。誇ってもいいよ?」
 ちょっぴり晴夜の口振りに寄せて悪戯っぽく花の隙間から小さく咲う。花弁は盛大に散ってはジェスターを襲い、満身創痍の道化が藻掻き苦しむ姿に耀子は軽く息を吐いて頬に筋を残す紅を手の甲で擦った。
「……、蛇は執念深いのよ」
 ぞろりと。彼女のチェーンソーから漂い泳ぐ、黒い靄が滲み出る。
「アレは、受けた痛みを、傷みを、忘れない」
 花世に寄生するUDCが“絢爛たる百花の王”ならば、耀子の傍に侍るのは“オロチ”だ。チェーンソーの『目』がぎょろりと道化を睨めつけた。
 視えるならば斬れる。音を立てて光速回転始めた幾多のブレード。彼女の纏う学生服のような衣装の袖は無数の傷でずたずたで、滲んだ血の量は夥しいが、それでも彼女は重さなど感じさせない動きでその剣を持ち上げた。
「おまえのその芸を、このせかいのヒトたちに披露されては困るのよ。此処で幕を引いて貰うわ」
 そして振るう。放たれた白刃が周囲、そして殺戮道化師を覆い尽くす花弁を散らす。《花嵐》──ライトスピード。
「そん、な」
 まだ。
 なにも。
 そんなかそけき声が聞こえたかと耳を傾ければ、そこにはただ、割れた仮面が花びらの敷き詰められた床の上に落ちているばかりになっていた。
 確かめるみたいに爪先で仮面を蹴り飛ばす晴夜の後ろで、一輪、一輪と花弁が尽きて元の姿へと戻りつつある花世が小首を傾げた。

「──お前のいるべき世界なんて、ほら、どこにもないんだよ」

 カーテンコールは、もう、いらない。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月28日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト